【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 (26)

モンスターハンターワールドのSSです。
不定期投下です。
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(水、水が飲みたい。体が動かねえ……酷くやられすぎた。俺はこのまま死ぬのか……)

パシャパシャパシャ……

(水……水だ……! ああ、ありがてえ! 目が、霞んでるがだんだん見えてきた……)



(何だ……? 猿……よく見えない。俺は……)

グイグイ。

(甘……ハチミツを口に押し込まれてる……)

~数時間後、朝~

アンジャナフ 「…………」
少女 「スゥ……スゥ……」
アンジャナフ (何で……人間の子供が俺の体の上で寝てンだ。それに……)
少女 「スゥ……スゥ……」
アンジャナフ (夢うつつだったが、俺ァ、水とかハチミツを口に運んでもらってた。こいつの仕業なのか……?)

グググ……。

アンジャナフ (痛ァ……! 体中が痛ェ。でも、もう動けないほどではなさそうだ。しかし、この人間、一晩中俺の傍にいたのか……)

少女 「……う、ううん……」
アンジャナフ 「!」
少女 「ふあ……ぁ……」
アンジャナフ 「…………」
少女 「あ……」
アンジャナフ (目が合っちまった……)
少女 「目が、覚めたの?」
アンジャナフ (何だ、こいつの声。小せぇのに、やけにハッキリ耳に聞こえるな……)
少女 「酷い怪我だよ。まだ動かない方がいいよ」
アンジャナフ 「……何で人間が。それも子供が、こんな森の奥にいるンだ?」
少女 「…………」
アンジャナフ (? 黙り込んだ。見た所かなりみすぼらしいな。そこらの猿だって、もう少し衛生的だ)

少女 「……ハチミツまだあるよ。食べる?」
アンジャナフ 「ハチミツ……? お前、随分刺されてるな。採ってきたのか?」
少女 (コクリ)
アンジャナフ 「俺に水を運んでくれたのもお前か……? どうして……」
少女 「あのままだと、おじさんが死んじゃうと思って……」
アンジャナフ 「…………」

グググ……

少女 「あ……下に降りるね。ごめんなさい」
アンジャナフ 「……!」
少女 「尻尾、痛い……? 切れてるから痛いよね」
アンジャナフ 「フフ……カカカ!」
少女 「……?」
アンジャナフ 「ハァ……俺も遂に、尾無しの仲間入りか。クソッ!」

少女 「お、落ち着いて……傷が……」
アンジャナフ 「……助けてくれたことは礼を言おう。だが、俺ァ人間は嫌いだ。見逃してやるから、どっかに消えろ。ガキは家に帰るもんだ」
少女 「…………」
アンジャナフ (……何だ、この悲しそうな目は。これは、俺を憐れんでるんじゃない。もっと深くて根深い何かの目だ……)
少女 「……家、なくなっちゃった。私も、ハンターさん達に見つかったら『ハント』されちゃうんだ」
アンジャナフ 「はァ?」
少女 「えへへ……同じだね」
アンジャナフ 「…………」

グググ……ズゥン、ズゥン

アンジャナフ 「痛ェ……でも何とか立てたぞ。ここは森の中でもいい場所じゃねえ。血の臭いプンプンさせてたら、いろいろ呼び寄せちまうからな」
少女 「行っちゃうの……?」
アンジャナフ 「…………」
少女 「そっか。じゃ……」
アンジャナフ 「ハンターに狙われてるって、何でだ? お前人間だろ?」
少女 「人間……のはず、だけど。でも、私は人間じゃないんだ」
アンジャナフ 「あァ? 何言ってやがる」

少女 「あはは……何、言ってるんだろ。ほんと……」
アンジャナフ 「……?」
少女 「笑えない冗談だよ……」
アンジャナフ 「家がなくなった? ハントされる? 人間のお前が、人間にか?」
少女 「…………」
アンジャナフ 「……いろいろ気になるが、ここは古代樹の森の西側の筈だ。俺の縄張りじゃねェ。縄張りの主に見つかる前に、ズラかるぞ」
少女 「縄張りの主? 見つかるとどうなるの?」
アンジャナフ 「お前と同じだ。今の俺は弱ってる……ハントされることになるな」
少女 「ハント……ハントって」

ギャオオオオオ!

少女 「……ひっ」
アンジャナフ 「よろしくねェな……この咆哮は、どうやらもう気づかれてるようだ」
少女 「おじさん、どうするの?」
アンジャナフ 「可能な限り俺の縄張りの方に逃げる。対面しちまったら、戦うしかねェな」
少女 「…………」
アンジャナフ 「……俺の背に乗れるか?」
少女 「!」
アンジャナフ 「ここにほっぽりだしてくのも目覚めが悪ィ。仕方ねえ。安心して話ができる場所まで連れてってやる」
少女 「う……うん! 分かった!」

よじよじ……

アンジャナフ 「俺の毛にしっかりと掴まれ。行くぞ」

~古代樹の森、南西部~

アンジャナフ 「ハァ……ハァ……」
少女 「おじさん、大丈夫……? 傷が開いて……」
アンジャナフ 「止まるわけにはいかねェ。縄張りを侵してるのは俺の方だ」
少女 「でも……」

ギャオオオオオオ!

少女 「近い……!」
アンジャナフ 「! しっかり掴まれ!」

ズゥン!

少女 「きゃあ!」
アンジャナフ 「ぐ……! 何とか避けられたが……」

オドガロン 「何だァ……? フラフラじゃねェか? よく俺様の一撃を避けられたな」
アンジャナフ 「やっぱりオドガロンの兄さんか……」
オドガロン 「俺の縄張りで何してる? ジャナフ」
アンジャナフ 「…………」
オドガロン 「すげェ怪我だな。人間のハンターとでも殺り合ったか?」
アンジャナフ 「それは……」
オドガロン 「そして負けたと見える」
アンジャナフ 「!」
オドガロン 「尾無しには、この古代樹の森で生きる資格はねェ。小さい頃からお前には口ィ酸っぱくして教えたよな? なぁ?」
アンジャナフ 「兄さん、聞いてくれ。俺ァどうしても、ヤマツカミ様に……」
オドガロン 「やかましいぞジャナフ!」

アンジャナフ 「……兄さん!」
オドガロン 「ハンターに敗北した挙げ句、尻尾を切られ、生き恥を晒して、俺の縄張りを汚しているお前にかける温情はねェ。森の掟だ。食うか、食われるかだ。分かるな? 坊主」
アンジャナフ 「クソが……!」
オドガロン 「…………」

ジリジリ……

オドガロン 「……血の臭いに混じって、おかしな臭いがする。お前、何かを隠してるな?」
少女 (……!)
アンジャナフ 「へへ……何のことだか……」

ビュン! ドガァ!

アンジャナフ 「ぐう!」
オドガロン 「ヘロヘロでこく威勢でもねェだろ」

ドガ! ドガ! バキィ!

アンジャナフ 「ぐ! ぐお……うう!」
オドガロン 「……本当にもう力が残ってねえみてェだな。不甲斐ないぜ!」
アンジャナフ 「クソ……!」
オドガロン 「ここで引導を渡して……」
少女 「やめて……!」
オドガロン 「!」
少女 「お願い……これ以上おじさんを傷つけないで!」
オドガロン (何だ……? ジャナフの背中に猿……? いや、人間だ。人間の子供? おかしな臭いはこいつからか!)
アンジャナフ 「馬鹿! 顔を出すな!」

オドガロン 「坊主……てめェ、どうして人間なんかとつるんでやがる?」
アンジャナフ 「兄さん……聞いてくれ」
オドガロン 「…………」
アンジャナフ 「森の掟……『弱き者は強き者に食われる運命』なのはよく分かってる。だが、今だけ。今回だけは見逃しちゃくれねえか……? それに、この人間は無関係だ。倒れてる俺のことを介抱してくれていた……」
オドガロン 「介抱……?」

ギャオオオオオ!

アンジャナフ 「……!」
オドガロン 「貴様、まさか人間に命を救われたとでも言うつもりか! 我ら森の民の誇りは、どこに捨てた!」

アンジャナフ 「分かってくれ! 俺はここで、兄さんに殺されるわけにはいかねぇんだ!」
オドガロン 「問答無用!」

ガッ!

アンジャナフ 「ぐ……食いつかれた!」
オドガロン 「このまま喉笛を食い破ってくれる!」
アンジャナフ 「うおおおお!」
オドガロン (む……! この人間が持っているものは……光蟲!)
少女 「…………!」

カッ……!

オドガロン 「ぐ! 光だ! 目が眩む! ぐあああ!」

アンジャナフ 「食いつきが緩んだ! 今だ!」
オドガロン 「グゥ! 貴様……」
アンジャナフ 「兄さんすまねぇ!」

ゴォォォォォ!

オドガロン 「ぐああ! 火炎を……! 目が……」
アンジャナフ 「俺はヤマツカミ様に会わなきゃいけねェんだ。兄さん……それまで生きなきゃならねェ!」
オドガロン 「こんなことで、俺が殺られるとでも……」
アンジャナフ 「尾無しとはいえ、俺をあまり甘くみねェ方がいい……!」

ゴォォォォォォ!
ズゥン! ドガァ!

オドガロン 「グゥゥゥ! き、貴様!」
アンジャナフ 「すまねェ!」

ドゴォォォ!

オドガロン 「ぐああ!」

ズゥン……

オドガロン 「…………」
アンジャナフ 「ハァ……ハァ……」
少女 (ブルブル……)
アンジャナフ 「大丈夫だ。気絶してるだけだ」
少女 「おじさん、怪我が……」
アンジャナフ 「これくらい、無くした尻尾の痛みに比べれば何ともない。ここを離れるぞ」
少女 「あの人は……?」
アンジャナフ 「…………」
少女 「……?」
アンジャナフ 「いや、いいんだ。行くぞ」

~古代樹の森、南、アンジャナフの縄張り~

アンジャナフ 「フゥ……ここまで来ればもう安全だ」
少女 「ここは……?」
アンジャナフ 「俺の寝蔵……縄張りだな」
少女 「…………」
アンジャナフ 「傷が開いちまってる。少し休むぜ……」
少女 「どうして……」
アンジャナフ 「……?」
少女 「どうして、あの人にトドメを刺さなかったの……?」
アンジャナフ 「…………」
少女 「あの人、おじさんを殺そうとしてた。本気だったように見えた……」

アンジャナフ 「オドガロンの兄さんとは古い付き合いでな。俺の、身内みたいなもんだ」
少女 「おかしいよ。身内の人は殺そうとなんてしてこないよ」
アンジャナフ 「……俺が尾無しになっちまったからな。今ここで引導を渡そうとしてくれてるのは、兄さんの優しさだろう」
少女 「優しさ……」
アンジャナフ 「お前をほっぽり出す気力もねェ。兄さんが追ってこねェとも限らねえ。俺は今のうちに寝る。お前も休め」
少女 「……うん」
アンジャナフ 「…………」
少女 「おじさん……あの、ヤマツカミ様って……」
アンジャナフ 「フゴー……フゴー……」
少女 「もう寝ちゃった……」

~アステラ、酒場~

ハンターA 「本当か? 森の中に生贄の巫女が逃げ込んだってのは……」
ハンターB 「森の奥で姿を見たってヤツもいる」
ハンターA 「古代樹の森の奥地でか? かなりの危険地帯だ。もうモンスターに喰われてるんじゃないか?」
ハンターB 「噂では、巫女は不思議な力を持っているって話だ。ひょっとしたら、まだ生きてるかもしれねぇな」
ハンターA 「おいおい、そんな馬鹿な……」

ガタッ……

ハンマー 「…………」
ハンターA 「な、何だ。あんたいきなり……」

ハンマー 「その話、もう少し詳しく聞かせてくれないか? 礼ならする」
ハンターB 「お……おう。巫女のことか?」
ハンマー 「ああ」
ハンターB 「ゾラ・マグダラオスが動き出してる。生贄の巫女は、マグダラオスに捧げられる女の子だ。俺も詳しくは知らねえが、部族の中で特殊な力を持つ一族が、代々捧げられてるらしい」
ハンマー 「…………」

ハンターB 「その巫女が、少し前に祠を逃げ出したらしくてな。加えて、マグダラオスの動きも活発化していて、ここ最近のネルギガンテの目撃情報も相次いでる。アステラは結構な騒ぎだぜ」
ハンマー 「ネルギガンテ……!」
ハンターA 「兄さん、珍しい武器持ってるな。この辺のハンターじゃねえだろ。ネルギガンテってのは……
ハンマー 「知ってる」
ハンターA 「……?」
ハンマー 「俺は、ヤツの角を砕くために旅をしているからな」

続きます。
寒暖差が激しいですが、皆様もお体に気をつけて。
お風邪など召しませんよう。

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