ある人が私に言う。
「君は貯金もしていないのかい。旅行が好きなんだろう。
今日にも列車に乗ってフィッチバーグへ出かけ、あの辺を見物してきたらいいのに」
だが私はもっと賢いのだ。
いちばん速いのは徒歩の旅行者だということを、ちゃんと知っているのだから。
私は友人に言う。ひとつ、君とぼくとどちらが先に着くか考えてみようじゃないか。
距離は30マイル、汽車賃は90セント。
これはほとんど一日分の給料だよね。
ぼくはこの鉄道路線で働いていた工夫の給料が一日60セントだったころのことをおぼえているからね。
さて、ぼくはいま徒歩で出発し、夜になる前に目的地に着く。以前に、その速さで一週間ぶっつづけに旅をしたことがあるんだ。
君はそのあいだ汽車賃をかせぎ、明日か、ひょっとすると今夜あたりそこへ着く。
うまいぐあいに仕事が見つかればの話だけれど。
つまりフィッチバーグへ行くかわりに、君はほとんど一日中ここで働いていることになるわけさ。
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