ほむら「幻想殺し…?」(953)

担任「はぁ~い。それじゃ、転入生を紹介しまぁ~す」

ほむら「暁美ほむらです。よろしく」

まどか(あれ? あの子、夢の中で会ったような……)

ほむら(まどか……今度こそあなたを救ってみせる)

さやか「ちょっと当麻、鼻の下伸びてない? まったく、可愛い女の子見るとすーぐこれなんだから」

上条「んな!? そそそそんなことはあーりませんのことよ!? 上条さんは紳士ですから初対面の女の子に下世話な視線を向けたりはしません!!」

さやか「どーだか」

まどか「えへへ。相変わらずだね二人とも」

ほむら「……」




ほむら「………誰ッ!!!?」

本拠地、横浜スタジアムで迎えた中日戦
先発三浦が大量失点、打線も勢いを見せず惨敗だった
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「今年は100敗だな」の声
無言で帰り始める選手達の中、昨年の首位打者内川は独りベンチで泣いていた
WBCで手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今の横浜で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」内川は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、内川ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってトレーニングをしなくちゃな」内川は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、内川はふと気付いた

ほむら(上条という名前は知っている…美樹さやかの幼馴染であり、彼女の魔法少女化および魔女化の最大の要因となる人物……)

ほむら(でも彼は今事故で入院療養しているはず…! しかもあんなツンツン頭のボサボサ髪なんかじゃなかったはず……!!)

ほむら(何よりまず名前が違う!! 彼は『上条恭介』だったはず! でも美樹さやかは彼のことを当麻と呼んだ!!)

ほむら(何者…!? 何者なの…!?)ジィ~…

上条「か、上条さんの顔に何かついてるんでせうか?」

ほむら「何者よあなた!!!!」

上条「え、えぇ~~!!!?」

「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
ベンチから飛び出した内川が目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのようにベイスターズの応援歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする内川の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「セイイチ、守備練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返った内川は目を疑った
「す・・・鈴木さん?」  「なんだアゴ、居眠りでもしてたのか?」
「こ・・・駒田コーチ?」  「なんだ内川、かってに駒田さんを引退させやがって」
「石井さん・・・」  内川は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
1番:石井琢 2番:波留 3番:鈴木尚 4番:ローズ 5番:駒田 6番:内川 7番:進藤 8番:谷繁 9番:斎藤隆
暫時、唖然としていた内川だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
中根からグラブを受け取り、グラウンドへ全力疾走する内川、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、ベンチで冷たくなっている内川が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った

   /.   ノ、i.|i     、、         ヽ
  i    | ミ.\ヾヽ、___ヾヽヾ        |
  |   i 、ヽ_ヽ、_i  , / `__,;―'彡-i     |
  i  ,'i/ `,ニ=ミ`-、ヾ三''―-―' /    .|

   iイ | |' ;'((   ,;/ '~ ゛   ̄`;)" c ミ     i.
   .i i.| ' ,||  i| ._ _-i    ||:i   | r-、  ヽ、   /    /   /  | _|_ ― // ̄7l l _|_
   丿 `| ((  _゛_i__`'    (( ;   ノ// i |ヽi. _/|  _/|    /   |  |  ― / \/    |  ―――
  /    i ||  i` - -、` i    ノノ  'i /ヽ | ヽ     |    |  /    |   丿 _/  /     丿
  'ノ  .. i ))  '--、_`7   ((   , 'i ノノ  ヽ
 ノ     Y  `--  "    ))  ノ ""i    ヽ
      ノヽ、       ノノ  _/   i     \
     /ヽ ヽヽ、___,;//--'";;"  ,/ヽ、    ヾヽ

上条「か、上条さんは上条当麻という名前で、極一般的な男子高校生といいますか、その」

ほむら(やっぱり名前が違う…苗字が同じだけの、まったく別の存在?)

ほむら(まったく別の存在が、美樹さやかの幼馴染と入れ替わっている……)

ほむら(どうしてそんなことが……)

上条「あ、あの~、どっかでお会いしたことあります?」

ほむら「いいえ、全くの初対面だわ」

ほむら(そう…初対面であるということが問題なのよ)

クラスメイトA「クソ…また上条かよ…なんでアイツばっかりいつもいつも……」ボソボソ…

クラスメイトB「鹿目さんや美樹さんと一緒にいるだけでもうらやましいってのに……」ボソボソ…

さやか「……」ジト~…

担任「あの、暁美さん? とりあえず席に座ってくれるかしら?」

以下、近寄ると獣臭のしそうな野球選手

里崎智也

ほむら(登場人物が入れ替わる……今まで何度同じ時間を繰り返してもこんなケースはなかった……」

ほむら(この時間軸で一体何が起きているの…?)

ほむら「これは…今まで以上に気を引き締めてかからないといけないみたいね」

ほむら「……とりあえずまどかを保健室に誘って、忠告を済ませておきましょう」

さやか「当麻、帰りにCDショップ寄ってこうよ」

上条「うげ、またかよ! いくら薦められても俺クラシックなんて聞かねえって!」

さやか「いーからいーから! これもリハビリだよ!」

 放課後、帰り道――――

まどか「……」

さやか「ん? どうしたのまどか?」

まどか「いや、ちょっと……」

上条「そういや転入生…暁美だっけ? と二人で保健室行ってたな。何か言われたのか?」

まどか「うん…まあ」

さやか「はあ!? 転入初日からあの女私の嫁に何しやがるんだ! くぅ~ムカつく! 明日私が百倍にして言い返してやるから何言われたか教えなさい!!」

まどか「家族を、周りの人達を大切にしなさいって……」

上条「いいヤツじゃん」

さやか「いいヤツじゃん! あぁ~もう、ムカつく!!」

上条「何でだよ!!」

まどか「……」


まどか(それと…上条くんのことをすっごく聞いてきたんだけど……)

まどか(それは、さやかちゃんには教えない方がいいよね)

 CDショップ―――

上条「zzz……」

さやか「こおら視聴中に寝るな」スパーン!

上条「うぁいて!! いや、駄目なんだよ俺。こういうのどうしても眠くなっちゃって」

さやか「いいからちゃんと聞く! 何がキッカケになるかわからないんだから!」

上条「へいへーい」

まどか「くすくす」


(助けて……)


まどか「……え?」

??(助けて…まどか……!)

まどか「誰…? 私を、呼んでる…?」



上条「……あれ? 鹿目どこ行った?」

さやか「あれ? ホントだ。おーい、まどかー?」

??(こっちだよ、まどか……早く……)

まどか「誰? あなたは、誰なの?」

ほむら(あれは……まどか!?)

ほむら(く…インキュベーター…やはりまどかを呼んだのね…)

ほむら(上条当麻…美樹さやかの幼馴染…彼のようなイレギュラーが存在している以上、ここは慎重に慎重を期するべきね)

??『ま…ど…か……』

ほむら(インキュベーターとまどかは絶対に接触させない!!)

ほむた「時よ…止まれ」

??『ま…』

まどか「え…」

 ドギュゥーーン!!

ほむら「この停止時間中にインキュベーターの位置を特定し、ケリをつける!」

上条「うわあ! おいさやか!? どうした!?」

ほむら「……ッ!?」

上条「おーい! さやか!? 美樹さーーん!? 何それ何のパントマイムですかーー!?」

さやか「」ピタリ

上条「きゅ、救急車ーーー!!!! ええ何で!? 電話も動かないんですけどーー!?」

ほむら「なに…? 何なの…?」

上条「あ、鹿目!! よかった!! 実は今さやかがうわぁぁぁあああああ鹿目も止まってるぅぅぅぅうううう!!!!」

ほむら「どういうこと…!? どうして動けるの!? この停止した時間の中を!!」

上条「は、そうか! 夢か!! 現実の俺はまだCDショップでクラシック聞いてるんだそうなんだわはは!!」

ほむら「……ッ! しまった…集中力を乱した…!!」

ほむら「時間が…動き出す…!」

 ドギュゥーン!!

まどか「は、あれ、へ?」

上条「おお!! 元に戻った!! よかったぁぁぁあああああ!!!!」

まどか「か、上条くん? へ、へ? いつの間にこんなそばに?」

さやか「だらっしゃあ!!」ドゴムッ!

上条「痛いッ!!!?」

さやか「こ、こんな廃墟で私を置いてずんずん先行くなぁ!! 怖かったでしょーが!!」

上条「いや、だって、お前がいきなり妙なパントマイム始めるから」

さやか「はぁ? ワケわかんないこと言ってんじゃないわよ!」

 ぱらぱら……

まどか「…? 何か落ちて…砂? ほこり? 上の排気口から…」

 ガターン!

まどか「うわ、うわわ!」

??「はぁ…はぁ…」

さやか「うわ! 何その生き物!? 生き物…だよね?」

上条「お、俺に聞かれても」

まどか「あなたが私を呼んだの…?」

??「助け…助け、て……」

まどか「…ッ! ひどい怪我…!」

ほむら「……ソイツをこっちに渡しなさい、まどか」

まどか「ほむらちゃん!?」

さやか「あんたがコレをやったのか!?」

ほむら「……ええ、そうよ」

まどか「ひどい……」

上条「……動物虐待が趣味ってのは、あんまり感心しないな」

ほむら「動物…? それが…? ふふ、面白い冗談だわ」

上条「何ぃ…?」

ほむら「それに、あなたに感心してもらっても私にとって何の得もないわ。もう一度だけ言うわ。ソレをこっちに渡しなさい」

??『はぁ…はぁ…』

まどか「う、うぅ……」

上条「鹿目…お前はそいつを助けたいか?」

まどか「え、えっと……」

まどか「……」

まどか「……うん、助けたい」

まどか「この子が何なのか、ほむらちゃんが何でこの子をこんなに虐めてるのか、私にはわからないけど」

まどか「この子は私に助けを求めてきたから……私を、頼ってくれたから……」

まどか「私、この子を守りたい……!」

上条「わかった。行け」

まどか「え?」

上条「とりあえず最寄の動物病院に見せてみるしかないだろ。俺はちょっと暁美と話しておくからさ」

さやか「だったら私も残…」

上条「こんな暗い廃墟を女の子一人で行かせるわけにはいかない、だろ?」

さやか「う…わかった。私もまどかについてく」

さやか「……女の子殴ったりしたら駄目だよ?」

上条「上条さんは紳士ですのことよ?」

さやか「……どーだか! まどか、行こ!」

まどか「う、うん!!」

ほむら「待…!」

上条「待て」

ほむら「く…」

ほむら「邪魔をしないで」

上条「ワケを聞かせろ。お前はどうしてあの生き物を狙う?」

ほむら「……言ったって、理解できる話じゃないわ」

上条「そんなのわかんねえだろ。もしかしたら力になれるかも…」


 ―――瞬間、世界が一変した。
 薄暗い廃墟だったはずのそこは、極彩色で彩られた奇妙な空間に成り果てていた。

上条「な、なんだこりゃ!?」

ほむら「魔女の…結界…!」

上条「えっ!?」

上条「おい暁美! お前これが何なのかわかるのか!?」

ほむら「まどか…!!」タッ!

上条「あ、オイ待て!!」

 駆け出したほむらに上条も追従する。
 だが、上条はすぐに足を止めた。
 けたけた、けたけたと、神経に障る笑い声に、思わず足を止めてしまった。

上条「何だ…こいつら…!」

魔女の使い魔『ケタケタケタケタ!!』

上条「化物…!?」

 そこには、上条には到底理解できない情景が広がっていた。
 まんまるに丸めた綿に髭を生やしたような『何か』が、上条の周囲で咲き狂い、笑っている。
 その内の一体が上条に向かって突進してきた。

上条「うわあッ!!」

 しかしその毛玉の化物は上条の目の前で突如爆発し、四散する。
 見れば、ほむらの手の中にある拳銃から硝煙が上がっていた。

上条「今の…お前が…?」

ほむら「……」

 ほむらは上条の言葉には答えず、また前を向いて走り出した。
 上条はその後を慌てて追いかけながら、その銃はどっから出したんだとか、その服装はコスプレじゃなかったのかとか、
色々気になることを頭の片隅に追いやって、とりあえず言うべき言葉を言う。

上条「…ありがとう」

ほむら「……」

 ほむらは答えない。
 上条は黙ってほむらの後に続きながら、ある事実に思い当たり戦慄した。

上条(この化物達は人を襲う…!! 鹿目、さやか!!)

 猛烈な焦燥感に、駆ける速度を引き上がる。
 もしかしたら、暁美ほむらが一切こちらに答えずに黙々と走り続けるのは、同じ焦燥感を胸に抱いているからなのかもしれない。

上条(悪いヤツじゃ、ないのかもしれないな……)

 そんなことを思っていたら、突然ほむらは上条の方を振り返った。
 そして即座に引き金を引き絞る。
 上条の側面に迫っていた使い魔が弾け飛んだ。

上条(……クソ! 何て足手纏いなんだ俺は!!)

 自身の無力さに、上条は奥歯を噛みしめた。
 一刻も早く鹿目まどかと美樹さやかに合流しなければならない状況なのに。
 今も、彼女たちは上条のように化物に襲われているのかもしれないのに。

上条(……ッ!!)

 ぞくりと背筋が震えた。
 振り返る。背後だ。上条の背中から、使い魔が迫ってきている。

ほむら「くっ…!」

 ほむらも気付いた。だが、銃の照準が付けられない。
 敵は上条当麻の背後にいる。射線上に、どうしても上条当麻の体が入ってしまう。

ほむら(まずい…時を止めるしか…! でも、間に合う…!?)

上条「暁美ぃ!! 俺のことはいい、鹿目とさやかの所に急いでくれ!!」

ほむら(……私だって、そうしたいわよ!)

 ほむらは時間停止の術を発動させる。
 世界が動きを止めるまで、あと二秒。

上条「この野郎ぉぉぉおおおおおおおお!!!!」

 その二秒の間に―――上条当麻は、その『右手』を化物に叩きつけていた。

 キュゥーン―――と甲高い音がした。
 上条が右手を叩き付けた瞬間、迫っていた綿の化物はその姿を消していた。
 ぽかん、としているのは化物を殴りつけた上条本人である。

上条「なんだ……殴れば消えるのかよ……はは、ビビッて損したじゃねーかちくしょう」

ほむら(……そんなはずない!!)

 驚愕は、暁美ほむらの物。
 そうだ。そんな容易いものではないのだ。魔女というものは。

ほむら(魔女、それにその使い魔を倒すには私たち魔法少女の魔力を込めた武器が必要……!!)

ほむら(この男は、一体……!?)

 既に、時間停止は発動している。相変わらず上条に止まる気配はない。
 どころか、静止した世界をキョロキョロと見回して「ほえ~」と声を上げる始末だ。

上条「スゲェな……暁美がやってるのか? これ」

ほむら「……ええ」



上条「一体お前は何者なんだ?」

ほむら「魔法少女よ」


ほむら「あなたは一体何者なの?」

上条「男子中学生」

※上の方でミスってるな。上条さん中学生です。


 上条とほむらがまどか、さやかと合流した時には全てが終わってしまっていた。
 既にほむらが『魔女の結界』と呼んだ空間は消えうせ、まどかとさやかの元には新たな魔法少女が現れていた。

上条「さやか! 鹿目!! よかった、無事だったかお前ら…!!」

さやか「そっちこそ、無事でよかった」

上条「暁美が助けてくれたんだよ」

さやか「ふぅ~ん…一応お礼は言っておくわ。……アリガト」

ほむら「別にあなたからのお礼はいらないわ」

さやか「むっかぁ~」

まどか「わ、私達はマミさんが助けてくれたんだよ!」

上条「マミさん?」

マミ「巴マミよ。よろしくね」

上条「は、はい…よ、よろしくです……!!」

マミ「?」

マミ「それで…暁美ほむらさん、だったかしら?」

ほむら「……」

マミ「わりと大団円っぽい雰囲気なんだけど……空気読まずに、仕掛けてきちゃう?」

ほむら「……いいえ、そのつもりはないわ」

マミ「そ。よかった」

ほむら(調べなくてはいけないことも増えた……ここは一旦退くべきだわ)

 くるり、とほむらは踵を返す。

上条「あ、暁美!!」

 その背中に、上条は思わず声をかけていた。

ほむら「……何かしら」

上条「また明日な!!」

ほむら「…………」


ほむら「………ええ、また明日」

マミ「それじゃ、私の部屋に行きましょうか。色々聞きたいこともあるでしょう?」

まどか「いいんですか?」

マミ「ええ。このまま帰っても、気になって夜眠れないでしょう?」

さやか「男いますけどいいんですか?」

上条「俺いますけどいいんですか?」

マミ「あ」

マミ(ど、どうしよう…!? 男の子を家に上げるなんて……!!)

マミ(と、取り乱しては駄目よマミ! 今、あの子達にとって私は頼れる先輩なのだから……)

マミ(折角彼女達に植え付けることが出来たこのイメージを壊してはダメ!! ファイト、マミ!!)

マミ「ええ、かまわないわ」サラリ

さやか「よ、余裕だ…」

上条「お、大人だ……」

上条(まずい……マミさん、上条さんの好みのタイプである包容力ある年上女性にガッチリフィットしてる!!)

 巴マミの家――――

マミ「はい、お茶よ」コト

まどか「あ、ありがとうございます」

さやか「わぁ~! お菓子も食べていいんですか!?」

マミ「ええ、どうぞ」

上条「……」ソワソワソワソワ

さやか「……そわそわしてんじゃないわよ」

上条「だ、だってよ……」

マミ「うふふ、いいわよ。上条くんくらいの年だと女の子の部屋興味津々なのは仕方ないことだもの」

さやか「よ、余裕だ…」

上条「お、大人だ……」

マミ(うわわわわわ! 何で上条くんキョロキョロしてるの!? へ、変なもの置いてないわよね!?)

QB「自己紹介が遅れたね。僕の名前はキュゥべえっていうんだ!」

 ほむらに狙われていた白い生き物―――キュゥべえはそう話を切り出した。
 そして先程の化物の正体―――魔女のこと。それと戦う魔法少女のこと。
 一通りの説明を聞き終えて、まどか、さやか、上条の三人は「ふへぇ」と鼻を鳴らす。

上条「まさか……そんなことが現実に起こっているなんてなぁ」

まどか「マミさんは、この町の平和を守るために魔女と戦い続けているんですね……」

さやか「すごいなぁー。あこがれちゃう!!」

マミ「そんなに大したことではないわ」

QB「もちろん、君たち二人にも魔法少女になることは出来る。特にまどか、君の素質はすばらしいものがあるよ」

QB「君が僕と契約すれば、君は凄い魔法少女になれる。僕が保証するよ」

まどか「えぇ~……?」

さやか「おぉー! 凄いじゃんまどか!!」

QB「だから、僕と契約して魔法少女になってよ!」

マミ「こら、急かしちゃダメよキュゥべえ。こういうのは、じっくり考えて結論を出さなきゃいけないでしょう」

 その後、魔法少女に興味を示したまどかとさやかに、後日マミが魔女退治の現場を見せるということで話は纏まった。
 出されたお茶も飲みきって、さあお暇しようかと腰を上げた時。
 上条は、ふと湧いた疑問をキュゥべえに投げかけた。

上条「結局さ、お前ってなんなわけ?」

QB「何って言うと?」

上条「いや、生物分類学上は何になんのかなって話だよ。やっぱりこことは違うファンタジー世界の住人とかなのか?」

上条「或いは、地球外生命体だとか」

QB「……まあ、そんなところだよ。案外鋭いね、君は」

上条「案外とはどういうことだ」

 キュゥべえは思わず「君こそ何者なんだい?」、そう問いかけようとして―――やめた。

QB(僕の姿は魔法少女、或いは『僕が許可した者』にしか見えないはず)

QB(彼は―――どうして僕の姿が見えたんだろう?)

QB(僕は―――彼に許可を出しては、いない)

 気付けばそこは、真っ白な世界だった。
 周りを見渡しても、何もない。ただ真っ白な大地が地平線まで続いているだけだ。
 そこで、たくさんの少女達が蹲って泣いている。
 中には助けて、助けてと空を仰ぎ見る少女もいる。
 思わず少女の目を追って空を見上げた。

 そこには空なんてなかった。
 薄い氷のような膜が、大地と同じく彼方まで広がっている。

 その上にあったのは、自分もよく知る世界だった。

 道があって、町があって、たくさんの人が行き交って、日常を紡いでいる。

 その中の誰もが、下を見ない。

 日常を生きているものは、世界の裏側で泣いている少女達に気付かない。

 少女たちの願いは、祈りは―――――決して、彼等には届かない。

まどか「……変なゆめぇ…」

まどか「……最近多いなあ。疲れてるのかな?」

まどか「今日はマミさんの魔女退治を見学するんだから……」

※微修正

まどか「……変なゆめぇ…」

まどか「最近こういうの多いなあ……疲れてるのかな?」

まどか「ダメダメ、しっかりしないと。今日はマミさんの魔女退治に一緒に連れて行ってもらうんだから」

まどか「……上条くんも一緒に行くって言ってたっけ?」



まどか「………上条くんも魔法少女になりたいのかな」

風呂入ってくる

さやか「おはようまどか! 昨日はよく眠れた?」

まどか「おはようさやかちゃん。えへへ…実はちょっと変な夢見ちゃった」

さやか「うんうん。そりゃあんなことがあったら夢に出ちゃうよねぇ~」

仁美「あら? 昨日は何かありましたの?」

さやか「あ、あはは! い、いや、何でもないよ!!」

仁美「?」

QB「その日あった出来事が睡眠にまで影響を与えてしまうなんて、まったく人間は大変な生き物だね」ヒョコ

さやか「うわあっ!!」

仁美「ど、どうされましたのさやかさん?」

さやか「いや、何でもない、何でも……」

まどか『皆には見えないからって、ついてきちゃったの』←テレパシー

さやか「うおわーー!!」

仁美「さ、さやかさん!?」

さやか『びっくりだよ…ついに私もあっち側の世界の住人になっちゃったって感じだよ……』

まどか『で、でも、少し楽しいよね。こういうの』

さやか『まあね』

上条「♪~♪~」

さやか「あ、当麻だ」

さやか『ねえ、このテレパシーって私たち以外の人にも使えるの?』

QB「まあ、僕が調整すればね」

さやか『へえ~、よし。当麻ぁーー!!』

上条「♪~♪~」

さやか『あれ? 当麻ぁ!!!!』

上条「♪~♪~♪~」

さやか「無視すんなやコルァ!!!!」ドゴォ!

上条「おぶふ!!!?」

上条「なに!? なんで!? ホワイ!?」

さやか「私があんだけ呼んでんだから返事くらいしなさいよ!!」

上条「ええ!? 呼んだ!? いつ!?」

仁美「さやかさん、いつ上条さんの名前を呼ばれましたの…?」

さやか「う……そ、れ、は……こ、心でよ!!」

仁美「うわぁ…」

上条「うわぁ…」

さやか「……ッ!!」ドゴォ!

上条「何故!? ふ、不幸だぁ!!!!」

さやか『ちょっと! どういうことよキュゥべえ!!』

QB『おかしいなぁ。確かに彼にアンテナを繋げたはずなんだけど』

さやか『とんだ恥かいちゃったじゃない!』

QB『どうやら彼に対してはうまくテレパシーが繋がらないみたいだ。なんでだろう』

まどか『そ、それよりさきに上条くんの心配をしようよさやかちゃん……ピクピクしてるよ?』

上条「」ビクンビクン

仁美「きゃああ! 大丈夫ですの上条さん!? しっかりなさって!?」

上条(あ、おっぱいが、おっぱいの感触が)

さやか「……!!」ゲシッ!

上条「ぎゃあ! 心を読まれた!?」

QB「……」

QB「………本当に、ワケがわからないよ」

 その後、暁美ほむらともなんやかんやいざこざがあって放課後。
 鹿目まどか、美樹さやか、上条当麻の三人は巴マミの先導に従い、町中を散策していた。
 巴マミ曰く、こうやって町中を歩き、魔力の反応を探っていくしか魔女の居場所を特定する方策は無い、とのこと。

まどか「大分暗くなってきちゃいましたね……」

マミ「そろそろ魔女が活性化する時間よ。反応があるかも」

さやか「というか、何で当麻までついてきたの?」

上条「心配だからに決まってんだろ」

マミ(正直、保護対象が増えるのは面倒なんだけどなぁ…)

まどか「私はてっきり、上条くんも魔法少女になりたいのかと思っちゃったよ」

さやか「ぶは! ちょっと笑わせないでよまどか!」

QB「ちなみに、君にはどんな願い事があるんだい?」

上条「世界平和」

マミ(目がマジだわ……)

マミ「……反応があったわ!」

さやか「ちょっとあのビル!! 屋上!!」

まどか「女の人…!? やだ、うそ!?」

マミ「くっ…!!」

上条「うおおおおおおおおお!!!!!!」

 マミが魔法少女と化して駆け出す―――よりも早く。
 上条当麻は女性の落下地点目掛けて駆け出していた。

マミ「バ…! 危ない!!」

 巴マミの伸ばしたリボンが落下する女性を包み、保護する。
 しかし、勢いのついたマミの体は止まらない。それは最初から止まる気の無い上条も同様だ。

 どしーん、と盛大な音を立て、マミの体と上条の体が衝突する。
 二人はもみくちゃになってその場に倒れこんでしまった。

上条「いててて……すいませんマミさん、大丈夫ですか?」

マミ「」

上条「マミさん」

マミ「」

さやか「と、当麻……アンタ、手……」ワナワナ…!

上条「て? ……手?」

 ふにゅん、と柔らかい感触。
 上条の手が、マミのふくよかなおっぱいを思いっきり鷲づかみにしていた。

上条「お、おうわあああああああああ!!!!!!」パッ!

マミ「う、うーん、ここはドコ? 私はだれ?」

上条「わ、わざとじゃないんす!! ど、どうかお許しをぉぉおおおお!!!!」

マミ「ど、どうしたの上条くん」

上条「…あれ? 気付いてらっしゃらない?」

マミ「うーん…衝突のショックで気を失ってたみたいね。何かあったの?」

上条「いやあ何でもありません!! ささ、行きましょう!!」

マミ「?」

マミ「そうだわ、上条くん!」

上条「は、はいぃ!!?」

マミ「二度とあんなことしてはダメよ!!」

上条「うわあやっぱり覚えてらっしゃったんですかぁ!!!?」

マミ「そりゃ覚えているわよ! いい? 二度とさっきみたいに私より先行したりしないって約束して!!」

マミ「あんな無謀なことされたら、守れるものも守れなくなっちゃうわ!」

上条「あ、そっち!? そっちですね!? よかった!!」

マミ「わかったの!?」

上条「ヤ、ヤー!!」

さやか「……覚えてたら、ティロされるところだったわよ」ボソ…

上条「……」ゾク…!

マミ「ところで三人とも。確認を忘れていたんだけど、何か備えになるものは持ってきているのかしら?」

さやか「私はこのバット!」

上条「俺もバット!」

まどか「……衣装を描いたノート…」

マミ「じゃあ二人のバットを強化するわね。鹿目さんにはあとで武器を貸してあげる」

まどか「うぅ…すいません……」

マミ「じゃあ二人ともバットを貸して? ………うん、これでよし。これで身を守ることくらいは出来ると思うわ」

さやか「わー! ありがとうございます!!」

上条「……あの、俺の普通のバットに戻っちゃったんすけど」

マミ「え?」

上条(や、やっぱり覚えてるのか!? そしてこれは『テメエは死ね』という意思表示なんですか!?)

マミ「おかしいわね……何度やっても戻っちゃうわ。これ以上魔力の無駄遣いは避けたいし……まあ、ちょうどいいわ。上条くんは後ろでじっとしているようにしてね?」

上条「は、はい…了解っす」

 そして、一行は魔女の結界に侵入した。
 世界が極彩色に彩られた異空間へと変貌する。

上条「二度目でも…慣れねえなこりゃ……」

 ケタケタと聞こえる笑い声が、上条たちの神経をすり減らす。
 そんな中、笑い声と共に迫りくる使い魔たちを、先行するマミが蹴散らしていく。
 まどか、さやか、上条の三人は決してはぐれないようにその背中を追いかけた。
 ケタケタと笑い声―――まどかの頭上に、使い魔の影が舞い降りる。

QB「まどか! 上だ!!」

まどか「えっ!?」

 QBの叫びに、まどかは咄嗟に頭を抱え、さやかはバットを振りかぶり、マミは使い魔に照準をつけ――――

 ―――上条当麻は、既に拳を叩きつけていた。

 キュゥーン―――と甲高い音が鳴り、使い魔の姿が消えた。

まどか「上条くん…?」

さやか「当麻…?」

QB「これは…一体……」

マミ「どういうこと!?」

上条「殴れば消えるってんなら、俺にだってやれることはある!」

上条「俺は今日、そのために皆に着いて来たんだ!!」

マミ『キュゥべえ、これは一体…!?』

キュゥべえ『僕にもわからないよ。上条当麻、君は本当に……何者なんだ?』

キュゥべえ「…!! マミ、上!」

マミ「しまっ…!!」

上条「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 上条当麻が駆け出す。
 マミに迫っていた使い魔目掛けて、その『左手』を叩きつける。

使い魔『ケタケタケタケタ!!』

上条「……あれ?」

 先程と同じように拳を叩き付けたはずなのに、まるで手ごたえが無い。
 するりとすり抜けるように使い魔は上条の左腕を伝い―――そのまま顔面に突進した。

上条「あ、ぐ…!!」

使い魔『ケタケタケタケタ!!』

 どろり、と上条の鼻から血がこぼれる。
 それが嬉しくてたまらないのか、魔女の使い魔は一層声を上げて笑う。
 けたけた、けたけたと。

 ドヒュン、と風を切る音で、笑い声は引き裂かれた。
 硝煙を吐き出すマスケット銃を放り投げ、マミは困惑の表情で上条を観察する。
 それは、怒っていいものかどうか、迷っている表情だった。

魔女に説教される上条さんワラタ

まどか「上条くん…!」

さやか「当麻、大丈夫!?」

上条「んあ、平気だ。不良に殴られたのと大して変わんねーよ」

マミ『キュゥべえ、どう思う?』

QB『わからないよ。まるでわからない。一撃で魔女の使い魔を倒したと思ったら、今みたいにあっさりやられて……』

QB『どうにも判断がつけられない。ただまあ、今の時点で確実に言えるのは』

QB『彼は間違いなく”特別な存在”であるということだ』

マミ「特別…ね…」


 その後、一行はさらに結界の奥まで侵攻し―――遂に、魔女との対面を果たす。

 その魔女の姿を目にしたとき、上条がイメージしたのはナメクジだった。
 ナメクジに蝶の羽が生えて、さらにヘンテコな頭部がくっついている。
 頭部にあしらわれているのは薔薇…だろうか。

上条(一体どの辺が魔女だっていうんだ…?)

 目の前にいる怪物は、どうにも上条の頭の中にある魔女のイメージと一致しない。
 というか、何故あれで性別を女だと断定しているのか、理解に苦しむ。
 そんな風に上条が魔女を観察していると、いつの間にか上条、まどか、さやかの三人を奇妙な光の壁が包み込んでいた。

マミ「防御結界を張ったわ。激しい戦いになるかもしれないから、ここから動かないで」

まどか「激しい戦いって…大丈夫なんですか?」

マミ「平気よ。見てて」

 マミはその顔に余裕の笑みを湛えたまま、魔女の下へと降り立つ。

まどか「マミさん……」

さやか「へ、へーきだよ! マミさんなら、きっと……!」

上条「………」

 上条は考えていた。
 本当に、一人で平気なのかと。

 どうしてここまで無茶をしたくなってしまうのか、上条自身にもわからない。
 しかし、何故か奇妙な確信がある。
 自分なら―――巴マミの力になることができる、と。

上条「………」

 上条は、自分の右手に視線を落とす。
 自惚れ、ではないと思う。
 泳げる人間が、泳ぐことを躊躇わないように―――それを成す能力がある人間は、それを成すことに抵抗感を持たない。
 そんな自然さで、上条当麻は巴マミを助けに赴きたいと思っている。

まどか「ああ! マミさん!!」

 まどかの悲鳴に顔を上げる。
 巴マミが、魔女の触手によって拘束されていた。
 そしてそのまま―――マミの体が壁に叩きつけられる。

上条「――――ッ!!!!」

 それが切欠だった。
 上条はある種の確信を持ってその右手をマミが拵えた結界に突き出し――ー――

 キュゥーン―――――と甲高い音が響き、結界は砕け散った。

上条「やっぱり、右手か!!!!」

 どうして自分にそんな力が宿っているのかわからない。
 いつから宿っているのかもわからない。
 能力の正体なんて、もう皆目見当もつかない。

 でも、ある。
 魔女のような存在を、この世の理から外れた存在を問答無用で無に帰す力。

 あらゆる異能の力を打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』。

 脳裏に浮かんだその名前を、上条は疑問も持たず飲み込んだ。

上条「『幻想殺し』……それが、俺の右手に宿った力……」

上条「はは…いいぜ…! なら、その名前に相応しく!!」

上条「魔女! テメエが罪もない人々に不幸を撒き散らす存在だって言うんなら―――」



上条「――――まずは、その幻想をぶっ殺す!!!!」

上条さんがフラッグファイターの本領を発揮し始めたな

 握り締めた拳を叩きつける。
 左手で使い魔を殴った時とは違う、確かな手ごたえ。
 果たして、魔女の体から眩い光が発生し―――直後、魔女の存在は跡形も無く消え去っていた。

まどか「……」ポカーン

さやか「……」ポカーン

マミ「……」ポカーン

さやか「ね、ねえ当麻……」

上条「ん?」

さやか「あんたって……何者なのさ?」

上条「……何者なんでせうね?」




ほむら(魔女を一撃で葬り去った……)

ほむら(上条当麻……あなたなら、もしかして……)

マミ「……凄い。本当に、何者なのあの子……」

QB「早急に彼のことを調べる必要がありそうだね」

マミ「……キュゥべえ?」

QB「気付かないかい? マミ。今ここには、本来あるべきものが欠けてしまっているんだ」

 そう、魔女の存在は、上条当麻の右手によって”跡形も無く”消えてしまったのだ。

マミ「え? ……あ! グリーフシードがない!!」

QB(もし彼の能力が僕の想像している通りの特性を持っているとしたら……)

QB(早めに手を打つ必要があるかもしれないね)

 夜、鹿目家――――

まどか「ふわあ……凄い一日だった……」ゴロン

まどか「まさかマミさんだけじゃなくて、上条くんまであんな力を持ってるなんて……」

まどか「上条くん、カッコよかったなぁ……」

まどか「私も、あんな風に魔女と戦えたら……」

QB「僕と契約すればすぐまどかも魔法少女になれるよ!」

まどか「うーん、やっぱりもう少し待って」

QB「ちぇっ」

 気付けば、ずっと少女たちの泣き声が聞こえていた。

 だけど、周りを見渡しても泣いている少女は見当たらない。

 日常を生きる周囲の人達も、泣き声に気付いた様子は無い。

 ならばこれは幻聴なのだと一蹴する―――ことも出来たが、万が一のことを考えた。

 もし、今本当に誰かが泣いているのなら、出来ることなら、その涙を止めてあげたい。

 そう思った瞬間に気が付いた。

 足元。地面の下に広がるもうひとつの世界。

 誰にも気付かれず、気遣われず、ずっと泣いているたくさんの少女達。

 幻覚だと一蹴することも出来た。でも、やっぱりそうはしなかった。

 一人の少女が、必死にこちらに向かって手を伸ばしていたから。

 薄い氷のような膜を蹴破って、その少女に向かって精一杯手を伸ばした。

上条「……変な夢だ」

 寝癖で殊更にぼさぼさになった頭を掻き毟り、上条にとって馴染みのない部屋で目を覚ます。
 ここは『上条』家。上条当麻とその家族が暮らす場所。
 そのはずだ。

上条「いや、しかし…やっぱり慣れねえなぁ……」

 上条の視線の先にあるのはあるひとつの楽器。
 一般的な総称は、バイオリン、という。
 そして壁に飾られたコンクール入賞の賞状の数々。
 上条当麻はバイオリンの名手であったのだ。

上条「ほんっと、信じらんねー……」

上条「バイオリンって! 俺のイメージでバイオリンって!! いやいやありえませんって!!」




 上条当麻には、過去の記憶が無い。

 交通事故にあったらしい。
 居眠り運転していた乗用車が、道を歩いていた上条に突っ込んできた。
 体に何の後遺症も残らなかったのは奇跡だった。
 だが、代わりに脳に―――記憶に、後遺症は残った。

母「当麻ーごはんよー」

上条「今行くー」

 母であるという女性の声に返事して、上条は仕度を始める。
 父と母には、未だに馴染めていない。
 上条はそこにどうしても疑念を拭えずにいる。
 普通、記憶が無くなってゼロの状態に戻れば、もっとすんなりと父と母を受け入れられるのではないだろうか。
 或いは、そう、記憶が残っているから、彼等を両親として認められないというような可能性はないのだろうか?
 しかし、上条に彼等以外の両親の記憶は無い。勿論のことなのだが。
 ふと思い出す、昨日のさやかの言葉。

『あんたって……何者なのさ?』

 その答えを誰よりも知りたがっているのは、実は上条当麻自身なのかも知れなかった。

上条「今日は定期検診の日か……はあ、憂鬱……」

支援

 交通事故から生還し、退院しても、記憶喪失という障害を残してしまった上条にとって、放課後の通院はルーチンワークだった。
 それなのに気持ちがこんなに沈んでいるのは、月に一回行われるこの検診にかなり時間がかかることからか。
 或いは、つい先程聞いた、マミが魔法少女になった『願い』を聞いてしまったからか。

 交通事故からの生還。
 それがマミの願いだった。
 その話を聞いてから、ずっと上条の胸にはもやもやが溜まっている。
 検診の時は一緒に病院に来てくれるさやかとまどかの声も、今は耳を素通りしてしまっていた。

さやか「こら! 聞いてるの!?」

上条「ああ、ごめん、聞いてなかった」

さやか「こんの~! 今日はずーっとぼーっとしてるじゃない! どうしたのよ!?」

上条「マミさんのこと考えてた」

さやか「んな!?」

上条「………」

さやか「んむぅ~……」

お前…

看護士「上条さーん、上条当麻さーん」

上条「……」

さやか「ほら、呼ばれてるよ」

上条「あ、ああ、行ってくる」

さやか「はやく記憶、取り戻してね。それで……また私にバイオリンを聞かせて」

上条「………あぁ」

きゅうけい!

さやか「さて……検査には時間がかかるだろうし、まどかはそろそろ帰りなよ」

まどか「さやかちゃんはどうするの?」

さやか「私は…当麻を待ってる。検査の結果、少しでも早く知りたいし」

まどか「なら、私も一緒に待ってるよ!」

さやか「いいの?」

まどか「お喋りしてれば時間なんてすぐ経っちゃうよ!」

さやか「ふふ…ありがとうまどか。じゃあちょっとそこら辺散歩してみようか」

まどか「でね、それでね…」

さやか「うんうん」

QB「……まどか! さやか!」

さやか「うわ!」

まどか「ど、どうしたのキュゥべえ?」

QB「あそこ!」

まどか「え?」

さやか「なにコレ? 変なアクセサリーが壁に突き刺さってる」

QB「それはグリーフシード……魔女を産む、卵なんだ!」

まどか「え…ええ!?」

さやか「まどか、マミさんの携帯番号聞いてる?」

まどか「ううん…」フルフル

さやか「あっちゃー…しまったなあ……」

まどか「ど、どうしよう……」

さやか「………」

さやか「……私がここに残るわ。まどかは急いでマミさんを呼んできて」

まどか「そんな! 危ないよさやかちゃん!」

さやか「誰かが見張っておかないと……魔女が生まれたとき、居場所がわかんなくなっちゃうかもしれないんでしょ?」

さやか「だから、私が残る……それに、私にはどうしてもコレを放っておくことはできない」

さやか「……この病院には今、当麻がいるんだから」

まどか「さやかちゃん……」

QB「じゃあ、僕がさやかと一緒にここに残るよ」

QB「そうすれば、たとえ僕達が結界に取り込まれてしまっても、マミを最短距離で誘導することが出来る」

さやか「キュゥべえ……ありがとう」

まどか「私、急いでマミさん連れてくるから!!」タタタタ…!

さやか「さて……うわあ、なんか禍々しいオーラが出てるよぅ……」

QB「……まずい! 結界が発動する!」

さやか「え!? きゃあ!!」

 眩い光が一瞬辺りを包んで―――さやかとキュゥべえの姿が消えた。

マミ「ここね……」

まどか「あれ? さやかちゃんとキュゥべえがいない」

マミ「どうやら既に取り込まれてしまったみたいね……」

まどか「そ、そんな!」

マミ「追うわよ、鹿目さん!」

まどか「は、はい!」




ほむら「………」

 鹿目まどかと巴マミは魔女の結界内へと侵入する。
 色とりどりのお菓子でそこかしこを装飾された異空間。
 しかしそれはとても童話のような心躍るものではなく、もっとどうしようもなくおどろおどろしい雰囲気を醸し出していた。
 その主たる原因である異型の使い魔を物陰に隠れてやり過ごし、マミは先攻しているはずのキュゥべえにコンタクトを試みる。

マミ『キュゥべえ、無事?』

QB『マミ! よかった、間にあった!』

まどか『さやかちゃん、大丈夫!?』

さやか『うん、ヘーキヘーキ!』

マミ『グリーフシードの様子はどう?』

QB『まだ生まれるまで時間はありそうだけど、魔力を放出したりして刺激すると危ないかもしれない』

QB『急がなくていいから、なるべく魔力を抑えて静かに来てくれないかな』

マミ『わかったわ』

まどか「よかった…さやかちゃん、無事で……よかったよぉ~……」

マミ「行きましょう鹿目さん。私から手を離さないように」

まどか「は、はい」


ほむら「待ちなさい」

マミ「……本当に、しつこい女は嫌われるわよ」

ほむら「今回の魔女は私が狩るわ。……あなたは手を引いて」

マミ「それは聞けない相談ね。先に行ってるキュゥべえと美樹さんも助けてあげなくちゃいけないし」

ほむら「その二人の安全は保証するわ」

マミ「……信じられると思って?」

 マミは小ばかにしたようにロールして纏めた髪を後ろに払って―――即座に魔力を発動させた。
 四方から突如伸びたリボンが瞬く間にほむらの体を拘束する。

ほむら「あう…!」

マミ「あなたはそこでじっとしていなさい」

ほむら「馬鹿……こんなことしてる場合じゃ……」

マミ「じっとしてれば帰りには解放してあげるわ。行きましょう、鹿目さん」

まどか「は、はい……」

ほむら「くっ……!」

まどか「あの、マミさん…」

マミ「なに?」

まどか「私、昨日の夜からずっと、考えていたんですけど」

マミ「ん?」

まどか「私、やっぱり……魔法少女に、なりたいです。それで、マミさんと一緒に戦いたい」

マミ「……本気なの? 叶えたい願いが、定まったの?」

まどか「はい。私は、どんくさくて、おっちょこちょいで、何のとりえも無くて……だから、魔法少女のになって皆のために戦うマミさんに、すごく憧れて」

まどか「私もあんな風になれたらって、誰かのために戦える人間になれたらって……」

まどか「……私は、魔法少女になりたい。それが、私の願い」



マミ「……ホント?」

まどか「え?」

マミ「ホントに、私と一緒に居てくれるの?」

 そう言った巴マミの姿は、いつもの凛とした先輩では無くて。
 どこかその様子は、その怯えた姿は、はぐれた親を探す迷子のようにも見えた。
 だから―――まどかははっきりと頷いた。

マミ「大変だよ? 普通の学校生活なんて送れなくなっちゃうよ? 恋なんかも……出来なくなっちゃうよ?」

まどか「それでも私は―――マミさんと一緒に、頑張っていきたいです」

マミ「鹿目さん…!」

まどか「わ、わ! マミさん?」

 ふわりと、しかし力強くマミはまどかの体を抱きしめる。
 まどかははにかんだまま、しばらくマミのさせるがままに任せていた。

マミ「……でも、願い事はちゃんと決めたほうがいいわ。折角の機会なんですもの」

まどか「あはは…やっぱりそうですか?」

マミ「それじゃ、こうしましょう? もし今回の魔女退治が終わるまでに願いが決まらなかったら、キュゥべえに大きなケーキを出してもらうの」

まどか「ケ、ケーキ!? 私、ケーキで魔法少女になっちゃうんですか!?」

マミ「うふふ、それがイヤならちゃんと願いを決めなさい」

 手を取り、歩みだした二人の前に―――魔女の使い魔の群れが現れる。

じゃあ上条が右手でほむらに触るシーンがあったらやばい訳ですね

まどか「マ、マミさん…」

マミ「大丈夫よ。鹿目さんはそこでじっとしてて」

 マミの体が輝きを放ち、魔法少女のソレへと変貌する。
 そして生まれる無数のマスケット銃。
 放ち、投げ、殴りつけ、マミは使い魔の群れを蹴散らしていく。

まどか「マミさん…すごい……!」

マミ(体が軽い……一人じゃないのが、こんなに嬉しいことなんて……)



マミ(もう、何にも怖くない……!)

>>314
上条さんのラッキースケベはもういいよ!

QB『マミ!!』

マミ『どうしたのキュゥべえ?』

QB『大変だ! 魔女がもうすぐ生まれちゃうよ!!』

まどか『そ、そんな!!』

マミ「鹿目さん、走れる? ちょっと急ぐわよ!」

まどか「は、はい!」

ほむら「くっ…!」

 ほむらはマミの拘束を逃れようと身をよじる。
 だが、魔力によって強化されたリボンはその程度のことではびくともしてくれない。

ほむら(早く、早くしないと……巴マミが……!)

 焦りはしかし、何の解決ももたらさない。
 歯噛みするほむらの耳に―――カツンと足音が響いた。

ほむら「え?」

 振り返ったその先に居たのは、黒いツンツン頭の少年。
 異なる時間軸を延々と繰り返してきたほむらにとってあり得ないイレギュラー。
 上条当麻がそこにいた。

ほむら「あなた…どうして…?」

上条「検査が終わって、待合室に戻ったらさやかと鹿目がいなくなってて……最初は帰ったんだと思ったんだけど、外であいつらの鞄を見つけた」

上条「それで、この世界への入り口があって……また魔女が出たのか?」

ほむら「……ええ、そうよ」

上条「それも、魔女に?」

ほむら「いいえ。これは……巴マミの仕業よ」

上条「……そうか」

 上条はその右手でほむらの体を拘束するリボンを掴む。
 キュゥン、と甲高い音が響き、リボンは千切れて消えた。

ほむら「……相変わらず、出鱈目な力ね」

上条「俺にも何でこんな『幻想殺し』なんて力があるのかわかんないんだけどな」

ほむら「幻想殺し(イマジンブレイカー)…?」

上条「まあ、そのおかげでお前を今助けることもできたし、感謝はしてるんだけどよ」

ほむら「……そう」

上条「なあ、ひとつ聞かせてくれないか? マミさんのことなんだけど」

上条「ぐへへ、動けないとは好都合。強気なアンタが羞恥に震える姿を見てみたいと思っていたんだ。まずはおぱんつを拝見させてもらおう」

ほむら「なにかしら?」

上条「マミさんさ……あれ、鹿目とさやかを魔法少女に誘導してるよな」

ほむら「……」

上条「危険だから、やめておいた方がいいなんて言ってるけど……どちらかといえば、わざと二人が魔法少女に憧れるように振舞ってるような節がある」

ほむら「……ええ、そうよ。その通りだわ」

上条「やっぱり、そうだよな……うん、やっぱりそうだったんだ……」

 ほむらの言葉を聞いて、上条は確信した。

 巴マミは――――戦っていてはいけない人間だ。

 思い出す。彼女が魔法少女になる切欠になった願い。
 それはただただ単純に―――『生きたい』と、それだけのことでしかなかった。
 生きたいと願ったはずの人間が、その願いを叶えて、生き死にの戦いを繰り返している。
 それはなんという矛盾だろうか。
 その矛盾を抱えて―――巴マミは磨耗している。
 だから仲間を求めた。
 一人はいやだと泣き叫んだ。

 終わらせてやらなきゃならない。
 そのための力は、この右手に宿っているのだから。

お前が殺す役かよ
鬱展開かよ

 マミとまどかは結界の最深部、魔女の前へとたどり着いていた。

まどか「さやかちゃん!」

さやか「まどか!!」

 まどかとさやかはお互いの無事を喜び合う。
 そんな二人を飛び越えて、巴マミが魔女の前に躍り出た。
 お菓子の世界に相応しく、小さなぬいぐるみのような出で立ちをした魔女。
 マミはその魔女が座る高い椅子の足をマスケット銃で殴りつけ―――落ちてきた魔女を続けざまに殴り飛ばした。

マミ「悪いけど……今日ばっかりは速攻で終わらせてもらうわよ!!」

 吹き飛んだ魔女に狙いを定め、マスケット銃の引き金を絞る。
 一発、二発。
 次々に放たれる弾丸が、ファンシーな魔女の体を穿っていく。
 地を蹴り、加速。魔女との距離を一気に詰める。
 そして今度は真上から銃を振り下ろし、宙を舞っていた魔女の体を地面に叩き付けた。

 地に伏せた魔女の頭に照準をつけ、ほぼ零距離で躊躇無く引き金を絞る。
 ビクン、と魔女の体が跳ねた。
 マミは手を緩めず、さらに生み出したリボンで魔女の体を宙に固定する。

 そしてマミの目の前に現れたのは、これまでの銃とは明らかに異なるフォルムの物体。
 銃というよりそれはもはや戦艦の大砲といった有様だった。
 その巨大な銃口に、マミの魔力が集束していく。
 そこから放たれる極大の光。それこそがマミが奥義としている必殺技。
 その名も―――

マミ「ティロ・フィナーレ!!!!」

 放たれた一撃は魔女の体に大きな空洞を穿った。
 マミは勝利を確信し、その顔に笑みを浮かべる。

まどか「やったー! マミさん、すごーい!!」

 喜びの声を上げるまどかに、手を振って応える。
 直後。
 魔女の口から、もうひとつの顔が姿を現した。

 その後に起きたことは、巴マミにはどうしようも出来ないことだった。

 勝利を確信し、少女は完全に油断していたから。

 だから、目の前に迫ってきた怪物が、あんぐりと牙を覗かせた時も、棒立ちのままだったし―――

上条「おおおおおおおおおお!!!!!!」

 突然現れた彼に突き飛ばされたときにも何の抵抗も出来ず地面に転がるだけだったし。




 その彼の右手が、魔女に食い千切られている間も、やっぱり見ていることしか出来なかった。

冥土返し居ないのにどうする気だよ・・・

ああ、そのためにさやカスがいるのか

上条「うがあああああああああああああああああ!!!!!!」

 絶叫。痛みに耐えかねて、上条の口から叫びが漏れる。
 上条の右手を食い千切った魔女は、もぐもぐとしっかり彼の右腕を咀嚼し―――その存在を打ち消された。
 後にはただ、右腕を失い倒れ付す上条と、呆然と彼を見つめる巴マミ。
 言葉を失ったまどかとさやかの二人が残される。

 どくどくと、上条の右肩から血だまりが広がっていく。

さやか「いや…当麻……!」

 いやいやと首を振るさやかを飛び越えて、上条の体に歩み寄ったのは暁美ほむらだ。
 ほむらは上条の肩口に手をかざし、魔力による出来うるだけの処置を施していく。

ほむら(く…ギリギリまで時間停止を維持していたけど、間に合わなかったのね……なんてこと…!)

 歯噛みするほむらと、呆然と座り込む巴マミ。

さやか「いやああああああああああああ当麻ああああああああああああ!!!!!!」

 結界が消え去る瞬間、最後に響いたのはさやかの絶叫だった。

 上条当麻はそのまま病院に入院した。
 右腕を失ったショックと、大量失血。
 翌日になっても、上条当麻はまだ目を覚まさない。

まどか「……」

さやか「……」

マミ「……」

 彼を見舞う三人の面持ちは沈痛だ。
 一命を取り留めたとはいえ、まだ彼の状況は決して予断を許さない。

ほむら「巴マミ……少しいいかしら」

 病室を新たに訪れたのは、暁美ほむらだった。

 病院の屋上で、二人は対峙する。

マミ「……何の用かしら?」

ほむら「単刀直入に言うわ。あなた、もう魔法少女はやめなさい」

マミ「なにを…!?」

ほむら「あれだけの無様を晒しておいて、まだやれるなんて大言壮語を吐くつもりかしら?」

マミ「く……!」

ほむら「この街に現れる魔女は全て私が狩る。あなたはもう戦わなくていい。魔力を使わなければ、ソウルジェムに穢れが溜まることもない」

マミ「でも…それは……」

ほむら「それは……彼の願いでもあるのよ」

マミ「え?」

ほむら「彼はあなたが決して望んで戦っているわけではないことを知っていた。あなたが決定的に戦いに向かない性質であることにも気付いていた」

ほむら「彼はそんなあなたを救おうとしていた。だから彼は、あの時あそこにいた」

ほむら「右腕を失ってまで願った彼の望み……叶えてやってはくれないかしら」

マミ「う、うぅ……!」

さやか「当麻……」

まどか「さやかちゃん、今日はもう帰ろ?」

さやか「うん…」

QB(……随分落ち込んでいる彼女達には悪いけど、僕にとっては都合のいい展開になったかな)

QB(お菓子の魔女シャルロッテとの戦いで確信したよ。彼の能力は、僕らの目的のためには邪魔すぎる)

QB(念の為に『彼女』に連絡をとってはいたけど……この分じゃ必要なかったかな)

 翌日―――学校にて

さやか『ねぇキュゥべえ。ちょっといいかな?』

QB『なんだい? さやか』

さやか『ちょこっと聞きたいことがあるんだけど二人きりになれないかな? まどかとかにもあんまり聞かれたくないからさ』

QB『いいよ。昼休みにでも屋上に行こう』


 昼休み――――


QB「それで、どうしたんだい?」

さやか「魔法少女になるための願い―――の、話なんだけど」

>>349
ラノベなんだしそれは許してやれよwwwwww

さやか「願いは何でもいいんだよね?」

QB「叶えられる願いの大きさは、その子が持つ資質によるけどね」

さやか「例えばさ……それは、自分のための願いじゃなくってもいいのかな? もっと、他に困っている人のために使う、とか……」

QB「君が、それを本気で望むなら、ね」

さやか「そ、そっか……ねえキュゥべえ。今日、夜に公園で会えない?」

QB「それはかまわないけど、今じゃダメなのかい?」

さやか「い、今はちょっと! ここ学校だし、もう少し考える時間、欲しいし……」

QB「わかったよ。夜に公園だね」

さやか「う、うん。それじゃ!」タタタタ…

QB「………」

QB「……やれやれ、厄介なことになったなあ」

上条さんの右腕の効果により無理、しかし上条さん右手は再生

??

 さやかは学校帰りに上条の病院に足を向ける。
 まどかの同行は申し訳ないけど断った。
 どうしても、直接彼を見て、一人で考えたいことがあったから。
 受付に見舞いの旨だけ言い伝え、エレベーターに乗る。
 廊下に出て、病室の前まで来て、念の為に中を覗きこむと―――先客が居た。

マミ「……」

 巴マミだ。
 巴マミはベッドの傍らで椅子に腰掛け、眠り続ける上条をじっと見つめている。

さやか(マミさん…?)

 さやかは思わず隠れてしまった。
 再び、そっと様子を覗きこむ。
 巴マミは泣いていた。

マミ「ごめんね……ごめん、なさい……!」

 さやかは―――再びエレベーターに乗り、屋上へ向かった。
 少しだけ時間を潰してから、もう一度病室を訪ねようと、そう思った。

 太陽が地平線に沈む頃まで時間を潰して―――さやかはもう一度病室を訪れた。
 今度は誰もいない。少しだけ安堵しつつ、上条の眠るベッドの傍へ。
 穏やかに眠っているように見えるその寝顔。
 しかし、掛け布団から覗く―――そこから先が何も無い右肩は、見ていてやはり痛々しすぎた。

さやか「ばーか……早く起きなさいよ。女の子いっぱい泣かせてんだよ? あんた……」

 さやかは、ずっと上条の寝顔を見ていた。
 そして、マミの泣き顔を思い出していた。
 そして、決意は固まった。


 さやかは病院を出て、その足で夜の公園を目指す。

さやか…

>>351
空気が弾ける音は紙を破る音に酷似していた。
大気が裂かれ。放射状に冷機の白い輪が広がり弾け、衝撃波が生まれた。
滝の瀑布にも似た重圧の轟音が、周囲に鳴り響く。

川上稔 『機甲都市 伯林』(電撃文庫)より

不可視の速度で振り下ろされた大剣が生み出したのは、衝撃波ですらなかった。
それは亜光速の斬撃が生み出す質量によって、歪められた空間そのものだ。
デッドリードライブの機体が震えるほどの轟音が鳴り響いた。
周囲の待機が暴風と化して荒れ狂い、半径百メートルにわたって地面がえぐれた。

三雲岳斗 『コールドゲヘナ③」(同じく電撃文庫)より


何がいいたいかっつぅと ラノベだからってそういうおざなりな代物じゃない
手抜きは手抜きでしょ(´・ω・`)

QB「やあ、遅かったね」

さやか「ごめんね、お見舞いが長引いちゃって」

QB「いいさ。それで、用事はなんだい? いや―――」

QB「願いは、決まったかい?」

さやか「……うん」


 さやかは、はっきりと頷いた。

QB「一応、忠告はしておくよ」

さやか「なに?」

QB「彼の右腕には摩訶不思議な力が宿っている。それは君も気付いていることだと思うけど」

さやか「うん……やっぱり、そうだったんだ」

QB「対魔女用に特化した異能力……仮に魔女殺し、と呼ぶことにしようか」

QB「そんな力を取り戻せば、彼の性格だ。また突っ走って今回みたいな目にあうのは目に見えてる」

さやか「そうかもしれない……でも、あいつは馬鹿だから。右腕が無くても、きっと突っ走っちゃうよ。なら、まだ右腕があった方がいいかなって」

さやか「それに…それにさ…これはホントに私の我儘で…アイツには、腕を失って欲しくない」

さやか「今は忘れちゃってるけど、あれだけ才能があったんだから……!」

さやか「復活して……また私にバイオリンを聴かせて欲しい……!」ポロポロ…!

QB「そう。なら僕から言うことは何もないよ。それに、彼を戦わせない方法は無くもない」

さやか「え…?」

QB「君だよさやか。君がこの街に現れる魔女を全て狩ればいい。彼の出る幕なんてないくらい、迅速に、完璧に狩り尽くしてしまうんだ」

さやか「はは…そっか…うん、そうだね」

QB「それじゃ、さやか。願いを口にしてごらん」

QB「君は、どんな祈りでソウルジェムを輝かせるんだい?」

さやか「私は……」

 その時、さやかの携帯電話が鳴った。
 着信画面を見なくてもわかる。
 それは、彼女の親友用に特別に設定した着信音だったから。

さやか「ホント…あんたって子は…親友だね」

 まるでさやかを引き止めるようなタイミング。
 それでいいのかと問うような着信。
 さやかはすぅ、と大きく息を吸い込んで、キュゥべえに向き直った。


さやか「上条当麻の右腕を取り戻して。あいつがまた、元気で笑えるようにしてあげて」

記憶は戻さないのかな

QB「契約は成立だ。君の願いはエントロピーを凌駕した」

 輝く球体がさやかの胸から生み出される。

QB「さあ手にしてごらん。それはソウルジェム。君が生み出した、願いの力」

さやか「あ…う…!」

 さやかは胸のうちに生じた圧迫感に耐え、必死に手を伸ばす。
 目の前に現れた青い球体へと。彼女の願いの具現へと。

さやか「とうま……!」

 そしてさやかはその願いをしっかりとその手に握り締め――――眩い光が夜の公園を照らした。

>>377
戻『せ』ないといったほうが正確かな。
叶えられる願いは「ひとつだけ」だから。
(まあ「記憶喪失になる前の状態に戻せ」とかなら両方叶えられるだろうけど)

さやか「これで…?」

QB「うん、君の願いは叶った。そして、君は今日から新しい魔法少女だ!」

 その時、再び着信音が鳴り響いた。
 着信画面に現れた名前は、彼女の親友、鹿目まどかの名前。

さやか「もしもし?」

まどか『よかった! さやかちゃん、やっと繋がった!』

さやか「どうしたの?」

 まどかは弾む様な声でさやかに語りかける。
 まるで、嬉しくてたまらないことが起きた、といったように。

まどか『上条くんの―――上条くんの右腕がね――――!!』

まどか『ちんちんになっちゃったの…』

上条「俺は…あれ…? 何で俺病院にいるんだっけ…?」

さやか「当麻!!」

上条「うわ! さやか!?」

 ベッドから身を起こしていた上条に、さやかが抱きつく。

上条「うわ! うわわ! おま、おまー!!」

さやか「本当に…本当によかった…!!」ポロポロ…

上条「あ、あう…心配かけてすまんこってす」

 抱きしめ返すなんてことは出来ず、ただおろおろと視線を泳がすことしか出来ない上条当麻であった。

飯食ってくる

>>388
いってらっしゃい。
待ってるよ。

 翌日―――上条の回復は巴マミと暁美ほむらにも伝わることになった。
 巴マミは純粋に回復を喜び、暁美ほむらは美樹さやかを屋上に呼び出していた。

さやか「何? 話って」

ほむら「上条当麻のことよ」

さやか「……当麻がどうしたのさ」

ほむら「とぼけないで」

 ほむらがさやかを見る目は冷たい。

ほむら「あなた……キュゥべえと契約したわね」

さやか「……ま、そりゃバレバレか。この分じゃマミさんにもばれちゃってるかな」

ほむら「馬鹿な真似をしたものね」

さやか「なんですってぇ…!?」

ほむら「いい? これは忠告よ。心に留めておいて」




ほむら「彼のためを思って願ったあなたの思いは――――決して報われることは無い」

さやか「……ッ!! そんなの、言われなくてもわかってるよ!」

ほむら「そう。ならいいの。あなたがわかっているのなら、それでいい」

ほむら「……あなたは決して彼を救ったヒロインにはなれない」

さやか「わかってる!! 私は、別にアイツに感謝されたいわけじゃない!! アイツに恩を売りたいわけじゃない!!」

ほむら「『理解』と『実感』は別のものよ……いつか、あなたは私の言葉を実感する」

ほむら「その時に、決して絶望したりしないよう―――覚悟だけは、持っておいて」

ほむら「話はそれだけよ。それじゃ」

さやか「………」

 帰り道―――まどかは巴マミの後姿を見つけた。
 この方向は、上条が入院する病院に向かう方向だ。
 巴マミは回復した上条の下に顔を出すつもりなのだろう。
 さやかは学校の途中でどこかへ行ってしまったし、仁美は今日も習い事だ。
 まどかはマミと一緒に上条の病院へ行くことにした。

まどか「マミさん!」

マミ「あら、鹿目さん」

まどか「上条くんの病院に行くんですよね? 私も一緒に行っていいですか?」

マミ「ええ、もちろんよ」

まどか「あの…マミさん」

マミ「……なぁに?」

まどか「この間の、その魔法少女になるって話なんですけど、その……」

マミ「……うん、いいのよ。あんなところを見ちゃったら、誰だって怖くなっちゃうわよね」

まどか「ホントにごめんなさい……私……」

マミ「ううん、いいの。本当にいいのよ……きっと、私ももう、戦えないから」

まどか「え…?」

マミ「………病院、見えてきたわね」

上条「あ、マミさん! それに鹿目も!」

マミ「上条くん、本当に良くなったのね。よかったわ」

まどか「上条くん、本当に大丈夫? 痛いところ無い?」

上条「おう。体はもう完全復活だぞ。ただ、どうしても気になることがあるんだよなー」

まどか「なに? どうしたの?」

上条「いや、病院の皆がな? 何かお化けを見たような目で俺を見るんだよ」

上条「主治医の先生に至っては『君は親戚にピッコロでもいるのかね?』って言ってくるしさぁ」

まどか「あ、あはは……」

上条「でさあ、俺も何かおぼろげにしか覚えてないんだけど、俺の右手って魔女にさあ」

マミ「それは気のせいよ。上条くん」

上条「き、気のせいかなあ? でも確かに…」

マミ「気のせいよ」

上条「いや、でも」

マミ「気のせいよ」

上条「気のせいですね、ハイ」


さやか『お願いしますマミさん! 私が願いで治したってこと、当麻には言わないで下さい!!』

マミ(心配しなくても、言えないわよ。こんなこと……)

上条「今日はさやかは来てないのか?」

まどか「うん、今日は学校早退しちゃった」

上条「マジでか。昨日見たときは元気そうだったけどな~」

上条「あ、マミさん! それに鹿目も!」

マミ「上条くん、本当に良くなったのね。よかったわ」

まどか「上条くん、本当に大丈夫? 痛いところ無い?」

上条「おう。体はもう完全復活だぞ。ただ、どうしても気になることがあるんだよなー」

まどか「なに? どうしたの?」

上条「いや、病院の皆がな? 何かお化けを見たような目で俺を見るんだよ」

上条「主治医の先生に至っては『君は親戚にピッコロでもいるのかね?』って言ってくるしさぁ」

まどか「あ、あはは……」

上条「なんで先生知ってるんだろうな、俺の母方の伯父がピッコロだってこと」

マミ「……え?」

さやか「はぁっ!!」

 握り締めた剣を振り下ろす。
 剣はずぶずぶと魔女の頭部にめり込み、そのまま一刀のもとに体を縦に断ち切った。

さやか「はぁっ…はぁっ……」

 魔女の結界が消失する。

QB「うん、戦い方もようやく様になってきたね」

 QBがさやかの肩によじ登る。
 カランとグリーフシードの落ちる音。

さやか「これがアンタの言ってたグリーフシード?」

QB「そう、ソウルジェムに魔力を取り戻す魔女の卵。魔女と戦い続けようと思ったら、これは確実に回収しなければならない」

さやか「マミさんと一緒に退治に行った時はこんなの無かったけど……」

QB(そう。それが最大の問題なんだよね)

QB(僕の最大の目標である鹿目まどかに連なる親友、美樹さやかを魔法少女に出来たのはよかったけど……)

QB(代わりに、彼に厄介なあの能力が戻ってしまった)

QB(魔女という存在を、生み出されたエネルギーを、有無を言わさず無に帰してしまう右手)

QB(何とかして排除しないとなぁ)

 翌日、上条当麻は退院し、学校に復帰した。

まどか「おはよう上条くん!」

仁美「おはようございます、上条さん」

上条「おう、おはよー。あれ? さやかは?」

まどか「今日はお休みって」

上条(……俺の見舞いとかで色々無理させちまったのが影響してるのかな?)

上条「そっか…じゃあ見舞いに行かないとなあ」

まどか「うん、きっとさやかちゃん喜ぶよ」

仁美「その時は私にも同行させてくださいね」

 帰り道――――

上条「んあ~! 病院でも学校でも退屈なのは変わんねえな~」

上条「あれ、あそこにいるのは……おーいマミさーん!」

マミ「あら、上条くん。元気そうでよかったわ」

上条「ありがとうございます。そういや、さやかのこと何か聞いてません? 昨日の午後から学校来てないらしくって」

マミ「え、ええ……いえ、わからないわ。ごめんなさい」

上条「あー、そうですか。ですよねー…」

マミ(美樹さんは…おそらく魔法少女として……今も……)

マミ(それに引き換え…こんなところで私は、何を……!)ギリギリ…!

上条「あ、そうだマミさん。教えて欲しいことがあったんですけど」

マミ「な、何かしら?」

上条「魔女の結界って、どうやって探すんですか?」

マミ「そんなこと聞いてどうするの?」

上条「いや…折角体の調子も戻ったんだから、やるべきことをやろうと思って」

マミ「無理よ。魔女の探索にはソウルジェムが必要……普通の人間には、魔女の結界は探知できない」

上条「ならお願いします……ソウルジェムを貸してもらえませんか?」

マミ「バ…! 何言ってるのよ! そんなこと出来るわけないじゃない!!」

マミ「それに、それはあなたのやるべきことではないわ! それは私たち……魔法少女のやるべきことよ」

上条「……それは、魔法少女しか、魔女と戦う力を持てないからだ。でも、俺は違う。違うんです」

マミ「駄目よ…それでも…駄目……!」

マミ(体が治ったことで、また体を壊されに行くのなら……美樹さんの祈りは何のために……!)

上条「マミさん!」

マミ「駄目よ!!」

 食い下がる上条に、マミはっきりと拒絶の意思を示す。

マミ「安心して……この世界に、魔法少女はたくさんいる。たとえ私が戦わなくても、上条くんが戦わなくても、他の魔法少女が魔女を退治してくれるわ」

上条「違う…それじゃ駄目なんだ」

マミ「え…?」

 上条の視線に、今度はマミの方が黙殺されてしまった。
 苦悩の顔を見せる上条当麻の瞳には、しかしこの上ないほどの強い意思が込められている。

上条「俺は…そうやって戦い続ける魔法少女を救いたいんですよマミさん!!」

マミ「…ッ!!」

 自分が何故こんなにも魔法少女に拘ってしまうのか、上条当麻にもわからない。
 ただ、それが出来なければ―――今の自分に存在価値など無いとすら思ってしまうのだ。

マミ「……わかったわ」

上条「それじゃあ…!」

マミ「ううん、ソウルジェムは貸せない。これはキュゥべえから肌身離さず持つように言われているの」

マミ「だから……魔女の結界探しに、私が協力してあげるわ」

上条「いや、でもそれじゃ……」

 それでは結局マミを魔女と戦わせる結果になってしまう。

マミ「上条くんが、私のことを気遣ってくれてるのは知ってる。暁美さんが教えてくれた」

マミ「あなたの思っている通りよ上条くん。私は弱い。本当は、死ぬのが怖くて仕方が無い」

マミ「だから…もし魔女が現れたら……その時は、私を守ってね」

上条「……約束します」



??「ちょぉ~っと待ちなよ」

地区話題苗字

上条「…ッ!?」

マミ「だれ!?」

??「キュゥべえのやつから話だけは聞いてたけどさ~、アンタにそういう風に動かれるとこっちはすごい困っちゃうんだよね」

マミ「あなたは確か……佐倉杏子!!」

杏子「嬉しいねえ。覚えていてくれたのかいマミ。一度か二度会っただけなのに」

上条「マミさん、あいつは……?」

マミ「ええ、彼女の名前は佐倉杏子。彼女もまた…魔法少女よ」

上条「それで、その魔法少女が俺達に何の用なんだ?」

杏子「いやあ用事は単純明快、簡単さ」




杏子「ねえアンタ。その右腕、置いていきなよ」

裸になる

上条「な…に…?」

 上条は戦慄する。佐倉杏子の手には既に槍が握られている。
 そしてポッキーを咥えたその顔は、しかし冗談を言っているようにはまったく見えない。

杏子「困るんだよね、アンタに魔女を退治されちゃさ。アンタの右腕、魔女のグリーフシードごと無くしちゃうんだろ?」

杏子「グリーフシードは私たち魔法少女の生命の糧だ。それをほいほい消し去られちゃ、こっちはたまんないんだっての」

マミ「だからって、何も右腕をなくすことなんて…!」

杏子「いやあ私もそこまでするつもりは無かったけどさ。様子見てたら何か魔女退治にやる気出しちゃってるし」

杏子「しかも理由が私たち魔法少女のためってんだ。全く気に入らないね。願いは誰かのためじゃなく、自分自身のために持つもんだ」

杏子「こりゃ、キッツイお灸が必要だなって思ったわけさ」

マミ「させると思う?」

 マミの姿が魔法少女の物へと変わる。

杏子「出来ねえと思ってんのかよ」

 佐倉杏子もまた、赤い闘衣をその身に纏わせた。

さやか「はぁはぁ…」

さやか「知らないうちに隣町まで来てたのか…」

さやか「あっ、見つけた!あの使い魔め」

さやか「観念しろー!」ドリャー

ガッキーン

さやか「へ?」

杏子「おいおい、なにやってんの?あれ使い魔だよ?」

すまん誤爆した

上条「おい…待て、おい!!」

 上条の静止の声も虚しく―――決戦の火蓋は切って落とされた。
 佐倉杏子が大地を蹴る。向かうは一線、上条当麻の下へ。
 マミが引き金を絞る。風を切る弾丸を、しかし杏子は仰け反ることでかわす。

マミ「上条くん、ごめん!」

 マミが上条の後ろ襟を掴み、後ろへと放り投げた。

上条「おわわ、おわあああああああ!!!!」

 杏子と上条の距離を取るためとはいえ、あまりにも荒っぽい処置に上条も思わず声を上げる。

杏子「へっ! 懐に入っちまえばコッチのもんさ!!」

 マミの放つ弾幕を掻い潜り、杏子の刃がマミに迫る。
 しかしマミは迫っていた槍の穂先を銃底を振ってかち上げた。

マミ「別に接近戦が出来ないってわけじゃないんだから!!」

 マミの足元からリボンが伸び、杏子の体を拘束せんと迫る。
 迫るリボンを切り払い、杏子はたまらず大きく飛び退った。
 着地点を狙うマミの弾丸。杏子は二転、三転とバク転を繰り返しそれをかわす。
 二人の距離が大きく開いた。

杏子「へえ、やるじゃん。さすがにベテランって感じだね」

マミ「どう? まだ続ける?」

杏子「……へ。今日はこの辺で勘弁しといてやるよ。もうこれから魔女退治に行く体力も残ってなさそうだしね」

マミ「………」

杏子「上条当麻! アンタが魔女を退治しようとすれば、私はまたお前の右腕をもらいにくるからな! それを忘れるなよ!!」

 そういい残して、佐倉杏子は姿を消した。
 後には、巴マミと上条当麻が残され、気まずい沈黙が満ちる。

上条「くそ…! なんで…なんでこうなっちまうんだよ……!」

そもそも、負の感情を抱いても、ソウルジェムは濁るからなあ
魔法少女が生きていこうと思ったら、グリーフシードは必需品だ
そりゃ、消されちゃたまらんわな

これはあんこちゃんが正しいペロペロ

 いつまた襲ってくるかもわからないから、ということで巴マミと上条当麻は携帯番号を交換した。
 また彼女が襲ってきたらすぐに連絡するように、と言い残してマミは家路についた。
 今は上条はひとり、既に暗くなった道を歩いている。

上条「クソ……どうしてうまくいかないんだ。俺はただ、皆を守りたいだけなのに……」

杏子「はぁ~あ、まったく。やっぱり諦める気配はないか」

上条「!?」

 いつの間にか、目の前に再び佐倉杏子が現れていた。
 反射的に上条の手がポケットに伸びる。

杏子「おっとぉ! 巴マミを呼ぶ暇なんて与えないよ」

 杏子が槍を振り、その動きを牽制した。
 上条はぴたりと動きを止め、ひたすらに杏子の動きに注視する。

杏子「見逃した振りして油断したところを強襲する。まあ、暗殺のセオリーだよね」

 くるくると、杏子の腕の中で槍が回る。
 肉を裂く鋭い切っ先が、ギラギラと夜光を反射する。

杏子「……ってなわけで、覚悟はいいかい?」

 一撃目は、何とかかわせた。
 真っ直ぐに右腕の付け根を狙ってきた刃を身を捻ることでかわす。

杏子「およ? 大した反射神経だね!」

 しかし杏子は慌てることなく次々と槍を繰り出してくる。

杏子「そらそら!」

上条「く…! あ…!」

 速い。尋常ではない。人間が、少なくとも十代の少女が振るえる槍の速度ではない。
 それでも何とか連撃をかいくぐっているのは、杏子の狙いが明白だからだ。

杏子「ああそうか。右腕以外に攻撃は来ないってタカをくくってんのか。だからかわせてるんだ」

 杏子の槍の向きが変わった。
 執拗に右腕を狙っていた切っ先は下を向き、上条の右足を抉る。

上条「あ、ぐああ!!」

杏子「なら先にこうやって足を止めちゃえば問題ないってわけだ」

杏子「じゃあ、悪いけど……その右腕、いただくよ。安心しな。治療は完璧にしてあげるから」

上条「ク…ソ…!」

 そして杏子の槍が振り下ろされて―――ガキィン、と金属同士がぶつかる甲高い音がした。

上条「お、ま…え……」

杏子「チ…気付かれちまったか」

 その姿を見た上条の衝撃は計り知れなかった。
 杏子の一撃を食い止めていたのは、青い衣を身に纏った―――魔法少女と化した美樹さやかだった。

さやか「あ~あ」

 ぎりぎりと杏子の槍を受け止めたまま、さやかは観念したような声をあげた。

さやか「いきなり秘密がばれちゃったかぁ。ま、しょうがないか」

今回は全面的に杏子が正しいからなぁ
上条さんがグリーフシード消して回ったらいずれ穢れきっちゃうわけだし

上条「さやか! お前!!」

さやか「話はあと!! 今はこの子を追い返すのが先!!」

杏子「あんたに出来ると思ってんのか!? マミならともかく、新米魔法少女のアンタに!!」

さやか「うるさい! 人を襲うような魔女もどきのアンタなんかに負けるかぁ!!」

 振るわれる槍。
 切り払われる剣。
 上条は目の前の状況に理解が追いつかなかった。
 何故? どうして? 何でさやかが? いつから? 何のために?
 疑問ばかりがぐるぐるぐるぐる上条の頭の中を回っている。

杏子「ほらぁ!」

さやか「くぅ!!」

 力の差は歴然だった。
 美樹さやか。佐倉杏子。二人は共に近接戦を得意とする魔法少女。
 共に同じタイプである以上、経験の差が物を言う。
 杏子の振るった槍が、さやかの皮膚を大きく裂いた。

上条「―――――ッ!!!!」

 そして―――上条の思考は瞬時に沸騰した。

>>469
上条さんが対使い魔に特化すればいいんじゃね?

>>471上条さんって魔女目の前にして見逃せるほど落ち着いてるの?
後先考えてないっぽいけど

>>471
上条さん、魔法少女を多々買わせたくない、って言ってるからな

上条「いい加減にしろよ……」

 上条の目の前で、佐倉杏子が槍を振り上げる。
 さやかはそれに反応できていない。

上条「いい加減にしろよこの野郎!!!!」

 上条が、さやかの前に躍り出た。
 驚愕は、さやかと杏子の両方に。

さやか「当麻!? 馬鹿ぁ!!」

杏子「ははは! わざわざ右手を渡しに来てくれたのかい!?」

 杏子は槍の切っ先を当麻の右腕に向けなおし、突き出す。
 槍を向けなおすという一瞬のタイムラグ。
 その間に―――上条の右手が、杏子の槍を掴み取っていた。


 パキィン―――!! と音を立て、杏子の槍が粉々に砕け散る。

>>469
なら、上条さんよりも先に魔女倒せばいいだけだっていう。

>>478いやいや、魔法少女相手だったらそれでいいだろうけど、上条さんは事情が違うだろ
魔法少女だったらグリーフシード自分で使って満足するんだろうけど
上条さんはグリーフシードの絶対数を減らしちゃうわけだし

>>473 >>475
魔女の正体知ってるのほむほむだけか
知ってたらどういう行動とるのやら

>>480
だから、一匹残らず、上条さんよりも先に倒せばいいだけだろう?

杏子「―――ッ!? そんな、馬鹿な!!」

 杏子は即座に上条との距離を取る。

杏子「アンタの力は魔女にしかきかないはずじゃ……!!」

杏子(まさか……魔法少女にも効くのか!? あの右手、魔法少女すら殺すのか!?)

杏子「く…! 冗談じゃない! 話が違うじゃんかキュゥべえ!!」

 あまりの事態に混乱を収めきれないまま、杏子は今度こそ離脱した。

さやか「当麻…あんた、大丈夫なの?」

 さやかは上条の背中に恐る恐る声をかける。

上条「――――馬鹿野郎ッ!!!!」

 返ってきたのは叱責の声だった。

あんこへの男女平等パンチは?

>>485
身体スペックが違うから当たらないし、
当たったら当たったで殺しかねないから使いにくいっていう。

聖人()に当たるのに
魔法少女には当たらないのね

 全てが繋がった。
 病院で感じていた違和感。
 おぼろげながら覚えていた、右腕を無くした記憶。
 自分の右腕の回復と共に学校に来なくなったさやか。
 そして―――同時にまどかの肩から姿を消していたキュゥべえ。

上条「なんで…! なんでお前、魔法少女なんかに!!」

さやか「ふ、ふーんだ! しょうがないじゃない! 私にも叶えたい願いがあったんだから!!」

上条「なんでお前が、俺の右腕のために命を危険に晒さなきゃならないんだ!! この、大馬鹿野郎!!!!」

さやか「……ッ!! な、なに言ってんのよ。私の願いは、別に……」

上条「そんなんで誤魔化されるワケねえだろ……馬鹿野郎……」

さやか「………」

>>487
当たってないよ?
神裂にもアックアにも一方的にやられただけ。

 気まずい沈黙が降りる。
 さやかは必死で上条にかける言葉を探すが―――思い当たらない。

上条「さやか」

 再び口を開いたのは上条が先だった。

さやか「……なに?」

上条「お前はもう戦うな」

さやか「な…!!」

上条「いいか、絶対に戦うな。この町で生まれる魔女は、俺が全部……」

さやか「バ…! 何言ってんのよ!! アンタ、普通の人間じゃない!!」

上条「俺には右手がある!」

さやか「それ以外は普通の人間でしょ!? さっきの杏子ってやつにも全然敵わなかったじゃない!! この間も死にそうになってたじゃない!!」

上条「それでも、お前が戦うなんて絶対に駄目だ!! 俺が原因で魔法少女になっちまったってんなら、なおさら!!」

さやか「…………バカァ!!!!」

さやか「どうしてわかってくれないのよ!! アンタがそうやって私たちを守りたいって思ってくれてるように……」

さやか「私だって、当麻を、皆を守りたくて……頑張ってるんだよ?」

さやか「わかってよ! 認めてよ!! 私の気持ちを!!」

上条「…………」

さやか「……ッ!!」

 さやかは駆け出した。
 上条に彼女を追うことは出来なかった。
 追おうにも、魔法少女のまま去ったさやかに、身体能力はただの人間にすぎない上条が追いつけるはずも無かった。

上条「あ……」

 気付く。上条は、彼女に一番に言わなくてはならないことを言っていなかった。

上条「……最低だ、俺」

 ありがとう、と。
 まず上条はそう言うべきだったのだ。

おい、このままだと
マミとさやかちゃんまで魔女化しちゃうぞ
あんこちゃん、二人を助けてペロペロ

こっちの上条なら青は魔女化しないで済むだろ

??「やあ」

 三度目の来客は、部屋に戻ってからだった。

上条「……」

 上条は胡乱な目つきで窓からの来訪者を出迎える。
 さやかを魔法少女の道に引きずり込んだ張本人、キュゥべえ。

上条「何しにきたんだ?」

QB「何だか険悪だね。何かあったのかい?」

上条「どの口が言うんだよ」

QB「心外だな。さやかのことなら僕を恨むのは筋違いだよ。彼女は、彼女自身の希望で魔法少女になったんだ」

上条「そっちもだけど、そうじゃねえよ。佐倉杏子、あれはお前の差し金なんだろう?」

QB「何のことだかわからないな」

上条「お前から色々話を聞いた風だったぜ。アイツ」

QB「確かに僕は君の話を彼女にしたよ。でも、それを聞いて彼女がどう行動したかは、僕の与り知るところじゃない」

上条「………」

>>496
むしろ青の魔女化で、赤の言葉の真意をしるという最悪の結末が……

>>496
グリーフシードの供給が需要を下回れば
全員魔女化するのも時間の問題だぜ・・・・・・
悪循環に陥るからな

上条「……それで、何の用なんだ?」

QB「少し、君と話がしたくてね。さっきの佐倉杏子とのやり取りで、ようやく君の力の本質が掴めたよ」

QB「だから僕は忠告に来た。いや、予言といった方が正しいかもしれないね」

上条「なんだよ?」

QB「さやかは脆い。心も体も、魔法少女を続けていくには未熟すぎた」

QB「彼女は遠からず崩壊を起こすだろう。或いは、もしかしたらギリギリで生き残っていく可能性もあるのかもしれないが」



QB「どちらにせよ――――きっと、最後には君の右手が彼女を殺す」

上条「……ッ!!」

 思わず右手を振るっていた。
 キュゥべえはひらりと拳をかわし、外へと飛び出していく。

QB「僕の言葉を忘れないでいて欲しいな。君が、美樹さやかを本当に救いたいのなら」

 最後に、そんな言葉を言い残して。



 上条は携帯電話を取り出した。
 かける先は、さっき交換したばかりの番号。
 用件は、学校をサボってのデートの誘い。

 翌日、学校をサボり、上条とマミは街中で合流していた。

上条「すいません、マミさん。学校までサボらせちゃって」

マミ「ううん、いいのよ。……美樹さんのこと、知ってしまったのね」

上条「はい……アイツは俺のせいで魔法少女になっちまった。だから、アイツには戦って欲しくないんです」

上条「そのために、この町にいる場所は少しでも早く消し去ってしまいたい」

マミ「あまり、思いつめないようにね」

上条「はい。じゃあ、早速行きましょうマミさん」

※5行目「この町に居る場所は」→「この町にいる魔女は」 間違えた

上条「おォあ!!!!」

 異形の怪物に臆することなく右手を叩きつける。
 同時に異空間は消え去り、上条とマミは街の中に復帰した。

上条「これで三匹目……」

マミ「正確には魔女一体と使い魔二体よ。上条くん、一度休みましょう」

マミ「確かにあなたの力は魔力と違って回数制限もないし、枯渇もしないけど……もう随分体を動かしたでしょう?」

上条「いや…大丈夫。まだ……いけます」

マミ「息が上がってるじゃない」

 ヒュン、と風を切る音に上条は顔を上げる。
 視界に入ってきたのは正確に上条の右手を狙い飛来する赤い槍。
 しかし上条は臆さず右手を突き出した。
 手のひらと穂先が接触し、槍は瞬時に霧散する。

マミ「今のは……佐倉さんね! また性懲りも無く仕掛けてきて…!!」

 マミと上条はすぐに周囲を警戒する。
 だが、それ以上の攻撃が行われる様子は無い。

マミ「妙だわ……気配がない。もう近くにはいないのかしら」

QBはなんていうかキリエル人に似てる
超古代からいるもろ悪魔なところとか

上条「う…」フラ

マミ「上条くん!?」

 疲労が重なり、遂に立つこともままならなくなった上条を、マミは慌てて横から支える。

マミ「足に来てるじゃない……ほら、休みましょう」

上条「い、や…まだ、やれます……」

マミ「休みます!」

上条「う…はい」

 時は少し遡る。
 美樹さやかは今日もまたキュゥべえに導かれ、魔女退治に繰り出していた。

QB「しかし、君も頑張るね。マミだってここまで精力的に魔女退治に取り組んだりはしなかった」

さやか「早めに魔女を全員ブッ倒しとかないと、暴走する馬鹿がいるからね」

QB「やれやれ、実に似た物同士だね、君たちは」

さやか「何か言った?」

QB「いや、何でもないよ。さあさやか、早速魔女の気配だ。行こう」

この善意の空回りするところがまどからしい

QB「あれ? おかしいな。さっきまで確かに魔女の気配があったのに」

さやか「え? なくなっちゃったの?」

QB「うん。どういうことだろう。今この町で動いてる魔法少女なんて僕たち以外には……」

さやか「キュゥべえ、あれ!!!!」

QB「あれは……佐倉杏子? 魔法少女に変身しているけど、何をしているんだろう?」

さやか「こっちに気付いてない…! 今のうちに、叩く!!」

 さやかは魔法少女へと変身し、地面を蹴る。

杏子「……ッ!? チィッ!!」

 一直線に杏子の下に向かい、剣を合わせ―――そして、見た。


 見てしまった。

 上条とマミが共に寄り添い戦おうとする姿を。




さやか「……え?」

>>533
上条さんのは、自己防衛からくる善意だからな
虚淵シナリオと相性最悪だぜ・・・・・・

 どうしてかはわからないけど、逃げ出した。
 魔女退治も、佐倉杏子も、何もかもを放り出してさやかは逃げ出した。

さやか(なんで…? 当麻とマミさんが…なんで…?)

QB「さやか! 待ってよ! さやか!!」

 後ろから必死に追いすがるキュゥべえの声が耳に届く。

QB『どういうことだろう? 今この町で動いている魔法少女なんて、僕達以外には…』

 それはつまり、どういうことだ?
 魔女の気配が消えた先に、上条当麻と、巴マミが寄り添っていて。


 答えは明白だ。

 つまりは、そういうことだ。

さやか「はあ……はあ……」

 いつの間にか辺りは暗くなり、さやかは公園の池の前で立ち尽くしていた。

さやか「何やってんだろ、私……」

 自分が昼夜を問わず魔女と戦い続けたのは何のためだ?
 痛みに耐えて、死の恐怖を堪えて剣を振り続けたのは何のためだ?
 それは守りたい人がいたからだ。
 戦いから遠ざけたい人がいたからだ。
 でも、その人は、戦って欲しくなかったその人は。
 既にもう戦っていた。自分ではない誰かと寄り添って。

さやか「……あはは、意味ねー」

さやか「なんなんだろ、私。意味ないじゃん。いらないじゃん、私」

 ぽろぽろと、こぼれる涙を抑えることが出来ない。

さやか「うう、ふ、うぐ…!!」

 手の中には、青く輝くソウルジェム。さやかの祈った願いの具現。
 手にしたときには宝石のように思えたそれも、今はもう色を失ったガラクタにしか見えない。
 そしてさやかはその手にあったソウルジェムを池の中に思い切り放り投げ―――――


 そのまま、意識を手放した。

 目を開ければ、水に濡れたキュゥべえが自分の顔を覗きこんでいた。

QB「全く、何て真似をするんださやか。まさか自分自身を放り投げるなんて、どうかしてるよ」

さやか「……え?」

QB「僕が池の底からソウルジェムを拾い上げてこなければ、君死んじゃってたじゃないか。今度からは気をつけておくれよ」

さやか「待って…キュゥべえ……何を、何を言っているの…?」

QB「何って、当然だろ?」




QB「君達魔法少女の本体はこのソウルジェムなんだ。自分自身を大切に扱わなきゃいけないなんて、当然のことだと思うけど?」

やめてぇぇぇ!
さやかちゃんを追い詰めないでぇぇぇ!!
魔女っちゃううぅぅぅ!!

 夜の公園で、さやかは呆けたまま座り込んでいた。
 頭の中ではさっきのキュゥべえの説明がぐるぐると回っている。

QB『生身の人間の体で魔女と対等にやりあえるわけないだろう? だから、魔法少女はまず命の本体をこのソウルジェムに移し変えるんだ』

QB『そうして、いわば操り人形となった肉体で魔女とやりあう。人形みたいなものだから、修繕も簡単にきく』

QB『どうだい? 実に合理的なやり方だと思わないか?」


さやか「それって…それってつまり……」

 私はもう人間じゃないってこと?
 私はもう化物になっちゃったってこと?
 もう――――人間には戻れないってこと?

さやか「あは、あはは…」

 何だそうだったのか。
 なのに、ちょっとしたことで一喜一憂しちゃって、馬鹿みたい。
 初めから終わっていたんじゃないか、私は。

さやか「うあああああああああああああああああああああ!!!!!!」



まどか「あれは……さやかちゃん!?」

さやか「まどか! まどかぁ!!」

まどか「どうしたのさやかちゃん! 落ち着いて! 大丈夫!?」

さやか「化物になっちゃった!! 私、化物になっちゃったよぉ!!!!」

まどか「さ、さやかちゃん……?」

さやか「うああああああああん!!!!」

 こうして―――美樹さやかと鹿目まどかは魔法少女の秘密を知った。
 この時のまどかにさやかを慰めきることは出来ず、それを期待するのは余りにも酷な話で。


 翌日、さやかはいつものように魔女狩りに出かけて――――そのまま帰ってはこなかった。

頑張れ上条さんマジ頑張れ

ぎゃああああああ!!!

 さやかが姿を消して―――まどか、マミ、上条の三人は学校の屋上に集まっていた。
 上条とマミはこの日も魔女探索に乗り出すつもりだったが、まどかに呼び出しを受けたのだ。
 さやかのことで話がある、と。
 そして今―――まどかの説明を受けた上条とマミは言葉を失っていた。

マミ「俄かには受け入れ難いわ……私の体も、もうただの人形になってしまっているだなんて」

ほむら「本当よ」

 突然屋上に現れたほむらがまどかの言葉を補強する。

ほむら「疑うなら、今ここにソウルジェムを置いて学校の外に出てみればいいわ。すぐにあなたの体は力を失い、死に至る」

マミ「いえ…信じるわ。でも…」

 マミは頭を振って何とか言葉を飲み込もうと努力している。
 無理も無い。いきなりお前の本体は宝石だと言われてすんなり飲み込めるほうがどうかしている。
 それを心の準備無く、一人で知らされたさやかの衝撃は計り知れ無い。

まどか「それで、皆にさやかちゃんを探してもらいたいの。出来ればほむらちゃんも……駄目、かな?」

ほむら「……いいえ、協力するわ。事は一刻を争う状況かもしれない」

まどか「ありがとう。特に、上条くん……絶対にさやかちゃんを見つけてあげて」

上条「……わかった」

ほむら「上条当麻」

上条「何だ?」

ほむら「これを」

上条「これは……地図? この赤い印は?」

ほむら「そこに美樹さやかがいる可能性は高い。あなたはまずそこに行きなさい」

上条「えぇ!?」

ほむら「その場所、佐倉杏子がよく隠れ家で使う場所なのよ。あの二人、今は身を寄せ合っている可能性が高いわ」

上条「な、なんでそんなことわかるんだよ?」

ほむら「さあ…? 私にもよく分からないけど……何だか気が合うみたいなのよ、あの二人」

杏子「ほら、りんご」ポイ

さやか「………」

杏子「心配すんなよ。今度はちゃんと金払って買ってきたんだ。食え。肉体がただの操り人形でも、腹は減るだろ」

さやか「……ありがと」

杏子「しっかし、ソウルジェムが本体ねぇ……クソ、キュゥべえのヤロウ。契約の時にはそんなこと一言も言ってなかったじゃねえか」

さやか「あんたは……何ともないの? 自分が化物になっちゃったって聞いて……」

杏子「んあ? そらショックだけどよー。お前ほどじゃねえな。魔法が使える時点で、もう大分化物って自覚あったし」

さやか「そっか……強いね、あんた」

杏子「アンタが気にしすぎなだけだと思うけど?」

さやか「そうかな?」

杏子「そうだよ」

さやか「でも……色々考えちゃうんだ。私、こんな体になっちゃって、それでも皆の傍にいていいのかな、とか」

杏子「まあ魔法少女は大抵魔法少女同士でつるむしかないけどな。あぐ」

さやか「もうこれから先、私の体は成長することも無いのかな。子供を産んだりすることも出来ないのかな、とか」

杏子「こ、子供…!? ず、随分アダルトなこと言うんだなアンタ」

さやか「何考えてんのよ、えっち」

杏子「えっちなのはお前だあ!!」

あんこちゃんド変態

さやか「……ありがと、アンタのおかげで大分楽になったわ。私、一度帰るね。お父さんとお母さんも心配してると思うし」

杏子「んあー…オイ、さやか」

さやか「ん?」

杏子「あのー…ア、アタシはさ、しばらくはこの建物に居るからさ」

杏子「……なんかあったら、来ていいから」

さやか「……ありがとう。ごめんね。私、アンタのこと大分誤解してた」

杏子「…ふん!」

さやか「でも、また当麻を襲ってくるようだったら、その時は容赦なく潰すからね」

杏子「だったらお前がアイツの首根っこ掴んでふん縛っておきなよ。魔女退治なんて無謀なことしないようにさ」

さやか「あはは。いーね、ソレ。そうか、そんな手もあったかぁ」

 さやかは杏子が根城にしていた教会跡を後にする。
 太陽の眩しさが憂鬱だった空も、幾分晴れやかな気持ちで見上げることが出来た。

さやか「うん…何とか、吹っ切れた、かな?」

 そうして、さやかが家に向かって歩き出してから程なくして―――


上条「さやか!!!!」

 今一番聞きたかった―――或いは聞きたくなかった―――少年の声が耳に届いた。

上条「げっへっへ、こんな人気のない場所をフラフラしやがってよぉ、誘ってやがんのか?」

 一気に体が冷たくなった。
 吹っ切れたなんて嘘だった。
 恐怖が、さやかの思考と行動を縛る。

さやか「来ないで!!!!」

上条「ッ!?」

 駆け出そうとしていた上条は、思わぬ拒絶の言葉に足を止める。
 さやかの顔に浮かんでいるのはまるで泣いているような―――そんな笑顔。

さやか「まどかから聞いたんでしょ? 私、化物になっちゃったの。もう、当麻とは一緒に居られない」

上条「………お前は、お前だろ」

さやか「切っても突いても死なない体。あはは! ゾンビだよそれ! 完ッ全な化物じゃん! ひょっとしたら私聖水で死んじゃうんじゃないの!?」

上条「うるせえよ!!!!!!」

さやか「…!」ビクッ!

上条「お前はお前だろうが!! さやかは、さやかだろうが!! 俺にとっては、何にも変わっちゃいねえよ!!!!」

インデックス「私と契約して魔法少女になってほしいかも!」
一方通行「俺と契約して魔法少女になりやがれェ!」

ゾンビだって良い、位はいってやれよ、上条さんwww
否定は良くないぜ

さやか「綺麗事言わないでよ!! なら、アンタはこんな体になった女の子を好きになることが出来るの!?」

さやか「子供も産めないかも知れない!! 年もとれないかもしれない!!」

さやか「こんな化物の体を、アンタは抱きしめることが出来るの!!!?」

上条「出来るッ!!!!」

さやか「な…!!」

上条「こんなこと言いたかねえけどなあ!! 気付いてないみたいだから言うけどよお!! お前可愛いんだよ!!」

さやか「な…な…!!」

上条「それに優しい!! 毎回俺の病院に付き合ってくれるとこなんて有難すぎて涙が出るよ!!」

上条「お前を好きになることが出来るかだと!? 出来るに決まってんだろうが!!」

上条「俺だけじゃない! そこら辺の男を捕まえて事情を説明して聞いてみろよ!! むしろこっちこそお願いしますってなもんだ!!」

上条「それくらい自覚してろ!! 馬ぁぁぁ鹿!!!!!」

いいぞぉ!

上条「ゾンビだっていいけどお前はいやだ」

さやか「……馬鹿なんて、アンタにだけは言われたくない」

上条「うぐ」

さやか「ホントに、いいの?」

上条「何がだよ」

さやか「私、こんな体になっても、アンタのそばにいていいの?」

上条「いい。恥ずかしいんだから何度も言わすな」

さやか「ホントだ。かっこつけてるけど、耳真っ赤」

上条「うるせい」

さやか「……当麻、傍に行ってもいい?」

上条「おう、どんとこい」

 恐怖で地面に縫い付けられていた足を、さやかはようやく踏み出した。
 変貌した自分を受け入れてくれた幼馴染の下へと駆け出す。
 さやかの目には、もう上条当麻しか映っていない。
 そして、上条当麻の目には。


 さやかの背後、道の向こうで微笑むキュゥべえの姿が映っていた。




『彼女は遠からず崩壊を起こすだろう。或いは、もしかしたらギリギリで生き残っていく可能性もあるのかもしれないが』



『どちらにせよ――――きっと、最後には君の右手が彼女を殺す』



無敵のそげぶで何とかしてくれますよねぇ~!?

 上条は咄嗟に右腕を引いていた。
 万が一にも、自分の右手が触れて、美樹さやかを殺してしまわぬように。

さやか「え…?」

 それは、さやかの目にはどう映っただろうか。
 その胸に飛び込もうとした瞬間、上条は右手を引いた―――つまり、半身を仰け反らせた。
 それは、さやかの目には明確な拒絶反応に映ったのではないだろうか。

さやか(ああ、そうか―――――)

 さやかにはその上条の反応に見覚えがある。
 上条の反応は、自分が台所でゴキブリを見つけたときのソレと一緒だ。
 どうしようもなく生理的嫌悪感を催すものと相対したときの反応だ。

さやか(そうだよね―――そんなこと、あるはずないってわかってたのに、変に期待しちゃって)

上条「待て!! さやか、今のは!!!!」




さやか(私って――――ホント馬鹿―――――)

うわああああ

やめろ

 ベキリ、と音を立ててさやかのソウルジェムがひしゃげた。
 既に最初の面影はまるでなく、黒く黒く濁ったソウルジェムがその溜め込んだ穢れを周囲に撒き散らす。

上条「さ…や…か…?」

 黒い穢れは大気の中で集まり形を為す。
 現れたのは異形の化物。
 周囲を囲んだのは奇妙な空間。
 紛うことなき、『魔女の結界』。

上条「魔女…? どうして、急にこんなところに魔女が…?」

 上条は見た。黒く濁ったさやかのソウルジェムが形を変えたのを。
 ソウルジェムが変貌したそれは、依然マミから見せてもらった、魔女を生み出すというグリーフシードに酷似していた。

上条「魔女…?」

 前も疑問に思ったはずだ。何故、性別の曖昧な化物たちを、女だと断定しているのか。
 この日本では成長途上の女のことを少女と呼ぶ。
 ならば、魔法少女と呼ばれるもの達が成長すれば、その行き着く先は―――――

上条「嘘だ……」

 目の前に現れた魔女を前に上条を拳の振るう先を定められず、ただ呆然と立ち尽くしていた。

これはもうキスするか押し倒すしかないで




QB「さて、これで上条当麻は魔女になったさやかと二人きりだ」


QB「しばらくは誰の援助も期待できない」


QB「……これであっさり死んでくれれば僕も安心なんだけど」


死ねQB死ね

上条「う…あ…」

 上条は、倒れ付していたさやかの体に歩み寄る。
 抱えてみると―――ぐったりとしたさやかの体は、まるっきり死体のようだ。

上条「嘘だよな…はは…嘘だろ?」

 迫りくる魔女の攻撃。宙を舞い突進する車輪の群れ。

上条「うああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 上条は無我夢中でそれらを右手で打ち払った。
 自身を守る防衛反応、からではなく。
 ただ、さやかの体を守りたくて。

だから手袋使えって、連載当初からいってんだろうがああああ!!!

杏子「なんだってこんな近場で魔女の結界がいきなり現れてんだ!?」

 飛び込んできたのは赤い魔法少女、佐倉杏子。

杏子「おい、お前何やって……さやか!? おい説明しろ! こいつはどういう状況だ!!」

上条「さやかは…さやかは……」

杏子「てゆーか、お前何ボーっとしてやがんだよ!! いつもはアホみたいに魔女に突進していくくせに!!」

杏子「今日は見逃してやるからさっさとアイツ消してこいよ!!」

上条「あれは、さやかなんだ……」

杏子「はぁ?」

上条「さやかなんだ……あの魔女は」

杏子「……意味わかんねえし!! オイ、いいから逃げるぞ!!!!」

ちょっと休憩

>>642
っても、魔法少女→魔女は不可逆な変化だぞ……
俺のさやかちゃんどうなるんだよ
……オクタヴィアちゃんペロペロ

>>651
いつから不可逆な変化だと錯覚していた?

 そうして―――上条は杏子に連れられて、魔女の結界から逃げ延びた。
 ただ絶望のままに、上条当麻は街を歩く。杏子はさやかの体を抱え、自らのねぐらへと戻っていった。

ほむら「真実を知ったのね」

 いつの間にか、上条の隣に暁美ほむらが立っていた。

ほむら「あなたならもしかして、と思ったのだけど……やはり、美樹さやかの魔女化を止めることは出来なかったのね」

上条「お前は、知ってたのか…? 魔女が、魔法少女の成れの果てだってこと」

ほむら「……ええ」

上条「そうか……」

ほむら「あなたは、これからどうするの?」

上条「わからない……頭ん中がぐちゃぐちゃで、今は何も考えられない」

ほむら「美樹さやかのことだけど、まどかと巴マミには真実を伏せていてほしいの」

ほむら「まどかが知れば彼女はきっと行動を起こす。そこをキュゥべえに突かれるかも知れない」

ほむら「巴マミは…あなたの知るとおり、あまり心が強くない。真実を知って、どんな行動に出るかわからないわ」

上条「なあ……キュゥべえの目的ってなんなんだ? アイツは執拗に魔法少女を生み出して、一体何を考えている?」

ほむら「……そうね。あなたには、本当のことを話してもいいかもしれない。途方もない話になるけど、信じてくれるかしら?」

上条「……信じる努力はするよ」

伝えてどうこうなる問題でもないだろ

機長に因縁つけた人とは思えないほど冷静な上条さんだ
これなら、もしかしたらもしかするかもな

QB「僕の目的は宇宙を延命させるためのエネルギーの回収さ」

 そう得意気に語るキュゥべえの目の前には、佐倉杏子と鹿目まどか。
 杏子はさやかを救う一縷の望みをかけて、彼女の親友であるまどかに接触を持った。
 まどかは魔法少女が魔女化するという真実を知って―――現れたキュゥべえに問いただした。
 「あなたの目的は何なの?」と。

QB「この宇宙は緩やかに消失に向かっている。この世界に存在するあらゆる事象は誕生と消失のエネルギーバランスがまるでとれちゃいないんだ」

QB「宇宙のエネルギーは徐々にその総量を減らしている。そこを補う手段として、僕達はこの星に住む君ら人類の感情エネルギーに目をつけたんだ」

まどか「そんな…そんなことのために、さやかちゃんを騙して、利用したの…?」

QB「むしろこの宇宙が存続するための礎となれたんだ。それは君たち人類にとっては名誉に値することじゃないのかい?」

まどか「ふざけないで…!!」

QB「やれやれ、全くわけがわからないよ」

QB「それにしても、まったくやれやれだ。君も余計なことをしてくれたね、佐倉杏子」

杏子「なにィ…?」

QB「あそこで君が上条当麻を助けるなんて、全く予想外だったよ。一体どういう心境の変化だい?」

杏子「うるせえ、バカ。もしあれが、あの魔女が本当にさやかだとしたら……あいつに、上条を殺させるわけにはいかないだろ」

QB「ふう、君たち人間は本当に僕達の想定外の行動ばっかりとってくれるね。まったく合理的じゃない」

まどか「どうして…そうしてキュゥべえはそんなに上条くんを目の敵にしてるの?」

QB「彼の右手は魔女のような超常的なものを問答無用で打ち消してしまう。何の対価も払わず、ただ一方的に殺しつくしてしまう」

QB「宇宙のエネルギー総量を増やしたい僕達にとってこれは看過できない問題だ。なんせ、彼の右手はエネルギーのマイナスしか生まないのだから」

杏子「一度魔女化した魔法少女を元に戻すことは不可能なのか?」

QB「どうだろう? 前例は無いね。でも、確実にひとつ、彼女を元に戻す方法はある」

まどか「え…?」

QB「まどか。君が願えばいいのさ。僕と契約してね」

ほむら「……キュゥべえの目的は、こんなところよ」

上条「魔法少女が魔女化するときに生まれるエネルギーの回収。そして、鹿目は特に途方も無いエネルギーを生み出す可能性を秘めている」

ほむら「そう、だからキュゥべえ……インキュベーターはまどかの魔法少女化にあれだけ拘っている」

ほむら「そしてそれだけは阻止する……それが私の目的」

上条「お前がそうまでして鹿目に拘るのにも、何かワケがあるのか?」

ほむら「まあ、そういうことよ。さて、次は私からも聞かせてちょうだい」

ほむら「あなたは……何者なの?」

 翌日―――

杏子「いいか? 私がとにかく時間を稼ぐ。お前はさやかに向かって呼びかけ続けるんだ」

まどか「う、うん」

杏子「クソ…上条のヤツ、一体どこに行ったんだ。この作戦をやるには、アイツがいた方が効果的だっていうのに」

 杏子とまどかは空間の歪みの前に立つ。
 杏子が手をかざし―――魔女の結界への扉が開かれた。

杏子「……行くよ」

まどか「……うん」

 魔女の結界――その内部は、まるでコンサートホールを模したような空間だった。
 そのステージの中央に、魔女と化したさやかはいた。

まどか「さやかちゃん!! お願い! 元に戻って!!」

杏子「さやかぁーーー!!!! 聞こえるかおい! 聞こえてたら返事しろぉーー!!!!」

 騎士のような姿の魔女が、その手に持つ剣を振るう。
 その動きに呼応するように、いくつもの車輪が二人を目掛けて襲い来る。

杏子「まどか! その結界から出るなよ!!」

まどか「う、うん!!」

杏子「叫べ!!」

まどか「さやかちゃーーん!!!!」

杏子「クッソ……やっぱり駄目なのかよ…!」

まどか「杏子ちゃん、危ない!!」

杏子「え、うわ!!」

 車輪のひとつが杏子の背中に直撃した。

杏子「が…ふ…」

 思わず地面に膝を突いた杏子に、次々と車輪が迫る。

杏子「ク……っそぉぉおおおおお!!!!!!」

 切り払い、振り払い―――地面に叩きつけられる。
 杏子の口から血の塊が吐き出される。

まどか「あ…あ…!」

杏子「……呼べ…まどか……アイツを…元に戻してやって…くれ…」ゴフッ

まどか「う…うぅ…!!」




まどか「キュゥべえ!! 居るんでしょ!? 見てるんでしょ!? キュゥべえ!!」

杏子「バ…お前……!」

QB「どうしたんだい? まどか」

まどか「キュゥべえ! 私魔法少女になる!! 魔法少女になるから!!」

QB「……願いを僕に伝えて。それで契約は完了だ」

まどか「さやかちゃんを元に戻し――――」


 ピタリと、世界が止まった。
 何もかもが静止した世界の中で、たった二人の影だけが動きだす。

 暁美ほむらと、上条当麻。

思えば、まどか原作でこのシーンでまどかが契約をしようとしなかったのは不思議だな。
ゾンビ化するとわかっていても、さやかを元に戻そうとまでしていたのに。

ほむら「間に合った―――!!」

上条「……悪いな、鹿目。それだけは駄目だ。そんなこと、絶対にさやかは望んじゃいない」

 静止した世界の中で、二人はそれぞれにやるべきことを行う。
 ほむらはキュゥべえの排除を。
 そして上条は―――魔女と化したさやかの元へ。

上条「ごめんな、さやか。俺のせいだ。何もかも俺のせいで、お前をこんな目に合わせちまった」

上条「この償いは、絶対にするからさ……また俺のこと、当麻って呼んでくれるか?」

ほむら「上条当麻! 早くしないと時間が―――!!」

 止まっていた時間が、動き出す。

QB「キュビッ!!!?」ズガラララ!

まどか「キャアアア!!」

杏子「お前……上条!? いつの間にそこに……待て、オイ、お前、何をする気だ!!」

上条「悪いな、佐倉。さやかがこうなったのは、全部俺の責任だ」

上条「だから……決着は、絶対に俺の手でつけなくちゃいけないんだ」

杏子「待て! オイ、ちくしょう! 諦めんのか!? お前―――さやかを諦めんのかよ!!!!」

上条「諦めたりはしないさ……さやか、俺は絶対にお前を諦めたりはしない!!!!」

 上条の右手が拳を作り、そして――――

杏子「やめろぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!」

 そのまま、魔女の懐へと――――叩き込まれた。

「命は消せない」この制約が吉と出てくれればいいが。

今まで魔女が消せてるんだから、その制約は無意味だろ

 キュゥーン――――と甲高い音が響き、結界の中が光で満たされる。

 その時、上条の目の前に広がっていたのは、かつて見た夢の光景。

 誰も気付かない地面の下、世界の裏で少女達が泣いている。

 その泣いている少女たちの中に、上条は、確かに美樹さやかの姿を見つけた。

上条(ごめん―――もう少しだけ、待っててくれ)

 そしてさらに眩い光が上条の視界を塗りつぶし―――魔女の結界は完全に消失した。

天使は?

 上条、ほむら、杏子、まどかの四人は元の世界へと復帰する。

まどか「そんな……こんなのって、ないよ……」

 ぼろぼろとまどかの目から涙がこぼれ出す。

杏子「お前ぇぇぇええええええええ!!!!」

 杏子が鬼の形相で上条に掴みかかった。

杏子「どうして殺した!!? どうして殺したんだ!!!!」

杏子「さやかはお前のために……お前のためだけに……!!」

杏子「お前だけは、さやかを殺しちゃだめだろぉがよおおおおおおおおお!!!!」

 杏子が拳を振りかぶる。上条はその拳を避けようとはしない。
 だが、杏子の拳は振り下ろされることはなかった。


 世界が、暁美ほむらの手によって止められていた。

>杏子「お前だけは、さやかを殺しちゃだめだろぉがよおおおおおおおおお!!!!」
上条「その幻想をぶち殺した(笑)」

ほむら「……ありがとう、美樹さやかのこと、決着をつけてくれて。ここは私が何とか納めるわ。あなたは今のうちに……」

上条「いや、いいんだ。時間停止を解いてくれ、暁美」

ほむら「……そう。それと、今のうちにひとつだけ伝えておくことがあるわ。いえ…これは私からのお願いよ」

上条「……なんだ?」

ほむら「あなたは魔法少女が魔女となる事実を知り、一度は絶望しながら、なお拳を振るうことをやめなかった」

ほむら「そんなあなたになら、心からお願いできる……お願い、私と一緒にワルプルギスの夜と戦って」

上条「……」

ほむら「あの時話したわよね。まどかの魔法少女化を食い止めるための最後の難関、最強の魔女……」

ほむら「あなたとなら超えられる。あの夜を、まどかの力を借りずに乗り切ることができる」

 上条とほむら以外、何もかもが静止した世界。
 まったく無音となった世界で、二人の声だけが響く。

上条「大丈夫だよ、暁美」

 上条は、そう言って、ほむらに向かって笑いかけた。




上条「大丈夫なんだ。ワルプルギスの夜は来ないよ」


上条「その前に、ケリをつけることが出来る」


上条「あの時、お前が全部教えてくれたから――――全部、思い出させてくれたから」




ほむら『あなたは本来この世界にいる存在ではないわ』


ほむら『美樹さやかの幼馴染の名前は「上条恭介」…姿形も正確も今のあなたとはまるで別』


ほむら『バイオリンがうまかったのも彼。交通事故にあって入院していたのも彼』


ほむら『どうしてあなたが途中から彼と入れ替わっているのか、その原因には皆目見当がつかないけれど……』


ほむら『あらためて問うわ』


ほむら『上条当麻―――――あなたは、何者なの?』

なにこの超展開

 時が動き出す。杏子の拳が振り下ろされ、上条の頬に叩き込まれる。

杏子「この…この…!!」

上条「……落ち着けよ佐倉。俺が何にも考えてないとでも思ったのか?」

杏子「……なにい?」

上条「キュゥべえ! どうせ生きてんだろ!? 出てこいよ!!」

まどか「……上条くん?」

ほむら「何を……?」

QB「やれやれ全く、あんなにあっさり殺されたあとで、出来れば姿を現したくはないんだけどね」

まどか「キュゥべえ!! さっきほむらちゃんに殺されたはずじゃ…!!」

ほむら「スペアなんていくらでもあるのよ、コイツは」

>>700
超展開ではないさ。
強いて言えば、最初からだろ?

>>702
うわぁ・・・

QB「それで? 一体僕に何の用だい? 上条当麻」

上条「ひとつ聞かせろよ。お前と契約して魔法少女になるには、やっぱり女の子じゃないと駄目なのか?」

QB「……は?」

上条「俺と契約して願いを叶える事は出来ないのかって聞いてんだよ、キュゥべえ」

まどか・ほむら・杏子「!?」

QB「男性と契約ってこと自体は、出来なくはないと思うけどね。僕達が少女をターゲットにしていたのは感情の起伏が激しくて一番効率がよかったからだし」

QB「でもそれとは別の理由で君には無理だと思うな。その右腕がある限りは」

上条「うるせえな。そんなのやってみなきゃわかんねえだろ」

QB「やれやれ、まったく。いいけどね、別に試すくらいは。それで、君は一体何を願うんだい?」

上条「美樹さやかを生き返らせてくれ」

超展開と言うよりは、上条さんに都合の悪い事が起こらない「上条補正」だな

杏子「あんた…!!」

ほむら「上条…当麻!!」

上条「なんだよ、いいだろ別に。鹿目には契約させないし、さやかは生き返るし、万々歳のハッピーエンドじゃねえか」

QB「……残念だけど、万々歳のハッピーエンドにはならないみたいだよ」

上条「え?」

QB「やっぱり駄目だった。君の持つエネルギーとしては願いをかなえるのに十分だったけど、やっぱりその右手でキャンセルされてしまったよ」

上条「え? マジかよ!? なんだよソレ!! ぐわあ! 大失敗じゃん!!」

まどか「……上条、くん…?」

上条「ごめんなみんな。目論見外れちまったわ。うわー、これじゃ俺さやかを殺しちゃっただけじゃんかよ~」

ほむら「あなた…なにを…?」

上条「なあみんな……俺がさやかを殺しちゃったこと、さやかの父ちゃんとか母ちゃんには内緒にしてくれよな?」

 ズバン、と肉が断たれる音がした。
 杏子の振り下ろした刃が、上条の右腕を断ち切る音だった。

なんだこの上条さん!(驚愕)

杏子「こんな……こんなやつのために……さやかは……!!」

上条「へ…へへ…」

杏子「何がおかしい!!!!」

上条「ごめんな、佐倉……利用するみたいになっちゃって。自分でするのは、流石に怖かったからさ……」

杏子「何を……何を言って……?」

上条「さあ…キュゥべえ……右腕は無くなった……改めて、契約といこうぜ」

杏子「…ッ!?」

まどか「上条くん、まさか……!」

ほむら「さっきの言動は、わざと……!?」

QB「天晴れだね。そうまでして美樹さやかを生き返らせようというのかい? いいよ、なら……」

上条「何…言ってんだ…改めて、契約を結ぶんだ……願いも、もう一度俺の口から言うのが筋だろう……」

QB「ふう、やれやれ。人間って言うのはどうしてこんな無駄な段取りに拘るんだろうね」

 右腕を断たれ、どくどくと出血し、蒼白になった唇で、しかし上条はしっかりと言葉を紡ぐ。

 彼の願いを、口にする。

マジレスすると右手なくなっても中の人いるから無理なんでねーの?






上条「俺の願いは――――この世界で生まれた全ての魔法少女の救済だ、インキュベーター」






>>722
最初に切断されたときに何も起こっていないだろ?
加えて言えば、中の人の能力は「無効化」ではない。

          >.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::: /.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::丶、
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          ー‐ァ.:::::::::{ 厶イ:::ハ/  `ニ ノ.:::jノ.::::::八/.:::'でうラヽ/.:::|:::::::::::::::::::\
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          ∠::::::::::::八 :.       \:::::/   }::j\    /.::::::/ ∧ハ|
           厶イ:::::::::ーヘ            ´/ノ.::::::\_/.::::::/イ  }
            ノイ::/i:::ハ         {:::::::::::::::::::::::::::∧丿

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              /   ∨/j   \:::\  ;::::. .<:::::'///\
             /     ∨′   \:::::: ̄::::::::::::::::'/////⌒ヽ、
            /         >x:::.、   \::::::::::::::::::::{'/////////\
| ̄上 ̄条 ̄ ̄当 ̄麻 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\

|────────────────────────────────
| 僕の右腕を治してください!!!!
| 
|________________________________

まどか神「えっ^^;」

因果の量が足りんだろ
異世界から来た上条さんじゃ

QB「……!!」

上条「お前達がこの世界で生み出してきた魔法少女―――最初の一人から、最新の一人まで―――救ってもらうぜ、インキュベーター!!」

QB「無理だ…!! そんな途方も無い願い……そんなものを叶えるのに、一体どれだけのエネルギーがいると……!!」

 その時―――上条の体から、黄金の輝きが放たれた。
 思わず目を覆ってしまうほどの輝きは、契約が成立したことを示すサイン。

QB「馬鹿な! どうして君にここまでの力が!? 因果の特異点と化したまどかにならともかく……!!」

 いや、違う。キュゥべえは知っている。
 世界には極稀に、こんな途方も無い力を持った人間が現れる。
 暁美ほむらの時間遡行により因果の糸を束ねられた鹿目まどかをイレギュラーな特異点とするならば、言わば正当な特異点。
 時代の節目に現れる、世界の流れを変えうる者。
 すなわち――――

QB「『英雄(ヒーロー)』……!!」

スーパースタイリッシュヒーロー

あー・・・・


えっ

まどか踏み台の上条さん(笑)SSか

杏子「あ…れ…?」

ほむら「こ…れ…は…!?」

 佐倉杏子、暁美ほむらのソウルジェムが砕け散る。
 しかし、彼女たちの命のともし火が消えることはない。
 それが意味することはただひとつ――――

杏子「魔法少女じゃ……無くなった!?」

ほむら「そんな…こんなことって……」

QB「そんな……! 消えていく……! 世界から、僕達が契約した魔法少女たちが……!」

 消えているのは魔法少女だけではない。
 魔女だって、元は魔法少女なのだ。その素体となった少女が、時間を遡り救われるというのなら。
 この世に、魔女が栄える道理は無い。

 そして――― そして―――――

さやか「あれ…? ここは…?」

 とある少女のにとっての救済は、少年との再会の他にはありえない。

魔法少女上条さんを期待していた俺にあやまれ

まどか「さやかちゃん!!」ダキッ!

杏子「さやか!!」ダキッ!

さやか「うわあ!! なんじゃあ!!」

まどか「良かった……良かったよぉ~!!」

杏子「ざやがぁ~~!!!!」

さやか「何なの!? 何がどうなってるの!? ってうわ! 当麻また右手ないし何か光ってるし!!」

杏子「ごめんなざい~~、右手はアダジがやりまじだぁ~~」

さやか「にゃにおう!!!?」

 そのやり取りに、上条は頬を緩ませる。
 ああ、よかった、と。
 俺は、この子達を救うことが出来たのだと。

なんかこう、学校で嫌われまくってるぼっちが一人休み時間に書いてそうな・・・

えー・・・


阿部さんの願いよかマシだけどさぁ

最初の魔法少女消えたら、それ以降の歴史が全部変わったパラレルワールド生まれるだけだな
まどかは「全ての世界」で願ったから、パラレル派生阻止なんてべらぼうな奇跡起こしたんだし

QB「だけど……上条当麻、君の願いには致命的な欠点がある」

上条「………」

QB「君の願いは全ての魔法『少女』の救済……その対象に、『君』は入っていない」

QB「空を見上げてごらん。面白いものが現れるよ」

 キュゥべえの言葉に空を見上げた者は、皆一様にごくりと唾を飲み込んだ。
 時間は既に深夜にさしかかろうとしている。
 なのに―――空には、太陽が輝いていた。

QB「あの太陽に見えるのが、君の途方も無い願いで生まれたソウルジェムだ」

QB「見えるかい? 球体の端から段々黒ずんでいっているだろう? まるで、日食のように」

QB「あれは穢れだ。君の願いによって無理やり昇華され、行き場を失った穢れが君のソウルジェムに集中している」

QB「すぐだ。おそらくは君の願いが叶い切った瞬間―――君は史上最悪の魔女になる」

QB「おっと、魔女っていうのはおかしいね。言うなれば魔人―――いや、魔神、か」

QB「それだけのエネルギーを回収できれば十分だよ。僕達の任務は十分に達成される」

これで、切り落とした筈の幻想殺しでそげぶしたら笑う

ここでどう説教するかにかかってるぞー


がんばれっ^^

上条「そんなことは、わかってたさ」

QB「…なに?」

上条「この世界から、魔法少女と魔女を消してしまったら、穢れの行き先がなくなっちまう」

上条「行く先をなくした穢れ、呪いは世界中に散らばっちまうだろう。もしかしたら、魔女に変わる新たな化物が生まれちまうかもしれない」

上条「だから……受け皿が必要だった。こぼれていく穢れを掬い取る、受け皿がな」

 そう言って上条は、己の両手で水を掬い取るようなジェスチャーをしてみせる。

QB「……え?」

 己の、両手で?

QB「……何故!? 君の右腕が復活している!!!?」

上条「言ったろ? 全部思い出したんだ。……どうやら、俺とこの右手は切っても切れない関係らしくてな」

カミヤンはもとの世界へ戻るのか
それとも元魔法少女達とイチャイチャして過ごすのか

ヲヤスミ、ケダモノ

>>798
けがれを全部引き受けて帰還→一方通行と御坂におしつける じゃね?

>>798
幻想殺しが完全に復活した以上
不思議テレポートも起きんから、今いる場所から自力帰還出来なきゃ移動不可能

QB「馬鹿な…! そんな…!?」

 いや、思えば兆候はあった。
 気付くべきだった。上条の願いが、右腕によって無効化された瞬間に。
 ならば、何故、あの時美樹さやかの願いで上条当麻の右腕は復活したのか。
 答えは単純明快だ。上条当麻の右腕は、美樹さやかの願いとは別の原因で復活していたのだ。

 このままでは、上条当麻の願いが叶い、魔神へと変貌する前に―――彼の命は消滅してしまう。

QB「ぐ、く…上条、当麻ぁぁぁぁあああああああ!!」

上条「どうした。声が荒いぜ? 感情ないんじゃなかったんかよ! インキュベータぁぁぁああああああ!!!!」

マミさんの願いをなかったことにしたら消えてまうやろ・・・

まどかは「魔女にまるまえに消し去る」願いだからよかったけどさ

>>810
だから今から全世界をそげぶしにいくんだよ

>>799
魔女は琥珀色の空を見るのか?

上条「いいか!! 覚えとけ……”今回俺だったのはたまたまなんだ”!!」

上条「お前達がこれから先、またこの世界で何かを企んだとしても、きっとまた他の誰かがそれを食い止める」

上条「何度でも、何度でもだ!! 人間舐めてんじゃねえぞ!! クソッタレ!!」


QB「………」

>>812
全世界どころか、今いる世界からも移動できねえよ
幻想殺しの効果で

あ、あぁ・・・

お前がそれでいいならいいんじゃね・・・

>>813
魔女がバイドと同化したらどうなるの

QB「ふぅ…わかったよ。僕たちはこの世界から手を引く」

QB「何度積み上げても、こんな風に台無しにされてしまうんじゃ、あまりにも非効率的だからね」

QB「僕達はまた、別のやり方を見つけるさ」

QB「宇宙の危機を見捨てた君たちは、精々楽しく人生を謳歌するといい」

上条「嫌味かよ。やっぱりお前感情あるだろ」

QB「無いよ。感情があれば、今頃君を八つ裂きにしているさ」

 そうして、キュゥべえは姿を消した。
 あたりはまた薄暗くなっている。
 それは、上条のソウルジェムを穢れが覆い尽くしつつあることを意味していた。

さやか「当麻……」

 つまりそれは、別れのときが近づいているということ。

>>825
魔法少女→バイド化魔法少女
魔女→A級バイド

さやか「いやだよ…どうして当麻が消えなくちゃならないの…?」

さやか「やだ…消えないで。また、私にバイオリンを聴かせてよ…!」

 さやかの言葉を聞いて―――上条は笑った。

上条「大丈夫だ。『上条』は消えない。きっと『上条』はお前にまたバイオリンを聞かせてくれるさ」

さやか「……当麻?」

 上条の言葉の意味に気付いたのは、暁美ほむらだけだ。
 そして―――上条の体は輝きを増し、反対に上空のソウルジェムは一切の輝きを失くし―――


 上条の体は、その場から消え去っていた。


ほむら「行ってしまったわね……」

まどか「え? ほむらちゃん……」


さやか「行っちゃったって、誰が?」

円環の理(笑)

 繰り返された時間軸の中で、とある一人の少女が祈った。

 この馬鹿げた魔法少女というシステムを、ふざけた幻想を粉砕してくれる存在を。

 それに―――ひとりの少年が応えた。

 自身の持つ能力のため、記憶も失い、なおかつ存在の近い他者の立場を借りねばならぬという不具合を起こしてまで、それでもなお。

 これは、たったそれだけのお話。

 <エピローグ>

まどか「おはようさやかちゃん! 仁美ちゃん!」

さやか「おはようまどか!!」

仁美「おはようございます、まどかさん」

まどか「さやかちゃん、今日も上条くんのお見舞い行くの?」

さやか「うん、最近『恭介』のやつ、リハビリの調子がいいって張り切ってるんだ!」

仁美「さやかさん…そのことで、あとで少しお話をよろしいでしょうか?」

さやか「え? うん、いいよ?」

まどか「あ、あれマミさんだ! おーいマミさーん!!」

マミ「おはよう、鹿目さん」

担任「転入生を紹介しまーす」

杏子「さ、佐倉杏子です……よろしく」

さやか「ぶは! 制服似合ってなーい!」

杏子「う、うっせーうっせー!!」

まどか「ねえほむらちゃん。今日のお昼はマミさんや杏子ちゃんも一緒に皆で食べようよ!」

ほむら「……ええ、よろこんで」

さやか「それで…仁美、話ってなーに?」

仁美「ええ、実は上条さんのことなんですけど……」

さやか「恭介がどうかした?」

仁美「ええ…実は……」



さやか「そっか……仁美も恭介のこと好きなんだ……」

仁美「『も』ということは、やはりさやかさんも……」

さやか「たははー…やっぱりあんだけ毎日見舞い行ってればばれるよねえ~」

仁美「それで、今日はさやかさんへの宣戦布告に参りましたの」

仁美「さやかさんは私にとって大切なお友達……だから、掠め取るような真似はしたくありません。やるからには正々堂々と……参ります」

さやか「本気なんだね仁美。でもさ……」



さやか「私だって、絶対に負けないよ!!」

で、どうやって上条さんを世界移動させたんだ?
魔法も異能も効かんのに

原作中こわいねー

 上条当麻はボサボサの髪をかきあげ、馴染んだ自室のベッドで目を覚ました。

上条「ふあああ……夢か……」

 それは、どこか遠い世界の中学校で、五人の女の子達がただ当たり前の日常を送るという、何の変哲のない夢。
 だけど上条当麻にとってはそれは他のどんな夢よりも楽しく、嬉しいものだった。

上条「そっか……元気にやってんだな、あいつら」

母「とうまさーん! 学校に遅れるわよ~!!」

 馴染み深い母の声が自分を呼んでいる。
 上条は彼にしては珍しく、遅刻覚悟で二度寝に入ろうと再び布団に潜りこむ。




 この数年の後―――彼は性懲りも無く大きな事件に頭を突っ込んで、この記憶を失ってしまうけど―――

 今はただ、この甘やかな夢の続きを味わっていたかった。


             <終>

うえーい何とか終わった終わった
上条さん英雄理論不評過ぎワロタwwwwww
QBもアニメで英雄や救世主ならまどか並みの資質を持ってるみたいな解釈できるようなこと言ってたじゃんかよう
まあいいや 終わったし 所詮オナニーだし
ほんじゃ またどこかで


上条”英雄”当麻いいとおもうよ

うん、まあチラシの裏にでも書いてろって内容だったけどお疲れ

もう一生書かないでね^^

踏み台式上条無双SS乙
もうやんなよ

>>887
俺もよく知らないけど、何回か原作中で生えたらしいよ
そういう能力なんじゃねーの

>>889
なにそれこわい・・・

とりあえず、禁書厨が他作品で踏み台ジャンプすんのが好き
って事が判っただけでも有意義なSSだったな

>>900
それ禁書厨を他の厨か禁書アンチや他のアンチに置き換えても成立するな

>>905
俺も複数作品の厨属性あるが
クロスオーバーの作法くらいわきまえてるぜ・・・・・・

禁書厨は禁書キャラを持ち上げようがけなそうが暴れるってことがよーくよくわかった……

なんともはや、 ともあれ>>1おつかれさん

なんか途中からデモベとガンパレが混ざってたなww
面白かった。またまどかと禁書クロスが読みたいぜ

>>924
そうだな
次は禁書が踏み台にされるSSが読みたいな

>>936
上条さんに不可能なんざ無いんだろうよ

>>937
世界を掬(救)えるるほどの英雄(笑)らしいからな

SIREN×まどかってのも面白そうだな

>>940
テキスト編集ツールで、このスレの「上条」を「夜科」に上書きしたら良いんじゃね?

それPSYRENだろが!

>>943
じゃあ「闇人」にすれば?

赤い水のほうのSIRENなら既にクロスされてるよ

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