「想いは願ってるだけじゃ叶わないんだよ」
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●白糸台高校における三角関係をテーマとした、オーソドックスな京太郎SSです
●京太郎と咲の関係はアニメ版公式サイトの設定(幼なじみ)に準拠しています
●攻略ルートを左右する選択肢(安価)は四話から用意する予定です(全六話)
●投稿は週一ペースの予定ですが、気分転換に小ネタを書くことも考えています
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淡「久しぶり。どうだった、一ヶ月ぶりの故郷は」
京太郎「少しだって代わり映えしなかったよ。咲の奴も相変わらずだった」
淡「こないだ言ってたテルの妹さん? 昔から京太郎にお熱だって話の」
京太郎「だからそんなんじゃねえっての。俺はあいつの保護者みたいなもんだよ」
淡「じゃあ何、ずっとお世話焼いてたの? せっかくゴールデンウィークで帰省したのに」
京太郎「ああそうだ。目を離すと昼間でも寝巻きでゴロゴロしてるからな、あいつは」
淡「あはは。よかったね、二・三日で帰ってこれて」
京太郎「…………」
淡「京太郎?」
京太郎「いやな。もしかしたら俺はずっと長野にいた方がよかったのかも、なんて」
淡「何それ」
京太郎「少しだけだよ。本当に少しだけ、そんな風に思ったんだ」
淡「…………」
京太郎「…………」
淡「やっぱりまだ気にしてるよね。連休が始まる前のこと」
京太郎「ずっとそれだけ考えてたよ。忘れろっていうのが無理な話だ」
淡「テルにも悪気があったわけじゃないよ、きっと」
京太郎「それは分かってるけどさ、まさか本当に俺のことを忘れてるわけじゃないだろう」
淡「咲って子のことも合わせて、私たちに知られたくないことがあるんだと思う」
京太郎「そうなのかな。やっぱり」
淡「…………」
京太郎「淡?」
淡「前から聞こうと思ってたんだけどさ。京太郎はテルのことが好きなんだよね」
京太郎「東京の高校に進学するのは前から決めてたけど、ここに来たのは照さんがいるからだよ」
淡「そっか。そうだよね」
京太郎「でも今はなんだかよく分からないんだ。あの人が好きなのか、自分が今どうしたいのか」
淡「うん」
京太郎「久々の再会であんなあしらい方されたのに、確執はなくて。全部なかったことにされてる」
淡「屋上でお昼ごはん食べたもんね。テルもいっしょに」
京太郎「照さんの言う通り、本当に違う人なんじゃないかって思ったよ。あのときは」
淡「京太郎」
京太郎「なんでだろうな。今までずっと追いかけてた目標が消えた途端、何もやる気が起きないんだ」
淡「五月病だよ、きっと」
京太郎「そうだといいけどさ。定期試験も近いし気分を入れ替えたいところだよ、やっぱり」
淡「むむ、もしかして席替えが不満だったりするわけ? 前回に引き続き淡ちゃんの隣なのに」
京太郎「別にそうは言ってないだろ。今回もお前と隣同士でよかったよ、本当だ」
淡「えへへ」
京太郎「はあ」
淡「…………」
京太郎「…………」
淡「ねえ、京太郎」
京太郎「なんだ」
淡「要するにさ、テル以外に熱中できる目標があれば京太郎は頑張れるんだよね?」
京太郎「麻雀ならやらないぜ。ケータイのアプリでたまに遊ぶけど、腕前はからっきしだからな」
淡「そうじゃなくて! テルが京太郎に振り向いてくれないなら、新しい恋を見つければいいんだよ!」
京太郎「…………」
淡「ふんす」
京太郎「イヤだよそんなの。スナック菓子じゃないんだから」
淡「人がせっかくアドバイスしてあげてるのに注文が多いよ。命短し恋せよ乙女って言うでしょ」
京太郎「乙女じゃないし早死にする予定もねえよ。色恋沙汰に義務感覚えたらおしまいだろ」
淡「そういう堅苦しい話はいいからさ、好きな女の子のタイプを教えてよ。私がくっつけてあげる」
京太郎「そんな簡単にくっついたり離れたりしてたまるか。先生も来るしそろそろ」
淡「貧乳属性!」
京太郎「は?」
淡「だから、京太郎の好みのタイプだよ。おっぱいの小さい女の子が好きなんじゃない?」
京太郎「ばか、教室だぞ! 大声で何言ってんだお前」
淡「だって、テルのことが好きだったんでしょ? それなら好みのタイプもそんな感じで」
京太郎「違うっての! ないからな、そんな特殊な性癖」
淡「じゃあ、その逆だ。京太郎はおっぱいの大きな子が好きなんでしょ」
京太郎「…………」
淡「図星かな、これは」
京太郎「放っとけよ。いるわけねえだろ、そういうのが嫌いな男なんて」
淡「あわわ、耳まで真っ赤になってる。京太郎って意外に照れ屋さん?」
京太郎「ばか」
淡「誰がいいかな、うちの麻雀部でおっぱいの大きな子っていったら」
京太郎「そろそろやめにしないか、いい加減恥ずかしくなってきたぜ」
淡「あ、尭深なんかどうだろ? チーム虎姫の中では一番大きいよね」
京太郎「確かにそうかもしれないけど、渋谷先輩はダメだろ。そういうの」
淡「どうして?」
京太郎「俺、あの人に避けられてるんだよ。何かしたってわけでもないのに」
淡「確かに、いかにも男の子と話したことありませんって雰囲気だもんね」
京太郎「そうだよ、だからどれだけタイプでも渋谷先輩とは付き合えない」
淡「尭深が好みのタイプだっていうのは認めるんだ?」
京太郎「どうせ信じてくれないだろ、今さら否定したってさ」
淡「まあね」
京太郎「はあ」
淡「それにしても、そっか。京太郎は尭深のことが好きなんだ」
京太郎「恋人にするなら渋谷先輩かなってだけだよ。そこまでは言ってない」
淡「そうやって照れないの。淡ちゃんが二人のためにひと肌脱いであげるからさ」
京太郎「ひと肌って、一体何をするつもりなんだよ。お前は」
淡「もちろん、なんでもしてあげるつもりだよ。他でもない京太郎のためだもん」
京太郎「頼むから余計なことしないでくれ、俺のためだって言うなら尚更だ。それに」
淡「それに?」
京太郎「変に関わったりしないで、見てるだけでもいいかなって。そう思うんだ」
淡「京太郎」
京太郎「今度のことでよく分かったんだよ。淡の気持ちはありがたいけど、やっぱり俺は」
淡「想いは願ってるだけじゃ叶わないんだよ」
京太郎「淡」
淡「私もう決めたから。京太郎の考え聞いたらますます放っとけなくなっちゃったし」
京太郎「分かってんのか、先輩にも迷惑掛けることになるんだぞ。俺だけじゃないんだ」
淡「終わりよければ全てよしって言うでしょ。恋のキューピッド淡ちゃんにお任せあれ!」
京太郎「…………」
淡「ね?」
京太郎「好きにしてくれよ。もう」
淡「もちろんそのつもりだよ? 絶対好きにしてあげるからね、尭深のこと」
京太郎「それはどうも。せいぜい期待しないで待ってるぜ」
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淡「やっぱり屋上はいいね。校舎の中より涼しいし、いかにも学園生活って感じ」
誠子「お昼ごはんを食べてる間は完全に貸し切りだしね。ホント、須賀くん様々だよ」
京太郎「なんの気なしに預かった屋上の鍵ですけど、喜んでもらえて俺も嬉しいです」
菫「天文部員は君一人なんだったな。それも書類の上での幽霊部長か、悪い奴め」
京太郎「淡じゃないですけど、俺もドラマみたいな学園生活に憧れてたんですよ」
誠子「去年廃部になった天文部の預かりだっていうのは知ってたけど、そういう発想はなかったな」
淡「もしも京太郎が部長にならなかったら、私が掛け持ちしてたと思うよ? 天文部」
菫「須賀くんはいつものように否定するかもしれないが、やっぱり似てるよ。お前たち二人は」
誠子「見た目だって、なんとなく兄妹に見えなくもないですしね。二人並べてみたら」
淡「だってさ京太郎。私たち二人、本当は生き別れの兄妹でしたってことにする?」
京太郎「淡」
照「…………」
淡「なーんて、言ってみたり。そうじゃなかったり」
京太郎「…………」
淡「ごめん」
京太郎「余計なこと言う口はこれでも食ってな」
淡「マッシュポテト? いつも作ってきてる奴だよね、これって」
京太郎「一番作り慣れてるメニューだから味の方は保証するぜ。あーん」
淡「えへへ。おいし」
誠子「…………」
菫「確か須賀くんは一人暮らしなんだったか。君も大変だな、色々と」
京太郎「慣れてみればそれなりですよ。近所の方もよくしてくれますし」
誠子「電車で通学してるんだよね。いつもはどの路線を使ってるの?」
菫「途中までは私といっしょだよ。朝なんかはたまに乗り合わせるんだ」
誠子「そうなんですか。なんだか羨ましいなあ、そういうの」
淡「いいじゃないですか、亦野先輩は毎朝私といっしょのバスなんだから」
誠子「言われてみればそうだった。忘れてて悪かったな、大星後輩」
淡「ホントだよ、玉子焼き一つもらいますからね。お詫びの印として」
誠子「食いしん坊さんめ。これなら私も電車で通学しようかな、やっぱり」
淡「なんで!?」
京太郎「あはは」
淡「そういえば尭深がいないね。今日も学食でとりラーメンかな?」
尭深「ううん、今日は気分を換えてスパゲティにしたよ。淡ちゃん」
淡「尭深! いつから後ろにいたの、全然気付かなかったよ」
尭深「ちょうど今来たところだし、特に驚かせるつもりはなかったんだけどね」
淡「そっかそっか! それならここに座りなよ、私と京太郎の間。いいでしょ?」
尭深「えっと、座るの、そこじゃないとダメかな」
淡「高校百年生である大星淡ちゃんの先輩命令です! 尭深後輩は京太郎の隣!」
京太郎「淡、お前」
淡「京太郎は黙ってて。さっき教室で言ったでしょ、私の好きにするって」
尭深「…………」
淡「ね」
尭深「分かったよ、ちゃんとそこに座るから。だからあんまり急かさないで」
淡「うむうむ、よきにはからえ! 遠慮せずお喋りでもなんでもするが良いぞ!」
京太郎「あの、なんかすいません。渋谷先輩」
尭深「きききき、気にしないで。ください」
菫「…………」
淡「ごちそうさまでした! 流石の私もこれ以上は食べられないや」
誠子「そりゃそうだよ、色んなところからおかずを失敬して回ったんだもん」
淡「自分成長期ですから。お腹がいっぱいになると幸せだよね、えへへ」
尭深「あのね、クラスの子から『淡ちゃんに』ってお菓子を預かったんだけど」
淡「食べる!」
京太郎「淡に限って妥協はないと思ってたが、そこはやっぱり別腹なんだな」
淡「チョコチップ・マフィンが『私を食べて』って言ってるんだもん、当然だよ!」
京太郎「ああ。何言ってるのか全然分かんないけど、よく噛んで食べるんだぞ」
淡「んまい!」
照「…………」
菫「そんなに物欲しそうな目で見るな。悪いが今日は何も持ってきてないんだ」
照「万に一つもありえない話だと思う、菫がお菓子を持ってこないなんて」
菫「この間話しただろう、虫歯がひどくなったんだよ。今日も歯医者に行く予定だ」
照「チーム虎姫でラディッシュに行く約束をしていたけれど、あれはどうなるの」
菫「悪いが延期ということになるだろうな。私の虫歯菌がなりを潜めるまで」
照「かなしい」
京太郎「それにしても、上級生にまでファンがいるなんてとんだ人気者ですよね」
誠子「大星は何かと人目を引くからね。いい意味でも、悪い意味でも」
淡「なんですか、悪い意味って。目立って悪いことなんか何もないですよ」
誠子「おいおい、目立ちたくない人気者だっているんだぞ? 尭深みたいに」
尭深「に、人気者だなんて。恥ずかしいからやめてよ、そういうの」
京太郎「ああ、上級生の間ではアイドルなんですね。渋谷先輩も」
淡「こないだ先輩たちから『お茶子』って呼ばれてたよ。癒し系なんだって」
尭深「淡ちゃん」
淡「えへへ。ごめんごめん」
誠子「共学は今年からだし、そういう趣味の子もいるんだよね。ここだけの話」
京太郎「正直そんな気はしてました。目立つのも考え物ですよね、やっぱり」
誠子「私なんて、生まれてこの方女の子からのラブレターしか貰ったことないしね」
京太郎「そうなんですか? 亦野先輩、話しやすくてモテそうなのに」
誠子「…………」
京太郎「先輩?」
誠子「なんでもない」
淡「お昼ごはんは食べ終わったけどさ、叶うならずっとここでゆっくりしてたいよね」
京太郎「そうは言っても次は移動教室だから、そろそろ戻らないと遅刻するぜ」
淡「はいはい分かってますよ。まったく口うるさいんだから、京太郎は」
京太郎「お前はお前で口が減らないみたいだけどな。柔らかいほっぺしやがって」
淡「いひゃい、いひゃい! ごめんなひゃい! えへへ」
菫「…………」
京太郎「ぶつくさ言ってる暇があったら、さっさとお弁当箱を片付けなさい」
淡「仕方ないなあ、もう」
菫「須賀くん、ちょっといいかな」
京太郎「弘世先輩。どうかしましたか」
菫「今日の放課後、特に用事がなければ駅で待ち合わせできるか。話したいことがあるんだ」
京太郎「…………」
菫「ここでは少し話しにくいことだし、長くなるだろうから」
京太郎「構いませんよ。いつものホームで待ってます」
菫「すまない」
誠子「…………」
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京太郎「すいません、お待たせしました。掃除当番が長引いてしまって」
菫「気にすることはないさ。私も今来たところだし、呼びつけたのは私の方だからな」
京太郎「弘世先輩が俺と話したいことって、照さんとの一件についてですよね。やっぱり」
菫「当然それに関しても詳しく聞きたいと思っていたが、本題はそうじゃない」
京太郎「え?」
菫「それに、どちらかと言えばこれはお願いになるのかな。だから肩肘張らず楽にしていい」
京太郎「楽にって」
菫「須賀くん?」
京太郎「できませんよ、そんなの。先輩だって俺のことを信用してないんですから」
菫「先日のことはすまないと思ってる。もちろん、君への認識を完全に改めたわけでもないが」
京太郎「損な性格してますよね。弘世先輩って」
菫「性分なんだよ。なんなら、友情の証として携帯電話の連絡先を交換してもいいぞ」
京太郎「俺のケータイ、ガラケーですから。先輩のスマホからは赤外線もらえませんよ」
菫「いやいや、絶対交換すべきだ。私が手ずから打ち込むよ、それなら問題ないだろう?」
京太郎「…………」
菫「君にしたい話というのは淡のことだよ。チーム虎姫ないしは麻雀部全体の問題でもある」
京太郎「淡?」
菫「君は淡の紹介で私たちと交流を持ったんだったな。かつて憧れていた照と再会するために」
京太郎「その通りですよ。淡の助けがなかったら、俺は麻雀部に関わることすらできませんでした」
菫「そして淡は今も陰ながら力を尽くしている。昼休みの後で問い詰めたらすぐに口を割ったよ」
京太郎「渋谷先輩の話でしたら、あれは俺がやらせてるわけじゃありませんから」
菫「ああ、もちろん分かってたさ。矢継ぎ早に狙いを替えるほど好色な男には見えない」
京太郎「…………」
菫「しかし、一体どうしてそこまで君に肩入れするんだろうな。正直なところ疑問だよ」
京太郎「それは、友だちだから」
菫「果たして本当にそれだけの理由だろうか。私にはどうもそう思えないんだがね」
京太郎「何が言いたいんですか」
菫「別に」
京太郎「…………」
菫「ただ一つ確信を持って言えるのは、淡のモチベーションが君に大きく左右されていることだよ」
京太郎「淡のモチベーションを俺が? 一体どうして」
菫「それは私にも分からないが、事実君が帰省していたゴールデンウィークはひどいものだった」
京太郎「何かの間違いとかじゃありませんよね。他でもない弘世先輩がそう言うんですから」
菫「信頼してもらえたようで嬉しいよ。淡がそうであるように、君も私たちにとって必要な存在だ」
京太郎「だったら先輩のお願いっていうのは、淡をガッカリさせるなってことですよね。要するに」
菫「察しはいいが少しだけ違うな。単刀直入に言おう、うちのマネージャーになってくれ」
京太郎「は?」
菫「君が淡を強くする。あの気分屋がたった一人見初めた、須賀くんにしかできない役目だよ」
京太郎「…………」
菫「…………」
京太郎「言ってて恥ずかしくないですか、それ」
菫「あまり意地悪なことを言わないでくれ。本当のところ顔から火が出るくらい恥ずかしいんだ」
京太郎「変な性格してますよね。弘世先輩って」
菫「性分なんだよ。このなりのせいで、そういうノリを周囲に期待されて育ったからな」
京太郎「それはなんというか、本当に気の毒ですね。キャラメル食べますか?」
菫「虫歯にくっつくからいらない」
京太郎「残念だなあ」
菫「しかしこの時間は本当に空いてるな。隣の車両までガラガラじゃないか」
京太郎「部活が終わるのって、いつも六時くらいですよね。そんなに人が多いんですか?」
菫「まず座れた試しがないな。そのせいか、今もこうして立っている方が落ち着くくらいだよ」
京太郎「大変なんですね、部活戦士って。天文部レギュラーでよかったです」
菫「…………」
京太郎「…………」
菫「なあ須賀くん、やっぱり今のはナシだ。部活に入っていても座れるときは座れるもんだよ」
京太郎「でも、今さっき『座れた試しがない』って弘世先輩」
菫「どうしても君をマネージャーにしたいんだ。やはり三連覇に淡の存在は欠かせないからな」
京太郎「駅ではああ言いましたけど、ちょっと俺のことを買い被りすぎじゃありませんか?」
菫「そんなことはないさ。須賀くんは淡の側にいるだけでいいんだ、私は君が欲しい」
京太郎「麻雀だってそんなに詳しくないですし、皆さんの助けになれるかどうか」
菫「もちろん研修期間は設けるよ。担当を一人つけるから、県予選の頃には立派なマネージャーだ」
京太郎「俺に担当、ですか」
菫「ああ、言わずもがな尭深を君にあてるつもりだ。少しは淡の面子も立てておかなければな」
京太郎「…………」
菫「すまないが大方の事情はさっき淡から聞いていてね、君が無為に燻っていることも知ってるんだ」
京太郎「そんなに大げさな話じゃないですよ。性質の悪い五月病みたいなもんですから、きっと」
菫「なら尚のこと五月の内に決着すべきだ。私たちはインハイの県予選を六月に控えているし、それに」
京太郎「俺が浮かない顔をしてると淡のモチベーションに関わるから、ですよね」
菫「ああ、そうだ。だからなんとしても君には充実した学生生活を過ごしてもらいたい」
京太郎「それでもやっぱり気が引けますよ。俺や渋谷先輩の意思はどこにもないんですから」
菫「学生時代の色恋沙汰にそんな大層な理屈が必要とは思えないが、それでも君は気になるか」
京太郎「当然です。そんな軽薄な真似できませんよ」
菫「お見合いみたいなものだと私は思うよ。肝心なところは結局君たちの意思に委ねられてるんだから」
京太郎「本当に、そうでしょうか」
菫「手段は私が用意するんだ、いちいち悩まず享受すればいい。終わりよければ全てよしだよ」
京太郎「…………」
菫「どうかな?」
京太郎「まったく同じこと、さっき淡にも言われましたよ」
菫「なあ須賀くん、度々すまないがやっぱり今のもナシにしてくれないか」
京太郎「なんで!?」
菫「君は次で降りるんだったか。長々と付き合せてすまなかったね」
京太郎「いえ、構いませんよ。俺も弘世先輩とは一度話しておきたいと思ってましたし」
菫「私たちはまだ、お互いについて誤解が多いようだからな。もちろん照のことだってそうだ」
京太郎「それについてはまた、いつか話せるときが来たら」
菫「そのときが来たらいつでも呼び出してくれ。なんせ私たちはもうメル友同士だしな」
京太郎「…………」
菫「須賀くん?」
京太郎「弘世先輩って、案外友だち少なかったりします?」
菫「しししし、失敬な男だな君は!? 友だちなんて掃いて捨てるほどいるぞ! 百人はいる!」
京太郎「あ、もう駅着くんで失礼します。今日は色々ありがとうございました」
菫「聞けよ!」
京太郎「マネージャーのお話、一晩だけ考えさせてください。明日には必ずお返事しますから」
菫「え? うん」
京太郎「じゃあ、また明日。いくら好きでも甘いものばかり食べてちゃダメですからね」
菫「余計なお世話だよ!」
京太郎「あはは」
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咲「もしもし京ちゃん? 何かあったの、急に電話掛けたりして」
京太郎「大した用事じゃないんだけどな、なんとなく咲の声が聞きたくなって」
咲「すぐそうやってキザなこと言うんだから。京ちゃんったら」
京太郎「…………」
咲「あれからお姉ちゃんと何かあったの。それとも、まだ知らん振りされてる?」
京太郎「それがさ、びっくりするくらい何もないんだよ。なんだか肩透かし食らった気分だぜ」
咲「だから京ちゃん元気がないんだね。声聞いてたら分かるよ、幼なじみだもん」
京太郎「咲」
咲「後悔してるんでしょ、白糸台に入ったこと」
京太郎「悪いことばかりじゃないって分かってるんだけどな。それでもやっぱり負けそうになるよ」
咲「私と会えない寂しさに? ふふ」
京太郎「そうかもな」
咲「え?」
京太郎「出来の悪い妹か何かだと思ってたけどさ、本当はずっとお前に頼ってたのかもしれない」
咲「京ちゃん」
京太郎「ずっとお前の世話を焼いていたいくらいだよ。もう自分で自分が分からないんだ」
咲「そうだったらどんなにいいかって考えない日はないよ。私だってそう思う」
京太郎「ああ」
咲「それでもさ、やっぱりダメだよ。私といたら京ちゃんのためにならないもん」
京太郎「俺のためにならない?」
咲「私ね、京ちゃんのことが好きだったんだ」
京太郎「咲」
咲「ずっと前から知ってたでしょう。京ちゃんはお姉ちゃんのことばかり見てたけどさ」
京太郎「…………」
咲「だからね。私は京ちゃんの居場所になりたいけど、逃げ場所になんてなりたくないの」
京太郎「…………」
咲「…………」
京太郎「ごめん」
咲「許してあげる。たった一人の幼なじみだもん」
京太郎「それでも、ごめん」
咲「いいよ」
京太郎「俺さ、マネージャーにならないかって誘われてるんだ」
咲「お姉ちゃんの麻雀部だよね。いいんじゃない、京ちゃんそういうの似合ってるよ」
京太郎「それは自分でもそう思う。悪い話じゃないんだろうな、俺にとっても麻雀部にとっても」
咲「…………」
京太郎「咲?」
咲「京ちゃんってさ、見かけによらず怖がり屋さんだよね」
京太郎「なんだよいきなり。そんなことねえよ」
咲「そんなことあるよ、今だって怖がってる。やりたいことが分からないっていうのも言い訳」
京太郎「…………」
咲「私たちまだ高校生だもん、ちょっと優柔不断だからって誰も責めたりしないでしょ?」
京太郎「…………」
咲「本当は怖いんだよね。お姉ちゃんを好きだった自分がいなくなるのも、毎日が変わっていくのも」
京太郎「…………」
咲「…………」
京太郎「そうだよ」
咲「うん」
京太郎「格好悪いよな。そんな情けないことでいちいち悩んで見せたりして」
咲「何年幼なじみしてると思ってるの。京ちゃんが格好悪い人だなんて、それこそ今さらだよ」
京太郎「手厳しいぜ」
咲「だからね、京ちゃん。そろそろ格好良くなってもいいんじゃないかな?」
京太郎「咲」
咲「怖くても踏み出さなかったら潰れちゃうよ。ずっとこのままでなんかいられない」
京太郎「分かってる。分かってるけどさ」
咲「皆毎日変わっていくの。京ちゃんが思ってるように、何もかも悪いことばかりじゃないよ」
京太郎「そうかな」
咲「そうだよ」
京太郎「変われるかな」
咲「これから先の京ちゃんを私に見せて」
京太郎「咲」
咲「なあに」
京太郎「ありがとう」
咲「おう」
京太郎「そっちはどうだ。もうゴールデンウィークも明けちゃったけど、部活とか入らないのか」
咲「そっか、京ちゃんにはまだ言ってなかったっけ。私も今日から麻雀部員なんだ」
京太郎「麻雀部員って、お前麻雀なんか打てたんだな。全然知らなかったぜ」
咲「家族でちょっとだけね。京ちゃんが麻雀部の人と仲良くなったって聞いたら燃えてきちゃって」
京太郎「単純な奴」
咲「白糸台って名門だし、京ちゃんがマネージャーになるなら会えるよね。きっと」
京太郎「今からインハイの話かよ。そんなに強いのか、清澄高校の麻雀部って」
咲「それはもちろん。部員の半分は私と同じ一年生なんだけどね」
京太郎「私と同じ一年生って、俺がいなくてもそっちでちゃんと友だちできたのか?」
咲「いつまでも京ちゃんに甘えてばかりいられないからね。二人とは仲良くしてもらってるよ」
京太郎「小さい頃から人付き合いの悪かった咲に友だちが二人も? 本当かよ、それ」
咲「事実そうだからうまく言い返せないけど、流石に驚きすぎでしょ。ちょっと傷付くよ」
京太郎「菓子折りとか持ってった方がいいかな!」
咲「ぶっ飛ばすぞ」
京太郎「ごめんなさい」
咲「いいよ」
京太郎「なあ、咲」
咲「なあに、京ちゃん」
京太郎「サンキュな。こんな時間までつまんない話聞いてくれて」
咲「本当だよ、夜更かしはお肌の天敵なのにさ。もしも荒れたら責任取ってくれる?」
京太郎「責任くらい好きなだけ背負ってやるよ。安心しろよな、お姫さま」
咲「…………」
京太郎「どうした?」
咲「京ちゃんってさ、やっぱり意地悪だよね。私時々京ちゃんが分からなくなるよ」
京太郎「咲」
咲「お姉ちゃんとのことだって本当は教えてあげてもいいんだよ。こないだはああ言ったけどさ」
京太郎「部外者が首を突っ込んでいい問題じゃないんだろ。俺にも分かるよ、そんなこと」
咲「…………」
京太郎「…………」
咲「意地悪」
京太郎「お前にだけだよ」
咲「ばか」
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菫「須賀くんはどうした。屋上が開いてるんだ、学校には来てるんだろう?」
淡「ちょっと用事があるから遅れてくるって。ここの鍵だけさっき預かったの」
菫「そうか」
淡「京太郎ったらなんか思いつめた顔しててさ、朝から全然構ってくれなかったんだよ」
菫「…………」
淡「お腹ペコペコだし京太郎のことなんか待ってあげないもんね、いただきます!」
菫「なあ、淡」
淡「なんですか?」
菫「お前は須賀くんのことをどう思ってるんだ。単なるクラスメイトか、それとも」
淡「京太郎は友だちだよ。私の一番大事な友だち」
菫「友だち」
淡「何さいきなり。いちいち聞かなくたって決まってるでしょ、そんなこと」
菫「ああ、いや。すまない」
淡「お、噂をすればなんとやらって奴かな? やっと来ましたよ、京太郎」
菫「須賀くん」
京太郎「弘世先輩。昨日からずっと考えてたんですけど、今度のマネージャーのお話」
菫「まあ待て、その話は食事が終わってからでもいいじゃないか。君がそう急ぐことは」
京太郎「お受けしたいと思います」
菫「…………」
京太郎「…………」
菫「へ」
京太郎「俺を麻雀部のマネージャーにしてください。できる限りでなんでもします」
菫「それは分かった! 分かったが、どういう心境の変化があったのか聞かせてもらえるか」
京太郎「え?」
菫「誘った私が言うのもなんだが、昨日の時点ではとても感触のいい話ではなかっただろう」
京太郎「…………」
菫「須賀くん」
京太郎「正直な話、俺にはまだ自分が何をしたいのか分かりません。それはやっぱり昨日のままです」
菫「…………」
京太郎「それでも、俺にしかできないことがあるなら挑戦したいんです。人のためじゃなく自分のために」
淡「京太郎」
京太郎「俺、変わりたいんです」
菫「…………」
京太郎「…………」
菫「握手をしよう」
京太郎「へ?」
菫「握手をしようと言ってるんだよ。今日から仲間だ、京太郎」
京太郎「…………」
菫「どうした」
京太郎「やっぱりそれも性分ですか」
菫「そんなんじゃないよ、何より私がそうしたいんだ。ダメかな?」
京太郎「それはもう、喜んで」
菫「ふふ」
照「…………」
京太郎「すごい手汗」
菫「放っとけ、正直なところ断られると思ってたんだ。昨日からずっと気が気じゃなかったよ」
京太郎「だったらお相子ですね。うまく言葉がまとまらなくて、俺もさっきまで悩んでましたから」
菫「なんだよ、君も大概じゃないか。好きな子に告白するわけでもあるまいし」
京太郎「あはは」
淡「ちょっとちょっと、何二人していい雰囲気作ってるのさ! 私たちが置いてけぼりだよ!」
誠子「マネージャーは既に何人かいますし、もしかしてチーム虎姫の専属ってことですか?」
菫「ああ、そのつもりだ。京太郎にはインハイまでうちのチームに関する雑務をこなしてもらう」
淡「何それ、私そんなこと一言も聞いてないんだけど! 京太郎もどうして黙ってたの!」
菫「お前に話したら彼が断りにくくなるからな。それに、お前だってイヤじゃないだろう?」
淡「そんなの当たり前じゃん! 菫先輩大好き!」
菫「調子のいい奴め、お前に喜んでもらえて何よりだよ。皆も異論はないよな?」
尭深「…………」
菫「言い忘れていたが研修期間中に彼を指導するのは尭深、お前だぞ」
尭深「え」
淡「へえ? 菫先輩もなかなかやるね。てっきりそういうのは乗り気じゃないもんだと思ってた」
菫「なんのことやら。時に淡、なんだか無性に学食のとりラーメンが食べたくなってきたな?」
淡「ちょうど同じこと考えてたところだよ。そんな気分でしょ? テルと亦野先輩も」
菫「スパゲティもあるぞ」
京太郎「行ってしまいましたね、皆さん」
尭深「うん」
京太郎「…………」
尭深「…………」
京太郎「もしかしなくても、渋谷先輩って俺のこと苦手だったりしますよね」
尭深「ごめんね」
京太郎「いえ、いいんですよ。苦手なものの一つや二つあって当然ですから」
尭深「そう、なのかな」
京太郎「俺だって饅頭が怖かったり、ここで濃いお茶が一番怖かったりで色々あって、その」
尭深「え?」
京太郎「すいません。忘れてください」
尭深「…………」
京太郎「…………」
尭深「今日はいい天気、だよね」
京太郎「先輩?」
尭深「空が、青いね?」
他の誰かがそこにいたなら、笑ってしまうほどぎこちないやり取りだけど。
そう言ってはにかんだ先輩の横顔と、抜けるような青空を眺めているだけで。
退屈だったその日々が、ちょっとはマシになるような気がしたんだ。
Shiraito Days
第一話「イノセント・ブルー」
投下終わりです。完走まで応援していただけたら幸いです
乙でした
なんか不思議な雰囲気だな・・・・・・
しかしデイズが付いてるからちょっと怖い
レスありがとうございます。励みになります
>>34
修羅場や三角関係、痴情のもつれは三度の飯より好きですが
登場人物は誰もかれも高校生なので死んだり犯されたりはしない予定です
どうせならタイトル全部カタカナでもいいんじゃないかなとか思ったり
>>31でガラスの割れる音が聞こえてきたんだけどこれ気のせいでいいんだよな?
欝はないんだよな?信じるぜ?
>>39
悲恋は書きますが鬱要素(いじめ等)はありません。淡ちゃんたちは人気者です
余談ですが僕は「一途な思いは報われて」が一番好きです!
皆さん応援ありがとうございます
それなりに順調なので宣言通り20日(日)には第二話を投下できそうです
それまで場を繋ぐために小ネタを投下することも考えましたが
それによって本編の投下が遅れてもいけないので
日曜日までお待ちいただけたら幸いです。どうもすみません
健夜「なあに、その古くて汚いぬいぐるみは?」
京太郎「あ、カピちゃんです。よろしく」
咏「ゴミを増やさないで欲しいねい。捨てろ」
京太郎「」
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はやり「ぬいぐるみ(そいつ)がしゃべるのは京太郎くんの想像なんだもん」
良子「それどころじゃねえ時はキャントスピークですよ」
京太郎「抜いてッ! 抜いてェェッ!」ゴボッグボッ
投稿は明日のお昼ごろの予定です。のびのび書かせていただきました
淡「お待たせしました! 麻雀部のスーパーアイドル・大星淡ちゃんです!」
菫「朝練に遅刻した馬鹿はお前だけだよ。なんならサインをもらおうか、この退部届に」
淡「またまた、心にもないこと言いなさんなって。そんなことより京太郎と尭深は?」
菫「そんなことって、お前なあ。件の二人なら私の言いつけで印刷室にいるぞ」
淡「ほほう、週明け一発目からベッタリですか。菫先輩もなかなかワルよのう?」
菫「いや、週明けどころか昨日もいっしょだったらしい。彼の研修は土曜までだったはずだが」
淡「それってデートじゃん! 普段お堅いことばっかり言ってるくせに京太郎もやるね」
菫「ああ、まさか一週間であそこまで打ち解けるとはな。これは脈アリと見てもいいだろう」
淡「手塩にかけて育てたせがれがこんなに立派になって、お母ちゃん嬉しいよ。うう」
菫「お前は何キャラだよ。ほら二人が戻ってきたぞ、なんでもないような顔をしろ」
淡「…………」
菫「淡?」
淡「いやね、菫先輩はいつもそうやってクールなキャラを演じてるんだなって」
菫「う、うるさいな。私にも色々あるんだよ、放っといてくれ」
京太郎「よう、淡。今日も遅刻とはいいご身分だぜ」
淡「へへーんだ、私ってばいいご身分だもんね! 高校百年生だぞ、もっと敬いなさい!」
尭深「先輩、これが龍門渕の牌譜です。最近数回の対外試合は全て彼がファイリングしました」
菫「すまないな。朝練はもうじき終わるし、入れる卓もないだろうから上がってくれ」
淡「手持ち無沙汰だし私もぼちぼち教室戻ろうかな。行こ、京太郎」
菫「淡」
淡「いけね、そうでしたそうでした。私は用事を思い出したから尭深と二人で戻ってよ」
京太郎「淡、お前さては」
淡「なんのことやら! ほらほら、あとは若い者同士仲良くやってなさい!」
尭深「だってさ。行こっか、京太郎くん」
京太郎「尭深さん。そうですね、行きましょうか」
淡「…………」
菫「…………」
淡「菫先輩、今の聞いた?」
菫「ああ、なんだか見ているだけで虫歯が痛くなってくるよ。私も教室に戻るかな」
淡「それじゃあ、私もそろそろ」
誠子「大星」
淡「あれれ、亦野先輩? どうしたんですか、そんなに浮かない顔して」
誠子「須賀くんと尭深をくっつけたの、お前と弘世先輩なんだよな」
淡「もちろんそうだよ。放っておいたらいつまで経っても平行線でしょ、あの二人」
誠子「お前はさ、須賀くんが他の子と仲良くしていてもなんとも思わないのか」
淡「そんなわけないじゃん、京太郎と尭深が仲良くしてたら嬉しいから応援してるんだよ」
誠子「…………」
淡「先輩?」
誠子「私には大星が分からないよ。私がお前の立場なら、きっと普通じゃいられない」
淡「普通じゃいられないって。ああ、もしかして京太郎のことが好きだったんですか」
誠子「だ、だったらなんだって言うんだ。大星には関係ないだろ」
淡「関係あるよ。せっかく京太郎が前を向いたんだもん、誰にも邪魔して欲しくないの」
誠子「邪魔? 須賀くんがそう言ったのか。彼は、尭深のことが好きなのか」
淡「そうだよ。分かったらもう教室に戻ってもいいよね、京太郎が待ってるからさ」
誠子「…………」
淡「元気出してくださいね? 五人全員が揃ってこそのチーム虎姫なんですから」
誠子「あ、ああ」
淡「じゃあ、また後で」
誠子「…………」
照「誠子」
Shiraito Days
尭深「ごめんね、須賀くん。私が映画なんかに誘ったせいでこんなことになっちゃって」
京太郎「二人で決めたことですよ。『研修が終わったらどこかへ遊びに行こう』って」
尭深「でも」
京太郎「俺は一日遊び歩いて楽しかったですけど、先輩はそうじゃありませんでしたか」
尭深「その言い方はズルいよ。こんなに楽しい日曜日、私だって久しぶりだったもん」
京太郎「それなら最後の最後で雨に降られたくらい、大したことじゃありませんよ」
尭深「だって傘まで差してもらっちゃってるし。私、あなたより一つお姉さんなのに」
京太郎「そのために持ち歩いてるんですから。先輩がずぶ濡れにならなくて良かったです」
尭深「…………」
京太郎「先輩?」
尭深「須賀くんってさ、妙に手馴れてるよね。なんでも良く気が付くっていうか」
京太郎「手の掛かる幼なじみがいましたから。長いこと面倒見ててクセになったのかな」
尭深「その幼なじみさんって、女の子だよね」
京太郎「ええ、昔から『京ちゃん京ちゃん』って俺の後に着いてきて。どうかしましたか?」
尭深「ううん、なんでもないの。気にしないで」
京太郎「変な先輩」
尭深「京ちゃん、か」
京太郎「呼ばれ慣れてるあだ名も、渋谷先輩の口から聞くとなんだか恥ずかしいですね」
尭深「うん、やっぱり私もそう思ったよ。男の子をあだ名で呼んだことなんかないし」
京太郎「それはもう、研修が始まる前なんて目も合わせてくれませんでしたからね」
尭深「あれは弘世先輩から『プレイボーイだ、気を付けろ』って言われてたから」
京太郎「いざ耳にすると地味に傷付くなあ。俺ってそんなにチャラく見えますか?」
尭深「今はそれほどでもないと思うけど、宮永先輩とのこともあったから余計にね」
京太郎「まあ、誰だって照さんの言い分を信じますよね。『私に妹はいない』なんて」
尭深「ねえ、須賀くん」
京太郎「はい」
尭深「須賀くんはさ、やっぱり宮永先輩のことが好きなんだよね?」
京太郎「…………」
尭深「…………」
京太郎「好きでしたよ」
尭深「そっか」
京太郎「そうです」
尭深「雨脚、強くなってきたね。土砂降りみたい」
京太郎「先輩、肩とか濡れてませんか。折り畳み傘小さくてすいません」
尭深「ううん。私は大丈夫だけど、やっぱり須賀くんは少し濡れちゃってるよね」
京太郎「ちょっとは格好付けさせてください。憧れてたんですよ、こういうの」
尭深「屋上のこともそうだけど、須賀くんって案外ロマンチストだよね」
京太郎「あらら、バレちゃいましたか」
尭深「そういうの、私も嫌いじゃないけどさ。須賀くん」
京太郎「はい?」
尭深「こうやって、もうちょっと近付いたら須賀くんも濡れなくて済むよね」
京太郎「渋谷先輩、何もそこまでしてもらわなくても」
尭深「私もね、変わりたいんだ。須賀くんのためじゃなく自分のために」
京太郎「先輩」
尭深「ダメ」
京太郎「え?」
尭深「や、やっぱり今だけは顔見ないで。恥ずかしくて死んじゃいそうだから」
京太郎「ごめんなさい」
尭深「…………」
京太郎「…………」
尭深「なんだかんだ、須賀くんも照れてくれてるんだね」
京太郎「ちょっと、ズルいですよ! 人には見るなって言ったくせに」
尭深「だって耳まで真っ赤なのがおかしくて。ごめんね、ふふ」
京太郎「仕方ないでしょ。女の人と腕を組んで歩くのなんて、初めてなんですから」
尭深「てっきり慣れてるものだと思ってたよ。さっきまで平気な顔してたから」
京太郎「いっしょに歩いてるのが渋谷先輩なんだし、俺だって意識しますよ」
尭深「じゃあもしも私が淡ちゃんだったら、それでもドキドキしてくれる?」
京太郎「…………」
尭深「あれ、えっと。何言ってるんだろ私? なんでもないから忘れて」
京太郎「しませんよ」
尭深「へ」
京太郎「渋谷先輩だから緊張するし、恥ずかしいんです。情けない話ですけど」
尭深「それって」
京太郎「…………」
尭深「須賀くんも気付いてるよね。淡ちゃんや弘世先輩が色々お手伝いしてくれてるの」
京太郎「…………」
尭深「正直なところね、最初は少しだけ迷惑に感じてたんだ。なんで私なんだろうって」
京太郎「先輩」
尭深「誠子ちゃんなんていつも須賀くんのことばかり話すんだもん、私よりずっと適役だったよ」
京太郎「…………」
尭深「ねえ、須賀くん。あなたはどうして私を選んだの?」
京太郎「それは」
尭深「見当外れだったらそう言って。私、このままだと勘違いしちゃうよ」
京太郎「…………」
尭深「…………」
京太郎「勘違いじゃありませんよ。全部俺が淡や弘世先輩に頼んだことです」
尭深「須賀くんは、私のことが好きなの?」
京太郎「分かりません」
尭深「え?」
京太郎「『好きだ』なんて、無責任なことを言いたくないくらいには好きなんです」
尭深「須賀くん」
京太郎「先輩と勉強してる内に、少しずつだけど自分が何をしたいのか分かってきたんです」
尭深「うん」
京太郎「それでも、先輩を意識してるこの気持ちが本物なのかはまだ分からなくて」
尭深「…………」
京太郎「そんな中途半端なままで誰が好きだとか、そういうことを言いたくありません」
尭深「面倒くさいね。男の子って」
京太郎「すいません。こればっかりは淡にも弘世先輩にも義理立てできませんから」
尭深「ううん、それを聞いて安心したよ。周りの望むままだなんて息が詰まっちゃう」
京太郎「先輩」
尭深「ねえ、須賀くん。先輩のお願いごと、二つだけ聞いてくれるかな」
京太郎「二つと言わず、三つでも」
尭深「そろそろ駅に着くけれど、もう少しだけあなたと寄り道したいの。これが一つ目」
京太郎「俺も同じこと考えてましたよ。それはもう、どこまでだって着いてきますから」
尭深「それと、もう一つなんだけどね」
京太郎「はい」
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淡「京太郎くん! 尭深さん! 次第に視線は絡み合い、二人の影は繋がって! むっちゅー!」
「なになに、淡ちゃんもとうとう銀幕デビュー? 女優賞は間違いなしだね!」
淡「目指すはカンヌ国際映画祭だよ! 皆も応援してね!」
京太郎「してねえよ、そんな恥ずかしいこと! 映画観てちょっと買い物しただけだっての」
淡「立派なデートじゃん! どんな映画観たの、今話題の『トライアングル・ラブ』?」
京太郎「いや、尭深さんはそういうの好きじゃないらしいから『シルマリルの冒険』」
淡「色気がないなあ。名前で呼び合うようになったのは及第点だと思うけどさ」
京太郎「そりゃどうも、もう今朝みたいに手助けしてくれなくてもいいぜ。色々あったんだ」
淡「なあに、色々って。なんかやらしー響き」
京太郎「淡や弘世先輩が俺たちをくっつけようとしてるの、尭深さん全部気付いてたんだよ」
淡「ええ、あれだけさりげなくサポートしたのに? さてはエスパーか!」
京太郎「わざとらしいこと言ってんな。あれだけ露骨なんだもん、誰だって気付くよ」
淡「それで?」
京太郎「なんだよ、それでって」
淡「どうせ尭深だって満更でもなかったんでしょ。ちゃんとお互いの気持ちは確かめたの?」
京太郎「ちゃんと話したよ。尭深先輩のことが好きかもしれないって」
淡「うへえ甘酸っぱい! それでそれで、尭深も京太郎のことが好きだって?」
京太郎「…………」
淡「京太郎?」
京太郎「そういや、尭深さんが俺のことをどう思ってるのか聞いてなかった」
淡「何それ、どういうこと!? そんなのフェアじゃないよ!」
京太郎「いいんだよ、ゲームじゃあるまいし。これは俺たち二人の問題だからな」
淡「じれったいなあ、もう」
京太郎「じれったいって、お前絶対楽しんでるだろ。分かってたけど」
淡「当たり前じゃん。古今東西探しても、人の色恋沙汰より楽しいことなんかないの」
京太郎「いい性格してるぜ、お前」
淡「え、そうかな? えへへ」
京太郎「別に褒めてるわけじゃねえよ。とにかくこれ以上は手を出さないでくれ」
淡「こないだは『好きにしてくれよ』って言ったくせに、つまんないの」
京太郎「それはもう失効。お前も他にもっと面白いことを探したらどうだ?」
淡「何さ、もっと面白いことって」
京太郎「たとえばほら、好きな奴とかいねえのかよ。淡には」
淡「何言ってんの、いるに決まってるじゃん。私は京太郎が好きだよ」
京太郎「は!?」
淡「なーんちゃって。本気にしちゃった? そんなわけないでしょ」
京太郎「お前なあ、冗談でもよしてくれよ。そういうの」
淡「迷惑だった? もしも私が京太郎のこと好きだったら」
京太郎「そうじゃねえけどさ、やっぱり驚くよ。困るんだ」
淡「ごめんごめん。京太郎と尭深がうまくいってるから、ちょっと意地悪したくなったの」
京太郎「はあ」
淡「でも半分は本当だよ? 私の面白いはいつだって京太郎がくれるもん。こんな風にね」
京太郎「ちょっとは手加減してくれよ。お前といたら心臓がいくつあっても足りないぜ」
淡「わお、ロマンチックなセリフ。全部盗んで差し上げましょうか?」
京太郎「ばか」
淡「いひゃい、いひゃい、いひゃい! もう、ほっぺはお餅じゃないんだぞ!」
「おいおい須賀くん、あんまり嫁さんいじめちゃダメだよ? あはは」
京太郎「…………」
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尭深「屋上だから仕方ないけど、やっぱり昨日の雨で水たまりだらけだね」
京太郎「今日ばっかりは学食の方が良かったですかね。皆さんも来ないようですし」
尭深「ベンチは京太郎くんが拭いてくれたから、私はここでも平気だよ。それに」
京太郎「それに?」
尭深「屋上なら、京太郎くんと二人きりになれるから。なんて」
京太郎「尭深さん」
尭深「でも、やっぱりまだちょっと恥ずかしいな。男の子と名前で呼び合うのは」
京太郎「なんででしょうね。声に出す度気恥ずかしくて、それがなんだか嬉しくて」
尭深「変だよね。私たち、まだ付き合ってるわけでもないのに」
京太郎「尭深さんから言い出したことですよ。ちっとも変じゃありません」
尭深「そうかな」
京太郎「そうです」
尭深「…………」
京太郎「…………」
尭深「ふふっ」
京太郎「お昼、食べましょうか。このままだとお腹いっぱいになっちゃいそうですから」
尭深「そうだね。いただきます」
京太郎「カラフルなお弁当。それって尭深さんが自分で作ったんですか?」
尭深「私も一人暮らしだし、一応女の子ですから。お料理くらいはね」
京太郎「すいません。学食ばかりって聞いてたから、てっきり」
尭深「京太郎くんも自分で作ってきてるんだよね。なんなら、ちょっとだけ交換しよっか」
京太郎「もちろんいいですよ。じゃあ、俺からはこの厚焼き玉子を」
尭深「…………」
京太郎「尭深さん?」
尭深「あ、あーん」
京太郎「あの、それってつまり。そういうことですよね」
尭深「淡ちゃんにはしてたもん」
京太郎「…………」
尭深「…………」
京太郎「どうぞ」
尭深「おいしい」
京太郎「尭深さん、もしかして俺の番もこんな感じですか。めちゃめちゃ恥ずかしいんですけど」
尭深「それは私だっていっしょだけど、ずっと憧れてたから。こういうの」
京太郎「案外アグレッシブですよね、尭深さんって。ちょっと見る目が変わりそうですよ」
尭深「幻滅した? ふふ」
京太郎「そんなわけないって分かってるくせに。尭深さんの意地悪」
尭深「ごめんね。照れてる京太郎くんがあんまり可愛いから、つい」
京太郎「あーん!」
尭深「へ」
京太郎「心の準備できましたから。気が変わらない内に食べさせてください」
尭深「…………」
京太郎「尭深さん?」
尭深「いざ食べさせる側になると、結構恥ずかしいね。これ」
京太郎「観念してください。俺だって照れくさいの我慢したんですから」
尭深「そ、そうだよね。それじゃあ京太郎くん、お口を開けてくれるかな」
京太郎「尭深さん、それプチトマトですよ」
尭深「あう」
京太郎「ごちそうさまでした」
尭深「魔法瓶にお茶を入れてきたんだけど、京太郎くんも飲むよね」
京太郎「どうも、もちろんいただきます。お茶子先輩が淹れてくれたお茶ですから」
尭深「もう、恥ずかしいからやめてよ。なんでそんなあだ名が付いちゃったんだろ」
京太郎「それはやっぱり、いつもお茶を飲んでる印象があるからじゃないですか?」
尭深「私、皆が思ってるほどお茶に詳しくないんだよ? 茶葉も実家から送られてくるだけだし」
京太郎「え」
尭深「どうしたの?」
京太郎「いえ、なんだか意外すぎて。てっきりガーデニングで収穫してるのかと思ってました」
尭深「そんなわけないよ。人よりお茶が好きなのは本当かもしれないけどね」
京太郎「あ、これおいしい」
尭深「良かった。私の好きなもの、京太郎くんにも好きになって欲しかったから」
京太郎「…………」
尭深「京太郎くん?」
京太郎「キュンとさせてもお茶菓子くらいしか出ませんからね」
尭深「ありがとう」
京太郎「そういえば、『お茶の子さいさい』の『お茶の子』って、お茶菓子のことらしいですね」
尭深「それじゃあ私、皆からお茶菓子お茶菓子って呼ばれてたんだね。変なの」
京太郎「俺はなんとなく分かる気がするけどなあ。尭深さんのあだ名」
尭深「どうして?」
京太郎「なんとなく和菓子みたいな感じがあるから。逆に淡なんかはショートケーキかな」
尭深「…………」
京太郎「尭深さん?」
尭深「甘いところ、教えてあげようか。なんて」
京太郎「それって」
尭深「京太郎くん」
照「ラディッシュのパフェ。桃が乗っててとびきり甘い、私のイチ押しデザート」
京太郎「…………」
尭深「…………」
京太郎「なんでいるんですか?」
照「デザートには一家言あるから見過ごせなかった。お菓子の話なら私も混ぜて欲しい」
京太郎「いや、そうじゃなくて」
照「じゃあ何、尭深と須賀くんは付き合っているの。随分と仲が良さそうだけれど」
尭深「それは」
京太郎「違いますよ。俺と尭深さんは、恋人同士とかそんなんじゃありませんから」
尭深「…………」
照「尭深」
尭深「はい」
照「そんなに怖い顔をしなくても、部活に支障がなければ口を出したりしない」
尭深「え」
照「自覚がないならそれでいい。私はただ、お菓子の匂いがしたからここに来ただけ」
京太郎「モナカしかありませんけど、それでも良かったら」
照「ありがとう。菫が先生に呼び出されたから、どこでお菓子を調達しようか悩んでいたところ」
京太郎「照さんくらいの有名人になると、ファンの人からもらえるんじゃないですか?」
照「それはいいことを聞いた。今度からお菓子が足りないときはそうすることにしよう」
京太郎「あはは」
尭深「…………」
照「予鈴が鳴るから私はもう行く。それじゃあね、京ちゃん」
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誠子「なんですか、わざわざ呼び出したりして。今日は後輩を指導する約束だったんですが」
照「部室で話すと菫や淡の耳に入るからね。心配しなくてもその子には私が埋め合わせるよ」
誠子「もしかして今朝の話の続きですか。その件でしたら既にお断りしましたよね」
照「お付き合いしているわけではないと、須賀くん本人がそう言ったとしたら?」
誠子「な」
照「あなたは尭深の友人でもある。二人が恋人同士ならば、それを引き裂くことはできない」
誠子「宮永先輩、あなた何が言いたいんですか」
照「分かってるでしょう。須賀くんと尭深の間に割って入ることができるのは今だけなの」
誠子「…………」
照「正直な気持ちを聞かせて欲しいと思っている。こんな校舎の離れに呼び出したんだからね」
誠子「今の須賀くんにとって尭深は欠かせない存在です。今朝大星にそう聞かされました」
照「曖昧になった須賀くんが、尭深といる内ようやく自分を取り戻した。確かそういう話だっけ」
誠子「そうですよ。だから今さら二人の邪魔はできないし、まして彼が好きなら尚のこと」
照「京ちゃんはマネージャーをするためにここへ来たわけじゃないから」
誠子「宮永先輩?」
照「自分の意味を他の誰かに見出すなんて、頼りなくて不健全な話だと思わない?」
誠子「それは確かにその通りですけど、そもそも須賀くんはあなたのことが」
照「京ちゃんは」
誠子「…………」
照「須賀くんは多分確かめているんだと思う。自分の想いが本物かどうか、臆病な子だから」
誠子「だからあれだけ親しげでも、尭深と恋人同士ではないと?」
照「私の勝手な予想だけどね。鏡も何も使わない、単なる希望的観測」
誠子「じゃあ、もしも須賀くんが尭深を値踏みし終えたら。そのときは」
照「二人の間に割って入る余地は、少しだってなくなるだろうね」
誠子「だけど今なら。そういうことか」
照「まあ、だからと言って手放しに安心できるわけではないよ。問題はいくつかある」
誠子「え?」
照「あれは機が熟すのを待てない女だからね。潤んだ目をして、自覚がないのも困りものだよ」
誠子「それも予想ですか」
照「まさか。こればっかりは自分の目で確かめたこと、少しだって嘘はない」
誠子「宮永先輩、あなたまさか」
照「誠子もなかなか目ざといね。私がナンバーファイブに選んだだけはある」
誠子「じゃあ先輩は、本当に四六時中見張っていたんですか。二人のことを」
照「それはもう、私も私で臆病な人間だから。確かめないと安心できないでしょう」
誠子「どうしてそこまで。あなた一体、須賀くんのなんなんですか」
照「単なる先輩と後輩だよ。それ以下ではないし、それ以上を誠子が知る必要もない」
誠子「先輩」
照「話が脇道にそれたね。もう一度だけ聞くけれど、二人の間に割って入るつもりはあるの?」
誠子「…………」
照「誠子」
誠子「私は須賀くんのことが好きです。尭深より前から彼のことが好きだった自信もあります」
照「だったら」
誠子「それでもやっぱり、尭深の友だちでもあるんです。変わろうとしてる二人を邪魔できない」
照「…………」
誠子「何より宮永先輩、私はあなたのことが信用できませんから。そんな人の口車にはとても」
照「そう。先輩として、この先誠子が後悔しないことを祈っているよ」
誠子「失礼します」
菫「一体どこへ行ってたんだ。お前がいなくなって部活はてんてこまいだよ」
照「溜め込んでいたお菓子を全て食べてしまったから。誠子に購買まで案内してもらった」
菫「お前ときたら、本当にもう」
誠子「…………」
菫「昼だってテキトーなことを言って私の手間を増やすし、もう少し自覚ある行動をだな」
照「お昼のことは悪かったと思っている。菫に用事があると聞いたのは昨日のことだった」
菫「昨日は日曜日だぞ。先生はなんの用があって私を呼びつけるんだ」
照「それは」
菫「それは?」
照「森で見つけた大きな卵を運ぶのに、人手が必要だったとか。ぐりとぐらみたいに」
菫「分かりきってはいたが、お前の頭の中は本当にお菓子のことでいっぱいなんだな」
照「嘘をついたらカステラが食べたくなってきた。ふしぎ」
菫「ちょうどファンの子がお前に置いていったカステラがあるんだ、それを食べたらいい」
照「なんと、それは直接会ってお礼がしたい。Tシャツに『満貫』と書いてあげてもいい」
菫「それでもきっと喜ぶだろうよ、お前なんかのファンだから」
照「えっへん」
淡「ああ、何食べてんのテル! 独り占めしないで私にもちょうだい!」
照「いくら淡でもそれは聞けない相談。私はお菓子を人に分けられないケチな人間」
淡「ズルいよテルばっかり! 菫先輩、私もカステラ食べたい!」
菫「気の毒だが、カステラの差し入れは照が食べてる分だけだな。栗饅頭ならあるぞ」
淡「えー、栗饅頭? カステラが食べたい気分なのに」
菫「ありがたい貰い物だぞ。感謝はしても贅沢は言うな」
淡「ちぇ、分かったよ。栗饅頭で我慢する」
菫「悪い子だけどいい子だ。ほら、最後の一個なんだから味わって食べろよ」
淡「ええ? そっか、最後の一個なんだ」
菫「淡?」
淡「はい、菫先輩。ちっちゃいけど半分こ」
菫「いやいや、気持ちは嬉しいが私は虫歯がひどくてだな」
淡「栗が入ってる方は私がもらうからね。慈悲深い淡ちゃんでもそればっかりは戦争だから」
菫「…………」
淡「ほれ」
菫「ありがとう」
淡「あーあ、バイバインがあったらこの栗饅頭だってお腹いっぱい食べられるのにな」
菫「おいおい、部室を栗饅頭だらけにするつもりか。お前にドラえもんはいないんだぞ」
淡「私はのび太みたいに失敗しないもん。お腹がいっぱいになったら皆に食べてもらうから」
菫「まあ、そのときは私も手伝うよ。虫歯が治ってたらな」
淡「尭深にたくさんお茶を淹れてもらわないとね。なんならお茶にもバイバインを使ったりして」
照「…………」
菫「それも飲みきれずに日本が沈没しないといいけどな」
照「そういえばさっきから尭深と須賀くんの姿が見えないようだけど、二人はどうしたの」
菫「二人ならホームセンターに備品を買いに行ってるよ。もちろん私の言いつけでな」
照「え」
菫「カバンも持っていったようだし、恐らくそのまま二人で帰るんだろう。仲が良くて何よりだ」
照「やられた」
菫「照?」
照「用事を思い出したから私も帰ることにする。部室の戸締りは菫に任せていいよね」
菫「うん? それはいいが、気を付けて帰れよ」
淡「あれれ、テルってばカステラ残してるじゃん。いっただっきまーす」
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尭深「ねえ、須賀くん」
京太郎「はい」
尭深「私といっしょにいるところを宮永先輩に見られたのが、複雑だったりするの?」
京太郎「…………」
尭深「そっか。そうだよね」
京太郎「ごめんなさい」
尭深「人間だもん、そんな簡単に気持ちの整理なんてできないよ。仕方ないことだから」
京太郎「そうかな」
尭深「そうだよ」
京太郎「尭深さん、俺」
尭深「『妹の幼なじみなんて知らない』だっけ。あれ、やっぱり嘘だったんだね」
京太郎「…………」
尭深「私にだって見てたら分かるよ。京太郎くんを疑っていたわけじゃないけどさ」
京太郎「照さんは、昨日話した幼なじみのお姉さんなんです」
尭深「私、あなたたちのこと何も知ろうとしてなかったんだね」
京太郎「この一週間色々な事があって、尭深さんと過ごして。全部忘れたつもりだったんですが」
尭深「そんなの、今でも好きに決まってるよね。ずっと見て見ぬ振りしてたんだ」
京太郎「ごめんなさい。俺、やっぱり照さんのこと」
尭深「謝らなくていいよ、私もう分かってるから。京太郎くんが誰を好きかなんて関係ないの」
京太郎「え?」
尭深「淡ちゃんに怒られちゃった。京太郎くんの気持ちだけ確かめるなんてズルいって」
京太郎「淡の奴、あれだけ言ったのにそんな余計なことを」
尭深「ううん、やっぱり私もその通りだと思う。想いは願ってるだけじゃ伝わらないもんね」
京太郎「尭深さん」
尭深「私は京太郎くんのことが好き」
京太郎「…………」
尭深「好きがホントか分からなくても、誰より近くで育むために。私をあなたの恋人にして」
京太郎「…………」
尭深「…………」
京太郎「俺、こんなに中途半端で。自分が何を考えてるのかすら分からない男ですよ」
尭深「そんなの知ってるよ。ずっと隣にいたんだから」
京太郎「だったら、どうしてそんなこと」
尭深「戻れるものなら戻りたいよ。でもダメなの、もう何一つ思い出せないんだもん」
京太郎「え?」
尭深「億劫だった朝練も、好きだったとりラーメンも。あなたがいない毎日なんて思い出せない」
京太郎「それは俺だっていっしょですけど、でも」
尭深「理屈じゃないの。私はもう、京太郎くんなしじゃいられなくなっちゃったんだから」
京太郎「…………」
尭深「責任を取ってよ。こんなにも切ないなら、あなたのことなんか知らずに生きていたかった」
京太郎「尭深さん」
尭深「…………」
京太郎「…………」
尭深「ごめんなさい、やっぱり今のは嘘。京太郎くんと出会えて本当に良かった」
京太郎「正直泣きそうでした」
尭深「それくらい好きってことなの。いちいち言わせないでよ、こんなこと」
京太郎「すいません」
尭深「もう」
京太郎「それでもやっぱり、俺は尭深さんに相応しい人間じゃありませんよ」
尭深「相応しいかどうかなんて、京太郎くんが決めることじゃないでしょう」
京太郎「話してないことだってたくさんあるんです。全てを知ったら、尭深さんだって」
尭深「だったらそれを教えてよ。私があなたを試したように、包み隠さず話してよ」
京太郎「…………」
尭深「…………」
京太郎「俺、胸の大きな女性がタイプなんです」
尭深「え?」
京太郎「尭深さんのことが気になり始めたのも、たまたま俺の好みのタイプだったからです」
尭深「…………」
京太郎「尭深さん」
尭深「それだけ?」
京太郎「へ」
尭深「それだけかって聞いてるの。京太郎くんの好きが分かって、なんだか誇らしいくらいだよ」
京太郎「それだけじゃありませんよ! 他にも色々あって、その」
尭深「うん」
京太郎「白糸台に入学したのだって照さんに片思いしてたからですし! ストーカー気質でしょ」
尭深「それは確かに悔しいけど、私が京太郎くんと出会えたのもそのおかげだから」
京太郎「それは、そうですけど」
尭深「教えてあげるよ。私のことなら、隠さず全部」
京太郎「今だってこんなこと言って尭深さんを困らせてる、面倒くさい男なんですよ」
尭深「私とのこと、こんなに真剣に考えてくれてるんだもん、嫌いになったりするわけないよ」
京太郎「えっと、巨乳好きですよ!」
尭深「それはさっき聞いた。なんなら試しに触ってみてもいいけど」
京太郎「へ」
尭深「冗談だよ、京太郎くんのえっち」
京太郎「…………」
尭深「今ので全部なんでしょ。誰だって自分を偽って生きてるんだもん、大したことじゃないよ」
京太郎「でも」
尭深「さっきも言ったけど、あなたの心が宮永先輩を向いててもいいの。いつか必ず取り返すよ」
京太郎「尭深さん」
尭深「おねーさんに、任せなさい。なんて」
京太郎「尭深さんは、本当の本当に俺なんかでいいんですか」
尭深「くどいよ。京太郎くんは、そんな『俺なんか』を宮永先輩に届けようとしたの?」
京太郎「…………」
尭深「まだ知り合って間もないけど、京太郎くんのいいところを私はたくさん知ってるよ」
京太郎「そんなこと」
尭深「そんなことあるよ、これからだってきっとそう。一番近くの特等席でそれを見つけたいの」
京太郎「…………」
尭深「だから、ね」
京太郎「…………」
尭深「…………」
京太郎「尭深さん」
尭深「なあに、京太郎くん」
京太郎「後悔しても、知りませんから」
尭深「…………」
尭深「うん」
Shiraito Days
第二話「告白」
レスありがとうございます。元気が出ます
第三話「ウソツキ」は27日(日)に投下する予定です
もうじき修羅場にさしかかる予定なのでどうぞご期待ください
「ウソツキ」かー
淡ちゃんがお菓子を譲れない子になっちゃうのかな…
>>120
^^
鋸vs包丁のアホ毛バトルか
つまり、
菫「妻です」
タコス「妻だじぇ」
ワカメ「妻じゃ」
ロッカー「出来ちゃった」
キャップ「死んでください(レイプ目)」
和「落ち着いてください。咲さんに迷惑が掛かります(血涙)」
宮永姉妹&淡「へ~」
尭深「ふ~ん」
誠子「ご活躍だな、京太郎…」
京太郎「いや、その・・・(ダラダラ)」
僕もマジカルハート☆すみれちゃんに虫歯チオしてもらいたいですね・・
原作だと世界が天文部だったと思うけど、
京太郎に役割移ってるのは世界ポジションを伏せるためだったりすんのかな?
ちなみに俺は淡が世界だと思うます。
>>137
大星の面倒を見る役割なので京ちゃんを天文部にしました
(大)星(の面倒)を見る役割なので天文部か、洒落てるね
乙
たかみーが可愛い過ぎて生きるのがダルい
ほのぼのは期待しない方が良いのかな?
>照「あれは機が熟すのを待てない女だからね。潤んだ目をして、自覚がないのも困りものだよ」
このへんなんかえろい
そうか、たかみーの収穫は早いのか…
>>143-145
真面目そうな子ほど手が付くと早かったり
そういう子がヤキモチ焼きな依存女になるシチュが大好きなので
そこらへんは結構気を使いました。gff
尭深「少しはうまくなったかな。私たち」
京太郎「上手とか下手とか、そういうのはよく分かりません。尭深さんとのキスは全部特別です」
尭深「…………」
京太郎「尭深さん?」
尭深「さっきのが何度目だったかは覚えてないけどさ、皆が来るまでもう一回だけ」
京太郎「一度きりでいいの」
尭深「ううん。もっとたくさん、特別しよっか」
京太郎「尭深さん」
尭深「んっ」
淡「おっはようございまーす! 世界が羨むスーパーアイドル・大星淡ちゃんでーす!」
京太郎「淡!? ちょっと尭深さん、まずいですよ! 今すぐ離れ」
淡「…………」
京太郎「て」
淡「あわ、あわわわ」
京太郎「違うんだ淡、誤解じゃないけど誤解だから! これは純粋なお付き合いの一環でだな!」
淡「あわわわわわわ!」
尭深「少しは落ち着いてくれた? 淡ちゃん」
淡「おおおお、落ち着いた! もうバッチリ」
京太郎「嘘つけ、うわずった声しやがって」
淡「うるさい! 仕方ないじゃん、まさか二人がそこまで進んでるなんて思わなかったんだもん」
尭深「部室でこんなことするべきじゃないってホントは分かってるんだけど、ごめんね」
淡「県予選まであとちょっとだから、二人の時間が取れなかったりするわけ?」
京太郎「ああ、そうだよ。『部活をおろそかにするな』って照さんにも言われたしな」
淡「なるほど、だから早朝の部室で逢引きしてたんだね。なんかやらしー」
京太郎「悔しいけど、こればっかりはなんも言い返せないな」
淡「なんだか逆に申し訳ない気分でいっぱいだよ。ごめんね、尭深」
尭深「ううん、むしろ入ってきたのが淡ちゃんで良かったくらいだから」
淡「言われてみれば確かにそうかも。亦野先輩とかだったら大変だよね」
京太郎「え、亦野先輩だったらまずいことでもあるのか? そういうの寛容な人だと思ってたぜ」
淡「はあ」
尭深「…………」
京太郎「なんだよその反応。尭深さんまでそんな顔して、なんか変なことでも言いましたか?」
尭深「分からないならそれでいいよ。誠子ちゃんには悪いけど、私もそっちの方が嬉しいから」
淡「おおう、尭深ってば悪い女。格好いい」
京太郎「結局俺は置いてけぼりかよ、訳が分からないぜ」
尭深「まあ、それはもしもの話として。部室でこういうことするのはちょっと我慢しよっか」
京太郎「そうですね。忙しいのは県予選が終わるまでの短い間だけですから」
尭深「なんにせよもうすぐ皆も来る時間だし、二人でお散歩してこよっか。飲み物も欲しいしね」
京太郎「それはもう。尭深さんといっしょにいられるなら、俺はそれでも大丈夫ですよ」
尭深「へへ」
京太郎「じゃあ淡、部室の留守番は頼んだぜ。弘世先輩あたりをびっくりさせてやれ」
淡「むむ、私が早起きしたらそんなにおかしいの。失礼しちゃうよ」
京太郎「おう、明日はきっと雨だよ。また後でな」
淡「はいはい、いってらっしゃい。もう帰ってこなくてもいいよーだ」
京太郎「へへ」
淡「…………」
淡「なんでだろ、胸のあたりがチクッてするや」
Shiraito Days
京太郎「淡ちゃん。おい、淡ってば」
淡「…………」
京太郎「大星淡!」
淡「ふきゅっ!?」
京太郎「なんだよ変な声出して、聞こえてるなら返事してくれよ。考えごとでもしてたのか?」
淡「別に大したことじゃないけどさ。私にだって色々あるの」
京太郎「…………」
淡「京太郎?」
京太郎「いやな。淡でも考え込んだり、悩んだりするんだなって」
淡「何それ、馬鹿にしてんの」
京太郎「そうじゃねえよ、なんか元気なさそうだったからさ。俺がなんとかできるんなら聞くぜ」
淡「…………」
京太郎「話しにくいことならそれでもいいけどよ。もっと他に仲のいい友だちとか」
淡「京太郎はさ。理由もなく胸がチクッとすることって、あるかな」
京太郎「淡」
淡「ごめんね、自分でもよく分かんないんだ。こんなこと相談されても困るよね」
京太郎「ないよ。辛かったり胸が苦しいときっていうのは、いつも何かしら理由があるもんだ」
淡「そうかな」
京太郎「原因に心当たりはないのか? トンカツを食べ過ぎたとか、小骨が喉に刺さったとか」
淡「…………」
京太郎「淡?」
淡「京太郎はさ、私のことを妹か何かだと思ってるわけ」
京太郎「何言ってんだお前、そんなわけないだろ?」
淡「へ」
京太郎「心配しなくても、ちゃんと友だちだと思ってるよ。俺たち親友だろ?」
淡「親友」
京太郎「改めて口に出すのはなんか照れくさいけどさ。やっぱりどっか似てるんだよ、俺たち」
淡「…………」
京太郎「えっと。またなんか変なこと言ったかな、俺」
淡「じゃあ、尭深は?」
京太郎「え?」
淡「尭深は京太郎にとってどんな存在なの。尭深と私に、一体どれほどの差があるの」
京太郎「淡」
淡「…………」
京太郎「尭深さんは俺の恋人だよ。お前と比べることなんかできないし、意味なんてないだろ」
淡「そうなのかな」
京太郎「尭深さんに話せなくても、お前には話せることだってある。そういうもんだよ」
淡「それは、友だちだから?」
京太郎「そうだよ。だから俺にとってどっちが重要だとか、そんなのきっとないと思うぜ」
淡「そっか。そうだよね」
京太郎「もしかして今朝の件で寂しくなったのか? 尭深さんとばかり話して付き合い悪いから」
淡「な、なにそれ。自惚れないでよ、キモい」
京太郎「そうだ、お前はそんな感じでいいんだよ。しょぼくれた顔なんか似合わないぜ?」
淡「…………」
京太郎「今月の頭にお前が協力してくれたみたいにさ、俺だってお前の力になりたいんだ」
淡「私が、したみたいに」
京太郎「ああ。お節介だろうとなんだろうと、お前のためならなんでもしてやる」
淡「京太郎」
京太郎「なんでも言ってみろよ。どんなことだって俺が叶えてやるからさ」
淡「…………」
京太郎「淡」
淡「お昼ごはん」
京太郎「え?」
淡「今日のお昼ごはん、私も屋上でいっしょに食べたい」
京太郎「…………」
淡「ダメ?」
京太郎「なんだよ、やっぱり寂しかったんじゃねえか。そんなのお安い御用だぜ」
淡「尭深に聞かなくてもいいの? 京太郎と私だけでそんなこと決めちゃうなんて」
京太郎「ばーか、似合わないこと気にしてんなって。淡の悩みは俺の悩みだろ」
淡「京太郎」
京太郎「それに、三人で食べるのを尭深さんがイヤがるわけないしな」
淡「そうかな」
京太郎「ああそうだ。それくらい分かるよ、なんてったって俺たちは恋人同士だからさ」
淡「お熱いんだね。火傷しちゃいそうだよ」
京太郎「そういや県予選までもう一週間だけど、コンディションの方はどうだ?」
淡「なあに、京太郎から麻雀の話を振ってくるなんて。どういう風の吹き回し?」
京太郎「いやいや、これでもチーム虎姫のマネージャーだからな。そこは気にして当然なの」
淡「部内でやった試合は全部白星付いてるよ。京太郎だってそれくらい知ってるでしょ」
京太郎「まあ、それはそうなんだけどさ。勝ち負けとかじゃなくてモチベーションの話だよ」
淡「モチベーション?」
京太郎「弘世先輩がお前を気にしていてな。俺をマネージャーにしたのもそれが理由らしい」
淡「知らなかった。菫先輩って案外お節介焼きだったりするのかな」
京太郎「お前がそれを言うのかよ」
淡「えへへ」
京太郎「淡は色んな人に期待されてるんだよな。なんだかちょっと羨ましいぜ」
淡「それはもう、淡ちゃんってば高校百年生ですから。私に負けはありえないよ」
京太郎「頼もしいな。俺も淡ならなんだってできる気がするよ、誇張やお世辞なんか抜きにさ」
淡「…………」
京太郎「淡?」
淡「そうやって私を持ち上げるのも、マネージャーのお仕事だから?」
京太郎「バレちまったら仕方ねえな。へへ」
淡「急にそんなこと言い出すんだもん、見え透いてるよ。京太郎のへたくそ」
京太郎「悪い悪い。それでも淡が皆の期待背負ってるってのは本当だよ、嘘じゃない」
淡「言われなくても分かってるよ。期待されようとそうでなかろうと、私はベストを尽くすだけ」
京太郎「誰かに教えてもらわなくても自分のやりたいことが分かってるんだな、淡は」
淡「そうだよ。どっかのマネージャーくんとは違うの」
京太郎「手厳しいぜ。相変わらず」
淡「友だちがいて、麻雀があって。色んなことに恵まれてるんだよね、私」
京太郎「淡?」
淡「なんでもないよ。大星淡ちゃんのワンダフルな日常をちょっと確かめてただけ」
京太郎「なんだよそれ。なんか馬鹿っぽいぜ」
淡「うるさいな。それよりもっと他にないの、私を元気付けるおべっか」
京太郎「ええ、急にそんなこと言われてもな。『毛穴がキレイ』とか?」
淡「何それ、なんか取って付けた感じがしてイヤ!」
京太郎「褒めるべきところが多すぎて逆に見つかんねえよ。何を言っても今さらだろ?」
淡「えへへ」
-----
尭深「京太郎くん、おまたせ」
京太郎「俺も今来たところですよ。なんて」
尭深「へへ。今のは恋人っぽいね、なんだか無性にドキドキしちゃう」
京太郎「それはもう、正真正銘の恋人同士ですから。ドキドキしてもらえないと困っちゃいます」
尭深「今日は淡ちゃんもいっしょなんだね。なんか久しぶりだなあ、こういうの」
淡「二人の時間、邪魔しちゃってごめんね。尭深」
尭深「淡ちゃんがそんなこと気にしなくていいの。なんだか訳ありみたいだしね」
淡「え?」
尭深「今日の淡ちゃん、ちょっと元気がないみたいだから。私の勘違いだったらいいんだけど」
京太郎「だから言ったろ? 遠慮なんかしなくていいんだよ」
淡「…………」
尭深「淡ちゃん?」
淡「同じこと言うんだね、二人とも」
尭深「へ」
淡「なんでもない。せっかくこんなにいい天気なんだもん、早くお昼ごはん食べよ」
京太郎「尭深さん、どうぞ」
尭深「ありがと」
淡「お弁当箱が二つ。尭深の分のお昼ごはん、もしかして京太郎が作ってきたの?」
京太郎「付き合い始めてから、弁当は毎日交代で作るようにしてるんだよ」
尭深「やっぱりちょっと照れくさいし、部活の皆には内緒にして欲しいな。へへ」
淡「そっか。そうなんだ」
京太郎「今日は中華にしてみたんですけど、やっぱりちょっと冷めちゃってますね」
尭深「京太郎くんが作ってくれたんだもん、冷めたって関係ないよ。ちゃんとおいしい」
京太郎「…………」
尭深「京太郎くん?」
京太郎「尭深さんって、たまにすっごくキザなこと言いますよね」
尭深「本当のことしか言ってないよ。まあ、ちょっとはキュンとしてもらいたかったりするけど」
京太郎「こういうときに実感しますよ。やっぱり年上のおねーさんなんだなって」
尭深「ええ? 大げさだよ、一つしか違わないもん」
京太郎「へへ」
淡「…………」
尭深「淡ちゃんも食べてみる? 京太郎くんの作った青椒肉絲、すごくおいしいよ」
淡「へ」
京太郎「もう、褒めすぎですよ尭深さん。何も特別な作り方とかしてませんから」
尭深「嘘だよ、だってこないだ言ってたもん。愛情たくさん詰めてますって」
京太郎「ちょっと! 淡の前なんですから、あまり恥ずかしいこと言わないでくださいよ!」
尭深「恥ずかしいことなんか何もないよ。京太郎くんが私のこと大好きな証拠でしょ?」
京太郎「…………」
尭深「とうとう何も言えなくなっちゃいましたか。今日は私の勝ちだね?」
京太郎「それでいいですよ。参りました」
尭深「へへ」
京太郎「まったくもう、尭深さんったら負けず嫌いなんですから」
尭深「それで、どうかな。淡ちゃんも食べてみる?」
淡「私は」
尭深「うん?」
淡「私はいいや、気持ちだけ受け取っておく。京太郎の愛妻弁当だもんね」
尭深「そっか」
淡「それに私、自分の分がちゃんとあるから。お母さんが作ってくれたのだけど」
京太郎「ああ、淡んちはお母さんに弁当作ってもらえるんだな。羨ましいぜ」
尭深「やっぱり、毎日となるとちょっと大変だもんね」
淡「そのお母さんもフランスに出張しちゃうから、そろそろ自分で作ることになりそうだけどね」
京太郎「へえ、フランスだなんてすごいな。どんな仕事してる人なんだ?」
淡「えっとね。ラディッシュの店長さん」
京太郎「ラディッシュって、あのラディッシュか? こんな身近にいるもんなんだなあ」
淡「大したことじゃないよ、たまに優待でパフェが食べられたりするくらいだから」
尭深「それはちょっぴり羨ましいかも」
京太郎「照さんが近くにいたら飛び付いてきそうな話だぜ」
尭深「ねえ京太郎くん。県予選が終わってちょっと落ち着いたら、二人で食べにいこっか」
京太郎「同じこと考えてましたよ。そのときはまた、こないだみたいに映画でも観ましょうか」
尭深「デートだね。今度は」
京太郎「折り畳み傘を忘れないようにしますね。今度も」
尭深「だったら私は忘れていってもいいかな。また相合傘でお散歩したいからさ」
京太郎「尭深さん」
尭深「なんかデザートの話でお腹がいっぱいになっちゃいそうだね。お喋りはここまで」
京太郎「無理して全部食べることないですよ、そんなに急がなくても」
尭深「何言ってるの。京太郎くんが作ってくれたんだもん、残すわけないよ」
京太郎「それは嬉しいですけど、結構油っこいですし。女の子なんですから」
尭深「京太郎くんの前ではそんな風に格好付けなくてもいいでしょ。私、あなたの彼女だもん」
京太郎「ううん。言われてみれば、それもそうなのかも」
淡「…………」
尭深「今日もおいしかったよ。ご馳走さま」
京太郎「お粗末さまでした。烏龍茶、俺も貰っていいですか?」
尭深「それはもちろん。ペットボトルの奴が一本しかないけど、それでもいいよね」
京太郎「彼氏ですから。今さら間接キスなんて気にしませんよ」
尭深「…………」
京太郎「尭深さん?」
尭深「私としては、まだちょっとだけ気にしてて欲しいかな。なんて」
京太郎「へ?」
尭深「ちゃんとドキドキしてよ。こんな風にときめいちゃってる私が馬鹿みたい」
京太郎「尭深さん」
尭深「じゃあ、どうぞ。京太郎くんの番」
京太郎「…………」
淡「京太郎」
京太郎「へ」
淡「私、やっぱり教室に戻るね。なんかお邪魔みたいだし」
京太郎「何言ってるんだよ、まだ全然食べてないじゃないか。わざわざ遠慮してくれなくても」
淡「お腹いっぱいだから。それに、次のリーディングはちょうど私が当たる番だもん」
京太郎「ああ、そういやそうだったな。もうこないだみたいにヘマはできないか」
淡「そういうこと。精々お昼休みの間中、カップル二人で仲良くしててね」
尭深「…………」
京太郎「…………」
尭深「続き」
京太郎「え?」
尭深「今朝の続き、しよっか」
京太郎「うん」
-----
菫「これは私の憶測に過ぎないし、見当違いなら構わずそう言ってくれて構わないが」
淡「…………」
菫「何か悩みごとでもあるのか。淡」
淡「何それ、訳分かんないよ。私がラス引かされたのがそんなに珍しいわけ」
菫「ああ、悪いがその通りだよ。お前が照以外に遅れを取るなんて、まったく前代未聞だろう」
淡「勘違いしないで。ちょっと油断しただけだよ、次は絶対負けたりしない」
菫「県予選に向けた最終調整だぞ。たとえ部内の試合だろうと、お前は手を抜いたりしない」
淡「先輩に私の何が分かるの!」
菫「…………」
淡「ごめん」
菫「事実そうだよ、淡が謝る必要なんてない。私はお前のことを何一つ分かっちゃいない」
淡「…………」
菫「だが京太郎はそうじゃないだろう。お前にとって一番の理解者は彼だからな」
淡「理解者」
菫「いつもあれだけ仲良くしているじゃないか。こればっかりは私にだって分かる」
淡「そうだね。私のこと一番分かってるのも、仲良くしてくれてるのも京太郎だよ」
菫「だったら京太郎に話したらいい。そのために彼をマネージャーにしたんだから」
淡「それは、分かってるけど」
菫「今だって向こうで牌譜を取ってる。余裕はないが少しなら抜け出したっていいんだぞ」
淡「…………」
菫「淡」
淡「話せないよ、こんなこと」
菫「どうして」
淡「私分かったの。他の誰かには話せても、京太郎にだけは話しちゃいけないことなんだって」
菫「…………」
淡「だから」
菫「淡、お前まさか」
淡「…………」
菫「そうなんだな」
淡「違うよ」
菫「違うわけあるか。お前にそんな顔をさせられるのは京太郎くらいだろう」
淡「何熱くなっちゃってんのさ。菫先輩には関係ないじゃん、こんなの」
菫「本気でそんなこと言ってるのか、お前」
淡「先輩が気にしてるのはスコアだけでしょ。京太郎から聞いたよ、期待されてるんだもんね」
菫「そんなこと」
淡「すいません。私がこんなことになっちゃって、先行きが思いやられますよね」
菫「違うんだ。私はただ、一人の人間としてお前のことが心配で」
淡「県予選ではしっかりやりますから。皆の期待を背負ってるんだもん、手抜きできませんよね」
菫「…………」
淡「私、今日は帰ります」
菫「待ってくれ」
淡「…………」
菫「私たちは間違っていたのか。京太郎と尭深を引き合わせたのは、間違いだったのか」
淡「違うよ」
菫「…………」
淡「間違いだなんてあるわけないよ。京太郎が幸せなんだもん、私はそれだけで充分だから」
菫「淡」
照「顔色が悪いようだけど、何かあったの」
菫「なんでもない」
照「もしかして、淡が早退けしたことと何か関係があったりする?」
菫「…………」
照「そうなんだね」
菫「教えてくれよ、私はどうしたらいい。もう何も分からないんだ」
照「今までチームに尽くしてきた菫だもん、何もかも自分一人で背負おうとしなくてもいいよ」
菫「照」
照「だから教えて。淡と須賀くんたちに何があったのか、私もいっしょに考えたいの」
菫「…………」
照「…………」
菫「どうやら淡は、京太郎のことが好きらしい」
照「淡が?」
菫「ああそうだ。今まで京太郎と尭深の仲を応援してきた事実が、あいつを苦しめてる」
照「…………」
菫「照?」
照「淡に限ってそんなことはないだろうと思ってたよ。人のものを欲しがる子には見えない」
菫「私もまさかと思ったさ。京太郎をこちらに誘うときも散々念を押したんだ」
照「けれど、本当は心のどこかで須賀くんを想っていたんだね」
菫「きっとそうだよ。それが、京太郎と尭深を見つめる内抑えきれなくなったんだろう」
照「ばかな子」
菫「照、お前」
照「どうして菫が怒るの? ほんとうの気持ちを隠して自分の首を絞めたんだもん、当然でしょ」
菫「そうだとしても、私は淡のことをなんとかしてやりたいと思ってる。あいつの先輩としてな」
照「どうして?」
菫「京太郎が幸せならそれでいいと、あいつはそう言ったんだ。似合わない痩せ我慢だよ」
照「…………」
菫「淡が助けを求められないなら、周りの人間が無理やりにでも助けてやるしかないだろうが」
照「だったらどうするの。今さら須賀くんと尭深を別れさせて、そこに淡を据えるつもり?」
菫「それは」
照「できないでしょう、そんなこと」
菫「…………」
照「菫は変わったね。須賀くんを引き入れたときだって、インハイのことしか頭になかったのに」
菫「そんなこと」
照「あなたをそんな風にしたのが誰なのかは聞かないし、正直なところ興味はないけどね」
菫「…………」
照「それでも三年ものの付き合いだもん、菫がどれだけ真剣かは分かるつもり。だからね」
菫「ああ」
照「須賀くんと淡の関係を、私が元に戻してあげる」
菫「は」
照「どうしたの」
菫「一体何を言うんだ。そんなことがお前にできるのか」
照「もちろんできるよ。今まで一度だって、私が失敗したことはあった?」
菫「照」
照「だからさ、全部私に任せてくれるよね。菫」
菫「お前の言う通りにすれば、本当に全て元通りになるんだな」
照「それはもう、インターハイチャンピオンの名にかけて」
菫「…………」
-----
淡「強いね。亦野先輩」
菫「今期で一番伸びたのはあいつだよ。まして臨海のいない県予選だ、誰も誠子を止められない」
京太郎「亦野先輩、空いた時間も全て他校の研究に費やしてましたからね」
菫「何かしら思うところがあったんだろう。麻雀以外全てを忘れたように打ち込んでいたからな」
尭深「…………」
京太郎「尭深さん?」
尭深「誠子ちゃん、すごく辛そうな顔して打ってる。誰の目にも勝勢なのに」
菫「それだけ真剣なんだろう。私たちにとっては頼もしい限りだよ」
尭深「そうですよね、きっと」
淡「…………」
京太郎「後半戦ももう終わりますし、先輩が帰ってきたときのために飲み物でも買ってきますね」
菫「もう立派なマネージャーだな、君も」
照「菫」
菫「ああ、分かってる。私も野暮用で少し離れるよ、尭深もいっしょに来て手伝ってくれるか」
尭深「ええ、分かりました」
淡「皆行っちゃったね。これも菫先輩の『お手伝い』なのかな」
照「…………」
淡「テル?」
照「誠子が今まで以上に麻雀を打つようになった理由、淡は知ってるんでしょう」
淡「へ」
照「怖いよね。失恋って」
淡「…………」
照「淡と菫はすごいよ。ここまで考えた上で須賀くんと尭深を付き合わせたの?」
淡「違う! 私、そんなこと少しだって考えてなかった!」
照「違うって、須賀くんのことを諦めるよう誠子に言ったのは淡じゃない」
淡「どうして、そのこと」
照「誠子から聞いたに決まってるでしょう。もちろん、泣きじゃくる誠子をあやしながら」
淡「…………」
照「『京太郎の邪魔をして欲しくない』だっけ? 惚れ惚れするよ、嘘がうまいんだね」
淡「嘘じゃないよ、私は京太郎と尭深の仲を本気で応援してたんだもん。だから」
照「あはは」
淡「何がおかしいの。全然笑うところじゃないよ、こんなの」
照「好きなんでしょう、須賀くんのこと」
淡「な」
照「何がおかしいって、一から十までおかしいよ。二人を邪魔して欲しくないんじゃないの?」
淡「菫先輩から何を聞いたの。テル」
照「何も聞いてないよ。淡が苦しんでることくらい、誰だって見れば分かる」
淡「…………」
照「素直になりなよ。何も私は淡を責めてるわけじゃないんだから」
淡「え?」
照「よく思い出してみるといいよ。淡はいつから彼のことが好きだったの?」
淡「いつからって、そんなの」
照「…………」
淡「出合ったときからに決まってるよ」
照「そうだよね、淡はずっと須賀くんのことが好きだったんだ。尭深よりずっと前から」
淡「でも、私」
照「辛いよね。後から来た人にかき回されるのってさ」
淡「…………」
照「痛いくらいよく分かるよ。今まで彼の隣にはずっと淡がいたんだもんね」
淡「回りくどいことはやめてよ。テルは一体何が言いたいの」
照「京ちゃんを尭深から奪って」
淡「は」
照「誰より優しい彼だもん、きっと淡を放っとけない。優しくて愚かな京ちゃん」
淡「テルは京太郎の何を知ってるの。私と尭深に京太郎を取り合わせて、どうしたいの」
照「怖い顔。私は先輩として淡が後悔しないよう助言してあげてるだけだよ、他意なんかない」
淡「嘘」
照「嘘つきは淡の方でしょう? 本当の自分を隠してまで、あなたは一体何が欲しいの」
淡「京太郎の、幸せだよ」
照「淡は本当にいい子だね。どんなにおいしいお菓子だって、誰かに分けてあげられるんだもん」
淡「尭深といることが京太郎の幸せならそれでいいの。私はずっとあいつの親友でいるよ」
照「…………」
淡「テル?」
照「京ちゃんの幸せを、淡が勝手に決め付けないで」
淡「テル、あんた何言って」
照「尭深といることだけが彼の幸せだなんて、素直になれない淡の思い込みだよ」
淡「そんなこと」
照「心からそう思ってるわけじゃないでしょう。京ちゃんは淡とだって幸せになれるんだもん」
淡「京太郎が、私と?」
照「そうだよ、京ちゃんが誰を好きかなんて関係ない。問題は淡がどれだけ彼を想っているか」
淡「…………」
照「淡の話を聞いている分だと、あなたの京ちゃんへの想いは尭深のそれより劣るようだけどね」
淡「そんなことない! 私だって京太郎のことが大好きだもん、尭深なんかに負けたりしない!」
照「ほら、やっぱりあるじゃない。淡が京ちゃんにしてあげられること」
淡「私が、京太郎にしてあげられること」
照「そんな淡だもん、京ちゃんだってきっと答えてくれるよ。優しい優しい私の京ちゃん」
淡「…………」
照「ね?」
淡「私、もう行くから!」
照「あはは」
誠子「選手交代だ大星。お前に限って負けはありえないだろうが、よろしく頼んだぞ」
淡「ごめん」
誠子「大星?」
淡「ごめんね、亦野先輩。ごめんなさい」
誠子「どうしたんだよいきなり。顔色も良くないみたいだし、どっか具合でも悪いのか」
淡「私、京太郎のことが好きなの」
誠子「へ」
淡「亦野先輩にひどいこと言って。それなのに自分は京太郎のことが好きで、私」
誠子「…………」
淡「私」
誠子「顔上げな、大星」
淡「…………」
誠子「今のは全部聞かなかったことにしてやる。だから、今はしっかり勝ってきてくれ」
淡「先輩」
誠子「何も捨てなくたってお前は強いんだ。最高にムカつくけど、何もかもそれでチャラだよ」
淡「…………」
-----
真佑子「あなたは、皆の欲するその花に手をつけてしまった」
「花はあなたのものではなかった。彼に相応しい、その花を愛してやまない彼女のものだった」
「あなたは彼女にその花を贈った。しおれた花など眺めていたくはなかったから」
淡「そうだよ、全部その通り。私は京太郎のしょぼくれた顔なんか見たくなかった」
真佑子「あなたと彼は鏡合わせ。幸せになるためのたった一つ、その手段を知っていた」
「誰よりそれを知りながら、遠回りの道を選んだ」
「ダブルリーチの配牌を蹴った。オリることしか頭になかった」
淡「私にも京太郎を幸せにできるんだって、本当は分かってた。言われるまでもないことだった」
真佑子「見つめるだけで幸せだった。そこには少しの嘘もない」
淡「私は京太郎の友だちだから、ずっと隣にいられるもんだと思ってたんだ」
「そうじゃなかった」
淡「それまで私を形作ってた友だちも麻雀も、どっか遠くに行っちゃった。無力な私だけ残った」
「ほんとうの気持ちはどこにあるの。そこにいたいと思ってる?」
淡「そんなわけない、ありえない。日なたで笑ってる京太郎に相応しく幸せでありたい」
真佑子「だったら今すぐここを出ようよ。日かげの今を抜け出そう」
淡「できないよ、そんなこと」
「誰が決めたのそんなこと。京太郎? それとも尭深か」
「そうじゃないなら亦野先輩? 違うよね」
真佑子「あなたが自分で決めただけでしょう。答えはいつでもそこにあったのに」
淡「そうだよ、私は何も壊したくなかった。少しだって変わりたくなかったんだ」
真佑子「嘘つき」
淡「な」
「あなたは全部変えてしまいたかった。愛しい彼のまなざしも、この世界すらも」
淡「その想いを口に出して、この世界を傷付けるつもりなんて微塵もなかった!」
真佑子「想いは願ってるだけじゃ叶わないんだよ」
淡「…………」
真佑子「それを誰より良く知るあなたが、そんなところで燻っていられるわけないじゃない」
「想っているだけで。見つめているだけで幸せだなんて、嘘に決まっているじゃない」
「そんなの、本当のあなたじゃない」
淡「私は。私は」
真佑子「本当は変わりたいんでしょう。誰かのためじゃなく自分のために」
淡「そんなの誰にも応援されない。誰も私なんかに期待してくれない!」
「誰よりあなたを応援してるよ。誰だって幸せになりたいんだもん」
「私はあなた自身だもん」
真佑子「私もあなたも大星淡。認めなさいよ、そうすれば今よりずっと楽になる」
淡「楽に、なれる」
真佑子「ジレンマなんてつまらないでしょう? 大丈夫、あなたはきっと幸せになれる」
「その権利がある」
「もう、オリることなんか考えなくてもいい」
淡「負けたくない。私、尭深なんかに負けたくない!」
真佑子「だったらどうすればいいのか、あなたにはもう分かってるでしょう」
「かけろ」
「かけろ」
真佑子「かけろ。大星淡」
淡「…………」
淡「リーチ」
Shiraito Days
第三話「ウソツキ」
乙です。
一気に読んできた、面白いし先も気になる、ただこれの元ネタ(でいいのか?)って何?
何となく予想はしたが、確証がない。
レスありがとうございます。咲ちゃん誕生日おめでとう!
うさうさ
>>185
「SchoolDays(SummerDays)」のパロディです
固有名詞や印象的なセリフ、歌詞のフレーズなんかを引用しています
次回の更新は一週飛んで11/10(日)を予定しています
第四話から選択肢を用意する都合、ルート分岐について少し考える必要があり
猛炎の塔を全力で周回したい気持ちもあるので、今週は小ネタを投下しようと思います
(総合スレと同じようなノリで、気まぐれに2レス程度の小ネタを投下します)
思いのほか+卵集めが好調で、つい先ほどPTのモンスター全員が297になりました! やったね!
↓1:もしよろしければ、小ネタの登場ヒロインなどご希望があれば安価でどうぞ。白糸台以外でも大丈夫です
京太郎が白糸台へ進学すると知った咲ちゃん
京太郎がGWに帰省したときの咲ちゃん
京太郎が東京へ戻った後の咲ちゃん
をまとめてでも小出しでもかまいませんのでお願いします
病み成分多めで
>はっちゃん
かしこまりました。気が向いたときに(ハイエースとか出てこない)ほのぼのタッチで書かせてもらいます
>>197
そのへんは僕も書いておきたかったので、咲ちゃんの番外編は本編が終わった後に細々と投下する予定です
ご期待ください
京太郎「ちょっと初美さん。まさかとは思いますけど、あなたその格好で表に出てたんですか」
初美「うん? まさかも何もその通りですよ、たった今帰ってきたところなんですから」
京太郎「呆れた。最近はようやく落ち着いてきたと思ったのに、やっぱり初美さんは初美さんか」
初美「おうおう、黙って聞いていたら手前の亭主に随分な口の利き方ですよ。京太郎」
京太郎「亭主って。たしかに俺は婿養子ですけど、女の人でもそういう呼び方をするんですか」
初美「あーあー、ごちゃごちゃ言っても無駄ですよ。薄墨の家では常に私がルールなんですから」
京太郎「ない胸張ったってちっとも偉く見えませんよ」
初美「お前はいちいちうるさいんですよ! 黙って姐さん女房を立ててればいいの!」
京太郎「俺だって好きでこんなことを言ってるわけじゃありません。理由があってのことです」
初美「理由?」
京太郎「そうやって薄着で表を歩いていたら、それはそれはもう大変なことになるんですよ」
初美「まーたお説教が始まりましたか。京太郎はいつも大げさなんですよ、心配いらないのに」
京太郎「このご時世なんですから、いつどこでロリコン犯罪者に狙われているか分かりませんし」
初美「ロリコンって。たしかに見た目はこんなですけど、私だって立派な成人女性なんですよ」
京太郎「自分で思っている以上に幼女だから問題なんです。とても成人女性には見えませんよ」
初美「その幼女に、昨夜あれだけ恥ずかしい格好させたのはどこの誰でしたっけ。京太郎」
京太郎「う」
初美「本当にヤキモチ焼きなんですから。この私が黙ってイタズラされるわけないでしょう」
京太郎「そうは言っても心配なんです。俺はあなたの婿ですよ」
初美「はあ」
京太郎「…………」
初美「分かりましたよ。京太郎がそこまで言うなら、もう巫女服を着崩したりしません」
京太郎「本当ですか?」
初美「亭主に二言はありませんよ。愛する連れ合いとの大切な約束ですし、何より」
京太郎「ええ」
初美「何より私はイタズラする側ですからね。他の誰かに遅れを取ったりしません」
京太郎「初美さん」
初美「ハロウィンの時節でもありますし、仮装でもして六女仙の皆を賑やかしてやりましょうか」
京太郎「トリックオアトリートって奴ですね。初美さんはどんな格好をする予定なんですか?」
初美「透明人間ですよー」
以上巫女さんの婿さんでした
玄と付き合ってるのに宥姉と浮気してた京太郎を憧がビンタする
↓
玄が「京太郎くんに謝って!」とかなんとか激昂して憧が泣きじゃくる
こういうの書こうと思ったけど本編に身が入らなくなったら大変なので
次の小ネタは咲ちゃんがうさうさする話か揺杏先輩の黒ストを嗅ぎまくる話にしようと思います
やっぱり一番そそるのは京太郎→憧の前提で、シズと付き合うよう憧に促される展開ですね・・
宥姉はあれで結構駄目な人だからどんどん堕落しそうな危うさがあって大変味わい深いですよね・・
宥姉が一週間着続けたどてらの匂いを本人の目の前で一心不乱に嗅ぎまくりたいですよね・・
灼のグローブって匂いするのかな?しないのかな?
>>226
もしも「いいにおい」になっていたらドチャクソにシコれると思いますが
灼ちゃんはどちらかと言えば几帳面な子なので、残念ながら無臭かと・・
咲「京ちゃんただいま! もう晩ごはんはできてる?」
京太郎「おう、おかえり。あとちょっとで作り終わるからテレビでも見てな」
和「さも当然のように出迎えますね。エプロン姿もこれ以上ないくらい様になってますし」
京太郎「あれ? 和じゃん。いらっしゃい」
和「あらためて聞いておきますけど、同棲しているわけじゃないんですよね? 本当に」
京太郎「そんな色っぽい関係じゃねえよ。あいつの父さん、今日は帰りが遅いみたいだからな」
和「つまり、言い換えれば親御さん公認というわけですよね。それはそれですごいですよ」
京太郎「わざわざ言い換えなくてもいいだろ。やけに俺たちをくっつけたがるよな、和って」
和「くっつけたがるって、別にそういうわけじゃありませんけど。むしろその逆というか」
京太郎「何、もしかして俺に気が有ったりするわけ? そいつは嬉しいな」
和「そそそそ、そうは言ってないでしょう!? 自意識過剰もいいところです!」
京太郎「冗談だよ、そんなに怒るなって。和が俺なんかを意識してるはずないもんな」
和「それは、その」
京太郎「ん?」
和「なんでもありません。軽口ばかりの須賀くんは、黙ってコトコト煮てればいいんです」
京太郎「それはそうと、和もここで晩飯食べていくんだよな? 多めに作って正解だったぜ」
和「ええ、一応そのつもりでいます。咲さんと須賀くんさえご迷惑でなければですけど」
京太郎「何言ってんだよ、あいつが和のことを迷惑だなんて思うもんか。きっと大歓迎だって」
和「…………」
京太郎「どうした?」
和「須賀くんはどうなんでしょうか」
京太郎「へ」
和「須賀くんと咲さんの食卓に、外から来た私が加わること。須賀くんはどう思いますか」
京太郎「和」
和「すみません、忘れてください。私は何を分からないこと言ってるんでしょう」
京太郎「嬉しいよ」
和「え?」
京太郎「そんなの、嬉しいに決まってるだろ。俺のど真ん中ストライクはいつだってお前だよ」
和「須賀くん」
京太郎「ちょうどサンマが焼けたから運んでいってくれないか。三人で食卓を囲むんだもんな」
和「帰ります」
咲京書こうかと思ったら咲ちゃんが一行でどっか行ったので諦めました
淫ピでもなく、たとえノンケであったとしても、いざヒロイン的な立場に立とうとすると
どこか間女的なアトモスフィアを拭い切れないそんな原村さんがぼくたちは好きです
>>235
`¨ - 、 __ _,. -‐' ¨´
| `Tーて_,_` `ー<^ヽ
| ! `ヽ ヽ ヽ
r / ヽ ヽ _Lj
、 /´ \ \ \_j/ヽ
` ー ヽイ⌒r-、ヽ ヽ__j´ `¨´
ゴッドフェスが微妙な結果に終わったので、気分転換として小ネタを書かせてもらいます
↓1:キャラ、シチュエーションなどご希望があれば安価でどうぞ。白糸台以外でも大丈夫です
>照 清澄在籍 京太郎独占
かしこまりました。明日あたり投下させていただきます
>ジョグレス
オメガモンというよりはオメコモンですね。強そうです
京太郎「お疲れさまです。今日はまだ照さんだけなんですね」
照「須賀くん」
京太郎「なんですか、今さら苗字で呼んだりして。他人行儀は寂しいですよ」
照「…………」
京太郎「照さん?」
照「なんでもない。少しぼうっとしてただけだから、ごめんね京ちゃん」
京太郎「もしかして体調が悪いわけじゃないですよね。ちょっとおでこ出してください」
照「へ」
京太郎「ちょっと熱っぽいな。もうじき初めてのインハイなんですから、気を付けてくださいね」
照「初めての、インハイ?」
京太郎「そうですよ。二年間もここで待ち続けて、今年ようやく部員が揃ったんでしょう」
照「…………」
京太郎「やっぱり保健室に連れていった方がいいかな。ちゃんと自分で歩けますか、照さん」
照「あのね、京ちゃん。何も私は具合が悪いわけじゃなくて」
久「やっほ、お疲れさま。そこの幼なじみコンビは今日もイチャイチャしてるわけ?」
京太郎「普段からイチャついてるような言い方よしてくださいよ。お疲れさまです」
久「何言ってんの、いつも特別仲良くしてるじゃない。たまにジェラシー感じちゃうくらいよ」
京太郎「もう、そんなんじゃありませんってば。ねえ照さん」
照「あなた、誰?」
久「えっ」
京太郎「…………」
久「知らなかった。照でもそういう冗談を言うのね」
京太郎「なんだか熱があるみたいで、さっきから分からないことを言うんですよ」
久「ああ、だからあんなにくっついてたんだ。わざわざおでこを合わせる必要はないと思うけど」
京太郎「それは昔からの癖というか、その。恥ずかしいから放っといてください」
久「まあ、おアツいこと。熱っぽいのも風邪のせいなんかじゃなかったりしてね」
京太郎「部長はすぐにそうやってからかうんですから。何が言いたいんですか」
久「別に。ただちょっと照が羨ましいなって思っただけよ」
照「…………」
久「二人にあてられたのか私も熱っぽくなってきちゃったわ。少し測ってみてよ? 須賀くん」
京太郎「部長!? いつもの冗談なんですよね、ちょっと!」
久「んふふ。それはどうかしら」
照「やめて」
京太郎「へ」
久「あら?」
照「今も昔も京ちゃんは私のものだから。後から来た人が、この子に気安く触らないで」
京太郎「照さん」
久「冗談なんだからそんなに怖い顔しないで。言われなくても照の須賀くんを取ったりしないわ」
照「京ちゃん。保健室はいいから、今すぐ私にお膝を貸して」
京太郎「は、恥ずかしくてできませんよ! 人前でそんなことするなんて」
照「いいから」
京太郎「…………」
照「ぎゅう」
久「あはは。ちょっと煽ってみようと思ったら、手痛い仕返しをもらっちゃったわね?」
照「京ちゃんの匂いがする。小さなころから何も変わってないんだね」
京太郎「それはもう。昔から今までずっと、あなたの須賀京太郎ですから」
照「ふふ」
久「お邪魔をするのも気が引けるから、和たちを探してくるとするわ。どうもご馳走さま」
京太郎「また、二人きりになっちゃいましたね」
照「私はそれでも嬉しいけれど、そうじゃないのかな。京ちゃんは」
京太郎「今日の照さんはいつもより甘えん坊ですね。何かイヤなことでもありましたか」
照「ずっと夢を見ていたの。京ちゃんが尭深や淡と恋人同士になっちゃう夢」
京太郎「誰ですかそれ。どうしたって考えられませんよ、照さん以外の人と付き合うなんて」
照「そうだったらいいのにな。本当に、悲しいくらいそう思う」
京太郎「照さん」
照「ねえ京ちゃん、咲は一体どこにいるの。変に頑固で素直じゃなくて、ホントは愛しい私の妹」
京太郎「咲なら東京の高校に進学したでしょう。今ごろ白糸台で麻雀をしてますよ」
照「…………」
京太郎「どうしたんですか。そんなに辛そうな顔をして」
照「最初から全部分かってたんだ。それでも私は信じてみたくて、抗いたくて」
京太郎「…………」
照「泣きたくなるほど名残惜しいけど、これはやっぱりそうだよね」
照「これは私の夢なんだ」
以上本編幕間でした
>>247
本格的な性描写はほとんどありませんが、嗜好丸出しな小ネタは過去総合スレにいくつか投下しました
たとえば、ネリーに生涯賃金を握られる話(part17)などはかなりノリノリで書かせていただきました
春の体つきが想像以上にむっちりしていて元気になったので今週最後の小ネタを書こうと思います
↓1:キャラ、シチュエーションなどご希望があれば安価でどうぞ。白糸台以外でも大丈夫です
>清澄京太郎 淡 インターハイ会場 夢で会ったような
かしこまりました。明日投下させていただきます
咲京ifです
分かる
お腹から腰にかけての肉づきいいよね
隠されてるから艶めかしい
>>265
普段から無節操に黒糖を直食いしている春ならではのめちゃシコボディですよね。実に見事です
これを契機にぽっちゃり属性キャラとしての側面も注目されれば永水に死角はないと言えるでしょう
推定三億の精子になって霞さんの胎内を泳ぎたい・・
京太郎「すいません、白糸台の大将さんですよね。ちょっといいですか」
淡「うん? たしかにそうだけど、もしかして私のファンだったりするわけ」
京太郎「うちの大将が迷子になっちゃったんです。清澄の宮永咲って言ったら分かりますか?」
淡「ちゃんと覚えてるよ、昨日やり合った相手だもん。あんたは清澄のマネージャーか何か?」
京太郎「マネージャーというか、雑用係というか。清澄の麻雀部員だってことはたしかです」
淡「ふうん」
京太郎「あの、大星さん?」
淡「嘘はついてないみたいだね。あんたどこかの個人戦の優勝者でしょ? なんか見覚えあるし」
京太郎「いえ、恥ずかしながら麻雀の腕はからっきしで。今年は県予選で負けちゃいましたよ」
淡「だったら私の勘違いかな。そんなはずはないと思うんだけど」
京太郎「え?」
淡「私たち、いつかどこかで会った気がするの。あんたは私のこと覚えてる?」
京太郎「覚えてるというか、普段から雑誌で目にしますよ。大星さんは有名人ですし」
淡「まあ、それはそうなんだけどね。淡ちゃんってば高校百年生だもん」
京太郎「…………」
淡「どうしたの?」
京太郎「いえ、なんとなく『逆ナンみたいだな』って思っただけです」
淡「ちょっと何それ! 自惚れるのも大概にしてよ、県予選も抜けられない雑魚雀士のくせに!」
京太郎「う」
淡「それで、あんたは咲の居場所を知りたいんだっけ? 仕方ないから教えてあげてもいいよ」
京太郎「本当ですか?」
淡「高校百年生は嘘をつかないからね。まあ、それにしたって只で教えるわけにはいかないけど」
京太郎「え?」
淡「ああ、お金なんて取らないから安心してよ。咲のことを少し教えてもらいたいだけだから」
京太郎「咲のことって言われても、あいつの打ち筋に関しては俺も分からないことばかりですよ」
淡「知ってるよ、あんたにそんなこと期待してないもん。私は普段の咲について聞きたいの」
京太郎「…………」
淡「何さ、変な顔して」
京太郎「大星さん、もしかして咲に気が有ったりするんですか」
淡「アホか! 宮永照の後継者として、あいつの妹がどんな子なのか知りたいだけだっての!」
京太郎「まあ、それなら」
淡「はあ」
京太郎「あいつは、宮永咲は俺の彼女です」
淡「…………」
京太郎「大星さん?」
淡「なんでもない。多分そんなことだろうとは思ってたよ」
京太郎「あいつとは幼なじみで。いつもどこか抜けてるもんだから、昔は目が離せませんでした」
淡「今だってまさに見失ってんじゃん。そんなんじゃダメだよ、恋人同士なのに」
京太郎「今はいろいろ事情が変わりましたから。俺が見ていなくても大丈夫だと思ってたんです」
淡「そういうもんかな。彼氏なんてできたことないから分かんないけどさ」
京太郎「俺は咲のお姉さんがずっと好きだったから、あいつのことは妹分みたいに扱ってました」
淡「そっか、テルもちょっと前までは長野に住んでたんだっけ」
京太郎「それでも、家庭の事情で照さんが東京に行ってしまってから。俺は気付いたんです」
淡「本当はテルじゃなくて咲が好きだったってこと?」
京太郎「俺はずっとあいつを支えているつもりだったけど、それは大きな間違いだったってこと」
淡「間違い」
京太郎「悩んだり辛くてしょうがないとき、本当に支えられていたのは俺の方だったから」
淡「…………」
京太郎「幸せになるためにたった一つ、その手段はいつも一番側にあったんです」
淡「変な話だね。私から言わせてもらえば、どうして最初から素直になれないのか分からないよ」
京太郎「理屈じゃないんですよ。ほんとうの気持ちを知っていても、人は意固地になってしまう」
淡「…………」
京太郎「えっと、なんかすいません。よく分からないことを長々と語ったりして」
淡「ううん。あんたがちゃんと幸せになれたんなら、私はそれでいいや」
京太郎「え?」
淡「なんでもないよ。もっといろいろ教えてもらうつもりだったけど、今はそれだけで充分かな」
京太郎「期待に応えられたようで何よりです」
淡「あんたの彼女なら購買の方でウロウロしてたよ。わざわざ時間取らせてごめんね」
京太郎「いえ、教えてくれてありがとうございます。またいつか縁があったら」
淡「次はあんたのことなんか忘れてるよ。なんせ、淡ちゃんは有名人だからさ」
京太郎「相変わらず手厳しいな。へへ」
淡「…………」
京太郎「それじゃあ、個人戦も頑張ってくださいね。咲と和と照さんの次に応援してますから」
淡「おうとも。皆まとめて百回倒してあげるよ」
淡「じゃあね、京太郎」
はあ。。。霞おかーさん。。。。。
性の対象だとかそういう話ではなく、霞おかーさんに女手一つで育てられたいですよね・・
小学校で勝気な女の子にいじめられて帰ってきた日は、何も聞かず大好物のオムライスを作ってくれる霞おかーさん・・
生傷に染みるお風呂から上がった後は同じ布団に入っていいこいいこされながら獣のようなセックスをして眠りたいです・・
>獣のようなセックスをして眠りたいです
性の対象だこれ!?
安価によるルート決定について考えがまとまったので報告します
・安価は↓3までの多数決です
・安価は最大で2回発生します
・4話の安価で選択肢Aを選んだ場合その後の安価は発生せず、ルートが決定します
(選択肢Bを選んだ場合は5話でもう1度判定を行います。ルートは全部で2つあります)
・2つの内どちらが選択肢Aであるかは秘密にさせていただきます。申し訳ありません
第四話「ほんとうの気持ち」は11/10(日)12時投下の予定です。ご期待ください
1話→曲名(OPテーマ)
2話→原作1話のタイトル
3話→曲名(EDテーマ)
4話→原作2話のタイトル
5話の展開を曲名から予想してニヤニヤしてる
了解じゃー
現状ルートが分岐しそうなのって、たかみーorあわあわ以外にいるのかしらん
当日は寝過ごさないようにしなければ・・・
>>289
ルートBの方はまだうっすらとしか考えていませんが、照にもチャンスを残す予定です
ルートAにせよBにせよ
バッドエンドなら(僕が)書く必要はないと考えているので、当日は皆さんお気軽にどうぞ
三話のラストって幻覚だよね?
>>291
精神的に参っていた淡の妄想です。セリフはアニメ版からいくつか拝借しました
台本形式ということもあり、心中での葛藤を括弧書き(モノローグ)で表現したくなかったので
真佑子ちゃん他2名を淡の潜在的な欲求に見立て、会話文の形式で自問自答させました
>>292
現実世界の多治比changはどうなったの?四話でも決勝戦続いてたらごめん
>>293
淡の妄想とは別に選手としての真佑子ちゃんも存在しています
試合のハイライトは次回冒頭で軽く触れます。どうぞご期待ください
それはそうと、近ごろ総合スレに雅枝さんの波が訪れていますね。大変喜ばしいことです
洋榎→京太郎→雅枝の前提から展開されるハートウォーミングな修羅場は非常に味がいいですね・・
ネリーに赤ちゃんの素を搾られるSSの作者ってことは他にも沢山書いてるよね?文体と名前欄からの推測だけど。
差支えなかったら大まかでも良いから今まで書いた小ネタSSの内訳とか教えて~。
>>295
過去総合スレに投稿した小ネタをあまり紹介しすぎると
「そのときは匿名であっても、読み返すとトリップ付きで投下しているのと変わらない」
ようにも思えて微妙なので(過度の自己主張は気が引けるので)本当にざっくり紹介させていただきます
小ネタを投稿していた期間は8/13~10/4で
ファイルの数を確認したところその期間に合計61個のSSを投下したようです
内訳/所属(SS数)
プロ・大人(10)
有珠山(9)
阿知賀(8)
姫松(7)
臨海(7)
永水(4)
千里山(4)
白糸台(4)
清澄(3)
新道寺(2)
龍門渕(2)
宮守(1)
ヒロイン別集計で最も数が多かったのは洋榎ちゃんでした。実はこの子が一番好きです
残念ながら
今後時間に余裕を作れそうなのが11月いっぱいまでなので
姫松や有珠山のスレはちょっと立てられそうにありません・・
白糸デイズも本編は11/24(日)分の更新で完走して
以後は咲ちゃんの幕間や小ネタでのんびり消費する予定です
今週分の投稿も残すところ6レスと推敲のみとなりました!
いつになくニヤニヤしながら仕上げますので、そのままもう少々お待ちください!
京太郎「もういくつかグループができてるみたいだぜ。大星さんは混ざらないのか?」
淡「私はそういうの興味ないから。あんたこそ友だち作らなくていいわけ」
京太郎「右も左も女の子ばかりだしな。かなり参ってるよ、正直なところ」
淡「驚いた。それが目的で入学したんじゃないの?」
京太郎「違う違う、俺にはちゃんとした目的があるの。人聞きの悪いこと言わないでくれ」
淡「目的」
京太郎「大星さんは宮永照って知ってるか」
淡「もちろん知ってるよ。何、あんた麻雀するわけ?」
京太郎「いいや、麻雀の腕はからっきしだよ。照さんは昔なじみの知り合いなんだ」
淡「つまり、テルと会うだけのためにここへ来たってこと? 変な奴」
京太郎「自分でもそう思うよ、否定はしない。大星さんはどうして白糸台に?」
淡「私は」
京太郎「うん?」
淡「私はテルと麻雀をしに来たんだ。まだ新入生だけど、あの子のチームに席も貰ってる」
京太郎「なんだ、大星さんも俺といっしょじゃないか。俺たちは照さんに会いに来たんだ」
淡「ううん。なんだか釈然としないけど、そうとも言えるのかな?」
京太郎「そうだよ、他人から見たら二人とも充分変な奴だ。学校一の照さんマニアかもな」
淡「何それ、ちょっと変態っぽい。あはは」
京太郎「…………」
淡「マニア二号くん? どうかしたの」
京太郎「大星さん、さっきから退屈そうな顔してたからさ。やっと笑ってくれたなって」
淡「へ」
京太郎「俺、須賀京太郎っていうんだ。同じ目的を持つもの同士友だちになろうぜ」
淡「友だち」
京太郎「いやならそれでいいんだけどな。ただ入学早々一人ぼっちってのも寂しいし、それに」
淡「いやじゃない! 私、あんたと友だちになる!」
京太郎「…………」
「何あの子、天然さん? もっとキツい感じの子かと思ってたよ」
「案外面白い子だったりしてね。後で話しかけてみよっか、こんにちわちわーって」
淡「と、友だちとか興味ないし。ぼっちなわけじゃないし」
京太郎「流石にその言い訳は今さらだと思うぜ。大星さん」
淡「うう」
京太郎「それじゃあ今日から友だちだ。俺は麻雀ができないし、たった二人ぼっちだけど」
淡「あらためて口に出されるとなんか照れるな。中学ではこんなことなかったし、ムズムズする」
京太郎「え?」
淡「私は他の子よりずっと強かったから。皆私を特別扱いしてたし、友だちなんてとても」
京太郎「もしかして、自分より強い雀士と会うのは照さんが初めてだったのか?」
淡「悔しいけどその通りだよ。ボロ負けして、この子とならなんでもできるって思ったんだ」
京太郎「…………」
淡「須賀くん?」
京太郎「なんでもない。そういうの、なんかいいなって思っただけ」
淡「何それ。おかしい」
京太郎「やっぱりさ、俺たちどこか似てるんだよ。ここで出会えたのだってきっと偶然じゃない」
淡「魅力的な口説き文句。見かけによらずロマンチストなんだ?」
京太郎「そういうのじゃないよ。同じ目的を持って、照さんに心惹かれてここに来たんだろう?」
淡「そうかもね。ううん、きっとそうだよ」
淡「すごいこと、やりにきたんだ」
Shiraito Days
菫「君も知っているだろう。淡が学校を休み始めて、今日で三日になる」
京太郎「担任は体調不良と聞いているらしいです。俺がメールをしてもそう返ってくるばかりで」
菫「県予選を勝ち抜いた安堵から体調を崩したと。君もそう思っているのか、京太郎」
京太郎「欠席の連絡は毎朝、受話器越しに本人の口から伝えられるそうです」
菫「ああ」
京太郎「出張で親御さんが家を空けているのを見計らって、何か他の事情で休んでいるとしか」
菫「そうだな、私も同じように考えていたよ。元気印の淡が何日も伏せっているとは思えない」
京太郎「そうなると学校を休むだけの事情が気になりますが、俺にはどうも心当たりがなくて」
菫「…………」
京太郎「弘世先輩?」
菫「先日の県予選決勝、その大将戦を覚えているか」
京太郎「淡がウィークリー麻雀の表紙を飾る原因になった、あの試合ですか」
菫「以前君には龍門渕の牌譜を見せたな。それならば決勝での淡に何か思うところがあるはずだ」
京太郎「天江、衣」
菫「過去何度か淡の本気を目にした私からしても、まったく同じ見解だよ。あれは普通じゃない」
京太郎「淡」
菫「淡はあれを絶対安全圏と呼んでいたんだったか。これは実況していた小鍛治プロの見解だが」
京太郎「…………」
菫「現在活躍しているプロですら誰一人聴牌できないらしい。あの決勝戦のものに限ってはな」
京太郎「小鍛治プロって、元世界ランク二位の雀士ですよね。そんなことがありえるんですか」
菫「悲しいことに能力者の麻雀に関しては私も見識が浅いんだ。詳しいことは分からないさ」
京太郎「少なくとも、準決勝の淡はいつも通りの打ち筋でしたよね。それがどうして」
菫「試合の後あいつは『獲得点数で尭深に負けたくなかった』と言ったが、真偽の方はどうかな」
京太郎「今週のウィークリー麻雀、先輩は今持ってますか」
菫「もちろん持っているよ。このページが西東京県予選の特集記事だ」
京太郎「淡の顔」
菫「対戦校である多治比さんの表情も印象的だが、そうだな。どこか切羽詰まった顔をしている」
京太郎「いつもの淡は勝ち気で、いつも余裕たっぷりで。ちょうどこの表紙みたいな顔ですよね」
菫「気になるか。淡をこんな表情で戦わせたのが誰なのか」
京太郎「え?」
菫「心当たりがあるんだ。準決勝から決勝の大将戦にかけて何があったのか」
京太郎「…………」
菫「京太郎?」
京太郎「教えてください。あいつが何もできずいるなら、俺がなんとかしますから」
菫「落ち着いてくれ。気持ちは私もいっしょだが、そんなに簡単な問題じゃないんだ」
京太郎「どういう意味ですか」
菫「複雑な事情があるんだ。誰か一人を懲らしめて終わるような話じゃないんだよ」
京太郎「…………」
菫「なあ京太郎。君は淡のために、一体何を捨てられるんだ」
京太郎「え?」
菫「さっき淡がメールを寄越したんだ。詳しいことは何も書かず、ただ一言『助けて』と」
京太郎「…………」
菫「最も親しい君に、それでも助けを求められない理由が分かるか。京太郎」
京太郎「それは」
菫「この先多くを知れば、君は間違いなく何かを失うことになるんだよ。淡はそれを嫌ったんだ」
京太郎「構いませんよ、そんなこと。淡が俺に助けを求められないなら尚更でしょう」
菫「…………」
京太郎「弘世先輩?」
菫「そうか。そういうことだったのか」
京太郎「とにかく、心当たりがあるなら教えてください。何もできずいるなんて堪えられません」
菫「分かったよ、君の覚悟も淡の意図も伝わった。どうか淡を助けてやって欲しい」
京太郎「それはもう」
菫「だが二つだけ私の頼みを聞いてくれ。まず一つは、明日必ず淡を学校に連れてくること」
京太郎「…………」
菫「そして、私ではなく淡の口から全ての事情を聞いてくれ。これが二つ目だ」
京太郎「つまり、今から淡の家に直接出向けってことですよね」
菫「入部届の写しがここにあるから住所は分かるよな。頼まれてくれるか、京太郎」
京太郎「マネージャーとしてではなく、あいつの親友として」
菫「そうだな。私もチーム虎姫の弘世菫ではなく、あいつのお節介な先輩としてお願いしたい」
京太郎「弘世先輩」
菫「詳しくはまだ話せないが、あいつが塞ぎ込んでいることの遠因は私にもあるんだよ」
京太郎「え?」
菫「それを君に丸投げすることになって、本当にすまないと思う」
京太郎「…………」
菫「京太郎?」
京太郎「ちょっと前に淡と約束したんです。そのときは俺も、今ほど深くは考えてなかったけど」
菫「一体どんな約束をしたんだ。私にも教えて貰えるかな」
京太郎「淡の悩みは俺の悩みで、あいつのためなら俺はなんでもしてやるって」
菫「…………」
京太郎「俺たち二人は多分、どちらが欠けていても笑えないんです。そういう風にできてるから」
菫「なあ京太郎、君はそこまで淡のことを思っているのに。どうして」
京太郎「え?」
菫「今のあいつは恐らく、京太郎が想像しているよりもずっと『君の淡』から外れているだろう」
京太郎「…………」
菫「君の知らない淡を知って、今まで積み重ねた関係が全て嘘だと分かっても。それでも君は」
京太郎「破らないから約束なんです」
菫「…………」
京太郎「誰よりあいつを助けたいんです」
菫「誰かのためじゃなく自分のために。今度も君はそう言いたいんだろう」
京太郎「はい」
菫「それを聞いていくらか安心できたよ。つまらないことを聞いて悪かったな」
京太郎「ちゃんと分かってますから。弘世先輩も、淡のことを心から大切に思ってるんですよね」
菫「…………」
京太郎「だったら全然、つまらないことなんかじゃないですよ。俺も気持ちはいっしょですから」
菫「コホン。それで淡の住所だが、私たちがいつも利用している路線とは真逆の方向にあるんだ」
京太郎「真逆っていうと、ちょっと前に尭深さんとデートしたあたりかな」
菫「まあ、尭深の家も近所にあるようだが。淡の前で尭深のことばかり話すんじゃないぞ」
京太郎「どうして」
菫「どうしてもだ」
京太郎「よく分かりませんけど、先輩がそこまで言うなら」
菫「なあ、京太郎」
京太郎「電車が来ましたね。それじゃあまた明日、淡といっしょに朝練で」
菫「私の後輩を助けてやってくれ」
京太郎「…………」
菫「…………」
京太郎「おう」
淡「ごめんね、京太郎を試したんだ。菫先輩なら京太郎を連れてきてくれるって思ってたから」
京太郎「話が少しも見えてこないよ。それはお前が菫先輩にメールしたことと関係あるのか」
淡「不安だったの。背中を向けて歩き出したら、もう誰もついてきてくれないんじゃないかって」
京太郎「…………」
淡「私ね、この川べりが好き。京太郎には尭深といっしょに歩いた思い出しかないんだろうけど」
京太郎「淡」
淡「全部変わっていくんだよね。もう引きこもってちゃいられないし、そうしたいとも思えない」
京太郎「そう思ってるなら明日は学校に来いよ。お前に何があったのかはそれから聞かせてくれ」
淡「ううん、それを決めるのは私じゃなくて京太郎だよ。明日の私はあんたが決めるの」
京太郎「淡、お前何を言って」
淡「京太郎。あんたは私のために、一体何を捨ててくれるの」
京太郎「…………」
淡「卑怯なことしてるって自分でも分かってる。それでもやっぱり幸せになりたいんだ、私も」
京太郎「淡?」
淡「私は京太郎のことが好き。初めて会ったときからずっと、あんたが欲しいと思ってた」
コピペミスです。場面転換しました
京太郎「…………」
淡「そんなに意外そうな顔しないでよ。あんただってなんとなく分かってたでしょう」
京太郎「いつもの冗談じゃないんだよな」
淡「京太郎こそ、本気でそんなこと聞いてるわけじゃないよね」
京太郎「…………」
淡「最初はね、見つめるだけで幸せだったんだ。友だちとしてずっと隣にいられると思ってた」
京太郎「だったら」
淡「やっぱりダメだよ、京太郎の一番近くには尭深がいた。とてもじゃないけど遠すぎるんだ」
京太郎「俺と尭深さんが恋人同士になるよう取り計らったのはお前だろう」
淡「京太郎に笑って欲しかった。私でもあんたを幸せにできるのに、見て見ぬ振りしてたんだ」
京太郎「俺のせいなんだな」
淡「…………」
京太郎「お前がこんなことになっちまってるのも、全部」
淡「違う」
京太郎「違うもんか。俺は結局、お前の気持ちなんて何一つ理解してやれなかったんだ」
淡「ほんとうの気持ちを隠して、ずっと逃げ続けてきたのは私。私だもん」
京太郎「…………」
淡「だからね、京太郎。あんたは何も責任なんか感じず選んでくれるだけでいいの」
京太郎「何を選べって言うんだ。お前が何を言おうと、俺の恋人は尭深さんだよ」
淡「私、パリに行くから」
京太郎「え?」
淡「京太郎に好きでいてもらえない私なんかいらないもん。お母さんと二人で向こうに住む」
京太郎「向こうに住むって。部活は、インターハイはどうするんだよ」
淡「知らないよそんなの。菫先輩には悪いけど、私はハイスコアを出すための道具じゃないから」
京太郎「淡」
淡「いっそこの川に身を投げてもいいよ。誰にも必要とされない私にはお似合いの最後でしょう」
京太郎「おい待て淡、早まるな」
淡「全部遅すぎたんだよ! その気もないくせにどうして引き止めるの!」
京太郎「俺のせいでお前がいなくなるなんて絶対御免だよ! 罪悪感で夜も眠れないだろうが!」
淡「何さそれ! こういうときは嘘でもいいから好きって言っときなさいよ!」
京太郎「好きだよ!」
淡「…………」
京太郎「お前のことが好きだよ。尭深さんよりも、照さんよりも」
淡「信じらんない。どうして平気でそういう嘘をつけるかな」
京太郎「平気でこんなこと言ってるわけないだろ。それに、言い出したのはお前だよ」
淡「…………」
京太郎「淡」
淡「もう手離していいよ。心配しなくても、飛び込んだりしないから大丈夫」
京太郎「絶対いやだよ、離せるもんか。本当を知ったら俺だって今まで通りじゃいられないんだ」
淡「え?」
京太郎「お前をフランスにやったりしない。言っただろう、俺はお前のためならなんでもするよ」
淡「なんでもするって。京太郎、あんた自分が何を言ってるのか分かってんの」
京太郎「俺を幸せにしたい淡が、俺から幸せを奪うわけないだろ。何を言われたって問題ないよ」
淡「京太郎」
京太郎「自分で思うほど俺はお前を知らなかったけれど、お前が思うより俺は淡が大切なんだ」
淡「…………」
京太郎「淡」
淡「夕ごはん」
京太郎「え?」
淡「うちに来て、夕ごはんを作って。今日一日だけは私の恋人でいて」
京太郎「…………」
淡「京太郎?」
京太郎「いやな、淡のことだからもっと無理難題を突きつけてくるのかと思ってさ」
淡「自分でも結構無茶なお願いをしたつもりだったんだけど、変かな」
京太郎「ちっとも変じゃないよ。今晩淡が眠るまでは、俺がお前の恋人でいてやる」
淡「あのね、京太郎。このこと尭深には」
京太郎「何も後ろめたいことをするわけじゃないんだ、後でしっかり話すつもりだよ」
淡「ダメ」
京太郎「え?」
淡「尭深には話さないでいて。変に心配かけたくないし、京太郎と私だけの秘密にしたいの」
京太郎「淡」
淡「お願い」
京太郎「…………」
淡「…………」
京太郎「ああ、お前がそこまで言うなら分かったよ」
淡「京太郎」
京太郎「おい、そういう約束だからっていきなり抱き付いてくる奴があるか」
淡「もう一分一秒だって惜しいもん。ずっと京太郎とこうしてみたかったんだ」
京太郎「淡」
淡「どうして今まで意地を張っていたんだろ。京太郎はいつでもこんなに近くにいてくれたのに」
京太郎「…………」
淡「ねえ、京太郎」
京太郎「どうした」
淡「お買い物に行こうね。二人でいっしょに、仲良く手を繋いで」
京太郎「そうだな、夕飯は何がいいんだ。なんでもお前の好きなものを作ってやるぞ」
淡「京太郎が作るものならなんでもいいよ。その代わり、たくさん愛情込めてね」
京太郎「それはもう、愛しい彼女のためだからな。ほっぺた落ちても知らないぜ」
淡「京太郎」
京太郎「どうした」
淡「愛してる」
-----
淡「私もいっしょに食器を洗うよ。京太郎と二人で台所に立ちたいもん」
京太郎「それも淡のお願いか?」
淡「そうだよ、よくできた彼女でしょう? お手伝いだってお手の物なんだから」
京太郎「それはいいけど、間違ってるぜ。スポンジの表裏」
淡「え?」
京太郎「お母さんが出張してる間、いつもそうやって洗ってたのか? 食器の後片付け」
淡「学校を休んでからずっと、コンビニでお弁当を買ってたから。食費はちゃんと渡されてるし」
京太郎「作りにきて正解だったよ。明日からは近所に住んでる尭深さんにでも頼んで、それで」
淡「…………」
京太郎「淡?」
淡「ねえ京太郎。こうやって首を絞めたら、今日が終わってもずっと側にいてくれるよね」
京太郎「お前はそんなことできないよ。俺が抵抗しようと、そうでなかろうと」
淡「あんたのそういうところ、心の底から大嫌いだよ。どうしてこんなに好きなんだろう」
京太郎「淡」
淡「ごめんね京太郎、少しの間抱きしめていて。一番近くで感じていたいの」
京太郎「別に謝る必要ないよ。今日だけはお前一人の須賀京太郎なんだから」
淡「この温もりは私のものじゃないんだって、本当は分かってる。どこで間違えちゃったのかな」
京太郎「間違い、か」
淡「いつかどこかで叶うはずだった未来を、今はちょっとだけお裾分けしてもらってるんだよね」
京太郎「…………」
淡「散々綺麗事を並べてきたのに、結局は自分が幸せになりたいだけだったんだ。笑っちゃうよ」
京太郎「笑えねえよ」
淡「…………」
京太郎「お前が笑ってないんだぞ。俺だけ笑っていられるわけないだろ」
淡「何さ、それ」
京太郎「…………」
淡「ホント、呆れるくらい優しいよね。あんたって」
京太郎「優しいって、たった今お前を苦しめてるのは俺じゃないか。罪滅ぼしにもなってないよ」
淡「他の人にとってはそうかもしれないけれど、私にとってはこの瞬間だけが全てだから」
京太郎「淡」
淡「あったかいなあ。本当に、悲しいくらいあったかい」
京太郎「お前の体が冷たいだけだよ。小さくてか細くて、今にもいなくなっちまいそうだ」
淡「ちゃんと捕まえていて。あんたとこうしている間だけは、どこにも行ったりしないから」
京太郎「…………」
淡「ねえ、京太郎。何も聞かずに目を瞑って」
京太郎「淡、お前それは」
淡「一つ知ったら十が欲しくなっちゃった。まるで麻薬か何かだよ、さっきの私には戻れない」
京太郎「そうでもしないと、お前はここからいなくなるのか」
淡「言ったでしょう、本当は自分が幸せになりたいだけだったんだよ」
京太郎「淡」
淡「なんでもするって言ったじゃない。京太郎の温もりも唇も、今晩だけは私のものだよね」
京太郎「それはお前のことを信じていたから!」
淡「んっ」
京太郎「…………」
淡「さっき食べた中華の味がするね。初めてのチューがレモンの味だなんて、嘘っぱちなんだ」
京太郎「本当にそれでいいのか。お前は、こんなことをするために俺を呼んだのか」
淡「そうだよ、そうに決まってるでしょう。勝手に信じたのに裏切られたような顔しないでよ」
京太郎「俺はまた、分かった気になってお前の気持ちを取り違えたんだな」
淡「気持ちなんていつも変わっていくんだもん、側でずっと見ていてくれないといやだよ」
京太郎「…………」
淡「本当は京太郎だって分かってたでしょう。恋人ごっこで今までの関係に戻れるわけないって」
京太郎「淡」
淡「隠したって私には分かるよ、京太郎も私を試したんだ。昼間私があんたを試したように」
京太郎「違う! 俺はただお前の側にいてやりたくて、それで」
淡「だったらもう一度キスしてよ。今度は京太郎の方から、ちゃんと私を奪って」
京太郎「…………」
淡「できないでしょう。結局京太郎は本気じゃないんだ、私のことも自分自身のことも」
京太郎「俺が淡のことを大切に思ってないって、お前はそう言いたいのかよ」
淡「事実そうじゃない!」
京太郎「目を瞑れ」
淡「え?」
京太郎「…………」
淡「んや、あっ」
京太郎「鼻で息をするんだよ、そうすれば苦しくないだろ」
淡「京、太郎」
京太郎「んっ」
淡「…………」
京太郎「…………」
淡「なんで」
京太郎「淡にお願いされたからじゃないよ。誰よりお前を大切に思ってるんだ」
淡「嘘だよそんなこと。だってこんなの、幸せすぎるもん」
京太郎「ほんとうの気持ちだよ」
淡「京太郎の彼女は尭深でしょう。私なんかに本気をくれるはずないよ」
京太郎「淡の言う通り、こんなことをしてやっても前までの俺たちに戻れるとは思ってないさ」
淡「だったら」
京太郎「今を抜け出そう。一番新しい俺たちになって、もう一度やり直そう」
淡「京太郎」
京太郎「お前がいなくなるなんて絶対いやだよ。もちろん尭深さんと別れるのだって絶対いやだ」
淡「何、それ」
京太郎「ちゃんとしよう。三人で話して、皆で幸せになれる方法を考えよう」
淡「…………」
京太郎「淡」
淡「そっか。そうだったんだ」
京太郎「え?」
淡「ごめんね京太郎。私は結局、京太郎のその言葉が欲しいだけだったんだ」
京太郎「…………」
淡「最後の最後までどうしようもない嘘つきだよ。こんなことのために皆を振り回しちゃった」
京太郎「こんなことって。俺は本気でお前のことが好きで」
淡「ううん、そこから先は言っちゃダメ。それは私が貰っちゃいけない言葉」
京太郎「…………」
淡「ホント笑っちゃうよ。言ってることが二転三転、ほんとうの気持ちはどこにあるんだか」
京太郎「お前が誰より知ってるはずだろ。もう自分の気持ちに嘘なんかつかなくていいんだ」
淡「分かってるよ、だからこれが最後の嘘になるのかな。泣きたいくらい悲しくて悔しいけれど」
京太郎「淡」
淡「私はあんたが大嫌い。こんなに愚かで嘘つきだけど、どうか最後に思い出をちょうだい」
●大星淡と性的関係を持ちました。↓3までの安価選択肢です(無効票は全て1)
●現時点における京太郎の精神状態・後の行動方針が安価によって決定されます
1:「淡との性的関係・その事情について尭深さんに黙っていよう」
2:「淡との性的関係・その事情について尭深さんに打ち明けよう」
●安価によってルートAが決定されました。これ以後安価は発生しません
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菫「あの通り淡も元に戻ってくれたんだ。本当に、なんとお礼を言えばいいのか分からないよ」
京太郎「お礼なんてそんな。全部が全部、今まで通りに戻ったわけじゃありませんから」
菫「よく分からないが、終わり良ければ全て良しだろう。いつか駅で言ったようにな」
京太郎「そんなに簡単じゃありませんよ。本当に大切なことは、これからも続いていくんです」
菫「京太郎?」
京太郎「二人で始めて三人になって。最後は一人で終わらせるなんて、そんなの絶対間違ってる」
菫「…………」
京太郎「おかしいですよね。頭では分かってるのに、変に納得してる自分もいるんです」
菫「淡を知ったのか」
京太郎「何も知りませんよ。俺は結局、最後まであいつのことを何も知らなかったんだから」
菫「仮にそうだとしても最後じゃないさ、本当に大切なことは続いていくんだろう?」
京太郎「…………」
菫「私たちはまだ高校生なんだ。しょぼくれているだけが青春じゃないと、私はそう思うよ」
京太郎「そうかな」
菫「そうだよ」
京太郎「本当に誰より辛いのは俺じゃないんですけどね。ひょっとして、励ましてくれてますか」
菫「もちろんそのつもりさ。君はそう言うが、京太郎だって随分悩んだはずだろう」
京太郎「それは、そうですけど」
菫「誰が一番辛いとか、きっとそんな問題じゃないんだよ」
京太郎「皆で少しずつ辛い思いをして、誰もが幸せになれたなら。それが一番よかったんです」
菫「淡が選んだ答えなんだろう。自分の気持ちと向き合って、結局は君の幸せを優先したんだ」
京太郎「…………」
菫「権利じゃなくて義務なんだよ。もっと言えば京太郎にはもう、くよくよ悩む権利はないんだ」
京太郎「普通の幸せを手に入れるのって、本当は大変なことなんですね」
菫「そうとも、だからこそ気分を切り替えてくれよ? ちょうど今日から学内でも夏服だろう」
京太郎「本当にまっさらですね。白糸台の夏服も、俺のワイシャツも」
菫「高校生活は続いていくんだ。いつか汚れてしまったら、そのときはまた洗えばいい」
京太郎「…………」
菫「京太郎?」
京太郎「やっぱりなんだかロマンチストですよね。弘世先輩って」
菫「性分なんだよ。誰にあてられたのかは知らないけれどね」
尭深「遅れてすみません。朝練、まだ終わってませんよね」
菫「事前に連絡があっただろう、何も問題はないよ。どこでも好きな卓に入ったらいい」
京太郎「…………」
尭深「そっか、京太郎くんも今日から夏服なんだね。とっても格好いいよ」
京太郎「尭深さんこそよくお似合いです。冬服のときよりも、なんだか垢抜けた感じがして」
尭深「…………」
京太郎「尭深さん?」
尭深「首元のそれ、すごく痒そう。襟を開けて早々悪い虫に食べられちゃったんだね」
京太郎「え」
尭深「気付いてなかったんだ。初めて見るよ、そんなに大きな虫刺され」
京太郎「虫刺されって。触ってみても、そんなものどこにも」
尭深「それじゃあ私、向こうで淡ちゃんと打ってくるから。また後でね」
京太郎「…………」
菫「…………」
京太郎「弘世先輩、手鏡があったら貸していただけますか」
菫「わざわざ確認するまでもないよ。私はずっと虫刺されだと思っていたが、違うのか」
照「鏡ならここにあるよ。菫はそう言うけれど、一度自分の目で確かめてみたらいいんじゃない」
京太郎「照さん」
照「よく見てよ須賀くん。この虫刺されは一つだけじゃなくて、襟をめくればいくつもあるの」
京太郎「…………」
照「それに、ひどいクマもできているね。昨夜は夜更かしをするような用事があったのかな」
京太郎「照さんが気にするようなことじゃありませんよ。心配いりませんから」
照「ねえ菫。須賀くんは昨日、部活が終わった後で淡のお家に行ったんだよね」
菫「ああ。確かに昨日、淡の家に出向くよう京太郎に頼んだよ」
照「淡とずっといっしょにいたんだ」
京太郎「…………」
照「どうしたの、須賀くん。随分と顔色が悪いようだけど」
京太郎「照さんは俺に、一体何が言いたいんですか」
照「なんのことはないよ、ただ奇遇だなって思っただけだから」
京太郎「奇遇?」
照「だって私もそうだもの、昨日はずっと尭深といっしょにいたんだ」
京太郎「え?」
照「淡の家と尭深の家は近所にあるでしょう? だから須賀くんと淡が歩いているところも見たよ」
京太郎「…………」
照「とても仲が良さそうだったね。つい声を掛けるのを躊躇っちゃったくらい」
菫「照」
照「なあに菫。怖い顔をして、クールな外面もそこまできたら考えものだよ」
菫「私の憶測が間違っていればすぐに否定してくれ。本当ならこんなこと考えたくもないんだ」
照「持って回った言い方はよしたら? ここ数日はずっと考えていたことでしょう」
菫「お前が淡を壊したのか」
照「人聞きの悪いことを言わないでよ。勝手に壊れただけじゃない」
菫「お前!」
京太郎「ちょっと、弘世先輩!」
照「私を叩いてそれで満足なの? 手をこまねいているだけだった菫が、そんな風に怒るんだ」
菫「どうしてそんな真似をした。二人の関係を元通りにすると、お前は確かにそう言っただろう」
照「横で聞いている分には、須賀くんと淡の関係は元の他人同士に戻ったみたいだけれど」
菫「…………」
照「全部菫が頼んだことじゃない。そのことについて、私がとやかく言われる筋合いはないよ」
京太郎「弘世先輩、照さんの嘘なんですよね。そんなの」
照「嘘じゃないよ、何もかも菫に頼まれたことだから。二人を元に戻して欲しいってね」
菫「違う! 私はただ、一人の人間として淡のためを思って!」
照「辛い役目を押し付けてしまってごめんね。須賀くんのおかげで淡も随分助かったと思うよ」
京太郎「…………」
菫「京、太郎?」
京太郎「すいません。弘世先輩を疑っているわけじゃありませんけど、少し頭を冷やしてきます」
菫「…………」
京太郎「照さん」
照「なあに、須賀くん」
京太郎「明日の文化祭、少しだけ時間を作っていただけますか。話したいことがあるんです」
照「あなたの頼みだもの、抜け出したって聞いてあげるよ。いつもの屋上でいいよね」
京太郎「失礼します」
菫「…………」
照「あははははっ」
菫「化け物め」
照「まだ終わってないよ。京ちゃん」
-----
尭深「…………」
淡「屋上の鍵を持ってるとは思わなかったよ。京太郎から借りていたんだね」
尭深「淡ちゃん」
淡「お昼休みは二人の貸し切りなんだもん、羨ましいよ。今日だってこんなにいい天気で」
尭深「淡ちゃん!」
淡「…………」
尭深「どうしてあなたを呼び出したのか分かるよね。知らない顔をしたって無駄だから」
淡「尭深にだけは知られたくなかったんだけどな」
尭深「最初に謝っておくよ。どんな事情があったとしても、私は平気でいられそうにないから」
淡「それだけのことをしたんだもん、何を言われたって文句は言えないよ」
尭深「最後にもう一度だけ確認させてくれるかな。昨夜あなたは京太郎くんに何をしたの」
淡「…………」
尭深「答えてよ。答えろ」
淡「京太郎と寝たよ。疲れた私が眠りにつくまで、何度も優しく抱いてもらったの」
尭深「…………」
淡「出会ったときからずっと京太郎が好きだったから。最後にせめてもの思い出を貰ったんだ」
尭深「どうしてそんな風に開き直れるのか全然分からないよ。あなたはどこまで勝手なの」
淡「どれだけ勝手なことをしたのか分かってるつもりだよ。だからもう言い逃れもしたくないの」
尭深「…………」
淡「昨夜の思い出が私の全てだもん。この罪だけは神さまにだって消せない」
尭深「ねえ、淡ちゃん」
淡「何」
尭深「それ以上自分に酔ったようなことを言わないでくれるかな。ハッキリ言って不愉快だよ」
淡「…………」
尭深「淡ちゃんが京太郎くんを好きだとか、そんなこと私たち二人になんの関係があるの」
淡「それは」
尭深「青春ドラマのヒロインにでもなったつもりなのかな。好きなんでしょう、そういうの」
淡「そんなつもりなかったよ。私はただ、自分のほんとうの気持ちにケリを付けたかっただけで」
尭深「京太郎くんの首筋に痕を遺したのだってそうだよ。都合のいい展開に賭けたんだもんね」
淡「…………」
尭深「だけど残念、京太郎くんの彼女は私だから。あなたの入り込む余地は少しだってないの」
淡「そんなこと分かってるよ! だから私は自分を殺して、京太郎のことを諦めたんだもん!」
尭深「二度と京太郎くんに近付かないで」
淡「へ」
尭深「何を言われても文句は言わないし、言い逃れもしないんでしょう」
淡「だってそんな、二度と近付かないでって。私はあいつを好きでいることさえ許されないの?」
尭深「本当なら今すぐここで、あなたを殺してしまいたいくらいなんだよ」
淡「尭深」
尭深「それでも、そんなことをしたら京太郎くんが悲しんじゃうもんね。誰より優しい人だから」
淡「…………」
尭深「指をくわえて見ていてよ。勝手にいなくなったりせずに、二人仲良くしているところをね」
淡「ごめん。ごめんなさい」
尭深「その罪だけが彼との絆なんでしょう。悲しかったら京太郎くんの思い出に慰めてもらえば」
淡「ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい」
尭深「言いたいことはそれだけだから。私は彼のところに行くけれど、そこで一生後悔してなよ」
尭深「泥棒猫」
Shiraito Days
第四話「ほんとうの気持ち」
レス、安価へのご参加ありがとうございます。励みになります
途中アクシデント(-----をコピーし忘れる)もありましたが、最後まで投下できて安心しました
修羅場は企画立案時からの念願だったので、今回のみならず次回も気合を入れて書こうと思います
(設定の上では)淡との性交に避妊具は使われませんでしたが、元ネタ(スクイズ)と違い妊娠ENDの予定はありません
また四話時点で尭深との性交は芳しくない結果に終わっている設定でしたが、淡との体の相性は大変良好だったようです
第五話「Still I Love You」は11/17(日)12時投下の予定です。ご期待ください
煌ママの膝まくらで英気を養ったので、夜更けにでも小ネタを一つ書こうと思います
↓1キャラ、シチュエーションなどご希望があれば安価でどうぞ。白糸台以外でも大丈夫です
>愛宕さんの泣き顔が特別可愛い方
かしこまりました!!!!!111
京太郎「どうですか。気持ちよかったらそう言ってくださいよ」ポンポンポンポンポンポン
雅枝「チーーーーーーー!!!!!」ビクビクビクッ
洋榎(オカンと京太郎がそんな・・嘘やろ神様・・)
「ビッグマックでお待ちのお客さま、いらっしゃいますか」
洋榎「はいはい、ありがとさん。京太郎のはまだ来えへんのかな」
京太郎「ああ、俺だったら注文してませんよ? バイトもしてませんし余裕がないので」
洋榎「またまた、京太郎も冗談キツいわ。あんたはここへ冷やかしに来たんか」
京太郎「ええ、幸いお冷は貰えるようなので助かりましたよ。どうぞ気にせず食べてください」
洋榎「…………」
京太郎「…………」
洋榎「なあ京太郎、なんや周りの視線がめっちゃ気になってんけど。ほんまに食べてええのこれ」
京太郎「何言ってるんですか、洋榎さんが買ったハンバーガーですよ。何も問題ありませんって」
洋榎「そやけど傍から見たら、小食な彼氏を付き合わせるえらい食いしん坊な彼女に見えへん?」
京太郎「大丈夫ですよ、安心してください。そういうプレイなんだって納得してもらえますから」
洋榎「大丈夫言うたかお前」
京太郎「安心しましたね?」
洋榎「できるかドアホ! そないなレッテル貼られるくらいならうちにも考えがあるわ!」
京太郎「はあ」
洋榎「このビッグマックはあんたが食べてええ。うちはもう一つ同じものを注文してきます!」
京太郎「それは願ってもない話ですけど、さっきあれだけ買い物したのに大丈夫なんですか?」
洋榎「なめたらあかん。ハンバーガーの一つや二つ、おサイフ開ければちょちょいのちょいで」
京太郎「足りそうですか。お金」
洋榎「…………」
京太郎「…………」
洋榎「な、なんやこのお冷めっちゃうまいわ! 残念やけど京太郎にはとても譲れんなあ!」
京太郎「あの、本当に食べないといけませんか。このビッグマック」
洋榎「そういうプレイの真っ最中です! お客さんたちは気にせんでええからな!」
京太郎「ちょっと!?」
洋榎「ハハ! うちの気分が分かったか京太郎、せいぜい先輩の真心を噛み締めとき!」
京太郎「ちくしょう!」
-----
絹恵「お姉ちゃんったら、お店の中で何してん。恥ずかしいわ」
恭子「『半分こにする』いう発想がないのもまた主将らしいな。他人のふりやで、絹ちゃん」
部活帰り洋榎ちゃんにハンバーガーを奢ってもらいたい人生でした・・
死に設定間違いなしなのでやめましたが、「誠」子と尭深と淡を親戚にするのは考えてました!
スクイズ・サマイズから拝借した設定で今も生きているのは淡と踊子さんの親子関係くらいですね
前に総合スレで京太郎がネキにバーガー奢ってもらってるネタあったけど書いたの>>1か?
あれ好きでした
>>385
多分僕です。最初期(8月くらい)に書いた小ネタですね
ありがとうございます!
煌ママいいですよね・・
例えば霞おかーさんなら自分の子ども(僕)が近所の子どもと喧嘩して帰ってきたときは何も聞かず察し
心配させないよう黙っている子ども(僕)の意思を汲んで
頭にできたコブを気遣って撫でたりは絶対しないと思うんですよね・・
しかしながら、煌ママは自分の痛みには無頓着でも我が子(僕)の痛みには大変敏感なお母さんなので
何があったか詳しく問い詰めようと迫るし、夫(僕)が帰ってきてからは我が子(僕)の負った傷や心の痛みについて
自分の見解を「でもでもだって」的に吐露し続けるわけですね・・
「疲れたので風呂に入って寝たい」と夫(僕)が正直に切り出すと
「あなた(僕)は仕事ばかりで子ども(僕)に関心がないんです!」とか
普段なら絶対に言わないような言葉を口にしてしまい、口論からその日は寝床でも背中合わせ
眠りに落ちる寸前まで自己嫌悪と不安でいっぱいな煌ママ・・
シコれる・・
はぁー。。。
おかーさん。。。。。
はぁー。。。。。。。
年下お母さんSSは一度書き始めると本編の進捗に支障があるので・・
「(煌ママの)か細い太ももの間から僕が産まれてきたんだなあ・・」とか思い耽りながら
ふと鏡を見たら草加さんみたいな表情の人がいたので人間は皆ライダーなんだと思いました
>>308の最後ってスタードライバーからの引用なのかな。それとも他に元ネタある?
>>405
その通りです!
三度の飯よりもスタドラが大好きなので、これまでの回でもところどころ引用しております!
後期OPである「SHINING☆STAR」なんかは淡ちゃんのテーマソングとすら思ってます!
ちなみに本編は(スタドラのDVDに付いてきた)劇伴のサントラを再生しながら書いてます
チャプターごとに劇伴を設定しているので、大人しめな「スガタ」「心の揺らぎ」「心の傷」などは頻繁に再生してたり・・
>>308のシーンは「純愛」ですね。プレイリストではそこから「イノセント・ブルー(スクイズの方)」に繋げてます
照「こ、これは宮永ホーンの共振?京ちゃんへの恋心が集中し過ぎてオーバーロードしているのか」
照「なのに恐怖は感じない。寧ろ暖かくて、安心を感じるとは…」
衣母さまのロクに乳汁も出ない乳首に吸い付き日がな一日しゃぶり続ける夢を見てお昼寝していたら
あと6レスと推敲を残したままこんな時間になってしまいました・・
予定通り明日12時に投下できるか少し怪しい気がするので(もちろん明日中には投下しますが)
13時になっても投下がない場合は夜まで気長にお待ちいただけると助かります。どうもすみません
衣と一と胡桃と初美、誰が一番母性的かな?
自分の恵まれなかった環境から、偉大な親としての背中を見せていなければならんという自負と
ついつい甘やかしてしまいがちな自分という相反する感情に葛藤する衣かーさん
でも夢中で自分の、密かなコンプレックスでもある比較的慎ましやかなサイズしかない乳房に
吸い付いてくる息子の頭の後ろに手を回して抱きかかえていると、今日もまた流されていると知りつつ
多幸感が溢れてくるのを止められない衣かーさん
どうもお騒がせしました。無事に推敲が終わりましたので予定通り12時からの投下となります
>>415
`¨ - 、 __ _,. -‐' ¨´
| `Tーて_,_` `ー<^ヽ
| ! `ヽ ヽ ヽ
r / ヽ ヽ _Lj
、 /´ \ \ \_j/ヽ
` ー ヽイ⌒r-、ヽ ヽ__j´ `¨´
/ l .| .|
__ | __ | | __ |
l ヽ. | | | |
. | __| | __ | |^)_ | ,-、
_ | | | | .|ノ |. i ヽ
i'i. ヽ. -‐、 ! !-! ‐- ヽ. 〉、 l
/ _ ノ.ヽ. `' (ノo(ヽο/ ヽノ (ノ |
ヽ. ,`ヽ,ソ )ノ ノ/o |
\ ' / / l ()ヽ l
ヽ. ' | (⌒ヽ |
ヽ. | しノ /
ヽ l /
>>413
その面子で一番刺激がビリッときて脳がシャキッとするのは一ちゃんですが
彼女には従姉妹のお姉ちゃんとしての類まれなる適性があるため度外視するとして
残った三名のうち最も母性的であるのはやはり衣母さまではないかと思います
照「最初はね、たった一つの嘘が全ての原因だったの。なんの気なしに私が口にした小さな嘘」
「嘘?」
照「今思えば、どうしてあんなに意固地になってしまったのか自分でも分からないくらいだよ」
「照おねーちゃんに妹はいない。妹の幼なじみなんて知らない」
照「小さな嘘を隠すために大きな嘘をいくつもついて、それがどんどん大きくなった」
「照おねーちゃんは、咲ちゃんのことが嫌いになっちゃったの?」
照「あの子は私の憧れだよ、それは今でも変わらない。咲は私の欲しい物を全部持っていたんだ」
「羨ましかったんだね」
照「二人合わせて一人前だったんだよ。どちらが欠けても幸せになれないようにできているの」
「それでも彼は照おねーちゃんを追いかけてきてくれた。咲ちゃんの元を離れたんだ」
照「嬉しかったよ。本当に、泣きそうなくらい嬉しかった」
「嬉しくて、嬉しくて。それからとても怖くなった」
照「これはやっぱり罰なんだと思う。彼を手放さないよう、最愛の妹を切り捨てた私への罰」
「独り占めにしたかったんだね。照おねーちゃんは好きなお菓子を分けてあげられない人だから」
照「私の手からすり抜けていく彼を見るのは本当に苦しくて、辛くて。胸が張り裂けそうだった」
「だから、もっともっと大きな嘘をついた」
照「子どものようにはしゃぐ菫と淡を見ながら私は、尭深なら大丈夫だろうと思っていたんだ」
「でも、そうじゃなかった」
照「誰より彼の魅力を知る私が、よくもそんなにうかつなことを考えたものだと呆れてしまうよ」
「人は予想を超えてくる」
照「警戒していた誠子が、今度は便利な駒のように思えた。思えばこのとき何かが狂ったんだ」
「『トライアングル・ラブ』。シアターを間違えたのは失敗だったけれど、興味深い映画だった」
照「全てを差し引きゼロに戻してやろうと考えた。三角関係を作れば台無しになるはずだった」
「それでも照おねーちゃんが思うよりずっと、誠子さんは尭深さんを大切に思っていたんだよね」
照「少しも理解できなかった。私の世界に必要なものは、彼と妹だけだったから」
「神さまが本当にいるならきっと、尭深さんの味方をしていたんだと思う」
照「街中を探し回ってようやく二人を見つけたとき、私はもういっそ死んでしまおうかと思った」
「二人の影は一つに重なっていた」
照「しばらくは何も喉を通らなかった。お母さんが作ったお弁当も、大好きだったお菓子さえ」
「魔物だなんてちゃんちゃらおかしい、悲しいくらいに人間の女の子だったんだ」
照「だからそのとき、人間としての宮永照は死んでしまった」
「だからあのとき、人間をやめて生き返った」
照「最初はほんの思いつきだった。偶然早起きした淡を使って、水を差してやるつもりだった」
「だから、気付かず部室へ入っていこうとする淡ちゃんを止めなかったんだよね」
照「気付けば最高の駒がそこにあった」
「尭深さんと対になる形で、駒は最初からその盤面に存在していた」
照「悪魔の声を聞いた私は、迷わず菫に詰め寄ったんだ。あの子は本当に優しい子だったから」
「淡ちゃんが自分から助けを求められないなら、周りの人が助けてあげるしかない」
照「だったらどうして私を助けてくれなかったんだ。そう口にしかけて、何度も躊躇ったよ」
「あなたは菫さんを大切に思っていないんだもん、彼女にとっての大切な人にはなれないんだよ」
照「そういう風にできてるんだ。そうやって自嘲しながら、私はあの子をたぶらかした」
「約束通りと自分に言い聞かせながら、淡ちゃんを壊した」
照「それからは拍子抜けするくらい簡単だったよ。ドミノ倒しみたいに尭深も壊れてくれたから」
「彼が照おねーちゃんと話しているだけで、怖い顔をしていた尭深さんだから」
照「だから、もうすぐゼロになる」
「全部プラマイゼロになる」
「待っててね。京ちゃん」
Shiraito Days
京太郎「淡。おい、淡ってば」
淡「…………」
京太郎「どうせ聞こえてるんだろう。どうして知らん振りするんだ」
淡「京太郎と話すことなんて今さら何もないでしょう」
京太郎「俺だって全部が全部元に戻るだなんて都合のいいこと思ってないよ。それでも」
淡「だったらなんだって言うのさ。これ以上気を持たせるようなこと言わないで」
京太郎「なんだよ、それ」
淡「あんたが『笑顔でいろ』って言うならそうするよ。心と体は別物なんだから」
京太郎「…………」
淡「ごめん」
京太郎「淡が選んだ結果だから受け入れようと思ったんだ。それが俺にできる唯一の償いだろう」
淡「京太郎」
京太郎「だったらどうしてあてつけみたいな真似するんだよ。一体何があったんだ」
淡「あんたが気にするようなことじゃないでしょう。私が勝手に背負った責任なんだから」
京太郎「だからって、たくさん背負い込んで潰れそうになってるお前を放っとけるかよ」
淡「…………」
京太郎「淡」
淡「京太郎の隣に私がいたら、尭深が幸せになれないから」
京太郎「え?」
淡「どこにも逃げたりしないでずっと、あんたたち二人を遠くから眺めていようと思ったんだ」
京太郎「どうしてそんなこと。尭深さんがそう言ったのか」
淡「私にできることはそれだけだから。見つめることしか許されないから」
京太郎「尭深さんがそう言ったんだな」
淡「…………」
京太郎「ずっと気になってたんだ。呼び出されたお前が、目を赤く腫らして帰ってきたときから」
淡「悪いのは私だもん、尭深が怒るのだって当然だよ」
京太郎「お前を抱いたのは俺の意思だよ」
淡「京太郎」
京太郎「淡一人が悪いわけじゃないんだ。少なくとも昨夜のことなら俺にだって責任がある」
淡「私が全部引き受けるって言ってるのにどうして背負いたがるの。だったら私はなんのために」
京太郎「全部俺のためだろう。だったら背負うよ、俺の幸せを守ろうとしてくれたお前のために」
淡「…………」
京太郎「説明すれば尭深さんだってきっと分かってくれるよ。尭深さんは俺の恋人なんだから」
淡「恋人だからこそ許せないことだってあるよ」
京太郎「確かにそうかもしれないけれど、それでも」
淡「私がこんなこと言うのはおかしいけれどさ。京太郎は多分、尭深のこと分かってないと思う」
京太郎「え?」
淡「京太郎は尭深のことが好き?」
京太郎「いきなり何を言い出すんだよ、そんなの好きに決まってるじゃないか」
淡「それは多分、あの子と付き合い始めてから今までゆっくり大きくなった『好き』なんだよね」
京太郎「ああ、そうだよ。恋愛っていうのは誰しもそういうものだろ?」
淡「尭深はね、あんたと付き合い始めたときからずっと同じくらいの『好き』なんだと思う」
京太郎「よく分からないけど、多分そうなんだろうな。それについては俺も同じ意見だよ」
淡「その好意がどこから来たものなのか、京太郎は考えたことがある?」
京太郎「…………」
淡「やっぱりか」
京太郎「もったいぶらずに教えてくれよ。淡は俺に何が言いたいんだ」
淡「依存だよ」
京太郎「依存って、なんだよそれ」
淡「尭深はもう京太郎なしじゃいられないんだと思う。誇張なんか抜きにしてね」
京太郎「…………」
淡「自分がこんなに好きなんだから京太郎だって同じだけ愛してくれるって、多分そう考えてる」
京太郎「でも尭深さんと恋人同士になった日、あの人は『好意を育みたい』って言ってくれたよ」
淡「だからこそ、同じだけの『好き』を渡し合えるまでに横やりが入ったら。それはきっと」
京太郎「普通じゃいられなくなるって、そう言いたいのか」
淡「…………」
京太郎「考えたこともなかったよ。そんなこと」
淡「尭深の『好き』は約束なんだよ。自分の心を守るために、欠かすことのできない前提だから」
京太郎「だからって尭深さんの好意が本物だとか偽物だとか、俺はそんなこと疑いたくもないよ」
淡「多分、正解なんてどこにもないんだと思う。これは京太郎と尭深だけの問題だから」
京太郎「だったら」
淡「じゃあ、あんたは今すぐに尭深を安心させてあげられる?」
京太郎「…………」
淡「少しの嘘もなく、同じだけの『好き』をあの子にあげられるの?」
京太郎「それは分からないけど、でも」
淡「もう言葉なんかじゃ何も伝わらないんだよ。私と京太郎はそれだけのことをしたんだから」
京太郎「…………」
淡「尭深を安心させてあげるためには、私たちが仲良くしてちゃいけないの」
京太郎「お前はそれで満足なのか。またそうやって、ほんとうの気持ちに嘘をつくのか」
淡「他に方法がないんだもん。仕方ないじゃない」
京太郎「いやだよ、そんなの」
淡「え?」
京太郎「情けない話だけど、今やっとあの人の気持ちが分かったんだ。だからもう逃げたくない」
淡「私の話を聞いていたんでしょう。これ以上、あの子にどんな嘘をつくって言うの」
京太郎「嘘なんてつかないよ。俺の気持ちをちゃんと話して、それから二人で考えるんだ」
淡「京太郎」
京太郎「淡も言っただろ、これは俺たち二人の問題なんだ。尭深さんだけの悩みじゃないんだよ」
淡「…………」
京太郎「ほんとうの気持ちを伝えて、それでもダメだったら。そのときは」
淡「そのときは、なんだって言うの」
京太郎「そのときはまた考えるよ。これは俺たち二人の問題だけど、俺は一人じゃないんだから」
淡「…………」
京太郎「淡?」
淡「ホント、あんたって格好いいのか格好悪いのか全然分かんないよね」
京太郎「なんだよそれ」
淡「自分一人でなんとかしようとは思わないの?」
京太郎「無理してまで格好いい奴になりたいわけじゃねえよ。ダサくても前を向いていたいんだ」
淡「はあ」
京太郎「咲の奴は呆れるかもしれないけどさ。恋人の前でだけ格好良ければ、それでいいんだよ」
淡「…………」
京太郎「だから、淡といっしょのときくらいは格好悪い俺でいさせてくれ」
淡「京太郎」
京太郎「俺が潰れそうになったらそのときは支えてくれよ。なんてったって俺たちは」
淡「友だち、だから?」
京太郎「都合が良すぎるかな」
淡「それでもいいよ。ばか」
尭深「ひょっとしたら今日は来てくれないんじゃないかと思ったよ」
京太郎「どうしても尭深さんに話しておきたいことがあるんです」
尭深「お昼ごはんを食べてからでもいいじゃない。今日は私の番だからお弁当だってちゃんと」
京太郎「俺は昨夜、淡を抱きました」
尭深「…………」
京太郎「淡のことを愛しています。友だちとしても、一人の異性としても」
尭深「だったらどうしたって言うの。私を捨ててあの子の恋人になるのかな」
京太郎「俺の恋人は尭深さんです」
尭深「京太郎くんは多分、自分が何を言ってるのか分かってないんだよ」
京太郎「自分のほんとうの気持ちは俺が一番分かってるつもりです」
尭深「淡ちゃんに何を吹き込まれたの」
京太郎「俺が本気じゃなかったから。だから尭深さんを不安にさせてしまったんですよね」
尭深「そうだよ、不安でたまらなかった。私はこんなに好きなのに裏切られちゃったんだもん」
京太郎「ごめんなさい」
尭深「ごめんなさいじゃないよ」
すみません、前回に引き続き「-----」のコピペに失敗しました。場面転換してます
京太郎「それでもごめんなさい。昨夜のことも、今までのことも全部」
尭深「そうやって謝ったらあなたは私を安心させてくれるの。私と同じくらい好きって言える?」
京太郎「俺は尭深さんがいなくても生きていけます」
尭深「…………」
京太郎「淡がいなくたって同じことです。それは悲しいことですけど、全部続いていくんです」
尭深「薄情だね」
京太郎「だけどちゃんと好きなんです。あなたと過ごした時間だけ、ここに好意はあるんです」
尭深「私だってそう思いたいよ。一番近くで積み重ねてきたんだもん」
京太郎「今はまだ、尭深さんと同じくらい好きだなんてとても言えませんけど。それでも」
尭深「だったら同じことじゃない。言い訳にもならないよ、そんなこと」
京太郎「…………」
尭深「最初から不安だったんだ。だけど『あなたの恋人になればいつかは』って思ってたの」
京太郎「だったらここで約束します。尭深さんがくれるだけの『好き』を、いつか必ず返します」
尭深「口先だけならなんとでも言えるよ。これ以上どんな言葉を信じられるだろうね」
京太郎「あなたを愛しています」
尭深「…………」
京太郎「尭深さん」
尭深「やっぱりダメだよ、何を言われても信じられない」
京太郎「…………」
尭深「そもそも京太郎くんが無理する必要はないでしょう。私はあの子さえいなければ、それで」
京太郎「それはできません」
尭深「京太郎くん」
京太郎「あいつが選んだ結果だとしても、それでも俺には分かるんです。そんなの絶対間違ってる」
尭深「どうしてそこまで」
京太郎「淡の友だちだからです」
尭深「…………」
京太郎「お願いします尭深さん。俺をあいつの友だちでいさせてください」
尭深「それもダメだと言ったら、そのとき京太郎くんはどうするの」
京太郎「それは」
尭深「大切な友だちのために、恋人である私を捨てる?」
京太郎「…………」
尭深「どこまでいっても禅問答だよ。私を大切に思ってくれているなら、しっかり態度で示して」
京太郎「態度、ですか」
尭深「この間の続きをしてよ、私だってもう逃げたりしない。最後までしたいの」
京太郎「この間の続きって、学校の屋上でそんなこと」
尭深「せっかくだから淡ちゃんにも見てもらおうか。京太郎くんが呼べばすぐにでも来るよね」
京太郎「尭深さん」
尭深「淡ちゃんとは最後までしたのに、私とはセックスできないんだ」
京太郎「そうじゃない! そうじゃありませんけど、でも!」
尭深「怖いんでしょう」
京太郎「…………」
尭深「私の『好き』が信じられないから、怖くて仕方がないんだよね。京太郎くんは」
京太郎「違う。俺はただ」
尭深「私だって信じられないんだもん、京太郎くんが信じられないのだって当然だよ」
京太郎「え?」
尭深「京太郎くんだって分かってるんでしょう。私の『好き』は普通じゃないの」
京太郎「…………」
尭深「本当、どうしてこんなことになっちゃったんだろうね」
京太郎「後悔してるんですか。俺と恋人同士になったこと」
尭深「そうかもね。あなたと出会わなければよかったって、今は本気で思ってる」
京太郎「…………」
尭深「いつかもこんなことを話したっけ。たった一ヶ月なのに随分昔のことのように思えるよ」
京太郎「それは、俺たち二人にとっては『たった一ヶ月』じゃなかったから」
尭深「幸せだったよ、悲しいくらい。私ばっかり色めき立って馬鹿みたいだよね」
京太郎「尭深さん」
尭深「言い訳なんかしないでよ。あなたのことなら全部分かるもん、ずっと見つめていたからさ」
京太郎「なかったことにするつもりなんですか。幸せな思い出も、楽しかったことも全部」
尭深「私はね、死にたくないんだ」
京太郎「…………」
尭深「このまま京太郎くんとすれ違っていったらきっと、いつか私は死んでしまうから」
京太郎「だから、あなたは」
尭深「うん」
京太郎「だから別れようって言うんですか。俺たち二人は、もう終わりだって言うんですか」
尭深「それしか方法がないじゃない。あなたが思ってるよりずっと、私は自分が大切なんだから」
京太郎「なんだよ、それ」
尭深「私は多分、私を大切にしてくれる京太郎くんが欲しかったんだよ」
京太郎「全部嘘だったんですか。尭深さんが俺にくれた言葉も、いっしょに過ごした日々さえも」
尭深「…………」
京太郎「尭深さん」
尭深「そうだよ」
京太郎「どうして」
尭深「嘘つきはお互いさまじゃない。今さらそんなこと聞かないで」
京太郎「…………」
尭深「もうすぐ予鈴が鳴っちゃうね。お弁当は作ってきたけど、こんなの食べたくないでしょう」
京太郎「食べますよ。これからもずっと食べますから、だから」
尭深「今度からは淡ちゃんに作ってあげたらいいよ。私にはもう、そんな権利ないから」
京太郎「尭深さん!」
尭深「…………」
京太郎「…………」
尭深「もう行くね」
-----
誠子「ブラックだけどいいよね。先輩の奢り」
京太郎「ありがとうございます」
誠子「…………」
京太郎「…………」
誠子「尭深と別れたんだね。そんな顔してる」
京太郎「弘世先輩から聞いたんですか。淡とのこと」
誠子「うちの部室は屋上の真下だからさ。ベランダで涼んでたら、ちょっとね」
京太郎「…………」
誠子「いいや、これもきっと嘘かな。私は多分あの二人に嫉妬してたんだ」
京太郎「嫉妬、ですか」
誠子「私ね、初めて会ったときからずっと須賀くんのことが気になってたんだ」
京太郎「へ」
誠子「やっぱり気付いてなかったか。想いは口に出さないと伝わらないんだもんね」
京太郎「ごめんなさい。俺」
誠子「いいんだよ。私なんかの『好き』を尭深や大星のといっしょにしたら怒られちゃう」
京太郎「だけど俺、先輩の気持ちなんて少しも知らないで。ずっと」
誠子「何か諦めないと手に入れられないものがあったんだよ。私は不器用だから」
京太郎「先輩」
誠子「尭深もきっとそうだと思う。自分の全部をあげないと、君から何も貰えないと思ってる」
京太郎「…………」
誠子「須賀くんはどうかな」
京太郎「俺も同じですよ。やりたいことを見つけたと思ったら、全て掴むには何か足りなかった」
誠子「皆そうなんだよね、きっと。私たちはまだ高校生なんだから」
京太郎「それでも、ずっとこのままじゃいられない」
誠子「格好いいね。須賀くんは」
京太郎「そんなこと」
誠子「ううん、格好いいよ。少なくとも私と大星だけは分かってる」
京太郎「…………」
誠子「須賀くんはさ、あの日の屋上で弘世先輩に言ったことを覚えてるかな」
京太郎「誰かのためじゃなく、自分のために」
誠子「あれさ、嘘だよね」
京太郎「え?」
誠子「言い方が悪かったかな。全部が全部自分のためだなんて、本当は思ってないんでしょう?」
京太郎「…………」
誠子「きっと心のどこかでは分かってるんだよ。自分一人で幸せになることなんてできないって」
京太郎「買いかぶりすぎですよ」
誠子「大星を迎えにいったのだってそうじゃない。あの子なしではいられなかったんでしょう」
京太郎「それもやっぱり自分のためですよ。全部俺の独りよがりでこんなことになってしまった」
誠子「同じことだよ。須賀くんが君自身のために動かなかったら、大星は今でも一人きりだった」
京太郎「…………」
誠子「その選択が間違いじゃなかったって証明したいから、今も必死で考えてるんだよね」
京太郎「それは、そうですけど」
誠子「そんな須賀くんだから私は格好いいと思ったんだよ。とっても眩しくて、キラキラしてる」
京太郎「先輩」
誠子「尭深のこと、今でも好き?」
京太郎「…………」
誠子「あの子の友だちとして、ちゃんと確かめておきたいんだ。それくらいは許してくれるよね」
京太郎「たとえ信じてもらえなくても、約束しようと思ってたんです」
誠子「うん」
京太郎「失敗しても何度でも伝えようって。周りの誰かに相談しようって、そう思ってた」
誠子「…………」
京太郎「それでもいざ尭深さんに『全部嘘だった』なんて言われたら、何も分からなくなって」
誠子「須賀くん」
京太郎「本当はあのとき伝えるべきだったんです。全てが嘘でも俺は尭深さんが好きなんだって」
誠子「それは須賀くんの、ほんとうの気持ちなのかな?」
京太郎「…………」
誠子「力になってあげられなくてごめんね」
京太郎「先輩」
誠子「ほんとうの気持ちが見えなくなったら、やっぱり自分で見つけてあげるしかないんだよ」
京太郎「…………」
誠子「須賀くんはさ、宮永先輩のことが好きだったんだよね」
京太郎「え?」
誠子「この学校に来たのも先輩を追いかけてきたからだって、随分前に聞いたんだ」
京太郎「好きでしたよ。まだ小学生の頃からずっと、俺は照さんに憧れてましたから」
誠子「ゴールデンウィークの少し前、私たちが知り合ったとき。君はどんな気持ちだった?」
京太郎「…………」
誠子「須賀くん」
京太郎「全部がどうでもよくなって、何もかも終わってしまったんだなって。そう思いました」
誠子「でも、終わらなかった」
京太郎「それは、そうですけど」
誠子「全てがゼロになっても君は終わらなかった。新しい意味を見つけて、また歩き出したんだ」
京太郎「…………」
誠子「ほんとうの気持ちが分からなくなって立ち止まって。それでもまだ、何か続いてる」
京太郎「先輩」
誠子「涙はもっと出るでしょう。限界なんかじゃないんだもん、今度もまた歩き出せるはずだよ」
京太郎「そうかな」
誠子「きっとそうだよ。他の誰かに分からなくても、私だけはちゃんと知ってるから」
京太郎「え?」
誠子「他の何もかもを失くしても、気持ちだけはなくならないんだ。片想いの先輩が保証するよ」
京太郎「亦野先輩」
誠子「なんちゃってね。柄にもなく格好いいこと言っちゃったかな」
京太郎「格好、良すぎですよ」
誠子「好きな子の前だもん。少しは大目に見てやってよ」
京太郎「…………」
誠子「須賀くん?」
京太郎「俺、照さんとのことも本当は見て見ぬ振りだったんです」
誠子「うん」
京太郎「尭深さんと付き合ったのだって、単に逃げてしまいたかっただけなのかもしれません」
誠子「宮永先輩を想ってた気持ちだって、君を作ってた宝物だもん。そんなに簡単じゃないよね」
京太郎「だから今度こそ照さんとの関係を清算して、ほんとうの気持ちを見つけようと思います」
誠子「それが、須賀くんが今やりたいことなのかな」
京太郎「やりたいことはまだ分かりません。それでも、やるべきことは分かった気がするんです」
誠子「…………」
京太郎「誠子さん。俺のことを好きになってくれて、ありがとう」
誠子「いいよ」
-----
咲「京ちゃんが電話をくれるなんて久しぶりだね。今晩はどういったご用件?」
京太郎「お前の声が聞きたくなったんだよ」
咲「…………」
京太郎「なあ、咲」
咲「なあに、京ちゃん」
京太郎「俺が悩んだり辛くてしょうがないとき、いつも側にはお前がいてくれたんだよな」
咲「幼なじみだもん。当然だよ」
京太郎「だから今度も、前を向いてもう一度歩き続けるために。お前と話しておきたかったんだ」
咲「決着を付けるんだね。お姉ちゃんと」
京太郎「ああ。ここに来るまで随分遠回りをしちまったけど、ようやく覚悟が決まったよ」
咲「…………」
京太郎「咲?」
咲「私ね。今の今までずっと、京ちゃんのことを助けてあげようって思ってたんだ」
京太郎「…………」
咲「麻雀部に入ったのだって、本当はお姉ちゃんを懲らしめてやりたかったから」
京太郎「咲」
咲「インターハイでお姉ちゃんに勝って、力ずくでも京ちゃんと向き合わせてやろうと思ってた」
京太郎「…………」
咲「でもやっぱりダメだね。気持ちばかり先走って、県予選は団体戦も個人戦も負けちゃった」
京太郎「決勝戦の牌譜は俺も見たよ」
咲「五人だけの麻雀部だから、雑用も何もかも自分たちでやってたんだ。大変だったよ」
京太郎「なんか、ごめん」
咲「京ちゃんが謝るようなことじゃないよ。負けちゃった原因は他にあったんだもん」
京太郎「え?」
咲「チームメイトと喧嘩しちゃったんだ。そんな理由で打ってる人とはいっしょに戦えないって」
京太郎「…………」
咲「京ちゃんのことを信じてなかったから負けちゃったんだって、私は今でもそう思う」
京太郎「現に今日までずっと逃げ続けてたんだ。咲が気に病むことじゃないよ」
咲「それでもやっぱり、私の手で助けてあげたかったんだよ。心のどこかでまだ期待してたんだ」
京太郎「うん」
咲「私は今でも、京ちゃんのことが好きだから」
京太郎「…………」
咲「京ちゃんには今、お姉ちゃんより好きな人がいるの?」
京太郎「どうなんだろうな」
咲「え?」
京太郎「ほんとうの気持ちなんて、自分が一番分かってるもんだと思ってたんだ」
咲「京ちゃん」
京太郎「右へ行ったり左へ行ったり。そんなことをしてる内に、大切な人を傷付けてしまったよ」
咲「…………」
京太郎「そんな俺でも幸せになりたくて、幸せにしてあげたくて。その方法をただ探してるんだ」
咲「ばかだよね、京ちゃんは」
京太郎「へ」
咲「私だったら京ちゃんにそんな思いをさせたりしないよ。いっしょに悩んであげるのに」
京太郎「…………」
咲「そんなの、私なんかよりもずっとずっと好きってことじゃない」
京太郎「咲」
咲「…………」
京太郎「ごめんな」
咲「許してあげたら、京ちゃんは私のものになってくれるの?」
京太郎「心にもないこと言わせちまって、ごめん」
咲「…………」
京太郎「俺のことならなんでも知ってる咲だから、今度もそんな風に俺を助けてくれたんだよな」
咲「京ちゃんのことなんか何も知らないよ。いつだってあなたが勝手に立ち上がるだけだもん」
京太郎「…………」
咲「あなたが歩く道を照らすのは私。だけど、誰の隣で歩くのかを決めるのは京ちゃんなんだよ」
京太郎「ああ」
咲「それがどんなに残酷なことでも、他の誰かにできないことなら私が引き受けてあげるから」
京太郎「…………」
咲「だから私を使ってよ。あなたの位置と行く先を、その目でちゃんと確かめて」
京太郎「咲」
咲「京ちゃん」
京太郎「俺はお前を愛してる。この先何があっても、どうしたって俺の心に咲がいてくれる」
咲「うん」
京太郎「そんなお前より、大切な人がいるんだ」
咲「そっか」
京太郎「本当に不器用で、危なっかしくて。俺が手を繋いでないと死んじまうような人で」
咲「面倒くさいね、本当に。京ちゃんはそんな子ばかり好きになるんだから」
京太郎「だけど、誰より近くで見つめていたいと思ってる」
咲「それは、自分のために?」
京太郎「今もどこかで苦しんでるあの人のために。あの人が好きな俺自身のために」
咲「欲張りだよね、京ちゃんは」
京太郎「荷物を下ろしたら腕は二つになるんだ。今度こそちゃんと掴んで歩いていけるさ」
咲「両手に花を抱えて、大切な人と幸せになって。京ちゃんはどこまで行くつもりなのかな」
京太郎「それは俺にも分からないよ。だけど、どこまでだって行ける気がする」
咲「月まで着いたら引き返してよ。いつまでだって、京ちゃんを待ってる場所があるんだから」
京太郎「たくさん土産を持って帰るよ。うさぎが餅をついてたら、かっぱらって持ってきてやる」
咲「そのときは皆でいっしょに食べようね。お姉ちゃんには内緒だよ」
京太郎「それくらいの意地悪なら許されるよな。きっと」
咲「へへ」
京太郎「なあ、咲」
咲「なあに、京ちゃん」
京太郎「サンキュな。こんな時間までつまんない話聞いてくれて」
咲「本当だよ、夜更かしはお肌の天敵なのにさ。もしも荒れたら責任取ってくれる?」
京太郎「肌が荒れたって、鮫肌になったって。お前はお前だよ」
咲「…………」
京太郎「だから、いつまでだって俺の幼なじみでいてくれよな」
咲「それはもう。京ちゃんが彼女さんに愛想を尽かされても、ずっとね」
京太郎「咲」
咲「全部終わったら。お姉ちゃんと仲直りできたら、そのときは私たちの話も聞いてくれるかな」
京太郎「朝になっても聞いてやるよ。その晩でも、その次の朝でも」
咲「…………」
京太郎「…………」
咲「京ちゃん」
京太郎「おう」
咲「今でもずっと、これからもずっとずっと愛してるよ」
-----
照「少しだけ待たせちゃったかな。ごめんね、京ちゃん」
京太郎「ずっと待ってるつもりでしたよ。呼び出したのは俺の方ですから」
照「それでも申し訳ない気分でいっぱいだよ。最初のデートに遅刻しちゃったんだもん」
京太郎「デート、ですか」
照「そうだよ、これは私たち二人にとって大切なデートなんだ。ここから全てが始まるんだから」
京太郎「本当はあのとき聞きたかったんです。俺たち三人の関係を、どうして壊そうとしたのか」
照「あはは」
京太郎「だけど今なら分かります。何もかも、俺たちにとっては間違いなんかじゃなかったって」
照「…………」
京太郎「だからこそ、今度は逃げずに聞きたいんです。ここで出会ったあの日のことを」
照「私たち姉妹のこと、咲からは何も聞かされてないんだね」
京太郎「それはまだ、今の俺が立ち入っていいような話じゃありませんから」
照「そうだね、京ちゃんの言う通りだよ。確かにこれは私たち三人の問題だった」
京太郎「それでもやっぱり、あの日の真意を聞くことくらいは俺にも許されるでしょう。照さん」
照「それを知って、京ちゃんはどうするの?」
京太郎「あなたを好きだった自分に決着を付けます」
照「へえ」
京太郎「俺がこの先歩いていくために、中途半端な気持ちのままじゃいられませんから」
照「ねえ、京ちゃん」
京太郎「なんですか」
照「私ね、京ちゃんのことが好きだから」
京太郎「…………」
照「あなたがまだまだ小さい頃からずっと、京ちゃんのことが大好きだったんだよ」
京太郎「…………」
照「あの日知らない振りをしたのだって、京ちゃんを嫌いになったからじゃないの」
京太郎「嘘、ですよね」
照「ほんとうの気持ちだよ。私はただ、咲との関係をなかったことにしたかっただけだもん」
京太郎「なんで、どうしてそんなこと」
照「馬鹿なことをしたと思うよ。こんなにも近くにいた青い鳥を、自分の手で手放したんだから」
京太郎「照さん」
照「だけど私の目論見通り、ちゃんと私の元に戻ってきてくれたんだよね。京ちゃんは」
京太郎「照さん。あなたまさか」
照「淡との関係を白紙に戻して、恋人だった尭深と別れて。全てが振り出しに戻ったでしょう?」
京太郎「…………」
照「ずっとこのときを待っていたんだ。たった今から、京ちゃんは私のものになるんだもんね」
京太郎「そんなことのために色んな人を傷付けて、かき乱して。あなたはそれで満足なんですか」
照「おかしなことを聞くんだね。私の世界に必要な人なんて京ちゃんと咲ぐらいのものじゃない」
京太郎「だったら弘世先輩は、麻雀部は。あなたにとって一体なんなんですか」
照「さあね、一度だって考えたことがないよ。それくらい取るに足らないことだから」
京太郎「どうして、そんな」
照「今日まで本当に辛かったよ。焦がれてやまないあなたを前に、指をくわえて待っていたんだ」
京太郎「照さん」
照「そんな日々もこれで終わり。全てを失った京ちゃんにとって、拠り所なんて私だけだもんね」
京太郎「…………」
照「長話はこれくらいでいいでしょう。この手を取ればもう一度始まる、二人でまた歩き出せる」
照「私のものになってくれるよね。京ちゃん」
Shiraito Days
第五話「Still I Love You」
レスありがとうございます。励みになります
長いこと淡ちゃん中心の描写が続いたので、今回は1話を踏襲する形で京太郎にスポットを当ててみました
(実感ありませんが)次回で最終話です。書きたかったものは全て書き終えたので、あとは落ち着いて畳もうと考えています
また、結末の構想自体は1話を書いている頃からあったので、当初の予定通り来週の日曜日には投下できるものと思います
安産です
最終話「スクールデイズ」は11/24(日)12時投下の予定です。ご期待ください
何気に清澄負けてるし、のどっちが転校してきてもう一波乱……は流石に無いか
霞さん、すばら、ころたんと順調に小さくなっているが、次は誰が母親になるんだろ?
>>465
最近のマイブームは「僕が生まれてこなければお母さんだって死なずに済んだんだ!」などと逆上して
育ての親である玄ちゃんをマジ泣きさせるシチュエーションです。仲直りのあとは「お母さん」と呼んであげます
花の二十代を家業と育児に費やし気付けば三十代も曲がり角な玄ちゃんいい・・
自らの存在意義であった義理の息子に親離れを切り出され歯車が狂い始める玄ちゃんいいよね・・
ふと閃いて大人用紙おむつについて調べてみたのですが
なかなか値段が張るようでがっかりしました・・
残念です。。。
はじめちゃんの従姉妹適正はなんとなくわかる
>>480
それまで何時間か下の子の面倒を見ていた弟くん(僕)に
アイスクリームを買ってくれる一お姉ちゃんいいですよね・・
年に何度かしか会えないものだから
顔を会わせる度女らしくなっていくのが分かる一お姉ちゃんいい・・
下の子()がうとうとしだしたから膝貸してくれるんだけど
ぱっと見た印象せいちょうして無いのに
例の私服が強調するふとももが確かな柔らかさを返してきて
やっぱり女の子なんだなって性別の差を感じ始めた所で
一ちゃんのまだ幼い母性が彼女に頭を撫でさせるものだから
ビックリするとともに何だかムラムラしてきちゃうけど
まだ小さくてそういうことがよく分からない下の子が勃ててるのを見た一ちゃんが
自分も経験無いのに強がって、で二人とも好奇心に負けちゃって
色々と教えながら目覚めてく展開はよ
ふざけようとしたら長くなった……
>>482
`i}:::::::::::::::::::| _,. .ィ
,、:::::::::::::::l_ /::/
ヽ::::::::::::i′ /:/ _
`^i::::::', _ ∠_,r:::i´/
ゞ:::::',ヽニ_ー-_-___--、 ` ^ ̄
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女の子におちんちんの状態を指摘されるシチュエーションはやっぱり素晴らしいですよね・・
>まだ小さくてそういうことがよく分からない下の子が勃ててるのを見た一ちゃん
草加さん進捗どうですか
>>484
本編のtxtは全て書き終わりました。全体の見直しにもう少し時間を使います
予定していた咲ちゃんの幕間ですが、第五話とエピローグで十二分に補完できるものと判断しましたので
誠に勝手ながらこれを省略し、24日の投稿をもって白糸デイズの連載を終了させていただこうと思います
もっと続きを読みたいが、全体が書き上がってるんじゃしゃあないな
ダラダラ続けずきちんと終わらせるというのも大事なことなんだろうし
それはそれとして>>1の性癖暴露というか妄想爆発は別枠で続けてもらえるんですよね?
>>486
(スレを立てる前から)全六話でピッタリ終われるよう構成していたので、ご理解いただけてありがたいです
それと僕の性的嗜好はさほどアブノーマルではないというか、ニッチではあれ誰しも考えうることだと思いますので
そうしたありふれた趣味・シチュエーションを今後特別に発信し続ける予定はございません。期間限定です
余談ですが、総合スレで「マホちゃんに子ども扱いされたい」とレスされた方とは非常に気が合いそうだと感じました
僕もマホちゃんに横たえられて、おしっこをたっぷり吸ったおむつを替えられた後でベビーパウダーをまぶされたいです
Shiraito Days
照「この手を取ればもう一度始まる、二人でまた歩き出せる。私のものになってくれるよね」
京太郎「…………」
照「京ちゃん」
京太郎「確かめたかったんだ。何もかもを失くしてしまっても、想いだけはなくならないって」
照「え?」
京太郎「誠子さんの言う通りだったよ。俺は本当に、自分でも笑っちまうくらい面倒くさい男だ」
照「…………」
京太郎「ねえ、照さん」
照「なあに、京ちゃん」
京太郎「今でも心にあなたがいます。本当のあなたを知っても変わらず、俺は照さんが好きです」
照「だったら」
京太郎「それでも俺は、俺のほんとうの気持ちは。あなたのものにはならない」
照「…………」
京太郎「ごめんなさい」
照「私を切り捨てて、何もかも失った上で一人きりになって。ありえないよそんなの」
京太郎「照さん」
照「京ちゃんの心だったらここにあるじゃない。今だってこんなに高鳴っているのに、どうして」
京太郎「好きな人がいるんです。照さんよりも咲よりも、誠子さんよりずっと好きなんです」
照「意味が分からないよ」
京太郎「…………」
照「尭深は! あの子たちは皆、京ちゃんのことなんて全然なんとも思ってないんだよ!」
京太郎「そんなの関係ありませんから。嫌われたって嘘だって、俺の気持ちは変わりません」
照「全部最初に戻ったはずなのに。私を好きでいてくれた京ちゃんはどこへ行ってしまったの」
京太郎「今だってここにいますよ。たとえ変わってしまっても、消えてなくなりはしないんです」
照「嘘だよ」
京太郎「嘘じゃありません。俺が今こうしてここに立っていられるのだって、その証明ですから」
照「え?」
京太郎「照さんのことが今でも好きだからこそ、俺は尭深さんのことを想っていられるんですよ」
照「…………」
京太郎「尭深さんへの好意が信じられないのなら、照さんへのそれだって信じられないはずです」
照「何、それ」
京太郎「誰より尭深さんを愛しています。もう、ほんとうの気持ちを見失ったりはしません」
照「どうしてそんな。だっておかしいよ、こんなの」
京太郎「…………」
照「なんで自分から傷付こうとするの。返して貰えない愛に一体どんな意味があるって言うの」
京太郎「そんなの俺が聞きたいくらいですよ」
照「え?」
京太郎「そういう風にできてるんです。俺の心に形があるなら、それは尭深さんの形だろうから」
照「…………」
京太郎「こういうのは、惚れた方の負けなんですよ。きっと」
照「…………」
京太郎「…………」
照「京ちゃんに勝って私にも勝って。誰も敵わないんだ、あの子には」
京太郎「照さん」
照「きっとそうなんだよね。『次こそは』なんて思っていたけど、今度も私は勝てなかったんだ」
京太郎「ごめん」
照「もういいよ。こうなってしまうのは多分、最初から全部分かってたことだから」
京太郎「え?」
照「負けてばかりの人生だもん。『いっそ終わってしまえばいいのにな』って、いつも思ってた」
京太郎「照さん」
照「ねえ京ちゃん。後夜祭のお相手を迎えに行く前に、二つだけ頼みごとを聞いてくれるかな」
京太郎「…………」
照「お願い」
京太郎「俺に、できることだったら」
照「今すぐ背中を向けて、私がいいって言うまでこっちを見ないで。顔を見られたくないんだ」
京太郎「もう一つの頼みっていうのは」
照「妹のこと。咲のことを京ちゃんにお願いしたいの」
京太郎「え?」
照「これから先続いていく道の途中で、あの子が。咲が助けを求められない状況にあったら」
京太郎「…………」
照「そのときは助けてあげて欲しいの。私によく似て、変に頑固で素直じゃない子だから」
京太郎「どうして」
照「振り向かないでって言ったじゃない。約束したのに、やっぱり京ちゃんは噓つきだよ」
京太郎「どうしてそんなこと頼むんだよ。どうして、そんなとこに立ってんだよ!」
照「さっきも言ったでしょう。もう何もかも全部、終わりにしちゃいたいんだよ」
京太郎「だからって!」
照「想いを失くしてしまえないのなら、死んで消すしかないじゃない。他に方法はないんだから」
京太郎「…………」
照「最後の最後で意地悪なことを言ってごめんね。それでもやっぱり、私にはもう無理だからさ」
京太郎「最後なんて言うなよ。そんな簡単に誰かの前からいなくなったりするなよ」
照「簡単なわけないじゃない。簡単じゃないから何もかも忘れてしまいたいんだもん」
京太郎「忘れたくないことだってあるはずでしょうが! 全部捨ててしまってどうするんですか!」
照「ないよ、そんなの」
京太郎「だったらこれから作ればいいじゃないですか! 死んだらそれすらできないんですよ!」
照「ねえ京ちゃん。強いて言うなら、最後にあなたと両想いになれて少しだけ」
京太郎「…………」
照「本当に少しだけだけど、幸せだったよ」
京太郎「照さん」
照「じゃあね。京ちゃん」
京太郎「照さん!」
-----
照「…………」
菫「…………」
照「どうして。菫」
菫「妙な胸騒ぎがしたんでな。ベランダで聞き耳を立てていて正解だったようだ」
照「手を離してよ。菫までいっしょに落ちちゃう」
菫「馬鹿言え、絶対離してやるもんか。お前をこのまま逃がしたりはしないよ」
照「菫」
京太郎「弘世先輩!」
菫「安心しろよ京太郎、この通りしっかり掴んでる。間一髪だったけどな」
京太郎「今すぐ部室に降りますから、それまではなんとか」
菫「いいや、君はこのまま尭深の元へ行ってくれ。フォークダンスの相手を今も待ってるはずだ」
京太郎「何言ってるんですか! 今はそんなことしてる場合じゃないでしょう!」
菫「こいつは私が助ける」
京太郎「は?」
菫「約束するよ。もう一度だけ私を信じてくれ」
京太郎「先輩」
菫「行けよ京太郎、今度だって自分のために。大切な誰かのために」
京太郎「…………」
菫「…………」
照「行っちゃったね」
菫「今さらここまで来たって間に合わないさ。仮に飛び移ったとしても今度は彼が落ちてしまう」
照「そろそろ限界なんでしょう。京ちゃんもいなくなったんだし、もう離してもいいんじゃない」
菫「約束したんだ、私の命に代えても助けるよ。たとえこの高さだろうと私が下になれば恐らく」
照「やめてよ菫。あなたの命を貰うだけの価値もその資格も、私にはないんだから」
菫「知ってるよそんなこと。現に今まで、お前に麻雀以外を求めたことなんてなかったからな」
照「だったら」
菫「価値も資格もこれから見出せばいいんだ。始めはどんなに小さなことだっていいんだよ」
照「…………」
菫「麻雀のことだってそうさ。誰かがお前に頼ったら、今度はお前が頼っていいんだ」
照「菫」
誠子「そうですね。どんなことだってきっと、そういう風にできてるんだ」
菫「誠子、どうして」
誠子「弘世先輩といっしょですよ。来るのが少し遅かったみたいですけど、間に合って良かった」
菫「だったら、これも京太郎が選んだ結果かな」
誠子「きっとそうですよ。だからこそ、やっぱりこの手だけは離しちゃいけないですよね」
菫「その通りだ。たとえ引き上げられなかったとしても、掴んだこの手は離さない」
照「落ちなくたってずっとこのままじゃない。たった二人じゃいつか限界が来るでしょう」
誠子「たった二人じゃないみたいですよ」
照「え?」
「宮永先輩!? ちょっと亦野さん、これはどういうことなの!」
「弘世先輩は少し休んでいてください。もうほとんど力が入ってないじゃないですか」
「もう少しだけ頑張ってね! 皆で引っ張ればすぐなんだから!」
誠子「道すがら、彼が声を掛けたんでしょうかね」
菫「私を信じてくれていたのか。今の今まで持ちこたえられると」
誠子「皆があなたを必要としてるんです。宮永先輩」
照「…………」
菫「準備はいいな、一気に引っ張り上げるぞ! せーの!」
照「…………」
菫「どうやら命拾いしてしまったようだな」
照「どうして」
菫「どうしてもこうしてもあるか馬鹿。お前に死なれたら困るからに決まっているだろうが」
照「あなたたちにとって私はなんだって言うの。本気じゃないのに助けたりしないでよ」
菫「照」
照「一人のまま生き続けたって仕方がないでしょう。これ以上私にどんな希望が残されているの」
菫「…………」
照「黙ってないでなんとか言ってよ!」
菫「知るかよそんなこと」
照「え」
菫「そんなこと知るかって言ってるんだよ。お前を助けたのは私の自分勝手だよ、文句あるか」
「弘世、先輩?」
菫「甘えたことばかり言いやがって。一人でいたくないならちゃんとそう言えばいいだろうが」
照「菫」
菫「いじけて呟く余裕があるなら、黙って私の友だちになれ!」
照「…………」
菫「…………」
照「へ?」
菫「さっさとケータイを出せ! 今すぐにだ!」
照「え、うん」
菫「お前もガラケーなのか。揃いも揃って仕方がない奴らだな、まったく」
「弘世先輩」
「手ずからアドレスを打ち込んでるわね、あれ」
菫「ほら、私の連絡先を登録しておいてやったぞ。メールでも電話でも好きにしたらいい」
照「菫、どうしてこんなことを」
菫「私がなってやるって言ったんだよ、お前の友だち第一号にな。これでもう一人じゃないだろ」
照「友、だち」
菫「不服だろうが我慢してくれよ。今のお前なんかには、私なんかが相応しいんだ」
照「…………」
菫「照」
照「えっと、その。よろしくお願いします?」
-----
「お茶子は例の彼を待ってるわけ?」
尭深「別にそんなんじゃないよ。そんなんじゃ、ないから」
「何言ってんのさ。後夜祭の伝説を信じてるから、こんな中庭なんかで待ちぼうけてるんでしょ」
尭深「…………」
「後夜祭でいっしょに踊ったカップルはその年の間だけ別れずにいられる、だっけ」
「去年まで女子高だったのにね。なんだか耽美な香り」
尭深「私と京太郎くんはそういう関係じゃないの。だからここで待っていたって、どうせ」
「まあ、どう考えてようがお茶子の勝手だけどさ。あんたの彼はそう思ってなかったみたいだよ」
尭深「え?」
「後ろ」
京太郎「尭深さん」
尭深「京太郎くん。どうしてここに」
京太郎「昨日の屋上であなたに言えなかったことを、今ここで伝えるために」
尭深「今さらどんなことを話そうって言うの。私たち二人はもう」
京太郎「あなたが好きです」
尭深「…………」
京太郎「尭深さんが俺のことをどう思っていたとしても。それでも俺はあなたが好きです」
尭深「嘘だよ」
京太郎「ほんとうの気持ちです。それでも信じられないって言うなら、今ここで証明してもいい」
尭深「証明? 無駄だよ、今さら何を言われたって私は」
京太郎「渋谷尭深さん、あなたのことが大好きです! 俺ともう一度付き合ってください!」
尭深「な」
「ちょっとちょっと今の聞いた!? 金髪の一年生、お茶子にガッツリ告ってたよね!」
「我らがアイドル尭深ちゃんに手を出すとはいい度胸だよ! 裏千家の奥義を見せてやろうか!」
「あはは、お茶子ったら真っ赤になってるよ。これからは紅茶を嗜んだりするのかな?」
尭深「何を大声で言ってるの!? こんなに人目のあるところで、そんなことしたら!」
京太郎「ええ。もしも裏切ったりしたら、今度こそファンの皆さんに殺されてしまいますよね」
尭深「…………」
京太郎「へへ」
尭深「京太郎くん、あなたまさか」
京太郎「この先あなたを悲しませないと約束します。今この中庭にいる人たち、全員が証人です」
尭深「…………」
京太郎「ねえ尭深さん。同じだけの『好き』を尭深さんが返してくれなくたって俺はいいんです」
尭深「どうして」
京太郎「誰にどう思われてるかじゃないんですよ。自分の気持ちに正直でいたいだけなんだから」
尭深「私はきっと、あなたが思うような人間じゃないんだよ。相応しい子なら他にいるでしょう」
京太郎「相応しいかどうかなんて、尭深さんが決めることじゃありませんよ」
尭深「京太郎くんに隠している嘘だってたくさんあるんだから。全てを知ったらあなただって」
京太郎「嘘をつかれて百回嫌いになったら、百一回だけ本当を見つけてもう一度好きになります」
尭深「だけど。だけどさ」
京太郎「好きがホントか分からなくても、誰より近くで育むために。俺の恋人になってください」
尭深「…………」
京太郎「尭深さん」
尭深「ばかだよね。京太郎くんは」
京太郎「色んな人から言われてますよ。こればっかりは死なないと治りませんから」
尭深「すぐ格好付けるし、淡ちゃんと浮気はするし。こんな状況で人の告白を真似してくれるし」
京太郎「ごめん」
尭深「本当にサイテーで、どうしようもない噓つきで。つける薬もないくらいのおばかさんで」
京太郎「…………」
尭深「本当に、どうしてこんな人を好きになっちゃったんだろ。懲りるってことを覚えたいよ」
京太郎「へ」
尭深「…………」
京太郎「それって、もしかして」
尭深「もう一度だけ後悔してあげるよ。どんなときでも一番側で、あなたのおばかが治るまで」
京太郎「尭深さん」
尭深「私はあなたで我慢するんだもん、あなたも私で我慢してよね。浮気は許さないんだから」
京太郎「俺の恋人は、尭深さんだけですよ」
尭深「だったら淡ちゃんばっかり構ったりしないで、いっしょにいるときは私だけ見てくれる?」
京太郎「えっと、ごめんなさい。それはやっぱり『友だちは友だち』ってことで」
尭深「…………」
京太郎「…………」
尭深「負けたよ。京太郎くんには」
京太郎「へへ」
「しっかり手なんか繋いじゃって、おアツいね。もう仲直りは済んだわけ?」
尭深「仕方がないから許してあげたよ。私がいないとどうしようもないみたいだから、この人」
「またまた素直じゃないんだから。放課後の教室でメソメソしてたのはどこの誰だったかな」
尭深「う」
「詳しい事情は知らないけれど、私たちのお茶子をよろしく頼むぜ? 彼氏くん」
京太郎「それはもう、誰より大切な人ですから」
尭深「京太郎くん」
「それを聞いて安心したよ。用事も済んだことだし私はもう行くけれど、末永くお幸せにね!」
京太郎「…………」
尭深「…………」
京太郎「尭深さん」
尭深「なあに、京太郎くん」
京太郎「いっしょに迎えに行ってくれますか。俺たちの、誰より大切な『もう一人』を」
尭深「…………」
尭深「うん」
Shiraito Days
最終話「スクールデイズ」
淡「白糸台高校麻雀部のインハイ三連覇を祝して、乾杯!」
照「咲、もう少しだけ私の方に寄って。ツーショットなんだから」
咲「ええ、これ以上くっついて写るの?」
淡「ちょっとそこ! せっかく私が音頭を取ってるのにノリが悪いぞ!」
誠子「まあまあ、ちょっとは大目に見てもいいじゃないか。何せ久しぶりの再会なんだろうから」
淡「むむむ、それはそうだけどさ」
咲「ごめんね淡ちゃん。うちのお姉ちゃんが『こんな』なばっかりに」
照「誠子の言う通りだと思う。淡はもうちょっと私に優しくするべき」
菫「お前が言うな、お前が。ほら乾杯」
照「乾杯」
咲「今さらだけど、私もお祝いしちゃっていいのかな? 私だけ別の学校なのに」
照「何も気にすることはないよ。なんなら二学期からはうちに転校してくればいい」
誠子「それはまた、レギュラー争いが熾烈になりそうですね」
咲「えっと、お姉ちゃんの気持ちは嬉しいけど。それでも私は清澄の麻雀部員だから」
照「向こうの子たちとは仲直りできたの?」
咲「あれから色々あったけどね。和ちゃんとも笑顔でお別れできたんだ」
照「それにしても、咲に京ちゃん以外のお友だちができるなんてね。お姉ちゃん嬉しいよ」
咲「お姉ちゃんまで京ちゃんと同じようなこと言ってるし。私ってそんなに付き合いが悪いかな」
淡「私はそんなことないと思うけどなあ。今だって初対面なのに仲良く話せてるしさ」
咲「うう、私の味方は淡ちゃんだけだよ」
淡「まあ、京太郎のことについて言えばライバル同士なんだけどね? 私たち」
咲「ライバルって、私と淡ちゃんが? あはは」
淡「ああダメだ、やっぱりこの子テルの妹だわ。めっちゃムカつく」
菫「おいおい、ライバルも何も京太郎の恋人は尭深だろう。そもそも勝負になるのか?」
咲「…………」
淡「あーあ。菫先輩、今のはないよ」
菫「どうしてそうなるんだよ!? 何か間違ったことを言ったか!?」
誠子「弘世先輩、それは流石にちょっと」
照「仕方がないよ。人より友だちが少ない菫だから」
菫「だからお前が言うなっての! 友だちならたくさんできたよ、文化祭の後でな」
淡「え?」
菫「なんだよその顔は。私に友だちがいたらおかしいことでもあるのか」
淡「そうじゃないけど、やっぱり嘘は良くないよ。自分の気持ちに正直な先輩が私は好きだから」
菫「言ったな淡! 嘘だと思うなら私のアドレス帳を見るがいいさ!」
淡「あ、ケータイにテルとのプリクラが貼ってある。二人とも仏頂面だ」
誠子「ぷっ」
菫「なんだよ、別にいいじゃないか! 初めて撮った奴なんだから仕方がないだろう!」
照「私のケータイにも同じものが貼ってある。お揃い」
咲「実の妹にも見せたことのないドヤ顔だよ。お姉ちゃん」
淡「なんだ、ホントにたくさん登録してあるや。全部麻雀部の子だけど」
菫「それ見たことか。私にだって友だちくらいいるんだよ」
誠子「それまでクールでとっつきづらかった弘世先輩が、意外な一面を見せた後でしたからね」
菫「う」
誠子「今じゃうちの二年生は皆、弘世先輩のファンですよ。引退を惜しむ声もちらほら?」
照「菫」
菫「なんだよ、脈絡もなく真面目な顔をして」
照「どんなに菫が人気者になっても、私の友だちは菫だけだから」
菫「重いよ!」
咲「そういえば、京ちゃんと彼女さんは遅れて来るんでしたっけ? なんだか緊張しちゃうなあ」
誠子「あの二人は映画を観てから来るみたいだよ。今話題の、なんでしたっけ」
淡「『サマーデイズ』でしょ?」
誠子「そうそれ、確かラディッシュが協賛してるんだよな。ここにもポップが飾られてるよ」
「お待たせいたしました。こちらラディッシュパフェが五つですね」
菫「ああ、どうもありがとう」
照「ぱふえ!」
咲「そうなんだ、羨ましいですね。京ちゃんと二人で映画なんて」
照「まぐまぐ。咲と私だって、京ちゃんと映画を観にいったことがあるじゃない」
咲「あれは大長編のドラえもんだよ。まだ前の声優さんだった頃だし」
淡「へえ、なんだかんだ三人は幼なじみなんだね」
咲「ふふん」
淡「テル、やっぱり私この子やだ」
照「仲良くしてあげてよ。私の大切な妹なんだから」
咲「あ、このパフェおいしい。長野にもできたらいいのにな」
菫「諦めろ。淡」
淡「ぐぬぬ」
誠子「その、須賀くんはどんな子だったのかな。小さい頃の話を聞かせてよ」
淡「おお、亦野先輩ナイスな質問だね。私も知りたい」
咲「昔の京ちゃんですか? そうですね」
照「京ちゃんは今とそんなに変わらないでしょう。ごちそうさま」
菫「速いな! 分かってたけど!」
咲「ええ? 今とは全然違うよ、昔はもっと優しかったもん」
照「それは今よりずっとお世話を焼かれていたからじゃない? 変わったのは咲の方だよ」
咲「ううん、言われてみればそうなのかも?」
淡「ホントに咲の保護者役だったんだね。京太郎は」
咲「何それ、もしかして京ちゃんから聞いたの?」
淡「すっごく呆れたような顔で教えてくれたよ。こんな感じで」
咲「うわ、なんかちょっと似てるのがムカつく」
淡「ずっと近くで見てたもん、教室だって隣の席だよ? しかも三回連続でね!」
咲「ぐぬぬ」
菫「なんだかんだで仲がいいんだな。お前たち」
誠子「実は似たもの同士だったりするんですかね?」
照「小さい頃の咲と言ったらもう、すごかったよ。どこへ行くにも京ちゃんについて回って」
咲「ちょっとお姉ちゃん! あんまり余計なこと喋っちゃイヤだからね!」
淡「ふははは、可愛いでちゅね? 咲ちゃんは」
咲「く、黒い表紙のノートがあったら!」
照「微笑ましいエピソードならたくさんあるけど、中でも一番はそうだね。小学校三年生のとき」
咲「ばかばか! その話だけはダメ、絶対ダメなんだから!」
照「本人はこう言ってるけど、どうする?」
淡「そこまで話して内緒はナシだよ。包み隠さずしっかり教えて!」
誠子「ごめんね咲ちゃん。私もちょっと知りたい」
菫「ふふ」
照「京ちゃんがクラスの男の子たちと遊ぶようになって、寂しくなっちゃった咲がね」
淡「うん?」
照「…………」
咲「…………」
照「そんな歳でもないのにおねしょをしちゃって、そのシーツを京ちゃんと二人で洗ったの」
淡「…………」
咲「なんか言えよ!」
淡「えっと、なんかごめんね。私もちょっと調子に乗ってたよ」
咲「そんな優しい目で見ないでよ! だからイヤだって言ったのに!」
照「まあまあ、ここは一つオレンジエードでも飲んで落ち着いてよ」
誠子「え、お小水の話をした後にそれなんですか?」
咲「もう、お姉ちゃんのばか! 慰謝料としてこの桃は私が貰うからね!」
照「な!? 嘘でしょう神さま、私の食後の楽しみが」
咲「甘くておいしいなあ。ふふ」
照「それはいけないよ咲。お姉ちゃんにだって許せないことはあるの」
咲「あはは」
誠子「いやですよ、一欠片の桃でまた姉妹喧嘩なんて。先輩には私の奴をあげますから」
照「以前から来年の部長は誠子しかいないと思っていた。あなたにはその器がある」
誠子「安いな、白糸台高校麻雀部!?」
菫「…………」
淡「…………」
菫「うん? どうした淡、やけにこっちを見たりして」
淡「こういうとき、真っ先に突っ込んできそうなのが菫先輩だと思ってたんだけど」
誠子「黙々とパフェに舌鼓を打っていますね」
菫「おいおい、人を食いしん坊キャラみたいに言うのはよしてくれないか。照じゃないんだから」
照「あ、ひどい」
淡「だけど今の菫先輩を見てたら、そんな芸風でもやっていけるんじゃないかって思うよ?」
菫「失敬な奴め。これはただ、虫歯が治って初めてのラディッシュだからであってな」
淡「ああ、そういえば何度か早退けしてたっけ。しっかり治ってたんだね」
菫「ヤブ医者にかかってしまったようで長引いたがな。あの歯医者には二度と行くものか」
誠子「そんなにひどかったんですか? 歯医者さん」
菫「ひどいなんてもんじゃないぞ。おおよそ医療に携わる人間の振る舞いではなかったな」
淡「へえ?」
菫「私がどれだけ右手を上げようとドリルを止めてくれないんだよ。ありえないだろう?」
淡「…………」
誠子「…………」
菫「なんだよその目は。誠子まで変な顔して」
照「菫はお子ちゃまだなあ」
菫「だから、私が何かおかしいことを言ったか!?」
淡「菫先輩が変なこと言うもんだから、笑いすぎて喉が渇いちゃったよ」
菫「…………」
淡「すいません、オレンジエード追加で!」
「かしこまりました!」
咲「結局オレンジエードは飲むんだね。別にいいけど」
淡「いやね、なんだか最近酸っぱいものがおいしくてさ。ファンタもオレンジの奴ばっかりだよ」
照「えっ」
淡「え?」
照「いや、なんでもないよ。多分私の思い過ごしだろうから」
淡「それでさ、レモンタルトなんかも食べ過ぎるもんだからお腹周りが気になってきちゃって」
照「えっ!?」
淡「もう、さっきからどうしたのテル。不思議ちゃんも度を越したら変な人だよ?」
照「やけに食欲がなかったりとか、前よりお腹が減ったりはしてないよね!?」
淡「何さ急に、前と何も変わらないよ。最近は尭深がご飯を作りに来てくれてるくらい」
照「それならいいけど」
淡「京太郎が作ってくれるのもおいしいけど、やっぱり尭深の夕飯が一番おいしいんだよね」
誠子「すっかり尭深と仲直りしたんだな。そればっかりは本当に安心したよ」
淡「前よりずっと仲良しさんだよ? 二人で買い物に行ったりもするしね」
照「それは私も思ってた。最近の尭深はいつも私に熱い視線を送ってくれるし」
淡「やっぱり色々思うところがあるんじゃない? 『先輩を見て勉強したい』って言ってたし」
照「なんだか照れちゃうな」
菫「照だけにか?」
照「…………」
淡「…………」
誠子「なあ、こういう空気やめないか。弘世先輩もそろそろ泣いてしまうぞ」
菫「誠子、お前が来年の部長だよ。私が推薦してもいい」
誠子「弘世先輩もそうなの!?」
淡「それにしても尭深は強敵だよ。たまに『尭深のお嫁さんになっちゃおうかな』って思うもん」
誠子「料理上手で健気で可愛くて、当然のようにスタイルもいいんだよな。尭深は」
咲「そんなにすごいんだ。京ちゃんの彼女さんって」
淡「そうだよ、めちゃめちゃすごいんだから! そこらへんの女の子が束になっても勝てないね!」
菫「どうしてそれをお前が自慢するんだよ。危機感を持て、危機感を」
咲「お似合いなんだね。一人じゃ何もできないくせに、なんでもできる京ちゃんとは」
淡「言葉遊び?」
咲「ううんと、そうじゃなくてね」
照「咲の言いたいことはよく分かるよ。淡だって本当は分かってるはずでしょう」
淡「さあね」
咲「なんでかな、今はすごく会ってみたいと思ってるんだ。私の京ちゃんが選んだ女の人に」
淡「怖くはないんだ? ちょっと意外だよ」
咲「もちろん怖いよ、当たり前じゃない。だけどそれ以上にそうしないといけない気がするから」
淡「へえ。まっすぐじゃん」
咲「ふふん」
照「咲」
咲「ちょっとお姉ちゃん、どうしたのいきなり!? 苦しいってば!」
照「泣き虫だった咲がこんなに立派になって、お姉ちゃん嬉しい」
咲「お姉ちゃんこそ、前はこんなお姉ちゃんじゃなかったよね!?」
菫「気の毒だが諦めてくれよ咲ちゃん。そいつにも今までの反動があるんだろう」
照「菫の言う通りだよ。咲もたまにはお姉ちゃん孝行をするべきだと思う」
咲「ううん、なんだか納得いかないけれど。仕方ないなあ」
照「えへへ」
咲「はあ」
淡「あわわ、こんなにだらしない顔のテルは初めて見るよ。大丈夫なのこれ」
誠子「言わずもがな大丈夫ではないだろうけど、ねえ?」
咲「まあ、『こんな』でもたった一人のお姉ちゃんですから。よしよし」
照「山の上で花が咲く。森林限界を超えた高い山の上でさえ、可憐な花が咲くこともあるんだ」
菫「おい照、いい加減現実に戻ってこないか。そろそろ京太郎と尭深も来るみたいだぞ」
淡「そうなんだ。なんだか私までソワソワしちゃうや」
誠子「どうして?」
淡「咲のせいだよ、目なんかあんなに輝かせちゃってさ。まるで漫画の主人公みたい」
咲「えへへ。そんなことあるよ」
淡「またこの子はすぐに調子に乗って。テルもそろそろ咲のお膝から下りたら?」
照「名残惜しいけど、京ちゃんが来るんだったら仕方ないな」
咲「おうちに帰ったらいつでもしてあげるよ。これくらい」
照「ふふふ」
淡「もしもし京太郎。もう近くまで来てるんでしょう、今どこにいるの?」
菫「おいおい、人がせっかく遠慮していたのにお前は」
淡「ええ、もうお店の前にいるの? どうして入ってこないのさ」
誠子「ホントだ。二人とも窓の外に立ってるや」
咲「じゃあ、あの人が京ちゃんの彼女さんなんだ」
照「トイレに行っておかなくて大丈夫?」
咲「またお姉ちゃんはそんなことを言って。まるで私がおトイレの近い子みたいじゃない」
照「今は違うんだ?」
咲「違うもん!」
淡「二人きりの時間が名残惜しいって、何それ! 私もそっちに行くからそこで待っててよね!」
菫「淡」
淡「今すぐにだって二人に会いたいの! 想いは願ってるだけじゃ叶わないんだから!」
咲「ちょっと待ってよ淡ちゃん! 私も行くってば!」
淡「へへ」
誠子「えっと、すいません先輩方。そういうことなんで私も行ってきますね」
菫「はあ」
照「皆は今でも京ちゃんのことが大好きなんだね。なんだかとっても眩しいや」
菫「お前は行かなくても良かったのか」
照「充分すぎるくらい貰ったもん。それに、世界は京ちゃんと咲だけじゃないって分かったから」
菫「…………」
照「二人も菫も私の全てを知ってるわけじゃないんだろうけどさ。それでもいいと今は思えるの」
菫「照」
照「誰だって心の中までは分からないよ。自分の気持ちだって時々分からなくなっちゃうくらい」
菫「皆本当は独りなんだ。満たされているようなつもりでいても、たまに立ち止まりそうになる」
照「だけどいっしょに歩いていくことはできるよね。悩んだり苦しみながらでも寄り添えるんだ」
菫「ああ」
照「それに、何もかも全ては分かり合えなくたって。いつかは見えるものだってあるでしょう?」
菫「ほんとうの気持ち、か」
照「そうやって大切が増えていって、手を繋いで。私たちは最後のときまで歩いていくんだよね」
菫「ロマンチストめ」
照「菫のが移ったんだよ。これから先もずっと続いていくんだもん、皆変わっていくんだから」
菫「そうだったな。私たちにとっての全てはきっと、そういう風にできているんだ」
菫「そういう風に、続いていくんだよ」
長らくお付き合いいただきました白糸デイズも以上で終わりとなります。ご声援本当にありがとうございました
おはようございます。たった今(恭子オカンにあやされて寝入った)長めのお昼寝から目覚めました!
たくさんの乙をありがとうございます。疲れていないと言えば嘘になりますが、大変充実した一ヶ月半でした
ハッピーエンドもバッドエンドも選ばない「ずっと続いていく」結び方を企画当初から構想しており
ともすれば打ち切られた漫画のような終わり方に疑問の声もいただくことかと覚悟しておりましたが
皆さん淡ちゃんのボテ腹事情に夢中なようで安心しました。おそらく中には誰もいません!
拙作によって「白糸台といえばバッドエンド」な風潮に一石を投じることができたのであれば幸いです
つい先ほど完結済みの安価スレ一覧にリンクを移してきました。晴れて完結作品の仲間入りです
また昨日のうちにhtml化依頼は済ませましたが、立て込んでいるらしく多少の間残り続けるようです
質問などお持ちの方がいらっしゃいましたら、可能な限り答えますのでその間お気軽にどうぞ
書くつもりがなければ、選ばれなかった分岐の大まかな流れを知りたい
>>555
尭深と和解した後も交際を再開せず「もう一度皆でやり直そう」チーム虎姫に平穏な日常が戻り
皆が京太郎にアプローチを仕掛けるようになる、学園ものハーレムラブコメを意識した結び方でした
虎姫メンバーとの体の相性のよさ完全版下さい
>>557
照→長年想い合っていたこともあり、いかなるアクシデントも意に介さない安定感がある
菫→淡とは違う意味で似たもの同士なので気遣いが過剰になりがち。躍動感に乏しい
尭深→「私はこうしていられるだけで充分だから。ごめんね」
誠子→凛とした外見ながら驚くほど初心。ごく一般的な高校生カップルのそれ
淡→「これが生き物としての正しいあり方なんだよね。このための部分だったんだ」
相当尭深とは体の相性悪いのか…
半年後くらいに別れて照もしくは淡と付き合う気がしてならん
>>559
単に「こうだったらシコれるなあ・・」「ちんちんイライラするなあ・・」というだけの設定なので
エピローグ後の展開に暗い影を落とすようなことは恐らくありません。どうぞご安心ください
余談になりますが、尺の都合でカットした淡との性交シーンは「赤ちゃんの素」だの
「いっぱい泳いでるんだよね。私のここで」だの、俺得な淫語をたくさん喋ってもらうつもりでした
淡「きょうごろーう!」
京五郎「ちゃーん!」
560 期待・・・してもいいんですよね・・・?
よく頭を撫でてくれていた怜お母さんの手が忘れられなくて、時々怜お母さんを寂しく思うけど、その度に竜華お母さんが頭を撫でて慰めてくれて
初めて事を致した後も優しく頭を撫でてくれる竜華お母さんと過ごす幸せな生活とかも>>1にとってはアリなのですか?
>>565
書きません!!!
>>566
学校ごとにお母さん力の強いキャラを一人ずつ選ぶ場合千里山は竜華でしょうから、もちろんアリです!
寂しそうな顔で「どこまでいってもあんたのオカンは怜か・・」なんて自嘲する竜華ママ抱き締めたいです!
千里山でおかん力高いの雅枝さんだろ?
だから絹ちゃんとと付き合っても隙を見て雅枝お義母さんと浮気するSSください
>>568
ごもっともですが雅枝さんは年上枠なので・・
あとそのSSは僕も読みたいのでどなたか書いてください・・
そして箸休めに面白い顔の人つまむんですねわかります
>>570
僕はやっぱり千鳥爆弾(※)の逆パターンで、洋榎ちゃんがいる部屋の隣で絹ちゃんとスポーツしたいですね・・
※愛宕姉妹を手篭めにしていく内容の、ドチャクソシコれるエロ同人誌。僕は百億万回お世話になった
数少ない愛宕姉妹本の中でもマイ至高の一冊を選ぶとは…
屋上
握手(ベチャァ
>>572
眼鏡を傍らに置いた絹ちゃんが公園で一人泣き濡れるシーンなんか本当に最高ですよね・・
読む度そのページばかり開いているものですから、冊子にもクセがついてしまいました
あと赤ちゃんの素はちゃんと拭いてください
>>573
絹ちゃんの泣き顔最高やねん
ワイもネキに「うち…あんたの彼女やもん…」て慈愛顔されながら中出ししたいねん
会話の間大事にするのと効果音使わないの徹底してたけどもしかして演劇好き?ウソツキのラストシーンもそれっぽい。
>>575
もっぱら演者側でしたが関わっていたこともあります。公演へ足を運ぶほどではありませんが今でも好きです
ご指摘の通り劇脚本を意識した(つもりの)演出も多いです(二話の栗まんじゅう、四話の川を始めとする記号など)
演者さんだったのか…
次回作の予定あります?
>>577
白糸台の子たちと心中するつもりでスレを立てたので(入水的な意味ではなく!)
出し尽くしたと言いますか、取り立てて書きたいお話も見当たらないのが正直なところです
以前のように小ネタを投下することはあるかもしれませんが、やはり長編は難しいですね・・
ダダ漏れの本音は書きたい物じゃなかったのか...
>>579
実際のところそうした妄想は毎晩睡眠導入に用いる程度のものなので
わざわざスレを立てるほどでもないんですよね・・
ガイトさんは「お袋」?それとも「母さん」?
>>581
常軌を逸した子煩悩であればそれはめちゃシコ案件ですから、僕個人の見解を述べますと「ママ」一択です
今一度童心に返り、微乳とサラシの狭間に存在するというチンポの遊園地で思う存分レジャーしたいですね
このSSまとめへのコメント
京太郎豚キモすぎだわ死ね