少女「人喰い」 (5)
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少女「......」
少女「(私は今、薄暗い洞窟の中を歩いています)」
少女「(理由はただ一つ、神様への生贄の役割を果たす為です。村の言い伝えでは、この奥に住処を設けているそうです)」
少女「(言い伝え、とは言っても神様が現れたのは極々最近のことで、不作続きで貧しかったこの村でも充分な食糧を手に入れることが出来るようになりました)」
少女「(しかし、それだけでは豊作と神様を結び付ける人は居ないでしょう。もう一つ、奇妙なことが起こり始めたのです)」
少女「(それは......村の人が突然消えていくのです。いや、何者かに連れ去られていくと言った方がいいでしょうか)」
少女「(居なくなった住人の家には、必ず血痕が残されていました。そして、数日後には骨となった住人が遺族の元に送られてくるのです)」
少女「(最初のうちは、村の総力を挙げて犯人を見つけ出そうとしていました。その中心となったのは、やはり身内を殺された人達でしょうか)」
少女「(しかし、連れ去られて骨にされた人物が10を超えた時、村ではこう考える人が出て来ました)」
少女「(充分な食糧を生産出来るようになった時期と、神隠しにも似たこの現象が起こり始めた時期は、同じではないかと)」
少女「(始めは一蹴されただけの考えでしたが、その後も神隠しは続き、遂には一晩で20人もの村人が骨にされました。ここで漸く、豊作と神隠しを結び付ける考えが支持されるようになりました)」
少女「(そして、そのことから結び付けられた結論としては『神様』がこの村にやって来て、豊作をもたらす代わりに人間を喰らっているという何とも信じ難いものでした)」
少女「(村で対策を考えている間にも被害は増え続け、100人の大台に達しました。これは、この村の総人口の2%を超す大人数であり、これ以上の被害は村にとって大打撃です)」
少女「(それ以上に......次に喰われるのは自分かもしれないといった恐怖が蔓延していました。皆、豊作よりも自分の命の方が惜しいのです)」
少女「(しかし、豊作と命の両者ともに惜しいと考える人も少なくありませんでした。村の有力者達です。彼等は、自分の命を守りつつ豊作をもたらす神の機嫌をとっておく方策を必死に考えていました)」
少女「......」
少女「(それが......生贄です)」
少女「......」
少女「......広い場所に出ましたね。ここが神様の住処なのでしょうか? 」
『何の用だ、小娘』
少女「!? 」
少女「(今の声、何処から!? )」
『お主、聞こえぬのか。何用でここに参った? 』
少女「(天井から? あの暗闇から? いや、それよりも......)」
少女「(ちゃんと言わなきゃ、供物として捧げられたことを......)」
少女「はじめまして神様、私は少女というものです。今日はお願いがあってここに参りました」
『申せ』
少女「村の人間を連れ去る代わりに生贄を捧げますので、村人を喰らうのをお辞め下さい」
少女「(い、言えました。これで役目を......)」
『そうか、という事はお主は我への供物ということじゃな? 』
少女「......はい、その通りです」
『......生贄か、実にくだらぬものじゃ』
『よりによってこの匂いのする人間を選ぶとは......』
『......我はお主を喰らわない』
少女「......え、どうして......」
『我はお主を食べぬと言っておるのじゃぞ? 何故喜ばんのじゃ』
少女「だ、駄目です。私を食べてください! 役目を果たさせて下さい! 」
『......言い方を変えよう、我はお主のその匂いが嫌いじゃ。今すぐ村へと立ちされ! 喰らう人間は此方で決める』
少女「い、いくら神様の御命令とはいえ、何の成果の無く村に戻る訳にはいきません! お願いです、私に生贄としての使命を全うさせてください! 」
『......』
スッ
人喰「人間如きが我と取引じゃと? 笑わせる。もしここでお主を喰らったとして、こちらにあの村の人間を喰らわぬという約束を守る義理はないぞ」
少女「......」
少女「(突然目の前に現れた神様は、私の想像を超える容姿でした)」
少女「(全長2m程の球体で、全身が黒に覆われています。両端には腕のようなものが生えており、そして何よりも目立つのは中心で大きく開いた口です)」
少女「(その口で......一体何人の村人を飲み込んだのでしょうか? )」
少女「(しかし、今は神様の容姿など、関係ありません。重要なのは......)」
少女「それでも......私を喰らって下さい」
少女「(確実に喰らってもらうことです)」
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