先輩「飲みに行くぞー!」後輩「はいはい……」 (284)

百合です

謎とき要素はありません

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後輩「……」


後輩「……」トポトポトポ

後輩「……」トプ

後輩「……う」

後輩「ぅぅ……」

後輩「……」グイ

後輩「…………」グビ

後輩「……プハ」

後輩「……」

後輩「……うぅぅ」

後輩「……」トプトプ




ピンポーン


後輩「……ぅ」トプ

後輩「……」

後輩「……」グビグビ


ピンポーン

ピンポ ピンポーン

ピンポーン


後輩「ぅー……?」

後輩「……?」

後輩「……」トプトプ

後輩「……」グイ



ピンポーン




後輩「……」クピクピ

後輩「……」

後輩「……フゥ」


後輩「……」トプトプ





先輩「出ろやぁー!!」バンッ ダンッ

後輩「ビクッ!」





先輩「出ろやボケ――……うおっ、開いてた」バタンッ

後輩「……」ドキドキ

先輩「おーう、後輩ー。後輩いるんだろー!?」ズカズカ

後輩「……」

先輩「おー、ほら、やっぱりいるじゃん」

後輩「せんぱ……」

先輩「いるなら出ろよぉー。居留守とか傷つくじゃーん、後輩ちゃぁん」

後輩「はぁ……」

先輩「あと鍵な、かけろな、お前な、さすがに。お前も女子よ、一応」

後輩「は、はい……、すみません」

先輩「お。やってんじゃん。何飲んでんの?」

後輩「あの……、手取川の……」

先輩「……は? 何いい酒飲んでんの一人で……――ちょうだい」

後輩「やだぁ」

先輩「いやお前、そんないい酒一人ぼっちでボソボソ飲んでるなよ、もったいない」

後輩「ほっといてくださいよう」

先輩「どうせ肴も、大したもの用意してねぇだろ? ツマミは?」

後輩「……、……柿ピー」

先輩「……なんていうか、性根が安っぽいのよ、お前は」

後輩「うっさいです」

先輩「『柳』行って飲もうぜ。これ持ってさぁ。なんか食べさせてもらって――……」

後輩「やですよ……、あそこいっつも混むもん……。高いし……」

先輩「じゃあ『はせ川』」

後輩「……」

先輩「いいじゃん、アソコ、大将にちょっと飲ませれば、ポテサラくらいタダで食べさせてもらえるってぇ」

後輩「えぇー……」









~居酒屋~


いらっしゃーい!


奥の席どうぞ―!







先輩「うぇっへっへっへ」

後輩「はぁ……」










大将「ふたりは、お猪口じゃなくてグラスでいいだろ?」

先輩「あっはは!ありがと、大将」

後輩「す、すみません、ほんとに……」

大将「まあまあ、いいから」

先輩「ほらぁ、大将もグラス用意してぇ」

大将「おっ、悪ぃね!」

先輩「ほれ、美人のお酌だぞ。嬉しいっしょ」

大将「なーにが美人のお酌だ! 手酌させてくれってんだ、手酌」

後輩「わ、私やりますから……。ど、どうぞ……」スッ

大将「わっはっは、ありがとうねぇ、後輩ちゃん」ニッコリ

先輩「おい、ちょっと。おい」

後輩「あはは……」










後輩「……」ムグムグ

先輩「……」グビグビ

後輩「……これ、酢味噌ですかね? イカのやつ」ムグ

先輩「酢味噌じゃねーかな」

後輩「酢味噌、酢味噌」

先輩「酢味噌ニアン」

後輩「あはは」グビグビ

先輩「……そういえば、後輩さぁ」

後輩「はい?」グビ

先輩「お前行った? 銀髪さんの葬式」

後輩「え? あー……、いえ。いいえ」

先輩「来いよ」

後輩「いや、……っていうか」

先輩「ん?」

後輩「……銀髪さん、お葬式あったんですか? 初めて聞いたんですけど」

先輩「葬式ってか、お別れ会? だけど。お前連絡行ってない?」

後輩「……、……ええ」

先輩「んー、まぁ、そっか」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……先輩、行きました?」

先輩「おう」

後輩「……そっか」

先輩「でも、金髪さん言ってたぞ? 後輩来ないのか? って」

後輩「えぇ……」

先輩「マジマジ」

後輩「なんで金髪さんが……」

先輩「いや、知らんけど」

後輩「……」

先輩「会いたいみてーだよ、あの人、お前に」

後輩「……うぅぅ」グビグビグビ

先輩「私にもちょうだい」トプトプ

後輩「……ウップ」

先輩「……」グビグビ

後輩「……」トプトプ

先輩「……っはぁー! うまっ」

後輩「……」グビグビ

先輩「……」トプトプ

後輩「……先輩も」

先輩「あ?」

後輩「知ってるでしょ?」

先輩「なにを」

後輩「……私と、銀髪さん……、ほら……、なんていうか……」

先輩「いや、関係ないでしょ。銀髪さん死んじゃったんだし」

後輩「そんな、身も蓋もない」

先輩「金髪さんだって気にしてないって」

後輩「……うぅーん」

先輩「手ぇくらい、合わせに行ってやれよ」

後輩「……先輩、付き合ってくれます? 週末」

先輩「土曜なら」

後輩「……じゃあ、土曜なら」

先輩「おし、土曜なー」トプトプトプトプ

後輩「……私のお酒……」




先輩「っていうかさ、銀髪さんが自殺した日ってお前――……



常連「へぇ、いい鯵だねぇ、大将! こっからでもピカピカ光って見えるよ!」

大将「へっへへ、でしょう? やっぱり今が旬だからねぇ!」



先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」



常連「鰺だと、塩焼き? あとはなめろう?」

大将「いやいや! やっぱり刺身! こればっかりは刺身が一番!」



先輩「……」

後輩「……」




先輩「……」

後輩「……」



大将「活きもいいし味もいいし、これがまた、日本酒に合うんだ!」



先輩「あじ……」

後輩「……」ジュルリ

先輩「……こ、後輩ちゃん」

後輩「……はい」

先輩「ちょっと、あの、後輩ちゃん、どれくらい持ち合わせある?」

後輩「ええ、えっと、これくらい……。あと先輩、先輩もちょっと出せます?」

先輩「……」ジャラ

後輩「……」

先輩「……足りる?」チャリン

後輩「……は、半分こしましょう? 一皿頼んで……」



今日はここまでです

続きます

飲んだくれの後輩と手繋ぐと心読める先輩の人かな






~土曜日~


後輩「……」

後輩「……」

後輩「…………」チラッ

後輩(9時、20分……)

後輩「……」

後輩「……」









後輩「……」

後輩「……」

後輩「…………」チラッ

後輩(9時、45分……)

後輩「……」

後輩「…………うぅ」

後輩(既読スルー……)

後輩(先輩……)

後輩(バックレやがった、あの人)

後輩「……うぅぅ」

後輩「……」

後輩「……」

後輩「……行くか」

後輩「…………」トボトボ










~金髪さんのアパート~


ピンポーン


後輩「……」

後輩「……」


ガチャ


金髪「はいはい~、……あっ」

後輩「……ど、どうも」ペコリ

金髪「あぁ~。おはよう、後輩ちゃん。いらっしゃい~」

後輩「遅くなってすみませんでした……」

金髪「いいのいいの。ひとり?」

後輩「はい、先輩が――……ええと、ちょっと、来れなくなりまして」

金髪「バックレた?」

後輩「バックレました……」

金髪「うふ、うっふふ」

後輩「すみません、どうも……」

金髪「まあまあ、あがってあがって、どうぞどうぞ~」グイ

後輩「お邪魔、します……」










チーン


後輩「……ナムナム」

後輩「……」

金髪「位牌も何もなくてごめんねぇ、せっかく手、合わせてもらってるのに」

後輩「あ、いえ……」

金髪「銀髪の体とか遺品とかは、全部あの子の、田舎の実家に持っていかれちゃって」

後輩「そうなんですか」

金髪「本家だったらしいのよね~」

後輩「へぇ……」

金髪「仕方ないから、せめて写真だけ飾って」

後輩「……」

金髪「あと銀髪が隠してた暗黒ポエムノートも飾って」

後輩「鬼ですか」

金髪「読む?」

後輩「え、遠慮しときます……」

金髪「うふふ……。今、お茶いれるわね」

後輩「お、おかまいなく……」










金髪「……」トポトポ

後輩「……」

金髪「ごめんなさいねぇ、お茶請け、これしかなくて」

後輩「はぁ……。なんです、これ?」

金髪「カロリーメイト」

後輩「……」

金髪「ポテト味」

後輩「……」

金髪「うっふふ、あの子の好物でね~……。ポテト味ばっかり、いっぱいあるのよね、ウチ」

後輩「……」

後輩(……これは)

後輩(何か、試されているのか? 私は……)

後輩「……」

金髪「……」

後輩「……い、いただきます」

金髪「どうぞ~」

後輩「……」ムグムグ

金髪「……」

後輩「……」ムグ

金髪「……」

後輩「……あの」

金髪「なぁに?」

後輩「ご、ごめんなさい」

金髪「どうして?」

後輩「私と銀髪さん……、その……、何ていうか……」

金髪「あぁ、うっふっふ」

後輩「知ってましたよね?」

金髪「もちろん~。でも、ふふ、いいの。いいのいいの」

後輩「……」

金髪「銀髪と私は、パートナーだったけど、お互いのことには口出ししない、って決めてたから」

後輩「……」

金髪「特に『自由恋愛』に関してはね」

後輩「……」

金髪「変わってる、って思われるかもしれないけど。でも、いい関係だったのよ、私とあの子」

後輩「ええ、はい……」

金髪「本当に……、本当に、いいパートナーだったの……」

後輩「……」

金髪「……ねぇ」

後輩「は、はい」

金髪「あの日……、銀髪が自殺した日……」

後輩「……」

金髪「……あなたのところにいたんでしょ? あの子」

後輩「……」

金髪「……」

後輩「……ええ」

金髪「……そう」

後輩「……すみません」

金髪「謝らなくていいったら~。……――それで、その時なんだけど」

後輩「……」

金髪「何か、あった?」

後輩「何か?」

金髪「何でもいいの。普段と違ったり、気になるようなこと」

後輩「それは――……」

金髪「……」

後輩「……うーん」

金髪「……」

後輩「……何も」

金髪「……」

後輩「特に何も」

金髪「……そっかぁ」

後輩「……」

金髪「……銀髪は」

後輩「……」

金髪「あなたの家を出てからね」

後輩「……」

金髪「ちょっと離れたビルまで行って、屋上まで登って」

後輩「……」

金髪「……そこから……」

後輩「……」

金髪「ねぇ、後輩さん」

後輩「……はい」

金髪「私ね……、全然思い当たらないの。あの子が死ななきゃいけない理由。本当に、全然」

後輩「……」

金髪「どうしてなのかしらねぇ……」

後輩「……金髪さん」

金髪「……それにね」

後輩「……」

金髪「あの子、高いところ苦手なのよねぇ」

後輩「…………」

金髪「……ねぇ」

後輩「……」

金髪「……本当に、何もなかった?」

後輩「……それは……」

金髪「……」

後輩「……あ、あはは。いやですよ、金髪さん」

金髪「……」

後輩「それだと、私がなにか、関わってるみたいじゃないですか。銀髪さんの自殺に」

金髪「そうなの?」

後輩「……」

金髪「……」

後輩「……」









~ゲームセンター~


カコン

パコン

カコン


先輩「えっ、マジで『ナイトフード』やめちゃうの!?」

後輩「ええ。金髪さん、言ってましたよ」カコン

先輩「うわ~、マジかぁ~……」パコン

後輩「料理、全部銀髪さんがやってましたし……、仕方ないと思いますよ」カコン

先輩「あそこのぬか漬け最高だったのになぁ~」パコン

後輩「あれも、銀髪さんが漬けてたらしいですし」パコ

先輩「行きつけだったのにな……っと!」スコンッ

後輩「うわっ……!」スカッ

先輩「うぇっへっへ、5-1な」

後輩「むぅ……」

先輩「他には?」パコ

後輩「ん~……」カコン

先輩「……」パコン

後輩「……あっ、先輩に会ったら、伝えてほしいって」パコン

先輩「おう」パコン

後輩「『今年もラウパ行こうね(はぁと』って……」カコ

先輩「ラインで言えやーっ!」スパーン!

後輩「あいたっ!」ベチン

先輩「よしっ、10-1」

後輩「何勝手に点入れてるんですか!」

先輩「ヘッドショットボーナス」

後輩「ピンポンにそんなルールねえですから」

先輩「んー……そんで」

後輩「はい」

先輩「他には?」

後輩「……」

先輩「……」パコン

後輩「……えっと、いや……、その……、特には」カコン

先輩「あ、そ」パコン

後輩「……」カコン

先輩「……」パコ

後輩「な、何でですか?」カコン

先輩「聞いてほしそうにしてたから」パコン

後輩「そんな、別に私は……」カコ

先輩「せいやっ」スコン!

後輩「ふわっ!?」スカッ

先輩「うぇっへっへ」

後輩「むぅ……」

今日はここまでです

>>17
そうです
お読みいただいて、ありがとうございます


先輩「っていうか」

後輩「はい」

先輩「飽きた」

後輩「あんたが卓球やりたいって言い出したんでしょうが……」

先輩「だぁーって、弱すぎるんだもーん、後輩ちゃーん」

後輩「うっさいです」

先輩「こっちの方、右の方。全然狙ってこないんだもんなぁ? どうちてかなぁ?」

後輩「……」

先輩「ンクク、優ちいんでしゅね、後輩ちゃんはぁぁ~?」

後輩「…………ふっ」

先輩「……お?」

後輩「ふふ……、ふっふっふ……」

先輩「後輩?」

後輩「そこまで煽られたら仕方ないです……」ユラリ

先輩「お」

後輩「見せてあげますよ……、私の秘奥義、大仏サーブをね!」キッ

先輩「お、おぉ、後輩がやる気になった!」

後輩「サービスください」

先輩「あーげる」

後輩「どーうも」

先輩「……」

後輩「……」ググ

先輩「……」

後輩「……っ」グググッ

先輩「……」

後輩「そいやっ!」カコン

先輩「……」パコンッ

後輩「あう……っ」スカッ

先輩「何なんだお前は……」

後輩「あれぇ……、おっかしいなぁ……」ブツブツ

先輩「もういいからさぁ。そろそろ飲み行こうぜー」

後輩「さすがにまだ、早すぎるんじゃないですかね? どこも開いてなくないです?」

先輩「『亜理愛』行こうぜ。たしか、月末は5時からやってる」

後輩「えぇ……、マジですか」

先輩「いいだろ。あそこボトル入れてるし」

後輩「私のなんですけど、あれ。……むむ」ググッ

先輩「固いこと言うなってぇ」

後輩「……むむむ」グググッ

先輩「…………」

後輩「……そいやっ」カコン

先輩「えっ、……うぉ!?」スカッ!

後輩「めっちゃ曲がった!」

先輩「めっちゃ曲がった!」











~スナック~


バイト「……お代わりいりますぅ?」

後輩「あー……、うん」

バイト「はぁい♪」カラン カラ

後輩「……」

バイト「……~♪」



先輩「サーングラスぅー! はーずしたらぁー! 吹き出しちゃうほどォー!」

ママ「ハイハイハイ♪」



後輩「……」



先輩「あーどけないーっ 目をしてるぅーっ!」

ママ「フッフー♪」



後輩「……」

後輩(アホだ……)

後輩(アホの人だ……)

バイト「はい、どうぞぉ♪」

後輩「ありがと……」

バイト「アホみたいに上手ですねぇ、先輩さん」

後輩「アホだからね」



先輩「おーっ、後輩ぃー! デュエットー! お前安室ちゃんなー!」



後輩「……」

バイト「呼んでますよぉ?」

後輩「……いいのいいの」

バイト「いいんですか」

後輩「付き合ってたら、アホがうつるから」

バイト「うふふ、怒られますよぉ?」

後輩「いいんだって。事実なんだから」グビグビ

バイト「ふふふ、そうやって、あんまり冷たくしてるとぉ♪」

後輩「……」グビ

バイト「いつかその内、フラれちゃいますよぉ?」

後輩「えっ……?」

バイト「え?」

後輩「あっ、いやあの……、私、付き合ってるわけじゃないからね、あの人と」

バイト「えっ! そうなんですかぁ!?」

後輩「えぇ……」

バイト「えぇ~……、でもでも、いっつも一緒じゃないですか、おふたりってぇ」

後輩「それは……、まぁ、なんだろ? 習慣で……」

バイト「カップルなんだと思ってたぁ」

後輩「うん、違う」

バイト「え……じゃあ、後輩さんが女の人好きっていうのも……」

後輩「あ、それは本当」

バイト「あぁ、へぇ……」

後輩「……」グビグビ

バイト「そうなんだぁ」

後輩「……」グビ

バイト「じゃあ、じゃあじゃあ、私とかでも、結構そういう目で、見ちゃうんですかぁ?」

後輩「そういう目って」

バイト「グッときたりとかぁ」

後輩「いや、まぁ……、可愛いは、可愛いし……」

バイト「ああぁ~……♪」

後輩「あっ、やっ、さすがにね! そういう趣味ない子に、手は出さないからね! ケダモノじゃないのよ、私これでも!」グビグビ

バイト「えぇ~……でもぉ」

後輩「……」グビ

バイト「後輩さんだったら、私ぃ」

後輩「……」

バイト「ちょっと興味あるかも? なんてぇ……?」

後輩「……」

バイト「なんて、んふふ♪」

後輩「……、……そんなこと言ってると」

バイト「はい?」

後輩「……連絡先、聞いちゃうよ?」

バイト「えぇ~? じゃあこれラインで……」

後輩「ラインは営業用のやつでしょ? 他にやってない? プライベートでもいいんだけど。ハングアウトやってる? 分かんない? ケータイAndroid? iphone? 分かんない? うんじゃあちょっとケータイ貸して――……

先輩「口説くな」ゴスッ

後輩「ぎゃふんっ」

先輩「ったく……」



ママ「バイトちゃ~ん、こっちお願~い♪」

バイト「はぁ~い♪」

後輩「いたい……」サスサス

先輩「本当、まったく、お前さぁ……」

後輩「なんですか」

先輩「見境なしか」

後輩「あ、あれは……、違うんですよ。なんか、こう、雰囲気? 流れ? みたいなので……」

先輩「ばーか」

後輩「むぅ……」グビ

先輩「はぁ」グビグビ

先輩「マジで、後輩」

後輩「はい?」

先輩「銀髪さん、あんなことになったのに、それですーぐ次の子って……、良くないと思うわけよ、先輩として」

後輩「いや……」

先輩「道ナラヌ仲とはいえ、恋人だったわけじゃん。それを――……」

後輩「あ、いえ、あの」

先輩「あ?」

後輩「銀髪さんとは、別にその、恋人というわけではなくて……」

先輩「え」

後輩「……」

先輩「え? そうなん?」

後輩「はい」

先輩「……」

後輩「……なんか、すみません……」



先輩「でも銀髪さん、しょっちゅうお前の家、いってたじゃん」

後輩「ええ」

先輩「じゃあアレなに? どういう関係よソレ?」

後輩「肉体関係」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……あ、いや、でもほら、向こうはパートナーいるし、遊びだったかもしれないけど」

後輩「はい」

先輩「お前の方はさぁ、ちょっとは、恋愛感情とかあったわけじゃん? いいなぁ、みたいな? そういうのがさぁ」

後輩「……そ、そういうの、全然で……」

先輩「……」

後輩「本当に、お互い後腐れない、付き合いで……」

先輩「…………」

後輩「…………スミマセン」




先輩「で、でもさぁでもさぁ、出会った時とかはさ、それなりに、トキメキ? インスピレーション? みたいなものが――……」

後輩「さっきみたいな流れでした」

先輩「……」

後輩「……ちょうどあんな感じ」

先輩「はぁ……」

後輩「溜息やめてくださいよぅ」

先輩「それじゃあお前、誰もかれも、ああやって引っ掛けてるわけだな」

後輩「人聞き悪いこと言わないでください」

先輩「はぁ……」

後輩「やっ、ほんっと、違……っ! たまたま! タイミングで……っ!」

先輩「タイミングねぇ」

後輩「そ、そ、そう、タイミング、タイミングが良くてそうなっただけで」

先輩「ふぅん」

後輩「……」


後輩「……」

先輩「でもさぁ」

後輩「はい?」

先輩「後輩、私には、言わないよな。そういうこと」

後輩「……え」

先輩「全然」

後輩「あ、え、いや……いやぁ……」

先輩「……」

後輩「ほら……その、ち、違うじゃないですか。なんていうか、せ、せ、先輩は、あの……」

先輩「……」

後輩「そ、そ、そういうのじゃないっていうか、あっ、いやっ! じゃなくて……! その、あ、あの……」

先輩「……」

後輩「別に先輩のことっ、きらいじゃな――……ああいや、だからって――……、そうじゃなくて、つまり……」

先輩「……」

後輩「あ……す、ストレートじゃないですか、先輩はっ」

先輩「うん」

後輩「……っ!」

先輩「だから?」

後輩「だっ、だ、だからですって。私、そんな、ほら、先輩のことなんて――……」

先輩「そっか」

後輩「あっ――……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」グビ

先輩「……そっかぁ」

後輩「……」

先輩「…………ボトル入れる?」

後輩「……」

先輩「すんませーん!」

後輩「……」






今日はここまでです







スパン!!

パン!!



後輩『はぁ……、はぁ……っ』

先輩『そうそう、そんな感じ』

後輩『……はい』

先輩『あとは手首をもっと柔らかく。……こんな風に』ブンッ

後輩『はい……!』ハァハァ

先輩『……ま、今日はここまでだな』

後輩『いえ、もう一本、見ててください!』

先輩『……校門閉まる時間だから』

後輩『ぅ……』

先輩『それにアンタも。……そろそろ限界だろ』

後輩『いえっ、私はまだ……!』

先輩『駄目、今日はおしまいだ』

後輩『むぅ……』

先輩『……』

先輩『そんな頑張ったって、今度の大会、出れるわけじゃないぞ』

後輩『……』

先輩『ウチのテニス部、年功序列だから』

後輩『……』

先輩『一年生のうちは、出番ねーよ』

後輩『大会なんて……』

先輩『ん』

後輩『私はただ、上手くなりたいだけです。先輩みたいに……!』

先輩『……』

後輩『いえ、先輩よりもっ!』

先輩『……ふ』

後輩『……』

先輩『アンタ程度に、負けることなんてねーよ』

後輩『……』

先輩『……今はな』

後輩『……っ、やっぱり、もう一本――……』

先輩『駄目。ほら、片付けて帰るぞ』

後輩『むぅ……』

先輩『……』

後輩『……』シュン

先輩『……、帰りにたこ焼き屋、寄ってくか?』

後輩『……』

先輩『半分こしようぜ』

後輩『……、……』グゥゥ

先輩『どうする?』

後輩『……行き、ます……』

先輩『あっはは、よしよし』

後輩『……笑わないでくださいよぅ』

先輩『はいはい』ケラケラ










先輩「……――なんて」

後輩「……」

先輩「昔は素直で可愛かったのになぁ、後輩も」

後輩「うっさいです」

先輩「今じゃ、こんなやさぐれちゃってなぁ」

後輩「……先輩に、言われたくありません……」

先輩「うぇへへ、まぁな」カラン

後輩「……」

先輩「なんかさぁ」

後輩「……」

先輩「変わっちゃったよなー、お互い」

後輩「……」

先輩「歳取ったなぁ、私も、お前もさぁ」

後輩「……、私は……」

先輩「ん?」

後輩「……」

先輩「何だよ」

後輩「別に……」

ママ「なに生意気言ってんのよぉ♪ 私から見たら二人とも、子供世代より下なのよぉ♪」

後輩「……ママ、水割りおかわり」

ママ「はいはい♪」カラン カラン

先輩「そうそう、聞いてよママ。高校の頃のコイツさぁ――……」

後輩「うっさいです。ホントうっさい」

ママ「あらあら♪」

先輩「うぇへへ、不機嫌だねぇ、後輩ちゃんよう」

後輩「……」

先輩「何だよー、ナンパ邪魔されたからって、拗ねてんのかぁ?」

後輩「……そんなんじゃないです」グビグビ

先輩「ペース早くない?」

後輩「別にっ!」グビ

先輩「潰れんなよ?」

後輩「……」グビグビ










ママ「へぇ~……、じゃあ金髪さんのところ」

先輩「うん。銀髪さんの親が来て――……」

後輩「……」フラ

先輩「お」

後輩「……」クテン

先輩「ありゃ」

後輩「……ぅー」

先輩「言わんこっちゃない」

後輩「……」

ママ「あららぁ♪ ……大丈夫?」

先輩「うぅん……。後輩、おい、後輩?」ユサ

後輩「……先輩」

先輩「……おう」

後輩「私ぃ……」

先輩「何だよ」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……起きてる?」

後輩「……」コクン

先輩「立てるか?」

後輩「……」コクン

先輩「よしよし……」ナデナデ

後輩「もっと撫でて……」

先輩「ばーか」ナデナデ

後輩「……」

先輩「ママ、ごめんね。お会計」

ママ「今度来た時でいいわよぉ♪」

先輩「いや、いいって。ツケなんて――……」

ママ「はいこれ、領収証」

先輩「あ。……お゛っ、げ……」

ママ「ひとりで払う?」

先輩「あ゛ー……、あの、すみませんね、本当に……」

ママ「ふふ♪ いいわよぉ♪」

後輩「……」

先輩「ほら、帰るぞ」グイッ

後輩「いま、なんじぃ……」フラフラ

先輩「まだ九時」

後輩「……『はせ川』行く……」

先輩「無理だろばか。救急車乗ってオムツ履きてーか?」

後輩「……むぅ」

ママ「タクシー呼ぶ?」

先輩「や、大丈夫。……歩けるか、後輩」

後輩「あゆけなすよお」

先輩「何言ってっか分かんねーから。肩、はい。掴まれ。ちゃんと」

後輩「……」コクン


先輩「そーそー、いい子いい子」

後輩「……」

先輩「じゃ、ママ。ここでいいから。また来るね」

ママ「気を付けてねぇ」

先輩「お邪魔しましたー」

後輩「はひゅぁい」ヨタヨタ

先輩「はい、あんよがじょーず、あんよがじょーず」

後輩「……」フラフラ

ママ「ばいばーい♪」




バイト「……」

ママ「……」

バイト「……、……本当に付き合ってないんですかぁ? あのふたり……」

ママ「さぁ♪」










先輩「……」ヨロヨロ

後輩「……」フラフラ

先輩「……」ヨロヨロ

後輩「……」フラフラ

先輩「……はぁ」

後輩「……」

先輩「あの頃は……、かぁ……」

後輩「……」

先輩「どうして……」

後輩「……」

先輩「こんな風になっちゃったんだろうなぁ、お前……」

後輩「……」

先輩「って、私もか」

後輩「……」

先輩「はは……」

後輩「……」

先輩「……ま」

後輩「……」

先輩「私のせいか」

後輩「……」

先輩「……そうだよな」

後輩「……」

先輩「……心配すんな」

後輩「……」

先輩「大丈夫――……、どんな風になっても」

後輩「……」

先輩「一緒にいてやるからさ」

後輩「……」

先輩「うぇへへ……」ヨロヨロ

後輩「……」フラフラ












――アンタのせいだ!


後輩『……っ!』


――アンタのせいで先輩ちゃんはっ!


後輩『ち、違います……、私は……』

後輩『私は……、知らなかったんです……っ』

後輩『先輩が――』


――知らなかったわけないじゃん!


後輩『違う……、ほ、本当に……、本当に……、私は……』


――知らなかったとしても……

――気付かなかったわけ、ないじゃん……


後輩『それは――……』


――気付いてたんでしょ?


後輩『……』


――アンタが

――アンタが先輩ちゃんを……


後輩『私は……』

後輩『私は…………っ!』










~翌朝~

~後輩宅~


後輩「……わた、ひ……はぁ……?」パチリ

後輩「……?」

後輩「……」ムクリ

後輩「……」

後輩「ぉ゛……!?」ガンガン

後輩「ぉ゛ぉ゛ぉ゛……」ガンガンガン



後輩(気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い……)

後輩(死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ……)


後輩「ぅぅぅぅ……」


後輩(たすけて……)

後輩(助けて神様ぁ……)

後輩(二度と深酒はしませんからぁぁぁぁ)


後輩「……ぅ゛ぐぅぅぅ」ドサッ

後輩「……」


後輩(……っていうか)

後輩(どうやって帰ってきたんだっけ……)

後輩(……覚えてないや)


後輩「……ぅ」ムクリ

後輩「……」ヨタヨタ


後輩(時計――)


後輩「……」

後輩「……」

後輩「……会社……」

後輩「……会社に行かねば……」ヨタヨタ











~オフィス~


プルルル

ワイワイ

ガヤガヤ


後輩「……」カタ

後輩「……」カタカタ



後輩さーん、営業からデータの依頼がー



後輩「そこ置いといてくださーい」カタカタ



後輩さーん、この間の案件のー



後輩「そこ置いといてくださーい」カタカタ



後輩さーん、課長が依頼した資料まだかってー



後輩「そこ置いといてくださーい」カタカタ










新人「後輩さーん!」

後輩「そこ置いといてくださーい」カタカタ

新人「じゃなくて! 後輩さん! 後輩さんってば!」

後輩「……うん?」

新人「もう終業時間ですよ!」

後輩「あっ、ほんと……?」

新人「ええ」

後輩「あぁ……。ウゥー……ン」ノビー

新人「……」ニコニコ

後輩「……っはぁ」

後輩(……終業時間になると)

後輩(体力回復してるのって)

後輩(なんなんだろうなぁ……)


後輩「……」


後輩(飲み行こうかな……)

後輩(先輩……暇かなぁ)

後輩(後でラインしてみよう……)



後輩「……」

新人「後輩さん、後輩さん!」

後輩「え? あぁ……、ごめん、何?」

新人「今日、私たち新入社員で、集まるんですよ。これから」ニコニコ

後輩「……月曜日に?」

新人「食事メインですよ。お酒も、ちょっとは飲みますけど」

後輩「ふぅん……」

新人「それで」

後輩「うん」

新人「後輩さんも来ませんか?」ニコニコ

後輩「えぇ……」

新人「いいじゃないですかぁ、後輩さん、会社の飲み会とか全然顔出さないし」

後輩「苦手なの」

新人「若いのばっかりですから、ヘンに気を遣わなくても大丈夫ですし」ニコニコ

後輩「いや、他の子が気を遣うでしょ。年上行ったら」

新人「後輩さんと飲みたい、っていう新入社員も、ちょいちょいいるんですよ?」

後輩「えぇぇ……」

新人「ねっ! どうですかっ!?」

後輩「うぅん……」

新人「私も、後輩さんと一度、ちゃんと飲んでみたかったですし!」ニコニコ

後輩「……」

新人「いいですよねっ!」

後輩「うーん、パス」

新人「えぇぇ~……」ガックリ

後輩「今日、飲みに行くから」

新人「月曜日に?」

後輩「月曜日に」

新人「彼女ですかっ!?」

後輩「え、違うけど……」

新人「本当ですかぁ……? 怪しい……」

後輩「本当だって」

新人「そうですかっ」ニコッ

後輩(笑顔がまぶしいなぁ……)

後輩(っていうか、『彼女ですか』、って……)

新人「残念ですけど、また今度ですね」

後輩「あぁ、うん……。そうね……」

新人「あ、今週末って空いてますか!?」ニコォー

後輩「グイグイ来るねあなた」






後輩「……」

後輩「……」

後輩(……既読つかないな)

後輩「……」

後輩「……」プルルル

後輩「……」プルルルル

後輩「……」

後輩(出ない……)

後輩「……」

後輩(忙しいのかな……)

後輩「……ふぅ」

後輩(ま、いいか)

後輩(家で飲もう)

後輩(ひとり寂しく)

後輩「……」

後輩「繁桝開けよう、繁桝」ウキウキ




今日はここまでです






ほうれん草のおひたし……適量

ツナ……適量

海苔……適量

めんつゆ……適量










後輩「……」ムフー

後輩「……」

後輩「さて……」

後輩「……」キュポ

後輩「……」トプトプ

後輩「……」

後輩「……」チビッ

後輩(おいしい……!)

後輩「……」グビ

後輩「……」

後輩「……」グビグビ









後輩「……」フラフラ

後輩「……」

後輩「……」グビ

後輩「……っふ」グビーッ

後輩「プハ……」

後輩「……」フラフラ


後輩(……そういえば)


後輩(煙草のにおい、もうしなくなったな、この部屋)


後輩「……」


後輩(……銀髪さん)


後輩「……」グビグビ

後輩「ぅ……」フラフラ


後輩(……お酒は美味しいけど)


後輩(ひとりで飲んでると)


後輩「……ぅぅ」


後輩(気が滅入ることばっかり)

後輩(思い出すなぁ……)


後輩「……」グビ

後輩「……」

後輩「……」

後輩「……ぅ」ウト

後輩「……ぅー」ウトウト











――それで、君は

――どう思っているの、先輩ちゃんのことは?









後輩「……っ!?」ハッ



後輩「銀髪さ――……」

後輩「……!?」

後輩「……」キョロキョロ

後輩「……」


後輩(今、確かに……)

後輩(声が……)


後輩「……」

後輩「…………」


後輩(1.若干寝てた。浅い眠りで、変な夢を見た)

後輩(2.幻聴。ついに酒で脳がやられた)

後輩(3.死んだ者の浮かばれない魂が……、部屋に漂い、生者に語り掛けた……)


後輩「とでも…………」

後輩「言うのだろうか…………」

後輩「……」

後輩「……2と3はやだな……」ヨロヨロ

後輩「自殺……」

後輩「飛び降りかぁ……」

後輩「……」


カチャ

カラカラカラ


後輩「……」

後輩(結構涼しい……)


後輩「……ふぅ」

後輩「暗いな……」







――私ね……、全然思い当たらないの――

――あの子が死ななきゃいけない理由――

――本当に、全然――







後輩「……」


後輩「……」

後輩「……本当に」

後輩「何ででしょうねぇ」

後輩「……」


後輩(……辛かったんですか)

後輩(……楽になったんですか)

後輩(ビルから、地面に……)

後輩(真っ暗なアスファルトに――……)


後輩「……」

後輩「……ふぅ」

後輩「ま、ここ二階だしなぁ」フッ

後輩「……ここからじゃ、せいぜい怪我――


ピンポーン


後輩「っ」ビクッ


後輩「……」


シーン…


後輩「……」

後輩「……」


ピンポーン


後輩「っ!」ビクゥ

後輩「……」

後輩「……」ドキドキ


後輩(……死んだ者の)

後輩(……浮かばれない魂が――)


後輩「……」ブルッ






後輩「……」オソルオソル


後輩「……ど」


ピンポーン


後輩「どっ、どちらさまで……!?」


ギィ


後輩「っっ!?」


先輩「……お、開いてた」

後輩「せんぱ……」

先輩「うぇっへへ、よう」

後輩「先輩……」

先輩「お邪魔ー――……どうしたん?」

後輩「え……?」

先輩「幽霊でも見たみてーな顔して」

後輩「……いえ」


先輩「つーか、鍵かけなさいって」

後輩「すみません……」

先輩「ん」

後輩「何ですか?」

先輩「窓」

後輩「あ……」

先輩「開いてるけど」

後輩「これは……、その……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「暑かった、から……」

先輩「ふーん」

後輩「……」

先輩「虫はいるぞ」

後輩「……そうですね」カラカラ パタン

先輩「閉めるんだ」

後輩「涼しくなったから……」

先輩「そう」

後輩「……」

先輩「お、何飲んでんの?」

後輩「繁桝の……」

先輩「ちょっとちょーうだい」トプトプ

後輩「……」

先輩「んーっ! おいしい!」グビッ

後輩「……はぁ」

後輩「……」


後輩(なんか……、具合悪くなってきた……)


後輩「……」

先輩「疲れた顔してんねぇ」

後輩「まぁ、ちょっと……。飲み疲れで」

先輩「そりゃね。昨夜もあれだけ飲めばね」

後輩「覚えてないからセーフです」

先輩「クズじゃん」

後輩「あはは……」

先輩「ちょっと、横になりなさいよ」

後輩「はぁ……、すみません……」ヘタリ

先輩「大丈夫かよ」

後輩「まぁ……、ちょっと休めば」

先輩「じゃなくて」

後輩「え……?」

先輩「顔色、悪いぞ。最近ずっと」

後輩「……」

先輩「酒の量、増えただろ。ガッと」

後輩「……別に」

先輩「嘘つけ」

後輩「……」

先輩「あの人のことだろ。銀髪さんの」

後輩「違いますよ……」

先輩「嘘が下手だな、後輩ちゃんよう」

後輩「……」

先輩「なぁ」

後輩「……」

先輩「何かあったんだろ、ホントは」

後輩「……本当に」

先輩「……」

後輩「本当に、何もないです……」

先輩「あ、そ」

後輩「……銀髪さんとは」

先輩「……」

先輩「……」

後輩「……恋人だったわけじゃないですし」

先輩「……」

後輩「恋愛とか、好きとか、そういう感情もなかったですし」

先輩「……」

後輩「優しいし、年上だけど、大事な友人って感じでしたし……」

先輩「うん」

後輩「でも……」

先輩「……」

後輩「気付かなかったんですよねぇ、私……」

先輩「……」

後輩「あの人、死にたいくらい……」

先輩「……」

後輩「本当に死んじゃうくらいの、何かを抱えてたのに……」

先輩「ああ」

後輩「……何も、特に何も」

先輩「……」

後輩「本当に、特に何も、気付いてあげられなかったんです……」

先輩「うん」

後輩「そう思うと、何か」

先輩「……」

後輩「何か――……、何だかなぁ、って」

先輩「何だかって?」

後輩「私って、何なんだろうなぁ、って……」

先輩「誰だって、そんなもんだろ」

後輩「分かってます。分かってるけど、でも……」

先輩「……」

後輩「あの日、あの晩だって……。いつも通りダラダラして、普通にお話しして……」

先輩「……」

後輩「……なのに」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「銀髪さん、死んだ日さぁ」

後輩「え?」

先輩「お前、何話したの? あの人と」

後輩「え、それは……」

先輩「それが、あの人の最後の言葉だったりするわけじゃん? どんなこと言い遺したのかなって、銀髪さんが」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……後輩?」

後輩「……言えない、です」

先輩「ん?」

後輩「それは……、話せません……」

先輩「うぇっへっへ、そんなこと言わずにさぁ」

後輩「すみません」

先輩「んふ、冗談だよ。謝るなよ」

後輩「……」

先輩「眠い?」

後輩「眠くないです……」

先輩「口閉じたら、眠くなるよ」

後輩「うん……、はい……」

先輩「……ちょっと、休め、後輩」

後輩「うん……」

先輩「ベッドのとこ行けよ」

後輩「……先輩」

先輩「おう」

後輩「一緒に寝よう?」

先輩「いいけど」

後輩「……」

先輩「また、布団借りるぜー」

後輩「……どうぞ」

先輩「勝手に敷くぞー」

後輩「……」ウツラウツラ




今日はここまでです






後輩『……いよいよ、ですね』

先輩『……そうだな』

後輩『先輩の、現役最後の試合……』

先輩『……』

後輩『先輩の、最後の試合の相手に、私がなれるなんて』

先輩『……』

後輩『……』

先輩『……』

後輩『いい試合にしましょう!』

先輩『……』

後輩『先輩……?』

先輩『……うん?』

後輩『聞いてます?』

先輩『……ん、あぁ……、うん』

後輩『……どうか、したんですか?』

先輩『なんでもねー』

後輩『……?』

先輩『……』

後輩『……せんぱ』

先輩『試合が始まれば』

後輩『……』

先輩『敵同士だし……』

後輩『……』


先輩『今からベタベタするもんじゃねーだろ』

後輩『……あ、そ、そっか……。そう、ですよね……』

先輩『分かったら、ほら、向こう行ってろ』

後輩『は、はい』

先輩『……』

後輩『……あの』

先輩『何でもねーったら』

後輩『……』

先輩『……手、抜くなよ』

後輩『……っ!』

先輩『本気でやるから、私』

後輩『……も、もちろんですっ!』









~寝室~


先輩「……」

後輩「……」

先輩「……後輩ー」

後輩「……」スゥスゥ

先輩「……寝た?」

後輩「……」スゥ

先輩「はぁ……」

後輩「……」


先輩(大切なことって言うのは)

先輩(大切にしすぎて……)

先輩(伝えられないものなんだよなぁ……)


先輩「……なんてな」


先輩(大切だから、伝えなきゃいけないことなのに……)

先輩(……気が付いたら、タイミングを失っていて……)

先輩(きっと……、みんなそうで)

先輩(誰だってそうで……)


先輩「……」ムク

後輩「……」スゥスゥ

先輩「……後輩」

後輩「……」

先輩「……」ナデ

後輩「……ん、んぅ」モゾモゾ

先輩「……髪伸びたな、お前な」


先輩(だとしたら……)

先輩(反対に)

先輩(伝えられないことっていうのは、それだけ、大切なことだったりするんだろうか……)


――言えない、です――

――それは……、話せません――



先輩「……」

先輩「……言わなくていいんだけどさ」

後輩「ムニャ……」ゴロン

先輩「……寝相わりー」

後輩「……」スヤ

先輩「風邪ひくぞ」ファサ

後輩「……」

先輩「……おやすみ」










銀髪『それで、君は』

後輩『え?』

銀髪『どう思ってるの、先輩ちゃんのことは?』

後輩『え、うぇ、えぇぇ!?』

銀髪『ふふ……』

後輩『ど、どういう、意味ですか……』

銀髪『そのままの意味さ』

後輩『……』

銀髪『君が、先輩ちゃんに”してしまったこと”は分かった』

後輩『……』

銀髪『けれど、そのことと今の君がどう思っているかは、別の話だろ?』

後輩『それは……』

銀髪『何のつもりもなく、いつも二人きりで四六時中、一緒にいるわけじゃないだろう』

後輩『……』

銀髪『特に君みたいな、不器用な子はさ』

後輩『私は……』


銀髪『……』

後輩『私は、先輩のことを……』

銀髪『……』

後輩『どう思ってるかなんて、言える立場じゃ、ないですから』

銀髪『……』

後輩『こんな、私が』

銀髪『……なるほどね』

後輩『……』

銀髪『そういう風に、先輩ちゃんを未来永劫、束縛し続けるわけか』

後輩『束縛って……』

銀髪『だって、そうだろう? どう思ってるかも、はっきりさせない。どうするつもりもない』

後輩『……』


銀髪『ただひたすらに、隣に置いておくだけ』

後輩『……』

銀髪『宙ぶらりんなまま、引き寄せもせず、突き放しもせずにね』

後輩『あなたに……』

銀髪『……』

後輩『何が分かるって言うんですか』

銀髪『……』

後輩『私と先輩の』

銀髪『ふふ。さぁ……ね?』

後輩『……』

銀髪『ただ、君もそろそろ、先輩離れしてみた方が良いんじゃないか? って、思っただけさ』

後輩『何ですか、それ』

銀髪『たとえば……、そう……私とかと』


後輩『何言ってるんですか』

銀髪『本気さ。君が望むのなら、君のものになってもいい』チュ

後輩『気障女』

銀髪『うっふふ……』

後輩『金髪さん、怒りますよ?』

銀髪『もし君が、その気なら――……』

後輩『……』

銀髪『彼女と別れたってかまわない』

後輩『……ふふ』

銀髪『何だい?』

後輩『誰にでも言ってるんですよね、それ』フフフ

銀髪『そ、そんなことないさ』

後輩『すぐ目が泳ぐ……』

銀髪『……』

後輩『呆れた人ですねぇ』


銀髪『ただね、今の君と先輩ちゃんとの関係は……』

後輩『……』

銀髪『良くないのは確かさ。お互いにとってね。彼女も君のことを――……』

後輩『……』ムクリ モゾ

銀髪『……』

後輩『……』モゾモゾ パサッ

銀髪『お、おいおい。もう服着ちゃうのかい』

後輩『今日はもうしません』

銀髪『……今日は、ね』

後輩『……』ジトッ

銀髪『怒った顔も可愛いよ』

後輩『馬鹿じゃないですか……』プイッ

銀髪『あらら』

後輩『銀髪さん……』

銀髪『うん?』

後輩『もし仮に――……仮に、私が先輩のこと、大好きで』

銀髪『……』

後輩『あ、あい、愛してる、としても……』

銀髪『……』

後輩『……私に、それを言う資格なんて、ないんですよ』

銀髪『そうかい? そういう自分に、酔っているだけじゃなくて?』

後輩『銀髪さん嫌い!』

銀髪『うふふ、傷つく』

後輩『帰りたくなったら、勝手に帰ってください。私ソファで寝てますから』

銀髪『うぅん……、本気で機嫌を損ねてしまったみたいだな』

後輩『……』

銀髪『やれやれ――……』









~オフィス~


後輩「……」ボケー


後輩(『言い遺したこと』――……)

後輩(銀髪さんの、最後の言葉――……)


後輩「……」


後輩(『やれやれ』でよかったんですか、銀髪さん……)

後輩(ハルキか)


後輩「……」ボー

新人「後輩さんっ!」

後輩「あっ、はい! そこ置いといてください!」

新人「じゃなくて!」

後輩「え……」

新人「終業時間ですよ、もう」

後輩「あ……」

新人「……」ニコニコ

後輩「あぁ」

新人「ふふっ」ニコニコ

後輩「もうこんな時間か……」

新人「ね、後輩さん」

後輩「うん?」

新人「今日、金曜日ですよ」

後輩「あぁ……、うん。そうだね……」

新人「……」ニコニコ

後輩「……それで?」

新人「飲み行きましょう!」

後輩「あー…………パス」

新人「えぇぇぇ~~……」

新人「金曜に飲み行くって、約束したじゃないですかぁ~……」

後輩「したっけ?」

新人「しましたぁ!」

後輩「……ごめん、覚えてない」

新人「ひどい!」

後輩「ごめんね。私今日、残業」

新人「Do残業デーですか」

後輩「Do残業デーって何だ……」

新人「残業終わってからでも……」

後輩「また今度ね」

新人「はぁ~……、残念……」

後輩「ごめんて」


新人「っていうか、後輩さん」

後輩「はい?」

新人「大丈夫ですか?」

後輩「え……」

新人「何かここのところ、心ここにあらずっていうか」

後輩「……」

新人「タスク抱えすぎてません?」

後輩「……適度にサボってるよ」

新人「さっきも」

後輩「……」

新人「ずっと、ボーっとしてましたし……」

後輩「……」

新人「何か、悩みごとですか?」

後輩「…………」

新人「後輩さん?」

後輩「別に、何でもないよ」

新人「……そうですか」

後輩「また今度、飲み行こう」

新人「楽しみにしてますからねっ、センパイ!」ニコニコ

後輩「あ、ごめんその呼び方やめてマジで。本気で。リアルで。ガチで」






今日はここまでです






~ビールバー~


先輩「……」

後輩「……ぅ」

先輩「……はぁ」

後輩「……ぅぅぅ」

先輩「……こうはーい」

後輩「話しかけないでください」

先輩「……」

後輩「今真剣に悩んでるところなんですから……!」

先輩「あー、そう……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……ぅぅ」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……早くしろよ!」

後輩「……ちょっ、ちょっと! ちょっと待ってくださいって!」

先輩「そんな悩むほどのことでもねぇだろ」

後輩「悩みます! 今月で一番悩んでますから!」

先輩「……」

後輩「こっちの、箕面のスタウトか……」

先輩「……」

後輩「それともこっちの志賀高原か……っ」

先輩「……」

後輩「……ぅぅぅぅっ!」

先輩「おーい」

マスター「ゆ、ゆっくり選んで、いいからね、ねっ?」

先輩「両方頼めよ」

後輩「……値段的に、ちょっと……」

マスター「ご、ごめんね……、お手頃価格で出せなくてごめんね……」

後輩「……ハーフグラスとか」

マスター「ごめんね……、ら、来週から始める予定なの、ごめん……」

先輩「……お前、マスターいじめんなよ」

後輩「やっ、ちが……っ、すみません……っ」

マスター「だ、大丈夫だから、ごめんね、気にしないでね……」

先輩「……」

後輩「……えぇ~、うぅ~ん……」

先輩「……半分こする?」

後輩「え……」

先輩「私、こっち頼むから。お前こっちにしろよ」

後輩「……い、いいんですか?」

先輩「私もこれ、飲んでみたい」

後輩「先輩……、スキ……」キュン

先輩「やっすい女だな、お前……」

マスター「イギリスから――……」

先輩「……」

後輩「……」

マスター「遠路はるばるアフリカ大陸」

先輩「……」

後輩「……」

マスター「そこから遥かなインド洋、大海原を越えてインドに至るわけです」

先輩「……はぁ」

後輩「……」

マスター「ですから」

先輩「……」

後輩「……」

マスター「インドまで行くと、インディア・ペール・エール」

先輩「……」

後輩「……」

マスター「インドまではいかない、その途中くらい、っていう意味で、アフリカ・ペール・エール」

先輩「へぇ~」

後輩「へぇ~」

マスター「し、洒落がきいてますよね……ふふ、ふふふ……」

先輩「あっ、おいしい……」グビグビ

後輩「本当だ……。IPAより飲みやすくて――」

先輩「次こーっち」

後輩「どーうぞ」

先輩「……」グビ

後輩「……」グビグビ

先輩「……ぷはぁ」

後輩「……ぷはぁ」

先輩「あ~……」

後輩「一軒目で、出来上がっちゃいそうですね」

マスター「こ、このあとも……、またどこか行くの……?」

先輩「うん、まぁ。金曜だし」

後輩「飲めるだけ飲みましょう」グビグビ

先輩「おい、自分ばっか飲むなよ!」

後輩「……あぁ~、もう一杯頼んじゃおっかなぁ……」

マスター「ふ、ふふ……、ご、ごゆっくり……」










~二軒目~


先輩「あっはっは! あーっははははっ!」バンバン

後輩「あはははっ、最高、さいこ……あっははは!」

先輩「うっはは、ほーんと馬鹿! あははは! はっはっは!」グビグビ

後輩「あははははh……げほっ、ごほっ!」グビグビグビ










~三軒目~


後輩「……うぅっ」グスグス

先輩「うんうん……、分かる分かる。お前は頑張ってるよ」

後輩「……だげどぉ、わらひたちのころはぁ、もっとアレだったじゃないですがぁ……。年上への接し方っでぇ……」グスグス

先輩「そうだな、そうだな」

後輩「……年下が怖い……」

先輩「うんうん」

後輩「正確には自分より有能な年下が怖い……」エグエグ

先輩「分かるよ」グビグビ

後輩「……」グビグビ










~四軒目~


先輩「……」

後輩「……」


金髪「いらっしゃ~い♪」


先輩「……」

後輩「……」

先輩「な、開いてたろ」

後輩「……えぇ」










金髪「はいっ、キンミヤハイボール二つ」

先輩「どうもー」

後輩「どうも……」

金髪「ごめんなさいねぇ、つまめるもの、チーズくらいしか残ってなくて……」

先輩「いいよ全然。な?」

後輩「え、えぇ……」

金髪「もう、冷蔵庫の中も空っぽ。うふふ……」

先輩「そっかぁ」

後輩「……」

金髪「お酒は、余ってるんだけどね~」

先輩「じゃあ私らで片付けていくか」グビ

後輩「……」

先輩「今日で最後かぁ、『ナイトフード』も」

金髪「そうなの~。それで、貴方たちが多分、最後のお客さん」

先輩「寂しくなるねぇ」

後輩「……」

金髪「って言っても、引っ越すわけでもないし。この辺り、よく飲みに来るから、すぐ会えるわ~」

先輩「へぇ、どの辺で飲むの?」

金髪「『信楽』とか『そば好』とか……」

先輩「『そば好』、昼だけじゃなかったっけ? また夜もやるようになったの?」

金髪「去年の冬くらいからかしらねぇ」

後輩「……」

先輩「知らんかったなぁー」グビグビ

後輩「……」グビグビ

金髪「……後輩ちゃん」

後輩「ふぇ!? えっ、はい!?」

金髪「この間は、ごめんね」

後輩「い、いえ……。そんな……」

先輩「えー、なになに? この間って何?」

金髪「うっふふ、内緒~」

先輩「えぇ~……、おい、後輩~」

後輩「……何でもありません」グビ

先輩「何だよぉ、隠すなよう」ワシャワシャ

後輩「……か、髪触らないでください。鬱陶しい……」ベシッ

先輩「……なーに大人しくなっちゃってんだよ。借りてきた猫かよ」

後輩「猫じゃありません……」

金髪「後輩にゃん♪」

後輩「猫違います!」

金髪「あら? あらあら、猫じゃないの? 意外……」

後輩「あ、え、いや、猫は猫ですけど……」

金髪「ふぅん、猫なんだぁ~」

後輩「……」グビグビグビグビ

先輩「えぇ、何それ。禅問答?」










先輩「結構飲んだなー」

後輩「……」ベロンベロン

先輩「な、後輩ー」

後輩「……」

先輩「……後輩」

後輩「……」クテン

先輩「あ……」

後輩「……スゥスゥ」パタン

先輩「あーあー」

後輩「……ムニャ」

先輩「駄目ねぇ後輩ちゃん、最近さぁ」

後輩「……」スヤ

金髪「あら、寝ちゃった?」

先輩「うん、まぁ」

金髪「大丈夫かしら……」

先輩「寝てるうちは、たぶん大丈夫」

後輩「……」スヤスヤ

金髪「先輩ちゃんも、おかわりはよしておく……?」

先輩「んー……、いや、もう一杯だけ」

金髪「はいは~い」

先輩「金髪さん」

金髪「うん?」

先輩「大丈夫?」

金髪「……」

先輩「あんなことあった、ばっかりだしさ」

金髪「えぇ……」

先輩「辛かったら、あんまり無理しないで――……」

金髪「うふふふ……、優しいのね、先輩ちゃん」

先輩「いや、そんな、別に大層なアレじゃなくて」

金髪「ううん、ありがとう。……先輩ちゃんはとっても優しい子」

先輩「子って柄じゃなぁ……」

金髪「だけど、後輩ちゃんには、もっと、ずっと、優しいんでしょ?」

先輩「え……、何で後輩?」

金髪「いつも一緒にいてあげて、隣で飲んであげて……」

先輩「……」

金髪「眠っている間も、見守ってあげて……」

先輩「いやぁ、それはただ、こいつが馬鹿だから」

金髪「うっふふ、いいえ。それも先輩ちゃんの優しさよ」

先輩「うぅん……」

金髪「でも……」

先輩「?」

金髪「本当に、優しさだけ?」

先輩「え?」

金髪「優しいから、優しくしてる……。それだけなのかなぁ、って」

先輩「……」

金髪「優しい先輩が、手のかかる後輩を気に掛ける……、それだけなのかしら」

先輩「言ってること、よく分かんねーですよ」

金髪「ふふ……」

先輩「私は……、別に、何も考えてないし…………」

金髪「後輩ちゃんは」

先輩「……」

金髪「そう思ってるわよぉ?」

先輩「……」

金髪「先輩ちゃんが一緒にいてくれるのは、先輩ちゃんが優しい人だからだ、って」

先輩「……」

金髪「後輩ちゃんが”負い目”を感じないように、気を遣っていてくれてるんだ、って」

先輩「いや、マジで……、何聞いたんですか、こいつから」

金髪「内緒~」

先輩「口軽ぃんだよ、お前っ」ベシッ

後輩「フギャ…………ゥーン」ムニャムニャ

金髪「うふふ、今のは全部、私の想像」

先輩「え、後輩叩かれ損」

金髪「叩いたのは先輩ちゃんだもん~」

先輩「えぇ~……」

金髪「……でも、そんなに外れてないと、思うわぁ」

先輩「……」

金髪「うすうす、そんな気はしてるでしょ、先輩ちゃんも~?」

先輩「それは……」

金髪「先輩が、相手をしてくれるのは、優しいから……”それだけ”」

先輩「……」

金髪「だから」

先輩「……」

金髪「そう思っているから、後輩ちゃんは先輩ちゃんに、優しさ以上を求めようとはしない」

先輩「……」

金髪「だから、今のままを望んで。……けど」

先輩「……」

金髪「それでいいのかしらね~」

先輩「……」

金髪「先輩ちゃんも、後輩ちゃんも……」

先輩「……あの」

金髪「ん?」

先輩「何の話?」

金髪「んっふっふ……、さぁ?」

先輩「……」

金髪「ただ、そういえば、そんな話したなぁ、って」

先輩「え」

金髪「銀髪と」

先輩「……」

金髪「あの子……、貴方たちのこと、大好きだったから」

先輩「貴方”たち”……」

金髪「本当よ?」

先輩「……」

金髪「……」

先輩「そっかぁ……」

金髪「私はそうでもないけど」

先輩「……」

金髪「冗談よ?」

先輩「う、うっす……」

金髪「うふふ、うっふっふ……」

先輩「……」

金髪「それで……」

先輩「……」

金髪「どうするの?」

先輩「どうって……」

金髪「……」

先輩「……どうしよっかなぁ」

金髪「困った子ねぇ」

先輩「あ゛~……」

金髪「……」

後輩「ンヘヘェ……」スヤァ

先輩「幸せそうに寝てんじゃねーよ、馬鹿!」ベシッ

後輩「フギュ」

金髪「あらあら」










~翌日~


~後輩宅~


後輩「……うーん」

後輩「胃が痙攣しているぞ」ヨロヨロ



ピンポーン



後輩「……」



ピンポーン



後輩(先輩め……)

後輩(昨日の今日で、飲みに行くつもりですか……)



ピンポーン


後輩「……今日は帰らせよう」スタスタ

後輩「血が丸ごと酒になってるんだ、こっちは」スタスタ



ピンポーン


後輩「しつこい……」ハァ

後輩「鍵かけて追い払ってやる……」

後輩「……」スタスタ


ガチャ


後輩「チェンジ!」



「は?」



後輩「え?」



「……」



後輩「えっ、あっ、いや……! しし失礼、しましたぁ!」


「……いえ」


後輩「あの、ええと……」

女刑事「……警察のものです」

後輩「は」

女刑事「銀髪さんのことで、少し」

後輩「…………」

今日はここまでです






後輩「今、お茶いれますんで……」トタタ

女刑事「お構いなく」






ガチョ


後輩「……」

後輩「………………」


後輩(1.発泡酒)

後輩(2.日本酒)

後輩(3.スポドリ)


後輩「……」


後輩(……思ったより、終わってるなぁ)


後輩「……」


後輩(1くらいだったら、ジョークで済ませてもらえるかも……)


後輩「……」

後輩「……」










後輩「すみません、お茶、切らしちゃってて……。今買ってきますんで――……」

女刑事「……本当に、結構ですから。どうぞお構いなく」

後輩「は、はぁ……。でしたら……」

女刑事「……」

後輩「ええと……、銀髪さんの件、でしたっけ……?」

女刑事「ええ」

後輩「ど、どういったお話で?」

女刑事「二、三、お尋ねしたい点がありまして」

後輩「……その、じ……自殺、だったんですよね」

女刑事「あ、ご心配なさらず」

後輩「……」

女刑事「これは捜査というわけではありませんから」

後輩「はぁ……」

女刑事「報告書の作成に必要な点を、確認させていただきたいだけです。いわゆる、事後処理のようなものでして」

後輩「そうなんですか……」


後輩(なるほど……)

後輩(それで、刑事さんひとりだけなのか)

後輩(聞き込みだと、二人組でやってるもんなぁ)

後輩(ドラマで見ただけだけど……)


女刑事「ご協力、いただけますか」

後輩「え、えぇ、まぁ……」



後輩(しかし、まぁ……)

後輩(なんか、圧を感じる人だ)

後輩(怖ぇ……)


女刑事「……――それで、当日のことなのですが」

後輩「はい……」

女刑事「少し、お聞かせ願えますか」

後輩「少し……」

女刑事「銀髪さんが、何時にこちらに来て、何時に帰った、とか」

後輩「……ええと」

女刑事「……」

後輩「来たのは、確か5時――いや、4時でした。それで4時……あ、朝の4時に帰って」

女刑事「その後、連絡は?」

後輩「取っていません……」


女刑事「何故、明け方のそんな時間に帰られたんですか。電車もまだ、動いていないでしょう」

後輩「ギリギリ、歩いて帰れる距離でしたし。朝は色々、立て込んでるらしくて……、いつもそのくらいの時間でした」

女刑事「……こちらには、良く来られていたんですか」

後輩「えぇ、まぁ……」

女刑事「そうですか……」

後輩「……」

女刑事「……」



後輩(間が怖ぇ……)

後輩(『私何も知りません』って言いてぇ……)



女刑事「それで、彼女はどういった用事で、こちらに?」

後輩「え」

女刑事「……夕方にやってきて、明け方に帰っていく必要がある用件というと、今一つ思い当たりませんが」

後輩「そ、それは……」


女刑事「少し不自然――……、失礼、言い方が悪いですね」

後輩「……」

女刑事「違和感があります」

後輩「……」

女刑事「銀髪さんは、貴方の家まで、何をしに来られていたのですか?」

後輩「そ、それは……」

女刑事「当日、銀髪さんは何の用事で?」

後輩「あ、ぇ、いや、えと――……」

女刑事「……」


女刑事「何か、言えない事情があるんですか?」

後輩「そそそういうわけではなくぅ……」

女刑事「でしたら」

後輩「…………した……」ボソボソ

女刑事「はい?」

後輩「……ッ――……て、……た……」ボソボソ

女刑事「何とおっしゃったんですか?」イラ

後輩「……」

女刑事「あのですねぇ……、ちゃんと聞かせてもらわないと……」イライラ

後輩「せ……セックスしてましたぁぁぁっ!!」

女刑事「せ――……はっ、へぁ!? へぇぇぇっ!?」


後輩「うっ、うぅぅぅ……っ」カァァ

女刑事「なっ、……女どっ――……、あっ、あぁ。って、えっ? えぇ……?」ワタワタ

後輩「……」カァァ

女刑事「えっ、あ……、んっ、コホンっ」

後輩「……」

女刑事「ま、まぁ、そ、そういうのは、お、お話しされなくて、だ、大丈夫、ですから」

後輩「……」

女刑事「コホ……、お聞きしたいのはセ――……それ以外で……」

後輩「ずっとセックスしてましたぁ……」

女刑事「ずずずずずっと!?」

後輩「うぅぅぅっ」カァァァッ

女刑事「4時から4時まで!?」

後輩「あ……いえ、途中で寝たので……」

女刑事「そ、そっか……。そりゃまぁ……」

後輩「1時くらいまででした」

女刑事「4時から1時!?!?」ワタワタ


女刑事「4時から……」

後輩「う、うぅぅ……」カァァ

女刑事「……9時間?」マジマジ


後輩(めっちゃ見られてる……)


後輩「……」

女刑事「はぁぁ……」マジマジ

後輩「……あ、あのぉ」

女刑事「……!」ハッ

後輩「……」

女刑事「……コホッ、コホン!」

後輩「……」

女刑事「失礼、取り乱しました」

後輩「……いえ」

女刑事「それで……」


後輩「……」

女刑事「1時には、眠られたんですね」

後輩「え、えぇ。大体それくらい……」

女刑事「それで、4時に起きて、銀髪さんを見送られたんですか?」

後輩「いえ……、まだ私、ソファにいて……。起きる前に、銀髪さん出て行って」

女刑事「……何故ですか?」

後輩「え?」

女刑事「何故、銀髪さんが帰った時刻が、4時だと断言できたのですか? 寝ていたのに」

後輩「あ……、そういえば」

女刑事「……」

後輩「確かに……」


後輩(……何でだっけ?)

後輩(ええと……)


後輩「……、……あぁ」


後輩(そうだ)

後輩(あの時……確か、銀髪さんが帰ろうとしていて――……)

後輩(それで、行く前に私の所に……)










後輩『……んぅ』ウトウト


トタ トタ

トタ


後輩(……銀髪さんの、足音……)

後輩(……帰るのかな……?)

後輩(時計――……)


後輩『……』チラ


後輩(まだ4時じゃん……)


後輩『……ん、ん』ウトウト

後輩『……』スヤ


ト トッ トッ


後輩(近づいてきてる……)

後輩(でも夢かも……)


銀髪『……後輩ちゃん』


後輩『……』


後輩(……銀髪さん?)


銀髪『――、――――』


後輩『……』

後輩(銀髪さん……)

後輩(何か言い……ました……か――……?)

後輩(銀髪、さ……)


後輩『……ムニャ』スヤスヤ


後輩「……一瞬、起きて……」

女刑事「……」

後輩「時計を見て……」

女刑事「なるほど」



後輩(あの時……)



後輩(あの時、銀髪さんは何を……)


後輩「……」

女刑事「……」

後輩「……」

女刑事「……?」

後輩「……」

女刑事「どうかされましt――……?」


ガチャガチャ!!

バターン!!


先輩「おぉぉーーっす!!」


後輩「!?」ビクーッ

女刑事「!?」ビクーッ


先輩「おぉーい後輩ー! いるかーっ! すげぇぞ、下の駐車場!」

後輩「せ……」

先輩「すっげぇヤクザ停めしてるレガシーいた! 超バカみてーなの! 見てみれ!」

後輩「せんぱ……」

先輩「写真撮ったからインスタで晒そ――……、あ……」

後輩「……」

女刑事「……」

先輩「あ、お取込み中?」

女刑事「……、……私の車ですね」

先輩「う、うぇ?」

女刑事「失礼、停め直してきます」

後輩「……先輩、この人、警察の方で……」

先輩「うぇぇぇぇぇ!?」









先輩「だーかーらー! ねぇって言ってんじゃん!」

女刑事「身分証明できるものですよ? 本当に何も?」

先輩「あぁん? 何度も言わなきゃ分かりませんかねぇ~!?」

女刑事「……では、ご職業は?」

先輩「自営」

女刑事「具体的に」

先輩「詩人」

女刑事「…………はぁ」

先輩「あぁぁ!? 何だその『はぁ』は!? 職業差別か公務員がこの野郎ォ~~~ッ!?」

後輩「先輩、ほんと……本当、やめましょうって、ねっ」

女刑事「……」

後輩「すみません……、この人こんなですけど、嘘はついてないんで……」

女刑事「そう……」

先輩「……」ガルル







先輩「発泡酒もらうぞ~」ガタガタガチャ



後輩「どうも、すみませんでした……」

女刑事「いえ、お気になさらず」

後輩「……」

女刑事「……では、私はこれで。ご協力、感謝します」

後輩「……あ、あの」

女刑事「はい?」

後輩「実はその……、銀髪さんが、ええと……亡くなったビルの場所、教えてほしいんですけど」

女刑事「……」

後輩「あ、これ聞いたら駄目なやつでしたか? シュヒ義務? 的な……」

女刑事「いえ、構いませんが」

後輩「ありがとうございます……」


女刑事「口頭でいいですか?」

後輩「えーと……、できたらメモを」

女刑事「お待ちを」ゴソ

後輩「すみません……」

女刑事「……」カキカキ

後輩「……」

女刑事「……変わったご友人を、お持ちですね」

後輩「いえ……。お恥ずかしい限りです……」

女刑事「貴方自身も」

後輩「へ?」

女刑事「少し、変わっていますしね」フフッ

後輩「あ……」


女刑事「失礼。……どうぞ」スッ

後輩「あ、ど、どうも」

女刑事「それでは」


ガチャ キィ

バタン


後輩「……」


後輩(笑うと……)

後輩(雰囲気変わるなぁ……)


先輩「後輩ー、『獺祭』見つけたんだけど開けていいー? 後輩ちゃーん?」





今日はここまでです







~夕方~


~郊外・ビル街~



後輩「んーと……」キョロキョロ

先輩「……」

後輩「おっかしいな……」キョロキョロ

先輩「なー」

後輩「何ですー? ……あ、こっちか」

先輩「もういいじゃんー。飲みに行こうぜー」

後輩「先輩についてきて、なんて言ってないじゃないですか」

先輩「冷てぇの」プシュッ

後輩「うーん、間違いなくこの辺りのはずなんだけど……」

先輩「……」ゴクゴク

後輩「うぅん……、刑事さん、この住所あってるんですか……」

先輩「……ぷはぁ」

後輩「……美味しそうなの、飲んでますね」

先輩「美味いよ」グビリ

後輩「はぁ……」

先輩「こうはーい」

後輩「何ですか……」

先輩「そっちじゃない」

後輩「え?」

先輩「こっち」スタスタ

後輩「え……ちょ、先輩……?」

先輩「~~♪」スタスタ

後輩「ちょっと……、せんぱ……っ、先輩!」









後輩「……」

先輩「ここだろ?」

後輩「……xxxxビル……、合ってる……」

先輩「……」カシュッ

後輩「先輩……、この場所、知ってたんですか……」

先輩「プハ……、人から聞いてな。あの界隈の連中なら、みんな知ってる」

後輩「……」

先輩「お前以外はなー」ケラケラ

後輩「……」ガチャ

先輩「鍵かかってる?」

後輩「えぇ……まぁ、当たり前ですけど」

先輩「ふぅん……」スタスタ

後輩「あ……っ、また……」

先輩「おっ」

後輩「何です?」

先輩「うぇっへっへ、非常階段~」

後輩「……キケン、立ち入り禁止、って」

先輩「大丈夫だろ」ヒョイ

後輩「ちょっと、先輩」

先輩「行かねぇの?」

後輩「……」

先輩「行くんだろ?」

後輩「……」ヒョイ

先輩「んふ、いけないんだー……」

後輩「もう……、アホ言ってないで」

先輩「はいはい」









後輩「……」カンカンカン

先輩「……」ゼェゼェ

後輩「……先輩」

先輩「……お゛ぅ」ゼェゼェ

後輩「大丈夫?」

先輩「おう……」

後輩「……」

先輩「やっぱ休憩……」ゼヒー

後輩「はい」

先輩「……うぁぁ」

後輩「……」

先輩「日頃の不摂生がなぁ」

後輩「先輩」

先輩「おう」

後輩「……脚、痛むの?」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「ちょっと」

後輩「……」

先輩「気圧が低いと、たまにな。今日とか」

後輩「……先輩」

先輩「謝んなよ」

後輩「……はい」

先輩「……よし、行くか」

後輩「はい……」

先輩「今何階?」

後輩「6階、多分」

先輩「うげぇ……」










後輩『……』

先輩『おーっす、後輩ー、いるかぁー』

後輩『せんぱ……っ?』

先輩『なんだ、起きてるんじゃねぇか』

後輩『どうして……』

先輩『お見舞い。ほれ、おみやげ』

後輩『……』

先輩『元気そうじゃん』

後輩『……』

先輩『いい加減、学校来いよなー。ずっと休んでるんだって?』

後輩『……』

先輩『アホだなー』

後輩『ほっといてください……』

先輩『うっへへ、強がっちゃってぇ』


後輩『先輩……』

先輩『うん?』

後輩『どうして、そんな……、平気そうなんですか……』

先輩『どうしてって?』

後輩『最後のあの試合……、私のせいで……』

先輩『……』

後輩『私のせいで、脚……駄目になったのに』

先輩『……』

後輩『私のせいで、もうテニス出来なくなっちゃったのにっ!』

先輩『お前のせいじゃねぇよ』

後輩『……だけどっ!』

先輩『本当は、ずっと良くなかったんだ』

後輩『……』

先輩『最後くらい、耐えられると思ってた』

後輩『……』

先輩『平気だと思ってた私が、馬鹿だったんだよ』

後輩『そんな……』

先輩『それに、お前は知らなかったんだ』

後輩『……』

先輩『何も言わなかったもんなぁ、私さぁ』

後輩『……』

先輩『ごめんなぁ……』

後輩『違う……』

先輩『……』

後輩『私は……私はぁ……』グスッ

先輩『……』

後輩『気付いてたんだっ! 試合中……っ! 先輩がぁ……!』

先輩『……』

後輩『動きがっ、いつもと……っ、右のショートクロス、対応できないって……っ!』

先輩『……』

後輩『おかしいなってっ、ゥグ……ッ、分かってて……グスッ』ポロポロ

先輩『後輩……』

後輩『なのにぃ……ヒッグ、うぅ、勝ちたくて! 先輩に勝ちたくてぇ……、わたし……わたしぃ……っ!』ポロポロ

先輩『泣くなよ、なぁ……』

後輩『……ヒック、みんなの……、みんなの言う通りなんですぅ……っ』

先輩『……みんな』

後輩『私がっ! 私が先輩を……っ!』グスグス

先輩『落ち着け、な?』

後輩『ヒック……ふ、ぐ、ぅぅぅ……ごめんなざい゛ぃ゛……』

先輩『お前は、本当に……』ナデナデ

後輩『う゛ぅ゛……』

先輩『気にしすぎなんだよ。死ぬわけじゃないし、歩けなくなるわけでも、ないんだから……』

後輩『だって……、先輩、もうテニス……』

先輩『だからさ、死にゃしないんだって。テニスなんて、できなくたって』

後輩『……』

先輩『本気だぞ』

後輩『……だけど』

先輩『……』

後輩『先輩は……あんなに、がんばって……。あんなに練習して……』

先輩『……』

後輩『あんなにテニスが大好きで、あんなに……うぅぅっ』グスッ

先輩『また泣く』

後輩『……うっ、うぅ……』

先輩『はぁ……、しょうがないヤツだなー』

後輩『……』

先輩『心配すんなって』

後輩『……グス』

先輩『きっといつか、笑って話せるようになるさ』

後輩『……』

先輩『逆に、あの時テニス、見切りつけられてラッキーだったなぁ、みたいにさぁ』

後輩『……』

先輩『酒なんか、飲みながら』

後輩『……』

先輩『お前と私でさ』

後輩『……酒飲みは』

先輩『……うん?』

後輩『嫌いです。臭いから……』

先輩『あっはっは、そっかそっか』

後輩『……』

先輩『……ま、何でもいいよ』

後輩『……』

先輩『私は大丈夫だから』

後輩『……』

先輩『お前も大丈夫になれ』

後輩『……でも』

先輩『もし辛いんだったら』

後輩『……』

先輩『私が、いてやるから』

後輩『先輩……』

先輩『お前が大丈夫になるまで、お前の隣に』

後輩『……本当に?』

先輩『おう』

後輩『……大学行っても?』

先輩『もちろん』

後輩『お、大人になっても? 先輩が――……』

先輩『だから、言ってんだろー』

後輩『……』

先輩『いつか一緒に、酒でも飲んで、笑うんだって』

後輩『……先輩』

先輩『な』

後輩『……酔っぱらい、嫌いです』

先輩『あっはは、そういうなって』

後輩『はぁ……。先輩って人は……、本当に……』

先輩『いいだろ! 大人になったら一緒に――……』

後輩『一緒に?』

先輩『飲みに行くぞー!』

後輩『はいはい……』










~屋上~



後輩「……」

先輩「……」

後輩「……落ち着きましたか、先輩?」

先輩「……」

後輩「先輩?」

先輩「……ん? ……あぁ。……もう大丈夫」

後輩「どうかしました?」

先輩「……んー、ちょっと。考え事」

後輩「……はぁ」

先輩「昔のこととか」

後輩「……」

先輩「……飲むか?」

後輩「ください」

先輩「ほら」


後輩「……」カシュッ

先輩「10階って、結構高いな」

後輩「ですね……」ゴク

先輩「普通にフェンスあるんだけどなー……」

後輩「あ、ここ……」

先輩「ん」


ギシギシ

キィ


後輩「壊れてる」

先輩「銀髪さんが壊したんかな?」

後輩「どうですかね……」

先輩「……ふーん」キィ

後輩「飲みます?」

先輩「ちょうだい」

後輩「どうぞ」

先輩「……」グビ


後輩「……高」

先輩「……」

後輩「うわぁ……」

先輩「……」グビ

後輩「真っ暗だぁ……」

先輩「後輩ちゃんさー」

後輩「はい?」

先輩「どうしたん? 急に」

後輩「……」

先輩「銀髪さんがトんだ場所が見たい、なんて」

後輩「いえ、別に……」

先輩「……」

後輩「特に意味は、ないんですけど」

先輩「ふぅん」

後輩「ただ……、なんて言うか……」

先輩「……」

後輩「思い出したんですよ」

先輩「何を?」

後輩「……銀髪さんに、最後に……、私の家、出ていくときに、何か、言われて」

先輩「何言われたん」

後輩「や、何か言われたんですけど……」

先輩「うん」

後輩「何言われたか、思い出せなせないんですよね」

先輩「何だそりゃ」

後輩「ちょっと、気になっちゃって」

先輩「……」

後輩「何て言ったんだろうなぁ、って……」

先輩「それで? ここに来れば、思い出すかも、って?」

後輩「いえ、ただ……」

先輩「……」

後輩「銀髪さんが、何考えてたのか。ちょっとは、分かるかと思って……」

先輩「……分かった?」

後輩「いえ、全然」

先輩「だろうな」


後輩「先輩は」

先輩「……ん?」

後輩「分かりますか? 銀髪さんが――……」

先輩「知らん」

後輩「……そっか」

先輩「……」

後輩「暗……」

先輩「……」

後輩「おっかないなぁ……」

先輩「……」グビ

後輩「……」

先輩「……お前さ」

後輩「はい?」

先輩「……。……、……やっぱ何でもない」


後輩「言ってよ」

先輩「ん~……」

後輩「……」

先輩「……何か」

後輩「……」

先輩「引きずられてるねぇ、後輩ちゃんよう」

後輩「何に」

先輩「過去に」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……引きずってる、でしょう?」

先輩「引きずってるヤツっていうのは、それでも進んでるヤツだよ」

後輩「……」

先輩「……背負いこんで、ヨチヨチしか歩けなくてもな」

後輩「……クサい台詞」

先輩「そう?」


後輩「……」

先輩「もっと、気楽に生きろよ」

後輩「……それは」

先輩「……」

後輩「……だけど、どうしたらいいか」

先輩「……」

後輩「色んなこと、忘れようとしても」

先輩「……」

後輩「……忘れられなくて……」

先輩「……」

後輩「酔っ払っても……、フラフラになるまで飲んでも、私は……」

先輩「……」

後輩「ねぇ、先輩……」

先輩「おう……」

後輩「私のせいだって、考えてしまうのって……、おかしいでしょうか?」

先輩「……」

後輩「もし、あの人の最後の言葉を……、私が聞いてあげられていたなら、って……」

先輩「……」

後輩「私のせいで……、銀髪さんも……」

先輩「後輩」

後輩「分かってるんです……、それもきっと、思い過ごしで」

先輩「……」

後輩「私なんかが……、あの人の何かを左右できるって、思うこと自体が傲慢で……」

先輩「後輩ちゃん」

後輩「はい……?」

先輩「……こっち来て」

後輩「……? あの……」

先輩「……」ガシ

後輩「あっ……」

先輩「……」ギュウ

後輩「先輩……」

先輩「言ったろ」

後輩「……」

先輩「私が、お前の隣にいてやるって」ギュッ

後輩「……」

先輩「……後輩」ナデナデ

後輩「……」

先輩「……あのさ」

後輩「……」

先輩「私は……」

後輩「……」スッ…

先輩「……あ」

後輩「……」

先輩「……こうは――……」

後輩「私は……」

先輩「……」

後輩「……十分、ですから……」

先輩「……」

後輩「今のまま……、先輩が……、一緒にいて」

先輩「……」

後輩「……一緒にいてくれて、遊んでくれて……、それだけで……十分……」

先輩「……」

後輩「だから……」

先輩「だったら」

後輩「……」

先輩「だったらさぁ……」

後輩「……」

先輩「そんな顔、すんなよ……」

後輩「……」

先輩「そんなさぁ……」

後輩「……ごめんなさい」

先輩「また謝る」

後輩「……」

先輩「フゥ……」

後輩「……」

先輩「行くか、そろそろ」

後輩「はい……」


先輩「死人の臭いで辛気臭くなっちゃったじゃん」

後輩「クソ失礼ですね」

先輩「さっさと酔っ払って、スカッとしようぜー」

後輩「はいはい……」

先輩「『はせ川』行くかー」

後輩「転ばないでくださいよ。脚、ガックガクじゃないですか」

先輩「おーんぶ」

後輩「やーです」

先輩「……あの、肩くらい貸してね? 先輩、マジで転び死にしちゃう……」

後輩「はぁ……」ガッシリ

先輩「うぇっへっへ、ありがとー……」

後輩「気を付けてくださいね」

先輩「おう。……あ、そうだ」

後輩「……はい」


先輩「お前さ、土日どっか、暇作れない?」

後輩「え?」

先輩「旅行、しようぜ」

後輩「旅行……」

先輩「いいだろ? 一泊くらいしてさ。女二人ぶらり温泉旅」

後輩「温泉……」ゴクリ

先輩「なっ?」

後輩「……べ、別に……、いいですけど」

先輩「よし、決まり決まり!」

後輩「……でも旅行って、どこ行くつもりなんです?」

先輩「新潟」










~駅~


先輩「……」

先輩「……ん~」ボケー


先輩(早く着きすぎたなぁ)


先輩「……」

先輩「……フワァ」



後輩「せんぱ~~~い!」


先輩「……お、こうh」


後輩「おっまたっせしましたぁ~♪」キラキラ

先輩「……」

後輩「わっ、すごぉ~い! 先輩がちゃんと時間通りに来てるっ!」

先輩「……」

後輩「うふふっ、これは雨が降っちゃうかもしれませんねぇ~?」

先輩「……」

後輩「なぁんてっ! 向こうもバッチリ晴れみたいですよっ!」キラキラ

先輩「……」

後輩「楽しみですねぇ~! さっ! 行きましょ! 早く早くぅ!」キラッ

先輩「だ……」

後輩「だ?」

先輩「誰だお前!?」

後輩「あははっ、先輩ってばヒドぉい」キラキラ

先輩「ど、どど、どうしたの、後輩ちゃん……」

後輩「うふ。新潟と言えば」

先輩「新潟と言えば?」

後輩「美味しい魚と」

先輩「うん」

後輩「美味しい日本酒!」

先輩「……」

後輩「うふふ……、だからね、先輩」

先輩「……は、はい」


後輩「私……、今日、この旅行のために……」

先輩「……」

後輩「……最高の状態で、お酒を飲むために……」

先輩「……」

後輩「ふふ……二週間ほど、禁酒をしまして……」

先輩「……」

後輩「……うふふ、ピークなんですよぉ、今まさにぃ……、ふふ……」

先輩「……」

後輩「……ふ、うふ……うふふ……」

先輩「……」

先輩(こんなにアホだったかなぁ、この子)

後輩「さっ! 行きましょう、先輩っ!」キラキラッ

先輩「……う、うん、そうね」

後輩「あ~っ、楽しみだなぁ~!」

今日はここまでです

立ち入り禁止の建物に入るのはやめましょう






~新幹線~


先輩「……スカー」

後輩「……」スヤスヤ

先輩「……スピー」

後輩「……」ムニャムニャ









~新潟駅~


先輩「着いたぁーっ!」

後輩「よく寝た……」

先輩「ガッツリ寝てたな、お前」

後輩「先輩こそ」

先輩「さぁて……」キョロキョロ

後輩「それで、どこ行くんですか?」

先輩「ん、それはな……。えーっと……」キョロキョロ

後輩「?」

先輩「あ、あれだ」

後輩「えぇ?」

先輩「おぉ~い! こっちこっち~!」



「あっ、どうも……!」



後輩「なっ……!?」ギクッ




先輩「うぇっへっへ、どうもね」

後輩「ぎ……っ」



「遠いところから、わざわざ」



後輩「銀髪……さん……?」



「えっ?」



先輩「後輩、こちら銀髪妹さん」

後輩「……」

銀髪妹「えっと……、はじめまして、後輩さん」

後輩「……」

銀髪妹「先輩さんも……、はじめまして」

先輩「ありがとね、急に連絡したのに」

銀髪妹「いえ……、よくいらっしゃって……」


後輩「い、妹、さん……?」

銀髪妹「はい」

先輩「話は聞いてたけど、マジでそっくりだね」

後輩「いや、似すぎでしょ……」

銀髪妹「あはっ……、よく言われます……」

後輩「……」


後輩(銀髪さん……、妹いたんだ……)


後輩「……」ジー

銀髪妹「……?」ニコッ


後輩(銀髪さん、清楚Ver……)


銀髪妹「立ち話も何ですから……。車、用意してますので……」

先輩「悪いね」

後輩「ど、どうも……」

先輩「びっくりした?」

後輩「はぁ……、心臓止まるかと思いました……」

銀髪妹「どうぞ」

先輩「うぉっ」

後輩「……アウディですよ、先輩さん」ヒソヒソ

先輩「A4ですよ、後輩さん」ヒソヒソ

銀髪妹「ち、中古車ですから……」

先輩「お嬢様だ、お嬢様」ヒソヒソ

後輩「とんだイイトコのお嬢様ですよ……」ヒソヒソ

銀髪妹「あ、あははは……」



~車内~



先輩「へぇ……、二卵性なんだ」

後輩「こんなに似るもんです? 二卵性って」

銀髪妹「ふふ、小さいころは、もっとそっくりで……」

後輩「はぁ~……」

銀髪妹「みんなから、よく言われました。見た目だけは瓜二つだって」

後輩「……ほんと、瓜二つ」

先輩「見た目”だけは”、ねぇ……」

銀髪妹「そうなんですよ……、中身は昔から、正反対で」

先輩「ふぅん……」

銀髪妹「姉は昔から……、自由で気ままな人でしたし……」

後輩「昔から、ですか」

銀髪妹「えぇ……、一時は、結構荒れたこともあって……」

先輩「何か、想像つく」

後輩「先輩、ちょっと……」

銀髪「あはは、多分想像通りだと思います……」

銀髪妹「両親との折り合いも悪くて……」

後輩「……」

銀髪妹「しょっちゅう喧嘩ばっかり」

先輩「……」

銀髪妹「それでとうとう、勘当されて……、勘当ですよ? 今時……。父が、本気で勘当しちゃって」

先輩「あはは、本気の勘当かぁ」

銀髪妹「私は、そんな姉とは正反対で……」

後輩「……」

銀髪妹「親の言うこと、何でも素直に聞いてる『良い子ちゃん』……」

先輩「それ、銀髪さんが言ったの?」

銀髪妹「えぇ」

後輩「……」

先輩「仲、悪かったんだ」

後輩「先輩……」

銀髪妹「いえ……、その通りですから……」

後輩「……」

銀髪妹「あの人は、気に入らなかったと思います……、はいはい、って言ってるだけの私が、私ばっかり、親に構われて」

後輩「……」

銀髪妹「あの人は、やることなすこと、何でも否定されて……」

後輩「……」

銀髪妹「比べられて、冷たくされて」

後輩「じゃあ、喧嘩とか、したんですか……?」

銀髪妹「喧嘩……、いえ……」

後輩「……」

銀髪妹「話せばギスギスするの分かってたから、だからお互い、近寄らないようにしてて……」

後輩「……」

銀髪妹「結局、最後まで……、そのままでした……」

後輩「……」

銀髪妹「最後の、最後まで」

先輩「……まぁ」

銀髪妹「……」

先輩「そういうもんだよ。喧嘩のひとつもしてやろうって、思っても」

後輩「……」

先輩「思ったときには、相手はいない、とかさ……」

後輩「……」

先輩「なんだかなぁ、って感じだけど。そんなもん。……世の中さ、そんなもんだよ」

後輩「……」

銀髪妹「……かも、知れませんね」

先輩「……」

銀髪妹「……着きました、ここです」

後輩「着いた、って……?」








ガチャ

バタン



先輩「ん~~っ!」ノビー

後輩「……」

先輩「……っはぁ。……静かだねぇ」

後輩「……ここは?」

銀髪妹「姉の、お墓です」

後輩「……」

銀髪妹「……まぁ、正確には、我が家の一家の墓、ですけど」

後輩「……」

先輩「どの辺?」

銀髪妹「ご案内します……」










先輩「……」

後輩「……」

先輩「……ナムナム」

後輩「……ナムナム」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「お花でも、買ってくればよかったのに」

先輩「そういやそうだな」

銀髪妹「いえ……、こうやって、手を合わせていただけただけで」

先輩「……」

銀髪妹「……姉も、喜んでいると思います」

先輩「……本当に?」

銀髪妹「あ、あはは……、本当はモノかお金の方が、喜びそうですけど……」

先輩「分かる」

後輩(分かってしまう……)




後輩「……ナムナム」

後輩「……」



後輩(……静か、だなぁ)

後輩(銀髪さん……)

後輩(本当に、死んじゃったんだなぁ……)


後輩「……」

先輩「……」

銀髪妹「……」



後輩(銀髪さん……)

後輩(貴方は……)

後輩(最期に、私に……、なんて言ったんでしょうか……?)

後輩(大事な……、ことだったんでしょうか……?)


後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」


先輩「後輩」

後輩「……えぇ、もう……、終わりにしますから」

先輩「……」

後輩「……ふぅ」

銀髪妹「……」

後輩「……お待たせしました」

銀髪妹「いえ……、ありがとうございます……」

先輩「悪いね。結構、無理言っちゃったでしょ」

銀髪妹「いえいえ、まぁ……父にさえ見つからなければ」

後輩「……あ、そんな感じなんですね」

銀髪妹「すみません……、父は、なんて言うか……、姉の交友関係を、その……、快く思っていなくて」

後輩「あぁ」

先輩「ロクデナシばっかだもんなぁ、あの人の周り」

後輩「先輩もでしょ」

先輩「お前もだろ」

銀髪妹「すすすすみません! すみません!」

銀髪妹「そもそも、自分で勘当したのに……」

後輩「……」

銀髪妹「亡くなってから、無理矢理みたいに引き取って、こうして家の墓にいれるなんて」

後輩「……」

銀髪妹「勝手な話ですよね……。姉も、口がきけたらきっと、文句言ってたと思いませんか?」

先輩「それだけ銀髪さんのこと、思ってたってことなんじゃない? 本当は」

銀髪妹「……」

先輩「言えなかっただけで。手遅れになるまで」

後輩「……」

銀髪妹「えぇ……、そう……ですね。きっとそう……」

後輩「……」

銀髪妹「両親は、きっと……姉のことは、大切にしていて……」

後輩「……」

銀髪妹「私より……、……っ」ハッ

先輩「……」

後輩「……」

銀髪妹「す、すみません。勝手に色々と。い……行きましょうか」

先輩「うん。……後輩」

後輩「はい……」













銀髪妹「ホテル、すみません……私の名前で取らせてもらったので……」

先輩「悪ぃね」

後輩「あ、ありがとうございます」

銀髪妹「30分くらいで着きますので」

先輩「妹さんさ、一杯くらいご馳走させてよ。色々お世話になっちゃったし」

銀髪妹「い、いえ……そんな……、悪いですよ」

先輩「気にしなくていいってぇ。帰り、代行使ってさぁ。車代くらい、こっちで持つし」

銀髪妹「いえいえ……、本当に……。子供も待ってることですし……」

後輩「あ……、お子さん、いらっしゃるんですね」

銀髪妹「えぇ」

先輩「へぇ~……、いくつくらい?」

銀髪妹「上の子が、今年10歳で」

先輩「10歳!?」

後輩「10歳!?」

銀髪妹「あはは……」

後輩「いや、ちょ、銀髪さんと同い年だからぁ……」

先輩「どうしよ後輩ちゃん、わたしさんすうできない」

後輩「わたしもひきざん、ちょっとできない、これ、ちょっと……」

銀髪妹「……えっと、それで真ん中の子が――……」

先輩「真ん中!」

後輩「真ん中の子!」

先輩「上中下!!!」

後輩「上下でもなくて!!!」

銀髪妹「あ、いえ、その」

先輩「やることやってんじゃねーかこの野郎ー」

後輩「なーにが『良い子ちゃん』ですかこの野郎ー」

先輩「やっぱり妹だわあの人の」

後輩「血ですね、抗えない血。おっかねぇ」

銀髪妹「あ、あは、あははは…………」











銀髪妹「着きましたよ」

先輩「おー、これかぁ」

後輩「うわ、普通にいいとこだ……」

銀髪妹「明日、チェックアウトの時間になったら、迎えに来ますので」

後輩「そこまでしてもらわなくても……」

銀髪妹「いえ、お気になさらず……。私がしたくて、そうさせてもらってるんです……」

後輩「え……」

銀髪妹「……今日は、お二人にお会いできて、本当に良かった」

先輩「……」

後輩「……」

銀髪妹「姉は……」

後輩「……」

銀髪妹「あの通りの性格で……、周りからは、いつも浮いていましたし……」

後輩「……」

銀髪妹「誰からも理解されなくて……、私だってそうで……。いつも、ひとりぼっちで……」

後輩「……」

銀髪妹「だから、自分で命を絶ったって、聞かされて……」

後輩「……」

銀髪妹「……思ったんです。あの人は……、最期まで、たったひとりきりだったんだ、って……」

後輩「妹さん……」

銀髪妹「でも、お二人に会えて」

後輩「……」

銀髪妹「そうじゃなかったんだって、分かりました」

後輩「……」

銀髪妹「知らない人ばかりの、知らない土地に行ってしまったけど」

後輩「……」

銀髪妹「こうして、姉のことを……、いなくなってしまった後でも、考えてくれている人がいたんだって、知れて……」

後輩「……」

銀髪妹「私……、嬉しかったです……」

先輩「そんな、大層なもんじゃないけどね」

後輩「えぇ……」

銀髪妹「それでも……。それでもです……。ありがとうございました」

後輩「い、いえっ、こ……こちらこそ! 銀髪さんには優しくしていただいて……っ」

先輩「優しく、ねぇ」

後輩「ちょっと、黙って」

先輩「うぇっへっへ」

銀髪妹「何もない場所ですけど……、ぜひ、くつろいでいってください……」ニッコリ

後輩「ど、どうも……」

先輩「それじゃ、また」

銀髪妹「えぇ」

後輩「またです」

先輩「じゃ後輩、行くか」

後輩「はい」

銀髪妹「あの……、先輩さん……」

先輩「うん?」

銀髪妹「……」

先輩「どうかした?」

銀髪妹「先輩さんは、さっき……『そんなもんだ』って、言いましたよね」

先輩「んん?」

銀髪妹「喧嘩したいときには……、……言いたいときには、相手はいない。世の中そんなもんだ、って」

先輩「あぁ」

銀髪妹「……だけど……、きっと、そうじゃないんですよ……」

先輩「……」

銀髪妹「言えたんです、きっと……。私は、あの人に……」

先輩「……」

銀髪妹「貴方なんて嫌いだ、って」

先輩「……」

銀髪妹「だけど……、だけど本当に、辛かったら、帰ってきてほしい、って……」

先輩「……」

銀髪妹「父だって、本当は……、言えたはずなんです。……すまなかったと」

先輩「……」

銀髪妹「言えたのに、言わなかった」

先輩「……」

銀髪妹「本当は……、私は……」

先輩「……」

銀髪妹「私だって……、辛かったんだぞ、って……」

先輩「……」

銀髪妹「『良い子ちゃん』は『良い子ちゃん』なりに……、苦労があるんだぞって……」

先輩「……」

銀髪妹「言えたんです。言えた。言えたのに。言えたことを――……、言えば、言っていれば……」

先輩「……」

銀髪妹「……、だから、先輩さん……」

先輩「……」

銀髪妹「『そんなもん』なんかじゃない……、ただ私が、言わなかっただけ。伝えなかっただけ――……」

先輩「……」

銀髪妹「すべきことを、しなかっただけ」

先輩「……」

銀髪妹「それだけなんです……」

先輩「……そっか」

銀髪妹「……」

先輩「ごめんね」

銀髪妹「いいえ……、こちらこそ……」

先輩「……そっかぁ」


後輩「先輩ー? せんぱーい! チェックインしちゃいましょうよー」


先輩「おー、今行くー!」

銀髪妹「それでは、また」ニッコリ

先輩「うん。ありがとね」




今日はここまでです

もう少しで終われると思います、終わりたい、終われたらいいなぁ(願望)

お読みくださっている方、ありがとうございます

よろしければ今しばらく、お付き合いのほどを






~ホテル客室~


先輩「はあっ!?」

後輩「ふわ……っ!?」

先輩「……」

後輩「ひ、ひろ……」

先輩「……」

後輩「これ……、部屋取り間違えたんじゃないですか、妹さん……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……よし」

後輩「……はい」

先輩「考えないことにしよう」

後輩「はい」

先輩「オーシャンビュー!」

後輩「オーシャンビュー!」










~卓球施設~



後輩「大仏サーブ!」カコンッ

先輩「見ぃ切ったぁぁ!」スカッ










~露天風呂~


後輩「貸し切りだぁ……」

先輩「最高だな」

後輩「わぁぁ……」

先輩「はぁぁ……」

後輩「きれいな夕焼け――……」

先輩「西日がきついな」

後輩「……」

先輩「……何だよ」

後輩「それでも詩人ですか……」

先輩「ほっとけ」

先輩「うぁー……」ザプン

後輩「うぁー……」ザブン

先輩「先に出た方がコーヒー牛乳オゴリな」

後輩「中学生ですか」

先輩「……はぁ~、あったまる~」

後輩「……先輩」

先輩「ん?」

後輩「今日は……ありがとうございます、誘ってくれて」

先輩「あはは、何だよもう」

後輩「……私が、銀髪さんのこと、ずっと気にしたから」

先輩「……」

後輩「それで、連れてきてくれたんですよね? ここまで」

先輩「別に、それだけじゃねーって」

後輩「そうです?」

先輩「銀髪さんのお墓参りしたかったしな、私も」

後輩「……」

先輩「あと、温泉入りたかったのもマジだし」

後輩「あはは、なるほど」

先輩「面白い人にも会えたしな」

後輩「似すぎですよね、妹さん……」

先輩「……本人だったりして」

後輩「え」

先輩「自殺の真相は、実は偽装工作だった! 本人は髪を黒に戻し、妹の名を借りて新潟へ――……」

後輩「あ、あはは、いやまさか……」

先輩「我々はハメられていたのだよ、ワトソン君……」

後輩「い、いや、いやいや! でもほら、お墓もちゃんとあったし、警察の人とかも――……」

先輩「冗談だっての」

後輩「……」

先輩「分かれよ」

後輩「わ、分かってましたよう……」ブクブク

後輩「でも、なんか……」

先輩「ん?」

後輩「銀髪さんにも、人並みの過去があったんですね……」

先輩「当たり前だろ」

後輩「まぁ、当たり前ですけど」

先輩「……」

後輩「……当たり前、ですけど。親と仲悪かったり、こんなとこ出てってやるー、って思ったり……」

先輩「……」

後輩「あの人にも、そういう、当たり前の昔があったんだって……」

先輩「……」

後輩「私、全然知らなくて……」

先輩「私だって、知らなかったよ」

後輩「知らなくても、知らないままで……、一緒にいたんですよねぇ」

先輩「……みんな、誰だってそうだろ」

後輩「誰だって……」

先輩「そりゃそうだろ。私だって、昔は色々あったし」

後輩「……先輩も?」

先輩「おう。……お前だってさ」

後輩「そりゃまぁ……」

先輩「……過去なんて」

後輩「……」

先輩「何があっても、何があったか、知らなくても。知ってたって」

後輩「……」

先輩「それで、一緒にいたって、いいだろ? 別に」

後輩「……そう、かもしれませんね」

先輩「それで」

後輩「……はい?」

先輩「思い出せそう?」

後輩「え?」

先輩「銀髪さん、最期に言ったこと」

後輩「ふふ……、それが、さっぱり」

先輩「……そっか」

後輩「……でも、それでいいのかもしれませんね」

先輩「ん?」

後輩「……引きずってる、いえ……引きずられているより」

先輩「……」

後輩「『そんなもん』って割り切っちゃえば」

先輩「『そんなもん』……か」






――ただ私が、言わなかっただけ。伝えなかっただけ――


――すべきことを、しなかっただけ――









先輩「……」

後輩「そう思いません?」

先輩「……どうだろうな」

後輩「えぇー、何ですか、それ」

先輩「分かんね……」

後輩「……むぅ」

先輩「後輩ちゃん」

後輩「何です?」

先輩「背中流してあげよっか」

後輩「えっ!? い、いや、いいですよ、そんなのっ! 何でですか!」

先輩「うぇっへっへ……」










~お部屋~


後輩「はい……どうぞ」トプトプ

先輩「おっとっと」

後輩「んふふ」

先輩「ほい、そっちも」トプトプ

後輩「おっとっと」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「じゃ」

後輩「はい」

先輩「かんぱーい」

後輩「かんぱーい」


先輩「……」グビグビ

後輩「……」グビグビ

先輩「……」

後輩「……」

先輩「うまぁぁい!」

後輩「……」

先輩「なんだこりゃ! すごい! うまい! すごい!」ゴクゴク

後輩「……」

先輩「はぁー……、これはいい酒だぁ――……、後輩ちゃん?」

後輩「オイシイ……オイシイ……」ポロポロ

先輩「泣くなよ……」

先輩「カニうまっ!」

後輩「カキうまっ!」

先輩「刺身うまっ!」

後輩「お米うまっ!」

先輩「……」ゴクゴク

後輩「……」ゴクゴク

先輩「酒うまっ!!」

後輩「酒うまっ!!」

先輩「うぇっへっへへへ、うぁー、最高だぁー……」グビグビ

後輩「あー、やばいよぅ、駄目になるぅ、アホになるぅ……」グビリ

先輩「なれなれ」

後輩「なりまーす。なりましたー」












先輩「はぁ~……」

後輩「……」

先輩「美味しかったねー」

後輩「ですね」

先輩「……」

後輩「……ふぅ」

先輩「どうする? 後でもう一回、温泉いく?」

後輩「あー……、何時まででしたっけ?」

先輩「あ、分かんねえや」

後輩「後で見てきます」

先輩「おう」

後輩「……」

先輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……あの」

先輩「ん?」

後輩「……ちょっと、散歩してきます」

先輩「どこ行くん?」

後輩「……海、近いから」

先輩「見えねーだろ、真っ暗だし」

後輩「まぁ……。でも、せっかくなんで」

先輩「ふーん」

後輩「……」

先輩「気をつけてな」

後輩「えぇ」









~海岸~


ザザァ

ザァ


後輩「……」

後輩「……」


後輩(本当に真っ暗だ……)

後輩(波の音はするけど……)

後輩(何も見えなくて……)



後輩「……」

後輩「……」


後輩(……ちょっと)

後輩(怖いな……)


ザザァ

ザザーン


後輩「……」

後輩「……」


後輩「……」

後輩「……風強い」


ザザァ


先輩「後輩ー」

後輩「うわっ」ビクッ

先輩「何ビビッてんだよ」

後輩「せ、先輩……。どうしたんですか……」

先輩「へっへ、私も散歩」

後輩「そうですか……」


ザァ

ザザン



先輩「……」

後輩「……」

先輩「ん~~っ……」ノビー

後輩「……」

先輩「……っはぁ」

後輩「……」

先輩「真っ暗だなぁ」

後輩「……ですね」

先輩「お前、あんま飲まなかったな」

後輩「えぇ……、何か今日は、酔いつぶれちゃうの、勿体ない気がして」

先輩「はは、分かる」

後輩「ね」

先輩「……」

後輩「……」


ザザーン

ザザァ



先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……先輩」

先輩「……んー?」

後輩「私ね……」


先輩「うん」

後輩「……銀髪さんと、最後に会った日」

先輩「……」

後輩「……あの日、話したのって……」

先輩「……」

後輩「先輩のことで……」

先輩「……」

後輩「銀髪さんに、言われたんです」

先輩「……」

後輩「私は、先輩のこと……、どう思ってるのか、って」

先輩「……うん」

後輩「それで……」









銀髪『そういう風に、先輩ちゃんを未来永劫、束縛し続けるわけか』



銀髪『だって、そうだろう? どう思ってるかも、はっきりさせない。どうするつもりもない』



銀髪『ただひたすらに、隣に置いておくだけ』



銀髪『宙ぶらりんなまま、引き寄せもせず、突き放しもせずにね』












後輩「私は……、私って……」

先輩「……」

後輩「先輩のこと、束縛しちゃってるのかなぁ……」

先輩「……」

後輩「そうなのかもなぁ……」

先輩「……」

後輩「そうだとしたら、ねぇ、先輩……」

先輩「……」

後輩「先輩、私って……」

先輩「……」

後輩「本当に、嫌なヤツですね」

先輩「……」

後輩「ほんとに……、自分でも嫌になるくらい……」

先輩「……お前」

後輩「はい……?」

先輩「言いたくないって言ってたじゃん」

後輩「……そうなんですけど」

先輩「……」

後輩「でも、何か……」

先輩「……」

後輩「今日、ここに来たら。なんでしょう……、言わなきゃいけない、気がして……」

先輩「……」

後輩「銀髪さんに会ったからかなぁ……、墓前ですけど……」

先輩「……」


後輩「言い残した、伝え忘れたことがあるって」

先輩「……」

後輩「……何か、もしかしたら……」

先輩「……」

後輩「すごく、悲しいのかなぁ、って」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」


ザザァ

ザァ


後輩「……」

先輩「……」


後輩「先輩……」

先輩「……私は」

後輩「……」

先輩「思ったことねーよ、束縛されてるなんて」

後輩「……ですか」

先輩「もし、さ……、たとえ本当に、そうだとしても……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「そうだとして、も……?」

先輩「……」

後輩「先輩……?」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

先輩「『そんなもん』なんかじゃない、かぁ……」

後輩「なんです?」

先輩「なぁ、後輩」

後輩「はい?」

先輩「……多分さ」

後輩「……」

先輩「私、違ったんだよ」

後輩「え?」

先輩「一緒にいてやるって、……私がお前の、隣にいてやるって……」

後輩「え、あの……」

先輩「言ったよな」

後輩「……」







先輩『もし辛いんだったら』



先輩『私が、いてやるから』



先輩『お前が大丈夫になるまで、お前の隣に』






後輩「はい……」

先輩「でもさ」

後輩「……」

先輩「違ったんだよ」

後輩「……え」

先輩「間違いなんだ」

後輩「な、何ですか……、それ……」

先輩「……」

後輩「私は、先輩と――……!」

先輩「一緒にいて”やる”だなんてさ」

後輩「……っ」

先輩「そうじゃなかったんだ」




――言えた。言えたのに。言えたことを――……、言えば、言っていれば……――




後輩「せんぱ……っ」

先輩「私が、お前といたかったんだよ」

後輩「……」

先輩「一緒に」

後輩「私と……」

先輩「後輩と、一緒にいたくて、一緒にいてほしくて……」

後輩「……」


後輩「……」

先輩「多分、最初からそうだったんだ」

後輩「……」

先輩「やっと分かったよ」

後輩「……」

先輩「やっと認められた」

後輩「……」

先輩「後輩」

後輩「……」

先輩「好きだよ」

後輩「……」












~お布団~


先輩「……」

後輩「……」

先輩「……手」

後輩「……」

先輩「繋いだまま寝るん?」

後輩「はい」

先輩「そっか」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」


先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……先輩」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……先輩」

先輩「……」

後輩「私も、好きです……」

先輩「……」

後輩「多分、初めて会った時から、ずっと……」

先輩「……」


後輩「……ねぇ、先輩」

先輩「……」

後輩「……寝ちゃった?」

先輩「……起きてるよ」

後輩「わっ……」

先輩「……うぇっへっへっへぇ」

後輩「もう……」

先輩「後輩ちゃーん」

後輩「はいはい……」

先輩「も一回、言って」

後輩「えぇ~……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……先輩」

先輩「……」

後輩「……す、好きっ」

先輩「……っはは」

後輩「ふふ……っ」









先輩「……あのさ」

後輩「はい……?」

先輩「する?」

後輩「え」

先輩「……しないの?」

後輩「あの……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「ねぇ」

後輩「……あ、あなた、ストレートだって……」

先輩「過去に囚われてちゃ」

後輩「……」

先輩「駄目なんだぜ、後輩ちゃん」

後輩「……何言ってんですか、もう……」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「……」

後輩「……先輩」

先輩「……うん」

後輩「そっち、行っていい?」

先輩「……」

後輩「……」

先輩「うん」

後輩「……」モゾモゾ

後輩「あの……」モゾ

先輩「ん?」

後輩「お恥ずかしいのですが……」

先輩「何だよ」

後輩「……ぶっちゃけ私、相当ご無沙汰ですからね?」

先輩「あっはは、生々しいなぁ」

後輩「ケダモノですからね?」

先輩「やだぁ、後輩ちゃん怖ぁい」

後輩「……覚悟しといてくださいよ」

先輩「うん」

後輩「……」

先輩「いいよ」

後輩「……」

先輩「来て」

後輩「……」


後輩「……先輩」

先輩「大好きだよ、後輩」

後輩「……私も」

先輩「……」

後輩「……大好きです、先輩」







~おわり~



これで、このお話はおしまいです

最後までお読みいただき、ありがとうございました

ばいばい

過去作です

〇百合〇
後輩「先輩より胸が大きくなってしまいました……」
先輩「本を読む後輩と」 後輩「かもめの先輩」
先輩「明日戦争がはじまる」
魔女「お眠りなさい、安らかに――」 女騎士「くっ、やめろ……!」
先輩「手を繋げば分かるだろ」後輩「ダメです」

〇男女〇
先輩「…生で」
先輩「一緒に子供育てようぜー」
男「魔女?」魔女「おう」

〇??〇
友「男、またおっきくなったね…」
主人「キミ、以前は男だったって本当?」 メイド「はぁ、まぁ」

〇二次創作〇
モバP「柑奈のカバンから謎の白い粉が出てきた」
モバP「夏樹とのセッションが決まったぞ!」 李衣菜「む、ムリ……」
棟方愛海「愛と!」 南条光「正義の!」
真澄「柚子……柚子……」クチュクチュ
ブーディカ「はい、あ~ん」 マシュ「あぁ^~」

他にもVipで書いたやつとかもあるんですけどね
覚えてないです

思えば2011年から今まで、時折こうしてSSを書いてたわけです

ここの皆さんには、とてもお世話になりました

頭の中だけで、妄想を何度も反芻していました
それをSSにすると、吐いた後みたいに、すごくスッキリしました

このSSなんかも、話の筋はゴチャゴチャで、物語としてはまとまってないですが、
今、頭の中にあった、楽しいフレーズとか、掛け合い、シチュエーションを、全部書き切れたので
これはこれで、とても愛おしい

終わったスレでグチグチ書くのは趣味ではないのですが…

ごめんね……

ただ、私はこんなのを書いてたよ、と誰かに知ってほしかっただけです

お読みいただき、ありがとうございました

宣伝乙
いくつか読んでないのあったし読んでみる

>>281
ありがとうございます。ウレシイ……ウレシイ……

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