雪歩「765プロが倒産してもう二年半ですぅ……」(760)

あのあと、お互いに言葉は何一つありませんでした。
ただ、満月を眺める四条さんの顔はどこか、悲しげだったのは気のせいだったのでしょうか……。


一人、ボーっとビデオカメラを覗きながら、廊下を一歩一歩進みます。
すると、長イスに座ったやよいちゃんが「べろちょろ」からハミガキやお財布を取り出していました。

「う~んと、これの他に必要なものは~もやしと~……」
……やよいちゃんモヤシは賞味期限が持たないと思いますぅ。

「あっ雪歩さん!」
私に気付いたやよいちゃんは、イスから飛び上がり、両手を後ろに跳ねあげてお辞儀をしました。

私は鼻歌まじりでご機嫌なやよいちゃんの隣に座って、話しかけます。
「あ、あのね、やよいちゃん、お家のことは大丈夫なの?」
「はい!最近、長介がしっかりしてきてくれたので、な~んにも心配いりませんよ!」

やよいちゃんは満面の笑みを向けてくれました……。
その言葉は、ウソじゃないみたいです。

「お金が無いから、お土産は買っていけませんけど」
相変わらず、ニコニコ顔でやよいちゃんは続けます
私はそれにつられて、ついつい口元が緩んじゃいます……。
「でもでも、あっちでの思い出話をい~っぱい持ってかえろうと思います~!」

やよいちゃんは、倒産してから一人で家事や、お刺身のタンポポを作るアルバイトや
病気で倒れたお母さんの看病をしていた、と響ちゃんから聞きました。
すごい……すごいなぁ……。私はとにかく、『すごい』という言葉しか浮かびませんでした。

「きっと!それはお金じゃ買えないほど大事です!」
やよいちゃんは、私より3つも年下なのに、もうなにか大切なものをすでに見つけたみたいです。

それから、起こさないようにそっと静かにドアを開けると、千早ちゃんが目を覚ましていました。
「……!」
千早ちゃんは、ベッドから身を起していました。
その目はギュッと閉じられていて、歯をきつく食いしばっていて……。

「わかるよ、千早ちゃん。春香ちゃんのことだよね」
「……!」
私の声にピクッと肩を震わせて、驚いた顔を向けました。

私と真ちゃんもずっとデュオを組んでいたから……。
千早ちゃんが今どれだけ辛いかは、こんなダメダメで負の胞子を撒き散らしちゃう私でもわかってあげられるつもりです。

「本当は、今すぐ会いに行きたいんだよね」
「……」

千早ちゃんは、一切言葉を発しません。
それに、千早ちゃんはあまり気持ちを表に出すような人じゃないので、他人から誤解されやすいみたいです。
私も、出会ってすぐのときは犬>男の人>千早ちゃんの順に怖かったですぅ……。

二人っきりになりました。
私と千早ちゃんは、アイドル時代そんなに話をするほうではなかったです。

「……えっと」
「……」

ひぃ~ん!何話せば元気が出るんだろ……。
昨日私がUFOを見つけた話かな……でも千早ちゃんってオカルトとか嫌いそうだし……
それとも私がドジっちゃった話……ダメダメ千早ちゃんってツッコミがなんだか怖いし……

「……」
千早ちゃんの顔がまた曇り始めました。
「あ、あのね!千早ちゃん、私たち絶対に帰ってくるから!」
「……!」
「だから、だから心配しないで!千早ちゃんも今とっても辛いと思うけど……」

必死に捲し立てる私の手に、そっと千早ちゃんの手のひらが重なりました。
「大……丈……夫……」
千早ちゃんは、私たちじゃないときっと無表情の時と区別がつかないほどの、ギリギリの微笑をして言いました。

「誰の……助けも……今は……いらない……から」
……あずささん、やっぱり千早ちゃんは私なんかよりとっても強い人です。

いよいよ、出発が明日に迫りました。
それまでに、いっぱいいっぱいビデオカメラに風景は残しておきました。

だけど、最後にどうしてもハッキリしておきたいことがあって……。
グッと拳を握って、休憩室のドアを開けました。
そこには……

「真ちゃん、二人で会うのは久しぶりだね」
「あ、雪歩……」

真ちゃんと私は、表面上では元通りになりました。
皆と会うときは、いつもの感じで話せます
けれども、二人っきりになるのをどこかお互い避けていて……。

「やぁ……」
真ちゃんは、私を見て顔を背けました。

真ちゃん、誰にも言わないし、元気にふるまっているけど私、知ってるよ。
週に1回、精神病院に通ってオクスリ貰ってること……。
未だに、あの日のことに悩まされていること……。

「真ちゃん、私ホントに気にしてないから」
「ごめん……」

会うたびに、ごめんと言われます。
謝るのはホントは私の方なのに。
私も、765プロ倒産直後は、真ちゃんにいっぱい迷惑かけちゃったから。

「美希ったらさ……ホントいつもボクを困らせるんだ、真クン真クン言って……まったく」
真ちゃんはポツポツと言葉を紡ぎます。
「でも、美希はボクの言うことだけはいつも聞いてくれるんだ。今回も大丈夫だよ」
「……」

真ちゃんは、相変わらず声は落ち込んでいます。

「雪歩、ボクたちまた元の関係に戻れるのかなぁ?
 アイドルに戻って、また仲良くなれるのかな」
「……」

「最近、そんなことばかり考えるんだ。もし、美希も春香も元気になってももう全部遅かったんじゃないかって」
「……」
多分、それはみんな考えてることだと思います。でも、私たちはそれを信じるしかないから……。
何か、言葉を出そうとしても喉の手前で引っ込んでしまいます。

「……けどね、解ったよ」
「えっ」

真ちゃんの声に力が篭りました。
「後悔するのは、全力で、精一杯、ジャンジャンバリバリ頑張ってから。それからしてやる」
「……」

真ちゃんが、立ちあがって肩を震わせました。
「あー!なんだかボクらしくないよね!ウジウジ悩んじゃってさ」
「……うん!」
やっぱり、真ちゃんは真ちゃんみたいです。
くるりと、私の方に振り向いて言いました。

「ひとつ、約束して。雪歩」
「えっ」
「もしこれから先、ボクにまた何かあってしても、雪歩には辛くても前を見ていて欲しいんだ」
……私は、真ちゃんの目をじっと見て強く頷きました。
それから、手をグーにして真ちゃんに向けます。真ちゃんも、手を握って……

「ダーン」

……いよいよ私たちは明日、アメリカへと向かいますぅ……!

「ユ→エスエ→!!!」
「イエーイ!」
小さなヤシの木の立ち並んだアメリカの空港の出口で亜美ちゃんと真美ちゃんが飛び上がりました。
遠くには、スモッグの先に、映画やテレビでよく見る「HOLLYWOOD」の大きな看板が見えました。

……ピンクのウサギがプリントされてジェット機チャーター。
ホントに来ちゃいました。アメリカ……。

「ここに来るのも久しぶりね~」
サングラスをズラして、隣の伊織ちゃんが言いました。
「はいはい、皆集合~!」
スーツを着た律子さんが、パンパンと手を叩きます。

「ここからは、グループを分けて美希を探すわ」
バッグから何か黒い電子機器を取り出して、それを一人ずつ手渡します。
伊織ちゃんの説明曰く……

水瀬財閥作!GPSで24時間リアルタイムで超小型ICタグで全員の位置を補足!
衛星地図も表示されて誤差ほぼゼロミリ!さらに通話機能搭載!


あはは……伊織ちゃんが味方になってくれると頼もしすぎですね……。

──ただし、衝撃には非常に弱いから注意してね
最後に一言付け加えました。

「では、チーム分けを発表するわ!」
律子さんが声を張り上げました。

「まず、真、やよいチーム!」
「はいはーい!」
真ちゃんとやよいちゃんが元気よく返事をします。
この組は、街中での捜索を中心に行うみたいです。

「次、雪歩、伊織、亜美真美チーム!」
わ、私の名前が呼ばれました……。
伊織ちゃんの海外旅行でのノウハウを生かして動くみたいです。

「3組目!響、貴音チーム!」
「自分、がんばっちゃうぞー!」
勘の鋭い二人が、奇跡を起こすかも……みたいです。

「最後に私とあずささんチームね……」
……なんとなく納得しました。

「それじゃみんな!舞台はハリウッド!元765プロ最後の一人、美希に会いにいくわ!
律子さんの瞳に炎が宿りました。
「作戦名は……そう、オーバーマスター作戦よ!」

「な、なんか律っちゃん燃えてんね……」
「ほら……りっちゃんってゲーム好きだから……」
亜美ちゃんと真美ちゃんの内緒話が、漏れてきました。

「では、スタート!健闘を祈るわ!」

そう言って、私たちはバラバラの方向へとそれぞれ向かいました。

それから、地図を見ていた私に伊織ちゃんが言いました。
「はぁ~……ようやく私たちが報われる、最期の週末が来るのね」
「う、うん……」
水瀬財閥の用意した外国車に乗り込み、市街地へと向かいます。

勘、っていうのかな。
どうしてだろう。美希ちゃんに会えるハズなのに……。
なんだかイヤな胸騒ぎが収まりません……。

カラフルな建物と、観光客が溢れかえるメインストリートに到着しました。
地面のタイルには、有名な俳優の名前と星がいっぱい書かれています。

ふと目を離すと亜美ちゃんと真美ちゃんがお土産屋で品物を見ていました。
「うわ→見て見て真美!ののワさん人形だよ!」
「ホントだ→!ここ押すと『ヴぁい!』って鳴くんだね!」

「ちょっとアンタたち、観光に来たんじゃないのよ!」
伊織ちゃんが真っ赤な顔で怒鳴りました。
うぅ……お願いだからはぐれないで……。

『あらあら~なんだか不思議な匂いがするわね~』
『あずささん!そっちの通りは危ないですから!』
GPSからあずささんと律子さんの声が聞こえてきました。

『は、はわいゆ~?あ、あいむたかね……』
『貴音!知らない人に話しかけちゃダメさー!』

……なんだかあちらはあちらで大変みたいです。

「ま、そんな簡単に見つかるワケないわよね」
「うん……」

私はそれからいっぱい歩き回って、ヘトヘトになっちゃいました……。
伊織ちゃんと一緒に、カフェに立ち寄りました。
亜美ちゃんと真美ちゃんは、まだまだ元気いっぱいみたいです。
うぅ……体力無いなぁ……私……ダメだな……。
また、ネガティブな思考が始まってしまいました。

大きなオレンジジュースを啜りながら、伊織ちゃんが言います。
「ねぇ、雪歩、聞くとこによると、ずっと千早と真の看病してたらしいじゃない」
「ふぇ……?!う、うん……」
なんだか、本当に私のことだとは思えないけれど……。
「ふ~ん。あんたにしてはよくやったじゃない」
そう言って、感心感心といった具合に両頬に手をついて私を見ました。
……あのときの力の出し方がもうわかりません。

その時……
『見つけた!』
真ちゃんの声がGPSから鳴り響きました。

「ホントに?!」
伊織ちゃんがテーブルに両手をついて立ちあがりました。
オレンジジュースが倒れて、床に染みを作ります。

ついに……ついに美希ちゃんに……3年ぶりに会えるんだ……。

『う、うん。だけどちょっと美希の様子がおかしいんだ……』
「えっ……」
真ちゃんが続けます。
『と、とにかくこっちへ来て』

そう言って、通話が途切れました。
真ちゃんの場所をGPSで確認します。
……多分、私たちが最初につく。

私は、美希ちゃんがいるであろう方向へと走ってむかいました。
なんだか、寒気がしてきました。足取りも、重たい……。
まるで、行くことを私自信が拒否してるかのような……。

俺「はにぃ…はにぃ」

「はぁ……はぁ……」
地図を確認すると、どうやらショッピングモールの中にいるみたいです。
自動ドアが開いて、エレベーターを駆け上って……
ここは……

CDショップだ……。
ガラス張りのドアを開けて、奥へいくと輸入CDのコーナーに
真ちゃんの後ろ姿と……

キレイな金髪に、ゆるいウェーブの後ろ姿が見えました。

「美希!一体どうしたんだよ?!」
真ちゃんが背後から肩を揺らしますが、まるで反応の無い人形のように体が揺れました。
手に持ってるのは……美希ちゃんの『Rerations』のCDだ……。

「……ふ~ん」
確かに、美希ちゃんの声が聞こえました。ゆらっと、私の方を振り向きます……。
「ひっ……!」思わず、悲鳴が漏れて、尻もちをついてしまいました。

美希ちゃんの目の下には、まるで痣のように、黒い『くま』が出来ていました……。
「眠れない……ずっと眠れないの……」

「あの日から眠れないの……眠ると思い出すの……」
ブツブツとうわ言のように、美希ちゃんは繰り返します。
「お願いだから眠らせてほしいの……」
掠れた声でそう呟く美希ちゃんのCDを持つ手が、小刻みに震えています。
私と全く視線が合いません。
一瞬、白目をむいて、またCDをじっと見詰め始めました


私は、立ちあがって、真ちゃんの背中に隠れます。
「真ちゃん……」
「う、うん。さっきからずっとこの調子なんだ……」

「……うぅん」
美希ちゃんは、CDを置いて、ふらふらと頭を揺らしながら私たちから離れていきます。

「ま、待てよ美希!」
真ちゃんが呼びとめます。
美希ちゃんの足がピタリ、と止まりました。

狂ってやがる、遅すぎたんだ…

「なんなの……」
美希ちゃんがまるで幽霊のように頭をぐらんとこちらへ回します。

「……!」
真ちゃんは一歩、後ずさりしました。
無理やり、笑顔を作って美希ちゃんに優しく語りかけます。

「ほら、僕だよ。真だよ。三年も会ってないから忘れちゃった?」
「……」
美希ちゃんの表情は変わりません。目はうつろで虚空を仰いでいました。

「ホラ、今度は怒らないから、真ク~ンって抱きついてきなよ」
「……」

美希ちゃんの口が、パカリと開きました。
まるで機械みたいに、感情のこもってない声で言いました。

「……キミ、ダレ?」
「えっ……」

不意に頭にある思いがよぎりました。
私たちは、765プロが倒産してから、ただその思い出だけでここまで頑張ってこれました。
だけど、だけどもし、それがスッポリと抜け落ちてしまっていたとするなら……。どうなっちゃうんだろう……。

「誰ってやだなぁ……。冗談キツいよ……」
真ちゃんはなるべく平静を装うように、美希ちゃんに話しかけようとします。
ちょっとだけ、声が震えていました。

「ホラ、一緒にステージで歌っただろ?結婚式の撮影でボクがタキシード着て美希がドレス着て……」
「……知らないの」

美希ちゃんのクマに覆われた瞳は、完全に輝きを失っていました。

私は、真ちゃんの背中に隠れたまま、やっと美希ちゃんに話しかけました。
「あ、あの。美希ちゃん私のことは覚えてる?」
「……覚えてないの」

「ど、どういうこと……?」
私は、無意識に言葉が漏れました。

「全生活史健忘、いわゆる記憶喪失だよ」
「えっ……」
突然、後ろから日本語が聞こえました。
振り返ると、黒いスーツを着た、ちょっと怖そうな男の人が立っていました。
美希ちゃんを知ってるこの人、一体だれだろ……?

「あ……!」
美希ちゃんの声に急に感情が篭りました。

「待ってたの~!」
さっきとは打って変わって、明るい美希ちゃんに変わりました。
そのスーツの男の人の腕に抱きつきました。

「あぁ、元々極度のストレスによる解離の兆候があったんだが、あまりに眠れないってんで強めの睡眠薬をやったんだよ
それでちょっとバカになっちまったらしい」

……!
「ひ、ひど……」
そう言いかけた私の背後から、明るい大声が聞こえました。私はビクッと肩を震わせます。

「いや~!全力でぶっ飛ばしてやっとついた……」
響ちゃんでした。その人を顔を見るなり、急に険しくなります。
「お、お前は……!」
「よぉ」
響ちゃんに向かって、気だるそうに片手をあげます。

「ま、待ってください……響……」
遅れて、息を切らして四条さんがお店へ入ってきました。
はぁはぁと目を瞑り膝に手をついて、息を整えます。

「……久しぶりだな貴音」
「……!」

四条さんが怯えたように顔をあげます。
そして、その人を見て、唇を血が出るくらい噛みしめて、拳を強く握りました。

四条さんが、こんなに感情をあらわにするなんて……。

ひとつ、深く息を吸って、また四条さんは無表情に戻り、深くお辞儀をしました。

「お久しぶりです、プロデューサー」
えっ……
この人が……961プロの四条さんの元プロデューサー……。
四条さんを脅して961に無理やりスカウトして……。
そして、私たちのプロデューサーへの嫌がらせを提案した……人だ……。

私たちが全員集まった後に、ショッピングモールのハンバーガーショップの奥の席へと座りました。

向かい側に961プロデューサーと美希ちゃんが座っています。
「貴音、お前が突然引退したせいでこっちは大変だったよ」
プカプカと煙草の煙を浮かべて、美希ちゃんの肩に腕を乗せて、天井を見上げました。

「まぁお前はかなり無理を通したせいでゴシップ記事まみれだったからな。そろそろ使えなくなる頃かと思ってんだ。」
そう言って、四条さんの方を見ようともせずに、口から煙を吐きました。
四条さんは、無表情を保っていますが、テーブルの下から覗く手は、スカートをきつく握っています。

「今回、美希には同じ轍を踏まないように心がけたよ」
「……他のものには手を出さないと約束をしたハズですが」
「お前が辞めた後だから、俺が誰をスカウトしようが勝手だろう」

「ねぇ、この人たちダレ?」
美希ちゃんは961のプロデューサーに問いかけます。
「こいつらな、俺をイジメる悪いヤツらなんだよ」

美希ちゃんが、こちらをキッと睨みつけます。
「ふ~ん、ワルモノさんなんだね」

……本当に、全部忘れちゃったんだ。美希ちゃん。

響ちゃんは、小さな唸り声をあげています。
「お前……ウソつくし……動物捨てるし……悪いヤツさー!」

響ちゃんの方を一瞥して、言いました。
「才能が無いヤツは苦労するよなぁ。引退した後、違法ペットショップで臭い思いしなきゃならんなんてな」
「……!」
響ちゃんがギリッと歯を食いしばりました。今にも、その人に殴りかかそうな顔でした。

「俺は星井美希の才能に目をつけた。
だけど、日本はダメだ。日本では961に随分と悪評がついて回った。
そこで俺はアメリカに渡ろうと思ったんだよ。こっちなら日本の噂なんて届かないからな」

そう言って、美希ちゃんの頭をわしわしと撫でました。
「ねぇねぇ、アレちょーだい」
「あぁ」
961プロデューサーは、銀のステンレスの入れ物から葉巻を一本とりだしました。
美希ちゃんは、鼻歌を歌いながらそれに火を点けます。煙が、こちらへ漂ってきました。

「この匂い。あんたまさか……!」
律子さんは、しかめっ面をして鼻を押さえました。

「あー大丈夫だよ。葉っぱならそれほど依存性は無いし、こっちじゃそれほど珍しいことじゃない」

「これね、よくわかんないけどすっごく気分が楽しくなってくるの」
そう言う美希ちゃんの瞳が、とろんと溶けてきました。

「あんた、それ、何だかわかってて吸ってるの?」
律子さんのきつく握った拳から、血がつつ……と伝いました。

「え?」
美希ちゃんはきょとんとした目で、律子さんを見ました。
……知らないんだ。美希ちゃんの世間知らずっぽさが、ここで響いてしまいました。

私は、また涙が零れてきました。
やっぱり、私、何もできないですぅ……。ただ泣くことしかできないです……。

「元プロデューサーとして、ひとつあなたに尋ねたいことがあります」
律子さんの拳から、流れた血が、オレンジのタイルに落ちました。

「あなたは、アイドルを何だと思ってるんですか?」

961のプロデューサーは、口の端を歪ませて、吐き捨てました。
「企業である以上、商品に決まってるだろ」

「ふざ……!」
真ちゃんが物凄い剣幕で、身を乗り出しました。
それを、律子さんが片手で制します。

「何だよ、止めるなよ!律子!」
「真、落ち着きなさい。殴ってはこの人の思うつぼよ」
「律子は悔しくないのか!こんなに美希をメチャクチャにされて!」

それを眺めている961プロデューサーは、ニヤリと笑みをこぼして
「なんだ。元765プロの中にもどっかのプロデューサーとは違ってマシなヤツもいたみたいだな」

……!
私は顔が熱くなりました。
……プロデューサーを、私たちのプロデューサーを馬鹿にされることだけは、許せません。
私は、出来る限りの大声で叫ぼうとしました。
「お、おお願いします!バ、バカにしないで──!」

「美希ちゃん、どうして、アメリカに来たのかしら?どうしてこの人について行こうと思ったの?」
その場の喧騒に似合わない不釣り合いな、穏やかなあずささんの声が背中から聞こえました。
「……」

ちょっと休憩しておにぎり食べます

伊織「あんたの親会社の筆頭株主だれだかしってるかしら?」

961p「…」

一歩前進!前進!たまに中断!そんな時もあるさ
無理せずに完走!完走!次は楽勝!できるといいのだけど
それがうちらのやり方だから

一致団結!団結!時に衝突!後腐れないように
とりあえず円満!円満!すべて相談!つまらないことでも
みんなまとめてみんなまとめてみんなまとめてアイドルマスター

     , く\/>ノ
    f ,'´ ⌒´ヽ   おなかすいたよー!
    ノ ( ノノVヽ〉   765プロ倒産しちゃってから無収入だぞ~
  ´'' ノ。゚ソ゚´д`゚ノ∩゜。
     ⊂   (       
       ヽ∩ つ  ジタバタ
         〃〃   ジタバタ

        , く\/>ノ
       f ,'´ ⌒´ヽ
       ∩( ノノVヽ〉 あ、ハム蔵…
     ⊂ ゚ソつд`゚ノ
       `ヽ_ ノ ⊂ノ    ○<チュ~


        , く\/>ノ 
       ∩ ,'´ ⌒´ヽ
     ⊂⌒( ノノVヽ〉 グチャ…グチャ…

       `ヽ_つ○⊂ノ

「……ワルモノさんとはお話しないよ」
美希ちゃんは口を結んで、押し黙りました。
それを聞いた961のプロデューサーは、手を叩いて笑いだしました。
そして……
「いいよ、教えてやれよ」
美希ちゃんの肩を抱きながら、そう言いました。
私は、その光景を見ただけで胸が苦しくなります……。

「……」
「大丈夫、ゆっくりでいいのよ~」
あずささんは、変わらないペースで美希ちゃんに話しかけます。

「……るの……」
「えっ」
美希ちゃんがボソボソと、俯きながら何か喋りました。
やがて、声が段々と大きくなってきて……これは、歌だ……。

「よーるのー駐車場でー、あなたはーなにもー……」
幼さを帯びた声。久々に、三年ぶりに聞きました。
この歌……Rerationsだ……。

「この歌だけは覚えてるよ。だってこれ、ミキのほんとの話だもん。」

「美希ね、名前も顔ももう全然覚えてないんだけど……むむ~……
 だけど大切な人がいたっていうのはずっと覚えてる。お墓参りも毎日行ってた。」
美希ちゃんの、強張った表情が段々と揺らいできました。
まるで、アルバムをめくっているかのような……。そんな顔で……。

「その人のことミキ、すっごく好きだったっていうのだけは覚えてるの」

美希ちゃん……。美希ちゃんは、こんなになってもまだプロデューサーへの思いだけは残っていました。
もし、美希ちゃんを取り戻す糸口があるとしたら、これしか……無いんじゃ……。

「でもね、その人ね。ミキじゃなくて、他に好きな人がいたんだよ」
「えっ……」
みんな、一斉に驚きの声をあげました。

ΩΩΩ な(

そういえばピヨちゃんは来なかったんだね

「前にね、夜のお仕事帰りの車の中で聞いたよ。「その人のこと好きなの?」って。
そしたらその人ね。「別に」って言ってたけど、目が泳いでた。
「俺は全員を平等に扱わなきゃいけないんだ。一人だけえこひいきなんて出来ない。」だって。
優しいよね。その人。でもミキ、誰が好きでも関係無かったよ。
ミキがいつか絶対に振り向かせてあげるのって思ってた。勝負だねって。
でもミキの大切な人、死んじゃったんだよね。これじゃもう一生その人に勝てないよね」

美希ちゃんは一息にそう云い切りました。
「それで、プロデューサーさんに会ったの。ミキの大切な人の知り合いだって。一緒にいれば教えてくれるって
ミキ的にはまぁいっかなって。日本にいると名前も顔も知らないその人に会っちゃいそうで。」

それって……

「さぁ、誰、誰だろうな。これは大変だなぁ。知ってるよ。お前らあの冴えないヤツのこと全員好いてたんだろ?
 こん中の誰かが好きだったんだと。十四角関係なんて笑えないよな」

私たちの中に……いるんだ……。
全員に動揺が、走りました。隣の人の顔をお互いに、見合せます。
今まで一つだった私たちに、少しだけ亀裂が入った。そんな風に思ってしまいました。

>>213
ピヨちゃんはお留守番
バキュラの面倒見てるよ

この中に特に不幸にあってない人物がいる

>>218
thx

てかPあの面子の中で選ぶってほとんどが犯罪じゃん…





たぶんやよいだろうけど

「瞼の裏に二人の笑顔が焼き付いて離れないの。だから眠れないの。」

そっか……美希ちゃんだけが、それに気付いてたんだ。
確かに、美希ちゃんはいつもはのんびりしてるけど、時々怖いくらいに鋭いことを言うときがあります。
きっと美希ちゃんは、私たちの誰よりも楽しいことも辛いことも見続けてきたんだ……。

もし──もし──
「もし、私だったら」
口を開いたのは、961プロデューサーでした。
みんな、目を見開きました。

「お前ら、みんなそう思ってるだろ」
タバコを口に加えると、美希ちゃんがすかさずライターで火をつけました。
……私たちのプロデューサーが亡くなった原因はこの人なのに。
都合の悪いことは、何も言ってないんだ……。

「いいのか。お前ら美希に関わると、イヤでも知ることになるぞ。」
……!

「だからな、やめとけ。仲間割れする前に、美しい思いでのままにしといて日本に帰れよ」
……悔しい……悔しいよ。プロデューサー……。

社長「わたしの出番かな?」

961Pが知ってるのも妙な話だけど、揺さぶりにはちょうどいいか

アニマス内ではいまのとこ誰がリードしてるんだ?

>>246

P「は?それってヤバい意味じゃないよな?」

>>247
アッー

何でアニメのPあんなイケメンなんだよ
まあ好みではあるが

……私たち、このまま日本に帰ったほうが幸せなのかな。そんな思いがよぎりました。
もう、真ちゃんと喧嘩したくない。みんなと離れたくない……!
私たちなんだか失ってばかりで……。
結局また、何も手に入れられないのかな……。


「それが……」
「えっ……」
その声は四条さんでした。

「それが、どうしましたか?」
真っすぐな声でした。
「貴音ェ……、知ってるよ。お前もアイツのこと好いてたんだ。
 でもお前は「密会」をしてしまった。汚れた身だよな」
「……」

四条さんは、眉ひとつ動かしません、平静な顔をしています。

「えっ……」
場が、かすかにどよめきました。
「もう一度申します。それが、どうしましたか」
依然、無表情のままでした。だけど、一筋、頬に涙が伝いました。
四条さんが泣いてるところ、初めて見ました……。

>>256
主人公がブサメンだったら嫌だろ…


支援

ゲームのPも台詞がいちいちカッコよかったりする

千早「歌も、人によっては、単なるヒマつぶし?」

P「心の暇つぶしだよ。生きてると、たまに心が行き場をなくすだろ。その相手をしてくれるのが、歌だ」

「わたくしは、この者たちと一緒ならばもう何も怖くありません」
その涙には、四条さんの決意、みたいなものが込められているような気がしました。

響ちゃんは、それを不安そうに眺めていました。
けれど、やがて八重歯を見せて笑って

「なんくるないさー!!!」
響ちゃんが思いっきり叫びました。
周りの外国の人たちが、一斉に振り向きます。


美希ちゃんが眉をひそめました。
不思議そうな顔で、961プロデューサーに問いかけました。

「ねぇ、プロデューサーさんホントにこの人たちワルモノさんなの?」
「……」

>>265
切り絵力作だけどこの状況じゃ遺影にしか見えん…

画像スレじゃないんで…
てか切り絵は狙っただろw

アイマス画像スレ立ててくる

四条さんは、伝った涙を拭わずに、斜め後ろへと顔を傾けます。
そこにいたのは……
「伊織が……教えてくれました」
「えっ……」
「生きてさえいれば、なんとかなるのです」
「あんた……」

伊織ちゃんは、くっと喉を鳴らして、それから笑っていいました。
「そうよ!この水瀬伊織ちゃんがいれば、なーんも心配いらないわ!にひひっ」

それを見た美希ちゃんの顔が、段々雪除けのように解れていきます。
「なんだか、楽しそうな人たちだね。ワルモノさんには思えないよ……」

「ちっ……」
微かに961プロデューサーの顔に焦りが見えてきました。
不機嫌そうに、机をトントンと叩きます。

>>288
頼りにしてるぞ

スレ終わるまで酒足りるかな

なんか既に泣きそうなんだが

煙草の吸い殻を、思い切り灰皿に押しつけて不機嫌そうに言います。
「美希、まさかお前は半年一緒にいた俺たちよりも、コイツらについていこうっていうのか?」
「そ、そんなこと思ってないよ」

そう言う美希ちゃんが、オロオロとうろたえます。
「プロデューサーさんはー楽しくなれるオクスリくれるしーだーいスキなの」
そう言って、腕に手を巻きつけました。

それで機嫌をよくした961プロデューサーは、もう一本ステンレスから
葉巻を取り出して美希ちゃんに手渡します。

「ミキね、もう頑張るのイヤなの。
頑張ったら、ミキの大切な人みたいになっちゃうんだよね」

美希ちゃんがそう言って葉巻に火を点けます。
かすかに、指元が震えていました。

relationsのスペル違うと思う

>>297
エンディングまで泣くんじゃない

>>303
rerations→re rations
ration=食料

つまりおにぎりリターンのことだったんだよっ

ねむい

「はは……お前ら765プロが手に入れたものなんて何も無いだろ」
961プロデューサーは、深く椅子に腰かけて、長く息を吐きます。

「所詮お前らお友達ごっこだよ。
現状を見てみろ、961プロはアイドルアカデミー賞の常連、片やお前ら765プロは倒産した」
ニヤニヤと、勝ち誇った笑みを私たちに向けました。
一人一人に、差し向けるように。
「結局、失ってばかりじゃないか。無駄なあがきだよ」

「……ふふ」
律子さんのメガネが、光に反射しました。
そして、拳を顔の前で握りました。
「765プロダクションのプロデューサーとして、先輩のあなたに申し上げることがあります」
あ……この律子さんの不敵な笑み……。

「あなたがたでは決して手に入れられないものを、私たちは持っています」
オーディションのとき、ライブの時律子さんが、成功を確信した時に見せる笑みだ。

「美希、忘れたんなら思い出させてあげるわ」律子さんが、携帯を開いて、画面を美希ちゃんに突き出しました。

「「春香!おめでとうー!」」
携帯電話から、荒い音質でみんなの声が鳴り響きました。

ピヨちゃんがみてた動画か

>>337
あれか!
この展開への伏線だったのか…!

小鳥さんが保存していた、春香ちゃんの雑誌掲載記念パーティーの動画……。

美希ちゃんが身を乗り出して、画面を凝視しました。
「うわぁ……」
「これが、昔のあなたよ。」
「え……そう……なんだ……」

「え、えへへ。みんなありがとう」
小さな画面に、春香ちゃんが照れ笑いを浮かべています。

「ねぇねぇ、この子ダレ?」
美希ちゃんはつんつんと画面をつつきます。
「……天海春香、日本であなたのことを待っているわ」

「そう……なんだ。なんだか明るそうな人だね ミキと仲良くなれるかも」

ところでP死んだ理由は?
後春香が酷いことになった原因って?

>>355
P:過労死(961が暗躍)
春香:希望からの転落(響に会えた!→響のショップが摘発、これも961が遠因)

こうしてみると961活躍してるな

『千早ちゃん、パートナーとして祝辞を一言お願いします!』
画面に映らない小鳥さんの、明るい声。

『はい。この調子でいけば、私の歌が認められる日も遠くないかと……』
「ねぇねぇ、この人は?」
美希ちゃんは目に焼き付けるようにじぃっと携帯電話の画面を見つめています。

「如月千早、あなたがとても尊敬していた人よ」
「ふ~ん。怖そうな人だね。ミキ、苦手かも」

くすくすと笑い声があちこちから漏れました。
「みんな、最初はそう言うわ」
律子さんが、やれやれと言った顔でため息を漏らしました。

『いおりんのMAマジさいこう!』

動画はどんどん進んでいきます。
「みんな、楽しそうだね」

「……」
961プロデューサーは、不機嫌そうに足を踏みならしてそれを眺めていました。

>>355
pは過労死
のちに961にはめられたと分かる
春香は響逮捕で自責の念にかられてつぶれちゃったんだっけ?

>>364
響は逮捕されてねえwww
取り調べは受けたけど

響の回が一番心にグッサリきた

まさかハム蔵が海老蔵になるなんて…

>>371
それ別スレww

動画が一旦途切れて、壁にもたれかかって、クリームを口の端につけている
3年前の美希ちゃんが写りました。

『ねぇねぇ、そこの人~』
「あ……ミキだ……」
画面を見ている美希ちゃんがぽっかりと口をあけました。

『そこの人~!ミキ、もう眠いの~』
美希ちゃんが、画面の外へ向かって声をかけています。

……そして。

「あ……」
画面に、生きていた頃のプロデューサーが、ケーキを持って嬉しそうに現れました。
『おいおい、美希。もうちょっとで終わるから』
『あふぅ』

「この人が……美希の、大切な人……!」
美希ちゃんの瞳から、涙が一つ落ちて、画面を濡らしました。
水滴に浮かびあがって、プロデューサーと美希ちゃんの笑顔が浮かびあがっていました

……結局、プロデューサーさんに頼っちゃった気がします。

皆の、10人分の視線が美希ちゃんに集まります。
──私たち二年半前だったら、泣きごと言って終わりだったと思う。
だけど、このあいだに色々なことがあって、みんなもう美希ちゃんに負けないくらい強くなって……。

ぽつり、と美希ちゃんが呟きました。
「美希ね、戻りたい」
「えっ」

「今、何て言った?」
961プロデューサーの声が、低くなりました。

「よくわからない。昔のことは今でもよくわからないの。だけど……美希、また頑張ってもいいのかな……
ミキね!この人たちについていけばドキドキワクワクできそうなの!」

美希ちゃん……!

美希は忘れてなんかいない…
頭では忘れていても、心が覚えているんだ

「決まりね」
携帯電話を閉じて、律子さんはそう一言。

「な!そんな勝手なこと許すわけが!」
961プロデューサーは、机を思い切り叩いて、立ちあがりました。
「ふざけるなよ!こんな口約束無効だ!」

「残念、今までの会話は全部、撮影、録音させてもらったわ」
「あ……」

律子さんがそっと一点を指さします。
振り向くと……
近くのテーブルで、やよいちゃんが、紙袋に入れてビデオカメラを回していました。
「これで、いっけんらくちゃくですねー!」

最後に、律子さんはふんと鼻を鳴らして、言いました。
「ここはアメリカよ。なんなら訴訟でもしてみせる?
 あなたの悪事やその他諸々もバレちゃうけれどね」

あとは春香だけだ!!いくぞ!!

リッチャンカッコイイヨー

俺たちゃいつでも見ているぞ

by 藤村

>>439
照らしてやれよ!!

「今までの事情やら手続きやら何やら必要だから、ツイて来てもらうわよ」
「クソ……金が……またお前らのせいだ……俺の金が……」
961プロデューサーが、水瀬財閥のリムジンに揺られて、ブツブツと呟いています。

私の隣には……
「やっと安心して眠れるね……」
美希ちゃんは子猫のように体を丸めて、やすらかな寝顔を浮かべていました。
失くした記憶は、もう取り戻せないかもしれないけれど……。
これからまた作っていけばいいよね……。

「大丈夫、私たちなら出来るよ、うん!」
思わず、無意識に声が漏れました。
「はぁ、ほんっとーに、疲れたわ……」
伊織ちゃんが、ズルズルと後部座席にもたれかかります。

私も、だんだんと眠くなってきて……。
意識が段々と、途切れて……。

「雪歩、ついたわよ」
「……ふぇ」
律子さんに体を揺らされて、意識が戻りました。

目を擦って、車の窓から、外を覗くと……
金の装飾がなされた豪華なホテルでした。

水瀬財閥御用達のホテル……みたいです。
伊織ちゃんもハリウッドに来るときは、ここに泊るみたいで……ふぇぇ……。

伊織ちゃんは髪をかきあがて、仁王立ちして言いました。
「最後は思いっきり祝うわよ。にひひっ」

「あふぅ……よく寝たの~」
大きな欠伸をして、美希ちゃんが車から出てきました。
クマはすっかり消えていました。
「わぁ、すごいの~」
美希ちゃんの目が大きなホテルを見てキラメキラリと輝きました。

「ミキミキ、隙あり!」
亜美ちゃんが、携帯電話のカメラを美希ちゃんに向けました。
フラッシュが一度焚かれて、眩しそうに目を瞑ります。

「んっふっふ→ホラ、見て、こーんな顔で笑えてるよ」
画面には、美希ちゃんの笑顔が、しっかりと映っていました。

「ミキね、みんなとははじめましてってカンジなんだけどなんだかとっても懐かしいの……」


……美希ちゃんの記憶は、きっとこれからゆっくりと思い出されていくでしょう。

パーティ会場で、真っ白なドレスに着替えました。
シャンデリアが吊るされた天井の下に、丸いテーブルがいくつもおかれていて
その上には色とりどりの食べ物が置かれていて……。

「こ、これは……わたくしの求めていたらぁめんでは……!」
四条さんは、世界各国の料理が並ぶ中、特別オーダーでラーメンを啜っていました。

「だ、だから何でボクだけタキシードなんだよ!」
真ちゃんは、赤い絨毯の上で、地団太を踏んでいます。

「あらあら~胸元がキツいわ~」
あずささんのドレスに収まりきらないバストがどたぷ~んと揺れています。す……すごいですぅ……

「んっふっふ……これをこうして……」
亜美ちゃんと真美ちゃんは、またイタズラをたくらんでいるみたいです。

「あはは」
美希ちゃんは、そんなみんなを見て、楽しそうに笑っています。
765プロの時の、あの時の笑顔でした。

ねぇ美希ちゃん、私たちが765プロが倒産してからの2年間半、どれだけ辛くても進んでゆけたのは
みんな同じひとつの、大切な夢があったからなんだよ……?

「み、美希ちゃん……」
「なーに?」

「真、ちゃん」
「どうしたんだい。雪歩」

「四条さん」
「どうかいたしましたか。雪歩殿」

「響ちゃん!あずささん!律子さん!……みんな!」

みんなが私に向かって柔らかい微笑みを投げかけてくれます。
あぁ、私たちはもう離れ離れじゃないんですね、プロデューサー。
すごくあったかい……。胸の奥がポカポカして充たされていく……。この気持ちは、この感情はなんていうだろう……。
あぁ、そうだ。これが、絆っていうんですね。心の中でそう、強く思いました。

「……ふぇ」
「あら~目が覚めたのね~」

また、意識を失っていたみたいです。
目をあけると、あずささんの笑顔が見えました。

オデコがひんやりと冷たくて、手を添えると濡れたタオルが載っていました。

「ここは……」
「雪歩ちゃん、亜美ちゃんにイタズラされてジュースとお酒を入れ替えられたのよ~」

……。

小さな個室には、私とあずささんだけでした。
「あ、あの。みんなは、どこに行ったんですか?」
「もうパーティは終わって、帰国の手続きと、961プロデューサーから話を聞いてるところよ」
「そうなんですか……」

顔がポカポカして、視界がくるくるとします。
「フヒッ……わたし、酔っ払っちゃってますかぁ~?」
「あらあら~大変ね~」

あずささんの顔が、二つに見えますぅ……。
なんだかいい気持ちですぅ……。

そうだ……。

「かめらで、撮影しますよ~」
私は自分のバッグをを探そうとキョロキョロと回りを見渡します。

「ビデオカメラは、今ミキちゃんが使っているわ~」
……。
「これまでの皆を知りたいみたいよ~」
「そうなんですかぁ……」
……
……えっ、
……あのビデオカメラには
……たしか
「ダメ……」
「えっ?」


「ダ、ダメですぅぅぅ!!!!」
アルコールが、一気に冷めて、血の気が引いてきました。

「待って!どこ行くの?!雪歩ちゃん!」

あずささんの制止も聞かずに私は、急いで美希ちゃんのいる部屋へと走りました。
途中、何度もぶつかって、花瓶や、置物を壊してしまいました


……ダメだよ
どうして、どうして。

──もし、私がビデオの編集をちゃんとしていたら。

──もし、真美ちゃんと亜美ちゃんがイタズラしてなかったら。

──もし、私が余計にビデオカメラを回さなかったら……


『……私は、プロデューサー殿を殺めてしまいました』
あの、病室の屋上で月を一緒に見ていた時に撮った、四条さんが写ってる……!


部屋の一室から、叫び声が聞こえてきました。真ちゃんだ……!
「やめろ!やめるんだ!美希!」

「ま、待って!!!」
ドアを思い切り、こじ開けました。

「ひぃ……!」
目の前には、信じられない光景がひろがっていました。

「落ちつきなさい!銃をおろして!」
律子さんが、声を張り上げています。

「撃て!撃つんだよ!こいつがお前の最愛の男を殺したんだ!」
961プロデューサーが、美希ちゃんの肩を揺らしています。

美希ちゃんは、ガタガタと震えながら、両手で銃を握って、四条さんに向けて引き金に手をかけていました……。
「この人が……この人が……ミキの……」
「そうだよ!そうだ……コイツが、お前のとこのプロデューサーが好きだったヤツだよ」

「デタラメよ!信じないで!」
律子さんが、部屋の壁に背中をつけて、必死に説得をしています。
や……やめて……。

「憎いだろ、撃てよ!」
「ミキ……ゼッタイ許せないよ……」

……やめて!

          _,,,-‐、_ノ)
       ヾ'''"     ⌒゙ヽ、
      r''"          ''ヾ、
    i(__..'´             ゝ
    |ヽ               し
   〈                 (
  、_/                 ゝ

  ヽ、 .{  ノ( /( /)/(/  /⌒l ´し
   ヽ、〈 (/、,,_( ノ_;;;;三''`、 .)`i.|  )
   ヾ、`;Yr::ヶ,、  '-`="' 、ノ .|、_/ (_,,)

     `ー{ ~~´ノ      ヾ、| ヾ、/‐ 、_
       ヽ (⌒ )  、 ヾ彡\__ツ:::::::::::::::`ー、
   _..-''´ ̄ヽ、二´-‐ '´ /  ,,''::::::::::::::::::::::::::::::`-、
  /:::::::::::::::::r''/ー‐''  /_,,-‐"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`-、
. /:::::::::::::::::::::::゙~:::ヽ--‐'´ ̄::::::::::::::::::_.-'''二ニニヽ、 ::::::::`‐、

/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,i' -"_..-ー‐''´ ̄\:::::::::::`、
|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,i'  /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\:::::::::}
|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::_,,,,-‐7~   /;;;;;;;/ ̄;;;;\;;ノノl:::::::i
|/ ̄ ̄\_,,,,,,,...、、、-‐'''":::::::::/   ./l__ノl;;γ⌒ヽ;;l(/|:::::〈
! ._,,,,-‐'''"     /:::::::::::::::::::|    /l⌒ヽl;;;ゝ;;_ノ;;;l(彡|:::::::}
/          |::::::::::::::::::::>‐-‐'´:::|;;;;;;;;\_;;;/;;;;/::::::/
           ヽ、;;: -‐"::::::::::::::::::\;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/:::::::::/
          _,,-''":::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ー---‐''´:::::::::::::|

「……」
四条さんは、相変わらず無表情……ではなかったです。
カチカチと、歯のなる音が聞こえてきました。

「ミキ……その人が好きだって事以外はぜーんぶ忘れてて……」
美希ちゃんの声が、震えていました。
「それだけが、思い出だったの!」

美希ちゃんは、歯を食いしばりました。

「あ、あの目だ……」
響ちゃんは、尻もちをついて両肩を抱いて、そう呟きました。

961プロデューサーの口から甲高い笑い声が途切れ切れに漏れだしています。

「待ちなさい!誤解よ!ちゃんと話せば……」
伊織ちゃんのその言葉を、美希ちゃんが遮りました。


「──言い訳なんか聞きたくないの」
美希ちゃんの、人差し指に、力が入りました。


「や、やめてぇぇぇ!!!!」
私は、喉が千切れそうなほどに、叫びました。

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                        `゙ー‐‐ ´ ̄ ̄ ̄ ̄`ソ 〈:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/    |     ノ : : : :. : :l ──

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          ゙゙゙゙゙゙     ゙゙゙゙゙゙   ´          (ソ 人  ヽi:i〉---‐ ´ i           . : : : : : : : : : : :/ ────
─────────────────────{_ ゝ〃<─── / __       : : : : : : :/──────

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ヾニ-‐^ ̄ ̄ ̄∠二__/二>‐-. .: : : : : :<
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……。

──銃声は、起こりませんでした。
床に落とした視線を、恐る恐る美希ちゃんへと、向けます。


「でも……でもね……」
美希ちゃんの声は、憑き物が落ちたように穏やかなものでした。

「ダメなの。やっぱり、撃てないよ」
美希ちゃんの、二度目の涙が落ちました。今度は、一粒だけじゃなく、何度も何度も。
「……どうしてだ」
961プロデューサーの美希ちゃんの肩を握る手に、力が篭りました。

「頭の中でね、さっき見た人が『ダメ!』って言うの……。なんでだろ、ミキこの人のことすっごく憎いハズなのに……」

「この、役立たずめ」
肩を掴んだ手が、ゆっくりと美希ちゃんの引き金を引く指に重なりました。

「だったら教えてやる。こうやって撃つんだよ」
「あ……」




──ドン、という大きな銃声が部屋にこだましました

もうちょっとだけ続くんだけど超腹痛くなってきた

雪歩「765プロが倒産してもう二年半ですぅ……」 中編終わり
後編へ続く

ほんとごめんなさい明日夕方以降再開します
書けるコンディションじゃない
俺のトイレのほうが修羅場にんじゃってる

読んでくれた方、保守してくれた方ありがとうございました


──トイレットペーパーが無くなった

今日の夕方5時以降
遅くなるかも例え漏らしても明日でゆきぽ編完結させます

昨日のみてねええええええええ
始めてリアルタイムで遭遇したああああ

終わってた(´・ω・`)

やよいちゃんかわいいよね(´・ω・`)http://beebee2see.appspot.com/i/azuYgt_nBAw.jpg

やよいちゃんかわいいよね(´・ω・`)http://beebee2see.appspot.com/i/azuY-avoBAw.jpg

>>704
う、うわぁぁぁぁぁぁぁ可愛すぎる死にたい

やよいちゃんかわいいよね(´・ω・`)http://beebee2see.appspot.com/i/azuY0oDpBAw.jpg

>>706
19歳のやよいちゃんがかわいいよね(´・ω・`)
16歳のやよいちゃんもかわいいよね(´・ω・`)
でもやっぱり13歳のやよいちゃんがかわいいよね(´・ω・`)

やよいちゃんと響ちゃんかわいいよね(´・ω・`)http://beebee2see.appspot.com/i/azuYqM_nBAw.jpg

ねるね(´・ω・`)http://beebee2see.appspot.com/i/azuY57_nBAw.jpg

おはようございますゥhttp://beebee2see.appspot.com/i/azuY0c_nBAw.jpg

このスレはもう落ちるとおもうので最後に一言、響は俺の嫁

>>725
俺らの、な
お前一人のものじゃない







やよいちゃんは俺の婚約者

おまえらは俺の嫁

>>727

  ( ゚д゚ ) !!!
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/     /
     ̄ ̄ ̄


  ( ゚д゚ ) ガタッ
  .r   ヾ
__|_| / ̄ ̄ ̄/_
  \/     /
     ̄ ̄ ̄


 ⊂( ゚∀゚ )

   ヽ ⊂ )
   (⌒)| ダッ
   三 `J

まとめに上がるの待つか…

>>733
いっきによんだほうがいいよね

美希ビッチっぽいけどかわいいよね(´・ω・`)

美希をビッチとか言うやつは無印やってこい

>>742
まだ攻略してないの

実際このSSでのあずささんはどうなってるんだ?
P過労死→死を受け入れられず同じ週(行動)を繰り返している→
でもPを吹っ切って別の男と付き合う、が行動変わらず→
響の会で合流…までは合ってると思うんだが、男との関係とか
アイドルとして復帰するつもりがあるのか云々の部分が
ごっそり抜け落ちてる気がするんだが

>>745
結婚したんじゃなかったっけ?
アイドルにゃなれんだろ
22だろ?ババァじゃんか

>>746
あらあら、屋上ね

>>748
うっせぇ!ババァしね!ゴージャスセレブプリン食ってたるんでろカス!

>>746
アイマスの中にゃ29でアイドル復帰した奴もいるぞ

>>752
ピヨちゃんは許す

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