上条「今夜、君の元へ」 ~Cry for the MOON~ (694)

このSSは以下の物語の続きとなっております

鳴護アリサ「アルテミスに矢を放て」 ~胎魔のオラトリオ~
鳴護アリサ「アルテミスに矢を放て」 ~胎魔のオラトリオ~ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396305392/)

レッサー「『新たなる光』の名の下に集えよ、戦士」 ~闇、海より還り来たる~
レッサー「『新たなる光』の名の下に集えよ、戦士」 ~闇、海より還り来たる~ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1413944245/)

宜しければそちらをご覧頂いた上でお読み下されば幸いで御座います
では最後までお付き合いくださいませ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1435022688

――夜の学校?

上条(延々続く無限回廊と文字通りの階段マラソン……今日もまたドラム缶を押す一日が始まる――)

上条「――ってまたここかよ!?知ってたよ!何となくそんな気はしてたけども!」

鳴護「ま、まぁまぁ!当麻君のイメージなんだから仕方がない、し?」

上条「イメージ?」

鳴護「うん。『ここはそうゆうところなんだよ』ってインデックスちゃんが」

上条「……インデックス居ないんだが……『龍脈』にアクセスしてる?」

鳴護「えっと……『むかしから知識を求めて異界へ旅立つお話はあってね、そこで賢者や仙人、時には神や悪魔と遭うんだけど』」

鳴護「『”龍脈”が彼らに代って役割を果すとすれば、それは流れ込む過去の記憶が人の姿を取って辻褄を合わせてたのかも』って」

上条「俺ら的には”現実じゃないどこか”へ迷い込んだつもりでも、実際には『龍脈』に繋がって情報を取っていただけ、か?」

鳴護「『勿論!誰も彼も出来る事じゃないんだよ!不用意にやろうとすれば発狂するし』」

鳴護「『たまたまありさや、魔術的に死んでた人が居たからであって、素人にはおすすめしないんだよ』……素人?」

上条「……ベイロープん時も思ったが、なんだかなぁ」

鳴護「『っていうかありさ!言っちゃ駄目だってば!』……うん?」

上条「イギリスから戻ったら美味いメシでもお見舞いしてやるから、色々な意味で諦めとけ」

鳴護「えぇっとー、インデックスちゃ――もとい、匿名希望Iさんが言うには、だけどね」

上条「アリサさんもそこはもう情報公開していいんじゃないかな?逆にここで見ず知らずの誰かにアドバイスされてる方が怖いからね?」

鳴護「例えば!そこの扉を『この扉を潜れば現実へ帰れる!』って”当麻君が心の底から思え”ば、その通りになったんだって」

上条「お、マジで?ラッキーっ!」 ガラガラッ

上条「……」

鳴護「……」

上条「帰れ、ないんですけど……?」

鳴護「や、だからね?過去形だから、その通りになっ”た”ってだけで」

鳴護「今はある程度イメージが固まったから、ネタばらし出来るけど。うん」

上条「なんでまた?俺に言えばいいじゃん、最初っからさ」

鳴護「あー……なんかね、こう、なんでもポジティブに考える人とか、経験を積んだ魔術師さんだったら問題ないんだって」

鳴護「でも、フツーの人は、『あ、オバケ出るかも!?』って思った瞬間に出るし」

鳴護「『もしかして出口がないじゃん!?』って疑っちゃうと、もう出られなくなるんだ――よ」

上条「なにそれこわい――てか、いいのかネタばらししちまって?」

鳴護「もう魔術的には安定している――というか『完成』した後だから、これ以上大きく変わりはしないだろうって」

上条「……言われてみれば、ベイロープとアホがしきりに俺を言い聞かせてたような……?」

鳴護「……で、当麻君的には出口、どこら辺にあると思う?まだ遠いのかな?」

上条「んー……近い、と思う。最大の難関、アリサの説得も済ませたし、後は帰るだけだからな」

上条「そろそろ階段も上らなくていいような気がする。そうだな、この階をずっと進めば、帰れると――」

――ィィンッ――

上条「――思、う?なんだ今の?何か聞こえなかったか?」

鳴護「はい?あたしには何も――」

……ァァ……………………ア――

鳴護「……人の声、だね。それも一杯、ていうか周囲に……居る、かも」

上条「……もしかして俺?またやっちまったのかよ!?」

アルフレド「――違う。”これ”はそういうもんじゃねーんだよ」

上条「……もういい加減飽きた。ウェイトリィ兄弟のアホの方」

アルフレド「随分なご挨拶だよなぁ。まー、俺も同感だけどさ」

上条(影から――文字通り”影”から――ぬぅっと三体の人陰が立ち上がる)

上条(二次元の薄さが徐々に厚みを持って人型に――って、待ってやる義理はねぇっつーの!)

上条「そこを、どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

団長『はっ、はあぁーーーいっ!』

バスッ!

上条(俺の右手はまた『団長』に易々と受け止められ、もう一つの影に飛び掛かられる前に後ろへ下がる!)

安曇「……ふむ、そう邪険にされては心が痛む、な」

上条(相変わらず少年か少女か分からない安曇阿阪。それに鉄仮面を被ってアニメ声メイド口調の『団長』……!)

上条「……幹部揃い踏みじゃねぇか!つーかお前ら死んだんじゃなかったのかよ!?」

アルフレド「あぁ死んだよ!俺達は完膚なきまでに死んださ!」

アルフレド「でも”ここ”は冥界だぜ、カミやん?死人が居て当然だろう?」

上条「だからって!急に出て来やがって邪魔するのか!」

アルフレド「――に、プラスして、たった今現実世界で魔神セレーネが『黄泉穴渡り(ナヅキノドウ)』を発動したぜ!」

アルフレド「神託巫女と蜂蜜酒の女王に邪魔されたが、発動が遅延しているだけで効果は出ている!俺達が証拠だ!」

上条「なづき……?」

アルフレド「十字教風に言えば『審判の日、その日(Apocalypse now)』かね?つーか聞いた事ねぇかな?」

アルフレド「終末の日には墓から死者が蘇って、善人も悪人も等しく神の裁きを受けるって――所謂黙示録かね」

上条「死者の――ってお前まさか!?」

アルフレド「あの世とこの世の境界は崩された!死人は墓から這い出るぞ!生者と仲良くパヴーァーヌを謳い上げろ!」

アルフレド「母親は戦場から戻った息子の死体へキスをし、子供は病気で死んだ犬の屍体を抱き締める!なんて、なんて美しい世界だ……ッ!」

アルフレド「――そう!”魔神の術式に善悪などない”んだよ!それが善人だろうと、悪人だろうとこうやって復活する!」

アルフレド「楽しい、あぁ楽しい世界の始まりだ!」

上条「……おい」

アルフレド「――て、ゆーかさ、カミやん。なぁカミやんよ?」

アルフレド「お前がぶち壊してくれたお陰で、この下らないボードゲームを続けようとしやがったせいで!」

アルフレド「俺の計画が台無しになった……クソッタレ、あぁあぁクソッタレが!」

上条「……」

アルフレド「折角”生かしておいてやった”のに!鳴護アリサの首を絞める大役を任せてやったのに!」

アルフレド「お前は!どうして役目を放棄しやがったんだよ、なぁ『幻想殺し』!?」

上条「……”あっち”でのお前にも言ったんだが、お前の言葉はもう届かないよウェイトリィ」

上条「それと――カミやん言うな」

アルフレド「あっあー、アレか?鳴護アリサ取り戻して調子ぶっこいてますかー?へー?」

アルフレド「上条さんはーアレですよねー?『右手』が効かなっきゃただの学生さんですよねー?」

アルフレド「『龍脈の力を得て記憶から再生し続けてる』俺らに、効くと思いますかー?」

上条「効くも効かねえもねぇさ」

アルフレド「あぁ?」

上条「お前が、お前らが俺達の前に立ちはだかるんだったら、全部ぶっ飛ばすに決まってんじゃねぇか!」

安曇「……ふふっ!」

団長『やだー、かっこいいー』

アルフレド「よっしゃ!はい、お前死んだ!つーか直ぐぶっ殺す!」

アルフレド「ブラック・ロッジのボス三人相手にして勝てるとでも思ったか――行くぞ!」

団長『りょうっかいっでーすっ!』

安曇「……ふむ――」

上条(前へ進み出るアルフレドと『団長』……やべぇ、勝つ自信なんかこれっぽっちもねぇよ!)

上条(今回の事件、殆ど俺はサポート役に回ってばっかで、連中にトドメ刺したのは『新たなる光』だし!)

上条(――そう、俺が半ばパニクっていると、先手を切ったのは――)

安曇「『”綿津見ニオワス大神ヘ奉ル”』」
(しょくじのじかんだな)

安曇「『”同胞ノ血ヲ以テ盟約ト成セ、我ラガ安曇ノ業ヲ顕現セン”』」
(では、いただきます)

上条(安曇の口が大きく裂け、子供ぐらいなら一呑みに出来そうな程、縦に伸びた!)

バキィッ、ガリガリガリガリカ゚リッ……ツ!!!

上条(その勢いそのままに、”最も近くに居た”者を噛みつき、貪り、引き千切る――)

アルフレド「オイ、阿阪安曇――」

上条(――そう、安曇がなんの躊躇もなく攻撃し、貪り食ったのは――)

アルフレド「――テメェ、なにやってんだコラァァァァァァァァァっ!?」

上条(――紛れもなく、”アルフレド”の左腕だった……!)

ズゥゥンッ、パリリイィンッ……!

団長『――!?』

上条(安曇はいつの間にか爬虫類へ変えた足で、『団長』も蹴り飛ばす!)

上条(背後からの奇襲に抵抗も出来ず、彼――か、どうかは知らないが――は、窓ガラスを突き破り、漆黒の闇に包まれた”外”へと叩き出された!)

安曇「だから、安曇阿阪だと言っている。以前にも言ったとは、思う」

アルフレド「何してくれんだよ、何してくれやがってんだよ、あぁっ!?」

アルフレド「テメーも俺達と同じ魔術結社の一員だったろうがよ!ブラック・ロッジのだ!」

安曇「そうだな、一言で言えば――」

安曇「――『交尾』、だな」

アルフレド「……?」

安曇「あぁ、ニンゲン――ではなく、カミジョウトウマ、か」

安曇「時間稼ぎをしてやろう、と安曇は言っている。よって先へ行け」

上条「お、おぅ……?」

アルフレド「質問に答えろ!」

安曇「分からないのか?そんな事すら説明が必要か?……ふぅ」

上条「……俺も知りたい。なんでお前が裏切るみたいな感じになってんだよ?」

安曇「知らないのか?その程度の事すら言わなければ分からないのか?……かくもニンゲンとは度し難い」

安曇「ならば見知りおけ。さして難しい事でもない故に」

安曇「安曇はな、魔術師だ。それも”ぶらっく・ろっじ”と呼ばれる、自己中心的な魔術師の中ですら、より欲求に”すとれぇと”だ」

安曇「喰いたければ、喰う。抱きたければ、抱く。自己の欲求のみに生きる存在だ」

安曇「たまたま”今まで”は利害が一致したに過ぎん。これからは違うという事だな、うん」

上条「利害?」

安曇「我が一族が金よりも欲している”モノ”は『血』だ。より強くより濃い、強者の種を取り入れなければならん」

上条「ヘー、そうなんだー?」

安曇「うん、そういう訳で先へ進むとよい――”だぁりん”」

上条「おうっ!………………おう?」

安曇「横文字は発音しにくいな。『お前さま』、の方がよかったのか?」

鳴護「……当麻君?」

上条「待て待て待て待て待て待て待てっ!?テメェ何言い出しやがった」

安曇「お前は安曇を下した、よって強者である、ここまでは理解出来るか?」

上条「あ、あぁ!」

安曇「よって『交尾』をする権利をやろう。というか、しろ。むしろ無理矢理にでも、する」

上条「だめだこいつなんとかしないと!つーか発想が獣レベルじゃねぇか!?」

安曇「獣だが?」

上条「ウン、ですよねー。お前ら徹頭徹尾類人猿レベルですもんねー」

安曇「――と、いい加減先へ行け」

上条「いやだから――」

安曇「いいか?時間稼ぎ、だからな?いくら安曇であっても、”でうす”相手にそれ以上は厳しい、と言っておこう」

上条「でうす……?」

上条(安曇が視線を外さぬ先にはアルフレドの姿があった――だが、しかし)

上条(傷口からは蔦のような触手が伸び、腕のような姿を取り戻しつつある様は悪夢めいている――っていうか!)

上条(”これ”はなんだ?安曇や『団長』、ショゴスの時にも”異質”を感じたが――)

上条(――こいつは何かが違う!本当に俺達の世界の生き物なのかよ……!?)

安曇「……ま、交尾はその内、貰いに行くとしよう――だから」

上条「……悪い」

安曇「構わない、と安曇は言おう」

安曇「生命は死んだらそこで終わりだ、終わりでなければいけないんだ」

安曇「そうでなければいつまで経っても若葉は伸びず、子供は産まれなくなるだろう」

安曇「……”それ”は安曇の”るぅる”、に反している。それだけだ」

上条「――アリサ、行こう……!」

鳴護「……ありがとう、ございます」

安曇「気にするな、行け」

カッカッカッカッカッカッカッ……

――夜の学校?

上条「――いい加減、しつこいんだよ……ッ!」

パキィィインッ……!

死人『アァァアアァァァ……ゥ』

上条(恨めしげな声を上げ、道を塞いでいた死人の群れが崩れる)

上条(……アルフレドから逃げる中、姿を隠していた”死人”が俺達へ群がってきた!)

上条(一人一人の動きは遅く、また全員が向かってくる訳でもないから、どうにか捌けてるって感じだ)

上条「アリサ、アリサっ!大丈夫かっ!?」

鳴護「ぅ、うんっ!なんとかっ!」

上条(元々荒事に慣れてないアリサを連れての強行突破は苦しい――クソ、どうしたらいいんだよ!)

上条(もたついてたら奴に追い付かれちま――)

男「――おや?そこに居るのはどこかで見知った顔ですねー?」

ザウンッ!!!

上条「また新手かっ!?」

上条(預言者が海を割るように、笛吹きが子供を連れて行くように)

上条(俺の前に立ちはだかっていた障害、亡者の群れはたった一払いで霧散させやがった――)

上条(――”小麦粉の刃”っていう、矛盾したシロモノで!)

上条「お前――っ!」

男「おや?お前ではありませんよー。私にはね、立派な名前があるのですから」

テッラ(男)「――そう、『左方のテッラ』という名前がですねー」

上条「死んだ、って聞いたんだけどな」

テッラ「えぇ、アックアにバッサリと。いけませんねー、やっぱりゴロツキはゴロツキでしょうか」

テッラ「借りは返したい所なんですがねー。ここからイタリアは流石に遠いでしょうし……」

上条(最悪だ!ここへ来てこいつが俺の前に現れるなんて!)

上条(確かフランスでも、偶然爆撃かなんかに気を取られてる隙が出来てんであって、正面からやって勝てた訳じゃない……)

上条(どうする?……ま、ぶん殴る以外には選択肢は無――)

ボトッ

上条(背後から肩を掠めて”何か”放られる)

ボトボトボトボトッ

鳴護「えっと――?」

上条「――アリサっ見るな!」 サッ

鳴護「う、うん……?」

上条(アリサの視線を逸らせた事に安堵しながら、俺は投げられた”それ”から目を離せない)

上条(……少し前まで、敵になったり味方になったりと掴めない奴だった。そう――)

上条(――安曇阿阪を”構成していたパーツ”が、無造作に転がっていた……)

アルフレド「………………かーみーやんっ、あっそびっまっしょっ!」

上条(背後から掛けられる声に肌が粟立ち理解を拒む!人と言うよりは虎か何かに追いかけられてるような……いや、猛獣の方がマシか)

上条(前をテッラ、後をアルフレド――クソッタレ!どうしたもんか!)

上条(近くの教室へ逃げ込んでも死人の群れに囲まれば、時間稼ぎにすらならない!)

上条(俺がアリサを抱えて悩んでいる間にも、前にいるテッラは近づき、アルフレドの尋常じゃない気配が這い寄ってくる!)

上条(逃げ場はない!近くの教室へ駆け込もうにも中は死人で一杯だろう!)

鳴護「……当麻、君……」

上条「……大丈夫だ、アリサ。約束したろ?」

テッラ「……」 ブゥンッ

上条(テッラは小麦粉で出来た刃を振り上げる。俺はきつくアリサを抱き締め、少しでも安心させるように)

上条「お前は、俺がまも――」

金髪「――はいはい、雰囲気出してる所にごめんねって訳よ?」

ガラガラッ、グイッ

上条・鳴護「――はい?」

テッラ「――『光の処刑』」

ガガガガガガガガガガッ!!!

上条(刃が廊下を突き進み死人諸共アルフレドを巻き込み――)

上条(――その、犠牲になる筈だった俺達は、間一髪、教室の中へ引きずり込まれて、難を逃れた)

金髪「はいはい、おつかれー。怪我してないって訳?」

上条(この、金髪の女の子の手によって)

上条「ありがとう、助かった、よ?」

金髪「なんで疑問系?そこは『ありがとうございますっ!』でいいって訳じゃないの!?」

――夜の学校? 廊下

ガガッ、ブゥン……!

アルフレド「……っ!?」

テッラ「やれやれ。異国の異教徒を助けるのは本意ではありませんがねー」

アルフレド「……テメー、『左方のテッラ』!」

テッラ「はい、初めまして」

アルフレド「……でだよ」

テッラ「何か?言葉はもっと明瞭に発すべきかと思いますよー」

アルフレド「なんでテメーがそこに居やがるんだよ!?あまつさえ『幻想殺し』を助けるなんぞ有り得ねぇだろうが!」

アルフレド「死人如きが!生者を助けるなんざ聞いた事がねぇよ!」

テッラ「死人……あぁやはりこの身は朽ちていたのですか。神の国へ入れるとばかり思っていましたが、まだその日ではないのでしょうねー」

テッラ「最期に見たのはアックアの顔……そのせいだと思いませんか?ねー?」

アルフレド「俺の質問に答えろ狂人が!」

テッラ「狂人?誰がです?」

アルフレド「テメーだよ!十字教徒以外の人間をモルモット扱いで殺してたお前の話だ!」

テッラ「心外、それは心外ですよー。異教徒はね、一度死んだ上で煉獄へと赴き――」

テッラ「”ここ”で魂に付着した罪を洗い流す事で、漸く神の国へ入れる資格を持つ訳ですから」

テッラ「例えあの少年――十字教へ楯突いた愚かな人間であっても、罪は許された訳でしょう?私が救うべき存在なのですよー」

アルフレド「話が、通じねぇっ!」

テッラ「それにこの術式は、あくまでも死人を甦らせる”だけ”のもの――つまり、そこに意識を操る意図は無いようですからねー」

テッラ「こうして『神の敵』と相対するのも可能な訳でして、ねー?」

アルフレド「……テメーは、確か」

テッラ「そうですねー、あなた方の前身――先代の『濁音協会』を殲滅したのはこの私でしてねー。お忘れですか?」

テッラ「あなた方を壊し、そして私を壊してしまった借りは返しませんとねー」

アルフレド「カミやんどこまでも運の良い野郎だなぁ、オイ……まぁいいぜ」

アルフレド「たかだか一介の魔術師如き、さっさと磨り潰してカミやんと遊ぼう」

テッラ「いやー、それはどうでしょうかねー?――『光の処刑』、ご存じで?」

アルフレド「あん?小麦粉の優先順位を入れ替える術式だっけか、だからどーした?」

テッラ「その言葉で確信しましたねー――”あたなは龍脈に通じてはいるが、全てを知る立場にはない”と」

アルフレド「……そぉいやテメェ、カミやんの記憶喪失も見破ったんだっけか?ただの狂人じゃねぇのか、嫌らしい」

テッラ「ですから心外ですよー。私はただの敬虔な信徒に過ぎないのですから――と、謙遜してもしようがないので、話を進めますがー」

テッラ「どうして皆さん、『その程度』の能力だと思われるんでしょうかねー?」

アルフレド「……あん?」

テッラ「『神の右席』の内、『前方のヴェント』は無差別殺傷術式”天罰術式”を持つ。またアドリア海の女王の真の持ち主でもありますかねー」

テッラ「『後方のアックア』は”聖母の慈悲”により、ありとあらゆる魔術的な制限を免責します。チート過ぎるような気もしますがねー」

テッラ「『右方のフィアンマ』は”聖なる右”にて、いと高きあの御方の奇跡を、不完全ながらも行使する事か出来ますねー。あぁ羨ましい」

アルフレド「それがどーしたよ」

テッラ「そして私、『左方のテッラ』は”光の処刑”により、あらゆるものの優先順位を変える事が出来ますねー」

テッラ「例えば小麦粉でギロチンを作ったりして――と、よく言われるんですがねー、それは誤解なんですよねー。ていうか」

テッラ「”たかだかその程度の能力”で、右席に選ばれる訳ないじゃないですか。少し考えれば分かりそうなものですがねー」

テッラ「よく人からは誤解されやすいんですよ、心外ですがねー」

アルフレド「……」

テッラ「私の研究テーマは『”神の子”が人の手で処刑された』点にあるんですよー?分かります?」

テッラ「魔術的にも遙かに劣る人が、どうやって”神の子”を害しめさせたのか、と。ね?おかしいでしょう?」

テッラ「だから私は研究を続けましたねー――そう、”あなたがた”のために」

テッラ「より小さき者が冒涜じみた”あなたがた”へ対抗するための手段……゜と、言えば格好良いかもしれませんが」

テッラ「許せないだけですねー。いと高きあの御方以外の存在が、神を名乗るなどと言う事が!」

テッラ「だから『優先順位』を変えてしまえば良い!そうすれば小さなナイフでも”あなたがた”を殲滅しうる武器になる!」

アルフレド「お前――『神殺し』の術式か……ッ!?」

テッラ「……私はねー、魔神よ。一度壊れてしまったんですねー、狂ってもしまいましたねー」

テッラ「人である事を捨て、人で在り続ける事を止めましてねー?」

テッラ「だが――壊れたからといって貴様らへの憎悪は止まず!狂ったからといって貴様らのへの敵意は衰えず!」

テッラ「あの御方の名を騙る紛い物に滅びを!」

アルフレド「……かかって来いよ。”狂信者(Judas)”」

テッラ「貴様に煉獄へ落ちる資格も無い、永劫の地獄で苦しみを味わうがよい……ッ!!!」

――夜の学校?

金髪「――よいせっ、と!」

バシュゥッ、チュドドォォォォウンッ!

上条(金髪の子がスカートの中から取りだしたミッソー――ミサイル?ペンシルロケット?――で、死人を薙ぎ払っていく)

上条(どこに収納してんだって話だが、まぁ能力なんだろう!流石は学園都市だよ!やったねっ!)

上条(ていうかアレだな。この状況を例えるならばだ、『バイ○でデフォ装備が弾数無限ラケラン』状態)

鳴護「当麻君、その……そろそろ目を開けてもいいかな……?」

上条「あ、ごめんな。もうちょっとだけ待って貰っていいかな?今その、うん……情操教育的にアウトっぽくてさ」

上条(見た目、殆ど俺達と変わらない死人をFPS感覚でデリート……うん、緊急事態ですからねっ!今はなっ!)

上条「つーかお前誰よ?」

金髪「ヒドっ!?初対面じゃないのにっ!」

鳴護「当麻君……?」

上条「待って下さいよアリサさん?これは、そう言うんじゃなくてですね。えっと」

上条「あ、もしかしてこの間デパートで会った――」

金髪「あ、それそれ」

上条「俺に『連帯保証になって下さい!』って言ってきた子だよな?」

金髪「それ違う訳よね?てかそんな事あったの?」

上条「割と、うん……時々は、かな……?」

金髪「そーじゃーなーくーて!デパートで、ほらっ、あたしの妹にプロポーズした時に!」

上条「あーっ!お前あん時のハイキックくれやがった金髪!」

鳴護「プロポーズ?……え!?この子の妹さんだったら――」

金髪「八歳よね。あー、今年の誕生日で九歳か」

鳴護「あー……」

上条「してねーよ!?誤解を招くような発言は慎んで貰おうかっ!」

上条「あとアリサさんの『あー、そーなんだー』みたいなリアクションおかしくないかな?なんで『少し納得』みたいな感じなの?」

鳴護「あれだけモーションかけてるレッサーちゃんに冷たいと思ったら、やっぱり?」

上条「あのですね、こう、ある学説に拠れば『男は省みない』的な説もあるんですけどね、はい」

上条「でもリアルな世界で言えば、明らかに見えてる地雷を踏みに行くのは……ま、まぁ少数派だって事かな!」

金髪「つまりアンタって訳よねっ!」

上条「ぶっ飛ばすぞコノヤロー!自慢じゃねぇがそんな機会すらなかったわ!」

金髪「まー、アレって訳よね、あたし、死んでんのよ」

上条「……あぁ。何となくはそんな気がしてたけど。どっか魔術師より能力者っぽい感じがしてたし」

金髪「あたしもよく分かんなくてさ?学園都市歩いてたらあのキチガ×の人に、『あなたは十字教徒ですか?』って」

上条「死んでも頭イタイのは治らなかったか……!」

金髪「何日か前から『境』――こっちをあっちを繋ぐ、ゲート?境界?みたいなのが緩くなっちゃってた訳。んで、あたしらみたいなのがフラフラっと」

上条「大丈夫だったのか、それ?」

金髪「大丈夫って何が?」

上条「いや、今現在俺らはゾンビー的なものに猛攻撃を受けてる訳だが、お前は他に死人とは違うのかよって」

金髪「アンタさ、お腹空いたら人でも食べたくなるヒト?」

上条「ねぇよ。つーか大抵の野郎は餓死選ぶわ」

金髪「それと一緒って訳。あたしはあたしだし、死んでようが生きてようが変わらないって訳」

金髪「”こいつら”は不完全に術式が成ってしまったからー、みたいな事言ってたっけ?」

上条「……」

金髪「何?心配してくれるって訳?」

上条「いや……まぁ、するじゃんか?やっぱり?」

金髪「……色々思う所はあった訳だけど、まぁいいんじゃない?妹にも会えたし、ね」

金髪「それと自分のお墓へ『嫌がらせっ!?それとも新手のジェンガっ!?』って引くぐらいの量の鯖缶が積んであれば、まぁまぁ悪い気持ちはしなかった訳よねっ!」

上条「……そか」

金髪「あー、でも心残りがあるとするんだったら、麦野に一言だけ言いたい事があった訳だけど――」

上条「麦野?もしかして浜面んトコの麦野さんか?」

金髪「浜面知ってる訳?」

上条「ダチだな」

金髪「あー、元スキルアウトの?言われてみれば三下っぽい雰囲気って訳よね!」

上条「違げぇよ。なんだ三下っぽい雰囲気って」

金髪「不幸そうな所」

上条「……俺、ほぼ初対面の相手から指摘される程、ヒドいか……?」

鳴護「えっと……うんっ、頑張ろっ!ふぁいおーっ!」

金髪「そっちの子も追い打ち入れてる訳だし」

上条「あー、それじゃ浜面に伝言させようか?あんま長くなかったら」

金髪「……それじゃ――こほん、『えっと、麦野。あたしずっとずっと思ってた訳なんだけど――』」

金髪「『――ぶっちゃけ、上から下まで同じブランドで固めるのって、超絶ダサいと思う訳よ』」

上条「最期の挨拶それかよっ!?」

金髪「あ、あたし達にはあたし達にしか分からない繋がりがある訳だしっ!」

上条「やー……でも麦野さん、大人の女だし、なぁ……?言っても問題は無い、のか……?」

金髪「あ、騙されてる訳っ!乳かっ!?あの乳に騙されたのかっ!?」

上条「それはハマーに言ってやってくれよぅ!なんかこう、いつ浮気的なものをやらかしそうで怖いし!」

金髪「麦野に粗相したら、全殺しされそうで……と」

金髪「ってゆうか”そろそろ出口の筈”なんだけど――どうって訳?」

上条「どれどれ……あー、あるなぁ。銀色の、なんだろ……門っぽいのが」

金髪「(いよっしゃっ!成功って訳よね!)」

鳴護「(当麻君も色々と心配になるメンタルだと思う……てか話したのに!)」

上条「幸い周りには死人も居ないな?なんでだろ?」

鳴護「えーとー……うん、『出現位置が術式の核にした人間の思い通りなんだから』、だって」

上条「よく分からんが、結果オーライだなっ!」

鳴護「や、だからね?当麻君もあたしのこと子供扱いするけど、中身はそんなに変わらないんじゃないかって」

上条「良し!それじゃ――」

金髪「あ、ごめん。あたしはここまでって訳だから」

上条「ん?一緒に帰れ――は、しないんだっけか」

金髪「行こうと思えば行ける訳なんだけどね。実際、行き来してたし?」

金髪「ただその、『扉』が開いて、そのままってのは問題ある訳よ。アンダスタン?」

上条「死人が……溢れる、か?」

金髪「さっきのオッサン曰く、『善人も悪人も関係なく、賢者も気狂いも分け隔てなく甦る』から、放っとくとヤヴァイ訳だし」

上条「お前は……いいのか?」

金髪「そう思ったら墓前に鯖缶でも上げる訳。あ、いっちばん高いのね?ブランドものがいいなー」

上条「……探してみるよ――それじゃ」

金髪「――ん、また”お盆”に逢いに行くって訳、よ!」

――銀色の扉

上条(永遠に続くかと思われた長い長い廊下の終焉……ぶっちゃけ突き当たり)

上条(そこにあったのは銀色の扉――なん、だが)

上条「……なんか安っぽくね……?俺の想像していたのとは少し違うような?」

鳴護「き、急遽作ったから!きっと冥界さんも時間が無かったんだと思う!思うよっ!」

上条「ま、帰れるんだったらなんだっていいけど――それじゃアリサ、心の準備はいいか?」

鳴護「……ん」 コクッ

上条「うっし!セレーネをぶん殴りに――」 ガチャッ

鳴護「うん?」

上条「……」 ガチャッ、ガチャガチャッ

鳴護「え、もしかして……?」

上条「……鍵、かかってる」

鳴護「えぇっ!?」

上条「落ち着けアリサ!こんな時には冷静にならないと駄目だっ!」

鳴護「当麻君……うんっ、そうだねっ!」

上条「今ちょっと交番行って、鍵が落ちてなかったかどうか聞いてくるから!」

鳴護「待って?当麻君、あたしより混乱してるのは分かったから!待とうかっ!?」

上条「どーすんだよ!?俺鍵なんて持ってねぇし!つーかあんのはサイリウムぐらい……」

鳴護「誰かに、何か言われなかった?アドバイスみたいなの、とか」

上条「アドバイス、アドバイス……あー、そう言えばアルフレドのNPCが『銀の鍵』って言ってた気が……?」

鳴護「銀色の門だし、それだよ!きっと!」

上条「……いや、だから俺は何も持って――違う、アリサは?」

鳴護「わたし?」

上条「なんかこう、それっぽいもの持ってないのか?なんだっていいから」

鳴護「急に言われても、待ってて――――――あ」

上条(アリサが”鳴護アリサ”になった瞬間、世界に生まれた時に手にしていたもの)

上条(そしてそれは『奇跡』を起こし、シャットアウラとの再会の切っ掛けにもなった――)

上条「――ブローチ……っ!」

鳴護「……うん。そう、だね」

上条「本物は俺が預かってるぞ。戻ったら返さなきゃ、な?」

鳴護「……」

上条「……アリサ?」

鳴護「……このブローチね、一回だけ捨てようとしたんだ」

上条「えっ?」

鳴護「身元の手がかりになのは分かっていたけど、それでも……辛くて」

鳴護「捨てられたんじゃないか、って思っちゃうんだよ。やっぱりさ」

鳴護「……でも、捨てた筈のブローチを拾ってくれたのは院長先生だったよ」

鳴護「昔はもっと厳しくてね、滅多に笑わない人で、みんなからも怖がられてて」

鳴護「……そんな人があたしになんて言ったと思うかな?叱られた?笑われた?……ううん、違う」

鳴護「先生は泣いてくれたの。あたしが泣かないから、代わりにだって」

鳴護「『傷つけてごめんなさい、あなたが辛いのに気付けなくてごめんなさい』って……ね?そんなことされちゃ困るよね?」

鳴護「……二人でわんわん泣いたあの日に――院長先生はわたしの『おばあちゃん』になった」

上条「……あぁ」

鳴護「それから――それから、少しずつだけど鳴護院の子達とも仲良くなって、古いオルガンを弾くようになって」

鳴護「……そうしてあたしの”世界”はちょっとずつ、おっかなびっくり広がっていった――」

鳴護「あたしは――ううん、わたし”も”一人なんかじゃなかったよ。繋がりは、あった……っ!」

鳴護「一人じゃなかった……っ!みんなや、お友達が居たよっ!居たんだよっ!」

鳴護「このブローチのお陰でっ!あたしは家族を探そうって切っ掛けになったんだもん!」

上条「……アリサ」

鳴護「……帰ろう、当麻君。あたし達の世界へ――」

鳴護「――あたし達の居なきゃいけない世界へ!」

上条「……うん」

上条(アリサがブローチを扉へ押し当てると、扉はゆっくりと開いていく)

上条(光が俺達を包み――)

上条「……」

上条(――光に包まれながら、同時にここへ来る時感じた浮遊感にウンザリしながら、俺はとある事を考えていた)

上条(アリサと合流してから、インデックスは――正しくは、その”知識”を優先的にアリサへ流して助けてくれた)

上条(けど、ここへ来て、最後の最後でアドバイスをくれなかった。何故?)

上条「……」

上条(……もしかして”これ”も俺達が帰るには必要な手順だったのか?アリサに”こう”させる事が?)

上条(待ってるのは俺だけじゃなく、俺”達”だって、自覚させるためのが、だ)

上条「……」

上条(……ただ、もしその仮説が正しいとすれば一つだけ疑問がある)

上条(だったらどうして――あのアホが助言をくれたんだ……?)

――青冷めた光の柱の下

レッサー「ランシス!」

ランシス「……空から堕ちてくるのは透明な魔力の塊、方向性を持たない無色のテレズマ……!」

ランシス「けどっ、量が多すぎる……!」

ベイロープ「具体的には?」

ランシス「……うーん……月から視認可能なクレーターが、出来るレベル?」

フロリス「マジか!よしジャパニーズ背負って逃げようぜ!」

レッサー「――と、お待ちなさいなフロリス。ちゅーかあなたはこんな時にまで逃げグセがですね」

フロリス「言ってる場合じゃないケド!HurryHurry!!!」

ランシス「……逃げられるような範囲だと、思う?」

フロリス「……ワタシの『翼』でも?」

ランシス「ん――ていうか、ぶっちゃけ、あと五秒で堕ちてくる、し……」

ベイロープ「全員『爪』を展開!”X”を維持しながら結界を張るわよっ!」

ランシス「四、三……」

レッサー「ベイロープ、それ私の台詞ですよねっ!?」

フロリス「言ってる場合じゃネーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

ラシンス「……いち、ぜ――」

キゴゴゴゴゴコゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――ッ!!!

レッサー「なんですコレ――潰され――」

ベイロープ「いいから黙っ――」

フロリス「……イヤー、これ詰んでんじゃ――」 バキンッ!!!

ランシス「……あ、『爪』折れ――」

ベイロープ「だからっ!常日頃のメンテナンスをしな――」 バキンッ!!!

フロリス「へーんだっ!ベイロープ――カーチャン――」

ラシンス「……お母さんは全員非処――」 バキンッ!!!

レッサー「あ、ヤバ。これ全員死にま――」

―― バキンッ!!!

レッサー(……ふーむ。私の人生ここで終わりですか、ま、こんなもんですかねぇ)

レッサー(悪い意味で『最後の王』になってしまったのは泣けばいいのか、それとも笑えばいいのか……)

レッサー(ま、取り敢えず笑っときましょうか、にゃっはっはっはっー!……あー、クソ面白くない)

レッサー(に、しても間に合いませんでしたねぇ、上条さん。あのスケコマシ、言うだけは格好良いんですから、えぇ)

レッサー(アリサさんが帰って来たら”ドギツいの”一発カマすつもりだったんですが……ま、アリサさんにとっては幸運かも?)

レッサー(騙された方か悪いっちゃ悪い気もしますがね、どうせだったら最後まで騙して頂きたい!是非に!)

レッサー(つーかアレですよ?こう、物語にはお約束ってもんがあるじゃないですか?)

レッサー(や、魔術師的に――てゆーか円卓の騎士の術式使ってる身としちゃ、あんま『お姫様になりたい!』な願望は薄いんですが)

レッサー(やっぱり、こう、あるじゃないですか?憧れみたいなの)

レッサー(お姫様がピンチになってレッツリーンカーンパーリィ!さぁ家族が増えるよっ!やったねっ!)

レッサー(だがしかぁし!騎士が颯爽と現れ助けてくれる!……みたいなの)

レッサー(理想。そうですねー、最後ですしねぇ?希望を並べるのもいいでしょうかね)

レッサー(外見は別に好みはありませんよ。人並みであればそれだけで)

レッサー(ただまぁ欲を言うのであれば、黒髪でツンツンしてるのが良いかもしれません。私も黒髪で、お揃いですしね)

レッサー(性格も別に好みはありませんよ。サイコキラー的なハッピー属性でなければそれで)

レッサー(ただまぁ希望を上げるとすれば、バカで不幸で空気読めなくて、無力の癖に突っ走るような、そんなバカが好みですね)

レッサー(……ある意味、私とお揃いでしょーしね。やはり性格が一致してなければ)

レッサー(……で、そのクソヤローは、散々焦らした後に、美味しい所だけ持っていって)

レッサー(そうですなー、きっとこう言うんでしょうね)

上条「――――――――――悪い、少し遅くなったっ!」

レッサー「そうそう、こんな感じ――」

レッサー「……」

レッサー「――こんな感じっ!?」

上条「……このまま世界が終わるとかっ!全員夢見てれば幸せだとかっ!」

上条「一人だけを犠牲にして、その他大勢が救われる、なんて――」

上条「――そんなふざけた『幻想』は――」

パキイイイン………………ッ!

上条「――――――――俺がぶち殺す!!!」

――青冷めた光の柱の下

フロリス「……おせーぞジャパニーズ。もう少しで本気で逃げる所だったし」

ベイロープ「あなた、本気で逃げようとしてなかった……?」

フロリス「く、口だけだし!」

レッサー「……」

ランシス「レッサー?」

レッサー「……遅いですよ、クソヤロー」

上条「あぁすまん。色々あった」

レッサー「あなたもそうですが――だけではなく、そちらの」

鳴護「……」

レッサー「言いたい事はクソ程もありますが……まぁ今は置いておきましょう」

レッサー「目を瞑って下さいな。一発ドギツいのでチャラにしてあげますから」

上条「おいレッサー!アリサだって――」

レッサー「あなたは黙ってて下さいな。結果だけ見れば”こう”なってる以上、ある程度の落とし前を必要かと」

上条「けど!」

鳴護「いいの当麻君!あたしが悪いんだから!」

鳴護「全部が悪いとは思ってないけど……ここで、この場所で皆が戦ってる間、わたしが居なかったのは事実だから!」

上条「……そうか」

レッサー「いよーしっいい覚悟ですっファッキ×野郎!そこで目ぇ瞑りなさいなっ!」

鳴護「う、うんっ」

レッサー「あ、もうちょい屈んで貰えます?あぁそうそう若干猫背になる感じで、えぇ」

上条「……すいませんレッサーさん、出来るだけ穏便に」

レッサー「んでわっ!覚悟は宜しいかっ!?」

鳴護「はいっ」

レッサー「――では、頂きます」

鳴護「はい――むっ!?」

レッサー「チュッ……ん、ちゅっじゅっちゅぅっ、じゅじゅっ」

鳴護「んーーーーーーーーーっ!?んんんんんんんんんんんんんんんんーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

鳴護「レッ――舌入っ、ちゅっ、じゅっ――んあっ、ぁふっ」

鳴護「当麻く、んっ!助けっ!たすけ――」

上条 パシャッ、ピロリロリーン

鳴護「とうまく――――――ちゅぱっ!?」

レッサー「――――――――――――ぷはぁっ!現役アイドルJCの唇、大変美味しゅう御座いましたっ!」

上条「変態だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

ラシンス「写メ撮ってなかった……?」

上条「それはそれ、これはこれ」

フロリス「説明になってねーゾー?ンー?」

上条「百合が好きで何が悪いかっ!!!」

フロリス「開き直りやがったコイツ!?」

鳴護「レッサーちゃん、舌、舌……ぶちゅーって……」

ベイロープ「相当ダメージ……というか、トラウマを負ったようだけど、大丈夫?」

ラシンス「これだったら、普通に平手打ちされた方が……まだマシ、だよね」

鳴護「もう、あたし、お嫁に行けない……ッ!」

レッサー「まっ、今日は初めてを奪った所で勘弁して差し上げますが!」

レッサー「次に友達ほっぽり出しやがった際には!ウチのムッツリスケベに襲わせますから覚悟して下さいなっ!」

ラシンス「いぇーい……」 グッ

上条「……」 ソワソワ

ベイロープ「おい、ソワソワしないの百合厨疑惑」

鳴護「え、ていうか初めて?」

レッサー・フロリス・ランシス・ベイロープ「「「「えっ?」」」」

ほぼ全員「………………」

上条「な、なんでそこで俺を見んの?」

レッサー「ズバリ――犯人はこの中に居る……ッ!」

上条「――よ、よおおぉぉしっ!魔神セレーネめ!よくも俺の仲間を傷つけやがったな!」

上条「俺が来たからには指一本触れさせないぞ!な、ないぞっ!」

フロリス「力業で誤魔化そうとしてるしー」

レッサー「何でしょうね、こう、パニクった時の私ってあんな感じなんだな、とつくづく思い知らされるって言いましょうかね」

ランシス「……というかレッサーもだけど、勢いで誤魔化せてるとでも?」

ベイロープ「これ、犯人の自供と同義だと思うのだわ……」

鳴護「当麻君当麻君っ!バレてるっ、バレちゃってるよっ!」

上条「お黙んなさいよ外野っ!アリサさんそれフォローになってねぇからな!」

上条「つーかアリサは”わたし”と一つになってから言動がレッサー寄りになってきてるから注意しないと!」

レッサー「その言い方は私の乙女なハートがブロークンマグナ○なんですけど……ま、状況をご説明致しますと、見たまんまでしょうかね」

レッサー「マタイさんは外から”ショゴス”が乱入しないよう結界張り――をしていたんですが、今ので破れましたな」

レッサー「レディリーさんは少し前の魔術から我々を庇って昏倒中。残念ながら死ねなかったかと」

上条「ふーん……あ、もふもふは?」

レッサー「えぇっと、その……」

上条「……あぁいやゴメン。何となく分かったよ」

レッサー「魔神セレーネは大技ぶっ放して硬直中、ただしそろそろ動ける筈――」

セレーネ『――きひっ、きひひひひひひひひひひひっ!』

レッサー「――と、ご覧の通りで!」

上条「……了解!それで、俺は何をすれば――」

――――ヴゥンッ……!!!

レッサー「――と、また空が堕ちて……ッ!」

ベイロープ「複数攻撃判定が出るタイプの術式か!」

上条「空?……何も見えないけど……?」

レッサー「あ、上条さん上条さん、そこでちょっとバンザーイして貰えません?バンザーイって」

上条「こ、こう?」 スッ

レッサー「あー、いいですねー、イイ感じですねー。そのポーズから左手を曲げて、右手の肘を支えるように……そうですそうです」

上条「……中二的なポーズになってないか、これ?」

レッサー「はいっ、ではそのまま頑張って下さいなっ!てーか失敗すれば人類滅びますんでっヨロシクッ!」

上条「おうっ任せ、ろ?」

ガァッ――――――――――ズズズズズズズズズズズズズズズズズズッ……ッ!!!

上条「あだだだだだだだだだっ?!何コレ!?これナニーーーーーーーーーっ!?」

上条「重い重い重いっ超重い!腕が折れ、るっ!」

レッサー「そういやむかーし聞いたんですがね。月と地震い――地震には密接な関係があるらしくて」

レッサー「地平線上へ消える月は、毎日毎日地上へ落下しているという世界観が在り、地震とはその結果なんだそーで」

フロリス「その心は?」

レッサー「さっきのがP波で、今来てんのがS波。当然後者の方が強いって事ですかねー」

レッサー「別の説を上げるとすれば、最初の一撃は二撃目を放った”余波”であって、セレーネ的には攻撃でもなんでもなかったんじゃねーかと」

フロリス「あ、なーる。だからさっきのは打ち消せて、今度のは潰されそうになってんジャン」

ベイロープ「つまりトーマは、その第一撃目をドヤ顔で」

ランシス「『――俺がぶち殺す!!!』」 ドヤァッ

レッサー・フロリス・ベイロープ プッ

上条「この鬼っ!悪魔っ!高千穂っ!人が命賭けて支えてるのにネタしなくていいじゃないっ!」

鳴護「ていうか、そろそろシャレにならないんじゃ……?」

レッサー「そうですね。そろそろ結界張るのに遣った魔力も戻って来ましたし、我ら『新たなる光』の対神殲滅集団術式をご覧に入れましょう」

レッサー「あ、これナイショなんで?特にイギリス清教には黙ってて下さいな」

レッサー「私達がコレ”使える”時点で、王権やら正当性やら小難しい事になりますんで」

レッサー「では――ベイロープ!」

ベイロープ「行けるわ」

レッサー「フロリス!」

フロリス「オッケー」

レッサー「ランシス!」

ランシス「……ん」

レッサー「今こそジェットストリームアタッ○の出番ですよっ!」

ベイロープ・フロリス・ランシス「「「こんな時までボケんなっ!!!」」」

上条「ぜぇ、ぜぇ……そ、そして、一人、……多い……!」

鳴護「早くしてあげて!?当麻君がツッコミに手を回せる余裕がなくなってきてるからっ!」

レッサー「……ははっ、何言ってんですかねー、アリサさんは」

鳴護「はい?」

レッサー「余裕に決まってるでしょう?そんな三下相手に私達が負ける筈はありませんよ――何故ならば!」

レッサー「『全員』揃っているからです。このクソ楽しかった旅の中、散々苦労してきたメンバーがここに居る」

レッサー「なら負ける訳はないでしょう。フルメンバーの私達が負ける事は有り得ませんよ、はい」

鳴護「……ん、そうだね」

レッサー「それではでわでわ、魔神セレーネ――」

レッサー「――あなたを、滅ぼします……ッ!」

上条(レッサー、ベイロープ、フロリス、ランシスはそれぞれ月から伸びている光の柱を囲み)

上条(手に持っているのは霊装だ。四人が装備していた物を取り外し、手にしている)

上条(ベイロープ『角』を掲げて、こう唱えた)

ベイロープ「『”Heimdall who has the corner cup of wisdom.. look!”』」
(知の角杯を持つヘイムダルよ、見よ!)

ベイロープ「『”The giant of the flame that extends in Bifrost of the fire and the wolf that swallows the sky!”』」
(火のビフレストを渡る炎の巨人を、天空を喰らう狼を!)

ベイロープ「『”Troops of the melancholic dead from Bifrost of the shadow!”』」
(影のビフレストからは憂鬱な死者の軍勢どもを!)

ベイロープ「『”Ah play Gjallarhorn. The sound turns into thunder and echos through Midgard!”』」
(さぁ吹き鳴らせギャッラルホルン!その音は雷鳴と化して蛇の中庭に響きわたらん!)

ベイロープ「『”The previous notice that reports fighting. Summon all soldiers!”』」
(戦いを告げる先触れを!全ての戦士を喚び起こすのだ!)

ベイロープ「『”――Ragnarok, Now!”』」
(――神々の黄昏が来た!)

上条(次にフロリスが『翼』を掲げ、こう宣言した)

フロリス「『”Know Gullinkambi to doze the morning glow!”』」
(朝焼けに微睡むグリンカムビよ、知れ!)

フロリス「『”Roar of the giant from whom we invade Asgard, Lick your lips by the venomous snake that lies in the courtyard! ”』」
(我らがアールガルズへ攻め込む巨人の咆哮を、中庭に横たわる毒蛇の舌なめずりを!)

フロリス「『”The horn that the main plays solemnly tells the age of the struggle!”』」
(主が吹き鳴らす角笛は粛々と闘争の時代を告げん!)

フロリス「『”Now cockscomb of gold must flap!, Remind me of propriety in the battlefield the brave man of a great Odin!”』」
(さぁ羽ばたけ金の鶏冠!偉大なるオーディンの勇者へ戦さ場での礼節を思い出させよ!)

フロリス「『”The fight started! Raise soldiers who report the end and war cries!”』」
(戦いは始まった!終焉を告げる戦士達よ、鬨の声を上げろ!)

フロリス「『”――Ragnarok, Now!”』」
(――神々の黄昏が来た!)

上条(続いてランシスが『爪』を掲げ、こう呟いた)

ランシス「『”Loki who is the god of the clown.. laugh!”』」
(道化の神であるロキよ、嗤え!)

ランシス「『”The shout of the giant who shakes the earth crowds it about the dead who change the revolt to foolish Cyclops!”』」
(大地を揺るがす巨人の咆吼を、愚かなキュクロプスに反旗を翻す亡者の群れを!)

ランシス「『”The dead dye the sky to the previous notice of the flame in red, and do not raise its fist even if it dispels one's melancholy!”』」
(天空は炎の先触れに赤く染まり、死者は憂鬱を晴らそうと拳を上げん!)

ランシス「『”Give the mistletoe Now blind to the hero! To dispel thine disgrace, all!”』」
(さぁ盲目の英雄へ宿り木を持たせよ!全ては汝の屈辱を晴らすために!)

ランシス「『”The dead will come! The dead came! All are mangling!”』」
(死人が来るぞ!死人が来たぞ!全てはぶち壊しだ!)

ランシス「『”――Ragnarok, Now!”』」
(――神々の黄昏が来た!)

上条(最後にレッサーが、見慣れた『尻尾』を掲げ――)

レッサー「『"Goddess Guna to run in the sky must start. "』」
(天空を駆け上がる女神グナーよ、疾走れ!)

レッサー「『"It is neighs of wolf's fang, giant's fist, and children of the flame that approach the chaser. "』」
(追手に迫るは狼の牙、巨人の拳、炎の子らの嘶き!)

レッサー「『"If it colors, it approaches the scarlet, and the coming madman doesn't destroy everything, the earth doesn't raise the groan. "』」
(大地は緋色に色づき、迫り来る狂人が全てを滅ぼさんと唸りを上げん!)

レッサー「『Soldiers of it is possible to stand up Ordin. The honor that scatters in the battlefield is yours. 』」
(さぁ立て父の戦士達よ!戦場に散る名誉はお前達のものだ!)

レッサー「『"Kill the enemy, kill the companion, and kill and carry out even the end. "』」
(敵を殺し!仲間を殺し!終末すら殺しつくせ!)

レッサー「『”――Ragnarok, Now!”)』」
(――神々の黄昏が来た!)

上条(それぞれ四人が掲げた――差し出した霊装は掌を離れて宙へ浮く)

上条(ボウッと赤い光が霊装を包み、次第に光の形が変化していく――あれは?)

レッサー「『”The story ends here. The age of the myth rang the death knell! ”』」
(物語はここで終る。神話の時代は終わりを告げた!)

レッサー「『”Odin disappeared as it was drunk by the wolf, and a primitive giant disclosed his entrails. ”』」
(オーディンは狼に呑まれて姿を消し、原始の巨人は臓腑をさらけ出した!)

レッサー「『”Therefore ..so.., ..doing.. ..the oak... ”』」
(たがしかし、だとしても、それ故に――)

レッサー「『”The world doesn't end. Do not end. ”』」
(――世界は終らない!終わりなどしない!)

レッサー「『”It is untied from the chain of an old pantheon, and the world is divided by the fine dust. ”』」
(旧き神々の鎖から解き放たれ、世界は千々に分かたれる)

レッサー「『”Even if the pantheon age (Ragnarok) brings the end, it is a previous notice that signals the coming in the next age. ”』」
(神々の時代が終焉をもたらしたとしても、それは次の時代の到来を告げる先触れである)

レッサー「『”Now it is a crow of can the dance as for the sea of the imaginary number. ”』」
(さぁ、虚数の海を舞えカラスよ!)

上条(……カラス、だ)

上条(『翼』、『尻尾』、そして『爪』の霊装がカラスと重なり、標本骨格のような姿を形作る)

上条(けど……『角』の収まるべき所はない。これはきっと――不完全なのだろう)

上条(……そう、俺が不安に感じている間に、カラスがレッサー達へ問いかける)

赤いカラス「『”It falls into the person dripping of grief that drops in the world of the calm and the world of the struggle and Holy Chalice is filled. ”』」
(凪の世界に落ちる嘆きのひとしずく、闘争の世へ落ちて聖杯を満たせ)

赤いカラス「『”Fall into a large wave of rejoicing buoying it up in the stormy world and the world of harmony and dye Longinus. ”』」
(嵐の世界に浮き立つ歓喜の大波、和合の世へ落ちて聖槍を染めよ)

赤いカラス「『”It must fall into the apple unevenly that plays in the world of the tohubohu and the world of making desperate efforts and X must hang. ”』」
(混沌の世界に戯れる不揃いの林檎、狂奔の世へ落ちて聖剣を掲げろ)

赤いカラス「『”My name makes to the offering and is god of death's bride . If it makes to good and evil is not done, it wants my body. ”』」
(我が名は贄にして死神の花嫁。我が体は善にして悪を成さんと欲す)

赤いカラス「『”――Report hero's name. ”』」
(――英雄の名を告げよ)

レッサー「『”The magician expresses it so in the story when old. ”』」
(古の物語で魔術師はこう謳う)

ベイロープ「『”The thing of dynamic rogue and 2 swords that there is a knight who toward the battlefield on the hand. ”』」
(豪快無頼、双剣を手に戦さ場へと向かった騎士が居た事を)

フロリス「『”Neither an incomplete genius nor the promised success are obtained and thing where knights who ..life.. drop exist. ”』」
(大器未完、約束された成功を手にせず命落とした騎士が居た事を)

ランシス「『”The thing of the rebellion usurpation and the lord where the knight who usurps everything exists to the hand. ”』」
(反逆簒奪、主君を手にかけ全てを簒奪した騎士が居た事を)

レッサー「『”Hero matchless and thing it keeps the oldest and with the last kings”』」
(英雄無二、最古にして最後の王が居る事を)

レッサー「『”Now we keep ..can legend.. living in the legend ....our ..magician.. body.. death... ”』」
(さぁ語り継げよ魔術師!我らの肉体は死すれども、伝承の中に我らは生き続ける!)

ベイロープ「『”In catnap that infant hears of”』」
(幼子が耳にするうたた寝の中に)

フロリス「『”In tales of adventure that shake boy or chest”』」
(少年か胸を震わせた冒険物語の中に)

ランシス「『”In hero paean that poet is put on wind and sung”』」
(詩人が風に乗せて謳う英雄譚の中に)

ベイロープ「『”In lullaby that mother puts child to bed”』」
(母が子を寝かしつける子守歌の中に)

フロリス「『”In battlefield where father fights with enemy”』」
(父が敵と戦う戦場の中に)

ランシス「『”Inside of inheritance that elderly person left"”』」
(老翁が残した遺産の中に)

上条(光が大きく――そして、その輪郭が徐々に変わっていく。カラスからもっと別なモノへと)

上条(『翼』は背中へ、『尻尾』は臀部へ、『爪』は手足の先へ)

上条(……今まで余剰パーツであった『角』は――)

上条(――当然、その雄々しい頭部へと導かれる……)

上条(……あぁ、俺はこれを知っている!『影』だけだが、とっくに目にしていた!)

上条(あの追い詰められたサッカー場で!天空から古の竜モドキを一蹴した――)

上条(――『ペンドラゴンの”赤い竜”』を……ッ!!!)

深紅の竜「『”The cross rots and rots away. ”』」
(十字架は腐って朽ち果てる)

深紅の竜「『”The dead threaten the person who forgets even dying and is alive. ”』」
(死人は死すら忘れて生者を脅かす)

深紅の竜「『”However, no wither the thing of doubt ..no withering the thing of forgetting.. never. ”』」
(されど忘れる事無かれ!ゆめゆめ疑う事無かれ!)

深紅の竜「『”It's Avalon and it is a king sleep barrel in Kudo. ”』」
(アヴァロンにて久遠に眠りたる王よ!)

深紅の竜「『”It is not suitable to kill thine even if dying. Even the death doesn't face the end in a grotesque, eternal outskirts. ”』」
(死を以てしても汝を殺す事は能わず!怪異なる永劫の果てには死すら終焉を迎えん!)

深紅の竜「『”This calls and sings the name out in a loud voice only the story and now of us. ”』」
(これは我らの物語、今こそ名を呼べ歌い上げろ!)

深紅の竜「『”The gate of Avalon is opened. Our king returns. ”』」
(アヴァロンの門は開かれる!我らの王が帰還する!)

深紅の竜「『”Ah, and call our king giving and the name by being and hear the begged clamor. ”』」
(さぁ来ませり我らの主、その名を呼び請う民草の声を聞け!)

レッサー「『”It asks thine. ”』」
(汝らに問う)

レッサー「『”I'm the last monarch who does chiefly by Britain and dozes in Avalon. ”』」
(我はブリテンの主にしてアヴァロンでたゆたう最後の君主)

レッサー「『”Britain is liberated, it makes to the hero who takes Gaul by storm, and I of a reverse-thief. ”』」
(ブリテンを解放し、ガリアを攻め落とす英雄にして逆賊の僕)

レッサー「『”What is my name called?”』」
(我が名を何と呼ぶ?)

ベイロープ「『”Oh the lord I serve, and the Grail is dedicated dear. ”』」
(おぉ主よ!俺が仕え、聖杯を捧げた愛しき方よ!)

ベイロープ「『”Suitably to dedicating the sword that makes to the road middle and has become interrupted. your name. ”』」
(道半ばにして途切れてしまった剣を捧げるに相応しい。あなたの名は――)

ベイロープ「『”Arthur!”』」
(『アーサー!』)

フロリス「『”Ah lord family also who is my father's best friend”』」
(あぁ主よ!僕の父の親友でもある家族よ!)

フロリス「『”Suitably to dedicating the revival sword ..will deprivation of the command of fellows of the rebellion.. even several-time. your name. ”』」
(反逆の輩に命奪われようとも、幾度でも蘇り剣を捧げるに相応しい。あなた様の名は――)

フロリス「『”Arthur!”』」
(『アーサー!』)

ランシス「『”…… Lord It makes to my friend and it is enemy of fate”』」
(……主よ!私の友にして宿命の敵よ!)

ランシス「『”Suitably to lowering my sword to the temporary ..killing, times how many getting tired, and worth... your name. ”』」
(何度殺して飽き足らず、仮初めに私の剣を下げるに相応しい。お前の名は――)

ランシス「『”Arthur!”』」
(『アーサー!』)

レッサー「『”――It's exactly so ! exactly so !. ”』」
(――然り!よって然り!)

レッサー「『”My name risks to Arthur Pendragon's child and is a wild boar in Cornwall. ”』」
(我が名はアーサー!ペンドラゴンの子にとしてコーンウォールの猪!)

レッサー「『”It's 'Arthur829 (king who crowns it to eternal The End of the Road again”』」
(『Arthur829(永劫の旅路の果てに再び戴冠する王)』なり!)

上条(深紅の竜が更に姿を変え……四振りの神々しい剣となり、光の柱の前へ浮かぶ)

上条(……レッサーの前に現れたのは、柄を上にして持てば黄金の十字架のような――)

上条(――『聖剣』、だ)

レッサー「『”The old one boasts of an older thing, and the rotting one remains though it rots. ”』」
(古きものはより古きを誇り、朽ちるものは朽ちるがままに――)

レッサー「『”However, the flame of a candlestick old ..the piling of sleep at 1000 nights.. doesn't disappear. ”』」
(――されど千夜に褥を重ねようとも、旧き燭台の火は消えず――)

レッサー「『”The wail of repaying dies I pray in 'Enemy of Britain' of the public peace. ”』」
(――『ブリテンの敵』に報いの慟哭を、願わくば安寧の死を――)

レッサー「『”Soldier ..under the name of 'New round table'.. ..the collection food... ”』」
(――『新たなる円卓』の名の下に集えよ、戦士)

レッサー「『”It's a gathering knight to my round table. Introduce itself. ”』」
(我が円卓へ集いし騎士よ!名乗りを上げよ!)

ベイロープ「『”'Balin189 (The knight of two swords must retrieve the disgrace)' is here. ”』」
(Balin189(『双剣の騎士よ汚名を濯げ!)』が、ここに)

フロリス「『”Florence243 (lady's protection knight)' is here. ”』」
(『Florence243(淑女の守護騎士)』が、ここに)

ランシス「『”'Lancelot225 (The knight of murdering shows by the action)' is here. ”』」
(『Lancelot225(弑逆の騎士は行動で示す)』 が、ここに)

レッサー「『”It doesn't suffice. My round table has not been filled yet. ”』」
(足りず!我が円卓は未だ満たさず!)

レッサー「『”The Grail lacked 2,000, and Longinus disappeared in the dark of Ti 'R na n-O' g. ”』」
(聖杯は千々に欠け、聖槍はティル・ナ・ノーグの闇へ消えた!)

レッサー「『”Do not reach to beat off his enemy even if my reckless courage is done. ”』」
(我が蛮勇を以てしても、彼の敵を打ち払うには届かず!)

レッサー「『”Coming in haste is a spirit of the war dead. It is soldier who doesn't have the name that dies and returned to the soil of the homeland in which it disappears either. ”』」
(ならばはせ参じよ英霊どもよ!死して故国の土へ還った消えた名も無き兵士共よ!)

レッサー「『”Become the foundation of the king hero who bundles thine spirit of the war deads. ”』」
(汝ら英霊を束ねる英雄王の礎となれ!)

レッサー「『”It returns from the nether world and the enemy of Britain is not destroyed. ”』」
(冥界より還り来たりてブリテンの敵を撃滅せん!)

ベイロープ「『”My friend Sir Galahad must come. Thine sword is here. ”』」
(来たれ我が友ガラハッド。汝の剣を、ここに)

フロリス「『”My father Gawain must come. Thine sword is here. ”』」
(来たれ我が父ガウェイン。汝の剣を、ここに)

ランシス「『”My friend Tristan must come. Thine sword is here. ”』」
(来たれ我が友トリスタン。汝の剣を、ここに)

レッサー「『”Come to my Sir brothers Guillaume. Thine sword is here. ”』」
(来たれ我が同胞ギヨーム公。汝の剣を、ここに)

ベイロープ「『”My independent king brothers Wallace must come. Thine sword is here. ”』」
(来たれ我が同胞ウォレス独立王。汝の剣を、ここに)

フロリス「『”My brothers Gruffydd great emperor must come. Thine sword is here. ”』」
(来たれ我が同胞グリフィズ大帝。汝の剣を、ここに)

ランシス「『”My king friend James must come. Thine sword is here. ”』」
(来たれ我が友ジェームズ老僭王。汝の剣を、ここに)

上条(レッサー達が英雄の名前を呼ぶたび、光の柱の周囲へ”剣”が。また一振り、そしてまた一振りと出現し――)

上条(――十、百、千……天へ昇る光柱へ切っ先を向け、包囲の輪を強固にしていく)

レッサー「『”Hero's king must come. ”』」
(来たれ英雄王)

ベイロープ「『”Fairy's king must come. ”』」
(来たれ妖精王)

フロリス「『”Spirit's king must come. ”』」
(来たれ聖霊王)

ランシス「『”Spirits of the dead's king must come. ”』」
(来たれ精霊王)

レッサー「『”The king of the ghost must come. ”』」
(来たれ幽霊王)

上条(万、十万、そして夥しい数の『剣』を前に。『最後の王』が高らかに宣言する……!)

レッサー「『”We must hang to the evil murdered in our country out the sword. ”』」
(我が国に弑逆する悪へ我らが剣を掲げよ!)

レッサー「『”Hero's soul Think death by fighting to be boast”』」
(英雄共の魂よ!戦って死ねる事を誇りと思え!)

レッサー「『”Destroy the sword of Sabaoth and destroy wickedness――”』」
(万軍の剣を以て邪悪を滅ぼせ――)



レッサー「『”――――"Million Arthur"――――!!!”』」
(――――『万軍英雄(ミリオンアーサー)』――――ッ!!!)

――青冷めた光の柱の下

ヒュゥッ――――ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ……ッ!!!

上条(百万の剣が!過去に在った英雄達の剣が!天へ伸びる青冷めた光を蹂躙していく……ッ!)

上条(ある剣は正面から薙ぎ払い!またある剣は音も立てずに刃を差し込み!またとある剣は狂ったように乱舞する!)

上条(光の柱は一つ、また一つと欠けていく――そう、月が満ち欠けするように、ぽっかりと空虚な穴を晒す)

上条(一方的な暴虐が限界を超えれば、起きるべき事が起きるのは必然か)

――ガッシャァァァーーーーーーーーーーーンッ――!

上条(……半ばまで断たれた光の柱は、断片となって地表へと降り注ぐ……)

上条「その様子はまるで流星雨……って、大丈夫なのか?」

レッサー「……問題、ない、でしょう……ありゃ、ただの魔力の残滓ですから」

上条「レッサー!……レッサーさん?お前っ!?」

レッサー「なんですか、人の顔見て?」

上条「髪の色が……金色に……?」

レッサー「あぁこれは『オジリン・アーサー』のイメージがブロンドらしく、”覗き過ぎる”とこうなるんですよ」

レッサー「なーに、放っておいても二、三日で元に戻りますんで」

上条「そうか、だったら――」

上条(……待てよ?その説明が正しいんなら、レッサーがいつも染めてる前髪は……)

上条「……」

レッサー「ほぉら、ボケっとしてないでセレーネぶん殴りに行って下さいな!きちんと天の龍脈ぶった斬ったんで、ノルマは果しましたよっ!」

レッサー「……私達はもう少ししないと、流石に、ですから」

上条「……了解。後は俺――いや」

上条「俺”達”に任せてくれ」

レッサー「えぇ、お任せします――って、俺”達”?」

上条「んー……まぁ、見ててくれ。アリサ!」

鳴護「うんっ」

レッサー「うえ!?ちょ、ちょっと待って下さい!アリサさんも行かれるんですかっ!?」

上条「こっち帰ってくる途中で話し合ったら、そうなったんだよ」

レッサー「保険金でも掛けましたか?……ハッ!?もしくは認知したくなくて抹殺するおつもりでっ!?」

上条「ぶん殴るぞテメェ」

レッサー「や、どう考えても無理ゲー過ぎでしょう。確かにアリサさんの『奇跡』は魔術史へ名を残すレベルですけど」

レッサー「直接戦闘、しかも前線でガチる系ではありませんでしょうに」

鳴護「多分、だけど……わたしが行かなきゃいけないような気がする、んだ」

レッサー「どうしてまた?」

鳴護「……何となく?」

レッサー「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……どうしたもんでしょーなー、これ」

ベイロープ「――レッサー」 ブンッ

レッサー「はいな――って、これは私の『尻尾』」 パシッ

ランシス「わたしの……『罪人の貨車』に、残ってた魔力を詰めてある……」

フロリス「なんかあったら、引っ掴んで、ニゲロ」

レッサー「……流石のレッサーちゃんもお疲れなんですが……まぁ、いいでしょう!キス一回で引き受けますコトよっ!」

上条「支払いはアリサ持ちで」

レッサー「賜りましたっ!」

鳴護「また当麻君が裏切ったよっ!?」

上条「アリサの安全のためだからな!決して疚しい気持ちがある訳じゃない!」

レッサー「また素敵な感じに全力で嘘吐いてやがりますなっ!」

――月蝕の夜

セレーネ『……』

上条(大規模術式を遣った反動か、それとも無理矢理龍脈を切られた反動か。目に見えて憔悴している)

上条(その場に居るだけで押し潰されそうになるプレッシャーは大分弱まり――と、言っても『神の右席』レベルよりも強い――どこか陰を落としている)

上条(……あぁそういや、『堕ちてくる空』はいつの間にか消えてたな。あれが残ってたらヤバかったが)

上条(と、言う事はあの術式は星辰の龍脈から力を得ていた――つまり、今は完全に断線している、ってか)

上条(『魔神』としちゃ、まだ地の龍脈を自由に遣える分、脅威は脅威なんだろうが……)

上条(……まぁ、いい。俺はアリサが失敗したら飛び出そう)

鳴護「――っ!」

レッサー「てーかアリサさんに先行させて良かったんですか?あんまり精神衛生上宜しくないっちゅーかですかね」

上条「……あぁ。ステージで助けられなかった時の話か。気持ちは分かるが……アレだ」

レッサー「どれですか」

上条「見せようぜ、取り敢えず」

セレーネ『……どうして?どうしてみんなはわたしを受け入れてくれないの……?』

セレーネ『みんな、大切なわたしの子なのに……!大事な大事な、わたしのぼうや達……!』

セレーネ『辛いでしょう、この世界は?厳しいでしょう、この世界は』

セレーネ『だから、そう、だから』

セレーネ『わたしの揺り籠でお眠りなさい……そうね、それが一番――』

鳴護「――」

レッサー「ちょっ!?近づき過ぎじゃないですかねっ!」

上条「いいんだと思う、あれで……や、違うか」

上条「あれじゃないと駄目なんだよ、きっと」

セレーネ『あなたは……アリサ!わたしの可愛い――』

鳴護「――――――――――”ありがとう”」

レッサー「………………はいぃ?」

セレーネ『アリサ……どうしたの、アリサ?』

鳴護「わたしが――”あたし”がこっちの世界、現実世界へまだ戻って来られたのって、あなたが助けてくれたんだよね……っ?」

鳴護「あたしが集めた『奇跡』じゃ、到底足りなかった。だから、一度は諦めようとした――のに!」

鳴護「あの時!背中を押してくれたのはっ!――あなた、なんだよねっ?」

レッサー「……何のお話で?」

上条「アリサは前にも一回消えてるんだよ。忘れたのか?」

上条「学園都市へ落下する大質量の塊、『エンデュミオン』を逸らすために一度」

上条「……あの時、『助かりたい!』って願った人達の思い――”想い”を集めて『奇跡』を起こした」

上条「……でもアリサは、あの体に込められた力を全部遣っちまったらしくてさ。一度は消えちまったんだ」

レッサー「や、でも!」

上条「……そうだ。アリサは戻って来たんだよ、『エンデュミオンの奇跡』から、少し時期はズレるけど」

上条「でも、これはおかしいって本人は思ってたんだと」

レッサー「おかしい、ですか?……いやいやっ、アリサさんがご自分の『奇跡』を使えば不可能ではないでしょう?」

上条「あぁ。アリサの『奇跡』は”不特定多数の意識を汲み取り現実を改竄する”力だ」

上条「少数の祈りでも理論上は出来るが……そうなるとごく細やかなものに限られる」

上条「……確かに。アリサのファンは最低でも万単位。『88の奇跡』を考えれば、全員で祈れば可能かもしれない』

レッサー「でしたら、それでいいんでは?」

上条「あの時、『アリサが消えたって知ってる人間は数人しか居なかった』んだよ。だから数万人が祈りを捧げる事は、ない」

上条「補足する――ん、だったら、アリサが自分のために『奇跡』を起こすと思うか?」

レッサー「……それ、上条さんが『右手』で世界征服始めるぐらいの確率ですよね」

上条「だけどアリサは帰って来た。『奇跡なんかじゃない』って」

上条「そこら辺の理屈は……アリサ自身も分かってなかったらしくて、そこら辺はなぁなぁで済ませてたんだが――」

レッサー「ここへ来て『濁音協会』との抗争が始まる、ですか」

上条「そう。連中曰く、アリサは魔神の欠片、なんだと」

レッサー「それは……」

上条「あぁ、そうだ。『龍脈』の力によって生み出された存在だ。最初っからそうだと言えば、その通りな気もするが――」

上条「でも、それはさ?逆に考えられないかな?」

レッサー「逆?何をリバースするんですか?」

上条「『セレーネはアリサを助けるために、魔神としての生を与えた』ってさ?」

セレーネ『――そうね、アリサ。わたしの可愛いぼうや』

セレーネ『あなたはかあさんの娘よ。生と死が交差する”塔”で、あなたを見つけて、産んだのはわたし……』

鳴護「あなたが、わたしの……」 ギュッ

上条(今まで一切噛み合わなかった会話が、初めて対話らしきものが成立する!……や、それも違うか?

上条(今にして思えば、セレーネはアリサを特に気にかけていた気がするし、アリサが消える直前も、二人の会話だけは成り立っていた……?)

セレーネ『あらあらまぁまぁ?アリサ、どうしたのアリサ?』

セレーネ『当麻に虐められたの?それとも他の妹にからかわれたのかしら?』

セレーネ『悪い子はかあさんが叱ってあげる。だから、泣くのを止めて頂戴、ね?』

鳴護「……」

セレーネ『それとも――アリサは”ここ”が合わないのかしら?』

セレーネ『あなたが生きるのに厳しいのだったら、またわたしの中へ戻って、おやすみなさい?ね?』

レッサー「……あのクソババアっ!まだアリサさんを――」

上条「待て!」

鳴護「……あの、ね。あたし、あなたに伝えたい事があるんだ」

セレーネ『なぁに、アリサ?言ってご覧なさい?』

鳴護「こっちの世界はね、とても、辛いんだよ。生きるのは辛いし、楽しくない事だって……幾らでもあるよ」

鳴護「思い通りになる事は少ないし……本当に、うん」

セレーネ『そう、だったら――』

鳴護「――でも!辛いけどっ!厳しいけどっ!あたしは、もうっ、大丈夫だからっ!」

鳴護「見て!お友達も出来たんだよっ!当麻君にレッサーちゃん!ベイロープさんにフロリスさんにランシスちゃんもっ!」

上条・レッサー「「……」」

ベイロープ・フロリス・ランシス「「「……」」」

鳴護「あたし、はっ!もう、大丈夫だからっ!」

鳴護「あたし”達”はっもう大丈夫だからっ!」

鳴護「辛い事があっても!厳しい事があっても!」

鳴護「もう一人で――歩いて、行ける……からっ!」

鳴護「だから、あなたは――っ!」

セレーネ『……泣かないで、アリサ。わたしの可愛い娘、アリサ』

鳴護「……っ!」

セレーネ『わたしは”こんな”だけれど、あなたは正真正銘”私”の子よ?それは忘れないで?』

鳴護「……うんっ」

セレーネ『体に気をつけてね?無茶をしちゃ駄目よ?あ、あと、お姉ちゃんも気に掛けてあげて?あの子も弱い子だから』

鳴護「うん、うんっ!」

セレーネ『……なら、かあさんは帰るわ。元の場所へ』

セレーネ『アリサは――みんなは、立派になったものね。もう、子供だって言ってられないのかしら?』

セレーネ『当麻も――お兄ちゃんなんだから、アリサのワガママを聞いてあげなきゃいけませんよ?』

上条「……分かってるさ」

セレーネ『それじゃまた――そうよ、あぁアリサ、あなたは歌が上手いのよね?』

鳴護「え、う、うん」

セレーネ『だったら最期にお歌を聴かせて頂戴――』

セレーネ『――この世界を”動かす”歌を』

鳴護「わたしに……出来る、かな?」

セレーネ『出来ますとも!だってあなたはわたしの子なんだから』

鳴護「……ん、やってみる」

セレーネ『慌てないでいいのよ?ゆっくりと、停まった糸車を回すように』

セレーネ『全ては、また、逆巻く――』

鳴護「『十六夜の月の下、月影が出来るのは二人』」

鳴護「『降り注ぐ蒼覚めた色は、煌々と』」

鳴護「『宵に伏す顔はそれでも甘さが見え』」

鳴護「『重ねた手に、冷えた手と手を繋ぐのはぬくもり』」

鳴護「『ずっと触れていたい、それは願いで』」

鳴護「『ずっと見つめていたい、それは望み』」

鳴護「『輝けるのは、続いていく君?』」

鳴護「『それとも私?』」

上条(大地に深く根を張った世界樹が、建物を覆った茨の蔦が、逆再生のように折り畳まれ、枯れていく……)

上条(静寂に包まれた世界から、徐々にざわめきが響き始める……)

鳴護「『絡みつく、月と太陽の輪廻』」

鳴護「『何度生まれ変わっても君と出逢うよ』」

鳴護「『だから君も見つけて――『あたし』の事を』」

鳴護「『ずっと触れていたい、それは願いで』」

鳴護「『ずっと見つめていたい、それは望み』」

鳴護「『絡みつく、月と太陽の輪廻』」

鳴護「『幾度繰り返しても君に恋する』」

鳴護「『だから君も探して――『わたし』の事を』」

上条(月蝕のまま閉じた円環は再び開き、漆黒一辺倒だった”月”は――)

上条(――微かに端の方から光を放ち、この優しい悪夢が終わりだと告げている……)

セレーネ『……じゃ、さようならアリサ――わたしの可愛い子』

鳴護「……っ!」

上条「アリサっ!」

鳴護「うん……ありがとう、あたしを産んでくれてっ!本当にありがとうっ!」

鳴護「――――――”おかあさん”……ッ!!!」

……パキィィィィィィィイインッ……!!!

上条(停まった世界が、凍り付いた世界が、今)

上条(生命の歌と共に動き始める――!)

――2014年10月8日18時10分 『Shooting MOON』ツアー・学園都市凱旋ライブステージ

佐天『改めましてサプライズ!ついに来やがった本日の主役ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!』

佐天『”夜の女王”さんの登場でぇーーーすっ!はい拍手ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!』

上条「…………あ、あれ…………?」

佐天『――て、あんれー?どっか見たよーな、つーか具体的にはあたしの知り合いっぽい人が居ますねぇ?』

上条「……オイ、ちょっと待て、これまさか――」

佐天『突然舞台に現れた集団の正体とは一体っ!?』

佐天『っていうかこれ打ち合わせにないんですけど、大丈夫ですかー?アンチスキル呼んだ方がいいのかなー?』

上条「――丸投げしやがったよあの魔神!元に戻してほしいとは思ったが、現状復帰させるにも程があんだろ!?」

佐天『アリサさん号泣してますし……感動のご対面なんでしょーかねー、もしもーし?』

上条(よし、考えろ俺!きっと打開出来る言い訳が浮かぶさ!信じろ、信じるんだ!)

上条(現状、ステージの上に居る奴らを完璧に説明する方法は――) チラッ

鳴護(※号泣)

ベイロープ・フロリス・ランシス(※疲労困憊×3)

レディリー(※昏倒)

上条「――よし!諦めようぜ!」

レッサー「待ちましょう、取り敢えず待ちませんか上条さん?」

レッサー「何を諦めたのかは存じませんが、今レッサーちゃんをスルーしませんでしたか?今今今っ!」

上条「お前に収拾が付けられるとでも?」

レッサー「その今にも唾棄しそうな蔑んだ顔も嫌いじゃないですがっ!ここは一つワタクシに任せてみてはどうでしょうかっ!」

上条「自信、あんの?」

レッサー「任せてつかーさい!こう見えて私は三年連続校内ランキング、『顔はいいが関わり合いにはなりたくない女ナンバーワン!』に耀いていますから!」

上条「今の危機的状況とそのランキング関係なくね?……あ、でもお前の学校が割とまともでホッとした」

レッサー「……上条さん、あぁカミジョーサン!」

上条「なんで外人っぽく言った?」

レッサー「私達が長い長い旅を通じて、様々なものを学びましたよね?それを思い出してくださいませんか?」

レッサー「良い事も悪い事も、我々は共に生活して知ったではありませんかっ!」

上条「そう、だけどさ」

レッサー「例えばアリサさんが、体洗う時は肌弱いんでスポンジ使ってるとかをですね」

上条「そ、それは知らなくていい情報だな?」

レッサー「人は万の言葉よりも一つの行動が信頼を生む筈でしょう!?違いますかっ!」

上条「あー……まぁ、そこまで自信があるんだったら、任せるけど――あ、佐天さん、ごめん。マイク貰える?」

佐天『あ、はい。どーぞ……あれ?この女の子、あたしと同じ芸風を感じるぞ……?』

上条「気のせいだ!?スタン○能力者は引かれあうとか言ってるけど、本当だったらDI○が来日してる筈だし!――と、ほら、レッサー!頼む!」

レッサー「期待を裏切りませんから!――『あー、あー、マイクテストーマイクテストー』」

レッサー「『フランス野郎は国連の援助物資で女子供を買うクソヤロー、クソヤロー』」

レッサー「『フランス女が売女しか居ないからって、余所の国まで同じだと思ってんじゃねーぞテストテストー』」

上条「止めてあげて?速攻で国際問題引き起こしてアリサさんの名前に泥を塗らないであげて!」

レッサー「『では――』」

上条「……」

観客『……』

レッサー「『――――――』」

上条「……うん?どーした――」

レッサー「『ぜっ、全員動くなァァあああああああああああああああああああッ!!』」

上条「お前それ一番やっちゃいけないヤツぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」

ラシンス「(……や、だから。レッサーが言いたいのは)」

フロリス「(『芸人としてのお約束を裏切らない』って意味ジャンか)」

ベイロープ「(はいはい、無駄話はそこまで。アリサとレディリー回収して引っ込むわよ)」

鳴護「(あのー、あたしもですか?)」

ベイロープ「(顔、泣き腫らしたアイドルなんて居ないでしょ?あと衣装も着替えないとね)」

鳴護「(あ、はい)」

フロリス「(てゆーかさ、アレ計算?天然?)」

ランシス「(……レッサー、意外とヘタレだから、多分……素)」

鳴護「(そう言えば旅の途中も、プラトニックが多かったような?)」

ベイロープ「(……言わないであげて――と、そうそう、アリサ)」

鳴護「(はい?)」

ベイロープ「(お帰りなさい)」

鳴護「(……はい、ただいま帰りました)」

フロリス「(あー……その、なんだ。ワタシが言うのもなんなんだけどサ。イヤだったら別に逃げたっていいんだぜ?)」

フロリス「(それで思い詰めるよりか、ずっとマシでしょーに)」

ランシス「(……ん、でも今度逃げたらわたしが……ぐへへへ)」

フロリス「(変態ダーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?)」

鳴護「(……もう、あの夜の恐怖体験はゴメンだよ……うん)」

ベイロープ「(この子はある意味、無言実行だからレッサーよりもタチが悪いのだわ……)」

レッサー「『――フランスが大負けしたワーテルローから今年で200年だよっおめでとうっ!今世紀中には滅ぼしたいですねっ!』」

上条「おいマイク離――逃げるなっ!」

上条「誰かーーーーっ!?誰かこのバカのマイクの電源落とし――」

シャットアウラ「――何をしているか貴様ァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

佐天『あ、激怒したスタッフの人だ』

上条「待て!?違うんだシャットアウラ!これはお前が考えてるような事じゃない!ちゃんとした理由があるんだよ!」

シャットアウラ「……言うだけ言ってみろ、聞くだけは聞いてやる」

上条「これはな、敵の魔神の攻撃――」

シャットアウラ「――ふんっ!」 バスッ!

上条「そげぶっ!?」 バタッ

上条(……シャットアウラの加減なしの一撃を食らい、俺はゆっくりと意識が狩れ取られていく……)

上条(その、目に映ったのは、大笑いするレッサー、ほぼ逃走を完了しているフロリス、レディリーの微妙な所を持って抱きかかえてるランシス――)

上条(――アイアンクロウをバカに噛まそうとしているベイロープ、そして――)

上条(――いつものように心配そうに見ているアリサの姿だった……)

上条(……ま、そんな日常を守るためだったら、世界の一つや二つ、どうって事はな――)

上条(――い……)

上条「……」

上条(……いや、やっぱ世界救ったのに、貰ったのがボディーブローって割に合わなくないか……?)



――闇、海より還り来たる -終-

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

来週エピローグを少し書いて大団円となります

おつ

久しぶり

その文章をわざわざ見に来て書き込む俺たちも同志じゃないか
なにを今更…あ、乙です

さて、誰エンドかな? お疲れ様です。

今回は、ほとんどの場面で縁の下の力持ちだった上条さん。
でも、どの場面でも無くてはならない存在でした。
お疲れさまでした。

さって、最後の踏ん張りが待ってますよヒーロー。
果たして……?

何が一番凄いかと言うと死の間際までネタに走り続ける新たなる光の皆さんです!

野生のかまちー!?

来週で終わりか。楽しみがなくなった。。。

エピローグ楽しみに待ってます
特にフロリスの
今回のヒロイン達はみんな可愛いので今から待ち遠しいです
特にフロリスが

肉食恐竜にまでフラグ建てやがったよさすが一級建築士!

レッサー、金髪グッ!
ベイロープ、一回くらいならキスも許されるぞ!
フロリス、安定のネコ的性格(時々ヘタレ)!
ランシス、今夜にでも夜ばいを!
アリサさん、現実世界でもライブinメイドお願い!

みんな、大好きだよ!!

レッサー上条さん好きすぎるのがひしひしと伝わってきた

レッサーはサイヤ人だった? にしても金髪のレッサーって2Pカラー並にパチモンっぽいな


いやー本当にプリキュアが始まったらどうしようかと
キュアピアスとかキュアシスコンとか登場しかねないからなー
あと妖精でコマッバとか

陽性の誤字の真意が気になる 触れてはいけないパンドラの箱なのかな?



――『エピローグ』

――ローマ コロッセオ

???「――――死んだらどうするっ!?」

???「……」

???「……あぁ怖かったー。死ぬかと思ったー。つーか一回死んだわー」

???「テッラ超つえー。『ククク、ヤツは右席の中でも最弱よ!』的な噛ませ犬かと思ったんだが、相性の問題だわ、あれ」

???「ま、滅ぼしきられる程のもんじゃなかったが、つーか生前にやり合ってたらヤバかったかもしれねぇが、あぁ」

???「あと『万軍英雄(ミリオンアーサー)』か……過去にブリテンで死んだ英雄達を”アーサー”と見なして部分的に召喚」

???「曖昧な定義且つ、様々な物語の英雄を組み込んでいったアーサー王伝説ならではの大技。カッケーな!」

???「……しかもあれ、『アーサー王伝説に組み込まれれば組み込まれる程、剣の本数は増す』ってトンデモ術式か。やってらっんねー」

???「流石は『アーサー王の遺産管理人』ども、ンな隠し球持ってるなんざ、この世界も捨てたもんじゃねぇな」

???「つーかさつーかさ、確かにあん時は連中も龍脈に接続していた――っていうか」

???「セレーネの属性の一つである『死して永遠に夢見る』へ、アーサーの『アヴァロンで永久に横たわる』属性で上書きしてやがったんだけど」

???「もしそれが出来ねぇ状況、ぶっちゃけ何の助けもなしに使えるかっつーと、相当疑問だわなー」

???「あぁっと……連中の術式か、霊装を起動させてた順番はベイロープ、フロリス、ランシス、レッサー……ふむ」

???「名前っつーのは本質をも表しているから、下手なフェイクは入れられねぇ。意味を持たせるとすれば――」

???「ベイロープ、ベイ・ロープ、ベイリン・ロゥ・プール……『Balin row pool(ベイリンは死の淵を渡る)』」

???「フロリス、フローレンス・リス、フローレンス・リスプ――『Florence lisp(フローレンスは震える舌で話す)』」

???「ランシス、ランスロット・シス――『Lancelot cist(ランスロットの石棺)』」

???「レッサー、レス・アーサー――『Less Arthur(未だ満たさぬアーサー)』」

???「――ってトコか」

???「ふーん?あぁそうか、最低でも二人、最悪だと全員死なないと発動しねぇのか!」

???「ベイリンは”災いの一撃”で死ななければいけないし、フローレンスも味方に斬り殺されて、『原型を辿る』必要がある」

???「神話をなぞった術式は強えぇ。だが強い代わりにそれ相応の代償を”持って”行かれっちまう」

???「そして円卓の騎士とは、必ず崩壊して死へ至る運命を持つ、と。イイ感じに狂ってやがるな!」

???「俺的には非常に好みだが、マァブも相変わらず奉仕する人間の魂を欲するか!」

???「今はもう狂ってしまったのか、それとも最初から狂っていたのかは興味深いところだが……さてさて」

???「つーか介入してんじゃねーぞババア。”この”世界はどう考えてもニュートラルなんぞとは縁遠いってぇのに、何考えてやがる」

???「カミやんの『右手』が魔術師のセーフティだってなら、俺達も俺達の……や、違うか?」

???「まさかと思うが……あの売女、テメーらの”子供達”を守るためだけに……?」

???「……」

???「……これだから地母神関係は嫌いなんだよ。ったく、いい加減子離れしねーと」

???「――んが、まぁアレだな。理論通りに”メインプラン”のセレーネ降臨は上々」

???「……つーか最初から分かるだろ?分かっていた話だろ?」

???「”ポラリス”があるおおぐま座は、アルテミスの侍女であるカリストが純潔を破り、天へ上げられた姿だ」

???「それに執着する娘は、母親を慕う子供と何が違う?違わないぜ」

???ギリシャ神話で、セレーネとエンデュミオンとの間に生まれた子は50人を越す。その中には女神もいた」

???「”パンデイア”、神話に登場する露の女神にして別名――」

???「――『エルサ』」

???「日本語読みにしたら面白ぇ事になる。文字通りの『冥護アリサ』だっつー訳だ。だー」

???「……まぁこっちに定着したし、嫌がらせとしても悪くはない。カミやんが大変なだけで俺は知ったこっちゃねぇし」

???「問題は……次は何で遊ぼうかな?私は誰を嘲笑えばいいのだろうか?」

???「……」

???「セレーネ召喚の呼び水に使った、んで使い物にならなかった場合のサブプラン――Κ(カッパー)の三相女神の復活と行くか」

???「たかだかセレーネ如きに一度滅びたんだ。今度は女神三人相手にどこまでやれるか、精々楽しませて貰うとするぜ」

???「『濁音協会』名乗んのも楽しかったがね」

???「……つーかユグドラシルの術式って超使い勝手悪ぃのな。無限再生するだけの躰(からだ)ってドM専用機じゃねぇか」

???「元々戦闘目的じゃなくて、延命目的だからまぁ、しゃーなし的な側面はあんだけど」

???「次はもっとまともな力が欲しいぜ。出来れば痛くないの、遠距離型がいーかなー?」

キラッ☆

???「――ん?流れ星――ハッ!?」

???「津へ津へ津へ!やったねっおにーちゃんこれで津へメテオストライク決定だ!……だ?」

キラキラッ☆

???「まだ、消えねぇな。ていうか昼間に星?どんだけ近くまで落ちて来てんだか」

???「また学園都市の人工衛星じゃねーだろうな……あぁ『エンデュミオン』のスペースデブリから、合法ロリは回収済みなんだっけ」

???「あー……アレだ」

???「探査衛星が地球へ落っこってくる、所謂大気圏突入は大体秒速11kmぐらいになる」

???「時速換算では約時速3万9千6百キロ。キップ何枚切られるか分かったもんじゃねぇわ」

???「ちなみに赤道の長さが4万キロ。超早いと理解出来りゃそれでいい」

???「他にも中距離弾道ミサイルが秒速2km、ICBMこと大陸間弾道ミサイルは7km」

???「ちなみに光速は約30万kmだっけか?大気を越えると減速するらしい」

???「月の地球の距離は約38万キロ、だから大体一秒弱前の光を俺達は見てんだが――って」

???「やっぱりこの”肉の檻”に影響されてやがるな。俺が持ってた冒涜的な知識の殆どが失われてるわー、つれーわー」

キラキラキラッ☆

???「てかどうしちゃったのお星様?シャーロット=ヴェイルでも拗らせた?」

???「……?てか、大きくなってね――」

――――――フッ

???「あるぇ?右目が見えな――」

???「……」

………………ザシュッ!!!

???「あー、成程。音速よりは早かったんだな、だからこう、矢が俺の目に刺さる前に音は聞こえなかったと」

???「そっかー、そうだよ、なんだー、こやつめー!」

???「……」

???「――ぐがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁっはぁぁっ!!!」

???「目が!?俺の目がッ――!?」

???「なんだ――これはっ!?どうして空から矢が降って来やがる!?天気予報には出てなかった筈だぜ!」

………………ザシュッ!!!

???「ァァァァァァアアァァァァァァァァァァァァァガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアァッ!!!?」

???「両目を……クソが!つーか誰だ出て来やがれっ!」

ヴヴゥンッ、ヴヴヴヴヴヴヴヴッ

???「矢がっ!振動し――つーか痛ぇよ!溶けた鉛を脳に突っ込まれるぐらいに痛ぇ!?」

振動?『――あー、ハローハロー?聞こえているか?』

振動?『私の姿を探しているとすれば、それは無駄。私は今ロンドンに居るの」

振動?『君へ声を伝えているのは、この『矢』を振動させ擬似的に話しているだけだから』

???「探すも何もこっちは見えてねぇんだよバカヤローっ!!!」

振動?『ふうん。やはり”この程度”では死ななかったのね』

???「頭イタイんで手短にっ!」

振動?『両目の後ろには大脳があり、大抵の人間はそこを貫かれれば良くて即死』

振動?『悪くて”死に損なった”場合でも、激痛に苛まれてまともな行動出来ない筈。なのに』

???「……テメェは誰だ!?誰が俺の物語へ入って来やがった……ッ!」

???「”ここ”はポッと出のルーキーが余裕かましていい場面じゃねぇぞコラ!」

???「最初から!舞台へ上がって道化を演じ、演じたつもりが本気になったバカ共の立つ場所だ!」

???「――貴様はどんな資格があって私のオペレッタへ足を踏み入れた……ッ?」

振動?『名乗る程の者ではない。私は属すべき結社をこの手で滅ぼしたのだから』

振動?「だ、けれども。声高らかに名乗りを上げられないのは少し寂しいと感じる――なら、ならば』

振動?『今はもうない彼らへの手向けと侮蔑、そして愛情を込めてこう言おう』

振動?『私は”天上より来たる神々の門”の一員だった者、よ』

――ローマ コロッセオ

???「天上の――ウレアパディーてぇ事は――」

???「――『ブラフマーアストラ』か!?」

ウレアパディー(振動?)『あら、私も有名になったものね』

???「……ふ」

ウレアパディー『ふ?』

???「ふざけんなチクショーっ!流れ星なんぞ滅多に流れるもんじゃねぇだろ!」

???「つーか同時に三つの流れ星を確認するなんざ、無茶振りにも程がある!」

ウレアパディー『そう』

???「……」

ウレアパディー『……』

???「……いや、説明は?」

ウレアパディー『君が”龍脈”と接続出来る能力があるのだったら、それを有効に使うべきでしょ?』

???「知らねぇよ!検索するのにだって限度があるわっ!」

ウレアパディー『つい一年前、”エンデュミオンの奇跡”の陰で暗躍していた組織があったわ』

ウレアパディー『それが私達”天上より来たる神々の門”……なんて、言ったものの』

ウレアパディー『”ブラフマーアストラを使ってみたい”なんて、バカな理由で命を賭けた人達だったわ』

???「……話にゃ聞いてる。何でも学園都市のスペースデブリを利用すんだったよなぁ?」

ウレアパディー『そう。空から降って来る残骸を、でしょ?』

???「空――!?」

ウレアパディー『私は見た。邪悪を滅ぼす英雄の剣を』

ウレアパディー『私は見た。魔王に打込む勇者の剣を』

ウレアパディー『私は見た。空から降り注ぐ青冷めた光の柱、そして――』

ウレアパディー『――そこから降り注ぐ、”剣”は流星だった……!』

???「テメェ――『万軍英雄』を流星雨だと解釈しやがったのか……ッ!?」

ウレアパディー『”ブラフマーアストラ”の起動条件は揃ったでしょ』

ウレアパディー『魔術師同士の戦いへ手を出すつもりはないけれど、あなたは私の同朋を傷付けた』

ウレアパディー『だからこれは彼らの怒りを代弁しているに過ぎない……なんて、言ってはみたのだけれど』

ウレアパディー『……結局の所、妹に泣き付かれた、なんて言えやしないわ』

ウレアパディー『あ、皆には内緒よ?』

???「――ッザてんじゃねぇぞ!そんな、そんなご都合主義が通る訳がねぇ!通して良い訳がねぇだろうがよ!」

???「『ブラフマーアストラ』だぁ?ンな大技、流れ星見ましたーハイ使いますー的なテンションでホイホイ撃てる筈ねーだろ!」

ウレアパディー『そうね。流れ星を”確認”するのにだって、数日の儀式魔術を必要とするわね』

ウレアパディー『でも”夜が明ける時には必ず流星雨が降る”のを、予測していたのであれば、前以て準備するのは造作もないでしょ』

???「だからっつって――」

ウレアパディー『ごめんなさい。そうやって”時間稼ぎ”したい気持ちは理解出来るわ』

ウレアパディー『君はきっとこう考えているのよ――”ブラフマーアストラの起動時間はどれぐらいだろう?そう長くはない筈だ”って』

ウレアパディー『そうね、確かにアストラが矢を放てる時間はほんの僅か……ま、アクティブにして、受け付け時間は多少あるけれど』

ウレアパディー『少なくとも既に終わってしまっているのよ』

???『だったら――』

ウレアパディー『けど、ごめんなさいね。あなたの思い通りは行かないわ。何故ならば――』

ウレアパディー『――”私はもう矢を放った”のだから』

???「………………あぁ?」

ウレアパディー『ブラフマーの弓はどこに居ようと何人居ようと、それが狙った相手であれば”全て”射貫く』

ウレアパディー『”そこに居る”君だけじゃなく、”全ての”君を』

ウレアパディー『それはきっと”アガシックレゴート”という魂の記録から、神々が書き給うた書物にも例外ではないでしょうね』

ウレアパディー『そして”龍脈”の記憶からすら抹消されてしまば、何をどうやっても”この”世界へ干渉出来ない』

???「な、なァァァァァァァァァァァァァァァッ――!?」

ウレアパディー『君はもう、この世界から存在ごと消えるの。じゃ――と、最後に一つだけ。妹の新しいお友達から伝言があるわ』

???「そいつか!そいつが俺を殺しやがるのかっ!?」

ウレアパディー『”わたしの辞書にあなたたちの存在はなかったんだよ――つまり”』

ウレアパディー『”――あなたって存在が、ウソ、なんだよね?”』

――――――――――ザシュッ!!!

???「か――――――――はっ……………………」 ドサッ

――学園都市某所

老いた聖堂騎士「――と、無事鳴護アリサは帰還し、悪しき神は退けたようだ」

老いた聖堂騎士「テンプルナイトは全員撤収させた……全員が全員、最新家電を買い込んでいったのが、堕落ではないかと思わないでもないが」

マタイ「佳きかな佳きかな。これで借りは返せた」

老いた聖堂騎士「……」

マタイ「何か問題でも?」

老いた聖堂騎士「いや――なんでもないよ、ヨーゼフ。君がそう言うのであれば、私には何も」

マタイ「不満があるようにしか見えないが?」

老いた聖堂騎士「彼(か)の売女の事は分かる。これからの時代に私達のような老人が出しゃばるのは宜しくないからな」

老いた聖堂騎士「『ゴルゴダの枷』を再び外すのにも問題はあるし、必要最低限の労力で済んだとも評価は出来る」

マタイ「だろう?」

老いた聖堂騎士「だが『ジョン=ボールの首狩り鎌(セイクリッド・デス)』を渡してしまってよかったのか?あれは確か君が――」

マタイ「――佳い、それこそ佳いのだ」

マタイ「あの鎌の出自からすれば、力なき者が振う刃であるべきなのだ。むしろそうでなければいけないのものだ」

マタイ「……今の私”達”は力を持ちすぎた。今更頼るものでもあるまいよ」

老いた聖堂騎士「私はてっきり、あの女狐に渡すものとばかり思っていたが」

マタイ「……この歳になって『色ボケした』と後ろ指を挿されたくもない、私はね」

老いた聖堂騎士「では、帰るとしよう。この街は少々居心地が悪い」

マタイ「ふむ?科学の街は嫌いかね?」

老いた聖堂騎士「そういう訳ではない、ないのだが――」

少女「あ、あのっ!すいませんっ!超すいませんがっ!」

老いた聖堂騎士「……」

マタイ「何かねお嬢さん。年寄り二人が珍しいかな?」

少女「その、ですね、もしかしたら超違うかも知れませんが――」

マタイ「ふむ」

少女「――俳優のイアン=マクダーミ○さんとクリストファー=リ○さんじゃないですかっ!?」

マタイ「……ふむ?」

老いた聖堂騎士「……これだよ、ヨーゼフ」

少女「超よかったらサイン下さいっ!ダメだったら超握手でも構いませんがっ!」

老いた聖堂騎士「……先に戻る」 スッ

少女「あっ!?」

マタイ「……すまないね、お嬢さん。私の相棒は気が短くて困る」

マタイ「お詫びと言ってはなんだが、この老人で佳ければ握手でもしようか」

少女「あ、ありがとうございます!……あの、超聞いてもいいですか?」

マタイ「年齢は秘密だよ。女性関係については『お互いに清い交際だった』とだけ」

少女「あはは、超そうじゃないですよ。そうじゃなくって――」

少女「――クリストファーさん、亡くなった、って超聞いたんですけど?――もしかして!」

マタイ「しーっ!……それ以上言っちゃいけない、どこかでヘルシングが聞いているかも知れないだろう?」

少女「……それじゃ、やっぱり!」

マタイ「あまり長く生きても怪しまれるし、そろそろ頃合いなんじゃないかな?」

少女「そっか……よかった……」

マタイ「……内緒だよ?」

少女「ありがとうございましたっ!わたし、超一生に記念にしますからっ!」

タッタッタッタッタッ……

老いた聖堂騎士「――おい、貴様。何を吹き込んだ?」 スッ

マタイ「佳い佳い。子供に夢を持たせるのも大人の仕事であるな」

老いた聖堂騎士「夢とホラ話は違うだろうに」

マタイ「私は嘘など一つも言っていないよ。何一つ事実を話していないだけだ」

老いた聖堂騎士「……というか、だな。彼はギリシア星教団から目をつけられていなかったか?」

老いた聖堂騎士「ともすれば”本物”として、今もどこかで生きているかも知れないが……」

マタイ「好きだったろう、彼の映画は」

老いた聖堂騎士「……あぁ。もう一度新作を見てみたい所だが……」

マタイ「どう、だろうね。それはきっと彼の気分次第ではあるだろうが……」

マタイ「……例え姿を消したとして、彼は銀幕の中に生き続ける。その魂と共に」

マタイ「……」

マタイ「……そうだな、永遠などこうやって簡単に手に入るものなのだよ」

マタイ「魔術などに頼らなくても、科学などに依存せずとも、な」

幼女A「……」 ジーッ

幼女B「……」 ジーッ

マタイ「おや?どうしたかね、迷子にでも――」

幼女A「にゃあ!シスの暗黒○がどうしてこんに所にいるのだっ!?」

幼女B「しかもドゥークー伯○までセットで豪華だよねってミサカはミサカは戦慄を隠せないし!」

マタイ・老いた聖堂騎士「「……」」

幼女A「が、学園都市では悪い事なんかさせないのだ!だって浜面は強い心を持っ――」

幼女A「……」

幼女A「……わ、わたしが頑張るし!にゃあ!」

幼女B「なにおー!それならあの人だってフォー○の暗黒面になんか捕われ――」

幼女B「……」

幼女B「……ひゅーひゅー、ってミサカはミサカは誤魔化すために口笛を吹いてみたり!」

老いた聖堂騎士「(……どうするんだヨーゼフ。これはプラハの春よりも厳しいぞ!)」

マタイ「(考えるな、感じるんだ!さすれば自ずと道は啓かれよう……!)」

老いた聖堂騎士「(貴様は困った時にはすぐそれだ!『流れで誤魔化そう!』としか言ってないからな!)」

幼女A「――だがしぁかしっ!正義をアイする力は誰にだってあるんだっ!つまり――」

幼女B「――このミサカ達にもフォースの力はある!とミサカはミサカは言ってみたり!」

老いた聖堂騎士「……師よ、如何致しましょうや?」

マタイ「――フゥハハハハハハーッ!笑止!その程度のフォースで我らが暗黒のフォースへ立ち向かうなど片腹痛いわ!」

マタイ「まだまだ力の弱いフォースなど恐るるに足りぬ――だが、しかし!」

マタイ「もしも汝らが毎日毎日早寝早起き、しっかり勉強して友達とも仲良く家族を大切にして好き嫌いなく食事をするようであれば!」

マタイ「何年か後には我が覇道の妨げになる可能性は否めないがな!」

幼女A「にゃあ!?それってホントなのか!?グリーンピース食べればフォースが強くなるのか!?」

幼女B「ミサカの嫌いなセロリにそんな秘密があったとは!ってミサカはミサカは驚愕してみたり!」

マタイ「……くくく、出来るものならばやってみるが佳いわ!」

幼女A「にゃあ!」

幼女B「うんっ!ミサカはミサカはやるぞーって!」

マタイ「それではさらばだ、小さなジェダ○よ!いつしか汝らが敵として相見舞えんのを楽しみしておるぞ!」

マタイ「だがしかしフォ○スの暗黒面はどこにだって口を開けて待っている!」

マタイ「例えば歯磨きしなかったり、お手伝いをしない悪い子とかが落ちるのだ!」

幼女A・B「「――っ!?」」

マタイ「フハハハハハハハハハハーーーーーーーーっ!!!」 ダッ

……

老いた聖堂騎士「……おい、『教会を大切にしよう』を入れておかないと、立場的に拙い気がするんだが……?」

マタイ「……余裕などあるまいよ」

老いた聖堂騎士「まぁいいが――おい!」

マタイ「なんだね。今度は」

小萌「あのー?もしたからなんですけども、そちらにいらっしゃるのは――」

老いた聖堂騎士「……まただ。また幼き少女が、だ」

マタイ「ならばするしかあるまい。道化を演じさせられるのも、演じるのも同じ事――」

マタイ「――それもまた、宿命、か」

――某日 学園都市XX学区 スクランブル交差点

ペーペーペー、ペーペペポー、ペーペペ、ペーペペ、ペペペペポー……

街頭テレビ(レポーター)『――ARISAさん。凱旋記念ライブおめでとう御座いますー!』

街頭テレビ(レポーター)『前売りは一時間で完売、追加席も直ぐになくなる程の人気でしたが、それについては何かありますかねー?』

鳴護『あ、いえ、特には』

街頭テレビ(レポーター)『……』

鳴護『――じゃないです、ありましたっ!』

鳴護『ファンの皆さんにはいつもありがとうございます。わたしの応援に来てくれてる方達から元気を貰っています(※棒読み)』

街灯テレビ(レポーター)『……えーーーっと、はい。ありがとうございます。では次に――』

人工音声『信号が赤に変わります。ご注意下さい』

上条「……相変わらず天然をお見舞いしてやがんなー」

上条(俺は交差点にあるビルのスクリーンに映されてる動画を見ていた。以前のように)

上条(以前、とは言ってもあの日は10月8日。あの異様に長い日からまだ数日しか経ってはいない)

上条(なんかこう、あれだよな?たった一日、時間的には0秒未満の間にどんだけ居たのかって話だ)

上条(まず『常夜(ディストピア)』では体感で2日、コント夢の中もカウントへ入れると更にプラスして2日)

上条(冥界下り……階段下りマラソンは一日だとして……アリサの見た夢は大体一週間ぐらい?)

上条(そうするとトータルで12日前後か……随分頑張った!頑張ったよ俺!)

上条「……」

上条(だがしかし……貰ったのはシャットアウラの素敵なボディブローだけ……!)

上条(ライブを妨害したようにしか見えなかったかもだけど!理不過ぎる!)

上条(確かにまぁ、いつもの『敵の魔術の攻撃なんだ!』とネタが被っていたのは認める。認めるが……)

上条「……」

上条(……あれから、俺達がどうなったのか?世界はどう変わったのか?と、言えば――)

上条(――結論から言えば、何も変わっちゃいない)

上条(アリサがセレーネを説得し、またこの世界は動き始めた。それも以前と寸分の狂いもなく)

上条(停止していた時間を見たのは極々少数。人類でも10人に満たないんじゃないですかー、とはレッサーの弁だが)

上条(地球は相変わらず太陽の周りを回っているし、月もまた同じく)

上条(俺はシャットアウラに殴られて即入院、てか検査入院)

上条(アリサは凱旋ライブを見事に”誤魔化し”、『新たなる光』は見届けた後に姿を消した、らしい)

上条(マタイさんも別れの言葉も一つなく居なくなっちまった)

上条(……ネットで調べたら、前教皇猊下はずっと”ローマで公務中”だったらしく、来日したのも無かった事になっている)

上条(三文小説の夢オチのように、文字通り『夢』だった訳で――)

上条(――俺達以外には”そう”なんだろう)

上条(夢を見ている時には、夢が夢だとは疑わない。疑えば夢は覚めてしまうから)

上条(そして覚めた後に夢を憶えている事も少ない。所詮、夢は夢だ)

上条「……」

上条(繰り返すが世界は何も変わってはいない。変わりようはなかった)

上条(世界のどこかでは誰かが死に、そして生きる)

上条(絶望に希望を見出して立ち上げる人もいれば、希望へ絶望を”期待”して深淵を覗き込む奴も居る……)

上条(『幻想が現実を絞め殺そうとしている』……と、言われれば真っ向からは否定しにくい)

上条(あん時、終わってた方がいいんじゃねぇかなって――あー、いやいや、なんかネガティブになっちまってんな)

上条「……」

上条(……何か、時間を持て余した俺はフラフラと街へ出て来ていた。誰か知り合いと会えねぇかなー、みたいな期待を持って)

上条(……ま、そういう時に限って誰とも会わないのは、ある種のお約束と言えなくもないか)

上条(そんな訳で、俺は止めどなく街頭テレビを眺めていたら、そこへ映ったのはアリサの姿だった)

上条(たった数日とは言え、声を聞いていなかったのは寂しく思う……あぁそれは勿論、レッサー達にも言える事だが)

上条(アホみたいに濃密な時間を過ごした俺達は、なんかもう知り合いとか友達とか、そんな言葉じゃ表現しにくい気もする。まぁ、いいや)

上条(てかアリサ――ARISAのインタビュー生放送なんだろう。アリサさんの天然っぷりが相変わらず炸裂している……!)

上条(タレント的には”素”というのが新鮮らしく、弱小の個人事務所でも結構お仕事があるんだとか)

上条(そのお仕事が食レポだったり、イメージビデオだったり、本人の望むものではないらしいんだが……)

上条(ま、まぁ?前よりは遠慮しない性格になったっぽいし、イヤならイヤだとはっきり言うだろうし)

上条「……」

上条(……てかレッサーが口走ってたっけー……アリサはスポンジ派かー……そうかー……)

上条(そういや夢ん中でおかしいと思ったんだよ!ほら、タオルかける、っつーか干す棒みたいなのあるよな?)

上条(正式名称知んないけどさ、ユニットバスとかで棒吊してあって、そこへタオルやスポンジ掛けて乾燥させるー、みたいなの)

上条(あそこにかかってたのが俺の小汚いタオルとアリサのタオル……なーんか端っこの方に白いスポンジが引っかかってたんだよ)

上条(最初、『あれ?バスタブ洗う時用のスポンジ?』って思ってたんだが、別に聞くような事じゃないし、ボロが出るのもアレだしでスルーしたんだが)

上条(家事手伝うようになったら、『あ、当麻君。バスタブのスポンジはベランダにあるから』って、あぁそれじゃこっちのスポンジ何なの?みたいな)

上条「……」

上条(それがっ!あの白くて柔らかそうなスポンジがっ!より正確にスポンジを絹100%のネットで覆った肌に優しそうなのがだ!)

上条(なんかこう良い匂いがするなー、とかバスタブに浸かりながら毎日毎日思ってたんだよ……それがッ!)

上条(あの、素晴らしいたゆんたゆんをスポンジで……ッ!!!)

上条「……」

上条(……止そう。幾ら何でも知り合いに失礼すぎる。そして俺は頭が残念すぎるわ――と)

上条(つーかまだ数日かぁ。何が長い時間が経ってる気がするんだよなぁ)

上条(あん時は確かバードウェイからの電話がかかってきたんだよ、うん)

チャーチャーチャチャー、チャチャチャー……

上条(そうそう、こんな感じ――)

上条「……」

チャーチャーチャチャー、チャチャチャー……

上条(出たくねぇっ!超々出たくねぇなっ!)

上条(着メロ、ダースベーダ○のテーマに設定しやがったのはどこのどいつだっ!?面白カッコいいけどもだ!)

上条(つーか誰?まさかマジでバードウェイじゃないよね?戻って来たつもりなのに、世にも奇○な世界に帰って来たとかねぇよな?)

上条(あー……液晶に出てる名前は――『上条刀夜』?父さん?なんでまた?)

上条(いや、だったら出るけどさ。だって安全だもの)

上条(つーか父さんの書類、レッサーさんがパチったままで返してねぇよ。そっちの話か……?) ピッ

上条「『――もしもし?上条ですけど?』」

刀夜『あー、もしもし上条で御座います、いつもお世話になっております』

上条「『父さん、営業トークになってんだけど』」

刀夜『当麻か?今、ちょっと時間大丈夫かな、話があるんだけどさ』

上条「『あーダイジョブダイジョブ、俺も今ヒマ持て余して――ん?』」

刀夜『どうかしたかい?忙しいんだったら、後から掛け直すよ?』

上条「『いやぁ――携帯がなんか重いんだよ、スッゲー』」

刀夜『当麻はガラケーだったっけ?折角学園都市に居るんだから、最新式の探せばいいのに』

上条「『……色々あって直ぐ壊すからなぁー……てか、異様に重いな。なんかストラップについてる?』」

上条「『ケータイクリーナー?それにしちゃやたらと重いし、人肌だし――』」

マーリン「……」 チラッ

上条「『……』」

刀夜『とうまー?どうしたんだい、とうまー?もしもーし?』

上条「『あっゴメンっ父さんっ!今ちょっと野暮用が出来たからっ切るなっ!』」

刀夜『ちょま――』 ピッ

上条「――で、何やってんですかマーリンさん?」

マーリン「『ワイはマーリン!ブリテンいちの魔術師やで!』」

上条「ぬいぐるみのフリしてんじゃねぇよ。つーか触ってもないのに勝手に喋るか!」

マーリン「いやんっばかんっ!ワイには心に決めたお人がおるのに触るやなんてっ!」

上条「おっと手が滑った『右手』でタッチ」 モフモフッ

マーリン「ぐあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 パキイィィンッ……!

上条「……」

マーリン サラサラサラサラッ……

上条「え、なに?マジで効いたのかっ!?ええぇっ!?」

上条「や、でも『常夜』ん時はもふもふしても効かなかったじゃんかっ!」

マーリン「……」

上条「……」

上条「えっと……ゴミ箱――」

???「待ぃよ?なんぼなんでもその態度は失礼ちゃうのん、んん?」

???「ワイもレッサー達にイジられて大概やけど、まずゴメンナサイすんのが先ちゃうか?あぁん?」

上条「マーリンの声……?どこから――」

上条「――って千切れた方の毛糸の残骸から……?」

マーリン(???)「まいどっ!おおきにっ!」

上条「一回り小さくなった!?つーか死んでねーじゃん!?効いてなかったのかよっ!」

マーリン「や、効いてた効いてた。やけどその程度で『魔術師の中の魔術師』を倒そう言うんは百年早いわっ!」

上条「じゃ、もう一回」

マーリン「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉっ!?」

上条「いや、しないけどさ」

マーリン「何で!?こんだけ振っといてテンドン無視するのは鬼の子ぉの仕業やんっ!?」

上条「知らん知らん。いいから、つーか何でお前俺のケータイクリーナーになってんの?」

マーリン「お前やのぉて、ま・あ・り・んっ!って呼んで!」

上条「……まーりん」

マーリン「誰がマーリンやねん!そんなホイホイ女の子の名前呼んだにらアカンよっ!」

上条「……あぁ面倒臭ぇ!今ならレッサー達の気持ちがよぉぉぉぉっく分かる……っ!」

マーリン「や、必要やん?こう、人生にウェットなジョークみたいなんは?」

上条「……路上でぬいぐるみ相手に一人芝居してるイタイ人って思われる前に何とかして欲しかったぜ!賢者名乗るんだったら特にな!」

上条「見て見ろ!既に俺の周りにはニヤニヤしながら笑ってるロリっ子以外には誰も居ないぜ!早足で消えてったから!」

マーリン「まぁまぁ気にせんと。ハゲよるよ?」

上条「どっかにゴミ箱……あ、コンビニでいいか」

マーリン「マーリン捨てるの良くないと思いますぅ!だってほら、分別的にゴミ箱じゃ扱ってへんし!」

上条「あ、それじゃどっかに置き忘れれば良くね?俺ってうっかりさんだからなー、仕方がない仕方がない」

マーリン「ヒドっ!?発想が悪オチしてるやんかっ!」

マーリン「てーか生き物飼うんやったらな、最期まで面倒見ましょうってワイは教えた筈やでっ!恥を知りぃよ――」

マーリン「――ってワイ教えてへんやないかーーーい!ルネッサーーーーーンスッ!」

上条 フキフキ

マーリン「あの……上条はん?なんやツッコんでくれへんと、オチてへんから次のチャプター行けへんのよ?分こぉ?」

マーリン「ちゅーか無言でワイの筐体使ぉてケータイ拭かれると、なんやモヤモヤするっちゅーか、な?」

上条「いいから、要件を、さっさと、言え!」

マーリン「あ、その言い方ベイロープに似とぉわ」

上条「……ベイロープはこんなストレスをいつも抱えていたのか――!」

マーリン「……あの子ぉはレッサー達の指導もせんとアカンし、大変やよね?」

上条「元凶が言うな!つーかあんなポジティブな変態ども育てたのはお前の仕業じゃねーか!?」

マーリン「否定はせんけど……ま、でも、代々の王様ってあんな感じよ?いやマジでマジで」

マーリン「そもそも頭良かったらガリアからの独立とか考えへんし、ランスロットも放置せぇへんやんか?」

上条「……マーリンのオリジナルが言うと説得力かある、のか?」

マーリン「まー、大概の英雄っちゅーんはどっか抜けてへんとアカンのよ。大望があって、立ち上がるだけの意志以外には何も要らんし」

マーリン「力なんてぇのはワイらみたいな、お節介な連中が出しゃばればええんよ」

上条「つーかな、マーリンさん生きてたのか?レッサー達と話した感じじゃ、死んだっぽい扱いになってたけど」

マーリン「あー、あの体は死んだ――ちゅーよりか、内蔵した魔力使い果たして崩れたわ」

マーリン「流石に魔神相手にこの体でどうこうすんのが間違いやっとぉ……ま、でも?レッサー達、残機増やしてたやん?」

上条「残機?」

マーリン「見とったやん。ほら、プチプチィって千切って」

上条「あー……そういえば千切られたら増えるとかなんとか言ってた――」

上条「――ってアレ、ネタじゃなかったのかよ!?」

マーリン「うん、そう――あ、口調忘れてるなー」

上条「うん?何か言ったか?」

マーリン「何も言うてへんよ?――てかレッサー言うて無かったっけ?『マーリンは霊装か龍脈の切れっ端』みたいなの」

上条「それも聞いた気がするが……なんか、モヤッとするな。正体が分からないってのは」

マーリン「んむぅ……ま、上条はんにはウチの可愛いアホの子ぉ達が世話になっとぉし、スジ通さなアカンかぁ」

上条「無理にとは言わない。てか、誰がどこで聞いてるかも分からねぇんだから」

マーリン「あぁそれは心配要らへんよ。さっきから人払いの結界を、ちょっとだけ強くしとぉの張っとぉわ」

上条「いや効いてねぇだろ、ヤブ魔術師。あっちに一人居るっつーの」

マーリン「ちゅーかな、ワイの中の姿知っとぉのて、オリジン・アーサーも含めて誰もおらへん」

上条「はい?」

マーリン「当たり前やんか。誰にどんな魔術かけられるか分からんし、身内やっても裏切れるかも知れんのよ」

マーリン「やったら誰も最初から信用せぇへんと、こうやって使い魔使役させんのがええやんな?」

上条「って事は、”これ”」

マーリン「この筐体は霊装やね。やから無理も利くし、下手な事では滅ぼされへんのよ」

上条「俺が触って、壊れる壊れないのジャッジは?」

マーリン「『常夜』が発動してる時には、ちょいちょいっと魔力盗ませて貰ぉてたわ」

マーリン「この街はちょぉっとマナが薄ぅて、近くに魔術師でも居らんと自立行動は出来んのよ」

上条「あぁ、だからさっきから動かないのな……んー」

マーリン「何よ?言いたい事があったら聞こぉで?」

上条「……お前、それ仲間信用してないって事じゃねぇのかな、ってさ」

マーリン「……あぁ、それ言われると辛いなぁ。ワイも全然気にしてへん訳じゃないんよ」

マーリン「堪忍な?それがワイ――ブリテンを護る魔術師の役目であり、王様と交わした約束でもあるんよ」

マーリン「あの子ぉらは最悪の最悪、ワイが居れば復活出来るけど、ワイはそうはいかへんからな」

上条「……納得行かねぇな、それ」

マーリン「……」

上条「つまりアレだろ?お前はレッサーみたいな子達を戦場へ送って、お前自身はどっか安全な場所から眺めてるだけ」

上条「ゲームで良くある代理戦争じゃあるまいし、そんな事……ッ!」

マーリン「あー、それはちゃうちゃう。ちゃうちゃうちゃうねんよ?ちゃうちゃうやで?」

上条「意味が分からんわ!」

マーリン「んー、そやんなぁ。どう話したもんか……」

マーリン「――あ、エエ事思い付いたっ!」

クタッ

マーリン「……」

上条「……マーリン?どうした?」

上条「もしもし?もしもーし?……切りやがった、のか?」

上条「……」

上条「……よし、それじゃコンビニに捨て、もとい忘れて来よ――」

ギュッ

上条「あん?」

上条(ぐったりしたマーリンの体をどこに捨てようか、と思っていたら)

上条(後から軽い衝撃と、温かい誰かが密着して、俺の胸の前で両手を回してきた)

上条(……その手は小さく、まだ子供のもの――つーかオンブしている格好だが……?)

???「――ワイやってな、ワイの子ぉを戦さ場へ送るぅんは好きとちゃうんよ?」

上条「……マーリン?」

上条(マーリンの声がするのは、クテっとなったぬいぐるみではなく。もっと後――)

上条(俺に背負われているらしい、女の子の口から発せられた)

上条「お前、それが――」

マーリン「あ、振り向いたらアカンよ?そうなったら責任取らんといかなくなるよって」

マーリン「――ね、”おにーさん”?」

上条「この声、どっかで――」

マーリン「落とし物、役に立ちましたか?」

上条「お前……ライブ会場の外で、ケミカルライト渡してくれた女の子かっ!?」

マーリン「みんなにはヒミツやで?」

上条「もしかして――レッサー達に何かあったら、助けられるように、か?」

マーリン「……あぁそれは誤解や、上条はん。ワイは――というか、ワイらにはそないな自由もないんよ」

上条「意味が……分からねぇんだが」

マーリン「あー……そやんなぁ。オティヌス居るやん?下乳魔神の?」

上条「そのオティヌスは知らないが、世界の敵になってる魔神なら知ってる。つーか『右手』切られたばかりだ」

マーリン「そうなん?切られた”ばかり”で合っとぉ?」

上条「合ってる……よ?」

マーリン「……ま、その話は本題と違ぉし触れへんけども、オティヌスの『50%の制約』っておかしいと思わへんかった?」

上条「あぁ、よくは理解出来てねぉんだけど、何やったって50%の確率で失敗する、みたいなのか」

マーリン「それだけやないよ。正しくは『50%で自身へ還ってくる』んよ」

マーリン「もしただ成功確率が50%だけやっとぉ、二回同じ事を繰り返せばエエし、最悪成功するまで何回もやれば済む話や」

マーリン「なのにそれをしない、出来ない言ぅんは、自分に跳ね返って来よぉ」

上条「それじゃ、俺の右手を切り飛ばした時、可能性としてはオティヌスの右手が切り飛ばされるかも知れなかったのか?」

マーリン「やんね。やから即死系の術式は出来ひんし、手ぇ出そうにも中々上手く行かへんのやけどもぉ――」

マーリン「『なんでコイツ、こんな面倒ぉな制約付けとぉ?』みたいなん、思わへん?」

上条「あー……言われてみればそうだよなぁ。その制約があるから、奴は世界を滅ぼしてないんだっけか」

マーリン「そもそも”そんな呪いはオリジナルであるオーディンには無い”のに、おかしな話やなぁ?んん?」

マーリン「……ま、でも難しい話とちゃうんよ。至極単純な話や」

マーリン「時に上条はん、”Ship in a bottle”って知っとぉ?」

上条「知らない、かな」

マーリン「日本語やと……ああっと、ボトルシップ、で合っとぉか?」

上条「そっちは知ってる。ワインみたいな空の酒瓶の中に、船の模型を入れて飾るんだろ?」

マーリン「それや、それそれ。ちなみに作り方は?」

上条「あぁ、『瓶の口よりも大きい船の模型をどうやって入れたんだろう不思議!?』みたいな、リアクションはしねーぞ」

上条「あれ確か、ボトルの口からピンセットで模型の部品を入れて、中で組み立てるんだよな」

マーリン「やんね。要はそれと同じなんよ」

上条「どれと?」

マーリン「『普通に接したらこの世界は壊れてしまう、だから力は50%の確率を負う』って制約がピンセットみたいなもんやね」

マーリン「そうでもせぇへんと、あんだけ大きい力を無尽蔵に振るえとぉたら、世界が幾つあったって足りへんよ」

マーリン「やから『よし!相手殺そぉか!』って力放ったら、半分の確立で自分が死ぬっちゅう”呪い”をな」

上条「……何となくは分かった、気がする。ただその、気になってんのが一つ」

マーリン「何?」

上条「制約制約つってるが、それは”何”なんだ?誰に付けられたんだ?」

上条「学園都市でオッレルスから聞いたんだけどさ。魔術を極めると魔神になるっていうじゃん?」

上条「それは何となく分かるんだよ。中世の錬金術師や、魔術師が求め続けてきたのは『神へと至る手段』だっつーのは」

マーリン「日本人にはよぉ難しい概念やねんけどなー。ほら、大八洲(おおやしま)には神が溢れとぉし?」

上条「……うんまぁ、出雲から電気街まで色んな所に居るな!」

マーリン「そこら辺を注意して『右席』を見よれば、また違ぉ解釈も出来る筈や」

上条「魔術を極めた結果、行くべき道を突っ切って、更に踏み込んだ先――それが『50%の確率』ってのは、おかしい気がする……」

上条「階段を登るように、もしくは奈落へ転げ落ちるように力を付けていくんだったら、そのどこかで妥協したりはしなかったのか?」

マーリン「誰や、っちゅう訳ではないんやけど……まぁ、自然の摂理みたいなもん?」

マーリン「科学サイドでも言うやん?『人間がフルパワーで動いたら、靱帯・筋肉・骨格がバッキバキになるさかい、常に手加減しとぉ』て話」

マーリン「それと同じで、ワイらも望む望まん限らず、どうやっても制約は受けよぉ」

上条「って事は、つまり。”こっち”のもふもふは、お前にとっての”ピンセット”か?」

マーリン「そうやんね。ワイにとってはそれが制約……ま、呪いみたいなもんや」

上条「……昔からな。不思議には思ってたんだよ」

マーリン「ん?何を?」

上条「三国志で諸葛孔明って有名な軍師が居るんだよ」

マーリン「三国志の名前の由来になった、国を三つ立てて拮抗さそぉとしたお人やんね」

上条「『コイツ別に軍師にならなくても、劉備押しのけて君主になっちまった方が話早くね?』」

マーリン「それは……まぁ、うん、なんちゅーかな、ぶち壊し的な発想やけど!」

上条「同じく。アーサー王伝説の魔術師マーリンも、チートに近い能力を持ち、つーか物語によってはアーサー食ってるレベルで」

上条「それがまさかマーリンは活躍しちゃいけなかったのか……?」

マーリン「……あぁ、それは間違ってへん。へんけども……違ぉとぉよ」

マーリン「別にワイは力を出し惜しみしとぉ訳や無いし、どの王様にも全身全霊で仕えとぉ。それはアーサー王の名前にも誓ぉよ」

マーリン「それにオリジンもそうなんやけど……子供の頃から預かっとぅ子を、可愛くないと思わん親はおらへんやろ?」

マーリン「ただの素人を一端の魔術師まで育て上げるのに情が移らへん程、ワイは狂ってへんよ……”まだ”」

上条「……ごめん」

マーリン「それに『マーリンの最期』は”最愛の女性に塔の中へ幽閉されて死ぬ”っちゅー運命がおぅて」

マーリン「”最愛の女性”――つまりワイの娘達に替ぉて、『Reverse Endymion(エンデュミオンの逆さ塔)』へ行く覚悟は出来とぉ」

上条「……」

マーリン「やってレッサー、ベイロープ、フロリス、ランシス……イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド」

マーリン「ワイがこのマーリンを名乗るよりもずっとずっと前、『蜂蜜酒の女王(ミード)』として君臨しとぉてた頃から――」

マーリン「――アルビオンで産まれたんは全員ワイの子ぉや。可愛い可愛い、ワイの娘達やで」

マーリン「それは多分、魔神セレーネが全ての命の”妣(はは)”であったのと同じよぉにな?」

上条「……マーリンと名乗る”前”?」

マーリン「レディの過去の詮索すんのは野暮天焼きやで、上条はん……ただ、ま」

マーリン「ヒントをあげるとすれば、マタイはんも面白い事言っとぉ。確か『世界が滅びた過去は無い』やったっけ?」

上条「あぁ、だから『位相世界』はただの神話に過ぎないし、魔神も降臨した事が無いって」

マーリン「それはな。おるんよ、お節介焼きな連中が」

上条「……何?」

マーリン「この世界を壊そうとする魔神、オティヌス以外にも存在しせぇへんって誰が決めとぉ?そして何を知っとぉ?」

上条「それじゃ――まさか!?」

マーリン「……あぁ、それは間違ってへん。へんけども……違ぉとぉよ」

マーリン「別にワイは力を出し惜しみしとぉ訳や無いし、どの王様にも全身全霊で仕えとぉ。それはアーサー王の名前にも誓ぉよ」

マーリン「それにオリジンもそうなんやけど……子供の頃から預かっとぅ子を、可愛くないと思わん親はおらへんやろ?」

マーリン「ただの素人を一端の魔術師まで育て上げるのに情が移らへん程、ワイは狂ってへんよ……”まだ”」

上条「……ごめん」

マーリン「それに『マーリンの最期』は”最愛の女性に塔の中へ幽閉されて死ぬ”っちゅー運命がおぅて」

マーリン「”最愛の女性”――つまりワイの娘達に替ぉて、『Reverse Endymion(エンデュミオンの逆さ塔)』へ行く覚悟は出来とぉ」

上条「……」

マーリン「やってレッサー、ベイロープ、フロリス、ランシス……イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド」

マーリン「ワイがこのマーリンを名乗るよりもずっとずっと前、『蜂蜜酒の女王(ミード)』として君臨しとぉてた頃から――」

マーリン「――アルビオンで産まれたんは全員ワイの子ぉや。可愛い可愛い、ワイの娘達やで」

マーリン「それは多分、魔神セレーネが全ての命の”妣(はは)”であったのと同じよぉにな?」

上条「……マーリンと名乗る”前”?」

マーリン「レディの過去の詮索すんのは野暮天焼きやで、上条はん……ただ、ま」

マーリン「ヒントをあげるとすれば、マタイはんも面白い事言っとぉ。確か『世界が滅びた過去は無い』やったっけ?」

上条「あぁ、だから『位相世界』はただの神話に過ぎないし、魔神も降臨した事が無いって」

マーリン「それはな。おるんよ、お節介焼きな連中が」

上条「……何?」

マーリン「この世界を壊そうとする魔神、オティヌス以外にも存在しせぇへんって誰が決めとぉ?そして何を知っとぉ?」

上条「それじゃ――まさか!?」

マーリン「この世界は何度も何度も、悪い神さんの手ぇによって滅ぼされかけとぉわ」

マーリン「三千世界を統べる暴虐の魔神、星辰の彼方から来た邪神、時には自然発生した嵐の神も居ぉたし」

マーリン「ここ大八洲でも……天に天津甕星、地に素戔嗚、海の彼方に名も無き異形の神」

マーリン「どの時代にも魔神や、魔神に近い性質を”持ってしもぉた”連中がな。その性質そのままに悪さしよぉ」

マーリン「……でも、そうなる度に、人間は全て討ち倒して来たんよ」

マーリン「――そう、ワイらの手ぇを借りて、な」

上条「だったらお前――じゃない、あなたは……?」

マーリン「でもワイにはワイの誇りがあるん。この世界、人間だけでよぉ作らなあかん。それに手ぇ出すのはルール違反やで」

マーリン「……残酷なように聞こえるかもやけど、もしワイらが全て解決しとぉたら、それはきっと種としての終わりと同じや」

マーリン「『カーゴ・カルト』の一種に”フィリップ王配信仰”っちゅーんがあるんよ」

上条「カーゴ……?貨物信仰?貨物車信仰――って、レッサーが大分前に言ってたような……?」

マーリン「んー……日本ならマレビト信仰、ワイらで言えばプレスター=ジョンやよ」

マーリン「大体11世紀終わり頃、度重なるクルセイドが失敗に終わり、オスマントルコの脅威が十字教へ迫って来とぉた時や」

マーリン「東方三賢者の末裔にして、極東にあるとされた十字教の王、プレスターがいつか現れ、クルセイドを参戦するよってー、みたいな信仰やね」

上条「よく分からんが……」

マーリン「で、時は下って20世紀。連合軍がとある南の島で基地を作ろう、っちゅー話になって」

マーリン「原住民の助けも借りとぉ、港やら滑走路やらは特に軋轢も起こさず完成しとぉた」

マーリン「ちゅーのも、連合軍は島の原住民へ対し、持ってた物資やらを分けてすんなり了解を得とぉ。ま、これはエエやん」

マーリン「……ただなぁ、問題になっとぉのがこの後。原住民がなぁ……」

上条「話の流れからすると、連合軍へ攻撃した?」

マーリン「いんや逆。崇拝しよった」

上条「……はぁ?」

マーリン「なんや、元々の信仰の下地はあったらしゅうてな?こう『遠い所から我々の神さんが来ぉて繁栄させてくれよぉ』的な?」

マーリン「やから……まぁ、そのな?飛行機のメス作り始めよったんよ。いやマジで」

上条「……はい?」

マーリン「何でも連合軍の使ぉてる飛行機はオスなんやて。やから飛行機のメスを滑走路に置いておけば、また来てくれる――」

マーリン「そして『自分達に物資をもたらしてくれる』っちゅー、な?」

上条「笑えない話だな……」

マーリン「や、まぁその程度なら笑って済ますのもエエんやけど……原住民の人ら、今まで自分らが作ってきた文化を捨て始めよぉた」

マーリン「貨幣代わりだったら獣の歯を捨て、農耕や漁を止め、育ててきたブタやニワトリをさっさと捌いて食いよぉ」

マーリン「過去の文化を全否定して、作り始めたのが藁で作ぉたメスの飛行機モドキ、滑走路モドキ」

マーリン「他にも木で作ぉたヘッドホンやラジオにライフル銃。あ、あと入れ墨で神が作ぉてる名前を刻むのが流行っとぉな」

マーリン「その名前は『USA』」

上条「うわぁ……」

マーリン「今の例は極端やー……ちゅーてもなぁ、もし仮に神さんが居たとして、ホイホイ言う事聞いとぉたら、人類は終わりよぉな」

マーリン「狂ぉたセレーネのように、世界はただ静かに滅ぼぉわ」

上条「……」

マーリン「……ワイに出来る事なんてなんもあらへんよ。こうして、ほんの少ぉし手ぇ貸すぐらいが精々やし、それに……」

マーリン「……ワイの娘がなんぼ可愛い言ぅても、こうやって抱き締める事も出来ひん。側に居て名乗る事すら許されへん」

マーリン「傷ついて、傷ついて、傷つくのを黙って見てるしか……」

マーリン「……母親として失格やん、な」

上条「……」

マーリン「……何も言ぉてくれへんの?なんや、凹んでる女が居ったら慰めんのがマナーやで」

上条「……いや、アリサん時もそうだったんだが、ここで安請け合いするような事は言いたくない」

上条「そもそも俺は何も分かってはないから。世界の事とか、様々な事を」

上条「旅の間中、色々な話を聞いたけれど……それもきっと間違いではないんだろう。現実の一つなのは間違いない」

上条「でも、俺にとってはその殆どが遠い国の遠い話……嫌な言い方をすれば、”他人事”かも、しれない」

マーリン「上条はんは悪ないよ……そぉいうもんやで、人は」

上条「――でも、けれども、だ」

上条「だから自分の目で見る事にする。自分の耳で聞く事にする」

マーリン「……?」

上条「この世界が、幻想が現実を絞め殺しに来ている――そう、俺の知り合いは言ってた。俺も納得はした」

上条「でも、それが本当かどうか、俺はまだ自分の目で見た訳じゃない。事実を確かめたのでもない」

上条「だから――あぁ、だから」

上条「取り敢えずは”知ろう”と思う。何が正しくて、何が間違っていて……どっちも正しいのか、間違ってるかも知れないし」

上条「そうして知った上、もしくは調べながらも、俺は――」

上条「――俺”達”は――」

上条「――自分の歩幅で、歩いて行こう……と思うよ」

マーリン「……そぉかぁ。やっとぉ、上条はんがどんな判断するか、楽しみにしとぉわ」

上条「……つっても、出来る事なんかちっぽけだがな」

マーリン「ええんよ、それで。何もかも自分でやろうとしたら、結局は大抵独りで死んどぉ運命にハマるわ」

マーリン「どっかのホラ吹きのように、世界相手に嘲笑い続ぇ羽目になるよって」

上条「その例えはよく分からないが――イッ!?」 チュッ

上条(背中に張り付いていた重みが消え、その瞬間、頬へ柔らかいものが触れる)

上条(残ったのは濃厚な蜂蜜の香り……?)

マーリン「――ま、上条はんの最初の判断は誰を選ぶかやねっ!」

上条(俺が持っていたもふもふが喋り出し、背後の気配は音もなく消えていくが――俺は振り返らなかった)

上条(それが……礼儀のような気がして)

上条「……うん?誰?誰ってどういう事だ?」

マーリン「イヤイヤっ!?上条はん、以前ここで黄昏れてた時思い出してみぃよ!」

上条「黄昏……あぁ、うん、あん時もブラブラしてたんだっけか」

マーリン「なんで?なんでブラブラしとぉ?ほら、おねえぇさんに言ぉてみぃ?ホレ?」

上条「あー……そういや、なんか悩んでたんだよなー。なんだっけかなー……?」

上条「アリサの様子がおかしかった、とか?」

マーリン「いやいやいやいやいやっ!違うやん、そうじゃないですやんっ!」

上条「……つーか何でお前が俺の悩み知ってんだよ」

マーリン「何を今更……見とぉたからに決まっとぉ」

上条「見てた?どこを?」

マーリン「ウェイトリィ兄弟倒しーの、レッサーとベンチで腰掛けぇーの」

上条「ありましたねー、そんなの」

マーリン「ぶっちゃけそん時にコクられとぉよね?」

上条「……ありましたねー、そんなの」

マーリン「ちなみに逃げよぉ思ぉても無駄やで?堪忍しぃよ?」

上条「そ、その心は?」

マーリン「うん、今日はお疲れ会開こぉちゅー話になっとぉんよ」

上条「……あ、あの?俺そのお話聞いていないんですけど……?」

マーリン「あーうん、心配せぇへんといてよ!そこはバッチリ、このっマーリンさんに手落ちはないんよっ!」

上条「そ、そうか?」

マーリン「全員ここの交差点に集まれっちゅー手配しといたんよ、うん」

上条「よく分かったなー……じゃねぇよ、俺のストラップに変態(生物学的な意味で)してたお陰だろ!」

マーリン「や、さかいっ!ここで一体誰ルートへ入るんかっ!決めて貰おうやないのっ!」

上条「……」

マーリン「お、どぉしたん?顔色悪いで?」

上条「あ、ごめん!俺ちょっと塾の時間だから早く帰らないと!」

マーリン「うぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!みんなーーーっこっちこっちーーーーーーーーーーーっ!」

上条「黙れ変態生物っ!俺から逃げ場を奪うなっ!」

マーリン「……くくく、こないな展開になると思ぉてたわ!片腹痛いでこれしかしっ!」

上条「なぁ、素に戻って聞きたいんだけどさ。俺ってそんなに信用ないの?」

マーリン「や、ワイもね?別にそこまではー、みたいなの言ぉたよ?レッサー達に言ぉたんやけどもね?」

マーリン「上条はん、女性関係に関しては、更正前のジャン=バルジャン並に……うんっ」

上条「微妙に表現をボカしてくれてありがとう!その事実は俺が受け止めるには重すぎるからなっ!」

ラシンス「……あれ、時間的に端折られるんだけど……一回では更正しなかった……」

ベイロープ「……てか、往来で先生と話していると、その……」

上条「……分かってる。あぁ、分かってるさ!」

フロリス「ビョーキ持ちの人みたいに見えるジャン?」

上条「分かってるから言うなよぉ!一応は人払いされてるんだし!」

レッサー「あ、もう切れてますよ。じゃなかったらランシスがアンアン言ってるでしょう」

ランシス「……ふっ」

上条「何で勝ち誇るのか意味が分からない……多分、意味は無いんだろうけど」

上条「……ていうか、皆とも久しぶりだな。元気だった?」

レッサー「お陰様でまぁ何とかやっていますよー。てか怪我らしい怪我はなかったですし」

上条(そう答えるレッサーの髪の色は元へ戻っていた)

上条(……ただ、少しだけ金色のメッシュ部分が広がっているような……?)

レッサー「気になるんだったら、どうぞ手にとって確かめて下さいなっ!さあさあさあっ!おっ気軽っにっ!」

上条「ねぇレッサーさん?今俺ちょっとしんみりしてたよね?ちょっとナイーブな雰囲気出してたじゃんか?」

上条「なんかこう、『この子達は自らを犠牲にしながらも戦っていくんだな』的な余韻に浸るシーンだよね?」

上条「だっつーのにテメェはどーして胸突き出してんだ?あん?」

レッサー「え?おっぱい凝視してませんでしたか?」

上条「残念ながら今日は見てなかった!つーかどんだけおっぱい好きだと思われてんだよ俺っ!?」

全員(-1)「えっ?」

上条「この外道共が!テメェらの血は名前を言ってみろ!」

ベイロープ「色々ミックスされてるみたいだけど……」

ラシンス「予想以上に生態バレしてて混乱してるとみた……」

フロリス「や、でもホラ、さ?ジャパニーズ見るジャン?つーか見てたジャン?ワタシらを?」

上条「見て――ない、けども!ここはオトナだから話を合わせて見て事にしておくけど!オトナだからねっ!」

フロリス「視線に気づかない訳がねーよ、的な。ウン?」

ベイロープ「男と違って――ってのはあんま使いたくないけど、見られ”慣れてる”分だけ、女の方が視線に敏感なのよね」

上条「……待ってくれ!違うんだ!これはきっとアレがあーしてコレがこーしたから、それなんだ!」

マーリン「もはや良い訳も出来ひん時点で詰どぉよ」

レッサー「てかお好きですよね?」

上条「大好きさっ!そりゃ大好きだけどもだ!」

上条「――てかアリサさんは?まだ来てないみたいだけど!」

レッサー「その超絶強引な話題転換で誤魔化されると思ってる所は、”Too too Bad(残念)”ですが……」

レッサー「ま、少しだけ待てば来ると思いますよ」

上条「え?でもホラ、テレビで中継やってるし?」

レッサー「中継、ですか?」

上条「ほら、見てみろって」

街頭テレビ(レポーター)『――成程!流石はディフェンディングチャンピオン、貫禄が伺えますね!』

上条「ちょっと目を離した隙に凄い話が展開されてんな!何となくメシ関係の話だとは分かるが!」

レッサー「あれはあれで必要ですからねぇ。文字通り美味しい商売ですし」

上条「……あぁなんか違和感あるなーっと思ったら、食う量、元へ戻ってんのな」

レッサー「何のお話で?」

上条「夢ん中でのアリサの話、つーか設定?家事全般が得意で、料理も上手くて小食っつー感じだった」

フロリス「我に返ったら、『あ゛あああああぁぁぁぁぁっ!!!』ってシャウトする感じじゃネ?」

ランシス「触れないであげる優しさ……」

レッサー「いえっ!むしろここは延々イジッて差し上げるのが芸人的な意味での優しさかと!」

ベイロープ「それ、絶対違う。ていうかあなたとアリサは同じカテゴリじゃなかった」

レッサー「なんと!?エロ可愛いとコンセプトにして来た私がっ!?」

上条「お前はただエロイだけだ……て、まだインタビュー終わってねぇな」

レッサー「いや、ですからね上条さん?さっき頂いたメールに拠れば、それはとっくの――」

街頭テレビ(レポーター)『では最後の質問になりますが――ズバリ!』

街頭テレビ(レポーター)『ARISAさんには気になるお相手とかいらっしゃらないのでしょうかっ!?』

街頭テレビ(レポーター)『ファンも聞きたがってると思いますよ!ぜ。是非っ!お返事を――

マネージャー『――はい、と言う訳で会見は終わりになります。本日はありがとうございま――』

鳴護『……あ、ごめんなさい。その質問待ってました、実は』

街頭テレビ(レポーター)『――はい?』

マネージャー『………………ARISAさん?――っ!?中継停めろ!カメラもだ!』

鳴護『当麻君っ!上条当麻君っ!聞いてますか、聞いてますよねっていうか聞いて下さいっ!』

レッサー・ベイロープ・フロリス・ランシス「「「「……」」」」 ジーーーーーーーーーーッ

上条「………………俺?」

マーリン「あ、堪忍な。ワイちょっとコンビニ行っとぉから、続けて続けて?他意はないんやけど」

上条「自立移動不可能じゃ……あ、ふわふわ飛んでる」

鳴護『えっと……はい、その、色々、考えたんだけどね。その――』



鳴護『上条当麻君大好きですっ!あたしと結婚を前提にお付き合いして下さいッ!!!』

上条「――――――――へ?」

四人「……………………」

マネージャー『言いやがった!?つーか自分がリーダーに殺されますから!?』

鳴護『と、ごめなんさいっ柴崎さんっ!お姉ちゃんには”わたし”から言うからっ大丈夫!……多分!きっと!』

マネージャー『誰が言ったって殺さ――』

プツッ

街頭テレビ(司会者)『――はい、と言う訳ですね。先程の爆弾発言を投下したARISAさんでしたー』

街頭テレビ(司会者)『ARISAさんの言ってた、トーマクンとは一体誰の事なんですか?さぁー続報が待たれま――』

上条「――あー、ごめんな?俺確か父さんから呼び出しがかかって――」 ギュッ

上条「はにをふるんですかへいろーふさん?おれのほっぺがひたいんれすけど?」

ベイロープ「んー……何となく?」

上条「なんとなくなってなんらっ!?なんと――おぅ?」 ギュッ、ギュギュッ

上条「ふろりふはんとらんひすはんも、どおしておれをつねるんですか?つーかむっひゃいたいんれすけど……?」

フロリス「あー……アレだぜ?何となーく?」

ランシス「……右に同じ」

上条「ひや、れすからね――あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!?」 ギュゥゥッ!

上条「れんいんでひっひゃったらいたいわっ!?つーかなにひやがるっ!?」

レッサー「私に理由を問われるのであれば、やはり『何となく』としかお答え出来ませんがね」

上条「――って離せっ!つーか理不尽過ぎんだろーがよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

鳴護「……あのぅ、何やってるの、かな……?」

上条「アリサえもんっ!?」

鳴護「や、、やあっボクアリサえもん――っていうか語呂が悪いよっ!」

レッサー「一瞬ノッたアリサさんには敬意を表しますが、メッチャ似てませんでした」

上条「てかお前何やってんだよっ!?生放送でやらかしてくれやがなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

上条「つーか中継じゃなかったのかよっ!?……ハッ!?テレポート……ッ!?」

レッサー「テンパって良い感じに錯乱してらっしゃるようなんで、私の方からお伝えします。録画ですよ、あれ」

鳴護「ていうかそうじゃなかったら、お疲れ様会、あたしだけのけ者になると思うんだけど。だけどー?」

上条「そ、そうですよねっ!みんな仲間だもんなっ!よーし、それじゃっ行こうか!」

レッサー「――の、前に”ちょっと”いいでしょうか。ちょっとだけ」

レッサー「直ぐ、終わりますから。えぇホント、”直ぐ”に」

上条「……はい」

レッサー「あー、一応確認しておきますけど……その、私達、告白したじゃないですか?」

鳴護「……うん」

レッサー「アリサさんと私――つーか、関係ない顔してバックレようとしてやがりますけども!他の三人だって同じでしょーに!」

ベイロープ「レッサー……その、モノには言い方ってあるのだわ」

レッサー「違うってんなら、殴り合いましょうか?私はこんな事で嘘を吐かせるような人間じゃありませんよ」

レッサー「――という訳で『どう』でしょうか?」

上条「あー……うん、二人の気持ちは嬉しい。素直にそこはありがとう」

上条「俺なんか――つったら怒られるかもだけど、うん、本当に」

フロリス「あのーワタシらは……?」

上条「忘れてない……し、だ!その、えーっと――」

上条「――はっきり言う。俺は、お前達とは付き合えない」

鳴護「それは……全員フラれた、のかな?それとも他に……?」

上条「って言う事でもなくって……俺は、まだ学生なんだよ。どうやってもさ」

レッサー「……なーんか体良くゴメンナサイされてる気がしますよねぇ、そのフレーズ」

上条「……俺がそんな世渡りが上手いとでも……?」

ベイロープ「これ以上ない説得力……!」

上条「なんていうか、だな。なぁなぁにしたくないって言うか、半端な気持ちで流されたくないって言うかさ?」

上条「『あ、それじゃお試しで付き合ってみようか!』みたいなのもアリだと思うし、俺も実は付き合ってみたい、ってのが本音だ」

ランシス「……じゃ、なんで?」

上条「……例えば、やっぱり付き合っちまったらさ、その、上手く行ったら最終的には、あー……」

上条「結婚を前提に!みたいな、所まで話は進むよな?重いとかキモいとか言われるかもだけど、俺はそう思う」

レッサー「出来ればそれが嬉しいですよね。つーか、しやがってください」

上条「だから、俺が仮にイギリス組と付き合うんだったら、最終的にそっちかこっちで暮らすって覚悟が必要だと思うんだよ」

上条「好きだから、愛してるから、って誤魔化していい問題じゃない。後回しにすんのも論外だ」

ベイロープ「そう、よね。『明日から科学サイドの街で暮らせ』って言われても、直ぐにどうこうは出来ないし」

フロリス「や、ワタシは別にいいケド」

ランシス「だよねー……」

レッサー「空気読みなさいなっそこっ!珍しく上条さんが頭の中身使ってんですからっ!」

上条「一番酷い事を言ってるのはレッサーさんだからな?……ま、それはそっちの理由。次はアリサ」

鳴護「はいっ!学園都市っ、学園都市出身兼在住の鳴護アリサですっ!宜しくお願いしますっ!」

レッサー「……逞しくなりましたよねー、このアマ」

上条「あー……こっちは俺の都合だ。自慢じゃないけど――”バカ”なんだよ」

鳴護「え、知ってるよ?」

上条「『当然だよね?』みたいな邪鬼の無い顔で聞き返されてもな!レッサーとはまた違った嫌がらせだよ!」

上条「あーっと、アレだ。学力じゃなくって、生き方って言うのか?生き様?」

上条「……こっちも例えば、なんだが――目の前でさ、困ってる奴が居たら助けるよな?」

鳴護「それはいい事だと思うけど……?」

上条「その、誰を敵に回しても、なんだ」

鳴護「それが?」

レッサー「……あー、アリサさん。上条さんが言ってる『敵』のレベルがスゲーぜってお話なんですよ」

レッサー「私達がやったように、無償で魔神クラスの相手を出来ますか?」

鳴護「それは……出来るよ、きっと!」

レッサー「それがただの通りすがりの人であっても、命を賭けられますか?」

鳴護「それは……」

レッサー「あぁいえ、失礼。ワタシも意地悪を言ってる訳ではなくてですね、『上条当麻』って人は、”そーゆー”人なんですよ」

レッサー「もし仮に恋人になっても、彼女ほっぽり出して誰かを助けに行く――そして、最悪命を落とす」

レッサー「そんな”クソヤロー”です。要はそんな相手に耐えられますか、ってお話ですよね?」

上条「言い方がヒデぇな。間違ってはないが」

レッサー「ちなみにそのお話を私達へしない理由を聞いても?」

上条「……お前は来やがったじゃねぇか、あのロシアでさ」

上条「なんだかんだで理由付けて……きっと、オティヌス辺りとの最終決戦にも首突っ込んでくるつもりなんだろ?」

レッサー「上条さんのためではありませんよ、自惚れないで下さいな」

フロリス「(――と、言っていますが、解説のフロリスさん、どうでショー?)」

ランシス「(『べ、別に上条さんのためじゃないんだからねっ!』と、ネタに走らなかった……つまり!)」

ランシス「(照れてボケれなかった……なんだと思う)」

ベイロープ「(真面目にしなさい、マ・ジ・メ・にっ!)」

上条「……そか」

鳴護「……むー、レッサーちゃんの方が当麻君を分かってる気がするよっ」

レッサー「それは立ち位置の問題なので、お気になさらず」

上条「……つー事なんだけど、どうかな?」

鳴護「分かった、ていうか分かっちゃった、かな?」

鳴護「わたしが色々なモノを背負ってるように、当麻君も同じなんだよね。それは、理解したよ」

上条「ん」

鳴護「――でも、その上で言わせて貰うよ。当麻君こそ独りなんかじゃないんだから」

上条「と、言うと?」

鳴護「誰かとお付き合いするのは幸せな事だと思うし、逆にしなくちゃ不幸せだって事でもないと思うんだ。それはね?」

鳴護「でもね?当麻君がそうやって犠牲になる必要もないと思うんだよ、わたしは」

上条「俺が、犠牲に……?」

鳴護「……うん。当麻君のお話を聞いてると、『自分は迷惑を掛けるから、誰とも付き合えない』って聞こえる」

鳴護「間違ってはない……けど、納得も出来ないって言うか」

鳴護「『誰かを助けるために戦わないで』、なんて……言えないし、言っちゃダメだし」

上条「……ごめん。本当に、ごめん」

鳴護「だから――だか、ら。わたしは当麻君と一緒に解決したい、って思うよ」

鳴護「……あたしみたいに、一人で悩んでいたら答えの出ない事はあると思う。現に、当麻君になんて言葉を返したらいいのか分からなくて」

鳴護「……けど、そういう時は頼ってもいいんだよ。むしろ、頼ってくれないとやだ、っていうか」

上条「……」

鳴護「……上手く、言えないけれど、あたしは当麻君が好きだよ」

鳴護「だから、ね?一緒に考えたいって思う。解決出来る方法を探したいって」

上条「……ありがとう、アリサ」

レッサー「そう、ですよね。流石は、と言っていいのか分かりませんが、正道だとは思いますよ」

レッサー「一人一人の力なんてたかが知れてますからね、非常にいいお話でしょうなぁ」

上条「それじゃレッサーも――」

レッサー「――――――――いえ、真っ平お断りですよ。はい」

上条・鳴護「「………………はい?」」

レッサー「何言ってるんですかっ!何やってるんですかっそんな甘っちょろい事を!」

上条「ごめんタイム。ねぇレッサーさん俺達の話聞いてた?今ちょっといい話をしてたよな?」

レッサー「えぇ確かに。涙の枯れた私でも思わずもらい泣きしそうになる程でした!」

上条「バカにしてねぇかな、それ?」

レッサー「また上条さんの仰りたい事も分かりましたっ!ぶっちゃけ性的な意味でデキちゃったら困るからって事でしょ?分かりますっ!」

上条「ちょっと何言ってるのか分かんないですね」

鳴護「でも正解ではないけど、大体の主旨はそんな感じじゃ……?」

上条「アリサさんもシーっで、頼む?最近君もイギリス組に悪い影響を受けてるからね?」

レッサー「……まぁ、年頃の女の子の端くれやってる身としては、ですね。そのお気遣いもありがたいですよ?無責任にアレコレされるよりは、ずっと」

上条「良かった……話通じてた」

レッサー「でも――『それは上条さんの都合』ですよね?」

上条「そうだけど……それが?」

レッサー「あー、ウチにはですね。実は恋愛の達人が居まして」

上条「初耳過ぎるが……」

レッサー「そいつはあろう事か1000年以上前に、こう言ってやがりました」

上条「千年?つーか誰?」

ラシンス「『好きなものは好きだからしょうがない……ッ!!』」

上条「それ現代の作品っ!ランスロットは多分そんな事言ってない!行動へは移したけどもだ!」

上条「つーかまた変化球ぶん投げて来やがったな!」

レッサー「上条さんには上条さんなりの理屈がある。それは理解出来ますし、私も少なからず共感を憶えます」 ギュッ

上条「……あのぅ、レッサーさん?ものっそい力で腕を捕まれると痛いんですけど……?」

レッサー「――が、しかぁし!さんなに知ったこっちゃありません!それが魔術師というものですよっ!」

上条「勝手に魔術師を貶めるな!確かに俺が会った連中は全員そんな奴らだったけどな!」

レッサー「むしろ嫌がって下さった方が興奮します」

上条「変態だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

レッサー「と言う訳でレッツ既成事実!来年度からは『上条当麻の奇妙な冒険・イングランド編』が始まりますよっ!」

上条「いい話がぶち壊しじゃねぇかよぉ!なんだこれっ!これなんだっ!?」

上条「つーか何回も言ってるけどっ!お前らなんだかんだでヴァイキングの時代から成長してねぇだろオォィッ!?」

上条「何でも暴力で解決して来やがったくせに、何で21世紀になったら自由だ平和だって物わかりのいいフリしてやがるっ!?」

レッサー「……ふっふっふー!私は知ってますよー、上条さん!あぁ上条さん!」

上条「……何をだよ」

レッサー「嫌いに”なれる”んだったら、とっくに私の手を――私”達”を突き放してるでしょ?違いますか?」

上条「……」

レッサー「つーかむしろ嫌いになれず、ぶっちゃけ大事だからアレコレ条件を付けた――どうです?合ってますでしょ?」

レッサー「諦めて下さい。アリサさんも含めて私達を、今更突き放したり嫌いになったり――」

レッサー「――”その程度の事すら出来ないほど、入れ込んでる”んですよね?ねっ?」

上条「否定はしねぇが……」

レッサー「――と、合意も頂いた所でっ!お疲れ会へ行きましょーかっ!」

上条「……や、だから腕離して欲しい――ってアリサ?」 ギュッ

鳴護「……なーんかレッサーちゃんだけズルいと思うよっ」

上条「いやだから、ズルいとかじゃなくて、この子は残念な子だからな?主に頭と頭と頭とかがね?」

上条「っていうか両側からDに包まれるのは、なんかこう、下条さんが覚醒しそうだからっ!自制して上げて!?」

レッサー「――ね、アリサさん?どうです?生きてて良かったでしょ?」

鳴護「レッサーちゃん?」

レッサー「この下らねー世界であっても、まぁそれなりに楽しめるとは思うんですよ」

レッサー「泣いて笑って、ケンカしてバカやって……それが充分、何かのために戦う理由になったりもしますし」

上条「……」

鳴護「……うん、そうだね」

レッサー「――ってそう言えば、キス一回貸しでしたっけ?」

鳴護「――――――――――え?」

レッサー「よぉっし!行きなさいなランシスっ!そして上条さんはそのまま腕を放さないで下さいよっ!」

鳴護「ちょっ!?ここで!?あたし現役アイドルだし問題がありすぎるよ!?っていうか問題しかないし!」

鳴護「っていうか当麻君?当麻君はわたしの味方――」

上条 ギュッ

鳴護「当麻君がまた裏切ったよ!?」

上条(……と、まぁ路上で、しかもデカい交差点の真ん前で俺達は騒いでる訳だが)

上条(悪ノリするレッサーにラシンス、他人の振りをするフロリスと頭を抱えるベイロープ)

上条(全力で抵抗して失敗するアリサ……まぁ若干一名を除いて、その顔には笑顔が浮かんでいる)

上条(アリサに言われた事も、レッサーに指摘された事も。どっちも正しい事であってだ)

上条(俺が今更、この子達の手を離せるか、って言ったら論外で。つーか考える事すらしたくない訳でさ?)

上条(今さっきまで、街をブラブラしていた時の寂寥感はどっかへ吹き飛んでしまっていた……まぁ、それが証拠っちゃ証拠か)

上条(俺達の関係性は変わるのか、それとも変わらないのか。それはまだ誰にも分からないし、誰かに言われる事でもない)

上条(……ま、いつか離れる時は来るだろう。どんなに形になるのは分からないけど)

上条(寿命が来ればそれでお終い、事故にあってもそれも同じく)

上条(生きていても生活環境や生活圏の違いで、道を分かつ事はあるんだろう。それは当たり前の話で)

上条(でも。それが当然だとしてもだ)

上条「……」

上条(……暇な間、俺はケータイの電子図書館から『ファウスト』って本を読んでみた)

上条(アルフレドの言い回しが気になったのもあってだが……その中で悪魔がこう嘲笑う一節がある)

上条(『”最初から無かった”と”既に失われた”の違いはなんだ?』)

上条(『どちらも無くなっちまうってんなら、結果は押し並べて同じだろう。ならば俺は永遠の虚無が好きだ』――と)

上条(あのアホも似たような事を言ったが――俺は後者を選ぶ)

上条(どんだけ頑張っても無駄になるかも知れないし、突然の悲劇が全部無しにしちまうかも知れない)

上条(でもこうして。俺の手には俺達が積み上げたものがある)

上条(まだ『愛』や『恋』とかじゃないけど、紛れもなく『信頼』には値するだろう)

上条(これは誰にも、壊す事は出来ないんだから――)

ランシス「……そろそろ観念しよ、うん?」

鳴護「ランシスちゃん!?こういう時ばっか早――んんんんんんんんんんんんんんんんんんーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

レッサー「あ、舌入ってますよね!グッジョブ!」

フロリス「どーしたコイツらのノリは……?」

ベイロープ「テンション振り切ってるだけでしょ?後で死ぬ程凹むわよ」

上条(微妙にハブられてる俺だが、はっきり言ってやったよ!そう、胸を張ってな!)

上条「あ、ごめん。誰かっ!俺のケータイで衝撃的ムービーを撮っ――」

上条「――いやだから頼むって!だから今両手が塞がって――」

上条「――違う違う!そう言う事じゃない!これはほら純粋なアレだから――」

上条「だからっ!せめて写メだけでもおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

上条(……まぁ、締まらないのもお約束か)



――エピローグ -終-

――胎魔のオラトリオ -完-

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた全ての方に深く深く感謝を

スレ立ててから約17ヶ月、文字数換算で約114万語、お付き合い下さった方には深く感謝を
また様々なレスや無茶ブリがなければ最後まで書けなかったと思います
本当にありがとうございました

お疲れ会と言う名の卒業式(意味深)ですね。分かります。
ともあれ毎週楽しく読めました。本当にありがとうございました。

乙です
アフター期待していいですか?



>>124
お前何様だ

一年間楽しませて貰いました
お疲れ様です

『この世界』の上条さんは、結局最後までヒーローではなかったですね。
悩んで、結論を出して、それを相手の子達に返されて。
いつかは一人を選ぶのだろうけれど(それは五人のうちではないかもしれない)、結論を出すまでみんなで世界を見て、考えていこう。
そんな、ある意味ハーレムエンドよりも「この上条さん」らしい結論に、心がほっこりしました。

お疲れさまでした!

乙!!
アフター期待します


>>129
最期まで読んでるなんて、ツンデレ乙(笑)
てか、野生のカマチーなんて名乗ってないぞ(笑)

乙です

で、次は恒例の個別ルートのアフターですね、わかります
期待して待ってます
主にフロリスを

駄目だ マーリンのせいで五人が霞んだwww

まさかドゥークー伯○まで出演していただけるとは…… (本当に、ご冥福をお祈りします。)
こうなると、テコンドーのお兄ちゃんも出してあげたい気もしますが。

しかしマタイさん、前から思ってたけどけっこうノリノリですね。
ダース・シディ○スっちゅーより、バイキン○ンっぽかったですけど。

またのご出演を、ぜひ!

乙です
毎週楽しかった!

アフター期待してます

マーリンもロリババアだったのか

>>60
ありがとうございます

>>61
実生活でやってたら周囲へ迷惑を掛けるでしょうが、原作からして”魔術と科学が交差する時、物語はラッキースケベ”ですので
というか文体や構成を意図的に似せたのに、そう言われるのは当たり前ではあります

>>62
形としては全員ですかね。上条家の業としてなぁなぁにして結論を出せないのはお約束
そしてまた外堀を着々と埋められているのに気づかないのも遺伝でしょうか
あんだけ現役アイドルが公言してる時点で、御坂さん以下全ヒロインへ宣戦布告してんのと同じ

>>63
思い返してみれば家事とツッコミとヒロインを励ます以外は役に立っていませんが、まぁたまにはそういうのも
基本コンセプトが「立って歩こう」なので、おんぶに抱っこ的な事はしていません

>>64
レッサー「いいですかー?これは私の言葉ではありませんが、と前置きをした上で、こう言いましょう」
レッサー「――『辛いのなら、笑えよ。それで周りは救われる』――」
レッサー「私が『ロビンフッド』で狙撃された時にも、様子を伺ってる仲間へ対し笑ったように」
(※by榊銃士浪inサムライスピリッツ新章 ~剣客異聞録 甦りし蒼紅の刃~。
SNKはゲーム性に難がありますが、名キャラと名言は多いと思います)

>>65

>>66
終わりがなければ始まりもなし。惜しんでくださるのはありがたいですが、バードウェイさん時と同じく終わりは必ず
次を書くかどうかも分かりませんが、まぁその時は一期一会という事でご了承下さい

>>67
推しメンがフロリスなのは分かりましたが
原作では上条さんへ恨みを持っているキャラ――と、ここまで書いて白井さんを思い出しました
白井さんはフラグ立っていませんが、フロリスさんは原作でも展開次第で立ちそうな気がします

>>68
自然に近い程強い個体が好まれる傾向にあります。種としての存続は文字通り死活問題ですので
我々哺乳類の先祖が”眼”という形式を獲得したのも、突然変異(親のDNAをそのまま受け継いだ個体)が二度起きたらしく、
その意味でも優秀な遺伝情報は何を以てしても得がたい――と、考える種族も居るでしょう

時々現れるスプリーキラーも平時であれば凶悪犯罪者ですが、文明が滅びる際に出くわせば……的な話
ただ、個人的には継承すべき文明を捨てた人間を、人類と呼ぶべきではないと思いますが

>>69
程度問題ですが、『ブリテンのため』に戦う割には出張してますしねぇ
まぁどちらが好きであっても矛盾するものでなし

>>70
マーリン「あー、アレなぁ……あれネタやのぉて”魔術的な記号としてアーサー王へ近づいた”証左なんよ」
マーリン「本編でも言ぉたよぉに、なんちゅーかな、誰それの魔術を使おうとするやん?例えばオーディンやったら『槍』とかな?」
マーリン「もっと簡単な例を上げとぉ……あー……てるてる坊主、昔作ぉたよね?こう『あーした天気になぁれ』みたいなん」
マーリン「それは類感呪術、ジェームズ=フレイザーが『金枝篇』で定義した魔術やねんけど」
マーリン「ま、要はアレや。より使い力を欲すれば欲するだけ、オリジナルの真似っこが必要になるよって」
マーリン「てるてる坊主は雨乞いの一種やけど、地方によっては供物を捧げたりすんのは珍しくもあらへんし」
マーリン「インカ・アステカやと人身御供を饗しよぉやろ?”神話で神さんがそうやった”っちゅー理由で」
マーリン「やからウチの子ぉらが力を行使するに当たって、足りない実力を補うために”そうなる”必要があったんよ」
マーリン「……ま、逆に言えば『それだけ神話から現実を汚染する』っちゅー見方も出来るんやケド……」
マーリン「とにかく!そんな訳で”金髪の王”たるアーサーに変化せなあかんのよ!」
(※補足すれば、何故『アーサーが金髪なのか?』という点かありますが、古代から中世に於いては黒または栗毛でした。
が、東方三賢者が乞食(”こつじき”・漂白する賢人の事)だったのに、時代が下ると彼らが王へ入れ替わったように、
アーサー王もイギリスの支配体制が固まるにつれ、やはり王としてのイメージが固まっていき、金髪へ変わりつつあるようです。
そしてそんなお馬鹿な事をやっていれば、プレスター・ジョンのような王が生まれると)

ちなみに『外人=金髪』というイメージは間違ってないんですが、あー……結構染めてるブロンドも多いですよ
Wiki情報ですがロシアで10%、イギリスで3%なので、天然モノは意外と少ない上
金髪と言ってもくすんだ色や赤みがかってたりしますし、子供の頃は綺麗な金色だったのに成長すると変わったりも
眉毛と生え際である程度は判別可能です
露出(エロい意味では無く、含まれないでもないですが)が多いモデルや俳優は、見栄えの問題で染める確率が高いのも一因
そうして憧れたファンや一般人が真似をし、また更にブロンドが広がっていくと

あとスコットランドとアイルランドに赤毛(※栗色じゃなく赤毛)が多いため、イングランドではあまり好まれません
つーか一時期は露骨に差別されていた時期もあり、また現代でもしばしば目にします
あー……最近有名になってきた『レッドキャップ』って妖精居ますよね?”返り血で帽子を染めた好戦的な妖精”みたいな定義の
彼らの出自はブリテンで、しかも伝承が語られてる地域は『イングランドとスコットランドとの国境近辺』なんですよ、えぇ
と、いう事はつまり……ここら辺のいやーな話を腐る程耳にするのが民俗学です。最近多少風通しが良くなってきましたが

>>71
誰が一回だけのネタだなんて言った?

>>72-73
知人の話ですが、一時期そっち系のお店へハマっていたらしく、月3ぐらいで通っていたんですよ
ですがある時、見事に陽性の国にご当選したらしく(※軽い皮膚病、飲み薬で治ったらしいから多分カンジダ)、流石に懲りたと
で、懲りた結果、向かった先が――L○でした。振れ幅ハンパねぇだろ。つーかそのバスは確実に地獄行きだよ。直行だよ
ていうかなんでまとも且つ真面目な文化人類学のレスした後に、性病の話になるのか……

――上条家(新築) リビング

刀夜「『――とーまー?もしもーしもどうしたんだい当麻?』」

刀夜「……うん、切れてるね。どうしたんだろう?」 ピッ

詩菜「当麻さんはなんて?」

刀夜「んー?よく分からないなぁ――っと、ちょっと詰めて貰えるかな?」

???「……」

刀夜「それがねぇ、なんかパニクってたみたいだし。やっぱり学園都市でも同じ報道がされてるとか思えないよねぇ」

テレビ(司会者)『――先程、爆弾発言を投下したARISAさんでしたー』

テレビ(司会者)『ARISAさんの言ってた、トーマクンとは一体誰の事なんですか?さぁー続報が待たれますね!』

テレビ(司会者)『ファンにフルボッコだな……おっと、ダメですからねっ!絶対に暴力なんて!』

テレビ(司会者)『幾らよく訓練されたARISAちゃんファンでも!暴力はいけませんから!』

テレビ(司会者)『絶対ですからねっ!ゼ――』 プツッ

刀夜「……思いっきりリンチ的なものを示唆してるような気がするんだ……」

詩菜「ワイドショーのお話だと、まだお付き合いはされていないようですけどね……」

詩菜「……当麻さんったら、一体誰に似たのやら。ねぇ、刀夜さん?どう思いますか?」

刀夜「待とうか詩菜さん!?安易な容疑者捜しは良くないと思うよっ!私はねっ!」

詩菜「容疑者も何も、犯人は確定してると思うわ。刀夜さんってば本ッッッッ当に面白い事を言うのね?」

刀夜「詩菜さんっ瞳から光彩が消えかかってるから!?ヤンデレにならないで戻って来て下さいっ!」

詩菜「……ふぅ、当麻さんったら……」

刀夜「ま、まぁアレだよ!きっと何かの勘違いとか、誰かの身代わりになったとかじゃないかなっ!」

刀夜「そうでもないと当麻がアイドルの子に告白されるなんて、有り得ないと思うし」

詩菜「……やっぱり当麻さんは刀夜さんに似たのね、はぁ」

刀夜「……深々と溜息を吐かれても。その『分かってない』的な溜息は何?」

詩菜「女の子がね、わざわざ『好きだ』なんて冗談でも言える筈ないじゃないですか」

刀夜「そ、そう……なの?私は結構――」

詩菜「刀夜さん?」

刀夜「――世界で一番愛してますよっ詩菜さんっ!勿論当麻も一緒にねっ!」

詩菜「それに、ですね。本気じゃなかったらメディアを使って言いませんとも」

詩菜「それこそ『アイドル』の女の子にとっては致命的でしょう?」

刀夜「まぁ……そうだね。彼氏持ちのアイドル居なくはないし、特にARISAはシンガーよりも上手いって言われてる歌唱力が売りの子だからねぇ」

刀夜「同性のファンも多くて、そんなにダメージはないのかも知れない、かな?」

詩菜「それに『テレビを使った』のは……そうね、誰かに対する牽制かも知れませんよ?それとも宣戦布告」

刀夜「当麻が?……いやいや、まだ早いよ!」

詩菜「そうかしら?」

刀夜「当麻はをくれてやるつもりはないねっ!例え誰が相手でも!」

詩菜「刀夜さん、凄く気持ち悪いわ」

刀夜「ま、冗談……でも、ないけど。それより牽制かい?あんなに大人しそうな子が?」

詩菜「好きなものに一生懸命になるのは当たり前だし、あなたが思っているよりも女の子はずっと強かですよ」

詩菜「当麻さんにその気がなくても、別に『黙って言い分に従う』なんてルールもないでしょ?」

刀夜「……それは、うん。当麻は果報者なの、かな?」

詩菜「だって男の子は大きくなって初めて男になるけれど、女の子は生まれた時から女ですもの」

詩菜「世界をリードしてきた男性で、どんなに立派な英雄さんにも”おかあさん”が居るわ」

刀夜「言わんとする事は分からないでもないけどね」

詩菜「それに、私の場合――あの子ぐらいの年頃だと、刀夜さんのお嫁さんになるって決めていましたから、ね?」

刀夜「詩菜さん……」

詩菜「刀夜さん……」

刀夜「イングランドへ出張になって、色々と見て来たけれど、やっぱり私はここが帰るべき家だとつくづく実感したよ」

刀夜「何故ならば詩菜さん、あなたが私――僕の帰る場所だから」

詩菜「あらあら刀夜さんったら」

刀夜「その、それじゃ――」

バードウェイ(???)「――と、少し待て。いや大いに待とう、大馬鹿者の父親と天然を見事に遺伝させやがった母親よ」

刀夜「えっと……?」

詩菜「はい……?」

バードウェイ「『誰だっけ?』みたいな顔をするんじゃない!ずっと居ただろう!少し前にもまた席を譲ってるし!」

バードウェイ「展開自体ほぼ同じだろうが!貴様には学習能力がないのかっ!?」

刀夜「あぁうん憶えてますよお嬢さん!えっと――」

刀夜「――親戚のヌレンダちゃん?大きくなったねーオジサン元気にしてる?」

バードウェイ「キ・サ・マ・のっ!息子の将来の嫁のレイヴィニア=バードウェイだっ馬鹿者がっ!!!」

バードウェイ「ずっと居たぞ!貴様が日本へ帰って来てからもずっとだ!ずっと!」

バードウェイ「学園都市へ行こう――ってマークが言ったから仕方がなく行こうとしてたのに!貴様が、貴様が!」

バードウェイ「加齢臭臭いオヤジが加齢臭臭い家へ加齢臭い口で寄ろうと言ってたから!わ・ざ・わ・ざだっ!」

刀夜「あの、前にも言いましたが、加齢臭連呼されるのはちょっと……」

バードウェイ「あのまま直で向かっていれば!”蝕”にも間に合ったのに!全部かっ攫ってやったというのに!」

バードウェイ「『龍脈』の記憶は”同時並行する世界全て”と繋がっている以上!こう、私が華々しく解決する予定だったのに!」

バードウェイ「それが――蓋を開けてみれば、何日も拘束しやがって!?つーかそっちの女もだ!」

詩菜「あらあらまぁまぁ」

バードウェイ「随分若いしロ×コンかっ!?そういう血筋なのか、あぁっ!?」

刀夜「詩菜さんは私とそんなに変わらないんだけど……」

バードウェイ「よくやった!ある意味それでいいナイスペ×っ!」

刀夜「あれ?今×リが完全肯定されませんでしたか?規制法新しくなったのに大丈夫ですか?」

バードウェイ「とにかく!そしてともかく!貴様はさっさと対価を支払え!つーか今すぐだ!」

刀夜「対価……?」

バードウェイ「おっとここに褐色エルフさんと加齢臭男のツーショット写真がだな」

刀夜「――当麻の写真ですねっ!今お持ちしますからっ!」

刀夜「さぁどうかっそんな席ではなく上座へどうぞ!ささっ!」

詩菜「……刀夜さん?」

刀夜「いえ、違うんですよ詩菜さん?これは、ですね、この写真はですね――そう!」

刀夜「――敵の商社の攻撃なんだ!私は悪くないんです!きっとね!」

詩菜「えっと、レヴィニアさん?」

バードウェイ「んー?」

詩菜「当麻さんのお写真だったら、お二階の当麻さんのお部屋にありますから」

バードウェイ「そりゃどうもご親切に、レディ」

詩菜「わたしは……そう、少しウルサくするかも知れませんけど、どうかゆっくりしていってね?」

バードウェイ「あぁ気にしないでくれ給え。コピーしたら退散するし、気を遣って貰――」

詩菜「当麻さんの、小さい頃のお話に興味ないかしら?」

バードウェイ「――と、思ったんだが、折角の誘いを断る程に礼儀知らずではないさ。暫く厄介になろう」

詩菜「はい、それじゃまた”後”で」

バードウェイ「そうだな。それじゃ”後”で」

刀夜「そうだね、私も後――」

詩菜「――刀夜さぁん?」

刀夜「……バードウェイさんっ!?どうか弁護だけでも!」

バードウェイ「未遂だな」

刀夜「ほ、ほらっ!私は潔白だよっ!疚しい所なんてないし!」

バードウェイ「ただし私が止めなかったら、家族が増えていたかも知れない」

刀夜「異議あり!裁判官っこの弁護人は悪意を持っています!」

詩菜「却下ですっ☆……さ、こっちへいらして下さいな?」

刀夜「……………………はい」

――『父親からの電話』-終-

――『どこにでもあるようなありふれた夕の風景、そんな話』

――商店街

沈麻(さってと……今日はメシは何にすっかなー、と)

沈麻(昨日の残りは全部弁当に消えたし、冷蔵庫の中身はヴェイニッチと澪子、妃后に食われてると見た……!)

沈麻(まぁ……何人か手伝ってくれるし、量さえ買い込んじまえば特に困りはしねぇんだよー、これが)

沈麻「……」

沈麻(……なんだろう?今、『手伝ってくれるならいいじゃん!?こっちは一人でやってんだよ!』って魂の叫びが聞こえたような……?)

沈麻(親父の場合、100%自業自得ではあるんだが……母さん達が幸せそうだし、あんま強くも言ってやれないよなぁ)

沈麻(んー、まぁでもいつか殺すけどな!物理的に!)

沈麻(ていうか親父も子供の事考えろっつーかさ、あるじゃん?親は選べない、的な話?)

沈麻(どこのアフリカの王族か、シスタープリセン○か!いや知らないけどな!)

沈麻(姉妹仲荒れんだろう。常識的な考えでさ……)

沈麻「……はぁ」

アーサー「ってどうしました?一人でこの世の苦労を全て背負い込んでるような顔して?」

沈麻「あながち間違いじゃねぇけどなー……ってお前?」

アーサー「はいな、あなたの妹アッ!サーちゃんですが何か?」

沈麻「今不自然なタメが入らなかった?名前の先っちょの所に、ねぇ?」

アーサー「気のせいかと。つーか今帰りですか?珍しくお一人で買い出しですかねぇ?」

沈麻「いや、一人っつーか、お前は誰だっつーかさ」

アーサー「私らも部活上がりで、お肉屋さんのコロッケでも買い食いしよっかー、と、こっちへブラタモ○」

沈麻「日本語間違ってるよ?……ん?私”ら”?」

フローレンス「よっす。シズマも来たんジャン」

ランスロット「ここのコロッケは美味しい、し。メンチカツも絶品……」

ベイリン「あんまり食べるとご飯が入らなくなるわよ?」

ランスロット「ベイリンは良い……私とフローレンスは……っ!」

ベイリン「いや、だからこれは遺伝だから……」

フローレンス「それとワタシを一緒のカテゴリーにスンナ」

ランスロット「ヴォイニッチやフレイアにいつ抜かされるんじゃないかという恐怖が……!」

沈麻「……グダグダになってんなぁ、なんか」

アーサー「子沢山とママ沢山にはこういう弊害があるんですねっ!」

沈麻「俺のせいじゃない俺のせいじゃない俺のせいじゃない……!」

アーサー「父さんは割とチョロいですからねぇ。沈麻さんも確実に曰く付きの血統を受け継いでいますし」

沈麻「――はっ!?もしかしてお前らが子孫設定になってるって事は――」

沈麻「……アリサさんも、もしかしてどこかに……?」

アーサー「アリサ母さんですか?その方の娘さん、つーか私の姉は――あ、丁度そこの電気屋さんで映してますね」

沈麻「……映す?」

アーサー「そこそこ、テレビの方です」

観客(テレビ)『CHA・LI・CE!CHA・LI・CE!CHA・LI・CE!CHA・LI・CE!CHA・LI・CE!CHA・LI・CE!』

鳴護カリス(テレビ)『みーーーーーーーーーーーんなーーーーーーーーーーっ!CHALICEのライブに来てくれてアリガトーーーー!』

観客(テレビ)『オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ』

カリス(テレビ)『あたしも大好きだよーーーーーーーーーっ仙台ーーーーーーーーーーーーーっ!!!』

観客(テレビ)『オ、ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ……?』

沈麻「……なんで客席がキョドってんの?」

アーサー「学園都市ライブなのに『仙台サイコー』的なMCしたからじゃないかね?」

沈麻「天然って遺伝だったんだぁ……」

カリス(テレビ)『じゃ、じゃあじゃあ次の曲――』

ペーペーポー、ペーペペポー……(テレビ)

沈麻「ん?着信?――ってテレビの中からしてんな?」

カリス(テレビ)『――あ、はい、もしもしー?』

沈麻「ってお前かいっ!?ライブに集中しろや!つーかなんで持ってる!?」

アーサー「『あー、わたしわたし、あなたの可愛いアーサーちゃんですよっと』」

沈麻「そして堂々電話を掛けやがったバカがここに居た!?」

アーサー「『あ、今沈麻さん達と商店街に来てるんですけど、ご飯どうしますか?』」

アーサー「『帰って来るんでしたらリク受けますけど、どうですかね?』」

カリス(テレビ)『あー、うん。お食事には間に合わないけど、打ち上げキャンセルして帰るよ。他のタレントさんが気持ち悪いんだもん』

沈麻「お前も言葉を選べ、な?アリサさんはそこまでストレートじゃなかったんだ・ゾ☆」

カリス(テレビ)『ていうか、いいなーアーサーちゃん達、沈麻君と一緒なんだー』

アーサー「『ぶっちゃけ隣で中継見てますんで、メッセージあればカメラへどうぞ』」

カリス(テレビ)『あ、ホント?それじゃーねー――』

沈麻「オイっバカ待て!お前何言――」

カリス(テレビ)『カツ丼とソースカツ丼とカレーライスとスープカレーとオムライスとオムバーグとミートソースカツスパとチキンハンバーグに――』

沈麻・アーサー「……」

カリス(テレビ)『チャーハンとホットサンドとカツサンドとフォー丼とナポリタンとシーザーサラダと名状しがたいコーヒーゼリー(1kg)を――』

沈麻「……俺が予想していたのとはまた違ってたんだが、これはこれで大ケガしてねぇかな?ある意味放送事故?」

アーサー「まぁCHALICEファンは常々よく訓練されていると評判ですし、まぁ今更食生活が暴露された所で、えぇ多分。きっと恐らくは」

沈麻「というかやたらカツが多い気もするが……ライブで油分遣っちまったんかな」

アーサー「あ、ちなみに”CHALICE”は『聖杯』という意味も含まれていますし、結局落ち着く所へ落ち着いた、ってぇ意味ですな」

アーサー「……と、言う事ぁ、王様達が探し求めたものは――」

沈麻「なにそのミニ情報?親父達から聞いたの?」

カリス(テレビ)『――それじゃリクエストお願いだよっ沈麻君っ!』

沈麻「……全部か?全部俺が作るのか、これを?」

アーサー「……違いますよ、そんな訳ないじゃないですか!」

沈麻「……アーサーさぁんっ!お前手伝って――」

アーサー「ヴォイニッチさんも入れれば更に倍でしょう?ファィッ!」

沈麻「だからァァァァァァァァァァッ!俺の、俺の扱いが悪りーーーーーーーーーーーーーーーんだよっ!」


――『どこにでもあるようなありふれた夕の風景、そんな話』 -終-



そして全てを嘲笑う



そして全てを嘲笑う

――???

 また一つ、世界が終わった。いやより正しくは”これ以上の見る必要がなくなった”と、言うべきだろうか。
 地球儀のような霊装から目を上げ、隻眼の魔神は、ふぅ、と溜息を吐いた。

 世界の可能性は無限にあり、明日第四次世界大戦が起きる事もあれば、また明後日には人類滅亡が確定する事もある。
 蝶の羽ばたきでライオンが欠伸をし、さざ波が大河を遡る現象すら、ラプラスの悪魔は内包している。

 だが、そのような『突飛な世界』は滅多に起るものではない。

 仮に毎日通っている道を外れる世界があったとしよう。いつもと違う道を行けば、通った数だけ世界は分岐する――が、ここで奇妙な行動を起こすのは極めて稀であろう。
 常識的に考えて回り道、精々サボタージュするぐらいが関の山。
 ふと思い付いてマフィアの事務所へ殴り込みへ行ったり、悪い王様を倒しに行く奴は有り得ない程の確率に過ぎない。

 しかしまた、無限に広がる混沌の中では、そんなバカバカしい世界もまた存在し、その世界からまた分岐が始まる。

 ――そう、『上条当麻達が蝕月の魔神を倒した』という、有り得ない世界が。

 本来の時間軸では起こりえなかった『奇跡』が起き、有り得ない筈の他の魔神の介入を知り、慌てた時には全てが遅かった。遅すぎたのだ。
 近くにあった駒をエインヘリャルへ変え、辛うじて助言するのが精一杯。後は食い入るように経過を見入る以外に出来る事はなかった。

「………………チッ」

 全知全能では無かったのか?それともまだ何かが足りていないのか?
 世界を自在に操る術を得たというのに、どうしてこの世界は自由になりはしないのか?

 様々な焦燥が少女――少なくとも外見は――の胸を焦し、再び舌打ちでもしたい気分になる頃。

 『それ』は現れた。音を立てずに虚空へと――そう、まるで。

「……?」

 魔神に心当たりは無い――と、いうよりも酷く不格好な屍体であった。
 それなりに整っていた容姿は見る影も無く、四肢はだらんと垂れ、一流ブランドのスーツは着崩れたままだ。
 屍体特有の腐った臭い、腐りかけの林檎に似た少し甘い匂いが鼻を突き、”これ”がまともな状態ではない、そう饒舌に物語っていた。

 それでもまだ、それだけであれば辛うじて生者か死者の区別は付かなかったであろう。
 駅のホームで寝転がっていたとしても、ただの泥酔した酔っ払いとして片付けられたかも知れない。

 けれど全てをぶち壊しにしているのは顔だった。
 両目は鋭利な何かでくり抜かれ、そのまま脳幹を貫通して後頭部へ穴を覗かせている。
 しかもその額の中央部にも同じ痕跡が刻まれており、脳髄は内部でグチャグチャにかき回されているのは必定だ。

 魔神の少女には見覚えがあった。たった今まで眺めていた世界の悪役、どこかしらから現れた魔術師の男。
 最期の最期に生き延びようとしたが、『ブラフマーアストラ』で射貫かれ、絶命した。たったそれだけの人物だ。
 働き自体はそれなりではあったが、結局負け、命を落とした。取るに足らない存在。

「――ふんっ」

 魔神が蝿を追い払うため――例えば人類最高峰の魔術師でも、同じ事をしただろうが――軽く手を振る。
 それで終わる。全てが終わる。何故ならば彼女はここの支配者だからだ。
 閉じた世界の、終わった終末の向こう側に君臨する暴君。たかだか屍体を消すのに躊躇も、容赦もありなどしなかった。

『………………く』

 だが――しかし。屍体は笑う。

『………………くく、クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハっ!!!』

 全てを――魔神ですらも嘲笑う。

「貴様――”何”だ?」

『俺かい?散々言ったじゃねぇか、つーか分からなかったか?分からなかったのかよオティヌスよ!』

 屍体の両目、そして額に開いた傷跡が燃え上がり、輝きを増す――。
 それは、それこにあるのは闇の中で燃え上がる三眼――。

『何が完璧な世界だ!何が全知全能だ!よくまぁそれで神を名乗れるなぁ!?』

「……黙れ」

『たかだか男一人すら!カミやん一人の心すら折れない甘ちゃんの!一体全体どこら辺が完全な存在だというのか!』

「黙れ」

『あぁおかしい、アァオカシイ、嗚呼可笑しい。くっ、くはははははははははははははははははははははははははははははははっ』

「黙れ!」

『貴様の創った世界には既に綻びが出来て居るぞ!あっちにもそっちにも!ほら――ここにもだ!』

「……」

『秩序ある世界なんか創れっこない!破綻しない平和も、永遠の闘争なんてのも出来やしな――』

 ザシュッ。

 軽い音を立てて、屍体はなんの痕跡も残さずに消える。一寸の血痕や血臭も残さずに。

「……なんだ、アレは」

 隻眼の少女は振り上げた『槍』を降ろし、また溜息を吐く。
 あまりにも跡形無く消えた”アレ”は白昼夢では無かったか?それとも自身が狂ったのか?

 そう韜晦する間もなく。

『さァさァ魔神よ!滅びの足音は聞こえたか?英雄が来るのを楽しみに震えて眠るが良いだろうさ!』

「貴様――何者だ!?」

『ゆめゆめ忘れる事無かれ――汝が最古の魔神であらぬ事を!

『つねづね忘れる事なかれ――汝が最後の魔神であらざる事を!』

『天界の頂には天帝ゼウス!星辰の彼方には天津甕星!海界の奥深くには死して眠る異形の神達が貴様の揺り籠を簒奪せんと牙を研ぐ!』

『……ほぉら見てみるが良い。そこに出来た暗がりを、単眼では見通しきれぬ夕闇の住処を――そう』

 何者も逃れられない程の魔力を発し、気配を探っても姿は見えない。
 その代わりに。閉じられた世界へ、終わった世界の中で。

 ――ただ、嘲笑う。

『貴様の背後には、もう混沌が這い寄っているぞ……ッ!』

『クッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!』


――??? -終-

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

>>123
ありがとうございます。お疲れ会は健全でした……よ?

>>125
確実に期待を裏切ると思いますが、まぁはい

>>126
ありがとうございます

>>127
こちらこそお付き合い下さってありがとうございます

>>128
世界情勢を含めてリアルに書きましたので、安易な結論や誰かが用意した答えに飛びつかないのもテーマの一つでした
――とは、言うものの。実際の所、得てして女性の方が現実的且つ逞しくもありましてね
それぞれのキャラクターには個性がありますし、「あっはい、そーですか」と引き下がるような人間が居ないのもまた事実です
(上条さんの意思は尊重するが、相互不可侵を守るとは言ってない)

>>130
ありがとうございます

>>131
フロリスさん意外な人気出ましたねぇ。『新たなる光』では二番手ですが

>>132
伏線回収に必要でしたのでつい

>>133
ネタです……が、ベネディクト16世猊下は意外と愉快なオッサンらしいです
知り合い曰く、「師はジェダ○の象徴たるライトセーバーを嫌ってはおるが、腕前はマスタークラスに相応しい」と

リーさんはこれ以上年齢を重ねると怪しまれるので、一度リセットしただけの話です
多分今頃トランシルヴァニアの次元の狭間奥深く、ゴーメンガースト城で有角さんとダベってんじゃないでしょうか

>>134
ありがとうございます

>>135
マーリンの中の人、某魔神は『単独で三相女神を成す』とされています(※ネタではなく文化人類学に於いて)
ギリシャ神話での三相女神の例だと、

○セレーネ――三日月、少女
○アルテミス――満月、女性
○ヘカーテ――新月、老女

これらの月の満ち欠けのように、神も役割分担をしています。他にもクロートー三女神(アホ曰く、サブプランの”K”の女神)、
後はスクルド・ベルダンディ・ウルドのように、『時』を分割して象徴しているのが一般的です

が、ギリシャ神話よりも更に古い時代、大体紀元前25世紀頃?では女神の分化は行われておらず、
一人の神が姿を変えてシンボルとなっていたです。つーか多分オリジナルっぽい

学生が多い学園都市へ入り込むには、子供の姿を取ったというのが真相ですね



――『胎魔のオラトリオ アフターシナリオ”死者の書”』

――学校 放課後

キーンコーンカーンコーン……

上条「……」

青ピ「おんやー?どうしたんかいな、授業も終わったちゅーのに!」

上条「……お前か」

青ピ「さぁ暗く冷たい檻からボクらは解き放たれた!いざ世界が羽ばたく時がキマシタワー!」

小萌「……折角のお勉強そんな風に言われるのは心外なのですよー?」

青ピ「具体的には遊びに行きまっさ!もっと具体的にはナンパ!」

青ピ「鬱々とした時代こそボクらかリードしなくてはいけない世界に――」

上条「……」

青ピ「てぇ、どうしたんでっか?さっきから一言も喋らんと、ポンポン痛い?」

小萌「あー……言われてみれば今日は少し元気がないように見えますねー。何かありましたか?」

上条「……まぁ、あったっつーか、カマされたっていうかさ、うん」

青ピ「……そうなん?よくは分からんけど、災難やったねぇ……」

小萌「気を落としちゃダメなのですよ!頑張れば良い事があるかも知れないのです!」

上条「そう……かな?そうだよな、きっと!」

上条「前向きに!あくまでも真っ当な生き方をしていれば、報われるよな!」

青ピ「その意気だぜぃ――”とーまくん」

小萌「その通りなのですよ――”とーまくん”」

上条「……」

青ピ「あんれー?あれあれあれあれ?ここは『お前、土御門の語尾と被ってるよ!』ってツッコミする所とちゃいますのん?ん?」

小萌「ツッコミ役がツッコミを放棄しちゃダメなのです!めっ、なのですよ!」

上条「あのー……ちょ、ちょっといいかな?些細な事なんだけどさ」

青ピ「なんやの?」

小萌「はい?」

上条「二人とも俺の呼び方おかしくないかな?」

青ピ「え、なんですのん?何を急に言い出してますのん?」

小萌「何かおかしい所でもありましたかー?」

上条「や、なんつーかそんなにフレンドリーだったっけ?名前呼びするような?」

青ピ「ペーターのバカっ!」 ビシッ

上条「そげぶっ!?」

青ピ「ボクはそないな子ぉに育てたつもりはないよって!そんな、そんな些細な事に気ぃ遣うなんてぇな!」

上条「お前……」

小萌「ペーターちゃん関係ないのですよ。悪いのはクララちゃんであって」

上条「そう、だよな?俺がきっと気にしすぎなんだよな、うん」

上条「……悪い。なんかこう気が抜けちまったようでさ」

青ピ「ええんよ。誰やっても具合が悪い日ぐらいあるわいな」

小萌「そうなのですよー」

上条「……あぁ!」

青ピ「――で!それはともかく現役のアイドルから『とーまくん大好きっ!』って生告白されてどんな気持ちなん?」

上条「やっぱりそれかよっ!?か分かってたけどな!」

小萌「異性交遊はよくないのですけど……職員室でも『上条ちゃん、今度は大物狙いに行った!?』って騒ぎになってるのですよ」

上条「狙ってないですね?ていうか職員室でネタにされるぐらいに有名なんですか!?あえて言えば見えざる神の手みたいなねっ!」

青ピ「いやぁ、な?大体もっと早く噂されてんのに気ぃつきませんかぁ?他のクラスからも時々見て来てる奴もおるし」

上条「そっかー!だからかー!」

上条「だから朝っからずっと姫神さんと吹寄さんが俺を道端で死んでる虫を見る目なんだ!てっきりご褒美かと思った!」

小萌「それでご褒美だと思う辺り、上条ちゃんは訓練されすぎなのですよ」

青ピ「つーか今は何やったんよ?怒らないからボクに教えてみ、ほら?」

上条「どう聞いてもフラグにしか聞こえねぇが……まぁ別に珍しい事はしてないしなぁ」

小萌「どこからか強権が発動したらしく、いきなり語学留学の話が出た時には……先生、ビックリしちゃいましたけど」

小萌「フランスのテレビ局で、フランス人へ喧嘩売ってる上条ちゃんを見た時には心臓が止まるかと……!」

上条「あれ!?それ俺がやらかした事になってんの!?」

青ピ「ま、でもアレですやん?親友としちゃアイドルから告られて鼻が高いですよって」

上条「告白……まぁ、ありがとう」

青ピ「――だがしかし、ARISAファンとしては納得いかへんのよ。これが」

上条「お前――まさかっ!?」

青ピ「今頃気づいたんでっか、カミやん。もうこの教室は包囲されてるという事に……!」

上条「そう言えばさっきまで居た姫神達が居なくなって、他のクラスの奴らが入って来てる……まさか!?」

青ピ「……ま、無粋な事は言いっ子なしですわ。シンプルに行きましょーや」

青ピ「ARISAを――このボクらが育てたARISAとの時間を思い知るがいいカミやん!」

上条「ちょっと意味が分からないですね。お布施的な意味でかな?」

青ピ「はっきり言うわ!ARISAのたゆんたゆんをたゆんたゆんたゆんしたければ――」

青ピ「――ボクらの屍を越えて行かんかい!」

ファン一同「イーーーッ!」

上条「お前ら本音がダダ漏れになってる。あとたゆんたゆん言い過ぎでゲシュタルト崩壊しそう」

小萌「プラスして先生をそこへ加えないで下さい。純粋に歌のファンなだけですから」

上条「あ、小萌先生も?」

小萌「はい、なので本来イケナイ事なのですが、サイン的なものを頂けないかなーと思っちゃったりしたりなんかしまして」

上条「他の連中には制限無くなるからダメだけど、小萌先生だったらこっそり」

小萌「――はい、解散!いつまでも学校で騒いでるのはめー、なのですよっ!」

小萌「悪い子は先生が課題を出しちゃいますから、早く帰るのです!」

青ピ「速攻で裏切りおった!?……あぁ、でもそんな小萌先生もキュートやわ……」

上条「お前はもうちょっと懲りる事を憶えるべきだと思うんだよ、いや割とマジで」

青ピ「な、ならこうしません?物理的な暴力はなしで!なんかこうゴールデンタイムにやってる面白くもなんともないパーティゲームみたいなので決めますし!」

上条「暴力ありだったのかよ、最初」

青ピ「ここには校内の濃いARISAファン20人が集まっとる!さぁカミやん!ボクらのファン愛を越える事が出来るか!?」

上条「ファン愛ねぇ……俺は俺でアリサと友達なんだけどな。まぁCD貰ったし……ファンでもあるか」

小萌「勝負はどうするのですかー?暴力だったら黄泉川先生を呼んで制圧してもらいますからね?」

青ピ「それはそれでご褒美ですが――古今東西ゲーーーーーーム!パチパチパチパチっ!」

上条「あぁ、この人数だったらそれが早いかもな」

青ピ「……くくく!甘い、甘いでカミやん!まるで新しいノンカロリーコーラのように甘い考えやわ!」

上条「あれそんなに甘くねーぞ?」

青ピ「ここに残ってるのは校内から選りすぐられた猛者の集まり!ARISAの無駄知識に関しては一騎当千の強者ばかりや!」

ファン達『ぶおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

上条「うわぁ……」

小萌「あのぅ、学校はお勉強を優先……なの、ですよ?」

青ピ「ではお題――古今東西ゲーーーームっ!『ARISAの好きなもの、さんっハイッ!』」

パンパン

上条「カレー」

パンパン

青ピ「カツカレー」

パンパン

ファンA「シーフードカレー」

パンパン


~30分経過~

上条「……ごめん。ちょっとタイム、これ終わらなくね?千日戦争状態じゃねぇかな?」

青ピ「……言われてみれば――ARISAに死角は無かったもんね!」

上条「嫌いっつーか、お題は好きなもんだった筈だが……大体出そろったよな」

小萌「途中から先生が板書しましたけど、古今東西・和洋中全部出てるのですよ」

上条「そりゃ高校生22人が思い付く限りの食べ物上げれば、まぁ思い付く限りは大体はコンプリートするわな」

小萌「その労力をもうちょっと、出来ればお勉強にですね、その学生なんですし」

青ピ「――甘い、甘いでカミやんっ!ペプ○のストロングコー○のように甘い考えや!」

上条「いやだから、あれ別に言う程は……うん」

青ピ「例えるならば――そう!スーパーのワゴンセールの値下げ商品覗いたら、ニンニンジャ○の黄色い奴が大量に積まれとったわ!」

上条「キニンジャ○の事かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

小萌「上条ちゃん、ツッコム振りをしてボケ倒してないですかね?あってますか、それで?」

青ピ「ワイのメル友の地元にはゴールデンウィークだろうが夏休みだろうが、黄色系のヒーローしか来やしませんわ!」

上条「あー……ツッコみづらいな!」

青ピ「やっからァァァァァァァァっ!見せたるわっボクらのファン魂を!」

青ピ「ARISAファンとして!ARISAの古今東西ゲームで負ける訳にはいかへんのやで!」

上条「関西弁怪しくなってる」

青ピ「ワイは……男には結果が分かってても前に進まんといかん時があるんよ!」

小萌「一人称も変わってますねー」

ファンA「隊長……そんな、隊長だけにそんな事はさせられません!」

ファンB「そうですよ!隊長にやらせるぐらいだったら俺が!」

ファンC「何言ってんだよ!だったら俺が!」

青ピ・ファンAB「「「どうぞどうぞどうぞ」」」

ファンC「聞いてないよ!?」

上条「ねぇ帰っていいかな?俺帰りにスーパー寄んなきゃいけないんだけど」

小萌「上条ちゃんは相変わらず自活していて偉いのですよ」

上条「というかこれ事前に打ち合わせしてるよな?明らかにコント臭がプンプンするって言うかさ」

青ピ「さぁ、バトルはまだ終わってへんよカミやん!ボクらの男気見ぃや!」

上条「いやだからそれ神戸弁だっ――」

青ピ「――古今東西ゲーーーーーーーーーーーーームっ!お題はARISAの好きなモノっ!はいっ」

パンパン

上条「あー……パス」

青ピ「はいっカミやんアウトー!これでボクらの勝利は決まりましたやん!」

小萌「この後、誰かが答えられなければ引き分けになりますけどねー。先生的にはそっちの方がいいのですよ」

青ピ「では野郎共!生き様を見せたろやないか、さんっはいっ!」

パンパン

ファンA「……か――」

上条・小萌「か?」

ファンA「か、か、か……」

上条「何で溜める必要があんのか分かんねぇんだけど……」

ファンA「――ぐふっ!?」

上条「回答中に舌噛みやがった!?」

小萌「――と、見せかけてドクターペッパーですね」

上条「あぁうん、絵的に似てないですよねー。深い意味もありませんしー」

青ピ「オイっ!大丈夫だ!傷は急所を逸れて――」

ファンA「……あとは――」

青ピ「なんや?何が言いたいんや?」

ファンA「――たの、む」 ガクッ

青ピ「お前――お前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

上条「(つーか小萌先生、さっきから思ってたんですけど)」

小萌「(はい?なんなのですか?)」

上条「(ARISA親衛隊ウチの高校支部の連中、誰も名前呼んでませんよね?)」

上条「(って事は多分、”お互いに名前は知らないけど、何となく趣味の話題で盛り上がる”程度の繋がりって事ですかね?)」

小萌「(あぁありますよね。なんかクラス違うんですけど、少し話すみたいな)」

上条「(ちなみにウチのクラスの青髪ピアスの本名ってなんて言うんですか?)」

小萌「(――しっ!上条ちゃんコントが良い所になってきてますから!)」

上条「(まさか小萌先生も把握してない疑惑が!?)」

ファンT「僕は君と一緒だ……どこまでも君と行くよ――かはっ!?」

青ピ「ファンTァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」

上条「呼んでやれよ、良いシーンなんだから名前ぐらいは呼んでやりなさいよ」

上条「ていうかアルファベットで20番目なら『ファン”ティ”』で良くね?」

上条「何でファン”タ”になってんの?売り場でジュース買ってってダダ捏ねてる子供みたいになってるからな?」

小萌「あと、そのファンTちゃん台詞はゲームボーイアドバン○の鉄腕アト○(※トレジャ○制作)で、ファンは号泣しそうになったのですよ!」

上条「ゲームボ○イ?なんですか、それ?」

小萌「あ、ほらっ上条ちゃん!青ピちゃんが何しようとしてるのですよ!」

上条「先生誤魔化し方超ヘタですね――っていうか名前を呼んであげて!」

青ピ「……ふっ、カミやん。勝ち誇るのはまだ早いでっせ……!」

上条「勝ってねぇよ。全員ほぼ均等に大怪我してるよ!」

青ピ「ワイは一人に見えるかも知れへん――けれど心や、心の目で見てみぃ!」

青ピ「ファンA、ファンB、ファンC……20人分の魂が耀いてる筈や!そりゃもうギラッギラに!」

上条「濁音……うん、なんか生々しいけど、お前が良いって言うんだったら別に」

青ピ「それはもうパラッパラに!」

上条「チャーハンだよね?イイ感じにご飯がほどけてる感じだよね?」

青ピ「……ファンの心意気!その眼に焼き付けて行かんかい!――古今東ざーーーーーーーーーーーーーーーいっ!」

青ピ「ARISAの好きなモノ――さんっはいっ!」

パンパン

青ピ「……」

上条「……あ、止まった」

小萌「あれですかね。こう、何か目に見えない葛藤的なものなのでしょうか?」

上条「いやぁ、どうでしょう?」

青ピ「――なんじゃこりゃあ!?」

上条「松田優○の殉職シーン始まったぞ」

青ピ「ボクは……こんな所で、こんな所で負けるかい……!」 プルプルッ

上条「なんだろうな。生まれたての子鹿のようなリアクションは見事なんだが、する意味が分からない」

青ピ「――ARISAのぉ、ARISAの、一、一番、好きな――モノ、はっ!」

上条「……」

青ピ「――『カミやん』や……ッ!!!」

上条「……うん?」

小萌「あー……成程なのですよ」

上条「先生?」

青ピ「ボクは!ボクらは確かにARISAの好きなモノやないよ!つーか多分名前も憶えて貰ってもないわ!」

青ピ「握手会に婚姻届持ってった時も、ボクと同じ行動しおったんは結構おったわ!」

上条「ごめん。普通に引く」

小萌「それ以前に”何人か居た”時点で、黄泉川先生の担当になるのです……」

青ピ「カミやん!カミやんはARISAの一等賞になったかも知れへん!またなんかこうラッキースケベを拗らせたんは分かっとるわ!」

上条「俺の評価、散っ々だな!」

青ピ「――そやけど!ファンは!ARISAのファンは!」

青ピ「ボクらが一番や!何故なら――」

青ピ「――そう!カミやんが知らないアイドルとしてのARISAを知っとるさかいに!」

上条「どういう事?」

小萌「『ARISAのファンとして、ARISAちゃんが上条ちゃんを好きなのは認めますよー』、なのですね」

小萌「『でも彼氏彼女じゃなく、ファンとしての知識であれば上条ちゃんには負けないぞ!』と」

上条「……そっか。ありがとな」

青ピ「何を仰いますカミやん!ボクら――トモダチ、ですやんか?」 グッ

上条「そ、そうだねっ!友達、だねっ?」

キーンコーンカーンコーン……

小萌「あ、そろそろ下校の時間なのですよー」

上条「あ、はい。さよなら先生」

青ピ「まいど!……あ、そうそうカミやん、一つ頼みがあるんやけどエエかな?」

上条「おう、何?」

青ピ「同じ事務所でARISAのMCやってる黒髪ロングの子って彼氏居るん?」

上条「ダメダメじゃねぇか!つーか乗り換えるの早っ!?合理的っちゃ合理的だけどさ!」

青ピ「居なかったら電話番号聞いといてくれへん?なんやったら紹介してくれるだけでもエエし、なっ?」

上条「――はい、お疲れー」

青ピ「あ、ちょっ!待ってぇなカミや――」

パタンッ

――昇降口

上条「――つーかさ、お前普通に彼女作る気になんないの?」

青ピ「ボクがでっか?」

上条「土御門もお前も、社交的だし外見もまぁ普通なんだし、普通にカノジョ出来るんじゃねぇのか?」

青ピ「何を仰いますかセンセ!ボクが求めているのは恋やで?」

青ピ「彼氏彼女になるんは目的やないよ!好きな者同士がなるのが先や!」

上条「ま、そうなんだけどな」

青ピ「それでやっぱりカミやんって義妹派?それとも実妹派やったっけ?」

上条「出て来い、なぁ?まずお前は二次元から三次元へのランクアップを果そうか?」

青ピ「いつんなったらミ○さんは出て来るんかいなっ!?」

上条「落ち着け!多分この学園都市だったらそっちの方向で突き進むバカも絶対居る筈だから!」

上条「ていうかボーカロイドを三次元化させようが、歌しか歌わせないんだったら意味無いよね?!」

青ピ「そりゃ……アレですやん?そう――」

青ピ「――ボクだけのアイドルになって欲しい、的な!」

上条「言ってる事はちょっと格好良いけど、それシモだよな?つーかテメェ初○さんに何させるつもりだコノヤロー」

青ピ「イケズやでカミやん。そないにビリビリせんと」

上条「ビリビリはしてないけど――ビリビリ?ピリピリの間違いじゃね?」

青ピ「そうやろか?でもいや、ほれアレ見てみぃよ」

上条「見る?なんで?」

青ピ「やっから、アレや。アレ。校門んトコ」

上条「んー……?」

御坂 ビリビリビリビリッ

上条「スッゴイビリビリしてますよねっ!ていうか物理的にスポォアァァク(※巻き舌)させてますしね……ッ!!!」

青ピ「やなぁ。まるで自分の友達へ手ぇ出した悪い野郎を成敗しに来よった感じや!」

上条「的確な状況説明ありがとう。でもこれ詰んでるよね?」

青ピ「――何を仰いますやら上条はん!」

上条「舞妓さんになってんぞ」

青ピ「今こそ我らの無双の友情を見せつける時やおまへんかっ!」

上条「友情……そうだね、友情って何だろうな。世界全部敵に回しても、信じ抜く事だよな、きっと」

青ピ「この場はボクに任せて先へ行きぃや!」

上条「その心は?」

青ピ「たまにはボクにも出会いが欲しいねん」

上条「あぁうん。予想を裏切らないよねー……って、海原ん時に一回すれ違ってる筈だけど……?」

青ピ「ささっ、カミやん!銃後の守りは完璧や!」

上条「……それじゃ頼む」

青ピ「おうさっ!」

――学校 裏口

上条「……」

上条(――と、さっさと逃げて来ちまった訳だが。いいのかな?)

上条(御坂の用件は確実にアリサ関係だと思うが……)

上条「……良し!先送りしよう!君子、危うきに近寄らずって言うじゃない!」

マタイ「そうだな。それは正しい」

上条「だよなっ!別に逃げてる訳じゃないぞ!」

マタイ「だが危うきの定義に拠るのではないのかね?逃げ先にはもっと大きな落とし穴が口を開けて待っているやも知れぬ」

上条「分かってさ!つーか俺の人生そんなんばっかだ、よ……?」

マタイ「こんばんは、で、合っているかね?」

上条「あ、はい。どうも」

マタイ「息災そうで佳きかな。ほんの数日前の話だというのに、な」

上条「あー、確かに。何か数ヶ月も戦ってた気がするよなー……って、マタイさん帰っちまったんじゃ?」

マタイ「最初から私はここに居ないさ。気軽に出歩けなくて困るよ」

上条「良かったらウチ来ます?今だったらレッサー達もまだこっちへ居るみたいですし、アリサも呼んで打ち上げ出来ると思いますよ?」

マタイ「厚意には礼を言おう……しかし、そう諸手を挙げて感謝されると遣りづらくもある」

上条「何が?」

マタイ「これからしようとしている事が、だ」

上条「はい――か……ッ!?」

老いた聖堂騎士「……」

マタイ「……では、行こうか」

――倉庫?

上条「――はっ……と?」

マタイ「申し訳ないのだが、場所を移させて貰ったよ。少しばかり内々の話をしなくてはいけないからね」

上条「……ここは?」

上条(LEDの蛍光灯――矛盾している言い方だが――が規則的に並ぶ天上、積み上げられたダンボール……つか見覚えのあるカップメンの箱だ)

上条(どっかのスーパーかコンビニの倉庫?しかも俺は縛られてもないし、なんで?)

マタイ「心配は要らない。君の家の直ぐ近くまで運ばせて貰った」

上条「聞きたい事はごまんとあるんだが」

マタイ「――の、前に私の話から聞いてくれ給え。それが回答となる」

上条(目が慣れてくると……マタイさんの背後に、これまたじーちゃんが立ってるのが分かる……)

上条(誰だろう……?なんかドラキュラっぽい格好してるが……)

マタイ「結論から言えば『死人が徘徊している』らしい。分かるかね?死人だよ、死人」

上条「お、おぉ?セレーネの話は終わったんじゃ?」

マタイ「一柱は眠り、一柱は去り、一柱は失せ、一柱は種を撒く」

マタイ「魔神が世界から手を引いた事で、暫しの猶予を得て訳だが、それで全てが元通りになった訳ではなかった、という話だ」

上条「死人……具体的にはどういう?」

マタイ「分からん。全く分かってはおらぬ。こちらのリィ卿が微弱なマナを感じ取り、追跡に入った瞬間に消えた」

マタイ「従って害があるのもかも、また土へと還ったのかも分からず仕舞いだ」

上条「――分かった。それを俺達が調べればいいんだな?」

マタイ「こういう件に関しては”だけ”は察しが良くて佳い」

上条「随分な言い方ですよねっ!……てか、アレだろ?学園都市で好き勝手出来ねぇとか、アウェイだから動きづらいとか、そういう話なんだよな」

マタイ「然り。だが、私の経験上あまり時間を掛けない方が佳いだろうな」

上条「なんでまた?勘みたいなもんか?」

マタイ「では、なく……『抑えが効かない』んだよ」

上条「……はい?」

マタイ「イギリス清教がそうであるように、ローマ正教もまた一枚岩とは行かぬ。多様性があるのは佳い事ではある」

マタイ「が、科学サイドとの『開戦』を望む者も居り、正直持て余しているのだよ」

上条「あー……」

マタイ「よって然るべく速やかに、且つこちらにも納得の出来るような形で決着を望む。でないと抑えきれない」

上条「……りょーかい。なんとかやってみるよ」

マタイ「頼む。私も戦いたく――は、ない、とも言い切れないがね」

上条「いい加減自重しろ。あと年相応の生き方をしよーぜ!」

マタイ「と、言われてもな。この街には我が逆縁たる”木原幻生”が居る」

マタイ「幸い魔神討伐の戦力がほぼ無傷で残っている上、学園都市内部まで易々と来られる機会はもう無いであろう」

マタイ「この老いぼれと引き替えにあの悪魔を滅せるならば、それはそれで佳いかもしれん」

上条「確実に第四次世界大戦になるから止めて下さい!……え、だったら?」

マタイ「最悪、私が何をしなくとも『そう』なる可能性がゼロではない、という事だけを憶えていれば結構だよ」

上条「相変わらずタイトな綱渡りだよなぁ……」

マタイ「健闘を祈るよ」

上条「レッサー達の力を借りてもいいんだよな?」

マタイ「友情は佳きかな。然れどそれが友情かは不明であるか」

上条「分かってるよチクショー!頼れば頼る程、つーか借りを作れば作る程色々と断りづらくなるってな!」

マタイ「産めよ増やせよ。それもまた佳い」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

新約13巻発売決定おめでとうございます
でも表紙の上条さん、顔が引きつってるような……?風圧かな、きっと。うん

乙です

もう一波乱あるのかな?

「あっはははぁ ほんとすげえなあの勇者。
 ここ(ひこぼしⅡ号)から見てたけど、あの歌姫さんが電波ジャック告白した瞬間、
 地球の全表面で火柱が噴きあがったもんなあ。だいたい1万本くらい。
 学園都市とイギリスあたりが、一番眩しかったけど。
 マジで第四次対戦に発展しそうだわなあ。
 ま、いいんじゃない?
 いざとなりゃ、またスポーツドリンク打ち込んでやるからさ」

(衛星軌道上在住 天埜郭夜(あまのかぐや)さんのコメント)

キニンジャーの悪口はやめるんだ
資格マニアっていう珍しい設定持ちで中の人の演技もなにげに一番安定してるんだぞ

まあ実際合体の時だけいればいいくらいには空気ですがね

乙です

このSSのオリキャラに声を当てるとしたら誰にしますか?

ネフテュスが分割云々言っててマーリンかと思った

アルフレドのあだ名は...ニャル子さんだ

もっとデレたみんなが見たい

>>172
あとほんのちょっとだけ(ry

>>173-174
残念。構想切ってたのは去年の1~3月でしたので、存在すら知りませんでした
”月”関係ならばかぐや姫は居て然るべきですからねぇ。もう一回似たような話を作るのであれば確実に噛ませるでしょうし
宇宙ステーション内は恐らく『常夜』の効果範囲外なので、ネット通信へ親子の歌を中継した人間が居てもおかしくはないかと

>>175
『実話』なんですよ、えぇはい残念ながら
近所のスーパーで”おーいお茶・新茶葉セット(値下げして200円)”と一緒に、ワゴンの上でセルフジェンガしてました

>>176
ありがとうございます

>>177
アルフレド&クリストフ;前田剛
安曇阿阪;萩原えみこ
団長(※中の人);瑞沢渓
セレーネ;雨宮侑布
マーリン;儀武ゆう子

>>178
立場的に体を分割されたのはオシリスかと――つーか、あまり詳しい話をすると新書一本書ける程度にまで文章量は増えるんですが、
と、前置きをしてから話しますが、神話には『系統』というものがありまして、ルーツを遡れば幾つかに分けられるんですよ

西アジアと北アフリカ(地中海を含む)――所謂”オリエント”辺りではルーツがエジプト系
メソポタミアと古代インドはシュメール系、そしてまたアルビオンではケルト系。あくまでも大雑把に分ければ大体こんな感じでしょうか
使う文字、または嘗て使っていた文字を辿ると文化的な変遷が見て取れます

さて、その中でもネフテュスさんの所属は(多分)エジプト神話系。従ってケルト語族のマーリンさんには関係の無い話……なん、ですが
ここで縁も縁もない、遠く離れた場所の神話や伝承が似通ってしまうという現象が起きます

主神や巨人を掻っ捌いて(フレ/ンダして)、その屍体から新たな生物が産まれるというのはよくある話
ゼウスにオシリスにイザナミ、巨人を入れるとギリシャ神話や北欧神話との類似性があったりと
少なくとも神話に於いては死が絶対的な死とは言えず、むしろ分割された所に意味や意義を見いだしたりします
……と、考えると――

――カラオケ店

上条「――と、いう訳なんですけども」

鳴護「『――I Really Really Really Really Really Really Really Really Really Really Really Really Like You!』」

ベイロープ「……」

上条「ですのでね、どうにも魔術的な知識に乏しい私どもと致しましては、やっぱりは餅は餅屋、みたいな感じでですね」

鳴護「『――I Really Really Really Really Really Really Really Really Really Really Really Really Like You!』」

フロリス「……」

上条「こうお任せしたい所存で御座いまして、えぇはい」

鳴護「『――I Really Really Really Really Really Really Really Really Really Really Really Really Like You!』」

ランシス「……」

上条「……どう、でしょうか?ダメ?」

レッサー「……いやあの、上条さんの案件は理解もしましたし、私もまぁ首突っ込んでやろうとは思うんですが」

レッサー「ただその、無駄に高い歌唱力でカーリー・レイ・ジェプセンさんの新曲を熱唱しているアリサさんが気になって気になってしょーがないです」

上条「無駄言うなや。現役アイドルやってんだから」

フロリス「てかこの歌詞と歌うタイミングに『相当溜まってんジャン』って思うよネー?」 チラッ

ベイロープ「たくましくなったのは良い事よ。それがきっと届いていないだけで」 チラチラッ

ランシス「……てか、気づいてない?」 チラチラチラッ

上条「おっと君達っ人を意味ありげにチラチラ見るのは止めて貰えないだろうかなっ!」

レッサー「ちなみにアリサさんがなんつってるか分かります?」

上条「あ、ごめん洋楽聞かないから」

レッサー「アレですなぁ、昨日テレビ見てたら着うたで告白する、みたいなCM流れてましたけど、バカが相手だと通じないんですよね」

レッサー「議論なんかもそうですが、議論される方にも一定の知性が無ければ論破されてた事に気づかないと」

上条「全くその通りだな。良い事言ったよ!」

ベイロープ「真っ正面から毒を吐かれてるのに気づ……いや、この場合は気づかない方が?」

フロリス「天然はこれだから恐ろしい。や、ワタシは別に関係ないんだケドさ」

ラシンス「被害者友の会としては、もう少し……ね?」

レッサー「語学留学という名目の紐無しバンジーを敢行した挙げ句、辛うじて日常会話程度の英語ならはナントカ出来るのに」

レッサー「歌だからと敬遠してしまうのはどうかと思いますが」

上条「悪かったなチクショー!毎日聞いてるとヒアリングはどうにかなるけど、流石に歌ってるのを一回で聞き取るまでには上達しねーよ!」

レッサー「……まぁ確かに。日本人でもほっともっ○入った時、店内ソングが洋楽だったらしいんですよ」

上条「なんの小話?」

レッサー「注文終らせて、椅子に座ってぼーっとしてたら、”かかっていた曲が普通のJpopだった”時の衝撃度と言ったらもう!」

上条「老化だよ。それオッサンが『若い子の音楽』でテクノとトランス一緒くたに語ってんのと同じ事だわ」

レッサー「ちなみにアリサさんが荒れているのは『半泣きになるぐらいお姉ちゃんが怖かった』とのお話です」

上条「あー……シャットアウラさんなー」

レッサー「そりゃまー現役アイドルがですねぇ?ぶっちゃけタレントとしての生命の危機――と、本人含めて思ってたらしいんですが」

上条「”が”?」

レッサー「一部の先鋭的な、ぶっちゃけ握手会へ婚姻届を持参する層以外は、『まぁやっぱり?』的な反応だったようですよ」

上条「婚姻届……マジだったんかい!」

レッサー「昨今の流行りである『コイツ誰?』的な芸人に持って行かれるよりは、マシだと思ったんでしょうなぁ」

上条「お前妙に日本の事詳しいよね?なんの影響?」

レッサー「主にもふもふからですが何か……まぁ、ともあれ企画の主旨は理解しました。承るしかないでしょうな」

ベイロープ「学園都市側からの依頼じゃないのよね?あくまでもローマ正教ってのが引っかかるけど」

レッサー「あ、報酬は頂きますんのでご安心を!」

上条「その言い方止めろ!何を要求されるか分かったもんじゃねぇから!」

上条「……あ、なんか言ってきたら『鎌が報酬たからね!宜しくね!』ってマタイさん言ってたし!」

フロリス「あー……アレなー。なんつーかアレだよなー」

上条「なんか微妙なん?」

フロリス「”教皇級”が長年愛用してた霊装を、ワタシらが持って直ぐに使いこなせると?」

フロリス「『念願の剣を手に入れたぞ!』っつーRPGじゃあるまいし、手に入れて即威力発揮出来るなんて有り得ないジャン」

ランシス「相性的にはレッサーが持つのが……だけど、『爪』よりも応用力が低いし、悩み所」

レッサー「暫くは霊装の解析待ちですけど、RPGに耐えるならば『攻撃力は高いが回避率が落ちるから使いにくい』でしょうかね」

上条「……あぁうん。ゲームと違って、俺らは攻撃が当たれば死ぬし、死ななくても戦闘不能になるもんな」

上条「だったら大きすぎる武器を振り回すよりは、コンパクトな物に絞って回避した方がいいか」

ベイロープ「セレーネの時みたいに背水の陣だったらば、まだ分かるし」

ベイロープ「他にも『相手に攻撃される前に殺せばヒャッハー!』みたいなコンセプトだったらまだしも、ロマンがあるネタ武器としか」

上条「それ、レッサーさん好きそうだよね?大好きだよね?」

フロリス「あれジャン?ジョン=ボール自体が『後の無い農民のオッサン』だった訳だし、取り敢えずATKに全振りしとけ、みたいな?」

ランシス「……でもその当時は霊装じゃなく、ただの鎌だった筈だけど……?」

レッサー「誰一人として私を擁護しない事実に少し凹みつつも反論しますが、流石に私だって現実とフィクションの境は分かりますよ」

レッサー「将棋も嫌いじゃないですが、現実は往々にしてチェスですからねぇ。対応しないといけませんな」

上条「つー割にはカーテナん時、あっさりし過ぎてた気が……?」

レッサー「あの時はエロそうな顔とエロそうな右手を持った東洋人に追いかけられ、気が動転してましてね」

上条「そっかー、お前も大変だったよな――で、取り敢えずここで殴り合うかな?それとも表?」

レッサー「断言しますし、反省はこれっぽっちもしていませんが、あの時『騎士派』へカーテナを預けたのは間違いではないと」

上条「てか聞こうと思ってたんだが、『カーテナ』の場所をお前らが把握してたんだよな?」

レッサー「はい。正確にはもふもふがですけどね」

上条「指示されてやってたのか?」

レッサー「ではなく、話を持ちかけてきたのはキャーリサ王女殿下で、持ちかけられたのはベイロープです」

フロリス「……ワタシはやりたくなかったんだよナー。いや今だから言うケドさ」

ベイロープ「お黙んなさいな。つーか当時からブーブー言ってたでしょうが!」

ランシス「まぁ、『騎士派』繋がりで、色々とあった……それが?」

上条「ん、あぁいや大した事じゃないんだが、計画とか全部マーリンさんがやってんのはどうかなーと」

レッサー「意外かも知れませんが、もふもふの教育は基本放任主義でしてね」

レッサー「学芸都市もそうだったように、私達の”課外活動”についてアドバイスをくれる事はあっても、あまり止められはしないですよ」

上条「全く以て意外ではないかな。むしろ好き勝手やった結果、伸び伸びと育ち過ぎちゃったよねと納得するぐらいだ」

レッサー「――まっ!締め付けがない方がよく育つとも言いますがね!」

ランシス「おい、一体ワタシのどこを見て言ってるのか、はっきりさせようじゃないか?なぁ?」

上条「まぁまぁ――で、そのマーリンさんはどこ行ったん?つーかお前らお疲れ会の後にさっさと姿を消してたみたいだし、またなんかやってんの?」

レッサー「えっと……ですね、まぁそれはそれ、これはこれと言いましょうかね」

フロリス「折角学園都市へ来たんだから、やりたい事とかあるジャンか?」

上条「あぁ観光な。納得納得」

ランシス「いやぁ……新しいアジト作り」

上条「何やってんの!?もう一回言うけどお前ら何しやがってんの!?」

ベイロープ「個人的な友情はさておくとしても、ローマ正教も学園都市も信用出来たもんじやないし、いざって言う時に準備しておくのは大切よ」

上条「うん、だからな。どうしてお前らはこう発想が世紀末なの?アメリカさんにあんま強くは言えないよね?」

上条「ていうかウヤムヤにする気満々だろうけど、『ハロウィン』の件でキャーリサとアックアは服役してっからな?言っとくけどさ」

上条「そもそも俺らの旅の結論、人を信じようって結論になんなかったっけ?」

鳴護「『当麻君が好き勝手するんだったら、あたし達もいるけどいいよね?』じゃなかったけっ?」

上条「アリサさんお疲れ。熱唱すんのは個人的には嬉しいんだけど、カラオケ屋でやり過ぎるとギャラリー集まるから注意な?」

鳴護「……無理だと分かってたけど、正面からスルーされるとそれはそれで……」

上条「――と、じゃあじゃあマーリンさんもアジト探しなのかなっ!きっとそうだよねっ!」

レッサー「その勢いで押し切ろうとしてますます傷口を広げる芸風はリスペクトすらしていますが……まぁもふもふは違いましてね」

上条「放任主義も結構だが、どっかでトラブルに巻き込まれて、とか?」

レッサー「あーいえいえ、そういうんでもないんですよ。えっと……この間のお疲れ様会、私途中でお手洗いへ行きましたでしょう?」

上条「同意を求められてもな……」

レッサー「そん時、『ドリンクバー連れてってぇよ!』と宣っていたので、手を洗う所に置いて、私は用を済ませたのですが――」

上条「が?」

レッサー「戻ってみたら、こう影も形も見当たらず。えぇそれっきりと」

上条「探してあげてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

レッサー「いや大丈夫ですって!あぁ見えてたくましいですから!」

上条「扱い悪すぎんだろう!?そういや会計ん時一人居なくて、『あ、マーリン逃げやがったな』と思ったのはそれかっ!?」

上条「つーかごめんなさい先生っ!俺の早とちりでした!」

レッサー「残機も大量にあるので、本体に何かあったとしても問題ありませんし?」

上条「……いや、うん、そのな?お前らもう少し、こう、扱いをですね」

上条(旧い魔神なんだよな。セレーネと同じ地母神系だっつーのにこの扱い……惨すぎる!)

レッサー「や、それがいいヤサを見つけちゃったんですよ!まるで誰かが使っているかのようにキレイな感じの!」

上条「住んでんじゃね?ていうか少なくともこの街で所有権が決まってない所なんて無いと思うぞ」

レッサー「ですので、こう些細な問題は後回しと言いましょうか。それとも先送り?」

上条「知らん知らん。誰か迎えに行けよ、カラオケ屋さんに捨てられる前に」

レッサー「まぁでも死人、死人ですか。こらまた厄介ですな。つーか面倒臭い」

上条「そうなのか?」

ベイロープ「死人……と、されているタイプは大まかに分けると”ゴースト”系と”ゾンビ”系。神話別にすればもっと増えるわ」

上条「肉体を持っていないのと持ってるタイプ?」

レッサー「極めて大雑把にすればその通りです」

ベイロープ「元々はギリシャ神話の女神が繋いだ『あの世』で、また甦ってきた死人も準拠するんであれば――」

鳴護「あ、次、フロリスさんの曲です」

フロリス「本場のアシッド・ジャズを聞かせてやるぜ!」

ランシス「いいぞー……」

上条・レッサー・ベイロープ「……」

上条「……あのぅ……真面目な話をね、してるんですけどね」

ベイロープ「あんまりね、そのあの子達は座学が好きじゃないし、うん」

レッサー「取り敢えず私が対抗して脱ぎましょうか?」

上条「誰に?誰にどんな意味で対抗すれば全裸になるの?」

ベイロープ「ともあれ、ギリシャ神話の死人だったら肉体を持ったタイプが多いし、体を壊せば事件は解決する……と、思う」

上条「ゾンビってヤツか」

ベイロープ「実際のゾンビはブゥードゥーの生ける死人の意味だし、ゴーストも昔は別の言葉が使われてたし、あくまでも便宜上ね」

レッサー「ですがしかし、これが十字教系と混じってしまえば超面倒臭ぇですかねー、これが」

上条「混じる?混線的な意味で?」

レッサー「えぇはい。セレーネの事件で魔神が日本の術式、それも日本風土記を使ってやがりましたし」

ベイロープ「そもそもで言えば魔神がクイーンズ話してた時点でおかしい。喋るならギリシャ語よね」

上条「俺には日本語に聞こえたが……まぁ、そういうもんなんだろう」

レッサー「ですので実際に異教の神がグローバル()な魔術を使っていましたし、変な思い込みは危険ですよねぇ、えぇえぇ」

上条「……その”混じる”と具体的にどんな問題が?」

ベイロープ「例えば……ギリシャ神話での冥界はタルタロス、ハーデスと呼ばれているのよ」

上条「タルタロスは知ってる。でもハーデスって神様の名前じゃなかったっけ?」

ベイロープ「だったのだけれど、後に冥界自体をハーデスと呼ぶようになり――っていうかタルタロスも元は巨人の名前ね」

レッサー「あんましデカいんで、他の巨人や迷惑な魔獣を押し込めてるウチに、気がつけばタルタロス=冥界の別名に」

上条「なんか居たたまれない話だな、タルタロスさんとハーデスさんに」

ベイロープ「でもこの二つはギリシャ神話だけじゃなくて、十字教の聖典にも出てるのよ。同じ『冥界』って意味の単語で」

レッサー「有名なのはゲヘナとヒンノムですが、シェオルやハーデスとも新約聖書に出て来ます」

上条「……つーことは、ナニ?もしかしたら”そっち”と混ざる可能性も……?」

レッサー「充分に有り得るでしょうなー。しかも十字教の死人って超メンドクセーんですよ」

上条「お前さっきから連呼してっけど、そんなにか?」

レッサー「えぇはい。ギリシャ神話の方はデメーテルみたいに、基本出て来ても悪さはしないですから、まぁ許せるっちゃ許せるんですが」

レッサー「ヘブライ系となると……聞いた事ありません、『レギオン』って?」

上条「あー……はいはい。あの小学生にトラウマ植え付けるポケモンボー○な」

レッサー「例えがディ・モールト不適切!ですが、そのセンス嫌いじゃありません!結婚して下さいっ!」

上条「――それはともかく、レギオンは”ゴースト”系なんだよな?」

レッサー「私のクリティカルなプロポーズが流されたっ!?」

鳴護「それが渾身だと思って……いやなんでもないよ」

ベイロープ「そうね。だから基本的に実体を持たないし、人や獣に取り憑くわ。しかも自殺まで追い込むわで、面倒なのよ」

レッサー「ゾンビならば物理的にグシャグシャボーン!と、お見舞いしてやれば簡単ですからねー」

上条「確かにそうだな……てかマタイさんの言ってた『途中で魔力が消えた』のも、誰かに取り憑いたと考えれば納得がいくか」

ベイロープ「『朝日を浴びて消えた』とか、『魔力が尽きて消えた』のも選択肢ではあるけどね」

上条「……ん?あれでもおかしくないか、この話」

レッサー「笑っちゃいますよね-、あっはっはっはー!」

上条「レッサーさんリアクション間違ってるわフライングだわで何一つ合ってないよ!ないよっ!」

ベイロープ「どうしたの?」

上条「うん、だからさ。十字教が余所様の神話の神様を引っ張って来たり、他の神話の世界観を持って来てんだよな」

上条「よく中二病拗らせて大人になりそこなった連中が、『十字教の悪魔は他の神話の神だったんだ!』と今更情報を垂れ流すし」

上条「だったらこの”死人”もギリシャ準拠になってゾンビ系、つーかもっとぶっちゃければ穏やかなモンになんじゃなかったのか?」

レッサー「あーそれは十字教特有の事情がありまして。てか上条さん、おかしいと思いませんでしたか?」

レッサー「『今回の件、ローマ正教がやけに好意的だな』って」

上条「……マタイさんがいい人だから……?」

ベイロープ「過去異端審問会と呼ばれていた、人類史上最悪の処刑部隊で半世紀近くトップをやった人間がなんですって?」

レッサー「前教皇さんの人柄を否定はしませんがね。あー……十字教の『神の子』の逸話ってどんだけご存じですか?」

上条「どんだけ……クリスマスに産まれたのと、『罪人へ石を投げるんだったら罪のない人がしなさい』……ぐらいかな」

レッサー「……なんかこう、嫌な所撃ち抜きますね。相変わらず」

上条「はい?」

レッサー「ま、それも含めてなんですが――復活しやがったでしょう?神の子?」

上条「あー……あったなぁ。そんな逸話も」

レッサー「キモは”そこ”でしてね」

上条「どこ?」

レッサー「『神の子は死した後にまたこの世へ復活しもうた。よって神の子はいと高きあの方の御子に相違ない』と、ここまではいいですよね?」

レッサー「”奇蹟”を起こす事により、神の子は神の子だと何よりも雄弁に証明して見せた。それはまぁ良しとしましょう」

レッサー「――ですが!ここで問題となってくるのは、その”奇蹟”の方ですよ」

上条「や、実際にやったかとどうかはともかく、他に誰にも出来ない事をやって見せたんだから、スゴイ力持ってますー、のアピールになってんじゃねぇの?」

レッサー「そこです、そこ。その『誰にも出来ない事』です」

レッサー「確かに死者蘇生は凄い――いや、『凄くなければいけなかった』と」

レッサー「『むしろ誰にでもホイホイ起こせるような”奇蹟”であってはいけない』」

レッサー「『死者の蘇生はいと高きクソッタレのみが成せる至高の業なのだ』――でしょうかね」

上条「つまり……『十字教の神様”以外”は完璧な蘇生はしちゃダメだよ』的な話か?」

ベイロープ「それで産まれたのがレギオンみたいな『肉を持たず、不完全な蘇生を遂げた悪霊』よ」

レッサー「また稀に肉を持ったまま黄泉帰ったとしても、話の通じないゾンビのようなパターン”で、なければいけなかった”んですね」

上条「理解はするが……納得しきれない」

レッサー「てかさっきの『罪を犯した事の無い者だけが罪人へ石を投げよ』の、話にも繋がるんですが、時々我々とのギャップに気づきませんかね」

レッサー「なんてんでしょうかね、こう、なんか妙に話や価値観がズレる的な感じで」

上条「うん、レッサーさんとは割としょっちゅう。貞操観念的な意味で」

レッサー「いやー一本取られましたね!こやつめー!」

ベイロープ「はいそこネタに走ろうとしない。終ってからにしなさい、ボケるのは」

ベイロープ「そうじゃなく。カルチャーギャップって言うか」

上条「んー……と、あるとすれば――みょーになんかこう、人権関係でアレ?って思う事はあったりする」

上条「政治的な話になっちまうってのも今更だが、死刑制度廃止にする一方、変な所で日和ったり」

レッサー「それも実は『十字教的な価値観』が根底にあったりなんかするんですよね」

レッサー「『人は人を裁く権利はない』は罪人投石云々がモロに影響してますし、死刑に関しても復活云々が実は密接に」

レッサー「所謂”審判の日”には死者が全員蘇り、神の審判を受けるとされています」

レッサー「従って『どうせいつの日か、神が裁くのであれば人が人を殺める必要はない』と」

上条「んー……分かった、気がするけど。そこまで十字教的な価値観が浸透してるモンなのか?今なら『関係ないぜ!』みたいな奴らも多くないか?」

ベイロープ「それは逆に日本人にも言いたいのだわ」

上条「俺らに?なんで?」

ベイロープ「『人は死んだら何も残らない』。『悪い事をすれば回り回って自分へ帰ってくる』。他には……」

レッサー「『神なんて居ない』も、ですよ」

上条「当たり前だろ、それは」

レッサー「うん、ですからね。『今のは完璧なぐらいにブディスト(仏教徒)の価値観』なんですよ、えぇ」

上条「……はい?」

レッサー「あなたが今まで疑いもせず、そしてまたこれからも当たり前のように持ち続けるであろう『価値観』はブディズムですよ――」

レッサー「――『私達から見れば』、そう見えると言うだけの話です」

上条「あー……なんか分かった。理解した。価値観ってのは無意識の内に”なってる”もんなんだな」

レッサー「積み上げた文化と言い換えても良いですがね。ま、そんな訳で」

レッサー「日本人が落とし物を交番へ持っていくのと同じように、はたまた道で迷っている人に親切にするように」

レッサー「十字教圏で生まれ育った人間達にとって、『死者の復活』なんてーのは、そりゃーもう罪深い訳でしてね」

上条「その割にハザー○とかデッドライジン○とか人気だし、そもそもゾンビ映画の発祥はそっちだったような……?」

レッサー「『禁忌に触る事が最大限の恐怖』なんですよ。むしろ禁忌が強ければ強い程に恐怖の対象でもあります」

レッサー「例えば豆腐を食べてはいけない教団の方にとって、豆腐小僧はどれだけ恐ろしい事か……ッ!!!」

上条「弩級マイナーな妖怪さんの話をされてもな……」

ベイロープ「そうね……えっと、ギャングエイジ……日本語では知らないけど、小中学生が少し悪ぶる年頃があるわよね」

上条「思春期、反抗期……あぁあと中二病か」

ベイロープ「その年頃には色々と悪ふざけ――ま、後から思い出すと叫びたくなるようなアレコレをやったり言ったりするの」

ベイロープ「その一つとして悪魔的なモノを崇めてみたり、と」

上条「どこでも症状は変わらないんだよなぁ……」

レッサー「――と、お思いでしょうが、あちらだと割と大問題へ発展します。例えばとあるバンドマンが『僕達は神の子より有名だ』と宣ったり」

上条「あー……日本じゃ、『あぁうん、そう、かもな?ガンバレよ?』と、良くも悪くもスルーされるか」

レッサー「似たように子供が頑張って反抗期カマすんですが、とあるアジア人がホームステイ先で見たのは、実に微笑ましい中二的なアレコレだったとか……」

上条「……まぁ基本タブー無ぇからな。あっても面倒臭い所を乗り越えれば、それなりに生きていけるし」

レッサー「魔術の話へ戻しますけど、ヤポンじゃゴーストの恋に落ちるのはよくある話!中には子育てするゴーストもいるじゃないですか!」

上条「そう言われると混沌としているような……?」

ベイロープ「ついでにローマ正教は”そういうモノ”の集大成みたいなもんだし。場合によっては本格的に鎮圧へ乗り出すでしょうね」

上条「どうせだったら日本型のゴーストになってほしいもんだが……取り敢えずの基本方針はなんて?」

レッサー「マタイさん方が感知したログはおありですよね?魔術師組はそこを中心にローテを組むのが妥当でしょうな」

レッサー「ウチには魔力感知のプロが居ますからねっ!」

ランシス「……ぐっ」

上条「路上でアンアン言ってる絵しか思い浮かばない……!つーかちょっと見たいぜ!」

鳴護「……当麻君、本音がダダ漏れになってるよ」

上条「お帰りー。つーか熱唱は終わりか」

鳴護「いやそのね、フロリスさんが――」

フロリス「『――Fly me to the Moon――』」

鳴護「――って独唱へモード入っちゃって」

上条「……マーリンさん、よくこいつらをまとめたよなぁ……」

ベイロープ「……あと、私もよ」

上条「うん、はいお疲れっ!」

レッサー「そこでお二人して私を生暖かい目で見るのは嬉しくないんですが――ま、その間には科学サイド組は別の仕事をして貰おうかと」

上条「魔術の役には立ちそうにないしな。いいけど具体的には何をすればいいんだ?」

レッサー「ま、そっちも地元の治安維持組織さんへ顔出して貰って、ここ数日おかしな事はなかったかを調べ貰っちゃって下さい」

レッサー「ネットの噂も良いですが、やはり一線で体張ってる方々から情報を仕入れるのがベストかと」

鳴護「白井さん、手伝ってくれるかなぁ?」

上条「……うん、きっと満面の笑みを浮かべながらやってれるよ!誰かさんのお陰でなっ――と、調べる?」

レッサー「はいな」

上条「範囲は?もしくは具体的に何を調べれば良いんだ?つーかこんカオスっぷりに拍車がかかってきた学園都市で”おかしな”っつーのも、なぁ?」

上条「つーかさつーかさ。もしなんか重大事件が起きてて、そこへ俺がノコノコ出向いてったらさ」

上条「まさにカモネギの如く、実にスムーズな流れで俺が犯人にされちまうんじゃ……?」

レッサー「――まっ!それはやっぱり地元の方でないと分からないでしょうし、お任せしますよっ!」

上条「ねぇレッサーさんどうしてキミ俺と視線を合わせないのかな?ねぇなんで?」

レッサー「――はいっ!と言う訳で各自解散っ!あ、上条さんはローマ正教から貰ったデータの転送をヨロシクっ!」

上条「えっと……アリサさん!アリサさんなら俺に付き合ってくれる筈……っ!」

鳴護「ごめんね、当麻君?嫌じゃないんだけど、門限があって」

上条「……あぁ過保護なお姉さんの」

フロリス「ま、デモあんま深刻に考えなくていーと思うぜ?」

上条「お前また勝手な事言いやがって!」

フロリス「いやマジ話さ。だって死人がやらかしてんだったら、もっと大きな事件なり事故なりになってる筈だしー?」

フロリス「そもそも”大きな事件”だったらば、ワタシらへ任さずローマ正教が戦力で潰すっしょ?それこそ嬉々としてサ」

上条「あー……魔術師は超々個人主義だもんなー」

フロリス「なんだったらワタシがついていっ――」 ガシッ

レッサー「――はいっと言う訳ですね!そちらはお任せしますんでねっ!」 シュタッ

ベイロープ「それじゃ、また」

ランシス「……ん」

フロリス「ちょま――!?」

上条・鳴護「……」

上条「えっと、今不自然な連行があったよ――」

鳴護「な、なかったよ!」

上条「はい?」

鳴護「不自然な所なんてなかったもん!」

上条「お、ぉおぅ……そう、かな?」

鳴護「それよりも!当麻君はお仕事任されたんだから頑張ってねっ!」

上条「ん、あぁそうだな。取り敢えずはそっちが大事か」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を
基本的に全員が全員、牽制しあっている感じなので中々イチャコラは遠いかもしれません


マーリンが何かやらかしたのか又は巻き込まれたのかのかな?

レッサーとかは小さくなって上条さんの頭の上に乗って、うるちゃい!とか言わないの?

乙です
新しいアジトってもしかして……

『どこにでもあるようなありふれた○の風景、そんな話』

完全なネタだと思って笑ってたんですが、話の位置的に、ひょっとすると下乳魔神さんのストッパーあるいは二度と開けない引き出し的役割を果たしている世界なのか……?
ともかく沈麻さん、親の因果がなんとやら。
お疲れさまっす。

乙でした。

内なる上条「(これ絶対マーリン関係じゃん...めんどくせー。)」

フロリス「ま、デモあんま深刻に考えなくていーと思うぜ?」
フラグだ(確信)

乙じゃ!!

ふむう

ついに死者の書の伏線回収か 楽しみ

>>180
アル「レッサーとキャラ被るだろ!」
上条「え!?そんな理由で!?」

>>181
まぁ蛇足ですので、あまり期待しないで下さい――が、新しいヒロインが出たり?

――カラオケ店

ピンポーン

上条「どもー」

店員「っしゃいあせー。お一人ですかー?」

上条「あ、いえ違います。今日はちょっと」

店員「ぼっちですかー?」

上条「それも違ぇよ!つーか言ってる内容はさっきと同じだ!」

店員「しゃっしゃいしたー」

上条「……もう同じ日本語喋ってると思えない……!」

店員「て、あれ?お客さん、一週間ぐらい前に来なかった?ほら、女の子イッパイ連れてさ」

店員「メチャクチャルームサービス頼んだ人っしょ?俺担当だったもの」

上条「ん、あぁ多分俺達だと思う」

店員「いいよなー、あんだけたくさん居たのにどしたの?今日は一人でカラオケ――って、あぁ修羅場かなんか?」

上条「あー、違います。そうでなくって」

店員「あーいーよいーよタメで。どうせお客さん学生でしょ、俺と同じ?」

上条「俺はいいがお前はダメだろ。接客的に――ってそうじゃない。えっと、忘れ物無かったかな?」

店員「あーはいはい。そっちね、ちょっと待ってな」

上条(チャラい店員はカウンターの下から段ボール箱を取り出す)

店員「サイフじゃないんでしょ?だったらここの中に――」

客A「すいませーん。お会計いいですかー?」

店員「――ある、から。探しててな。つーか他にはないし」

上条「ありがとう、ございます」 ゴサゴソ

上条(カウンター横のスペースで段ボール箱を開け……あぁ中にはハンカチやタオル、ポーチ?やトートバッグのような物が多い)

上条(街の雑貨屋さんで売ってそうな『これ、どこ製?』の時計とか、ヘッドフォン、ケータイのストラップらしき物が雑多に詰め込まれているが……)

上条(……俺の探している”モノ”は見当たらない)

上条「(マーリンさーーーん……?居たら返事しろー……?)」 ボソッ

店員「――で、どう?見つかった?」

上条「いや全然っ!他には無かったんですかっ!?」

店員「他にって、忘れ物聞いてねーけどさ、お客さんケータイとかサイフじゃ無いんでしょ?だったらそこにしか入れてない筈」

上条「……そか。ちなみにケータイとサイフだったらどうなるんだ?」

店員「風紀委員か警備員へ直で渡すって規則があんだよ。誰にどう悪用されっか分かんねーし、拾ったヤツがババを引くかもしんねーし」

上条「拾ったヤツが?なんで?」

店員「『このサイフには10万円入れといた筈だ!でも何も入ってない!そうだ、拾ったヤツが盗んだんだろう!』――ってクソみてーな話がたまーに」

店員「なんつーの?当たり屋みたいな感じ?」

上条「あー……それは善意で届けた方も気が悪いわなぁ」

店員「だーかーらー間にしっかりとした連中に入って貰ってーの、トラブルを無くす訳だと」

店員「お客さんも気ぃつけた方がいいんじゃね?何か変なモノ拾って不幸を背負い込みそうな顔してっから」

上条「……インデックス、姫神、御坂妹、風斬、オルソラ、サラシ巻いたおねーさん、バードウェイ、トール……!」

店員「なんでお客さん指折り数えながら泣きそうになってんの?」

上条「……一応聞いとくけど、白いぬいぐるみ落ちなかったかな?こう、犬のような、日曜朝のファンシー系マスコットのようなカンジの」

店員「ぬいぐるみねぇ?ケータイのストラップについてるんじゃなかったら、その箱に入ってんのが全部だわな」

上条「そうか……」

店員「一週間より古いのだとあっかもしんないけど、一応見てく?

上条「いやー……いいや。ありがとう。ま、その内見つかんだろ」

店員「どう致しまして――って、あぁお客さんちょっと聞きたいんだけど、いいか?」

上条「はい?」

店員「結局、あん中の誰が彼女なの?」

上条「俺だって知りたいわコノヤロー!」

――風紀委員 第177支部

上条「――と、いうワケで初春さん!」

初春「は、はい?」

上条「何も言わずに機密情報を教えてくれ!」

初春「速やかにお引き取り下さい。あ、出口はあちらですので」

上条「待ってくれよ!?あんまりな対応じゃないか!?」

初春「開口一番、『問答無用で職務規程を破ってほしい』と言われた私もあんまりだと思うんですが……」

上条「……じゃあ、理由話したら協力してくれる?」

初春「ご協力出来るかどうかは分かりませんが、私達風紀委員は困っている方を助けるお仕事をしていますよ」

上条「そうなの?何かこういつもいつも学園都市存続の危機レベルの事態に首突っ込んでるものとばかり」

初春「ヤダナー、ソンナコトアルワケナイジャナイデスカー」(※超棒読み)

上条「だ、だよね?時々ネットニュースで大事件が取り上げられるけど、その中で良く出る”すんごい髪飾りの風紀委員”って初春さんじゃないもんね?」

上条「あくまでも噂だけどトム=クルー○張りの映画アクションを強いられてたなんて話ないもんねっ!」

初春「――と、とにかくですね!私達風紀委員は全員がボランティアとはいえ、むしろそれ故に高い倫理を要求されますの!分かりますよねっ!?」

上条「は、はい」

初春「ですからこう安易に情報を流してはいけない――と、いう一面もあるのですが、また同時に善良な学園生の味方でもありまして!」

初春「常識的な範囲を逸脱しなければお助けするのも吝かではない、ですよ」

上条「よっ!流石はジャッジメント!外から来た人に『”ですの”ってやって!』とせがまれるだけはあるぜ!」

初春「……すいません。さっきから私の精神を削るのは止めて貰えませんでしょうか?地味に堪えるんですが」

上条「うん?俺なんか変な事言った?」

初春「ここら辺の鈍感力は佐天さんと組んで番組出来るって感心しますけど……それで、ご用件をどうぞ?」

初春「迷子の猫ちゃんの捜索や人捜しに道案内に喧嘩の仲裁、あなたの風紀委員は色々とやらされてますよー……」

上条「……あぁはい、苦労してんですね」

初春「かと思えば合体変形ロ――いや、なんでもないです。気にしないで下さい。あれはなかった事になると思いますんで」

上条「戻って来い初春さん!瞳から光彩が消えかかってるから!」

初春「あぁ失礼しました。つい」

上条「頼み事をしに来た俺が言うのもなんなんだけどさ、もう少しお休みや人員を増やした方がいいんじゃないかな?なんだったら俺も手伝おうか?」

初春「それだけは勘弁して下さい!?学園都市史上初のレベル5ジャッジメントが出来ちゃったらどうするんですかっ!?」

上条「犯罪減りそうじゃん?」

初春「あ、だったらいいですかねー」

上条「ごめんなさいっ!もうおフザケしないから帰って来て!」

白井「うるさいですわよ初春。一体どうしたっていう――」

上条「あ、白井さん。お邪魔してます」

白井「あら上条さん。お姉様がお探しでしたわよ?」

上条「待ってくれ違うんだよ!これはきっと敵の魔術師(レッサー)の攻撃だっ!」

白井「その、小声で仰ったレッサーさんに心当たりは御座いませんが、安心して下さいまし。黒子は突き出すつもりはありませんから」

上条「そ、そう?ビリビリにチクらない?」

白井「あ・のっ!アリサさんの熱烈な告白を見ましたら、ねぇ?」

上条「……いやだからあれは!」

白井「お姉様も意地になってる所がありますし、一度きちんと話されては如何――と、何を不思議そうな顔をされているので?」

上条「……いやー、白井とまともに喋ってんの初めてだなって思ってさ」

白井「失敬な。こう見えても正真正銘の常盤台のお嬢様ですのよ」

上条「その割には車椅子で殴りかかってきたりしてなかったか……?」

初春「白井さんは難儀な人ですが、基本的には常識人ですからねぇ」

白井「んまっ!?初春まで!」

初春「ま、白井さんのお話はさておくとして――そろそろ本当に何をしにいらしたのか、聞きたい所なんですけども」

上条「あぁ丁度いい。出来れば白井にも協力してほしいんだが……その、さ」

上条「最近、ここ一週間ぐらいの間におかしな事起きなかったか?」

白井「それはまた随分と漠然的な質問ですのね」

初春「あー、はい。あれですか?佐天さんとやってる深夜番組の――って、それだったら佐天さんが私へ直接聞きますかー」

上条「うん、別件。なんでかは……まぁ、オカルト的な話だから聞かない方がいい」

白井「科学の街でオカルト……眉唾ですわね」

初春「もっと具体的にはどんな感じでしょうか?範囲が広すぎて、こうお役に立ちそうな情報を絞り込めそうにないですし」 ピッ

白井「むしろ”そっち系”のお話でしたら、佐天さんへ訊いた方が早いかも知れませんわ」

上条「あー……確かに。それも手段としちゃありか」

初春「デマに付き合わされた挙げ句、『ホンモノ』を引く可能性だってありますけどねー」

上条「むぅ……どうしたもんかな」

白井「あくまでも、と前置きをした上でわたしくし達の感想で言えば……それほどトラブルはありませんでしたわよね?」

初春「でしょーかね。能力者同士のいざこざはいつもの通りですし、変な誘拐犯もふつーに出てますし」

上条「……風紀委員のお仕事お疲れ様です」

白井「というか普段よりも少なかった、気がするですの。なんとなく、ですけど」

初春「そうですねー。そういえば迷子の猫ちゃんを探す依頼もありませんでしたよね」

上条「その部分だけ聞いていると和やかで結構だが……そっか、分かったよ。ありがとうな二人とも」

白井「いえお役に立てず」

初春「佐天さんに私が聞いておきましょうか?きっとノリノリで調べてくれると思いますよ?」

上条「あーうん、他に手がなくなったらお願いするよ――って、そうそう」

上条「落とし物とか無くし物の担当も風紀委員でやってんだっけ?だったらちょっと別件で聞きたい事があったんだ」

初春「お財布とか金銭的な価値を持たないものであれば、ウチの担当ですね。何か無くされたんですか?」

上条「知り合いがね……知り合いを、か?」

白井「何を小声でブツブツ言ってますの?」

初春「さぁ?なんでしょうねー」

上条「あぁっと、俺が探してんのはだな。こう、ぬいぐるみなんだよ」

上条「なんつったらいいのか、ぶっちゃけ謎生物かつファンシーっぽいので」

初春「へー?上条さんにもそういう趣味があったんですかー?」

上条「だから俺んじゃないって。知り合いのだ」

白井「落としたのはどちらで?」

上条「XX学区、多分カラオケ屋周辺」

初春「だったらウチの子とは違いますねー、良かったー」

白井「ちょっと初春。わたくし達が不謹慎な発言は慎まないといけませんのよ?例えそれが類人猿相手であっても!」

上条「白井に罵られて、ちょっと安心している俺がいる――ん?ウチの子?」

初春「あ、それじゃ見ます?これ、なんですけど――」

マーリン「……」

上条「……」

初春「YY学区の路地裏に泥だらけで落ちてたんですよー、なんかこう酔っ払いのおじさんみたいにやさぐれて」

初春「見た瞬間たまらなくなって拾って来ちゃいました」

白井「お風呂へ入れてキレイにするのは良い事ですけど、持ち主が来たらきちんと返すんですのよ?」

初春「わかってますよー。でもきっと一週間も放置されてますし、この子はもうウチの子にするって決めたんですからー」

上条「えっと……初春、さん?」

初春「あ、それでですねー、ここを押すとー」

マーリン「……」

初春「あ、あれ?壊れちゃったのかな?ここを、ぎゅっと押すと喋るんですよ」 ギュッ

マーリン「『オイ鬼太○!』」(※デス声)

白井「……えっと、そんなデス声でしたかしら……?」

初春「……もっと綺麗な声で『ワイ、マーリン!ブリテン一の魔術師やで!』って言ってくれたんですけど……電池がないんでしょうかね?」

マーリン「『ダイター○カムヒアー!』」

上条「……必死で他人のフリしてる所悪いんだけどさ、バレてるから。これ以上ないぐらいの勢いでバレてるからな」

上条「つーかお前みたい謎生物そんなにホイホイ居るわけねーだろ!常識的な考えろや!」

白井「どうなさいましたの?」

初春「ぬいぐるみに話しかけて……?」

上条「……あぁ心配ない。俺は正気だから、白井さんは通報しようとしてんの止めて?俺が大丈夫じゃなくなっちゃうから」

上条「心配はいらない。こんな事もあろうかと!俺はレッサーからお前の擬態を解く合い言葉を知ってる!」

マーリン「……」

白井「……初春、類人猿さんがついに……!」

初春「どうしましょう?誰に通報すれば……」

上条「俺どんだけ信用ないの?せめてビリビリの知り合い枠でフォローしてくんねぇかな?」

初春「御坂さんもある意味電波を受信出来るので、そのお友達かな、と」

白井「初春、結構言いますのね」

上条「――ともあれ!行くぞ!覚悟しやがれ!」

マーリン「……」

上条「白井っ、バーン!」

白井「指でっぽうで撃つ仕草……お姉様がよくやるのに似てますわね」

上条「初春さん、バーン!」

初春「えっと……はい?」

白井「あぁもしかしてあれですの?関西の方が『バーン!』って振ると、『やーらーれーたー』みたいな」

初春「ケンミンショ○やローカル関東番組でよくネタ検証してますねー……って上条さん、ウチの子はただのぬいぐるみなんですが……」

上条「そしてーーーーーーーーーーーーーーーーーッ――!」

マーリン「……」 ソワソワ

上条「――ふー、疲れたー」

マーリン「ってぇせーへんのかい!?『バーン!』するかと思ぉて待っとぉたんのに!こんなオイシイボケ振らへんて!」

マーリン「鬼っ!悪魔っ!高千穂っ!アンタには人の血ぃが流れてへんのかいな!」

マーリン「『あぁもうこれはバレてんなー、しゃないなー、つーかワイの神々しいオーラは隠せへんかったわー』」

マーリン「『――やけども!どうせやったら派手なリアクション決めとぉわ!それが浪速のオンナの生き方や!』」

マーリン「『よっしゃガヴェインの最期の再現しとったるわ!派手に殉職したるで!』――って思っとぉたのにスルーかーーーーーーーい!」

マーリン「つーか誰や!?こないなヒドイ芸人殺し上条はんに入れ知恵したんは!?ワイがオシオキしたるさかい出て来んかい!」

マーリン「――ってこのネタ、レッサーに教えたんワイやないかーーーーーーーーい!ルネッサーーーーーーンスッ!!!」

初春・白井「「……」」

上条「何やってんの?お前何やってんの?」

上条「確かにレッサーの扱いは悪すぎるとは思うが、どこをどうシライ2(前方伸身宙返り3回ひねり)したら初春さんのマスコットに収まってんだよ、なぁ?」

マーリン「や、違うんよ?つーかちゃうやん、そーゆー事じゃないねんな。うん」

マーリン「これはあれやで?誤解されるかもやけど、初春さんは何も悪くないんよ!いやマジで!」

マーリン「やから!責めるんやったどうかワイだけにしときぃ!ワイは誰の非難やっても受けるわ!」

上条「途中からさも初春さんが悪そうな流れに持ってくんじゃねぇよ。つかそれでいいのか地母神の切れっ端」

マーリン「ワイの担当ここちゃうし?」

上条「てか何やってんの?姿見ないなと思ったらなんで初春さんちの子になってんの?」

マーリン「……や、これにはや。泣くも涙、語るも涙、涙涙の物語がな」

上条「泣くと涙ってカブってねぇかな?」

マーリン「ワイ、な。決めたんよ」

上条「何を」

マーリン「……ワイ、初春さんのチの子ぉになるわ!」

上条「……はい?」

マーリン「人って産まれて来たからには理由があるんよ。誰かのために戦ぉたり、誰かを育てるっちゅー使命を負うねんな」

マーリン「時には道ぃ外してもぉてバッサリ斬られもぉても、それはそれで英雄の誕生に一役買うんよ」

上条「はぁ」

マーリン「ワイも約1500年、このボディを使い始める前からだと4000年か。そんだけ多くの子ぉらを導いて来た……やけども!」

マーリン「……ワイは知ったんよ!今までのワイの経験はこの子ぉのために培って来たもんやって!確信をや!」

上条「うん、具体的には?」

マーリン「初春さんプリキュ○にしたら人気出ると思わへん?あとワイもマスコットとして新たな人生をやね」

上条「……えっと、ちょっと待ってな」 ピッ

マーリン「なに?どしたん上条はん?ピコピコで何探してるん?」

上条「……っと、これか。えっと――こほん」

上条「りん、ぴょー、とー、しゃー、かい、じん、れつ、ざい、ぜん?」

マーリン「早九字やね。そんなに棒読みでやっつけの密教呪、”レッツゴー!陰陽○”以来初めて見とぉわ」

マーリン「てかその『右手』、こっち向けよぉの良ぉないよ?うん、ワイにとっては銃口を向けられる的な意味が――」

上条「――消え去れ悪霊よ!『幻想殺し』!」 ペタッ

マーリン「ぎにゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

マーリン「……」 クテンッ

上条「……ふう」

白井「……あのー?今の一連のコントは一体なんでしたの……?」

上条「これでもう安心だ!このぬいぐるみに憑いていた悪い妖怪は除霊した!――ような気がする!」

初春「えっと……?」

上条「霊装としてはもう使えないから!これからは大事にしてやってくれよ!じゃなっ!」 パタン、タッタッタッタッ……

初春・白井「「……」」

白井「……なんでしたの、今の?」

初春「……なんなんでしょうね-、今の?」

――路上

レッサー『あー……それでですか。だから急にこっちの残機へ戻ってきたと』

上条「『霊装として壊れたぬいぐるみはそのまま預けちまっていいかな?』」

レッサー『それは構いませんが、今の外見はエロゲのマスコットキャラなのでお忘れなく』

上条「『……まぁ初春さんが気に入ってんだし……後からそれとなく言っとくわ』」

上条「『ちなみにマーリンさんはどうだ?あんま責めないでやってな』」

レッサー『分かってます分かってます。苦しまずに一撃で仕留めるように前向きに努力したいと思いますので』

上条「『曖昧な返答だわ処刑前提だわで突っ込む所多すぎるだろ!?』」

レッサー『ともあれそちらさんの情報は伺いました。”何もなかった”のは、あまり嬉しくはないですよねぇ』

上条「『どういう意味?』」

レッサー『本当に何も起きてないのか、それとも巧妙に隠されているのか……難しい所です』

上条「『何事もないなら越した事はない筈だが……!』」

レッサー『そう悠長に構えてても、いざなんかあったら真っ先に巻き込まれてヒドい目にあう上条さんっ流石ですよねっ!』

上条「『言うなよ!俺だって逃げたくなる時だってあるんだからな!』」

レッサー『とーもーあーれー、そちらの事情は把握しました。引き続き自称その筋の専門家さんへコンタクト取ってみて下さいな』

上条「『いいのか?大切な情報は隠されてる可能性もあんだぞ?』」

レッサー『話を聞くに、もし何か大事件が起きていればご友人方とのんびり話す暇もないんじゃないかな、と』

上条「『あー……風紀委員の主力だもんな。駆り出されて当然だし、なんか疲れてる感じもなかったか』」

レッサー『そしてぇぇぇぇぇぇっ!こんな事もあろうかとジャッジなんとかさんへ潜り込ませていた我らのエージェントからも同じ報告が!』

上条「『偶然だよね?君らがマーリンさんをぞんざいに扱ってただけだもんな?』」

レッサー『――おぉっと!電波が――ジジッ――悪い――ジジジッ』

上条「『ノイズ音を口で言って――』」

レッサー『それではではではっ!またアジトにてお目にかかりましょう!アデュー!』 プツッ

上条「『”では”が妙に増量中だが……』って切りやがったよ」 ピッ

上条(ふーむ。”ホウレンソウ”はきちんと果たしたし、もふもふもあっちへ戻ったと)

上条(立場上マーリンさんの中の人は介入するつもりがないみたいだが、まぁこれで落ち着く所へ落ち着いた)

上条(……個人的にもふもふが主犯じゃねぇかなって思ってたはのナイショだ!今も少しは可能性があると疑ってるが!)

上条(……と、ネタはともかく。佐天さんへ連絡をしなきゃいけない)

上条(あの子は間違いなく良い子なんだが、色々な所が残念すぎる!主にフラグ管理とセーブ無しで突っ込む所がねっ)

上条(「お前が言うなよ、お前だけは言うなよ」ってツッコミが聞こえそうだけども!俺には何個とか分からないなっ!) ピッ

佐天『――もしもし?』

上条「『佐天さん?上条ですがちょっと今話せるかな?』」

佐天『ええっと……はい、大丈夫ですよ?都市伝説の事ですよね?』

上条「『あぁ初春さんから連絡行ってたんだ?』」

佐天『うえ?次の特番の話じゃないんですか?』

上条「『……』」

佐天『……』

上条「『――そうだねっ!次の特番の話かも知れないよねっ!』」

佐天『なーんか面白そうな事隠してませんか?あたしのレーダーに引っかかるんですけど』

上条「『友達!友達が学園都市に来ててさ!それで少し興味あるっていうかね!』」

佐天「『また女の子ですよね?』」

上条「『”また”と女の”子”に悪意しか感じねぇんですがコノヤロー』」

佐天『否定しやがらない所がまた女の敵ですよねっ!』

上条「『緊急事態だから!そのお話は後に回して貰っていいでしょーかねっ!?』」

佐天『今上条さんが置かれている事態に興味津々ですが……まーはい分かりました。お話は初春からもメール受けてますし』

上条「『知ってたじゃねぇか』」

佐天『一週間縛りとなると……あぁありますね。丁度生きのいいのが入ってますよ』

上条「『いやだから、キミ場合によっては犯罪になるんだし不謹慎……』」

佐天『――”客の消えるブティック”って知ってます?』

上条「『なんとなくは……グロい都市伝説でしょ、確か』」

佐天『まぁまぁまとめますと、ある日旅行先であるブティックへ入りました。しかし友達は試着室へ入っていきましたが中々戻って来ません』

佐天『気になって試着室を開けてみると――そこには誰も居なかったのです!』

佐天『現地の警察にも訴えましたが相手にして貰えず、結局友達はそのまま失踪扱いになりました……その数年後』

佐天『別の友人が「消えた友人らしき人が写っている写真」を見つけたという話を聞きつけ、その友人へ詰め寄ったのですが中々見せようとしません』

佐天『「見ない方がいい、絶対に!」と渋る友人から写真を引ったくり、消えた友人は今どうしているのかと写真を覗き込むと――』

佐天『そこには四肢を切断され、ダルマになって見世物にされた友人の姿が写っていたのです……!』

上条「『……やなオチだなぁ、知ってたけどさ』」

佐天『ちなみにこういう怪談では”溜め”を作るのが大切ですんで、余所様で話す時、もしくは聞く時には注意してみるといいですよ』

上条「『誰に向かってなんのアドバイスしてんの――って待て待て。違くね?』」

佐天『あぁ「古い都市伝説じゃないか」、ですよね?いや、そうなんですけど、違うんですよ』

佐天『その、このお話のキモはアレな姿にされちゃうって所なんですが、そっち繋がりで一つ』

上条「『嫌な予感がする!聞きたくねぇ!』」

佐天『あー”その”心配はいらないですよ。ってか”そんな”事件が起きてたら初春達も大忙しですから』

上条「『いやでも噂なんだろ?人が消えるか、改造されっちまう話なんだよな?』」

佐天『それもブッブー!です。ていうか都市伝説というよりかはゴシップ系のお話ですかね』

上条「『話がよく見えないんだが……結論は?』」

佐天『あー、でしたら見た方が早いかも知れません。今どちらに?』

上条「『ちょい前まで初春さん達の支部で話聞いてた所』」

佐天『もっと具体的には?』

上条「『あーっと、向かい側の、一階にファミマ入ってるテナントビル――って、そこまで詳しい位置情報要る?』」

佐天『そっちは……えぇ、はい、友情的なアレでして――はい、オッケーだそうですよ』

上条「『で、その場所言わせるって事はなんかあるのか?』」

佐天『XX学区にですね、あるんですよ――』

佐天『――”ニホンダルマ”ってお店が……ッ!』

上条「『……はい?』」

佐天『超絶悪趣味だと思いませんかっ!?あたし的にはオッケーですが!』

上条「『店……店、なんだよね?店舗、お店、ショップの、店?』」

佐天『そーですよーっ!なんでも一見コンビニ風でありながら中へ入ると怪しげなオカルトグッズの数々が!』

佐天『噂ではたった昨日まで倉庫だったのに、一夜にして忽然と現れたという未確認情報も!』

佐天『またそのイメージを覆すように!店員さんは可愛らしいラクロス?だかクリケット?だかのユニフォーム着たガイジンさんですって!』

上条「『……ヘー、ソウナンデスカー』」

佐天『しかも”アタリ”の店員さんが居れば、事細か且つフレンドリーにアレコレ相談になってくれるそうですよ!』

上条「『……ふーん?店員さん、店員さんなぁ。他になんか特徴はないのかな?』」

上条「『こう、ヘアバンド着けたりだとか、一部に金髪ウィッグみたいなのつけてたりだとか?』」

佐天『……ありゃ?上条さんどうしてそれをご存じで?』

上条「『知り合いだから、かな?よりぶっちゃけるとソイツらに紹介するために佐天さんへ訊いてんだよ!』」

佐天『ミイラ取りがミイラ、とはよく言いますけど、その子達もまさか都市伝説を生む方へ回るとは……!』

上条「『……うん、まぁ聞けてよかったよ。情報ありがとう』」

佐天『いえいえ、あまりお役に立ちませんでしたが――つてもし良かったら引き続き調べときます?』

佐天『猫の手ぐらいにはお役に立てると思いマスですよ、にゃー』

上条「『佐天さんその鳴き声あんま外で言わない方がいいと思うよ?具体的には変なオブション憑くから』」

上条「『――て、今日はやけに親切だな……?』」

佐天『あー、いややっぱり分かっちゃいますか?実はですねー、隠していた事が一つだけありまして。そのお詫びで、はい』

上条「『隠してた?一体何――』」

???「――見つけた」

上条「ッ!?」

佐天『えっとですねー、あたし的にもARISAさんのDAI・TAN告白は驚きだったんですが――』

佐天『――やっぱりその、きちんと会ってお話ししたいという友達がですね。はい』

バチッ、バチチチチチチチチチチチチチチチチチッ!!!

上条「大気が――周囲の電子機器が帯電している……ッ!?」

佐天『まぁ取り敢えず誘導したんで、後はお若いお二人でって、事で一つヨロシクー!』

上条「『待てよテメェっ!?何俺んトコまで死神誘導しやがってんだァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?』」

佐天『と、都市伝説については!不肖この佐天涙子の名にかけて調べときますんでっ!それじゃご武運をっ!』 プツッ

上条「あぁクソ切りやがった!?どーすんだよこの状況!出て来いよ責任者――」

???「うん、そういうのいいから、ね?」

上条「ビリビリ、さん……?」

御坂(???)「うん、どうしたのそんなに震えちゃって?まるで猛獣を見るような目で」

上条「いやあの違うんだよ!話を聞いてくれよ!」

御坂「そうよね、話し合いは大事よね――」

御坂「――『最期』になるかも知れないから、しっかり言えばいいと思うわ。悔いのないように」

上条「まず最初に!俺はARISAのEUツアーへ頼まれてついて行ったんだよ!マネージャ的な仕事の一環としてだ!」

御坂「うん。その話は知ってるわよ」

上条「そう思ったらユーロトンネルん中でドロドロネバネバの怪物達に襲撃されたんだ!女の子と一緒に戦ったけどさ!」

御坂「うん?」

上条「そうかと思えばフランスへ着いたらトカゲ人間達と深夜のスタジアムで追い回されたし!別の女の子と一緒に撃退したけども!」

御坂「……うん」

上条「イタリアへ入れば入ったで、夢の中で命を賭けた探偵推理ごっこをさせられる羽目になったよ!また別の女の子と一緒に乗り切ったが!」

御坂「……えっと……」

上条「イギリスへ舞い戻って敵の本拠地へ乗り込めば、変態双子と邪教集団を相手もしたな!違う女の子と一緒に解決したんだけどもだ!」

御坂「……」

上条「頑張って頑張って学園都市へ戻ってみれば、月の海で死して眠っていた魔神が復活して地球は静止するし!」

上条「でもアリサや『新たなる光』の女の子達の力を借りて!俺達は勝ったんだよ!ただそれだけだ!」

御坂「……」

上条「――って話、信じられる?どう?」

御坂「ワケないわよね?」

上条「ですよねー、あはははははははははははっ!」

御坂「……」

上条「はは、はははは……」

御坂「そろそろいいかな?」

上条「良くないですっ!まだ死にたくありません!」

上条(考えろ、俺!何か方法はある筈だ!)

上条(事実をほぼ包み隠さずに言ってもダメ――ほぼ詰んでるが!)

上条(そのためにも今は一端逃げて!ビリビリの怒りが収まるまで隠れれば!)

上条(……けどなんて?どうやってビリビリの気を逸らせようか?下手な言い方をすればオシオキが処刑へ変わるかも知れないし……)

上条(俺が知ってるビリビリのイメージで、なんか気を引けそうなもの――つったらアレか。アレしかないか)

上条「あーーーーーーーーーーーっ!?あんな所に――」

御坂「通じないわよ。てかいつの時代だと」

上条「――可愛い子猫がいるーーーーーーーーーーーーーー!」

御坂「マジでかっ!?どこに!どこに居るのよっ!?」

上条「ダメ元でやったのに食いつきいいな!?今のウチに――」

――路地裏

カツカツカツカツ

御坂「……」

ガタッ

御坂「――誰……ってポリバケツか」

ポリバケツ「……」

御坂「……」

御坂「探さ、ないと――」

カツカツカツカツ……

ポリバケツ「……」 パカッ

上条「……ふう、行ったか……!」

上条「俺を甘く見たなビリビリ!まさか俺がゴミバケツの中に潜んでいたとは分からなかったようだな!!」

上条「ポリバケツはポリ塩化ビニルで作られているから電気を通しにくい――つまり!ビリビリのレーダーからも逃れられるって訳さ!」

上条「生ゴミがスッゲー臭いけど!お嬢様育ちのビリビリにこの発想は見破れまい!」

上条「……」

上条「……うん、臭いよね。何やってんだろ俺……」

上条「ゴミバケツん中で勝利宣言……どう見ても負けてるだろ。コールド的な大差をつけられてだ!」

上条「……まぁいいや。今日はもうどっかでフロでも借りるか、公園で体洗って帰ろ――」ムギュッ

上条「――う。ってかなんだ?さっきから俺なんか踏んでるみたい……?」

女の子「……」

上条「………………屍体だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

上条「運が悪いのもいい加減にして下さいよもうっ!つーかシチュ的に第一発見者=犯人じゃねぇかっ!」

上条「今度は何か?あ?アズカバンにでもブチ込まれんのかよっ!なあぁっ!?」

上条「……」

上条「……いやしかし、三食メシは出るし家事炊事をしなくていいし」

上条「何よりもラッキースケベで困る事はない………………成程な!」

女の子「何が……ナルホドか、分からない訳……?」

上条「生きてたっ!?」

女の子「勝手に……殺す……な……」

上条「どうしたっ!?どっかケガでもしてんのか!?待ってろ、今救急車呼んぶからな!」

女の子「……おなか……」

上条「痛いのかっ!?」

女の子「………………へった」

上条「……あん?」

女の子「おなか……へった、わけ……」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を
謎()のヒロインが111!!……てか最期の伏線回収の蛇足話です

フレンダァァァァァァァ!?

女の子「……おなか……」
上条「痛いのかっ!?」

女の子「……無い、訳……」

とかだったら、どうしようかと思った訳よ

久々の風紀委員コンビ登場!

この間、友達(アニメに興味無し)から「頭に花冠のせて歩いてるJCが二人いる!」とメールが。
U春さんの画像送って「これ?」と聞いたら「これこれ!」と。
コスプレイベントでもあったんかなと思ったけど、別の知人から「中学生の間で普通に流行ってるよ」との情報も。
だとしたら、すげーなかざりん。

マーリン、いい加減上条さんにくらいありのままの姿見せようぜ

>>195
マーリン「そないにヒトぉ疑うのはよくないと思うんよ、うん。ワイは信頼こそが力やと思うわ」
マーリン「やから決して!決してワイが初春さんチで新たな第二の人生を送ろうとしてたんも!」
マーリン「体を張ったギャグであって本気とはちゃうんよ?いやマジでマジで」

>>196
レッサー「残念ですが、おっぱいはコンパクトにならないのでねっ!残念ですけどもっ!」
レッサー「ていうか巨乳の妖精さんで有名なのは、昔々『アポなしギャルズお・り・ん・ぽ・○』ってゲームがありましてね」
上条「お前中の人オッサンだろう。なんでSSで出たゲーム知ってんだよ」
レッサー「笠原弘子さんの”Loving You”は超名曲ですので、ヒマだったらググるのも結構――なん、ですけども」
レッサー「ヒロインが主人公の妹(※実妹)オンリー、しかも前世の因縁どーたらで代理戦がどーたらで、中々尖った内容でしたよ」
レッサー「しかも最後が『お兄ちゃん大好き』で終らせる辺り、20年ほど世に出るのが早かったと言えましょうか!」
上条「俺妹は……うん、まぁ、うん……」
レッサー「ちなみに上条さんだったらどんなエンドにします?」
上条「ヒトが濁してんだから察しろや!」

>>197
レッサー「安全安心安牌アンコウ!ニホンダルマ日本支店をどーかっごひいきにどうぞっ!」
レッサー「気になるあの子を(物理的に)オトす方法や、(精神的に)オトす方法各種取りそろえておりますっ!」
レッサー「勿論店内には個室ブース、通称『試着室』も御座いますのでプライバシーも厳守致しますですよ!」
上条「マジ都市伝説になりそうだから止めてあげて――って思ったんだけどさ」
上条「なんでお前ら学芸都市で『ニホンダルマ』なんて店立ち上げたの?他にまともな名前なかったんかい」
レッサー「それは私らの霊装云々を持ち込むための偽装ですな、名前の方はなんとなく?ノリで?」

>>198
ですね。全く仰る通りだと思います
(※実は『アイテム~』書いたらトンズラしようとしていたなんて今更言えない……)

>>199>>203>>204
毎度ありがとうございます

>>201
個人的な見解ですが、話の『軸』にオリキャラを持ってくるのは頂けないかと
悪役でも、端役でもいいですけど、ベースを別のものへ求めるのはあまり好きではありません
なので今回の『軸』になるのも、利用されるかどうかはともかく、”彼女”である訳です

>>202
○『新たなる光』のフラグ一覧
レッサー「やりましたかっ!?」→やってません
フロリス「ヘーキヘーキ、心配ないジャン?」→死にかけます
ランシス「……ん、なんとなく?」→舌を入れますガチでした
ベイロープ「戦士は戦場へ(以下略)」→見事にフラグ立ちました

>>205
ヘルメスの羽根うんたらではなく、折口信夫先生の方の死者の書ですね。テーマ自体は似通っていますが

――夕方 自宅(上条のアパート)

女の子 ガツガツガツガツガツ……

上条「あー……っと、な?メシ食うのはいいし、俺の部屋を占拠するものいいんだけどさ」

上条「半分は俺の分だから、残しといて欲し――」

女の子「グルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルッ!」

上条「オーケー!分かったよ!それはお前の分だから物投げようとスンナ!」

上条(あれから……ゴミバケツの中で女の子を拾ってから、大変だった……)

上条(お互いにカブトムシのような臭いはするわ、しかも公園で洗ったぐらいじゃ取れる筈も無く)

上条(俺は情報収集をさっさと切り上げて自宅へ戻った訳だが……オプション付きで)

上条(ポリバケツ子(仮名)さんをどうしたらいいものか、つーか拾っちまったものは仕方がないんだよ、うん。それは分かるだろ?)

上条(だが!だからといって救急車を呼ぶでもないし、どう見ても訳ありの子をそのまま放置するのも後味が悪いし)

上条(……てか憶えてないんだが、インデックス拾った時の俺もどうして通報しなかったんだろう?普通に考えれば救急車と風紀委員のお仕事なのに)

上条(……はっ!?まさかエロ目的で――って、それはないな。それだけはない)

上条 クンクン

上条(……つーか臭ぇな。公園で軽く洗ったのに落ちる筈もねぇが)

上条(てかこの子、よく食えるなこんな所で――うん?) クンクン

上条(なんの……香料だろう?花っぽい香りが微かに――)

女の子「――おかわりっ!もう一杯っ!」

上条「ねぇよ。ウチにある食材全部食いやがったよ」

上条「……てかインデックス居ないから油断していたけど、こんなトラップが待っていようとはな!」

女の子「ちょっとー、人をトラップ扱いは感じ悪い訳よ?」

女の子「こう、小汚い家へ超絶ぷりちーなあたしが来てやったんだから、五体投地して有り難がるのが筋って訳だし」

上条「ぷりちー()、超絶()」

女の子「半笑いに超ムカツク訳」

上条「てかそもそも小汚いの半分以上はお前のせいだよ」

女の子「あー……暫くお風呂に入ってなかったしねー。そんなに臭う訳?

上条「俺はお前がカブトムシの化身であっても驚かないレベル」

女の子「――お風呂借りる訳ねっ!あ、あと覗いたら殺すから!」

上条「覗くとか()」

女の子「……さっきからちょくちょく見下した笑いが入るけど、それは一体なんなの?」

上条「お前そりゃ現役アイドルや洋タレ顔負けの――って何でもないです!気にしないで!」

女の子「はっきり言うと?」

上条「もつと高いレベルで見慣れてるから、『ちょっと可愛いかな?』ぐらいにしか思わない」

女の子「言いやがった訳ね!こう見えて脱いだら超すっごい訳よ!」

上条「ヘー、ソウナンデスカー」

女の子「むっきーーーーーーーーーーーーーーーっ!信じてない訳!?だったら見せてやろうじゃない!」

女の子「このあ・た・し・のっ!脚線美を!おっぱいは成長途中にあるけども、その将来得るであろう美貌の一部を!」

上条「……」

女の子「……」

上条「どした?」

女の子「ちょ、ちょっと聞きたい訳だけどさ?あんた高校生よね?」

上条「だな」

女の子「夜遅くないとはいえ、オトコの家にか弱いあたしが居る――はっ!?これってピンチが貞操っ訳か!?」

上条「いや、別にそういうつもりは。あとお前の日本語スゲーな」

女の子「近寄らないで!不幸がうつる訳!」

上条「不幸関係ねぇだろうが!お前オレのアイデンティティ否定すんなや!」

女の子「あ、エロい事するのは否定しない訳かっ!?」

上条「だからさ!」

女の子「美人で可愛くてこう同僚からも妬まれて時々シバかれるあたしを!薄い本みたいにエロい事するつもりな訳ねっ!」

女の子「――ハッ!?まさか食事の中に媚薬が混ざって……!?」

上条「ないな。そんな便利な薬あったら実用化されてるわ!つーか欲し――いやいや!俺は紳士だからそんな不埒な事は思わないけども!」

上条「そもそもエロ目的だったらメシなんて食わさねぇだろ!どこの世界に美味いメシ作ってフラグを立てるヤツがい、る……」

上条「……」

上条「ま、まぁ!その話はいいとしてだ!」

女の子「……なんでそこで完全否定しきれない訳……?」

上条「ともかくだ!俺はエロい事なんて考えてないぜ!これは純粋に人助けだ!」

女の子「あたしの同僚の話なんだけどさ」

上条「なんだよ急に」

女の子「まぁ聞くって訳。いいからその子が前に言ってた訳よ」

女の子「『いいですかー?フレンダは超アレンダかも知れませんが、男もまたは超オオカミなのです』」

女の子「『例え道に落ちている超腐った肉でも、スカベンジャー的な超思考を持ったバカが超居ますからね』」

上条「お前100%バカにされてるからな?死肉扱いされてんぞ?」

上条「てかフレンダ……?」

女の子「『どれだけ女の子には超関心がない振りをしていても、心の中では肉食系ですので超注意すべきです』」

上条「オマエら男バカにするのもいい加減にしろ、な?お前らが思ってる程単純じゃねーぞ!」

女の子「『例えば……男が”エロい事なんて考えてない”と宣う時は超注意ですね』」

女の子「『この場合、100%の確率で超エロい事しか考えてはいませんから。ええはい、それはもう超確実に』」

上条「ごめんなさいねっ!男って大体そーゆーもんだからなっ!」

上条「つーかその時空を超えてあの小悪魔から心理的腹パン喰らうとは思ってみなかったよ!どんだけだあのヤロウっ!」

女の子「『あ、ちなみに”エロい事考えてる”と超正直に言っていた場合、それも100%エロい考えを持ってますんで』」

女の子「『――つまり男は200%の確率でエロしか頭にないですねっ!』」 ドヤァッ

上条「間違っちゃーない、つーかそれが世界の真理なような気がするけども。その計算式はウォーズマ○方式、別名死亡フラグだ」

上条「あと野郎代表として言わせて貰えれば、たまーに100にの一人二人の割合で、女の子には興味がないってヤツも居るのは居るわ」

上条「……ただそういう”ポーズ”を取ってるヤツに限って、同性でもドン引きするような性癖を隠してたりするし……」

上条「……や、まぁその、なんだ。警戒する気持ちは分かるけど、取り敢えず俺は暫く外に出てっからさ」

上条「その間にシャワー浴びるなり、服洗濯するなり好きにすれば良い――し」

上条「家を出るんだったら、合鍵置いてくから、鍵閉めてから郵便入れにでも入れといてくれ」

女の子「……手慣れてる、訳?」 ジーッ

上条「訳ありっぽい子を助けるのは慣れてんだよ、一身上の都合で」

上条「だから……いや、だけどか。別に話を無理矢理聞き出そうってつもりはねぇから、まぁ気の済むようにしてくれて構わない」

上条「話を聞いて欲しいってんなら聞くけど強制はしない――って、お前」

女の子「な、何よ!?」

上条「いや、どっかで会ったような……?」

女の子「……やっぱり、ナンパ?」

上条「ナンパ()」

女の子「待ちなさいよっ!さっきからずっとずっとずっと!」

女の子「なんで全部”()”で流されてる訳よ!?それはそれで女としてのプライドがあるって訳だし!」

上条「流石にカブトムシの臭いがする相手は、ない」

女の子「んがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

上条「あー、はいはい――って人様んちの物を投げるな!目覚まし時計は結構したんだぞ!?」

女の子「さっさと出て行く訳よ!このヘンタイっ!チカンっ!不幸っぽい!」

上条「待て!?不幸は構わないだろ!不幸は他人から誹られる憶えはねぇよ!」

女の子「いいから、出てけーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」 ドンッ

上条「おふっ!?」

ガチャッ、ガチャンッ

上条『あテメ内鍵だけじゃなくてチェーンかけやがったな!?何しやがってんだよ!?』

女の子「ベッドの下、にーはー、何がある訳かなーっと」 ゴソゴソッ

上条『それじゃさよならカブトムシさんっ!比較的速やかに離れるからそこだけはノータッチで頼む!』

カッカッカッカッ……

女の子「………………はぁ」

女の子「どうした訳、よ……」

――近くの公園

上条「……」

上条(……アレだな。こう、テンションってあるよな?)

上条(なんか格好いいっぽい事を言ったために、後々困る時ってないかな?まぁ一般的には後悔って言うんだが)

上条(ノリで出て来たはいいもののですね、行く場所が無いっていうか、えぇはい)

上条(フロ沸かしーの、服洗濯しーの、乾燥機へ放り込んでーの……で、まぁ二時間ぐらいは必要だろう。女の子だし下手すればもっと)

上条(生ゴミん中へ隠れるぐらい悲惨な逃げ方をしなくちゃいけない状況……なんとなく想像はつくが、まぁ碌なもんじゃねぇだろうし)

上条(側に見知らぬ野郎――俺だ――が居て、ゆっくり休めるとも思えない。だったら今晩ぐらいは帰らない方がいいだろうっと)

上条(とはいえ、どこへ行ったもんかな)

上条(土御門不在――最近帰って来たんだけど、雲川先輩の所で働いているらしい――の、土御門家へお邪魔する訳には行かないし)

上条(コンビニか公園、はたまた漫画喫茶で一晩過ごすのが妥当か……ふむ)

上条(”死人”の方をレッサー達(除くもふもふ)が調べてるのに、俺だけが遊んでんのも気が引ける)

上条(歩き回って出くわすなんて偶然、そんなある訳ねぇし。だからってネットでググっても答えは返ってこない)

上条(佐天さんの地雷踏み抜く能力は結構アテに出来るとして、任せっぱなしなのも如何なものかと)

上条(死人……死人ねぇ?科学サイドで、つーか俺の知り合いで詳しそうなのはカエル先生ぐらいか。でも魔術だから明らかに専門外ではある)

上条(他に詳しそうな、且つ魔術師は――って居た!そうだよ!あいつが居たじゃんか!)

ピッ、プルルルルルルルルルッ

???『――はい?』

上条「『もしもし?海原か?』」

海原(???)『えぇはいお疲れ様です――と、あぁARISAさんの記者会見見ましたよ?』

上条「『あー……はい』」

海原『つまりアレですよね?自分との約束を果たされなくなったと言う事で、殺してもいいんですよね?』

上条「『いやあの、約束を破ったつもりはですね?こう、流れっていうかさ?』」

海原『まぁカノジョ持ちでも御坂さんは守れますし、そこは信頼してますから』

上条「『……すまん。あと、ありがとう』」

海原『そもそも上条さんの側に居た方が、より危険性が高まる気がしないでもありませんし』

上条「『ホンットーーーーーーーーーーーにごめんなさいよ!俺が望んでトラブルに巻き込んでるんじゃないんですけどねっ!』」

海原『それでご用件はなんでしょうか?雑談でも構いませんが』

上条「『えぇっと、”そっち”絡みで相談したい事が……なんかゴメンな?頼るばっかりでさ』」

海原『それはお気になさらず。回り回ってプラスになるのであれば、自分は別に』

海原『……ですが、今自分が居る場所が少々特殊でして。あなたがいらっしゃるのは厳しいかと』

上条「『俺今自宅近くなんだが、位置的にキツいって?』」

海原『では、なく……なんて言うんでしょうかね、こう、素人の方にはお勧め出来ない、と申しましょうか』

上条「『あ、ごめん。もしかして潜入捜査中とかなのか?』」

海原『えぇ、ざっくばらんに言えばそのようなものかと――』

ケータイからの声『お待たせしましたセンパイっ!ご注文のストロベリーショートとベリーベリードーナツになりまぁすっ!』

ケータイからの声『ご注文は以上でお決まりでしょうか?ではごゆっくりどうぞー!』

上条「『……』」

海原『――と、言うワケでしてね!自分は今厳しい環境下に置かれているのですよ!』

上条「『確かに厳しいわ-、俺的にはベリーハードだもの』」

上条「『だって俺だったらなんかベリー多すぎて躊躇するもの。もしくは帰るもの』」

海原『いえこれはですね、そういう目的ではなく』

上条「『つーかテメー今メイド喫茶的なものに居るだろ、なあぁっ!?だって今”センパイ”つって注文持ってきたみたいだし?』」

上条「『人が割とマジで相談したいってのに!海原さん的にはそっち優先でいいのか、あぁ?』」

海原『いやでも、素人の方には厳しいかと』

上条「『厳しいの意味が違うだろうがよ!お前が言ってんのはハードじゃなくってルナティックの方だし!』」

海原『一応誤解を解いておきますが、メイド喫茶ではありませんよ』

上条「『どこでも変わらんねーよ!?だってそっち系の店確定してんだから!』」

海原『スゴいんですって!いやホントに!来てみれば上条さんもビックリしますから!』

上条「『……もう既にビックリはしてるさ。お前のキャラの変わりっぷりにな!』」

海原『アドレス、ショートメッセージで送りましたんで。ではっ』 プツッ

上条「『あ、こら話はまだ終って――』……またこの展開か」

上条「……あぁうん、近くはないけど……行けばいいのな、ここに」

――???喫茶

カランコロンッ

上条「えっと……」

海原「あぁ上条さんこっちです、こっち」

上条「あぁうん、お疲れー」

上条(指定された場所は繁華街の裏路地の一角。外観は普通の喫茶店で、中身もまぁアンティーク調のシンプルな店だ)

上条(俺が想像していたような、『お帰りなさいませ、ご主人様!』的な店じゃなかったらしい。というのも――)

上条「常盤台の子、多いなこの店」

上条(品行方正(※例外あり)で通ってる、常盤台中学の女の子が結構な数居る。大体立ったままだけど……なんで?)

上条「なぁ?JC大好きの海原さんがこの店に居着くのは分かるんだが、どうして常盤台の子ばっか居るんだ?」

上条「なんかぱっと見、ウェイトレスさんっぽい事もやってるみたいだし、体験学習――なんて、させる筈はねぇか」

海原「あぁ、それはですね上条さん――」

海原「――ここが『常盤台喫茶』だからですよ」

上条「ふーん……………………え、何?お前今変な事言わなかったか?」

海原「常盤台喫茶ですか?何を今更」

上条「いや知らねぇよ!?何お前が『え?』みたいな顔してんの!?」

海原「あぁっと……メイド喫茶はご存じですよね?」

上条「前に……一緒に行かなかったっけ?いつだったか忘れたけどさ」

海原「最近だと……他にもペット喫茶という変わり種が広がっているのはご存じですか?」

上条「あー聞くなぁ。店内に放し飼いになってるペットをもふもふ出来るんだろ?ドッグカフェは正直行ってみたい」

海原「そのどちらも『店内にあるもので癒やされよう』に、異論はないですよね?」

上条「ツッコミ所はあるが、異論は特に」

海原「犬好きな方はドッグカフェへ、猫好きな方はキャットカフェへ、そしてメイドさんが好きな方はメイド喫茶へ」

上条「……うんまぁ、その三つ並べるのはどうかと思うが。理解は出来るよ」

海原「そして――常盤台中学の子が好きな人間は常盤台カフェへ行くに決まってるじゃないですかっ!」

上条「需要がニッチ過ぎるだろうが!」

上条「なに?それじゃこの子ら全員常盤台の制服着てるだけで、通ってる訳じゃねぇのか!?」

海原「お店の子達は『憧れの常盤台の制服着れてラッキー!』だそうですよ」

上条「ウルセェよ!?そんな動機でバイトするんじゃありません!」

海原「お客の方も、ですね、その……」

上条「……何?なんかあんの?」

海原「常盤台へ不用意に近づくと、問答無用で私設警備員呼ばれて補導されるので、えっと……好評ですよ?」

上条「近づいただけで補導って……それはやり過ぎじゃねぇのか?」

海原「ですよね。ただ風景写真を撮るためだけにバズーカレンズ着けたままだってのに!」

上条「うん、その段階で窃視する気満々だよね?てかその理屈が通ると思っている方が、おかしい」

海原「……と、自分は心の癒やしを求めてここへ来ていた訳ですよ、はい」

上条「個人の趣味に文句つけるつもりはねぇが……てか客結構入ってんな」

海原「プレイであっても常盤台のお嬢様に憧れているだけですよ、きっと」

上条「お前がプレイ言わなきゃいい話だったのにな!……いや、そうでもないか。全然そうじゃなかった」

海原「それで?自分に話があるとは一体――と、ちょっと失礼します」 クンクン

常盤台カフェの店員さん達「「「……!!!?」」」

上条「海原さんちょっといいかな?テメー人の首筋に顔埋めるとBL的な構図になっちゃうからさ?」

上条「てか店員さんがカメラ構えて――」

常盤台カフェの店員さん達「「「……」」」パシャッ、パシャッ、パシャッ……

上条「撮るな撮るな!見せもんじゃねーぞ!」

海原「――と成程。アネモネですか。それで自分へお声がかかったと」

上条「はい?」

海原「込み入った話になりそうなので個室を借りましょうか。あまり人に聞かれてもよくないでしょうしね」

お付き合い方に感謝を。来週は実家へ帰るのでお休みとなります



――次回予告1

――イギリス清教 地下大聖堂

ステイル「『――そうだ。そこを壊して――何?』」

インデックス「……とうま……」

ステイル「『今はそんな事を話している場合じゃない――縁起でもない!そんな事を――!」

インデックス「うん?」

ステイル「『……あぁ分かった、分かったよ。キミがそう望むのであれば、僕は叶えてやらなくもないよ』」

ステイル「ただし貸し一だからね。必ず返せよ――』」

ステイル「『――生きて帰って、だ』……ほら」

インデックス「えっと……?」

ステイル「ベツレヘムの星に居るあのバカとこの霊装は繋がってる。ここを持ちながら話せば向こうへ声は届く」

ステイル「……話があるんだってさ。君に」

インデックス「……うん――『もしもし?とうま?』」

上条『……よぉインデックス。元気か?』

インデックス「『ちょっと頭がクラクラするかも』」

上条『そいつはフィアンマに操られてたからだ。そっちの術式はぶっ壊したけど、その間お前の隣に居るヤツが傷付けないように抑えてくれたんだよ』

上条『一応でいいからお礼言っとけ』

インデックス「ありがとうなんだよ」

ステイル「……仕事だからね」

上条『まぁ……あんま大した話じゃないんだが――その、聞いてほしくってさ』

上条『もしかしたら最期になっかも知んないし、さ?』

インデックス「『とうま!そんなこと言っちゃダメなんだよ!』」

上条『いいから、聞いて欲しい』

インデックス「『でも!』」

ステイル「……聞いてあげなよ。男の一世一代の見せ場だ」

インデックス「……うん」

上条『俺はさ。お前に嘘……吐いてきたんだよ』

インデックス「『……うん』」

上条『いつか……いつかきっと言おうって!ずっとずっと思って――』

インデックス「『それはもういいんだよ、とうま』」

上条『インデックス……!』

インデックス「『ちゃんと帰って来てくれれば、それだけで』」

上条『違うんだインデックス!これはそんななぁなぁで済ませて良い問題じゃないんだ!』

上条『きちんと!お前に謝らなきゃ!俺自身の中でケジメが決かねぇんだよ!』

インデックス「『……うん。だったら聞くんだよ。とうまが何を言いたいのか、もう分かってるけど』」

上条『……ありがとうインデックス――その、俺、俺さっ!俺、実は――』

上条『――ヅラ、だったんだよ……ッ!!!』

インデックス「『』」

ステイル「……」

上条『……』

インデックス「――はっ!?」

上条『インデックス?』

インデックス「『あーうんごめん?なんか今ちょっとよく聞こえなかったのかも?』」

上条『俺――ヅラだったんだよ!』

インデックス「『……うんごめんね、とうま?いやあの、そうじゃなくって』」

上条『何?』

インデックス「『うんその、ヅラだって事は分かったから、本題を――』」

ステイル「――男の告白を茶化すなッ!!!」

インデックス「!?」

ステイル「……あぁごめんよ。大きな声を上げてしまって」

ステイル「けれど、これは大事な話だ。きちんと聞いてあげなきゃダメだ!」

インデックス「わたしがふさげてるのかな?どう考えてもとうま達の方がネタに走ってるとしか……」

上条『……初めて会った時から!俺、お前に嘘吐いて……!』

上条『嘘がバレるのが怖いから!ヅラだって言い出せなかったんだ!』

インデックス「『記憶は?とうまの記憶がなくなってたって下りはしなくていいのかな?』」

上条『バカヤロウ!何言ってやがんだよ!』

インデックス「『この流れで怒られるのは納得行かないかも……!?』」

上条『……いいか、良く聞けよ?確かに俺の記憶はなくなってたかも知れない』

上条『それでインデックスに嘘を吐いた……あぁ認めるさ!それは俺の過失ではある!』

上条『でもなインデックス?よく考えてみようぜ』

上条『記憶ってのは幾らでもやり直す事が出来る。生きてさえ居れば何度だって繰り返す事が出来るんだよ!』

上条『楽しかった事!辛かった事!何度でも何度でも、忘れられなくなるまですりゃいいだけの話さ!』

上条『……でも、でもな。記憶はそれでいいのかも知れない。それでどうにかなるかも知れない。けど!』

上条『――毛根は一度死んだらそれでオシマイなんだよ……ッ!!!』

インデックス「『……とうま……』」

ステイル「……くっ!」

インデックス「『――って待って待って?ちょっと深い話かもって一瞬思っちゃったけど違うよね?これただのお馬鹿なお話しだよね?』」

インデックス「ていうかあなたも共感してるって事は……!?」

ステイル「……」

上条『……あぁこれで言いたい事もなくなった――思い残す事はない!』

インデックス「『こんなのが言いたかったのかな?他にもうちょっと言うべき事はあったよね?』」

インデックス「『ていうか今までよく隠せたのかが不思議なんだけど……』」

上条『うん?』

インデックス「『や、あのね?病院でお医者様に治療を受ける時とか、あっくあに攻撃されてあいしーゆー?へ入ってたのはどうしたの?』」

上条『カエル先生は協力者だ!あの髪型を見ただろう?』

インデックス「『髪型っていうか、あれはハゲ散らかるっていうか……』」

上条『ステイル――もし、もし俺に何かあったら!』

インデックス「『とうま!わたしを心配して――』」

上条『俺のヅラは、お前が使ってくれ……!』

インデックス「『譲渡するの!?ヅラってそういうシステムだったんだ!?』」

ステイル「『断る。君からの施しを受けるつもりはない』」

ステイル「『僕のヅラは僕が勝ち取ってから着ける!今までも、そしてこれからもそうさ!』」

上条『……へっ、こんな時まで嫌なヤローだぜ』

ステイル「『お互い様だと思うがね、それは』」

インデックス「あのー?二人ともおかしくないかな?」

インデックス「ていうかどんな世界観なんだろう?ヅラを継承する世界ってつまり、滅んでもいいよね?」

上条『――っと、そろそろ限界みたいだ』

ステイル「『……ま、ヘマしないようにね』」

上条『分かってるよ――じゃな』 プツンッ

インデックス「『とうま、とうまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?』」

――ベツレヘムの星 落下地点

御坂「――どこよ!?あんにゃろ一体にどこに居るって言うのよ!」

御坂「てかさっきから電磁波レーダーにはゴミしか引っかからないし!どこまで落ちてん――」

御坂「――あった!ここから近い所に!」

御坂「……」

御坂「……これは――」

ヅラ「……」

御坂「千切れた、あいつのヅラ――!」



――『上条「俺、ヅラだったんだ」』、へ続く


――次回予告2

――大法廷

アックア「――では、ただいまから『上条当麻、ラッキースケベ裁判』を始めるのである」

上条「……はい?」

アックア「被告人、宣誓をするのである。右手を胸に置いて、メモを読み上げるのであるな」

上条「待ってくれよ!?俺が何をしたって言うんだ!?俺は疚しい事なんかひとっつも――」

上条「……」

上条「――して、ナイヨ?」

アックア「いいからさっさと読み上げやがるのである。時間の無駄であるが故に」

上条「……てか何?朝一で呼び出されてみりゃ裁判ってどんだけ理不尽極まねぇんだよ……!」

アックア「さっさとするのである。しないと裁判官の心証が悪くなるのであるが」

上条「裁判官って……アックアが?」

アックア「同性だと裁判中にフラグを立てられる恐れがあるため、立ち位置的にも比較的ニュートラルな私が選ばれたのであるな」

アックア「よって一度引き受けた以上、私の名にかけて理不尽な判決が下る可能性はゼロである」

上条「あぁそう?だったらまだ救いようはあるが……何々」

上条「『わたくし、上条当麻は人の持つ良心に従い、嘘偽りのない証言をすることを誓います』」

アックア「宣誓は為された。では検察官、罪状を読み上げるのである」

青ピ「はいなっ!」

上条「予想通りお前かい」

青ピ「被告人はラッキースケベと称して数々の犯罪行為を女の子にしてますぅ!これは立派な犯罪やで!」

上条「不幸なのは仕方がねぇんじゃねぇかなって」

青ピ「よって検察は『チ××切断の刑』に処するように望みますわ!」

上条「刑罰ヘビー過ぎんだろ!?つーかどんな刑だ×ン×切断!?」

アックア「そんな刑はないのである――さて弁護人、前へ」

ステイル「あー、検察の話していることは真実であり、弁護人の立場からしても処刑が妥当だと思われます」

上条「裁判官!弁護人が弁護以外の役割をしてるんですけど!」

上条「つーかアウェイ過ぎるだろ!?何この状況!?」

アックア「では検察」

青ピ「はいなっ!まずは証人その一!どーぞ!」

インデックス「……」

上条「ヤバイな!最初っからいい訳も申し開きも出来なくなった!」

青ピ「では被告人からあなたがされたセクハラを証言して下さい!辛いと思うけど、しっかりしてや!」

インデックス「……えっと、とうまに何回も裸見られたんだもん……」

ステイル「――もう死刑でいいんじゃないかな?いいよね?つーか殺すからそこを動くな!」

上条「ごめんなさいインデックスさん!本当にごめんなさいだから今は空気読んで!」

アックア「はい、弁護人は退廷するのである――と、被告人は新しい弁護人を呼ぶか、自身で弁護するのである」

上条「チェンジしたら誰が来るの?」

アックア「HAMADURAがやりたそうにしていたのであるな」

上条「だったら俺がするよ!つーかアイツ俺の交友関係知んねぇのになんでエントリーしてやがる!?」

アックア「他に弁護したがるニンゲンが――いや別に何でもないのである」

上条「……どんだけ野郎から人望ないんだ……!」

アックア「で、被告人兼弁護人、反論は?」

上条「異議あり!証人の証言は正しいですが、それは過失の筈です!」

上条「被告が意図的にした訳ではないので罪に問えないんじゃないですかっ!?」

青ピ「そうなん?」

インデックス「それはっ!そうかも、だけど……」

アックア「確かに過失であれば、過失自体の罪はあるものの、性犯罪自体を立件すれば冤罪になるのであるな」

上条「よしっ!」

青ピ「裁判官!次の証人を出しますわ――どうや!」

御坂「……」

上条「ビリビリ……いや、ビリビリさんも大体インデックスと同じシチュじゃ――」

御坂「……った」

上条「あい?なんて?」

御坂「私のおっぱい、触った!」

アックア「強制猥褻罪、6ヶ月以上10年未満の懲役であるな」

上条「待てよ!?俺ビリビリを触った憶えなんてねぇぞ!?」

御坂「しらばっくれるんじゃないわよ!あ、あ、あんたが触ってきたんでしょうが!」

上条「そりゃー……御坂妹のは入院していた時に触ったけどさ」

御坂「よし殺す」

アックア「証人は冷静になるである!復讐するのであれば裁判が終ってから!」

上条「いやでもビリビリ触った憶えは………………あ」

アックア「思い当たる点があるのであるか?」

上条「そういや……トールが御坂に化けてた時に、面白半分で触ったような……?」

一同「……」

上条「……なんだよ。なんで全員急に静かになるんだ?」

御坂「あんた……”男の胸”だったら触るの……?」

上条「そりゃそうだろ。何言ってんだ」

御坂「ちょ、ターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイムッ!」

~審議中~

上条「審議中ってなに?つーか今俺の罪状審議してる真っ最中じゃねーの?」

上条「てか主にビリビリと御坂妹達のひそひそ話なんだが……」

~審議終了~

上条「あ、終った」

御坂「――裁判長!」

アックア「なんであるか」

御坂「BLは嫌いじゃありません!ホモが嫌いな女子は居ません!」

上条「なんでその結論になった!?」

御坂「や、まぁ男だったら……うんっ!応援してるわ!頑張って!」

上条「嫌な理解のされ方だなチクショー!リアルゲイとBLは別もんだろうが!」

アックア「――と、いうか検察。埒があかないのである」

青ピ「ま、まだまだやっ!他にもラッキースケベに遭ぉた証人ならダース単位で居まっせ!」

アックア「そうではないのであるな。先程も言ったように、『被告人が強制猥褻の意図があった』と証明出来なければ、それはただの軽犯罪に留まるのである」

上条「……真面目だ……てっきり冤罪でぶち込まれるもんかと」

アックア「ギャグへ走る程落ちぶれてないのであるな」

青ピ「――あ、そういやカミやん、ヴィリアン第三王女にドキドキしてませんでしたっけ?」

上条「あー……あったなぁ、そういや」

アックア「判決を申し渡すのである!上条当麻は××コ切断の刑に処するのである!」

上条「変わり身早っ!?つーか今までのは全部フリじゃねーかよ!?」

上条「ていうかチ××さんは関係ないだろ!悪さをしたのは主に右手であって×ン×さんは新品未使用だから罪はねぇよ!」

アックア「――ならば罪一等を減じ、上条当麻はアズカバン送りとなるのである!」

上条「……はい?」


――『上条「ここがアズカバンか……」』、へ続く



――次回予告3

 生温い雨に打たれながら少年は自らの無謀を知る。
 たかだか、そうたかだか『世界を救う』程度の力では到底及ばぬ高みがある事を。
 無様に路上へキスをしながら、切れた頬を伝う血をぬぐう事すらせずに、ただ思い知らされる。

「現実を受け入れろ。何も切り捨てずに何も手に入られる訳がない」

 二刀の戦士が――本来の得物すら使わせる事が出来なかった――吐き捨てる。その中には大分憐憫が含まれていて。

「……次、あったら容赦はしないわよ――例えあなたが誰かを助けるのだとしても」

 側に立つ魔導師の声は懇願じみていた……誰に願うのか?何を願うというのか?
 非情に徹すればここでこの命を絶つのが正解――だが、それをせず見逃している時点で……。

「……無ぇよ、二度目なんか、ない……ッ!」

 少年は肘から切断された『右手』を泥水にぐちゃり、とツッコミ、支えにして立ち上がる。
 いつかの如く、そう『世界にそう仕組まれた』ように再生する気配は微塵もない。
 足下の水溜まりをより赤く、紅く染め上げるだけ。

「……ここで寝てたら、それで終っちまう。そんなのはもう嫌なんだよ!」

 今までもそうしてきたように、これからもきっと。

「『右手』があろうがなかろうが、俺のすべき事は変わらない――」

「……そうか、なら死ねよ」

 音よりも速く、光に肉薄する程の速さで双剣は放たれた。
 主へ確認はしない。それはきっと優しさなのだろう。手心を加えて主が傷つかないように。
 そしてまた剣の軌道は正確に急所へと向かっている。それもまた慈悲だ。痛みすら感じる前に絶命するであろうと。

 物語はここで終る。ただの人間が殺されて終わり。
 それもまた必然だ。この物語は彼の居るべき物語ではないからだ。

 彼に従うサーヴァントなど存在しないのだから――そう。

 ――たった”今”までは。

 ギャリギャリギイィィィィィィィィィィィィィィィィンッ!!!

 鋼が鋼を弾き、周囲に昼間よりも明るい火花が溢れ出す。
 あぁ少年の命を救ったのは、そう――。

 ――槍、だ。

「――退くぞ!」

「待ってよ!?何が起きて――」

『――おいおい、つれないじゃないかニンゲン』

 ぞくりとする程の圧力を持った声。まだ若く女のものだと知っても尚、魔導師は判断を誤る。

「新しいサーヴァントね!だったら正体を――」

「――だから、ダメだ――ッ!」

 脱兎の如く逃げ出した二人を追うとはせず、血と泥の溜まった水溜まりから”それ”は全身を表す。
 千切れた少年の右手を眺め、次に自身の失われた片眼に触れた。

『いいザマじゃないか。前よりもずっと男前だ』

「力を――力が欲しいんだ!」

『ほう?』

「誰かを救える!誰かを助けるための力が!」

『……あぁそうか。それで私が喚ばれたのか』

 くっくっと喉の奥で最悪の魔神は嗤い――次の瞬間、少年の喉元へ”槍”を突きつけていた。

『勘違いするなよ、貴様?私は大人しくサーヴァントになってやるつもりなど――』

「俺を、やろう」

『……何?貴様なんて言った?』

「強い戦士を集めてるんだろ、お前は?だったら俺が死んだら俺の躰も魂も、どっちもくれてやるよ」

『……』

「……戦士、って言っちゃ本職の人らに悪いし、物足りないだろうが……それでどうだ?」

『――宜しい。ならば付き合おう!貴様が死んで我が戦さ場へ至る時まで、私が従ってやる!』

「……ありがとう」

『勘違いするなよ。これは正統な対価の元に交わされた契約だ、礼など言われる筋合いはないよ』

「……そか、なら――逝くぞ、オティヌス」

『――あぁ逝こう、我が主よ』


――『上条「聖杯戦争……?」 オティヌス「戦って、死ね」』、へ続く



――次回予告4

――とある日記

○8月1日
今日もおっぱいは育っていない。あ、パンツは黒いレースだった

○8月2日
今日もおっぱいは育ってなかった。でもペロペロしたい。あとパンツは白のローレグだった

○8月3日
今日もおっぱいは残念なままだった。でもprprしたい。あとパンツよりガーター付きのニーソハァハァ

○8月4日
今日はスク水だった。ドサクサに紛れておっぱいチェックをしたが壁を触ってるような感触だった。でも興奮した
平泳ぎの練習をしたいと言ったので、お腹へ手を添えて支えるついでにタッチした。とても興奮した
あまり露骨に触れるとマズいので、外側から円を描くように愛撫しつつ、もう一方の手は要所要所で膨らみの先端を――
(※都合により以下省略)

○8月5日
今日は転んだ振りをして抱きついてみた。悪い反応じゃなかった、ちっぱい様prpr

○8月6日
俺はちっぱい様のためなら死ねる!イアイアちっぱい!ジークちっぱい!
けれど育ってしまったら価値はない!俺がちっぱい様をタッチしている間に育ってしまったらどうすれば……
(※以後、掠れて判読不能)

――上条のアパート

上条「……なんだ……これは!?」

上条「記憶を失う前の俺に一体どんな秘密が――」

インデックス「通報しました」


――『上条「ちっぱい様観察日記」』、へ続く



――次回予告5

――駅

上条「……あちぃ……」

上条(なんだってこんな真夏に呼び出されるんだよ。クソ重い荷物持たされてさ)

上条(しかも待ち合わせ場所は駅のロータリー前とか、もっとあるだろ……)

上条(つーかこんな所で待ち合わせなんて、俺の他には誰も――) チラッ

黒髪の女の子「……」

上条「……居るな――よっと」 ポトッ

上条(俺と同じように旅行鞄持ってるし、ここって結構待ち合わせ場所として使われてんのかな)

黒髪の女の子「――ンー?」

上条(あ、ヤベ。ガン見してんのバレた)

黒髪の女の子 ニコッ

上条(はい?笑顔?)

黒髪の女の子「チョット、いーですかー?」

上条「は、はいぃ?」

黒髪の女の子「オニーサン、これ落としましたよー?」 ヒョイッ

上条「あ、俺のサイフ――ありがとう」

黒髪の女の子「イエイエ、どういたしてー――って、あっついですよねー」

上条「あぁうん、そうだ、ですよね」

黒髪の女の子「ヤダー、敬語じゃなくっていいですよー?オニーサン年上じゃないですかー」

上条「歳だけな。今見たようにあんましっかりしてないけど」

黒髪の女の子「アハハッ!そうかもしれませんねー――と、待ち合わせですか?こんな所で?」

上条「そっちも見ての通りだ。朝一で電話寄越して、『旅行へ行くから』って」

黒髪の女の子「彼女さんですか?」

上条「あんなおっぱい大きいけど脳が残念な子は嫌だ」

黒髪の女の子「ソーナンデスカー?あ、だったらオニーサン格好いーし、私、立候補しちゃおーかなー、なんて」

上条「そ、そんな事言われての初めてだけど……」

黒髪の女の子「ンデ?オニーサンのお名前なんてーんですかー?」

上条「上条、上条当麻です」

黒髪の女の子「……」

上条「はい?」

黒髪の女の子「……チェー……時間の無駄だったよ」

上条「……はい?」

黒髪の女の子「テカよくよく考えれば分かったかー。だってこのクソ暑い中、待ち合わせ場所が同じなんてありえないし」

黒髪の女の子「イヤー失敗失敗。手っ取り早くコネ作ろうとするもんじゃナイネー」

上条「あのー……ちょっといいかな?なんで君、露骨に態度変わって――」

プップー

上条「お、ロータリーへ車が入って来――」

リムジン(※全長7メートル) ブルルルルッ

上条「――日本の交通事情じゃトラップ扱いのリムジン入って来やがった!?」

黒髪の女の子「しかも周囲に停めてあるバスがこぞって道を譲る……アー、能力使ってんなー」

上条「まさか――つーか確定だよ!こんな残念な事するのあの残念な子しか居ないもの!」

ウィーン……

黒髪の女の子「ア、窓が開いテー……」

食蜂「上条さぁーん☆かっみっじょーさーん☆」

上条「遠くから俺の名前を連呼すんなよ!?関係者だと思われるでしょーが!いや関係者だけどさ!」

ウィーン……

上条「あ、別の窓も開いて――誰?少しビリビリに似た女の子、か?」

茶髪の女の子「みーちゃーーーーーーーーーんっ!なんかスッゴイんだよ!車がおっきくておっきいの!」

茶髪の女の子「ピッってやったらね!星がキラってみさきちゃん凄いんだよ!」

黒髪の女の子「食蜂ちゃん!ドリーに悪い影響を与えるから能力を使わないで言ってるでしょー!」

上条「言ってやれ言ってやれ。あのおっぱいに言ってやりなさいよ」

黒髪の女の子「だから人の居ない所でしろってあれだけ注意したのに!」

上条「あれ?君もそっち側の人なの?人として残念な系の子なんだ?」


上条「取り敢えず車と運転手さんを元あった所へ捨ててきなさい!何でもかんでも拾って来ちゃダメだってお母さん言ったでしょ!」

食蜂「えー、旅行って言ったらこういうのが普通力じゃなーい?」

上条「どこの世界に運転手付きのリムジンで遠出する学生が居る!?アラブの富豪じゃあるまいし返してきなさい!」

食蜂「アラブだって私の魅力力でチャームし・ちゃ・う・ん・だ・ゾ?」

上条「それ物理的な暴力って事だよね?多分向こうの王族は対策――つーか魔術師雇ってるから、返り討ちに遭うと思うが」

上条「あと魅力に”力”って着ける意味あるかな?最初誤字かと思ったよ」

黒髪の女の子「……これは」

上条「な、なに?」

黒髪の女の子「天然ボケ×2で間に合わなかったツッコミに光が――!」

上条「え!?俺ってやっぱツッコミ要員なの!?」

食蜂「さぁ――海へ行きましょう!」


――『食蜂「潮騒の響く渚で」』、へ続く
(※以上、では)

みさきちキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

5!
断然 5 でしょう!

みさきちは手遅れとして、ドリちゃんはどうかキュア・ラッキー魔の手にかからないで欲しい。ミサカの世界は君を必要としている。
コーザックは……カミやんとツッコミスパイラルの仲になりそうな予感……?

ロリきちの日々育っていくちっぱいを揉みしだきながらおっぱい聖人に目覚める上条さんか

みさきちが海行くと色んなお約束イベントが自然にできそう

逆にロリきちのせいでちっパイに目覚めてしまった可能性がが…



おれのように

>海原「個室を借りましょうか。」

>アックア「同性だと裁判中にフラグを立てられる恐れがあるため~」

女性がBL好きなのってマンガのネタだけと思ってたんだけど。
周りの人たち(リアル)にそれとなく聞いてみると、
「嫌いじゃない!決して嫌いじゃないぞ、うん!……で?」
と、期待に満ちた眼差しが。

ミコッちゃんまで理解示さないで、お願いですから。

2週前の話で恐縮ですが。
鳴護さんの熱唱カーリー・レイ・ジェプセン、

  ホントにホントに

の Really が
倍盛りになってた事実に、今気付いた。
どんだけ溜まってんのアリサ。

上条さんがドリーにお手付きしたらみさきちはどうなっちゃうの
天使のみさきちの心に闇が芽生えのかな

おお、またまた面白くなって来た

堕天使エロメイドなみさきち…

待つんだ君たちとりあえずは5つもある予告編の3つにまで登場した正規ヒロインインデックスさんのことをだね

みさきちとインちゃんの金銀丼もいいですなぁ

毎度乙です。
空気読まずに1のシリアス→ギャグ希望です。
が、何をお書きになっても応援してます。

「黒髪ツインテダウナー系ナースさん(脱いだらスゴイんです!)」をメインに是非。カミやんいらないから。

4と5見てみたい
ハゲ条は誰得なのか

4いいかも

支援!!

>>225-228
※『死者の書』 前日譚ダイジェスト版

フレンダ「あ、あれ……?あたしどうしてXX学区にいる訳……?」
フレンダ「てかおなか……ついてる訳よね?なんで確認したんだろ……?」
フレンダ「ケータイ……は、ないしお金も無いか。何があった訳?」
フレンダ「多分あれじゃない?精神操作系の能力者とかち合って操作された訳」
フレンダ「んで身ぐるみ剥がれて――って服はちゃんと着てるけど――ほっぽり出された訳よね、うん」
フレンダ「――はっ!?まさか超ぷりちーなあたしの貞操が……ッ!?」
フレンダ「……今、『ぷりちー()』って空耳が聞こえた訳だけど、まぁ大丈夫な訳」
フレンダ「さってと。それじゃどこ行ったら……」
フレンダ「麦野んトコへ行って事情を……あれ?なんか寒気がする訳ね?風邪かな?」
フレンダ「あたしがこんな状況で麦野達が平気だって可能性も少ない、か。『暗部』として巻き込まれてるんだったらば、うんそうって訳」
フレンダ「んー?それじゃ……あぁお腹も空いたしアジトへ行く訳よね」
フレンダ「念のため麦野達にもナイショで作っといたから、バレる可能性も低い訳だし」

――XX学区 ”元”アジト

フレンダ「……アジトが――無くなってる訳!?」
フレンダ「つーかコンビニ!?ニホンダルマなんて趣味わっる!?」
レッサー「おんやー?いらっしゃいませーお客様ー、そんなとこで見てないで中入ったらどーです」
フレンダ「え、あ、はい、うん?いつの間にコンビニなんて建った訳?」
レッサー「……いつでしょうねぇ。私はバイトの身なんでよくは存じませんが」
フレンダ「ま、まぁいい訳だけど――って店員さん、なんであたしに近寄ってきて、る……訳?」
レッサー「お客さん――匂いをしてますよねぇ?花ですか、これは」
フレンダ「……え?」
レッサー「ていうか大分お憑れ――もとい、お疲れのご様子だとお見受けしますし」
レッサー「どうです?中へ入ってお茶の一杯でも――」
フレンダ「イヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」
フレンダ「バラされるーーーーーーーーーーーーっ!?中国の片田舎で見世物にされるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」
レッサー「あ、ちょっと――」
フロリス「どったん?」
レッサー「いえ少し気になる方がいらしたんですが、逃げられちゃいました」
フロリス「フーン?」
レッサー「親切心からあれこれして差し上げようと思ったんですが、まぁ嫌なら仕様がないですよねぇ」
ランシス「……レッサーが他人を気にするのって珍しい」
レッサー「多分同郷ですよ、あの方」
ベイロープ「やっぱりそこなのね、拘るのは」

※以降、野良フレンダにクラスチェンジして本編に続く

>>229
初春「えぇっとぉですねー……ググってみたら今年の4月頃に日本テレビの朝の情報番組で取り上げられたみたいですねー」
初春「でもこれ、流行り物を取り上げるのではなく、『流行らせたいもの』を取り上げる系かと」
上条「そうなの?」
初春「情報番組という名前の宣伝番組ですからねぇ。サブカル然り、流行もですけど」
初春「最近じゃー『終活』や『イクメン』を造り出そうとして、失敗していますし」
上条「……あぁ、なぁ?流石にアレはないわー、つーか自分の家族がそんな不吉な事言い出したら止めるわ!」
初春「私的にはポッと出の小娘が!と言いたいですかねー」
初春「私はもうかれこれ8年近くやってるんで!」
(※超電磁砲コミックス一巻の初版発売が2007年11月)
上条「ねぇキミ何年JCやってんの?そろそろ社会人じゃね?」
初春「他にもディズニー映画の影響もあるとかですけど……でも昔々女子高生達の間でも流行ったような?」
上条「あー、『どこの部族?』みたいに、キン肉マングレー○っぽく塗った子らな。俺は知らないが」
初春「なので流行ってるかと言えば流行ってる、かもしれませんねぇ」
上条「あーでも俺思ったんだけどさ」
初春「はい?」
上条「初春さんは別に花着けなくても可愛いよ?」
初春「あ、ありがとうございます……」

~翌朝 学校~

土御門「あ、カミやん。門の所にお客さん来てるぜぃ」
上条「客?誰?」
土御門「金属バット持った女子中学生が『あたしの初春に何吹き込んだんですかコノヤロー!』って」
上条「人聞き悪っ!?」
(※本当に女子高生の間で流行ってたら凄いですけどね。マスコミの、特に流行り物は9割さっ引いてみた方がいいと思います。
この間も「楽○が都市部で超高速デリバリーサービス開始!」と取り上げていて、これ採算取れる訳ねーだろと見ていたら、
その番組の提供が○天で思いっきり脱力しました。ニュース番組の時間割いてステマするのは日常茶飯事かと)


>>230-231
マーリン「てーかなぁ。ホンマ思ぉねんけど、アンタらえぇ歳した若ぉ娘が四人もおるのにやで?」
マーリン「上条はん一人落とせへんてどーゆーコト?ブリテンのために生きるんちゃうかったん?」
マーリン「あの歳の男子なんざ、考えるコトちゅーたらまぁアレやん?8割方はエロい事やん?」
マーリン「てかレッサー、自分アレやんなぁ?ロシア行った言った時もや、ほら、チャンスなんぼでもあったやん?」
マーリン「勘違いしとぉるかもやけど、基本男は良い訳さえあれば行くねんよ?分こぉ?」
マーリン「魔法科の劣等○で、ほれ、あのー、後輩の子ぉか。おったやん?名前知らんけど」
マーリン「なんや司○はんに絡んどぉたら瞬殺されぇの、でもって『高校デビュー=噛ませ犬デビュー』しよった子ぉいたやん?名前憶えてへんけど」
マーリン「それが最新巻見とぉ?今度は傷心のほの○はんにどさくさ紛れで告白しぃの、噛ませ犬としてのランクアップしよぉったんやな。名前分からんけど」
マーリン「他にもデスクリムゾンさんやったっけ?名前忘れたけどアイタタなライバルキャラも動き始めよおぉたし」
マーリン「この、よーに!男は隙があっとぉ直ぐに来るもんやよ!それをアンタが手ぇ出されへんやったんのはガードを固めたからや!」
マーリン「思い当たる点ないかぁ?無理してエロい事しぃの、相手に『女の子』って意識させて引かせたり!」
マーリン「アンタはもうちょい反省――」
レッサー「あ、ベイロープ。フォアグラって地面に埋めてからエサを詰め込むんでしたっけ?」
ベイロープ「そうね。今は動物虐待だって少なくなってるけど、昔はそう作ったらしいわ」
マーリン「アンタらなに人を処刑しよぉとしてるん!?つーかそれも中々[ピーーー]ない残酷な方法やないのっ!?」
(※オリキャラのフリをした、余所様のキャラですのであまり突っ込まないで下さい)

――常盤台喫茶 個室

海原「――個人的には○ちゃんと阿良々○君が和解して欲しくなかったですねぇ」

上条「唐突にアニメの話?しかも結構前に終ったよね?」

海原「何と言ってもあのゴミを見るような目つきで蔑まれるのは、やはりご褒美ですよねっ!」

上条「海原海原、テメーいい加減にその外骨格オリジナル海原君へ返してやったらどうだコノヤロー」

上条「確かにご本人はちょい素行に問題があるけど、下手すれば『暗部』に間違われる程悪い事はしてねーぞ」

海原「自分の外見だと少々目立ちますのでね。まぁいいじゃないですか」

上条「……なんかそのウチ俺の所へ、『上条さんドッペルゲンガーが出たそうですよっ取材しまっしょーよ!』って残念な子が来そうなんだが……」

海原「心苦しくはありますから、この姿でこっそり募金でもしましょうか?」

上条「こっそりしてる時点で意味がねぇな!……と、なんか悪いなお楽しみの所」

海原「自分の潜入捜査は後日でもできますからお気になさらず――どうせ緊急の要件だったのでしょう?」

上条「俺が、とある風紀委員ですのさんへ通報するから後日は二度と来ないが、まぁそうだな」

海原「信じてますよ!上条さんは恩に対して義理を忘れない人情味溢れる方だと!」

上条「……まぁ店も客も損してないっつーんだったら止めないが……」

海原「それで?死人のお話でしたよね?」

上条「そうだな――ってお前に言ったっけ?」

海原「結論から申し上げますと、自分は魔術師ですが死霊術士――所謂ネクロマンサーではないため、関連する術式を扱う事は出来ません」

海原「が、得意とする魔術の特性上、知識は持っていますのでご相談には乗れると思いますよ」

上条「すまん、ありがと……う?でもお前のって、アレだよな」

上条「素人考えだけど、アステカって割と死と直結した文化じゃなかったっけ?」

海原「自分の、より正しくはアステカ系魔術師で冥界関係の術者が得意するのは『屍体から霊装を作る』事であり、死人そのものは対象じゃないんですよ」

上条「うん?」

海原「ですからあくまでも自分達が有効利用するのは『屍体』であって、『死人』ではありません」

上条「いやごめん。意味が分からない、どっちも同じじゃねぇの?」

海原「……えーっとですね。順を追ってご説明しますと」

海原「古代アステカではイケニエを捧げてきました。こう、神殿の一部に輪っかを作り、そこへボールを入れたら勝ち、みたいな感じで」

上条「あぁ負けた方が罰ゲームな。文字通りの命を賭けた」

海原「いえ逆です。勝者から生贄が選ばれ、神へ捧げられたんですよ」

上条「……あい?」

海原「具体的には、その神殿の上で黒曜石のナイフで胸を裂かれ、頬骨の間から血の滴る心臓をくぱぁ、と」

上条「詳しく聞きたかったんじゃねぇな!?つーか個室指定した意味はこれかよ!」

海原「言っておきますが人身御供を捧げていたのは自分達だけではありませんよ。EUはドルイド、アフリカではブゥードゥ、アジアではカーリー教団」

海原「日本でも古くは補陀落渡海や人柱という風習が、ついぞ100年ぐらい前まではあったじゃないですか」

上条「否定はしないし前のは聞いた事もないが……でも、何?勝った方がなんで殺されんだよ?」

上条「俺だったら絶対死にたくないし、他の連中も多分そうだからそのデスサッカーいつまでも終りそうにないんだが……」

海原「まさにそこが価値観の違いでしょうね。自分達の文化では『イケニエにされるのは名誉』だとされていましたので」

海原「……まぁやり過ぎて人材不足に陥り、後年はイケニエ欲しさに戦争までしていましたが!」

上条「アレだよね?俺知り合いのイギリス人に『お前らスーツ着た蛮族だよね?』って散々言ってたけど、南アメリカも相当だよね?」

海原「アステカに近いマヤ文明ではイシュタムという自殺を司る女神も居ましたし、やはりそういう土地柄ではないかな、と」

上条「そんなに過酷だったっけ?」

海原「十字教とは違い、自殺が『肯定される”側面”』もありましたからねぇ。そこら辺は現代の価値観でどうこう言うのは間違っています」

上条「あぁだからお前の使ってた年代物のナイフも――って出すな出すな!今の話聞いて直視したいとは思わないから!」

海原「以上を踏まえて話を戻しますが、自分達にとっては『死は神聖なもの』であると分かって頂けたでしょうか?」

海原「だから――そう、”だからこそ死人が甦る”のは禁忌とされています」

上条「えっと……?」

海原「アステカでは優れた戦士であればある程、死して神へ命を捧げるのが尊いとされています。正確にはいました」

海原「でも考えてみて下さいよ。仮に魂なり肉体なりを復活出来てしまえるようならば、その捧げた命、チープになりませんか?」

上条「あー……分かるような」

海原「例えば年間所得が数千ドルに満たない家庭があったとしましょう。まぁ世界には遙かにそちらの方が多いのですが」

海原「その家で100ドル分の供物を買うなり用意したとして、大出費ですよね?文字通りに大枚をはたいた状態です」

海原「同様に。日収数千ドルの人間が、同じ神へ100ドルを捧げたとしましょう。こちらはレストランのチップ感覚で」

海原「さて、同じ百ドルですが、どちらがより信心深く、また神が喜ぶでしょうか?」

上条「……なけなしのお金を出した方だな」

海原「で、ある故に。『死とは絶対的で取り返しのつかないもの』でなければいけないんですよ、それこそホイホイ甦ってしまったりしてはいけない」

海原「そんな事がまかり通ってしまっては、自分達の先祖が捧げてきた命の価値が暴落しますからね」

上条「もしかしてさ」

海原「はい?」

上条「お前らの魔術が、妙に遺体や人骨を使いたがるって……まさか?」

海原「えぇ、誓って言いますが『死者の尊厳を傷付けている』つもりは毛頭ありません。むしろ逆ですね」

海原「優れた戦士の力を後世へ伝え、あやかろうとするのが目的です」

海原「勿論余所様で屍体を傷付けたり、墓を暴いたりするのは冒涜であると考える方や信仰もあるでしょう。それは否定しません」

海原「ですが自分達は決してぞんざいに扱ったり、面白半分でやっているのではありませんから」

上条「……成程。だからお前らん所では『死人』を使った魔術は発展しなかったと」

海原「あなたが今頭を悩ませている『死人の復活』系はありませんが、その代わり先祖霊と交信するのは出来ますね」

海原「女性の舌に穴を開けて紐を通してから、切った髪を血に浸して燃やし――」

上条「だから方法は聞きたくねぇよ!?」

海原「そうすると竜が現れ、その口から先祖の霊が姿を現します」

上条「嫌なシェンロ○ですねっ!」

海原「ただし!繰り返しますが自分が今お話ししたのは古代から近代にかけてのアステカの宗教観です。現代では当然違います」

海原「また同じく死者へ敬意を払ったとしても、十字教とは正反対の弔い方をしていますのでご注意下さい」

上条「南アメリカの……どこだったか、人骨で作った十字教の教会もあったよな。あれもお前ら流の信仰の表れだと」

海原「そうですね」

上条「十字教は最後の最期、審判の日に神様が甦らせて復活させるんだっけ?」

海原「はい。だから遺体を損壊させるのは禁忌ですし、また死人を甦らせるのは神の模倣として大罪にされていますね」

海原「……ただ、歴史的な災禍に度々見舞われ――ペストは知ってますよね?日本語では、えぇっと」

上条「黒死病。ネズミについたノミから人に感染する伝染病だな」

海原「その媒介となったネズミは……まぁやはり屍肉を漁る訳でしてね、えぇ」

海原「だから土葬とは非常に相性が”良”く、また当時の墓地は教会に隣接して造られる事が多いため」

海原「当時は街の中心へ教会が据えられるのが当たり前であり……余計に被害が拡散してしまった背景があります」

上条「流石にそこまで命の危険に関わると、なぁ?」

海原「納骨堂なんかも、一度土葬した遺体を掘り返し後に聖堂の中へ戻して安置する。それ自体は立派な信仰ですが、生憎ペストを野放しには出来ませんでした」

海原「統計学の一つに”世界人口”というものがありまして……大体西暦1年ぐらいに人類は何人ぐらい居たと思います?」

上条「まさに神話の時代だよな。あー……数十万ぐらい?」

海原「研究者によって幅がありますが、まぁ1億7千万~3億人ぐらいだそうです」

上条「あ、意外と居るんだ?……いやでも、今の日本人の倍ちょっとが世界人口と言われると……少ないか?」

海原「では続いて11世紀、西暦1000年ではどうでしょうか?」

上条「あー、今が大体70億ぐらいだろ?だったら、そこから3億引いて半分にしてーの……33、4億ぐらい?」

海原「外れ。これも約2億6千万~3億4千万人だと」

上条「……あんま、つーか全然増えてなくね?」

海原「ちなみに10億の大台に乗ったのが19世紀、1800年の産業革命直前ですかね」

海原「以上の事から分かるのは、人類は11世紀ぐらいまでは停滞していたんですよ。単純にね」

海原「人口が増えなかった理由は様々でしょうが、その一つに感染症が大きく寄与しているのではないかと」

上条「信仰深いのは良いと思うが、まぁ……なぁ?」

海原「それだけ十字教圏はアレだった証拠。それ以外も大差ありませんが」

海原「そう言えば負けた国の幹部を指導者の息子の誕生日に処刑し、遺体を家族へ返さずに海へ捨てた国があったような……」

海原「お察しします。いつか倍返ししましょうね?」

上条「なんの話か分からないが!今の季節には一度考えて欲しいですよねっ!」

海原「ま、遺体を大事にするのは、イコール死人の尊厳を大事にする、とも言い換えられまし、自分も否定はしません」

海原「同様の理由で未だにほぼ100%土葬が続けられている国もありますからね」

上条「ギリシャ正教だっけか。もう墓場がなくて困ってる所」

海原「よくご存じで。ある意味棺桶に囲まれて暮らすのもまた悪くはないでしょうか」

上条「……んー、まぁアステカの話――と、十字教の話は理解した、ような気がする」

海原「でも上条さんがお知りになりたい情報とは違うんですよね?」

上条「傾向と対策、かな?思い過ごしだったら、それに越した事はないんだけどさ」

海原「そうですね……他に自分が知ってる知識であれば、死霊術は決して使い勝手の良い魔術ではない事ぐらいでしょうか」

上条「ゲームとかでよくある『不死の軍団!コスパ最強!』じゃね?」

海原「いえ、ですから伝染病は?見た目が悪いので、確実に石を投げられるでしょうし」

上条「ス、スケルトンだったら大丈夫!」

海原「一々屍体を掘り起こして魔術をかけるのですか?それでしたら生きている人を動員し方が早いですよ」

海原「権力者になるなり、取り入るなりすれば人を動かす以外にも力を持てますし。骨の王になっても虚しいだけでしょう」

海原「……というか、上条さん。あなたは魔術がそんなに安いものではないとご存じですよね?」

海原「自分は少し事情が異なりますが、本来であれば持たざる者が持つ者へ復讐するために学ぶ術です」

海原「どうしてわざわざそれを死人を甦らせるんですか?もっと直接的な方法がある筈でしょう?」

上条「まぁな。そりゃ復讐するんだったら火球ぶち込んだり、呪い殺した方が早い――待て待て」

上条「動機だったら『亡くなった人にもう一回逢いたい』なんて普通じゃないか?むしろ日本神話にもあったろ、冥界へ下る神様の話が」

海原「よくご存じで。今日は冴えてますね」

上条「うん……一身上の都合でね、ついこないだ行ってきたばっかっつーかさ」

海原「えぇまぁですから、自分が言ったように『死人を呼び出して喋らせる』程度の術式は有り触れていますよね、割と」

海原「日本でもITAKOと言う専用の巫女さんが居ると聞きますし!」

上条「おいなんで今テンション上がった?巫女か?巫女さんも好きなのか?」

海原「あぁ上条さんはシスター派でしたっけ?」

上条「否定はしないよっ!俺はオトナだからねっ!」

海原「”その程度”は存在するんですよ。死人へ伺いを立てたり、簡単な会話をする程度であれば」

海原「ですが上条さんも仰ったような『死者の蘇生』に関しては、時として神ですら失敗している。違いますか?」

上条「すごーく非効率的だと?」

海原「死人が死人でなくなるのは、それはつまりある種の『永遠の命』と同義ですから。人類の永遠のテーマでしょうかね――と、そうそう」

海原「一つだけご忠告を。少々本題とは逸れますが、まぁこちらのお会計代としてサービスを」

上条「ここ俺のオゴリか!?……い、いや払うけどさ」

海原「詳しくお話は存じませんが、今探しているのは『甦ったかも知れない何か』で、間違いありませんよね?」

上条「ん、そうだな。あくまでも”かも知れない”ってレベルで」

海原「なのに、だというのに、上条さんは何故『死人』と呼んでいるのでしょうか?」

海原「復活を遂げたのであれば、それはもう『死人』とは呼べない筈でしょう?」

上条「あー……考えもしなかったが、なんでだろう?」

海原「その答えは簡単ですね。あなたへ話を持ってきた人間が十字教関係者だから。彼らの言い方をそのまま真似て、違いますか?」

上条「……ノーコメントで」

海原「では、深くツッコミはしませんが……基本的に十字教関係の方々に取っては、どれだけ完全に甦ろうが、それは『死人』と呼び続けるんですよ」

海原「どうしてかと言えば『復活とは神と神の子のみが行なえる奇蹟』である上、その対象も『十字教の洗礼を受けた者限定』」

海原「それ以外は全て偽物であり、まやかしに過ぎないと教会が明言しています」

海原「どれだけ完全に生前のままだと言っても、鼓動があり生きていたとしても、彼らにとっては『死人』なんです」

上条「それは……なんか」

海原「ですから決してその死人とやらに同情しないように。すれば依頼者をそのまま敵に回す事になりますよ、と」

上条「分かった。気をつけるよ」

海原「……あなたが”何も分かっていない事が分かった”のですが、まぁ苦労するのは自分ではありませんし、良しとしましょう」

海原「それよりもそろそろ何か頼んだらどうですか?店い――自分の後輩もやきもきするでしょうしね」

上条「その設定いい加減なんとかしろや――ハッ!?」

海原「どうされました?」

上条「お前”常盤台の理事長の孫”の皮を被ってんのって――まさか……?」

上条「任務どーたらを放棄してまで、尚且つレベル4の大能力者をブチ倒して復讐されるリスクを負いながらも使い続けるメリットとは――」

上条「――もしかして常盤台JCとお近づきなりやすいから、じゃ……?」

海原「企業秘密ですっ☆」

上条「お前いつか刺されるからな?」

海原「いえいえ自分など上条さんの足下にも及びませんよ!」

上条「あれ?その台詞って相手を褒める時に使うんじゃなかったっけ?」

――常盤台喫茶 個室

店員「――ベリーベリーミックスセットベリーは以上となりまーす!宜しいでしょうか、センパーイ?」

海原「はい、お疲れ様です」

店員「ではごゆっくりどーぞ――」 パタンッ

上条「……なんだろうな、これ」

海原「どうされました?」

上条「いや……正直『センパイって呼ばれんの悪くないな』って、ちょっと思った」

海原「でしょう?自分も常盤台カフェを出す場所へ出せば大人気だと思うんですよ!」

海原「ひまカフ○で『リアル?なにそれ新しい食べ物?』と大失敗をカマしてはいますが、是非に実現して欲しい!」

上条「おまひ○とタイアップしたメイド喫茶の話は止めろ。二次元と三次元のギャップに悩む人だって出てくるんだからな!」

海原「ちなみにとある筋から仕入れた情報によれば、裏で風紀委員と闇取引してるという噂も……!」

上条「白井さんじゃねぇかな?きっとみょーに小物しっかりしてんのも、監修やってくれてっからじゃねぇか?」 ズズ

上条「……と、紅茶も良い茶葉使ってんなー。美味しい」

海原「あ、今の間に食べておいた方がいいですよ?」

上条「何?モノ食えなくなるような話に突入すんのか?」

海原「素人さんには少々厳しいかと。スプラッター・ゴア好きな人間でもないと、はい」

上条「聞かなきゃ駄目か?」

海原「それはどうぞ自由に。ただし後悔とは”後になって悔いる”と書きますが」

上条「……あークソ!分かったよ!聞けばいいんだろっお願いしますよっ!」

海原「まぁ多少はマイルドにしますが、決して聞いていて楽しい話ではありません、と前置きはさせて貰いましょう――さて」

海原「先程も言いましたが――言いましたっけ?」

上条「出だしからコケてんぞー」

海原「死霊魔術全般、『死者の蘇生』――『黄泉帰りはコストに合わない』と」

上条「神様でも失敗するっけか?」

海原「えぇ。死者を迎え入れて支配する神も居るんですが、それはあくまでも『死んだままの人』ですから」

海原「例えばオーディンが迎え入れる戦士達は、やはりあの世ですし。冥界から一日の半分だけ帰還するペルセポネーは半死人」

海原「イザナミに至っては神ですら死の運命から逃れられなかった」

海原「また神でもなくとも個人がどうにかしようとしても、ほぼ100%の確率で失敗しているのが現状ですかね」

上条「まぁ理屈はよく分からないけど、言いたい事はなんとなく分かる」

上条「死人が簡単に甦るんだったら、ここまで医療は発達してないよなー、なんて」

海原「……その指摘は魔術師全般にも言える皮肉ですが、まぁそうですね」

海原「『”完全な形”での死者の蘇生』は、賢者の石を造り出すぐらいには難題とされていますね」

上条「妙に強調すんなぁ――つーことはアレか?”完全じゃない形”でなら、そこそこ成功するってか?」

海原「残念ながら……ゾンビはご存じで?」

上条「バイオがバザードする奴だろ?オカルト由来なのにサイエンスフィクションの領域へ入っちまってるし」

海原「あぁそれ元々は科学ルーツらしいですよ」

上条「マジで!?ゾンビだぞ!?」

海原「ブードゥー系の社会的制裁でゾンビパウダーという、物凄い強烈な毒薬を使用される刑があるそうです」

海原「その毒薬を使われると脳の殆どの思考が出来なくなり、『生きた屍体』として人から命令されるままになるとか」

上条「あー聞いた事はあるが……あぁじゃバイオも技術としては間違いじゃないんだ?」

海原「あくまでも系統的な話ですが――まぁその話はさておくとして、『生きた屍体』は誰かが造る物と、自発的に生まれる物の二種類あります」

海原「地域や国によっての細かな差異もありますが、例外なく共通しているのが――」

海原「――『生者を食い物にする』という事ですよ」

上条「……幽霊も?」

海原「幽霊が誰それを取り殺すというお話は有名ですよね?『生きた屍体』もまさにそれが関係します」

海原「ある種の哺乳類である霊長類ヒト科ヒト目を好んで捕食している、というケースが多いと」

上条「あー……それ、いつも思うんだけどさ。他の肉じゃダメなのかな?」

海原「近年に於ける人口問題、上条さんは如何お考えですか?」

上条「はい?」

海原「増えすぎた人口を適当な数にまで少なくするためには――そう、食糧問題と一緒に解決出来る方法があります!」

上条「それ以上言わせねぇよ!俺が悪かったから!魔術に理屈を求める方が悪かったから!」

海原「と、いう冗談はさておき、まぁ実はこれにも――『人間は死人と同居出来ない』という理にも、立派な答えがあるんですよ」

海原「屍体を屍体として適切な方法で弔わないと祟りますから」

上条「……オカルトの話か?」

海原「”発祥はオカルトですが、根本は科学の話”です」

上条「ちょっと何言ってるかわっかんないですよ?」

海原「都市伝説の一つの、『切り落とした腕』というものをご存じでしょうか?」

上条「なんとなく想像はつくが……グロ系だろ?」

海原「えぇまぁ一応お食事処でする話ではないので、要点だけを言いますと、色々あって切断された腕を巡って繰り広げられる都市伝説です」

海原「糖尿病であったり、また交通事故であったり、他には工事現場というパターンもあるらしいですが」

海原「その腕は非常にお食事中の方にはお聞かせ出来ないような最後になります――が、この都市伝説は正確ではありません。少なくともこの日本では」

上条「そうか?お前の話の触りだけ聞いてても、あぁありそうだなって思うんだが」

海原「はい。例えば糖尿病が悪化して切断せざるをえなかった四肢であれば、それは医師立ち会いの下に診断書が書かれ、即火葬にされます」

海原「同都市伝説の派生バージョンとなる『屍体拾いのアルバイト』でも、列車に轢かれたバラバラ屍体をアルバイトが拾う――と、されていますが」

海原「実際に回収するのは警察であり、洗浄の一部も彼らのお仕事となりますね」

上条「それを聞いて少し安心だが、そこまでキッカリする必要あんのか?」

海原「何故ならばそうしないと危険ですから」

上条「霊的な意味で?」

海原「ではなく『感染症という意味で』、です」

上条「……はい?」

海原「人間の体は雑菌の塊なんですよ。それも質量数十キロという肉の塊が抱え、それを媒介により悪い菌が大発生する可能性も高い」

海原「ペストでがヨーロッパが全滅しかかったのも、”それ”が理由です」

上条「あー……成程。死者を俺達が弔って埋葬するってのは、科学的な面から見れば防疫になんのか」

上条「昔の人はそれが『死者の呪い』や『祟り』みたいに解釈してたんだけど、実際にはただのパンデミックだったと?」

海原「仰る通りです」

上条「その延長線の話で、昔の人達は死者……っていうか屍体を怖いモンだと考えていた。正しく処理しないと祟る、みたいに」

上条「その畏怖や、科学的な寓意も込めて生まれたのが――」

上条「――『生者を食い物にする』」

海原「と、自分は解釈しています。実際に遺体から霊装を造るにしろ、きちんとした処理をしないと村や町の共同体が壊滅するレベルの病気が起こりかねません」

海原「また古代から中世にかけて、オリエンタル近辺では大規模な戦争が繰り返し行われてきました」

海原「その多くの戦死者を放置したため、近くの水辺が汚染されて畑や森が死んだケースを見、当時の人間はこう思いました」

海原「『これは死者を弔わなかった呪いだ』と」

上条「それを元に人類は神話や伝承を語り出し、それがまた元になって魔術が出来る……」

海原「どちらが先かは自分には分かりませんが、とにかく人と死人との境は明確に分けられましたね」

上条「お前がさっき言ってた『人口が中々増えなかった』ってのも、関わってそうな感じだよなぁ」

海原「2015年初頭から夏にかけて起きた、南アフリカでのエボラ出血熱の大流行。その原因と一つされているのが『葬式で死者にハグする風習がある』そうですね」

上条「科学が発達してなければ、何をやっていいのか、また何をしてはいけないのかの境は曖昧で」

上条「トライ&エラーで……まぁ言い方は良くないけどさ、誰かが死んだりするのを見て経験値を積まなきゃいけなかった訳か」

海原「人類の歴史はそうやって築いてきましたからね」

上条「でも、さ?その、死人を甦らせるのがそんなに悪いか?ってのも思っちまうんだな」

上条「俺が例えば、父さんなり母さんなりが少しでも生き返るんだったら――とか、迷うもんな」

海原「自分だってそうですよ。ただ善悪ではないだけの話で」

海原「ただただ『共存は出来ない』という一言に集約されるだけかと」

上条「よく――あぁごめん、雑談みたいな話になっちまうけど――道路で車に轢かれた犬猫の屍体ってあるじゃん?」

上条「あれに手を合わせるのも良くないって聞いた事はあるし、やっぱり……なぁ?」

海原「理解されてきた所なのに、お言葉を返すようで恐縮ですが、あれはまた別”かも知れない”ですね」

上条「うん?」

海原「グレイトフルデッド、という単語はご存じで?」

上条「老化させるスタン○、プロシュー○兄貴。アレな敵ばっかの世界で珍しく人格者」

海原「――の、更に元になったバンドさん達曰く、『チベットにある男の霊の話』だそうです」

海原「埋葬されない男のために旅人が自腹で弔った結果、以降旅人は不思議な幸運が続くようになったそうです」

海原「旅人は『あぁあの男の幽霊が感謝して助けてくれているのだろう』と。聖書にも似たような話があるらしいですね。自分は専門外ですが」

海原「あくまでも個人な見解で言えば、更に今までずっとやって来た体験談からすれば」

海原「手を合わせたり心の中で祈る程度でどうにかなるのであれば、それはしてもしなくても”そうなっていた”と思いますよ」

海原「大体その辺の普通の犬猫の屍体程度が祟るというのなら、所謂英雄や偉人の霊廟はどうるんですか?」

海原「キルスコアが万単位のNobu-nagaやHide-yoshiは?」

海原「心霊スポット行って幽霊が憑く話は良く聞きますが、本能寺行って『Nobu-naga憑いてきちゃったよー、やっぱり寺生まれってスゴイ!』とはならないでしょう?」

上条「戦国武将と一緒にすんなや!つーかローマ字にしてハイフンで区切るとなんかカッケーな!」

上条「――いや待て待て、つーか猫?どっかでその話が出たような……」

海原「あと言わせて貰えるのであれば、洒落怖系のお話で”寺生まれの○○君ってスゴイ!”的なのがありますよね」

上条「あぁ肝試しに行ったら、たまたま寺生まれのC君が霊媒先○ゴッコを始めるヤツだな」

海原「ですが原始仏教では血の繋がりは完全否定、むしろ開祖は邪魔になると捨てて出家していますし」

海原「そもそもの本懐としては『生まれに関係なく徳を積めば救われる』であり、あの話を作った人間は仏教の知識をまるでお持ちでないと」

上条「魔術的には遺伝する素質みたいなのはなかったっけか?イギリス王室なんかそうだと思うんだが」

海原「当然ありますね。けれど仏教は選ばれた某かが衆愚を扇動――先導するような話ではないでしょう。ならば資質も限定はされない」

上条「てか長々と話してきてなんなんだが……死人との共存って不可能じゃなくね?」

上条「寺生まれのC君、はさておき、手を合わせれば『あぁこの人は優しいんだな』ぐらいの判断は出来るって事だろ」

上条「少なくともチベットの旅人の話は、誰かの厚意へ感謝する心を持ってんだからさ」

海原「心……心ですか。持っているのでしょうかね」

海原「学習しても記憶するべき器を持たない彼らが、果たして自分達のように学習出来るとは思えませんが」

上条「どういう事?」

海原「よく死んだ後も生前と同じ行動をしている幽霊の話がありますよね?飛び降り自殺したのに、同じ場所からずっと飛び降りている幽霊、みたいな」

海原「人を呪うにしろ、どうしてそんな無駄な事をするんですか?あの世とやらがあるんでしたら、さっさとそちらへ行ってしまった方がいいのに」

海原「『生ける死体』にしてもそうです。過酷な環境で重労働を強いられても唯々諾々と従う。自分だったら逃げ出すでしょうが」

上条「それは――やっぱり死んでるし、もしくは実体も持たないからじゃないのか」

海原「ですね、自分もそう思います。どれだけ経験を積もうが蓄積する場所が無ければ意味は無い」

海原「その延長線上の話で、『死人は約束を破れない』という概念もあります」

上条「あー、なんとなく分かる。幽霊とかって意外と義理堅いようなイメージあるよな」

海原「あ、いえそうじゃなく。約束を破”ら”ないのではなく、破”れ”ないです」

上条「どう違うんだよ。自発的に破棄出来ない?」

海原「そうですね……上条さんがどなたかと約束するじゃないですか?例えば『御坂さんを一生守る』みたいな?」

上条「例えてないよね?具体的にその約束したもんね?」

海原「この約束を果たすのであれば、上条さんがある程度の距離で御坂さんに接し、守るのが最適でしょう」

海原「でも実際の所、上条さんの方がより大きなトラブルに見舞われる確率が高い――よって、逆に御坂さんを遠ざける事で約束を守ろうとした。違います?」

海原「懐かれてると気づいているのに、わざわざ嫌われるような態度を取って――例えば名前を呼ばないなんて意地悪をして」

上条「……優しいストーカーめ」

海原「今の話はあくまでも『最初の約束を守るため、一見反故にしたように思える行動を取る』という例ですが、現実での約束破りはよくある事です」

海原「昔々、『おっきくなったら結婚しようね!』と妹に言われた場合、自分調べでは100%の確率で約束は守られていませんしねっ!」

上条「誰に言ってんの?もしかしてお前遠回りに自分を擁護してねーかな?」

海原「約束破りは一般的には宜しくない事――では、ありますが、時として破る事も大切です」

海原「お土産にケーキを買って帰ると約束したのに、売り切れだった。だから別のお店でもっとお高いケーキにした、といえば大抵喜ばれるでしょうし」

海原「また緊急時や災害時も同じく。まぁ今更言うべき事ではないのかも知れません――が、今のはあくまでも生者の話です」

海原「一般に死者と呼ばれる物達はそれが出来ない。柔軟な思考力が失われているのか、そもそも考える事が出来ないのか」

海原「幽霊だけでなく、それは勿論『生ける死体』も例外ではありませんよ」

上条「体が死んでるからこれ以上記憶の上書きが出来ない、か?」

海原「と、解釈する以外はないと思います。もしくは精神そのものが死んでいるか」

海原「ですから『約束を破るという概念がない』んですよ。ずっと変わらず、学習せず劣化すら出来ない哀れな存在」

上条「……意志の強い人は、てか約束を頑に守る奴だっているだろ?それが悪い事だとは思えない」

海原「電波時計が毎日毎日同じ仕事を休まず繰り返すのを、上条さんは『時間を守って誠実だな』と褒めるのでしょうか?」

上条「……」

海原「個人の意見は尊重致しますが、人類の歴史に於いて死者と生者が共に暮らした事はありません」

海原「それは魔術的な困難さだけではなく、科学的に屍体を処理しないリスクの高さが原因だからですね」

海原「しかもそれらのリスクを負ってまで、言わば常に爆弾を抱えながら魔術の研鑽に励む死霊術士とはやらはクセが強いらしいですよ」

上条「知り合いとか居ないのか?」

海原「自分達は加工が専門ですので。一見近いように見えますが、彼らと相容れる事は有り得ませんね」

上条「お前らそれ五十歩百歩にしか見えねぇが……まぁいいや。なんとなくは分かった」

海原「――というか聞こう聞こうと思っていたのですが、こんな所で油を売っていて宜しいのですか?」

海原「確保してあるとは言え、長時間放置されるとリスクが高まりますよ」

上条「あぁそれは別に大丈夫だろ。俺以外にも探してっから、どっかっつーとサポートだし」

海原「……はい?」

上条「うん?」

海原「会話が噛み合わない気がしますね……どうしたものでしょうか」

上条「だからさ。何でも魔力で追跡出来るらしいんだけど、俺は無理だしって話だ」

海原「……そう、ですか?おかしいですね、それは」

上条「つーと何?」

海原「自分が話を聞いて想像するだに、上条さんプラス上条さんハーレムチームは『死人』の足取りを辿っている最中、ですよね?」

上条「その妙な敬称以外は合ってる」

海原「ならば――どうしてあなたの体からは『死人』の臭いが漂っているのですか?」

上条「――はぁ!?俺から!?なんでだよ!?」

海原「自分に聞かれましても。魔力の残滓等は特に感じられないのですが、こう、自分達のような特殊な人間には分かるんですよ」

海原「肉体が本格的に朽ちる、その直前に放つ花のようなどことなく甘い香りを」

海原「最初にお会いした時からしていたので、てっきりもう話は結構進んでいるものとばかり」

上条「いやぁ……どこですれ違った、つーかそんなに臭いかな?」

海原「何か心当たりはありませんか?例えば電車の中で妙な人と密着したとか、バスを待っている間に、とか」

上条「ないなぁ。特に普通――――――あ」

海原「思い当たる節があって重畳かと。ちなみにどこで?」

上条「……さっき、行き倒れさんをですね、拾った、かな……?」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

皆さんみさきっつぁんのちっぱい大好きで何よりです
ハゲ条とアズカバンも含め、前スレ終わりで募集したリクエストの中にあっただけですので私は悪くない、えぇ



勘違いはやめたまえよ、みさきちのおっぱいも大好きだから

そっか。だから「この上条さん」は、御坂をいつも「ビリビリ」扱いに……

いかにも彼らしいけれど、アリサやレッサー達の持つ「覚悟」は、彼女もとっくに持っている、ってことだけは分かっていて欲しいな。

>>262
一年以上前からの約束です。みさきっつぁん口調は苦手ですが、まぁ書いてる間に慣れるでしょう
実は佐天さんも書く前は苦手でしたし、まぁまぁ

>>263
別に全員分のフラグを立てようとか言っていません。えぇ多分立たないんじゃないですかね?

>>264
書いてもいいですが魔術と科学の欠片もないシロモノになります。てかプライベートまでロ×ロ×しいのはどうかと

>>265
なんとなく予定している(ネタになりそうだなとメモってる)イベント

1.ナンパされて(※自演)上条さんが颯爽と助けに入る
2.水着が流されて(※自演)上条さんが颯爽と(ry
3.浜辺でハプニング(※自演)上条さ(ry
4.水着コンテスト(※自演)(ry
5.無人島に(※自(ry

上条「やっている事はいつもと変わらないな!しかも殆ど海関係ないしな!」

>>266
一方通行「おめでとォ」
垣根「おめでとう」
海原「おめでとう」
青ピ「おめでとう」
御坂「おめでとう」
上条「おめでとう――って違う違う!俺はそっちの人間じゃないよ!」
土御門「世間様では例え高校生であろうと中学生へ手ぇ出すのはアウトだにゃー。あ、おめでとう。人類の新しい可能性へようこそ!」

>>267
フイクションに関しての好みは現実とは一線を画していますからね。男性同士の、が好きな女性であっても彼氏は極々ノーマルだったりします
打ち止めの抱き枕(※なかじまゆ○さん制作)を家宝にしている知り合いが居ますが、彼女は別に幼女好きではないそうです
なの○さんをフェイ○さんがprprするのを見たいだけの一般人だと主張しています

>>268
鳴護「だって、ホラ!うんっ、仕方がないと思いますっ!」 チラッ
レッサー「まぁそりゃあんだけスルーされれば、ですよね」 チラチラッ
フロリス「だーよネー。そりゃワタシもそう思うし?」 チラチラチラッ
ランシス「……」 チラチラチラチラッ
ベイロープ「そう、ここで感想をどうぞ?」
上条「凄い殺気――これは敵の魔術の攻撃だ!みんな気をつけろ!」
(個人的には来日されると妙に変な服着させられるのがイマイチ。てか海外では普通にカジュアルなのに。
アヴリルと同じ路線だと日本のプロモーターが踏んでるんでしょうけど、違いますからねー。
miwaと西野カナを一緒くたのフォルダにぶち込むような暴挙です……と、実家の犬が言っていました)

>>269
食蜂さんの性格上病みそうですかね。ですがまぁそれもまた良し

>>270>>278
ありがとうございます

>>271
超ぶっちゃけますが、神裂ねーちんさんはコスをしない普段の格好が一番エロいと思っています(※とあるアーカイブ・ドラマCDの3巻ジャケット表参照)
ていうか二年ぐらい前にも書きましたが、五和さん以下天草式の女衆が悉くフツーの格好なのに、どうして神裂さんだけあんなChi-Jyo風……

>>272
前にも言いましたが、インデックスさんはイニシャルヒロインらしく、堂々と一本使って書きましたので今回以降もご縁がなかったと言う事で一つ

>>273
食蜂さん、多分自分よりも天然力の強い相手には弱い気がします。意外と面倒見が良いようですし
『女王蜂』とは外敵には集団で対抗しても、身内や子供には慈悲深い親であるように

>>274
空気を読んだら負けだと思っています。流石にシメる所はシメますが

>>275
上条「うん、俺もいい加減出ずっぱりで疲れるって言うかさ」
上条「原作でも一方通行や浜面主役の回がもっと増えたっていいと思うんだよ」

>>276
前スレの最後を参照。繰り返しますが私は悪くないです、えぇそりゃもう
ロリきちの成長日記なんて書きたくなかったんだ……!

>>277
合計してみると4が多い、だと……!?

――夜 路上

タッタッタッタッタッ……

上条(太陽は完全に地平の下へ隠れ、肌寒い冷気が足下から這い上がってくる)

上条(昼間は忘れていたが、その寒さは10月に相応しいもので――と、モノローグごっこしてる場合じゃねぇ)

上条(終電もバスもなくなる――学園都市は夕方に終るって設定、タクシーなんか呼べる金もない――から、全力で道を走ってる訳だが!)

上条(まさか道で拾ったカブトムシ子(仮名)さんアタリかもしんないって!どんだけ引き強いんだよ!もっと別の所でこの運を使って欲しかったけどな!)

――回想 常盤台喫茶(※常盤台非公認)

海原「――ま、取り敢えず落ち着いて下さいよ。焦っても良い事なんかありませんから」

上条「お、おぅ」

海原「まずはこのベリーベリーストロベリーベリーハッピーセットをベリー飲んでですね」

上条「ベリーつけすぎじゃねぇかな?明らかに修飾語の三重苦になってんだけどさ」

海原「えぇとですね。まず自分が嗅いだ『死体の臭い』はあくまでも感覚的なものに過ぎません」

海原「従って上条さんが直接接したのか、間接的に接したのかまでは分かりません――が、まぁ相当薄れていたので、直接ではないと思います」

上条「俺、一回公園で体も洗ったし、家で服も着替えてるのに?」

海原「料理人が臭いを嗅いだだけで使っている香辛料を当ててしまう。その延長線の話だと思ってください」

海原「ですから精度の方もあまり正確ではないのですが、恐らくは、と」

上条「……どうしたもんか」

海原「どうもこうもないでしょうね。成仏させる以外に選択肢がある筈も無く」

海原「自分が行って『分解』するのもいいですし、上条さんの『右手』があれば然程問題なく終るでしょう」

海原「死んだという自覚がない相手の場合ですと、気づかせればとの、言う話もありますが、逆に襲われる事も――」

上条「女の子だぞ、相手は!」

海原「ではもしも屈強な男性であれば即座に始末するのでしょうか?」

上条「そういう話じゃねぇよ!」

海原「あーいえ、お気持ちは分かりますとも。相手がモンスターみたいな形状をしていれば、それだけで排除対象になるのでしょうが」

海原「見るからに人間じみていれば同情するでしょうし、それは感情として正しいとも思いますよ」

海原「ですが、上条さんは知ったでしょう?彼らが人間としてはもう戻っては来られないと。存在するだけで害悪だと」

上条「理解はしたつもりなんだが……」

海原「ま、自分の事件ではありませんし、どんな結論を下すのかは上条さん次第でしょうけど――あぁでは最後に一つだけ」

海原「仮にあなたが『生ける死体』として甦ってきたとしましょう。この世界に何か未練があり、それを晴らしに帰って来ました」

海原「ヒューマニズムに充ち満ちた奇跡が起き、戻ってきたあなたに周囲の方々は戸惑いながらも手を差し伸べ、受け入れる。それはとても素晴らしい事でしょう」

海原「ですが――あなたは、死人故にそんなに親身になってくれた人達を食い殺さなくてはならない。誰よりも親しい身内を手にかけなくてはいけない」

海原「同族殺しの罪を着せるのか、はたまた笑って自身を差し出すのかは分かりませんが」

海原「……あなたに人の心が残っていたら、これ、耐えられますか……?」

上条「……」

海原「あくまでも私見ですが……『死人』とは”加害者であり被害者でもある”と思うんですよ」

上条「……うん?」

海原「人の肉を持ちながら、それでも同じ人を害さなければいけない――これは『加害者』であると言えるでしょう」

海原「時として存在するだけでパンデミックを引き起こしかねず、それはまさに呪われていると言っても過言ではありません」

海原「ですが――同時に『そうしなければいけない躰になってしまった』時点で、ある意味被害者ではないでしょうか?」

海原「大抵の場合ですと、甦る――黄泉帰”らせる”のは第三者であり、死者がそう望んだ訳ではありません」

海原「『死者の意を汲み取って』というチープな台詞は多々聞かれますが、本当にそう望んでいるのかは何とも言えません。ですが」

海原「もし、上条さんがそんな立場になってまで――」

海原「――生きていたいと思いますか?」

――路上

上条「……」

上条(……俺は――もし、俺だったら嫌だ。それは)

上条(誰かに、それも親しい奴らに尋常じゃない迷惑かけてまで生き返りたいとは……幾ら何でも)

上条(……けど、今の話の中心は――そう、主人公は俺じゃない。あの子だわな)

上条(死んだ人がどう思うかなんて、それこそ口寄せしてみても分からないと一緒。生きてる人間だって聞いてみないと分からない)

上条(それに海原が教えてくれたのは『一般的な死人』であって、それが全てのケースに当て嵌まらないとも言ってたっけ……?)

上条(まずは――そう、まずはだ。あの女の子が本当に確かめるのが先だろ、うん)

プップー

上条(……てーか、もうどっかで見たような気がしてるし、他でも会ってるような……?あぁクソ記憶が曖昧になってんな)

プップー、プップー

上条(あの日の出来事――『常夜』前後の事は、当事者である俺やアリサ達も少しずつ――)

プップップ、プッププ、プププ、プップップ、ププッププッ

上条「車のクラクションでB'○!?しかも初期の名曲だなっ!?」

上条(あ、やべ。クセでやばそうな黒塗りのワゴンツッコんじまった――て、窓が開く?) ウィーンッ

クロウ7「――こんばんは上条さん」

上条「あ、はい、こんばん、は……?」

クロウ7「取り敢えずどうぞ中へ。お送りしますので」

上条「あぁどうも――てか、ありがたいんですけど……タイミング、良すぎじゃないんですか……?」

クロウ7「そうでもないですよ。たまたま尾行していた所ですから」

上条「そっかー、それじゃたまたまですよねー――ってと、取り敢えず殴っていいですよね?」

クロウ7「……時間、ないんでしょう?殴りたければ前向きに検討したいのでどうがご乗車下さい」

上条「……日本人的な回答だな……!」

――車内

クロウ7「どちらへ行けば宜しいでしょうか?学内であればどちらへでも」

上条「あ、俺ん家までお願いします。って場所は――」

クロウ7「あぁ知っていますので、というか最初から尾行していました」

上条「どこのストーカーだよ。てかARISAのジャーマネ設定どうなった?」

クロウ7「先週、顔の皮を剥がされたばかりで、少し接合面が残ってるんですよ。ですので人前に出るお仕事は厳しいかと」

上条「あー……結局、セレーネ事件で傷負ったのって一人だけ……ん?だったら会うのはおひさしぶり?」

クロウ7「ですねぇ。自分と魔術結社のボスが入れ替わっていたのに、どなたさんも気づいて貰えませんでしたしねぇ」

上条「相手がプロだからですよねっ!ほら!変装とかのね!」

クロウ7「それにウチは慢性的な人材不足で……!ホームページで社員募集したのですが、応募して下ったのはたった一人だけという大惨事に」

上条「あー、あったなぁ。つーか俺のコメント削除して下さいよ。社員じゃないんですから」

クロウ7「しかもその方、岩○さんとおっしゃる方なんですが、かなり真っ当な方っぽかったので、泣く泣く不採用のお手紙を出せさて頂きました……!」

上条「どうしよう。知り合いの企業がブラック過ぎるんですが」

クロウ7「ま、まぁ詳しくは言えませんが、今日は業務の一環とお答えしましょう」

上条「……大体想像はつくがな。心配性のねーちゃんか、それとももっと心配しぃの妹さんのどっちかだろ?」

上条「俺に疚しい所なんてないから、別にしてくれたっていいんだけどさ」

クロウ7「ちなみに現時刻での最終報告は『常盤台の制服を着たお若い子に接待されるお店へ行った』、ですかね」

上条「あ、そうだよねっ!たった今ものっそいやましい疚しいお店に行ってきたばかりですもんねっ!」

クロウ7「自分はもう少し歳がいってる方が好みです」

上条「うん、知ってた。アリサも含めて多分知ってる」

上条「てゆうか、歳いっ――もとい、大人っぽいけどもシャットアウラは『88の奇蹟』ん時には大体中学生ぐらいだよなぁ?」

上条「あれが三年ぐらい前だって事は、シャットアウラ今高校せ――」

クロウ7「いえ、ですから自分がボスへ寄せる感情は信頼であって、そういうのとは違います――し」

クロウ7「上は子供が中学生の人妻から下は一桁まで幅広い交友関係の上条さんには、いやはやとてもとても」

上条「よしっ!これ以上は痛くない腹の探り合いになるから止めようかっ!痛み分けの内になっ!」

クロウ7「コールドゲーム並の大差がついたような気がしますが……まぁ冗談はこのぐらいにしましょうか。自分がどうして尾行していたのか、ですか」

クロウ7「まぁ指摘されたように、依頼があったからですね。とある筋からの」

上条「……あぁ、なんかすいません」

クロウ7「詳しいお話はまだ伺っていないのですけど、『死人』でしたっけ?」

上条「魔術サイドの話なんだが、首突っ込んで大丈夫ですか?」

クロウ7「殺せば死ぬのでしょう?”物理的にどうにかなる”相手であれば、多脚戦車を使える自分の出番かと」

上条「このバン、みょーにカッチリしてっと思ったら後部座席に積んでんのかよ」

クロウ7「正直、魔神だ結社だ、と言われるよりも分かりやすくていいです」

上条「……」

クロウ7「どうされました?」

上条「いや……何でもない」

上条(『殺すのがいいのか?』とは、聞けなかった……流石に失礼すぎんだろ)

上条(さて……今のウチに整理しちまおう。他に出来る事もないし)

上条(まずはあの子、ウチに居る子が『死人』だって可能性がある。海原曰く絶対ではないらしいが)

上条(確定じゃないし、あの子が接触した時についた香り?死臭?が、俺についたのも否定出来ない)

上条(だから現時点で判断を下せない。とはいえ放置も出来ないし、確保に向かってる最中だ)

上条(次にあの子の身元だ……どっかで会った気がするんだよなぁ。どこだっけか?)

上条(彼女が友達から言われてる話の中で、確かアレンダ?フレンダ?とかって)

上条(珍しい名前だよな。フレッドやフレデリックみたいな名前は聞くが、他じゃ滅多に――)

上条「……」

上条「……フレ、メア……?」

上条(そう――だよ!浜面んトコの女の子!垣根がペドって――もとい、ペタって張り付いてた幼女た!)

上条(特設ステージへ運んで貰う最中、俺は垣根の背中で揺られながらあの子のねーちゃんの話をした!『遠い所にいる』って縁起でもねぇよってさ!)

上条(それは浜面の頭が残念じゃなく、今にして思えばそのまんまの意味で……か!)

上条「……」

上条(それに……それよりか少し前の日に、デパートで買い物してた時にも、遭ってる……よなぁ?)

上条(ちっこいの二人に俺が買い物のお願いをしたのを、どこをどう勘違いしやがったのか蹴りくれやがって――)

上条(――そして、『冥界』で俺とアリサを助けてくれた、と……)

上条「……」

上条(……あぁクソったれ繋がっちまったよ。これで多分『死人』確定か)

上条(しかも俺、伝言を浜面に伝えんの忘れてる――あぁそうか、浜面の知り合いなんだよな、あの子)

上条(感情的には引き合わせた方がいいのか?下手に隠して事情を知らないまま遭遇したら、悲惨な事になるだろうし……よし)

上条「あ、すいません。電話しても良いですか?」

クロウ7「どうぞ」 ピッ

上条「それじゃ――――――待てよ?」

上条(俺があの子とコンタクトを取った、つーか発見したのを知ってるのは誰も居ない。海原も言いふらしたりはしないだろうし、聞かれなきゃ)

上条(ここで浜面に『あ、ウチで珍しいの拾ったんですよー』なんて言えば、柴崎さんからアリサ達に伝わる、よな。やっぱり)

上条(隠すようなこっちゃない。ないんだが……だよな?ない筈だ)

クロウ7「……ご心配なく。余所の女と楽しそうに喋っていた、なんて報告は致しませんから」

上条「話盛る気満々じゃねぇですかコノヤロー……あ、そうだ柴崎さん」

クロウ7「はい」

上条「『死人』の始末なんですが……」

クロウ7「そちらは自分達のコネでどうとでも。最悪の最悪、死体損壊程度には疑われるかも知れませんが、不起訴に持ち込みますから」

上条「た、頼もしいですよねっ!」

上条(……ダメだ。こっちに情報流したら即処分――いや待てよ。レッサー達は?レッサー達だったらきっと良い方法を考えてくれるよ!)

Trrrrrrrrr……

レッサー『――はーいどうもー、今夜もやって来ましたDJレッサーの”LateLateLateRadio☆”のお時間ですっ!』

レッサー『今日も張り切ってご機嫌なソウルを皆さんにお聴かせしちゃうんだぜ!覚悟して下さいなっ!』

レッサー『さぁ、一曲目のリクエストは学園都市にお住まいの、ハンドル”姉の愛情が重すぎて辛い”さんからのナンバーだ!』

レッサー『曲は”そろそろツッコミがないと間が持たない”のニューシングルを――』

上条「……」

レッサー『……最近、上条さん私の扱いに慣れてきてやしませんかね?』

上条「『えぇお陰様で慣れさせられたからなっ!基本ツッコんだら負けだってねっ!」

レッサー『――ちょ……待って……ぅんっ!』

上条「『……うん?どした?また混線ゴッコか?』」

レッサー『ランシス、今上条さんと話――やぁっ、指がエッチぃですってば……!』

上条「『……』」

レッサー『そんなに……強く、されたら聞こえ――ちゃいます……!』

上条「『間違いなく敵の魔術師の攻撃を受けてるなっ!今すぐ行くから場所を教えて下さいっ!さぁ早く!さぁさぁ早くっ!』」

上条「『あと近くに居るであろうベイロープさんとフロリスさん達は写メと動画を頼むっ!俺が行くまで記録プリーズ!』」

クロウ7「ツッコまない言った側からツッコんでんじゃないですか」

レッサー『嘘ですけど。食いつきが良くて逆に引きます』

上条「『騙したなァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!よくも騙してくれたなァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』」

レッサー『ていうか私を含めた全員が、庭の隅で死んでるセミを見るような目をしてますけど、そっちの写メだったら要ります?』

上条「『ごめんなさい。もうおフザケはしませんから』」

レッサー『どこをどう聞いても魂の叫びが夜のシジマに響いた気がするんですが……』

上条「『あー、ごめんな?夜遅く……は、ないけど』」

レッサー『いや構いませんよ。レジ締めも終った所ですし』

上条「『レジ締め?』」

レッサー『えぇ、我らが新アジト”ニホンダルマ日本支店”も中々評判が宜しいようで。なんでもどこぞのローカル番組で取り上げたいとJCが』

上条「『佐天さんには相変わらずバックギアついてないよね?仕様かな?』」

レッサー『ブリテンのおまじないグッズが珍しいらしく、割と稼がせて貰っていますよ』

上条「『へー。ちなみに一番人気は?』」

レッサー『幸運の一ペニーがなんとお値段税込み200円!ご奉仕価格でうっはうっはですなー!』

上条「『オイコラ詐欺師。ペニーって確かポンドの下の通貨で、セントとどっこいどっこいだよね?ぶっちゃけ数円程度の価値しかねぇよな?』」

レッサー『いえ、一応は”ラッキーペニー”というジンクスもありますし、根も葉もない嘘という訳では』

上条「『しかもお前ら確実に消費税の対象外じゃねーか!ぼったくりにも程がある!』」

レッサー『……マジ話だと、ユーロから学園都市までの出張費が結構嵩んでいます……』

上条「『あー……学生だったんだよな、お前ら』」

レッサー『このままだとベイロープが実家に泣きついて、縁談と引き替えに融資をして貰わなくてはいけないハメに!』

上条「『止めて差し上げろ。無駄に分岐していくんだからその手の発言はな!』」

レッサー『――上条さん!』

上条「『はい?』」

レッサー『ペニーってなんか卑猥ですよねっ!』

上条「『お前がイギリスの自虐ネタに走んなや!確かにアメリカじゃチップとして渡すと殴られても文句言えねぇらしいけども!』」

クロウ7「上条さん本題本題。そろそろつきますよ」

上条「『――っと!レッサー、ズバリ聞きたい!”死人”見つかったらどうするつもりだ?』」

レッサー『ズバリ処分しますけど?』

上条「『ですよねー……』」

レッサー『よく正しくはズバリではなく、バッサリですけど』

上条「『――うん分かったよ!それじゃおやすみっ!』」 ピッ

上条「……ふぅ」

上条(分かってた……レッサーさん達が”悪・即・バッサリ”逝く人らだって分かってた……!)

上条(……あ、いや対処としちゃあいつらが正しいのは分かる。俺だって知らない奴だったら、『仕方がないね』で済ませてただろうし)

上条(でも、なぁ?一度知り合った上、何と言っても恩人だし。向こうは憶えてないみたいだけど)

上条(ていうか冥界に居た俺の事も記憶してないみたいだよな?そもそもあそこに居た自覚があったら自分の立ち位置は理解して――)

上条「……」

上条(……それじゃアレか?あの子は『自分が死人だと自覚した瞬間に死ぬ』とか……?)

上条(それは……)

キキィッ

クロウ7「――はい、到着しましたよ」

上条「あ、はい。送ってくれてありがとうございます」 パタンッ

クロウ7「いえいえお気になさらず」

上条「それじゃ、どうも。おやすみなさい」

クロウ7「はい。よい夜を」

上条「……」

クロウ7「……」

上条「……帰らないの?」

クロウ7「……業務ですので、はい」

上条「あー……はい、お疲れ様です」

クロウ7「自分は念のためにマンションの周囲を調べてから帰りますので、どうかご安心下さい」

上条「すいません。なんか色々と」

クロウ7「そう思うのであれば、さっさと彼女さんを誰かに絞って下さると自分の気苦労も減るのですが……」

上条「はいっ!おやすみなさいねっ!また明日っ!」 シュタッ

クロウ7「相変わらず誤魔化すのが……まぁいいですがね」

――上条のアパート 周辺

クロウ7「さて……」

クロウ7(一通り見た感じで不審者、不審物はなし。極々普通の環境でしょうかね)

クロウ7(……というかリーダーも心配しすぎなんですよね。そうそう彼を害する人間が居るとも思えませんし)

クロウ7(不意の事故や、事情を知らない堅気の人間にどうこうされる事はあっても、それ以上に怖い方々から目をつけられるのは必然――と)

クロウ7(……ま、自分には関係な――)

ガサッ

クロウ7(植え込みの中に何か居る……?枝葉が邪魔でよく見えませんね)

クロウ7(素人ならば近寄ってミスするのはよくある話、特にホラー映画では死亡フラグですが。プロは慌てず騒がず機械に頼ると)

クロウ7(臭気感知装置――は、剥がされてから直してないんでしたっけ。でしたら携帯型の集音器を、と) カチッ

クロウ7(感度を上げて、拾った音から雑音を抜き、入力してあるサンプルと照らして合わせて音源がどれに最も近いかを絞る)

クロウ7(視覚と違って音は誤魔化しようがありませんから、人が隠れていれば吐息や心臓の鼓動でそれだけと分かります――と) ピピッ

クロウ7(呼吸音は感知出来ず、しかし心臓の鼓動は検知。パターンは……)

クロウ7(……猫と一致、ですか。まぁ人が隠れるにしてはおかしな場所ですし) クルッ

クロウ7(さてと。さっさと帰ってリペアでも――) ピピピッ、ピピピッ

クロウ7(分析結果の完全なデータが出たようですが……まぁわざわざ目を通す程のものでもな――)

クロウ7「……………………は?」

クロウ7「猫の心臓の鼓動数から推測する個体数――」

クロウ7「――さんじゅ――」

ザシユッ……!!!

クロウ7「か………………は――――――――!?」

…………バタ

???「ナー……ゴロゴロゴロ――」

???「――――――――――――にゃあ」

――上条のアパート 自室

上条「たっだいまー……と」

上条(内鍵はかかってたけど、チェーンはかけられてなかったぜ、と。ついでに合鍵も郵便受けに入ってなかった)

上条(部屋の中に居るのを期待したんだが……隠れるような場所は無いし)

上条(一応、そう一応、風呂場兼俺の寝室を覗いてみても、誰の姿もなかった)

上条(なーんか微かにゴウンゴウン言ってるが……あぁ洗濯機か。シャットアウラに貰った、ほぼ最新式の乾燥機付洗濯機!が、回ってる音だ)

上条(俺が回した憶えはない、から、きっとあの子がやってったんだろうが……うーん?)

上条(見事にどっか行ってるし、しかも戻ってくる気がある、感じだよなぁこれは)

上条(しかも素っ裸で外出る訳はねーから――べ、べつに興味なんてないんだからねっ――俺の服パクってったんだろうが)

上条(まぁ、そのまま戻って来ない可能性もあるが……んー?探しに行ってみるか?)

上条(浜面に連絡取れなきゃだし、表に出るのは――あー、柴崎さん居んだっけか?)

上条(一応そっちの確認もしながら、バレないよーにしてみっかなー。ま、なんとかなんだろ)

――アパート外 路上

上条「……」

上条(あのひぐらしの鳴きそうな黒いバンはどこにも見当たらない。帰ったんかな?……お疲れ様です。いやマジで)

上条(今の内に浜面へ連絡っと――) ピッ

Trrrrrrrrrrr……

浜面『――もしもし?どうしたヅラか?』

上条「『お前こそどうした!?唐突にその語尾なんだ!?』」

浜面『あーごめんごめん。今ちょっとフレメアと”ハピレスプリキュア”ごっこをだな』

上条「『やめなさい!そんな教育に悪いアニメ見ちゃいけませんよ!』」

浜面『俺がハマッヅラ?なんか陽性役で』

上条「『お前ホンットに気をつけろよ?彼女持ちが陽性の国行ったら人生詰むからな?』」

上条「『確かに一見メルヘンっぽく映るけど、実際には素人さんお断りの仁義なき世界だからな?』」

浜面『んでフレメアが――』

上条「『……あーアレだろ?キュアスター(二代目)とかでしょ?だって他に選択肢ないもの』」

浜面『いやキュアサベスだって』

上条「『カ・ツゥーラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?』」

上条「『持ち込みやがったな!?シリアスなこの世界にネタを持ち込み……あぁクソ!あのヤロウっ!』」

浜面『んで、どったん大将?こんな時間に珍しい』

上条「『あー……なんつったらいいか、そのさ、お前んトコのフレメアのねーちゃんの話なんだが』」

浜面『……フレンダの?』

上条「『嫌なこと確認するんだが……もう、亡くなってる、んだよな?絶対に?』」

浜面『どういう話だよ?何かの興味本位だったら、お前でも俺は怒るからな?』

上条「『……すまん。そういう茶化した話じゃ一切無いし、ここで――電話口で言っても信じて貰えるか分からない』」

上条「『だから――俺を信じて教えて欲しいんだ、頼むっ!』」

浜面『あー……まぁそこまで言われっちまうと、なぁ。なんつーか、だけど。ちょっと待ってな』 ガタゴト

上条「『浜面?』」

浜面『他の奴らに聞かれたらマズいんだろ?ベランダに出たから、もう大丈夫』

上条「『ん』」

浜面『あー……結論から言っちまうと……フレンダは死んでる』

浜面『俺がこの目で確認したし、他の”アイテム”の奴らも確認した。だからそれは絶対だ。間違いなんてありっこない』

上条「『……そっか……ごめんな』」

浜面『んで、なんでまたそんな話聞きたいんだよ?下手な言い訳したらぶん殴るからな』

上条「『……ウチに居たんだよ。ついさっきまで』」

浜面『お?U-chi?新しい食いモンかなんか?』

上条「『良いから落ち着け、そのまんまの意味だ』」

上条「『誰がどうやったのかは知らない。何のためにかも分からない』」

上条「『でも何らかの魔術を使って、その、フレンダを甦らせた、らしい』」

浜面『ハアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?そんなんアリなのかよっ!?反則じゃねーかそっち側は!?』

浜面『甦るってアレだよな?イタコのばーちゃん口寄せ的じゃなくって、生きてた頃そのまんまって意味なんだよな!?なっ!?』

上条「『いいから最後まで聞けよ!でもそのまま、って訳には行かないらしいんだ!』」

浜面『え、どーゆー』

上条「『あくまでも可能性だが、その……死んだ人ってのは、やっぱり死んだ人であってさ?』」

上条「『人を傷付けられずには、いられない、みたいな……』」

浜面『……あぁなんとなく分かった――で、俺はどうすればいい?』

上条「『どうすればって……どう?』」

浜面『その”フレンダっぽい死人”を殺せば……いいのか?その手伝いをしろって?』

上条「『……違う。俺はそんなつもりで連絡したんじゃ――』」

浜面『――フレンダを殺したのはな。ウチ――”アイテム”の奴なんだよ』

上条「『――っ!』」

浜面『内容は言いたくねーが、そいつも死ぬ程――少なくともテメーの生き方見失って自暴自棄になるぐらい、悩んだよ』

浜面『どうしてって、それこそ盛大な八つ当たりで自分を融かすぐらいにはな』

上条「『……』」

浜面『俺は……俺は約束したんだよ。そんな奴でも守るって、もう”アイテム”が二度とバラバラにならないようにするって!』

浜面『……今のさ、大将の話聞いてるとさ?なんだかんだで、その……殺さなくっちゃいけないみたいじゃん?』

浜面『そんな、そんな辛い思い、させたくはねぇんだよ!俺は!もう二度とだ!』

上条「『……あー、うん、浜面。分かった、お前の言いたい事は、理解、した』」

浜面『……悪い。それでは俺は――』

上条「『――大丈夫だ、それは』」

浜面『あん?』

上条「『こっちは俺が”なんとかする”から、そっちは出来る限り、その……見つからないようにしてくれれば、それでいいと思う』」

浜面『――悪い!本当に、悪い!』

上条「『いや――こっちこそゴメン。何か平和にやってんのに、変な話持ち込んじまってさ?』」

上条「『こっちはこっちで何とかするから、うん、大丈夫大丈夫!上手く行くって!』」

浜面『……上条』

上条「『――あ、それじゃな?気をつけろよ、お前顔に出やすいからな?』」

浜面『オイ、まだ――』

上条「『それじゃまたなっ!』」 ピッ

上条「……」 プツッ

上条「……これが――」

上条(――『死人』って事かよ……!)

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を


※初春さん型・花ヘアバンドの続報

つい先週、ほん怖のCM中にテレビをザッピングしていたら、世界陸上女子400mリレー決勝でジャマイカの選手が初春さんヘアバンドをつけていました
しかも二人。そして何が怖いかってそんなふざけた格好のまま走ったのに、大会新記録(40秒07)を叩き出して優勝した事かな (´・ω・`)
片方(トンプソン選手)は200mの銀メダリストだし。ていうか誰か止めろや。なんでチームの半数が堂々と花輪ヘアバンドつけてんだよ

つまり、初春さん運動音痴説は誤りであった、と。
ていうか、かざりん、西葛西じゃなくてジャマイカ出身だったとか。

>海原「同族殺しの罪を着せるのか、はたまた笑って自身を差し出すのかは分かりませんが」

フロイラインのこともそうだけど、姫神の境遇を思い出さずにはいられない。設定は若干異なるけど。
食べられることで大事な人を殺してしまうって、考えてみれば禁書中でもトップクラスの悲劇だな。

乙です

>>294
ロ×ババアからリアルロ×まで幅広く嗜んでこそhentai紳士ですね!(それ違、つーか狭い
ていうかシェリーさん(29歳)からバードウェイさん(12才児)まで守備範囲の広い上条さんパねぇかと

>>295
『向日葵~』のテーマが”無垢であるが故に免責されるが、戦わない世界へ未来は訪れない”というものであるのに対し、
御坂さんのお話を書かせて頂くとすれば”戦う覚悟と守る覚悟”になると思います
『向日葵』のインデックスさんは”そうしなければ引き離される”という意味で、自身の恋心やその他を押し殺し、敢えて子供のように振舞っている――という解釈をしています
御坂さんの場合は「上条さんが意図的に距離を置いているのではないだろうか?」と、ある意味対象的なテーマでしょうか
(よって基本的に、何かトラブルがあっても”この”上条さんは土御門さんや海原さん、一方通行さんや垣根さんや浜面さんに頼る事はあっても、
御坂さん&インデックスさんに何かお願いするのは(※ギャグは除いて)なかった、筈です)

――上条のアパート 一階出入り口エントランス

上条「……」

上条(アパートの近くを探してみたものの、結局見当たらずと)

上条(ついでに言えば怪しいバンもなく、帰ってくれたのは不幸中の幸い、かな?)

上条「……」

上条(浜面の言葉……いや、俺がどうこう言って良い問題じゃないのか、それは)

上条(仲間を――友達を手にかけて、尚且つ今も仲良くやってるのは、そこにどんだけ葛藤があったのか、想像もつかない)

上条(たまたま首を突っ込んだだけの第三者が、感情に任せて詰っていい訳がねぇ――し。浜面だってだ)

上条(そんだけ大切にしてる仲間を守るために、元の仲間を――っていう”覚悟”がある。それはきっと半端な覚悟ではないに決まってる)

上条「……はぁ」

上条(とはいえ、とはいえだ)

上条(あの子――フレンダを、はいそーですかってさっさと処分する……)

上条(……そんな下らない事は絶対にしたくはないし、させたくもない)

上条(……だってホラ?アレじゃん?まだあの子が危険だって決まってもないし?)

上条(なんかこう、『陽性の国から来ました!』みたいなファンシーな可能性だって――)

上条「……」

上条(ないな、それはないわー。つーか今文字おかしくなかったか?まぁいいや)

上条(まぁまぁそれはいいとしてだよ。俺はこれからどう動くべきかを考えよう)

上条(今日はそろそろ日付が変わっちまうけど、引き続き彼女を探すのは不可能じゃない)

上条(学校もサボっちまえば、見つける可能性は更に高まる――それが雲を掴むような話で、0.01%が0.02%程度に上がるのであっても)

上条(……ただ、強行軍をしちまうとどっかで破綻するだろう)

上条(学校をサボれば土御門や青ピみたいな友達から、そうじゃなくても勘の鋭いレッサー達にバレるリスクが高まる)

上条(そして一回疑われたら、俺が秘密裏にこっそりと探すのは難しくなる……というか)

上条(現段階で俺がリードしているのは、『死人』の姿や顔を知ってるって一点だけ)

上条(レッサー達は……えぇと、何だっけ?魔力の残り香から探す?みたいな感じか)

上条(海原曰く、『魔力は感じ取れない』……らしいが、まぁ……下手に急いで探すのは止めにした方が無難だろう)

上条「……」

上条(『見つかった後』ってのもまた問題だわなぁ、これが)

上条(『新たなる光』だと処刑コース、黒鴉部隊も同じく)

上条(ハマッヅラ――じゃねぇや、同じ『アイテム』だった浜面も……てか、それだけは避けたい)

上条(……でもなー、出来ればなー、仲直りさせたいって言うかさ?)

上条(心情はどうあれ、割り切るかもさておき、あの子は故人の記憶と肉体っぽいものを受け継いでんだしさ)

上条(何とか、こう、せめてだ。妹さんぐらいに挨拶はさせてあげたい。うん)

上条(と、なると――写メかな?あのちっこい子に事情を話してなんかないだろうし、いつか話にしたって今ではないし)

上条(だとすると『お姉ちゃんは頑張ってるわよ!』みたいなメール出したっていい、かな……?そのぐらいは、さ)

上条(……浜面の許可なしにバカやらかすつもりはねぇが、一応写真の一枚二枚ぐらいは撮っておこう)

上条(……ま、捕まえるのが先だし、その間に何事も起こらない事を祈るが)

――上条のアパート 自室の前

上条「鍵、鍵……」 ガチャッ

上条「」 ガチャガチャッ

上条「あれ……?」

上条(鍵、今開けた筈なのに閉ってんな……?もしかして開けたまんまで出かけた、かな?)

上条「――って、まさか!」

上条(あの子が帰って来てる!?他に行く場所も無いだろうし、取り敢えず俺の部屋へ!) ガチャガチャッ

上条「……ただいまー……って居ねぇな」 ギィィッ

上条(台所、ベッドの上、ベランダ……にも居ない) キョロキョロ

上条(つーコトは風呂場か。あぁ洗濯の続きでもしてんのかな――あ、そだ)

上条(本人の安否確認用の写メ撮っちまおう。了解ないけど、後からとればいいし)

ガチャッ

上条「おー、お帰り。お前今までどこほっつき歩いて――」

フレンダ(※シャワー中)「――!?」 シャーッ……

上条 パシャッ、ピロリロリーン

フレンダ(※シャワー中)「……」

上条「――だん、だ……」

フレンダ(※シャワー中)「……」

上条 パシャッ、ピロリロリーン

フレンダ「なんでもう一枚撮った訳っ!?」

上条「ツッコム所そこかっ!?……あ、いや間違ってないけども!」

フレンダ「ていうか何でカメラ下に向けた訳よ!?」

上条「あぁいや『下も金なんだな』って。他意は無いよ?」

フレンダ「えっと――正座」

上条「あの、ここ下、濡れまくってんですけど……」

フレンダ「大声を出されて一生性犯罪者の汚名にビクつきながら生きていくのとどっちがいい訳?」

上条「――よっしゃ任せとけ!正座をさせたら校内一だと言われたこの俺に!」

フレンダ「あ、壁向いたままでね?あと、ケータイはこっちに渡す訳よ」

上条「……はい」

フレンダ「エーっと……あー、それじゃ整理する訳よ。オケ?」 ベキッ

上条「ノーオーケーでありますっ!たった今背後から電子機器をヘシ折った異音が聞こえましたけどっ!?」

フレンダ「あんたの人生が折れる方が好きなら、まぁ止めない訳だし?」

上条「形あるものはいつか壊れますもんねっ!サヨナラっ旅の報酬で貰った最新式のスマフォさんっ!短いお付き合いでしたねっ!」

フレンダ「で、なんだっけ?あー、そうそう、まずあんたは言いました――『俺は紳士だから不埒な事は考えない』と!」

上条「も、勿論だ!俺は誰に恥じる事はない!」

フレンダ「やだー、超カッコイイ訳ー――でねでね、取り敢えず自身の行動を振り返ってほしい訳なのよね?」 シャーッ

上条「あの……すいません?ちょ、ちょっといいですかね?」

フレンダ「あによ?」

上条「あのですね、俺の背後から水しぶきが飛んでくるって言うかですね、冷たいんですが」

上条「具体的にはテメー俺にシャワー浴びせてねぇか?あ?」

フレンダ「……これがシャバ最後のシャワーになる訳ねー」

上条「いやーシャワー好きだなぁ!特に夏は服を着たまま浴びるって最高ですよねっ!今は10月で寒いですけどっ!」

フレンダ「矯正施設のシャワールームで、ムサいオッサン共に後ろから前から……悪くない訳よねっ!」

上条「それだけは!ゴメンナサイするからそれだけは勘弁して下さいっ!」

フレンダ「話を戻す訳だけど、あんた言った訳よね?なんかこう『純粋に人助けだ』みたいな台詞言った訳だよね?」

上条「あー……言いましたねぇ、俺」

フレンダ「で?道で拾ったか弱く可愛い女の子がシャワー浴びてる最中に、カメラ構えて突入してきたのはどこのどなたさんって訳よ?」 カチッ

上条「……俺、かな――って、すんませんっ!緊急のお話があるんですが聞いて下さいっ!」

フレンダ「あ、ごめんちょっと待つ訳よ。今シャワーの温度最高にしてる訳だから」

上条「その話ですねっ!俺が何とかして欲しいのは丁度そのお話なんで――あちちちちちちちちちちちちちちちちっ!?」

フレンダ「この――ヘンタイっ!」

上条「ごめんなさいしますからっ!つーか悪気はなかったんだよ!むしろ善意で!」

フレンダ「善意で女の子の裸を撮る世界があるんだったら、滅びた方がタメになる訳だし!」

上条「まぁ、同感だ――アヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂッ!?マジで!?熱湯だけは勘弁して下さいっ!」

フレンダ「そんなにあたしの脚線美が好きだった訳か!」

上条「あ、ごめん。そういうのいいから」

フレンダ カチカチカチカチカチカチッ

上条「シャワーの水温を上げんのを止めてくださいっ!?それは高橋名○みたいに連射するもんじゃありませんよっ!」

上条「つーか珍しく俺の生活環境が最新家電に包まれてるのがアダになったな!ほんのちょっぴり嬉しいぜ!」 ドヤァ

フレンダ「微妙に喜んでる訳……?」

上条「お前には――あちちちっ――分からないだろうさ!あちちっ、追い炊きに1時間かかるウチの前時代的なあちちちちちちちっ!」

上条「つーかテメェ人が喋ってんだから熱湯止めろよ!?お約束でしょーが!」

フレンダ「……他に言いたい事はある訳、被告人?」

上条「ブラつける必要無くないかな?」

フレンダ カチカチカチカチカチカチカチカチッ

上条「バカっ!学習しない俺のバカバカバカバカっ!前も似たようなシチュで半殺しになっ――」

フレンダ「はーい、最大熱湯ショー開始って訳――よ!」

上条「だーーーーーーーーーーかーーーーーーーーーーーーらーーーーーーーーーーーーっ!」

――上条の自室

フレンダ「――ふっ、悪は滅びる訳よね」

上条「滅んだっつーか、今まさに俺の背中が大惨事なんですが……」

フレンダ「ていうかそんなに温度上げてない訳だし、ていうか一般家庭用のシャワーがそんな高温になる筈ない訳よ!」

上条「残念!俺んちは今最新家電に包まれてるんだな、これが!」

フレンダ「うっわ、自慢ムカツクー」

上条「まさかリミッター無しのアレな仕様になってるとは思いもしなかったがな!」

上条(……あれから誤解を解いて、どうにか許して貰ったんだが……背中はヒリヒリする)

上条(冷水のシャワーを浴びたが……まぁ、うん)

フレンダ「ていうかあんた、マジで盗撮する気だった訳?」

上条「いやー、だからそれば誤解だって」

フレンダ「どんな誤解って訳よ。まぁ百歩譲ってお風呂中なのは分からないとしても、なんであたしの写メ欲しかった訳?」

上条「そりゃお前、ご家族に安否をだな――」

フレンダ「身代金目的の誘拐っ!?」

上条「――じゃ、ないですねっ!ついこうフラっと!ほら、魔が差した的なカンジで!」

上条「可愛い子が居たから!俺の右手がつい勝手に!みたいな!」

フレンダ「まー、気持ちは分からない訳でもない訳だけどー」

上条「……ちっ、立場が立場だけに何も言い返せない……!」

上条「――まぁ冗談はさておくとしてだ」

フレンダ「うん?」

上条「お前、その危ねーヤツんちでくつろいでる訳だが、そこら辺の事情どうなんだよ?」

上条(拾った直後はブラック過ぎる背景がアレで突っ込めなかったが、今は少しでも話を聞き出すのが大切だな)

フレンダ「あー……」

上条「あ、いや別に出てけって訳じゃないし、何だったら居てくれても構わないんだけども……」

上条「どこでどうトラブってる奴を置くのもなんか気になるし、事情ぐらいは聞いときたいな、と」

フレンダ「そうねー……ま、相手が変質者だとしても、一宿一飯の恩がある訳よね」

上条「誤解が全く解けてないようで恐縮だが、それで?」

フレンダ「……いい?今からあたしが話す事は、絶対に他では言わない事。守れる訳?」

上条「……約束する」

フレンダ「……ん、それじゃ言うけど、あたし――」

フレンダ「――『タイムスリップしてた』訳よ……ッ!!!」

上条「……」

フレンダ「うんその、『何言ってんだコイツ?』的なリアクションになるのは分かってた訳よねっ!」

フレンダ「でも聞いてよ!あたし的には全っ然突拍子もない話じゃないんだから!」

上条「あー……タイムスリップなぁ」

上条(この子にしてみれば当然そう解釈するわなぁ)

上条(『誰かに殺されて、一年以上経ってから黄泉帰った』って思い付いたら、ある意味天才だが)

フレンダ「てかNARUT○が終ってた訳!ネ○兄さんも死んでるし!」

上条「テメェどっか行ったと思ってたら、コンビニで立ち読みしてやがったのかコノヤロー」

フレンダ「あ、でもHUNTER×HUNTE○は終ってなかった訳!むしろ一巻も進んでなくてホッとした訳よねっ!」

上条「あれもなぁ……てかマンガで確認すんなや。テレビか新聞で充分だろ」

フレンダ「……」

上条「どした?」

フレンダ「……オカルトって、信じる?」

上条「タイムスリップした時点で充分にオカルトだと思うが」

フレンダ「そうじゃない訳!そうじゃなくて、その……都市伝説、的なの」

上条「……なんか、あったのか?」

上条(自分が『死人』だって理解してきた、とか……?)

フレンダ「それがね――」

――回想 とある路地の一角

フレンダ『あ、あれ……?あたしどうしてXX学区にいる訳……?』

フレンダ『てかおなか……ついてる訳よね?なんで確認したんだろ……?』

フレンダ『ケータイ……は、ないしお金も無いか。何があった訳?』

フレンダ『多分あれじゃない?精神操作系の能力者とかち合って操作された訳』

フレンダ『んで身ぐるみ剥がれて――って服はちゃんと着てるけど――ほっぽり出された訳よね、うん』

フレンダ『――はっ!?まさか超ぷりちーなあたしの貞操が……ッ!?』

フレンダ『……今、『ぷりちー()』って空耳が聞こえた訳だけど、まぁ大丈夫な訳』

フレンダ『さってと。それじゃどこ行ったら……』

フレンダ『麦野んトコへ行って事情を……あれ?なんか寒気がする訳ね?風邪かな?』

フレンダ『あたしがこんな状況で麦野達が平気だって可能性も少ない、か。『暗部』として巻き込まれてるんだったらば、うんそうって訳』

フレンダ『んー?それじゃ……あぁお腹も空いたし秘密アジトへ行く訳よね』

フレンダ『武器が無いのはまぁ仕方が無い訳だけど、お金と』

フレンダ『念のため麦野達にもナイショで作っといたから、バレる可能性も低い訳だし』

――XX学区 ”元”アジト

フレンダ『……アジトが――無くなってる訳!?』

フレンダ『つーかコンビニ!?何でコンビニ風の建物に……ニホンダルマなんて趣味わっる!?』

女の子『おんやー?いらっしゃいませーお客様ー、そんなとこで見てないで中入ったらどーです』

フレンダ『え、あ、はい、うん?ありが、とう?』

フレンダ『てかちょっといい訳?いつの間にコンビニなんて建った訳よ?』

女の子『……いつでしょうねぇ。私はバイトの身なんでよくは存じませんが』

フレンダ『ま、まぁいい訳だけど――って店員さん、なんであたしに近寄ってきて、る……訳?』

女の子『お客さん――匂いをしてますよねぇ?花ですか、これは』 クンクン

フレンダ『……え?』

女の子『ていうか大分お憑れ――もとい、お疲れのご様子だとお見受けしますし』

女の子『どうです?中へ入ってお茶の一杯でも――』

フレンダ『イヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?』

フレンダ『バラされるーーーーーーーーーーーーっ!?中国の片田舎で見世物にされるーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?』

女の子『最近では”コンビニのトレイへ入った女子高生が出て来ない”バージョンへと派生してるようですよ?』

フレンダ『シュタッ!』

女の子『あ、ちょっとお客さーん――』

――上条のアパート 現在

フレンダ「――っていう怪奇現象が!」

上条「……」 グッ!

フレンダ「あ、あれ?どうしてあんたDOZEZAしてる訳よ?」

上条「……えっと……うん、気にしないで欲しいな。なんつーか、こう、あぁっと……まぁ、今なんか無性にDOZEZAしたい気分ってだけだから!」

上条(うん、全然理解してなかったな!)

フレンダ「そ、そう?まぁいいけど大変だった訳よ!ヤサにはお金や武器も仕舞って置いたのに!」

フレンダ「――ってあんたのDOZEZAがますます地を這うぐらいに小さくなってんだけど、ホントどうした訳?今頃になってやっちゃった感て訳?」

上条「一身上の都合でねっ!決して身内(バカ)の不始末に誤ってる訳じゃないからなっ勘違いしないでよねっ!」

フレンダ「なんで今更感が漂うツンデレになってる訳……?」

上条「……大変だったな、うん!お前は大変だったよっ!いやマジでねっ!」

フレンダ「信じてくれる、訳?」

上条「勿論さっ!つーかあのバカ――もとい、どっかの俺の知り合いなんかじゃない奴らに代って!いつまでもここに居たら良いし!」

フレンダ「でもすこーし貞操の危機を憶えるような」

上条「貞操の危機()」

フレンダ「えっと、アンチスキルの一番近い詰め所はっと」

上条「いやー俺彼女居ないから!こんなキレーでぷりちーなお嬢さんを泊めるのは緊張しちゃうんですよねっ!」

フレンダ「ていうか怖かった訳よー。何だったんだろ、アレ?心霊現象?」

フレンダ「次行った時、お店が跡形もなくなってそうで怖い訳よね」

上条「いやぁ……うん、まぁ本人達からすればギャグ、つかボケなんだろうが……」

フレンダ「てかガイジンがなんであたしの隠れ家に居た訳……?」

上条「お前も外人だな?なんか日本に長く住む外人は、みんなそういう感覚になるって言うけどもだ」

フレンダ「――あ、そうだ聞いてよ!あたしの不幸はそれだけじゃ終らなかった訳だし!」

フレンダ「隠れ家を追われたあたしは!誰かの家に転がり込もうとした訳よ!」

上条「お前、それものっそい危険だぞ。割と本気で注意すっけどさ」

フレンダ「……まぁ、道を歩いてたら、こんな事があった訳……」

――回想 とある学区の路地裏

フレンダ『あー……』

フレンダ(どうしよう……他のアジトも含めて全滅……っていうかなくなってるし)

フレンダ(こんな短期間に全部潰せるなんて……相当の力を持った組織に狙われる訳か……!)

フレンダ(ってコトは下手に麦野達に連絡したらヤバい訳だし、かといってホームレスになるのはイヤだし)

フレンダ(これはもう、適当な相手をとっ捕まえて転がる込むしかない訳かー。あー気が進まない訳だしー)

フレンダ(脂ぎったオッサンに誘拐されたら人生終る気がする訳。薄い本的な意味で。それだけは何としても避けたい訳よね)

フレンダ(……っと、それっぽいカモ発見っと――)

青髪ピアスの男『……』

フレンダ『あのー――』

青髪ピアスの男『……どっかに女の子落ちてへんかなぁ……』

フレンダ『』 ビクッ!?

青髪ピアスの男『あれやんな?こう、まずは道を歩いてたら「助けて下さい!追われてるんです!」は基本やね。王道っちゅーか』

青髪ピアスの男『もしくは家帰ったらベランダにシスターさんが落ちとるとか、裏路地でリアルロ×を拾ったりせぇへんかなー』

青髪ピアスの男『やっぱ出会い言うたらアレやん?人間第1印象が大切やんな』

青髪ピアスの男『危機を乗り越えて惹かれ合う男と女っ!古きよき時代のボーツミーツガールは守っとかんとアカンで!』

青髪ピアスの男『そりゃ空から女の子降ってきたら世界敵に回しても戦うわ!当たり前ですやん!』

青髪ピアスの男『……ま、今の流行りも――』

青髪ピアスの男『最近は異世界転生チートモンばかりで風情がないっちゅーか、嘆かわしい事やん?……でも流行りは流行りやけど』

青髪ピアスの男『やっぱ転生するんやったらアイン○さん的なのはイマイチやね。楽しいのは楽しいやろうけども、イビルア○はんprprできひんし』

青髪ピアスの男『ロリババ○……ロリバ○アになって賢者の弟子のフリするんは……アリ、やな……っ!』

青髪ピアスの男『TSプラスロ×を兼ねられる……これまさに天才としか言えへんよ!そうやね!』

青髪ピアスの男『……あ、でもあれWEB版の微エロ描写、文庫版ではバッサリ切られとぉな……あれは頂けんわー、ホンマに――って』

青髪ピアスの男『ねーねーそこのカノジョ!』

フレンダ『は、はい?』

青髪ピアスの男『もしかして前世でボクら恋人同士やなかったっけ?』

フレンダ『おまわりさんこの人です』

――上条のアパート 現在

フレンダ「って変質者に絡まれたトラウマで、あたしは不幸な路上生活を余儀なくされた、って訳よ」

フレンダ「本当に、ホンットーに最近は治安が悪い――って、あんたはどうして床に額を擦りつけんばかりに再DOZEZAしてる訳なの?」

上条「……いや……なんつーか、うん、ごめんなさい……ッ!」

フレンダ「ハダカを見られたとは言え、そこまで卑屈になるのはどうかと思う訳だけど」

フレンダ「……ま、あたしはそんなこんなで大っ変な思いをしてきた訳なのよ!」

上条「辛かったんだな……そんな、若い子がカブトムシの臭いをさせるまで頑張るだなんて!」

フレンダ「別に好きでそうした訳じゃないんだけど……」

上条「てかアジトそんなに大切だったのかよ。身動き取れなくなる程に」

フレンダ「あー……っと、どうしよっかな?あんたには話しても良いような気がする訳だけど?」

上条「信用出来ないんだったら、まぁ無理して話す必要はないぜ?……言ってて自分で凹むがなっ!」

フレンダ「覗きは、まぁ何かの事故っぽいのは分かったけど……んー……巻き込んだら悪い訳だし」

上条「お前の能力に関してか?」

フレンダ「そうよ。『兵器庫艦(バックヤードキャロット)』って能力な訳――」

フレンダ「……」

上条「うん?どした?」

フレンダ「――巧みな誘導尋問っ!?あんたその筋のプロって訳か!?」

上条「まずお前の言動を省みろ!つーかどこの世界にここまで失敗しまくる尋問官が居るんだよ!」

フレンダ「ま、そこら辺は信用してる訳。こんなとっぽいニーチャンが『暗部』とは思えないし」

上条「……もうそこまで言ったら、つか拾った時点で巻き込まれてんだからさ、話してくれよ」

上条「まさか聞いたら即死末されるようなヤバい能力じゃないんだろ?」

フレンダ「んー……まぁ知られても問題はない訳だけど……アポート、って聞いた事ある?」

上条「あぽーと?」

フレンダ「超能力――世に知られている一般的な超能力としては、サイコキネシスやテレポートと並んで有名って訳」

フレンダ「なんかこう、遠く離れた場所から物を取り寄せたりする能力なんだけど、見た事ない訳?」

上条「あっ、あー!テレビでよくやってるの!」

フレンダ「そのっホンモノって訳!つーかインチキやマジックと一緒にしないでお願いっ!」

上条「アポート、アポートなぁ……」

フレンダ「なにその微妙な反応は?」

上条「いやー凄いは凄いけどさ?俺みたいなレベル0からすれば」

フレンダ「ふふんっ、どーよって訳!」

上条「でもそれ手品でよくある、『握った手の中にコインが現れました!』みたいに、トリックで代用可能じゃね?」

フレンダ「だからマジックと一緒にしないで!あっちはタネと仕掛けがある訳だから!」

上条「具体的にはどう?」

フレンダ「それは……こう、事前に武器を用意しておく訳!例えばハンドグレネードとか、そーゆーのを!」

上条「持ち運び出来ないような武器――つーか兵器だったら、便利、かな?」

上条「遠くのモンを自由にお取り寄せ出来るんだったらば、盗みなんかも楽勝だろうし」

上条「使いようによっては物流革命も不可能ではない、と」

フレンダ「……」

上条「ど、どした?何で急にテンション下がってんだよ?」

フレンダ「……それがさーあ?あたしはこの能力持ってたから、学園都市にスカウトされた訳なのよね」

フレンダ「ま、身内も一緒に。だから良かったっちゃ良かった訳、そこまではね」

上条「能力を――以前から使えた?」

フレンダ「あーうん。たまにそーゆー能力者も居るらしい訳ね。つーかあたしそうだし」

上条「……へー」

上条(バードウェイから前に聞いてたな。確か――)

上条(――『原石』、だっけ?天然の能力者であり、力を持つ者)

上条(既存の魔術師の成り立ちは、才能の無い者が彼らの力を欲し、魔術でその差を埋めようとした、とかなんとか)

フレンダ「ただいざ実際に来てみれば、『実用的じゃねぇな、次』つってさっさと『暗部』にポイ!ってどーゆーコトな訳よ!?」

フレンダ「確かに!予め決めた座標軸だけとか!アポート出来る武器も近接系”ほぼ”オンリーってイマイチだけど!」

フレンダ「何もそーゆー言い方しなくっていい訳よっあのヤクザ研究者!ねぇ!?思う訳よねっ!?ねっ!?」

上条「まぁしょうがないんじゃ?強い能力程、なんてったっけ?リミッター?みたいなのがついてて、使いづらいって話聞いた事あるし」

上条(その割には一方通行や垣根、ビリビリにあるって話は聞かないが。弱点がないからこそ『レベル5』なんだろうけどさ)

フレンダ「あんた……っ!意外とイイヤツだって訳よね!」

上条「信頼度がだだ下がり状態で今更媚びるつもりはねぇが、その言い方も、なんかな……」

フレンダ「ま、そんな訳であたしの能力の座標軸は、あそこの謎コンビニに固定されてて、移動できない訳」

上条「移動させれば――って、無理か。する意味ないもんな」

フレンダ「武器は……まぁ換金できないから要らない訳だけど、せめて!せめてコツコツ貯めたお金だけは……!」

上条「……あぁうん。多分拾いパクしてるテロリスト共に、返すよう言っとくわ……」

フレンダ「テロリスト?」

上条「もしかしたらっ!ホラッ!親切な人が拾っててくれたかも!」

フレンダ「あんたバカな訳?もっと現実を見なさいよ」

上条「フォローしてる筈がヒドイ言われようだなっ!」

フレンダ「――んーで!最初のタイムスリップの話へ戻る訳だけど!」

上条「あれ?その話は終ったんじゃ?」

フレンダ「終ってない訳!てゆうか今までのが前フリだし!」

フレンダ「あたしの『能力』は物だけだけど、空間移動させる力な訳よ。分かる?」

上条「まぁ、はい」

フレンダ「だ、けども!何をどうしたのか分からない訳だけど!能力が暴走したか成長したのかわっかんない訳だけど!」

上条「……」

フレンダ「だ・け・どっ!」

上条「あ、はい。それで?」

フレンダ「きっと『能力』のせいであたしはタイムスリップしてしまった訳よ……ッ!!!」

上条「ちげーよ!」

フレンダ「はい?」

上条「じゃなかった!見事な推理ですねヌレンダさんっ!流石は脚線美っ!」

フレンダ「フレンダね?もしくはセイヴェルンね?あと脚線美関係ないし」

上条「ですよねっ!」

上条(あー……成程成程。そういう解釈すんのが普通かー……っと待てよ?)

上条「あのー、それじゃ今は能力の方は……?」

フレンダ「タイムスリップした直後に一辺使った訳だけど、なーんか調子悪くて止めちっゃた訳、かな?」

フレンダ「後は暴走って可能性も否定出来ないから、自粛してる訳ね」

上条「……ふむ」

上条(まぁ……いいのかな?猟奇コンビニに置いてある謎商品取り寄せても、混乱するだけだろうし)

上条(話を聞くに、自分で置いた物、もしくは認識した物でないと無理っぽい)

上条(ただ――白井さんと同じレベル4だってのは、少ーし過剰評価過ぎる気がする。なんか隠された力でもあるとか?)

上条「まぁそっちの事情は分かったよ。そういう事だったらば、まぁ暫くは居たらいいんじゃないかな」

上条「カノジョ持ちって訳でもないし。あ、ただ俺は学校行くから、あんま相手してらんないけどな」

フレンダ「学校……そか。今日も平日だった訳か」

上条「ていうかもう寝ようぜ?放課後拉致されてからずっと動きっぱなしで疲れた……」

フレンダ「そうよね、寝ようって訳……よ?」

上条「どったの?」

フレンダ「ベッド一つしか――ハッ!?」

上条「なんとなくお前のそのリアクションでお腹いっぱいだが、言うだけ言ってみ?」

フレンダ「『あ、ベッド一つしかないや。それじゃ仕方がないから一緒に寝ようか?』みたいな展開狙うって訳か!?薄い本みたいに!」

上条「発想が安易すぎるわっ!その流れで『じゃ、一緒に……!』ってなんのはエロいゲームぐらいしかねぇよ!ある意味男の夢ではあるが!」

フレンダ「ほー、あたしに魅力がないとでも?」

上条「魅力()」

フレンダ「てかあんた最初っから何よその態度は!初対面だって訳なのになんか人を小鷹にして!」

上条「あ、その小説も終ったわ」

フレンダ「マジでっ!?アニ○ルートで終った訳っ!?」

上条「そこの棚にあるから読んでいいよ」

フレンダ「あ、ホントだ」

上条「それじゃ俺は先に寝てるから、おやすみー」

フレンダ「うん、んじゃお休みって訳ー」

上条「……」

フレンダ「……」 パラッ

上条「……ぐー……」

フレンダ「……………………あれ?」

フレンダ「なんかこう、イベント一つ不発だった気が……?」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

誰得の不連打(誤変換)編はもう少しだけ続きます

「ZE」は「ゼ」だよね?もしかして「ゲ」とも読むのかな?教えてエロい人

「新たなる光」がでなくてサビシイ…サビシイ…
頑張ってください

>上条「あぁいや『下も金なんだな』って。他意は無いよ?」

うん他意は無いよね。
本意だよね。
僕たちの総意だよね。
ケータイってへし折ったくらいじゃメモリ消えないよね。消えても復活できるよね。

……三万から出す。

食蜂って名字は西尾先生の作品に出てきそう。いつか胸がぱんぱかぱーん!することを期待しています。

やっぱりフレンダの能力はアポート系って設定になるよなあ。
でも「原石」なんだったら、大事に育てていけばけっこうな戦力にならないか?
座標軸適時設定とか移送質量増大とか出来るようになれば。
使いようによっては白井の能力よりすごいんじゃ?
どんだけ我慢弱いんだよ研究者。



青髪のことだから死人も余裕で守備範囲なんだろうなー

異世界モノが増えたのは人気作を欲しがった出版社があそこで宝探ししてるからだろうな

上条さん最新刊でパトリシアにも手を出すのか? やっぱロリコンなんすね

>>313>>316
ありがとうございます

>>314
初春さんがどうこう以前に、そんなナメた格好で大会出て来て新記録叩き出すジャマイカンが凄いだけです
(そもそもまともな神経していたら、コンマ0秒を競うアスリートがあんな空気抵抗の多いモンつけないです)
一度は否定しましたが、本当に一部では流行ってるっぽいですよ、花輪型ヘアバンド……まぁ初春さんの影響か、といえば違うんでしょうけど

>>315
魔術――というか神話や伝承にありがちな話なんですが、大抵そういうのは「最も愛した者」でないと効果がないパターンが多いですね
怪談の一つに「結核治療にウミガメ(※意訳)の肉がよく効く」というものがありまして、墓地へ行ったら出くわして逃げ出す話があります
(太平洋戦争中に疎開した児童達が聞いたという記録が残っています。正直眉唾ですが。
ここら辺は所謂”名前は知っているが誰も体験した事がない”のであり、杉沢村伝説や人面犬のような扱いですね)

しかしフロイラインさんはどうして捕食する事で”少女”になったのか……?
生物学的に同族食いはしばしば起きますが、カマキリ・ゴゲグモの母親が子供を産むためにオスを、という話はあります
また名前は忘れましたが、生まれた子供に自身の体を差し出すクモもおり、ある意味究極の母性愛と言えなくもないかも知れません

と、すれば彼女が捕食するのは「何か」を産む目的があり、それを代用品で済ませてしまったが故に、女性から少女へと転じたのかも……
そもそもフロイラインさんは人類というカテゴリに収まるのかどうか検証が待たれる所です

――よし!ここは一つ上条さんに検証して貰おう!まず子供をつk(※以下自粛)

――翌朝 自宅

チュンチュン、チュンチュンチュン……

上条「……」

上条(スズメが鳴いてる……まぁよくあるマンガ的表現だが、古式ゆかしいのは嫌いじゃない)

上条(学園都市にスズメいねーだろ的な事も言ってはいけないし、前似たような事を言ってなかったっけ?も禁句だな)

上条(こう、あくまでも男女表現のアレな事が終りましたよー、察して下さいねー、的な意味もあるし!ていうか少女漫画では特にねっ!)

上条(だが残念!一人暮らしの俺には生憎浮いた話なんかこれっぽっちないのさ!なんか最近モテ期……?いやいやそうじゃないけど!)

上条(だからですね、朝チュン的な表現があったとしても、それはこう別にこれと言った深い意味は――)

フレンダ「……くー……すぅ」

上条「」

上条(……よし落ち着こう俺!まず何があったor何が起きたのかを整理しよう!)

上条(こういう時に騒いだらロクな事ぁねぇからなっ!過去の体験から言っても取り敢えずは落ち着こう!)

上条(どう見ても10代前半のロ×好きなおっさんには(※悪い意味で)たまらない女の子と一緒にベッドへ入っていたとしてもだ!)

上条「えっと……」 ペタペタ

フレンダ「……………………ゃ……て訳」

上条「……」

上条(Bカップだな。Aに限りなく近いけど) モミモミ

上条(形はやや小ぶりながら適度な弾力があり、まだまだ将来の期待が持てそうなぐらい、それ相応のむにゅむにゅ感が) モミモミ

上条(むしろこれはこれで、思春期特有の今しか維持できない、あまりにも繊細でなだらかな曲線が控えめな自己主張を遂げている) モミモミ

上条(今はまだワイヤーこそ入ってないインナーに、優しく包まれ保護されているものの、いずれ咲くであろう大輪の花を思わせ――) モミモミ

フレンダ パチッ

上条「」 モミモミ

フレンダ「………………なに、やってる訳……?」

上条「違うんだ!これは――ほら!敵の魔術師の攻撃なんだ……ッ!?」 モミモミ

フレンダ「スネイ○先生だって、就寝中の女の子のおっぱい揉ませたりはしない訳だけど」

上条「ですよねー」 モミモミ

フレンダ「ていうか手ぇ話す訳だしっ!ちょっと気持ちいいから!」

上条「具体的にどこが?」(ゲス顔)

フレンダ「う、うん、中からジンジンして、女の子の大事な――じゃないって訳よ!悪びれもせずにセクハラで畳みかけるって中々やるって訳だし!」

フレンダ「つーかあんた昨日とキャラ違くない!?そんなキャラだったっけ!?」

上条「おっかしいな……?俺も違和感があるような……?」

フレンダ「つーか人が気持ち良く寝てたと思ってたら、朝起きたらおっぱい揉まれて気持ち良く起きるなんてどんな訳よっ!?」

上条「えっと、その……あれだよ!」

フレンダ「何よ?」

上条「この世界にはさ、色々な職業があると思うんだよ。アイドルみたいな芸能人や、弁護士や公務員みたいなお堅い仕事もある」

上条「最近の女の子には永久就職に憧れる――てか、家庭へ入るって願望も強いみたいだし、それはそれで構わないとも思う」

上条「何故ならばお母さんってのも立派な仕事だからだ。最近だと社会進出してる女性が主婦を見下すー、みたいなのはあるけど、それは間違いだと思う」

フレンダ「うん?」

上条「……でも中には、つーか大半がそうだと思うけど、普通は望んだ職に就けるとは限らない」

上条「子供の頃に夢見た職になる……どこかで現実と妥協して、収まりのいい所を選ぶだろう――だが!俺は思うんだよ!」

上条「夢を捨てちゃいけない!絶対に叶うなんて有り得ないし!殆どが無理だって分かる!そんな事は当たり前だろう!」

上条「でも!だからっつって最初から諦めるのが正しいのかよ!?『あの葡萄は酸っぱくてマズい』って食べようとしてもしないで投げ出すな!」

上条「それが困難な夢だからこそ!俺達は少しずつ!這いつくばってでも前に進んでいかなきゃいけないんだろ!?なあっ」

フレンダ「んで?その壮大な話とあたしのおっぱいフニフニしてた件とどう繋がる訳?」

上条「実は俺さ」

フレンダ「うんうん」

上条「将来おっぱいソムリエを目指しててだな、その予行演習を」

フレンダ「歯ぁ食いしばる訳よ」 ニッコリ

上条「……あい」

パシァーーーーーーーーーーーーーーーーンッ

――学校 朝

上条「おはよー」

土御門「おぅ、おっはー――ってカミやん!」

上条「ん、なに?俺の顔になんかついてるか?」

土御門「デッカイ紅葉が左頬に、つーか誰にぶん殴られたん?」

上条「昨今の夢のない世代の話をしてたら、こう、いきなり」

土御門「ラッキースケベで殴られるのは、もう固有特性としか言い様はないし、そもそもいつもの事だ」

上条「おかしいな……?完璧に言いくるめたと思ったんだが……」

土御門「……あれでどうにか誤魔化せると本気で思うのであれば、貴様の頭がバグっている証拠だろうさ」

上条「ん?何か言ったか?」

土御門「いんや別にぃ?なんも言ってないぜぃ?」

上条「……」

土御門「どした?」

上条「ドドえもーーーーーーーーーーーーーんっ!!!」 ギュッ

土御門「あ、こら抱きつくな莫迦者がっ!」

土御門「というか”つちみかど”の土と”みかど”の”ど”を取ってドドえもんは分かりづらいだろうが!」

上条「……土御門……?」

土御門「な、なんだにゃー?」

上条「――問題、中学生と妹、どっちが好き?」

土御門「……知らない相手よりも肉親を選ぶ――だろ?」

上条「……ふー良かった。本物の土御門だった。てっきりまた海原かと」

土御門「……あぁそうか。良かったな」

上条「ていうか土御門さん、ずっと失踪中じゃなかったっけか?何か随分久しぶりな気がするんだけど」

土御門「あぁそりゃカミやんの方じゃないかにゃー?EUくんだりまで出張したりして、たまたまスケジュールが合わなかっただけだぜぃ」

上条「そう、だっけ……か」

土御門「そうだにゅ」

上条「語尾語尾。キャラ設定は守ろうぜ」

土御門「んで、またどんなトラブルに首突っ込んでるんだ?朝一で俺にすがりつくぐらいに」

上条「それが――あぁいや俺じゃないよ?俺の友達の友達がね、ちょっとトラブルにあったらしくてさ」

土御門「”友達の友達”……その時点で都市伝説の条件を満たしてるが、その友達がなんだって?」

上条「実は――と、教室で話すのは、ちょっとマズいっていうか」

土御門「誰も聞いてないぜぃ。というか”こっち”の話してたってゲームかマンガだと思う筈にゃー」

土御門「吹寄や姫神辺りが突っ込んでくるんだったら、それはもう最初っから巻き込まれる運命だぜぃ」

上条「土御門が言うんだったら――で、友達の話なんだが」

土御門「一親等近くなってるぞ」

上条「友達の友達の話なんだがっ!……そのさ、『死人』をうまーく生き返らせる方法は、ない、かな?」

上条「せめて普通の人レベルに落ち着く、みたいな感じに」

土御門「ないな」

上条「即答っ!?」

土御門「『死人』――死んだ人間を”そのまま”甦らせるのは不可能に近い」

土御門「あったとしてもそれはもう人の業ではなく、魔神や神話に謳われる魔女の域にまで達している話だぜぃ」

上条「……オーディン、だったよな?優れた戦士へヴァルキリーを遣わせて、自分の宮殿へ集めるって」

土御門「そりゃ死んだ”後”の話であって、その戦士達が筐体(からだ)を得るのは神々の黄昏の時だけだにゃー」

上条「無理なのかな?」

土御門「北欧神話のような死後の救済案が整ってる世界観であっても、エインヘリャルとして迎え入れられるのは極々一部の梟雄に過ぎないぜぃ」

土御門「その他大勢はヘルヘイムで呪われた死者となり、ラグナロクの日には『ナグルファル(死者の爪船)』に乗ってアスガルドへ攻め入る」

土御門「それまではずっと死人は死人のままだ。それも『異界』でな」

上条(ナグルファル……ランシスの『爪』の霊装と同じ名前だな)

土御門「あの影は病疫神と相性がすこぶる良い。忌々しい程に」

上条「ふーん……ん?今俺口に出して」

土御門「――ま、魔神クラスの魔術が扱えるんだったらともかく、たかが人の身でどうこう出来るモンじゃないぜぃ」

土御門「『死者を生者として蘇らせる事』”は”だが」

上条「……いや、それが出来ないから――」

土御門「そうじゃない、そうではないんだにゃー。発想の展開だ、と言った方がいいのかも知れないが」

土御門「カミやんは何とかしたい訳だろ、その『死人』を」

上条「友達の友達だけどさ」

上条(浜面の仲間なら、文字通りにそういう関係性になるが)

土御門「正攻法は叶わない。不可能じゃないが限りなく無理だ……と言うのであれば」

上条「……あれば?」

土御門「だったら正攻法を避ければいい。何も真っ正面から付き合ってやる必要性すらない」

土御門「ヴァルハラでは魔神が一柱、”隻眼隻影”のオティヌスが死人を招いて軍団を造る」

土御門「同じくここの秀真(ほつま)でも、とある地母神は死人を率いて黄泉戦(よもついくさ)――『死人』の軍隊を造り上げた訳だにゃー」

上条「だから、『死人』じゃ宜しくないって話じゃねぇのか」

土御門「だったら『死人”以外”』にすればいいだろう?」

上条「……………………はぁ?」

土御門「何も魂が――記憶を持っているのであれば、死者に拘る必要は無いさ。精霊にでも妖精にでも仕立て上げればいい」

土御門「そうすれば『死者』の持つリスクの大半は無効化されるだろうよ」

上条「あー……どういう事?」

土御門「『死者』が死者足りうるのは、そのメリット――生者の”延長”であるのを差し引いても、各種病魔のリスクを抱える」

土御門「それは例え神であろうと――それこそ、オティヌスのような生死を司るものでなければ、制御は出来ない。また住み分けるのすら困難だ」

土御門「だったらイカサマすればいいんだよ。何も『死者』だけが魂の残滓とは限らない」

上条「えっと……ごめん。全然分からない」

土御門「だからお前の――友達の友達が抱える問題点は全てが全て『死者』である一点に起因する」

土御門「ならば対象を『死者でない何か』へ造り替えてしまえば話は簡単だ……にゃー」

上条「出来るのかよっ!?そんな事が!」

土御門「やって見せただろう。魔神オティヌスが妖精へと変わっ”た”ように」

土御門「多少は存在が揺らぐかも知れないが、このまま中途半端なまま喜劇を迎えるよりはマシだぜぃ」

上条「でも魂……魂って言ったよな?」

土御門「あぁ。魂の容器を変えればいいと」

上条「けど、その、魂ってのは無いんじゃなかったのか?こう、全部は龍脈に流れている記憶がどうこうしているんであって――」

土御門「莫迦か。それこそがデウス・エクス・マスナではないか」

上条「機械仕掛けの神、だったよな?確かご都合主義って意味の」

土御門「確かに龍脈には全ての存在の記憶と力が流れ、それを自由に操れるかどうかかせ魔術の深淵だという説がある。それは否定はせんよ」

土御門「だがそれはあくまでも『未知の自称に適当な名称をつけ解釈している”だけ”』に過ぎない」

土御門「例えば龍脈じゃなくともオレゴンエネルギー、宇宙からの謎パワーだって良い」

土御門「『万能の謎パワーがあってそれで全てを説明出来る』のは、ただのジョークだよ」

土御門「機械仕掛けの神々が最後に全てを救ってくれるのに対し、そう思い込めばそうなっているだけだ」

上条「魔神は?俺達が戦ったセレーネやその眷属達は?」

土御門「……この世界に於て、この世界”軸”に於いては、それがたまたま真実だったのだろうさ」

土御門「他のどこかで同じ事が通用するとは限らない」

上条「……なぁ土御門」

土御門「残念だがこれ以上は力になれない、というか出来ないが正しいのか」

土御門「こい――ウチの本系筋、高野山には反魂の法が伝わってるらしいが、それはどうにも不十分なシロモノだった訳で」

土御門「実践した西行法師が造り上げたモノには魂は宿らず、未だ吉野の山中を彷徨ってるらしいぜぃ」

上条「そっか……あぁでも少しだけ見えてきた、かな。なんとかなるかも」

上条「……本当にありがとうドドえもん!困った時には頼りなるよなっ!」

土御門「いい。貸し一つにしておく……いや、借り、か?……だが忘れるな」

土御門「秀真において常世と現世の境は酷く曖昧で厄介なモノだ。故に親和性が高く、容易に現実を侵食しかね――」

土御門「この街にはまだ魔力が残っている。あの人類が好きな――の、嘘が本当――――厄介――――」

上条「土御門……?」

土御門「アルビオンより運ばれた――器――――――――――――――――――」

土御門「――――――――――――――断罪――――――――――――――――」

土御門「―――――――――――――――――――――――オールバンズの血統」

上条「おいどう――」

ジジッ、ザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ………………

――教室 朝

上条「――した……?」

青ピ「それでボクは言うてやったんよ!こう、喉が枯れんばかりの勢いで!」

上条「……あれ?」

青ピ「あ、ゴメン。喉が枯れるのは言いすぎやったわ。枯れるんやのぉて、ちょいガラガラする程度やったわー」

上条「ん、あぁいやそういう事じゃねぇんだが……今、土御門居なかった?てか話してなかったか?」

青ピ「あんのボクらに一言も相談なしに歩き回っとぉボケが登校してるん?」

上条「あー、何だろうな……まぁいいか」

上条(今はフレンダの話を聞こう――てか、確かこいつとも遭遇してんだよな。人間不信になるぐらいのトラウマ与えて)

上条(ある意味、警戒心を高めさせて薄い本的な展開になるのを防いでんだから、まぁ良かった……かも?前向きに考えれば、うん)

上条「あーそれより訊きたい事があったんだよ。今から一週間ぐらい前にナンパしなかったか?」

青ピ「一週間ぐらい前……うーむ、憶えとらんわー」

上条「いやいや!忘れないだろ、普通!」

青ピ「なぁカミやん、つーかカミやんさんよっ!」

上条「何だよ」

青ピ「カミやんは今までに食べたパンツの数を憶えてるんかいな……ッ!!!」

上条「ゼロ枚ですね。大抵の人はゼロ枚ですよ?」

青ピ「ボクは――」

上条「いいっ!それ以上言うなっ!台詞噛んで変な事態になったのは理解出来るけども!これ以上話を広げても誰も得をしないからなっ!」

青ピ「ナンパ……なぁ。急に言われても、ボクいつもいつもしてますし。つーかアレ?カミやんの知り合いがボクにナンパされて腹立ったー、みたいな話?」

青ピ「やったらボクちゃうよ。そないに強引なナンパしとっても、女の子引くだけで成功する訳ないし、非効率的やわ」

上条「違う違う。そこら辺を疑ってるつもりもなくてだ。知り合いは知り合いなんだが……あー、怒ったとかそう言うんでもないんだよ」

上条「その、変な臭い――もとい、変な感じとかしなかったか?」

青ピ「エラいまたフワッフワとした聞き方やね」

上条「ちなみに外見は金髪の外人で、大体中学生ぐらいの子だ」

青ピ「の、女の子?」

上条「あぁそうだよ女の子――ってお前イマなんて聞き返したっ!?すっげー危険な内容だった気がするぞ!」

上条「ペンで差別煽るバカどもがまた俺達のせいにしたがってんだから!自制する所は自制しとけ、な?」

青ピ「やー、でも今時の学園都市でパツキンの子ぉて結構居ますやん?ガイジンさん含めても」

上条「居るなぁ。知り合いにも何人か居るし」

青ピ「殆ど挨拶代わりにナンパしとるけども、そんなに変わった子ぉや切羽詰まった感じの子ぉはおらん……かった、筈やね」

青ピ「もし少しでもおかしなカンジやったら憶えとぉ筈やし、なん危険やと思ぉたらその場で首突っ込もぉわ」

上条「だなぁ……うーん」

青ピ「なになに?なんや困り事やったらボクも手ぇ貸すよ?」

上条「お前、知り合いに死霊術士とか居なかったっけ?」

青ピ「ネク、ロ……?なんて?」

上条「いや冗談。思い出してたら教えてくれるだけで充分だよ、ありがとな」

キーンコーンカーンコーン

小萌「――はーい、チャイムは鳴ったのですよー、席について下さいねー」 ガラガラ

青ピ「あぁ小萌センセ今日もキュートやわ……!」

上条「ほれ、吹寄にドツかれる前に座っとけ」

――学校 授業中

上条(青ピからは全然聞き出せなかった訳だが……さて)

上条(幾つか情報は集まった訳で、今のウチに整理をしよう) カキカキ

上条「……」

上条(授業中に授業サボって小説や絵ぇ描いたりするのって、どうして集中出来るんだろうか……?まぁいい)

上条(えっとまず……『死人は危険だ』って事が大前提。科学的な意味ではパンデミック、魔術的な意味では”I Really Like You!”と)

上条(とはいえ、必ずしもその『危険な死者』として甦る訳じゃない……特にギリシャ神話の場合、綺麗な死者として共存出来るかもしれない)

上条(事件のトリガーとなったのは”エンデュミオンの恋人”……魔神セレーネの『常世』の術式の影響か)

上条(この夜とあの世の境が曖昧になり、死者が墓から這い出て生者と共に生き続ける……それは、幸せなのかも知れないが)

上条(実際に俺は”こっち側”へ来たフレンダと遭遇してるしな)

上条(んでもってフレンダの場合……もう既に死んでる人間だってのは確定)

上条(ただ、その、『危険な死者』かどうかは分からない……俺的にはそうでなくて欲しいが)

上条(少なくとも……あん時に数日ぐらい前から境界線は綻び始めてたらしいが、その際に人が襲われた事件は起きてない)

上条(そんな事がありゃ今頃ニュースでやってるだろうし、アングラに近い都市伝説界隈のサイトがお祭り騒ぎになってる筈だからだ……不謹慎だけどな)

上条(まぁ”どこかの誰かが完璧に情報封鎖している”可能性もあるが……そんな『ぼくらをしはいしているやみのせいりょく』の可能性を考慮してたらキリがない)

上条(風紀委員の初春さんと白井も忙しそうじゃなかったし、佐天さんも暇そうにしてたんで、そんな大事件は起きてない――事から)

上条(フレンダは人を害するような、悪い『死人』ではない。俺はそう思う)

上条「……」

上条(……下手したら俺が第一の被害者になってた可能性もあるが、まぁ賭けに勝ったって事で……ありゃ?)

上条(そういや朝ペタペタ触ったが、あん時に『右手』使ってた、よな……?)

上条(つーことは生身――な、筈はないから、あの姿がフレンダにとって”自然”なのか?)

上条(……最近『幻想殺し』の能力もなんかこう、曖昧になって来たような……まぁいいか)

上条(ともあれ”海原から聞いた”ように『死者以外の形態へ変換させる』事で、死人のデメリットはなくせると)

上条(取り敢えずすんのはフレンダの経過観察、平行してなんかこうスッゴイ死霊術士?だかを探すと)

上条(イギリス組に見つからないようにすんのは一苦労かも知れないが、まぁまぁ、フレンダも勘違いしてる分だけ慎重になるだろうから、うん)

上条(少しずつだが情報も集まって来たし、先も見えてきた。これなら何とかなりそうだ!)

上条「……」

上条(情報、そう情報って言えば――佐天さんにここ最近の都市伝説調べて貰ってんだよなー)

上条(喜んで大量のメールが来てそうな感じだが、昨日の夜から何のレスもない――)

上条(――じゃねぇな!最新式のスマフォ折られたんだったよ!昨日の夜にねっ!)

上条(SIMカード抜いてきたから帰りにどっかで契約しねーと……はぁ。短かったよ、俺の最新家電生活……!)

上条(……待てよ?然るべき筋へ頼んだら内蔵メモリの復旧も可、か……?あとで調べとこう……そう!ご家族のためにも!)

上条(決して!やましい気持ちはこれっぽっちも無いさ!)

――放課後 携帯電話ショップ前

ウィーンッ

店員「ありがとうございましたー、またのご来店をお待ちしておりまーす」

上条「……」

上条(以前の機種に戻しておいた。まぁ使えればそれでいいしっと……さて) ピッ

上条(メールは転送されて――る、な。自動的にストレージへバックアップされる設定にしといてホントに助かった……!)

上条(新着はアリサとレッサーだけでー、佐天さんからは特に来ては……ないか。少し期待してたんだけど)

上条(アリサからのはなんだろ?時間的には日付変わるちょい前)



――Title お疲れ様です From【鳴護アリサ】To自分

お疲れ様です。なんか大変そうだけどガンバってね?あたしもお手伝い出来そうな事があったら、頼ってくれると嬉しいかも
あ、あと今度出すジャケ出来ました。感想よろしくねー、じゃあオヤスミナサイ……

上条(なんだろうな、こう癒やされるっていうか)

上条(俺にも心配してくれる人が居るんだ、と思うと嬉しいよなぁやっぱり)

上条(ジャケ?なんだろ、写真集かな?ARISAの……ふーん?写真集ねぇ……出すんだ?)

上条(いや別に興味ないよ?アリサはアイドルっていうよりも友達だからね、うんっ)

上条(でもホラ!礼儀ってあるじゃないかな、こう親しき仲にもー、みたいなの)

上条(だからこう興味はない、あんまりないんだけども、こう――)

上条(――速攻で添付画像を開封する……ッ!!!) ピッ

上条「……あれ?」 ピッ、カチカチッ

上条(開かないな?どーゆーワケ――)

携帯電話の画面【※画像データは破損しています。転送元のスピンドルをアクセス可能な状態にしてください】

上条「嘘ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

通行人 ビクッ!?

上条「マジかよ!?なんで大事な時に限って消えてやがるんだよ!」

上条「かでなれお○と坂ノ上朝○と河中麻○と杉原杏○と次原か○と鷹羽○と結城舞○と小瀬田麻○のいいとこ取りしてるたゆんたゆんが……ッ!!!」

上条「……なぁ、知ってるか?」

通行人「……」

上条「本当に――そうっ、本当の巨乳ってヤツは――」

上条「タオルが”乗る”んだよ!抵抗があってタオルさんが下に落ちないんだ……っ!」

上条「こうなったらビリビリに土下座して壊れたケータイからサルベージして貰うしか……!」

上条「……」

上条(……ダメだ!怒りのままに襲われる未来図しか……って)

上条(……なんだろ。俺のテンションおかしくねぇかな?深刻な事件だってのにギャグばっかだしさ)

上条(そもそも女の子に『きゃーえっちー、パチーン』的な展開って、日常生活でそうそうないような……?)

上条「……」

上条(あ、うんいつも通りだった。良かったー、気のせいで良かったー)

上条「……次、レッサーさんからのメールはっと。もしかして何か進展あったかも」 カチッ



――Title 『新たなる光』は力強い人材を募集しています! From【レッサー】To自分

うだつの上がらない日々をなんとなく生きてるアナタに朗報です!
私達はストレングスな仕事とベストパートナーをお約束する会社です!
信頼度は全英でナンバーワン!実際信頼出来ます!
今ならば各種死亡保険は完備します!残されたご遺族にも笑顔でハッピー!実際ハッピーです!

たった一度の選択肢で灰色の人生は明るくマゼンダなライフを保証するでしょう!
『新たなる光』はあなたの入会を求めています!

上条「スパムじゃねーか!しかも日本語が胡散臭くて『これ誰が引っかかるんだろう?』って時々見かける類の!」

上条「そりゃ確かに『新たなる光』に入れば良くも悪くも人生変わるだろうさ!旅の間で思い知ったけども、マゼンダっつーか血みどろに決まってんだろ!」

上条(……寝る前に見なくて良かった……こんなメール読んだら突っ込みたくて仕方がな――ん?大量の改行の後に、まだ文章が……?)



































P.S.――あなたを下さいな、ってお話。まだお返事貰ってませんよね?

上条「……」

上条(……卑怯だと思うよ、レッサーのこーゆーとこ)

上条(普通に『あ、可愛いな』って思わねぇワケねぇだろうがよ、ったく)

上条「……はぁ」

上条(ま、そっちの話もきちんと考えないとなぁ。このまま全員で、なんつーフザケた話はないんだし――ありゃ?) ピキーン

上条(佐天さんからのメールが届いた、何々……タイトルは無題で、中にもアドレスが一個入ってるだけ)

上条(URLに”stream”入ってるっつー事は何かのLIVE放送かな?)

上条(何かの手がかりになるかも知れないし、一応) ピッ

佐天『ちゃん・らーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!』

上条「」

佐天『全国1千万人の初春愛してるぜーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!いや言わせんなよマジで!』

佐天『そんなこんなでやって来ました三年目!時系列がおかしいようだけど気にスンナ!多分脚本が間違ってるだけだから!』

佐天『今年も来ましたっ!”学園都市七大不思議探訪出張版”!かかってこいや都市伝説!かかってこぉい!』

鳴護『あの、涙子ちゃん?そのテンションでオカルト番組のMCやるのは間違ってるし、タイトルコール――』

佐天『え?時間が無い?マジですかっ!?』

佐天『それはファミ○の新商品、ヨーロビアンポテ○にヨーロッパ要素皆無なのとどっちが大切ですかね?』

鳴護『――はいっ!私達は”いつも皆さんに寄り添う関係、TATARAグループ”の、提供でお送りしますねっ!んねっ!』

佐天『チャンネルはそのままで!今日はスッゴイトコ行くぞーーーーーーーっ!』

上条「……………………えっと」

上条「生放送、なんだよな……?」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

下乳魔神さんの陽性化が完了している……?
上やんの性癖も素に、いやおかしくなってるし、単純なアフターストーリーじゃないってことか。

乙ですじゃ!

おっぱいソムリエ目指すなら、スタンダードも無視してはいかんよ。
具体的には姫神とかフロリスとか、あとオティちゃんもそうか。それから……
禁書キャラって、あんまり中庸がいませんな。

>>334
ごめんなさい思いっきり誤字です。以前にも間違えたので今度は間違えないと注意した結果また間違えました
今日はホントのちょっと出ます。ちょっとだけですが

>>335
あと何年かでコミックス版で暗部闘争編があるんで、その時にフレンダの恥ずかしい所(※内蔵)が見られるかも知れません
……が、しかし姫神さんのエピソードすっぱり切った前例があるため、実現するかどうかは謎ですが
そうだ!それじゃ薄い本を買おう!(割と現実的な提案。だがしかし食蜂さんに喰われてアニメ二期直後ですら殆ど無かった

>>336
忍野メメ「食蜂――そう、食蜂ってのは江戸時代に流行った怪異の一種なんだよ」
メメ「その名の通り、”蜂を食する”つまり養蜂家の間で恐れられたもんさ」
メメ「ていうかさ、郷土料理では蜂の子として食べられたもんだけど、まぁ僕はあんまり好きじゃないよねぇ。美味しいけどさ」
暦「鎖骨hrhr忍タンの薄い胸とワンピースから除く横乳キタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」 サスサスサスッ
忍「こ、こら主様よっ!アフロが見て……くぅんっ!」
メメ「元気が良いねぇ阿良々木君、何か良い事あったのかい――ていうか話聞いて?君キャラそんなんだっけ?」
暦「お前がお前がお前がっ!最初から幼女だったら僕は容易く人間を捨てていたというのに!のに!」
忍「主様……////」
メメ「阿良々木君、それ作品の全否定だよね?原作もメタ多いけどそれ言っちゃダメじゃないかな?」
暦「でも僕は和解する前、ゴミを見るような目で僕を睨む忍タンも大好物です」
暦「自分の尊厳を奪って激おこちゅんちゅん丸オーク28なのに、その相手から無理矢理組み敷かれて吸わせられる屈辱!」
暦「僕のエゴで幼女化した相手から吸血される背徳感と言ったら最高に決まってるじゃないか!」
メメ「あ、委員長ちゃんこっちです」
暦「違うんだ羽川!これには深い事情があって――そうっ!」
暦「――怪異の仕業なんだ……ッ!!!」
(※やってること今と変わらねぇじゃねぇか。向こうは幼女がメインヒロインなだけで(違います)。
あと西尾先生、掟上さんのドラマ化おめでとう御座います……が、ぬーべーの後追い自殺にならないといいですけど。本気で心配です。
テレビ業界もデスノやheat?だか言う今世紀初のクズドラマを作ったり、斜陽以前にオワコンでしょうかね)

>>338
青ピ「愛に年齢・身分・性別・生物・無機物・生死・次元の壁なんてあらへんのやで?」
上条「おまわりさんはやくきて」
(※個人的には”オーバーロード”というダークコメディと”賢者の弟子を名乗る賢者”というTS弱エロファンタジー、
読んでいると腹が減ってくる”異世界食堂”がお勧めです。
小説を発表出来る場があるのはとても良い事だと思いますし、同時に個人創作の垣根が下がるのもとても素晴らしい事かと。
……ただ、ですが噂程度にしか聞いていませんが、続編刊行のノルマ(初版が何冊ハケるか)が既存よりも高いらしく、
さっさと出版社に見限られ、その後作者さんのモチベが上がらずエタるという事例もあるとか。こっそり書いてみたい気がしますが)

>>339
バードウェイ「貴様ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
上条「待って下さいよボス!俺には何の事だかサッパリ分からないんですってば!」
パトリシア「ていうかお姉さんはどうしてバールのようなものを振り上げているんでしょう……?」
バードウェイ「幾ら私が貴様にとって高翌嶺の花だからといって、吊り橋効果でホイホイ惚れるパトリシアで代替行為をしようとは見下げ果てたぞ!」
バードウェイ「だが跪いて忠誠を誓うのであればっ!どうしてもと言うのなら、ほら、そのっ……アレだっ!」
上条「お前結局自分だけだよな?自分の事しか褒めてないもんな?」
上条「妹さんを擁護するフリしながら持ち上げてるのもお前だもんな?」
パトリシア「てかかなり直接的に私を非難してますし、お姫様抱っこを帰りの飛行機で散々自慢しまくったお姉さんにだけは吊り橋言われたくない……」
(※次巻そうなってるんですか?パトリシアさんが出るんだったら、ステイルさん主役なような気がしますが……どうなんでしょうね)

>>337
木原病理「病理と」
木原円周「円周の」
病理&円周「『なぜなに学園都市ーー!はっじっまっるっよー!』」
病理「……いえ予想以上にキツいですね。諦めた筈なのに婚期がまた遠ざかるかと思うと鬱ですよねー」
円周「大丈夫だよ病理お姉ちゃん!この世界には一桁から二桁までが守備範囲の性欲ハンターK.Tお兄ちゃんが居るんだから!」
円周「取り返しのつく程度の悪い事した後、なんかそれっぽいことを言って改心したフリすればイケるって!」
病理「おっと円周ちゃん中々『木原』っぽくなって来ましたねー。イイ感じですよ-」
病理「さって、そんな感じで唐突に始まったこのコーナーですが、今日は学園都市の外にお住まいの>>337さんからお便りが届いています」
円周「あー……確かにそうだよねぇ。レベル5でも『あるぇ?』みたいなのは居るよね」
病理「ちなみにそれはどういった意味でですか?」
円周「応用力、かなぁ?例えば第一位の”ベクトル操作”は凄いと思うんだけど、『それを別分野で利用する』って難しいよね?」
円周「うん、うんっ……!そうだよね、こんな時、アクセラレータお兄ちゃんだったらこう考えるんだよね……ッ!」
円周「『あァなンだ。俺にカラータイマーつく前の話なンだが、その気になればどンな独裁者だろォが、世界のカウボーイの首ねじ切って帰ンのは簡単だわな』」
円周「『ンがあくまでもそりゃア”個”の力だ。どうやったってェ限度が来る』」
円周「『例えば数十万単位の兵士とカチあって、四六時中狙われるンだったら”能力”の集中が解けたら拙いだろォよ』」
円周「『……まァ?そりゃァ”正面からやった”場合の話で、マジでやりあうンだったら相手の頭潰して各個撃破すっから、負ける要素はねェし』」
円周「『もっと穏当な方法で使うンだったら、そうだなァ……災害救助かァ。スパイダーマ○みてェにな』」
円周「『まァそれもはっきり言えば”個人ですンのには限界がある”ぜ。同時多発的に起きたらどォもこォもねェわ』」
円周「『それだったらテレポートや、あァ……窒素装甲?だかの方が応用力は高ェ』」
円周「『最初の例に挙げた国の指導者ぶっ飛ばすのも、テレポート遣いが居りゃ、爆弾置いてはいさよォならってェのが効率的だなァ、うン』」
病理「はいありがとう御座いますよ円周ちゃん。字数が決まってるのに私の出番を大幅に食って下さって」
病理「某人気投票でコメントが全然つかず、HPやってるヒト自らコメント投票しただけの事はありまーす」
円周「ぶっ[ピーーー]ぞババア?」
病理「とまぁ>>337さんの疑問にもあったように、『学園都市のレベル分けが実態に即してないのではないのか?』とのお話ですね」
円周「はっきり言うけど白井お姉ちゃんや恥j――結標お姉ちゃん達の能力の方が便利じゃないかなぁ?」
円周「『ここから先は(※性的な意味で)一方通行だァ!』は、当麻お兄ちゃんに言ってみたいけど」
病理「まー暗殺のお話はさておくとしても、緊急災害や病人の搬送、はたまた物流の革命としてはよりテレポートの方が有益でしょう」
病理「第三位さんは例外としても『コイツらの能力解析しても使えねーwww』的なのが多いでーす」
円周「それにレベル5は能力がピーキー過ぎて、『分析・実用化までどんだけかかるんだ?』的な感じだよねー」
病理「ですね――ですが!そこはそれキチガ○だらけの理系の中でも最大限に特化したキチガ○が集まる学園都市でーす!」
円周「病理おばちゃん理系にケンカ売ってるよねー。文系もぶっちゃけ差別と弱者利権にどっぷりつかってるクズばかりだけど」
病理「多分原作でもどっかに出ていると思いますが、『レベル分けはあくまでも学園都市にとって有益が否か?』なんですよねー」
円周「あー、あったねぇ。ハマッヅラが麦野おばさんにドMプレイをされた時だっけ?」
病理「確認している暇はないので、各自で読み直して欲しいのですが……ま、そんな訳で」
病理「我らが学園都市の目的はなんでしょーかね?世界平和?人類の発展?それとも世界征服のための超技術の開発?」
円周「はいっ、はーいっ!わたし知ってる!数多おじちゃんが言ってたんだモン!」
病理「あい、円周ちゃん。答えをどーぞ」
円周「学園都市の『木原』を筆頭とした最上位研究者の目的は”レベル6へと至るため”なんだよねっ!」
病理「はい正解。ですから上位陣は科学かオカルトなのかがはっきりしない能力者が占めていますねー」
病理「な・の・でテレポーターなどの『人類の役に立ちそう』な能力者よりも、アレな方が上位に居ると」
円周「中には能力もないし頭も悪くて、真面目になる努力すら出来ないおじちゃん達が”強さランキング”と勘違いしてるみたいだけどー」
病理「あーそりゃ生まれ持った能力は仕方がないですから諦めて下さいよ――と、”言われてって本当に考えることを諦めた廃棄物”でーす」
病理「確かに学園都市は能力第一主義的な所がありますが、それ以前に『能力者を研究するのはタダのヒト』ですし」
病理「頭の出来次第では幾らでも研究者として大成しますし、少々足りなくとも勤勉であればきちんと評価されるシステムですからね」
円周「『木原』だって特に優秀な能力者は居ないもんねぇ」
病理「仮に他人の足を引っ張って諦めさせたとしても、それで自分の位階が上がる訳ではないですし。現実社会でもそうですが」
円周「――という訳で>>337お兄ちゃん?もしくはお姉ちゃん?分かったかなー」
病理「ではまたお会いしましょー……まぁ多分諦めてますけどねー」
円周「それじゃー、全国一千万のJC大好きなおにーちゃんたちー、まったねーっ!」

――XX学区 夕方 学園都市七大不思議探訪出張版オープニング

佐天『――はい、ってな感じで編集点を作りながらやってますが!あいにくの生放送なんで意味はないんですけどねー!』

鳴護『涙子ちゃん大人になろうよ、ねぇ?ここは取り返しがつかないんだからもう少し、うん』

佐天『さーってそんな訳でやって来ました某学区!下校途中の学生さんがチラホラと居ますねー』

鳴護『あ、うんスルーするんだ……あ、はいありがとうございまーす』

佐天『ちなみに画面には映っていませんが、小学生の女の子達が手を振ってくれてますよー。ありがとーねー』

鳴護『っていうか今日は何なのかな?あたし何も聞かされてないって言うか、お昼ご飯食べてたらメール来ててビックリしちゃったんだけど』

佐天『……ふっふっふ!今日はスゴイですよ、つーかあたしもまさか取材許可が出るとは思いもしませんでしたから!』

鳴護『えっと?』

佐天『都市伝説――そう、”友達の友達”から語られる現代の落とし穴!日常に潜む闇がイマっ!私達の手によって暴かれようとしているのです……っ!!!』

鳴護『いや、あのね?だからあたしの質問には一切答えて貰ってないって言うかさ?』

鳴護『あとさっきも言ったよね、あたし?そのテンションはオカルト番組じゃなくって、川○or藤○探検隊のノリだよねって』

佐天『まーとにもかくにも行ってみれば分かりますって!』

鳴護『ちょっ!?涙子ちゃん走るとパンツ見――』

~暫くお待ち下さい~

――YY学区 携帯ショップ前の路上

上条「……」

上条(……青、か)

上条(夕暮れのほの明るくも、やや郷愁を感じさせるような陽射しの中、俺の目に飛び込んできたのは青空だった)

上条(時が逆巻いたのかと錯覚する程、それは蒼穹を連想させながら)

上条(ほんの一瞬でありながら、まぶたに焼き付いたストライプブルーは心臓の早鐘を鳴らすには充分な衝撃だった)

上条(まだ幼く、充分に成長しきっていない肢体を覆い、未だ汚れを知らす……だがこれからはその保証がない少女を守る鎧となって――)

上条「……」

上条(……はっ!?現実逃避してる場合じゃないな!)

上条(……でもありがとうとだけは言っておくよ!他意は無いけども!あぁこれっぽっちも他意なんてないさ!)

上条(ていうか柵中セーラーで堂々番組する低予算っぷりは相変わらずだな!オービットがスポンサーやってる筈なのに!)

上条(……まぁ風評被害で大変なんだろうが――っと、そういや)

上条(レディリー、セレーネの事件が解決してから見てないよなぁ?何やってんだろ?)

――XX学区 路上 学園都市七大不思議探訪出張版Aパート

佐天『――いやー、実はですねぇ。最近とある噂が流れてるんですよっ!』

鳴護『番組の紹介もなく始めるのはどうかと思うんだけど……』

佐天『大丈夫ですっ!こう見えても結構長い事続けてるんで!』

鳴護『あーうん。ご長寿番組だから今更企画の説明しなくても、みたいな?』

佐天『どうせこの番組見てる人、みんな大好きJCなだけですから!』

鳴護『言葉を選ぼうかな、ねぇ?なんとなくその台詞で視聴者層が分かっちゃったけど、もっとこう、うん、オブラートに包もう?』

佐天『視聴率は悪い反面、何故か円盤が2万弱は必ず売れるという、ある意味番組自体オカルトになっちゃってますからねー』

鳴護『あー、カルト的な人気があるのはないよりも良い事、とは思うよ』

佐天『では初見の方にも軽くご説明致しますと、この番組はダラダラッと都市伝説を扱ったり扱わなかったりする番組ですなっ!』

鳴護『扱わないんだ……そっかー……』

佐天『なんとファーストシーズンでは喫茶店でダベってただけの回が二本もありました!』

鳴護『深夜番組ってそういうの多いけど、最近だと逆に珍しいんじゃ?』

佐天『この街のローカルケーブルテレビ、しかも学生がディレクターから編集まで全部やってる局なので、まぁお察し下さいと』

鳴護『採算的なものは取れてるのかな――って、あ、生放送で言っちゃマズいか』

佐天『メインスポンサーのTATARAさんが映像関連のモニタも兼ねて機材を提供して下さってるそうで――あ、そだっ!』

佐天『いつもありがとうございまーすっ!次は局のみんなでお寿司を奢ってくれたら嬉しいかもですよーっ!』

鳴護『自重しよう、ねっ?そろそろ番組的にも本題に入らないとマズいから!』

鳴護『ていうかこんな時に限って当麻君居ないし!相方が出来たのにあたしの負担が増えてるよっ!』

佐天『というかカメラマンの方、いつもARISAちゃんのジャーマネさんがやってましたけど、今日はいらっしゃらないんですね?』

佐天『いつもだったら絶妙のタイミングでカンペが跳んでくるのに、少し物足りないような』

鳴護『んー……そっちはちょっとあった、の、かな?あたしもよく知らないんだよ』

佐天『それじゃーおフザケはここまでにして、本題へ入りたいと思いますが――ARISEさん!』

鳴護『あたしの名前じゃないです。それ攻殻な機動隊さんの最新シリーズだよね?』

佐天『アナタがまず!「都市伝説と言えば?」と聞かれて思い浮かべるのはなんでしょうかっ!?』

鳴護『えぇー……?そうだなー、えっとねー――』

佐天『――人面犬ですよねっ!ありがとうございましたっ!』

鳴護『まだ何も言ってないし!?尺が足りなくなったからってその展開はどうかと思うな!』

鳴護『だから本番前にあれだけ「フリーダムな司会進行だけは自制しようね!」ってお願いしたのに!』

佐天『……この世界には数多の都市伝説があります……!ツチノコ、モスマン、モンゴリアンデスワーム……!』

鳴護『涙子ちゃん、チョイス狭くないかな?てか都市伝説よりかはUMA側の人達だよね?人かどうか分からないけど』

佐天『確かに……そうっ!それは私達の想像の産物、暗がりを嫌う恐怖心を母に持つだけなのかも知れません……ですがっ!』

佐天『時として彼らは奇妙な世○からアナタを虎視眈々と狙っているのですよ……ッ!!!』

鳴護『ねぇなんでUMAから世にも奇妙な○界に話が跳んだの?ベクトルは同じかもだけど、一気に話が深夜ドラマってぼくなるよね?』

佐天『この世には、目には見えないが様々な妖怪変化――』

鳴護『地獄先○のオープニングをここで始める必要はなくないかな?っていうかそのネタ、どうせするんだったら最初で良いよね?』

鳴護『タイムキーパーさんが「もうAパート終りますよ」ってカンペ出してるし……うんっ!』

鳴護『えっと……緊急告知しますっ!てか応募しますっ!』

鳴護『XX学区の近くに居てツッコミスキルをお持ちの方は至急来て下さい!あたしだけじゃツッコミが追い付きません!』

鳴護『ていうか当麻君っ!見てたらタクシーでもなんでも拾って助けに――』

プッ

CM『――TATARAはあなたの生活を応援します』

――YY学区 携帯ショップ前の路上

上条「……」

上条(放送事故、だよね?てか大丈夫か?もうダメだと思うけど)

上条(つーかオープニングから微動だにせず、全く同じ路上で女の子二人が掛け合い漫才やってるだけの番組て!どこに需要があんだよ!)

上条(てかオカルト関係ないしな!……や、まぁこのグダグダ感は嫌いじゃない、嫌いじゃないんだが……)

上条(喉枯らすまでツッコミに行きたいのは山々なんだけども、こっちからXX学区まで……あー、車に乗っても……放送時間内に行けるかは微妙か)

上条(これ、本当にBパートで終るのか……?まだ話のとっかかりしか流してない……)

――XX学区 路上 学園都市七大不思議探訪出張版Bパート

佐天『――あいっ!てなワケで学園都市に起きた様々な事件や噂を検証するこの番組ですがっ!』

鳴護『あー……Aパートの頭にそれ言えば時間押さなかったのに……』

佐天『実はですねー、最近また新しい噂が流れていまして』

鳴護『噂……コワイ系の?』

佐天『じゃなくってジンクス系でしょうか。なんとっ!おまじないで願いが叶うという話ですよっ!やったねっ!』

鳴護『あたしは……うーん、四つ葉のクローバーぐらいしか知らないけど、どんなお話なのかな?』

佐天『以前にもこの学探では”両思いになれる自販機!”や”遊園地のジンクス!”も取り上げましたが、どーやら噂は噂にしか過ぎなかったようです!』

鳴護『や、あのさ?DVD見たけど自販機の方はどう考えても設定に無理があるし、そもそも犯罪だし』

鳴護『遊園地の方も、ある程度仲が良くないと男の子と一緒に観覧車は、正直……うん、考えちゃうと思うんだけどさ』

佐天『で・す・がっ!今度は本物、多分本物、本物だったら良いなという気持ちでTATARAグループの提供でお送りします!』

鳴護『涙子ちゃん涙子ちゃん、スポンサーさんから”社名連呼されると企業好感度下がるから控えてね”って釘刺されてたよね?』

佐天『――さあっ!到着しましたっここがっ!』

佐天『――”ニホンダルマ日本支店”です……ッ!!!』

――YY学区 携帯ショップ前の路上

上条「すいませーんっ!タクシーっ!XX学区まで高速使っていいから全速力で!」

――XX学区 ニホンダルマ日本支店前 学園都市七大不思議探訪出張版Bパート

佐天『先人曰く――虎穴にハイランダー誇示終えず!』

佐天『つまりはイギリスの戦闘民族ことスコットランド人が最強である証明でしょーかっ!?』

鳴護『涙子ちゃん、ちょっとシーで?今カメラマンさんが全体図を撮ってる最中だから』

佐天『やだなぁちゃんと実況しますってば。ほらカンペにもそう指示が』

鳴護『うん、だからね?あれもこれも口に出して良くはないよね?』

佐天『そろそろ怒られそうなので真面目に解説しますと、見た目は……そうですね、普通の白と青色のコンビニっぽい感じです』

佐天『ちょっとアレレなのは正面の自動ドアの上に”ニホンダルマ日本支店”の看板と、10月なのに”冷やし中華始めました”の幟が……』

鳴護『なんかこう、どんな街にも必ず一軒はあるような、やってるのかやってないお店って感じ、かな?』

佐天『もしくは潰れたコンビニの建物を、改修無しでそのまま使ってる雑貨屋さんですかねー?妙に外側が新しい気もしますが』

鳴護『えっと……で、どうするの?てか怪しいお店だとは思うけど……』

佐天『じゃーんっ!これ見て下さい、これっ!』

鳴護『んー……デジカメ?』

佐天『TATARA製の最新式ですよっ!暗視モード搭載でお気軽に盗撮も可となっておりますっ!』

鳴護『涙子ちゃん言ったよね?わたし言ったよね、CM中にもっとしっかりやろうって!』

鳴護『この流れでスポンサーさんのステマにもなってないあからさま過ぎるコマーシャル始めたら、視聴者の人怒ると思うんだよ、うん』

佐天『でわでわっ!時間も押しまくってるそうなので店内へ突撃したいと思うでありますっ!』

鳴護『原因の9割は涙子ちゃんだと思うし、そもそも都市伝説がどんなものなのかすら明らかになってないし……っていうか、ちょ、ちょっと聞いていい?』

佐天『どぞ』

鳴護『まさかとは思うんだけど――このお店、きちんとアポ取ったんだよね……?』

佐天『……』

鳴護『……』

佐天『――ごめんくださーーーいっ!ちょっと取材したいんですけどーーーーーーっ!』 ゥィーンッ

鳴護『ツッコミはっ!?当麻君急いで来てくれないとあたしじゃボケが捌ききれないから早くっ!』

佐天『あ、そうだ。上条さん新しい都市伝説、探したら見っけたんで後からメール出しときますね?』

鳴護『公共の電波だから!あたしもヒトの事言えないけど個人名は出さないであげて!』

――ニホンダルマ日本支店内

佐天『――ごめんくださーーーいっ!ちょっと取材したいんですけどーーーーーーっ!』 ゥィーンッ

レッサー『えーらっしゃいあ……せ?』

佐天『お邪魔しまーすっ!昨日メールで取材をお願いした者ですけ……ど?』

鳴護『ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイっ!直ぐ連れて帰りますからまた警察呼ぶのだけは!』

鳴護『もう朝までずっとじゃんじゃん言うおねーさんに優しく説教されるのはイヤなんですっ!だからそれだけは堪忍して下さ……い?』

佐天・レッサー・鳴護『……』

鳴護『――って涙子ちゃん関係ないよね?てかなんで見つめ合っ――』

レッサー『そもさんっ!』

佐天『せっぱっ!』

鳴護『うぇ?えっ?えっ?』

レッサー『ある日、スティーブがボクへこう言ったんだ』

レッサー『「Hey, マイコォ!オレのパパは勲章を貰ったんだけど、一体何で貰ったのか分かるかい?」――ってね!』

鳴護『展開間違えてないかな?今の前フリだと、ちょっとトンチっぽい洒落たお話の筈なのに、どうしてアメリカンジョークになってるの?』

佐天『「Oh.,スティーブ!そんな簡単さ!」と、続けてマイコーはこう答えました』

佐天『「――お前のママと寝たからだよ!」ってね……ッ!!!』

鳴護『まさかの下ネタっ!?それも事務所的にNGっぽいし!』

レッサー『……』

佐天『……』

鳴護『ど、どうした、の……?』

レッサー・佐天『親友(トモ)よ……ッ!!!』 ガシッ

鳴護『あー……波長合っちゃったかー、てか、うん、なんかこう、うん……』

佐天『てな訳で取材させて下さいなっ!丁度お客さんも居ませんし!』

レッサー『あー、どうぞどうぞ。見られて困るようなもんはありませんし』

レッサー『(どうせ売り抜けたらドロンしますから)』

鳴護『……や、あの、ちょっとレッ――店員さん、いいかな?』

レッサー『初対面ですけどなんでしょうか、着やせアイドルのARISAさん?』

鳴護『(そういうのいいから、ちょっと、ちょっとこっちへ!)』

佐天『あ、お手洗いですかー?それじゃ今のウチに店内紹介しておきますねっ』

鳴護『違うんだけど……うんまぁ、オネガイシマス……』

佐天『さぁさぁ許可も下りましたしー、店内を見渡せば……あー、なんか”それっぽい”オカルトグッズが所狭しと並べられてますねぇ』

佐天『分かりやすいのだとタロットカードや水晶、蝙蝠の羽根っぽいのですね』

佐天『あっとはー――あ、なんでしょアレ?カメラさんもう少し左左。そう、そこの棚の端っこです』

佐天『何かのぬいぐるみですかね?前に流行ったブサカワイイ系かも?へー』 ツンツン

マーリン『おおきに!ワイはマーリン!アルビオン生まれの大魔術師やで!』

マーリン『ワイと契約して魔法少女なっとぉ!今ならサービスであのアホのかけた666の呪いも解いとぉわ!』

佐天『わースゴイ!ちっちゃいのにお利口さんなんですねー!』

マーリン『なんでも聞きぃよ。ワイ答えとぉわ』

佐天『んー、そーですねー。聞きたいもの聞きたいもの……あ、そだっ!』

佐天『恋愛運っ!あたしの将来の旦那様ってどんなカンジなんでしょうかっ!』

マーリン『そやんなぁ、まずアンタは人の彼氏を好きになるタイプやんなぁ、違ぉ?』

マーリン『親友や友達の彼氏、もしくは好きな相手の話を聞いているウチに、段々気になっとぉて、最後には好きになっとぉ』

マーリン『で、自分の中に生まれた恋心に気づいた時にはもぉ遅ぉて、「ま、いっか」で済ますー、みたいな?』

佐天『エラく具体的に恋愛相談で、むしろ心当たりがあるようなないような、イイ感じにモヤモヤっとしましたが……』

佐天『てかこれ商品、ですよね?他に何体も並んでますし、ちょっと欲しいかも』

マーリン『やったらワイを掴んでレジへゴー!もうフォアグラの刑はカンベ――』

ガシッ

マーリン『え?』

ランシス『……』 フルフル

佐天『あ、店員さんですか?これ一体何の商――』

ランシス『……』 フルフル

佐天『えっと……』

レッサー『はーいどうされましたかっお客さんっ!何か問題でもっ!』

佐天『あ、お帰りなさい。あのですねー、このファービ○モドキをですね』

レッサー『チッ、また脱走謀りましたか』

佐天『はい?』

レッサー『中身がバグってるらしくて、たまーに動作が不安定になるんですよっ!いやー古いIC載せてるからですよねぇっ!』

佐天『いやいや、でもこれだけ流暢に喋れるんですから凄いですって!……あ、でもお値段はそうとうお安いみたいですけど』

レッサー『――それでっ!?どローカルの深夜番組さんがどうしてこんなチンケな小売店までお越しになったんでしょーかねっ!?』

佐天『いえそんなことよりも、この謎マッシーンの中身が気になるって言いま――』

鳴護『なんでも願いが叶うってアクセサリーがあるらしいよっ!涙子ちゃんも言ってたのかせ気になるなぁー!』

佐天『あー、はいはいっ、そうでしたそうでしたっ!取材しに来たんでしたっけ!』

鳴護『そ、そうだよー!全く涙子ちゃんったら!』

佐天『ま、それはさておきその人形をですね――』

鳴護『レッ――店員さんっ!何か話題になっているアクセサリーはありませんか、っていうかあったよねっ!?』

レッサー『はいっそれはもうご用意して御座いますっ!その名も――』

レッサー『――”幸運の一ペニー”っ!』

佐天『わー、すごー……い?ですか?』

レッサー『えぇまぁ大体アメリカへ行ったブリテン移民の間で語られているジンクスですな』

レッサー『早起きし、最初に道に落ちてた1セントを”ラッキーペニー”と呼び、幸運のシンボルだとされています』

佐天『へー……ん?あれでもそのお話、1”セント”なんですよね?』

佐天『てかイギリスあんま関係ないですよね?ペニーもイギリスで使われてる硬貨なのに、なんでアメリカで噂に――』

鳴護『あ、あれじゃないかなっ!?早起きは三文の得、みたいな感じだよきっと!」

レッサー『ちなみにアメリカの東海岸辺りでは、1セントや幾つかの硬化を潰してペンダントにする、って風習があります――が!』

レッサー『日本でそれをやると懲役刑も待ってますので、ダメ!ゼッタイ!……ま、たまーに自称アーティストが、シルバーアクセ造ろうとしてやらかすらしいですが』

佐天『まぁそれは別にいいんですが、例のもふもふが絶望的な顔でバックヤードへ連行されていくのが見えたんですけど』

レッサー『上条さんっ!?上条さんは今いずこに居られるんですかっ!』

レッサー『どうやってこのパンジャンドラムさんを制御出来たのかと小一時間!つーかアータの管轄だから引き取って下さいなっ!』

鳴護『ていうかレッサーちゃんにもツッコミが必要なんじゃないかな、ってちょっと思ったり?』

佐天『あ、あっちの方にエレザー○の鎌が!』

鳴護『涙子ちゃんそろそろ収集がつかなくなって来たから、ねっ!?イイ子だからそろそろ学習しようっ!?』

佐天『――ふっ!このわたしを止めたいのであれば、それ相応の手段が必要ですなっ!』

レッサー『……私が言うのもなんなんですけど、この方重度の中二病を罹患されていますよね、えぇ』

鳴護『ある意味、二人は実行力はハンパなさ過ぎなくて持て余す、っていうか』

???『――たった一度のオンエア捨てて、急いで来たら間に合った――』

レッサー『あれは……まさかっ!?』

???『――ボケにツッコミ叩いて砕く!俺がやらねば誰がやる……ッ!』

佐天『――はいって言うワケでそろそろお別れの時間と相成りましたっ!いやー、残念ですが今日も都市伝説の謎には迫れませんでしたねー!』

???『ねぇ聞いて?タクシー飛ばして貰ってきたのにスルーするってどういう事?』

佐天『それでは皆さんサヨウナラ!いつかやったる第二シーズン!お相手は佐天涙子とっ!』

鳴護『あ、ARISAでっ!』

佐天『で、お送り致しましたっ!』

???『マジか?俺呼ばれたのに声だけで紹介もしないで終るの――ハッ!?』

???『もしかして佐天さん、キミこうなるように最初から時間を調節し――』

佐天『うっいっはっるーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!あいしてーるぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!』

プツッ

ナレーション『この番組は「残像?違うなこれが本体だ」で未来をお届けする、TATARAグループの提供でお送りしました』

――ニホンダルマ日本支店

上条「つーか今の提供もおかしいだろ!?残像じゃなくて本体に当たったんだったら、それ直撃してるって意味だ!」

上条「可愛いけど残念な子に段々と侵食されてんぞTATARAグループ!もういい加減にしやがれ!」

佐天「あ、ども上条さん、こんにちわー。CASSHE○N似てませんでしたよ?」

上条「いや確かに俺も悪かったけどさ!つーかここまで番組グダグダにしたのは誰のせいだよっ!?」

佐天「あ、すいません。この鎌お幾らですか?」

上条「聞きなさいよっ人の話、は……」

佐天「ていうかこれ超レアですよっ!見て下さい、ほらっ名前っ!」

上条「……あぁうん、名前っつーか、見覚えあるよね、これ」

上条「死神が持ってそうな大きな鎌、あーっと王冠みたいなのがぶら下がってるし……」

佐天「てゆーかあたし、この死神鎌装備した人に路地裏でお会いしたよう、な?」

上条「どれだけ君は引きが強いんだよ!?というかまたどっかで危ない橋を爆走してやがるし!」

佐天「はい?」

上条「フィクションですね、それは多分夢かなんかだと思いますよ?」

佐天「でっすかねぇ……その直後にシスの暗黒○っぽいおじいさんに道を訊かれたり」

上条「HAHAHAHAHA!!!何を言っているのか俺にはサッパリだが、この世にオカルトなんてものは存在しないと思うよ!」

レッサー「ありますけど」

鳴護「――はーい、レッ――店員さん、こっちへ、ね?」

佐天「なーんか割と人見知りするタイプのアリサさんが店員さんと親しげな……?」

上条「細かい事気にしちゃダメだ!感じるんだ!」

マーリン「そぉそぉ。何事もあんま頭固くせぇへんと、気軽に考えんとダメやで?なんや言うても、最後はノリと場の勢いでどぉにかなるモンやし」

佐天「あの上条さん」

上条「訊かないで」

佐天「このぬいぐるみ、空、フワフワ飛んで……?」

上条「い、イリュージョンじゃないかな、きっと多分うんそうに違いないよ!」

マーリン「アンタ魔術に興味あるみたいな事言ぉとぉ?やったらワイが全般教えとぉで?」

マーリン「そぉなぁアンタは……あぁエアリエルと相性エエみたいやし、まずぅあのアホの獣の刻印解除しよぉるから、コナートのワイの墓まで来ぃや」

マーリン「やないてと頭バーン!ってなるやさかい、頭バーン!って」

佐天「はいっ、バーン!」 BANG

マーリン「やーらーれーたー――ってワイに何しさらすのんっ!?ワイは大阪人ちゃうで!」

マーリン「バーン!やろぉてバーン!するんのはバーン!好きなバーン!とミストバーン――」

上条「はいバーン」 タッチ

マーリン「ギぃニャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ……ッ!?」 パキィインッ

マーリン「……」 クテッ

上条「……ふう、これで良し!それじゃっ、俺はこれで!」

鳴護「え!?場を収集しないで帰っちゃうの!?」

佐天「てかこの子大丈夫ですかねー?電池切れちゃいましたか?」

レッサー「あー、今ちょっと修理に出しますんでね、お嬢さんにはこっちの喋らないのをプレゼントします」 ポイッ

佐天「え、マジですか!?ラッキー」

レッサー「だから帰って下さい。出来る限り速やかに、えぇ」

ベイロープ「なんか用事でもあるの?」

レッサー「ちゅー訳ではないんですが、この騒ぎをベイロープに知られたら確実にケツ引っぱたかれますんでね」

鳴護「あのぅ、レッサーちゃん?なんて言うかな、こう、ね?」

レッサー「てか聞いて下さいよ皆さん。こないだもですね、あのいい歳してんのに処女が私のケツを8ビートでぶっ叩きやがりましてね」

レッサー「スカじゃないんですから!危うくもう少しで気持ち良くなる所でしたよ!」

ベイロープ「……へぇ」

ランシス「……シムラー、後ろ後ろ」

レッサー「あい?」

ベイロープ「レッサーはこっちに――で、お客様、大変申し訳ないのですが、アポイント無しでの取材はこれ以上承りかねます」

ベイロープ「どうしてもと仰るのであれば、また後日ご連絡を頂ければ対処したく存じますので」

上条「(あれ?意外に常識人?)」

ランシス「(……対外的には、まぁこんな感じ)」

佐天「そーですかー、それではまたっ!」

鳴護「……はぁ」

佐天「あ、ほらアリサさんも帰りますよー?何お店側の人っぽくなってんですか」

鳴護「気苦労、そう気苦労的な意味でね!」

上条「……いや、なんか流れで来たけど……お前らも程々にしとけよ?」

レッサー「いやぁ楽して金を儲けようとするもんじゃないですねー!あっはっはっはっはっー!」

ベイロープ「あなたはこっち、ね?」

レッサー「……あい」

上条「何やってんだが……まぁレッサーが悪い訳じゃないんだろうし」

上条「あー、もうこれは一度初春さんとビリビリに会って、佐天さんの教員方針について話し合う必要があるよなー」

カメラマン「……」

レッサー「カミジョー、うしろうしろー」

上条「はい?――あぁカメラマ、ン、さん……」

シャットアウラ(カメラマン)「――やっと捕まったな、ん?」

上条「……あれ?シャットアウラ、さん?」

シャットアウラ「まぁ……アレだ。私も色々と君とは話し合いたいとは思っていた所なんだがな」

上条「そ、そうかなー?いやでも俺は別にだな」

シャットアウラ「主に”ARISA”のアイドルイメージを大きく損ねたバカの件について」

上条「……あい」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を


みさきちは信州の出かな?(適当)

鎌池の話だと蜂自体は関係なくて、蜂のような集団とか団体をまとめて貪るって意味でつけたらしいけどね
日本人なのかね

上条さんがどんどん「おかーさん」化を極めつつある件について

乙!!

マタイさんはハイエロファントグリーン使えますか? それとロックアルバム出すらしいですね。

>>358
???「……まぁ、アレだな。鳴護アリサが人の”想い”で産まれたとしよう」
???「そいつを奇蹟と呼ぶのか必然だと願うのかは、任せるとして――だとすれば、そして尚、だからといって……最後のはなんか違うか」
???「オティヌスが『最古にして最期の魔神』でないのと同じように」
???「鬼籍で膿まれる”モノ”もまた然るべく、って話だぜ」
???「……」
???「あかいくつー、はーいてたーおーんーなーのーこー」
???「いーじーんさーんにつーられーて、いっーちゃったー」

>>359
ありがとうございます

>>360
上条「おっぱいに貴賤はない。小さかろうと手に余ろうともおっぱいは至高の存在と言える!」
上条「もし、もしも区別するべきカテゴリーがあるとすれば、それはそう――」
上条「――おっぱいがついているかいないか、だ……ッ!!!」
上条「……って俺こんなキャラだったっけ……?」
土御門「カミやんって最初の方でギャルゲーネタも振ってなかったっけか?」
青ピ「ちゅーかそのロジックやと無乳の方はフォローできてへんよ」
上条「無乳は犯罪の臭いが……」
バードウェイ「ちょォォォォォォォォォォォォォォォォォォっと話があるんだが、いいかね?」
上条「やめてっ!?近寄らないでよっ!?」
(※某ビリビリさんが貧乳をネタにされていますが、年相応ではないかと個人的に思います。
ARISAさんのネタを探すのにアイドルのIV百本近く見まくった際、まぁあんなもんではないかと。
そういう媒体に載るのは基本的に多少なりとも人様より優れているからであって、気に病む必要はないと思いますが。
まぁそれはそれとして一年前までランドセル背負ってた佐天さんが意外と巨(以下自粛))

――ニホンダルマ日本支店前

佐天「なーんか色々大変ですよねぇ。路地裏にドナドナされていく上条さんが実にイイ感じで!」

佐天「ま、あたしには関係ないですけどー、一応助けにー的な――」

ポンッ

佐天「はい?」

白井「……」

佐天「ありゃ、どうしました白井さん?お仕事中に一体何の――」

白井「――えぇと、風紀委員の者ですけど、少しお時間宜しいですの?」

佐天「いや知ってますけど。いつもの『ジャッジメントですの!』じゃないんですね、少しテンション下がり気味って言うか」

白井「それはもう下がりも致しますわよ、まさかついにこの日が来るなんて……」

佐天「ついに?なんのお話ですか?」

白井「――16時52分、XX学区路上前にて事前申請なしでの路上撮影を敢行したのは間違いないですわよね?」

佐天「あ、はい。しましたよ」

白井「道路を不正に占拠した疑い、並びに迷惑防止条例違反の疑いがございますので、どうかわたくし共とご一緒して頂けませんか?」

佐天「……えっと、その、かーらーの?」

白井「ぶっちゃけ任意同行での取り調べですわね。”今の所”は」

佐天「弁護士!弁護士を呼んで下さいよっ!具体的には初春を!」

白井「……その初春も『佐天さんにはいい薬です』とお説教する満々ですので、まぁ大人しくついてきて下さいな」

佐天「……そんなぁ――そうだっ!」

白井「ちなみにここで逃げ出したり抵抗したりすると――」

佐天「す、すると……?」

白井「――さっ、行きますわよっ!」

鳴護「あー……涙子ちゃんやっぱりこの日が来ちゃったかー」

佐天「あ、あの人も共犯ですっ!」

鳴護「涙子ちゃんっ!?幾らなんでもそれは無いんじゃないかなぁっ!?」

白井「ご心配なく。アリサさんにもご同行をお願いするつもりでしたので」

鳴護「……うん、分かってた。止められなかった時点で、うん……」

佐天「ていうかさっきから二人で”ついに”とか”やっぱり”とか、不愉快なワードが見え隠れしてるんですが……」

白井「ある意味では期待を裏切らなかった、と思って下さいまし」

佐天「いやーそれほどでも!」

白井「反省なさって下さい!は・ん・せ・いを!――さて」

白井「お二人方の保護者役の類人――上条さんはどちらに?」

佐天「いつもセットで扱われるの心外なんですけど」

鳴護「でも大体涙子ちゃんがトラブル起こす時には、当麻君の影ありって言うか」

白井「トラブルのある所にお姉様と佐天さんと上条さんあり、ですので。さっきも放送終了直前に喋ってらっしゃったでしょう?」

鳴護「あー、当麻君は……お姉――ウチの社長さんが引っ張っていきました」

白井「なんとなくどんな要件か分かりますし、極めて黒子的には放置した方がいいかもしれませんけど……そういう訳にもいきませんわね」

白井「ともあれ、こちらへ連れてくるように言って下さいません?風紀委員の仕事を優先と言う事で」

鳴護「助かったと言えなくもないかも」

白井「ま、その後どうなろうと知った事ではありませんの」

鳴護「助かってなかった!当麻君の未来はどこにっ!?」

佐天「大変ですよねっ!」

鳴護・白井「「誰のせいだと思って!!!」」

――風紀委員 第177支部

初春「――と、言う訳でですね、繰り返しますが三つの原則を守って頂きたいと思います」

初春「面白そうな人が居ても近寄らない!トラブルを起こしそうだなと思ったらまずその場を離れる!」

初春「その場のノリで行動せずに!前後の見境無く突っ込まないで!」

佐天「四つになってないかな?」

上条「反省しなさい」

初春「そして何かあったら直ぐ通報!みんなの味方っ風紀委員へご一報下さいっ!」

初春「取り敢えず私が白井さん、もしくは御坂さんに一言メールでもいいですから!」

佐天「……はぁい」

上条「初春さん、もっと言ってやって。良い機会だから。絶好の機会だから!」

初春「くれぐれもっ!何度も何度も言いますが、時には断腸の思いでフラグをへし折る勇気!」

上条「あ、あれ?話がなんか凄い方向に……?」

初春「例えば自宅へ帰ってベランダにシスターさんが干されていたら、それはまず住居不法侵入の現行犯で通報して下さい!」

初春「えっちぃ目的のために自宅で保護するなんて以ての外ですよ!女の子を助けても冒険なんて始まりませんからね!」

上条「ごめんね初春さん?なんかこう、どっか聞いたような例えになっちゃってるけど、気のせいで流していいのかな?」

初春「他にも女の子であれば誰彼構わず見境無く助けてみたり!フラグ管理を間違えて未だにヒロイン確定すらしてないだなんて!」

上条「うん、ていうか初春さん、俺に対して言いたい事があったら直接言って貰えないかな?」

上条「ケンカ売るんだったら買うよ?捨て値でも買うし、そろそろ西葛○ネタを振ったって構わねぇんだぞコノヤロー?」

ガチャッ

白井「ただいま戻りましたのー」

初春「あ、お疲れ様ですー」

佐天「外回りお疲れ様でーす」

上条「お疲れ様です……あれ、テレポートしないのな?」

白井「わたしくをなんだとお思いなのか知りた――く、もないのですし、興味もございませんが、お客様がいらっしゃってるのにマナー違反は致しませんの」

上条「白井さん、確か君、俺への傷害罪が何件か溜まってるよね?まぁタイミング的に俺が悪い部分もあったけどもだ」

白井「初春、佐天さんへのお説教は?」

初春「一通りは済ませましたけど、ただその」

佐天「反省しましたっ!もう二度としませんっ!」

初春「……と、まぁ、はい」

白井「ま、いいんじゃなくて?暫く大人しくなれ、る……かしら?」

上条「……誰が鈴をつけるのかの騒ぎだよなぁ、これ」

初春「……鈴をつけただけで大人しくなるんだったら、どれだけ良かった事でしょうか……!」

上条「苦労してんなー」

白井「そう言えばARISAさんはどちらへ行かれたんですの?スタッフの方もおられないようですけど」

初春「あー、弁護士の方がみえましたし、次のスケジュールがあると仰っていました」

白井「手際の宜しい事で――と、なら何故上条さんはまだこちらに?」

上条「『知りません。スタッフの人じゃないですから煮るなり焼くなり好きにすると良い』ってね……!」

白井「あー……それでしたらお帰り頂いてもよかったですのに」

上条「良い機会だし、この残念な子が叱られる姿を見たかった――で、なくて野暮用を思い出してさ」

初春「昨日もいらしてましたよねー……あれ?というか佐天さん絡みの案件ではなかったと?」

上条「だから違うんだってば。もっと切実って言うか、切羽詰まった的な感じで」

佐天「――あ、そだっ!さっきオンエアでも言いましたが、新しい都市伝説拾っときましたよっ!」

初春「オンエアで言わないで下さい。一応公共の電波なので」

上条「興味があるが、そっちよりもまず――」

白井「ですから昨日も申し上げたようですけれど、ここ暫くは忙しくありませんでしたのに」

佐天「おんやー?でも今さっき白井さんも緊急呼び出し受けてませんでしたっけ?」

白井「ただのコンビニ強盗ですし、いつもの事ですわよ。ですわよね、初春?」

初春「まぁ、そうですよねー」

上条「俺が言えた義理でも無いと思うんだが、君にも割とハードボイルドな人生送っているよね?前に流行ったバウア○的な」

佐天「そもそも初春と白井さんが出会った直後に、まだ素人だったにも関わらず銀行強盗を撃退する大金星は未だ語り草になっているとかいないとか」

上条「慣れって怖いよなっ!ホントにっ!」

白井「昨日の今日で大事件が起きてはいませんし……まぁ友達を迷惑防止条例等でしょっ引かなくてはならないのは、ある意味ショッキングでしたわね」

佐天「大変だよねー、お仕事」

初春「佐天さん、反省。反省をして下さい」

上条「平和なのは良い事だが……んで佐天さんの方は?」

佐天「あたしは平穏に暮らしたいんですが、まるでこう見えざる神の手が働いているかのように次から次へとトラブルがですねっ」

上条「そんな話は振ってねぇよ!ついでにそれ言うんだったらここにいる全員が全員、その神様に愛されてると思うがなっ!」

初春「ま、まぁまぁまぁまぁ。言い出すとキリがありませんし、それで?」

佐天「そう言えば大覇星祭の時、御坂さんの体操着が途中から真新しくなっていたような……?」

上条「佐天さん今ちょっとその話は置いておこうか?一年前の話を持ち出すのもアレだけど、君に事件的なものを持って来いとは頼んでなかったよね?」

白井「それは――大事件ですわねっ!!!」

上条「どうしよう。ツッコミ役に徹していた白井までこの始末」

初春「あ、あはははー!白井さんは御坂さんの事になると、まぁテンション上がりますので」

上条「白井さんのはテンションっつーか、割とオッサンが想像するようなドス黒い何かが見え隠れしてるんだが……」

佐天「最初、『あ、御坂さん汗かいたんで着替えて来たんだー。っていうかフォークダンスで誰かと踊りたいから、気合い入れたのかな?』って」

白井 チッ

上条「やめてくんない?俺何にもしてないんだけどヘイトが高まってるみたいだから、いい加減本題に戻ってくんないかな?」

佐天「え、違うんですか?居なくなった御坂さんが戻ってきたと思えば、小綺麗になってるわ服変わってるわで、あたしてっきり」

上条「何もなかったよ!ビリビリがビリビリされてんのに気づいて俺がビリビリされそうになった以外は!何もだっ!」

上条「軍覇はさっさと居なくなるわでトンズラするので一苦労さっ!」

初春「ゲシュタルト崩壊しそうなぐらいビリビリ並んでますよねぇ。と、そろそろ佐天さんも遊んでないで」

佐天「うーん……や、まぁ話します、話しますけどね。あんまり期待しないで下さいよ」

上条「頼んどいてなんだけども、都市伝説は大体根も葉もない噂や、悪趣味な冗談から始まってんだろ?だったら別に――」

佐天「それだけとは言いがたいんですけど、まぁ話半分として」

上条「うん、それは割といつもだから心配しなくて大丈夫だよ?」

佐天「あ、だったら良かった――良かっ、た?ですかね?」

初春「そ、それでっ!新しい都市伝説とは一体何だったんでしょうかっ!?」

佐天「お、おぅ……初春が喰い気味なのはレアですけど――ま、引っ張るのも何なんでサクッと行きますが」

佐天「――出たんですよ、『いじん』」

――風紀委員 第177支部

初春「いじん、ですか?」

白井「どこかで聞いた憶えが……あぁ野口雨情の童謡、『赤い靴』のフレーズでありますわね」

初春「あ、知ってます。赤い靴履いてた女の子がいじんさんに連れられて行っちゃう、みたいな歌詞ですよね」

白井「いじんさん――というよりは『外人さん』の、当時の呼び名だと思いますの」

佐天「えぇまぁその話で大体の前置きは合っています」

初春「前置き、ですか?」

佐天「白井さんが言ったみたいに、元々『いじんさん』は明治維新後に『外人さん』という意味で使われていました。それは間違いないです。ないんですけど……」

佐天「それが後に都市伝説化して、『いじん』として独立してしまったんですよ」

白井「えぇと、どういう意味ですの?」

佐天「そうですねー……例えば『人攫い』は固有名詞か、それとも一般名詞か分かります?」

初春「一般名詞ですよね。特定の誰かを指し示すんじゃないですから、職業……というか、犯罪のカテゴリー?」

佐天「それがねー、昔は固有名詞だっんだって」

初春「あ、そうなんですか?へー」

佐天「ん、東京の近郊での神隠し――子供が居なくなると『ヒトサライ』って妖怪が出た、って解釈してて」

佐天「それが段々と全国に浸透していった結果、『人攫い』が誘拐犯を意味する一般名詞になった、らしいんだよ」

白井「それはつまり、『ポテトチップ』という名前の商品が発売された後に、それ以後類似のお菓子が全て『ポテチ』で統一されるみたいな感じですのね」

佐天「あ、それですそれです!そんな感じかと!」

初春「と、言う事は『いじん』は最初、外人さんの意味で使われ始めたのに――」

初春「……今では何らかの都市伝説を意味する言葉になった、んですか?」

佐天「ウイハルン、正解!」

初春「人をドイツ風にアレンジするの禁止です……おや?そうすると矛盾がありませんか?」

白井「矛盾って?」

初春「えぇ、『いじん』という言葉は童謡の中で歌われるぐらい、まぁとても昔の言葉遣いですよね?わたし達も使いませんし」

白井「わたくしも歌以外で耳にした憶えはありませんの」

初春「ですよねぇ。でしたら何故この平成の世の中にその単語を引っ張り出して来たんでしょうか?」

佐天「あー……それがねー、『いじん』はずっと昔から存在してたみたいで」

白井「……はい?」

佐天「順番に言わなかったあたしも悪いんですけど、『いじん』――少なくとも怪異としての『いじん』は昭和中期頃には居たんだって」

佐天「なんていうかな……こう、『うさぎおいし、かのやま』って歌詞知ってる?」

初春「話がまた跳びますけど……よくネタにされるお話ですよね。童謡の一節で『うさぎ美味しい、カノヤマ』だと子供が信じ込むパターン」

白井「童謡……唱歌でしたかしら?『故郷』という歌ですわね。『ウサギ追いし、彼の山』」

佐天「と、同じで、誤解したらしいんですよ、子供達が」

初春「何を、ですか?」

佐天「『いじんさんに連れられて、行っちゃった』って」

白井「あぁ確かに、ですの。赤い靴は童謡として有名でしたし、そこだけ聞けば『いじん=妖怪的な誘拐魔』のような誤解をされても」

初春「いやぁ……それは、どうでしょうかねぇ?昭和中期頃でしたら、そんなに噂は流れないはずですけど」

佐天「んー、それがねー……その頃は丁度戦争が終った頃だから、引き上げてきた軍人さんや外国人が入ってきて、混乱してたんだって」

佐天「中では、こう飼っていた犬や猫を盗まれて、しかもー……みたいな話もあるし、それから産まれたのが――」

白井「都市伝説としての『いじん』ですわね」

佐天「はい。人――主に子供を攫ったり、野良犬や野良猫を食べるっていう噂の」

初春「佐天さんが言ってた『妖怪だった頃のヒトサライ』にも被ってますよねー」

白井「ま、実際に治安が悪化してたのは、今のヨーロッパでのゴタゴタを見るに、原因の一端として異邦人が真っ先に挙げられますし」

初春「ですけど彼らだけに原因を求めるのは間違っている気がします、多分、ですけど」

白井「その説の白黒を付ける壮大な社会実験はやって頂けるみたいですし、結果は楽しみですわね」

初春「白井さん!」

佐天「まぁまぁそのぐらいで――で、その『いじん』がですねー、出るんですよってお話です」

白井「いじん……ブラックサンタと並んで小学生辺りの子が好きそうなお話ですけれど、少々……あぁいえ、完全に眉唾物のお話ですの」

佐天「と、仰いますと?」

初春「昨日上条さんにもお話しましたように、ここ一週間ぐらいは事件も少なめなんですよー。有り難い事です」

佐天「あ、そうなんだ?」

初春「その証拠に、外部の方にはお話し出来ないのは置いておくとしても、そんな誘拐事件が頻発していたらわたし達がお喋りしてる暇なんてありませんよ」

白井「ですわね。警備員の方々も暇そうにされていましたわよ」

佐天「そっかー、それじゃ残念――って初春っデコピンは止めてっ!?ジョーダン!ジョーダンだからっ!」

佐天「助けて下さいっ上条さん……てかアレ?さっきから黙っちゃって、どうしたんです?」

上条「……ん、あぁいや、ちょっと考え事を」

上条(なんだろうな……なんか引っかかる)

上条「その……『いじん』の噂はどんな話なんだ?てかいつ頃から?最近?それとも前からあったとか?」

佐天「ま、待って下さいっ!順番にお話ししますから!」

上条「……あぁごめん」

佐天「色はピンクでフリル付でした……ッ!!!」

白井「はい?」

上条「初春さんのパンツの話はしてねーよ!ノーヒントで察せる俺も俺だが、ヤローの前で止めて差し上げろよいい加減になっ!」

初春「あ、上条さんちょっと抑えてて貰えますか?今全力でデコピンしまんで」

上条「よっしゃ任せろ」

白井「話が前に進みませんの……いいですから続きを」

佐天「昨日は――」

初春「……次、テンドンしたら明日の英訳手伝いませんからね?」

佐天「――それがですねーっ!目撃報告があったのはつい10日ぐらい前からなんですよっ!割と新種です!」

上条「都市伝説……というよりは怪人のリバイバルみてーな感じだけどな、話を聞くに」

佐天「夜道を歩いていたり、公園を通りかかるとスレンダーマンのような人影がっ!」

初春「人影だけでは、ちょっと根拠が足りないかも、ですよね」

白井「そもそもただの一般の方なのでは?」

初春「あー、スキルアウトやってる方は昼夜逆転してますしねー」

佐天「……コート着て、だよ?まだ10月なのに?」

白井「それは……こう、ただの一般の変質者ではなくて?」

初春「あー……コート系のヘンタイさんって、いつの世も居ますよねぇ……」

佐天「そうバッサリ切られると夢も希望もないんだけど……上条さん?」

上条「あー……そのさ、話聞いてて思ったんだが、なんで『いじん』なんだろうな?」

佐天「人攫いだからじゃないですかね?」

上条「攫ってる事実がないのに?」

佐天「あたしに言われても困りますよ、ってか」

上条「あぁごめん。ケチつける訳じゃなくって純粋な疑問って意味で」

白井「と、仰いますと、何か引っかかるので?」

上条「ん、なんつーかな、こう、えっと上手く言えないんだが……あぁそうだ。さっきの一般名詞と固有名詞の話か」

上条「最初にまず『ヒトサライ』が居た訳だ……あぁ妖怪が居たんじゃなくって『人が消える現象』にそういう名前がついてた」

上条「その地方じゃ神隠しでも失踪でもなく、ただ『ヒトサライ』って固有名詞を挙げて、人が消える現象を解釈していた。それは分かる」

上条「んで次。全国各地に話が広まって、似たような現象が統一のアイコンで括られる――ヒトサライが『人攫い』って一般名詞に落ちつく。それ”も”分かる」

佐天「んでは一体何が?」

上条「以上を踏まえて『いじん』の話は昭和中期ぐらいにあったんだろ?」

上条「実在したかはともかく、現実に犯罪があったのかもさておき。概念としては存在していたと」

佐天「ですねー」

上条「分からないのはここからだ――なんで”今”、学園都市でその名前が出たんだろうな?」

佐天・初春「「はい?」」

上条「なんつったらいいのかな……」

白井「言われてみればおかしな話ですわね。一体『どこ』で判断してそう考えるに至ったのか、と」

上条「だろ?」

佐天「あのー、宜しければあたし達に分かるようにですね」

白井「少しお待ち下さいな、うってつけの例が……ありました、の」 ゴソゴソ

佐天「あぁ錠剤型のお菓子ですね。お好きなんですか?」

白井「えぇお姉様といつ何かあっても――って何を言わせるんですのっ!?」

上条「(……今、自らゲロった気がするんだよ、俺は)」

初春「(白井さんも、これさえなければ人格者なんですけどね-、えぇはい)」

白井「婦女子たる者、口臭を気にするのはエチケットとしては当たり前ですの!えぇもう一般論ですが!」

上条・佐天・初春「「「ハイソーデスネ、シライサン」」」

白井「棒読みが気になりますが……まぁ置くとして――このお菓子の名前、お分かりですの?」

佐天「フリス○?ミンティ○?」

白井「答え合わせは致しませんが……ではどうしてそう思ったのでしょう?」

佐天「形がそれっぽいから、ですけど」

白井「そうですわねー、『形が似ているから』――つまり『形状という共通項』を見いだした訳ですのよ」

初春「そりゃーCMガンガン流してますし、間違えようがないと思いますけど」

白井「で・す・が!中には――わたくし達の親の世代であれば、これを『ラムネ』と答える方の方が多いと思いますの」

白井「昔からこういう錠剤型のお菓子はありますし、知識としてはラムネの方が先ですので」

佐天「まぁ……おじいちゃんだったら言いそうですよねー」

白井「話を元に戻しますけれど……同じように『それ』を見たと致しますの」

初春「現段階、不確定名『いじん』さんですね」

白井「人間、誰しもがよく分からないもの、はっきりしないものを見た場合、記憶の中から一番近しいモノを探し、当て嵌める事で認識するですわね」

白井「佐天さんであれば、今二つの商品名を出し、そのどちらかだろうと」

佐天「あー……はいっ!なんとなく分かりましたよっ!」

初春「要は、その、不確定名『いじん』を見た方が、どうしてまた『いじんと呼び始めたのか?』のが納得出来ない……と、上条さんは仰ってるんですかー」

上条「そうそう。白井も言ってたけどさ、夜道でコソコソやってるヤツ見たら、普通は『あ、変質者だ』って思うよな?」

上条「あんまり怪しいようだったら即通報されるだろうし、そうなったら白井達の出番だっつーのに、そんな話は上がってない」

佐天「いや……それはどうでしょうか?」

初春「佐天さん?」

佐天「もしあたしが見つけたら実況しながら探しに行くと思いますし、そうじゃなくてもやっぱりオカルト的な解釈したりしちゃいますよ、きっと」

上条「初春さん、やっぱこの子反省してないみたいだから、後で説教頼む!」

初春「まぁ、なんとなくそうだと思っていましたけど……」

佐天「待って下さいっ!あくまでも例えですよ、例えっ!」

白井「わたくしはあまりオカルト的な事は存じませんけれど、その、この間『スレンダーマン』を取り上げてましたわよね?ARISAさんと」

佐天「はい」

白井「仮にその『学園都市のいじん』的な存在が居たとして、果たして見た方は『いじん』とは認識されないのではないでしょうか?」

白井「同じような人を攫ったりする怪異であれば、より年代の新しいオカルトだと解釈するのが自然な筈……かしら?」

上条「『都市伝説だからそんなもん』――って逃げ道はあるんだが……なーんか腑に落ちない。納得出来ない」

上条「見たヤツはなんでわざわざ半世紀以上前の、それも散々ネタバレしたような妖怪だか怪人の名前出して来たんだよ?」

初春「そう言われれば気になりますけど……でも、実際には誘拐事件の類も起きていませんし」

上条「……そうなんだけども――まぁ、取り敢えずは分かったよ。佐天さん、ありがとうございましたっ」

佐天「あーいえいえ。趣味でやってるようなモンですのでお気になさらずっ!」

上条「お礼はそのウチに、何かの形で」

佐天「いえですからっお礼なんてとんでもありませんっ!」

佐天「『”学探”のセカンドシーズンやりてぇなーとか』、『どっかにパシれるカメラマン居ねぇかなー』なんて全然思ってませんからっ!」

上条「佐天さん、キミ段々いい性格になってくるよね?どこで憶えたの、その腹芸?」

初春「あのー、ご歓談中にちょっと宜しいでしょうか?」

上条「楽しい要素は皆無だったが……はい?」

初春「上条さんは何か事件か、事件っぽいものを追跡されているんでしょうか?」

上条「それは……」

初春「困っている方をお助けするのはわたし達のお仕事ですし、なんでしたら”個人的”にお手伝いしても吝かではありませんよ――ね、白井さん?」

白井「……不本意ではありますけれど、ま、お仕事ならば仕方がないですの」

白井「ただし!決してあなたのためにしてるのではありませんの!勘違いなさらないで下さいましね!」

佐天「白井さん、ツンデレのレベル高いですよねっ!」

白井「本心ですのっ!」

上条「まぁまぁ、二人の厚意――」

白井「違います!職責を果たすためですわ!」

初春「わたしは厚意ですけどねー」

上条「――は、まぁ有り難いんだが、今の所は大丈夫だと思うよ」

上条「なんつっても被害者ゼロだし、仮になんか変な奴が居たとしても、それだけで逮捕してもいいって事にはならないだろうし」

初春「犯罪を未然に防ぐのもお仕事の内ですが」

上条「あぁ心配ないって!危なくなりそうだったら直ぐに泣きつくから!」

白井「笑顔で『女の子二人を危険に巻き込む』発言がクズクズしいですの……!」

――風紀委員 第177支部前

上条「さって、どうすっかな」

佐天「次はどうしましょうか、ボス?」

上条「そうだなー、まずは腹減ったしメシでも食って行こうか」

佐天「あ、でしたらあたしいいお店知ってますよ!『安い!早い!マズい!』をモットーにしたラーメン屋さんがですね」

上条「マジで?それただの客単価安くしないとやっていけないだけの店じゃないの?」

佐天「そのマズさがいつしか病みつきに!……なる、前にみんな逃げ出すと評判です!」

上条「待って?ねぇ待とうか佐天さん?」

佐天「はい?」

上条「まず誰がボスだ」

佐天「じゃヤ○?」

上条「事件の真犯人でもねぇよ!てかあのゲームやった事ないから犯人の名前以外誰も知らないし!」

上条「ていうかキミ帰ったんじゃ?」

佐天「あ、いえなんかまた面白そうな事に首突っ込んでそうですし、あたしもいっちょ噛みしようかな、と」

上条「シ、シテナイヨ?ウン、キノセイデスヨネ、キット」

佐天「でっすかねー、どーにもあたしの勘がなにやら有頂天なんですが!」

上条「いや、だからね?君はたった今それを自制しようって散々叱られたんだよ?分かってる?」

佐天「わかりませんっ!」

上条「よーし素敵な返事だなっ!嘘でもいいから少しぐらい善処する姿勢を見せて欲しかったが!」

佐天「んー……?」 ジーッ

上条「な、なに?」

佐天「少し迷惑そう――ですか?」

上条「……さぁ?」

佐天「……でしたらあたし、今回は自制しますよ。茶化していいお話じゃないみたいですし」

上条「……ごめんな。噂の事調べて貰ったのと一緒に、埋め合わせはいつかまた」

佐天「ですかねー……あ、そういえば調べたいジンクスがあったんで丁度いいかも!」

上条「ジンクス?どんなの?またしょーもないの?」

佐天「いえいえ、今度”こそ”きっと一緒に行けると思いますよ」

上条「ふーん?」

佐天「――『遊園地のジンクス』ってご存じですか?」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

そういえばミサカさん、あのあとどうやって帰ったんだろうね。
ボロボロジャージいっちょで得意の電磁力ビル伝いすると、新手の都市伝説になりそうなんだが。
カミやんに無理やり服を買わせに行った、ってのも見たいシチュエーションだけど。

乙!!

前々から気になっていたんですけど、ここでの学探は何回で終わったんですか?

佐天さんは不定期に学探をやっているみたいですけど

おお、乙!!

ハウルの動く城やってた フロリスとハウルって似てるよね

>上条「一年前の話を持ち出すのもアレだけど」

あれ、この話って上条さん2年生なの、か……?

>>379
ミサカ・プロト(ドリー)がクローン第一号だとして、食蜂さんはプロジェクトの総括としての役割を期待されていたのでは無いかと
エクステリア使って木原幻生さんがミサカネットワークを掌握したように、今の打ち止めさんの立ち位置”だった”んでしょうかね
で、あれば鎌池先生の――というか、恐らくは学園都市側が”食蜂”という名前を与えたのは理解出来る気がします

一年で急激に成長(空気抵抗フラット→コアンダ効果発生)という特徴はEUの東欧(ギリシャ~アルバニア~クロアチア)辺りの印象、でしょうか
(それよりも東だともっと高背で成長してもモデル体型になる事が多く、西だとやや豊かになる)
金髪金瞳ですし、日本人の可能性の方が低いかもしれませんね

そんな事よりも大覇星祭の時、みさきっつぁんの体操着の下は何を着(以下自粛

>>380
上条「ツッコミの心は母心!ボケを流さずきちんとフォローするのがお仕事です!」
レッサー「ていうか上条さん、この長編でアドバイスする以外はあんま役に立っていませんよね?」
レッサー「アホどもを各個撃破したのは我々ですし、セレーネに至ってはアリサさんが泣き落として決着付けましたし」
上条「お、俺は別に悔しくなんてないし!むしろツッコミが俺の本業だし!」
(ラブコメを書いている筈なのに、いつの間にか大喜利になっているのもよくある話。今回はかなり控えめになっていますが(※除くS天さん))

>>381
ありがとうございます。いつもごひいきに

>>382
マタイ「使えるか、と訊かれればそれは”否”と答えるのが佳かろうな」
マタイ「さりとてその答えが正しいかと更に問われれば、それもまた”否”と答えるのが真摯だと言える」
マタイ「嘘を吐くのは悪であり、また誠を話すのは善である。それがこの世の理であるが……」
マタイ「ならば誠を以て嘘を吐くのは、さりとて悪だと言えようか?」
マタイ「……」
マタイ「――誠実に答えるとすれば、それはもう『使った』のだよ」

レッサー「『新たなる光』の名の下に集えよ、戦士」 ~闇、海より還り来たる~
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658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/03/17(火) 10:53:31.04 ID:VSp3WVA00
(~前略~)

老人「『継続して流れ続ける力』を打ち消すのは不可能。よって常在型の大規模術式には膝を折られねばならんと」

上条「でもレッサー達が起きてるって事は……ここは安全なのか?それともそもそも夢の中にまだ居たりするとか?」

レッサー「前者ですな。『教皇の結界(ハイエロファントグリーン)』をジジ――そちらさんが張って下さいましたし」

(~後略~……アホみたいに小ネタをぶち込んでいますので予めご了承下さい。
……いやまぁ真面目に原作を考証すれば、不完全ながらもフィアンマの『右手』の加減無し攻撃を食らい、
瀕死のまま市街地には被害を出さなかったので、やはり『教皇級』の防御術式は有しているでしょう。
……ホント?ベネディクト猊下ストーンズでも歌うんですか?)

――学園都市モノレール内 夕方

上条「……ふー」

上条(あぁ疲れた超疲れた……なんかもう、あのツッコミで喉を枯らす悪夢が再現されそうでね、うん)

上条(新シリーズやるっつったけどさ、基本あれ企業好感度ガンガン下げるステマとテンションで乗り切る番組だしなぁ……)

上条(……まぁでもちょっと癒やされた感がしないでも。大声出してツッコんだからスッキリしたとか?)

上条(感動する映画見て号泣すると気分転換になるような……まぁ、悩んでるばっかりでも仕方が無いしな)

上条(てかアリサに呼ばれて行ったのに、最後は放置されるって一体……!)

上条(一応……アリサさんも『死人』に噛んではいるんだし、俺が白井達に聞きやすいように気を遣ってくれたのかも?)

上条(いや-、それはないわー。アリサだけだったらともかく、シャットアウラさんからは殺意しか飛んでこなかったもの。もう少しで物理攻撃も)

上条(アリサの彼氏は大変だよなっ!なんかこうモヤっとするけど、今は深く考えないでおこう!きっとそれがいいぜ!)

上条「……」

上条(モノレールは音も無く――リニアだし窓もなく遮音性も高い――進んでいる)

上条(いつもだったら、そろそろ異様に早い終電の時刻だし、俺が座れるスペースなんてない筈なのに)

上条(今日に限っては車内ガラガラ、なんかイベントでもあったんかね?ま、ありがたいけども)

上条「……」

上条(……さて、現在の情報を整理してみよう)

上条(とは言っても進展はゼロ。進展がないのを確認したのが進展……いかん、進展言い過ぎて頭痛くなりそう)

上条(まぁ『何事もなかった』ってのは悪い話じゃない。むしろ俺にとって――フレンダには朗報だろう)

上条(あんま良い言い方じゃないが、その、あー……『被害者』らしき人物はいない。少なくとも風紀委員に話が持ち上がるようなレベルでは、だけど)

上条(コレが『実は人がこっそりいなくなってましたー!』的なオチだったら、俺は神様だってぶん殴ろう)

上条(推理小説で密室トリック使うのはいい。古典とは言え今もよく使われてるしさ)

上条(でもその解決方法が『実は合鍵ありましたみたいテヘペロ』的な感じだったら、最悪だよ)

上条(……ま、現実的に可能性を完全に否定すんのは難しいんだが……フレンダが”こっち”へ来てから一週間ちょっと。実際には10日ぐらい?)

上条(『I need you!』をカマしていればもっと早く事件になってるだろうし、限りなく低い可能性だって話だわな、うん)

上条(だからフレンダは安全だし、誰からも排除されることはない――)

上条「……」

上条(――と、納得出来るかはまた別か。人間はそういうモンだし、それが当たり前だ)

上条(……ま、『最悪のシナリオ』に驀進してるような気配はない。一安心ではあると)

上条「……」

上条(ただ……不安要素は、ある。それも明確な形になって出て来やがった)

上条(それは『いじん』の存在だろう)

上条(佐天さん曰く、『10月にコート着て』たんだっけか?……あ、詳しく訊くの忘れてたか……)

上条(変質者的な事も言っていたし、多分ガタいの良いヤローの話だろうし。関係はない……と、思いたい。そうだなぁ……)

上条(仮に、仮の話だが、ウチの新しい居候が似たようなシチュになったとしたら――)

フレンダ(※脳内の想像)『トリックオアトリートって訳よ!うがーーーーーーっ!』 バサァッ

上条「……恥女?」

上条(ある意味人畜無害――と、までは言わないが、決して変質者みたいな言われ方はしないだろう。なんつってもちっこいし)

上条(都市伝説系でコート来た人、つったらやっぱり上背のある人のイメージ……か?)

上条(口裂け女だったらまた別だが――あれ?)

上条(てか昨日、昨日の夜!見てるじゃねぇかコート着た変質者!)

上条(わざわざ俺んチまで送ってくれた柴崎さん!いつもお疲れ様ですっ!)

上条(まさかとは思うが……『黒鴉部隊』の人達見たって話じゃねぇだろうな?まさかそんなオチも嫌だよ!)

上条(学園都市は色々なバカがいるから、どっかのスキルアウトがギャング化して、おそろいのコート用意してお散歩の可能性も否定は出来ない……!)

上条(もしくは『中二っぽいコート買ったんだけど人前に着てくのはちょっと――あ、良い事思い付いた!』的な話だったらどうしよう……)

上条「今までの『学探』の方向性からして、どう考えてもオバカなオチが待っているとしか……!」

老人「隣に座っても構わないかな?」

上条「あ、どーぞ――って」

上条「車両、ガラッガラなのに、なんで――」

上条(――て、人が増えてる?前の車両との連結に二人、後ろには……三人)

上条(少し離れた所にも――その、全員がこっちを見ている……!)

上条「あんたは……」

老人「感謝するよ――というか」

マタイ(老人)「”久しぶり”だな、上条当麻君」

――モノレール車内

上条「あぁどうも……でも」

マタイ「”セレーネを退治して以来”だが、壮健そうで佳きかな」

上条「です――ね、はい。そっちもお変わりないようで」

上条(実は昨日俺を誘拐したばかりなんだが……マタイさんの連れている人らの手前、”そういう事”なんだろうか)

上条(全員が外国人で、何つったら良いのか……あぁアックアみたいな雰囲気の奴と、ルチアみたいなのが半々)

上条(中には俺を睨んでいるとしか思えないヤツも混じってる……何なんだ、こいつら?)

上条(車両を物理的にだか魔術的にだか、人払いしたのもきっと――)

マタイ「変わりがない、というのは少々間違いであるのだが……君は、学校の帰りかね?」

上条「えぇまぁ、そんなよーな、そうじゃないよーな感じです。はい」

上条(『携帯を以前のへ戻しに行ったら、知り合いがテレビに出てて、ツッコミをしにタクシー拾って駆けつけたらスルーされて、風紀委員に任意同行を求められました――』)

上条(――なんて、言えないっ!どんだけ素敵な人生なんだよっ!)

マタイ「……何か顔芸が物凄い事になっているのだが……まぁ時として若人は悩む事も佳いであろう」

上条「その一言で流されるのもアレなんですが……」

マタイ「とは言え、悩むばかりでは解決しないだろう。なんだったらこの老人に訊かせてみるつもりはないかね?」

上条「……はぁ」

上条(マタイさん……なんか嫌な雰囲気だな。この人の性格上――なんだかんだで超武闘派――サバっと言いそうな感じなのに)

上条(……つー事は、コイツらと関係があるのか?多分護衛かなんかだろうけど、立場上あんまり話せない、みたいなの)

上条(だとすれば最初の”久しぶり”も納得が行くが……さて)

上条(昨日は俺を強制的に引っ張ってまで『死人』を解決して欲しい、と依頼したのに今日は進捗状況はおろか、その話すら振ってこない)

上条(そうすると昨日の話は内緒であって、ここで遭ったのも偶然……いやいや、そんな偶然は)

上条「……」

マタイ「どうかしたかね?こう見えて意外と人の相談を受ける立場なのだよ」

上条「うん、知っ――」

パキイインッ……!!!

上条「――て、る?……何?」

マタイ「――止せ。そして下がりたまえ」

女「ですが!」

マタイ「彼は我が友人である。友と喋るのに何の気兼ねが居るものか」

女「ソイツは異教徒です!それも学園都市の能力者!」

マタイ「お前は、お前は私にこう言わせたいのか。それを望んでいるのかね」

マタイ「――『神は、善なる者にも悪なる者にも、分け隔てなく祝福の恵みを与えてくださる』と」

女「……っ!」

マタイ「全員下がりなさい。今の私に護衛は不要だ」

男「しかし――」

マタイ「自ら手を伸ばさぬ相手には慈悲を与えぬのか?……それは傲慢の大罪と知るが佳い」

男「……失礼しました」

ウィーンッ

上条(マタイさんの護衛はマタイさん”だけ”に頭を下げ、隣の車両へと移動していった……が)

上条(殺気が飛んでくるんですが!割とマジなのがねっ!)

マタイ「……済まない。正式に謝罪しよう」

上条「あ、いえ!別になんともなかったんで!」

マタイ「本当に?」

上条「ていうか俺も悪かったですし!マタイさんや……その、あっちの人らが怒られるのも、何か、何か違う気がします」

マタイ「ならば今のは何もなかった、という事で」

上条「はい、それでお願いします」

マタイ「暗殺術式を向けられて、しかも許すとは佳い性格をしている」

上条「ちょっと待てよテメー?今何つった?あ?」

マタイ「佳い佳い。友人であればそのぐらいは言うであろうな」

上条「今のは流石にちょっと……てか、今の人達は」

マタイ「私の”護衛”だな。何事があろうとも私を護ってくれる優秀な魔術師達だよ」

上条「その割には……なんか、妙にピリピリしてるような感じだったけど……」

マタイ クイクイッ

上条「ん?」

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上条(マタイさんが人差し指と親指合わせて輪っか作って、それをくっつけてる……メガネ?目?)

上条(……あぁ『視てる』って事か。てかユーロスターん時と同じシチュね、おけおけ)

マタイ「日本は『カゴメカゴメ』という唄があっただろう?それと同じさ」

上条「それって――」

上条(目隠しした子供の周りで、他の子達がカゴメカゴメって手を繋いで回る)

上条(その歌が終った時、『うしろのしょーめん、だーれ?』と誰が背後に居るのかを当てる遊び……だが、歌詞自体は陰気だ)

上条(傍目には集団で一人を取り囲んで居るようにも見える……て、事は)

上条(今の連中、マタイさんの”護衛”も兼ねてるけど、もしかしたら見張り的な事もされてる、のか?)

上条(昨日の話でも暴走がどうとうか言ってたし――あん時に居た、ドラキュラっぽいじーちゃんは居ないけど)

上条(それで俺の所まで来たのはどうしてだ?『死人』関係の話を切り出さないって事は、護衛連中には聞かれたくないんだよな、きっと)

上条(怪しまれるのを承知で来た意味は……何かのアドバイスをしてくれんのか?探りに来ただけなのかも?)

上条(そもそもマタイさんと護衛の関係はブラフで、俺を信用させるためにしている、とか……)

上条(……あークソ!こういうのは苦手だ!てか向いてない!)

上条(要はアレだろ?俺がマタイさんを信じられるかどうか、って話だろ?)

上条(だったら答えは決まってる!)

上条(あの夜、俺”達”が最期までアリサを見捨てられなかった時、世界を助ける機会をふいにしてまで助けようとした時!)

上条(なんだかんだで助けてくれた相手を信用しない訳がねぇだろ!)

――モノレール

上条「あー……その、ですね」

マタイ「ふむ」

上条「最近変わった、というか何つったら良いんでしょうか――そう、拾ったんですよ!猫っ!」

マタイ「……ふむ?」

上条「どこへ行ったら分からないみたいだったし、仲間とはぐれたみたいなので、つい」

マタイ「猫……そうか、猫は佳いモノだよ」

マタイ「ローマでも何故か野良猫が増えすぎてしまってね。彼らを使って観光客を増やそうとする動きがあるぐらいだ」

上条「言われてみれば、イタリアに入ってから異様に猫を見たような?」

マタイ「まぁ勿論。殆どが飼い猫ではないため、食餌やフンの被害などで割に合わない事になっているそうだ」

上条「あー……まぁ、そうでしょうね。日本でもご近所同士で揉める話はよく聞くし」

マタイ「だが、生き物とはそういうものであろう。価値があるとかないとか、割に合うとか合わないというものでもない」

マタイ「パンとワインだけで、生きていくには然程不自由は感じんが、たまにはステーキも食べたくなるがね」

上条「十字教は食のタブーってないんでしたっけ?」

マタイ「旧約に従ってカシェルを守る者が居れば、そうでないと言う者もおる。現教皇猊下が色々としでかしてくれているようだが」

上条「あんまり日本人も人の事は言えないような……」

マタイ「外つ国の同業他社の……まぁ、少しばかり顔が広い者の一意見として言わせて貰えるならば、だ」

マタイ「Meiji Restoration――明治維新の際、多くのブディズムの神官達が還俗したのだが、地方都市では『これで肉も食えるし妻も娶れる!』と喜んだ記録も残っておるな」

マタイ「時代の流れと共に世俗化するのはどこも同じ。イコノクラスムだった話もありうるが」

上条「それじゃ、今の――あーっと、なんて言ったら良いんだろな、こう」

マタイ「どこの国の聖職者も生臭い事かね?」

上条「人が濁してんだから察して下さいなっ!」

マタイ「中世辺り、教会は日本で言う”Estate Steward”の役割を果たしていたのだよ」

上条「すいません。そんなお仕事の人居ないと思います」

マタイ「ジトー?」

上条「あぁ、地頭」

マタイ「広い土地を管理しそこからの収入を得る仕事だな。時としてトラブルに見舞われる場合も増え、武装していった」

上条「それが日本の武士の走りだって言われてるけど……教会も?」

マタイ「正確にはその土地土地を治める貴族や豪族の下につき、保護を得ていた――ケースもあり」

マタイ「またその領主や貴族そのものが教会であった事もしばしばである――が」

マタイ「大事なのはその当時、『教会は教会だけの収益だけでは成り立たなかった』事なのだよ」

マタイ「よって政治とは距離を取れる所の話ですらなく、むしろ余程の暴君でもない限り、教会は彼らの行為を肯定し続けてきた歴史がある」

上条「それは仕方がないんじゃないですかね。やっぱりその当時は」

マタイ「そう言ってくれると有り難い……さて、現代の話だ」

マタイ「現代であれば教会にせよ、新興の宗教にしろ、節度を持てばそれなりにやっていける」

マタイ「生臭い話だが、経済的に独立しているため他者からの干渉を受けずに済む。まさに自由を謳歌している訳であり、結構な事だ――が、しかし」

マタイ「勘違いで善意と虚飾で舗装された地獄への道を、ただ邁進する様は滑稽である」

上条「どういう意味?」

マタイ「プロテスタントがカソリックから、つまり古い権威主義からの脱却という美辞麗句を並べるのは勝手だ」

マタイ「それは否定出来ないし、権威があったのもまた事実の一側面ではあるが……同時に」

マタイ「プロテスタントへ改宗した君主が、まず最初に行った事はカソリック教会の財産の没収」

マタイ「そしてスイスのジュネーブやベルギー、ドイツなどで多くの教会がプロテスタントの略奪に遭っている」

マタイ「……ある意味で言えば、今の自由と平等至上”教”も、旬が過ぎたのかも知れんが」

上条「さっきから立場的にギリギリな事言ってねぇかな?かなーり危険な気がするんだけど」

マタイ「まぁ年寄りの愚痴ぐらい聞いてくれても罰は当たらんよ――で、猫の話だったかな」

上条(少し雰囲気が変わったような……?あっちの奴らが言われて嫌な事を言ったせいで、盗聴が止んだ?)

マタイ「猫、猫と言えば――『ウルタールの猫』という話がある」

上条「うるたーる?」

マタイ「この世界のどこかにあるウルタールの街では一つの法がある。それは『何人も猫を殺すは罷り成らぬ』と」

マタイ「その奇妙な法が出来たのには理由があり……そう、昔々ウルタールにはある老夫婦が住んでいたのだ」

マタイ「二人の名前は伝えられていないが、二人は猫を嫌っていた。いや、憎んでいたと言った方が正しいであろう」

マタイ「何故ならば老夫婦は自分達の敷地へ入る猫を、悉く手にかけていたのだから」

上条「……うわぁ」

マタイ「街の住人は自分達の飼っている猫達を愛してはいた。しかしその風変わりな老夫婦を表だって責める者はいなかった」

マタイ「老夫婦を憎む者は多く居たが、彼らを下手に刺激すれば対象が猫以外へ移りかねない……と、でも考えたのだろうな」

マタイ「そもそもウルタールの住人達は、彼らの飼う猫達がいずこから来たのを知らず。そういう所も無関心に拍車をかけてしまっていた。だが」

マタイ「だがある日の事、ある旅人が訪れ、彼が去った後には忽然と猫が消えてしまっていた」

マタイ「住人達は驚き、怒り、動揺し、誰が猫達を連れ去ったのかと言い争った」

マタイ「曰く、旅人が犯人である。また曰く、いや老夫婦の行為がエスカレートしたのだ、と」

マタイ「そうしている内に日は暮れ、そしてまた昇る」

マタイ「すると、何事もなかったかのように猫達が帰って来た」

上条「……少し、ハーメルンの笛吹き男に似てるような……」

マタイ「ウルタールの住人達は安堵し、それから一週間程が経った後、ある事に気づいた――うん?」

マタイ「”一週間”という下りで動揺した気配が伝わってきたが、何かあったのかね?」

上条「べ、別に何でもないですよ?うん、全然全然っ!」

マタイ「ならば佳いが――ウルタールの住人達は、あのおぞましい老夫婦達の姿を見かけないと」

マタイ「猫達への被害がなくなるのは佳い事であるが、さりてと放って置くのも出来ぬ。ならば誰か様子を見に行こう――と、そこで彼らが目にしたものは」

マタイ「――白骨化した老夫婦の姿であった」

上条「……」

マタイ「そうしてウルタールの街では猫を傷付けてはならぬ、という法が出来たそうだよ」

上条「フィ、フィクションですよね……?」

マタイ「そうだとも。ラブクラフトの創作に過ぎぬ」

上条「で、ですよねーっ!だと思ってた!」

マタイ「オリジナルの話は今語ったように旅人はキャラバンではなく、一人旅――というか、我が友であるリィ卿だな」

上条「――はい?」

マタイ「他に猫の話は……『シュレディンガーの猫』か」

上条「『観測すると結果が確定する』……つーかそれ科学サイドの話じゃ」

マタイ「確か量子力学の思考実験だったかな。不思議な話だと思わないかね?」

上条「ぶっちゃけ虐待だと思いますが」

マタイ「背景はさておくとしても、勇気は必要である」

上条「勇気?」

マタイ「時には猫が死ぬリスクを負ってまで確認する必要がある――さて、果たしてそれは勇気だと言えるだろうか?」

上条「言える――と、思います」

マタイ「何故だ?」

上条「だって箱の中に入ってんのは屍体かも知れない、ません、よね?だったら、その……」

上条「『中には屍体が入ってるって”現実”』を受け止める必要がありますから。それには勇気が必要かな」

マタイ「然り。あぁそれは然り――然れど答えはそれだけではない、とも私は考える」

上条「と、すると?」

マタイ「箱を開けず、そのままにしておくのもまた勇気が必要ではないかね?」

上条「……」

マタイ「事情を確定させず、敢えて曖昧なままに留めておく事で最悪を避けられる。それは無責任なようでいて、酷く勇気を必要とする行為ではないかな?」

マタイ「下手をすれば中で惨憺たる有様になっているかも知れないのに、僅かな可能性を諦めず行為だと言える」

上条「……でも、それは……中で猫がケガしてたり、弱ってたらヤバいんじゃないかって」

マタイ「続けたまえ」

上条「……それが辛い事であっても、欲しがってる答えじゃなくても」

上条「どんな結果であろうと……俺は、俺達は」

上条「きちんと受け止めて、いかなくちゃいけない。そう思う」

マタイ「――そうだな。口で言うのは常に易しいものである」

上条「……っ!」

マタイ「人は弱い、そして強い」

マタイ「目の前の現実を受け入れぬのは愚か――だがそれは決して、弱さと繋がるのではない」

マタイ「諦めず、従わず――現実すらも”受け入れない”のは強固な信念に則ったものであり、弱者のそれとは一線を画する」

マタイ「……そんな愚か者が居たからこそ、死霊魔術などという巫山戯たものが出来たのだからな」

上条「……」

マタイ「佳い。それもまた佳いであろうよ。白や黒だと結論づけずに、グレイの道を選ぶのもまた人生と言える」

マタイ「前に進まず、かといって後退もせず、足踏みを続ける時間もあって佳かろうさ」

上条「……すいません。無駄足になっちゃって」

マタイ「無駄な事など何一つないさ。何一つとして」

マタイ「この世界は全ての物に訳があり、全ての事には意味がある」

マタイ「もしも無駄があるのだとすれば、それはきっと見えてないだけだ」

上条「見えてない……?」

マタイ「見るのには必ずしも目を使う必要はなく、はたまた聞くにも耳を以てすべし、と定められているのでもない」

マタイ「見えずとも知る事が出来、聞こえずとも識る事は出来る」

マタイ「目が開いていようと視ようとしない者がおり、耳で聞き取れるのに塞いでいる者もおる」

マタイ「とても悲しい事だが、それもまた佳いのだ。人が選びし道ゆえに……さて」

上条「行っちゃうんですか?」

マタイ「有意義な時間であった。ではまた逢いたいものだ――”近い内”に」

上条「……大丈夫でしょう、きっと」

マタイ「ならば佳いが……あぁそうだ。これは個人的なアドバイスだがね」

マタイ「『我思うが故に我在り』。デカルトのコギト・エルゴ・スムは知って……居なさそうだな」

上条「悪かったなコノヤロー!日本語で喋って下さいっお願いしますっ!」

マタイ「高圧的なのか卑屈なのか分からん態度だが……ま、『この世界全てが虚偽だとしても、そう疑う自身の”我”は存在する』という事さ」

マタイ「私も友人からの又聞きなもので詳しくない。が、こうも解釈出来よう」

マタイ「『思考しないのであれば、それはもう人である事を捨てている』と」

上条「えっと……?」

マタイ「箱の中の猫の話だな」

マタイ「仮にもし居たとすればの話だが、その猫は大人しく箱の中で死を待つだけの存在であった方が佳いのかな?ただ座して大人しくするだけの」

マタイ「運命とやらが決まっていたと言われ、はいそうですかと素直に己の生死をあっさり受け入れる――それは死んでいるのと何が違う?」

マタイ「私はそうは思わない。例えは力なき存在であったとしても、死の瞬間まで足掻いて足掻いて、惨めで無様な格好を見せる――」

マタイ「――それが『生きている』という事ではないだろうか」

上条「……それは」

マタイ「うむ?」

上条「それ、当たり前じゃねぇかな?」

上条「誰だって、つーか死にたい奴なんて滅多に居ないだろうし」

上条「中二拗らせてそう構えてる奴だったとしても、いざなんかあったら死にものぐるいで足掻くだろ、フツーは」

上条「てかなー……俺の場合、金も力もコネもないただの学生だし。人様に自慢できる所があるとすれば諦めの悪さ?」

上条「運命なんてクソッタレだし、今更そんな話されても分かってた」

上条「こっちは産まれた時から特大の不幸抱えてんだ!意地で幸せになってやるぜ!」

マタイ「……ある日本の小説でコギト・エルゴ・スムを聞いた猫は、君と同じ感想を抱いてこう言った」

マタイ「『人間は長い歴史の中でそんな当たり前の事しか思いつかない愚かな生き物だ』と」

上条「スゲぇな設定だなその猫!?……猫ねぇ?そんな小説あったっけ?てか名前は?」

マタイ「――”まだ無い”」

――上条のアパート 自室

上条「たっだいまー……」 ガチャッ

フレンダ「……」 グッタリ

上条「……フレンダ……フレンダ!?」

フレンダ「……」

上条「お前、なんて分かりやすい姿で倒れて――床、じゃなかった床に落ちてるチラシの裏にはダイニングメッセージ……!?」

チラ裏【……オナカ、ヘッタ……】

チラ裏【……鮭缶と鮭缶と鮭缶と鮭缶が食べたい、わ、け……】

上条「これは――謎は全て解けた……ッ!」

上条「まず現場は密室ではなかった!それは何故か!」

上条「それは朝俺がラッキースケベを引き起こしたせいで、鍵閉めるのを忘れた上、どっかのバカが閉めなかったせいだと考えられる!」

上条「そして現場に残されたダイニングメッセージ……一見すると、ただの子供がお母さんに宛てたショートメールっぽい文面だが、これには大きな謎が隠されていた!」

上条「それは――」

上条「……」

フレンダ「……」

上条「……手洗って、うがいしてこよう……」

フレンダ「――ってスルー!?こんだけ引っ張っといてスルーする訳かっ!?」

フレンダ「人が折角振ったのに!つーかヒマでヒマでしょーがなかったからどんなお出迎えしようか迷ったって言うのに!」

フレンダ「あんたは麦野かっ!?あの残虐超人ですらツッコミはきちんとしてくれたって訳なのに!」

上条「ノッた俺も俺だが、こんだけ無駄にネタを仕込むんだったら別の事に生かしやがれ!いつもツッコミばかりだったから、ボケれて新鮮だったがな!」

フレンダ「あぁ後”ダイニング”じゃなくて”dying(ダイイング)”ね?”dining”は食事って意味な訳であってさ」

上条「し、知ってたよ!わざとであって計算だし!……てかお前さ」

フレンダ「な、何よ!?出てけって言うんじゃないでしょうね!?」

上条「いや、言わないけどさ。そうでなくって、腹減ったんだったらメシ食えばいいだろ?」

上条「米と炊飯器はあるし、近くにコンビニも――あぁ現金は持ってないんだっけか」

フレンダ「自炊できたらこんな騒ぎにはなってない訳だと思うわよね、うんうん」

上条「女子力の無さを誇ってどうする……あれ?でもこっちのキッチンに空の鍋が転がってんだけど」

フレンダ「あ、それが聞いてよ!メイドちゃん見た訳!メイドちゃんっ!」

上条「メイド?何言ってんだよ、メイドさんなんてホイホイ歩いてる筈が……ん?メイド”ちゃん”?」

フレンダ「え?隣に住んでて、『おすそ分けだー』って言ってた訳だけど?」

上条「……あ、ごめん。あれはそういう生き物だから、気にしたら負けだから」

上条「――ってお前!?出たのかよ!?」

フレンダ「あれ?ダメだって言われなかった訳よね?」

上条「そりゃそうだけどさ!……あぁクソ!女連れ込んだと思われる!しかもこんな合法が違法かギリギリの奴を!」

フレンダ「あんた、まだ殴られ足りない訳?あ?お?ん?」

上条「――そうだ!お前そん時なんつった!?一応危険がピンチの立場だったら上手く誤魔化してくれたんだよなぁっ!?」

フレンダ「え?」

上条「え?」

フレンダ「あー、うん!大丈夫!そこはちゃんとしておいたから!」

上条「……ア、ソウナンデスカー。スゴーイデスネー」

フレンダ「だから心配ない訳だよ!あは、あははははははははははっ!」

上条「キャラ崩れるぐらいキョドってんだが、具体的にはなんて?」

フレンダ「『暫くお世話になると。ケミジョーの姉です』って!」

上条「バカじゃねぇの?なぁお前バカじゃねぇの?」

フレンダ「言い方!?あたし頑張ったのに!とっさに取り繕うと頑張った訳!」

上条「だって繕ってねぇもの。お前がやってんのは傷口に塩塗るどころか、縫合面を無消毒のカッターで開いて重曹ぶち込んでるようなもんだもの」

上条「俺の名前がケミジョーじゃないのは今更ツッコまないけど――『姉』?お前が『姉』?」

上条「せめてそこは妹ぐらいに留めておくべきじゃね?」

フレンダ「そうよっ!こう見えても良いお姉ちゃんやってる訳だし!」

上条「歳は……まぁ最近ロリババアも多いし、なんとかフォローできるけどさ!」

フレンダ「……出来るんだ?すっごいわねー、日本」

上条「流石に幾ら何でも人種までは厳しい……うん、厳しいな」

フレンダ「あ、そう言えばねー。午後にもう一人お客さんが来た訳」

上条「客?平日の昼間に?てか舞夏はいつ来たんだよ」

フレンダ「メイドちゃんは実習がどうとかで午前中――で、もう一人の子はヒルナンデ○見てたら、ガチャって」

上条「ガチャ?合鍵持ってんのか?」

フレンダ「スッゴイ可愛い子でね!ねぇあんた彼女いないって言ってたのに!」

上条「残念ながらいねーよ!……いや、でも誰?どんな人?」

フレンダ「んーとねー、こう、髪は黒くてロングのハタチ前後?もしかして高校生ぐらいにも見えた訳よね」

上条「誰だろう……?ポニテだったら神裂かもだが、ロングの知り合いは……先輩か、妹さんか?」

上条「メイド服着てなかったか?もしくはセーラー?」

フレンダ「……ここ、そんなにメイドさん多い訳?どっちも着てなかったけど」

上条「他に、他になんか言ってなかった?つーか何の用かも聞かなかったのかよ?」

フレンダ「あ、聞いて聞いて!それが何か怖かった訳なの!」

上条「ふーん?どんな風に?」

フレンダ「それがいきなり鍵開けて入ってきたから、『あんた誰よ!?』ってあたしが聞いたら、『あなたこそ誰ですか?』って」

上条「うん」

フレンダ「『上条当麻の姉ですけど何かっ!?』って言ってやった訳なんだけど、そしたら……」

上条「……うん?」

フレンダ「その子がね、『あらやだうふふ、トーヤさんってば私の知らない所でトーマさんにお姉さん作っちゃったのかしら』って」

上条「父さん逃げて!今すぐ逃げてェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!!?」

フレンダ「なんかブツブツ言ってた訳、『子供に責任はない。あのクソ親父は殺す』って。『暗部』の人だった訳かな?」

上条「テメなにしてくれんだぁぁっ!?何してくれてんだよ!?」

上条「お前のその不用意な一言で!今頃父さんはDOGEZA中だよ!きっとな!」

フレンダ「あーやっぱり。子はパパのDOGEZAを見て成長し、またその子がパパになると、そのDOGEZAを見て子が育つ訳かー」

フレンダ「まさに一子相伝のDOGEZAって訳ねっ!」

上条「合ってるけ違ぇよっ!俺んチが絶えずDOGEZAする宿命を負わせないで貰おうかねっ!」

フレンダ「……合ってるの?合ってないの?どっちな訳よ……」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を
今度こそDOGEZA間違えなかったよ!


この上条さんなら既にDOGEZA極めてそうだなw

作者さんの描くSSでは、フレンダとの絡みが一番上条さんが活きいきしているように思う。
御坂やインデックス、その他に対する保護者のようなお節介的接し方ではなく、
格上の相手(麦野やバードウェイがそれにあたるか)への若干突っ張った態度でもない。
対等、もっと言えば同レベルの相手に対しての、容赦ない対応。

この世界でのフレンダさんがどんな末路を辿るか、興味は尽きないけれど。
願わくは、ハイタッチでもしながら終わる幕切れでありますように。

>>398
ありがとうございます

>>399
選択肢
1.買いに行かせる(上条さん罰ゲームルート)
2.どっかのホテルに確保している部屋で何故か一緒に着替え(薄い本ルート)
3.白井さんに連絡(現実的、ただしそこら辺のオッサンに見つかるよりもエロい目で見られるルート)
4.佐天さんに体操着を借りる(胸が少し余って屈辱ルート)
5.初春さんに服を借りる(ゆるゆ○展開で白井さんぐぬぬルート)
(※個人的には1をお勧めですが、流石にジャージの上だけじゃ厳しいでしょうし、現実的には3かと思われます)

>>400
佐天「あーアレですね。あたし的には一緒に遊園地行った記憶があるんですけど、憶えてない方が殆どでしたよ、はい」
佐天「と、いう割にはDVD(全七話)がきちんと発売されていたり、その中には収録されてたりもしてます」
佐天「更に更に言えば――まぁ当事者の一人が大切な所”だけ”をド忘れてしていたり、マジな感じのオカルトに驚愕しております」

>>401-402
こ・や・つ・め♪( ´・ω・)σ)Д`)

>>403-404
びみょーにダウナー系な所と変な所でヘタレるのも似ている……かも知れません。ビジュアル的に
……あぁそういや昔々、「ハウルの~」公開直後にメインヒロインの中の人が63歳で、18歳と90歳を演じ分けるのが話題になったんですよ
んで、そん時学校の先輩に「63歳が18歳の演技するのって無理ですよね?」と振ったら、
「俺にとっては18でも90でもババアだから」 キリッ
と真顔で返されて通報しそうになりました

>>405
ARISAの学園都市コンサートは『エンデュミオンの奇蹟』から一年後の設定となっております
なので最低でも二年生になってる”筈”

――???

刀夜『――はい、もしもし?当麻?』

刀夜『どうしたんだいこんな時間に――ってあぁ、こっちは昼間だから問題ないけど、そっちは――え、何?』

刀夜『緊急……?』

刀夜『……』

刀夜『……あぁ大丈夫。今のはちょっと感極まったって言うかさ』

刀夜『当麻は昔から一人で何でも抱え込む子だったろ?ウチのじいさん、東刃(とうは)じいさんに似たんだろうけど』

刀夜『それが今じゃ、こうやつて親を頼りにしてくれるだなんて、つい、さ?』

刀夜『――さ、何も!何も心配する必要なんてないよっ!このパパに言ってご覧よ!』

刀夜『相手がアメリカ大統領だって殴ってみるさ!ただし詩菜さんだけは勘弁な!……古い?ネタが古い?』

刀夜『で、何をすれば……え?』

刀夜『「家出中の女の子を泊めてあげてて、それが詩菜さんに見つかった?」……あー、タイミング悪いよなー、それは』

刀夜『ある意味、上条家の宿命みたいなもんなんだろうけどさ、当麻はそのお嬢さんとはなんでもないんだろ?』

刀夜『誤解であれば胸を張っていればと良いと父さんは思うな。やましい所がなければ詩菜さんだって分かってくれるよ!絶対に!』

刀夜『あ、でもやましい事はしちゃ駄目だぞ?緊急時とはいえ、嫁入り前のお嬢さんを預かるんだからそれ相応のおもてなしをしなさい』

刀夜『幾らラッキースケベだからといって、お風呂に突入したり、ギャグシーンでえっちぃ事しないように!』

刀夜『いいか、駄目だからね!絶対にしちゃ駄目だぞ!絶対だからな!』

刀夜『まぁ詩菜さんにはこっちからそれとなくフォロー――え?それだけじゃない?』

刀夜『……その娘さんが、へー……ウソ?とっさに?』

刀夜『それも仕方が無いんじゃないかな、うん。女の子のウソを許してこそ、男の度量ってモンだと――えっと何?』

刀夜『「当麻の姉」だって、言った……の?』

刀夜『……』

刀夜『……い、いや大丈夫だよ?全然全然?これっぽっちも動揺なんかしてないって!』

刀夜『思い出のマーニ○を百合映画だと勘違いしていたなんて、別にそんな事はしてないし――そんな話じゃないだろ!今はもっと大事な話さ!』

刀夜『その娘さん、髪の色は?赤毛じゃなかった?それとも夜みたいな藍色とか?』

刀夜『言葉は?語尾に「なのだぞ」とか、「ですもの」みたいな不自然なキャラ作りは?』

刀夜『他にはお母さんから手紙や証拠のブツは持たされてなかった?ない?ないんだよね?』

刀夜『……』

刀夜『や――なんだ、今のはあくまでも、そう!あくまでも確認作業みたいなもんでね!』

刀夜『刑事さんが「アリバイはありますか?」って一応聞くのと一緒で、父さん的には心当たりなんてね、うん、まぁまぁ』

刀夜『違う?そんなんじゃなかった?……え、それじゃどんな娘さんなの?』

刀夜『金髪の外人さん…………………………………………ぁっ』

刀夜『言ってないよ!「あっ」だなんで一言も言ってないさ!テレビの音でも拾ったんじゃないですかねっ!』

刀夜『いやでも……あれは……ノーカンだった……けど、酔ったあの夜……計算だと……』

刀夜『――うん、まぁアレだよっ!父さんは今!今外国だから!難しい問題は日本へ帰ってからでいいと思うな!』

刀夜『詩菜さんの愛がどれだけ深いと言っても!流石にイギリスまで届きはしないさ!いやもう決してフラグではなく!』

刀夜『何?……「誤解であれば胸を張れ、やましい所がなきゃ分かってくれる」……?』

刀夜『そんな訳無いだろう!そももそやましい所があるに決まってるじゃないか!』

刀夜『……いや違うんだ!やましい所なんてなかった!これっぽっちもなかったんだ!』

刀夜『ただ、あるとすれば――そう、それは……ッ!』

刀夜『――敵の商社の攻撃なん――げふっ!?』

刀夜『……』

男の声『――あー、もしもし?マークですが、はい、ターゲットの捕獲に成功しました』

男の声『ていうか的中率ハンパねぇですね。ボスのタロットで?……違う?女の勘?』

男の声『……いや別に何も?特に思う所は――いやいや、気のせいですってば』

男の声『「外堀から埋める」?……内堀どころか、城門にも取り付いてないのに、何言ってんだか――』

男の声『いや別に!あ゛ーーーーーーーっ!あ゛あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーっ!ノイズが入ってる、みたい、ですね!』

男の声『それじゃ速やかにターゲットの移送を始めま――あん?この携帯、通話してんな?』

男の声『相手は、SON――』

男の声『……』

男の声『――はいっ!こちらはいつも誠実・清潔・成功をモットーに働いている”明け色の陽射し”、”明け色の陽射し”で御座いますっ!』

男の声『上条さん疲れちゃったのかなー、うんそうだきっとそうにちがいない!今すぐ帰国させようっそうしようっ!』

男の声『「へ?」じゃないですよボス!このまま失踪されると私達は親の敵ポジに――』

プツッ

――上条のアパート・自室

上条「……ただいまー。つーかベランダは寒いわ」 ガラガラ

フレンダ「お帰りー。どうだった?あんたのパパ生きてた訳?」

上条「あー、うん。大丈夫、じゃないかな?きっと、そうだったら良いなー、的な」

フレンダ「ベランダからオッサンの断末魔の叫びっぽいのが聞こえて来た訳だけど……」

上条「ま、前向きに!百戦錬磨の父さんだったら乗り越えてくれる筈さ!俺達をそう信じてる!」

フレンダ「ていうかさ、てーかさ、思った訳なんだけどさ?」

フレンダ「あんたが『実は女の子と同棲してましたーてへぺろ』って謝れば、刃傷沙汰にならずに解決する訳よね?」

フレンダ「てーゆーうーかー。どっちみち穏当な終わり方を探すにしろ、事情を説明する必要はどっかで出てくる訳」

上条「――さって!終った話は終ったとして今からの話ですよねっ!過去を振り返っても仕方が無いからなっ!」

フレンダ「そんなにママが怖い訳?」

上条「……普段優しそうな人ほど……分かるだろ?」

フレンダ「あー分かる気がする訳よ。あたしの知り合いにも麦野って、ソトヅラだけがめっちゃ良い女がいる訳」

フレンダ「その中身は……もう!口で表現したらモザイクかかるぐらいのサイ×女な訳だし!」

上条「お前それは幾ら何でも言い過ぎじゃ……」

フレンダ「何よ!?あんたがあのデスザウラ○知ってる訳ないでしょーが!」

上条「そうだけどなっ!知り合い!そうっ俺の知り合いにも麦野さんっているんだよ!」

フレンダ「へー、どんな女?」

上条「オトナって感じで、落ち着いた人、かな?」

フレンダ「あ、じゃ他人って訳よね。ウチの麦野はサイ×な訳」

上条(よかった!この子も残念な子でよかった……!)

フレンダ「てゆーかさっきから言ってる訳なんですけど、お腹空いた訳ー」

上条「……お前、土御門さんチの舞夏さんが持ってきた鍋、てか寸胴――」 チラッ

フレンダ「オイ、何で今目線下げた訳だ?あ?」

上条「――デカい鍋なのに食っちまったのかよ?これ全部?」

フレンダ「美味しかった訳ー」

上条「……いやいや、人の胃袋は1.5リットルだし。この寸胴どう見ても5リットルは入る……」

上条「……いや待てよ?インデックスやアリサを考えたら、アリ、なのか……?」

フレンダ「おーなかへったー、おーなかへったー」

上条「……くっ!なんか最近メシ作りとツッコミの出番しかない気がするけど!」

フレンダ「ラノベの『一般人系主人公』にはよくある設定な訳よねっ」

上条「あー……なんかこう取り敢えず一人暮らししてるのがデフォみたいな」

フレンダ「よく思う訳だけど、超常バトルに巻き込まれる主人公ポジでさ」

フレンダ「『んなっ!?その能力にそんな盲点があったとは!?』とか、『観察力は一般人を超えている……なんて言う事だ!』みたいな」

フレンダ「どー考えても一般人程度の洞察力しか持たないフツーの子が、今まで年単位で異能使ってきた人らの裏をかくって矛盾ある訳よね?」

上条「止めよう、なっ?そこら辺を深く掘り出すと対岸の火事じゃなくなるから!」

上条「そういう話がしたいんだったら、今度小萌先生紹介するから!なっ!?」

フレンダ「ていうかさっさと作る訳ー。あ、コンビニでもいいけど」

上条「却下だ。今から作るから」

フレンダ「あ、じゃあたしはテレビでも見て」

上条「お前も手伝いなさい……あぁ炊飯器もカラかよ。しかも保温スイッチ入れっぱなしで、中のご飯粒カチカチになってんぞ……」

上条「あー……んじゃコンソメなら簡単に作れるだろうから、そっち頼むわ。俺は……米研いで……あぁこないだググった混ぜご飯でも作っちまうから」

上条「夜食うには重いが、余ったら明日に回せば良いし」

フレンダ「おけ!任せるって訳!」

上条「まずは釜洗っ――て?」

フレンダ「……」

上条「フレンダさん?」

フレンダ「な、なに?」

上条「どうして君は立ったままなのかな?嫌な予感がするんですけど、きっと俺の勘違いだよね?」

上条「もしかして――コンソメ、てかスープの作り方、知らない……?」

フレンダ「バ、バカじゃない訳!あたしだってそんくらい知ってる訳だし!」

上条「へー?」

フレンダ「うす塩味より好きだってメンバーの中でも意見が統一されてる訳なのよ、うんっ」

上条「はーいフレンダさん女子力マイナス1、誰もポテチの話してねぇよ!」

上条「罰ゲームとして俺が対インデックスさん用にとって置いた、”ぷっち○塩ジャケ”味をプレゼントしまーす」 ポイッ

フレンダ「こ、これは……ッ!?」

上条「ちなみに俺は食ってない。そして意外と悪くないらしい、らしいんだが」

上条「だったらスーパーの処分品コーナーで大量に積まれてて、しかも一向にハケる気配を見せない妖怪ウォッ○のかき氷シロップと並んではない筈だ」

フレンダ「――こ」

上条「こ?」

フレンダ「こんな良い物貰っていい訳!?」

上条「……あぁ、需要はあるのね。スッゲー狭い所に剛速球で」

――上条のアパート・自室

上条「……さぁフレンダ、持ってご覧?両手でしっかり――そう、そっと左手で握らないと」

フレンダ「やだ……スッゴイ太い訳……!」

上条「……ククク、こんなに真っ赤になってイヤラシイ子だ!」(ゲス顔)

フレンダ「これを……剥くの?」

上条「嫌だったら別に良いんだぜ?……でもそうなったら、いつまで経ってもこのままだけどな」(ゲス顔)

フレンダ「いや――それはイヤって訳!」

上条「なら続けるんだな!ほーら手が止ってるぞ!」(ゲス顔)

フレンダ「……」

上条「……」

フレンダ「……取り敢えず、何発か殴っていい訳よね?強めに行っとく訳か?」

上条「待つんだフレンダさん!?今のやりとりにはやましい所なんて一つもなかったぞ!」

フレンダ「ニンジンの皮剥いてるだけなのに、なんでプレイ的なものが始まったかのと小一時間」

上条「プレイってどういう事かな?もっと具体的に言ってくれないと分からないよ?」(ゲス顔)

フレンダ「歯ぁ食いしばる訳よ?」

上条「違うんだ!?なんかこう今のは流れでつい言っちゃっただけでさ!本来は俺はもっとジェントルなんだよっ!」

フレンダ「初日にあたしのハダカ写メしよーとしましたー!今朝だって……まぁ、うん!」

フレンダ「裁判に訴えたら確実にぶち込まれる訳よね、あんた」

上条「――はいっと、という訳でフレンダさんはニンジンさん切ってて下さいねっ!その間にボクは他の準備やっちゃいますから!」

フレンダ「……あんた、憶えておく訳よ?結構ヘイト溜まってる訳だからね?」

上条「一応拾い主なんで、そこら辺は考慮に入れてくれると助かるんですけど……」

フレンダ「わ・り・に!割に合わないって訳よ!?一体どこの世界に女の子拾った当日に写メ取ったりたゆんたゆんしくさる善意の人が居るって訳!?」

上条「……いやあの、たゆんたゆんではなく、もっと空気抵抗はフラットだったような……」

フレンダ「あ゛あ゛!?」

上条「たゆんたゆんだった!多分直後に殴られたから!混乱がパニックになってるんだと思う!」

フレンダ「うん、今も後遺症が残ってるみたい訳ね」

上条「ま、まぁ人助けは損得じゃないと思うなっ!そもそも俺はやましい所がないから!全っ然ないから!」

フレンダ「そうよねー、ヤラシイ所しかない訳よねー」

上条「――はいっ!てな感じで編集点を作りながらお送りしますけども!今フレンダさんにやって貰ってるのは」

フレンダ「ニンジンの皮剥きな訳ね。しかも二本分」

上条「俺はゴボウの土落とし。つってもタワシでゴシゴシ擦ってるだけだが」 ザリザリザリザリッ

フレンダ「はーい質問っ!しっつもーんって訳ー!」

上条「なんでしょうかフレンダさん」

フレンダ「今から作るのってコンソメスープと」

上条「混ぜご飯だな。こないだググって見て面白そうだと思ったんで、材料揃えてあったんだよ」

フレンダ「や、それは良いんだけど、ニンジンって皮まで食べられるんじゃないの?あんまお料理しないから分かんない訳だけど」

上条「……お前の場合、”あんま”っつーか”さっぱり”の間違いじゃねーか」

フレンダ「お、手元に手頃なキッチンナイフがある訳ねっ」

上条「おっとギャグでも人に向けるのは止めて貰おうか!こう見えて刺された事はまだ――」

上条「……」

フレンダ「……」

上条「――ま、それはそれとしてだ!」

フレンダ「……なんだろう。あんたの人生、これっぽっちも興味無かったんだけど、段々知りたくなって来た訳……」

上条「……神裂にシバかれた時にはノーカンだし、アウレオルスには斬られただけで刺さられてはない、よな?」

上条「火野はどうだったっけ……?」

フレンダ「うん、あのテンションが目に見えて下がってくるから、タオル投げようと思う訳なんだけど……だから質問だってば!」

上条「はい、どうぞ」

フレンダ「『コンソメスープは余った野菜と具材を適当にぶち込めば誰にも出来る簡単なお料理です!』って言ってた訳よね?」

上条「よっぽど危険物入れない限りは、まぁ平気。カレー程の万能性はないが」

フレンダ「だったらさ、このニンジンの皮とか入れちゃっても大丈夫なんじゃない訳かなー、と」

上条「あー……」

フレンダ「よくテレビでもやってる訳よね。『野菜は皮の部分に栄養がぎっしり詰まってる』みたいなの?」

上条「……何年前にだかな、スッゲー田舎の村へ体験学習しに行ったんだよ。名前忘れちまったが、ヒマワリと野菜が特産の」

フレンダ「田舎のテンプレみたいな訳ね」

上条「そこで教わった話だが『生で食える野菜でも、絶対に水で良く洗え』って」

フレンダ「ふーん?なんで?」

上条「それは残留農薬――って言いたい所なんだが、そうじゃない。洒落になんないぐらいの農薬使ってたら、絶対にバレるから”まず”そんな事はないんだ」

上条「問題は……まぁ、虫」

フレンダ「……うぇー……」

上条「……まぁ?百歩譲って誤爆するぐらいだったらば、まぁまぁ分からないでもないが……その、お腹の中に棲む方の虫がですね」

フレンダ「聞きたくない聞きたくない聞きたくないっ!?」

上条「……まだな!日本国内だけだったらば、流通経路も分かってるし、北に行って原野であんまバカしなければ問題はまずないんだが」

フレンダ「あぁ、野生のキタキツネと触れ合ってー、みたいな訳か」

上条「海外だと割とほったらかしにする場合が多くて、えっと……海外だと収穫”後”にも農薬使ったりするんだよ」

フレンダ「なんでそんなことする訳?流通乗せれば終わりじゃないの?」

上条「保管と管理じゃねぇかな?俺もよく知らないけど、まぁその、危ないんだと」

フレンダ「……そう言えば海外へ遊びに行く時、そっちの薬も貰ってた訳かー」

上条「一度冷凍にしたりきちんと洗浄すれば問題は”まず”なくなるから、神経質になりすぎる事はない。店で売ってるのは大抵大丈夫なんだが」

上条「虫以外にも病気の問題もあるから、もし疑うんだったら農家で体験農業でもしてみ?農家の人らは絶対に中途半端なままで食べたりしない」

フレンダ「……聞かなきゃ良かった訳……!」

上条「まぁ今のは極端すぎるし、あくまでも俺個人の意見としてだが……下手に冒険する必要はないと思うな、俺は」

フレンダ「あー……なんつーかそれで食ってるプロって訳だもんね」

上条「いや、俺が教わったのは村唯一のクソガキからだったけど――さて、理解して貰った所で!具材を適当な大きさに切って下さい!」

フレンダ「切り方、は?」

上条「乱切りで――あぁっと、ニンジンの細い方から、こう、回しながらトントンと」 トントン

フレンダ「乱切りっていう適当な大きな訳よね?火の通り悪くならない?」

上条「それも個人の好みだが、料理には歯ごたえってのも大切だと思う訳だよ、うん」

フレンダ「歯ごたえ?」

上条「例えばレトルトのカレーあるじゃんか?パウチの袋を沸騰したお湯へ入れて数分煮るとかっての」

フレンダ「ある訳ね」

上条「で、あれのシリーズに『○○屋さんが作ったカレー!』みたいな、ちょいお高い系のあるよな?家計に優しい曜○系じゃなく」

フレンダ「それもある訳よ」

上条「……でもさ、そういうカレーに限って、温めて袋開けてご飯にかけようかー、と思ったら」

上条「『なにコレ?具材ほぼ細切れじゃん、うっわー』みたいにテンション下がった事無い?」

フレンダ「……分かるっ!これだったら近くの洋食屋さんの方が絶対美味しいって思う訳!」

フレンダ「ちょっとぐらい『あれ?あんま美味しくないけど、お肉が大きいからまいっかー』みたいな!」

上条「だからガッカリ感を出さないためにも、メシ食った時にある程度の歯ごたえってのは必要だと思うんだよ」

上条「一応科学的にも乱切りだと斜めに包丁が入るだろ?だから表面積が増えて、実は火の通りが早くなるってマジックもある」

フレンダ「へー……お料理も意外と深い訳かー」

上条「だからこう、ゴボウ入ってる日本料理は大抵斜めに入ってるから、観察してみるといい――と、それでいいかな」

フレンダ「どう?上手いでしょ?」

上条「あー上手い上手い……で、切ったニンジンとジャガイモをレンジでチンして下拵えをして――」 チーンッ

上条「同じく切ったタマネギと一緒に鍋へ入れて、コンソメの素を落とす、と」

フレンダ「あれ?『野菜は煮る時間が違うから、タイミング変えろ』って家庭科で教わった訳だけど?いいの?」

上条「レンジで温めた時点で柔らかくなってるし、煮込み料理だから気にしない!……あ、でも流石にキャベツは最後に入れるけどな」

上条「そして刻んだベーコンを入れて、煮詰める……さて」

上条「今の間にもう一品。混ぜご飯の具だな」

上条「こっちも水で戻して置いた乾燥シイタケを絞って、取った出汁を火にかけます」

上条「その間にニンジンを千切りに、ゴボウはささがきにして、出汁を取ったシイタケも数ミリ間隔で切ってと」

上条「シイタケの味だけじゃ足りないから、みりん・醤油を2:3ぐらいの割合で入れて味を調えて」

上条「出汁が沸騰してきたら水とゴボウを入れて煮立てる――間に、ニンジンをまたレンジへかけて、別口でお湯を沸かす」

上条「待ってる間に油揚げを……二枚取りだして縦に切って、また重ねて5ミリぐらいに切り分ける」

上条「切ったらザルに上げて、上からお湯をかけて油抜きをする……しなくても良いんだが、した方が油っぽくなくていい」

上条「で、用意した具材を全部、混ぜご飯用の鍋へ投下して煮る。こんだけだ」

フレンダ「……」

上条「簡単だろ?」

フレンダ「えっと、一つ、言って良い訳?」

上条「あい?」

フレンダ「誰にでも一つぐらいは特技がある訳よねー」

上条「全国のお母さんに謝りなさいっ!このぐらいは誰だってやってるから!」

――上条のアパート・自室

フレンダ「美味しそうな匂いがする訳よねー。これ、後は待ってりゃいい訳?」

上条「コンソメスープにはキャベツもぶち込んだし、味見する以外は特にないな」

フレンダ「思った訳なんだけど――お肉、は?」

上条「コンソメに入ってますよ?」

フレンダ「ペラいのが四枚だけ……?」

上条「家計の事情でね、うんっ」

フレンダ「……」

上条「フレンダさん?」

フレンダ「……オレ、オマエ、マルカジリ」 グルルッ

上条「やだデジャブっ!?前にもこんなシチュあったような!?」

フレンダ「ニクニクニクニクニクニクニーーーーーーーーーーク!」

上条「ふなっし○のように肉要求しない!なんですかっ嫁入り前の娘さんがはしたないっ!」

フレンダ「ここんチの子になっていいから肉ーーーーーーーーーーーーーっ!」

上条「居候は一人で充分なんだが……はぁ、仕方がない」 ゴソゴソ

フレンダ「Wait!(オイッ!)」

上条「はい?」

フレンダ「いや、確かにあたしは肉食いたい言った訳ね?それは認めるのはヤブサメではない訳なんだけどさ」

上条「”吝か”な?ここで撃ち抜いてどうする」

フレンダ「あんたがガサゴサしてんのって、アレよね?もんぺちとかカリカリ締まってある戸棚、つーか猫の餌じゃない訳?」

上条「……ふっふっふ、甘いな!――コレを見るがいい……ッ!」

フレンダ「それは……まさかっ!?鮭缶……だとっ!?」

上条「こんな事もあろうかと、そうっ!こんな事もあろうかとだっ!」

上条「俺が万が一のためにもんぺちの間へ隠して置いたんだ!どうだ!」

フレンダ「……」

上条「……」 ドャァッ

フレンダ「い、いやあの、そんな凄いドヤ顔されても、『あ、うん、そーな訳ですね』ぐらいしか感想はないって言うか」

フレンダ「そもそも猫飼ってる訳?今お出かけ中な、わけ――ハッ!?」

上条「止めてくんない?その『喰ったのか!?』みたいなリアクション止めてくんないかな?」

上条「スフィンクスさんは実家へ帰ってる最中かな。付き合いで海外旅行……検疫、明らかにパスしてねぇだろうが」

フレンダ「てかそんな良いブツ隠してないでさっさと寄越す訳」

上条「いやいや、お前カンヅメそのまま食うのかよ?」

フレンダ「うん?カンヅメそのまま食べないでどうしろって言う訳よ?」

上条「料理の心は母心!ボケは流さずツッコミ入れるのはママ力!」

フレンダ「ちょっと何言ってるのか分からない訳ですね」

上条「見なさいっ!カンヅメそのままお客様へお出しするような、そんな子に育てた憶えはありませんわよっ!」

フレンダ「キャラ安定させた方がいい訳よ、うん?ママかお嬢の二択になっちゃってる感じだし」

上条「……てか、混ぜご飯のレシピについてた作り方なんだが――サケ缶を開けます」 パキッ

フレンダ「フレークになってるヤツな訳よね」

上条「これをフライパンへ乗せて、出汁・みりん・醤油を混ぜながら炒めます」 ジューッ

フレンダ「……なんか色が悪くなってる訳ですけど、ヘーキ?」

上条「水分が飛んで、緩めのペースト状になったら完成――疑うんだったら食べてみるか?」

フレンダ「あ、うん、それじゃ」 モグモグ

上条「どう?」

フレンダ「悪くはない訳だし、美味しいは美味しい訳だけど」

上条「味濃いだろ?それ単体で食うんじゃなくって、飯の上へ乗せんのがメインの使い方――と、飯も炊けたし、ご飯にしよう」

フレンダ「あれ?コンソメにキャベツ入れた訳だっけ?」

上条「さっきこっそり入れた。レンジで火ぃ通しても良かったんだが、どうしても水分が飛んでシワシワになっちまうからな」

上条「ポリ袋を使えば平気なんだけど、ぶっちゃけ面倒――さて、炊いたばかりの飯を平皿に盛ります」

上条「その上から混ぜご飯の具を乗せて、今作ったサケ缶の和風煮詰めをパラパラとかけて……と、出来上がりだな」

上条「どうだ!『あれコイツ主夫キャラなのに実は料理シーン皆無じゃんねー?』とか散々言われ続けてきた俺が!」

フレンダ「――美味しい……ッ!?」

上条「まぁな!シイタケの出汁と各種調味料と旬の野菜のお陰と言えなくもないが、日本にはですね、このような豊かな食文化が――」

フレンダ「――おかわりっ!」

上条「ちょっと待てテメー俺の分まで食おうとすんじゃねぇよ!」

――ニホンダルマ日本支店

鳴護「――たっだいまー……じゃなかった、お疲れ様でーす……?」 ウィーンッ

レッサー「お疲れ様ですアリサさん」

鳴護「どーにもなんか、『ただいま』って言っちゃいそうになるよねー。反射的にって言うか」

レッサー「たった二週間とは言え、濃密な日々でしたからな。まるで一年半以上も顔つき合わせていたような」

レッサー「……ま、ウチの連中も似たような感想だと思いますから、ここは『ただいま』でも構わないかと」

鳴護「……ん、ただいま」

レッサー「に、しても無事逃げてこられたようで何よりです」

鳴護「あーうん、レッサーちゃんが『前からお泊まりの約束があった』ってメールしてくれなかったら、きっと朝までお説教コースかな?」

鳴護「……お姉ちゃんの愛が重いよ!大事にしてくれるのは有り難いけど!」

レッサー「いざ出来た身内なんてそんなもんでしょーなー。ナムナム」

鳴護「……ていうか、『ただいま』だと同棲してるみたいだよね?」

レッサー「同棲、ですか?まぁある意味ツアーの間も同棲と言えなくもないかも知れませんが」

鳴護「いやぁ、前半はともかく後半はレッサーちゃん以外の子達も意識しまくりだっ――」

レッサー「まぁその話はさておくとして!さーてーおーくーとーしーて!!!」

鳴護「レッサーちゃん、芸風が段々当麻君に似てきたよ?」

レッサー「確かに私らの旅は同棲というよりかは、卒業旅行みたいな感じでしたね?日本だったら学校単位で行く感じの」

鳴護「あー、分かるような気がする」

レッサー「やっぱり好きな殿方と同棲となると……そうですねー、やっぱり憧れるシチュエーションってありません?せんせん?」

鳴護「えと、どうゆうのかな?」

レッサー「例えばですよ?私がこう他の結社をぶちkor――壊して帰ってくるとしましょう」

レッサー「あー疲れたなー、ご飯どうしようかなー、とか考えて帰宅すると――」

レッサー「――『あ、お帰り?フラン○野郎をぶち殺すお仕事、お疲れ様です(キリッ)』とか言って迎えてくれるんですよ!」

鳴護「分かる!すっごく分かる!」

レッサー「他にもですね?こう、お風呂に入っていたらつい間違って入って来られて?」

レッサー「まだ距離感がない二人は戸惑うんですが、最終的には――」

レッサー「――『じゃ、じゃ一緒に入りましょう、か?』」

レッサー「『お湯!地球資源が危険でピンチですからねっ!節約できるところから始めませんと!』みたいな感じで!」

レッサー「他にもですねっ、一緒にご飯を作ったり、マズいと評判の私の手料理をお見舞いしたり!」

レッサー「そして最終的には恥ずかしながらも同衾しちゃったりも!」

鳴護「……」

レッサー「……あれ?どうしましたか、アリサさん?」

鳴護「前から思ってたんだけど、お、怒らないで聞いてね?」

レッサー「あい?」

鳴護「レッサーちゃんって、結構乙女だよね?」

レッサー「……」

鳴護「グイグイ行くのは当麻君限定だし、意外って言ったら失礼もだけど、イギリスのためとか言いながらも、落とそうとしてるのは一人だ――」

レッサー「……アリサさん!」

鳴護「な、なにかな?」

レッサー「そんな口は――塞いでやりますよっ!」

鳴護「え!?ちょっと待ってこんな展開前にもあっ――んーーーーーーーーっ!?んんんーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

レッサー「んちゅっ、んーーじゅっ、ちゅぢゅ、ぢゅるるっ」

鳴護「だから舌入っ――助け、助け――」

ランシス「……」

鳴護「ヘルプっ!何とか――」

ラシンス パシャッ、ピロリロリーン

鳴護「」

ランシス「……『レッサーとアリサ、前戯中なう』」 ピッ

鳴護「待って!?その写メ誰に送っ――」

ラシンス「……お幸せに……」 グッ

鳴護「そんなキャラに合ってないほど力強く親指立てなくて良いから!レッサーちゃん引きはがすの手伝っ――」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を
ヒ、ヒロイン誰だっけ……?

ヒドイン

ためになるカミやんお料理教室。
野菜の皮はあえて剥かない派だった私としては、震えが止まりませんでした。

そう言えば、前にレッサーが作ってたミートソースも、あらゆるものが丸ごとだったよね。
あれ、ちょっとアレンジすればかなり美味しそうなんだけど、。

乙!

>>424
刀夜「DOGEZAの道は一歩から!まずは修羅場を何回も経験して場数を踏む所からスタートラインだ!」
上条「ちょっと何言ってるか分かんないですね」
浜面「諦めるな!DOGEZAを諦めたらそれで試合終了だからなっ!」
上条「……浜面、DOGEZAしてんの?まぁイメージ通りではあるが」
浜面「いや-それがだな、こないだバニーさんのお店へ行ったらさ」
上条「その時点でお前は滝壺さんに謝ってこい!バニーさんが居る時点で真っ当な店じゃねぇから!」
浜面・刀夜「「え?」」
上条「父さんも母さんに謝ってきなさい!てかそんないかがわしいお店に行くじゃありませんっ!」
刀夜「え、当麻は勘違いしてるんじゃないかな?バニーさんが居るからっていかがわしいとは限らないよ?」
上条「そ、そうなの?俺よく知らないんだけど」
浜面「あー大将知んねーのかー、そりゃそう思うわー、仕方がないわー」
浜面「バニーさんの実態も知らずに言うのは、良くないと俺は思うんだよな、うん」
上条「……いや、でもさ。今時バニーさんって居なくね?まだメイドさんの方がよく居るし」
上条「確かに某プレイメイト関連で、バニーさん=エロいイメージが先行しちまってる感があるよな」
浜面「あ、それじゃ今から行っとく?実はこないだいいキャ……店を見つけたんだよ!」
上条「おいテメ、今キャバって言おうとしなかったか?あぁ?」
刀夜「なら私もご一緒しましょうか!今後の参考のために!」
上条「父さんも食いつきがいいの止めてあげて!?そんな姿見たくはなかったよ!」
刀夜「当麻もどうだい?ここは一つ、男同士で親睦を深めるためにも」 キリッ
上条「そういう事なら行こうじゃないか」 キリッ
詩菜「あらあらうふふ、楽しそうなお話ですね?」
上条・刀夜「「コイツが主犯ですっ!!!」」
浜面「全責任放り投げやがった!?」


>>425
まず『多重人格(解離性同一性障害)ブーム』というものが一時ありまして。えぇ猫も杓子も、フィクションからノンフィクションまで取り敢えずオチは多重人格にしとけみたいな
私には与太話としか思えませんし、これが”病気”なのか”自己暗示”なのかで大いに揉めました。前者ならば無罪にもなり得ますから
(詳しくはビリー・ミリガン事件を参照。日本では刑法39条が該当、『39 刑法第三十九条』という映画も機会があればどうぞ)

ユングに学んだ概念ですが、人間にはペルソナというものがあります。これはキャラクターと言い換えても構いませんし、まぁ会う相手によって微妙にキャラを変える的な話です
例えば学校・職場でのキャラ、家庭でのキャラ、ネットでのキャラ、実家に居る弟(犬)をもふもふする時のキャラ、それぞれ少しずつ違うでしょう
人は誰しも”自分”が根っこにあり、その上に仮面のようなものを付けているようなものだと

では上条さんの場合、自分の命を狙った相手(黒夜海鳥)のあんな事やこんな事(意味深)で済ませたりもします。恐らく”年下”だから
アニェーゼさん以下同文。パンツ(以下自粛
インデックスさんや御坂さん辺りは”年下の被保護者”として極力(文字通り命懸けで)闘争を回避させようとします
逆にかんざきさんじゅうはっさいやオリアナ、オルソラ辺りには微妙に甘えたり、共闘したり、頼ったり(ねーちんパラシュート)をしてると

”以上の原作を踏まえ”た上で、フレンダさんと絡んだらどうなるか……まぁ”年下の友達枠”に収まると思っています
某かの戦闘で巻き込まれたのではなく、また命を狙い狙われた関係でもなければ、お互いに遠慮はないでしょうし
原作で佐天さん・初春さん達(日常の象徴)との関係が、何年か続いたらこうなるのではないか、とイメージして書いているのが本音です
(なのでやや対・佐天さんのツッコミを強め+遠慮なしにしている感じ)

――が、まぁそれはあくまでも”上条当麻から見たフレンダ=セイヴェルンのイメージ”であり、それもまたペルソナの一面でしかないという点です
どんな悪人でも家族や身内へ対しては優しいように、悪意100%だけの人間が居ないように、善意100%の人間もまた居ないでしょう
(と、言った所でスレの過疎っぷりが様々なモノを証明しているような気がしますが、まぁ星の数ほどある二次創作で一つぐらいはあっても構わないかと)

このお話ももう少しですが皆様どうかお付き合い下さい

上条「応援ありがとう!頑張ってパイタッチして終るようにするから!頑張ってな!」
鳴護「あ、あれ?今当麻君から邪なオーラが見えたような……?」
上条「読者さんが言うんだったら仕方がない!”Pai-Touch”するしか道は無い……っ!」
レッサー「”Hi-Touch”をあからさまに聞き間違えるフリをするのもどうかと」


【†尚、某所人気投票優待特典(フレンダ=セイヴェルン様)は今作で終了となります†】

――上条のアパート

上条「あ、ゴメン!ちょっと今から出かけてくる!」

フレンダ「……何言ってる訳?もうそろそろ寝る時間なんだけど」

上条「急用だから!助けを求めている人が居るから!」

フレンダ「あぁさっきのメール来てからソワソワしてみたいだけど、なんかあった訳よ?」

上条「『動画で撮影言い値で買うなう』……!」 カチカチカチカチッ

フレンダ「いいから落ち着け、ねっ?」

上条「落ち着け……?――お前よくそんな事が言えるなぁ!?できっこねぇじゃねぇかよ!」

上条「あのたゆんたゆんと将来のたゆんたゆんが夢の二大スターがたゆんたゆん共演するんだぞ!?これを見逃したら一生後悔するに決まってる!」

上条「例えるならばゴジ○とキングギド○が戦うようなもんだ……ッ!!!」

フレンダ「そいつら結構な頻度で戦ってる訳よね?」

上条「あ、ごめんな?先を急ぐからエメリッヒさんちのジ○さんは先に寝て――」

フレンダ「――せいっ!」 ブンッ

上条「あべしっ!?」

上条「……」 コテッ

フレンダ「……世話が焼ける訳よね、うんうん」

――深夜

上条「……」

上条「――ハッ!?」

上条「………………あれ?」

上条(真っ暗……あー……で、俺はベッドの上……?)

上条(ステキな夢を見ていたような……まるで仮面ライダ○とウルトラマ○が戦うような、そんな夢を)

上条(頭、つーか首が地獄の断頭○喰らったようにズキズキ痛むし……一体何があった?……つか夢?)

上条「……」

上条(まさか――また魔神セレーネの術式の中じゃねぇだろうな!?ワッケ分からんカオスな夢の中に取り込まれてるとか!?)

上条(そうだ……確かに思い当たる点はたくさんあった……!クソッ!どうして疑わなかったんだ!)

上条(だって常識で考えればおかしいだろ?道を歩いてたらビリビリに攻撃されるとか、謎の魔術師に誘拐されるとか!

上条(たまたま入った裏路地で女の子を拾うとか!そんな事は有り得ない!)

上条(仮に100歩譲ってそんな事があったとしても、普通は家になんて連れ込まない筈だ!どう考えても怪しすぎるからな、お互いに)

上条(そうだよ、こんなに奇蹟みたいな偶然なんて重なる訳が――)

上条「……」

上条(えぇと、落ち着け。あぁまぁまず深呼吸を) スーハースーハー

上条(俺が憶えてる内で一番古い記憶はベッドの上だった。女の子を守るために記憶を無くしちまって、それを気取られないようにって)

上条(その後は……女の子を守るために学園都市最強の能力者とステゴロしたり)

上条(女の子――あー、うん、年上のお姉さんを守るためにも何回も戦ってきた訳で)

上条「……」

上条(平常運転ですね、てか概ねいつもと変わりねぇだろ)

上条(相変わらずフラグが乱立した人生も、前と特に変わって気もしない……あれ?もしかして俺ずっと夢の中に居んの?)

上条(いやでもそうすると、ジェントルな俺が妙にエロい理由の説明がつかな――)

PiPiPiPi、PiPiPiPi……

上条(っと携帯が――あれ?どこ置いたっけ?) ググッ

上条(てかベッドになんかデカいの潜り込んでんな?犬?)

フレンダ「……ぐー……」

上条「……お前は――」

上条(うん、なんかそんな気がしてた。夕方まで散々ギャーギャー言ってたっつーのに緊張感ねぇよなぁ)

上条(佐天さんぐらいの子になんかしようって気は起きないが、まぁもうちょっと計回をだな)

PiPiPiPi、PiPiPiPi……

上条(起こさないように電話電話っと――ベランダ……寒いが、仕方がないか) ガラガラッ

上条(というかこんだけ騒いでんのに目を覚ます気配も無し……ちょっと羨ましい……)

フレンダ「……」

――上条のアパート・ベランダ 深夜

上条「寒っ!?予想以上に寒い!……えっと、つーかこんな深夜に誰だよ?」

上条「――シャットアウラ?なんでまた……まぁいいや」 ピッ

上条「『もしもし?』」

シャットアウラ『夜分遅く申し訳ない。緊急の用だ――とは言っても、今すぐにどうと言った話ではないが』

上条「『緊急――まさかっ!?』」

シャットアウラ『違う。アリサは”新たなる光”の所に泊っているし、今さっきメールを貰ったばかりだ』

シャットアウラ『だからもう少し手摺りから離れろ。お前の場合、またいつもの不幸で落下しかねないからな』

上条「『良かったー……あれ?』」

シャットアウラ『どうした』

上条「『なんでお前、俺がベランダに居るって知ってんだ?もしかして電波状況?』」

シャットアウラ『直接見てるからだな。見たくもないが』

上条「『……ストーカー!?』」

シャットアウラ『――ではお休み、起こして悪かったな』

上条「『ごめなんさいっ!ビックリしちゃったんで!こう、シャットアウラさんが突然変な事言うから!」

シャットアウラ『私もお前の監視なんてしたくはないし、むしろ×したいぐらいのなんだが……まぁ順を追って説明しよう』

上条「『というか俺の監視とアリサの安全ってどういう繋がりが……?』」

シャットアウラ『結論から言えばクロウ7が襲撃された』

上条「『……………………あい?』」

シャットアウラ『柴崎信長と名乗って、護衛兼ARISAのマネージャーをやってる男だよ。もう忘れたのか?』

上条「『いや知ってるけどさ!襲われた!?誰に!?いつ!?どこで!?』」

シャットアウラ『……昨日の夜か。お前を家まで送った後、定時信通信を入れた後から連絡が取れなくなった』

シャットアウラ『その事実に気づいたのが今朝7時。出勤して来ず、またこちらからも連絡が取れない』

シャットアウラ『持たせていた発信器に反応はあるが、多くの学区を行ったり来たり。車かそれに近い手段で移動しているのが分かったが、それだけだ』

シャットアウラ『よって「黒鴉部隊」は非常事態だと判断し、ヤツの発信器を探したんだが……』

上条「『……』」

シャットアウラ『クロウ7を見つけたのは個人タクシー、それもトランクの中だ。詳しく知りたいか?』

上条「『頼む!』」

シャットアウラ『お前は……』

上条「『何?』」

シャットアウラ『……別に……はぁ。それで細かな状況は省くが、どうやら一当てやって来たらしい』

シャットアウラ『義体の殆どは潰され、まぁ生きて”は”いるという状況だ』

上条「『大丈夫なのかよっそれっ!?』」

シャットアウラ『ヘブンキャンセラー、だか、カエルっぽい医者に預けた以上、死にはしないだろう』

上条「『……そうか。カエル先生が……でも一体、誰が……?』」

シャットアウラ『補足しておくが、”あいつ”は「黒鴉部隊」で最も優秀な、対人・対能力者の玄人だ』

シャットアウラ『護衛対象を引っつかんで逃げ出す事に置いては、アメリカ大統領のSPに比肩する技能を持つ』

上条「『褒めてんのか貶してんのか分かんねぇよ……』」

シャットアウラ『褒めているに決まっているだろ。暗殺だなんてそんなコストに合わない仕事、そうそう何度も仕掛けられるもんじゃない』

シャットアウラ『一度仕掛ければ成功失敗に関わらず、敬語レベルは格段に跳ね上がる。そうなったらもう二度目以降は無理だ』

シャットアウラ『従って、どれ程の組織であっても「これ以上はない」という準備を念入りにし、且つ出し惜しみせずに最悪の一手を選んでくるのは間違いない』

シャットアウラ『――が、その一撃を容易に回避してしまうんだ。これが優秀でなくて何という?』

シャットアウラ『というか、たかが一人を殺して世界が変わる訳もないんだが……まぁ、とにかくクロウ7はそこそこ優秀だった。私の次にな』

シャットアウラ『”クルマ”――多脚戦車の遠隔操作も可能で、対能力者戦用の訓練も積んだ――実戦に移したかは言わないでおくが――男が遅れを取った訳だ』

上条「『それは……相手がそれだけ強かったって事か?』」

シャットアウラ『大の大人一人を戦闘不能にするのにどれだけの”暴力”が必要だと思う?』

シャットアウラ『銃を使う、刃物を使う、拳を使う……あぁここは学園都市だ。異能を使うも足しとくべきだろうがな』

上条「『どれでも出来そうな気がするんだが、っていうか出来るだろ?』」

シャットアウラ『はっ!それこそ「どうやって」だよ!』

上条「『そりゃお前、こう不意を突いてガンって』」

シャットアウラ『義体化を進め、体の各所に対刃・対弾・対爆コートを埋め込んだ人間をか?』

シャットアウラ『背後からの射撃でも、注意していれば護衛対象を庇えるスキルを持つ人間をどうやって不意を突くんだ?あぁ!?』

上条「『……』」

上条(あぁ、成程。なんかおかしいと思ってたら――)

上条(――激怒、してんのな。いつかのように)

シャットアウラ『だがヤツも人間だ。一撃で無力化させるのも不可能ではない』

シャットアウラ『戦車を吹き飛ばすような爆発物を使ったり、周囲数メートルを吹き飛ばす無反動砲を使えばだが』

シャットアウラ『もしくは鉄をも易々と貫く、人サイズの溶断ブレードでもあれば可能だな』

上条「『……あぁなんか話が見えてきた。つまり、お前が言いたい事ってのはだ』」

上条「『柴崎さんをどうこうする方法はある。また用意も出来ない事ぁないだろう』」

上条「『けどいざ実行に移せば、大規模の攻撃にならざるを得ないし、そうしないと効果がない――筈、なのに』」

上条「『どこに行っても人だらけ、ましてや夜には人通りは少なくなるとは言え、俺のアパートの前で仕掛ける、ってのは不可能なのか』」

シャットアウラ『手がかりらしい手かがりすら残さず、あっさりとウチの社員を無力化した――が、逆にこれ”が”手かがりでもある』

上条「『それってつまり!』」

シャットアウラ『――あぁ”魔術サイド”の攻撃を受けたんだろうな』

――ベランダ

上条「『アリサは――って、お前がマネージャーとしてついてたんだっけか』」

シャットアウラ『付け加えるのであれば、学園都市で最も”魔術的に安全”な人間達と過ごしている。心配は……あまりしていないさ』

上条「『……そうすると』」

シャットアウラ『次に狙われるのはどこかのバカだろうからな。下校後からずっと監視させていた――ん、だが』

シャットアウラ『生憎釣り針にかかるのは中学生と中学生、あと中学生』

シャットアウラ『……』

上条「『な、なんだよ』」

シャットアウラ『……お前、どこかおかしいぞ?』

上条「『待って下さいよ!これには正当な理由があってだ!』」

シャットアウラ『理由?』

上条「『それは今――』」

上条(――かくまってる女の子の無実を証明するため――)

上条(――っては言えないですよね!どう誤魔化したら……)

上条「『……』」

シャットアウラ『もしもし?』

上条「『――じょ、女子中学生サイコー!』」

シャットアウラ『あぁ済まないが、そこからもう少しだけ前に足を進めてくれないかな?ほんの少しだけでいいから』

シャットアウラ『具体的には目の前にある手摺りを乗り越えろ、そして跳べ。きっと高く飛べるぞ?空はお前のモノだ』

上条「『やだなーシャットアウラさん、落ちたら死んじゃうじゃないですかー』」

上条(よっしゃ完璧に誤魔化した!引き替えに大事なモノを失った気もするが!……ん?待てよ?)

上条(このままシャットアウラ達に監視されてたら、フレンダの事バレないかな?あれ?バレてもいいんだっけ?……いやいや!)

上条(誰とは言わないが、嬉々として殲滅しそうな魔術結社を知ってる!少なくとも人畜無害かどうか、グレイの状態で知られるのはマズい……か?)

上条(だからっつって、柴崎さん襲った奴を放置するのもダメだけど……あ、そうか)

上条「『……あのー、もしもし?』」

シャットアウラ『墓には「生まれ変わるなら女子校の更衣室の壁になりたい」と刻んでやるから。ほら早く』

上条「『それお前埋めてるよな?遺体的なモノを猟奇的に処分するとそうなりそうじゃね――いやだからさ』」

上条「『俺を護衛――』」

シャットアウラ『監視。むしろ撒き餌だな』

上条「『――して、くれるのは有り難いが、それ多分俺狙いじゃないと思うぜ?』」

シャットアウラ『根拠は?』

上条「『最初から俺狙いだったら、柴崎さんに仕掛ける必要なくね?ほら、警戒されるだろうしさ』」

上条「『今お前が言ってたじゃん?二度目以降は警戒レベルが上がるって』」

シャットアウラ『それは……そうだが』

上条「『仮に俺狙いだったとしてさ。そうすると昨日の夜から今朝にかけて、俺は完全に無防備だった訳だ』」

上条「『その間に幾らでも仕掛けられたのに、向こうは何もしてこなかった。って事は俺が目的じゃないんだよ、きっと』」

シャットアウラ『可能性は……あるな』

上条「『あくまでも俺の推測だけどさ、不幸な遭遇戦とかそんなんじゃね?そう、道でバッタリ会って、つい!みたいな?』」

シャットアウラ『……お前に対しての示威行為ではないのか?知り合いに危害を加えるという類の脅迫』

上条「『だったらもっと露骨にアピールすると思う。一応は隠したんだろ――っていうかさ、柴崎さんの意識は?』」

シャットアウラ『数日以内には戻るそうだ』

上条「『素人意見でなんなんだが、だとすりゃ意識が戻るまでアリサとその周辺だけでいいんじゃねぇかな?』」

上条「『犯人捜しはそれからでも遅くはない――し、そもそもで言えば手かがりだって魔術師”かも知れない”だけ』」

上条「『それだけで探すのは難しいんじゃないかな、と』」

シャットアウラ『……正論だな』

上条「『俺もそっちの方から調べてみるけど、その、なんだ』」

上条「『やっぱり、俺が監視されてたらさ?その、そういう奴らも警戒するじゃんか?』」

上条「『心配してくれるのは有り難いんだが、今は優先順位を決め――』」

シャットアウラ『心配はしていない』

上条「『……た、方がいいんじゃないですかね。あとお前には優しさが必要だぞコノヤロー』」

シャットアウラ『はは!お前は冗談が上手いな!』

上条「『いやあの、ジョークを言ったつもりは――』」

シャットアウラ『分かったよ。それでは私はアリサの方へ行くとしよう。あー、清々した』

上条「『……ですよねー』」

シャットアウラ『では――あぁ、一応釘を刺しておくが』

上条「『あい?』」

シャットアウラ『確かにお前が狙ったのではないかも知れない。可能性としてはそうなんだろう。だが――』

シャットアウラ『――それでもこの街には”何か”が居る』

シャットアウラ『強度だけで言えば下手な現金輸送車よりも手堅い傭兵を、反撃だけでなく、非常通信すら入れる間もなく倒してしまう”何か”がな』

――プツッ、ツーッ、ツーッ、ツーッ、ツーッ……

――翌日 朝

上条「……」 トントントントントン……

上条(ネギを刻んで、豆腐へ包丁を入れて軽く引く。縦横数回、サイコロぐらいの大きさになったら良し、と)

上条(煮立った鍋に味噌を溶いて、一応味見……出汁入りのやつだから、お忙しい主婦の朝にも優しいですよねっ!俺は違うけどな!)

上条(一煮立ちすれば完成と。あーとーは……大量に炊いた飯があるか。つーか他には焼き海苔ぐらいしかないか)

上条(何つったらいいんだろな、こう、小さなビニールに小分けされてるタイプじゃなくて、折り紙を二回り大きくしたサイズのが10枚入ってるし……)

上条(……何故我が家にそんなブツがあるのかはさておくとして――きっと手巻き寿司大会を開こうとして忘れてた――これを使ってみよう)

上条(まずテーブルをよく拭いて、その上にラップを敷き、更に焼き海苔を広げる)

上条(次は飯を手頃なタッパーによそい、具材は……漬け物と梅干しと鰹節……?)

上条(キュウリの柴漬けを包丁で刻み、梅干しをほぐしてご飯に混ぜる。鰹節も入れてよくかき混ぜるっと)

上条(味を濃くしないでも充分に鰹の風味が効いてるから、醤油の量はお混みで)

上条(醤油を軽めに振ってご飯の準備は終わり、焼き海苔の上に広げていく。あくまでも均等になるように、てか熱が逃げるように、だな)

上条(……本来なら、広げるのは白米でカンピョウや納豆、卵焼きやサーモン等々、寿司用の具材を巻くのが普通なんだが……まぁ!ウチにはないですしねっ!)

上条(個人的にはツナマヨ+キュウリの千切りがジャスティス且つ家計にも優しいんだが!まぁまぁそれはさておき!)

上条(後は端っこから巻いていく……のは、難しくはない。別にスダレみたいなのを使わなくたって、フツーに巻けるわ) ギュッギュッ

上条(100均で売ってるは売ってるが……あれ、使い所が、うん。南京玉すだれゴッコする以外にはあんまり) ギュッギュッ

上条(でもこのままだと食べづらいし、何よりも太巻き一本は胃に悪い)

上条(なのでよく濡らした包丁で丁寧に輪切りにする……と。あ、少し崩れちまった)

上条(寿司酢使って、ある程度冷ましてからしっかりと握れば、包丁を入れてもそんなに崩れないんだけど、時間がない仕方がない、ナイナイばっかだな)

上条(とか考えてる間に完成。お手軽手巻き寿司(具無し)だ!やったね!)

上条(だがしかし問題があるとすれば、ゆっくり食ってる暇が無い事だ!味噌汁も飲んでる時間はねぇよ!……えっとラップラップ)

上条(適当に包んで、学校で食おう……あぁ半分は置いていくとして) チラッ

フレンダ「……ぐー……」

上条「……いい根性してやがんな、こいつ」 ツンツン

フレンダ「……にゃあ、何する……わけ、よ……」

上条「……」

上条「………………黒、だな。中々大胆な」

上条(アホな事やってないで、学校行こ……あぁ一応書き置きしくか)

上条(『お昼の分はチンして食べなさい。足りなかったらお金を置いていきますので、コンビニで買う事』……と)

上条(……そういやこの子は着の身着のまま放り出されてんだよな。悲壮感がこれっぽっちもないが)

上条(まだ数日、けどもう数日。そろそろこの先どうするのか話し合った方がいいか)

上条「……行ってきまーす……」 ガチャッ

カッカッカッカッカッカッカッ……

フレンダ「……………………にゃあ、かぁ」

――学校 授業中

小萌「――と言った感じで江戸自体の物流システムは大都市近郊に集中していたのですよー」

小萌「そのため海運システムが高度に近代化される必要に迫られ、東日本では江戸、西日本では堺が中心となりました」

小萌「というのも、全国各地から集められた年貢米を『物理的』に移送する必要があったためなのです。あ、ここ大切ですよ」

小萌「これらの年貢を運ぶ船は浦廻船と言われ、寄港するようになった各地の港がまた経済的に――」

上条「……」

上条(……シャットアウラの言ってた『何か』、なぁ?得体の知れない何かが居る――のも、まぁまぁ学園都市では日常な気がしないでもないが)

上条(今までのやりとり、佐天さんや初春さん達の話から推測するに”いじん”が『何か』に相当するんだろうが……でも、それにしてはタイミングがおかしい)

上条(時期的に考えれば『ショゴス』、正式名称”垣根の切れっ端(inバゲージで拾ったらしい)”の可能性はある。つーかそれぐらいしか思い当たらない)

上条(……けどなぁ、そうだったら矛盾するんだよなぁ、これが)

上条(所謂ホラー映画にありがちなクリーチャー像ってあるじゃん?こう、ハリウッドから学生自主制作ビデオまで、理由もなく人を襲うの)

上条(見境なしにやってればいつか必ずバレるし、そもそも人一人の痕跡を完全に消すってのは無理ゲーに近い)

上条(ましてやここは学園都市だ。失踪すれば風紀委員に引っかかるし、コワーイおじさん達の研究所行きが確定するだろう)

上条(逆にある程度の知能があったと仮定しよう。人並みかそれぐらいの)

上条(セレーネの一件で恨みを買ってるのは俺やアリサ達、その復讐に来た――ってのも考えにくい)

上条(思いつきでシャットアウラに喋った事だが、俺を探しに来てるんだったら柴崎さんを襲う意味が無い……あぁいや)

上条(意味を持たせようと思えば、『アリサの匂いがついていたから』ぐらいはあるかも知れないが、そこで立ち去らずに俺の部屋まで入ってくるだろう)

上条(そう考えると、殆ど思いつきで言った『不幸な遭遇戦』の可能性が高くなってくる)

上条(柴崎さんに攻撃される理由はないかも知れないが、『黒鴉部隊』だったら……どうなんだろう?恨みでも買ってるとか?)

上条(まさか『敵の魔術師の攻撃だ!』って可能性が本当に出てくるとは。あ、いや、今までのだってネタじゃないよ?いやマジで、うん)

上条(これがもし一方通行辺りの怒りを買ってボコられたとか、そういうしょーもないオチだったら救われるんだが……なんねぇだろうなぁ。今までの体験からして)

上条(なんにしろ『何か』が居るのは確実で、それが柴崎さんを襲撃したのも確定)

上条(普通の人間の能力”程度”じゃ不可能で、高位の能力者、もしくは魔術師の可能性がアリと)

上条(いやけどあのオッサン意外と人情派だから、女子供も選択肢に入る気がするわ。一発で無力化はされないだろうけども)

上条「……」

上条(襲われたのは昨日――今からすると一昨日の夜か、俺が丁度フレンダ拾った日だわな)

上条(あの夜は結構フラフラと出歩いてんだよなー)

上条(カブトムシ子さんを拾って家へ運んでから、海原の話を聞くのに一回。帰った時に居なかったから、浜面に連絡取りながら軽く探すので二回)

上条(俺狙いならチャンスは幾らでもあっただろうし、縁起でもねぇが)

上条「……」

上条(発見されたのは昨日。でも初春さん達は知らなかったっぽい。関知してなかったんじゃなく、知らなかったんだよ)

上条(それは柴崎さんが『暗部』の人間だから?裏の人間が被害者なら大騒ぎにならなかったのか?)

上条(それとも情報の伝達が遅いから、なのか?……うーん、分からん)

上条(都市伝説『いじん』と『何か』は同じなんだろうか?) カキカキ


いじん≒何か


上条「……うん?」

上条(都市伝説?『いじん』は都市伝説”だった”んだよな、昭和ぐらいの)

上条(だけど佐天さんが聞いたのは……”目撃例”か。実際に居たって言う)

上条(もしこの二つが同じものだとすれば、一週間前から『何か』は居たって事になるよな、うん)

上条(でもそれが人を……する、ような可能性は低い。何故ならば被害者が皆無だからだ――とは、思っていたんだが)

上条(『暗部』の人間だけが攻撃されてるんだったら、需要は満たせる……けども、そうしたらどんだけ『暗部』の人間ばっかだって話だよな)

上条(……うーん。『襲われて問題にならない層』……かぁ。どっかの紛争国や外部と隔絶された離島とかじゃない限り、難しいよなぁ)

上条(ましてやここは学園都市だし。白井みたいな能力者から、最新科学の痕跡調査まで使って分析するだろう)

上条(……と、すると『何か』は――)

小萌「――こーらっ!上条ちゃん先生のお話を聞くのですよ!」

上条「すいませんっしたっ!……あぁそうだ小萌先生」

小萌「罰として上条ちゃんはレポートを――ってなんです?」

上条「例えばの話なんですけど、先生が……あぁっとキャットフードが好物だとします」

小萌「猫ちゃんのお話ですかー?てか授業中になんでその話を」

上条「あぁそれじゃ猫の話で。一週間分のキャットフードを一日おきに出す機械へ入れて旅行へ行ったとします」

上条「でも、帰って来たらキャットフードには手を付けられていません。しかし猫は生きています。どうして?」

小萌「どうして、って……別の物を食べてたに決まってるのですよ」

上条「……え?」

小萌「猫ちゃんがどれだけ好きなのは分からないですけど、一つの食べ物を食べ続けてれば飽きもするんじゃないでしょうか?」

小萌「本当はよくない事なのですが、公園で猫ちゃんへエサをやってる方も時々見かけますし」

上条「猫……エサ……迷子の猫を探す依頼が――」

小萌「お家に猫ちゃんの出入り出来るドアがあれば、そちらからお出かけして」

上条「――なかった……ッ!!!」

小萌「あの、先生のお話聞いてますかー?振るだけ振ってといてスルーは厳しいのですけど……」

上条「ビリビリが引っかけに思いっきり食いついたのも、”暫く猫が居なかった”からか……!」

上条「『何か』を見たヤツが『いじん』だと思い込んだのも、喰ってたモノ原因!」

上条「人じゃなく――だったら大事になる事はない!精々が都市伝説のレベルで語られる話にまで矮小化されちまうのかよ!」

小萌「あの、上条ちゃん?授業中にハイパーモードへ入られてもですね、今はこう勉強しやがれって言うかですね」

上条「――先生っ!俺早退しますから後は宜しくっ!」

小萌「ちょっ!?話が唐突すぎて先生は置いてきぼりなのですよ!?」

上条「猫を探さないといけないんです!猫をっ!」

小萌「家出しちゃったんなら大変ですけど、それはやっぱり放課後に――」

上条「それじゃまたっサヨナラ!」

小萌「あ、こらっ!上条ちゃーーーーーんっ!?」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

乙。「考えてみればおかしかったんだ」の始まりかな?

乙!!!

「……にゃあ、何する……わけ、よ……」

は、フレメアの姉貴だからだと思ってたのにー!

小萌先生の歴史授業、受けたいなあ。

>>441
???「……出られるだけね、いいと思うんだよ。わたしは」
???「でもこう、もっと!もっといにしゃるひろいんの出番とかあってもいいかも!」
???「なんかこう、これだけはーれむが続いていると、ひろいん一人だけなのは隔離されてる感がするんだよ!」

>>442
あくまでも”極端すぎる例”と思って下さい
実際にスーパーで売られている野菜・果物に関してはきちんと洗浄はしているため気にする必要は全く無いかと
(野菜は収穫後直ぐ、果物は集荷場で選別する際にイモ洗い状態になります)
青虫一匹居ただけで大騒ぎになりますし、残留農薬もまた然りで、日本では全く馴染みはないんですけど海外では収穫後の野菜へ農薬を使います
というのも流通関係が発達して居らず、消費者のお手元へ届くまで結構な日数がかかるため、その間保たせるために
(冷凍・冷蔵コストの削減という意味合いもあるでしょうが、というか日本の流通網の速さは異常)
なので日本産はともかくとしても外国産のは絶対に皮を剥いて食べて下さい

尚、残念ですがあの料理はマジで実在します。しかも料理方法はほぼそのままです、えぇ残念ですが
アレに手を加えるとすれば、そうですね

1.材料をきちんと切る
2.料理をきちんと煮込む
3.完成したらきちんと皿へ装う
4.1~3の間、イギリス人を厨房に近づけない

以上4つを守ればオイシイと思います

>>443
ありがとうございます

――上条のアパート

上条「あ、ゴメン!ちょっと今から出かけてくる!」

フレンダ「……何言ってる訳?もうそろそろ寝る時間なんだけど」

上条「急用だから!助けを求めている人が居るから!」

フレンダ「あぁさっきのメール来てからソワソワしてみたいだけど、なんかあった訳よ?」

上条「『動画で撮影言い値で買うなう』……!」 カチカチカチカチッ

フレンダ「いいから落ち着け、ねっ?」

上条「落ち着け……?――お前よくそんな事が言えるなぁ!?できっこねぇじゃねぇかよ!」

上条「あのたゆんたゆんと将来のたゆんたゆんが夢の二大スターがたゆんたゆん共演するんだぞ!?これを見逃したら一生後悔するに決まってる!」

上条「例えるならばゴジ○とキングギド○が戦うようなもんだ……ッ!!!」

フレンダ「そいつら結構な頻度で戦ってる訳よね?」

上条「あ、ごめんな?先を急ぐからエメリッヒさんちのジ○さんは先に寝て――」

フレンダ「――せいっ!」 ブンッ

上条「あべしっ!?」

上条「……」 コテッ

フレンダ「……世話が焼ける訳よね、うんうん」

誤爆orz
>>464は無かったことに

――学校 廊下

上条(マズいマズいマズいマズい!自体は進展してない所の話じゃなかった!いつの間にか這い寄ってやがった!)

上条(『よく考えれば分かった事』――とは、言わない。言えないか)

上条(情報が錯綜している中で、全部の事案を結びつける立場に居たのは俺だ。少なくとも風紀委員、ビリビリの科学サイド)

上条(マタイさんや海原の魔術サイド……横の繋がりが皆無な以上、全貌を見渡せる人間は一人――俺しか居なかったって事だ)

上条(与太話に近い都市伝説や、風紀委員が暇なのは結構ですよねってのを結びつけるのは、どう考えても無理筋だろ!)

上条「……」

上条(ここまでは、そう”ここまで”は後手に回ってただけだ。最悪の被害はまだ出ていない……と、良いなぁ)

上条(何をすれば……取り敢えず裏取りか。俺の杞憂だったら楽なんだけど)

上条(初春さんか白井の電話番号は知ってる訳もなく、えっとどうすっかな?佐天さん経由でお願いする必要があるか) パカッ

上条(メールの文面は『緊急・初春さんに連絡取りたい』っと) カチカチカチカチッ、ピッ

上条「……」

上条(……初春さんの支部まで出向いた方がいいのかな?てゆーか風紀委員の仕事って、放課後だけ?授業中はしてないのか?)

上条(常識的に考えりゃ、俺ら学生達が学校に居る間は”やらかす”人間も減る筈なんだが)

上条(あーでも、そういう連中に限って学校サボって行動してっから、むしろ授業中の方がトラブルは多そうだよなー)

上条(てか今ふと浜面が脳裏をよぎったんだが、あいつどうやって生活してんだろう……?学生?フリーター?ヒモ?)

上条(女の子と同棲してる割には、まるで何年も何年も『待て!』を続けさせられた犬のようなオーラを漂わせている時が) ピピッ

着メロ『メールが届いたよっ当麻お兄ちゃん!どこの業者かなぁ?』

上条「……こんな着メロ入れたっけか――着メロ?返信メールじゃなく?」 ピッ

佐天『あ、どもっ!お疲れ様でありますっ!』

上条「『ごめんな佐天さんっ!緊急の用件で初春さんと連絡取りたいんだ!頼むっ!』」

佐天『あぁ大丈夫です!授業中でしたが、あたしの迫真の演技で切り抜けてきましたから!』

上条「『悪い!……一応、聞くけどさ、なにやったの……?』」

佐天『「あ、すいません先生っ!ちょっとプリキュ○に変身しないといけないんでサボらせて貰いますよっ!」と』

上条「『オープンすぎるなそのプリキ○ア!』」

初春『……あのぅ、それに付き合わされるわたしの身にもなって頂きたいと言いましょうか、えぇはい』

上条「『ゴメンナサイっ!心の底からゴメンナサイっ!今度何でも言う事効くから!それで勘弁して下さいっ!』」

佐天『え、マジでいいんですか!?ラッキー!』

上条「『君には言ってない……けど、まぁ一人も二人も一緒だからいいや』」

初春『それでご用件って何ですか?何となくここ最近の事と関係ありそうなのは分かりますけど』

上条「『あぁそれそれ。えっと……二つ、頼みたい。出来れば両方お願いしたいんだが、無理にとは言わない。つか言えない』」

初春『前向きに善処したくはあるので、言うだけ言ってみて下さいな』

上条「『一つめは……えっと、前に”迷子の猫探し”みたいな依頼受けたんだよな?ネタじゃなくて実際に?』」

初春『はい。最近だと一ヶ月ぐらい前でしょうかねぇ。定期的にご相談下さるおばあさんがお一人』

佐天『ちなみにあたしや御坂さんも一緒になって探したんですよ』

上条「『その人と連絡取れないかな?もしくは、えーっと、何つったらいいのか』」

上条「『放し飼いにしてるんだったら、出来れば住所的なものも知りたい。大体でいいから』」

佐天『もう一つはなんです?』

上条「『最初に”いじん”を書いた人のログ。出来れば直接会って話を聞きたい』」

初春『えぇっとどちらも難しい、でしょうかね。上条さんの主旨をハッキリして頂かないと』

上条「『うーん……』」

初春『というかここ数日風紀委員までお越し頂いているのは、どのような意図があるんでしょうか?』

初春『個人的に事件や事件の匂いがするのであれば、お早めにわたし達へ言って下されば適切に対処致しますので』

上条「『ですよねー、普通はそういう反応だよなー……』」

佐天『まぁまぁ、初春も上条さんも。話の全体像を言えとは言いませんから、せめてとっかかりだけでも何とかならないでしょうか』

上条「『ってのは?』」

佐天『何か、これこれこういう事件が起きてるっぽいんだけど-、的な感じで?』

初春『……本当は個人情報をお知らせするのは守秘義務的にNGなんですが……まぁ、それっぽい理由さえあれば』

初春『御坂さんが信頼されてる方ですし、わたしや白井さん――は、ちょっと微妙ですが、信頼出来ると思っていますから、はい』

上条「『ありがとう……あー、それじゃさ、最近の話なんだが』」

初春『はい』

上条「『ネコ、居なくなってないか?』」

佐天『……はい?』

初春『ネコちゃんですか?』

上条「『ここ一週間、俺の住んでる学区や、えっと……初春さん達の詰め所のある学区でさ』」

初春『言われてみれば、そんな気もするような、ですかねぇ』

佐天『あー……どうだったっけ……?』

上条「『それを前提に話を聞いて欲しいんだが、都市伝説”いじん”の話だ』」

佐天『おっ、話があたし関係になってきましたねっ!』

初春『信憑性がガクって落ちたんですけど』

佐天『初春、言いたい事があったら言って良いんだよ?ねぇ?』

上条「『こらこらケンカしないの――で、その”いじん”の特徴っつーか、性質みたいなので気になったんだよ』」

上条「『今もし語られる都市伝説、特に学園都市で流行るようなもんだったらばスレンダーマンやショ……ぉぉぉぉっがく、せい?』」

初春『なんでそこでJSの話になるんですか』

佐天『よっ、この「幻想殺し」っ!』

上条「『佐天さんは次顔合わせた時にお話あるから憶えておいてな?……いやだから、昨日も考えたように、何で今更昭和の遺物が出てくるんだろうってさ』」

初春『不思議な話もあるものですよねぇ、で終った話じゃないんですか?』

上条「『と、思ってんだけど……その、”いじん”って人攫いの他にも特徴あるよな?』」

佐天『――あ』

初春『ありましたっけ?――と、佐天さん?』

上条「『……そう、それだ』」

佐天『――”犬や猫を食べる”……ッ!!!』

初春『っ!?』

上条(その正体が『ショゴス』や『ザントマン』とは言えないわな。開示出来る情報はここまでだと)

上条「『……実際に、その不確定名”いじん”が犬や猫を食べているのかは分からない。つーか多分違うと思う』」

上条「『でも被害に遭ってるのが、そういう小動物だけだったら』」

上条「『それを見た人が都市伝説だと思っちまったら』」

佐天『……”いじん”って言われるでしょうねぇ』

初春『……』

上条「『……どう、かな?』」

初春『確かに、はい、えぇ確かに有力な情報だと思います。その、上条さんの言われた情報が正しければ、という前提であれば』

初春『小動物への虐待事件は、多くの場合人間へとエスカレートする傾向が強く、風紀委員が活動する理由にはなります』

上条「『そうか!だったら!』」

初春『――ですが、ですよ?話を最後まで聞いて下さい』

初春『まず前提となった”小動物への虐待or誘拐”がされているのであれば、そのネコちゃん捜しの依頼をされていた方はどうでしょうか?』

上条「『とは?』」

初春『自分の大切な家族が殺されたり、居なくなったりすれば、またわたし達を頼ったりするのではないでしょうか?』

上条「『あー……そう、だな。それは確かに』」

初春『その猫おばあさんは野良猫に餌をあげている方ですので……まぁ野良猫が居なくなった所で、他の方は気にしないとしても』

初春『そのおばあさんは誰よりも大騒ぎすると思います。どうでしょうか?』

上条「『……正論、だな』」

佐天『ぶー、初春の鬼っ!悪魔っ!高千穂っ!』

初春『いえあの、高千穂ってなんですか高千穂って……ではなく、話を最後まで聞いて下さいね、って言ったじゃないですか』

上条「『はい?』」

初春『上条さんの仰ったお話と推測は非常に独創的ではありますが、可能性としては有り得るでしょう』

初春『それに何より、もしも本当に”いじん”のような犯罪者が居たとすれば、彼もしくは彼女が人へと対象を変え、大事件になる危険性があります』

上条「『そうだけど……それが?』」

初春『なので”代わり”に聞いてきて貰えませんか?』

上条「『――へ?』」

初春『わたしは……今少し忙しいので代理として』

初春『今から住所や前回ネコちゃん捜しした時のデータを送信しますから、それを持って直接聞いてきて下さい――』

初春『――”風紀委員、初春飾利の代理”として』

佐天『……ウイハルン……ッ!!!』

初春『佐天さん空気読んで下さい。それと二つめのお話は一つめの結果次第という事で――』

上条「『ありがとう初春さんっマジ愛してるぜっ!!』」

初春『――え?』

佐天『あーあ……』

上条「『今から俺は学校サボ――抜け出してそっち向かうから!住所ヨロシク頼むっ!』」 ピッ

――電車内 昼間

上条「……」 ピッ

上条(初春さんからのメールに書かれた住所へ移動中。俺の他に客は居ないかと思ったが、結構居る。学生も含めて)

上条(だから悪目立ちもしてないし、補導される心配もないだろう)

上条(……さてさて。貰った住所は風紀委員177支部所、ぶっちゃけ初春さんと白井のヤサの近くの公園だった)

上条(そこで猫を飼っている――あーまぁ正確には公園で猫の餌付けをしているおばあさんが居るそうで)

上条(倫理的には……んー……良くはないんだろうがなぁ。増えるだけ増えた猫もそうだが、それ以上に猫のためにもならない)

上条(ずっと餌付けされてきた家猫が、いざ捨てられると自力で餌を取れず、そのまま……っていう話もある)

上条(ある程度地域単位で認められていれば、宮城の猫島みたいに観光名所としても使えそうだが)

上条(……まぁそんな人から風紀委員は猫探しの依頼を受けたんだそうだ) ピッ

上条(たまたま支部に来ていた佐天さんとビリビリも一緒になって探した結果、行方をくらました猫は廃ビルで子猫を産んでいた)

上条(そっから里親を探すのでも一苦労だったとレポートはシメている。大変な仕事だよなー、今度暇な時に手伝おう)

上条「……」

上条(い、今のはフラグじゃないんだからねっ!俺が風紀委員でドタバタするなんて未来はやってこないからな!恐らくは!)

上条「……」

上条(……バカな事考えてないで、今の内にやる事はやっておこう。つっても移動中だし出来る事は限られてる)

上条(昨日の夜、突然すぎて深くツッコムのをど忘れとしたけど、柴崎さんのカルテは手に入らないだろうか?)

上条(少なくとも、現時点で攻撃された被害者且つ生存である以上、なんかの方法で攻撃されてるのは事実で)

上条(不謹慎な話かも知れないが、柴崎さんが負った傷から『なにか』の正体を見極めたい)

上条「……」

上条(現段階で俺が最も可能性が高いと思っているのは『アレ』であり、『ザントマン』でもある)

上条(要は垣根の切れっ端、『未元物質』で出来ている『何か』かな)

上条(次点で怪しいと思ってんのは……まぁ、いいや。その事は考えないようにしよう、うん)

上条(それよりシャットアウラにカルテの開示……いや、見せてくれつったって、専門用語の羅列で理解出来ないか)

上条(だったら、えっと……『柴崎さんの傷について、素人にも分かりやすいように説明頼む』で、いいか)

上条(シャットアウラには俺が今魔術サイドの伝手を辿っている、って設定になってるし不自然じゃないだろう)

上条(……個人的には海原かマタイさんの意見が欲しいけど、どっちにもこれ以上――あれ?)

上条(仮に『何か』がショゴスなりザントマンだったとしよう。不定形のドロドロなヤツか)

上条(一般人――含む俺――に、とっちゃ脅威だ。弱点である炎なんて日常生活で持ち歩いてないから)

上条(だから出来るのは精々逃げるかも助けを呼ぶ事ぐらい……だ、けど)

上条(あの食えないオッサンが、曲がりなりにも『黒鴉部隊』って『暗部』の副官役こなすぐらい実力者が、後れを取るもんなのか……?)

上条(第一、初見だったユーロトンネルの中であっても、物量で押し切られる前までは、割と無難に相手をしていた)

上条(と、するとまだなんか『何か』にはあるって事か……まぁいいか、意識が戻ればハッキリするだろ)

上条(ともあれアリサにまで情報下りてきてないって事は、シャットアウラも巻き込むつもりはないんだろうし、俺が聞いても漏れはしないか)

上条(……送信っと) ピッ

電車内アナウンス『次はXX学区AA駅ー、AA駅ー』

上条(……鬼が出るか蛇が出るか――)

――AA駅 公園前

上条「……ここか」

上条(初春さんから貰った住所(+ナビ付き+電子クーポンチケットで割引料金)へ来てみた訳だ)

上条(どこにでもあるような公園……ではあるが、あっちの砂場付近になんかある。というか居る?)

上条(屈んでなんかやってる。聞いた方が早いな)

――AA駅 公園砂場付近

女性「――は……本当に――」 ガサガサッ

上条「あのー、すいません?」

女性「はいっ!」

上条「うおっ!?」

女性「……あらやだゴメンナサイね。おばさんイライラしてたから」

上条「あ、いえ急に声かけた俺も悪いですから――と、それより何やってるんですか?」

女性「見て分からない?ネコのエサを交換しているのよ」

上条「交換、ですか?」

女性「えぇ交換。本当は母がやっていたのだけど、腰を悪くしちゃってね。代わりに私がしなきゃいけないんだから、もう大変で」

上条(そう言ってる間にも、女性はせっせと地面へ置いたネコ用の食器――丸くて安定性の良いヤツ――を交換する)

上条(古いのは何重にかしたゴミ袋へ入れ、容器を軽く拭いてから、また新しいカリカリを入れる……あれ?)

上条「……あの、交換?交換なんですよね?」

女性「えぇそうよ。それが何か?」

上条「いや、交換って言っても、元々のエサが全然減ってないですよね……?」

女性「……」

上条「それにこれだけ――見た感じ10個ぐらい食器置いてますけど、肝心の猫の姿が居ないような……?」

女性「……はぁ。そのね、私も意味ないと思ったんだけどね、母がどうしてもって」

上条「えっと……その、すいません。改めて詳しくお話聞かせて貰えませんか?」

女性「あなた……あぁこんな時間に居るって事は」

上条「あ、いや、風紀委員じゃないです!ただその、気になったって言うか」

上条「最近ここの学区でネコを見かけなくなったなー、なんて思いましてですね」

女性「あら……他でも?」

上条「はい、なので良かったら――あ、交換、俺も手伝いますから」

女性「あ、じゃ古いのはこっちの袋へ、そう、それを――話、話って言われてもねぇ」

上条「俺が来たのは、前風紀委員177支部へ猫探しの依頼をされたおばあさんが居て、その方なら詳しいんじゃないかと」

女性「あー……母です、はい。一ヶ月ぐらい前、女の子四人にとても良くして貰ったって自慢してたわ」

女性「私がエサを代わりにやり始めたのは一週間ぐらい前だし、その前はずっと母がしていたのよね」

上条「その一週間はどうでした?」 ガサガサ

女性「見ての通り。母から預かったエサが無駄になるし」

女性「かといってきちんと交換しないと、ネコが帰って来た時に古いんじゃイヤでしょう?」

上条「ですねー――と、終りました」

女性「じゃ、こっちの布で拭いてから、アルコールを軽く吹き付けて――そうそう、それでこっちのカリカリを、そうね」

上条「もし良かったら、そのおばあさんから話を聞く訳には難しいでしょうか?」 シュッシュッ、ガサゴソ

女性「あー……それがねー、母はねー、その入院してて」

上条「入院?お加減悪いんですかっ!?」

女性「あ、そういう訳じゃないの。カエル先生に看て貰ったから、もうすぐ退院出来るのだけど、そっちじゃなくて」

上条「そっち?」

女性「歳も歳だからしょうがないんだけど。あぁでも若い頃からしっかりしてると思ったら、急にね」

上条「……もしかして、その」

女性「『いじんを見た』って」

上条「――っ!?」

女性「ほら、ネコが居なくなったら風紀委員の子達にも通報出来るでしょ?こんな一遍に居なくなっちゃったら、悪い子が何かしてるとか思うじゃない?」

女性「けど、ねぇ?母に聞いてみても変な事を言うんじゃ、信じて貰えないんじゃねぇ?」

上条「す、すいませんっ!ちょっと待ってて貰っても良いですか?」

女性「えぇ構わないわよ。おばさん、まだエサをやらなきゃいけないから」

――AA学区 公園前

上条「『――あー、もしもし?初春さん?』」

佐天『ヤハハハハハハッ!遅かったな勇者Kよ!初春飾利は我の手中にあるわっ』

佐天『返して欲しければ今度出来たテーマパークに予算全部そっち持ちで連れて行くが良いわフハハハハハハハっ!!!』

上条「『あ、ごめん。今緊急だから魔王ゴッコは初春さんにして貰ってくれないかな?』」

佐天『ていうかこの番号あたしのケータイなんですけど!開口一番初春ってどう言う事なんですけどっ!』

上条「『あーゴメンゴメン。悪かったから、初春さんを』」

初春『はい、お疲れ様ですー。それでどうでしたか?』

上条「『猫探し依頼したおばあさんは入院中、腰をケガしたんだそうだ……あ、もうすぐ退院だって』」

上条「『んで、今はその娘さんって女性が猫に餌をやってるらしいんだ。大体ここ一週間ぐらい前から』」

上条「『……ただ、その間ネコを餌に食べに来る様子はなかったそうだ』」

初春『……悪い想像ばかり浮かびますねぇ、それは』

上条「『公園にある食器見た感じだと、大体10匹以上居たんじゃねぇかな?それがバッタリと姿を消した』」

初春『でも――でもですよ?そうでしたら何故風紀委員へご相談なさらなかったんでしょうか?』

上条「『あー、娘さん曰く”いじんを見た”んだそうだ』」

佐天『ってコトは!』

上条「『突拍子も無い事を言ってるモンで、相手にされないんじゃねぇかって判断したそうで』」

初春『あー……まぁ気持ちは分からなくもないですが』

上条「『それに娘さん――つーかあんまネコ好きじゃなさそ――』」

上条「『……』」

初春『もしもし?どうされました?』

上条「『……あぁいや、ネコ嫌いの割には随分熱心に餌の交換やってんな、と思って――で、二つめのお願いなんだけど』」

初春『あ、はい。”いじん”と書き込んだログですね』

上条「『調べるのに時間かかりそうか?』」

初春『あ、いえ実はもう既に突き止めてあります』

上条「『仕事早っ!?』」

初春『大体一週間ぐらいの、学園都市内のローカル電子掲示板のログを虱潰しに当たったら、最初にヒットしました』

初春『その書き込み以降、噂は噂として広がっていったようですので、その書き込みがオリジナルかと』

上条「『ローカル掲示板……オカルト系の?』」

初春『ではなく、えっと……地域系ですね。近所の情報をやりとりするようなスレッドが好まれる場所です』

初春『そちらの携帯へログと発信元の番号を、送り、ました』 ピッ

上条「『あぁ届いたよ、ありがとう』」

佐天『今からアポ取って、その方と会ってくるんですか?』

上条「『――る、つもりではあったんだけどなー』」

上条「『実はもう”会ってた”みたいなんだわ、これが」

――AA学区 公園内

上条「すいません。何か足止めしちゃって」

女性「あぁ気にしないでいいのよ。餌の交換を終るまでは帰れないから」

上条「なんつーか、唐突な質問なんですけど――」

上条「――学園都市のローカルネットで『いじん』の事を書き込んだのは、あなたですよね?」

女性「……何を言って」

上条「あなたも、ネコ好きなんでしょう?おばあさん程かどうかは知りませんが、こうやって毎日毎日、きちんと交換しに来るぐらいには」

上条「ネコが居なくなって悲しかったし、けどおばあさんの証言そのままだったら、誰かに信じて貰えない。だから――」

上条「――『いじん』という都市伝説に乗っかる事で、噂を……あぁいや、警告、しようとしたんですかね?」

上条「『ネコが居なくなってる事件が起きている』って」

女性「……」

上条「あ、いや。別に罪になるとか、責めるつもりは全然ありませんから」

上条「実際、あなたで書き込んでくれたお陰で、警告を広く伝えようとしてくれたから、俺は気づく事が出来たんですよ」

上条「回り道しましたが、それもまぁそんなに遠くはないと思いますよ」

女性「……話す事と言っても、母から聞いた以上の事は」

上条「充分です!お願いします!」

女性「……はぁ、座ってお話ししましょうか」

――AA学区 自販機前

女性「……母はですね。あまりこう、社交的な質ではありませんでした」

女性「若い時分は、それなりに人との交流もあったようですが、やはり歳を取るとどうしても」

上条「それで猫達に餌付けを……善し悪しはともかくとして、気持ちは何となく分かります」

女性「本来であれば母のために何かしなくてはいけないのでしょうが、私たち子供ではどうしようもなく」

女性「そのまま母の言葉を伝えれば、恐らく狂人扱いされるでしょうから、迂遠な方法になってしまいました。ごめんなさい」

上条(女性はさっきと人が違ったようにしおらしくなっている。というのも理由があってだ)

上条(話を良く聞いてみれば、おばあさんは近所の人達にあまり――というか、かなりよくは思われていなかったそうだ。猫の扱いについて)

上条(あくまでもこれは俺の想像だが、娘さんとしては一応”ポーズ”としてネコ嫌いのフリをしなくてはいけなかった、みたいな?)

上条(まぁなぁ……野良猫へ際限なく餌付けすんのは問題だと思うが、人嫌いのお年寄りが趣味でやってると強くは言い辛い)

上条(『何か』の事件が解決したら、何とかならないか考えてみよう)

上条「おばあさんの境遇は分かりましたから、出来ればその、事件についてお願い出来ますか?」

女性「あの日……綺麗な満月だったので、よく憶えております」

女性「母は猫達へいつものようにエサをやり、夕方になると私と一緒に帰りました」

女性「といっても直ぐそこのアパートですので、母の足でもゆっくり歩いて10分程度だったでしょうか」

女性「家へ帰って暫く経つと、何か忘れ物でもしたのでしょうね。母は一人でまた公園へと戻っていったのです」

上条「あなたは一緒に行かれなかったのですか?」

女性「えぇ少し私事がありまして……思えばついて行くべきでした」

上条「まぁ仕方がないんじゃないかと」

女性「そして……帰りが遅いので、見に行ってみると母が腰をついて倒れてしました。その時、うわごとで呟いていたのが」

上条「――『いじん』ですね」

女性「……はい。あとは……概ね、あなたが仰った通りです」

上条「分かりました。お話を聞かせて下さってありがと――」

女性「その、もっと別の方法があったとは思います!誰かへ助けを求めるのだって!」

女性「でも私達にはこれぐらいしか出来なくて!」

上条「……方法は、というかやり方はマズかったと思う。少なくとも最善じゃない、ですよ」

女性「……」

上条「けど、手遅れだって事もない、とも思います。こうやって気付けたんだから」

上条「あなたが『いじん』が居ると警告をし、それに気づいた人間がこうして目の前に居るんですから、決して無駄なんじゃありませんでした」

女性「……ありがとうございます。その」

上条「はい?」

女性「猫達はどう、でしょうか?帰ってくるのですか?」

上条「……分かりません。分かりませんが――」

上条「――仮にその『いじん』が居たとして、少なくともおばあさんを脅かして転ばせたり、ネコを傷付けた奴が居たとしたら――」

上条「――然るべき報いは受けさせる。そう、思います」

女性「……どうか、どうか宜しくお願いします」

上条「はい、それじゃ失礼しま――っと、本当に失礼しますっ」 PiPiPiPiPiPi

上条(初春さんからの呼び出し……なんかあったのか?) ピッ

上条「『はい、もしもし上条ですが』」

初春『あ、どうもお疲れ様ですー……て、すいません、気になったんで一つだけ訂正を』

上条「『訂正?』」

初春『ネコおばあさんが気になったんで、少し調べてみたんですけど――』

初春『――おばあさん、どうやら天涯孤独の方だったようで』

上条「『あぁそう――そう?それが?』」

初春『でしたら上条さんがコンタクトされていた、娘さんと称する方は一体どこのどなた様かな、と』

上条「『――っ!?』」

上条(驚いて俺が振り返るとそこには誰の姿もなく)

初春『まぁきっと、近所の仲の良い方が事情を説明するのが面倒なので、そう言ってるだけで――』

上条(電話口では初春さんが何かを喋っていたようだが、俺の耳には届かない。何故なら)

上条(俺は耳から携帯を放しさっきまで女性が座っていた所へ、ちょこんと寝そべっている”それ”へ、『右手』を伸ばす)

上条(嫌がる素振りも見せず、伸ばした右手をツンとつついた”それ”に改めて)

上条「――約束はした。お前のかーちゃんのカタキは取るさ」

ネコ「……にゃー……」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

来月完結です

ジャケ凝ってるなー
ハロウィン企画 乙でした

乙でした!

来月てことは多くてあと4回しかないのか……

上条「今日から風紀委員の一員になった上条ですの!」?

初春と白井とカミやん……読みたい!

乙でごんす。

>>459
推理ものではなく、一人称でドツボに嵌まっていくお話ですので考えてもどうしようもなかったかと
キバヤシさんレベルの超推理力を持っていなければ、まぁ……ていうかノストラダムスから早15年、色々あったけど私達は元気ですね

>>460
ありがとうございます

>>461
えぇはいそのつもりで書いていますが何か
(超電磁砲でも「にゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」的な台詞があった気がします。対御坂さんで)

>>462
小萌先生の担当は化学ですので、多分リソースとイノベーションの例えから脱線したと思われます
化学は完全に門外漢なので大した話は出来ませんが、まぁ星関係だったら少しは

――AA学区 路上

上条(これでやっと、そうやっとだ。これで”事件が起きている”スタートラインへ立てた)

上条(探偵小説なら警察が動いて、ものぐさな探偵が興味を惹かれ重い腰を上げるのだろう)

上条(……なんて、事件の当事者でも無ければ、大して痛みも感じず、その場限りの同情こそすれ、章が変われば全てをリセットする人達と一緒にして欲しくはない)

上条(俺は、俺達は生きている。少なくともそう信じている)

上条(虚構の世界の気楽な自由人とは違い。どれだけ残酷な現実を見たとしても、それを受け入れ――時には見ないフリをして――生きるしかない)

上条(……そう、どれだけ残酷だとしてもだ)

上条「……」

上条(シュレディンガーの猫の話はよく分からなかった。思考実験?だか量子力学?なのか)

上条(『高度に発達した科学は~』とは言うが、それはそれで自分の理解しがたいもの、出来ないものへレッテル貼ってるだけのような気もするが……とはいえ)

上条(遺伝子工学で蛾の頭に自走式のミニ四○みたいなモンをつけた、リアルデンドロビウ○を見て、『これは画期的ですよ!』って大喜びは出来ない……つーかしたくはない)

上条(……単語の意味は理解出来ていないし、本来使うべき意味合いとも恐らくは違うんだろうが……)

上条(猫が死んでいるか、それとも生きているのか。たったそれだけを確かめなきゃいけない)

上条「……」

上条(俺がフレンダを保護したあの日、ほんの少しの時間目を離していた間に柴崎さんは襲われた――『何か』に)

上条(……状況証拠からすれば、主にアリバイからすれば彼女が容疑者へ含まれるだろう。それは確実に。取り繕っても仕方がないしな)

上条(ただ!逆に言えば、その間のアリバイさえしっかり証明してしまえば!あの残念な子が加害者である可能性はなくなる!)

上条「……」

上条(問題は、だ。そのアリバイ証明をどうやってしようか?という当たり前の話に落ち着くんだが)

上条(直接聞く――の、も悪くはない。どうやらコンビニ行ってたっぽい事は言ってたし)

上条(だが、俺が説得したいのは、確固とした証明を要求してくる相手だ)

上条(『危さそうだから取り敢えず始末しとけ』の、過激派さんが二組。つーか学園都市も入れて三つか)

上条(だからフレンダがウロついてた時の動画か画像さえ残っていれば。柴崎さんが襲撃された時刻のだ)

上条(疑いを100%とまでは行かないが、様子見まで落ち着かせるレベルの材料になるだろう。悪くはない)

上条(と、すると……やっぱり頼れるみんなの味方、風紀委員さん、つーか初春さんへまた頭を下げるしかないのか……!)

上条(どんだけ今回の件で借りを作ってんだが、精算すんのが怖いがまぁ先送りにするとして連絡を――) パカッ

上条「……」

上条(……待てよ。俺、フレンダの写真って持ってないよな?)

上条(『金髪碧眼のフリフリした服の子』は今時珍しくもないし、あの時間帯は言う程遅くもなかった)

上条(……あんま言いたくないが、可愛いか可愛くないかで言えば、ソロで活動出来るアイドルやっててもおかしくないレベルの外見をしてる)

上条(つってもそれは目の前に立ってた場合の話であって、こう、防犯カメラの粗い画像で見分けられる話じゃない)

上条(ウチ近辺のコンビニを中心的にすれば……いや、そうすると必ずしも引っかかるとは言えないか)

上条(だからって情報無しで調べて貰っても、ヒットする可能性は低くなるし……どうしたもんか)

上条(家帰って写メする?いやぁ、なんかそれも、なぁ?)

上条(どっかにフレンダの写真さえあれば良かったんだけどなー)

上条「…………………………あ」

上条(あったねー、そういや。俺がラッキースケベ拗らせて撮った写メが)

上条(だがしかしあの壊れた携帯は家――だと、思うだろう?)

上条(んがっ!心配ご無用!こんな事もあろうかと肌身離さず持ち歩いていたのだ!あぁこんな事もあろうかとな!)

上条(け、決して『今度詳しい人に聞いてフラッシュメモリのサルベージしよう!」とか考えてたんじゃないからな!そんなやましい事は考えてないよっ!ホントだよっ!)

上条(やましい所なんかどこにもない!俺は勿体ないの精神を体現しようとした訳であって、エロはないよ!エロ目的じゃないんだからねっ!)

上条「……」

上条(……キャラがぶれてきているから、必死で言い訳するのはこれぐらいにしておこう、うん)

上条(ちなみにリサイクルに特化していた江戸時代を、まるで天国のような持ち上げ方をする人間が居るが、あれは『当時のリソースとしては限界が来ていた』んであって)

上条(現代じゃ人口が増えれば増える程、まぁ経済力は上がって豊かになる――みたいな妄想が幅を利かせているが、現実はそうじゃなかった)

上条(都市部では人余りで結婚出来ない男がたくさん。農村部では3人以上の子供は間引き……適正な人口を意図的に調整していた訳で)

上条(限りある資源を大切に使うのは大事だが、昔の日本は必要に迫られているから徹底的に切り詰めていた、のが正しい)

上条「……」

上条(あー……フレンダの画像かー、てかこの携帯そのまま送るのは気が引ける……)

上条(画像サルベージのやり方を俺は知らないが、初春さんならきっと上手くやってくれそうな予感はする。過去の実績からして)

上条(問題があるとすれば……こう、ぶっちゃけ事件が終ってから、俺が風紀委員さんにお呼ばれしそうだよな、って事か)

上条(背に腹は代えられないって言うし、うん、でも去年バードウェイにドリル突きつけた時にもステキなお説教受けてるしねっ!今更だよっ!)

上条(初春さんの手に渡れば画像データは二度と戻って来ないと分かってはいるが、まぁ仕方がないよなぁ)

上条(コンビニでバイク便呼んで貰って、メモかなんかを一枚添えて、俺が無実だと主張すればなんとかなる!……と、いいなぁ)

上条(あ、メモ次第かな。えっと『俺は悪くないんです』って書けば信じてくれるよ!きっと!初春さん良い子だから!)

上条(決して!決してビリビリにまで伝言ゲームが行われて!俺がビリビリする未来なんて来ないから!フラグじゃないから!)

上条「……」

上条(……しかし、まさかのバカ騒ぎがこんな所で役に立とうとは。人生は分からん)

上条(どっか他にも回収忘れのフラグとか伏線とか埋まってたりしてな――別名”地雷”が)

――コンビニ前

バイク便「――はい、では確かにお預かり致しました。風紀委員177支部、時間指定で初春飾利様ですね」

上条「はい、よろしくお願いします」

バイク便「では、またのご利用お待ちしております」 シャーーーーッ

上条(バイク便――MotorcycleではなくBicycle、自転車の方のバイク便を呼んで、俺は泣く泣く壊れた携帯を入れた封筒を渡した)

上条(事前にウイハルン(ドイツ風)さんへ事情を説明してある――どんな画像かは伏せて――ので、照会作業は快く引き受けてくれた)

上条(そん時に『知り合いが犯人の可能性をなくしたいから、念のため調べて欲しい』とは言ったが、あんまりツッコまれなかった)

上条(……まぁ、猫が居ない話を持っていったのも、数日前から風紀委員へ通っていたのも分かってるからさ。訳ありだと思ってんだろうが)

上条(しかし『学探』の時も思ったんだが、ソツのない対応と的確で空気読んでくれる所は好印象なんだが)

上条(……あれ?初春さんの顔と『オーバーロー○』のOP曲がフラッシュバックするな?なんでだろう?)

上条「……」

上条(さて……バイク便で送った事たし、俺は手持ちぶさたになった訳だ)

上条(このまま他の学区の猫探しにでも行くか?それとも家帰ってから、近くのコンビニでフレンダの聞き込みをしてもいいような)

上条(でも、フレンダばかりに時間を割いても無駄な気がするんだよな。犯人じゃないんだから――)

PiPiPiPiPi、PiPiPiPiPi……

上条「『――はい、もしもし?』」

シャットアウラ『授業中じゃなかったのか?ちっ』

上条「『その時間を狙って電話かけてくるシャットアウラさんブレませんねっ!ダイレクトに地味ぃな嫌がらせをコツコツとしやがって!』」

シャットアウラ『カルテの件で電話してやったというのに、随分な言い草だな』

上条「『いやぁ、うん、感謝はするんだけど、そのためにメールじゃなくて電話してくるってのは……うん』」

シャットアウラ『仕方が無いだろう。カルテをそのまま送っても理解出来ないのであれば、最初から口頭で説明した方が早い』

シャットアウラ『というかお前に無駄な時間を浪費するぐらいだったら、コンビニで商品の陳列数の統計を取っていた方がまだ有意義だ』

上条「『ちょっとそれ興味ある!でも多分店舗の大きさによって違うだけだろうけどな!……てーかさ、今ふと思ったんだが』」

シャットアウラ『なんだ』

上条「『別に連絡取るのお前じゃなくても良くね?そこまで毛嫌いされてんだったら、間に人置いてワンクッション挟むとか』」

上条「『柴崎さんが居ない分、仕事が増えてんのは理解出来るけどさ』」

シャットアウラ『……』

上条「『……』」

シャットアウラ『それでだな。クロウ7の傷についての説明だが』

上条「『おい誤魔化してんじゃねぇぞコノヤロー。もしかして俺にチクチク嫌味言いたかったとかそういう事なんか、あぁ?』」

シャットアウラ『両腕から多数の咬合痕(こうごうこん)が発見されている……私が言い渋った、というか誤魔化したのもそのせいだな』

上条「『こーごーこん?』」

シャットアウラ『分かりやすく言えば噛み傷だ』

上条「『……っ!?』」

シャットアウラ『より正しくは咬創痕(こうそうこん)とすべきなのだろうが……まぁ、歯形が人類と思しきものであった以上、咬合なのだろうな』

シャットアウラ『学術的な分類に興味は無いが』

上条「『……』」

シャットアウラ『私なりに学生へ聞かせるべきではないと思ったのだが、まぁ覚悟があるのであれば遠慮はしない』

シャットアウラ『その咬創――噛み傷は両手に集中していたよ。こう、前腕部と言えばいいのかな』

シャットアウラ『よく……あー、素人が刃物を持った相手へ対し、せめて両手を上げて防御しようとするんだよ。こう、手を上げて致命傷を避けようとな』

シャットアウラ『その結果として両腕に大小様々な創傷を負うのだが……それに似ている、気がする』

シャットアウラ『あくまでも私の見立てだが、歯形が残っているのも”何か”から防御しようとしたのではないか、と』

シャットアウラ『だがそうすると疑問が残る』

シャットアウラ『あの男が”防御する程時間に余裕がある”のであれば、我々へ連絡をしない理由が分からな――』

シャットアウラ『――おい、聞いているのか?』

上条「『……ん、大丈夫。聞いてる、うん』」

シャットアウラ『話を続けるぞ――ある筋から、”冥土帰し”以外の伝手を使って学園都市内のデータベースにアクセスしてはみた』

シャットアウラ『……ものの、該当者は居なかった』

シャットアウラ『よって”暗部”の人間が、それに近い位置……もしくは外部の人間である可能性がある』

シャットアウラ『クロウ7の意識はまだ戻らないが、今夜ぐらいには無理矢理――もとい、自発的に目を覚ますだろうな』

上条「『……今夜?』」

シャットアウラ『あぁ。あまり犯人特定に時間を割くのは拙い。さっさと麻酔を切って起きて貰う事にしたよ』

上条「『それっ!――は、あんまりな判断じゃない、かな?』」

シャットアウラ『当事者から話を聞くのが最適に決まっている、お前は何を言ってるんだ?――まさか』

上条「『っ!』」

シャットアウラ『心配は要らん。元々痛覚は遮断してあるから、麻酔を切っても本人に痛みはない』

シャットアウラ『ただ痛み自体が電気信号になって脳へ伝わるため、あまりにも重篤だとハレーションを――』

上条「『……』」

シャットアウラ『――おい、聞いてるのか?オイっ!?』

上条「『……あ、ウン大丈夫!聞いてる聞いてる!』」

シャットアウラ『と、言う訳で――』

上条「『――それ、さ?俺も同席出来ないかな?』」

シャットアウラ『お前がか?まぁ構わないが』

上条「『なんて言うか、敵の魔術師が居たとして、そいつから攻撃喰らってんだったら解除するのに”右手”があると便利じゃん?』」

シャットアウラ『……ふむ。道理だな』

上条「『たださー、今ちょっと私用で立て込んでる感じでさ?』」

上条「『だから出来れば明日の昼間以降になっちまうんだが……どうだろ?』」

シャットアウラ『……学生だろ、お前は』

上条「『そっちはまぁ今更だしなっ!』」

シャットアウラ『ふーむ……まぁ、いいだろう。半日遅らせるのも大したロスにはなるまい』

上条「『……ほっ』」

シャットアウラ『では明日の朝にまた連絡をする』 ピッ

上条「『あいよー』――ってもう切れてるか」 ピッ

上条「……」

上条(……最悪だ……ッ!!!)

上条(ほぼ全ての状況証拠が!フレンダが犯人だって要ってるのと同じじゃねぇかよ……!)

上条(どうすればいい?どうしたらいい?この状況をどうにかするのか……どうにかなるのか?マジで?)

上条(時間が経てば立つ程、問答無用で抹殺されても文句が言えない要素が集まって来やがる!なんなんだよ!これは!)

上条「……」

上条(……落ち着け、頭に血が上ってても碌な考えは浮かばない。冷静になるんだ)

上条「」 スーハー、スーハー

上条(今までは俺はフレンダがシロだって前提で考えを進めてきた。失踪した猫もそうだし、アリバイもそうだ)

上条(『何か』ってバケモノが学園都市に潜んでいて、ソイツが何が悪い事をしている)

上条(実際にフレンダって『死人』が居て、甦らせた第三者が居るって……でも、それは)

上条(前提から違っていたのか?そもそもフレンダは濡れ衣を着せられた被害者じゃなかったのか?)

上条(マタイさんが遠回しに警告して来たように、最初から全てあの子がしてたのか……?)

上条(俺に対する態度は全部演技で、その正体は……みたいな)

上条「……」

上条(何が正しい?何をするのが正しい?)

上条(誰を信じるのが正しくて、誰が間違ってる?)

上条(どの情報が正解で、どの情報がミスリードなんだ?)

上条(……全てが正しく、俺が信じた――信じ”よう”としたものが、実は違っていた……?)

上条「……」

上条(――そう、だな)

上条(俺が今すべき事は、しなくちゃいけない事は) パカッ

上条 Trrrrrrrrrrrrrr、Trrrrrrrrrrrrrrr……

上条「『――あー、もしもし?俺です、オレオレ』」

上条「『いや違うから!オレオレ詐欺じゃないから!つーか怖くてお前のトコなんかにかけれるかっ!』」

上条「『……あ、いやそうじゃなくてですね。今ちょっとご相談がですね』」

上条「『”時間を考えろ”?……いやまぁ、時差は9時間だし、えっと……こっちは2時だから朝5時か。ごめんごめん』」

上条「『でもなんかお前の電話口から、相○っぽいジングルが聞こえるんですけど。水谷○の声もするんですけど』」

上条「『……うん、ていうか今バックで母さんの声聞こえなかった?気のせい?それで流していいの?』」

上条「『借りが初めてカード持った学生みたいに溜まってる……?や、うん、返すよ!それはもう返すに決まってるさ!』」

上条「『お前の両親に会ってDOGEZA?三つ指ついて?……いやぁどうだろう』」

上条「『俺が人の親で、12歳児の娘に求婚する男が現れたら、取り敢えずショットガン持ち出すと思うなぁ』」

上条「『多分18ぐらいでも持ち出すと思うし、25ぐらいだったら……あ、ごめん。やっぱ持ち出すわ』」

上条「『……ま、時間ないからいいんだけど、えっと、うん、それで用件なんだが』」

上条「『学園都市から、俺ともう一人を裏口で抜け出せるルートって知らない?』」

――上条のアパート 夕方

フレンダ「ごっちそーさっまでしたーっ!」

上条「……はい、お粗末様でした」

フレンダ「なんて言うの?こう、サンドイッチはタマネギとコショウが効いてて美味しかった訳だけど、オニオンスープはイマイチな訳よ」

フレンダ「やっぱ炒める時にバターを使うと油っぽくなる訳だし、かといってサラダ油だと風味が消える訳ねー」

フレンダ「なのでここはひとぉつ!オリーブオイルご購入を考えてみるのはどうでしょうか!?」

上条「あーうん、いいかもな。それも」

フレンダ「……どうしたの?いつもだったら『余所は余所、ウチはウチですから!』とか言う訳だし」

上条「そう、だな。言うかもな」

フレンダ「……マジで、どうした訳よ?さっきからどうしちゃった訳?」

上条「――フレンダ!」

フレンダ「はい?」

上条「俺と一緒に逃げてくれ……ッ!」

フレンダ「――へ?」

上条「あー、俺の知り合いがだな。たまたま偶然学園都市から逃げ出すルートを知っていてだな」

上条「そこに二人で厄介になろう、って話なんだが――フレンダさん?」

フレンダ「……や、その、ね?えっと嬉しいのは嬉しい訳よね?うんっ、そこは誤解しないで欲しい訳よ!」

上条「はぁ」

フレンダ「でもやっぱりあたしら出会ってまだ数日じゃない?だからこう、流石に結婚即逃避行的なのは良くないと思う訳!」

フレンダ「まずはこう、遊びに行ったりとかして既成事実を積み上げながら、じっくりゆっくりと行き後れにならないように」

上条「話聞けやテメェ。誰もそんなメルヘンな話してねぇよ」

フレンダ「え、違う訳!?」

上条「真面目な話なんだっつーの!……いや、ツッコませんなよ」

フレンダ「普段の調子に戻ったのは嬉しい訳だけど、なんか納得が行かない訳だ……!」

上条「あー、なんだ。お前、『暗部』なんだろ?」

フレンダ「……あんた――知ってた、訳?」

上条「あ、いや誤解しないでくれ!俺はそっちの人間じゃないから!」

フレンダ「それは……うん、何となく分かる訳」

上条「じゃなくて、お前はその……追われてる、んだろ?誰かっつーか、何かに」

上条「しかも相当ヤバい感じの連中に」

フレンダ「可能性はゼロじゃない訳、だけど」

上条「だったらさ、こう、外でほとぼりを冷ますってのはどうだろ?ダメか?」

フレンダ「……んー……」

上条「ダメかな?一ヶ月でも二ヶ月でも、なんだったらもっと過ごしてさ?」

上条「お前が相手にした奴らはどんな連中か知らないけど、その――」

フレンダ「――なんで?」

上条「わざわざ外まで追いかけては――はい?」

フレンダ「なんでわざわざ、見ず知らずのあたしにそこまでしてくれる訳かな、って」

上条「あー……」

フレンダ「あ、先に言ってとくけど。少なくともアレな訳。あんたはあたしの中では結構高評価な訳だ」

フレンダ「寝たふりしてるあたしに手を出さなかっ――」

フレンダ「……」

フレンダ「本気でエロい事はしなかった訳だし、うんっ!」

上条「今ちょっと考えたのが悔しいですよねっ!自業自得は言えなっ!……いやいや」

上条「つーかお前起きてたのかっ!?」

フレンダ「そりゃ当ったり前な訳でしょ。得体の知らない男んチ泊って、警戒しない女は居ない訳だし」

フレンダ「……だからその、色々としてくれた事は感謝してる訳だし、あんたが『実は俺”暗部”だったんだよ』的なオチもないと思ってる訳」

フレンダ「なんてーかな。『暗部』特有の”暗さ”みたいなのが無い訳」

上条「暗さ?」

フレンダ「雰囲気っていうか、空気って言うか、こう暗い訳よ。何となく」

上条「そんもんなのか」

フレンダ「まー、どっかの組織に所属してて、あたしを売ったんだったら、今頃取っ捕まってエロエロな展開になってる訳だから」

上条「いやエロはないかと思うが……ま、あ、その、信用してくれてありがとう」

フレンダ「てかあんたの全部が演技でしたー、ってなら見抜けないあたしがアホだった訳だし」

上条「オイ」

フレンダ「んで、こっからが本題な訳だけどー、あー……例えば!例えば裏路地で女の子が倒れてた訳ね!」

上条「ゴミバケツん中で生ゴミの中に埋もれてた」

フレンダ「倒れてた訳だけど!さて――この子を拾うのは、まぁあるかも知れない訳じゃない?エロ目的で」

上条「テメさっきから殊更エロ強調すんな?あ?」

フレンダ「だから例えばだって訳!マンガみたいだけど、多少は下心だってあった訳でしょ?実際の所?」

上条「……まぁ、皆無とは言わないが……うん」

フレンダ「やっぱり絹旗の超論理は合ってた訳か……っ!?」

上条「引っ張るよねその子のネタ。本人多分憶えてないと思うし、さも真実の如く言うけど、B級映画から引っ張って来たロジックだと思うよ?」

フレンダ「ま、まぁまぁまぁまぁ!色々あって、女の子を引っ張り込む、みたいな話はよくある訳じゃない?」

上条「うーーーーん……まぁ、ある、かなぁ?」

フレンダ「んでもって身の上話を聞いてーの、同情してーの、場合によってはエロもしいーの」

上条「いやしてないから!俺は潔白――とは、言い切れないが、エロ目的じゃないから!」

フレンダ「で、何となく一緒に同棲っぽく暮らすのもある訳じゃない?」

上条「あー……うん。親元離れた学生ばっかだし、そんな出会い方する奴らもいっかもしんねぇな」

フレンダ「んじゃさ、その子が『暗部』に所属して”る”子でさ?」

フレンダ「その子のために、ためだけに一緒に海外逃亡するって、どんな確率な訳?」

上条「あー………………」

フレンダ「あんたがあたしに惚れましたー、とかそう言うんじゃない訳よね?だったら話は分かりやすい訳だけど」

上条「そうだな」

フレンダ「一も二もなく頷かれると、それはそれでイラっとする訳――そこで最初の質問か、そういう訳で」

フレンダ「『なんで?』」

フレンダ「なんでそんなにしてまであたしを助けてくれる訳?」

上条「それは」

フレンダ「たゆんたゆんだから?」

上条「それはない。あと物理的にも無い」

フレンダ「じゃ、あれ?同情?『恵まれてない上条さんがフレンダちゃんを助けてあげる』って訳か?」

上条「そういう言い方は好きじゃねぇが……まぁ、なんだ」

フレンダ「なんだ」

上条「『人を助けるのに理由は要らない』って、昔の偉い人は言ったそうだけどな」

フレンダ「……綺麗な言葉な訳ね」

上条「綺麗な言葉は嫌い?」

フレンダ「好きよ。大好きな訳。でも――」

フレンダ「――”綺麗すぎる”訳よ。分かる?」

上条「……」

フレンダ「昔――家族みんなで川遊びに行った訳。つってもウチじゃ日帰りで近くの川へお弁当持っていくのが精々だった訳だけど」

フレンダ「その時に河原に流れ着いた綺麗な石を拾った訳……妹にあげちゃった訳だけど、ふと思ったのよ」

フレンダ「『この綺麗な石は価値がある。それは綺麗だからだ』」

フレンダ「『で、そうすると綺麗な石の下にあるフツーの石はどうなんだ』って」

上条「……」

フレンダ「綺麗な石は上流から流れてる内に、何回も何回も転がされて角が取れたり、中にある結晶が自然に剥き出しになってく――って、後から知った訳よ」

フレンダ「それと同じで『綺麗な言葉』は、軽くて薄っぺらい、見せかけにだけにしか見えない訳」

フレンダ「誰でも簡単に、それこそ着飾るように身につけようとするけど」

フレンダ「口に出せば出す程、価値が無くなっていく訳」

上条「……そか」

フレンダ「否定は?否定はしない訳?」

上条「俺は……それでも、何度でも綺麗な言葉を言おう」

フレンダ「……へぇ?」

上条「……残念だけど、お前の言ってる事は合っていると思う。綺麗な言葉は薄っぺらくて浮かびやすく、そして流されやすいって」

上条「でも、だからって、だからこそ」

上条「格好の一つぐらい付けさせてくれよ。綺麗な言葉の一つぐらい言わしてくれたっていいだろ」

上条「下手すりゃお前の人生かかってんだ。それを救おうってのに、何も言わずにハイ助けましたーじゃ、なぁ?」

フレンダ「……言うだけ、言ってみればいい訳よ」

上条「……俺を信じないんだったら、それでもいい。それもまたお前の自由だし、信じて貰えないのは俺が信じるに足りないから」

上条「出会って……まだ数日の、知り合いでも何でもない人間に、『お前の人生を助けさせてくれ!』なんて言われて信用出来ないのも分かる」

フレンダ「……ん」

上条「だったら俺は行動で示すさ。信用出来るように、して貰えるように」

上条「目の前で困ってる人が居て、それをただ助けたいって、”たったそれだけのために動くヤツも居る”んだって事を」

上条「それじゃ……ダメかな?」

フレンダ「……バーカ、格好悪い訳よ」

上条「だなぁ。もっと気の利いた事が言えれば良かったんだが」

フレンダ「そういう意味じゃ無い訳――でも、分かった訳」

上条「だったら!」

フレンダ「暫くは、アンタが信用出来る間は付き合う訳。ただし」

上条「あぁそれで構わない!」

フレンダ「んで?プランはどうなってる訳?」

上条「友達がマフィ――貿易商!貿易関係のお仕事をやってる12歳児でな!」

フレンダ「ごめん。やっぱあんたこれっぽっちも信用できない訳」

――裏路地 深夜

上条 コソコソ

フレンダ コソコソ

上条(あれから軽く仮眠を取った後、荷物をまとめて二人で家を出た)

上条(バードウェイの部下が待っているのはBB学区。そこまで行けば向こうで見つけてくれるらしい)

上条(が、タクシーを使う訳にも行かず、徒歩で向かってる……あと二時間歩くのは憂鬱だが)

上条(まぁこれからしなきゃならない事を考えれば、大した苦労でもないか)

上条「……」

上条(……あぁまぁ、アレだ。結局俺にはフレンダを切り捨てる事が出来なかった)

上条(俺がもっと上手く立ち回っていれば良かったのかも知れないが、過ぎた事を言っても仕方がない)

上条(彼女『死人』だろうが『何か』だろうが、どっちにしろこの子の加害者である可能性を否定出来なかった)

上条(仮にどこかで過ちをしていたとしても、俺には否定出来る要素は一つも持ち合わせていない)

上条(……けど、同時にフレンダは被害者でもある筈だ)

上条(浜面達、嘗ての仲間達と旧交を温める事すら叶わず、妹さんとも連絡を取れない)

上条(それどころか逆に……あぁ気分が悪い)

上条(結局は人頼みになっちまったが、まぁ一ヶ月ぐらいは俺が付きっきりで面倒看て、その間に死霊術士を探すしかない)

上条(そうすればきっと良くなるさ。今みたいに夜逃げしたとしても、未来は必ずやって来る)

上条(浜面達の和解……は、無理かもしんないが、まぁ妹さんに会うぐらいだったらば)

上条(それに学園都市の中にだけ幸せがあるんじゃないんだし、どこかで人生やり直すのも立派な選択肢だ)

上条(生きていれば何回だってやり直しは出来るんだ。どこでだって)

フレンダ「――ねぇ」

上条(――そう、生きてさえいれば)

フレンダ「――せいっ」 ガスッ!!!

上条「――あがっ!?」 パタンッ

フレンダ「……ありゃ、流石に一発で気絶はしなかった訳かー」

フレンダ「――あ、でも無駄な抵抗は止めて欲しいって訳よ。あたしだって感謝はしてる訳だし、最後ぐらい笑ってサヨナラしたい訳」 バチバチバチッ

上条「スタンガン……?お前、何やっ――」

フレンダ「あー、ね?あたしは色々考えた訳ね、まー時間だけは腐る程あったし」

フレンダ「でね、やっぱりここでお別れすんのがいいんじゃないかなって」

上条「お前っ!さっき俺を信じるって!」

フレンダ「たった今まで信じた訳、でも気が変わった訳よ」

上条「っ!」

フレンダ「――って言ったら流石に怒られそうだけど。信じる信じないだったら、最初から信じてない訳よ」

上条「俺は……そんなに信用なかったのか……!?」

フレンダ「うん、あのね?これはあたしからのアドバイスな訳なんだけどさ」

フレンダ「つーか感謝はしてる訳だから、”次”があったら生かして欲しい訳。また女の子拾ったら、ね」

上条「アドバイス……?」

フレンダ「――あんた、あたしに隠してる事ある訳よね?」

上条「それは――」

フレンダ「まっさか浜面の知り合いだとはねー。意外とあのチンピラも顔が広かった訳かー」

フレンダ「……思ってみれば、あのバカにも『暗部』の暗さはなかった訳だし、友達?それとも仲間な訳?」

上条「それはっ!」

フレンダ「彼氏のケータイ調べるなんて、今時誰だってやってる訳だし。つーかアドレスにフルネームで登録すんの、あんまよくない訳よ?いやマジで」

上条「……悪かったよ!確かに俺は浜面の知り合いだし、お前の事だって聞いてたさ!」

上条「殆どすれ違いだけど、妹さん――フレメアを保護した事だってあるんだ!」

フレンダ「……フレメア」

上条「でも、でもそれは理由があるんだよ!お前が今の時間に!一年以上経過した世界に来たのと関わる話だ!」

フレンダ「『お前がここに居る理由は知ってる。けど中身は言えない』?」

上条「そうだよっ!」

フレンダ「……はぁ、アンタさーあ?自分が何言ってるのか分かってる訳?そーとー無茶苦茶な話よ」

フレンダ「『手品の種は知ってる。けどそれをバラせない』ってのは、それ結局知ったかぶりしてるのと何が違う訳?うん?」

フレンダ「……まぁいい訳。さっきも言った訳だけど、感謝はしてない訳じゃないから、ここでお別れしましょ?」

上条「だから、なんで……!?」

フレンダ「あたしが言ったのと同じ言葉――なら、あたしも答えるけど、この街にはあたしにとっても大切なものがある訳」

フレンダ「『暗部』なんて、クソッタレな仕事してでも守らなきゃいけないような、そんな理由が」

上条「……それ、妹さんか……?」

フレンダ「だから、ここで、お別れ。日の当たる場所に帰れって訳」

フレンダ「あたしのハダカ見たのは、まぁ……我慢してあげる訳だし」

上条「フレ――」

フレンダ「……Спасибо вам до сих пор. И до свидания.……」

上条「え、何語――」

バチチチチチチチチチチチチチチチチッ!!!

上条「あがががががががががっ!?」

パタンッ

上条「……」

フレンダ「……さよなら」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を

十二歳児さんにもそりゃご両親はいるよなあ。今まで全く可能性に気づかなかったけど。真の意味で親の顔が見たい。

しかし、バードウェイも問答無用の「始末しとけ」派だと思うんだけど、そうでもないのかな?
一連の騒ぎに気づいていないはずはないし。

乙です!!

フレンダ・・・・・・・・・

>>479
「グラフィッカー?なにそれおいしいの?」や外注オンリーの所もチラホラあるため、素材さえ揃えればある程度は。絵は一切描けませんが
ちみなにエイプリルフール企画で作ったのはいいものの、アルバム画像をクリックしないとsample(偽)のあるページまで飛ばず、
誰一人様にも気づいて貰えなかったという悲しい過去があります

>>480
今週は解明編(伏線回収その一・数ヶ月ぶり)、来週が決着編(伏線回収その二・約13ヶ月ぶり)と早かったらラストかも知れません
その後は……年内は休んで、年明けたらみさきっつぁんの中編書いてー、が今後の予定になります。構想切ってないので遅れるとは思いますが
あと……あぁ某妖怪マンガの乙女(同人)ゲーの一ルートやらないかというお話も。逆だったら無償でやったんですが

>>481
他人様のお話ですが、白井さん×上条さん×一方通行さんの乙女ゲー的内容のほのぼのSSをお勧めします
……私のはメルヘンがない上、外連味が強い内容になってしまいますので……ホント、こればっかりはえぇもう性格ですね

>>482
ありがとうございます
ちなみに「ごんす」とは「ござんす」の簡略化verでして、元々は遊郭で使われた廓詞の一つです
元々地方出身の女性を多く引っ張って来ているため、お国訛りでは不興を買うという事で導入されました
それが浄瑠璃で遊女の恋を扱った演目が増えるにつれ一般化し、一定の認知度を持つに至りました

――路地裏 深夜

上条「……」

上条「――……アイツ……!」

上条「……」

上条「……なに、やってんだ……」

上条「――なにやってんだよぉっ!最後の最後で!もう少しだったのに!」

上条「何が悪かったんだ……?最初から全部を話せばよかった?」

上条「『お前は”死人”かも知れないから家出大人しくしとけ』?」

上条「『昔の仲間へ連絡とったら、遠回しに会いたくないって言われた』?」

上条「『存在自体、ローマ正教が危険視しているから問答無用で殺されるかも知れない』?」

上条「『あと伝承の一つに”本人が死者だと自覚した瞬間に屍体へ戻る”ってのがある』……?」

上条「言える訳ねぇだろうがそんな話っ!……そんな」

上条「……残酷な、話を……!」

上条「バカなりに悩んで結論づけて、それなりにデカくて――しかも、大勢の人らに迷惑かけちまうような選択肢選んで」

上条「……それが……このザマかよ……」

上条「……」

上条「……なんて、怒鳴って解決は……しないよな」

上条「こんな所で躓いてる場合じゃない。まだスタートラインから踏み出した所だってのに、諦めてなんかいられない」

上条「俺が寝ちまった間にも変な事件があれば、フレンダのせいにされちまう……それは避けなきゃいけない」

上条「……」

上条「早く、早く見つけないと――」

???「――おや、上条さん奇遇ですねぇ。こんばんは、そんなに慌ててどうかされたんですか?」

上条「――っ!?……お前」

レッサー(???)「やっだなぁお前だなんて。いつものようにレッサーちゃんとお呼び下さいな」

上条「……」

上条(振り返った俺が見たもの、それは――)

上条(――おそろいの『N∴L∴』のラクロス服に身を包み――)

上条(――そのやや尖った耳に『角』を付けたベイロープ――)

上条(――ほっそりとした指に『爪』を付けたランシス――)

上条(――そしてニヤニヤ笑いながら、いつものようにフリフリ揺れる『尻尾』を付け――)

上条(――すっかりお馴染みとなった愛用の武器である『槍』、どんな猛獣の爪よりも鋭い切っ先を――)

上条(――真っ直ぐに、”俺”へと突きつけている――)

上条(――レッサーの姿だった……!)

――路地裏 深夜

上条「えっと、そのな?違うんだよ、これはきっと――」

レッサー「『敵の魔術師の攻撃だった』なんて、ギャグシーンでもないのに使ったら、前歯全部へし折りますからね?」

上条「……」

レッサー「ちなみにアリサさんはこの場に居ませんが、近くに待機されているのでご心配なく。止める方は誰も居ないって事ですから」

上条「……」

レッサー「て、ゆーかですねぇ。何とか言ったらどうです?何か言う事あるんじゃありまっせん?せんせん?」

レッサー「私達に隠れてコソコソと……ま、ぁ?これがただの逢い引きだったら、ビンタ一発ぐらいで穏便に済ませる所でしょーが」

レッサー「ウチの変態魔力探知マッスィーン!にも、上条さんのアパート近辺で反応があったりなかったり」

レッサー「どう考えても魔術サイドの案件なのに、いつまで経ってもお声がかかりませんしー」

レッサー「こうやって出張って来てみれば、上条さんが良い感じにorzやって盛り上がってて、なんのこっちゃ、的な」

レッサー「あ、でもでも!コンクリに倒れて膝をつく惨めな姿はとてもお似合いですよ!」 グッ

上条「……俺は」

レッサー「あい?」

上条「俺は、失敗した……のか?」

レッサー「はい」

上条「初めはさ……女の子を拾ったんだよ。いつものように、こう、ゴミバケツん中から」

レッサー「はい」

上条「その子から話を聞いたり、他の人から『死者』が危険だ危険だって言われても……実感なんかなくて」

レッサー「はい」

上条「だから……なのかな。何か事件が起きてやしないかって、その子がどっかでやらかしてんじゃないかって、調べるのもどこか本腰を入れてなかった」

レッサー「はい」

上条「……でもいざ、知り合いが襲われて!状況証拠がどう考えてもそうだって!」

レッサー「はい」

上条「それでも信じようとして!その子を助けたいって動いたら――」

レッサー「はい」

上条「――このザマだ。最初っから信用なんかされてなかった。それも俺のミスだ……」

レッサー「はい」

上条「……なぁ、レッサー。ていうか『新たなる光』の――あ、フロリス居ないみたいだけど」

レッサー「はい」

上条「今更かも知れない。もしかしたら手後れかも知れない!俺が愚痴ってる間にもだ!」

レッサー「はい」

上条「俺が信じようとしてるものが全部ウソだったかも知れない!それでもだ!」

レッサー「はい」

上条「俺は信じたいと思う!何か手段があるって!あの子を助ける方法か見つかるって!」

レッサー「はい」

上条「だから――お願いだっ!俺を、俺達を助けてくれ……ッ!!!」

レッサー「――分かりました。では行きましょうか、ちゃっちゃっとね」

上条「え?」

レッサー「はい?」

上条「信じてくれる……の、か?」

レッサー「信じない方がいいですか?相変わらずドMですね」

上条「あ、いやそんなこっちゃないけど……そんなあっさりと、お前」

上条「……俺の話なんて100%感情論だけで……説得力のセの字もない話なのに……」

レッサー「や、別に『死者』がどうとか、ローマ正教がどうとか、そういうのはメンドイなー厄介だなー、ぐらいにしか思いませんが」

レッサー「でも、あなたは信じたんでしょ?」

上条「……あぁ」

レッサー「だったら信じるに決まってるじゃないですか。何言ってんです?」

上条「何――ってお前は!」

レッサー「仲間――少なくとも世界の存亡かけて肩を並べたクソヤローが信じたのであれば」

レッサー「『仲間が信じた』って理由以外、私達が動く何かとやらは必要ですか?」

上条「……お前」

レッサー「レッサーちゃんです」

上条「……レッサーちゃん」

レッサー「すいません。シリアスな展開に耐えきれずボケへ走ったのは謝りますから、その呼び方はよして貰えませんか?」

ランシス「意外()と乙女()……」

レッサー「お黙りなさいなっランシスちゃん!今度はベイロープにキスさせますよっ!」

ベイロープ「変態プレイに私を巻き込まないで」

上条「……すまん」

レッサー「お気になさらず。仲間が信じたのであれば私も信じる。ただそれだけの話ですんで」

レッサー「余所んチの『仲間』とやらの定義は存じませんが、ウチはこうやって代々続けてるようですんでね」

レッサー「例えそれがキャーリサ王女殿下からの怪すぃ取引であったり、気がつけば人の嫁をNTRってるような仲間だとしても!」

ベイロープ「オチに私達を使うな」

ランシス「……術式のオリジナルだし、事実かどうかも怪しい、し?」

レッサー「あなたの影響がエロ方面へ特化し始めてる以上、ランスロット性豪伝説はあながち根も葉もない噂とは思えないんですが……」

上条「まぁまぁ。それよりここに居ないフロリスはどうしたんだ?逃げた?」

レッサー「普段の行いが出ますよねぇ、こういう時。あぁでも違います違います」

レッサー「まーこんな展開になるんじゃねぇかなー、とは思って居ましたんで、実はさっきのお嬢さんを追わせてる所です」

上条「……そっか」

レッサー「まー、そんなに気に病まないで下さいな」

レッサー「『死者』が『黄泉帰り』だってお話は先の事件の延長線かも知れませんし?」

レッサー「でしたらば我々も当事者であって、それ相応の責任が――」

???「――ので、あれば当然私も参加資格があるのだろうか?」

レッサー「……あー、チクショウ。やっぱり枝付きでしたかコノヤロー」

ランシス「魔力、探知出来なかった……」

???「使ってないから分かる筈もなく。悔やむ必要はない」

上条「誰だっ!」

???「そう声を荒げる必要はないよ、上条当麻君。何故ならば――」

???「――今レッサー君が言ったように、そして実際そうだったように――」

???「――あの売女を仕留める時、我々は確かに仲間”だった”じゃないか?」

ベイロープ「……頭痛い。まさか本当に来るとは……」

ランシス「ラスボス降臨……」

上条「……あんた、いや、あなたは――!」

???「『信じたければ、まず疑え』……誰が言った言葉だったかな?私が殺めた当時の上官か、もしくは私が手にかけた同僚だったかな?」

???「まぁ……友人に嫌疑がかかった時には、私情を捨てて徹底的に調べるべきだ、というだけの話」

???「その友人を心の底から信じている――潔白であれば当然調べられても疚しい所なぞないのだからな」

上条「――マタイ=リース……!」

マタイ(???)「こんばんは、上条当麻君に『新たなる光』の皆さん」

マタイ「実に興味深い話をしているようだが、私も交ぜて貰っても佳いかな?」

――路地裏 深夜

上条(いつぞやの――俺達が神殺しに挑んだ長い永い夜に見た、あの死神チックな闇色のローブを着て)

上条(……あぁしかし大鎌は装備せずに素手のまま。『新たなる光』日本支部に陳列されてんだっかけ)

上条(……どう見ても剣呑な雰囲気を漂わせながら、マタイさんはゆっくりと距離を縮めてくる)

上条(絹切れの音一つさせずに近寄ってくる様は、捕食獣がゆっくりと獲物ににじり寄ってくる様を彷彿とさせ)

上条(周囲の気温が数度下がった――なんて、そんな表現がピッタリくるんだろう)

レッサー「そういうの、私は嫌いですかねぇ」

マタイ「とは?」

レッサー「信じる信じないってのは心のありよう、つーか生き様でもありますよ、えぇ」

レッサー「それが嘘だと分かっていても、どんなに馬鹿げた話であっても」

レッサー「世界を敵に回すのだと分かっていたとしても、私は、仲間がそう言うんであれば信じますけどね」

マタイ「仲間思いなのは佳い、佳い事だな。素晴らしい美徳と言える」

マタイ「だがね、あからさまな虚偽や友が誤った道へ進むのであれば、時として殴ってでも止めるべきではないのかね?」

レッサー「否定はしません。ですが肯定”も”しませんよ」

レッサー「それがもしも地獄まで続く善意の道だとしても、仲間を裏切り、見限り、正義のためだと叫んで矯正するのは果たして正しいんでしょうか?」

レッサー「もしそうしないと正しくない――天国とやらに行けないのであれば」

レッサー「私は仲間と一緒に地獄へ堕ちるのを選びますけどね」

レッサー「って言うかですね。前々から思っていた事ではあるんですが、十字教の価値観って究極の個人主義じゃないですか」

マタイ「個人主義……ふむ、確かにそう言われるのは慣れているが、それで?」

レッサー「騎士道と武士道、共に名誉を重んじ主君へ使えるあるべき姿を説いたものとして有名です。ですが根本的な所は違う」

レッサー「武士道の根幹が『盲目的な他人への関わり』であるならば、騎士道にあるのは『強烈な自己満足』と言えるでしょうね」

レッサー「と、言うのも武士道のべからず論は『主や自身の誇り』という、徹底的に外部との関係性に座したものである……との、対象的に」

レッサー「騎士道は『神が見ているから善行を積め』という、どこまで行っても独りよがりなものに過ぎないからです」

レッサー「……それの延長線――あぁいや延長戦で”こう”なってしまった気がしますよねぇ」

レッサー「『神が見ているのだから自身”だけ”は正しい事をしよう』。まぁそれは良い事ですけどね」

レッサー「自分が汚れるのが嫌だからと理想論だけに傾倒し、手を汚さないで済ませようとする――それがどれだけ他人の迷惑になっても気にしない」

レッサー「ゴミ置き場が汚れていたとしても、服が汚れるから、臭いが移るから、と言って触れようとしない」

レッサー「それどころが生活に絶対に必要なものであるというのに、『ゴミ置き場は要らない!ゴミを出さなければいいだけだ!』と妄想ベースに理想論だけに凝り固まる」

マタイ「……耳が痛い話であるな」

マタイ「自己を律し、他人に寛容で――とも説いているのだが、忘れられがちであると言える」

マタイ「自分達を受け入れろと声高に叫ぶ一方、他人を受け入れる努力はせず、また受け入れられようとする事もせず」

マタイ「それが”楽”な生き方である故に――とはいえ」

マタイ「ここで私達が言い争っていても埒があかないな。これでは」

レッサー「でっすよねぇ。どうしましょうか?」

上条「ま、待って――むぐっ!?」

ランシス「(しーっ……今のウチに、行く)」

ベイロープ「(フロリスが先行してるから連絡取って合流するのだわ)」

上条「(でもっ!)」

マタイ「内緒話に聞き耳を立てるようで少々気が咎めるのだが、釘を刺しておこう」

マタイ「ここには居ないもう一人のお嬢さんは――ほら、あちらに」クイッ

上条(マタイさんが振り返ると、そこにはグッタリとしたフロリスが……意識を失ってるようだ)

レッサー「やりやがりましたねクソジジイ!」

マタイ「何を言っているのか分からないな。私はただ、少し呼び止めるだけのつもりだったのだが」

マタイ「ほんの少しばかり強く叩いたらあぁなってしまったよ。最近の若者はひ弱でいかん」

上条「マタイさん!」

マタイ「何かね?」

上条「俺の話を――」

マタイ「その話というのは……依頼、そう依頼をしたのだが、それよりも大切な事なのかな?」

上条「それはっ!」

マタイ「一応私なりに待ってはみたのだよ。相談があれば乗るとも言ったな?」

上条「……っ!」

マタイ「が、待てど暮らせど返事は来ない。便りがないのは元気の証拠とも言うがね」

マタイ「また依頼を一度した立場として、あまりに拙速な真似をするのも憚られるのではあったが」

マタイ「それでも君が青春を謳歌するのであれば、忘れるのであればそれはそれとて佳い」

マタイ「歳の離れた友人として、まぁそういう事もあろうかと苦笑いで済ませたであろう――が、だ」

マタイ「君のアパート近辺から、件の『死者』の魔力が定期的に観測されるのだが、それは一体どういう訳かね?」

上条「だから、それは色々あったんだよ!」

マタイ「あったのであろうな。だがそれがどうした?」

上条「それが……って」

マタイ「まぁ、佳い。どんな選択肢を取ろうが、君が決めた事である。私はとやかく言うつもりはない」

マタイ「――そう、”言う”つもりはない」

上条(ザワリ、と空気が変わる)

上条(肌寒い10月の空気が心地よく感じられるぐらいに、寒さが鋭く肌を刺す)

上条(どこか厳かな雰囲気――こう、数百年の齢を重ねた聖像を前にしたような錯覚すら見えて)

上条(あの、魔神セレーネが最後まで俺達へ向けなかった殺気――これが教皇級か……ッ!!!)

レッサー「月並みな台詞でアレなんですけど、ここは私達に任せて行っちゃって下さいな」

上条「……でもっ!」

ベイロープ「説得出来る出来ない以前に、時間が足りないのだわ」

ベイロープ「あの『死者』を野放しにしたまま何かあったら、それこそ向こうに着け入れられる隙を作る」

ランシス「……でも、出来るのは時間稼ぎ、だから」

上条「……すまない、みんな」

ランシス「多分あっちの方だと思う……ビリビリくるから」

上条「本当にありがとう」

ランシス「……」

上条「どうした、んだ?」

ランシス「注意して欲しい……なんかおかしい」

上条「なんかって、何が?」

ランシス「……分からない。けど……」

ベイロープ「ここ数日、足を棒にしてしつこい青髪ピアスのナンパを適当にあしらいながら、あなたの家近辺を探ってたんだけど」

ベイロープ「妙なのよ。反応が」

上条「妙?」

ランシス「あなたの近くで何回か魔力を感じた……けど、何か、違う気がする」

上条「それは、どんな風に?」

ランシス「具体的には分からない……」

レッサー「あ、そうだったんですか?ランシスが時々ブルブル震えるから、てっきりエロ奴×調教されてるもんだとばかり」

上条「ごめんな?今ちょっと大切なお話をしてるから、レッサーさんはマタイさんに遊んで貰っててくれないかな?」

マタイ「それは私も感じたな」

レッサー「エロ×隷ですか?またマニアックな趣味を持ちで!」

上条「おい誰か!このバカを黙らせる薬を持ってないかなっ!」

マタイ「……さて、では始めようか」

上条「ホーラ見なさいっ!マタイさん会話を切り上げて戦闘態勢に入っちゃってるから!お前が余計な事言うから!」

ベイロープ「て、いうか遊んでないでさっさと行きなさい」

上条「はい」

レッサー「――上条さんっ!」

上条「あぁっ!」

レッサー「この戦いが終ったら、私と田舎へ帰って実家のパン屋を継いで裏の水門が大丈夫か見てきましょうねっ!」

上条「無理矢理死亡フラグ立てようとするんじゃねぇ!しかも多すぎて一つ一つ取り上げんのが面倒だわ!」

上条「ていうかそこまで事前に水門が気になるんだったらもっと平時から準備しとけよ!台風ん時行ったら危ないだろ!」

レッサー「やはり農家の方は偉大という事ですなっ!」

上条「結論そこかっ!?……まぁいいやっ!とにかく後はヨロシクっ!」

――路地裏 深夜

レッサー「……やれやれ。世話が焼けるって言うか、まぁ」

レッサー「ツッコミが出来るぐらいにリカバリしたんで、結果的にゃオーライって事でしょうな」

マタイ「直接言ってあげたら佳いのではないかね?そうでもしないと気づかない――”フリ”を止めないだろうから」

レッサー「あなたはお料理ってしますかね?」

マタイ「ペンネを茹でるぐらいは」

レッサー「なら憶えておくといいでしょうが、隠し包丁という概念がありましてね」

レッサー「つってもま、お肉や野菜を柔らかくしたり、火が通りやすくなるように切れ込みを入れる技術なんですが」

レッサー「そんなママンがわざわざ手間暇かけたのを、誇って子供へ自慢するようなこっちゃないでしょう?そんな当たり前のコトを押しつけがましくするのも」

マタイ「成程成程」

レッサー「理解して頂けましたか?」

マタイ「乙女なのだな、君も」

レッサー「全然理解してやがりませんねクソジジイ」

ベイロープ「いやあの、ほぼ正確に分かってると思うのだわ……」

ランシス コクコク

レッサー「――さて、ですが。先に行かせたのは訳がありましてね。打算と言いましょうか」

マタイ「ほう?」

レッサー「前は共闘しました。その実力は……そうですなぁ。私が見た魔術師の中でも、『右方』のフィアンマと並ぶぐらいでしょうか」

マタイ「私は彼に過去敗れているのだがな。それが何か?」

レッサー「『これが所謂”教皇級”か』と驚きはしたんですけど……まぁそれだけでしたね」

レッサー「『この程度であれば我々も届くんじゃないかな』と」

マタイ「興味深い話だ――が、話を続ける前に少しいいかね?」

マタイ「今更ながらお願いなのだがね。あの鎌を返してはくれないだろうか?」

レッツー「ほほう」

マタイ「いや一時的にというだけで、終ったらまた返すさ。このままだと少々拙い事態になりかねない」

ベイロープ「そのデメリットしかない提案に『はい』っていうおバカは居ないと思うのだわ」

マタイ「そうかね?君達には得しかないと思うが――」

レッサー「――死に晒せクソジジイッ!!!」 ブウンッ

ランシス「ヒャッハー……明日バチカンは国葬ローマ正教は葬式だぜ-……」 ブウンッ

マタイ「――ならば『手加減』は出来ないが、構わないな?」

ダダンッ……!!!

ベイロープ「――は?」

レッサー「……」

ランシス「……」

マタイ「あぁ訊きたい事は幾つかあると思うが、取り敢えずは私の話を聞いてからにしてはくれまいか」

マタイ「年寄りの長話とはいえ、順序立てて話した方が理解もし易かろう――と、私の一撃を受けて壁まで吹っ飛んだレッサー君」

マタイ「並びさっきからジリジリと体勢を変え、上条君にこっそりと合流しようとしているフロリス君」

マタイ「そして『影』を通じて、厄介な霊装を私へ叩き込もうとしているランシス君」

マタイ「君達の意識は刈り取っていないのだから、気絶したフリをして油断させようとしても無駄というもの。立ちたまえよ」

レッサー「ぐぬぬ!」

フロリス「あー、面倒クセー」

ランシス「……ちっ」

ベイロープ「待ってよ!?今、何が――」

マタイ「何が、という程の事はしていない」

ランシス「魔力、関知出来なかった。霊装や術式じゃないと、思う……」

マタイ「体術だよ、ただの」

レッサー「ただの、で私達フォワードを一蹴出来る訳ないじゃないですかっ!きっと何かの伝説を模した迎撃術式に決まってますよ!」

マタイ「信じたくなければ強制はしない。ただ理解するまで拳を叩き込むだけではあるからな」

レッサー「わっかりましたっ!言葉の意味は分かりませんが、とにかく凄い自信ですよねっ!」

ベイロープ「レッサー、ハウスっ」

フロリス「つーか、何?イメージと違うんだけど……?シスの暗黒○っぽい外見で、体術?」

ランシス「……それも殺意はなかったけど、こっそり本気だったレッサーを上回るぐらいの……!」

レッサー「あれ?私一人で吶喊した事になってませんか?確かもう一人居ましたよね?」

マタイ「さて――と、まずは君達にはチャンスがあった。私を殺すには及ばずとも、無力化出来るだけの力は有しているよ」

マタイ「が、その方法は宜しくはない――というのも、どうして一斉に私へ襲い掛かったのか」

マタイ「……あぁいやいや返事は結構だ。私が近接戦闘が苦手であろうと判断したからだな」

レッサー「(……どうします?なんか長ーい説明台詞が始まりそうなんですが)」

フロリス「(言わせときゃいいジャン?だって時間稼ぎか目的だったんだしー)」

マタイ「そもそも魔術師には様々なタイプがある。研究や伝説の解読に特化したタイプ、治癒魔法に長けたタイプや」

マタイ「魔術の才能など欠片もないのに、半生を捧げて有名な術式体系をまとめ上げた者も居る。人それぞれと言えるな」

マタイ「同様に戦闘系へ特化した魔術師も然り」

マタイ「中世の騎士のようにガチガチに固めた者も居れば、イギリス王室派の『騎士団長』のような鎧を着る必要すら無い者も居る」

マタイ「各々が選んだ術式や霊装に合わせ、戦闘方法もチューニングしている。これもまた魔術師次第と言えるだろう」

マタイ「それぞれが得意とする距離があり……そうだな。便宜上、遠距離型・中距離型・近距離型・格闘型と分ける事にしようか」

レッサー「……ありがたいお話なのかも知れませんが、あんまし有意義では無いじゃないんですかね、それは」

マタイ「と言うと?」

レッサー「我々なんてのは個人主義者が拗らせすぎたような連中ばっかですし、そもそも分類できる程ケース分けが出来る筈、が……」

ランシス「……レッサー?」

レッサー「あー居やがりましたねぇ、確かに」

レッサー「A-FOみたいな時間を闘争につぎ込んで、半世紀以上古今東西の魔術師とやり合い、データを蓄積し」

レッサー「……そして生き残って来やがった化け物ジジイが」

マタイ「ありがとう。そう褒められたものではないが、まぁ年寄りの与太話として聞き流してくれても構わない――さて」

マタイ「レッサー君が言った事にも一理ある。曲者ばかりの魔術師達に置いて、他人との共通点は驚く程少ない」

マタイ「というのもこの世界には様々な神話や伝承があり、またそれらに対して様々な解釈がなされる」

マタイ「意図的に曲解するのも含め、時として同じオーディンの術式でも効果は真逆にもなる」

マタイ「とはいえ、ある程度のセオリー、傾向というものもまた存在する。あくまでも私の主観に過ぎないが……」

マタイ「『得意な距離と防御力は反比例する』、とね」

レッサー「はい?」

マタイ「例えばそこのお嬢さんがこっそり準備しようとしている砲撃術式。これは分類からすれば遠距離系と言えるだろう」

レッサー「すいません、あなたが指した方にはお嬢さんは居ないんですけど」

ベイロープ「――『知の角杯(ギャッラルホルン)』!!!」 バチバヂバチバチバチッ

レッサー「ナイスですっベイロープ――あれ?なんか私へ雷撃が向かって来てやしま――」

ダンッ!

マタイ「――と、このように、砲撃に特化した魔術師は、その膨大な射程を以て相手を圧倒する事を好む」

マタイ「相手からは攻撃を受けず、一方的に蹂躙するような、ね」

フロリス「……雷素手で撃ち落としやがった……!?」

マタイ「同士討ちは佳くない。仲佳くやりたまえ――が、そんな遠距離系にも欠点はある」

マタイ「しかし裏を返せば攻撃面に特化しすぎるあまり、大概は近づかれてしまえば無防備な側面を晒す事になる」

マタイ「勿論、某かの切り札は用意しておくだろうが……それにした所で、その切り札とやらが使い勝手の佳いものであるならば、隠匿する意味は無い」

マタイ「逆の話、これが近距離型になればなる程、遠距離・中距離型の魔術師からは射程の優位を取られ、一方的に攻撃される機会が増える」

マタイ「よって自身の攻撃が届く近距離まで近づく必要があり、それを埋めるために色々と試行錯誤する」

マタイ「中には機動力を極限まで高めるものも居るが、殆どは自身の防御力を高めるな」

ベイロープ「……あぁ。つまり攻撃距離と防御力が反比例してると?」

マタイ「そうだな。ボクサーに例えるのもいいかもしれん」

マタイ「アウトボクサーはその射程の長さ故に、相手と距離を取って戦うのを好み」

マタイ「インボクサーはその破壊力を遺憾なく発揮するため、相手に肉薄するのを好むと」

マタイ「君達で言えばベイロープ君は遠距離型、フロリス君は近距離兼格闘、レッサー君が近距離と中距離の間」

マタイ「ランシス君は……万能型、かな?もしくは特殊型。直接戦闘よりもフォローを優先してやいないかね?」

ランシス「……やばい、バレてる……!」

フロリス「なんだろな……言っちゃなんだけど先生よりもタメになるぜ!」

マタイ「前置きが長くなっているが、君達は私を遠距離型だと思った訳だ。違うかな?」

マタイ「前衛二人で、しかも後衛の補助なしに無力化出来る――そう思ったのは、私が老人だからかね?それとも素手だから好機と見たのかな?」

レッサー「どっちも正解、てかあーた『モロクの聖竈』なんつー物騒な遠距離術式ぶっ放してたでしょーが!」

マタイ「ならば仕方がない――と、までは言わないが……そうだな。私がバチカンで瀕死になった話は知っているかな?」

ベイロープ「噂程度だけど、『右席』のフィアンマの一撃を受けて、市街地には被害を出さなかったとか何とか」

マタイ「そうだ。”至近距離からフィアンマの加減無しの一撃”を受け、背後にある市街地に達しないように抑えたのだ」

マタイ「負けた恥を言うのは心苦しいが、その直前に40年ばかり時を空回りする術式を発動しており、余力が殆ど無かった状態で、だ」

マタイ「以上を踏まえた上で――さて、私は一体どんなスタイルの魔術師に分類されると思うかね?」

レッサー「……あ、あのぅ?ちょぉぉぉぉぉぉぉっとなんかスッゲー嫌な予感がするんですけど!」

フロリス「……奇遇だぜ。ワタシもだわ」

ランシス「明日……何食べよう……」

ベイロープ「現実見なさい!ていうか喧嘩売ったのあんた達でしょうが!」

レッサー「や、あの、まさか80過ぎのジジイがガチ格闘タイプの武闘派なんて分からないでしょうが!」

ランシス「曲がりなりにも『右席』の暴走を抑えていた時点……で、うん」

レッサー「楽勝だと思ったんですよ!なんか、あっさりぶっ倒した後」

レッサー「『これが教皇級か。ふっ、思ったより大したもんでもありませんでしたね』とキメ顔でキメ台詞をキメるつもりだったのに!」

フロリス「キメ多いぞー。結構余裕だな」

マタイ「先程も言ったように魔術には様々な相性がある」

マタイ「相手によってはクリティカルな効果を上げるものもあれば、簡単に防がれてしまうものもある」

マタイ「従って、ある魔術師は防御を捨て、射程を伸ばし遠距離から一方的に攻撃するのを選び」

マタイ「またある魔術師は近づいて反撃の暇すら与えず、葬る事を選んだ」

マタイ「――私が選んだのは、只々”効率”というだけの話」

レッサー「『レベルを上げて物理で殴る』……まさか魔術師で実践するアホがいるとは!」

マタイ「仕方があるまい。多種多様な魔術師を相手する以上、一々相手の術式がどう、霊装はこう、と分析するのは時間の無駄だ」

マタイ「剣や槌などの武器、また当時広まりつつあった銃器へ対する備えをする者はいても、拳を無力化させる発想は”あまり”なかった」

マタイ「……多少見栄を張って”選んだ”と嘯いたが、正しくは”それしかなかった”だな」

マタイ「私は才能の欠片も持ち合わせておらず、遠距離術式を放とうにも魔力が足りず」

マタイ「高速戦闘を行おうにも、加速した世界では直ぐさま魔力が枯渇してしまい、戦闘以前の問題だった」

マタイ「よって残された術は、持てる限りの魔力を注いで防壁を張り、相手に近づくぐらいしかなかったのだよ」

レッサー「……上条さんはっ!?上条さんはどこに居るんですかっ!?」

レッサー「壮大なノリツッコミ、『やっつけであの術式の出力出る訳ねーだろ!』の出番ですから!」

マタイ「私のような凡夫、才能の欠片もない人間であっても、経験値を積めばそれなりに。嗜み程度だがね」

フロリス「……どんな『教皇級』だよ……」

マタイ「あぁその、俗に言う『教皇級』とやらにも私は異議を唱えたい」

ベイロープ「……えぇ、聞くけど」

マタイ「魔術師の敬称だか尊称だか、はたまた力の等級を表す位階の一つに『教皇級』というものがある。それはまぁいいだろう」

マタイ「が、しかしそれが真実味があるように語られるのは面白くはないな」

ランシス「不適切……?」

マタイ「現教皇猊下は政治畑の出身でな。あまりこういう荒事に慣れてはいないというか戦闘型の魔術師ですらないよ」

マタイ「だがそれでも彼の使う魔術は『教皇級』と呼ばれる。その威力に関わりなく」

マタイ「この私の使う魔術もまた『教皇級』であり、同じ等級として見られるのはあまり嬉しくないものだよ――そして」

マタイ「いつもいつも疑問に思うのだが、『教皇級、教皇級』と呼ばれるものの、その魔術を身近で目の当たりにした人物は恐らく少ない、というのに」

マタイ「どうしてさも人類普遍の形容詞の一つとして、『教皇級』が通用してしまうのか、と言う事だな」

マタイ「私に限って言えば、私の攻性術式を見て生きている外部の人間は、君達とアックアとフィアンマぐらいか」

フロリス「オイ、とんでもねーコトカミングアウトしやがったぞ」

マタイ「他の教皇にしても、基本的には『玉』だ」

マタイ「王ではなく旗印としての意味合いも強く、最前線で供も連れずに力を行使するのは稀ではある」

マタイ「……だがどういう訳か、私達の力など知る者は極々少数であるというのに」

マタイ「誰それは『○○に於いては教皇級に匹敵する』だの、『○○は教皇級だと言える』と、連呼されてみたまえよ。複雑な気分になるから」

レッサー「あー……まぁ、そりゃ誰も知らない筈の、バカ偏差値28が流出してて、『あいつより上』、『あいつに匹敵する』とか言われれば気分悪いですよねー」

レッサー「……んでー、どうしてまたマタイさんはそんなお話をワタクシどもへされるんでしょうか?」

マタイ「『教皇級』をその身で実感しておくと佳い。きっと今後の糧となる」

レッサー「上条さんはっ!?ダッシュで追わねばならないんじゃないかなっと愚考いたす次第で御座いますがっ!」

ベイロープ「オイ、時間稼ぐ話どうなった?」

レッサー「魔王が乗り込んできた勇者の前でペラペラ喋る意味!分かるでしょうがっ!」

ランシス「今から始末するから、何話しても大丈夫、的な……?」

マタイ「あぁ安心したまえ。それはない。”そういう”約束をしているからな」

レッサー「約束、ですか?」

マタイ「君達の動向を探る際、マーリン卿に見つかってね」

マタイ「その時、『命までは取らないから内緒にしていて貰えないか?』と聞いたら」

フロリス「き、聞いたら?」

マタイ「『あの外道共に世間の広さを分からせたって下さいセンセー!死ななきゃ腕の一本二本構わしまへんよって!』」

レッサー「あ・の・も・ふ・も・ふ・がっ!霊装の分際で余計な事を!」

レッサー「フォアグラの刑じゃ生温かったですね!やっぱりもみじおろしにしとけば良かったですよ!」

マタイ「私が言いたいのはこのぐらいだが……あぁ歳の離れた友人として、一つだけオマケをしておこうか」

レッサー「超引っかかりますけど、何なんですかね?」

マタイ「君達は経験が足りない。それも圧倒的に」

ベイロープ「……あなたからすれば、誰だってそう見えるんじゃないかしら?」

マタイ「ではなく、こう……そう、言ってみれば『傲り』に近いものだ」

レッサー「私達がですか?」

マタイ「そう。確かに『神殺し』の術式や、過去の英雄達の記憶とリンクし、その年齢にしては非常に優れた魔術師だと言えよう」

マタイ「もしも同じ年頃の私と戦えば、十中八九君達が勝利を収めるだろうな」

ランシス「それは……どうも」

マタイ「だが、それは。優れた師と霊装、術式を持っているからに他ならず、決して君達が積み上げたものではないと知るが佳い」

マタイ「どれだけ強力な魔術を行使しようとも、どれだけ偉大な霊装を持とうとも、それを使っているのは魔術師自身であると」

レッサー「話が見えませんが……」

マタイ「……なぁに難しい事など何一つ。事実とは得てしてシンプルで分かりやすいものだ」

マタイ「よって私も、極々シンプルに、端的に、単刀直入に言おうと思う」

フロリス「充分長いっつーの」

マタイ「それは失敬――では」

マタイ「君達は私の冗長な無駄話に付き合ってくれた。それはきっと年寄りへ対する思いやり――」

マタイ「……など、ではなく。上条君の所へ、私を行かせないようにするための手段として。時間稼ぎだ」

レッサー「まー、バレてるとは思って――」

マタイ「分からないかね?ここへ来ても尚?」

マタイ「玉の例えをした時点で気づいてくれても佳かったのだが……まぁ、今日の反省は後々生かせば佳い」

レッサー「一体、何を」

マタイ「時間稼ぎをしているのは――」

マタイ「――私”も”なのだよ」

――路地裏 深夜

上条「ハァ、ハァ、ハァ……」

上条(クーラーの室外機と雑多なゴミ、そして所々に積まれている壊れたビールケースの残骸)

上条(ともすればちょっとした障害物競走よりハードな道を、俺は全力で駆け抜けてた)

上条(灯りなんて全然ないし、方向もランシスに言われた――多分魔力を感じたんだろう――通りに進んでいる”つもり”だけど)

上条(本当にこっちかは分からない。進んでいるように見えても、検討違いの所へ向かってる可能性も否定は出来ない……だが!)

上条(ジッとしているよりはマシだ!誰かが助けるくれるのを待つよりも!誰かがクソッタレな現実を何とかしてくれるなんて祈るよりも!)

上条「俺が何とかしなきゃ行けない!俺達が動かなければ変わってくれなんてしないんだよ!」

老人「――なら、そうしてみせろ」 サッ

上条「ったぁ――っ!?」 ガッ、ゴロゴロゴロゴゴロッ

上条(目の前に積まれたゴミを飛び越えようと踏み込んだ瞬間、ブレるべき視界が予想した上下ではなく数回転して止まる)

上条(強かに背中と腰を打ち――ったと思ったが、倒れた先にあったゴミがクッションになって、大して痛くはない。ないが……)

上条(これを不幸中の幸いと喜ぶのはまだ早すぎる。何故ならばだ)

上条(俺の足を払い、スッ転ぶ原因を作った野郎が直ぐそこに居るからな!)

上条「お前、何しやがるっ!?こっちは急いでんだぞバカヤロウッ!」

上条「どっかのスキルアウトだろうが、カネが欲しいんだったらサイフごと置いてくし、喧嘩したいんだったら後から受け――」

老人「『どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか』」

老人「『もし、お前が正しいのであれば、顔を上げられる筈ではないか』」

老人「『正しくないならば罪は玄関でお前を待ち、そして求める。お前はそれを支配する義務を負うであろう』」

老人「――創世記第四章より」

上条「あんた……どっかで……?」

上条(歳は……じーちゃん、老年と言っていいぐらいの。三つ揃いスーツを着ているが、こんな場所には似合っていない)

上条(何よりも、吸血鬼が着ているようなクロークが浮いている――かと、思いきや、違和感が少しあるだけでおかしいとは……矛盾してるけど)

上条(俺は知っている……そうだ!マタイさんに拉致された時、影のように付き従ってた人だ!)

老人「行動――そう、現実を変えようとして足掻くのはいい。それは決して何人たりとも卑下してはならない」

老人「だが、しかし、だけれども。その行動が果たして本当に正しいと言えるのか?」

老人「綺麗事と甘言、そして諫言めいた偽善に彩られ、善良な人による善良な人のための、善意にて舗装された地獄へと進む道ではないのか?」

老人「お前が突き進む道には屍体しか転がってはいない。引き返せ」

老人「ここからは俺達の仕事だ。ここからが俺達の仕事だ」

老人「今までそうしてきたように、これからも俺達がそうするだけの話」

上条「……悪い。時間が無ぇんだけど、手短に言ってくれよ、なぁ?」

老人「この先に『死者』が居る。遭いたければ俺を倒していけ」

上条「良かった――いつも通りの展開だ……ッ!!!」

――ガッ!!!

――路地裏 深夜

フレンダ「……ん?」

フレンダ(何か聞こえた、訳よね?猫でも居んのかなー、にゃあ)

フレンダ(ていうか猫って良い訳よ。あんま悩み事もなく、にゃーにゃー言ってればご飯が貰えて――ってのは、八つ当たりな訳か)

フレンダ(野良猫には野良猫なりの気苦労がある訳だろうし、一人で生きていくのは辛い訳よ、うんうん)

フレンダ「……」

フレンダ(さって、と。これからどうしよっかなー?お金は……あー……盗んで来りゃ良かった訳)

フレンダ(無一文でどうしろっつーんだか、これだからテンションとノリで行動しちゃダメだって訳よねっ!テヘッ!)

フレンダ「……」

フレンダ(……あー、なんであんな事しちゃったんだろー。素直に従ったとけば良かった訳ー)

フレンダ(ヤバくなったらまた逃げればいい訳だし、ギリギリまで付き合ってあげれば、良かった、かも)

フレンダ(良かった――良かった、ねぇ?何が良くて何が悪いのかワケわっかんないワケ。いやホンっとに)

フレンダ(前からよく食べる方だったけどね、あたしも。でもこんなに食べてた訳じゃないし)

フレンダ(何が起こってる訳?何かの実験材料にされた、とか?)

フレンダ(だったらもっとシャレにならないような副作用がある訳よね。こう、手術の痕も無いし)

フレンダ(てか超電磁砲に電撃喰らった時についたヤケドも残ってな――) グー

フレンダ(……さっき食べたばっかなのに、燃費が悪いのは、うん)

フレンダ(どんだけ食べても太りそうにないのは、ある意味女の子の憧れっちゃ憧れかー。いや食費どんだけって)

フレンダ(……ていうか、本当にお腹空いた訳。なんか、チョコバーでも持ってなかった、かなっと……ん?) ゴソゴソ

フレンダ「……………………これ」

フレンダ(あの家の、合鍵……)

――路地裏 深夜

マタイ「――そろそろ立ち上がらないでくれると助かるのだがね」

マタイ「婦女子の、それも少なからず行動を共にした相手を攻撃するというのは、あまり佳くないものであるな」

レッサー「こ、の……クソジジイ……!さっきからポンポンぶん殴っておいていうコトはそれだけですかっコノヤロー!?」

レッサー「口ん中が鉄の味しかしないんですけど、このまま味オンチになってしまったらどう責任取れってくれるんですかっ!?えぇっ!?」

マタイ「いや、イギリス人は前からだろう?」

レッサー「確かにっ!上手い事言いやがりますねっ!」

ベイロープ「……レッサー、ウルサイ」

マタイ「恨み言に異を唱えるつもりはないものの、君達にだって私を殺すチャンスはあったのだよ」

マタイ「まず最初に、全力全霊を以てあの”神殺し”の術式を使っていれば、無傷では居られない可能性はあった」

マタイ「……まぁ、一度見た術式が私に通じるかは別の話だが」

レッサー「……くっくっくっ……!」

マタイ「何か可笑しいかね」

レッサー「クが三つ……!」

フロリス「あ、すいません教皇さん。今度からワタシもグリーンピース食べるから、そのアホに教皇級ツッコミ入れて下さい。全力で」

レッサー「ちょっとボケただけじゃないですか?!折角場を和ませようとしただけなのに!」

マタイ「そろそろ佳いかな?私も暇ではないのでね」

マタイ「我が友にこれ以上罪を重ねさせるのは気が引ける。少しは私も泥を被らねばならん」

レッサー「……だったら全部止めてやったらどうです?そうすれば誰も彼も救えてハッピーになるんじゃありませんか?」

マタイ「最善であれば、な。私も人の子だ、そう願わざるを得ないが」

マタイ「かといって『宝くじの一等が当たる』前提で家を買ったりはしないだろう?そこまでこの世界が優しいと信じてもおらん――さて」

マタイ「君達はまだ若い。研鑽を積めば私程度の魔術師など、駆け足で通り越していくだろう」

マタイ「また今回の件について、恨みを抱くのであれば我々を恨みたまえ。君達の『正義』を邪魔した、我々を」

レッサー「……」

マタイ「……そろそろ夜も更けた。子供はとうに帰って寝る時間だな……見たまえ」

マタイ「月もほら、登ってきているではないか。あぁ本当に青ざめた」

マタイ「美しい満月が――――――――何?」

マタイ「満月、だと」

レッサー「どうかされましたかー?ニヤニヤ」

マタイ「擬音を口で言うのは佳くな――いや、満月?どうして満月なのだ!?」

マタイ「あの忌々しい売女の夜は!青覚めた月の下の悪夢の幕は!とうの昔に引かれた筈だ!」

レッサー「でっすねぇ。つーか発動までに超時間かかるっつーか、まぁ実戦にゃ殆ど意味ないでしょうが。ま、アレですな」

レッサー「『新たなる光』は、今んトコ私達だけしか居ませんが――」

レッサー「――私達の『仲間』がたった四人だと思ってんじゃねぇですよコノヤロー」

マタイ「な、に」

???「『――ぼうや、”わたし”の可愛いぼうや』」

???「『闇の帳はとうに降り、良い子はもう眠る頃』」

???「『夜更かしする悪い子は、狂ったザントマンがやってくる』」

???「『”Danced and Turn(まわれまわれ)”と声をかければ、不幸なお父さんは階段から滑る』」

マタイ「この――声は……っ!鳴護アリサさん!?」

鳴護(???)「『はつかねずみがやってきた――』」

マタイ「まさか魔神の力を使え――」

鳴護「『――はなしは、おしまい』」

プツッ、ザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ……

――???

ヨーゼフ「………………う、ん?」

男「おぉ起きたぜよ――って寝とぉ!寝とぉぜ!動いとぉたら傷口開こぉき!」

ヨーゼフ「ここは――あの子は!?」

男「あれば別嬪さんなら女衆が看とるちや。大丈夫、お前さんと違ぉてケガの一つもしとらん」

男「それどころが起きちゅうがりにママ食いとぉ食いとぉ言ぉて笑かしよぉ!えらい剛毅な娘さんちや!」

ヨーゼフ「ここは、というか君は一体――」

男「あしか?あしは名乗る程のもんじゃないき」

ヨーゼフ「……いや、命の恩人の名前ぐらい教えて欲しい。都合が悪いというのであれば別だけど」

男「……んー、ここで格好つけるのがよかったき……まぁ構わん。構わんちや。あしの名前は――」

男「――上条、上条凍刃(とうは)ちや」

――路地裏

上条「……」

上条(月のない夜空を見上げ、俺は大の字になっているのを知る)

上条(アレがおおぐま座、で、あっちが北極星。ポラリスだっけか?ARISAの1stアルバム)

上条(ライブ衣装を着たのが色々ツッコミ入れたい気持ちは分かる。あぁ分かるさ!俺だってな!)

上条(でもほら、フィクションのノンフィクションの違いってあるじゃん?事務所的な意味で)

上条(星はスバルのよ、シロー――ん?現実逃避もこれぐらいしないと)

上条「――つー……」

上条(このじーちゃん、メッチャ強……!ていうか強ぇーよ!バランスおかしいだろ!?)

上条(魔術や能力を使うでもなく、真っ正面から俺の拳を受け止めるし!タックルを決めようとしたら、軽く切られるよ!)

上条(魔術をこれでもかと見せつけてくるタイプでもないし、どっかでごり押しする事もしない!)

上条(俺が行動する度に的確な打撃を入れられ、投げられ、絞められる)

上条(それでも!まだ俺が倒れる程度で済んでいるのは、偏にじーちゃんに殺意がないから。あったらさっさと終ってる)

上条(……まぁ、痛ぶって楽しむ趣味がないんだったらば、の話だが)

上条「……なぁ?そろそろ名前ぐらい教えてくれてもいいんじゃねぇかな?」

老人「俺はお前を知っている。それ以外に不都合はない」

上条「マタイさんの関係者だってーのは分かるんだが……まぁいいや、っと」 グッ

老人「まだ立つか。俺がお前を殺さないとでも思っているのか?」

上条「その気があんだったらとっくにやってんだろ。ドSが趣味だったら倒れた俺に追い打ちしてるだろうが、それもなし」

上条「そんなお優しい事をしてくれる敵は……御坂ぐらい、かな?敵ですらなかったけどさ」

老人「何度向かって来ようとも意味は無い。意義はない」

老人「お前が無様に痛めつけられる。ただそれだけだ」

上条「意味なぁ?んな事ぁないと思うが、俺は」

上条「ボッコボコにされてでも、クソッタレに何度ぶん殴られても向かっていくのって、ほら、男のロマン的な意味で憧れるよな!」

老人「俺には理解出来ん話だ」

上条「だったら分かるように言ってやるよ――そうだな」

上条「女の子一人追い回して、ぶっ殺すのだけが救う方法だ、なんてダサいっつってんだ!」

老人「『死者』は害にしかならない」

老人「革袋に腐った肉と濁った血を詰め込んだだけの『何か』だ。生きているように見える”だけ”だ」

上条「俺達だってメシは食うだろ!?それと何が違う!?」

老人「違わないさ。何も違っている所なんてない」

老人「『死者』の同族食いにした所で、俺達でも極限状態であればタカが外れる事だってある。否定はしない」

老人「だがな。俺達は俺達を食う獣達を殺してきた。人類の害となるような物を排除するのもまた自然の摂理――と、まで言わないが、そうしてきた」

老人「……それにな、上条当麻。お前は考え違いをしている。勘違いをしているな」

上条「俺が?何をだよ?」

老人「仮にお前が体を張って、釈尊の如く薪へ身を投げるウサギになったとしよう」

老人「もしくは虎か?……まぁなんにせよ。その体を捧げたとしようか」

老人「『死者の憂鬱』――発作的に起きる同族食いの因果が発動し、お前は笑って受け入れた。それはいい」

老人「ありったけの自制心を以て悲鳴一つすらあげず、お前は喰われる。それもまた本望と言えるかも知れない」

老人「――だが、だがな。本当に悲劇は、喜劇はここから始まるんだよ」

老人「そうしたら――『残れたヤツはどう思う』か、考えた事はあるのか?」

老人「衝動的にお前を喰っちまった後、ふと腹が満腹になって正気に戻った時」

老人「どんな思いになるかなんて、想像するのは難しくもない」

上条「……」

老人「……お前、そんな思いをしてまで生きていたいか?」

上条「――他に、方法がある筈だっ!」

老人「あるよ。そりゃあるに決まっているさ」

老人「考えても見ろ。常に大量の食料を必要とするなんて”非効率的”極まりない。そこまでして死人を使うメリットはないだろう」

老人「ゾンビ映画じゃあるまいし、今の時代、人一人居なくなれば大騒ぎだし、かといって墓から持ち出そうにも灰じゃハラも膨れない」

老人「だが死霊術士は死人を遣う。今も昔も変わらず――と、言う事は、何らかの方法で食欲を抑えているのは間違いない」

老人「最高峰の死霊術士辺りであれば、まぁ何とか出来るんだろうな」

上条「だったら!」

老人「だが死霊魔術師はここには居ない。そして時間も足りない」

上条「――っ!」

老人「屍体を与えて時間を稼ぐが?それとも奇跡が起きて死霊術士と道でバッタリ出くわすのかね?」

老人「そして”たまたま”出会った魔術師が初対面であるお前に一目惚れをし、無償で術式を施してくれると?」

老人「第一死霊術士というのは『死者』が引き起こすデメリットを一笑に付し、人格破綻者であるヨーゼフ達のような魔術師連中の中でも、特段に狂ったヤツがだ」

老人「善意と良心に従って、たまたま出会っただけのお前を助けてくれると?あぁ?」

上条「……」

老人「理解はしよう、共感もしよう」

老人「――だが賛同は出来ない。そんな奇跡を何回乗算したのかも分からない、そんな可能性に賭けられない」

上条「――それでもだ……ッ」

老人「……」

上条「あの子が生きてて、悩んで、笑って、蹴られて、バカやって」

上条「他人の痛みを分かるって、身内を――妹さんを守りたいっていうんだったらそれはもうヒトと変わりはないだ!」

上条「『こいつは害になるかも知れないから始末する』って最初から決めてかかってる方こそ、人だって胸を張れるか!?」

上条「……張れるものか、そんなモンが……ッ!!!」

老人「『――何が神だ。神が正しいのであればお前を守ってくれただろうに』」

上条「……何、を」

老人「『何故、私の供物を拒んだんだ。初穂じゃなかったからか?』」

老人「『主が供物を喜んでくれればこんなことにはならなかった。私のせいではない』」

老人「『アベルを殺したのは他でも無い神自身だ』――創世記第四章」

上条「何を、言ってん」

老人「お前が正しいのであればお前は俺を膝をつかせるだろう。だが、現実はどうだ?」

老人「たかだかジジイ一人すら満足に倒せず、お前は這いつくばっている。違うか?」

上条「……」

老人「我が侭を通したいのであれば強くあれ。そうでなければそのまま寝ていろ」

老人「お前に変わって俺達が、このクソッタレな世界をどうにかしてやる」

上条「……今から本気出す所だったんだよ、今からな!」

老人「ならば、来い」

上条「――あぁ……ッ!」

――???

ヨーゼフ「……鎌は」

男「根元からポッキリ折れとぉ――が、直せる」

男「人も物も同じちや。誰がばために居れば何度だって立ち上がれるちや」

ヨーゼフ「……」

男「幸い、これはあしが一族に伝わっとぉジツシキによぉ似とぅぜ。数日もあれば元通り――いや、前よりも強ぉ鋼になるちや」

ヨーゼフ「Toeeha、ありがとう」

男「言うき!あしはあしがしたいようやってるき、礼を言われる程のモンはしてないちや!」

ヨーゼフ「しかし術式――ジツシキが同じなのは珍しいな。君達にはイギリスの血が流れているのかい?」

男「よぉ知らんちや。何代か前に天――か――流れ――」

ヨーゼフ「そうか。この鎌は――『セント・オールバンズ(StAlbans)』 ――」

男「したら、いつか――」

ヨーゼフ「――返――」

マタイ「『――The person's sleep woke up gradually. 』」
(――彼の人の眠りは、徐(しず)かに覚めて行った)

マタイ「『It was conscious that eyes opened in stagnation though it was first of all chilly in addition in a black night. 』」
(まず黒い夜の中に、更に冷え冷えするものの、澱みの中で目の開いて来るのを覚えたのである)

マタイ「『……drizzle, drizzle, drizzle, ……』」
(……した、した、した……)

マタイ「『It is a sound that comes to the ear to go along to which water drips. 』」
(耳に伝うように来るのは、水の垂れる音か)

マタイ「『However, the eyelid and the eyelid naturally part in the frozen dark――. 』」
(ただ凍りつくような暗闇の中で、自ずとまぶたとまぶたとが離れて来る――)

パキイイイィィィィンッ……

――路地裏 深夜

マタイ「……」

マタイ「――また、また随分と懐かしい夢を見たものだ」

マタイ「そう言えば”彼”も上条であったな。日本には良くある名前やもしれぬ、な」

マタイ「……彼女らの気配すら残されていない、逃げられたか……どこからが夢で、どこからが現実だったのか……?」

マタイ「……」

マタイ「しかし……魔神の力を行使出来る人間など、それ即ち魔神と何が違う?」

マタイ「直ぐさま討伐命令が出されてもおかしくないのだが……これは佳く言って聞かせねばならんな」

マタイ「……場合によっては第四次世界大戦にもなりかねん……ふむ、またお説教しなくてはならない理由が増えた、か」

マタイ「……」

マタイ「……『賭け』は、果たして――」

――路地裏 深夜

上条「――がっ、は……っ。つー……痛ぇ」 ガクッ

老人「……いい加減にしておけ。ヨーゼフからは『殺すな』と言われているが、俺が命令を守るとは限らんぞ」

上条「だか――」

老人「――っ」 バスッ!!!

上条「――!?」

上条(サッカーボールのように、俺はご機嫌――じゃない――な反動を付けて、強かに壁へと打ち付けられる、と)

上条(動きが止った俺に、何度も何度も何度も何度も何度も執拗な蹴りが跳んでく――このっ!)

老人「だから、無駄だと」 ガッ

上条「くぁっ!?」

上条(蹴り足を掴もうと伸ばした両手を踏みつけられ、膝がこめかみにめり込……)

上条「……」

老人「寝ていろ。そうすれば全て終らせ――」

上条「させな――あぐがっ!?」 ボスッ

上条(……オチたフリも目の前のじーちゃんには効かない……なんだろうな、これ?詰んでるような?)

上条「――かっは、げほっ、げふげふげふげふげふっ!」

老人「埒が明かないな……そろそろ、本気で落とすぞ」

上条「……って、待て――」

上条「……寝てる、場合、じゃ――」

老人「これが現実だ、諦めろ」 グッ

上条「……」 ギリギリギリギリッ

老人「……俺達は賭けをした」

上条(倒れたままの俺の首に両手が掛かり、意識が、遠く……)

老人「何も人の体にのみ人の魂が宿るとは限らん。だから」

老人「だからもし、あの『死者』が戻ってきて、お前を助けようとでも足掻くのであれば」

上条(……柔道の技で、苦しい、と思う暇もなくオトされる……って聞い、た)

老人「だからこその賭けだ。自身が世話になってる人間を。少しでも人間らしい心があるのならば省みる筈だろうからな」

上条(……だ、め……このまま……オチ――)

老人「それが無いというのは……ただ、そこまでの存在だったと言う――」

上条「……」

着メロ(※携帯電話)『メールが届いたよっ当麻お兄ちゃん!どこの業者かなぁ?』

老人「……」 スッ

上条「……ゲッホゲホゲホゲホゲホゲホっ、……げふっ」

上条(な、なんだ……何でコイツ、オトさずに手ぇ放した、んだ……?)

老人「……出ろ」

上条「……は、い……?ゲホッ」

老人「家族からなのだろう?それもこんな深夜に」

上条「……いや、これは誰かが勝手に設定した着メロ、で……」

老人「大切な用件かも知れない。出ろ」

上条「……あ、はい。出ます――つーか、これ着メロ通知なのにメール言ってんな……?」

上条(メール、じゃなかった電話をかけてきたのは――)

上条(――初春、さん?)

上条「『……も、もしもし?』」

初春『あ、どうも上条さんお疲れ様ですー。すいませんね、こんな夜遅くにお時間宜しいですか?』

上条「『あ、うん、今ちょっと取り込み中だけど、まぁ助かったような、うん」

初春『えぇとですね、非常識だとは思ったんですが、早い内にお知らせした方がいいと思いまして』

上条「『早い内に……?何?何かあったっけ?』」

初春『え?』

上条「『え?』」

初春『頼まれたじゃないですかっ!?壊れた携帯電話のデータの中から、女の子を照会して欲しいって!』

上条「『あー……あったねぇ、そんな話』」

初春『なんですかっそのリアクションはっ!?少し前まで、ていうかご指定の時間になるまで待って、聞き込みしてきたのに!』

上条「『あっはい、ごめんなさ――』」

初春『それで、ですね。結論から言いますけど』

上条「『いやあのごめんな?折角調べて貰っといて何なんだけど、その子の話は』」

初春『シロ、でした』

上条「『――はい?』」

――路地裏 深夜

上条「『え!?なに!?どういう事!?』」

初春『いえ、どうもこうもないんですよ。あのー、防犯カメラとかには残ってなかったんですが、丁度その時間の店員さんが憶えてたらしく』

初春『あ、その方のローテが今の時間帯だったんで、直接お話を伺ってきたんです』

上条「『……お疲れ様です。ていうか無理言ってすいません……』」

初春『なんでも画像の女の子、「NARUT○完結してる訳!?全巻持ってこぉい!」と怒鳴った挙げ句』

初春『一時間以上コンビニで、しかも立ち読みで粘っていたんで忘れる訳がない、と』

上条「『……』」

初春『という訳で上条さんの疑いは解けたかと思います』

初春『が、その、画像データが少々不謹慎でしたので、後日出頭されて詳しいお話を――』

上条「『あっ、ごめんなっ!キャッチ入っちゃったから!詳しい話はまた今度に頼――』」

着メロ(※携帯電話)『おっ、またメールが届いたよー当麻お兄ちゃん!今度はどんな美人局に引っかかってるのかなぁ?』

上条「『――って本当に来やがったな!』」

初春『あ、話はまだ終ってな――』 ピッ

老人「……まだか?」

上条「待ってくれ!今度は別の妹が!」

老人「……そうか。家族は、大切だものな」

上条「ですよねー、家族ですからねー」 ピッ

上条(良かった……!マタイさん関係者だから、根本的な所ではモラルがあって良かった……!)

上条(どっかの誰かみたいに『ありがとよパパン(※パニッシャ○アーケード版)』とかされなくて!)

上条(てか待て待て。タイミング良く電話してきたけど、誰――え?シャットアウラ?)

上条(初春さんと違って、依頼なんてしてなかったよな……?)

上条「『――もし、もし?』」

シャットアウラ『夜分に済まんとは全く思っていないが、報告がある』

上条「『斬新な挨拶だな?突っ込むべき所が……まぁいい、それより報告って?俺何にも頼んでない、よな?』」

シャットアウラ『――何?』

上条「『頼んだ頼んだ!憶えているから!たしかアレをアレした件でお願いしてまし――』」

シャットアウラ『別に憶えてなくても構わんが、クロウ7の外傷の件だ』

上条「『もしかして――人の歯形じゃなかったのか!?』」

シャットアウラ『いや、人だな。というか歯形の照会が終った』

シャットアウラ『データベースだけでは何も該当しなかったが、「冥土帰し」へ訊ねてみたあっさりと教えてくれたよ』

上条「『え、カエル先生にか?って事はカエル先生の知り合いの歯形、なのか……?』」

シャットアウラ『それも違う、というかクロウ7の両手にあった噛み傷は――』

シャットアウラ『――本人の歯形と完全に一致したそうだ』

上条「『……はい?ってゴメン、意味が分からない。本人って誰だよ?』」

シャットアウラ『だからクロウ7本人のだよ。つまり自傷だ』

上条「『はぁああああああああっ!?何言ってんの!?』」

シャットアウラ『前に連絡した際に、人が防御行動をすると両腕に傷が多く残ると言う話を憶えてるいるか?』

上条「『あぁ、だから柴崎さんは”何か”に襲われたんじゃねぇかって』」

シャットアウラ『だが”冥土帰し”曰く、傷口もクロウ7の咬合痕と一致している上、可動範囲――つまり、歯の届く範囲にしか傷はない』

シャットアウラ『従って、第三者がわざわざクロウ7の歯形を採取した上で、それ相応の装置でも作らない限り、本人の自傷で決まりだそうだ』

上条「『……いやいやっ!』」

シャットアウラ『否定されても私にはどうする事も出来ん……と、いうのもだ』

シャットアウラ『そんな”夢みたいな話”は魔術サイドの専門だからな』

上条「『……』」

シャットアウラ『用件はそれだけだ。じゃあな』 プツッ

上条「……犯人じゃない……自分で……」

上条「魔術師……ネクロマンサー……『死者』――」

上条「――そして、『夢』」

老人「終わりか?ならば――」

上条「――そうか、そうか……ッ!!!」

老人「うん?」

上条「待ってくれ!ここで俺達が争ってる場合なんかじゃないんだ!早く!早くフレンダを見つけないと!」

老人「……あぁヨーゼフから聞いているよ。『敵の魔術師の攻撃』が、お前の得意なジョークなのだろ」

老人「しかし今は聞いている気分では――」

上条「『死人』は二人居たんだよ!」

老人「――何?」

上条「俺がずっと匿っていた女の子の他に!もう一人!」

上条「そいつが全ての真犯人で!事件の裏側で糸を引いてやがったんだ!」

老人「……それは誰――」

ガギィィィィィインッ……!!!

上条「――――――――――え」

上条(歩道へダンプが突っ込んで出来やがった――と、錯覚するぐらいの素早く、且つ一方的な蹂躙)

上条(線路上に放置されたダミー人形が吹っ飛ばされるような軽さで、たった今まで俺を殴っていたじーちゃんは、紙のように飛ばされた)

上条(数回、硬いコンリートの上でバウンドしながら、壁に激突して関節があらぬ方へと曲がる……『良くて重傷』、そんな縁起でもない言葉が頭に浮かんだ)

上条(……リアリティは、ない。そんなまともな要素は欠片も)

上条(テレビの特撮を見ているように、ヒーローや怪人がご機嫌にカマしてくれるように)

上条(重機を使わず、爆発物や兵器すら用いず)

上条(平然と常識離れの事を、個人のショルダータックルだけでやってのけた相手は――)

上条(――その、厳つい仮面とデカい図体にアニメ声のまま、いつもの調子を崩さず、こう言った……ッ!!!)

団長『ご無沙汰しておりまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーす!おっきゃっくっさっまーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!』

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を
早ければ来週で終わりとなります。いやぁ長かった(他人事)

団長おぉぉぉぉっっっ!!??
そういやコイツだけ「死んで」なかったんだっけ!?学校の窓から放り出されただけで!

未現ジョゴスまさかの原作出演
まあ脅威度はだいぶ違うけど…

乙ですの!

上条さん下手すりゃ画像の件で前科付いちゃうんじゃ……?

乙です

そういやアルフレド弟はどうなったんだっけ?
最終決戦から見かけてないが、復活してないんか?

だれかおしえてー

乙です!

>>548
どっちも千の貌の一つだったんじゃないの?
で、どっちも放逐されたと

>上条「『昔の仲間へ連絡とったら、遠回しに会いたくないって言われた』?」

実際、どう足掻いても死んだ人はもう死んでるんだよね。その人を好きだったかどうかは、全く別の問題として。
新約12巻でフレンダの映像を見た浜面も、すごく複雑そうだったし。

この番外編全体に漂うやるせなさは、そこからも来ているのかも。
せめて最後にはフレンダ、笑ってよ。

乙です


原作にジョゴス出た時に、原作者はこれ読んでんじゃね?って思いましたね

単なる偶然でしょうけど

グッド!

>>501
バードウェイ「RPGでレベルの低い仲間を連れて強い敵と戦わせる、レベリングという作業がある」
バードウェイ「レベル1のキャラだけでは瞬殺されるように敵を倒し、さっさとレベルを上げてしまおう――まぁ、嫌いではないがね」
バードウェイ「――が、それはあくまでも非現実の話。フィクションの中の”錯覚”だ」
バードウェイ「仮に竜退治へ村人Aがついて行ったとしよう。そして勇者に紛れてこっそり石を投げ、ドラゴンへ当たった」
バードウェイ「この”作業”を100回、いや1000回でも繰り返したとする。根気よく、勇者達の影に隠れな」
バードウェイ「――当然、これでは成長なんてしないだろう?多少は度胸が付くかも知れないが、それだけだな」
バードウェイ「する訳がない。経験とは自らが自らの意志で戦い、抗い、傷つく事によってのみ得られる対価だ」
バードウェイ「絶対の庇護者に守られながら、楽をしてぬるま湯に浸かったままであれば、それはとてもまともな経験値など得られはしまいさ」
バードウェイ「……」
バードウェイ「私が欲しいのは『肩を並べて戦う連中』であって、『格下の足手まとい』などではない」
バードウェイ「――この、莫迦が好き勝手やった挙げ句、酸っぱい葡萄を採れずに停滞している『しあわせの世界』を壊すには、な」
(※ドナーティのホロスコープが”バードウェイ家の血筋”を必要としていたように、恐らくは家業として『あ系ロリ陽射し(誤変換)』をやってるのはまず確実、
んでもって最新巻で姉妹でgdgdな犠牲し合いをやっていて、且つ両親が介入した気配が微塵もないため、恐らくは亡くなっているのではないかと思います。
余談ですが、『胎魔の~』の本編中、『団長』の特性を「あぁうん、これは流石に原作レイ×になるから止めておこう」と珍しく自重し、カニバリズムから夢のお話へ変更したのですが、
原作最新巻では見事にイヤーな部分にまで突っ込んでます。神様(※鎌池先生)はスゲーな!と。
更に補足ですが、カニバリズムは今なお存続しており、南アフリカでは「アルビノの子」が非常に珍重されています。それもつい数年前の話。
更に更に同じく7、8年前。韓国で中国から輸入した『栄養カプセル』の成分を分析した所、”胎児の遺体”だったそうで)

>>502
ありがとうございます

>>503
フレンダファンの方には色々とご心配をおかけしたかと思いますが、ご安心下さい。悲劇を書ける程の甲斐性は最初からありません、残念ながら

――路地裏

団長『元気ですかー?元気でしたかー?それはそれはよう御座いましたー。まっ、でも今から元気じゃなくなるんですけどねー』

団長『ま・ず・は!「右手」をへし折ってぇ、左手は再生出来ないように砕いてぇ』

団長『あ、両足は膝辺りでチョッキンしちゃいましょーねー。せめてお散歩ぐらいはさせて上げたいですしー』

上条(くねくねと恋する乙女のように、2m近い屈強なオッサンが身を震わせる光景は、それだけで充分怖い……いや、違う、な?)

上条(前に遭遇した時には、もう少し小綺麗な印象を――映画でよくある殺人鬼程度には――受けたんだが、なんか、こう歪だ)

上条(両肩が異常な撫で肩になっているし、右手の左手のバランスがおかしい)

上条(デッサンに失敗したラフ画のように、言い方を変えれば前衛芸術のように、右手だけが太く、長い)

上条(全体的にも痩せたのか?顔に付いている鉄仮面ぽい何かとコートのシルエットが同じじゃなければ見分けはつかない)

上条(……が、おかしな所――ツッコミ所は多々あれど、俺が真っ先に指摘したいのは、その”臭い”だ)

上条(生ゴミの臭いやカブトムシの臭いに近いのは近い。けどどこか甘ったるいような、胸焼けと吐き気を同時に催させるような)

上条(……そう、俺が何度か嗅いだ事のある。『冥界』の香り……!)

上条(アリサを迎えに行った奈落の底で、見渡す限り咲いていた冥府の華……!)

団長『でもでもぉ、時間が足りないしぃ、やっぱりここはぁお持ち帰りしたいなぁ』

上条「――お前が」

団長『なんですかぁ?はい?』

上条「お前が全ての元凶だったのかよ!?猫達が次々と居なくなったのも!フレンダを甦らせたのも!柴崎さんに術式をかけたのも!」

上条「全部はフレンダを犯人に仕立て上げるためにやったのか!?そんな、そんな馬鹿げた事をしやがった!?」

団長『んー……?お客様ぁ、当りっちゃ当りですけどぉ回答としては不正解ですねー』

上条「あぁ!?」

団長『物事には必ず原因がありますよぉ。それがどれだけ狂った要因で引き起こされたとしても、必ず”何か”が』

団長『フレンダちゃんを犯人役にしたのは、あくまでも手段であって目的じゃないですからねぇ?』

上条「……じゃあ、なんで!?」

団長『時間が無いんでぇ、あんまり説明してるヒマはないんですけどー――あ、そうだ!こうしましょう!』

ギリギリギリギリギリギリッ

上条「あ……――くっ…………!?」

上条(俺が避ける暇もなく、たった一本の右手で首、を絞め……っ!)

団長『あ、死にそうになったらタップして下さいね?まぁ、結局殺すんですけど』

上条「――か、っ、……くっ!!!」 ガリガリガリガリガリッ

上条(『右手』で殴っても、宙に吊られているまま蹴りを入れても、引っ掻いてすらびくともしない……!)

上条(体自体は人並みの柔らかさなんだが、中に鉄筋でも入ってるかのように硬っ!)

団長『んー、そうですねー。強いて言えば”優先順位”の問題でしょうかねー』

団長『私ってほら、魔術師サイドの人間でしょ?だから異能者相手にするのは比較的楽勝――なん、ですけど』

団長『お客様、お気づきでしたかー?あの「常世」の夜以降、マタイさんがつかず離れずガードしてたんですよー?』

上条(……マタイさん、が……あぁクソ!手が、緩まない!)

団長『他に「新たなる光」が、日替わりでウロついてましたしぃ、私がこうやってお客様にお別れの挨拶をするのは不可能だったでしょうねー』

団長『――なら、その護衛を切り離してしまえばいい』

上条「……っ!」

団長『そうですそうです!たまたまうってつけの”死者”が居たモンですからねぇ!彼女に全部罪を被って貰おうって、誘導したんですよぉ!』

団長『その結果、あなた方は本来手を結ばねばならない者同士が仲違いをし、お客様と会えちゃいました!やったねっ☆』

上条「――は」

団長『はい?もっと大きな声で言って下さーーーーい……あ、すいません言えないんでした――』

上条「猫はどうしたっつってんだよ!!!」 ガッ

上条(団長が俺の口元へ耳を近づけた一瞬、残った力を振り絞って画面へ蹴りを入れた!)

上条(……が、当然というか、意外性の欠片もなく、仮面一つ傷付けられなかった)

上条「……」

上条(……いや、違う、か?今の衝撃で野郎のコートが僅かに捲れ上がっ――)

上条「――!?」

団長『やだー、お客様のエッチスケッチワンタッチー!こんな時までラッキースケベ起こさなくってもいいじゃないですかー』

上条(俺は締め上げるのも忘れる程、空気が満足に肺へと入って来ない逆境を忘れる)

上条(ほんの一瞬だが、それほどまでに目にした”もの”が信じられなかった)

上条(暗い暗い路地裏の灯り、ほんの僅かにコートの下から覗いたのは――)

上条(――猫の顔、だった……!)

団長『私もねぇ、本体はシリンダーでしょ?ですから非力な初期状態だと、人体改造は無理なんですよぉ』

団長『それにここは科学の街ですしぃ。だったら人が失踪したら大騒ぎになるでしょうから、どうやってお客様へご奉仕する躰を作るか、迷っちゃいましてぇ』

団長『な・の・で!ここはやはりハイスペック且つ大量に落ちていた猫ちゃん達にご協力願いましたー!パチパチパチパチィ!』

団長『人一人の躰を造り上げるまでに結構虐殺しちゃいましたけど、まぁ仕方がないですよねぇ?』

上条「――のっ!」 ガッガッガッガッガッ!!!

団長『アッハハハハハハハハハハっ!お客様ステキいぃっ!その憤怒にまみれた顔はとてもいいですよぉ!』

団長『殺したくなくなっちゃうじゃないですかー!もっとゆっくり時間をかけて楽しみたい……ッ!』

上条(そういやコイツ、ネット上で猟奇殺人を手がけてる魔術結社なんだっけか……嫌な事思い出させてくれやがる)

団長『腕を千切って遊びましょうか?それとも足をもいで楽しみましょう
か?』

団長『我ら”殺し屋人形団(チャイルズ・プレイ)”の名にかけて!お客様にはとっておきの悪夢をご覧に入れましょうかっ!』

上条「クッソ!離せっ!離せっ!離せぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」 ガッガッガッガッガッ

上条(残ってる酸素がなくなるのも気にせず、激情に任せて全力で団長を蹴りつける!)

上条(蹴ってる足が躰へめり込む度に、コートの下から肉塊と化した猫の残骸が剥き出しになって背筋を振るわせる――が!)

上条(哀れや悲しいとか言う感情よりも!目の前にいる最低の屑に対価を支払わせてやる!)

上条(お前が!お前が弄んで傷付けた人や猫の分まで!俺が!)

団長『お客様は怒ってる場合じゃ無いんじゃないですかー?ほらほらー」ギリギリギリギリッ

上条「か――……はっ……!?」

団長『――受け入れろよ、「幻想殺し」』

団長『それは友人であり、隣人であり、そして家族でもある』

団長『どこにでもあり、有り触れた現象の一つでもある――そう、ほら』

団長『ここにも、”死”が――』 グググッ

上条(今までどんだけ手加減してたんだってぐらい、血液が止ま……じゃ、ない……)

上条(俺の……頸骨が、ミシミシ――)

上条(これ、窒息する、前に……死――)

???「何――」

上条(――意識、が、遠――――)

???「――やってる――」

上条(――ここは、くらくて、さむい……)

???「――訳よ!?」

ゴッ、ザパバシャアアァァァァァァァァァァッ!!!

団長『おやぁ?』 スッ

上条「――ゲホッ、ゲフゲケフゲフゲフゲフゲフッ!」 ドンッ

上条(乱暴に、そして脈絡もなく俺は何度目かの締め付けから解放された)

上条(肺へ、頭へ流れる血流が土砂降りの雨音に聞こえる――ような、錯覚に陥りながらも)

上条(さっきの複雑な音は、耳がおかしくなったんじゃなくって、どうやら闖入者がゴミバケツを蹴り上げたんだと、周囲に散乱した生ゴミに辟易しながら理解し)

上条(俺は”そいつ”を知っていた)

上条「お前――」

???「感謝する訳ー、つーかこの貸しはデカいから」

上条「――ヌレンダ!」

フレンダ(???)「フレンダよね?前も言ったけど、セイヴェルンさんでもいい訳だけどねっ!」

――路地裏

フレンダ「つーか何コレ?痴情のもつれかなんか?」

上条「違――逃げ、るん、だ……っ!」

フレンダ「たった今まで絞殺されそうになってるヤツが、格好付けるんじゃない、って訳よね」

上条「……そいつ、は――」

フレンダ「つーか、さぁ?――」

フレンダ「――『暗部』ナメんな」

上条(俺が見ていた――そう、俺が知っているフレンダじゃ、決して浮かべようとしなかった暗い暗い顔)

団長『これはこれは、また新しいお客様でっすかー?』

団長『遊んであげたいのは山々ですけどぉ、今ちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっと、忙しいんでぇ』

フレンダ「あーはいはい。大物感出す努力は認めるって訳だけどさ、喋るヒマあんだったらかかって来なさいよ、ねぇ?」

団長『何……?』

フレンダ「てか能力依存度バリバリの相手にもこっちは勝ってきたって訳」

フレンダ「図体デカいだけの頭カラッポちゃん、肉弾戦で押すしかないタイプに負ける訳がないのよ、こっちは!」

上条(倒れた俺を庇うように――実際、庇っているのだろうか?――立つフレンダの顔は、もう見えない)

上条(きっと……最初の頃の一方通行やフィアンマみたいな、どこか能面じみた笑いの形になってる”だけ”の表情が浮かんでいるんだろう)

上条(――でも、それは違う!それじゃダメなんだ!)

上条(そんな『切り捨てた』やり方じゃ何も解決なんかしないんだ!)

フレンダ「てゆーか、ペラペラ喋ってるヒマある訳なの?んー?」

フレンダ「さっさと逃げるか、それともあたしに向かってくるか決める訳」

フレンダ「それとも、もうすぐ来る警備員にとっ捕まるー?ま、好きに選べ良い訳よ」

団長『暇、暇ですか?余裕はありませんけどねぇ――ですが』

フレンダ「何よ」

団長『ここら辺一帯の電場座標は”最高のタイミングのドッキリ”をする一瞬だけしか解放してないですから、ケータイ繋がらない筈ですよぉ?』

フレンダ「え」

団長『なんでしたら試してみてはどうですかぁ?ケータイ、お持ちなんでしょう?』

フレンダ「……ちっ、電波系能力者って訳か――」

フレンダ「――でも、こっちは学園都市最上位のビリビリとついこないだやり合ってる訳よ!」

フレンダ「あんたみたいなザコにやられるなんて有り得ない訳!――見なさい!このあたしの華麗な能力を……ッ!!!」 キリッ

上条「――っ!?」

団長『へぇ……?』

フレンダ「……」

上条「……」

フレンダ「……あ、能力使えないんだっけ」

上条「お前……もう帰れよ……」

フレンダ「何よっ!?もし力が使えるんだったら瞬殺してる訳だし!」

団長『……なんかドッと疲れたんですけどぉ。てゆうか無駄な時間遣ってぇ、私も怒っちゃったぞー!』

フレンダ「……2m近い鉄仮面被ったコートの不審者が、アニメ声オネエって……」

団長『そろそろ教皇サマが来そうですしぃ、かといってお客様以外を相手にする時間は勿体ないですしー。んー、どうしましょうかー?』

フレンダ「な、何よ!それ以上近づいたら走って逃げる訳!」

団長『ナルホドナー。確かに電波的に密室ですが、少し大きな通りへ行ったら人も居ますし、もしかしたら「正義のヒーロー」――』

団長『――と、までは言いませんが、それに近い性質のバカが居るかも知れませんねぇ』

フレンダ「ふっ!こっちはこのバカに大した恩も感じてないから、いつでも見捨てられるって寸法な訳よねっ!」

上条「……胸張って……言う……なっ!」

団長『――っていうのがハッタリなんですよねぇ?違いますぅ?』

フレンダ「……」

団長『そうやってお客様からあなたへの優先順位を引き上げさせて、わざわざ自分を囮にして助けようって事ですよねぇ?いやー、流石ですー』

団長『少ない情報でそれだけの機転を効かせ、しかも異能者が能力も満足に使えない状態』

団長『それだけのハンデを背負って来ているのに、お客様を庇って逃げようとする気配すら見せない。いやー、健気だなー」

上条「……フレンダ……俺は……いいからっ!」

フレンダ「……黙っとく訳。アレでしょ?これもあたし関係のトラブルなんで
しょ?」

団長『えぇ?知りたいですかぁ?』

上条「お前――余計な、事を――」

団長『あぁ分かってます分かってます。言ったら死んじゃうんですよね?聞いたら死んじゃうんですよねぇ?』

フレンダ「……何の話?あたしに隠し事してるのって」

上条「いや、別に大した――」

団長『そうですね。別に大した事じゃないから気にしなくって構わないと思いますよ』

団長『――あなたがもう、既に死んでるっていう”だけ”のお話ですから』

フレンダ「え――」

上条「聞くなっ!アイツの言ってるのは全部嘘――」

団長『憶えてないんですか?『暗部』同士の抗争で、あなたは仲間を裏切ってアジトの場所をお喋りしちゃってぇ』

団長『それで激おこ麦野沈利さんに、こう、生きたままお腹を裂かれたんですよね?』

団長『苦しかったですかぁ?それとも怖かったですかぁ?』

団長『あなたが殺されたあの日、思い出して下さいな!』

フレンダ「――――――――こふっ」

上条「フレンダっ!?フレンダっ!」

上条(糸の切れた人形のようにストンとフレンダは膝をついた)

フレンダ「あー……そっかぁ、あたし」

上条(抱き起こした俺の目に入ったものは、口の端から血を流し、両手でお腹の辺りを押さえているフレンダ……)

上条(丁度抑えている辺り、服には赤い染みが異常な速度で広がっていく)

フレンダ「……ね、ぇ」

上条「喋るなっ!いいからっ!大丈夫だからっ!」

フレンダ「……これ、だった……訳?あんたが隠してのって……」

上条「待ってろ!今誰かっ!お前を助けてくれる人を!」

フレンダ「あ、ははー、こりゃちっとマズい……訳、か」

上条「喋らなくていいから!俺の知り合いは凄い人ばっかなんだよ!みんな、みんな『教皇級』とか言って!凄い魔術――能力者なんだ!だからっ!」

上条(傷口を――にじみ出る血を抑えながらも、フレンダの瞳の焦点は段々と
合わなくって)

フレンダ「……言わない訳、つーか言えない訳よね、これは……うん」

上条「全部きっと上手行くさ!誰も!誰もお前を死なせたくなんてないんだからな!」

フレンダ「……なんだかなー……最期の最期、で、男運が悪かったんだか、良かったんだか」

上条「妹さんにだって会えるんだよ!そりゃ……うん!今じゃ保護者が変わってるから、電話とかメールとか!そういう手段になっちまうけどさ!」

フレンダ「……あぁ、悪かったのはあたし……な、訳か」

上条「フレンダ……」

フレンダ「……戦うべき所で逃げて……逃げるべき所で、戦っ……」

上条「諦めるなっ!方法はあるんだから!誰もが認めてくれるような方法が!きっと!」

フレンダ「……ね、上条」

上条「な、なんだっ!?――」

上条「――あれ、お前初めて俺の名前呼ん――」

フレンダ「………………………………ありがと、って……訳――」

上条「な、何言ってんだよ?別にどうって事はしてねぇだろ、なぁ?」

フレンダ「……」

上条「俺は別に、いつだってそうだけどさ?俺がしたい事をしてるだけであって、助けたいと思う人に手を差し伸べるだけで」

フレンダ「……」

上条「だから、こう、アレだよ!お前が俺に感謝する事なんて!何一つ!だから!」

フレンダ「……」

上条「だから、あぁうん、だから、さ……?」

フレンダ「……」

上条「だから――」

フレンダ「……」

上条「――だから、目を」

フレンダ「……」

上条「目を、開けてくれ、よ……?なぁ?」

フレンダ「……」

上条「何だっていいよ!『死者』だろうが!お前がどんな存在だったって!」

フレンダ「……」

上条「俺を!俺みたいなヤツを助けに来てくれてんだから!そこいらの人よりかずっとずっと人らしいし!」

フレンダ「……」

上条「なぁ知ってるか?ローマ正教の偉い人達が、そこでぶっ倒れてるじーちゃんと、マタイさんって人が賭けをしたんだって」

フレンダ「……」

上条「その人達が言うには、お前が、お前がどんな存在であれ、人らしく誰かを助けようとするんだったら……」

フレンダ「……」

上条「……するん、だったら……」

団長『あっははははははははははははははははははははははははははははははははははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!』

団長『そうそう!その表情!それが見たかったんですよ!』

団長『絶望に打ち震えろ上条当麻!お前を守る神などありはしないんだ!』

団長『これは罰だ!貴様らが神を殺し――』

上条「お前――お前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
ぇぇっ!!!」 ガッガッガッガッガッ

上条(『右手』……だけじゃなく、両手両足、いや体全体で思い付く限りの方法で殴りつける)

上条(渾身の一撃、そんなちゃちな言葉だけに留まらないような、殴りつける手の皮が破れ、骨がズキリと痛むのも気にかけずに)

上条「がぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

上条(獣のような叫びがデタラメに響くが……しかし、そのささやかな抵抗も終る時が来る)

上条「あ――がっ!?」

団長『時間がありませんから巻きで行きますよぉ。いやぁ、そこのお嬢さんに感謝して下さいねー』

上条(じーちゃんに団長、二人から散々痛めつけられた体は言う事を聞かない……体力がと殆ど残っていない)

上条(頼みの綱の『右手』もこの男には何故か効き目が薄い)

団長『て、いうか-、ヤる前に一つだけ聞きたいんですけどー、おっきゃっくっさっまぁ?』 ギリギリギリッ

団長『あなたは少し前に体の自由を取り戻していましたよねー?つーかこんだけ動けるんですから、まぁ当然でしょうが』

団長『だったらどうしてさっと逃げなかんったんですー?こんな”屍体”なんか放っておいて置けば――』

上条「……ない」

団長『はい?』

上条「そんな事が出来る訳がねぇだろクソッタレがっ!!!」

上条(逃げれば良かった――とは、思わない。決して。それだけは)

上条(『団長』自身が語ったように、この状況下で逃げられて助けを呼ばれ、最終的にはマタイさんに駆けつけられるのは最悪だろう)

上条(……だが、しかし。それをしてはいけない。それだけは絶対にだ)

上条「こいつは――フレンダは!俺のために――恐らく、俺を殺すという”たったそれだけ”のために甦らせられて、命を弄ばれたんだ!」

上条「そして役目が終り、舞台から一度降りたにも関わらず、また俺のために戻ってきた!俺なんかのために戻ってきてしまった!」

上条「そんなフレンダを――この場に置いて、ノコノコ逃げるような真似を!」

上条「……そんな下らねぇ事をやったら、俺は俺じゃなくな――ぐっ!?」 グッ

団長『はぁ、よく分からないですけどー、取り敢えず殺しておきますねぇ?……と、口上忘れてたや』

団長『――さぁさぁお別れのお時間となって参りました!お名残惜しいですが、どなた様もお忘れ物のなきように!』

団長『我らが”殺し屋人形団”の演目、楽しんで頂けましたらば今後ともどーっかごひいきに!』

上条「か――は……ッ!?」

団長『あ、お客様もご心配なさらず!あなた様のご遺体はご家族の元へ送って差し上げますよー!やー、アフターサービス満点だなー』

団長『勿論”死者”としてねっ!大切なお時間を生者の皆様とおくつろぎ下さいますようっていうかお楽しみ下さいなっ!』

団長『超笑える展開をこうご期待!上条当麻さんの戦いはまだまだこれか――』

……プツッ……

――???

フレンダ(あー……なんか、物理的にお腹なくなってた訳かー。道理で空きっぱなしな訳ーと)

上条「な、何言ってんだよ?別にどうって事はしてねぇだろ、なぁ?」

フレンダ(ていうか『死者』?死んでた訳?……そっかー)

上条「俺は別に――だけどさ?俺がしたい事――助けたいと思う人に手を差し伸べ――」

フレンダ(てかゾンビー的なあれな訳?……マジで?あんまお肉食べたいとか思わなかった訳だけど)

上条「だから、こう―!お前が俺に――」

フレンダ(絹旗辺りだったら嬉々として見そうなB級映画っぽい展開な訳。他人事かっ!つーか他人事かっ!)

上条「だから、あぁうん、だから、さ……?」

フレンダ(うん?)

上条「だから――」

フレンダ(だから何よ?)

上条「――だから、目を」

フレンダ(見えてるじゃない。今にも泣きそうなアンタがはっきりと見える訳よ)

上条「目を、開けてくれ、よ……?なぁ?」

フレンダ(あ、泣いた……つーか、男の人も泣くんだー?へー?)

上条「何だっていいよ!『死者』だろうが!お前がどんな存在だったって!」

フレンダ(つーかまだ生きてる。っていうかウッサい。脈を取れ脈を)

上条「俺を!俺みたいなヤツを助け――そこいらの人よりかずっとずっと人らしいし!」

フレンダ(んなわきゃ無い訳。こっちにだって打算があって、たまたま声が聞こえたから引き返してき訳だし)

上条「なぁ知って――正教の偉い人達が――賭けをしたんだって」

フレンダ(あんたを助けに戻ったんじゃない訳、鍵返しに来ただけだし。誤解すんな)

上条「その人達が言うには、お前が、お前がどんな存在であれ、人らしく誰かを助けようとするんだったら……」

フレンダ(……)

上条「……するん、だったら……」

フレンダ(……うん)

団長『だったらどうしてさっと逃げ――放って――』

フレンダ(なんつー言い方すんだこのオネエ。だからあたしはまだ生きてるし)

上条「……ない」

団長『はい?』

フレンダ(はい?)

上条「そんな事が出来る訳がねぇだろクソッタレがっ!!!」

フレンダ(いやでもあたしだったら逃げてる訳よ)

上条「こいつは――フレンダは!俺のために――恐らく、俺を殺すという”たったそれだけ”のために甦らせられて、命を弄ばれたんだ!」

フレンダ(だから勘違いすんなバーカ。誰もあんたのためなんか、に)

上条「そして役目が終り、舞台から一度降りたにも関わらず、また俺のために戻ってきた!俺なんかのために戻ってきてしまった!」

フレンダ(……)

上条「そんなフレンダを――この場に置いて、ノコノコ逃げるような真似を!」

フレンダ(……)

上条「……そんな下らねぇ事をやったら、俺は俺じゃなくな――ぐっ!?」 グッ

フレンダ(…………ほんと、バカなヤツ)

団長『はぁ――取り敢えず殺――』

フレンダ(……あぁ何か殺されそうになってる訳……つってもなぁ、武器も何も無いあたしじゃどーする事も出来ない訳)

フレンダ(能力……武器を引き寄せようにも、元々ストックしてある場所には、碌なモンが置いてないっぽいし)

フレンダ(手元にあるのは――あぁ手、殆ど動かない訳……あっと)

フレンダ(……鍵?返しに来たんだっけ?そういう設定だった訳か)

フレンダ(無駄になっちゃったけど、鍵……どこかに、武器……)

フレンダ(あたしの……能力が……万全なら)

フレンダ(どこかに、武器があれ……ば)

フレンダ(力が欲しい……訳)

フレンダ(大切なものを守――力――が)

フレンダ(欲し――)

フレンダ(……)

???『――ならば』

フレンダ(……はい?)

???『――手を伸ばせ、我が戦友の娘よ』

フレンダ(え、なに?どんな超展開!?)

???『――嘗て、ただ一人暴虐へ立ち向かった男が居た』

???『理不尽に泣く事すら許さない嬰児、怨嗟の声を押し殺す母親、飢える我が子を見捨てなければいけない老婆』

???『暴虐に打ちひしがれる同朋のために、ただ一振りの刃を持って騎士に立ち向かった愚かな男が居た』

???『男は民を率い、騎士達に戦いを挑むが――最期は無惨にも体を裂かれて命を落とした』

???『だが――それでは終らぬ。全ては始まりに過ぎない』

???『我は暴虐に抗する冷たい刃!力なき者へ与える正義の心!幾度でも戦さ場へ現れては我を呼ぶ声に応えん!』

???『我が名を呼べ!力なき者よ!我が友の娘よ!』

フレンダ(……その、死ぬ前の走馬燈の割にはスペクタルな内容な訳)

フレンダ(誰かと勘違いしてるんじゃ?ウチのパパはあんたみたいな変な知り合いは居ない、かな?多分)

フレンダ(てか呼べ、って言われても、ねぇ?困るって言うか)

???『汝は能力者に非ず。汝の力は異能に非ず』

???『自らが定めた檻を打ち破れ!我が戦友の娘よ!』

フレンダ(よく分からない訳だけど、能力、使えばいい訳、かな?)

カチリ

フレンダ(……はい?今なんか鍵穴に入った――)

???『力なき者はその力に憧れ”魔術”を造った……』

???『またある者は魔術を殺そうと”科学”に手を染めた……が、しかし』

???『汝が持つ力は原初にして人が持つ可能性、進化の過程で切り捨てた筈の力』

???『そう、人の言葉で言うのであれば――』

???『――――――――”原石”』

――路地裏

……プツッ……

上条(――という音が聞こえ、あぁついに俺の首が折れたのか――)

上条(魔術と科学との間を行ったり来たりしていて、最期はアニメ声のオッサンに絞殺される……魔術も能力も関係なかったな!)

上条(ていうかアックアん時も思ったんだが、個人用のブースト……身体能力強化に関しては、『右手』で触っても解除されないようだし)

上条(神裂と初めて殴り合った時のように、魔術で能力値を上げて物理で殴って来られたら……うん、まぁいいか)

上条(しっかし死んだにしては体が痛い。全身傷だらけで無事な所が無いって言うか。まぁいつもの事だが)

上条(この世界のセオリーじゃ魂はないって話で、死んだらそれっきり。龍脈に蓄積されるって聞いたけど)

上条(それにしてはあちこちが痛む。まるで生きてるよう――生きてる?)

上条「……?」

上条(俺の喉を掴む『団長』の右腕はまだここにある。というか掴んだままだし)

上条(が、その力は弱々しく、俺でも引きはがせ――) ペリッ

団長『――な』

上条(鉄仮面の下から、そしてコートの下から覗く猫――だったモノ――達の虚ろな瞳に写ったのは俺――)

上条(――では、なく。焦点が合っているのは後ろ、そう――)

上条(――俺の肩越しに、『団長』の右腕を切断してのけた――)

上条(――”彼女”の姿を!)

フレンダ「――ったくオチオチ死んでらんない訳よ」

団長『その――武器は』

フレンダ「あぁコレ?何か頭ん中でゴチャゴチャ喋ってたから、あたしの能力でお取り寄せしてみたんだけど――」

フレンダ「――女の子が持つには、ちょっとゴツい訳よね?」

上条(すぅ、と。軽く横に引いただけで『団長』の右腕が切り落とされる。その武器を、その凶器に!俺は一度ならず見覚えがあった!)

上条「『(Sacred Death(ジョン・ポールの断頭鎌)』……!」

団長『マタイの武器が何故ここにあるっ!?お前はただの能力者だろうに!』

フレンダ「さぁ?あたしに言われてもわっかんない訳――あ、ちょい退いて」 スッ

上条「お前――体はっ!?傷口は大丈夫なのかよっ!?」

フレンダ「言われてみれば!?……あ、いや、付いてるし?」

団長『フレンダ――フレンダ、セイヴェルン……!そうか、Saint. Albansの血族か……っ!』

団長『反逆者の末裔が学園都市で何をする!?』

フレンダ「オールバンズ?あたしが前に暮らしてた街だけど、それがどうしたって訳?」

団長『こんな所に”原石”が!しかもヴァルキュリエだなんて聞いていな
い!?』

フレンダ「いやあの、話振るだけ振っといてスルーって酷くない?……ま、いっか。何か知らないけど、このあたしが超パワーアップしたみたいだし!」

フレンダ「サクサクッと終らせるって訳よっ!――せいっ!」

団長『……!』

上条(気合い一閃!フレンダはその死神鎌を振りかぶって攻撃――)

フレンダ「ふんっ!ふんぬぅぅぅぅっ!」

上条(こ、攻撃……うん、攻撃をね、しようとね、してるんだけど……)

フレンダ「ていうか重っ!?この鎌重っ!?」

上条「今更かっ!?ていうか最初の一発はまぐれかよっ!?」

フレンダ「あたしに言わないでよ!?さっきのは上条が死んじゃうかも!って必死だった訳だし!」

フレンダ「ていうかこんなバランス悪くて重くて黒くてダサくて使いづらい武器なんか使える訳ないじゃないっ!」

上条「全否定すんな!鎌は中二病患った人達からすれば憧れの武器なんだからな!」

フレンダ「あ、ゴメ。てかやっぱあたし腰が抜けてるってぽい……」

上条「だからお前もう帰れよ、なっ?シリアスが苦手なんだったら、これ以上居ても意味ないからな?」

団長『――あのぉ?そろそろいいですかぁ?』

上条「……えっと」

団長『まー、そりゃそうですよねぇ。”聖人”だ”原石”だぁと言った所でぇ、最初は素人さんですしぃ』

団長『素人さんが覚醒したとしても、急に全ての力を振るえるなんて有り得ないですよぉ』

上条(『団長』は斬られた右手を拾い、傷口と傷口とをぐちゃりと合わせ、強引に二度三度押し込む)

上条(すると……たったそれだけの作業であっさり癒着したらしく、ゴキゴキと右手の指が動き始めた……!)

団長『立てないでしょ?それ魔術の反動ですよぉ。魔力を消費したって訳で、それ相応の疲労がやって来ますからぁ』

団長『イニシエーションも受けていない、ましてや魔術知識で精神防壁も築いていなければ、まぁそうなるでしょうねぇ』 ググッ

フレンダ「な、なによ?」

団長『でもでもぉ、その程度済んで良かったとは思いますよぉ?下手すれば発狂しますし――あ、能力者が魔術使ったらボン!するんでしたっけ?』

団長『それが無いって事はぁ……クロウリーの呪いが解けたんでしょうか?それとも――』

団長『――あなたが”異能だと思って使っていたモノは、最初から魔術だった”とかぁ?ま、いいですけどねぇ』

上条(右手の慣らし運転が済んだのか、その、コンクリさえ砕く凶器を俺達二人へ向ける)

上条(満足に体が動けない俺は、どうにか這いつくばってフレンダの所まで行き)

上条(背後に庇う……ような、格好をするので精一杯だ……!)

団長『”奇跡”はちょぉぉぉぉぉっと驚いちゃいましたけどぉ、まぁそれなりに面白かったですねぇ――お礼に』

団長『時間も押しているんでぇ、お二人ともさっさと仕留めちゃいますねぇ。遊んでいる暇はないみたいなんで、いやぁラッキーですねー?』

上条「……クソッ!」

団長『それじゃいっきっまっすっよぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!』

上条(軽いかけ声とは裏腹に、今度こそ全力の一撃を放とうとその腕が大きく引かれる)

上条(俺と戦ってたじーちゃんを吹き飛ばした一撃――)

上条(――不意打ちはいえ訓練を積んだ魔術師すら、一発で戦闘不能に追い込む攻撃が、俺達にどんな影響を与えるのか。考えたくもない)

上条(あー……どっか聞いたんだが、あんまり強すぎる攻撃を受けると吹っ飛ぶんじゃなくって、千切れるんだってな)

上条(最大級の対物狙撃銃、戦車装甲を撃ち抜く目的で作られた銃で人を撃つと、衝撃で人体が粉々になると)

上条(……実際、大口径のアサルトライフルで撃たれれば、銃弾が外へ抜けたとしても、衝撃で内蔵がグズグズに……)

上条(――いや、現実逃避してる場合じゃないだろ!ここで諦めてどうするんだ!?)

上条(折角フレンダが稼いでくれた時間を無駄にするつもりかっ!俺一人だったらとっくにやられてたってのに!)

上条(考えないと……何か、事態を打開するための方法がある筈だ!今までそうして来たように!)

上条(――とは、言ってもか。どうする?レッサー達やマタイさんが駆けつけてくるのを待つ?誰かが何とかしてくれるのを?)

上条(仮に助けが入ったとして、振りかぶった拳を引くような相手じゃないだろうし……)

上条(それとも『右手』か?俺が危なくなった時ギリギリになって、今まで知らなかった超パワーが発動するよ!やったねっ!)

上条(――と、希望的観測に縋るのは、なぁ?右手さん働き過ぎだしさ)

上条(何かの偶然が起きて助かる?俺が知らない何かの偶然が重なって、とか?)

上条(それこそ……ありもしない奇跡を信じて、ヒモ無しバンジーするような感じか。いや、必要があれば跳ぶのは跳ぶが)

上条(だからっつって最善の方法を探さずには居られない……つってもなぁ)

上条(まともに動くのは口ぐらい。でも説得に応じるような相手でもない。少なくともこの状況下で俺の言葉は届きそうにない)

上条(バードウェイや雲川先輩みたいに、充分以上に喋れるんだったら……まぁ今更だが――ん?)

上条(そういや……あの時、あの場所で、俺は、俺達は――そうだ!)

上条(あったじゃねぇか!今の今まで忘れてたけど!アレを使えば!)

上条(相手は『死者』だ!条件はきっと当て嵌まる筈――)

団長『おおおおおおおおおォォォォォォォォォォォォォォォォォォ――』

上条「――――――――――『約束』……ッ!!!」

団長『――くっ!?』 ピタッ

上条(ごうっ、と。俺の鼻先で豪腕は停まり、体が軽く押される程の風圧がやってくる)

上条(酷く獣臭いのに顔をしかめるが……それ以上、拳や蹴りなどの暴力はやって来なかった)

フレンダ「……あ、あれ?どった訳?なんで?どうして?」

上条「『――死者は約束を破られない。破らないのではなく、破”れ”ない』」

上条「『柔軟な思考力が失われているのか、そもそも考える事が出来ないのか』」

上条「『体が死んでるから、もしくは精神そのものが死んでいるのかは分からないが』」

フレンダ「え?」

団長『この、このオォォォォォォォォォォォォォォッ!!!』

上条「……助かったぜ、海原……!」

フレンダ「あ、あのー?どういう訳?」

上条「前に――一番最初ん時、こいつと俺、そしてもう一人でゲームをしたんだ。『負けた方が勝った方の言う事を何でも聞く』って罰ゲーム付きで」

上条「色々端折れば、まぁ俺達が勝ってこいつが負けた。んで、俺の相方はその時に願い事をして叶えられ、こいつは一度死んだ」

上条「そういや俺の方は保留になってたんだけど……人生、どうなるか分かったもんじゃねぇよなぁ、これは」

フレンダ「や、でもそんな約束なんかブッチしちゃえば良くない訳?あたしが言うのもなんなんだけどさ」

上条「それが出来ないんだ。『死者』の特性の一つとして、一度交わされた約束は絶対に」

上条「……とはいえ、こいつがそのパターンに当て嵌まるかどうかは分からなかったけどな。ダメ元で言ってみて良かった……!」

フレンダ「へー。でもオネエが止ってる理由にはならないような?」

上条「ぶっちゃけ俺も知らないが、多分あれじゃねぇかな?『約束を持ち出されたから、反故にするような行動を出来ない』ってトコじゃね?」

フレンダ「それじゃなんて命令する訳?下手に生き残ったらマズい訳だし……そうだ!」

フレンダ「シンプルなのは『自殺しろ』かな?それが一番後腐れが無くなくって良い訳よねー」

フレンダ「……あーでもあんたヘタレだから言わなさそうだなー」

上条「ヘタレ言うな。言わないけどさ」

フレンダ「だったら『誰も傷付けるの禁止』は?意図的に傷付けるのも禁止しちゃえば、ただのキモい声のオネエになる訳だし」

上条「それは悪くはないんだが……折角だし、頼みたい事があるんだ」

フレンダ「ふーん?」

上条「……なぁ『団長』」

団長『……なんですかぁ、お客様』

上条「そんなに身構えないでくれ。お前が俺や他の人を傷付けなくなれば、どうこうしようとは思わな――あぁいや、猫の分は償わせるけどな」

上条「それよりも今は、お前にどうしても頼みたい事があるんだよ」

団長『拒否権はありませんからねぇ。どうぞ何なりとお申し付け下さいな。ただし』

フレンダ「ただし?」

団長『”曲解して正反対の結果を呼び込む”ぐらいは、平気でしますけどね?』

フレンダ「よし、やっぱ殺す訳よ!」

上条「だから待てっつーのに。こいつと話してんのは俺だ――さて、じゃ一つお願いがある」

上条「この子を――フレンダを『死者』じゃなくする方法って、ないかな?」

フレンダ「――へ?」

――路地裏

フレンダ「あ、あたしっ!?」

上条「あぁお前だよ」

フレンダ「美脚ぷりちーなフレンダちゃんが!?」

上条「その人は知らない。で、どうかな?」

フレンダ「ちょ、ちょっと待つ訳よ!」

上条「はい?」

フレンダ「はい、じゃなくって!こいつに聞いても――」

上条「話を聞くに、お前を甦らせたのに一枚噛んでるみたいだしな。だから最適だと思ったんだよ」

フレンダ「そうじゃない訳!」

上条「……情けない話なんだがな。俺、学園都市からお前を連れ出しても、その後どうするかってのは殆ど白紙でさ?」

上条「どっかで腕のいい死霊術士――『死人』に詳しい魔術師を見つけて、何とか協力して貰わないといけないな、と」

上条「そう思ってたら、向こうの方から来てくれたみたいだし、まぁなんつーの?珍しくラッキー?的な?」

フレンダ「いや、あんた――そんな事聞いたら!こいつがまた襲い掛かってくる訳で!」

上条「まぁ、そうだな」

フレンダ「そうだな、って……」

上条「そん時はまぁどうにか時間を稼ぐさ。こいつマタイさんや俺の仲間に見つかるのを、超嫌がってた――つまり苦手にしてた訳で」

上条「逆に言えば、そんだけの時間さえ稼げれば後はどうにかな――」

フレンダ「違うっ!そうじゃない訳よっ!」

上条「……だから、何が?」

フレンダ「危ない訳!危険がピンチな訳よ!」

上条「お前の語彙力もそうだと思うが……まぁ、リスクはあるわな」

フレンダ「あたしっ!大体は思い出した訳だけど――あんた」

上条「上条当麻」

フレンダ「上条に、そこまでして貰う理由、なんて――」

上条「前にも言ったし、何度でも言う」

フレンダ「……?」

上条「俺はただ俺が出来る事をやってるだけ、それだけだよ」

上条「――だってお前は人間だから」

フレンダ「……っ!」

上条「と――」 クラッ

フレンダ「バカ……こんなにケガだらけになってまで、格好付けなくって良い訳よ……」

上条「って事で、いい加減目の前がクラックラしてっから、早めに教えてくれると有り難いんだけどな」

団長『……お客様が何を心配しているのかは存じませんけどぉ、そこのお嬢さんが”死者”のリスクを受ける事はないでしょうね』

団長『だって彼女、最初から”死者”じゃないですから』

上条「――――――はぁ!?お前何言ってんだ!?」

上条「だってほら!お前がフレンダに死んでるって告げたら!こう、お腹からどばっと血が!」

団長『そういう術式、幻覚で偽りの死を与えただけですよ。その証拠に傷跡も血痕も残ってないでしょう?』

フレンダ「あ、ホントだ」

上条「待て待て待て待てっ!だったら、『死』の臭いとか!魔力とかは!」

団長『私が誤解させるためにやっただけですね、きゃはっ!』

フレンダ「……ねぇ、やっぱコイツ殺す訳?」

上条「いや、それは保留に……だったら、あの異常な食欲の正体は?人をかゆうまする事の代替行為だったんじゃ……?」

団長『お客様はその答えをもう知ってる筈ですよ。だって身近に居るじゃないですか』

上条「身近……?誰?」

団長『アストラル体へ無理矢理エーテルをまとわせているだけであって、消費激しいんですよねぇ。これが』

団長『だから大量に食物を摂取する事で、体に変換しているんだとか』

上条「食事……大量……あ」

上条「アリサか!?――って事はフレンダも!」

団長『あれほど精巧なものではなく、場合によってはグールに堕落する可能性もあったでしょうが、今は――っと』 スッ

団長『お客様のお仲間がいらしたようで。今日はこのぐらいで切り上げるとしましょうか』

上条「話はまだ終ってないぞ!」

団長『終りましたよ。その子はもう”死者”ではないため、死霊術士として出来る事は無いんですから』

上条「そっか……そっか!」

団長『ではまた近い内に――次、お目にかかった時には、この制約も解除しておきますから、どうかお楽しみに☆』 ダタッ

上条「何度でも――あ、その前に『約束』、一つ使わせてもらうわ」

団長『やっぱ”死ね”ですかぁ?ま、いいんですけ――』

上条「『俺との喧嘩に俺以外を巻き込むな』――だな」

団長『……はい?』

フレンダ「ちょっ!?それヤバくない!?」

上条「正々堂々――は、しなくても良いが、少なくとも誰か、第三者を巻き込んでんじゃねぇ」

上条「俺に文句があるんだったら、直接来い。それだけだ」

団長『賜りましたぁ。では早速ご期待にお応えしてぇ』

フレンダ「――許すと、思う訳?」

団長『……なーる。これは中々キツい誓約になりそうで悪趣味ですねぇ、お客様』

上条「次は正攻法で勝ってやるからな!」

団長『それではまだいつか。両手一杯の悪夢と共に遊びに参りますわぁ』

――路地裏

上条「……行った、かな?」

フレンダ「あんたも結局無茶する訳よ……心臓止まるかと」

上条「……信じたかったんだよ」

フレンダ「え?」

上条「俺がお前を信じたかったんだ」

フレンダ「でもっあたしっ!」

上条「……色々やったし、色々言った。俺達がこの道でぶっ倒れるまでにも、まぁ色々あったわな」

上条「……俺だって聖人君子じゃない。まして何でも片手間に颯爽と解決出来るような、完全無欠のヒーローとは程遠い」

上条「最初から最後までずっとお前を信じてた――なんて、嘘を吐いてまで綺麗事を言いたくもない」

フレンダ「……」

上条「――でも、結局。お前は俺を心配して戻って来てくれた」

フレンダ「違う訳!そんなんじゃ――」

上条「動機がどうだろうと、過程がどうなってやがろうと」

上条「……お前は、ここに、居る。それだけもう、充分だ」

フレンダ「……うん」

上条「……」

フレンダ「……」

上条「……綺麗な言葉」

フレンダ「はい?」

上条「今も、苦手、か……?」

フレンダ「んー、そうねー……うんっ」

上条「うん?」

フレンダ「嫌いに決まってるじゃない。そうそう人は変わらないって訳よねー、うんうん」

上条「……どんなオチだよ。変わってねぇじゃねぇか」

フレンダ「あー、でもねー、ちょっと思った訳だけど」

上条「ん」

フレンダ「嫌いなのは変わらない訳だけど――」

フレンダ「――信じてみたい、ってちょっとだけ。ホントちょっとだけどねっ!」

上条「……そか。まぁ、それもいい――と、あ、ごめん」

フレンダ「ちょ、どうした訳?」

上条「意識が……もう限界――」

フレンダ「……もう、しょうが無い訳」

上条(薄れていく意識の中で、俺が最後に見たものとは)

上条(暗い暗い路地裏の中、ほんの僅かな街灯の辺りの中ですら)

上条(闇に照るように、そして誇るように輝く)

上条(……彼女の髪の色だった、とさ)

上条(……?)

上条(……あれ?なんで俺の視界いっぱいに広がっ――) チュッ

上条(……まぁ、いいや……)

上条(……眠い……今は――)

――路地裏

団長『……』

団長(負けた、か。アルフレド無き世界で、アレを殺せばまたリスタートすると思ったのだが)

団長(もう閉じたのか、終ったのか、後はダラダラと終末を超えて続くだけの代物に成り果てるのか)

団長『……』

団長『それは――』

ドゥンッ……ッ!!!

団長(身体機能が20%低下、出力が落ちて――攻撃を受け――後ろか!) クルッ

少女達「……」

団長(女3、男1――丁度いい!)

団長(バレた以上学園都市から高飛びしなくてはならない。しかしこの猫だけの筐体じゃ出力も見栄えも悪い)

団長(四人も居れば、以前程度の力にまでリカバリが可能――!) ブゥンッ

少女A「あ、すいません。そういうの超いいですから」 パシッ

団長『んなっ!?』

少女A「超死んどけボケがっ!」 ガッ

団長『――んだっ!?私の力以上――』

少女B「あー、こらこら。あんまり加減を間違えないでよ」

団長『新手――ではないか。初撃を放った方か!』

少女A「でも!」

少女B「――あんまり激しくし過ぎると、楽しむ時間が減っちゃうでしょ?」

ドゥゥウンッ!!!

団長(か――なんだ!?”火伏せ”の術式も貫通するだと!?)

少女B「あなたはは誰に何されてんのか、分からないだろうけど。ぶっちゃけこれは八つ当たりよね」

団長『……何?』

少女B「ウチのメンバー――あぁ、さっきのギャアギャアうるさい金色のヤツは、元々ウチの一員なのよ」

団長『――なら、お前達が――』

少女C「……むぎの、右手」

少女B「あぁ?何よ?」

少女「右手が、本体。あとは全部だみーの脳が入ってる……」

少女B「……そっかぁ、良い事聞いたわぁ。ねぇ?」

団長『違う!お前じゃなくて、お前達が――』

男「――そうだ。その名前、地獄へ堕ちても忘れるんじゃねぇ……!」

男「そう、俺達が――」

少女C「――あいてむ、だ……ッ!!!」

男「ねぇ待って?何で言うの?何で滝壺さん言っちゃう訳?ねえってばさ!」

男「さっき決めたじゃんか?絹旗がこーやって、麦野があーやって、滝壺がぴしってやったら俺がキメ顔でキメ台詞言うって!言ったよね?予行演習もしたじゃんか?」

男「滝壺さん言っちゃうと俺の意味がなくなっちゃうから!俺の存在価値がなくなっちゃうからって言ったよねえぇっ!?」

男「だってそれぞれ見せ場があるのに俺はないもの!なんかこう、途中でキメ台詞に入ってきたあの人誰?みなたい空気になっちゃうから!」

男「俺がキョドってるのを麦野に即バレして時!DOGEZAして頼んだのに!どうして無かった事になってんの!?WHAT!?どうして!?」

少女A「疑問詞が超ズレていますが――麦野」

少女B「……あぁうん。なんか、ヤる気が削がれちゃったから、ヤる事だけヤっとくけど――ま、アレよね」

少女B「――地獄に堕ちろやクソムシ」

ズウウウウゥゥゥゥゥゥンッ………………!!!

――路地裏

絹旗「はい、超しゅーりょーですね。これからどうします?」

麦野「そうねー、どっか開いてるファミレス見つけて行く?」

滝壺 コクコク

浜面「ちょっ!?聞いてるんですかねっ滝壺さんっ!この借りは大きいよ!大きいんだったら大きいんだからねっ!」

絹旗「超意味不明ですね」

浜面「具体的に言うんだったらバニーさん3回!そのぐらいの負債はあると思うなっ!だって俺は心理的にトラウマを負ったモノ!」

麦野「トラウマってのは、元々心理的なものであってね」

浜面「じゃ、じゃあ二回!二回よりは減らないからねっ!俺のハートがブロークンした責任は取って貰わないと!」

浜面「ていうか――」

絹旗「……超どうしましょうか?浜面が超不愉快なんですけど、エロ目的超見え見えで」

麦野「構うだけ無駄よ、放置放置――と、あなたは一緒に来る?打ち上げ、みたいな感じでダベるんだけど」

???「私は遠慮しておくわ。すべき事は果たしたもの」

絹旗「なんて言うんでしょうか、超不思議な能力ですよね。滝壺さんともまた超違った……予知能力?」

???「……みんなには内緒ね?神託巫女が未来を変えるなんて知られたら、きっと怒られちゃうから」

麦野「……その歳に合ってねぇ媚び方も気にはなるんだけど……まぁ、いいわ。お疲れ様」

???「それじゃまた。何かあったら呼んで頂戴。私は死なない限り生きてると思うわ」

絹旗「超当たり前ですよ、それ」

???「そうね。それはきっと当たり前かしらね」

今週の投下は以上となります。お付き合い頂いた方に感謝を
来週エピローグを少し追加して本当に終わりとなります

>>29

ここぞという時に出てくるレディリーw

乙ですの

乙ですー
ちと早いですが、勝手ながら次回作もお待ちしてます

>>544>>549>>552>>554
本当に最後までありがとうございます


>>545
団長『どっこい生きてる猫の中~』
上条「危険なご時世なんだからそういうネタは避けろ!地雷を踏みに行こうとすんな!」


>>546
海原「むう……幼女姉妹を粘液でドロドロに穢した挙げ句、姉の体の中に『果実』を宿すなんて侮りがたいですねっ!」
一方通行「しかし垣根の野郎も、切れっ端と言えどンだけ幼女好きなンだっつー話だァな?」
垣根(白)「関係ないですよね?むしろ原作では被害者ですよね?」
垣根(白)「御坂さんの精製した謎金属(超電磁砲コミックス版)よりも、取り敢えずファンシー的なものには垣根でOK!的な風潮は良くないと……」
海原「むしろFLASH!したのに無反応な上条さんは病んでいるとしか!」
上条「一緒にすんな!誰かがきっと薄い本ではIFストーリーを書いてくれるさっ!」
(※対上里さん用の地雷兵器ですからねぇ。今回の件でバードウェイ、反学園都市にならなきゃいいですけど)


>>547
当事者共に未成年者なので淫行罪(18歳未満とのエロ禁止条例)は適応外
アゲられるとすれば親告罪となり、フレンダさんの証言が必要ですが、身分照会されるとヤバいんで立件不可
(だから立場的に「同意で撮った」と嘘でも認めなければいけない)
なので二人揃って(初春さんの)お説教を頂くのが精々かと
そして白井さん経由で御坂さんへ伝わり、死ぬよりも辛い目に遭ったり遭わなかったり。悪い意味で因縁の相手ですし


>>548
――常夜・約一週間前
『Crawling Chaos(嘘が現実になる)』術式発動により、特定の人物達と近しい死者が蘇ったり、都市伝説が現実化
クリストフ・『団長』・安曇、ショゴスの体にて再生(※”復活”ではない)。同時期にクリストフを『樹』へ改造
また噂の具現化によりスレンダーマン(ショゴス)の大量培養。しかし潜在的な敵(テッラ&フレンダ)も”復活”

――常夜・数日前~前日
クリストフ、スタッフに扮したアルフレドによって凱旋コンサート会場へ持ち込まれ、舞台背景としてセッティング
テッラ、マタイと接触し対魔神の準備を進める。マタイは常夜当日までショゴス狩り

――常夜・当日
『団長』、クロウ7を襲撃し入れ替わる。尚、誰一人として気づかなか(以下略
アルフレド、『団長』は術式の準備。安曇は裏切り、スタジアム裏口の『暗部』を一掃
(※最初の予定だと上条当麻を間に合わせるつもりはなかった)

――常夜・開始
クリストフ、セレーネ降臨後に巨大な茨の蔦と化して地表を覆う(※魔術的には『茨姫』の暗喩)
地上に居たアルフレドと『団長』はマタイに倒される

――常夜・冥界
アルフレド(の一部)、鳴護の夢の中へ入り上条へ嘘を吹き込む
(※ちなみに夢の中の土御門はオティヌス、風紀委員掲示板の最後の佐天はレッサーが介入している)
安曇裏切り(直後に消滅)、『団長』は戦線離脱、フレンダ&テッラ、アルフレドの足止めに成功

――常夜・解除後
術式解除で『茨』になっていたクリストフ消失、アルフレドは別の体へ逃げ込むもブラフマーアストラの一撃により、この世界軸より抹消
ギリギリで地上へ帰ってきた『団長』、セレーネが還る前にショゴスを捕まえて同化。滅びた他のショゴスと違い生き伸びる

【金髪「それと一緒って訳。あたしはあたしだし、死んでようが生きてようが変わらないって訳」】

を”真に受けたバカの一念”やフレメアが姉は生きていると信じ込んでいる事、浜面達が「フレンダは生きてる」みたいな”嘘”、
複合的なそれぞれが『Crawling Chaos』の影響でフレンダ復活
が、『団長』に発見され眠らされる。以降『団長』は猫を補食しながら『躰』を作成

――常夜・一週間後
~アフターシナリオ開始~

>>550
『濁音協会』メンバー、無貌の魔神の介入が無かった場合

○アルフレド=ウェトリィ。この人物は最初から存在しない
○クリストフ=ウェイトリィ。地方の新興宗教の指導者。ただし『必要悪の教会』の要介入案件、数年以内にバラされた筈
○『あれ』(ショゴス・スレンダーマン・ザントマン・垣根の切れっ端)。氷の下から回収されず
○『団長』。都市伝説の一つであり現実には存在していなかった。”嘘”から産まれた魔神の眷属
○安曇。同じく断絶した一派。”嘘”から産まれた魔神の眷属
(※尚、アルフレドがクトゥルー系を名乗り、構成員もそれっぽい感じでまとめていたのは魔神セレーネを隠すため)


>>551
『胎魔の~』本編でやった”人間の定義”を更に踏み込んだ形になっています
現実があっちもこっちもヘビーな事になっていますが、『他人と対話・尊重・共感出来る相手であれば共存は可能』という話を書きたかったです
(ていうか書き出した頃よりも最悪の方向(人権主義に首を突っ込んだ人間の無理心中)へ突っ込んでいますか)

「終った」のか、「続いている」のか、シェリーさんしかり、ヴェントさんしかり難しい問題だと思います
またフレンダさんは途中で死んだため取り上げられなくなっていますが、彼女もまた『暗部』の一人であり、人様の生き死にに関わった
――殺害している可能性もかなり高く、加害者であるのは否定出来ません

『仲間が激情に駆られて仲間を殺した』悲劇であるのと同時に、IFの話ですが廃工場でフレンダさんが御坂さんを殺していれば、
確実に白井さん&初春さんがどんな手を使ってでも仇討ちしていたでしょうし。また垣根さんがほんの少し機嫌が悪ければ、とも
それらの場合、フレンダさんの『死』は今のような、ある種の楔みたいな形になっていたかどうが
「『死者』は加害者であると共に被害者」は『暗部』であった彼ら、彼女らの暗喩でもあったり……というのは大嘘ですが

ともあれ、今まで不幸だからと言って、悪い事をしてきたからと言って、これからも続けていく必要はなく、また幸せになってはいけないとも思えません
生きていれば変われるでしょう。生きてさえいれば。まぁせめて二次創作の中ぐらいでは


>>553
神様(※鎌池先生)の事ですから、ここのような場末のSSはともかくとしても各種ファンサイトや考証ブログはご覧になってる気がしますね
ちなみに私の推測、『魔神みたいなトンデモ連中が居るのに、世界が滅びないのは制約を抱えているため』は大ハズレでした
……でもそうするとオティヌスの50%の呪いって一体何だったんでしょうか……?




『エピローグ』


――いつもの病室

上条「――」

上条(いつもの超絶硬いベッド――つーかバスタブ――と違い、寝心地の良さに寝返りを打って、はたと気づく) チラッ

上条(適度にスプリングが効いた、それでいて同じ姿勢で数日過ごしても鬱血しない!床擦れを起こさないグッドな柔らかさ!)

上条(高齢化が進み、中々体を動かせないお年寄りにも優しい寝具だ……!あぁ、このぬくもりに一生包まれていたい……!)

マタイ「――起きた瞬間に現実逃避は止めたまえ。というか今、私と視線が合ったね?」

マタイ「事後処理の多さに頭を抱えたくなる気持ちには共感するが、後回しにしても誰が片付けてくれるものでもない」

上条「俺が現実逃避しようとしてる原因はあなたじゃないでしょーかねっ!そりゃ目ぇ覚ました3秒後に発見したら『あ、お迎え来たかな?』って思うわっ!」

マタイ「人を死神扱いはよして貰おうか。一応これでも教理省の番人とも呼ばれていたんだ」

上条「中世まで異端審問会開いてた人らに言われても!……ていうか、お迎え?マジでお迎えじゃないの?」

マタイ「我々が対立しているか、と言えばNOである」

マタイ「昨日――いや、明け方までの騒ぎは何一つとして影を落としてはおらん」

上条「……いやあの、そうじゃなくてですね。こう、お約束的なのっつったら分かりますかね?」

上条「俺がですね、目を覚ましたらですよ?掛けてあるシーツが重いんですよ、人一人乗ってる、みたいな?」

上条「『なんだコレ?』みたいに、俺がゆっくり目覚めると、そこには突っ伏して寝る女の子の姿が!みたいな!」

上条「『そっか……こいつ、朝になるまで俺の事看ててくれたのか……ありがとな』とか言って髪撫でる展開じゃないんでしょーかねっ!?」

上条「だっつーのに現実は!俺の嫌いな現実は!目ぇ開けたら死神の親戚っぽいじーちゃんが綺麗な姿勢でパイプイスに座ってんだもんよ!そりゃ逃げたくもなるわ!」

上条「『あれ、?どこでフラグ管理間違えたかな?』ってロード画面呼び出す所だったよ!危ないわー、もう少しでロードしてたわー」

マタイ「話の意味が殆ど理解出来ていないが、ここは現実だから戻って来たまえ」

上条「いや……聞くけど、他の連中は?実はもう既に粛正した後だとか言わないですよ、ね……?」

マタイ「返す返すも君は私を一体何だと思っているのかね?」

上条「ジジイになったアンデルセ○」

マタイ「試してみるか、若造?」 ググッ

上条「ジョークですから!冗談だからっそのっ拳は仕舞った方がいいと思うよっ!」

マタイ「……謝罪は受け入れよう。何故ならば君の憤りを招いた原因の一端は私もあるからだ」

上条「その心は?」

マタイ「つい今し方までレッサー君達を並べてお説教していたので、ここへ来る余裕はなくなってしまったのだよ」

マタイ「君を回収してからずっとだから……そうだな、大体5時間ぐらいかな?」

上条「何やったんだっ!?マタイさんをそこまで怒らせる程に何かやったんかっ!?」

マタイ「当人達から聞きたまえ。全員隣の病室で就寝しているがね。あぁそういえばレッサー君だけは違ったな」

上条「……いや、いないけど」

マタイ「『……オロシガネ、錆が浮いて切れ味が落ちたオロシガネを買いに行かないと……』等と、ぶつぶつ呟きながら外出してしまったが」

上条「オロシガネ?……卸し金?大根おろしでも作んのか?」

上条「あー、でも錆浮くぐらいにボロボロだったら、満足にすり下ろし出来なくて、大根がズタズタになっちまうんだけど……?」

マタイ「……業は深いものだな、マーリン卿」

上条「あぁっと、バカ話は置いておくとして……聞き辛いんだけど」

マタイ「私が部屋を出る時には、フレンダさんも一緒に眠っていたようだね」

上条「そっか、良かっ――た?」

マタイ「疑問形かね」

上条「事件が終ったのか、それともこれからまだ『ザ・処刑タイム!』的な展開になるのか分からねぇ、ない、からな」 スッ

マタイ「立ち上がらないで佳い。蛮勇は勇気の親戚ではあるが、双子程は似ておらん故に」

上条「助けて貰っておいて何だけど、てか非常にゴメンナサイしたいんだが、それはそれ、これはこれっていうか」

上条「同じく助けて貰った相手に義理もあれば恩もある。それを返す以前に情が移れば、なぁ?」

マタイ「佳い。それはとても佳い事だが」

上条「が?」

マタイ「『魔神セレーネの帰還』事件、及び『濁音協会の残党』騒ぎに関してはもう解決済み、と言っておこう」

上条「……あい?」

マタイ「午後の便で帰る事になったのでね。挨拶ぐらいは――」

上条「……いや、あのフレンダは?てっきり『連れて帰る』とか、『監視下に置く』とか、そういう非人道的な方向で進むもんかと」

マタイ「『死者』であればそうなのであろう――が、彼女は『死者』に非ず」

マタイ「ヴァルキリエは珍しい存在だが……まぁ、その一点を以て我々ローマ正教が動きはしない。少なくとも表向きは、だが」

上条「ヴァルキリエ……?昨日も『団長』が言ってたっけか?――というかだ」

上条「昨日のアレはなんだったんだよ?マタイさんの武器をフレンダが召び喚してみたり、何?愛の力?それとも友情パワーかなんか?」

上条「しかも『団長』の話じゃ、最初っから『死者』じゃないって言うしさ!アリサと同じだって言われても、そうはいですか、って納得出来ねーよ!」

マタイ「『はいそうですか』が、混乱して逆になっているが――そうだな。順を追って話をしよう」

マタイ「まず私の使っていた大鎌、『Sacred Death(ジョン・ボールの断頭鎌)』の謂われは憶えているかな?」

上条「昔の教会や政府に反発して、反乱起こした人だろ?最期は処刑されちまったけど」

マタイ「そうだ。あの鎌は当時のジョン=ボールが使っていた物――では、ない」

上条「ないんだっ!?……あぁいや、でもそうか。霊装って色々あるけど、オリジナルそのまま使ってる方が珍しいんだっけ?」

上条「『魔術的記号』を付加するために、伝説の神具と同じ名称にするとかなんとか」

マタイ「その理解で合っている――の、だが、あの鎌は少々特殊な由来の持ち主でもある」

上条「へー……ん?”持ち主”?」

マタイ「ボールの逸話上、あの鎌の特性は只の武器という訳ではない。それどころか武器かどうかすら怪しい」

上条「やだその前フリ超怖い」

マタイ「と、いうのもあの鎌は、ボールの死後、幾度も姿を現しては消えていく」

マタイ「第二次百年戦争では敵軍を狩る名も無き騎士の手に持たれ、ナポレオン戦争でも目撃されたと記録が残されている」

上条「それ、なんか都市伝説っぽいよな」

マタイ「然り。あの鎌は権力や共同体、組織といったものへ反逆する力なき者達の間を渡り歩いてきた」

マタイ「『理不尽な暴力に抗するための刃』、『断罪の鋼』、『敵味方皆殺し』と呼ばれた存在だ」

マタイ「非公式記録では1999年に日本の……藍仙、とかいう場所に”現し身”が顕現したとも」

上条「……そんな鎌をどうしてマタイさん持ってんの?ローマ正教の大幹部じゃん?」

マタイ「それはヒミツだ。長くなるし、若かりし頃の失敗は聞かれたくないものだよ――が」

マタイ「どうしても、と言うのであれば凍刃にでも聞きたまえ」

上条「うん?なんでじーちゃんの名前が……?」

マタイ「そしてここ半世紀ばかり、飽くなき闘争と血煙――もとい、平和の象徴として私と共に在った訳だが」

上条「今更だよね?あんたが残念なイギリス人ボコったのって薄々見当は付いているからね?」

上条「本気と書いてキ×××と読む、全てにおいてマジモンのレッサーさん相手にして、見たところケガの一つもしてないですもんね?」

マタイ「それはそれとして――ジョン=ボールの話だ。大鎌とは別の軸の話」

上条「ん?処刑されたんだよな?」

マタイ「そう、彼”は”処刑されたな。が、しかし物語はそこでは終らん」

マタイ「彼には家族が居た。妻が居り、子供が居り、彼らはボールの死後も当然生き続ける訳だな」

上条「まぁそうだけど……生きづらくなかったかな?」

上条「言っちゃなんだけど、政府からすればクーデター未遂起こした人の家族だろ。迫害とかされなかったら良かったんだが」

マタイ「心配は要らんさ。実際現代まで続いておるのだからな」

上条「そっかー、それじゃ良かっ――」

上条「……」

上条「……んー……?」

マタイ「ここまでで不明瞭な点でもあったかな」

上条「って訳じゃあないんだが……びっみょーに、引っかかるような、引っかからないような」

上条「ま、まぁいいさ!続けてくれ!」

マタイ「承知した――君の心配は尤もでもある」

マタイ「ボールは確かに民からは慕われておった。少なくとも彼らの暮らす街の近隣住民からは指導者と仰がれる程に」

マタイ「しかし、だからといってその外から来た余所者、また心ない人間からすればボールは只の反逆者である」

マタイ「よって名を変え、姓を変え、余計なトラブルから逃れようとしたのだ」

上条「あー、苦労はしてんだなぁ」

マタイ「ちなみにその時つけた名前はボールが住んでいた街の名前から取ったそうだよ」

マタイ「――そう、『Saint. Albans(セント・オールバンズ)』という都市からね』

上条「……」

マタイ「さっきからどうかしたかね?――あぁ、お腹が空いたのか。ならば私がリンゴでも剥こうか」

上条「やめてください。勿体なさ過ぎて、剥いたリンゴから芽が出て花を付けそうですから!」

マタイ「私達は代弁者に過ぎず、それ自体に価値などは無いんだがね」

上条「……いや、そういう話じゃなくて――その、せんと?おーるばんず?」

マタイ「元々はイギリスの守護聖人の名前から付けられたんだよ。こういうのは珍しくはない……セントルイス、あるだろう?アメリカの都市の」

マタイ「あれもフランス人が聖人列席されたルイ9世にちなんで付けた地名が元だ」

上条「あー……日本でもあったなぁ。源氏や平氏の落人伝説で、変わった苗字の子孫の人らとか」

上条「地名とかにも残ったり、逃げてる割には意外と自己主張強いんだなー」

マタイ「それは貴人漂流譚と言う、別ジャンルの話なんだが……まぁいい。セント・オールバンズでは街の名前と同じ」

マタイ「ボールの家族達は紛らわしいのでもっと短縮形にした――さて、どんな家名だと思う?」

上条「そうだなぁ。セント・オールバンズ……ラノベ風にすんだったら『センオバ』?」

上条「もしくはスポーツチームの愛称だったら、『セイバンズ』――」

上条「……」

上条「……あるぇ……?」

マタイ「どこかで聞き覚えは?」

上条「セイ・バンズ、。セイ・ヴェンズ、セイヴェーンズ――」

マタイ「オールバンズの”Al”は後ろへ回り、”ル”と訛る」

上条「セイヴェルン、ズ」

マタイ「を、短くすれば?」

上条「――――セイ、ヴェルン……?」

マタイ「うむ」

上条「――――フレンダ!?フレンダ=セイヴェルン……っ!?」

マタイ「直系かどうか知らぬ。またただの同性の他人である可能性も高い」

上条「いやまさかっ!……冗談だろ?からかってるだけなんだよなっ?」

マタイ「根拠としては無くもない。フレンダさんの異能、大能力だったかな?」

マタイ「それは『兵器庫艦(バックヤードキャロット)』。予め確保してある場所へ武器を置き、それを取り寄せるだけの能力」

上条「あんたがどうしてそれ知ってんだってツッコミは置いといて、それがどうしたんだよ?」

マタイ「おかしいと思わなかったかね――『どうして武器”だけ”なんだ』と」

上条「あー……認識の問題?」

マタイ「私の古馴染み曰く、『カッターナイフでも人は殺せる。スーパーマーケットでの買い物袋、コントとハンカチーフだけでも充分に』」

上条「そんな危険なヤローと俺は戦っていたのか……!」

マタイ「昨日のあれを言うのであれば、ただしじゃれていただけだよ。私も彼も」

マタイ「我が友人殿が得意するのは有り触れた軍隊格闘術だからな。軍事演習を積めば誰だって修められるさ」

マタイ「――が、ここでの焦点は『武器か否か』の境だ」

マタイ「能力とは科学的なものなのだろう?心のありよう、認識の問題と言い、それが実際に反映しているのであれば――」

マタイ「それは『魔法』のような話だと思わないかね?」

上条「って事は――フレンダ、魔術師なのか?」

マタイ「より正確には『原石』なのであろう。学園都市へ来る以前から能力を使えるのであれば、な」

マタイ「そしてそこへ私の推論を付け加えるのであれば、『どうして”武器”なのか?』と」

マタイ「別にコインだって構わないし、質量を考えれば紙の方が簡単そうなのに」

上条「それは……やっぱり、本人と武器の繋がりがある。縁があるって話じゃないか?」

マタイ「どう?幼子が武器に関わる環境にあったとは考えにくいが」

上条「それじゃ血筋と、か……」

マタイ「――そう、だな。結論から言えばフレンダさんの能力は異能”ではなかった”と私は考える」

マタイ「それは『原石』として、『武具精霊(ヴァルキリエ)』として覚醒する”筈”だった彼女の、基本中の基本の能力」

マタイ「”己の半身となるべき武具を召び喚す”というだけ。ただそのワンステップに過ぎなかった」

上条「……よく分からないんだが、そのヴァルキリエってのは『聖人』の別名か何かかな?」

マタイ「然り。伝説級の武具に宿り、共に戦場を駆る異教の聖人をそう分類しておる」

上条「でも、それだったら何でフレンダは生前――って言い方は良くないが――は出来なかったんだ?」

マタイ「これも想像でしかないが、最初の一歩で躓いたのだろう」

上条「うん?」

マタイ「魔神になる力があり、資格があり、機会もあった――だが、必ずしもそうはならない。なれない者も居る」

マタイ「同様に『聖人』や『原石』としての力に覚醒せず、生涯を終えるものも居るであろうな」

上条「そう、かな?『聖人』は生まれつき運や身体能力が異常に良かったりすんだろ?」

上条「だったらどこかで誰か、魔術師に素質を見いだされて訓練を……」

マタイ「気づいたかね」

上条「……素質があれば、誰かに見いだされる。悪い意味でも目立って、しまう」

上条「神裂は魔術師――天草式に出会って『聖人』としての教育を受けた。順番は逆かも知れないが」

上条「――けど、今の時代。そうそう魔術師なんて居ない。レッサー達みたいにいい指導者に恵まれるのは稀、だ」

上条「そう、すると。『魔術』が廃れれば……」

マタイ「そう、だからこそフレンダ君は科学サイドに預けられた。『能力者』として」

マタイ「もしもこれがそれなりの魔術の師に恵まれてさえいれば、『何故武器なのか?』を突き詰め、『ボールの血族』へとたどり着けただろう」

マタイ「しかし答えを求めた先にあったもの、科学では彼女の能力の解明など出来やしない。回答に近付く事すら出来なかった」

マタイ「その結果、『武器っぽいものを呼び寄せる便利な能力』として扱われ……まぁ、この様だな」

上条「……随分、回り道をして来たんだな――に、しても」

上条「一体どんだけの偶然が積み重なった結果なんだろうな……まずはフレンダが『原石』だったと」

上条「次にマタイさんが『ボールの大鎌』を持って魔神狩りに参戦してくれてーの」

上条「ドサクサに紛れてフレンダがいつの間にか復活してて、鎌はたまたまフレンダのアジト跡に占拠したレッサー達に渡ってて」

上条「『元々鎌とリンクする能力』だったフレンダの手に渡る……嘘のような話だなぁ」

マタイ「それは当然だろう。嘘なのだし」

上条「………………はい?」

マタイ「上条君、これだけ、そうこれだけの偶然――『奇跡』が重なるなんて、世界は優しくはない。寛容ですらない」

マタイ「フレンダさんが『原石』である可能性、そしてその鍵となる『Sacred Death』がたまたま揃う偶然」

マタイ「しかもその鎌が彼女の支配する領域下へ持ち運ばれ、且つ極限にまで追い込まれた状態で召喚に成功?」

マタイ「どれだけの『奇跡』や『偶然』が重ねなればいけないのかね?」

マタイ「今までの話は『結果から出した推論』であって、必ずしも事実とは限らない」

上条「待てや、つーか待てよ!推論は推論だから間違ってるかも知れない、のは分かる!分かるけどさ!」

上条「でも、その言い方だと、どっかで嘘が紛れ込んでるような、誰かが何かを仕組んでるように聞こえるんだが……?」

マタイ「――『Crawling Chaos』」

上条「……這い寄る、混沌……?」

マタイ「そう、とあるマジ……ゅつ、しによって仕掛けられた大規模術式だ。私はその影響を心配してここへ残っていた」

上条「なんでここで噛むんだ?……いやいいけど、どんなの?」

マタイ「”現時点で解明されている”と、前置きをした上で言えば――」

マタイ「――『嘘が本当になる』、そうだ」

――病室

上条「人並みに幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になる幸運になるっ!!!!!!!!」

マタイ「見ていて泣きそうだから、自分に嘘を吐くのは止めてくれたまえ。そもそもその術式は効力を無くしておる」

上条「何で俺に一言言ってくれなかったんだよっ!?悪用なんて絶対しなかったのに!」

マタイ「歳の離れた友人として、まぁ強く否定はしないでおくが――この術式、何が質が悪いかと言えば『術者以外の効果を知った者の嘘は弾かれる』んだ」

上条「性格悪っ!?」

マタイ「”アレ”に性格、などという生易しいものがあるかはさておくとして、この魔術をかけた”モノ”は二つの嘘を現実化しようとした」

マタイ「一つが『スレンダーマン』だ」

上条「なんでここで嘘の都市伝説が出てく、る――もしかして、『ショゴス』かっ!?」

マタイ「正解だね。後々魔術的な意味を付加して『ザントマン』へと造り替えた。その素体として大量に」

上条「垣根は?垣根の体は?」

マタイ「あちこちへ撒いたのであろうな。核になっているのは恐らく」

マタイ「そしてもう一つ、『死人が墓から這い出る』という著しく冒涜的な嘘が現実になった」

上条「あぁ、それで。『常夜』前にもフレンダが居たりしたの――待て待て。なんでそんな事したんだよ?」

マタイ「仲間を再生させる目的だろう。幾ら『ショゴス』に記憶を上書きさせるとは言っても、其程精度も成功率も高くはなかったのだ」

マタイ「似たような術式を重ね、効果を高めようとした、と」

上条「……言われてみれば、『常夜』前の数日から、昨日ぐらいまで『あれ?これ現実じゃ有り得なくね?』的な事が起きてるような……?」

マタイ「昨日の夜に鳴護君が無茶をしたお陰で、今は効力を失っている。が、それらも『嘘が現実になった』副作用だろう」

上条「そうか……!だから俺も妙にエロくなったんだな……ッ!!!」

マタイ「それは君が思春期だからだね。妙齢の女性達に言い寄られ、性欲を持て余し気味なだけであろう」

上条「分かってたよ!分かってたけどそんなにはっきり言う事ないじゃないっ!」

マタイ「……ともあれ、だ。そんな術式が続いていた以上、フレンダさんの話もどこかが都合の良い嘘が現実を書き換えられている、と私は思う」

マタイ「彼女がオリジナルの記憶を有しているのか、それは誰にも分からない」

マタイ「そもそもで言えば――あの夜、あの場所で君達が見たものは本当に幻覚だったのかな?」

マタイ「彼女はまだ『死者』であり、『団長』に揺さぶりかけられて屍体へ戻ろうしたのではないか?」

マタイ「そして彼女が生前のフレンダ=セイヴェルンさんと同じかどうか、その存在を許せるのかも分からない」

マタイ「他ならぬ、彼女自身も含め、だ」

上条「――それは」

マタイ「うん?」

上条「別に、嘘だって構わない、と俺は思う」

マタイ「……」

上条「マタイさんが言ってくれた事でさ?『人間が生きようと足掻く事が人間の証拠』だっけ?そんな感じで」

上条「……確かに生きようとする事は戦いで、誰だって同じで。けどそれは人だけじゃなくて獣も同じだ。植物も自然淘汰の意味では同じ」

上条「だったら人とそれ以外を分けるのは、他人を大事にするって事じゃねぇかな」

上条「誰を大事にしたり、自分を犠牲にしてまで守りたいモノがあれば」

上条「仲良くなるか――は、別にしても、理解し合える。したいと思う」

マタイ「……」

上条「マタイ、さん?」

マタイ「佳い、それで佳いのだ。そこからが始まりなのだ」

マタイ「手があれば繋ぐ事が出来る。ただそれだけの話を忘れずにおれば佳い」

上条「……ありがとう、ございます」

マタイ「自身が出来なかった夢を、他人へ託すのは笑い話にもならんが――長くなって済まなかった。私はそろそろ行く」

マタイ「この街では思ったよりも有意義な体験をさせて貰ったよ。君や勇気ある少女達に心からの感謝と尊敬を」

上条「今度はどこへ?」

マタイ「闘いがあれば、どこへでも」

上条「……もう少し落ち着いて下さい、この世界のためにも!」

マタイ「アックアがな。彼の特性である『聖母との共鳴』は君達の戦いで失われたであろう?全ての罪から免罪されるという形質」

上条「あったなー」

マタイ「それを取り戻しにチュニジアにまで足を運び、『黒いマリア』の秘蹟を探索していたのだが、そこでトラブルがあったと聞く」

マタイ「」

マタイ「どうだね?良かったら君も――」

上条「逃げなきゃダメだ!逃げなきゃダメだ!逃げなきゃダメだ!逃げなきゃダメだ!逃げなきゃダメだ!逃げなきゃダメだ!逃げなきゃダメだ!逃げなきゃダメだ!」

マタイ「清々しいばかりの現実逃避であるな。まぁ気が向いたら連絡してくれたまえ。あの男も君が来れば喜ぶであ――」

上条「あのっ、マタイさん」

マタイ「ふむ?」

上条「……俺、さ。失敗ばっか、してて。上手い事なんか、全然やれなかったんだけど」

上条「マタイさんとか、他の人からは褒められるけど。他の人の力も借りてどうにか、って感じで、俺一人じゃ全然――」

マタイ「成功すれば佳い訳ではない。また失敗しても佳しとする訳ではあるまい」

上条「えっと、言っている意味が」

マタイ「信頼とは共に過ごした時間だ。また信頼とは共に悩んだ時間でもある」

マタイ「そしてまた信頼とは行動を以て得るものでもある……仮の話だ」

マタイ「鳴護アリサ君を巡る長い長い旅、君は幾つもの失敗をして来た。取り返しのつくものもあれば、そうじゃないものもあった」

上条「……はい」

マタイ「共に笑い、共に泣き、共に怒る。そうした経験が君達を強くし、そして絆もまたより強くした」

マタイ「想像してみると佳い。もしもあの旅の始まりに私が居て、フランスで『濁音協会』を粉砕してしまったら、今の君達は居ただろうか?」

マタイ「それとも君が『右手』の力を最大限に解放し、誰一人傷付けず世界を救ったとすれば?」

マタイ「今、君達の間にある、確固とした信頼が築けたかね?」

上条「……違ってた、でしょうね。それは」

マタイ「佳い。それで佳いのだ。力などは生きていればその内に身に付く、どうしても足りなければ補い合えば佳い」

マタイ「今の君達には文句を言いながらも、笑って手を取ってくれる仲間が居る」

マタイ「それは全て、君が持てる限りの力で精一杯『生きて』来た結果だよ。足りる足らぬに関わりなく、な」

上条「……俺は」

マタイ「――あぁ、そうそう一つだけ告げるのを忘れていた。嘘ではない本当の話を」

上条「はぁ」

マタイ「君が私の親友、ク――もとい、ドゥーク○に足止めされていた時の話だ」

上条「ドゥー○ー言うな!確かに盛り上げる前にあっさり退場したり、噛ませっぽい雰囲気出してたけどもドゥ○クーさんじゃねぇから!」

マタイ「『家族はやはり佳いものだな』と、君の携帯電話へ着信があったのをしきりに感心していたよ」

上条「あー……あの、アホ着信ボイス。しかもメールの着信っぽいのに誰が仕込んだんだか」

マタイ「決まっているだろう、”彼女”に」

上条「……彼女?」

マタイ「君と数日間寝食を過ごし、同じ時間を共有し、携帯電話を手軽に見る機会があった人間――と、まで言わないと分からないかね」

上条「その条件からすると、フレンダしか居ないが……え、なんで?なんでフレンダが俺の携帯の着メロ弄ったんだろ……?」

マタイ「気づいて、欲しかったのだろうな」

上条「何、に?」

マタイ「君の携帯を自分が盗み見している、という事。つまり――」

マタイ「――君が彼女を理解したかったように、彼女もまた君に理解して欲しかったのだよ」

上条「フレンダが、俺を?」

マタイ「でもなければわざわざ他人の持ち物を弄り、設定を変える意味が無い」

上条「い、いやでもさ。フレンダが最初に俺から逃げ出したのって、俺がフレンダの仲間と知り合いなのを隠してたのがきっかけで」

上条「だったら隠すんじゃ、ないですか?見てるってのがバレたら、警戒されるし」

マタイ「私に聞かれても困るよ。状況証拠からして、そんな悪戯を仕掛けるのは彼女しかおらん」

マタイ「結局の所、本人にしか分かりはしないのだがね」

上条「……そう、かな」

マタイ「ただし、これだけは忘れないで欲しい」

マタイ「『現実』がどれだけ嘘だったとしても、はたまたフレンダさん自身に胡乱な所があったとしても」

マタイ「あの時、我が親友殿の一撃を止めたのは、フレンダさんの意志によって引き起こされたものだ」

マタイ「その『偶然』は紛れもなく君達が起こしたんだよ」

上条「……俺達が」

マタイ「では今度こそさようならだ、上条君。出来れば敵味方で再会しない事を願っておるよ」

上条「……はい。本当にお世話になりましたっ」

マタイ「――と、言って別れた相手の、実に9割5分で最悪の対面になったんだがな」

上条「やめてくれない?そうやって悪いフラグ積み重ねるのやめてくれないかな?」

マタイ「冗談だよ」

上条「当たり前だ」

マタイ「10割だな」

上条「お前もう帰れよ、なっ?」

マタイ「……それで佳いのだ。別れとはこうでなくてはいかん」

――???

フレンダ「『――あー、うん、分かってる……うん、うん』」

フレンダ「『ていうかなんであんたに言われなきゃいけない訳よ?浜面のくせに!』」

フレンダ「『え?あー……あの子も?……血は争えない訳かー』」

フレンダ「『いやでもだって浜面だし?ていうか浜面だし?』」

フレンダ「『滝壺とくっついた時点で、残りの人生全部の運を遣ってる訳だからね?そこら辺を勘違いしない訳、あ?』」

フレンダ「『滝壺……んー、確かに可愛いしおっぱい大きいし、優良物件だとは思う訳だけど……』」

フレンダ「『……ま、悪い男に騙されて人生経験を積むのも良い訳よねっ!え、違う?』」

フレンダ「『素に戻って忠告しとくけど、あんた滝壺泣かせたら十中八九――いやぁ、まぁ良くて瞬殺される訳よ?分かる?』」

フレンダ「『まー精々――ってそんな話いい訳。つーかさっさと出せ』」

フレンダ「『いいからっ、ほらさっさとする訳!』」

フレンダ「『……』」

フレンダ「『……も、もしもし?あたしあたし、分かる?』」

フレンダ「『――って詐欺じゃない訳よ!ネタって何よネタって!』」

フレンダ「『あー………………ゴメンゴメン!一年以上も放ったらかしにしたのはねー……あたしも、ほら色々あった訳です、えぇホント』」

フレンダ「『心配――うん、しない訳ないわよね。ごめん、本当に、ごめんなさい』」

フレンダ「『……』」

フレンダ「『……その、ね。なんて言ったらいいのか……うん』」

フレンダ「『あたし、ね?学園都市を離れなきゃ――』」

フレンダ「『……』」

フレンダ「『あ、全然全然っ!?学費がどうとか、そういう事じゃない訳』」

フレンダ「『お金だったら、今まて通りにお姉ちゃんが何とかするから、あんたは心配しなくて良い訳』」

フレンダ「『そうじゃなくてね、こう方向性の違いって言うか。分からない?あたしも分かってない訳だけどさ』」

フレンダ「『学園都市のね、親戚って言うか、従兄弟――あー……外の機関?まぁイギリスに出戻りって訳ね、うん』」

フレンダ「『そこで勉強すれば、あたしの能力も――』」

フレンダ「『……』」

フレンダ「『……ダメ。あんたは待ってる訳、ここで、この街で』」

フレンダ「『嫌い?……うんまぁ、あたしも正直好きじゃない訳。ぶっちゃけ嫌いよ』」

フレンダ「『人生これからだっつーのに、着たい服が死ぬ程あるっつーのに、ね。まぁまぁ』」

フレンダ「『……けど、今のあんたは不幸な訳?どう?』」

フレンダ「『友達も居るし、保護者っぽい人達も居て、幸せ?……そっかぁ、そう、ね』」

フレンダ「『……あたしもね。出来ればフレメアと――うん、だから、リハビリ?みたいな感じ?』」

フレンダ「『必要無いって思う訳だけど、その――ケジメ、かな?あたしを助けてくれた人に』」

フレンダ「『こんなあたしを信じてくれた人が居て、体を張って死にかけたバカが居た訳。物好きな訳よ、そいっっっつが』」

フレンダ「『でも、だからこそ』」

フレンダ「『あたしの命は、今の命はあたしだけのもんじゃなくってね?こう、色んな人に助けて貰った訳だ』」

フレンダ「『だから簡単には死ねないし、死んでなんかやるもんか――あ、ごめんね?訳分からない訳ねー?』」

フレンダ「『……うん、まぁまぁまぁまぁ』」

フレンダ「『少しだけ、頑張ってみようって――』」

フレンダ「『――着飾らなくたって、綺麗じゃなくたって――』」

フレンダ「『――あたしは、あたしだから』」

フレンダ「『……』」

フレンダ「『……ありがとって訳……あー、あとさ。変な質問だけど』」

フレンダ「『昔、川遊びに行ったの憶え――そうそう、うん、オールバンズに住んでた時に』」

フレンダ「『拾った石――あ、持ってる?ホントに?はー……』」

フレンダ「『……止めときなさい。カブトムシさんは石食べない訳!ていうか死んじゃう訳だから!』」

フレンダ「『そう、か……あった訳かー……うん?』」

フレンダ「『あぁいや別に、大した事じゃない訳。ただの確認って言うか、まぁ賭けに負けたって言うか』」

フレンダ「『んじゃ、メールアドレスは教えとくから。あ、そうだ、あんたブラって付けてたっけ?付けてる?』」

フレンダ「『それじゃくれぐれも!くれっぐれも!浜面の前で着替えたり、一緒にお風呂とかダメだからね?いやマジで気をつける訳?いい?』」

フレンダ「『”お、俺と一緒にお風呂ブヒヒヒヒィィィィィィィィィィッ!”とか言ったら、催涙スプレーぶっかけて逃げる訳よ?』」

フレンダ「『絹旗か、出来れば麦野の所へ。しっかり去勢してくれると思う訳だから』」

フレンダ「『あ、そうそうアドレス――え?伝言?”アイテム”のみんなに?良い訳?』」

フレンダ「『下っ端――じゃなかった、浜面は?……あ、あぁ、良い?マル?マジで?』」

フレンダ「『滝壺……は、ヨロシクやってる訳だし――やらしく?ナイナイ、浜面にそんな甲斐性ある訳ない訳……あるのかないのか面倒臭いな!』」

フレンダ「『ま、居場所見つかったっつーんだったら、あたしがとやかく言う所はない訳だけど……あーでも、ね。もうちょっと選んで欲しかったな』」

フレンダ「『あたしヴィジョンじゃ、10年後に酒代せびる浜面の姿が……うん、まぁ幸せだって言うんだったら、良い訳だけどさ』」

フレンダ「『絹旗ー、もー、相変わらずB級映画ばっか見てそうだし……んー……あたしからは別に、まぁそこそこ元気でやってる訳だろうし』」

フレンダ「『むしろ絹旗がヘコんでる所が見たい訳。物理的にも精神的にも』」

フレンダ「『と、すると麦野――うん、麦野か』」

フレンダ「『……うん、それじゃみんな揃った時に言って、くれる訳?……うん、そう、浜面も一緒に。浜面も一緒にね!』」

フレンダ「『大事な事だから二度言った訳だけど、く・れ・ぐ・れ・もっ!浜面と、一緒にねっ!』」

フレンダ「『あー……えっと。麦野、麦野沈利さん』」

フレンダ「『……あたし、さ。前から思ってた、うん、そうねー……初めて面通しされた頃ぐらいかな?結構前から思ってた訳』」

フレンダ「『いつか、言わなくちゃなーとは思ってた訳だけど、ね。いい機会だし、言わせて貰う訳』」

フレンダ「『……』」

フレンダ「『――麦野、その上下同じブラントで合わせる癖、何とかならない訳?ぶっちゃけ超絶ダサい訳よ、いやマジでマジで』」

フレンダ「『あぁうん、似合ってない訳じゃない訳ね?そこはまぁタッパあるしー、スタイルいいしー、まぁ良いっちゃ良い訳なんだけど……』」

フレンダ「『でもどう見てもOLのおばはんにしかね、うん、あんま言いたくない訳だけど、実年齢がプラス10ぐらいされて見える訳でさ』」

フレンダ「『……うん、その、これは墓場まであたしが持って行こうって思った話な訳だけど――一回行ったからノーカンね?』」

フレンダ「『あー、その、前にさ?カチコミしたじゃん?麦野がウッサいっつったチーマ×んトコ』」

フレンダ「『そん時ね、ボコったヤツが今の浜面みたいにパシリんなった――憶えてるかなー?……あぁまぁ、その子がさ、あたしに聞いてきた訳だ』」

フレンダ「『”あ、あの人に惚れたんですけどっ!娘さんは幾つの時の子ですかっ!?”』」

フレンダ「『……』」

フレンダ「『……えっとね、麦野に惚れ込んだのは良い訳よ。別にね?きっとその子はデスザウラ○派だって訳だから、うん』」

フレンダ「『あたしみたいに正統派のゴジュラ○派とは違って、荷電粒子砲にロマンを感じる人だって居る訳だしね、そこは』」

フレンダ「『絹旗みたいなシールドライガ○も居れば、滝壺みたいなグスタ○が良いっての居る訳だし、まぁ人それぞれって訳よ、うん』」

フレンダ「『でもその、どっこで何を勘違いしたのは分っかんないんだけど、えっと……』」

フレンダ「『……絹旗をねー、麦野の娘だと……うん、思ってたらしくってねー……』」

フレンダ「『……』」

フレンダ「『い、いやだってあたしは悪くない訳!あたし悪くない訳よ!』」

フレンダ「『だって絹旗と目と髪の色も似てる訳だし!サイケな性格もそっくりって訳!あたし言ったんじゃない訳だけどさ!』」

フレンダ「『それに当時の絹旗ってヒョウ柄の、どう見ても”ヤンママに着せられた感”する服着てたし!そっちも悪いと思う訳!』」

フレンダ「『だから、ね?こうもっと若々しい服を着た方がね、誰も得をしない訳で』」

フレンダ「『あんたからも、それとなーく、麦野を傷付けないように言っ――はい?』」

フレンダ「『え、何?聞いてたって、何を――』」

フレンダ「『……』」

フレンダ「『い、いや違う!違う訳よ麦野!これには事情がね、事情がある訳!』」

フレンダ「『そう、これはきっと――』」

フレンダ「『――敵の能力者の攻撃って訳!うんっ!』」

フレンダ「『”死ねっ”!?死ねって酷くない訳!?つーかあたし死んだわ!一回死んだ訳だし!』」

フレンダ「『そこら辺の事情を汲みなさいよ!あたしだって心理的にトラウマを負った訳だし!』」

フレンダ「『……え?トラウマは元々心理的なもの?そうなの?』」

フレンダ「『あー……なんかね、こう、元気そうって言うかさ、電話口から浜面の悲鳴が聞こえ――うんっ!気のせいな訳よねっ!知ってた訳っ!』」

フレンダ「『正直、あんま前後の事憶えてないし……実感もないんだけど、さ。まぁ、うん』」

フレンダ「『何かね、あたしの能力、成長する余地があるんだとかで、うん。魔術?眉唾モンだけど』」

フレンダ「『だから、まぁちょっくら行ってくる訳。だから、その』」

フレンダ「『……あたしの妹を、お願いします』」

フレンダ「『……うん、うんっ』」

フレンダ「『――行ってくる、訳よっ!』」

――CC学区 深夜

上条「えっと…マークマーク……」

上条「……あ」

マーク「こんばんは、お疲れ様です」

上条「あ、どもこんばんは。すいません、なんか昨日は約束すっぽかしちゃって」

マーク「あぁ別に良いんですよ。このクソ寒い中、朝までずっと待ってただけですから、えぇ」

上条「さーせんしたっ!この埋め合わせはいつかっ!」

マーク「いえいえ、お気になさらず。実はボスが」

上条「バードウェイが?」

マーク「――っていうコーヒー美味しいですよね?」

上条「話題の展開が強引すぎるだろ!また裏で何かやってんのかあの違法ロ×!」

マーク「それは実家に帰った時のお楽しみ――おっと、これ以上は言えません!」

上条「ほぼ言ってますよね?それつまり俺の実家であの悪魔が暗躍してやがるって事ですもんね?」

マーク「……俺に止められるとでも?」

上条「帰省したくねぇっ!年末帰って来い言われてるけど帰省したくねぇよなっ!」

マーク「でしたらお仕事ありますよ?愉快な仲間と一緒にイギリスですったもんだの大冒険!」

上条「お前らとは関わり合いになりたくないつってんだよコノヤロー!」

マーク「いやあのですね?学園都市から戸籍のない人を海外出国、更には経歴ロンダリングで戸籍作成」

マーク「当面の生活費や、見習い程度にまで魔術を叩き込むってぇのは、最低でも6桁行くんですが」

上条「え、円で?」

マーク「ドルに決まってんだろ。つーかあんた、これ以上ボスに借り作ったら、マジで奴隷ルート確定すんぞ、あぁ?」

上条「大丈夫さっ!俺がDOGEZAをすれば数億ぐらいキャッシュで貸してくれるかも知れない友達が居るからっ!からっ!」

マーク「それ、返済先が変わるだけで実質は何も変わってないんじゃ……?」

フレンダ「ていうか希望的観測であって、何一つ根拠は無い訳よね」

上条「誰のためにやってると思ってんだっ!?そりゃ俺がしたいからに決まってるけども!」

フレンダ「セルフ完結しやがった訳ね」

マーク「まぁ、あんだけ格好つけといて、今更人様の責任には出来ないでしょうからねぇ」

上条「ウッサいな!つーかマークはなんでそんな事まで知ってやがる!」

マーク「話の流れて何となく、『あ、またか』みたいな?違います?」

上条「またの意味がサッパリ分からないですね?いやマジで」

マーク「まー、我々に対する負債はいつか必ず取り立てるとして――こちらのお嬢さんを運べば良いんで?」

フレンダ「ヨロシクって訳ー」

上条「お前なんか軽くなった――いや、前から軽かったな。気のせいだったわ」

フレンダ「ツッコミが面倒臭くなって諦めたっ!?」

マーク「んで荷物はバック一つで良いんですか?ナントカという鎌は?」

上条「あーそう言えば……どこ行ったんだ、あれ?」

フレンダ「んーっと、ちっょと待つ訳」 ヒュインッ

マーク「ほう」

上条「初めて……じゃないが、殆ど初めてだかな。お前の能力見るのって」

フレンダ「あー、それがさー、聞いて聞いて?『兵器庫艦(バックヤードキャロット)』の能力が何かおかしくなってる訳」

上条「不安定だとか言ってたっけ、確か」

フレンダ「いや、安定したっちゃしたんだけど……その、この武器しか取り出せなくなった訳だ」

上条「あー……」

フレンダ「一応、今までとは違って『送り返す』のも出来るんだけど、さ。なんかこう、使い勝手が悪いっつーか」

マーク「……それ、『魔剣』としても有名ですよ?『円卓』には及ばないですが」

上条「使う方がこんなんだから、まぁいいんじゃね?ショボイ持ち主だって分かれば、脅威度も低くなるだろうし」

フレンダ「ちょっと!誰がショボイって誰がっ!?」

上条「あー、もうウルサイウルサイ。さっさと行――」

???「――ちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおっと待ったぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

フレンダ「だ、誰よっ!?」

上条「レッサーだろ」

レッサー(???)「上条さんの鬼っ!悪魔っ!高千穂っ!人のボケを途中で潰すなんて非道を!」

レッサー「そんな事しちゃいけませんって学校で教わりませんでしたかっ!?」

上条「特殊な養成学校でしかやってねぇよ!診療報酬と生活保護の不正受給させるようなブラックな学校ぐらいしかなっ!」

レッサー「とうっ!」 スタッ

フロリス「いや別にジャンプする程の高さじゃなかった、よね?」

ランシス「……お約束、必要……」

ベイロープ「あぁもう他の結社さんの前なのに……ッ!」

上条「あぁうん、マークさん。この件はどうか一つ、うん」

マーク「はい、何かのイベントだと思って流します」

レッサー「聞いて下さいよ!『それ』の所有権はこちらにあるんですからねっ!」

フレンダ「これ?この鎌?」

レッサー「イェエッスアイドゥ!」

ベイロープ「文法間違ってる」

レッサー「私達が死ぬ思いでボコられて!『あ、やっぱ鎌返しときゃ良かったなー』と割とマジで思ったんですから!さぁさぁ早く返して下さいなっ!」

フレンダ「あ、うん。どうぞ」 ヒョイ

レッサー「あ、これはご丁寧にどうも――って、良いんですかっ!?」

フレンダ「え、欲しい訳よね?これ?だったらどうぞっていうか」

レッサー「……えっと……?」

フレンダ「ぶっちゃけダサい重い格好悪い訳。どっかに捨てても戻ってくるし、呪いのリ○ちゃん人形かと思った訳」

レッサー「何たる暴言を!いいですかー、コレにはですね、我らがブリテンの血と血と血の歴史が――」

フレンダ「ホントに縁起悪いなっ!?」

上条「……なんだこのカオス……」

鳴護「こ、こんばんわっ当麻君!」

上条「アリサまで来てたのか」

鳴護「うん、レッサーちゃん達帰るって言うし、お見送りしようと思ってお姉ちゃんに送って貰いました」

上条「まさか同じルートで帰るとは思いもしなかったが……うん?」

鳴護「何?あたしのリュックに何かついてるかな?」

上条「いや、ついてるじゃなくって。なんかこう、不自然に膨らんでんなって」

鳴護「んー?大したものは入れてなかった思うんだけど――」 ガサゴソ

マーリン「……」

上条・鳴護「「……」」

マーリン「『ワイはマーリン!ブリテン一の魔術師やで!』」

上条「黙ってろ謎生物。映画のグレムリン並みに意味不明な生態しやがって!」

マーリン「てか一年戦争やのに次々と新MS出てくるってありえへんよね?ギリア○にーやん働かせ過ぎやっちゅーの」

上条「それ多分グロムリ×な?一目見た時『あるぇ?ぴっけるく○がガンダ○出てる?』って思ったけどもだ!」

鳴護「当麻君、そんなボケでも拾うんだ……?」

上条「お前もイギリス帰れよ!何魔法少女量産すべくアリサにくっついてんだよっ!」

マーリン「最近の魔法少女は変身する時エゲツない脱衣するねんて。マジカルなシェフとか」

上条「――アリサ、今日から魔法少女頑張ってなっ!!!」

鳴護「当麻君っ欲望まっしぐらだよねっ!……ていうか、見たいんだったら別にいいのに」

上条「――はいっ、という訳ですねっ!本日のゲストはマーリンさんなんですけどもっ!」

マーリン「清々しいまでゲスい話題の転換法やねぇ。嫌いやない、決して嫌いやないけども」

上条「マジな話、あの鎌ってどうなの?フレンダ的に離して大丈夫か?」

マーリン「あかんて。離したら死のぉわ」

上条「……マジで?」

マーリン「うんマジで。っていうか、今のあの子の『本体』は鎌みたいなもんやし」

上条「ヴァルキリエだっけ?」

マーリン「武具精霊になっとぉ。やから、魔術的に切り離されたら……まぁ死ぬんちゃうの?実験しよぉ訳にもいかんし」

上条「アリサとは違うのか?」

マーリン「アリサはんは魔神の欠片、あの子ぉは『尸解仙(しかいせん)』やな」

上条「えぇっと……?」

マーリン「まぁ気にせんと。不老不死ゆうても仙人やないんやし、寿命になったらぽっくり死によぉわ」

上条「(……どういう事?)」 コソコソ

マーリン「(ワイの推測やけど、アリサはんもあの子も『想い』とかが固まった存在なんよ)」

上条「(……あぁ、他の知り合いにもそういうの居るわ)」

マーリン「(本人が思えば思い込んだままの影響が、ダイレクトに肉体へ反映されよぉ。やから『不老不死』やって思い込めば、そうなるんよ)」

上条「(スゲぇな思い込み!)」

マーリン「(もしこれが徳を積んだ仙人やったら、何百・何千年平気で生きよぉんやけども、二人とも徳はおろか修行もしてへんよね?)」

マーリン「(んでまともな人間はそう思わへんよね?普通に年取って、普通に死によぉ。血が流れるだけでショック死もするし)」

上条「(ショック死の意味間違えてるが……まぁ分からないでもない)」

マーリン「(『ワイは歳とらへん!絶対にや!』ってぇ思い込もうとしても、普通は無理やって。歳とるって)」

マーリン「(その証拠に、アリサはんって『普通』に過剰な所あらへん?なんか無理して普通になろうしている感がある――いや、あったっちゅーか)」

上条「(それってもしかして、薄々自分の事に気づいていて、それでも他の人と同じが良いって?)」

マーリン「(としか思えへん……ま、心配は要らへんよ。アリサはんもあの子も、『自分は普通の人間や』と思っている以上、人間以外の何かにはならへん)」

マーリン「(もし何かの弾みで不老になったら、ワイがまとめて面倒看よぉわ)」

上条「(……悪い)」

マーリン「うん、やからワイは日本に残ってアリサはんのマスコットをやね」

上条「おーいレッサー!お前らの先生忘れてんぞーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

マーリン「速攻裏切りよった!?」

レッサー「あ、すいません。これはつまらないモノをわざわざ」

マーリン「紅葉おろしだけはっ!絵的に綺麗な分だけよりエグさが引き立つ紅葉おろしだけは堪忍してぇな!」

上条「もふもふはどうでもいいが、今の話聞いてたか?」

レッサー「はい、ウチのランシスが軽く調べた所、一体化しているようで切り離すのは少々手荒な方法しかないようで」

上条「手荒?」

レッサー「えぇ、物理的にバッサリスッパリ後腐れなく」

上条「”少々”?それが”少々”?」

レッサー「なのでウチで、『新たなる光』で引き取る事にしましたよ、はい」

上条「へー……え?」

フレンダ「ちょっと待つ訳!そんなの聞いてない訳よ!?」

レッサー「『剣』を召んで扱う私達とは共通点もありますし、まぁ悪いようにはしませんて」

フレンダ「こっちのオッサンについてくのも不安な訳だけど、あんた達もあたしとそんなにそんなに歳変わらないし……?」

マーク「オッサン……」

レッサー「――ならフレンダさん!敢えて伺いますがっ!」

レッサー「あなたっもしかしてみょーに身体能力が高いとか、近接戦闘がやたら高いとかそういう心当たりはありません?せんせん?」

フレンダ「な、なによいきなり」

レッサー「正直に、どうです?」

フレンダ「んー………………っと、言われてみれば、思い当たる節がない訳でもない、かな?」

レッサー「他にも電撃喰らったのにダメージが少なかったり、刃物で切られてるのにあんま痛みを感じなかったり」

フレンダ「切られるようなヘマはしなかった訳だけど……確かに!そう言えば第三位とやり合った時も!」

上条「また意外な所で意外――でも、ない名前が出て来やがったな」

レッサー「おかしいとは思いませんでしたか?何か他の人とは違う――かといって『能力』という訳でもないのにっ!」

フレンダ「そうよねっ!」

レッサー「それはフレンダさん、答えは簡単ですよ――あなたは、選ばれた……ッ!!!」

フレンダ「あ、あたしが?」

レッサー「世の中には『原石』と呼ばれる産まれながらしてに才能を持つ、極々一握りの人達が居ます――ですが!」

レッサー「その多くは才能を生かせる事なく一生を終える。あなたも心当たりありませんか?」

フレンダ「そうよっ!あたしもアポート前から使えたからスカウトされたのに、学園都市じゃ現状維持しか出来なかった訳!」

レッサー「それはですねー、ベクトルの違いなんですよねー、えぇはい」

レッサー「あなた方は『科学』という面で世界を解き明かそうとし、我々は『魔術』を使って世界を表そうとしました。その違い!」

フレンダ「そ、それってまさか……!?」

レッサー「そうです!あなたの才能は魔術サイドでこそ花開くモノであって、科学サイドが居場所ではなかったのですよ……!」

レッサー「さぁおいでませ我らが魔術結社(未満)『新たなる光』へっ!今ならたった数年で引き返しが出来ない魔術の真髄を伝授しましょうっ!」

フレンダ「マジで……!?」

上条「……あのー、もふもふ?」

マーリン「はいな」

上条「レッサーにフレンダの事教えたんだ?」

マーリン「いや何も伝えてへんよ。口から出任せ言っとぉだけやね」

上条「それでも大体合ってんのがスゲェな!」

マーリン「代々の王様、カリスマっちゅーんか、口は上手いヤツ殆どやしなぁ。ま、エエけど」

上条「ていうか俺達が魔術使ったら、エラい目に遭う設定はどうなんだ?」

マーリン「フレンダはんは一回死んだから、あんのボケの呪いは解けとぉと思うわ。念のため、イニシエーションん時にもっかい解除してみるけど」

上条「呪い……?」

マーリン「あ、ほら、話まとまったようやし」

フレンダ「決めたわっ!あたし魔法少女になる訳っ!」

上条「おいレッサーテメー何吹き込みやがったっ!?ベクトル的に間違いでもないような、微妙に否定しづらいジャンルへ行ってんぞ!」

レッサー「いやあの、話をちょこっと盛ったら、つい」

上条「具体的には?」

レッサー「私達が魔法のプリンセスが治める魔法の国から来た事になっていましてね」

上条「間違ってない!間違ってはないが!エリザードさん見ちまうと、うんっ!なんだかなぁ!」

マーク「……あのー、それで私はどうすりゃいいんで?こちらのお嬢さん方を連れ出すだけでいいんですか?」

上条「すいません、なんか話の流れでそんな感じに」

マーク「あー別にいいんですよ。話を聞くにウチよりか待遇は良さそうですしね。歳の近い者同士、仲良くやるのがいいでしょうな」

上条「本音は?」

マーク「これ以上ガキのお守りなんて真っ平ゴメンだ」

上条「あー……うん、魔術結社だもんね」

マーク「ボスには上条さんから伝えといて下さい。説明するのが面倒ですんで」

上条「一応聞いておくけど……」

マーク「脱出費用は基本料金5倍増し。ボスの機嫌次第では倍率が変わりますんで、まぁ頑張ってご機嫌取ってやって下さいな」

上条「ですよねー」

レッサー「大変ですねー。なんでしたら肩代わりしましょうか?」

上条「気持ちは有り難いんだが……債務者が変わるだけで好転はしないだな、これが」

上条「どうせ踏み倒すんだったら、まだ大きな所の方がスルーしてくれるかも知れないし!」

マーク「聞いてますよー?まぁ別に放置されてもウチの財政はビクともしませんが、ボスは面白半分で無茶な取り立てするような人ですんで」

上条「人が折角忘れようとしてるのに!」

マーク「忘れるだけじゃ根本的な解決にはならないと思いますが……っと、そろそろお時間です」

上条「ん、それじゃお前ら、まぁ――」

フレンダ「――ちょ、ちょっと時間いい訳?」

マーク「まぁ3分ぐらいなら」

フレンダ「ん……っと、上条?よね?」

上条「あぁ」

フレンダ「その、色々ありがとって訳。感謝してる、から」

上条「あぁいいって別に。慣れてるっちゃ慣れているし、最初に言ったろ?『一身上の都合で』みたいな」

フレンダ「……よく拾う訳?」

上条「人よりは、まぁ少しだけ」

フレンダ「あんま人拾うって体験ないと思う訳――だけど、あー、その、ね、なんつったらいいのかわっかんない訳だけどさ」

フレンダ「色々ゴメン。蹴ったり蹴ったり、あと蹴ったりスタンガン使ったりして、反省は――」

フレンダ「……」

フレンダ「――は、してない訳だけども!」

上条「しよう?そこはしようぜ?無辜の一般人相手に暴力振るったのは、これから改善しよう、なっ?」

フレンダ「あー……っとごめんなさい」

上条「いやだから別にいいって。お前は俺を一方的に痛めつけたー、とか思ってるんだろうけど、あれはあれで引き分けだったから」

フレンダ「引き分け?」

上条「だからまぁそんなに気にすんな。少なくとも俺の中ではイーブンになってるから」

フレンダ「へー、なんで?」

上条「いやほらさ、お前が俺をバチって転がした後、こう、俺の顔の脇で屈んだじゃん?」

上条「膝つかずにかかと揃えて、膝の上に両手乗せるっぽい格好で」

フレンダ「やった……かな?でもそれがどうして引き分けって訳なのよ?」

上条「パンツ見えたんだよ、うん」

フレンダ「……………………はい?」

上条「確かにお前は俺を出し抜いた!あぁそれはその通りだろう!俺はお前に一杯食わされたさ!」

上条「だがしかぁし!俺はお前のパンツ、具体的には黒レースを見ている!」

上条「暗がりの中でありながらも至近距離でダイレクトに見えそれはまさに圧巻の一言に尽き!つまり――」

上条「――あの時、俺達は実質的には相打ちだっ――」

フレンダ「――せいやっ!」 ゲシッ

上条「そげぶっ!?」

フレンダ「死ね!っていうか死ぬ訳!なんでこんな時にそんな事言う訳よ!?ネタかっ!あたしはネタ要員かっ!?」

フレンダ「違う訳よ!もっと、こう、しんみりして『寂しくなるな……』的な空気じゃなかった訳!?あぁっ!?」

マーク「(……あれ、どう考えてもわざとですよねぇ?)」 ボソボソ

マーリン「(やんなぁ。上条はんは基本アホやけど、真の意味ではクレバーなお人やし、多分空気読んだ上でぶち壊しとぉだけやと思うわ)」 ボソボソ

上条「……」

フレンダ「っていうか聞いてる訳!?きーいーてーるーわーけーかーっ!?」 ガックンガックン

レッサー「もしもーし?オチてますからその人、追い打ちはそのぐらいにして下さいなー」

フレンダ「……あぁまた結局ちゃんとゴメン出来なかった訳……!」

鳴護「ま、まぁまぁ!それよりもお時間大丈夫?そろそろ3分経っちゃってるんだけど?」

レッサー「あ、すいません。最後の台詞をムードたっぷりにもっう一回言って下さいませんか?」 カチッ

ベイロープ「おい変態自重しろ携帯で撮ろうとするな……って、本当に気絶してるのだわ」

フロリス「『聖人』ってのも嘘じゃないんじゃなーい?ま、なり損ないって話だけど――ランシス?」

ランシス「……んー……?」 ツンツン

レッサー「どうしました?まるで今から置き引きしようとしているストリートギャングみたいな挙動不審っぷりですよ?」

ラシンス「……いい事考えた……マーク、さん?」

マーク「さんは結構です。それで何か?」

ランシス「あと、二人増えても……大丈夫?」

マーク「何とかなります――が、二人ってのは……」 チラッ

上条「……」

鳴護「当麻君っ!?ダメだよ、勝手に誘拐するのは――って、ランシスちゃん?」 ギュッ

ラシンス「……ん」

鳴護「キャラに合わないぐらい、しっかりとした力であたしを掴んでるんだけど。ど、どうしたのかな?」

ラシンス「……だから”二人”……」

鳴護「待って!?え!?ていうか二人ってあたしも!?被害担当の当麻君だけじゃなくて!?」

鳴護「レッサーちゃん!お友達の凶行を止めて!止めてあげ――」

レッサー「あ、ベイロープ。そっちの足持って下さいな。フロリスは手を」

鳴護「お仕事早いよねっ!後先考えないだけだと思うけど!」

フレンダ「あー……まぁあんたも誰か知らない訳だけど、生きてるだけで幸せだって思える訳よね?うんうん」

鳴護「その下り一回やりました!だからあたしの居場所はこっちであって――」 グッ

ランシス「……うん」

鳴護「えっと、ランシス、ちゃん……?」

ランシス「……幸せに、するから……っ!!!」

鳴護「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?ランシスちゃんルートは、いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

鳴護「っていうか当麻君っ!?当麻君起きてるよねっ助け、助けてっ!?」

上条「……」 ゴソゴソ

鳴護「ほらこっそり写メ撮ろうとしているモノ!気絶したフリして撮ろうとしてるから!分かってるから!」

鳴護「だから、だからっ!」

フレンダ「……あのさ」 ポン

鳴護「は、はい?」

フレンダ「結局、死ぬ気になれば何でも出来る訳!ファィッ!」

鳴護「助けてーーーーーーーーーーーー!?おかーーーーーさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!」

フレンダ「あたし達の戦いはまだまだこれからって訳よね!」 グッ



――『胎魔のオラトリオ アフターシナリオ”死者の書”』  -終-

投下は以上となります。お付き合い頂いた全ての方に深く深く深く感謝を
最後はやっぱりしょーもないオチでした、えぇ本当に

スレ立ててから約19ヶ月、文字数換算でトータル約137万語、まぁ色々ありましたが……あったかな?特になかったような
本当にありがとうございました。ではまた

おつおつ超乙
どえりゃー楽しかった読み返してきます

次回作も期待してます!!

お疲れ様でした!
セレーネ復活からのストーリーがとても熱かったです
アリサの夢の中で出した上条さんの答えとかもうね

あと作者様のまとめサイトなんですが、本編のエピローグがまとめ忘れてるかと

19か月間お疲れさまでした!次回作待ってます!
それとレッサーの買いに行ったオロシガネはどういう意味ですか?

乙です
長い間楽しませてもらいました

今回のssのテイストも結構よかったな
ヒロイン誰な時もあったけど

気がむいたら、また何か書いてください

最後の最期でアリサちゃんがおかあさん呼んで無限ループなわけですね。
ほんとにおつかれさまでした!

麦野と絹旗はあの服装だと、確かに親子に見えるw

今回のオリキャラの柴崎さんだけど、作中で結構酷い目にあってるよね…ある意味上条さんより不幸やん

乙でした!

もう19ヶ月も経ってたのかw
今作も毎週楽しく読ませていただきました。

この後借金のカタに色々パシられてる上条さんしか見えないw

とりあえず、お疲れ様とありがとうを作者氏に!!
よくぞ書き切って下されました、近日中にまとめて一気読み致します!!

>>598-599、>>601
ありがとうございます。本当に本当に最期までお付き合い頂いて

>>600
正確にはマタイ&レディリー&マーリンの三人がグルです
(マタイ=上条担当、マーリン=『新たなる光』担当、レディリー=『アイテム』担当)
フレンダさんを初期の段階で確保してしまえば、それはただの『死者』として処分せざるを得なくなるため、
敢えて泳がす事によって変化を求めた――というか本当に「死者ではなかったのか?」は、誰も知りようがないと
(シュレディンガーの猫のように、確定してしまうと対処しなくてはならない)

>>602>>602>>650
短いSS(ハピレスチャージプリキュア・キュア一武道会編)を幾つか書いて、その後は大分前(多分1年以上前)にお約束した食蜂さんヒロインの中編を書かせて頂こうかと
構想(ネタ出し)するのに二~三ヶ月ぐらいは間を置くと思います。今年中には整形と耳鼻科に行ったり、実家へ帰って弟をもふもふする用事が

>>649
ありがとうございます。出来れば経過時間を教えて頂ければ幸いです

>>651
登場順に、人が戦う理由・進化の過程での淘汰・文明の傲慢・宗教(神殺し後の信仰)、そして『個人』というテーマを取り扱ってみました
……結局、誰がどうであろうとも立って歩くのは自分の意志だ、と言う当たり前の話でしょうか
また副題として意識していたのが、

「死を以てしても汝を[ピーーー]事は能わず。怪異なる永劫の果てには死すら終焉を迎えん」

という”アーサー王伝説”という『神話』
不完全な存在であっても他人の心を動かす事が出来れば、それは物語として永遠の命を持つのと同義かも知れません

尚、後編の最後にエピローグ足した筈ですが、読みにくいので分割して掲載致しました。ご指摘ありがとうございました

>>653
全体的に黒すぎる時事ネタやブラックジョークを入れるだけ入れたため、まぁ暗いは暗いですね
(個人的にはそこいらの新書やジャーナリスト()よりも正確に国際情勢と歴史の情報が入っていると思います)
鳴護さんの人格を掘り下げて、”人間だったら当然のように抱える悩みや葛藤”が本編のテーマでしたので、まぁまぁ、はい

鳴護さんがメインの筈なのに、美味しい所はレッサーさんがかっ攫って、オイシイ(芸人的に)所はランシスさんが持って行きましたね

>>654
身内がおらず、ある意味全てを一人で抱え込んで完結していた子が、多少なりとも他人へ依存――甘えられるようになったのはよい傾向かと
人が生きて行くには他人との関わりが絶対に必要となりますが、まずは手を繋ぐ努力から

>>655
麦野さんはもう少し、こう軽めの色の方が若く見えると思う――って浜面さんが言っていました。そう浜面さんが
い、一応はクロウ7(映画版の『黒鴉部隊』のオールバック隊員、声優が島崎信長さん)だから、完全にオリキャラって訳じゃないですし!
(※あの人もポジ的にはNo.2で多脚戦車も扱えるようですし、戦闘能力は高いと思います)
ていうかオリキャラが原作キャラ喰ってはいけません。そういう意味でマーリンは失敗でした

>>656
幼女にパシられのはご褒美です。そして『アイテム』でパシらされる浜面さんもご褒美です

>>657
ありがとうございます。膨大な時間かかると思いますが、まぁ気長にどうぞ

>>652

――『もみじおろし』


レッサー「ちゃかちゃっちゃちゃちゃちゃちゃん、ちゃかちゃっちゃちゃちゃちゃかちゃんちゃん♪」

ランシス「……ちゃかちゃちゃちゃちちゃちゃちゃちゃかちゃっちゃんっ……♪」

レッサー「ハーイやって来ました『新たなる光』の三分で出来るNice Cooking Show!!ゲストは昨日に引き続きランシスさんですっ!」

ランシス「いえーい……イマイチ人気ないぜー……」

レッサー「!今日のお料理はなんっと『もみじおろし』ですねっ!」

ランシス「……もみじおろし?」

レッサー「え?知りません?もみじおろし?あー、まぁJapanの西日本で薬味として使われるのが一般的ですねー」

ランシス「……大根おろしと、違うの?」

レッサー「の、一種だと思って下さいな。具体的には、すり下ろす前の大根に穴を空け、唐辛子やニンジンなどぶっ込みます」

レッサー「その大根をゴーリゴーリすり下ろせば――なんとっ!紅い色の大根おろしに早変わりっ!『もみじおろし』の完成ですっ!」

ランシス「わーい……」

レッサー「大根は種類やすり下ろした時間、はたまた季節によって辛みが変化します。同じ辛み大根(※という種があります)でも辛さは一定していません」

ランシス「それ……大丈夫?料亭屋さんで、使いづらくない?」

レッサー「心配ご無用っ!そんな時には『もみじおろし』で代用する事により、一定の辛さを保ったお料理を出せるってぇ寸法でさぁ!」

ランシス「へー……」

レッサー「色も綺麗ですし、ちょいと和的な辛みが欲しい時には是非付けたい一品!付け合わせと言って侮るなかれ!」

ランシス「ふーん……?」

レッサー「あ、でもですよねぇ。やっぱり唐辛子を入れるから辛くなるとはいえですよ、やっぱり大根は辛い方が美味しいと思うんですよね」

ランシス「辛くすり下ろせる秘訣、あるの……?」

レッサー「よくぞ聞いてくれましたっ!でーでんっ!」

ランシス「卸し金ー」

ランシス「わー、パチパチパチパチ……」

マーリン「いや『まいど』やあらへんよ!?何この企画!?なんでワイ縛られとんの?」

レッサー「はーい、それじゃこの食材をですねー、卸し金に当てて-」

マーリン「ちょ、ちょう待ちぃ?あんな、この体勢ワイ的には非常に危険な気がす――」

レッサー「――力の限りおろしますっ!!!」 ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリッ!!!

マーリン「ギニャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

ランシス「……あ、綺麗な緋色」

レッサー「裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者っ裏切り者がっ!!!」

ランシス「あー、うん。教皇さんと繋がってた件……」

レッサー「巨乳派だと信じていたのに!よりにもよってちっぱいばかりが集まって!」

ランシス「話の主旨からズレてる……」

マーリン「――ってぇ待ちぃ!ワイの話を聞きぃよ!」

レッサー「我々を裏切ってジジイと内通されていたマーリンさん、一体どのようなお話ですか?」

マーリン「裏切りって……や、その、雑談しとっただけやんか!?その証拠に『手心加えてぇな(はぁと)』ってぇ釘刺しとったやん!」

レッサー「その釘がぶっとすぎんだろコノヤローって話ですよ!四一で足腰立たなくなるぐらいボコられてた挙げ句、朝までお説教ってどんな拷問ですかっ!?」

マーリン「……ま、まぁまぁ!マタイはんの『ほどほど』が『半殺し上等』レベルとまではワイも想像してへんかったけども!」

マーリン「でもアレやで!アンタらも悪いんやで!?分かるぅ!?」

レッサー「はい、ゴーリゴーリゴリーゴリッとな」 ゴリゴリゴリゴリッ

マーリン「あだだだだただだだだただっ!?地味に!地味にメッチャ痛くてリアクション取りづらいわアホが!」

ランシス「……体、少しだけすり下ろされてるのに……その感想、なんだ?」

マーリン「そぉや無ぉて!仮にアンタらへ情報渡しとぉだらどーするのん?っちゅー話や!」

レッサー「あぁ上条さんが庇ってましたっけ、『死者』の」

マーリン「あんたの性格やと即滅殺や悪即バッサリとかしてたんちゃうんかっ!?えぇっ!?」

マーリン「そんな事してみぃや好感度はダダ下がるっちゅーねん!めっさ下がるわ!」

レッサー「先生のご指導の賜物です」 キリッ

マーリン「やめてくれへんかな?ワイが育てたみたいに責任転嫁するのんやめてくれへん?いやマジでマジで」

マーリン「『取り敢えずブリテンの敵は殺しとき』みたいな事言ぅてへんよね?カエル野郎は殺っとけみたいな言い方はしたけど」

ランシス「言ってる言ってる……」

レッサー「いいんですよっ別に!アレはアレで殺った後に号泣して、『私もこんなことしたくなかった……!』みたいに言っとけば!」

レッサー「しかもその後にっ!『今夜、一人になりたくないんです……だから、側に居て下さい……!』っときゃルート確定したってもんですよ、えぇっ!」

マーリン「ヤイヤイ言うなや!第一アンタアレやんかっ!?そんな腹芸出来るんやったら『濁音協会』本部乗り込んどぉ時になんでせーへんかったのよ!?」

レッサー「そ、それは……ホラ!色々あったんですよっ!」

マーリン「色々てなんや!色々て!ワイ知ってんねんで!なんやかんやチャンスはあったものの、全部が全部意識しすぎてフイにし――」

レッサー「――はーい、ゴリゴリゴリゴリっと」 ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリッ!!!

マーリン「ギイィィィィィィィィニャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

レッサー「……と、言う感じで、綺麗にすり下ろせましたかー?どうですかー?」

マーリン「……」

ランシス「レッサー……ワタ、出てる……」

レッサー「あ、ちなみに鑑識のスラングで『もみじ』は”アスファルトで削られた仏さん”も意味しますんでー、使い方には注意しましょーねっ!」

ランシス「……どこで使うの……?」

レッサー「でわでわ皆さんっ!3分くらいクッキングまた明日っ!ばいばーーーーいっ!」

ランシス「明日は……マーリン風フォアグラ、です……」

ベイロープ「――って何やってるのよあなた達」

レッサー「今ですね、3分ぐらいクッキングの予行演習を」

ベイロープ「あ、ごめん。聞いといてなんだけど、お腹いっぱい――ってなにこれ?ハギス(※スコットランドのホルモンの腸詰め)?」 ヒョイッ

レッサー・ランシス「「あ」」

ベイロープ「ってマズっ!?半年振りにお風呂に入れた犬の風味がするわ!?」

レッサー「あー……ま、まぁ色々ありましたが!そんな訳で『もみじおろし』!ご家庭でも是非作って下さいねーっ!」

ランシス「胃薬、はい……」

ベイロープ「あ、はい、どう、も?」


-終わり-

最後まで本当に乙っした!!!!

おねえさまって貴重ですよね!
ベイロープさんもお疲れさまでした!!

>>651だけどさ

HPのほうで読んでて違和感あったから本スレ覗いてみたら
>>74からのエピローグが抜けてるのよね
何度もすみません。

中編だと?

長編にしてくれても一向にかまわが?

完結お疲れ様でした。食蜂さんのss期待してます

個人的な理由ですがオラトリオはレッサーのフランスへの批判などが多く読んでいて辛かったので、次回作はアイテムの話みたいな感じだと非常に嬉しいです

乙~☆



レディリーと『アイテム』

――『アイテム』のアジト

浜面「……寝た?」

絹旗「滝壺さんが超寝かしつけている所です……っていうか、何なんですか?あの超ハピレスプリキュア?」

浜面「いやー……うん、なんかなー学校で流行ってるとかで」

絹旗「変身しないでダラダラッとしている、超B級映画みたいに超素敵でしたが!」

浜面「絹旗にはご褒美ですもんねー」

絹旗「超言いたい事があるんだったら超言えよ、あぁ?」

浜面「そ、そうやって直ぐ暴力振るおうとするのよくないっ!よくないよっ!女の子なんだからねっ!」

絹旗「浜面に女の子認定されても、それはそれで貞操の危機を超感じる訳ですけども」

浜面「あのさぁ絹旗さん?いい機会だから言わせて貰うけど、お前滝壺に変な事吹き込むの止めてくれねぇか?」

浜面「『男の半数は常にエロい事を考えてる』とか、微妙に否定しづらくて困るんだけど」

浜面「多分変な女性誌の受け売りだろうが、ありゃ事実に基づいてなんてないからね?ノリでデタラメ書いてるだけだぜ」

絹旗「ほぅ。では超違うんですか?」

浜面「半数じゃなくてほぼ全てだな」

絹旗「ダメじゃないですか超ダメじゃないですか」

浜面「わ、分かってないな!こないだタクシーの運ちゃんに聞いたけど、政治とスポーツの話は荒れるから、取り敢えず男の客はエロ振っとけば鉄板だって!」

絹旗「あぁそれ多分浜面が超エロそうな顔してたからだと思いますよ」

浜面「どういう顔?俺いつもエロそうなの?」

絹旗「具体的にはお風呂上がりで超薄着になった麦野を見る目ですね」

浜面「おっとそれ以上は言うなよっ!場合によっては侮辱罪で法廷で倍返しだからなっ!?」

絹旗「……侮辱罪というのはですね、こう、『本当の事を超言われてバカにされた』って事であって」

絹旗「って麦野からも超言ってやって下さいな、この浜面に」

麦野「……んー……」 ピッ

絹旗「麦野?超何やってんです?」

麦野「あーうん、今ちょっと浜面の携帯見てたんだけどね」

浜面「オマっ!?勝手に!?」

麦野「基本的にはエロサイトとエロサイトとエロサイトとパチスロ攻略サイトしか行ってないんだけど」

浜面「だって仕方がないじゃんかよ!マジハ○の新台が出るんだからねっ!」

浜面「しかも今回は恒例の『ハロウィンなんてクソ程も関係ない季節』を破って、ハロウィン終了から一ヶ月で発表したんだからさっ!」

絹旗「ちょっと意味が超分からないですね」

麦野「まぁ浜面のアレなのは今更だとして――」

麦野「――着信履歴の、この『大将』って人、アレよね?いつも面倒臭い事に首突っ込んでる人よね?」

麦野「そんな人とどーして長々と話してるのかにゃー?ねぇ、はーまづらぁ?」

浜面「そ、その年で『にゃー』とかキツ――」

麦野「顔面割られて泣く泣く話すのと、話してから顔面割られるとどっちが良い?」

浜面「そ、それじゃ話してから割られる方で!……ありゃ?トラップじゃん!どっちも割られるの確定じゃんっ!?」

絹旗「浜面が超不自然にネタに走るのは何かある証拠ですね」

浜面「や、やだなー君達!仲間を疑うもんじゃないアルよ?」

麦野「あるのかないのかビンタされてぇのか?あぁ!?」

浜面「ふっ!やるならやってみやがれ!俺はこう見えてもバニーさんの格好してビンタされるのが苦手だけどな!」

絹旗「超特殊すぎるプレイじゃないですかー」

麦野「『――もしもし?浜面仕上がいつもお世話になっております。あ、はい。その節はどうもありがとうございました』」

麦野「『それでですね、先程の件――えぇはい、浜面から少し聞いたんですけど、もっと詳しいお話を――』」

浜面「お前フザけんじゃねぇぞ!?ていうかそんなキャラじゃなかったじゃねぇかよ!?」

浜面「お前いつもいつも上条の前では猫被ってやがるから、最近お前の事『綺麗なお姉さん』だと勘違いしてやがるからなっ!」

麦野「『――え、本当に!?』」

浜面「言いやがった……くそ、何考えてんだ!」

麦野「『エロい店に二人で行く計画……?』」

浜面「そんな話してねぇよ!フレンダの話だ!」

絹旗「……はぁ、浜面は少し賢くなっても浜面は超浜面でしたか」

麦野「――と、いうよりも携帯から向こうの台詞が聞こえてこない時点で、ブラフだと気づかないかしらね」

絹旗「ていうか、どうせ超下らないエロネタだと思っていましたが、よりにもよって超々のネタだったとは」

麦野「ごめん。滝壺呼んできてくれない?あと」

絹旗「超寝てるかどうかも確認、ですね」

麦野「ん」

浜面「……え、な、何?」

麦野「ブラフ――ハッタリよ、ハッタリ。電話をかけた”フリ”をしただけ」

浜面「……あーっと、ね?麦野さん?」

麦野「事情はよく知らないし、まぁあんたが隠すんだから、私にはきっと面白くもないネタなんでしょうけど」

麦野「いっちょ前に女の子扱いされて嬉しいは嬉しい――でも」

麦野「あの子に関しての話で――『アイテム』の関する話で。あんた一人だけで独断で話を決めちまおう、ってのは認められない話よ」

麦野「都合の悪い事実は伏せて、自分一人でナントカしよう?――それが『仲間』って言うんだったら、あんたがもう一回やり直せるって言ったモンだったら」

麦野「今日で『アイテム』は解散した方がいいわ」

浜面「……麦野」

麦野「男を見せるんだったら滝壺にしなさいよ。使い所を間違ってる」

???「――いいじゃない。それでも貴女は喜んでいるのだから」

浜面「そ、そうなの?」

麦野「何言ってん――誰よっ!?」

???「私は――」

麦野「――よっと」 ガッ!!!

浜面「あぁバカっお前そんなデカい香水の瓶で殴りつけたら!」

麦野「どう考えてもまともな相手じゃないでしょうよ。絹旗にやられるよりはマシ……?」

浜面「……どーすんだよ、どう見てもガキ相手に、しかも顔面グッシャグシャじゃ……あ、あれ?」

???「――良いわ。女の子の顔を全力で潰してに来るなんて、素敵な性格なのね、貴女」

麦野「最低でも鼻は折った筈なのに……再生したっ!?」

???「顔面を砕かれたのは……いつ以来だったか忘れたけれど、相手の外見に惑わされず、何の躊躇も見せずに殴りつけるなんて。中々刺激的よね?」

麦野「――んだぁ?」

???「あら、怖いわ。そんなお顔だと、好きな男の子からも嫌われちゃうわよ?ね?」

麦野「この……ッ!」

浜面「わー、待て待て!多分この子も関係者だから!」

???「直接的ではないし、暇潰しに付き合ってあげているだけだけれどね」

絹旗「超何やってんですか?なんかドタバタと、鈍器のようなもので超殺人したような音がしましたよ?」

滝壺「……あ、また女の子」

???「さて、早くの皆さんが揃ったようだし、改めて自己紹介――私は、レディリー。レディリー=タングルロードよ」

レディリー(???)「『神託巫女(シビル)』としては物語を紡ぐよりも、未来を語る方が正しいのでしょうけど、今日はお話をしましょう」

レディリー「皆さんには数奇な運命を辿った、『死者』の話なんて如何かしら?」

――『アイテム』のアジト

レディリー「――のが、今までの動きね。何か分からない所はあったかしら?」

浜面「あぁーっと、はい!先生!」

レディリー「どうぞ」

浜面「分からない所が分かりません!」

レディリー「あなたのお友達とそっくりそのままの姿と記憶を持っている――”かも、しれない”スワンプマンが現れた」

レディリー「このままでは『死者』として処分されそうになってる、だと思うわ」

絹旗「超ツッコミたい所は多々あるんですが……まず、一つ」

絹旗「その『死者』のフレンダというのは、生前――以前の、わたし達が知っているフレンダと超違うんですか?」

レディリー「肉体は別の物から構成されているわね。存在自体はこれからの展開でどうとでも変わるでしょうけれど」

絹旗「じゃ、じゃあ!アレですよ!魂とか、そういうのがあって!フレンダを超再現しているとか、そういうのは!」

レディリー「えぇそうね。彼女の魂はしっかりと再現されているわ」

滝壺「……だったら!」

レディリー「――と、言えば満足かしら?それともご不満?」

絹旗「やっぱり顔面超割りましょうこのクソビッチが」

レディリー「あらご不満だったようね?でも、それは確かめようがないのよ」

レディリー「魂のあるなしなんて定義がある訳じゃないし、仮に記憶が以前とどこが違うだなんて、本人ですらも分かってないわ」

浜面「いや……それは、分かるんじゃねーのか?友達や家族だったらさ」

レディリー「昨日の夜と今朝のあなた。どちらも同じ人物だけれど、その記憶が寸分違わぬものであると言えるのかしら?」

レディリー「こうやって話している間にも、古い記憶から少しずつ消えていくのに、あなたはその全てを憶えていると?」

浜面「それは……あー」

レディリー「それとも記憶が100の内99保たれていれば”本人”であって、50を切れば別人なの?」

レディリー「ある日突然、事故で記憶がなくなってしまったら?そう、割り切れるものじゃないでしょう?」

麦野「……お前の言いたい事は分かったわ。クソムカツクけど、どっかのクソヤローがフレンダ使ってなんかしようって事はね」

麦野「それで?お前は私達に何させたいのよ?まさかボランティアで人の感情引っかき回して来やがった、とかそう言うんじゃないのよね?」

レディリー「あら怖い。そんなに目をつり上げると赤ずきんを食べちゃうオオカミさんみたいよ?」

麦野「真面目に答えろクソガキが!」

レディリー「私がやって欲しいのは露払いよね」

絹旗「……フレンダの?」

レディリー「えぇ。さっきも言ったけれど彼女には敵が多くてね。その一つ――狂信者達を、こう、殺さない程度に、ね」

滝壺「……なんでそんな人達が……?」

レディリー「内緒。ただ、科学の街で魔術師が能力者のチンピラに倒されるのは、まぁよくある事よね、と言っておくわ」

浜面「チンピラて……!」

レディリー「あぁ返事はしなくて結構よ。場所と時間は伝えたから、その気になったら来て頂――」

麦野「――最後に聞かせて」

レディリー「信じたくなければ構わないのよ?それもあなた達の決断だし、私は尊重するわ」

レディリー「気に食わなければ逆に邪魔するのも素敵よね、くす、くすくすくすくすっ」

絹旗「……超イカレてますね、この子」

レディリー「そうね、おかしいわよね、私――でも、ね?」

レディリー「あなた、そうあなた達は正気なのかしら?本当に?言い切れる?」

絹旗「超言い切れますよ、当たり前じゃないで――」

レディリー「――だってあなた達、本当はフレンダさんなんてどうだっていいんでしょう?」

絹旗「そんな訳ないじゃないですか、超何言って――」

レディリー「だったらどうしてあなた達、フレンダさんを殺した相手に復讐しないのかしら?」

レディリー「『本当』に仲の良い関係だったら、仇の一つでも取ってあげればいいのに、ねぇ?」

絹旗「――っ!」

浜面「――お前っ!」

レディリー「あら気に障ったのかしら?だとしたらゴメンナサイね、私は何も知らないのだから」

レディリー「……そうよね。お友達が死んだんですもの、感情の整理が追い付かなくなる事もあるかも知れないわ。ううん、きっとそう」

レディリー「――けれど、そういうフレンダさんは被害者だったのかしら?」

滝壺「何が……言いたいの?」

レディリー「私が聞いた限りだと、彼女は『暗部』とか言う組織に居たらしいの。そこで非合法な活動をしていたとか」

レディリー「だとすれば、当然色々な恨みを買っているわよね。フレンダさん”は”」

レディリー「それが正当なもの――か、は別にしても、それこそ他人の人生を狂わせたり、終らせたりしてるかも知れない」

レディリー「と、なれば当然復讐の対象になるかも。ここに居る全員が」

レディリー「そういう人に殺されたら、あなた達はどうしていたの?どうすべきだったの?」

絹旗「それはっ!――他に仕様がなかったんであって!」

レディリー「『あなた達は被害者であって加害者ではない。騙されたのだから仕方がない』」

レディリー「――と、言って素直に納得してくれる相手だと良いわよね?くすくすっ」

麦野「……」

浜面「おいテメー、いい加減にしとけよ!」

滝壺「……」

浜面「俺達がどんな思いでやり直したのか、また『アイテム』を始めたのか!お前になんて分かる訳がな――」

レディリー「――『心の中で姦淫するものは、それ即ち現実にしたのと等しい』――」

浜面「あぁ?」

レディリー「聖書のどこに書いてあったのは忘れたけど、姦淫の罪についてあのボウヤがそう語った言葉があるわね」

レディリー「内心であっても悪い事を考えてしまえば、それは実際に罪を働くのと同義である、という強烈な罪の意識を植え付ける手法」

レディリー「……でも誘惑に駆られてはしても、実際に行動へ起こすのは極めて稀。空想家と犯罪者を一緒くたにしてしまうのは、まぁ相応しくはないわね」

浜面「だから、何の話を――」

レディリー「けれど、けれどね?実際に計画を立て、武器を用意して、ある人を殺そうとしたとしましょう。”ある人”が」

レディリー「”ある人”は幸い、不幸な人によって計画を邪魔され、人殺しにはならずに済んだのだけれど、あなたはどう思うのかしら?」

浜面「ど、どうって」

レディリー「彼女には留守になりがちでも優しい夫と、そしてどこへ出しても恥ずかしくない娘が居るのよ」

レディリー「中学二年生、そうフレンダさんと同じぐらいの年頃の、ね」

浜面「……そ、それが何だって!」

レディリー「その子は『暗部』になんて関わり合いはないし、善悪で言えば特定人物への通り魔と自販機キックを除けば、まぁ善だけの道を歩いた来たの」

レディリー「お父様も素敵な方よ。途上国でよくある悲劇を食い止めるため、可愛い奥様に拗ねられながらも飛び回っているわ」

レディリー「そんな二人の、良き妻であり、良き母親である彼女を”その人”は殺そうとしたのよ。酷い話よね?」

浜面「あ、ぁ、ああっ……!」

レディリー「考えた事はなかった?それともあなたには想像力がなかった?」

レディリー「他人を容易く踏みにじっておいて、いざ自分達へ累が及びそうになると『他に方法が無かった』のかしら?」

麦野「仲間、を」

レディリー「そうね。お仲間を大切にするのはとてもとても素晴らしい事よ、心の底からそう思うわ」

レディリー「でもそう思うのだったら、どこかで、いつか必ず自身の行為の報いを受ける前に、悪意の連鎖から抜けだそうとはしなかったの?」

レディリー「それとも『自分達は特別でいつまでもこの生活が続く』なんて思っちゃったの?」

麦野「……」

レディリー「あなた達が生き方を変えたのは良い事よ、それはね」

レディリー「でも、年長者から言わせて貰えれば、いつか、誰かから身に覚えのない『負債』の精算を求められるかも知れないから、覚悟しておくと良いわ」

浜面「――お前は」

レディリー「何?」

浜面「お前はそんな事言え――」

レディリー「私はつい少し前――あぁ一年前か、この世界軸では――に、10万人規模の無差別虐殺を起こそうとした女よ?それがどうかしたの?」

浜面「……っ」

絹旗「……ここまで喧嘩を超売られて、わたし達が手を貸すとでも?」

レディリー「結果はもう識っているもの。あなた達に覆らせるのであれば、とても素敵なのだけれど」

レディリー「それじゃあまた会いましょう」  パタンッ

――『アイテム』のアジト

浜面「……なんちゅーか、変なガキだったな」

絹旗「超同意です。わたしが言うのも超なんなんですけど」

浜面「だっよなー」

絹旗「あ、すいません滝壺さん。浜面の顔面超割っても構わないですか?」

浜面「構うよ!?それ割ったら取り返しがつかなくなっちゃうから!?」

滝壺「……わたしたちに隠し事をするんだったら、オシオキ、必要かも?」

浜面「そりゃ内緒にしてたのは悪かったけどさ!」

麦野「……」

絹旗「麦野?超大丈夫ですか?」

麦野「……あぁ、うん、大丈夫、よ?少し驚いただけだから」

浜面「まぁ――アレだ、真面目な話、『アイテム』はこれ以上関わらない方がいいと俺は思う」

滝壺「……ふれんだの話、なのに」

浜面「酷な言い方……か、どうか分からねぇが、フレンダは『終った』話なんだよ。当事者が居なくなっちまって」

浜面「その、なんつーか、フレンダのそっくりな子には悪いとは思うが、俺達は動くべきじゃないと思う」

絹旗「俺達は、ですか?」

浜面「あぁ、俺は行くよ。大将――最初に連絡くれた奴は、なんだかんだ世話になってるし、バレちまった以上、隠す意味も無いし」

浜面「フレンダの件がないにしても、それはそれ、これはこれでさ」

滝壺「わたしも」

浜面「滝壺とフレメアと待っててくれよ、な?フレンダ関係だし、勘違いしたバカが出て来やがる可能性もあるし」

絹旗「だったらわたしは浜面を超お手伝いしましょうか。どうせ一人じゃ何も出来ないんですから」

浜面「ヒデぇな!?その通りだけどよ!」

絹旗「あのロ×に超一発お見舞いしたいですし、まぁ――」

麦野「――ちょっと待って」

絹旗「はい?」

麦野「私は――うん、私は『アイテム』として動くべきだと思うわ……いや、『アイテム』だからこそ、動かなきゃいけない」

浜面「やー、あのな?あぁっと」

麦野「その――子、が、フレンダかどうか。それは関係ない」

麦野「魂が同じかも知れない。記憶が同じかも知れない。本来死んでいたフレンダを”継ぐ”存在かも知れない」

麦野「そういうのも、全部関係なくてだ」

浜面「……じゃ、何だって言うんだよ?」

麦野「私はクソッタレだ。仲間をぶっ殺し、その死骸に縋り付いているような最低の女よ」

麦野「筋は通っていないし、自分達の事を棚に上げている。そう、思うわ」

絹旗「それは、超仕方がないんじゃないかと」

麦野「……けど、けれどね?ここであのロ×ババアが言っていたように、開き直ってのは違う」

麦野「また『暗部』へ戻りましたー、なんて言ったらそれはもう最悪よ」

滝壺「……」

麦野「気に入らないバカはぶっ飛ばすし、そうじゃないバカもぶっ飛ばす。それは変わらないわ、ただ、その」

麦野「筋は通さないと。隣で眠っている子も含めて、そういう……なんて言うかな、最後の最後で惨めったらしく縋り付いているもの?」

麦野「それを全て投げ出して、逃げ出してしまったら……多分、私は」

麦野「……もう二度と、胸を張れないような気がする。何に対しても、誰に対しても」

滝壺「……うん」

絹旗「そう、ですね。はい」

浜面「俺としちゃ、ニアミスするような可能性も減らして欲し――」

麦野「――っていうのが、建前ね?」

浜面「建前かよ!?結構しんみりとしてたのに!」

麦野「フレンダのニセモンだか、ホンモノだかは別にどうでもいい。一度会ってみたい気はするけど」

麦野「……それよりも何よりも、『アイテム』のメンバーの姿を勝手に造りやがって、しかも他の連中を振り回してるのよね?」

麦野「これ、ちょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっと!頭に来るわよ、ねぇ?」

絹旗「おっ、麦野超悪い顔になってますよー

麦野「フレンダモドキを造りやがった野郎の思惑はさておき、『アイテム』に喧嘩売ったんだ。然るべき落とし前はつけてあげないといけないわねぇ」

浜面「(あ、あのさ?)」

滝壺「(なに?)」

浜面「(い、いいのかな?麦野さんがキリングなマッスィーン風になってんだけど!超怖いんですけど!)」

滝壺「(元気があって……まぁいいんじゃ?)」

浜面「(ていうか今までそれっぽい事言ったのは建前で、要は『喧嘩売られてテッペン来てる!』って結論はどうかな!)」

浜面「(具体的にはフレンダ殺った時とメンタル一個も成長してない気がするしな!)」

滝壺「(……べつに、そのふれんだモドキがふれんだだってた証拠はない訳だし、今はこれで良いと思う)」

浜面「(でもさ?真っ当な人間じゃないかもって)」

滝壺「(もし、以前のよう感じに少しでも戻れる可能性があるんだったら、わたしたちに取っては些細な事、かな)」

浜面「(滝壺……)」

麦野「――まぁ、それはそれとして、浜面があたし達に黙ってた件についてなんだけど」

浜面「あ、ごめんボク塾の時間があるからこれで失礼――げふっ!?」

麦野「ナイス絹旗」

絹旗「いえいえ、超お構いなく」

浜面「待ってよ!?俺は善意で隠してたんであって!決して、そう!決してお前らに対する裏切り的な気持ちは無いさ!」

麦野「滝壺に誓って?」

浜面「イエスッあいあむっ!俺の愛はインフニィットさ!」 キリッ

絹旗「――では、こちらにある。『バニーさんランド優待券』とは超なんでしょうね?」

浜面「いやあの、これはだな。夜の繁華街で会った謎のナイスミドルさんから頂いたドォリィムランドゥ(巻き舌)へのチケットなんだよ!」

浜面「これを使えば遙かなるカダスへ行けるって!ボクが子供の頃の夢なんだよ!純粋なね!」

浜面「オイ知ってるか?バニーさんは、外国の方にあるドリームランドにしか自生してないらしいぜ?」

絹旗「それはただの出稼ぎと超違わないんじゃ……?」

浜面「そんな訳ないよ!だって本人がそう言っ――――――あ」

麦野「――はいっと言う訳で罰ゲーム確定した訳ですが絹旗さん。今日の罰ゲームはなんでしょうか?」

絹旗「そうですねぇ。あまり強烈なものだと鼻面の友人関係に超支障を来しかねないので」

浜面「絹旗さん、俺浜面。鼻面じゃないです」

浜面「あと人間関係に支障を来すような罰ゲームつて何よ!?それもう拷問って言わねぇか!?」

絹旗「――じゃーじゃん」 コトン

浜面「ビン……?調味料の、だよな」

麦野「タバスコね」

浜面「凄く……赤いです……ッ!!!」

絹旗「はっまっづっらの、超いいとっこ見ってみたいっ。あ、それっ、いっき、いっき、いっき……」

浜面「ヤバいって!これ地味に内蔵がおかしくなるヤツじゃんか!?ノリでやっちゃいけないの!」

浜面「ていうか『アイテム』のドS担当はやっぱり絹旗じゃねぇのか!?麦野の影に隠れてやがるけども!」

麦野「――ねぇ、浜面」

浜面「な、なんだよ!怖い顔したってやらないからな!」

麦野「フレンダモドキを黙ってた件は――」

浜面「――飲んでやるよ!よっしゃ!男の生き様見とけやゴラァ!!!」

滝壺「がんばれー、わたしはそんなはまづらを応援している……」

浜面「どうせ応援してるんだったらねっと早く止めて欲しかったが!……うし!」

ゴキュゴキュゴキュゴキュッ

絹旗「うわ、マジで超飲みやがりましたね」

麦野「ていうか、これ本物なの?水で薄めてあるとか、着色料ついてるとか、テレビ的なヤラセはないのね?」

絹旗「冷蔵庫にあったのですね。最後にピザ食べたの忘れるぐらいに前ですし、そろそろ超処分しようと思っていたんで、まぁ?」

浜面「……」

滝壺「……はまづら?」

浜面「ぶほおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!?」

三人「「「」ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」」」

――決行当日 深夜の路地裏

レディリー「――なんだかんだ言って予定通りの時間ね」

麦野「気に食わねぇが、それはそれ、これはこれ、よ」

レディリー「まぁ良いのだけれど……そっちのボウヤが、顔面腫れ上がらせているのは」

浜面「……」

絹旗「超ご褒美ですね」

レディリー「あら素敵。愛の形は様々よね」

浜面「……扱いが……!」

麦野「んーで、私達はどいつをぶっ殺せば良いの?狂信者、だっけ?」

レディリー「聖堂騎士は一人を除いて帰還した後で、残ったのは改宗組のクルセイド達ね」

レディリー「元々は信仰や宗教にも関わり合いがなかった人達が、シスター・リドヴィアに感化――いいえ”感染”した狂信者ども」

レディリー「聖堂騎士よりは格段に弱いけれど、”神のため”と言えば喜んで死に急ぐ、厄介と言えば厄介よね」

絹旗「なんでそんなキチガ×がフレンダモドキを超狙ってんですか?ロ×?ペ×?」

レディリー「本人達は十字教の教えを敬虔に護っている”つもり”。特に最初から組織の一部じゃなかったのだし、活躍を見せたいんでしょうね」

レディリー「ヨーゼフとしては、『木原』とぶつかった時の捨て駒として持ってきていたんでしょうけど、ここへ来て自らを縛る枷になると」

麦野「ソイツらを半殺しにすりゃいい訳か」

レディリー「殺しちゃうと第四次世界大戦になりかねないから、気をつけると良いわ――あぁそうそう」

レディリー「もしも”彼女”が。あなた達の知っている誰によく似た”彼女”が」

レディリー「その手で運命を変えられれば、今回の事件の主犯はこちらへ逃げてくる事になるわ」

麦野「ふーん?」

絹旗「……それは、超良い事を聞きましたね」

滝壺「……ん」

レディリー「それじゃ行きましょうか」

浜面「――そうだな、『アイテム』しゅっぱ――」

絹旗「浜面、超置いていきますよ」

浜面「あっはい今行きます――っておかしくねぇか!?俺がキメ台詞言ってんのに!?」

麦野「何遊んでんのよ」

浜面「いや決めたじゃん!ジャンケンで決めたじゃんか!こう、なんかビシッと決める時には俺も一枚噛むって!」

浜面「じゃないと俺の役割が!俺のポジ的に『あの子、必要かな?』って思われちゃうでしょーが!」

麦野「あーうん、何か主犯ぶっ殺す時には言わせてあげるから。それで我慢しなさい」

浜面「絶対だからな!?俺は信じてるからな!?」

浜面「も、もし破られたら全員でバニーさん――って聞いてよぉ!?ボケを誰も聞いてないってどういう事!?」

浜面「だからぁ何度も言ってるけどぉ、俺の存在意義を――」


-終わり-

おつ

みさきちに超期待してるんだな

>>681
ありがとうございます。来週上のレスへのお返事書いて、その後にhtml化をお願いして本当に終わりですね

みさきっつぁんのは政治的な話を一切絡まないので、まぁ『学探』ぐらいの話になるかと思います

毎回素晴らしい作品を提供して下さって、良い感謝の言葉が思いつきません。
お歳暮送りたいくらいです。
ついこんな時間まで読んでしまいました。

少々早いですが、良いお年を!

うん、最後に「アイテム」のみんながキメてくれて良かった。
いつかフレンダが(フレンダだよ!)帰ってきたら、今度こそ5人で浜面いじりながら笑えるといいね。

お疲れさまでした。ありがとう!

乙でゴザル!!

乙です
魔術を設定レベルまで掘り下げるSSは貴重なので(最近は長編自体ほとんど見ませんが…)次回作も楽しみです

>>662
いえ、こちらこそお付き合い頂いてありがとうございました 

>>663
年上(主人公から見て)属性の需要が少ないですよね。昨今の二次元界隈(除くロリババア)
昔のアニメだったら、オティヌスのポジションはドロンジ○様みたいなエロ年増だったんですけど
まさか平均よりもやや小ぶり下乳隻眼少女が来るとは

>>664
いえいえご指摘ありがとうございます。トップページにはありましたが、一覧に載せるのを忘れていたので追加しておきます

>>665
余所様の事は分かりませんが、私なりの分類ですと

短編-数回。『学園探訪(第一シーズン)』
中編-数回~10数回。『アイテム』と『向日葵を』
長編-長め。『断章』
超長編-超長い。『胎魔』

特に『断章』と『胎魔』は普通の小説を書くレベルで構成切ってたのでそれなりに
食蜂さんら三人に関して、今の所膨らませるようなネタを探しているので、まぁまぁ
『海行きましたー→遊びました→楽しかったです』だと外連味も何もないので、もう少し何か足してみたいと思います

ただ大分前に言ったような気がしますが、書く分量に応じて私へも相当のダメージが返ってくるようで、
今年は、インフルで死にかける・骨にヒビが入る(病院へ行かず放置しそのまま癒着、くるぶしが一つ増えた)・メニエール病発症(近所のヒトに引き続き)と、
まぁ良い感じに命を削っています

>>666
フランスの批判、というか”良心的”西洋文明への自嘲ですね。マジモンのイギリス人だと(身内の間では)あれの100倍口汚く罵ります
(※世間話をする際、国の話だと出身地――イングランド~北アイルランドで揉め、サッカーでは殺し合いになり、政治だと社会階級で本音は言えず、
カエル×いなら、楽しくほのぼのとしたコミュニケーションが取れる……いや、本当の話です)

テーマが『現実からの逃避』・『神殺しを為した狂信者の末路』を受けた上での、『前を向いて自分の歩幅で歩き出す』でしたので、絶対に避けては通れませんでした
なんて言いましょうか、こう、鳴護さんの冥界下りの”溜め”だと思って下さい。そうじゃないと言動が軽く――そうですね、例えば

【セレーネ召喚直後】
鳴護「……当麻君、私、どうすれば良いのか分からないよ……!」
上条「あ、うん大丈夫だよ?」
上条「アリサは俺が完全に理解しているし、悩みはなんだって俺が解決して”あげる”から」
上条「お前の悩みは俺が全部知ってる。人間じゃない苦しみや悩み、俺が理解して”あげる”さ」
セレーネ「き――」
上条「はい、右手でどーん」
セレーネ「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!?」
上条「解・決☆」
鳴護「素敵……結婚して!」
レッサー・ベイロープ・フロリス・ランシス「さすかみー、さすかみー」

――で、終ったらですね、こう、うん。私には納得しがたいと。ていうか、それなんも解決して無いでしょう
創作物の人間にだって悩みはある(だろう)し、そこを掘り下げず上条さんTueeeeだけやってもリアルでも何でもないと
様々な事を見て、聞いて、悩んで、考えて、葛藤して、口だけじゃなくて行動してナンボでしょう

ともあれ、次のでは政治・社会的な話はテーマにしませんので、もっと明るくなると思います――が
今にして思えば『アイテム』も、そんなに明るいお話じゃなかった気が……?
ボケとツッコミと下ネタと腹パンとフレンダ弄りが延々と続くだけの、割とバイオレンスな話だったよう、な?
(書き始めた当時、フレンダの資料が足りないのでネタキャラにし過ぎたと思っていましたが、そんな事は無かった)

>>667
ありがとうございました

>>683
ありがとうございます。どうぞよいお年を

>>684
外見と記憶が同じだけの他人と割り切れるほど薄情でもなく、かといってすんなり受け入れられる訳もなし
どちらも整理する時間が必要で、大抵は時間の経過で笑って許せるようになるかもしれません

>>685-686
ありがとうございます

>>687
正直、私一人で余所様の邪魔してんじゃねぇかと思わないでもないですが
次にアニメ化されればきっと!うんまた、その内に!



ともあれ最後の最後まで長くなりましたが、お付き合いくださった皆さんには深い感謝を
ではまたどこかで

全体的にカスだらけという文化か、新しいな(白目)

レッサーがもし本当にアーサー王的な設定だったら聖槍は使えるのか?

キュアシリーズは何気に好きだわ

>>691
まぁその人間は底辺レベルの語学力しか持ち合わせておらず、ステイ先が下町だった事もあるでしょうが
イギリスは上から下まで階級社会が染みついており、社会的立場によって行けるパブすら変ります
日本の場合でも、「一見さんお断り」や「誰々様ご紹介」のお高いお店がありますが、それを徹底させている感じですか

そしてイギリスはまだかなりマシな方であり、なんと道を歩いていても東洋人という理由だけでは殴られないんですよ!そんなには!
……あれ?

>>692
マジレスすると聖槍は多分無理
あれは相性的にベイリンが(悲劇が運命付けられている)という前提があり、またアーサーは聖剣所有者ですので属性は盛らない

>>693
上条「キュア一個も関係ねぇけどな!」

……しかしhtml化依頼したのに落ちませんねぇ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年06月30日 (火) 19:20:46   ID: sga6yjSy

次、待ってます

2 :  SS好きの774さん   2016年03月02日 (水) 00:03:10   ID: I_PpvgeX

また新たなるのssがみたいです

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