P「ベースボールキャップ談義」 (29)


P「いやあ、本当にね。語りたかったんですけど、あずささんは野球に疎いし」

小鳥「うんうん、765プロで野球をかじってるの、私ぐらいですもんね」

P「そうそう、ずーっとあのDeNAを応援してる小鳥さんしかいないですもん」

小鳥「…………今日、プロデューサーさんのおごりでいいですよね?」

P「ごめんなさい、許してください」

小鳥「もう……。たるき亭で夕食なんて、しばらくぶりですよ」

P「今日は2人で語りましょう」

小鳥(……この角度でスマホを置いておけば…………プロデューサーさんの顔も映るわね)

 ——

春香「プロデューサーさんだっ! いいなぁ、小鳥さん」


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小鳥(プロデューサーさんの好みを会話から読み取る委員会の私が)

P「ほんっと、今日のやよいにはしびれましたよ」

小鳥(この会話をネット通話アプリでアイドルのみんなに垂れ流し)

P「おはよーって挨拶したら、頭にちょこんと」

小鳥(その情報を使ってみんながプロデューサーさんを悩殺するのだっ)

P「……小鳥さん?」

小鳥「……はい?」

P「聞いてます?」

小鳥「あっ、ごめんなさい」

P「もー……あ、すみませーん、焼き鳥セットと、ビール2杯」


P「それでですねっ、やよいの頭に」

小鳥「今朝、かぶってましたねぇ。ロッテの帽子」

P「アイドルとベースボールキャップって案外合うんじゃないかな、って思うんですよ」

小鳥「……なるほど、好みの組み合わせを言う会ですね?」

P「ええ。メジャーリーグでも俺はOKです」

小鳥「私も、多少なら……」

P「もう、早速言ってもいいですか?」

小鳥「はい」

 ——

春香「えーっと……『野球 帽子 一覧』っと」

 ——

千早「高槻さんがマリーンズの帽子……!」

 ——


P「まず、じゃあ春香から」

 ——

春香「ドキッ!」

 ——

P「春香のイメージカラーは赤ですね」

小鳥「ええ……もしかして、広島ですか?」

P「いいえ、ここはあえて……オレンジの巨人で行きます」

小鳥「きょ、巨人……」

P「イメージカラーで揃えると、やよいと巨人って似合わないんですよねぇ」

小鳥「ああ……確かに、やよいちゃんよりは似合うかもしれませんね」


 ——

春香「巨人、って……知ってる、巨人かぁ」

 ——

P「春香はほら、ちょーっとだけ黒いでしょう?」

小鳥「なるほど、ドス黒い巨人と、ちょっと黒い春香ちゃんで中和するんですね」

P「そう、そうなんですよ」

 ——

真美「はるるんにはぴったりだNE→!」

亜美「いや、はるるんは…………黒系……うーん…………セ・リーグより……」

真美「え、えーっと……亜美……?」

亜美「……楽天…………いや、旧西武……」ブツブツ

 ——


小鳥「春香ちゃんは、巨人……っと」

P「続いて千早なんですけども」

小鳥「千早ちゃん……やっぱりここは青系の球団ですか?」

 ——

千早「…………中日…………中日…………!」

 ——

P「ええ。そしてあえてメジャーリーグですね」

小鳥「ほほう」

P「ブルージェイズの帽子、って分かりますか」

小鳥「えーっと……鳥みたいなのが居るやつですか?」

P「それです!」

 ——

響「自分、明日からファイターズの帽子かぶっていこうかなぁ」

 ——


P「それをかぶってほしいなぁ、と思うわけですよ」

小鳥「蒼い鳥だけに?」

P「もー、分かってますねー!」

店員「お待たせしましたー」

P「おっ、きたきた! 焼き鳥っ」

 ——

千早「…………」カチカチッ

千早「……お急ぎ便でも、12時間後……少し、無理そうね」

 ——

小鳥「もぐ…………日本の球団だと……どこですかね……?」

P「……はむっ……そーですね…………中日かなぁ」


 ——

千早「っ!」ガタッ

 ——

P「といっても、一昨年ぐらいまでのモデルですけど」

小鳥「文字が四角っぽいやつですか」

P「そうです。千早はなんとなく…………期待されてる3年目サウスポーって感じですよねぇ」

小鳥「全部背負いこんでしまって故障しそうですね」

P「まぁ、ここは山本昌みたいに息の長いアーティストになってほしい、って願いも込めて」

小鳥「おぉ……プロデューサーさんがプロデューサーっぽいことを!」

P「いや、プロデューサーですから」

小鳥「ふふっ」


P「つーぎーはー……真ですね」

小鳥「真ちゃんは……なんとなくパ・リーグっぽいですね」

P「ええ……そうですね、ダイエーの帽子ですね」

小鳥「ダイエー? ソフトバンクじゃなくて、ですか?」

P「ええ。身売り前の……工藤公康とか、杉内とかがかぶってたやつです。ツバがオレンジの」

小鳥「いいですねぇ」

 ——

春香「えーっと……ダイエー……これかぁ、FDH……って、何の略だろ」

 ——


P「『プロデューサー! ボク、今150km/h出しましたよねっ!?』とか聞いてきちゃってね」

小鳥「あー、可愛いですねぇ」

P「真は野球が似合いますね」

小鳥「同感です」

P「次は……雪歩かなぁ」

小鳥(真ちゃんも雪歩ちゃんも、これを聞いてないんだよねぇ……惜しいなぁ)

 ——

千早「『ダイエーの帽子をかぶるといいわよ』……っと、送信」

 ——

真「……ん? ダイエー? えっ? なにこれ」

 ——


P「雪歩はまず、間違いなくセ・リーグです」グビッ

小鳥「意外ですねぇ。儚げなイメージから、パ・リーグと言うものだと」グビッ

P「雪歩は実は強いですからね。そして雪歩とボール……あまり似合わない」

小鳥「真ちゃんの後だと、余計にあんまり……な感じですね」

P「だがしかし、ここで俺は雪歩ヤクルト説を推したい」

小鳥「ヤクルト……理由を聞いても?」

P「ええ。ヤクルトの生え抜きは愛される生え抜きが多いでしょう?」

小鳥「宮本とか、田中浩康とかですか」

P「生え抜き……他球団に移籍しなくても活躍できるパワーがある」

小鳥(な、なんかちょっと真面目なノリに……)


P「だから雪歩はヤクルトなんですよ」

小鳥「ごめんなさい、一気にわからなくなりました」

P「……まぁ、ぶっちゃけるとですね」

小鳥「はぁ」

P「濃紺の帽子って、雪歩に似合うじゃないですか」

小鳥「…………」

『プロデューサー、とれませんよぅ』

小鳥「似合いますね」

P「そこですよ」

 ——

真美「ゆきぴょんにメールしとこっ」

亜美「……ヤクルト……なら、西鉄の帽子……」

 ——


小鳥「プロデューサーさん、私から提案してもよろしいでしょうか?」

P「もちろんです。どのアイドルですか?」

小鳥「律子さんです」

P「…………ほう」

小鳥「ちなみにプロデューサーさんは、どの球団を思い浮かべましたか?」

P「俺は、アスレチックスの緑色の帽子です」

小鳥「ほうほう」

P「小鳥さんは?」

小鳥「私はですね……マイ球団DeNAの帽子です!」

P「……ちょっと待って下さい、妄想します」

 ——

春香「ディーエヌエー……?」

 ——


『プロデューサー! 投げますよーっ』

P「…………」

『番長みたいに、私も長く一線に立ちたいですね』

小鳥「……どうですか?」

『熱いぜっ、ですよー、プロデューサー殿ー!』

P「最高ですねぇ」

小鳥「ねー?」

P「いやぁ、いい組み合わせだ」

小鳥「そうでしょう、そうでしょう」

P「どうしてこの組み合わせなんです? 俺的には、響とDeNAでもいいかなって思ったんですが」

 ——

響「えっ!?」

 ——


P「でも今、ああやっぱり律子がDeNAで、響は違う球団だなーって思いましたよ」

小鳥「響ちゃんは、今のところどの球団ですか?」

P「うーん……オリックス?」

小鳥「オリックス・バファローズですか?」

P「ええ。今使われている、金色の」

 ——

響「えー……自分、ハムファンなのに……」

 ——

P「想像してみて下さい、壊れやすいエースの響を」

小鳥「……」


小鳥「……ていうか、単純に似合いますね。Bs帽子」

P「少し不憫な響だからこそ、ですねぇ」

 ——

響「どういうこと!?」

 ——

小鳥「不憫なアイドルには不憫なチーム、と……?」

P「ははっ、その理論だと律子が不憫になっちゃうじゃないですか」

小鳥「っ!」プッチーン


小鳥「なんであなたのようなファンは、いっつも横浜とオリックスと広島をセットで馬鹿にするんですかっ!」

P「いや、俺はオリックスファンですし……愛がなきゃ金子のことなんて言いませんよ」

小鳥「えっ……プロデューサーさんは、阪神ファンじゃ……」

P「それは社長です。俺から勝手に猛虎魂を感じないでください」

小鳥「勝手に……ライバル意識してました……」

 ——

千早「……糸井のトレードの話を勉強しようかしら」

 ——

春香「オリックス? もう、よくわかんないよぅ……」

 ——

亜美「……オリックス・ブレーブスの帽子……」

真美「…………まだやってるんだ、亜美……」

 ——


P「貴音、なんですけども」

小鳥「貴音ちゃんと野球って、全く繋がりませんよね……」

P「俺は、なんとなくなんですけど……レッドソックスの帽子が似合うと思うんです」

小鳥「ほう……理由は?」モグモグ

P「貴音は響と仲が良いですよね」

小鳥「ええ」

P「そして、響は野球をよく見ていますね」

小鳥「……そうなんですか?」

P「この間までは疑問点もありましたが、『そんなの残当だぞ』という一言で確信しました」

小鳥「残当?」

 ——

響「えっ……?」

 ——

千早「なんJ用語……やっぱり、我那覇さんも野球ファンだったのね」

 ——


P「仕事先が東京ドームシティ。帰りに、東京ドーム横のスポーツショップに立ち寄る響と貴音」

小鳥「TO:DOですか!? 私、よく行きますよ!」

P「そうそう、TO:DOです!」

小鳥「巨人グッズばっかりなんですよねぇ……」

P「響が少ないファイターズグッズを吟味する中、貴音は店をめぐり……響に聞くんです」

『……響、この帽子は、あちらの帽子とは何かが違うのですか? 置き場が……』

『ああ、これはメジャーリーグ……アメリカの野球チームの帽子だぞ』

『アメリカ……』

『貴音は、これが似合いそうだな』

『……赤い、B……ですか』

『ああ、レッドソックスだぞ!』


P「そして結局貴音は気に入り、レッドソックスの帽子を買います」

小鳥(……すごいなぁ、プロデューサーさん)

P「後日、何気なくテレビを見ていると……レッドソックスの帽子をかぶって活躍する日本人」

小鳥「ま、まさか……」

P「そう、その名前を冠した世代がある……”怪物”」

『…………松坂大輔、彼はとても速い球を投げますね……』

小鳥「…………って、もう居ませんけど……」

P「いいんですっ」

小鳥「はぁ……」

 ——

響「……今度、貴音を誘って東京ドームに行きたいなぁ。上手く洗脳してファイターズファンにするぞ……」

 ——

春香「や、やっと知ってる名前が出た……。松坂……大輔……」

 ——

千早「四条さんはソフトバンクと踏んでいたのだけれど」カチカチ

 ——


P「というわけで、レッドソックスだと思います。日本の球団は……ない、ですね」

小鳥「うん……貴音ちゃんに日本の球団は、ちょっと……」

P「いやぁ、妄想って楽しいですね」

小鳥(ちょっと酔ってるな?)

P「どんどんいきますよー」グビッ

 ——

真美「まだかな、まだかな」

亜美「……真美は湘南シーレックスの帽子、似合いそうだよねぇ」

真美「…………いつの間に、亜美とここまで知識の差がついたんだろうねぇ」

 ——

P「亜美真美!」

 ——

真美「キター!」

亜美「お手並み拝見、といきますか……」

 ——


小鳥(プロデューサーさんは知らない。亜美ちゃんは尋常じゃない野球ファンだということを)

P「亜美はまだ子供だからなー」

小鳥(亜美ちゃんの好きな選手が……70年代の近鉄のエース、太田幸司だということも)

P「無難に……あー、でも……」

小鳥「悩んでます?」

P「ええ、無難に今の球団で行くか、昔のでいくか……です」

小鳥「両方、聞かせてもらってもいいですか?」

P「ああ、はい。分かりました。じゃあ、まず昔の球団ですけど……大阪近鉄です」

小鳥「三色の?」

P「いえ、球団が消滅するときに使われていた……最後の帽子です」

 ——

亜美「ふーん……やるねぇ」

真美「……近鉄って……?」

亜美「真美はまず、プロ野球再編問題を綴った『スト決行』って本を読んだほうがいいね」

真美「あ、はい……」

 ——


P「岩隈とか、門倉とか、ノリさんとか。最後の優勝をしたときの、あの帽子です」

小鳥「えーっと……代打逆転満塁サヨナラ優勝決定ホームランの?」ゴクゴク

P「そうですね……亜美だったら、あの猛牛マークを見て『ナニコレ? 変なのー』と言うでしょう」

小鳥「……ふむ」モグモグ

P「でも帽子をかぶり、近鉄について調べる間に……伝説のあの試合にたどり着く」

小鳥「『あの試合』?」

P「2001年9月26日——北川博敏」

小鳥「えーっと……逆転ホームラン?」

 ——

亜美「9回の裏、近鉄が2点、オリックスが5点。ツーアウト満塁。ここでもしホームランが出れば」

真美「逆転!?」

亜美「そー。しかもその試合に勝てば、近鉄はリーグ優勝。古久保のかわりに名前が呼ばれたのは」

真美「キタガワ、って人?」

 ——


P「YouTubeにあるんですよ、あの伝説の打席……」

『す、すごい……すごいよ、近鉄っ! 亜美、ここのファンになるっ!』

小鳥「で、でも……近鉄は……」

P「そう、亜美は真実を知ってしまう。近鉄がもう存在しないということを」

『な、なんで……? ウソっしょ……? バファローズなのに……』

小鳥「あの試合の対戦相手のオリックスが、バファローズを名乗っていることに違和感を……」

P「一度、野球を嫌いになってしまう亜美」

『あ、ありえないっしょっ!』

P「でも……あのホームランを打った北川がオリックスで現役で活躍していることを知って」

小鳥「再び野球に興味を持ち始める……と」

P「ええ」

小鳥「Wow……」


P「そんで、今の帽子なんですけども」

小鳥「ええ」

P「楽天イーグルス、です」

小鳥「楽天? 意外です……。黒系の帽子の球団だと思ってました」

P「これは、さっきの話の続きになるんですけどね」

小鳥「続くんですか!?」

P「ええ。亜美が何気なく野球の試合を見るとしますね」

小鳥「ええ」

P「そこで、見覚えのある名前を見ることになるんです。『岩隈久志』と」

小鳥「……さっきは言いませんでしたけど、北川は引退しましたし、岩隈はメジャーに」

『楽天にいたんだ、岩隈……!』

P「と、亜美はあの臙脂色の帽子をかぶり、イーグルスを応援するようになる……というわけです」

小鳥「なんか適当じゃないですか……?」


P「適当なんかじゃないですよ」グビッ

小鳥「そ、そうですか……」

P「小鳥さん、真美は……どこの球団だと思います?」

 ——

真美「キター!」

亜美「真美は……まぁ……」

 ——

小鳥「西武」

P「即答ですね」

小鳥「そりゃあ、西武ですよ。普段のイメージが強いかも、ですけど」

P「俺も、真美=西武が崩れませんでした」

小鳥「びっくりしましたよ。真美ちゃん、事務所で野球を見てたんですけど」


小鳥『…………西武戦?』

真美『西口ガンバレ→!』

小鳥『ファッ!?』



P「西口、ですかぁ」

小鳥「西口のファンなんですよっ! ビックリしましたよ、好みが渋いんですから」

P「確かに、真美の年齢なら岸とか菊池雄星とか涌井とか、イケメンに行ってもおかしくないですよね」

 ——

真美「だ、だって……かっこいいじゃん……西口……」

亜美「こればっかりは、双子だけどわかんないよー」

真美「真美は亜美の知識の多さについていけないよっ」

 ——

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