先輩「それじゃあ、今日からは一人でやるのよ?できるわね?」
新人「は、はい!」
先輩「それじゃ、よろしく」
新人「ふぅー……」
新人「緊張するなぁ。クレームの電話なんてなければいいけど……」
ピリリリリッ……ピリリリリッ……
新人「か、かかってきた!?」
新人(落ち着いて。練習通りにやれば大丈夫……)
新人「――はい。お電話ありゅがとうございまちゅ。株式会社ユメノアナカンパニーでしゅ」
『あー、もしもし?おたくのさぁ、商品買ったんだけどさぁ。不良品だったみたいなんだよね』
新人「え?あ、はい。申し訳ありません。おきゃくしゃまがご購入された商品のほうは……?」
『あ?ああ……オ……ホ……だけど?』
新人「はい?あの、もう一度言っていただけますか?」
『だから、オナ……ルだよ。何回も言わせんなよ』
新人「すいません。ええと、オナルですか?」
『違うよ。似たようなもんだけど、違う』
新人「す、すいません……」
『おたくの商品であるだろ、そういうやつ。それが不良品だったんだよ』
新人「しょ、少々お待ちいただけますか?』
『おう』
新人「せんぱーい」
先輩「なにぃ?」
新人「あの、お客様からクレームの電話が入ったんですけどぉ」
先輩「内容と商品は?」
新人「ええと、購入された商品が不良品だったみたいで、商品名はオナルだそうです」
先輩「オナル?そんなのあったかなぁ。ちょっと調べてみるわ」
先輩「オナルはないなぁー。もっとよく聞いてみてよ」
新人「は、はい。――お、おまたしぇして申し訳ありません」
『あっただろ?』
新人「あの、オナルという商品は自社製品にはないようでして……」
『いや。パッケージの裏に書いてある電話番号にかけたんだぞ。あるだろ』
新人「ええと。商品名をもう一度ご確認していただけますか?」
『あぁ?だから、オナ……-ルだよ』
新人「オナール?ですか?」
『違うっていってんだろ!!!』
新人「ひゃぁ!?」
『なにいってんだよ!!』
新人「すいません……あの……おかしいなぁ、電話が遠いのかなぁ」
『あ、あれだよ。男が……その……一人で使う奴だよ……わかるだろ!!』
新人「は、はい!し、調べてみますから少々お待ちください!!」
『頼むぞ』
先輩「男が一人で使うやつ?」
新人「そういってます」
先輩「商品名は言ってくれないわけ?」
新人「何故かそのときだけ電話が遠くなって」
先輩「うーん。一人で使う商品っていっても30種類はあるからなぁ」
新人「どうしましょうか?」
先輩「ほい。このリストを順に読み上げていって、該当する商品がどれかお客様に答えてもらうしかないね」
新人「わ、わかりましたっ」
先輩「どうしても無理なら代わるからさ」
新人「は、はいっ!」
新人「んんっ。――おまたしぇしました」
『どうだ?』
新人「あの、今からお客様がご購入されたとおもわれりゅ自社製品を、順に読み上げますので、該当するものがあればいってくらさい」
『お、おう』
新人「えーと、妹アクメ絶頂フルコース……妹の秘密全部見せちゃう……妹の穴……」
新人「――最後が、ロリ穴シリーズ小学生のキツキツホールです」
『……』
新人「あの……どうでしょうか?」
『おたくの商品……そんなにあるのかよ……』
新人「えっと、これらではないんですか?」
『……』
新人「あのぉ……」
『お前、そんなの口に出して恥ずかしくないのかよ!!』
新人「え!?す、すいません!!」
『親が知ったらどう思うんだ!!』
新人「でも、あの……研修のときに先輩たちからあの、商品名を声に出すときは羞恥心を捨てろって……」
『そ、そうか……あんたも大変だな!!』
新人「あ、ありがとうございます」
『……』
新人「で、あの、お客様がご購入された商品は、この中になかったのでしょうか?」
『……あ、あるけど……さぁ……』
新人「ど、どれですか?ロリ穴シリーズでしょうか?それとも妹シリーズですか?あとは小学生シリーズしかないですけど」
『そういう問題じゃねーだろぉ!!!俺の買った商品が不良品だったって話だろぉ!!』
新人「あ、はい。そうです。その通りです」
『いいから!!弁償するか!!新しい商品に交換してくれよ!!』
新人「で、でも、あの、お客様のお手元にある商品がわからないと……その……困ってしまいますのでぇ……」
『んだよぉ! リ……しょ……の……ール……だよぉ!!!』
新人「あ、あの……あの……」
『聞こえただろ!!』
新人「ぐすっ……」
『なくなよぉ!!』
先輩「どうしたの?」
新人「先輩……すいません……」
先輩「はいはい。代わるわ」
新人「すいません……」
先輩「お電話代わりました。大変申し訳ありません、うちの社員がお客様に失礼なことを……」
『いや、こっちも悪いんだけどさぁ……。さっきの人に謝っといてくれよ』
先輩「畏まりました」
『頼むぞ。それじゃ』
先輩「ああ、お客様」
『なんだよ』
先輩「当社の製品が不良品ということでしたので、お客様に謝罪するとともに弁償、または商品のお取替えをさせていただきますので」
『そうか。そうだったな。じゃあ、してくれよ』
先輩「はい。勿論でございます。では、お客様がご購入された商品名をお願いいたします」
『あぁ!?なんでだよぉ!?』
先輩「該当商品をチェックし直さなければなりませんので。お客様のほかにも不良品を購入されてしまったかたがいる可能性もあります」
『おう……なるほどなぁ』
先輩「ですので、お手数ですが商品名をお答えいただきたいのですが」
『なぁ、あんたも……女だよなぁ?男の社員とかいねーの?』
先輩「申し訳ありません。我が社には女性社員しかおりません。社長の意向でして」
『……』
先輩「お客様?」
『……もういい』
先輩「はい?」
『もういいよ!!』
先輩「あの……」
新人「先輩、どうなりましたかぁ?」
先輩「切られちゃったわ」
新人「すいません。私のせいですよね」
先輩「いいのよ。慣れないうちはそんなものだから」
新人「……はい」
先輩「はい。気持ちを切り替えて仕事しましょ」
新人「わかりました」
先輩「ふんふーん。お、新商品企画あがってきたわね。なになに……園児の中を再現した脅威の肉圧……ふぅん。こんなの買う奴いるのかしらねぇ」
新人「……」
新人「ふぅー……よし!」
新人「せ、先輩!!」
先輩「なにー?」
新人「先ほどのお客様にもう一度電話かけてみます!!」
先輩「番号聞いたの?」
新人「ディスプレイに表示されてますから!」
先輩「ふーん……。部長ー」
部長「んぁ?」
先輩「新人が生意気にもクレーム対応を最後までしたいっていってますけど」
部長「いいよー。責任はとったげるぅー」
先輩「だってさ」
新人「あ、ありがとうございます!!」
先輩「でも、あまり酷くなるようだったらヘルプしなさいよ」
新人「は、はい!!」
新人「……」ピッ
新人「大丈夫……大丈夫……」
『――はい、もしもし?』
新人「あ、あ、あの、おいしょがしいなか、大変もうしゅわけありましぇん!わ、わたくし、株式会社ユメノアナカンパニーの――」
『あんたか。なんだよ。もう話はすんだよ』
新人「いえ。お客様はまだ納得されていないようですから」
『納得は……まぁ……してないけどさぁ……』
新人「あの、おねがいししゅ!お客様の力になりたいんでしゅ!!」
『力になるって……。もういいから』
新人「なんとかします!」
『どうしてそこまでいうんだよ!!」
新人「お、お客様が……その……私の初めて……で……」
『……』
新人「だから、どうしても解決したいんです……」
『そ、そうか……』
新人「あの、私も何も考えずにお電話したわけではありません。無い知恵を雑巾のように絞って考えました」
『どういうことだ?』
新人「商品のお取替えなんてお客様に失礼であると思い、お客様がご指定した商品を配送させていただきますので」
『なに……』
新人「もう一度、商品名を読み上げますので、気になった商品があれば仰ってください」
『ま、まて』
新人「妹アクメ――」
『まてこらぁぁぁ!!!』
新人「きゃっ!?あ、あの……なにか不手際が……?」
『いや……。商品名を言われても……困る……』
新人「困るだなんて、私が困ります」
『とにかく、もう弁償もいいし、取替えもいい。これでいいだろ』
新人「ですが、私たちの所為でお客様のお楽しみを奪ってしまったのですから」
『やめろぉ!!!そんなことまで言えっていわれてんのかぁ!?あぁぁ!?』
新人「ひぃ……すいません……すいません……」
『もういいって言ってるだろ。ひとりにしてくれ』
新人「そんなお客様……。あ、あの、ローションもお付けしますので……」
『いらねえよ』
新人「え?でも、研修でローションがないと、あの……オチンチンが痛くなると……」
『うっせぇな!!ローションぐらいあるよ!!!』
新人「も、もうしわけありませんっ」
『何言ってんだよ……。恥ずかしくないのか!?』
新人「それは――」
先輩「ぶちょー!この新商品、チンコもげちゃいますよねー?」
部長「開発のやつらにいってよぉ。あたしはしらないし。というか、そんなのでオチンポもげる男いないでしょ」
『……』
新人「こういう言葉が飛び交う職場で……えへへ」
『いちいち聞かせなくていい……』
新人「すいません」
『まったくよぉ。最近は女の性が乱れてるなぁ』
新人「あの、どうにかお客様の納得していただきたのですが。土下座しろというなら、今すぐします」
『電話越しでは見えないだろ』
新人「あ、そうですね」
『……はぁ』
新人「お客様、あの、どうして商品名をはっきりと仰ってもらえないのでしょうか?」
『え?』
新人「私たちは商品を自信をもって世に出しています。品質は勿論、名前にだってです」
『……』
新人「もし、口にするのも憚れるほど下品な商品名だというなら、そう仰ってください。直ちに検討いたしますので」
『いや……そういうわけじゃ……』
新人「男性が目を惹くような、それも文字だけで興奮するような名前にしろというのは社長の方針でして」
『知らないよ』
新人「特に社長が気に入っているのは、小学生シリーズ4年生のヌレヌレメルヘンホールなんですけど……」
『……そんなのもあるのか?』
新人「はい!イチオシ商品ですっ」
『ふぅん』
新人「あ!それにしますか!?では、お客様のご住所を……」
『何も言ってないだろ!!』
新人「えー!?」
『も、もっと、他にないのか……』
新人「ど、どのようなものをご希望ですか?」
『なんかさぁ、さっきからおたくら、ロリだの小学生だの言ってるけどさぁ。俺、別にそういうのに興味ないんだけどさぁ』
新人「えぇ!?そ、そうなのですか!?それはも、もうしわけありませんでした……!!」
『もっと、ほら、普通のでいいんだよ。普通の』
新人「た、たとえば?」
『例えばって……ほら……あるだろ、なんか、こう……熟女、とか?』
新人「じゅくじょ?」
『そう、そうだよ!!俺ぁそっちの趣味だからよぉ』
新人「わかりました。少々お待ちください」
『頼むぞ、こら』
先輩「はぁー?熟女ぉ?そんなの無いわよ。知ってるでしょ、うちは小学生以下しかモデルにしてないって」
新人「でも、お客様が……」
先輩「無い物を強請られても困るわねぇ」
部長「そもそもあたしたちの商品買ったからクレームの電話してきたんでしょ、そのお客様」
新人「はい」
部長「熟女好きが、あたしたちの商品を手にするかなぁ?」
先輩「気の迷いとかあるんじゃないですか?私もたまに違った趣向のプレイをすることもあるし」
部長「公園で露出の次はなに?警察には捕まらないでよ」
先輩「それはもう卒業しましたって。今は、わざとあえぎ声をだして隣人の男を興奮させることに興奮を覚えてて――」
新人「あの!!どうすればいいですか!?」
部長「うーん。別の会社の製品を届けるしかないかなぁ」
先輩「それは面倒ですね。社長にも許可もらわないと」
部長「とりあえずさぁ、どんなものがいいのか具体的に聞いてみて。それから希望に合う商品を届けるってことで」
新人「わ、わかりました」
新人「お待たせしました」
『待ってない』
新人「え、えーとですね。自社製品にはお客様のご希望にあうものがありませんでした」
『それは良かった』
新人「なので、他会社の製品を購入してお客様にお渡ししようかなと考えているのですが」
『なんだと!?』
新人「では、ご希望の商品名を仰ってください」
『そ、そんなのわかんねええよ!!』
新人「そうですか……。では、サイズ・大きさはどの程度のモノがいいですか?」
『は……』
新人「サイズも色々あるので、お客様のお好みに合わせなければ……」
『そ、そんなの大きいのにきまってるだろ!!』
新人「大きい……」
『小さいのなんて、お、納まりきらないからなぁ!!』
新人「な、なるほど……」
『原寸大じゃなきゃ、ダメだ』
新人「わかりました。次に構造ですが、リアル系構造、二重構造、ストレート、スパイラル、ヒダ、粒――」
『いうなぁ!!知ってるよぉ!!』
新人「も、もうしわけありません……」
『そら、あれだ、全部だ全部』
新人「ぜ、ぜんぶ!?」
『あったりまえだろ。それぐらいの用意しろよ』
新人「でも、全部は……」
『じゃあ、この話は終わりだ!!切るぞ!!』
新人「ま、待ってください!!わかりました!!ご用意いたします!!かならず!!」
『できるわけねえだろ!!』
新人「なんとかしますからぁ!!」
『……ちっ』
新人「はぁ……。あの、体のほうはどうしますか?お付けになりますか?」
『もうあれだ……等身大の人形じゃないと、満足しねえな!!』
新人「なぁ……!!」
『やってくれるんだろう?』
新人「それは……なんとかお腹だけで……」
『だめだな』
新人「……わかりました」
『お、おい。マジか』
新人「大丈夫です。お客様のご住所をお願いできますか」
『……じゅ、熟女でくるのか?』
新人「はい。熟女です。あ、年齢は?熟女といっても50歳から90歳ぐらいと幅がありますし」
『熟女すぎんだろぉ!!!』
新人「そんなぁ、お客様。社長は49までは女の子だーっていつも言っているんですが」
『社長のことなんて知らない!!そこまでの熟女は求めてない!!』
新人「では、どの程度の……?」
『そうだな……25……いや18以下だな……。おう!そうだ!!15歳以下からが熟女だ!!それでもってこい!!』
新人「え……」
『なんだよ……』
新人「あの、失礼ですが……それはどういうことですか?」
『どういうこともくそもねえだろ!!俺の中では7歳から15歳が熟女で、それよりも上はクソババアなんだよ!!』
新人「……」
『いいか!!等身大の熟女人形、届けろよ!!今から、住所言うから』
新人「ぐすっ……」
『な、なんだよ?』
新人「うぅ……ぐすっ……そん、な……まだわたし……19なのに……クソ……ババアなんて……」
『え……おまえ、そんなに若いのか……』
新人「うえぇぇぇん」
『お、おい……わるかったよぉ……』
先輩「かして」
新人「せんぱい……」
先輩「お客様、お電話代わりました」
『お、おう。なんだよぉ』
先輩「対応したものが話せない状態になりましたので」
『そうか。で、用意してくれるんだろうな?』
先輩「……ええ。ご要望どおりのモノを」
『で、できるのかよ……』
先輩「お任せを」
『な、なら、たのむ……』
先輩「はい。では、失礼いたします」
新人「せんぱい……すいません……」
先輩「運が悪かったわね。こんな顧客に引っかかるなんて」
新人「いえ、でも、初めての電話対応でしたから……なんとかしてあげたいって……」
先輩「これがお客様の要望ね?」
新人「は、はい。そんな商品、ありますか……?」
先輩「ぶちょー。これに該当する商品ありますか?」
部長「んぁ?うーん……注文おおいねー。でも、こういう全てに対応したのって何かで見たことあるような……」
新人「本当ですか!?」
数日後
ピリリリリリッ……
先輩「はい。お電話ありがとうございます。株式会社ユメノアナカンパニーです」
『もしもし』
先輩「はい、なんでしょうか?」
『先日、あの……あれを送ってもらったんだけど……』
先輩「アレとはなんでしょうか?」
『アレだよ!!等身大の人形のやつだ!!』
先輩「申し訳ありません。商品名のほうを」
『だ、だから……みりょくの……なんたらってやつで……』
先輩「ああ。『魅力のダッチワイフご主人様の肉棒で慰めて』ですね?」
『そ、そう、それ』
先輩「ご満足いただけましたか?」
『いや……これ……空気いれたら……パッケージの女の子みたいにならないんだが?』
先輩「しかし、お客様のご要望に沿えるホール付きの人形はそれしかなかったのですが」
『こういうのじゃねえよ……もっと……あるだろ……』
先輩「そういわれましても……」
『前の人に代われ!!担当だろ!!』
先輩「しかし」
『いいからはやく代われよ!!』
先輩「――電話よー」
新人「あ、はーい」
先輩「この前、クレームいれてきたお客様」
新人「……お、お電話、かわりました」
『ふざけんなよ。なめんてのかぁ?』
新人「え……?」
『あんなので弁償した気になってんのかぁ!!』
新人「す、すいません!!」
『いいか。俺はもう許したけど、他の客にはこういうことしないほうがいいからな。それじゃあ』
新人「あ、あ……まって……。切れちゃった」
先輩「怒ってたわねぇ」
新人「はい……」
先輩「気にしなくてもいいわ」
新人「そうですね……」
部長「おーい。園児ホールのほうはぁ?」
先輩「あとはテストだけって言ってました」
部長「そう。それじゃあそろそろ園児ホールの概要等にも目を通しておかないとねー」
新人「……」ピッ
『――はい?』
新人「あの……」
『しつこいなぁ。そんなに必死になんなくても、またおたくの商品は買ってやるよ』
新人「いえ!そんなのはどうでもいいんです!!」
『いいのか?』
新人「ただ、どうしたらお客様に満足していただけるのか……」
『だから、もう満足したよ。十分だって』
新人「でも、あんなにお怒りになっていましたし」
『あんなの詐欺だろ。いいか?俺はあの魅力……なんたらが届いたとき、嬉しかったわけだ』
新人「はい」
『こんな可愛い……美しいデザインの女の子が出来上がるのかって思ってな。でも、空気を入れてみれば、どうだ。出来上がったのはただのゴミだ』
新人「申し訳ありません」
『俺ぁ、もうがっかりだよ!!』
新人「……」
『だから、もういい!!これっきりにしてくれぇ!!』
新人「だ、ダメです!!」
『なんでだよぉ!?もうね、俺は恥ずかしいんだ!!女の子とこんな会話してるだけでさぁ!!!』
新人「どうしてですか!?」
『どうしてってわかんだろぉ!?』
新人「仕事です!!何も恥ずかしくありません!!」
『あんたは良くても俺がダメなのっ!!ゆるして!!』
新人「お客様が本当に望んでいるものを仰ってください。今度こそ、なんとかしますから」
先輩「おやおや。若いわね」
部長「あたしも新人のときはああだったなぁ」
先輩「マジですかぁ?」
部長「ホントだよぉ」
『だから……』
新人「お願いします!!私を助けと思って!!何でも仰ってください!!」
『俺が救われねえだろぉ!!いい加減にしろよぉ!!』
新人「お客様!!」
『わ、わかった……わかったから……』
新人「はい」
『し、しっかり、メモとれよぉ……』
新人「はいっ」
『で、何を言えばいいんだ?』
新人「どのような造形でダッチワイフを仕上げればいいのか、それとホールの仕様などです」
『お、おう……そうか……』
新人「お客様のお好みは確か……熟女でしたね。15歳以下の」
『そうだが、今回は違うぞ』
新人「え?」
『いいか?よくきけよぉ。5歳前後だ』
新人「5歳……前後……?」
『おう。そうだ。しかもとびっきりリアルにつくれ。服とかあればいいな』
新人「は、はい」
『もう部屋いるだけで子どもができたみたいな錯覚を起こすほどリアルじゃないと、俺ぁ許さないからなぁ』
新人「わかりました」
『でだ、ホ……のほうは……』
新人「え?なんですか?」
『だ、だから、その……下のほうは……』
新人「あ、はい。ホールですね。ホールは大きいのがいいんですよね?」
『え!?いや、その……そこもリアルで』
新人「で、でも、お客様のサイズでは裂けてしまいますが……」
『いや、ばかやろう!!てめえ、脳みそあんのかよぉ!!俺が使うんじゃねえよぉ!!』
新人「そ、そうなのですか?」
『俺の知り合いに、とんでもねえロリコンがいるんだ。そいつに、あれだ、バースデープレゼントだ。何を送るかずっと悩んでたんだよ』
新人「なるほど……」
『俺はそっちの趣味はねえから。マジで』
新人「はい」
『あと、あれだぞ……お……り……もだぞ』
新人「はい?」
『だ、だから……おし……も……』
新人「お尻……ですか?」
『そ、そうそう。それだ。分かってきたじゃあねえか』
新人「アナルのことでよろしいですか?」
『そこまではっきりいうなよぉ!!!』
新人「す、すいません!!でも、間違えるのはもう嫌ですから……』
『そ、そうか。ああ、その通りだ。そっちの穴も……リアルにしろよ……』
新人「わかりました」
『胸とかもだぞ。わかってんのか』
新人「それははい」
『……肌の質感とかもだぞ?できねえだろ?なぁ?もういいって、無理すんな』
新人「やります」
『いや。もうそんな人形なんて発売できねえだろ』
新人「時間はかかるかもしれません。でも、お客様のためにやってみます」
『ま、まて!!!』
新人「はい?」
『あー……作るつもりか?』
新人「我が社では園児をモデルにしたホールの開発にも既に着手していますから」
『な、なに!?』
新人「あとは胴体の部分を……」
『おい、本気か?無理だろ?もういいんだよ。無理するなって。この不景気にそんな余力もないだろ、あんたのところ。どうせ、零細企業なんだろ?』
新人「いえ。昨年、小学生モデルのホールだけの売り上げで200億円はあったみたいですから。私は将来性がある会社を選んだつもりです」
『マジで……か……』
新人「やります!やらせてください!!」
『わ……わかった。やれるもんなら、やってみろ!!ふんっ!!!どうせできっこねえよ!!』
新人「はいっ!!」
『じゃあな!!』
新人「ありがとうございました!!」
新人「ふぅー……」
先輩「随分と白熱してたみたいだけどぉ?」
部長「何をお願いされたのぉ?」
新人「先輩……部長……すいません……勢いで……いろんなことを言ってしまいました……」
先輩「なになに……。うわぁ……。これを作ろうって?」
部長「新型のドールでも中々ないんじゃないかぁ」
新人「やっぱり、無理でしょうか?」
先輩「どうするんですかぁ、部長?」
部長「いいよいいよ。新入りの責任をとるのがあたしの役目みたいなもんだし。ちょっと開発部と社長に掛け合ってみるよ。こんな要望がありましたけどーってね」
開発部長「ふむ……。これを作るのか」
社長「へぇ。中々の予算をぶっこむことになりそうじゃない?」
開発部長「そうだな。価格も高騰するぞ」
社長「そうね」
部長「クレームの声を拾うのも、面白いかと思ったのですが」
開発部長「しかしだな」
社長「新人の子が必死になってリサーチしたんだって?」
部長「え、ええ。年齢は20代~30代前半の男性のようですけど」
社長「いいわね。仕事のためとはいえ、男性が私たちに性癖を教えてくれる機会なんて殆どないし」
部長「そうですね。あの子は上手く聞き出せたと思います。偶然ですけど」
社長「……やってみましょうか?」
部長「本当ですか!?」
開発部長「社長、いいのですか?」
社長「私がやろうっていったんだから、やりなさい。大丈夫よ。失敗したって、私の首が飛ぶだけでしょ?」
開発部長「それが一番困るのですが……。わかりました。やれるだけのことはやりましょう」
数週間後
先輩「ちょっとー」
新人「は、はい」
先輩「開発部で問題が起こったみたいよ」
新人「な、なんですか?」
先輩「穴の大きさでもめてるみたい」
新人「でも、あのお客様はそこもリアルでって」
先輩「その人だけに贈るものなら、それでもいいけど。こっちは商品を作ってるからね」
新人「そう、ですよね……」
部長「入らない穴には意味がない!!これ、社長の名言」
先輩「それ、確か恥ずかしいって思ったらすぐに隠れろ的な意味もありましたよね」
部長「社長はまだまだ乙女だからね」
新人「その問題、どうなるんでしょうか?」
先輩「さぁねー。ただ、完成までにはもう少しかかるのは確かね」
新人「そうですか……」
社員「部長。やはりこれは狭すぎます」
開発部長「だが……」
社員「この園児ホールを取り付けるのは簡単ですが、ドールになると凡庸性がなければ採算が……」
開発部長「万人が挿入できないと、作るだけ無駄になるか……」
社員「はい」
社長「よっ。進んでる?」
開発部長「知っているでしょう、進捗状況は」
社長「穴の大きさで揉めてるんだってね」
開発部長「ええ。どのようなサイズでも包み込めるようにするのか、それとも飽くまでもリアルにこだわるのか……」
社長「ふんふん……。これ、前と後ろの穴って、なにか違いでもあるの?」
開発部長「内部の構造が違うだけですが」
社長「穴のサイズもリアル路線なわけね」
開発部長「はい」
社長「……じゃあ、もっとリアルを追及して、拡張できるようにしましょうか」
開発部長「拡張……?」
半年後
新人「えーと……えーと……」ピッ
『――はい?』
新人「お忙しいところ恐れ入ります。私、株式会社ユメノアナカンパニーの――」
『あ、あんたか……。久しぶりだな』
新人「はい!」
『で、なんようだ?』
新人「試作品が完成しました!!」
『え?』
新人「お客様がお求めになったドールの試作品です!!」
『な……』
新人「それで、お客様に試作品のテストにご協力してほしいのですが」
『え!?な、なにいってんだ!?』
新人「なんと!どんなに大きなサイズでも飲み込んでしまう拡張機能がついている上に、締まりは殆ど緩まないという謎の素材を使用しているんですよ!!すごいと思いませんか!?」
『そ、それはすごいけど……』
新人「半年前、お客様には多大なるご迷惑と失礼なことをしてしまい、私はずっと心に引っ掛かっていました」
『あ、あぁ』
新人「おのお詫びといってはなんですが、我が社の試作品テスターになっていただきませんか?」
『お、俺が!?』
新人「勿論、それなりの報酬もお支払いすると社長も仰っています」
『ど、どうして俺なんだよ。例ならそのドールをくれたら……』
新人「社長がとにかくデカいオチンチンを集めてテストしろっていってまして」
『え……』
新人「色々と開発途中で実験はしているんですが、やはり本物でないと分からないところもあるようで」
『……』
新人「お願いします。あなたのが……その……ほしいんです……」
『いや……お、おれ、趣味じゃねえし……』
新人「無理を承知で頼んでいます!!おっきいオチンチンがほしいんです!!」
『やめろぉ!!もういうなぁ!!』
新人「す、すいません……」
>>169
凡庸性→汎用性
『本当なのか……いや、本当なんだろうな……こうしてわざわざ電話をかけてきたってことは……』
新人「はい。きちんと作りました」
『……』
新人「そんな趣味がなくても、きっとご満足いただけるはずです」
『しかし……』
新人「貸してください。あなたの大きいのを」
『……いや!!いい!!俺はそんな馬鹿げた実験になんて付き合わない!!ふざけんなぁ!!!』
新人「そ、そんなぁ!」
『完成したものだけよこせ!!知り合いの誕生日が迫ってるんだからぁ!!!』
新人「あ……ま、まって……」
『がんばれよっ!!!』
新人「あ……」
先輩「どったの?」
新人「……怒られました」
先輩「仕方ない。他をあたってみましょうか」
数ヵ月後
開発部長「――これです」
社長「ふぅん。一年足らずでよくここまで仕上げたわね」
開発部長「意外と多くのテスターが集まったおかげでもありますが」
社長「10人でいいっていったのに、何十万人と応募があったからねぇ」
開発部長「面接の段階で規定サイズに届くものは殆どいませんでしかけどね」
社長「あれはおかしかったわね。ああ、そんなことより。もう、商品として出せるわね?」
開発部長「問題ありません」
社長「よし。――もしもし?あの子に社長室まで来るように言ってくれる?うん、お願い」
開発部長「どうされるのですか?」
社長「頼まれてたのよ。初めてのお客様にどうしてもお詫びしたいから、ドールの第一号が私にくださいってね」
開発部長「まさか無料で……」
社長「そんなことしないわ。私のポケットマネーよ」
開発部長「全く、アナタという人は」
新人「――し、失礼します!!」
新人「わーい。かわいいですねー」
社長「でしょう?」
新人「あのお給料から天引きして構いませんから」
社長「うふふ。あなた、三ヶ月以上無給で働くつもり?」
新人「いえ……」
社長「あげるわ。あなたのおかげで完成したんですもの」
新人「い、いいんですか!?」
社長「それをお客様のところに持っていくんでしょう?」
新人「はい!!知人の誕生日にプレゼントしたいそうなので!!」
社長「あら、そう。誕生日過ぎてなければいいわね」
新人「ありがとうございます!!」
開発部長「リボンでもつけていったほうがいい。ほら」
新人「あ、はい!そうですね!!」
社長「それじゃ、ご苦労様」
新人「は、はい!!行って来ます!!」
新人「このアパートですね……」
新人「……」ピンポーン
「……はい?」
新人「はじゃいめましゅて!」
「だ、だれ?あ、いや、その声……」
新人「はい!一年前、あなたからのクレーム対応で泣いてしまった新入社員です。もう、新人とは呼ばれませんけど」
「な、なにしに……きたの……?」
新人「これです!!我が社からあなたへ!!」
「こ、これ……!?」
新人「リアル幼稚園女児シリーズ第一弾!妖精の穴をパパで犯して!ですっ!!」
「うわ!!しーっ!!近所の人にきこえるだろう!!」
新人「あ。ごめんなさい。興奮して」
「と、とりあえず、もらっておくから……」
新人「あの、よければご使用後の感想なんかをいただけたら……」
「わ、わかった!!知り合いにつたえておくから!!もう俺に関わらないでくれ!!!」
先輩「どうだったの?」
新人「なんだか、あまり嬉しそうではなかったですね……」
部長「照れたんじゃないの?あなたが急に行ったから」
新人「えー?どうしてですか?」
先輩「自覚がないのがねぇ」
部長「まぁ、仕事にも慣れてきたし、今からもっと開発していってあげるけどね」
新人「はぁ……」
先輩「それで、あの『パパ犯』の発売日って決まったんですか?」
部長「とりあえず受注生産するみたいだから、明日ぐらいから電話鳴り始めるんじゃない?」
先輩「これは忙しくなりそうですねえ」
部長「そうねー」
ピリリリッ……
新人「はい。お電話ありがとうございます。株式会社ユメノアナカンパニーです」
『お、おたくの……あれ……つかってみたんだけどさぁ……なんか……もう……いいじゃん?』
新人「はい?どの商品でしょうか?商品名をお願いできますか?」
数週間後
先輩「こっち5体追加でーす」
部長「2体追加で。――はい。お待たせしました。ええ、はい……え?なんですか?パパで犯して、ですか?あの、電話が遠いみたいで……ええ。はい。ですから、パパで犯してですね?」
社長「おっほぉ。電話が鳴り止まないねえ」
先輩「社長、暇なら電話とってくださいよぉ」
社長「部下の仕事は取らない主義なのよ」
先輩「もう!――お待たせしました。株式会社ユメノアナカンパニーです。はい、商品のご予約ですね?なんですか?え?申し訳ありません、もう一度……パパ犯でよろしいですか?」
新人「はぁー、めがまわるー」
社長「これも、あなたがクレームを真摯に受け止めて、一生懸命応えた結果よ。胸を張りなさい」
新人「社長……。はいっ!ありがとうございます!!」
社長「ほら、電話」
新人「はいっ!――お電話ありがとうございます!株式会社ユメノアナカンパニーです!」
『あ……あの……アレ……を……もう一体……ください……例のあれを……はい……』
新人「ふふっ。パパで犯してですか?」
『そ、そうそう、それ。頼むぞ』
おしまい。
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