春香「惚れ薬を飲んだみんなと見られた私」 (272)
それはあまりにも突然の出来事でした
ご自由にと書かれたバスケットの中のお菓子
ご自由になら食べてもいいのかな?
食べてもいいよね?
と、千早ちゃんと一緒に摘んだわけだけど
「あっ食べちゃったの?」
「えっ」
急に小鳥さんがお茶を持ってきて、
そして言ったのです
「その中に、惚れ薬入りのお菓子が混じってるから気をつけて」
……と。
千早ちゃんがとったのは白いお饅頭
私が取ったのは普通のクッキー
「お饅頭の方だからね、気をつけてね?」
「……春香」
小鳥さんの語尾のように、となりからの声が続く
「えっと……千早、ちゃん?」
温かい千早ちゃんの視線を感じる
「春香……ふふっ、可愛い」
これ、多分ダメなパターンです
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「春香!」
「っ!」
ソファからの緊急離脱
千早ちゃんが顔からソファに倒れこむ
「小鳥さん!」
「ふふっ幸い今日はオフでしょ? 良いんじゃないかしら」
何がいいのかさっぱりわからないけど、
とりあえず
「時間はどれくらい経てばいいんですか?」
「ん~……大体2時間くらいかしら」
大体だなんてなんて曖昧な時間
こんな状態の千早ちゃんを外に出すわけにはいかないし……っ!
「春香……どうして? 春香、どうして逃げるの?」
「ひぃっ」
ゆらりと立ち上がり、上目遣いの鋭い眼光が私を捕える
普通に怖い、殺されそうな勢いで怖い!
「これっヤンデレ化の間違いじゃないんですか!?」
「春香……どうして無視するの? どうして逃げるの?」
ソファが軋み、
千早ちゃんの足が床へと降りていく
トッ……トッ……と、
千早ちゃんの足音が向かってくる
なんてホラー、なんてヤンデレ!?
「春香……逃げる必要なんてないのよ?」
「え、え~っとぉ……」
チラッと小鳥さんへの救援要請
だけど、そこはやっぱり小鳥さん
面白そうにニヤニヤと私たちの行く末を見守るつもりらしい
「春香ちゃん、あくまで惚れるだけだから、危険はないはずよ」
「すでに貞操……命の危機ですよ!」
「は~る~かっ」
「ひっ」
ドンッと背中が壁にぶつかった
「ふふふっ追いかけっこはおしまいね」
圧倒的絶望を前に、
私の体は動くことができなかった
震える体は言う事を聞かず
その首筋を千早ちゃんの指がなぞっていく
「ち、千早ちゃ……」
「春香には私を見て欲しいの……」
「み、見てるよ? 結構見てると思うんだけどなっ!」
後ずさることもできない私は
千早ちゃんの怪しげな手の動きを一身に受けるしかなく
夏の暑さも相まって汗が滴り落ちていった
「結構じゃ嫌よ……」
「へ?」
「常に私を見て欲しいの」
そんな無茶なことを言われても……困るよ
「だから、ね?」
千早ちゃんの右手が顎をクイッと持ち上げる
「あ、あのえっと……」
「春香」
温かくて、柔らかい唇の感触
押しつぶされるように唇の厚みが減っていく
「……………」
「……………」
互いの呼吸が止まった瞬間
その分だけ心拍数が跳ね上がった
千早ちゃんが徐々に離れていく
同時に唇の厚みが戻って言っているはずなのに
その強烈な感触が唇には残っていた
「…………………」
キスされたんだよね?
千早ちゃんに、キスされちゃったんだよね……?
確かめるように唇を指でなぞっていく
柔らかい自分の唇
そこに重なった千早ちゃんの唇
「っ……」
「春香……?」
惚れ薬なんていうモノによる偽物の心
「ぇ、えへへ……や、柔らかいなぁ」
千早ちゃんの気持ちを勝手に操作して、思いのままにキスさせて
こんなの可愛そうだよ……
「で、でもっ禁止ね? 見られたら困るし」
私自身の唇を奪われたのも少し悲しいけど
千早ちゃんの本当の意思に関係ないキスだったことが、
もっと悲しかった
一旦中断
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