レッサー「『新たなる光』の名の下に集えよ、戦士」 ~闇、海より還り来たる~ (1000)

このSSは以下の物語の続きとなっております

鳴護アリサ「アルテミスに矢を放て」 ~胎魔のオラトリオ~
鳴護アリサ「アルテミスに矢を放て」 ~胎魔のオラトリオ~ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/)

宜しければそちらをご覧頂いた上でお読み下されば幸いで御座います


※業務連絡。前スレは私(>>1)が依頼を出していないのですが、勝手にhtml化されました
従ってここも勝手に落とされる可能性があるため、先に言っておきます

お付き合いくださった方に感謝を。ではまたどこかで

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1413944245

――ロンドン ガトウィック空港

上条「うおー……体、バッキバキだ……」

レッサー「伊達に『Eco-Army(環境狂徒)』とついてはいませんねぇ」

上条「だな。エコノミーって――お前今発音違くね?」

レッサー「気のせいですよ。気のせい。Queensはアメリカ英語に慣れてると聞き取りづらいらしいですから」

上条「そんなもん、か?詰め込み型の英語教育の弊害がここに……」

レッサー「あ、ちなみに『日本の英語は実用的ではない!』とホザくバカが一定周期で出没しますが」

レッサー「あれ、海外の論文読む時にキッカリとした文法知ってないと手も足も出ませんからね。真に受けても損しますんで、注意して下さいな」

レッサー「常識で考えるか現地で暮らせば分かる事ですけど、日本だって学校や役所のテキストと日常会話は違うでしょ?」

上条「文語体と口語体の違い?」

レッサー「に、近いでしょーかね。そもそも英語英語つったって、誰しもが同じだけ使えるのは『幻想』でしてね。訛りが酷かったり、語彙が少なかったり」

レッサー「そうですね……ハリウッド映画を字幕でご覧になった事は?」

上条「何回かある。テレビの深夜映画で」

レッサー「直訳と一緒にスクリーンに映っていると、『あ、なんか字幕と比べて台詞少ねーな』みたいなのありません?」

上条「こないだ見たホラー映画で、ヒロインの子が『あっちから来たわ!?』が『There!?』だった」

レッサー「慣用句、『over there(あっち)』を更に略して『There』でしょうかね。あのトラック映画のセンス、嫌いじゃないです」

レッサー「てか、大体『分かりやすい単語と単文のオンパレード』ですよね?ま、実際の話し言葉より更に単純化した作りになってんですが」

レッサー「その理由としては『子供から大人まで、また英語を大して知らない人間にも分かりやすいような脚本』だからです」

レッサー「誰でも理解出来るようにレベルを下げている、と言っても過言ではないかと」

レッサー「大人でも新聞とテレビみたいな『バカでもわかった”つもり”になれる媒体』にしか触れない人、結構居ますからねぇ」

上条「おい止めろ!今度は誰にケンカ売るつもりだ!?」

レッサー「いやですから、別に普通の人はそれでいいじゃないですか。だって政府の公文書や学術論文に触れる機会はないですし?」

レッサー「『ただ意思疎通が出来るレベル』であれば、少しの英単語憶えとけば何とかなります――と、言いたいんですが」

レッサー「実際にこちらの新聞のWEB版を読めば分かりますけど、専門用語もさることながら割と難しい言い回しは出てくる訳で。タブロイドでも無い限り」

レッサー「『日本人が習う英語は日常生活では使えない!』のが真であれば、『新聞を読むのは日常生活の一部ではない』の証左になってしまいますよねぇ」

上条「結局どっちなの?意味あんの?ないの?」

レッサー「私は日本人ではないのであんまり実感は?ただ『大人が子供に話を合わせるのは簡単だが、その逆は難しい』とだけ」

レッサー「更に付け加えるのであれば、宣うバカどもの大半が、学術論文や外電には縁も縁もない人間ばっかって事ですよ」

レッサー「ていうか、そもそも、元々は」

レッサー「『大抵の国では英語を使わないとまともに本が読めない』って事情もあるんですが、まぁそれはいいでしょう」

レッサー「……あんまり掘り下げるとブーメランが刺さりますし」

上条「つーかそれ、お前らの植民地のせいじゃねぇの?あぁ?」

レッサー「失敬な!アメリカさんだって今や世界の最先端じゃないですかっ!」

上条「……お前、アメリカ独立戦争って知ってる?」

レッサー「し、知りませんねー?ネコ耳だなー?」

上条「ネコ耳じゃなくて初耳な?お前日本語バカにすんのもいい加減しろ、な?」

上条「てかアメリカの自由の女神、イギリスから独立した時にフランスから貰ったって習ったぞ」

レッサー「……えぇえぇ、そん時からあのクソヤローはブリテンの邪魔ばっかしやがってますよっ!悪いんですかっ!?」

上条「当時の国際情勢として植民地は合法なんだっけ」

レッサー「『劣等な人種を導いてやらねばならない』をまともに信じていた時代ですから。ま、今でも形を変えて残っては居ますが」

レッサー「ありますでしょ?――『自分達が正義だと思い込んで、悪い奴らを皆殺しにする』ってぇ話は割と」

上条「……魔術師と能力者、スタート地点は違ってもゴール地点はどうして同じなんだろうな?」

レッサー「向いてるベクトルは同じだからじゃないですかね?中世に『神』を目指した錬金術師達」

レッサー「表に居続ければ『科学』となり、裏へ潜れば『魔術』となる、ですか」

レッサー「医療科学の最先端はアンチエイジングにIPS-cell。どちらも人類の寿命を延ばしてくれるでしょう……が」

レッサー「言い方を変えれば『不老』であり、魔術サイドが追い求め続けてきた目的の一つですがねぇ」

上条「不老不死、出来んの?」

レッサー「戦いましたよね?ついこないだも」

上条「『団長』……」

レッサー「あれは肉体の大半を捨ててシリンダーの中の”脳”だけになる。ある種のSFチックな術式でしたが」

レッサー「……ただアレ、『よく見たらコレ霊装じゃね?』ってぇ気もしますがね」

上条「人体改造しすぎだろ。似たようなの科学サイドでも居たけどな」

レッサー「概念としちゃ魔術サイドの方が先ですよ。エジプトのミイラと復活なんかまさにそれです。ただ中途半端でしたが」

レッサー「レディリーさんのように『人としての機能全てを保ったまま』は極めて高難度です。それが出来たら神話になるレベル」

レッサー「でも『体の一部だけ』とか、『意識の一部だけ』はたまーにありますし。聞いた事ありません?地縛霊的なの?」

上条「あれも術式なのか?趣味悪ぃよな」

レッサー「便利は便利かも知れませんがねぇ、私はちょっとゴメンでしょうか」

レッサー「なんつっても学習できない以上、予めプログラミングされた状況にしか対応出来ませんしぃ?」

レッサー「だったら遺言書いた方が地球に優しいってもんですよねっ」

上条「……幽霊って、環境の敵なの?」

レッサー「さぁ?どうなんでしょうね?」

上条「お前が断言したじゃん!」

レッサー「あー、いやいや。これ割と核心的なお話ですがね、魔力って基本自分で精製するじゃないですか」

上条「聞いたなー、ここ数日はそればっかだよ」

レッサー「でも幽霊、体ないんで魔力作れないですよね?ねね?」

上条「そう、だな。言われてみれば」

上条(って事は風斬も?拡散力場の力で存在しながら、記憶はどこかに依存しているのか?)

レッサー「だからまぁ?そう言った不思議存在が実在するとしても、『外部』――つまり『龍脈』からの力をエネルギーにしてんじゃないかと」

上条「聞いた事ある。『霊道』だっけか」

レッサー「これぞまさに『霊・ライン』なんっつっちゃったりしてー、あははーこやつめー!」

上条「――さて!そろそろ体もほぐれたし、バスターミナルへ行こうぜ!」

レッサー「待ちましょうか?女の子に恥ずかしい思いをさせるなんて紳士じゃありませんからっ!」

上条「いやぁ、流石に今のはオッサンでも言わないもの」

――バスターミナル

上条「――てか向こうを出たのは夕方なのに、あんま時間が変わってない?」

レッサー「日付変更線は一本、地理的にも近いですからね。んで、どうしますか?」

上条「どうって?あ、足を何にするかって話?」

レッサー「も、含めてのご相談ですけど。今日はどうすんですか?」

上条「え?まだ夕方――を、ちょい回ったばっかりなのにか?」

レッサー「学園都市も18時ぐらいを過ぎると公共の交通機関がなくなるんじゃ?」

上条「まぁあっちは建前上、学生集めて勉強のための都市って事になってるからな。でも都会は別だ」

レッサー「うーん?でももうサフォークまでの便がありませんよ?」

上条「……はい?」

レッサー「正確にゃあるんですが、あれは事前に予約が必要でして。私達には乗れませんし」

上条「まだ深夜じゃねぇのに?」

レッサー「日本の首都と一緒にしないで下さい。サフォーク州は人口約70万の地方都市です」

上条「70万ならかなり多いだろ、それ」

レッサー「同じ大きさのサイタマーの10分1程度。ま、EUじゃ普通なんですけどね」

上条「その例えがよく分からんが、とにかく足がないのは理解した。んー、どうしたもんか……」

レッサー「ここに一泊、もしくは行ける所まで行く、の二択でしょうな。後者はお勧めしませんが」

上条「その心は?」

レッサー「飛び入りで、しかも外国人を泊める所は大枚はたかないとまず無理です」

上条「大概だな、イギリス」

レッサー「……あのですねぇ上条さん、ロシアでは何とかなりましたけど、あんまり外国をナメてるとマジで死にますからね?」

上条「いやぁ言い過ぎだろ、それ。だって海外で何かあったニュースになるし、そんな数多くないだろ」

レッサー「そりゃ『死体』が出てくれば問題になりますがね。『行方不明』とか『失踪』だったら話題にもなりませんし」

レッサー「人が多いと相乗的にアイタタな人間も増えますから。カモにされやすいジャパニーズは要注意」

上条「……見方が穿ってんなー、お前は」

レッサー「綺麗事だけ言ったって役には立ちませんからね。んで?」

上条「……」

レッサー「どーしました?」

上条「今気づいたんだが、未成年二人でホテルに泊まれるのか……?」

レッサー「ホンットに今更ですね。結論から言えば『場所による』としか」

レッサー「バックパッカー向けの一泊数百円フロ無しメシ無し扉無しは、わざわざ身分証なんて出させませんし」

上条「無いモン多すぎるだろ!?扉はつけてあげて!」

レッサー「もしくは真っ当な所でもチップを弾めばイケます。ま、そこまでして身分隠す意味があるのかどうか分かりませんけど」

上条「レッサーさん、君のお名前なんつーの?」

レッサー「やっだなぁ上条さん!レッサーちゃんに決まってるじゃないですかっ何言ってやがるんですかねっ!」

上条「何か意味はあんだろうから、あんま突っ込まねぇけど……うーん?」

レッサー「てか海外のゲイには日本人が大人気で――」

上条「――ここはやはり地元のレッサーさんにお願いしましょうかねっ!よっ、生粋のイギリスっ子!」

レッサー「任せて貰いましょうかっ!ではまずモーテルに行って明るい家族計画を話し合いましょうねっ!ささお早くっ!」

上条「既成事実を作ろうとすんなよっ!?つーかその計画はきっと明るくはねぇもの!」

レッサー「おんやぁ?何か勘違いされてません?せんせん?」

上条「な、何がだよ?」

レッサー「『モーテル』ってのは『モーターホテル』の略であって、旅行者達が車のまま出入り出来るようなホテルの意味ですよ」

レッサー「エロい事するホテルだなんてハレンチなっ!んもうっ上条さんのエッチスケッチハイタッチ!」

上条「昭和だな?お前らに日本語教えたヤツ、昭和以前の生まれだよね?」

上条「はー、そうなん?俺、てっきりモーテルっつったらエロい所だけかと」

レッサー「てかフツーのホテルでもしますし、専門という意味はありません。これもマジの話です」

レッサー「……ただまぁ先生のメル友が愚痴ってたんですが、帰国子女の子と遠出した際」

レッサー「『あ、少しあそこで休んでいきませんか?』と言われ、思考が停まった過去があったという……!」

上条「ちょっと何言ってるか分からないですね」

レッサー「ま、二次元にしか興味無いんで、事なきを得たんですが!」

上条「事無いけど、それある意味大事になってるよね?つまりその家は断絶って意味だもの」

レッサー「ま、適当に車でも借りるか、私らのアジトへ行くかの二択としましょうか」

上条「モーテルは……ちょっと気が引けるよなぁ」

レッサー「大丈夫、上条さんの貞操は私の貞操を賭けても守りますから!」

上条「命じゃねぇの?レッサーさん、仰ってる事が恥女ですよ?」

レッサー「もし万が一!上条さんの貞操が危うくなった場合!この私が責任持って先に頂きますっえぇ!」

上条「あ、俺知ってる。等価交換ってヤツだよね。もしくは”無理心中”」

レッサー「てか上条さんだって女体に興味の一つや二つおありでしょう?だったらこう、もう少し弾けてもいいんじゃないんでしょうかね」

上条「まぁ……あるけどさ、っつーかバスターミナルで話すようなもんじゃねぇよ!」

レッサー「や、別に誰も聞いてませんから。ねーちんに話してご覧なさいな?ほれほれ」

上条「どう見てもお前年下……」

レッサー「やっぱりロ×じゃないとダメだとか?」

上条「やっぱりの意味が分からない!てかどこのどいつだ上条×リ説広めやがったのは!」

レッサー「ヒロインの胸がペッタンコの時は足繁く遭遇していたのに、育ってからは記憶の彼方へと追いやったと評判の上条さんではないですか!」

上条「ってか誰情報がちょっと教えてくれないかな?俺そいつの幻想とかぶち殺しに行かないといけないからさ」

レッサー「『巨乳好きというのも実はカモフラージュで、実は貧乳こそ神が与えたもうた奇蹟なのよ!と言っていたのよな』」

上条「そっか……今度は天草式も敵なのか……」

レッサー「そんな疑惑を払拭するためにも!」

上条「だから近寄るな腕を取るなおっぱいを押しつけようとすんな!若い娘さんがはしたない真似すんじゃありません!」

レッサー「でも嫌いじゃないでしょ?」

上条「大好きに決まってるさ!おっぱいに貴賤はない!」

レッサー「どう見ても節操が無いだけですありがとうございました――で、ホントの所はどうなんです?」

上条「おっぱいの話?」

レッサー「恋愛の話です。私は別におっぱいでも構いませんっつーかむしろウェルカムですが!」

上条「俺はノーサンキュー……いやだから、ストレートに言うと」

レッサー「ストレートじゃない?肌の白さと病みっぷりが堪らない、ですか」

上条「それ掛け算だよね?お前の俺を誰と掛けたの?何となく分かるけど」

上条「俺だって男だし、つーか女の子に話すようなこっちゃないんだが、ほら、ドキってする瞬間あるじゃんか?」

レッサー「ありますあります、性欲持て余すんですよねっ」

上条「オブラートに包んでんでしょーが!?もっと気ぃ遣いなさいよ!」

上条「だから!その、『あ、ちょっと良いな?』みたいなので一々付き合ってらんねーだろ!そっちはタダのエロだし!」

レッサー「つまりムラッとくる頻度は結構あるものの、それで別にコロッと行ったりはしないと?」

上条「そうそ――違うな?そこまで身も蓋もない言い方はしてない!」

レッサー「いやぁ別にノリで付き合っちゃっても良いと思うんですよねー――って誤解されんのは嫌ですから最初に言っておきますけど」

上条「おいお前今度はどんな暴言吐くつもりだ……?」

レッサー「『新たなる光』、全員処女ですんでご安心を」

上条「その情報は激しくレアだが俺が聞いていい話じゃねぇっ!?つーかどんな方法で知った!?」

レッサー「ヒント!『女子校』」

上条「レッサーさん、詳しくお願い出来ませんか?スール的なお話なんですよね?」

上条「――ってお前ら共学じゃん!騙されないからな!」

レッサー「途中までノリノリだったくせに……まぁある霊装で『魔女』にしか発動出来ないものがありまして」

レッサー「十字教の言い伝えでは『魔女は生まれた時から処女では無い』というえらーくエロいもんがあり、そっち関係です」

上条「なんだその、日本の年齢制限ありゲームの設定みたいなのは」

レッサー「いい加減念を押すのも面倒になってきましたが、マジです。マジである話です」

レッサー「これもまたガチな話なんですが、魔女狩り中の聖職者が『こいつら冤罪だったらどうすんの?』と訊ねられた際」

レッサー「『もしそうでもあの世で神様が救ってくれるからヘーキっしょ?』と宣ったクソバカ十字教徒が歴史に名を残しています」

上条「お前ら人様をモンキーモンキー言うけど、言えるだけの資格はねぇよな!?結構蛮族だよね?」

レッサー「で、こないだソレ試したら全員ダメでした。良かったですよねぇ?」

レッサー「私的には、なんだかんだでランシスが一番早く居ボーイフレンド作りそうな気がしますが」

上条「……この会話、もう止めねぇ?いい加減色々とマズ過ぎるだろ」

上条「つーかな。そもそもっていうか前から聞こうと思ってたんだが」

上条「レッサー、お前俺が好きなの?」

レッサー「前世の頃から愛してましたっ!」

上条「……ありがとう。ペラッペラの言葉でも嬉しいよ……」

レッサー「信じてませんね?いったいどうやったらこの私の真摯なBeeeeeat!が伝わると言うんでしょうか!」

上条「真摯じゃないから伝わらないんだと思うよ?」

上条「特に巻き舌でビィィィィト!っつった辺り。どう聞いても波紋流す気満々だもの。新日の中邑かと思ったし」

レッサー「何だったらフランスの大統領をぶん殴って証明して差し上げましょうか!?」

上条「それ、お前がしたいだけだよね?フランスを国家レベルでガチ嫌ってるだけだもんね?」

レッサー「よぉぉっし!それじゃ意味も無く全裸になって駆け回るのも辞さない覚悟です!」

上条「それもお前がしたいだけだよね?つーか辞しろ、自重しろや恥女」

レッサー「全裸になれる勇気……!」

上条「ヤダ格好良い!?……か?何か騙されて――うん?」

レッサー「どうしましたか?昔お付き合いされていた方がロンドンに?」

上条「止めろ。ムダにフラグを立てるんじゃない!……いや、そうじゃなくて」

上条「……なーんか、こないだからレッサーに違和感があんだよな。なんだこれ?」

レッサー「実はですね、ブラを」

上条「待とうか?場合によっちゃコンビニで下着買ってこい!」

レッサー「と、言う訳で子供は何人ほど欲しいですか?」

上条「高校生相手に重すぎるわっ!?お前だって中二ぐらいじゃねーか!」

男「――おーーーい!当麻、当麻じゃないかーーー!」

上条「……誰?――って父さん!?」

レッサー「『性的な話をしていると親御さんが来る』、テンプレではありますかねぇ」

上条「気まずいよ!?つか流石にそこまでは!」

刀夜(男)「そこでいたいけな少女相手に家族計画を話しているのは当麻じゃないか!」

上条「どっから聞いてたんだ父さん!?しっかり把握してるじゃねぇか!」

刀夜「息子の事なんて父さんはお見通しさ!それよりもどうしてここに?」

刀夜「ヨーロッパに課外学習中だって聞いたけど、ロンドンに居るんだっけ?」

上条「あ、ヤバ」

レッサー「――初めましてお父様っ!上条さんのホストファミリーやってる者です!」

上条(ナイスだ!レッサー!)

刀夜「あ、これはどうも愚息がお世話になっております。私、当麻の父親の上条刀夜と申します」

レッサー「いえいえっとんでもありません。私は上条さんのムスコのお世話をしたいと常々――」

上条「ちょっとタイムな?父さん、待っててくれないかな?」

上条「俺、ちょっとこの子幻想殺してこないといけないから、時間貰える?」

刀夜「こら当麻!日本語が達者では無いだけだろう!失礼な事を言うもんじゃ無いよ!」

刀夜「些細な言い間違えぐらい、男子たるもの笑って済ませ」

レッサー「いや、ぶっちゃけ体だけでも良いって言ってんですけど、中々ガードがお堅いんでねー」

刀夜「……」

上条「待ってくれ父さん!これはこの子が勝手に言ってるだけで!」

刀夜「し、詩菜さん……!当麻が!当麻がいつの間にか大人に……!」 ピッ

上条「おいコラ母さんに連絡取るんじゃねぇ!つーか何を報告するつもりだ!?」

刀夜「いや、お赤飯的な」

上条「男の場合でも作るのか……?」

レッサー「ま、ジョークはともかく、宜しくお願いしますお義父さん」

上条「レッサーさん、字、字ぃ間違ってるよ?いい加減にしないと後で幻想殺すからな?」

刀夜「君にお義父さんと呼ばれる筋合いは無いねっ!」

上条「父さんもなんでここで否定から入るの?それ娘さんの彼氏に言う台詞じゃ無いかな?」

刀夜「一度言ってみたかった……あ、でも」

上条「な、なに?」

刀夜「もしかしたら言えるかも知れないな!確率は半々だし」

上条「聞きたくねぇっ親のそういう話は特に!」

レッサー「仲が宜しくて結構ですねぇ。私なんて、ほら、当麻さんテレちゃって」

刀夜「こらこら、当麻ー。あんまり恥ずかしいからって邪険にするもんじゃ無いぞ?」

上条「コイツ外堀から埋めてきやがった!?」

レッサー「あ、いや、いいんですよ。私なんか当麻さんにとっては、何でも無いんですから。きちんと弁えてますからっ!」

上条「……なにその『弄ばれた挙げ句、捨てられるの前提で付き合ってる』みたいなの……?」

レッサー「事実ですよね?」

上条「何にも無かったのは間違いないけどな!」

刀夜「……」

上条「と、父さん?これは違うんだよ、このバ――子は俺で遊んでいるだけで!」

刀夜「……少しお話ししようか、当麻?オシャレなカフェもあるみたいだし」

刀夜「まぁ、母さんに報告するかどうかは、内容次第かなぁ」

上条「俺はっ!無罪だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?手ぇなんか神様に誓って出してねぇさ?!」

レッサー「……ま、”だからこそ”なんですけどねぇ」

――ガトウィック 南ターミナルのスターバックス

刀夜「……ふーむ。話を聞くに当麻は悪くないみたいだね」

上条「言ったよね?俺最初に無罪だって!」

刀夜「ただね、もうちょっと女性の機微を理解した方がいいと思うんだよなぁ。私は」

上条「いや父さんに言われる筋合いは……」

レッサー「てーかお二人には言う資格は無いと思いますよ、えぇ」

刀夜「迷惑をかけなければいいってもんじゃないだろ?お前は男の子なんだから、女性を守って然るべきだ」

上条「まぁ、うん」

レッサー「あ、そちらに関しては過不足無くして頂いてます。若干過剰かも知れませんけど」

レッサー「……ただその、ちょっと言いづらいんですけど」

上条「何だよ?俺別にいかがわしい事なんかした覚えねーぞ?」

レッサー「言っても?」

上条「どうぞどうぞ」

刀夜「当麻、それはフリだぞ?」

上条「えっ?」

レッサー「たまーに長時間トイレに籠もる時があるんですが、あれは一体ナニをしているんでしょうかねっ!?」

上条「突っ込まないであげて!?確かにそれはある意味後ろ暗いけども!」

刀夜「××だね」

上条「オイ!なんで堂々としかもちょっと誇らしげに答えてんだ父さん!?

刀夜「あ!詩菜さんに連絡しないと!」

上条「ケータイ寄越せ?ぶち壊されたくなかったらな!」

レッサー「仲、よろしいんですねぇ」

上条「お陰様でたった今暴力沙汰になりそうだけどな!」

刀夜「何を言ってるんだい?これから君も――」

刀夜「――”家族”になるんじゃないかッ……!」

上条「なんでその話に繋がるの?仲間になりたそうにしてたから?」

レッサー「お義父さま……!」

上条「お前も付き合うよな!父さんテキトー言ってるだけから!」

刀夜「君にお義父さんと呼ばれる筋合いはないよっ!」

上条「え!?ここでもっかい突き放すの!?」

レッサー「……ぬぅ、中々やりますな!当麻さんをここまでのツッコミ使いにまで育て上げただけの事はある!」

レッサー「さぞや名のあるボケ家庭だとは薄々気づいていましたが、まさかこれほどとは!」

上条「俺の価値ってツッコミだけ?確かに特殊な家庭環境がなければ、ここまでスルーせずに拾うのもどうかと思うが」

刀夜「まぁそこはそれ夫婦仲の異様に良い家族であれば」

上条「……なぁ?俺が荒んでたのって家庭環境が原因じゃねぇの?」

上条「『夜の街を徘徊していた』的なのは、父さん達を見てると居たたまれないだけじゃねぇのか?あ?」

レッサー「ちなみに話を戻しますとベイロープ辺り、『放っておくのだわ』と言いつつ、顔真っ赤なのが超可愛いですな」

上条「まさに今居たたまれないのは俺だから!?レッサーさんもう少し空気を読んであげて!?」

レッサー「ダチョウ的な意味で?」

上条「一般教養だっ!」

刀夜「……そうか、当麻が元気でやってるようで何よりだよ。語学の方も達者になったんだろうね?」

上条「語学?なんで?」

レッサー「(カミジョー、設定設定ー)」

上条「ん、あぁっ!勿論だぜ!そりゃもうペラペラさ!」

レッサー「……オノマトペ、古っ」

上条「ウッサいな!昭和だって良かった事一杯あっただろ!」

刀夜「そうか、それじゃ、えっと――」

上条「(マズe!この展開じゃ父さんが英語で話しかけてくるパターンだ!)」

上条「(全然分かってなかったら疑われちまう!)」

レッサー「(おっと当麻さん!ここは私の言うとおりに喋って下さいな!)」

上条「(レッサー……信じて、いいのか?)」

レッサー「(今更じゃないですか!この私のナニ誓いますとも!)」

上条「(何か引っかかるが、頼んだ!)」

刀夜「『How about the business of the London market?』」
(ロンドン市況の景気はどうですか?)

上条「『Will you have the daughter from such a talk?』」
(そんな話よりもあなたに娘さんは居ませんか?)

刀夜「『Should I become independent Scotland?』」
(スコットランドは独立すべきですか?)

上条「『Money is decided to the aim. Please do not let me say because I am shameful. 』」
(金目に決まってんだろ。言わせんな恥ずかしい)

刀夜「『What idea do you of the immigrant have?』」
(移民についてのあなたはどんな考えを持っていますか?)

上条「『I love little girl with the fair hair. 』」
(金髪ロリはぁはぁ!)

刀夜「……」

上条「(良し!意味は分からなかったが何とか誤魔化せたぞ!)」

レッサー「(……ちょっと罪悪感が……)」

刀夜「……ま、まぁイギリスジョークまで言えるんだったら、結果は出てる、かな……?」

レッサー「ポジティブ過ぎんのもどうかと思いますよねぇ――んで?」

上条「何?」

レッサー「いえ、当麻さんではなく、もう一人の上条さんの方です。どうしてまたイングランドまでいらしたのか、と」

上条「ん、あぁそうだよな。父さん確か証券会社のアドバイザーやってんじゃなかったっけ?そっちの仕事?」

刀夜「当麻、私達には守秘義務というのがあってだね。仕事上で知り得た情報を気軽に話す事は出来ないんだよ」

刀夜「もしもそれを漏らしてしまえば、不自然に利益を得たり、損をする人達が出てくるかもしれないからね」

刀夜「幾ら親子であっても気軽に話せない事だって――」

上条「『――あ、もしもし?母さん?当麻だけど』」 ピッ

刀夜「当麻?今、父さん良い事言ってたよね?」

上条「『今、イギリスのロンドンで父さんとお茶してんだけど、これ何の仕事?』」

上条「『え?そんな事より女の影?見える所には居ないなぁ』」

刀夜「よし当麻!父さん今から機密情報でも何でも喋っちゃうから、取り敢えず携帯を切ろうか!」

レッサー「……似たモン親子。上条さんもいつか尻に敷かれるんでしょうかね」

上条「まっさか!ある訳がない!」

レッサー「現状見るに――」

上条「良し!話を聞かせて貰おうじゃないか!」

刀夜「だね!」

レッサー「ホンットに似てやがんなこの親子」

――10分後

レッサー「サフォークの保険金調査、ですか。こいつぁまた……」

上条「……なぁ?」

刀夜「具体的には言えないけれど、イングランド――っていうか、イギリスはNHSの国だからさ。どうしてもね」

上条「えぬえいちえす?」

レッサー「国民健康サービス、の略でしょうか」

レッサー「ぶっちゃけ『ブリテン国民or合法的に滞在している外国人は格安か無料で医療が受けられる』って話ですな」

上条「へー?そりゃ凄いな……あ、でも」

レッサー「えぇお察しの通り問題は山積みに。良い面もありますがね」

刀夜「日本と違って、診察を受ける際には予約が必要でね。早くて数日、長いと数週間とか割とあるんだよ」

刀夜「あ、勿論緊急性のあるものは別だけどね」

上条「……風邪引いたら、直ぐ病院、とかじゃねーのな?」

レッサー「えぇですから、死なないようにってか、『つなぎ』として薬局やネットで薬を買い、凌ぐ事が迫られます」

刀夜「日本でも『ネットで専門的な薬を売らせろ!他の国では実施されているのに!』と引き合いに出されるけど」

刀夜「余所の国では長い待ち時間があるからだね」

上条「日本じゃ長いっつっても、一日の終りには看てくれるもんな」

レッサー「ちなみに『私的診療』として、特別料金で待ち時間なし!みたいなのも横行してますね。ナイショですけど」

刀夜「他にも住んでる地域によって医療レベルや料金がバラバラだって現実もある」

上条「なんでまた?」

刀夜「大都市の医学部と町医者の違いかな?どうしても前者の方がより高度になるだろう?」

レッサー「で、この保険制度、『基本的に住んでる地元の診療所しか選べない』ってぇデメリットがありまして。田舎だとアレなんですよ」

上条「欠陥、とまでは言わないが……なんか、なぁ?」

レッサー「待機時間も今では改善されましたが、それを嫌う人間が海外まで行って医者にかかったりします。場合によっては無保険で」

上条「辛いだろそれ!?」

レッサー「あの世へお金は持っていけませんからねぇ、えぇえぇ」

刀夜「後は……不正な診療報酬の要求かな?エセ医療って知っているかい?」

レッサー「せめてホメオパシーぐらいは言ってあげましょうよ。やってる当人は大真面目なんですから」

上条「あー、雑誌の広告に載ってたな。そんな単語」

レッサー「『××を摂取すると○○病になる!よしならば××を薄めに薄めた△△を摂取すれば抵抗力が!』ってぇ話」

上条「治るの、それ?」

レッサー「逆に聞きますけど、それで治るんだったらエイズもエボラも根治治療されてると思いませんか?」

刀夜「まぁ、正しくはホメオパシー”も”含む疑似医療行為だね。うん。『自然のまま』を優先して現代医学の否定」

刀夜「自然分娩へ拘った挙げ句どうしようもなくなって救急車を呼ぶ」

刀夜「当然臨月の、しかも受診回数がゼロ回のクランケを受け入れる所なんかない。当たり前だよ。最後の最後で泣きつくなんて」

刀夜「しかしその結果だけを過剰に宣伝し、『日本の医療体制は崩壊した!』と宣伝しまくった羽織ゴロも居たね」

上条「……あれ、そういう話だったのか?」

刀夜「『と、いうケースもあった』のが正しいかな。全てじゃない」

刀夜「臨月かそれに近い状態だったら、首の上に頭が乗っている人間であれば、入院させて様子を見る」

刀夜「……そして何よりも『親』として失格なんだよ。その人達は」

レッサー「ま、そういう事例もあるって事ですね――てか、その関係で?」

刀夜「これ以上は流石に言えないけどね」

上条「そっか。父さん、こんな仕事もやってんのか」

刀夜「本職は証券会社だからね。今回は急な話だったんだけど、当麻に会えたしラッキーかな?」

レッサー「(ね、上条さん上条さん)」

上条「(はい?)」

レッサー「(私の下着は青のローレグですなんですけど)」

上条「(今必要か?その話父さんの前で内緒話する意味は無いよね?)」

レッサー「(噛んでません!わざとです!)」

上条「(うん、知ってた)」

レッサー「(何かきな臭いですね)」

上条「(なんでだよ?要は医療保険詐欺じゃねぇか)」

レッサー「(えぇ、お義父様が調査されているのはそうでしょうけど、それはあくまでも『枝葉』ではないかと)」

上条「(枝……木があるって事か?)」

レッサー「(詐欺をするからには『した連中』が居る、もしくはかも知れない可能性がある訳でして)」

レッサー「(証券マンがわざわざ出張る程の事案じゃありません)」

上条「(正しくは『証券取引室』で、証券会社じゃないんだけど……言われてみれば、確かに)」

レッサー「(サフォークでは何らかの『異変』が現在進行形で起きており、その一端が詐欺となって表面に現れたんじゃないかと)」

上条「(異変?)」

レッサー「(まだ確証がないのでお話し出来ません。何とかしてお義父様がお持ちの資料、見られませんかねぇ)」

上条「(流石に仕事の中身までは無理じゃねぇかなぁ……)」

上条「あー……つーかかなり言わせちまった気がするけど、大丈夫なの?結構人が居るんだけど」

レッサー「あぁスタバって何かPC持ち込んで作業してる人居ますけど、あれ『フリ』だから問題ありません」

上条「フリ?」

レッサー「だって普通に考えればどこの業界にも社内秘の一つや二つある訳でして」

レッサー「にも関わらず、こんな所で堂々と扱うのは神祖級のバカかやってるフリに決まってるじゃないですかーヤダー」

上条「まぁ……言われてみればオープンカフェとかでして良い事じゃないよな」

レッサー「ってかそもそも『超』貧弱なLAN回線で何やろうってんですか?公共LANだから情報盗まれまくりますし」

レッサー「つーかこんな所で仕事やったとしても、普通の神経を持っていれば集中なんか出来る訳がないですし。だから『フリ』ですよ」

レッサー「大方ニートか無職か失業者が『こんな所でも仕事出来るんだ俺カッコイイ!』って酔うためにやってるだけですから」

上条「あの……そのぐらいに、うん。何かさっきよりも気持ちお客さんの数が減ってきてるし!」

上条「いいじゃないアピールしたって!格好つけぐらいはさせてあげても!」

レッサー「や、でも恐らくはアピールする以上、対象的なモノはある訳でして。具体的には『店員さん』とか」

刀夜「ここの店員さんは世界各国、『顔も審査基準に入ってるよね?』と思いたくなるぐらいだからね。それ目当てで」

レッサー「でもそういう店員さん達、似たような社会人気取りのドリーマーを腐る程見てきてる訳でして――多分!」

レッサー「『お、また来てやがるよこのクソ野郎。チラチラこっち見ながら長居してっから気持ち悪ぃんだよなぁ』程度にしか、はい」

上条「謝って!?全国の純粋な気持ちでスタバ来てるお客さんに謝んなさいよっ!?」

刀夜「作家さんなんか、煮詰まるとビジネスホテルとかに籠もるしね。なんでわざわざ公共スペースでしなきゃいけないんだって話だよ」

刀夜「『雑音の中でも集中出来る俺!』を、やりたいんだろうけど。そもそも『そんな所で集中出来るんだったら自宅でも大丈夫』だからね」

刀夜「むしろ移動時間を考えるとマイナス要素しか見当たらない、っていうね」

上条「父さんも加勢しないで?明らかに気まずそうな顔して引き上げるお客さん増えてるし!」

上条「……なんかもう居たたまれなくなってきた。俺、追加注文頼んでくる」

レッサー「だったら私も」

上条「あ、お手洗いにも行きたいから」

レッサー「じゃそっちも一緒に」

上条「そうだな。一緒に入ればエコだもんな――ってバカ!なんて言わねぇよ!?なんで一緒なんだよ!?」

上条「そもそもエロにはなってもエコにはならないな!」

刀夜「……当麻、ノリツッコミまで立派になって……!」

レッサー「エコとエロをかける辺り、中々どうして機転も利きますしねぇ」

上条「ウッサいな!着いてくんなよ!絶対に!絶対だからな!」

レッサー「……あれ、着いて来いって言ってんでしょうか?」

――スタバ

刀夜「――で、君は『そっち側』の関係者で合っているよね?」

レッサー「違いますけど?」

刀夜「……あれ?間違った?」

レッサー「――ってのは冗談ですけど、やっぱり分かりますかね?」

刀夜「そ、そうだよね?なんかそれっぽい感じがしたから……あぁ!そうそう!」

刀夜「前にね。ウチの家族で旅行に行ったんだよ」

レッサー「はぁ」

刀夜「その時、カンザキさんっていう、妙に女っぽいシナを作る巨漢の外国人さんと一緒になってさ」

レッサー(イギリス清教の『聖人』、神裂火織……いえ確かに長身ですけど、『巨漢』?男性へ使う単語じゃないでしたっけ?)

刀夜「その男の人と同じ感じがするんだ」

レッサー(流石は上条さんの父親。国際的な投資銀行のアドバイザー――所謂『知的傭兵』は伊達ではない、ですか)

レッサー(……ま、往々にして鷹が鷹を生む事はあれど、鳶が鷹を生む事はまずないですからね。妥当は妥当だと)

レッサー「それで?わざわざ人払いまでかましてどんなお話が?――まさかっムスコの彼女に手を!?」

刀夜「誤解にも程がある!?どこの世界に自分の子供よりも年下へ手を出す……」

レッサー「って話は良くあります。むしろデフォです」

刀夜「……だね。私の顧客にも恋人を一杯持ってる方が、割と多いよ」

刀夜「で、その、私が聞きたいのは、だけどさ」

レッサー「えぇお察しの通りです。『こちら側』のお話です」

刀夜「どんな話か、聞いても?」

レッサー「なーに大した話じゃありません。よくある話っちゃ話です」

刀夜「そ、そう?だったら良かったんだが」

レッサー「ただちょっと世界の滅亡を目論む悪の秘密結社が居て、そいつらと戦ってるだけですから」

刀夜「……」

レッサー「一応幹部四人の内、半分はぶっ飛ばしましたけどね」

刀夜「……えぇと、なんだね、こういう時何と言うべきか、迷うんだが」

レッサー「はい」

刀夜「人としてはいけないかも知れないのだけれど、当麻を外す訳にはいかないん、だよね?」

レッサー「んー……まぁ、なんとかなるとは思いますよ、『なんとか』は」

刀夜「なんとか”する”のではなく、なんとか”なる”のかい?」

レッサー「えぇはい、”なる”です。」

レッサー「世界のどこかで誰かが殺されていても、それは『なんとか』なるでしょうね」

レッサー「私達が抱えてる問題を、いつか誰かが、無償で何の瑕疵も無く、見返りも求めずに解決してくれる――」

レッサー「――っていう『可能性は決してゼロじゃない』んですから。そう信じるのも結構でしょうな」

刀夜「……私も仕事柄国際情勢には詳しい方だけれど、それは」

レッサー「はい、皮肉で言ったんですよ」

レッサー「今回の事件、上条さんが絶対不可欠という訳ではありません。むしろ否応なしに巻き込まれた被害者、と言って差し支えないでしょう」

レッサー「ですので最初から居なければ――そうですねぇ、死人はざっと今の数万倍程度手に収まったかと」

刀夜「数万……!?」

レッサー「ユーロトンネルは年単位で封鎖、下手すれば両出口一帯が『毒ガス』で大量に事故死扱い」

レッサー「お次はフランス市内が閉鎖されて戒厳令が布かれ、ユーロ経済は大混乱――で、済めば御の字ですかね」

レッサー「このないだのは……直接影響はないですか。ただこの先も体を奪われる被害者が永遠に出るだけで」

レッサー「そんな風に『なんとか”なる”』筈でした――ですが!」

レッサー「上条さんは嫌々ながらも引き受け、途中何度も離脱する理由と機会を得たにも関わらず、しませんでしたよ」

レッサー「そうして『なんとか”して”』きたんです」

レッサー「偽善者達が平和な国”だけ”で平和を叫び、独裁国家やテロリストの靴を舐めるのは真逆」

レッサー「『する必要なんてこれっぽっちもなかった』――と、言うと上条さんに怒られそうですけどねぇ」

レッサー「『たまたま巻き込まれたお友達を助ける』ってぇだけの、シンプルで且つどうしようもないぐらいの正論」

刀夜「……そうか、当麻は」

レッサー「部外者がこう言っちゃ何なんですがね、上条刀夜さん」

レッサー「あなたがすべきなのは初対面の女の子相手に、ふざけてご機嫌を取る事ではありませんよ、えぇ」

レッサー「恐らく息子さんの『不幸』に気遣っているんでしょうが、それは、違う」

レッサー「あなたがすべきなのは、まず胸を張る事」

レッサー「そして同時に誇りに思う事――あなたのご子息が助けた人達を、です」

刀夜「……」

レッサー「親御さんとしては到底納得行くものではないでしょうし。ご心配なく、とは口が裂けても言えません」

レッサー「何よりもまず、私は事実を口にしてすらいませんが――ただ一つだけ、宣言はしておきましょう」

レッサー「『Arthur829(永劫の旅路の果てに再び戴冠する王)』の名前に誓って、上条さんは助けます」

レッサー「……ま、保険代わりだと思って頂ければ」

刀夜「……父親としては、そんな危険の場所へは行って欲しくない、って思うんだけどねぇ」

刀夜「……やっぱり我が侭なんだろうか?」

レッサー「まさか。人として当たり前の話です。子供を心配しない親が居れば、そらちを恥ずべきでしょう」

レッサー「とはいえ決断されるのは上条さんご本人です。未成年で、しかも学生でしかない。だから理不尽だ、と仰るのかも知れません」

レッサー「ですがしかし、決断なんていつどこでだってやって来るものです。予告無しに来るのが普通でしょうし」

レッサー「何にせよ上条さんは自らの意志で戦さ場へ足を運んでいます。納得しろとは言いませんが、せめて理解はしてあげて下さいな」

刀夜「……君は、当麻とは長いのかな?」

レッサー「うーむむむむむむむ……?トータルで言えば二週間ちょい、ってぇトコでしょーかね」

刀夜「そうなの?そんな風には見えないけど」

レッサー「最初は殺すつもりが逆に命を助けられて、次は第三次世界大戦中のロシアへ逃避行しただけです」

刀夜「00○のシリーズにありそうな話だよね、それ」

レッサー「ある意味核心を突いていそうなご指摘ありがとうございました、えぇ本当にもう……ってか、そういう話ではなく!」

レッサー「繰り返しますが、あなたはただ胸を張ってるだけで良いんですよ。誰に対しても引け目を感じる所なんかありゃしませんって」

刀夜「……そうか。ありがとう」

レッサー「いえいえ、お気になさらず――あ、でもあなたに問い正したい所が一つだけ」

刀夜「なんだい?」

レッサー「不幸がどうこうじゃなくて、もぉぉぉぉぉっとタチ悪ぃ、『アレ』」

刀夜「うん?だから何?」

レッサー「あ、トイレから出て来たんでちょい見てみましょうか」

当麻『……えぇっと、注文注文』

ドンッ!

当麻『あ、ごめん――じゃなくてソーリー?』

刀夜「どこかのレディと肩が当たったね。謝ってる」

レッサー「普通はここで終るんですよ。普通ならば」

レディ『――』 グッ

刀夜「うん?当麻が女性に胸倉捕まれてる?」

レッサー「何か言ってますが、聞こえないので私が読心術を」

レディ『――シッ!静かに!このまま動かないで!』

上条『何?動かないでってどういう意味だよ?』

レディ『黙ってて!少しだけで良いから!』

バタバタバタバタバタ……

刀夜「おや?突然店内に黒服の集団が入ってきた?」

レッサー「どう見ても訓練された人間――”っぽい”ヒト達ですねぇ」

レッサー(歩くとギシギシ音がする辺り、球体関節の”人形”なんでしょうが)

……バタバタバタバタバタ

刀夜「――と、思ったら直ぐに出て行ったね。誰かを探しているんだろうか?」

刀夜「てかあからさまに怪しいトイレの前で抱き合ってる二人をスルーしてるよね?」

レッサー「はい、まぁ、えぇっと。仕様です」

上条『なんなんだよ突然――ってイタっ!?』

レディ『気安く触れないでよこの変態っ!』

上条『……はぁ?お前何言ってんの?』

レディ『……じゃあね』

カツカツカツカツ……

刀夜「行っちゃった。何なんだろう、あれ?」

レッサー「――いや、まだ終っていませんよ!見て下さい上条さんの足下を!」

上条『……うん?なんだこれ、宝石?』

上条『――じゃねぇな、これ。内側から光ってる……』

刀夜「フラグだよね?私が言うのも何なんだけど、相当面倒臭い部類へ入るフラグに決まってるよね?」

レッサー「……えっと、まぁ見て下さいよ。まだ話は終ってませんから」

上条『さてっと、交番に届けたもんか――っとあん?』 グッ

女の子『……』

刀夜「いつの間にか現れた女の子が当麻をシャツを掴んでる……」

レッサー「……えぇ、私にも感知出来ない程の早業ですよ、はい……」

上条『どしたー?迷子かー?パパかママと一緒じゃないのか?』

女の子 ブンブン

上条『そっか、それじゃ警察――いや、空港だから迷子センター行くしかねーな』

上条『つっても子供――あぁ、すいません、店員さん、この子が飲めそうなメニューってある?』

上条『キャラメルとミルク……そうそう、コーヒー入ってないの』

刀夜「当麻!随分立派になって……!」

レッサー「てか英語しか使えないのに、キャラメルとミルクの単語だけで注文する上条さんのメンタルって……」

上条『お待たせー。どうぞどうぞ、飲みなよ』

女の子『……?』

上条『大丈夫、お兄ちゃんが払ったから。な、店員さん?』

女の子『……』 ゴクゴク

上条『あーあとすいませんけど、この子連れて行けるような所ってあります?迷子センター的なの』

上条『何?カード?クレジットカード寄越せ的な話?』

上条『首?……あぁ社員証みたいに下げてるのね。オーケーオーケー』

上条『よし、それじゃちっと見せて貰って――』

上条『……?』

上条『――どっか、行った……?』

刀夜「……何かまた一瞬で消えたんだけど、これはどういう事なのかな?」

レッサー「多分、選択肢的なアレでしょうな。やっぱり」

レッサー「落とし物をどうするか、はたまた念のため迷子センターへ行くか行かないかでルートが変わるのかと」

刀夜「ルートって何?日本語ではなんて言うのかな?」

ボス『――と、言う訳でな。少し顔を貸すんだよ、勿論拒否権はないぞ!』

上条『何?なんでお前暫くぶりにあった瞬間命令口調なの?つーかどっから現れやがったボス!?』

刀夜「おやおやー?今度はまた新しいフロイラインが出て来たねぇ。かなーり非合法的な感じの」

ボス『それは違う!それは違うぞ愚か者めが!』

ボス『お前は目を開いているのか?本当に?そう言い切れるものか?』

ボス『たったこれだけの真実へ行き当れずに、目が見えると思ってるのかバルドルめ!身の程を知りたまえ!』

ボス『光は暗闇を照らすものの怪物が出る!見えなければ存在しなかったものを”識る”のが、果たして賢明と呼べるのだろうか?』

ボス『蓮の華が開くのは、それ即ち適した主が現れる時に決まってるだろうが!』

ボス『さぁ、宣言せよ!キャメロットの猪とは違う!世界の綻びを魔神の喉元へ突きつけてやれ!』

上条『……えぇっと通訳の方ー?誰かこの電波系金髪ロリの子の言語を翻訳してあげてー?』

上条『つーか隠れて見てねぇでさっさと出て来やがれマーク!』

通訳『あ、すいません。ボスは12才児なのに中二病を発症してるもんで』

通訳『意訳すると、「次の方どうぞ」、ですね』

上条『次?次って何?』

修道女『おんや?上条さんじゃねぇですかい。どうしたんです、こんな所で?』

上条『また出やがった!?今度は何?何なの?』

修道女『相変わらずボケボケっとしたお顔をしてやがって何よりです……全くこっちは大変だってぇのに、暢気なもんですね』

通訳『事件でも起きたのですか?』

修道女『そっちでも把握してるでしょーに。例のアレ、「亡霊騎士団(ワイルド・ハント)」の連中ですよ』

修道女『つーか暇だったら手伝っちゃくれませんかい?生憎こっちは万年人手不足でしてね』

刀夜「……えっと……」

レッサー「……えぇまぁ、はい。既に何となーくお察しかとは思いますが」

刀夜「当麻の周囲に、段々と女の子が集まって来て……る、よねぇ」

レッサー「面倒なんでぶっちゃけますけど――上条刀夜さん!」

刀夜「あ、はい」

レッサー「『不幸』がどうこう言う前に、もっと反省すべき所はありませんかね?」

レッサー「具体的には『アレ』をどうにかしろっつってんですよ!」

レッサー「遺伝にしても程かあるでしょうが!?この短時間に何人とフラグ立てれば気が済むんですかっ!?」

レッサー「不幸不幸と言う割にはラッキースケベを連発しますし、本当に不幸なんですかねっ!?」

刀夜「……はい、なんかもう、色々とすいません。でもコレばっかりは遺伝だから」

レッサー「遺伝?DNAの中に悪魔が居るってんですか、あ?」

刀夜「私の父さん、当麻の爺ちゃんも、まぁ似たような感じだから」

レッサー「よく断絶しませんでしたね?主に痴情のもつれや嫉妬で」

刀夜「詩菜さんと結婚した時は大変だったよ……」

レッサー「すいません、目の前の上条さん見てるだけでお腹イッパイなんで、その話はキャンセルして貰っても構いませんかね?」

刀夜「あ、君さ」

レッサー「はい?」

刀夜「『当麻さん』から『上条さん』へ戻っているよ?

レッサー「ウルセェですよクソ親父。つーかこういう所だけ鋭い親子って……」

刀夜「まさに遺伝だね!」

レッサー「……誰かこの人達のゲノム殺してくれませんかねぇ……?」

10代後半の少女「――おや、そこに居るのは確か」

レッサー「はい?どちらさんで?」

刀夜「――あぁ君は確か、パブに居た――」

10代後半の少女「あの時は驚いたぞ。まさかの人の身で『危険域』から抜け出るとはな」

刀夜「いやいや、おじさんの経験だよ。君とは違って少しだけ長く生きているからね」

10代後半の少女「……長さで言えば我らの方が種族として長命なのだがな。ま、生き方が違うか」

10代後半の少女「ともあれそなたには世話になった。その借りを返したいと思っていた所だ」

刀夜「あーいやいや、。別にお礼される程のもんですもないさ。それに私はもう貰っていますからね」

10代後半の少女「……?した憶えなどないが?」

刀夜「言ってくれたじゃないですか――『ありがとう』って」

10代後半の少女「……っ!」

刀夜「チャーミングなお嬢さんにそう言われたら、お釣りが足りないっても――おや?」 ガシッ

10代後半の少女「……ダメだな、私は。どうやってもそなたを諦めきれないらしい」

刀夜「フロイライン?どうかしましたか?」

10代後半の少女「一緒に来てくれ!森が大変なんだ――」

刀夜「ちょ!?ちょっと待って――」

……

レッサー「……あれ?本当にどっか行った……?てか今の女性、耳がヤケに尖っていたような……?」

レッサー「エルフの女騎士がスーツ着てたらあんな感じ……」

レッサー「……」

レッサー「……」 ポクポクポクポク

レッサー「……!」 チーンッ

レッサー「えぇっとぉ、鞄にー」 ガサゴソ

レッサー「ねんがんの、ないぶしりょうを、てにいれたぞ!」 キリッ

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を


レッサーの魔方名凄まじいな
上条家(男)は相変わらずのフラグ建築力

乙です。
毎週楽しませてもらってます。

色々あるだろうけど、定期的に投稿続けてくれててありがたい。

本編でレッサーが触れてたことだけど、
日本で世に言う「英語力」ってなんなのさって勉強してて思う…考えさせられたよ。

>>25
原作でも絡んでほしいんですが、一介の魔術師に果たして出番が来るのか、と

>>34
あくまでも個人の体験の域を出ない話ですが、素直な感想を書いています
「人に素早く分かりやすく伝える」のか目的の日常会話と「正確に精密で瑕疵の許されない」公的文書、違って当然

これを勘違いするとエラい事になりまして、日本の近くにある某自称TOEIC大国出身のパイロットが英語を碌に聞き取れず、
旅客機事故を起こしそうになったというエピソードもあるぐらいです

――『明け色の陽射し』 ロンドンにあるアジトの一つ

レッサー「――うーむ。結論から言えば真っ黒でしょうかねぇ、こいつぁ」

バードウェイ「どれ、見せてみろ」

レッサー「なんて言いましょうか、素人ですらどこから突っ込んで良いのか困るレベルですよ」

バードウェイ「……30代の若人がCF、しかも立て続けに10人だと?馬鹿げている」

バードウェイ「疑ってくれと言ってるようなもんじゃないかね、これは」

レッサー「でっすねぇ。しかもジギタリスすら常備してなかったせいで、応急処置も出来ずにそのまま、と」

バードウェイ「よくもこんなチャチな書類で保険金が下りたもんだが……あぁ”だから”か」

レッサー「ですね。逆に杜撰すぎて下りなかったもんで、当――上条さんのお父様へお鉢が回って来たのでしょう」

バードウェイ「他にもホメオスパシー系が『なんて良心的なんだ!』と思えるような内容、感動すらも覚えるな」

レッサー「って事はやはり?」

バードウェイ「ま、二種類の詐欺に関してはクロ。だがそれが連中の仕業とは限るまい?」

レッサー「いやぁそれがですねぇ。担当医の名前、読んで下さいな」

バードウェイ「……あぁ。聞いた名前だな、どこかで」

レッサー「ですなー。あからさま過ぎて罠を疑うレベル」

バードウェイ「むしろ罠ではない、と言うのが不自然なぐらいだが……さて?」

レッサー「……えぇ!」

バードウェイ「……」

レッサー「……」

バードウェイ「なぁ、一ついいか?」

レッサー「あい?」

バードウェイ「私が折角内部資料を解説してやってるのに、あの馬鹿者はどこで何をしてるんだっ……!?」

レッサー「あー……あちらを」

上条「――マジ?この食材使って良いのかっ?」

マーク「勿論ですとも。何せ上条さんのためにご用意させて頂いたものですから」

上条「え、俺?なんで俺のために?」

マーク「ウチのクソガ――もとい、ボスがね。実は『そろそろあの馬鹿者が来てもおかしくないな!』なんて言ってまして」

上条「あ、そうなんだ?占いスゲーな」

マーク「約十日前から」

上条「凄くなかったな!?九日は外してんじゃん!?」

マーク「いえいえ、ほらユーロトンネルで大暴れしてましたよねぇ?アレ見てボスが」

マーク「『……成程成程。ARISAの護衛か……これは流石に一人の手には余るだろう……ククク』」

上条「やだ脳内再生率ハンパじゃない」

マーク「『どうせ私達、”明け色”に泣きついてくるんだろうが、そう安売りはせん!たまには痛い目を見るがいいさ!』って宣いやがったんですが」

マーク「でも実際にご一緒なさったのは、そちらのお嬢さん方でしょう?だもんでボス大恥、ザマーミロ的な?」

上条「あ」

バードウェイ「……」

マーク「しっかも挨拶ぐらいしてくれても良いのに、スルーしてさっさとイタリアへ向かいましたよね?それでもう、ボス激怒」

マーク「未練タラッタラで、上条さんから『助けて!?』的な連絡が入るかも?ってずっとソワソワしてましてね」

マーク「そうしていたら『網』に上条さん達がロンドンへ来るって――って、どうしたんですか?何か、いやーな顔してますけど?」

上条「マークー、後ろ後ろー」

マーク「何ですかそれ。日本のモーストフェイバリットコメディアンじゃあるまいし――」

バードウェイ「マァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァク……ッ!!!」

マーク「違いますってボス!?これは危険がピンチですから!?」

上条「気持ちは分かるが混乱しすぎだろ」

マーク「てか上条さんっ!なんで言ってくれなかったんですかっ!?」

上条「だって遅れだもの。お前が悪っそうな物真似してた時、既にボスからタゲられてたし?」

マーク「確かにそれは不回避ですけど!?ソレだってもう少し傷が浅いウチに止め――」

バードウェイ「――る、と思っていたか?」

マーク「……いえ、ですけあばばばばばばばばばばばばはばばばばばっ!?」

バードウェイ「ほーら、お前”も”大好きな虐殺ウサギだぞー?」

レッサー「良い感じにスパークしてやがりますね。アメリカの処刑はこんな感じでしょうか」

上条「……なんだろう?俺には縁も縁もないのに、何故か寒気が……?」

レッサー「そういう時には人肌で暖め合うのがセオリーですなっ!」

上条「イギリスの常識が世界で通用すると思うなよっ!?」

バードウェイ「そんな常識持った憶えはない。捏造しないで貰おうか」

上条「あー……なんか、ごめんな?挨拶もしなくって」

バードウェイ「終った話だ。貴様に人並みの社交性を求めた私が愚かだったさ」

上条「終ってないよね?根に持ってるもんね?」

バードウェイ「……私だって少しばかり期待はしていたのだからな、少しだけ、だが。勘違いはするなよ?」

上条「……バードウェイ」

バードウェイ「お前がどんなマヌケ面を晒して無様にDOGEZAを決めるか、心の底から楽しみにしていたのと言うのに!」

上条「期待の方向性が違うなっ!?発想からして歪んでやがる!」

上条「……まぁいいや、メシ作っちまうから。二人とも手ぇ洗ってこい」

バードウェイ「わかった――行くぞ、どうした?」

レッサー「素直になれよツンデレ」

バードウェイ「黙れ、殺すぞ」

――食事後

上条「で、なんでバードウェイさん居んの?」

バードウェイ「成り行きだよ。路頭に迷う馬鹿者共を見捨てておくのも気が引ける」

上条「マークの証言と180度方向性が違うんだが……まぁいいや」

上条「それよりもお前らが父さんの鞄を勝手に開けてる件について!」

レッサー「や、ほら、なんかエルフの女騎士っぽい人に拉致られてましたでしょ?なのでお荷物は預かるのが筋じゃないかと」

上条「どこ行きやがった父さん!?仕事放り出してまで!」

レッサー「それで手数料的なお駄賃のような意味合いで、まぁちょろっと見るぐらいは良いんじゃねぇかな、と」

上条「……いやぁ、うん。それはちょっとスルー出来ねぇなぁ」

バードウェイ「ま、気にするな。彼には彼の仕事があり、私達とは道が異なるだけだ」

上条「同じだよね?サフォークって言う所まで同じだったもんね?」

バードウェイ「どっちみち同行は出来なかっただろう?お前は父親を危険地帯へ向かわせるつもりだったのか?」

バードウェイ「何のかんのと理由をつけて断念させるか遅らせる、違うか?」

上条「まぁ、そうなんだけどな」

レッサー「そんなにお堅いこたぁ言いこっなしってヤツですよ、えぇ。大事の前の小事とは言いましたでしょう」

上条「……父さんがどっかの誰かに拉致られたのが、『小事』?」

バードウェイ「携帯電話はどうした?先程何か話していただろうに」

上条「あー……衛星電話らしくてさ。会社に連絡して欲しいって頼まれたんだよ」

レッサー「ほら!やっぱり無事――」

上条「――『当麻、エルフって本当に居たんだな!』っつってんだけど、これ、無事か?」

レッサー「あー……」

上条「どう考えても頭イタイか、もっとイタイ状況に陥ってると思――なに?」 トスンッ

バードウェイ「――では話を始めようか」

レッサー「ぐぎぎぎっ!幼女を胡座の上に乗せるなんて!上条さんの変態っ!」

上条「お前一部始終見てたじゃねぇか!?どこに俺の自由意志があったと!?」

レッサー「嫌がる素振りも見せないなんてドンだけ好きモンなんですかっ!」

上条「や、別にいいかなって」

レッサー「幼女の仄かにミルク臭い体臭を胸の奥へくんかくんか吸い込んでガイアの息吹を感じつつ!」

レッサー「丁度お尻辺りにツンツンしながら、『ホラ、俺の妖怪さんがどこかに居るか、ウォッチしてご覧?』とか言うつもりなんでしょう!?」

上条「レッサーさん、それ妖怪じゃなくて『”幼”怪』。べとべとさん親戚のペ×ペ×さんの話じゃね?」

レッサー「『幼怪体操、しようか?』」(キリッ)

上条「どんな体操?あ、もしかして青信号の車道で踊ってたのは、『行っとけ!』みたいな比喩が込められていたの?」

上条「てか前から思ってたんだが。そんな素人じゃ考えつかないような発想をする方が、どっちかっつーとおかしくねぇかな?」

上条「明らかに堅気の人の発想じゃねぇもの!どう見てもその筋の玄人だもの!」

レッサー「余談ですが、『イノケンティウス』と『芋けんぴ薄っ!?』って似てません?」

上条「フリーダム過ぎるわっ!?天丼の三段目には同じ系統のネタ持ってくるのがセオリーでしょぉぉぉぉっ!?」

上条「確かに芋けんぴはほんのちょっと似てるけどさ!ここで前振りもなく飛び出すネタじゃないし!」

バードウェイ「……おいお前達。さっきから黙って聞いていれば、人を特殊性癖用のカテゴリーへ入れないで貰おうか」

バードウェイ「多少幼さを残すとはいえ、明らかなレディに暴言を吐くのもいい加減にし給えよ」

上条「だって子供じゃん?普通の女の子だったらしないし?」

レッサー「せめて膨らみを抑える乳バンドをつけないと、おっぱいはおっぱいと呼べませんねぇ、はい」

レッサー「今ぐらいの膨らみだと――”おっ”ぐらいが適当かと。あ、多少オマケしてですよ?」

バードウェイ「――よし、表へ出ろ。猪の牙をへし折ってやる!」

上条「コラ暴れんな!大人しくしとけ!」 ナデナデ

バードウェイ「はーなーせっ!気軽に撫でるんじゃないっ!」

上条「あー、レッサーいいから話進めてくれ」 ナデナデ

バードウェイ「……っ……!」

レッサー「嫌なら別に退けばいいんじゃないですかね、どっちも」

上条「何?」 ナデナデ

バードウェイ「……」

レッサー「この『幻想殺し』……なんかこう、イラっと来るって言いましょうか。や、まぁいいんですけど」

上条「だから俺の能力にはそんな意味は無いと何度言ったら」 ナデナデ

バードウェイ「……くっ、殺せ!」

上条「アレ!?いつの間にか妙な能力獲得してたのっ!?」

レッサー「幻想とロ×を開発する能力……!なんて恐ろしい……!?」

上条「怖いけど、それある意味で幻想殺せてないよね?あとむしろ殺されるのは俺の社会的立場だよね?刑法的な意味で」

レッサー「――さて!これ以上は条例が怖いので突っ込みませんが!書類の内容から説明しますけど――」

上条「条例?どこの条例?非存在が存在しちゃう系の条例なの?」

レッサー「えぇっとですね。書類に拠ればこの方――というか医療団体は二つの嫌疑がかけられています」

レッサー「一つはスタバでも言った国民保健サービスで不正診療をし、要求してるといった所でしょうな」

上条「疑似医療行為だっけ?」

レッサー「ですな。お父様が仰っていた通りっちゃ通りでした――んが!」

上条「……」

レッサー「んーーーーーがーーーーーーっ!!!」

上条「そ、それでっ!?」

レッサー「でもその資料は『参考資料』でして、本命は別にあったみたいです」

上条「医療報酬じゃなくて?」

レッサー「えぇ。だってそっちは儲けが少ないですからね。だもんでそんなに派手にはやってないかと」

上条「充分大事だと思うが……それじゃ何を?」

レッサー「まぁぶっちゃけ保険金詐欺ですな」

上条「……もしかして?」

レッサー「ご想像の通りの、いやーな感じの方ですね。保険金かけて『事故死や病死』する的な話」

上条「ガチじゃねぇか……!」

レッサー「考えてみればお父様は民間の方なんでしょう?なら、同じく民間保険会社の依頼を受けたんでしょうな」

レッサー「国民保健サービス云々はあくまでも参考。っていうか、もしそっちか主目的だったら国が動いている筈です」

上条「……敵、ヤクザかよ……」

レッサー「『だったらまだ良かった』んですがねぇ。生憎それがそうでもないらしくて」

上条「またまたー、ヤクザ以上にタチ悪いのってそうそう居る訳がないじゃないですかー」

レッサー「完全に熱湯風呂的なお約束へ入ってますけど――ま、こちらをご覧下さいな」

上条「診断書……?ほ、ホラ俺ドイツ語とか見せられてもね!」

上条「いや残念だわー、英語だったら読めたのにー」

レッサー「え?なんでブリテンでドイツ語なんて使うんです?」

レッサー「日本と違ってドイツから医療技術仕入れた訳じゃないですからね、勿論英語で書いてありますけど?」

上条「……ごめんなさい」

レッサー「いえいえ。分かります分かります、好きな子の前だと格好つけたくなっちゃいますもんねー」

上条「不本意な解釈をされてる……!?ポジティブで結構だが!」

レッサー「それにお見せしたいのはホラ、下の医師の署名欄」

上条「どこ?」

レッサー「ここですよ、こーこ」

上条「また達筆に筆記体だが……えぇっとW=ウェイトリー……ウェイトリィ!?」

レッサー「ブリテン風の発音だとウェイトリ”ー”ですね」

上条「関係者?それとも本人?」

レッサー「こっちの資料には60過ぎの初老の男性だと書いてありますねぇ。なので本人ではないかと」

レッサー「とはいえ、偶然の一致として片付けるにはおかしい――ん、ですがねぇ」

レッサー「その前に少し情報を整理しません?気になる事がありまして」

上条「ん、あぁ良いけど。大した情報は持ってないぞ」

レッサー「それは上条さんの『主観』であり、情報の価値のあるなしは別問題です。でわでわ質問!」

レッサー「髪はロングが好き?それともショートの方がいいでしょうか?」

上条「似合ってりゃなんでも。あんま奇抜じゃなければ別に」

レッサー「……」

上条「……」

レッサー「……上条さんっここはツッコむ所じゃないですかねっ!?」

上条「逆ギレじゃねぇか!?『あ、やっぱそっちか!』とは思ったけど、一応答えてんじゃん!?」

レッサー「……どーにもこう、マンネリ感が拭えませんが……まぁ気を取り直しまして真面目に!」

上条「本当だな?フリじゃないんだよな?」

レッサー「ってかもうそれ自体が『押すなよ!?』って感じになっちゃってんですが。あんまりボケても話が進まないので、えぇ」

レッサー「『濁音協会』――通称『S.L.N.』、一度は滅びてんですよね?」

上条「って言った、よな?ステイルからのまた聞きだが」

レッサー「ずばり、『いつ』の話?」

上条「10年前、ローマ正教が関係してるらしい」

レッサー「『必要悪の教会』は?」

上条「イギリスのサフォークにも居たらしくて、知り合いの先輩達がカタをつけたって」

レッサー「にゃーるほど、うむむむ……」

上条「それが何か?」

レッサー「おかしくないですか、それ?」

上条「矛盾は無い……よな?あ、マタイさんに直接訊きゃ良かったか」

レッサー「ではなく。『必要悪の教会』が、ですよ」

上条「うん?」

レッサー「仮に今から行くサフォークが、『S.L.N.』の残党なり後継者だったとしましょう。仮にですよ?」

レッサー「『わざわざ残党を残すような生温い処置を連中がする訳が無い』じゃないですか」

上条「……説得力、ありすぎるよな」

レッサー「良くて皆殺し、悪くて地図上から街そのものが消えていても不思議じゃ無い、って言うのにですよ」

レッサー「なーんか不自然だと思いません、これ?杜撰っていうか、手落ちってのも、違いますかね」

レッサー「あぁっと日本語で――あ、そうそう!『示し合わせたかのように』です!」

上条「『必要悪の教会』がグルって可能性も?」

レッサー「ゼロでは無いでしょうが、流石にそこまでは落ちぶれてないと思います。あんまり酷いようだったら、ウチの先生が介入してるでしょうし」

上条「先生も魔術師なのか?」

レッサー「昔はぶいぶい言わせてた、なんつってますけど怪しい所です。ま、それはともあれ」

レッサー「『必要悪の教会』、つまり『清教派』に歪みがあれば他の二派閥がここぞとばかりに潰すでしょう。なので主導では無いかと」

レッサー「ですが、『清教派』内部の誰かさんが意図的に隠した、とか?」

上条「……それもある話だな」

バードウェイ「……おい」

上条「ん、どした?」

バードウェイ「撫でる手が止まっているぞ馬鹿者が!」

上条「え!?そこキレる所なの!?」

バードウェイ「重要情報をくれてやると言っているんだ。そのぐらいしてもバチは当たらんさ」

上条「ってもお前、10年前だったら流石に憶えてはねーだろ」 ナデナデ

バードウェイ「ん、んんっ……まぁ、そうなん、んっ!だ、がっ……っ!」

レッサー「すいません上条さんとバードウェイさん、絵面がエロ同人みたいになってますんで、ナデナデはお話が終了してからで宜しいでしょうか?」

上条「ユカタン?」

レッサー「あぁ、いいですいいです。上条さんはどうかそのまま、汚れの無いまま育って頂きたい」

バードウェイ「……まぁ、その、なんだよ。私は関わっていない、先代ボスが殲滅に参加したという話を聞いただけだ」

上条「それじゃマークから詳しく話を聞け――」

マーク「……」

上条「――は、まだ復活してねぇな」

バードウェイ「ヤツもまだ若いから知らんよ。そうじゃなく、時間の話だ」

バードウェイ「私が聞いた分だと、『私が生まれる前に殲滅した』と」

レッサー「……っ!?」

上条「ふーん?それじゃ伝聞でしか知りようが無い――って、レッサー?」

レッサー「えと、12才児って言いましたよね、あなた?」

バードウェイ「”児”は余計だ」

レッサー「……食い違ってますよね、これ」

レッサー「『必要悪の教会』が滅ぼしたのが『10年前』で――」

レッサー「――先代『明け色の陽射し』が参加したのが『最低でも12年以上前』――」

レッサー「――なんでしょう、これは……?」

上条「バードウェイの勘違いじゃ無いんだよな?」

バードウェイ「まさか。お前でもあるまいし」

上条「ですよねー……だったらステイルが面倒臭くてテキトーぶっこいたとか?」

レッサー「で、済めば良いんですけどねぇ。今まで、そんなケースありました?」

上条「……大体、最悪の伏線になって帰って来ました……鮭の稚魚が大きくなって川を遡るようにねっ!」

レッサー「中々ドラスティックな人生で結構ですな。しかし、むー……?」

バードウェイ「直接お友達に訊いてみろ。禁書目録でも構わないが」

上条「いや、それがさ。最近連絡取れないんだよ」

レッサー「最近?具体的にはいつ頃から?」

上条「イタリア入ったぐらい。『団長』とやり合う前」

レッサー「信用出来る方なので?」

上条「あぁ、一点においては世界の誰よりも。だから『協会』の殲滅には一番熱心にやってる筈だ」

レッサー「……そうですか、んー……?」

上条「何だろうな、これ?不自然っつーか、気持ち悪――」

上条「――いや、不自然なのは今更、か?」

レッサー「なんです?他にも何か?」

上条「建宮――天草式十字凄教の知り合いとも話したんだが、色々と納得が行かねぇなって事だよ」

上条「向こうの作戦が杜撰で行き当たりばったりだって」

レッサー「あぁ成程。確かに、ですな。私もそう思っていましたよ」

レッサー「戦力を小出しにするのは下策中の下策。ムダに仲間を死なせたい目的でも無い限りはしません」

レッサー「あれだけの術式と霊装を持ちながら、最初の一回以外は全て幹部が組織単位でバラバラに動いている」

レッサー「しかも『団長』に限っては夢に二人を閉じ込め、何をしたかったのかも不明と来てますし」

上条「最初は単純な時間稼ぎだと思ったんだが、終ってみれば一瞬。もっと長かったら襲撃されてたのかも、だが」

レッサー「あー、その可能性も否定出来ませんねー」

上条「……?」

レッサー「上条さん?」

上条「……そういやステイル――『必要悪の教会』と最後に会った時、変な事言ってやがったな、って思ってさ」

レッサー「変な事、ですか?」

上条「んー……?や、でもあれは関係ないのかも?説明が面倒臭いから、『新しい友達に訊いてみれば?』的なニュアンスだったし」

レッサー「ですから、具体的にはどのような?」

上条「――『アルテミスの猟犬はどこから来たのか?』――」

――イギリス東部高速列車 朝

上条「……」

上条「……お?」

上条(明るい?てかここ、電車の中――痛っ!?)

上条(全身、あちこちが殴られたように痛い……痣にでもなってるみたいだ)

上条(俺、レッサー達と話してた、よね?なんでこんなトコ――)

レッサー「上条さん!」

上条「レッサー?」

レッサー「良かった、気がついたんですね……私、どうしようかと心配で」

上条「おいおい、お前らしくないな。心配なんてさ」

レッサー「一体どこへ捨てようか、もう……!」

上条「処理の心配っ?まずは病院連れてってあげて!……っ!?……」

レッサー「あー、大声上げるからですよ。少しとはいえ怪我人なんですから」

上条「その怪我人を、意識の無いまま列車に乗せるのもどうかと思うんだが――何があったんだよ?」

レッサー「憶えてないんですかっ!?凶悪な魔術師の襲撃を受けたんですよ!」

上条「そう、だっけ?」

レッサー「上条さんは必殺の一撃を消しきれずに直撃。意識を刈り取られたのを見て、私が担いでさっさと逃げ出しました」

レッサー「いやー、あと少しあの場に居たら命は無かったでしょうね」

上条「……そっか。ありがとなレッサー」

レッサー「いえいえ、どういたしまして」

上条「あ、なんか段々思いだしてきた……」

――回想 『明け色の陽射し』 ロンドンにあるアジトの一つ

バードウェイ「だから私は最初に言ったじゃないか、『アルテミスの猟犬共め』と」

上条「聞いてねぇよ。つーかお前最後に会ったの学園都市で俺の下腹へ穴空けた以来じゃんか」

バードウェイ「……あぁ思い出したよ」

バードウェイ「確か学園都市の路地裏で、背後から有無を言わせず、雄々しくドリル的なモノを私へ突き立てようとしたんだったか」

上条「言い方!?それだとまるっきり性的な意味で犯罪者じゃないですかっ!?」

レッサー「え!?届いたんですかっ!?まっさかぁ、幾ら何でも」

レッサー「……あ、いやでもこの身長差で、フルパワー時にならなんとか……?」

上条「コラそこ指で大体の目算をしない!アリサ居ねぇからって露骨な下ネタ解禁になった訳じゃねーから!」

レッサー「ちなみにドリル……あっ!比喩的表現ですよねっ分かります!」

上条「違うよ?そういう意味じゃないよ?日本人男性には多いけど、俺が必ずしもそうだって訳じゃなくてだ」

上条「あのドリルは工業的なアレでね、決してドリルがドリるみたいな暗喩は」

上条「だからもうアマゾンでリドル・ドリル先生の、勘違い新作がね、読めなくなっちゃったのは少し寂しい」

バードウェイ「しかもその後、何が気に食わなかったのか、私の頬を叩いて『俺がお前を利用すりゃいいだろグヘヘヘヘ』とか言ってたな」

レッサー「真性じゃないですかヤダー」

上条「逆じゃなかったかな?」

レッサー「ではやっぱり仮性で?」

上条「表へ出ようか?テメェの幻想ぶち殺してやるよっ……!!!」

バードウェイ「殺し合いは余所でやれ。近所迷惑だ」

上条「だから!俺の話はどうでも良いんだよ!お前らには関係ないし!」

レッサー「……」

バードウェイ「……」

上条「何?なんで気まずそうなの?」

レッサー「――しかしまた、アルテミスですか。予想の範疇であったとはいえ、嬉しくも有り難みもない話ですよねぇ、はい」

バードウェイ「よく分からんが、相も変わらず波瀾万丈な人生で羨ましいものだよ、なぁ?」

上条「望んだ憶えはないっ!俺は平穏に生きていたいだけなのっ!」

レッサー「で、あれば禁書目録さんを警邏組織へ不法侵入で突き出し、毎回突っかかってくるビリビリさんを刑事告訴すれば良いでしょうに」

レッサー「それが出来なかったからこそ、今のご自分があるって自覚して下さいな」

バードウェイ「馬鹿が馬鹿みたいに悩んだって馬鹿だから分かりはしないんだよ、この馬鹿」

上条「……二人の正論に俺のMPゴリゴリ削られていく……!」

レッサー「馬鹿って認めるんですか……ま、さておきましょう!『おバカな子程可愛い』って母親から言われ続けてる私が言うんだから間違いありません!」

バードウェイ「普通に諦観の境地へ達しているだけだな」

上条「お前をそこまで伸び伸びと育てやがった親には、正直ちょっと興味ある」

レッサー「アルテミスの話は憶えておいでで?」

上条「『エンデュミオン』って男の人が居て、その人に恋をした神様だっけ?」

バードウェイ「それは『セレーネ』だ。ま、後に同じ月の女神であるアルテミスと合一・同一視されるがね」

上条「ステイルが言ってたのは、その『猟犬』って単語。関係あんのかな?」

レッサー「あちらさんがエンデュミオンと関わりのあるアリサさんを狙ってる以上、意味を持つ可能性が高い――いや、むしろ」

レッサー「『分かっていて』情報をこちらへ流した可能性が」

上条「と言うと?」

バードウェイ「機密情報は上から口止めされていて言えない。だが世間話は出来る」

バードウェイ「特にお前はMagicの”M”も書けないド素人だ。だからある程度『解説”してやる”』必要がある」

バードウェイ「その過程で、たまたま、偶然、何かの拍子で」

バードウェイ「確信に近い何か、真実へ至る道標、迷路を抜ける毛糸玉を与えてしまっても、それは偶然だから仕方がないと」

バードウェイ「ましてや相手は何も知らない相手。重要性なんて気づく訳がない――誰かに話さない限りは」

上条「的確に黒い説明ありがとうボス……言われてみれば、建宮もやったら説明台詞多かった気がする……」

レッサー「内容、憶えてます?」

上条「……何となくは、まぁ何とか!」

レッサー「バックログでもありゃ良いんですけどねー。ま、基本的な所から行きますか」

レッサー「上条さんは『アルテミス』についてどの程度まで知識をお持ちですかね?」

上条「俺?そうだなぁ……名前と、あと月と弓の神様ぐらいか?」

上条「ゲームに出てくる『アルテミスの弓』的なのは、大抵最強レベルの弓装備だっつーぐらい」

レッサー「大体合ってますし、その知識でほぼ把握してると言っても過言ではありません」

上条「お、褒められた?」

レッサー「ただし『一般人としては』という注釈が入りますがね」

上条「……ガッカリだ」

バードウェイ「それでいいんだ。魔術師知識を持っていたとしても、日常生活では使い道に困る」

レッサー「中二病が治らないのも厄介ですしね――それでは、そうですねぇ、どこからお話ししたものか」

バードウェイ「神性からで良いだろ。背景を知る上で必要不可欠だ」

レッサー「ですなぁ。では上条さん、今『アルテミスの弓超強ぇーハンパねー』と仰いましたが」

上条「言ってない。俺そこまで言ってないわー」

レッサー「『どうして強いのか?』と考えた事は?」

上条「狩猟の神様だから、だな。獣を射る弓の扱いが上手いって事なんだろ」

レッサー「合ってます。では『どうして狩猟の神であるのか?』とは」

上条「……そこまで深くは考えねぇって。『そういうもんだ』と」

レッサー「ま、神様なのでそんなもんですよ。それもまぁ正しい理解っちゃその通りなんですが」

バードウェイ「アルテミスの逸話として、弓矢を持ち山野を駆け抜ける姿が言い伝えられている」

バードウェイ「また彼女へ仕える巫女達は熊を真似る踊りを捧げる。従者の一人であったカリストは純潔を失うと熊の姿へ変えられた話もある」

バードウェイ「同時に生まれたばかりの身でありながら、母の出産に立ち会い、弟のアポロンを生ませた――よって妊婦や出産をも司る、そうだ」

バードウェイ「特にエペソス――トルコのエーゲ海東端にあった都市では、アルテミス神殿と神像が残っており」

バードウェイ「その姿は『多数の乳房を持つ』形をしている」

上条「へー」

バードウェイ「だがしかし、これは矛盾しているんだ。それも明確に」

上条「どこが?つーか神様や神話に矛盾も何もあったもんじゃ――」

バードウェイ「ギリシア神話のアルテミスは『純潔と狩猟の神』で――」

レッサー「――エペソスのアルテミスは『豊穣と出産、そして狩猟の神』なんですよねぇ」

上条「……はい?」

バードウェイ「『カリストは純潔を失い雌熊への姿を変えられた』んだが、『豊穣の女神がそんな事をする道理がない』と思わないか?」

バードウェイ「もしカリストが身ごもっていたら?そうするとアルテミスは『自身が加護を与えるべき妊婦へ罰を与えた』話になる」

レッサー「『純潔の神』と『豊穣・出産の神』は明らかに相反するんですよねぇ、これが」

上条「アルテミスは出産の神様、妊婦さんを守る神様であって」

上条「妊婦さんになるためには……まぁ、その、なんだ。すべき事をしなくちゃならない訳で」

上条「でもそうするとアルテミス的にはNGだって話か?矛盾、つーかおかしいだろ!」

レッサー「その疑問へ対する回答としては『アルテミスは元々オリンポスの神ではなかった』でしょうかね」

上条「え?ギリシア神話に出てくるんだろ、だったら」

レッサー「えぇ出て来ますよね、ギリシア神話『にも』ね」

バードウェイ「というか、ギリシアは多数のポリスで構成された連邦国家だ。それぞれの地域や支配都市で文化は異なる」

バードウェイ「それらの神話を統一、集合化させたのがギリシア神話。例えば――ヘルメス。英知と盗賊の神、ヘルメス神は知っているか?」

バードウェイ「愚か者に華を持たせてやれば『盗躁』の神と言ってやらなくもない」

上条「靴関係で素早さを上げてくれる神様?」

バードウェイ「彼女――もとい、彼は元々エジプトが由来の智恵の神だ。それを信仰する人間達がギリシアへ加わり、神話に組み込まれた」

上条「あー、建宮と似たような話したかも。『征服者が被征服者の神を墜とす”以外”の神話も作られる』って」

レッサー「まぁそれも結構あるんですが、中には比較的穏健な国家・民族融合もありましてね」

レッサー「その場合、二つ以上の神様が一つの国家に存在する矛盾が生じます。さて、それを解消するにはどうすれば良いでしょうか?」

上条「それが、『同一視』、か?」

レッサー「ピンポーン!正解!」

バードウェイ「……ま、そこまで大掛かりな話ばかりじゃなく、『信仰の上書き』だってある」

バードウェイ「『今まで○○と信じられていたものが、実は××のお陰だった』的な話だよ」

レッサー「十字教も一時期盛んにやっていましたよねぇ、これ」

上条「十字教が?何か敵対する宗教を邪教認定して攻撃してるイメージがあんだけど」

バードウェイ「それ”も”正解。ただそれ”以外”にもやっていたのさ」

レッサー「聖人や神の奇跡を紐解いていけば、実は別の信仰の一形態や異教の英雄だった、みたいな話です」

バードウェイ「そうだな……マーリン、知っているか?アーサー王の使いっ走りの魔術師だ」

レッサー「……あのぅ、それはちょっと」

上条「名前は何となく。何やった人なのかまでは知らない」

バードウェイ「奴は夢魔の血を引いていて、高い魔力の才能を受け継いだんだが、邪悪な気質も同居していた”らしい”んだよ」

バードウェイ「だが彼は赤子の際に十字教の洗礼を受けたため、邪悪からは守られたんだとか。はっ、中々笑える話さ」

上条「笑えるって、なにが?」

バードウェイ「当たり前の話だが、ローマ正教は魔術の行使を禁じている。少なくとも表向きはな」

バードウェイ「魔術を使う人間を嫌い、『魔女狩り』をしたのは好例だよ」

バードウェイ「だというのに歴史上に名を残すような『”魔術”師』が、十字教の洗礼を受けたお陰だと宣伝していた時期があった」

レッサー「……色々あったんでしょうねぇ、えぇきっと」

バードウェイ「ま、それと同じく二柱――いや、下手をすればもっと『たくさんのアルテミスが存在した』んだよ」

上条「……あのぅ?すいません、何言ってるか本気で分からないです」

レッサー「ギリシアのアルテミス、そしてエペソスのアルテミス。そのどちにも共通しているのは『狩猟の神』であるという側面」

レッサー「ですから元々別だったものが、時代を経るにつれ同一視されて行った、というのが定説になっていますね」

上条「……あり得るのか、そんな事?」

レッサー「うーむ……まぁ、『時代と価値観の変遷』というファクターもあるかも、ですね」

レッサー「古代、人は狩猟で生計を立てて居た――もしくは非常に高いウェイトを占めていた、のは分かります?」

上条「稲作文化が出来る前か?」

レッサー「プラス伝わった後だって、中々毎年安定して育てられるなんて有り得ないですからねぇ」

レッサー「病気に冷害、洪水や干ばつが一度でもあれば稲は駄目になりますし」

バードウェイ「近代灌漑が定着する前、また稲の品種改良が出来る以前であれば不安定なのは当たり前だ」

バードウェイ「現実問題、現代農耕バリバリの日本の農家だって、毎年同じだけ採れるとは限らん」

上条「……にゃるほど。それじゃ昔は今よりももっと狩りが重要だったのな」

レッサー「私の口癖取るの禁止。次したら全裸になりますよっ!」

上条「いや、俺の知り合いにもう一人使う奴が居るが」

バードウェイ「恥女は放置しておくとして、それでも文化が発達すればある程度の食料が定期的に入ってくるようになる」

バードウェイ「と、なれば『豊穣』よりも『統制』の概念の方が大切になるな」

上条「統制?」

バードウェイ「道徳、モラルと言い換えても良い。要は『共同体を安定して維持するために人口節制をしよう』だ」

レッサー「子沢山が一般には美徳とされていますが、実は昔の出産は結構な賭けですからね」

レッサー「産後の肥立ちが悪ければ母親はさっさと死にますし、そうすれば赤子も運命を共にします」

上条「誰かに育てて貰うのは?」

バードウェイ「母乳は赤子へ免疫力を高める効果がある。現代では各種医療技術の前に霞む効果だが、近代以前は神の奇跡に等しい」

レッサー「また栄養状態が脆弱なので死産も多かったでしょうしね。安易に数を増やすと、文字通り共同体が崩壊しかねません」

上条「だから『純潔』の神……」

レッサー「文化が成熟して行くにつれ、神が新しい属性を獲得するのは割とある事ですよ」

バードウェイ「過去の帝を神として奉り、武神として崇め――そして現代へ至れば平和の神に早変わりだ」

バードウェイ「日本の、確か八幡神とか言ったな」

レッサー「尤も、文化は成熟するだけとは限りませんよ。腐敗するのも珍しくはないですが――さて、実はこの二柱のアルテミス」

レッサー「『オリジン』が存在するんですね。旧い、とても旧い神が」

バードウェイ「ちなみにこいつが言っている『オリジン』は『原型』の他に『血統』という意味も含んでいる」

バードウェイ「日本語英語ではあまり縁がないだろうが、『German Origin』でドイツ系とも使うから憶えおくと良い」

上条「例題だと”From”ばっか使ってたな」

レッサー「日本から来るのは日本人だけですが、アメリカから来たってアメリカ系アメリカンとは限りませんからねぇ――で、話の続きなんですが」

レッサー「その『アルテミス・オリジン』もまた狩猟の女神であり、月を司る役割を持つ――」

レッサー「――キュベレーって呼ばれる神ですな」

バードウェイ「こいつもまたタチの悪い神でな。アルテミスと同じく、人身御供を好んだり、人を獣へと変える神性を持っている』

バードウェイ「しかも古代特有の価値観によって、それは『正しい』行為だと肯定されていたのさ」

上条「あー……あれ?ちょっと良いか?」

レッサー「Dカップですけど?あ、アリサさんはEに近いDです」

上条「そんな地雷を踏み抜くような質問はしてない!?」

バードウェイ「――と、私の方を見ながら釈明する理由を言ってみろ!」

上条「だから俺じゃねぇって!?……てか全員分の知ったけど、得はしてない!………………事も、ない!」

レッサー「素直で結構ですな。んで?」

上条「てーかさっきからずっと気になってたんだが――アルテミスとキュベレーって名前、つい最近も聞いた憶えがあんだよ」

レッサー「そりゃお話ししたからですよ。『エンデュミオン』の術式の際に」

レッサー「アルテミスはキュベレーの系譜、そして同時に女神セレーネもキュベレーと同じ」

レッサー「そんでもってアルテミスはセレーネとも同一視されましたからなー」

バードウェイ「アルテミスは恋人オリオンを自らの手で射殺し、死後天空へと上げて星座にする」

バードウェイ「対してセレーネは恋人エンデュミオンを永遠の眠りへとつかせた」

バードウェイ「……ま、アルテミスがセレーネだとすれば、二人の男を愛した訳だが。さて」

バードウェイ「どちらも愛した恋人を不老不死にしてしまったのだよ」

上条「……なーる。そんな状況――歴史的に『密接』だってのに、ステイルが何の含みもなくヒントを寄越した筈が無い、か?」

バードウェイ「どういった意図で発したのかは、充分に疑ってかかるべきだがな。向こうの企みに乗ってやる義理はない」

上条「義理はないけど……義務は、まぁ?」

レッサー「あちらさんの虎の子である、禁書目録縛りプレイですからねぇ。そこら辺を突かれると、ま、色々と」

バードウェイ「厄介な男め。どうせならその男もデレさせれば話は早かったのに」

レッサー「いいですねー!今からでも遅くはないのでするべきだと思いますっ!」

上条「無茶言うなよ!?つーかどっかの00○じゃあるまいし!取り敢えず女の子を味方につけるスキルなんて持って――」

上条「……」

上条「……も、持ってないよ?いや全然全然?何のことか分からないし?」

レッサー「『不幸』で獲得したCP、どこに遣っちゃったんでしょうねぇ」

バードウェイ「言うな。察してやれ」

上条「おい止めろ!人の半生をキャラメイク失敗したみたいに言うんじゃない!」

バードウェイ「……ま、そんな訳でアルテミスにも『猟犬』へ纏わるエピソードがある」

バードウェイ「ある猟師が山中で犬を連れて狩りをしていたら、偶然にもアルテミスが水浴びをしていたのを覗き見る」

バードウェイ「激怒した女神は猟師を鹿へと変え、彼の連れていた猟犬に襲わせて殺した」

上条「古代のラッキースケベは代償が重いなっ!?」

レッサー「もしこの猟師がドMだったら、アルテミスがツンデレだった可能性も……!」

上条「神話を穢すな。ヘロドトスに助走つけて殴られんぞ」

レッサー「上条さん、もし神話だったら大体何回ぐらいブタに変えられてます?」

上条「そうだねぇ、結構な回数――待て!鹿は分かるがブタと言われるのは心外だ!」

バードウェイ「ちょくちょくコントを挟むな馬鹿者共が。もう少し真面目にやれ」

レッサー「と、現在進行形で抱っこされてる幼女に言われましてもねぇ」

バードウェイ「仕方がないだろ、こいつが喜んでやってる以上」

レッサー「あー、まぁ確かにそうですけど」

上条「コント挟んでるのはお前らだよね?真面目にやろう?」

レッサー「……真面目に話すと『エンデュミオン』からドデカい不発弾が出て来そうで……」

バードウェイ「何の話だが知らんが、『ただの狂信者でしたー』で済む訳がないだろう。腹を括れ」

バードウェイ「ま、私には関係の無い話だが。良い気分だ、ザマーミロ」

上条「ボスっ!?俺にはボスが必要なんですよっ!」

バードウェイ「コラ離せ!レディに気安く触るんじゃない!」

上条「おっ?お前もしかしてくすぐりに弱いの?へー?」

バードウェイ「だから!気安いぞ馬鹿者が!」

レッサー「上条さん上条さん、絵面がとてもアウツッ!に、なってますよ?都条例的な意味で!」

レッサー「あと嫌がってるバードウェイさんも、抜けようと思えば楽に抜けられますよね?魔術で身体能力強化してますもんね?」

バードウェイ「あぁ居たのか、レッ――トイットビー?」

レッサー「ついに私の名前がイジられるようにまで!?ある意味光栄な間違われ方ですが!」

バードウェイ「小遣いを渡すからどこかで遊んでこい。邪魔だ」

バードウェイ「えぇと……まぁ二時間もあれば終るだろうから、うん」

レッサー「邪魔ってなんですかっ!?邪魔って!?って普通に喋ってますし!」

レッサー「あとその的確な予想は私の想定と同じですよチクショー!」

上条「ほーら、くすぐっちまうぞー?」 ムニムニッ

レッサー「そして私達の会話をスルーしてイタズラしてる上条さんも如何なもんですかね。主に頭とか」

バードウェイ「そこは私の胸だッ!!!」

上条「え?真っ平らなのに?」

バードウェイ「――よし、死ね」

チュドォォォォォォォォォォォォォォーンッ……!!!

――イギリス東部高速列車 朝

レッサー「――と言う、口にするのすら憚られる恐ろしい出来事が!」

上条「俺がバードウェイに吹っ飛ばされただけじゃねぇか!しかも理由がしょーもないな!」

レッサー「いやぁ、それは上条さんデリバリーに欠けるってぇもんですよ」

上条「デリカシーな?特にレッサーさんにも欠けてないですかね?」

上条「てかお前が言ってた命が無い云々の話はっ!?確かにぶち切れてらっしゃいましたけども!」

レッサー「実に危ない所でしたねっ!あそこで上条さんが天然を出さなければ。今頃あなたの命は尽きていたでしょう――」

レッサー「――そう!人生の墓場的な意味で!」

上条「ウッサいわ!上手くもないしドヤ顔止めなさい」

レッサー「レギュラーがこれ以上増えると私の存在価値が……」

上条「相手は子供だろ?つーかマークが言ってたけど、兄貴が欲しいみたいな感じだって聞いたぞ」

レッサー「上条さん」

上条「な、何?」

レッサー「兄妹の方が萌えるじゃないですか!」

上条「一部だけな?一部の特殊な性癖の皆さんだけを、さもマイノリティみたいに言うな!」

レッサー「年上のお姉さんはお嫌いで?」

上条「……か、考えた事も無いなっ!」

レッサー「明確なお返事ありがとうございました――と、いい加減テンションも温まってきたと思うので、話を戻しましょう」

上条「上がったっつーか、上げられたっつーか。お陰様でな」

レッサー「『猟犬』の話は後回しにして、取り敢えず今後の方針を決めません?サフォーク――ダンウィッチへ着くと、人目もありますし」

上条「人目って……ヤバいのか?」

レッサー「可能性は充分に。少なくともウェイトリィを名乗る医師が居て、彼の団体では不正診療と保険金詐欺が行われているのは確実」

レッサー「ですが、この二つの案件自体は、魔術が絡まなくとも結構な頻度で起きてます」

上条「行ってみたは良いが、全然関係ありませんでしたー、って?」

レッサー「そん時ゃブリテンの司法にお任せするしかありませんでしょ?」

レッサー「私達はフツーの一般国民、捜査権も逮捕権も持っちゃいませんしね」

上条「うーん……?」

レッサー「あー……分かりましたよっ!そんな捨て犬みたいな目で見ないで下さいなっ!どーにも最近胸が痛いんですから!」

上条「胸?病気なのか?」

レッサー「ちょっとさすってみます?多分恋の病だと思うんですよ」

上条「あからさまな罠はノーサンキューで!あと恋をしたらもっとキョドるわっ!」

レッサー「……チッ……」

上条「ホラやっぱり」

レッサー「ま、まぁ状況次第と言う事にしましょうか。犯罪の証拠を掴んでしまったら、通報するのも国民の義務ですしね」

上条「まぁ”偶然”掴んじまったら仕方が無い、よな」

レッサー「偶然って怖いですからね、えぇはい」

上条「でもさ、根本的な話へ戻るんだが、俺らみたいな素人がノコノコ行って証拠掴めるような相手なの?」

上条「たまたま街を歩いていたら、『助けて下さいっ!?』って重要な証人とぶつかるとか、普通はないだろ」

レッサー「上条さんに限っては非常にありそうな展開ですが――難しいでしょうね、そこも」

上条「主導してんのはどっかの病院。って事は潜入も?」

レッサー「正しくは病院”も”経営している所でして、副業なのか本業なのかは怪しい所ですが」

レッサー「ウィリアム=ウェイトリィ院長、彼が主催している宗教団体は『House of Mistletoe(ヤドリギの家)』」

上条「……あぁ正体が『濁音協会』だったら、病院経営してようが実態はカルトだわな」

レッサー「ネットで調べた限りじゃ、十字教のイギリス清教後継を名乗っていますが、実際には認められていません」

レッサー「というかウェイトリィ氏が神父であった経歴はなく、ある日突然『神の声を聞いた』んだそうで」

上条「ねぇ?なんでその人『自分は頭イタイ人です』って自己紹介してんの?何か決まり事?」

レッサー「ふむ。他人の見ている世界って、興味ありません?」

上条「見ている世界?また唐突だな」

レッサー「蝶や蜂だったら紫外線が見てるでしょうし、猫だったら夜目が利いたり」

上条「あぁ分かる分かる。俺達はRGBの三原色で世界を見てるけど、トリや爬虫類はもう一つ多いんだっけ?」

上条「そっちで見たらどんな風に見えるのか、興味あるよな」

レッサー「って言う話じゃないんですけど」

上条「一秒前の俺の共感を返せコノヤロー」

レッサー「ではなく、そうですねぇ……あ、上条さん、昨日ターミナル歩いてて転びそうになったじゃないですか。憶えてます?」

上条「あぁ。どっかのテレビ局が点字ブロックの上へ荷物置いてて邪魔だったからな」

レッサー「……実はここだけの話なんですが!」

上条「大事な話?」

レッサー「えぇ、恐らく気づいているのはごく一部の人間だけです。ですから決して他言しないようにお願いしますね」

上条「任せろ!……あ、でも電車の中でするような話じゃ――」

レッサー「……ブリテン政府はね、以前から高騰する医療費の削減を憂いていました。毎年結構な割合で社会保障が増大して行っているんですよ」

レッサー「ま、日本と同じく医療技術の進歩により平均寿命が高くなっている。それ自体は喜ぶべき事なんですがね」

上条「だな」

レッサー「当然支出が増えるって事は、どこかから別の予算を持ってくる必要があります。歳出削減が出来なかったら、増税なり国債を発行するなりする必要があります」

レッサー「何故ならば『社会保障とは天から降ってくる訳ではない』のでありまして、無理なく維持出来るような制度を作られねばいけませんので」

レッサー「『予算の組み替えで100兆円の埋蔵金』とか、『国債を発行せず、増税をしなくてもやっていける』とやらかしても」

レッサー「失業者と倒産を量産した挙げ句、株価を地獄へ叩き込んだ政府があったそうですけど、一体どこのどちらでしょうね?」

上条「日本の黒歴史には触れないであげて」

レッサー「でもまぁ政府が増税を決めれば国民の反発は必至――なので、手段を変える事にしたんだそうです」

上条「……なんか壮大な話になってんだけど、それと道でコケるのとどう関係が?」

レッサー「しっ!――すー、はー、すーはー、すーーーーーー…………」

レッサー「――上条さん声が大きいでぇぇぇぇぇぇぇすっ!!!」

上条「お前のほうが大きいよね?ってか明らかに深呼吸までして息整えてから、全力で声張ったよね?」

上条「俺のメル友が劇団取材した時教わった腹式呼吸、なんでレッサーさん舞台役者の真似事してんの?」

レッサー「……だから、政府はこう考えたんですよ――『人が多いのなら減らしてしまえば良い』って」

上条「……はぁ?」

レッサー「ヒットラーも恐れるような悪魔の計画!それは今ブリテンで着々と進行されている……っ!」

レッサー「上条さんも罠にかかる所だったじゃないですか!?よく思い出して下さい!」

上条「……コケそうになったのが、陰謀?」

レッサー「そうです!政府は人を転ばすように、職安の最新技術を仕入れているのです!」

上条「スゲーな職安。そりゃニートも戦々恐々としてんじゃねーかな」

上条「てか人を転ばせる装置って何?どんな超技術があったらそんな事が出来んの?」

レッサー「プラズマと新堂派、後オレゴンエネルギーで出来るって書いてありました――ネットに!」

上条「なんで世界を揺るがす最新技術がネットでダダ漏れしてんの?本当にヤバかったら速攻で消されるよな?複合的な意味で」

上条「あと新堂派じゃなく振動波な?俺は新堂さん、もっと歌手として評価されてもいいと思うが」

レッサー「確かに――そう!確かに『人を転ばせるだけ』ならば大した話じゃありません!それ単独ではね!」

レッサー「ですが昨日上条さんかスベった所はど・こ・かっ!思い出してみて下さいなっ!」

上条「人をスベったとか言うな人聞き悪い!……場所?場所って、そりゃ駅前だろ」

レッサー「あれが本当に転んだとすれば――車へ突っ込んでいた可能性も捨てきれないでしょう?」

上条「いやぁ無いって。『不幸』な俺だって人並みの反射神経はあるから、仮に転んだとしても車道まで突っ込みは」

レッサー「……そうですね。上条さんはきっとしないでしょう――少なくとも”今”は」

レッサー「ですが!あと半世紀程経った後!お歳を召されて足腰が脆弱になった状態であれば――」

レッサー「――結果、どうなるでしょうね?」

上条「……まさか!?」

レッサー「そうっ!ブリテン政府は社会保障を抑制するために人工的な間引きを画策!」

レッサー「駅前の歩道でコケる兵器を開発し、お年寄りが勝手に車道へ出て事故に遭うように仕組んだんですよっ!!!」

上条「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」

レッサー「……」

上条「……えっと」 ピトッ

レッサー「何ですか?人の額に手ぇ当てて――まさか!?」

レッサー「聞いた事があります……極東の島国では壁ドン!して好きな相手へ好意を伝えるという風習があるという……」

レッサー「ならばきっとこれもプロポーズのつもりですかっ!」

レッサー「良いでしょうっ!受けて立ちましょうかコノヤローっ!!!」

上条「おい、その島国って日本の事じゃねぇだろうな?てか『壁ドン!』海外にまで伝播してやがんのか!?」

上条「つかレッサーさん、キミさっきからどんな電波受信してんの?いや、たまーに居るけどな政府陰謀論吐く人」

上条「てーかベイロープに連絡取りたいから、携帯貸してくんない?」

上条「あ、心配はしなくて良いぜ?全世界がお前の敵に回ったとしても、俺やアリサ、ベイロープとランシスはお前の味方だ!」

レッサー「フロリスは?」

上条「なんか『面倒クセー』って言って逃げそう」

レッサー「あー……そんなイメージですよね。実際にも否定出来かねるんですが」

上条「『ハロウィン』の時もそんな感じだったしなー」

レッサー「『――狂人の話は支離滅裂だという人がいるが誤りである。狂人の話というのは彼らなりの論理で一貫しているからだ」』

上条「おい、またなんか受信しやがったのか」

レッサー「『他人への不信で狂った者は、日常のあらゆる事象に”誰かの陰謀”を感じ取る』」

レッサー「『散歩で転んでも愛用のステッキが折れても飼い犬が逃げても、それは全て自身を陥れるための陰謀なのである』」

レッサー「『つまり狂人を論破することは不可能だ。何故なら常人にとって全く関係ないものが、狂人の理論では破綻せずに結びついているから――』」

上条「レッサー?」

レッサー「――以上、我が国が誇る文豪にして批評家、『ギルバート=ケイス=チェスタートン』氏のお言葉です。意訳がかなり含まれていますが」

レッサー「もしも『気狂いの視点から世界を俯瞰すれば、上条さんがコケたのも誰かの陰謀に見える』というお話」

上条「……つまり、今レッサーがやったみたいに、頭イタイ人は自分が頭イタイって分からないのか?」

レッサー「むしろ逆で、『周りが全部頭イタイのであり、自分が正常だ』ぐらいの確信はしているかと」

レッサー「『自分が正しくて他は全部狂っている』と思い込むので、彼らにしてはそれが正気なんでしょうかね」

レッサー「もし他人が偉そうに見えたとしたら、それはご自身が下水の中で汚物まみれになって誰からも軽んじられ蔑まれているだけ、ですから」

レッサー「真っ当に胸を張って生きていれば、せめて疚しい生き方をしていなければ、人に対して妙な先入観を持ったりはしないでしょうし」

レッサー「それが出来ないって事、無意識的に自分が劣等であり僻んでいるのを認める証左だと」

上条「……なーんかな。俺だったら他の人と違っていたらさ。『もしかして俺が違ってる!?』って疑うけどな」

レッサー「でね。気狂いの特徴の一つとして、異常なまでに自己愛と自己評価が高いんですよ」

レッサー「例えば……あぁ、『俺が評価されないのは××のせいだ!』とか、『他人が俺の言う事を信じないのは××が圧力をかけているからだ!』等々」

レッサー「『自身の意見は絶対であり、万人が支持すべき真実』……ぐらいには思ってんでしょうかねぇ、これが」

レッサー「ネタで言うんだらまぁ可愛いもんなんですが、本気な分タチが悪いですよ」

上条「でもそれ、結構居るよな?大小の差はあるが、頻度としてはかなり」

上条「陰謀論じゃないしにしろ、霊感があるとか、政府が○○とグルだとか」

レッサー「……ま、個人がどう考えるのは自由ですし、例え偏執狂であっても他人へ害を及ぼさないのであればスルーされますよね」

レッサー「親兄弟や周囲にとっては堪ったモンじゃないでしょうが。ともあれ」

レッサー「――んで、そんな彼らの行き着く先が『ネオ・ペイガニズム』なんですよ。日本語にすれば『復興異教主義』」

上条「あぁ『昔あった信仰っ”ぼく装った”新興宗教』だったか」

レッサー「ただベースとされる宗教はもう踏んだり蹴ったりで、えぇもう大変らしいですよ」

上条「……そういや、その話が出た時に、ランシスが無表情でぶち切れてた気が……?」

レッサー「ランシスの故郷である北アイルランド、そしてアイルランドには今もケルティックな文化が残っていますからね」

レッサー「発祥の地かどうか、はともかく、今そこに住んでいる人間にとって、子供の頃から慣れ親しんだ世界であり」

レッサー「それを第三者が好き勝手に解釈を加え悪用すれば、決して良い気持ちにはならないですからね」

上条「てーかさ。そもそも頭イタイ人がそっち系、カルトへハマる理由は何?どんな心境の変化があれば受け入れられるの?」

上条「そういう人ら――てか、根拠も証拠無く陰謀論ぶち上げる人だったら、むしろ逆に警戒しそうなもんじゃね?」

レッサー「より正確に言えば『他に受け入れて貰える場所が無い』ですね」

上条「あー……」

レッサー「家族や友人からも腫れ物扱いなので、ますます妄想は膨らむ一方。やはりどこかで誰かに認めて貰いたい」

レッサー「だからといってそういう人達には何もありませんからね。それこそ何も」

上条「何も?」

レッサー「例えば趣味があればそっちへ没頭するじゃないですか?政治活動であっても、実生活で調べたり政党へ入ったりするでしょう」

レッサー「仕事で忙しかったら他人に構ってる暇は減りますしね。真っ当な職であれば、ですが」

上条「耳が痛いな!何の事か分からないけども!」

レッサー「何だってそうですけど、評価というのは実績へ対して付いて回るもんです。良かれ悪しかれ」

レッサー「だってのにそっちの人らは何もしない何も出来ない何も知らない、という三重苦」

レッサー「ありもしない妄想の中に生き、ネット掲示板で他人を口汚く罵るぐらいしか出来ません。やれません、と言った方がいいんでしょうかね?」

レッサー「詳しくは実物を見ながらお話ししますが、どっちとも『現実を見ていない』んです」

レッサー「『世界経済はユダヤ人が支配している!!!』的な陰謀論、ありますよね?」

上条「ロックフェラーがフンダララでアメリカがどーたらして、日本人を家畜にするヤツな」

レッサー「一部の財閥がユダヤで占められているのは本当です。つーか聖書の頃から金融と商人で食ってきた連中なんで当たり前なんですが」

レッサー「我が国のシェイクスピア卿がヴェニスの商人とか書いてますんで、良かったら見てやって下さいな」

上条「金貸しの人がユダヤ人だっけか」

レッサー「基本小金を持っていたり、横の繋がりが強ければ政治権力と結びつくのは世の常……ま、さておき上条さん」

レッサー「ユダヤ人ユダヤ人言いますけど――『ユダヤ人のハーフ』とか、『ユダヤ人のクオーター』って聞いた事あります?ますます?」

上条「え?」

レッサー「無いですよね?てかあったらそれは逆に怖いんですが」

上条「言われてみれば聞いた事無い……日本から遠いせいかな?」

レッサー「違います。だって『ユダヤはユダヤ”教徒”を意味してる』んですからね」

上条「……はぁ?何、ごめん、どういう事?」

レッサー「詳しい説明をすれば長くなるんで省きますが、ユダヤ人には白人も黒人もアラブ人もアジア人も居ます」

レッサー「ですが彼らは全員『ユダヤ人』なんですよ。ユダヤ教だから、ユダヤ人であると」

上条「何!?だったらユダヤって民族的な括りじゃねーのかよっ!?」

レッサー「ステレオタイプのユダヤ人像、お髭を生やしてラビの帽子を被ったのはアシュケナージであり、最も旧い一派です」

レッサー「ドイツ周辺に住み、厳しい律法を守る人達。ただそれ”だけ”を指してユダヤと呼ぶ事は無いですが」

レッサー「あちこちに移り住み、人種も混血しているから、という事情もあるようですがねぇ」

レッサー「起源の一つはヘブライ人がバビロンに囚われた――所謂『バビロン捕囚』の際、ユダ王の臣民であった事、とも言われていますが」

レッサー「イスラエルが現在出している公式見解としては、『ユダヤ人を母とする者またはユダヤ教徒』であり、人種は関係ありません」

レッサー「だ、もんで『世界経済はユダヤ人が支配している』は『ユダヤ教徒が占められている』に直結するんですが――」

レッサー「――これ、もし本当なら『ユダヤ教徒は金融関係の仕事に就いてはいけない』という差別ですよね?ま、人種でも同じなんですが」

上条「……だなぁ」

レッサー「『特定の○○を××が独占している』のが陰謀だとすれば、G7のウチ約六ヶ国は十字教徒ですよね。あ、何代か前も日本の総理は十字教徒でしたが」

レッサー「これは十字教の陰謀ですか?それともただの偶然?」

上条「偶然だろ。だって少し前までG8でロシアも入ってたが、ウクライナのいざこざで抜けたし」

上条「第一十字教はイギリス清教、ローマ正教、ロシア成教の三つで、仲は良くなかったな」

レッサー「ですなぁ。十字教徒のカルテル的なものがあれば、離脱は出来なかったでしょうね」

レッサー「てーかそんなにユダヤ人が世界を支配()してるんだったら、パレスチナはとっくに地図上から無くなっているでしょうし」

レッサー「ついこの間のガザ紛争も世界各国大非難だったじゃないですか?最初に手を出したのはパレスチナがユダヤ人捕まえて焼き殺した上」

レッサー「いざ戦闘が始まってみれば、どう見てもイスラエルへ繋がる軍事侵攻用の地下トンネルが続々と発見され」

レッサー「病院などの国連施設や本来中立にするべき所へ兵士をかくまったり、イスラエル側からの攻撃勧告を国民へ伝えずに女子供を盾にしたり」

レッサー「果てはその攻撃で亡くなった人間をLIVE中継……反吐が出ますよねっ!」

上条「楽しそうに言うな」

レッサー「――と、言うように『現実』を見ていないんですよ、彼らは。この程度専門書ですらない、世界史の教科書を開けば載ってる程度のお話です」

レッサー「『世界を支配出来るような超絶的に頭が良くて金のある人間が、自分達にクリティカルな意見を放置するか?』って話もね」

レッサー「そもそも言えばサブプライムローンの破綻とリーマンブラザーズ社の倒産から始まるアメリカ初の世界不況」

レッサー「アメリカ自体、一年の間に地方銀行が100行以上倒産する憂き目に遭っています。当然、財閥系も例外ではなく」

レッサー「私がもし世界経済を仕切る立場か、日本をエサに出来るんだったら、何とかしてますけどねぇ」

上条「……もし『闇の勢力()』があったとしても、『その程度』って事なんだよな」

レッサー「何よりもまず証拠が何一つないんですが――”彼ら”に言わせれば『証拠がないのが証拠』なんだそうですよ、えぇ」

レッサー「例えの『ユダヤ人支配説()』に、『実はユダヤ人は宇宙人だった!』と属性の一つや二つ着いても矛盾しません」

レッサー「元々がチラシの裏に書いたような陳腐な陰謀論なので、むしろ少しでも”認めてくれる”相手が居ればコロっと騙されると」

レッサー「……ま、カルト側にすれば『養分』なんでしょーがね」

上条「……オイ。そんな厄介な連中んトコ潜入すんのかよ!?」

レッサー「必要とあれば仕方が無いでしょうなぁ……あ、そん時は夫婦役で!」

上条「残念。俺の国じゃ結婚出来ない年齢だ」

レッサー「ブリテンならオーケーですよ?」

上条「堂々と嘘を吐くんじゃありません!」

レッサー「ま、そんなに危機感を持つ必要はありませんて。まだ『濁音協会』関係だと決まった訳じゃないんですから」

上条「そ、そうだよね?安心して良いんだよな?」

レッサー「あ、確か上条さん、この調査が終ったら実家へ帰ってパン屋を継いで裏の水門を見に行きつつレッサーちゃんへ告白するんでしたっけ?」

上条「フラグ立たすなよ!?しかも長いわアクロバティックだわで収集がつかない!」

レッサー「私へ告白は否定しなかった、だと!?」

上条「好きは好きだし信頼もしてるが、今んとこはそんな予定はない」

レッサー「じゃ、私からするって事で」

上条「はいはい。楽しみにしてる」

レッサー「………………………………いよぉっし!」 グッ

上条「何?なんでそこでガッツポーズ?」

レッサー「いや別に何でも?――あ、ほら見えてきましたね。駅の所へノボリが」

上条「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」

レッサー「どっちも出てますけどね。『団長』は死人なので”鬼”。安曇阿阪はそのまんま”蛇”ですし」

レッサー「順番からすれば『神』ってトコでしょーか」

上条「……ま、なんとかするさ。今まで出来たんだから、これからも」

レッサー「私達の戦いはまだ始まったばかりですよねっ!」

上条「止めろ!打ち切りフラグを立てないであげて!?」



”――Welcome to Dunwich――!!!”

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

結局一スレに収められなかったので、「一話=12万語」の字数制限を取っ払いました
書くのが楽です。ほぼ世界史と宗教史の話しかしてませんけども

乙!

上条さんは明け色に協力頼もうとしてましたよね

ただ、アリサは学園都市の使者ってなってるから、政治的な理由で駄目になったけど

乙です

レッサーさん、完全にバードウェイにくわれてたw
カミやん、寮監好きはカモフで実はやっぱり…

字数制限解除むしろウェルカム

>上条「つーかお前最後に会ったの学園都市で俺の下腹へ穴空けた以来じゃんか」

ああ、このSSてば、オティヌス最終決戦より前のお話なんですね。納得なっとく。
あと上条さん、「ゆかたん」気に入りすぎて高速言語っぽくなってますが。

てか、B C D D<E E と揃ったんですね。
上条さんよりどりみどりじゃないですかやだー

>>61
レッサー「――でも実際の所、私らも『明け色』もイギリス清教や学園都市からの危険度は大差ない訳でして」
レッサー「むしろ実在すら怪しい結社である『明け色』の方が、実は対外的には”まだ”やらかしてない訳ですしおすし」
レッサー「ぶっちゃけ政治的な駆け引きどうこうは100%ブラフでしたサーセンwwwwwww」
鳴護「じゃあなんでレッサーちゃん達は当麻君を助けたのかな?かな?」
鳴護「先週のお話でレッサーちゃんが『当麻君』って呼びかけて、途中で止めたのと関係あるとか?」
鳴護「レッサーちゃんも当麻君を当麻君って呼べばいいと思うよ!ね、当麻君!とーまーくーんー?」
鳴護「ほら、ちょっとこっち来てくれるかな。レッサーちゃん言いたい事があるんだって!」
レッサー「ここまでまさかの腹黒キャラが!?しかも追い込みハンパねぇですねっ!」
(※フィクションです)

>>62
バードウェイ「べ、別にデレてなんかないんだからなっ!これは、そう……げ、下僕へ対する主人の哀れみだよ!」
マーク「(言えない!その態度が余計一部の属性にクリティカルしてるなんて言えない……ッ!)」

>>63
つ 『そして静かに幕を開ける。ある反撃の烽火』

>>64
ロ×にとっては罰ゲーム

――サフォーク州 ダンウィッチ

上条(――そんなこんなでやって来たダンウィッチ。学園都市から離れて何やってんだろ?とか思わないでもないが)

上条(父さんの鞄はバードウェイんトコに置いてきたまま。ボスならきっと父さんを上手く助け出してくれるよ!多分!」

上条「……」

上条(……再登場フラグになんねぇだろうな、これ?父さんもバードウェイも後から合流したりして)

レッサー「あー、ありますあります。『実はフラグで本命は背後から刺す!』みたいな作戦」

上条「レッサーさんちょっとシーで?俺今モノローグで忙しいから――てか、まぁいいが」

上条「しかし思ったよりか都会的なんだな。ロンドンやパリの郊外っつっても通じるレベル」

レッサー「一体どんなのを想像してやがったんですか。あんま聞きたくないような気もしますけど」

上条「ホラー映画であるような、閉鎖的な住民総出で監視されるような感じ?」

レッサー「定番ですねー。旅行者の被害妄想も否定出来ませんが」

上条「実際に来て見てれば想像とは正反対。コンクリとビルと街路樹、あと通りの反対側に見えるのはマックだし」

上条「日本と違うのはガンガン自己主張する駅前の看板が少ないぐらい?」

レッサー「ですなー。つーかまぁ現代都市なんざ、どこだってこんなモンっちゃこんなモンですね」

レッサー「Frog Eaterはパリの都心を観光用に割り振ってるんで、『洗濯物を通りに干すのはダメ』とだとホザいてますが、そこまでは」

上条「日本だって京都とか、古い観光地は似たような感じだな。コンビニの外見を地味ーな色で塗ったり」

レッサー「『歴史』を誇るのであるならば、今もそこへ住む人間達の営み――『現在』も含まれて然るべきだとは思うんですが……」

レッサー「それ言ったらNINJAも同じでしょうかね」

上条「お?忍者好き?」

レッサー「好きか嫌いかで言えば、まぁそちらさんが騎士に憧れるぐらいには、好きな人間が多いですよ。SAMURAIと並んで」

上条「って事は微妙だって話か?」

レッサー「んー……むむむむ?これ言うと、もしかしたら上条さんの幻想をぶち壊すかも知れないんですが……」

上条「ドンと来い!微妙にネタ振りにも聞こえるが!」

レッサー「……ここだけの話、NINJAはもう居ないらしいんですよっ……!」

上条「うん、知ってた」

レッサー「流石は上条さん!学園都市の”闇”を垣間見てきただけの事はありますよねっ!」

上条「それ関係ないな?多分『サンタさんか実在するどうか?』と同じ比率でバレてんじゃねぇかな?」

レッサー「テレビで見ました!」

上条「じゃお前はハリーさんが空飛んでたら、イギリスにもハリーさんが居るっつーのか?あ?」

レッサー「魔術師ならホラここに」

上条「……お前らみたいな想像の枠外とNINJA比べられてもなぁ……」

レッサー「ま、余所様の文化なんて長く滞在しない限りは理解出来ませんて。日本だって『地元の人間』からすればワザとらしい観光地ありますでしょ?」

上条「……あぁ成程!そう考えると納得出来る気がする!ロンドン塔にイギリス人ほっとんど居なかったし!」

レッサー「TEDに拠れば『普段は行かないが、ロンドンから去る祭に高確率で訪れる』という結果も出ていますし」

レッサー「日本で言えばTOKYOタワー?」

上条「……一旗揚げようと上京してきて、でも途中で挫折して故郷へ帰る。けどその前の思い出に……?」

レッサー「よくある話ですが、笑うに笑えない話ですよねぇ。かといって上京を制限する訳にもいきませんし」

レッサー「ちなみに似たような話が19世紀末の”British Empire(大英帝国)”でもありましてね」

レッサー「植民地にあったインドに貴族の次男三男が行って豪遊。物価が安いんで色々と好き勝手出来たんですが」

レッサー「そのおバカさん達がいざ帰国しても生活レベルを下げられず、実家の富を食い潰す始末で、えぇ」

上条「前から薄々気づいてはいたんだが、お前ら結構BAKAだよね?」

上条「百歩譲ってまぁ植民地時代なのは許そう?日本だけがヘイトされまくってんのは許すつもりはないけど、そこは置いておくとして」

上条「でも仮にも世界の半分近く持ってたにも関わらず、食文化はスルーしまくったのって一体どういう訳?カーチャン寝込んでたの?」

レッサー「あー……まぁ、イングランドでね、メイドを雇うのが流行ったんですよ。19世紀の初め……だったと思います」

上条「ふむ。生活に余裕があればいいんじゃないか?結果的に女性の社会進出にも一役買った訳だし」

レッサー「資産家は自力で雇ったんですが、無い所は『メイドの格好して家に通うメイドもどき』を雇う人間が出ましてね」

上条「ホラやっぱり」

レッサー「しかも果てには『メイドにする目的での誘拐や人身売買』すら横行する始末……」

上条「お前ら日本のエセメイドにどうこう言ってやがるが、本場からしてダメじゃねぇか!?どんだけメイドさんに憧れてんだよっ!?」

レッサー「上条さんはお好きでしょうかね?」

上条「嫌いじゃねぇが知り合いに一人、蜜蜂みてーなメイド服着ながら、そのクセ仕事はきっちりこなすメイドが居てな……」

レッサー「学園都市恐るべし……!朝のメイドさんから夜のメイドさんまできっちり用意しているとは!」

上条「時間帯区切ったのに何か意味あんの?夜は別に家事とか任せないよね、ご近所迷惑だから」

上条「……あぁ、まぁある意味学園都市の闇が生み出したと言えなくもねぇかな……先輩クロいし」

上条「つーか先輩、あんな妹さん居るなんて一言も教えて貰えなかった……よな?多分そうなんだよな?」

レッサー「教えたら速攻手ぇ出されるじゃないですかーやだー」

上条「待とうか?君らいい加減、そこら辺の認識をだな、そろそろ改めるべきって言うか」

上条「つーかそもそも手ぇ出す出さない以前の問題で、俺は未だアレは新品なんだから、その誹りを受ける筋はないって言うか」

レッサー「仮性ですねっ!」

上条「その話は終った筈だ!蒸し返すんだったら俺にも考えがあるぞ!」

レッサー「ほう?このレッサーちゃんロリ巨乳へ対し、どんなイヤンバカンをしてくれるのかやって貰いましょうか!」

上条「考えがあるとは言ったが、実行に移すとは言ってない!」

レッサー「日本人的発言ありがとうございました――てか」

レッサー「そろそろ昼ご飯にしません?丁度あそこにマックありますし」

上条「……前にも言った筈だが、出来ればご当地メシ食いてぇんだが」

レッサー「そりゃ夕飯に取っといて下さいな。ご飯を食べたら泊まる所を探さないと」

上条「ホテル、先に探すか予約しちまった方がいいんじゃ?」

レッサー「いえいえ、”こっち”はかなり都会的なので問題は無いかと。最悪『ヤドリギの家』に言えば泊めて貰えるでしょうしね」

上条「……その最悪はお断りしてぇよなぁ――”こっち”?」

レッサー「えぇ。私達が今居るのは『新市街』。そして――」

レッサー「――『旧市街』は大規模な火事で一度焼け落ちているんですよ、そう――」

レッサー「――『10年前』に」

――ダンウィッチ 旧市街

上条「……」

上条(『新市街』から20分程、のろのろと走るバスから降り立った瞬間、俺は眉を潜めた)

上条(そこが酷く寂れた朽ちた都市、日本の田舎にも見られるような所だったから――では、ない)

上条(俺達を遠巻きにして見つめる、どこか魚類めいた感情の籠らぬ男達――でも、なかった)

上条(俺が嫌悪を憶えたのは『臭い』。この旧市街に漂っている何かの臭い)

上条(故郷を離れた旅行者は旅先の臭いに閉口する、って話を土御門から聞いた事がある)

上条(日本は醤油臭いとか、インドがカレーっぽいとか、ハワイが花の匂いだとか。イギリスだと”石畳”だって)

上条(話半分に聞いたんだが――今にして思えば本当だった部分もある)

上条(人は自分の体臭に気づかない。あまり強いものでない限り、それが『日常的』なものとして認識はされない)

上条(同様に俺達が暮らしている生活圏の中では、余所からやって来た人間でも無い限り特別な臭いを嗅ぎ取る事はない)

上条(……でも、ここの臭いは、なんか違う。なんかな)

上条(例えるんだったら、赤錆と海水の中に、焼け焦げた何かを突っ込んだような……)

上条(大きな火事があってから10年経ってるってのに、臭いが消えていないのか……?)

レッサー「……こりゃマスクでも買ってきた方が良かったでしょうかねぇ。どうします?雑貨屋さんでも探してみます?」

上条「いや、さっさと探しちまおう――てかさ?」

レッサー「はい?」

上条「俺ら、なんでこっち側来たの?」

レッサー「観光?」

上条「――あ、ごめん俺先に帰るわ」

レッサー「待って下さい!ジョークに決まってるじゃないですか!」

レッサー「もうっ!上条さんのあ・ば・れ・ん・ぼっ!」

上条「スゲーなその単語使われたの初めてだよ。後この場合正しい日本語は『あわてんぼ』であって『暴れん坊』は別だ」

レッサー「それではわたしが上条さんの初めてを奪ったので、上条さんが私のはじ――」

上条「言わせないよ!?幾ら日本語で意味通じないからって往来で喋って良い事といけない事がある!」

上条「てか旧市街って言われてるぐらいだから、もっと人は多いもんだと思ったけど……なぁ?」

レッサー「あぁイングランドにも関わらず中東アジア系ばっかでしょ?実質スラム街ですからねぇ、こっちは」

レッサー「ぶっちゃけちょっとした治外法権になってますんで、私から離れないで下さいな。絶対にね」

上条「……一部の言葉だけを抜き出せば、ちょっとラブコメっぽいんだけどなぁ」

レッサー「おんやぁ?私はそれでも構いませんけど?」

上条「ここじゃなかったら、な」

上条(って事はレッサーが狙われる可能性も充分って話かよ。俺がしっかりしないとな)

上条「……見た目は可愛いんだけどなぁ、お前」

レッサー「にゃっ!?」

上条「つーかお前、今からでも戻った方がいいだろ。こっちは俺が適当に調べとくから」

レッサー「えっと、それじゃ今からホテルへ戻ってしっぽりしましょうっいや大丈夫大丈夫っ!エロゲ情報ではビギナー同士でも平気らしいですからねっ!」

上条「真面目な話だ!あと多分その情報はソースからして間違ってるよ!」

レッサー「どうでしょうね、それは?まぁ二人の証言が食い違っているのは確かですが!」

レッサー「では実践して確かめるという事で一つ間を取りましょう!」

上条「良し!それじゃ確かめ――ってバカ!ならないよね?それお前しか得してねーもの!」

上条「……いやまぁ、俺も嫌いじゃないんだが!もっと自分を大切にだね」

レッサー「ま、ここいらは日が暮れない限りはまず問題ないでしょう。ではちょっくら聞いてきますな」

上条「待て待て一人でどこへ行くつもりだ」

レッサー「路地裏入ってチンピラボコって情報をゲットしようかと」

上条「……いい加減にしろ」

レッサー「――はいな?」

上条「いい加減にしろって言ったんだよ!?お前は魔術師かもしんないけどさ!」

上条「”一応”女の子なんだから、”一応”危ないとかって思えよ!」

レッサー「あのぅ、”一応”連行されると私のエンジェルハートが傷つくんですが。”一応”は女の子なんで」

上条「マジな話、注意してくれないか?俺は知り合いの子が酷い目に遭うなんて、想像すらしたくない」

レッサー「……上条さんから『女の子』扱いされるのは、嬉しいやらくすぐったいやらですがねぇ……まぁ分かりましたよ」 ギュッ

上条「……なんで俺の腕を取ってんですか、レッサーさん?」

レッサー「私は基本、『護る』方なんで『護られる』のは苦手なんですよね、これがまた」

上条「守る?……でもお前ら、どっちかっつーと国家転覆狙ったテロリストじゃ?」

レッサー「アレも『護る』ためにやったつもりですが――あのババアが『noble obligation』を放棄したんで、まぁ良しとしましょう」

上条「のーぶる?」

レッサー「人々の盾であり剣となるべき人物が、その責をブリテン国民へ押しつけた――『王権』の否定……それもまた時代の流れ、人の選択肢なんでしょうが」

上条「何?」

レッサー「いえなんでも。あ、それよりも上条さん!もっとくっつかないと私の貞操が危険でピンチです!」

上条「任せろ!……でもこれおかしくね?守るのに腕組む必要はないですよね?」

上条「って言うかですね、俺の腕に敬語にならざるを得ない程のアレが、ふにょんふにょんしてるって言うか!」

上条「やっぱフロリスやランシスとは一線を画す破壊力的な!みたいな感じで、はい!」

レッサー「そしてゆくゆくは私が上条さんの貞操を!」

上条「あれ?もしかして狙われるのって俺の方なのか?」

レッサー「ククク……こうして入れるのも今夜が山田っ!」

上条「お前日本のテレビから知識仕入れるのもいい加減にしろ、な?」

上条(――と、真面目な話を振ってもあっさりスルーされちまったんだが。なんつーかまぁ、人生経験の差っていうか、修羅場の差?)

上条(レッサーがそこら辺のチンピラ相手に後れを取るとは思えないが……ま、俺が気をつけていればいいだけの話――ってそうそう)

上条(最近、っていうか旅が始まってから少しあった”違和感”。それの正体がここへ来てようやく分かった)

上条(俺がフィアンマをに殴りに行く途中、不安と後悔――インデックスへ申し訳ない気持ちで一杯になってた時)

上条(少しぐらい危険な方法でも急ごうとしていた俺は、随分とレッサーに助けられた気がする)

上条(俺が少しでも落ち込んだ顔を見せようものなら、即座に慰めようとしてくれた――体を使って)

上条(不安で心が押し潰されそうになっていたのも、明るく活を入れてくれようとした――体を使って)

上条(他にも憂鬱な考えに嵌まりそうな時にも、元気に励まそうとしてくれた――体を使って)

上条「……」

上条(あれ?もしかしてこれいい話じゃないな?ただ単にハニトラ食らってただけだよね?)

上条(むしろ傷心の俺相手につけ込もうとする、ドス黒い打算的なものが……)

上条(……ま、まぁ!動機はどうであれ助かったのは事実だし!感謝はしてるさ!)

上条(ただ、そのレッサーに『何か違うな?』って違和感があったのも事実で)

上条(『新たなる』の友達と一緒なんだから、違って当然なのかも、と考えてはいたんだが――)

上条(旅が始まってから初めて、そして数ヶ月ぶりに”腕へ抱きついてる”のを見て)

上条(どこかホッとしてるのを自覚した……なーんか嫌な予感もするんだけどなぁ、これはこれで)

上条「……」

上条(……うん!今考えても仕方がないからな!後でゆっくりと考えよう!)

上条(アリサやレッサー、ベイロープにフロリスとランシス。どうせこの旅が終ったら俺はお役御免だし)

上条(アリサはともかく――じゃ、ないか。現役アイドルに早々会えるって訳がないだろうし、イギリス組も同じ)

上条「……」

上条(――良し!先送りしても問題はないよなっ!どうせこのままウヤムヤになるだろうしっ!)

――雑貨屋

レッサー「すいまっせーん、これとこれ下さいな。あとミネラルウォーターも!」

おばさん「ん、あぁ銘柄は一つしかないけどいいかい?」

レッサー「あと道も少し教えて欲しいんですが――」

上条(――と、交渉事はほぼ全てレッサーにやって貰ってる。だって英語だもん!)

上条(いやでも進歩はあったんだぜ?自動翻訳アプリと環境に慣れたせいでリスニングは何とか)

上条(話すのは自信がない。まぁ多少おかしくても突っ込み禁止で)

レッサー「で、その時私が言ってやったんですよ――『お前のその幻想は一方通行だ!』ってね!」

上条「混ざってる混ざってる。しかもその内容だとただの勘違いを指摘してるだけだな」

おばさん「アンタ達観光なのかい?こんな辺鄙な所にまでわざわざ」

レッサー「まー半分半分ですかね。残りはちょっとした調査でして」

上条「10年前に火事ありましたよね?どれだけ復興が進んだのかをレポートにしようかと思っています」

おばさん「……あぁ、あったねぇ。ありゃ酷かったよ」

上条「良かったらお話を聞かせて貰えませんか?」

おばさん「話すのは構わないけど、あんまり憶えていたいモンじゃないからねぇ。曖昧でも良いんだったら」

上条「すいません。お願いします」

おばさん「あの日は寒い冬の日でね――ってお兄さんはジャパニーズかい?そっちの子は違うみたいだけど」

上条「えぇ――」

レッサー「――いやぁよく『似てない兄妹だな』って言われますがね。正真正銘の兄妹ですよ」

レッサー「ホラホラ、髪の色なんかそっくりでしょ?」

上条「(お前またそういうワケ分からん嘘を……)」

おばさん「言われてみれば似てるかも知れないねぇ。悪かったよ」

レッサー「(ま、基本的に言ったもん勝ち的な所ありますから)」

上条「(よく分からねぇよイギリス文化!)」

おばさん「で、ジャパニーズなら分からないかも知れないけど、イングランドの冬はカラッカラに乾いて雨が降らないのさ」

おばさん「だから少しの小火でも大火事になって、北区は派手に焼かれちまったって話。それだけだね」

レッサー「北区ってぇと、駅から出て右側の?」

おばさん「そうそう。ここいら辺は大丈夫だったんだけどねぇ。病院と教会が焼けちまってさ」

レッサー「教会、ですか?馬糞投げられ機――じゃなかった、イギリス清教の教会は健在だった筈ですけど」

上条「お前今別に噛まなかったよね?ものっそい明瞭に発音したじゃねぇか」

レッサー「ここへ来る前に見ましたが、どう見ても19世頃の建築様式でしたが」

おばさん「ん?……あぁそうだよねえ、余所から来たお客さんには分かんないかもだけど、この街には教会が二つあるのさ」

おばさん「古くからある教会と、新しく出来た教会の」

上条「それ、もしかして――」

おばさん「『ヤドリギの家』って言うんだけどね、知らないだろうねぇ、外の人は」

上条(ここでその名前が!?)

レッサー「変わった名前ですね、ってか初耳です。イギリス国教会派?それともイギリス清教系カトリック?」

おばさん「ははっ!やだよお客さんったら、そんなちゃんとしたもんじゃないさ!」

レッサー「……はい?」

おばさん「北区には元々ウェイトリー先生って、代々お医者様をやってる人が居てね――あ、元々は移民だったらしいんだけど」

おばさん「先生が立ち上げた教会なんだよ」

レッサー「胡散臭っ!?」

上条「オイ!言葉を選べよ!気持ちは分かるが!」

おばさん「そーよねぇ?普通はそう思うじゃない、『ウェイトリー先生忙しすぎて』みたいに心配しちゃったわよ!みんなでね!」

レッサー「(おや意外。否定しないどころかむしろ話に乗ってきましたね)」

上条「(ってかもしかしてこの人も元患者か?だったらヤバくねーかな)」

おばさん「でも先生は、そのホラ?ボランティアもやってたのよ。移民の子とか、お金のない家庭の子供を集めて学校を作りたかったみたいで」

おばさん「そう言った支援をするためにReligious……えっと」

レッサー「『Rreligious corporation?』」

おばさん「あ、それそれ!それをアレするために立ち上げたって!」

上条「(何?)」

レッサー「(宗教法人、ですね)」

おばさん「まぁ後は孤児を受け入れたり、ゴロツキを集めて仕事をさせたり、ここいらも治安は良くなったのさ。でもね」

レッサー「そこで10年前の火事に繋がると」

おばさん「噂じゃ先生も火傷したって聞いたねえ」

レッサー「聞いた、ですか?でしたらおばさんはもう罹ってないと?」

おばさん「ないわね。確かにウェイトリー先生にはあたしが生まれた時、取り上げて貰ってからの付き合いだったけどさ」

おばさん「わざわざ新市街にまで行くのはちょっと面倒でしょ?」

上条「(あぁイギリスの保険制度じゃ、地元の医者にしか医者に掛かれないんだったか)」

レッサー「新市街?って事はそちらで今もやってらっしゃるんですか?」

おばさん「興味があるんだったら行ってみれば――とは言えないわよねえ、ちょっと」

レッサー「ですなぁ。あまり病院に良い思い出もありませんし」

おばさん「そうよねえ。あ、ごめんなさいね、長話しちゃって」

レッサー「いえいえタメになりました、ような気がします。ね?」

上条「ん、あぁそうだな。ありがとうおばさん」

おばさん「どうしたいまして――あ、そうそう!」

レッサー「はい?」

おばさん「病院跡地はガレキが残ってるからね!近づいちゃ危ないよ!」

上条「フラグじゃねーか」

レッサー「むしろダチョウですな」

――旧市街

レッサー「――それで先程のお話の続きなんですが」

上条「あぁ」

レッサー「私がデレたんですから、そろそろ上条さんもデレては如何でしょうかね?」

上条「続ける場所間違ってねぇかな?オルソラばりに巻き戻ってんぞ」

上条「それとお前は最初からずっと一貫して、表面上はデレてるっほいがなっ!表面上は!」

レッサー「心外ですねぇ。陰日向から尽くしているというのに!」

上条「『ベツレヘムの星』、俺を置いてさっさと帰ったのはだーれだ?」

レッサー「言いますけどね。むしろあそこはミーシャさんだかってロシアの魔術師さんや研究者解放して、『星』の能力を削いだんですからね?」

レッサー「そもそもで言やぁ何のお手当も無しに、あそこまで付き合ったレッサーちゃんに感謝しやがっても良いんですけど!」

上条「前も言ったかもだが、感謝はしてんだよ。感謝は。でもな」

レッサー「ではこちらへ『ありがとう!上条当麻より!』と書いて頂きましょうか!」

上条「そのカーボン紙の下にある用紙、ちょっと見せて貰っていいかな?なんか日本語の書類っぽいからさ」

上条「あと婚姻届は直筆のみ有効だから、俺の想像通りのブツだったら受理して貰えないと思うよ?」

レッサー「――んで、今のお話どう思います?」

上条「間違いなく犯罪だな」

レッサー「いえ、今のネタ小話ではなく」

上条「何?それじゃお前小ネタに婚姻届何枚も持ってんの?」

レッサー「いえ!今のマジ小話ではなく!」

上条「たまーに俺、何がレッサーさんをそこまでボケに駆り立てるんだろうって不安になるんだが……」

レッサー「愛ですよ、あ・いっ!言わせたがりですかっンもうっ!」

上条「だから俺は、お前の直ぐ小芝居へ逃げる所が信用ならないんだけど……」

レッサー「ではなく、『ヤドリギの家』ですよ。感想としちゃどんなもんですかねってお話です」

上条「意外とまとも……か?問答無用で『お前も人形にしてやろうか!』ぐらいは覚悟してたんだが」

レッサー「その方はKISSのパクりな上、政治的に斜め上の発言で悪魔()としての株を大暴落させましたんで、ノータッチでお願いします」

レッサー「『Clever&Crazy』、要はマンソン路線で行こうとしやがって大失敗。私だったら地獄へ帰りますけどね」

上条「普通こういうのって、中の人よりも外の人の方が判断キツいじゃん?」

レッサー「ですなぁ」

上条「おばさんの言ってる内容はよく分かんなかったけど、まぁ好感触か」

レッサー「ですねぇ。もそっと電波的でアイタタタな話を期待していたんですが、若干拍子抜けしたぐらいです」

上条「何かボランティアみたいな事業するために、宗教法人始めましたって言ってたな」

レッサー「病院は……あー……日本の場合ですと医療法人へ入り、管轄の部署が少し違うんですね。向こうさんの資料読んでみない事には何とも言えませんが」

レッサー「より広義の福祉的な事業をするには社会福祉法人、だったような?」

上条「うん?だったらそっちですればいいんじゃないのか?」

レッサー「えぇはい、ですから宗教法人を取りながら、他の法人も兼任してるんでしょう」

レッサー「日本ではどうか知りませんけど、こっちじゃ教会が慈善団体を”経営”するのは良くある話です。なので恐らくはその線じゃないかと」

上条「移民を雇ってどうこうって話は?」

レッサー「おばさんはゴロツキと言っていましたが、実態は不正移民でしょう。不法入国と不正滞在、違法就労のセット」

上条「こんな田舎で?街は街だけど、ロンドンとかに比べれば全然だよな?」

レッサー「田舎の方が取り締まりはヌルいですし、職を求めてるんだったらトラック使えば少しの時間で移動出来ますからね。荷台で我慢すれば、ですが」

レッサー「そんな彼らを雇用すれば、結果的に昼間から暇を持て余してウロウロしてる人間が減り、結果的に治安向上へ繋がると」

上条「何となくは分かったが。でもそれじゃ”宗教”法人を取った意味が分からないぞ?フツーに法人やボランティアした方がいいんじゃねぇの?」

レッサー「あぁそこら辺はお国柄ですね。基本的十字教以外は敬遠される所もありますんで」

レッサー「形だけでも『それっぽい』スタンスを取る必要性があったんじゃないか、と」

レッサー「不正移民であろうが、職を与えれば住人として認知されますし。何よりもまず経済に組み込まれます」

レッサー「更にぶっちゃけますと宗教法人の場合、グレイな支出や胡散臭い活動費も『経費』として計上出来る面があります」

レッサー「なので節税対策――と、いう名の脱法行為が行われている、と考えるのが自然でしょうな。だもんで真っ当は真っ当ですよ」

上条「まぁ、なぁ?」

レッサー「……ただ、ですねぇ。正直な感想としては『出来すぎている』んですよ」

レッサー「あ、長編で呼ばれるとのび○の存在意義が消失するとか、そういう話じゃないですからね?」

上条「レサえもんそれ違う人だよ!俺的には『あれ?これ別に出来○君居たら問題が解決してるよね?』ってガキん頃から思ってたけどさ!」

レッサー「さっきも言いましたが宗教団体が『慈善事業』をする話ってぇのは良く聞きますよね。NPO、知ってますか?」

上条「そんぐらいは流石になぁ。ボランティアとかする人らだろ?」

レッサー「ですがこれ、『法律的には医療法人や宗教法人も入る』んですね」

上条「……はい?非営利団体なのに?」

レッサー「狭義のNPOにした所で『組織を運営出来るだけの報酬』は認められてますからねぇ。当然ですが」

レッサー「『自分達が適正だと思う分の報酬を受け取る』権利、も含めてのNPO。上から下まで全員無報酬はただの妄想ですよ」

レッサー「むしろ『”非営利”団体』を意図的に連呼している節もあるぐらいですからね、えぇもう胡散臭いったらありゃしませんよ」

上条「先生質問でーす!」

レッサー「好きなシチュは邪教集団を壊滅させた後、昇る朝日を見つめながら『ランシス達の分まで幸せになろう?』『……はい』です」

上条「聞いてないな?あとその設定だとランシスさん死んでねぇかな?」

レッサー「政略結婚とはいえ人の嫁をNTRった挙げ句、パーティ壊滅に晒しておきながら堂々と余生を全うした相手にどうしろと?」

上条「言葉の意味はよく分からないが、『お前が言うなモルドレット!』ってツッコミが浮かんだよ。何だろうな、これ?」

レッサー「――と!上条さんの仰ったように『だったらなんで猫も杓子もNPOになるん?』ですが」

上条「せんせー、俺まだ質問してませんが!……まぁ聞きたいのはその通りだが」

レッサー「税制面での優遇措置、並びに各種で高まってる知名度を利用した政治・宗教団体への勧誘目的でしょうかね」

レッサー「……ま、政治団体と宗教団体の境をどこかに引くかで、一悶着ありそうですが」

上条「……聞いていい話なのか、それ」

レッサー「『このせかいはカミサマがおつくりになりますた。だからカミサマ(オレサマ)にしたがわないヤツぶっ殺ぎゃー』――これはまぁ『宗教』ですよね?」

上条「後半部分は何かとアレだが、まぁ、そうだな」

レッサー「『地球は生きていまつ。一個の生命なんでつ。だからこの地球を汚すイエローはぶっ殺ぎゃー』――これは?」

上条「後半同じだったし、もしかしてイルカの名を借りたテロリストの事?」

レッサー「『世界から武器を無くせば平和に以下略』」

上条「色々な意味で面倒臭くなりそうだからって、ぶん投げるなよ!」

レッサー「『やってる当人からすれば大真面目、しかし端から見れば狂人の戯言に等しい』事、結構ありますよね?ま、好きでやってるんでしょうが」

レッサー「そんな人らが隠れ蓑にしていたり、確信犯――正確には”故意犯”としてNPOを開くというのはままある話で」

上条「あー……成程。神様ってのは信んじる人にとっては『居る』わな。科学サイドがどうじゃなくって、そう思ってる」

上条「同じベクトルでそういう人らも『神様じゃないけど信じきってる』って流れかぁ……」

レッサー「えぇまぁそーんな感じでしょうかねー。いやー個人が何を信じようが、信じた挙げ句に身上潰そうが勝手なんですがー」

レッサー「それでまともに生きている方々の足引っ張るバカも居るんですから、大人しくハイキングでもしてやがれって感じですかね」

上条「……分からなくもねぇがな。俺も『不幸』でババ引いた口だから、まぁな」

レッサー「個人が個人の趣味の範疇でおバカする分にゃ結構なんですがねぇ。大抵親兄弟から友人知人職場と迷惑かけまくりで――と」

レッサー「そろそろ着きましたねぇ、『北区』」

――旧市街 北区

上条(そこへ足を踏み入れた瞬間、俺は思わず口元を抑えそうになった……というのも)

上条(何度かイノケンティウスで焼かれかかった時、人間の体を焦がす嫌な臭いを嗅いだ。つーか俺の体なんだが)

上条(何とも言えない生理的に不快な異臭。それがまだこの通り一帯から漂っている……)

上条(道の両端はポツポツと再建した建物と、火事のまま放置されたガレキが積み重なっていて、何とも表現しがたい)

上条「10年、経ってんだよなぁ?」

レッサー「再建が遅い、ですか」

上条「住宅は住む人次第だろうけど、土地の方は更地にしちまえば良かったんじゃねぇの?」

レッサー「多分、その答えは新市街の方にあると思いますよ。あちらが元々、開発の優先順位は高かった訳で」

レッサー「こっちへ新しく家を建てるよりか、向こうへ移った方がいいんじゃね?みたいな考えなのかと」

上条「なる。向こうの方が新しい上に治安も良さげだしなぁ」

レッサー「むしろそうやって旧市街から人が流出すればする程、街は寂れてしまうんですが――まぁ、政治的な観点から見れば?」

レッサー「新市街の方へ重点的に住人を移して、でもって発展させる。すると当然人が集まって土地は足りなくなる」

レッサー「そうした動きが出始めたら、次は旧市街の再開発計画を立てるって考えじゃないかと」

上条「よく考えてんなー」

レッサー「シムシテ○8段は伊達じゃないですよっ!」

上条「伊達だな?驚くぐらいのハッタリで、少し感心した損したわ!」

レッサー「ですけど、そんなには外れてはいないかと。計画が実現出来るかどうかは別にして――さて」

上条「病院、か。宗教施設も兼ねてるんだっけ?」

レッサー「名義だけでしょうがね、恐らくは」

――ウェイトリー記念病院跡

上条「あー……」

レッサー「一応残ってるっちゃ残ってますねぇ、これは」

上条「外枠はほぼそのまま、遠くから見れば健在に見えない事もない、か?」

レッサー「ですが壁も所々剥げ落ちてますし、内部は火事でボロッボロ」

レッサー「何よりもまずこの臭いじゃ、正直暮らしたくはないですがね」

上条「都市伝説で登場するような、廃病院のイメージそのまま……夜中には来たくねぇよなぁ」

レッサー「でっすよねー!」

上条「だよなー!」

レッサー「……」

上条「……」

レッサー「――それでですね。実はこの街の名産品が『うなぎゼリー』でして」

上条「おい!帰ろうとするんじゃない!ここまで来たんだから中、見るだけ見とこうぜ!」

上条「あと悪名高い『うなぎゼリー』は俺だって知ってるわ!先輩からトラウマと一緒に植え付けられたからなっ!」

レッサー「いやぁ、でもなんかめっさ臭いですし?煤だらけゴミだらけで服汚れそうだなーと」

上条「そうだけども!だからってこのまま帰る訳に行かないだろう!?何のために来たのか思い出せよっ!?」

レッサー「愛の逃避行?」

上条「良し!そろそろお前にも日本の礼儀を教えてやらないとな!」

レッサー「おっ?なんです急に?」

上条「日本には”UMEBOSHI”っていうツッコミの一つがあってだ」

レッサー「No!?それいつもベイロープから貰っていますんでノーサンキューです!」

上条「『ヤドリギの家』がシロならシロでも別に構わないんだよ!ちょっとアレな感じであっても俺達の脅威じゃないから!」

上条「今はとにかくアリサを狙うキ×××を何とかしないと――」

レッサー「……また、アリサさんですか……」

上条「……レッサー?」

レッサー「いや!いいんですよ!私、分かっていましたから!」

レッサー「上条さんの中にはアリサさんが、ずっと前から居るって――分かって、いましたから……っ!」

上条「ねぇよ。つーか一々友達相手に好き嫌いとか失礼だろ」

レッサー「アリサさん、最初は少し蟠りもありましたよ?嫉妬って言うか、羨ましかったんですよ」

レッサー「上条さんに側に居られた、ただそれだけの理由が!」

上条「……いやだからね?そういう話じゃなくって」

レッサー「でも今はもう友達じゃないですかっ!?一緒に辛いアレコレをくぐり抜けてくれば情だって移りますよっ!?」

レッサー「あんな……」

上条「……レッサー。そうか、お前きちんとアリサと友達になってくれたんだな」

レッサー「そりゃ当然ですよ。『奇蹟の歌姫』ではない『鳴護アリサ』さんはもう、私の友達の一人であり――」

レッサー「――大切な、仲間、なんですから……!」

上条「……あぁ!」

レッサー「その状態からNTRのって、超興奮しますよねっ!」

上条「いい話が台無しじゃねぇかっ!?友達だとか仲間だって話はどこへ家出しやがったっ!?」

上条「そうじゃないだろっ!?そんな事実はないけど、つーか自分で言ってて悲しいけど!アリサのために身を引くって展開じゃないのっ!?」

レッサー「いえむしろ『仲の良い友達を裏切る事での背徳感』で盛り上がる事間違い無しかとっ!!!」

レッサー「大丈夫です!この私は口の堅さに関してはベイロープから、『紙風船』と呼ばれるぐらいの信頼を得ていますのでっ!」

上条「ベイロープは多分『ペラッペラで直ぐ飛ぶし、物に当たったら割れる』って意味でしそう呼んだんだと思うよ?」

上条「なぁ?今からいいからチェンジ出来ないかな?レッサーさんじゃなくて、他の人呼べない?」

上条「それとも今からでもバードウェイにDOZEZA決めるか……?」

レッサー「てかあのツンロリ、携帯で呼び出せば普通に来そうな感じですけどねー」

上条「……うんまぁ、なんだかんだで来るとは思うよ?あの子、面倒見はいいから。でもな?」

上条「呼び出せば呼び出したなりの”対価”として、一体何を失うハメになるか……っ!腎臓とか肺とか持って行かれそうで怖えぇんだよっ!?」

レッサー「鋼っぽい錬金術ですか。っていうか失うより増えると思いますよ、家族的なものが」

上条「てか今スルーしちゃったんだが、”ツンロリ”って何?どんなジャンルなの?流行ったらまた問題にならないかな?」

レッサー「何を勘違いしたのか、『壁ドン!』すらCMで流れたんでしたっけ?笑いものにしようって悪意アリアリで吐き気がしますっ」

上条「……いやまぁ話戻すけどな。中入るのそんなに嫌か?俺も嫌だけど」

レッサー「ホラだって『Keep Out!(立ち入り禁止)』のテープがですね」

上条「貼ってあるけどさ!でもこれ――これ……?」

レッサー「おっ?気づきました?」

上条「……これ、なんで貼ってあんだよ?火事は10年前だっつーのに……!?」

レッサー「近隣付近、今通ってきたデパートはスルーでしたよね。『立ち入り禁止!』の看板はありましたが」

レッサー「しかもこれ――あ、後ろ側の粘着力が落ちてませんなー。いやぁもう面倒クセー状況ですねオイ」

上条「……あのぅ、このテーブってさ?”事件的なもの”が起きた現場とか、部外者が入らないように張るんですよね?こう、周りをグルグルと?」

レッサー「はい、そうですね。”事件的なもの”で警察さんが出張った時に、です」

上条「……」

レッサー「……」

上条「……う、うなぎゼリー」

レッサー「あい?」

上条「外見はグロいけど、オイシイ……ん、だよね?」

レッサー「ぶっちゃけ日本の煮凝り知ってると、『残飯?』レベルですが」

上条「いやでも!食べてみないと分からないじゃないか!というか食べても居ないのに批判するのは良くないよ!」

レッサー「えぇまぁ仰ってる事はある意味真理を突いているんですが、そのロジックだと『女性の心理は女性にしか分からない』、つまり」

レッサー「『男性は××コ切って性転換しないと女性を語ってはいけない』って暴論へと繋がるんですが」

上条「これ以上To LOV○るはゴメンだよっ!?つーかなんで俺ばっかりこんな目に!?」

レッサー「カミジョー、少し前の『アリサを守るとかナントカ』思いだせー?あとTroubleの単語も違うぞー?合ってるっちゃ合っていますが」

上条「見なかった事には……?」

レッサー「したい、ですけどねぇ。つーか私も戦略的撤退をお勧めしたい所なんです――が」

上条「が?」

レッサー「どーにも上条さん。熱烈なファンの方とか、身に覚えはありませんか?」

男A・B・C・D「……」

上条(イギリス人じゃない……?顔立ち見るにインドとか中央アジア……って事はこいつら移民か!)

レッサー「Pakistaniでしょうかね。最近イングランドで騒ぎを起こしていますし」

上条「俺の友達ではないなぁ。もしそうだったらこんな修羅場にはなってない」

レッサー「え?でもいつか刺されそうだってマタイさんに予言されてませんでしたっけ?しかも童×のままで」

上条「やっぱアレそういう意味だったのかよチクショー!?」

レッサー「さぁ!迫り来る男達、上条さんの明日はどっちだ!?」

上条「普通に来る予定だよ?別に見えないとか、そういう話じゃないからね?」

レッサー「このまま無抵抗で上条さんがオッサンどもから前から後ろから……悪くないですねっ!」

上条「おいテメェ今どんな想像しやがった!?」

レッサー「――上条さん、向こうは歴戦の魔術師だと見受けられます!このまま二人で一緒に戦っては不利かも知れません!」

上条「お、おぉ?それで?」

レッサー「なので私が逃げている間に上条さんは時間を稼ぐ作戦で行きましょう!コードネームは――」

レッサー「――『くっ、殺せ!』です!」

上条「ごめんな?おっさん達少し待っててくれないかな?」

上条「俺ちょっとこのバカと拳で語り合わなくちゃいけないから!幻想とか殺さなきゃいけないからな!」

上条「一体何をどうやって『殺して下さい!』って懇願するような状況に陥るのか、言ってみやがれゴラァァッ!」

レッサー「『上条さんの貞操を狙って現れた第三の刺客!レッサーちゃんの奮闘虚しく連れ去られる上条当麻!』」

上条「あれ?狙われてんのって俺の貞操なの?なんでそっちがメインになってんの?」

レッサー「『鍛えられた筋肉の海に意識を刈り取られそうになる中、上条当麻が思い浮かべるのは幸せだった日々の事……』」

上条「次回予告するぐらいだったら余裕じゃないかな?てか向こうも『何言ってんだろコイツ?』って空気読んでくれてるし、話せば分かってくれるんじゃないの?」

レッサー「『……あぁ、あん時レッサーに童貞切って貰えれば良かった……!』」

上条「軽いよね?なんで俺敵に捕まってんのに、割としょーもない事ばっか考えてんの?」

レッサー「『こんな快楽に陥るのも悪くないぜ……ククク!』」

上条「俺のキャラブレすぎだろ!?気持ちいいのか抵抗してるのか一貫性がないなっ!」

レッサー「『そして現れる謎の女の影!突如現れた上条当麻の現地妻を相手に戸惑う取材班!』」

上条「アニメ風予告じゃなかったの?取材班だと昭和の面白探検隊シリーズと被るよね?」

レッサー「『レッサーちゃんは上条当麻の心を救えるのか!?凍り付いた心を溶かす事は出来るのであろうか!?』」

上条「むしろ今、俺がお前への不信感で凍り付きそうなんですけど」

レッサー「『次回、”ザ・ガンジー”!すべからく見よ……ッ!!!』」

上条「いやなんか、次回予告とかしっちゃかめっちゃかになってんだが……」

レッサー「と言う訳で、Please?」

上条「嫌だよっカマ掘られるのはっ!?」

レッサー「じゃ、じゃあ私が犠牲になります!その間に逃げて下さいっ!」

上条「待て!?お前それあの有名な『どうぞどうぞ』の前フリじゃないのか!?」

レッサー「――てなワケで、ですね」 ザワッ

上条「レ、レッサー?」

レッサー「あまり、こっちとしちゃ事を荒立てたくないでしてね。えぇもう本当ですよ?」

レッサー「なんで一応は『逃げる時間を差し上げた』分だけ、人道的配慮だと思って下さいな」

上条(なんつー殺気だ!?つーかコイツ本気で――)

レッサー「『――Please, Go to the grave(あなたのための墓穴へどうぞ)』」

男達「――!?」

???「……何をしている。というか相変わらず女連れだな、お前は」

上条(そう、男達の後ろから出て来たのは――褐色の肌を持った女の子だった)

上条(男達が、スッと身を引いた所を見るに、指導者的な立場の子なのは間違いがない……が、見覚えがあるような?ないような……?)

レッサー「あ、あ、あ、あなたはっ!?まさか――」

上条「知ってるのかレッサーっ!?」

レッサー「――本当に現地妻がしゃしゃり出てくるとはっ1?流石に斜め上でした!!!」

上条「あ、ごめんな?今少し大事な話をしてるから、向こうで待っといて貰えるかな?」

???「誰が現地妻だっ!わ、私はそこのお節介な男の妻になった憶えはないぞ!」

レッサー「……しぃぃぃぃぃっかりフラグ立ててるじゃないですかーヤダー」

上条「待て!?人を人でなしみたいな目で見ちゃいけませんっ!」

レッサー「いやでもあちらさんはお知り合いのようですよ?」

???「お前、まさか憶えてないと言うのか……っ!?」

上条「憶えてる!今ちょっと突然すぎて整理がついてないだけであってだ!俺はきっと憶えてる筈だ!」

レッサー「その言い方自体が憶えてないって証拠なんですけど――まぁ、そちらさんとはお目にかかるのは初めてですんで、自己紹介でもしましょうか」

レッサー「私は『新たなる光』のレッサーちゃんと申します。あなたがブリテンの敵にならない限りはヨロシク」

上条「その自己紹介もどうかと思うが……」

???「随分とご挨拶だが……まぁ名乗られて応じないようでは、我が一族の名が廃る」

レッサー「褒められましたっ!」

上条「皮肉だよ?」

???「私はソーズティ、ソーズティ=エキシカ」

ソーズティ(???)「『天上より来たる神々の門』の魔術師――だった、者だ」

――ウェイトリー記念病院跡 一階ロビーがあったと思われる広場

上条「あぁうん、憶えてた憶えてた!ただちょっと前とはイメージが違ってたから」

上条「前はさ?ホラ、パンツ見えそうな超ミニスカ制服着て――」

ソーズティ「言うなバカ!私の中であれはなかった事にしてるんだから!」」

上条「あー……姉ちゃんに何か言われた?」

ソーズティ「『……そういうお店?』って一言だけ……正気に戻った最初の会話が……ッ!」

ソーズティ「姉妹の再会……感動の対面だったのに……!!!」

上条「ウレアパディーも肌色多めな服、つーか布きれ着てたもんな……」

レッサー「すいません、そのお話を詳しく」

レッサー「あと、もう使わないのであれば、そのミニスカ制服とやらを譲っては頂けないでしょうか?」

上条「ダメだ。あればソーズティが着るからまだ許せるんであって、お前が着ると完全に恥女扱いになる」

ソーズティ「人の潜入服になんて言い草だ。中の学生達もそう変わらない格好だったろうに!」

レッサー「まぁおっぱいが大きいとリアルですもんね。分かります分かります」

ソーズティ「……お前」

上条「そこまでー!つーか喧嘩しない!仲良くしなさい!」

ソーズティ「……ふんっ」

レッサー「喧嘩なんてしてませんとも。ただソーズティさんは暫くぶりに会ったのに、このバカは気づかないし女連れだわで、機嫌斜めであって」

上条「女連れ……よく分からんが――お前今、俺の事”このバカ”って言わなかった?ねぇ?」

レッサー「それで?どうしてIndianの元魔術結社の方がイングランドに居るのでしょうか?」

レッサー「しかもタイミング良く、私達が調べようとしていた廃ビルの中から。偶然とは、思いにくいですよねぇ」

ソーズティ「……」

レッサー「おんやぁ?聞こえてませんかー?もっしもーし?」

上条「俺も聞きたい。二人で逃げられたのか?怪我とかしなかったか?」

ソーズティ「……それは、別に。魔術結社は全滅した事になっているのだから、追っ手がかかる訳でもない」

ソーズティ「それに姉は不完全だが『ブラフマーアストラ』を扱える。相手になんかなるもんか」

上条「発動条件厳しいんじゃなかったっけ?……まぁ、いいや。お前らが無事なら」

ソーズティ「無事。無事か。傷を負わなかったのはその通りだが、今や私達は死んだ身だ。故郷へ帰れる訳もない」

レッサー「なので比較的インドから来やすい旧宗主国のイングランドですか。まぁ納得ですな」

ソーズティ「……そうだ」

上条「姉ちゃんも近くに居るの?」

ソーズティ「いや、ロンドンに居るな。体調は思った程安定していない……病人、ではないのだが」

ソーズティ「だから私が”ここ”へ来た。代理人に過ぎないのさ」

上条「ふーん?……はい?代理人?」

ソーズティ「何?何故そこで首を傾げるんだ?」

レッサー「上条さん、ここは一つ」

上条「あぁ言っちまった方が早い、つーかお互いのためになると思う――ソーズティ!」

ソーズティ「な、何だ?」

上条「っと、今から話す事は他言無用でお願い出来るか?」

上条「あ、ウレアパディーとか信じられる人に言うのは良いけど、それ以外に広まると拙い」

ソーズティ「またお前はトラブルに巻き込まれているのか。そうなんだろうな、それは」

ソーズティ「お前が命を助けた相手も、お前にとってはただの日常に過ぎない、んだよな」

上条「ソーズティ?」

レッサー「聞くのは野暮ですよ。察せないのであれば黙っていましょうか――それとも」

レッサー「『知ってて』したんでしたら、前歯全部ヘシ折って差し上げますけど?」

上条「だから何の話だよっ!?ペナルティが重いし!」

ソーズティ「……ただの愚痴だ。益体も無い」



――10分後

上条「――で、調べていたらお前達に会った、ってのが流れだな」

ソーズティ「『エンデュミオン』……ただの軌道エレベータではないと思っていたが、まさかそんな仕込みがあったとはな」

レッサー「おや?ソーズティさんもアリサさんの関係者でしたか?」

上条「の、少しの話だ。直接の関係者じゃないが、まぁ後で話すよ」

ソーズティ「……納得しがたいが、お前がまた危険な所へ首を突っ込んでいるのは理解した」

上条「その理解、正しくないと思うよ?」

レッサー「合ってます合ってます。ど真ん中ですよ」

ソーズティ「ではこちらの経緯を話す――よりも、まずその、『病死』した人間の名前は分かるか?」

上条「えっと……書類は?鞄の中だからバードウェイんトコか」

レッサー「こんな事もあろうかと思いまして、実はデジカメに撮ってあります。見ます?」

ソーズティ「見るのはそちらに任せる」

上条「はい?」

ソーズティ「――死んだ者の名は、Pawaskar、Trivedi、Chandrababu。誰か一人でも該当しただろうか?」

レッサー「”一人”ではなく”全員”アタリですね……あっちゃー、こりゃまた面倒臭そうな展開になりそうですよ」

上条「え、なんでお前が死んだ人の名前知ってんの?」

ソーズティ「順を追って説明するか……移民、というものは大抵横の繋がりを持っている」

ソーズティ「繋がりを持っている――と、言えば聞こえは良いが、良くも悪くも裏社会のそれと大差ない」

レッサー「ま、それは『生活互助会』でいいのでは?パキスタン系と違って完全なマフィアではないんでしょう?」

ソーズティ「当然だ!あんな面汚しどもと一緒にしないでくれ!」

上条「えっと?」

レッサー「つまり、ソーズティさんは探す側の人間だったんでしょうな。今回『事故死』された方達を」

ソーズティ「彼らはある日、『仕事を見つかった!』と言い残して姿を消したんだ。探すに決まっているだろう」

上条「じゃあ、調べた先に行き着いたのが――」

ソーズティ「この街、そしてお前達に出会った」

ソーズティ「最初は面倒だから穏便に追い払おうとしたんだが……ちっこいのがパキスタニと間違えて皆殺しにしようとしただろ?」

ソーズティ「だから嬉しくもない再会をしてやっただけだよ」

レッサー「Oh……またですか!またレベルの高いツンデーレがここに!」

ソーズティ「ツンデーレ?霊装の名前か?」

上条「やめろ!ソーズティをMOEで汚染するんじゃねぇ!あとツンデレをインドの神様っぽく言うな!」

ソーズティ「まぁしかし、パキスタニどもの最近の凶行を見るに心中は察するが」

レッサー「ありがとうございます、インディアのお嬢さん」

上条「あのー、パキスタニって何?マフィアか何かの名前?」

レッサー「パキスタン国出身の人間をPakistani。直訳すればパキスタン人」

ソーズティ「それがなんで侮蔑の象徴となっているのかは、そのガキから聞け。私は口にしたくない」

レッサー「詳しくは後程しっぽりと。出来ればこのまま忘れて下さると有り難いのですが」

上条「忘れるのも含めて、分かった。しかしそれにしても穏便な話じゃないよな。誘拐されたって事か?」

レッサー「というよりは自発的に居なくなった所を食い物にされた、でしょうか。実際に『病死』した上で保険金が下りているのですから」

ソーズティ「保険金は当然、家族宛てではないのだろうな?」

レッサー「ですねぇ。『ヤドリギの家』が全額受け取っています」

上条「……真っ黒だな。灰色じゃなく、真っ黒」

レッサー「何ともまぁ剣呑なお話ですよね――ですが、私は少し腑に落ちないんですけど。ソーズティさん」

ソーズティ「ん?」

レッサー「あなたはここへ『生活互助会』としていらしたので?それとも『魔術師』としてのお立場でしょうか?」

ソーズティ「言葉遊びは好かない。はっきり言ったどうだ」

レッサー「これは失礼を。では簡潔にお伺いしますが――」

レッサー「――あなた方は『ヤドリギの家』を魔術結社として捉えておいでなのですか?」

ソーズティ「ノーコメントだ」

レッサー「……それはちょっとあんまりじゃないですかねぇ。こちらばかり情報を開示して、そちらさんは黙りってぇのは」

ソーズティ「……」

上条「レッサー、言い過ぎだ」

レッサー「……いや、まぁ巻き込みたくないってのは理解出来ますがね。私も素人さん巻き込んで良い気分はしませんし」

レッサー「ですがここで情報出し渋っていた所で、事態が改善するする訳もなく。ましてや」

レッサー「あなた一人の手に余るのであれば尚更人に頼るべきです。私達が解決出来るかは別として、解決”策”が出るかも知れません」

レッサー「どうせお話を聞くにお姉さん以外に”こっち”の流儀を知らず、辟易してるんでしょう?さっきの男達みたいに」

上条「さっきの?」

レッサー「えぇソーズティさんは『やらせた』と仰いましたが、どう見ても殺気的なものが混じっていましたんでね」

レッサー「魔術師相手に素人さんが叶う訳がない。それを知らない”程度”に闇を使った人間――つまりチンピラ未満だと」

レッサー「恐らくは部下は部下なんでしょうが、勝手に暴走しやがって渋々顔を出さざるを得なかった、が真相でしょうな」

上条「……あぁ確かにそうだな。知り合いなんだから、普通に出て来ても良かったんだし」

レッサー「それをしない、出来なかったって事は、部下の制御すらままならない環境である証左」

レッサー「意地を張ってる場合じゃないと思うんですがねぇ、違いますか?」

上条「……俺からも頼むよ。お前が学園都市に来た時だってそうだったろ?」

上条「俺やソーズティだけじゃなく、インデックスやステイルの力も借りられたからこそ!ウレアパディーを止められたんであって!」

上条「俺だけじゃ頼りにならないかも知れないけど、こっちのはただの恥女じゃないんだ!」

レッサー「待ちません?唐突に人を恥女呼ばわりはまぁ事実だから良いとして、今シリアスですよね?」

ソーズティ「……分かった。お前を信じよう」

上条「ありがとう!」

レッサー「あれ?おかしいですね?ちょい前にアリサさんに説教カマした時とデジャブが――」

レッサー「――はっ!?これはまさか前世での記憶……!?」

ソーズティ「お前”は”信用出来るんだが」

上条「レッサーさんレッサーさん、お前の言動に耐性ついてない子だと頭イタイ子にしか見えないって自覚しよう?」

上条「特に俺が信じられないのは、既に上着を脱ぐ体勢に入っているって所とか。重点的に」

レッサー「いやこれは何となく流れで、つい?」

ソーズティ「お前、気づいてないのか?」

上条「だよなぁ?」

ソーズティ「そっちじゃなく、お前だよ、お前」

上条「俺?」

レッサー「言うだけ無駄、つーか痛くもない腹バラすってんなら、こっちにも迎撃の用意があると言っておきましょうか」

ソーズティ「痛くないのなら迎撃する必要性も無い筈だが、まぁ良い。こちらも難癖つけられるのは面倒だからな」

上条「何の話だよ」

ソーズティ「気にするな。お前に理解出来るんだったら、とっくにどうにかなっている」

レッサー「お気になさらず。周囲が勝手に盛り上がっているだけの話ですので、その内落ち着く所へ落ち着くかと――まぁ?」

レッサー「その時には後ろから刺される覚悟をしておいた方が良いかもしれませんけどね?」

上条「ほっ、良かった!俺には関係なさそうな話だな!修羅場とは無縁の俺にはねっ!」

ソーズティ「えっと?」

レッサー「そっとしてあげましょう。頭のどこかで見当はついているんでしょうが、業の深さに理解を必死に拒んでいるようです」

ソーズティ「正直、『ざまあ見ろ』的なワクワクも否定しがたいが」

レッサー「私の立場としちゃその前に仕込んでおきたい所ですがねぇ……や、でも五人で守ればナントカ……?」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

乙!!

少なくともイギリスはペラッペラの服を着て、媚びを売りまくるのをメイドと認めたくないんでしょ

金持ちのステータスみたいなもんだし

ま、それを差し引いても
メイドが嫌いな男なんて存在しないわ!!

>上条(いやでも進歩はあったんだぜ?自動翻訳アプリと環境に慣れたせいでリスニングは何とか)

おお、原作で関西のおばちゃん呼ばわりされてたのに、わずか十数日(?)で……
上条さんてば、やれば出来る子だったんですねっ

確かに今までは、問答無用で外国に放り出されたり、一刻も早く目的地に着かなきゃいけなかったりで、現地で勉強なんでする暇なかったしなあ。

よっしゃ!上条さんの嫁候補のソーズティちゃんやんけ!
天上より来る神々の門のテーマは割と好き

乙です

うなぎゼリーそんなに凄いのか…
ライスプディングとかハギスとかも、アレらしいよね。
ライスプディングは、美味しそうな気もするけど

ソーズティ懐かしいわぁー、姉妹共々エロい格好してたな、そういえば。
あと褐色肌の女の子って良いよね

上条さんのDOZEZAなるものを見てみたいぜ

>>88
レッサー「マジレスをすると私が語った内容は事実です。エセメイドもメイド誘拐も含めて」
レッサー「ただ英国のメイド雇用は女性の社会進出と教育の場の歴史でもありましてね」
レッサー「具体的には女の子がメイドとして雇用されると、家事だけでなく礼儀作法から何からみっちり仕込まれるんですよ」
レッサー「場合によっては玉の輿も狙えますしねっ!これがホントの二重の意味で仕込ま――」
(※暫くお待ち下さい。「ルソー 孕ませる 10年で5人」のワードでググってはいけません。絶対にするなよ!絶対だからな! )
レッサー「ま、まぁ日本でお暮らしだとあまり馴染みはないでしょうが、第二次世界大戦以前の女性の立場は基本的に『財産』扱い」
レッサー「ヘレン=ビアトリクス=ポターはご存じで?我が国が誇るピーターラビットの作者です」
レッサー「彼女は植物学者になりたかったんですが、『女性だ』という一点だけでなれませんでした」
レッサー「ちなみにポター女史は弁護士の父と紡績商の母の間に生まれ、小さい頃から家庭教師により高い教育を受けてきた身です」
レッサー「当然、彼女以外の恵まれていない子達は、逆にメイドになる事で社会進出を果たそう、という先進的な動きでした」
レッサー「日本の丁稚奉公によく似ていますかね。成果を出せれば店舗ののれん分けや、店を継ぐケースもありましたし」
レッサー「ここら辺の事情を鑑みると、メイドが如何に大事な存在であるか分かりますよねっ」
レッサー「メイドが好きかより誰のメイドが好きかで自分を語りましょうよ……ッ!!!」
(※まぁぶっちゃけますとイングランドのは「メイド」で、日本のは「メイド”さん”」)

>>89
上条「体験談から言わせて貰うとそんなに難しく考える事はないぞ?滞在とかするんだったらともかく、旅行ぐらいだったら別にそんなに話せなくても大丈夫だから」
上条「そうだなぁ……例えば、いつものようにサイフとパスポートと荷物全部盗まれたとしよう。でもここで慌てちゃいけないんだ」
上条「初心者だとまず慌てて大使館へ駆け込むだろ?妥当なんだが、それだとやっぱ滞在時間が勿体ないし、スケジュールがメチャクチャになるんだよ」
上条「それが嫌なら、たまたま残ってた観光用の地図を持って道行く女の人に聞いてみるんだ。最初の予定で行く筈だった場所へ、どうやって行けますかって」
上条「そうすると大体その子は逃亡中の某国王女か、家出中のお嬢さんだから、ビンタされるか殺されそうになるんだけど」
上条「彼女を追って魔術師か能力者が現れるから、一緒に逃げるんだ。あ、ここポイントな?殺されたら死んじゃうから注意してくれよ?」
上条「で、なんやかんやアレコレあった挙げ句、一週間後には解決してるだろうから、その後もう一度言えばタダで連れてってくれるぜ?」
上条「な、簡単だろ?」
上条「ただちょっと、日本へ帰った後、その子や敵対してた組織の元女幹部(ロリ)が押しかけて来るけどなっ!」
刀夜「当麻……!すっかり立派に成長して……!」
バードウェイ「いい加減にしとけ馬鹿親子。というか『不幸』以前にもっと負い目に思うべきカルマがあるだろうが!」
(※真面目な話、EテレのTEDを半分程度聞き取れればリスニングは何とかなります。旅行代理店のツアーでぞろぞろ行くのが一番安全で楽)

>>91
本編登場はアリサさん以上に絶望的。レディリーさんはちょい名前出ましたけど、アリサさんは……
というか嫁候補”以外”の方が少ないんじゃないかとか言ってみたり

――廃病院 個室

上条(俺達が通された部屋は意外に綺麗だった……まぁ、廃墟にしてはという但し書き付きでだが)

上条(むかーしガキの頃に作った――と、思う――”ひみつきち”的な雰囲気で、捨てられたソファやら机が並んでいる)

上条(電気は通ってない筈なのにある冷蔵庫。そこから冷たい飲み物を取り出し、ソーズティはゆっくり話し始めた)

ソーズティ「お前達の分はないぞ」

レッサー「上条さん後で買ったげますから、今は大人しく」

上条「そんなに俺物欲しそうな目で見てたかな?いや別にさっき買ったお茶のペットボトルあるし」

上条「……つかイギリスだと緑茶に砂糖入ってんのな?日本でも麦茶に入れるご家庭があるらしいけど」

レッサー「インドのチャイの影響でしょうかね。超絶に甘ーいミルクティーは受けがいいので」

ソーズティ「言っておくが、あれはSサイズをちびちび飲むものであって、西洋人みたいにリッターサイズの紙コップで啜るのは別だ」

レッサー「アメリカの常識をEUにまで広げないで頂きたい。イングランドはまぁまぁマシだと自負していますからねっ!」

上条「まぁまぁで自負すんなよ。日本も最近はメタボ多いがな」

ソーズティ「肥えられるのは富の象徴――”だった”時もあるが、お前達の国は貧しいほどカロリーコントロールが出来ずに太ると聞くな」

上条「インドも経済発展スゲェって聞いてるけど、違うのかよ?」

ソーズティ「前よりはマシになったがまだまだだ。地政学的リスクが高すぎる」

レッサー「西側のパキスタンではジハーディスト”を、名乗っているテロリスト”の活動が盛んで、冷戦状態」

レッサー「商業都市ムンバイは何年か前に派手に爆破され、その犯人達を完全には捕まえてはいませんし」

レッサー「東を向けば貧困村を狙って毛派の浸透が続いており、一部では独立を宣言する始末」

レッサー「国が大きいと憂鬱の種も尽きまじ、ですか」

ソーズティ「どちらにせよ、故国を離れた私達にはもう関係無い話――で、だ」

レッサー「あなたがここにいる理由、それをキリキリ吐いて下さいな」

ソーズティ「……始まりは『ブラフマーアストラ』だ。終ったと思っていたアレが」

レッサー「えぇと、『ブラフマーアストラ』……?名称からするに『創造神ブラフマーの武具』って所でしょうが」

上条「お、合ってる。弓だっけ?」

ソーズティ「姉の霊装はそうだな。必中必殺、距離も壁も関係なく、弓を放てば命中する術式だ」

レッサー「また中二心をくすぐるチート武器ですなぁ。嫌いじゃない、むしろ使ってみたいです!」

レッサー「……でもやっぱり、使用条件お厳しいんでしょう?」

上条「通販みたいなノリは止めなさい。割と深刻な話なんだから」

ソーズティ「『アストラ』に合わせるための体のチューニングを少々。被験者は何人かいたが、生き残っているのは姉だけだ」

レッサー「……ま、そうですよね。魔術の規模に比例して扱いにくくなるのは当たり前ですが」

ソーズティ「後は『三つ以上の流れ星を同時に確認する』必要性がある」

レッサー「それ絶望的じゃないですか――って、あぁ成程成程。それで『エンデュミオン』に絡んだと」

上条「正しくはその前にあった『デブリストーム』だな」

レッサー「そっちもまたお名前から察するに『スペースデブリをどうにかしちまうぜ!』的な、トンデモ技術なんでしょうねぇ……」

ソーズティ「だがあの戦いの中、どこかのお節介焼きのバカに潰され、アストラは本来の力の大半を失った」

ソーズティ「今では”やや”強い霊装の域を大きく超えるものではないがな」

レッサー「あー、いますよねぇ。どこでもそういう人って。無関係なのに首突っ込んできてドヤ顔で説教マカす人」

レッサー「『仲良く出来るんだったら、最初っからやってるっちゅーの!』的な」

上条「……すいません。ホントもうね、色々とすいません……」

ソーズティ「今言ったように『アストラ』の起動条件の一つには、三つ以上の流れ星が必要だ」

ソーズティ「しかしだからといって、霊装を片手に持ちながら、望遠鏡で一晩中流れ星を探している訳ではない」

上条「……シュールな絵面で、それはそれで見てみたいが」

レッサー「あ、それ私も不思議に思ったんですよ。『ブラフマーアストラ』、確かに超強そうな感じですけど、『実戦で使えるのかよ?』と」

上条「破壊力は並の魔術と文字通り桁違い。精度に関しちゃ……あー……ウレアパディーが”当てる”つもりがなかったんで、体験はしてない」

ソーズティ「当然だな。姉が本気を出してさえいれば、お前なんかに膝を屈する筈が無い」

上条「あ、シスコン発見。仲が良いのは結構だけどなー」

レッサー「……私の話が途中なのにこの始末……」

上条「あぁごめんごめん。それで?」

レッサー「……えっと、ですね。普通は、てか常識的にそんなに流れ星見ませんよね?しかも同時三つとか無理ゲーかと」

レッサー「『エンデュミオン』――てーか軌道エレベーターやらスペースデブリを遣い、作為的に起こさない限りは、まず」

ソーズティ「その通りだ」

レッサー「天文学がある程度発達してりゃ、流星雨を予知出来るっちゃ出来ますけど……それにしたって都合良く、タイミング良く起きる訳がありません」

レッサー「なのでその霊装、『実は待機時間を挟める』仕様なのではないでしょうか?」

上条「どういう事?」

レッサー「そうですなぁ……『流れ星が流れる前に、三回お願い事をすれば叶う』っておまじない――お呪い、ありますよね?」

上条「あぁ、某ネットラジオで『津へ!津へ!津へ!』なら出来るかも?つってたやつか」

レッサー「あのお呪い――って言いますか『術式』の受け付け時間は『流れ落ちている間』です。分かります?」

上条「まぁな。どう考えても子供の願掛け用のおまじないなのに、発動条件がシビア過ぎて、入り口にすら立てないもんな」

レッサー「でもこれが逆に『流れ星が流れてから○○秒以内』だったら、楽勝じゃないですか?それと同じ」

上条「あぁ成程。起動してから使うまでの時間に余裕があれば、戦闘に入る前に起動しといてー、って使い方も出来るのか」

ソーズティ「……驚いたな。意外と考えてるじゃないか」

レッサー「褒められましたっ!……おや?”意外”と?」

上条「レッサーさんは若く見られますからねっ!その歳にしてはって意味だと思うよっ!」

ソーズティ「お前の連れにしては、だよ」

上条「あれあれー?フォローをしたらこっちに流れ弾が跳んで来たぞー?」

ソーズティ「原理はその女の推測の通りだ。予め流れ星三つを”確認”し、”起動”させておく」

ソーズティ「そうしてから実際にブラフマーの弓を引くまで、ある程度タイムラグが認められている――の、だが」

ソーズティ「……先程も言ったように、姉はずっと夜空を見上げているのでは、ない」

レッサー「意外にロマンチストで、初恋の人がトチ狂っても待っていたりしそうですけどね」

上条「レッサーさん、黙ろうか?それは言っちゃいけないと思う」

レッサー「『兵無し!』と言い切った割には次から次へと残党がですね」

上条「それも止めようね?当時はこれ以上話膨らませるつもりはなかったって、監督言ってんだからさ?」

ソーズティ「なので当然、当たり前のように天体観測自体は、それ専用の術式に任せっきりになっている――と、ここまでが前提の話だ」

ソーズティ「細々とした説明が嫌になるぐらい、前座の話と言えなくもないんだよ」

上条「要はお前のねーちゃんが夜空を観察してる術式使ってる、って話だよな?」

ソーズティ「そうだ。その通りだ――だから今からする話は、完全に『偶然』だったんだ」

ソーズティ「……そうじゃないと、おかしい……!」

レッサー「もし?どうされました?」

上条「……言い辛い事なのか?だったら無理に話さなくても――」

ソーズティ「――20XX年11月末。お前達はどこで何をしていた?」

上条「はい?なんでまた」

ソーズティ「答えろ、いいから」

レッサー「私は、私達はイギリス清教さんから逃げ回っていましたねぇ。つっても表面だけ、形式上だけなんでヌルいもんでしたが」

レッサー「キャーリサさんの取り計らいがなければ、『必要悪の教会』の抹殺対象になってしてもおかしくはありませんでしたが……まぁ?」

レッサー「それを除けばいつもの通りでした」

上条「反省しないの?少しは省みようよ、ねぇっ!?」

レッサー「残念!私の辞書に『反省』の二文字はありまんせんよっ!」

上条「そんな辞書は返品してきやがれ、つーかお前の辞書日本語表記なんか?」

上条「……と、俺は何してたっけかな……?」

上条「佐天さんとテレビ番組――あ、いや誰かと暮らしてた――のも、違うな。バードウェイと――」

上条「……いやいや。そんな事もしてない。えっと……あぁ、そうだ。アリサのライブの手伝いしてたんだよ」

レッサー「アリサさんの?年越しコンサートでしたっけ?」

上条「の、準備で大忙し。一ヶ月以上前からリハビリとか歌のレッスンとかさ。シャットアウラが手ぇ離せないってから、俺に頼みたいんだと」

レッサー「……アリサさん結構強かだと思うんですが、どうでしょうねぇ――で、私達のプライベートがどう関係が?」

ソーズティ「……『彗星』、来ていたな?」

上条「すい……?あぁ!あったあった!そう言えば去年の11月頃の話だっけ?」

レッサー「はい?ありましたっけ?」

上条「百年に一度だか、千年の一度だか、ボジョレヌーボーのコピペみたいに宣伝しまくった彗星の話。あー、あれ11月だったかー」

レッサー「えーととと……あぁ、そういやあった……ような?ランシスが何か言ってた気がしますけどね」

レッサー「『イカロスの羽根』がどーのこーのと……」

上条「イカロス?」

レッサー「ギリシャ神話のミノタウロス閉じ込めた迷宮作ったダイダロスの息子です」

レッサー「蝋で出来た翼で天空に跳んだのは良いものの、太陽に近づきすぎて羽根が溶けて墜落死した伝承が」

上条「あ、それとある意味同じだな。去年来てた彗星も、太陽に近づきすぎたら溶けちまったんだよ」

上条「彗星は氷とチリでて出来ているからさ」

レッサー「へー?寓話みたいなお話もあるもんですにゃあ」

上条「猫になるの禁止――で、あの彗星がどうしたって?」

上条「『世紀の天文ショー()』って言ってたのに、何か残念すぎる結末だとは思うけどさ」

ソーズティ「……おかしいと思わなかったのか?”それ”を」

上条「どれ?」

ソーズティ「世界中の天文学者、そして魔術師達が彗星を観察していたんだぞ?単位は数万を超える数のだ!」

ソーズティ「それだけの数の『プロ』が居たというのに、誰一人彗星が蒸発した結末を予測出来なかったんだよ!」

上条「だってほら?実際に消えてる訳だしさ」

レッサー「……指摘されてみれば、確かに、ですね」

上条「おい、レッサーまで」

レッサー「我々魔術サイドが天体の運行、天文学について有史前から研究していたのはご存じでしょうかね?」

レッサー「各種の壁画や創造神話を紐解けば、もっと言えば『暦』を創り上げたのも我々ですし――」

レッサー「――何より、『エンデュミオン』もまた星辰が深く関わっていますでしょ?」

上条「それは、推測だって」

レッサー「ローマ正教さんの元トップが言うんだから、まず大きく外してはいないでしょうな」

レッサー「てか、あの人が外すんであれば、他の魔術師にも予想は不可能と言っても過言ではありませんよ。そういう人です」

レッサー「なので当然、昨年の彗星も魔術師にとっては興味深い研究対象であったのも確か、ですね」

上条「お前らは違ってたみたいだけどな」

レッサー「んー、まぁそこはそれ”次”の仕込みに忙しかったって言いましょうか。ま、そんな感じでアレでしてね」

ソーズティ「と、同時に科学サイドでも観察の対象になっていただろう?アマチュアの天文学者から、重力レンズを観察しようとする学者まで幅広く」

ソーズティ「だというのに、それだけの面子の人間が揃っていたにも関わらず、『太陽に近づきすぎたから蒸発』なんて締まらないオチが予測出来なかったのか?」

上条「……なあ、ソーズティ。なんかさ、俺の気のせいかもしないんだけど、さっきからお前の話を話を聞いているとだ」

上条「あの彗星、本当は太陽の側をきちんと通り過ぎる筈だったのに、誰かが――”何か”が干渉して蒸発させられた、っていう風に――」

ソーズティ「――ここで姉の話へ戻る」

上条「おい、聞けよ」

レッサー「上条さん、『聞いた』上での結論ですよ。恐らくはね」

上条「でも、俺の話を踏まえるって事は」

ソーズティ「姉が星辰を観察している霊装は、太陽系内で動きがあったり、また逆に大気圏を通過する物体があれば動きを察知出来る」

ソーズティ「……ただし、地球を離れれば精度は格段に落ちる。殆ど気休めみたいなものだったらしいんだが」

ソーズティ「その日――いや、あの日はほんの気まぐれで」

ソーズティ「『太陽に近づいたら最も彗星が尾を引く』――とかってWEB記事を見て、楽しみにしていたんだそうだ」

上条「ちょっと可愛いな……って事は段々と元の人格が回復してるんだな、良かった」

ソーズティ「だから珍しく彗星が太陽へ近づく瞬間、姉は目視ではないものの魔術的に観測をしていたら――」

ソーズティ「――『喰われた』んだよ」

上条「…………………………うん?」

ソーズティ「だから、彗星が、突然、『喰われた』んだ」

レッサー「待って下さい、ちょっと待って下さい?『喰われた』ってぇのは、一体全体どういう比喩表現でしょうか?」

ソーズティ「姉曰く、彗星の端からムシャムシャと。まるで蚕食のように――と、言っても分からないか」

ソーズティ「白いシャツへインクを垂らしたみたいに染みが広がって」

ソーズティ「気がついたら、『喰われた』彗星は残骸しか残っていなかった、と」

上条・レッサー「……」

ソーズティ「そして姉の霊装には大気圏を横切る物を、大まかにではあるが察知する能力があった」

ソーズティ「その『網』には幾つのかテレズマ、魔力の流れを捉えていたんだ。日にちは忘れたが、長くても数週間前にだ」

上条「もしかしてその魔力を放った奴らが!?……や、違う、か?仕込むにしては早いしな」

レッサー「……いえ、多分上条さんの想像で合っていますよ。地球から太陽まで約1億5千万キロ、光速で表すのであれば約8.3分です」

レッサー「また自転と公転、更には彗星の場所を予測して『仕込む』のであれば、どんなに遅くとも数日前には放たないと間に合いません」

ソーズティ「先にも言ったように、魔術師連中も彗星には興味津々だ。だから誰かが何かの術式をかけた――と、その当時は思っていたんだろうが」

ソーズティ「お前達と同じ結論へ至った姉は『今、”喰わせた”のはあの魔力じゃないだろうか?』と、ようやく逆算し始めた」

ソーズティ「幸いにも姉は賢明なので、苦労もなく三つの大まかな場所を探査出来たんだよ」

上条「三つ?今三つって言ったか?」

ソーズティ「あぁ、『三』だ。『ブラフマーアストラ』が天空からの星を欲するのに対し、地上から魔力の矢を放ったのは三箇所」

ソーズティ「一つ目は日本、それも沖縄近郊の海中から」

ソーズティ「二つ目はイタリア、国境近くの森の中から」

上条「……安曇阿阪と『団長』……!?」

レッサー「……うわぁ、私この先聞きたくないですねぇ……」

上条「俺だってそうだよっ!?だってまだもう一つ残ってるもの!」

ソーズティ「文句を言うな。聞いたのはお前達、自己責任だと思え――そして、三つ目は――」

ソーズティ「――ここ、『ダンウィッチから放たれた』ようだ」

――廃病院

上条「……『星喰い』なんて出来――」

レッサー「――ますよ?現実逃避されている所で恐縮なんですけど」

上条「どうして君達は大抵大概なの?魔術師だからって何やったって良いって訳じゃないんだからねっ!」

レッサー「ツンデレ風味で嫌いじゃないですが――いえ、ですから『魔術理論上は』というヤツでして」

上条「……科学サイドの『理論上は可能性がある』みたいなもんか?」

レッサー「それに近いですなぁ。てか散々お話ししましたでしょ?古今東西の終末神話」

レッサー「その中には太陽を食べたり、撃ち落としたりするお話が少なからずありますんで、えぇ」

レッサー「上条さんのトコの神話だってありますよね?終末じゃないですが、『皆既日食』とニートの神話」

上条「ニート言うな。アマテラスが天の岩戸?だかへ隠れたら、太陽も陰って姿を消したって話か」

レッサー「そう!そうしてここはレッサーちゃんのターンですなっ!」

上条「取り敢えず脱ぐな恥女。そういうのは日食が起きてからにしなさい!」

ソーズティ「早々蝕が起きてたまるものか。次に起きるのは確か月食だった筈だ」

レッサー「ま、そんな感じで日食・月食の類は神話として存在し、術式や霊装に取り込まれてもいます。他にえっと……」

レッサー「北欧神話であればラグナロクの果てに、太陽神ソールはスコル狼――フェンリルの息子に追い付かれ」

レッサー「その体だけでなく、太陽をも呑み込みまれてしまう運命を持っています」

上条「あれ?俺がゲームとかで知ってる範囲じゃ、オーディンがフェンリルに呑まれるんじゃなかったっけ?」

レッサー「あぁそれはですよ。書き手によって、また翻訳者によっては解釈も違うんですよ」

レッサー「例えば太陽神ソールは一説にはオーディンの化身の一つであり、スコルもまたフェンリルそのものであった、という話もあります」

レッサー「二つの神は共にラグナロクで狼に呑まれるため、混同されて伝えられてますから注意して下さいね?」

上条「何に注意するんだ、何に」

レッサー「ゲームやラノベの知識を真に受け、神社の前でドヤ顔で彼女に語り出す方がたまーにいるらしく」

レッサー「偶然そこに居合わせた、通りすがりのサラリーマンが」

レッサー「『あの、カンピオー○!の”鋼と蛇”は、別にあれメジャーな学説じゃないからね?』」

レッサー「『そもそもで言えば、気候も風土も民族性も違う信仰を体系づけるのは不可能だって話でさ』」

レッサー「『なんかもう、そこまで行くとラプラスの方程式みたいな、オカルトになっちゃうから気をつけてね?』と優しく指摘される大惨事が!」

上条「放っておいてあげて!?サブカルからそっちへ行く人だって結構居るんだから、道を閉ざすのは止めてあげて!?」

レッサー「後、大抵は神職僧籍神父さん、当たり前ですけど神学を修めているので、生半可な知識だけで語ると、100%恥をかきますから」

上条「注意するってそういう意味なの?」

レッサー「まぁラグナロクで弑されるのがオーディンかソール、呑み込むオオカミがフェンリルとスコル――」

レッサー「――『そのどちらも正しく、間違っている』かも知れませんしねぇ」

上条「……禅問答?」

レッサー「アルテミスが二柱居たように、他の神だって同じルーツが別々に別たれ、時代を経て再統合される事もままあります」

レッサー「北欧神話は幾つかの民族の融合、それに伴った神話の再編成が繰り返されてますねぇ」

レッサー「なので似たような名前の巨人が複数居たり、太陽神ですら似たような役割の神様がカブりまくってる状態です」

ソーズティ「――口を挟ませて貰う。その北欧神話の太陽神ソールだったか?」

ソーズティ「彼のルーツは『リグ・ヴェーダ』――インド神話の『スーリヤ』だと言う説がある」

上条「どんな神様?」

ソーズティ「そのまま太陽神だ。生まれつき高熱を発し、馬が引く戦車にのって天を翔る。太陽の動きは彼の動きそのままだと伝えられている」

レッサー「他にもローマ神話じゃ、全く同じ名前の太陽神ソールが居ますからねぇ?後にヘリオスやアポロンと同一視されましたが」

上条「北欧神話とはズレがないかな?時代的な意味で?」

レッサー「ズレ?ビッ×的な意味で?」

上条「なんでここでギャルの話が出るんだっ!?アバズ×じゃなくて、ズ・レ!」

レッサー「――と、上条さんがご所望のようですので、取り敢えずここはソーズティさんと私がですね」

ソーズティ「なぁこの恥女殺していいか?どうして突然脱ぎ出すんだ?」

レッサー「ズー×ーが好きなんじゃねぇかなって、前々から何となく察しては居たんですがねー……それに!」

レッサー「もしかしたら途中で乱入してくれるかも知れませんし!」

ソーズティ「……おい、そこでツッコミ放棄して『べ、別に悪くないとか思ってるんじゃないんだからね!』って顔した男、いい加減止めてやれ」

上条「どういう顔?その技術の特許取れれば人類は新しいステージへ行く発明になんじゃねぇかな?」

レッサー「顔をどうにかした所で電光掲示板程度のウザさを量産するだけど思いますが……それで、時代とは?」

上条「いやだからさ、北欧神話の歴史って古いんだろ?だったらどっちが先かとか言えないじゃないかな、って」

レッサー・ソーズティ「……」

上条「え!?俺またなんか変な事言ったか!?」

レッサー「……ソーズティさん、インド神話――てーかヒンドゥー教の成立は何年ぐらいでしたっけ?」

ソーズティ「アーリア人の何かが約紀元前2000年、なので大体原型が創られたのは紀元前16世紀前後だろうな」

レッサー「アーリア!?アーリア人ですって!聞きましたか上条さんっ!」

レッサー「この女言うに事欠いて『Aryan(高貴な)』って言いましたよねっ!」

ソーズティ「何か言ったかヒットラーの叔父貴ども。あの騒ぎのお陰で、アーリア人を名乗ると胡散臭い目で見られるんだが?」

レッサー「人種で一括りにされると、同じっちゃ同じですがねぇ――ともあれ、上条さん。上条さんの所の神話はいつぐらいで?」

上条「神話……一番古いのは古事記と日本書紀だな。西暦712年……ぐらいだった気がする」

上条「一応それまでの伝承は口伝として残ってたらしいんだが、文字として残し始めたのはそのぐらい、と教科書に」

ソーズティ「口伝が伝わっていたのはいつ頃から?」

上条「えっと……紀元前7世紀ぐらい?自称だけどな」

レッサー「ちなみに西暦とはキリストが生まれた年を基点としています」

上条「いや、そんぐらいは分かるし」

レッサー「で、先に上がったローマ神話は紀元前8世紀頃から、王政ローマが始まった時が最初ですかね」

ソーズティ「とはいえローマ神話の殆どはギリシャ神話を取り込んだものだ。ルーツはもっと深いだろうな」

レッサー「ちなみにギリシャ神話もまた紀元前15世紀頃から始まってます。文化の興りはアーリアンと同じくらいですかねぇ」

上条「歴史的に見れば同じぐらいの時期に大きな文明が出来た、か」

レッサー「ま、それだけ人類の生活レベルが安定してったんでしょうな。お互いに影響を与えた可能性もありますがね」

レッサー「で、北欧神話、幾つかのエッダを基にした神話群へと話は華麗に舞い戻るんですが!」

上条「普通でいいよ?お前が張り切ると大抵惨事になる――俺がなっ!俺だけがなっ!」

レッサー「北欧神話にも日本神話で言えば記紀神話、十字教のバイブルみたいなものがあります。それが『エッダ』」

ソーズティ「ヒンドゥー教の教典である『リグ・ヴェーダ』は紀元前12世紀、ただし紀元前18世紀頃の話が書かれている」

上条「……ちょっとドヤ顔だ……」

レッサー「アーリアン国家の成立その時期ですし、まぁ矛盾はありませんな。『時代を遡って書く』のは割とありますんで」

レッサー「ま、どこぞの西暦13世紀の書物だけに『紀元前50世紀にアジアを支配していた!』と書いた偽書を正史と言い張り」

レッサー「世界中の学会から実質上の出禁食らってる民族もありますが、まぁそれはともかく――てか、ちなみに!」

レッサー「上条さんは北欧神話ってどのぐらいに出来たモンだと思います?あ、設定ではなく歴史書が書かれた時期として」

上条「設定言うな。尊重してあげろや」

ソーズティ「設定云々言ってたら、どの神話も宇宙開闢まで巻き戻るからだよ」

上条「つってもなぁ……?あー……北欧神話だろ?よくあちこちで見るし、つーか敵も味方も使いまくるし!」

ソーズティ「……切実な問題だな、それは」

上条「例えがアレで恐縮なんだが、ゲームとかでも比較的上位にあるよな?だったらかなーり古いんじゃね――」

レッサー「残念!ハっズレです!」

上条「まだ言ってねぇよ!つーか話振ったんだから最後まで言わせろ――何?それじゃインド神話よりも新しいの?」

レッサー「ですねぇ」

上条「んじゃローマ神話ぐらい?」

レッサー「もっと若いです」

上条「だったら十字教、紀元0年か?」

レッサー「もう一声!ガンバって下さい!」

上条「記紀神話の8世紀?」

レッサー「まだです!まだ諦めるような時間じゃありません事コトよっ!」

上条「お嬢言葉になってんぞ。それじゃ一体いつ?あ、逆にもっと古いとか?」

レッサー「結論から言いますと――『エッダ』が編纂されたのは『13世紀』です。13世紀」

上条「……はぁ?」

レッサー「ですから神話にしちゃ、かぁなーり若い部類へ入りますねぇ、えぇ」

上条「待て待て!?神話って言うよりも時代的には中世へ入んじゃねぇのか!?」

レッサー「ですな」

上条「そんな時代に成立したのか……日本だと鎌倉時代だぜ」

レッサー「ちなみに『エッダ』も古の物語を編纂した、という形を取っているため、実際に9世紀頃まで遡るんじゃないかなーと」

ソーズティ「……あぁ、だからか」

上条「ん?でもそれにしては扱いデカくないか、北欧神話?不自然なぐらいに?」

レッサー「まぁ十字教以外で自分達に関わりのある”それっぽい”神話を求めるとすれば、一番近いのは北欧神話ですからねぇ」

レッサー「オペラなど歌劇や音楽、また絵画や彫刻など芸術畑のモチーフとして選ばれていましたからねぇ。そーゆーの」

上条「芸術ねぇ……あ、でもそれっておかしいよな?」

レッサー「何がです?」

上条「歌とか絵画は信仰の一部だったんだろ?芸術じゃなくて、宗教を補強する感じでさ」

レッサー「えぇ仰る通りですよ、”最初”はね」

上条「最初?」

レッサー「十字教、特にローマ正教が台頭してからはですね、オペラとかで『神様とかの文句言っちゃらめぇ!』って規制が厳しくなりまして」

上条「言ってないな?そんな言い方はしなかった筈だよな?」

レッサー「絵画も同じく。えぇっとぉ、これはぁ、あんまりぃ、乙女の口から言いたくはないんですけどぉ」

上条「じゃいいや。次の話へ移ろうぜ」

レッサー「ですが上条さんがどうしてもと仰るのであれば!あ・れ・ば!仕方がなく私が辱めを受けようじゃないですかっ!」

上条「……」

パタン……コトン

上条「……ソーズティ?冷蔵庫からペットボトル取り出して、なに?」

ソーズティ「えっと、なんだ、その?」

ソーズティ「甘いグリーンティでよければ、飲むといい。だから、な?」

上条「その優しさが逆に痛いわっ!?てか俺の状況を理解してんだったら改善を!パートナー交代をっ!」

上条「今からでもいいからっ!もっとツッコミで俺の喉が枯れない相手を!」

レッサー「あっはっはっはー!やですねぇ上条さん、そんな羽目になったらマタイさんの予言が早まるだけじゃないですかー、もぅっイ・ケ・ズっ!」

上条「……な?」

ソーズティ「同意を求められてもな……休憩にしようか、少し」

上条「あ、ごめん。トイレある?」

ソーズティ「この階の端、ストリートから見えない所へ簡易トイレが設置してある。そこを使え」

レッサー「ありがとうございます。では上条さんご一緒に」

上条「あぁそれじゃ失礼して!……とか言わないからね?流れと勢いだけで持って行けると思うなよ!?」

――休憩中

ソーズティ「さっきのアレはなんだ?」

レッサー「ツンエロを気取ってみたんですけど?」

ソーズティ「……そこは普通、『何のことだ?』じゃないのか!?」

レッサー「心当たりがあり過ぎで何がなにやら自分でも把握し切れていません!」

ソーズティ「威張って言う事ではないと思うが……そうじゃない。さっき特定の神話を意図的にスルーしなかったか?」

ソーズティ「正確には『英雄譚』なんだかな」

レッサー「気のせいじゃないですかね。する意味がありませんよ」

ソーズティ「そうか。だったらいい」

レッサー「ですねー」

ソーズティ「……」

レッサー「……」

ソーズティ「何を」

レッサー「はい?」

ソーズティ「何を、話したらいいんだ。こういう時は」

レッサー「……はい?何を急に」

ソーズティ「『結社』で育った身だから、あまり同年代とのコミュニケーションには慣れていなくてな」

レッサー「あー……はい、成程、なんとなくですけどお察してました。割かし良くある話――と、言っていいのかどうか迷う所ではありま――」

レッサー「……」

ソーズティ「アリマ?」

レッサー「……あれ?ちょ、ちょっと待って下さい!私気づいちゃったんですがっ!大事な事にねっ!」

ソーズティ「うるさいな。どうした?」

レッサー「初めてお会いした時から『あるぇ?この子ツンデレ?』って思ってたんですけど、それもしかして狙ってるワケじゃなくて!」

レッサー「上条さんにどこか刺々しいながらも劣情混じりの態度を取っているのはっ!まさかっ!?」

ソーズティ「そんな事実はないぞ!過去一度だってな!」

レッサー「妙に距離感掴めてねーなー、とか感じたのももしかして――素、だった……!?」

ソーズティ「……悪いか」

レッサー「まただ!?またいと高きクソッタレは私の前へ『天然モノ』という刺客を送って来やがったんでしょうか……!!!」

レッサー「つーか私別に神様に恥じるような行いはしてませんともっ!誓って品行方正な生き方しか来ませんでしたよっ、えぇっ!」

レッサー「ただちょっとシスコン拗らせたり、ガリア征服したノリと勢いでティベリウスぬっ殺しただけじゃないですか!」

レッサー「あまりにもあっさり事が運んだせいで、歴史書から一人ローマ皇帝が削り取られるとかありましたけど!」

ソーズティ「お前が何を言っているのかが、分からない」

レッサー「あと、すいません。ぶしつけな質問で恐縮なのですけど」

ソーズティ「何だ急に」

レッサー「あなたのカップ数を教えては頂けないでしょうか?」

ソーズティ「本当にぶしつけだな!?話の流れも理解できん!」

レッサー「あなたがAだと上条さんがロイヤルストレートフラッシュ(性的な意味で)揃える可能性が出て来ましてねっ!」

ソーズティ「私を巻き込むな!あとお前小声で『性的な意味で』って言わなかったか!?」

レッサー「せーてーきーなーいみでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

ソーズティ「オペラっぽく大声で言い直せばいいモンじゃないぞ!?」

レッサー「いえこれは消臭○の最後のフレーズですな。あ、ご存じでした?消○力は長州○さんにちなんで名付けられたそうで」

ソーズティ「というか、上条当麻!さっさと戻って来い!ツッコミが間に合わないし私ではカバー出来ない!」

レッサー「――と、言った具合にですよ」

ソーズティ「なに?今度は何を言い出した?」

レッサー「話題でしょうが、話題。別に何か話さなっきゃいけない決まりでもあるまいし、好きにすればいいんですよ。好きにね」

ソーズティ「好きに……?」

レッサー「ま、魔術結社と違って対人コミュで四苦八苦しそうですけどねぇ、それにしたって要は経験ですよ、場数ですよ」

レッサー「『人に嫌われるから話さない』とか『人に好かれたいから話さない』とか、人によって色々あります。そう人によってね?」

レッサー「お喋りで社交的な人間は厚意を集めますが、逆に嫌う人種だって居ます。当然、好みは画一的なものではないですから」

レッサー「ま、万人受けするような方法はありませんし、仮に表面取り繕っても長持ちはしませんからね」

ソーズティ「……」

レッサー「なのであなたは、あなたの思うように行動をすればいいと思いますよ。私は」

ソーズティ「お前は……そう、していると?」

レッサー「えぇ勿論。覚えている限りでは、ずっとね――あ、そうだ」

レッサー「あくまでも一般的ですが、こういう時、女の子同士でする定番のお話がありましてね――」

――廃病院 廊下

上条(……いや、焦った。手ぇ洗えないのかと一瞬ビビったが、水道が生きててよかったよ)

上条(まぁうん、アレな方法でアレしてるんだろうが!突っ込まない勇気!最近それがあるって分かったよ!)

上条「……」

上条(ソーズティの方も、相変わらずっちゃ相変わらずミニスカ――じゃなかった、元気そうでよかった)

上条(ウレアパディーのエロ――元気な!そう、元気な姿も拝みたかったが!……あれ?)

上条(ソーズティは代理で来てる……って事は、再登場する可能性が……!?)

上条(あのお姉さんキャラおっぱい時々透けコスが本邦初公開、だと……!?)

上条「……」

上条(ちょっと何を言ってるのか分からないな!つーかキャラがブレてる!本当の俺はこんなんじゃないよ!違うんだからねっ!)

上条(ま、まぁまぁ?相変わらずツンツンしてるし、問題はな――)

レッサー『……――……』

ソーズティ『……――……?――!』

上条(――い。むしろ楽しそうにやってるな)

上条(レッサーと意外と相性が良かったのかも?あぁ見えて気を遣う方……かも、知れないし!俺以外には!)

上条(ガールズトークって言うんだっけ、こういうの?アリサ達と旅してる時には、俺が最初から入ってたから、あんましなかったが)

上条(ちょっと興味はある、かな?)

上条「……」

上条(や、でも盗み聞きは良くないっつーかさ。ほら?礼儀みたいなの、あるじゃん?)

上条(親しき仲にも礼儀あり!大事だよねっ人間関係!)

上条(なので、まぁ?少しだけ?少しだけなら聞いても――)

レッサー『――や、でも最後までダメダメでしたよ?結局私の体には手ぇ出そうとしませんでしたしねぇ?』

レッサー『で、その時ピコーン!と閃いたんですよっ!プロミネンス○のように!』

ソーズティ『その”ように”が分からないが、それで?』

レッサー『”あ、こいつやっぱペ×かショ×なんじゃね?”ってね!!!』

上条「違う!断っっっっっっじて、違うわっ!!!」

レッサー「おや上条さんお早い還りで」

上条「つーかテメー何ソーズティに吹き込んでやがるっ!?どうせまたある事無いこと言ったんだろうが!」

レッサー「私の知り合いの釣った魚に餌をやらないクソヤローの話をですね」

上条「そっか、それじゃ俺じゃないよなっ!胸が痛むけども気のせいなんだよなっ!」

上条「……てーかさ俺の幻想を返してよ!?ガールズトークで何言ってるのか期待した人達に謝って!?さぁっ!」

レッサー「あー、はいはい。居ますよね、少なからず期待してる層が、どの時代にも」

レッサー「ぶっちゃけますけど、女子会だったり、女の子の集まりで喋ってる内容は大抵『悪口と自慢話』ですからね?いやマジな話」

レッサー「誰それがムカツクーとか、こないだ彼氏に買って貰ったんだけどーとかとか。基本、愚痴と金と男です」

レッサー「ファミレスでダベってる時、ギャル系JKの会話聞こえますよね?スッゲー下品にガンガンパンツ見せながら」

レッサー「あれを全年代でやってると思って下されば、まぁ正解ですな」

上条「レッサーの鬼っ!悪魔っ!高千穂っ!いいじゃない!別に本当の事ぶっちゃけなくたっていいんじゃねぇかよ!」

上条「……絶望した……!女の子の実態に絶望した……!」

レッサー「勝手に幻想を抱いといてなんつー言い様ですか。ねぇ?」

ソーズティ「お前は夢を見すぎだ。少しは実態を見つめろ」

上条「人が席を外した隙に仲良くなりやがってチクショー!俺は部屋に戻るぞ!こんな所に居られるか!」

レッサー「それ、死亡フラグ」

上条(……と、レッサー達は仲良くなりましたとさ。レッサー”達”はねっ!)



――廃病院 個室

レッサー「で、エロの話へ戻すんですが」

上条「戻すな戻すな。戻るんだったら本題へ戻れ」

レッサー「ほら、中世から近世にかけて、教会が絶対的な権力を持ってたじゃないですか?神聖ローマ皇帝すら虚仮にしたり」

レッサー「なんて言いましょうか、芸術というのはエロなんですよ!エ・ロっ!エロがあれば空だって飛べるさ!」

上条「お前ついさっき話しにくいっつってたよね?その設定はどこ行ったの?飛んでっちゃった?」

レッサー「えっとですね、これはマジ話――てか、これ”も”マジ話なんですが、絵画ありますよね?ルネッサンス以降の」

上条「あんま詳しくはないが、美術の教科書でパッと見た名前ぐらいは暗記させられてる。それが?」

レッサー「まぁ何となくのイメージでいいんですけど、ルネサンス以降の絵画には『異教のワンシーン』が多いですよね?」

レッサー「例えばヒエロムニス=ボスの『悦楽の園』、時代が経ってはゴヤの『我が子を食らうサトゥルヌス』なんて代表ですが」

レッサー「他にも魔女のサバトを描いた絵なんかゴロゴロ出て来たりしますが――あれ、不思議に思いませんでした?」

上条「本場だろ?別に珍しいこっちゃ――」

レッサー「『キリスト教が絶対的な価値観を支配している中、あんな絵が評価されたのか?』と」

上条「言われてみれば……そうだよな?確かにルネサンス以降、ギリシャ神話の神様やジークなんとか?って英雄の絵とか増えたよなぁ?」

上条「あとレッサーさん?多分故意犯だとは思うんだけど、『十字教』な?そこ間違えないでやって?」

レッサー「おっと失礼、加味ました!」

上条「違う!わざとだ!字が違う!」

レッサー「神は死んだ……ッ!」

上条「深いなっ!?哲学的なテーマがありそうっ!」

レッサー「ゆかたん?」

上条「ゆかたん!」

ソーズティ「戻ってこい。いつまで経っても本題へ入れん、というかユカタンとはなんだ?半島か?」

レッサー「つーかですねぇ、ぶっちゃけますと当時の宗教画はガッチガチに硬いモンでした。当時”は”ですが」

レッサー「当然エログロの需要もあったんですが、教会側に睨まれるので描けませんし――というか芸術の成り立ちはご存じでしたっけ?」

上条「宗教色が強い、んじゃなくてスタート地点から既に宗教や信仰の一部だっんだよな?」

レッサー「ですです。なので罰当たりな――エロいポーズのマリア様描いたりしたら、そりゃもう大変だと」

上条「日本でもご覧の有様になるっつーの。こっちで観音様の裸……」

上条「……」

上条「日本よりも西洋の話だな!さぁ進めてくれ!」

レッサー「流石は『観音様=全裸』というスラングが残る国。かくありたいものです」

上条「知ってんじゃん!?」

レッサー「でもまぁどこにだって異端児は居るもので、そう言った連中が取った手段が『異教の神を仰々しく描く』でした」

レッサー「ただただ背徳的におぞましく、伝説も伝承も二の次で絵柄優先。そしてこれがまたウケてしまいましてね」

レッサー「まぁアレを表現するために魔女が好んで描かれたりと、なんだかなぁ的な」

上条「……お前ら、俺達をエロの魔改造屋みたいに言うけど、お前らも大概だよね?この旅始まって大概言うの、通算何回かも忘れたけどさ」

上条「十字教の締め付けが全盛期の時代に何やってんだよ!?エロか!?古今東西エロが文化の原動力なのかっ!?」

レッサー「私が目標としている方の一人に、ボッティチェリのヴィーナス誕生という絵画がありましてね」

上条「……そうだなぁ、あれ確かにキリスト教すっ飛ばして、ローマ神話の女神だもんなぁ……」

上条「待て?お前今目標って言わなかったか?」

レッサー「恥女の鏡ですよねっ!」

上条「全世界的なプレイじゃねぇかっ!?親御さんショック死するから自重しろよ!」

レッサー「でも最近はネット解禁で『あ、これどうすんだろう?』みたいなエロ画像がですね」

上条「もういい語るな!お前の野望は野望に留めとけ!」

レッサー「もうっ!上条さんったら、独占したがりなんですからっ!」

ソーズティ「微塵もそんな様子ないんだが。で?」

レッサー「あぁ脇道に逸れまくりやがりましたが、教会の一方的な文化の締め付け、そいつがいつまでも続けられる訳がないんでして」

レッサー「彼の有名なヴィーナスの誕生も、ボッティチェリがメディチ家という強い後ろ盾があったから済んでいたんですが」

上条「あ、あのー?レッサーさんとソーズティさん、少しいいかな?」

上条「これ、どこまでマジ話?フィクションの部分はどこから?」

レッサー「……えーとですね。正直に言いますと、別に『これマジ?こんなエロい絵画あっていいの!?』みたいな記述はないんですよね、えぇ」

レッサー「また文豪として著名なマーク=トウェインはティツィアーノの『ウルビーノのヴィーナス』についてこう扱き下ろしています」

レッサー「『全世界に存在する絵画の中、最も下品で下劣でわいせつな絵画である』」

レッサー「『オスマン帝国の奴隷監獄向けにでも描かれた代物で、あまりにも下らない絵だったので受け取りを拒絶されたのだろう』」

レッサー「『他のどこに飾るのにもばかげた作品だから、美術館に飾られているに違いない』と」

上条「ボロックソじゃんか」

レッサー「余談ですがトウェインはアメリカ南北戦争時に『南軍』として参加、後に脱走しているのも興味深いと言えましょうかね、えぇ」

上条「何?」

ソーズティ「『嘘吐きの自己紹介』だ」

レッサー「ともあれ今まで清貧と清潔、そして貞節重視で宗教画を描かせてきました。文字通り焼いてきたんですね、”どっち”も」

レッサー「が、しかし貴族や諸侯、豪商の台頭により、相対的に十字教の権力は落ちてきました」

レッサー「最初は貴族の露悪趣味だったのかも知れません。道楽で集めた描かせただけの代物でした――ですが」

ソーズティ「『異端が溢れると異端が普通に置き換わり、普通が異端へ置き換わる』、か」

レッサー「ですなぁ。ルネッサンス美術が異教の神々やその信仰群――『ペイガン』を取り入れ、認知されます」

レッサー「南北戦争に”奴隷存続側として参加した挙げ句、脱走した臆病者”のマーク=トウェイン大先生は否定していましたが」

上条「その形容詞、要るか?」

レッサー「『仲間を裏切らない敵』と『誰とでも寝る味方』、私はどちらを尊敬すべきか決めているタチですので悪しからず」

レッサー「あっ、勿論私は上条さん一筋なんでっ!浮気はしませんからっ!」

上条「浮気も何も付き合ってすらいないな!」

レッサー「トウェイン氏の作品には高確率で『脱走した黒人奴隷』が登場しているので、思う所はあったようですが」

レッサー「ただ黒人奴隷をモチーフの一つとして盛り込んでいる反面、インディアンをステレオタイプの悪役として出してガッカリですが」

レッサー「アメリカさんの自由民権運動、特にアフリカ系の自由民権運動について評価出来るんですが、その一方インディアンについては無頓着なんですよねぇ」

レッサー「ともあれトウェイン氏が貶そうと美術館へ飾られ、且つ高い芸術的評価を得ていると言うのは、特定層だけでなく価値があると判断された証拠です」

レッサー「更に時代が経つと、ワーグナーの『ニーベルングの指輪』やウェーバーの『魔弾の射手』とか、異教や十字教以外の伝承取り扱ったものが増えます」

レッサー「まぁ創作物も縛りがあるのとないのでは段違いですし、散々やって飽きられたお決まりの結論に飽き飽きとしてしまうのは無理もないコトです」

上条「十字教の影響力の低下か?」

レッサー「に、加えて富の分散でしょうかね。経済規模が拡大するに連れて、教会”以外”の力も強くなります」

レッサー「大衆、一般庶民へ文化が伝播するのも結構なんですがねぇ……まぁ、それはそれでまた、後々深刻な問題を生み出す訳ですが」

レッサー「エルギン=マーブルの『白い神像』などの大罪を積み重ね――さて!」

レッサー「こうして北欧神話はヨーロッパで高い認知度と市民権を得ていったと!ご静聴ありがとうございましたーっ!」

上条「……あぁうん、長かったけど、まぁ言いたい事は何となく分かった」

レッサー「なので北欧神話とギリシャ神話については、断片的ながらも知名度は高い訳ですし、文化としても取り込まれています」

レッサー「日本で例えるならば……西遊記や封神演義、でしょうかねぇ」

レッサー「あれもまた他の国の神々のお話ですけど、日本で道教を信仰する方は極めて少数でしょう?神農辺りは意外とありますけどね」

上条「俺達は自分達のエロを肯定するためには使ってねーよ!」

レッサー「女体化って良いですよねー?私は魏ルートの続編どうなるか楽しみにしてたんですが、ライターさん替ってぶん投げやがりましたし」

上条「すいませんしたっ!!!」

レッサー「ふむ。素直で結構です」

ソーズティ「……長くなったが、大抵の宗教で太陽は太陽神が運航しているか、そのものであったりするんだ」

ソーズティ「だから時折起こる日食や月食も、太陽に何か危害を加える存在が居て、そいつらの仕業だと説かれている」

上条「……当然、それを模倣するような術式や霊装の類があったっておかしくはない、と」

ソーズティ「逆に無い方が不自然だな。『太陽を喰らうオオカミ』なんて、飼い慣らしたらさぞかし便利だろうし」

レッサー「ちゅーか気になってたんですけど、ソーズティさんのお姉さんの霊装、『ブラフマーアストラ』で同じ事は可能でしょうかね?」

上条「なんで今それを聞くんだよ?関係な――く、ないのかっ?」

レッサー「『インド神話に出来る』事でしたら、他の神話でも再現可能でしょうからね。そこから向こうさんの目的と手段が掴めるかも、ですし」

レッサー「……ただですねぇ。メリットに見合うかどうかの価値があるかと言えば、どうかなー?つった所ですか」

上条「もし持てたらスゲーじゃん?オティヌスの『槍』みたいに、世界だって滅ぼせるんだろ?」

レッサー「えぇまぁ。太陽や月、星を撃ち落とせる程の魔術であれば、威力はそれはもうスンゴイものなんでしょうが――」

レッサー「――でも『撃ち落とす”だけ”』なんでしてね、これが」

上条「はい?だけってナニ?」

レッサー「ですからオティヌスの槍は『全知全能である主神オーディン』を象徴する霊装です」

レッサー「なのでもし完成すれば、槍を手にした者も全知全能の力を得る――と推測されてますでしょ?」

レッサー「一度世界を終らせて新しく創るのも良し、今の世界へ手を加えて遊ぶのも良し。それが出来る”筈”ですからね」

レッサー「対してフェンリルにしろ、その他『星喰い』を使ったとしても、そこでお終い。ただの超威力の魔術ってだけです」

上条「核兵器を持ってたら凄いし、抑止力もなるよね?みたいな話なんじゃねぇの?」

ソーズティ「規模が大きすぎるんだよ。ケーキを切り分けるのにミサイルを飛ばして、その尾羽を使うバカはいない」

上条「本当にバカだな。そいつ」

ソーズティ「キッチンナイフがなければペティナイフ、それもないのであればフォークを使えば事足りる」

レッサー「もしかして上条さん、『大は小を兼ねる』とか言い出すのかも知れませんけど!それは違いますからねっ!」

上条「よく分かったな。確かにケーキ切るにミサイルはないと思うけど、知り合いだったら日本刀でスパっとやりそう」

レッサー「……今なんか、乙女心が傷ついた音がしたような気がしますが、違いますよ!それは断じて違いますからねっ!?」

レッサー「小には小の良さがありまして、そうじゃなければJSっぽい需要があれだけある説明がつきませんよ!」

上条「その大小は別だよな?別ジャンルの話じゃないか?」

ソーズティ「その知り合いは置くとして、普通はしないだろう。何故ならば『非効率』だからな」

上条「お前らが効率・非効率言うのかよ」

ソーズティ「失敬な。私達は目的のために手段を選ばないだけであって、手段は選別するんだぞ!」

上条「通訳ー?誰か通訳の方いらっしゃいませんかー?」

レッサー「いやですから、前言ったじゃないですが。『威力のデカい術式ほど困難になる』って」

レッサー「ソーズティさんも仰ったように『人一人を斬り分ける』のが目的であれば、デカい威力は必要無いんですよ」

ソーズティ「そんな猟奇的な表現はしていない」

レッサー「多少オーバーキルでも、まぁ爆弾を用意するとかその程度の発想へ留まるでしょうなぁ」

レッサー「テロに見せかけたり、不特定多数を巻き込んで犯人探しを難しくする、という意味合いでは、たまに使われますからね――で」

レッサー「それで『ブラフマーアストラ』で同じ事は可能でしょうか?出来るのであれば条件等もお聞かせ頂きたい所です」

レッサー「当然、同じかそれ以上の『代償』を必要とするでしょうし、ね?」

ソーズティ「……詳しくは姉に聞いて貰うのが確かだ。なので推測でよければ」

上条「頼む」

ソーズティ「可能か不可能であれば、可能だ。太陽も月も無理だが、彗星程度であれば吹き飛ばせるだろう」

レッサー「あっちゃー……」

ソーズティ「ただし!『ブラフマーアストラでは相性が悪い』と言っておく。破壊力の面であればな」

上条「どういう意味?」

ソーズティ「ヒンドゥーの最高神は三柱、トリムールティと呼ばれている神が居る――在る」

ソーズティ「一柱が『創造の神ブラフマー』。姉のアストラが力を得ている神だな。世界の創造をした」

ソーズティ「二柱目が『維持の神ヴィシュヌ』。太陽神でもあり、世界が無事に運行するのを司っている」

ソーズティ「最後に『破壊神シヴァ』。暴風と水害の神でもあり、世界を滅ぼす役割を持つ」

ソーズティ「ヒンドゥー教は、この三最高神のどれかを崇める事が多く、それぞれブラフマー派。ヴィシュヌ派、シヴァ派を名乗っている」

上条「あと二つは聞いた事がある。やっぱゲームでだが」

レッサー「あの、ちょっとお聞きしても良いでしょうか?脱線しますけど、私前から気になっていたんで」

ソーズティ「なんだ?結社の最奥に関わらない事であれば」

レッサー「いえいえ、そんな大層なお話しではなくてですね。それぞれ三つの宗派に分かれてるんですよね?この場合、あなたはブラフマー派ですか?」

ソーズティ「私ではなく結社がそうだった、だな。特にこだわりはないが」

レッサー「三つの宗派が揃っていて、よく争いになりませんよね?つかなってたり、私の知らない所で?」

ソーズティ「……面倒だが……『バラモン教』とやらを知っているか?お前達が勝手に名付けたんだが」

レッサー「えぇ、ヒンドゥー教と並ぶぐらいで、聖典も同じヴェーダ使ってるんじゃないでしたっけ?」

ソーズティ「あれは正しくは『Brahmanism(ブラフマニズム)』、直訳すれば『ブラフマー教』なんたよ」

レッサー「え、ちょっと待って下さい!?それ、つーかだったら、ヒンドゥー教ブラフマー派でも良いじゃないですか!?」

ソーズティ「ちなみにヒンドゥー教も実はお前達がつけた名前だ。だから定義が割と曖昧でメチャクチャなんだよ」

レッサー「……なんか、すいません」

ソーズティ「なのでお前達がしているような、十字教内部での抗争は”あまり”していない。政治的な原因もあるが……『アバター』という概念があるからな」

上条「あ、映画で見た」

ソーズティ「正しくは『アヴァターラ』、化身とか権現という意味で、えぇと……」

上条「あ、大丈夫。日本にもそういう逸話かなり残ってるから。アレだろ?『神様仏様が姿を変えて助けに来てくれた』みたいな?」

ソーズティ「合っているな。それで例えばヴィシュヌには10の化身があり、その中に『ブラフマーとシヴァも含まれている』んだ」

上条「……あい?それって」

ソーズティ「ちなみにブラフマー派によれば『ヴイシュヌとシヴァはブラフマーの化身』であるし、シヴァ派によれば以下略」

レッサー「なんつースケールのデカい解決方法ですか、それ」

ソーズティ「ただヒンドゥーには宗派以外にカースト制度があるからな。そっちで騒ぐ余裕がなかったとも言える」

ソーズティ「それに最近は改善もされてきて、都市部では自分達のカーストを知らない人間も増えている。私もその類だ」

レッサー「……大変なんですねぇ」

ソーズティ「今の説明で分かったと思うが、ブラフマー自体は『創造神』であって、『破壊神』ではない」

ソーズティ「単純に破壊を求めるのであれば。シヴァ系の力に頼った方が確実で、しかも楽だな」

ソーズティ「だがしかし!『ブラフマーアストラ』ですらシヴァに勝るとも劣らない威力を持たせた姉は、並の魔術師ではないという話だ!」

上条「おい、長々と話した結論が『ねーちゃん大好き』かよ」

レッサー「どこの世界にもいらっしゃるんですねぇシスコニアンの方」

上条「止めろ!?勝手に単語を作るんじゃない!」

レッサー「スーリスト?」

上条「それはちょっと見てみたい……いや!一般論だけどな!」

ソーズティ「どんな一般論だそれは。で、最適とはお世辞にも言えないが、『ブラフマーアストラ』が半壊する前であれば……」

ソーズティ「彗星程度なら打ち抜ける……と思う、が。代償に姉が『持って行かれる』のは間違いない」

ソーズティ「一度に振る流星の数が万を超えれば、大した代償無しでも撃てると聞いた憶えもあるが」

上条「意図的にしないと無理だよな」

ソーズティ「だから、現実的には不可能だ」

レッサー「神が使う武器を人が扱おうとするならば当然、”そう”なるでしょうねぇ。分かりましたよ、無理言ってすいませんでした」

レッサー「しっかしまぁ妙な縁ですよねぇ。『エンデュミオン』で一度交わっただけの道が、またここで交わるだなんて」

レッサー「一応確認しておきますけど、わざわざこちらまで足を運ばれてんですから、『星喰い』の魔術は阻止するおつもりなんですよね?」

ソーズティ「いや……姉次第かな」

レッサー「おっとぉっ!まさかのここでノータッチですか!?」

ソーズティ「『魔術師』と『互助会』、どちらの立場であっても無視は出来ない……が、単独で事を起こして、勝てる相手か?連中は?」

レッサー「私達でしたらちゃっちゃと締め上げちまうつもりですがね。勝ち負け以前にアリサさんが――ねぇ上条さん?聞いてます?」

上条「ん?あぁごめん。ちょっと考え事してた」

レッサー「Aじゃないそうです。私の見立てだとB以上C未満」

上条「何の話?あとそれ答え言ってるよね?何となく分かるけど、つーか俺、他に考えそうな事ないって思われてんの?」

レッサー「二重の意味で、『おおむね』は!」

上条「学園都市帰ったらさ、お前に是非紹介したい子がいんだよ。『柵川中の核弾頭』って俺が心の中で呼んでる子なんだが」

ソーズティ「戯れ言はいい。それで、どうしたって言うんだ?」

上条「んー……?あのさ、偶然かも知んないけどさ。気になったんだよ」

レッサー「ですからどのような?」

上条「ソーズティの姉ちゃん――ウレアパディーの霊装は『弓』だよな?」

ソーズティ「そうだな。他の説ではチャクラムのような投擲武器とも言われているが、まぁ弓だ」

上条「なんで、弓?」

ソーズティ「詳しく説明すると更に長くなるから簡単に説明れば、ブラフマーは創造神だ、この世界の」

ソーズティ「なので存在は宇宙に留まり、私達の世界を常に俯瞰している――という概念があり、そんな神が持つのは『弓』だと」

レッサー「『宇宙』、そして『私達の世界』……って事ぁ『流れ星』でしょうか?」

ソーズティ「発動条件の『三つの流れ星』とは『ブラフマーが放つ試し矢』を意味しているんだ」

上条「試し矢?」

ソーズティ「あぁ。目標との距離を測ったり、弦の張りを確かめるために射る。準備体操のようなものだ」

レッサー「三つも?」

ソーズティ「ブラフマーは四顔四腕。なので一本に弓を持てば、矢は当然四つとなる」

上条「誰が矢をつがえるんだ、とか突っ込んだら負けなんだろうな、きっと」

上条「つかお前!それこないだ説明端折ったじゃねーか!?ステイルの推測と違ってるし!」

ソーズティ「詳しく聞かれなかったからな。私に言われても困る」

レッサー「まぁまぁ、今は上条さんお話を伺いましょう。それが何か気になるんですかね?」

上条「あぁいや、大した事じゃない。ないとは思うんだが、ブラフマーの使う武器は『弓』だわな」

ソーズティ「しつこいぞ」

上条「でもって『エンデュミオン』――の、恋人だったアルテミス?だかも、使うのは――」

レッサー「……『弓』、ですよねぇ」

上条「これ、偶然か……?」

ソーズティ「……」

レッサー「上条さん」 ポンッ

上条「何?何レッサーさん俺の肩へ優しく手ぇ乗せてんの?」

レッサー「昔の偉い人はどうしようもなく困難な状況に置かれた際、こう言って諭したそうですよ」

上条「へぇ、なんて?」

レッサー「――『考えるんじゃない!感じるんだ!』と!」

上条「お前それ面倒臭くなって説明ぶん投げた人の台詞じゃねぇかよっ!?」

上条「そもそも偉人ですらないし!核シェルターに入る時、『あ、ちょっとゴメンな?もう少し詰めて貰える?』って一言ありゃ主役になってた人だなっ!」

レッサー「てゆーか、死の灰被ってから結構長く生きてんのって逆に凄いですよねっ!」

上条「だから!今からでもいいから誰かパートナーを変えてくれようっ!?誰でもいいからさっ!」

レッサー「ちなみにフラグ的には、その台詞が出た時点でルート確定ですな-、いやーめでたいっ!」

上条「贅沢は言わないからっ!シリアスの時にボケを撃ち込んで来ない相手であれば……!」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

関係ないですがNARUTO完結おめでとう御座います。コミックス派なのでまだ内容は知りませんが

乙!

アー○ー王も女性化してたけど、イギリス人はどう思うんですかね?


というか、もともとラン○にいろいろ役目とられた感のあるペディ○ェールさんの扱いどうなってるんだろ
例の英雄譚もいろいろごちゃ混ぜされてるし

>>92
フロリス「んーとねーえ?ウナギゼリー(煮凝り)は騙されたと思って食ってみればいいジャン?」
フロリス「試しだよ、T・R・Y!!!ダイジョーブ!ワタシが保証するから、一回だけ、ね?一回でいいから!」
フロリス「想像してみなよ?ジャパンでSUSHI食べに来たらさ、ガイジンが入ってきて『お勧めを』みたいな?カッコイイよねー?」
フロリス「同じだって。イングランドのレストランで、『うなぎゼリー、大盛りで!』つったらカッコイイよ?ワタシ好きんなっちゃうかもなー?」
フロリス「周りの客がね、ドヨってると運ばれてくるんだよ、例のブツがだ!」
フロリス「見た目はワルい!ぶっちゃけキツい!でもね、でもキミが口に運んだらきっとこう思うワケだ!」
フロリス「――『騙された!?』って、ね」
(※ライスプティングなどの「米を牛乳で煮炊きするお菓子」はスペイン語圏に多いですが、おはぎを食べられる日本人であればまぁなんとか。
が、しかしハギスは料理以前に私が偏食のため食べられませんでした。生の魚介類全般と火を通してもホルモン系と血液入ってるのは無理。
あとアレなのは「イギリス料理」であって、「イギリスの菓子料理」は普通に美味しい。ただし注意点もあるにはありまして、特に各ご家庭で作るプティング系。
「この家のクリスマスプティングは来年も食べたいぐらい美味しい」と言うと、フツーにプロポーズになるため上条さんも含めてご注意。
また『断章の~』で仕立屋のじーちゃんが「ばあさんのプティングをお見舞いしてやるぞ」と言っているのも、「ファミリーとして迎えてあげるよ」という意味が。
……てかまぁ、文化的な小ネタがちょこちょこ入っているのですが、一体如何程伝わっているやら……)

>>93
バードウェイ「だよなぁ?そう思うよなぁ?」
バードウェイ「普段、上から目線で見下してるヤツが、羞恥に顔を赤らめながらプルプルしながら頭を下げるのは」
バードウェイ「イギリス淑女としちゃ必見の価値があると思わないか、ん?」
上条「俺、身長以外で見下した事ないよね?てか淑女はそんな事言わない」

>>115
インデックス「基本、イングランドを構成しているのはイングランド国教会なんだよ。わかるかな?」
インデックス「子供が生まれたら近くの教会で洗礼をして貰って、お休みとかには教会へ行って”みさ”に参加するんだよ」
(※イングランド国教会はプロテスタント”ではない”ので要注意。ヘンリー8世が教皇を廃したカトリック)
インデックス「また種々折々の季節や、特別なお休みの日に触れる文化もイングランド国教会のものなのかも」
インデックス「それに対して”あーさーおう”は伝承の一つでしかなく、おとぎ話みたいな感じで伝わっているんだね」
(※エリザベス女王がエロゲに出たら、まず100%国際問題へと発展しますが、アーサーは時代が遠すぎて現実感がない。
実在した君主ではなく、『キリスト教が来る前に居たかも知れない王様の一人』なので、重要視”しすぎる”と逆にマズいですから。
とはいえ、某吸血鬼がナチ殺しまくるマンガへ登場する女王を見た知り合いのイギリス人曰く、「格好良いぜババア!」と)
ステイル「……巷にあふれるミニスカサンタを取り締まれって、わざわざデンマークから抗議される訳ないだろ。バカじゃないのかい、君は」

>>117
ランシス「……イギリス版では『アーサー王の悲劇』、フランス版では『ランスロットの騎士物語』になってる……」
ランシス「えっと……昔見た話では、王妃グィネヴィアが嫁入りの最中に盗賊に襲われ、旅をしていたランスロットが助け出す」
ランシス「アーサーに感謝されたランスローは円卓の騎士へ加わるが、忠義と恋の板挟みになる……的な感じの」
ランシス「多分……ランスロー、今の物語見たら『あれ?俺こんなヒドい事したっけ?』と思う筈……!」
(※国によって人気のある騎士が分かれますので、物語の構成や比重も変わります。戊辰戦争でも地域によって捉え方が違うのと同じでしょうかね。
ネタバレになるのであまり詳しくは語れませんが、アーサー王物語の原型が出来たのは北欧神話よりも古く、尾びれ背びれが付くのも仕方が無い。
また”双剣騎士”のベイリンが手にした『カッシウスの長槍』、”巨人殺し”のベオウルフが手にした『黄金柄の大剣』には、シチュとか類似性があったりします)

――翌日 新市街某所・受け付けカウンター

レッサー「――ついに飲み屋でばったり意気投合!あぁ!それが悲劇の始まりだとは誰も思わなかったのです……!」

上条「レッサーさん?テンション高くないですかね?入れるギア間違ってますよー?」

レッサー「私が物心ついた時から聞いていた”お兄様”が、まさか!まさか運命の人だったなんて!」

上条「なんで育てた人、その人の外見は言い聞かせてこなかったの?むしろそれ狙ってたんじゃね?」

レッサー「風雲急を告げる新展開!新キャラ登場でテコ入れを図る編集部の思惑は如何にっ!?」

上条「テコ入れだと思うよ?今、君がゲロったように」

レッサー「こないだ某スレを見ていたら、『さすおに』ってスラングがあったんですけど、なんか卑猥な響きですよねっ?」

レッサー「『一体ナニをさすさすするするのん!?』みたいな!」

上条「れんちょ○禁止!俺にボケるのやめて交渉に徹しなさい!」

レッサー「おーいえー――で、ついこの間も隣の奥さんがですね――」

上条「……」

上条(……さて、状況を整理しようか。したくもねぇが!つーか薄々分かってるだろうが!)

上条(俺達が居るのは、そう新市街の――)

上条(――『ヤドリギの家』、教団本部だよっ!やったぜパパ!明日もホームランだ!)

上条「……」

上条(……どうしてこうなった……orz)

――回想 廃病院

レッサー「ま、ウジウジ考えていても仕方が無いってぇもんですよね、えぇえぇ。相手がどう出ようと致し方ありませんし」

上条「まぁ……ここまで状況証拠が揃ってりゃ、スルーする訳にも行かない、よなぁ?」

レッサー「Break by Hitting! (当たって砕けろ!)の精神で、一つ」

上条「それ間違ってないかな?直訳すると『当てて壊せ』って意味だと思うんだけど……」

上条「つーかさ、大丈夫かイギリス?俺の知ってる限りじゃ、先進国ん中でも先進国だと思うんだが」

上条「幾ら規格外のキチガ×相手だからって程があるだろうに!つかさ、イギリスって治安悪いの?頭が悪いのは別にして」

レッサー「場所による――と、言いたいんですがねぇ。えぇ出来ればそう言いたかったですよ」

レッサー「今月頭、イングランド中部のヨークシャー州ロザラムでねー、パキスタニの集団犯罪が出て来まして」

上条「パキスタニ……あぁパキスタン人だっけか。麻薬?ギャングみたいなもん――」

レッサー「少女や少年へ対する暴行・脅迫・誘拐・人身売買ですな」

上条「じゃ、ないのな……」

レッサー「あ、ちなみに暴行というのは『傷害罪』という意味では”ない”ので、勘違いなさらないで下さいねー?」

上条「あぁ、だからソーズティ、パキスタン系だっつわれてキレてたのな。そりゃ分かるわー」

ソーズティ「我が国の民度が高くないのは理解しているが、あちらと同列に扱われるのは心外すぎる!」

上条「い、いや?キレる気持ちは分かるけどさ、それってやっぱり個人の犯罪なんだろ?」

上条「だったら国籍がどうこうじゃなくて、例外で全体を見極めるようなのは止めるべきだと思うんだよ、うん」

レッサー「頭に蛆が湧いたような素敵な発言ありがとうございました。でもそんなあなたがDIE好きですっ!」

上条「お、おぅ?ありが、とう?」

ソーズティ「割とストレートに『死ね』だが……」

レッサー「いやまぁ上条さんの”そういうところ”は、私大好きですけどね。綺麗な国に住んで優しい両親に恵まれ、他人を疑おうとしない所が特に」

上条「止せよ、照れるだろ?」

レッサー「……皮肉が通じないのがタチ悪ぃですが――まぁいいでしょう。『16年で1400人』です。被害者の数、分かってるだけで」

上条「……はい?今なんて?」

レッサー「16年と1400人。あ、桁間違ってないですからね?釘刺しておきますが」

レッサー「ちなみにロザラムの人口は約26万人、サッカーチームもあります。今は二部リーグだったような……?」

上条「え、マジで!?それ大問題じゃねぇのかよっ!?」

レッサー「えぇ大問題ですよ。私もちょぉぉぉぉぉぉっとオシオキに行こうかなって思ったぐらいですし」

レッサー「しかもこれ、何が最悪かってのは地元の行政、地方議会と警察と役人が把握してたらしいんですよ、16年前から」

レッサー「が、しかし加害者の殆どがパキスタニだと言う事で、『人種差別』と呼ばれるのが怖くて突っ込めなかったそうです」

上条「酷い話だな。日本じゃ全然知らなかった」

レッサー「そちらさんも『口に出してはいけないあの人達』が居ますでしょ?キーワード的にもドンピシャですからねぇ、この場合だと」

レッサー「マスコミさんお得意の『報道しない自由』を使えば、あらこの通り!スコットランド独立で未来はバラ色に!……みたいな」

レッサー「ちなみにロザラムの移民は8%程、多くがパキスタニかカシミール系だと」

上条「移民が罪を犯して、それを糾弾すると『人種差別』ねぇ……」

レッサー「イングランド以下、EUは旧植民地からの移民を多く受け入れてきましたが、この手の事件が続くとノーサンキューですな」

レッサー「てか、上条さん上条さん。ブリテンの都市はスクールバスが多いって、ご存じでしたか?ロースクールでは高確率で送迎つきです」

上条「そうなの?」

レッサー「ちなみにこの点だけ取り上げて『英国は素晴らしい!日本はなんて遅れているんだ!』と言い出すバカが出ますが」

レッサー「この措置、一見近代的でモッダーンな制度に見えますけど、真逆。ま・ぎゃ・く!」

レッサー「ぶっちゃけますと『こっちの営利誘拐は身代金を要求されるケースは稀』なんです、えぇ」

上条「……理由、聞きたくねぇなぁ……碌な話じゃないんだよね、やっぱり?」

レッサー「戦いましょう!現実と!」

上条「やかましいわ!出来れば一生縁が無い環境で暮らしたかったっ!」

レッサー「いえですがね、上条さん?確かに今まで縁が無かったのは幸運であり、幸福な事だとは思いますよ」

レッサー「とはいえ現実は現実。例え今まであなたの目と耳の届く範囲になかっただけで、存在自体はしていたのもまた正である、と」

上条「つまり?」

レッサー「いずれこっちへ住むんですから、今の内に慣れて貰いませんと困りますよ!全く!」

上条「そんな予定は金輪際無いな!誘拐でもされない限りは!」

レッサー「で、誘拐されても戻って来ない話へ戻るんですが……」

上条「な、なに……?」

レッサー「『話は戻るのに、子供は戻って来ないとはこれ如何に?』」

上条「不謹慎な事言うんじゃありませんっ!幾らフイクションだからってねっ!」

レッサー「言っときますけどね、これ全く誇張してませんですから、はい。てーかフィクションの方がどれだけ救われたでしょうかね」

レッサー「ロザラムもこれからする話も現実ですよ、えぇそりゃもう」

レッサー「……ま、引っ張るような話じゃないんですが、子供それ自体が目当てなんですよ。単純に」

レッサー「身代金なんて端金を要求するよりも、ある程度の規模でシンジケートでドナドナされていく話ですなー」

レッサー「売られた先で然るべき筋の、特定層向けの映像作品へ主演させられた挙げ句、アラブの富豪に買われれば”まだ”幸せな部類でしてね」

レッサー「普通は体が大きくなるとスナ――――」

ソーズティ「――そこまでだ。イングランドの恥をそれ以上晒すな」

上条「……凹む、ってか、なぁ?」

レッサー「まぁそんな訳でブリテンだから、と言って安全とか安心とか思ってるんじゃないんですからねっ!」

上条「なんでツンデレ風?その言い方だと『安心してもいい』って意味になんねぇかな?」

レッサー「最近上条さんも随分旅慣れて来たようですが、中途半端な慣れが一番怖いですからね。注意して下さい」

レッサー「当たり前の話ではありますが、『言語は通じても言葉が通じない』ってケースままありますよね?」

上条「あるなぁ。特に最近思い当たる点が、お前とか」

レッサー「特にですね、下手に語学に堪能になってしまうと『相手の悪意にまで気が回らない』という事が起きるんですよ」

上条「なにそれ?」

レッサー「ホラ皆が皆、私のように裏のない人間ばかりじゃないですよね?」

上条「その意見には異論がある!」

レッサー「――と、今のがもしクイーンズで話されたら、上条さんどう思いますか?」

上条「あっ、あー……何となく分かる、気がするわ。それ」

上条「英語翻訳すんのに集中しすぎて、言葉の裏側に気付けない、みたいな感じか」

レッサー「面白い――と言うのは不謹慎ですけど、ぎこちなく喋ってる時には警戒心が働くようなんですが、慣れてしまうとそのシチュに酔う?ハマる?」

レッサー「不必要にキョドる必要はありませんが、夕方以降観光客が一人でコンビニ行ったら、30%で強盗に遭うと思って下さい」

上条「イギリスでもそうなんだ……」

レッサー「あ、いえ日本人が狙われてるのはも否定出来ませんけど、そんくらいの気持ちで居て下さいな――と、言うワケで!」

レッサー「道端で幼女や少女を見かけても、決して後をつけちゃいけませんよ?」

上条「人聞きワルっ!?つーか結論それかよっ!?」



――現在 『ヤドリギの家』・受け付けカウンター

上条「……」

上条(あれ?ここに居る説明になってなかったな?)

上条(つーか今の回想は国が出している渡航情報よく見とけ!的な話だったよ……)

上条「……」

上条(ちなみに海外安全情報ってNHKがWEBラジオやってるから、聴くだけ聴いておこうなっ!お兄さんとの約束だよっ!)

上条(まぁでも?巻き込まれる時には何やったって巻き込まれるんだよね!俺とか俺とか、あと俺とか!)

上条「……」

上条(あー……もっと後だ。ソーズティが雑談続ける俺らにキレたんだったか)

――回想 廃病院

ソーズティ「そちらの事情も理解はした、というか出来た」

ソーズティ「切羽詰まってはいないものの、急を要する事案であるのは否定できん」

上条「そうか?向こうは長い間、ここに根を張って――じゃないな、巣を張ってるんだろ」

上条「なら、俺達だけじゃなくて『必要悪の教会』やローマ正教、あと……あー……」

上条「バードウェイんトコの『明け色の陽射し』に手伝って貰えたりとか……」

レッサー「『グレムリン』のような”World of Enemy(世界の敵)”クラスならともかく」

レッサー「『濁音協会』の最後の一社、『双頭鮫(ダブルヘッドシャーク)』如きにそれは難しいでしょうね」

上条「なんでだよ?ローマ正教も俺達の受け入れに同意してくれただろ」

レッサー「そりゃあれは『学園都市の使節受け入れ』ですんで、合同攻撃とは訳が違います」

レッサー「そもそも『必要悪の教会』のお膝元で、外国の魔術師を受け入れて対処すれば、それ即ち『解決能力の欠如』と宣伝するのと同義です」

上条「面倒臭ぇなぁ、その柵み」

レッサー「マフィアも魔術結社も、『どんたけキチガ×か?』ってぇのは重要ですよ、えぇもう」

上条「一緒くたにまとめんなよ」

ソーズティ「大体合っているな」

上条「合ってんの!?……あぁでも、お前はねーちゃんがアレされてんだよな……」

レッサー「まぁ魔術師は悪い意味でアグレッシブ過ぎますからね、人の迷惑顧みる事すら一切無い訳で」

レッサー「なのでそういうバカどもへ睨みを利かせるため、取り締まる方はドギツくエゲツなく進化しなければいけなかったのでありますよ!」

上条「レッサーさん、語尾語尾。キャラブレてますよー?」

レッサー「……いやぁ、でもですねぇ、なんつーかまぁ、誤算みたいなのもありまして」

上条「な、なに?何となくオチが読めるけど」

レッサー「上条さん、今まで何人ぐらい魔術師と殺りあって来ました?」

上条「殺りあった憶えはないが……そうなー?」

上条(ステイル、神裂。あとインデックス……の、中の人?外の人?)

上条(アウレオルス、土御門、闇咲、シェリー、アニェーゼ達三人、オリアナ、ビアージオにヴェント)

上条(テッラ、アックア、レッサー達四人、キャーリサもカウントしとくか一応)

上条(フィアンマ、サンドリヨン、サローニャ、マリアン、トール……ん、時、バードウェイともやり合ったっけ)

上条(他にはソーズティ、ウレアパディー、ラクーシャ、ハリーシャ、ベイリー姉妹)

上条(んでもってレディリー……は、ノーカンでいっか。直接殴り合ったのはシャットアウラだし)

上条(でもって合計――あるぇ?妊婦さんの魔術師と戦った気が……ま、いっか)

上条(一、二、三……)

レッサー「……軽い気持ちで聞いたんですが、上条名人、長考へ入ってしまいました」

ソーズティ「いや、普通魔術師と早々戦り合うか?悩むくらいの数をこなす前に死ぬだろ?」

レッサー「ま、そこを何とかしてきたのが、上条さんの上条さんたる由縁と言いましょうかね――あ、スマフォでテキストに起こし始めました」

上条「……32、人?」

レッサー・ソーズティ「「多っ!?」」

上条「言っとくが、お前達も入ってるんだからな?あ、負けたオティヌス入れて33人か」

レッサー「あの人の姿をした災厄相手に、生きて帰って来られただけで儲けものですよ」

上条「手も足も出なかった、つーか斬られたけどさ。最初の一回で」

レッサー「何を弱気になってるんだか上条さん!あなたの本質は『右手』なんかじゃないでしょうっ!?」

レッサー「私――いや、私達は分かっていますからねっ……!」

上条「レッサー……!」

レッサー「上条さんの何がタチ悪ぃかって、『右手』なんかよりもホイホイフラグ建てる謎能力ですよねっ?」

上条「ガッカリだ!?なんか多分変な持ち上げ方しやがったから、絶対落とすとは思っていたがなっ!」

レッサー「アレでしょ?オティヌスと戦ったって、なんやかんやしながらも最後はフラグ建てて攻略すんですよ、えぇ」

レッサー「『だがしかし俺はお前の下乳を見過ごす事が出来ないっ!……いやっ!』」

レッサー「『むしろそのブラになりたい……!!!』」

上条「どういう状況?どんなシチュになれば俺は熱くオティヌスに性癖カミングアウトする羽目になるの?」

上条「つーかしねーよ!人を節操無しみたいに言うな!」

レッサー「おありなんですか、節操?」

上条「……そ、それで?俺に戦った魔術師の数を数えさせた理由は?」

ソーズティ「逃げたな」

上条「……男にはな。負けると分かってたら逃げないといけない時もあるんだよ……!」

レッサー「それだとタダの臆病もんですが――まぁ、なんで聞いたのかは難しくはありません」

レッサー「魔術師ってば超個人主義ですよね?『組織』とか『結社』に所属していても、自分の利益のためにはあっさり裏切りますし」

レッサー「そもそも『無力な人間が力を得よう』という所から出発しているため、そうならざるを得ないんですがねぇ」

上条「能力者でも一緒っちゃ一緒だがなー」

レッサー「ここで質問。今数えた面子の中で、『相手が怖いからやっぱしません』的な人、居ました?」

上条「フロリス」

レッサー「その子以外でお願いしますっ!あとその子はヤレばデキる子ですからっ!どうか長い目で見て上げて下さいなっ!」

上条「アンジェレネ――は、アニェーゼ部隊限定で気張ってたか。そう考えると居ないわな」

レッサー「それと同じく、なんぼ『必要悪の教会』がおっそろしい取り締まり方をしても、折れるような信念ではないでしょうね、と」

上条「納得だなぁ、それ」

レッサー「とはいえ中途半端な素人さんが、こちらへ手を踏み入れないよう抑止する効果……に、もならないですね」

レッサー「組織名知った時点で、引き返しの付かない所にまで来ている訳ですからねぇ」

上条「やだなぁレッサーさん、その言い方だと俺がもう一般人じゃないみたいじゃないですかー」

レッサー「そう聞こえませんでした?」

上条「俺は一般人のつもりなんだがなっ」

ソーズティ「その自称一般人とやらに殴り飛ばされた魔術師は多そうだが」

レッサー「ともあれそんな感じで突っ張ってる以上、余所様からの応援を受け入れるのは相応のビッ×でないと」

上条「ピンチな?今スルーしそうになったけど、それだと意味合い大きく変わるからね?」

ソーズティ「字的には合っているとも言えなくもないが……では、『必要悪の教会』自体に助けを求めるのは?」

上条「連絡がねぇ……付け方が分からないんだよなぁ。少し前までは定期的に情報のやりとりしてたってのに」

レッサー「あ、私は信用してませんからね」

上条「いやお前そう言うけどさ」

レッサー「イングランドにここまで大きな『協会』の支部だか本部だかあるってぇのに、情報一切寄越さなかったんですからねっ!」

レッサー「それに無辜の国民をテロリスト扱いして抹殺しようしてやがったんですから!私達みたいな善良な一般国民をねっ!」

上条「マジモンのテロリストからここまで嫌われるって事は、いい仕事してだんなぁ『必要悪の教会』」

ソーズティ「何をしでかしたんだ、この女?」

レッサー「ちょっとクーデターをですね」

ソーズティ「……旧植民地からすれば褒めてやりたい所だが、よく無事だったな、それ」

上条「まぁまぁ。組織として信用出来ないかもだけど、個人は信用出来るしな?……一点において、だが」

レッサー「(……これ、恐らく上条さんへの”鎖”ですよね?)」

ソーズティ「(信頼出来る個人を用意しておいて、組織ではなくそいつを信用させる……よくある手口だな)」

レッサー「(どれだけ個人が信用出来たとしても、その人が下っ端である限りどうしようもないんですがねぇ、えぇもう)」

ソーズティ「(滑稽と言えばそれまでだが、この男らしいと言えばその通りか)」

上条「何?」

レッサー「いいえちょっとロシアのルーブルが変動性に移行してた件について少々」

ソーズティ「そんなので騙されるか」

上条「そっかー、最近の魔術師は為替相場にまで詳しいんだなぁ」

ソーズティ「そんなので騙されるのか!?」

レッサー「てな感じで『必要悪の教会』は信用出来ません。少なくとも最初の時点でそのお友達さんから情報を貰えていませんのでね」

上条「友達じゃねーし、ただの知り合いだし」

レッサー「はいはいツンデレ乙ツンデレ乙。と、まぁそんな感じで『必要悪の教会』に頼るのはNGですね」

上条「待ってくれよ!放置してるんだったら、放置してるだけの理由があるんじゃ――」

レッサー「んじゃ帰ります?このままアリサさんの所へ」

上条「それは……」

レッサー「私は上条さんの意見を尊重しますよ?決して強制したり、無理強いしたりはしませんのでね」

上条「……そういう訳にも行かねぇだろ。このまま放置したら、ツアー終ったのに問題は解決してません、てな事になりかねない」

レッサー「賢明な判断ですな。向こうさんには向こうさんの思惑があるのは当然。こちらがそうであるのと同じく、です」

上条「優先順位なのかも知れないな。アリサとイギリス、下手に刺激しない方がいいとか思ってるのかも。イギリス清教の上の人はさ」

レッサー「それ相応の筋を通してくるのであれば、配慮すべき事柄もあったんでしょう――が」

レッサー「今回のこれは、曲がりなりにも同盟組んでる相手へ対しては少々不誠実ですな」

上条「……うーん」

レッサー「まぁ尤も、上条さんがお帰りになっても、私一人で突っ込むんですけどねっ!」

上条「俺の選択関係ねぇじゃん!?尊重するとか言う話はどこ行ったのっ!?」

レッサー「ですから『止めもしませんが、自制するつもりもない』という事で一つ」

上条「ほんっっっと!ブレねぇな!フリーダムすぎる所が特に!」

レッサー「アリサさんとの個人的な友情というウェイトも大きいんですが、今回はそれ以上に――」

レッサー「――彼らが『ブリテンの敵』で在り続けるのであれば、それは私の敵と同義ですから」

――現在 『ヤドリギの家』・受け付けカウンター

上条(――てな感じで、ノリで勢い、愛と勇気を友達にして俺達は潜入を試みているんだが……)

上条(ソーズティは失踪したインド人達の関係者と疑われるのを恐れて別行動――つーかウレアパディーと合流してから決めるんだそうで)

上条「……」

上条(俺達と一緒に行動するのが嫌とか、意図的に避けられているとか、そういう事じゃないよ?多分違うと思うな?)

上条(俺としては年上お姉さんキャラの出番が……まぁ、色々あるよねっ!包容力的な意味で!)

上条「……」

上条(……んで、今は受け付けで名簿?宿帳?みたいな所へ名前や住所とか書いてるんだ。施設の見学には必要だとかで)

上条(……そして俺と苗字同じにして、『兄妹ですが何か?』とごり押しするレッサーさんが……)

上条(少しぐらい話を盛るのはいいと思うんだけど……)

レッサー「――で、私は白ひ○海賊団の二番隊隊長になったんですが」

上条「話盛り過ぎじゃね?もう原形留めてないもんな?」

上条「あとその設定だと、俺は体が伸び縮みするファンタスティックフォ○っぽい人じゃないかな?」

レッサー「え、でも部分には伸びたり縮んだりしますよねっ?」

上条「全世界の約半分はな!しかも意図的にやってる訳じゃないから!生理現象だから!」

受付「あのー?カミジョウさん?」

レッサー「おっと失礼しました!話が逸れましたンねっ!」

上条「逸れてる逸れてないで言えば、最初っから本題に入ってねぇよ!?」

レッサー「どこまでお話ししましたっけ……あぁそうそう!」

レッサー「父は将来、アテ×を守る聖闘○を量産すべきためにですね」

上条「今日はジャンプ系で攻めるの?新旧スター系だってのは認めるけどさ」

レッサー「あれ、実子である必要性皆無じゃないですかね?あのヒゲ別に特別な人間って訳じゃないし、養子でも条件満たしてたのでは?」

上条「だからその設定アニメ版ではなかった事になってたんだよ!別に誰が困る訳でもないし!」

レッサー「”こちら側”から解釈を入れるとすれば、ゼウスがあちこちへ種を蒔いた神話を踏襲してるんでしょうが、その設定は生かされませんでしたしねぇ」

レッサー「――と、見て下さいよ!こんなに息が合ったツッコミとボケ!それはもう魂の兄妹以外に有り得ませんでしょうっ!」

上条「”魂の”つってる時点で血縁否定してるじゃねぇか」

受付「……あ、はい、分かりましたので、もういいです。えっと――誰かー?」

女性「はーい、ただいま参りまーす!」

受付「今、担当の者が参りますので、彼女の指示に従って下さい。後、勝手な行動や写真撮影はくれぐれもしないで下さい」

レッサー「(フリですかね?)」

上条「(常識的な注意だと思うよ?)」

女性「えっと、はい、お待たせ致しました。わたしは『ヤドリギの家』でDeaconを勤めております、テリーザと申します」

上条「でーこん?」

テリーザ(女性)「あ、日本語だと『助祭』……えぇと司祭様をお手伝いする係、みたいな感じです」

レッサー「お上手ですね」

テリーザ「いえそんな。実家でホームステイを受け入れていたので、簡単な日常会話を少しだけ」

レッサー「いやいや、充分ご立派ですよ。私達日本人が聞いてもお綺麗な日本語で。ね、兄さん?」

上条「誰が兄貴だ」

レッサー「(上条さーん、設定お忘れでー?)」

上条「んんっあぁっ!確かにレッ――言う通りだなっ!」

テリーザ「ありがとうございます」

上条「てか、ごめん。案内の前にタイムいいかな?いいよね?ちょっとお話が」

レッサー「あ、すいませんねー。兄はちょい前までニートやってたもんで、テリーザさんみたいな美人さんとお話しすると蕁麻疹――」 グィッ

レッサー「(って、何なんですか?あんま挙動不審だと怪しまれますよ?)」

上条「(……聞きたいんだけど、お前名簿になんて書いた?名前も日本風にしたの?)」

レッサー「(そりゃ当たり前ですよ。私をなんだと思ってるんですか)」

上条「(あー、ごめんごめん。で、なんて書いたの?)」

レッサー「(”上条れっさぁ”)」

上条「(まず改めるのはお前の方じゃねぇのかっ!?幾ら日本にDQN増えたからって、そんなトンデモネームつけるかっ!)」

レッサー「(人の名前になんつー言い様ですか!謝って!コードネームつけた先生に謝って!)」

上条「(良し!この事件が終ったら、お前に魔術を教えたヤツに会わせて貰おうじゃねーか!きちんと落とし前つけるからな!)」

上条「(てかお前、『レッサー』って何よ?フロリスとかランシスみたいな名前じゃダメだったの?」)」

レッサー「(ベイロープ外してません?)」

上条「(変わってるけど、ファミリーネームだったらあんのかな?って)」

レッサー「(――”Balin Low Pool(死の淵のベイリン)”なのでしょうがねーんですけど、あれ)」

上条「(はい?今なんて?)」

レッサー「(ベイロープは綺麗系に見せて意外と可愛いですよね、と)」

上条「(あぁそりゃ俺も同感――って、んな話はしてねーよ!)」

レッサー「(往生際が悪いですよ、乗りかかった船なんですからドンと行きましょう!)」

上条「(うん、だからね?お前はその船を乗り込む判断材料が『あ、これ面白そうじゃね?』的な感じでだ)」

上条「(君、アレでしょ?普通の船の隣にウサギさんがオプションで付いてくる泥船があったら、そっち選ぶよね?それをまず改善してだな)」

レッサー「あ、はい。タイム終了でーす」

テリーザ「じゃこちらへどーぞー?」

上条「二人とも話を聞きやがれ!」

――『ヤドリギの家』教団 通路

上条(――テリーザさんに連れられて、教団内部をテクテク歩く俺達だが――)

上条(――まず、『ヤドリギの家』教団は新市街の外れにあった)

上条(「これだったら別に旧市街でも良くね?」、ぐらいに駅から遠いし、わざわざ移転する意味があったのかは分からない)

上条(ま、とにかく郊外の方に『教団』使節はあったんだよ。外見はだなー……あー……)

上条(ポジティブな言い方をすれば『窓のないコロッセウム』、言葉を飾らなければ『刑務所』)

上条(5mぐらいの高い壁で周囲を囲まれた、何とも言えない光景ではある)

上条(旧市街の火災が10年前、という事はどんなに新しくても建てられて10年は経ってない……の、割に古さが目立つっていうかな)

上条(塀のカビたか汚れだかが、妙に人の顔に見える……なんか心理学的な用語あった筈だ)

上条(……日が陰って来て、余計に印象へ暗い何かを感じさせるんだろうか……)

上条(内部へ入って分かった事だが、中には巨大な建物が幾つかある)

上条(一つ目が外壁と一体化している――)

テリーザ「えっと、今わたし達が居た場所は『本館』になります」

テリーザ「余所からいらしたお客様や、信徒の皆さんが外へ行かれる際には必ずあそこを通って出入りします」

上条(『本館』っていうよりは検問所っぽい感じだけどな)

レッサー「他に出入り口はないんでしょうか?ほら、火事とかあったら大変ですしねぇ」

テリーザ「非常口が幾つかありますので、そちらを利用して頂ければ大丈夫ですよ」

上条「ですよ、って」

レッサー「まぁまぁ。それで?」

テリーザ「今から向かう先は『第二聖堂』になりますね。右手の大きな建物です」

上条(学校の体育館ぐらいの大きさの教会――”っぽい”建物だ)

レッサー「十字架が架けられてはいませんけど……工事中か何かで?」

上条(あぁ『ベツレヘムの星』には十字教教会の十字架が勝手に集められたんだっけか)

上条(……あそこに引っ付いてた霊装とか、北極海に落ちたまま回収されなかったら、また問題になりそうじゃね?)

上条「……」

上条「フラグじゃないよ?全然?そういうんじゃないからね?」

レッサー「誰に話してんですか兄さん。つーか不審者ですよ」

上条「お前にだけは言われたくねぇが、てかテリーザさん」

テリーザ「はい?」

上条「第二、って事は第一は遠くにある、アレですか?」

テリーザ「はい、あちらが第一聖堂ですね。昔はあそこしかなかったので、第一・第二とは呼ばれていなかったそうですが」

上条「へー?……あれ?目が何か、おかしいな……?」

レッサー「どうしました?」

上条「こっちの聖堂は何か真新しいのに、あっちのはスゲー古っぽいていうか」

レッサー「言われてみりゃ確かにそうですな」

テリーザ「あちらは元々、昔からあった教会をそのまま利用してますので」

上条「教会を?」

テリーザ「はい、教会をそのまま」

上条「あぁっと……単刀直入に伺いますけど、ここ、十字教じゃないんですよね?」

テリーザ「いえ、十字教ですけど?」

上条「あ、あれ……?」

レッサー「言ったじゃないですか兄さん」

レッサー「ホームページにも書いてありましたよね、ウェイトリ”ー”先生はお医者様であられるのに、信仰の徒としても目覚められたとか」

テリーザ「あー……あのHP見ちゃいましたかー。あれ、どう見ても怪しい新興宗教にしか思えませんよねー……」

上条「その痛々しい反応、何か間違ってるとか?」

テリーザ「えぇっと、何からお話ししたものか、っていうか別に秘密にしてる訳じゃないんですけど」

テリーザ「十字教にも色々と派閥がありまして、ですね。中には『神の子』の再臨を説く方達も居ますし」

テリーザ「逆に『この世界は偽物の神が創った』と主張されている方も居ます」

レッサー「(前者がモンタノス派、後者がグノーシス派ですね)」

上条「(お前、詳しいな?)」

レッサー「(一身上の都合で十字教徒さんとはよくドツキあってますからねー。昔から)」

テリーザ「そのどちらも、古い十字教の一派なんですけど、大体2世紀ぐらいにはなくなっちゃってるんですよ」

レッサー「(グノーシス派は4世紀まで続いた上、マニ教へ継承されて15世紀の中国まで存在が確認されていますけどね)」

上条「(……お前ら、大航海時代にウチまで渡ってきたもんなぁ……そう考えると十字教ってスゲーな)」

テリーザ「わたし達も、実は昔からずっと隠れ続けて来た十字教の一派閥なんです。まぁ昔は異端だ邪教だ、と排斥されたんですが」

テリーザ「今の世の中そういう時代じゃありませんし、どうせなら大々的に復活させよう――とウェイトリー主教がお考えになりました」

レッサー「なーるほど。それは確かに仰る通りですなぁ」

レッサー「性別や民族の壁を取っ払おうってぇ、カオスな動きが続いてる中、古い信仰の一つや二つ復活してもおかしくはない、と」

テリーザ「ですよねっ、そう思いますよねっ?」

レッサー「(それが本当に『旧い信仰』だったのか、疑問が残る所ではありますけど)」

上条「(なぁ、レッサーさん?)」

レッサー「(詳しくは後程。まだ彼らの尻尾が掴めていません)」

レッサー「それで?『ヤドリギの家』の皆さんは、一体どちらのどなた様で?」

テリーザ「Trinity、と言って分かるでしょうか?」

上条「三位一体だっけ?名前ぐらいしか知らない」

レッサー「兄さんは日本暮らしが長かったですからねー」

テリーザ「Trinityとは、父なる神、神の子、聖霊から成り立っていますよね?」

上条「そのぐらいだったら何とか――何?」 チョンチョン

レッサー「(――上条さんっ!大変な事に気づきました!)」

上条「(どうしたっ?まさか――敵の魔術師の攻撃かっ!?)」

レッサー「(お姉さんの口から『乳なる神』って聞くと卑猥です!」

上条「(お前もう口を開くなよっ!?あと、日本には「エッチだと思う方がエッチなんだ」って格言があってだな)」

上条(ちなみにテリーザさんは大学生ぐらいの地味めの女性。化粧も殆どしてないし、案内役だから抑え気味にしてんだろうけど)

テリーザ「ですがこの考え、『神の子は代理人に過ぎない』という所から出発したグループがあります」

上条「代理人?確か、他の人の罪を背負ったんだよな?」

テリーザ「正確には『代理人の一人』でしょうかね。聖人の方々のように、たまに降臨されては奇跡を起こす、という感じで」

上条「(その考えだと神裂も……まぁ身ぃ削ってるっちゃ削ってるが)」

レッサー「(神の子の否定――アリウス派確定ですなー)」

テリーザ「神の子は偉大ですが、あくまでも養子に過ぎず、特別神聖視するには及ばない――というのが、本教団での考えです」

上条「なんでまた?」

テリーザ「この世界は父がお造りになりました。そして」

レッサー「えっ?すいません、今ちょっと聞き取れなかったんですけど、誰が造ったんですか?」

レッサー「”誰”が造ったのか、大きなお声でもう一度どうぞっ!さんっはいっ!」

上条「すいません、この子病気なんですよ。脳と性癖がちょっとアレでして、無視してやって下さい」

テリーザ「は、はぁ?……それで、世界を造った後、神の子が生まれるまでは時間がかかっていますよね?」

テリーザ「アブラハムの子らが子孫であったとしても、時が経ちすぎています。その間、神はただ見守っていたのではないと」

上条「……あーっと、つまり『神様は神の子以外でも、ちょくちょく奇蹟を起こしてた』から、みたいな感じですか?」

テリーザ「はい。父の愛は万人へ等しく与えられています、ですので『神の子』”だけ”を神聖視するのは差別である、と」

上条「差別?」

テリーザ「だって人の命は誰だって同じでしょう?なら誰が特別だと、そういうのは差別だと思うんですよ」

上条「そう、か?な、レッサー?」

レッサー「乳の愛……!」

上条「あ、ごめんね?お話続けて貰えますか?」

テリーザ「あ、すいません。こんな所でお話ししちゃいまして、本当でしたら寄宿舎の方でお茶でもお入れする筈だったのに」

上条「いえそれは別に。聞いたのはこっちですし――てか、寄宿舎ってのは、あの?」

テリーザ「えぇ、あの建物です。ホテルっぽいですけど」

上条(10階ぐらい建てのビジネスホテルっ”ぼい”建物。修学旅行で泊まらせられるような感じの所だ)

上条(この中で一番大きな建物――じゃ、ないんだ。もっと大きな建造物がある)

上条「それじゃ、あっちの病院っぽいのは……やっぱり?」

テリーザ「はい。ウェイトリー主教の病院です」

テリーザ「先程も言いましたが、えぇと、その、例えば神の子は他人を癒やすという奇蹟を用いました」

テリーザ「けれどそれは他の人間でも、現代であれば医学と医術によって為し得ますでしょう?」

テリーザ「それは『誰にでも出来る普通の事』だと主教は説かれています」

上条「医療を誰でもってのは、無茶だと思うけど」

テリーザ「この国の保険制度はご存じでしょうか?」

上条「はい。公的診療だと数週間かかるんでしたっけ?」

テリーザ「……えぇ。大分良くはなったんですけど、これでも」

テリーザ「酷い時には歯医者にかかるのが一ヶ月先、みたいなのもありましたし」

上条「そりゃ……うん、酷いな。虫歯になったらどうするんだっての」

テリーザ「そういう時――あ、今でもありますけど――には、フランスへ行って日帰り診療を受けたり、他には私的診療を受けたり」

テリーザ「空いた時間で個人的に看て貰うしか、診療は受けられませんでしたから」

上条「”でした”って事は、もしかして?」

テリーザ「はいっ!ウェイトリー教主は誰でも診療して下さるんですよっ!」

上条「へー、そりゃ凄い」

テリーザ「ただ、外からの患者さんが多い分、どうしても軽い症状の方は後回しになってしまいまして」

テリーザ「なので一部は病室だけでは足りず、寄宿舎の方へお入り頂いてます」

上条「病院も大きく見えるけど……あぁ別に患者さんが泊まる部屋だけって事もないか」

上条(まとめるとだ)

○『ヤドリギの家』教団施設

外壁は高い壁がぐるっと囲んでいる。5・6mぐらい?
出入り口は『本館』は呼ばれる所のみ、ただし非常口(※EXITマーク)があるらしい

第二聖堂(新しい)
第一聖堂(古い。教団が施設を造る前からあった)

寄宿舎(と、いう名のホテル。10階建てぐらい)
病院(一番大きな建物。県立の総合病院クラス)

上条(ざっとこんな感じ、かな?今の所、パッと見て怪しいのは……)

上条(第一聖堂かな?「な、なんとこれは失われたあの信仰ではありませんかっ!?」みたいに、レッサー騒ぎそう)

上条(――て、そういやさっさからレッサーがやけに静かだな……?)

上条「レッサー?」

レッサー「うーむむむむむ……テリーザさん、ちょいとお話が逸れるんですがね?」

テリーザ「はい、何でしょうか?」

レッサー「こちらで行われているのは公的診療ではない、私的診療、ですよね?」

テリーザ「そうですね」

レッサー「お気を悪くしないで頂きたいのですが、私的診療である限り、保険制度の対象外ですよね?もしくは比率が低い筈」

レッサー「なのによくやっていけるなぁ、と思いまして」

テリーザ「あー、やっぱりそこ気づいちゃいますかー」

レッサー「失礼ながら、お金をお持ちの方”だけ”が患者であるならば、充分にPayは出来るのでしょうけど、どーにもそうとは、ですね」

上条(俺達以外にも患者――もしくは、信徒?の人らとは結構すれ違う)

上条(カジュアルな格好をしている人は少なく、殆どが病院着かテリーザさんみたいな質素な服。そして)

上条(肌の色が違う、ソーズティと同じインド系と思われる人達か)

上条(移民だったら、というか最初からお金があれば移民になんかならない訳で)

テリーザ「……あの、ここだけの話で?ネットとかに書かないで下さいね?」

上条「どうぞどうぞ。つーか他人へペラペラ喋る程、英語が堪能って訳じゃないですから」

テリーザ「ウェイトリー”先生”はあまり、その宗教の方は熱心じゃない、らしくてですね」

テリーザ「どっちかって言うと、慈善団体とか、税金対策のためにやってるって、司祭さんから聞いた事があります」

レッサー「あぁ言われてみれば確かに。宗教団体と言うよりかは、オープンキャンパスみたいな感じですよね」

上条(この鬱々とした閉塞感の中でよく言えるよな。お世辞なんだろうけど)

テリーザ「なので、こう治療と言ってもかかるものはかかる訳でして。その辺りを寄付金とか、信徒の方々からカバーして頂いてる、のではないかと」

上条「それじゃ俺達と同じアジア系の人らが多いのはなんでですか?」

テリーザ「さぁ……?あ、でもインディアンとパキスタニの皆さんは、介護のお仕事をされていますよ?」

レッサー「ならそれが目的じゃないですかね。言っちゃなんですが、正規の看護師・介護士として雇用するなら、相応のお手当が必要」

レッサー「また労働環境によっては職業互助会――労働組合から睨まれますからねぇ」

レッサー「でも『ボランティア』や『宗教活動の一種』であれば、免許や資格のない人間でも雇用出来ますし」

テリーザ「その言い方だと、ちょっと……」

レッサー「なら好意的に解釈すれば――ある程度経験を積めば、後々免許を取るのにも役に立つ、ってぇ所ですかね」

上条「節約のためにやってるって?」

レッサー「流石に専門的なのは任せられないでしょうが」

テリーザ「成程ー、そういう意味があったんですねーっ!」

レッサー「と、納得されてる方も居ますし、いいんではないでしょうか」

上条「職業訓練の一環だってなら、アリはアリ、か」

テリーザ「お二人はこれからどうされますか?」

レッサー「第一聖堂が見たいですし、出来れば古い信仰にも興味がありますかねぇ」

上条「院長先生が力入れてないんだったら、あんま聞く意味は無いかもしんないけどな」

テリーザ「いえいえっ!確かにウェイトリー教主はあまり熱心ではないらしいですけど!」

テリーザ「でも司教のお話はそれはもうっ評判が良くてですねっ!」

レッサー「ミサには私達のような部外者も参加しても構わないのでしょうか?それとも直に会えたりとかします?」

テリーザ「流石にそれはお忙しいので、きちんとした用件でもなければお断りさせて頂いていますが……」

テリーザ「その、ミサの方であれば『体験入信』コースというものがありまして」

上条「あー……なんとなーく、あのホテルっぽいホテルの目的が分かった気がする」

レッサー「奇遇ですねぇ、私もですよ」

テリーザ「なんと!今なら『二泊三日体験コース』がえっと……今日のポンドがこれで、日本円へ換算すると……」

テリーザ「お二人ならは500ドル!たったの500ドルで体験出来ますよっ!」

上条「おい、急に営業トークになったな、あぁ?」

テリーザ「いえあの、ですけど中々人気ですので、騙されたと思って体験されては如何でしょうか?」

レッサー「聖堂だけ見せろ、ってのは」

テリーザ「すいません。信徒の方以外には公開しておりませんので」

上条「ちょっとタイムいいですか?」

テリーザ「あ、どうぞどうぞ」

上条「(――って話なんだが、どうする?)」

レッサー「(質問に質問で返すようで恐縮ですが、どうもこうも?)」

上条「(ですよねー……選択肢なんかないって話だわな)」

レッサー「(潜入目的で来たんですから、観光者の物見遊山に紛れるのはこれ幸いですが……さて?)」

上条「――分かった。んじゃ二人でお世話になります」

テリーザ「はい、こちらこそ至らぬ所もありますが。と、お二人のお荷物はそれだけでしょうか?」

レッサー「いえ、新市街のモーテルに置いて来てますね」

テリーザ「あぁ丁度良かった。わたし、これから車で街まで買い出しの用事がありますので、ついでで宜しければお送りしましょうか?」

上条「あー、すいません。お願いします」

――新市街 ホテル入り口

テリーザ「では1時間ぐらいで買い物は終わると思います」

レッサー「そちらの手伝いはしなくても?」

テリーザ「そうですねー。でしたら、時間が余ったら直ぐそこのマートまで来て頂ければ助かります」

レッサー「わっかりました!では――」

パタン、ブロロロロロロンッ

上条「今、一瞬『外車乗ってるなスゲー』と思った俺は小市民なんだろうか……?」

レッサー「あー、分かります分かります。私も日本行ったら、『日本車ばっかだ!?』とカルチャーギャップ受けるのと同じで」

上条「あ、イギリスには有名な車メーカーなかったっけ?」

レッサー「大抵何でも揃える日本とドイツが異常なんですよコノヤロー。日本・ドイツ・イタリアと、嘗ての枢軸国がシェア占めてるって……」

上条「だったらフランス――は、嫌だろうから、アメリカ製の買えばいいじゃんか」

レッサー「……上条さん、アメリカがどちらから独立したかご存じで?」

上条「あー……それじゃ日英同盟にまで戻って日本車を買おうぜ!」

レッサー「あん時、ウチが下手に租界を求めて居なければそうなってたんでしょうがねぇ――で、ですが」

レッサー「取り敢えず10分ぐらい経ったら私の部屋で打ち合わせでもしましょうか。つっても今後の方針確認ですけど」

上条「やっぱり向こうじゃ盗聴されてるとか?」

レッサー「目をつけられていれば可能性は充分に。ある程度は術式でカバー出来るとは言え、100%は無理でしょうからね」

上条「あぁお前そういう小細工苦手っぽいもんな」

レッサー「その評価は概ね合っているので言い返せませんが、そうではなく、えー、例えば防音の魔術を使ったとしましょう」

レッサー「イメージとしちゃ、結界みたいなので辺りを覆うような感じでしょうかね。こう、ビニールハウス的な感じで」

レッサー「確かにその魔術を使えば、範囲外へ出る音量は大幅に減退され、中で銃を撃っても『空耳かな?』レベルにまで抑えられます」

上条「悪用前提の魔術だな」

レッサー「ですがこれ、欠点がありまして『音は漏れないが魔術を使ったのがバレる』と」

上条「魔力が感知出来ちまうんだよな。ランシスが言ってた」

レッサー「相応の魔術師が居た上、常に近くで監視していれば、という但し書き付きですがね」

上条「そこまで警戒されてるんだったら、魔術の一つや二つ使ったって今更だわな」

レッサー「と、言うような細々とした話をしたいので」

上条「ん、分かった。10分後に」

レッサー「鍵は開けておきますからっ!遠慮無くどうぞっ!」

上条「それ罠だよね?俺からかって遊ぶ気満々だよな?」

――ホテル 個室

カチャン

上条「……」

上条(さてさて、荷物をまとめてと……大して荷物自体ないんだが)

上条(それこそ着替えと携帯ぐらいしか持ってきてないし、大半はローマの部屋に置いてきたままだ)

上条(大半つってもこっちで買ったお土産だとか、イタリアの朝市で貰ったジャムの瓶とか、そういうのばっかだけど)

上条(他にも……ARISAのライブで使った使用済みケミカルライトとか。封切ってないのと一緒にぶち込んである)

上条(10分、10分あればシャワーでも浴びれるかな?旧市街で焦げ臭い臭いが染みついたままで、気持ちは良くない)

上条「……?」

上条(……あれ?シャワー室、誰か――まさか!?)

上条(――敵の魔術師かっ!クソッタレ!こんな所にまでっ……!)

上条(どうするっ?レッサーを呼んで――いや、それはマズいか。こっちだけじゃなくて、あっちの部屋にも潜んでる可能性がある!)

上条(だったらまずこっちのヤツを無力化させてから、合流するのがベストだろう!そうと決まれば――)

上条「……」

上条(イチ、ニ、の――――――サンッ!)

上条「――動くな!お前の魂胆は分かっているぞっ!!!」

ソーズティ(※シャワー中)「――ぅえ?」

上条「」

 慌てて胸元を隠そうとするソーズティであったか、それは無駄だったと言えるだろう。
 少女と女性の半ば辺り、未だ成長中であろう胸の膨らみは細やかなものであったが、少女の細腕では隠しきれない程には、女性らしい曲線を描いている。

 対象的だったのは、全体のボディライン、シルエットとも言うべきだろうか。成熟した美しさは別の、どこか背徳的な妖しさをも潜むぐらい、細く、華奢だ。
 男が片手だけを回してしまえば、容易に手折る事すら出来るだろう――そう、一輪の花のように。

 だが、上条にとってそれはもう望めない事でしかなかった。何故ならば彼の片手は少女の肩へ、そしてもう一方は彼女の手首を握っていたからだ。
 暴漢を取り押さえようと乗り込んできた彼にとって、もう既に立場は逆転している。守る側から危害を加える側へと。

 腕の中で恥ずかしそうに――実際そうであろうが――身をよじるソーズティであったが、片腕を捕まれたままでは満足に抵抗は出来ない。
 むしろ逆に、羞恥に顔を歪ませ、頬を赤らませて、彼女の褐色の肌が熱を帯びる様は、とても扇情的であった。

 手を離せばいい。視線を逸らせばいい。悲鳴を上げればいい。そう理性ではどこか訴えている。そう、どちらともがだ。
 しかしどちらもしない。出来ない。若さ故の過ちの如く――。

 シャワーの水滴がソーズティの肌を滑り、流れ落ちる。上条の黒い瞳とソーズティの翠玉色の瞳が、何度も何度も交差する。
 最初はオドオドと伺うように、次第に大胆に、そして最後には予定調和のように。
 恋人がキスを交わすように、視線は絡みつき、離れられず、囚われる。

「その……」

 口を開いたのはどちらの方が?何を言おうとしたのか?
 それすらももどかしく、二人の距離は縮まって――。

レッサー「F×cking!!!なんってこった!?」

上条・ソーズティ「「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」

レッサー「何やってんですかっ!?つーか何やってんですかっコノヤローっ!?」

レッサー「人が目を離した隙にこれですかっ!ラッキースケベどころか、今本番突入しようとしてませんでしたかっ!?」

レッサー「それどもアレですか!?日本人のエッチとは『HENTAI』のHじゃなく『HON-BAN』だったんですかっ知りませんでしたっ!」

レッサー「てか親子揃ってやたら滅多にフラグ建てるのもいい加減にしといて下さいなっ!」

上条「ま、待て!?レッサーこれには深い訳があるんだっ!」

ソーズティ「ち、違うぞ!?別に私は誘ってなんかないんだからな!」

レッサー「違うでしょぉぉぉぉっ!そうじゃないでよすねっ!?違いますからねっ!」

レッサー「なんで勝手にヒロイン交代してんですかっ!?ラッキースケベは私の役割でしょうがっ!」

上条「すいません、ちょっと何言ってるか分かんないです」

レッサー「てか地の文要ります?適当に流せばいいのに、あそこまで詳細且つインモラルに描写する必要性がどこにあるのかと濃い乳時間!」

上条「小一時間な?お前も混乱してんだよな?」

レッサー「むしろ淫乱ですよ!」

上条「むしろの意味が分からない!?」

レッサー「そもそもアリサさんの時にも思ったんですが、あれ別に絡むのランシスじゃなくて私でも良かったんじゃ?」

レッサー「トリスタンとイゾルデ伝説のダメバージョンだってのは分かるんですが、結局手ぇ出してましたし!」

上条「本格的に落ち着けレッサー!ワケ分からなくなって何言ってるのか分からない!俺もそうだけど!」

レッサー「この――泥棒猫がっ!人が折角シャワー浴びて誘惑しようと思っていたのに、先に済ますとは……!」

上条「人の事とやかく言える立場じゃねぇな!故意にしかけてる時点でタチはもっと悪いよ!」

ソーズティ「いえ、その、私も被害者なんだがな……?」

上条「そ、そうだぞ!俺が悪いのは間違いないが、ソーズティは悪くないだろ!」

ソーズティ「廃病院はシャワーなんか無いからな!お前達を待ってる間に済ませてしまおうって考えたんだよ!」

レッサー「いや、鍵かければ良かったじゃないですか、つーか私の部屋のシャワー使えば良かったじゃないですか?」

レッサー「なんでわざわざ上条さんの部屋だと分かっていながら、シャワー浴びる必要があったですか?さぁなんで!?どうして!?」

ソーズティ「……ぅ」

レッサー「どうせアレでしょ?『あ、このシャワーであの男もオ×ったんだなー』とか考えながら、一戦始めたんですよね?」

レッサー「『まるで一緒にシャワー浴びてるみたい!』的な想像を――」

上条「いい加減にしとけ。お前そろそろ出禁食らうからな?本気でだぞ?」

レッサー「じゃあ上条さん!お言葉ですが上条さんはおかしいとは思いませんでしたかっ!?」

上条「何がだよ。あんな場所に居たら、体洗いたくなるのは当たり前だろ?」

レッサー「違いますって。そっちじゃなくてもっとそもそも論のお話です」

上条「そもそも論?また妙な単語出て来やがったな」

レッサー「いいですかっ!ここは曲がりなりにも敵地!アウェイです!」

レッサー「例えるならば三十路のおっさんが正月に実家へ帰ったばりに、敵しか居ません!」

上条「結婚しろしろウルセーの?実体験なのか?」

レッサー「そして対象はいっぱしの魔術師!戦闘訓練を受け、気配を察知するぐらいはお茶の子さいさいなねっ!」

上条「その単語、生で使う奴始めて聞いたが……で?」

レッサー「そんな人間が『シャワーやお風呂と言った、一番無防備になる状態で周囲への警戒ゼロ』ってどんだけですかっ!?有り得ませんよっ!」

上条「言われてみれば……!」

レッサー「ですから、きっと×ナってたんではないかと」

上条「選べよ!言葉を!タダでさえアレなんだから!」

レッサー「全くもう!人が折角早めに来て上条さんの裸を拝もうとしなければ!今頃は大惨事になっていた所ですからね!?反省して下さいな?」

上条「お、おぅ……?ありが、とう?」

ソーズティ「……なぁ?コイツの方がタチ悪くないか……?」

レッサー「ちゅーか、私が折角ウヤムヤにしようとして上げているのに、いい加減手を離したらどうです性的犯罪者さん?」

上条「ヒドっ!?絵面だけを見ればそうだけど!」

レッサー「状況証拠でもバッチリですがね。親告罪なので立件されないだけです、ありがとうございました」

レッサー「はっ!?……それとも3Pがお好みだとか……?」

レッサー「――宜しい、受けて立ちましょうかっ!レッサーちゃんがエロゲで身につけた奥義をお見せしましょう!」

上条「これ以上はカオスになるから止めてくれっ!?あとエロゲでは勉強出来てないから!」

レッサー「ま、立つのは上条さんなんですがね」

上条「だからお前も恥じらいを持ってあげて!」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

パソコンまた壊れました (´・ω・`)

上条さん…アニェーゼを部隊で数えたら200人プラスされて、天草式入れたら50人近く増えるよね?

乙です

リアルだと年上の方が好きだなんだけど、フィクションのラキスケは背徳感的な意味で同世代の方がいいことに、今更ながら気づいた
後、上条さんの敵の魔術師ネタは脳内再生完璧でいつも笑っちゃう

イギリスも移民の問題とか大変なのね…
パキスタンといえば、平和賞の子の自伝読んで感銘受けてググってみたら、色々言われてて、うーん…ってなった

パソコンは犠牲になったのだ…


ふーん二割五分か。意外と男性率多いね当麻くん。

それでさりげなくエツァリさんがハブられてるのは、偶然なのかな?かな?

乙!!
軽くググったんですけど、イギリス車ってほとんど外国メーカーの傘下なんですね
そりゃ買えんわ

レッサーがラッキースケベ担当って言ってたが
ラッキースケベを未然に防いでるよね
誘ってるように見せれば警戒するし、近寄らないよね
もしかしたら本当は恥ずかしいんですね

「いや落ち着いて読み直そうぜ!」
「ラッキースケベの直接描写って、このシリーズではこれが初めてだよね!?」
「他のケースはたいがい『当ててんのよ』的なシチュエーションだったし!」
「だから、人を指さして『最後の、そして永遠の助平チャンピオン』みたいに形容しなくてもさあ!!」

「んじゃ、間接的な描写を数えてみようかジャパニーズ?」
「描かれていない逸話も含めると……うん」
「五人パーティでも、指が足りなくなってしまうのだわ」

「 ―――――― 」

「と、当麻くん!私のターンもあるって、信じてるからねっ!?」

田中さんには科学とか魔術抜きの上条さんと女の子(たち)がデートするようなの書いてほしい
それが無理なら1レスの小ネタとかでいいから『(上条さんが)女の子に壁ドンやってみた』とか『愛してると言ってみた』がみたい
あ、乙です

>>141
つか天草式だったら、上条さんがベトベトした粘液をBUKKAKEて、おっぱいに顔を埋めながら無理矢理押し倒した挙げ句、
意識のないのをいい事に彼女が大事にしていたモノを奪った浦上さんってキャラが居たり
(本編7巻P151、漫画版9巻P134参照。スマイル君付きバレッタ留めポニテ・ドレスソード・ニーソの子)

>>142
円周「んーとねーえ、マララお姉ちゃんちゃんスッゴいよねっ!お兄ちゃんが大好きな17歳だよ!17歳!」
円周「BANG!!!されたのが14歳の時でー、ブログを書き始めたのは11歳かー。って事は計6年の活動なんだねー」
円周「でもねぇ?同じ平和賞貰ったカイラッシュ=サティヤルティおじちゃんはさ、児童労働を改善する活動に取り組んでてさ」
円周「劣悪な環境に置かれた子供達を保護した後、職業訓練をする施設を行政と一緒に作ったんだって!」
(※下手に親元へ帰すと「また売られる」ので)
円周「1980年からざっと34年間、国内で生涯をかけて取り組んできた、少なくとも第一線で活動する人と」
円周「海外でブログと講演会周りでガッツリ稼いで本国には寄りつきもしない人」
円周「カイルおじちゃんとマララお姉ちゃんが同じ功績を得るなんて、おかしいよね、って意見が結構あるみたいだしぃ?」
円周「何よりもまずパキスタン国内では、アメリカがTTP(パキスタン・タリバン運動)への対テロ戦を張っていて」
円周「無人攻撃機が民間人を誤爆しているのに「どうしてそっちは非難しないの?」って本国では非難されていたりするんだよ」
(※ただし同国内ではTTPの意向に沿ったマスコミもある上、マララ女史はオバマ大統領と面会した際、軍事介入を止めるように訴えています)
円周「他にもね、マララお姉ちゃんはさ、オックスフォードに通いながらアメリカの大学院に通うのが夢なんだって!凄いね!」
円周「ってかこの間、賞を貰った時にこんな事も言ってたんだけどぉ」
円周「『賞は私が前進する勇気を与え、自分を信じるに値すると示してくれた……授業のテストや試験の助けにはなりませんが』」
円周「調子に乗ってるよねー?わたしは大好きだけど」
(※マララ女史の活動は素晴らしいものではありますが、と前置きをしておきますが、問題にされているのは『活動期間・内容・実績』の三つ。
期間は前述の通り、内容も『国外から母国の人権状態の改善を訴える”だけ”』、実績は……という感じですし。
他にも女性の人権問題以前に、もっと悲惨な人身売買に取り組んでいる団体からすれば、ヌルいの一言。
特にパキスタンで歓迎されていない理由の一面として、女性に発言権が皆無である上、「不幸な人は自身が不幸だと気づいていない」事ですか。
パキスタン以外でも言える事ですが、小さい頃からそれが普通で当然だと思っていれば、自身の境遇について疑問に思わない。思”え”ない。
当事者にとっては「頼りがいがあって暴力を振るわない旦那様」を探す方が大切である――と、ですね。
また別口の問題点としては、イギリス国内で不法滞在のパキスタニの旗頭に使われるんではないか、との懸念が。
……本人の意志とは裏腹に、「ノーベル平和賞の○○」という肩書きは素人さん騙すのにピッタリですからね。洋の東西を問わず”連中”は権威に縋るのが大好きだと)
円周「でさでさ、わたし、思ったんだけどねっ」
円周「>>142お兄ちゃん、実はさ、アレなんじゃないかなぁ?好きなんだよね、わたしやレヴィちゃんみたいな」
円周「未発達でペッタペタな方が好きなんでしょ?わかるわかる、あるよねー、そーゆーの」
円周「でもでも、リアルでやっちゃうと問題あるから、BABAAに逃げてるんだけなんだよね?違う?」
円周「逃げちゃダメだよ!自分に素直にならなきゃ!」
円周「だから、さ?お兄ちゃんのその穢らしい欲望、円周にだけコッソリ教えて?ね……ッ?」
マタイ「……善人の善意すら棄教の道へ陥ろうと言うのに、いわんや悪人の悪意たるやだ」
(※女史は間違いなく「善意」で変えようとしている……ですが、だからといって『良い方向』へ変わるとは限りません。
当たり前ですけど「善意を悪用しようとする悪意を持つ人間」もまた少なからずいますから。
それ以上に度しがたいのは『善意であればなんだって許されると思っている』層……福島に住んでるとつくづく実感します)

>>143
海原さんは素で忘れていましたごめんなさい。いやでもあれ出来レースみたいなもんだったし

>>144
レッサー「ロータスとテヴィーアという超お高いスポーツカーメーカーがあるにゃあるものの、普通は手が届きませんしねぇ」
レッサー「ブリテンの製造業は60年代まで造船を筆頭にブイブイ言わせてたんですが、次第に金融工学()へぶっ込んで製造業は冷え込みました」
レッサー「ベントレーはキャベツ野郎に買収されてしまうで散々ですよ、えぇもう」
レッサー「とはいえユーロ通貨導入の際、自主独立の危険性を訴えて導入しなかった辺り、EUん中ではマシだったりします」
レッサー「ちなみに私が言ったのはネタであって、街じゃフツーにワーゲンやフィアットほ目にします」
レッサー「そして車がぶっ壊れた時、『ファシストにまた騙された!』と、叫ぶのまでがテンプレ」

――シティホテル

レッサー「で、上条さんがソーズティさんを無理矢理手込めにしようとしていた件についてですが」

上条「終ったよね?俺が言うのも何なんだけど、場面が切り替わったのに引っ張る必要無くないか?」

レッサー「てかベッドの上に女物の着替えが放置される時点で、『あ、誰かシャワー使ってんなー』って疑いません?」

レッサー「一体どういう思考回路を辿れば、『シャワー使ってる人がいる→敵の魔術師の攻撃だ!』に繋がるのかと」

上条「でもですね、反論しますと割合俺は襲撃を喰らってる身でしてね?」

レッサー「ちなみにシャワー中のラッキースケベって何回あります?」

上条「そうだなー?インデックスに神裂にオルソラにバードウェイにアリサ――ってそんなにないよ!?日常茶飯事じゃ決して!」

レッサー「現実と戦いましょうとは言いましたが、常識と戦ってどーすんですか。つーかバードウェイさん、着々と王道フラグ積み重ねてる気が……?」

上条「レッサーに常識説かれるのは心外なんだが……」

レッサー「と、言われる私の方こそが心外ですがね――もう少しでお迎えが来るので手短に」

ソーズティ「ん、あぁ、どうか……した、か?」

レッサー「ほら見なさい上条さん!ソーズティさんさっきから目ぇ合わせくれませんよ?」

上条「……本当にごめんなさい……っ!反省してますからっ!」

レッサー「でしたらここは一つ、責任取って私と結婚するしかないですなー」

上条「責任の取り方間違ってなくね?てーかお前の入ってくる余地は無ぇよ!」

レッサー「ま、それはさておき私達の方針は先程と同じです。体験入信二泊三日コースに参加する事にしました」

ソーズティ「罠じゃないのか?」

レッサー「だったら正面から粉砕するまでですね。こう、ガッツーンと」

上条「罠じゃなかったら?」

レッサー「裏口から入って粉砕するだけですかね。こう、ドッカーンと」

上条「粉砕するのは決定かよ……ま、放置するつもりはねぇけどもだ。で、ソーズティはどうするんだ?」

上条「何だったら俺の妹枠で付いて来るか?向こうは来る者拒まず、みたいな感じだったし」

ソーズティ「……うわぁ」

レッサー「よっ!上条さんの妹マニアっ!このシスタープリンセ○っ!」

上条「違うよっ!?どっかのおバカが無理矢理血兄妹として登録しやがったから、その流れが続くんだと思ったんだ!」

上条「……後、レッサーさんはその黒歴史持ち出さないで貰えるかな?メーカーがある意味伝説作ったっつーか、Nice Boat!っつーか……」

ソーズティ「そうだな……姉と合流もしたいが、それ以前にだ」

ソーズティ「ここに居る面子全てが潜入したら、後続との連絡役が居なくなる、な」

上条「あぁ納得。乗り込んだ人間も身動きが取れなくなったら、後から来る奴らに事情とか説明しなきゃいけないよな」

レッサー「なら携帯のアドレス、宜しいですか?こちらの身内のも渡しますんで」

ソーズティ「いいのか?」

レッサー「えぇそちらと同じく使い捨てなので、この件が終ったら破棄しますし」

上条「勿体なくね?折角仲良くなったんだから、メールぐらいはしようぜ?」

レッサー「個人的にはある一点で気が合うとは思いますよ。思いますが――下手に繋がりを持ってると、ご迷惑をかけるかも知れませんし?」

ソーズティ「必要最低限、あくまでも『一時的に共闘しただけの仲』なのが、一番楽でいい」

上条「あ、だったら俺の携帯に登録しようぜ?」

ソーズティ「話を聞けこのバカ!」

上条「いや聞いてるし?俺だったら別に迷惑かけてくれて構わないし、問題は起きないだろ?」

レッサー「……諦めましょうソーズティさん。こちらさんを説得するのは時間の無駄かと」

ソーズティ「……ちっ」 ピッ

上条「お、来た来た――ってメールアドレス、デフォのまま変えてなくね?半角英数字のの羅列になってる」

ソーズティ「……いいか?私は今回の一件が終ったらこの携帯は捨てるし、番号も使わないからな?」

上条「ん?あぁいいんじゃね、そん時には変更したアドレス送ってくれれば」

ソーズティ「だから――っ!」

レッサー「はい、どうどう。ですから無駄だと」

ソーズティ「本当に……この男は……!」

上条「な、何?」

レッサー「お気になさらず――ってか、そろそろお時間ですので」

上条「おけ。それじゃちょっと行って来るよ」

ソーズティ「――待て。姉からの予言がある」

レッサー「予言ですか?伝言ではなく?」

ソーズティ「予言だ。姉は『ブラフマーアストラ』を使う手前、星詠みに長けている」

ソーズティ「星座や星の運行だけではなく、星辰を使った占いも結社随一……”だった”」

上条「なんで過去形?」

ソーズティ「『チューニング』された副作用だと思ってくれ。なので気休め程度ではあるが……」

上条「充分だ、それで何だって?」

ソーズティ「『――樹が幻視(みえ)る』、だそうだ」

上条「木?ツリーの木?」

ソーズティ「いや正確には、”Wooded”だ」

レッサー「『木に覆われた、木が生い茂った』という形容詞ですな」

上条「教団の場所は新市街の外れ……だけど別に、周りに木ばっか生えては、無かった、よなぁ?」

レッサー「昔はどうだか知りませんが、再開発計画の真っ只中ですしね。切り出した土地であるのは間違いないでしょうけど」

上条「やっぱりケンカする相手が『ヤドリギの家』だから『樹木』なのかな?」

レッサー「『生い茂った』所へ主眼を置いているのか、何かを隠しているのを暗示している可能性もありますね」

ソーズティ「解釈を私に求められても困る」

上条「うーん……ま、分かったよ。注意しとく、ウレアパディーに『アリガトな』って伝えといてくれ」

ソーズティ「……」

上条「どしたん?」

ソーズティ「……と、その、妹からもだな。聞いてはいるんだ、聞いては」

ソーズティ「伝言、というか、その、だな」

上条「うん?」

ソーズティ「『無事に帰ってこい』と」

上条「……あぁ、任せろ!」

レッサー「あのぅ?すいません、ちょ、ちょっといいですかね?」

レッサー「ソーズティさん出るお話間違えてませんかね?ここはレッサーちゃんがシメる所じゃないんでしょうか?」

レッサー「あと上条さんもヒロイン間違っちゃいません?目の前に超絶ぷりちーな私を放置しておいて、褐色スレンダー系にフラグを立てる暴挙を――」

レッサー「――はっ!?さてもしや……っ!?」

上条「お前が何を考えてるのかは知らないが、それは、違う」

レッサー「やはり貧乳にしか興味が無いと……!」

上条「違うっつってんだろ!何となく展開は読めてたけどなっ!」

レッサー「あぁこのおっぱいが憎い……!私が人様よりも豊満な胸でさえなければ……!」

ソーズティ「……なぁ、さっきから私をチラチラ見てるそこの女。喧嘩を売ってると解釈して間違えてないだろうな?」

上条「止めて下さい!?正体不明の魔術結社以外に敵を作りたくはねぇよ!」

レッサー「あー、最近ずっと肩が凝るなー。なんででしょうかねー」

上条「レッサーさんも不用意に喧嘩売るのは自制しなさいよっ!」

レッサー「不用意にフラグ量産する職人さんには言われたくないですがねぇ」

――『ヤドリギの家』教団本部 寄宿舎・厨房

テリーザ「上条さんっ、次こっちの皮剥きをお願いしますねっ!」

上条「はいっ!」

レッサー「上条さんっ!次は下――」

上条「ボケるんだったら後にしなさいっ!今ちょっとおにーちゃん手が離せないんだから!」

レッサー「手が離せないのであれば……ハッ!今が好機……ッ!」

上条「ベイロぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉプ!何だったらランシスでもいい!」

上条「この際フロリスでもアリサでも文句言わないからっ!誰か相方交代してくれっ!」

上条(あの後、ものっそいデカいスーパーで迷子になっていたテリーザさんを回収して、大量の食料品と一緒に本部へ帰って来た)

上条(こんなに大量に買いこんで大丈夫か?――と、思ったんだが)

上条(寄宿舎――つかホテルの厨房だ。そこへ押し込まれてエプロンを着せられた上条兄妹(嘘)は、延々下拵えをさせられる羽目に……!)

おばちゃん「中々やるねえアンタ達!」

レッサー「マムっ、イエスマムっ!光栄であります!」

おばちゃん「よく言ったわ!ジャガイモ追加してあげるわね!」

レッサー「……くたばれクソババア……」

おばちゃん「何か言った?」

レッサー「マムっ、ノーマムでありますっ!」

上条「お前も馴染みすぎだ」

上条(意外と戦力になってるレッサー。手料理は色々な意味でお見舞いされたけど、まぁまぁ……うん、手際はなかなかだ!手際はな!)

上条「……」

上条(……おかしいな?仮入信とはいえ、どうして俺はメシ屋のバイトっぽい事をやってんるだろう……?)

レッサー「そりゃ兄さんが帰りの車ん中で、『あ、自炊はするんで』みたいな事を言ったせいだと思いますが」

上条「独り言に突っ込み禁止――て、声に出てたか、今?」

レッサー「いや、そろそろ面倒臭くなってんじゃねぇかなって思いまして。私と同じく」

上条「合ってんのは合ってるがな」

上条(ちなみに調理班は俺達の他にテリーザさんとおばちゃん達7人、計10人のチームで作ってる訳で)

上条(何人分作るのは分かんねーが、気合い入れないと……なんつーか、保たない)

上条(どのぐらい大変なのか想像出来ないのなら、『ディナータイムのファミレスのキッチン』を見て貰えれば、何となく分かるだろう)

上条「……よし!」

おばちゃん「お、いい気合いだね!若いんだからしゃっきりしないと!」

レッサー「(余談ですが、こっちのオノマトペは後日私が上条さんへレクチャーした上、日本語へ変換してますんで悪しからず)」

上条「そうだな、俺達の戦いはこれからだっ……!」

レッサー「だからそれ死亡フラグですってば」

――その頃 暗き森の奥深く

ダークエルフ「……ふっ、愚かな人間め!この地球に巣くう癌細胞共が!」

ダークエルフ「貴様らがどれだけ母なる大地を穢し、母なる世界樹を傷付けてきたのか――その身に刻むがよい!」

刀夜「……」

ダークエルフ「どうした人間!恐怖の余りに口が利けなくなったのか!?それとも矮小さに震えが止まらんか!?」

ダークエルフ「蚊の如き僅かな寿命しか持たぬ身で!我らの悲願に口を挟もうなどとは傲慢が過ぎる――」

刀夜「……傲慢。成程、傲慢ですか。確かに、私達人間はそう称されるのでしょうな」

刀夜「『この世界へ対して傲慢である』――そう仰る方程、逆に傲慢なんですがねぇ」

ダークエルフ「何?なんだと?」

刀夜「えぇですから、私達人間の振舞い――自然を廃し、時には種を絶やしてまで利益を得ようとする」

刀夜「それをあなたは『傲慢』だと仰いました。でもそれは『あなたの身勝手な意見にしか過ぎない』んですよ」

ダークエルフ「……貴様!この期に及んで我らを愚弄するのか……!?」

刀夜「愚弄などしていませんよ。しているとすれば、それはあなた達自身でしょうに」

ダークエルフ「貴様は何を――もしや気が触れ――」

刀夜「『自分が理解出来ないものは狂人扱い』ですか……やれやれ、それでは人間と変わりませんな」

刀夜「自分達と違うものにあぁだこうだと理屈をつけ、排除をする。相互理解を謳いながらも、端からするつもりもない」

刀夜「よくまぁそれで、自分達が人間よりも優れていると豪語出来ますな――」

刀夜「――それこそがまさに『傲慢』であると言うのに、ですよ」

ダークエルフ「――この!言わせておけ――」

刀夜「――黙りなさい!あなた達が高貴だ何だと語るのは結構だが、そう自称するからには相応しい立ち振る舞いするべきだ!」

刀夜「丸腰の相手へ段平を突きつけ、討論に叶わないのであれば暴力へ訴える!そのやり口のどこが正統な振る舞いかと言っているんだ!」

ダークエルフ「……く」

刀夜「……宜しい。確かに私は喧嘩も碌にした事の無い人間だが、自分の命を守るのであれば棒きれでも拾って戦うつもりはある!」

刀夜「訓練を積んだ君達には叶うべくもないだろう。だが妻と息子、家族を守るためには躊躇わないよ」

刀夜「そんな人間を一方的に弑したという汚名が欲しければ、幾らでもかかってきなさい!さぁっ!」

ダークエルフ「……口は達者だな、人間」

刀夜「いや、まだまだだよ。君達が本当に屈辱を味わうのはこれからだ」

ダークエルフ「何だと……?」

刀夜「君達は私達人間を傲慢だと言ったね?その理由として挙げているのは『他の種を滅亡させる』のが根拠なのかな?」

ダークエルフ「そ、その通りだ!この世界は共存出来る筈なのに――」

刀夜「それは一体『誰』が言ったのかな?」

ダークエルフ「誰でもだ!そんな常識エルフの子供だって知っている事だぞ!」

刀夜「それはつまり、君の場合だとご両親か、近しいご親族の方から教わったって事で良いのかな?」

ダークエルフ「ああ、そうだ」

刀夜「つまりそれは『君達の一族の独り善がりな思想』って事なんだよね?」

ダークエルフ「……我が一族に対する愚弄、流石に捨て置けんぞ……!」

刀夜「ふーん?なら聞くけど、私の考えは合っているのかな?まぁ単純な話――」

刀夜「――『君達の一族が大地や世界樹から聴いた』んじゃないんだよね?違う?」

ダークエルフ「当たり前だ!我々のような概念の意志を持っていない相手と言葉が交わせるものか!」

刀夜「なら君達、どうやって『自然はこういう風に考えているに違いない』って判断したの?だから根拠は、何?」

ダークエルフ「根拠などお前も常に目にしている筈だ!」

ダークエルフ「この大地!この星では生命が循環している!お互いに支えあっているんだ!」

ダークエルフ「地球が生まれてから数十億年!我らはそうやって生きてきたんだ!」

刀夜「――恐鳥類って知ってるかな?ディアトリマ……は、有名な筈なんだけど」

ダークエルフ「鳥?鳥の話が何故出てくる?」

刀夜「恐竜が滅亡した原因は色々言われているが、急な気候の変化に対応出来なかった、という見解が未だ多勢だね」

刀夜「巨体故に温度変化に弱かった、との説は最近じゃ否定されつつあるけど……まぁ、さておき。絶滅後の話だ」

ダークエルフ「まさか『恐竜が絶命したのは人類の仕業では無い、だから人間だけを責めるの間違っている』等と言うつもりじゃないだろうな?」

刀夜「まさか。超時空宰相HIDEYO-SHIでもあるまいし、何でもかんでも責任を押しつけるつもりは無いよ」

刀夜「私が言いたかったのは、『その後直ぐ哺乳類の時代は来なかった』という点だね」

ダークエルフ「……?お前達が教えている歴史とは」

刀夜「同じだね。サラッとしかやらないので、意外と知ってる人間が少ないってだけでさ」

刀夜「実は哺乳類が天下を取る前に、世界の大半を鳥類が占めていた時代があった」

刀夜「――と、言うと怒られそうだけど、少なくとも食物連鎖の頂点に恐鳥類っていう、2mを超える肉食の鳥がいたんだよ」

刀夜「ディアトリマ、フォルスラコス、ケレンケン。200kgを超える大型の肉食鳥類で、紛れもなく頂点にあった」

刀夜「――が、今は姿を消している。当たり前だけど絶滅したからだよ、哺乳類肉歯目の台頭によって」

刀夜「その肉歯目だって食肉目――今のネコ科が出てくると、絶滅するんだけどね」

刀夜「胎盤の有無、肋骨の骨の数が影響してるんじゃないか、って指摘はあるけど、実際の所はまだ解明されてはいないかな」

ダークエルフ「だから、一体」

刀夜「つまりね、別に『人間が存在するずっと以前から、絶滅は生命の歴史そのもの』なんだよ」

刀夜「恐らく、植物以外で最も長い間食物連鎖の頂点に立ち続けた恐竜であっても、同じ種がずっと君臨はしなかった」

刀夜「獣脚類のティラノサウルス、スピノサウルス、アロサウルス。どれもが食物連鎖の頂きへと立ちながら、絶滅しているね」

刀夜「隕石が落ちた訳でも無く、核戦争や宗教間の対立があった訳でもなく」

刀夜「ただ『エサとなる大型草食動物を採り過ぎた』なんて、マヌケな理由でだよ」

ダークエルフ「……」

刀夜「住み分け?共存?この地球にそんなもの、どこにも無かったよ」

刀夜「それどころか肉食恐竜が草食恐竜を食い尽くす、なんてのは日常茶飯事。ある種が他の種を絶滅させるのは当たり前だ」

ダークエルフ「そ、それでもだ!食物連鎖であるのならば仕方が無い!人間とは違う!」

刀夜「……君は、君達は『食物連鎖だったら他者を害するのも許されるが、それ以外ではいけない』って考えなの?ふーん?」

刀夜「例えばイルカは趣味で他の生き物を襲ったり、リンチを加える性質がある。『娯楽』としてだ、と言われているね」

刀夜「イルカの他にも狼が羊を襲うのが確認されているね。面白半分に殺して、一部だけしか食べなかったりさ」

刀夜「他に寄生虫は自身が食す訳でも無いのに、自らの宿主を操って、他の生き物へ食べさせる習性がある」

刀夜「食虫植物はどうだい?『光合成で満足出来ないで、他の命を奪うのは傲慢だ!』とは言わないよね?」

ダークエルフ「それでもだ!人間は娯楽のために!自らの目的のためだけに命を奪う!それこそが自然の原理から外れているんだ!」

刀夜「――って、『誰』が言ったの?」

ダークエルフ「それは……」

刀夜「地球さんが言ったのかい?『最近ニンゲンって奴らが調子乗ってるよねー?』とか」

刀夜「それとも世界樹の意志とかがあるのかな?ねえ、どうなんだいそこら辺の所?」

ダークエルフ「い、言わなくって――」

刀夜「言わなければ、分からないよ!大切な事になればなる程、意思疎通を綿密にしないといけないんだ!」

刀夜「それが親子であったとしても!すれ違う時はどうやったって間違えるんだよ!」

刀夜「そりゃね、確かに面白半分で誰かを傷付けたり、滅ぼしたりはしちゃけないさ。少なくとも『ニンゲン』の持つ倫理感に照らし合わせて、私もそう思うよ」

刀夜「けど実際の所。君達は自然の代弁者でも何でもない訳で。自然の声を聞こえる訳でも無く、誰かに選ばれたのでも無い」

刀夜「ただ『自然はこう思っている”に、違いない”』と勝手に決めつけ、代弁するだけの存在じゃ無いのかな?」

刀夜「生物学をかじっていれば、絶滅なんて珍しくも無いし、有り触れた現象の一つにしか過ぎない」

刀夜「その一点だけを殊更に強調し、さも私達人間が劣等種であるかのように判断し、交わりのを拒み、排除する」

刀夜「……君達の方が、圧倒的に『傲慢』だと思えるけどね」

ダークエルフ「……」

刀夜「……とは、いえだよ。君達の指摘も間違っちゃいない。というよりも、一部に限っては本質を突いていると言っていい」

刀夜「だからこそ、本来は温厚であろう君達がこれだけ怒ったのも理解もするし、共感もしよう」

刀夜「そう――そこから、始められないかな?」

ダークエルフ「何を、言って……」

刀夜「君達が『弓なり病』と呼んでる病は、私達の世界で『破傷風』と呼んでいるものだよ」

刀夜「死病であり、毎年数十万人程度の人間が命を落としている」

ダークエルフ「……そうか、そちらの世界でも病は存在するのか……!」

刀夜「だがしかし、それは世界での値であって先進国での死者は殆ど居ない」

ダークエルフ「居ない……?」

刀夜「ゼロじゃない。けれど限りなく低い」

ダークエルフ「そんな治療方法があるのか!?ならば――」

刀夜「あくまでも素人考えであるし、そもそも見立てが間違いなのかも知れない」

刀夜「だけれども、たまたま持っていた抗生物質が族長さんの娘さん?だかにも効果があった事から、少なくとも症状の改善は見込まれるよ」

ダークエルフ「なら、我らにも――」

刀夜「ただし!当たり前だけど対価を支払って貰わないと、薬は譲れない」

ダークエルフ「何故だ!?強欲な人間よ、貴様らは我らの弱みへつけ込もうとするのか!?」

刀夜「いや、そうじゃないんだ。仮に……例えば、ここで私が私財を投げ打って、君達を助ける事は出来るんだよ」

刀夜「薬もまぁそこまで高いものではないし、不可能ではない」

刀夜「でも、それじゃ何の解決にもならないんだ。君達が代金を支払わなければならない分を、私が肩代わりしているだけなんだから」

ダークエルフ「……」

刀夜「仮に……そうだね、私が生きている限り支援を続けたとしても……精々30年。私の息子へ託したとしたも、まぁ60年が限度だろう」

刀夜「それを過ぎたら君達はどうするつもりだい?また誰か人里へ遣わして、助力を求めのかな?」

刀夜「その人間が君達を救うだけの力を持っているとは限らないし、また君達の事を暴露しないとも限らないよね?」

刀夜「君達が今の生活を続けたいのであれば、情報が外へ漏れるリスクは最小限に留めた方がいい」

ダークエルフ「……なら、我らはどうすれば良いんだ?貴様に縋り、善意に頼るのも駄目だと言うし、他の者を招くのもダメだと言う」

ダークエルフ「このまま死を待つのが、自然の掟だと言うのか……!」

刀夜「だからその考えが『傲慢』だって言ったじゃないか、私は」

刀夜「人が生きる死ぬのに運命なんてないよ。結末が決まってる?神様が決めた道がある?」

刀夜「それとも幸運と不幸の量が決まっている?馬鹿馬鹿しい。そんなものがある訳がないじゃないか!」

刀夜「仮にだ。もしそんなクソッタレなものがあるって言うんなら――」

刀夜「――その『運命』、私がぶち壊すだけだからね……!」

ダークエルフ「貴様……」

刀夜「現役の証券マンを甘く見ないで欲しい。こう見えても口八丁と伝手には自信がある」

刀夜「今問題になっているのは二つ。『当面の間の薬代』と『持続的なケア』の必要だって事だよ」」

刀夜「後者は然程問題はない。幸いにして、君達は長い命と高い知識がある」

刀夜「……多少見目麗しいのは問題と言えば問題かも知れないが……まぁ、使いようによっては武器にもなる」

ダークエルフ「……?」

刀夜「『自分達の自分達で作ろう』って話さ。私達の世界へ来て」

ダークエルフ「我らに貴様らの術を学べと言うのか!?」

刀夜「一族のためだろ、嫌だとは言わせないよ?」

刀夜「それとも君達のちっぽけなプライドが、これから生まれてくる子供の命よりも重いんであれば、好きにすればいいさ」

ダークエルフ「……くっ!」

刀夜「そして当面の問題だが――この草、えっと」

ダークエルフ「……ただの薬草だが、それがどうかしたのか?」

刀夜「高い滋養効果がある。これで特許を取れば一財産は楽に築けるだろうね」

ダークエルフ「ときよ……?」

刀夜「詳しくは省くけど、まぁこの草を育てて売れば儲かるって事さ」

ダークエルフ「……なら、その代金でコーセーブシツとやら買えばいいのではないか?」

刀夜「草は草だよ。いつまで経っても同じ値段で売れるとは限らないし、より効果の優れた物が出れば価値は下がる」

刀夜「『アンボイナ事件』――昔は香辛料が金の一掴みと同じ価値があるとされ、戦争やその寸前にまで発展する事はしばしばあった」

刀夜「が、そこまでして手に入れた物品であっても、暫くすれば価値が下がって以前のように利益を得られなくなる」

刀夜「それに君達の場合、もう少し事情が違うんだ……えぇっと、これはアフリカの難民キャンプで支援をした時の話なんだが」

刀夜「ある国で内戦が起こった。事の始まりはベルギー人が『聖書の教えに従って』人間を仕分けし、反目が高まったのが原因なんだが」

刀夜「ともあれ何十万人が殺し、殺され、多くの人間が難民として隣国へ押し寄せたんだ」

刀夜「当然、私達は彼らを見捨てては置けず、大量の援助物資や金銭が届いた――それは『善意』でだ」

刀夜「……でもね、『善意だからと言って必ず成功する』とは限らないんだ」

刀夜「可哀想だからという理由で、あれもこれも支援しすぎると駄目になるんだよ」

刀夜「『困った時に誰かが助けてくれる』――そう、信じ切ると人は堕落してしまうんだ」

ダークエルフ「……」

刀夜「例えば今回の件。悪い竜が居て、君達だけでは歯が立たず、どこかの勇者を連れてきて倒したとしよう」

刀夜「これはダメなんだ。一度これをしてしまうと、二度三度、困難が起きる度に外部へ依存してしまう体質が作られる」

刀夜「自分達だけでどうしようもない事態を、外部へ救いを求めるのは良い。けれどそれ”だけ”になってしまうのはダメだ」

刀夜「だから私達はまず井戸を掘った。他からの綺麗な飲料水を運ぶのではなく、次から難民だけで掘れる技術を教えた」

刀夜「次に厳しい気候でも実る作物の作り方を教えた。その次には子供に勉強を教えるようになった」

刀夜「安定して余裕が生まれれば、他の国の助けがなくとも他人を助けられるようになる。そういう仕事も私はしてきた」

刀夜「私は、っていうか御坂さんのお仕事なのだけれど、まぁそのうち紹介するかも知れないね――さて」

刀夜「君達も結論を出して欲しい。そうすれば私も君達の助けになる事が出来る」

ダークエルフ「……大丈夫、なのか?人間は強欲だというのに……」

刀夜「私は段平を突きつけられても一歩も引かない男だよ?それに比べれば、恐い物なんてないさ」

――エルフの集落 宴

刀夜「……ふう」

十代後半の少女「隣、いいだろうか?」

刀夜「ん?えぇ構いませんよ――っと、ちょっと詰めて貰えるかな?うん」

???「……」

十代後半の少女「宴は嫌いか?主賓のそなたへの感謝であるというのに」

刀夜「あー……いや、そんな事はありませんけどね。どうにも、嫌いというよりも、苦手かな、と」

十代後半の少女「ふむ?」

刀夜「私が何かした訳ではなく、元々はこちらにの皆さんは解決出来るだけの能力と危機感を持ってらしたんですよ」

刀夜「それにちょっと方法を出しただけで、私は特別に何をしたという訳でもありませんから」

十代後半の少女「……剣の針山へ飛び込んでおいて、何を言う」

刀夜「あぁあれはブラフですよ、ブラフ。先様が本気でしたら、流石に突っ込む勇気なんかありませんでした」

十代後半の少女「では彼女は本気ではないと?」

刀夜「私にはそう見えましたよ。焦りはあるものの、どこへぶつけたら良いのか分からない――って彼女!?」

十代後半の少女「ダークエルフの族長の娘だからな。立場は私とほぼ同じだ」

刀夜「鎧着てたから分かりませんでした……そっかー、キツい事言っちゃったかなー?」

十代後半の少女「そなたが気に病む必要は無いさ。誰かが言ってやらねばならない事だ」

刀夜「若いのにご立派ですね」

十代後半の少女「だから私達は見た目通りの年齢では――いやなんでもない」

刀夜「お若いのはいい事ですよ。ウチの女房なんてね、学生の頃から全然変わってなくっですね」

十代後半の少女「……その話、今は聞きたくないな」

刀夜「あ、すいません。前に話しましたっけ?」

十代後半の少女「そうじゃない!……そうじゃ、ないんだ」

刀夜「えーっと……?」

十代後半の少女「私は、そなたがその女性の話をする度、胸が――」

刀夜「はっはっはー、おじさんをからかうもんじゃありませんよ。ご婦人の言って良いジョークではない」

十代後半の少女「冗談、冗談か……そうだろうな、そなたにとっては――」

刀夜「あのー?」

十代後半の少女「……だが!それでも私は構わない!」

十代後半の少女「質の悪いジョークであっても!私にはっ、そなたが――!」

刀夜「……ちょっ!?ダメですって!私には妻と息子が!」

十代後半の少女「……大丈夫だ。森を救った英雄殿の子であれば、大事に育てられよう!」

刀夜「そういう問題じゃないですってば!確かにそっちも気になりますけど!」

十代後半の少女「それにホラ?息子さんにも弟か妹が居た方が喜ぶだろう?」

刀夜「当麻が?いやぁ、……どう、でしょう?」

十代後半の少女「幸い我が一族には『好きな相手へ幸運を与える』ギフトを授かる身だ!なので兄妹を作れば、その子が息子さんの不幸を解決出来る!」

刀夜「そ、そうでしょうか?」

十代後半の少女「その通りだ!だからこれは決して浮気などではない!大切な一人息子を救うためなんだ!」

刀夜「な、ならしょうがない、ですかね?当麻のためだったら!」

バードウェイ(???)「――と、少し待て。いや大分待とう、大馬鹿者の父親」

刀夜「えっと……?」

十代後半の少女「はい……?」

バードウェイ「『誰だっけ?』みたいな顔をするんじゃない!ずっと居ただろうが!少し前にも席を譲ってるし!」

刀夜「あぁうん憶えてますよお嬢さん!現地の子でしたよね?」

バードウェイ「貴様の息子の将来の嫁のレイヴィニア=バードウェイだっ馬鹿者がっ!!!」

バードウェイ「ずっと居たぞ!貴様がこっちに連行されてから、直ぐに追い付いたわっ!」

バードウェイ「森の中ではゴブリンに襲われそうになった時にも助けたし!オークにアッーされそうになったのも助けてやってたんだよ!」

バードウェイ「つーかほぼ横に居ただろ!?なんだ貴様ら!?代々尽くす女はスルーする異能でも拗らせているのかっ!?」

刀夜「あー、そうなんだ?ありがとうございました」

バードウェイ「ん、あぁいや別に恩は高く売っておくつもりだったから――じゃ、ないっ!」

刀夜「ちょ、首がっ!?首が絞まってますよ!?」

バードウェイ「あの馬鹿者共がさっさと貴様を見限って去った挙げ句!加齢臭臭い親父の世話を任せられた身にもなってみろ、なあぁっ!?」

バードウェイ「しかも見捨てて帰ろうとの提案を蹴って、最後の最後まで面倒を見るわ!」

刀夜「い、良い事じゃないですか!人助けですよっ!?」

バードウェイ「知らんし、興味もない。破傷風拗らせて死ぬのも、コイツらにしては『弱肉強食』なんだろう?放置すれば良かったじゃないか」

バードウェイ「そもそも破傷風自体、Tetanus bacillus――破傷風”菌”が体内へ入って神経毒を生む仕組みだ」

バードウェイ「言ってみれば連中の大好きな『自然と一体化して栄養になる』んだぞ?それを否定するのは酷な気がするがね」

刀夜「や、でも別に生きれるんでしたら生きた方が得じゃね?みたいなですね」

バードウェイ「そもそも世界は輪廻を繰り返している、という考え方自体がおかしいんだよ」

バードウェイ「この宇宙が誕生した時に在ったのは水素とヘリウムだけ。ビッグバンで爆発的に広がり、濃度の濃い薄いで密度に変化が生じて重力が生まれる」

バードウェイ「その後、重力によって物質が圧縮されたり、星が限界まで押し潰されると希土類を初めとした鉱物が生まれるんだ。最初からあった訳じゃない」

バードウェイ「地球が生まれるのですらたった46億年前、原初の生命が産声を上げたのは36億年前だという説もあるがね」

バードウェイ「『たった一つの種子から全ての命がリンクしてる』証拠もなく、同時多発的に生まれた兄妹達を糧にしなければならなかったろうし」

バードウェイ「それに原子核の中の陽子の寿命は10”溝”年。10の32乗のも年月を経れば崩壊してしまう運命が待っている」

バードウェイ「原子を構成する物質が消えれば、全てのものは無へ帰すというのにな」

バードウェイ「万物が姿形を変えて円環になっているという『幻想』は、無知な人間の妄想に過ぎんさ――さてと」

バードウェイ「いいから帰るぞ。今から戻れば顔ぐらいは出せるかも知れんからな」

刀夜「あとキミ、当麻の嫁っつったけど、レッサー=チャンさんって娘さんがもう既にエントリーしててだね」

バードウェイ「ホンッッッッッッットッに!どうでもいい所ばかり耳ざといな貴様らは!どういう教育を受けてきたのか、あ?」

刀夜「……あの、ウサギの前足っぽいロッドがグリグリと当たってるんですが……」

バードウェイ「『Choose whether to return or to die? (帰るか死ぬか、選ぶといい)』」

刀夜「……待って下さいよ!まだこっちで話す事もあるし、戻ったら戻ったで手続きとかしなくちゃいけませんから!」

バードウェイ「――なら一人で帰るとしよう。なぁに心配はいらないさ、『戦士として立派な最期だった』と伝えてやるから」

刀夜「した憶えがありませんが!?でもちょっと男心に惹かれるものがあるフレーズですなっ!」

バードウェイ「嫁と馬鹿息子には『現地で年上のババアを捕まえてヨロシクやってた』と」

刀夜「それ伝えると本当に立派な最期になっちゃいますから!主に詩菜さんの手によって!」

バードウェイ「それが嫌ならさっさと帰るぞ。種としてとうの昔に終った連中の面倒など見てられんよ」

刀夜「……いやいや、バードウェイさん、私の本業を舐めてもらっては困ります!」

バードウェイ「……ほぅ?面白い事を言うな、親子揃って笑えんジョークが好きだと見える」

バードウェイ「この私へ対して、どうにかするだけのジョーカーを君が持っているとでも?……はっ、馬鹿馬鹿しい。寝言は寝てから言い給え」

バードウェイ「そもそもだ。取引というものは相手が欲しいカードを持っていなければ話にならん」

バードウェイ「うだつの上がらない加齢臭臭いサラリーマンに、一体何が用意できると言う言うんだ加齢臭臭い?」

刀夜「……なんか加齢臭臭い連呼されて、スタン○使いみたいになっちゃってますけど――これを」 ピッ

バードウェイ「携帯電話がどうし――まさかっ!?」

刀夜「確かにあなたはお強いのでしょう、えぇ。片手で私を振り回す時点で、ただの子供な訳はありませんからね」

刀夜「――ですが!あまり大人を舐めるなよお嬢さん?こういう戦いも出来るんだ!」

バードウェイ「……」

刀夜「言葉も出ないだろう!その写真は当麻の小学生の頃の写真だ!レアものだぞ!」

刀夜「ほーら、他にも中学生の時とか!少しグレてた頃の写真だってある!」

刀夜「これが欲しければせめてもうちょっと滞在を許して下さい!あと妻にはさっきのはナイショでお願いしますっ!」

バードウェイ「あー……その、なんだ。人助け、なんだよな?」

刀夜「は、はい、人助け、ですね」

バードウェイ「ならまぁ、少しだけなら?」

刀夜「ありがとうございます!」

バードウェイ「……ちなみに聞くが、これ以外にもあったり?」

刀夜「当麻が詩菜さんのお腹に居た頃から、一眼カメラで撮りまくりましたが何か?」

バードウェイ「――よし!ならばさっさと片付けて行こうか!人助けをするのに理由はいらないしな!」

刀夜「えぇ全く!なんか釈然としませんが!」

十代後半の少女「あの……私は?私の恋心はどこへ行けばっ!?」

バードウェイ「墓場まで持っていくと良い。なんなら手を貸そうか?」

十代後半の少女「……すいませんでした」

刀夜「よーし!父さん頑張ってお仕事してるからな、当麻っ!」

刀夜「何か忘れてる気もするけど!まぁそれは考えない方向で一つ!」

バードウェイ(ダンウィッチの調査……本職放り出して、減給で済めば良いけどな)



刀夜「詩菜さん違うんだよ!?これは浮気じゃなくって――そう、敵の弁護士の陰謀だ……ッ!!!」 ~祝祭のウンディーネ~ -完-

――『ヤドリギの家』教団本部 食堂

レッサー「――って展開になってると思うんですがねぇ、今頃」

上条「なってねぇよ!人の父親をそんな異世界ファンタジーさせてんじゃねぇ!」

レッサー「まぁ、バードウェイさんは計算高い割に面倒見も良いですから、途中でほっぽり出すのはないと思いますよ」

上条「父さん……一体どこで何やってんだろうなぁ。あの女の人に連れられてトラブルに巻き込まれてんだろうけど」

レッサー「恐らく私の想像とそう大差ない面白展開になってる筈ですが――血として!」

上条「おっとレッサーさん、それ以上俺のDNAをDISるのは止めて貰えるかな?」

上条「最近は”血”の一言でアレコレ片付けられる傾向が強いが、これ以上俺の心を折らないで……!」

レッサー「最近じゃ事実を正確に伝えたり、誤りを指摘するとヘイト呼ばわりされますからねぇ――と、ソース取って貰えますか?」

上条「……お前の方が位置的に近いけどな、ほれ」

レッサー「あざーす」

上条「お前もお前でダメな日本語ばっか仕入れてくるねっ!」

レッサー「いやいや、語学で大切なのは『生の会話』ですんで」

上条「ま、一理あるな」

レッサー「辞書の例文とか読んでも、極めて穏当なものしか載ってないんですよね、これが」

レッサー「書類書く時や公式な場では相応しいんですが、それ以外じゃちと堅苦しいですよね」

上条「まぁ、それはそうかもな」

レッサー「なので2c○で浪○を買ってですね」

上条「そこまでする必要はないよ!?明らかに書き込む気満々じゃねぇか!?」

レッサー「○人は『アフィだ!金儲けなんて許せない!』って言わないんですかねぇ?」

上条「サーバーには維持費が必要だ、ぐらいは流石に分かるだろ……」

レッサー「ま、潰したいと思っている特定層は居るでしょうが、今更手遅れでしょうしね」

上条「その話はどうでもいいよ!黙って飯を食おうか!」

上条(――怒濤のメシ作りが終り、おばちゃん達を含む俺達は食堂で食事を取っている)

上条(メニューは自分達で作った残り。量は……まぁ少し足りない気もするが、余らせるよりはマシだろうか)

上条(ちなみに一番人気メニューは『大豆マヨネーズのポテトサラダ』という謎の代物だった)

上条(このマヨネーズはアレルギーや肥満防止のために卵を不使用……なん、だが、まぁ味はお察しとか)

上条(他の料理もまぁアレなんだけどな!流石イギリス飯!舌が痺れる憧れる!)

レッサー「……はて?今誰かがブリテンを貶したような……?」

上条「ごめんなさい、多分それ俺です」

レッサー「あ-、分かります分かります。外人のロ×は可愛い子多いですしね」

上条「惜しい!三大欲求カテゴリは当たってたけど、そっちじゃなかった!」

レッサー「ブリテン飯に関しちゃこんなもんですよ?あ、なんでしたら今から私が作りましょうか?」

上条「12時間煮込む謎料理は余裕がある時にしてくれ。あとアレ料理方法少しアレンジすれば、化けると思うが」

テリーザ「あの、お疲れ様でした?ご苦労様でした?――で、合ってます?」

上条「日本じゃ前の方が多いですね」

レッサー「ですが日本語的には『ご苦労様で御座いました』が正しいらしいですけどね。逆に失礼に当たるんで、わざわざは使いませんが」

テリーザ「本当に助かりました。前からもう、人手が足りなくて足りなくて」

上条「テリーザさんは助祭?なんでしょ。なのに食事まで作るんですか?」

テリーザ「お仕事は信者の方や体験入信の方のお世話が殆どですよ。助祭には就かせて貰っていますが」

レッサー「助祭そのものが『信徒の中から選んだ世話人』を指す場合が多いですからね。てかいつもこんなもんで?」

テリーザ「お恥ずかしながら、その人手が……」

上条「手伝って貰えばいいんじゃ?」

テリーザ「えぇはい、皆さんからお金を支払ってらっしゃるので、『手伝いなんかするか!』みたいな」

レッサー「あー、お客様なんですか。居ますよねーそーゆーヒト」

上条「……じゃなんで俺達に」

テリーザ「以前『N○と言えない日本人!』という本をですね」

上条「間違ってねぇけど、少し言葉を選んで欲しかったな!」

レッサー「ついでに言えば日本人、『NO!!!』なんて言いませんしね」

テリーザ「だ、大丈夫です!今は少しだけローテーションがおかしくなってるだけで!今新しく信者の方に手伝って貰う筈ですから!」

レッサー「思った以上にやっつけですが、そこまでしなくてもおばちゃんズ増やしたらどうです?」

上条「おばちゃんの信者を増やせって?どんな勧誘しろっつーんだ」

レッサー「ではなく、先程伺った所では彼女らは信者ではなく、近く民家からの通いだそうで」

上条「……なんでまた?」

テリーザ「さぁ、なんででしょうね?」

上条・レッサー・テリーザ「……」

上条「――ってお前中の人なのに知らねーの!?」

レッサー「上条さん、敬語敬語ー」

上条「お前も設定忘れてんぞー?」

テリーザ「わたしが悪いんじゃなくてですね、その、お手伝いして頂いていた方達が急に居なくなっちゃいまして」

テリーザ「作って下さってたインド料理、皆さんに大好評だったんですけどねー」

上条(インド料理?居なくなった?)

レッサー「(話を合わせて)」

上条「(……あぁ)」

レッサー「へー、そりゃ残念だったですねー、兄さん?」

上条「だな。俺達も食べてみたかった」

テリーザ「上条さん、ご兄妹でお料理得意ですものね。やはりそちらへ?」

上条「少しですけど調理関係に興味があったりするんで、その料理にも興味津々だったりします」

テリーザ「ナンって言う平べったいパンと、そこへ挟んで食べるスープみたいな感じで。それはもう何種類も作って下さってたんですよ」

レッサー「インド北部、世界に広まってるタイプのインド料理ですな」

テリーザ「あ、調味料残ってるけど見ます?」

レッサー「あるんですか?」

テリーザ「えぇ私物の幾つかがそのままで。急なお話だったんですねー」

上条「見せて貰えるんだったら、それっぽい風の料理も出来るかも知れませんよ?」

テリーザ「本当ですかっ!?い、今取ってきますから!」 ガタッ

上条「そんなに走らなくても――と、行っちまったか」

レッサー「……上条さんの料理スキルが、フラグ建てる以外で始めて有効に使われている……!」

上条「確かに――じゃねぇよ!薄々気づいてはいたけど!何か釈然としないな!」

テリーザ「――と、お待たせしました。これです、これ」

上条「缶ですね。コリアンダー、クミン、カルダモン……あぁ、これだったらスープカレーが作れます」

テリーザ「……あのー、もし良かったらなんですけど」

上条「あぁ作るのは別に――」

レッサー「――構わないんですけど。私達が勝手に使っても良いんでしょうか?えっと、そのIndianの人達に断りもなく」

テリーザ「チャンドラーさん達、前から自由に使っていいって仰ってましたし……ただその、インド料理をカレー粉なしで作れる人は、ですね」

レッサー「職人か本場の人、もしくは好感度狙いで料理憶えてる人ぐらいしか居ませんよねー?」

上条「ねぇレッサー?俺、その中だとどれに分類されんのかな?」

レッサー「まぁそこら辺の仕込みは兄さんと私でちょいちょいとするとして。ってか何人分ぐらい作れば良いんですか?」

テリーザ「大体寄宿舎に泊まってる方は100人ぐらいでしょうかねぇ。病院の方は数に入っていませんが」

上条「そういや入院してる人も居るんですよね?……姿を見なかった、ような」

テリーザ「あちらでは別に厨房がありまして、そちらで入院食を」

レッサー「あー、素人が作って良いもんじゃないですからねー」

上条「てかこっち来てから司祭?さんとかに見かけた憶えがないんだけど」

テリーザ「いやあの、わたし達四六時中きちんとした正装をしてるって訳じゃないんで……」

レッサー「あぁそれじゃ、気づかなかっただけですれ違ってたりはしてたんですかね」

テリーザ「かも知れませんねー。でも大体は病院の方で奉仕活をされているので、ミサでもない限り直接お話しする機会はないですけど」

上条「ミサねぇ」

テリーザ「明日の午後から第二聖堂へ司祭様がいらっしゃいますので、お二人とも行かれてみては如何でしょうか」

レッサー「その言い方だとテリーザさんは参加なさらないんですか?」

テリーザ「私はその時間、子供達のお世話をしないといけませんので」

上条「本当にお疲れ様です。てか人、増やせないんですか?」

レッサー「チャンドラー某さん達みたいに厨房班として、信徒の方から割り振って貰うとかは?」

テリーザ「話してはいるんですけど、中々上の方は現場の苦労を分かって頂けないようでして……」

レッサー「あー……だからIndianの方、他に稼ぎ口があってそちらへ流れた、と?」

テリーザ「そうなんですよっ!折角仲良くなったのに!わたし達には挨拶すらしてくれなかったんですから!」

テリーザ「そりゃお金も大事てすよ?移民だって立場も分かりますし、わたし達よりもご苦労されてるのは知ってますけど!」

テリーザ「せめて!仲良くなった子供達にお別れを言うぐらいの時間はあったんじゃないですかねっ!」

レッサー「――”なかった”のかもしれませんけどね、時間」

テリーザ「はい?」

上条「ま、そんな訳でインド”風”料理を作るのは任せて下さい。ただし仕込みがあるんで、明日の夕飯ぐらいになりますけど」

テリーザ「あ、はい。お願いします」

レッサー「ミサに出てからなんで。それまでどうしましょうか?」

上条「他の施設の見学と、時間余ったらテリーザさんのお手伝いでいいんじゃね?」

レッサー「また直ぐに新しい女性を口説こうとするなんて!幻滅しましたっ!」

上条「はいそこ初対面の人に嘘教えない!大体俺が手を出した事はない!」

レッサー「助けられた後に人生踏み外す方が続々と」

上条「――じゃ、テレーザさんまた明日!お休みなさいっ!」

テリーザ「あ、はい、おやすみなさい……?」

レッサー「すいませんねー、ウチのはテレ屋さんですから」

上条「お前もオッサンみたいな事言ってないでさっさと行くぞ!」

――寄宿舎 404号室

上条(――と、テリーザさんと別れた俺は割り振られた部屋にやって来た)

上条(404号室。4階の階段から近い場所にある角部屋だ)

上条(作りは完全にビジネスホテル。日本のと違って簡易電気コンロや冷蔵庫はない)

上条(ダブルベッドにトレイ兼用シャワールーム。小さな玄関がついてるのはちょっと驚いた)

上条(取り敢えず街で買っといた水とお菓子、簡単な筆記用具――あぁ後、携帯の充電もしとかねーとな)

レッサー「あ、先にシャワー浴びちゃいます?それとも一緒に?」

上条「じゃ一緒が良いな――ってバカ!?なんでレッサー居んの!?」

レッサー「気づくの遅っ!?最初からずっと居ましたのに!」

上条「お前の部屋は隣ですよ?ゲラゥッ!!!(Get out)」

レッサー「……流石に英語がお達者になりやがって幸いですよ、えぇもうご立派な巻き舌で!」

上条「お陰様でパニック映画で使う各種スラングと悲鳴の類は憶えたぜ!使う機会も結構意外にあるよ!やったね!」

レッサー「その空元気が素敵ですよっ!シャインっ!」

上条「……空元気っていう名の現実逃避だけどね!」

レッサー「なんつーんですかねぇ、こう、追い詰められてる上条さん見ると超楽しいんですよ」

上条「発想が人類のそれじゃねぇぞド外道め!」

レッサー「つーか上条さん!えぇ上条さん!カミジョーさーーーーーん!」

上条「なんで五七五っぽく言うの?最後ニュアンスが『消臭○』になってたけど?」

レッサー「私がね、何の考えも無しにここまで来たとお思いで?だとすれば甘いですよ!カレーの甘口ばりに甘いですから!」

上条「カレーの甘口は別に『辛さ抑えめ』であって、糖度が高いって訳じゃない……」

レッサー「まさか――私が上条さんを『兄さん(はぁと)』って呼んで疑似兄妹プレイをするためだけに、身分を偽ったとでも!?」

上条「お前ならやりそう。つーかやってる真っ最中じゃねぇか」

レッサー「……兄妹!えぇ兄妹!兄妹であればなんだって許されます!そう――」

レッサー「――ひとぉつっ屋根の下にお泊まりする事だってね!」

上条「――あ、俺今から部屋変えて貰うように頼んでくるわー」

レッサー「待って下さい!?本気で変えるってどういう事ですか!?」

レッサー「そこはホラっ!ラブコメでよくある展開のように、修学旅行で女子部屋に来た男子のように!」

レッサー「『あ、先生が見回ってるから帰れない!だったらしょうがないよなー?』ってなぁなぁで済ませる所じゃないんですかねっ!?」

上条「フィクションな?お前が拘ってるのはフィクションだから許されるんであって、現実でやっちゃうと気まずいよね?」

上条「昼間、俺がラッキースケベで壮絶な自爆かましたように、すればする程相手からは嫌われるからな?」

レッサー「いやぁソーズティさんの事であれば、フリだと思いますけどね」

上条「ないない。だったらもうちょっと俺の人生に潤いがあったっていいもの!」

レッサー「『恥ずかしい所を見られてるのに気持ちいいビクンビクン!』的な?」

上条「黙れ恥女!お前を基準に物事を計るな!」

上条「つーか別の意味で身の危険しか感じねぇんだよ!主に恥女に狙われる貞操の危機的な意味でなっ!」

レッサー「あ、なら私が添い寝して恥女を追い払ってあげましょうか!ささ、お早く!」

上条「そっかー、それじゃお願いしよっかなー――なんて、言うかッ!」

上条「ルパ○から犯行予告来てんのに、ガードマンに不二○ちゃん雇うやつはいねーよ!だってアイツらグルだもん!」

レッサー「いやでもしかし、ここは敵地ですよぉ?いつ何時、敵から襲われるか分かったもんではありません!」

上条「ま、まぁな?それには一理ある」

レッサー「なので私が上条さんの貞節が穢される前に頂こう、と!」

上条「やっぱり理はなかったな?つーか俺の周りは敵ばっかじゃん!?どうしてこうなった!?」

レッサー「や、私も初めてなので特殊なプレイは明日以降にして頂ければ幸いですが」

上条「だからね?お前はもう少し女性としての慎みをだね」

レッサー「服を着たままの方がお好きで?」

上条「全裸で迫ってこられるよりは、まぁ――ってそんな話もしてねぇよ!」

レッサー「――魔術師的な盗聴・盗撮は仕掛けられていません」

上条「大体お前は――って何?何の話?」

レッサー「いえ、ほらここまで騒いだら『何やってんだコイツら?』って疑問に思うじゃないですか」

レッサー「なので術式なり霊装を起動して確かめる――てぇのが、人間の心理だと思うんですよ」

上条「……成程。それがないって事は多分盗聴はされてないだろう、って事か」

レッサー「はいっ!ですので今の内に!」

上条「だな」

レッサー「あ、先にシャワー浴びちゃいます?それとも一緒がいいですかね?」

上条「会話をループさせてんじゃねぇっ!」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

刀夜編完結……!


そういや写真があるはずなんだよな
原作で実家が全くといっていいほど絡まないからアレだけど絡めばそこから過去をいろいろ推察できるのに私情ではほとんど学園都市出ねーもんな上条さん

刀夜さんを見ていると、当麻の右手というのは本当に「ただの道具」なんだなあ、と実感します。
自分のやりたいこと、隣にいる人を助けたいという欲望を叶えるための、道具の一つ。
本当に核となっているのは、この親から受け継いだ、向こう見ずで熱い血なのだ、と。

あとフラグ。

乙です



十代後半の少女「幸い我が一族には『好きな相手へ幸運を与える』ギフトを授かる身だ!なので兄妹を作れば、その子が息子さんの不幸を解決出来る!」

刀夜「そ、そうでしょうか?」


不幸な未来しか見えないんですけど

>>146
ランシスさん編の次回予告でランシス×アリサ……
ついでに言えば最近のホラー・パニック映画じゃサービスカットは無い傾向が強いです……あぁ思い出した
こないだですね、『51』ってパニック映画見たんですよ。内容はETとエイリアンとインビジブル足して10で割ったような感じ。3じゃなくて10で
で、そのパッケージ、”金髪ねーちゃんが半裸で触手的なものに汁ダラダラ”のパッケージでして
http://www.amazon.co.jp/51%EF%BC%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%95%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%83%AF%E3%83%B3%EF%BC%BD-DVD-%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%B3/dp/B005OPIM2O
――が、見たら『そんなシーン一秒たりとも存在しなかった』ってオチで、逆に超面白かった
いや、確かに金髪ねーちゃん出てくるのは来るんだけど、触手持ってる奴とは遭遇しない上、剥かれる事もないし
そいつも別に触手をメインに使ってる訳でもなくて、ただのデザインだけっていう素敵な展開でしたよ、えぇ


>>147
上条「お、おぅ?壁ドン?流行ってんのそれ?」
上条「カップメンのCMで新おにぃがやってんのしか見た事ないんだが……じゃちょっと知り合いにやってみるわ」

上条 ドンッ!
麦野「カウンターで腹パンっ!」
上条「あべしっ!?」

上条 ドンッ!
絹旗「きゃーやだー超こわいじゃないですかー?わたしを超追い詰めてどうするつもりですかー?」
上条「分かってるよね?企画の意図を誰よりも正確に理解してるよね?」

上条 ドンッ!
フレンダ「ちょ――何!?何なのっ!?何だって言う訳よっ!?」
フレンダ「てゆうか顔近っ!?近いって訳っ!」
フレンダ「文句があるんだったら勝負つけようじゃないっ!ただもうちょっとだけ離れてからねっ!」
上条「意外と乙女……」

上条 ドンッ!
滝壺「……」 ボー
滝壺「……」
滝壺「……?」
滝壺「……ん」
上条「反応が遅いなっ!?……まぁこれはこれで保護欲を掻き立てるが!」

上条 ドンッ!
佐天「きゃーーーっ!?壁ドンきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
佐天「マシですかっ!?現実にやる人初めて見ましたよっえぇっ!結構近けーし圧迫感がバクバクだ!」
佐天「つーか写メ撮って良いですかっ!良いですよねっ!初春に自慢しないと!」 パャシッ
上条「この流れだと初春さんからビリビリにバレて俺が抹殺される展開だなっ!」

上条 ドンッ!
インデックス「なにとうま?何かくれるのかな?」
上条「……あぁ、うん。お前そっちのアニメは見ないもんな」
上条「……ただインデックスの場合、『分かって』そうしてる可能性もあるけど」

上条 ドンッ!
バードウェイ「お――何だ貴様!何のつもりだ馬鹿者が!?」
バードウェイ「下らん!実に陳腐だなぁ、上条当麻?」
バードウェイ「このような見下げ果てた行為に価値を見いだすとはな!」
バードウェイ「何をするつもりかは知らんが!やってみろこのクズが!」
バードウェイ「……」
バードウェイ「……その、早く……しろ?」 プルプル
上条「逃げないの?言ってる間にドーン!とか出来るようね?ボスならね?」
上条「なのになんでお前目ぇ瞑って顎上げて、つま先立ちになってんの?」
上条「これ完全にキスしちゃう格好だよね?受け入れ体制万全だよね?違う?」

上条 ドンッ!
円周「ん――ちゅっ、じゅ、ちゅ、ん……んぅっ、ちゅっ」
円周「――んむ、んーーーーーーちゅっ」
円周「……もう、お兄ちゃんってばエッチなんだから!」
上条「お前にだけは言われたくねぇよ!?……なんか汚された気がする……!」

上条 ドンッ!
シェリー「あ、悪い。今ちょっと忙しいから後でな?」
上条「ドライだ。予想通りっちゃ通りだけどさ」
シェリー「その……あと、出来れば空いてる方の手は肩を掴んだ方がいいと思うわよ?」
上条「意外に知ってたな!?イギリス女子寮の悪影響がここに……!」

上条 ドンッ!
レッサー「よっしゃ来た!今脱ぎますから暫しお待ちを!」
上条「企画が違げぇよ!脱線しまくってるよ!」
レッサー「いやでも私が見たシチュではこの後体育倉庫にですね、連れ込まれてアンアン言わされ――」
上条「それエロゲな?なんでバレる可能性あんのに学校でおっ始めてんの?バカなの?」

上条 ドンッ!
ベイロープ「きゃ!?」
上条「……」
ベイロープ「……きゃ、キャーリサ王女殿下は意外にフランクなのよ――って!何笑ってるんだわ!」
上条「アドリブに弱い」

上条 ドンッ!
フロリス「っとぉ!?なに、どーしたジャパニーズ!?敵襲か……ッ!?」
フロリス「つーかビックリさせんなよー、何様だーあー?」
上条「ベタベタはしてこない……猫をビックリさせた感じ?」

上条 ドンッ!
ランシス「はい?」
上条「壁ドン自体にあんまり興味はない、かな?」

上条 ドンッ!
鳴護「な、なにかな当麻君?お顔が近いんだけど……?」
鳴護「っていうか、そのっ!インデックスちゃんにわ、悪いよっ!良くないってば!」
鳴護「……こ、こういう事するんだったら、その、冗談とかじゃ、良くないし!」
鳴護「もっときちんとした感じで!その、順番とかあるんじゃないんでしょうかってあたしは言いたいですっ!」
鳴護「うんっ、だよねっ……そう、だよ……?」
鳴護「だから、その、言ってくれないと、あたしは分かってあげられないよっていうか」
鳴護「……うん、あたしも、ずっと前から――」
上条「なんだろうこの、女の子女の子した感じ……!」

上条「以上。実験に参加した女性達にはネタばらしをして、ぶん殴られるか責任を取れと迫られたんだがコノヤロー」
(※尚、台詞と内容は某所でやってる人気投票を”やや”反映しています)

みんな安定した反応だなー

……うん、分かってるのよ?私、このSSじゃヒロインどころかいつもチョイ役だし。
どの話でも、何となくアイツに避けられてるし。
とうとう人気投票でもランク落ちちゃったし。
でも、さ。(キョロキョロ)周りにいないから言うけど―――やっぱり羨ましい、わよね。壁ドンなんてさ。
いや、オチがどうなるかくらい、自分でも想像つくわよ?
どうせ「ふにゃ~」で「ビリビリー!」で「どわあっ!?」(パッキーン!)だもんね。パターンよパターン。
それでも……うん。
素直になれなくて暴力的で常識無いのも自覚してるけど。
上でやられてる子たちと比べても、……その、気持ちで負けてるとは思えない。
やっぱり私は、アイツ、が好―――

「おー、なんだこんなとこにいたのか。いや実はお前に試したいこt」

「にゃあああああああっっっ!?!?!?」 バリバリ ドーーーンッ

「学園都市の外壁吹っ飛ばすくらい、上条さんのこと嫌いですかっ!?」

ディ・モールト、ディ・モールト良いぞ!
リクして良かった!
わざわざ乙ですありがとうございました

個人的にはシェリーが顔を赤らめて照れた感じならパーフェクト

>>170
タイムテーブル見るに7/20(第一巻)→10/19(22巻終了時)、新約のグレムリン東京湾決戦が11月らしいんで、
まぁ過去がどーたら以前に生きるので精一杯じゃないかと
ちなみにこのSSは劇場版から約一年後の話となっています――本当に?

>>171
レッサー「上条さんのお父様ならこのぐらいは言ってくれる筈」
レッサー「ただし善意でやっても、結果的に歴史へ名を残すような大失敗もままある話でしてね」
レッサー「合成の誤謬は経済だけではなく、政治や国際情勢でもしばしば起こり得ます」
レッサー「善意は善意でいいですし、そこを疑うつもりはもありませんけど、青木大和(仮名・小4)さんみたいなのは少なからず居る訳で」

>>172
ありがとうございます

>>173
レッサー「上条さんのお父様ならこのぐらいは言ってくれる筈……ッ!(震え声)」
レッサー「いや流石に手を出したりはしないんじゃないかなと思わなくも無かったりする気がしないような感じがしないでもないかも知れません」」
レッサー「血継限界・フラグ乱立というカルマを持っているので、手を出さなくとも……男には負けると分かっていても戦わなく(以下略
(※まぁ――遺伝って罪だよね (`・ω・´))

――『ヤドリギの家』教団本部 寄宿舎404号室

レッサー「まぁこちら側的には安全とは言え、そちら側にまでは踏み込めませんからね」

レッサー「どんだけ魔術的な要素を排除したとしても、電子的なマイクとかあったら台無しですよ。台無し」

レッサー「なのでフォローを適切なお願いしたいな、と」

上条「フォローって言われても、俺別に盗聴のスペシャリストじゃねぇからな、あー……探すだけは探しとくか」

上条「つっても、ピンホールカメラの穴なんて簡単に見つかる訳がないし……一応飾ってる絵の裏側とかも見とく?」

レッサー「あぁそれは止めとい――いや別に何でもありませんよ?」

上条「ネタだよね?ビジネスホテルに多い怪談的な話じゃ無いんだよね?」

レッサー「臨!兵!闘!者!皆!陣!烈!海!王!」

上条「わぁいっ本格的な九字印だねっ!レッサーさんってば多芸なんだからーあははー!」

上条「てかお前、最後『烈海○』になってなかったか?確かに人智を超えてるが、召喚して応えてくれる程暇人じゃねーぞ?」

レッサー「『ボクシングがしたいです……!』」

上条「安○先生呼ぶな呼ぶな!確かに何事もなかったかのように帰って来そうだけどな!」

レッサー「いや流石に今のはネタですがね。曰く付きのホテルだってーのはホントですよ、えぇ」

上条「……まぁ、なぁ?失踪者まで居るんだから、下手すりゃ前使ってた部屋かも知れないし」

レッサー「人の生き死にだけであれば、病院なんかスッゴい事になってますからね。気にするだけ無駄ってぇもんじゃないかと」

上条「つーかさ。前々から気になってんだけど」

レッサー「先生は女性ですよ?」

上条「そ、そっか!話が捗るよねっ!――ってそんな事じゃねぇよ!」

レッサー「スリーサイズ教えて差し上げたい所ですが、本人曰く『可変』だそうで」

上条「なにそれこわい――じゃなくてだ。マジな話、幽霊って居んの?」

レッサー「を、使役する魔術や霊装は結構ありますよね。日本でも犬神なんてそうでしょ?」

上条「あー……犬をお腹空かせて殺して、その恨みパワー的なので、って奴か」

上条「あれも犬を殺してんだから、怨霊的なもんを使ってる……」

レッサー「正しくはアレ、単に貨幣経済が村落共同体へ入り込んだ弊害なんですけども。ま、オカルトって良いですよねぇ」

レッサー「『実はこれこれこういう魔術があったんだ!』でまだ救いもありますが、そうじゃなかったら――」

上条「何々?またなんか秘密にアレコレがあるんか?」

レッサー「他に『黄金』系で有名なのは、罪人の手を切り落として作った『栄光の手(Hands of Glory)』って霊装でしょうか」

上条「……バードウェイんトコ、えげつない霊装作るんだな……」

レッサー「あ、だから上条さんに固執しているんですねっ」

上条「やっだなぁボスがそんな事する訳な――」

上条「……」

上条「――さて、盗聴器を探そうか!」

レッサー「『やりかねないよなあのロリっ子なら!』とお後が宜しいようで――さてさて」

レッサー「てか携帯で調べればいいじゃないですか、盗撮カメラ?」

上条「無茶言うなよ。シャットアウラから預かってるヤツだけど、流石にそんな面白機能は無い」

レッサー「ではなく。おや?ご存じでない?」

レッサー「携帯電話のカメラは赤外線を映すんで、暗視カメラが起動していれば感知出来るんですよ。こう、ピカーッと」

レッサー「テレビのリモコンを押してる所を見てみると、光ってるのを確認出来ます」

上条「へー?良く知ってんな」

レッサー「ラブホで鏡の裏に仕掛けられてる場合が多いので、一度試すのをお勧めしますよ。いやマジでやっとけ」

上条「使う機会が……!てかちょっと見直したのに、素直に褒めたくねぇ雑学だな!」

レッサー「ただし赤外線以外は感知しないので、暗視カメラ以外には通用しない――と、ありませんかね」

上条「まぁ灯りも消してねぇし、今から起動してるってのも有り得ない話だな」

レッサー「てか上条さんこそ、曲がりなりにも学園都市の人間なんですから。こう、超技術でパパッと発見!みたいなのは出来ませんか?」

上条「だから無茶言うなっつーのに。確かにこの携帯は最新式らしいけど、流石にそっちまでは――」 ピッ

上条「……うん?」

レッサー「どうしましたか――っとちょっくら拝見しますよっと……?」

レッサー「アプリに……なんか、ありますねぇ」

上条「……ありますねー、何か」

レッサー「『対盗聴・盗撮監視ウィザード』……」

上条「……起動してみよう」 ピッ

上条「えっと何々……『あなたが今居る場所を選んで下さい』」

上条「『屋外・車内・室内・地下』……室内を選んでと」 ピッ

上条「『次に手にしている携帯電話を床へ一度置き、数秒経ってから天上近くまで掲げて下さい』」

上条「……」 トン……サッ

レッサー「シュールな絵ですなー。暗黒太極拳?」

上条「俺もそう思うが……『続けて携帯電話を床へ置き、両耳を手で覆いでゆっくり10秒数えて下さい。その準備が出来たら”次へ”を押して下さい』」

上条「何の意味が?」 ピッ

レッサー「この場合私はどうな――つっ!?」

上条「レッ――くっ!?」

イイィィィィィィィィィィィィィィィンッ!!!

レッサー「――?」 パクパク

上条「――」 パクパク

上条(喋ってるのに超高い金属音で全然聞こえない!……あ、でもこれ10秒待てば――)

――ィィン…………

レッサー「――えますか?もしもーし?」

上条「……何とか」

レッサー「これ、充分音波兵器にもなりやがりますね。学園都市恐るべし!」

上条「……てかアプリ動かす前にヘルプ見なかった俺が悪いんじゃ……?」

レッサー「『――現在検出中――』と、今のは一体何が?どんな意味があったんですか?」

上条「ちょい待ち。ヘルプ――と、これか」

上条「『このアプリケーションは各種電磁波の感知、並びにマイクロフォンのダイヤフラムを無効化させる効果があります』」

レッサー「”無効化”の”効果がある”って、何か英語を日本語へ置き換えたような感じですね」

レッサー「てかこの時点で大体の単語の意味が分からないんですが、電磁波?航空機の計器が狂うから機内での使用を断られる、のは知ってますけどねぇ」

上条「病院で携帯電話を使うと影響があるから、電子機器は電磁波出してるって事か?」

レッサー「あー、分かるような気がします。無線型だと盗聴・盗撮した後に電波を飛ばす必要がありますから」

上条「そうか。受信機と発信器兼ねてるんだな……また日常生活で要らん知識が……!」

レッサー「私は個人的に借りパクしたい所ですがね、そのケータイ。で、続き読んじゃって下さい」

上条「『ただし日常使われるようなものは自動的に除外されるため、お持ちの機器を損なう事はありません。※1』」

レッサー「こめじるしいち?」

上条「ヘルプの別の項目へ飛ぶみたいだ。多分免責事項じゃね?万が一壊れても弁償しないぞ、とか」

レッサー「アバウトですなぁ、ハイテクの割に」

上条「ヘルプ見ずに動かした俺は何も言えない……と、終ったみたい。『検出ゼロ』だって」

レッサー「なら良し、ですかね」

上条「ええっと、一応※見てみるか?」

レッサー「はい、一応は」

上条「ポチッとな――あれ、テキストファイルが開いた」


無題1.txt
○効果――盗聴・盗撮の感知
○原理――電子機器が発する電磁波の感知。また各種可視不可視光の探知
○要注意――ダイヤフラムを無効化させる際、超音波が出るのでくれぐれも注意して下さい。特に上条さん


上条「……あー、俺ヘルプファイル作ってくれた人に心当たりあるわー」

レッサー「HAHAHA!中々やりますねーっ、島崎信長さんとやら!」

上条「柴崎信永さんな?名前似てるし声も多分そっくりなんだろうけど、あんま突っ込まないであげて、なっ?」

レッサー「てか出番あり過ぎじゃ無いですかね?モブのくせに」

上条「お前が何を言ってるのか、俺には一切分からないな?出番って何?どういう事?」

――404号室 20時頃

レッサー「――ではシャワーは私が先で宜しいでしょうか?」

上条「オルソラばりに巻き戻ってんぞ。宜しくねぇな……あぁいや、浴びるのは自由なんだが、話終ってからにしろ」

レッサー「成程っ浴びない方がお好みなんですかっ!JCの体臭が気になるお年頃ですもんねっ分かります!」

上条「あれぇ?日本語喋ってるのに通じないなー?これは英語で喋った方がいいのかなー?」

レッサー「『Hey, Mike!どうしてユーの寝室には勲章が飾ってあるんだい?HAHAHAっ!』」

上条「バグったの?どうして小ネタを披露し始めるの?」

レッサー「『それはね――ワイフと寝たからに決まってるじゃないか!』」

上条「内容黒いよね?笑えないっつーか、笑っちゃいけないって言うか」

レッサー「『――ところでビリー?どうして俺の寝室に勲章が飾ってあるって知ってるんだいカチャリ』」

上条「『Run away Mikeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!?(マイク逃げてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?)』」

レッサー「このジョークのキモはですね、『ブッサイクなワイフが実はNTRていた』という驚愕のオチがつく所です!」

上条「この小ネタ挟む必要あったかな?会話の流れ自体に違和感しか沸かないっつーかさ」

上条「あとMikeどうなったの?アメリカ魔法で『こらっ』ってされちゃったの?」

レッサー「――さて、外部への情報漏れがなくなり、私の小粋なアメリカンジョークが逆転満塁ホームランをした所で本題へと戻りますが!」

上条「そんなにかっ飛ばしたかな?むしろ顔面当てに来てないか?」

上条「つーか別に今の小ネタは誰に聞かれても良くない?」

レッサー「あ、ちなみにホームステイ先のご家庭で家主のおじいさんが、東洋人との初対面で掴みに持ってきて盛大に滑ったという実話が……!」

上条「止めてあげて!?そのおじいさんの失敗談広めるの止めてあげてよう!」

レッサー「後日お孫さん曰く、『相手がキョドるのを見て楽しむ病気なのよ!』だ、そうで」

上条「計算尽くじゃねぇか」

レッサー「で、さっきのどう思いますか?」

上条「サラダが一番美味しかった」

レッサー「そっちじゃないですね、つーか天然モノはこれだから嫌ですよ、えぇ」

上条「ようやくお前がアリサと別のステージへ立ってると認めやがったな!」

レッサー「私は、ほら、『新キャラとして出したらステレオタイプのヒロインよりも大人気で、ヒロインに抜擢!』みたいな?」

上条「ゆき○さんはいいじゃない!5周差ぐらいリツ○先生に勝ったのに、まさかドラマで罰ゲーム喰らうなんて誰も想像しなかったし!」

レッサー「ヴッ○先生の配役が本物のビッ×ってナメてんですか?あぁ?」

上条「映画版はね……うんまぁ、でもあの作品は基本、ナギ○君とカル○君しか見てないし、他は基本オマケ的な感じだから」

レッサー「薄い本の殆どがどっちか主役、もしくはどっちも主役ですからねぇ」

上条「……俺には関係ない話だけど、あぁいうののモチーフにされるんのってどうなんだろうな?」

上条「特にイギリスの皆さんにはアーサーさん女体化の件で何回謝ればいいか……っ!」

レッサー「ちょいお待ちを……んむむむむむっ!」

上条「レッサー?」

レッサー「『あーワシワシ、アーサーやち』」

上条「どっからアーサーさん呼びやがった!?しかも日本語だし!どこの方言だよ!?」

レッサー「『モルドレッドはムラっと来てやったき。反省はしてるちや』」

上条「いや確かにぶっちゃけっとそうなるけどさ!何かホンモノっぽい!」

レッサー「『女体化のぅ。まぁいいちや?ワシ別に関係ないし』」

レッサー「『つかアレやき?今のアーサー王伝説って殆どがワシの活躍と違うちや』」

上条「あ、そうなん……ですか?」

レッサー「『そーそー。ワシ、ローマ皇帝倒した憶えないし、そもそもティベリウスっちゅー皇帝はおらんちや』」

レッサー「『ほら、聖杯知っとるちや?ベイリン卿に取りに行かせたの』」

レッサー「『あれも元々は十字教の聖人譚とわっちゃになって、統合したんちや』」

上条「わっちゃ?ごっちゃ的な意味?」

レッサー「『”カッシウスの長槍”と”廃皇子のキャリス”、あとワシが持ってる”絶対王剣”なんてそのままちやね』」

上条「すいません。意味がよく分からないです」

レッサー「『多分ボンは関わる事になるき、そん時にもう一度教えて貰えばいいちや』」

上条「やだなー、人間そう何度も世界を賭けた戦いに巻き込まれる訳ないじゃないですかー」

レッサー「『それ、強い敵に攻撃した後の”やったか!?”と同じ種類のフラグやき』」

上条「フラグ管理に詳しいなテメー!?てーか設定ぐらい守れよ!」

レッサー「――はっ!?今までは私は一体何を……!?」

上条「訛りのきついじーちゃんになってたよ?君、ホント無駄に多芸だよね?」

レッサー「てな訳で、我々イングランド人はそんなに大した事は思っていません」

上条「意識あったじゃねぇか。把握してんだよな?」

レッサー「円卓の騎士を取り扱った映画は国内外で何本も出ていますし、小説その他は数限りなく。例えるならば!」

上条「な、ならば?」

レッサー「メガテ○が宗教問題へ発展しないとの同じですかねー」

上条「ホンットごめんなさいよっ!ロクな事しやがりませんねっ俺ら!」

レッサー「POKEMO○も中東で『これ偶像崇拝じゃね?』とプチ国際問題になりかけた前科もありますがねぇ。あ、ちなみに」

レッサー「妖怪ウォッ○は『デフォルメしたとは言え、異国の神そのまんま』なんで、さぞや楽しい事になると期待しています!」

上条「輸出されんのかなー、あれ?コロコ○とのタイアップだから、ポケモ○と売り方は同じっちゃ同じだけどさ」

レッサー「悲しいかなアーサー王もそれに近い感覚になってますでしょうか。妖怪さんも元を辿れば神様だって感じでしょ?」

レッサー「アーサー王伝説、確かに私達イングランド人にはそこそこ馴染みも愛着もありますが、まぁ激怒する程のもんでもないかなー、と」

上条「モノによるけど……まぁ大抵は良いポジだし」

レッサー「そもそも、アーサー王とは『十字教が来る前に統治していた”と、される”王』なので、歴史的にそれ程重要視されていません」

レッサー「日本もブディズム伝来してからガッツリやるのであって、神代を長々としたりはしないのと同じですかね」

上条「……成程。仏教は誰それが広めたとか、どんな教えだとか細かく教わってんな」

レッサー「そもそも扱いどうこうで言うんだったら、十字教どんだけ悪役になってると思ってんですか?あとアメリカ政府とCIA」

レッサー「ついでに言えば、30年ぐらい前の映画は必ずソビエトのスパイが必ず問題起こしてましたし。いやはや時代は移ろうもんですなー」

上条「意外と怒ってないようで安心はしたが……そんなに軽くて良いもんなのか?」

レッサー「『ワシは意外と温厚やきね?あ、ただしガッリーとランスローは許さんちや』」

上条「出て来るな来るな。じーちゃんは仕舞っとけ」

レッサー「まぁ流石に『アーサー王はフランス人だった!』みたいな事を、国主導で広報しやがったらぶち切れると思いますけど」

上条「ないない。人様の神話や文化を窃盗するような蛮国が21世紀にある筈がないって」

レッサー「日本人の我慢強い所は美徳だと思うんですが、我慢に我慢を重ねて一線を越えると超危険ですからね」

レッサー「チャーチルも楽勝ムードがプリンス・オブ・ウェールズ沈められて涙目ですし。猫ではなく虎だと自覚を持って欲しいものです」

上条「意味が分からんが……あ、ごめん。話を戻そう」

レッサー「……」

上条「……レッサーさん?」

レッサー「……私は大変な事に気づいてしまいました……!」

上条「またネタなんだろうが、言うだけ言ってみ?」

レッサー「『新たなる光』、全員分のカップサイズは既に言ってしまっていた、と!」

上条「と!じゃねーよ!やっぱりネタじゃんか!」

レッサー「ちなみにユーロトンネルの中でベイロープがDカップだと私は言いました」

レッサー「ですがイタリア国境付近、キャンピングカーの中でベイロープがゲロったのはE!Eですってよ奥さん!」

上条「奥さんじゃねーし。把握も――して、ないよ?うん、全然全然?」

レッサー「これは別に間違いではなく、私が把握していたよりもしっかり育ってやがったのが原因です!勘違いした訳じゃないですから!」

上条「お前は誰に向かって説明したんだよ」

レッサー「『か、勘違いした訳じゃないちやっ!』」

上条「だからアーサー王(仮)は仕舞っとけよ!出来れば棺桶まで持ってってやれ!」

上条「つーかお前でもアニメっぽい声で言われると萌えんのが腹立つな!」

レッサー「魔術師の皆さんは呪文詠唱に腹筋使うので、大変なんでしょうね。きっと」

上条「いやだからそれよりもだ!さっきテリーザさんが言ってたインドの人ら」

レッサー「チャンドラ某さんら、お三人の事ですか」

上条「名前もう少し長くなかったかな」

レッサー「書類上はチャンドラバーブ。ですが呼びづらいので愛称だったり、最初からチャンドラと名乗っていたのかも知れませんね」

上条「『もっと稼ぎの良い仕事が見つかった』、だから居なくなった――」

上条「――テリーザさんへ何も言わずに、だ」

レッサー「との”自称”ですがね」

上条「テリーザさんが嘘吐いてるって?」

レッサー「善良な人であっても私のように嘘を吐きますし、逆に嘘を吹き込まれた可能性もありますよーっと」

上条「そうだな――ってお前今”善良”に自分を含めてなかった?ねぇ?」

レッサー「他にもそのIndianが正真正銘のIndianであった保証もない訳で。ぶっちゃけ不法移民が別の国に成りすますのは常套手段だったりします」

上条「そうなのか?」

レッサー「パスポートもあって無いようなもんですからねぇ。ブリテンじゃ特にパキスタニがIndiaだって偽るケースが多く」

レッサー「……まぁ元々、宗派が違うだけで同じ国であったんですが、分離してから数十年で国力と民度に段違いですからねぇ」

上条「でも今回は失踪した人らに成りすます必要はないだろ?」

レッサー「恐らくは……うーむ、名簿か写真を見たい所ですが」

上条「テリーザさんが知ってるんだったら、こっちで持ってる写真を見せるとか?」

レッサー「私達兄妹の設定をお忘れですか?観光ついでのビジターにしては不自然過ぎます……が、まぁ?」

レッサー「彼女が信用出来ると判断するか、もしくは最後の手段として身元を明かすのは選択肢の一つですなぁ」

上条「前の方は分かるけど、後ろのはなんで?」

レッサー「『私達は国から委託された企業の調査員ですよ』と身バレさせる事で、相手に手を出しづらくさせる感じです」

レッサー「実際にゃ違うんですが、流石に私達まで処分して事を荒立てるのは有り得ません――」

レッサー「――あちらさんに正気が残っていれば、ですが」

上条「……魔術結社なんですよねー、多分」

レッサー「宗教法人の名を借りたブラックな企業だってのは確定でしょうがね」

上条「でもろそれにしちゃ、なんつーかアバウトすぎないか?俺達の管理もそうだし、何か信者や体験入信の区別が付いてないって言うか」

レッサー「信者、信者ねぇ……そっちも気になるんですよ」

上条「何が?」

レッサー「実はさっきのご飯の最中、男女20人ぐらいに聞いてみたんですよ」

上条「お前よくそんな暇あったな?」

レッサー「いえ、ぶっちゃけサボってる間に聞き込みの口実で作っとけ、的な」

上条「後でベイロープさんに伝えとくからな?たっぷりケツを……」

上条「……」

上条(いやでも20人だぞ?20人。捌いた人数が100人前後だって話で、その5分の1だ)

上条(サボり目的でその数に聞き込める筈がないっつーか、出来たらスゲェつーか)

上条(レッサー、確かにアホみたいな言動が多いし、実際にアホだと思うけど)

上条(やったらアバウトな性格と、誰からもある程度好かれる言動と物怖じしない芯の強さ)

上条(あと万が一バレたとしても『尻尾』?だかって、異様に機動力を上げる霊装で突っ切れば、逃げ切るのは難しくもない)

上条(って事は、レッサー今回の件にピッタリなんじゃないのか?俺なんかよりもずっと)

レッサー「お、おぅ?どうしました?私のケツをペロペロしたいんですか?」

上条「そんな話はしてなかったな!あと俺はそんなに――」

上条「……」

上条「……話を戻そうかっ!」

レッサー「上条さん、大体の性癖をカバーされているのは頼もしいやら恐ろしいやらで……」

レッサー「んで、話を伺った所、皆さん体験信者――面倒なので以後、在家信者と仮称しますね」

上条「在家?仏教用語じゃなかったか?」

レッサー「システムが修道院よりもブディズムに近いので、あくまでも仮の話としてです」

レッサー「つーか普通の修道院でしたらホイホイ出たり入ったりは出来ないんですから――と話が逸れましたが」

上条「分かった。仮な、仮」

レッサー「すいません、よく聞き取れなかったんでもう一回Repeat Please?」

上条「黙れ恥女。真剣な会話にちょくちょくセクハラを挟むな!」

レッサー「はっはっはー!残念ながらこの私は物心ついてからネタとマジを区別した憶えがありませんなっ!」

上条「本当に残念だな。主にお前の頭がだが」

上条「……いやでも、アリサの前で大分セーブしていたんだからな、そこを思い出せよ」

レッサー「や、その今だから言いますけどね、アレはアレで打算の産物なんですよね、えぇ」

上条「打算?」

レッサー「私の貞操を賭けても良いぐらいに確信してるんですが、アリサさんきっと意味が分からないまま連呼しますでしょ?」

レッサー「『当麻君当麻君っ!【ピーーーーッ】って何だろう?【ピーーーーーツ】ってどういう意味があるの?』――みたいに」

上条「あー……うん。そう、な?」

レッサー「天然と着痩せがタッグを組まれるとタチ悪ぃんですよ!なんですかっあのっ無邪気なエロさは!」

レッサー「なんかこう、たまーに油断してノーブラの時とかあるじゃないですか?あん時は同性でもついペロペロしたくなる無防備さがですね!」

上条「ごめんな?なんか話振った俺が悪かったから、そのぐらいに」

上条「あとアリサのノーブラ情報は言わないであげて?いや別に俺が直接見たいとうそういんじゃない、ないんだけど」

レッサー「……や、まぁそんな感じで在家信者の人らと話してみたんですが、居なかったんですよ。一人も」

上条「何が、つーか誰が、か?」

レッサー「出家信者――つまり、ここで集団生活している”筈”の人達が」

上条「……何?」

レッサー「えぇっとですね。一応こちらさんは修道院のシステム”の体裁”を取っているんですよ」

レッサー「主教が一番偉い人で、司祭が聖職者。テリーザさんみたいなのは助祭として」

レッサー「ブラスしてヒラの出家信者を多く抱えてる筈なんです。だというのに、居ない」

上条「……最初から居ない、みたいなオチはどうだ?ここって病院が……補助金や待遇改善目当てで宗教法人になったんだろ?」

レッサー「えぇそれは『テリーザさん.の自称』ですけどねぇ」

上条「引っかかる言い方だな」

レッサー「敷地内にある教会、あぁ少しお話ししましたっけ?アリウス派の事」

上条「三位一体を否定したとか何とか」

レッサー「アリウス派は異端認定されたんで、十字教会としては徐々に消えていったんですよ」

上条「物理的な意味で?」

レッサー「つっても初期キリスト教なんで苛烈なもんじゃなかったですがね。例えばアリウス派の聖堂をちょちょいと作り変えたり」

上条「十字教な?……あ、でも十字教で異端認定即ぶっ壊そうぜ!みたいなイメージがあるんだが」

レッサー「でもない――事も、ないんですが、TPOに応じたり空気を読んだりしますよ、一応は」

レッサー「古代であってもヒパティアの悲劇やら、アレクサンドリア大図書館へ放火したりする暴挙をしていますし」

レッサー「逆にパルテノン神殿を取り壊さず教会として改築したり」

レッサー「また特にイベリア半島では、イスラムと十字教で征服したりされたりの攻防が繰り返されてきました」

上条「だからモスク風の十字教教会とかあんのな」

レッサー「ですです。スペインのアンダルシア州にあるコルドバ聖マリア大聖堂なんか典型的な例でしてね」

レッサー「なので、あの第一聖堂”もしも本物であれば”世界遺産へ登録されるレベルの文化遺産かと」

上条「正直に言っていい?」

レッサー「どーぞ」

上条「超胡散臭ぇ」

レッサー「同感ですな。もしも本当にアリウス派の聖堂であるならば、ただ正直に申告すれば良いだけの話です」

レッサー「それこそ病院そっちのけで収益を上げられるぐらいには、と」

上条「それもそれで気になったんだよな。なんか、なんかこうおかしくないか?」

上条「いや、確かにさ。イギリスの医療制度がおかしいってのは分かる。歯医者に数週間なんて、俺なら耐えられそうにもないしさ」

上条「当然困ってる人が居て、それに対して打開策を採るのも分かる――けど、それが『宗教興して税金免除』ってズレ過ぎてねぇかな?」

レッサー「介護士を移民で、ってのも何かおかしいですよねぇ。それこそ失業者を雇えばいいんですからね」

上条「人件費の安さとは言ってたけどな。んー?」

レッサー「それもまた『エサ』にしか見えませんがね、私にゃ」

上条「……ともかく話は分かったよ。怪しい施設が二つある。第一聖堂と病院」

レッサー「そのどちらかが出家信者さんの暮らしている場所も兼ねている――ま、常識的に考えれば病院なんでしょうけど」

上条「実は聖堂の地下に大空間が!……的な展開はないか?」

レッサー「ホラー映画とインディ系では王道中の王道ですよねぇ。私も超好きな展開ではありますが」

レッサー「ですが地下があったとしても、精々カタクームぐらいのもんで、そう大規模なもんじゃないかと」

上条「カタクーム?」

レッサー「イタリア語でカタコンベ。地下墳墓の事ですよ」

上条「それはそれでテンション上がりそうだ」

レッサー「まぁ中世ヨーロッパじゃ土葬+地下墳墓のコンボによって、一度黒死病で絶滅寸前にまで陥ったと言えばロマンがありますけど」

上条「ロマンかな?むしろ恐いっつー感想しか出て来ねぇけども」

レッサー「しっかもですねー、そん時に猫居るじゃないですか?猫?」

レッサー「あれが『悪魔の使いだ!黒死病をばらまいている!』と猫狩りまでやったもんで、いやー被害が広がる広がる!あっはっはっはー!」

上条「ねぇ、お前らって意外と蛮族だよね?肉食系以前にアホじゃないかな?」

レッサー「ちなみにギリシャ正教会じゃ未だに土葬です。こないだ正教会が『火葬した場合は破門するし、葬儀もしないよ』って声明出してましたね」

上条「コメントし辛いな!」

レッサー「ギリシャでは何人かの市長が『墓所が足りないから火葬にしようよ!』つってんですが、今まで火葬場が作られていません」

レッサー「ついでに火葬が合法になったのは2006年。宗教的にはまぁ好き勝手やりやがれとは思うんですがねー」

上条「何か言いたそうだな?」

レッサー「あ、分かります?んー……なんつーかですね、私も一応は十字教徒なんですよ。上条さんがブディストであると同じぐらいには」

上条「熱心ではないのな」

レッサー「えぇですがまぁ、詳しいのは学校の勉強プラス、いつ敵に回っても対処出来るようにって感じです」

上条「お前らその発想が恐えぇよ!」

レッサー「心外ですなー。後悔役に立たず、ということわざがですね」

上条「言っている意味は正しいけれど、それ俺の知ってることわざじゃねぇよ。先に立たずだ」

レッサー「いざ敵さんに追い詰められてから、『あぁあん時勉強してれば良かったな』と思っても遅いでしょ?それと同じかと」

上条「意外と考えてる……流石はリーダー?」

レッサー「疑問系なのが気になる所ですが――で、そのアリウス派なんですけど」

上条「戻ってる戻ってる」

レッサー「いえ、戻ってないんですよ。彼らアリウス派が異端とされた、その原因ってヤツです」

上条「教えが十字教とは離れてるから、じゃないのか?」

レッサー「とんでもない。それだったら原始十字教には教皇や司祭も居ませんでしたからね」

上条「教会内の派閥争い、とか?」

レッサー「備後!」

上条「字、違くね?BINGOじゃね?」

レッサー「アリウス派は三位”非”一体論を唱えて負けたんです――その相手はどちらで?」

上条「……三位一体論」

レッサー「ですです。今の教会の根幹を成している概念ですな。それを唱えた派閥が『アタナシオス派』と呼ばれる人です」

レッサー「彼自身、ギリシャ正教と呼ばれる一派の一員だったのですが、こう言い残したのが有名ですね――」

レッサー「――『神が人となったのは、人が神になるためであった』と」

――404号室 20時30分頃

レッサー「――と、ここだけ聞くとひっじょーに物騒な印象を受けるでしょうが、実際には違いますよー?恐くないですからねー?」

レッサー「『神になった』とされているのは、あくまでも神の子だけであり、原罪を引き受けた結果――と、教えているので、えぇ」

上条「引きはしないが……何?お前ら三位一体ってそういう意味だったのか?」

レッサー「特にギリシャ正教ではそういう教えが浸透しています。なので」

上条「……あぁ、だから『火葬の否定』に繋がんのか。火葬すると復活出来なくなるから」

レッサー「ちなみに『火葬如きで復活出来ないなんで、お前の親父も大した事ねーなwwww』とこっちで言うと、まず間違いなく殴られるので注意して下さいな」

上条「言わないだろ。つーかそのぐらいは俺だって分かるわ」

レッサー「絶対ですからね!絶対に言わないで下さいよっ!」

上条「あれ?俺言えって振られてんのか?」

レッサー「ま、信仰ですし、誰に迷惑かけている訳ではないのでいいんですけどね。今の所は」

レッサー「ただお墓を量産しても経済的ではないですし、何よりも観光で食ってるギリシャにとってもあまり宜しくはないと」

レッサー「なのでどこかでどういう風に折り合いをつけるのか、それとも”つけない”のか、興味津々ですな」

レッサー「代表的なのは『カーゴ・カルト』ですがまぁ、興味があれば携帯でお調べ下さい」

上条「話が脱線しまくってるが、まぁカタコンベで興奮した俺も悪いとしてだ」

上条「問題はどうやって調べるか、って話だよな」

レッサー「私は『こちら側』の警報・トラップならば探知出来ますけど、上条さんは?」

上条「ぶち壊すしか出来ません……!」

レッサー「『クラッシャー』とは縁遠い性格なのに、どうしてこうなった的な矛盾を感じますが、まぁいいでしょう」

レッサー「第一聖堂には今晩にでも忍び込んでみます。ただ病院は」

上条「そっちは俺がするよ。取り敢えず正攻法で『お手伝いしたいんですが』って言えば、掃除ぐらいはさせてくれると思う」

上条「……まぁ奥にまでは踏み込めないだろうけど、雰囲気ぐらいは何とか」

レッサー「さっきの携帯電話のアプリ、拡張機能とか無いんですかね?」

上条「拡張って?」

レッサー「防犯カメラや盗聴マイクを無効化させるだけではなく、探知出来る機能です」

レッサー「もっと言えば後日侵入する際の下調べ、ってな感じで」

上条「分かった。連絡取って聞いてみるわ」

レッサー…そこはヘルプ読めばいいと思うんですがね」

上条「専門的な事は専門家へ聞くのかベストっ!素人が手を出したら大抵失敗しますからねっ!」

レッサー「……妙に実感のこもったお言葉ですね。それじゃちょっくら行ってきますよと」

上条「え、今からなのか?」

レッサー「逆に聞きますが、今からじゃない理由が分かりませんってば」

レッサー「出来れば深夜がベストなんでしょうが、この時間帯であれば『つい気になって来ちゃいましたテヘペロ』が通用しますし」

上条「んーむ……まぁ、しょうがないか」

レッサー「ですね。適材適所と言いますし」

上条「じゃ、行くか」

レッサー「はいっ!――って待ちましょうかジャパニーズ!」

上条「あ、フロリスっぽい」

レッサー「いやですから自制してくれませんかね?ぶっちゃけ邪魔なんですけど」

上条「や、でもさ?」

レッサー「お気持ちは非常に有り難いのですが、ありがた迷惑という言葉もあったりなんかします」

上条「Oh……」

レッサー「一応言っときますけど、私は『新たなる光』の中では、片手で数えられるぐらいの強さを持っていますんで」

上条「そうかー……あれ?お前らって四人じゃなかったっけか?」

レッサー「禁則事項です(はぁと)」

上条「うわウゼー……ドヤ顔で言い切るのが更に腹立つわー」

レッサー「ガチムチでやるんだったら、ベイロープにも勝つ自信はあるんでご心配なく」

上条「ムチは要らないな?」

レッサー「ご褒美ですが何か?」

上条「だからっ!お前はそうやって話を煙に巻くの止めろっつってんだよ!」

レッサー「Oh, ワタシニッホンゴワッカーリマセンHAHAHAHAHA!!!」

上条「今更だ!散々刃○ネタで盛り上がったろ!」

レッサー「……それじゃ上条さん、心配して下るのであれば一つだけ約束して下さいませんか」

レッサー「そうすれば私、きっと無事に帰ってこられると思うんですよ……ッ!」

上条「待て待て。確かに色んな意味で心配はしてるが、そーゆー話はしてない」

レッサー「私この戦いが終ったら故郷へ帰って実家のパン屋を継いで、肝試しに行ったらC君が格好をつけたがって寺生まれってスゴイんですって!」

上条「それ、フラグ違いじゃね?怖い話で『あぁこれ作り話だな』とあからさまに分かるパターンだな?」

レッサー「ネタとして読む分には面白いんですがねぇ――と!今の説得で分かって頂けたでしょうが!」

上条「説得1ミリもやってなくね?ネタ話だけだよね、いつものように?」

レッサー「あー、面倒臭い。だったら上条さんは出入り口の確認でもしてきたらどうですかー?」

上条「何か投げやりだな」

レッサー「いやまぁ、聖堂攻めるついでに回ろうかとは思っていましたが、やって下さるのであれば任せようかと」

上条「出入り口って、本館か?」

レッサー「ではなくEXIT――非常出口の方ですな」

上条「場所は見取り図にあった筈だけど?」

レッサー「実は鍵がかけられていて出られませんでしたー、なんてのはゴメンですから、その確認をばお願いしたいなと」

上条「鍵?非常口に施錠してあったら意味無ぇだろ」

レッサー「――って事が割と結構な頻度で起きてましてね、えぇもう」

レッサー「例えば火災が起きたスタジアムから逃げ出す人が逃げ出せず、そのまま――と」

上条「あー……そんな事件たまーに見るな」

レッサー「『警備上の都合』で閉められているのはままある話。なので様子と場所を確認して下さるだけでも違うかと」

上条「納得はしてないが……まぁ、理屈は分かった」

レッサー「おや?『レッサーちゃんと離れたくないの!?』とダダをこねるターンですよ?」

上条「茶化すなよ。俺だってバカじゃな……い、事もないんじゃないかなって、たまーに思うけどさ!」

レッサー「途中から思いっきり曖昧になってますけど。つーかそんぐらいは言い切りましょうよ」

上条「『尻尾』を持ってるお前に、あの程度の壁なんて関係ねーだろうし――だから、多分」

上条「何かあった時に俺やテリーザさん、他の奴らを逃がすためだってんだろ?違うか?」

レッサー「……どーにも、そう面と向かって言われるとサブイボが走るってもんですがね」

上条「そう難しいこっちゃねぇよ、相棒」

レッサー「……っ!」

上条「なんだかんだで付き合いも長いだろうが。ただの頭イタイ子――」

上条「……」

上条「――頼りにはさせて貰ってんだから、な?」

レッサー「待ちましょうか?てーか本格的に待ちましょうよ、ねぇ?」

レッサー「まず『頭イタイ』の訂正から入りませんか?今のままだと上条さんの中では、私がまるで頭イタイ子みたいに聞こえるんで」

上条「え?はっきり言っていいの?」

レッサー「良いワケないじゃないですかっ!?本人には知らせない方が幸せだって話もあるんですよっ!」

上条「いーから行くぞ」

レッサー「えぇ、そう、ですね?……イヤちょっと待って下さい!せめて、せめて人をイタイ子扱いだけは何とかっ……!」

――21時 『ヤドリギの家』教団本部・外周部

上条「……」

上条(俺は非常口を探しに、レッサーは第一聖堂を探索に――と、一見桃太郎のおじいさんとおばあさんのような役割分担だ)

上条(でも実際には俺が泣きついたような感じになっちまってるし、まぁ気を遣ってくれたのは明白な訳で)

上条「……」

上条(あ、最近のモモロタウって知ってる?何か、一部の学校だと『おばあさんが洗濯に行くのは差別だ』って、役割が逆転してんだってな)

上条(その内、『結婚する相手がおばあさんなのは同性愛者へ対する差別だ!』とか言い出して、きっとおじいさんとおじいさんが仲良く暮らしてたとか……)

上条(……誰得?つーか違和感ありまくりじゃねぇか。じーちゃん二人で暮らすってどんだけだと)

上条(桃太郎も『女の子じゃないと差別だ』とか言い出すんだろうなー……あ、でも全裸で桃から飛び出すのはどうなんだろう?)

上条「……」

上条(桃を梨へ変えて、ふなっし○の中の人爆誕!みたいな……逆に見てみたいな。子供にはトラウマ量産するだろうが)

上条「……」

上条(……みたいな馬鹿な事を考えながら、俺は警備のアルバイトのように外周部を歩いている)

上条(定間隔で非常灯が並んでいるので、それ程苦労はない――事もない)

上条(それぞれの建物の周囲には草が刈られてるから、別に歩きにくいって事も無かったんだが)

上条(流石に広い敷地内全部には手が回らないようで、ちょっとした藪を踏み分けながら行く必要があった)

上条(……ただ、気候上、イギリスの方が寒くなるのが早いみたいで、半分ぐらいは枯れ草だ。思ったよりも苦労はしてるけど)

上条(日本と同じ島国、えっと北緯で言えば――) ピッ

上条(――ロンドンが北緯51度。札幌が43度、仙台が38度だからスッゲー北だな!)

上条(こっち来て思ったんだが、てか何となくヨーロッパは落葉樹が多いな?たまにある松林の他は全部そうだ)

上条(生物の授業で習った感じじゃ、日の光の少ない冬に葉を落とすのは『効率的』なんだそうだが)

上条「……」

上条(効率的……効率的、なぁ?本当にか?)

上条(確かに、冬は葉を落として冬眠した方が有利――とは、一見思える。でも)

上条(だったら熱帯はどうなる?葉を落とす必要が無い程、温かい地域にだって落葉樹は生えている)

上条(反対にこっちでも松林は――多分植林だけど――見るし、何なんだろうなとも)

上条(生物の多様性は整然としている一方、どう見てもこれ要らねぇだろ的な進化を遂げたヤツも少なくない)

上条(だからって完全に淘汰された訳でもなく、きちんと現代まで生き残ってるのも多い。変な虫とか)

上条(かと思えば俺達が『合理的じゃね?』と思うようなものが、逆に主体じゃないってのもある。食虫植物とか)

上条(光合成も出来るし、タンパク質も取り込める最強生物!……って誤解されてるんだが、実際にはそうじゃない)

上条(虫を補食する器官――閉じる葉っぱだったり、消化液の溜まった瘤なり、ベタベタした花をつけるのにも、養分は必要だ)

上条(有名なハエトリグサ、ギザギザの葉が閉じるタイプのは、数回しか虫を捕らえられないそうで、限界を超えると葉が枯れる)

上条(他にもあんまり遊んで開閉し過ぎると同じく枯れて、葉が無くなれば本体は弱るし最悪枯れっちまう……『効率的』には程遠い)

上条(……つっても、まぁ?地球には星の数ほど種が居る中、環境だって全く同じな筈もなく)

上条(一つの種だけが全ての環境に適応して繁栄する、って考え方がおかしい。その環境に応じて住み分けが出来ると)

上条「……」

上条(……俺がなんでこんな事を考えているのかと言えば――)

上条「……いや別に意味は無いよ?ただちょっと暇だってだけで――と、またかよ」

上条(俺は4つめのバツ印をパンフ――簡単な見取り図――へ書き込んだ)

上条(確かに非常口はあった。図面そのままの場所に、きちんと非常灯の誘導先通りに)

上条(けれどその扉は金属製で、硬く錠が下ろされている。とてもじゃないが万が一の時、直ぐに逃げられるような感じじゃない、と)

上条「……」

上条(『本部』の施設には余裕がある。建物と建物の間は少なくとも数十メートル、端から端までランニングすればいい運動になるぐらいの距離だ)

上条(なので一つの建物で火事が起きたとしても、建物から出ればまず安全)

上条(――なん、だがなぁ……うーん……?)

上条(車の出入り出来るのが『本館』――つまり、受付を兼ねた門しかない。非常口も通れる程大きくない)

上条(そこを塞がれちまったら、壁を重機で倒すかヘリかなんかで救助――も、無理か。火事の煙や上昇気流の中、飛ばせたら自殺行為)

上条「……つーかな、初めて見た時も思ったんだが――」

上条(『ヤドリギの家』の、高い高い外壁は)

上条「……外敵から守る『鎧』か、それとも『監獄』か……?」

――同時刻 第一聖堂前

レッサー「……っと」

レッサー(はーいっそんな訳でやって来ましたっ第一聖堂っつーかアリウス派聖堂前!)

レッサー(外から見た感じフツーの教会っぽい!バロック式だから遡っても300年ってトコですかねっ!)

レッサー(それじゃーSearch&Destroy(検敵必殺)、逃げる敵はミナゴロシで逃げない敵はミナゴロシだぜヒャッハー!!!)

レッサー「……」

レッサー(突っ込んでくれる人が居ないと寂しいですね、えぇえぇ)

レッサー(……ま、上条さんがいらっしゃらない分、ちょっとだけポロリ的な展開があるかも、ですが)

レッサー(主に手足や内臓的なモノが、ですけど――さて)

レッサー(建築様式からして比較的近代に建てられた感じですな。精々200年前後)

レッサー(アリウス派が廃れた西暦4世紀。とてもじゃないですが、その頃からあったようには見えません――が!)

レッサー(外側は完全にリフォームしてしまって、中身――地下墳墓や内装を変えないって可能性も無きにしも非ず、と)

レッサー(あ、これは珍しい事ではなくてですね。十字教の苛烈な支配を受けた植民地に多いんですが、”ガワだけ”それっぽく装うってのが)

レッサー(インカ・アステカ帝国はSpik野郎に滅ぼされましたが、ところがどっこい地下じゃ信仰は途絶えておらず)

レッサー(西洋風の教会の下へ、カタコンベと称して人骨で作った素敵な神殿をおっ建ててたり、中々良い感じですかねー)

レッサー(アフリカでも同様。現地へ宣教師を何代も派遣した挙げ句、ようやっと十字教会を建てる運びと相成りまして)

レッサー(喜び勇んだ本国の司教サマが乗り込んだ先で見たものとは……!)

レッサー「……」

レッサー(……ボケが単独行動すると色々な意味で辛いですね。いや割りとマジで)

レッサー(これはさっさと片付けで早々に合流せねば……!)

レッサー「……」

レッサー(あ、ちなみに司教さんが見たものとは『アフリカ式に魔改造されてる教会と信仰』だったそうです)

レッサー(興味がある子は『黒いマリア像』で調べてみてねっ(はぁと)!)

レッサー「……」

レッサー(……さっさと済ませましょうか、はい)

――第一聖堂 内部

レッサー「」

レッサー(鍵無し、警報無し、監視用の術式も霊装も無し……監視カメラ系は存じませんが)

レッサー(内部もまた……普通な感じでしょうか?夜目が利くまで――いや、灯り?)

レッサー(ゆらゆらと闇に揺れる三つの炎……まさかっ!?這い寄る混沌ニャルラトホテプ――!!!)

レッサー「……」

レッサー(『燭台の灯りじゃねーか』ってツッコミが返ってこないのは、寂しいですねぇ)

???「……あの-、誰か、いる――」

レッサー「――シィッ!」

ダッン!

???「あ……がっ!?」

レッサー(『槍』を展開していて正解でしたねー)

レッサー(まっさか『ボケに対してツッコミが返ってこなくてしくじった』なんて知られたら、ベイロープに何発尻叩きされる事か……!)

レッサー(てか反射的にぶっ倒しましたけど、こちらさんはどちら様で?……テリーザさんだったらシャレになんねーですなーHAHAHA!)

???「ちょ、だ、誰ですか!?僕は司祭です!怪しいもんじゃありませんからっ!」

レッサー「お名前をぷりーず?」

???「ウェイトリーで――」

メキメキメキメキメキッ……!!!

???「か、つっ!」

レッサー「……へー?ふーん?ほーお?聞き覚えありますよねぇ、てーかどっかでお会いしましたっけ?」

レッサー「てかあなた方ご兄弟、お顔も似てますし声もそっくりで見分けつかないんですよねー……あ、そっか。こうすればいいんですよねっ!」

ミシミシミシミシミシッ!!!

???「あがががががががががかっ……!?」

レッサー「もっと悲鳴を聞けば思い出すかも知れません。ほらほらー、いい声で鳴いて下さいな」

レッサー「あ、でも大声を上げたら手元が狂っちゃうかもなんでー、注意して下さいね?」

???「あなたは『新たなる光』の」

レッサー「――はい、減点いーち……っと!」

ベキッ!

???「――!?」

レッサー「言いましたでしょう?ウェイトリー――ウェイトリ”ィ”さん?態度からして弟さんですかね」

レッサー「『よ、余計な事を言ったら腕ヘシ折るんだから勘違いしないでよねっ!』って」

クリストフ(???)「……」

レッサー「『聞いてませんよ!一言足りとも聞いてませんからっ!?』と心の中のツッコミが入った気がしますけど、賢明なご判断で」

レッサー「ではでは聞きたい事は山程あるんですが……そうですねぇ、どっから手をつけたもんか悩みますなぁ」

レッサー「どうしましょーねぇ?どっから聞けばいいんでしょうかねー?迷うなー?どうしよっかなー?」

レッサー「あ、じゃなんかリクエストあります?『こんなん喋りたいぜ!』みたいなの、リスナーの皆さんへ言っときたい事とか?」

クリストフ「……」

ボキッ!

クリストフ「――っ!?」

レッサー「やっだなぁ言ったじゃないですかー、『質問に答えられなかったらもう一本をヘシ折る』って!クリストフさんったらドMなんですからっ!」

クリストフ「…………っ!」

レッサー「いやいや、睨まないで下さいな。あなた方がぶっ殺してくれやがった方々はこんなもんじゃなかったですからね?」

レッサー「『アレ』に生きたまま喰われて、自分が何故死ななければいけなかったのかすら分からず亡くなった方に比べれば、ですが」

レッサー「あと素人さん相手に、魔術結社総動員で追い回しやがったお礼もしなきゃいけませんかねー?どうしましょうか?」

レッサー「……や、でもあれですよね?ここであなたをぶっ殺すのは簡単ですけど、もっと情報を聴き出した方が有意義と……うーむ」

レッサー「そうですよねっ!人間LOVE&PEACE!何事も話し合いが大切ですもんねっ分かりますっ!」

レッサー「なのでクリストフさん、こうしませんか?あなたは私に聴かれた事を、ショージキに答えて下さい。ただそれだけで結構です」

レッサー「もしも私が欲しい答えを嘘偽り無く返して頂ければ、結社名に誓ってあなたを解放しましょう。どうです?」

クリストフ「……」

レッサー「お返事は?あ、首を縦に振れば肯定、横に振れば否定で」

クリストフ「……」 コクコク

レッサー「良かったー、私こういうの苦手でしてね。どうにも交渉事は気が短いもんで、えぇ」

レッサー「いっつもベイロープから叱られるんですよ、『どうしてあなたってば我慢出来ないのだわ!』と。いやー成長したなぁレッサーちゃん!」

クリストフ「……」

レッサー「おっと失礼しました。両腕ヘシ折られたままじゃ痛いですもんねー、さっさと質問終らせちゃいましょうか」

クリストフ コクコク

レッサー「ではではっ!結社名『黄昏きゅんきゅん騎士団(らぶらぶシャットアウラ)』に於いてお尋ねします――」

レッサー「――地獄って、あると思います?」 ヒュゥンッ

クリストフ「!?」

メキメキメキメキメキメキッ――グシァアアッ……!!!

レッサー「……」

レッサー「あるぇ?お返事がありませんねー?もしもーし?クリストフさーん?」

レッサー「そんな頭蓋が割れて脳をはみ出させた挙げ句、全身から血を流してピクピクしちゃってどうしたんです――はっ!?」

レッサー「まさかこの私のミリキに興奮して鼻血的なものを!?しかも全身を使ってリアクションする程情熱的に!?」

レッサー「いけませんいけませんっ!私には心に決めた上条さんという方がっ!お気持ちは嬉しいんですけども!」

レッサー「……」

クリストフ「……」 ピクピク

レッサー「……はぁ、やっぱりボケしか居ないと面白くありませんね、えぇ」

レッサー「あなた方がユーロトンネルで命を奪ったブリティッシュ188名、プラス62名」

レッサー「加えて私の古い友人達と新しい友人へ危害を加えた対価には、ちと程遠いですが――」

レッサー「――足りない分は、私がそっちへ行った時にでも利子をつけて頂く、という事で一つ」

レッサー「……」

レッサー「『古きものはより古きを誇り、朽ちるものは朽ちるがままに――』」

レッサー「『――されど千夜に褥を重ねようとも、旧き燭台の火は消えず――』」

レッサー「『――”ブリテンの敵”に報いの慟哭を、願わくば安寧の死を』」

――第一聖堂内

レッサー(さてさて、ウェイトリィ兄弟の片割れは始末しました)

レッサー(暗闇から急に襲撃されましたからねー、いやー危なかったー、いやホントマジでマジで)

レッサー「……」

レッサー(……この路線で行きましょう!どうせ上条さんは上条さんですから気づきっこないですし!)

レッサー「……」

レッサー(……とはいえ、さてどうしましょう、って事になりますねぇ。こんな時間にこんな場所で、教団――結社の幹部が何をしてたんだか)

レッサー「……」

レッサー(昼間は人目や信者が絶えない。一般人は入れませんが、在家・出家信者ならば出入りは自由……とすると)

レッサー(何か隠しているものが――)

レッサー ゴソゴソ……

レッサー「燭台の火が風で揺れてる――室内なのに、ってぇ事は――」

ギギギィイッ……

レッサー「……地下墳墓、あっちゃいましたかー」

――地下墳墓

カツ、カツ、カツ、カツ、カツ……

レッサー(地下墳墓……スペイン語でカタコンベ、クイーンズでカタクーム)

レッサー(基本的に十字教下での埋葬は土葬が基本。ギリシャみたいに現代まで続いている所も多いですけど)

レッサー(ただまぁ、あくまでも普通に穴掘って棺へ入れて埋めるのがスタンダードなんで、カタクーム自体は一般的ではありません)

レッサー(なんつってもきちんと埋葬しないと、黒死病を媒介するネズミとノミの養殖場になりかねませんし、昔はホラ教会自体が都市の中心だったんですね?)

レッサー(……今はまぁ交通機関が発達したので、そうでもありませんが、文化や政治の中心が教会でした)

レッサー(と、なれば屍体が安置されてる場所と、私達の生活空間が近しければ近しい程、感染症その他の危険性も高まる訳で)

レッサー(テンプルが村落の外れにあった日本とは違う、って感じですか)

レッサー「……」

レッサー(――と、私もあまり詳しい訳ではないんですがー、まぁ普通……なん、でしょうかね?)

レッサー(石をくり抜いて掘られた長い長い廊下、その両脇に幾つもの横穴があって)

レッサー(その一つ一つに白骨化したご遺体が……ナムナム。あ、宗派違いました)

レッサー(衣類を漁れば生前の身分ぐらいは分かるんですが……ま、そこまでする程の事も無いで――しょう?)

レッサー(行き止まりだと思ってた壁に、ドア?しかもこれ、新しい……?)

レッサー「……」

レッサー「あー……何か言ってましたっけ……どっかの『右席』さんがトチ狂ったのが、前の『濁音協会』と関わったせいだって」

レッサー「ちゅー事は、このさきにあるモンは中々SAN値を削られる代物……さてさて?」

レッサー(戻って上条さんに相談――は、酷でしょうかね。この先にあるのがドヅキイ現実だったとして、知らずに済むんでしたらそっちの方が)

レッサー(とはいえ、逆に上条さんがどこまで絶望するのかを見てみたい気もしますが……まぁ、今回はご縁がなかったと言う事で)

レッサー「……」

レッサー「べ、別に心配してる訳じゃないんですからねっ!」

レッサー「……」

レッサー「……ボケの単独行動は控えた方がいいでしょうかね……」

ギギィッ……

レッサー(扉を開き、持ってた燭台を掲げると――視界へ入ったのは)

レッサー「……………………花?いや、草……?」

レッサー(テニスコートぐらいの大きさの空洞、その床一面にびっしりと生える”紅い”草、ですか?)

レッサー(燭台を左右に振っても目に入ってくるのは、草、草、草。照明でもあれば、と天井を照らしてもライトの類は無く)

レッサー(そもそもこんな暗闇で草育てる意味が……?)

レッサー(麻薬か魔法薬の原料?確かに毒々しい紅色はそれっぽい感じではありますが、うーん?)

レッサー(何か引き抜いたら『ヒャッハーーーーっ!』とか奇声を上げられそうで恐いですけどね)

レッサー(風もない――完全な地下で空気の流れなど感じられないのに――ユラユラと揺れて――いや!)

レッサー「……動いてる、んですか?植物なのに?」

???「――ようこそ、俺達の楽園へ」

レッサー「と、期待を裏切らないお出ましで感謝感激ミナゴロシ――っと!」 グォンッ!

レッサー(私が生んだ火球は背後から響く声の主へと突き刺される――!)

???「――BattleRam!(破城槌!)」 バシュウンッ!

レッサー(――前に、召喚した肉色の蔦で迎撃される……おや?この術式は)

レッサー「……あるぇ?その、ちょっとお伺いしたいんですか?」

???「何?俺痛いのは好きじゃねーんだけど」

レッサー「その、あなたの頭からはみ出てるのって、脳髄ですよね?」

???「おう!ちょい前に通り魔っぽい魔術師にやられた傷だな!」

レッサー「全身所々出血されてるいるのも、どっかで見覚えがあるんですが?」

???「あぁ!ちょい前に尋問のフリして処刑された名残だなっ!!!」

レッサー「待って下さい!それじゃあなた!」

???「残念。俺ぁ別にクリストフだって名乗った憶えはねぇよ……あぁそうそう」

アル(???)「地獄はそんなに楽しい所じゃ無かったぜ?帰って来たくも無かったが」

レッサー「死なない、もしくは死ねない術式ですか……てーか『濁音協会』そんなんばっかりですな」

レッサー(少し前まで屍体にしか見えなかったアルフレドさんの体が、赤い蔦のようなもの――要は召喚するのと同じ――で繋ぎ合わされていきます)

レッサー「……ふむ。それは好都合ですね」

アル「何?」

レッサー「あなた達が殺した188プラス62人分、利子つけてぶっ殺せるって事でしょ?」

アル「やってみ?そんだけの魔力が続くんだったらな」

レッサー「そちらはこちらの台詞でもありますよ、えぇ。ジークフリートでもあるまいし、ただの人が不死なんて術式出来る訳がありません」

レッサー「なのでその『再生回数』ですらも、魔力――”残機”が無くなってしまえばフツーに死ぬ。違います?」

アル「当たりだな。ただその”残機”がどんだけあるのは秘密だが」

レッサー「そっちの方が楽しいじゃないですかやだー。黒ヒ○危機一髪みたいに死ぬまでずっと楽しめるんですから、あらら私ってば超ラッキー」

アル「人を新発売のソイソースボトルみたいに言うなや。こっちも痛ぇのは痛ぇんだよ!」

レッサー「ならますます重畳かと――で、まぁまぁどうします?ってもこっちとそっちの解決方法は一致している訳なんですが」

アル「だよなぁ?なんだかんだ言った所で、する事は一緒――てか、前もしなかったか?こんな会話?」

レッサー「でっすよねぇ?前にもありましたよねー、こーゆー会話!」

レッサー・アル「「……」」

アル「俺は魔法名『Geat013(門にして鍵)』、魔術結社『双頭鮫(ダブルヘッドシャーク)』のアルフレド=ウェイトィ」

レッサー「私は『新たなる光』のLess-Arthur、魔法名『Arthur829(永劫の旅路の果てに再び戴冠する王)』」

アル「……まぁ、あれだよな?決まってるよな?俺達が揉めた時の解決方法、みたいなのは」

レッサー「ですなぁ。私も色々悩むよりか、そっちの方がシンプルで好きですねぇ」

レッサー・アル「「あっはっはっはっーーーーーーっ――」」

レッサー・アル「「……」」

レッサー・アル「「――もう、殺す――ッ!!!」」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

レス頂いている方へのお返事が遅れぎみですが、全部ありがたく拝見しておりますのでご心配なく

おっつし☆

>「なんかこう、たまーに油断してノーブラの時とかあるじゃないですか?」

「呼んだかしらあ?」

乙!!

上条(桃太郎も『女の子じゃないと差別だ』とか言い出すんだろうなー……あ、でも全裸で桃から飛び出すのはどうなんだろう?)
桃キュン○ードって糞パチ原作のアニメがありました…
あれは萌え重視?だけど

役割や差別と区別の違いが分からないアホ共に限って、本当に平等にすると不平不満のオンパレードなんですよね

乙!壁ドンされないソーズティーさんェ
ヒロインズの壁ドンの反応が可愛すぎる

そして上条ママンなら旅行から帰ってきた刀夜さんの挙動で浮気がバレそう

>>177
上条「……」
上条「……え、俺?なに?また行ってこいっつーのかよ!?」
上条「いや別に嫌じゃ無いけど……ビリビリだろ?ただでさえ死亡フラグ立ってるような気がするんだけど」
上条「『なにすんのよビリビリー!』みたいな感じでだな。音だけ聞いてるとハニーフラッシ○だな」
上条「つーかさ、北欧で俺一敗貰ったんだけど、あれどういう理屈?ビリビリのビリビリって効かないんじゃ無かったの?」
上条「つまりあれ喰らうって事は、俺これ以降ビリビリと接触すると危険がピンチだよって意味なんだよ!」
上条「まぁ……うん、レッサー達の旅もこれからは笑い減るみたいだし、ちょっくら行ってくるわ」


上条 ドンッ
御坂「――ッ!?」
上条(お、言葉も出ないぐらいにビックリ――ってか改めて思ったけど、この企画の趣味悪りーな!倫理的にどうよ?)
上条(てか麦野とインデックスとベイロープとフロリスからは、ネタバレ後に殴られたんだが……何?苦行?)
上条(平然としてたのはシェリーぐらいだったし……やっぱ大人なんだよなぁ、なんだかんだ言って)
上条(つーかこれ、男女逆の立場だったら恐いんじゃ……?)
御坂「――み」
上条(お、反応あった)
10032号(御坂)「――ミサカルートをお望みですか、とミサカは心の中で『ヒャッホウ』と叫びながら聞き返します」
上条「ヤベぇ!?ミサカ違いだった!?」
10032号「いいえ間違いではありません、むしろ間違いを犯すのはこれからだぜ、とミサカは嬉々として告げます」
上条「どっから憶えて来やがったその単語!?あと表情がさっきから変わってねぇしな!」
10032号「さぁ、壁ドンが来たからには次のステップへ進みたいと思いますが、とミサカは近距離戦を提案します」
上条「なにそれこわい。つーか壁ドンって先になんかあるの?袋小路しか俺には見えないけど」
10032号「えぇまぁ取り敢えず――あちらを」
上条「あちら?」
御坂「……」
上条「違うんですよっ!これはですね、不幸な行き違いがあっただけでっ!決っして、決してそういうんじゃなくっ!」
上条「これはきっと恐らく俺が不幸が干渉した結果じゃねぇかなって!そう、不幸が悪いんだよ!」
御坂「……最近ね。ちょっと、小耳に挟んだんだけど」
上条「……御坂、さん?」
御坂「あの女王様気取りにも、手ぇ出してたんだだって!?あぁっ!?」
御坂「人が折角!黒子にも触らせなかった、おっ……コ゚ニョゴニョ……を触られて!」
10032号「いや、その例えはおかしいだろ、とミサカは冷静に突っ込みます」
御坂「『あぁやった私のターンが来た!』と思ったら!この仕打ちって!」
御坂「今度はあのナイスバディ(※巻き舌)が参戦してくるっつーのはどうこう事だコラァァァァァァァァァァっ!?」
上条「……あ、あの、ちょっと。ちょっと良いですかね?」
御坂「何よ。はっきり言いなさいよ!」
上条「お前の言う女王様ってさ――”どの”女王様の事?」
御坂「SHI-NEっ!」
上条「あ、コナンのネタであったヤツだ。てか普通、”shine”ぐらいは分か――」
……ドーン……
10032号「お後が宜しいようで、とミサカはコッソリ逃げ出します」

>>179
――女子寮 夜

シェリー「……」
アンジェレネ「あ、あのっ。シェリーさんお食事はどうされるんですかーっ!?」
シェリー「……メシ?」
アンジェレネ「え、えぇっ!今日はですねー、シスターオルソラが作って下さった、それはもう美味しいパスタがですね」
アンジェレネ「グランデかと思いきやティ・モールト!味のロンドン塔とはこれ如何に!?」
シェリー「あー……面倒だから食べて良いわよ。食欲が無いの」
アンジェレネ「え、えーっ?体調でも悪いんですかー?」
シェリー「ってワケじゃねぇんだが、あー、私の分は食ってていいわ」
アンジェレネ「わ、わっかりましたシェリーさん!わたしにお任せをっ!」


――シェリーの私室

パタン
シェリー「……」
作りかけの石像『――』
シェリー「――ふんっ!」
作りかけの石像 ガシャーン、パラパラパラパラパラパラッ……
シェリー「このっ!人がっ!どんなっ!気持ちでっ!」
ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッ
シェリー「つーかっ!私もっ!もうちょっとっ!あるだろ反応がっ!」
ガンッ、ガンッ、ガンッ、ガンッ
シェリー「慣れてねぇのよっ!『きゃあっ(はぁと)』とか言えるんだったら人生変わってるわクソがっ!」
ガンッ、ガンッ……


――廊下
アニェーゼ「……シェリーさんまた壁パンしやがってますけど、余っ程煮詰まってんですかい?」
アニェーゼ「こないだも、何とかってぇ展覧会用に出すStatueん時も……いや、ここまで荒れてましたっけ?」
オルソラ「うふふー、シェリーさんもまだまだ乙女なので御座いますよ」
アニェーゼ「……はぁ、そうですかい」
オルソラ「ちなみに『学探』の一話でフッたのは、伏線なので御座いまして」
アニェーゼ「どこまで巻き戻ってんですか?てーか何の話です?」
(※――との展開までは考えてたんですが、人気投票で振わないキャラに割くのも不義理かなと
御坂さんのお話は……色々と面倒臭くなってきたので、正直そろそろ店じまいにしたい気分ですが)

ベイロープがあと十年成熟すれば、シェリーさんみたいになるかな。

またまたディ・モールト良い!
読者様風情の厚かましい要望にお答えしていただきありがとうございました
ここは>>1様のスレですし、>>1様が書きたいものを書き、書きたくない・書きづらいものを強制させるところではありません
どうかご無理をなさらぬよう

乙です


「やったぜついに顕現ですねレッサーさんのスタンド!じゃ私のは【ハルク判官】で震えるぞHeart!(※巻き舌)」
「待てまて待とうか核弾頭at柵川中学。
 作者さんが愛称から経歴・魔法名まで一致させてる苦労に比べて、君のどの辺にその武者の要素が被ってるの?
 あとハルク違う」
「魔法名『Crow013(天を佐〈たすけ〉し涙の御曹子)』ですねっ」
「ムリヤリ感ハンパねえなっ?わりといろんな英雄に対応しちゃいそうな異名だし!」
「北海道から大陸に渡って隣国の騎馬征服王になっちゃうって、エキサイティングな晩年ですよねー」
「いいじゃん!?後世の人たちの夢と願望から生まれた伝説くらい受容してあげたって!
 国家主導でゴリ押しに広報してくるどっかとは全然事情が違うんだからさあ!!」
「そうすると弁慶は初春でー、伊勢三郎は白井さんでー、あ、御坂さんには妹さんいるそうだから佐藤兄弟でO.K?」
「いやそんな『西遊記の猪八戒は誰やんの?』的に割り振られても!?初春さん弁慶説はちょっと心惹かれるが!
 それとそのキャスティングだと真っ先に退場するの御坂さんだよねっ?」


『学園探訪』、また(単発でも)待ってます!

レッサーさんは神聖ブリタニア帝国をどう思ったのか気になる

>>176>>205>>207
ありがとうございます

>>178
「愛してる」は上条さんのキャラ的に言わなさそうなので、見送る運びとなりました。ネタ的に旬のものなので良い機会だったと思います

>>206
上条「よぉしっちょっと壁ドン(in体操着服)してくらぁっ!」
御坂「待てやゴラ反応が露骨に違うぞ!」
上条「たゆんたゆんと(´・ω・`)比べるのは――てか常盤台の体操着スゲーな。普通透けるのに何ともないぜ!」
御坂「あのアマ、ああ見えて天然なトコあるから、気づいてないんじゃない?」
上条「てか原則の設定だと、俺と一方さん脳障害ありすぎじゃね?」
御坂「正しくは特殊な『記銘力障害(Merksto¨rung)』であって、『そのレベルに留まる訳が無い』障害なのよね」
上条「……つまり?」
御坂「特定の人や事柄だけに留まらず、発症した段階で日常生活が送れない重篤な障害になってるって事よ」
御坂「他にも記憶が失われるぐらいのダメージを負っているんだから、深刻な後遺症も併発してないとおかしい訳で」
御坂「卵のパックを落としちゃったとして、当然卵にはヒビが入ったり割れるわよね?」
御坂「「んで、当然そのぐらいの衝撃が起きたんだったら、外箱も潰れてなければおかしいのよ」
上条「流石は『幻想殺し』だ!なんともないぜ!」
御坂「んー……」
上条「ど、どうしたの御坂さん?目が何か恐いんですけど?」
御坂「……余所の女に盗られるぐらいなら、私が一生面倒看て上げるわ……っ!!!」
上条「やだなぁ御坂さん、冗談にしてもタチ悪――」
御坂「……愛してるわよ、ずっとね」 プスッ
(※フィクションです)

>>208
あれはパチンコの販促+タイアップ企画の一環なので、取り敢えずやっとけみたいな。税金対策的な意味で
知り合いがマジハロ廃人(回転数全国一位ホルダー?イベントへの優待券を貰える程)なので、そっちの話もよく聞きますが、
新人声優がよく起用されているため、ギャラが少ない駆け出しには貢献している面があるんだとか
(シンデレラブレイドの二作目のように、コストが高くなればあっさり切るという清々しい程の合理主義)

社会でそれなりの立場にある女性の一人、我が上司曰く「女の敵は女である」と
真っ当に働くのも自由だし、同時に素敵な旦那様捕まえて子供が大きくなるまで専業主婦になりたい、って希望の女性は少なからず居る訳で
また専業主婦になるのも個人の自由だし、親と同居しながら介護も兼ねて――なんてのもよくある話。田舎では、ですが
にも関わらず、同じ女性であるのに専業主婦を「豚」と罵り蔑む自称フェミニスト共を×したくなるそうです
社会進出だけを物差しにして上下を決めないと気が済まない。他人を落とせば自分が上がると思い込んでいるのでタチが悪い

一言で言えば日本のフェミニスト共が言っているのは、「私がモテないのは男が悪い」ですからねぇ。「草食男子」と同じく
東欧の人身売買、パスキタンを筆頭にしたムスリム国家での自立の権利、最近加わったISISの異教徒を奴隷にする話とかが山積しており、
たかが職種すら差別差別言う人間が目にすれば発狂するぐらいの事案なんですが、外国にはスルーしている上、
国内であってもエロ産業全般へ関わる女性の人権啓発には何一つ手をつけない当たり、自己満足にしか過ぎませんが

知人が海外で聞かせられた(ブラック)ジョークの一つに、
A「どうして先生(or弁護士or活動家)はゲイ(or中国人)を守るのにはパレスチナ(orチベット)は守らないんだい?」
B「そりゃ自分の選挙区にゲイは居るけど、アラブ人は居ないからさHAHAHA!」
ってのがあります。大体はそーゆー事ですかねぇ

>>209
いやですから(今回の話や過去作の)ヒロインではないので
浮気は流石にしないでしょうが、上条家が背負ったカルマは深すぎるような気も……
修羅場をくぐったオッサンですら手玉に取る暗殺教室の渚君とは違い、同性には(今の所)効果が無いのが救いっちゃ救い

――翌朝 厨房

上条「……」

テリーザ「おはようございます上条さん――って、凄いDarkCircles(クマ)出来てますよ……?」

上条「……あ、ども。おはようございます……」

テリーザ「日本人は枕が変わると眠られなくなる噂、本当だったんですね」

上条「そんな噂無ぇよ、つーか始めて聞いたわ」

テリーザ「お元気な妹さんは、まだお休み中で?……あー、昨日張り切ってましたもんねー」

上条「ごめんなさい、あの子あれが素なんですよ。信じられないと思いますが」

テリーザ「うふふ、お兄さんの顔になってますよ?心配性の」

上条「100%錯覚だと思いますがね、根拠は特にありませんがっ」

テリーザ「日本からわざわざいらしたんでしたらお疲れでしょうしね」

上条「え?朝食おばちゃん達が来てないから、圧倒的に手が足りないんじゃ?」

テリーザ「ですから主婦の方は朝お忙しいですね、と言う理由で朝は簡単にトーストとハムエッグです」

上条「本場のハムエッグですね!」

テリーザ「……どうして”本場”なんですか?」

上条「いやなんか外国の朝飯ってそんな感じなんで?」

テリーザ「聞き返されましても……あ、ちなみに”ハムエッグ”という単語はこちらにはなく、単純に”Ham and Eggs”とだけ」

テリーザ「『イギリス料理で唯一褒められる』と評判なのが朝食だって、ジョークもあるくらいですから……」

上条「レッサーは言わなかった、よなぁ?」

テリーザ「『朝食を一緒に食べませんか?』は、兄妹じゃなかったら少しだけ刺激が強いかも知れません。恥ずかしがり屋さんなんですね?」

上条「……あぁ、うん、まぁある意味そうかも?」

テリーザ「なので今日はアイルランド・ブレックファストにしましょうか。おばさん達に分けて頂いたトマトも大量にありますし」

上条「アイルランド風……へー、もしかして地域によって違うんですか?」

テリーザ「イングランド風、スコットランド風、アイルランド風、ウォルシュ風、全てひっくるめて”フル・ブレックファスト”です」

テリーザ「パンの代わりにお粥やシリアル、スコーンがメインになったり。ジャムや半熟卵を乗せて食べると、これが美味しくてですねっ!」

テリーザ「スコットランドの方ではハドクの燻製が出たりもします!しますっ!」

上条「なんで二回言った?……いや、じゃなくてですね」

上条「そんなに朝飯は拘るのに、昼夜その他が軒並み壊滅的だってどういう理屈?」

テリーザ「――はい、と言う訳でアイリッシュ・ブレックファストを作っちゃいましょうか!」

上条「だから聞けよ話をブリティッシュ!レッサーと言いボスと言いどうして人の話をキャンセルすんだよ!」

テリーザ「って言っても、サラダの代わりに油で炒めたトマトをお出しするだけですが」

上条「あ、そうなんですか?」

テリーザ「焼きトマト……は、馴染みがないですよね」

上条「前にナポリタン――じゃなく、アラビアータ風パスタ唐辛子無し作った時、トマトの皮を直火で炙ると剥きやすくなるって試しました。茄子と同じですよね」

テリーザ「どちらもナス科ですから……私もやってみようかな?」

テリーザ「後、わたしはナポリタン大好きですっ!アメリカのケチャップ使った日本料理ですよねっ」

上条「……よくまぁご存じで。てかテリーザさん、日本の事に詳しいですよね?」

テリーザ「あ、はい。昔実家の方で日本人の方をホストファミリーとしてお世話した事が」

上条「あー、言ってましたね。それで日本語を?」

テリーザ「はい、学校でも専攻……」

上条「うん?」

テリーザ「ま、まぁいいじゃないですかっ。それよりも今は朝食を作らないと!」

上条「ん、あぁはい。そうですね」

上条(露骨に話題を変えられたが……まぁ、突っ込むのは野暮なんだろうな)

上条(テリーザさん、見た感じ18・9歳ぐらいか。俺の知ってる子だと、五和っぽい気がする)

上条(俺達の世話をしてるって事は出家信者か?……後で聞いてみよう)

上条「……」

上条(フライパンに油を布きながら、俺は昨日の事を思い出していた――)

上条「……」

上条(……いや、回想しないよ?別に何があった訳じゃないしな。ただ)

上条(レッサーと別れてから数時間後、真夜中に差し掛かるかって頃にメールが届いたんだ)

上条(内容は極めてシンプル。こんな感じ)


――Title 『RACCOON』

せたんのかーたぜーにー、せたんのたかーぜたになったてー


上条(……文字化けしたんじゃなく、このままだ)

上条(あー……うん、昔さ?ガキの頃のマンガに『暗号文』的なのあったよな?小学生か、その前に見るような感じの)

上条(”RACCOON”って事は”タヌキ”つまり――)

上条(――暗号文から『た』を除くと真の意味が現れるんだ……ッ!!!)

上条「……」

上条(……こんなしょーもない事をする俺の知り合いなんて一人しか居ない……!)

上条(つーか日本人なら誰だって解けるわっ!……と?)

上条(……や、まぁ逆に考えれば日本人でもない限り解けないナゾナゾでもあるんだが……クレバーなのか、これ?)

上条(ま、まぁまぁ!とにかく!暗号を解いてみたよ!そうしたらばだ!)


『せんのかーぜーに○、せんのかーぜになっ○ー』


上条「……」

上条(誰だって知ってるフレーズだけど、そこしか知らないで有名な曲じゃねぇか!)

上条(……その、なんだ、この歌詞の中に、『探さないで下さい、そこに私居ないんで』的なものがあるから、多分その繋がりだは思うんだが……)

上条(何やってんのか知らねぇけど、この小ネタ挟む間に連絡出来なかったかな?もしくは事情説明でも良いが)

上条「……ま、そんな感じでね。朝まで警戒してたらKONOZAMAなんですけどねっ」

テリーザ「上条さーん、ちょっと焼き過ぎなんでは……?」

上条「っとすいません」

――朝食後 厨房

上条(100人分――と、思ったが実際には半分ぐらい。テリーザさん曰く「まだ寝てる」――の朝食を作り、同じメニューを食べ終った)

上条(時間までに来ない人はトーストと冷めたスープを勝手に食べるシステム。ま、妥当か?)

上条(レッサーの食事はスコーンとペットボトルに入れたコーヒーを持ってってやる――という設定で、テリーザさんに許可して貰った)

上条(昨日の夜から何も食ってないだろうし、いざという時に直ぐ食べられるように)

上条(……っても、今日の夜までに帰って来ないようだったら、深夜に第一聖堂へ乗り込むつもりだが)

上条「……」

上条(……あんま役に立ってないなぁ、俺。この旅が始まってから思ってたんだけどさ)

上条(電車の中では露払い、スタジアムでも時間稼ぎ、挙げ句夢の中では……)

上条(ワトソン役?つーかツッコミ役か?段々役立たずのレベルが上がってる気がする!)

上条(……ま、今から立ち位置を交換して貰う訳にも行かないだろうし、俺は俺でするべき事をしよう。出来るだけの事を)

上条(適材適所、本当にそうだか怪しいもんだが。他にやるべき事も無く)

上条(レッサーがいない分、その代わりの”目”として憶えおかないと……!)

テリーザ「……あのー、上条さん?」

上条「あ、え、あはい?何?」

テリーザ「今日これから、どうされるんですか、って聞いたんですが」

上条「これから、ですか。えぇっと、確か第一聖堂で開かれるミサは午後からですよね?」

テリーザ「いえ、第二聖堂です。新しい方の」

上条「夕飯はそれが終ったら仕込むとして、テリーザさんは出ないと」

テリーザ「えぇ子供達と遊ぶ約束がですね」

上条「その子達も俺達みたいな体験入学――じゃなかった入信した人の子供なんですか?」

テリーザ「あ、いえ司祭様や病院で働いている方の、です」

上条「義務教育的に大丈夫なんですか、それ?」

テリーザ「えーと……はい、わたしとか教員免許を持った人間が居ますし、何とかなるんじゃないかな、と」

上条「……あの、すいません。昨日の夜、レッ――妹とも話した事なんですけど」

テリーザ「はい?」

上条「ここの教団、アバウト過ぎじゃないですか?そんなのでやっていけるのかなと」

テリーザ「……えぇはい、わたしも上条さんの仰る事はよく分かりますし、実際に司祭様へ相談した事もあります――けど」

上条「けど?」

テリーザ「……すいません。外の方にお聞かせするような話では、愚痴になっちゃいますので」

上条「別に俺は構わないですけど」

テリーザ「そ、それよりも上条さんっ、午前中は何をされるんでしょうか、とお伺いしたかったんですよ」

上条「俺ですか?そう、ですね。妹が起きて来なかったら、第一聖堂でも見学したいかなーと」

テリーザ「そうですか……それじゃマズいですかね」

上条「あ、何か仕事あるんだったらやりますよ?どうせ妹待ちですし」

テリーザ「でしたら、そのー、非常に申し訳ないんですが、えっとですね」

テリーザ「……うーん、妹さんがいらっしゃったら是非にとお願いしてたんですが」

上条「男手だとマズいとか?」

テリーザ「あ、いえいえっ!そんな事は全然!そうじゃなくてですね、その子供達と遊んでくれたらなーと」

上条「あぁ確かに。子供から懐かれそうな感じだもんな……メンタルが近いっつーか」

テリーザ「そこまでは言いませんけど、フレンドリィな方ですよね?」

上条「フレンドリィつーか……ルナティック?まぁ、仲良くなれそうな気もする。でも俺だって結構得意ですが?」

テリーザ「あ、それじゃお願いしちゃっても構いませんか?わたしはお洗濯とお掃除をやっちゃわないと」

上条「あぁ時間かかるんですよねー。全自動で2時間とかフツーだし」

テリーザ「?日本だと違うんですか?」

上条「最速で15分とか?」

テリーザ「早っ!?」

上条「脱水入れても20分ぐらいで終るコースあるし、普通は一時間洗濯機回してる事なんてないですかねー」

テリーザ「もしかして学園都市の最先端技術とか、でしょうか?」

上条「学園都市から来たのは来たけど、普通の家庭向け家電だって同じです」

テリーザ「上条さんっ!」

上条「あ、はい?」

テリーザ「学園都市から、っていうのは……?」

上条「言ってませんでしたっけ?ほら、これ学生証」

テリーザ「凄いですっ!何か超能力みたいなの使えるんですよね!?」

上条「あー、残念。俺は使えませんよ」

テリーザ「あ、そうなんですか?……あ、それじゃこう見えてもとても頭が良いとか?」

上条「こう見えて……まぁ、普通だなぁ」

テリーザ「秘密道具的なあれとかどうです?」

上条「あんまハイテクな機器は持ち出すの禁止されてる。技術流出がどうのって」

テリーザ「……」

上条「……何?」

テリーザ「なんか、こう、わたしの想像していた学園都市のイメージと違います……」

上条「ガッカリしてんのは分からない事もないですが、都市240万人中、能力を実用レベルで使えるのは一部だけですからね?」

上条「それにしたって『突き抜けた』連中は持て余されてる気もしますし」

テリーザ「なんだ……意外と普通?専用のカリキュラムとかないんですか?」

上条「俺の通ってる高校じゃこれっつって別に?」

テリーザ「子供達喜ぶと思ったんですけどね」

上条(学園都市に居ながら、魔術師達とケンカしてる時間の方が長いだなんて言えない……!)

上条「あ、でもこういう施設や乗り物があるとか、他の能力者がこんなん居るとか、差し障りのない範囲でなら言え――」

テリーザ「是非それでっ!わたしも聞きたいですしっ!」

上条「――るって、食われたんだがまぁはい、じゃそれで」

――病院

上条 コツ、コツ、コツ、コツ、コツ

上条(リノリウムの無機質な床、真っ白に塗装された壁と天井)

上条(カエル先生のトコじゃ、小児病棟はもっとライトブラウンの明るい色で統一されていた。なんでも色が心へ与える影響がどうとか)

上条(暖色系と寒色系、どっちがリラックス出来るかって言ったら、やっぱり暖色系の方が脳波が安定する実験結果も出ている)

上条(最近ではそこから踏み込んで、古民家風の、要は木目調がある壁紙も人気があるんだとか)

上条「……」

上条(てか今の時代、ログハウスでもない限りは木目調なんて縁が無いはずなのにな。何かホッとするらしい)

上条(先輩が前に書いたレポートで、長期間の宇宙ステーションに滞在する飛行士達がどこに集まる傾向かあるのか、っての)

上条(自室か?談話室か?それとも研究室か?友達の部屋とか?……以上の答えを思った奴は残念、外れだ)

上条(答えは水耕栽培や無重力下での植物実験をしているプラント、要は植物の所へ集まったんだってさ)

上条(プライベートな時間はそこで過ごす……やっぱ地上を離れると余計に緑を求めるみたいな感じなんだろうな)

上条「……」

上条(てか先輩、なんで超絶頭良いのに俺と同じ高校通ってんだろ?能力が無くたって研究職としてはやってけそうだけども)

上条(まぁ……帰ってたら聞いてみよう――この戦いが終ったら、学園都市へ戻って先輩に答えを貰うんだ……!)

上条「……」

上条(完全に死亡フラグですありがとうございました……てか、レッサーと俺、ちょくちょく踏んでるけど大丈夫かな?死んだりしないよね?)

上条(――と、考えながら来た訳だが)

――Salon-A(談話室A)

上条(飾り気も何にも無いルームプレート。指定された場所はここで合ってる)

上条(受付から途中、ナースさんの一人ともすれ違わなかったのは……まぁ、朝が早いからか?)

上条(ちなみにここの病院は一・二階が診察室と検査室?で、三階から上がずっと入院患者”等”の部屋だそうで)

上条(出家信者もこっちに泊まり込みで介護しているんだって話。でもってその人らの子供達の面倒を看るのが俺の仕事)

上条(……さて、出来れば内部の話も聞きたい所だが)

コンコン

上条「おっはよーございまーすっ……?」

子供達「……?」

上条「こんにちは、上条です。日本から来ました、よろしくー」

子供達「……」

上条「あぁテリーザさんから何も聞いてないか?午前中一緒に遊ぶ事になったんだけどさ」

上条「あー、良かったら自己紹介なんてしてくれると嬉しいかなー、なんて」

男の子「……あの、いいか」

上条「Please?」

男の子「なんか、不幸っぽい顔してるよな?」

上条「どんな顔?つーか顔で判断すんなよ!大事なのはハートだろ!」

男の子「なんか、こう、俺の父ちゃんがよく小銭を落とすんだけど、雰囲気が」

女の子A「あー……そうだねー、ケインのお父さんみたいな感じかも?」

女の子B「……うん」

上条「……もしかして、お前のとーちゃん道でよく女の人とぶつかったりしない?」

男の子「するする!それでよくからまれたりするぜ」

上条「居るんだな、どこにも俺みたいなの――で、君はケインでいいのかな?」

ケイン(男の子)「あぁケイン=パワスカァだよ。こっちの小さいのがカレン」

カレン(女の子A)「カレンです。いじめないでね?」

上条「しないしない。で、そっちのもっと小さい子は?」

女の子B「……」

ケイン「クリスタ――クリスって言うんだけど……まぁ、そんな感じかな」

上条「宜しく、上条当麻――トーマって呼んでくれ」

クリス(女の子B) コクコク

上条「全部で三人なのかな?他にお友達とかは?」

カレン「一週間前まではセレナちゃんがいたんだけど、お父さんと一緒にかえっちゃったんだってー」

上条「セレナちゃん?」

ケイン「あぁスッゲー歌がうまくてさ。キーボード弾いてくれたりもしてたんだよ、ほらそこの」

上条(部屋の隅の方、金属製のラックに収まっているのはキーボードだ……ってもパソコンの奴じゃなくて、鍵盤の方)

上条(……なんかアリサの持ってるのと似てんな。まぁどれも基本的には同じなんだろうけどもだ)

クリス「……トーマお兄ちゃん、弾ける、の……?」

上条「んー……ちょい待ち、電源は」

ケイン「コードはこれ」

上条 プツッ……ジャーン

カレン「わぁ」

ケイン「弾けるんだ、兄ちゃん?」

上条「ほぼ毎日、アリサの歌の練習に付き合ってから、まぁ簡単な伴奏ぐらいは何とか」

クリス「……ARISA――ARISAっ!?」

上条「食いつき良いなっ」

ケイン「クリスはこの間のロンドン公演でファンになったんだってさ。兄ちゃんもか?」

上条「ファンっつーか、友達?」

カレン「ホントっ!?」

ケイン「オイ!子供相手だからってウソつくなよ!」

上条「いやマジだって――ちょい待ち、今写メ出すから」 ピッ

クリス「ARISA……!」

ケイン「兄ちゃん達一緒に写ってる……コラ?よくできてんなー」

上条「コラ言うな!アイドルとの集合写真作って喜ぶ程、俺は寂しい人生送ってないわっ!」

カレン「てーかクリケットのユニフォーム着たお姉ちゃん達?何かの試合の後なの?」

上条「試合って言うか、まぁユーロトンネル抜けた直後だけどさ」

ケイン「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

カレン「ケインうるさいよ!」

上条「俺を指さして、どしたん?」

ケイン「俺、トーマ兄ちゃん見た事あるなって思ってたんだよ!どっかでさぁ!」

上条「俺を?人違いじゃないのか?」

ケイン「音楽番組、昨日やってた!」

上条「あー……フランスのか。マネージャーがちょっとアレだから代役で出たヤツな、はいはい」

上条「つーかあれ、フランス以外でも流れてんのか……?生き恥が拡散され――うん?」 クイクイッ

クリス「……トーマお兄ちゃん、ARISAのお友だち、なの?」

上条「だからそう言ってんだろ。信用無いなぁ」

ケイン「じゃ学園都市から来たのか!?スゲー!」

上条「先言っとくけど、能力は使えないからな」

ケイン「……うわー、テンション下がるー」

上条「いや、実際そんなもんだぜ?殆どはレベル2以下で日常生活じゃ役に立たないから」

ケイン「えー、火使えたら格好いいだろ」

上条「じゃ聞くがケイン、お前日常生活で火ぃ使うか?機会があるって?」

ケイン「あ、あるだろ!色んな事に!」

上条「例えば何?」

ケイン「んー……悪いやつと戦う時、とか?」

上条「銃使った方が早いよ。よっぽど高火力――強い能力でも無い限りはな」

上条「家の中ではコンロがあるし、バーベキューでマッチ忘れた時ぐらいかな?」

カレン「悪いやつをやっつけろ!」

上条「いや、そうそう悪い奴居ないよな?こっちから探しまくるのもおかしいし、警察の仕事だ」

上条「それとも何だ。世の中には『悪の秘密結社バードウェイ』みたいなのがあって、対抗するためにヒーローになるんか?あ?」

ケイン「……なんだよ。夢がねーじゃん」

上条「って言われてもなぁ。諦めろ、現実なんてそんなもんだよ」

クリス クイックイッ

上条「あぁごめん、何?ARISAの曲以外は、ドラク○の祠のテーマぐらいしか弾けないよ」

ケイン「なんだその限定的な持ち曲は」

上条「中学へ入ってからは大体合唱ばっかしてたからなぁ。ジュニアスクールん時以来、あんま触ってな――」

クリス クイックイッ

上条「あ、度々ゴメン。で、なに?」

クリス「……お話し、したい」

上条「してんじゃん?」

クリス「じゃなくて……その」

カレン「ARISAちゃんにってことじゃないかな?クリス、大っファンだから」

上条「成程。話すか、うーん……?」

ケイン「ケチケチすんなよ。いいだろ話ぐらい」

上条「あぁいやそう言う訳じゃなくてだ。そのな、今アリサはイタリアでコンサートの準備してんだけどさ」

ケイン「邪魔したらわるい、よな」

上条「……うーん?取り敢えずメールだけでも送ってみるよ」

カレン「あ、それだったらあたしたちの写メ送らない?こんなファンがいますよーって」

クリス「……うん」

上条「あー、そうだな。んじゃ並んで並んで」

ケイン「あ、俺が撮るよ。トーマ兄ちゃんも写ってた方がレス早いような気がするし」

上条「なんで?」

ケイン・カレン・クリス「……」

上条「オイ待てガキ共!その顔を見合わせて『やれやれだぜ?』みたいなリアクションにはどんな意味があんのか言ってみろ!」

ケイン「それじゃ言うけどさ――」

上条「聞きたくないなっ!」

カレン「……トーマお兄ちゃん、子供……」

上条「……いいかい?男ってのはねいつまで経っても少年だって事なんだよ、主にメンタルが」

ケイン「いっしょにすんなよ――はい、撮るぞー、いち、にの――」

カレン「あ、待って待って!クリスー!」

クリス「う、ん」

ケイン「――さんっと」 パシャッ

上条「撮れた――なんか、妙に近いような気がするけど……?」

カレン「なーに?」

上条「……うん、気のせいだよ。きっとな!」

――イタリア バチカン市国

鳴護「……うーん」 モグモグ

フロリス「どったの?食事が進んでない――事もないみたいだケドさ」

鳴護「いやー、なんか当麻君達連絡ないなって」

フロリス「連絡って。まだ二日ジャン?ARISAってば心配性かー、ん?」

鳴護「心配は……うんまぁ、しているよねぇ。色々な意味で」

フロリス「あー……だーよねぇ、するねぇ、色々な意味で」

ベイロープ「あなた達、さっさと食べないと片付かないんだけど」

鳴護「あ、すいません。もう少しだけ」

ベイロープ「ステージで歌いっぱなしなんだから、カロリー遣うのは理解出来るのよ?
でもね」

ベイロープ「その細い体(除く一部)のどこに山盛りあったスコーンが消えるのかと……?」

鳴護「やですよぉ、まるで人をビックリ人間みたいに言わないで下さい」

ランシス「……人体の神秘を――その胸が!」

鳴護「……や、でもあたしベイロープさんよりも小さいですし?」

フロリス「つってもワタシやランシスよりは大きいんだよねー。レッサーとタメだし」

ベイロープ「……あのおバカが今頃どんなヘマをしているのかと思うと……!」

ランシス「近くに居ても遠くに居ても、胃が痛い……」

鳴護「ま、まぁまぁ。お気持ちは分かりますけど、今頃当麻君がボケを捌いてるんじゃないかなー、なんて」

フロリス「ちゅーかジャパニーズの貞操が心配だぜ、いや割かしマジでさ」

ランシス「あのヘタレが……?」

鳴護「レッサーちゃんヘタレ扱いなんだ……?」

ランシス「ヘタレもヘタレ……他人の恋愛事に首突っ込むけど、いざ告白されるとキョドる」

鳴護「慣れてそう――あ、いや遊んでるって意味じゃなくてですよ?その、性別とか関係無しに仲良しになるタイプじゃ無いんですか?」

フロリス「その認識であってる――ん、だケドねー。ワタシら、言う程青春してるワケじゃないんだな、これが」

鳴護「そうなんですか?」

ベイロープ「現役アイドルと同じ、ってのは言い過ぎたけどね。えっと、能力は才能の他に時間を費やせば費やす程、比例するわよね?」

鳴護「ですねぇ。あたしなんかいつまで経っても、中々垢抜けなくて、はい」

フロリス「外見は、ってかアリサその台詞余所では言わない方がいーよ?刺されたいんだったら別だケドさ」

鳴護「はい?」

ベイロープ「ま、勉強にしろスポーツにしろ、持って生まれた才能も当然ある――けど、その才能にだって大小があるわ」

ベイロープ「だから最終的にはどれだけ打ち込んだか、時間を遣ったのかに実力は正比例するの」

鳴護「まぁ、はい、そうですよね」

ランシス「……で、私達の場合だと、クーデター未遂の引き金を引けるぐらい、魔術的にはそこそこの腕を持った魔術師、だと」

フロリス「一流には少し足りないけど、ヨンイチなら聖人にだって勝つ自信はあるゼ!……ワタシはしないケド」

ベイロープ「おいそこ、反省しなさいよ!そーゆーとこを!」

鳴護「まぁまぁ、それで?」

ベイロープ「……なので私達も!当然!それ相応の訓練やら魔術的な能力を高めるために日々研磨している――」

フロリス「――つまり、ヤローと遊んでる時間なんてほっとんど無いワケさ。Ah-Ha?」

鳴護「あ、あいむすたんっ!」

ラシンス「だからこうして四人が四人とも毒牙にかかる……あ、ごめん。アリサも入れて五人か」

鳴護「――さってと!それじゃ今日も元気に歌の練習をしようっと!」

フロリス「そーゆートコ、誰かさんに似てるよーねぇ」

人工音声『メール・ガ・キタ・ヨ』

ランシス「ミ○さん?」

鳴護「うん、お友だちから貰ったんだけど、中々難しくて――って、当麻君からだ」

フロリス「おっ、ようやっと近況報告かよ。タルんでなぁ」

鳴護「……」

ベイロープ「中身はなんて?あ、もしかしてプライベートなの?」

鳴護「……っていうかね、その、写メが同封されてきたんだよ、うん」

ランシス「……誘拐された姿、とか?」

鳴護「じゃないけど!じゃ、ないんだけとも、うーん?これはちょっと……」

フロリス「いーから見せ――Oh,,,,,,」

ラシンス「どれ……あぁ」

ベイロープ「何よ、三人して」

鳴護「ベイロープさんも、どうぞ……?」

ベイロープ「ありがと……何……?」

ベイロープ「『お世話になってる先でARISAのファンの子達と仲良くなりました』」

ベイロープ「『ARISAの大ファンでどうしてもお話ししたいと言っているのですが、良かったら話してやってくれませんか?』……」

ベイロープ「何よ、普通じゃない」

フロリス「フツーじゃないぜ!その後、スクロールさせてみ?」

ベイロープ「……はい?」

ランシス「いいから」

ベイロープ「んー……………………」

ベイロープ「……」

ベイロープ「……あぁ、はいはい。フツーじゃ無いわね、これは」

鳴護「当麻君がっ、当麻君がまだ旅先で女の子を!?」

フロリス「しかもかなーり犯罪的な臭いがするよね」

ラシンス「……それも、ふ・た・り」

鳴護「なんかもう一ヶ月以上合ってないような気がするのに!来たのは犯罪っぽいメールだよ!?」

ベイロープ「流れでそうなったんだろうけど、この距離感は……」

――ダンウィッチ

上条「時差はどんぐらいあんのか知らないけど、まぁ数時間も待てば返事――」 ピピピピッ

上条「来たな、早速――『もしもし?上条ですが』」

アリサ『……あの、当麻君さ』

上条「『何か久しぶりだなー。どう、元気?トラブルとか起きてない?』」

アリサ『その子達は、ちょっとまだ犯罪と思うよ?』

上条「『よし!待とうか鳴護さん!君は恐らく三人の悪魔にたぶらかされているから!』」

上条「『多分率先して煽った羽根生えた悪魔、そして地味ぃに煽った爪の生えている悪魔』」

上条「『最後に何となく流れでノッたおっぱいの悪魔が近くに居る筈だ……ッ!!!』」

鳴護『……流石に本気にはしてないんだけど、うん、まぁまぁ、かな』

上条「『なら良かった』」

鳴護『当麻君は?危ない目に遭ったりしてないかな?』

上条「『信用無いなぁ、俺」

鳴護『誰か新しい女の子のお風呂を覗いちゃったりしてない?』

上条「『……し、信用無いなぁ、俺っ……!」

鳴護『今、ドモったような……?』

上条「『――と、言う訳で!朝から無茶ブリで悪いんだけど、良かったら話してくれませんかねー、と!』」

鳴護『怪しいし……帰ったら皆で聞くからね?そこら辺を中心に』

鳴護『で、お話しするのは、うん、いいけど……英語、なんだよね?やっぱり?』

上条「『ちょい待ち』――クリス、お前日本語は」

クリス「『ハナセマス、スコシダケ』」

ケイン「テリーザ姉ちゃんから教わってるからな、俺達」

上条「子供の方が語学の上達が早いっては聞くけど――『だ、そうだ』。それじゃ替るよ、はい」

クリス「『モシモシ……?』」

カレン「……クリスのあんな顔、久しぶりに見た」

上条「そうなのか?」

カレン「うん。一番仲良かったセレナちゃんが居なくなって、ずっとさびしそうにしていたからからねー。あーぁ」

ケイン「つーかトーマ兄ちゃん、マジでARISAと知り合いだったんだな!スゲー!」

上条「凄いのはアリサであって俺は全然だよ。無いよりはマシ、かも知れないぐらいの感じだし」

ケイン「えー、そうかー?」

カレン「ARISAちゃんも、きっとトーマお兄ちゃんが好きだと思う――あ、次はわたしが話したいっ!」

上条「そりゃ嫌われてはねぇだろうけどさ。つーかな、お子様共。男女であっても友情は成り立つんであってだ」

上条「直ぐに好きだなんだって結びつけるのは、それこそお子様の発想だぞー?」

ケイン「カレン、聞いてないし。つーかいなくなる前のとーちゃんも同じ事言ってた」

上条「お前の父ちゃん何してたんだよ――何?居なくなった?」

上条(ケインはイギリス人にしては肌が濃い。それと『パワスカァ』って確か――)

上条(――居なくなったインド人の一人のファミリーネームか……!)

ケイン「ん、どーした兄ちゃん?」

上条「ん、あぁいやいや。悪い事聞いたよな、ごめん」

ケイン「いいって。ここでの暮らしも悪くないし、てか前に住んでた所よりかずっと良いよ」

ケイン「なぁ、それよりトーマ兄ちゃんってえらい人なんだろ?司祭様みたいに」

上条「違う、けど。何?」

ケイン「……クリスとカレンのことだけどさ。二人とも親に合わせてやってくれないかな、って」

上条「……会えない、のか?

ケイン「……うん。俺は、まぁとーちゃんの事だから、どっかの悪い女に引っかかってんだし、いいんだよ」

ケイン「でもあの二人は、やっぱ子供だからな」

上条「そっか。良い兄貴やってんだな、お前」

ケイン「そんなんじゃねーよ!ただ、とーちゃんが帰って来て、女の子ほったらかしにしてたら怒られるだけだからな!」

上条「って事は、カレンとクリスの親御さんはここの中で働いてるんだよな?だったら――」

ケイン「……会いに行っても、直ぐ見つかって連れ戻されるんだよ。なんかこう、水族館っぽい部屋の中にいるんだけど、こっちからは聞こえないらしくて」

上条「水族館……ICUか?……て、だったら病気か何かじゃねぇのか?」

ケイン「……わかんない」

上条「だよなぁ。うーん……」

上条(『濁音協会』も気になるが、それ以上にカレン達の両親の事も気にかかる……さて?)

上条(もしもこれが本当に何かの病気で隔離してるだけ、とかならまぁ理解は出来る)

上条(……想像したくは無いが、末期癌とかで――いや、違うな?それだったらむしろ、肉親には会いたがる筈。俺ならそうする)

上条(下手に動いて警戒されるのは危険――いや、それはない。それだけはない)

上条「な、ケイン」

ケイン「何?」

上条「その部屋って、何階の何号室だ?」

ケイン「調べてくれるか!?」

上条「確約は出来ないけど、俺の出来る範囲であれば何とか調べてみる」

ケイン「ありがとうな、兄ちゃん!」

上条「気にすんな。それで?」

ケイン「カレンのかーちゃんとクリスのとーちゃん、8階の812号室――エレベーターから一番遠い部屋だよ」

上条「分かった」

カレン「――トーマお兄ちゃん、アリサちゃんが替ってってっ!」

上条「ありがとう。あ、ケインは?」

ケイン「俺はいいや。日本語、あんま得意じゃ無いし」

上条「そか――『もしもし?』」

鳴護『えっと……嬉しいは嬉しいんだけどね?そのさ、なんかこう――』

上条「『あーごめんな、忙しい時に無理通して貰っちゃって』」

上条「『俺もアリサと話したかったし、その内借りは返すからツケといてくれ、なっ?』」

鳴護『……』

上条「『もしもーし?』」

鳴護『当麻君はそういう所がズルいと思いますっ!』

上条「『……なんで俺怒られたの?……ま、まぁレッサーから連絡が行ってると思うから、詳しく話はしないけど』」

鳴護『え?レッサーちゃんから?』

上条「『あれ、違う?』」

鳴護『ちょっと待――』

フロリス『――あー、ハロハロー?フロリスだケドー?』

上条「『おっす。お前も何か久しぶり』」

フロリス『二日経ってないジャーン?なんだー、ジャパニーズはワタシが恋しいとかかー?』

上条「『……ある意味な』」

フロリス『……ふぇ?』

上条「『レッサーのボケを一人で千切っては投げ孤軍奮闘している立場からすれば、もう一人ぐらいツッコミ要員が欲しかった……!』」

フロリス『苦労してんなー。ま、ワタシに声かけてかなかったそっちが悪いね』

上条「『……みんな怒ってたり、する?』」

フロリス『うんにゃ別に?アリサは「またか」みたいな感じで、ランシスは無反応』

フロリス『ベイロープはコッソリ合流しようとしてたみた――あぁ、ゴッメーン!本題に入る!入るから!』

上条「『なんで二回……?あと向こうの電話口で一体何が起きてんだ……?』」

ランシス『……単刀直入に言えば、レッサーから連絡来てない』

上条「『……はい?あ、ランシス』」

ランシス『正しくは、一昨日の夜?「明け色の陽射し」から逃げた後、貰ってないって言うか』

上条「『あぁ……そうか、了解。後から送っておく』」

ラシンス『……気をつけてね?ジョークじゃなく……』

上条「『お、心配してくれるのか?』」

ラシンス『もし何かあったら、ダンウィッチ火の海にしそうな身内が二人……』

上条「『止めて上げて!?仮に何かあったとしても一般人は逃がして上げて!』」

上条「『てかお前、今二人って言わなかった?もしかして俺そんな過激派と喋ってんのかな?』」

ランシス『……アリサに替る?』

上条「『んー……いいや、取り敢えずは。それじゃまた』」

ランシス『んー……』 ピッ

ケイン「……あの、兄ちゃん、ちょっといいか?」

上条「おう?」

ケイン「ハーレム要員、いっぱいなんだな?」

上条「子供がそんな言葉使っちゃいけません!どこで憶えて来たのっ!」

ケイン「否定しろよ。そこ大事だろ」

――バチカン

ランシス「……はい、ありがとう」

鳴護「あ、はい……」

フロリス「ん、まぁ用件がアレだったケド、元気そうでよかったジャン、ねー?」

ベイロープ「そうね。相変わらずっていうか、レッサー側に居なかった、わよね?」

ランシス「居たら騒ぐし……きっと単独行動してる。間違いない」

フロリス「あのイノシシを止めるのは誰にも出来ないしねー。ね、アリサ?」

鳴護「ぅぇっ?あー、う、うん?そう、だよね?」

フロリス「どったん、いつもよりボーっとしてるよ?」

鳴護「んー、ちょっと気になる事が」

フロリス「……ボケがスルーされた……!」

ランシス「まるでちょくちょくイヤミを言うサブヒロインの立ち位置」

ベイロープ「黙ってなさい二人。それは何?大事な事?」

鳴護「って訳でもない、と、思うんですけど」

フロリス「あ、分かったアレじゃね?『他人と仲良くするのにダシに使いやがって!こっちは忙しいんだプンプン!』みたいなカンジ?」

鳴護「そんな事はっ!?ファンの子とお話し出来て嬉しいよ?ホントだからねっ?」

鳴護「ロンドン公演、母子家庭の親子さんをご招待するプログラムで来てくれたみたいで、とっても楽しかったって言ってくれたし!」

ラシンス「それは良い事……じゃ、何が引っかかってるの?」

鳴護「何かね、施設みたいな所で子供達をまとめて生活してる、って言ってたんだけど。そこでセレナちゃんってお友だちが居たんだって」

鳴護「その子があたしの曲とか、キーボードで演奏しながら歌ってくれて、ファンになったのはそれがきっかけだってお話」

ベイロープ「まぁ、いいんじゃない」

鳴護「……ただ、その、セレナちゃんが歌ってくれたあたしの曲の中に、なんか別の人のお歌も入ってたみたいで」

フロリス「あー……分かる分かる。プロデューサーが一緒だと、楽曲もそっくりになるのってあるよねぇ」

鳴護「『一番気に入った曲』として、誰かの曲をあたしのみたいに言ってくれたんだけど、最後まで言い出せなくて……」

ベイロープ「ま、仕方がないんじゃない?そもそもが向こうの勘違いだし、マ――あの男に後からメールでも送れば」

鳴護「それはそれで夢を壊しちゃいそうで、何か恐い気がするんですが」

フロリス「その曲”だけ”を気に入ってんだったらともかく、全体のウチの一つだから放っておきゃいージャン」

フロリス「つーか好きなシンガーとの直接会話で、違う曲を絶賛するなんてトラウマもんの失態だぜ。いやマジで」

鳴護「うーん……?」

ラシンス「……ちなみに、なんて曲?」

鳴護「えっとねー、確か――」

鳴護「――『セカイヨオワレ~WORLD END~』、だって」

――『ヤドリギの家』教団本部 病院談話室

上条「で、俺は言ってやったんだ――『いい加減目を覚ませよ!』」

上条「『もしもお前達が自分の復讐しか見えないってんなら、誰を犠牲にしても巻き込んでもしていた!』ってな」

ケイン「……あのー、兄ちゃん?学園都市の話してたんだよな?」

上条「ん、あぁ今もそのつもりだけど?」

ケイン「なんで途中からラノベになってんだよ!ズレてるだろ!」

上条「『ズレじゃない桂だ』」

ケイン「あれ?そんな人出て来てたっけ?」

上条「ま、そんなこんなで毎日退屈はしないぜ!退屈だけはな!」

カレン「涙目になるぐらいつらかったんだね……よしよし」

上条「!?」

テリーザ「お疲れ様でーす。みんなー、上条さんに迷惑かけてないー?」

クリス「お姉ちゃん……」

テリーザ「……あれ?上条さんが半泣きで慰められ――こら、ケイン!」

ケイン「俺じゃねーよ!兄ちゃんが勝手に泣き出したんだよ!」

テリーザ「てか大の男の人が泣くって、よっぽどじゃないと……」

上条「……テリーザさん」

テリーザ「はい?」

上条「俺、今日からここの家の子になるっ!」

テリーザ「あぁはい、そういう与太話は後でどうぞー。お昼ご飯持ってきましたから、さ、食べて下さい」

上条「……なんか少し、レッサーの気が分かったような気がする」

上条「てかもうそんな時間ですか?あ、昼の手伝いするの忘れてた……」

テリーザ「いえいえっ、とんでもないです。本当はお客様なのに、こうやってみんなと遊んで貰ってるだけで、もうっ」

クリス「トーマ、おもしろかった、よ?」

カレン「もうちょっとステキだったら良かったんだけど」

テリーザ「こーら。失礼ですよあなた達!」

上条「……ま、事実だしなぁ」

ケイン「苦労してんだなぁ……」

上条「まぁな」

ケイン「そっちじゃなくって、兄ちゃんのまわりの子達だよ」

上条「はい?」

テリーザ「あー、はいはい。お喋りはそこまで!早く食べちゃって下さい、ケインも!」

ケイン「うーす」

上条「俺は食堂で食べればいいのかな?」

テリーザ「えぇ、メニューが違いますから」

上条「てか、コイツらの方がきちんとした食事になってる」

上条(パンと肉類、あとサラダにゼリーと牛乳。学校の給食みたいなメニューだ)

テリーサ「ちょっと、その」 クイッ

上条(外で、って事ね。了解了解)

上条「それじゃまたなー」

カレン「トーマお兄ちゃん、午後は来てくれないのー?」

上条「ミサに出て、その後夕メシの支度も手伝うって約束しちまったからな。ちょっと難しいと思う」

ケイン「ミサぁ?お前、あんなのに出るのかよ!?」

上条「あんなの?」

テリーザ「ケイン!」

ケイン「姉ちゃんだって言ってたじゃないか。あんなのは、ただの――」

テリーザ「――上条さん、こちらへ」

上条「でも」

テリーザ「いいですから、どうか外へ」

上条「……ん、でもその前に――ケイン」

ケイン「……なんだよ」

上条「そのな、俺昨日買い出しへ付き合ったから分かるんだけど、お前らの食ってるものってテリーザさんが買ってきてくれたんだよ」

ケイン「それがどうしたんだよ!姉ちゃんにとっては仕事なんだろ!?」

上条「ま、そうだな。それは間違いない。けど」

上条「昨日、大量の買い出しとは別に、プリンとかゼリー後お菓子買ってたんだよ。会計別にしてたから、後ろの客がいやーな顔してたから憶えてんだ」

上条「んで、ここまで話せば想像つくだろうが、お前らが食ってんのまさにそれだわな」

カレン「それ、どういうお話なの?」

上条「多分、『教団』の方じゃ『テキトーにやっとけ』ぐらいの指示しかされてなくて、テリーザさんが自腹切ってしてくれたんだと思うよ、それはな」

ケイン「……だから、なんだよ」

上条「この人はお前の敵なんかじゃねーぞ、って話だ。少なくとも悪意でどうこうしようとしている人間じゃ、ない」

上条「俺の言ってる意味、分かるか?」

ケイン「……あぁ」

上条「だったらお前はやるべき事があるに決まってる。そっちのちっさい子達にしてるのと同じだ。何かあったら世話になった人も守らなくちゃいけない」

ケイン「俺が?まだガキなのにか?」

上条「歳も立場も肩書きも、誰かを助けたいんだったら関係ない。言い訳にも理由もならいし――ただもし理由があるすればだ」

上条「――お前が男だからに決まってんだろ」

――病院 廊下

テリーザ「……」

上条「はっきり聞くけど、ケインは居なくなったインド人の子供だよな?」

テリーザ「それは――」

上条「『良い職場を見つけた』ってのは本当なのか?それとも『誰か』から聞いた事なのか?」

テリーザ「……上条さんは、どうして」

上条「……ケインの親父さんは、もう亡くなってるんだ。そして保険金が『教団』へ下りる事になっている」

テリーザ「そんなっ!?」

上条「三人が三人ともだ。死因は……えっと、CF?だかってバードウェイが言ってたな」

テリーザ「『……Cardiac Failure……!』」

上条「カーディ?何?」

テリーザ「日本語では『心不全』です……」

上条「あれ?それ確かよく分からない死因の時につけられるんじゃ……そうか。『病院』だもんな、ここは」

上条「医者が共犯だってなら、死因なんて幾らでも誤魔化せる。イギリスの医療がザルだからって、幾ら何でも!」

テリーザ「……知らないんです」

上条「知らない?ここで生活しているのにか?」

上条「ケインのとーちゃん達とも知り合いだったんだろ?不思議に思わなかったのかよ!?」

テリーザ「だって――分かる訳ないじゃないですかっ!?わたしは!ただの!学生で!」

テリーザ「偉い人達から言われるだけしか!出来る事も少なくてっ!」

上条「……てかさ。聞こうとは思ってたんだけど、テリーザさんはどういう立場なんだ?」

上条「助祭――って言う割には雑用しかしてないし、情報も殆ど知らな――」

テリーザ「知りません!本当に分からないんです、何もかも!」

テリーザ「わたしだって!チャンドラーさん達が、そういう事になってるだなてん、知らな――」

上条「あぁ、ごめんな。俺が悪かった。責めるつもりはなかったんだよ、ただ話を聞きたくてさ」

テリーザ「……」

上条「その、それじゃ順番に教えて貰っていいかな?答えたくない事は答えられない、で構わないから」

テリーザ「……お話出来るのは、その、何にもないんですよ、ホントに!」

上条「ケインの事は?」

テリーザ「ケインのお父さん達が居なくなって、司祭様からお聞きしたぐらいで!」

テリーザ「子供達の事をお伝えしても『直ぐに会える』ってだけ!」

上条「司祭様なぁ。えぇっと、確認するけど主教って人は、ウェイトリーさんで合ってるよな?」

テリーザ「はい……主教、もしくは教主……ウィリアム=ウェイトリー……わたしは直接お目にかかった事はありませんけど」

上条「ならテリーザさんの”上”の人は?」

テリーザ「ウェイトリー司祭です」

上条「同じ名前って事は、家族の誰か?」

テリーザ「えっと、一人息子だってお話しになっているのを聞いた事があります。名前は確か――」

テリーザ「――クリストフ=ウェイトリー……」

――病院 8階・廊下

上条 カツ、カツ、カツ、カツ、カツ

上条(想像はついていた筈だ。ウィリアム=ウェイトリー医師が啓いた新興宗教)

上条(当然関わってる――っていうか、残っている『濁音協会』の幹部は二人。ウェイトリィ兄弟)

上条(ダンウィッチの呪われた双子――とは、一体誰の言葉だったろうか?)

上条(……聞いてもないのに答えをポンポン返してくれる相方は、俺の隣には居ない、が)

上条「……」

上条(……これ、思ったよりも深刻な状況じゃないのか?あ、いや、俺達がって事じゃなくイギリスがって意味でだ)

上条(どっかの街であった移民の、しかも10年以上に渡る犯罪すら取り締まれていないのに)

上条(明らかな魔術結社の恒常的な犯罪が、一体どうして放置されてんだよ?『必要悪の教会』はどうしたっつーんだ!)

上条(こんな時に助けてくれるのがアイツらの仕事――いや、待て待て。そう、じゃないな。それは、多分、違う)

上条(俺が知っている『必要悪の教会』の仕事は、特に対魔術師戦で共闘する事が多かった。けど、それは違うんだ)

上条(ステイルの得意な術式――それは『魔女狩りの王(イノケンティウス)』だ。名前が本質を表しているとすれば……)

上条(『教会』――それも、『必要悪』の連中にとっての”本業”は、きっと『魔女狩り』だ)

上条(異端とされる魔術師や魔術を悪用する奴らを粛正するのが仕事)

上条(……だと、すれば。本来この状況なんてのは当然看過出来るような事はない。それをしちまえば存在意義にすら関わる)

上条「……」

上条(でも、実際にステイルや建宮、神裂と言った連中の気配すら感じられないのはおかしい。確実に問題視しているのは間違無いのに)

上条「あー……」

上条(と、なると順番が逆か?ステイルが言ってた『10年前に壊滅させた”らしい”』とバードウェイが言った『生まれる前に壊滅された”筈”』の食い違い)

上条(バードウェイは12歳児だし、最低でも2年のズレがあるって事だが……うーん?これが何を意味しているのか……?)

上条(あの過剰なぐらい気違×が揃った面子で、わざわざ放置させるだけのメリットが――)

上条「……」

上条(……いや、放置して”た”、とすればどうだろう?)

上条(『濁音協会』と『必要悪』、多分それなりの地位に居る奴が癒着か何かしてて、見逃してやった、とか?)

上条(イタリアからイギリスにかけて、二つの十字教だけじゃなく、『明け色』も加わった大規模な駆逐戦。それが12年以上前の話で)

上条(その後、イギリスに潜んでいた奴を倒した――と、偽って匿い始めたのが10年前……そう考えれば辻褄が合うな)

上条「……」

上条(時間の差異はそれで説明が付くとして、ステイル達が介入してこないのは何故だ?)

上条(万が一、今の上層部も『濁音協会』と繋がっていたとすれば、妨害の一つでもある筈……)

上条(けれど俺達は完全に放置プレイ。助けても貰えないが、邪魔もされない。どっちつかず、ニュートラルって言った方が良いかな?)

上条(介入はしてないし、して来ないのは一体どういう意図があ――)

上条「……魔女狩り」

上条(――あぁクソッタレ!そういう事かよ!)

上条(『必要悪の教会』はイギリス清教に害を与えるものへ牙を剥く!その本質は『魔女狩り』であって『救済』じゃない!)

上条(インデックスの知識だって、本来は魔女の脅威へ対してとか言ってやがった!)

上条(そんなイカれた連中が!ここでこうしてご機嫌に異端ゴッコしやがってる連中を見つけたらどうする?)

上条(問答無用で全員『粛正』か、それに近い事をされるに決まってるじゃねぇか!)

上条(ステイル達が接触して来ないのも、多分『私達は”まだ”気づいていませんよー?』ってポーズのためで!猶予期間みたいなもんか!)

上条(俺達が失敗するか、制限時間を超えたらアウト……クソ!)

上条「……」

上条(……それ”だけ”だろうか?本当に?たったそれだけが理由?)

上条(『必要悪』の方はそうかも知れないが、『ヤドリギの家』は……?その裏に居る『濁音協会』はどう考える?)

上条「……」

上条(フランスの病院の前で、建宮は確かこんな事を言ってた筈だ。えっと)

建宮『それだけじゃなく佯狂――気狂いを装っていたとすれば?』

建宮『裏で色々画策しているのを悟られないようにするため、わざと狂っているフリをするのよ』

上条(『狂っていると、”装って”いる』……どこが?この場合は当て嵌まるのか?)

上条「……」

上条(……対応、だな。運営方針って言うか、アバウトすぎる経営、どう考えてもギリギリ回してる上、余裕の欠片もない教団運営……)

上条(俺達――少なくとも”俺”はおかしいと思っていた。法人格もそうだし、テキトーな運営方針もそう)

上条(……でも、それは当然だって思ったんだよ。連中がそういう筋違い、常識外れをするのは当たり前だって受け入れるようになっちまってた)

上条(行動が異常、言葉が異常、魔術が異常、そして安曇阿阪に『団長』、アルフレドにクリストフみたいな幹部連中)

上条(奴らは最初から『自分達は狂った一団である』と強調しまくっていた――)

上条(――そう、不自然な程にだ!)

上条(それらが全てポーズ、演技だとしよう……まぁ安曇や『団長』はおかしかったのかも知れないが、ウェイトリィ兄弟までは同じだって保証は無い)

上条(だとすれば、この『ヤドリギの家』の運営自体も、それも医療保険詐欺みたいな、しょーもない犯罪へ手を染めたのは何故……?)

上条(直ぐに目をつけられそうな犯罪をして、バレるリスクが高まってまで得られるリターンは……)

上条(素人目にも行き当たりばったりな行動で、曲がりなりにも『教団』一つ維持出来る筈がない)

上条「……維持?」

上条(……そうだ。答えは最初っから出ていた……)

上条「常識的に考えれば、至極真っ当な人間なら誰でも思い付く……!」

上条「ウェイトリィは『ヤドリギの家』を捨てるつもりだったのか……!」

上条(顔を出して堂々と名乗って、しかも12年前の事件の残党だと言えば、普通は過去の事件を洗い直すのが当たり前)

上条(当然、『濁音協会』――じゃない、『双頭鮫』も見越していた!)

上条(だからそり隠れ蓑である『ヤドリギの家』の運営も疎かになるし、保険金詐欺みたいな急場凌ぎの犯罪もする!)

上条(つまり最悪の最悪、ここは連中にとってはいつでも切り捨てられる準備がしてある、不要な施設である訳で……)

上条(しかも『善意の信者』って盾がある分、『必要悪の教会』も強硬手段へ訴えるのを躊躇っているのかよ、クソッタレ!)

上条(ついでに言えばアルフレドの術式は空間移動。中途半端に追い詰めても楽に逃げる自信がある。だから!)

上条(クリストフが司祭としてのうのうと活動しやがってる、と!)

上条「……」

上条「あーーーーーーーーがーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

上条「……」

上条「……よし、切り替えよう……!」

上条(優先順位は……ケインの頼み、カレンとクリスの両親の事か?まずはだ)

上条(合流させてから、無理矢理にでも退団してほしい所だが……まずは話すのが先)

上条(アルフレドをぶちのめすのはレッサーと合流しないと、どうしようもない――つか、そっちもそっちで気になるけどなー)

上条「……」

上条(……しかしさぁ、こんな展開になってくると二人で乗り込んできたのが悔やまれるよな。ベイロープ達の助けがあったら良かったのにって)

上条(……や、でもそれも違うか?こっちが『新たなる光』や『必要悪の教会』、『明け色の陽射し』とかのオールスターズで来たら逃げ出してる筈で)

上条(『たかが二人』って油断してくれてるから、未だに逃げ出してない感じ……か?)

――病院 8階・812号室近く

上条「……」

上条(……正直に言おう、いや思おう?まぁどっちでも良いか)

上条(俺はケインから話を聞いた時、『水族館みたいな』って表現でICUを思い出したんだ)

上条(生命維持装置に繋がれて、患者の家族とはガラス板一枚隔てて入らなきゃならないような。よくテレビで見るヤツ)

上条(……アックアん時に俺も入ったらしいが、あの事件は途中から記憶が曖昧で――まぁいい)

上条(とにかく。そんな先入観があったから、きっとカレン達の親御さんも似たような感じなんだろうな、と思っていた)

上条(……思い込んで、いた)

上条「……」

上条(単刀直入に言えばICUじゃなかった。廊下側がガラス貼りになっていて、そこから室内の様子が見えるって、異様な作りになっていただけであって)

上条(心の病気になっちまった人の処置で、そういうのは聞いた事がある。自傷をしないように見張るためには仕方がない……と、割り切らなきゃいけないんだろう)

上条(けどな?六人部屋をわざわざガラス貼りにする理由って何だ?)

上条(治療って単語よりも『実験』って言った方がしっくりくる。そんな違和感が、あった)

上条「……」

上条(それでもだ。まだ患者同士、他愛の無いお喋りや読書、ラジオをイヤホンで聴いたり、テレビを見てたんだったら、まぁ分かる)

上条(病気や怪我は辛いんだろうが、だからといって治療に焦る事無く行くのも大切だから)

上条「……」

上条(けれど外から見た患者達はそうじゃなかった)

上条(何をする訳でもなく、ベッドへ横たわって天井を眺め続けている様子に、俺は寒気を憶える程異質だった)

上条「……」

上条(そして俺が最も目を引きつけられたのは患者達の頭だった)

上条(程度こそ違うが、全員が示し合わせたかのように一部から全部がそうである――)

上条(――あの、風も無いのに揺れる紅い髪は、なんだ……ッ!?)

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

レスするついでに色々書いてるのは好きでやってますから、どうかお気になさらず

おっつし☆

乙なんだよ

テリーザさんがかなり良い味。
イメージでは、麦藁色の髪を無造作に後ろで束ねて、鼻にちょっとそばかすが散っていて……

五和とアリサを足して、メンタル面を5で割った感じ、かな。
常人はそんなものですよね。誰もが戦士になれるわけではない。

乙!!

子供たちの名前の元はメタルサーガシリーズ?

フロリスの上条さんへの呼称はジャパニーズで固定なのかな
あ、個別エンドで変わるんですね分かります

>>212
シェリーさんと比べて人生狂わすようなトラウマ抱えてる訳ではないですから、あぁはならないでしょう。多分
ただまぁあの世界の魔術というのは、『自身が世界を変革するため力』なので、
一体どこをどうしたら『ヘイムダルの雷』へ行き当たるのか気にかかる所ではあります

SSでちょい書きましたが、ヘイムダルが『知の角笛』を手に入れた時、『傾聴』――つまり聴力引き替えにした論があります
オーディンの片眼と同じく、アスガルド全域へ轟く霊装のために犠牲にせざるを得なかったと
その副効果として、ヘイムダルは監視の任を負っていたにも関わらず、炎の巨人達がビフレストを渡ってくるまで気付けませんでした
(同様にオーディンは”眼”、つまり『未来を見通し予測する力』を失い、智恵を得たのに終末から逃れられなかった)

またわざわざ同じ雷を選ぶのであれば、『帯』や『槍(手袋)』とも親和性の高いトール神をセッティングするのが楽な筈
にも関わらず、わざわざ『ヘイムダルの雷』を選んでる辺り、何かを犠牲にする未来が暗示されているのかも知れません
加えて『傾聴』を捧げてしまったヘイムダルのように、『騎士派』の企みを看過出来ずに利用されてしまいましたしね
(ちなみに『神ですら権能を捧げる事で扱える霊装』なのだから、『人間ならばその命(or匹敵する膨大な魔翌力)を差し出す必要がある』とSSでは解釈しています。
ベイロープさんは捧げるべき心臓を人様に預けたため、命までは取られませんでしたが……まぁそれはそれで)

以上の原作の設定を踏まえながら予想すれば、某かのジレンマか二律背反に悩む未来が待っているような気がします
例えばブリテン全体の国益を守るのか、それとも独立派に手を貸すのか――という感じで
極めて個人的にはスコットランド王族の子孫(※は、このSSでの設定)で、独立の旗頭になって家族と仲間の間で板挟みに、と話を膨らませられるかも知れません

まぁそれはさておき、レッサーさんはともかく、あの面子では個性の薄いベイロープさんがこの先生きのこれるか……ッ!
キャラ的にフロリスさんが再登場してかっ攫う予感がしないでも(※珍しく上条さんに敵意を持つ女性なので)

>>213
すいません。面倒だと言ったのは”ここ”であって、読んで下さる方でありません。SS読み書きするスレで何やってんだか、と

>>214>>241>>242>>246
ありがとうございます

>>215
佐天「おーぅっ応援ありがとーっ!まさかあたしも『幻想御手』のゲストの筈が、いつの間にかグッズ連発されるぐらい人気になるとは思わなかったよ!」
初春「……大覇星祭編のラストも、まぁポジ的には三角関係のフラグが立ったと言えば、その通りですしねー」
佐天「今年も薄い本が厚くなるねっ!」
初春「去年は……はい、フレなんとかさんが大人気かと思いきや、食蜂さん一色でしたから……」
佐天「アタリだと思うんだけどなー、フレンダさんの声、可愛ぇぇし」
(※てかウチの人気投票、フレンダさんに一週間で66票ぶち込んだのは誰だコノヤロー)

>>216
レッサー「マジレスすると、我がブリテンがイギリス帝国(大英帝国)と呼ばれた時代は幾つかあり、その内一時代は『世界の40%』という説もあります」
レッサー「ですがねー……やっぱりどうやっても維持するためにはコストが必要なんですなー。あ、これはお金だけじゃないですよ?」
レッサー「アメリカ大陸を手放さざるを得なくなったのも、フランス野郎の横やりが入った訳ですし、それを撥ね除けるだけの軍事力は必須」
レッサー「制海権を徐々に強化――でも、ないですかね。WOP野郎の無敵艦隊()ボコったのは15世紀ぐらいだったですし」
レッサー「南下したインドを統一した後、アフリカ、アジア――と手を広げていったら、極東の島国から手酷いカウンター喰らって軍事ボロッボロ」
レッサー「呼応するようにアジアで独立運動が広がり、我が国の植民地を失いましたからねぇ。White supremacyが砕けた瞬間でもあります」
レッサー「服を着るにしても、背丈に合ったものを選ぶのが当たり前。領土にしろ同じくと」
レッサー「なんつーか、まぁ今のアメリカさんと同じで、手広くあれこれやり過ぎると失敗しがちだっつー話ですな」
レッサー「かといって対テロ戦争の手を止めてしまえば、ISISのような忌子が生まれる訳でしてね」
レッサー「責任の有無、また善悪すらも通り越して、今まさに少数派のキリスト教徒が物のように売買されているのが現実」
レッサー「ウクライナとクリミアでもそうですが、これを止めるには戦力を送り込む以外に止める術はないんですよ」
レッサー「どれだけ理想を語ろうが、どんな素晴らしい正義感を持とうが、『暴力を止めるだけの暴力』がなければ意味が無い」
レッサー「そんなあなたに私の好きな言葉をプレゼント。いやぁMANGAって素晴らしいですねぇ」

『目前で進行中のレイプをやめさせるには、説教ではなく力が必要で、それもレイプ後ではなく事前に』 by士郎正宗

>>243
「都会の学校へ出て来たが、馴染めなくて別の所へ行ってしまった」という設定。現実にも割と良く居ます
>常人はそんなものですよね。誰もが戦士になれるわけではない。
に関しては(以下略

>>244
特に考えていませんでした。伏線もあるっちゃありますが、大したもんでもなく
メタルマックスシリーズは4のキャラデザが酷い+ダウンロードコンテンツ多すぎで未プレイです。ブラゲー辺りからなんかちょっとなぁと
俺の好きだったMMはこんなんじゃない!もっと最終盤に出て来た戦車が重くてバギーより使えないとか、
クソ長い東京タワーへ登ってもクズアイテムしか手に入らないとか、デタラメなバランスじゃなきゃ!
そうだ、無いんだったら作れ(以下略

>>245
上条「個別エンドなー……想像つかねー」
上条「いやでもどっかにフラグの神様とか居て、その人がパパッとやってくれるんだったら――」
フラグの神様「あ、どもフラグの神様です」
上条「何やってんの佐天さん?ついに脳まで達しちゃったの?」
フラグの神様「いやなんかこう、ノリでやっとけ!みたいな感じらしくてですね、こうお鉢が回ってきたって言うか」
上条「てーか壁ドンの設定、基本個別エンドじゃねーの?俺、麦野さんとか絹旗さんとか面識無いと思うんだけど」
フラグの神様「まぁそれはそうなんですけどねー。でもあの反応だと、現在籠絡中の五人は恋人さんじゃないですもんね?」
上条「あー……まぁ確かに。他の子も違うけどな!」
フラグの神様「なのでフラグ立った状態でリトライっ!よっ、やったねっJC殺し!」
上条「過去の俺がよりにもよってキャラ被ってるJC二人と関係あったなんて……!」
フラグの神様「あれ、意味よく分かんなかったんですけど、『自殺したと思った子が生きてた』で良いんですよね?だったらハッピーじゃ?」
上条「俺に言われてもな。なんかこう、たゆんたゆんだったのは憶えてる」
フラグの神様「あたしもですね、実は『佐天さん巨乳説』がフェブリク錠10mgとお風呂入った時に肯定されましたし」
上条「誰?俺とは面識無いけどフェブリじゃなかったかな?どんな辞書入れてたら予測変換出来るの?」
上条「てか変な所で医学の知識がちょいちょい出――」
フラグの神様「――はい、ではやって来て下さいなっ!壁ドンLover's ver!いつものように!」
上条「そしてまた君はいつものように人聞きが悪いなっ!」
フラグの神様「なんか収集つかなくなる予感がするんですが、以下は個別エンド以後のお話になりまーす」


――壁ドンLover's ver
上条 ドンッ!
フロリス「っとぉ!?なに、どーしたジャパニーズ!?敵襲か……ッ!?」
フロリス「つーかビックリさせんなよー、何様だーあー?」
上条(あれ?反応は全く同じか?)
フロリス「……あっ!あんなトコにレッサーが服着て歩いてる!」
上条「マジでっ!?――ってそれ、当たり前じゃ――」
フロリス チュッ
上条「」
フロリス「……ってか、恥ずかしいからここまで!あ、後はワタシにはムリだかんねっ!そいじゃっ!」
上条「……負けず嫌い、ってか顔真っ赤で逃げてった……」
(※ちなみに名前に関しては二章の終わりにチラっと呼んで以降、基本恥ずかしくて使ってない……筈。多分)

――第二聖堂前

上条「……」

上条(見ているだけで”持って行かれそう”になる、悪夢とも幻想ともつかない光景を後にした――逃げ出した、と言ってもいい)

上条(あの紅い髪――魔術がそれに類するものなんだろうが、こう、異質すぎて手を出す気にはならなかった)

上条(ヘタに『幻想殺し』で弄ったら大変な事になりそうで恐い、が)

上条(俺だけじゃ情報を集められても正しく判断が出来ない。罠だったら?それとも何か必要な措置だったりしたら?)

上条(罠だったとしてだ。俺一人がダメージを貰うのはまだいい、良くはないけども、まぁ?)

上条(でもあそこで空中を見続けている、カレン達の両親にまで被害が及んだらどうする?)

上条(訳の分からない術式を無効化!流石は『幻想殺し』だ!……で、終る程。いや)

上条(終らせて”くれる”程、『濁音協会』はまともな相手じゃない。自分達ですら改造する相手が、他人の命なんか惜しむ筈が!)

上条「……」

上条(魔術が使えないのは仕方がないとしても、知識はないと厳しい……あぁ、病気に似てるかもな)

上条(病気になってから今までの健康が幸せだったと実感して、また健康になると病気の事を忘れちまうような)

上条「……」

上条(……や、まぁ?俺もね、科学の知識があるって訳じゃないんだよね、って話なんだが)

上条(いつか土御門に『熱膨張って知ってるか?』をドヤ顔で言いきった所、次のような一連の台詞を頂きました。では、再現スタート)

土御門『なぁカミやん?カミやんはバカなの?死ぬの?』

土御門『鉄筋コンクリートって知ってるかにゃー?うん、ほら、家とか橋とか建てる際に使う工法なんだにゃー』

土御門『あれは両方の熱膨張比がほぼ同じだから出来るんであって、他の組み合わせだから無理なんだぜい』

土御門『で、カミやんは「ポットのお湯を零したら、マンションが熱膨張で倒れました」みたいな話聞いたのかい?うん?』

土御門『ないよね?たかが”沸騰水程度の温度”でなる訳がないよね?』

土御門『確かに軽機関銃――鬼軍曹が小隊の殿として面制圧に使うのは、秒間数十発って撃つ”場合”もあるから、バレル自体が赤熱化する場合もあるんだぜい』

土御門『で、理科の実験とかでバーナー使ったよな?なんかこう、マッチの火を近づけると、ボって点火してビビるの』

土御門『あれの温度が大体1300から1600℃、ローソクの火が1000℃だと言われてるにゃー』

土御門『火の付いてる煙草にしても、吹かしてない状態で400℃。どう見ても立派な凶器だから、よい子の皆は煙草を人に向けちゃダメだぜぃ?』

土御門『で、カミやんは理科の実験で何やってたんだにゃー?バーナー使ってビーカー炙る実験しなかった?』

土御門『そん時に金網使ったよね?そうそう、鉄の網』

土御門『鉄の輪っかみたいな手が着いた棒の上へ網乗せて、その上にビーカー乗っけて、上からバーナーで炙るみたいな』

土御門『多分煮沸させるまでだから、10分以上は火ぃ使ってたんだと思うけども、どう?熱膨張で変化してたか?』

土御門『うん、だからな。1000℃以上の高熱で数分間炙って、ようやくうっすい鉄は少し赤くなるかどうかぐらいなんだよ』

土御門『でだ。クソ寒い貨物室の中、しかもたった100℃前後のお湯へ数十秒浸して、熱膨張で銃がイカれるってどう思う?ねぇ、カミやん?』

土御門『もしそれが本当ならば、お鍋の中に鉄の針を浮かべてグツグツ煮れば、変形出来るって事になるよな?違うか?』

土御門『カップ焼きそばと一緒に鉄を入れとけば、たった三分で熱膨張!みたいな?』

土御門『後ね後ね、最近の旅客機って安全面と効率考えてコンロをつけてない機体もあるんだにゃー?』

土御門『だってさ、お茶にしても沸騰したまま出す訳じゃないよな?だから精々60℃ぐらいまでしか上がらない電気ポットがあって』

土御門『火傷するような温度で出すとバカが直ぐ訴訟起こすよね?あれの対策に「最初から○○℃までしか上がりませんが何か?」って』

土御門『機内食にしても、基本カートにコード繋げれば温まるような感じになってっから、あんまり、こう、分かるよな?カミやんは?」

土御門『……あぁうん、なぁカミやん?俺は別に怒ってないよ?全然怒ってる訳じゃないんだぜ?ホントにな?』

土御門『別に全世界のガンマニを代弁して言ってるとか、そういう事じゃないんだ』

土御門『ホラ、俺ってば能力も魔術もまともに使えないじゃん?だからこう、物理的な暴力に頼らざるを得ないっていうかさ、うん』

土御門『だもんで銃器の仕組みや構造を可能な限り知っておかないと、仕事に差し障るっつーか、まぁそっちの話なんだけどさ』

土御門『あと、謝っとくけど、俺今キャラ作ってる余裕がないから気にしないでな?怒ってる訳じゃないんだ』

土御門『例えば中東各国や赤道直下の紛争地域でも銃は使われてるのね、スッゲー暑い所だと思ってくれれば分かるんだが』

土御門『でさぁ、よく「車のボンネットで目玉焼き作ってみた」的な動画あるじゃん?うん、あの衛生的に引くヤツ』

土御門『流れから何となく分ると思うけど、あれ相当熱くなってんのね。具体的に何度かは調べてないけども』

土御門『ま、そんな悪条件の中でも軍や警察、特殊部隊は仕事しなくちゃならないんだよ。銃を持ってだ』

土御門『当然、熱湯ぶっかけられたぐらいでジャムるような、そんなシロモンだったら使えないよね?撃てないよね?』

土御門『銃を使うのは主に屋外が殆どだし、そんなヤワな作りしてねーんだわ、これがな』

土御門『あと、ついでに言えば銃の熱でバレルやフレームが変形するって事故もあるにはある』

土御門『さっき言ったように個人携帯出来るギリギリのレベルである、軽機関銃がーみたいな話は聞くよ?そりゃな?』

土御門『でも、ハンドガン程度、複雑な機構もなんもなしで”撃てなくなる”なんて話、ノーライセンスのデッドコピーでも聞かないからな?』

土御門『特に最近の、つーかここ近年じゃ強化プラスチックを素材にして、軽量化と近距離でも振り回しに長けたモデルが多く作られている』

土御門『特にアメリカなんかはベトナムで高温多湿のジャングル、中東で高温乾燥って超悪条件の中、戦って来た訳で』

土御門『アメリカの強みはアホみたいな物量なんだけど、それにプラスして「経験値の蓄積」って側面もあんのね?』

土御門『具体的には軍を定期的に動かして、あちこちで実戦経験積ましてる感じでさ。故意はどうかは知んないけど』

土御門『でもそれってば武器も同じな訳。色んな修羅場で、散々酷使されれば経験積んでより強いモデルへと昇華されていくんだよ』

土御門『従軍する兵士の命を守り、敵対する連中をぶっ殺すために、銃器も職人の手によって進化させられてきた歴史がある』

土御門『銃器の歴史は裏を返せば人殺しの歴史――って感想を否定するつもりはない。俺もそうだと思ってるし』

土御門『でも同じ人殺しの道具であるならば、剣や甲冑が美術品として持て囃されるのはどうしてだ?』

土御門『そこに何か人を引きつけるものがあって、共感する人間が多く居るからだ。研磨に研磨を重ねた機能美へ対して』

土御門『いいか?銃をバカにするな、カミやんが助かったのは鉄の熱膨張じゃなく、相手がアマチュアで弾を詰まらせただけだ』

土御門『普通は――というか、素人でもない限り新品の銃なんて使わないんだよ』

土御門『耐久性や撃ち方、銃は同じ工業規格で大量生産されているとは言え、一つ一つ癖がある』

土御門 『だからプロってのは事前に試し打ちを繰り返して自分の銃の癖を把握してるんだ』

土御門『フィギュアスケートの選手が、本番でいきなり新品シューズを使うか?使う訳はないよな?』

土御門『他にも特殊部隊なら必ず予備の武器を持つのが常識だとか、銃だけに頼ってるだけで素人未満の格闘術だとか』

土御門『なんつーかまぁ、俺は別にガンマニアでもミリオタでもない。ないんだけど、一言だけ言わしてくれ』

土御門『もしも俺がそのバカだったら、カミやん確実に撃たれて殺されてたからな?』

上条「……」

上条(……と、言うようなですね。有り難いマジ説教を頂きました)

上条(ガンマニアの琴線に触れる何かを踏み抜いたらしい、俺が)

上条(てかさ、今になって思い出してみると『熱膨張って知ってるか?(ドヤァ)』って下り、居るか?)

上条(コーヒーぶっかけてコンテナん中から出て来た所を、俺が無言でボコって終わりにすれば良かったし、そもそも他の武器使われた日には……)

上条「……」

上条(……あ、何か土御門思い出したら落ち着いてきた。そうそう、余裕を失ってどうすんだっつーの。ホントに)

上条(『必要悪の教会』のタイムリミット、んで逃げる気満々の『濁音協会』。どっちも正直ムカツクが、焦って事態が好転する訳もない)

上条(むしろ正常な判断力を鈍らせて、見るべきものを見失う……それじゃ意味がない)

上条(俺にしか出来ない事――見て、聞いて、憶えて……知ろう。ただ、するだけだ……!)

上条「……」

上条(と、決心を改めたのは良いんだが、ミサが始まる第二聖堂前には人集りが出来てた)

上条(誰も中に入る様子がない。こりゃ聞く必要がある――と、その前に)

上条(スマホの自動翻訳アプリを起動、耳に無線式のイヤホンをかけてっと……よし)

上条「あの、すいません?何かあったんですか?」

青年「ん?あぁ何でも落書きがあったんだって」

上条「落書き、ですか?」

青年「あぁほら、見てみなよ。青いペンキで書かれているから」


『ヒント――ドラえも○』


上条「タヌキじゃねぇよっ!ネコ型ロボットだよ!つーか日本語だとバレるしっ!?」

青年「TA、NUKI?フランス語か?」

上条「いえ別に何でもっ!酷い事するヤツが居るんですねっ!」

青年「中もヒドいもんだよ。悪魔の呪文みたいな詩が、壁一面にバーッと」

上条「……ど、どんな内容なんですか……?」

青年「そう、だな。ええと……『TAN-TAN, TANUKI-NO-KINTA――』」

上条「冒涜的で口に出すのも憚られるおぞましい内容ですね!俺にはサッパリ理解出来ませんが!」

青年「そうだなぁ。なんで人の嫌がる事をするんだろうな」

上条「あ、あはははははーーっ!じゃ、俺はこれでっ親切にありがとうございましたっ!」

上条(乾いた笑いともに俺はさっさと逃げ出そ――)

青年「Hey!(おい!)」

上条「あ、はい、なんでしょうか……?」

青年「ミサは第一聖堂で行われるそうだ。急がないと間に合わないぞ」

上条「……あなたは行かないんですか?」

青年「俺達はこれを消さなきゃならん。それに」

上条「それに?」

青年「あの説教は、食後に聞くと胃がもたれる」

――第一聖堂

上条「……さて」

上条(俺があのにーちゃんに理由を訊ねるよりも、『早く行かないと閉められるぞ!』との言葉に背中を押された形になった)

上条(ま、実際にその通りで、少し小走りで向かった第一聖堂は、今まさに入り口が閉じられそうになっていた)

上条(出家信者と思われる、フード付きのシスター服っぽい女の人は俺を見ると無言で扉を上げてくれた)

上条(少しくぐもった音を立てて戸が開き、教会の中へと迎えられたんだが……まぁ、予想に反して普通だった)

上条(アニェーゼと初めて会った教会、まさにそんな感じの『普通』な感じ。これと言って特別を感じさせる事もなく)

上条(装飾品とか調度品の知識はない――いやだったら『何の知識ならある?』と聞かれると困るが――俺でも、そう大して価値の高そうなものはないような気がする)

上条(ただ……それは別にしても奇妙な違和感があるっつーか、うん)

上条(どうにも言葉にしがたい何か……うーん?なんだろうな、これ)

上条(……そんな思いをひとまず横へ置いておき、俺は空いていた座席へ腰を下ろした)

上条(まぁ、アレだ。結婚式場とかである教会の作りと同じだな。中央が通路になってて、その脇を長椅子が何個も並んでいるタイプの)

上条(新郎新婦が真ん中通って、奥の教卓みたいなものの前まで行って神父さんに『汝病める時も健やかなる時も~』とかな)

上条(違和感とは別にして、祭壇?の後ろの所がビニールシートに覆われてる……レッサーかな?もしかしてあの子が何かやらかしたの?)

上条(……いやこれ、相手が相手だからまぁまぁ許されるかもしんないけど、そうじゃなかったらタチの悪いチンピラだよな……)

上条(あ、ちなみにレッサー曰く。普通の教会には教卓なんてなく、司祭や牧師が座る長椅子が置いているのが一般的なんだそうだ)

上条(……ま、そりゃ説教するのには座ってた方が楽だし、立場的に上の人が立ってんのに座ったまんまってもアレだし)

上条(とにかく俺は一番後ろの席にありつけた。ここからなら前がよく見え――は、しない)

上条(そうだな、今ちょっと座る前に見えた感じだと、大体……80人ぐらいかな?全部足せば)

上条(前の方へ座っているのは服装――シスターさんっぽい人達。あ、男の人っぽいのも居るな――が、大体二列ぐらいを占拠してる)

上条(正直、フード+後ろ姿だから、背格好ぐらいしか判断材料がない)

上条(その後ろはずーっと俺達みたいな普通の格好をした連中が並ぶ。性別は半々、歳も……やっぱよく分からん)

上条(時々隣の人同士が会話をしてるから、ハリボテとかじゃないんだろうが……まぁ、疑ったらキリが無い)

上条(相手の懐へ飛び込んだ以上、覚悟を決めるし――)

リィンゴーン、リィンゴーン

上条(鐘の音……?鐘楼なんて無かった筈だが……スピーカーか?)

上条(古さ故か、少し音程の外れたベルの音が響く……あぁ10年前にはこの教団は出来てたんだっけか)

上条(学園都市に居ると気づかないが、どこだって最新の音響設備なんて用意できる訳もなく、設置する意味も無い)

上条(今聞いているスピーカーも、年代物を引き取って来たのかも知れない。それとも)

上条(それよりもずっと前からあって、使い続けているとしたら?)

シーン……カッ、カッ、カッ、カッ

上条(誰かのささやき声も止み、静かになった場を縫うように――引き裂くように、俺達の前へ姿を現す)

上条(――クリストフ=ウェイトリィがだ!)

――第一聖堂 ミサ

クリストフ「――さて、では説教を始めましょうか……説教、うーんあまり僕は好きじゃないんだけどね、この言葉は」

クリストフ「僕たちは同じ人間であり、その上も下もない――というのが建前だけれど、実際にはそうじゃない」

クリストフ「それが間違いだというのは誰でも分かる。それこそ子供だって常識だろう」

クリストフ「しかし是正されないんだから、それだけの『何か』が働いているって事だが……ま、良いだろう。さて」

クリストフ「まず最初に主が御座す。そして『光あれかし』と言葉を発せられ、この世界が光に満ち溢れた」

クリストフ「しかしそれだけではまぶしかろうと『闇もまたあれかし』と望み、一日の内、半分は光で、半分は闇に覆われる事になった――『AMEN(かくあれかし)』」

信者達『AMEN……』

クリストフ「そしていと高きあの御方はその御業にて、太陽を創り、大地を創り、我々人を創った――と、聖書では説いているがこれは不十分だ」

クリストフ「残念ながら、というか正直な所、僕達――僕達の一派は『三位一体』を否定している。否定せざるを得ない」

クリストフ「とは言っても、『神の子』の奇跡を疑っているのではないよ、不心得者よ。決してそのような事はない」

クリストフ「『あの方』――は、良い。善悪で言えば善の頂きへ立つ御方へ、僕達は疑問を差し挟む余地すらない」

クリストフ「『神の子』――これもまた、当然の如く否定する要素を持たない。けれど――」

クリストフ「『聖霊』――いや、『教会』はどうだろうか?君達はどう思う?」

クリストフ「少なくとも『神の子』がおわした時には存在しなかった。教皇も司教も司祭も助祭も」

クリストフ「教皇はペテロの意志を継いでいると言うが……さぁ?それも怪しいもんだけれどね」

クリストフ「文字通り一国一城の主へ収まり、そしてまた豪勢な服を着て世界中の信徒へ手を差し伸べる」

クリストフ「たった一度足りとて、『神』の声を聞いた事無く、選挙と人気で決まる。それこそがナンセンスさ」

クリストフ「……」

クリストフ「……恐らく、誰もか感じているんじゃないかな?彼らが僕達とは違う道を歩いている事に」

クリストフ「僕らの信仰、そもそも『神の子』が声を上げた時には身分も格差もなかった」

クリストフ「ただ、『神の使徒』として全てが等しく平等に、いと高き方から愛されていた――『AMEN』」

信者達『AMEN……』

クリストフ「実際に、彼らが創ったという聖書は不完全なものであったようだ。最新の科学では神が人をお造りになるまで、相当な時間がかかったのも事実」

クリストフ「はっきり言ってしまえば、聖書なんてのは教会が創った紛い物なのさ。だから間違う」

クリストフ「だってそうだろう?僕らの神は全知全能、その方が仰った事をそのまま記せばそれが現実だった筈なのに」

クリストフ「教会はずっと嘘を吐き続けて来たんだよ。そうじゃなきゃガリレイの頃から弾圧なんてしなかった」

クリストフ「嘘吐きの特徴だね。嘘を吐いて、その嘘がバレないように嘘を吐く」

クリストフ「そしたまたその嘘が嘘だと――って風に延々と嘘を吐き続けなければいけない。そのジレンマに陥ったんだ」

クリストフ「今じゃ聖書はフィクション満載のファンタジー、その内ハリウッドで映画されるかもね?あ、されてるんだっけ?」

クリストフ「ジャンルはファンタジーで。ポッターに勝てると良いけどね。難しいかも?」

クリストフ「……」

クリストフ「父は――あ、いやあの方ではなく、物理的な意味で。この病院長にして教主のウィリアム=ウェイトィは、こう提唱した」

クリストフ「『人が人になるためには、敬虔な信仰と揺るぎなき努力が必要である』と」

クリストフ「人類の歴史は神から与えられたもうたモノであるとは言え、苛烈の一言だ」

クリストフ「『発生の時代』、マグマと硫酸の海で『ゆらぎ』から生命は生まれ」」

クリストフ「『闘争の時代』を牙も爪も持たぬ人類は潜り抜けてきた」

クリストフ「『文明の時代』へ至ると、僕達はその他の生き物と一線を画した。これに反論する人は少ないだろう」

クリストフ「だがしかし、だけれども、だというのに――だ」

クリストフ「……自問自答してみるといい――『これだけ文明が進み、人類は霊長と言えるぐらいに進化したというのに、この虚しさはどうした?』と」

クリストフ「『この世界は満たされているにも関わらず、自分の手には何も残っていないのは何故だ?』と」

クリストフ「おかしいと思わないかな?これだけ、多くの発見をし、発明もし、文明も発達した」

クリストフ「だというのに、僕達――いや、はっきりと言おう、『君達はどうして空虚に囚われている』んだろうか?」

クリストフ「それはね、神が居ないからだ――」

クリストフ「――君達の神は殺されたからだ、他ならぬ君達の手によって」

信者達『……』

クリストフ「と言っても物理的な意味なんかじゃない。とはいえ霊的な話でもなく……そうだね、世の中には善の行いと悪の行いがある」

クリストフ「悪とは他人から奪う事、そして善とは他人へ施す事。誰だって知っている事だ」

クリストフ「でも、君達はしているかい?誰かへ手を差し伸べてきた事があったかな?」

クリストフ「隣人を愛するように、家族を慕うように、そう神は仰ったようにだ」

クリストフ「君は、君達は誰かから奪い、傷付けるような事はあっても、逆に与える事はしなかったんじゃないかな?どうだろうか?」

クリストフ「少しでも心当たりがあれば手を上げ……あぁいや、いいか。上げようが上げまいが、神は見ておられる――今、こうしている間にも、ずっと」

クリストフ「……」

クリストフ「……シンプルな、驚く程に単純な言葉で言ってしまえば『だから』だよ

クリストフ「君達が空虚に包まれている理由は、ただただその理由に尽きる」

クリストフ「『悪を成し善を軽んずる』……そうしていれば、神の存在を見失って当然の話だよ。違うかな?」

クリストフ「そりゃ堕落していれば神のお姿が見えよう訳が無いさ。ただそれだけの話」

クリストフ「……」

クリストフ「うん?話は終ったよ?神を信じない人間へ言うべき事は言ったからね」

クリストフ「ここから先は、もしそうだと知った上で打開したい人間のみが知るべきだ」

クリストフ「だから僕の話が的外れだと思ったり、飽きたと思ったら出て行けば良いさ。この教会の扉はいつでも開いているのだから」

クリストフ「……」

クリストフ「……ふーむ?いいかな?誰も出て行かないみたいだけど」

クリストフ「ま、話を聞いたからと言って入信しろとか、追加料金を払え、みたいな事は言わないから安心していい」

クリストフ「……いやまぁ、払ってくれるんだったら有り難く貰うけど――さて」

クリストフ「さっきも言ったように『悪は他人から奪う事、善は他人へ施す事』だね」

クリストフ「それをしていれば君達が抱えている『空虚』もいつか満たされるよ」

クリストフ「他人へ奉仕する喜びというか、他者と繋がってさえ居ればね」

クリストフ「自宅へ帰ってママの肩でも揉んでやるのもいいし、ここの病院で少しばかり働いてくれると嬉しい、かな、僕は」

クリストフ「……」

クリストフ「しかし、残念な事にさ。僕らは正論を言ってるつもりだが、中々外には伝わらないんだ」

クリストフ「多分、『善』が伝わるのはマズい人間達が邪魔しているんだと思うが……そうだな、例えば」

クリストフ「『国』なんてのはそうだよね?僕達が汗水流して働いて得た、正当なる賃金をなんだかんだと名目をつけて奪ってしまう」

クリストフ「これは『悪』の仕業だ。他人から奪うんだからね」

クリストフ「例えば……生まれながらして富める者が富を独占してしまう。政治家や資産家の家に生まれた、というだけで将来が決まってしまう」

クリストフ「親が貧しい者から奪った富で肥え肥り、他人から盗む事だけに長けた大人になる」

クリストフ「たかだか生まれが違うだけで、百万長者の息子として一生を安楽に暮らす者が居る」

クリストフ「その反面、貧しい家庭に生まれ、一生100ユーロ紙幣を見ない者だって居るね」

クリストフ「……これのどこが『平等』なんだい?」

クリストフ「他にも――ほら、ここにもパキスタニやインディア、アジアンだって居るだろう?彼らを受け入れられないのは『悪』だ」

クリストフ「たまたま生まれた国が、ほんの数百キロ離れているだけで壁を作ってしまう社会……そんな『悪』の中に僕らは生きている」

クリストフ「20世紀は『闘争の世代』が再びあった時代だと言えよう。人類が過剰なまでの力を手に入れ、この世界が危うくなる程に」

クリストフ「たかだか一国の指導者がボタンを気まぐれに押せば、世界の殆どが死の灰で覆われる。そんな時代だった」

クリストフ「しかし僕達は変える術を知っている。嘗てジョン=レノンが説いたように、この世界には国も民族という垣根もあってはいけないんだ」

クリストフ「『神の子』がおわした世界に差別はない。ただ、等しく神の元で平等だった」

クリストフ「でも、今は違うよね?誰かの都合で引いた国境線で僕らは区切られ、手を取り合う事も、こうやって喋る事も満足に出来ない」

クリストフ「いつからだろう?僕達が肌の色や人種、国籍や言葉で分かたれるようになってしまったのは?」

クリストフ「例えば畑を耕す仕事がある。例えば書類に判を押す仕事がある。例えば株価のグラフと睨めっこする仕事がある」

クリストフ「これは全て等しく仕事だ。けれど得られる対価は海と山ほども違う」

クリストフ「恐らく最も体を酷使し、時間も費やしているのは僕らなのにね」

クリストフ「これ、おかしいと思わないかい?同じ仕事――で、すらないのに搾取され続ける側とする側が明確に分かれている」

クリストフ「仕事ですらそうなんだから人種なんて酷いものだ……そうそう、移民にしてもだ」

クリストフ「彼らは様々な理由から故郷を捨てなければいけなかった人間達だ。ノーベル賞の候補に挙がった女の子もそうだね」

クリストフ「彼女の境遇を想像してみれば分かるように、社会的弱者であって、僕達は彼らを受け入れなければいけない」

クリストフ「僕らが、僕らの神の信仰に準ずれば、同じ神の国へ住まう住人として手を差し伸べるのは当たり前だ」

クリストフ「……」

クリストフ「……僕らは確かに過ちを犯すよ。生きていればそうだし、それは『神の子』が背負われたとは言え、消えて無くなった訳ではない」

クリストフ「だから僕達は、僕達の『善』を成すためだけに『悪』と戦わなければいけない」

クリストフ「一人一人は無力かも知れない。今はまだ誰からも理解されないかも知れない」

クリストフ「でも、だからといって戦わない理由にはならない。恐いと言っている間にも『敵』は動きを止めないのだから」

クリストフ「それは『国』であったり、『教会』であったり」

クリストフ「僕達は絶対の『善』だ。何一つ曇りもない、正真正銘の『善』」

クリストフ「考え、学び、知り、実践している――これもまた『正義』の行いだよ」

クリストフ「神が望んだ世界――少なくとも、弱者へ対して施しを与え、共に生きようとする。それは万人が否定する事は出来ない」

クリストフ「『悪』に取り憑かれて、他者から奪うだけのものに成り果てていない限りは」

クリストフ「……」

クリストフ「僕達は神の御許に於いて例外なく平等である。しかしこの国、この世界がそうだとは程遠い……!」

クリストフ「だから、僕達がこの世界を変えていかなければならない!平等や平和を邪魔する『悪』と戦い、勝利しなければいけない!」

クリストフ「僕達は神の代理人である!教会や牧師達よりもっと純粋で、しかも『善』と共にある!」

クリストフ「恐るる事なかれ、考える事なかれ、神の国はもうそこまで来ている――」

クリストフ「――『AMEN』」

信者達『……AMEN……!』

パチ、パチパチパチパチッ……

クリストフ「……ありがとう、あぁありがとう。ふぅ、疲れるね。また若いつもりなんだけとさ」

クリストフ「さて……じゃ、何か質問がある人は挙手を――」

上条「はいっ」

クリストフ「――して、くださ、い……」

――ミサ

上条(……まぁ、半分ぐらいアホらしくて聞き流してたんだが……)

上条(これ、逆にチャンスじゃねぇのか?ここで張り切ってクリストフを論破すれば、信者の人も離れると)

上条(人が少なくなれば巻き込まれる人間も減るし、変に動きがあっても必要最低限の犠牲で済む……とは、中々割り切れないけどな)

上条(ま、ダメ元でやってみるしか――つか、予想以上にクリストフ”司祭”、ビックリしてやがんな!)

上条(俺らが侵入してるなんぞ、とっくにバレてるもんだと思っていたが……バカ兄貴の性格上、伝えてなかったとか?)

上条(……有り得るなー。だって魔術師だもん)

上条「はーい、はいはいっ!俺っ!」

クリストフ「だ、誰か居ませんかー?」

上条「おいこっち見ろやテメェ。視線逸らしてんじゃねぇぞゴラ?あ?」

クリストフ「……はい、そこのチンピラの方。どうぞ」

上条「あ、ども、初めまして正義のヒーローさん。通りすがりの一般人ですが、ちょっといいですかね?」

クリストフ「出口はあちらですよ?」

上条「あ、こりゃご丁寧にどうも――ではなくてですよ、ちょい前に格好良い事言ってたじゃないですか?『善』がどうこうって」

クリストフ「えぇ、はい」

上条「胡散臭ぇ」

クリストフ「……はい?」

上条「だから胡散臭ぇつってんだろ」

クリストフ「はぁ、それで?」

上条「……」

上条(……しまった。クリストフがパニクってんの見たら、何言うか忘れた……!)

クリストフ「あぁっと、はい、お気持ちは分かりますよ。ジャパニーズの方」

クリストフ「よく分からないもの、もしくは受け入れがたいものへレッテルを貼って見えない聞こえない分からないフリをするのはよくある事です」

クリストフ「では、こちらから伺いましょう――あなた、そしてあなたと同じ能力を持つ人間が居たとしましょう」

クリストフ「ま、実際に瓜二つと言う事は無いので、同程度の仕事を出来る能力を持っていた、と」

クリストフ「ですが、その人物とあなた、同じ仕事を同じだけするにも関わらず、評価は賃金が全く違う」

クリストフ「あなた貰う筈だった賃金、その倍も彼が貰っているとすればどうします?不公平でしょう?」

クリストフ「今のはあくまでも喩えですが、これと同じ……いや、もっと悪い現象が現実に起きているのです!」

上条「うん、だから何?」

クリストフ「……はい、ですから」

上条「同じ能力持ってたって、同じように評価される訳ねーだろ。バカじゃねぇのか?」

クリストフ「バ……どういう、意味です?」

上条「お前の言ってる事を実践すればだ。会社とかで長年働いてるおっちゃんと、新人の仕事が同じだったら賃金も同じにしろって話だよな?」

上条「今までの実績もガン無視して、それっておかしくねぇかな?」

クリストフ「それは……その、男性が!受け入れるべきなんですよ!」

上条「仮に学校が同じで、歳も離れて無くて、成績も同じぐらいの学生がさ。入社試験で面接受けるとするよな?」

上条「会社側が一人しか欲しくなかった時はどうすんだ?『片方だけを受け入れるのは差別だ!』つって騒ぐのか?」

上条「それやったら二度と騒がれるのはゴメンだから、同じ学校からは取らなくなると思うが……間違ってるかな、俺」

クリストフ「……」

上条「もう一回言う。『胡散臭い』んだよ、お前らは。正論が正論過ぎる」

上条「誰かから奪うのが『悪』、ねぇ……?言っている事は分からなくもないが――」

クリストフ「……Paganだ」

上条「はい?ペイガン?どっかで聞いたな」

クリストフ「この者はPaganだ!耳を貸してはいけない!」

上条「……あぁ、はいはい『異端者』的な意味ね。つーかお前、それ」

クリストフ「彼の言っている事に耳を貸してはいけない!彼は差別主義者だ!」

クリストフ「僕達の『善』を成す行動に嫉妬している何も出来ない藁の人よ!我らの前から立ち去り給え!」

信者『……そうだ!去れ!』

信者『去れ、去れ、去れ……!』

信者『女の敵は疾く去れー』

上条(幼稚園のイジメレベルの酷さだが……大の大人が大真面目にやってんのを見ると、悲しくもあるな)

上条(俺一人突き上げたって、そりゃテメーらの力不足を露呈するようなもんだっつーのに)

クリストフ「私達は負けないぞ!汝は審判の日に父によって裁かれるのだ!」

信者『裁かれろ、Pagan!』

信者『報いを受けるのはお前達の方だ!』

信者『女の敵は地獄へ落ちろー、然るべき報いをー』

上条「……あれ?」

クリストフ「どうした!我らの団結力に恐れを成したかっ!」

上条「いやあの、そうじゃなくって、なんかおかしくないか?」

信者『去れ、悉く去れ!』

信者『異端者に慈悲など下らぬ!棄教者には地獄が待って居るぞ!』

信者『いいぞもっと言ってやれー、つーかエンマ様に下を抜かれてしまえー』

信者『ぶっちゃけ××コもげろー、女の敵ー』

上条・クリストフ・信者「「「……」」」

信者『ハーレムルートだと一人分の取り分が少なくなるんだぞー、そこら辺をわかれー』

信者『おにー、あくまー、たかちほー。櫻井×がウスラってるなんて酷い事言うなー』

信者『……』

信者『……おや?いつのまにか静かになってる……?』

上条「……おい、そこのバカ。どさくさ紛れに俺をDISってるヤツ」

信者『お、呼ばれてますよ?』

上条「お前だ、お・ま・えっ!フード被ってんのに前髪と金髪のメッシュがはみ出てるちっこいヤツ!」

上条「隣の人に全責任なすりつけてないでさっさ脱いでこっち来なさい!バレってからとっくに!」

信者『やだ……こんな大勢の中で脱げだなんて――興奮するじゃないですかっ!』

上条「おい恥女、いい加減にしとかないと、こっちにはベイロープにチクるっていう奥の手が――」

信者『――はいっ!そんな訳でですねっ色々ありましたがぁぁっ、ダサい修道士服を抜けばこの通り――――』

レッサー(信者)「可愛い可愛いレッサーちゃんでしたっ!残念っ!」

上条「何やってんの?つーかお前何やってんの?」

レッサー「まぁまぁ上条さん、それは後程しっぽりと。今は先に解決しなきゃいけない問題ありますでしょ?」

上条「あぁ、まぁなぁ?」

上条(殺気立ってる――いや、立って”た”『ヤドリギの家』教団の連中か)

上条(流石にレッサーのこの登場は意表を突かれたようで、緊迫した雰囲気に水を差した形になっているか)

上条(……クリストフの扇動次第で、また元へと戻れるだろうが……さて)

レッサー「ではでは適材適所、『ディベートさせたら最終的に手が出る女!』と学校で有名だった俺が替わりましょう!」

上条「適材かな?それ手ぇ出ちゃってるよね?」

レッサー「どうです、クリストフ司祭様?女の子相手だとヤル気出ないタイプですかー?」

クリストフ「……その言い方は癪に障るが……いいよ、好きにすれば」

レッサー「あざーす!……で、なんでしたっけ?『奪うのが悪で、施すのが善』ですか?」

クリストフ「その通りだよ。僕らは常に――」

レッサー「あ、すいません。そういうのお腹いっぱいなんで結構ですが――質問を」

レッサー「あなた方が『奪われた物』って一体なんでしょうかね?」

クリストフ「それは僕達が汗水流し――」

レッサー「あ、お金でしたっけ。思い出しました、そうそうそんな事言ってましたよねー、そういや」

レッサー「えぇっと、ですなー、どっから話したもんか迷いますが、あぁっと」

レッサー「『公共サービス』の概念ってご存じですか?」

クリストフ「……国が道路を作ったり、年金――」

レッサー「はい結構です。他にも色々ありますけど、そのために遣われていますね。なので国の予算HP見れば書いてありますよ?」

レッサー「どんな予算を組んでどのように遣われたのか、全て具体的に書かれていますね。当たり前ですけど」

クリストフ「だか――」

レッサー「はい、お次。えっと、『能力が等しいのに対価が違う』ですか?あー……居ますよねぇ、そういう人、いつの時代にも」

レッサー「私が知っている限りでは、ここから東へ数千キロ程離れた場所にある国家が、つい20年ぐらい前まで掲げてた思想です。所謂」

レッサー「『社会主義』ってヤツですな」

レッサー「あぁ勘違いしてないで下さいな。私は別に個人の主義主張を否定するつもりはありませんよ?」

レッサー「ですがねー、何一つの例外なく、駄目になっちゃったんですよ、社会主義ってのは。今も名前だけ残っている所はありますけど」

レッサー「理由は色々あるんですが、あなたが最初に仰った『等しく』ってのがネックでしてね?」

レッサー「全てに等しく、可能な限り差を作らないようにしたんですよ。それが彼らの考え方であり、理念ですからね。それ自体は至極真っ当なものです」

レッサー「で、生活水準にしろ労働水準にしろ、ある一定のラインを設けて合わせる必要があります」

レッサー「『金持ちが貧乏になる』のは簡単なんですよ。身上を潰してしまえば良いだけの話ですからね」

レッサー「財産を持っていれば没収して国庫へ入れれば良い。本人とご家族以外はお得な話ですな――が!」

レッサー「『貧乏が金持ちになる』のには、それ相応の財産が必要です。そう、『他人よりも多いお金』が必要だと」

レッサー「……うんまぁ、ここまで言えば分かるでしょうが。社会主義の行き着いた先は『全員等しく貧乏になった』んです」

レッサー「全員不幸になった――ま、それはそれで幸せなのかも知れませんし、理念だけを掲げて肥え肥る共産党員に比べれば遙かに真っ当ですが」

レッサー「『能力』にしても、それを測る人間が必要であり、またそれを国家が決めねばいけません、個々人ではなく『国家』が」

レッサー「さてどれだけ膨大な手間暇がかかったのか、想像がつきます?」

レッサー「仰る事は分からないでもないんですが、何一つ現実的ではありません。それこそ国家か、それに近い存在が全ての価値観を決めてしまう世界ですからね」

レッサー「んで、前の話へと戻るんですが、あなた方が奪われたと仰ってる財産、それが公共サービスに遣われているのはご存じですよね?」

レッサー「高齢者の福祉から若年層の教育。人々が暮らす生活空間を整える公共事業」

レッサー「更には外国からの侵略を守る防衛、また私達の声を代弁するに代理制間接民主主義で選ばれた議員のセンセイ方」

レッサー「これら全てを指して、『奪われた』ですか?へー?」

クリストフ「なにが――」

レッサー「可笑しいですねぇ、笑っちゃいますよあっはっはー!」

レッサー「どうせアレでしょ?『負担しているんだからサービスを受けるのは当然だ』とか『多くが無駄に遣われている』とか言っちゃうんでしょ?」

レッサー「じゃ、どうしますか?どうしたいんですか?」

クリストフ「ど、どう?」

レッサー「えぇですから具体的な代案をどうぞ?出来れば『○○部門の××事業が不採算である』と言って頂きたいですかねぇ」

レッサー「……Please?」

クリストフ「……」

レッサー「言えないでしょう、どうせ?どこが無駄で無駄じゃないとか、あれこれ改善すべきとか言うのは簡単ですよ――そう、『口』だけは」

レッサー「でも具体的に、実行へ移す案はお持ちでないのでしょう?ただただ理想の姿がこうあって、それにすべきだ、そうしましょう――」

レッサー「――そんな『寝言』しか言えないんですから、あなた方は」

クリストフ「気をつけろ!この女は異端だ!」

レッサー「って、あーぁ言っちゃいましたか、言っちゃいましたよね-、その言葉を」

レッサー「『こっちが待っていた』とも知らずに――てかクリストフさん、あなたお兄さんに比べて数段落ちますなぁ」

クリストフ「何を」

レッサー「あなた方は言いました、『弱者には施しを与えるのか善なのだ』と。ま、否定はしませんが」

レッサー「私もこちらの上条さんも、正しい意味ではあなた方と同じ十字教徒ではありません」

レッサー「私の方は一応そうなんですが、ツンツン頭はハレムを肯定する宗教の方です」

上条「さりげなく捏造すんなコノヤロー」

レッサー「なので十字教アリウス派を名乗るあなた方からすれば、まず間違いなく『異端』であり、”Pagan”であると。それを踏まえてお聞きしますね?」

レッサー「あなた方の『善』や『施し』とは、たかだか信じる神が違っただけで排斥する理由になるんですか?」

クリストフ「……っ!」

レッサー「ならばここにもいらっしゃいますよね、移民の方。彼らは間違いなく十字教ですらないのですが、彼らも排斥すべきだと?」

レッサー「もしそうでないのならば、移民だけを贔屓にして私達を排除する――立派な『差別』ですよねぇ?」

レッサー「あなたが散々仰った『神の元に平等あるべき』は『ただし異教徒と別派閥は除く!』という薄っぺらい物であったと」

レッサー「教会を散々恣意的だと非難されていましたが、あなたの方が酷いんじゃないですかね?どうです?」

クリストフ「……」

レッサー「ちなみに今クリストフ司祭様が仰ったのは『詭弁』の、『ネームコーリング』もしくは『ラベリング』という手法ですねぇ」

レッサー「逆立ちしても闇討ちしても、勿論正面からも勝てない程に理論武装した相手とかいますよね?そんな絶望的な状況で卑怯者がよく使います」

レッサー「勝てる目算が無いので、『相手への人格攻撃をして相手が用いるロジックを貶める』手口」

レッサー「たっとっえっばー、ですねー。ある政治家は『○○という政策があり、××という成果を出してきた』と選挙で言います」

レッサー「彼の言う事は正論なのでー、野党側は別の政策やらを取り上げて攻撃材料にしなければいけません。しかしそれをする頭は無い」

レッサー「なので彼らは、『上から目線だ』とか『世襲だ』とか『頭が悪い』等々、個人への中傷に徹するしか無かったんですな」

レッサー「そうすれば『相手の議論へ踏み込む事無く、相手を貶める事が出来るから』です」

レッサー「……ま、そんな人格攻撃をした瞬間に『自身は正攻法では勝負を挑む事すら出来ない負け犬』だと証明してしまっているんですがねぇ、えぇ」

レッサー「その証拠に言えば言う程、使えば使う程効力を失っていくんですよ。正常な人間から見れば一目瞭然で、議論にすり替えだと気付くんですがね」

レッサー「そしてこの『ラベリング』、通称レッテル貼りは『使っている本人をダメにする』という副作用がありまして」

レッサー「成功体験って言うんですかね?こんな簡単で単純な詭弁を使い、勝利してしまったら手放せなくなります」

レッサー「要は『相手個人の文句を言っていれば、どんな議論へ対しても通用する――”と、思い込める”』んですから」

レッサー「実際には二度三度繰り返す内に、それがご自身へ対するレッテルを貼ってるに過ぎません。どんなものかは口に出したくもありませんけどね」

レッサー「んで、以上を踏まえてクリストフさーん?言えるもんならばもう一度どうぞー?なんでしたっけ?Pagan?」

クリストフ「……っ!」

レッサー「あー、あとついでに私は優しいんで簡単な経済学についてレクチャーしたいと思うんですが、まぁ普通のサラリーマン居ますよね?」

レッサー「その方の生活費を1、でもって納税額も1としましょう。えぇ体感なので細かい事は言いっこ無しでお願いしますよ」

レッサー「で、彼の納めた1の税金。これを遣えば1――つまり誰か一人を生活させる事が出来ます」

レッサー「ま、学費なり保険なり、お歳を召された方への年金だとしても良いでしょう――あ、これはあなた方の言う『善の施し』になるんですかね」

レッサー「んーでー、同じくお金持ちは100、場合によってはそれ以上納税をします」

レッサー「それによって助かる人は普通のサラリーマンの100倍以上だと……分かります?私の言っている意味?」

レッサー「今のは個人の例であり、税金の多くは法人税が占めていますが、まぁアレですよ」

レッサー「『金持ちの方が他者ヘ対する貢献度』に於いて、一般人を遙かに凌ぐんですね」

レッサー「それが不正なお金だと、または汚い方法で稼いだとあなた方は言うのかも知れません。誰かから『奪った』とね」

レッサー「ですが、ある一定額はそうやって『弱者への施し』に有効活用されている現実もあるんですよ」

レッサー「で、あなた方は具体的にどんな活動をされていますか?納税や寄付金で誰かの助けになっているとか?」

レッサー「それともボランテイア活動をしている……いや、それも違いますよね」

レッサー「あなた方がやっているのは、この『ヤドリギの家』を肥らせるためだけ」

レッサー「奉仕活動と言う名の脱法介護も、信者さんによる討論の場も、全てが教団の営利目的に適っています」

クリストフ「う、嘘を吐く――」

レッサー「私はね、クリストフさん。一身上の都合からPatriot(愛国者)を名乗ってるもんなんですが、全ての根本というのは国家なんですよ」

レッサー「ご両親が大事――いいですよねぇ、パパンとママンには迷惑ばっかかけてますから、いつかご恩返ししたいものですな」

レッサー「兄妹が大事――兄弟仲が宜しいのは結構ですなー。ヨスガると目も当てられませんが」

レッサー「家族が大事――私もいつか素敵で浮気性じゃない旦那様が欲しいものですよ」

レッサー「仲間が大事――これも嫌いじゃありませんなー。私もそうですし」

レッサー「故郷が大事――ま、イングランドにスコットランド、北アイルランドにウェールズ。郷土愛は大切ですからね」

レッサー「色々な『大事』の範囲がありますよね?他にも会社で会ったり、同好の士達であったり、色々とあるでしょう」

レッサー「それら全てをひっくるめた、最大単位が『国家』なんですよ。恐らくあなたには理解出来ないでしょうが」

レッサー「私が、私達がブリテンの国益を守るというのは、その上に乗っている国民を守るためです」

レッサー「この世界には家族を愛する人間が居て、仲間を愛する人間が居て、郷土を愛する人間が居る」

レッサー「そして、国を愛する人間が居る。ただそれだけの話です……ま、なんですかね」

レッサー「この国を恨み、この国を騙し、この国を嘲り、この国を裏切る」

レッサー「そんなあなたにアドバイスをして差し上げましょうか。優しいなー、さっすがレッサーちゃん!」

レッサー「まずここに、10ポンド紙幣があります。これは国が発行しているものですが――」

レッサー「――どうしてこれが、『10ポンドの価値を持つか?』と考えた事はおありでしょうか?……ないですよねぇ、きっと」

レッサー「その理由は『国家が10ポンドだと価値を保証しているから』です。分かりますか?」

レッサー「例えばこれがメモ用紙に書いた『じゅっぽんど』であるならば、何も買えませんし、他の貨幣との交換出来ません」

レッサー「何故ならばその紙は何の価値も誰の裏付けもない、ただの落書きだからです」

レッサー「ですがこの紙。発行に数ペニーしかかかっていないのに、10ポンドの価値を持ちます。それは何故か?」

レッサー「それも『ブリテン国家がそう保証しているから』以外の答えはありません」

レッサー「……ま、他にも大体そうなんですよ。あなた方が不朽のものだと『勘違い』している人権ってありますでしょ?」

レッサー「人らしく生きる権利だとか、表現の自由だとか――アレも全て、何一つ例外なく、『保障しているのは国』です」

レッサー「そうですねぇ……」

レッサー「我々がか少し前まで植民地にしていた香港。あそこでは中国国内で唯一、言論の自由が認められていました――そう『ブリテン国家』によって」

レッサー「私達が私達のルールに則り、住人へ対してそう保障し、維持を続けていたからです」

レッサー「統治者が件の帝国主義の亡霊どもへ替わると、あっさりその『保障』は打ち切られ、言論の自由はなくなりましたよね?それが、現実」

レッサー「……なんてーか、ですね。世の中には不思議な人達もいらっしゃいましてね」

レッサー「『人権とは人が生まれながらにして持つ権利だ』なんて仰る方が居ます。言うのは勝手ですが……あー……バカでしょ?ぶっちゃけ」

レッサー「言っちゃなんですが、『人が最低限度の暮らしが出来る権利』なんてのは、ある程度豊かな国じゃないと出来ません」

レッサー「言い方は悪いんですが、それこそ『金持ち』を多く有していないと、他者の面倒を丸々看るなんてのは不可能です」

レッサー「視点を少し変えればウクライナに南スーダン、そしてイラクで絶賛活動中のISISの皆さんはどうです?」

レッサー「そちらへお住まいの方々は人権を与えられなかったのですか?それとも無くしてしまったとか?」

レッサー「その答えも簡単ですよね。『国民を保障する国家にその力が無い』だけの話」

レッサー「……はぁ、バカバカしい。どうしてこんなロースクールで習うべき事を言わなければいけないのか、と」

レッサー「あー、そうそう、それじゃ簡単な実験をしてみましょうか。簡単なね」

レッサー「あ、すいませんクリストフさん、ちょっとこちらへどうぞ」

クリストフ「……僕?」

レッサー「いいじゃないですか、別に取って食う訳じゃなし――あ、もそっと右、そうそう、そこがベストです」

レッサー「ではでは、私のお話の締めへ入らせて頂こうと思うんですが――とおっ!!!」

クリストフ「な、何を――」

レッサー「『――Please, Go to the grave(あなたのための墓穴へどうぞ)』」

ガッ

クリストフ「何――だぁぁぁっ!?」

ビリビリビリッ……ドーンッ

信者『司祭様……!?』

上条「ちょ!?レッサー、お前跳び蹴りって!?」

上条「つーか大丈夫か!?ビニールシート破った先に落とし穴?なんで?」

レッサー「今、私は傷害罪を侵しました。ぶっちゃけ現行犯です。イラッとしてやりましたが、反省していません」

上条「しなさいよ、反省を」

レッサー「でも普通は、少々イライラしたからって手を出しませんよね?だって捕まりますから。ですが!」

レッサー「この『捕まえて・裁判にかけ・刑を執行する』という一連の流れ。これ全て国家がやっているものです」

レッサー「もし仮に、この国がきちんと機能していなければ、暴力へ対して弱い者が搾取され続ける地獄のような光景が見られるでしょうね」

レッサー「あなた方の安全を保障し、また自由に言動が行えるように取りはからっているのも、全て『国家』が保障してくれてるんですよ、えぇ」

レッサー「今、あなた方がやっている事、仰っている事は――」

レッサー「――平和な場所で反撃しない相手に『自由』だの『平等』だと言った、聞き心地が良くて中身の無い言葉で批判する――」

レッサー「――言わば『思想家ごっこ・活動家ごっこ』に過ぎませんな」

レッサー「誰もが反論しにくい綺麗事を言い、自己満足に浸るだけの」

レッサー「目的があるのでしたら政治的な活動をすれば良いでしょう?我が国はそれが出来る権利を、全ての人が正しく保有しているんですから」

レッサー「でもあなた方はしない。どうしてでしょうね?」

レッサー「答えは簡単、『胡散臭い』からです。私の相方が言ったように、地へ足をつけて真っ当に生きている人間からすればそう見えるんですよ」

レッサー「受け入れられないのは分かってる。だからこうして、地味ーに人を騙くらかして詭弁を振うしか出来ないと」

レッサー「この世界で一番偉いのはあなた方ではない――誰かを『導いてやらなくてはいけない』なんて傲慢な考えを持った人間では、決して」

レッサー「そして当然、私のような法を法とも思わないような無頼の輩でもありません」

レッサー「毎日毎日を正直に生き、自分の頭で考え、誰かを愛し、誰かから愛される――」

レッサー「――そんな『普通』の人達ですよ」

――寄宿舎404号室

上条「レッサー……脱げよ」

レッサー「灯り、消して下さいね……?」

上条「違げーよ、何雰囲気作ってんだよ!俺はただ応急手当するから上着を取れっつってんだ!」

レッサー「暫しお待ちを!絶好の大義名分を得た今、全速力でマッパになりますから!」

上条「やってもいいが、俺は逃げるからな?」

レッサー「ちゅーか心配しすぎなんですよ。私達には魔術でちょいちょいと治せますから、そんなに心配しなくても」

上条「多分、だけどさ。『魔術で治してる最中なのに血が滲むぐらいの大怪我』なんだろ?」

レッサー「気づかれたくない所にだけ気づきますよねぇ、相変わらず」

上条「心配すんな。こう見えても怪我は大小しょっちゅうしてるから、手当には定評があるぞ!」

レッサー「いやその、そっちはあんまり心配してないんですがね、その」

レッサー「ぶっちゃけ肌見せるの恥ずかしいかなー、なんてですね」

上条「……」

レッサー「……」

上条「……くっ!お前ホンモノのレッサーをどこへやったっ!?」

レッサー「居ますよー、あなたの目の前、NOW!」

上条「俺の知ってるレッサーは嬉々として全裸になろうとする筈だ!」

レッサー「自業自得とは言え、何か凹みますねぇその評価」

上条「んで、無理矢理脱がすのと『右手』で無理矢理脱がすの、どっがいい?」

レッサー「実質上の一択だと思うんですが……まぁ、抵抗する力も無いんで、お願いしますね」

上条(つってレッサーは『N∴L∴』のアウターを恥ずかしそうに脱ぎ、背をこっちへ向ける――)

上条(――恥ずかしそう!?あのレッサーが!?)

上条「……騙されるな!これはきっと罠だ!」

レッサー「てーか寒いんでちゃっちゃとやって下さいな。あと声に出てます」

上条「お、おぅ……!」

上条(後ろ向きにベッドへ座ったレッサー、後ろからシャツをまくって、と)

上条(斬られた痕?数本の横に伸びる傷口からは血が滲んでいる)

上条(ブラの背中部分がない、って事は――)

上条「……」

上条(コイツ、ノーブラじゃねぇか!?)

上条(……うん、不謹慎だよね。分かってるよ!でも男の子だから仕方がないじゃんか!)

レッサー「……おや?どこかでオオカミさんが叫んでいるような……?」

上条「幻聴じゃないかな?この部屋には紳士しかいないし」

上条(と完璧に誤魔化して、テリーザさんから預かった救急箱から消毒スプレーとガーゼ、あと包帯を取り出してーと)

上条(……テリーザさんにやって貰えばいいんじゃね?って、今思ったけど……まぁ、いいか。兄妹設定だし)

上条(さっさと消毒し――)

レッサー「……上条さん」

上条「エ、エロい事なんて考えてないよっ!?本当だからねっ!」

レッサー「何かもう、その反応だけでお腹いっぱいなんですが……違います。そういうんじゃなくて、ですね」

レッサー「さっきのお話、どう思いました?」

上条「どっち?」

レッサー「どっちも、ですね」

上条「正直に話していい?」

レッサー「どぞ」

上条「クリストフの話はちょっと共感出来る所もあった」

レッサー「……どこら辺が?」

上条「面接の話」

レッサー「実体験だったんですか、あれ!?」

上条「バイトだけどなー。俺の場合、トラブルに巻き込まれて面接すら受けられない事が何度か……!」

レッサー「心中お察しします、えぇ」

上条「だからこう、なんだろうな?そんなに変わらない奴が、楽なバイトばっか狙って落としてる、みたいなのはちっと思うよ」

上条「不公平だよな、って」

レッサー「……ですかねぇ」

上条「でもな、俺が知ってんのはそれだけじゃない。知り合いに学園都市の第三位――」

上条「――と、第一位と第二位と第五位と第七位が居るんだけど」

レッサー「ほぼコンプリート!?内外からも謎の存在とされているのに!」

上条「話聞くとスゲーなーとか、羨ましいなーとかは思っちまう、よなぁ?そんなに俺達と歳も変わんねぇのにってな」

上条「でも会って話して、付き合ってみれば――その『立場』だからこそ悩んでる事があってさ」

上条「悪い大人に騙されて実験をさせられて、その責任を取ろうと死ぬ気になった奴も居る」

上条「どんだけ止めて欲しくても、誰一人として手を伸ばしてくれなかった奴も居る」

上条「……よく、憶えてないんだが他にもあるっぽいが、それはまだ思い出せそうにはない」

上条「俺が何を言いたいのかって言えば、誰だって自分の立場で悩んでんじゃねーの、って事だな」

上条「キャーリサ……は、極端な例かもしんないけどさ。あんだけイギリスの事を大事に考えて、手を汚すなんて考えられないだろ」

上条「外からはとても華やかな世界に見えるけど、実際には大違いだ」

レッサー「あの方々は基本、自由意志というものが制限されがちですからね」

レッサー「国を立て直すために命だけでは無く、ご自分の名誉すらも賭けているんですから、ご立派なものですよ」

上条「だから俺は、その個人がどーたらってのは『隣の芝生は青い』ってのだと思ってる」

上条「『当事者じゃないから分からない』し、『当事者じゃないから好き勝手言える』ってだけで、なんかこう、無責任だ」

上条「そりゃ犯罪とか、セレブ?の特集番組見ると『何やってんだコイツら』的な感想はあるけどなー」

レッサー「……その」

上条「――はい、終わり。服着て良いぞー」

レッサー「杞憂って言葉知ってます?」

上条「はい?杞憂?」

レッサー「昔々中国に居た男が、毎日毎日『天が降って来るかもしれない!?』と怯えて暮らしていました」

レッサー「それが故事になって『杞憂』という言葉が生まれました」

上条「取り越し苦労……俺もどっちかっつーと、その男のタイプだな」

レッサー「これね、私なんですよ」

上条「はい?どういう意味?」

レッサー「私がさっき語ったお話――それは全て私にとっては事実であり、真理でもあります」

レッサー「どこへ出しても恥じる事無く主張しますし、ブリテンに誓って正しいと思っています」

レッサー「……ですがねー、ある人にとっては私も同じ、『空が落ちてくるぞ』と」

上条(治療が終ってシャツを下ろし――たん、だが。レッサーはこっちを振り向かない)

レッサー「こう言っちゃ色々と角が立つんですが、『論破されるには論破されるだけの知識』が必要なんです」

上条「お前、それ言っちゃいけない台詞だろ」

レッサー「上条さんはクリストフさんの説教を『胡散臭い』と切って捨てました。それは恐らく経験に裏付けられたお言葉なのでしょうな」

レッサー「ですが、全ての人が同じような体験をしているかと言えば、生憎そうではありません」

レッサー「生まれてから寿命以外で人の生き死には触れず、また暴力とも無縁である人間だって居る――いえ、それはとても幸運なのですが」

レッサー「自らの国家が国家であるための武力を忌諱し、また国によって国内での自由や権利を認められているのに国家を恨む」

レッサー「そんな方は、結構居るんですよ。残念な事にね」

上条「……」

レッサー「ISIS――イラク・シリアのイスラム国へ参加する若者が増えている。それも先進国からって、お話はご存じで?」

上条「なんでその話に……?」

レッサー「Please?(どうですかね?)」

上条「あぁ知ってるよ。日本人でも誰か、大学生が行こうとして捕まってる」

上条「……あと現地へ取材に行った、女の子っぽい名前の男の人?は、向こうで改宗して元気に暮らしているらしいな」

上条「処刑されるよりかは大分良いけど……なんか、なぁ?」

レッサー「あれも根っこ自体は同じなんですよ。聞いた事ありません?」

レッサー「『どうして俺は能力を持っているのに、世間からは相手にされないんだろう』」

レッサー「『それはきっとこの社会が悪いからだ。そうに違いない』」

レッサー「『だったら俺が正しい方向へ導いて”やる”必要がある』――みたいなの」

上条「それ、クリストフの……!」

レッサー「最初に誤解を解いておきたいのですが、ISISへ参加するのはムスリムではなくただのテロリストです」

レッサー「ただ、その背景にあるのは移民とムスリムの関係もありましてね」

レッサー「えーっと、まぁ、中東の本国を離れて欧米へ行きますよね?移民として本国を捨てて逃げてきます」

レッサー「でもそこは異境の地。文化も人種も言語も全く違いますし、生半可な努力では受け入れられません。不法移民であれば余計に」

レッサー「それでもまぁ?移民一世ならば、本国がどのような所で、逃げるだけの理由があったからと自身を納得させられるそうです」

レッサー「向こうに比べれば、こちらは天国であると――ま、そのただ乗りしている社会保障は私達の積み上げたものなんですが」

レッサー「で、今テロリストへ合流するのは二世や三世が多いんですよ」

レッサー「彼らは生まれた時から本国を知らず、異境の地の住人として暮らしています」

レッサー「ですが彼らもまた肌の色、国籍の有無、言語などによって『区別』されるんですよ」

レッサー「テレビをつけてみればコメンテーターが平等と融和を唱え、新聞を開けば社説で平和と自由を訴えているのに」

レッサー「そこで、先程の台詞へ行き当たり、終ってしまいます」

上条「……自分達の住んでる場所で、受け入れられないから、か?」

レッサー「ですがねぇ、それもまた当たり前の事なんですよ」

レッサー「ブリテンでパキスタニの事件があって、また数年前にはロンドン暴動で移民が暴れまくって国民感情は惨憺たる有様です」

レッサー「確かにまともな移民も居るでしょう。というかまともなのが殆どなのでしょうな。そこは否定しませんし、してもいけません」

レッサー「でもそれとは別に感情というものがありまして、ここまで人様の国で好き勝手するならお前ら帰れよ、という動きが加速しています」

上条「右派勢力だっけ?」

レッサー「だけじゃないですね。スイスとか、移民の数を制限し始めた国も出て来ています」

レッサー「……そうやってまた、行き場を無くす、無くした先に両手を広げWelcomeしているのが――」

上条「……テロリスト!」

レッサー「Exactly。これと言った意味も大義も無く、自分が置かれてる現状を国へと逆恨みして攻撃する人、居ません?」

レッサー「何を勘違いしたのか、『そういうの』にハマってテロの道へと走る……ま、自分探しの旅の一環と言えば、そうかも知れません」

レッサー「もう帰っては来れないでしょうけど」

上条「……」

レッサー「ISISを指して『狂人の群れ』と言う方も多いようですが、実はアレある意味では全く理に適った行動なんですよ」

上条「アレがか!?誰が考えたって無茶だろ!?」

レッサー「無茶?具体的にどうぞ」

上条「いや、だからさ?連中のやってる事ってテロだよな?」

上条「石油採掘施設奪ったり、異教徒奴隷にしたり、外国人捕まえて殺したり身代金取ったりとか」

上条「確かにアメリカとか、EU諸国嫌いな奴は喜ぶかもしれねーけどもだ。どう考えたって無実のイスラム教徒にまて迷惑かけんだろ?」

レッサー「あ、何人かのイスラム指導者が『ISISはムスリムでは無くテロリストである』と声明を出しているので、そこは間違えないで下さいね」

レッサー「――んで上条さん。正解!……てか、なんだかんだでピンポイントに理解しますよね、そーゆーの」

上条「はぃい?正解?何が?」

上条「俺が今言ったのって、『テロリストが好き勝手やれば、関係ない人達まで白い目で見られる』って話だよな?」

レッサー「えぇ、その通りですね。で、その”あと”が問題なんです」

上条「後?どの?」

レッサー「欧米、というか十字教圏内では『ムスリムとアラブ人が白眼視される』と。すると?彼らはどこへ行きます?」

上条「……あっ!」

レッサー「ですね。『通常のコミュニティから弾き出されれば、過激派という極端な思想へ走る場合が多い』んです」

レッサー「むしろ真っ当なムスリムまでもが忌諱されるようになれば、それだけISISへ入ったり共感したりする人間も増える、と」

上条「最悪だな、そいつら!」

レッサー「『ここ』もある意味、そうなんですよ。例えばテリーザさん居ますよね?」

上条「待て待て、どうしてあの人の名前が出て来るんだよ?テリーザさんとお前はあんま話してないから分からないだろうが、あの人はまともだぞ?」

レッサー「……むぅ。私が居ない間にあんな事やそんな事を……!」

上条「してねぇよ。俺がどんだけシモ緩いと思ってんだ?」

レッサー「えっとですねー」

上条「――話を戻そうか!シリアスな話へねっ!」

レッサー「んじや聞きますが――どうしてその”まとも”な人が、”まともじゃない”ここに居るんです?」

上条「え?どうしてって、そりゃ本人へ聞いてみないと」

レッサー「お歳から察するに大学生、教員免許がどうってならば間違いないでしょうな」

レッサー「そんな方がどうしてここなんかに居るのか、分かりませんか?」

上条「……居場所、か?」

レッサー「つーまーりー?」

上条「都会の大学へ出てきたものの、中々馴染めなくって。どうしようか悩んでいたら……」

レッサー「でしょうね。恐らくは『そこ』へつけ込んだんでしょうな」

レッサー「確か数ヶ月前から居る、みたいなお話でしたよね?」

上条「ん、あぁそう言ってたけど」

レッサー「ならば休学か退学――あ、今は休み明けなので、今から戻れば何とかなるかも知れませんかね」

上条「……どういう話だ?」

レッサー「彼らの手口はですね、『先鋭化』するんですよね。言い換えれば『社会からの孤立』とでもなるんでしょうか」

レッサー「例えば上条さん、私達の想像――は、少しばかり酷いですが――が正解だとして、テリーザさんが学校に馴染めないとしましょう」

上条「本当に失礼だよな。何となく正解な気もするが」

レッサー「彼女へ適切なアドバイスをするとしたら、どんな風に言います?」

上条「あー……趣味のサークルにでも入ってみたり、誰か同郷の人と話したり……」

上条「最悪、転校すんのもアリじゃね?確か、こっちの学校って日本よりも緩いんだよな?」

レッサー「ですなぁ。なので私もそれプラス休学も含めてアドバイスをするでしょうが――で、『教団』の場合は『囲い込む』と」

上条「囲い込む……?日本語合ってんのか、それ?」

レッサー「えぇ、割とマシな言い方をしてそれですから、多分合っていると思いますよ。表現を変えるならば『依存させる』と」

上条「……成程」

レッサー「まず長年の親友のように親身に、そして両親のように鷹揚になって、相手を受け入れます」

レッサー「愚痴があるなら何時間でも聞きますし、寂しいのであれば常識の範囲内で側に居るでしょう。ここだけを聞くとぉー」

上条「良心的だよな……あ、もしかしてスッゲー金取るとか?」

レッサー「ブーっ!不正解!だったら『まだ』分かるんですが、取らない分だけタチが悪い」

上条「悪い、のか?良いんじゃなくって?」

レッサー「悪いですねぇ。即金へ走れば『あ、こいつら金が目当てなんだ』と分かるでしょうに、それをしないので実に巧妙です」

レッサー「で、まぁ最初はタダで色々やっていると、当然段々依存していきますよね?よねよね?」

上条「よねが多いが、まぁそうだな。でもそれはそれでいいんじゃね?生活に余裕が生まれれば、新しい環境にだって馴染むだろ」

レッサー「ところがどっこいハム太○!」

レッサー「……」

レッサー「そういや最近――」

上条「言うな。時代の流れなんだ。ゴジ○シリーズにトドメを刺した俺の敵なんだ……!」

レッサー「同時上映で『お前ら、マーティングって言葉知ってる?』と突っ込まれたラインナップですからねぇ、えぇえぇ」

レッサー「で、昔ゲームをしていたらハム○郎の中の人がですね」

上条「他人ですよ?名前が違うんだから違うに決まってんじゃん故意曜日!」

レッサー「てか、上条さんぶっちゃけますけど、たかだか都会へ出て来ただけで凹む上、自己解決も出来ない人間のメンタル」

レッサー「そう、急激に改善されるなんて事、ありますかね?」

上条「あー……うん、分かるような?」

レッサー「なので大抵――と、言い切ってしまうと角が立つので、賢いレッサーちゃんは”中には”と言い直します――は、そのままズルズルと、はい」

レッサー「具体的には依存しまくって、むしろそっちが本業みたいになってしまうんですよ。もうずっぽりと」

上条「あちゃー……」

レッサー「んで、会社や学校、そういうのを放り出してハマればハマる程、今度は社会復帰が困難になっていきます」

レッサー「そして気がつき、周囲を見渡しても相手にしてくれる人は居らず――」

レッサー「――唯一残った『無私の友人』とやらの一員になる、と」

上条「……嫌な話だな、それ」

レッサー「ま、この場合『教団』という『宗教団体』だっただけで、他にももっとタチの悪い所は一杯ありますからねぇ」

レッサー「政治団体であったり、環境保護団体とか、他にも”市民”運動団体でしょーかねぇ」

レッサー「『宗教の体裁を取っていない”だけ”の宗教』なんてのは、腐る程ありますから」

上条「や、神様崇めていないんだったら宗教じゃなくね?」

レッサー「教会ってのは突き詰めれば神の代弁者、預言者なんです。あれこれスンナとか、戒律守れよとか、『神の名に於いて』言う人達です」

レッサー「が、そうじゃなくて『自然環境は悲鳴を上げている』とか、『鯨は怒りの声を上げている』とか、ガイアの声を聞くような人達居ますでしょ?」

上条「居るなぁ。測定器よりも高感度の鼻血出す人とか」

レッサー「多少胡散臭くても、信者獲得は巧妙にすれば難しくもありませんからね――特に若い女性には利用価値がありますんで、重宝されるでしょうな」

上条「お前」

レッサー「実際に子供達の世話を一任された上、私達のような体験入信の勧誘者にもなっていますし――っておや?何か変な想像しませんでしたニヤニヤー?」

上条「ニヤニヤ口で言うなよ!」

レッサー「……ま、”そういう所”も少なからずあるらしいので、上条さんの妄想もあながち間違いではない、と」

レッサー「どっかの島国の自称小学四年生が、実は二十歳でNPO法人の代表だった所からも、胡散臭いものは多々ある訳で」

レッサー「アレも蓋を開いてみれば、『最大野党のシンポジウムのレギュラーゲスト』や『その野党の次期党首と懇ろ』、『その野党の帰化済み議員と懇ろ』」

レッサー「『その野党の元代表兼元総理の息子が副代表を勤めるNPOで同じ副代表』とか、こっちならば政党潰れるぐらいのダメージなんですがねぇ」

レッサー「……」 トスッ

上条「レッサー?」

上条(コテン、とそのまま横になるレッサー)

レッサー「……でも、ですがねぇ。私たまーに思うんですよ」

レッサー「言ってみればここもある種の楽園じゃないですか?」

上条「ここが?こんな所がか?」

レッサー「私達は『外』を知ってますでしょ?もっと自由に、しかも幸せなケースなんか幾らでも見ているからそう言えるのであって」

レッサー「ここでこうして、知識も能力もない人間達だけが寄り添って生きる――それはそれで幸せなんじゃないですかねぇ、と」

上条「……」

レッサー「ここで『国が悪い!企業が悪い!平等な社会を作れ!』って、妄想を土台にした高層ビルぐらいの陰謀論をおっ立てて内に籠る」

レッサー「現実を直視せずに、自分達がどうした存在であるかすら知らずに生きていく――そうした方が、実は幸せなんじゃないでしょうか?」

レッサー「……だから、この人達にとっての杞人は私」

レッサー「『空が落ちてくるぞ!』と有り得ない事を言って不安にさせる、滑稽な嘘吐き……それが、私ですよ――っと、上条さん?」

上条(どーにもらしくないレッサーの頭をくしゃりと乱暴に撫でる……こっちから顔は見えないが)

上条「……聞いた事無かったんだがな、そういや。お前の魔法名は何だ?」

レッサー「え?」

上条「何を考えて、何をしたいと思って、その名前へ決めたんだ?」

上条「今、お前はその名前に恥じない行動をしているか、なぁ?」

レッサー「私の、魔法名……」

上条「俺の戦友は知り合いのために最強であろうと誓った!」

上条「俺の知り合いは救われぬ人のために戦うと決めた!」

上条「……な、レッサー?お前にだってあるんだろう?――イギリスのために命を賭けるような、そんな誓いが!」

レッサー「……」

上条「だったら胸を張れよ!誰から何か思われようが関係ないじゃねぇか!お前の『誓い』はその程度で揺らいじまうようもんなのかよ!?」

レッサ-「ヒッデー言い方ですな、それ」

上条「少なくとも俺は!俺やアリサは!お前達が無理矢理にでも助けて貰った事には感謝してるんだからな!」

上条「この奴らだってそうだよ。今はまだ理解出来ないかもしれない。そしてもしかしたらずっと分からないままで恨まれるかも知れない。でもな!」

上条「この先に待ってんのが袋小路なのに!居なくなった連中のように『病死』するかも知れないのに!黙って居られる訳がないだろうがよっ!」

上条「お前は何だ、レッサー?」

上条「何のために在る?何がしたい?何をすべきだ?」

上条「それは俺なんかに言われなきゃいけない事か?どうなんだよっ!?」

レッサー「……魔法名『Arthur829(永劫の旅路の果てに再び戴冠する王)』、そして――」

レッサー「――『Less-Arthur(未だ満たさぬ英傑の聖杯)』……」

上条「――はい?れす、あー?」

レッサー「憶えておいて下さいな。いつか轟く英雄の名前ですから」

上条(そう言って振り返ったレッサーの、その顔に陰はなく)

上条「うっせぇな元テロリスト。少しは軟禁されてるキャーリサ達を見習いやがれ」

レッサー「反省、してると思います?」

上条「お前もキャーリサもする筈無いですよねっ!」

レッサー「……てーか、流石のレッサーちゃんも疲れましたよー。思わず愚痴を吐いてしまうぐらいには、えぇ」

上条「俺の方の話はさっき伝えたけど、結局お前何やってたの?ドラえも○に恨みでもあるとか?」

レッサー「や、別に大したこっちゃないんですけど、万が一分からなかったらと思いまして!」

上条「気持ちは有り難いんだが、もっと別の所にだな。気を遣うにしてもだ」

レッサー「あー、ねみぃ……ちっと寝ますわ」 ゴソゴソ

上条「聞きなさいよっ人の話をなっ!」

レッサー「上条さん、その、手を」

上条「『右手』か?」

レッサー「ではなくてですね、こう、眠るまで握ってて欲しいかなー、みたいな」

上条「……まぁ、構わないけど」

レッサー「では私は左手を。あの日あなたが掴んで下さったように」

上条「あの日?」

レッサー「……ちょっとだけなら、イタズラしちゃっても良いです……よ……」

レッサー「……」

上条「おーい?レッサーさーん……?」

レッサー「…………くー……すー…………」

上条(何やってきたのかは分からないが、まぁ戦いがあったっぽいのは事実で)

上条(俺なんかに愚痴り、目ぇ瞑って直ぐに寝息を立てるぐらいには、消耗している訳で)

レッサー「……」

上条(こうやって見てると女の子なんだよなぁ。他の子達もそうだけどさ)

上条(……ま、側に人が居るとよく寝付けないだろうし、手ぇ離して――)

レッサー ギュッ

上条(――力強っ!?こいつ霊装解くの忘れてんじゃねぇのか、ってぐらいに握って離さない!)

上条(つーか俺も自分のベッドで寝たいんだが……昨日、眠れなかった分取り返したいっつーかさ)

上条「……」

上条(ベッドは……ここにあるよな。既に一人寝てるけど、更にシングルだけども)

上条(詰めれば、まぁ、何とか?) ゴソゴソッ

レッサー「……すぅ……」

上条(狭いのは狭いが……ま、いいや。俺も色々あって疲れた……)

上条(つーかレッサーの握力スゲェな。本当に解除し忘れたとか?……いやぁ、ナイナイ。そんな『ブラつけたまま寝た』みたいな話――)

上条「……」

上条(そういや、No-Bra(※巻き舌)でしたっけ……確か、えっと……Dカップ&現在成長中さんが!)

上条(……待て!落ち着け!そういう事じゃない!)

上条さんの下条さん(ちなみに海外では”Braless”って言うんで、検索する時は間違えないで下さい)

上条さんの下条さん(他にもスラングとして”Tit”と”Babe”でレッツトライ!)

上条(黙ってろ兄弟!久々に出て来たと思ったらそれか!?……いや違う!何か違う!)

上条(てーか『ちょっとだけなら』みたいな事も言ってたし、す、少しだけなら……?)

上条「……」

上条(……だ、ダメだ!信頼してる相手にそんな事するなんて最低だよ!)

上条(俺達は兄妹!設定でも兄妹は兄妹だ!エッチな事を妹にするお兄ちゃんなんて居ませんっ!)

上条(……はぁ、疲れてんなー、俺も。なんでこんな状態でエロい事考えるんだか。情けない……)

上条(さっさと……眠ろう……余計な事、考え、る……)

上条(……前、に――)

上条 スー……

レッサー「……」

上条「……」

レッサー「…………………………………………………………………………ちぇっ」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

最終章、最短で来週、遅くとも年内には終ると思います

ちなみにクリストフの台詞は何年か前に選挙事務所へ潜り込んだ際に拝聴した、某労組幹部と政党議員のお言葉をほぼそのまま引用しています
……しかしISIS+移民の現状解説と、寸止めハーレム系ラブコメが同居してるSSって混沌とし過ぎてる気も……?

さすが釣った魚に餌をやらない主義の上条さん!
さらには他人(の女の子)の弱気につけこむことに定評のある上条さんだ!
おっつし☆

博識ですね上条さんの下条さん。

もうすぐ終わりかあ……なにか淋しい。

ていうか、ここまでストーリー的にも伏線的にもフラグ的にも広がりまくった話が、あと数回でどうやって完結するんだろう?
あと、鳴護さんにも!にも!!

乙!!
田中○樹の創○伝って作品がありましてね
その中に、尖った石が戦車の腹部を突き破ったのがありました
理由が戦車の居住性を高めてエアコンを付けたから、鋼板を薄くしたって意味不明な理由でね

特に意味なく破壊された戦車に比べりゃ、熱膨張なんざ…

壁ドンフロリス最高でした
まさか個別エンドの話題を出しただけでここまでのモノが返ってくるとは

ありがとうございます・・・! フラグの神様・・・! ありがとうございます・・・!

ぅおー来てたー!乙っ
てーか、そっかぁ。もう終わりが近いのかー……
……は、ハーレムEDがダメでも“アフター”なら何したって許されると思うの

貴重なレッサーたち主軸のスレが終わってしまう....
レッサーマジで好きです、はいw

レッサーと上条の共闘シーンはないんですか?

クリスマスssとかはやらないのかなー(チラ

ああ……もう、今週で……終わってしまうのか……

よくぞここまで書き切って下された
もう一頑張りですたい

一年間ホント乙ですわ

今回のssは時事ネタけっこう多くて、わりとカオス
おかげで知識は増えたけど

ラストでもアリサの影が薄かったら泣く

>>276
上条「おい!人聞きの悪い事言うなよ!俺が女の子の人生狂わしてるみたいな言い方は!」
上条「そんな事ないよな、なぁっ?」
御坂「えっ?」
インデックス「えっ?」
神裂「えっ?」
姫神「えっ?」
妹達「えっ?」×9969
風斬「えっ?」
シェリー「えっ?」
五和「えっ?」
オルソラ「えっ?」
アニェーゼ「えっ?」
ルチア「えっ?」
アンジェレネ「えっ?」
オルソラ「えっ?」
リドヴィア「えっ?」
ヴェント「えっ?」
キャーリサ「えっ?」
レッサー「えっ?」
バードウェイ「以下略だ。反省しろ馬鹿者め」

>>277
下条さん(えぇまぁ学問だけではありませんけど実践も必要でして、ある程度失敗をすれば伸びも違います)
下条さん(先週、ですかね。少しお伝えしたい事があったので某大使館とイングランドの新聞社へお手紙を出させて頂いたのですが、その際に翻訳ソフトを使いました)
下条さん(翻訳された英文を推敲していると、「ユダヤ人」を「Jew」とそのまま翻訳されていたものですから、適宜「Jewish」へと直しました)
下条さん(これはですね、「Jew」自体には「高翌利貸し」という意味合いが含まれているため、日常会話では避ける傾向が強いからです)
下条さん(そのま使っても直ぐに問題へ発展する事はまずありませんが――まぁ日本人を”Jap”というぐらいの蔑称”と、受け取る人が居る”ので注意するのが宜しいでしょう)
下条さん(代替としては「Jewish」ですが、これは形容詞で「ユダヤ人の」の意味なので、日本のテスト等で使ったら不正解になります)
下条さん(確かに学校や教材のテキストで学べるものは大きいですし、使い方によっては有用です)
下条さん(ですが現実社会では必ずしも型通りのものが正しいとは言えず、柔軟な対応と経験がものを言う場合もあります)
下条さん(公文書ではわざわざ民族を指定してまず書く機会は無いと思いますが、日常会話で使う時にはご注意下さい)
下条さん(では失礼致します。機会があればまたどこかでお目にかかれたら素敵ですね)

――『ヤドリギの家』 21時過ぎ

テリーザ「……」

テリーザ(上条さん達、来なかったな……てか、お夕飯二人分取っておいたのに……)

テリーザ(勿体ないから食べる?……や、でも太っちゃうのは、何か、嫌かな)

テリーザ(それともレッサーさんの怪我が酷いとか?救急車呼んだ方が良いとか?)

テリーザ(『穴に落ちた』って言ってたけど……第一聖堂に、穴?Catacombあるっては聞いた、っけ?)

テリーザ「……」

テリーザ(何か、体験入信の方が大勢途中で帰っちゃいましたし、あぁお掃除もしないと)

テリーザ(レッサーさんが『やらかした』って言ってたのは、一体……?)

テリーザ「……」

テリーザ(……ま、いいか。明日になったら考えよう、買い出しもしないと)

テリーザ(今日のみんなはお利口さんにしてたから、お菓子を買って――あ、レッサーちゃんも欲しがるかな?)

テリーザ(みんなよりも少し大きい――一部分的はわたしよりも――から、14・5歳ぐらい?)

テリーザ(あの歳でわたしよりしっかりしてるし、見習わないと――)

リィンゴーン、リィンゴーン、リィンゴーン、リィンゴーン……

テリーザ「……こんな時間に、鐘……?大聖堂で、何か――」

テリーザ「……」

テリーザ「……見て、来ないと」

――『ヤドリギの家』教団 敷地内

リィンゴーン、リィンゴーン、リィンゴーン、リィンゴーン……

テリーザ(鐘の音、っていうかスピーカーの音が鳴り続けている。音程が少し外れて、音も一定していないのは同じ……だけれど)

テリーザ(こんな夜中に鳴った事なんて一度も無い。事故?故障?それとも誰かの悪戯?)

テリーザ(昨日の夜に落書きをした人が居るから、夜はあまり出歩かないで、って上条さんには言われてた……けど)

テリーザ(一応、責任者の一人としては見過ごしちゃいけないと思う……し)

テリーザ「……」

テリーザ(へ、変な人が居ても、大声を上げれば大丈夫だよね?ね?)

テリーザ(スピーカーを制御しているのは病院だって聞いた事があるし、取り敢えずそっちへ――あれ?)

テリーザ「……?人……?」

テリーザ(第二聖堂へ向かう石畳の所に誰か倒れ――じゃない、二人?)

テリーザ(暗くてよく見えないけど、片方がもう一人を押し倒し――)

テリーザ(――って!それ拙いんじゃ!?)

テリーザ(えっと!こういう場合警察――は、多分間に合わないし、誰か人を――も、どうだろう?)

テリーザ「……わたしが、やらな――」

女性「――ぁ」

テリーザ「――え?」

テリーザ(地面に押し倒されている方が”男”の人、で……上に乗っているのは、女の人……?)

テリーザ(苦しそうにもがいてる大柄な男の人を、子供でもあしらうように簡単に押さえつけ――)

テリーザ(――その女の人は、頭を男性へ擦りつけるように、いや、実際に押しつけていた――)

テリーザ(――『紅い』髪を……?どうして?)

ズルッ、ザリザリザリザリッ

テリーザ「――ひっ!?」

テリーザ(紅い紅い女性の髪が、まるで魚を捕らえるようにブワッと広がり、男の人の頭部を包み込む……)

テリーザ(ランに似た花が花弁を広げ、捕食しているような……)

ゴキュッ、ポキュッ、ギリ、ギリギリギリギリギリッ

テリーザ(何かの砕ける音、租借されるような音――決して”起きてはいけない音”が紅いツボミの中から響き)

テリーザ(……す、数秒だったのか、数分だったのか、時間の間隔がマヒするぐらいに、長い間ぼうっと見ていた事に、わたしは、気付く)

テリーザ(そして、”気付く”のはわたしだけの特権などでは有り得なく)

男性「――く、はぁぁぁ」

テリーザ(夜目にもはっきりと分かる!男の人もまた、ほんの少し前ではそれじゃなかった――)

テリーザ(――そんな”紅い”髪などしてなかったのに!)

女性「――ああぁ」

男性「――ぃぃいあぁっ――」

テリーザ「――あ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

テリーザ(二人の手が伸びわたしはあっさりと地面に引き倒されわたしはわたしはわたしは――)

テリーザ(血と意識が入り込んで入り込んでいたいイタイ痛い居たい――)

テリーザ(――誰かと痛みをわたしは痛いわたしは意識が他人の境が――)

テリーザ(――混迷改善並列均等平等……わたしは、ヒトリジャナい――)

???「――の人か――ら――」

テリーザ「――だれこれはすきこれはすきでもキライキライキライき――」

???「――手を、離しやがれっ!」

パキイィィンッ……!!!

――404号室 回想

レッサー「――結論から言いますと『濁音協会』はクトゥルーでは”ない”でしょう」

上条「……ナニ突然……?俺まだちょっと眠いんだが……」

レッサー「私はお腹が空きました。あ、スコーン頂いてますよっと」

上条「あぁそれは別に。昨日買っといたお菓子も良かったら食べたらいい」

レッサー「感謝です。昨日の夜から飲まず食わずで、スプラッターハウスでしたから」

上条「……何やってたんだよ。てかまずそっち話すのが先だろうが」

レッサー「話すっつっても大した事は……第二聖堂に落書きしてーの、でもって第一聖堂行ってーの、ですからね」

レッサー「んで、そこの地下墳墓でウェイトリィ兄と戦闘になって、明け方近くまでぶちぶち殺してたんです」

上条「ぶちぶち殺す……?長州弁か?」

レッサー「250まではSATSUGAI数カウントしてたんですが、面倒になって途中から止めました」

上条「お前は誰と戦っていたんだ?てーかクラウザ○さんみたいな言うなや」

レッサー「だって死なないんですもん、アルフレドさん」

上条「死なない?」

レッサー「どこをちょん切っても、煮ても焼いても凍らせてもダメ。全然」

レッサー「最初に駅で会った時、なんか植物のツタだか、内蔵だかみたいなの召喚してましたでしょ?」

レッサー「あれの小さいのが、体をスライスさせる度にニョキニョキ伸びて再生させていました」

上条「……グロぉ」

レッサー「や、でも痛みはあるようで、最後の方は『もう殺してくれ!』と叫んでいましたし」

上条「悪のボス相手にお前は何して来やがったんだよ!?」

レッサー「割かし有意義な時間を過ごせたとだけ……しかしあれ、とてもじゃないですが『殺しきれる』ようなもんじゃないですよ」

レッサー「再生までのタイムラグが非常に早い上、本人が原形を留めていない状態でも意識があり、魔術を行使出来る」

レッサー「ぶっちゃけ体の殆どが炭化した状態でも反撃してきましたから、相当強力な術式でしょうな」

上条「で、結局半殺しにしてきただけなのか?」

レッサー「いえ、いい加減魔力が枯渇しそうになってきたので、細切れにした後、凍らせて埋めておきました」

上条「そこだけ聞くとどっちが悪役か分かったもんじゃないけどな!」

レッサー「地下墳墓から上がってみれば、見回りに来た出家信者の方に鉢合わせ、取り敢えず眠らせて成り済ましていました」

上条「相変わらずお前はアクティブ過ぎる!てーかその時点で俺に連絡入れろよ!」

レッサー「あ、すいません。ちょっと出血が酷かったんで、意識が朦朧と……」

上条「ならしょうがないけど……大丈夫なのかよ」

レッサー「取り敢えず意味も無く全裸になってみないと分かりません!」

上条「お前が朦朧としてんのは意識じゃなくて正気だ――てか、つーことはお前」

レッサー「えぇ、まぁ。私も『病院』の中で僅か数時間とは言え生活をしたんですが――」

レッサー「――上条さんが見た『紅い髪』、あれが信者の方にもバァッと広がっていまして」

上条「まさかとは思うが、生まれつきとか染めんのが流行ってるとか、そういうネタじゃないよなぁ?」

レッサー「で、あれば気が楽なんですがねぇ――んで、ここで”クトゥルーではない”へ戻るんですけど」

レッサー「何回かバラしている時、アルフレドの体に描かれていたタトゥーが僅かーに、発光してたんです」

上条「タトゥー――入れ墨かが?なんでまた」

レッサー「元々入れ墨ってのは原始信仰、アミニズムの頃から存在する由緒正しい魔術ですからね。マフィア崩れが素人さん脅すためのもんじゃありません」

上条「たまーに萌えイラストのモンモン入れて台無しな人も居るみたいだがな!」

レッサー「アレもある意味『近寄るな(頭が)危険!』の看板持ってるようなもんですし、アリっちゃアリかと」

レッサー「んで描いたあったのはルーンでした」

上条「内容は?」

レッサー「そんな余裕まではありませんでした……が!多分、これで確定したと思います」

レッサー「『濁音協会はクトゥルーの魔術師ではない』と」

上条「名前を騙って屋やがっただけか!」

レッサー「安曇阿阪は古い”Shin-Tou”、『団長』も同じく”古代エジプトの不死魔術”」

レッサー「ウェイトリィ兄弟が使っているのは”ルーン”――よって北欧魔術以外には有り得ません」

上条「って事はお前らと同じって訳か」

レッサー「あ、いえ正確に言えば私達は偽装しているので違うんですが」

上条「偽装?なんでまた」

レッサー「そんな事よりも今はアルフレドの不死魔術の真相を解き明かす方が先決ですな!」

上条「お前も俺も、都合が悪くなったら大声張る癖なんとかしようぜ?」

レッサー「いいですかー?魔術師に取っては術式と霊装を解明されると文字通り命に関わりますからね!バカにしたもんじゃないんですよ!」

レッサー「相手に弱みにつけ込んでドヤ顔で籠絡させる誰かさんの手口そのまんまじゃないですかねっ!?」

上条「概ね同意はするけどもその”誰かさん”について詳しく頼む?何だったら肉体言語で話し合う準備もあるが」

レッサー「何か前にも言いましたが、『不死』自体は神話でもよくある設定なんですよ」

上条「待てやコラ。何かスルーしちゃいけない話題のような気がするんだよ!」

レッサー「一神教に於ける神様は大抵不老不死、というか全知全能である事が多いですし、多神教に於いても、まぁ大抵はそれに近いですよね」

上条「……だったらこの場合も絞れないんじゃないのか?そんだげ溢れてるって事は」

レッサー「とも、限らないですよねぇ。何故ならば”私達は神ならぬ凡夫の身”だからです」

上条「お、おぅ?」

レッサー「一時期その界隈で流行りました”等価交換”って言葉ご存じですか?」

上条「鋼で錬金術なアレだろ?鋼なのか金なのか分からんけど」

レッサー「ですから魔術師的に『金』とは神の肉体と同義であり、金の精製は『神になる』事を意味しているんですってば」

上条「冗談だよ。俺だってそのぐらいは憶えてる……よ?」

レッサー「その”……”が激しく怪しい気がしますが……まぁ良いでしょう。ぶっちゃけスコーンとお菓子じゃ足りなかったので、手短に話したいと思いますが」

レッサー「『大掛かりな魔術を使う際には、それ相応の代償と準備が必要となる』んですね、前に言いましたが」

レッサー「『ブラフマーアストラ』が”三つの流れ星を同時に見る”ように、無茶な条件下でのみ発動する術式が多々あります」

上条「理由は自前の魔力だけじゃ足りず、時には他から――『龍脈』や『レイライン』から補給する、って感じ?」

レッサー「補給というか、そっちがメインの動力源ですかね。人の魔力なんで微々たるもんですから」

上条「……アックアや神裂やバードウェイは?」

レッサー「まず聖人のお二方は後回しにするとして、あのドSロリを筆頭に”普通”の魔術はごまんと居る訳ですよ。あなたの目の前にも居ますけど」

レッサー「なんて言いましょうかねー、『明け色の陽射し』には魔術結社『黄金夜明』の数百年、下手すれば千年単位の秘術が蓄積されている訳で」

レッサー「そのノウハウを幼い頃からカ・ラ・ダに叩き込まれてる相手が、普通かどうかは怪しいもんですがねぇ」

上条「体、強調する必要あったかな?ないよね?」

レッサー「なのでドSロリ実はヘタレ受けさんはさておき、一般的な魔術師の話をしますと」

レッサー「まぁ人によって、魔術の流派によって魔力精製の方法は違いますし、霊装によっても威力は変わります」

レッサー「同じ術式や霊装であっても個人差はあります。てーか化学反応じゃないんですから、違ってて当たり前で」

レッサー「元々の魔力や体質、経験、そして異世界からの汚染を防ぐ呪的防御等々によって上下するのは当然ですね」

上条「運動、みたいなもんか?慣れてる人がするとそんなに疲れないが、そうじゃないと辛いって言う」

レッサー「あー、そうですなぁ、LEDってご存じで?青色発光ダイオード」

上条「うん、知ってるね。まさにもろこっちの話だな」

レッサー「おっ、なら話は早い。あれの『電力を既存の照明よりも遣わない』って特性について話して貰おうじゃ――」

上条「――と思ったけど勘違いだったわー。全然別の分野だったなー」

レッサー「……せめてWEBぐらいは見ましょうよ。一応そっちに居るんですから」

レッサー「……ま、色々端折りますとですね、既存の照明は発行する際に『熱』を伴うでしょう?白熱電球にしろ、蛍光灯にしろ」

レッサー「それが殆ど無い分、ロスが無いだけLEDはコストパフォーマンスに優れているという訳でして」

上条「へー、科学って凄いんだなー」

レッサー「……まぁ魔術も習熟すれば原理は同じで、ある程度までは魔力を切り詰めて遣えるんですよ。例えば」

レッサー「物語に出て来るお髭の生えた老魔導師、体力も生命力も若者には適いませんよね?」

レッサー「でも魔術や霊装をバンバン使える。それは『効率的』に魔力を精製出来るから、と言う理由が強いんですなー」

レッサー「体力や生命力を数字化すると、若者は100、老魔導師は20ぐらいだったとしましょうか」

レッサー「ある魔術を使うとして必要な魔力は10。単純計算で若者は10回、老魔導師は2回しか使えません」

レッサー「ですが『効率的に魔力を精製』できるのであれば、老魔導師の消費は5、または1ぐらいで済むでしょう」

レッサー「反対に若者が未熟であれば魔力変換のロスが大きく、一回の魔術で100使用する場合もあります」

上条「成程なー、つまり神裂やアックアは老魔導師枠だって事な?」

レッサー「いえ、全っ然見当外れです」

上条「今までの流れ全否定っ!?」

レッサー「その枠へ入るのはドSロリロリ実はヘタレ受けだいしゅきホールドさんですなぁ」

上条「やめろよっ!?さっきから恐くてスルーしてるけどそれ以上ボスにオプションつけないであげて!?」

上条「どうせ俺が言った事になって、『こらっ(殺)』って責められるんだからねっ!」

レッサー「その方達――『聖人』や『右席』と呼ばれる人間は『才能がある』んですよ」

レッサー「大半の魔術師がそうであったのとは違い、『力の無い者達がそれを補うために選んだ』のではなく」

上条「神裂も才能がどうっつってたっけかなぁ……?」

レッサー「『聖人』ってのは生まれながらにして莫大な魔力を行使出来たり、『右席』は人よりも容易にテレズマを扱えたりします」

レッサー「後者は先天的なものではありませんが……ま、少なくとも聖人さんの方はって事ですかね。さて」

レッサー「ここでつい先日、マタイさんが仰っていた事へと戻るんですが……」

レッサー「……憶えてます?アリサさんと上条さんがなんて言われたかって」

上条「地脈の……聖人、だっけか?」

レッサー「おっ、備前です!」

上条「お前が言いたかったのって備後じゃないかな?吉備国を三つに分けて、備前、備中、備後って名付けたんだけどさ」

レッサー「お二方とも大した訓練も受けず、かといって何の代償も支払わず、”力”の行使が出来る」

レッサー「その”力”は龍脈ではないか、という仮説でしたよね?大丈夫ですか?着いて来られますか?」

上条「ま、まぁ何とか!」

レッサー「さて、問題です。私達の専門用語――というか、相手の力を表す表現の一つに『聖人級』というものがあります」

レッサー「その『聖人』が一般の魔術師と同じような存在だと思いますか?」

上条「違う、よな?文字通り桁違いの力なんだし」

レッサー「そうですよねぇ。今のさっき言った”力のロスが限りなくない老魔導師”であったとしても、良くて互角」

レッサー「”戦闘に長けた聖人”ともすれば、逆立ちしたって勝てませんよ、えぇ」

上条「何が、言いたいんだ」

レッサー「まぁぶっちゃけますとね、『ズル』してんじゃねかなぁ、と」

上条「ズル?」

レッサー「えぇ。普通の魔術師がセコセコ命や精神力削って魔力へ変換してんのに対し――」

レッサー「――『聖人』は龍脈から恒常的に力を得てるんではないでしょうか?」

――404号室 回想

上条「あー……うん、確かに。それは、分かる気がする」

レッサー「や、まぁ?私もですね、人生経験はそこそこあるんで才能やら天然やら着痩せとか、色々目にしてきましたよ、はい」

上条「天然はともかく、着痩せ関係なくないか?」

レッサー「世の中は公平でないように、人間にも持って生まれた才能や能力、適正ってのか歴然と存在するよねってぐらいは、オトナですし」

レッサー「ただねー、ウチのフロリスを。逃げに徹していたのを一発KOだなんて、どうにも納得行かないんですよ」

上条「フロリスが機動力高いのは知ってるけどさ」

レッサー「言っちゃなんですが、トンズラさせたら色々な意味で逸材だってのに!」

上条「本気、出してなかったんじゃね?それっぽい霊装もない奴に追いつけるかー、みたいに?」

レッサー「あ、すいませんっ納得しちゃいましたっ!まず間違いなくあのアマなら考えそうですもんねっ!」

上条「うんまぁ、そこはそうなんだけど、納得しなかった体でな?一つ」

レッサー「あー……それじゃ言いますけど、『人間の限界』みたいなのはどうやってもありますよね?」

レッサー「100mを10秒未満で走るのは出来ても、5秒は流石に無理じゃね?的な」

上条「俺の知り合いのバディに出来る奴が……」

レッサー「生身の話です、生身の。魔術と異能抜きにして、どうしても突破出来ない壁は存在します」

レッサー「どんだけ体を鍛えようが、何代スポーツへ打ち込もうが、どうやっても種族としての限界ってのはありますし」

レッサー「……ま、努力を否定するつもりもありませんが、少なくとも『フェア』じゃねぇなぁと思いまして」

上条「……レッサーも」

レッサー「はいな?」

上条「レッサーもさ、才能とか生まれとか、気にした事あんの?」

レッサー「んなっ!?なんつー言い方ですか!人を野生児みたいに!」

上条「だよなぁ」

レッサー「おっぱいはもう少し欲しいですけど!ベイロープぐらいには!」

上条「そっちじゃねぇよ!バストサイズと才能一緒にすんな!」

レッサー「『貧乳はステータスだ』とは言いますが、実際に誇ってる方は知りません。えぇ、悲しいですがそれが現実ってモンですよ」

上条「全周囲に敵を作るの止めよう?誰も得しないんだから、な?」

レッサー「てか才能があろうがなかろうが、結局の所は”するかしないか”でしょうに」

レッサー「目の前で轢かれそうになってる子供が居たら、届くかどうかは別にして、間に合うかどうかも関係なく、普通手を伸ばすでしょ?」

レッサー「それだけの事に才能も何もありませんって」

上条「……気軽にクーデター未遂を起こした人は違うよねっ!」

レッサー「おやおやー?残念ですが、私はこれっぽっちも反省してませんので皮肉にはなりませんよー?」

上条「……で、聖人と人間の限界がどうしたって?」

レッサー「さっきも言った”普通の魔術師が辿り着けた最高峰”が老魔導師レベル、それも殆どはそこまで届きやしません」

レッサー「幾ら魔力のロスを減らしたとしても、人間としての”器”が有限である以上、どこかで限界は来る筈なんですよ」

レッサー「だってのに聖人さん達がキワモノ揃いの魔術師の中ですら、異常な力を持ってるってのは、ねぇ?」

レッサー「更に言えばマタイさんが言っていたように、テレズマを筆頭とする『異界から流れ込む力と知識』だって、国や地域で変質しますし」

レッサー「他にも『原石』っていう……生まれながらにして、力を操れる能力者が居るんですよ。アリサさんもその類ですね」

上条「てーかさ、マタイさんに言われた時も思ったんだけど、土御門がアリサの事『聖人候補』だって」

上条「もしかして、魔術サイドじゃ『聖人』と『原石』の区別って無いのか?」

レッサー「『聖人』の定義は『神の子の力、または特徴を受け継いだ』ですからねぇ」

レッサー「十字教へ異教の神々が『聖人譚』として取り込まれていきましたし、『神の子』の特徴とやらも他のドグマで再現可能ですから」

上条「お、おぅ?」

レッサー「十字教徒の旧い一派が極東島国のルーツと酷似している、というトンデモ説はさておき、共通項もある訳で」

レッサー「神話が普遍的な無意識という土台の上へ成り立っている限り、類似性は否定出来ませんが」

上条「えーっと、アレか?お前が言いたいのは、『聖人』も『原石』も全部ひっくるめて『龍脈』から力を得ていると?」

レッサー「はいな。バードウェイさんも仰っていたでしょう」

レッサー「『自然環境の組み合わせで、たまたま能力者が育つ環境が整っていたのが”原石”』」

レッサー「『原石とは地球環境に影響されて能力を得た者達なのよな!』と」

上条「後半別人じゃね?ラジオなんとかん時、俺のアパートで言ってた奴か」

レッサー「この場合の『自然環境』とやらが『龍脈』と関係すんじゃないかなー、と」

上条「……ふーむ」

上条(俺の知り合いで『原石』――学園都市へ来る前から能力を使えたのは……姫神か)

上条(『吸血殺し』が環境で生まれた、ねぇ?何か意味があるのか?)

レッサー「――で、なんで長々とこんな話をしたかと言えば。ウェイリトィ兄の『不死』魔術』、あれも一介の魔術師にどうこう出来るもんじゃないですなー」

レッサー「再生回数、速度、精度……どれ一つとっても異常の一言です」

上条「じゃ、あいつも聖人枠なんじゃ?」

レッサー「いえ、それも違うと思います。もしそうであれば『弱すぎる』んで」

上条「……少なくともレッサーが殺しきれなかった相手が『弱い』のか?」

レッサー「上条さん上条さん、最強の盾と矛があります」

上条「あ、知ってる矛盾って意味だろ?」

レッサー「やっぱ盾が受けですかねぇ?」

上条「矛盾してるな!?その設定から!」

レッサー「つーか考えてみても下さい。聖人だったらば……その身体能力の高さから『滅多に死なない』んですよ」

レッサー「素の状態で格闘攻撃はおろか、銃弾ひょいひよい躱す相手が、わざわざ防御に特化する必要は無いですし」

上条「あー……言われてみれば、アックアん時もあんま防御には無頓着だったなぁ」

レッサー「プラナリアみたいに再生魔術を極めるよりも、攻撃系の術式へ力入れた方が効率的でしょうしねー」

レッサー「とはいえ、あの能力は異常……そこら辺が解明する鍵かな、と」

上条「聖人ではない、けど龍脈か何かに関係する可能性はある、と」

レッサー「他に私達が持っている判断材料としちゃ、あの『紅い』草でしょうかね」

上条「地下にビッシリ生えてたんだっけか……俺が見たのは『紅い』髪だが」

レッサー「恐らくは同一のもの……なんでしょうが、生憎どちらも私の知ってる限りでは存じませんなぁ」

レッサー「ムスッペル……炎の子らやスルトは、イメージ的にはそうですけど」

上条「逆に考えてさ。北欧神話に龍脈をどうこうする話とかないのか?」

レッサー「そうですねぇ……私の先生が唱えていた説で、印象深かったのが一つ」

レッサー「これはもしかしたら上条さんの今後にも関わるかも知れない事ですが、オーディンの逸話ってどのくらいご存じで?」

上条「ゲームやアニメで見た知識だと……超強い槍を持つ、北欧神話の偉い人、片眼……ぐらいか」

レッサー「グレムリンの実物さんっぽい人にお会いしたんでしたっけ?」

上条「……あぁ、意味が分からないぐらいの下乳だった……!」

レッサー「や、まぁ……そこはそれ、そういう霊装だって事で一つ……んで、なんで片眼になったかは?」

上条「えっと……『知識』を得るためだっけか?智恵の泉の水を飲むため、だった気がする」

レッサー「えぇ、オーディンは自らの片眼を世界樹の麓に湧く泉、ミーミルへ沈める事で智恵を得たとされています」

レッサー「ちなみに泉を管理していたのが巨人ミーミル。彼の名前から泉はそう呼ばれてた――ん、ですが」

レッサー「あの魔神さんがどっから力を得ているかなー、とか考えませんでした?」

上条「そこまでの余裕はなかった、かな?お前も考えるのはちょっとアレだし」

レッサー「結論から言いますと、ウチのもふもふは『ミーミルの泉から汲み上げてんちゃうのん?』と」

上条「なんでその人関西弁入――待て待て、『汲み上げる』?」

レッサー「あくまでも推論の域を出ませんが、その『泉』が龍脈を意味しているのではないか、と」

上条「……つまりオーディンは眼を差し出したんじゃなく」

レッサー「『自身の一部を担保に入れてラインを構築した』――と。仮定のお話ですがね」

上条「……」

レッサー「どうしました?」

上条「……なぁ、その『ラインを構築』ってのは、魔術的に繋がるって意味なんだよな」

上条「こう物理的に繋がっていなくたって、力を利用出来る、みたいな?」

レッサー「科学サイドの有線型決戦兵器じゃあるまいし、魔術は”経路(パス)”が一度繋がれば、滅多な事では破壊出来ませんよ」

上条「アルフレドの再生――不死魔術も、どっかから魔力を得てるってのが、お前の推論なんだよな?」

レッサー「ですです。それが『どこか』か、判明すればパスを壊せると思いますんで」

上条「俺の『右手』は?」

レッサー「断線ならば確実に出来るでしょうが、それって確か『永続的・持続的に流れ込み続ける力』には弱いんですよね?」

レッサー「触ってる瞬間に殺せても、手を離せば再生が始まったら目も当てられないですから。まぁ、そのまますんなり倒せる可能性もゼロじゃありませんが」

上条「喧嘩売ってきてるだけに、それは無いと思うが……他にヒントは?」

レッサー「空間移動魔術、あとツタだか内蔵だかを召喚して攻撃する術式。呪文は……」 ピッ


『混沌を媒介に開け虚空の門』

『原初の言葉を知りたる異形の知性』

『全にして一、一にして全なる者』

『漆黒の闇に生まれ落ちて産声を上げろ』


レッサー「――でしたね」

上条「こりゃ丁寧にどうも。てか文字に起こしてんのか」

レッサー「素敵な感じに中二病でしたんで、つい――てか、これ殆どクトゥルーの『ヨグ=ソトース』そのまんまですね」

レッサー「不定形で輝く球体、永遠に泡立ち続ける触手の塊……と、ワッケ分からない描写をされる神性の一つです」

上条「空飛ぶスパゲッティモンスター?」

レッサー「に、近いでしょうかねぇ。ここの教団の教義もアレな感じですし」

上条「だよなぁ。『ヤドリギの家』なんて言ってる割に、自立がどうとか言っているしなぁ」

レッサー「……」

上条「自由も権利も国に守られてるっつーのに、一体何をどこまで求め――」

レッサー「……上条さん、今の台詞、もう一回言って貰えません?」

上条「国も権利も?」

レッサー「じゃなくて!『トコロテン、食うかい?』と――!!!」

上条「言ってねぇよな!?つーかそれ誰の台詞だ!」

レッサー「――ヤドリギですよ!ヤドリギ!」

上条「だからそれ、教団の名前じゃ」

レッサー「ではなく!アルフレドの使ってる魔術は『ユグドラシルに生えたヤドリギ』を利用してるんですよ!」

上条「すまん。全く分からない」

レッサー「ヤドリギ自体、北欧圏では信仰の対象とされてきました!それ自体が生まれ変わりを示すシンボルとして!」

レッサー「それが『世界』を表している世界樹ユグドラシルへ生えていれば、空間移動も可能になるって理屈です!」

上条「だから待てって。お前が何を言ってるのか」

レッサー「北欧神話では巨大な一本の世界樹、そこから枝分かれした先や根元にそれぞれの世界が存在し」

レッサー「中にはその巨大な枝葉や幹の上に大地があり、文字通り”世界樹”なんですよ」

上条「まぁ……うん」

レッサー「それぞれの世界は独立しているものの、繋がってはいる――そう、『世界樹』を渡りさえすれば移動出来る……!」

レッサー「世界樹は門であり、扉であり、世界であり、全てである」

レッサー「そして恐らく何よりも誰よりも生まれ落ちた存在でしょうし!」

上条「呪文にも一致するか!」

レッサー「世界樹の概念を導入すれば、空間を超え、『経路』を繋ぐ事も出来ます――が!どこかまでは分かりません、ね」

レッサー「龍脈を操る魔術師にしてはショボイですし、聖人よりも強いかと言えばどうかですし」

レッサー「かといって個人の魔術だけじゃ、到底足りない術式を行使している……」

上条「――なぁ、その、リンクって?繋がるのって1箇所だけかな?」

レッサー「世界樹の応用でしたら、根も幾つか分かれるでしょうし、またヤドリギに特化していれば数の制限はないでしょう。それが?」

上条「……『紅い』髪、つーかあれが、あれこそが――」

レッサー「……あ!」

上条「――世界樹の『根』なんじゃないのか……?」

――『ヤドリギの家』教団 敷地内 現在

パキィィンッ……!

上条「――と、消えた消えた」

レッサー「魔術サイドで良かったですかねぇ。でないと今頃『見せられないよ!』の大盤振る舞いだったかと」

上条「どういう意味?

レッサー「ですから脳へですね、直接ぷすっと接続して」

レッサー「そこで『右手』を使えば弄った部分がずしゃあぁっと流れ出そうな感じで」

上条「……うん、俺らは基本改造好きですもんね……」

テリーザ「……?」

レッサー「……ふむ。『再接続』する様子はない、と。立てます?気分悪くないですか?」

レッサー「……てかこれ、『元に戻る』んであれば、下手に手ぇ出せませんな……ちっ」

上条「物騒な事を言うんじゃない!」

レッサー「HAHAHAHAHA!何言ってるんですか!一発だけなら誤射かも知れませんよ!」

上条「少なくとも日本人でそれを真に受ける奴ぁいねぇよ!つーかわざとだ!」

テリーザ「え、いま、わたし」

上条「あーっと、ですね。なんつったら説明出来るのか……」

レッサー「『一、悪い奴が居ます。二、私達は正義のエージェント。三、あなたは騙されていたんだっ!』」

上条「待て待て。楽に流れ作業で済ませようとすんな!」

テリーザ「……やっぱりそうだったんですかっ!?」

上条「あんたもいい歳っつーか、多分俺より上なんだから疑えよ!」

レッサー「ちょい前まで『接続』してましたからねぇ、意識が朦朧としてるんではないかと思いますが」

男「……ん、何なんだ……?」

女性「……」

上条「男の人は気付いて、女の人は気を失ったままか……あ、こっちの人、第二聖堂でペンキ落としてた人だ」

レッサー「推測ですが、接続時間へ正比例してんではないでしょうかね?こちらの女性は服装からして出家信者っぽいですし」

レッサー「てーか時間が惜しいので、上条さんはちゃっちゃと行って下さいな。こっちの片付けは私がやっときますから」

上条「おけ。んじゃ打ち合わせ通りに――レッサー」

レッサー「『ここは私に任せて上条さんは先へ行って下さい!なーに、退路の確保なんざお手の物ですよ!』」

上条「間違ってる間違ってる!無理にフラグを立てようとするんじゃない!しかもそれピンチになるやつだ!」

レッサー「『……やぁ、こんな夜に一人で散歩かい?良い趣味をしている――でもね』」

レッサー「『――選ぶが良いよ。ここで死して輪廻の枠へと還るか。それともこのボクと黄昏の住人となるのかを、ね?』」

上条「ラノベやエロゲでよくあるプロローグっぽい!その子が大抵吸血鬼でメインヒロインなのな!」

レッサー「『私……この戦いが終ったら、あの人へ好きだって言うんです……!』」

上条「それはそれで過去メインヒロインが、サブヒロインに出番奪われた挙げ句、作者が扱いに困って無理矢理死亡フラグ立てるシーンだねっ!」

レッサー「ってな感じで、また後で」

上条「おうっ!上手くやれよ?」

レッサー「お任せ下さいな。ではでは」

――『ヤドリギの家』教団 敷地内

レッサー「さってと、それじゃ皆さんは本館からお外へ出てて下さいな。多分敷地外へ行けば追って来ないでしょう」

レッサー「もしかしたら、こわーいお兄さんお姉さんに保護されるかも知れませんが、ま、そこはそれこんなアイタタタな組織に入ったご自分を恨んで下さい」

レッサー「上条さんが絡んでいる以上、命までは取られたりはしないでしょうが……多分!」

男「多分かよ!?てか一体何がどうなっ――」

レッサー「話している時間も勿体ない、てかいつまでもここに居ると襲われますんで、さっさと避難して下さい。ハリーハリーッ!」

男「……仕方がない。こっちの女も連れてきゃいいんだよな?」

レッサー「テリーザさんに担げるとは思えませんし、お願いしますよっと」

男「わかった――っしょっと!先行くぜ」

テリーザ「……」

レッサー「詳しい事情は私達、どちらかが生きて帰れたらお話しする事を前向きに検討する方向で調整するようにお約束はしませんから、あなたもホラ」

テリーザ「……あのっ!」

レッサー「はい?」

テリーザ「お願いしますっ!どうかっ、わたしに替わってあの子達を助けて下さいっ!」

レッサー「あの子達、ですか?えぇと、もしかして上条さんがお知り合いになった方達ですか?」

テリーザ「はいっ!あの子達は『病院』の中で暮らしてて!」

レッサー「にゃるほど。『紅髪』がウヨウヨいる中へ取り残されている、ですか。こいつぁ厄介ですなぁ」

テリーザ「わたしなら何でもしますからっ!ですからっあの子達を助けて下さいっ!」

レッサー「いえ、お断りします」

テリーザ「……え」

レッサー「では私は先を急ぎますので、どうぞテリーザさんもお早く避難を――」

テリーザ「待って下さい!?ちょっとレッサーさんっ!」

レッサー「はい?すいませんが、今少し急いでいるので手短にPlease?」

テリーザ「いやだからっ!あの子達はまだ子供で!戦えないんですよ!?」

レッサー「その情報は知ってますけど?」

テリーザ「ますけど、じゃなくって!」

レッサー「追加情報を頂けるのは有り難いのですが、その……正直な所、子供達の個人情報をこれ以上追加しても使い道がなくてですね」

レッサー「むしろこうやってあなたと無駄な時間を過ごす分だけ、危険がピンチになるんですがねぇ、はい」

テリーザ「ムダ!?わたしがお願いしているのがムダだって言うんですか!?」

レッサー「――あ、それじゃこうしましょうか。テリーザさん、あなた今さっき『なんでもします』って仰いましたよね?よねよね?」

テリーザ「レッサーさん……!」

レッサー「両手を重ねて前へ出して下さいません?こう、渡す物があるので」

テリーザ「は、はい?――って重い!?」 グッ

レッサー「今渡したのはグロック17というハンドガンです。ご存じですか、銃?引き金を引けばBANG!!!と鉛玉が銃口から飛び出す仕組みになってます」

レッサー「あ、セーフティ外してありますから、決して人には向けないで下さいね?”人”にはね、決して」

テリーザ「あ、あのっ!」

レッサー「総弾数は17発、普通の人間であれば数発も当たれば行動不能か死にますから。ではっ、そーゆー事でっ!」

テリーザ「待って下さいよっ!?そんな、いきなり銃を渡されても!」

レッサー「さっきの男性が隠し持っていたんで、コッソリかっぱらいましたけど、まぁ非常時なので拝借しても罪には問われないと思いますよー?」

レッサー「どっかの国――恐らくはイングランドの諜報機関の人間でしょうけど。わざわざオーストリア系に偽装しなくたって、ねぇ?」

テリーザ「違います!そんな事を聞いてるんじゃなく!」

レッサー「『何でもする』って言いましたよね?」

テリーザ「言いましたけど!」

レッサー「なら、ご自分で行かれたらどうです?幸い、あなたの手の中には出来る武器がありますし」

テリーザ「いえでもわたしっ!銃なんて撃った事のないタダの学生ですからっ!」

レッサー「大丈夫大丈夫、誰にだって始めてはあるものですよ。テリーザさんにとって、今日がたまたまその日であったってだけで」

レッサー「今回の敵、捕まっても殺されやしませんし、『接続』されるだけで済みますからね、えぇ」

レッサー「……ま、私と上条さんが失敗すれば、施設ごと『強制焼却』コースが待ってるんでしょうけど――10年前と同じく」

テリーザ「わたしは!普通の学生で!銃を持った事なんてありませんし!誰かと争った事だって!」

レッサー「オーケー分かりましたテリーザさん、落ち着いて、ね?いい加減、私がブチ切れてあなたを殴り飛ばす前に、一つお話をして差し上げましよう」

テリーザ「な、なにを……?」

レッサー「物事ってのはですね、『出来る・出来ない』の二択だと勘違いをされてる方が多いんですよ」

レッサー「マルマル出来るからバツバツだとか。出来ないからしないとか」

レッサー「でも実際にはそうじゃない――か、どうかは知りませんが、少なくとも私はこう思っています」

レッサー「――『するか・しないか』と」

レッサー「例えばあなたの家に強盗が入ってきたとしましょう。あなたは不戦の誓いを守って逃げるとする。ま、それもいい判断だと思いますよ?」

レッサー「ですがしかし家にはあなたの家族、ご両親やご兄弟、そして夫や子供達が居ます。全員連れて逃げるなんて出来そうにありません」

レッサー「さて、どうします?」

テリーザ「それとこれとは関係が――!」

レッサー「ないでしょうか?ならば私がお話し出来るのはここまでです。ではサヨウナラ、Good Night(良い夜を)」

テリーザ「――レッサーさん!?」

レッサー「……あなたが私達へ良くして下さった、その恩義へ対する礼として、あと少しだけお付き合いしましょう」

レッサー「テリーザさん、あなたは頑なにご自分で災禍の中へ飛び込むのを躊躇っておられますが、それは何故?」

テリーザ「わたしなんか……何の、力もなくて!」

テリーザ「だからっ……きっと、誰かの足を引っ張るだけで!」

レッサー「ですよねぇ。それには同意しますけど――なら、どうします?」

テリーザ「どう、って……?」

レッサー「あなたは、あなたが抱えている問題を解決するために、何かリアクションを起こしましたか?」

レッサー「子供達を助けたい、それは結構です。むしろこんな危機的状況の中、他人を考えられる余裕があるのは素晴らしいと掛け値無しに私は思いますよ」

レッサー「……ま、そうじゃなかったら、強制的にでも切り上げているんですが」

レッサー「でも、ですね?『抱えている問題を解決としてくれるスーパーヒーローさんは、一体いつになったら来てくれる』んでしょうか?」

レッサー「五分後?十分後?一時間後?それとも一日後?」

レッサー「あなたがピンチになっている所へ颯爽と現れ、何の見返りも無しに、あなたが望んだままの優れた能力を振ってくれる――そんな存在が」

テリーザ「……」

レッサー「私はあなた――いえ、あなた方の生き方を否定しません。それもまた宜しいでしょう」

レッサー「どうしようもならない現実を目の前にして、誰かの厚意に縋る”だけ”だって」

レッサー「具体的な解決策を模索せずに、誰かがいつか、自分達の望む通りに世界をどうにかしてくれる――と、信じる”だけ”なのも」

レッサー「あなたが共感している思想のように、銃を床へ置き、寛容と共存、そして一方的な淘汰と摩擦の道を辿るのですら、”自由”だと思いますよ?」

レッサー「……ね、テリーザさん?厳しいですか?私が言っているのは、とても厳しい事だと思われるでしょうね。ま、否定はしませんよ」

レッサー「ですがね、ここやあなたの周囲に居る人達のように、上っ面だけヘラヘラと相手に合わせて、何でも肯定する――それ、優しさだと思います?」

レッサー「もしも私がもう少し誠意のない人間であれば、きっとこう言ってこの場を後にしていたでしょうね」

レッサー「『わっかりましたテリーザさん!彼らの事は私が全力でお助けします!ですからあなたは早く安全な場所へ向かって下さい!』」

レッサー「『もし子供達が無事に帰ってきた時、あなたが怪我でもしていたら悲しみますから!』――なんて、言いそうですよねぇ?」

レッサー「あなたがそんな気休めの言葉が欲しいのですか?あなたが、あなただけが心の平穏を得るためだけに」

レッサー「ですが私は少ない時間ながらも、あなたを友人だと思っています」

レッサー「従って具体的に出来る事を示し、手段を与え、可能性を示唆しています。ま、可能性は低いですが、子供達が助かる方法を提示しています」

レッサー「あなたはどうしたいんですか?どうすればお気に召します?」

テリーザ「わたし……」

レッサー「繰り返しますが、『するか・しないか』なんですよ」

レッサー「目の前に大切なものがあって、それをクソッタレがぶち壊して台無しにしようとしている」

レッサー「勝ち負けも関係なく、力を持っているかどうかすら関係ありません」

テリーザ「……」

レッサー「さ、どうします?」

テリーザ「――わた、しは」

――第一聖堂

上条「……」

上条(遠くで喧噪が聞こえる……多分『紅髪』が暴れてるんだろう……)

上条(俺が駆けつければ解除出来る。だが、それをしてしまえば大本である奴らを止める人間は居なくなる、と)

上条(一応俺達がミスった時のために、ベイロープ達とソーズティにはメールしてあるが……援軍は期待しない方が賢明だとか)

上条(つーかさ?俺の読みが正しいんだったら、ステイル達が近くでスタンバってる筈でさ?)

上条(最悪の最悪、突っ込んできて37564……する、ぐらいだったら手伝ってくれたっていいと思うんだけどなぁ、俺は)

上条(ブラックっつーかダークって言うか。どんだけ宿命割り振ってんだよ)

上条「……」

上条(……さて、と。緊急用の懐中電灯を手に、俺は聖堂の中へ入っていく)

ギィィッ

上条(中には灯りもなく、当然真っ暗で……ライトの光だけを頼りに進む)

上条(教壇……説教台?結局レッサーに正式名称を聞くの忘れたまま、昼間クリストフが蹴り落とされた穴へ近づく)

上条(……今じゃビニールシートもなく、銀色の脚立が穴の中へ突っ込まれている……や、有り難いっちゃ有り難いが)

上条(ここまで体裁を取り繕わなくなった、ってのはやっぱり連中がここを切り捨てる用意はしてるって事か)

上条(下手すりゃ地下へ降りても『遅かったな明○くん!また会おう、さらばだ!』って既に撤収済みだったり)

上条(そん時ゃあのバカを追いかけんのか……ユーウツだ)

上条「……はぁ」

――第一聖堂 地下墳墓 突き当たりの”紅い”花畑

???「『……Happy birthday to you,』」

上条(聞き慣れた――く、はなかったが――声が、歌が響く)

???「『Happy birthday to you,』」

上条(闇の奥に浮かぶのは三つの……眼?――な、筈は無いか。ロウソクの明りだ)

???「『Happy birthday, dear Mnma』』

上条(マンマ?イタリア語でかーちゃんだっけ?)

???「『Happy birthday to you.……』

上条「お前のかーちゃんの誕生日なのか、今日は?」

アルフレド(???)「俺のっつーかさ、俺達のだわな。てか今日が誕生日って訳でもないんだけども」

上条「いやお前ケーキにロウソクまで用意して、曜日違うって」

アルフレド「食べる?昼間、街のケーキ屋で買ってきたやつだけど?」

上条「何やってんの?お前レッサーに半殺し、っつーか何回も全殺しされてんじゃなかったのかよ?」

アルフレド「いやな、カミやん。あの女だけは止めとけ、ノリが良いのは認めるけども、ノリで刺されそうじゃん?」

上条「否定しづらいがな……殺しても死なない奴に比べればマシだと思うぜ?」

アルフレド「はっはっはっー!甘いなカミやん!昨日俺が受けた拷問アレコレ!カミやんがまかり間違って恋人になっていたら喰らう可能性がある訳だぜ!」

上条「ち、ちなみに一番どれがキツかった?」

アルフレド「One inch Cutting(一寸刻み)」

上条「……苦労してんだなぁ、お前も」

アルフレド「本気なのか狂ってるのか、それとも本気で狂ってんのかね。あの子は」

アルフレド「さて、と。ダベんのも楽しいは楽しいが、聞きたい事あるんだろう?さっさと済ませて楽しい事しよーぜ?」

アルフレド「それともアレか?バディがクリストフぶっ壊すの待ってる、とかか?」

上条「……読まれてんなー、ムカツクぐらい」

アルフレド「そこへ思い付くってんなら、今更俺がドヤ顔でネタばらしすんのもなんかぁ。一応やっとく?」

上条「お前その体――と、信者の人らの『紅髪』って、『世界樹』なのか?それとも『ヤドリギ』?」

上条「ここにも生えてるって事は無機物も対象になる、とか?」

アルフレド「ん?あぁいや、『世界樹の根(Root Yggdrasil)』は有機物対象だぜ」

アルフレド「コンセプトが『人間の並列化と魔力の共有化』だから、そこまで手を広げる必要も、余裕もないんだわな」

アルフレド「むしろ無機物にまで手を広げられるんだったら、それこそこの大地のレイ・ラインへパイル打ち込んだ方が早い」

アルフレド「……ま、リンクは出来るだろーが、確実に暴走して全滅エンドだが」

上条「そんなに難しいのか――じゃなく!有機物?この花畑が?」

アルフレド「紅い草みたいに見えてんのが全部根だし、花を育ててる訳じゃねーんだ」

アルフレド「ウィリアムなんだよ、これ全部。もう変質してっけども」

上条「ウィリアム?どっかで聞いたような……?」

アルフレド「いやだから、クリストフの親父さん」

上条「どこに?」

アルフレド「あー……右手をご覧下さい、お客様」

上条「右手っつーかお前の後ろな?土と草しか見えないが」

アルフレド「ご紹介します、ちったぁ姿は変わってますが、これ全部――」

アルフレド「――ウィリアム=ウェイトリィ主教様です」

――病院

 荷物搬送用の裏口、本当は少しだけ傾いていて鍵の締まりが悪い。
 軽く力を入れれば外れる。こうやって――。

 カタン。

 ……思っていたよりも大きな音が心臓が止まりそうになるが……そう簡単に止まってはくれない。
 見つかってしまえば楽なのに、とは……そう、うん、思えないような、気はしていた。

 非常灯を頼りに、月明かりすら差さない廊下をゆっくりと歩いて行く――レッサーさんが言うには、『紅頭(レッドキャップス)』は幾つか。
 体力は人以上だけれど、五感は人よりも落ちる――”筈”だって。

 リンク?……されてる以上、脳で使う注意力や集中力が散漫になる、とか……?意味がよく分からないけど、『歩きスマホをするのと一緒』?

 ……とにかく、見つからないように、進む……。

 エレベーターを避け、非常階段をおっかなびっくり登り……途中、何度か『紅頭』と鉢合わせそうになって肝を冷やした――けど。
 近づくとレッサーさんから預かったお守り袋が震え、存在を伝える。こちらが積極的に動いていなければ、側を通り過ぎても気づかなかった。

 それに下の階からは突発的に悲鳴や爆発音、あとそれとどこかで聞いたようなレッサーさんの高笑い……きっとわたしのためにしてくれる筈で。

 昼間でも薄気味悪かった廊下を通り、子供達の部屋へ向かっていると――見慣れた、一度は恩人だと信じた人が、そこへ居た。
 今ではもう、全ての元凶であると知ってしまい、そんな考えも浮かんでは来ない。

 わたしは、その元凶の人の前へ立った――そう、素手のままで。
 皮肉っぽくなればいい。そう思い精一杯の悪意を込めて言うつもりが。

「こ、こんばんは――クリストフ司祭」

 声は震えてしまっていた。

――病院

クリストフ「はい、こんばんは。どうされましたか?ええっと……テリーズさん?」

テリーザ「テリーザです、司祭様」

クリストフ「あぁそうでしたっけ?すいません、あまり物覚えが良くないもので」

テリーザ「……いえ、それは別に。その、どう、したんですか?こんな所で?」

クリストフ「質問へ質問で返すのはマナー違反ですが……まぁ、収穫、とでも言うんでしょうか。この場合」

テリーザ「……」

クリストフ「どこからお話ししたものか……まぁ『繋がって』頂けたので、どんなものかは分かって貰えたかと思います」

テリーザ「……何なんですかっ、あれは!」

クリストフ「『独りは、辛かった』?」

テリーザ「……っ!」

クリストフ「『だから、誰かと同じ価値観を共有したい』――それが僕の父、ウィリアムが受け継いだ理念だ」

テリーザ「ウィリアム医院長が?」

クリストフ「……科学を志した人間が、最後に行き着いたのが魔術だったってのは、どうにも皮肉が効きすぎてる気がするけどね」

――第一聖堂 地下墳墓

アルフレド「最初はな。どっかの野良魔術師が売り込んできたらしい。『不死の研究をしてみないか?』って」

上条「胡散臭っ!?」

アルフレド「まぁまぁカミやんそう言うなよ。木を隠すなら森の中、屍体を欲しがるんだったら病院ってのはセオリーだぜ?」

上条「良く信じたな……てかカミやん言うな」

アルフレド「脅されてた、っては言ってたが怪しいもんだわな。当時ですら四肢再生ぐらいはやってのけたんだし、そりゃ憑かれるわ」

アルフレド「んでもまぁ?やっぱコストの面?人一人を再生させるにはコストがかかりすぎってんで、再生魔術としては頓挫するんだ」

アルフレド「頓挫、っつーか正確には『濁音協会』の崩壊だわな」

アルフレド「イタリアに拠点を置いて色々やってんたんだが、ローマ正教の逆鱗に触れて壊滅」

アルフレド「イングランドにあった支部も『必要悪』の奴らにやられてお終い……に、なる筈だったんだが」

アルフレド「たまたまここで研究していた魔術師は、人嫌いっつーか、『濁音』の連中の中でも異端だったようで」

アルフレド「残党狩りがここを見つけるまでに二年もかかった……ま、結局焼かれたらしいぜ?異端らしくな」

アルフレド「残党狩り