郊外にある小さな丘。そこへと続く階段。
小気味よさとは程遠いリズムで、乾いた足音を奏でる。
ゆっくりと、ゆっくりと歩を進める老人。
小さく腰を曲げて石畳を昇ってゆく。
その身体に不釣合いな程に大きな布の塊りを抱えて。
その足音がピタリと止まる。
陰鬱とした雰囲気の場所。眼前に並ぶ小さな二十六の墓。
そして、それらとは違い、異様なほど大きな石碑がそびえ立つ。
三列、二十六行に及ぶ石に刻まれた文字の並び。
古びて苔むしたそれ。読み取る事が出来ないほどに。
その一番下に刻まれた二つの名前。間にポツンと間を空けて。
『年上魔導士 年下魔導士』
時はこれより、その名が刻まれる少し前まで遡る。
―――祈りを捧げている。
―――誰のために?
―――民のために?
―――国のために?
―――いや、チガウ
―――オレ自身のために
―――大切なものを失わないために
~丘の上の墓地~
年下魔導士「……」チラチラ (以下 下魔)
勇者「……」
下魔「……」ギュッ
勇者「……」スッ
下魔「……」チラチラ ハッ!
勇者「ん? どうしたんだ下魔?」
下魔「いえ、そのう、勇者さん随分長い事お祈りしてましたから、一体どんな事をお祈りしていたのかなって……」イヤーアハハ
勇者「……たいした事じゃないよ」
下魔「いっぱいお祈りごとしたんですか?」
勇者「いや、たった一つだけ、ほんの少しだけね」
下魔「どんな事ですか? 気になります!」ズイッ
勇者「……皆が幸せになる未来……かな」
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