ほむら「魔法少女戦記ホムガイア」 (711)

まどマギとゲーム「魔界戦記ディスガイア」シリーズとのクロスです
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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1364712788

——空に浮かんでいるワルプルギスの夜が崩壊していく

奴が倒されたことで、街の壊滅は免れた。だけど……

ワルプルギスの夜を倒したのは私じゃない。私の、何よりも大切な人

あなたがワルプルギスの夜を倒す。それは、この時間であなたとの『約束』を果たせなかったということ

それに、あなたが奴を倒しちゃ駄目。あなたが倒したということは、つまり……

そして、ワルプルギスの夜が消滅すると同時に

彼女は、その場に崩れ落ちた

まどか「……っあ…う……」

ほむら「まどか!!しっかりして、まどか!!」

まどか「……ほむら…ちゃん……」

ほむら「まどか!!駄目、死んじゃ駄目よ!!」

まどか「……ごめん、ね…ほむら、ちゃん……」

ほむら「まど…か……」

まどか「ほむらちゃん……!早く、時間を戻して……!」

ほむら「まどか…あなた、何を……」

まどか「……自分のこと、だから…自分でどうにかするよ……。それに……」

まどか「ほむらちゃんには…ソウルジェムを、砕くところなんて…見せたく、ないから……!」

ほむら「まどか…あなた……!」

まどか「……っ…もう、ダメみたい……。だから、ほむらちゃん…早く……!」

ほむら「……わかった。次こそは…必ず、あなたを救ってみせる」

まどか「……ありがとう、ほむらちゃん……」

ほむら「まどか…ごめんなさい。……さようなら……」

まどか「うん…さよなら……」

ほむら「……っ!」カシャッ

まどか「わたし…もう、ほむらちゃんに…1人で戦ってほしく…ない……!」

まどか「天使でも…悪魔でも、何だっていいから…わたしの代わりに、ほむらちゃんを……」

まどか「ほむらちゃんを、助けて……!」

この世には、3つの世界が存在する

私たち人間が住む『人間界』

天使と呼ばれる存在が住む『天界』

そして、悪魔や吸血鬼、不死者のような闇の住人が住む『魔界』

この3つの世界が人間界を中心に、お互いに影響を与えながら共存している

天使は人間の心の拠り所として。悪魔は人間を戒める存在として

その中で唯一、天界、魔界に広く住みついている魔物がいる

——————

「プリニー!プリニーはどこだ!?」

「殿下ー?何騒いでるんですか?」

「プリニーどもが見当たらん。どこに行ったのだ……?」

「プリニーならこの間の赤い月でほとんど転生しちゃってますけどー?」

「何!?何故それを言わんのだ!」

「ちゃんと言いましたよ?とにかく、次のプリニーが来るまで、しばらくは我慢して下さいよ」

「……仕方あるまい。次の出荷まで待つとしよう」

——————

「のう、デビルバスター」

「その名前で呼ぶな…何だ?」

「ここ最近、プリニーを見かけぬのじゃが……」

「そう言われるとそうだな…まとめて転生したのか?」

「あやつらがそれほど稼いでいたとも思えぬが……」

「どこかに逃げたのか?」

「何にせよ、それほど気にする必要もあるまい?」

「そう…なのか?」

——————

「えぇい!くそ、また失敗だ……!」

「少し休んだ方がいいんじゃないかなぁ……」

「うるさい!何としてもコレを完成させる必要があるのだ!」

「それはわかるけど……」

「つべこべ言ってる暇があるなら、早く次のプリニーを連れて来い」

「それなんだけど…もう1匹も残ってないよ?」

「何?あれだけいたのにか?」

「全部実験に消えていったよ。……まぁ、もうすぐ新しいプリニーが出荷されてくるはずだから……」

「こんなところで足踏みしている場合ではないと言うのに……!」

プリニー。ペンギンのような外見をした奇妙な魔物

主君に仕え、時には雑用、時には戦争の駒として働いている

投げると何故か爆発し、どこまで行ってもザコ扱い。そんなプリニーは少し特殊な魔物だ

プリニーは地獄で生まれ、プリニーとしての基礎をプリニー教育係から叩き込まれる

最終的にその教育を耐え抜いたプリニーたちが魔界や天界へ向けて出荷される

その地獄にて、今まさにプリニーたちが出荷されようとしていた

——————

「フフフ…みっちりと詰まっているな、プリニーども」

「押忍!詰まってるッス!」

「聞け、プリニーども!今日がお前たちにとって、地獄最後の日となる!」

「お前たちは死して地獄に送られた!何故だ!?」

「罪を犯したからッス!」

「罪を犯したお前たちに教育を施したのは誰だ!?」

「ヴァルバトーゼ閣下ッス!」

「そうだ!俺はお前たちをいつ出荷しても恥ずかしくないプリニーに鍛え上げた!」

「今日は待ちに待った出荷日だ!これから死に物狂いで働き、金を稼ぎ、罪を贖うがいい!」

「……しかし、プリニーども…よくぞ俺の教育に最後まで耐え抜いた!」

「この先、どんな主君に仕えようと、この地獄で鍛えられたプリニーとして誇りを持って働くがいい!」

「……ただし、この地獄へ再び送り返された者には再更生プログラムが待っていることを…肝に銘じておけ!」

「アイアイサー!」

「うむ。……では約束通り、褒美のイワシをくれてやろう!有難く持って行くがいいッ!」

「そのイワシを食べて、主君のために存分に働くがいい!……では、さらばだ!プリニーどもよ!」

「ヴァルバトーゼ閣下!お世話になったッス!」

「……」

「今回も無事に出荷できましたね」

「当然だろう。俺を誰だと思っている?」

「……これは失礼いたしました」

「まぁいい。今回も、約束の褒美を与えて出荷できたのだからな」

「まだあのことを悔やんでおられるのですか」

「当然だ。約束は守った上で出荷せねば、プリニー教育係の名が廃る。アレは教育係として、最大の汚点だ」

「それはそうと、今回の出荷であの騒動時に地獄にいたプリニーは全て出荷されていったな。ようやく一区切りついたということか……」

「しかし…よろしかったのですか?魔界大統領の座に就かずに、再びプリニー教育係など……」

「俺にはこれが一番合っているからな。……さて、次のプリニーどもが待っている。行くぞフェンリッヒ」

「……はっ。全ては我が主の為に」

——————

「オレたちはどこへ出荷されていくッスかねー?」

「それはオレたちにはわからないッス。……けど、あんまりにあんまりなところは勘弁してほしいッス」

「お願いッス…超魔王配下のつるぺた魔神のところだけは嫌ッス……」

「だけど…いざ出荷されてみると、地獄が懐かしくなるッス。閣下も厳しかったッスが、同時に素晴らしいお方だったッス……」

「オレたちみたいなプリニーとの約束もきっちり守ってくれる…この先、そんな人はきっと現れないッス」

「出荷先のご主人もそんな人であってくれると嬉しいッスねー。……あ、どうやらそろそろ着くみたいッスよ」

「それじゃ、これからプリニー同士、力を合わせて頑張るッス!」

大切な人との約束の為、時間を超えて独り戦い続ける魔法少女

彼女を助けたいと願った少女

己の罪を贖う為、主君に仕える魔物たち

これは、ひとりの少女を守る為に強大な敵に立ち向かう魔法少女と

そんな彼女を支えたいと願う少女

そして、彼女たちに付き従う爆弾ペンギンたちの物語

ひとまず導入まで
続きは今日の夜投下します

頭に書き忘れた。ディスガイア側はプリニーがメインです
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——————

ほむら「……」

ほむら「これは…イレギュラー、かしら?」

ほむら「今までこんなところに結界なんてなかったはずだけど……」

ほむら「……アイツを始末したいところだけど、これを放置するのも危険ね。手早く片付けましょう」

まどかを守り、救う為に時間を繰り返して、もう何度目だろうか

数えるのを諦める程に繰り返したが、未だにまどかとの約束を果たせずにいた

私が不甲斐ないせいで、まどかを何度も辛い目に遭わせてしまった

今度こそ、彼女との約束を果たしてみせる。そう思った矢先にこのイレギュラーだ

学校で彼女には警告をしておいたが…インキュベーターのテレパシーを聞けば、彼女は間違いなくここにやってくる

奴がテレパシーでまどかを呼び出す前に、まずはこの結界を何とかしなければ

ほむら「……鬼が出るか、蛇が出るか……」ズズ

——結界内——

ほむら「……っと」

ほむら「……何もいないわね…奥まで進んでみましょう」

イレギュラーの結界に入ったが、今までの結界とは趣が違っていた

例えるなら、まるで魔界にでも迷い込んだようだった

結界の中というのはどれも気分のいい物ではない。早く結界の主を倒して外に出よう。そう思っていたときだった

結界を作ったと思われるイレギュラーが見えてきた。しかし、数が多い。面倒なことになりそうだ

私は盾の中から機関銃を引っ張り出し、イレギュラーの群れに向かって走り出した

プリニー1「しかし、ここはどこッスかねー……」

プリニー2「地獄から出荷されたと思ったら、こんなわけのわからないところに放り出されて……」

プリニー3「魔界に見えないことはないッスが…やっぱり、魔界とは違う場所みたいッス」

プリニー4「閣下から褒美のイワシを貰えたのはいいッスが、これからどうしたらいいッスかね……」

プリニー5「……まぁ、悩んでても仕方ないッス。イワシでも食べながら考えるッス」モグモグ

プリニー6「オレたち以外の魔物…この際、魔神でも魔王でも…天使でも構わないッス。とにかく、誰かいないッスか?」

プリニー7「ここに着いたときにざっと見て回ったッスが、オレたち以外には誰も……」

ズドドドド

プリニー1「な、何事ッスか!?」

プリニー2「向こうから銃を乱射しながら女の人が突っ込んで来るッス!」

プリニー3「銃なんて持ち出されたらオレたちまとめてやられてしまうッスよ!」

プリニー4「どこだかわからない場所に出荷された挙句、全滅なんて嫌ッス!」

プリニー5「ダメ元で話をしてみるッス!このままだと全滅ッス!」

プリニー1「了解ッス!」

ほむら「何かしら、このペンギンのようなもの…使い魔とも魔女とも違うみたいだけど……」ズドドドド

ほむら「随分と弱いわね……」ズドドドド

ペンギンもどきに向けて発砲する

幸い、このペンギンもどきはさほど強くはないようだ

この調子ならアイツがまどかと接触する前に殲滅できる。そう思い、攻撃を続けていると

プリニー「待つッス!攻撃を止めてほしいッス!」

ほむら「え……?喋った?」

ペンギンもどきが話しかけてきた

それも、攻撃を止めてほしい、と

何が何だかわからないが、意思疎通ができる相手のようだ

私は攻撃を止め、彼らと話をしてみることにした

プリニー「言ってみるものッスね…攻撃を止めてくれてありがとうッス……」

ほむら「……言葉を理解して話してるってことは、少なくともあなたたちは魔女や使い魔ではなさそうね」

ほむら「あなたたち、一体何者なの?」

プリニー「オレたちはプリニーッス」

ほむら「プリニー?」

プリニー「そうッス。見たところ、アンタは魔族や天使ではないみたいッスね」

ほむら「……何のことだかわからないけど、私は人間よ」

プリニー「人間ってことは…ここは人間界ッスか!?」

ほむら「まぁ…人間は山のように住んでいるわね……」

プリニー「人間界…厄介な場所に飛ばされてしまったッス……」

プリニー「魔界や天界なら時空の渡し人を使えばいいッスが、人間界となると…どうしたものかッス……」

ほむら「……悩んでるところ悪いけど、あなたたちが何者なのかまだ聞いてないのだけど?」

プリニー「この世には天使が住む『天界』と、悪魔が住む『魔界』と呼ばれる世界が存在するッス」

プリニー「オレたちプリニーは、その天界や魔界で働く魔物ッス」

ほむら「天使に悪魔…本当にそんなものが……?」

プリニー「信じられないのも無理はないッス。普段は滅多にそれぞれの世界から出てきたりしないッスから」

プリニー「……でも考え方を変えれば、これはあのプリニーをプリニーと思わぬ労働環境で働かなくて済むチャンスかもしれないッスね……」

ほむら「労働環境……?」

プリニー「オレたちは主君となる方に仕え、その方の下で働くんスけど…基本的に条件が悪いッス」

プリニー「働く場所によって少しずつ違うッスが、福利厚生なし1日20時間労働、ボーナスにイワシ1匹が基本ッス」

ほむら「酷いなんてもんじゃないわね……」

イレギュラーな結界の中で出会った、イレギュラーな存在のプリニーと呼ばれる者たち

イレギュラーに賭けるのも気が引けるが、彼らの力を借りれば、もしかしたら……

ほむら「……出会ってすぐにこんなことを言うのもおかしいけれど…私に協力してくれないかしら」

プリニー「協力ッスか?」

ほむら「そう。私は…ある悪魔を倒すために戦っている。それを倒すのに力を貸してほしい」

プリニー「悪魔!?人間界なのに悪魔が出るッスか!?」

ほむら「まぁ、悪魔…のような存在ね。協力してくれたら、詳しいことを話すわ」

プリニー「それじゃ、オレたちの雇用条件を提示するッス」

ほむら「え?」

プリニー「オレたちだってタダ働きは嫌ッス。ちゃんと雇用してもらいたいッス」

ほむら「そ、そうね…それじゃ、イワシ…はあなたたちが全部でどれだけいるかわからないから保留……」

ほむら「福利厚生については何が何だかさっぱりだからこれも保留…労働時間は1日5時間程で…どうかしら」

プリニー「……」

ほむら「駄目…かしら?」

プリニー「こんな…こんな高待遇でいいんスか!?」

ほむら「え、えぇ、それで……」

プリニー「アンタ、とんでもなくいい人ッス!オレたち、アンタについていくッス!」

ほむら「そ、そう…よろしくお願いするわね」

プリニー「よろしくッス!……えーと」

ほむら「私は暁美ほむら。ほむらでいいわ」

プリニー「よろしくッス、ほむら様!」

ほむら「ほ、ほむら様……?」

プリニー「今日からほむら様がオレたちのご主人ッスから」

ほむら「何だか急に偉くなったような感じがするわ……」

プリニー「しかし、これだけ数がいるとわけがわからなくなりそうッス…何か目印があるといいッスが……」

ほむら「……なら、この赤いマフラーを巻いておくといいわ。丁度持っていた物よ」ゴソゴソ

プリニー「了解ッス。それじゃ、これからはオレがプリニー隊のリーダーということで、頑張るッス」

ほむら「わかったわ」

プリニー「それと、これだけは守ってもらいたいことがあるッス」

ほむら「何かしら?労働条件のこと?」

プリニー「それもそうッスが…オレたちのことは、絶対に投げないでもらいたいッス」

ほむら「投げる?投げるとどうなるのかしら」ヒョイ

プリニー「あ、待つッス!止めるッス!」

ほむら「それっ」ポーイ

プリニー「あああぁぁぁ……」

——————

ズドォォン

まどか「え、何?何の音?」

マミ「今のは…爆発?」

さやか「ば、爆発!?何が爆発したってのさ!?」

マミ「何が理由であれ、早く離れたほうがよさそうね…美樹さん、キュゥべえのこと、お願いね」

さやか「わかりました!」

QB(近くから魔法少女と、それ以外の魔力を感じるけど…まさか、ね)

まどか(ここに来る前にほむらちゃんを見た気がするけど…大丈夫かな……)

さやか「まどか、行くよ!」

まどか「あ、うん!」

雇用という形ではあるが、プリニーたちと協力を取り付けることができた

彼ら自体はさほど強いわけではなさそうだが、協力すればきっと……

まどか…今度こそ必ず、あなたを救ってみせる

巻き起こる爆発の中、私はそう決意した

今回はここまで
次回投下は4月1日夜を予定しています

ディスガイア知らない人にも見て頂けているみたいなので
プリニーは投げると爆発するペンギンみたいなザコキャラと認識していただければ

補足ですが、名前の表記はマフラー装備のリーダーは「プリニー」
それ以外の一般プリニーは「プリニー隊」と表記してあります

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——翌日 放課後——

ほむら「はぁ……」

昨日出会ったプリニーと呼ばれるペンギンのような者たち

投げるなと言うから投げるとどうなるのかと思い、投げてみたらまさか爆発するとは……

結果として連鎖的に全てのプリニーが爆発してしまい、酷い目に遭ってしまった

ただ、ひと晩休めば回復するらしく、今日の朝にはもうピンピンしていた

それにしても、あの数…どうしたものか

何匹いるか数えてみたところ、全部で100匹もいることがわかった

これだけの数がいれば……

まどか「ほむらちゃん」

ほむら「……何か用かしら?」

考え事をしていたら、まどかが話しかけてきた

この時点でまどかの方から私に話しかけてくるとは思わなかった

まどか「うん…昨日、ショッピングモールで爆発事故があったでしょ?」

まどか「そこでほむらちゃんを見かけた気がして…それで、大丈夫だったかな、って」

爆発事故というのは恐らくプリニーたちの爆発のことだろう

本当のことを言うわけにもいかないので話を誤魔化しておくことにした

ほむら「……確かにショッピングモールには行ったけど、怪我もしてないから大丈夫よ」

まどか「そっか…よかった、ほむらちゃんが怪我してなくて」

ほむら「……どうして私の心配を?」

まどか「え?だってほむらちゃん、心臓が悪いって話だったし……」

まどか「ニュースになるような爆発事故にほむらちゃんが巻き込まれてるかもって思ったら、わたし……」

ほむら「……」

保健室に連れて行ってほしいという名目で警告をした程度の会話しかしていないのに、私を心配してくれるなんて

昨日インキュベーターを襲っていないことが功を奏したのか、それはわからない

だけど、少しだけプリニーたちに感謝しておくことにした

ほむら「私の心配なんて……」

まどか「わたし、ほむらちゃんと夢で……」

ほむら「夢?」

まどか「あ…ううん、何でもないの」

まどか(夢の中で会ったなんて言ったら変だと思われちゃうよね…えっと……)

まどか「ほむらちゃんとは…どこかで会ったような、そんな気がして……」

ほむら「え……」

まどか「だから…ほむらちゃんと友達になりたいなって……」

さやか「おーい、まどかー」

まどか「あ、さやかちゃん」

さやか「ほら、今日からマミさんのアレについてくんだから、そろそろ行くよ」

まどか「あ、うん。ごめんねほむらちゃん、わたし行くね」

ほむら「えぇ、さようなら」

美樹さやかの言っていたアレとは、恐らく巴マミの魔女退治について行くことだ

私はまだ魔法少女だと気づかれていない。だから私の前でそれを言うことを避けたのだろう

インキュベーターを襲っていない今なら、やりようによっては巴マミとも協力できるかもしれない

とりあえず私はプリニーたちを待機させている自宅に帰ることにした

——————

プリニー「……これがその結界という奴ッスか」

ほむら「えぇ。この奥に魔女がいるわ」

プリニー「魔女と使い魔…ほむら様の話を聞く限りは魔界の悪魔とはまた違うものみたいッスね」

プリニー「正直、オレたちでどこまで戦えるか不安ッス……」

プリニー隊を引き連れ、結界へやってきた

あれだけの数を引き連れて移動するわけにもいかず、盾に入らないか試してみたところ、全てのプリニーを格納することができた

それよりも、彼らプリニー隊の戦闘能力はまだよく分かっていない

この薔薇園の魔女との戦いでプリニーたちの力を見極めさせてもらうことにした

ほむら「それじゃ、行くわよ」

プリニー「了解ッス」

——結界内——

プリニー「これが結界の内部ッスか……」

ほむら「えぇ、そうよ」

プリニー「……正直、このくらいならどうってことないッス。魔界の方がもっとおどろおどろしいッスから」

ほむら「頼もしいわね。それじゃ、戦闘もよろしく頼むわよ」

プリニー「頑張るッス」

ほむら「……なんて言っていたら、どうやらお出ましのようね」

使い魔「……」

プリニー「あれが使い魔…確かに魔物とはまた違った感じがするッス……」

ほむら「まずはあなたたちの強さを確かめさせてもらうわ。あの使い魔、全て殲滅してみなさい」

プリニー「了解ッス!行くッス!」

プリニー「相手の強さがわからないッスが、数はこっちが有利ッス!一気に行くッスよ!」

そう言ってプリニー隊は使い魔へ向かって突撃し、交戦を始める

どうやら彼らは集団戦が得意のようだ。攻撃が終わると、続けざまに別のプリニー隊が攻撃を仕掛ける。よく出来た連携だ

大して強くもない使い魔だからか、終始プリニー隊が優位に立つ。そして

プリニー「これで最後ッス!」ズバン

最後に残った使い魔を、ナイフのような武器で切り裂いた

プリニー隊の強さは大体わかった。後はそれをどう使うか

私は運用方法を頭の中で組み立てながら、結界の奥へと進んでいく

ほむら「数が多いとはいえ使い魔を倒すなんて、なかなかやるじゃない」

プリニー「正直オレたちより弱いのがいるとは思わなかったッス」

ほむら「まぁ使い魔程度に負けるようなら、100発の投げ爆弾として使わせてもらうつもりだったけど」

プリニー「マジッスか……」ダラダラ

ほむら「でもその心配はなさそうね。使い魔相手には十分戦えるってわかったわけだし」

ほむら「……さて、それじゃいよいよ魔女戦よ」

魔女「……」

プリニー「話には聞いてたッスけど、なかなか強そうッスね……」

ほむら「魔女とは私が戦う。あなたたちは援護をお願い」

プリニー「ほむら様1人で大丈夫ッスか?」

ほむら「大丈夫よ。この程度の魔女、何てことない。それに……」

ほむら「いざというとのために、盾の中にまだ数匹残してあるもの」

ほむら「さて、それじゃ……」ジャキ

ほむら「行くわよ!」ズドドドド

魔女「!」

使い魔「……」

ほむら「使い魔……!プリニー隊、抑えて!」

プリニー隊「ほむら様の邪魔はさせないッス!」

使い魔「……!」

ほむら「これで……!」バシュウ

魔女「……!」

ズドォォォォン

プリニー「やったッス!」

魔女「……!」ズアア

ほむら「……!」グルグル

プリニー「ほ、ほむら様ー!」

プリニー隊「は、早くほむら様をお助けするッス!」

プリニー「でもどうするッスか!?オレたちの攻撃じゃ届かないッス!」

ほむら「大丈夫よ、これで……!」ゴソゴソ

プリニー隊「行くッスよ!」

ほむら「止めよ!」ブン

プリニー隊「え!?そ、そんな、ほむら様ー!」

魔女「!!」

ズドォォォォォン

ほむら「……あなたたちの爆発も結構な武器になりそうね」

プリニー「身が持たないからできるならやめてもらいたいッス……」

ほむら「わかってるわ。できるだけ爆弾として扱うことはしないわ」

プリニー「お願いするッス……」

ほむら「それじゃプリニー隊、今日はこれでおしまい。戻って頂戴」

プリニー「わかったッス。何かあったときはまた言ってほしいッス」

ほむら「えぇ、わかったわ」

プリニー「それじゃプリニー隊、帰投するッスよ!」

プリニー隊「了解ッス!」

プリニー隊を回収したところで、グリーフシードの回収をしていなかったことを思い出す

辺りを見回し、私のすぐ側に落ちていたグリーフシードを拾い上げる

ほむら「さて、グリーフシードも回収したことだし、早く帰り……」

『あれ、ほむらちゃん?』

ほむら「……!」

まどか「ほら、やっぱりほむらちゃんだよ」

さやか「ほんとだ…転校生、こんなとこで何してんのさ?」

マミ「あなたは……」

本当は彼女たちが来る前に引き上げるつもりだったが、どうやら遅かったようだ

見つかってしまった以上は逃げるわけにもいかない。仕方なく話をすることにしたが

今の私は魔法少女の姿。つまり、これから聞かれることは……

マミ「まず最初に…あなた、魔法少女ね?」

思った通り、魔法少女のことを聞かれてしまった

ここで嘘を言っても仕方がない。私は正直に答えた

ほむら「……えぇ。私は暁美ほむら。魔法少女よ」

マミ「そう…私は巴マミ。あなたと同じ魔法少女」

まどか「ほむらちゃんも、魔法少女だったんだ……」

さやか「まさか転校生がねぇ……」

まどかと美樹さやかが驚いた顔でこちらを見ている

巴マミには疑惑の籠った視線を向けられていた

マミ「あなたのことはわかったけど……」

マミ「あなたの目的は何?私の縄張りを奪いにきたの?」

まどか「マミさん、そんな言い方……」

マミ「ごめんなさい。でも早いうちに彼女が敵か味方か、はっきりさせておいた方がいいと思って」

ほむら「……私は最近転校してきたばかりで、ここがあなたの縄張りとは知らなかった。それについては謝るわ」

ほむら「私としてはあなたと敵対するつもりはないわ」

マミ「そう…ごめんなさい、嫌な言い方をしてしまって」

ほむら「……構わないわ。それより、あなたに提案がある」

マミ「何かしら?」

ほむら「これからの魔女との戦い、私と協力してもらえないかしら?」

マミ「そうね……」

巴マミは答えを決めかねているようで、ドリルのようなツインテールの先を指先でくるくると弄っていた

インキュベーターを襲っていなかったからと言って、やはりそうすんなりと協力はできそうにない

協力できないのならこれ以上は時間の無駄。そう断りを入れようとしたとき、まどかが口を開いた

まどか「マミさん、ほむらちゃんと協力してあげられませんか?」

マミ「え?」

さやか「まどか?」

まどか「マミさん、言ってたじゃないですか。魔法少女は死と隣り合わせ。とても危険なことだって」

まどか「だから、ひとりで戦うよりも2人で戦えばそのほうが危険も少ないのかなって、そう思って……」

マミ「それはそうなんだけど……」

ほむら「……急に現れた魔法少女に協力しろ、と言われてそう簡単に協力はできないわよね」

まどか「マミさん、お願いします。わたし、マミさんにもほむらちゃんにも、危ない目に遭ってほしくないから……」

マミ「……今すぐにあなたを完全に信用することはできない。だけど……」

マミ「鹿目さんがここまで言うってことは悪い魔法少女ではないと思うの。だからあなたのその話、受けさせてもらうわ」

まどかの説得が通じたのか、協力してくれるようだ

まどかのおかげでいい方向に話が進みそうだ。ありがとう、まどか

ほむら「今はそれで構わない。よろしくお願いするわ」

マミ「えぇ。よろしく、暁美さん」

マミ「……今度は、佐倉さんのときみたいに…ならないわよね……」ボソ

さやか「マミさん?何か言いました?」

マミ「……いえ、何でもないわ」

まどか「……そうだ、ほむらちゃん」

ほむら「何かしら」

まどか「学校でも言ったけど、わたし、ほむらちゃんと友達になりたいの」

まどか「ほむらちゃん、わたしと友達になってください」

そう言って、まどかは私へ手を差し出す

魔法少女や私には関わってほしくない。そう思ってるのに

こんなことされて、断れるわけがなかった

内心では喜びつつも、差し出された手を握り返す

ほむら「よろしく、まどか」

まどか「よろしくね、ほむらちゃん」

そう言って、まどかは私に笑顔を見せる

まどかの笑顔を見て、少しだけ頬が緩んだ気がした

さやか「まどかと友達になったんだし、あたしともなってくれるよね?」

ほむら「えぇ。よろしく美樹さやか。巴マミも」

さやか「なーんかまどかと扱いが違う気がするけど……」

ほむら「それよりも、あなたたちは魔女を倒しに来たのでしょう?」

マミ「えぇ、そうだけど……」

ほむら「魔女なら私がもう倒したからいつまでもここにいるのは……」

マミ「それもそうね…今日はこれで帰りましょうか」

さやか「そうですね」

まどか「ふふふーん」

ほむら「まどか、もう離してくれても……」

さやか「何だかすごい嬉しそうだね」

まどか「そりゃそうだよ。だって、ほむらちゃんと友達になれたんだもん」

さやか「まどかにそう思われるなんてねぇ……」

ほむら「そ、それは嬉しいけど……」

マミ「もうすっかり仲良しねぇ、2人とも」

さやか「言っとくけど、まどかはあたしの嫁だからなー」

結局まどかは、私とまどかの家路が別々になるまで手を離してくれなかった

巴マミと美樹さやかに茶化されてはいたけど

まどかと手を繋いで帰るなんて、もういつ以来だろう

時間を繰り返す度に、まどかとの心の距離が離れていく

だけど、今回のこれで少しだけ、まどかに近づけた気がした

今回はここまで
見て下さってる方、ありがとうございます

次回投下は2日夜を予定しています

ほむら盾収納はディスガイアのベースパネルをイメージしています

あとプリニーはひと月イワシ1匹でも生きていけると思う
魔界の悪魔どもが律儀にプリニーに3食出してるとも思えないので…

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——数日後——

まどか「それじゃさやかちゃん、わたしほむらちゃんと寄り道して帰るね」

さやか「はいはい。ここ数日でまどかの嫁の座をほむらに取られてしまいましたな……」

ほむら「何を言って……」

さやか「ま、どの道あたしは今日は予定があるから行けないんだけどね。2人で楽しんできなよ」

まどか「うん、ありがとうさやかちゃん」

さやか「そんじゃ、またねー」

まどか「……それじゃほむらちゃん、わたしたちも行こうよ」

ほむら「えぇ」

まどかと友達になってから、まどかは色んな所へ私を連れて行ってくれるようになった

新しい友達の私と早く仲良くなりたいと思っているのだろう

この日もまどかに連れられて寄り道をすることになった

まどか「さやかちゃんがいつもわたしの嫁がなんだって言っててごめんね」

ほむら「まどかが謝ることじゃないわ。それに……」

ほむら「あなたの嫁なら…嫌じゃない…わ……」

まどか「な、なんかそう言われると恥ずかしいよ……」カァ

ほむら「あ、ご、ごめんなさい、別にそういう意味じゃ……」

まどか「でもなんだろう、ほむらちゃんにそう言われると何だか嬉しいな…なんて……」

ほむら「も、もうこの話は終わりにしましょう」

まどか「そ、そうだね。それじゃ、今日はショッピングモールに行ってみようよ」

ほむら「わかったわ。それじゃ、行きましょうか」

——————

まどか「……ショッピングモールってほんと色々あるんだねぇ。今日初めて入ったお店も多かったよ」

ほむら「楽器店なんかは、自分は何も出来ないけど見てると面白いと思ったわ」

まどか「ほむらちゃんには…ピアノが似合うと思うよ」

ほむら「そうかしら……?」

まどか「うん。……あ、そういえばあの爆発事故って結局何が原因だったのかな?」

ほむら「さ、さぁ…ガスか何かじゃないかしら……?」

まどかと一緒にショッピングモールの色んな店を回る

ただ、私とプリニーが引き起こした爆発事故の影響か、一部は未だに立ち入り禁止だった

そんなことを考えながら次の店に向かっていると、まどかの携帯が鳴り響いた

Prrrrrrrr

まどか「あ、電話…さやかちゃんからだ、何だろう」ピッ

まどか「もしもし、さやかちゃん?何か用…え、ほむらちゃん?うん、いるけど……」

まどか「ほむらちゃん、さやかちゃんが代わってくれって。何かだいぶ慌ててるみたいだけど」

ほむら「何かしら…代わったわ」

さやか『あ、ほむら!あたし今病院にいるんだけど、グリーフシードが壁に刺さってるんだよ!』

ほむら「……!」

迂闊だった。ここ数日、まどかと遊び回っていてすっかり忘れてしまっていた

今日は病院に魔女が現れる日だ。こんな大事なことを忘れるなんて……

さやか『何だかよくわかんないけど、絶対ヤバイと思って電話したんだけど…コレ大丈夫なの!?』

ほむら「巴マミへ連絡は?」

さやか『マミさん!?ごめん、連絡先聞いてない!……それよりも、ヤバイのなら早く来てよ!』

ほむら「えぇ、すぐにそっちに向かうわ。あなたはすぐにそこから離れなさい」

さやか『わかった、なるべく急いで…うわっ!?』プツッ

ほむら「もしもし?美樹さやか?」

急に通話が途絶えてしまった。結界に飲み込まれてしまったのだろうか

それにいつもなら一緒にいるはずのインキュベーターがいないことも気になる

とにかく今は、早く病院に向かわなければ

まどか「さやかちゃん、どうしたの?」

ほむら「病院に魔女の結界が現れて、美樹さやかが飲み込まれたわ。私はこれから結界に向かう。あなたは家に帰りなさい」

まどか「……わたしも…わたしも、連れて行って!」

ほむら「まどか?何を馬鹿なこと……」

まどか「さやかちゃんが心配なの!わたしじゃ足手まといにしかならないって、わかってる…でも!」

ほむら「……」

ここでまどかと連れて行く行かないの問答をしている余裕はない

私は仕方なく、まどかを連れて行くことにした

いざとなったらプリニー隊にまどかを守らせればいい

ほむら「仕方ないわね…私から絶対に離れないで。いいわね?」

まどか「うん……!ほむらちゃん、ここから病院だと……」

ほむら「大丈夫、道なら知ってるわ。ここ数日、あちこち行ってるもの」

まどか「わかった、じゃあ急ごう!」

まどか(……でもわたし、病院になんて行った覚えないんだけどな……?)

——————

ほむら「……これが結界よ」

まどか「これが……」

ほむら「……念の為に聞くけど、どうしてもついて来るというのね?」

まどか「うん…さやかちゃんも心配だし、それに……」

まどか「ほむらちゃんのことも心配なの。お願い、ほむらちゃん」

ほむら「……わかったわ。それじゃ、行きましょう」

——結界内——

まどか「……ねぇ、ほむらちゃん」

ほむら「何かしら?」

まどか「わたしね…魔法少女になろうかなって、そう思ってるんだ……」

ほむら「……っ!」

まどか「マミさんの話を聞いて、ほむらちゃんも魔法少女だと知って…わたしにも、2人の手伝いができたらなって、そう思って……」

ほむら「……忠告したはずよね?今と違う自分になろうだなんて、思わないで、って」

まどか「……わたし、人に自慢できる才能も、得意な教科とかもないし……」

まどか「でも、わたしでも魔法少女になってみんなを…ほむらちゃんやマミさんを助けられるのなら……」

ほむら「……常に危険がつきまとうと…いつ死んでもおかしくないものだと、わかっているの?」

まどか「うん、わかって……」

ほむら「もしかしたら私も、ここの魔女に殺されてしまう…かもしれないのよ?」

まどか「え……」

ほむら「誰かを助けたいと思うその気持ちはとても素晴らしいものだと思うわ。でも、魔法少女の世界にその優しさは通用しない」

ほむら「それでも、魔法少女になりたいと言うのなら…私は言いたくないことを言わなければならなくなる」

ほむら「私はあなたに魔法少女になってほしくない。これだけは覚えておいて」

まどか「うん…わかった……」

ほむら「わかってくれたのならいいわ。……さて、どうやら着いたようね」

まどか「この先に、魔女が……?」

ほむら「えぇ。あなたは美樹さやかと一緒に離れていて頂戴。危ないから」

まどか「うん……」

ほむら「それじゃ、行くわよ」

再度まどかに魔法少女は危険だと教えたが、やはりまだ魔法少女に憧れているようだ。私について来ると言うくらいに

ここで巴マミの凄惨な死を目の当たりにすれば、その考えもいくらか消えてくれるはずだが…そういうわけにもいかない

何としても、まどかから魔法少女への憧れを無くさせなければ。……例え自分が痛い目を見ることになるとしても

ほむら「美樹さやか、無事かしら」

さやか「ほむら!ありがと、来てくれて」

ほむら「魔女を倒すのが魔法少女の仕事。気にしないで」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「え、何でまどかがここに……?」

まどか「さやかちゃんが心配で…ほむらちゃんに無理を言って、連れてきてもらったの」

さやか「そうなんだ…ありがと、まどか」

ほむら「お喋りはそこまでにして。……来るわよ」

グリーフシードから魔女が孵化する

ぬいぐるみのような、魔女の外面が姿を現した

さやか「なんだろ…ぬいぐるみみたいだね」

ほむら「それでも立派な魔女よ。……さて、プリニー隊、出撃!」バッ

左手を前に突き出す。それがプリニー隊への出撃命令

左腕の盾から、多数のプリニーたちが召喚される

プリニー「お呼びッスか、ほむら様」

ほむら「えぇ。そこにいるまどかと美樹さやかの護衛をお願い」

プリニー「了解ッス!」

さやか「ちょっ!?ほむら、こいつら何なの!?」

ほむら「彼らはプリニー隊。私の手下たちよ」

さやか「て、手下!?どういうことなの!?」

ほむら「話は後にして。それじゃプリニー隊、任せたわよ」ダッ

さやか「あ、ちょっと!……あー、行っちゃったよ」

プリニー「アンタたちはオレたちプリニー隊が守るッス。泥船に乗ったつもりでいるといいッス」

プリニー「プリニー隊、全力でこの2人を守るッスよ!ほむら様の命令ッス!」

プリニー隊「アイアイサー!」

まどか「う、うん…よろしく、プリニーさん……」

さやか「はー…しかしこいつら、ペンギンっぽいけどあんまりかわいくないね。死んだ魚みたいな目してて」

まどか「えー、そう?かわいいと思うんだけどなぁ」

さやか「……あんたの趣味は時々わからんなー……」

魔女「……」

ほむら「出て来て早々悪いけど、さっさと中身を引きずり出させてもらうわ」ジャキ

ほむら「食らいなさい!」バシュウ

ズドォォォォン

魔女「……!」

ほむら「プリニー隊!叩き落として!」バッ

プリニー隊「了解ッス!プリニー連射ッス!」ビュンビュン

魔女「!」ズバババ

ほむら「地面に落ちた……!これで……」ガッ

魔女「!」

ほむら「……終わりよ」バァン

魔女「!!」

さやか「……どこが魔法なのよ……」

まどか「あ、あはは…す、すごいねー……」

魔女の外面にに有効打を与える。これで中身が飛び出してくるはず

いつ中身が出てきてもいいよう、私は魔女と距離を取った

ほむら「……そろそろかしら」ヒョイ

プリニー隊「え、ちょっと、ほむら様!?どうしてオレを持ち上げるッスか!?」

ほむら「それは……」

ズルゥ

魔女「……」

ほむら「このためよ!」ブン

プリニー隊「ヒドいッスゥゥゥ!」

ズドォォン

まどか「わっ、プリニーさん、爆発したよ!?」

さやか「ホントだ…あんたたち、一体どういう体してんのさ」

プリニー「オレたちは投げられると爆発するようにできてるッス」

プリニー「魔界では雑用に戦争の道具に…それに比べたら、ここはまるで天国ッス」

まどか「へ、へぇー……」

さやか「魔界って何よ、魔界って……」

プリニー「それは……!アンタたち、下がるッス、何か来るッス!」

魔女「……!」

ほむら「……しぶといわね」

プリニー隊「ほ、ほむら様…どうしてオレたちを投げて攻撃するッスか!?」

ほむら「それは…弾薬の節約のためよ」ブン

プリニー隊「あんまりッスゥゥゥ!」ズドォォン

ほむら「……」

正面からやりあえば、それなりの量の弾薬を消耗することになる

こんなところで大事な物資を減らすわけにはいかない

プリニーたちには悪いが、ここは私の武器となってもらうことにした

ほむら「しかし、投げすぎたかしら。煙が……」

さやか「ちょっと!あんたたち早く倒しなさいよ!」

プリニー「無茶言わないでほしいッス!コイツら、オレたちより強いッス!」

何やらまどかたちの方が騒がしい。使い魔でも出たのかと銃を構えて振り返る

しかし、そこにいたのは見たこともない

カボチャの頭をした奇妙な生き物だった

カボチャ頭「ケケケッ!」

プリニー「どうして魔物が人間界にいるッスか!?わけがわからないッス!」

カボチャ頭「クケッ!!」ズバン

まどか「あ…ぷ、プリニーさんが……!」

さやか「早く倒さないとみんなやられちゃうよ!」

プリニー「無茶言わないでほしいッス!オレたちは魔界で一番のザコッス!」

さやか「いばるな!」

このお菓子の魔女の使い魔に、あんな奴はいないはずだ

とにかくあのカボチャ頭を倒さなければ

そう思い、まどかたちのところへ向かおうとした時だった

まどか「ほ、ほむらちゃん!後ろっ!!」

ほむら「な……っ」

私の注意が逸れるのを待っていたのだろうか、爆煙の中から魔女が飛び出して来る

まどかたちの方へ意識が向いていたせいで完全に反応が遅れてしまう

慌てて魔女へ向けて銃を構えたが、もう遅かった。そして

大口を開けた魔女に、右腕を食らいつかれてしまった

ほむら「ぐ…う……!」

魔女「……!」

食らいつかれた右腕から骨の軋むような音が聞こえる

このままでは食いちぎられるのは時間の問題だろう

まどか「ほむらちゃん!ほむらちゃんが……!」

プリニー「助けに行きたいッスけど、コイツを倒さないとそうも行かないッス!」

カボチャ頭「ケケケッ!」

さやか「あーもう!こっちはいいから早く行って!」

ほむら「私のことはいいから!!そのまま2人を守って!!」

まどか「でも……!」

とにかく、早くこの状況をなんとかしなければ

私は盾からプリニー隊を召喚し、指示を出す

ほむら「この魔女の口を開けさせるか…私を引き剥がして」

プリニー隊「うえっ!?オレがッスか!?」

ほむら「早く…もう持ちそうもないわ……!」

プリニー隊「りょ、了解ッス!ちょっと手荒いッスが、勘弁してほしいッス!」

そう言うと、プリニー隊はカバンの中から何かを取り出し、魔女の口の中へ放り込む

それは口の中で炸裂し、私と魔女を吹き飛ばした

ほむら「ゲホッ…爆弾だったの、あれ…ありがとう、助かったわ」

プリニー「ほむら様!大丈夫ッスか!?」

さやか「ほむら!!」

目の前の魔女、後ろのカボチャ頭、どちらかを倒さなければ

時間を止めて魔女を倒すべきか。そう考えていたときだった

ズドドドドド

魔女「!」

カボチャ頭「ケケッ!?」

さやか「え…何!?」

マミ「みんな、大丈夫!?」

ほむら「巴…マミ……」

まどか「マミさん!ほむらちゃんが!」

マミ「え…暁美さん、大丈夫なの!?」

ほむら「私のことはいいから…とにかく手を貸して……!」

マミ「えぇ、わかってるわ!あの魔女と、カボチャ頭を倒せばいいのね!?」

ほむら「魔女の相手は私がする…あなたはカボチャ頭をお願いするわ」

マミ「あのペンギンみたいなのは?」

ほむら「あれは私の手下…味方よ」

マミ「手下って…とりあえず味方なのはわかったわ!向こうは任せて!」ダッ

巴マミが2人のところへ向かって行く。これで向こうは大丈夫だろう

魔女の相手は私がするとは言ったものの、利き腕をやられたせいで上手く戦うことができなかった

魔女「……!」グオオ

ほむら「く……!」

受けた傷の修復を試みるも、私がまともに戦えないのを知ってか、魔女が攻勢を強める

こうなってしまった以上、時間を止めてその間に魔女を倒すしかなさそうだ

ほむら(……あまり他の魔法少女がいる場で使いたくはないけど…そうも言ってられないわね)

ほむら(行くわよ……!時間……)

プリニー「ほむら様!」

ほむら「プリニー…どうしてこっちに……!」

プリニー「あのドリルの髪の人に、こっちは1人で大丈夫だからほむら様を助けてあげてと言われたッス!」

ほむら「マミが……?でも、あなたでは魔女相手には……」

プリニー「確かに今のままではろくに戦えないッス…でも、手段はあるッス!」

プリニー「ほむら様、プリニー隊を1匹出してほしいッス!」

ほむら「え?えぇ……」ゴソゴソ

プリニー隊「話は聞いてたッス!オレたちが魔女と戦うってことは、つまり……」

プリニー「そうッス、アレをやるッス!」

プリニー隊「了解ッス!戦闘は任せたッスよ!」

プリニー「わかってるッス!じゃあ行くッスよ!」






『怒ッキング!!』


ズゥン

プリニー「これなら負けないッス!さぁ、かかってくるッス!」

ほむら「え…プリニーが……?」

プリニーの指示通りにプリニー隊を1匹引っ張り出す。何をするのかと思ったが

2匹のプリニーが合体し、1匹の巨大なプリニーとなっていた

魔女「……!」

プリニー「よくもほむら様を…お返しッスよ!」チャキ

プリニー「食らえッス!」ズバババ

魔女「!」

ほむら「凄い…魔女相手に……!」

魔女「……!」グオオ

プリニー「そうはさせないッス!」ガギン

プリニー「続けて行くッスよ!プリニー連射ッス!!」ビュンビュン

魔女「!?」ズババババ

プリニー「行けるッス……!次で終わりッス!」

魔女「!」グオオ

プリニー「オレを食べても美味しくないッス…これでも食べてるといいッス!」ゴソゴソ

プリニー「プリニー爆弾ッス!!」

魔女「!?」ガポン

ほむら「あれって…爆弾!?」

魔女「!!」

ズドォォォォォン

ほむら「……倒した…みたいね」

シュゥゥ

プリニー隊「魔女は…倒せたみたいッスね……」

プリニー「ほむら様、大丈夫ッスか」

ほむら「え、えぇ、私は…それよりもまどかたちは……!」

プリニーたちのおかげで魔女は片付いた

カボチャ頭はどうなったかと振り返ると、向こうも終わったようだ

カボチャ頭「グゲッ……」

マミ「……何とか倒したわね」

プリニー隊「危なかったッス…アンタ、助かったッス」

さやか「マミさん、ありがとうございました」

まどか「プリニーさんたちも、ありがとう」

マミ「えぇ…それよりも、暁美さんの治療を……」

ほむら「私は大丈夫よ。それよりもプリニー、さっきのアレは何だったの?」

さやか「まさか合体してでっかくなるなんて…ねぇほむら、そもそもこいつら、一体何なの?」

ほむら「……そうね、説明しておいた方がよさそうね。私の家で話をしたいのだけど…いいかしら」

マミ「それは構わないけど……」

ほむら「ありがとう。……さっきのことの説明も頼むわよ」

プリニー「了解ッス」

ほむら「それじゃ、行きましょうか」

プリニーを全て回収し、まどかと美樹さやか、巴マミを連れて私の家へ向かう

私の手下のことと、巨大化のこと

それと、これからのことを話す為に






『怒ッキング!!』



>>119>>113の修正。たぶん大丈夫

今回はここまで。見て下さってる方、ありがとうございます
次回投下は3日夜を予定しています

アニメ版にはほむら声のプリニーがいたような
元々地球勇者さんの助手やってたはずだけど

前回の頭に書いとくべきことだったけど、この辺からディスガイアの「特殊技」が出て来ます
ディスガイア知らない方は下記の動画を参考にして下さい

ディスガイア2
http://www.youtube.com/watch?v=uyvlAbpZFAU
ディスガイア3
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2958348
ディスガイア4
http://www.youtube.com/watch?v=xq4R9AEo1EQ
ディスガイア4 魔物編
http://www.youtube.com/watch?v=tbYcFEg6KZk

ディスガイア1は探したけど見つかりませんでした

次から本文

——ほむらの家——

ほむら「……と、こういう訳よ」

まどか「え、えーと……」

さやか「魔界って…マジだったの……」

マミ「ごめんなさい…ちょっと整理させてちょうだい……」

3人にプリニーについてのことを説明した

あの爆発の起こったフロアで出会い、彼らは魔界からやって来た魔物である、と

それと、プリニーたちの話によれば、結界に現れたカボチャ頭も魔物らしい

あのカボチャ頭は妖魔族といい、プリニーを含め他にも多種多様な種族がいるようだ

さやか「プリニーのことはわかったけど…何であんな大きくなったのさ?」

ほむら「それは…プリニー、どういうことなの?」

プリニー「あれは『怒ッキング』と言って、オレたち魔物が持ってる特殊能力のひとつッス」

プリニー「2匹の魔物が合体して1匹の巨大な魔物になる…そういう能力ッス」

ほむら「……だそうよ」

まどか「ほむらちゃんも知らなかったんだ……」

ほむら「えぇ…正直驚いたわ……」

プリニー「ただ、巨大になったとはいえ、元はオレたちッスから…劇的に強くなるわけじゃないッス」

ほむら「そう…なら、今まで通り集団戦をさせたほうがよさそうね」

ほむら「それで、これからのことなんだけど……」

ほむら「私は少しこの街を離れるわ」

さやか「え?そりゃまた何でさ」

ほむら「……武器を集めて来るの。これからの為に」

マミ「気になってたけど…その武器って、やっぱり……」

ほむら「……こうでもしないと私は戦えない。私は魔法で武器を作れないの」

マミ「……わかった、今は何も言わないわ」

ほむら「そうしてくれると助かるわ」

ほむら「さて、これ以上話すことがないようならそろそろ帰った方がよさそうよ」

マミ「あら…もうこんな時間なのね。それじゃ、帰ろうかしら」

さやか「そうですね。……よし、まどか、帰ろうか」

まどか「えっと…その……」

さやか「まどか?」

まどか「わたし…今日、泊まって行きたいんだけど、ダメ…かな……」

さやか「まどか?どうしたのさ、いきなり」

まどか「うん…ちょっと、ね……」

ほむら「……私は構わないけど……」

まどか「ありがとう…ほむらちゃん。わたし、着替えとか明日の準備しに一旦帰るね」

ほむら「えぇ、わかったわ」

マミ「それじゃ2人とも、帰りましょう」

まどかは準備の為に一旦家に帰っていった

それからしばらくして、玄関のチャイムが鳴る

ドアを開けると、カバンを持ったまどかが立っていた

まどか「ごめんねほむらちゃん、遅くなっちゃって」

ほむら「そんなことないと思うけど…それじゃ、あがって」

まどか「うん…おじゃまします」

まどかを先ほどの部屋に通す

まどかが泊まりに来るというので、プリニーには盾に戻ってもらうことにした

私はテーブルを挟んでまどかの向かい側に座ったが、こういうとき何を話せばいいのかわからない

少しの沈黙の後、まどかが口を開いた

まどか「ほむらちゃん、今日はありがとう。急に言ったことなのに」

ほむら「それは…まどか、だから……」ボソ

まどか「え、何?」

ほむら「な、何でもないわ。それで、どうしてまた急に?」

まどか「うん…魔法少女のことでほむらちゃんに話したいことがあるの……」

ほむら「……まさか、まだ魔法少女になろうだなんて考えているんじゃないでしょうね?」

まどか「……わたし、ほむらちゃんに謝りたかったの……」

まどか「ほむらちゃん、ごめんなさい……」

魔法少女のことで話があるというから何を言い出すかと思っていたら

まどかは私に深々と頭を下げて謝った

ほむら「……私はあなたに謝られるようなことはされてないと思うけど」

まどか「だって、ほむらちゃんが危ないって言ってたのに…連れて行ってなんて言っちゃったし……」

まどか「そのせいでほむらちゃん、酷いケガしちゃったし…私のせいだよ……」

まどか「……本当にごめんなさい、ほむらちゃん」

ほむら「怪我ならもう治したし、あなたを連れて行ったのは私の判断よ。あなたが気に病むことはないわ」

まどか「わたし…考えが甘かったんだと思う。確かに魔法少女は危険だって、そう言われた。だけど……」

まどか「実際そんなところ、目にしたわけじゃなかったから……」

まどか「心のどこかで、そんな命の危険なんて起こるわけないって…そう、思っちゃってたんだよ……」

まどか「でも…ほむらちゃんが魔女に噛み付かれたとき、すごく怖くなった……」

まどか「もし、あれで腕…ううん、頭でも食べられたら、って考えちゃって……」

まどか「結界の中で言ってたよね、『私もここの魔女に殺されてしまうかもしれない』って。わたし、ほむらちゃんがほんとに死んじゃうんじゃないかって……」

ほむら「そう…ごめんなさい、不安にさせてしまって。でも大丈夫よ、今はまだ死ぬつもりはないから」

まどかは俯いたまま謝罪の言葉を続ける

私の負傷を見たせいか、幾分か考えを改めてくれたようだ

ほむら「もう十分よ。まどか、顔を上げて」

まどか「ほむらちゃん…許してくれるの……?」

ほむら「許すも何も、私は最初から怒ってなんていないわ」

まどか「ほむらちゃん…ありがとう、ほむらちゃん」

ほむら「まどかは笑ってる方が素敵なんだから。ほら、笑って」

まどか「え、えぇ!?な、何言うのほむらちゃん!?」カァ

ほむら「え、思ったことを言ったのだけど…何かおかしかったかしら?」

まどか「あ、いや、そんなことはないんだけど……」

まどか「と、とにかくもう結界の中に連れて行ってなんて言わないよ」

ほむら「……魔法少女になる、っていうのは……?」

まどか「……ほむらちゃんの大ケガ見たら…ごめんね、ほむらちゃん……」

まどか「今思い返しても、すごく怖くて…わたしには…向いてない、よね……」

ほむら「そう思うのが普通よ。……あなたは魔法少女になっちゃ駄目。いいわね?」

まどか「うん……。約束するよ、絶対に魔法少女にはならないって……」

ほむら「そう…ありがとう、まどか」

まどか「それでもうひとつの話なんだけど…わたし、ほむらちゃんを支えることにするよ」

ほむら「え?」

まどか「魔法少女にはならないけど…ほむらちゃんを助けたいって言ったでしょ?その思いは本当だよ」

まどか「だから、魔法少女にならない範囲でほむらちゃんのことを助けてあげたい。……ダメ、かな」

ほむら「……」

理由をつけて断ってもこの子、変なところで行動力があるし、何をするか……

それなら、私の目の届くところにいてくれた方がよさそうだ

ほむら「それなら…お願いできるかしら?」

まどか「うん。任せてよ、ほむらちゃん!」

ほむら「よろしく、まどか。……さて、それじゃ夕飯にしましょう」

まどか「さっそく出番だね、手伝うよ!」

ほむら「いえ、今日はちょっと材料も何もないからカップラーメンで……」

まどか「あ…うん、わかった……」

ほむら「そ、それじゃ私はお湯沸かして来るわね」

まどか「うん……」

見るからに沈んでいるまどかを見て、少し悪いと思いつつ、キッチンに向かう

それでもカップラーメンが出来上がる頃にはすっかり元通りで、美味しそうに食べていた

それからまどかと少し話をして、お風呂に入って、明日からの準備を始める

眠たそうにしているまどかには半ば無理やり、私のベッドを使わせることにした

ほむら「……これでよし、と。さて、後は……」パァァ

ほむら「プリニー、ちょっと出てきなさい」

プリニー「お呼びッスか、ほむら様?」

ほむら「えぇ。プリニー隊に頼みたいことがあるの。まどかを……」

プリニー「……了解ッス。オレたちプリニー隊に任せるッス!」

ほむら「頼んだわよ。それじゃ、行って来るわね」

明日からの私の不在に対処できるよう、できるだけ手は打っておいた

それでも、いくつか不安要素はある。私もできるだけ急ぐつもりではいるが……

何にせよ、今度こそまどかを絶望から救い出してみせる

自分にそう言い聞かせ、私は家を後にした

——————

ピピピピピピピピ

まどか「ん…あれ、ここ……」

まどか「……あ、そっか、わたしほむらちゃんの家に泊まりに来たんだっけ」

まどか「ん〜…ふぅ、ほむらちゃん、もう起きてるかなぁ」

まどか「ほむらちゃん、おはよ…あれ、ほむらちゃん?」

まどか「別の部屋かな…あれ?なんだろう、これ……」

『まどかへ』

『おはよう、まどか。よく眠れたかしら?』

『昨日言っていた通り、私は少しこの街を離れる。2、3日程度で戻れると思うわ』

『あなたが私を支えてくれる…助けてくれると言ってくれたときは、本当に嬉しかった』

『ちゃんとお礼を言ってなかったから、ここで言っておくわ。ありがとう、まどか』

『私が留守の間、巴マミと美樹さやかのこと、お願いするわ』

『それじゃ、私が帰るまで無茶なことはしないで、大人しく待っていてね』

まどか「そっか…ほむらちゃん、もう行っちゃったのか……」

まどか「ほむらちゃんからマミさんとさやかちゃんのこともお願いされちゃったし、頑張らなきゃ」

まどか「よーし、それじゃまず……」

『目が覚めたッスか?』

まどか「うぇひっ!?」

プリニー「そんなに驚かなくてもいいと思うッス……」

まどか「あ、ごめんなさい…あれ、でもどうしてプリニーさんがここにいるの?」

プリニー「ほむら様不在の間、オレたちがまどか様を守るようにと頼まれているッス」

プリニー「プリニー隊のみんなもいるッス。今は別の部屋で待機してるッスけど……」

まどか「そうなんだ…って、まどか様!?」

プリニー「まどか様のことは、ほむら様から大事な人だと聞いているッス」

プリニー「ご主人にとっての大事な人はオレたちにとっても大事な人。だから、ほむら様と同等の扱いをさせてもらうッス」

まどか「そ、そう…よろしくね……」

まどか(大事な人って…どういうことなんだろう……)

まどか「でもどうしよう、あんなにたくさんいると…わたしの家に入らないよ」

プリニー「それも大丈夫ッス。ほむら様が帰って来るまでこの家を預かってほしいとの事ッス」

まどか「えぇ!?」

プリニー「まどか様を脅威から守るにはここが一番都合がいいと言っていたッス」

まどか「う、うーん…パパとママに相談してみるね……」

プリニー「お願いするッス。それはそうと、時間は大丈夫ッスか?」

まどか「え?……うわ、もうこんな時間!?急いで準備しないと!」

——————

マミ「それで、鹿目さんは暁美さんの家を預かることにしたのね」

まどか「はい。パパとママにはほむらちゃんの心臓病のことを話して、それで何とか……」

さやか「あたしじゃなくてほんとよかった…死んだ魚の目したペンギンがうじゃうじゃいると思うと……」

さやか「それにしても…まるで単身赴任した旦那と帰りを待つ嫁みたいだねぇ、まどかさん」ニヤニヤ

まどか「うえっ!?な、何変なこと言ってるのさやかちゃん!」

さやか「ごめんごめん、冗談だって」

まどか「もう……」

マミ「ふふ…でも鹿目さんに留守を預けたってことは、それだけ鹿目さんを信頼しているんだと思うわ」

まどか「でも…わたし、そんなに信頼されるようなことは何も……」

マミ「なんていうか…鹿目さんのことは無条件で信じているような気がするわ」

さやか「あー、そんな気はしますね。まどかのことはまどかって呼んでるのに、あたしとマミさんは何でかフルネームですし」

キーンコーンカーンコーン

さやか「っと、もう休み時間終わりか……」

マミ「それじゃ2人とも、また後でね」

さやか「マミさん、また後でー。……さて、教室戻ろうか」

まどか「うん……」

まどか(ほむらちゃんはどうして…わたしをそこまで信頼してくれてるんだろう)

まどか(ほむらちゃんが帰ってきたら、聞いてみようかなぁ……)

さやか「まどかー、行くよー」

まどか「い、今行くー!」

——放課後——

まどか「さやかちゃん、この後空いてる?」

さやか「んー?……あー、ちょっとマミさんに相談したいことがあるんだ」

まどか「そっか…どうしようかなぁ」

さやか「何?あたしに用事?」

まどか「えっと、買い物に行くから手伝ってくれないかなーって……」

さやか「このさやかちゃんを荷物持ちに使おうとするとは…プリニーに頼めばいいんじゃないの?」

まどか「ものすごく目立つと思うよ……」

さやか「だよねぇ。……まぁそういうことで、あたしもちょっと用事があるから…ごめんね」

まどか「ううん、大丈夫だよ。それじゃ、わたし帰るね」

さやか「まどか、またねー」

まどか「ただいまー」

プリニー「おかえりなさいッス」

プリニー隊「まどか様、おかえりなさいッス!」

まどか「お留守番ありがとう、みんな」

プリニー「これも仕事ッス。まどか様が気にすることはないッス」

まどか「そ、そう……?」

プリニー「それでは朝言った通り、オレたちプリニー隊がまどか様をお守りするッス」

プリニー「ほむら様が帰って来るまでこの家にいることと、学校以外で外出するときはオレを連れて行く」

プリニー「これだけ約束してほしいッス」

まどか「え、でも連れて外歩くのは……」

プリニー「大丈夫ッス。この大きいカバンに入るッスから」

まどか「う、うん…わたし、着替えるついでに少し家の中見て来るね」

まどか(ほむらちゃん…この家、預かってほしいってことだったけど……)

まどか(家具も、テレビも…ほとんど何も置いてない……)

まどか(辛うじてベッドは置いてあったけど…ここに住んでるって言われても信じられないな……)

まどか「あ…冷蔵庫……」ガチャ

まどか「空っぽって…プリニーさーん」

プリニー「どうかしたッスか?」

まどか「ほむらちゃんって、朝とか夜って何食べてるの?」

プリニー「そこの棚に入ってるものを食べてるみたいッス」

まどか「ここ?」ガチャ

まどか「えぇー…棚いっぱいのカロ○ーメイト…あ、ドリンクまである……」

プリニー「ほむら様は最適な栄養の取れる便利な物だって言ってたッスけど……」

まどか「これじゃほむらちゃん、倒れちゃうよ…何とかしないと……」

まどか「プリニーさん、少し出かけたいの。ついてきて」

——————

まどか(家具とかそういうのは買えないから置いとくとして、まず食べる物を……)

まどか(お金はほむらちゃんが置いていったのを預かってるけど、使ってもいいよね……?)

ドン

まどか「わっ…ご、ごめんなさ…あれ?仁美ちゃん?」

仁美「あら…鹿目さん……」フラフラ

まどか「どうしたの?今日、お稽古のはずじゃ……」

仁美「そんなこと、どうでもいいんですの…だって、これから素晴らしい世界へ旅立つんですもの……」フラフラ

まどか「ど、どうしよう…何だか様子が変だよ……」

まどか「と、とにかくマミさんに連絡して…っと」ピッピッ

まどか「あとは…ついて行くしか……」

——工場内——

まどか「あ!あれ、混ぜたらダメだって……!」ダッ

仁美「邪魔しないでいただけます?」ガッ

まどか「ひ、仁美ちゃん!?だって、あれ混ぜたら……!」

仁美「えぇ。だからこそ、ですわ」

まどか「そんな…助けて、プリニーさん!」

プリニー「了解ッス!」バッ

仁美「あら…何でしょう、このペンギン……」

プリニー「こ、こんなバケツ……」ガッ

プリニー「オリャーッス!」ガシャーン

まどか「や、やった!?」

工場長「何しやがるこのペンギン!!」

ゾロゾロ

プリニー「や、ヤバイッスよ……」ダラダラ

まどか「と、とにかくあの部屋に……!」バタン

プリニー「た、助かったッス……」

まどか「うん…あとはマミさんが来るまで……」

ズズズ…

まどか「え…け、結界!?」

使い魔「……」

プリニー「まどか様はオレが守るッス!」ズバン

まどか「プリニーさん……」

プリニー「さぁ、かかってくるッス!」

使い魔「……」ワラワラ

魔女「……」

プリニー「……と、言ってみたものの…これはマズいッス……」

まどか「数が違いすぎるよ…マミさん、早く来て……!」

プリニー「このままじゃ2人ともやられてしまうッス…こうなったら……」

プリニー「……まどか様、お願いがあるッス」

まどか「こ、こんなときに何!?」

プリニー「オレの代わりに、戦ってほしいッス」

まどか「えぇ!?で、でもわたし魔法少女じゃ……」

プリニー「オレがまどか様の武器になるッス!助けがいつ来るかわからない以上、こうするしかないッス!」

まどか「な、何が何だかわからないけど…わかった、わたし…やるよ!」

プリニー「ありがとうッス…それじゃ、行くッスよ!」






プリニー「魔チェンジ!!」



プリニー『まどか様、お願いするッス!』

まどか「な、何これ!?プリニーさんが、弓に……!」

プリニー『これは魔チェンジ…怒ッキングと同じく、オレたち魔物の特殊能力ッス』

まどか「そうなんだ…よし、後はわたしが……」

まどか(すごい…体に力が……。それに、弓の扱い方…ううん、もっとすごい何かの使い方が、頭に……!)

まどか「行くよ……!」キリキリ

まどか「ジール…レーゲン!!」パシュウ

ズドドドドド

使い魔「!!」

まどか「すごい…あれだけいたのに……」

プリニー『まだ魔女が残ってるッス!気を付けるッス!』

魔女「……!」ズズズ

まどか「させないっ!」パシュウ

魔女「!」ズガッ

まどか「これでトドメ!スプライン……」

まどか「アローッ!!」パシュウ

ズガガガガ

魔女「!!」

カラン

まどか「グリーフシード…わたし、勝ったの……?」

プリニー『そうッスよ!まどか様、スゴいッス!』

まどか「うぇひひ…無我夢中だったから何が何だか……」

まどか「でもあのものすごい矢とか、バーっとした攻撃とか…あれ、なんだったのかな」

プリニー『あれは魔界の……』

『鹿目さん!どこ!?』

『まどか!返事して、まどか!』

まどか「あ、マミさん…それと、さやかちゃん?」

プリニー『まどか様が心配でついて来たんじゃないッスか?』

まどか「そうかも…マミさーん、わたし、ここでーす!」

マミ「鹿目さん!よかっ……」

さやか「まどか!心配した……」

まどか「?」

さやか「えーと…まどか、その弓、何?」

マミ「見たところ魔法少女になったわけでもないみたいだけど…魔力は感じるわね」

まどか「あぁ…この弓、プリニーさんなんです」

さやか「へ?プリニー?」

まどか「うん。プリニーさん、戻ってくれる?」

プリニー『了解ッス』パァァ

プリニー「ふう…まどか様、ありがとうッス」

まどか「ううん、わたしの方こそ…ありがとう、プリニーさん」

マミ「話が見えないけど…つまり、そのプリニーさんが弓に変身して……」

さやか「使い魔どころか魔女まで倒しちゃったってこと……?」

まどか「そ、そういうことになるかな……」

さやか「ちぇー、せっかくのさやかちゃんの初陣だと思ったのに」

まどか「そういえばさやかちゃん…その恰好……」

さやか「まぁその、心境の変化と言いますか……」

さやか「……決心がついたんだ。マミさんと、ほむらと一緒に戦おうって」

さやか「ほむらの大ケガ見てさ、いつかマミさんやほむらが死んじゃうんじゃないかって思って……」

さやか「あたしにもみんなを助ける力があるのに見てるだけなんて…できないから」

マミ「本当は暁美さんにできるだけ契約しないように引き留めてほしいと頼まれてたけど……」

マミ「美樹さんの決意を聞いて…私には止められないと、そう思ったわ」

まどか「そっか…さやかちゃんが決めたことなら、わたしは応援するよ」

さやか「ありがと、まどか……。それにしてもキュゥべえの奴、どうしたんですかね」

マミ「私にもわからないけど…何だか急いでいたみたいね」

まどか「キュゥべえがどうかしたんですか?」

マミ「いえ、美樹さんとの契約が済むとすぐどこかへ行ってしまって……」

まどか「そういえば、マミさんと初めて会ったときからキュゥべえ、見かけてないなぁ」

マミ「最近姿を見せないのよね。どうしたのかしら……」

プリニー「キュゥべえって一体何者ッスか?」

さやか「そっか、知らないんだっけ…素質のある子の願いを叶えて、魔法少女にする…動物?」

マミ「素質のある子にしか見えないから、あなたたちは見えないと思うわ」

プリニー「そんな奴がいるんスか……」

さやか「……さて、それじゃ帰ろうか」

まどか「あ…まだ買い物してないんだった」

マミ「それじゃみんなで買い物して帰りましょうか。魔女の影響を受けた人は警察に任せましょう」

まどか「ありがとうございます、マミさん」

——————

マミ「それじゃ鹿目さん、また明日。夕飯、ありがとう」

さやか「美味しかったよ。……しかし、どんどんまどかがほむらの嫁になっていく…あたしゃ悲しいよ」

まどか「そ、そんなんじゃないよ……」

さやか「わかってるわかってる。それじゃ、またねー」

まどか「マミさん、さやかちゃん、また明日」

バタン

まどか「……ふう、今日は疲れたなぁ…早めに寝ようかな……」

まどか「……これでよし、と。今日はもう寝ちゃおう」

まどか(普段はこんなに早くは寝ないんだけど……)パチン

まどか(この家、テレビも何もないからなぁ……)

まどか(話し相手がプリニーさんだけじゃなぁ…退屈だよ……)

まどか(ほむら…ちゃん、早く…帰って……)

まどか「すぅ……」

『あのペンギン、どこかで見た気がすると思ったら…そういうことか』

『向こうからの妨害かと思ったけど、どうやら偶然やってきたようだね』

『彼女との契約は…このままだと難しそうだ。何か手を考えるとしよう』

『もう無理に契約を取る必要はないけど…それでもあれだけの素質だ。契約できるのならそれに越したことはない』

『それと、暁美ほむら…彼女の目的は恐らく……』

『アレがやられるとも思えないけど…そうだ、あの子に話をしてみよう』

『何にせよ、僕たちの邪魔はさせないよ』

『きゅっぷい』

今回はここまで
見て下さってる方、ありがとうございます

次回投下は4日夜を予定しています

誤爆を防ぐ目的でプリニーにヘビースタンスつければもう大丈夫、そう思ってた時期が(ry
タル爆弾で誘爆して消し飛んだ思い出

次から本文

——翌日——

さやか「それじゃまどか、あたしはマミさんと特訓があるから今日はこれで」

まどか「うん。さやかちゃん、がんばってね」

さやか「外出するときは気をつけなさいよ?昨日みたいな無茶はもうしないこと」

まどか「わかった、気をつけるね」

さやか「わかってくれればよろしい」

マミ「美樹さん、いるかしら?」

さやか「あ、マミさん!……それじゃまどか、またね!」

まどか「さやかちゃん、またねー。……よし、わたしも帰ろうっと」

まどか「あ、その前にわたしの家に寄って、買い物して…っと」

まどか「……た、ただい、ま……」ヨロヨロ

プリニー「おかえりなさ…何スか、その大荷物……」

まどか「うん…ちょっと、ね」

まどか「あ、こっちの荷物を部屋に運んでおいてくれるかな」

プリニー「了解ッス」

まどか「お願いね。わたしはちょっとキッチン使わせてもらうね」

——————

ほむら「思ったより早く帰って来られたわね……」

武器調達を終え、家に向かう

各地から少しずつ拝借したが、全てを合わせると相当な量になっていた

これだけの武器があれば、大丈夫だろう

これからのことを考えながら歩いていると、いつの間にか家の前に着いていた

ほむら「……あら、いつの間にか着いてたわね…考えるのは少し休んでからにしましょう」

ガチャ

ほむら「ただいま」

プリニー「ほむら様!おかえりなさいッス!」

ほむら「まどかの護衛、ありがとう。何か問題は?」

プリニー「何もないッス!」

ほむら「そう。ところで、まどかは?」

プリニー「あ、今呼んでくるッス!まどか様ー!」

ほむら「あの子…大人しく待っていてくれたようね。よかった……」

まどか「ほむらちゃんっ!」

プリニーが呼びに行ってからしばらくして、まどかが少し慌てた様子で部屋に飛び込んできた

何かの調理中だったらしく、エプロンを着けていた

まどか「ほむらちゃん、おかえり!」

ほむら「……っ」

まどか「……あれ、ほむらちゃん?」

ほむら「……ごめんなさい、家に帰ってきてそう言われるの、久しぶりだったから」

まどか「そっか…うん、でももう大丈夫だからね」

ほむら「え?まどか、それはどういう……」

まどか「あ、話の前に夕飯にしよっか。わたし、がんばったんだから!」

ほむら「え?えぇ……」

まどか「じゃあ今用意するから、ちょっと待っててね」バタン

ほむら「まどか……」

プリニー「ほむら様は幸せ者ッスねー」

ほむら「な、何よ」

プリニー「だってそうじゃないッスか」

ほむら「わけのわからないこと言ってると放り投げるわよ」

プリニー「勘弁してほしいッス……」

——————

ほむら「ふぅ…ごちそうさま。美味しかったわ」

まどか「ほんと?ありがとう、ほむらちゃん」

まどかの用意してくれた夕飯はとても美味しかった

まどかが作ってくれたと思うだけで、何倍も美味しくなった気がした

ほむら「さて…まどか、私がいない間、何もなかった?」

まどか「え?何かって……」

ほむら「私がいなかった間、魔法少女に関連したことで何かあった?」

まどか「えっと、さやかちゃんが契約して、魔法少女になっちゃったんだけど…よかったのかな……?」

ほむら「そう…美樹さやかが……」

巴マミになるべく契約させないように伝えはしたが、やはり契約してしまったようだ

それでも以前と比べ、彼女の魔女化を防ぐ手段はいくつか見つけられた

まどかの為にも、美樹さやかを魔女にするわけにはいかない

ほむら「美樹さやかのことはわかったわ。私と巴マミに任せて頂戴」

まどか「わかったよ。それと…あのね……」

ほむら「何かしら?」

まどか「うん…わたしも、一緒に戦いたいの」

ほむら「まどか…あなた、まだそんなこと言って……」

まどか「待って、今説明するから…プリニーさん、お願い!」

プリニー「了解ッス!魔チェンジ!」カッ

プリニーがそう言うと、一瞬閃光が走る

次の瞬間には、まどかの手に弓が握られていた

ほむら「……何がどうなってるのかしら?」

まどか「えっと、これは『魔チェンジ』って言って、あの大きくなったのと一緒で魔物の特殊能力なんだって」

ほむら「怒ッキングと……?」

まどか「プリニーさんに武器になってもらえば、魔法少女にならなくても戦えるかなって……」

プリニー『まどか様はとんでもない魔力を持ってるッス。魔神…下手したら魔王クラスの魔力を秘めてるッス!』

プリニー『ただ、オレが魔チェンジしないとどうにも扱えない魔力ッスが……』

ほむら「危険だと…わかっているの?」

まどか「……うん。わかってるよ」

ほむら「少し…考えさせて……」

まどか「うん。……あ、それと」

ほむら「……まだ何かあるの?」

まどか「えっと、魔法少女のことじゃないんだけど」

まどか「わたしね…このまましばらくほむらちゃんと一緒にいようと思うの」

ほむら「え?」

まどか「理由はいろいろあるんだけど…一番はほむらちゃんが心配、だから……」

まどか「何もない家に独りでいて、まともな物食べてないほむらちゃんが、心配なの」

ほむら「そういえば…ぽつりぽつりと見慣れない物がいくつか……」

まどか「わたしの家から持ってきたの。この家…寂しすぎるから……」

ほむら「……」

まどか「……お願い。わたしに、ほむらちゃんを…支えさせてほしいの」

まさかまどかがこんなことを言い出すとは思わなかった

私と一緒にいてくれた方が色々とやりやすい。だけど……

まどかが私と一緒にいたいと言ってくれて…凄く嬉しい

ほむら「……わかったわ」

まどか「あ…ありがとう、ほむらちゃん!」

ほむら「お礼を言いたいのは…私の方よ。ありがとう、まどか……」

プリニー「ホント、ほむら様は幸せ者ッスねー」

ほむら「いい加減にしないと投げるわよ」

プリニー「ごめんなさいッス……」

まどかとそんな話をしていたら、随分といい時間になってしまった

そろそろお風呂にでも入って来ようか、なんて考えていたときだった

ドンドンドン

マミ『鹿目さん、いる!?』

まどか「あれ…マミさんだ。どうしたんだろう」

ほむら「どうしたのかしら…とにかく、出てくるわね」

ガチャ

ほむら「巴マミ、何かあったのかしら?」

マミ「あ、暁美さん!帰ってたのね!」

ほむら「えぇ、そういえば連絡してなかったわね。ごめんなさい」

マミ「そんなことより、少し上がらせて!治療を……!」

巴マミの背中には美樹さやかが背負われていた

だが、その姿は随分とボロボロだった

ほむら「……何があったの?」

マミ「まだ外にいると思うわ…それじゃ、ちょっと上がらせてもらうわ!」

そう言うと、巴マミは家に上がっていった

私は何があったのか確かめるべく、外に出る

ほむら「あなたは……」

家の前に、少女がひとり立っていた

真紅の衣装を纏い、槍を手にした赤髪の魔法少女

佐倉杏子が不敵な笑みを浮かべて、こちらを見ていた

杏子「暁美ほむらってのは、アンタかい?」

ほむら「えぇ、そうよ」

杏子「そうか、アンタか…あぁ、アタシは佐倉杏子。見ての通り、魔法少女だ」

ほむら「美樹さやかをやったのは、あなたなの?」

杏子「美樹さやか……?あぁ、あの青い剣使いのことだったらアタシがやったよ」

ほむら「そう……」

杏子「どうする?今ここで敵討ちでもするかい?」

ほむら「いえ、そのつもりはないわ」

杏子「文句はそのさやかってのに言ってくれよ。先に手を出したのはそっちなんだからさ」

ほむら「それで、あなたの目的は?」

杏子「あぁ、そうだった。アンタと…美樹さやか、巴マミに対しての……」

杏子「宣戦布告さ」

——————

まどか「あ、マミさん…さやかちゃんは……」

マミ「もう大丈夫よ。今は眠ってるだけ」

まどか「そうですか…よかったぁ……」

マミ「美樹さんがテレパシーで助けてくれって言ってきて……」

マミ「その後で倒れてる美樹さんを見たときは何があったのかと思ったわ」

まどか「マミさん、さやかちゃんのこと、ありがとうございました」

マミ「さて、それじゃ私はそろそろ……」

ガチャ

ほむら「ちょっと待って。話があるわ」

マミ「暁美さん…佐倉さんは?」

ほむら「今日のところは帰ったわ」

マミ「そう…それで、佐倉さんとは何を?」

ほむら「彼女の目的を聞いておいたわ。……ここにいる全員への、宣戦布告だそうよ」

まどか「え……」

マミ「宣戦布告って、どういうこと……?」

ほむら「それは……」

——————

ほむら「宣戦布告?一体どういうこと?」

杏子「理由は2つ。1つ、そっちの縄張りも欲しいから」

杏子「2つ。アンタ、魔法少女のシステムを壊そうとしてるそうじゃないか」

ほむら「一体何を言ってるの?身に覚えがないのだけど……」

杏子「キュゥべえの奴から聞いたんだよ。見滝原の暁美ほむらってのが魔法少女のシステムを壊そうとしてるってな」

杏子「アンタがそうしてる以上、アンタのお仲間もそうなんだろ?だったらぶっ潰すしかないよねぇ?」

ほむら「ちょっと待ちなさい、私は……」

杏子「とにかく、そういう理由でアタシはアンタらに宣戦布告させてもらうよ」

ほむら「……話し合いをしたいのだけど」

杏子「アタシに勝てたら話くらいは聞いてやるよ」

ほむら「そう…わかったわ」

杏子「ま、今日のところはこれで帰らせてもらうよ」

——————

ほむら「……ということになってしまったわ……」

マミ「システムの破壊って…何を言っているのかしら?」

まどか「壊すって、どういうことなんだろう……?」

プリニー「詳しくないからわからないッスが、そう簡単に壊せるものなんスか?」

ほむら「いえ…そもそも、壊すも何も物体として存在してないもののはずだけど……」

ほむら「その概念的なものを破壊するだなんて…何を吹き込まれたのかしら」

マミ「キュゥべえに直接聞いてみるにも、今どこにいるのかしら……」

まどか「話を聞いてもらうにしても、戦わないといけないのかな……」

ほむら「そうなるでしょうね。どうにかできないかしら……」

マミ「対応を私の方でも考えてみるわ。……さて、それじゃ私はこれで帰るわね」

ほむら「えぇ。引き留めてごめんなさい」

マミ「美樹さんのこと、お願いね。それじゃ、おやすみなさい」バタン

まどか「ほむらちゃんが帰ってきて早々、こんなことになるなんて……」

ほむら「まどかが気にすることじゃないわ。何にせよ、私の邪魔をするのなら容赦しない」

プリニー「ほむら様の邪魔すると銃で撃たれそうッス」

ほむら「蜂の巣にするわよ?」

まどか「……あ、そうだ。ほむらちゃんが帰ってきたら聞こうと思ってたことがあるんだった」

ほむら「私に?」

まどか「うん。……ほむらちゃんは、どうしてわたしのこと、そこまで信じてくれるの?」

まどか「それと…プリニーさんに、わたしを『大事な人』って言ったみたいだけど…どういう意味なの?」

ほむら「っ…それ、は……」

まどか「わたし、ほむらちゃんにそんなに信じてもらえるようなことをした覚えないし、大事な人って言われる理由も……」

まどか「だから、どうしてかなって思って……」

ほむら「……覚えてるわけ、ないわ……」ボソ

まどか「え…何?何か言った?」

ほむら「……今はまだ、言えない。でも、いつか必ず話すわ」

まどか「……わかった。ほむらちゃんが話してくれるまで、待ってる」

ほむら「ありがとう…それよりも、そろそろ休んだ方がいいと思うんだけど……」

まどか「え?……うわ、もうこんな時間だったの?」

ほむら「美樹さやかがベッドを使ってたわね…布団を用意しておくから、お風呂に入ってきなさい」

まどか「うん。ありがとう、ほむらちゃん」

——————

ほむら「……それじゃ、おやすみなさい、まどか」パチン

まどか「うん、おやすみ」

まどか(どうしてほむらちゃんがわたしを信頼してくれてるのか…お風呂でも考えてみたけど、全然わからないや……)

まどか(わたしが何かしたとも思えないんだけど…自分で気づかないうちに何かしたのかな……)

まどか(信頼してくれてるのは嬉しいけど、わたしとしてはもっと仲良くなりたいなぁ……)

まどか(……昨日もそうだったけど、何だか寝る前にほむらちゃんのことばかり考えてるなぁ)

まどか(それだけわたしにとってほむらちゃんが、大事な人だってことなのかな……)

まどか(ほむらちゃんが…わたしのことを大事な人って言ってくれたように……)

まどか(うん…もう寝よう……)

さやか「……ん…あれ、ここ……?」

さやか「……えっと、ここ、どこ?」キョロキョロ

さやか「まどかとほむらが寝てる…ってことは、ここ、ほむらの家かな」

さやか「えっと…確かあたし、赤い魔法少女にやられて…マミさんに連絡して…そっからは記憶がないな……」

さやか「ま、なんにせよ…ありがと、まどか、ほむら」

まどか「すぅ……」

ほむら「……」Zzz

さやか「……少しばかり、お礼をさせてもらいますかねっと」ニヤニヤ

さやか「よいしょ…それで、こっちに…と」トスン

さやか「さて…それじゃあたしは一度家に帰るかな。2人とも、また後でね」バタン

ピピピピピピピピ

ほむら「う…ん、朝…え!?」

まどか「んぅ…ほむらちゃん、おは…よ……」

ほむら「……」

まどか「……」

ほむら「な、なんでまどかと同じ布団に!?」

まどか「わ、わたしもわかんないよ!さ、さやかちゃん!起き……」

ほむら「……いないわね。ということは、犯人は美樹さやかね」

まどか「さ、さやかちゃん…やりすぎだよ……」カァ

ほむら「と、とにかく起きて支度しましょう」

まどか「う、うん……」

——放課後 ほむらの家——

さやか「あはは、驚いてくれた?」

まどか「さやかちゃん…あれ何だったの……」

さやか「んー、半分お礼、半分ドッキリ…かな」

ほむら「やられる側はたまったものじゃないからやめて頂戴……」

案の定、あんなことをした犯人は美樹さやかだった

彼女が来る度にあんな状態にされていては身が持たないので釘を刺しておいた

だけど、まどかと一緒に寝ていたと考えると…悪い気はしなかった

マミ「それよりも佐倉さんの件、どうしようかしら……」

まどか「そういえばマミさん、あの子を知ってるみたいでしたけど……」

マミ「佐倉さんとは…以前、一緒に行動していたのだけどね…考えが食い違ったせいで、出て行ってしまったの……」

まどか「そうだったんですか……」

マミ「ただ、佐倉さんも決して悪い子じゃないの…悪い子じゃないんだけど……」

さやか「でも、昨日のアレは…あたしは許せないです」

まどか「さやかちゃん、何か言われたの?」

さやか「アイツは…グリーフシードのためなら普通の人を見捨てるって…そう言ったんだ」

まどか「そんな……」

さやか「あたしがもっと強ければな…あいつを倒して、ここに引っ張って来られたのに……」

まどか「さやかちゃん……」

マミ「最初から強い子なんていないわ。強いってことは、それだけ経験があるってことなんだから」

さやか「でも……」

佐倉杏子にこっ酷くやられたせいか、少し自信を失っているようだ

彼女自身は強くなりたい、力が欲しいと思っているようだが、そう簡単に強くはなれない

今日のところはまた巴マミと特訓してもらおう。そう思っていたところで、プリニーが美樹さやかに話しかけた

プリニー「そこの青い人…何と言ったッスか……」

さやか「え?あ、あたし?美樹さやかだけど……」

プリニー「アンタ、剣を使うんスよね?」

さやか「うん、そうだけど……」

プリニー「……もしかしたら、オレがアンタの力になってやれるかもしれないッス」

さやか「え?ど、どういうこと……?」

プリニー「アンタに…魔界の秘技を伝授するッス」

さやか「……!」

プリニー「その佐倉杏子という人に勝てるかどうかは保証できないッスけど……」

さやか「……うん、それでもいいよ。少しでも、力が欲しい……!」

プリニー「わかったッス。全力で指導するッス」

ほむら「ちょ、ちょっと待ちなさい。その魔界の秘技って何なの?」

プリニー「魔界で使われている武器には、魔力を使って放つ『秘技』というものがあるッス」

プリニー「具体的には…剣に槍、弓、銃なんかがあるッス」

ほむら「銃……」

まどか「……あ、じゃあこの間のあれって……」

プリニー「そうッス。あれは弓の秘技ッス」

プリニー「弓は多数の敵と戦うためのものが多いッスね」

マミ「それじゃ、銃と剣は?」

プリニー「銃はサポート向けが多いッス。そして、剣は……」

プリニー「極めることができたなら、何者にも負けない力となるッス」

さやか「何者にも……」

プリニー「事実、魔王の多くは剣を使っているッス」

まどか「でも、そんなものをわたしたちに教えちゃっていいの?」

プリニー「本当はあんまりよろしくないッスが…今のオレたちのご主人はほむら様とまどか様ッス」

プリニー「ほむら様とまどか様のために戦ってくれるのなら、協力は惜しまないッス」

さやか「……ちょっと待って、今の話を聞くとあたしとあんたたちが同列に聞こえるんだけど」

プリニー「何言ってるッス。当然じゃないッスか」

さやか「あたし、こいつらと同列なんだ……」ズーン

マミ「私は何でも構わないわ。よろしくね、プリニーさん」

プリニー「それじゃ、さっそく特訓ッス。とりあえず、一番簡単なのから始めるッスよ」

さやか「はぁ、まぁいいか…よろしく、プリニー」

ほむら「……」

プリニーが言った秘技のある武器…剣に槍、弓…そして、銃

その銃の秘技、私にも使えないだろうか。私の雀の涙程度の魔力でも……

プリニーに聞いてみることにした

ほむら「待って」

プリニー「どうしたッスか?」

ほむら「その秘技、私にも教えてもらえないかしら」

まどか「ほむらちゃん?」

プリニー「それは構わないッスけど…急にどうしたんスか?」

ほむら「力が欲しいのは私だって同じよ。……私の目的の為に」

プリニー「ほむら様の目的って…出会ったときに言ってた、悪魔のように強い何かを倒すことッスか?」

ほむら「えぇ。その為なら、私はどんなものだって利用してみせる」

プリニー「わかったッス。それじゃオレが責任を持ってほむら様とさやかに秘技を伝授するッス!」

ほむら「えぇ、よろしく頼むわ」

さやか「やっぱり、あたしは『様』がつかないんだ……」ズーン

ほむら「私たちは特訓に出るけど、あなたたちはどうするの?」

まどか「あ、わたしついて行こうかなぁ」

マミ「私はパトロールに出るわね」

ほむら「わかったわ。佐倉杏子には気を付けて」

マミ「えぇ、わかってるわ」

プリニー「それじゃ、行くッスよ」

さやか「……ほむらの目的ってさ」

特訓場所…例の河川敷に向かう途中、美樹さやかが話しかけてきた

私の目的について聞いてきた彼女は、続けてこう言った

さやか「もしかしてだけど…まどかと何か関係ある?」

ほむら「……どうしてそう思ったの?」

さやか「あんた、普段からあたしたちとまどかじゃまるで扱いが違うじゃん?それ、どうしてだろうなって思ってさ」

さやか「その理由を考えてたんだけど、さっきの目的があるっての聞いて、あたしの中の何かがピーンと来たってわけよ」

ほむら「……外れではないとだけ、言っておくわ」

さやか「無理に聞くつもりはないけど…あたしとマミさんもいるってこと、忘れないでよ?」

ほむら「……覚えておくわ」

まどか「さやかちゃん、ほむらちゃんと何話してるの?」

さやか「んー?いやなに、ほむらにあたしの愛を伝えてだね……」

まどか「あ、愛!?だ、ダメだよそんなの!」カァ

さやか「おーおー、真っ赤になっちゃって。変な子だねぇ」

まどか「さ、さやかちゃんのせいでしょ!?」

ほむら「早く来ないと置いてくわよ」

まどか「ほむらちゃん!?ま、待ってよー!」

さやか「わー!今行くって!」

慌てて追いかけて来る2人を尻目に、河川敷へと向かう

魔界の秘技…私たち魔法少女の魔法による攻撃とどう違うのかはわからない。だけど

思わぬチャンスで新たな力を得られるかもしれない

力を得られるかどうかは私次第

絶対…何が何でも物にしてみせる

全てはあの子を…まどかを守る為に……

今回はここまで
見て下さってる方、ありがとうございます

次回投下は5日夜を予定しています

大地とか地球とか月がヤバイのは序の口
4のテラスターとギャラクシーコメットで銀河系がヤバイ

次から本文

——数日後——

ほむら「……何とか形にはなってきたけど……」

さやか「簡単な奴ってのは割とすぐに物になったから、これはイケると思ったんだけどねぇ……」

まどか「で、でもほら、プリニーさんも魔族じゃないのに習得が早いって言ってたよ!」

プリニー指導の下、秘技習得の特訓を始めて数日

簡単なものはすぐ会得することができたが、高レベルのものはなかなか上手くいかなかった

まどかが以前、高レベルの秘技を使ったことがあるらしいが、才能…魔力にも左右されるのだろうか

さやか「そう言えばさ、マミさんは秘技習得の特訓はしないの?」

ほむら「あぁ…何でも、銃と言っても私の拳銃みたいなものじゃないと駄目らしいの。マミのは別の区分になるとかで……」

さやか「ふーん…プリニーがそう言うのなら、仕方ないのかな」

ほむら「何にせよ、これを習得できれば色々と楽になりそうね」

さやか「あんたのその、目的とやらの達成のためにも?」

ほむら「それは……」

さやか「ま、よっぽど変なものでなけりゃ、あたしは協力するよ」

まどか「あ!さやかちゃん、またほむらちゃんと内緒話してる!」

さやか「うわっ、まどかにバレた!そんじゃ、あたしはこれで帰るよ、それじゃ!」ダッ

まどか「あ、ちょっと、さやかちゃん!」

まどか「さやかちゃん、行っちゃった…ほむらちゃん、さやかちゃんと何話してたの?」

ほむら「それは……」

まどか「ほむらちゃんまでわたしに秘密にするんだ……」

ほむら「ご、ごめんなさい、そんなつもりは……」

まどか「……なんてね、またさやかちゃんが変なこと言ってたんでしょ?さやかちゃん、すぐそういうこと言うから」

ほむら「え、えぇ……」

まどか「それよりも、今日の夕飯はどうしようかな…家に確かまだ……」ブツブツ

そう言ってまどかは私の隣で夕飯について思案し始めた

まどかが私の家に来てからは、夕飯やら何やらをまどかに頼りっきりになってしまった

申し訳ないとは思うけれど、やっぱり嬉しい

誰かの手料理を食べるなんて、もう随分久しぶりだから……

まどかが私の為に作ってくれたんだと思うと、とても幸せな気持ちになる

勿論私の目的を忘れているわけではない。……だけど、このくらいの幸せがあっても、バチは当たらないはず

とにかく、私の目的はひとつ…まどかは私が守る。例え、どんな犠牲を払おうとも

私はそう結論を出したところで、後ろからついてくる彼女に声をかけた

ほむら「何か用かしら?佐倉杏子」

杏子「……何だ、バレてたのか」

まどか「ねぇ、ほむらちゃんは何が…あれ、この人は……」

ほむら「彼女が佐倉杏子よ」

まどか「え?この人が……?」

杏子「そういうアンタは鹿目まどかだな…ふーん……」

まどか「あ、あの、何か……」

杏子「あぁ、キュゥべえから聞いただけさ。魔法少女じゃないアンタに用はないよ」

ほむら「それで、一体何かしら?」

杏子「わかってんだろ?アンタをぶっ潰しに来たのさ」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「ひとつだけ約束して。まどかには手を出さないと」

杏子「さっきも言っただろ、魔法少女じゃない奴に用はないってさ」

ほむら「……いいわ。私が相手になる」

杏子「それじゃ、場所を変えようか。ここらじゃ人目につきそうだしねぇ」

そう言って、私は佐倉杏子の後について行く

ここで私が負けてしまうと面倒なことになるような気がする

何としても彼女と話をしなければ

——————

杏子「……ここなら問題ないだろ。それじゃ始めようか」パァァ

ほむら「……」パァァ

佐倉杏子が魔法少女に変身するのを見て、私も変身する

もう戦うことは避けられそうもないが、駄目元で聞いてみる

ほむら「……本当に戦わなければ、話を聞いてもらえないのかしら」

杏子「そう言ったはずだろ?ま、アタシに勝てたらの話だけどな」

ほむら「どういうことかしら」

杏子「マミの奴とはお互い知ってる分やりづらい。さやかってのは弱い割には速いしタフだ」

杏子「それと比べてアンタはどうだい。武器さえ作り出せないそうじゃないか」

杏子「だからアンタを相手に選んだんだけどな」

杏子「悪いけど、弱いからって手加減はできないからな」

どうやら彼女は私を武器すら作り出せない程度の魔法少女だと思っているらしい

そう思っていてくれた方が好都合だ。魔法のことも、こちらに引き込むまではバレないに越したことはない

ほむら「……あなたは2つ、勘違いしているわ」

杏子「あん?」

ほむら「私に簡単に勝てると思ってること。そして、もうひとつ……」スッ

ほむら「私が1人だと思ってることよ……!」バッ

そう言うと同時に、盾からプリニー隊を召喚する

瞬く間に、私の周囲にプリニーたちが展開されていった

杏子「は……?」

ほむら「プリニー隊、前方の魔法少女に攻撃開始」

プリニー「了解ッス!全軍突撃ッス!」

プリニー隊「行くッスよ!」

杏子「は!?え、ちょ、なんだコイツら!?」

ほむら「話を聞く気になってくれたら教えてあげるわ」

杏子「な…クソ、かかって来いよ!」

ほむら「……さて、それじゃ後は見守るとしましょう」

まどか「えぇー……」

ほむら「プリニー隊に勝てないようじゃ、私には勝てないわよ」

まどか「うーん…まぁ、いっか……」

——————

杏子「ハァ…ハァ…」

ほむら「……もう十分かしらね。プリニー隊、撤収」

プリニー「全軍引き上げるッス!」

佐倉杏子が疲弊しているのを確認し、プリニー隊を引き上げさせる

いくら彼女が強くても、この数が相手なら多勢に無勢というものだ

私は肩で息をしている彼女に声をかけた

ほむら「これでもまだ話を聞いてくれないのかしら?」

杏子「ハァ…何で、引き上げさせた……?」

ほむら「私はあなたと話がしたいだけ。あなたを倒そうと思っているわけじゃないわ」

杏子「ヘッ…そう、かよ…でも残念だな…アタシはまだ、やれるんだから、な……!」

ほむら「そう…それなら仕方ないわね」

そう言うと私は盾から銃を取り出し、少し魔力を込める

そしてそのまま、自分の足元に向けて一発、発砲した

地面に向けて撃たれた弾は、地面にめり込んでいった

杏子「……何のつもりだ」

ほむら「何って、私の攻撃よ。これで私の攻撃は終わり」

杏子「テメェ…舐めやがって!!」ダッ

私の挑発に乗った佐倉杏子が一直線に突っ走って来る

先ほどまでの疲弊はどこへ行ったのかという勢いだった

まどか「ほ、ほむらちゃん、大丈夫なの?」

ほむら「えぇ、大丈夫。見てなさい」

杏子「近づきさえすれば、こっちのもんだ!!」

私と佐倉杏子の間の距離はどんどん縮まる

そして、私まであと少しというところまで近づいたときだった

杏子「ここまで来れば……!覚悟しな……」

ズドォン

杏子「うぐ……!」グラ

地面から飛び出した弾丸が、彼女の脚を貫いた

バランスを崩した彼女は、前方に大きく転倒する

何が起こったのかわからず混乱している彼女に銃口を向ける

ほむら「……私の勝ちよ」

杏子「あ…クソ、アタシの負けだ……」

ほむら「怪我させてしまったわね。ごめんなさい」

杏子「……別に、こっちは最初からそのつもりだったんだ。気にすんなよ」

ほむら「まぁ、私は何もされてないのだけどね」

杏子「……ケッ」

ほむら「それで、私の話は聞いてもらえるのかしら?」

杏子「……約束だからな。とりあえず話だけは聞いてやるよ」

ほむら「それじゃ私の家に行きましょうか。まどか、帰りましょう」

まどか「あ、うん。……えっと……」

ほむら「勿論彼女も一緒よ。大丈夫、私がいるから」

杏子「ソイツには何もしないつってんだろ……」

ほむら「わかってくれてるのならいいわ。じゃ、行きましょう」

佐倉杏子と話をする為、私の家へ向かう

それにしても、彼女はインキュベーターに何を吹き込まれたのだろうか。私がシステムを破壊するなどと……

そして、これは全員に話しておかなければならない

私の、目的を……

——————

マミ「何が……」

さやか「どうなって……」

ほむら「いらっしゃい、2人とも」

まどか「うーん、これで足りるかな…杏子ちゃん、どう思う?」

杏子「……正直多すぎるんじゃないか、この量」

プリニー「アンタ、さっきはすまなかったッス」

杏子「まぁ、気にすんな。あのときは敵同士だったんだからよ」

杏子「それよかアレはアタシも驚いたよ。まさか銃弾があんなところから飛び出して来るなんてねぇ」

ほむら「あれは確か…『土竜弾』、だったかしら。なかなか使えるわね」

マミ「えっと…美樹さん、私たち何て言われたんだったかしら……」

さやか「えー…佐倉杏子とのことで話があるから来てほしい、だったはずですけど……」

さやか「あとほむらが自分の目的についての話があるって言ってましたね」

マミ「そうよね、間違いないわよね…でも、何で……」

さやか「あいつら、あんなに打ち解けてるんですかね……」

ほむら「あなたたち、突っ立ってないでこっちに来て座って頂戴」

みんなで話をする為に美樹さやかと巴マミを私の家に呼び出した

2人は私たちと打ち解けている杏子を見て驚いているようだ

さやか「よいしょっと…うわ、何このお菓子の山……」

マミ「わたがし、たいやき、チョコレート…プリンにエクレア……」

まどか「安かったんで、つい買いすぎて……」

さやか「はぁ…で、何であんたら打ち解けてんのさ」

ほむら「色々話してるうちに…ね。でも一番決め手になったのは……」

杏子「あぁ、まどかの夕飯だな。あんなウマいもん食わせてくれるとは思わなかったよ」

さやか「まどか、何作ったの?」

まどか「え?……冷やし中華だけど」

さやか「……何で?」

まどか「……安かったから……」

ほむら「それじゃ、そろそろ話を始めましょうか」

全員がテーブルに着いたところで、話を切り出す

さっきまで楽しそうに喋っていた杏子も、それを聞いて顔つきが変わった

杏子「本題に入る前に、コイツらのことを教えてほしいんだけど?」

そう言って杏子は側にいるプリニーを指で突っついた

こちらの話の後で教えるつもりだったが、催促があったので先に教えることにした

ほむら「わかったわ。それじゃまずは……」

——————

ほむら「……以上よ。わかってくれたかしら?」

杏子「いや、ちょっと待ってくれ…つまりだ……」

杏子「ここ以外に『魔界』と『天界』があって、コイツらはそこで働く魔物…ってことでいいんだよな……?」

プリニー「そうッス」

杏子「で、その魔界からどういう理由かわからんが、飛ばされて来た、ってことなのか」

プリニー「その通りッス」

杏子「そうか…それにしても魔物ねぇ…アタシは最初見たとき使い魔か何かかと思ったよ」

さやか「うーん…でもまぁ、使い魔よりかは愛嬌があるんじゃないかな…死んだ目してるけど」

まどか「えー?かわいいって、絶対」

さやか「だからあんたの趣味は特殊すぎるんだって……」

ほむら「さて…それじゃプリニーのことも話したし、そろそろ教えてくれないかしら?」

ほむら「私たちが魔法少女システムを破壊するって、どういうことなのかしら?」

杏子にプリニーのことを話し終え、本題に入る

そのことについて、杏子は真剣な顔で話し始めた

杏子「……詳しい話までキュゥべえに聞いたわけじゃないんだけどよ……」

杏子「見滝原の暁美ほむらって奴がワルプルギスの夜を倒そうとしてるから…それを阻止しろって……」

杏子「ワルプルギスの夜が倒されると…今ある魔法少女システムが狂ってしまうから、だとさ」

ほむら「……!」

彼女の話が上手く理解できなかった

どうして私の目的が?奴を倒すことと魔法少女システム破壊の関連性は?

確認の為にもう1度、彼女に聞いてみる

ほむら「その話…本当なのね……?」

杏子「話自体が本当かどうかはわからねぇけど、間違いなくキュゥべえに聞いた話だ」

ほむら「そう…わかったわ」

杏子の話を聞いて、ますます頭がこんがらがってしまった

私の目的がバレているのはともかくとして、どうしてワルプルギスの夜を倒すことがシステム崩壊に繋がるのか

ひとまずこの話は置いといて、私の目的について話すことにした

ほむら「それで、私の目的についてなんだけど……」

まどか「ほむらちゃんの目的って、今言ってた……」

ほむら「えぇ、今の話にも出たけど…ワルプルギスの夜を倒す事。それが、私の目的」

マミ「ワルプルギスの夜を……」

さやか「そのワルプルギスの夜って、一体何なの?」

ほむら「結界を持たない超弩級の魔女のことよ。一般人からは自然災害とされているわ」

ほむら「そして1度姿を現せば、何千人と死者が出る」

さやか「そんな……」

ほむら「美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子…あなたたちにお願いがある……」

ほむら「ワルプルギスの夜を倒す為に、私に協力してほしい……」

さやか「……」

マミ「……」

杏子「……」

3人にワルプルギスの夜を倒す為の協力を求める

だが、ただでさえ強いということに加え、もしかしたら本当にシステムが壊れるかも、ということもありすぐに返事は返ってこなかった

しばらく沈黙が続いたあと、まどかが口を開いた

まどか「……わたしは…ほむらちゃんに協力するよ」

さやか「まどか?」

杏子「協力つっても、お前は魔法少女じゃ……」

まどか「うん、わかってる…でも、ここでもしみんなが断っても、ほむらちゃんはきっと1人でも立ち向かって行くと思う……」

まどか「ほむらちゃん1人じゃ、絶対…どこかで倒れちゃうから…だからわたし、ほむらちゃんのことを支えてあげたい……」

マミ「鹿目さん……」

プリニー「もちろんオレたちはほむら様とまどか様について行くッスよ」

プリニー「ご主人の命令とあれば、相手が魔神だろうが魔王だろうがオレたちは戦うッス」

さやか「……プリニーに負けるわけには行かないからね。あたしも協力するよ」

さやか「もしかしたらホントにシステムが壊れちゃうのかもしれないけど…でも、ワルプルギスの夜を放っておいたら何千人と人が死んじゃうんでしょ?」

さやか「それをただ見過ごすことなんて…あたしはできない」

マミ「……そうね、美樹さんの言った通り、放置すれば多数の犠牲者が出てしまう」

マミ「私はこの街の魔法少女として、見滝原を守る。私も協力するわ。……佐倉さんは、どうするの?」

杏子「なんだよ、ここで断ったらアタシ、まるっきり悪人じゃないか……」

杏子「正直システムのことは…今になって落ち着いて考えてみたら、ちょっと信じられなくなってきたよ」

杏子「ワルプルギスの夜だって魔女なんだ。魔女を倒したら壊れるなんてな」

杏子「キュゥべえの話だけじゃない、ハッキリとした答えが出るまでは協力してやるよ」

まどか「ほむらちゃん、わたしたちみんな、ほむらちゃんに協力するよ」

ほむら「まどか…ありがとう」

ほむら「杏子と美樹さやか、巴マミも、ありがとう」

さやか「あたしらはいつまでフルネームなんでしょうかねぇ、マミさん」

マミ「そうねぇ…鹿目さんはともかく、後から来た佐倉さんにまで先を越されるなんて、ちょっと寂しいわ」

ほむら「わ、わかったわよ…さやかとマミもよろしくお願いするわ」

さやか「うん、よろしく、ほむら!」

マミ「よろしくね、暁美さん」

さやか「っと、それと……」

さやか「……」

杏子「……おう、何だ?」

さやか「……あんた、この間あたしのことボコボコにしてくれたよね」

杏子「あぁ…悪かったな。でもあれは先にお前が……」

さやか「そのことはまぁ…別にいいんだ。……でも、グリーフシードのために普通の人を見捨てるってのは……」

さやか「あたしは…その考えだけは、許せない」

杏子「……さっきも言ったけど、ハッキリした答えが出るまでは、協力するって言ったろ?」

杏子「協力してる間は…合わせることにするさ。……それでいいか?」

さやか「……今すぐあんたの考え方が変わるとは思ってないけど…今はそれで充分だよ」

さやか「……よろしく、杏子」

杏子「……よろしくな、さやか」

さやか「……さて、それじゃ話も終わったし、帰ろうかね」

マミ「そうね。それじゃ2人とも、今日はこれで」

杏子「アタシはこっちにいる間どうしたもんかな……」

マミ「佐倉さん、もしよかったら私のところに来ない?」

杏子「マミ…いいのか……?」

マミ「えぇ、いいわよ。ふふ、また佐倉さんとこんな風にできるなんて思わなかったわ」

杏子「それは…アタシもさ。……またよろしく頼むよ」

マミ「佐倉さん…また、よろしくね。……それじゃ、そろそろ行きましょうか」

まどか「あ、みんな!帰る前にお土産持ってって!」

さやか「お土産って…さっきのお菓子じゃん」

まどか「買いすぎてとても食べられそうにないから……」

さやか「はぁ…まぁ、くれるならもらってくよ。……それじゃ、またね」

>>268修正


さやか「……さて、それじゃ話も終わったし、帰ろうかね」

マミ「そうね。それじゃ2人とも、今日はこれで」

杏子「アタシはこっちにいる間どうしたもんか……」

マミ「佐倉さん、もしよかったら私のところに来ない?」

杏子「マミ…いいのか……?」

マミ「えぇ、いいわよ。ふふ、また佐倉さんとこんな風にできるなんて思わなかったわ」

杏子「それは…アタシもさ。……またよろしく頼むよ」

マミ「佐倉さん…また、よろしくね。……それじゃ、そろそろ行きましょうか」

まどか「あ、みんな!帰る前にお土産持ってって!」

さやか「お土産って…さっきのお菓子じゃん」

まどか「買いすぎてとても食べられそうにないから……」

さやか「はぁ…まぁ、くれるならもらってくよ。……それじゃ、またね」

バタン

ほむら「ふぅ……」

まどか「ほむらちゃん、がんばろうね」

ほむら「えぇ…でもまどか、あなた……」

まどか「勝手にあんなこと言ってごめんね。……でも、そのくらいのことはさせてほしいな……」

ほむら「それは構わないけど…どうして私を……?」

まどか「前にも言ったけど、ほむらちゃんが心配なのと…あと、ほむらちゃんが好きだからかな」

ほむら「え……?」

ほむら「ま、まどか、今、その」

まどか「え?何?」

ほむら「い、今…す、好き、って……」

まどか「へ?……あ、いや、違うの!友達として好きってことだから!」

ほむら「そ、そう、そうよね、わかってるわ……」

まどか「わ、わたしお風呂行ってくるね!」バタン

ほむら「はぁ…驚いた……」

プリニー「ほむら様も罪な人ッスねー」

ほむら「な、何のことかしら」

プリニー「蜂の巣になりたくないからこれ以上は言いたくないッス」

ほむら「何なのよ…でも、私を友達として好きって思ってくれている…それだけで十分よ……」

ほむら「そんな風に想われる資格なんて、私にはないのに……」

プリニー「ほむら様……?」

ほむら「……そんな事より、秘技を杏子にも教えてやってほしいのだけど……」

プリニー「あの人は確か槍ッスよね…了解ッス」

ほむら「えぇ、頼んだわよ」

何とかさやかたち3人に対ワルプルギスの夜の協力を取り付けることができた

もうあまり時間はない。いつもより多い武器を集め、魔法少女3人を仲間にすることはできた

だが、まだいくつか不安要素はある

この時間軸に来てからまだ1度も見かけていないインキュベーターと、魔法少女の真実のこと

それに、魔法少女システムの崩壊

特にさやかの魔女化については、一番注意しなければ。さやかの破滅していく姿をまどかに見せるわけにはいかない

万一のときは、最悪の事態になる前に私が何とかしよう。例え、まどかに嫌われることになったとしても

今回はここまで
見て下さってる方、ありがとうございます

次回投下は6日夜を予定しています

強制ゲームオーバーにさせるダーク太陽さんマジ外道
魔法少女の身体が装備品扱いと聞いてヘボクレスボディ思い出した

次から本文

——翌日——

プリニー「今日はここまでにするッス」

杏子「お、そうかい?アタシはもうちょい続けてもいいんだけどな」

ほむら「根詰めてもいいことはないわ。今日のところは切り上げましょう」

さやか「あ、あんたら…何でそんな平気な顔してんのさ……」ゼェゼェ

杏子「トーシロじゃないから」

ほむら「激しく動き回ったりしないから」

さやか「うう……」

昨日プリニーに頼んでおいた通り、杏子を特訓に参加させる

最初は胡散臭そうな顔をしていた杏子も、それが本物であるとわかってからは熱心に特訓を受けていた

私たちが先に打ち解けたことが幸いしたのか、杏子とさやかも打ち解けることができたようだ

プリニー「それにしても魔力があるとはいえ…習得が早いッスね。魔族でもないッスのに……」

プリニー「その魔法少女というヤツは人間じゃないんじゃないスか?」

ほむら「……っ」

さやか「何失礼なこと言ってんのかねこのペンギンは…さやかちゃんみたいな美少女捕まえておいて人間じゃないだってぇ?」

杏子「何言ってんだお前は…ほむら、どうした?」

ほむら「……いえ、何でもないわ。それよりも早く帰りましょう」

さやか「そうだね…何だか降ってきそうな空だなぁ……」

杏子「なぁほむら、またまどかの夕飯、食わせてくれよ」

ほむら「別に構わないと思うけど…まどかに聞いてみるわ」

杏子「頼んだよ。……そういやまどかって何でほむらの家に住んでるんだ?」

さやか「それはねぇ…まどかがほむらの嫁になるって言い出してね……」

ほむら「何を言ってるのあなたは…私の目の届くところにいてくれた方が助かるのよ」

杏子「まぁあの家だからな…まどかがいてくれた方がそりゃ助かるだろうよ」

さやか「前来たときと比べて色々と物が増えてたよね。ほとんどまどかの物だけど」

ほむら「そういう意味ではないのだけど……!」

他愛もない話をしながら帰り道を歩いていると、ソウルジェムに反応があった

この反応、どうやら魔女のようだ

さやかと杏子も気づいたらしく、私たちはそのまま反応のあった方へと急いだ

——結界内——

さやか「今日はもう疲れてるから勘弁してほしいんだけどなぁ……」

杏子「出ちまったもんは仕方ねぇだろ。雨も降りそうだし、早いとこ倒して帰ろうぜ」

さやか「そういえば、マミさんに連絡は?」

杏子「さっきしてみたけど、時間かかるとさ」

さやか「そっか…あたしたちだけで頑張るとしますか」

ほむら「それじゃ、行きましょうか」

——————

さやか「……あいつが魔女、かな。真っ黒でよくわかんないけど……」

ほむら「そうね。さやか、あなたは魔女との戦いは初めてだろうから、気をつけて」

さやか「わかってるよ。それじゃ行くよ!」ダッ

杏子「ほむら!援護、頼んだ!」

ほむら「えぇ、任せなさい」ジャキ

とはいえ、影の魔女相手に私の銃の秘技はあまり役に立ちそうもない

マミがいればだいぶ楽なのだが、いない人のことを言っても仕方ない

私は盾から機関銃を引っ張り出すと、影の魔女へ向けて引き金を引いた

ズドドドド

魔女「……!」

さやか「最近戦ってるの見てないから忘れてたけど…ほむらってあんまり魔法少女って感じじゃないよね……」

杏子「どこの世界に機関銃ブッ放つ魔法少女がいるんだよ…っと、何か出てきやがったな……!」

さやか「なんだろ、あれ…まぁいいや、杏子!突っ切るよ!」

杏子「おう!」

さやか「よし、行くよ!」ズバン

杏子「うらあっ!」ズバン

さやか「てい!」ズバン

杏子「はっ!」ズバン

さやか「ぽこーん!」ズバン

杏子「かにみそっ!」ズバン

さやか「あーもう、キリがないよ!」ズバン

杏子「マミがいてくれりゃ、もう少しは楽だった…な!」ズバン

さやか「杏子!こっち、1人で持たせられる!?」ズバン

杏子「あぁ!?何する気だ!?」

さやか「ここを突っ切って、魔女を叩く!」チャキ

杏子「はぁ!?」

さやか「行くよ……!一文字…スラッシュ!!」ズバァン

杏子「抜けた……!」

さやか「このまま魔女を……!」ダッ

魔女「!」ワサワサ

さやか「うわっ、何か生えて……!」

魔女「!」ズアア

さやか「うわ……」

ズドドドド

魔女「……!」ズガガガ

さやか「……あ、あれ?」

ほむら「さやか、今よ!」

さやか「ほむら…わかった!」ダッ

魔女「……!」ワサワサ

さやか「させるか!」バシュウ

魔女「!」ズドン

さやか「これで、トドメだっ!!」ズバン

魔女「!!」

カラン

さやか「……やった?あたし、倒したの……?」

ほむら「お疲れさま、2人とも」

杏子「初陣にしちゃ、よくやったな」

さやか「特訓してた時間なら、杏子より長いしね。よし、魔女も倒したことだし帰ろうよ」

ほむら「待って…何か変よ」

おかしい。魔女は倒したはずなのに、いつまでたっても結界が消滅しないなんて……

それどころか、結界の風景が変化していき、何やら開けた広場のようなところに変わっていった

何か嫌な予感がする。私は盾からプリニー隊を召喚し、辺りに展開させる

杏子「一体どうなってんだ…こりゃ」

さやか「それに何だろう…何だか寒気がするよ」

プリニー「この感じ…まるで魔界ッス……」

ほむら「……何かいるわ。注意して」

私の視線の先には、1匹の魔物と思しき生き物がいた

狼のような体躯のそれは、頭にブレードを生やし、およそ人間界には存在し得ない生き物だった

その生物はこちらを睨みつけ、唸り声を上げていた

さやか「……何、あれ」

ほむら「プリニー、あれは……」

プリニー「間違いなく魔物ッス。幻獣族…この間の妖魔族とは比べものにならないほど強いッス」

杏子「アレがその魔物って奴か…なるほど、使い魔なんかよりよっぽど強そうだな……」

さやか「とにかく、あいつを倒さないと……!」ダッ

プリニー「あ、さやか、待つッス!そいつは……」

幻獣族「グルルルル……」

さやか「大人しく成敗されろー!ワン公!」

幻獣族「グオオ……!」ヒュン

さやか「え!?ちょ、ちょっと……!」

幻獣族「ガアアアア!」ブオン

さやか「な、何こいつ、速い……!」ギィン

幻獣族「グガアアアア!」

さやか「しまっ……」

ギィン

さやか「あ…あれ?」

杏子「1人で突っ走るなっての、半人前のくせしてさ」

ほむら「あなたに死なれると困るのよ。色々と」

さやか「ほむら、杏子…よし、それじゃ協力してあいつを……!」

幻獣族「グルルル……」

私と杏子が加勢するも、魔物の目はさやかを睨んで離さなかった

どうやら魔物の狙いはさやかのようだ

ほむら「さやか、奴の狙いはあなたよ。気をつけて」

さやか「わかった…さっきは不意を突かれたけど、ワン公になんか負けるもんか……!」

プリニー「来るッスよ!」

幻獣族「グオオオ!」ブオン

さやか「そう何度も同じことを……!」ギィン

幻獣族「……!」

さやか「そこだっ!」ズバン

幻獣族「ガアッ!」

さやか「へっ、どんなもんよ!」

幻獣族「グルル……」

杏子「気ぃ抜くな!また来るぞ!」

幻獣族「ガアアア!」

プリニー隊「オレたちは加勢しなくていいんスかね……?」

プリニー隊「オレたちでは幻獣族にはとても敵わないッス…ほむら様たちとリーダーに任せるッス」

プリニー隊「自分にできることを全力で頑張るッス。とりあえず戦いを見守りつつ、周囲の警戒をするッスよ」

『グルル……』

プリニー隊「……あれ、今何か聞こえなかったッスか?」

プリニー隊「オレには何も聞こえなかったッスけど…気のせいだと思うッス」

プリニー隊「それならいいんスけど……」

幻獣族「グルルル……」

さやか「くそ…速い……!」

杏子「攻撃が…当たらねぇ……」

ほむら「……どうしたものかしらね」

幻獣族へ攻撃を続けるが、そのスピードに翻弄され続ける

速さだけで考えれば、さやかなら追いつけるとは思う。だが、さやかはまだ戦い慣れていない

何にせよ、まずはアイツの動きを封じなければ。そう思っていたときだった

幻獣族「……」バッ

さやか「……?距離を……?」

プリニー「……!さやか!気をつけるッス!」

さやか「え?プリニー、急に何……」

幻獣族「ガアアアアア!!」ドッ

さやか「ちょっ!?な、何こいつ、急に攻撃が……!」ギリギリ

杏子「さやか!テメェ……!」ブン

幻獣族「ガァッ」バッ

さやか「ありがと、杏子…どうなってんの?攻撃の威力が……」

プリニー「オレたちが投げられると爆発するように…魔物は種族ごとに色んな特殊能力を持っているッス」

プリニー「幻獣族は…遠距離であればあるほど、その攻撃が鋭く、重くなるッス」

杏子「おっかねぇな…そんなんに貫かれちまったらお陀仏だな……」

ほむら「それなら、なおさら奴の足を止めないと危ないわね。……私に任せて」ジャキ

ほむら「行くわよ……!ディビジョンバレット!!」バシュウ

パァン

幻獣族「……!」

さやか「ほむら!?弾けてどっか飛んでっちゃったよ!?」

ほむら「あれでいいの。……あとは弾が戻って来るまで……!」

ほむら「三連星射!!」バァンバァン

幻獣族「グオオ……!」ダッ

ほむら「……そこ!」バァン

幻獣族「グガッ……!」

杏子「さっきの弾が戻って……!」

ほむら「逃がしはしないわ。食らいなさい……!」

ズドォン

幻獣族「グガァッ!」

プリニー「足に当たったッス!これでもう走れないッスよ!」

杏子「アタシが捕らえる!行くよ!」ジャラジャラ

幻獣族「グ……」バッ

杏子「遅いよ!そこだっ!」グルグル

杏子「さやか!やっちまえ!」

さやか「わかった!行くよ……!」

さやか「でりゃあっ!!」ズバァン

幻獣族「グガアアアアアア!!」

さやかの一撃を受けた魔物は断末魔の悲鳴を上げてその場に倒れ伏した

随分と苦戦したが、どうにか倒したようだ

さやか「ふぅ…なんとか倒したね……」

杏子「みたいだな……」

ほむら「お疲れさま。魔女に魔物と立て続けに倒すなんて凄いじゃない」

さやか「そう…かな?少しは自信ついたかも」

プリニー「でもちょっとおかしいッス……」

ほむら「おかしい?魔物が現れたことが?」

プリニー「それもそうッスが、人間界でも魔界と変わらない強さなのがおかしいッス」

プリニー「きっとこの魔界に似た結界が関係してると思うッス…何だか嫌な予感がするッス……」

さやか「大丈夫だって、魔神だろうが魔王だろうがこのさやかちゃんがバッサバッサと……」

杏子「調子に乗るなっての」

ほむら「それにしても、同じ魔物でもこうも違うものなのね……」

杏子「そうなのか?アタシは今回初めて戦ったけどよ…確かにプリニーより強かったな」

プリニー「幻獣族は結構強い部類ッス。……まぁ、オレたちから見たら大抵のは強いってことになるんスけど」

さやか「あたしらが秘技覚えるみたいにプリニーも特訓して強くなった方がいいんじゃないかな。ほら、周りでいっぱいやられてるよ」

ほむら「え……?」

さやかのその言葉を聞いて、私は辺りを見回す

展開させていたプリニー隊のほとんどが、いつの間にかやられてしまっていた

あの魔物は常に視界に捉えていた。となると、答えは……

ほむら「さやか!杏子!まだ何かいるわ!」

さやか「え?そのプリニーたち、魔物にやられたんじゃないの?」

杏子「今の魔物は違うだろうな。ずっとこっち攻撃してきてたし、アタシも見てたからな」

まだこの結界に何かがいる。今と同じ魔物か、また別のものか……

私は周囲を警戒しつつ、やられたプリニーたちを回収していった

そして全てのプリニーを回収し終え、ふと上を見上げると月のようなものが映し出されていた

さやか「ねぇ…あの月って、最初からあったっけ……?」

杏子「いや、なかったと思うが……」

プリニー「あの月…まさか幻獣族の……!」

ほむら「それにしても、いつまでも隠れてるなんてどういうつもり……」

ズドン

ほむら「ぐ…ッ……」

さやか「え……」

杏子「ほむら……?」

背後に何かの気配を感じ、振り返ろうとした次の瞬間、背中に何かが当たったような気がした

それと同時に、胸と背中に激しい痛みを感じた

何が起こったのかわからず、胸を見てみると

魔物の頭のブレードに、胸を貫かれていた

幻獣族「グルルル……」

ほむら「か…は……」

私に一撃を食らわせた魔物が剣を引き抜いて距離を取る

私の胸からは夥しい量の血が噴水のように噴き出した

杏子「おい、ほむら…ほむら!クソ、あの犬ッコロ!!」

さやか「ほむら!今治療を……!」

プリニー「ほむら様、しっかりするッス!ご主人がやられたら、オレたちは……!」

ほむら「ごふ…っ……」

逆流した血が口から溢れ出す

痛覚は遮断したが、胸…それも心臓をやられたせいで上手く息が出来ない

さやかたちが何かを言っているが、よく聞き取れない

魔力で修復を行うも、どうにも間に合いそうもなかった。そして

朦朧としていた私の意識は、次第に暗転していった

今回はここまで
見て下さってる方、ありがとうございます

次回投下は7日夜を予定しています

???「魔法なんて必要ないわ。レベルを上げて物理で殴ればいい」

本文の前に修正点があるので修正

>>313修正


ズドン

ほむら「ぐ…ッ……」

さやか「え……」

杏子「ほむら……?」

背後に何かの気配を感じ、振り返ろうとした次の瞬間、背中に何かが当たったような気がした

それと同時に、胸と背中に激しい痛みを感じた

何が起こったのかわからず、胸を見てみると

魔物の頭のブレードに、胸を貫かれていた

幻獣族「グルルル……」

ほむら「か…は……」

私に一撃を食らわせた魔物がブレードを引き抜いて距離を取る

私の胸からは夥しい量の血が噴水のように噴き出した

修正おわり

次から本文

——————

あれからどれだけの時間が経ったのだろうか

どうやら気を失っていたらしく、布団のような柔らかい物の上に寝かされていた

貫かれたはずの胸に痛みはなく、誰かが治療してくれたのだろう

いつまでも寝ているわけにもいかない。起き上がろうとしたところで、彼女たちの会話が聞こえてきた

私はそのまま、気を失っているふりをして、彼女たちの話を聞くことにした

『あたしが…あたしがもっと、周りに注意してればこんなこと……』

『それはオレたちがやっていたことッス…オレたちが簡単にやられたことが原因ッス……』

『きっと…プリニーたちがいれば、何かあればすぐに教えてくれるって…そう思って、気が緩んでたんだよ……』

『それがこんなことになるなんて…あたし、自分が……』

『ほむら様…ほむら様がいなくなったら、オレたちはどうしたらいいんスか……』

どんよりと沈んださやかとプリニーの会話が聞こえてくる。どうやら私が死んだと思っているようだ

心臓を貫かれて生きているはずがない。きっとそう思っているのだろう

『どうにも…どうにもならねぇのか、マミ!』

『傷の治療はしたわ…でも……』

『クソ…クソッ!!』

『暁美さん…ごめんなさい、私が遅れてしまったせいで、あなたを……!』

怒気を孕んだ杏子と、それに返答するマミの声が聞こえてくる

こちらの2人も似たような考えなのだろう

修復が終わったあたりで心臓は動きだしていたと思うが、気が付かなかったのだろう

『ほむらちゃん…起きてよ、ほむらちゃん……』

私のすぐ側からまどかの声が聞こえる

まどかのことだ。恐らく、ずっと側にいてくれたのだろう

『ほむらちゃん…わたし、ほむらちゃんのこと、まだ何も聞いてないよ……』

『どうしてわたしのことを信頼してくれてるか、まだ答えを聞いてないよ…それなのに……』

『魔法少女は…死と隣り合わせだって…そう、言ってたよね……。でも……!』

『こんな…こんなのってないよ…あんまりだよ……!』

そう言うとまどかは、私の手を握る。そしてそのまま、声を上げて泣き崩れた

これ以上、まどかを悲しませるわけにはいかない。そろそろ起きなければ

しかし、起きたらこの身体のことできっと厄介なことになるだろう

だからと言ってずっと死んだふりをしているわけにもいかない。覚悟を決め、私は体を動かした

ほむら「まどか……」

私は泣いているまどかの手を握り返す

それに気づいたまどかがこちらへ顔を向ける

まどか「え…ほむら…ちゃん……?」

ほむら「えぇ。心配させたみたいで……」

まどか「ほむらちゃんっ!!」ギュウ

言葉を言い切る前に私はまどかに思いきり抱きしめられてしまった

泣きじゃくっているまどかを、私は優しく抱きしめた

ほむら「まどか…心配させてしまってごめんなさい」

まどか「ほむらちゃん…ほむらちゃん、わたし……!」

さやか「あわわわわ…ほほほほむ、ほむほむ……」

プリニー「ささささやか落ち着くッス……」

杏子「ど、どうなってんだ…コイツ、確かにあの時……」

マミ「えぇ、治療のときにはもう…目的への執念で蘇った、とか……?」

ほむら「勝手に殺さないで頂戴。それよりも、あの魔物は?」

杏子「あ、あぁ…ほむらがやられたあと、アタシとさやか、プリニーで倒したよ」

プリニー「2体目を倒したらちゃんと結界は消滅したッス」

マミ「ちょうどそこに私が到着して、急いであなたの家まで運んで治療したのよ」

ほむら「そう…あなたたちにも迷惑かけたわね。ごめんなさい」

私が気を失っている間に起こったことは把握した

気になるのはどうして結界に魔物が現れるのかということと、プリニーの言う魔界のような結界のことだ

魔界絡みのことについて考えていると、杏子が聞いてほしくないことについて聞いてきた

杏子「なぁ…何でほむらはあれだけの怪我でも生きてるんだ……?」

マミ「佐倉さん?」

杏子「いや、だってそうだろ?いくら魔法で怪我を治せるって言ってもな……」

杏子「普通、心臓貫かれりゃ、その時点でお陀仏だろ?」

さやか「それは…まぁ……」

プリニー「そう言われるとそうッスよね……」

杏子「それをコイツは傷を治してやったらまた起き上がりやがったんだ…一体どういうことなんだ?」

ほむら「……できることなら話したくはないわ。話したくない理由もある。それでも…聞きたいのかしら」

杏子「……ここまで話さなかったってことは、その理由がよっぽどのことなんだと思うけどよ……」

杏子「でも、聞いておかなきゃいけない…そんな気がするんだよ」

ほむら「さやかとマミも同じ意見かしら……?」

さやか「……うん」

マミ「怖いけど、でも…聞かせてほしいわね」

ほむら「そう…まどか、もう十分抱きついたでしょう?そろそろ離してくれると助かるのだけど」

まどか「あ…うん、ごめんねほむらちゃん、わたし……」

私に抱きついていたまどかが手を離す

それにしてもどうしたものか。それらしい話をもっともらしく話した方がいいのだろうか

正直に全部話してしまえば、恐らくあの惨劇を繰り返すことになってしまう。何か…何かいい考えは……

『それについては僕から説明するよ』

どこからか、忌々しい声が聞こえてくる。声のした方へ視線を向けると、部屋のドアの前にそいつは座っていた

真っ白な体。長い耳。大きい尻尾。そして…悪魔のような、真紅の瞳

どこからか現れたインキュベーターが、ゆらゆらと尻尾を揺らしながらこちらを見ていた

ほむら「キュゥべえ……!」

QB「はじめまして、暁美ほむら。もっとも、君は僕を知っているようだけどね」

プリニー「そのキュゥべえってのがいるッスか?……オレには見えないみたいッスね……」

QB「見えない者がいると不便だね…仕方ない、この場にいる全員に見えるようにしよう」パァァ

プリニー「……あの、ドアの前にいる奴がそのキュゥべえって奴ッスか…正直オレたちプリニーの方が愛嬌があるッスよ」

さやか「いや、五十歩百歩だと思うけど……」

マミ「それにしても、最近キュゥべえは何をしているの?全然帰ってきてくれないから、少し寂しいわ」

QB「ちょっとやることがあってね。それが終わるまでは待っていてくれないかい?」

マミ「そう…わかったわ。今はもう1人じゃないし、大丈夫よ」

この時間軸に来てからインキュベーターに会うのは初めてだった

以前杏子が言っていた、魔法少女システム崩壊のことについて問い質したいが、今はこの場を切り抜けるのが先だ

ほむら「それで…一体何の用かしら」

QB「君たちが抱いている魔法少女についての疑問を僕が教えてあげようと思ってね」

QB「暁美ほむら、君は全てを知っているようだけど、他のみんなに隠しておく必要はないんじゃないかな」

ほむら「彼女たちには隠していたわけじゃない。教える必要がなかっただけ」

QB「確かに、訊かれなければ教える必要はないね。でも今はどうだい?杏子はそのことについて疑問に思っているようだけど?」

ほむら「それは……」

QB「杏子の疑問に答えようか。何故ほむらが心臓を貫かれても生きていられるか」

インキュベーターが魔法少女の核心部分へと話を進めようとしている

他のみんなはその話に聞き入ってしまっていた

QB「どうして心臓を貫かれて生きているか。それは……」

ほむら「黙りなさい……」

QB「魔法少女というのはそもそも、魔法少女となった時点で、普通の人間とは違う構造になるんだ」

ほむら「黙りなさい……!」

QB「生身の肉体で戦えば、いつか傷ついて死んでしまう。そんなことが起こらないように、君たちの魂を……」

ほむら「黙れ!!」

そう叫ぶと同時に私は魔法少女に変身し、盾から銃を抜く

そしてインキュベーターに向けて、銃弾を撃ち込んだ

ほむら「ハァ…ハァ…」

まどか「ほ、ほむらちゃん……?」

プリニー「ほむら様、落ち着くッス!」

さやか「ちょっとほむら、何も殺すこと……」

マミ「暁美さん、どういうつもり?キュゥべえを殺すなんて」

杏子「全部言い切る前に死んじまったぞ…魂が、何だって?」

アイツを殺したところで何の解決にもならない

次のインキュベーターが来る前に、ここから離れなければ

ほむら「みんな、私の……」

QB「逃げたって無駄だよ」

ほむら「く……!」

QB「逃げたところで、その逃げた先でまた同じ話をするまでだよ」

マミ「え?キュゥべえ?え、でも、あそこに……」

QB「何も僕は1体しかいないわけじゃないよ。ちょっと待っててね、あれを処分するから……」

そう言って新しいインキュベーターは死体となっているインキュベーターに貪りつく

しばらくして、死体を食べ終えたインキュベーターがこちらに振り返った

QB「きゅっぷい。さて、話の続きなんだけど…えっと、どこまで話したっけ……」

プリニー「まさか食べるとは思わなかったッス…魔物のオレもちょっと引くッス……」

杏子「魂がどうとか、って言ってたぞ」

QB「あぁ、そこまでだったね。つまり、簡単には死なないように構造を作り変えるんだ」

さやか「作り変える……?どういうこと?」

ほむら「駄目よ……!そいつの話に耳を貸さないで!」

そう叫んでみるも、インキュベーターは私を無視して話を続ける

ついに、私を除いた全員を絶望のどん底に突き落とす話を始めてしまった

QB「ソウルジェムがどうしてソウルジェムと言うのか?それは言葉通り、それが君たちの魂で作られた宝石だからだよ」

QB「君たちの肉体から魂を抜き取って、ソウルジェムに作り変える。それが魔法少女の契約さ」

QB「魂の抜けた肉体は言わば操り人形のようなものだ。傷つき壊れても、魔法で修復してやればまたすぐ動けるようになる」

QB「例え、心臓を貫かれようが、ありったけの血を流そうともね」

杏子「オイ…それじゃ、アタシたちは……!」

QB「うん。君たち魔法少女の身体は今までの肉体じゃない。そのソウルジェムだ」

QB「ソウルジェムが本体で、その本体が肉体を操って動かしている…と言えば分かりやすいかな」

マミ「ちょっと待って…それじゃ私たちは……」

杏子「ゾンビにされちまったようなモンじゃねぇか……!」

さやか「キュゥべえ…あんた、あたしたちを騙して魔法少女に……!」

QB「騙したわけじゃないよ。魔法少女の真の姿がどういったものか、説明は省略したけれど」

QB「魔法少女になることを決めたのは君たちの意思だ。現に願いも叶っているじゃないか」

さやか「だからって…こんな姿にされるなんて聞いてない!」

QB「ともかく、そういう理由でほむらは心臓をやられても生きていられるわけだよ。その身体の有用性はそれを見ればわかってくれるんじゃないかな」

杏子「ふざけんじゃねぇぞ!人の魂に勝手な真似しやがって!」

QB「ソウルジェムとしなければ見えもしない魂の在処にどうしてそこまでこだわるんだい?わけがわからないよ」

杏子「テメェ……!」

プリニー「……アンタ、悪魔よりも悪魔らしいッス……!」

マミ「キュゥべえ…あなた、私を騙していたの……?」

QB「さっきも言ったけど、説明はしなかったけれど魔法少女になると決めたのは君だよ、マミ」

QB「それに魔法少女にならなければ、君はあのとき死んでいたんじゃないかな?」

マミ「その方がよかったのかもしれないわね…人として死ねたのなら……」

QB「やれやれ…まどか、君にも叶えたい願いがあるのなら、魔法少女に……」

まどか「ふざけないで…何で、何でこんなこと……!」

QB「それは、僕たちの目的のためさ」

まどか「その目的のために…さやかちゃんやマミさん、杏子ちゃん…それに、ほむらちゃんを利用してるの……?」

QB「利用じゃなく協力と言ってほしいな。ちゃんと願いをひとつ叶えるという見返りの上で契約してもらってるんだよ」

まどか「そんなの……!」

ほむら「そこまでにしなさい、インキュベーター」

ほむら「それ以上何か喋るというのなら、お前たちにとって一番都合の悪い話、ここでぶちまけるわよ?」

インキュベーターの話を遮る形で私が口を開く。言った後で思ったがこの発言、一種の賭けだ

今ここでその話をしてしまえば、杏子はともかく、さやかとマミが魔女化してしまうような気がした

インキュベーターは少し考えるような仕草のあと、こう言った

QB「どういう理由で僕の正体とその話を知ったのかはわからないけど、今日のところは帰らせてもらうよ」

QB「今ここでその話をされても、お互いに利益にならなさそうだしね」

ほむら「そう。なら今すぐ消えなさい」

QB「わかったよ。それより、君も僕に訊きたいことがあるんじゃないのかい?」

ほむら「彼女たちを放っておいてまで聞くべきことじゃないわ」

QB「そうかい…そうだ、ひとついいことを教えてあげるよ」

ほむら「……?」

QB「魔界を知っているのが自分たちだけだと思わないほうがいいよ。僕たちだってその存在は知っているんだ」

ほむら「なっ……」

QB「魂を抜き取ってソウルジェムへ変える技術。その一部に、魔界の技術を使わせてもらったよ」

QB「元々魂を抜き出すだけなら僕たちの技術だけでも可能だったけど、魔界の技術のおかげでずっと効率が良くなったよ」

ほむら「何ですって……?」

QB「それじゃあこの辺で僕は帰るよ。それじゃあまた。ほむら、プリニー」

そう言ってインキュベーターは闇に消えていった

聞きたいことは聞けなかったが、わかったことがある

奴は…インキュベーターは魔界を知っている

プリニー「……あのキュゥべえって奴は、どうして魔界を知っているッスか……?」

ほむら「わからないわ……」

プリニーたちに出会ったときにも思ったが、やはりこの時間軸…いつもと違う。魔界というものが大きく関わっている

いつもと違う時間軸だろうが、私のやることは変わらない。まどかとの約束を果たす…それだけだ

それよりも、今はあの3人を何とかしなければ

ほむら「みんな、私の話を聞いて頂戴」

まどか「あ…ほむらちゃん……」

ほむら「まどか…大丈夫?」

まどか「うん、わたしは…でもみんなが……」

ほむら「話をしたいけど…まずは落ち着かせないと。まどか、プリニー、手伝って」

まどか「うん……」

プリニー「了解ッス」

私たちは3人を宥め、何とか落ち着かせることができた

3人は平静を装ってはいたが、憔悴した顔をしていた

杏子「……ほむらが隠してたのはあのこと…だったのか……」

ほむら「えぇ。あんな内容だから、話したくなかったの」

杏子「アタシがあんなこと聞かなければな…本当にごめん……」

ほむら「……いつかは明るみに出たことよ。気にしないで」

まどか「さやかちゃん、マミさん…大丈夫……?」

マミ「えぇ…まだちょっと整理がつかないけど……」

さやか「あたしも…まだ色々と混乱してるよ……」

プリニー「でもまさか…ここで魔界が出てくるとは思わなかったッス……」

ほむら「それも気になるけど…まず魔法少女のことについて話しましょう」

私は魔法少女の秘密についての一部を話した

魔女化のことは今この場で話すのは得策ではない。全員が落ち着きを取り戻してから、後日話すことにした

ほむら「……以上よ」

さやか「あたし…ほんとに、もう……」

マミ「これが砕けたとき、私は……」

まどか「さやかちゃん…マミさん……」

杏子「今まで散々好き放題できたのはこの身体のおかげとはいえ…あー、クソ…次会ったら風穴開けてやる……」

プリニー「杏子は割と平気みたいッスね」

杏子「そうでもねぇよ…こう見えてもハラワタ煮えくり返ってるさ……!」

さやか「ねぇほむら…あたし…あたしたちはもう…人間には戻れないの……?」

杏子「さやか?」

マミ「そう…ね…戻る手段があるのなら……」

ほむら「そんな手段…無いわね」

さやか「……そっか、そうだよね…そんなうまい話、ないよね……」

さやか「……いや、あるじゃん…ひとつだけ方法が、さ……」

まどか「……?」

そう言ってさやかはまどかを見やる

さやかの言う方法とは、まさか……

さやか「まどかがさ、あたしたちを人間に戻して、って願いで契約したら、きっと……」

まどか「さ、さやか…ちゃん……?」

プリニー「さやか、アンタ何を言って……」

さやか「ねぇ、いいでしょ?あんた、自慢できることがないって言ってたじゃない」

さやか「あたしたちを人間に戻して、それで魔法少女になれば、それはもう立派に自慢できること……」

ふらふらとした足取りでまどかに詰め寄る。錯乱しているのか、その目はどこかおかしかった

私はその間に割って入り、さやかと向き合う

ほむら「さやか…あなた、一体どういうつもりかしら」

さやか「別に何も…ただ、まどかに助けてってお願いしてるだけだよ……」

ほむら「まどかを巻き込まないでと、そう言ってるのよ」

さやか「あんたさ…随分まどかを気にかけてるみたいだけど、一体何なのさ……」

本当はこんな形で私の戦う理由を明かすつもりはなかった。だけど……

私の…立場を明確にしないと話が進まない。そう思い、私は自分の戦う理由を話した

ほむら「私は…まどかを守る為にここにいる。まどかの害になるのなら、あなたでも容赦しない」

杏子「まどかを……」

マミ「守る……?」

まどか「ほむらちゃん…わたしを……?」

さやか「まどかは守るのにさ…同じ魔法少女のあたしは……?守ってくれないの……?」

ほむら「……仲間というのなら協力はするわ」

さやか「仲間…ね…その言葉、今のあたしはちょっと信じられないんだよね……」

まどか「さやかちゃん…何でそんな……」

さやか「ただなんとなくそう思ったんだよ…ごめん、あたしこれで帰る……」

さやか「それとさ、明日からはあたし1人でやらせてもらうから…それじゃ……」バタン

まどか「さやかちゃ……」

杏子「さやかの奴、大丈夫か……?」

プリニー「かなりショックを受けてたみたいッスから…心配ッス……」

ほむら「……」

杏子「ほむらのせいじゃねぇよ、全部騙してたアイツのせいさ。……アタシも今日のところは帰らせてもらうよ」

ほむら「えぇ…マミのこと、お願いするわ」

杏子「あぁ。……おいマミ、大丈夫か?帰るぞ」

マミ「佐倉さん…私……」

杏子「話ならマミの家帰ったら聞いてやる…だから帰ろうぜ」

マミ「そうね…暁美さん、お邪魔したわね……」

ほむら「玄関まで送るわ」

杏子「……今日は悪かったな…それじゃ、またな」

マミ「また…明日ね……」

ほむら「えぇ、また」

バタン

ほむら「……」

杏子は真っ青な顔をしたマミを連れて帰って行った

1人玄関に残った私はしばらくそこに立ち尽くした

自分の不甲斐なさが許せなかった。インキュベーターに付け入る隙を与えてしまった自分が……

ほむら「……ッ!」

情けない自分が許せない。腹立たしい。憎らしい。何とか堪えようと歯を食いしばる。そして

私は自分の側の壁を、思い切り殴りつけた

今回はここまで
見て下さってる方、ありがとうございます

次回投下は7日夜を予定しています

予定まちがえた

次回投下は8日夜を予定しています

さやかくんは殿下も恐れる凶悪アイテムである馬のアレでも装備してるんじゃないですかね

次から本文

——数日後——

まどか「ねぇ…さやかちゃん……」

さやか「……何?」

まどか「あ…えっと…さやかちゃん、戻ってきてくれないかな、って……」

さやか「……言ったはずでしょ、あたしは1人でやるって。話はそれだけなら、もう行くよ」

まどか「あ……」

ほむら「待ちなさい」

さやか「何……?まどかを守るのが目的なら、あたしに用なんかないはずでしょ……」

ほむら「あなた、ソウルジェムがもう相当濁ってるはずでしょう?これ、使いなさい」スッ

さやか「そうやって恩を売って、何が目的……?」

ほむら「敵対するというのなら、せめて利用してやろうとは思わないのかしら?」

さやか「……どっちにしろ、あんたの助けなんかいらない。……それじゃ」

さやかが私たちと決別してから数日。一応は学校にも来ているようだが、私たちとは必要以上に関わろうとしなかった

それよりも、さやかのソウルジェムの状態が心配だ

1人で戦っているということに加え、精神状態が不安定なこともある。いつも以上の速さで濁っているはずだ

彼女が魔女となる前に説得するのが最善だが、それが不可能なら、私は……

まどか「さやかちゃん……」

ほむら「……まどか、今日のところは私たちも帰りましょう」

まどか「わたし…さやかちゃんのところ行ってくるよ。……やっぱり心配だもん」

ほむら「……わかったわ。私は先に帰るわね」

まどか「うん。それじゃほむらちゃん、また後で」

まどか「えっと、さやかちゃんは…いた、さやかちゃ……」

まどか「……?誰かと話してる…仁美ちゃん……?」

まどか「何だろう…よく聞こえないけど、あんまりいい話じゃないみたい……」

まどか「あ…一緒に帰るのかな……?わたしは…どうしよう……」

まどか「……グズグズしてても仕方ないよね。2人には悪いけど…後ろからこっそりついて行こう」

まどか「さっきの話、何だか嫌な予感がするし…大丈夫、だよね……」

——————

ほむら「……」

銃の手入れをしながら、まどかの帰りを待つ

さやかを説得したいところだが、どうにも私の話は聞いてもらえそうもない

でも、まどかなら今のさやかでも話を聞いてくれる。私はそう信じてる

プリニー「みんなは…大丈夫ッスかね……」

ほむら「杏子は問題ないわ。マミももう立ち直ったみたいだから、大丈夫だと思う」

ほむら「心配なのは…まどかとさやかよ」

プリニー「さやかはわかるッスが、まどか様もッスか?」

ほむら「えぇ。あの子は魔法少女じゃないけど…だからこその心配もあるわ」

あの日以来、まどかはずっと何かに怯えているような感じがしていた。本人に聞いても教えてはくれなかったが

まどかはきっと、私たちの誰かがいなくなるのが怖いのだと思う

本来なら死んでいるような大怪我をした私に、単独行動を始めたさやか。あの日の出来事がよほど堪えたのだろう

そこに付け込まれて契約を迫られないかが心配だ

さやかについては…まどか1人でどうにもならないのなら、マミと杏子にも協力してもらおう

ほむら「……それにしても…まどか、帰ってこないわね」

プリニー「そう言われると…いつもならもう家にいる時間ッスね」

Prrrrrrrr

ほむら「あら、電話…まどかから?」ピッ

ほむら「まどか?どうしたのかしら?」

まどか『あ、ほむらちゃん…さやかちゃんが……』

ほむら「さやか?さやかがどうかしたの?」

まどか『うん、あのね…さやかちゃん、学校の玄関で仁美ちゃんと何か話してて……』

まどか『何話してたか聞こえなかったけど、気になって…こっそりついて行ったの』

まどか『それで喫茶店に入って、2人の話を聞いたんだけど…仁美ちゃん、上条君のことが…好きなんだって』

ほむら「……」

まどか『仁美ちゃん、自分より先にさやかちゃんが告白するべきだって…それを聞かされたさやかちゃん、お店を飛び出して行って……』

まどか『上条君の家の前に着いたところで杏子ちゃんと会って、そこで言い争いを始めちゃったの……』

まどか『それが原因で上条君に怒られちゃって…さやかちゃん、よっぽど堪えたみたいで…走ってどこか行っちゃったんだ……』

ほむら「そう……」

まどか『ねぇほむらちゃん…わたし、嫌な予感がするの。……さやかちゃんに、もう会えなくなっちゃうような気がして……』

まどか『ほむらちゃん、さやかちゃんを探すの、手伝ってほしいんだけど…ダメかな……?』

ほむら「……わかった、私も今からそっちに行くわ」

まどか『う、うん、わかった。ありがとう、ほむらちゃん』

ほむら「それじゃ、また後でね」ピッ

ほむら「さて…行くわよ、プリニー」

プリニー「了解ッス」

志筑仁美の宣戦布告に杏子との言い争い、そして上条恭介からの叱責

彼女のソウルジェムはもう限界に近いはずだ。一刻も早く彼女を見つけなれば

彼女が彼女でなくなってしまう前に……

——————

さやか「……」

さやか「……はは、何してんだろ、あたし……」

さやか「家の前であれだけ派手に言い争ってりゃ、怒られて当たり前なのにね……」

さやか「人ん家の前で言い争って、怒られたからって逃げ出して…ほんと、何してんだろうね、あたしは……」

さやか「ソウルジェム…もう、真っ黒になっちゃったな……」

さやか「……これがあたしの本体ってなら、濁り切ったらきっとよくないんだろうけど…何かもう、どうでもよくなってきた……」

さやか「マミさん…杏子…ほむら…まどか…ごめん、あたしもう、ダメだよ……」

さやか「恭介…伝えられなくてごめん…勇気がなくて本当にごめん…今までありがとう……」

さやか「あたしって、ほんと……」

まどか「さやかちゃん!!」

さやか「まどか……?あんた、何でここに……」

まどか「さやかちゃんが心配で探しに来たの。……みんなも一緒だよ」

杏子「さやか……」

マミ「美樹さん…よかった、心配したのよ……?」

プリニー「そろそろ、戻ってきてほしいッス……」

駅のベンチで項垂れているさやかを見つけ、声をかける。その顔はあのときと同じく、錯乱したような顔をしていた

私は1歩前に出ると、彼女へ向けてグリーフシードを放り投げた

さやか「……だから、何のつもり?」

ほむら「もうソウルジェム、限界なんでしょう?話をする前に、それで浄化しなさい」

さやか「……いい加減しつこいから、貰っとくよ」

そう言ってさやかはグリーフシードをソウルジェムに押し当てる

どす黒く濁っていた彼女のソウルジェムは本来の水色の宝石へと戻っていった

さやか「……これでいいんでしょ?」

ほむら「えぇ。それじゃ、話をしましょうか」

さやか「あんたと話すことなんて…ないね」

ほむら「そっちには無くともこっちにはあるのよ。単独行動なんて始めて、どういうつもりなの?」

さやか「最初から全部知ってたあんたにわかるわけないでしょ…あたしの気持ちなんて……!」

さやか「あんな話…人間じゃないなんて聞かされて、はいそうですかと納得できるわけない……」

さやか「自分だけじゃなくて、魔法少女のみんなも人間じゃないって考えたら…一緒にいられなくなって……」

まどか「それでさやかちゃん、1人で……」

さやか「そうして1人で行動してたらさ…仁美に呼び出されて、恭介のことが好きだって……」

さやか「ゾンビのあたしに…恭介に好きだなんて言う権利…ないよ……!」ポロポロ

さやか「それでさっき、恭介に怒られたときに…もう何もかもどうでもよくなったんだよ……」

まどか「そんな悲しいこと言わないでよ…さやかちゃん、人間……」

さやか「だったら…あんたが魔法少女やりなさいよ……!ほむらに守られてばっかじゃなくてさぁ……!」

まどか「え……」

杏子「オイ…何言ってんだ」

さやか「人間のあんたが…わかったようなこと言わないでよ……!同じ立場に…ゾンビになってみなさいよ!!」

マミ「美樹さん…あなた……」

ほむら「……言ったはずよ。まどかは魔法少女にはさせないと」

さやか「誰も…誰もあたしの気持ちなんてわからないんだよ!ゾンビのあたしが、人間を…好きになるなんて……!」

さやか「身分違いも、いいとこだよ……!」

胸の内をぶちまけたさやかは、その場に泣き崩れた。魔法少女の自分と、人間との恋。その狭間で彼女は苦しんでいる

こればかりは、私は何も言えなかった。私が何かを言ったところで、その恋をどうするかはさやか自身が決めなければならない

誰もが何も言えず押し黙っていると、プリニーがさやかに語りかけた

プリニー「……その気持ち、少しだけわかる気がするッス」

ほむら「……?」

さやか「プリニー……?あんた、何……」

プリニー「魔界にも、そういう身分違いの恋ってのがあるッス。それも、もっと厳しいものが……」

プリニー「……ある魔界を統べていた魔王は…人間の女性と結婚したッス」

マミ「人間と……?」

プリニー「そうッス。そんじょそこらの魔族じゃない、魔王ッス。許されないどころの話じゃないッスよ」

プリニー「その上子供まで授かってるッス。……だから、身分が違うなんて理由で想いを諦める必要なんて、ないッスよ」

さやか「でも…あたしの本体はコレ…なんだよ……?」

プリニー「……オレたちも似たようなものッス」

ほむら「……どういうこと?」

プリニー「オレたちプリニーは、このペンギンみたいな皮の中に魂が込められているッス」

プリニー「その魂がこの身体を操っている…だからある意味、魔法少女と似たような理屈で動いてるッス」

まどか「そうだったんだ……」

プリニー「むしろまともな肉体がある分、魔法少女が羨ましいッス。こっちなんて投げたら爆発ッスよ?」

杏子「何だ、じゃあここにいるのはまどか以外全員中身すっからかんなのか」

マミ「佐倉さん、笑えないわよ……」

さやか「……はぁ…何かバカバカしくなってきたよ、あんたたち見てたら」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「まぁ…身分が違うってことで諦めるなんて…あたしらしくない…よね」

さやか「とんでもない身分差でも結婚した人…うん、人たちもいるんだ。あたし、頑張ってみる」

プリニー「そうッス、頑張るッスよ!」

さやか「うん。……みんな、迷惑かけてごめん。……もう、大丈夫だから」

プリニーに説得されたさやかが立ち上がる

先ほどの錯乱した顔は消え、どこか吹っ切れたような顔をしていた

さやか「まどか…ごめん。あたし、酷いこと言っちゃってた…よね」

まどか「ううん…さやかちゃん、ちょっとだけ疲れてただけなんだよ」

さやか「まどか…ほむらもごめん。邪険な態度しちゃってさ……」

ほむら「……別に私は……」

さやか「それでも、ね。……あーもう!あたしって、ほんとバカ……」

ズズズ…

まどか「え…えっ、結界!?」

さやかの話が終わるのを待っていたかのように結界が現れ、私たちを飲み込んだ

さやかが魔女化したわけでもない。ならこの結界は一体……?

そうこうしているうちに、結界はいつかの魔物が現れたときと同じような、開けた広場のような形に変わっていった

ほむら「さやか、杏子、プリニー…この結界……」

杏子「あぁ…あの犬ッコロのときと同じだな……」

マミ「何かしら、この結界…嫌な感じがする……」

プリニー「……やっぱりこの結界、魔界に似ているッス…どうしてッスか……?」

さやか「またあのワン公が出てくるのかな……?」

ほむら「どうかしら…まどか、あなたはもっと下がって。何が出るかわからないわ」

まどか「……わたしも……」

ほむら「まどか……?」

まどか「……わたしも、戦う。プリニーさん、力を貸して」

ほむら「まどか…あなた、アレで戦うつもりなの……?」

まどか「うん。さっきさやかちゃんも言ってたよね、ほむらちゃんに守られてばかりじゃなく、自分でも戦えって」

さやか「あれは…本心じゃないよ、頭に血が上ってて……」

まどか「それでも、だよ。わたし、みんなの…ほむらちゃんの力になりたい」

ほむら「まどか……」

杏子「ウダウダやってる暇ねぇぞ…魔物のお出ましだ……!」

ほむら「……絶対、絶対に無茶だけはしないで。いいわね?」

まどか「……!うん、わかった!」

プリニー「行くッスよ、まどか様!」

まどか「うん!魔チェンジ!!」

カッ

まどか「これで……!」

まどかとプリニーが魔チェンジするのと同時に、どこからか魔物の大群が現れた

どうやって現れているのかわからないが、今はそれを考えている場合ではない

現れたのは多数の妖魔族に幻獣族が1体…それに、初めて見る樹の巨人のような魔物が1体

プリニー『あれは…樹巨人族ッス。自己治癒能力があって、中途半端な攻撃をしてもすぐに回復されるッス』

杏子「要するにごっついさやかってことか?」

さやか「ちょっと、あたしとあんなの一緒にしないでよ」

プリニー『動きはのろいのが弱点ッスが…幻獣族が一緒にいられると……』

マミ「それよりも、あのカボチャ頭はどうするの?」

ほむら「数には数…プリニー隊で相手するわ」バッ

ほむら「プリニー隊、妖魔族の相手をお願い」

プリニー隊「了解ッス!」

プリニー隊と妖魔族の集団戦が始まるのを確認してから、残る2体の魔物へ目を向ける

先日はあの幻獣族に不覚を取ったが、次はそうは行かない

ほむら「さやかとマミは幻獣族をお願い。私とまどか、杏子は樹巨人族の相手をするわ」

さやか「マミさん、あのワン公すばしっこいんで気をつけてください!」

マミ「えぇ、聞いてるわ。美樹さんも注意して!」

プリニー『杏子、あいつは見た通り高い攻撃力と防御力を持ってるッス!気をつけるッス!』

杏子「あぁ、わかった!援護頼んだぞ、まどか!ほむら!」

ほむら「まどかは私が守る。だから安心して」

まどか「うん…ありがとう、ほむらちゃん」

まどか「わたしから行くよ……!」キリキリ

まどか「スプラインアロー!!」パシュウ

樹巨人族「!!」ガガガガ

杏子「次はアタシだ!食らいやがれ!」ガッ

樹巨人族「……」

杏子「っ……!何だコイツ…硬ぇ……!」

ほむら「杏子!離れて!」ジャキ

ほむら「樹だと言うのなら…これはどうかしら!?」バシュウ

樹巨人族「ゴ……!」

ズドォォォォン

樹巨人族「ゴゴ……」

杏子「表面は燃えてはいるが…イマイチっぽいな。やっぱアタシがどうにか……!」ダッ

杏子「うおりゃっ!!」

樹巨人族「ゴオッ!」ガッ

杏子「ウソだろ…刃ぁ掴んでやがる……」

ほむら「杏子!逃げて!」

樹巨人族「ゴゴ……!」

杏子「な……」

ドゴォン

杏子「が……ッ!」

ドガァァァァン

まどか「杏子ちゃん!!」

ほむら「まどか!攻撃は任せるわ、あいつを倒せるだけの攻撃をお願い!」

まどか「え…ほ、ほむらちゃんは!?」

ほむら「私が囮になる…その間に……!」

まどか「わたし…うん、わかった……!」

ほむら「それじゃ、頼んだわよ!」ダッ

まどか「あの巨人を、倒せるだけの秘技……」

プリニー『樹巨人族を倒すには生半可な威力じゃダメッス!』

まどか「……うん」

まどか「……」キリキリ

まどか(今まで…ほむらちゃんに守られてばかりだったけど……)

まどか(魔法少女とは違う形だけど…わたしだって、戦える!)

まどか(少しでも…ほむらちゃんの力になるんだ……!)

まどか「ほむらちゃん!下がって!」

ほむら「……!わかったわ!」バッ

まどか「行くよ……!オメガコメット!!」パシュウ

樹巨人族「ゴ……!」

ズガァァァァン

まどか「やった!?」

プリニー『まだッス、まだ生きてるッス!』

樹巨人族「ゴォォォ……!」

プリニー『早く倒さないと自己治癒されてしまうッス!』

まどか「そ、そんなこと言っても……」

ほむら「あとは私に任せなさい」

まどか「え…ほむらちゃん?」

樹巨人族「ゴゴ……」

ほむら「遅いわ…これで止めよ……!」キィィン

ほむら「零距離…バスター!!」

ズドォォォォン

樹巨人族「グゴオオオオオ……!」ボロボロ

ほむら「崩れていく…倒したみたいね」

まどか「うん…あ、そうだ、杏子ちゃんは……!」

私の攻撃の直撃を受けた樹巨人族はボロボロと崩壊していった

樹巨人族の攻撃を受けた杏子の下へ急ごうと、そう思っていたところで

背後から杏子の声が聞こえた

杏子「すまねぇ、油断した」

ほむら「杏子、大丈夫なの?」

杏子「あぁ、何とかな。……っと、他の奴らもケリがついたみたいだな」

さやか「これでトドメだっ!」ズバン

幻獣族「グガアアアアア!!」

プリニー隊「これが最後ッス!」ズバン

妖魔族「グゲッ……!」

向こうで戦っているさやかたちの方へ目をやると、さやかが幻獣族を倒したところだった

妖魔族と集団戦をしていたプリニー隊の方も、最後の妖魔族を倒していた

現れた魔物は全て撃破したが…以前のこともある。私たちはさやかたちと合流し、辺りを警戒する

さやか「……何も来ないね」

杏子「あぁ…結界は消えてねぇけどな……」

マミ「前回みたいなことは…もう起こしたくないわね」

プリニー『オレだって…もうあんな光景は見たくないッス』

ほむら「結界が消えてない以上、まだ何か来るはずよ。気を抜かないで」

『そう。まだ終わりじゃないよ』

どこかで聞いたことのある声がした。その声の方へ目を向けると

いるはずのないインキュベーターが、こちらを見つめていた

QB「まさか樹巨人族がこうも簡単にやられるなんてね…君たちを少し甘く見ていたのかもね」

ほむら「その口ぶり…この結界と魔物はお前の仕業ね?」

QB「うん、その通り。最初は魔物を魔女の結界に転送するしかできなかったけど……」

QB「今となっては結界を発生させ、そこに魔物を転送することもできるようになったんだ」

プリニー『この魔界に近い結界も、アンタがしたことッスか?』

QB「あぁ、これも僕たちがしたことさ。消滅するはずの結界に魔力を与え、魔界そっくりの環境の結界を造り出す」

QB「おかげで転送した魔物も全力で戦える。便利なものだよ」

ほむら「それで、お前の目的は何?」

QB「杏子から訊いてないのかい?君たちがワルプルギスの夜を倒すことの阻止さ」

QB「暁美ほむら、君がどういう経緯で魔法少女になり、ワルプルギスの夜の秘密を知ったのかは知らないけど……」

QB「アレが倒されると僕たちとしても非常に都合が悪いんだ。アレがそう簡単に倒されるとも思えないけど、念の為にね」

ほむら「……お前が何と言おうが、私の目的はワルプルギスの夜を倒すこと。邪魔はさせないわ」

QB「ふーん…まぁ、それもここから無事に出られたらの話だけどね」

インキュベーターの背後で何か影のようなものが揺らめいている

あれがその転送されている魔物なのだろうか

QB「次の魔物はなかなか強いから、注意した方がいいよ。特にまどかはね」

まどか「え……?」

QB「プリニーとの魔チェンジで戦う力はあるみたいだけど、所詮生身の人間だ。1発でも当たれば致命傷になるだろう」

QB「だから僕としては、ここで契約して魔法少女になることを勧めるけど…どうだい?」

ほむら「まどか…あなたは……」

まどか「うん、わかってる…わたしは、契約するつもりはないよ」

ほむら「まどかは私が守る。相手が何であろうと」

QB「そうかい…それじゃ、僕は帰らせてもらうよ。あとは頑張ってね」

そう言ってインキュベーターは闇に消えていった。それと同時に転送が完了した魔物が姿を現す

今までの妖魔族や幻獣族、樹巨人族と比べると、見るからに悪魔といった禍々しい姿をしていた

さやか「何…あいつ……」

杏子「チッ…またヤバそうなのが出てきやがって……」

プリニー『あ…ああ……』

まどか「プリニーさん?どうしたの?」

プリニー『ほむら様!プリニー隊を回収するッス!急ぐッス!』

ほむら「え?急に何を……」

プリニー『早くするッス!オレたちプリニーじゃアイツには…銃魔神族には勝てないッス!』

銃魔神族「グガガ……」キィィン

銃魔神族と呼ばれた魔物はこちらの存在を確認すると、右腕の巨大な銃を構える

もうプリニー隊を回収している余裕はない。とにかく、相手の射線から退避しなければ

杏子「おいおい…何かヤベーぞ……」

ほむら「とにかく全員退避よ!各自散開して!」

プリニー『散開じゃダメッス!防御するッス!アイツの攻撃は……!』

銃魔神族「ガアアアア!!」

銃魔神族からの攻撃を見たとき、プリニーの防御しろという言葉の意味が理解できた

逃げる場所が無ければ、散開したところで何の意味もない。そして……

目の前を覆い尽くさんばかりの光線が、私たちに降り注いだ

今回はここまで
見て下さってる方、ありがとうございます

次回投下は9日夜を予定しています

ゴードンとカーチス、どこで差がついたのか…
一番アレなのは1以降出番がないジェニファーとサーズデイだけど

次から本文

ズドォォォォォン

銃魔神族「グガッ……!」

杏子「……止んだか、なんつー攻撃だよ……」

さやか「ふぅ…ありがと杏子、助かったよ」

杏子「気にすんな。……それより、他の奴らは……?」

さやか「わかんない、煙が…あ、マミさん!」

マミ「2人とも、大丈夫!?」

杏子「あぁ、アタシたちは無事だ」

マミ「私もなんとか…暁美さんと鹿目さんは!?」

さやか「あ……!ほむら!まどか!どこ!?」

杏子「攻撃の前に見たときは向こうだったな…行くぞ!」

まどか「……止んだ…かな……?」

プリニー『そうみたいッスね…爆煙でよくわからないッスが……』

ほむら「まどか…無事、かしら……?」

まどか「う、うん…ほむらちゃんのおかげで何とも…プリニーさんも大丈夫だよ」

ほむら「そう…それはよかっ…た……」

まどか「ほむら…ちゃん……?」

ほむら「やっぱり、私の魔力では…持ちこたえられなかった…みたいね……」

まどか「ほむらちゃん…そのケガ……!」

ほむら「大丈夫…死にはしないから…ぐっ……」

銃魔神族からの攻撃を見て、私は時間を止めようと盾に手をかけた。だが……

あの光線攻撃の範囲がこの結界のほぼ全域だと分かり、すぐに防御魔法を展開して攻撃を防御した

しかし、私の魔力程度では攻撃を防ぎきることなどできるはずもなかった

まどか「ほむらちゃん!……どうしよう、わたし……」

さやか「ほむら!まどか!大丈夫!?」

まどか「さやかちゃん!ほむらちゃんが……!」

杏子「ほむら!オイ、大丈夫か!?」

ほむら「さやか…マミ…杏子…無事みたいね……」

さやか「あたしたちは無事だよ!でも、ほむらが……!」

まどか「ほむらちゃん…わたしを庇って……」

ほむら「まどかが無事なら、それでいいの……」

マミ「とにかく治療を……」

ほむら「私のことはいいわ……!それよりも、あいつを倒すことに集中して……」

杏子「ほむら……」

プリニー『今の攻撃、超消滅レーザーと言って…広範囲をレーザーと爆発で攻撃する技ッス』

さやか「物騒な名前だね……」

プリニー『アイツの攻撃はとにかく広範囲、高威力ッス。気をつけるッス』

杏子「あぁ、わかった。アタシとマミ、さやかで行くぞ。まどかはほむらのことを頼む」

まどか「うん、わかった」

マミ「それじゃ、行きましょう。まずはこの煙を……!」スッ

ズアッ

銃魔神族「グガ?」

さやか「行くぞ!どりゃあっ!!」

銃魔神族「ガアッ!」ブオン

さやか「うわあっ!?何こいつ、ビームサーベルっぽいものまで……!」ガギン

杏子「だったらアタシが!」ダッ

杏子「食らいやがれっ!」ズバン

銃魔神族「ガッ!?」

さやか「杏子、助かったよ!……次はあたしだ!!」ズバン

銃魔神族「グガアッ!」

マミ「2人とも、下がって!これでトドメよ……!」

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

ズドォォォォォン

マミ「これで倒……」

銃魔神族「……」

さやか「そんな…ティロ・フィナーレの直撃を受けたのに……」

銃魔神族「グオオ……」ブオン

杏子「またビームサーベル…させるか!」ダッ

銃魔神族「ガアア……!」ズズ

さやか「……ウソでしょ……?さっきのよりデカいなんて……」

銃魔神族「グルァァァァァ!!」

杏子「ぐっ…食らって、たまる…か……!」ギリギリ

さやか「杏子!今助けるよ!」ダッ

マミ「佐倉さん!」ダッ

杏子「バカ!来るんじゃ……」

銃魔神族「グ…ガアアアアア!!」ブオン

ズガァァァァン

さやか「うぐ…っ」

杏子「何なんだコイツ…今までのと強さが……」

マミ「暁美さん、鹿目さん…逃げ、て……」

ほむら「く……」

銃魔神族が3人をなぎ倒し、こちらに向かってくる。何か、何か策は……

プリニー隊はリーダーを除いて全滅、私を含めた魔法少女は満身創痍、逃げるにも逃げ道は無い

私が…やるしかない。まどかを守る為に。そう思い、立ち上がろうとする私の目の前に

まどかが、立ち塞がった

ほむら「まど…か……?」

まどか「ほむらちゃん…わたしに、任せて」

ほむら「まどか…あなた、何を……」

まどか「わたしが…あの魔物を、倒す……!」

銃魔神族「ガア……」

まどか「よくもほむらちゃんやみんなを……!」

まどか「許さない…絶対に、許さない!!」

ほむら「……っ!」

まどかはそう叫ぶと、銃魔神族を睨みつける。その顔は今まで見たことがないほど、激しいものだった

まどかには途方もない魔力が眠っている。でもそれは、契約して魔法少女となった時の話。契約しなければ、使われることはない

だが、このまどかは契約せずに戦うことが…魔力を使う術がある。本来なら有り得ない形で魔力を使っている

そんな形で使われていた魔力が感情の爆発…恐怖への反動と呼応し、人が変わってしまったように感じさせているのだろうか

ほむら「まどか、下がって……!」

プリニー『まどか様、落ち着くッス!』

まどか「……ドッペルゲンガー!!」

ズララララ

さやか「まどかが、あんなに……?」

杏子「まるでアタシの魔法じゃねぇか…でも、アタシのよりもずっと多い……」

まどか「……」キリキリ

銃魔神族「ガアッ!?」

まどか「……っ!」パシュウ

銃魔神族「グガア!!」ズドドド

まどか「これで……!」バッ

ズドォォォン

銃魔神族「グ……!」

まどか「まだまだ……!ジールレーゲン!!」パシュウ

ズドドドドド

銃魔神族「グオ……!」

まどか「……まだ、倒せてない……!」

ほむら「まどか…無茶しないで……!」

銃魔神族を倒そうと、まどかは大技を連発する

だが、あんな無茶な戦い方では、先にまどかの方が潰れてしまう

私はまどかを止めようと、必死でまどかを呼び続けた

銃魔神族「グルォォォォォ!!」

妖魔族「ケケッ!」

ほむら「妖魔族…まだ生き残りが……」

プリニー『……!まどか様!あの妖魔族、早く倒すッス!』

まどか「……え、プリニーさん、何……」

プリニー『早く倒すッス!!早く……』

妖魔族「クケケッ!」

銃魔神族「グオオ……!」パァァ

妖魔族と銃魔神族が重なった瞬間、銃魔神族が光に包まれた

そして次の瞬間には、巨大な銃魔神族が目の前に姿を現した

銃魔神族「グゴォォォ……」

さやか「ねぇ…ウソでしょ……?」

杏子「オイ…何だコリャ……」

マミ「これって…あのときの……」

ほむら「怒ッキング…向こうもしてくるなんて……!」

プリニー『遅かったッス…こうなったら、早く倒すしかないッス!時間かけるとまた……』

銃魔神族「ガ……!」キィィン

さやか「またあの物騒なレーザーが……!」

まどか「……させない!」キリキリ

銃魔神族「グガアアアアア!!」ズドドドド

まどか「サイコミラージュ!!」パシュウ

ズドドドドド

マミ「凄い…全部相殺した……!」

まどか「ハァ…ハァ…」

ほむら「まどか!もう下がって!」

まどか「これで……!オメガコメット!!」パシュウ

ズガァァァァン

マミ「やった……?」

銃魔神族「ガ……!」

さやか「まだ生きてる…けど、だいぶ弱ってるみたい……」

まどか「なら……!」パシュウ

銃魔神族「ガアッ!」ズドン

ガギィン

まどか「弾かれた……!ならもう1発……」

銃魔神族「グオオ!」ズドン

まどか「う…あっ……!」

ほむら「まどか!!」

まどか「……まだ戦える……!これで、終わりだよ……!」キリキリ

まどか「瞬雷!!」パシュウ

銃魔神族「……!」ジャキ

ヒュオン

銃魔神族「!?」

ヒュンヒュン

銃魔神族「ガ!?ガア!?」キョロキョロ

杏子「すげぇ…全然見えねぇぞ」

マミ「……見て、上!」

銃魔神族「グ……」

まどか「遅いよ!!」

ズドォン

銃魔神族「グ…オオオオオオオ!!」ズゥン

さやか「倒した…の……?」

杏子「みたいだな……」

ほむら「まどか!まどか!!」

まどか「……ほむら、ちゃん……」

ほむら「言ったはずでしょ…無茶はしないでって……!」

まどか「ごめんね…あのとき…許さないって叫んだところで、頭が真っ白になって……」

まどか「でも…目の前にいるあの魔物を…絶対に倒さないとって、それだけははっきりしてたんだ……」

ほむら「だからって……!」

まどか「心配かけて、ごめん…ね……」

ほむら「まどか……?まどか!しっかりして!!」

ほむら「私……!私はもう、あなたを失いたくない!!」

マミ「暁美さん、落ち着いて。気を失っただけよ」

ほむら「え……?」

マミ「だから安心して。ね?」

ほむら「……治療をお願いするわ。私はプリニー隊を回収してくる」

——————

さやか「さて、回収も終わったし、治療も済んだ。そろそろ帰ろうよ」

杏子「元はと言えばお前のウダウダが原因だろうが」

さやか「うっ……」

ほむら「そうね。それじゃ、帰りましょう……」

マミ「待って、暁美さん」

ほむら「……何かしら」

マミ「あなた、さっき鹿目さんにこう言ったでしょ?『もう、あなたを失いたくない』って」

ほむら「……そうだったかしら」

マミ「暁美さん、あなたは何を知っているの?何を隠しているの?……そろそろ、教えてはくれないかしら?」

ほむら「……以前も隠していたことを聞いて後悔したでしょう?聞かない方がいいと思うわ」

マミ「えぇ。確かに驚いた。絶望しかけたわ。でも……」

マミ「それでも、聞かせて欲しいの。あなたがそこまで鹿目さんに拘る理由を」

結構な声で叫んだわけだし、聞かれていても不思議ではなかったが…まさか問い詰められるとは思っていなかった

私がまだみんなに話していないこと…インキュベーターのこと。私とまどかとのこと。魔法少女の最期のこと

それらを話してしまってもいいのだろうか?

ほむら「……相当キツい内容になると思う。正直、ショックを受けて逃げられても、もう助けている余裕は無い」

ほむら「それでも…聞きたいのかしら?」

マミ「……えぇ。私も…美樹さん、佐倉さんももう大丈夫だから」

さやか「もう、覚悟は決まってるよ」

杏子「洗いざらい、喋っちまえよ」

ほむら「……わかった。私の家で話しましょうか。まどかは私が背負ってくわ」

——ほむらの家——

さやか「まどかは……?」

ほむら「ベッドに寝かせてきた。あとはプリニーに任せてあるわ。それより…何から話しましょうか……」

さやか「どういうこと?」

ほむら「私が隠しているのは3つ。魔法少女の最期のこと。キュゥべえの正体のこと。それと…私とまどかとのこと」

ほむら「これが最後の確認よ。本当に話してもいいのね?」

マミ「えぇ」

さやか「怖いけど…お願い」

杏子「頼む」

ほむら「そう…わかったわ。さて、どこから話したものかしら……」

私は3人に全てを打ち明けた。昔話を聞かせるように、ゆっくりと、丁寧に

魔法少女の最期を話したとき、誰1人として絶望することなく、私の話を聞いてくれた

キュゥべえ…インキュベーターについて話すと、まさか宇宙人だったなんて…と驚いていた

そして…私とまどかとのことを話し始めた

最初のうちこそ、何でもないような顔をしていたけど…話が進むにつれて顔が曇る

全てを話し終えたとき、3人はぼろぼろと涙を流していた

ほむら「……これで全部よ」

マミ「暁美さん…ごめんなさい、私……!」

ほむら「謝ることじゃないわ。あなたの知らないことだから」

杏子「その…あんまりアタシは話に出てきてないから、うまく言えないけどよ……」

杏子「大事な人を失うって辛さは…痛いほどわかる。……アタシもそうだったから……」

ほむら「そう…そうね、あなたも…そうだったわね」

さやか「ほむらぁ……!ごめん…ごめん、ほむらの邪魔ばっかりして……!」

さやか「あたし…その自分が許せないよ……!」

ほむら「マミにも言ったけど…謝る必要はないわ」

ほむら「それに…謝らなければいけないのは私の方」

さやか「……?それって、どういう……」

ほむら「私がこの話を隠してたのは…元々あなたたちに話すつもりなんてなかったから」

ほむら「あなたたちを仲間だとは思わない。対ワルプルギスの夜の為に利用した方が好都合。……そう、考えていたから」

杏子「まぁ…あんだけのことがあれば、無理もないか……」

ほむら「揃いも揃って私の邪魔をするのなら、最初から何も期待しない。私が信じるのは自分とまどかだけ」

ほむら「もう誰にも頼らない。そう思っていたのに……」

ほむら「この時間でまどかと一緒にいて…思ったの。私はまどかだけを守りたいわけじゃない。まどかの全てを守りたいんだ、と」

ほむら「だからもう1度…もう1度だけ、信じてみようって……」

さやか「ほむら……」

ほむら「さやか、マミ、杏子。お願いがある」

ほむら「あと数日でワルプルギスの夜が現れる。私はどうしてもあの悪魔を倒したい」

ほむら「虫のいい話だとは自分でも思ってる。だけど…どうか、私に力を貸してほしい……!」

マミ「えぇ、わかってる。みんなで協力して、ワルプルギスの夜を倒しましょう」

さやか「ほむら、話してくれてありがと。……あたしもほむらに力を貸すよ」

杏子「ワルプルギスの夜を倒して、キュゥべえ…インキュベーターつったか?あの野郎に一泡吹かせてやるか」

ほむら「みんな…ありがとう……」

マミ「以前はすれ違いばかりだったみたいだけど…少なくとも、今この時間の私たちは…みんな暁美さんの仲間よ」

杏子「さて…もういい時間になっちまったし、アタシらは帰るとしようか」

さやか「そうだね。あと数日か…よーし、明日からまた特訓だ!」

杏子「その前にお前は自分の問題を解決しろよ……」

さやか「う…そうでした…あー、どうしたら……」

杏子「あー、その、何だ、絶望する前にアタシかマミにでも相談をだな……」

さやか「フられる前提で話さないでよ……」

マミ「そう言えば…さっきの話、鹿目さんにはしたの?」

ほむら「いえ、まだよ。彼女が目を覚ましたら…話そうと思ってるわ」

マミ「そう…わかったわ。それじゃ、また明日ね」バタン

ほむら「……」

彼女たちに全てを打ち明けた上で、彼女たちは協力すると約束してくれた

私とプリニー、それにみんながいれば、今度こそワルプルギスの夜を……

それに、まだ時間はある。万全を尽くせば必ず倒せるはずだ

そう自分に言い聞かせたところで、私は後ろに隠れている彼女に声をかけた

ほむら「もうみんな帰ったわ。そこで聞いてたんでしょう、まどか?」

ガチャ

まどか「……」

プリニー「ほむら様、申し訳ないッス…本当なら連れ戻すはずだったんスけど……」

ほむら「構わないわ。ほら、こっちに来て座りなさい」

まどか「うん……」

ほむら「それで、どこから聞いていたの?」

プリニー「ほむら様がベッドに寝かせたすぐ後に目を覚ましたから…ほぼ全部ッス……」

まどか「ごめんね、ほむらちゃん……」

ほむら「……元々あなたには話すつもりではいたわ。だから…まどか?目が赤いけど…あなた、泣いて……」

まどか「だって…だってわたし、ほむらちゃんのこと…ほむらちゃんを忘れちゃってたなんて……!」

ほむら「……気にしないで。覚えてなくて当然なんだもの」

まどか「それでも……」ギュウ

ほむら「まどか……?」

まどか「それでも……!ごめん…ごめんね、ほむらちゃん……!」ポロポロ

ほむら「まどか…ありがとう……」

まどか「……ねぇ、ほむらちゃん」

ほむら「……何?」

まどか「わたしも…わたしも、ワルプルギスの夜と戦うよ」

ほむら「それは……」

まどか「わたし…もうほむらちゃんが傷ついていくのを見てるだけなんて嫌なの」

まどか「ほむらちゃんがわたしを守ってくれてるのと同じように…わたしもほむらちゃんを守ってあげたい」

ほむら「まどか……」

まどか「それに…こんなこと言っても仕方ないとは思うんだけど……」

まどか「わたしとほむらちゃんが力を合わせれば、何だってできる。そう思うの」

まどかが泣きはらした目で私を見る。もう、覚悟は決まっているようだ

魔法少女ではないとはいえ、プリニーとの魔チェンジでの攻撃力は私たちの中では一番だろう

その分防御能力は一般人と同程度だが、私がサポートしてやればいい

ほむら「やっぱり、あなたには敵わないわね……」

まどか「え?」

ほむら「……まどか、私と一緒に戦ってほしい」

まどか「……!うん、わかった!」

プリニー「ほむら様、いいんスか……?」

ほむら「防御に関しては私がサポートする。それにまどかのことだから、変に断るより最初から側にいてもらった方がいいわ」

まどか「えぇー…そんな信用ないの……?」

ほむら「信用はしてるわよ、まどかだもの。そういうことじゃなくて……」

ほむら「……ずっとあなたを見てきたもの。そのくらいなら、わかるわ」

まどか「それだけ…ほむらちゃんはわたしを見ててくれたんだね。……だとしたら…嬉しいな」

まどか「ほむらちゃんは、わたしの……」

まどか「……わたしの、最高の友達…だよ」

ほむら「友達……」

まどか「ほむらちゃん……?」

ほむら「……何でもないわ。随分と遅くなったし、もう休みましょう」

まどか「え、あ、うん」

最後の難関、さやかの魔女化も乗り越えることができた。……彼女の告白の結果次第では多少のフォローが必要になるかも知れないけど

これでもう、障害は何もない。あとはワルプルギスの夜を倒すだけだ

ワルプルギスの夜出現の日までは私とまどか、さやかの特訓に充てることにしよう。今のままではまだ不十分だ

私とさやかは秘技の習得、まどかは私との連携の確認。マミと杏子については何も心配はしていない

それと、気になるのはインキュベーターのことだ

ワルプルギスの夜が倒されることが奴らにとって不都合とはどういうことだろうか

何にせよ、きっとまた何か妨害してくるはずだ。注意した方がいいだろう

思えば、私を含めて魔法少女4人に加え、未契約ながら戦えるまどか、プリニーというイレギュラーの協力もある。今までで最高の条件だ

これなら勝てるはずだ。今度…今度こそ、ワルプルギスの夜を倒して、まどかを…まどかの全てを守ってみせる

——数日後——

ほむら「……さて、ついに明日ワルプルギスの夜が現れるわけだけど…みんな大丈夫かしら?」

マミ「えぇ、私は大丈夫」

まどか「わたしも大丈夫だよ、ほむらちゃん」

杏子「アタシも万全だ」

さやか「あたしも大丈夫ー。……はぁ」

杏子「ホントか?どう見ても引きずってるようにしか見えねぇぞ」

さやか「んー…大丈夫ってのはホント。どうしてこの天使のようなさやかちゃんをフるかなー、しかし」

杏子「自分でそういうこと言っちゃうからじゃねぇか?」

さやか「やめて…普通に突っ込まないで、今になって恥ずかしくなってきたから」カァ

ほむら「さやかみたいな天使がいたらそれこそ世も末ね」

杏子「案外いるんじゃねぇか?世の中3人は似てる奴がいるって言うだろ。天界もその範疇かは知らんけどよ」

さやか「何この仕打ち…傷心のあたしに何てこと言いやがるんだこいつらは……」

あれから数日…ワルプルギスの夜出現の前日の今日、全員集まっての作戦会議をする為に私の家に集まってもらった

心配していたさやかは、告白が上手く行ったわけではないようだが、酷く落ち込んでるわけでもないようだ

さやか「それにしても驚いたよ。まさかまどかを戦わせるなんてねぇ」

ほむら「私だってまどかには安全なところで待っていてもらいたいわ。だけど……」

まどか「みんなが…ほむらちゃんが傷ついて行くのをただ見てるだけなんてできない。だから…わたしも戦う」

杏子「でもお前、攻撃以外は生身じゃ……」

プリニー「大丈夫ッス。魔力を使ってある程度の肉体強化はできるようになってるッス」

マミ「それならいいんだけど……」

さやか「まぁ何にせよ、そう言った以上は力を借りるよ?まどか」

まどか「うん!」

さやか「しかしあれだ、ほむらだけ別枠かー。まぁこんだけ同棲してりゃあ…ねぇ」

まどか「べ、別にそんなつもりじゃ……」カァ

ほむら「ほら、作戦会議始めるわよ」

作戦会議とは言ったが、正直そんな大層なことでもない

私たちの役割の確認とワルプルギスの夜の情報を伝える程度だ

あれだけ強大な相手に小手先の策を弄したところで意味が無いのは目に見えている。私たちが全力で戦うしかない

私は長いループの中で蓄積したワルプルギスの夜に関する情報を全て伝えた

出現予想地点、攻撃の種類と対策、使い魔の能力……

想像以上の量だったのか、さやかと杏子は途中でわけがわからない、って顔をしていた

仕方ないので要点を書いたメモを2人に渡しておいた

その全てを話し終えたときには、辺りはすっかり暗くなってしまっていた

ほむら「……それじゃみんな、明日はよろしく頼むわ」

マミ「えぇ。今日はゆっくり休んで、明日に備えましょう」

杏子「あぁ、そうするか。……最後に聞いておくが、さやか。本当に大丈夫なんだな?」

さやか「……うん。あたしだって、恭介を…この街を守りたい。だからもう、迷わない」

杏子「……その顔なら、もう大丈夫そうだな。強欲の天使がどうのこうの言ってたから心配だったんだ」

さやか「そ、そんなこと言ってたっけ?あたし……」

マミ「……さて、それじゃ今日はこれで解散にしましょう。みんな、明日は頑張りましょう」

そう言って挨拶を交わして、3人は私の家を後にした

明日に備えて今日は早く休もうと、いつもより早めに夕飯を食べることにした

しかし…どうもまどかの顔が冴えないような気がした

気のせいだと思っていたが、何か言いたげに私を見て、少しするとふっと視線を逸らす

何なのか検討がつかなったので、まどかが話してくれるまで待つことにした

それからしばらくして、私がお風呂から出たところで、まどかが話しかけてきた

まどか「ほむらちゃん…ちょっといいかな……?」

ほむら「何かしら?今日は早めに休んだ方がいいと思うけど……」

まどか「うん…すぐ終わらせるよ」

ほむら「今日はどうしたの?ずっと何か言いたそうにしていたけど」

まどか「……ワルプルギスの夜の前に…ほむらちゃんに、聞いておきたいことがあるんだ」

ほむら「私に……?」

まどか「ほむらちゃんは…どうしてそこまでわたしを守ろうとしてくれてるの?」

ほむら「どうしてって…この間の話、聞いてたんでしょう?」

まどか「聞いてたけど…でも、今のわたしはほむらちゃんには何もしてあげてないんだよ?それなのにどうして……」

ほむら「確かに…私に良くしてくれたまどかはとうの昔に死んでしまった。でも……」

ほむら「別の時間軸だろうが、私のことを覚えてなかろうが、それでも…私のたった1人の友達。だから、よ」

まどか「たった1人の……」

ほむら「今でこそさやかにマミ、杏子がいるけど…ひとりぼっちの私に、いつだって優しくしてくれたのは…まどか、あなただけ……」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「それに、あなただって何もしてないわけじゃないわ。断ることだってできたのに、こうして私と暮らしてくれているし、夕飯も作ってくれる。何より……」

ほむら「私のことを支えてくれる…あなたがそう言ってくれたことが、私は…何よりも嬉しいの」

ほむら「本当は…あなたにも頼るつもりなんてなかった。全て私1人でどうにかするつもりだった」

ほむら「でも、結局…あなたを戦いに巻き込んでしまった。あなたに頼ってしまった。……ごめんなさい、私が情けないばかりに……」

まどか「そんなこと言わないで。わたしだからそういうことを頼っちゃダメだなんて、そんなことないんだから」

ほむら「まどか…私と一緒に戦うって言ってくれて、ありがとう。私に力を貸してくれる……?」

まどか「もちろんだよ。わたしとほむらちゃん、それにさやかちゃんとマミさん、杏子ちゃん。みんなでワルプルギスの夜を倒そう!」

ほむら「まどか……」

まどか「話、聞いてくれてありがとう。それじゃわたし、お風呂行ってくるね」バタン

ほむら「さて…いるんでしょう?インキュベーター。出て来なさい」

QB「……こんばんは、暁美ほむら」

ほむら「今更何の用?」

QB「ついに明日に迫ったわけだけど…本当にワルプルギスの夜を倒すつもりかい?」

ほむら「愚問ね。当然よ」

QB「そうかい…残念だ。以前も話したけど、ワルプルギスの夜を倒されると僕たちにとって都合が悪い」

QB「だからその交渉をしに来たんだけど…どうやら無駄のようだね」

ほむら「そうね。話をする余地なんてないわ」

QB「……きっと君たちは後悔することになる。精々絶望しないように頑張ることだね」スゥ

プリニー「ほむら様……」

ほむら「プリニー?何かしら。あなたたちも私に話?」

プリニー「そうッス。……オレたちは中の魂が皮を動かしてるって言ったッスよね?」

ほむら「えぇ、そう聞いたわ」

プリニー「その魂…元は罪を犯した人間の魂ッス」

ほむら「……!人間の……?」

プリニー「全部が全部そうというわけじゃないッスが…ほとんどは生前に罪を犯した人間の魂が詰められているッス」

プリニー「もっとも、ほとんどのプリニーはプリニーになった時点で生前の記憶はほぼ失っているッスけど……」

ほむら「そう……。それならきっと、私も死んだらプリニーになるのかしらね……」

ほむら「仕方がなかったとはいえ、まどかを殺し、銃器を盗んで…地獄に堕ちるだろうとは思ってたけど、まさかプリニーになるなんてね……」

プリニー「……魔界のプリニーはオレたちの比じゃないレベルでツラいッスよ」

ほむら「忠告ありがとう。……私はもう休むわ。まどかがあがったらそう伝えて頂戴」

プリニー「了解ッス」

ガチャ

まどか「ほむらちゃん…もう寝ちゃったかな……?」

ほむら「……」Zzz

まどか「寝てる…みたいだね。それじゃほむらちゃん、ちょっと失礼するね」ゴソゴソ

まどか「ほんとはちゃんと言った方がよかったんだろうけど…ごめんね」ギュウ

まどか「面と向かって言うと、きっとわたし泣いちゃうだろうから…ここで言わせてもらうね」

まどか「ほむらちゃん。今日までずっと、わたしのことを守ってくれて…ありがとう」

まどか「自惚れじゃなければ…ほむらちゃんはわたしのために、全てを捨ててでも救おうとしてくれてるんだよね……」

まどか「でも、そのせいでほむらちゃんがボロボロに傷ついて…最悪どこかで死んじゃってたと思うと…わたし、胸が苦しいの」

まどか「ほむらちゃんはどう思ってるかわからないけど…わたしはほむらちゃんのこと、心から大事な人だって…そう思ってる」

まどか「きっと…友達よりももっと大事な人だって…そんな気がするんだ。だから……」

まどか「ほむらちゃんにはもう、辛い思いはしてほしくない。今まで辛かった分…ほむらちゃんに笑っていてほしい」

まどか「だから…ここでワルプルギスの夜を倒して…全て、終わらせる……」

まどか「ほむらちゃんは…わたしが守ってみせる…よ……」

今回はここまで
見て下さってる方、ありがとうございます
今日は遅い時間になってしまってごめんなさい

次回投下は10日夜を予定しています

プリニーの着ぐるみという選択肢もあります。プリニースーツってきっとそんなアイテム

あと4のブルカノ(?)さんは何でブルカノだったんだろう
最初あの悪人面の天使と何か関係あんのかなと思ったら何もなかったっていう

本文の前に修正点見つけたので修正

>>240修正


——数日後——

ほむら「……何とか形にはなってきたけど……」

さやか「簡単な奴ってのは割とすぐに物になったから、これはイケると思ったんだけどねぇ……」

まどか「で、でもほら、プリニーさんも魔族じゃないのに習得が早いって言ってたよ!」

プリニー指導の下、秘技習得の特訓を始めて数日

簡単なものはすぐ会得することができたが、高レベルのものはなかなか上手くいかなかった

まどかが以前、高レベルの秘技を使ったことがあるらしいが、才能…魔力にも左右されるのだろうか

さやか「そう言えばさ、マミさんは秘技習得の特訓はしないの?」

ほむら「あぁ…何でも、銃と言っても私の拳銃みたいなものじゃないと駄目らしいの。巴マミのは別の区分になるとかで……」

さやか「ふーん…プリニーがそう言うのなら、仕方ないのかな」

修正おわり

次から本文

——————

ビュオオオオ

ほむら「……」

マミ「……いよいよね」

さやか「……しかしすごい風ですね。まどか、大丈夫?」

まどか「う、うん。なんとか……」

杏子「お前ら、家族がいるんだろ?連絡はしたのか?」

さやか「ちゃんと避難所にいるよって連絡しといたよ」

まどか「わたしも、ほむらちゃんと一緒に避難したって言ってあるよ」

杏子「そうか、ならいいんだけどよ。……っと、戻って来たな」

プリニー「ほむら様!プリニー隊、配置完了したッス!」

ほむら「そう…後は奴が現れるまで待機して」

プリニー「了解ッス!」

プリニー隊の各地点への配置が完了し、あとはワルプルギスの夜の出現を待つのみとなった

彼らには地上からの援護攻撃と、私たちのサポートを任せることにした

ワルプルギスの夜とその使い魔はともかく…恐らく仕掛けてくるであろうインキュベーターの妨害が心配だ

それにしても…今朝のことは何だったのだろうか。目が覚めたら、まどかが私に抱きついたまま眠っていた

昨日寝るときに私のベッドに入って来たということだが…そう言えば、何かを言っていたような気もする

まどかはどう思っているかわからないが…まどかに抱きしめられているとわかったときに感じたあの気持ち

もしかすると、私はまどかを……

プリニー「ほむら様」

ほむら「何かしら?」

プリニー「これをほむら様に……」

ほむら「これは……?」

プリニー「インペリアルと言って、位の高い悪魔が持つシンボルッス。魔界のお守りとでも思ってほしいッス」

プリニー「もちろん魔界のアイテムッスから、無意味な物じゃないッス。ほむら様の魔力を底上げしてくれるはずッス」

ほむら「ありがとう…使わせてもらうわ」

プリニー「本当は全員分あればよかったッスが…1つだけしか見つからなかったッス……」

ほむら「無い物を言っても仕方ないわ。それよりも、あなたもそろそろまどかと魔チェンジしておきなさい」

プリニー「了解ッス。……ほむら様」

ほむら「何かしら」

プリニー「オレたち…絶対、ほむら様の力になってみせるッス。だから…ほむら様も頑張るッスよ」

ほむら「……えぇ」

プリニーはそう言うとまどかのところへ向かって行った

もらったインペリアルを首から下げ、握りしめる。確かに少しだけ、魔力が増幅されている。多少は無理をしても大丈夫そうだ

ほむら「……来るわよ!準備を!」



杏子「ヘッ、いよいよお出ましか……」



まどか「がんばろう、プリニーさん」

プリニー『ほむら様とまどか様の為に頑張るッス!』



さやか「ワルプルギスの夜…あたしたちが倒すべき、悪魔……!」



マミ「この街は…私が守ってみせるわ!」

ゴゴゴ…

ワルプルギス「アハハハハハ!」

マミ「……話には聞いてたけど……」

杏子「何てデカさだ……!」

まどか「ほむらちゃんは…あんなのと何度も……?」

さやか「みんな!ビビってる場合じゃないよ!」

ほむら「さやかも言うようになったものね…プリニー隊、攻撃開始!」バシュウ

プリニー隊「……!合図が来たッス!全員攻撃開始ッス!」バシュウ

プリニー隊「ほむら様から預かった武器、1発たりと無駄にはしないッスよ!」バシュウ

プリニー隊「全部撃ち尽くしたらほむら様たちの援護に回るッス!また魔物が出てくるかもしれないッスよ!」バシュウ

私の攻撃を合図に、各地に展開させたプリニー隊からの攻撃が始まる

ワルプルギスの夜を取り囲むように配置したプリニー隊からの攻撃が、ワルプルギスの夜に降り注いだ

ズドドドドォン

ほむら「始まったわね…それじゃ、こちらも散開するわよ」

マミ「えぇ、わかってるわ。みんな、グリーフシードは持ったわね?」

杏子「あぁ、大丈夫だ。それよりもな……」

さやか「本当にそっち、2人だけでいいの?」

ほむら「えぇ、大丈夫よ。まどかのことは私が守ってみせる」

杏子「ほむらがそう言うんなら大丈夫だろうよ。よし、そんじゃ行くぞ!」

ほむら「そっちも気をつけて」

まどか「……」

ほむら「まどか…怖い……?」

まどか「……正直言うと…怖い。怖くて仕方ないよ。今すぐ逃げ出したいくらいに。でも……」

まどか「さやかちゃん、マミさん、杏子ちゃん…それにほむらちゃんが傷ついて…死んじゃうかもしれないって思うと……」

まどか「みんなを失う方がもっと怖いから…だから、わたし、戦う……!」

ほむら「まどか……」

まどか「……ほむらちゃん、言ってたよね。わたしのことを、大事な人だ、って」

まどか「わたしも…ほむらちゃんのこと、大事な人だって…そう、思ってる。だから……」

まどか「こうして、ほむらちゃんの隣で…ほむらちゃんの力になってあげられるのが、嬉しいんだ」

ほむら「……ありがとう、まどか。また私と一緒に、戦ってくれて……」

まどか「ほむらちゃん…よし、行こう、ほむらちゃん!」

ほむら「えぇ。まどかのことは、私が守る。約束するわ」

まどか「……うん。わたしも、ほむらちゃんを守ってみせる。約束するよ」

そう言ってまどかは私の隣に並んで立つ。その横顔を見たとき、あの時のまどかを見たような気がした

そんなまどかを見て、私は心に決める。まどかのことは何が何でも私が守ってみせる

それが例え…私のこの命に代えることになったとしても

ワルプルギス「アハハハ!」

杏子「野郎、何がそんなにおかしいってんだ……」

さやか「あたしに聞かれても…杏子!使い魔が……!」

使い魔「……」ワラワラ

杏子「わらわら出てきやがったな…マミ!薙ぎ払っちまえ!」

マミ「えぇ!行く……」

ズババババ

使い魔「……!」バチュン

マミ「……何?あ、プリニーさん!」

プリニー隊「使い魔はオレたちに任せるッス!みんなは本体を!」

マミ「わかったわ!……食らいなさい!」

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

ズドォォォォン

ワルプルギス「アハッ!」

マミ「……さすがに1発当てたところで目に見えた効果はないみたいね……!」

杏子「クソ、使い魔が…あいつら、何が任せろだよ!撃ち漏らしがいるぞ!」ズバン

さやか「でも、プリニーがいなけりゃもっと押し寄せて来てるんだよ!?」ズバン

杏子「それはわかってるけどよ……!マミ、使い魔はアタシたちに任せろ!」ズバン

マミ「佐倉さん、美樹さん…わかった、私はワルプルギスの夜を……!」

まどか「……」

ほむら「……やっぱり、こちらは向こうに比べて使い魔が少ないわね」ズドドドド

まどか「……ねぇ、向こうは大丈夫なのかな」

ほむら「大丈夫。プリニー隊も向こうに多く配置してあるし、杏子とさやかもいるし……」

ほむら「それよりも…あなたはワルプルギスの夜を倒すことだけに集中して」

まどか「……うん」キリキリ

まどか(ワルプルギスの夜…何度も…何度もほむらちゃんを苦しめた悪魔……)

まどか(もう、ほむらちゃんに辛い思いをしてほしくない……。だから…ここで、倒す……!)

プリニー『まどか様!行けるッスよ!』

まどか「……オメガコメット!!」パシュウ

ズガァン

ワルプルギス「アハハッ」

まどか「あれでも貫けないなんて……!」

ほむら「いえ、でも…効いてるわ!まどか、次を……」

ワルプルギス「アハ……!」ズズ

プリニー『ほむら様!攻撃が来るッス!』

ほむら「えぇ、わかってる!まどか、行くわよ!」

まどか「う、うん!」ギュッ

ほむら「絶対、手を離さないで。……時間停止!」カシャッ

ほむら「あまり長くは持たないわ。急ぎましょう」

まどか「すごい…これがほむらちゃんの魔法…時間停止……」

プリニー『オレたち以外が…全て止まっているッス……』

ほむら「私には…これしかないから……」

ほむら「この能力の為に他の全てを犠牲にしているようなものよ……」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「……さて、この辺りまで来れば大丈夫ね。時間停止解除」カシャッ

ズドォォン

まどか「さっきまでいたところが……」

ほむら「これでアイツはこちらを見失ったはず。まどか、攻撃準備を」

まどか「あ…うん!」

ほむら「……マミたちの方も善戦してるみたいね。これなら……」

使い魔「……」

ほむら「……もうバレてしまったみたいね。でも……!」ジャキ

ほむら「まどかの邪魔は…させない!」ズドドドド

——————

ワルプルギス「ア…ハハ!」ズッ

マミ「く…ティロ・フィナーレ!!」

ズドォォォォォン

ワルプルギス「アハ……!」

杏子「クソ…あと何発叩き込めば倒せるんだ!?」

さやか「マミさんとまどかの攻撃、あれだけ受けてまだ生きてるなんて……!」

マミ「泣き言なんて言ってられないわ!もう1発……!」

ズガァン

ワルプルギス「アハッ!?」

さやか「まどかの攻撃が……!」

ズガァン

ワルプルギス「ア…ハ……!」

杏子「もう1発行った……!」

ワルプルギス「アハハッ」ズズ

ズドォォン

マミ「気が逸れたわね……!行くわよ、ティロ……」

ほむら「マミ、待って」

さやか「あ、ほむら!」

まどか「みんな!大丈夫!?」

杏子「あぁ、こっちは大丈夫だ。そっちは?」

ほむら「こちらも問題ないわ」

マミ「そう…よかった。それで、どうしたの?分かれて戦うんじゃ……?」

ほむら「……だいぶワルプルギスの夜も弱ってきたと思うの。だから……」

ほむら「まどかとマミの攻撃を合わせれば、きっと……!」

マミ「そういうことね…鹿目さん、やるわよ!」

まどか「はいっ!」

使い魔「……」

さやか「2人の邪魔は……!」ズバン

杏子「させねぇよ!」ズバン

ほむら「2人とも、頼んだわよ……!」ズドドドド

プリニー『まどか様!行くッス!!』

まどか「オメガコメット!!」

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

ズガァァァァァァン

ワルプルギス「ア……!」ギギギ

さやか「そんな!あれでもダメなの!?」

マミ「いえ、よく見て!ワルプルギスの夜にヒビが……!」

杏子「あと少しだ!踏ん張れ!」

ほむら「まどか!マミ!もう1度攻撃を!」

まどか「マミさん!」

マミ「わかってるわ!行く……」

プリニー『待つッス!何か来るッス!』

ズドン

マミ「う…っ……!」

ほむら「今のは…ワルプルギスの夜の攻撃じゃ……!」

『その通り。今のはワルプルギスの攻撃じゃない』

杏子「今の声……!」

ほむら「まさか……!」

背後から声が聞こえる。聞きたくも無いアイツの声が

振り返るとそこには、インキュベーターが座っていた

ほむら「……私たちの邪魔をしに来たのかしら?」

QB「言ったはずだろう?ワルプルギスの夜を倒されるのは非常に不都合だ。だから阻止させてもらうって」

QB「まぁ、僕自身には何をどうすることもできないけどね。君たちの背後から不意打ちなんて真似はできないから……」

ほむら「お前の御託はどうだっていい。私が聞きたいのはひとつだけ」

ほむら「一体、何をしに来たの?」

QB「だから君たちの妨害だって…あぁ、その内容を訊きたいのかい?」

ほむら「……」

QB「それならワルプルギスの夜の方を見るといい。もうすぐ完了するだろう」

ほむら「……一体何を……!」

さやか「何…あれ……?ワルプルギスの夜が……」

マミ「反転していくわ……」

まどか「それだけじゃないよ…ワルプルギスの夜の周り、見て!」

杏子「……オイオイ、嘘だろ……?アレってまさか……!」

QB「正直、君たちがここまで戦えるとは思ってもなかったよ。まさかあの銃魔神族を倒すなんて思ってもみなかった」

QB「それに、今だって下手をしたら反転する前に倒されていたかもしれない」

QB「だけど、それもここまでだ。反転した全力のワルプルギスの夜と、転送してきた魔物。君たちにもう勝ち目は無い」

QB「それじゃ、幕引きにしようか」

インキュベーターがそう言うと同時に、ワルプルギスの夜の反転と、魔物の転送が完了する

転送されてきたのは、見たことのある魔物、無い魔物…様々だった

転送されてきた魔物の数に、私は自分の目を疑った。空を覆い尽くさんばかりの魔物が、ワルプルギスの夜の周囲に展開していた。そして……

ワルプルギスの夜の笑い声と、魔物の咆哮が辺りに響き渡った

まどか「あ…あぁ……」

さやか「そんな……」

杏子「冗談じゃねえぞ…何て数だ……」

マミ「あんなの、勝てるわけ……」

ほむら「インキュベーター……!」

QB「アレを全部倒しても無駄だよ。魔物はいくらでも造って転送させられるからね」

プリニー『魔物を造る……?アンタ、まさか……!』

QB「君の想像通り。アレは全てクローン悪魔だよ」

QB[もちろん、君たちが今まで戦った魔物も全てクローンさ」

プリニー『そんな…研究所は閉鎖されたはずッス!』

QB「確かに研究所は閉鎖されていたよ。だけど、その作成メカニズムがわかってしまえば、造り出すのは容易いことだ」

プリニー『……どこで造り出してるッスか……?』

QB「潰そうと考えたって無駄さ、人間界には無いのだから。とある魔界に作らせてもらったよ」

プリニー『そんな……』

QB「もちろんアレで終わりじゃない。僕たちがその気になれば、魔神や魔王を呼び出すことだって出来る」

プリニー『そんなこと…そう簡単に魔神や魔王を呼び出せるわけが……』

QB「なら、今からでも呼び出してあげようか?……そうだね、超魔王だった魔王でも」

プリニー『だ…ダメッス!ソイツだけは…絶対にダメッス!!』

さやか「超魔王…名前だけでとんでもない奴だって感じはするけど……」

プリニー『その強さのあまりに…封印されていた伝説の魔王のことッス』

プリニー『……あるときは禍々しい姿。あるときはキノコの魔物の姿。そして…あるときは、オレたちプリニーの姿をしているッス』

プリニー『でも…確かある魔王に倒されたはずッスけど……』

QB「超魔王と言われた魔王だ。1度や2度倒されたところで、そう簡単に死ぬ存在じゃない。ともかく……」

QB「もう1度言うよ。君たちに勝ち目は無い」

ほむら「く…ッ……」

何か打開策はないかと、必死で考える。だが……

もう、策は何も出てこなかった。どう考えても、あの魔物の数が相手では勝ち目は無い

盾の砂時計はもうすぐ全ての砂が落ち切る。それなら

砂が落ち切るのを待って、次の時間へ行った方が得策ではないだろうか

だけどそれは、この時間を捨てるということ。ここでまだ生きているさやかにマミ、杏子、そして……

私と一緒に戦ってくれると言ってくれた、まどかを見捨てるということだ

私の目的を思い出せ。私の目的はまどかを見殺しにすることじゃない。まどかを守ることだ

まどかと約束したはずだ。まどかを守る、と。その約束を破ることなんて、出来るわけがない

ここで逃げ出したら私はもう、まどかに顔向けできない。ならば、答えはひとつだ。私は……

ほむら「……ふふ…ふふふ……」

まどか「ほむらちゃん……?」

QB「何を笑ってるんだい?絶望で気でも触れたかい?」

ほむら「絶望……?何を絶望する必要があるのかしら」

QB「……やっぱり気がおかしくなってしまったのかな?あの魔物が見えないのかい?」

ほむら「無限の魔物?魔神と魔王…それに超魔王?その程度のことで私が諦めるとでも?」

ほむら「まどかが契約せず、生きてここにいる。それなら私は……」

ほむら「まどかを守る…いえ、まどかの為に戦う。それだけよ」

QB「……やれやれ、わけがわからないよ。他人の為にみすみす危険を冒すなんて」

ほむら「お前には一生わからないでしょうね。何にせよ、ワルプルギスの夜は倒させてもらうわ」

QB「……僕はもう何も言わないよ。君たちも同じ意見かい?」

さやか「当たり前でしょ……!」

杏子「ここまで来て…引き下がれるかってんだ!」

マミ「私がいる限り、この街で勝手な真似はさせないわ!」

ほむら「みんな……」

まどか「ほむらちゃん……」ギュウ

ほむら「まどか……?」

まどか「ほむらちゃん…ありがとう。わたしの為に戦うなんて、言ってくれて……」

ほむら「……私が今まで戦ってきたのは過去のあなたとの約束の為。だけど……」

ほむら「それと同時に、今ここで約束する。私は、この時間のまどか…あなたの為に戦う」

まどか「ほむらちゃん…わたしも一緒に戦うから……!」

ほむら「……ありがとう、まどか。……それじゃ、行きましょう……!」

まどか「うん……!」

プリニー『ここが正念場…頑張るッス!』

さやか「絶対、負けない……!」

杏子「死ぬんじゃねぇぞ、お前ら!」

マミ「みんな!行くわよ!」

QB「……さて、いつまで持つかな」

今回はここまで
見て下さってる方、ありがとうございます
今日もまた遅い時間でごめんなさい

次回投下は11日夜を予定しています

今週何でこんな時間取れないんですかやだー
D2についてはこれ書いてたときは発売前、現在もまだ購入してないのでD2ネタは入れてないです

次から本文

——————

ワルプルギス「アハハハハッ!」

杏子「クソ……ッ」

マミ「数が…違いすぎる……!」

さやか「1発も当てられないなんて……」

まどか「ほむら…ちゃん、大丈夫……?」

ほむら「えぇ、何とか…まどかも怪我はないみたいね……」

プリニー『プリニー隊にもだいぶ被害が出て来てるッス!これ以上長引くと……』

ワルプルギスの夜に向かって行ったまではよかったが、想像以上に厳しい戦いになった

近づこうにも魔物が邪魔で近づけない。私やマミ、まどかの遠距離攻撃で狙おうにも、魔物が盾となって届かない

そしてインキュベーターの宣言通り、いくら倒しても後から後から転送されて来るようで、キリがない

手持ちの弾薬は底を尽きかけ、砂はとうに落ち切っている。はっきり言って、戦況は絶望的だ

QB「だから言っただろう?勝ち目は無いって」

杏子「うる…せぇ……!」

さやか「まだ…戦える……!」

QB「もう諦めて消えるのを待った方がいいんじゃないかな。街は破壊されてしまうだろうけど……」

マミ「そんな事…出来るわけないでしょう……!」

ほむら「生きてる限り諦めは……」

QB「そうかい…それなら、そろそろ最後のチャンスかもしれないね」

まどか「え……」

ほむら「ワルプルギスの夜が……」

私たちに止めを刺そうとでも思っているのか、ワルプルギスの夜は私たちへ向かって来る

それに従って、魔物たちも移動を始めた

まどか「そんな…どうしたら……」

マミ「絶体絶命って奴ね……」

杏子「何かないのか…何か……!」

QB「もう何をしたって無駄だよ。君たちではワルプルギスの夜を倒すことは出来ない」

ほむら「それでも……!」

まどか「ほむらちゃん!?」

残り少ない武器の中から機関銃を2丁引っ張り出して両手に構える

そしてそのまま、ワルプルギスの夜に向かって突っ走った

ほむら「それでも…私は戦う!ここで諦めて…たまるものか!!」






『そうです!諦める必要なんてありません!』



マミ「何…今の声……?」

さやか「わかりません…でも……」

杏子「頭に直接……?」

プリニー『今の声…もしかして……』

まどか「……見て、あそこ!」

ほむら「あれは…何……?」

まどかの指差した方を見ると、空から何かが姿を現した

雲を割って現れたそれは、ワルプルギスの夜に引けを取らない程に巨大な人型ロボットだった

呆気に取られているうちに、そのロボットはワルプルギスの夜を押し返し始めた

周りの魔物も、自分たちの邪魔をするロボットに攻撃を仕掛けるが、まるで効いていないようだ

そうこうしていると、目の前に魔法陣が現れる

次の瞬間には、その場に1人の少女が立っていた

???「皆さん、大丈夫ですか?」

ほむら「え、えぇ…あの、あなたは……?」

???「自己紹介がまだでしたね。わたしはフロン。天界の天使長です」

マミ「天使……?」

杏子「そう言われりゃ、天使の羽が……」

さやか「でもこのちっこいのが……?」

フロン「ちっこいとは失礼な!こう見えても皆さんの100倍近くは長く生きてるんですよ!?」

さやか「マジで!?」

フロン「マジです!」

魔法陣から現れた少女はフロンと言い、天界の天使長らしい

天使長というからにはそれなりの地位の者なのだろう

しかし…天使にロボットというのはあまり合っていないような気がする

私はフロンにロボットについて尋ねた

ほむら「それで、フロン…だったかしら。あのロボットは一体……?」

フロン「よくぞ聞いてくれました!あれこそ天界の技術の粋を集め、莫大な資金を投じて造った超合金ロボ……」

フロン「その名もグレートフロンガーXです!むふぅー」

ほむら(どう突っ込めば……)

まどか(えっと……)

さやか(よく見たらあのロボってこの人自身じゃ……)

杏子(家が教会のアタシとしては、コイツが天使ってのは……)

マミ「カッコいい……」

フロン「ふふふ、そうでしょう」

プリニー『フロン様はどうして人間界に来たッスか?』

フロン「おや、あなたは……」

プリニー『地獄にいたプリニーッス。出荷されたとき、何かの手違いで人間界に送られて来たッス』

プリニー『そのときにほむら様と出会って、今はほむら様の下で働いているッス』

フロン「そうでしたか…それで、こちらに来た理由ですが……」

フロン「彼らの暴挙を見逃しておけなくなったからです」

ほむら「彼らって……」

フロン「そうです。そこにいるのは見えているんですよ?インキュベーターさん」

QB「……」

フロン「自分たちの目的のためなら手段は選ばない…相変わらずですね、あなたたち最高評議会のすることは」

QB「宇宙の寿命が尽きてしまったら元も子もないだろう?僕たちは宇宙の為に……」

フロン「そのために恐怖や絶望を『畏れ』エネルギーに変換して利用している、と?」

QB「希望から絶望への相転移で得られるエネルギーより、『畏れ』エネルギーの方がずっと効率がいいからね」

QB「その変換コンバーターでもあるワルプルギスの夜を倒されると、僕たちにとっても都合が悪い」

QB「それにしても、今までのエネルギーよりも効率のいいものが見つかるなんてね……」

QB「このエネルギーを教えてくれた『断罪者ネモ』に少しは感謝しないとだね」

QB「もっとも、彼はエネルギーを独占することだけを考えていたみたいだったけどね」

QB「このエネルギーを利用しない手なんてないのに…彼ももったいないことをしたものだよ、まったく」

フロン「……やはり、あなたたちは止めないとダメですね」

QB「……これ以上の話は無駄のようだね。天使長が出てきたとなると、こちらも……」

フロン「それは無理ですよ」

QB「……どういうことだい?」

フロン「超魔王ラハール。デビルバスター・アデル。邪悪学園理事長マオ。暴君ヴァルバトーゼ。あなたも知ってますね?」

QB「……それがどうかしたのかい?」

フロン「わたし、彼らにはちょっとばかり顔が利くんですよ?だから、皆さんに『お願い』をしてきたんです」

QB「……お願い?」

フロン「はい。アデルさんにはあなたが呼び出しそうな魔神と魔王の討伐。マオさんには魔物の転送の妨害」

フロン「ヴァルバトーゼさんにはクローン悪魔施設の破壊。そして……」

フロン「ラハールさんには元・超魔王バールの相手をお願いしてきました」

QB「それは…天界法に触れるんじゃないのかい?」

フロン「確かにそうですが…それを知っているのはあなただけ。それに……」

フロン「宇宙人…それも、最高評議会に関係しているあなたが言ったところで、誰も信じないと思いますよ?」

QB「……」

フロン「もっとも、わたしもそうなると踏んでここまで無茶をしているんですけどね」

フロン「もしバレてしまったら…わたしの立場も危ういですからね。天使長のわたしが人間界でこんなことをしてるなんて……」

QB「……それなら、早く帰った方がいいんじゃないかい?」

フロン「そうは行きません。あなたたちの狙いは何が何でも阻止させてもらいます」

QB「天使長フロン、君は……」

フロンとインキュベーターが話をしているが、私にはまるで内容が理解できない

辛うじてわかったことは、ワルプルギスの夜は効率のいいエネルギーへの変換コンバーターということだけ

そんな話、今まで聞いたことがない。これもこの時間軸だけのイレギュラーだろうか

フロン「さぁ皆さん、ここからですよ!魔物とワルプルギスの夜を倒しましょう!」

フロン「クローン悪魔はもう転送されないはずです!」

杏子「ワルプルギスの夜は…あと1撃叩き込めれば……!」

さやか「もう増えないってなら、勝機は…ある!」

マミ「魔物は私たちが何とかするわ!暁美さんと鹿目さんはワルプルギスの夜を……!」

まどか「わかりました!」

ほむら「それじゃあ…行くわよ!」ダッ

魔物「……!」

さやか「ほむらとまどかの道…開けてもらうよ……!」ザッ

さやか「食らえ……!飛天無双斬!!」

ズガァァァァン

杏子「次はアタシの番だ!行くよ……!」

杏子「魔砲流星群!!」

ズドドドドドォン

マミ「私は2人みたいな秘技はない…けど、私にはコレがあるわ……!」

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

ズドォォォォォン

ほむら「道が開けた……!まどか、今よ!」

まどか「うん!……これで、終わり……!」

魔物「……!」ワラワラ

ほむら「な…まだいた……!?」

まどか「……っ!ジールレーゲン!!」

ズドドドド

まどか「ほむらちゃん!トドメを!」

ほむら「え!?でも、私は……」

まどか「大丈夫!ほむらちゃんなら…やれるから!」

ほむら「まどか…えぇ、わかった……!」

銃に魔力を込める。この秘技、今まで1度も成功したことはない。だけど

今の私ならきっと撃てる

さやか「ほむら!」

マミ「暁美さん!」

杏子「行けっ!」

フロン「フロンガーは大丈夫ですから、やっちゃって下さい!」

プリニー『ほむら様!やるッス!』

まどか「……ほむらちゃんっ!!」

ほむら「これで止めよ……!」

ほむら「トーテンクロイツ!!」ズドォン

ガギィン

ワルプルギス「アハッ?」

まどか「そんな…失敗……?」

ほむら「いえ…これで、終わりよ……」

ワルプルギス「アハ?ア…アア……!」ズドォォォォォォン

ワルプルギスの夜に向かって放たれた魔法の弾は奴の内部にめり込んだ

不発かと思われたが、一呼吸置いてから炸裂する。そして……

ワルプルギスの夜から、巨大な十字架の火柱が上がった

さやか「ね、ねぇ!?どうなったの!?」

ワルプルギス「アアアアアアア!!」ボロボロ

ほむら「ワルプルギスの夜が崩れていく…ってことは……!」

まどか「ワルプルギスの夜を…倒したってこと……?」

マミ「えぇ…そうよ……!」

杏子「倒したんだな…あの悪魔を……!」

ほむら「私…私、本当にワルプルギスの夜を……?」

まどか「ほむらちゃん!」ギュウ

ほむら「まどか……?」

まどか「ほむらちゃん…お疲れさま……」

ほむら「……えぇ。これで私、やっと……」

ズズズ…

ほむら「……っ!何、この感じ……?」

杏子「わからねぇ…わからねぇけど……」

マミ「えぇ…もの凄く嫌な感じ……」

さやか「……ねぇ、あれ…何?」

まどか「……結界?」

フロン「……やはり、そう簡単に勝たせてはくれませんか」

プリニー『フロン様…これって、やっぱり……』

フロン「はい…あのときと同じですね」

QB「やれやれ…本当にワルプルギスの夜を倒してしまうなんてね……」

QB「だけど…そのせいで君たちは絶望することになる」

マミ「私たちが……」

さやか「絶望する……?」

杏子「どういうことだ……?答えろ、インキュベーター!」

QB「君たちがワルプルギスの夜を倒したことで起動させてしまったのさ」

QB「魔法少女を絶望させるシステム…『ワルプルギスの夜』をね……」

今回はここまで
見て下さってる方、ありがとうございます

次回投下は12日夜を予定しています

今日も遅くなっちゃった…明日は休日だから早めに投下できたらいいなぁ

本文の前に修正点見つけたので修正

>>489修正


QB「正直、君たちがここまで戦えるなんてね。まさかあの銃魔神族を倒すなんて思ってもみなかった」

QB「それに、今だって下手をしたら反転する前に倒されていたかもしれない」

QB「だけど、それもここまでだ。反転した全力のワルプルギスの夜と、転送してきた魔物。君たちにもう勝ち目は無い」

QB「それじゃ、幕引きにしようか」

インキュベーターがそう言うと同時に、ワルプルギスの夜の反転と、魔物の転送が完了する

転送されてきたのは、見たことのある魔物、無い魔物…様々だった

転送されてきた魔物の数に、私は自分の目を疑った。空を覆い尽くさんばかりの魔物が、ワルプルギスの夜の周囲に展開していた。そして……

ワルプルギスの夜の笑い声と、魔物の咆哮が辺りに響き渡った

修正ここまで

次から本文

ほむら「ワルプルギスの夜……?それは今倒したはずでしょう?」

QB「君たちが今倒したのは『魔女』のワルプルギスの夜。……もっとも、アレはもう魔女と呼べる代物じゃないけどね」

マミ「そう言えばグリーフシードを落としていないわ……」

ほむら「……インキュベーター、説明しなさい」

QB「……訊かれた以上、正直に答えるよ。あのワルプルギスの夜は…クローンだ」

ほむら「何ですって……?」

QB「もう随分昔になるけど…オリジナルのワルプルギスの夜は、ある吸血鬼によって倒されてしまったんだ」

QB「ただ…最高評議会がワルプルギスの夜が倒されたことを良しとしなかった」

マミ「その最高評議会というのは……?」

QB「200億の星々から成る汎銀河連盟の総意を決定するもの…分かりやすく言えば、宇宙人たちの評議会さ」

QB「僕たちの星はその最高評議会に属しているんだ」

さやか「つまりその…宇宙人の評議会で、ワルプルギスの夜が倒されたことがよくないって……?」

QB「そうさ。だから僕たちは、回収したワルプルギスの夜のグリーフシードを元に、ワルプルギスの夜のクローンを造り上げたんだ」

プリニー『クローン悪魔の技術を転用して…ッスね?』

QB「そういうことになるね。その技術を利用して、『クローン魔女』ワルプルギスの夜を造った」

QB「そして改良に改良を重ね、エネルギー変換コンバーターと、あるシステムを組み込んだ。それが……」

QB「魔法少女を絶望させるシステム…『ワルプルギスの夜』プログラムさ」

杏子「どういうことだよ…ワルプルギスの夜にそんなもんが付いてるなんて、知らねぇぞ!」

QB「それはそうさ。あの結界に入って、生きて帰ってきた魔法少女は誰もいないのだからね」

QB「どれだけ強い魔法少女でも、あの結界に入ったが最後。絶望することになる」

ほむら「あの結界に入って、生きて帰った魔法少女はいない……?それはつまり……」

ほむら「クローンのワルプルギスの夜は過去に何度か魔法少女によって倒されている…そういうこと?」

QB「そうだね。2回…いや、3回だったかな。クローンのワルプルギスの夜は倒されたことがある」

さやか「ワルプルギスの夜を倒した魔法少女はいるのに…生きて帰った魔法少女はいないって……?」

QB「簡単なことさ。それだけ強い魔法少女でも、あのシステムには打ち勝てない」

まどか「で、でも…それなら入らないってことは……」

QB「システムが完全に作動してしまうと、魔法少女の本体…つまりソウルジェムに直接負荷をかけ、半ば強制的に絶望させることが出来る」

QB「しかもその影響は全世界の魔法少女にも及ぶ。この2つを聞いて入らなかった魔法少女もいなかったね」

QB「全世界の魔法少女が絶望してしまえば、その数だけ魔女が生まれるということだ」

QB「それだけの魔女が生まれると、魔法少女でない人への影響も計り知れないものになると思うよ」

さやか「それじゃ、あの結界っぽいのを放っておくと……」

QB「いずれは全世界に影響が及ぶことになるだろうね」

杏子「どこまで汚い真似を……!」

QB「用意周到と言ってもらえないかな。僕たちは自分の目的のためにやっているだけさ」

ほむら「そう…それと、もうひとつ。『畏れ』エネルギーとは、一体何かしら?」

QB「魔界の住人たちの、魔力の源となるものさ。弱い魔物も、最強の魔王も、等しくこの『畏れ』エネルギーから魔力を得ている」

QB「『畏れ』エネルギーは人間の畏れから得られる物だ。だけど、僕たちにはエネルギーを継続して採取する術がなかった」

QB「だから僕たちは『畏れ』エネルギーの研究を始めたんだ。そしてその結果……」

QB「恐怖や絶望といった負の感情の形を変え、『畏れ』エネルギーに変換することに成功したんだ」

ほむら「……つまりそのエネルギーを手に入れる為に、ワルプルギスの夜に魔法少女や襲撃を受けた街の人たちの負の感情を集め……」

ほむら「取り付けたコンバーターで『畏れ』エネルギーへ変換している…ということね」

QB「そうさ。ただ、一般人の負の感情はおまけ程度。狙いはあくまで魔法少女の負の感情だ」

QB「ソウルジェムを通じて、負の感情が『ワルプルギスの夜』システムの方へ集まるからね」

マミ「ソウルジェムに、そんな秘密が……?」

QB「以前までの君たち魔法少女の希望から絶望への相転移のエネルギーと比べて、『畏れ』エネルギーの効率は目を見張るものがある」

QB「基本的にエネルギーは形を変える度にロスが生まれ、効率は落ちていくものなんだけど……」

QB「負の感情から『畏れ』エネルギーへの変換は逆にエネルギー量が増えているんだ。まさにエントロピーを凌駕した最高のエネルギーだよ」

QB「これがあれば、まどかみたいな強い魔力を持つ者でなくても、ある程度のエネルギーを得られる。僕たちとしては選り好みする必要がなくなって大助かりさ」

ほむら「それで、お前は執拗にまどかへ契約を迫ったりしなかったのね……」

ほむら「知りたいことは教えてもらったわ。……それで」

ほむら「アレはどうしたら止まるのかしら?」

QB「そうだね…止める方法は3つ。1つはまどかがこの事態の収拾を願って魔法少女になること」

ほむら「却下よ。次」

QB「……2つ目は君たちの誰かががシステム内部で絶望すること」

QB「あのシステムの目的は絶望のエネルギーを採取すること。1人分であろうと、採取できたら止まってしまうんだ」

ほむら「話にならないわ。次」

QB「……3つ目。内部にあるシステムの中核を破壊すること」

杏子「破壊できるんだな…だったら……!」

フロン「いえ…そう簡単には行かないと思います。インキュベーターさん、これは……」

QB「君はもう気づいてると思うけど…これはあの『恐怖の大王』プログラムを参考にして造ったものだ」

QB「『恐怖の大王』は人類全てに向けて造られたみたいだけど、『ワルプルギスの夜』は魔法少女に向けて造ったものだけどね」

QB「あの結界の入口の向こうはシステム内部に繋がっている。それがどういうことか、わかるだろう?」

フロン「つまり…あの内部は絶望で満たされている、と?」

QB「そうさ。『恐怖の大王』は憎悪で満たされていたように……」

QB「『ワルプルギスの夜』は魔法少女たちから集められた絶望で満たされている」

QB「魔法少女でなくとも、心が圧し潰されることになるだろうね」

フロン「……」

QB「それに、当然だけど自己防衛機能だってある。簡単に破壊できるとは思えないね」

QB「それと、『恐怖の大王』は生きている憑代に憑りついて起動するものだったけど、コレには必要ない」

フロン「まさか……」

QB「以前に結界へ入って、そして絶望した魔法少女の身体を憑代として、システムの一部にしているのさ」

QB「もっとも、自己防衛機能が魔力とエネルギーで弄っているだろうから、元々が誰だったかなんてわからないだろうけどね」

フロン「あなたは……!」

QB「とにかく、止めたいのなら好きな手段を取るといい。止める手段については、嘘は言ってないからね」

まどか「ほむらちゃん、どうしよう……」

ほむら「……」

インキュベーターから3つの選択肢が与えられる。しかし、実質選べるのはたったひとつだけ

まどかを契約させる?ここにいる魔法少女の誰かを絶望させる?冗談じゃない

ほむら「……決まってるでしょう。そのシステムの中核とやらを…破壊する」

さやか「そうと決まれば、早く……」

ほむら「いえ…ここからは私1人で行くわ」

マミ「あなた、何を言って……!」

ほむら「さっきの話を聞いてなかったの?あの結界の中は絶望で満たされているのよ」

ほむら「あなたたち、そんなところに入って魔女化しないと言い切れるの?」

さやか「うぐ…そ、それを言うならほむらだって……」

ほむら「私はもう…絶望には慣れてるから」

フロン「ほむらさん、甘く見ないでください。『恐怖の大王』と同等だとしても、相当な絶望が……」

ほむら「……あなたこそ、私を甘く見ないで。私にとっての絶望は、『まどかを救えないと、自分でそう認めたとき』だけ」

ほむら「それ以外の絶望?そんなもの、絶望でも何でもない」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「……ともかく、誰が何と言おうと、私1人で行かせてもらう。あなたたちは……」

フロン「待ってください」

ほむら「……何かしら」

フロン「ほむらさんの覚悟は聞かせてもらいました。そこで、他の4人の方に伺います」

フロン「今、目の前に大きな絶望が待ち構えています。……最悪、それが世界を滅ぼしてしまうかもしれません」

フロン「それに対して…皆さんは戦うことを選びますか……?」

さやか「……当然でしょ」

マミ「世界が滅ぶかもしれない、ってことはこの街も滅んでしまうかもしれない、ってことでしょう。そんなの、私が許さないわ」

杏子「このまま黙って見てるわけにもいかねぇよ。止める手段があるのなら、最後まで足掻いてみるさ」

まどか「……わたし、世界が滅ぶかもしれないから…それを阻止しようとか、そんな立派なことは思ってない。だけど……」

まどか「ほむらちゃんが戦うのなら…わたしも戦う。絶対に、諦めない……!」

フロン「……わかりました。では皆さん、もう少しこちらへ。あ、ほむらさんも来てください」

ほむら「……?わかったわ……」

フロンにそう言われ、私たちはフロンの近くへ歩み寄る

何をするのかと思いきや、フロンはどこからか杖を取り出し、魔力を込めていく

フロン「……少女たちに、愛のチカラを……!」

杖の先から発せられた淡いピンク色の光が、私たちの体を包み込む

何だかよくわからないが、体が軽くなったような気がした

まどか「あの、これは……?」

フロン「皆さんを愛のチカラで包み込みました。名付けて『愛フィールド』です」

フロン「愛と絶望は対極のモノ。愛フィールドがあれば、そう簡単には絶望せずにすむと思います」

ほむら「……ありがとう、フロン」

フロン「いえ…申し訳ないのですが、わたしが力になれるのはここまでです。本来、わたしがここにいるのもマズいことなので……」

ほむら「ここまでしてもらえれば十分よ。後は私たちに任せて頂戴」

フロン「それと…ほむらさん、これを持って行ってください。何が出て来るかわかりませんから」

ほむら「……これは?」

フロンから手渡されたのは、剣の柄のようなものだった

刀身は無く、どう見てもガラクタにしか見えなかった

フロン「……魔剣良綱。魔界にその名を轟かす、最強の剣…だったんですが……」

フロン「ご覧の通り、刀身がないんです。力を失ってしまった原因は…よくわかっていません」

フロン「元々お知り合いのある魔王の方が持っていたんですが…『使えないならいらない』とわたしに押し付けていった物なんです」

ほむら「……そんなものを渡したの?あなたは……」

フロン「ごめんなさい……。でも、ほむらさんの魔力…いえ、愛のチカラで蘇る。……そんな気がするんです」

ほむら「愛フィールドに愛のチカラ…あなた、一体何なのよ……」

フロン「天使長にして、愛の伝道師です!それに愛があれば、大抵のことは上手く行くんですよ?」

ほむら「わけがわからないわ…それじゃフロン、そろそろ行くわね」

フロン「皆さん…無事に帰って来てくださいね」

さやか「うん!」

マミ「えぇ!」

杏子「あぁ!」

プリニー『了解ッス!』

まどか「……行こう、ほむらちゃん!」

ほむら「えぇ…みんな、行くわよ!」ズズ

QB「……さて、彼女たちは本当に止めることはできるかな?完成以来、魔女はともかくシステムを完全に止められた魔法少女は誰もいないのだからね」

フロン(……この件に最高評議会が関係しているのだとしたら、きっとまだ何か……)

フロン「……わたしは1度天界に戻ります。フロンガーをいつまでも人間界に置いておくわけには行かないので」

QB「そうかい?まぁ、好きにしたらいいんじゃないかな」

フロン(何をしてくるかはわかりませんが…とにかく考えうる限りの対策を……!)

——結界内——

ほむら「これが、結界…もとい、『ワルプルギスの夜』プログラムの内部……」

さやか「……絶望で満たされてる、って言葉だけじゃよくわからなかったけど……」

杏子「あぁ…嫌な感じが纏わりついて来るというか……」

ほむら「……あなたたちは大丈夫みたいね。まどか、マミ、大丈夫かしら」

マミ「えぇ、何とか……」

まどか「これが…絶望……」

プリニー『それで、そのシステムの中核はどこに……』

ほむら「……まだ先があるみたいね。とにかく、進んでみましょう」

『ワルプルギスの夜』プログラムの内部に足を踏み入れる

聞いてはいたが、確かに内部は絶望で埋め尽くされているようだった

勿論絶望が見えているわけではないが、心がそう感じていた

まどか「ほむらちゃん…大丈夫……?」

ほむら「えぇ。まどかは?」

まどか「何とか……。プリニーさんは割と大丈夫みたいだけど……」

プリニー『腐っても魔物ッスから。負の感情には強いッスよ」

ほむら「あなたもずっと魔チェンジし続けているけど、大丈夫なの?」

プリニー『この戦いが終わるまでは…頑張るッス』

ほむら「そう…まどかのこと、よろしく頼むわよ」

プリニー『了解ッス』

杏子「さやか、マミ、大丈夫か?」

さやか「杏子…うん、なんとか……」

マミ「この感じだけは慣れそうにもないわね……」

杏子「あんま慣れたいもんでもないけどな」

さやか「魔物のプリニーはいいとして…ほむらも平然としてるように見えるんだけど……」

マミ「入る前に言ってた、絶望には慣れてる…ね……。あれだけのことがあった以上、仕方ないとは思うけど……」

さやか「……悲しいことですよね。絶望に…慣れるなんて……」

杏子「ほむらとまどかには…幸せになってもらいたいな……。あいつらはもう、十分すぎる程に苦しんだんだからよ」

マミ「えぇ…そうね……」

『ワルプルギスの夜』の内部をしばらく進むと、開けた場所に出た

魔物が現れたときの結界そっくりのその広場の中心に、何やら魔法陣のようなものが描かれていた

ほむら「あれが…システムの中核かしら」

まどか「じゃないかな…もう、これ以上先はないみたいだし」

杏子「で、コレを壊すってどういうことだよ?」

さやか「うーん…とりあえず、魔法陣を崩してみるとか?」

マミ「下手に手を出さない方が…何があるかわからないし」

プリニー『でも、他に案は……』

ズズズ…

マミ「な、何!?」

ほむら「……!退路が……!」

マミ「ここから逃がさないつもりのようね……!」

杏子「コレがその自己防衛機能ってヤツじゃないのか!?」

ほむら「何が出てくるかわからないわ!注意して!」

まどか「う、うん!」

私たちを察知したのか、魔法陣が激しく反応する

何が起こるかわからない。辺りを警戒しながら魔法陣を見守っていると、その中心から何かが姿を現した

よく見ると、それは人間の体のようだった。インキュベーターの話を聞く限り、恐らくあれはシステムの為の憑代にされた魔法少女の身体…だろう

その魔法少女の身体が完全に姿を現す。しかし、そこに現れたのは……

さやか「ちょっと…どうなってんの……?」

マミ「わからないわ…でも、きっとこれもキュゥべえたちの仕業だと思うわ……!」

杏子「クソ…どこまでも汚い真似してくれるじゃねぇか……!」

プリニー『ま、まどか様……』

まどか「うん…ほむらちゃん、あれって……」

ほむら「えぇ…これは魔法少女を絶望させるプログラム。だからきっと…こちらの心を折りに来たんでしょうね……」

ほむら「あなたの姿で……!」

偽まどか「……ウェヒッ…ウェヒヒヒッ!」

魔法陣から現れた魔法少女の身体は、どういうわけかまどかの姿をしていた

しかし、本物のまどかとは比べるまでもなく、何もかもがおかしかった

黒く染まった魔法少女の衣装を纏い、およそ人間とは思えない肌の色。手には黒い弓を携えている。そして……

その顔には狂気に満ちた笑みを浮かべていた

マミ「……偽物とは言っても…鹿目さんと戦うだなんて……!」

さやか「あ、あたし…あたしにまどかを斬れって言うの……?」

杏子「どうしたもんか…やりづれぇな……!」

ほむら「……」

偽まどか「ウェヒヒッ!」キリキリ

まどか「ほむらちゃん!危ない!」

偽まどか「ヒヒッ!」パシュウ

ガギン

偽まどか「ウェヒ!?」

ほむら「……ふざけるんじゃ…ないわよ……!」

ほむら「たかだかインキュベーターごときが造ったプログラムが、まどかを……」

ほむら「私のまどかを、騙るんじゃないわよ!!」

ほむら「……お前だけは絶対に許さない。徹底的に破壊してあげるわ……!」

ほむら「さやか!マミ!杏子!いつまでも怖気づいてるんじゃないわよ!覚悟決めなさい!」

さやか「ものすごいやりづらいけど…こうなった以上仕方ない……。覚悟、決めるよ……!」

マミ「あれは鹿目さんじゃないけど…ごめんなさい、鹿目さん……!」

杏子「偽物に惑わされるなんてな…もう大丈夫だ……!」

ほむら「まどか、あなたは大丈夫……?」

まどか「う、うん……!」

まどか(ほむらちゃん…今言ったこと、気づいてないのかな?……でも)

まどか(ありがとう、ほむらちゃん。そんな風に言ってくれて…すごく、嬉しい)

まどか(わたし…やっぱり、ほむらちゃんのことを……)

プリニー『こっちも大丈夫ッス!いつでも行けるッスよ!』

ほむら「みんな、行くわよ!」

偽まどか「ヒヒッ!」

偽物のまどかが手を翳すと、周囲に魔法陣が描かれる

そこから姿を現したのは、私たちの偽物だった

偽物のまどかと同じく、黒い魔法少女の衣装を纏い、手には黒い武器

その顔にはニタニタと狂った笑顔が浮かんでいた

偽ほむら「……」

偽さやか「ヒヒヒッ」

偽マミ「フフ……」

偽杏子「ケケッ」

さやか「何あれ!?あたしたちの偽物まで出て来たよ!」

杏子「どいつもこいつも悪い笑顔してんな……」

ほむら「恐らく私たちの偽物の方は偽物のまどかを守るための駒。偽物のまどかを…システムの中核を破壊すれば、消えるはず」

まどか「じゃあ、わたしの偽物を倒せばいいんだね……!」

ほむら「えぇ、そういうこと。……みんな、偽物のまどかに攻撃を集中させて!これで全て…終わらせるわよ!」

さやか「わかった!」

杏子「あぁ、任せろ!」

マミ「援護は任せて!」

ほむら「インキュベーターの造った『ワルプルギスの夜』プログラム…ここで破壊する……!」

偽まどか「ウェヒッ!」パシュウ

プリニー『今の攻撃……!』

まどか「みんな!散開して!」

ほむら「まどか?……とにかく、全員散開!」バッ

ズドドドド

マミ「散開してなかったら直撃してたわね…でも、今のは……」

まどか「はい…弓の秘技、ジールレーゲン……」

さやか「向こうも秘技使うっての……?まどか、よくわかったね」

まどか「……わたしだって…同じ秘技、使えるんだから……!」キリキリ

まどか「行くよ……!ジールレーゲン!!」パシュウ

偽まどか「ウェヒヒ!」バッ

ズドドドド

ほむら「向こうもバラけた…これで……!」ダッ

偽まどか「ウェッ!?」

ほむら「食らいなさい……!」ジャキ

偽ほむら「……」ズドドドド

ほむら「な…私の偽物……!」

偽まどか「ウェヒッ!」

偽ほむら「……」

ほむら「……お前はそっちのまどかを守るとでも言いたいのかしら。でもね……」

ほむら「私だってまどかと約束したのよ、まどかの為に戦うって。……だから、負けるわけには行かないのよ……!」

ほむら「行くわよ……!リフレクトレイ!!」

フォン

偽ほむら「……?」

ほむら「いくら邪魔したところで、これなら……!」バシュウ

偽まどか「ウェヒィ!?」ズガッ

ほむら「……反射させればそう簡単には防げない。さぁ……」フォン

ほむら「四方からの一斉攻撃…防げるものなら防いでみなさい!」バシュウ

偽まどか「ウェッ……」

偽ほむら「……!」

ドォォォン

ほむら「これで……!」

偽ほむら「……ッ」

ほむら「こいつ……!」

偽ほむら「……マジカル…レイン……!」

ほむら「秘技……!なら、こっちも……!」

ほむら「マジカルレイン!!」

偽ほむら「……!」ズドドドド

ほむら「偽物の自分に…負けるわけないでしょう……!」ズドドドド

さやか「ていっ!」

偽さやか「キヒッ……」ギィン

さやか「くそ…さすがはあたしの偽物ってところか……!」

偽さやか「ヒヒ…無限剣……!」ズズ

さやか「な、何……?剣……?」

偽さやか「イヒヒヒヒッ!!」ダッ

さやか「く……!」ギィン

偽さやか「ヒヒ……!」ガッ

さやか「次の剣を…そういうことか……!」

偽さやか「ヒヒヒッ!」ダッ

さやか「くそ…このままじゃ……!」

さやか「そっちが『無限剣』ってんなら、こっちだって……!」ザッ

さやか(チャンスは…あいつが向かって来たとき……!)

偽さやか「ヒヒッ……!」

さやか「……そこっ!」ドガッ

偽さやか「……!」

さやか「これで……!秘剣……」バッ

さやか「闇夜斬り!!」ズバババァン

偽さやか「ガ…ア……」

さやか「……よし、倒した。早くまどかの偽物を……!」ダッ

『……』ズズズ

偽マミ「フフ……」ズドドドド

マミ「あれが私なんて冗談じゃないわ…ただ撃ちまくる戦い方なんて……!」

マミ「私の戦い方を…教えてあげるわ!」パァン

偽マミ「……」バッ

マミ「……これでいいわ。あとは……」

偽マミ「ウフフ…ティロ……!」ジャキ

マミ「させない……!拘束!」

偽マミ「……!」グルグル

マミ「私以外に使わせはしないわ…食らいなさい!」

マミ「ティロ・フィナーレ!!」ズドォォォォォン

偽マミ「ア……」

マミ「ふぅ…あとは鹿目さんの偽物を倒さないと……!」ダッ

『……』ズズズ

偽杏子「ケケッ……」

杏子「チッ…自分と戦うことになるとはな……!けどよ……」

杏子「アタシは…そこまで悪い笑顔してねぇよ!」ブン

偽杏子「クケケ……」ギィン

杏子「クソ……」

偽杏子「ケケ…酷刺……!」ドガッ

杏子「ぐっ……!」

偽杏子「クケケケッ!」ガッ

杏子「な…クソ、離せ……!」

ズドォン

杏子「ぐ…ッ……」

偽杏子「ケケケ……」

杏子「ク…ソ…すま、ね……」

偽杏子「クク…クケケケケ……」ズバァン

偽杏子「ケ……?」

杏子「……ロッソ・ファンタズマ。アンタはずっとアタシの分身と戦ってたワケさ」

杏子「……っと、こうしちゃいらんねぇな。早いとこニセまどかを倒さないとな」ダッ

『……』ズズズ

偽ほむら「……ッ」

ほむら「……どうやら私の勝ちのようね。これで、止め……!」ジャキ

ほむら「マジカルレイン!!」ズドドドド

偽ほむら「グ…ガ……!」ズガガガガ

ズドォォォン

偽ほむら「グ……」

ほむら「……所詮は私と言ったところかしら。時間停止がなければ、対して強くも……」

偽まどか「ウェヒ……!」

ほむら「私の偽物は倒した。他の偽物も、みんなが倒してくれた。……もう、観念しなさい」

偽まどか「……ウェヒッ」

偽まどか「ウェヒ…ウェヒヒッ!」

ほむら「……?何を笑って……!」

偽ほむら「……」ジャキ

ほむら「な……!」

偽ほむら「……」ズドドドド

ほむら「ぐっ……!どう、して……?」

偽ほむら「……」ダッ

ほむら「……合流させるわけには……!」

ほむら「……いえ、1度みんなと合流するべきね……。私も手傷を受けてしまったし……」

偽さやか「ヒヒヒッ!」

偽マミ「フフフ……」

偽杏子「ケケケ」

さやか「どうなってんの!?こいつら、倒したはずじゃ……!」

杏子「アタシが知るか!……向かってくるんなら、もう1度……!」

偽さやか「……!」ダッ

偽マミ「……!」ダッ

偽杏子「……!」ダッ

マミ「……鹿目さんの偽物のところに戻って行ったわね……」

さやか「でも…何でだろう……?あ、まどか、大丈夫だった?」

まどか「わ、わたしは大丈夫だけど……」

ほむら「全員…無事のようね……」

まどか「ほむらちゃん!大丈夫なの!?」

ほむら「えぇ、ちょっと背後から撃たれただけよ。油断したわ……」

まどか「……なら、いいんだけど……」

ほむら「それよりも、あの偽物たち…どうにも復活するみたいね……」

マミ「えぇ…私たちも暁美さんの偽物が復活するのを見て、後ろを見たら……」

杏子「倒してもまたすぐ起き上がってくる…ゾンビはどっちだよ……」

さやか「でも、それだとどうやって倒すのさ……」

まどか「……わたしに、考えがあるの」

プリニー『まどか様?』

まどか「わたしがもう1度、偽物を散開させるから…ほむらちゃん以外のみんなは、それぞれの足止めをお願い」

さやか「……うん、わかった」

ほむら「私は……?」

まどか「ほむらちゃんは、わたしの偽物を…倒せるくらいの攻撃をお願い」

ほむら「……何とかしてみせるわ。でも、私の偽物が……」

まどか「……大丈夫。わたしが…動きを止めてみせるから……!」キリキリ

まどか「行くよ、みんな……!ジールレーゲン!!」パシュウ

偽まどか「ウェヒッ!」バッ

ズドドドド

さやか「よし、バラけた……!行くよ!」ダッ

偽ほむら「……!」ダッ

まどか「遅いよ……!瞬雷!!」パシュウ

ヒュオン

偽ほむら「……ガ…ッ……」ズドォン

偽まどか「ウェヒィッ!」

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「えぇ、わかってる……!」

確実に仕留められる秘技…アレが撃てれば、恐らく倒せるはず。だけど……

インペリアルで増幅したとしても、魔力が足りない。私はインペリアルを握りしめ、願う

ほむら(お願い…私にもう少しだけ、力を……!)

パァァ

ほむら「え……?これは……?」

まどか「ほむらちゃんの首飾りが……」

プリニ『あれは…アルカディア……!インペリアルよりも、ずっと上等な物ッス!』

ほむら「……魔力が満ち溢れて来る…これなら……!」

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「えぇ……!」

握った銃に魔力を集中させる。……この一撃で、全て終わらせる

偽物とはいえ、再びまどかを銃で撃つことになるなんて……

だけど、アイツは偽物。だったら、躊躇う必要は無い。私はまどかの偽物に向けて、引き金を引いた

ほむら「……インフェルノ!!」ズドォン

偽まどか「ウェヒッ……」

私が放った魔法弾は、まっすぐにまどかの偽物へ向かっていく

そして、まどかの偽物の眼前で炸裂し、大爆発を引き起こした

ズドォォォォォン

ほむら「……やった…の……?」

まどか「じゃないかな…ほむらちゃんの偽物も消えてるし……」

ほむら「……今度こそ、全部……」

さやか「あんた、なんちゅー秘技使うのさ!」

杏子「あんなモン使うならそう言え!危ねぇだろうが!」

マミ「まぁまぁ…それよりも、倒したのなら戻りましょう?こんな場所、早く出たいわ」

ほむら「……そうしたいのだけど、退路が閉じたままね。どうやって出る……」

ズズズ…

ほむら「……ッ!」ゾクッ

さやか「な、何?今の……」

杏子「最初ここに入ったときに感じたのに近いが……」

マミ「えぇ…それよりももっと嫌な感じ……」

まどか「まさか…まだ……!」

私たちの背後から感じた嫌な何か

私たちの偽物は既に消滅している。……それなら、正体はひとつしかない。そう思っていると

爆煙を裂いて、奴が姿を現した

>>567修正


偽杏子「ケケッ……」

杏子「チッ…自分と戦うことになるとはな……!けどよ……」

杏子「アタシは…そこまで悪い笑顔してねぇよ!」ブン

偽杏子「クケケ……」ギィン

杏子「クソ……」

偽杏子「ケケ…槍刺……!」ドガッ

杏子「ぐっ……!」

偽杏子「クケケケッ!」ガッ

杏子「な…クソ、離せ……!」

今回はここまで
見て下さってる方、ありがとうございます

頭の部分しか表記してませんが
>>564のは『無限剣の墓標』
>>579のは『槍刺葬哀』です

次回投下は13日夜を予定しています

今日も結局遅くなった…ぐぬぬ

次から本文

偽まどか「ウェ…ヒ……」

杏子「……やっぱりアイツか」

さやか「でも、もうだいぶ弱ってる。これなら……」チャキ

マミ「待って…様子がおかしいわ」

偽まどか「ウェヒッ…ウェヒヒヒヒヒヒッ!!」ズズズ

まどかの偽物が狂ったかのように笑い出すと、どこからか黒い靄のようなものが現れ、彼女を包み込んだ

靄は少しずつ濃くなっていき、やがて完全に見えなくなってしまった

まどか「何が…起こってるの……?」

ほむら「わからないわ……。あの黒い靄は何……?」

プリニー『絶望が収束していく…そんな感じがするッス……!』

杏子「何だかよくわからねぇが…ヤバそうな気はするな……」

マミ「……みんな、見て!」

まどかの偽物を包んでいた靄が少しずつ晴れていき、彼女が再び姿を現す。しかし……

その姿は、先ほどまでとは大きく変わっていた

漆黒のドレスのような衣装に、堕天使のような黒い翼。そして

身の丈を超えるほどの大剣を手にしたその姿は、まるで魔王のようだった

偽まどか「ウェヒ…ウェヒヒヒヒッ!」

杏子「……何だよ、あのフザけた剣……!」

さやか「わかんないよ…でも……!」

ほむら「やるしかないわ……!行くわよ!」

マミ「鹿目さん!あなたはそこにいて!」

まどか「は、はい!」

偽まどか「ウェヒヒヒッ!」ダッ

杏子「向こうもやる気みたいだ…気をつけろよ!」

さやか「まずはあたしから……!」チャキ

さやか「うおりゃっ!」ドガッ

偽まどか「……!」

さやか「行くよ!秘剣…闇夜斬り!!」ズバババァン

偽まどか「……ヒヒッ」

杏子「逃がすか!疾風迅雷!!」ズドドドド

杏子「これで…どうだ!?」ズドォン

偽まどか「……ヒヒ…ウェヒヒヒヒッ」

杏子「マトモに食らったはずだろ……?どうなってやがる……」

さやか「……!杏子、来るよ!」

偽まどか「ウェヒッ」ブオン

さやか「うぐ…重い……!」ギィン

杏子「アタシはこっちだ!」

偽まどか「ヒヒッ……!」グググ

さやか「そん…な……!」

杏子「……嘘だろ…さやかごと……!」

ズガァァァン

偽まどか「……ウェヒヒッ」ダッ

マミ「……来るわよ!」

ほむら「わかってるわ。残り少ないけど……!」ジャキ

ほむら「食らいなさい!」ズドドドド

偽まどか「ウェヒッ!」ギィン

ほむら「……防御魔法……!」

マミ「何としても…倒してみせる!」ズドドドド

偽まどか「ヒヒッ」

ほむら「仕留める……!マジカルレイン!!」ズドドドド

マミ「私と暁美さんの集中砲火…食らいなさい!」ズドドドド

偽まどか「……!」

ズドォォォン

ほむら「どうかしら……?」

マミ「倒したとは思えないけど……」

偽まどか「ウェヒヒッ」ダッ

ほむら「まだ……!」

偽まどか「ヒヒッ!」ブオン

マミ「く…私じゃ……!」ギィン

偽まどか「ウェヒヒヒッ……!」グググ

マミ「も、もう……!」

さやか「マミさんから離れろ!」ブン

偽まどか「ウェヒッ」バッ

杏子「マミ、大丈夫か!?」

マミ「えぇ、ありがとう、2人とも」

杏子「にしても、強いな……」

ほむら「全員で一気に行くわよ。一斉攻撃なら……!」

さやか「わかった!」

ほむら「それじゃ、行くわよ!」ダッ

偽まどか「……」

さやか「杏子!あんたは右!あたしは左から行くよ!」

杏子「わかった!」

マミ「私と暁美さんは正面から攻撃するわ!注意して!」

ほむら「私たちの連携…食らいなさい!」

偽まどか「……ヒヒッ」スッ

ほむら「……?何を……」

偽まどか「ウェヒヒヒヒッ!!」バッ

ズドォン

杏子「ぐ…っ……」

さやか「な…何……?」

マミ「あ…足元から……」

ほむら「剣が……!」

偽物のまどかが手を翳す

次の瞬間、私たちの足元から、偽物が持っているような巨大な剣が突き出した

ほむら「ぐ…う……」

偽まどか「ウェヒヒッ」ダッ

ほむら「あいつ…まさか……!」

まどか「ほむらちゃん!みんな!」

プリニー『まどか様!こっちに来るッスよ!』

まどか「え!?え、えっと…防御魔法を……!」

プリニー『ダメッス!アレは防げないッス!そのまま斬られるッスよ!』

まどか「そんな…どうしたら……!」

偽まどか「ヒヒ……」ブオン

プリニー『こうなったら…魔チェンジ解除ッス!』パァァ

まどか「プリニーさん……?」

プリニー「1発こっきりッスが…今が使うときッス!」ゴソゴソ

プリニー「食らうッス!プリニガービーム!!」パシュウ

偽まどか「ウェヒ……!」ガギン

まどか「弾いた…けど……!」

偽まどか「ウェヒヒッ!」ブオン

プリニー「や、やっぱりまた来たッス!」

まどか「プリニーさん!もう1回……!」

プリニー「も、もう撃てないッス!」

まどか「そんな……!」

偽まどか「ウェヒヒヒヒッ!!」

まどか「あ……」

ズバァン

まどか「……あれ?え!?」

ほむら「……が…ふ…ッ……」

プリニー「ほむら様……?」

まどか「ほむらちゃん…ほむらちゃん!!」

ほむら「まど、か…大丈…夫、かしら……」

まどか「わたしのことはどうだっていいよ!!それより、ほむらちゃんが……!」

ほむら「心配…しなくても、大丈夫…よ。アイツを…倒すまでは、死んだり…しないから……!」

今の私には、まどかの目の前に迫った偽物の攻撃を防ぐことも、まどかを逃がすことも出来ない

なら、私に出来ることはただひとつ。身を呈してでも、まどかを守ることだけ

肩口からばっさりと袈裟懸けに斬られ、鮮血が噴き出す

溢れだす血で、みるみるうちに私の全身は真っ赤に染まっていった

ほむら「まどかは…私が、守る……!私の…この命に代えても……!」

まどか「そんな…ほむらちゃん……!」

偽まどか「ウェヒヒッ!」ブオン

まどか「ほむらちゃん!!」

さやか「そうは…させるかあぁぁぁ!!」ズバン

偽まどか「ウェヒッ!?」バッ

杏子「まだだ!さっきのお返し…させてもらうよ!!」ズドン

偽まどか「ウェッ……!」

杏子「こ…の……!うおりゃああぁぁ!!」ブオン

ズガァァァン

マミ「暁美さん!!しっかりして、今治療を……!」

ほむら「……止血だけで、いいわ……。それより、話を聞いて……」

さやか「話……?」

ほむら「……正直に言って、今の私たちではアイツに…勝てない。まどかが契約でもしない限りは……」

さやか「そんな…あたしたちが協力すれば、きっと……!」

ほむら「私たちの秘技を食らって…ほとんどダメージがないのよ……?力の差が…レベルが違いすぎる……」

ほむら「だけど…私は、まどかが契約するなんて…そんなの認めない……。だから…賭けに出るわ……」

杏子「賭け……?」

ほむら「ここに入る前…フロンから手渡された、魔界最強の剣…『魔剣良綱』を使ってみるわ……!」

さやか「そんなもんあるんなら最初から……」

ほむら「だから、言ってるでしょう…これは賭けなの……。今、この剣には刀身が無いの……」

ほむら「フロンの話だと…私の『愛のチカラ』で蘇る…かもしれないということよ……」

杏子「博打も博打、大博打じゃねぇか……。けどよ、その話…乗ったよ……!」

さやか「あたしたちは…その刀身が復活するまで時間を稼げばいいんだね……!」

マミ「……治療、終わったわ。私も、協力するわ……!」

プリニー「オレとまどか様も力を貸すッスよ!」

まどか「ほむらちゃん…ひとつだけ、約束して」

ほむら「……何かしら」

まどか「絶対…絶対に、生きてみんなと一緒に帰ろう。だから…死んだりしちゃ、ダメだからね」

ほむら「……わかった。『約束』するわ」

偽まどか「ウェヒッ……」ガラ

さやか「向こうも行動可能になったみたいだし…よし、行くよ!」ダッ

杏子「マミ!お前、近接型じゃないんだからな!無茶すんなよ!」

マミ「わかってるわ!2人も気をつけて!」

そう言って、3人は互いに声を掛け合いながら偽物に向かって行く

私は盾からフロンに手渡された魔剣を取り出す

まどか「……それが、魔剣……?」

ほむら「えぇ。フロンが言うに、知り合いの魔王から譲り受けたらしいわ」

プリニー「魔剣良綱…初めて見るッス……」

ほむら「……少し集中させてほしいの。まどか、私の護衛…お願いできるかしら」

まどか「……うん。ほむらちゃんは、わたしが守ってみせる。プリニーさん、お願い」

プリニー「わかってるッス。魔チェンジ!」パァァ

ほむら「それじゃ…お願いするわね」

魔剣を握りしめ、目を閉じる。フロンは『愛のチカラ』で蘇るなんてことを言っていたが

これが魔界の武器だとしたら、魔力を送り込めばきっと……

そう思い、私は魔剣へ魔力を送り続けた

——————

偽まどか「ウェヒッ!」ブオン

さやか「うぐっ……!」ギィン

杏子「クソ…いつまでかかるんだよ……!」

マミ「刀身は出てるみたいだけど…あれじゃ……!」

さやか「でもいい加減…こっちも限界に近いよ……!」

マミ「グリーフシードももう残ってない…マズいわ……」

杏子「……ほむら、急いでくれ……!」

まどか「みんな、がんばって……!きっと、もう少しだから……!」

ほむら「……」

魔力を送り込むことで、何とか刀身を蘇らせることには成功した。だが……

その姿は、魔界最強の剣と呼ぶにはあまりにも弱々しいものだった

完全に復活させるには…魔力と『愛のチカラ』とやらが必要なのだろう

しかし、その愛のチカラとは一体どうしたら……

ズガァァァァン

さやか「ぐあ……っ」

まどか「あ…さやかちゃん!マミさん!杏子ちゃん!」

マミ「く……っ」

杏子「動けよ…アタシ……!」

偽まどか「ヒヒッ……」

まどか「ほむらちゃん…みんなが……!」

ほむら「……どうやらここまでのようね。不完全だけど…やるしか……」

偽まどか「ウェヒヒ……」バッ

さやか「あれ…飛天無双斬……!?まどか!ほむら!逃げ……!」

ほむら「……っ!」バッ

まどか「え、ほ、ほむらちゃ……!」

偽まどか「ウェヒヒヒヒッ!!」

ズガァァァァン

杏子「ほむら!!まどか!!」

マミ「2人とも、返事して!!」

さやか「……よくも…よくも2人を!!」ダッ

偽まどか「ウェヒ?」

さやか「うおおぉぉぉ!!」ズガン

偽まどか「ウェ、ウェヒッ!?」

さやか「出ろ!魔王の剣!!」ズズ

杏子「でけぇ…アイツのと同じくらいに……!」

さやか「超魔王……!」ズバン

偽まどか「ウェッ……」

さやか「十字斬!!」ズバァン

偽まどか「ウェ…ガッ……」

マミ「ダメージが……!行けるわ!」

杏子「次はアタシだ……!ロッソ・ファンタズマ!!」

ズララララ

マミ「佐倉さん…その魔法……!」

杏子「まだまだ!続けて行くぞ!」ザッ

杏子「ブリュンヒルデ!!」ズドドドド

偽まどか「グ…ガ……」

杏子「トドメだ!食らいやがれ!!」ズドォン

偽まどか「ガアッ……!」

マミ「私の番ね……!秘技は色々あるけど…私にはコレが一番似合ってるわ!」

マミ「行くわよ!ティロ・フィナーレ!!」ズドォォォォォン

偽まどか「ウェ…ヒッ、ウェヒヒッ……」

さやか「まだ…倒せないなんて……!」

まどか「最後は…わたしだね……!」

さやか「まどか!大丈夫なの!?」

まどか「うん…多分、ほむらちゃんが守ってくれたんだと…思う」

杏子「ほむらは!?無事じゃねぇのか!?」

まどか「……」

マミ「そん…な……」

まどか「許さない…許さない、許さない!!」

プリニー『許さないッスよ……!絶対、許すものかッス!!』

まどか「行くよ……!弩炎竜!!」ズズズ

偽まどか「ウェ…ウェヒ、ウェヒッ……!」

ズドォォォォォン

偽まどか「……ウェヒッ、ウェヒヒヒヒッ……」

さやか「くそ、まだなの!?」

まどか「なら、もう1発……!」

偽まどか「ウェヒィィィッ!!」ダッ

杏子「まどか!危ねぇ!!」

まどか「え……」

ギィン

偽まどか「ウェ……!」

ほむら「まどかは、私が守ると…そう言ったはずよ……!」

まどか「ほ…ほむらちゃん!!」

少しの間、気を失っていたようだ

目が覚めてから最初に見たのが、まどかに向かって突っ込んでいく偽物のまどかだった

再度身を呈してまどかを守ろうとも思ったが、手にした魔剣を見て考えを改める

蘇った魔剣を握りしめ、まどかの下へ急ぐ。……大好きなまどかを守る為に

私のそんな想いに呼応するように、魔剣の出力が上がる。奴の大剣ほどの刀身ではないが、これなら……

そして、まどかに向かって振り下ろされた剣を、魔剣で受け止めた

ほむら「まどか…心配させてしまったみたいね……。少し、気を失っていたみたい」

まどか「ほむらちゃん……」

偽まどか「ウェヒッ!」バッ

偽物が私から距離を取る

さやかたちはもう余力はない。まどかも、これ以上長引けばどうなるかわからない

私が決着をつけるしかない

だけど、これを放ってしまったら…きっと私は……

ほむら「……さやか、マミ、杏子…それに、まどか……」

ほむら「……ありがとう。後は私に…任せて」

まどか「ほむら…ちゃん……?」

もう、覚悟は決まっている。後は私がアイツを倒して、それで終わり

魔剣を握りしめ、奴を睨む

ほむら「これで、全て終わらせる……。行くわよ……!」フォン

偽まどか「ウェ…ウェヒィッ!?」

眼前の虚空へ向けて魔剣を振る。すると、偽物の足元から魔法陣が現れた

魔法陣は幾重にも重なっていき、やがて巨大な柱のようなものへと変わっていった

偽まどか「ウェヒッ!ウェヒィィィ!?」

マミ「すごい…魔法陣の、柱……?」

さやか「ほむら…いつの間に剣の秘技なんて……?」

杏子「魔剣があるから…じゃないか……?」

ほむら「ハァ…ハァ…」

魔法陣で偽物を拘束することはできた

しかし、思った以上に消耗が激しい。だが…アイツを倒すまで倒れるわけにはいかない

ほむら「まどか……」

まどか「ほむらちゃん……?」

ほむら「魔剣を蘇らせるのに必要だった『愛のチカラ』…正体がわかったの……」

まどか「え……?」

ほむら「誰かを敬ったり、好きだったり…『愛のチカラ』って、きっと誰かのことを…愛する気持ちのことだと…そう思うの……」

まどか「そうだったんだ……」

ほむら「だから、まどか……」

そう言ったところで、私は天高く魔剣を掲げた

天を衝く程に巨大なエネルギー状の刀身が現れる。やはり、思った通りだ

私の中の想いを認めただけでコレだ。まどかに伝えればまだ強くなるはず

これが最後になるかもしれない。だから、ちゃんと伝えよう

私は顔だけをまどかの方へ向け、そして……






ほむら「大好き……」



ズドォォォォ

ほむら「これだけの出力があれば……!」

まどか「ほ、ほむらちゃん…今……」

ほむら「まどか…ありがとう。私と一緒に暮らしてくれて。私について来てくれて。そして……」

ほむら「……ありがとう。私と、友達になってくれて……」

まどか「ほむら…ちゃん……?」

ほむら「時間を繰り返す度に…あなたと心が離れていく。だけどこの時間軸で…私は幸せだったわ。……もう、心残りはない」

まどか「ほむらちゃん…何を言って……」

ほむら「……さよなら、まどか……。愛してるわ……」

私はそう言うと、偽物へ視線を戻す

そして、その巨大な剣を、魔法陣の柱へ向けて振り下ろした

ズガガガガガ

さやか「魔法陣を砕きながら……」

マミ「……頑張って、暁美さん!!」

杏子「行け、ほむら!!」

さやか「アイツを…倒して、ほむら!!」

まどか「ほむらちゃん!ほむらちゃん!!」

偽まどか「ウェヒッ!?ウェヒィィィィ!?」

ほむら「これで…終わりよ……!魔陣……」

ほむら「大次元断!!」

偽まどか「ウェ…グ…ガガ……」ギギギ

ほむら「この……!」

魔法陣の柱の中で、偽物が振り下ろした私の魔剣を防いでいる

だが、誰がどう見ても勝負はもう、ついていた

魔剣を握る手に力を込める。そして

ほむら「はあぁぁぁぁぁ!!」

偽まどか「ウェ…ヒ…ッ……」

持っている大剣ごと

偽物を真っ二つに切り裂いた

ズドォォォォォォン

偽まどか「ウェヒ…ウェ…ヒ……」シュゥゥ

マミ「偽物が…消えて……」

杏子「アタシたち…勝ったのか……?」

さやか「勝った…勝ったんだよ!あたしたちは!」

偽物の姿が次第に消えていく。今度こそ、倒したようだ

システムの中核は破壊した。これでシステムは止まるはず

別に世界中の魔法少女を救うつもりなんて、ない。まどかを守る…まどかの為に戦った。ただそれだけのこと

でも…どうやら相討ちのようだ。……ワルプルギスの夜を倒して、死んでいったまどかのように

そして、偽物が消滅したのを見届けると

私は、その場に崩れ落ちた

マミ「暁美さん!鹿目さん!私たち、勝った……」

まどか「ほむらちゃん!しっかりして、ほむらちゃん!!」

さやか「……何か、様子が……」

杏子「とにかく、行ってみようぜ」

ほむら「ハァ…ハァ…」

まどか「ほむらちゃん!ほむらちゃんってば!!」

プリニー「ほむら様!しっかりするッス!!」

さやか「まどか!どうした!?」

まどか「さやかちゃん!ほむらちゃんが……!」

マミ「暁美さん…あなた、まさか!?」

杏子「ソウルジェムが…もうヤベェ……!」

マミ「……とにかく、早くここを出ましょう。こんな絶望が渦巻いてるところにいたら……!」

>>593修正


ズドォン

杏子「ぐ…っ……」

さやか「な…何……?」

マミ「あ…足元から……」

ほむら「剣が……!」

偽物のまどかが手を翳す

次の瞬間、私たちの足元から、偽物が持っているような巨大な剣が突き出した

ほむら「ぐ…う……」

偽まどか「ウェヒヒッ」ダッ

ほむら「アイツ…まさか……!」

今回はここまで
見て下さってる方、ありがとうございます
あと1回か2回で完結の予定です

次回投下は14日夜を予定しています

ディスガイア2の修羅エンドは死ぬほど後味悪くなったなぁ…
3と4は鬱エンドはなかったような気がしたからよかったけど

次から本文

——————

さやか「外に出たのはいいけど……」

マミ「もう…どうにも……」

杏子「さやか!手分けして魔女を探すぞ!!まだ間に合うかもしれねぇ!!」

プリニー「オレたちも手伝うッス!無事だったプリニー隊を総動員して……」

マミ「無理よ……。今からでは、もう……」

さやか「そんな……」

プリニー「……嘘ッス……。ほむら様が……」

杏子「……どうしようも…ねぇのかよ……!」

ほむら「まど、か……」

まどか「ほむらちゃん……!何で…何であんなこと……!」

ほむら「言った…でしょう……?命に代えても、あなたを守ると……」

ほむら「私は…あなたを守れた、もの……。後悔なんて、あるわけ…ない……」

まどか「でも…だからって、こんな……!」

ほむら「『約束』したじゃない……。あなたを…守るって。それだけの…ことよ…ぐ…っ……」

まどか「ほむらちゃん!!」

ほむら「まどか…私が、魔法少女に…なるときの願い…覚えてる……?」

まどか「うん……!『まどかとの出会いをやり直したい。まどかに守られる私じゃなく、まどかを守る私になりたい』…でしょ?」

ほむら「そう…まどかとの出会いをやり直すってのは…叶ったけど、まどかを守る私になりたいっていうのは…叶わなかった……。でも……」

ほむら「あなたを守ろうと…何度も…何度もやり直した……。そして今、やっとあなたを守ることができた……」

ほむら「私…なれたかな……?まどかを守る私に…なれたかな……?」

まどか「なれた…なれたよ、ほむらちゃん……!わたしを守ってくれて…ありがとう、ほむらちゃん……!」ポロポロ

ほむら「ふふ…よか…った……。もう、心残りは…ない、わ……」

まどか「ほむらちゃん…ダメだよ…死んじゃダメだよ!!」

まどか「ほむらちゃん、約束したでしょ……!生きてみんなと一緒に帰ろうって!!」

まどか「約束…破っちゃ嫌だよ、ほむらちゃん!!」

QB「おめでとう。無事にシステムの中核を破壊したようだね」

さやか「あんた……!どこが無事なのよ……!」

QB「アレが完成してから今までに完全停止させた者はいないんだ。それを考えれば、この状況は無事というべきじゃないかな」

QB「それに、魔界のアイテムを使ったんだろう?それならあれほどまでに強くなったのはある意味必然だね」

杏子「テメェ…最初から……!」

QB「確かに、中核の破壊に成功した者はいるよ。ただし……」

マミ「……全魔力を注がないと中核は破壊出来ない…そう言いたいの?」

QB「さすがマミ、理解が早くて助かるよ」

QB「あのシステムから生きて帰った魔法少女はいないって言っただろう?それにはそういう理由もあるのさ」

QB「何より、中核を破壊したその場で魔法少女が身体を残して死んでくれるんだ。それを新しい憑代としてシステムを再構築すれば済む話さ」

さやか「そんなのって…どう転んでも絶望しかないじゃない……!」

QB「そりゃ僕たちだってアレを完全停止させられる…つまり魔法少女システムを破壊されても困るしね」

杏子「魔法少女システムの破壊…それって……」

QB「君にも話したじゃないか。ワルプルギスの夜…まぁ正確にはプログラムの方だけど……」

QB「アレを止められると、エネルギーの変換ができず、『畏れ』エネルギーが生み出せない。つまり、システムとして欠陥が生じてしまう」

QB「そうなると、僕たちにとってはシステムを破壊された、と言わざるを得ないね」

杏子「そういうことかよ…また騙しやがって……!」

QB「しつこいようだけど、訊かれなかったからだよ。『魔法少女』はあくまでエネルギーを生み出す手段。僕たちの目的はエネルギーの方さ」

マミ「ふざけないで……!」

QB「ふざけてなんていないさ、僕たちは宇宙の寿命を延ばすために最善を尽くしているだけだよ。……さて、彼女はもう限界だ。今なら契約してくれるかもね」

次第に身体が動かなくなってくる。もう、身体を操るだけの魔力もないのだろう

目の前がぼやける。治した視力が戻ったのだろうか…と思ったが

いつの間にか、目には涙が浮かんでいた

ほむら「まどか…泣かないで……」

まどか「ほむら…ちゃん……!」

血に塗れた手で、まどかの頬にそっと触れる

まどかはそれに手を重ね、私に問いかけた

まどか「ほむらちゃん…さっき、『ワルプルギスの夜』の中で…わたしのこと…好きだって……」

ほむら「えぇ…私は、まどか…あなたのことが…好きよ……」

ほむら「今までは…友達としてだったけど…あなたと、暮らすようになってから…あなたを意識するようになって……」

ほむら「ここ最近は…あなたのことばかり…考えていたわ……」

まどか「……わたしも…わたしも、ほむらちゃんのこと…大好きだよ……」

ほむら「そう…ふふ、最高の…冥土の土産ね…う、ぐ……」

ほむら「……ごめん…なさい、もう…ソウルジェムも、限界みたい……」

まどか「ほむらちゃん…待って……」

ほむら「あなたに、人殺しはさせないわ……。自分で…始末する……」

まどか「ダメだよ…死んじゃダメだよ!!」

まどか「わたし…ほむらちゃんのこと、好きなのに……!こんな…こんなのってないよ……!あんまりだよ!!」

QB「まどか、泣いてるところ悪いけれど、僕の話を……」

ほむら「……失せな、さい…インキュベーター……!」

QB「まどか、よく聞いてほしい。今君が願えば、ほむらのソウルジェムを元通りにすることだってできる」

まどか「え……」

QB「ソウルジェムを元通り…つまり、魂を本来あった場所へ…元の人間の姿へ戻す。まどかには、それができるだけの資質がある」

QB「もちろん、ほむらだけじゃない。さやかたちだって、何とかできるはずだよ」

QB「だからまどか…僕と契約して、魔法少女になってよ!」

まどか「……ほむらちゃん、ごめんね」

ほむら「まどか……?あなた……」

まどか「わたし…魔法少女になる……!」

ほむら「やめて……!私、そんなこと、望んで……!」

まどか「でも……!わたし、ほむらちゃんを救えるだけの力があるのに……!」

まどか「ほむらちゃんが苦しんでいるのをただ見ているだけなんて…そんなこと、できない!!」

まどか「それに…今までほむらちゃんに、たくさん助けてもらった。……今度は、わたしがほむらちゃんを助ける番」

ほむら「まど、か……」

QB「まどかの意思は決まったようだね。それじゃあまどか、君の願いはなんだい?」

まどか「ほむらちゃんにさやかちゃん、マミさん、杏子ちゃん…みんなを、元通りにして!」

QB「鹿目まどか、君の願いはエントロピーを……」






『その必要はありません!』



頭の中に声が響いたかと思うと、私の側に魔法陣が現れる

今の声、そしてこの魔法陣は……

フロン「何とか…間に合いましたね……!」

プリニー「フロン様!」

マミ「あなた、今までどこに……」

フロン「少し天界に戻っていました。宇宙評議会が相手なら、必ず裏に何かがある。そう思い、思いつく限りの対策を用意してきました」

QB「天使長フロン…君はどこまで僕たちの邪魔をすれば……」

フロン「徹底的に、です。本当は内部で絶望させ、その絶望のエネルギーを元に破壊された魔女のワルプルギスの夜の修復をするつもりだったのでしょう」

フロン「ですが、中核を破壊されるという手違い…それに、憑代にするはずの身体を残すことなく出てきてしまった。だからそうして時間稼ぎをしている…違いますか?」

QB「……」

フロン「……っと、今はあなたと話している時間はありませんでした。早くほむらさんを助けないと危険ですね」

まどか「フロンさん!ほむらちゃんを、何とかできるんですか!?」

フロン「……できるにはできます。ですが…条件があります」

まどか「条件……?何ですか、言ってください!」

フロン「……この先ずっと…一生、ほむらさんのことを…好きでいられますか?愛し続けられますか?」

まどか「え!?こ、こんなときに何を……」

フロン「これからすることに…それだけの想いと覚悟が必要なんです。……どうですか?」

まどか「……はい。ずっと…ほむらちゃんを、愛し続けます」

フロン「……わかりました。ではほむらさん、少し失礼しますね」

フロン「……少女の魂に、愛の奇跡を……!」

そう言ってフロンは杖を天に翳す。すると、私の身体は光に包まれた

私を包んでいた光はソウルジェムに集まり、やがて消えていった

何が起こったのかとソウルジェムを見ると、どす黒く濁ったソウルジェムの中に、弱々しく光る紋様が浮かんでいた。何かの魔法陣だろうか

ほむら「これ…は……?」

フロン「話は後です!ほむらさんのソウルジェムはまだ穢れたままです!」

まどか「え…何とかしてくれたんじゃないんですか!?」

フロン「それは、あなたの役目です。……まどかさん、祈って下さい」

まどか「へ……?」

フロン「祈って下さい。ほむらさんのことを、心から愛している、と」

まどか「……わかりました、やってみます」

フロン「ほむらさんも、まどかさんを愛していると祈って下さい!」

フロンがそう私に言って来る。死にかけている私になんて無茶を……

だけど、それで…まどかを愛していると、そう祈ることで生きられるのなら…祈ってみることにしよう

まどかは私の左手に手を重ね、目を閉じて祈っている

目を閉じたら2度と帰って来れなくなるような気がしたが、まどかと自分を信じ、目を閉じる

そして、まどかを想う。まどかが好きだ。まどかを愛している。そう、強く念じた

まどか「……」

ほむら「……」

さやか「な、何がどうなってるの……?」

マミ「わからないわ……」

杏子「ほむらは…ほむらは助かるのか!?」

フロン「皆さんも祈って下さい!まだ浄化するエネルギーが足りません!」

さやか「え!?でもあたしたち、ほむらを愛してるとかは……」

フロン「愛でなくとも構いません。ほむらさんを敬う想いだったり、色んな形の好きだったり…そういう気持ちであれば……!」

杏子「とにかく、ほむらを想って祈ればいいんだな!?さやか!マミ!プリニー!祈るぞ!」

さやか「そんな簡単に言うけど…あぁもう、やってやろうじゃない!」

マミ「暁美さん…絶対、死なせたりしないから……!」

プリニー「悪魔が祈るとは思わなかったッスが…やるッスよ!」

さやか(ほむら…あたしは、友達としてあんたが好き……。だから…死なないで……!)

マミ(私は…友人として、そして先輩として、暁美さんが好きよ。……お願い、行かないで……!)

杏子(……友達…いや、仲間かな…とにかく、アタシだってほむらが好きだ。……絶対、死なせるもんか……!)

プリニー(ほむら様は…こんなオレたちを高待遇で雇ってくれたッス。こんな最高のご主人、他にいないッス。……ほむら様、死んじゃダメッス……!)

QB「……何をしたかはわからないけど、そう簡単に穢れを浄化できるとは思えないね。君が魔女を探して倒した方がまだ確実性があると思うけど」

フロン「それは流石に誤魔化しきれません。それに、わたしは信じています。……ほむらさんとまどかさんの愛のチカラを」

QB「愛?……全く、わけがわからないよ」

フロン「感情の無いあなたにはわからないでしょう。ですが…愛に不可能はないんです。愛さえあればフロンガーだって月を押し返すことくらい……」

QB「月を押し返す…か。確かにそんな話を聞いたような気はするけど…どうやら浄化は出来なかったみたいだよ?」

フロン「え……?」

ほむら「う、ぐ…あ……!」

まどか「ほむらちゃん!?どうして…どうしてダメなの!?」

フロン「エネルギーが…もうちょびっとだけ足りません……!」

まどか「そんな……!」

杏子「おいお前ら!本気で祈ってんだろうな!?」

さやか「大マジでやってるよ!」

マミ「手を抜けるわけないでしょう!?」

フロン「他にほむらさんを想ってくれる人はいないんですか!?」

プリニー「無事だったプリニー隊を集めれば、もう少しは増えると思うッスけど……」

さやか「今すぐ必要なんでしょ!?……だったら、これ以上は……!」

フロン「……とにかく、もう1度祈って下さい。心の底から」

杏子「わかった。さやか、マミ、プリニー、やるぞ……!」

マミ「えぇ……!」

まどか「ほむらちゃん……」

フロン「まどかさん、あなたも……」

まどか「フロンさん…祈る以外って、ダメなんですか……?」

フロン「どういうことですか?」

まどか「誰かを好き…愛する想いを、祈る以外で伝えるんじゃ…ダメなんですか……?」

フロン「祈る以外って…それは……」

まどか「なので、その……」

フロン「わかりました……。わたし、さやかさんたちの方を見てますね」

まどか「……ありがとう…ございます」

ほむら「まどか…本当に、もう…駄目みたい……」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「だから…魔女になる前に、ソウルジェムを…砕かせて……」

まどか「……ほむらちゃんを、死なせたりしない。絶対に」

ほむら「まどか……?」

まどか「……これからわたしがすること、信じて…受け入れてほしいんだ」

ほむら「……まどかのすることなら、何だって…受け入れるわ……」

まどか「ありがとう、ほむらちゃん……。じゃあ、行くね……」

そう言ってまどかは私に顔を近づける。何をするのかと思ったが、これってまさか……

そう思っているうちに、まどかはどんどん唇を近づけてくる。そして……

私の唇に、まどかは自分の唇を重ねた

まどか「……」

ほむら「ん…っ……」

まさかまどかがキスをしてくるとは思わなかった。だけど

こうしてまどかとキスをしていると、心の奥が温かい。身体に力が漲ってくるような気がする

1度は死ぬことさえ厭わないと思った。まどかを守り、救うことができた。私の役目は終わった。終わったはずだった

だけど…まどかが心の底から、私を必要としてくれている。こんな私を、好きだと言ってくれた

必死になって私を救おうと手を伸ばすまどかを見て、思った。まどかと一緒にいたい、と

私はまだ、死ねない。こんなところで、死んでなんていられない。私は…生きる。まどかと一緒に

パァァ

QB「そんな…馬鹿なことが……」

フロン「……言ったでしょう?愛に不可能はないんです」

ソウルジェムが光り輝く。それと共に、私を襲っていた苦痛が嘘のように消えて無くなった

何がどうなったのかわからず困惑していると、唇を離したまどかが、こう言った

まどか「……祈るだけじゃ、ほむらちゃんを助けることができない…そう、思って……」

まどか「何かいい方法はないかって、そう考えたときに…キスだったら、わたしの想い…全部、伝わる…そんな気がしたの」

まどか「わたしの想い、全部伝えたから……。もう…大丈夫だよ。ほむらちゃん」

まどかにそう言われ、ソウルジェムを確認する。左手には、私の魂の宝石が美しく煌めいていた

未だに自分の身に起こったことが信じられず、まどかに聞き返す

ほむら「私は…助かったのかしら……?」

まどか「……うん。少なくとも、今すぐ魔女になることもないし、ソウルジェムを砕く必要も…ないよ」

ほむら「そう……。私…生きられるのね……?まどかと、一緒に……」

まどか「うん……!よかった、ほむらちゃん……!」ポロポロ

ほむら「まどか…私は1度、あなたとの『約束』を破りかけた。でも……」

ほむら「みんなと…あなたのおかげで、『約束』を破らずに済んだ。……ありがとう、まどか」

QB「……」

フロン「これで少しは理解できたんじゃないですか?『愛のチカラ』の素晴らしさを」

QB「……僕たちには感情がないからね。理解に苦しむよ」

フロン「そうですか……。ともあれ、2つのワルプルギスの夜は完全に破壊され、あなたたちの目論みは阻止されたわけですが」

QB「確かに『畏れ』エネルギーへの変換は出来なくなり、効率は以前に逆戻りだ。魔法少女システムが魔法少女によって破壊されてしまうなんてね」

QB「……だけど旧システムは生きている。しばらくはそっちでエネルギーを集め、様子を見ることにしよう」

フロン「……宇宙の寿命を延ばすことは確かに重要なことです。ですが……」

フロン「彼女たちのような少女を利用してまで行うことではない……。わたしは、そう考えます」

QB「そうかい。……それじゃあ、僕はそろそろ引き上げることにするよ。最高評議会への報告もしないとだからね」

フロン「……今回のような非道な方法を次回も行ったとしたら…わたしたちはそれを全力で妨害させてもらいます」

フロン「それだけは、忘れないでください」

QB「……覚えておくよ。そう何度も邪魔されたくないからね」

さやか「ほむら!!」

マミ「暁美さん!!」

杏子「ほむらっ!!」

プリニー「ほむら様!!」

ほむら「あなたたち…ありがとう。おかげで助かったわ」

杏子「無事だったんだ。気にするな」

フロン「ほむらさん…おかえりなさい」

ほむら「フロン…ありがとう。あなたが来てくれなかったら、私は……」

まどか「それよりも、さっきの魔法は何だったんですか?」

フロン「先ほどのアレは『愛フィールド』を応用した魔法です」

フロン「皆さんの想いをまどかさんの想いへ繋げて、愛のチカラに変換。最後にほむらさんの想いに同調させ、そのエネルギーで穢れを浄化しました」

さやか「えっと…つまり?」

フロン「愛の勝利です!ほむらさんとまどかさんの愛が起こした奇跡です!」

マミ「愛…って、それじゃ、暁美さんと鹿目さんは……」

フロン「あー、皆さん必死で祈ってたから見てませんでしたね、あのあつーい……」

まどか「ちょ、ちょっと待ってください!見てたんですか!?」

フロン「はい、しっかり見ちゃいました。あのですね、悪いなーとは思ったんですけど、やっぱり気になって……」

まどか「み、見られてたってわかったら、急に恥ずかしく……」カァ

ほむら「まどか」

まどか「ほ、ほむらちゃん…何?」

ほむら「全てが終わった今、改めて言わせてもらうわ。……大好きよ、まどか」

まどか「……ふふ、ほむらちゃん……」

ほむら「な、何……?何で笑ってるの?」

杏子「自分の姿、よく見てみなよ」

ほむら「え?あ……」

杏子にそう言われ、自分の姿を確認する

髪はボサボサ、あちこち傷だらけ、さらには血塗れと、どう見ても告白するには相応しくない恰好をしていた

ほむら「こ、これは……」

まどか「ほむらちゃん、そんな恰好で告白してくるんだもん」

プリニー「そういうまどか様だって、顔が汚れてるままッスよ」

まどか「え?……あ、ホントだ」

ほむら「さっき私が触れたときに汚してしまったみたいね…ごめんなさい、今何か拭く物を……」

まどか「……ううん、いいよ。だって、これは…ほむらちゃんが死ぬ気でわたしを守ってくれた、証だから」

ほむら「まどか……」

まどか「ほむらちゃん…わたしも、ほむらちゃんが、大好き…ううん、愛してるよ」

ほむら「まどか…私……!」ギュウ

まどか「これからは…ずっと一緒だよ……」ギュウ

さやか「ほむら、まどか…よかった……」

マミ「美樹さん、知ってたの?」

さやか「最初に気づいたのは秘技の特訓してる頃なんですけど…ほむらの『ワルプルギスの夜を倒す』ってのに、何か裏があるような気がして……」

さやか「その後にほむらのあの話を聞いて…まどかのことが好きなんじゃないかなって、そう思ってたんです。まどかの方も、ほむらのことが好きだったみたいですし」

マミ「……想いが通じ合って、本当によかったわね」

杏子「血塗れで告白する奴なんて、アイツくらいだろうな。……でも、ほんとよかったよ」

マミ「佐倉さんはあの2人のこと、気にかけていたものね」

杏子「気にかけてたって言うか…幸せになってほしいと思っただけさ。……それに、やっと一緒にいられるようになったんだ」

杏子「……今まで辛い思いをした分、幸せを願っても…バチは当たらねぇよな」

プリニー「ほむら様……」

ほむら「何?今邪魔するのなら……」

プリニー「そうじゃないッス…他のみんなが見てるんスけど……」

まどか「あ…わ、忘れてた…ほむらちゃん、離してくれない…かな……?」カァ

ほむら「……仕方ないわね」

さやか「2人が現実に戻ってきたところで、そろそろあたしたちも帰ろうよ」

マミ「もう、全て終わったもの。ゆっくり休みましょう」

ほむら「その前に展開させてたプリニー隊を回収しないと…行くわよ、プリニー」

プリニー「あ…ちょっと待ってほしいッス」

プリニー「フロン様……」

フロン「どうしたんですか?」

プリニー「オレたち…魔界や天界に行かなくていいんスかね……」

プリニー「何かの手違いだったとはいえ、このままずっと人間界にいるのは……」

フロン「……わたしは違うと思います。プリニーさんたちは、ほむらさんとまどかさん…あの2人を助けるために、ここへ飛ばされた」

フロン「わたしはそう思っています。それに、彼女たちは一般人ではなく魔法少女。きっと見つかることもないと思いますよ?」

プリニー「……」

フロン「これからも、あの2人を…助けてあげてください」

プリニー「……了解ッス。これからも、ほむら様とまどか様の為に働くッス!」

ほむら「フロン、私からもいいかしら?」

フロン「ほむらさん?」

ほむら「これを返そうと思って……」

私は魔剣とアルカディアを彼女に差し出す

魔剣はフロンから手渡されたものだし、アルカディアも魔界の物。自分が持っているより、フロンに返した方がいい

そう思って返そうとしたのだが、フロンは受け取ることなく、首を横に振る

フロン「……それはほむらさんが持っていてください」

ほむら「でも……」

フロン「ほむらさん…もう、魔法を使えないのでしょう?」

ほむら「それは……」

フロン「なら、やはりあなたが持っていてください。それに、あなたはそれを悪用するような人ではありませんし」

ほむら「……ありがとう、フロン」

フロン「わたしはあなたに魔剣というガラクタを押し付けただけです。それを蘇らせたのは、ほむらさん…あなたですよ」

ほむら「……そうだったわね」

フロン「それでは…わたしはそろそろ天界へ帰ります。色々としなければならないこともあるので」

さやか「また…会えるかな……?」

フロン「それはわかりません…ですが、もしかしたら…また会えるかもしれませんね」

マミ「それじゃあ…また、会う日まで」

杏子「元気でな」

プリニー「魔法少女のみんなは、オレたちに任せてほしいッス」

フロン「はい…さやかさん、マミさん、杏子さん、プリニーさん…お元気で」

まどか「フロンさん……!」

フロン「ほむらさんにまどかさん…愛を忘れないでくださいね」

ほむら「えぇ…わかってるわ」

フロン「それでは…皆さん、さようなら……」

そう言うと、フロンは魔法陣の中へと消えていった

辺りには、天使の羽がひらひらと舞い散っていた

さやか「……よし、あたしたちも帰ろう!」

マミ「えぇ。……私たちが守った街へ」

杏子「何かを守る、なんて今までなかったけど…こうして見ると、少しは誇らしいモンだな……」

ほむら「私はプリニー隊を回収しないとだから、これで失礼するわね」

まどか「あ、わたしも一緒に行くよ。……みんな、またね」

杏子「……さーて、マミん家でひと眠りするか…アタシもう、疲れて疲れて……」

さやか「あたしも…マミさん、あたしもお邪魔していいですかね……」

マミ「みんなヘトヘトみたいね…じゃあ、行きましょうか」

ほむら「まどか…あなたは帰ってもいいのよ?疲れているだろうし……」

まどか「いいの。ほむらちゃんと一緒にいられるなら」

ほむら「まどか……」

まどか「……ねぇ、ほむらちゃん」

ほむら「何……?」

まどか「手、繋いでもいいかな」

ほむら「……どうぞ」

まどか「ありがとう、それじゃ……」

そう言ってまどかは差し出した私の手を握る。それも、指を絡めて

これはもしかして、恋人繋ぎという奴だろうか

ほむら「まどか…これ……」

まどか「……わたしたち、もう恋人なんだから…いいよね」

ほむら「……えぇ、そうね」

プリニー「あのー、オレもいるんスけどー…2人の世界に入らないでほしいッス……」

ほむら「ならあなたは盾に戻ってなさい」ヒョイ

プリニー「え?あ、ちょっ……」スポン

ほむら「私たちの邪魔をするからよ」

まどか「ちょっとだけかわいそうかな……」

ほむら「それにしても…こうしてまどかと2人で歩くのも、久しぶりね……」

まどか「うん…ほむらちゃんと友達になって、あちこち遊びに行ったときを思い出すよ」

ほむら「……あのときも確か、この道…歩いたわね」

まどか「うん……。道はあのときと同じ。だけど……」

ほむら「あのときは友達として…そして今は…恋人として」

まどか「……ねぇほむらちゃん、ひとつだけお願いがあるんだけど」

ほむら「お願い?」

まどか「うん。あのね、わたし……」

こうして私の戦いは終わりを告げた

まどかを救うことができただけでも嬉しいのに、まさか私と恋人になるとは、思いもしなかった

今思えば、戦う術があるとはいえまどかを戦わせるなんて、危険なことをさせてしまった

だけど、これからはプリニー隊と、フロンから託されたこの魔剣で…まどかの全てを守る

それと、まどかが言ったあの提案。その内容に驚いたけど、私としてはそう言ってくれたことがとても嬉しい

まどかは、それについての許可を貰う為に、1度家に帰って行った

そして、数日後……

今回はここまで
見て下さってる方、ありがとうございます
次回で完結です

次回投下は15日夜を予定しています

あー、3人間界エンドなんてあったなぁ…鬱エンド仕込むの勘弁してください
今回で完結です

次から本文

——————

杏子「おーい、マミー?まだかー?」

さやか「あんた、静かに待てないの?」

マミ「お待たせ。……よいしょっと」

杏子「お、来た来た。そんじゃひとつ…うん、やっぱうめぇな」

さやか「マミさん、今日もウマいですよ!」

マミ「そう?ありがとう。……そう言えば、暁美さんと鹿目さんはどうして来なかったのかしら?」

杏子「ほむらから聞いただろ?もう忘れちまったのか?」

マミ「……あぁ、そうだったわね。……今日は2人にとって、大切な日になるのね」

さやか「いやー、めでたいとは思うんですけどねー。でもあたしとしては、どうかと思うんですよね」

マミ「あら、どうして?」

さやか「なんだかんだ言っても、あの2人まだ中学2年なんですよ?それを……」

さやか「さ、さやかちゃん、許しませんよ!」

杏子「別にお前に許してもらう必要ないだろ。もうお前の嫁じゃないしな」

マミ「美樹さん、人の恋路を邪魔すると大変なことになるからやめたほうがいいわ」

さやか「……色々心配なことはあるけど…よかったって、そう思います」

杏子「だな。……あぁそうだ、昨日だったか……?あの天使、フロン…だっけ?アイツ、見かけたんだけどよ」

マミ「あら、佐倉さんも?私も見たわ。話しかける前にどこかに行っちゃったけど……。美樹さんは見てない?」

さやか「あー…その件なんですけど……」

フロン「呼ばれて飛び出て!」バーン

さやか「うわぁ、来た!なんであたしがここにいるって……!」

フロン「天使長をナメないでください!……あ、マミさんに杏子さん。お久しぶりです」

マミ「え、えぇ……」

杏子「まだ久しぶりってほど別れてたわけじゃないんだがな……」

マミ「……とりあえず、フロンさんの分のお茶を用意しましょうか」

フロン「あ、お気遣いなく。……さぁさやかさん、決心はつきましたか?」

さやか「だ、だからあたしはまだなるつもりなんてないって言ってるでしょ!?」

杏子「一体何の話だ?」

さやか「聞いてよ!この天使、あたしに補佐役として働いてほしいとか言ってくるんだよ!?」

フロン「いいじゃないですか。ほんのちょびっとわたしに協力してもらうだけですし……」

フロン「死後は特例で天界で過ごせる破格の待遇ですよ?迷うことないじゃないですか」

さやか「本音は?」

フロン「以前わたしの補佐役だったアルティナちゃんって子がいなくなって寂しいんです」

さやか「お断りだって言ってんでしょうがあぁぁぁ!」

杏子「そんならアタシが補佐役になってやろうか?」

フロン「え、ホントですか?」

杏子「あぁ。……それに、コイツの補佐になれば、いずれアタシが天使長にも……」

フロン「あ、あなたの狙いは天使長の座ですか!?……ダメです、あなたは不適格です!」

杏子「なー、そう言うなよ、天使長さん」

フロン「ダメったらダメです!あああ、あなたは今後天界への立ち入りは禁止です!天使長の名において出禁です!」

マミ「はいはい、そこまでにしなさい。……それで、フロンさんはどうしてまた人間界へ?昨日、ちらっと見かけたんだけど……」

フロン「……あ、そのことですね。半分左遷、半分研究の為…です」

さやか「研究と…左遷?」

フロン「先日のワルプルギスの夜騒ぎの際、わたしが人間界で色々したことがバレちゃったみたいで、しばらく人間界に……」

フロン「そして、研究は…魔法少女システムについてです。その全貌が明らかになれば……」

フロン「あなたたちのような魔法少女をもう増やさずにすむ…ようになるかもしれません」

さやか「そう…なの?」

フロン「はい。わたしはそのつもりで頑張ってます」

マミ「そう…何か力になれることがあったら協力するわ」

杏子「アタシもだ。……こんなシステム、無かった方がいいんだろうけど……」

杏子「そのおかげでお前らと出会えたことだけは…感謝してるよ」

マミ「……そうね。魔法少女にならなければ…私たち、出会ってなかったかもしれないわね」

さやか「そうですね…それにしても杏子、たまにはいいこと言うじゃん」ニヤニヤ

杏子「うっせ。……そういえば、フロンはどこに住んでるんだ?人間界に家なんて持ってるワケないだろうし……」

マミ「そう言えば…まさか、暁美さんと鹿目さんのところに……?」

さやか「……あたしのとこにいるんですよ、コイツ。どうやって調べたのか知らないけど」

フロン「さやかさん、当分の間お世話になります」

さやか「はぁ……」

フロン「おや、そう言えばほむらさんとまどかさんはいないんですか?」

杏子「あぁ。今日はあいつら、大事な用事があるからな」

フロン「大事な用事…ですか」

マミ「えぇ。……でも、認めてもらえるのかしら?さっき美樹さんが言ったことじゃないけど、まだ……」

さやか「きっと、大丈夫だと思います。まどかが、真剣に訴えれば……」

杏子「上手く行ったときは、全員で祝いに行ってやろうぜ」

フロン「え?あれ?わたしがいなかった間に、何があったんです?」

杏子「あぁ、そこは説明してなかったな。実はな……」

——————

ほむら「……」ウロウロ

プリニー「ほむら様、少し落ち着いた方が……」

ほむら「落ち着いてなんていられないわよ……」ウロウロ

どうにも落ち着かず、テーブルの周りをうろうろと歩き回る

まどかは大丈夫だろうか。ちゃんと話ができているだろうか

馬鹿なことを言うなと怒られてないだろうか。子供の冗談だと取り合ってもらえなかったりしてないだろうか

どうしても考えが後ろ向きになってしまう。……とにかく、まどかが心配だ

プリニー「とにかく、落ち着いて座って待ってるッス。ほむら様が今できるのはそれだけッスよ」

ほむら「わかってはいるんだけど……」

まどかは今日、ご両親に全てを…私のことが好きだということ、そして……

私の家で、私と一緒に暮らしたいということを打ち明けている

説得が上手くいって認められたときは、荷物を纏めたまどかが私の家にやってくる。だけど、もし失敗したときは……

そもそも、私とまどかが恋人だということを認めてくれるかどうか…それが不安だった

もし、それさえ認められないというのなら、私は……

ほむら「……そろそろ約束した時間ね。……まどか、来てくれるかしら……」

時計を見ると、まどかと約束した時間が迫っていた

まどかを信じてはいるが、やっぱり落ち着かない。再度テーブルの周りをうろうろし始める。そんなときだった

ピンポーン

ほむら「……っ!」

玄関のチャイムが鳴る。私は急いで玄関に向かう

そして、ドアを開ける。そこにいたのは……

ほむら「まどか…凄い大荷物ね……」

まどか「う、うん……。あれもこれもと持ってきたら、こんなになっちゃって……」

大荷物を抱えたまどかが、立っていた

大きなカバンを抱えたまどかが、今にも荷物を落としてしまいそうなので、まずは家に上げることにした

まどか「あ、ありがとうほむらちゃん…手伝ってくれて……」

ほむら「さすがに私もあんな大荷物になるとは思ってなかったわ……」

まどか「わたしが色々と持ち込んだけど、ほむらちゃんの家、まだまだ寂しいからね」

ほむら「そう…まぁその話は置いといて、まずは……」

プリニー「……オレは向こうの部屋にいるッス。終わったら教えてほしいッス」バタン

ほむら「……何だか気を遣われてしまったわね」

まどか「ありがとう…プリニーさん」

ほむら「それでまどか、話の方は……」

まどか「うん。ほむらちゃんと恋人になることも、ほむらちゃんと一緒に暮らすってことも、ちゃんと話してきた」

まどか「どっちも、許してもらえたよ」

ほむら「そ、そう…よかった……」

まどかのその言葉を聞いて、体から力が抜ける

そんな私の姿を見て、まどかはおかしそうに笑っていた

まどか「ほむらちゃんってば、そんなに心配してたの?」

ほむら「そ、それはそうよ。私を好きだということだけでも大変なのに、一緒に暮らすだなんて……」

まどか「……ほんとのことを言うとね、相手がほむらちゃんだって言ったら、全部許してもらえたんだ」

ほむら「……そうなの?」

まどか「うん。ほむらちゃんと暮らしてたときのことを話してるわたしが、すごく幸せそうに見えたんだって」

ほむら「そ、そう……」

まどか「あと…1度ほむらちゃんを連れて来いって、ママが」

ほむら「え…わ、私、何されるのかしら……?」

まどか「ママがね、ほむらちゃんのこと、気に入ったみたいで…話をしてみたいから、って」

ほむら「……わかったわ。近いうちに、挨拶に行くことにしましょう」

まどか「……ねぇ、ほむらちゃん。ひとつ、聞きたいことがあるんだけど……」

ほむら「何かしら?」

まどか「ほむらちゃんってさ…よく、『約束』って言葉、言うよね」

ほむら「……えぇ、そうね」

まどか「ほむらちゃんにとってさ…『約束』って、何?」

約束…私にとって、それは特別なもの。何よりも貴いもの

まどかと交わしたあの約束があったから、今私とまどかはここで、笑っていられる

ほむら「私の…全てかしら」

まどか「全て?」

ほむら「私にとって、『約束』は…特別なもの。何より大切なもの」

ほむら「魔法少女のあなたとの約束があったから、私はあなたを救う為に戦うことができた」

ほむら「あなたを守ると約束したから、私はあなたを守り抜くことができた」

ほむら「あなたと生きて帰ると約束したから、私は生きてここにいられる」

ほむら「今の私があるのは…全て、あなたとの『約束』のおかげ。……だから、私にとっての約束は…私の全てなの」

まどか「……そっか」

まどか「ほむらちゃん…わたしと、ひとつ…『約束』してくれない…かな」

ほむら「約束?」

まどか「うん。ちょっと待ってね」

そう言って、まどかは私の目の前までやって来る

そして、まっすぐに私の目を見て、言葉を続けた

まどか「わたしとほむらちゃん…絶対、2人で幸せになろうね」

ほむら「……えぇ。私からもひとつ、『約束』して頂戴」

ほむら「私とまどか…何があっても、ずっと一緒にいましょう」

まどか「ほむらちゃん…うん、ずっと一緒にいようね」

ほむら「……言ってから思ったけど、約束するまでもないわね、この内容は」

まどか「いいんだよ。ほむらちゃんと交わした『約束』ってことが大事なんだから……」

まどか「ほむらちゃん、過去のわたしとの約束は…もう、果たしたから…それで、わたしと新しい約束をしてほしかったの……」

まどか「以前の約束は…ほむらちゃんを、ずっとこの時間に閉じ込めちゃってた。だけど……」

まどか「新しい約束なら…わたしとほむらちゃん、2人で一緒に未来に向かって歩いて行ける。そんな気がしたから」

ほむら「まどか…ありがとう……」

まどかと新たな約束を交わす

まどかと幸せになる。ずっと一緒にいる。この約束は、絶対に破ることはできない

まどか「ねぇ…ほむらちゃん」

ほむら「何……?」

まどか「……わたし、約束ごとってすぐに忘れちゃうんだ。だから……」

まどか「絶対忘れないように…キス…してほしいな……」

ほむら「……えぇ。わかった」

まどかはそう言って、目を閉じる

私はまどかをそっと抱きしめて、目を閉じたまどかの顔を見る

まどかの顔を見ていると、少しだけ不安になる。私と一緒で、まどかは幸せになれるだろうか、と

普通の少女のまどかと、魔法少女の私。身分の違う2人が、いつまでも一緒にいられるだろうか、と

だけど、もう約束したんだ。2人で幸せになる。ずっと一緒にいるんだと。すぐにその考えを振り払う

そして、それを忘れないように、自分に刻み込むように

まどかと、口づけを交わした

ほむら「ん……」

まどか「……ぷぁっ」

ほむら「……これで、契約成立…ね」

まどか「契約…うん、そうだね……」

私の魂に刻み付けた約束。言わば、まどかとの魂の契約

そして、私からまどかへの初めてのキス。この前のは、私は死にかけていたのでよく覚えていなかったが

今回ははっきりと覚えている。まどかの柔らかい唇を

ほむら「まどか…愛してるわ……」

まどか「わたしも…愛して……」

プリニー「ほむら様、まどか様、もう終わったッス…か……」

ほむら「……」

まどか「……」

プリニー「えっと…その……」ダラダラ

ほむら「……」パァァ

プリニー「ほむら様…どうして魔剣を握っているッスか……?」

ほむら「そうね、どこぞのペンギンにまどかとの時間を邪魔されたからかしら」

プリニー「ま、まどか様……」

まどか「……わたしとしても邪魔されたくなかったから…ごめんね?」

プリニー「ひ…ヒドイッスゥゥゥ!」バタン

ほむら「全く…プリニーを出してるとまどかとの時間が作れないわね」

まどか「……ふふ」

ほむら「まどか?」

まどか「……こうして、ほむらちゃんとプリニーさんのやり取り見てると…実感するんだ」

まどか「……わたしも、これからここに住むんだって」

ほむら「もう既にしばらく住んでたじゃない」

まどか「そういう意味じゃなくって、これからずっと……」

ほむら「……わかってるわ。これからは私とまどか…2人で頑張って行きましょう」

まどか「一応プリニーさんもいるんだけどね……」

まどかの言葉で、これからのことをより強く実感する

まどかも、きちんとご両親に説明し、許可を得られたのだ。もう、私たちを邪魔するものは何もない

今日この日から、まどかは私の家で、私と一緒に暮らし始める

一緒に暮らすなどと言っても、今まで家事のほとんどをまどかに頼りっきりだった

一緒に暮らす以上、少しでもまどかの助けになれるよう、努力しよう

まどか「ほむらちゃん」

ほむら「何……?」

まどか「えっと、今までもだったけど…これからも、ほむらちゃんのこと、わたしに支えさせてほしいんだ」

まどか「だから…これからまた、よろしくね、ほむらちゃん」

ほむら「……えぇ。よろしく、まどか……」

まどか「……あ、もうこんな時間…ほむらちゃん、夕飯の買い物に行こうよ」

ほむら「そうね…恋人になってから最初の手料理、期待してるわ」

まどか「うん、任せてよ!」

ほむら「それじゃ行きましょうか。……プリニー、留守番頼むわね」

プリニー「了解ッス!ほむら様、まどか様、いってらっしゃいッス!」

まどかが私を支えてくれる。それがどれほど嬉しいことか

まどかの言う、私を支えるという言葉。私との約束というわけでもない

あれはきっと、まどか自身との約束。『誓い』とでも言うべきだろうか

私にだって自分自身に誓ったものはある。まどかとの約束を果たしてみせるという誓い

だが、もうあの約束は果たされた。だから、私は新たに誓いを立てる

私はここに誓う。これから一生、まどかを守る。まどかの為に戦う。そして、まどかを愛する、と

この先にある未来に、何が待っているのかはわからない。でも、例え何があったとしても

まどかと一緒なら、どこまでも歩いて行ける

私はずっとあなたの隣にいる。だから…あなたは私の隣で笑っていてほしい

それが私とまどか、2人で願った幸せなのだから

ねぇ、そうでしょう?まどか……






Fin



これにて完結です
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