P「安価でアイドルプロデュースしてIA大賞受賞を目指す」3 (176)


初めに…

このSSは
P「安価でアイドルプロデュースしてIA大賞受賞を目指す」
P「安価でアイドルプロデュースしてIA大賞受賞を目指す」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1362578656/)
P「安価でアイドルプロデュースしてIA大賞受賞を目指す」2
P「安価でアイドルプロデュースしてIA大賞受賞を目指す」2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1364746895/)
の続きとなっています

読まなくてもわかるように話を展開していくつもりですが、
前スレまでの内容を引き合いに出すことも多いと思うし、更に遅筆なので、
暇があれば読んでくれたら嬉しいです

あと誤字脱字がかなり多いです。気がついたら訂正していきますが、
大目に見ていただけると助かります

これまで決まっている設定等は>>2以降に書いていきます



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1369398199


●主人公ユニット:ユニット名『フェアリーズステップ』
・プロデューサーはP
・我那覇響(リーダー)
・双海真美
・如月千早

●ライバルユニット:ユニット名『スプラッシュ』
・プロデューサーは秋月律子
・高槻やよい(リーダー)
・天海春香
・四条貴音

●その他、話の展開に深く関わった人物
・三浦あずさ
・水瀬伊織
・萩原雪歩
・菊地真
・音無小鳥
・東豪寺麗華
・水谷絵理
・秋月涼
・日高愛
・尾崎玲子
・石川実
・鈴木彩音(サイネリア)


※基本的にP視点で話が進んでいきます
※ときどき回想編に入ることもあるので、その場合は安価もなくなりPも登場しなくなります
※安価で誰かを登場させる場合、シンデレラガールズとミリオンライブ固有のキャラクターは無しでお願いします

※活動は全部で55週の予定。現在は30週目に入ったところ


●ステージのゲストとして呼べるアイドル

・高槻やよい
・天海春香
・四条貴音
・三浦あずさ
・萩原雪歩
・菊地真
・水瀬伊織


※Pとコミュを重ねて親愛度が上がれば、他の女の子(事務員さん含む)もゲストに呼べるようになります
※765プロ全員がゲストとして呼べるようになると、その時点で話が分岐し、
 13人ユニット『765プロオールスターズ』をプロデュースするかどうかの選択肢が現れます



●各アイドルの持ち歌

フェアリーズステップ
・『Next Life』
・『空』
・『MUSIC♪』『DREAM』『黎明スターライン』『目が逢う瞬間』
・『TODAY with ME』『エージェント夜を往く』『MEGARE!』

スプラッシュ
・『SMOKY THRILL』
・『キミはメロディ』『まほろば』『SWITCH ON』『Princess Snow White』
・『Colorful Days』『ゲンキトリッパー』『乙女よ大志を抱け!!』『フラワーガール』
・『The world is all one!!』『MEGARE!』

三浦あずさ
・『ラ・ブ・リ』
・『まっすぐ』
・『MEGARE!』

星井美希
・『黒い犬』『白い犬』

日高愛
・『はなまる』

水谷絵理
・『“HELLO!!”』
・『クロスワード』

秋月涼
・『ヒミツの珊瑚礁』

その他
・『シャララ』
・『KisS』


※これらの楽曲は、新曲をリリースするときには除外してもらう…かもしれません
※でも一応、その都度除外曲一覧は書いていきます
※安価で曲を決める場合、アイマスオリジナル曲でお願いします
 (カバー、ラジオ、ジュピター、シンデレラガールズ、ミリオンライブ固有の楽曲は無し)

前スレが埋まりそうなので、とりあえず立てました
あちらが埋まってからこっちに入ろうと思います

あとこれまでの設定として、各アイドルのPに対する現在の親愛度も書いておいたほうがいいかな?

>>1です
前スレが埋まったので、次からはこちらで書いていこうかと思います

ですが、とりあえず今日書くのは前スレ分で終了させていただきます
次に再開できるのはたぶん月曜日になるかと・・・そのときはまたお願いします


あと親愛度云々は、やっぱり書かないでおくことにしました
小鳥さんがカンストしていることだけ伝えておきます
それでは

再開します
前スレの>>919あたりからリスタートします


静岡


  ──────────────────────
        オーディション:BANG BANG!!
  ──────────────────────


                            テレビ つつじ
                      ──────────
                          活動 30週目 昼



P(ここまでのあらすじ……)

P(我那覇響、双海真美、如月千早の三人で構成される、
 765プロの新ユニット『フェアリーズステップ』)

P(千早がノドに抱えた問題が明らかになったり、東豪寺プロによる圧力がかけられたりと、
 これまで何度もピンチを迎えたが、様々な人達の助けにより無事にアイドル活動を再開できることとなった)



P(目指すはアイドルアカデミー大賞の受賞だ。そのためにはまず、
 活動36週目に発表される『運命のランキング』で20位以内に入らなければならない)

P(現在活動30週目であり、4ndシングル『TODAY with ME』はランキング28位。
 もう十分に、20位以内を狙える位置まできている……あともうひとふんばりといったところだな)

P(ここからの活躍次第で売り上げが更に伸びれば、
 フェアリーズステップはIA大賞ノミネートの資格を得ることが出来るだろう)

P(……彼女達がトップアイドルとして輝けるかどうかは、俺のプロデュースにかかっている。
 今日も頑張っていこう!)


──────
────
──


          テレビ局前
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


テクテク……


P「……よーし、ようやくテレビ局が見えてきたな。
 みんな、今朝も言ったとおり、今日のオーディションは──」


びゅおお!


P(うわっ、突風だ! これはとっぷうアイドル……、トップアイドルの誕生の前兆か!?)

P(……なんて、前にも同じようなしょうもないことを考えたような気がする。
 ボキャブラリーが貧困だな、俺……)



P「……ごほん! えーっと、今朝も言ったとおり、
 今日のオーディションには、お前達の知り合いである秋月涼さんも参加しているようだ」

P「以前俺達は彼……じゃなくて彼女に大いに助けられたが、
 今日ばかりは少ない出演枠を奪い合うライバル同士。油断せず、全力を尽くしていこう!」

「「「はいっ!」」」



  *  *  *



P「さて、と……」


ざわ……

  ざわざわ……


記者A「……おい、秋月涼はいたか?」ヒソヒソ

記者B「いや……」ヒソヒソ



P「……?」


P(なんだ? テレビ局の入り口の前に記者とカメラマンがいっぱいいるぞ。
 でもオーディションにはこんな報道陣なんて関係ないだろうし……、
 今日はこの局で、なにか発表でも行われるんだろうか?)

P(……発表といえば──)




石川『……ここにいる日高愛は、約十五年前に日本で活躍していたアイドル、
   「日高舞」さんの娘なのです』

愛『そーなんです……はい……』




P(先週、876プロダクションの石川社長が記者会見を開き、この事実が公に明らかになった)

P(アイドル史上たったひとりしかいない、伝説のランクSアイドル『日高舞』。
 俺達も何回か会ったことがある日高愛さんはその日高舞の娘であり、
 これまで全く活躍が無かったのにも関わらず、今世間を最も賑わしているアイドルのひとりとなっている)

P(……今彼女は、何を思っているんだろうか)


P(……まぁ、いいか)

P(冷たいと思われるかもしれないが、そこまで考えを回している余裕なんてないのも事実だ。
 それより今は、目の前のオーディションに集中集中……)



記者C「……あっ! 我那覇さんに如月さんに、双海さん……あなた達は、765プロの方達ですね!?」

P「え? ああはい、そうですけど……」

記者D「ちょうどいい! スプラッシュの件について、コメントをいただけませんか!?」

P「……へ? スプラッシュ?」



パシャ!

  パシャパシャ!



P「うおっ、まぶしっ!」

記者A「スプラッシュが、あの日高舞の娘さんに勝利したことについて、何か一言お願いします!」

P「はぁ!?」



P(……『スプラッシュ』。律子がプロデュースしている、
 高槻やよい、天海春香、四条貴音の三人で構成される、765プロの人気アイドルユニット)

P(彼女達は先週のフェスで、その事実を知らなかったとはいえ、
 日高愛──日高舞の娘に勝利してしまったのだった)

P(そのせいで今、スプラッシュは、
 日高さんに関わるあらゆる話題を求めている記者達から大注目を浴びているんだけど──)



記者B「同じ事務所の仲間として、いかが思われますか!?」

P「い、いかがって……」

響「と、通してよー!」グイグイ

「「「お願いします! どうか一言!」」」



P(……まさか、同じ事務所だからと言って、
 『フェアリーズステップ』にまで食いついてくるとは……)

P(どこから嗅ぎつけたのかわからないけど、
 もしかしてこの記者達は、俺達にインタビューするのが目当てだったのか!?)

P(どうする、これからオーディションの準備だっていうのに……!)




1 丁寧に対応し、記者の質問に答える
2 ノーコメントを貫きとおす
3 その他


>>16
※さすがに同じ箇所でつまづきたくはないので、
 この安価に限ってはバッドエンドに直行するようなものは安価下にさせてくださいすみません
※この場面を過ぎたら、これまで同様安価に従っていきます

Pが対応してアイドル達は楽屋へ向かわせる



記者E「如月さんは、天海さんとはプライベートでも交流があるということですが、
    天海さんから何かお話を聞いていませんか?」

千早「そ、そう言われましても……プロデューサーっ」



P(……記者達のあまりの気迫に、アイドル達まで怯えている。
 とにかく今は、オーディションに集中してもらわないといけないだろう)



P「……わかりました。でしたら私のほうからコメントをさせていただきますから、
 アイドル達は先に楽屋に向かわせてもよろしいでしょうか?」

記者A「失礼ですが、あなたは?」

P「765プロの──『フェアリーズステップ』のプロデューサーです。
 彼女達はこれから大事なオーディションを控えているので、
 あまり動揺させないでいただきたい」

記者B「765プロのプロデューサー……」



ざわざわ……



記者C「……これはこれで良い話を聞けそうだな」ヒソヒソ

記者D「この短期間で『フェアリーズステップ』をここまで育てあげた人物の人柄……、
    それはある種の人たちからは需要があるわけだし、面白い記事が書けるかもしれないぞ」



P(……何を話しているかはわからないが、おそらくろくでもないことだろうな)

P(今ここにいる彼らは、いつもお世話になっている記者さんとは大違いだ。
 ゴシップ記事、スキャンダル、そういったことに興味津々って顔をしている……)



千早「プロデューサー、私達はどうすれば……?」

P「もう先に行っていいよ。中に入って受付で自分達の名前を名乗れば、案内してもらえるはずだ。
 テレビ局の人たちも外がこんなことになっていることはわかっているはずだし、
 事情を汲んでもらえるだろう」

真美「兄ちゃんは? きてくんないの?」

P「すぐに行く。だからなんの心配もしないで、曲と振り付けの確認、しておいてくれ。
 ……響、お前はリーダーだ。ふたりを任せてもいいな?」

響「……うん、まかせといて!」

P「頼んだぞ」


──────
────
──




パシャッ!

  パシャパシャ……!



P「……っ」

P(まぶしい……アイドル達はいつも、こんなフラッシュの中で話に応えているのか)

P(あはは、もしこれが、『フェアリーズステップをトップアイドルへ導いた敏腕プロデューサー』
 ってことでインタビューを受けるなら、俺としても大歓迎なんだけどな……)



記者A「……でしたら、まずひとつ。『スプラッシュ』のメンバーが
    この件についてどうお考えなのか、おうかがいしたいのですが……」

P「この件、というと、日高愛さんに勝利したことについてですか?」

記者A「はい。日高舞の娘と直接戦ったフェスの感触や、
    何かオーラを感じたとか、そういったことでもなんでも結構です」

P「……」

P(日高さんの名前は、『日高舞の娘』じゃなくて、『日高愛』だっていうのに……)



  *  *  *



P(……実際のところ、スプラッシュのメンバー達がこの件についてどう思っているのか、俺は知らない)

P(日高さんと仲の良い春香だって、日高さん自身のことを心配はすれど、
 『日高さんを倒したこと』については特に深く考えていないようだった。
 あくまでも、いつも通りのやり方で正々堂々と戦い、その結果が出ただけ……そう考えているんだろう)

P(ただひとつはっきりしていることは、不本意な形で注目を浴びることになって困惑しているということ。
 律子はこれをチャンスと言っていたが、それだって強がりの可能性も捨てきれない)


P(……俺の対応次第では、彼女達に余計な負担をかけさせるかもしれない。
 どうこたえておくべきだろうか?)



1 スプラッシュが記者達のせいで迷惑しているということを伝える
2 日高さんに勝ったことについては特に何もコメントしていないということを伝える
3 「日高愛なんて敵じゃない、日高舞自身がかかってこいよオラァ!」と言っていたと伝えてみる
4 その他

>>20

2



P「スプラッシュは、この件について一切コメントをしていません。
 それはあなた達も良くご存知だとは思いますが……」

記者達「……」


P(……律子は今朝、こんなことを言っていた)


『今の私達が何かコメントしたところで、
それが日高さんにとってプラスになるとは限らない。むしろ迷惑になる可能性だってあるわ』


P(おそらくこれまで律子達は、こんな風にノーコメントを貫きとおしてきたんだろう。
 それなのにここで俺が余計なことを言ってしまったら、
 記者達はまた、彼女達にその件について話を聞きにいってしまうかもしれない)

P(ここはこう言っておいて正解だっただろうな……)



  *  *  *



記者B「……でしたら、フェアリーズステップの皆さんはどうお考えですか?」

P「……確かに私達はスプラッシュとは同じ事務所の仲間同士ではありますが、
 この件については一切関係ありません。ですから、コメントは控えさせていただきます」

記者C「どうでもいい、と?」

P「そういうわけではありません。しかし、関与していないということは事実なのですから、
 個人的な感想はどうあれ、公の場でコメントするようなことはありません」

記者D「個人的な感想とは?」

P「文字通り、プロデューサーという立場を除いた、私個人の感想です。
 しかしそれこそ、こんな場所で言うべきことではないでしょう」

記者A「いえいえプロデューサーさん、そういうのにも興味あるんですよねぇ」

P「私個人の意見がですか?」

記者A「はい。みんな気になっているんですよ、あなたのことを」


P(みんなが俺のことを気になっている? なに言ってんだこいつ……)


P「……あなた達は今、『プロデューサーとしての私』にインタビューを行っているんですよね?
 そういった形という話だから、私はインタビューに答えている。
 もし私個人の意見を知りたければ、また別の機会にしていただきたい所存です」

記者B「そうは言わず、ただの一般人の意見だと思って、気軽に応えてくれていいんですよ?
    私達も変なことは書きませんから」

P「そういった意見を知りたければ、街角インタビューでもしたほうが、
 よっぽど貴重なたくさん意見を得られるかと思いますが」

記者達「……」

P「……話は以上でよろしいですか?
 私もこのあと仕事ですから、このあたりで切り上げさせてもらいたいのですが」

記者C「ちょ、ちょっと……! まだ聞きたいことがいくつも……あ、そうだ、好きなアイドルは!?」

P「フェアリーズステップです。それでは」


スタスタ……


──────
────
──

なんか日本語がおかしいので訂正
×よっぽど貴重なたくさん意見を得られるかと思いますが」
○よっぽど貴重な意見をたくさん得られるかと思いますが」



           テレビ局内
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


テクテク……


P「……はぁ」

P(思い返せば結局何もコメントしなかっただけなのに、
 なんだかドっと疲れたな)

P(……隙を見せたらダメだ。彼らは本当に大きな口を持っているんだから、
 仮に俺個人の意見という形で何か言ったところで、
 それがどう湾曲されて記事にされるかわかったものじゃない)

P(まぁ、さっきの場所ではああ言っておくのが一番だっただろうな、うん……)



  *  *  *



P「さて、響達の控え室は──……って、あれ?」


涼「……」コソコソ


P(あそこの自動販売機の物陰でコソコソしている卑猥な髪──じゃなくて、
 ボブカットの髪型の子は……秋月さんじゃないか?)

P(何やってるんだろ、気になるな。でも今は、フェアリーズステップのみんなとも早く合流したいし、
 秋月さんに話しかけたらあまりみんなとの時間が取れなくなるかもしれないけど、ここは……)



1 普通に話しかける
2 こっそり近づいて脅かしてみる
3 話しかけないでおく
4 その他

>>25

耳に息を吹きかける


P「……」

P(よ、よーし。ここはひとつ……アイドルとしてどれだけの成長を果たしたか、俺がチェックしてやろう。
 『出来るアイドルはリアクションも良い』……そのことは、
 響をプロデュースするうちに俺が知ることが出来た、最も大切なことだからな)

P(ククク……耳元に息を吹きかけてやる……!
 その男の子にしてはありえないほど可愛い顔がどんな風にゆがむのか、見ものだぜ!)



P「そろーり、そろーり……」

涼「……ここにもいない……」


P(ふふふ。何かに気を取られているのか、
 背後から忍び寄る俺のことには全く気づいていないみたいだ)

P(もう秋月さんのうなじに生えた産毛が目視できるくらいの距離まできたぞ。ここで息を……)



P「すぅー……」

涼「うぅ……夢子ちゃん、どこ行っちゃったんだろ……」


P(夢子ちゃん? なんのことだろう。
 まぁいい、それより今は──……!)





P「……ふぅ〜」

涼「きゃんっ!」

P「ヒューヒュルルル」

涼「く、くすぐった……ぁ、や、だめ……!」



P(こいつ本当に男の子か!!?!?)


──────
────
──


涼「ぷ、プロデューサーさん!? 脅かさないでくださいよぉ……」

P「あ、ああ。ごめんごめん……」


P(イケないイケない。つい意地悪をしてしまった。
 でもなんだろう、この胸の高鳴り……)

トクン

P(──だ、ダメだ! 秋月さんは男の子なんだぞ!
 お、俺はそんな気は……)



涼「プロデューサーさん?」

P「お、おう!? なんだい!?」

涼「その……なんで急に、耳元に息なんて……?
  私実は、そういうの弱いんですよ……」

P「えーっと……」



1 「実は俺、ホモなんだ。だから君の可愛いリアクションが見たくて」と試しに言ってみる
2 「そんなことより、夢子ちゃんってなんのこと?」と聞いてみる
3 適当に誤魔化し、挨拶もそこそこにこの場を去る
4 その他

>>29

抱きしめながら耳に甘い言葉をささやく


P「……」

P(まだ少し動揺しているのか……ほのかに色づいた頬、首筋に浮かんだ珠の汗)

P(なんて色っぽいんだ……)



P「秋月さん」

涼「……?」



P(──いいじゃないか)



P「はは、君にあんないたずらをしたことだけどさ、実は俺……」

涼「は、はい」



P(男の子だって、いいじゃないか)

P(そうさ、どんな事情があれ女の子アイドルとして活動している以上、
 誰かをこういう気持ちにさせることはむしろ、アイドル『秋月涼』にとっては誇りに思ってもいいはず)

P(そうだ、そうだよ。俺は悪くない。
 悪いのは、秋月さんをこんなにも可愛くさせてしまった、運命の女神様だ──)




──ぎゅっ



涼「っ!? ぷ、ぷろ……」

P「……君の反応が見たくて」

涼「え……? く、くるし……」

P「ああすることで、可愛いリアクションが見られるかと思ったんだ。
 だから、俺……我慢できなかった」

涼「……っ」

P「……可愛いよ、秋月さん。いや……涼」ボソリ

涼「!!!?!!?」


涼「ぷ、プロデューサーさんっ! やめっ……」

P「こうされるの、嫌かい?」

涼「い、嫌とかそういう問題じゃなくて……」



涼(──いや、いやいやいや!)

涼(嫌だよ!? 嫌に決まってるじゃないかぁ!
  だって僕、男の子だよ!? プロデューサーさんだってもちろん男性で……)

涼(それなのに、なんで──……)



  *  *  *



涼「……とにかく、こんなことやめてください!
  私だってアイドルですから、誰かに見られたりしたら……」

P「スリルのない愛なんて、興味あるわけないじゃない! わかんないかなぁ!?」

涼「なに言ってるんですか!?」

P「俺にもわからない! でも、そういうものなんだ!」

涼「え?」

P「……時にはわけのわからない行動をしてしまうこともある、
 迷惑をかけてしまうこともある」

P「それを自覚していてもなお、この心のうずきは抑えられない。
 ただ不器用に、ぶつかっていくしかない。
 そういう風に、出来ちゃっているんだよ……!」



P「──愛ってやつはさ!」

涼「っ!」




涼(──それなのに、なんで僕は、はっきりと嫌って言えないんだろう……)

涼(下手なことを言って僕が男の子であるとバレるわけにはいかないから?
  それとも、大げさなことにしたくないから?)

涼(……わからない。そうだよ、何もわからない)




涼「ぷ、プロデューサーさん……」

P「涼……」




涼(プロデューサーさんに抱きしめられて甘い言葉をささやかれることによって、
  なんで、僕の心はこんなにもドキドキしているのか……)


ドックンドックン……


涼(それすらも、僕にはわからない──)



かっしゃーん……



P・涼「……?」



P(何かが床に落ちる音がして、
 ふとそちらを振り返ると──)



響「ぷ、プロデューサー……?」



P(そこには、響がいた)

P(床に落ちたのはどうやら、今日のステージで使うアクセサリだったようだ。
 『星のブローチ』……手のひらくらいの大きさの、星屑を模した可愛らしいブローチ)

P(あの日──みんなで『LUCKY RABBIT』に買い物に行ったとき、
 響が特別気に入っていた、思い出のアクセサリだ。
 これをつけて舞台に立てば、きらめく星の輝きによってダンスアピールがより一層引き立つ)


P(……いや、そんなことはどうでもいい! 今は響を)



P「……ひ、び」

響「……──サーは……プロデューサーは……!」プルプル

P「え……?」



響「──男の子のほうが、好きだったの!!?」

P「あ……」

涼「……!!?!?」



P(そ、そうだ! 響だけはなぜか、秋月さんの正体を一目で見抜いていたんだった!!)

P(こ、こんな誰が聞いているかもわからないテレビ局でそんなことバラされたりしたら、
 秋月さんのアイドル生命の関わるぞ……!)



ざわざわ……


<なんだ? 騒がしいなー



P(まずい! 人が来る……!)


  *  *  *


P「い、いやいや、響、何言ってるんだよ、秋月さんが男の子なわけ」

響「そーなんだぁー! だ、だからプロデューサー、
  いくら自分が頑張っても、全然……!」

涼「あのっ、僕、じゃなくて私、」

響「うわぁ〜ん!!」



P(聞いちゃいない。よっぽど動揺しているみたいだな……)

P(ど、どど、どうしよう!? もう何がなんだかわからないけど、
 とにかくまず、響を静かにさせないと……!)

P(今ここで俺が、響に『そうだよ、俺はホモなんだ』なんて言ったら、
 響が余計に騒ぎ立てるのは目に見えているし……よし、ここは)



1 「好きなのは響だけだ」と伝えよう
2 「ただの男同士のスキンシップだよ」と言おう
3 その他

>>35


P「……響、落ち着いてくれ。これは……そう、ただのスキンシップだよ」

響「ずきんじっぷ……?」ズビッ

P「ああ、男同士のスキンシップ。響は知らなかったかもしれないけど、
 男っていうのはな、久しぶりに会ったらこうやって抱き合うのが一般的なんだ」

響「え!? そーなのかー……?」

涼「そもそも私が男だって前提で話を進めるのはやめてくださいっ!
  ぷ、プロデューサーさん、もしかして律子姉ちゃんから……」

P「……いいから、ここは話を合わせてくれ」ボソッ

涼「で、でも……!」

P「もうすぐ人がくる。ここで響が騒いだら、
 君だってまずい立場になるはずだ。わかるだろう? な?」

涼「……はい……」


涼(僕の人生って一体……)



  *  *  *



涼「……そ、そうなんですよ、響さん」

響「……」ジトッ

涼「男の子同士っていうのは、こういうものなんです。
  抱きしめて、抱きしめ返す。筋肉と筋肉を触れ合わせる……
  そうすれば、お互いが元気だってことを、どんな言葉よりも雄弁に伝えることができるんです」

響「……」

P「……と、いうことなんだけど」

響「……そうなんだ!」パァァ

P「わ、わかってくれたか?」

響「うん! えへへ、プロデューサー、ごめんね!
  自分ちょっと誤解しちゃってたかも」


P(ちょろいぜ)

涼(いいのかなぁ……)



ノーマルコミュニケーション!


──────
────
──

30分ほど休憩します



涼「……あの、プロデューサーさん。どういう事情で僕のことを知ったかはわかりませんけど、
  くれぐれもこのことは秘密に……」

P「ああ、わかってるよ。悪いな、話を合わせてもらっちゃって」

涼「あ、あはは……そうするしかなかったというか、なんというか……」


  *  *  *


P(それから秋月さんは、『人を探しているから』と言ってその場を去っていってしまった。
 もしかしてその探している人っていうのが、さっき言ってた夢子ちゃんとやらだったのだろうか?)

P(……それにしても、去り際に秋月さんが浮かべた、人生に疲れきったような顔……。
 それもそうだろうな、秋月さんは本当は男の子なのにそれを隠して女性アイドルとして活動している。
 色々と気苦労も絶えないんだろう……)

P(俺には応援することしか出来ないが……頑張れよ、秋月さん……!)



  *  *  *



テクテク……


P「……そういえば響、お前どうしてここに──」

響「でも自分、知らなかったぞ」

P「え? なんのこと?」

響「女の子同士だけじゃなくて、男の子同士でもそうやって挨拶するんだね!」

P「……そうやって、っていうと……」

響「ぎゅーってするの。女の子同士ならそーいうのもしょっちゅうだけど、
  自分、男の子同士がそれをしてるの、今まで見たことなかったから」

P「……」



P(そ、そうなのか?)

P(さっきのは俺がでっちあげた適当な作り話だったけど、
 今まで俺が知らなかっただけで、女の子同士では普通なのか?)

P(……どうしよう、詳しく聞いたらなんだか、
 ある人物の印象が大きく変わってしまう気がするけど……)



1 詳しく教えてもらおう
2 「そんなことより、どうしてここに来たんだ?」と聞こう
3 その他

>>39

2


P「……そ、そんなことより、どうしてここに来たんだ?
 真美や千早の姿は見えないようだけど……」

響「あっ! そそ、そーだった! プロデューサー、大変なんだよ〜!」

P「大変? 何かあったのか?」

響「真美が、真美が、からくって、だから自分っ、自動販売機に水を買いにきてて、
  そしたらプロデューサーが男の子と抱き合ってて、だから自分、リーダーだし、
  プロデューサーにもまかされたし、でも水が」

P「お、落ち着け! 真美に何かあったのか!?」

響「う、うん……とにかく、こっち来て!」



  *  *  *



タッタッタ……


千早「……あ、プロデューサー!」

P「はぁ、はぁ……ま、真美、千早っ!」

真美「にいひゃ〜ん……」

P「真美、大丈夫か!? ほら、水!」スッ

真美「あんがと……ごくごく」



P(……道すがら響から話を聞きだすと、
 どうやら真美は、何者かから突然、プレゼントを渡されたらしい)

P(そのプレゼントとは、見た目はなんの変哲の無い飴玉。
 『ノドがすっきりしますよ』と言われて渡された真美は、喜んでその飴玉を口に入れてしまい……)



真美「……ぷはぁ。うあうあー、まだめっちゃいたい〜!
   だいひょうぶじゃないっぽいひょ〜!」

P「……」



P(……そして、こんなことになってしまった。
 かわいそうに、唇が大きく赤く腫れている……)

P(真美が渡されたその飴玉は、実のところ、とんでもない辛さの激辛キャンディーだったみたいだな。
 くそ、一体誰がこんな嫌がらせを……!)


真美「激辛ぺ○ングもびっくりのからさだよ〜! ひぃ、ひぃ……」

響「真美、驚いて飲み込んじゃったんだってさ……。
  だから今、唇だけじゃなくてノドもヒリヒリしてるらしくて……」

千早「……これではとても、まともに歌うなんてことは出来なさそうね。
   ムリに歌ったとしても、ノドに余計な負担がかかってしまいそう」

P「……、」

響「……プロデューサー、どうする?」



P(……俺のせいだ)

P(俺が記者達の相手をしている間に、真美はこんなことになってしまった。
 俺さえついていれば、こんなことにはならなかった、いやさせなかった)

P(どんなときだってアイドル達から片時も目を離さず、
 笑顔で活動させてやるのが、プロデューサーの仕事だっていうのに……!)

P(東豪寺プロとのゴタゴタが終わり、今日は961プロも関わっていなさそうだからって
 心のどこかで少し油断していたんじゃないか? くそう……っ!)



P「真美……」

真美「にいひゃん……」



1 「ごめん」と言おう……
2 「人から渡されたものを簡単に受け取るんじゃない」と説教しよう
3 「今日のステージは中止にしよう」と言おう
4 その他

>>43

真美抜きでいけるか聞く


P「……響、千早。真美抜きでいけるか?」

真美「にいひゃん!? 真美だって、ちゃんとうたえ──」

千早「……、我那覇さん」

響「……うん」



響「いけるぞ」

真美「……!」



P「……そうか。それならふたりとも、今から急ピッチで振り付けの変更だ。
 歌は千早、ダンスは響。ふたりで考えれば、本番までには間に合うな?」

千早「ええ、間に合わせてみせます。幸い今日の課題曲は、
   デュオでの構成でもいけるものですから」

響「それならさっそく練習だぞ! 千早、いこ!」

真美「ま、まってよ! 真美……」

響「プロデューサー、真美をよろしくね」

真美「……」

P「……ああ、まかせとけ」


──────
────
──



P(それから、しばらく時間が経過して……)



真美「……兄ちゃん」



P(ようやく真美は、まともに喋ることが出来るまでには回復したみたいだ。
 しかしもちろん、痛みが完全に引いたわけではないということは、
 今でも赤く色づいている真美の唇を見ればわかる)

P(……残念だけど、今日はお休みだな)



  *  *  *



真美「ねぇ、なんで……?」

P「……」

真美「なんで、真美だけ仲間はずれにすんの……?」

真美「兄ちゃんもそうだし、ひびきんも千早お姉ちゃんも……っ!
   そりゃあ、こうなっちゃったのは真美が悪いけど、でも、
   真美、ダンスなら出来るし、歌だって一生懸命がんばって歌えるもん!」

真美「それなのに、なんでぇ!? う、うぅ……!」

P「……真美」



1 「しかたないことだ。これもトップアイドルになるためだから」と言う
2 「響達は決して、真美を仲間はずれにしたかったわけじゃない」と言う
3 「これは、油断した真美に対する罰だよ」と言う
4 その他

>>46

2


P「……響達は決して、真美を仲間はずれにしたかったわけじゃない。むしろ、逆だよ」

真美「逆?」

P「ああ……」



P(去り際の響達の表情を落ち着いて見ることが出来れば、
 真美だって、そのことに気付くことが出来たはずだ)

P(フェアリーズステップはいつだって、三人で手を取り合ってやってきた。
 理不尽で納得の出来ない事情でそれが不可能になったことについて、
 響達がどう思っていたのかを……)



  *  *  *



P「……響達は、真美のことを心配していたんだ。
 真美は全然悪くないのに、今でもこんなにも痛い思いをしている……」

P「だけど今回のオーディションは、フェアリーズステップにとって久しぶりの大きな舞台。
 これを切り捨てることだって出来ない。わかるな?」

真美「……うん」



P(IA大賞にノミネート出来るかどうかは、ここから先の活躍にかかっている)

P(もう、どんなに小さなチャンスだって逃すわけにはいかないんだ。
 真美も、そのことはなんとなくわかってくれているようだな)



真美「だから真美だって……」

P「……もし今日、真美がムリをしてオーディションに望んだとして、
 そして見事に番組出演権を得たとしよう」

P「でも、そうなったとき、真美はいつも通りの笑顔でテレビに出られるか?
 ファン達みんなを喜ばせてあげられるか?」

真美「それは……っ」

ヒリヒリ

真美「……わかんない」

P「……だから、今日のところは真美にお休みしてもらいたかったんだ。
 何よりも真美のために、そしてこれから先、また三人で活動するために、
 真美にムリをさせないことを選んだんだよ」

真美「真美のため?」

P「そう。……響達が簡単に真美を仲間はずれにするような子だったかどうか、
 よく思い出してみてくれ」

真美「……」



真美「……ちがう、もん」

真美「前にケンカしたときだって、ひびきん、真美のこと、
   全然嫌いになんてなってないって言ってくれたもん……」


P(前にケンカって……ああ、買い物に行ったときに話してくれたことか。
 あれは真美の一方的な勘違いだったんだけど)

P(……まぁ、そんな小さなことは、今はいいか)



  *  *  *



真美「……ごめんね兄ちゃん。真美、わかったよ!」

真美「今日は真美、ひびきんたちをめっちゃ応援する!
   んっふっふ〜、真美が応援してればきっと、
   百人力……いや、千人力くらいにはなるっぽいよ〜!」

P「うん、そうだな!」



P(こうなったことは、決して真美は悪くない。
 しかし、アイドル活動にアクシデントはつきものだ)

P(そうなった場合に優先すべきなのは、目先の仕事を無理やりこなすことではなく、
 メンバーが笑顔でいられるように考えをめぐらせること……。
 未来のことを考え、それを踏まえた上で今出来るベストを果たすことだ)

P(……真美は、俺達の意図をちゃんとわかってくれたようだった。
 きちんと話せば、素直な心を持った真美にはちゃんと伝わるんだよな)



パーフェクトコミュニケーション!



       一方その頃……
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


響「……だから、違うってばっ!」

千早「そうは言っても、真美が抜けたパートを埋めるには……!」



  *  *  *


カチッ、カチ……


千早「……、オーディション本番まで、あと一時間もない」

響「……」

千早「我那覇さん……とにかく練習しましょう。
   少しでも合わせないと、情けない姿を見せてしまうわ」

響「……あーもうっ! わかったよっ!」



クルッ、クルクル……


響「はっ、ほっ……!」

千早「……っ、我那覇さん、そこでターン!」

響「うぎゃー! だからここは、千早が前に出たほうがいいって何度も……!」

響「──って、うわぁっ!」ドテッ

千早「っ! 大丈夫!?」

響「……、」



響(……なんでだろう、落ち着かない。
  千早との意見も、全然合わないし……)

響(こんなんで自分達、本番、ちゃんと踊れるのか……?)



響(……今日の課題曲は、『Do-Dai』)

響(『GO MY WAY!!』なら自分達も何度か歌ってきたから全然問題ないけど、
  この曲はこれまであんまり練習してきてなかったんだ)

響(だけど三人でなら、真美が上手に自分達の隙間を埋めてくれて、
  なんとでもなるのに……)



千早「はぁ、はぁ……」



響(……慣れないデュオの練習で、千早もバテてきてる)

響(自分達は思ってたよりずっと、真美に頼ってたみたいだ。
  真美が抜けただけで、こんなにボロボロになっちゃうなんて……)



  *  *  *



響「……やっぱり、自分達ふたりだけで作り上げるなんて……ムリなのかな」

千早「……でも、まかされた以上、やるしかないのよ。
   そうでないと、久しぶりに入ってきた貴重な仕事を無駄にしてしまう」

響「……」

千早「真美にあんな顔をさせてしまったからには、格好悪いところなんて見せられないわ。
   プロデューサーだって……」

響「……プロデューサー」

千早「え?」



響(……こんなとき、プロデューサーがいてくれれば、きっと、
  自分達のダメなところを教えてくれて、バッチリ指導してくれるんだよね)

響(自分達は、三人でひとつだけど……
  だからこそ、真美とプロデューサーがいないと、こんなにも──……)



響「……」

千早「……我那覇さん」

響「え?」

千早「今、プロデューサーがいてくれれば、って思っていたでしょう?」

響「……そ、そんなことないし!」

千早「嘘をつかなくてもいい。私にはわかるから」

響「なんでそんなこと言えるんだよー……」

千早「……当然よ」


千早「私達が今までどれだけ長い間、一緒にすごしてきたと思ってるの?
   良いことも嫌なことも、いつだって三人で共有してきた。
   だからそれくらい、一目見ればわかるのよ」

響「……」

千早「……ふふっ、それにあなたは、特別考えていることが顔に出やすいしね」

響「うぎゃー! なんだよそれー!」



  *  *  *



千早「……プロデューサーは今、真美のそばにいる」

響「……うん」

千早「はっきり言ってしまえば、我那覇さんはきっと、それが嫌なのよ」

響「えええ!!? そ、そうなの!? って、自分のことか……」

千早「……真美がこんな目に合ったこともそう。
   プロデューサーが今、自分以外の誰かのために時間を過ごしていることもそう」

千早「嫉妬や怒り、そういういろんな感情がごちゃ混ぜになって、
   だから今、我那覇さんはイライラしているんだと思う」

響「な、な……!」

千早「……ちがう?」

響「知らない! っていうか、なんで千早にそこまで言われなくちゃいけないんだ!?」



響(自分がそんな気持ちになってることなんて、自分は知らなかった!
  っていうか、真美に嫉妬だなんて、ゼッタイそんなことないと思うし!)

響(それなのに、なんで……!)


千早「……大切なことだから」

響「大切!? 自分の気持ちを当てて、なんの役に立つって言うんだよ!
  もしも、もしも当たったとして……、それで千早は楽しいのか!?」

千早「違うわ! 楽しいとか、そういう話じゃない!
   私達ふたりが今、先に進むために必要としていることは──……」

響「……?」

千早「……、」

響「……な、なに? 何が必要なの?」

千早「それ、は……」

響「……っていうか、千早こそそーでしょ!」

千早「え?」

響「千早だって今、プロデューサーが真美のそばにいるからイライラしてるんだ!
  だから自分の意見なんて全然聞いてくれないし、いつもだったら言わないこんなことを言うし!」

千早「……っ」


ドクン、ドクン……


千早(私、は)

千早(……私は──)




響「じ、自分、なんとなくわかるんだぞ!
  千早ばっかり自分の気持ちわかるって言うなら、それは全然、勘違いなんだからな!」

響「ち、千早は……いつもはそんなことないって顔してるけど、
  本当は、プロデューサーのこと──」




千早「──そうよ」

響「……え?」



千早「我那覇さん、いえ……響」


千早「それこそが、今の私達にとって必要なこと。
   自分の気持ちに正直になって、隠し事は無しにすること……」

千早「……そうでないと私達は、これから先に進めない。
   響も私も、きっと……、お互いに言えない『秘密事』を抱えすぎた」

響「ち、千早? 何言って……」

千早「もう、腹の探りあいはやめにしましょう」

響「……っ」



響(……千早が、なにか、言おうとしてる)

響(それはきっと、自分が──ううん、自分達が、
  ずっとずっと大切にしてきた、『自分だけの秘密事』で──)



  *  *  *



千早「……響」

千早「私はプロデューサーに……、特別な感情を抱いてるわ」

響「っ! それ、って……」

千早「……簡単に言ってしまえば、こう」



千早(……最初は、こんな感情、認めたくはなかった。
   私とプロデューサーは、ただの仕事上の関係だからって、自分に言い聞かせていた)

千早(そうでないと、とても自分を保っていられなかったから)



千早(……でも私は、いつからかしら)

千早(いつだって私のために親身になってくれて、
   アイドルではない、ただの『如月千早』を大切にしてくれるプロデューサーのことを……)

千早(アイドル活動をしているときも、プライベートでも、
   常に頭の隅で考えるようになってしまっていた)

千早(私は──……)





千早「……私は」

千早「プロデューサーのことが、好きなのよ」

響「……!」

千早「……あなたに負けないくらい、強く、強く、彼のことを想っている」



響「……っ」

千早「……あなたは、どう?」

響「どう、って……」

千早「プロデューサーのことを、どう想っているの?」

響「……」




響(……プロデューサー)

響(プロデューサーは、初めて会ったときから、いつだって自分のことを振り回してきて……)



『俺、勘違いしていたんだ……君のことを、仮面ライダー響鬼だと思っていた』



響(でもいつだって、自分のことを大切にしてくれて)



『……綺麗だって思ったから、近くで見ておきたかったんだ』



響(……だから自分、悲しかった)

響(あのときプロデューサーが、自分のことを『相棒』だって言ったことが)



『……出会ったときから、ずっとずっと、ふたりで一緒に歩いてきた。
響は、俺にとって……、今でも、そしてこれからも、大切な相棒だ』



響(──好きだって言ってくれなかったことが、悲しかった……!)



響「……千早」

千早「……」

響「自分、自分は……」




響「プロデューサーのこと──……!」




──────
────
──



             本番前
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


P「……お、来たな」

真美「あ、ホントだ! おーい、ひびきーん、千早お姉ちゃ〜ん!」タッ

響「……」スッ

ぽかっ

真美「あ痛っ!? え、え!?」

千早「……」スッ

こつんっ

真美「なんでー!? なんで真美、チョップとデコピンされちゃったの!?」

響「ふーんだ、これはお仕置きだぞ」

千早「……これで、おしまい。別に痛くもなかったでしょ?」

真美「そ、そうだけど〜……?」





真美「……兄ちゃん、やっぱり真美、ひびきんたちに嫌われちゃったのかな……」

P「……そんなことはないと思うよ」


P(ふたりの間に何があったのかはわからないが、
 今の二人は、とても良い顔をしている)

P(千早の言うとおり、さっきので全部おしまいにしたんだろう。
 響と千早、ふたりの間に抱えた問題を、すべて……)


P「……で、どうだ? 曲のほうは」

響「えへへ、それが……」

千早「実は、全然合わせてなかったんです。途中まではやっていたんですけど」

P「ええっ!? お、おいおい、そんなんで本番、うまくいくのか……!?」

響「うん、大丈夫! 今の自分と千早なら、なんくるないさー!」

P「うーん、まぁ……響がそう言うなら、俺はもう何も言わないけど」

千早「……やっぱり、何かにつれて我那覇さんのことばかりね」ボソリ

響「ふっふーん♪」

P「……?」



  *  *  *



スタッフ「……フェアリーズステップの皆さん、そろそろ時間ですのでお願いします!」

響・千早「「はいっ!」」



響「……それじゃあ、真美!」

真美「へ? なになに?」

千早「いつものやるわよ。ほら、真美も一緒に」

真美「……い、いいの? 真美、ふたりにメーワクかけちゃったのに……
   今日は一緒にステージに立てないのに……」

響「トーゼンだぞ! フェアリーズステップは、自分と!」

千早「私と……」

真美「……っ、ま、真美……」


響「……誰かひとりでも欠けたら、ダメなんだ」

千早「……そうね。たった一時離れていたって、そんなことは関係ない。
   私達の気持ちは、離れていたってたったひとつ」

響「だって、自分達……みーんな!」



「「……仲間だもんげ!」」



真美「……うんっ!」




  *  *  *




千早「……3!」



真美「2!」



響「……いーっち!」




「「「……えい、えい、お────ッ!!」」」


──────
────
──



審査員「……はい、ありがとうございました。それでは次の方」

涼「……ありがとうございましたっ!」


涼(ふぅ、なんとかうまくやれたかな……)



  *  *  *



審査員「えー……次は765プロ所属、フェアリーズステップ。トリオユニット……」

スタッフ「あの、今日は……」

審査員「え? ああそう、さっきメンバー変更したとのことでしたね。
     今日は双海さんを抜いた、デュオ、っと……」


涼「……──!?」

涼(……真美ちゃんが、いない?)



審査員「……ん? どうしたの君? 君の出番はもう終わりだよ?
    合否の結果はまた後ほど通知するから、外に出ていていなさい」

涼「あ、はい……すみません、失礼します」



──バタン



涼(……さっきプロデューサーさんに会ったときは、
  真美ちゃんのことなんて何も言ってなかった)

涼(まさか、まさかまさか……)



涼「……っ」

夢子「……お疲れ様、涼」

涼「夢子ちゃん……っ!」


涼「……ッ、君が、何かしたのか……!?」

夢子「何か、って?」

涼「真美ちゃんのことだよっ!」

夢子「……」

涼「どうしてそんなことをしたっ!? もう、そんなことはしないって約束したじゃないか!
  正々堂々、自分の力でやってやる、って……!」

夢子「……怖い顔ね、まるで女の子じゃないみたい」

涼「っ! ま、真美ちゃんが……真美ちゃんが君に何かしたっていうの!?」

夢子「別に、そういうわけじゃないわ。ただ、ちょっと興味が沸いただけよ」

涼「興味……?」

夢子「ええ……」




夢子「水谷絵理や涼、そして、あずさお姉様があれほどご執心な、
   『フェアリーズステップ』……」

夢子「それが、どの程度の格を持ったアイドルか、ってね」

涼「……! たった、それだけのために……」

夢子「……その結果、あの子はなんの疑いも無く私のキャンディーを受け取った。
   その程度の存在なのよ、彼女達は」

涼「ふざけないでっ!」

夢子「──ふざけてるのはどっち!?」

涼「っ!?」

夢子「涼、今のあなた、はっきり言って最悪よ……!」

涼「……な、何を言って……?」


夢子「フェアリーズステップと関わってからのあなたには、全然やる気を感じられない!
   出会った頃の、何をするにも必死だった涼はどこにいったの!?」

夢子「水谷絵理を連れ戻したから、それで満足ってわけ!?
   わかってるんでしょ!? これまでの自分が876プロに利用されているだけで、
   そしてそれは、これからもだってことくらい!」

涼「……っ!」

夢子「……バカみたいよ、本当に。あなたも、私も」

涼「……私は、利用されてなんていない」

夢子「嘘よ」

涼「嘘じゃない!」

夢子「それじゃあなに? あなたはこれからも、
   水谷絵理のためだけの存在でいるつもり!?」

涼「そうじゃない! 私には私の、夢がある!」

夢子「……何よ、その夢って」

涼「……、それは──」



「……道を開けてくれるかしら」



涼「え? あ……」



響「……」

千早「……」

涼「響さん、千早さん……」


響「……ねぇ、君」

夢子「……なにか?」

響「なんていうか、あんなに大声だったから色々聞こえちゃったし、
  真美も、『自分にキャンディを渡した人がどんな姿だったか』って教えてくれたから、
  自分達、君のしたことは知ってるんだけどさ」

夢子「……、そうですか。それじゃあ私、不合格みたいね」

千早「……私達は別に、だからと言って、
   あなたのしたことをオーディションの責任者に伝えるつもりはありません」

夢子「は?」

響「えへへー……ただ、これだけ言わせてもらうね!」



響「──合格者は、自分達だ」

夢子「っ!」



千早「あなたにとっては残念だけど、そうね。
   あなたの目論見通りにはいかない」

夢子「……トリオの穴、それはひとりでも欠けたらそこで全てが崩れるということ。
   こんな短時間で、デュオとして構成を練り直したっていうの?」

響「収録本番の自分達を見ればわかるさー」

千早「……それじゃあ、秋月さん。私達は行くから」

涼「あ、はい……頑張ってください」



──ガチャ



バタン……



夢子「……」

涼「……」


夢子「……何よ、あれ。さっきまでのふぬけた連中と同じとは、思えない」

涼「……そういう人達なんだよ、響さんたちは」



  *  *  *



審査員「……えー、ではお願いします。
    フェアリーズステップさんに今日与えられた課題曲は、『Do-Dai』ですね」

響「あのっ! それ、ちょっと変えてもいいですか?」

審査員「え? いやしかし、課題曲の変更を許可したら……」

千早「課題曲自体を変更はしてくださらなくてもいいんです。
   ただ、少しだけ私達のアレンジを加えた、別バージョンにさせてもらえれば」

審査員「アレンジ? ふぅーむ……『Do-Dai』のアレンジバージョンなんて聞いたことがないな」

響「えへへ、だって、ついさっき思いついたんだからねっ!」

審査員「はぁ!?」



  *  *  *



涼「……いつだって、あの人達はあきらめない。
  どんなアクシデントがあったって、結局自分達の力で乗り越えていく」

夢子「……お姉様も、そんなことを言っていたわ」

涼「あずささんは、特別そうだろうね。なんて言っても、
  響さんの魅力を一番知っているのは、あずささんだから」

涼「あずささんは響さんに命を救われて、再び立ち上がる力をもらった。
  だから──……」



  *  *  *



審査員「……は、はは……まぁ、いいでしょう。
    765プロの方たちはいつも突拍子の無いことを言うって有名ですからね」

響・千早「ありがとうございますっ!」

審査員「それで」

ちょいミス、>>64はなかったことにしてください




夢子「……何よ、あれ。さっきまでのふぬけた連中と同じとは、思えない」

涼「……そういう人達なんだよ、響さんたちは」



  *  *  *



審査員「……えー、ではお願いします。
    フェアリーズステップさんに今日与えられた課題曲は、『Do-Dai』ですね」

響「あのっ! それ、ちょっと変えてもいいですか?」

審査員「え? いやしかし、課題曲の変更を許可したら……」

千早「課題曲自体を変更はしてくださらなくてもいいんです。
   ただ、少しだけ私達のアレンジを加えた、別バージョンにさせてもらえれば」

審査員「アレンジ? ふぅーむ……『Do-Dai』のアレンジバージョンなんて聞いたことがないな」

響「えへへ、だって、ついさっき思いついたんだからねっ!」

審査員「はぁ!?」



  *  *  *



涼「……いつだって、あの人達はあきらめない。
  どんなアクシデントがあったって、結局自分達の力で乗り越えていく」

夢子「……お姉様も、そんなことを言っていたわ」

涼「あずささんは、特別そうだろうね。なんて言っても、
  響さんの魅力を一番知っているのは、あずささんだから」

涼「あずささんは響さんに命を救われて、再び立ち上がる力をもらった。
  だから──……」


審査員「……は、はは……まぁ、いいでしょう。
    765プロの方たちはいつも突拍子の無いことを言うって有名ですからね」

響・千早「ありがとうございますっ!」

審査員「それで、そのアレンジバージョン……タイトルを教えてもらえますか?」




  *  *  *




涼「……だからあずささんは、今でも、
  フェアリーズステップのためだけにアイドルを続けている」

夢子「……私は、それが許せないのよ。
   自己犠牲の精神ってやつ? いくら恩があるとはいえ、どうしてお姉様がそこまで……!」

涼「……」

夢子「……」


テクテク


涼「……行くの?」

夢子「……私には私のやることがある。
   『歌姫・歌王子フェス』に参加出来るようになるまで、あと一歩なんだから」

涼「オーディションの結果は聞いていかないの?」

夢子「……しらけちゃったわ。もうどうでもいいわよ、こんなオーディション」

涼「……そう」




  *  *  *




響「えへへ……それじゃあ千早!」

千早「ええ!」



「「せー、の!」」



「「……『Do-Dai (REM@STER-B)』ですっ!!」」




──────
────
──



             舞台袖
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


響「……ねぇ、千早」

千早「……なに?」



ワァァァァ……!



響「……何がダメで、何が得意かって……」

響「ホントは、自分が一番……知ってるんだよね」

千早「……」

千早「……うん、そうね」

千早「そうかも……しれないわね」




『……えー、本日は双海さんは体調不良につきお休みとのことですが』


<え〜!


『双海さんの分まで元気いっぱいに歌っていただきましょう!
フェアリーズステップのおふたりです! どうぞ!』




響「……でも、『自分じゃないからこそわかる部分』だって、きっとある。
  自分が知らなかった、本当の自分……。
  そういうことを言い合える仲間と会えて、自分は本当に、幸せだぞ」

千早「……」

響「だから……これからもずっと、一緒に頑張ろうね!
  自分と真美と、千早と……」

千早「……ふふっ、そして、プロデューサーと?」

響「うん!」



「……さぁ、行こう!」


東京
                           765プロ事務所

                      ──────────
                          活動 30週目 夜





P(収録本番を終え、ようやく俺達は765プロ事務所へと帰ってきた)

P(響と千早は、土壇場でのデュオ構成だったが、本当によくやってくれた。
 合わせてないと聞いたときはどうなることかと思ったけど、それでも堂々の一位通過だもんな)

P(……いきなり本番でアレンジバージョンを歌ったときは、さすがにビックリしたけど)



  *  *  *



P「……しかし、真美をこんな目に合わせた犯人については、
 結局わからずじまいだったな。真美、大丈夫か?」

真美「うん! もう平気だよーん!」

P「そっかそっか……」

響「……」ニコニコ

千早「……」ニコニコ

P「……」


P(あれ以来、響と千早の間にはなにやら秘密事ができたらしい。
 明らかに様子が変わっているから何かあったのかと思っているんだけど、
 俺には全然教えてくれないんだ)

P(……まぁ、年頃の女の子同士だもんな。異性に言えないこともあるんだろうし、
 あまり首を突っ込まないでおこう……)

P(……少し、さみしい気もするが)


──────
────
──


P「さて、それじゃあ──」



……ガチャッ



律子「……お疲れ様、です」

P「おー、律子。ちょうど帰りか、お疲れ」

律子「……」

真美「あれ? 律っちゃん、なんか顔赤くない?」

律子「そ、そう? そんなこと……」

千早「……! 律子、あなた……!」

律子「え──……? あ……」


ふらっ……


響「っ! 律子ぉっ!」タタッ


……がしっ!


響「……っと、ギリギリセーフっ!」

真美「おー、さっすがひびきん! ナイスキャッチ!」

律子「はぁ、はぁ……! ご、ごめん、ひび──げほっ、ごほっ!」

P「……!」



P(律子の体調が、明らかにおかしい……!)

P(顔も真っ赤で、うまく喋れないようだし、これはまるで──……)




『ハァ……っ、けほっ、こほ!』

『ぷ、プロデュー……サー……』



P「……、」



P(……落ち着んだ、俺。かつての千早と重ねてどうする)

P(俺が知る限り、律子は健康上なんの問題も抱えていないはず。
 だからこれはきっと、ただの風邪だろう)

P(大げさに騒ぎ立てるより、今出来ることをしてやらないと……)



響「うー、お、重……!」

律子「し、失礼ね……けほっ」

P「……代わるよ、響」

スッ

P「ほら律子、肩につかまって……ソファまで運ぶぞ」

律子「す、すみません……」



  *  *  *



P(……律子をソファまで運ぶ途中、俺は初めて知ることができた)

P(それは、律子の身体の小ささ。どうして今まで、
 こんなことに気づくことも出来なかったんだろう)



P「……」

律子「はぁ、はぁ……」



P(……ああ、そうか)

P(今の律子は、こんなにも弱っているから……
 いつものような自信満々の彼女じゃないから、
 そのせいで余計に、小さく感じてしまっているのか)



──────
────
──


律子「……すぅ、すぅ」

小鳥「……熱も下がって、だいぶ落ち着いたみたいです」

P「そうですか……良かった」

小鳥「でも、プロデューサーさ──あら?」



響「うぅ、律子ぉ〜……」

真美「律っちゃん、元気になってね……」ナデナデ

律子「うぅーん……」

千早「……風邪薬、栄養になるもの、ああそれと、ノド飴も……」ブツブツ



小鳥「……こーら、あなた達、まだいたの?
   もう遅いんだから、おうちに帰りなさい」

真美「うあうあー! でもピヨちゃん、」

小鳥「でももへちまもありません。
   もし律子さんの病気の菌がみんなにうつったらどうするの?」

小鳥「心配する気持ちわかるけど、あなた達はアイドルで、
   今はとても大切な時期。体調を崩して休んでいる余裕なんてないでしょう?」

「「「……」」」

小鳥「……もしそのせいで、みんなまで風邪を引いたら、
   律子さんがそのことをどう思うかって考えてみなさい。
   大丈夫、ここは私達にまかせておいて。すぐによくなるから……ね?」

「「「……はい」」」



……バタン


小鳥「……ふぅ、ようやく帰ったわね」

P「……すみません、小鳥さん」

小鳥「え?」

P「ああいうことは、本来俺が言うべきでした。
 悪者役を引き受けさせちゃいましたね」

小鳥「わ、悪者なんてとんでもないですっ!
   みんなもちゃんとわかってくれているはずですし、それに……」

律子「……ぅ、うん……」

小鳥「……律子さんだけでなく、響ちゃん達までこんな風に苦しんでしまったら、
   そっちのほうが、私にとっては苦しいですから」



  *  *  *



P「……疲れていたんでしょうか」

小鳥「そうでしょうね……。律子さん、東豪寺プロから圧力をかけられているときにも、
   毎日毎日仕事を取ってくるために走り回っていましたから」

小鳥「まぁ、もちろんそれはプロデューサーさんも同じですけど……。
   その疲労に加え、今では舞さんの騒動にも巻き込まれちゃってるし。
   きっと律子さんのこの小さな身体の中には、色々なものが溜め込まれていたんですよ」

P「……?」


P(『舞さんの騒動』って……ああ、日高さんが日高舞の娘だっていうことが明らかになった件か)

P(……しかし、『舞さん』か。日高舞に対してそういう呼び方をするなんて、
 まるで小鳥さん、日高舞のことを個人的に知っているみたいだな)



小鳥「……それでですね、プロデューサーさん。
   こうなってしまったから、プロデューサーさんにお願いしたいことがあるんですけど……」

P「え? なんですか?」

小鳥「……スプラッシュについてです」



小鳥「今のスプラッシュには、常に誰かが一緒にいてあげないといけません。
   アイドル達だけでの活動も、やよいちゃん達ほど経験があれば問題はないとは思いますけど……」

P「……でも今は、記者達がついてまわっている」

小鳥「そうです。記者さん達への対応、そしてアイドル達の心のケア……、
   それらを引き受けてくださる誰かが、必要なんです」

小鳥「律子さんだって、これだけの処置で全快するとは限りません。
   ただの風邪に見えていますけど、私達素人の目には正確な判断が出来ませんから。
   これから病院に連れていって、そしてちゃんと診断を受けてもらわないと……」

P「……」

小鳥「……だから、プロデューサーさん。
   もし律子さんの体調がすぐには復活しないようだったら、
   やよいちゃん達を、見てあげてくれませんか?」

小鳥「ほんの短い間でいいんです、たった一週間でもいい……。
   もちろん、律子さんが治ったらそこで終了でいいんです。
   だから……だから、お願いします」

P「っ! な、そんな……頭を上げてください、小鳥さん」

小鳥「……やよいちゃん達は、今が、一番大切なんです」

小鳥「今、このタイミングでつまづいてしまったら……IA大賞は、もう……!」



P(……スプラッシュには、今、何よりも優先するべきことがある。
 それは、天ヶ瀬冬馬に負けたことを帳消しにすること……)

P(そのためには当然、プロデューサーの力を必要とする。
 アイドル達だけでは見えてこないこともたくさんあるからだ)


P(小鳥さんも、俺がスプラッシュのライバルユニット──すなわち、
 フェアリーズステップのプロデューサーであることを考慮に入れた上で、
 こうお願いしているんだろう)

P(俺がスプラッシュを助けることで、最終的な敵を増やしてしまうかもしれない。
 それでもなお、やよい達を助けて欲しい……)

P(……小鳥さんはずっと、765プロのみんなのことを見てきたんだもんな)




小鳥「……お願いします、プロデューサーさん」




P(……もしも俺が今、このお願いを断ったら)

P(それがそのまま、スプラッシュの脱落に繋がる……かもしれない)



1 わかりました
2 お断りします

>>76
※話が分岐する安価です。どちらかでお願いします
※1を選んだ場合、次週のみ『スプラッシュ』をプロデュースすることになります

1


P「……わかりました」

小鳥「! ほ、ほんとですか!?」

P「もちろん、こんなことで嘘はつきませんよ」

P「……俺だって今まで、何度もスプラッシュの三人とは関わってきました。
 だから彼女達が、こんなところでつまづくべきアイドルではないということもわかっています」

P「まぁ、以前やよいを貸してもらったということもありますし……
 出来ることなら、力になってやりたいんですよ」

小鳥「ぷ、プロデューサーざん……ずびっ」

P「あーあー、鼻水が……」

小鳥「す、すみまぜん、あだしったら……!」



  *  *  *



P「……断られるかと思ったんですか?」

小鳥「……もちろん、その可能性もあるとは思っていました。
   普通に考えたら、同じ事務所の仲間とはいえ、
   ライバルユニットを助けることにメリットがあるとは思えません」

P「……」

小鳥「でも……、良かった」

小鳥「やっぱり、あなたを選んだ高木社長の目に狂いは無かった。
   ……私は、今の765プロが、本当に大好きです」

小鳥「アイドル達がいて、律子さんがいて、プロデューサーさんがいて……、
   敵も味方も関係なく、仲間同士で手と手を取り合って」

小鳥「……そういう事務所にすることが、私達の目標でしたから」



小鳥「……プロデューサーさん」

小鳥「765プロに来てくれて、私達と出会ってくれて……」



小鳥「本当に、ありがとう……!」




  *  *  *




P(……こうして俺は来週、スプラッシュをプロデュースすることになった)

P(もちろん、律子の具合が全く問題ないようだったら、
 いつも通り響たちをプロデュースすることになるが……
 でもそれは、あまり期待しないほうがいいだろうな)

P(まぁ律子のことだから『私は全然平気です、ですからお構いなく』とか言いそうなもんだけど、
 それでも良い機会だから、何を言ってきたところで休ませてやることにしよう)



  *  *  *



P(……それよりも、俺の頭には今、先ほどの小鳥さんの様子が残っていた)



『……そういう事務所にすることが、私達の目標でしたから』



P(創立当初から、小鳥さんはずっと765プロを見守ってきていたという)

P(そんな小鳥さんが、『今の765プロが本当に大好き』と言ってくれたんだ。
 だから、彼女が愛する今の765プロの一員でいられることを、俺は誇りに思う)


P(……フェアリーズステップだけじゃない。
 スプラッシュも、他のソロアイドル達も……、俺達は全員で765プロだ)

P(彼女達アイドルのために、これからも全力を尽くしていこう。
 たったふたりしかいない、765プロのプロデューサーのひとりとして……)



【活動 30週目 おわり】

とりあえずここで以上です、お付き合いありがとうございました
後半安価少なくて済まぬ

次は水曜日になるかと思います、その際にはまたお願いします

再開します


東京
                           765プロ事務所

                      ──────────
                          活動 31週目 朝




律子『……はい、ええ、それでは──けほっ』

P「お、おい、大丈夫か? やっぱりまだ……」

律子『いえ、もう熱も下がったし身体も十分動かせます。ただ、たまにセキが出るだけ。
   あと二、三日も休めば、完全に復活できると思う』



  *  *  *



律子『プロデューサー殿、本当に、その……』

P「……いいから、今日はもうゆっくり休んでろよ。
 スプラッシュが本当に必要としてるのは、俺じゃなくて、律子なんだからさ」

律子『……はい』


律子『それじゃあ、あの子達を──スプラッシュを、お願いします』



ピッ……



P「……」





P(前回のあらすじ……)

P(先週、俺がプロデュースするアイドルユニット『フェアリーズステップ』は、
 久しぶりに音楽番組のオーディションに参加した)

P(途中で何者かの嫌がらせを受け真美がリタイアしてしまったが、
 響と千早は力を合わせて見事オーディションに合格。
 IA大賞ノミネートに向けて、また一歩前進出来たと思う)

P(……一体誰が真美にあんなひどい仕打ちをしたのかは、俺はまだ知らない。
 自分でも気がつかないうちに、東豪寺プロでも961プロでもない、
 他の誰かの恨みを買っていたのだろうか?)

P(まぁ、真美を含めた本人達が『もうこんなことは起きないから気にしないで』と言ってきたから、
 俺からはもうこの件について関わることはしないけど……やっぱりそうは言われても、気になるな)



  *  *  *



P(……そして、その後)

P(事務所に帰ってきた俺達の前に現れたのは、
 見るからに体調を崩している様子の律子だった)



『……きっと律子さんのこの小さな身体の中には、
色々なものが溜め込まれていたんですよ』



P(小鳥さんがこう言っていたとおり、律子の身体には本当に多くの負担がかかっていたんだと思う。
 東豪寺プロの一件や日高舞の騒動、それに天ヶ瀬冬馬のことも……)

P(そうして俺は今週、そんな律子に代わり、
 彼女がプロデュースするアイドルユニット『スプラッシュ』をプロデュースすることになったのであった)


P(ちなみに、フェアリーズステップのみんなにはこの件について既に伝えてある。
 やっぱり反対されるかな? とは思ったけど、彼女達の反応は俺の想像とは真逆のものだった)

P(律子がこんな状況になっているんだから、それを見捨てるなんてとんでもない。
 スプラッシュのことをほっといてまで自分達のプロデュースを優先されたって、嬉しくもなんともない。
 プロデューサーは自分達のことは気にせず、今週はやよい達のことを見てあげて欲しい……)

P(……要約すると、こんな感じだな。765プロは本当に、良い事務所だと思う。
 味方もライバルも関係なく、全員で前に進んでいこうと、みんながそう考えていてくれているんだ)

P(そこまで言われたなら、俺も、担当アイドルかどうかなんて関係なく、
 全力を尽くしてスプラッシュをプロデュースしていかなければ……!)



  *  *  *



……ガチャッ


??「おはようございまーす」


P「ああ、おはよう!」



P(そんなことを考えているうちに、誰かが事務所に顔を出してきたみたいだ。
 えっと、彼女は……)



そこにいたのは……
>>85
※765プロの女の子でお願いします

真美に変装した亜美


真美?「おっはよーだぴょーん、兄ちゃ〜ん!」

P「ああ、真美か。おはよう!」



P(そこにいたのは、俺の担当アイドルのひとりである双海真美だっ──)

P(……ん?)



P「えーっと……」

真美?「どったの? そんなに真美のこと見つめて……。
    あっ、もしかして兄ちゃん、誰もいないのをいいことに、
    プロデューサーという立場を利用して真美にあんなことやこんなことを〜……!?」

P「ちっ、ちがうわ! どんなテレビに影響されたんだ、ったく……」



P(……そこにいたのは確かに、いつも一緒にいる真美……のはずなんだけど、
 なんだろう、この違和感……?)

P(前髪を斜めに流す、アシンメトリーな髪型。
 頭をしばっているゴム紐からは、長い髪の毛が垂れている。いつもと同じだ)

P(もしかして、顔がそっくりな妹の亜美と入れ替わって……いやいや、
 亜美は真美に比べて髪が短いから、ふたりを間違えるはずもないよな)



P「……あ、そっか! 今日は、逆なんだな」

真美?「え? 逆ってなんのこと?」

P「髪の毛だよ。いつもだったら真美は、髪の毛を左耳の上でまとめてるけど、
 今日はそれが右耳の上になってる。だからちょっと、いつもと違うって思ったんだ」

真美?「……ぁ」

P「フフフ、どうだ、この観察眼! いつもお前達にあーだこーだと言われてるから、
 いい加減に髪の毛の変化くらいは見抜けるようになったんだぞ!」

真美?「……ふっふっふ、さっすが兄ちゃんだねっ!
    この真美の変身を見破るとは、お主、只者ではないな!」



P(変身っていっても、ただ髪の毛を結ぶ位置を逆にしてるだけなんだけど……、
 まぁ、さすがにこれくらいは気付いてあげないとな)


P「ところで、こんな朝早くにどうしたんだ?
 今日のフェアリーズステップのレッスンは午後からって、昨日伝えておいたはずだけど……」

真美?「あ、えーっと……そのね、兄ちゃん」

P「うん」

真美?「……」ゴニョゴニョ

P「……うん? な、なんだ?」

真美?「ちょっと……兄ちゃんとお話、したくて」

P「話? ああ、いいぞ。相談事か?」

真美?「うん……」



  *  *  *



真美?「……兄ちゃんはさ、真美のことどう思ってる?」

P「真美のこと? そりゃあもちろん、大切な担当アイドルのひとりだって」

真美?「うあうあー、そうじゃないよ〜! そうじゃなくって、その……
     女の子としてどう思ってるのか、って聞いてんの!」

P「お、女の子として!?」


P(な、なんだ急にそんなこと聞いてきて……
 いつもの真美らしくないな、なんか変なものでも食べたのか?)

P(……えっと、とりあえず、こう答えておくか)



1 真美は可愛くて、とても魅力的だと思う
2 真美はまだまだガキンチョだと思ってる
3 別にどうとも思ってない、女の子としてなんて見たことないし考えたこともないな
4 その他

>>88

3


P「うーん……、別にどうとも思ってないよ」

真美?「ええっ!?」

P「女の子としてなんて見たことないし、考えたこともないな」

真美?「……っ、そ、そうなんだ……」

P「うん……」

真美?「……真美……」



P(目の前にいる真美が、ひどく落ち込んでしまっている……)

P(……あれ? よく考えたら今、俺って……
 本人を目の前にしてとんでもないこと言ってるんじゃないか?)



P「ご、ごめん真美! いや別に、嫌いとかそういうわけじゃなくて」

真美?「……じゃあさ! ひびきんと、千早お姉ちゃんのことは!?」

P「響と千早?」

真美?「ひびきん達も、同じ? 真美に対して思ってるのと同じように、なんとも思ってない?」

P「……」



1 そんなことわからない
2 真美の言うとおり、なんとも思ってないよ
3 同じじゃない、真美に対する気持ちとは別の感情を抱いてる
4 (どうも様子がおかしい。真美に何があったのか聞こう)
5 その他

>>91


P(……こんなことを聞いてくるなんて、どう考えても変だ。
 真美に何があったのか聞いてみよう)


P「……あのさ、真美」

真美?「兄ちゃん!」

P「いいから、その質問に答える前に、今度は俺の話を聞いてくれ。
 何があった? 響達から何か言われたのか?」

真美?「……別に、なんもないもん」

P「嘘だな」

真美?「う、うそじゃないもん!」

P「真美は嘘をつくとき、自分のポニーテールをいじくるクセがある」

真美?「ええ!? それホント!?」ワシャワシャ

P「嘘だよ」

真美?「……」

P「っていうか、そう言われてから髪をいじくったら、
 自分は嘘をついてるって言ってるようなもんじゃないか……」

真美?「あう……」


P(……あまりよく考えず、反射的に動いてしまう)

P(それは確かに、真美の行動そのものだ。でも……!)



1 本当はお前、真美じゃないな?
2 もしかして真美、おなか空いてるのか?
3 もしかして真美、響達とケンカしたのか?
4 その他

>>93

1


P「……本当はお前、真美じゃないな?」

真美?「っ!」

P「……やっぱり、そうか」

真美?「……」


シュル……

パサッ


亜美「……いつからわかったの?」

P「今だよ。正直言って、最初はわからなかった。
 でも、話をするうちに、『目の前にいるのは真美じゃない』って、なんとなく思ったんだ」

亜美「なんとなく?」

P「ああ。まぁ、根拠もなかったんだけどね。
 でも真美はそもそも、こういう話をそんなに深刻そうに話さないからさ」

亜美「……ふーん、さっすが、真美の兄ちゃんだね」



  *  *  *



P(真美かと思ったその人物は、真美の双子の妹、双海亜美だった)

P(髪が長かったのは、カツラをかぶっていたから。
 結び目がいつもと逆だったのは、まぁたぶん、そこまで気が回らなかったんだろう。
 この姉妹はどこか抜けているところがあるからな)



亜美「……真美がね、言ってたんだ」

P「……」

亜美「最近、ひびきんと千早お姉ちゃんの間に、
   真美の知らない秘密が出来てるっぽいって……」

P「秘密?」

亜美「うん……」



P(……そういえば、今まで何度か顔を合わせてきたことはあったが、
 こうしてふたりきりで亜美と話すのは、これが初めてかもしれないな)


亜美「ふたりね、最近、めっちゃ可愛くなってるんだ。
   千早お姉ちゃんは服とかちゃんと選ぶようになったし、
   ひびきんなんてお化粧しちゃったりしてるんだよ!」

P「け、化粧? 化粧くらいその年頃の女の子なら……」

亜美「兄ちゃん、知らないの? ひびきんは今まで、
   お仕事のとき以外、ずっとすっぴんだったんだよ。
   すっぴんぴんでもなんくるないさーって言って」

P「……」

P(やば、気付いてなかった……)



  *  *  *



亜美「……だからね、これはゼッタイ間違いない!
   ひびきんと千早お姉ちゃんは、恋しちゃってるんだって、亜美たちは思ったんだよ〜!」

P「はぁ!? こ、恋だって!?」

亜美「……」

P「いや……いやいやいや、えー……マジで……?」

亜美「なんでそんなにびっくりしてんの?」

P「だ、だって……」



1 アイドルに恋愛はご法度だから
2 響と千早に恋人なんて出来たら悲しいから
3 俺にはまだそんな覚悟できてないから
4 その他

>>96

あいつら見ても興奮しないし


P「あいつら見ても興奮しないし……」

亜美「こ、コーフン!? 兄ちゃん、何言ってんの〜!?」

P「え?」

亜美「エロエロだ〜! やっぱり兄ちゃん、そういうことしか考えてないんだ〜!」

P「い、いや、まっ

亜美「っていうか、兄ちゃんがひびきん達をどう思ってるかなんて、亜美聞いてないっしょ!
   もしかして頭こんがらがっちゃっておかしくなっちゃった? 大丈夫〜?」

P「……ごめん」


P(……確かに、話の流れからして、今俺が言ったことは意味不明だな)

P(もうちょっとよく考えてから発言することにしよう……)



  *  *  *



亜美「亜美が聞きたかったのはね、兄ちゃんに、
   そういう心当たりがないかってこと!」

P「心当たり?」

亜美「……真美はたぶん、ふたりが誰のこと好きかって知ってるっぽい。
   でもそれは、亜美には教えてくんなかった」

亜美「だけど、もしこのままひびきん達に彼氏が出来たら、
   真美ひとりぼっちになっちゃうじゃん! そんなのかわいそうっしょ!」

亜美「そりゃあ、亜美と真美は前に『どっちが早く彼氏が出来るか』競争してたけどさ、
   今はそういうのやめにしたんだもん! 亜美に勝ち目はないっぽいし……だから、」

P「ちょ、ちょっと待ってくれ! 話が見えてこないんだけど……」

亜美「うあうあ〜! だからぁ〜!」


亜美「兄ちゃんが、真美の彼氏になっちゃえばいいって思ったんだよ〜!」

P「……はぁ!?」


P「な、なに言ってるんだよ……」

亜美「亜美は一瞬、もしかしたらひびきん達の好きな人は兄ちゃんなのかな?
   って思ったけど、まぁ、それはないっしょ? 兄ちゃんあんまパッとしないし」

P「う」グサッ

亜美「でも真美はね、兄ちゃんといると楽しいっていつも亜美に自慢してくる。
   だから亜美、兄ちゃんならって思ってた……のに!」

P「……」

亜美「それなのに兄ちゃん、真美のことはなんとも思ってないって……」


P(……確かに、そう言ったな)

P(亜美はさっき、俺が真美のことをどう思っているか探りを入れて、
 良い返事が返ってきたらそれを真美に報告するつもりだったんだろう)

P(そして、最終的には俺と真美がくっつけばいいって考えて……)



  *  *  *



P(……ああ、もう。それならそうと、
 あんなに突き放すような答えをしなければよかったのかもしれない)

P(もちろん好きと言ってしまったらそれはそれで問題だけど、
 さっき俺が言ったことは、亜美から真美に伝わってしまう可能性もある。
 そうなれば間違いなく、真美の俺に対する評価は下がってしまうだろう)

P(……いや、違う。一番問題なのはそういうことじゃない。
 自分の立場がどうとかじゃなくて──……)




亜美「……それじゃあ、亜美はもう学校行くね」

P「う、うん──って、学校!?」

亜美「うん。亜美にはレッスンもお仕事もないんだもん」

P「……今から間に合うのか? なんなら車出すけど」

亜美「いい! じゃーね、兄ちゃん!」タタッ

P「あ……」



タッタッタ……


亜美「……兄ちゃんのばーか! サイッテー!」

P「……」



P(……一番問題なのは、プロデューサーである俺の口から、
 『真美のことを女の子としてどうとも思っていない』と言ってしまった事実だ)

P(プロデューサーはアイドルの一番のファンでなければいけないと思っていたのに……。
 亜美の言うとおり、最低だ、俺って……)


バッドコミュニケーション……


──────
────
──


ガチャッ

春香・やよい「「おっはようございまー……」」

P「はぁ……」ズーン

春香「あ、あれ? プロデューサーさん、何かあったんですか?」

やよい「あぅ……なんか、元気がないかもですー……」

P「……ああ、春香にやよいか、おはよう」



P(こうして落ち込んでいるうちに、俺が今週プロデュースするアイドルユニット『スプラッシュ』に所属する、
 貴音以外のメンバーふたりがやってきたようだ)

P(……いつまでもクヨクヨしてはいられない。
 律子にああ言った以上、俺がするべきことは、この子達に心配をかけさせることじゃない。
 責任を持って面倒を見てあげるということだから……)

P(……頑張っていこう、うん)



  *  *  *



P「……さて、と。あれ? そういえば貴音は──」

やよい「……あのっ、プロデューサー!」

P「ん? どうしたやよい、もしかして貴音から何か連絡でもあった?」

やよい「そ、そうじゃなくて……元気がないときにはあれをしましょーうっ!」


スッ……


P「……ああ、アレか」


P(……やよいが右手をピンと伸ばし、手のひらをこちらに向けてきた。
 もしかしたらやよいは、俺のことを慰めてくれているのかもしれないな)


※タッチしてください


1 手のひら
2 頭
3 その他(身体の部位)
4 「そういう気分じゃないよ……」と言って、どこにもタッチしない

>>104

1


やよい「……ハイ、ターッチ!」

P「……ターッチ!」


ぱちんっ


やよい「いえーい!」

P「……」チラッ


P(……やよいの手は、小さかったけれど、とても暖かく、力強かった)

P(不思議なものだな。たった一瞬手のひら同士を合わせただけなのに、
 こんなにも気持ちがラクに……)



  *  *  *



やよい「……プロデューサー。私、何があったのかよくわかりませんけど、
    今のプロデューサーがとっても落ち込んじゃってるってことはわかります」

やよい「でも、そんなプロデューサーは、プロデューサーらしくないかなーって!」

春香「……そうですよ、プロデューサーさん。いつも言ってるじゃないですか、
   失敗は誰にでもある、一度や二度のミスなんて気にするなって」

P「……俺、春香たちにそんなこと言ったっけ?」

春香「ふふっ、私達はプロデューサーさんの見ていないところで、
   いろんな話をしているんですよ?」

P「……ああ、そうだったね」


P(春香は、俺の担当アイドルである千早と響とは、
 同じ学年ということもあってか特に仲がいいようだ)

P(彼女達から俺に関する話を聞いていたとしたって、何も不思議じゃないな)


春香「……きっと、フェアリーズステップのことを考えているんですよね?
   響ちゃん達と、ケンカでもしちゃったんですか?」

P「ケンカじゃないけど……まぁ、そんなところだよ」


P(さっきの俺の発言が、亜美を通して真美に伝われば、きっと真美は傷ついてしまうだろう。
 そうなったとき、俺は……)


春香「……大丈夫、何も心配ありません」

P「え?」

春香「響ちゃん達は、いつも言っていますから。
   『もうプロデューサーに何を言われたって、驚かない。
   もしも傷ついたら、溜め込まないで文句言って、すぐ仲直りしてやるんだ』って……」

P「……」

春香「よーく、考えてみてください」

春香「プロデューサーさんがしたことが、どういう結果を生むのかって」

P「どういう、結果……?」


タッタッタ……!


やよい「……あっ! 春香さん!」

春香「……うん、そうだね」

P「な、なんだ? 何をふたりで納得してるんだよ」

春香「……私達は、プロデューサーさんの言動だけで生き方を決めるような、
    お人形さんみたいな存在じゃありません」

春香「アイドルである前に、ひとりの女の子なんです。
   いつだっていろんなことを考えてるんですから!」

P「それって、どういう──」



バッターン!!



P「っ!」


P(……誰かが、事務所のドアを勢いよく開いて中に入ってきたみたいだ)

P(そこにいたのは──……)



真美「はぁ、はぁ……兄ちゃんっ!!」

P「ま、真美っ!?」


P「……なんでここに……レッスンは午後からだろ?」

真美「……さっき、亜美からメールが来たんだ」

P「メール?」

真美「ほら、これ!」スッ

P「……」



……………………………………………………………………………
From:亜美
Sub:残念無念。。


ぁんね、真美。。
兄(C)、真美のことナんともぉもってないんだって…
ゴメンNE、勝手に聞いちゃって(-_-;)↓↓↓↓

でもそれ聞いて、亜美、CHO→ムカついちゃったョ!
あうあうあうあう→→→→!!もぉ、兄(C)とは、クチきかないんだヵラ!
だヵらもぅ、真美も、兄(C)みたぃなヘンタィさんじゃなくて、
もっとカッコE人探したほ→がEっぽぃYO!!!!!
うあうあうあうあ→→→→!!!!!
……………………………………………………………………………



P(う、うーん……この姉妹は、このメールの独特な書き方もそっくりなのか)

P(──じゃなくて!)



P「ま、真美……あの」

真美「……真美のこと、なんとも思ってないの?」

P「それは……」

真美「……ううん、やっぱそれは今はいいや。
   それより、真美が聞きたいのは別にあんの!」

真美「なんでそれを、真美じゃなくて、亜美に言うの!?」

P「っ!」



やよい「ま、真美──」

スッ

春香「……やよい、ダメよ」

やよい「……はい」



真美「言いたいことがあるなら、真美に言えばいいじゃん!
   それなのに……!」

P「……」



1 素直に謝ろう
2 「だって真美にそんなこと言ったら、拗ねるじゃないか」と言おう
3 何も言わないでおこう
4 その他

>>108


P(……ここで今俺が何を言ったところで、それは言い訳にしかならない)

P(素直に謝ろう……)



P「……ごめん。軽率な発言だった」

真美「……」

P「亜美と真美を比べてどうこう、って思ったわけじゃないんだ。
 というか、それを言ったときは俺、相手が亜美じゃなくて真美だと思っていたし」

真美「えっ!? 亜美じゃなくて、真美だと思ってたの? なんで?」

P「カツラかぶって、変装してたから……」

真美「……ぐむむ、亜美のやつめ……!
   でも、それならそれで、真美は余計に傷つくっぽいよ〜!」

P「そ、そうだよな……本人を目の前にしてそんなこと言うなんて」

真美「そーじゃなくて! なんで真美じゃないってすぐわかんないのさー!」

P「え、そっち!?」

真美「うぅ……こんだけ一緒にいても、兄ちゃんは真美の正体を見破れなかったんだね……」

P「……ごめんなさい」



  *  *  *



真美「……兄ちゃんが真美のこと、女の子としてなんとも思ってないなんて、
   そんなのはどーでもいいんだもん。あ、いや、やっぱよくない!」

P「ど、どっちなんだ?」

真美「うあうあー、そんなことはどーでもいいっしょ!
   それより真美は、兄ちゃんに嘘つかれたり隠し事されるほうが、もっとヤダっ!
   だから真美、兄ちゃんに、なんで真美に隠れて亜美にそんなこと言ったのか確認しにきたんだけど……」

真美「……でも、真美だと思って言ったなら、それはもういいや。
   真美の勘違いだったっぽいし……」

P「……だけど、俺が真美のことをそう言ってしまったのは、本当のことだよ」

真美「別にいーよ、めっちゃ怒ってるけど、ほんとはあんまり怒ってないから。
   だってそれはまだ、真美のヘロモンがむんむんになってないせいなんだもんね」



やよい「春香さん、真美は怒ってるんですか? それとも怒ってないのかな……」

春香「さぁ……でもやよい、あの子の言うことを深く考えたら負けだよ」

やよい「負け?」

春香「そう。一年間で身体はあんなに大きくなっても、まだまだ心はお子様なんだから」


真美「……」

真美「……ん? でも待てよ、よく考えたら……」

真美「真美に変装した亜美が兄ちゃんに質問して、
   兄ちゃんがそう答えちゃったってことは……もしかしてそれって、亜美のせいかも!?」

P「えっ」

真美「そーだよ! んっふっふ〜、きっと亜美にはまだ、
   メチャモテオーラが出てなかったから、兄ちゃんもどーでもいいって思っちゃったんだ!」

P「あの……」

真美「兄ちゃん兄ちゃん! 目、つぶって!」

P「目? こ、こうか?」



スッ……



真美「……目、つぶった? 真美のこと、見えてない?」

P「あ、ああ。何も見えない」

真美「……どう?」

P「どう、って……何かしたのか?」スッ

真美「うあうあー! まだ目開けちゃダメ! 目開けたら、兄ちゃんの負け!」

P(何を持って勝敗の判定が下されているんだろう……)



スッ……



真美「……わかる? むわーって感じる?」

P「……一体、真美は何を言ってるんだ?」

真美「さっきも言ったっしょ! 真美の身体から、こう、ヘロモンがむわーって!
   目をつぶってても、ビンビンに感じちゃうっしょ?」

P(ヘロモンって……フェロモンのことだろうか?)

P(……)



1 感じるよ
2 わからないな
3 その他

>>111

お前臭いんだけど……


P「うーん、なんていうか……」

真美「うんうん!」

P「……お前、臭いんだけど……」

春香・やよい「「えぇっ!?」」

真美「えっ!? うそっ!? ちゃんとお風呂はいったよ!?」

P「いやぁ、でも……」クンクン

P「……うん、やっぱり少し、汗くさい。
 だから、真美が言うヘロモンっていうのが、よくわからないな」

真美「汗? ……あ」


クンクン……


真美「……さっき真美、走ってきちゃったからかな。
   はるるん、真美、そんなにくさい?」

春香「う、うーん……確かに汗はかいてるけど、私はあんまり感じないよ」

やよい「私も……」

春香「……と、というか、真美──」

真美「んー、ま、いいや! それならそれで、
   真美のメチャモテオーラが汗に負けちゃってるってことだもんね!」

P「……真美、もういいか?」

真美「だめ! 真美がいいよって言ったら、目開けて!」

 








「……兄ちゃん、もういーよ!」


P「……」パチッ



P「……あれ?」


P(真美から合図を受けて、目を開けると……)

P(そこには、真美の姿は無かった)



  *  *  *



P「……なぁ、春香、やよい。真美はどこにいったんだ?」

春香「……もう、出て行っちゃいました。
   ドアのそばで今の合図を出して、そのまま……」

P「で、出て行った?」

やよい「あの、プロデューサー……さっき、真美、泣い──」

春香「……もういいよ、やよい」

やよい「で、でも!」

春香「もういいの。いいから、行こ?」

P「あ、あのさ、どこに行くんだ?」

春香「仕事です」

P「俺も一緒に……」

春香「……結構です」

P「え……」




春香「……きっと、今のプロデューサーさんは疲れているんですよね。
   ごめんなさい、それなのに私達のプロデュースまで引き受けてもらっちゃって」

春香「私達なら、もう大丈夫ですから。放っておいてください」

P「……、いや、しかし、俺は律子にお前達のことを任されて」

春香「……言わないと、わかりませんか?」



春香「今のプロデューサーさんに、振り回されたくないんです。
   私達だって、IA大賞に向けて、真剣に挑んでるんですから」

P「……」

春香「……」



春香「……それじゃあ」



……バタン

すいません、書くの忘れてたけど、ルート確定しています
これから先、安価がひとつだけになり、エンディングまで一直線になります



P「……行ってしまった」

P「……」


P(どうするか……)

P(春香たちはかなり怒っていたようだし、
 スプラッシュのプロデュースはもう出来ないと考えたほうがいいだろう)

P(……とりあえず、午後になるまで待って、
 フェアリーズステップのみんなが来るのを待とう。
 こうなったらもう、いつも通りのメンバーをプロデュースすることしか、やることないしな……)


──────
────
──




P(……しかし、あれからいくら待っても、
 フェアリーズステップの三人が事務所に顔を出すことは無かった)

P(その頃にはさすがの俺も、真美のことをとても傷つけてしまったということはわかっていた)

P(だから、今日は真美は来ないかもとは思っていたが……)



P「……響と千早まで来ないなんて」



P(……アイドル達は、俺の見ていないところで様々な話をしている)

P(それはもう、いろんな人から、耳にタコが出来るくらい聞いてきた事実だ。
 もしかしたら響達は真美から話を聞いて、俺に幻滅してしまったのかもしれないな……)



──────
────
──


P(そしてそれから更に、数時間が経過して……)



カァ、カァ……



P「……夕方。もう、こんな時間か」

小鳥「……」カタカタ

P「……こ、小鳥さん」

小鳥「……なんですか?」

P「いやー……さすがに俺、やっちゃいましたよね……」

小鳥「……、」



P(先ほどのやり取りの現場に小鳥さんはいなかったが、
 今日一日まともに話をしてもらえなかった様子を見るに、
 小鳥さんもきっと、この件について知っているんだろう)

P(……先週はあんなことを言ったにも関わらず、
 俺が今スプラッシュのプロデュースをせず、こうして事務所でのんびり雑務していることを、
 彼女はどう思っているんだろうか……)



  *  *  *



小鳥「……私からは、なんとも言えません」

P「……」

小鳥「アイドル達がどう思っているかは、彼女達本人にしかわからないこと。
   でも、もしそれでも、彼女達の心を少しでも理解したいなら……」



……ガチャッ

響「……ただいま戻りましたー」



小鳥「……本人に、聞いてみればいいんじゃないですか?」


P「ひ、響……お帰り」

響「……プロデューサー、いたんだ」

P「今日はどうしたんだ? レッスン前にはいつも、事務所に寄ってるじゃないか」

響「……自分も千早も真美も、レッスンには行かなかったんだ。
 ごめんね、サボっちゃって」

P「い、いや……」



  *  *  *



P「……あのさ」

響「……」



P(アイドル達の心を知りたければ、本人達に聞くしかない)

P(……でもきっと、ここが分岐点だ。ここでどういう話題を振るかで、
 これから先の運命が、少しだけ変わってしまう気がする)

P(どうあがいても大きな道筋からは逃げられないとしても……、
 少しはマシな結末を迎えられるかもしれない……)




P(俺がわからないことはなんだ? 俺が知りたいことは……、なんだ?)




1 響が今まで何をしていたのか
2 千早が今何をしているのか
3 真美が今何をしているのか
4 その他

>>130
※最後の安価です

サボったの俺のせいだよな



P「……サボったのは、俺のせいだよな」

響「……っ、……うだよ……!」プルプル

P「え……」

響「そうだよっ! このバカプロデューサーッ!!」

P「っ!」


響「……ダメだ、ダメだダメだ! もうだめだ!
  さすがの自分も、もう怒ったぞ!」

P「ひ、響……」

響「そんな当たり前のことが聞きたかったの!?
  自分達が今まで何をしていたのかよりも、少し考えればわかるような、
  当たり前のことが確認出来れば、それで良かったのか!?」

P「いや、そんなつもりは──……!」

響「プロデューサーはいつだってそうだ! どこか外れてる!
  っていうか、そうだって思うなら、どうして今まで何にもしなかったんだよ!!」

P「……」

小鳥「……」


P(だって、それは……身体が、動かなかったから……)

P(今、みんなの顔を見るのが、怖かったから……)



  *  *  *



響「……自分と千早は、今まで真美のところにいたんだ」

響「朝、真美から電話があった。大声で泣いてて、何いってるか全然わかんなかったけど、
  それでも自分はなんとか、真美が今どこにいるかを聞き出して、それから千早を呼んで……」

P「……」

響「……ねぇ、プロデューサー。どうして真美を傷つけるようなこと言ったの?」

P「……」

響「……そっか。もう、それすら、教えてくれないんだ」



響「……もう、ダメだね」

P「……ダメって……?」

響「自分達はもう、プロデューサーのことが信じられない。
  ……IA大賞なんて、どうでもよくなっちゃった」

P「な……っ!?」



P(──なんでだよ!?)

P(い、いや……そりゃあもちろん、今回の件は俺が悪かったと思う。
 真美のことをひどく傷つけたと思う……)

P(でも、こんなこと今までいくらでもあったじゃないか!
 なのに、『この程度のこと』で、夢を捨てるなんて──……!)



響「……『この程度のこと』、って、思ったでしょ?」

P「……っ!」

響「プロデューサーは顔に出やすい。それくらいのこと、
 これだけ長い時間一緒にいたんだから、自分、わかるんだからな」

P「いや……ま、待てよ、響。
 そうだ、確かに俺は今、そういうことを考えた。でもさ!」

P「またいつものように仲直りして、もう一度、やり直せばいいじゃないか!
 俺、真美に謝りにいくよ。土下座でもなんでもしてやる。だから……!」

響「……そうやって、何回傷つければ気が済むの!?
  自分達がプロデューサーを信頼してることを利用して、好き勝手なこと言って!」

響「『どんなことがあっても仲直りできる』って思ってるなら、それは大間違いだぞ!
  そんなに単純じゃないんだ、自分達は! 生きてるんだよっ!!」

P「な、なんで……なんで、今更になって、そんな……」



P(……先週までの響と、今の響、どこか……違う)

P(どうしようもなく俺が悪いということは、もうわかってる。
 でも、なんでだ? どうして今回はこんなに、謝るチャンスも与えてくれないくらいに、怒ってるんだ?)



響「……、もう、最後だし、わかんないなら、教えてあげるよ」

P「え……?」

響「今から自分が言うこと、よく聞いて。今はもうどうしようもなくても、
  もし心を入れ替えて生まれ変わることがあったら、それがヒントになるかもしれないから」


P(……なんだ? 響は、何を言って……)


くらっ……


P(あれ? 頭が、なんだか……)






響「……プロデューサーだって、なんにもヒントが無かったわけじゃないんだ。
  だから、知らなかった、わからなかったじゃ済まされない」

響「亜美が言ってたでしょ? 『自分と千早の間に、何か秘密が出来たっぽい』って。
  それでそのことを、真美が気にしてるって」

P「……」

響「亜美たちの言うとおり、自分と千早は今、少し、変な関係になってる。
  『お互い一切秘密事がない状態』になっ──……から──……」



P(……響の言葉にノイズが乗っているように聴こえる)

P(何を言っているんだ? 響……)



響「『プロデューサーが自分と千早にしたこと』は、お互い、全て知って──……」

響「それでも……自分達は、それでもい──って……」

響「だけど、それは──……」




P(……ダメだ。もう、意識が──……)






「……気持ちが大きければ大きいほど」

「愛情が大きければ大きいほど、そのバランスは危ういものになる」

「少しつついただけで簡単にその感情のベクトルが変わり、
憎しみにも嫌悪にも変わってしまう……」



「ましてや、お互いに腹のうちを全て打ち明け、
ひとつの壁を乗り越えた彼女達なら、なおさら……」

「彼女達は確かに彼に大きな信頼と愛情を抱いていたが、決してそれだけではない。
これは恋愛小説ではないのだから、恋愛など話のおまけに過ぎない」

「というかそもそも、これは小説ですらない。ただの日記帳か、それ以下の存在だ」



  *  *  *



「……これまで多くの努力と苦難を共に重ねてきた彼女達の間には、
彼に対する愛情と同じくらい、大切な絆が出来ていた」

「そんな仲間を傷つけられた。しかもそれが、
最も信頼を寄せていた彼の口から出た、理不尽で納得のいかない暴言によって。
それは、彼女達の心のバランスを崩すには十分すぎた……」



  *  *  *



「全てが彼に都合よくなんて、そんな風には世界は出来ていない。
あっけない終わりに納得のいかない人もいるだろうが、これもひとつの結末だ」

「なにしろ、彼女達は生きているのだから」

「生きることは傷ついていくことの反復であり、
もう耐えられないと言って逃げ出してしまう人もいれば、最後まであがき抜く人もいる」

「彼女達は前者だった。それを責めることが出来る者なんて、誰もいない。
いるとすれば、運悪くこの書き物に出会ってしまった読者である、あなたかもしれない」



「……」



「……おわり、と……」




「うーん……我ながら見事な黒歴史だ。
かつての自分のしたことを、こうして原稿用紙にまとめてしまうなんて……
大したことは何も成し遂げられなかったっていうのに、自叙伝のつもりかよ」

「これは、誰にも見られないように、物置にしまっておくとしよう……」



  *  *  *



「……どうして、こんなものを書いたんだろうな」

「こんなもの、なんの意味もないっていうのに……」

「……」




(……あれから一週間待っても、一ヶ月待っても、
半年経って、何かの大きなお祭りが始まっても……)

(結局、彼女達が再び俺の前に姿を現すことはなかった)

(電話をかけてもダメ。他の誰に聞いても、誰も何も答えてはくれない)



(俺はただひたすら、待ち続けた)

(待って、待って、ひたすら待って……)



  *  *  *



(……そんなある日、事務員さんが俺にこんなことを言ってきた)


『あなたがいるから、彼女達は戻ってこないんです』


(意味がわからなかった)

(それなら俺が生きている意味って、なんだ?
担当アイドルがいるからこそ、俺は存在するんだろう?)

(俺が生きているってことはつまり、俺の目の前にはアイドル達がいないとおかしいだろう?)


(だって、俺は──……)



「……俺は」


「俺は、なんだったんだろうな……」


「……まぁ、どうでもいっか。
よーし、ひとつ大きな仕事も終わったし、今日はもう寝るとしよう……」




  *  *  *




(……たまに、こんな夢を見る)

(それは、昔の夢。俺と彼女が、初めて出会ったときの夢……)




『よーしっ、自分、やるぞーっ! 目指せ、トップアイドルーっ!』




(俺達はそのとき、これから訪れるであろう輝かしい未来を胸に抱いて、
ただ無邪気に笑い合っていた)

(幸せな夢だ。今夜も、見れるといいな)

(そうすれば明日は、ややこしいことなんて一切考えずに、
その夢のことを思いながら、一日をのんびり過ごすことができるから……)





「……それじゃあ……」




(……今日も俺は、もうボロボロになって全てのページが色あせてしまった、
かつて使っていたスケジュール手帳を胸に抱いて眠る)

(この手帳にはいろんな思い出が詰まっているし、
その最後のページには、初めて彼女に会ったときに書いてもらったサインがあるから)

(いろんなものを失ってしまったけど、この手帳だけは、
唯一今でも手元に残っている、俺の大切な宝物だ……)




「おやすみ、響……」





……ぱちん。





(……意識が闇に落ちていく最後の瞬間、俺の頭に浮かんだものは)



『……なんくるないさー!』



(彼女の顔いっぱいに広がる、まぶしいくらいの笑顔だった)






P「安価でアイドルプロデュースしてIA大賞受賞を目指す」


                                  おわり





※二回目のバッドエンドを迎えました。Pの残機はあと1です




リスタートしますか?

1 する
2 しない

>>140
※1の場合、真美が事務所に入ってくる直前からリスタートします
※2の場合、本当にここでSS終了です

1



           リスタート
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



小鳥「……もう二回目なんで、いいですよね、色々と」

「……はい」

小鳥「とりあえず、わかっているとは思いますけど、
   どうしてバッドエンドになったのか教えます」



  *  *  *



小鳥「前回のバッドエンドで言いましたけど、、
   バッドエンドになる条件をもう一度説明させていだきます」



1 活動36週目にランキング20位以内に入れないこと
2 フェアリーズステップの誰かがアイドルを辞めること
3 765プロの評判が取り返しのつかないくらい悪くなってしまうこと



小鳥「加えて、これも……」



4 PのプロデュースするアイドルがIA大賞を受賞出来ないこと



  *  *  *



小鳥「前回は、あなたが逮捕されたことにより、3の条件に当てはまってしまいました。
   そして今回は、あなたが担当アイドルを傷つける発言をしたことにより、
   アイドル内での評判が悪くなり、結果として信用を全て失ってしまったんです」

小鳥「彼女達はプロとはいえ、ひとりの女の子です。女の子は傷つきやすく、壊れやすいもの。
   アイドルを続ける意欲がなくなるには、十分だったかと」

小鳥「プロデューサーを信用できない程度でアイドルを辞めるなんて馬鹿らしいと考える人もいるかと思いますが、
   この世界はそういうものなんです。プロデューサーがアイドルと信頼関係を築けないようでは、
   これから先、いくら頑張っても結果なんて得られないでしょう。絵理ちゃんの例もありますし」

小鳥「団結値も親愛度も親密度もゼロのままIA大賞を受賞できるものならやってみてください。
   この縛りプレイではコミュで常にバッドにしなくちゃいけない上に、
   もちろんレッスンだってパーフェクトを取れないんですからね、団結値上がりますから」


小鳥「もうあとがないので色々と言ってしまいますけど、
   これまで散々言ってる条件1……すなわち、『活動36週目にランキング20位以内に入れないこと』は、
   活動36週目に『普通に』到達さえ出来れば必ず達成できます」

小鳥「『普通に』っていうのは要するに、5thシングル決定以降のコミュでバッドを連発しないこと。
   4thシングルまでは順調にやってきたので、その領域まで既に達しているんですよ」

「5thシングル?」

小鳥「活動32週目の朝に決めることになります。4thも随分長いこと歌ってきましたから」


  *  *  *


小鳥「それと、先ほど加えた条件4……『PのプロデュースするアイドルがIA大賞を受賞出来ないこと』は、
   IA大賞にノミネートしたにも関わらず、残念ながらIA大賞を受賞できなかったパターンです。
   原作ゲーム『アイドルマスター2』における、いわゆるアカペラENDですね」

小鳥「このバッドエンドも……、もう言ってしまいますけど、
   話を『普通に』進めさえすれば、回避できます。普通に進めてハッピーエンドじゃない物語なんてあり得ませんから」

小鳥「『Pのプロデュースするアイドル』という言い方をしたのは、これから先の選択次第では、
   フェアリーズステップではなく『765プロオールスターズ』をプロデュースする可能性があったからです。
   ……まぁ、亜美ちゃんの親愛度があそこまで下がってしまった以上、もうこのルートはほとんど消えかかってますけど」


  *  *  *


小鳥「要するに、プロデューサーさんが変なことさえしなければ、いずれはクリアできるんです。
   ハードでもなければノーマルですらない、イージーモードなんです」

小鳥「ハードにしているのはプロデューサーさん自身。
   その結果としてバッドエンドを迎えたところで、あなたに文句を言う権利はありません。
   もう最後ですからね、私も小うるさくなりますよ!」

「あの……先ほどから何度か言っている、最後とか、あとがないっていうのは?
っていうかさっきチラッと見た、Pの残機があと1って言うのも気になるんですけど……」

小鳥「……それじゃあ、今のうちに言っておきます」

 

小鳥「リスタートできるのはこれが最後。
   あと一回バッドエンドになってしまったら、そこで終わりです」




小鳥「もちろん、私としても最後まで見届けたいところではありますけど……
   バッドエンドに入るのは精神的に疲れますから、それがこう何度も続くようならもういっそのこと、
   スパッと切るのもひとつの選択かと。これ以上アイドルが傷つくのは見たくないです」

「え……マジですか?」

小鳥「マジです。でも、あなたが頭の中で考える選択肢によってバッドになってしまった場合は、
   その限りではありません。具体的に言いますと、こういうことです」




3 その他

あるいは

4 その他




小鳥「こういう、『その他』で示される自由安価の結果でバッドエンドのルートに入ることが、
   もう許されないということです。それ以外の場合なら、再びリスタートします」

小鳥「『その他』を一切無くしたりひどい安価の場合再安価するということも考えましたが、これはあくまで安価SSですから。
   『安価は絶対』というルールを破るくらいなら、最初から安価なんか出しません」

小鳥「……とにかく、次にこうなった場合、そりゃもうすごいことになりますからね!」

「すごいことって……?」

小鳥「前回のようなまだ救いの可能性のある終わり方でもなく、
   今回のようなあっけない終わり方でもない、
   理不尽で納得のいかない結末、最悪のバッドエンドを迎えることになります」

小鳥「それはきっと、アイドル達にとって考えうる最大の不幸です。
   ですから、どうか常識を持って行動してください。
   でないと本当に、取り返しのつかないことになります。私も最大限のサポートはしますから」

「……はい」


小鳥「それじゃあ……本当にこれが最後ですよ、プロデューサーさん」

P「……」

小鳥「月並みなことしか言えませんけど……
   頑張ってください。応援していますから」

P「……わかりました」


──────
────
──

とりあえず今日はここで以上です、お付き合いありがとうございました
次にいつ書くかはまだわかりません、まぁ一週間以内にはまた書く…と思う
それでは

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