は~い!元スーパーアイドル、水瀬伊織ちゃんで~す♪
えっ踏んでください?ワケわかんないこと言ってんじゃないわよ……。ただでさえ今、頭ん中がこんがらがってるんだから……。
美希を探しに来たハリウッドで私は銃で撃たれた。お腹が、焼けるように熱くなって意識を失った。
それで目を覚ますと、「ロストアルテミス」とかなんとかいう月の崩壊現象が起きた百数年後の世界だった。
そこで私は、名前がおんなじなんだけどどこか目つきが悪い真とか、妙にしっかりしたあずさとかと一緒に
「ネーブラ」とかいうロボットに乗って隕石の破壊活動をやろうってんだから驚きよね。
おまけに元の世界に戻るには、こっちの世界を救うしか無いみたい。
……わかったわ。この伊織ちゃんに不可能は無いんだから!やってやろうじゃないの!
牛丼なんか食べてる場合じゃない!いくわよ!バカリボン!
……あなたのアイドルになりたい。
……って
「そんなわけないでしょうがあぁぁ!」
思いっきり体を起こすと、周りは真っ白い天井と、真っ白い壁だった。
目の前には私好みのふわふわ羽毛のシーツ。
窓の外には、車のクラクションや英語の看板だらけ。
天国にしては、随分カジュアル過ぎるわね。
……どうやらここはハリウッドみたい。
まったく冗談キツいわよ……。
ま、この水瀬伊織ちゃんがそう簡単に死ぬわけないんだけどね。
えーっと……私ってどうなったんだっけ。
確か、銃で撃たれて、美希が逃げて、貴音がずっといて……
投げっぱなしジャーマン言われたので急遽ショートアフター書きます
今回はマジで突発ノープランだからクオリティはほんと期待しないで
壁にかかってるエンブレムを見るに、水瀬財閥の……どう見ても病院よね。
右手にみえる、まるでユーモアの無いテーブルの上には、うさちゃんがポツンと乗っていた。
私しかいないBGMのない静かな部屋を見回す。
あるのは机、カーテン、テレビ、ニュースペーパー、電気スタンド……くらいね。
はぁー病院って何でこんなつまらないのかしら。
もっとキュートなウサギのプリントでも壁に張ればいいのよ。
こんなんじゃ余計に気分も塞ぎこんじゃうわ。
さて、近辺調査は終わったから、あとは状況の整理ね。
……一体全体なにが起こったわけ?
私は、うさちゃんを両手に抱き抱えて、考えてみる。
ハリウッドに来て、美希を探しに来てそれで……
そうよ!すっかり忘れてたわ!
あの腹立つ悪徳変態大人に出会って、水瀬財閥のホテルで気を失ったんだった!
私は、歯をきりきりと食いしばる。今思い返してもム・カ・つ・く・わ~!
あいつ、ちゃーんと逮捕されたんでしょうね。
英字のニュースペーパーを力いっぱい握って、顔の前へ持っていく。
……目を凝らしながら、文字をすべらしていくと小さな小さな記事に
『日本人がホテルで発砲』という見出しに、アイツの写真が載ってた。
ざま見なさい。悪いコトするからバチが当たったのよ。
だけど、ちょっと違和感があった。
負傷者は一切無し……?
じゃあ、何で私は病院にいるのよ……。やっぱりこれも夢なのかしら。
考えても仕方ない。誰かに聞くしかないようね。
私は備え付けのボタンを何度も押す。
すると、暫くして日本人の、白衣を着たナースがゆっくりとドアを開けた。
「良かった!お嬢様、目が覚めたのですね」
「目が覚めたって……私どのくらい眠ってたの?」
「大体、50時間ほどです」
……あれから2日以上も眠ってたわけね。
「申し訳ございません。このような施設も整っていない病院で。何分急でしたので……」
「……」
そういうわりには随分と部屋が広いけどね。
さすが、水瀬の医療技術は世界一なだけあるわ。
……そういえば、銃で撃たれたのに痛みがまるで無い。
「あの、とても申しあけにくいのですが、お嬢様のお怪我は……」
「軽傷です」
「へっ?」
大慌てでシーツをめくって、水色の病院服をおへその辺りまでめくりあげた。
見ると、わき腹の部分に、ガーゼが小さく張られていた。
「わき腹をかすって、弾は貫通しました。内臓器官や重要な血管はほとんど傷つけられていません」
「な……な……」
「どちらかというと、お嬢様の場合、撃たれたというショックが大きかったようで……」
「だって、血がいっぱい……」
「怪我を負った場合、パニックになって本来よりもずっと悲惨なイメージをしてしまうのはよくあることです」
──お兄さま……やっぱり……私は……間違っていなかった……わ
その瞬間、私は顔がフットーしたように真っ赤になった。
は……
恥ずかしいぃぃ!
な、何私死んじゃうみたいなノリ出してたのよ!
あぁぁああ!絶対後で、亜美と真美にからかわれるわ!
私は手のひらで顔を覆って、頭を左右に振った。
「あの……お嬢様……?」
うぅ……屈辱だわ……。
「はぁ……」
思いっきり感情を爆発させたら随分と落ちついたみたい。
ひとつ、ため息をついてナースに言った。
「ありがと。もう一つ聞きたいことがあるわ」
「なんなりと」
「私のツレ、じゃなくて友人についてはどうなったのかしら」
「……」
私、あのあとどうなったのか全くわからないのよね。
ま、どうせ私をほっといてハリウッドを満喫してるんでしょうけど。
それを聞いたナースは、口をつぐんだ。目が左右に泳ぐ。
「友人、とは?」
「私と一緒にいた元アイドルのみんなよ」
「はぁ……」
「ほら、いたでしょ。例えば妙にもったいぶった言い方する銀髪、貴音とか」
そう言って、口元に手を当てて、目をすっと細めて貴音のマネをする。
「ここに運ばれた時は、お嬢様のみで、以来お見舞いには御友人は来ておりませんが」
「えっ……?」
私、いくら軽傷と言ったって、銃で撃たれたのに、一度も見舞いに来ないわけ?!
随分と薄情じゃないの!握った拳がぶるぶるとと震えた。
「怪我は何ともないわけね」
「はい……」
「じゃあ、退院するわ」
「えっ?」
そう言いきって、ベッドから飛び起きる。
近くのロッカーを開けると、私の着ていたピンクのワンピースが入ってた。
「お、お待ちくださいお嬢様」
でうろたえるナースも気にせず、私は病院の服を脱いで、ワンピースに袖を通す。
「それじゃ、後はよろしくね」
手をひらひらと振って、ドアノブに手をかけた。
あれ?引っ張っても開かない。
すぐに気付いた。逆側から誰かが回してる。
手を話すと、扉がゆっくりと開いた。
そこには……
如何にもお高そうなオーダーメイドのスーツに、金色の時計、ダイヤモンドのアクセサリ。
私は、見上げるように顔をあげる。
そして、すぐに顔を背ける。
……喧嘩中なんだから、顔も見たくなかったわ。
「伊織、やっと目が覚めたか」
「お兄さま……」
どうせ待ってなんかないくせに。
時計をしきりに確認するに、随分とお忙しいようね。
「会社の方は大丈夫なのかしら?」
「10分だけ時間が空いた」
お兄さまとは昔から小さな喧嘩が絶えなかったけれど、
765プロが倒産してからは私への態度が明らかに変わった。
私のバッグのおねだりメールも返信してこなくなったし、久々に家に帰ってきてもほとんど会話も無かった。
落ちこぼれと言われたことを思い出して、唇を強く噛んだ。
「用件だけ伝えに来た」
「……」
背を向けて、語りかける声をただ聞く。
……私ってやっぱりまだお子様よね。
「まず、お前の友人たち」
「……」
「水瀬が全員保護している」
「……えっ」
……それから極めて説明口調の説明を聞いた。声のトーンは一定を保ったまま。
961プロデューサーを殴って、皆は美希を追ったこと、そのすぐ後に全員捕まえられた。
何故すぐに捕まったかは……。
「これだよ」
振り向くとお兄様は水瀬財閥製のGPSを片手に持っていた。
なるほど……要するに逆探知されたわけね。
「逃走するから誤解が起きた」
あそこは監視カメラも無かったし、日本語も通じなかったし、肝心の961プロデューサーは響がボコボコにしちゃったし、揚句、車泥棒か。
美希を追うためとはやりすぎよ。特に真……。
「後に、誤認であることと、父が765プロの社長と親友であることがわかった」
「……」
「警察には伝わってない」
全て不問、か。強引に揉み消し……ってわけね。
「はぁ~~……」
肺の中の酸素を全て吐きだすくらいの長いため息をひとつ。
「みんなとはすぐに会えるね」
「あぁ、お前の意識が戻ったら解放するつもりだった」
よかった。これでめでたしめでたし、ね。
お兄様は相変わらず、感情が篭っていないただのガラス玉のような瞳でこっちを見つめている。
「……」
「な、なに?」
「伊織、今年でいくつになる?」
「もうすぐ18歳よ」
妹の年齢くらい覚えてなさいよ……。
「そうか」
お兄様は目を伏せた。
「伊織、お前はアイドルを辞めてから何をした?」
「えっ……」
私は……。
お兄様は相変わらず一定のテンポで続ける。
「家でひたすら歌を歌っているか踊って遊んでいる。途端に泣きだす」
「……」
「そして、突然家出する。ボディガードを雇うのもただじゃないんだ」
「えっ……?」
ボディガードって……?
お兄様の言葉を頭の中で反復して、意味を解きほぐす。
もしかして私が家出してる間、ずっと尾行されてたっていうの?
泣きそうなくらい辛かったあの一か月は、全部保障されたものだったの……?
私はまた顔が熱くなるのを感じた。
お兄様はそんな私に興味が無いかのように続ける。
「それで、帰って来たかと思ったら友人の手術をしてくれという」
「……」
「いくらかかったと思ってる?揚句の果にはアメリカに行くから、パスポート無しで10人分の飛行機をチャーターしてくれという」
「……」
悔しさを感じたけれど、私は何も言い返せなかった。
お兄様は事実をただ述べてるだけ……。
「そして、極めつけは今回の大事件だ」
「……」
「水瀬財閥の損失は莫大だ」
「……」
「伊織、お前は親のコネの金を湯水のように使うだけ。お前自身は天下の水瀬にどんなメリットをもたらしてくれたんだ?」
「……!」
「お前は、やはり落ちこぼれ。水瀬家の失敗作だよ。伊織」
「……うっ!」
悔しい……!悔しい……!
私は心がズタズタに引き裂かれる思いがした。
銃で撃たれた時よりも、今のほうがずっとずっと痛かった。
私は、ずっと、赤ちゃんの頃から父と兄の背中を見て育ってきた。
一身に人望と名誉を集める父と兄は、輝いていた。
学校の先生や友達も、私を「水瀬財閥の娘」という目でしか見ない。
……私は、それが堪らなくイヤだった。
それで、私はアイドルになった。
父と兄に負けない何かが欲しかった。
そこで出会った皆は、時々腹も立つけれど、私に対して「伊織」として接してくれた。
プロデューサーも、最初はなんて頼りない下僕が来たのかと思ってオレンジジュース何度も買ってこさせた。
けれど、いつのまにか私の中でどんどんおっきな存在になっていって……。
純粋にアイドルをやれた時は楽しかった、居場所があった。
でも今の私は、もうアイドルじゃない。
お兄様の声が部屋に響いた。
「伊織、お前はもう水瀬じゃない」
「えっ」
信じられなかった。
まさか、まさかこんな形で、私と水瀬の関係が終わるだなんて。
「ど、どういうこと?お兄様」
「お前と水瀬財閥は、今後一切関わりを持たない」
それって……つまり……
「勘当ってわけ?」
「平たくいうとそういうことになるな。遺産もお前に一円も渡らない」
……お金は別にどうでもよかった、とは言えないわね。
よく考えたら、私、たしかに私がみんなにしたことって、全部お父様のお金の力だった。
千早の喉の手術も、飛行機の手配も、GPSの用意も、祝いのパーティも、そして今回の事件の揉み消しも。
だけど、それでもみんなのためなら構わないなんて勝手に思ってた、かも知れない。
私は何もしてないのに。
今言われてることは当然の結果って、強く思った。
耐えられない胃の痛みが私を襲った。お腹を押さえて、膝をがくりと落とす。
あれ、嘘でしょ……この程度で私ってダメだったの……?
雪歩に対して「あんたにしてはよくやった」なんて言ってのけたことを思い出す。
身の程を知った気がした。
入院したのにお父様もお母様も来た気配がない理由がわかった。
「……うぅ」
私は低いうめき声をあげた。
お兄様は、そんな私に対して歩み寄りもせずに、むしろ遠ざかるように革靴の足音を鳴らした。
「一週間後、また来る」
「……待って、お兄様」
絞り出すように、声を出した。
「わかった。わかったわ……よ」
今まで……わがまま言って……。
だけど、まだ終わりじゃない。
美希にやっと会えて、これから日本に帰って春香をなんとかできたら、
きっと律子が私たちをプロデュースしてくれる……。
アイドルを再開できたら、お父様もきっと見直してくれるに違いない。
ショックだったけれど、今は受け入れる以外の選択肢がなかった。
情けないけど、早く皆に会いたい……。
絶対に口では言えないセリフを頭の中で思った。
あんたちの生意気な顔を見れば、意地でも笑ってみせるわよ。
次の言葉で私は頭をハンマーで殴られた衝撃が走った。
「帰りの飛行機は全員分キャンセルした」
「えっ……?」
「あんな大犯罪起こした後に、易々と帰国できるわけ無いだろう。自力で帰れ」
海外旅行が趣味な私は、その言葉を聞いて一気に寒気が走った。
言ってしまえば、今回のアメリカ入国は密入国。パスポートも無い。
……私たちはいわば不法滞在者。帰国するだけなら、強制送還がある。
だけど、だけど
日本での前科がつく……。
そしてアメリカへの再入国は永久に不可能……。
つまり春香と千早以外の、トップアイドルへの道が、無くなる……。
私のせいで……。
──私のせい私のせい私のせい
……病院のドアを開けると皆が出迎えてくれた。
どこも真っ白なハズなのに、なんだか景色が灰色にみえた。
「伊織!」
貴音が泣きそうな顔で飛び込んでくる。
「無事だったのですね!よかった、わたくしは……」
「……」
あれだけ見たかった顔なのに、ただ苦しかった。
「伊織ちゃん!」
雪歩がまっすぐ向かってくる。顔つきがなんだか違っていた。
「さっきね、牛丼屋見かけたのよ。退院祝いにみんなで行きましょう?」
律子が、私を刺激させないかのように日常の会話を挟む。だけど、目が潤んでいた。
──また、みんなでアイドルやれるね。
誰かがそう言った。
きっと、みんなは私を責めない。許してくれる。
私のせいなのに。
「あふぅ」
怠けた声が聞こえた。
「美、希……」
「大変なことがあったみたいだね。お凸ちゃん?」
「……っ!」
さっきの会話のことかと思って、心臓が跳ねあがった。
思わず睨みつけてしまう。
「う~……お凸ちゃんなんだか怖いよ?」
「……」
そういえば、私のことを、気に食わないあだ名で呼んでる。
ずっと無言でいる私に向かって、雪歩が声をかける。
「あ、あのね。なんだか美希ちゃんの記憶がひっくり返っちゃったみたいで、最近のことは何も覚えてないの」
「……」
へぇ、そう。
私を撃ったくせに。そんなことを思ってしまう自分がイヤだった。
「随分と都合のいい頭してるじゃない」
「……!伊織、そんな言い方はないだろ」
真がまた文句を言ってくるけど、喧嘩する気も起きなかった。
それから、日本を勘違いしているナンセンスなお店に連れてかれた。
壁には漢字が一文字の額があって、刀が飾ってあって、メニューに『てんぽら』って書いてあった。
「……全っ然笑えないわよ。馬鹿じゃないの」
「お凸ちゃんお腹痛いの?」
伏し目に声を漏らすと、美希が顔を覗きこんでくる。
「アメリカの牛丼もおいしいなー!やよい」
「はいー!これ、お持ち帰りできますかー?」
響とやよいの明るい会話も、耐えられなかった。
口をつけずに箸で丼をつついていると、律子が話しかけてくる。
「伊織、ところで帰国の日時はいつにする?そちらの都合に合わせるけれど」
「……」
「伊織……?」
「少なくともあ、と、一週間……」
言及されるのが怖くて、無意識に言ってしまった。
私はあと一週間でケリをつけなくちゃいけない。
今度こそ私自身の力で……。
ショートアフターって言ったが……すまんありゃ嘘だ
今日はここ……まで……
いおりん可愛いよいおりん
おつでした
よかったら、あと何スレくらいで終了予定とかあれば教えてほしい
今回責任とって説明不足だった部分回収してくんで勘弁してください
おかしいトコ退屈なトコもあるかも知れないけど千早のおっぱいに免じて
もやし(裏声)
>>168
あと20~30レスあれば終わるんじゃないかなぁ
といいつつ千早編であと2スレで終わるよとか言ってすいませんでした
言う機会無いので、便乗して……
腹パンは打ち切り
ダイナマイトゆきぽ「ヴぁい!」
のワの「ハイ!」
ご……め……ん……
今帰ってきたそして今から出掛けなくちゃいけない
明日必ず続き書くんで許してください
せっかく保守してくれたのに本当に申し訳ない
最速で夕方4時
落としてもらって構わないですいおりん
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