マミ「ほ、ほむら…ちゃん」(228)
ほむら「!」ドキホムッ
マミ「あっ、ご、ごめんなさい、名前で呼んだりして…馴れ馴れしかったわよね…」
ほむら「…か、構わないわ」ドキドキ
マミ「あっ、そうだほむらちゃ…じゃなくて暁美さん」
ほむら「…何かしら(何故言い直すの?)」
マミ「今日、何か予定ある…?もし良かったらうちに来ないかしら…」
ほむら「今日は予定があるの。遊んでる暇はないわ」
マミ「あ…そうよね、ごめんなさい、マミ厚かましかったよね…」
ほむら「!」ドキホムッ
マミ「?どうかした?」
ほむら「…何でもないわ」
マミ「…顔赤いわよ?熱でもあるんじゃない?」
ほむら「…いえ、そんなことないわ、平気よ」
マミ「…そう、それならいいのよ…それじゃあ、またね…暁美さん」
ほむら「……」
ほむら「…まっ…待って」
マミ「…?」
ほむら「…さっきみたいに…名前で呼んで」
マミ「…え…?」
マミ「ほ…」
マミ「ほむらちゃんっ」
ほむら「!?」
ほむら「…」
ほむら「何?」
マミ「呼んでみただけよっ」ニコッ
ほむら「…」
マミ「ほむらちゃん」
ほむら「…」
マミ「ほむらちゃんっ」
ほむら「…うる…さいっ」カァァァ
>>18
失礼、続けて
マミ「…いいの?」
ほむら「……」
マミ「…でも…」
ほむら「…いいから」
マミ「…ほむら…ちゃん」
ほむら「…///」
マミ「…なっ…なんか…照れるわね…これ…///」
ほむら「…そうね…貴女のせいで私まで恥ずかしくなってくるわ…」
マミ「ごめんなさい…その…そういうつもりじゃ…」
ほむら「…わかってる…気にしなくていいわ」
マミ「…じゃあ…これからもこうやって呼んでもいい…?」
ほむら「…ええ」
マミ「…ありがとう、あけ…じゃなかった」
マミ「…ほむらちゃん」
ほむら「…いいの、こっちこそありがとう…」
ほむら「…巴さん」ボソッ
マミ「え?」
ほむら「…ううん、なんでもない」
ほむら「そろそろ時間だわ…今日はこの辺で」
マミ「…ほむらちゃん!」
ほむら「…はい…?」
マミ「…これから冷えるから…風邪ひかないように…ね?」
ほむら「…はい」
―――
マミ「…前より…仲良くなれた…の、かな」
マミ「…えへへ」
マミ「…明日…鹿目さん、誕生日なのよね」
マミ「お祝いの準備…一緒にやろうと思って誘ってみたけど…」
マミ「…仕方ないわよね…別の予定があるんじゃ」
マミ「この後…佐倉さんと美樹さんを誘ってみましょう」
マミ「……」
マミ「…ほむらちゃん…ふふ」
マミ「ずっと呼んでみたかったのよねぇ…名前で…暁美さんのこと」
マミ「ほむらちゃん…ほむらちゃん…♪」
―――
ほむら「……」
ほむら「…嬉しそうだったなぁ…巴…マミ…」
ほむら「…羨ましいなぁ…名前で…呼べるのって」
ほむら「…でも…まどかのために被った仮面ですもの…外すわけにはいかないわね」
ほむら「…本当は…あの日に戻りたいけど」
ほむら「…巴さん…美樹さん」
ほむら「そんな風に呼べたらなぁ…」
ほむら「もう一度…だけで…いいのに…」
ほむら「…あれ…もうこんな時間だ」
ほむら「早く帰ってまどかの誕生日パーティーの準備しないと…」
―――
さやか「…えっ、マミさんの家で」
杏子「まどかの…誕生日パーティー…?」
マミ「そう!せっかくだしみんなでやりましょうよ!」
さやか「…確かにいいアイディアです…けど…」
杏子「なぁマミ、ほむらの奴は?」
マミ「誘ったけど用事があるって言って…それで…」
杏子「うーんそっかぁ…それなら仕方ねーなぁ…」
さやか「…あの、マミさん?…その…それ、どう言って誘ったんですか?ほむらのこと…」
マミ「え?どうって…」
さやか「…なんだ、誕生日パーティーのこと伏せて誘ってたんですか」
マミ「…だって…暁美さんとはあんまり話さないから緊張しちゃって…」
杏子「さやか、どうしてそんなこと…」
さやか「いやー…あたしもまどかの誕生日になんかしてあげようって思っててね」
さやか「でも…うちはお父さんが今日明日家で仕事しててパーティーなんてできないし」
さやか「そもそも料理とかあんまりしたことないのにパーティーも何もないよなぁって…」
さやか「それで今朝…二時間目の休み時間くらいだったかな」
さやか「ほむらが私に話しかけてきてさ」
さやか「誕生日パーティーの準備、一緒にやらないか…って誘ってきて」
マミ「…暁美さんが?」
さやか「ええ…さすが普段からストーキングしてるだけあって行動が早いっていうかなんていうか…」
杏子「だったらさ、ほむらとも一緒にやっちゃったほうがいいんじゃない?」
マミ「…そうね、そうよね…そうしましょうか」
さやか「ほむらもちゃんと誘えばよかったのに…」
杏子「まぁマミもほむらも口下手だからなー」
さやか「なんであたしにはあんなにすんなり…」
杏子「毒を吐きやすいんじゃないのか?あんたバカだから」
さやか「な…なにをー!あんたには言われたくないってーの!」
杏子「きゃー♪」
さやか「きゅ…急にらしくない声出すな!待てこらバカ杏子!!」
マミ「…はぁ…この二人がいてまともにできるのかしら?」
―――
ほむら「……」
ほむら「…マミの用事ってなんだったんだろ…?」
ほむら「…付き合ってあげたらよかったかな…」
ほむら「…い、いやいやダメよ私…まどかの誕生日は盛大に祝うって決めたの…」
ほむら「他のことにかまけてなどいられないわ…」
ほむら「…んしょっ…と…っと…あれっ…」
ほむら「んっ…だめっ、届かない…」
ほむら「…高いところに飾り付けができないじゃない…どうしましょう…」
ぴんぽーん
ほむら「…?誰よいったい…こんな時に…はーい?」
マミ「…暁美…さん」
ほむら「…巴マミ…?」
さやか「ほむら!来たよー!約束だったよね?」
杏子「あたしもついでにあがらせてくれよ、ほむら」
ほむら「美樹さやか…佐倉杏子…」
ほむら「…ふふっ、ええ…あがってちょうだい」
ほむら「その代わり…まじめに働かなかったら容赦はしないわよ…」
さやか「うげっ…こっわー」
杏子「お邪魔しまーす」
―――
ほむら「…恥ずかしながら…ここに飾り付けをしたいのに届かなくて困っていて…」
さやか「ふーん…本当に恥ずかしいなぁほむら」
ほむら「」ビキッ
さやか「ちょっ…冗談だって!冗談!そんなに怒んないでよ!」
ほむら「…ふん」
さやか「はぁ…怖いよーマミさーん」
杏子「自業自得だろ」
マミ「…暁美さんはどうしてすぐ喧嘩になってしまうのにわざわざ美樹さんを招待したのかしら…」
さやか「…普段まどかと一緒にいるからですって…そう言ってました、あいつが」
杏子「それだけなのか…」
杏子「ほれほむら、肩乗れ」
ほむら「あ…ありがとう、杏子…」
杏子「ちゃんとつかまってろよ、せーの…よいしょっと」
ほむら「大丈夫、これなら届きそうだわ」
杏子「そうか、よかった」
マミ「暁美さん、私たちにも何か手伝えないかしら?」
ほむら「えっと…さっきケーキ作りに挑んで失敗してしまったからそれを…」
さやか「うわだっさ」
ほむら「……」ピキッ
さやか「いやだだだだからじょじょ冗談だって!」
ほむら「…ちっ」
さやか「し…舌打ちしなくたっていいじゃんかよぉ…」
杏子「だから自業自得だろうが」
―台所―
マミ「…さて、美樹さん一緒にがんばりましょうか」
さやか「マ…マミさん…あたしあんまり料理したことないから苦手って言ったじゃないですか…」
マミ「苦手だというのはやらない理由にはならないわ」
マミ「苦手ならば得意にしてしまえばいいだけのことよ」
マミ「大丈夫、一人で作るわけじゃないのだから…ね?」
さやか「うぅ…マミさんがいれば事足りるじゃないですか…」
マミ「何言ってるの、美樹さんにはサポートだってしてもらうんだからサボろうとしても無駄よ」
さやか「…こりゃ本当に無駄っぽいなぁ…はい、美樹さやか、精一杯頑張ります…」
マミ「よろしい♪」
―――
杏子「…ほむら、次はどこ飾り付ければいいんだ?」
ほむら「玄関のあたりがまだ微妙だわ…そっちをお願い」
杏子「了解、任しとけ」スタスタ
ほむら「…杏子はともかく…台所の二人は大丈夫かしら」
ほむら「…まぁ…マミがいるなら心配いらないわよね」
ほむら「…さて…私も飾り付けの続きを…」ガサッ
ほむら「…あ、飾りが尽きてしまったわ…」
ほむら「仕方ない、買いに行かないと…」
マミ「…あれ…クリームが足りなくなってしまったわ…」
さやか「あの…あたし買ってきましょうか?」
マミ「いえ…いいわ、私が行く」
さやか「でも…あたしだけじゃ…失敗…しちゃうかも…」
マミ「大丈夫、失敗するのは悪いことじゃない」
マミ「失敗したらまた作り直せばいいでしょ?」
さやか「マミさん…」
マミ「…しばらく任せても平気かしら?美樹さん」
さやか「はい!マミさんもお気をつけて」
マミ「うふふ、それじゃあ任せたわね」
ほむら「…あら、巴マミ」
マミ「クリームが切れてしまったから買いに行こうと思って…あなたも出かけるの?」
ほむら「ええ、用意していた飾りが尽きてしまったの」
マミ「あらそう…じゃあ一緒に行きましょう?」
ほむら「ええ、構わないわ」
マミ「ふふ、ありがとう…ほむらちゃん」
ほむら「…二人きりの時だけそう呼ぶのね」
マミ「…いけなかったかしら」
ほむら「いえ…そんなことはないわ、早く行きましょう」
マミ「うん」
マミ「…ねぇ、ほむらちゃん」
ほむら「…はい」
マミ「私…ずっとほむらちゃんと…もっと仲良くなりたいって思ってたの」
ほむら「……」
マミ「それこそ…今こうやって名前でほむらちゃんのこと呼んで」
マミ「一緒の道を…他愛もないことしゃべりながら歩いて」
マミ「…こんな日常が…ずっと欲しかったのよ…私」
ほむら「…私も…そうよ」
ほむら「こんな風にあなたと喋ったこと…今まで…ただの一度もないから」
ほむら「…だから…すっごく…」
ほむら「……」
ほむら「…嬉しい」
マミ「…ほむらちゃん…」
マミ(…でも…どこか寂しそうにも見えるのは…)
マミ(気のせい…なのかしらね…)
マミ「…ごめんなさい」
ほむら「…え?」
マミ「…いえ、なんだか悲しそうな眼をしていたから…」
ほむら「あっ…えっ…ご…ごめんなさい…」
ほむら「あのっ…心配…させるつもりは…」
マミ「だ…大丈夫?ほむらちゃん」
ほむら「…は…はい…ごめんなさい」
マミ「…なんだかいつもと違うほむらちゃんのようね?」
ほむら「……」
マミ「…ほむらちゃん?」
ほむら「…あっ…ごめんなさい…少し…考え事を…」
マミ「なんだか様子が変よ?風邪ひいた?」
ほむら「ううん…原因があるとしたら風邪じゃなくて…」
マミ「…?」
ほむら「…なんでもないわ…早く行きましょう」
マミ「変なの…」ムズッ
マミ「へっくしょんっ!…ずずっ」
ほむら「…このままでは本当に風邪をひいてしまうもの…」
マミ「うっ…そうね…急ぎましょ…ずずっ」
―――
ほむら「すぐに見つかってよかったわ…必要な分の飾り」
マミ「ホイップクリームもすぐに見つかって助かったわ」
ほむら「…それじゃあ帰りましょうか」
マミ「辺り一面真っ暗ね…」
ほむら「まだ5時なのに…ずいぶんと日が短いわ」
マミ「…それだけ冬が近いということよ」
マミ「冬は…嫌いだわ」
ほむら「…どうして?」
マミ「…動物たちは冬眠に入って…草木は凍えて枯れてしまう」
マミ「虫もいないし鳥も飛ばない」
マミ「おまけに…冬のにおいは切ないじゃない」
マミ「…なんだか…息が詰まるのよ」
マミ「無性に…悲しくなるのよ」
ほむら「…私はそうは思わないわ」
マミ「…え?」
ほむら「冬は日が短いうえ…それまでと変わらず活動しているのは人間くらい」
ほむら「でも…冬眠の時期が終われば目覚めがあって」
ほむら「夜が終われば朝が来て…冬が終われば春が来る」
ほむら「なにも冬は破滅の季節じゃないのだから…怯えることなんかないって…」
ほむら「…私はそう思うわ」
マミ「…ほむらちゃん」
ほむら「…まぁ…朝起きるのがつらいのは…嫌だけれど」
マミ「ぷっ…なんだ、あなたもそういうこと思ったりするのね」
ほむら「な…何よ、いけないのかしら」
マミ「いいえ、そんなことないわ」
ほむら「まったく…」
マミ「…かなり暗くなってきたわね…早く帰りましょう」
ほむら「…はい」
ほむら「…はぁ…ずいぶん冷えるわね…」
マミ「…ほむらちゃん、今日はタイツはいてないのね…気まぐれ?」
ほむら「…まぁね…昔の気分を思い出すつもりで…」
ほむら「…だけどまさか仇になるなんて」
マミ「ふふ、意外と抜けてるところもあるのね、あなた」
ほむら「…余計なお世話よ」
マミ「…ほむらちゃん、ちょっと待って」
ほむら「…?」
マミ「…よっと」トスッ
ほむら「…なんでベンチになんか…」
マミ「いいからいいから、座って座って」
ほむら「……」テクテク
ほむら「…早く帰ったほうが…」トスッ
マミ「…少しだけだから…ね?」
ほむら「……」
マミ「…膝枕してあげる」
ほむら「なんでよ」
マミ「いいじゃない、したいのよ」
ほむら「…いらないわよ」
マミ「お願い、ほむらちゃん」
ほむら「…なんでそんなに膝枕にこだわるのよ…」
マミ「だから私のわがままよ、ちょっとくらい付き合って?」
ほむら「…あなたのわがままにはもっといっぱい付き合っている気がするわ」ドサッ
マミ「ふふ、そうかもね…」
ほむら「…寒い、でも…」
ほむら「…あったかい」
マミ「…どっちよ」
ほむら「…結局これ…何の意味があるのよ…」
マミ「…いいじゃない、あったかいんでしょ?」
ほむら「…頭だけね…」
マミ「あら…残念」ナデナデ
ほむら「あなたの頭がね…」
マミ「…ねぇ、ポニーテールとかにしてみたらかわいいんじゃないかしら」
ほむら「あなたは私を一体なんだと思ってるの」
マミ「…友達よ、私の…大切な」
ほむら「……」
ほむら「…はぁ…もういいわ、煮るなり焼くなり好きにしなさい」
マミ「うふふ、じゃあそうさせてもらっちゃおうかなぁ…♪」
ほむら(…疲れるなぁ…もう)
マミ「~♪」イジイジ
ほむら「…もう30分も経っているのだけれど」
マミ「うそ、もうそんなに?まずいわね、二人が心配しているかも…」
ほむら「今更そんなこと言いだすの…」
マミ「…はい、完成!ポニテほむらちゃん」
ほむら「うう…変な感じがするわ…」
マミ「ほら、鏡見てみなさい」スッ
ほむら「……」
マミ「ね?かわいいじゃない」
ほむら「…は…恥ずかしい…もう…///」
マミ「ほどいたら罰ゲームだから」
ほむら「……」
マミ「さ、帰りましょ」
ほむら「…散々遊ばれたような気がするわ…」
ほむら「…真っ暗ね…」
マミ「大丈夫よ、街頭ついてるから」
ほむら「うう…やっぱり冷えるわ…」ブルッ
マミ「…こっちおいで」クイクイ
ほむら「…今度は何よ」
マミ「……」スルスル
ほむら「…?」
マミ「…何してるの、もうちょっと寄って」シュルシュル
ほむら「…マフラー?」
マミ「そう、あったかいでしょ?これなら」
ほむら「…ええ…あったかい…」
マミ「ふふ」
ほむら「…あったかいけど…顔が近いわ」
マミ「…仕方ないじゃない、文句言うならマフラーとっちゃうわよ」
ほむら「……」
マミ「…意外に素直なのね」
ほむら「…寒いんだもの…」
マミ「…ふふっ、かわいいところあるじゃない…」
ほむら「はーっ、はーっ…」
マミ「…もうすぐ家に着くわ、中で温まりましょう?」
ほむら「……」コクコク
マミ「ただいマミ」
ほむら「なにそれ」
杏子「あっ…ほむら!マミ!お前ら今まで何してたんだよ!」
マミ「ど…どうしたの…そんなにあわてて」
杏子「慌てもするって!台所見てみろ!」
ほむら「だ…台所…?」
マミ「…嫌な予感しかしないのだけれど」
さやか「ああああああああああっ!!!」
ほむら「美樹さやか…!?どういう…」
マミ「待って、中に入っちゃダメ!」
ほむら「えっ…」
ドカァァァァァァァァン
杏子「…爆発した…」
ほむら「さやか!」
さやか「」
マミ「美樹さん!」
ほむら「さやか、大丈夫!?」
杏子「しっかりしろ、さやか!」
マミ「…料理を見ていたら爆発してしまう展開って割とありがちよね…」
杏子「バカみてーなこと言ってんじゃねぇ!」
さやか「…うーん…」
ほむら「さやか!?」
さやか「…ここはどこ、あたしはだれ…?」
ほむら「えっ」
さやか「えっ」
ほむら「…えっ?」
さやか「なんちゃって」
ほむら「は?」
さやか「…ごめんなさいごめんなさい」
杏子「さやか、無事なのか?」
さやか「…あたしはね…なんとか」
さやか「けど…」
ほむら「ケーキ…」
マミ「…?…何を落胆しているの…?」
杏子「だって…せっかく作ったんだろ?それなのに…」
マミ「…生地が飛び散っちゃったけど…まだ利用できそうな生地はたくさんあるわよ?」
マミ「まだ諦めるのも落ち込むのも…早いんじゃないかな」
さやか「…え?」
マミ「これだけあればクッキーとか作れるかも!…ちょっと異色だろうけど」
杏子「…なぁ、あたしにも手伝えないかな、飾り付け終わって暇なんだ」
ほむら「私も…クッキーなら作れそうだわ」
さやか「えっと…あたしは…」
マミ「…美樹さんは私とケーキ作りに決まってるでしょ?」
さやか「えっ?…でも…」
マミ「まさか一度失敗したからやりたくないなんて情けないこと言わないわよね?」
さやか「……」
マミ「失敗したらまたやり直せばいいって言ったじゃない、材料は足りてるんだから」
マミ「普段から一番鹿目さんの近くにいるあなたが…精いっぱい努力して」
マミ「ケーキを作って、誰よりも近くの親友として、お祝いしてあげるべきじゃないのかしら」
マミ「…それとも美樹さん、一回の失敗で諦めちゃうような女の子だったかしら…?」
さやか「…あはは…好き勝手…言ってくれちゃって…もう」
マミ「……」
さやか「…ごめんなさい…今度は…ちゃんと…」
マミ「…美樹さん、一つ教えてあげるわ」
さやか「…はい」
マミ「物を作って贈るときには、贈る相手…受け取ってくれる相手」
マミ「…その人のことを考えなさい」
マミ「わたしは普段そうしているわ、だって…」
マミ「…だってそのほうが、相手に強く気持ちを伝えられるから」
さやか「…はい!」
マミ「それじゃあ…一緒にがんばりましょう?」
さやか「はいっ!」
…こんな調子で私たちは、夜遅くまでずーっと甘い香りに包まれながら、
ときどき空腹に襲われながら、寒い中必死のお菓子作りに励みました
…そして、まどかの誕生日当日
ほむら「…やっぱり素直に伝えてあげたほうがいいんじゃないかしら…」
さやか「それだとインパクトに欠けるっていうか…地味じゃんか!」
杏子「あんまりかわいそうなことしてやらないほうがいいと思うんだけどなぁ…」
マミ「そうよ、べただけど鹿目さん傷つくかもしれないし」
さやか「えー…誕生日に気づかないふりして一日中過ごすってサプライズっぽくていいじゃんかー」
ほむら「それはわかるけどまどかの気持ちを考えたほうがいいと言っているの」
さやか「ぐっ…じゃ…じゃあさ…積極的に隠すわけでもわざとらしく教えるわけでもなく…」
さやか「そう、いつも通り自然にふるまおう、それならありでしょ!?」
マミ「…むしろ相手を傷つけないようにするならそれが普通だと思ったのだけど…」
さやか「…ちぇ、はいはい私が悪かったですよーだ…もう…」
―――
まどか「…今日さやかちゃんもほむらちゃんも遅刻だって…珍しいよねぇ」
仁美「他にも生徒の数名が風邪でお休みらしいですわ…しかも被害は上級生のクラスまで…」
まどか「うーん…時期が時期だから仕方ないのかなぁ…」
まどか「ほむらちゃんたち…なんともなければいいけど…」
仁美「…ところでまどかさん、今日はお誕生日でしたよね?」
まどか「えっ…うん、覚えててくれたんだ?嬉しいなぁ…」
仁美「…本当は勉強に必要のないものを持ってくるのは校則違反なのですが…今日はもちろん特別な日なので」
仁美「…まどかさん…これを」スッ
まどか「…えっと…緑の…箱?」
仁美「…増えるわかめですわ(キリッ」
まどか「えっと…あ…ありがとう…仁美ちゃん…」
仁美「おほん、さすがにこれだけじゃ呆れられてしまう気がします」
まどか「…まぁね…」
仁美「…なのでこちらもお贈りいたしますわ、どうか受け取ってくださいまし」スッ
まどか「ちょっ…なにこれ…えっ、なにこれ!?」
仁美「ダイヤの指輪ですわ、その価値およそ一億万…でしたっけ」
仁美「…一兆か一京だったかもしれませんけど…あれ、いくらだっけ…」
仁美「申し訳ありません、記憶にございませんが…そこそこ価値のある指輪です」
まどか「……」
仁美「…い、一応言っておくとわかめじゃなくて指輪が本命ですわよ?」
まどか「……」
仁美「ほ…本当ですわよ!?まどかさん」
まどか「…私わかめだけでいいや」
仁美「えっ」
―――
まどか「…増えるわかめ…」ブツブツ
まどか「…うーん…増えるわかめ…」ブツブツ
まどか「…増えるわかめかぁ…」ブツブツ
まどか「…増えるわかめもらってもなぁ…」ブツブツ
まどか「…っていうか…わかめが増えてもなぁ…」ブツブツ
まどか「…増えるわかめ…」ブツブツ
ほむら「…まどかの独り言がさっきから凄まじいわ」
さやか「どうしたのあの子?風邪でも引いたのかな?」
まどか「へっくち!…ずずっ」
―昼休み―
さやか「まどかーお弁当食べようー」
まどか「いいよー」
さやか「…どこで食べる?」
まどか「え?いつも通り屋上じゃなくて?」
さやか「あ、あー…うん、そうだったね、行こう行こう」
まどか「…?」
さやか(…なんか…まどかが誕生日だってこと意識しすぎてんのかな…おかげで変な質問しちゃった…)
さやか「…あのさ、まどか」モグモグ
まどか「なに?」ムグムグ
さやか「…あ、ほっぺにご飯粒ついてる」スッ
まどか「あ…えへへ、ありがと」
さやか「…それでさ…えっと」パクパク
まどか「…あ、さやかちゃんもほっぺにご飯粒ついてる」ピッ
さやか「んあ…ありがとう」
さやか「…それでさ、えーっと…今日って予定とかあったりする?」
まどか「…ううん、別に」
さやか「よかったぁ、じゃあさ、今日ほむらの家に遊びに行かない?」
まどか「えっ、ほむらちゃんの家!?うん、行きたい行きたい!」
さやか「よっ、よーし…行こうかーまどかー」
まどか「うん!」
さやか(…あたしの家に誘った時よりも食いつきがよくって悲しい…)
まどか「ごちそうさまでした」
さやか「ごちそうさま」
まどか「……」
さやか「…?まどか?」
まどか「…えっ、なに?さやかちゃん」
さやか「いや…ぼーっとしてたみたいだったからさ…大丈夫?」
まどか「あっ…ごめんごめん、平気だよ」
さやか「そう?それならいいんだけど」
まどか「……」
さやか「……」
さやか(…なんか…まどか…悲しそう…)
さやか「…やっぱり伝えたほうが…」
まどか「え?」
さやか「…あっ、あのさ!まどか…今日ってあんた――」
-エピローグ-
どか・・・まどか・・・
誰かの呼ぶ声がする
ゆっくりとゆっくりと目を開けるとそこは私の家だった
目の前にはたくさんのご馳走、部屋は綺麗に飾り付けされていた
周りには優しいパパにママ、学校のお友達みんながにこやかに笑っていた
パパ「さぁまどか、ロウソクの炎を消してごらんそうしたらパーティーの始まりだ」
私の前にはパパのお手製ケーキが置いてあった
プレートには「お誕生日おめでとう!まどか」と書いてある
促されるように私は大きく息を吸い込むと勢い良く吹き消した
すまん誤爆
ほむら「―――生理?」
さやか「!?」
まどか「えっ…あれ、ほむらちゃん…?」
ほむら「なんだか情緒不安定そうに見えたから…」
まどか「あっ…ちっ…違うって…なななんでそんなこと…///」
ほむら「…あっ…まどかに最後に生理が来たのは一週間前だっけ…」
さやか「いや、何で知ってんのよ」
まどか「そっ、そうだよ!よくわかんないけどほむらちゃんの変態!」ゴキッ
ほむら「ぐはぁ!」
さやか「普通そこの擬音はバシッとかぺしっとかじゃないの!?ゴキッてなんだよ」
ほむら「平気…ご褒美よ、ご褒美…ぐふっ」
さやか「左腕がありえない方向に向かってるんですけど」
ほむら「…美樹さやか…誕生パーティーの計画をまどかに伏せようと言ったのはあなたじゃない」グリゴキャッ
さやか「力技で腕を治すな」
ほむら「それなのにどうしてあの子に誕生日のことを…」
さやか「…だって…悲しそうだったんだもん…」
さやか「あいつ…謙虚で控えめでいい子だからさ…自分から祝ってもらおうなんて言わなくて」
さやか「…だから…寂しいんだろうな、って思ったら…つい、ね…」
ほむら「…さやか…」
ほむら「…親友、らしいわね」
さやか「…え?」
ほむら「いえ…私ではきっとあなたのように…まどかの些細な変化には気づけない」
ほむら「私よりもあなたのほうが…悔しいけれど、まどかのことを知っているから」
さやか「…ほむら…」
ほむら「…だから…親友として」
ほむら「…あの子がうれし泣きするくらい…とびっきり驚かせて」
ほむら「…とびっきり…喜ばせられるくらいの…そんな誕生日にしてあげましょう?」
さやか「ほむら…」
ほむら「…だからそれまで…秘密は厳守よ?」
ほむら「そもそもはあなたが決めたことなんだし」
さやか「りょ…了解…」
ほむら「…それじゃあ放課後、よろしくね?さやか」
さやか「よし、任せなさい!」
―放課後―
さやか「まどか、一緒に帰ろう?」
まどか「うん…あれ、仁美ちゃんは?」
さやか「例によって習い事だってさ」
まどか「そっかぁ、残念」
さやか「…その手に持ってんの何?」
まどか「……」
まどか「増えるわかめ…」
さやか「…何で?」
―――
まどか「……」
さやか「…まどか」
まどか「…なに、さやかちゃん」
さやか「…ほむらの家行こう、今から」
まどか「え?でも…いったんおうちに帰らないと…」
さやか「大丈夫大丈夫、まどかのお母さんもお父さんもそんなに時間にうるさいわけでもないじゃん」
まどか「うーん…でも…」
さやか「あーもう!いいから早く行くよ!」
まどか「あっ、ちょっ…引っ張らないでよさやかちゃん!」
―ほむホーム―
さやか「ほむら…もう帰ってきてるかな」
ぴんぽーん
ほむら「…遅いわ、さやか…それにまどか」
まどか「ほむらちゃん」
さやか「はぁ…よかったぁ」
さやか「…ほら、早く中入って!今日の主役は…」
さやか「…まどか、あんたしかいないんだからさ!」
まどか「…え…?」
ほむら「…まどか、この部屋に入って」
まどか「う…うん…」
まどか「真っ暗で…何にも見えないね…」
パァァァン
パァァァァン
まどか「ひぃっ!?」
マミ「ハッピーバースデートゥーユー」
杏子「ハッピーバースデートゥーユー」
ほむら「ハッピーバースデーでぃあまどかー」
さやか「ハッピーバースデートゥーユー!」
まどか「…みんな…」
杏子「字面だとなんだかやる気のない歌にしか見えないな…」
マミ「そんなつもりはなかったのだけど」
まどか「…みんな…ありがとう…もしかしてこれ…」
まどか「…全部、わたしの…ため…?」
さやか「当然でしょ?他に誰がいるっていうのよ」
まどか「うぅ…ぐすっ、ひっく…」
マミ「か…鹿目さん!?」
まどか「えぐ…ごめんなさい…だって…」
まどか「…こんな風に…盛大にお祝いしてくれるなんて…私、思ってもみなかったから…」
まどか「パパやママも…今まで何度もお祝いしてくれたけど…ぐすっ」
まどか「こんなに豪華なの…私、初めてで…それに」
まどか「それに…みんな、私なんかのために…頑張ってくれたのが…わかるから…」
まどか「…ひっく…なんで嬉しいはずなのに…泣いてるんだろ、私…」
まどか「…ありがとう…みんな…」
まどか「今までで…一番のパーティーだよ…ぐすっ」
さやか「それじゃあろうそくの火!吹き消して?」
まどか「…うん!すぅー…」
まどか「ふぅーっ!!」
杏子「おお、一発で全部消えたぞ!」
まどか「…疲れた…」
マミ「今ので…?」
ほむら「…とりあえず切り分けちゃうわね」
まどか「はい、お願いします…」
さやか「まどか、まだ始まったばっかなのにだれすぎだって、あはは」
その後は、みんなの用意してくれたお料理を食べて、みんなにプレゼントをもらって…
みんなで遊んで、みんなが疲れた夜ごろに、ようやくお開きになりました
ちなみに、さやかちゃんがくれたプレゼントはウサギのぬいぐるみ
マミさんのくれたプレゼントは手編みの人形
杏子ちゃんのくれたプレゼントはお菓子一年分
ほむらちゃんのくれたプレゼントは…すごく高そうなネックレスでした
…でも
…私の誕生日パーティーは一回で終わりませんでした
詢子「まどか、お帰り…遅かったね」
知久「ちょうどケーキができたとこなんだ、さぁ座って」
タツヤ「あー」
まどか「……」
…本当は、ありがたいことなんだけどね…
まどか「…おなかいっぱいだよ…私…」
マミ「…ほむらちゃん」
ほむら「…巴マミ、どうしたの?」
マミ「…成功してよかったわね、鹿目さんの…誕生日パーティー」
ほむら「ええ…あなたやさやか、杏子のおかげよ」
マミ「…ふふ、どうもありがとう」
ほむら「…まどかの笑顔が見られて…よかった…」
マミ「…私は…」
ほむら「…?」
マミ「…ほむらちゃん、あなたの笑顔が見たいわ」
ほむら「……」
マミ「…本当は…まだ納得のいかないことがあるんじゃない?」
ほむら「……」
ほむら「…さやか…」
マミ「…そう、美樹さんのこと」
ほむら「…お見通しなのね」
マミ「…誰でもわかるわよ、嫉妬してるんでしょ」
ほむら「…そうよ、悔しいわ」
ほむら「私より彼女のほうがまどかにとって大きい存在…彼女の親友は…」
ほむら「…美樹さやか」
ほむら「…でも…彼女を憎んだり傷つけたりしたいわけじゃない」
ほむら「…自分の力で…私は」
ほむら「さやかより大きな存在に…なるつもりでいるから」
マミ「…なるほど…じゃあ」
ほむら「……」
マミ「…ほむらちゃん…それ、私にも…手伝わせてよ」
ほむら「……」
ほむら「…どうして?」
マミ「…私だって、鹿目さんと仲良くなりたいもの」
マミ「ときどき美樹さんがうらやましいことがあるのよ…先輩のくせに、ね」
ほむら「……」
マミ「…美樹さんと同じくらい…特別な存在になりたいじゃない」
ほむら「…いいわ…それじゃあまずは…」
マミ「…?」
ほむら「…私にとっての…特別な存在になってくれないかしら…」
ほむら「…巴マミ」
マミ「…え…?」
ほむら「…いえ…本当はとっくの昔から…貴女は特別な存在だった」
マミ「…何を言っているの…?」
ほむら「…簡単なこと…巴…さん」
マミ「…え?」
ほむら「…こうやって呼びたかったの…ずっと」
マミ「……」
ほむら「昔みたいに戻りたかった…堅苦しい名前じゃなくて」
ほむら「…一度でいいから…仮面を取りたかった」
ほむら「だからお願い…呼ばせてください…」
ほむら「…巴さん…巴…マミさん…」
マミ「…ほむらちゃん…」
ほむら「…これが…あの日からの…私の思い」
ほむら「マミさん…少しだけ」
ほむら「…膝枕させてください」
マミ「…ええ…どうぞ、ほむらちゃん」
マミ「……」
ほむら「…あったかい…」
マミ「…そう、それはよかったわ…」
ほむら「…ありがとう…マミさん」
マミ「…貴女のこと…なんだか…もっと知りたくなっちゃったな」
マミ「教えてくれないかしら…」
ほむら「…ええ…いつでも」
ほむら「…どんなことでも…」
マミ「…ありのままのあなたを…見てみたい」
ほむら「…でも…私は…」
マミ「…貴女はもう…無理して自分を繕う必要なんかないわ」
マミ「貴女には…仮面なんて似合わない」
マミ「本当のあなたのほうがよっぽど綺麗で…可愛いもの」
マミ「…貴女はもう…一人ぼっちじゃないわ」
ほむら「!」ドキホムッ
マミ「…約束よ」
ほむら「…はい」
ほむら「…マミさん」
―――
まどか「さやかちゃん、仁美ちゃん、おはよう」
さやか「……」
仁美「お、おはようございます…まどかさん」
まどか「…さやかちゃん、どうかしたの?」
仁美「さやかさんの視線の先を見ればおそらく…」
まどか「…あれ?ほむらちゃんとマミさんだ」
仁美「さやかさん…ずーっとあのお二方を観察してらっしゃるんですよ…」
仁美「あまり時間がないといってもてこでも動かなくて…」
まどか「二人が一緒に登校してるのなんて初めて見たよ」
さやか「まどか!ほむらのほうをもっとよく見てみなさい、明らかにイメチェンしてるよあいつ!」
まどか「…め…眼鏡と…ぽにーてーる…?」
―――
ほむら「マミさん、今日の放課後どこかに出かけませんか?」
マミ「いいわね、どこに出かけるの?」
ほむら「えっと…いろいろ行きたいとこはあるんですけど」
マミ「…うーん…ほむらちゃんの自由でいいかな、わたしは」
ほむら「えーっ?うーん…じゃあ…」
ほむら「…お洋服!お洋服買いに行きましょう?」
マミ「ええ、わかったわ…放課後、楽しみに待ってるからね?」
マミ「ほむらちゃん!」
夏から秋へ移りゆく
秋から冬へ移りゆく
寒くなっていく季節ですが…私の心は晴れ晴れとして
もう二度と曇ることはない
いつでも私は覚えてる
一人ぼっちじゃないってことを
冬から春へ 移りゆく
終わり
乗っ取ると必ず最後のほうで失速するのはなんとかならないかな
書きたかったことは大体書けたからいいかな
まどっち誕生日おめでとう、マミほむの土台みたいな扱いにしてごめんなさい
さすがにもう寝ます
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