【モバマス×餓狼伝説】ビリー・カーン「はァ?アイドル?プロデューサー?」 2 (793)

ホア「愛梨ちゃん!今日は11時から収録、15時から握手会、19時からはスイーツパーティだぜ!」




※前スレ【モバマス×餓狼伝説】ビリー・カーン「はァ?アイドル?プロデューサー?」

【モバマス×餓狼伝説】ビリー・カーン「はァ?アイドル?プロデューサー?」 - SSまとめ速報
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前スレからの続きはこちらで投下します

周子「……ところでさぁ、ビリーさん」

ビリー「……あぁ?」

周子「あたしがアイドルになるって言った時言ってたよね、半端な覚悟の奴を取れる状況じゃないって。なんか問題でも起きてるん?」

ビリー「……元々半端なヤツは取られねえってだけだ。てめェが気にすることじゃねえ」

周子「……ふーん」

ビリー「とりあえず今日はどっか適当なホテルに泊まって、明日事務所に来い。社長か事務員か、どっちかがお前の住処の手配をしてくれるだろうよ」

周子「うん、わかった。じゃ、また明日ね」

ビリー「……」




ビリー(よくわからねえ内に5人目が集まっちまったが……ギース様があの事務所に関与している可能性が少ねえことはリッパー達に相談しねえとな……)

ビリー(それに、俺を狙ってる奴ら……昨晩は堂々と街中で仕掛けてきやがったが、今日はその気配もねえ……昨日二人掛かりでやられたから警戒してんのか?)

ビリー「……」
ピッ
プルルルル



リッパー『……そうか』

ビリー「どうすんだよ?ギース様が関わってねえとなれば俺がこっちに居続ける理由は……」

リッパー『話を聞いた相手はまだ一人だろう?彼女が知り得てない情報がまだあるかもしれん。お前は引き続きプロデューサーと調査を続行してくれ』


リッパー『それに、ついに5人目をスカウトしたんだろう?お前が言った話が本当ならこれからお前の行動の自由度も上がるはずだ』

ビリー「……あの女が簡単に独立をさせるかね……今日も休んでやがったし、すんなりいくとも思えねえ」

リッパー『何かあったのか?』

ビリー「桐生と極限流の女……あいつらどうも何か隠してやがるようだ。事務所に写真を送ってきたやつらと何か関係があるのかはわからねえが……そっちの正体はまだ掴めねえのか?」

リッパー『残念だがまだこちらでも実態は掴めていない。今は現地に派遣した人員からの報告待ちだ』

ビリー「……」

翌日
事務所

周子「……というわけで、京都から来ました~、よろしくお願いしま~す」

パチパチパチパチ


智恵理「よ、よろしくお願いします……」

心「いやあ、はぁとはすぐに『あっ!京都の和菓子屋の娘だ!』って思い出したゾ☆タダモノじゃないオーラ出してたかんな♪」

李衣菜「えーっと……歳は、18?心さんの次にお姉さんじゃん」

いきなり名前ミスっとるやん ごめんなさい
>>7 智恵理→智絵里



忍「えっと……周子さんもアイドルになるために実家から上京してきたの?」

周子「さん、なんて堅苦しい呼び方しなくていいよ。そっちのがアイドルとして先輩なんだからさ」

忍「え……じゃ、じゃあ……周子、ちゃん?」

周子「うん、それで♪」

周子「で、さっきの答えだけど……まぁあたしの場合は順番が逆かな」

忍「逆?」

周子「うん。アイドルになるために上京してきた、じゃなくて、家を追い出されてアテがないからアイドルになった、かな」

心「え、あの和菓子屋さん追い出されたの?マジで?」

周子「うん、急に親に将来の事とか聞かれてさ、ふざけてこのまま実家でヌクヌク過ごしま~す、なんて言ったらもうお父さんもお母さんカンカンでさ」

李衣菜「うわあ……」

周子「んで、当面の生活費だけ渡されて叩き出されちゃったってワケ。とりあえずバイトでもして食いつなごうと思ったんだけど、ビリーさんに名刺もらったこと思い出してさ」

智絵里「えっ……プロデューサーさんから誘われてたんですか……?」

周子「んや、強引に貰った。で、こっちに来て、昨日運良く街の中でビリーさんに会えたんだー」

心「へえ……でも特にテストっていうかオーディションとかなかった?いきなり採用になったの?」

周子「へ?……あ~、いや、あったよ。かるいテストみたいなのは……」

周子「まあきっかけはこんな感じだけどさ、アイドル手を抜くつもりは無いからみんな改めてよろしくね」


忍「……」

社長室

ビリー「……よう。今日は出勤出来たようで何よりだぜ」

つかさ「……昨日はちょっと疲れが溜まってたから休みを急きょもらった。お前らにも迷惑かけたな」

ビリー「そうかい。……で、俺は昨日5人目をスカウトした」

つかさ「……ああ。アタシもさっき話したが、アレは才能がある。良く捕まえられたな」

ビリー「……」

つかさ「……なんだ」

ビリー「なんだ、じゃねえよ。5人目をスカウトしてきたんだから、俺はもう独立できるんだろ?」

つかさ「……その件か」



つかさ「……お前の独立だが……今回は見送る」

ビリー「……ああ!?」

ビリー「……オイオイ社長サンよ……そりゃあ話が違うんじゃねェか」

つかさ「……お前こそ、アタシがお前に出した独立の条件をはき違えてるんじゃないのか」

ビリー「……んだと?てめェは確かに5人担当アイドルを抱えたら独立させると言ったはずだ」

つかさ「……担当アイドル5人、それとプロデューサーとして最低限の能力を身に着けてから、と言ったはずだ」

ビリー「……じゃあ何か?てめェは俺がそのプロデューサーとしての最低限の実力も無ェと言いてえのか」

つかさ「……そういうこった。まだもうしばらくは大人しく事務所で……」



ビリー「……ふざけんな」


ビリー「俺ァもう営業で仕事も取ってきてる!トレーナーからはあいつらもそれなりのレベルまでこなせるようになってきてると報告も来てる!」

ビリー「それで後は何が足りねえ!どうせてめェが俺を気に入らねえから嫌がらせしてんだろうが!」

つかさ「……」

つかさ「逆に聞くが、なんでそんなに独立を急ぐ?」

ビリー「……あ?」

つかさ「何か急いで独立しなきゃいけない理由がお前にあるのか?仮に独立して……お前は一体どういう方向でプロデュース活動していくつもりかビジョンはあるのか?」

ビリー「……」

つかさ「……」




『そう考えれば合点がいく。あの狂犬がこんな所でアイドルのプロデューサーごっこをしてるなんてのも、ここの調査の為の偽装の為ならな』





つかさ「……それとも……事務所にいると……いや、アタシの目があると困るような事をするつもりなのか?」

ビリー「……!」

つかさ「……」

ビリー(……バカな、この事務所を調査しているのがバレてんのか?)

ビリー(昨日会った兵藤から?いや、昨日の今日だ、それに俺は昨日はあのキツネをスカウトしたというアリバイがある)

ビリー(……そもそも俺が調査らしい調査ができたのは昨日が初めてだ、だったらこの女がそれに感づいてるのはおかしい……だとしたら、カマかけてんのか?)

ビリー「……」

ビリー「……単に俺ァ誰かの下でやるってんのが性に合わないってだけだ。俺に命令できんのはギース様以外には俺自身だけだ、それは今も変わってねえ……」

ビリー「それが俺がさっさと独立してェ理由だ、なんかおかしいことあるか?」

つかさ「……」



つかさ(……山崎がいつ何を仕掛けてくるかわからない以上、こいつを外に放り出して山崎と接触するような事態は避けたい……)

つかさ(だからできるだけ手元に置いときたい……なんてのはこいつには言えるわけがないな……)


つかさ「……とにかく、今すぐの独立は認めない。わかったら……」

ビリー「わからねえな。俺ァこの数か月、コレを目標にしてやってきた。すぐに独立させねえってんなら、せめて独立のための具体的な条件を出されねえ限りはぜってえここを動かねえ」

つかさ「……」
ジロッ

ビリー「……」
ギロッ



つかさ「……ふぅ」

つかさ「……ほら」
ピラッ

ビリー「……なんだこのチラシは」

つかさ「……約一月後、新結成されたグループを対象にしたフェスがある。それにお前のアイドル達でグループを作って出演しろ」

ビリー「……!」

つかさ「それでそのフェスの中でお前のグループが抜きんでた実力を見せられたなら……その時は独立を認めてやる」

ビリー「……今度こそ、本当だな。もし今度も独立を認めねえなんて抜かしやがった日には……」

つかさ「ああ、その時は好きにしろよ。……まっ、お前が上手くやればの話だけどな」

ビリー「……その言葉、忘れるんじゃねェぞ」
スッ
ガチャ

バタン


つかさ「……」

つかさ「……」
スッ
ピッ
プルルル

つかさ「……もしもし、桐生だ」


つかさ「ああ、そっちもメンバーが揃ったんだろ?だったら、案内したいステージがある」


つかさ「一月後にフェスがあるから、それに出演しろ。そこで、アンタのアイドル達の実力を見せてくれ」

ピッ


つかさ「……」

今日はここまで






周子「……はぁ、はぁ……つっかれた……」
グタッ


李衣菜「お疲れ、周子ちゃん!」

心「はい、恒例の初レッスンリポートでーす☆いやあ、期待通りグッタリしてんな☆」

周子「いやあ、予想はしてたけどかなり身体鈍っちゃってんなー……ま、しょうがないか……最近ホント碌に運動もしてなかったし」

周子「その点、ほかのみんなはもうバッチリ動けてるって感じだったよね。すごいなー」

智絵里「そ、そんなことないですよ」

忍「……でも、初めてなのにあれだけ踊れるのはすごいって周子ちゃん褒められてたじゃん」

周子「え?いやいや、あんなんお世辞じゃないかなー、実際後半はもうバテバテだったしさ」


忍「……そうかな」

心「……あれ?プロデューサー?」


スタスタ
ビリー「……お前ら、揃ってんな」

李衣菜「どうしたんですか?レッスン時にプロデューサーさんが来るなんて……」

ビリー「……シューコ、へばってんな」

周子「……見ての通りね」

ビリー「全員、シャワー浴びたらもう1回集まれ。話がある」

忍「話って?」


ビリー「これからの話だ」


智絵里「……?」




心「……デビュー!?」

ビリー「そうだ。今から約1か月後……『ニューフェイスフェスティバル』が開催される……それがお前らの初舞台だ」

忍「お前ら、ってことは……この5人でユニット?」

ビリー「そういうこった」


周子「……あのー、あたし今日から入ってきたばっかりなんだけど、メンバー入ってるの?」

ビリー「あたりめェだ。タダ飯食わせる余裕はねえんだよ」

周子「いや、タダ飯食うつもりはないけど……良いの?」

ビリー「良いも悪いもあるかよ」

李衣菜「……でも、1か月後ってことはユニット名や曲ももう決まってるって事ですか!?」


ビリー「……曲に関しては原案は出来てる。ユニット名は別に何も決まってねえ」

心「ユニット名決まってないの!?じゃあ、『すいーと☆きゃぴきゃぴがーるず』に……」

李衣菜「なんですかそれ!もっとロックな感じの名前にしましょうよ!」

智絵里「……た、たとえば……?」

李衣菜「えっ……ロ、ロ……ロッキングガールズ、とか……」


ビリー「……おい、てめえら」

周子「……ん?」

ビリー「予め言っとく。今度のステージ、初舞台だろうが関係ねえ、完璧にこなせ」

忍「……どういうこと?」

ビリー「そのまんまの意味だ。失敗は許さねェ、最高のパフォーマンスを見せろ。絶対だ」


智絵里「……ッ」
ビク

心「ちょ、ちょっとプロデューサー、いきなりライブ決まった瞬間からプレッシャー掛けてくるのはちょっと早すぎない?」

ビリー「……てめェらは呑気に考えてるかもしれねェが、今回のこのステージに俺たちの独立が懸かってる。失敗はあり得ねえんだよ」

心「えっ、独立って……最初に話してたアレ?」

ビリー「桐生が俺にさっき出してきた条件だ。今度のフェスで1番のパフォーマンスを見せろ……てな」

ビリー「だから、もし浮かれてるヤツがいんなら切り替えろ。明日から本番までは完全にレッスン重視にしていく」

ビリー「……良いか。てめェらも曲がりなりにもプロだ。泣き言や文句は受け付けねェ、明日から覚悟しとけよ」
ツカツカ

心「あっ、プロデューサー……行っちゃった」

李衣菜「……なんか、ついに待ちに待ったデビューが決まったっていうのに……」

周子「やったー!っていう空気じゃないね。ビリーさんはいつも仕事じゃあんな感じなん?」

智絵里「……確かにぶっきらぼうで、怖い時もありますけど……」

心「……まぁ、あんまり余裕がないんでしょ!そういうこともあるだろ☆」


忍「……でも、プロデューサーさんの言う通りだと思う。せっかくデビュー決まったんだから、みんなでパフォーマンス仕上げて、良いステージにしようよ!」

智絵里「……」

翌日
レッスンルーム

トレーナー「……おはよう。プロデューサー殿から話は聞いてる。本番用の曲もほぼ出来てるから、今日からはこの曲のダンス、ボーカルのレッスンをしていく」

李衣菜「どんな曲なんですか?」

トレーナー「じゃあ、とりあえず一回曲を聴いてもらうか」




トレーナー「……以上だ」


心「……はげしい~曲だな☆」

周子「うんうん、こういうのなんて言うんだっけ、パンクロック?」

忍「うん、ギターの音がかなり目立って……李衣菜ちゃん?」


李衣菜「……カ」

智絵里「か……?」



李衣菜「カッコイイーーーー!!超ロックううううう!!」
グワ

智絵里「ひっ」
ビク

李衣菜「トレーナーさん!コレなんていう曲なんですか!」

トレーナー「ああ、曲名は……」


ビリー「『トーキョーマーチ』だ。作曲家とは俺が直接話して作った」
ツカツカ


周子「あ、ビリーさん。おはよー」

李衣菜「ト、トーキョーマーチ……かっこいい……!」

心「……けど、これ演奏どうすんの?」

ビリー「てめェらが歌って踊れて演奏まで出来るんならやらせるが、出来ねえだろ。演奏自体は外注だ」

李衣菜「えーーー!私ぜひこの曲のギター弾きたいんですけど!」

ビリー「まだコードも押さえ切れてねえシロウトが何ほざいてやがる。10年はええ」

李衣菜「ええ……」

ビリー「……じゃあお前、本番までの一月でコード覚えて、完璧に仕上げられるか?」

李衣菜「……そ、それは……」

ビリー「……もう一回言っとくぞ。失敗はねえ、絶対だ」

ビリー「それに、お前らの実力が頼りねえのはわかってるから、わざわざ俺が曲作りから関わったんだ。この曲なら、お前らが歌とダンスさえしっかりこなせりゃ一番盛り上げられるハズだ。他の参加グループも所詮新人だしな」

忍「……」

ビリー「オラ、ボーっとしてるヒマはねえぞ。いくら曲が良くてもてめえらがヘボなら意味ねえんだからな」

心「……」



心(……そんな言い方じゃ、もし上手くいっても曲のおかげってことになっちゃうじゃん)

都内
某所


???「……というワケなんだ。一月後だから、急な話だ」

女の子「いや、ホントに急だね!あたし達もつい最近5人になったばっかりなのに!」

少女「でも、ライブは楽しそーダナ♪出たい出たい♪」

少女2「……けど、本当に急すぎます。そもそも私たちはまだユニットとしての体も成していないじゃないですか」

???「俺もそう思うけど、シャチョウさんがぜひ出てくれっていうからな。ハハハ!」


少女3「いや、ハハハじゃないだろッ!ほんとテキトーだなコイツは!」

女の子2「ええ~?良いじゃん出よ出よ~♪ぜったいたのしーよ☆」


???「まあみんなで話し合って決めようじゃないか!出るも良し、出ないも良し!まっ、初めてのステージなんだし、思いっきり失敗してみるのも良いかもな!」

今日はここまで
前スレにごくごく簡易的ですが年表作ってますのでもし良ければ。

レッスンルーム


トレーナー「佐藤!ステップ遅れてるぞ!もっと細かく刻め!」

心「ひぃ、ひぃ……」
ヨタヨタ

トレーナー「緒方!縮こまるんじゃない!緻密な動きと小さい動きは違うんだぞ!」

智絵里「は、はいぃ……」




ビリー「……」

心「はぁ、はぁ……この曲マジできっつい……」


智絵里「……」


ビリー「……おい、お前ら」
ツカツカ

李衣菜「……あ、プロデューサーさん……」

ビリー「なんだそのザマは?あと本番まで半月しかねえんだぞ、わかってんのか?」

周子「……」

忍「……でも、みんな精一杯やってるよ。朝から晩までレッスンに時間当てて……」

ビリー「精一杯、なんて言葉に価値はねえ。全力だろうが適当だろうが、結果を出した方が偉いんだよ」

智絵里「……う……」

ビリー「別にてめえらが本番で結果を出せんなら構わねえが……そうじゃねえなら今のやりかたを変えなきゃならねえ」

心「……」



ビリー「……」

トレーナー「……失礼、プロデューサー、今よろしいか?」

ビリー「……なんだ」

トレーナー「あまりこういう事は言いたくないが……あなたにレッスン場でしかめっ面で居られると、皆が萎縮してしまう」

ビリー「……」

トレーナー「だからレッスン中はレッスンルームには……」

ビリー「俺がいる程度で萎縮するような連中が、本番でまともにやれるワケねェだろ」

トレーナー「……仰る通りだが、まずは練度を上げないことには……」

ビリー「問題はそこだ。今のペースで本当に仕上がんのか?」

トレーナー「……正直、かなり厳しいかもしれない。初めての曲にしてはダンスも歌も難易度が高すぎて……」

ビリー「……俺が来ねえことでレッスンの効率が上がるってんなら俺はもうレッスンルームには来ねえ」

ビリー「だが、本番までに仕上がるように負荷を上げろ。どうせ本番は半月後なんだ、多少無茶させても構いやしねえ」


トレーナー「……良いのか?」

ビリー「良いも悪いもねえよ。全ては結果のためだろうが」

トレーナー「……わかった。プロデューサー殿がそういうなら」

ビリー「……それと、レッスンの進捗のほかに、誰が一番マシに動けてるか、誰が一番動けてねえかも報告しろ。それによって、本番の配置も決める」

トレーナー「……」





トレーナー「……それまで!10分休憩!」



心「はぁ、はぁ……オエッ……」

李衣菜「はぁ、はぁ……お、オエッは流石にアイドルの出す声としてやばいですよ心さん……」

心「け、けど……明らかにハードになってきてない?最近はまたプロデューサーさんレッスン見に来なくなったけど……」

忍「……まぁいよいよ本番が近づいてきてるし、ハードになるのはわかるけど……」

智絵里「……最近、プロデューサーさんが事務所で会っても目を合わせてくれないんです……すごくピリピリしてて……」

周子「……元々そういうタイプの人なんじゃないの?」


トレーナー「よし、休憩終わり!」
パンパン

心「ひぃっ!もう!?」

トレーナー「さて、本番まであと10日を切ったわけだが……ここいらで1度、1曲通しでやってもらう。完成度を測るためにな」

忍「……!」

心「そっか……もう10日ないんだ……」

李衣菜「そう考えると焦りますね……」

トレーナー「そういうわけだ、残り少ない時間を少しも無駄にするなよ。では、始め!」




智絵里「はぁ、はぁ……」

李衣菜「と、とりあえず踊り切ったぁ……」

心「もう無理……きっつい……」


周子「ふい~……まっ、こんなもんかな……」


トレーナー「……ご苦労。今日のレッスンはここまでだ」

忍「……あの、完成度は……どうでしたか……?」

トレーナー「……とりあえず今日はもう終わりだ。明日からのレッスンに備えて休め」




忍「……」

すみません、いったんここまで

翌日

ビリー「全員揃ってんな」

心「レッスン前だけど……またなんか発表あんの?」

ビリー「昨日、お前らの現時点での完成度を測って、結果を見た。それを踏まえて本番でのステージ上での配置を決めた」

智絵里「……!」

ビリー「で、センターは……シューコ、お前だ」

周子「……え?あたし?」

忍「!」

周子「ちょっ、待ってよ。なんであたしが……一番遅くに入ってきたのに」

ビリー「別に所属期間は関係ねェ。現時点じゃお前が一番踊れてる、それだけだ」

周子「……」

ビリー「それからサイドにリーナ、シノブ」

ビリー「で、端……ウイングにチエリ、佐藤。これでいく」


智絵里「……!」

忍「な……!」

心「……!ちょっと、プロデューサー!」

忍「!」

ビリー「……なんだ?文句でもあんのか」

心「当たり前じゃん!なんで……」

ビリー「……」



心「なんでほかの娘は名前呼びなのにはぁとだけ苗字呼びなんだよ☆おかしいだろ!」

智絵里「……」

李衣菜「ええ……」

忍「……」

周子「確かに」



ビリー「……もう1週間しかねェ。残りの時間で死んでも仕上げろよ」
スッ

心「ちょっ、待てよ☆はぁとの事もこれからははぁとって……」

忍「待ってよ!プロデューサー!!」

智絵里「……!」
ビクッ

ビリー「……なんだよ」

忍「この並び順は……もう決まりなの?」

ビリー「……」
ジロッ

忍「うっ……」

ビリー「この並びは実力で決めてる。文句があるなら、実力の足りねえ自分に言え」

心「プ、プロデューサー……ちょっと……」

忍「……だったら、本番までにもっと上手くなれば、並びは考えてもらえるの?」

周子「……」

ビリー「……とにかく、本番までに全員もっと完成度をあげろ。以上だ」


忍「……待って!……答えて、プロデューサーさん……」

ビリー「……本番3日前にもう1回リハーサルをやる。それで最終の配置を決める。良いな」
スタスタ

忍「……」

忍「……」

心「……あー……忍ちゃんあんまり配置なんか気にしすぎない方が……」

忍「……配置なんか?」


李衣菜「し、忍ちゃん!私たちにとっては初めてのステージなんだし、どこに立つにしたって優劣なんて……」


忍「……あるよ。プロデューサーさんがはっきり言ったじゃない」


忍「……ねぇ、みんなは悔しくないの?」

智絵里「……!」


忍「心さんはここの誰より早くこの事務所に入って……レッスン頑張ってきてて……端っこなんだよ?」

心「うっ……」

忍「アタシはステージに立つ以上は一番目立ちたいし、輝きたい。そう思って田舎から飛び出してきた」


周子「……」

忍「けど、そう思ってるのはアタシだけなの?みんなはステージに立てるならどこでも良いやって思ってるの?」

心「……」

智絵里「……」

李衣菜「……」

忍「……周子ちゃん。アタシは、諦めないから」
スタスタ

周子「……」

心「……悔しくないの、か……」

智絵里「私は……」

翌日

レッスンルーム



忍「はぁ……はぁ……」


トレーナー「……工藤。まだ続けていたのか……」

忍「あ……トレーナーさん……」

トレーナー「配置の件は……聞いた。だが、本番までもう時間がない」

トレーナー「今お前たちにやらせているレッスンははっきり言って楽なものじゃない。そのうえ自主トレでこれだけ根を詰めていては身体が身体が保たないぞ」

忍「……でも、アタシどうしても諦めたくないんです。ううん、実力で言えば今の時点で周子ちゃんが一番なのはわかってる」

忍「あの娘はここに来たのは一番後だけど……すごいと思う。口では大変だって言ってるけど、アタシが1週間かけて出来ないステップをすぐにやってみせちゃう」

忍「こういう言い方って良くないのかもしれないけど……才能の差を感じちゃった」

トレーナー「……」

忍「だけど、それを理由に諦めたくない。同じレッスンやってても離される一方なら……アタシは量を増やすしかない」

トレーナー「工藤……」

忍「だから、見逃してください。みんなに迷惑はかけませんから……」





周子(……はぁ。忘れ物なんかしなきゃよかった)


周子(……)

本番3日前


トレーナー「……それでは本番前最後のリハーサルだ。本番と思って全力でやるように」

忍「はいっ!」

周子「……」

ビリー「……」

忍(プロデューサーさんも……見に来てる……絶対見返すんだ……!)

~♪


忍「……はっ!」
タンッ

トレーナー(工藤……やはり少々疲れがでているように見えるが……上達している……!やはり鍛錬は嘘をつかない……が……)

周子「……」
スタッ

トレーナー(塩見は、精彩を欠いている……どういうつもりだ……?)


ビリー「……バカが」




ビリー「……本番でのステージの配置を発表する」

忍「……」

心「……」

智絵里「……」

李衣菜「……」

周子「……」

ビリー「まずセンターは……シノブ」


忍「!ほ、ホントに!?」

ビリー「今日の時点で一番お前が動けてた。それだけだ」


忍「……やった……やった……!」


周子「……」

ビリー「で、サイドはリーナ、佐藤。ウイングはチエリ、シューコ。以上だ」

心「え……?」

忍「……周子ちゃんが、端に……?」

周子「……いやーしょうがないね。これが本来の実力だったってことなんだと思うよ」

トレーナー「……おい、塩見……」

ビリー「シューコ」

周子「……なに?」

ビリー「なに、じゃねえよ。もし本番でもさっきみてえな態度でやるつもりなら、てめェはステージには立たせねえぞ」

李衣菜「……え?それって、どういう……」


ビリー「簡単な話だ。そいつはさっき、手ェ抜いてやがった」

心「!」

李衣菜「……え!?」

智絵里「……!」

忍「……!どういう……こと……?」


周子「……いやいや、なに言ってんのプロデューサーさん。あたしがそんなマネできるわけが……」

ビリー「ナメられたもんだな。俺がそんなモンも見抜けねえとでも思ってんのか?」

周子「……」

ビリー「何を考えてんのかは知らねえが……本来なら髪引っ掴んで引きずりおろしてるところだ。そんなやる気のねえ奴にセンターはやらせねえ」

周子「……いや、別にやる気がないなんてそんな……」



忍「……周子ちゃん、もしかしてアタシにセンターを譲ろうとしたの?」

周子「……!」

忍「どうして?哀れに思ったの?」

周子「い、いや……」

忍「……周子ちゃんにとって、センターなんて人に譲れるくらいのもの?アイドルなんて……それくらいのもの?」

周子「……」

心「し、忍ちゃん……!もう、そこまでにしとこ?」

忍「……」

忍「……もしこのセンターが譲られたものでも、アタシは絶対に手は抜かないから」

周子「……」


ビリー「……誰がセンターに立とうが、俺にとっちゃどうでもいいが……てめェら失敗だけはしてくれるなよ」
スタスタ


智絵里「……」


心「……」


李衣菜「……」

今日はここまで

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さくら「えぇっ?!3分って1ターンなのぉ?!」
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本番前日

社長室

つかさ「……カーン、来たか。これが明日の『ニューフェイスフェスティバル』のプログラムだ」
スッ

ビリー「……俺たちのユニットは何番目だ?てか、どれだ?」

つかさ「……あぁ、そういえばユニット名はお前から申告がなかったからな……アタシも忙しくて名前を考えてやる時間が無かったから、『ネームレス(仮)』で登録してある」

ビリー「……まぁ名前なんざなんでもいい……出番は……最後じゃねえか」

つかさ「ああ、トリだ。抽選の結果らしいが……ふさわしいパフォーマンスをして見せろ」

ビリー「言われるまでもねえ……それより、そっちこそ独立の約束……忘れんなよ」

つかさ「……もちろん、お前らが一番のパフォーマンスを見せれば、な」

ビリー「……」

ビリー(……チッ、どうせ達成できやしねえと思ってナメてやがるな……ん?)

ビリー「……おい、この『Hot Shot!』ってユニット……所属がウチの事務所になってるぞ」

つかさ「……ああ、お前にはまだ言ってなかったな……今回のフェス、ウチの事務所からはお前ら以外にももう一組参加する」



ビリー「……なに……!?」

ビリー「おい、そりゃあどういうこった……だったらアンタはそいつらと俺らを競わせようってのか」

つかさ「この事務所に入る一番最初に説明したろ、ウチは基本弱肉強食だ。同じ事務所でも関係ない、基本的には競争させる」

ビリー(……なるほど、この女、俺たちには万に一つも勝ち目はねえと確信してやがんのか……だから独立の条件を……)

ビリー「……良いぜ、だったらアンタ肝いりのこのユニットも完膚なきまでに叩きのめして、大手を振って独立させてもらおうじゃねえか」

つかさ「……」

ビリー「明日の結果を楽しみにしてろよ……」
クルッ
スタスタ

「……まったく、出る順番もわかんないんじゃ明日みんな困っちゃうよ」

「はっはっは!まぁそう怒るなよ。せっかくこうしてプログラムを取りに来たんだから」

ビリー「……ん?」


つかさ「……来たか」

ガチャ

ビリー「……!てめェは……!」

ファミレス

智絵里「……」

李衣菜「……はぁ」

心「……ちょっとちょっと☆ふたりとも暗いぞ♪せっかくの決起集会ではぁとのオゴリなんだからもっと明るくいくぞ☆」

李衣菜「……そうは言うけど心さん……忍ちゃんも周子ちゃんもいないし……」



~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~

忍『……決起集会?ごめん、最後まで動き確認したいから……』

~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~

周子 『……ごめん、ちょっと疲れててさ……今日は明日に備えて早めに休むよ』

~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~

心(……まぁ正直あれからあの二人がギスギスしてるからそれをどうにかしたかったんだけど……断られちゃったからな……)

心「ま、まぁまぁ、あの子たちも色々あるんでしょ……とりあえずはぁとたちだけでも上げていこうよ」

智絵里「……けど、忍ちゃんの様子も……周子ちゃんの気持ちも……どっちも無理してそうで……」

李衣菜「……プロデューサーさんは最近なんだか怖いし……ねぇ心さん……」

李衣菜「私たち……ホントにこのままで良いのかな……」

心「……」

心「良くはないと思うよ……けど……今回のフェスがはぁとたちにとって初めての大きな仕事であるように、プロデューサーにとっても初めての大きな仕事じゃん?」

心「だから、みんなそれぞれ気負っちゃってるところはあると思うよ。もちろん、智絵里ちゃんも李衣菜ちゃんも、はぁとだってさ」

心「とにかく、まずは明日のニューフェイスフェスティバル頑張ろう?そこでしっかり結果が出せれば、今抱えてる問題もきっといい方向に進むんじゃないかと思うからさ」

智絵里「……!」

李衣菜「……はぁとさんって、意外とオトナですよね……ちゃんとしてればちゃんとしてるっていうか……」

心「……ってオイ☆それじゃ普段はぁとがちゃんとしてないみたいだろ☆……してない?」

李衣菜「してない」

智絵里「……してない……かもです」

心「やめろよ☆李衣菜ちゃんはともかく、智絵里ちゃんに言われるとなんかマジで凹むだろ☆」


女の子「……ねぇ、お姉さんたちさっきニューフェイスフェスティバルの話してた?」


智絵里「……え?」

李衣菜「確かにしてたけど……あなたは?」

女の子「あ、ゴメンゴメン、さっきチラッと話してるのが聞こえちゃってさ」

心「ふふ、実はそうなの♪はぁとたちはアイドルでぇ……明日のフェスに出演するの♪あ、コレ一応オフレコな☆」


女の子「へぇ~!実はあたしも……ていうかあたしたちも明日のニューフェイスフェスティバルに出るんだ!」

智絵里「え……?ってことは……あなたもアイドルなんですか……?」

女の子「うん、って言ってもルーキーなんだけどね。……ホラ、あっちのジュース持って歩いてきてる娘たちとチーム組んでるんだ」

心「あの娘たち……?」
クルッ



スタスタ
少女「……もう、ナターリアさん。ここはファミレスですからお寿司は諦めてください」

ナターリア「うう……ニッポンのお店ではどこでもスシが回ってると思ってたのに……話がちがうヨ……」


少女2「どこで聞いた話だよソレ……」

女の子2「あはははは!あ、ゆっきー、とりあえずビールはダメだからてきとーに炭酸混ぜてきたよ!……アレ、その子たちは?」

友紀「ありがと、唯ちゃん!いや、この子たちも明日のフェスに出るんだって!挨拶しとこうよ!」


少女「……いや、友紀さん、この人たち同じ事務所のアイドルの人たちですよ。佐藤心さんと、多田李衣菜さん、緒方智絵里さん、ですね」

心「は、はぁとたちの事知ってんの!?」

友紀「ふふ、ありすちゃんはあたしたちの頭脳担当だからね、スコアラー兼ヘッドコーチ的な」


ありす「……橘です。別にこのくらいの情報、ネットで見れば知ってて当然じゃないですか」

李衣菜「え?でもさっき同じ事務所って言ってたけど、会ったことないよね?」

少女2「ああ、ウチらは本社事務所に行ったことないからな」

心「??……どういうこと?」



友紀「まぁでもこんなとこでせっかく会えたんだし、自己紹介しとこうよ!」


友紀「あたしは姫川友紀!アイドル界のホームラン王狙ってまーす!よろしくね!」

唯「あははは!アイドル界のホームラン王ってなにー?あ、ゆいは大槻唯でーっす☆じゃ、とりあえず隣座ってもいーい?」
ストン

智絵里「!?あ、あぅ……ど、どうぞ……」

唯「きゃ~!智絵里ちゃん、だったよね?かわいい~!顔まっか~!」
キャッキャッ

少女2「……まったく、ユイは誰とでもすぐ近づくからな……ウチは別に馴れ合う気はないし」


ありす「……まぁ同意見ですけど、挨拶くらいはしておいた方がいいんじゃないですか?」

美玲「……チェッ、早坂美玲。これでいいんだろッ!」
プイッ

心(なんか尖がってる子だな……けどかえってそこがかわいいな☆)


ありす「……橘です。同じ事務所所属ですが、私も必要以上にコミュニケーションをとる必要はないと思いますので」

ナターリア「ありすはありすって呼ばれると怒るからナ!気を付けヨウ!」

ありす「あっ、ちょっと、ナターリアさん……!」

ナターリア「ナターリアはナターリアだヨ!ブラジルから来ましタ!スシとダンスが大好きだゾ!」



友紀「この5人でチームを組んでるんだ。ちなみにチーム名……もとい、ユニット名は、『Hot shot!』っていうんだよ」


李衣菜「ホットショット……」

事務所

ビリー「……なんで、テメェが、こんなトコにいやがる……」

「……ビリー」


ロック「いったいどうしたの、急に立ち止まって……テリー」



ビリー「……テリー……テリー・ボガード……!」

テリー「……」

今日はここまで

ロック「……テリー、こいつは……!」


~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~
~~~~~~~~~~~~

―――――ロックがテリーと出会う少し前
ギースタワー


バタン
ロック「ハァ……ハァ……」

ギース「……」

ビリー「……」

リッパー「……」

ホッパー「……」


ロック「とう……さん……」

ギース「……」

ロック「母さんが……大変なんだ……病気で……」

ギース「……」

ロック「たすけて……母さんを……」

ギース「……」

ロック「母さんを助けて!父さん!」

ギース「帰れ」

ロック「……え?」

ギース「私は貴様など、貴様らなど知らん。早々に立ち去るがいい」

ロック「……なんだよ、それ……母さんが、死にそうなんだ……」

ギース「―――ビリー、つまみ出せ」

ビリー「……はい」
ザッ

ロック「なんだよそれ……あんたは、母さんが死んでもいいっていうのかよ……」

ロック「母さんは!ずっとあんたの名前を呼んで――――」

ビリー「……」
ガシッ

ロック「うわあああああああああああああ!母さんは、母さんは―――――」


ロック(ギース――――ギース……!)


~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~
~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~


ロック「……ビリー・カーン……!」

ビリー「……」

ビリー「……ガキまで連れてきて、どうしてこんなトコにいやがんだ、テリー……!」


テリー「……それはこっちのセリフだぜ、ビリー……どうしてお前が日本に……」

つかさ「……それはアタシから説明してやる」

ビリー「桐生……!」

つかさ「カーン、ボガード、お前らは二人ともウチに所属しているプロデューサーだ」


テリー「な……」

ビリー「なんだとォ……!」

つかさ「ボガードはカーン、お前がプロデューサーになった数か月後にプロデューサーになった。とある人の紹介でな」

テリー「……ビリー、お前がアイドルのプロデューサーだって……!?」

ビリー「……だが、俺はコイツと日本で会ったのは今が初めてだぞ……初めは皆この事務所勤務からスタートじゃなかったのかよ……!」

つかさ「……ボガードは一番最初にあたしと顔を合わせた時点で既にアイドル数人と面識を得ていた。本人の適正も考慮した結果、特例としてボガードは初めから事務所を持たせた」

ビリー「……ンだとォ……!」
ギリギリ

ビリー「ふざけんな!俺に対してはアイドルを集めたこの期に及んでまだ独立を認めていやがらねえくせに、コイツは独立してスタートだと!?」

つかさ「個人の力量に合わせた環境を用意するのは当然の事だ。現にボガードはお前より数か月遅れのスタートなのにもう初ライブができるところまでこぎ着けてる」

つかさ「一方のお前はどうだ?社外では度々問題を起こし、最近ではアイドル達と上手くいってないんじゃないか?」

ビリー「……なんだとてめェ……!」
グイッ

つかさ「……殴るか?別に良いよ。そうすればその時点でお前はクビだ」

ビリー「この女……!」
ギリギリ


テリー「ビリー!よせ……!」
バッ

ビリー「テリー……!離しやがれ!くそっ、てめェどこまで俺の邪魔をすりゃ気が済みやがんだ!」

テリー「俺はそんなつもりじゃない、ただ……」

ビリー「ただ、なんだ!普段はフラフラしてる根無し草のてめェが、なんでプロデューサーなんてやってやがる!」

テリー「……ただ、俺はプロデューサーをやる事で見られる景色を見てみたかっただけだ」


テリー(そう、あの男が……若い頃のギースが見ていた景色を……)

ビリー「何をワケわかんねェ事を……!」

つかさ「……そこまでだ。お前ら二人の間に今まで何があったかなんて別に興味もないが、一つだけハッキリしてることがある」

つかさ「カーン、お前たちが独立するには、明日のフェスでこのボガード達を含めた他の出演ユニット達よりも優れたパフォーマンスをするしかないってな」


ビリー「……!」

テリー「……」

ビリー「……クソッタレが!てめェら、全員明日覚えてろよ!」
ズカズカ
ガチャ
バタン




つかさ「……ボガード、済まなかったな」

テリー「……いや、別に……だが社長サン、あんたも人が悪いぜ。よりにもよってアイツがこの事務所でプロデューサーをやってて、しかも明日のフェスで当てるなんてな……」

つかさ「……別に意図的に被せたわけじゃない。たまたまお前たち二人の担当ユニットのデビューが重なっただけだ」

テリー「……そうかい」

つかさ「だからあたしはアンタに対して明日絶対に勝て、なんて言うつもりもない。ただ結成してから今持ってる力を、ステージで悔いなく表現してくれたらそれでいい」

テリー「……まぁこっちは……というよりあの娘らは最初からそのつもりさ。じゃあこのプログラム表は一部もらってくぜ。行こう、ロック」

ロック「あ……うん……」

ガチャ
バタン



つかさ「……ふぅ」



つかさ(あれから山崎は何も動きを見せていない……カーンを外に出していないというのもあるが……)

つかさ(だが、明日のフェスでは何か仕掛けてくる可能性が高い……対策を打っておかないとな)


つかさ「そしてフェス自体は……果たしてどっちに転ぶか……」

翌日
フェス当日

事務所

リリィ「……ついに今日フェス本番かぁ……はぁとさんたちのデビュー、私も見たかったなぁ」

美波「そうだね……けど、桐生社長もフェスの会場に行ってるから、誰かが留守番してないといけないからね。ホントは私が残ってリリィちゃんには見に行かせてあげたかったんだけど……」

事務員「……社長がわざわざこの3人で残れって言われましたもんね。きっと何か理由があるんでしょうけど……」

美波「……」

美波(多分、山崎さんを警戒しての処置だと思うけど……現地は大丈夫なのかな……?)

リリィ「……」

事務員「リリィちゃん、どうかしたんですか?あんまり元気がないようですけど……」

リリィ「あっ……ごめんなさい、心配かけちゃって……けど、最近兄さんもはぁとさんたちも……難しい顔をしてる事が多かったから……大事なステージの前だから仕方ないのかもしれないですけど……」

美波「……確かに本番前は厳しい状況になると、雰囲気が悪くなったりすることもあるけど……リリィちゃん、プロデューサーさんは今朝はどんな様子だったかな?」

リリィ「……私にはずっと普段通り接してくれるんですけど……けど、やっぱりイライラしてるのはすぐにわかりました」

リリィ「メンバーの娘たち……特に忍ちゃんと周子ちゃんはなんだかお互い避けてるような感じもあったし……今日のフェス、上手くいけばいいんだけど……」


美波「……そうだね……」

今日はここまで

フェス会場
ガヤガヤ



李衣菜「……うわあ~、けっこう大きな会場ですね……」

心「このニューフェイスフェスティバルもかなり長い事やってるけっこう歴史のあるステージみたいだし、やっぱ熱気もすごいな……ちょ、ちょっと緊張するわ☆」

智絵里「うう……」
プルプル

周子「……まぁあたし達の出番はトリらしいし、今から緊張しててもしょうがないんじゃない?」

忍「……」


心(……う~ん、緊張もあるけどそれ以上に空気が悪すぎる……ここはプロデューサーがなんか緊張をほぐすような事を……)

ビリー「……」

心(……言ってくれそうにないなコレ……しゃーない、はぁとが一肌……)



友紀「あっ、いたいた!おーい!」

智絵里「あ……」

唯「やっほー!」

李衣菜「友紀さん!唯ちゃん!みんなも!」

ナターリア「始まる前からスッゴイ盛り上がってるナ!リオを思い出してナターリアもコウフンしてきたゾ!」


忍「……えっと……心さんたち、知り合い?」

心「あ、うん。昨日ファミレスでたまたま会ったんだけど、ウチと同じ事務所所属の……」

ありす「Hot shot!です」

ビリー「……!」
ピクッ

李衣菜「あれ?唯ちゃんたちだけ?そっちのプロデューサーは一緒じゃないの?」

美玲「プロデューサーならあっちで受付してるぞ。……まぁ別にアイツがいなくたってウチらだけでもやっていけるしッ」

心「あ、そうなんだ。言っても同じ事務所のPなんだし挨拶しとかないと……」

ビリー「……必要ねェ。同じ事務所っつってもあっちは独立してんだから他人と同じだ。ましてや俺らはこれからのステージで戦うんだからよ」

忍「……」


唯「あ、お兄さんがみんなのプロデューサー?そんな、戦うとかって大げさじゃーん!せっかくのフェスなんだしさ、みんなで仲良く楽しもーよ♪」

ビリー「……」

唯「?」

ビリー「……へっ、あの野郎にはお似合いの能天気さだぜ」

ビリー「先に控室に行ってる。てめェらも駄弁ってねェでとっとと来い」
ツカツカ

李衣菜「あっ、プロデューサーさん……!」

ナターリア「……ソッチのプロデューサーはなんか怒ってたナ?」

唯「……ゆい、なんかマズイこと言っちゃったかな?」

心「……いや、大丈夫大丈夫!ほら、あの人緊張しいなの☆だからちょっとつっけんどんになっちゃっただけだから!」

友紀「いやー、まぁ確かに競い合いというか、ライバル対決みたいなのがあった方が盛り上がるのは確かだけどね!キャッツとタイガースみたいな!」

美玲「ウチも別に馴れ合う必要はないと思うけどな」

唯「もう~美玲ちゃんはすぐそうやってツンツンするんだから!このこの~♪」
ツンツン

美玲「や、やめろよッ!つ、ツンツンしてんのはオマエだろうが~!」
グイグイ



周子「……楽しそうだね」

忍「……ごめん、アタシ先に控室行ってるね」

智絵里「あ、は、はい……」




友紀「……んん?あれは……」



テリー「オーイ!みんなどこだー?」

ロック「もう、なんでこんな日に限って携帯忘れるんだよ……」

ナターリア「あ、テリープロデューサーダ」

唯「テリーちゃ~ん!ロックちゃ~ん!こっちこっち~!」


テリー「おっ、いたいた……いやあ、すごい人の数だな!」

心「あ、この人がみんなのプロデューサー?」

テリー「ん?君たちは?」

李衣菜「あ、私たちは同じRUNWAY所属の……」

友紀「ほら、昨日話してた子たちだよ」

テリー「ああ!ってことは君たちがあのビリーのトコの!」

ロック「……!」

智絵里「……え?プロデューサーさんをご存じなんですか?」

テリー「ああ……よく知ってるよ。腐れ縁というか……」

テリー「そうか、君たちがビリーの……」
ジッ

心「……?」

テリー「……」

テリー「ふむ……82……いや、3……60……80……4ってトコか……」

心「……」

心「……おファッ!!?」

李衣菜「……ええ!?」

美玲「出たぞ……」

ナターリア「でたナ」

ありす「出ましたね……」

唯「出た~!テリーちゃんの3サイズ当て~!」


心「いい、いきなりなに言い出すのかこの男は!いくらはぁとでもセクハラ!セクハラだろコレ!っていうかはぁとの3サイズは『 ぼんっきゅっ ぼんっ♪』サイズだコラァァァァァ!」

テリー「ああ、スマンスマン、実際に拳を合わせればもうちょっと正確な数値がわかるんだけどな、ハハハハハ」

心「うおおおお!!しゅがーはぁとあたっく!!爆死しろ!」
ズビシ

テリー「ハハハハハ!」

ロック「……いや、テリー……その人本気で怒ってるよ……謝りなよ……」

李衣菜「ん?その後ろの子は……テリーさんのお子さんですか?」


テリー「ん?ロックのことか?ああ、血は繋がってないが、養子ってことになるな」

周子「へぇ……かわいいやん、ほら、おいで」
チョイチョイ

ロック「……!」
ススッ

周子「……あれ?嫌われちゃった?」

テリー「ああ、普段は男ばっかりのトコで暮らしてるからレディに対してあんまり免疫がないんだ!誰に対してもこうだから気にしないでくれ」

友紀「まっ、そういうトコがカワイイんだけどね~♪ほら、よしよし♪」
ギュッ
ナデナデ

ロック「……!ぅあ、や、やめろよ……」

心「……なんかちょっと智絵里ちゃんっぽいな☆」

智絵里「え、そ、そうですか……?」

ロック「そ、それよりも……テリー……」

テリー「ん?……ああ!そうだった!みんな、急いで準備するんだ!」

心「え?準備って、友紀ちゃんたち、出番いつ?」

友紀「あれ?そういえば聞いてなかった……あたしたち何番目なの?プロデューサー」


テリー「トップバッターだ!」

ありす「……えぇ……」

李衣菜「ええ……」

美玲「……いや、トップバッターだ!じゃないだろッ!言っとけよッ!」

テリー「いや、すまんすまん!けど、事前に言っといたら緊張するかもと思ってな!ハッハッハ!」

友紀「いや、直前に言われる方が普通もっと緊張するよ!」

ありす「っていうか、急いで衣装に着替えて準備しないと間に合わないんじゃ……」

ナターリア「ナターリア、すっごいテンション上がってきたゾ!」

唯「あはははは!ってことで、みんな、またあとでねー♪」

ギャーギャー



心「……なんていうか、とんでもない事務所だな……全体的に……」


智絵里「そ、そうですね……」

周子「……けど」

李衣菜「……ん?」

周子「……ごめん、何でもない……あたしらも控室、いこっか」

李衣菜「あ、う、うん」

心「……」

心(……けど……そう……)



心「楽しそう、だったな……」

テリー「……」

ロック「……テリー?どうしたの、早く準備に行かないと」

テリー「……ああ」

テリー(……そうか、彼女たちがビリーの……)


テリー「……ビリー、気づいてるか?お前は、彼女たちを……」

今日はここまで

控室裏通路

忍「……」
タンタタン

ビリー「……シノブ、まだやってんのか」

忍「……あ、プロデューサーさん。うん……正直、まだ自信なくて」

忍「アタシはセンターを任されたんだからみんなを引っ張っていかなきゃいけない……その為には、やり過ぎなんてことはないから」

ビリー「……立派なこった。期待してるぜ」

忍「……!はい!」


ビリー(……もうそろそろ始まる頃か。プログラムでは確かテリーの奴らが一番最初の出演だったハズだ……)

ビリー(……一応見とくか。控室にモニターが付いてたはずだ)

控室


ガチャ
ビリー「……お前ら」



心「あ、プロデューサー。ちょうど今からHot shot!の娘たちが出るぞ☆」

李衣菜「すごいバタバタだったけど……どんなパフォーマンスするんだろうね」

智絵里「う、うん」

周子「……」

ビリー(……お手並み拝見ってところか)

ステージ袖



テリー「あー……ゴホン。みんな、良いか?」

友紀「……」

唯「……」

ナターリア「……?」

ありす「……」

美玲「……」

テリー「俺たちが揃ってからわずかにひと月足らず……だってのにお前たちはもうステージに上がることになる」

テリー「正直、準備不足かもしれない。時期尚早かもしれない。ただ―――」


テリー「みんな、結成からわずかの期間でよくステージに上がるまでこぎ着けてくれたな……ホント、よくやってくれたと思う」

美玲「いや、まだやってないだろ。今からだろッ!」

テリー「いや、今はそういう話をしてるんじゃ……」

テリー「……いや、そうだな。ミレイ、お前の言う通りかもな」

テリー「お前たちのステージはこれから始まるんだ……どんな形であれ」

友紀「そうだよ!これからがあたし達のプレイボール!もう待ったはきかないよ!」



ありす「……ただまぁステージに立つ順番くらいは教えといてもらいたいですけどね……」

テリー「ああ……そうだ、どうなるかはわからない!大成功するかもしれないし、大失敗するかもしれない!絶対なんてこの世にはないもんだ」

テリー「だが……笑え!ファンは笑顔になりにライブに来てるんだ!だったら、何がどうなっても、お前たちは笑うんだ!」


唯「……!」

テリー「それがステージに立つお前たちの最低限の義務で……最高の仕事でもあるんだ」

美玲「……エラそうだな、オマエだって素人プロデューサーのクセにッ」

テリー「な、なんだって!?」

ナターリア「ミレイ、ソレは言わないオヤクソクだゾ」

ありす「本当のことですけどね」

唯「あははははっ!」

テリー「ハハハ!これは痛いところを突かれたな!」

テリー「……けど、そうだな。今更俺が偉そうな顔してこんな事言わなくてもお前たちは何が一番大切かなんてわかってるか」

テリー「だったらもう俺が言う事なんて一つだけだ」

テリー「みんな!楽しんで来いよ!」


友紀「……うんっ!」




李衣菜「……いよいよですね……あっ、出てきた」

心「どれどれ?どんな衣装なのかな?……ふむふむフツーのトップスにジャケット、スカート……カジュアルっぽいけど、そんな珍しい感じでもないかな?」

智絵里「……けどみなさん、キャップをかぶってますね」


ビリー「……チッ」


周子(……プロデューサーさん?)

MC「さぁ、ついに今年も始まりました、『ニューフェイスフェスティバル』!第20回目を迎える今年の1発目で盛り上げてくれるのは、『RUNWAY』所属の5人組ユニット、「Hot shot!」!曲は、『OK!』」
ワアアアアアアア


友紀(……うわぁ~……、すっごい人……!ドームのお客さんと同じくらいいるんじゃないのこれ!)

唯(ヤバーい!ちょちょちょ、ちょい緊張するかも!)


美玲「うう……ッ」


ナターリア「アハハハ!ヨシ、盛り上げるゾ!なっ、みんナ!」

友紀「……!そうだね!行こう!みんな!」

ありす「……!はい!」

OK!
上手じゃなくたってもいいよ
OK!
キレイじゃなくたってもいいよ
OK!

ヤなことばっかりがあっても
イイコトひとつでも
あればOK!でしょ!

Tomorrow is another day
明日は明日の風が吹く

唯(――――ああ、楽しい!)

ありす(ステージに上がる前にはあった不安も気づいたら、ない……!)

ナターリア(ミンナ、笑顔ダ!ナターリアも、ほかのミンナも!)

美玲(弾むッ!心が、身体がッ!)

友紀(なんだかこのまま、どこまでも行けるような―――)

髪の毛うまくまとまらなくても
OK!
メイクがうまくいかなくても
OK!

朝いちばんに会ったキミが
最高の笑顔なら
それでOK!でしょ!
The Sun Also Rises
日はまた昇る


Smile is all OK!
笑顔ならきっと大丈夫!

ワアアアアアアアアアアアアアアアア

智絵里「……すごい」


李衣菜「ホントに……なんていうか……すっごい元気になるっていうか……!」

ビリー「……」

ビリー(……確かに会場は盛り上がっちゃいるが、いかにも急造で仕上げたって感じだな。曲も、ダンスも別段レベルが高ェとは思わねえ……低難易度だ。こんなもんかよ、テリー)
スッ

周子「……プロデューサーさん、どこいくの?」


ビリー「……タバコだ。お前らの出番までにゃ戻ってくる」
バタン

心「あっ、う、うん……アレ?友紀ちゃんたち、まだステージに……?」

ありす「はぁ、はぁ……」

唯「はぁ……はぁ……!」

美玲「……!」

ナターリア「ハァ……ハァ……!」

友紀「ふぅ……ふぅ……それじゃみんな、いい?……せーのッ!」

「OK!」

バッ

ワアアアアアアアアアアアアアアアア

ステージ袖

ナターリア「アハハハ!ナターリア、すっごい楽しかっタ!」

唯「ゆいもゆいも!サイッコーだった!」

美玲「ハハハッ!やった、やったな!ウチらのパワーだったなッ!」

ありす「……よかった……!」

友紀「うんうん!最高に気持ちよかったね!」

テリー「お前たち!サイコーだったな!」
タッタッ

ロック「……!」

友紀「テリープロデューサー!ロック君!どうだった!?」

ロック「……う、うん……かっこよかったよ……!」

唯「ありがと~!ロックちゃ~ん!」
ギュ~

ロック「わわわ……」

テリー「ハハハ!ところで、最後のあの帽子を投げるアピール……俺は聞いてなかったが、いつ決めたんだ?」

友紀「ああ、アレ?実は直前なんだ!唯ちゃんがどうしてもやりたいって言い出して……」

唯「うん!唯、どーしてもアレやってみたかったんだ!……テリーちゃん、怒った?」

テリー「まさか!お客さんも盛り上がってたし、文句なしだ!」

唯「よかったー!」

美玲「……訳も分からずやったけど、これっていったい何のパフォーマンスなんだ?」


ありす「いえ、私も聞いてないので……」

テリー「ああ、これはな……」


つかさ「お前たち、ご苦労さん」
スタスタ

テリー「……社長!」

ナターリア「エッ」

ありす「この人が……?」

つかさ「……ああ、私は書類と報告でお前らの事は知ってたが、実際に会うのは初めてか……RUNWAY社長、桐生つかさだ。よろしく」

友紀(あたしがちっちゃかったころにテレビに出てた桐生つかささん本人だ……社長だってこと事体は知ってたけど……)

つかさ「今まで顔合わせも出来てなくてごめんな。けど、良いステージ見せてもらったんだ、労いの言葉くらいはかけさせてくれ」

ナターリア「オー!シャチョウさんのオスミツキだナ!」

唯「やったねー!いえーい!」

つかさ「……まぁ細かいことを言い出せば結構ステップ間違えてたりとかはあったみたいだが……次回以降の課題として、とりあえず今は良い」

唯「あ~、やっぱりわかる人にはバレるんだね~!けど、とりあえず勢いでごまかしちゃった!えへへ」

テリー「ハッハッハ!まぁしょうがない!次に間違えなきゃいいさ!俺なんか間違いに気づかなかったしな!」

ありす「そ、それはプロデューサーとしてどうなんですか……」


アハハハハハ



ビリー「……」

ビリー(……ずいぶんと温ィこった。テリーの野郎のプロデュースだからって警戒したが……そういや野郎の表のツラはこんなもんか)

ビリー(てめェらのやってる事はただのお遊びだ……それを思い知らせてやるぜ……!)

事務所

リリィ「……もうそろそろみんなの出番くらいの時間かな……」

美波「気になるね……でも時間的にはちょうど……」

ピンポーン

事務員「……あれ?来客ですかね……」
スタスタ

ガチャ
事務員「はい、どなた様……!!な、なんですかあなたたち!」

男「……」

男2「……」

男3「……」
ゾロゾロ

リリィ「……!?だ、誰ですか……!?」

美波「……!」

美波(この人達……!)

今日はここまで

事務員「ど、どどどど、どこのどなた……きゃあっ!」
ドン

男2「……點做?」

男1「劫持人質」

男3「畀邊個?」

男1「唔理係邊個.所有好」

事務員「あわわわわわ……」

リリィ「な、何語でしょうか……?」

美波「……ふたりとも、こっちに……私の後ろへ……!」

リリィ「み、美波さん……」



男1「跟我嚟.不抗拒」

美波「……」

美波「(あなたたちは誰ですか?何が目的なんですか?)」

事務員「……!」

男2「(……へぇ、中国語なら話せるのか?広東語はムリみたいだが)」

美波(……!通じた……!)

男1「(だったら話が早い、お前たちには人質になってもらう……抵抗すれば手荒になるぞ)」

美波「(……待ってください、いったい誰の命令なんですか?人質って、何のために?)」

男1「(答える必要はない)」

美波「(……帰ってください、とお願いしてもダメですか?)」

男3「(……おい、女……ごちゃごちゃ言うなよ。すぐに言う事聞けねえんなら、大人しくさせてやろうか)」
ズイ

事務員「ひ、ひい!でかい人出てきた!」

男1「(……あまり激しくするなよ。表に車は待機させてある、すぐにアジトに戻るぞ)」


美波(……ダメ、この人たちには言葉は通じても……話は通じない……!)

男3「(ヒヒヒ、そうは言っても可愛がりがいのありそうな女が3人……コッチの仕事で本当に良かったぜ)」
ポキポキ

リリィ「いや……」

事務員「ああ……どうしてこんなことに……お母さん、お父さん、ミーちゃん……ごめんね……」
ブツブツ


男3「(……オラァ!)」
グワッ


美波「……」

リリィ「……!」




――――――――――――


リリィ(相手の男の人がその腕を振り上げた時……私は確かに聞いたんです)


リリィ(美波さんが小さな、本当に小さな声で『ごめんなさい』ってつぶやいたのを……)


――――――――――――

ズン

事務員「――――……!」

リリィ「……!」

男1「……!」

――――――――――――

リリィ(怖くて閉じた目を恐る恐る開くと、そこには)

リリィ(ふわっと舞い上がった美波さんの長い髪……後姿)

リリィ(相手の男の人の腹部に突き刺さる、美波さんの拳がありました)


――――――――――――





男3「……オ、オオオ、オオ……!」
ガクッ

美波「……はっ!」

男2「(……何?)」

事務員「え、えええ……!?」

リリィ「……!」


男3「(こ、この……女……!殺してやる!)」
ブン

美波「……はっ、はっ、はっ!それっ!」
パン
パン
パン
ビシッ

男3「グァ!ガッ!」

男1「(……速い!突きと蹴りの4連撃!)」

男2「(だが、軽い!それでは仕留められんわ!)」

男3「(……クソがァァァァァ!!)」
グワアアア


美波「……!」




美波「虎 煌 拳!」
ズドォン

男3「――---……」
フラ
ズゥン



美波「……ごめんなさい、加減はできませんでした……」

事務員「(絶句)」

リリィ「み、美波さん……!」

男1「(……女、貴様何者だ……?)」


美波「今の私は極限流の人間です……経理部ですけど」

美波「ただ……経理部であっても……」



美波「周りの人すら守れずに、極限流は名乗れませんから……!」
スッ
ザッ

今日はここまで

男2「(……ば、馬鹿な!張が倒された!?女の細腕に!?)」
スッ

男1「……」
スッ
ピッ

男2「(……!そうか、その手があったな……!)」


美波(……携帯でどこかにメッセージを送った……?)

男2「(……ふっ、女……おとなしくしてれば酷い目に合わずに済んだのにな……表に控えてる奴らも全員でかかれば流石にどうしようもないだろう)」

美波「……!」

事務員「……な、なんて言ってるんですか……なんかニヤニヤしてますけどぉ……!」
ガタガタ

リリィ「み、美波さん……」

美波「……」

男2「(……おい、まだか。どうなってる、呉?)」

男1「(……)」

ガチャ
男2「(……!やっと来たか!お前ら、この女たちを……!?)」

リリィ「……あ……!」

???「おうおう、でけェ奴が伸びてるじゃねえか……姉ちゃん、アンタがやったのかい?」
ドサ
ドサ

男たち「」

男2「(お、お前たち!?馬鹿な!?誰だ貴様は!?)」

???「あ?何て喋ってんだお前?」

美波「……あなたは誰ですか?って聞かれてますよ」

事務員「……パ、パ……!」

???「なんだよ、俺を知らねえとはモグリか、テレビを見ねえ奴か?まっ、しょうがねえ、知らねえなら教えてやるぜ」
ザッ

ジョー「嵐を呼ぶ男、ジョー・ヒガシ様たぁ俺のことだぜ……!」

リリィ「ジョーさん……!」

事務員「パンツの人……!」


男1「……!」

ジョー「さて、表にいた7人は……いや、8人だったか?この通りだぜ、さあどうする?」

男2「(呉……!ど、どうするんだ!!)」

ジョー「……まぁ女の子を危険な目に遭わせたんだから当然その報いは受けてもらうんだけどな……!」
ポキポキ

男1「(……)」


男1「(……ここらが潮時か)」
スッ

男2「(……!?呉!?)」

美波「……!」

ジョー「……あん?どういうこったそりゃ」

男1「(降参だ。我々全員退くから、見逃してくれ)」

男2「(ウ、呉!)」

美波「……撤退するから見逃して、と言ってます」

ジョー「はぁ?ずいぶんと調子の良い野郎じゃねえか、そんなもん通る訳ねえだろ!」

男1「(……うるさい男だ。私はお前に聞いてるんだ、女)」


美波「……!」

男1「(どうする?もし見逃してくれないというなら、俺たちは死にもの狂いで悪あがきをしなければならない)」

美波「……」
ジッ

男1「……」

美波「(……このまま誰にも危害を加えず、もう2度とここには来ないと約束してくれますか?)」

男1「(約束しよう)」

男2「(お、おい!」)

美波「……ジョーさん」

ジョー「……良いのか?」

美波「ええ……誰にもケガがないのが第一ですから」


男1「(……撤退するぞ。倒れているやつらを全員車に運ぶ)」

男2「(……)」

事務員「はぁ~……助かった……」

ジョー「リリィちゃん、みんな、ケガは……ねえみたいだな」

リリィ「はい……!けど、どうしてジョーさんがここに?」

ジョー「ん?ああそれはここのしゃ……」

ジョー「……いや、リリィちゃんの顔をたまたま見に来たんだよ」

リリィ「……?ありがとうございます!」

ジョー「いや、礼を言うならこっちの姉ちゃんにだぜ」

リリィ「はっ、そうでした……美波さん、まさかあんなにお強いなんて……!」

美波「いえ、私は……実際あのまま何人も入ってこられたらどうしようもなかったですし」

リリィ「でも、本当にかっこよかったです!美波さん、ありがとうございます!」

事務員「……けど、あの人たち何者だったんですかね……なんでこんな何の変哲もない事務所に……」

リリィ「確かに、そうですよね……」

美波「……」

美波「……ジョーさん、ちょっとあちらでお話良いですか?」

ジョー「……ああ」

美波「……本当に助かりました……ありがとうございます」

ジョー「ああ、社長サンの頼みだったからな……だが、あいつら逃がして本当に良かったのか?」

美波「……あの襲ってきた人たちのリーダー格の人……一番冷静でしたけど……目が正気じゃありませんでした。無理に追い詰めれば、誰かがケガを……いえ、それだけじゃすまないような気がしたんです」

ジョー「……まぁあの山崎の野郎の手下なんだろ?だったら何しでかしても不思議じゃねえな」

ジョー「だが、俺に事務所を張らせといたのは社長サン良い判断だったぜ」


美波「もしあっちが何かを仕掛けてくるなら、社長もビリーさんも不在になるLIVE中、と桐生社長は踏んでましたからね……」


ジョー「だが、山崎の野郎にこの事務所が狙われてることはリリィちゃんや事務員の子に知らせなくていいのか?」


美波「……もしこのまま襲撃が無いようだったら、いたずらに不安にはさせたくないと社長は仰ってましたけど……でも実際にこうして彼女たちも巻き込まれてしまった以上、おそらく社長から説明はすると思います」

ジョー「……そうだな。この事務所の襲撃が失敗に終わった以上、山崎の野郎は次々に何かを仕掛けてくるかもしれねぇ……そうなりゃリリィちゃん達にも隠しきれるもんでもねえし、隠すべきじゃねえよな」

美波「そうですね。こうして表立った手段を行使してきた以上、警察の方に相談もできると思いますし……そうだ、社長にこの事を報告しなきゃ」

ジョー「ああ、そうした方がいいな」

ジョー「……それにしても、アンタ腕が立つんだな?実際にゃ見てねえが、あのデカい男をのしたのはアンタだろ?極限流だったか?」

美波「は、はい……いえ、でも私なんて護身術レベルですから」

ジョー「いやいや、そんなことねえだろ……極限流、またじっくりみせて欲しいもんだぜ」

美波「あ、あはは……社長に、電話しますね」

会場


ビリー「……今やってる奴らが終わったら、いよいよお前らの出番だ」

心「……う、うおお……めっちゃ緊張してきた……」

智絵里「うぅ……」
プルプル

李衣菜「大丈夫……私はロック……私はロック……」
ブツブツ

周子「……」

ビリー「……今までステージをざっと見てきたが……飛びぬけたレベルの奴らはいねえ。ある意味新人専用ステージらしいっちゃらしいがな」

ビリー「あのテリーの……同じ事務所の奴らのパフォーマンスも、盛り上がりこそしてたが別にそんなにレベルが高かったとは思わねェ」

忍「……」

ビリー「だったら、てめえらが本番前のリハでやれた水準でやってみせりゃ問題はねえ……そういうレベルの曲をやらせてたんだからな」

心「……」



ビリー「さっさと証明してこい。自分たちこそが捕食者で、ほかの奴らはエサだってな!」

心(……はぁとたちにとって初めてのステージ……最近なんだかギスギスしてるけど、ここで結果さえ出せれば……!)

李衣菜(ロックなアイドルになる為の第一歩……いきなり躓いてなんかいられないよね……!)

智絵里(うう……上手く……いきますように……!)

忍(ここで失敗しちゃったら意味ない……アタシはステージで輝くために、ここに来たんだから……!)

周子(……あれ?あたし、なんで――――……)



MC「さぁ、今年の『ニューフェイスフェスティバル』はRUNWAYで始まりRUNWAYで終わる!ついにトリを迎えます!」

MC「一発目の「Hot shot!」と同じく『RUNWAY』所属の5人組ユニット、「ネームレス(仮)」!曲は、『トーキョーマーチ』!さあこれが今年の最終曲だ!」
ワアアアアアアア

今日はここまで

友紀「いよいよ心さんたちの出番だね!」

美玲「……どんなパフォーマンスするんだろうな」

唯「楽しみだよね~!ねっ、テリーちゃん!」

テリー「……ああ、そうだな」

テリー(彼女たちは……大丈夫か?)

喰らいつけ!
The wolf bit the dog to death.

Hey!


ダンダンダン
ダンダンダンダンダン


つかさ「……!」

友紀「わあ……!ギターのかっこいいイントロ!」

テリー「……!このステップは……!」

唯「すっごい迫力!」




負けてもいいなんて決して言わない
負けて得るものなんてなにもない

欲しいものは必ず勝って手に入れる


ダンダンダン

オオオオオオオオオオオオ

すげえ!
なんてステップだ!


心(よっし……!今のトコ上手くいってる……!)


智絵里「はぁ……はぁ……!」

Hey hey hey!
覚悟がないならここには来ないさ
喰らうは敵か 己が身か

飛んで火を噴くトーキョーマーチ



李衣菜(イケる……!お客さん、すっごい沸いてる!)


周子(……!)

ビリー(へっ……こんな新人LIVEでお目にかかれるレベルじゃねぇからな、客どももビビってるだろ)

ビリー(どうだ……桐生、テリー……!テメエらの思うようにはならねえ……ザマぁみやがれ……!)




ナターリア「リーナたち、スゴイナ!」

ありす「……あんなにレベルの高いパフォーマンスをしてくるなんて思いませんでした……」


ロック「すごいね、テリー……」

テリー「……ああ……」



つかさ「……」

つかさ(確かにレベルは高い。これを1か月で作り上げたっていうんならそりゃ大したもんだよ)

つかさ(だが、カーン……お前は一人ひとりの顔をしっかり見たか?全員と話はしたのか?)

つかさ(気づかないのか?みんな辛そうなことに……)



つかさ(特に、あの娘は……とてもステージに上がれる顔じゃないよ)

心(……さぁ、ここが正念場……!ギターの音に合わせてむっずいステップ……!)


Clash!
ダンダンダン
ダダダ



忍「……はぁ、はぁ……」



周子(……忍ちゃん……?)

Clash!
ダンダンダン
ダダダ

忍(……なんで?足が……)


Clash!

忍「……あ……」
フラ
ガク

心「!」

智絵里「あ……」

李衣菜「しの……!」

周子「忍ちゃん!」


ビリー「な……!」

ザワザワザワザワ

忍「はぁ……はぁ……なんで……!」

周子「忍ちゃん……!大丈夫?立てる?」
タッ

忍「来ないで!」

周子「!」

心「ちょっ……忍ちゃん……!」

忍「アタシは大丈夫だから……続きを……!」

忍(はぁ、はぁ……どうして……こんな時に……!)
ガクガク




ザワザワザワ

おいおい、大丈夫かよ……



友紀「忍ちゃんたち……大丈夫なのかな……」

ナターリア「シノブ、辛そうだゾ……」

ありす「……そうですね……」


テリー「……」

つかさ「……」

忍「……くっ」
ガク

智絵里「あっ……」
タタン

李衣菜「……!」


周子(緊張の糸が切れたのか……それとも今までの無理が祟ったのか)

周子(それからあたしたちはミスを連発した)

アナウンス「……これにて今年度のステージは終了です。ご来場ありがとうございました。お帰りの際はお足元にご注意……」



客「……なんか、途中まではすごい盛り上がってたのに……最後ケチがついちゃったな」

客2「出来もしない難易度のダンスを無理やりやって、結局失敗だもんな……しかもアレがトリと来た」

客3「最後の方は俺もう痛々しくて見てられなかったよ……悲壮感漂いすぎだっつうの」


ビリー「……」

つかさ「……カーン」
スタスタ

ビリー「……ンだよ、笑いに来やがったのか」

つかさ「少しも笑えるもんかよ。おかげでウチの事務所は恥を掻いた」

ビリー「……」
スッ

つかさ「待てよ。逃げるな」

ビリー「……あぁ?」
ギロッ

つかさ「言っとくが、今回の大失敗は彼女たちのせいじゃねえからな。カーン、お前の責任だ」

ビリー「なんだと……!?」

つかさ「……いや、あたしの責任もあるかもな。お前がすんなりと5人スカウトしてきたもんだから、もっと人をしっかり見られるヤツだと買いかぶりすぎたわ」

ビリー「……」

つかさ「お前、ステージに上がる前、しっかりと彼女たちとコミュニケーションは取ったのか?」

ビリー「あ……?んなモン、当然……」

つかさ「どうだかな。全員のコンディションは把握していたのか?メンタル面に不安はなかったか?」

ビリー「……」

つかさ「アタシにはとてもそうは見えなかった。みんな不安を抱えて……特に工藤はな」

ビリー「……!」

つかさ「ただでさえあの娘は初めてオーディションに来たとき、無理をし過ぎて倒れてる……そういう無茶をしちまう娘だってのはわかってたハズだ……アタシもお前もな」

ビリー「……お説教なんざ聞く気はねェ……」
スッ

つかさ「……アイツは、ギース・ハワードはそこが違った。アタシ達の現状を常に把握して……やれない事をやれなんて事は一度も言わなかった」

ビリー「……!」

つかさ「お前はプロデューサー失格だ。人を導く器じゃない」

ビリー「……」
ツカツカツカ



つかさ「……」

つかさ「……人を導く器じゃない……か……ま、アタシも人の事は言えないかもな……」


プルルルル
つかさ「……ん?電話……美波からか」
ピッ

つかさ「もしもし、アタシだ……」

控室



智絵里「うっ……うう……」
グスグス

心「……ほら、智絵里ちゃん、もう泣くのはやめなって……」

智絵里「で、でも……うっ……」

李衣菜「……忍ちゃんは?」

周子「……救護室だよ。過労みたい……まぁずっと無理してたからね……」

コンコン
ガチャ

忍「……」


心「……忍ちゃん!もう大丈夫なの!?」

忍「……うん……」

忍「……ゴメンね、みんな……アタシのせいで……」

李衣菜「そんな!忍ちゃんのせいじゃないって!」

忍「……ううん……全部、アタシのせいだよ……」

周子「……」

忍「なんか妙に気負っちゃってさ……オーディションの時も同じ失敗してたのに……ホントアタシって学ばないよね」

心「……忍ちゃん」

忍「センターやりたいなんて……アタシが出しゃばらなければ……きっと成功してて……」
ポロッ

周子「……忍ちゃん、あのさ」

スタスタ
ビリー「……そうかもな」

李衣菜「……!プロデューサーさん……!」

忍「プロデューサーさん……ごめんなさい……アタシのせいで……大事なステージが……」


ビリー「……本当にな。俺もつくづく痛感したぜ……自分の運命を他人に委ねる事の馬鹿さ加減をな」

忍「……!」

ビリー「俺はてめェなら出来ると踏んで任せた。結果がこれだ」

心「……ちょっと!流石に言い過ぎだろ!忍ちゃんがどれだけこの日のために頑張ってきたか知ってるだろ!?」

ビリー「プロなら結果が出なきゃその過程に意味は無え……そう言っといたハズだぜ、俺は」

ビリー「それが耐えられねえなら……田舎から出てくるべきじゃなかった。ハナからここに来るべきじゃなかったんだよ」

忍「……――――――!」
ダッ

周子「……!忍ちゃん……!」


ビリー「ほっとけ。……大体、てめェらもだ。なんだあの後半の出来は」

李衣菜「……え?」

ビリー「ちょっとアクシデントが起きたぐらいでピーピー騒いで動揺しやがって……その程度でやってけると思ってんのか」

智絵里「……う……!」
グスッ

ビリー「泣こうが喚こうが……てめェらがあの程度ならもう面倒を見る価値もねェ」

智絵里「……!いや……!」
ポロ

智絵里「いや……いやです……!見捨てないで……!」
ポロポロ

ビリー「……」

李衣菜「ち、智絵里ちゃん……」

心「……ちょっとさぁ。さっきから黙って聞いてりゃ……一体何様のつもりなんだよ」

ビリー「……あァ?」

心「大体さ、さっきははぁと達を信用して任せたみたいに言ってたけど……最近のプロデューサーひどかったよ?曲が決まったときだってはぁと達じゃなくて曲がすごい、みたいな事言ってたり」

心「大体今回プロデューサーが妙に怒ってるのだってさ、はぁと達が失敗した事自体じゃなくて……独立ができなかった事に対してでしょ?自分本位な理由じゃん、そんなのさ」

ビリー「……」

心「それでも何か理由があるみたいだし、はぁと達はあなたにスカウトされて事務所に入れた訳だから、もちろん協力はしたいよ。だからずっと黙ってついて行ってた」

心「けど、はぁと達はプロデューサーの駒じゃないんだよ。みんなそれぞれ心があるから、大事なものも、抱えてるものも違うんだよ」

ビリー「……けっこうな事じゃねえか。じゃあテメェらの抱えてるモンってのは勝つことよりも大事なモンなのか?負け犬同士でキズを舐めあってりゃ守れるモンなのか?」

ビリー「もしそうだとすりゃ、もう俺の下には要らねえ。出ていきな」

心「……ねえ、プロデューサーは一体何を抱えてるの?そうまでして勝ちだけに拘って、周りの人も拒絶して……そんなんじゃ、誰も……」


ビリー「……うるせえんだよ。テメェちょっと一緒に仕事したからって俺の理解者気取りか?そういうのが一番うざってえんだよ」

心「……!」

心「……智絵里ちゃん、立てる?救護室に行くぞ?」

智絵里「……」
フラ

ガチャ
バタン

李衣菜「……」

周子「……」

李衣菜「私、忍ちゃんを探してきますね……」
スッ

李衣菜「……初めてビリーさんの演奏を聴いたとき、心が震えました……世の中にはこんなにもロックな人がいるんだって」

李衣菜「……けど、今は……そうは思えない。今のビリーさんと一緒には……ロックを目指せません」
ガチャ
バタン

ビリー「……何ワケわかんねえ事言ってんだあいつは」

周子「……」


ビリー「……おい。お前は出ていかねえのか」

周子「……んー、あたしってさ、一番ビリーさんとの付き合いが短いじゃん?せいぜい1か月ちょいくらい」

ビリー「……それがなんだよ」

周子「けど他のみんなはさ、あたしより付き合いが長い分、色んなビリーさんの顔を知っていた訳だよね。いや、幻想……理想像かな?」

周子「だから今のビリーさんを見てみんな幻滅して出て行っちゃった。けど、あたしの中では幻滅するほどビリーさんの事を知らないんだよね」

ビリー「……何が言いてえ?」

周子「いや、もちろんダーツ勝負でムキになったり、あたしがキャッチに捕まって危ないところを助けてもらったり、良いトコも見せてもらってたよ?」

周子「でもそのあと、このフェス前のひと月はアタシは厳しいビリーさんしか見てない。手抜いてるのバレた時なんか髪引っ掴んで引きずり降ろすとか言われたしね。パワハラだよパワハラ」

周子「けど、そういう人だと思った。勝つことが何よりも大事な、負けるのが絶対にイヤな人。だから、別にギャップとかは他の娘ほど感じてない」

ビリー「……」



周子「……けど、そうだね。あたしよりも長くアンタを見てる人達がみんな愛想尽かせて出て行ってるんだから……今のビリーさんは良くないんだろうね」

周子「だったら、ほとぼりが冷めるまでシューコちゃんも退散しとくよ。また活動が始まったら連絡してね。それじゃー」
ガチャ
バタン



ビリー「……」

ビリー「……!」
ガン
ガシャン
ガランガラン

ビリー「……クソが。なんだってんだ」

東京都内
車中
ブロロロロ

男2「(……おい、呉。本当に良かったのか?)」

男1「(……何がだ)」

男2「(何がも何も……こうして全員撤退できたはいいが、結局人質の一人も取れぬまま……このままおめおめと帰ったら、ボスに殺されるんじゃないのか)」

男1「(……ああ、そのことか。心配ない、人質こそ取れなかったが、俺たちの仕事はほぼ終わった)」

男2「(……何?どういうことだ、説明しろ)」

男1「(あの事務所を襲う前、あの事務所を張っていた妙な連中がいただろう。アレは恐らくあの事務所が雇っていたのとは別口の護衛だ。外部に連絡される前にそれを始末できたのがまず一つ目)」

男2「(ああ、いたな……腕の立つ奴らだったが、人数で押し包んで殺した……)」

男1「(それと、もうひとつ。今回の襲撃はあくまで事務所まで赴くのが主な目的であって、人質は本来必要なかった)」

男2「(なんだって?俺は確かに人質を取りに行くと聞いて……)」

男1「(もちろんそこまで行ければ話は早かったかもしれないが……まぁどうでもいい。あとは仕上げだ。着いたぞ)」

男2「(……海?何をするんだ)」

男1「(後処理だ。後ろで気絶している連中を起こしてくれ)」

男2「(……?……おい、お前ら、起き――――)」
クルッ

男1「(……)」
スチャ
パーン

都内某所


ブーンブーン
山崎「……電話……ヤツからか」
ピッ

山崎「(俺だ)」

男1『(ボス。たった今後処理まで終わりました)』

山崎「(そうか……一人も残っちゃいねえだろうな?)」

男1『(はい。全員車ごと海に沈めました。今日の襲撃で俺以外に生き残りはいません)』

山崎「(そうか、御苦労……しっかり撮れてるんだろうな?)」


男1『(はい。我々が事務所に入っていく様子が、とても鮮明に撮れています)』

山崎「(……よし、よくやった。アジトに帰ってこい)」
ピッ

山崎「……ヒヒヒ、あとは仕上げだ……!ヒッヒッヒッヒ!」

ギースタワー

ホッパー「……まずいな」

リッパー「どうした?」

ホッパー「リリィ・カーンにつけていた護衛と連絡が取れない。定時連絡の時間はとっくに過ぎているのに、携帯にも繋がらない」

リッパー「……何?馬鹿な、もう一度かけてみろ」

ホッパー「さっきから何度もかけている……いや、待て!」

『……よう』

ホッパー「……もしもし?誰だお前は……この携帯の持ち主はどこにいる?」

『……あァ、この携帯の持ち主なら遠いところにいるよ……もう2度と生きては会えねえ遠いところにな……』

ホッパー「……なんだと?貴様……いや……その声……まさか……」

『ああ、俺も何度かその声は聴いた覚えがあるぜ……そうか、思い出したぜ……てめェはギースんトコの秘書サマじゃねえか。その節は世話になったな。俺にやられた傷はもう大丈夫か?』


ホッパー「……お前は……山崎……山崎竜二か……!」


リッパー「……何……山崎だと……!?」



山崎『ヒッヒッヒ、ってことはあの殺された護衛はハワードコネクションのモンか……かわいそうに、今頃は魚のエサだろうよ』

ホッパー「貴様……日本で何をやってる?ビリーの写真を事務所に送り付けたのも貴様の仕業か……!」

山崎『ヒッヒッヒ、情報が遅えよ。俺ァもう事務所の社長に挨拶も済ませてるってのによ』

ホッパー「……何が狙いだ?」

山崎『さァな?自分の胸に聞いてみな、多分それと同じモンだよ』



ホッパー「……!」

山崎『だが、もうコッチは仕上げの段階でな。てめェらが送り込んだワン公を利用させてもらうぜ……悪く思うなよ』
ピッ

ホッパー「何!?おい!山崎!……クソッ!」

リッパー「なんだ!?ビリーの周辺を狙っていたのは山崎だったのか!?」


ホッパー「リッパー、すぐにビリーに電話だ!山崎が何か仕掛けてくるぞ!」

都内
路地裏

スタスタ
ビリー「……」


つかさ『お前はプロデューサー失格だ。人を導く器じゃない』


心『……ねえ、プロデューサーは一体何を抱えてるの?そうまでして勝ちだけに拘って、周りの人も拒絶して……そんなんじゃ、誰も……』

李衣菜『……けど、今は……そうは思えない。今のビリーさんと一緒には……ロックを目指せません』

周子『……けど、そうだね。あたしよりも長くアンタを見てる人達がみんな愛想尽かせて出て行ってるんだから……今のビリーさんは良くないんだろうね』

ビリー「……へっ、何をいまさら。俺なんざ、ハナっからそういう人間だろうがよ」

ビリー(土台俺がアイドルのプロデューサーなんてのがおかしい話だってんだよ)

ビリー(リッパー、ホッパー……あいつらに言いくるめられて……だが、こうなった以上はもうプロデューサーなんざ続ける必要はねえ、適当に事務所とギース様が無関係なことを確認すりゃ終わりの仕事だ)

ビリー(リリィには……まぁサウスタウンの本社から呼び出し食らったとでも言や済む話だろ)

ビリー(……はあ、そう考えりゃなんでわざわざこんなクソ面倒な事をしてたんだろうな、自分が信じられねえぜ)

ビリー(クソムカつく女にアゴで使われ、面倒なガキどもの世話を焼いて……アイドルのステージなんぞに神経を使って……)

ビリー(……それからやっと解放される……そう考えりゃこんな晴れやかな気分はねえ!清々したぜ!)

ビリー「……」

ビリー(……だってのに、なんだ)



ビリー(……どうしてこんなにムカつきやがる……!?)

プルルルル
ビリー「……」

ビリー「……チッ」
ピッ

ビリー「もしもし、俺だ」

ホッパー『!繋がったか!ビリー、今どこにいる!?』



ビリー「……ホッパー?何をそんなに慌ててんだ……今外に――――」
ヒュン

ガン

ビリー「――――」
ドサッ
カシャ

ホッパー『……ビリー?おい、ビリー!返事をしろ!何があった?ビ』

グシャッ


チンピラ「うは!いきなり金属バットで頭は死ぬだろ!」

チンピラ2「いや、まさしく殺そうってんじゃん?このオッサン殺ればさっきの頭金の500万+成功報酬で500万くれるってんだからよお」

チンピラ3「なんかカタコトでやばそうな連中だったけど、このオッサン殺して500万はでけえよな。しかも処理は完璧にやってくれるっていうし」

チンピラ4「まあとにかくこっちは10人だから全員で割っても一人100万だしな」

チンピラ5「……なんか少なく感じちまうな。なあ、トドメを刺した奴が総取りってことにしねえ?その方が良いよな?……オラァ!」
ブォン
ガン

ビリー「……!」

チンピラ「あっ、ズリイぞてめえ!1000万は俺のモンだ!」
ブオン
ガン
ゴッ


フザケンナー!
テメエコソ!
オレノモンダ!

ゴン
ガッ
ガスッ

ギースタワー

ホッパー「……切れた」

リッパー「……ホッパー、留守を頼む」
ザッ

ホッパー「……どうする気だ?」

リッパー「どうにも嫌な予感しかせん……!俺が直接、日本へ飛ぶ……!」

ホッパー「……!」

日本
フェス会場
救護室

唯「……ホラ、智絵里ちゃん、もう泣き止んで?アメちゃん食べる?」
ナデナデ

智絵里「……うっ……ひっぐ……」
グスグス

テリー「……そうか……ビリーのヤツ、かなり荒れてるな」

心「……けど、それにしたって言っていいことと悪いことがあるっつうの。はぁとにならともかく、他の娘にまで……」

美玲「フェス前に会った時も愛想がないヤツだとは思ったけど……とんでもないヤツだなッ!」

ありす「……最低です」

心「……い、いや、確かに怒りに任せて喋っちゃったのははぁとだけど、本当は普段はあんなことは言わないんだよ?まぁ確かに口は悪いしぶっきらぼうだしチンピラみたいだけど……」

友紀「……なんかあんまりフォローになってないっぽいけど」

テリー「……」

ロック「……あれ?テリー、向こうから桐生社長が走ってくるよ……」

テリー「……なに?」

つかさ「……ハァ、ハァ……おい、カーンはここにいるか!?」

テリー「ビリー?いや、ここにはいないが……」

つかさ「クソッ、携帯も繋がらないし、アイツ、何してる……!」

心「……あの~、何かあった感じ……ですか?」

つかさ「……!いや……」

テリー「……ビリーを探せばいいのか?なら、俺も探すぜ」

つかさ「……!ボガード、頼めるか?」

友紀「……なんかトラブル?それならあたしたちも一緒に探そっか?」

テリー「……いや、それは大丈夫だ。みんなはこのまま救護室にいてくれ。ロック、頼んだぞ」

ロック「!……う、うん」


心「……あ、は、はぁとたちは……」

テリー「……ハートたちも、だ。任せな、あいつは必ず俺が連れて帰るぜ」

心「あ……」

つかさ「……ボガード、悪いが……」

テリー「……ああ、すぐ行く。事情は携帯で探しながら聞く」
タタタタ






美玲「……なんだかすごくバタついてたなッ」

ナターリア「……ナターリア、なんだかスゴクイヤなヨカンするヨ……」

ありす「……何もなければいいんですけど」

智絵里「……プロデューサーさんに、何かあったんですか?」
グスッ

唯「……んーん!大丈夫だよ!ウチのテリーちゃんが探しにいったし……だったらどーにかなるなる!だから智絵里ちゃん心配しないで!」
ナデナデ


友紀「……うん!そうだよ!テリープロデューサーが絶対なんとかしてくれるから、心さんも心配しないで……心さん?」

心「……」



心(……さっき、はぁとはなんて言いかけたんだろう?「はぁとたちも探しに行く」……?)

心(今のはぁとたちがビリーさんを探しに行って……どうなるっていうんだろう……?)


テリー「……何……!山崎が……!?」
タタタタタタ

つかさ『ああ……あたしたち不在の事務所に仕掛けてきたらしい……幸いにも護衛を頼んでいたヒガシ氏のおかげで撃退できたらしいが……今の状態でカーンを一人にしておくのは危険だ……!』


テリー「ジョー……あいつが……だが……確かに今のアイツを、ビリーを一人にしておくのは危険だ……!」
タタタタタ

つかさ『ああ……山崎は会ってみてわかったが、正直狂っている……!一体どんなヤバイ手を使ってくるか見当も……』

テリー「……そうじゃないんだ」

つかさ『……なに?』

テリー「今一番危険視しなきゃいけないのは山崎でも刺客でもない……!」

テリー「あいつ……ビリー自身だ……!」

つかさ『……どういうことだ?ボガード、何を言ってる?』



テリー「……ビリー、早まるなよ……!」
タタタタタ

路地裏

チンピラ「……ハァ、ハァ……こんなもんか……オイ、そいつ生きてるか?」

チンピラ2「いやいや、さすがに生きてるワケねえだろ……金属バット、鉄パイプ、その他凶器で何発殴ったと思ってんだよ」

チンピラ3「……結局、しっちゃかめっちゃかに殴ったから誰がトドメ刺したかわかんねえな」

チンピラ4「まぁそうなるだろうな……しかたねえ、最初の予定通り1000万を10人で山分け――――」




ビリー「……」
ピクッ

チンピラ「……あん?」

ビリー「……クッ、くくく」
ニヤ

チンピラ3「……!なんだコイツ!?まだ息があんぞ!?」

チンピラ2「……化け物かよ!?」

ビリー「ありがとよ、カスども」
ムクリ
ポタポタ

チンピラ5「……へっ!ちょうどいいぜ!これで俺がトドメを刺しゃ俺の総取りだ!こっちこそありがとよオッサン!オラァ!」
ブオン


パシッ

チンピラ5「……な……!」

チンピラ2「素手で、止めた……!?」

ビリー「……テメェらの温ィ攻撃……心地よすぎて、おかげで目が覚めたぜ」
グイッ

チンピラ5「あっ……!」

チンピラ「オイ!なにむざむざオッサンに鉄パイプを渡して――――」



ブオン
グッシャア




チンピラ5「」
ドサッ

チンピラ4「……え?ウソだろ、今、パイプが……頭を……」

ビリー「今俺ァ最高に最悪な気分なんだよ」
ズチャッ……
ズチャッ……


チンピラ「……び、ビビんな!こっちゃ9人いんだ!一斉にかかりゃ……」

ブオン
ゴシャッ

チンピラ「」
ドサッ

ビリー「だからよぉ……もう誰でも良いからヤっちまいてェところだったんだ」
ズチャッ……
ズチャッ……




テリー「……もし、今どこかの誰かがビリーにちょっかいを出してたとしたら……」
タタタタタ

つかさ『……』





グシャ
チンピラ2「」
ドサ

チンピラたち「う、うわああああああああ!」

ビリー「ホントにありがとよ、わざわざ俺の前に来てくれてよ……言っとくけどよ、もうNoはナシだぜ」
ズチャッズチャッ

チンピラたち「うわあああああ!なんだよ、話が違うぞ!こんな……化け物……!」
ダッ




テリー「もしかしたらもう、最悪の事態が起こってるかもしれない……!」
タッタッタ





ビリー「……最期まで……良い声で鳴いてくれや」
ブオン




グシャ




山崎「……」
ニヤリ

今日はここまで


【お詫びと訂正】
前スレの>>993に置きまして、年表の中に『 ギース、『Reppu』の解散を発表。志希、レナは美城プロに移籍。』とありますが、正しくは『 ギース、『Reppu』の解散を発表。志希、真奈美は美城プロに移籍。』
となります。
茄子とレナはこの時点で無所属、後年つかさの設立した『RUNWAY』に所属となります。
ここにお詫びと訂正を申し上げます。

テリー「ハァ、ハァ……どこだ、ビリー……!」
タタタタ


通行人「……おい、さっきあっちの方に歩いて行ってた集団、なんかヤバそうな雰囲気だったよな……警察呼んだ方がいいんじゃないか?」

通行人2「確かにな……なんかバットとか持ってたしな……」

テリー「……!」


テリー「ハァ、ハァ……!」
タタタ

テリー(聞いた話では……こっちの方に……!)


ドン

テリー「!?ビ……」

チンピラ「うわ、うわあああ!」

テリー(ビリーじゃない……!だが……!)

テリー「どうしたんだ!落ち着け!」

チンピラ「嫌だ!死にたくない!あんな……あんな化け物がいるなんて、知らなかったんだ……!」

テリー「……!」

チンピラ「軽い気持ちだったんだ……ラクに儲けられるって……でも、こんな……こんなことになるなんて……!」





ビリー「……クク」


チンピラ「」


ビリー「ハハハ……」


チンピラ2「」

チンピラ3「」




ビリー「ヒャハハハハハハハ!」



チンピラたち「」

ビリー「どうした……!さっきまでの威勢はどうしたんだよゴミクズども……!」
ゲシッ

ビリー「オラ、こうして俺ァまだ元気だぜ?とっとと俺の頭カチ割らねえと金がもらえねェんだろ!?」
ゲシッ

チンピラ6「……ヒ……ヒ……」
ズリズリ

ビリー「……お?まだ動ける奴がいたのかよ」
スッ

チンピラ6「ア……」
ズリ


ビリー「……汚え上に無様だが……喜べよ。テメエみてえなゴミでもその頭カチ割りゃさぞかしド派手な赤が飛び散るだろうぜ」
ブォン

ガキン


ビリー「……あァ?」

テリー「クッ……」

ビリー「……誰かと思えばサウスタウン・ヒーロー様じゃねえか」

テリー「……ビリー」

テリー(クソ……遅かったか……!)


ビリー「どきなテリー。そこで這ってるゴミにトドメを刺さなきゃなんねえ」


テリー「……よせ、ビリー……こいつらは恐らく、唆されてお前を襲っただけの奴らだ……!」

ビリー「唆された?」

テリー「ああ……少し前からお前は何者かに尾けられていたんだろう?それは山崎の手の者だったんだ」

ビリー「……山崎……あのドブネズミ野郎か」

テリー「こいつらはたまたま山崎に金で買われてお前を……」





ビリー「関係ねえ」

テリー「……何?」


ビリー「関係ねえっつったんだよ。こいつらがどこのゴミだとか、背後にいるのがどこのどいつだとか……」

ビリー「なんであろうが、気に食わねえヤツはブッ殺す、それだけだろうがよ」


テリー「……ビリー……!」

ビリー「言っとくが、その気に食わねえヤツってのにはもちろんテメエも含まれてんだぜ?……邪魔すんならテメエから先にやってやるよ」

テリー「……やめろ、ビリー!お前のそのケガだって軽くは……!」


ビリー「他人の心配なんかしてる場合じゃねえぜ」
ブォン

テリー「!」
バッ

テリー(……この鋭さ……!ビリー、本気か……!)


ビリー「良いねェ……やっぱりテメエはその辺のゴミ共とは別だ……」
ズチャ

ビリー「始めようぜテリー・ボガード。どっちかが……死ぬまでなァ……!」


テリー「……クソッ!」





友紀「……遅いね、テリープロデューサー」

唯「ねー、どこまで探しに行っちゃったんだろ」

智絵里「……」

心「……」


ガチャ
周子「お、いたいた、智絵里ちゃん、具合はどう?」

心「あ、周子ちゃん……と」

李衣菜「失礼しまーす……」

忍「……」

心「李衣菜ちゃん、忍ちゃん」




智絵里「……ありがとうございます……だいぶ、落ち着きました……」

周子「そりゃよかった……どっこいしょ」
ストン

唯「アメちゃん食べる?」
スッ

周子「いただきまーす」
ヒョイ

忍「あ、いや、アタシは……いい、です」

友紀「……そっちもみんな揃ったみたいだね。ちょっと外の空気吸いに行かない?」

ありす「……そうですね。この人数で救護室にいるのもなんですし……」

唯「あ、それならコンビニ行こーよ!みんなノド乾いてるでしょ?」

美玲「そうだな」

ロック「……え?でもテリーは救護室にいろって……」

ナターリア「いいカラいいカラ!ホラ、ロックもいっしょにいくヨー!」
ギュッ

ロック「!?わ、わかったから、手は繋がなくても……!」

唯「じゃ、みんなの分もお菓子とかジュースとか買ってくるから、待っててね~♪」

ガチャ
バタン




周子「……気を使われちゃったね」


心「いい子たちだな、ホント……」

心「忍ちゃんも……ちょっとは落ち着けた感じ?」


忍「うん……ごめん、取り乱しちゃって……まぁ落ち着いたところでさっきの失敗がアタシのせいっていうのは変わらないんだけど……」


心「……もう終わったことだって。さっきの失敗は忍ちゃんの失敗であるかもしれないけど、忍ちゃんの不調に気づけなかったはぁと達全員の失敗なの」


心「全員の失敗なら全員で共有しなきゃ。で、反省して次で同じ失敗をしなきゃそれでよし!おわかり?」

忍「う、うん……」

心「だったら!いつまでもそんな顔してんじゃないの☆ほらほら♪」
グニ~

忍「い、いひゃいよ、ひんはん……」

李衣菜「あははは……」





智絵里「……私たち、これからどうなっちゃうんでしょうか……」


忍「……!」


李衣菜「どう……って……」

智絵里「……さっき、ビリーさん……すごく怒ってました……」

忍「……怒ってたのもそうだけど……ガッカリさせちゃった、っていう方が近いのかな……」


心「……さっき本人にも言ったけどさ、確かにはぁと達は今回結果を残せなかった……けど、だからってプロデューサーのあの態度はないと思うんだよね」

周子「それ、聞きたかったんだけどさ、ビリーさんって元々ああいう言い方をする人じゃないの?私が知ってる限りでは、今回の結果からするとビリーさんの反応はああ、やっぱりなって感じなんだけど」

忍「……確かに、厳しい人ではあるけど……」

智絵里「……だけど、普段は厳しいだけじゃなくて……面倒見の良さっていうか、温かさだってあって……」

心「ほら、妹のリリィちゃんいるでしょ?あの子相手にはゲロ甘だし、まぁそこまではなくてもなんだかんだで見捨てない、ツンデレ気質みたいなのがあったんだよ……ちょっと前までは……」

周子「……うん、確かにあたしもツンデレっぽいところは見たよ」


李衣菜「……」

忍「……李衣菜ちゃん、どうかしたの?」

李衣菜「……いや、そういえば私たちってビリーさんのこと実は何も知らないなって思って……」

智絵里「……え……?」

心「……いやいや、そんなコトないでしょ……トシは三十で、シスコンで、けっこういいトシなのに無職だったから妹に心配かけないためにプロデューサーに……」

李衣菜「じゃあなんで日本に来たの?そもそも前は何をしてたの?そもそもなんでプロデューサーに?」

忍「……」

心「……知らないね」

周子「……確かにね。以前からそういう芸能界とかで働いてた風にも見えないし」

李衣菜「そもそも動機がわからないから、今回の失敗をビリーさんがあんなに怒っていた理由もわからないですし……」

心「……つまり、まだまだはぁと達とプロデューサーはお互いのことを良く理解していないってこと?」

李衣菜「それもそうですし、今回のことも含めて……改めてもう一度しっかり話し合わなきゃって思います」


周子「……李衣菜ちゃんって、意外とちゃんとしてるんだね。見直したよ」

李衣菜「そ、そうかな……って意外ってなに!?」

智絵里「……けど、ビリーさんすごく怒ってたし、今更お話しなんて……」



「いいじゃねえか、いくらでも話し合ったらよ」

智絵里「……!?」

李衣菜「その声は……」


心「パ……チャンピオン!」


ジョー「おう、知らない顔も増えてるが……久しぶりだなみんな!」

今日はここまで


忍「ジョー、さん……!」

周子「うわ……ホンモノじゃん……!」


心「あ、二人は初対面なんだっけ」


周子「テレビに出る前から関西圏じゃ有名人なんだよ。元ヤンから世界チャンピオンまで一気に駆け上がったシンデレラボーイ……!」

ジョー「へへっ、照れるじゃねえか……!」

心「チャンピオンがどうしてここに?」

ジョー「ああ、ちょっとヤボ用でオタクの社長サンに会いに来たんだが……」


ジョー「それよりみんな、話は聞かせてもらったぜ。あのバカ野郎が、こんないい娘たちを悲しませやがって……」

忍「い、いえ……けど、ビリーさんの言う事も正しいんです……アタシたちは結果を出せなかったわけですから……」

ジョー「だからって、一度の失敗で終わってちゃ今後の成長も望めねえじゃねえか。……まぁアイツも色々あって追い詰められてんだろうが……」

忍「それよりジョーさん、話し合ったらいいっていうのは……?」

ジョー「そのまんまの意味だよ。お互いにわからない、知らないってんならツラ突き合わせて腹割って話すしかねえじゃねえか」

智絵里「……ですけど……」


ジョー「今アイツは外に行っちまったんだろ?だったら皆で会いに行こうぜ。俺が一緒に行ってやるから」

心「……けど、社長やテリープロデューサーたちからはここにいるように言われてて……」

ジョー(……そうだよな、そういやテリーもこっちに来てて、しかもプロデューサーやってんだよな……なんの因果だよ本当に……)

ジョー「……確かに社長サンたちの言う事もわかるが……今のこの状況の『当事者』は間違いなくアイツと、アンタ達だと俺は思うんだよな」

忍「……当事者……?」

ジョー「ああ、確かに今のアイツ……ビリー・カーンはやべえ状態かもしれねえが……だからこそ、アイツを止められるのはアンタ達なんだと思う」

ジョー「もちろん、アンタ達の身の安全は俺が守るぜ!だから……」



周子「……ちょっと待った。さっきのテリーさんもそうだけど……ビリーさんに対する反応が一般人に対するソレじゃないよね」

ジョー「……!」

李衣菜「確かに……」

心「……チャンピオンはビリーさんのこと以前から知ってるんだよね?あの人……本当は何者なの?」



ジョー「……その様子だとアイツから過去のことは何も聞いてねえんだな?」

智絵里「は、はい……」

ジョー「だったら、それもアイツ本人に聞くべきだ。だが……」

ジョー「今みんなが知ってる顔じゃねえ……もっと危険な顔をアイツは持ってる。……俺から言えるのはそれだけだ」

智絵里「……!」

ジョー「俺から言っといてなんだが、どうする?アイツの隠してる顔を見たくねえってんなら、ムリにとは言わねえ」

李衣菜「……それでも、私達は……ビリーさんと話し合わなきゃいけないと、思います」

忍「……!」

心「……うん、そうだね。そうじゃないと……これ以上、前に進めないし」



ジョー「……そうかい。だったら俺が絶対に守ってやる。行こうぜ、アイツのトコへ……!」




ドガッ
ガキッ



ビリー「グッ……ハハ……!」

テリー「ぐあッ……!」
ズシャ



ビリー「ハハハ……!どうしたサウスタウンヒーロー……!もうおしまいかよ……!」


テリー(……なんて攻撃だ……!一撃一撃に信じられない殺気と重さが籠って……!)

テリー(だが……俺の一撃も決して軽くはないはずだ……!すでにボロボロの身体で、気を失っててもおかしくない……いや、失うハズの……!)

テリー「……クソッ!」
バッ

テリー「バーンナックル!!」
ゴッ

バキッ

ビリー「グッ……」

テリー(……!完全に決ま――――)

ビリー「……ヒャッハァ!Dragon flame!」
ガン

テリー「ガハッ……!」

テリー(馬鹿な……!)
ドシャア

ビリー「へっ……」
ズチャッ

テリー「ハァ……ハァ……!」

ビリー「この期に及んで……俺を殺さずに気絶させて止めようなんざ……無駄なこった……!」
ズチャッ

テリー「……!」




ビリー「……なァ、テリー……テメェいつまで手を抜いてやがる?……日本に来る前にやりあった時も、そうだった……」

テリー「……何?」


ビリー「あのギース様を殺したテメェが……俺を殺すなんざワケねェだろ?」

テリー「……!」

ビリー「ギース様は……そりゃあ強かった。正直な話、俺じゃあ100回闘ったって1回も勝てねえと思うほどにな。常にあの方の傍にいたんだ……俺が一番あの方の強さを解ってる」


テリー「……」



ビリー「そのギース様を……テメェは倒して……殺したんだろ?」

テリー「……」

ビリー「だったら……俺を殺せねえワケはねえ……同情か、蔑みか……なんの理由か知らねえがテメエは手を抜いて俺を生かしやがる……」

ビリー「ふざけるんじゃねえ!俺に……俺にこれ以上生き恥を晒させるつもりかテメェは!!」
ブオン

バキッ

テリー「ぐはっ……」
ドシャ

ビリー「……」
ズチャ

テリー「……ビリー……」

ビリー「……もう一度言うぜ、テリー」

ビリー「俺を止めたきゃ、殺せ。さもなきゃテメェが死ね」
スッ


テリー「……!」

ビリー「……テメェは、こんな所で死ねねェハズだ。テメェはサウスタウン・ヒーロー……名声も、帰るべき場所もあるんだろ」

テリー(……ロック……)

テリー「……俺は……!」
フラフラ
グッ


ビリー「……そうだ、それでいい……」

ビリー「……さぁ!!死ね(殺せ)!!テリー・ボガードォォォォォォ!!!」
ブォン




ドグシャッ





心「……全然見つかんない!」

周子「一体どこまで行っちゃったのビリーさんは……」

ジョー「とにかく探すしかねえが……」



李衣菜「みんな!あっちにそれらしき情報を持った人が……!」

忍「……本当!?」

通行人「……ああ、さっきあっちの方で騒ぎがあってて……帽子の兄ちゃんが走っていってたよ」

ジョー「……そりゃおそらくテリーだな……!」


智絵里「……バ、バンダナの人は!?み、見ませんでしたか!?」
ヒシッ

通行人「うわっ」

心「ち、智絵里ちゃん!お、落ち着きなって!」

通行人「……ああ、そういやその前にバンダナの人もそっちに歩いて行ってたような……」

智絵里「……!ホ、ホントですか!?」

ジョー「……ってことはもうテリーとビリーの野郎は会ってる可能性が高いってことか……!」

ジョー「みんな、急ぐぜ!アイツに投げかける文句は考えときな!」
ダッ

忍「……はい!」

タッタッタッタ






通行人「……」



通行人「……フッ」
ニヤリ



ビリー「……」

テリー「……」


フラッ
ドサッ


テリー「カハッ……!」



ビリー「……おい」


ビリー「……テリー、テメェ、どういうつもりだ……!」




ビリー「どうして拳を下しやがった……?」

テリー「……」


ビリー「……どうして、防御もせずに打たれやがった……?」



ビリー「どうして、そうまでして俺を殺さねえ!?答えろ、テリィィィィ!!」
グイ




テリー「……ビ、リー……」

テリー「たし……かに……アイツを……ギースを……俺は殺した……」



ビリー「……!」


テリー「……だが……ギースは……最期の最期で……」


テリー「……笑って……俺の手を……払って……落ちていったんだ……」


ビリー「……なんだと?」



テリー「……それでも……俺がヤツを殺した事実は……消えない……」



ビリー「……オイ、待て……どういうこった……それは……」

テリー「だが……俺にも……ヤツにも……もはや憎しみは……なかった……」



ビリー「まて……待て!……それじゃあ何か……?ギース様は……あの御方は……自ら死を選んだって言いてえのか……?」


テリー「……」
ガクッ

ビリー「……オイ……オイテリー……待ちやがれ……!オイ……!どういうことだ!!テリィィィィ!!」
ガクガク


テリー「……」



ビリー(どういうこった……?ギース様が自ら死を……?馬鹿な……ありえねえ……)



ビリー「……」





李衣菜「……あそこですね!あの路地裏に……」
タッタッタ

心「ヒィ、ヒィ……ビリーさんが……!」
タッタッタ

周子「……!」

忍「……ビリーさん……!」

ジョー「……みんな、待て!……何があるかわからねえ……俺が先頭で行く!」



ジョー(……なんだ……胸がざわつきやがる……?)
スタスタ


ジョー「……テリー?」
スタスタ
スッ

ジョー「……!なっ……!!」




心「チャンピオン?どうしたの!?」

忍「ジョーさん!?」


ジョー「……ダメだ!!アンタ達は……見るな……!」


周子「……!あ……」


チンピラ「」

チンピラ2「」

チンピラたち「」


李衣菜「あ……あ……」


智絵里「……きゃああああああ!」


ジョー「見るな!見るんじゃねえ……!?あれは……!?」


テリー「……」

ジョー「……テリー?」

心「そ、そばにいるの……ビ、ビリー……さん……?」

ジョー「テリィィィ!!」
ダッ

バッ
ジョー「テリー!テリー!しっかりしろ!オイ、テリー!」
ユサユサ



テリー「……」


ビリー「……」
ボーッ


ジョー「これは、テメエがやったのか!ビリー、おい!!」

ビリー(……なんだ?誰が俺に話しかけてやがる?)



心「……!」

周子「……!」

忍「……」

李衣菜「……」

智絵里「……!……!」

ビリー(……ガキども……?なんでこんなところに……)



ビリー(帰れ……ここはテメェらみたいのが来る場所じゃねえ……)
スクッ


智絵里「ひッ……いや……!」

忍「いや……来ないで……!」

李衣菜「……あ……ああ……」

心「……!」
ギュッ

周子「……」


ビリー(……なんだ?何を怯えてやがる……?)

ビリー(……ああ、この血か?この血なら俺の血じゃねえ、クズどもの血……)



ビリー(―――――ああ、そうか……)





ビリー(この血が、俺の血じゃねえからこいつらは怯えてんのか――――……)

ウ~ウ~

心「……サイレン……!?」

ブルルルルル
キキー
キキッ

ガチャッ
バタン

ザザザザザザ

警察「……そこの男に告ぐ!大人しく投降しろ!」

周子「け、警察……!」


警察2「そこの君たち!危険だから下がりなさい!」
グイ

心「あ……!ビ、ビリーさ……!」

ビリー「……」


警察「……犯人、暴れる様子はなし。犯人自身もケガを負っている模様……了解」

救急隊員「ケガ人の搬送、急いで!」
バタバタバタ


警察「……18時14分。暴行の容疑で緊急逮捕」
ガチャッ

ビリー「……」




心「……!」

今日はここまで




留置所





カツカツカツ

警察官「……ビリー・カーン。面会だ」

ビリー「……女か?会わねえ」

警察官「……これで1週間毎日同じ娘が会いに来てるぞ。家族なんだろう?なぜ会ってやらない?」



ビリー「……」

警察官「……彼女、泣いていたぞ」

ビリー「……うるせえ。会わねえもんは会わねえ」

警察官「……」
カツカツカツ


ビリー「……」

ビリー「……どのツラさげて会えってんだ……」


翌日

カツカツカツ
警察官「……ビリー・カーン。面会だ」

ビリー「……」

警察官「……今日はいつもの娘じゃない」

ビリー「……誰だ?」

警察官「スキンヘッドの男だ。リッパーと名乗ってる」


すみません、いったんここまで、続き明日投下します

面会室


リッパー「……ビリー」

ビリー「……リッパー、まさかアンタが直々に日本まで来るたァな」

リッパー「……思ったよりも元気そうだな。……いや、少しやつれたか」

ビリー「……」

ビリー「……今、シャバはどうなってる」

リッパー「……ああ、お前は逮捕されてから全く情報が入っていないのか」

リッパー「お前が逮捕された件は、大々的に報道された。結果、桐生社長の事務所は世間からかなりのバッシングを受けた」

ビリー「……」

リッパー「それを受け、桐生社長は謝罪会見を開いた。お前が逮捕されて3日後の話だ」

ビリー「……」

リッパー「対応としては迅速で悪くなかった。しっかり謝意を示した中で、否定すべき所、はっきりしていない所は明確にしていた」

ビリー「……あの女の得意そうなこった」

リッパー「それで世間的には一時沈静化の動きを見せていたが……2日前、この記事が週刊誌に出た」
スッ

ビリー「……『話題の暴力事務所の黒い交友……事務所はヤクザの集会所』……なんだこりゃ」

リッパー「お前たちがライブをやってる最中に事務所に襲撃を行ったようだ。その時の写真だな」

ビリー「……!?待て、その時事務所にはリリィが……!」

リッパー「落ち着け。襲撃自体はジョー・ヒガシが退けたようだ。桐生社長は襲撃を読んでいたらしい」

ビリー「……あの女、そんな事は一言も言ってなかったはずだ……しかもよりによってあのパンツ野郎か……」

リッパー「それにも理由があった。そもそもこの襲撃自体、あちらからすれば『事務所に強面の奴らが入っていく』瞬間さえ撮れればいい、という目的だったようだ」

ビリー「……結果、その写真をマスコミに流して、また大バッシングって寸法か」

リッパー「ああ、この写真一枚を切り取ればこいつらが事務所を襲撃しているなどわからん。大衆からすればわかりやすい、『ヤクザの集会所』という印象だけが残る」

ビリー「……チッ、くだらねえ……」

ビリー「……で?今事務所はどうなってる」

リッパー「再加熱したバッシングの渦はもはや制御不能だ。桐生社長はもちろん、所属しているアイドル達にさえマスコミが張り付き、最早外を出歩けん状況だ」

ビリー「……」

リッパー「連日ワイドショーで延々と同じ話題を議論し、世間もほぼ敵に回っている」

リッパー「芸能事務所『RUNWAY』の信用は最早地に堕ちたといっていい」

ビリー「……リリィはどうしてる?」

リッパー「彼女は桐生社長の計らいで休職中だ。事務所にも近づかせていないようだが、毎日お前に面会を断られて精神的に参っているようだ」


ビリー「……ボディーガードはちゃんと仕事してるんだろうな?」

リッパー「……その件だが、彼女に付けていたボディーガードは死んだ。例の事務所襲撃の際に始末された」

ビリー「……なんだと!?」
ガタッ

リッパー「彼女の目の前で殺られた訳じゃない。襲撃の前に事務所に張っていた所を狙われたようだ」


リッパー「もちろん、今はさらに増員して別のガードはつけてある。そこは抜かりはない……が」

リッパー「問題は相手が殺しすら厭わない相手だということだ」



ビリー「……山崎か」

リッパー「……そうだ。もう知っていたのか?」

ビリー「……テリーの野郎がそう言ってやがった。その時の俺ァ聞く耳持たなかったが……」

リッパー「どうやら桐生社長には山崎が直に接触してきたらしい……そこで彼女は山崎を危険人物だと判断した。彼女がお前に事務所を狙っている相手を伝えなかった理由だ」

ビリー「……俺と山崎の野郎がツラ合わせりゃあ何も起こらねえハズはねえと?……そりゃあ殺し合いになるだろうよ。あの女の読みは正しい」

ビリー「だが、判断は間違っていた。さっさと俺に山崎の事を教えてりゃ、こんなことになる前に俺が山崎をブッ殺してたんだ。そうすりゃ事務所がこんなに追い詰められることもなかった」


リッパー「……桐生社長なりに、事務所をトラブルから守ろうとした上での判断だろう」

ビリー「……ハッ、その結果がコレだぜ。それもこれも……俺なんざを受け入れたのが間違いだったんだよ」


リッパー「……ビリー」


ビリー「……リッパー、テリーは……あの野郎はどうなった」



リッパー「……テリー・ボガードは重傷を負ったが命に別状はない。今は都内の病院に入院している」

ビリー「……そうか」

ビリー(……まぁ死んだとは思ってなかったが……)




リッパー「……さて。ビリー、今後の事だが……」


リッパー「ここを出てもらう」



ビリー「……なに?」

ビリー「待て、リッパー……当たり前のように言いやがるが、俺がここを出るなんざ……」


リッパー「何ために俺がわざわざ日本まで来たと思っている。お前に状況を説明するためだけに来るほど暇じゃない」


ビリー「……いや、ムリだろ?ここは日本だぜ、サウスタウンならいざ知らず……」

リッパー「もう話はつけてある。いや、話がついたからお前に会いに来た」

ビリー「……!」

リッパー「支度をしろビリー。釈放だ」

都内某所




男「(……ボス。お耳に入れたい事が)」

山崎「(なんだ)」

男「(……ビリー・カーンが釈放されるようです)」

山崎「(……なんだと?あんだけ派手にやらかしてか)」


男「(……今回のビリー・カーンの乱闘事件、重傷者は数多く出ましたが奇跡的に死者は出ませんでした)」


山崎「(ああ、心底ガッカリしたぜ、随分お優しい凶器があるもんだってな。それともすっかり錆びて鈍らになっちまったか)」


男「(……それに加えて、ハワード・コネクションが証人を確保したようです)」


山崎「(証人?)」

男「(はい、一人はビリー・カーンを襲撃したメンバーの一人。比較的軽傷で済み、逃げ回っていた所を確保されたようです)」


山崎「(なるほどな。確かにクチが利けるヤツがいるとわかりゃ真っ先に俺は始末するように言っていた)」

男「(はい。コネクション側は身の安全を保障し、代わりに証言をさせたようです。自分たちの方が先にビリー・カーンを襲ったのだと)」


山崎「(へっ……ムショにぶち込まれる方がマシだって判断したのか。コネクションはよっぽど脅かしたんだろうなぁ……まぁ間違いじゃねえが)」

山崎「(だが、それだけじゃ弱えだろ?他に奴はテリー・ボガードも病院送りにしたじゃねえか)」

男「(そうです。……つまり、二人目の証人が、テリー・ボガードだったようです)」

山崎「(……なんだと?)」

男「(テリー・ボガードはしばらく意識がなかったようですが、先日意識を取り戻し、証言をしたそうです)」

山崎「(……ヒッヒッヒ、コイツは傑作だ!ハワード・コネクションは自分トコのボスを殺した男にへいこら頭を下げて証言をお願いしたってワケだ!惨めさもここまで来ると笑えるぜ!)」
バンバン

男「(……それが、ボガードは自らの意思で証言をしたようです。自分のケガはビリー・カーンとは無関係だと)」

山崎「(……あァ?そんなわけがあるかよ、あいつらは顔も見たくねえ敵同士だろ?特にテリー・ボガードとビリー・カーンはよ……とんでもねえ額の金でも積みやがったか)」


男「(……とにかく、この二人の証言と、警察関係者に金を流して今回の件を不問に漕ぎつけたようです)」

山崎「(……くっくっく、犬一匹牢屋から逃がす為に随分と苦労なされるこって)」


男「(……よろしいので?)」


山崎「(まぁあの野郎がブタ箱にブチ込まれるってのは愉快だったが……だが今更ヤツが出てきた所でもうどうしようもねえ)」




山崎「(あの事務所はもう死に体……俺のモンになるのは時間の問題だぜ……!)」


街中

スタスタ

ビリー(……本当に釈放されやがった……リッパーのヤツ、ムチャしやがる……)


ビリー「……」

~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~
~~~~~~~~~~~~

リッパー「さて、ここから出た後だが……もうこうなってしまった以上、プロデューサーを続けていくのは不可能だろう。そもそも事務所もどうなるかわからん」

ビリー「……」

リッパー「ひとまずはサウスタウンに帰ることになるが……リリィ・カーンはどうする?お前は逮捕されて以来、彼女から逃げ回っていたんだろう」

ビリー「……てめェ……」

リッパー「事実だろう。……だから気を使ってやってるんだ。彼女にお前から伝えるのか、否か」

ビリー「……」

ビリー「……俺から伝える。ンなことまでやらせられっか」

リッパー「そうか。マンションまで車で送ろう」

ビリー「……いや、いい。勝手に行く」


リッパー「……別に構わんが、お前に監視はつけておくぞ?今のお前から目を離すリスクは、コネクション内の誰も見逃してはくれんだろう」

ビリー「……勝手にしろ」

リッパー「あと、外を出歩くつもりなら顔を隠せ」

ビリー「……」

リッパー「さらに言うなら、そんなに時間もやれん。もし時間が掛かり過ぎるようなら」

ビリー「あ~うるせえな!」

~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~
~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~




ビリー(……ああは言ったが、どのツラ下げてリリィに会やいいんだ……)
スタスタ


ビリー(今回の件でリリィは流石に悟っただろう……俺の本性ってやつに)


ビリー(なんて話す?何を話す?……なんて謝ればいい?)


~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~

『彼女、泣いていたぞ』

~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~



ビリー「……チッ……」

スタスタ
ビリー「……」
ドンッ

女性「あいてっ……っとすまねぇな、よそ見して……」

ビリー「……チッ、ボサッとしてんじゃねえよ」

女性「……ああ?下向いて歩いてきてたのはテメェの方だろうが。こっちゃ一応謝ってやったのにンだその態度はコラ」

ビリー「……んだこのアマ、こっちゃあそれどころじゃねえんだコラ……」
ギロ

女性「上等だオラ……」
ギロッ

ビリー「……」

リッパー『……お前に監視はつけておくぞ……』




ビリー「……チッ」
クルッ
スタスタ

女性「……ああ?なんだよ!ビビったのかぁ!?」

ビリー「……」
スタスタ



女性「……」


女性「……ビビってたな。アタシにじゃあねえけど……何かを失いたくねえって眼だった」




女性「……やれやれ、アイツは拳を交えただけで相手の人となりがわかるって言ってたけど、アタシもその域に近付いちまったのかね……」

今日はここまで

保守頂いてましてありがとうございました。
いつの間にか復活していたなんて……チマチマ投下再開していきます。



ビリー「……」
スタスタ



ビリー(マンションに着いちまった……だが……)

ビリー「……」

ビリー(……考えても仕方ねえ、詫びて許されるとも思えねえが……とにかくサウスタウンにリリィを連れて帰らねえとな……)

ビリー(……さて、どう切り出すか……そもそもどんなツラして……)


スタスタ
パサッ
「……兄さん……?」


ビリー「……!?」
バッ
ビリー「……リ、リリィ……!」

リリィ「……っ」


ビリー(しまった……!買い物帰りか……?迂闊だった……!)

ビリー「……」

リリィ「……」

ビリー「……リリィ……」

リリィ「……おかえりっ!兄さん!」
ニコッ

ビリー「……!」

リリィ「おなか空いてるでしょ?ちょうど食材も買ってきたし、ごはんにしよう?」

ビリー「……あ、ああ……」

マンション


リリィ「♪~」
トントン

ビリー「……」

ビリー(どういうこった……?俺がどうなったのか知らねえのか……?)

ビリー(いや、そんなハズはねえ……リッパーの話じゃテレビで大々的に報道された……いや、そもそもリリィは面会に留置場へずっと来てたじゃねえか……)

ビリー「……おい、リリィ……」

リリィ「……はいっ!出来たよ!兄さんの好きな卵料理!」
トン

ビリー「あ、ああ……すげえ量だな……」

リリィ「えへへ……ちょっと張り切りすぎちゃったかな?」

ビリー「……いや、ありがとよ……ん?これは……」

リリィ「……うん、だし巻き卵って言うんだって。前にはぁとさん達と行った居酒屋で食べた、日本料理……練習してたの」

ビリー「そうか……いただくぜ」
パク

ビリー「……うめえ。やっぱりお前の料理が最高だな」
モグモグ

リリィ「本当?よかった……」

ビリー「……」


ビリー「……リリィ、帰国の準備をしろ」

リリィ「……どうして?」

ビリー「こんなことになっちまった以上、日本に残っててもしょうがねえからだ」

リリィ「……」

ビリー「……」



ビリー「……リリィ、すまなかった」

リリィ「……なにが?」

ビリー「なにがって……」

リリィ「……兄さん、どうして……面会してくれなかったの?」

ビリー「……!」

ビリー「……すまねェ。だが、お前に会わせるツラがなかった……」

リリィ「……」

ビリー「……リリィ。お前にゃ謝らないことが他にもある。……俺は本当は……」

リリィ「待って」

ビリー「……!」

リリィ「……ううん、兄さん。私も本当は……知ってたの」


ビリー「……!」

リリィ「……そんなに驚かないで?あの街に住んでたんだから、いくら私だって、わかっちゃうよ」


ビリー「……あのパンツ野郎から……聞いたのか?」


リリィ「違うよ。ジョーさんは優しいから……私にはむしろ隠そうとしてくれてた。……そう考えると、ジョーさんと兄さんは似てるかもね」

ビリー「……」

リリィ「街に行けばみんな優しくしてくれる。どんなに怖い人たちでも、兄さんの名前を出したら逃げて行っちゃう」

ビリー「……」



リリィ「……わかるよ。兄さんが良くないことをしてしまってたことも、それが私の為だってことも」


ビリー「リリィ、それは……」

リリィ「……むかしむかしの、ちっちゃい頃。私と兄さんがサウスタウンのスラムにいた時……毎日毎日寒くてひもじくて、死にそうだった」

ビリー「……」

リリィ「あの日も確か何日も何も食べてなくて、辛かった。けど――――その日、兄さんはパンと温かいスープを持って帰ってきてくれた」

ビリー「……」

リリィ「美味しかった。嬉しかった。兄さんに泣きながらお礼を言った」



リリィ「すると、兄さんは次の日から毎日のようにパンを持って帰ってきてくれるようになった。……あの頃はわからなかったけど、あのパンは―――――」

ビリー「……リリィ、俺は……」

リリィ「いいえ、謝るのは私のほうだよ。ごめんなさい」

ビリー「……なんでだ。お前が謝ることなんて、何もねえじゃねえか――――」

リリィ「ううん……私は途中からもう気づいてたの。この幸せな生活の裏に、きっと他の知らない人の不幸せがあってるって、気づいていたの」

ビリー「……」

リリィ「それでも、私は兄さんを止められなかった。『もうやめて』って言えなかった」

リリィ「それは、兄さんといつまでも一緒にいられるこの生活を失いたくなかったから。偽りでもいい、兄さんと一緒にいられる以外に私が望むことなんてないんだから……」

ビリー「……」

リリィ「……だから、これは兄さんのせいじゃない。私が悪いの。私が兄さんを止めていれば――――」


ビリー「言うな!」


リリィ「……!」

ビリー「……確かに始めはお前のためのつもりだった。いや、それは今も変わらねえつもりだ」

ビリー「……だが、俺は出会っちまった。俺たちを地獄から救い出してくれる存在に。ゴミみてえに打ち捨てられるだけの存在だった俺たちに家―――いや、本当の居場所を与えてくれる御方に」

ビリー「尊敬した。心酔した。この人のためだったら、なんでも出来る。どんな汚え仕事だって出来る。どんなモンだって捨てられる。……それが例え、俺の命や、お前であっても……」

リリィ「……」

ビリー「……だから俺がやってきた事はお前のせいじゃねえ、飽くまで俺が望んで、好きでやってきたことだ」



リリィ「……そっか。ちょっと妬けちゃうな、その人に」


リリィ「……それでも、私は兄さんが大事なのは変わらないし、離れたくないよ」

ビリー「……リリィ、じゃあ……」


リリィ「……けど、それがきっと兄さんの足枷になってたんだね。……私も、大人にならなきゃいけないんだなって」


ビリー「……何言ってる?」

リリィ「……私は日本に残るよ、兄さん。桐生社長、事務員さん、はぁとさんたち……みんなが大変な今の状況で、わたしだけ逃げる訳にはいかないから」


ビリー「……リリィ……」


リリィ「……これは私が望んで……好きでやることだから、兄さんもきっとわかってくれるよね?」




ビリー「……」

今日はここまで
休止期間にも別に書き溜め量は増えなかったので相変わらず更新はクッソ遅いですが、
引き続きお付き合い頂ければと思います。




ビリー「……」
ピッ
プルルルル



リッパー『俺だ』

ビリー「……リッパーか」

リッパー『妹との話はどうだった?ちゃんと帰国の件は伝えられたのか?』

ビリー「……」

リッパー『……ビリー?』

ビリー「……」

ビリー「俺は……もうあいつのそばにいる資格はねぇ…」

リッパー『なに?』

ビリー「……リッパー、あの野郎は……テリーはどこにいる?」

リッパー『……テリー・ボガードの入院している病院か?……そこに行って何をする気だ?』

ビリー「……」

リッパー『……ビリー、今すぐ戻ってこい。妹と何を話したかは知らんが……お前は……』

ビリー「……」
ピッ

リッパー「……おい!ビリー?……通じないか……」

ピッ
プルルルル
リッパー「……もしもし、俺だ……ああ、そうだ、ビリーから目を離すな」

リッパー「……もしまた暴れだすようだったら……やむを得ん、銃の使用も許可する」
ピッ

リッパー「……拳銃程度であいつを止められるとも思わんが……」

リッパー「ビリー、いったい何を考えてる……」



ビリー「……」


ジョー「……おい」


ビリー「……てめェは」

ジョー「どこに行く気だよ。……つうか釈放されたんだな」

ビリー「……」

ジョー「もうわかってるとは思うが……全部滅茶苦茶だ。リリィちゃんだって傷ついてる……どうやって出てきたかは知らねえが、今はあの娘の傍に居てやるべきだろうが」

ビリー「……」


ジョー「それなのにお前はリリィちゃんから離れてどこに行こうってんだ?」


ビリー「……ちょうどいい。テリーのいる病院……てめェなら知ってんだろ」


ジョー「……んだと?」


ビリー「教えろ」



ジョー「……!」

ジョー「てめェ、テリーに会いに行って何しに……いや、聞くまでも無ぇか」

ビリー「……」

ジョー「てめェ、そんなにテリーが憎いのか……!こないだだってアイツはお前を止めるためにあの場所に行ったんだ……!」


ビリー「……」

ジョー「それなのにてめェは……アイツを……!」



ビリー「……もう一度聞くぜ。テリーは、どこだ」

ジョー「……リリィちゃんには悪いが……もうこれ以上は見逃せねえ……!留置場に戻ってもらうぜ……!」
グッ

ビリー「……」
スッ

ジョー「……!棍を出したって事は、そういう事だよな……!上等だオラアアアアア!」
ダッ

ビリー「……」

ジョー「オラアアアアア!!」
ブォン

ビリー「……」
スッ

ジョー「……!?」


バキィ

カランカラン



ビリー「……グッ」
ガクッ



ジョー「……お前……どうして、棍を……捨てて……」

ビリー「……俺は、テリーに手を出すつもりはねェ……」

ジョー「……なに……?」



ビリー「ただ、話を聞きてえだけだ……さっきてめェが言った通り、何故あの野郎があそこまでしたのか……そして、ギース様の最期の真実を……」

ジョー「ギースの……真実……?」

ビリー「だから……頼む、ジョー・ヒガシ……テリーの病院を教えてくれ」


ジョー「……!……だが、それを聞いてお前はどうするつもりだよ」



ビリー「……さあな。自分にもわからねえが……それを知らねえ限り……俺はずっとドン詰まりなんだろうよ」

ジョー「……言っとくが、お前のツラはもう日本中に割れてるし、テリーが担当してるアイドルの娘たちは多分お前を恨んでる。会いに行っても歓迎はされねえぞ」

ビリー「関係ねえ」

ジョー「……覚悟は出来てんのか」


ジョー「……この住所の病院だ。ここはマスコミにも隠されてる……お前ントコの社長サンが用意した病院だ」
スッ

ピッ
ビリー「……」

ジョー「……言っとくが……もしテリーに少しでも手を出しやがったら……絶対に俺はお前を許さねえからな」

ビリー「……その時は、好きにしやがれ」


スタスタ

ジョー「……」

ビリー「……」



ジョー「……お前には、まだリリィちゃんがいるじゃねえか。まだ帰る場所が……」

ビリー「……リリィはもう、俺の手を離れた。自分の意志でな」

ジョー「……なんだって?」

ビリー「……事務所が襲われた時も、俺が捕まってた時も……てめェがリリィを守ってやがったんだってな」

ジョー「……」


ビリー「一応礼を言っとくぜ、パンツ野郎。恩に着る」



ジョー「……お前」

ビリー「……それと、ガキ共は……どうしてる?」

ジョー「……はぁとちゃんたちの事か?……マスコミの目から隠れてレッスンをやってる娘もいるが……」

ジョー「……正直、お前はもうあの娘達に会うべきじゃねえ」


ビリー「……別に会うつもりなんざ無ェ。どうしてるか、聞いときたかっただけだ。……じゃあな」

スタスタ



ジョー「……あいつ……」

今日はここまで

今年中には完結させる予定だったのに……
なんとか年内にあと1回は更新させたいと思います……
もし待って下さってる方がいたらすみません……

病院



アンディ「……ここの、125号室に兄さんは入院しているようだ」

舞「テリー……聞いた話だとすごく酷くやられたって……」

アンディ「ああ……先日まで面会謝絶だったていうくらいだから、軽いはずはない……」

舞「心配ね、アンディ……」

アンディ「……ここか」

舞「125号……うん、間違いないよ」

ガチャ
アンディ「……失礼するよ」


ロック「……ん?」

アンディ「君は……」

舞「ロック君!」

ロック「あ、アンディさん、舞さん……」

舞「久しぶり、元気にしてた?」

ロック「あ、はい、おかげさまで……」


アンディ「……兄さんの姿がないようだが……」



ロック「……テリーは……」


舞「……え?まさか……」

アンディ「……!」

ガチャ

テリー「ふぅ~、いい汗掻いたぜ!」

友紀「もぉ~!テリープロデューサー本気出しすぎでしょ!ていうかホントに病み上がりなの!?」

ナターリア「全然ボールとれなかったナ!」

ありす「はぁ……はぁ……」

唯「いや~、バスケなんて久しぶりにやったけど楽しかったね~!」

美玲「どこがだよッ!ウチら5人がかりだったのに全然ボールさわれなかったぞッ!」

テリー「ハッハッハ!まぁ俺からボール奪うにはまだまだ力不足……ん?」


アンディ「……兄さん」

舞「……」

ロック「……テリーなら、身体動かしに行ってたよ」

テリー「アンディ!それに舞じゃないか!来てたのか!」

舞「来てたのか!……じゃないわよ!え!?全然元気じゃないの!」

テリー「ハッハッハ!」

舞「何も可笑しくないけど!?」


アンディ「……とにかく、元気そうで良かったよ」

テリー「……ああ、心配かけたな、二人とも」

友紀「……テリープロデューサー、知り合い?」

唯「すっごい美男美女!ザ・美形って感じ!」

テリー「ああ、こっちは弟のアンディ」

アンディ「……君たちが兄さんがプロデュースしているというアイドル達だね。いつも兄さんがお世話になっています」

テリー「で、こっちが……」


舞「アンディのお嫁さんの、不知火舞です」

ナターリア「エ!ケッコンしてるのカ!?」

アンディ「いや、舞……まだしてないじゃないか……」

舞「あらアンディ、照れなくたっていいじゃない♡時間の問題なんだし!」

アンディ「いやいや……私はまだ修行中の身で……」

舞「もう!いつまでそんなこと言ってるつもりなのアンディ!」



ありす「……なんとなく、苦労人のにおいがします」

美玲「……女の方からは肉食獣のにおいがするぞ」




舞「……じゃあ、ほんとにケガ自体は重かったのね……」

ロック「うん……この病院に運ばれたときは意識もなかったし……」

アンディ「……相手はビリー・カーンだったみたいだけど、兄さんがそこまで後れを取るなんて考え難い……兄さん、一体何が……」

ありす「……え?アンディさんもカーン……プロデューサーをご存じなんですか?」

アンディ「カーン……プロデューサー?兄さん、いったいどういう……」


テリー「……ああ」


アンディ「……なんだって!?あいつも、アイドルのプロデューサーを!?」

舞「ええ……無理よそんなの……あいつに女の子のお世話なんて!」


テリー「いや、案外そうでもなかったみたいだぞ?ジョーの話じゃそこそこ仲良くやってて、アイドルからも信頼されていたみたいだ。それにあいつは妹や子供にはけっこう優しいしな」

アンディ「……何が狙いなんだ……」

テリー「……さあな。だが、俺が会ったとき……というかLIVEの時だな、あの時はかなりギスギスしてたみたいだが……」

ありす「私たちの目から見れば……担当アイドル達に辛く当たった上に、プロデューサーさんに暴力を振るって大怪我をさせる……最低な人にしか見えませんでしたけど」

ナターリア「……シノブやチエリ、泣いててカワイソウだったゾ」

友紀「チームをまとめる監督があれじゃ誰もついてこないよね……」

テリー「……まぁ、そうかもな……」


「その最低野郎が……邪魔するぜ」

舞「な……!?」

美玲「……なぁッ!?」

ロック「お前は……!」


テリー「……ビリー。釈放されたのか」

ビリー「……ああ、おかげさまでな。てめェこそ思ってたより元気そうで何よりだぜ」

アンディ「……ビリー・カーン!貴様……よくもノコノコと……!どうしてこの病院の場所を!」
スッ

ビリー「……てめェか。てめェこそ部外者のくせになんでこんな所にいやがる」


アンディ「なんだと……!」
ギロッ

舞「アンディ……!」
ギュッ

アンディ「舞……止めるな。こいつは兄さんが怪我で動けない事をいいことに止めを刺しに来たんだ……!俺が兄さんを守る……!」

ビリー「すっこんでな。てめェになんざ用は無ェ」


アンディ「貴様!」

ビリー「……」
ツカツカ

アンディ(……!やってやる!)
ザッ

バッ

ビリー「……!」

アンディ「!」


唯「……行かせないよ」

友紀「唯ちゃん!」


ビリー「……どけ」

唯「……どかない」

アンディ「……待つんだ!その男は危険だ!その男は……」

バッ
バッ

友紀「……」

ナターリア「……!」

ありす「友紀さん、ナターリアさん……!」

ロック「……!」


ナターリア「またテリープロデューサーにヒドイことするのカ!?ココカラ出てってヨ!」

友紀「テリープロデューサーには絶対近づけさせないよ……!」

舞「あ、あなたたち……」

ビリー「……」

テリー「……みんな、ありがとうな。けど……少し、ビリーと二人で話をさせてくれないか」

アンディ「……!?兄さん!?」

舞「正気!?あなた、ただでさえ入院中の身なのにアイツと二人で話なんて……!」

ありす「そんな……どうかしてます……!」

テリー「いや、大丈夫だ。もし本当に俺を始末しに来たんだとしても、俺ももう逃げ果せるくらいには回復してるさ」

唯「……テリーちゃん」

ナターリア「ウウ……」

テリー「……心配すんな。また後でな。ロック、頼むぜ」

ロック「……」


アンディ「……ビリー・カーン。もし兄さんに何かあれば、俺はお前を……!」
ギロッ

ビリー「……」


バタン

テリー「……まったく、あいつらも無茶しやがる」

ビリー「随分好かれてるこった」

テリー「まぁ、おかげさまでな」

テリー「だが、お前だってアイドル達には随分と慕われてるように見えたけどな」

ビリー「……余計な話は良い。聞かせてもらうぜ、何故この間てめェの行動と、てめェとギース様の闘いの顛末をよ」

テリー「……」




友紀「……テリープロデューサー、大丈夫かな」

ありす「ついこの間あんな事があったばかりですからね……」

唯「テリーちゃん本人が大丈夫って言ってたから大丈夫だって思うけど……心配だよ~……」


アンディ「……もし少しでも病室の方から不審な物音がしたら私がすぐに踏み込む。兄さんなら……いくら病み上がりでもそれまでにやられたりはしないだろう」

ナターリア「アンディはタヨリになるナ!」

舞「そうでしょそうでしょ?好きになっちゃダメよ?」





ロック「……」

美玲「……ロック、オマエどうしたんだ?さっきから元気ないだろ」

ロック「別に、何もないよ」

美玲「……ふーん」

ロック「……」

美玲「……」
ジーッ

ロック「……さっき、あいつが……ビリー・カーンが病室に押し入った時……俺は何もできなかった……」

美玲「……」

ロック「唯や、友紀……ナターリアもテリーを守るために前に出たのに……俺は……」

スタスタ
ありす「あの3人はちょっとお気楽すぎるところがありますから……別に気にすることなんてないと思いますけど」

美玲「ありす」

ロック「……」

ありす「それに……私たちがあの時前に出たって……あんな危ない人を止められる訳ないじゃないですか」

ロック「止められるとか止められないとか……そういうことじゃないんだ」

美玲「……」

ロック「普段からずっとテリーと一緒にいて……一番世話になってるのは俺なのに……普段からテリーに守ってもらってるのに……」
ポロ

ロック「さっきだけじゃない……この間だってそうだ……」

ロック「いざテリーが危ないって時に、俺は何も出来なかった……!」
ポロポロ

美玲「ロック……」

ロック「ちくしょう……くやしい……くやしいよ……!」
ポロポロ

ありす「……ロック君」
ギュッ

ロック「……もっと大きくなったら……大人になったら、俺も強くなれるのかな?友紀たちみたいに……テリーみたいに、なれるのかな?」
グスグス

ありす「……それは……わかりません。悔しいですけど……私も、まだ子供だから……」

ロック「……俺、早く大人になりたいよ……!」

美玲「……そうだな」

美玲「早く大人に、なりたいな」

今日はここまで
読んでくださってる方、今年中に完結できずすみません。
来年もよろしくお願い致します。

めちゃくちゃ更新止まっててほんとすみません……
GWの連勤終わればやっと一息つけるので更新再開できる見通しです……
保守してくれてる方たちほんとありがとうございます





ビリー「……じゃあ、そろそろ話してもらおうじゃねぇか」


テリー「……」


テリー「……ビリー、話す前にひとつだけ良いか?」

ビリー「……なんだよ?」

テリー「俺は今まで誰にもこれからする話をしたことはない」

テリー「だが……俺がこの目で見た事実だ」

ビリー「……」

テリー「信じるかどうかは聞いてからお前が判断してくれ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーー

ーーーー





「レイィジング……」

「パワァァァ……」

タイミングはアイツの方が少し早かったと思う。

俺は、しまった……と思ってイチかバチかでゲイザーを撃つんだが、内心では終わったと思った。

だが、アイツはレイジングストームを撃ってこなかった。
その理由は今でもわからない。

もしかしたらダメージが蓄積していて撃てなかったのかもしれないし、敢えて撃たなかったのかもしれない。



「ゲイザァァァァァァ!!」

「ウワアアアアアアアアア」



そのまま止めることは出来ずに放たれたゲイザーが、ヤツの身体を吹き飛ばす。

そのままギースの身体は柵を突き破った。


その瞬間、否でも応でも思い出す。


その5年前、息を荒げて立ち尽くすアイツを蹴り飛ばして、タワーから叩き落したあの時のことを。


あの時の俺は、父さんの復讐の事しか考えてなかった。

明確な殺意を持ってあいつを落としたんだ。




悲鳴を上げて落ちていくアイツを見下し一人でタワーの上で立ち尽くしてた。

スカッとした?

恨みが晴れた?

仇を取った?



そんな気持ちじゃなかった。

いつまでもいつまでも、アイツを蹴り落した感覚ばかりが記憶に残ってる。

『人一人をこの手に掛けた』という事実だけが、気色の悪い感覚とともに俺の中に残った。



その4年後、アイツが実は生きているとわかるまで、俺は悪夢を見ない夜はなかった。



あんなに憎んでいたのに、アイツは俺とアンディの父さんを殺した張本人なのに。

それでも俺は、アイツが生きてたと聞いて……内心、ホッとしてたんだ。

そんなこと、アンディにも、ジョーにも言えやしない。

そのせいもあったのかな。

だから、アイツとの最後の闘いの時……俺は、あんなに憎んでいたはずのギースと闘っていた時……楽しい、と感じてたのかもしれない。



ギースは、強かった。

初めて闘った時だって、最初は打ちのめされた。

アイツが復活して、秦の秘伝書を狙っていたときに闘った時も、俺は何も出来ずにやられた。

最後の時も、そうだ。


アイツは常に俺たちよりも高い所に立っていて、俺たちを見下ろしている。



どうしてヤツがこんなに強いのか、考えたことがある。


才能と言えば、そうだろう。

ヤツは紛れもなく天才だった。

鍛錬の結果と言えば、それもそうだろう。

ヤツは長年、血の滲むような研鑽を積んで、あの境地に達した。



けど、それだけじゃない。

アイツは確かに悪人で、その強さを盾に好き放題やってきた。

何人もの人がアイツの手に掛かった。

だけど、それだけじゃない。

上手く言葉には言い表せないが……

復讐心だけで強くなった俺が、復讐心を超えた先にもう一つ先に行けたように……

恐らくギースも何か『悪』と断ずることは出来ない何かを乗り越えたような強さを、俺はアイツから感じたんだ。

それは、尊敬の念だったのかもしれない。

もちろん俺はアイツのした事を許せないし、アイツも俺の事は邪魔だっただろう。

だが、確かにあの瞬間。

俺だけではなく、恐らくギースも。

お互いを復讐の相手ではなく、憎しみの対象じゃなく。

一匹の餓狼として、認め合っていたんだと思う。

そこには、憎しみも復讐もない。


ただ、負けられないから闘っていたんだ。

「ギィィィィスゥゥゥゥ!」


タワーから落下しそうなアイツの腕を、俺は掴んでいた。

無意識だった。

何も考えちゃいなかった。

頭で判断する前に、身体がそうしたんだ。

そうしなくちゃならない、と身体が動いたんだ。


ギースは、腕を掴む俺の顔を忌々しそうに睨み付けると、

「good-by」

そう一言言い残して、腕を振り払った。

俺たちが良く知る、あの全てを見下すような邪悪な笑みを浮かべながら。

「ハッハッハッハッハ……」

アイツの高笑いが響いて、やがて途絶えた。

それがヤツの最期だった。


ーーーー

ーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ビリー「……」


テリー「もちろん、ギースが死んだのは俺のせいじゃない……なんて言うつもりはない。俺はアイツと闘って……そして俺の手にかかって死んだ。それは事実だ」


ビリー「そんなバカな……ギース様……どうして……」

テリー「どうしてヤツは腕を振り払ったのか?」

テリー「プライドが許さなかったのかもしれない。もう死にたいと考えていたのかもしれない」

テリー「なんで最期にアイツは笑っていたのか?」

テリー「俺を最後に出し抜けたからかもしれない。最早この世に思い残すことはなかったのかもしれない」


テリー「アイツが死の間際……一体何を考えてたのか?」



テリー「……わからない」

テリー「結局……何一つわからず終いだ」

テリー「聞こうにもその答えを唯一知る人間は……もう死んじまった」


ビリー「……」

ビリー「……どうして、黙ってやがった……」

テリー「……お前を、守るためだった……」

ビリー「……なに?」

テリー「ギースが死んだとなれば……お前は絶望するだろう。その上こんな何もわからない死に方なら猶更だ」

テリー「だったら……それを伏せる事によって、例え俺に対する憎しみでも復讐心でも……お前が生きる理由になるんだったら、それでいいと思ったんだ。……かつての俺と同じようにな……」

テリー「俺はお前に命を狙われ続けながら、憎しみを受ける……それがギースの、お前の恩人の命を奪っちまった俺の唯一できる罪滅ぼしだってな」

ビリー「……」

テリー「……だが、それは言い訳だったんだ」

ビリー「……!」


テリー「そんなのは、俺が俺自身を守るための方便に過ぎない……こないだの、LIVE後のお前を見て、やっと気づいたんだ。……いや、本当は最初から気づいていたのに目を背けていたのかもな」

ビリー「……どういうこった」


テリー「自分にとってかけがえのない人の、死の真相が知らされないことが良いことなんて、あるわけがない」

テリー「自分の事も顧みず、周りの事も顧みず……ただひたすらに死に急ぐような生き方が良いわけがない」

テリー「俺がお前にギースの最期を伝えず、お前は俺への憎しみに生き、俺はそれを受け続ける……それは俺自身の自己満足だったんだ。俺の気が楽になるだけで、お前のことなんて、お前が抱え続ける苦しみなんて、ちっとも考えちゃいなかった」

テリー「だから、これが最後だと思ったんだ。お前のあの最後の攻撃……あれを受けて、お前に真相を話そうと思ったんだ」

テリー「俺自身の罪……その罰であるお前……それから目を背けるのはもう終わりにしようと思ったんだ」

ビリー「……」

テリー「だが、こうしていても結局アイツの考えていた事はわからない……」

テリー「逆に、どうだ?ビリー……お前にはギースの最期の真相……あいつが何を考えていたか、わかるか?」

ビリー「……」

テリー「……」

ビリー「……わかるわきゃねェだろ」

テリー「……」

ビリー「俺ァあの方の右腕として、凶器としてあの日まで生きてきた」

ビリー「当然あの方が命じてくれりゃあなんでもやったし、あの方の命令に疑問なんか持ったことはねえ。あの方の判断に、いつだって間違いは無かったからだ」

ビリー「だから、俺ァあの方の考えてることなんてわからねェしわかる必要もなかった。いや、そもそも考えたこともなかった」

テリー「……」

ビリー「……この日本に来た時……あの事務所でアイツに、桐生に初めて会った時、こう言われた」


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『ただただアイツの命令聞くだけで、なんにもアイツから学ばなかったんだな』

『右腕だって?笑わせんなよ、飼い犬だろ?ただのさ』

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ビリー「……その場でブッ殺してやろうかってくらいムカついたが、今思えば図星だったな……いや、図星だったからムカついたんだろ」

ビリー「誰よりあの方のお傍にいながら、誰よりもあの方の心をわからなかった」

ビリー「だから……腸が煮えくり返りそうだが、あの方の考えってのは……テリー、てめェが一番理解してたんじゃねェかと思う」

テリー「……ビリー」

ビリー「そのてめェがわからなかったモンが……俺にわかるハズもねえ」

テリー「……そうか……」

テリー「……実は、俺がこっちでプロデューサーなんてものをやっているのも……その辺りを理解できないかと思ったからなんだ」

ビリー「……なに?」

テリー「ある人とサウスタウンで会って……日本に誘われたんだ」

テリー「で、たまたまこっちに来る用事が出来て、彼女に日本で再会して……プロデューサーに誘われた」

ビリー「……桐生か?」

テリー「いや、違う。……だが最初は断ったんだ。俺みたいな根無し草に務まる仕事じゃないってな」

ビリー「……まぁそりゃそうだな」

テリー「すると、彼女が言うんだ。アイツも、ギースもかつて日本でプロデューサーをやっていたと」

ビリー「……!」

テリー「俄かには信じられなかったが……彼女自身がギースのプロデュースを受けていたと言うんだ」

テリー「その時点では彼女に会うのは2回目だったが……不思議とウソをついてるとは全く思わなかった」

テリー「まさかギースとは全く関係ないと思っていたこの日本で……アイツの足跡を見つけるとは思わなかったが、これも何かの縁だと思って、仮ではあるがプロデューサーをやることになった」

ビリー(……恐らく桐生以外の昔のメンバーの誰かだろうが……それよりも……)

テリー「……だが、まさかお前とここで会うとは思わなかった。恐らくお前はコネクション絡みで動いてたんだと思うが……」

ビリー「……てめェにゃ関係ねェよ」

テリー「……そうだな」

テリー「だが……俺はもう少しプロデューサーを続けようと思う。アイドルたちと……あいつらと一緒に過ごすことで、何かが見えてきそうだからな……」

ビリー「……だが、あの事務所はもう死に体じゃねえのか」

テリー「……そうか、お前は留置場にいたから知らないのか……」

テリー「俺たちの……アイドルグループ『Hot shot!』は芸能事務所RUNWAYから切り離された」

ビリー「……なんだと?」

テリー「俺たちだけじゃない……桐生社長は、独立させた事務所を次々本体から完全に切り離してる……」


ビリー「……」

ビリー(……あの女)

今日はここまで
最低週1回は更新できるように頑張ります

昨年はリアルでちょっと色々あり、長らく更新出来ておらず、誠に申し訳ございません。
現状問題が起きなければ2月中には更新再開出来ると思います……もし更新待って下さっている方がいましたら本当にすみません。

都内
喫茶店


つかさ「……よし。あとはここに印を押せば手続きは完了だ」

男性「……」

つかさ「……どうした?」

男性「……社長、やっぱり私にはできません……」


つかさ「……何言ってんだ、これからは正真正銘お前が運営していく事務所なんだ、そんな調子だと困るんだよ」

男性「桐生社長……それでも私は……こんな、RUNWAYを見捨てて逃げるような……」

つかさ「言うな。今の本社のこの状況なら……お前たちは独立さえすれば生き残れる。沈んでいく泥船に付き合うことはない」

男性「……確かに、独立は私の目標でもありました……けど、こんな形でなんて……!」


つかさ「……お前たちには申し訳ないと思ってる。こんな大事な話をするのにも隠れてこそこそとしなきゃならない……」


つかさ「だが、お前たちはこうなる前からもう独立してもやっていけるとアタシが判断した奴らだ。はじめは苦労するかもしれないが……絶対に大丈夫だ」

つかさ「元々は競争心を煽るための疑似的な独立制度だったが……お前たちは想定以上に成長した。本当に、一個の芸能事務所としてやっていけるほどにな」


男性「……桐生社長……!ですが!」

つかさ「いい加減シャキッとしろ!これからはお前が自分のアイドルの人生を背負ってかなきゃいけねぇんだよ」

男性「……!」

つかさ「新しくも田舎から上京してきて入ったあの子……彼女もこれからだろ。だったら……もうお前はこっちを気にしてる余裕なんてないハズだ。お前は彼女たちを幸せにする義務があんだよ」

男性「……はい」

つかさ「彼女たちを……頼んだからな」

男性「……」
スッ

男性「……桐生社長、今まで本当に、お世話になりました」

つかさ「……こっちこそ、本当にすまなかったな」



つかさ「……よし、これで独立組全員と話はついたな……」

つかさ「あと残るは……」

プルルルル

ピッ
つかさ「……もしもし」

『……もしもし、新田です』


つかさ「美波か、どうした?」

美波『うん……大丈夫かなって……何か私に手伝えることない?』

つかさ「なに言ってんだよ。ただでさえ迷惑かけまくったのにこれ以上手を借りられるかよ」

美波『そんな、迷惑だなんて……』

つかさ「……隠すなよ。最近美波んトコにもマスコミが寄ってきてるだろ。ウチと何か関わりがあったんじゃないかって……」

美波『……けど、ウチは大丈夫だよ。極限流も、事務所の方だって社長さんが上手くやってるし……』

つかさ「それでも、この件のカタはアタシがつける。それが社長としてのアタシの責任だからな」




美波『……つかさちゃん、プロダクションを畳む気なの?』

かさ「……アイツに……山崎にこのプロダクションは絶対に渡さない。それだけだ」

美波『……つかさちゃん』

つかさ「もう、切るぞ。ごめんな」


美波「……」

美波(何か、出来ることは……)

都内
某所

心「……」
コソコソ
キョロキョロ

心「……」
スッ

心(……はぁ。あの騒動以来、まともに顔出して表も歩けなくなっちゃったな……事務所近くには近づけもしないし)

心(社長は社長で連日マスコミの対応と傘下の事務所を完全に独立させる手続きで忙しすぎてまともに話もできないし……)

心(他のメンバーの子たちも……直接話は出来てない……みんなメッセージは返してくれるけど、多分塞ぎこんじゃってる……特に智絵里ちゃんは)

心(社長からは待機って言われてるけど、正直今後の見通しは全く立たないし……ホントにどうなっちゃうんだろう)

心「……」


心(それに、ビリーさんも……)


心「……」


心(……けど、ずっとこのままじゃ絶対ダメだし……いくら先行きは見えなくても、はぁとははぁとのやれることをやらなきゃダメだろ)

心(そもそもほんの1年前まではもっと先行きの見えない人生送ってたんだし……何があっても諦めらんないし)

心(っていっても、目立つことはできないしアパートの壁は薄いし、今日もカラオケボックスで歌の練習しよ……)
コソコソ
ウィーン



店員「いらっしゃいませー、お一人様でしょうか?(うわっ、この人マスクとサングラスつけてて超怪しい……有名人?)」

心「あ、はい……フリータイムで……」

店員「では、こちらのお部屋になりまーす、ごゆっくりどうぞー」



心「……ふぅ。ここなら歌っても踊っても大丈夫だよね……よーっし!スウィーティーに自己レッスン始めるぞ☆」

~♪

心「ふっ、ふっ……」
タンタン

心「……っはぁー!疲れたー!」
ボスッ

心「あ~……」

心「……」

心(一体いつまでこんな状況なんだろ……このまま待ってれば沈静化するのかな?事が収まった時、事務所はまだあるのかな?……はぁとは……アイドルでいられてるのかな?)

心(……あ~、考えれば考えるほど暗くなって……)

心「……」

………………

………………


心「……はっ」

心「あれ……?もしかしてはぁと、寝ちゃってた……?」
スッ

心「……ウッソ!?もうこんな時間!?寝すぎだろ!」
ガバッ

心「ヤバイヤバイ、帰って洗濯物畳まなきゃ!」
ダッ

街中

心「ハァ……ハァ……」
タッタッタッタ

心(すっかり遅くなっちゃった……しかもほとんど寝てたし……自分が思ってるより疲れ溜まってんのかなこれ……)

心(……とにかく早く帰ろ……こっちの事務所の近くを通れば少し近道になるけど……でも社長からは事務所には近づくなって言われてるし……)

心「……」

心「ううん、やっぱやめとこ……急がば回れって言うし……」
スッ

記者「……おい、アレ、『RUNWAY』に所属してるアイドルじゃないか?」

心「……!?」

記者2「ん……?あ、マジだ!前あの『ととヒガ』に出てた……佐藤とかいう!」

心(ほああああああ!?こ、こんな所にはぐれ記者の人があああああ!?)

記者「ラッキーだぜ……!ちょっとちょっと!君RUNWAYのアイドルだよね!?ちょっとお話いいかなぁ!」
ダッダッダッダ

心「ひっ!」

心(あばばばばばばば!ヤバイ!ヤバイ!逃げなきゃ!)
ダッ

記者2「あっ、逃げたぞ!」

記者「チッ、こっちもこんな時間まで毎日毎日こんな時間まで張らされてんだ!手ぶらで帰れるか!追え、追え!」
ダッ

心(ぎゃー!追ってきたああ!)
ダッダッダッダ

心(ヤバイ!ヤバイ!自宅待機の指示でてるのに街でマスコミに捕まるとかマジでヤバイ!逃げ切らないと……!)
ダッダッダッダ

記者「待てえええええ!!」
ダダダダダ

記者2「逃げ切れると思うなよおおおお!」
ダダダダダ

心(あああああああ!記者さん速い!絶対なんか運動やってる!)

心(ああ、追いつかれる……!)
ヨタヨタ

心(ごめん、みんな―――――)

???「こっちよ」
グイッ

心「うへぇ!?」
ガクッ

心(な、なんか知らない人に路地裏に引っ張りこまれた!?)

クソ!ドッチイッタ!?
サガセ!チカクニイルハズダ!

バタバタバタ


???「とりあえずは、大丈夫そうか……」

心「あ、あの~……あなたは……」

???「……」
ジロジロ

心(な、なにこの人……?ヘルメット被って顔隠して……怪しすぎる……!)

心(……はっ!?もじかしてこれって襲われる直前なの!?人気のない路地裏にヘルメット被った不審者に連れ込まれるとか……完全にそういうシチュじゃん!?)

???「……あなた、アイドル事務所RUNWAYに所属している……佐藤心さんに間違いないわね?」

心「……え?」



心(この声……女の人?っていうか、なんではぁとの事知って……はっ!?)

心「あ、あんたも記者の人だな!?ち、違いますぅー!はぁとは佐藤心じゃありませんんんん!!」

???「……はぁと?ちょっと何言ってるかよくわからないけど……隠れていたいならあまり大きな声を出さない方が良いわよ」

心「……へ?いやいや!なんかそんなこと言ってはぁとの事を騙そうと……!」


???「……はぁ」


オイ!コッチダ!
アッチノロジウラカ!

ドタドタドタ

???「……ほらね」

心「あ、ああ……!」

???「……しょうがないわね。ちょっとそこの陰に隠れてなさい」

心「え、でも……!」

???「……」
スタスタ

心「あ……!」



記者「……さっきの通行人の話じゃこっちに金髪の女が入ってったのを見てる」
ザッザッ

記者2「こんなところに……チョロチョロしやがって……ん」



???「……」

記者2「すみません、そこの……こっちに金髪の女性が来ませんでしたか?」

記者「いや、来たはずだ……!」

???「……金髪の、女性?」

記者2「(女か……?)そうです、背丈はちょうどあなたと同じくらいの……」

???「……」
スッ

記者(ヘルメットを……あ!)

女性「……ふぅ」
フッ

記者2「あ……き、金髪……」

女性「……何か、私に用かしら?」

記者2「い、いや……」

記者「そ、その……あなたの他にここに金髪の女性が……」

女性「……」
ジロリ

記者2(うっ……な、なんだこの迫力……!?)

女性「……あなたたち、何の仕事をしてるの?探偵か何か?」


記者「あ……自分たちはその、報道関係者で……」

女性「報道関係者?この国の報道関係者は男2人がかりでこんな路地裏まで女性を追いかけまわすのね」

記者2「う……あ、あの、佐藤なんとかっていうアイドルを探してるんだけど……」

女性「アイドル?よく知らないけど、その子はよっぽど悪いことをしたんでしょうね。そうじゃなきゃこんな事倫理的に許されないもの」


記者「……おい、もう行くぞ」

記者2「あ、ああ……しかし……」

記者「金髪の女はこいつの事だったんだろう……他を当たろう……」

記者2「そ、そうだな……」

女性「……」




女性「……行ったわよ」

心「あああああ!あ、ありがとうございますぅ!そして何かさっきは色々失礼な事言っちゃってごめんなさいっ!」

女性「気にしてないわ」


心(あああ、良かったぁー!なんとか助かったぁー!)

心(それにしても……この人……外国の人だよね……ブロンドの髪に……革ジャン着てるからわかり辛かったけどナイスなプロポーション……いかにもデキる女の匂い……)

心「あ、あの……日本語上手なんですね☆」

女性「そう?ありがとう、私も祖父が日本人だったから……って言っても別に祖父と話した記憶なんてないんだけど」

心「あ、そうなんですか……とにかく、助けてもらってほんとなんてお礼を言えばいいか……」

女性「あら、あなた本当に助かったかどうかはまだわからないわよ」

心「へ?」


女性「話を戻すわ。あなた……佐藤心さんに違いないわね」

心「……え?あ、あの……」

女性「もう分かってるから隠さなくていいわよ。さっきの男たちもあなたを探していたと言ってたし」

心「うぐ……」

女性「……ああ、失礼。自己紹介が遅れたわね」


マリー「私はマリー。あなたの知ってることを聞かせてもらえるかしら?」

心「し、知ってる事……?」

マリー「ええ。あなたの所属している事務所と……ビリー・カーン。彼についてね」


心「……ビリーさんの……!?」

今日はここまで

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数日前
都内


ポツ
ポツ
サー

男「(……雨?)」

男2「(クソ、今日は降るとは聞いてなかったのに……)」

男「(ボス、すぐに車を手配させます、どこかで雨宿りを……)」

山崎「……」


山崎「(てめぇら、先に戻っておけ。俺は後で戻る)」

男「(は?ですが……)」

山崎「(ちと用事が出来た……二度言わすんじゃねえ)」

男「(は、はい。車はどうしますか?)」

山崎「(いらねえ。とにかく早く消えろ。……ああ、ただ今日はアジトに帰るんじゃねえぞ。どっかで適当に一晩過ごせ)」

男2「(……?わ、わかりました)」



山崎「……」

ザー
スタスタ


山崎「……」
スタスタ

スッ

山崎「……おい。コソコソさっきから尾けてまわってんのは、どこのどいつだ?」

スッ
???「……」

山崎「……おいおい、名乗ってくれなきゃわからんぜ。生憎身に覚えがありすぎてなぁ」

???「……日本に来ているという情報は得ていたけど、ようやく姿を現したわね。手下と一緒に悪巧みといったところかしら?」

山崎(女……?)

山崎「おいおい、なんのこった?悪巧みも何も……ただ知り合いと街をブラブラとしてただけじゃねえかぁ」

???「そう?この日本でそんな悠長な事をしていられる余裕があったとは知らなかったわ、山崎竜二」
ファサ

山崎「……ああ、てめぇは……以前サウスタウンで俺の事を嗅ぎ回ってた女か」

マリー「……あなた、何が目的で日本にいるの?」

山崎「アァ?俺ぁ元々日本の生まれだぜ、里帰りもしちゃいけねぇのかい?ククク……」

マリー「日本中の裏社会の人間に命を狙われてるあなたが、しかも大勢の手下を引き連れて里帰り、ね。さぞかし家族もご友人も喜ぶでしょうね」

山崎「ああ、残念ながら家族も仲間もこの世にゃいねえ……だが久々に生まれた国の様子でも見たくなってなぁ?郷愁ってやつだ」

マリー「……とぼけないで。先日の都内であったビリー・カーンの傷害事件……あれはあなたが仕組んだことでしょう?」

山崎「へえ?そんな事件があったのか……ってか、あの狂犬もこっちに来てたのかよ、初耳だぜ」
ニヤニヤ

マリー「……もう一度聞くわ。あなた、何を企んでいるの?ビリー・カーンが潜伏してた事務所に、いったい何があるっていうの?」

山崎「クク……それこそそれはあの狂犬に聞いたらいいんじゃねえか。最も、あいつはもうブタ箱行きだがなぁ……ヒヒヒヒ……」

マリー「……話しなさい」
スチャ

山崎「……おぉ~っとォ~……拳銃なんてそんな物騒なモン出して……ヒヒヒ、ダーティハリーでも気取ろうってのかい」

マリー「私は刑事では無いのよ。その気になれば……」
ガチッ

山崎「ヒヒヒ、そいつは無理だな……どこの誰かに雇われたか、個人的に動いてるかは知らねえが……何か確証も無く街中でンなモンぶっ放せば、お前がどんだけお偉いエージェント様でもお咎めなしとはいかねえだろ?」

マリー「……!それは、どうかしらね……試してみる……?」
ガチ

山崎「ククク……ヒ、ヒヒヒヒ……」
ズイ

マリー(この男……!自分から額を銃口に……!)

山崎「Go ahead…… Make my day……と、こりゃお前(ハリー)のセリフだったかァ?」
ニヤニヤ

マリー「くっ……」

マリー(全く怯んでないどころか……挑発をしてくる……!この状況で……!)

マリー(いえ……この状況でも……もし私が引き金を引こうとも逆に私を潰せると確信している……!)

マリー「……」
スッ

山崎「……なんだァ?結局撃たねえのか?ククク……」

マリー「……あなたは危険よ。必ず尻尾を掴んで……あなたも刑務所に送ってあげるわ」

山崎「やってみなぁ……ヒーヒッヒッヒ!」
ザッザッザッザ

マリー「……」

マリー(問題は山崎だけじゃない……)

マリー(山崎竜二……ビリー・カーン……この危険な男たちが集まる芸能事務所……その裏には……あの男に関係のある何かがある……?)

~~~~~~

~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~~

現在
都内某所


マリー(……という訳で、事務所内の関係者から直接事情を聞き出そうと思ったけど……)


心「……だぁ~から~!ホントに知らないの!ビリーさんが本当は何しに事務所に来てたのかとか言われても……こっちはスカウトされただけだっての!」

マリー(……これだものね)

マリー「……じゃあ本当にビリー・カーンはあなた達をプロデュースしてただけだって言うの?実は裏で色々動いてたんじゃないの?」

心「そんな事言われたってはぁとは知らないっての!けど、少なくともはぁと達といる時は普通の……いや、普通とは言い難いか……いっつもプリプリしてる、凶暴な……」

マリー「凶暴な?」

心「……けど、なんだかんだ言って面倒見は悪くないっていうか……根っからワルという訳ではないというか……いや、チンピラだけど……」

マリー「……根っからワルじゃない、ね……あなた、そもそもあの男がどういう人間か知ってるのかしら」

心「まぁハッキリ言って素性は全然知らないけど……でも、チャンピオンもなんかそんな感じの事言ってたけど……本人には聞きそびれたから何も知らない」

心「せいぜい三十路にもなって妹離れ出来ないシスコンのすぐ切れる危ない男としか……」

マリー「結構無茶苦茶言うわね……けど、貴女も現場を見たんでしょう?この前の『事件』を」

心「……」

マリー「ごめんなさい、思い出したくない光景でしょうけど……でもあの事件、恐らく貴女が把握している以上に複雑な裏がありそうなの」

心「……え?あれって、ビリーさんが街で大ゲンカして止めに入ったテリーさんにも大怪我させたって事でしょ?はぁと達はそう聞いてるけど……」

マリー「そうね。少なくとも世間ではそういう事になってる……もちろんそれも完全な偽りではないけど」

マリー「……あなた、この男を見たことはある?」
スッ

心「写真?……うわっ、人相わるっ……絶対関わりたくない……っていうか近寄りたくない……ヤの付く自由業の方?」

マリー「……会ったことはないのね?」

心「ないないないない!絶対!こんなの正面立たれたら泣いて命乞いするわ☆」

マリー「……実は、この前の事件は、この男が仕組んでいたという疑いがあるの」

心「……ええ!?仕組んでたって……何を!?ていうか何で!?っつーかこれ誰!?」

マリー「ちょっと落ち着いて……」

マリー「この男の事を話す前に……まずはビリー・カーン……あの男について話をする必要があるわね」

心「……!」

都内
某所



つかさ「……」
スッ

つかさ(……よし、まだここのホテルはマスコミにはバレてないみたいだな……)

つかさ(どうせ自宅近くにはずっとマスコミが張ってるだろうし、ここがバレた時の為にもう二、三候補を探しとかねぇと……)
スッ

「……おい」

つかさ「……ッ!」

つかさ(……まさか……もう嗅ぎつけられて……!)

「……」

つかさ「……!お前は……」

つかさ「……ビリー・カーン、か……」

ビリー「……」

都内
ホテルの一室

つかさ「ふう……それにしても……なんでこのホテルだとわかった?」
トス

ビリー「……別にピンポイントでこのホテルを当てた訳じゃねぇ」

ビリー「以前お前が仕事で手配した事があるホテルをピックアップして……その内の一件ずつに張ってたらお前が来ただけだ」

つかさ「なるほどな……確かに幾つかのホテルを切り替えながら生活をしてるが……何にせよ、お前にすぐ行きつかれるようじゃもう替え時かもな」

ビリー「……」

つかさ「……いや、本来のお前の仕事はこういう事の方が多かったのか?」

ビリー「……」

つかさ「ビリー・カーン……本当に釈放されてたんだな」

ビリー「……その口ぶりじゃ……もう誰かに聞いてたのか?」

つかさ「ああ……お前の本来の会社の……ハワード・コネクションの男から一応報告しとくっつてな」

ビリー(リッパーか、ホッパーのどっちかか)

ビリー「まぁ……色々裏で手が回されたらしいが」

ビリー「だが、ンな事はどうだっていい」 

つかさ「……何?」

ビリー「ある野郎に、あんたが事務所を本体から切り離してるっつう話を聞いた」

つかさ「……」

ビリー「あんた、事務所を畳む気なのか?」

つかさ「……」

ビリー「傘下の事務所を全部切り離して……本体は潰しちまうのか」

つかさ「……RUNWAYは悪評が付きすぎた。芸能界でやっていくのはもう無理だ」

つかさ「独立させた事務所もしばらくは苦労するだろう。だが、本体を畳んだと世間に示せば、世間は納得して、やがて記憶から消えていく」

つかさ「そうすりゃ独立した奴らはちゃんとやれば立て直せる……まぁそこは心配してない。アタシが独自経営を任せた時点であいつらは立派にやっていけると判断してるからな」

ビリー「……ンな事聞いてんじゃねえ、あんたはそれで良いのかよ」

つかさ「良い悪いの話じゃない。そういう結果だ」

ビリー「……」

ビリー「なぜ、俺に文句の一つも言わねえ」

つかさ「……」

ビリー「今日俺は元々そのつもりでここへ来た。てめェを待ってる時から、どんな罵詈雑言を浴びせられるかってな。ブッ刺されたって文句を言うつもりは無かった」

ビリー「わかってんだろ。こうなったのは俺が来たからだ。俺が来たから、山崎なんてクソ野郎に事務所が目をつけられた」

ビリー「俺が来たからてめェが築き上げた事務所が、全部が、水の泡だ。ざまァねえ」

つかさ「……」

ビリー「今まであんたが積み上げて来たモノが、俺みてェな訳のわかんねえヤツのせいでパーだ。ムカつくだろ?許せねえだろ?」

つかさ「……」

ビリー「……何を黙ってやがる?オラ、いつものように俺を罵倒してみろよ。どうしようもねえヤツだとか、救い難ェクズだってよ」


つかさ「……ふぅ」

ビリー「……!」

つかさ「……で、お前を罵って、何になんだよ?」

ビリー「……なに?」

つかさ「お前はどうしようもねぇクズだ、お前のせいでアタシの人生メチャクチャだ……それを口にして、事務所が元に戻んのか?世間が忘れてくれんのか?」

ビリー「……!」

つかさ「今までお前に嫌事言ってきたのは、それで結果が、未来が変わる可能性があったからだ。けど、もうこうなったらお前に何言ったって何も変わらないんだよ」

ビリー「……」

つかさ「……それに、全部がお前のせいだとも思っちゃいない」

ビリー「……なんだと?……」

つかさ「お前が初めて事務所に来た時、お前の事は全部調べた。そうだ、アタシと口論してお前が悪態ついて出ていった時にはお前の素性は全部分かってた」

ビリー「……」

つかさ「表に出てきている事、裏の顔、全部だ。お前がどんだけ危ねえヤツかってのは、調査してたんだ」

ビリー「……」

つかさ「ビリー・カーン……ギース・ハワードの右腕、歩く凶器……とにかく全部だ」

ビリー「……そこまで分かってて、何故俺を雇った?なんでテストなんか受けさせた?確かにメチャクチャなテストだったが、本当にやるとは思わなかったか?」

ビリー「だが、アンタは別にどうとでも理由を付けて俺を落とせたハズだ。なんでだ?」

つかさ「……アタシも本当はお前を迎えるつもりは無かった。そもそも危険人物だ、普通に考えたら絶対にNOだ」

ビリー「だったら……!」

つかさ「だが、なんでだろうな。お前が連れてきた佐藤が面白いヤツだったからか、妹と話してるお前を見たからか……」



つかさ「……それとも、アイツが……ギース・ハワードが一番信用した仲間だったから……かもな……」

ビリー「……!」

つかさ「……とにかく、アタシはお前の過去とかをひっくるめた上で事務所に置く判断をした。それには当然こういう事になるリスクも含めた上での判断をな」

ビリー「……じゃあ、何か?この結果はてめェの判断ミスだと?」

つかさ「……ん、まぁ、そういう事だな」

ビリー「……!」
ガタッ

ビリー「ふざけんな……!てめェ、ちょっと前までボロクソ言ってきてた癖になんだその……!」
グイッ

つかさ「……離せよ」

ビリー「うるせえ!言えよ!事務所を潰したのは全部お前の所為だってよォ!」

つかさ「……カーン」
スッ

ビリー「あァ……ッ!?」



つかさ「アタシを、この桐生つかさ様を甘く見んじゃねェぞ!!」

ビリー「……!」

つかさ「事務所を潰したのは俺の所為!?ハッ、自惚れてんじゃねえぞチンピラ風情が!」

つかさ「この『RUNWAY』は!アタシとアタシの仲間が人生掛けて立ち上げて作ってきた事務所だ!それをここ最近ノコノコ現れたお前が潰しただって?舐めんな!」

つかさ「RUNWAYを作ったのがアタシなら潰すのもアタシだ!これだけは他の誰にも奪えやしねえ!お前にも、山崎にも、ギースにもな!」

ビリー「……ッ」
スッ

つかさ「……」
トスッ

ビリー「……」

つかさ「……ただ」

つかさ「ただ一つ、申し訳ない事があるとすんなら」
ジワ

つかさ「このRUNWAYに夢を賭けてくれたアイドル、プロデューサー、スタッフ達……みんなには、謝っても、謝り切れねえ」
ポロッ

ビリー「……!」


つかさ「……」
グスッ




つかさ「……お前、これからどうする気だ?」


ビリー「……」

つかさ「……もしアメリカに帰るんなら、その前に、お前がスカウトしたアイドル達にきっちりケジメだけは付けていけ」

つかさ「別に直接会うんじゃなくてもいい……ただ、何も言わずに消えるのだけは止めてやってくれ」

ビリー「……」

つかさ「お前が捕まって以来……アタシもマスコミ対応や事務所の手続きがあったせいで、あの娘達とはまともに会えていない」

つかさ「電話で少し話はしたが……明るく振る舞うヤツ、顔は見れてないが明らかにふさぎ込んでるヤツ……ただ、皆大なり小なりショックは受けてる」

つかさ「もちろん、あの娘達の今後は、アタシが責任を持ってなんとかする。別の事務所に移籍させてもらうか、独立させる事務所に編入させるか……とにかくなんとかする」


つかさ「だがあいつらは……あれでもお前、ビリー・カーンという人間にスカウトされたからこそ集まった連中だ。お前が本質的にどういう人間であれ、それは変わらない」

ビリー「……」

つかさ「だから、傷になったって良い、悲しい記憶になったって良い。ただ、あの娘達が踏ん切りを付けて、前に進めるようにしてやるのがお前のプロデューサーとしての責任だ」

ビリー「……」
スッ

スタスタ

ガチャ
バタン


つかさ「……」


つかさ(……なんだよ。今更になってアイツに恨み言言ってんのかアタシは)


つかさ(分かってる。踏ん切りを付けて前を向くのは他人にさせてもらう事じゃない……自分自身でやらなきゃいけないことなんだ)

つかさ(アタシだ。アタシだけなんだ――――それが出来ていないのは)



つかさ「……」

つかさ「……馬鹿みてぇ。結局、18のあの頃から何も成長しちゃいねぇんだ」


つかさ(……なぁ、アンタ、見てんのか?もし見てたらアンタは……今のアタシになんて言うんだ?)






ビリー「……ケジメ、か」

今日はここまで



マリー「————まず、ビリー・カーンは今もう釈放されてるわ」

心「……え、ええ!?あんだけやらかして逮捕されたのに……!?」

マリー「……裏でハワード・コネクションが手を回したみたいね。1週間前に勾留を解かれて、留置場から出ているわ」


心「……ハワード・コネクション……?」

マリー「ええ、ハワード・コネクション……名前くらいは知ってるでしょ?」

心「そりゃあ世界的にも有名な企業だし名前は知ってるけど、ただ大きいってだけでどんな事をやってる会社かってのはよく知らないし……」

マリー「どんな事、と言われれば、何でもよ。物流、サービス産業からカジノ経営、そして軍事まで。莫大な資金力を背景にして、アメリカ……いえ、世界で見ても指折りの影響力を持つ巨大複合企業……」

心「……」
ゴクッ

マリー「そしてその資金力以上にコネクションの力を高めていたのは、総帥であるギース・ハワード……この男の支配だった」

心「……え?でもその人って、ちょっと前に確か事故死したって……ニュースですっごい大騒ぎしてたもん」

マリー「ええ。ギース・ハワードは確かに今から約10か月前……自身の居城とも言うべきギースタワーから転落死してる。コネクションは世界への影響力に若干翳りが見えている」


心「……ね、ねえ、さっきから……そのコネクションとか社長とか……ビリーさんと一体何の関係があるの?その会社と社長がすごいってのはわかったけど……そんなすごい会社が……どうして捕まってたビリーさんを助けるの!?」


マリー「……ビリー・カーンはそのハワード・コネクションで、ギースの側近を務めてた。名実ともに組織のナンバー2をね」

心「……はあ!?う、ウソウソウソ!無理でしょ!あんな社会不適合者がそんな立派な企業のナンバー2だなんて!」

マリー「……まぁ貴女の言ってることも正しいけどね。けど、事実よ」

心「そ、そんな……大体、ビリーさんがそんな所にいて何の仕事すんの!どう見たってあの態度で営業が上手いとは思えないし、あの短気さで人の管理なんて出来るとは思わないし……!」

マリー「さっきも言った通り、ハワード・コネクションは何でもやってるの。そしてその『何でも』の中には、表の社会のは出せない事も含まれる。所謂、裏の仕事もね」

心「な、なにそれ……マンガとか映画とかで見るような仕事って事?」

マリー「まぁ概ねそういうイメージで間違ってないわ……それが表に出てこないのは、豊富な資金による買収、癒着……そして武力による邪魔者の排除」

心「……まさか」

マリー「そう、ビリー・カーンは組織内でその『武力』を担っていた。ある時は格闘大会でコネクションの力を喧伝するように派手に暴れ、そしてある時は秘密裏に敵対する者を暗殺したり、ね」

心「……あ、暗……さ……!」

マリー「そう。ビリー・カーンの手によってから消された人間は両手の指じゃ足りない……もちろん、表面に出ている数だけでもね。着いた仇名が『歩く凶器』」

心「歩く、凶器……!」

マリー「ハワード・コネクションはそういった側面から、表社会だけでなく裏社会にも強い影響力を持っていた。ビリー・カーンを筆頭に、血生臭い事もやっていたからね。……そしてそれはギース・ハワード本人も時に先頭に立って手を汚した」

心「……」

マリー「けど、さっき言った通りギースは死んだ。ビリー・カーンは荒事専門で、ギースのような支配力は持っていなかったから……コネクションは急激にその影響力を失った……特に裏社会の方のね」

マリー「それからというもの、ビリー・カーンは本拠地であるサウスタウンに居て、特に目立った動きは無かった。けど、突然姿を消したと思えば、この日本で目撃された。しかもアイドルのプロデューサーとしてね」

心「……」


マリー「ねえ貴女、どう思う?ビリー・カーンは一体何が目的で……ちょっと、佐藤さん。貴女……大丈夫?」

心「……そんな……ビリーさん……暗殺……凶器だなんて……」

マリー「……正直言って、貴女がそんなにショックを受けている事に私は驚いてるわ。私は暴力の象徴としてのビリー・カーンを知ってるから……けど貴女のその様子を見ると、貴女は私の知らないビリー・カーンの顔を知っているようね」

心「……」

心「カーンさんは……確かに短気で自分勝手で、妹大好き人間だけど……」

心「それでも、悪態つきながら、憎まれ口叩きながらもはぁと達の事を心のどこかで気にかけてくれてる……そういう人だった」

心「そう思ってるのははぁとだけじゃない、李衣菜ちゃんだって、智絵里ちゃんだって……忍ちゃんも周子ちゃんも、それこそ社長だって、そう思ってたと思うよ」

心(けど、人殺しだけは……それだけは……)

マリー「……あの男がいたこの約半年間……随分と信頼を勝ち取ったようね……それは私にとっては想定しなかった事だわ」

マリー「まぁビリー・カーンという男の評価を決するのは今必要な事じゃない……認識を改める必要はあるかもしれないけどね、貴女も私も」

心「……」
ガタッ

マリー「……佐藤さん?」

心「……もう、帰る」

マリー「……この写真の男の事は、聞かなくていいの?」

心「……今はちょっと何も考えたくないかも」
フラフラ
カランカラン

マリー(……いつの間にか、私の方があちらに話をする側になってたわね)

マリー(特に目新しい情報は得られなかった……恐らくこれ以上聞いても同じだったでしょうけど……しかし)

マリー(ビリー・カーン……あの男の私が知り得なかった新たな人物像を伺い知ることはできた)


マリー(ただ……例え仕事だとしても……彼女のような辛そうな顔を見るのは……やっぱり胸が痛むわね)





コツコツコツ

男「(……お呼びですか)」


山崎「(オウ、呉、来たか)」

男「(私を呼んだという事は……何かアクションを?)」

山崎「(ああ。俺ァ追い詰めりゃあの社長サンはきっと大人しく事務所を譲ってくれると踏んでたんだが……どうやらあの女、事務所を処分しちまいそうなんだ)」

男「(……我々に渡すぐらいなら、自分の手で潰す、と?)」

山崎「(俺ァ多少傷物になっても良いと思って工作を掛けさせたが……全く嫌われたモンだぜ。所詮アイドル上がりだと舐めてたが……クク、大した反骨精神だぜ)」

男「(……では、事務所が畳まれる前にこちらに譲るように圧力を掛けると?)」

山崎「(まぁそういうこった。別にアイドル事務所に興味はねえが、それでも事務所事畳まれりゃあそこに隠してあるであろうブツが全部パーになる。それじゃあ何しにわざわざ日本まで来たのかわからねェ)」

男「(しかし、今はあちらに仕掛けようにも事務所及び社長やアイドルの周辺には常にマスコミという衆目があります。その中で事を起こすのは多少リスクが……)」

山崎「(イヤ……いるだろ?この騒動の中マスコミに追い回されてねェ面倒な護衛も着いてねェ当事者が……クク、地味ってのは得な事もあるんだなァ)」

男「(……!なるほど)」

山崎「(オウ。それじゃあ『協力者』を確保出来次第、改めて社長サンと交渉だ……クク、今度こそ社長サンが優しくしてくれると良いんだがなァ?)」





都内
某所


ブーン
キキッ
李衣菜「あ、領収書ください……宛名は、ラ……いや、やっぱ空白でいいです、はい、どうもありがとうございました」

ガチャ
バタン
ブーン

李衣菜「……っふう、ここのビルで合ってるよね……?」

李衣菜(『RUNWAY』が活動停止になってから約ひと月……未だに世間のバッシングは止まないし、事務所の近くにはマスコミの人がうろついてる)

李衣菜(プロデューサーさんは捕まっちゃって……桐生社長は色んな対応に追われててんてこ舞い……私たちは自宅待機になってたけど……そんな中今日久しぶりに社長から集合が掛かった)
スタスタ


李衣菜(わざわざ変装して、事務所から遠く離れたこのビルにタクシーを使って……しかもビルの前で鉢合わせないように時間をずらして集合)

李衣菜(私が一番ビルから遠くに住んでたから、私が最後に集合って事だったけど、みんなちゃんと来てるのかな……アレ以来声は聞いてても顔を見るのは久しぶりだし)

李衣菜「えーっと……会議室の609号室だから……6階に上がらなきゃ」

李衣菜(そもそも集合が掛かったのも何か重要な伝達事項があるってことなのかな……もしかしたら……プロデューサーさんの事……とか)


チーン
ウィーン

スタスタ

李衣菜「609号室……ここか」

李衣菜(静かだな……)
コンコン

ガチャ

李衣菜「おはようございま~す……リーナで~す……」

つかさ「多田、来たか」

周子「あ、リーナちゃん。おひさ~」
ハタハタ

李衣菜「あ……」

忍「あ……良かった、元気そう、だね」

智絵里「……」
ペコリ

李衣菜(良かった、皆来て……ん?)

李衣菜「……あれ?心さんは?」

智絵里「……」

忍「……」

李衣菜「……え?ど、どうしたのみんな……」

周子「……あー、心さんは……」

李衣菜「……ま、まさか」


李衣菜「心さんの身に何かあったんじゃ!」

スッ
???「……うわあッッッッッ!!!!」
ドン

李衣菜「きゃあああああああああ!!!!!」
ビクゥッ

李衣菜「だ、だだだだだ……って」

心「よっ☆李衣菜ちゃん久しぶり☆」

李衣菜「……心さん!?え、ふ、普通にいるじゃないですか!?」

心「え?そりゃいるよ?トイレ……じゃなくて、お花摘みに行ってただけだし」

周子「あっはっはっはははは!『きゃあああああ!』やって!かわいっ」

李衣菜「な、なに笑ってんの!ていうか心さんなんで脅かすんですか!」

心「いや~、戻ろうとしたらちょうど李衣菜ちゃんが部屋に入ってくのが見えたからさ☆ちょっと久しぶりに会うあいさつ代わりと思って☆」

李衣菜「もおおおお!!」



つかさ「……まぁとにかく全員集まる事ができて何よりだ」

心(……確かにみんな集まってくれてそれはホント良かった……けど、今に至るまで智絵里ちゃんも忍ちゃんも……全然笑ってないな……さっきのでくすっとくらい笑ってくれるかなって思ったけど)

智絵里「……」

忍「……」

心(ビリーさんの事を知ってるのも……多分はぁとだけだよね……)

李衣菜「それで桐生社長、今日集まったのは……」

つかさ「ああ、まぁ騒動が起こって以来忙しくてお前たちと顔合わせも出来なかったが……少し余裕が出来たのでこうして集まってもらった。お前らに伝えなきゃいけないこと、確認したいこともあるしな」

工藤「伝えたいこと、ですか……」


つかさ「ああ……まず最初に、この『RUNWAY』はアイドル事業から撤退する」


心「!」

智絵里「……!」

忍「え……!?」

周子「……」

李衣菜「そ、そんな!?」

つかさ「みんな知っている通り……連日事務所にはマスコミが張り付き、世間はほぼほぼバッシング一色……こんな状態で人様の前に出る芸能活動なんて出来るわけがない」

心「そ、それじゃあ……はぁと達は……」

つかさ「いや、お前らの今後についてはアイドルを続けられるようにする。先に独立させた元傘下の事務所に受け入れてもらうか、もしくはお前らが望むなら別の事務所に移籍でも良い。こう見えて業界にはツテが多少あるから、それくらいは出来る」

忍「で、でも……『RUNWAY』は……」

李衣菜「そ、そうですよ!桐生社長は、事務員さんやリリィさんはどうなるんですか!?」

つかさ「……その事だが、その二人は退職してもらう方向で動いてる」

智絵里「……え……?」

李衣菜「た、退職って……!」

つかさ「現状あの二人はマスコミにも追われていないが……それでももう沈みかけてる船に付き合ってもらう必要はない」

忍「そ、そんな……あの二人はそれで納得してるんですか……?」

つかさ「納得する、しないの話じゃない。雇ってるのはアタシ……それを続けるかどうかはアタシが決める。リリィとはまだ話し合い中だが……」

李衣菜「……ってことは事務員さんとはもう話がついてるんですか……」

つかさ「……まぁそういう事だ」

周子「……」

つかさ「……まぁそれよりもお前らの事だ。今後どうするかだが……」


智絵里「……ま、待ってください……」

つかさ「……緒方?」

智絵里「……プロデューサーさんは、どうなったんですか……?」


心「……!」

忍「……ち、智絵里ちゃん……」

つかさ「……その様子だと、カーンから特に連絡はなかったようだな」

李衣菜「……え?連絡も何も、プロデューサーさんは逮捕されてるんじゃ……」

つかさ「……」
フゥ


つかさ(カーン……あいつやっぱり……ケジメはつけられなかったか……)

つかさ「……ここから話す事は他言無用だ。いいな」


李衣菜「……え、な、なんですか……」


つかさ「カーンはもう留置場にはいない。釈放された」

智絵里「え……」

忍「な……!」

周子「……!」

李衣菜「え、ええ!?」

心「……」

つかさ「釈放されたのは今から10日くらい前か……その後アタシにわざわざ会いに来た」

李衣菜「プ、プロデューサーさんが……」

忍「釈放……」

周子「……けど、釈放されたなら何であたしらに会いに……ていうか連絡してくれないの?電話の一本くらいあってもいいと思うんだけど」

つかさ「……本当にそう思うか?」

周子「……」

つかさ「お前らはあの事件の現場で……その、カーンを見たんだろ?現場にいたカーンを……」

忍「……そ、それは……」

智絵里「……ッ!」
ブルッ


『見るな!見るんじゃねえ……!?あれは……!?』


『これは、テメエがやったのか!ビリー、おい!!』

『ひッ……いや……!』

『いや……来ないで……!』

『……あ……ああ……』


『……』





智絵里「……いや……!」
ガクッ

李衣菜「ち、智絵里ちゃん!」
ガシッ

つかさ「……やっぱり見たんだな。アイツの、ビリー・カーンのもう一つの顔を……」

忍「な、なんですか、もう一つの顔って……」

つかさ「……本来なら、カーン本人の口から聞くべきだと思うし、アイツにもそうしてもらいたかったが……アイツはお前らにケジメをつけられなったようだしな」

つかさ「もうアイツは二度とお前らの前に現れないだろうが……それでも何も知らないよりはお前らも区切りが付けられるだろう……アイツは……」



心「ま、待って!」

李衣菜「……心さん?」

心「社長、すみません……それから先ははぁとに話させてほしいって言うか……」

つかさ「……なに?佐藤、お前……」

心「みんな、ゴメン……その、はぁとはついこの前……その、とある情報筋から偶然ビリーさんの話を聞いたの……ホントはすぐに皆にも知らせるべきだと思ったんだけど、その、はぁとも色々整理できなくて」

心「だから……今みんなに聞いてほしいの……又聞きだけど、ビリーさんの事……はぁとが聞いた事を……」


つかさ「……」

今日はここまで

同時刻
事務員宅


事務員「……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーー

ーーーー


1週間前
都内ホテル



事務員「……解雇、ですか……?」

つかさ「……ああ」

事務員「そんな……!事務所が大変なこの時に……!」

つかさ「さっきも言ったろ。事務所は分割の上で本体は清算、アイドル事業から撤退するって」

事務員「だから……!アイドル事業からは撤退するにしても、完全に廃業する訳じゃないんでしょう!だったら私にだって出来ることが……!」

つかさ「わかってる。お前はデキるヤツだ、お前が居てくれてどれだけ助かってる事か」

事務員「……ッ!だったら……!」

つかさ「だからこそ、だ。もしお前が何にも出来ないヤツだったら、放り出す事なんてできない。けど、お前は優秀だ。どこにだって行けるし、どこでだって活躍できる」

事務員「……それはっ……就職もしないで、大学にもいかないで、途方に暮れてた私を社長が拾ってくれたから……人よりも覚えの悪い私を、辛抱強く育ててくれたから……ッ」

つかさ「辛抱強かったのはアタシじゃなくてお前だろ?他に事務員で雇ったヤツはみんな半年持たないで辞めてったからな……まっ、口が悪いしな、アタシは」

つかさ「……懐かしいな。お前がこの事務所に来てくれてもう6年……最初は頼りなかったが、立派に成長して、今じゃアタシの右腕だ。お前がいなきゃ、この事務所は成り立たなかったよ」

事務員「……子供の頃……Reppuの……桐生社長のアイドル姿に憧れて……」

事務員「それ以来アイドルになりたかった……中学からは色んな事務所に応募して、養成所にも行って……けど、芽は出なかった……私には、華が無かったから……」

つかさ「……」

事務員「正直、それは自分でも分かってました……事務所や養成所の子……みんな私なんかより可愛くて輝いてる子ばっかりで……私なんて地味だし、ビビリで度胸もないし」

事務員「それで気付いた頃には19歳……周りの友達はみんな進学か就職してて……けどそんな時、RUNWAYでアイドル募集してるのを知って」

つかさ「ああ……」

事務員「社長は、私をオーディションまで進めてくれた。社長の前で全力で歌って……そこで社長がはっきり無理だって言ってくれたお陰で、私はアイドルの道を諦めることが出来たんです」

つかさ「……」

事務員「そして社長はアイドルとして、じゃなくて事務員として働かないかって連絡してくれましたよね。……今更ですけど、事務の仕事なんて全くしたことがない私をなんで誘ってくれたんですか?」

つかさ「……オーディションをした結果だよ。あの時点でお前の歌を聴いて、アイドルとして活躍するのは無理でも……お前は努力を続ける事が出来る、根性が座ったヤツだって、わかったからだ」

事務員「……全部、社長のお陰なんですよ。アイドルを目指して努力出来たのもアイドル桐生つかささんに憧れたからだし、事務員にしてもらって頑張ってこられたのも、社長が見捨てないでいてくれたからです」


つかさ「……」


事務員「……お願いです、桐生社長……お給料がなくたって良いです、お休みがなくたって良いです……私も、社長についていかせてください……!」

つかさ「……」
ギュッ

事務員「……!」


つかさ「……ごめんな。お前の気持ちは何より嬉しい……けど、アタシがこれから歩く道は酷いもんだ。そんな道にお前を引き込む訳にはいかない」


事務員「……どうして、ですか」

事務員「……どうして、社長がそんな道を歩まなきゃいけないんですか……」


事務員「悪いのは、こんな状況を持ち込んだプロデューサー……いえ、カーンさんじゃないですか……!」

つかさ「……お前……」

事務員「私は、知ってます……!あの人が初めて事務所に来た時……名刺を預かったのは私だったし、最初からあの人は怖かったから……」

事務員「調べれば調べるほど出てくるのは怖い噂ばっかり……それは社長だって知らないはずはないのに……どうしてこんな人事務所に置いとくんだろうって、私ずっと思ってました……」


つかさ「……だが、奴は……」

事務員「確かに……リリィちゃんと話してる時は優しいお兄さんだったかもしれません。佐藤さん達や李衣菜ちゃん達にも慕われてたかもしれません。私が思ってたよりかは悪い人じゃなかったのかもしれません」

事務員「……けど」

事務員「けど、結局はあの人はあんな事件を起こして、苦しむのは周りの人たちじゃないですか……!」

つかさ「……」

つかさ「……結局、あいつの素性を知った上であいつを雇うと決めたのはアタシで、アイツを御せなかったのもアタシに力が無かったからだ」

つかさ「退職金は十分に出す。必要なら次の仕事の斡旋もする」

つかさ「だから……アイツを、他人を恨みながら生きていくようなマネはしないでくれ」

つかさ「それが……アタシからの、最後のお願いだ」

事務員「……社長……」


~~~~~~

~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~ ~~~~~~~~~~~~~~

事務員(……)

事務員(私は、お金なんかよりも、新しい職場よりも……社長と一緒にお仕事が出来ればそれで良かったのに……)
グ~

事務員「……」
フラフラ
ガチャ


事務員(あ……もう食べるものない……もう何日も外出てないし……)

事務員「……買い物行かなきゃ」

RUNWAY事務所

事務員「……」
フラフラ

マスコミ「……ハァ~、今日もどうせ誰も来ねえのに事務所張っとかなきゃいけねえのか」

マスコミ2「な、いい加減警戒されて関係者はこの事務所に近づかねえだろうに……上の命令だから仕方がねえけどさ」


事務員(……なんとなく事務所の近くに来てみたけど未だに報道関係の人がいる……)

事務員(けど、誰も私がここの事務員だったなんて気づかない……別に気付かれたい訳じゃないけど)

事務員(……帰ろう。いつまでも未練がましくこの場所に来て……こんな所誰かに見られたら……)
スッ



マスコミ「……ったく、何でもいいけどさあ、ヤクザでもチンピラでも良いからさっさと新しい特ネタ出してほしいよな」


事務員(……!?)

マスコミ2「全くだぜ。もうなんならでっち上げて勝手に記事書いちまうか?どうせ真っ黒な事務所なんだし案外適当に書いても当たるんじゃねえの?ははは!」


事務員「……!」

スタスタスタ

マスコミ「……ん?」


事務員「あ……あなた達が、この事務所の何を知ってるって言うんですか!」

マスコミ「は?」

事務員「こ、この事務所を作っていくのに、社長が……色んな人達が、どんな思いで……!」

マスコミ2「……お姉さん、誰?この事務所の関係者?」

事務員「……!わ、私は……!」

事務員(……もう、今は……)

事務員「……違います」

マスコミ「……んだよ、だったらあっち行けよ。こっちゃ仕事なんだよ」
シッシ

マスコミ2「……いや、待てよ。あんた……ちょっと話聞かせてくれる?全くの無関係者が事務所の近くで俺らマスコミに噛みつくってこたぁ無いよね?」
ザッ

事務員「……あ……!」
ジリ

事務員「……ッ!」
ダッ

マスコミ「あっ、逃げたぞ!」

マスコミ2「追え追え!絶対関係者だ!」




事務員「……!ハァッ……!」


事務員(最悪……!私なんかが出しゃばって……結局社長たちの足を引っ張っちやう……!)
グスッ

事務員「ハァ、ハァ……ハァ……」

マスコミ「ハァ……ハァ……最近走らされてばっかりだな俺ら……」

マスコミ2「ハァ……ハァ……けどまぁ、前は逃げられちまったけど今回は大丈夫だ……真昼間だが人通りもない路地裏……もう逃げられねえ」

事務員「……ッ」


マスコミ「おいおい、泣かないでよ。まるで俺らが犯罪者みたいじゃん」

マスコミ2「そうそう、ちょこっと話を聞かせてくれれば……ん?」

ザッザッザッザ

男たち「……」

ザッザッザ

事務員「……!?」

マスコミ「お、おいおい!?なんだアンタら!?」

マスコミ2「ヒッ……な、何だ!な、何人いるんだ!?」

男たち「……」

スタスタスタ

男「……」

事務員「……あ……!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

事務員『ど、どどどど、どこのどなた……きゃあっ!』
ドン

男2『……點做?』

男1『劫持人質』

男3『畀邊個?』

男1『唔理係邊個.所有好』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

男「……」

事務員(あ、あの人は……!間違いない……前に事務所に襲ってきた怖い人達の……リーダーらしき人……!)
ガタガタ


男「(……ようやく姿を見せてくれたと思ったが、これは中々どうして。想定外と言うべきか、手間が省けたと言うべきか……)」

マスコミ「な、何語だ……?中国語……?」

男「(君たちマスコミは我々の期待以上にあの事務所を追い詰めてくれたが……やり過ぎたな。まさか廃業寸前まで追い込むとは思わなかった。それでは困る)」

マスコミ2「な、なんだ……?なんて言ってるんだ……!?」

男「(お前たちの役割は終わった。役目の終わった駒には舞台から消えてもらわねばならない……おい)」

男2「(はい)」

ゾロゾロ

男「(殺しはするなよ。少しばかり痛い目に遭って頂け)」

マスコミ「ひ……や、やめろ……」

マスコミ2「うわ、うわああああああ!!」




男「(……さて、本題だ)」

事務員「あ……あ……」
ガタガタ

男「(どうやら俺の顔を覚えているみたいだな。なら、言葉は通じずとも状況はなんとなくわかるだろう……連れていけ)」

男2「(はい)」

ゾロゾロ

事務員「……!」

事務員(……社長……!ごめんなさ―――)

ヒュッ
スタッ


男たち「……!?」

男「(……お前は)」


事務員「……あ、ああ……」



「……やっぱりこっちに来やがったか。あのクソ野郎の考えそうなこったぜ」



事務員(どうして、あなたが……)

事務員「—————プロデューサー、さん……」


ビリー「……」
ザッ


男「(ビリー・カーン……まさかお前が出てくるとはな……その女の護衛をしていたのか?)」

ビリー「……おい、アイツ何喋ってんだ」


事務員「……えっ!?あ、あのすみません……私もわからなくて……ただ、あの人……以前事務所を襲ってきた人で……美波さんは、たぶん中国語で……」

ビリー「……なに?おい、お前今なんつった」
ピク

事務員「ヒィっ!?み、みみみ、美波さんはたぶんちゅ、中国語で……!」
ビクゥ

ビリー「違ェ!ンな事はどうでもいい、あの野郎が以前事務所を襲った野郎だと……そう言ったのか」
ギロリ

事務員「ヒィィィィ!そ、そそそそそ、そうですぅぅ!!」
ビクビクビクゥ

ビリー「……そうかよ」
スッ


ビリー「へっ……意外な所で運が回ってくるもんだなァ……」


ビリー「おい、地味女。お前は出来るだけ隅っこの方でうずくまってろ」

事務員「あ、あああああ……」
ガタガタ

ビリー「……へっ、そうだ、それで良い……」


男「(……総員、戦闘態勢。銃を持ってる者は抜け)」

男2「(……は?それでは人質が……)」

男「(……わからないか。全力で掛からないとこっちが喰われると言ってるんだ)」

ビリー「俺の妹を危険に晒してくれた礼だ……てめェら全員、生まれた事後悔させてやるぜ……!」
スッ

男2「……!」

男「(総員、構え!良いか、確実に殺しに行け!死にたくなければな!)」

ビリー「全員、ブッ殺してやるぜオラァァァァ!!」
ズバッ


男「(……掛かれ!!)」

今日はここまで

都内
会議室


心「……ここまでが、はぁとが聞いた話……本人に直接聞いた訳じゃないけど……」


李衣菜「そ、そんな……」

智絵里「……うっ、うう……」

忍「プロデューサーさんが……そんな……」

おっと、酉間違えちゃった……

都内
会議室


心「……ここまでが、はぁとが聞いた話……本人に直接聞いた訳じゃないけど……」


李衣菜「そ、そんな……」

智絵里「……うっ、うう……」

忍「プロデューサーさんが……そんな……」

周子(……なんか訳アリっぽそうな人とは思ってたけど……そっち側の人だったとは……)


つかさ「……佐藤、その話は誰から聞いたんだ?……いつ?」

心「……1週間くらい前です。その……サウスタウンに居た頃のビリーさんを知ってるって女の人から」

つかさ「……」

つかさ「……今佐藤が言っていたことは……事実だ」

李衣菜「!」

智絵里「……ッ!」

忍「……プロデューサーさんは……どんな気持ちでアタシたちをプロデュースしてたのかな……」

心「……」

つかさ「……アイツの素性に関しては、アタシは最初から把握していた」

忍「……え……?」

つかさ「アイツがどうしてプロデューサーをさせろとやってきたのか……そして先日のあの事件が起こるまでプロデューサーを続けていたのか……それはアタシもわからない」

周子「けど……今までに何度もビリーさんは危ない橋っていうか、問題を起こしてたんでしょ?それをクビにしなかったのは?」

つかさ「……」

つかさ「それは、お前たちを見てたからだ」

周子「……!」

つかさ「確かにアイツはガラも悪いし揉め事も起こした……さっさとクビにした方が良かったんだろうが……」

つかさ「それでも……佐藤……多田……緒方……工藤……塩見……」


つかさ「アイツが連れてきたお前たちが頑張ってるのを見る度……アタシはアイツを信じたくなっちまったんだ……」

心「……」

李衣菜「……」

智絵里「……」

忍「……」

つかさ「……だが、結果としてアイツは事務所を去り、お前たちは傷付いた。それは他でもない、アタシの責任だ」

李衣菜「な、なんで……そんな事……」

つかさ「この事務所はアタシの事務所……アタシの人事で起こった事はアタシの責任」

つかさ「……みんな、すまなかったな」
スッ

忍「そんな……頭を上げてください桐生社長……」


心(……ビリーさん……)

都内
路地裏


パンパンパン

ビリー「ハッ!」
チュンチュン
キン

男3「(ば、バカな!?弾かれた!?)」

男4「(なんだあの棍は……!)」

男5「(ええい……!」)
パンパンパン

ビリー「ハァーッ!」
ブン
キンキンキン

ビリー「へッ……!ライフルの弾ならいざ知らず、チャカ程度で俺の棍をブチ貫けると思うな……よッ!」
ダン

男3「(飛んだ!?)」

男4「(げ、迎撃を……!)」

ビリー「遅え!kill you!」
ドガガ

男3「グハッ!」
ドッ
男4「ギャアアア!」
グシャ

ビリー「アアァーーーッ!!」
ギュン

男5「ガッ……」
ズド

男「(バラバラに撃っても当たらん、引き付けて、一斉に撃て!弾幕が増えれば奴も捌き切れん!)」

男6~12「……ッ!」
ザザザザザ

ビリー「ヒァーッハッハッハ!」
ドドドドドド

男6「……ヒ……!」

男「(竦むなッ!……撃てーッ!)」

パンパンパンパンパンパン

ビリー「ハァーッ!」
グルグルグルグル
キュンキュンキュン


男「(棍を回転させて、弾いた……!)」


男6「(ひ、ヒィィィィ!)」

男7「(ば、化け物だ!!)」

男「(チ……!散開しろ!あらゆる角度から同時に撃ち込めばヤツとて捌き切れん!)」

男6~12「……!」
ザザッ

ビリー「おっとォ……!バラけるつもりか……!そうは……」
ダッ

男6「……!ヒ……!」

ビリー「いくか、よ!」
パンッ

男6「……!」
ドサ

ビリー「次ィッ!」
タン

男7「(うわ、うわああああああ)」
パン パン パン

ビリー「もっと良く、狙えや!」
スッ
ヒュン
バキィ

男7「ガ……ハ……」
ドッ

ビリー「次ィ!」
タン


事務員「す、すごい……!」

事務員(こ、この人ただ怖い人じゃなくて、本当にやばい人だったんだ……!ていうか人間じゃない……!)
ブルブル




男8「ぎゃああああ……!」
ドサァ

ビリー「……あと5人。大分少なくなってきたなァ?」
ザッ

男12「(な、なんだこの男は……!)」

男11「(け、獣だ……!銃もまるで効かない!)」

男9「(無理だ!いくら銃を持っててもこいつは!)」
ダッ

男10「(あっ……逃げ……!)」



男「……」
スッ
パァン

男9「」
ドサッ

男12「(あ……!)」

男10「(な……!)」

ビリー「……!」


事務員「ひ、ひィ~~~~~!!」

事務員(う、撃った……!じ、自分の仲間の人の、頭を……!うっ……!)

事務員「うぇぇ……」
ビチャビチャ

男10「(ウ、呉!な、何を……!気でも狂ったか!)」


男「(黙れ。逃げる者は撃つ)」
スチャ

男11「(な……!)」

男「(それにどうせここで失敗すれば、全員ボスから追手を差し向けられて殺される。お前らに残された道は、ビリー・カーンをここで仕留めて女を連れて帰るか、死ぬかだ。選べ)」

男12「(く……!)」
ジリ

男「(範は俺に撃たれて幸運だった。脱走して捕まれば、待っているのは拷問による極限の苦痛の後の死だ。お前らも楽に死にたいのなら逃げてみるか?)」

男11「……」
ゾク

男10「(く……クソが……!殺ってやる……殺ってやらァ!)」

男12「(……!)」
ザッ


ビリー(……チ、このまま総崩れになりゃ楽だったが……何話してたかわかんねえが、全員決死兵の眼になりやがったか……)

ビリー「————だったらよ」
ザッ

ビリー「まとめてぶっ飛んでもらうしかねェな」
スッ

男「(———何を……)」

男11「(クソ!死ね!)」
パン

男10、12「!!」
パンパンパン

ビリー「……!」
グルグルグル
キンキンキン

男11「(くっ!また棍を回転させて……!)」

男12「(だが、撃ち続ければヤツはああやって防御に回り続けるしかない!交代で撃って、そのスキに次弾を装填して……)」


男「(……!いや、これは……!)」

事務員(な、なんか暑い……え……これってまさか……)

男10「……火……?」

ビリー「……」
グルグルグル
チッ
ボッ

男11「(……火だ!ヤツの棍から、火が、火輪が……!)」

ビリー「トゥルララァーーーーー!」
ズゴゴゴゴ


事務員「……!!」

事務員「ゆ、夢……じゃない……」



男10~12「(うわ、うわあああああ!!)」
ダッ



ビリー「……FIRE!」
ゴッ

男「……!」


ズドォォォン

ビリー「……へっ」
ザッ

事務員「ありえないありえない……」
ブツブツ

男たち「……」
プスプス

ビリー「……」
スタスタ

パン

ビリー「!」
キン

男「(……チッ)」
ムクリ

ビリー「へっ、やっぱり死んだふりしてやがったか。手下どもを盾に使ったみてェだがバレバレだぜ。ンな三文芝居で俺の不意を突けると思ってんのか」

男「(……まさかお前が出てくるとは本当に想定外だった。女一人を攫うには大袈裟すぎる人数を動員したにも関わらず、結果的にそれを全員お前に潰されるとはな)」

ビリー「だから何言ってんのかわかんねえんだよ!……だが、てめぇは俺の妹を危険な目に遭わせやがったんだ。無事に帰れると思うなよ……!」
ズチャ

男「(……だが、如何に想定外の事があろうと、俺は俺の役目を果たす……!)」
スチャ
チャッ


事務員「……!ヒッ……!」

事務員(懐からナイフを……!)

ビリー「……右手に拳銃、左手に逆手のナイフ……」

ビリー(以前リッパーに聞いたような……軍隊式の近接戦闘術か)

ビリー「ってこたあコイツは軍人崩れか……あの手下どもへの指揮もまぁそれならある程度合点がいく」

ビリー(……ギース様も確か軍人崩れは侮るなと仰ってたな……まぁ手下どもは軍人じゃなくてただのチンピラだったのが幸いってか)


男(……この男の棍はその射程も威力も最早拳銃と遜色ない)

男(ならば……相手が銃を持っている想定、それ相応の方式で制圧し、この男の首を掻き切る……!)
ジリ

ビリー「……」
ジリ


事務員(ふ、二人ともほとんど動かない……)



男(本物の拳銃を持っている分、単純な射程は俺の方が勝る……だが正面から撃っても奴の棍に弾かれる……そして装填した弾が無くなれば後はナイフの間合いの外より喉を突かれてジ・エンドだ)

ビリー(……だが、こいつの銃の中に弾が入ってる限り、俺は常にそれの防御を念頭に置いとかなきゃいけねぇ……コイツはまさか他の三下のように銃の照準が下手ってこたァねえだろう)

ビリー(そうなると迂闊に棍を打ち出すことが出来ねえ……一発で仕留められりゃいいが、よく見りゃコイツは俺に対して身体を半身に構えてる。自信がねえとは言わねえが、躱される可能性もゼロじゃねえ)


ビリー(……チッ、如何にもシステマチックで面倒なモンだな、軍隊格闘術ってのは)

男(もし奴が先に棍を打ち出せば、これを半身でなんとしても躱し銃の発砲とともに一気に懐に入る……懐に入ってしまえば弾が当たっていようがいまいが、ナイフのワンアクションで確実に殺れる)

ビリー(何にせよ勝負は一瞬……確実に取れる間合いまで詰める)



ジリ……

ビリー「……」

男(こちらからは間合いは詰めない……銃で牽制しながらヤツの攻撃の瞬間を見極め、一撃を躱すことに全神経を集中させる)

ビリー「……」
ジリ

男「……」
パン

ビリー「……!」
キン

ビリー(チ……間合いを詰めりゃその分銃弾のスピードも威力も強くなる……集中してなきゃ弾き損なっちまう)

男(奴の棍の間合いまで後一歩……)

男(しかしこの男、如何に弾く自信があるとは言え、こうも躊躇なく銃の前に立っていて近づいてくるとは……)

男(こいつもボスと同じ……肝が据わっているなどという次元じゃない、狂っていやがる)

ビリー「……」
ジリ……

男(……入った!)

ビリー「……」

男「……」

ビリー「っらァッ!」
ボッ

男「……ッ!」
ズァッ

ヂッ

ビリー「……!」

事務員(か、躱された……!?)

男(なんという突き……!だが、躱したぞ……!)

男(後は身体の伸び切った奴を……何!?)


ビリー「……」


男(馬鹿な……何故ヤツの棍が、手元に……)

ビリー「ヒャアアアア!」
ドドドドドドド

男「ガッ、グッ、ッハァ……ッ!」
ガガガガガ

ドッ

ドサァ

男「……」



事務員(な、何……?何が起こったの……?)

ビリー「……集点連破棍。まぁ狙いは悪くなかったが、俺の棍を単発の拳銃程度と見積もったのがテメエの運の尽きだ」

ビリー「アサルトライフル程度に見積もってりゃ、せめて俺と殺り合おうなんて思わずに済んだのかもしれねえのにな」



事務員(……ほ、本当に銃を持ってる大人数の相手を全員やっつけちゃった……こ、この人は……やっぱり―――)


ビリー「……よォ。怪我はねえかよ」
ザッ

事務員「ヒッ!」
ビクビクゥ

ビリー「……」

事務員(う……最低だ私……この人は私を助けてくれたのに……)

事務員(それなのに、怖くて、顔が見れない……!)
キュッ


ビリー「……まぁ良いさ。俺も元々アンタを餌に使ったんだからな」

事務員「……え?」

ビリー「致命の一手を打ったつもりだったんだろうが、中々しぶとく事務所は潰れねェ……そんな状況に痺れを切らしたあのクソ野郎が次に打つだろう手を考えりゃ、アンタを狙うであろう事は俺も予想がついた」

事務員「……ちょっと待ってください、それって……」

ビリー「ハッキリ言や、アンタが襲われるであろう事は分かってた。分かってた上で……奴らを釣る為に泳がしてた。影ではアンタをマークしながらな」

事務員「……!」


ビリー「結果は御覧の通りだ。へっ、あの野郎……策士を気取ってやがったようだが、所詮は雑魚の浅知恵だ。こうも俺の狙い通りに動いてくれるたァな。ハハハハ!」

事務員(やっぱりこの人……最低だ……!こんな人の為に……つかさ社長の夢は……!)
ギリッ

ビリー「……へっ。そうだ、恨みな。そうじゃねえと、俺の頭がどうにかなっちまう」
ザッザッ

事務員(……?倒れてる人の傍に……?)


ビリー「……オラ、いつまで寝たフリしてんだ。テメエは特別ビビってんのがバレバレだったから、殊更に手ェ抜いて撫でてやったんだぜ?」
ゲシ

男6「ガッ……ヒ、ヒイ……!」

事務員(やっぱりこの人……最低だ……!こんな人の為に……つかさ社長の夢は……!)
ギリッ

ビリー「……へっ。そうだ、恨みな。そうじゃねえと、俺の頭がどうにかなっちまう」
ザッザッ

事務員(……?倒れてる人の傍に……?)


ビリー「……オラ、いつまで寝たフリしてんだ。テメエは特別ビビってんのがバレバレだったから、殊更に手ェ抜いて撫でてやったんだぜ?」
ゲシ

男6「ガッ……ヒ、ヒイ……!」

ビリー「よし、思った通り元気そうだな……だったら案内してもらうぜ、テメエのボスのアジトによ」
グイ

男6「……!」

ビリー「おっとォ……何言ってるかわかんねェってのは通用しねえぜ?テメェのその顔色見りゃ、俺が何言ってんのか分かってるハズだ」

男6「唔、唔得……!喺頭領地佢哋會殺咗我嘅……!」


ビリー「何言ってんのかわかんねえよ。グダグダ言うようなら案内したくなるようにしてやろうか……?」
メキ…

男6「好、好囉好囉!佢哋引導你!停下!」

ビリー「だからわかんねーよ何言ってんのか」
メキメキ

男6「哦,哦……!」
ビクビク

事務員「……」

事務員(……何でも暴力で解決して……それが結局新しい暴力を呼び込んで)

事務員(その結果泣くのは本人じゃない……力のない、周りの人じゃないですか……)


ビリー「オラ……そろそろ案内したくなってきただろ?ククク……」
ギリギリ


事務員(この人と私たちは同じ世界の人じゃない……いや、いちゃいけない)

事務員(……逃げよう。あの人の眼には私は映ってないし……)
スッ

男「……」
ピクッ

事務員「……え?」

男「……」
プルプル
チャキッ

事務員「……あ」

事務員(———嘘。なんで―――)

事務員「あ――――」

ビリー「———ッ!」

ビリー(あの野郎、女を――――)

男「————死吧」
パン

パン

事務員(————)



ビリー「……!」


事務員「……」



事務員「……あれ?痛く……」


事務員(私……あ……)


事務員(どこも痛くない事が不思議で、恐る恐る目を開けた私は)


事務員(倒れた態勢のまま何度も引き金を引いて恐らく弾の入っていない銃をカチカチと鳴らす男の人と)

事務員(私の目の前で壁に突き刺さっている真っ赤な棒と)

事務員(苦痛に顔を歪めるプロデューサーさんの、右の脇腹から流れる止めどない赤色を見ました)

ビリー「チッ……!」
ガクッ

男「(ハハ、ハハハ……!やはり、女を庇って棍を手放したな……!)」

ビリー「……この、死にぞこないが」
スタ…スタ…

男「(馬鹿な男だ……!女を無視すれば正面からくる弾丸など、問題ではなかったろうに……!」)

ビリー「……」
ザッザッ
ポタポタ

男「(だが、貴様は他人を守る方を選んだ!フッ、歩く凶器が笑わせる……!いくら貴様が人を守る素振りを見せようと、所詮は貴様も俺も、まともな『人』にはなれん!使い捨ての暗殺者(ヒットマン)に過ぎん!)」

ビリー「……」
ザッ

男「(戦いの中では或いはボスに、山崎竜二に匹敵する狂気の持ち主かとも思ったが、やはり貴様はあの人には及ばん!あの人ならばもし撃たれれば、例え女でも子供でも……いや、もし家族だったとしても、眉一つ動かさずに盾にしただろう!)」

ビリー「……うらァァァァァ!」
ブオン

男「(だからこそ、貴様はあの人には勝てん!例えアジトに乗り込もうとも返り討ち―――)」


グシャ


ビリー「……だから、何言ってんのかわかんねェんだよ、クソが」

事務員「プ、プロデューサーさん……血、血が……きゅ、救急車……」

ビリー「いらねえ。俺が向かうのは病院じゃねえ……オラ、早く案内しな」

男6「ヒ……!」

事務員「……!?な、何言ってるんですか!?じゅ、銃で撃たれたんですよ!?」

ビリー「銃が怖くてこの稼業が務まるかよ。こんなもん……どうってこたねえ」

事務員「……!」

事務員「……」


事務員「……どうして……どうして私を庇ったんですか……?」

ビリー「……」

事務員「どうして、そんな酷いケガを負ったのにまだ進もうとするんですか……?貴方はもう事務所とは関係ない……だったら、山崎って人の事も放っておいていいじゃないですか……!」

ビリー「……チッ」

ビリー「……俺だって元々はそのつもりだった……いや、本来この日本に来た時から、深入りする気なんてこれっぽっちもなかったんだ」

ビリー「……だが、嫌々ながらもあのガキ共と曲がりなりにも一緒に仕事をして……面倒を見て……」


ビリー「……それで、あの事件」

ビリー「別に、関係ねえ。事務所が潰れようが、ガキ共がアイドルじゃ無くなろうが……俺と、妹さえ無事なら、別に」

ビリー「……そう思ってた、ハズだった」

ビリー「アレ以来、ふと目を閉じると浮かびやがる。血に塗れた俺を見るガキ共の怯えた目。桐生のあの何もかも諦めたようで、何も諦めきれねえ悔いに満ちた目……情けねえ話だぜ。寝覚めが悪いってのはこの事だ」


ビリー「だが、俺にはできねえ。事務所を立て直す事も、ガキ共をステージに立たせる事も。俺に出来る事は……今も昔も、他人をブチのめす事だけだ」


ビリー「だったら、その唯一出来ることで何が成せる?どうすりゃ俺は楽になれる?」


ビリー「そう考えた時……ヤツを、山崎をブチのめす事だけが、唯一今の俺に出来る事だった」

事務員「……」

ビリー「だったら俺は、やらなくちゃならねえ。凶器には凶器の……出来る事をやらねえと、俺はいよいよ存在価値のねえ男になっちまう」
スッ

事務員「あ……!」

ビリー「お前はもうしばらくじっとしてろ。もうすぐ事前に連絡していた俺の仲間がここに着く。そうすりゃ保護してもらえる」

事務員「……!」

ビリー「……」


ビリー「……俺が言えた義理じゃねえが……もしガキ共や桐生に会ったら伝えとけ。山崎は必ず俺がブッ殺す。お前らも……どうにかして立て直せってな」
ザッ

事務員「……プロデューサー、さん――――」


ビリー「……オラ、案内してもらおうか」

男6「……」

ビリー「山崎竜二……あのゴキブリ野郎のアジトによ……!」

今日はここまで

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