P「返せ……返せよッ!」 (40)
かの人は言う
求めなければ与えられることはないのだと。
かの人は言う
尋ねなければ見出すことはできないのだと。
かの人は言う
門を叩かなければ扉が開かれることはないのだと。
ならば、問おう
与えられるものが、求めたものであるのか。と
ならば問おう
見出したものが、邂逅すべきモノであったのか。と
ならば問おう
開かれしその扉は……開くべき扉であったのか。と
お答えできないのであれば……私は否定する
私は言おう。
求めるだけでは与えられはしないのだと
私は言おう。
尋ねてはならないものがあるのだと。
私は言おう。
閉じられているのは、開くべきではないからだ。と
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「春香、やはり帰るべきでは?」
「あはは……怖がりだなぁ。貴音さんは」
「そういう問題では……」
嫌な予感がすると、
私はすでに何度も言っていたはず。
なのにもかかわらず、
肝試し紛いのことを行ってしまった
「大丈夫ですよ。ちゃんとお祓いも、お清めだってしたんですから」
「し、しかし……」
当然、春香一人で行かせるわけにもいかずについてきてしまったわけで、
正直……怖くて仕方がなかった
「大丈夫ですよ、いざって時は私がいます」
そんな私の腕を春香はつかみ、
元気な笑顔を見せてくれた
「春香……」
でも、不安と恐れは拭えず、
表面上だけを取り繕った私の笑顔をあざ笑うかのように、
風が廃校のがらすを撫でて奇怪な音を響かせていた
「特に怪奇現象とかは起きないですね」
「起きる必要などありませんっ」
怪奇現象が起きるかどうかの検証をいくつか行うだけという簡単なものではあった
しかしながら、
そのいくつもの儀式と呼べるような調査の間も、
怪奇現象は起きずとも嫌な気配だけは消えることがなかった
とにかく警戒を――……
「……? 春香」
「はい?」
「りぼんは……どこへ?」
「え?」
春香の髪を結んでいた右側のりぼんが消えていた。
いつ?
前回の検証時は?
「すたっふの方! 春香が映っている部分を!」
「は、はい」
確認した結果、
前回の検証からここへの移動中も紛失してはおらず、
それどころか、
春香を一時的に移さず、
私へとカメラなどの意識が全て向いたその一瞬。
その刹那で消えていた
「……霊媒師の方、なにか感じましたか?」
「何も感じてないねぇ……」
「ど、どっかで落っことしちゃったんだよ……多分」
「春香、映像上では【ここに来るまであったのですよ】確実に」
その言葉が、
春香はおろか、すたっふ達みなの動きを止め、
夜の廃校という禍々しい空気の乱れを止めてしまった
「お、おい、どうするんだ?」
「どうするって……」
ただの遊びのようなことをしたせいであることは明白だった
開けてはならない門を開き、
尋ねてはならないモノを尋ねてしまった
「今すぐ……中止です」
「け、けど……番組に穴があいちゃうぞ」
「そのようなこと、気にしていられる場合ではありません!」
だから嫌だった
こうなるかもしれないと思ったから。
けれど、
安眠を妨げた私達に憎悪の火を燃やす廃校は、
どこからともなく突風を巻き起こし、
私達のあいだではなく、体を駆け抜けていき、
「ぅ……ぉぇっ……」
「春香!」
「す、すごく……さむっ……」
春香の意識を奪い去っていった
その結果、番組は別のものとさし代わり、
倒れた春香も、
廃校からでて病院へと向かう途中、
何事もなかったかのように目を覚ました
くわえて、
お祓いとお清めを再度したということで、
みな平気なのだと思い込んでしまった
もちろん、
私はそれでも警戒は怠らなかったつもりだった
でも、だけれど。
翌日事務所に向かった私を待ち受けていたのは、
豹変した春香だった
「おっはー、ひめちゃん」
「春……香?」
「うん? どったのかなぁ? ひめちゃん」
ひめ……ちゃん?
いえ、そうではなく。
どこからどう見ても春香であることは間違いない。
容姿も、声も。
春香であるはずなのに……何かが違う
「春香、ですよね?」
「そっだよー?」
「その、ひめちゃんというのは?」
「ひめちゃんはひめちゃんだよ。貴音ちゃんはお姫様みたいだから、ひめちゃん」
真美か亜美の悪戯?
それとも、まさか昨日の?
不安と恐怖が蘇ってくる……
緊張走る私の表情を下から眺めていた春香が不意に笑った
「アハハハハハハ」
「っ!」
あまりにも強すぎる嫌悪感。
その声も、表情も、容姿も
何もかもが春香でありながら、
春香ではない何かであるような錯覚……錯覚?
「貴音さん?」
「ひっ」
「えっ、ちょ……や、やりすぎたかなぁ?」
思わず後ずさった私を見る春香は、
申し訳なさそうに頭をかき、私を見つめていた
「あーっはるるんなんで止めちゃうのさ!」
「そうだよ、もうちょっとでおひめちんの貴重な泣き顔が見れたのにーっ」
亜美、真美……?
その手に握られた自作のドッキリプレート
「貴音さんがすごく不安そうだったから……亜美、真美もちゃんと謝って」
「「おひめちん、ごめんね→?」」
「ごめんなさい、貴音さん」
ただの冗談?
本当に……?
3人の弁解を聞いても、かかったモヤが消えることはなかった
とりあえず中断
この時点で既に予定を逸れました
このまま貴音主役、はるるんヒロインで行くことになりそうです
P「たった一人の弟なんだ…!」
とか
P「持って行かれたぁぁ!!!」
かと思った
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