ルルーシュ「デートか……」/ユフィ「デートです!」(121)

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■前回まで

前スレ:スザク「死なせてよ!」ルルーシュ「えっ?」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1381324660/)


これまでのまとめ:http://geassfun.at.webry.info/

 01 ルルーシュ「お前のせいなんだろうッ!」C.C.「私のせいですぅ!」
 02 C.C.「ボク、チーズクンダヨ!」ルルーシュ「えっ?」
 03 シャルル「いーむゎあぁ……」神官「えっ?」
 04 スザク「死なせてよ!」ルルーシュ「えっ?」


全速力で!

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■カワグチ湖周辺 中継車内 ─────

ディートハルト「くそっ、つまらん……!」
      「ユーフェミア殿下が屋上で危険に晒されているのにそれが流せないとは……!」


(カワグチ湖のホテルジャック事件の中継のため、私は現場周辺まで出張っていた)
(しかし、テロリスト達が屋上へ人質を並べた時点で報道管制が敷かれ、中継映像も)
(ホテルの遠景までしか許されなくなった……)
(我々は総督府の広報ではない、民間の報道機関だ……つまらんことを!)


AD「まーたそういうことを……」
   「勘弁してくださいよ、ディレクターが捕まったらオレもやばくなるんスよ?」

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ディートハルト「お前は何のためにこの業界に入ったんだ……!」
      「大衆の求めるものを見せるのが私たちの使命だろう!」

AD「まあ、そうですけど……」

ディートハルト「可憐な少女が屋上から身を投げ出す瞬間……!」
      「そして、百メートル下のアスファルトで薔薇のように儚く散る瞬間!!」
      「誰もが見たがるであろうその瞬間をだなぁ……」クドクド

AD(だからそれがやばいんですって……)ハァ…

ディートハルト「まったく……ロマンのないやつだ……」
      「……うん、おい、3号車はどうした?」

AD「はい?……あれ、映像が来てない?」
  「おい3号車、どうした、トラブルか?」

??「マスコミの方、済まないが、しばらくの間この車両を借り受ける」

AD「ああ?ふざけてんのか?おい……」

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??「私は、ゼロだ……」

AD「ゼロぉ?何をふざk」バキッ!!


(その名を聞いた瞬間、私は目の前の愚鈍なADの頭をぶん殴った!)
(この上なき素晴らしいアクシデントが、私に向かって飛び込んできた……!)


ディートハルト「おいゼロ、何をする気だ?これから、何が始まるんだ!?」
      (私に……何をみせてくれるんだ……!?)ハァハァ

ゼロ「作戦に必要なのだ……安心しろ、後で無傷で返す」プッ

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(処刑場での鮮やかな襲撃以来の……待ち望んでいた、歓喜の瞬間……!)
(私は、ファンファーレ代わりに、目の前のADの頭を丸めた台本でしたたかに打ち据える)
(コオンという乾いた音が車内に鳴り響いた)


ディートハルト(ゼロ……きたか……!)ギンギン

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─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

ゼロ「よし……このままゆっくりと進め」コンコン

井上『了解……』ブロロ…


(……俺は、中継車の屋根に上った状態で、車をゆっくりと、ホテル正面の橋へ向けて)
(進める……中継車の内部には、キョウトの兵と騎士団メンバーが乗り込んでいた)
(周囲にいた親衛隊の連中は、俺の姿を見てぎょっと驚いているようだ)

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(俺の読みは的中した……ホテル屋上に並べられた人質の中には、コーネリア最愛の妹、)
(ユーフェミア副総督が含まれていた)
(それと同時に、コーネリアにはあと1時間半しか時間が残されていないことも判明した)

(コーネリアは特派に対し、搬入路の突破を命じた)
(突破後にホテルの基部を破壊し、ホテルを沈めるという作戦だったが、俺はその計画)
(そのものをハイジャックした)
(ランスロットのベストパイロットである枢木スザクにランスロットを強奪させ、彼が突破を)
(図るのだ……パイロットがすでに入れ替わったことを、コーネリアはまだ知らない)

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(草壁たちを殲滅し、人質を無事に救出し、そして自分たちも安全に脱出する……)
(極めて困難な条件だ……)
(しかし、それをやり遂げねば……シャーリー達から明日が永遠に奪われる!)
(あるいは、俺の未来も……!)


ゼロ(スザクに続き、今度はシャーリー達だ……)
   (フッ……俺に関わると、みな危険に晒されるのか……?)


(仮面の中で俺は、我が呪われた運命を口を歪めて嗤った)

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■その約30分前 レジスタンストレーラー ─────

ゼロ「全員、制服を着用したか?」

玉城「おう!これでいいのかァ?」

南「……井上、それすごいミニスカだな……」

井上「ちょっ……言わないでよ、恥ずかしいんだから!」

扇「ゼロ、カレンがいないんだが?」

ゼロ「彼女は、今回は君と共にトレーラーで待機してもらう」
   「大丈夫だ、カレンがいなくても作戦は成功できる」

扇「そうか……ゼロ、気を付けてくれ」

ゼロ「うむ……それでは、キョウトの兵と黒の騎士団の共同作戦を決行する!」
   「いくぞ!」バッ!!

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(ゼロの合図で、彼らとキョウトから来た応援は共にトレーラーを後にする)
(今回は、オレはトレーラー内で彼らの連絡の仲介を行う係だ……)
(作戦開始まで、まだ少し時間がある)

(先ほどから姿の見えないカレンが気になり、オレは車内を移動する)
(女性幹部用の部屋の扉は開いていた……)
(覗いてみると、カレンは制服も着ずに、寝そべって携帯用TVを見ていた)
(いま、少し離れた場所で起きている事件の、中継映像だ)


扇「……カレン」

カレン「あ、扇さん……」ゴソゴソ

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扇「制服を着るように言われていただろう?聞いてなかったのか?」

カレン「……」


(彼女はうつむいたまま、中継を見ている)
(何事か思い悩んでいるような……そんな表情だ)


扇「……彼と何かあったのか?」

カレン「ううん、なにも」

扇「そうか……でも、そういう顔には見えないな?」
  「オレはごまかせないぞ?」

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カレン「…………ルルーシュはね、」

扇「うん?」

カレン「友達でも、作戦のためなら平気で見捨てる気みたい」

扇「そう言ってたのか?」
  「……オレらも、そういう風に見ていると?」

カレン「…………」

扇「オレは、彼はそんなやつじゃないと思ってる」
  「いつ死んでも気にならない奴らに、これだけの設備、用意できるか?」

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カレン「……今あそこにいる人質の中に、知り合いがいるんだ……」

扇「本当か?」

カレン「学園の、クラスメイトだった子……彼も、よく知っている子だよ」
    「でも、作戦のことしか言ってなかった……」
    「心配だとか、そういうことはひとことも……」

扇「……なら、なおさらじゃないか」

カレン「??」

扇「オレなら、必死になって作戦を練る……絶対失敗できないからな」
  「そういうことを言う暇があるなら、より確実な手段がないか考えるだろう」
  「彼だって同じじゃないかな」

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カレン「……うん……」

扇「……ほら、カレン、制服を着てろ」
  「待機しておけと言われたなら、いつ出番が来てもいいようにしておくんだ」
  「オレは戻るよ……もう少ししたら作戦の開始時間だ」

カレン「……わかった」

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■カワグチ湖 ホテル内 草壁らの篭城場所 ─────

草壁「……少将?今なんと?」

片瀬「キョウトが、君たちの活動を認めた……今、ゼロが部下を連れて、」
   「そちらへ応援に向かっている、彼らを配下として迎え入れてくれ」

草壁(ゼロ?ゼロだと……?)

片瀬「彼らは有能だ、きっと君らの役にたつだろうとキョウトは言っている」

草壁「……どうやって、ここに来る気で?」
   「周囲はすでにブリタニアに包囲されておりますが?」

片瀬「それは彼らが手段を講じるらしい……」
   「詳しくはワシにもわからん」

草壁「ふむ……わかりました、受け入れましょう」
   「彼らがここに辿り着けるなら、ですが」カチッ

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(片瀬からの予想外の話に、草壁は頭をひねる)
(キョウトが動いた、となると、事態はやや変わってくるが……)


同志A「草壁、応援が来ると?」

草壁「うむ……キョウトからの指示で、ゼロがここに来るらしい」

同志B「ゼロが!?」

草壁「我々の活動を認める代わりに、ゼロをお目付けにしようという魂胆だろう」
   「しかし……どうやって包囲網を突破する気だ……?」

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同志C「……おい、あれがゼロじゃないか?」


(窓際にて、眼下に広がるホテル正面の風景を見ていた同志が、そう草壁に知らせる)
(彼らは窓際に走り寄り、状況を確認してみる)


草壁(……あれは、報道車輛か……!?)

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

ゼロ「……コーネリア、どちらを選ぶ?」
   「死んだクロヴィスか、生きているユーフェミアか」
   「もっとも、ユーフェミアもあと1時間足らずの命でしかないようだが……」

コーネリア(…………おのれ……)ギリッ…
      「お前が連中の仲間ではないという保証もないのに、誰が……!」

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(ホテルへと続く橋のたもとで、ゼロはその行く手を阻んだコーネリアと対峙していた)
(ここが最初の難関……しかし、姿を現した彼らをコーネリアが撃たなかった時点で)
(勝算は見えた……状況は、想定通りとなったのだ)


ゼロ「コーネリア、冷静になれ……我々が増えたとて、戦況に変化があるのか?」
   「貴女なら、この程度の敵戦力の殲滅などたやすい話だろう?」
   「人質を皆殺しにした上での勝利となるが……」

コーネリア「……」

ゼロ「それとも、私以外に適切な交渉役がいるならそれでも構わないが……」
   「いないだろうな……フッ、いれば、とうの昔に解決している」

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コーネリア「…………降りろ、ゼロ」


(コーネリアはそう告げると、グロースターから飛び降り中継車に歩み寄る)
(驚くギルフォードら親衛隊に、手を振って留めた)


ゼロ(これで第1ステージの前提条件はクリアされた……!)バッ、カツカツ…

   (クク……ギアスを使うまでもない、あなたにとってユフィは、絶対に失うことの)
   (できない存在なのだからな……すなわち……!)

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(双方とも、額がぶつかる程に接近し、歩みをピタリと止めた)
(周囲が息をのむ中、コーネリアはゼロを真正面から睨み据えながら、)
(絞り出すような声で小さく呟く)


コーネリア「……ユフィを絶対に助け出せ……!」ボソボソ
      「助けられなければ、お前らを皆殺しにする……必ずだ……」
      「その首を切り落とし、仮面もろともハンマーで叩き潰してやる……!」

ゼロ「よかろう……その条件、受け入れよう」ボソボソ
   「ところで、私が彼女を助けたら、どうする?」

コーネリア「…………見逃してやる……」クルッ
      「道を開けろ!ゼロたちを通せ!」


(コーネリアの言葉を背に、ゼロは再び中継車の屋根に駆け上がる)
(道は開かれた……作戦開始のタイミングまで、あとわずかとなった)

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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

草壁「……なんと……!」

幹部A「コーネリアが包囲を解いた!?」

幹部B「バカな……一体どういう魔法だ……?」


(草壁らは、コーネリアの包囲を抜け中継車が橋を渡り始めるのを見て驚愕した)
(あるいはこれが、片瀬が語った"キョウトの支援"という意味なのか……?)


草壁「ふ……ふはは……!」
   「諸君、これはひょっとすると……ひょっとするとだぞ!」
   「この籠城、成功するやもしれんな!」

幹部A「では、ゼロたちを迎え入れるのか?」

草壁「ああ、門戸を開け放て!」
   「キョウトのご厚意、有難く頂戴するとしよう!」

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■特派 搬入路への進入口 ─────

扇『……枢木、ゼロから連絡だ、そちらに中継する』ピピッ

スザク「こちら、準備は完了してるよ、なんだ?」

ゼロ『枢木スザク……当初の計画から状況が変化した、よく聞け』
   『ユーフェミアは現在屋上にいる、彼女はこのままでは、屋上から突き落とされる』

スザク「なんだと……!?」

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ゼロ『じき、私たちの部隊はホテル内に入る』
   『合図と同時に君は強襲をかけ、ホテル最下層から真上に向けてヴァリスを使い、」
   『床を抜いて一気に屋上まで駆け上がり、ユーフェミアを確保しろ』
   『ホテル内の守備は脆いはずだ、ナイトメアなら単騎でも問題ない』

スザク「……猶予は?」

ゼロ『君の突撃による混乱から回復するのが、おそらく数分』
   『事態を把握し、ユーフェミアを処分するまでは1・2分もないだろう』

スザク「……わかった」ググッ

ゼロ『他の人質は、その混乱に乗じ私たちが助け出す』
   『扇の合図と同時に、突入開始だ……君の働きに、期待している』カチッ

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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

(スザクとの会話を切って1分後、中継車はホテルのゲートをくぐる)
(周囲を解放戦線の兵士が取り囲む中、俺は中継車の屋根から飛び降りた)


ゼロ「……出迎え、ご苦労!」バッ!!
   「キョウトから応援として派遣された、ゼロだ」

戦線兵「ようこそゼロ、同志として歓迎する」
   「VIPルームへ来てくれ、草壁中佐がお待ちだ」

ゼロ「うかがおう」カツカツ
   「君たちはここで待機していてくれ」

玉城「あいよ!」
   「おう、おめェら、オレらはどこを守ればいいんだァ……?」


(玉城ら騎士団メンバーとキョウトの兵たちは1階に残る)
(第2ステージの第1段階はクリアだ……)

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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

(俺と解放戦線の兵士は、エレベータで草壁のいるフロアを目指す)
(刻々と上がっていくフロア表示のランプを見ながら……)


ゼロ「途中のフロアにも兵を配置しているのか?」

兵士A「いいや、ナイトメアが上がれない位置には置く意味がないからな、数名程度だ」
    「突入路となる下のフロアと屋上を固めれば十分だ」

兵士B「間の階からVTOLなどで無理に侵入しようとすれば、上下から挟み撃ちって寸法だ」

ゼロ「なるほど……効率的だ」


(だろうと思った……つまり、連絡を分断されるとそれぞれが孤立する)
(第2段階もクリア……)

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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

(俺は、草壁のいるVIPルームのある、最上階フロアに辿り着く)
(先にエレベータから足を踏み出した俺は、おもむろに背後の兵士を振り向く)


ゼロ「ああ、すまないが……」
   「5分後に、1階にいる私の兵を、人質のいる場所に案内してくれ……!」キュィィィン!!

兵士たち「…………わかった」

ゼロ「ありがとう、頼むよ」

兵士たち「…………ん?」

ゼロ「……君たち、草壁の部屋はどこだ?」

兵士たち「あ、ああ……こちらだ」テクテク


(これで最終段階もクリア……"タイマー"は、セットされた)

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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

(草壁のいるVIPルームのドアが開かれ、俺は中に入った)
(草壁は、豪奢な室内のソファにどっかと座りこんでこちらを見ている)
(その周囲を、見た覚えのある幹部および兵たち数名が取り囲んでいた)


草壁「ゼロ……久しぶりだな」

ゼロ「ああ、片瀬少将に初めてお会いした時以来かな?」


(俺は、草壁に言葉を返しながら、向い合せの位置に立った)
(おあつらえ向きに、ここなら全員が視界に入る……これは、想定になかった幸運だな)


草壁「確かそうだな……」
   「今日は、例のおっかないお嬢さんはいないのか?」

ゼロ「ああ、今は自宅の片付けをさせている」

草壁「???」

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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

南「……ん?あの兵士か?」

兵士「……ついて来てくれ、人質のいる場所まで案内する」


(『解放戦線の兵士が、人質の場所へ案内する、と言った時点で作戦開始だ』)
(予めゼロが決めておいた手順通りに、事態は進行しているようだった)

(玉城と南ら数名は、その兵士と共にエレベータへ乗り込む)
(井上は、通信機で開始の合図を伝えた)


井上「扇さん、開始よ」ボソボソ

扇『了解ッ!』
  『枢木スザク、突撃だ!』

スザク『ランスロット、行きますッ!』ギャギャギャギャ!!

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キョウト兵「……やれ」タタタッ!!

兵士「ぐあ!」…ドサドサツ


(ゼロの推測通り、人質を閉じ込めていた場所……食糧庫を守備していた兵の数は、)
(数名だけだった……玉城たちはすばやく中に入ると、驚く解放戦線の兵士2名を)
(たちまち射殺する)


玉城「よおッ、みんな無事だったかァ?」
   「正義の味方、黒の騎士団がおめェらを助けに来たぜえ!」バアーン!!

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シャーリー「えっ……正義???」キョトン

ニーナ「でっ、でもあなた、イレヴンだし!」キッ!!

玉城「……な、何なんだよ、その反応はァ!?」ガクッ

南「扇、人質は確保した!」ピピッ

扇『いま枢木が地下通路の突破を図っている!』
  『もうしばらく待て!』

南(早いとこ頼むぜ……枢木……!)
  (でっかい花火を打ち上げてくれないと、オレらここで挟み撃ちになっちまう……!)

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スザク「ぬおおおおおおおッ!」


(雨のように降り注ぐ超電磁式榴散弾を、しかしランスロットはブレイズ・ルミナスを展開しながら)
(通路の天井まで使った回避行動により全てをかわし切った!)
(サザーランドと全く異なる、白いナイトメアの驚異的な動力性能および防御システムに、)
(通路を防衛しているリニアキャノン、"雷光"の乗員たちは、死の恐怖を覚える……)


兵士「……てっ、敵ナイトメア、第5射も突破……!」
   「信じられない……こいつは、まさかあの、白い死神……!」

上官「臆するなアアッ!四連腕部自在砲台を展開!」
   「ここは絶対防衛圏である、死守するんだアアアッ!!」

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スザク(……こいつは、射撃前の加圧ラグがある!)
    (それに、こちらとの距離を測って榴弾が破裂する仕組みだ!)
    (ブレイズ・ルミナスはあと1回は展開できる、ならば次の砲撃と同時に……!)

上官「超電磁式榴散弾重砲、発射アアアアッ!」


("雷光"の砲口が白く輝き、榴散弾が発射される!)
(その瞬間、ランスロットは一気に最大戦速まで加速した!)


兵士「なにい!?まだ加速したぁ!?」

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スザク「展開前に!!」


(榴散弾が展開する直前を、ブレイズ・ルミナスで叩いた!)
(と同時に、全力でMVSを投擲した!)
(切っ先鋭い槍と化したMVSは一撃で"雷光"の砲身を割り、搭乗席に飛び込む!)


兵士「ひいいいいギ!」ズシュ!!

上官「ぬああああガ!」ブシャ!!


(突如飛び込んできた鋭利で巨大な剣に、乗員たちは瞬時に串刺しにされる!)
(乗り手を失った"雷光"は、完全に沈黙した!)


スザク「敵防衛線、突破ッ!」シュオオオオ!!

セシル『ほんとにやっちゃった……!』アゼン…!

ロイド『彼が来てくれてざんねんだったねぇ~!』ニコニコ

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~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

兵士A「ん……なんだ、今の音は?」

兵士B「地下からの爆発だったような!?」
    「おい、司令部に連らガ!」

兵士A「ぬア!」


(その瞬間、ランスロットが地下から放ったヴァリス弾が、床を突きぬけさらに天井を)
(次々と貫通してゆく!たまたま周囲にいた不運な兵士たちは、死を自覚する間もなく)
(みじんに吹き飛ばされた!)

.
(ホテルの床を抜き、ランスロットは1Fのフロントに躍り出る!)
(予想外の位置からの突然のナイトメアの強襲に、解放戦線の兵士たちは驚愕した!)


兵士「な……何だァ!?」

スザク「ウラアアアアッ!」


(ランスロットがMVSを振るうたび、剣が発する高周波は兵士たちを瞬く間に肉片と)
(化し千々にちぎり飛ばす!)
(対KMFの重火器はみな外部へ向けて設置していたがゆえに、スザクに対し彼らは)
(無防備も同然の状態となった)

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(次々と天井を抜きながら飛び上がり、最上階を目指して突撃を行うランスロット……)
(その圧倒的な火力の前に、解放戦線の側はただただ虐殺されるだけであった)
(飛び散る兵士の血しぶきが、ランスロットの白く輝く機体を朱に彩る)


スザク「邪魔をするなアアアッ!」ガシュオォォ!!

兵士「ひ……ひいいぃぃギぁ」グチャ

スザク(屋上へ……一瞬でも早く、屋上へ……!)

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

(ランスロットの突撃による衝撃は、重い地響きのような振動となりホテル全体に伝わる)
(最上階にある草壁たちのいる部屋には、それが地震のように感じられるものとなった)


草壁「なっ……何事だ、この揺れは!?」

同志A「地震……いや、まさか攻撃か?」

ゼロ「ふむ……草壁、どうやらチェックメイトのようだな」

草壁「……なに!?」
   「さ、さては、貴様……!!天誅ッ!」ガバッ!!

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(俺の言葉に、謀略にはまったことを悟った草壁は、腰の軍刀を抜いて俺に切りかかる)
(傍の兵隊たちも、銃を素早く構え俺に向ける)
(しかし……俺のギアスの発動はそれらよりも圧倒的に早い!)

ゼロ「自決しろ」キュィィィン!!

草壁「ぬ……ぬお……!」ググ…


(他の者はすぐに命令を遂行したが、驚いたことに草壁は、俺のギアスに)
(抵抗するそぶりを見せた……それは、俺にとって初めての経験だった)


ゼロ(なに……ギアスに逆らうだと……!?)

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草壁「ぐ……おお……日本バンザイイイイイ!」ズシュ!!


(少しの間、躊躇するようであった草壁だったが、最後に高らかに叫ぶと)
(軍刀を己の腹に深々と突き立てて絶命した)


ゼロ(……今のは、なぜだ……?)
   (強い意識下の場合は効果がなかなか発揮されないのか?)
   (草壁の、俺に対する強烈な殺意が邪魔をしたのか……?)


(だが、今その考察をする間はない!)
(俺が廊下に飛び出すと、階下から上がってきたキョウトの兵および騎士団員と)
(鉢合わせになった)


ゼロ「草壁たちは自決した!」
   「屋上へ急げ!連中が気付く前に制圧するんだ!」

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

(ホテルの正面にいるブリタニアの部隊には特に動きがないにも関わらず、ホテル全体を)
(揺らすような、重い地響きが先ほどから続いている……)
(屋上にいる、ユーフェミアを含む人質たち、そして彼らの背後で銃を構える解放戦線の)
(兵士たちも、互いの顔を見合わせて不安げな表情をする)


兵士A「おい……なんだ、これ……?」

兵士B「わからん……指示は何もないのか?」

兵士A「問い合わせてるんだが……誰も出ない」

兵士B「まさか?……襲撃か?」

.
(と、その時、屋上へ通じる階段の扉が勢いよく開き、十数名の兵士が飛び出してきた)
(その中には、ゼロの姿も……!)


ゼロ「動くな!投降せよ!」
   「君たち解放戦線の同志、草壁はすでに自決した!」

兵士A「なに!?」

ゼロ「いま、ブリタニアのナイトメアの強襲部隊がここを目指して移動している!」
   「投降するなら今の内だ、奴らが到着してからでは遅すぎるぞ!」

兵士B「くそ……!」

ゼロ「命が惜しくば、武器を捨てて床に伏せろッ!」

.
(遮蔽物もない屋上で、完全に不意を突かれた解放戦線の兵士たちは、)
(ゼロのその言葉に、互いに顔を見合わせながら腰を落とし、手に持っていたマシンガンを)
(そろそろと床に置く……)


ゼロ『こちらゼロだ、屋上の制圧に成功した、人質は……』

兵士A「……ニッポン、バンザイィィ!」ダッ!!

ゼロ「な!?」


(突如、そのうちの一名がそう叫びながら身をひるがえし、人質に飛びかかった!)
(人質……ユーフェミアは、襲い掛かってきた兵士の姿に恐怖し、身を固くする!)

.
ゼロ「と、止まれえッ!」パンッ!!


(ゼロの放った銃弾は、その兵士の背中に命中した)
(身を反らし、脚がもつれながらも兵士は、決した死の覚悟をもってユーフェミアに抱きつく)


兵士A「……死なば、諸共……」ニヤ

ユフィ「!!」

.
(倒れた兵士に押し出される形で、ユーフェミアの身体が、ぐらり、と倒れた)
(ユーフェミアは、屋上のふちから足を踏み外し、宙に舞う……)


ゼロ「な……!」


(長いフレアスカートを風にたなびかせ、驚いた表情の彼女はそのまま、)
(真っ暗な夜の闇へと、吸い込まれるように…………姿を消した)


ゼロ「ユ、ユフィィィィィ───ッ!!」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

ダールトン「……屋上に、動きがあったようです」
       「どうやら、制圧に成功したようですな」

コーネリア「ふむ……あれがゼロ達か」


(ダールトンの言葉に、コーネリアは暗視付双眼鏡でホテル屋上の様子を見ていた)
(ゼロ達らしき集団が屋上へ現れ、解放戦線の兵士たちが驚いているようだ)


コーネリア「ふん、イレヴン共にしては手際が良いな」
      「言うだけのことは…………ッ!?」


(覗いているレンズの中で、解放戦線の兵が女性に飛びかかるのが見えた)
(その兵が倒れ、押し出されるように……その女性は!)


コーネリア「ユッ……ユフィ……!?」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

(……その瞬間!)
(ランスロットの現在の階数、位置、方角、ユーフェミアの位置、落下速度……)
(それら全てのイメージが、同時に、ゼロの脳裏を駆け抜ける!)


ゼロ『スザク、4時の方向!飛べええ────ッ!』

スザク「!!」


(スザクは、突如無線で叫んだゼロの、その言葉の意味を瞬時に理解した!)
(スティックを全開にし、ホテルの壁に対し背中からランスロットを突っ込ませる)
(壁を突き破り、ランスロットは夜の虚空へ躍り出た!)

.
スザク(ユ……ユーフェミア様……ッ!)


(ファクトスフィアを全開にし、上空から落下してくる彼女をセンサーでとらえる)
(ゼロの指示は的確だった……まさに目の前に、ユーフェミアが!)


スザク「くおおおおおッ!」


(ランスロットは腕をまっすぐに伸ばし、ユーフェミアの身体をその手に受け止めた)
(と同時に、スラッシュハーケンをホテルに撃ち込む!)
(煙を噴き上げながら急制動をかけるスラッシュハーケン、だが、ホテルの外壁は)
(落下するランスロットの荷重には耐えられそうにない……!)

.
スザク(くそおッ、彼女だけは……!)


(宙吊り状態になったランスロットは、もどかしげにその巨大な身体をねじり、)
(仰向けになった……コクピットを下に向ける!)
(その瞬間、外壁が剥がれ落ちた!ランスロットは宙に投げ出され、)
(数秒後には激しい衝撃音と共に地面に叩きつけられた……!)


コーネリア「ぬうッ!?」

ゼロ「スザクッ!!」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

ディートハルト「これは……ッ!?」

AD「……!」


(3号車からの映像をモニタリングしていたディートハルトたちは、白いナイトメアが)
(ホテルから飛び出し落下するまでの一部始終を見ていた)
(空中で何かを手にし、まるでそれをかばうかのように……地面に落下していった)


ディートハルト(あれは何だったのだ……?)
      (一体、何が起きたのだ?)ギンギン


(現場は、ナイトメアとホテルの脱落した外壁が巻き上げた土ぼこりが立ち込め、)
(カメラでは状況が把握できない)
(ディートハルトたちは、事件の結末を、固唾をのみながら待ち構えた……)

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


ユフィ「……う……」
    (わたし……?)
    (確か、屋上から投げ出されて……ここは……?)


(気を取り戻したユーフェミアは、大の字に横たわったナイトメアの掌の上で突っ伏して)
(いたことに気付いた)
(舞い上がったチリが立ち込める周辺にはガレキが散乱し、ナイトメアは殆ど動けないまでに)
(壊れている)


ユフィ(このナイトメアが、わたくしを……?)

.
(自分を見守るように向いたまま、その動きを止めたナイトメアの顔を、)
(ユーフェミアはゆっくりと見上げる……と、その時……)


??『……ご無事で……』


(内部からマイク越しに、力なく男の声が響いた)
(中のパイロットが無事なのを知り、ユーフェミアは安堵の表情をする)


ユフィ「……あなたが私を助けてくれたのですね……」
   「心から感謝いたします」ニコッ

.
??『勿体なき……お言葉です……』

ユフィ(…………あら?今の声……どこかで……?)
   「あなたのお名前をおっしゃっていただけますか……?」

??『…………』

ユフィ「……あの?」

??『早く……お戻りを……』

ユフィ「……?」
    「…………えっ?あなたは……!?」

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

ロイド「……あああああ!僕のランスロットがああああああ!」オロオロ!!


(ボロボロに破壊されコクピットも圧潰したランスロットを吊り上げ、持ち去るために、)
(ホテルの中庭には2機の所属不明のVTOL機が着陸し、準備を行っていた)

(無事救出された人質たちは、ホテル正面の橋の上に集められた)
(そして人質たちと対面にいる親衛隊たちの間で、ゼロたちレジスタンスとコーネリア及び)
(専任騎士2名が対峙していた)

.
コーネリア「……我々のおもちゃを盗んでいく気か?」

ゼロ「我々は火事場泥棒ではない」
   「中のパイロットを救出できれば、機体は返却する」

コーネリア「特派から報告があった、アレには枢木スザクが乗っていたようだな?」

ゼロ「ああ、彼以上の適任はいないのでね、協力してもらったのだ」

コーネリア「奴はクロヴィス暗殺の指名手配を受けている身だ……」
      「引き渡す気はないのか?」

ゼロ「声明でも述べた通り、それが濡れ衣だというのは分かっているのだよ……」
   「何しろ、私が彼に手伝わせた覚えがないのだから」
   「フッ……どうかな、お手製の"指名手配犯"に助けてもらった気分は……?」

.
コーネリア「ふざけたことを……!」
       「テロリスト風情がえらそうに講釈か!」

ゼロ「違うな……間違っているぞ、コーネリア」
   「我々は、テロリストでもない」

コーネリア「じゃあ何だというのだ!」

ゼロ「我々は……黒の騎士団だ!」バッ!!

コーネリア「なにい?」

ゼロ「今回の件は、日本解放戦線の一部急進派による騒動であった」
   「例え相手がブリタニア人であろうと、武器を持たない一般人を人質に取る行為は」
   「決して許されない……よって、我々が粛清を行った……」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

ディートハルト「……何がですか、こんな特ダネを逃してどうするんですか!」
      「責任ン?そんなもの、私がとりますッ!」

AD(……もうだめぽ……オレも巻き添えで処分を食らうのかなぁ……)ハァ…


(ゼロたちの背後にある3号中継車はまだ生きていた)
(先ほどまでは、ホテルで繰り広げられていた戦闘やランスロットの活躍、そして今は、)
(すぐ間近で行われているコーネリアとゼロのやりとりを、ずっとライブ中継していたのだ)
(ディートハルトはこのやりとりを、独断で全国に流しているのだった……)


ディートハルト(こんな……こんなエキサイティングなイベントになるとは!)
      (たまらん!これぞ報道、これこそがマスメディアだ……!)ギンギン

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

ゼロ「……コーネリア、私は約束を守ったぞ」
   「貴女も約束を守れ……それで契約が完結する」

コーネリア(……守らなければ人質を連れ去るということか)
      (ユフィも含めて……)

      「……今回だけだ、行け!」
      「次に逢う時は、お前の最期だと思え!」

.
ゼロ「その高潔なる心に敬意を表する……」
   「……では、またいずれかの戦場で」


(ゼロの合図で、キョウトの兵士と騎士団の団員たちはVTOL機に乗り込む)
(2機の機体は人質たちを残して上昇すると、いずこへと飛び去っていく……)
(ユーフェミアは、力なく吊り下げられたランスロットが飛び去ってゆくのを、)
(いつまでも見つめ続けていた)


ユフィ(……枢木スザク……ありがとう……)
   (今度は、わたしが貴方を助けます……必ず……!)

.
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

ゼロ「扇、カレン、目標は達成された」
   「租界ゲットーまで戻れ、作戦完了後に我々も後から合流をする」

扇『了解!』

玉城「…………っひょーッ!すッげえぜオレら!」
   「やっちまったぜェ、見事によォ!」

南「ああ……今でもこうやって生きてるのが不思議な気分だぜ……」

井上「被害もなし……信じられないわね……」フーッ

ゼロ「何を浮かれているんだ?」
   「作戦はまだ終わっていないんだぞ!?」

玉城「へ?」

.
ゼロ「ナイトメアの中の、枢木スザクの安否が確認できてからだ!」

南「……そうだな」


(俺は……殆ど祈るような気持ちでいた)
(スラッシュハーケンでの制動により、ホテル最上階付近からよりは随分と衝撃が弱まったに)
(せよ、ランスロットは相当の高さから、コクピットをクッションにして落下したのだ)

(外からの開閉ができないほどに歪んだそれは、中への衝撃がいかほどのものだったかを)
(如実に物語っていた)


ゼロ(早く……早く目的地へ到着してくれ……!)
   (奴を、スザクを救い出さないと……!)ググッ…

.
■ Intermission ─────

(その後の展開は、ほぼ俺の読み通りとなった)

(日本解放戦線は……片瀬少将は、俺たちの対応について謝意を示した)
(内心は忸怩たるものがあるにせよ、最悪の事態は回避できたのだ)
(だが、彼らの組織の崩壊はもはや時間の問題だ……後は、いつ我らがそれを吸収するか、)
(という課題だけが残っている)

.
(人質たちがブリタニア人であったにも関わらず、彼らを救い出した我らが黒の騎士団は、)
(その単純明快な主張──弱者の味方──が受け入れられ、支持者を増やした)
(また、俺はその言葉を実践に移す)

(クロヴィスの統治期間中、エリア11では腐敗がはびこっていた)
(貧困にあえぐイレヴン達に渡るはずの物資の横流しや麻薬、密輸、そして賄賂……)
(しかし、次の総督に就いたコーネリアは、国内の反政府組織の壊滅を優先させるあまり、)
(それらをないがしろで放置していたのだ)
(黒の騎士団は、コ-ネリアが見逃しているそれらをひとつひとつ、丁寧に潰していった)

(紙面の片隅という扱いながらも新聞には、末端の売人が警察に突き出されただの、)
(議員の汚職が判明しただのという記事がたびたび載るようになった、そしてそこには、)
(「黒の騎士団」という名が入ることになる……こうして徐々に、我々の名を人々の間に)
(定着させる戦略だった)

.
(ひとつ、予想外であったのは枢木スザクのことだ)

(ランスロットの中で生存が危ぶまれていたスザクだったが、幸いにして無事だった)
(実験機ということで、フレーム構造なども通常の量産機より強固な仕組みが試験的に)
(用いられていたことが幸いしたらしい……1か月程度の入院生活で済んだ)

(だが予想外というのは、そのことではない)
(街角から、スザクの顔写真が静かに姿を消した……つまり、彼の"指名手配犯"扱いが)
(撤回されたのだ)

.
(撤回の理由はいまだに公表されていないのだが、ともかくこれでスザクは、大手を振って)
(街中を歩くことができるようになり、キョウトも彼を軟禁しておく必要がなくなった)
(先日の"ライブ中継"の影響かとも思ったが、あるいはユフィを救い出したことに対し)
(コーネリアなりに借りを返したつもりかもしれない)

(……それでもスザクは、軍籍も、名誉ブリタニア人という地位もはく奪されたままだった)
(帰る場所は、失われたのだ)

(ケガの完治後はトウキョウ租界周辺に戻り、今は俺が用意したゲットー内の仮住まいで)
(寝起きしては、日雇いの仕事をこなしている)
(幾度も誘ったが、俺の"仕事"を手伝う気は全くないようだ……)

.
(一時期、救出されたシャーリー達がマスコミの取材責めになるなど、)
(事件の後しばらくは慌ただしい日々を送っていたが、世間は徐々に、平穏な日常へと)
(戻りつつある……狙い通り、黒の騎士団、という異物を内に秘めたままに……)

(……やがて、季節は冬を迎えた)
(街を行く人々の姿に、厚手の上着が目立つようになってきたある日のこと……)

.
■黒の騎士団 トレーラー内 ─────

カレン(コンコン)「……紅月カレンです」

ゼロ「……入れ」


(その日、ゼロに呼ばれたわたしは、トレーラー内の彼専用の部屋の扉をノックした)
(ほどなくドアが開き、わたしは中に入る)
(ゼロは……仮面を脱いだルルーシュは、何かの資料に目を通していた)

.
ルル「……そこのソファに座っていてくれ」

カレン「はい」テクテク…モスッ

ルル「……」パラパラ

カレン(……何の話だろ?)


(わたしが座っても、ルルーシュはしばらくの間は書類に目を通していた)
(やがて、それらを机の上に置くと、わたしの方に向いた)

.
ルル「待たせた……カレン、最近は作戦活動を精力的にこなしてるようだな?」
   「その献身には感謝している」

カレン「ありがとうございます」

ルル「先日の、政治家の収賄事件では、危険な潜入調査もしてくれたな?」

カレン「はい……任務ですから」

.
ルル「うむ……」
   「ところでカレン、次の日曜日は何か予定があるのか?」

カレン「公私ともにありません」
    「新しい作戦活動ですか?」

ルル「……えっ?」

カレン「え?」

ルル「作戦という解釈でもかまわんが……」
   「俺と一緒に、街に出てもらいたい」

.
カレン「わかりました、装備はどうしますか?ハンドガンで?」
    「それともグレネードランチャーくらいが必要になりますか?」

ルル「えっ?」

カレン「え?」

ルル「……いや、武器は必要ないだろう」
   「まあ護身用のハンドガンくらいは持っててもいいが……」

カレン「わかりました、集合時間は?」

ルル「朝10時だ、イケブクロの噴水の前で」

.
カレン「日中ですか、今回は隠密活動ではないんですね」

ルル「えっ?」

カレン「え?」

ルル「……隠密、と言えばそう言えるかな……」
   「俺たちが目立つのは好ましくない、地味な服の方がいいかもしれん」

カレン「…………あの、一体何の話?」

ルル「……君は、一体何の話だと思ったんだ?」

カレン「騎士団の、次の作戦の話じゃないんですか?」

ルル「…………」
   「いや、ごく単純に、買い物などにつきあってもらいたいんだが」

カレン「…………」

.
■その数日前 ─────

扇「ゼロ……いや、ルルーシュ」

ゼロ「ん?なんだ?」

扇「最近、カレンとそりが合ってないのか?」

ゼロ「いや……どうした?」

扇「先日、カワグチ湖でカレンに待機を命じただろう?」
  「あれ以来、カレンがどうも君を避けてるように見える」

ゼロ「それは気のせいではないのか?」
   「彼女は、作戦でも問題なく指示に従っているが」

.
扇「オレは彼女を、小さい頃からよく知ってる」
  「いま、カレンは君に対して隙間のようなものを感じていると思う」
  「疎外感、というのかな……?」

ゼロ「隙間、か……」
   「私は、特にそういう意識はなかったのだがな……」

扇「君がそういうのを気にしていないのは、彼女も分かっているだろうが……」
  「カレンに対してもう少し、接し方を考えてみてもらえないか?」

ゼロ「……難しい戦略目標だな」
   「とりあえず作戦を立案してみよう」

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

カレン(……これって、まさかデートのお誘いってこと……?)
    (あのルルーシュが……?)

ルル「……不満か、悪かった……」
   「また今度の」

カレン「……朝10時ね?」

ルル「えっ?……ああ、10時だ」

.
カレン「イケブクロね?」

ルル「ああ、イケブクロだ」

カレン「ハンドガン持参ね?」

ルル「ああ、ハンドガ……それは君に任せる」

カレン「わかりました!」ガバッ
    「失礼します!」カツカツ…シュッ!!

ルル(…………今の反応は、怒ってたのか?)

   (ナナリーなら、いっしょの買い物を素直に喜んでくれるんだが……)
   (拒否しなかったので、約束は了解したとみていいのだろうが……)

   (……女というのは、よくわからんな……)

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

カレン(…………)カツカツ

井上「……そうなのよ、彼もまだ仕事がわかってないみたいね~」

玉城「しゃあねェなあ、田中のヤツも……おっ、カレン!」
   「次の日曜の飲み会だけどよォ……」

カレン「ごめん、出れない!また誘って!」カツカツカツカツ

玉城「へっ?」

カレン「今日はもう帰るね!また明日!」カツカツカツカツカツカツ

井上「また……あした……?」パチクリ

玉城「……すげェ勢いだったな?」

.
■租界 カレンのアパート ─────

カレン母「あっ、おかえ……」

カレン「寝る!」ドカドカドカ

カレン母「えっ、ちょっと、カレン?」アタフタ


(わたしは、速攻で部屋に入ると服を脱ぎ散らかしてベッドに飛び込んだ)
(ルルーシュに言われた瞬間から今まで、それについてあまり考えないようにしていたが、)
(こうして落ち着くと…………じわじわと……!)


カレン(…………デートって……デートって!)
    (ルルーシュと、デートおお!?)

カレン(くっ……くくく!何それ!笑えるっ!!)バタバタ!!
    (あの、あのルルーシュが……デートのお誘いいい!?)
    (『買い物などに……つきあってもらいたいんだ……』って!あは、あははは!)

    (やばい、やばいって!何それ!?買い物!?)
    (『いかん、お金が足りないッ!カレン、戦略的撤退だ!』とか言うんじゃないの!?)
    (もうほんっと、なにそれえ!?いたいいたい、お腹いたいってば!)バタンバタン!!


カレン母(……だいじょうぶかしら?)
     (帰ってくるなり、お部屋で暴れて……)オロオロ

.
■夕刻 租界周辺ゲットー スザクの部屋 ─────

スザク(今日も疲れたなぁ……ガレキの山と、一日中格闘してたな)
    (しかしこのペースだと、ゲットーの復興って百年以上かかるんじゃないかな……)


(オレは、現在ゲットー内で唯一の定収入となる仕事、ゲットーのガレキ撤去作業に)
(従事していた……)
(ものすごく厳しい仕事だ、毎日、巨大なガレキの撤去や、廃屋を壊しては整地の繰り返しを)
(している……でも、これでも働けるだけまだマシだ、体力のない女性や老人は、乏しい配給に)
(すがって命を長らえてるような状況だから……)

(その日の仕事を終えたオレは、アパートに戻ってきていた)
(扉を開け、生活品もまだろくに揃っていない住まいに足を踏み入れる)

.
スザク「ふう……ただいまあ……アーサー、元気にしてたかい?」

アーサー「にゃあー」


(同居人は、猫のアーサー……真っ黒なネコだ)
(ゲットーで怪我をしてうずくまっていたところをオレが手当してあげたら、そのまま部屋に)
(いついてしまった……でも、オレも寂しい独り身はつらいので、同居は歓迎なんだが、)


スザク「ほらアーサー、こっちにおいデエェェエッ!?」ビクン!!

アーサー「……」ガブリンチョ


(かわいがってあげようとすると手にかみつく……)
(そんなにオレが嫌いなら、出てってほしいんだけど……)

.
(と、そこへケータイの呼び出し音が鳴る)


スザク(非通知?誰だ……?)ピッ
    「はい……もしもし?」

???「…………あの、スザク……枢木スザク、ですか?」

スザク(女の声だ、一体誰だ?)
    「あ、はい、そうですが……どちらさまで?」

???「あの、わたくし……ユーフェミア・リ・ブリタニアと申します」

.
スザク(…………ユーフェミア、って聞こえたけど、)
    (疲れすぎて、幻聴が聞こえ始めたんだろうか……)
    「あの、もう一度お名前をお願いします」

???「わたくし、ユーフェミア・リ・ブリタニアと申します」

スザク「……ユーフェミア副総督、でしょうか?」

ユフィ「はい!」

.
(その、鈴が転がるような可愛らしい返事を聞いた瞬間!)
(オレは電撃を食らったような衝撃をうけ、片手にアーサーをぶら下げたまま、)
(思わず直立不動の姿勢をとった!)
(ホンモノのユーフェミア様が、オレのケータイに非通知でかけてきただと───!?)


スザク「こっ、これは……!」ビシッ

ユフィ「お久しぶりです、枢木スザク……突然電話をして、ごめんなさい」
    「あれから、お体の調子はいかがですか?」

スザク「はい、おかげさまで!」
    「毎日ガレキを持ち抱えまくっております!」

.
ユフィ「そうですか……良かった……」クスクス
    「カワグチ湖のことで、まだあなたにちゃんとお礼を申し上げておりませんでしたので、」
    「失礼ながらお電話をさしあげたのです」

スザク「なんとも勿体なきお言葉で……!」タラタラ…

ユフィ「あの……スザクとお呼びしても?」

スザク「はい!問題ありません!」ドキドキ

.
ユフィ「スザク、あの時は本当にありがとうございました」
   「あなたの献身的な行動がなければ、わたくしは命を失っていました……」

スザク「いえ、あれは僕だけの力ではありませんでした」
    「ルル……っほごほ!」

ユフィ「??」

スザク「ごほごほ、すいません……ゼロの助力もあってこその結果です」

ユフィ「ゼロ、ですか……」

.
(ゼロの名を聞いたユーフェミア様の、声のトーンが沈んだ)
(そうだ、彼女にとっては、ゼロは……ルルーシュは、お兄さんを殺した相手でもあるんだ……)

(しかしルルーシュも元皇族だ、ひょっとしてユーフェミア様とは既知の仲じゃないだろうか?)
(なら……ゼロがルルーシュだと知ったら、彼女はどう思うんだろう……)


ユフィ「……そうですか、なら彼にもお礼を申し上げなければなりませんね……」

スザク「あっ、大丈夫です!」
    「ゼロには、僕から伝えておきます!」

ユフィ「……ありがとうございます、お願いいたします」

.
スザク「しかし、本日は、そのことでわざわざ……?」

ユフィ「あっ、その……それもですが……」


(そう言うと、ユーフェミアは少し言いよどんだ)
(何事だろう、と思っていると、)


ユフィ「……あの、次の日曜日、お時間はありますか?」

スザク「はい、1日中空いてます」

ユフィ「良かったぁ……!」
   「スザクに、ゲットーの案内をお願いしたいのです」

スザク「えっ、ゲットーの……!?」

.
■夜半 貿易商事務所 ─────

ルル「……ふう」クタッ…

C.C.「どうした?ソファに寝そべって?」
   「随分とお疲れのようじゃないか?」

ルル「まあな……」
   「カワグチ湖の件以来、仕事量が膨大に増えてきててな」
   「俺がもう一人欲しい気分だよ……」

C.C.「そうか……まあ、それがお前の選んだ道だ、あきらめろ」

ルル「ふん、わかってるさ」
   「ところで……」

.
C.C.「ん?」

ルル「……やはり、お前に聞いてもわからんか」

C.C.「なんだ?随分ともったいをつけた言い方をするじゃないか」
   「何か相談でもあるのか?言ってみろ」

ルル「いや、実はカレンのことなんだが……」

C.C.「ほう?」

ルル「最近、俺を避けてる風だったか?」

C.C.「やっと気づいたのか」

.
ルル「なんだと!?」
   「扇の言ったことは、本当だったのか!」

C.C.「扇が何を言ったのかは知らんが……」
   「お前のカタブツぶりに、ちょっとげんなりしてたっぽいぞ」

ルル「カタブツぅ!?俺が?」

C.C.「カタブツそのものじゃないか、お前は」
   「いや、ナナリーの前ではやわやわだから、その反動かな?」

ルル「……固いとか柔らかいとかはよくわからんが、」
   「カレンが俺に対し距離を感じていたのは確かということか?」

C.C.「そうだな」

.
ルル「……ふむ、なら、対策を施して正解だったということか……」

C.C.「うん?」

ルル「いや、彼女を買い物に誘ったんだがな」

C.C.「ほう……いつだ?」

ルル「今日誘った……ああ、約束か?」
   「日曜に、イケブクロへ行くつもりだ」

C.C.「ほほう……?」

ルル「カレンはとても有能な人材だからな……」
   「ここで失うと、黒の騎士団にとってかなりの痛手に……」ブツブツ

C.C.(……面白そうなイベントじゃないか?)
   (どれ、この日曜は、私も久しぶりに外出してみるかな……)ニヤリ

.
■ナリタ連山 日本解放戦線アジト ─────

藤堂「しょ……少将ッ!?」ギョッ


(その日、片瀬が姿を見せないことを訝しんだ藤堂は、彼の書斎に赴いた)
(しかし、ノックをしても返答のないことに嫌な予感を覚え、扉を開けると……)

(片瀬は、床に純白の敷物を敷き、その上に正座で割腹……すでに絶命していた)
(彼の腹は、その手に握った短刀により、真一文字に切り裂かれていた)
(その見事な割腹は、彼の壮絶なる決意の強さを物語っている)

.
藤堂(な……なんという……御覚悟で……!)ワナワナ…


(机の上には、遺書らしきものが置かれていた)
(藤堂は、震える手でそれを開く……)

(草壁らの"クーデター"が極めて遺憾であること、キョウトに対し申し訳のたたない事態を)
(招いてしまったこと、後は、藤堂を筆頭に組織を立て直し、また盛り立ててほしいこと……)
(達筆でしたためられたそれには、最後に片瀬の名と血判が捺してあった)

.
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

桐原「……そうか、片瀬は腹を召したか……」

藤堂「はっ……最後に、日本の独立を見届けたかった、と記してありました……」

桐原「やつも不運であった……惜しい男を無くしたのう……」
   「……藤堂、片瀬の遺言通り、これからはお前が解放戦線を率いるがよい」

藤堂「はっ……承知……!」


(……通信が終わると、桐原は小さな溜息をついた)
(その場にいた他の六家の者たちに告げる)


桐原「……片がついたぞ、自害にしておいた」

.
刑部「まあ、妥当な線だろう……そのくらいはな」
    「総督府からも、しめしをつけろと矢の催促がきていた、」
    「どうであれ、奴が死んだのだから、それで決着としてもらわねばな」

宗像「片瀬には、自害としただけでも礼を言って欲しいところだ……」
    「国外逃亡を図っていた、と聞くが?」

桐原「うむ、密偵から報告があった」
   「ふざけた男よ……我々の目を盗めるとでも思っていたのか」

公方院「奴の後を襲う、藤堂という男……」
    「奴は大丈夫かのう?片瀬のシンパと聞いておるが?」

桐原「奴は、片瀬の表の顔しか知らん……どうということはない、単純な男だ」

.
刑部「ふむ……」
    「ところで、黒の騎士団とかいう連中だが……」

桐原「ゼロ、か……」

刑部「そうだ、その男……お主、カワグチ湖の件で兵を貸したそうだな?」

桐原「うむ、神楽耶様に頼まれたのもあるが、ちと面白いと思ったのでな」
   「少ない手勢でどうやって決着を図るのかと思ったが……」
   「随分と愉快なものを見せてもらった」

.
宗像「お主は、いつもそれだな……」
    「ブリタニアの皇子を預かった時といい……」

桐原「せっかくの人生だ、しっかりと楽しまんとな……」
   「奴の"調査"についてだが、芳しくないな」
   「正体不明ときた上に、奴の組織構成がそれをさらに困難にしておる」

宗像「確か……扇、だったか?」
    「奴が何かを知っているのではないか?」

桐原「ワシもそう睨んでいる……しかし、解放戦線がもう使えないからのう、」
   「騎士団を代わりに挿げ替える時期との兼ね合い次第だ」

.
公方院「コーネリアは……雪が降る前にナリタを落とすそうじゃ?」

桐原「なに?……本気でか?」

公方院「本気のようじゃ……あの潔癖症には困ったものよのう」

桐原「全くだ……冬の嵐でも起こそうというのか」
   「急いては事を仕損じる、だ……さてと、どうしたものかのう、諸君?」

.
■日曜日 朝10時 イケブクロ噴水前 ─────

カレン(……あっちゃー、寝坊しちゃった!)テクテクテクテクテクテク
   (ルルーシュ、絶対怒ってるわ!こういうの、いっつも厳しいし!)
   (『カレン、それでも騎士団の幹部か!』とか言いそう……!)


(ルルーシュとの待ち合わせに遅れたわたしは、街中を急ぎ足で歩いていた)
(いつもの騎士団の服装なら、全速力で走ることもできるんだけど、)
(今日は私服、しかも下はスカートだ……さすがに走るのは目立ちすぎる……)

.
(あたふたと約束の場所に辿り着くと、ルルーシュは、やはり先に来ていた)
(わたしを見つけた彼は、意地悪そうな微笑みを浮かべる)


ルル「おはよう、カレン……10分の遅刻だな?」ニヤ
   「それでも幹部か?」

カレン「おっ……おはよう、ございます……」ハァハァ
    「申し訳……」

.
ルル「フッ、冗談だよ……大して待っちゃいない」
   「今日はプライベート、敬語もなしだ、随分と急いだみたいだが、大丈夫か?」

カレン「あ、はい……うん、だいじょうぶです」ハァハァ
    「……ごめん、待たせて……」

ルル「いいさ、落ち着いたら行こうか」

カレン「う、うん……」ハァハァ


(ルルーシュの柔和な反応に、今日はいつもと違う日なんだ、と改めて認識する)
(買い物デートと言ってたの、けっこう本気……なの?)

.
■朝10時過ぎ ゲットーのゲート前 ─────

スザク(……本当に、ユーフェミア様が来るんだろうか……)
    (ゲットーを見たいと言ってたけど、案内するところなんて別に……)


(オレは、租界とゲットーを繋ぐ検問の前で、ユーフェミア様の姿を待っていた)
(約束では、ひとりで来ると言ってたんだけど、立場が立場なのでボディガードくらいは)
(ついているだろうな、と思っていた)


ユフィ「……スザクー!」パタパタ

.
スザク(……えっ、うそ!?)
    (本当にひとりで、ここへ……?)


(目の前に止まったタクシーから、ひとりの女性が降りたかと思うと、オレに向かって)
(小走りで近づいてきた!)
(ピンクの長い髪をたばねていてパッと見にはわからないけど、服装の上品さは)
(オレたちとは違う位の人……さすがにユーフェミア様だな、という感じだ……)

.
ユフィ「……スザク、おまたせしました!」ハァハァ

スザク「ユーフェミア様……!」

ユフィ「あっ、スザク、その呼び方はやめてください」
    「周囲の方の目もありますし、わたくしのことは、ユフィと呼んでください」

スザク「ゆっ……ユフィ、ですか?」ゴクリ

ユフィ「はい!」ニコッ

.
(……この、目がくらむほどに眩しい笑顔!)
(ユフィ……きっと愛称だろう……と呼べという彼女の言葉に、)
(オレは胸がはち切れそうなほどの至福感を覚えた……)


スザク「ゆ、ユフィ……さま」ドキドキ

ユフィ「さま、も必要ありません」
    「ユフィで結構です」

スザク「……ユフィ……あっ、あの、本当におひとりでここまで?」

ユフィ「はい、追っ手を撒くのにちょっと手間取りました!」ニコニコ

.
スザク「追っ手、って……政庁の方々では……?」

ユフィ「そうです、お姉様……総督がわたくしに付けられた方々です」
    「ゲットーに入るのを、どうしても許してもらえなかったので……」

スザク「本当に、ゲットーの見学をされる気ですか?」

ユフィ「はい、ゲットーの実情も、副総督として知っておくべきことだと思うのです」
    「わたくしや他のブリタニア人だけだと、きっと人々も警戒すると思うんですが、」
    「同じ日本人であるスザクといっしょなら……」

.
(オレを真っ直ぐに見つめる目……)
(正直に言うと、ここに来るまでやや浮かれ気味だったオレは、この言葉を聞いて)
(これも彼女の重要な仕事の一つなのだということに思い至り、深く反省をした)


スザク「……わかりました、僕でよろしければ、いくらでも」ニコッ
    「これでも元軍人です、何があろうとお守りします……ご安心を」

ユフィ「ありがとう……スザク」ニッコリ


   ────── 続く

くぅ疲ッ!

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