前作
ダル「牧瀬氏、オカリンのこと好きっしょ?」 紅莉栖「ふぇ!?」
の続き
長い
一応ネタバレ注意
送信メール
3/26 8:03
件名:寝てたらごめんね
本文:
日本はいま夜だよね?
まだ起きてる?
受信メール
3/26 8:05
件名:大丈夫だ、問題ない
本文:
さっき12時を過ぎたところだ。
まだ起きている。今ラボには俺とダルがいる。
ダルがパソコンを使っているから、残念ながらテレビ電話ができない。
紅莉栖「橋田めぇ~」
送信メール
3/26 8:07
件名:こっちは朝8時。眠い(´Д⊂
本文:
('・c_・` )ソッカー メールで我慢する。
10時くらいの飛行機に乗るから、今から12時間後くらいに日本に着くと思う。
そこからバスに乗るから、ラボに着くのは何時になるかな?
受信メール
3/26 8:10
件名:早起きご苦労
本文:
バスで来るつもりか?
荷物も多いだろうし、よかったら迎えに行ってやるぞ。
送信メール
3/26 8:11
件名:(゚∀゚)!
本文:
ホント?じゃあ迎えに来て欲しいな。
そっちの時間でお昼の12時くらいになるかな。
受信メール
3/26 8:12
件名:いいだろう
本文:
了解した。
多分行くのは俺一人になると思うが。
送信メール
3/26 8:14
件名:ヾ(*´∀`*)ノ
本文:
べ、別に岡部に早く会いたいわけじゃないんだからね!
勘違いしないでよね!
なんちゃって☆
受信メール
3/26 8:16
件名:テンプレ乙!
本文:
なんだそのツンデレはw
言っておくが、俺はお前に会いたくて仕方がない。
眠くないのも実はそのせいだ。
紅莉栖「きゃー///」ジタバタ
送信メール
3/26 8:17
件名:////
本文:
もう!ばか!
あんたなんて、大好きなんだからね!
受信メール
3/26 8:18
件名:その言葉、そのままお返しする!
本文:
べ、別に、俺は早くお前に会いたいだけなのだからな!
勘違いするのではないぞ!
送信メール
3/26 8:19
件名:テンプレお・・・なん、だと・・・?
本文:
wwwwww
でも、岡部のさりげなく優しいところが本当に好き。
会えるのが待ち遠しい・・・。
受信メール
3/26 8:20
件名:今度はデレ過ぎだw
本文:
それ以上はよせ。
更に眠れなくなってしまうではないか。
紅莉栖「うきゅー///」ジタバタ
送信メール
3/26 8:21
件名:デレで悪いか!
本文:
ごめんwww
そろそろ準備するね。皆に会えるの楽しみ。もちろん岡部に会えるのが一番だけど!
それじゃ、おやすみなさい。
受信メール
3/26 8:23
件名:悪いなど一言も言っていない!
本文:
ああ、俺も楽しみだ。
ではまたあとで空港で会おう。降りたら電話をくれ。道中には気をつけるんだぞ。
岡部「ふふ」
ダル「ぅ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!受信メール音読すんな!!!氏ね!!!!!!!!」
3月中旬 アメリカ
「クリス、話がある」
紅莉栖「はい?なんでしょうか、ボス」
「オカベとはうまくいってるか?」
紅莉栖「what!? え、ええ、まあ、はい」
「といっても、もうしばらく会ってはいないだろ?」
紅莉栖「え、ええ。週に1回パソコンでテレビ電話くらいしか」
「そこでだ」
ニヤリとキザに笑い胸ポケットから1枚のチケットを取り出した。
「クリス、会って来い」
3月中旬 skype 日本―アメリカ
紅莉栖「なによー、もっと喜んでよー」
岡部「そうしたいのは山々なのだが、今日本は夜の1時なのだ。大声は出せない」
紅莉栖「あ、そっか」
岡部「そのボスには感謝せねばならんな。ところで、いつごろ来れるんだ」
紅莉栖「今月の下旬くらいかな。大丈夫?」
岡部「ああ、ちょうど春休み中だ。問題ない」
紅莉栖「そう。じゃあいっぱい会えるわね」
岡部「ああ。毎日だって会える」
紅莉栖「きゃー!どうしよどうしよー!!」
岡部(テンション高いな・・・だが、これはこれで・・・!)
紅莉栖「でも、今の時代って便利ね。このテレビ電話とか」
岡部「ああ、すごい時代だ。日本とアメリカとのテレビ電話が無料だものな」
紅莉栖「週に1回は電話で会ってるけど、一昔前だったらそうもいかないものね」
岡部「ああ、お前のかわいい顔が半年も見れないなんて、考えられないな」
紅莉栖「!な、何よ、突然!」///
岡部「どうした?顔が真っ赤だぞ?」
紅莉栖「・・・ばか」
岡部(勝った。まあ本音だが)
紅莉栖「・・・私だって、半年も岡部の顔を見られないなんて、考えたくない・・・ぐすっ」
岡部「な、なにも泣くことはないだろう? ほら!俯いてないで、こっちを向け!」
紅莉栖「ウソよ」
岡部「っ・・・やられた・・・」
紅莉栖(勝った。まあ本音だけど)
3月27日 日本
送信メール
3/27 12:07
件名:日本上陸!
本文:
飛行機降りたよー。
第2ターミナル1階の真ん中あたりにいるから、迎えに来てくれる?
受信メール
3/27 12:09
件名:長旅ご苦労
本文:
わかった。
ちょっと離れているから、少し待っててくれ。
空港なんて滅多に来ないから、迷ってしまいそうだ。
紅莉栖「うふふ♪」
紅莉栖「日本の空気、久しぶりね。っていっても5ヶ月ぶりか」
3月。さすがに東京も涼しい。
紅莉栖「皆、元気かな?早く会いたいな」
行き交う人の中に、知った顔がいないか目を配る。
紅莉栖「岡部、まだかな」
さっきのメールからまだ1分もたっていない。
ソワソワと浮き足立っている少女は、背後から近づく不振な男の気配に、気付くはずも無かった。
???「牧瀬、紅莉栖だな。ちょっと来てもらおうか」
紅莉栖「! ・・・誰?」
???「おっと、振り向くな。前を向いていろ」
紅莉栖(この背中の感触・・・銃・・・?)
???「前を向いたまま、まっすぐ歩いて外に出ろ」
紅莉栖は素直に従う。
紅莉栖(私に用がある・・・?)
男は紅莉栖の肩に片手を乗せ、歩くように促す。
紅莉栖(やだ、どうしよう・・・岡部・・・!)
真一文字に結んだ口元とは裏腹に、体は小刻みに震えていた。
紅莉栖「・・・聞いてもいいかしら」
???「・・・なんだ」
外に出る頃には、紅莉栖はもうすっかり落ち着きを取り戻していた。
紅莉栖「どこへ連れて行くの?」
???「機密事項だ」
紅莉栖「そう、じゃ、あなたは何故私を知っているの?」
???「話す必要など無い」
紅莉栖「あらそう、じゃあ、もう一つ聞いてもいいかしら」
???「口数の減らない女だ。今度はなんだ」
紅莉栖「岡部、なにやってるの}
???「!!!」
岡部?「だ、誰だそれは。俺はそんな名前ではない」
紅莉栖「へえ、じゃあ”鳳凰院凶真”さん、でしたっけ?」
岡部?「ッ!!そ、そのような名前でもない!」
紅莉栖は肩に乗せられた手を振り解き、勢いよく振り返る。
帽子。
サングラス。
ビット粒子砲。
白衣。
紅莉栖「・・・もう一度聞くわ。あなたの名前は?」
岡部「・・・岡部、倫太郎です」
岡部「な、なぜバレたのだ。完璧なドッキリだと思ったのに・・・」
紅莉栖「理由は3つ」
岡部「3つ・・・だと?」
紅莉栖「まず一つ目。肩に乗せた手が、優しかった」
岡部「ぐっ!最初からか・・・!」
紅莉栖「簡単に振りほどけそうな乗せ方だったもの。実際今だって簡単に振りほどけたし」
岡部「むむ・・・痛い思いをさせてはいけないと思ったのでな・・・」
紅莉栖「二つ目。前から人が歩いて来たとき、私の体をグッと自分に引き寄せた」
岡部「・・・完全に無意識だった」
紅莉栖「3つ目。これが一番肝心なところ」
岡部「・・・聞かせてくれ」
そう言うと紅莉栖は、岡部から視線を外し、俯く。
紅莉栖「・・・いくら声色を変えたって、好きな人の声、わからないわけがないでしょ」
岡部「お、おう・・・」
紅莉栖は岡部の胸に勢いよく飛び込む。
紅莉栖「・・・会いたかった。会いたかったよ・・・」
岡部「・・・おかえり。紅莉栖」
周りの視線を気に留めることもなく嗚咽を漏らす。
そんな泣き虫少女を、俺は力いっぱいに抱きしめた。
紅莉栖「バス乗り場って、こっちの方だったっけ?」
空港の外を歩き始めて数分。紅莉栖が問うた。
紅莉栖「こんなに歩いた記憶ないけど?」
岡部「いや、いいんだ。ついてきてくれ」
紅莉栖「こっち、もう駐車場じゃない。どこに向かってるの」
岡部「今日はバスに乗る必要は無い。さ、そこだ」
岡部が指差した先。
白いセダン。
初心者マークつき。
紅莉栖「もしかして・・・岡部の?」
( ^) 地面か…
( ) ̄
( | | )
( )|
( | | )
( ^o) うわっ!
 ̄( )
( // )
(o^ ) なんだこれ!熱っ!
( )ヽ
| |
..三 \ \ V / (o^ ) 三 マグマだー♪
三 \ \ V / ( )ヽ 三
三 \ \ | / / / 三
三 ( ^o) \ V // / / 三 マグマだー♪
三/( ) \ V / (o^/ 三
三 ヽヽ \ | /( / 三
..三/( ) \ V / (o^ ) 三
三 ヽヽ^o) \ V / ( )ヽ 三
三 \ )\ | (o^/ / / 三
岡部「内緒にしていたが、年末に免許を取ったんだ」
紅莉栖「わー、車で来たんだー!この車も買ったの?」
岡部「残念ながら親父のだ。車を買う余裕はなかったのでな」
紅莉栖「やっぱそうか。立派な車だものね」
岡部「クラウンだぞクラウン。泣く子も黙るクラウンだ」
紅莉栖「パパさん、よく貸してくれたわね」
岡部「彼女を迎えに行きたい、と言ったら、喜んで貸してくれた」
紅莉栖「・・・パパさん、もう知ってるんだ、私たちの事」///
岡部「ああ、写メを見せたら『奇跡だ!』と言われた。失礼な父親だ」
紅莉栖(そのうち、挨拶に行ったり、とかあったりして・・・)
紅莉栖「実は、タクシー以外で男の人の車に乗るの、初めてなんだ」
岡部「ん?・・・父親は?」
紅莉栖「・・・パパ、車持って無かったし」
岡部「・・・そうか、すまない」
紅莉栖「ううん。でも運転してる男の人の姿って、素敵」
岡部「お、おお。そうか?」
紅莉栖「うん。かっこいいぞ。岡部」
岡部「今日はいつになくデレ全開だな」
紅莉栖「自分でもそう思う。なんか感情の歯止めがきかないの」
岡部「だがそれがいい」
紅莉栖「あっ、あれって、桜?」
岡部「そうだ。ピークは明日だと言っていた」
紅莉栖「綺麗・・・。桜ってあまり見た記憶が無くって」
岡部「近いうちにラボメン全員で花見でも行こうか」
紅莉栖「うん、いいわね」
岡部「勿論二人だけでも行こう。夜の桜も綺麗だぞ、ぜひお前に見せてあげたい」
紅莉栖「夜のお花見デート、か。ロマンティック。楽しみにしてる」
岡部「そういう風に言われるとなんだか恥ずかしいな」
紅莉栖「なんでよー。とっても素敵なデートのお誘いだったわよ?」
岡部「む、む」
ブラウン管工房の前に車を停める。
紅莉栖「ここに停めていいの?思いっきりお店の前だけど」
岡部「ミスターブラウンに許可はもらった。この時間は丁度出かけている最中らしい」
紅莉栖「そうなんだ。うーん、久しぶり。この光景」
萌郁「あら、岡部君、おかえりなさい」
岡部「ちょっとだけ車置かせてもらうぞ」
萌郁「店長から聞いてるわ。紅莉栖ちゃん、お久しぶりね」
紅莉栖「え?あ、お久しぶりです」
紅莉栖(えっと・・・萌郁さんよね?)
萌郁「今回も滞在は長いの?」
紅莉栖「ええ、1ヶ月ほど」
萌郁「よかったわね。岡部君と一緒にいられる時間が長くて」
紅莉栖「う、あ、はい・・・」
岡部「萌郁、後でラボに来れるな?」
萌郁「ええ。店長が帰ってきたら休憩に入るから、その時なら」
岡部「うむ、紅莉栖、コンビニに寄って行こう」
紅莉栖「あ、うん。それじゃ、また後で」
萌郁「うん、色々とお話を聞かせてね。うふふ」
岡部「どうだった?萌郁の変貌っぷりは」
紅莉栖「・・・びっくりしたー。あれ、本当に萌郁さん?双子のお姉さんとかじゃないわよね?」
岡部「何の漫画だそれは。まあそう思う気持ちもわかる」
紅莉栖「何があったの?」
岡部「まゆりと一緒にいるうちに、段々心を開くようになったんだ」
紅莉栖「・・・さすがね」
岡部「まゆりのコミュニケーション能力は天性のものだ」
紅莉栖「でも、よかったわね。元気になったっぽくて」
岡部「ああ。・・・まゆりには感謝しないとな」
まゆり「あっ、オカリン、お帰りー」
ダル「おおっと、後ろにいるのはもしかしなくても?」
紅莉栖「ハロー。みんな、久しぶり」
まゆり「紅莉栖ちゃんだー♪久しぶりだねー!」
るか「ご無沙汰しています」
フェイリス「おやおや、来日早々仲むつまじい登場ニャ♪」
岡部「萌郁もあとで来るそうだ」
まゆり「久々に全員集合だねー♪」
バッジに書かれた「A」の文字に視線を落とす。
岡部(・・・全員・・・か)
萌郁「おじゃましまーす」
まゆり「あ、萌郁さんトゥットゥルー♪ 全員そろったねー。それでは」
立ち上がり、数歩前へでて注目を促す。
まゆり「第5回、ラボメン全員ワイワイ会議ー♪」
紅莉栖「5回?」
紅莉栖は小首を傾げる。
紅莉栖「去年私がここにいたとき、第4回までやらなかった?まだ5回なの?」
まゆり「紅莉栖ちゃんが帰っちゃったら全員じゃないもん。だから5ヶ月ぶりの第5回なんだよー」
紅莉栖「あ、そうなんだ。うん」
まゆり「紅莉栖ちゃんがいない間はねー、『ラボメンいっぱい会議』って名前なんだよー」
ダル「先週が第11回だったお」
岡部「というか、ラボメン全員ワイワイ会議の第1回に参加してないのだが」
るか「ところで牧瀬さんはいつまで日本にいらっしゃるんですか?」
紅莉栖「4月下旬くらいまでだから、丸々1ヶ月くらいかな」
フェイリス「そのうち、凶真とは何日会うのかニャ?ニャフフフ♪」
紅莉栖「ふぇ!?そ、それは、そりゃ、できるだけ会いたい・・・けど・・・ゴニョゴニョ」
岡部「俺は毎日一緒にいたいがな」
紅莉栖「ちょッ!?お、岡部、なに言って・・・」
萌郁「うふふ、顔、真っ赤」
岡部「聞こえなかったか?俺は毎日でもお前と一緒にいたい」
紅莉栖「あ・・・あう・・・あ・・・」
岡部「いまさら恥ずかしがることも無いだろう?俺とお前はもう公然の仲なのだからな」
ダル(オカリン、攻める! 圧倒的攻め・・・ッ!!!)
まゆり「ほら、紅莉栖ちゃんも言っちゃいなよー」
紅莉栖「う・・・わ、私も・・・毎日、一緒に・・・いたい、よ」
一同「やんや、やんやー!」
紅莉栖「もーー!からかわないでよ!」
岡部(フ・・・今度こそ勝った。まあ本音だが)
るか(いいなぁ・・・)
「おーい、岡部ー、聞こえるかー?」
ほどなくして、窓の外、階下から天王寺の声がした。
岡部「どうしました?ミスターブラウン」
天王寺「そろそろ車どかしてくれねえか?もうちょいしたらトラック来るんだよ」
岡部「わかりました。今移動します」
紅莉栖(あ、この流れ、イヤな予感がする)
岡部「というわけだから、俺は車を家に置いてくる。小1時間で戻る」
まゆり「いってらっしゃーい♪」
皆が岡部を見送る。
数秒の沈黙。
そして、全員がニヤリと笑いながらこちらを振り返った!
紅莉栖(やっぱり!)
天王寺「ったく、大学生の分際でクラウンなんか乗りやがって」
岡部「だから親の車ですって。自分じゃ買えませんよ」
天王寺「親のだろうがなんだろうが、そんな車乗り回してる時点で生意気だっつってんだ」
岡部「できれば俺だってもう少し小さい車がいいです。持て余し気味で」
天王寺「じゃあ俺の軽トラ貸してやる。デートに使えや」
岡部「遠慮します。ま、そのうち綯にも彼氏が出来て、家まで車で迎えに来
天王寺「それ以上言ってみろ。間違いなく殺す」
岡部「・・・すいません」
天王寺「それと、その彼氏も殺す」
岡部(だめだコイツ、早くなんとかしないと・・・)
フェイリス「はてさて、クーニャンは日本に何しに来たのかニャー?」
ダル「はいはーい!僕知ってるおー!」
まゆり「はいダルくん!お答えをどうぞー!」
ダル「オカリンに会うために決まってるだろ常考ー!」
萌郁「その証拠はあるの?」
ダル「証拠もなにも、オカリン自分で言ってたお!」
るか「な、なんて言ってらしたんですか?」
ダル「『紅莉栖の上司が気を利かせてくれて、1ヶ月の休暇をもらったそうだ』って嬉しそうに答えてたのだぜ!」
まゆり「紅莉栖ちゃん、オカリンに愛されてるねー♪」
フェイリス「ラブラブニャンニャンだニャー♪」
ダル「末永く爆発しろ!ソイヤ!ソイヤ!」
紅莉栖「もう勘弁して・・・orz」
まゆり「そういえば、今回もホテルに泊まるの?」
紅莉栖「・・・・・・あっ・・・忘れてた」
萌郁「あら、紅莉栖ちゃんらしくない」
紅莉栖「そうだ、泊まるところだけは自分で確保してくれって言われてたんだった・・・」
ダル「浮かれすぎですね、わかります」
紅莉栖「1ヶ月間泊まるなんて、予約しとかないと無理だしなぁ・・・どうしよう」
フェイリス「だったら、うちに泊まるニャ?」
紅莉栖「え?でも、突然押しかけたりして大丈夫なの?」
フェイリス「他でもないクーニャンの悩み、フェイリスに任せるニャ!」
紅莉栖「えーと、じゃあお言葉に甘えちゃおうかな」
ダル(いいなあ・・・)
フェイリス「でも今日はフェイリスもマユシィもバイトだから、帰るのは9時過ぎニャ。大丈夫かニャ?」
紅莉栖「9時か、うん、全然大丈夫」
まゆり「オカリンといっしょにここにいるからねー」
紅莉栖「うん、岡部とここにいるから何時でも・・・ちょっ!」
ダル「もう氏ねよオカリン。こんなの絶対おかしいよ」
萌郁「さて、後はお若い者に任せて、私は退散しましょうかね」
フェイリス「外泊はいつでも許可するニャーン♪」
るか「あ、あの、が、頑張ってくださいっ!」
まゆり「トゥットゥルー♪」
紅莉栖「ちょ、ちょっと待ってよ!
萌郁さん、たった2つ上じゃないの!?っていうか外泊許可って!
そもそも頑張れって何を!?わーん、せめてもう少しここにいてよー!」
岡部「ただいま、っと」
ニコニコするまゆり。
賢者タイム中のダル。
頬を染め目を逸らすルカ子。
大人の微笑を見せる萌郁。
ニヤニヤするフェイリス。
真っ赤になってアタフタする紅莉栖。
岡部「・・・何があった?」
まゆり「さて、まゆしぃとフェリスちゃんはバイトに行くのです」
岡部「おお、気をつけてな」
萌郁「私もそろそろ戻らないと」
岡部「うむ、ご苦労だった」
るか「ボ、ボクも神社の手伝いがあるので、これで・・・」
岡部「そうか」
ダル「じゃ、ボクはコレがアレでコレだから帰るお」
岡部「なんだそれは」
紅莉栖(そう来たか・・・!)
岡部(そういうことか・・・)
紅莉栖の隣に腰掛ける。
岡部「そういえば、泊まるところはどうしたのだ?いつものホテルか?」
紅莉栖「それがね、予約するのをすっかり忘れてて」
岡部「ほう、お前らしくない」
紅莉栖「相当浮かれてたんだと思う。さっきまゆりがその話をするまで忘れてたくらいだし」
岡部「ではどうするのだ?よもやラボに1ヶ月寝泊りもできまい」
紅莉栖「フェイリスさんがね、うちに泊まっていきなよって言ってくれたの」
岡部「なるほど、あそこなら来客の一人や二人、問題ないな」
紅莉栖「そんなに大きい家なの?」
岡部「ああ。行けばわかる。そして驚くだろう」
ほう、3pか
紅莉栖の肩を抱き寄せ、髪をすくように優しく頭をなでた。
紅莉栖「っ、あ・・・」
岡部「こうしてお前に触れるのも、久しぶりだ」
紅莉栖「・・・うん(さっき空港で抱きついちゃったけど)」
岡部「・・・」
紅莉栖「・・・?」
岡部「好きだ、という言葉は陳腐であまり使いたくは無いが、それ以上の言葉が見つからない」
紅莉栖「そう?ストレートな感情表現だし、私は好きよ」
岡部「ツンデレ少女がそれを言うか」
紅莉栖「誰がツンデレよっ」
岡部「違う世界線でのお前は、まるで絵に書いたようなツンデレだったのだぞ」
紅莉栖「『べっ別にあんたの事なんか好きじゃないんだから!』みたいな?」
岡部「それに近いな。お互いあー言えばこー言う状態で、よく俺と口論になっていた」
紅莉栖「じゃあ岡部もツンデレだったんじゃない?」
岡部「フフフ、そうかもな」
岡部は天井を見上げ、哀しげな笑顔を見せる。
何故か、胸がズキリと痛んだ気がした。
岡部「その世界線でも、俺はお前に告白した」
紅莉栖「・・・私は、なんて返事したの?」
岡部「最後まで、『好き』とは口にしてくれなかった」
紅莉栖「最後まで、って?」
岡部「急にお前の帰国が決まってな。その前日に告白した」
紅莉栖「・・・じゃあ、私は気持ちを告げずに帰国したの?」
岡部「世界線が変わる直前になってお前はラボに帰ってきた。そして、何か言いかけたところで、お前の死んでしまった世界線に・・・」
岡部が目頭を押さえる。
岡部「・・・すまない。この話は思い出すだけでもダメなんだ」
紅莉栖「岡部・・・泣かないで」
岡部「カッコ悪いところを見せてしまったな。こんな姿を見られては幻滅されても文句は言えん」
紅莉栖「幻滅なんて、しないよ」
岡部の体に、やさしく、強く 抱き付く。
紅莉栖「そこまで私の事を想ってくれる人に、幻滅なんてしない」
岡部「・・・すまない。気を遣わせてしまったな」
紅莉栖「ううん、むしろ、もっと好きになっちゃった。 私はね、岡部の事が大好き」
岡部「・・・っ・・・」
隠し切れなかった思いが雫となり、紅莉栖の手の甲にポタリと落ちた。
紅莉栖「・・・だから、岡部の口からも、久々に聞きたいな」
岡部「・・・好き、だ」
紅莉栖「辛い記憶、思い出させちゃってごめんね。でも私は今ここにいる。これからも、ずっと、この気持ちは変わらないから」
まゆり「ただいまットゥルー♪」
紅莉栖「あ、おかえりなさい」
フェイリス「ニャ?もっとラブラブ空気が充満してるかと思いきや、そうでもないニャ」
岡部「お前たちが帰ってくる時間帯にそんな空気を出しているわけが無かろう」
フェイリス「ってことは、さっきまではラブラブ☆にゃんにゃんだったのかニャ~?」
岡部「んっふっふ~」
フェイリス「ンッフッフ~♪」
まゆり「んっふっふ~♪」
紅莉栖「ちょ、ちょっと岡部!誤解招いちゃうでしょ!な、何にもしてないから!」
フェイリス「あ、凶真、クーニャンはうちに泊まるって聞いたかニャ?」
岡部「ああ、すまないな。1ヶ月近くも」
フェイリス「お安い御用ニャ。他ならぬ凶真の終生の伴侶となるクーニャン、超VIP待遇にて持て成すニャ!」
岡部「ああ、そうしてもらえるとありがたい」
紅莉栖「しゅ、終生の・・・」///
まゆり「まゆしぃも今日はフェリスちゃんのおうちにお泊りなのです」
岡部「そうか、ガールズトークに華を咲かすのだな」
フェイリス「話題の中心はクーニャンになるニャ。クーニャン、今夜は寝かさないニャ~」
紅莉栖「・・・やっぱり、そうなるのね・・・」
まゆり「あと10分くらいしたら行くからね」
まゆり「それじゃまゆしぃとフェリスちゃんは先に外行ってるよー。オカリン、おやすみー」
フェイリス「今のうちに別れのキスも済ませておくニャー♪」
岡部「く・・・あの猫耳め・・・黙っていれば好き放題言いおって」
紅莉栖「まるでボウガンを持った恋のキューピッドね」
岡部「物騒だな」
紅莉栖「それじゃ行くね。今日は長い夜になっちゃいそう」
岡部「ああ、無理はするな。体調には気をつけろよ」
紅莉栖「うん、ありがと。・・・」
岡部「どうした?」
紅莉栖「・・・しないの?」
窓から3人を見送り、深々とソファーに座り込んだ。
唇が未だにくすぐったい。
岡部(5ヶ月ぶり・・・か)
♪
メールが鳴った。
受信メール
3/27 21:33
件名:
本文:
聞いておきたい事があるニャ。
クーニャンのタブーな話題ってあるかニャ?
送信メール
3/27 21:34
件名:Re;
本文:
俺の話、と言っても無駄なのだろうな。
父親の話はしないでもらいたい。
受信メール
3/27 21:35
件名:Re;Re;
本文:
了解だニャ。凶真との話は根掘り葉掘り聞いちゃうから心配しなくてもいいニャ♪
あと、あまり遅い時間にならないようにするから、安心して欲しいニャ。
それじゃおやすみニャンニャーン♪
ああ見えて、フェイリスは気が利く娘なのだ。
紅莉栖「・・・!!」
紅莉栖は空を見上げた。
かのように見えたが、その目はビルの最上階を捉えていた。
フェイリス「フェイリスだニャ」
「お入りください」
玄関のオートロックが小さな金属音をたて、自動ドアが開く。
紅莉栖「これ、何階建てなの・・・?」
フェイリス「さ、二人とも入るニャ」
まゆり「フェリスちゃんち、久しぶりー♪」
フェイリス「クーニャン?どうしたニャ?」
紅莉栖「あ、うん、お邪魔します・・・」
玄関のドアを開けると、一人の執事が深々と頭を下げた。
黒木「お帰りなさいませ」
フェイリス「黒木、今日はお友達二人がお泊まりニャ」
黒木「かしこまりました。お荷物をお預かりしましょう」
黒木という名の執事が手馴れた手つきで荷物を受け取る。
黒木「そちらの方が牧瀬様ですね。お話は伺っております」
紅莉栖「あ、すいません。一ヶ月間お世話になります」
フェイリス「クーニャンはとっても大事な客人ニャ。粗相のないように」
黒木「かしこまりました」
紅莉栖(ふおお・・・!)
窓際に立ち、下を見下ろす。
人の姿はおろか、車でさえライトが点いてなければ認識はできない。
紅莉栖(・・・高い・・・)
紅莉栖「人の姿がほとんど見えない・・・)
紅莉栖(・・・・・・)
紅莉栖(・・・人がゴミのようだ・・・)
フェイリス「クーニャンは飲み物何にするニャ?」
紅莉栖「えっ、えーと・・・じゃ、アイスコーヒー」
来客用の部屋に招かれる。
シングルベッドが4つ。ヘタなホテルよりもよほど豪華な内装。
フェイリス「クーニャン、寝るとき用の服は持ってきてないのかニャ?」
あっ。
紅莉栖「しまった。滞在中はいつもYシャツ1枚で寝てたから、つい・・・」
フェイリス「ニャフフ、やっぱり。ちょっと待ってるニャ」
まゆり「オカリンに会うことしか考えてなかったんだねー♪」
紅莉栖「う・・・」
言い返せない。
フェイリス「お待たせニャンニャーン。はい、クーニャンのパジャマ」
紅莉栖「え、貸してくれるの?」
フェイリス「来客用だニャ。更衣室はそっちのドアニャ」
来客用とはいえ、けっして粗末なものではない。
紅莉栖(これ、いくらするんだろう・・・)
まゆり「あ、紅莉栖ちゃん、似合ってるよー。かわいいねー♪」
フェイリス「ちょっと大きかったニャ」
確かに袖が少し長い。手のひらが半分ほど隠れてしまう。
フェイリス「それより小さいのが無かったニャ、クーニャン、スリムだから」
紅莉栖「ううん、全然大丈夫。貸してくれてありがとう」
まゆり「袖が長くて手のひらが隠れる服装って、作者の趣味全開だよねー」
フェイリス「女の子のパジャマ姿が嫌いな男の人なんていないと思うニャ」
フェイリス「さてさて、お楽しみはこれからニャ」
フェイリスがニヤリと笑う。
紅莉栖「・・・やっぱり、そうなる?」
まゆり「恋バナはねー、女子高生の話題の定番なんだよー」
フェイリス「で、凶真とは順調ニャ?」
紅莉栖「え、ええ、まあ、そこそこ?」
フェイリス「でも、今日久々に会った割には”感動の再会”っぷりがあまり見られなかったニャ」
紅莉栖「週に一回、土曜か日曜にパソコンでテレビ電話してるの。だから、久々に会ったって感じは薄いかな」
まゆり「あ、そうなんだー。だからかー」
フェイリス「ニャるほど、話が繋がったニャ」
まゆり「月曜日にオカリンに会うとねー、紅莉栖ちゃんの話ばっかりするんだよー」
フェイリス「土日に凶真が店に来た時は、いつもより少しテンションが高いニャ」
まゆり「そういうことだったんだねー♪」
紅莉栖「電話ではいつも通りの岡部だから、もうあまり私の事好きじゃないのかな?なんて思ったこともあったけど」
まゆり「大丈夫だよー。オカリンは紅莉栖ちゃんの事、大大大好きだと思うなー」
紅莉栖「うん。今日久しぶりに会って、まだ愛してくれてるって、実感できた」
フェイリス「聞き捨てならない発言ニャ。一体何があったのかニャ~?」
紅莉栖「な、何もない!何もないから!」
まゆり「何かしたのー?」
紅莉栖「何もしてなーい!はい次!」
まゆり「久々に会ったって感じは薄いって言ったけど、あまり嬉しくなかったのー?」
紅莉栖「い、いや、そんなことは全然・・・」
フェイリス「マユシィ、いくらテレビ電話でも、凶真の肌の温もりは伝わらないのニャ」
まゆり「あ、そっかー、オカリンのこと、ギューッてできないもんねー♪」
紅莉栖「う・・・!」
まゆり「もうオカリンとはギューッてしたのー?」
天然少女の質問は、時に手厳しい。
フェイリス「5ヶ月ぶりに再会したカップルが愛の抱擁をしないわけがないニャ!」
紅莉栖「・・・に・・・2回・・・」ボソッ
まゆり「きゃー♪」
フェイリス「ニャー♪」
まゆり「そうだ!オカリンに電話しちゃいなよー」
紅莉栖「ふぇ!?ちょ、何で?」
フェイリス「そろそろ凶真の声、聞きたくなったんじゃないかニャー?」
紅莉栖「さ、さっきまで一緒にいたし!十分聞いたし!」
でも、聞きたくないかと問われれば、答えはNOだ。
フェイリス「でも凶真はクーニャンの声を聞きたがってるかもしれないニャ?」
紅莉栖「う・・・!」
まゆり「久々に会ったんだもんねー」
フェイリス「ああ愛しい紅莉栖よ。君のその可憐な声をまた聞かせておくれ・・・!なんて言ってるニャ」
紅莉栖「ああもう!わかったわよ!岡部に電話しちゃうから!絶対声出さないでよ!」
岡部「もしもし。どうした?」
岡部の声はスピーカーから。
つまり、まゆりやフェイリスにも聞かれている。
紅莉栖(頼むから、今だけは変なこと言わないで・・・!)
岡部「フェイリスの家にいるんだろ?何かあったのか?」
紅莉栖「ごめんね、こんな遅くに。・・・その、岡部の声が、聞きたいな、って」
岡部「・・・まったく」
岡部が呆れて笑い声をあげる。
まゆりたちが目を輝かせている。
岡部「だが奇遇だな。俺も同じ事を考えていた」
岡部「不思議なものだな。ついさっきまで一緒にいたのに、お前の声が聞きたいと思っていた」
紅莉栖「・・・私も、そう」
岡部「明日もラボには来るな?」
紅莉栖「うん、行く」
岡部「明日の夜、二人で出かけないか。といっても何をするわけでもないが」
紅莉栖「・・・うん。楽しみにしてる」
岡部「俺は今日はラボに泊まる。好きな時間に来るといい」
紅莉栖「わかった。お昼頃に行くと思う」
岡部「あまり遅くまで起きてるんじゃないぞ。それじゃあな、おやすみ」
紅莉栖「うん。おやすみ」
携帯を畳むと、紅莉栖は倒れるようにベッドに突っ伏した。
まゆり「オカリン、かっこよかったねー!」
フェイリス「凶真のあんな優しい声、初めて聞いたニャ。クーニャン、愛されてるニャー♪」
紅莉栖(これなんて公開処刑)
まゆり「さりげなくデートのお誘いもしてたねー」
ハッと、紅莉栖は突っ伏していた枕から頭を上げた。
紅莉栖「も、もしかして、尾行する気じゃ!?」
フェイリス「そんなことは絶対にしないニャ。この猫耳に誓うニャ」
まゆり「二人のデートの邪魔なんて絶対しないから、安心していいんだよ♪」
紅莉栖は再び、枕に突っ伏した。
しかし、時刻はまだ11時過ぎ。
長い夜は、まだまだ続く。
紅莉栖「おじゃましまーす・・・って誰もいないの?」
11時を回ったあたり。紅莉栖は少し早めにラボに着いた。
紅莉栖「岡部ー、いないのー?あっ」
ソファーに横たわる岡部。
テーブルの上には教科書とノートと筆記用具。
紅莉栖(勉強、してたのかな)
紅莉栖は静かに、岡部の方を向いてテーブルの前に座った。
紅莉栖(まったく、鍵もかけないで。無用心なんだから)
小さく口を開けて、寝息を立てる岡部。
紅莉栖「・・・素敵」
思わず頬杖をついて、見とれてしまっていた。
岡部「っ・・・ん・・・」
突然、岡部はハッと目を覚ました。
紅莉栖「おはよう、岡部」
岡部「ん・・・ああ、紅莉栖・・・もう12時か。すまないな、お前を呼んでおいて俺は爆睡したままだった」
紅莉栖「ううん、さっき来たとこだから。何時に寝たの?」
岡部「確か、3時過ぎだったと思う」
紅莉栖「よくソファーで9時間近くも寝てられるわね」
岡部「ここ一週間お前の事ばかり考えていたら、寝不足になってしまってな」
紅莉栖「・・・ん・・・」
岡部「相変わらず言葉攻めには弱いのだな」
紅莉栖「・・・馬鹿岡部」
岡部「紅莉栖は何時に寝たのだ?」
紅莉栖「1時頃だったかな。それでも根掘り葉掘り問いただされちゃったけど」
岡部「昨日の電話、二人が差し向けたな?」
紅莉栖「・・・わかった?」
岡部「あの状況ならそれしかないだろう。内容も聞かれていたのか?」
紅莉栖「・・・うん。通話の音声、外部出力にされた」
岡部「やはりな。変なことは言わないで正解だった」
紅莉栖「何を言うつもりだったの?」
岡部「”紅莉栖たん、ちゅっちゅしたいお”」
紅莉栖「・・・それなんて橋田?」
岡部「ははっ」
紅莉栖「ふふっ」
岡部「紅莉栖、もっと近くに来い」
岡部に手招きをされ、紅莉栖は岡部の寝るソファーの前に腰を下ろす。
紅莉栖の頭に手を伸ばし、優しく髪を撫でる。
紅莉栖「・・・なんか、子供をあやしてるみたい」
岡部「お前に触れると心が落ち着く。お前が生きているということを、実感できる」
紅莉栖「・・・また、あの日の夢を見たの?」
岡部「・・・半年以上前の事なのに、忘れられないものだ」
紅莉栖「・・・そんなに、辛かったのね」
岡部「当たり前だ。俺は、お前を・・・」
紅莉栖「いいの。それ以上は言わなくてもいい。忘れよ?」
紅莉栖「私は見ての通りピンピンしてるから、全然元気だから」
岡部「・・・」
紅莉栖「ほ、ほら、お腹に傷なんて一つもないから、ね?」
紅莉栖は岡部の方を向き、恥じらいながらもシャツを捲り上げてへその辺りを見せる。
岡部「・・・ああ、そうだな」
岡部は横になったまま、地べたに座り腹部をめくる紅莉栖の体を両手で抱きよせ、左脇腹に耳を寄せる。
紅莉栖(ちょ、む、胸、あ、当た、あ、た、当た、岡、部のか、かかか、顔、に!)/////////
岡部「・・・鼓動が聞こえる。お前は、生きているんだな・・・」
紅莉栖「あ・・・」
岡部「少しの間でいい。このままでいさせてくれ」
紅莉栖「・・・うん。岡部の気の済むまでで、いいよ」
紅莉栖「そういえば、今日は誰も来ないのね」
岡部「そういえばそうだな。用事があるのか、はたまた気を利かせているのか」
紅莉栖「まゆりとフェイリスさんはきっと後者ね。夜に出かけることも知ってるし」
岡部「ま、萌郁は下にいるがな。そういえば腹が減ったな。もう2時か」
紅莉栖「岡部、何も食べてないでしょ?私もほとんど食べてないし」
岡部「何か食べに行こう。何がいい?ご馳走してやろう」
紅莉栖「ホント?そうね・・・あ、久々にキッチンジローに行きたいな」
岡部「そういえば俺も久しく行ってない。決まりだな。行くか」
紅莉栖「ご馳走様♪」
岡部「もう少ししたら出かけよう」
紅莉栖「行くところは決まってるの?」
岡部「そうだな、上野公園はどうだ。桜が見ごろだしな」
紅莉栖「あ、お花見デート」
岡部「そ、そうだ。いいか?」
紅莉栖「うん!連れてって!」
岡部「そんなに遠くはないな。たまには歩いて行こう」
紅莉栖「うん、それがいい。話しながら歩きたいな」
★君もラボメンになろう★
世界を変えたいけど機関に見張られてできない、
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未来ガジェット研究所のラボメンたちが一生懸命、
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詳しくは東京都-千代田区-秋葉原 ×-××-× の二階までどうぞ
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紅莉栖「綺麗・・・」
ライトアップされた桜並木に、紅莉栖は感嘆の声を漏らした。
つないだ手に、思わずキュッと力が入る。
紅莉栖「すごい・・・こんな綺麗な桜、初めて見た」
岡部「しかしまだ人が結構いるな。もっと遅く来るべきだったか」
紅莉栖「ううん、全然構わない。ありがとう、本当に嬉しい」
岡部「喜んで貰えてなによりだ。少し見て回ろう」
紅莉栖「うん・・・ねえ、岡部」
さわさわと枝が揺れ、はらはらと桜の葉が舞い落ちる。
紅莉栖「・・・腕、組んでもいい?」
岡部「ここまで喜んで貰えるとはな。連れてきた甲斐があった」
紅莉栖「うん、とっても素敵だった。ありがとう」
岡部「あのはしゃぎっぷりは中々だったな。とても天才少女には見えなかったぞ」
紅莉栖「むー、悪かったわね」
岡部「だが、そんなお前も、最高に可愛かった」
紅莉栖「ふぇ!?」
岡部「おっと、肌が桜色になったぞ?カメレオンみたいな奴だな」
紅莉栖「もー!岡部の馬鹿!岡部なんか嫌い!」
岡部「おっと、嫌われてしまったか。・・・哀しいな」
紅莉栖「ちょッ!そんなわけないでしょ!馬鹿!馬鹿!!」
岡部「もう一箇所、見たい所がある」
紅莉栖「もう一箇所?って、もうラボの近くじゃない」
岡部「ここだ」
紅莉栖「ここ、って、こんなビル街に何が―――」
ビルの看板を見上げる。
ラジオ会館。
紅莉栖「っ・・・」
岡部「老朽化もあって、夏頃には取り壊しが始まるらしい」
紅莉栖「・・・ここには、いい思い出が無い」
小さくうなだれ、肩をすくめる。
紅莉栖「岡部だって、良い記憶なんて無いでしょ?」
岡部「ここには俺にとって、忘れることの出来ない最高の思い出がある」
紅莉栖「・・・何?」
岡部「お前と、出逢えた事だ」
紅莉栖は、はっと8階を見上げる。
岡部「ここでお前と会う事がなければ、今こうやって腕を組んでいることもなかった」
紅莉栖「・・・そっか」
岡部「悪いこともポジティブに捕らえる。発想の転換は大事だぞ。天才少女」
紅莉栖「うん、そうする。ここは岡部と運命の出逢いの場所、ね」
紅莉栖「ここ、取り壊されちゃうんだ」
岡部「ああ、建造から大分経つからな、数年後に新しいビルが完成するそうだ」
紅莉栖「そうなんだ。なんか、寂しいね」
岡部「秋葉の名物みたいなものだったからな。テナントは一時的に移転するらしい」
紅莉栖「ここが新しくなったら、また、来ようね」
岡部「ああ。必ず・・・ん?」
ラジ館の屋上近辺、光が収束するように明滅を繰り返している。
紅莉栖「何あれ?なんかあそこ、光って・・・」
ズシン―――
紅莉栖「きゃっ、な、何?今の何?」
紅莉栖が岡部の腕にしがみ付く。
岡部「まさか・・・!」
岡部は何かを感じ取ったかのように屋上を凝視する。
岡部「ちょっと見てくる。紅莉栖はここで待っていてくれ」
紅莉栖「見に行くの?一人じゃ危険よ!私も・・・」
岡部「大丈夫だ。ちょっと心当たりがある。なるべくすぐ戻る」
紅莉栖「・・・わかった。気をつけて」
ラジ館の屋上へ向かって、岡部は走った。
運良く、職員用出入口はまだ開いていた。
周りを見渡しながら侵入し、非常階段を駆け上がる。
岡部「まさか・・・いや、間違いない。あの光・・・」
息も絶え絶えに屋上へ到着。
ゆっくりとドアを開くと、そこには。
月光に照らされ、おぼろげに形を見せる金属の塊。
側面に書かれた”FG204”の文字。
岡部「やはり・・・か」
しばらくすると、ドアらしきものが上方に開き、自動的にタラップが降りた。
中から一人の女が、警戒しながら降りてくる。
???「うわー、ラジ館、ふっるー。こんなビルだったんだ」
岡部「動くな」
???「のわァっ!?ビックりしたぁ!!」
女は大きく飛び上がり、5歩ほど後ずさりする。
???「・・・誰?」
訝しげにゆっくりと近づく。
岡部「・・・動くなって言っただろうに」
岡部「鈴羽だな」
鈴羽「っ、なんで私の名前を知って・・・!あ・・・」
岡部「久しぶり、ではないか。始めまして、だな。阿万音鈴羽」
鈴羽「オカリンおじさんだ!」
岡部「まだ同世代だっ」
無遠慮に、岡部の顔をジロジロ見回す。
鈴羽「うわ、若ーい!でもあまり変わってないなぁー」
岡部「2036年の俺は40代か。想像できんな・・・」
鈴羽「あれ?でもなんで私の事知ってるの?ここじゃまだ生まれてないけど?」
岡部「ああ、簡潔に説明する」
こうやって、自分の辿ってきた経路を説明するのは、いつ以来だろうか。
鈴羽「・・・へぇ、オカリンおじさんも大変だったんだね」
岡部「随分と物分りがいいな。あとおじさんはやめろ」
鈴羽「阿万音って母さんの旧姓だもん。2011年ではまだお父さんと出会ってないし」
岡部「普通なら知る由も無い事を知っている、か。両親は元気か」
鈴羽「うん、健在。未だに結構ラブラブだから見てるこっちが恥ずかしいくらい」
はにかむように笑う。
岡部「そうか、よかった。ということは、お前は阿万音性を名乗ってはいないのだな」
鈴羽「うん、橋田鈴羽だよ。って、あまり未来のことは口にしちゃいけないんだった」
岡部「ここでは阿万音鈴羽を名乗ったほうがいい。面倒なことが起きるかもしれんしな」
鈴羽「うん、そうするよ」
岡部「ひとつ、聞きたい事がある」
鈴羽「何?答えられる範囲なら答えるよ」
岡部「紅莉栖、牧瀬紅莉栖は、元気にしているか」
鈴羽の笑顔が、消えた。
岡部「・・・鈴羽?どうした?こっちを向けよ?なあ」
岡部から目をそらし、苦しそうに俯く。
岡部「・・・冗談だろ?冗談だよな?おい・・・何とか、言えよ・・・?」
鈴羽「・・・牧瀬、紅莉栖・・・」
鈴羽は、消え入りそうな声で呟く。
鈴羽「・・・私のいる2036年に、牧瀬紅莉栖という人間は」
そして、大きく息を吐き、岡部の目を見て言った。
鈴羽「・・・もう、存在していない」
岡部「・・・なんだよ、それ」
声に感情が伴わない。
岡部「また、それかよ」
力なく膝から崩れ落ちる。
岡部「紅莉栖・・・どうして、また・・・くそ、くそ!なんでだよおおおおおおおおおぉぉぉ!」
紅莉栖(っ! 今の・・・岡部?)
それは、ラジ館の近くのベンチに腰掛け、男の帰りを待っていた少女に届く、悲痛な叫び。
不安と恐怖が入り混じって巨大な波となり、紅莉栖の全身を覆い尽くす。
岡部「あんまりだろ・・・やっと、ここまで、来れたんだぞ・・・?」
紅莉栖(どうしたの・・・?お願い、早く戻ってきて・・・)
岡部「・・・鈴羽、もう一つ、教えてくれ」
希望を失ったその目は、もう何も捉えようとはしなかった。ただ、開いているだけ。
鈴羽「・・・内容による」
岡部「知っているのなら、紅莉栖の・・・彼女の最期を、教えて欲しい」
鈴羽「・・・わかった。私の目を見て」
二人は向き合い、お互いの目を見合う。
鈴羽「今から5年後、2016年」
岡部「・・・5年・・・」
鈴羽「・・・牧瀬紅莉栖は」
険しい表情を浮かべていた鈴羽は、急に、ニカッと白い歯を見せて笑う。
鈴羽「”岡部”紅莉栖に、苗字が変わるんだよ♪」
岡部「っ!・・・・・・?」
鈴羽「だから、”牧瀬”紅莉栖はもう存在しないっていうオチ」
岡部「・・・・・・・・・・・・」
鈴羽「紅莉栖さんは元気だよ?オカリンおじさんともすっごく仲いいしー」
岡部「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
鈴羽「・・・もしもーし?もしかして、怒っちゃった?ちょっとしたドッキリのつも・・・」
岡部「・・・った・・・」
鈴羽「え?何か言っ・・・って、めっちゃ泣いてる!ごめん!ごめんってば!」
岡部「よかった・・・本当に、よかった・・・」
ここ数日、俺の涙腺は緩みっぱなしだ。
ゴチン。
岡部「話してくれたお礼だ」
鈴羽「いつつ・・・ごめんなさーい。でもね、このドッキリ、紅莉栖さんの提案なんだよ?」
岡部「未来の紅莉栖がか?なんでまたそんなマネを・・・」
鈴羽「この時代のオカリンおじさんの本当の気持ちが知りたかったんだって」
岡部「本当の気持ち、って、どういうことだ。俺は紅莉栖の事を本気で・・・」
鈴羽「なんかね、この頃はあまり感情を表に出さないから、不安になる時もあったとか」
岡部「・・・女という生き物は、そういうものなのか」
鈴羽「超遠距離恋愛だしね。ま、いずれ二人は近所でも有名なおしどり夫婦になるんだけど」
岡部「・・・紅莉栖が下で待っている。5分後に降りてきてくれ」
鈴羽「りょうかーい。いっぱいハグしてあげなよ。にっひっひ~」
まったく、女という生き物は。
紅莉栖「あ、岡部!」
ラジ館から出ると、ベンチに座っていた紅莉栖が駆け寄ってきた。
岡部「すまないな。少々時間がかかっ・・・うおっ」
紅莉栖「もう!何分待ったと思ってるの!!」
岡部「そんなに、心配だったか」
紅莉栖「当たり前でしょ!突然岡部の悲鳴は聞こえるし、携帯には出ないし・・・すごく不安だったんだから・・・」
岡部「携帯?む、ラボに忘れてきたようだ」
紅莉栖「馬鹿・・・うぅっ、ひっく・・・岡部の、ばかぁ・・・」
しまった、泣かせてしまった。
―――この時代のオカリンおじさんの本当の気持ちが知りたかったんだって―――
岡部「ごめんな、紅莉栖。お前に心配をかけた上に泣かせてしまった。許してくれ」
ポロポロと涙を零す紅莉栖の華奢な体を力強く抱きしめ、耳元で囁く。
岡部「紅莉栖、俺はお前の事が大好きだ」
紅莉栖「ひっく・・・な、なに、いきなり・・・」
岡部「これが俺の本心だ。お前は、世界で一番大切な人だ」
紅莉栖「ど、どうしたの・・・?」
岡部「どうしても今、この気持ちを伝えたかった。もうお前に、不安な思いはさせないからな」
紅莉栖「・・・嬉しい。すごく嬉しいから許す。ぐすっ」
鈴羽「オカリンおじさ・・・おっと」
ラジ館から出ようとした鈴羽は、抱擁を交わす二人を見て思わず身体を引っ込めた。
鈴羽(成功したよ、紅莉栖さん)
紅莉栖「阿万音鈴羽、って・・・前に岡部が言ってた・・・?」
岡部「そう、ダルの娘だ。この世界では橋田鈴羽だが」
鈴羽「ちょッ、いきなりバラしちゃったよこの人!?」
岡部「大丈夫だ。紅莉栖にだけは全てを話している」
鈴羽「そうなの?じゃあいっか」
紅莉栖「・・・信じられない・・・」
岡部「まあ、信じられない方が正しいのだろうな」
紅莉栖「橋田、本当に結婚できたんだ・・・!」
鈴羽「あ、ひどい」
岡部「まあ、確かに一番信じられないのはそこかもしれん」
鈴羽「うわ、オカリンおじさんまで」
鈴羽「それにしても紅莉栖さんってこの頃から全然変わってなかったんだねー」
紅莉栖「え?何が?」
鈴羽「ルックスとか。2036年では40代だけど、全然そうは見えないよ」
紅莉栖「ほ、本当?」
鈴羽「うん。すっごい綺麗。芸能人みたいってよく言われてる。それに・・・おっと」
紅莉栖「岡部、鈴羽さんってすごく素敵な人ね!」
岡部「ああ、そうだな。よほど母親に似たのだろう」
鈴羽「あはは、父さん、言われ放題」
岡部「しかしここで立ち話もなんだ。ひとまずラボへ戻ろう」
鈴羽「お、行ってみたい!」
鈴羽「うっわー、ちっちゃー。これが最初のラボなんだ」
鈴羽はラボ内を大きく見渡す。
岡部「確かに7人が集まると少々窮屈だな。ま、自由に座ってくれ」
紅莉栖「コーヒー入れるわね。二人ともブラックでいいの?」
鈴羽「うん、ありがと。ふふふ」
岡部「なにが可笑しい」
鈴羽「いや、同じだなぁ、と思って」
岡部「何がだ?」
鈴羽「なんでもなーい♪」
岡部「?」
岡部「そういえば、お前がこの世界に来た理由を聞いてなかったな」
コーヒーを啜りながら、岡部は問う。
岡部「何しに来たのだ?」
鈴羽「え?遊びにだけど」
紅莉栖「・・・随分軽い理由なのね」
鈴羽「他にもあるよ?、買い物とか、写真撮ったりとか」
岡部「いやいや、それらを足しても十分軽い」
鈴羽「オカリンおじさんがいた世界線でも私は来たんでしょ?違う理由なの?」
岡部「支配社会を変えるため、更には第3次大戦を防ぐために来たのだぞ」
鈴羽「はー、嫌な未来だねー」
岡部「こいつは・・・」
鈴羽「あ、そうだ」
リュックから、カメラを取り出す。
鈴羽「二人の写真、撮らせてもらっていい?」
岡部「ああ、別に構わんが」
紅莉栖「それ、未来のデジカメ?」
鈴羽「うん、っていっても型遅れの安いやつだから、4500万画素しかないけどね」
岡部「・・・それ、絶対落としたり失くしたりするなよ」
鈴羽「よし、それじゃ、二人でソファーに並んでー、ほら、もっと寄り添って!キスしちゃってもいいんだよー?」
カシャ。
岡部「そういえば、寝泊りはどうするんだ?」
鈴羽「タイムマシンの中で寝るつもり。結構快適だよ?音楽だって聴けるしね」
岡部「・・・なぜそんな機能まで付いている」
鈴羽「私のリクエスト。移動中って暇だしさ」
岡部「・・・まあいい、だが、ラジ館にはどうやって入るのだ?さすがにもう開いていないぞ」
鈴羽「えっ?あっ・・・あー・・・あはは」
岡部「だろうと思った。今日はここに泊まれ」
鈴羽「いいの?助かるよ」
岡部「夜が明けたらタイムマシンをここの屋上へ移動させればいい。そうすれば自由に使える」
鈴羽「なるほど、さすがオカリンおじさん!」
紅莉栖「あーーっ!!!」
岡部「!?」
鈴羽「!?」
岡部「ど、どうした、いきなり」
紅莉栖「しまったー、12時過ぎてる・・・黒木さん、もう帰っちゃった・・・」
岡部「黒木って、フェイリス家の執事か?」
紅莉栖「そう、フェイリスさんも今日はいないらしいし・・・どうしよう」
岡部「やれやれ、お前も今日はここに泊まれ。俺は帰る」
紅莉栖「そう・・・するしかないかぁ・・・」
岡部「って・・・終電も終わっている!帰れないではないか!」
鈴羽「・・・」
紅莉栖「・・・」
岡部「・・・」
岡部「俺は開発室の方で寝る。で、一人はソファー、もう一人は地べたになってしまうが」
鈴羽「あ、私地面でいいよ。いつでもどこでも寝れるのが特技だし」
紅莉栖「いいの?私がソファー使っちゃっても」
鈴羽「全然オッケー。遠慮しなくていいよ」
紅莉栖「そう?ありがと」
岡部「ペラッペラになってしまった敷布団ならある。少しはマシになるだろう」
鈴羽「うん、上等上等。こんだけ厚けりゃ余裕で寝れるよ」
岡部「では電気を消すぞ。おやすみ」
電気を消すと、岡部は開発室に入り、カーテンを閉めた。
鈴羽「紳士だねぇ」
紅莉栖(素敵)
紅莉栖(・・・眠れない)
まだ昨日の出来事の余韻が残っているのだろう。30分経っても、寝付けない。
紅莉栖(岡部・・・)
―――お前は、俺にとって世界で一番大切な人だ―――
紅莉栖(うきゅー・・・)
この30分間で、何回岡部の名前を呼んだだろう。
―――もうお前に、不安な思いはさせないからな―――
紅莉栖(はーー・・・)
小さく身悶える。
鈴羽「紅莉栖さん、まだ起きてんの?」
紅莉栖「ひっ」
紅莉栖「す、鈴羽さん、起きてたの?」
鈴羽「ちょっと考え事。いつでも寝れるけど、いつまでも起きてられるのも特技なんだ」
紅莉栖「・・・ねえ、未来の岡部って、どんな感じ?」
鈴羽「うーん、簡単に言えば、今の姿を渋くした感じ」
紅莉栖「岡部を・・・渋く・・・」
鈴羽「今とあまり変わってないけど、ちょっとカッコよくなってるかな」
岡部が今以上にカッコよく、そして今以上に渋くなった姿を想像してみる。
紅莉栖「・・・はわー・・・」
鈴羽「おーい、紅莉栖さーん、帰ってこーい」
紅莉栖「あ・・・あと・・・もう一つ、聞いてもいい?」
鈴羽「何?」
紅莉栖「あの・・・岡部と私って・・・その・・・どういう関係になってるのかな・・・?」
鈴羽「うーん・・・内緒にしとく」
紅莉栖「えっ?」
鈴羽「なーいーしょ。どうなるかは、お楽しみ♪」
紅莉栖「・・・そうね、楽しみに待ってる」
鈴羽「一つだけヒントあげる。紅莉栖さんが思ってること、多分当たってると思うから、安心していいよ」
紅莉栖「そ、それって・・・」
鈴羽「ほら、もう寝なきゃ。おやすみなさーい」
紅莉栖(・・・眠れるかな・・・)
キリがいいので一時離脱。9時前には帰ってくる。
落ちてたらまた立てるお
まだ半分か・・・。
流石に許してやれよ
岡部「・・・ぐ・・・体中が痛い」
朝8時すぎ。
岡部「さすがに開発室で寝るのは無理があったか・・・ん?」
鈴羽の姿が無いかわりに、テーブルに1枚の書き置き。
「タイムマシン移動しに行ってきまーす! 鈴羽」
岡部「・・・ラジ館、まだ開いていないだろう・・・」
天真爛漫で、せっかちで、おっちょこちょい。
岡部「これも、母親似なのだろうか?」
未だ見ぬ、橋田至の妻となる女性。
人物像はなんとなく想像がついた。
紅莉栖「すー・・・すー・・・」
小さくうずくまる様に、身体を丸めて寝息を立てている。
岡部「ふっ・・・なんとも愛おしい姿だ」
タオルケットをかけなおす。
紅莉栖「・・・にへへ・・・岡部・・・好き・・・」
岡部(はぁうッ!)
寝言という黄金の矢は、いとも容易く岡部の心臓を貫いた!
俺はよろめきながらフラフラと後ずさる。
頭を冷やすため、外に出ることにした。
紅莉栖「・・・にへへ・・・」
紅莉栖「・・・ん・・・」
8時半。
紅莉栖「睡眠時間、4時間か・・・んんー・・・ん?」
誰も居ない。
紅莉栖「二人ともどこ行ったのかな」
テーブルに1枚の書き置き。
「タイムマシン移動しに行ってきまーす! 鈴羽」
紅莉栖「・・・ラジ館、まだ開いてないんじゃ・・・」
岡部「お、起きていたか」
岡部が、コンビニの袋を手に帰ってきた。
紅莉栖「おはよう。鈴羽さんと一緒だったの?」
岡部「いや、あいつは俺が起きた時点でもういなかった。何時にここを出たのだろうな」
紅莉栖「意外とせっかちなのね。鈴羽さん」
岡部「母親に似たのかもな。ほら、軽い朝食だ」
紅莉栖「あっ、ありがと。いいの?お金」
岡部「これくらいは出す。ま、あまり大きな出費はできないがな」
紅莉栖「ううん、十分」
10時。
ズシン―――
岡部「おっ!」
紅莉栖「きゃっ!」
紅莉栖は岡部の腕にしがみ付く。
岡部「ああ、鈴羽が移動してきたのか」
屋上へ上がると、昨日ラジ館の屋上で見た金属の塊が鎮座していた。
鈴羽「よっこいせ、っと」
岡部「動くな」
鈴羽「誰!? なーんてね」
紅莉栖「これが、タイムマシン・・・!」
岡部「お前は何時にラボを出たのだ」
鈴羽「7時くらいかな。善は急げって思ったんだけどさー」
岡部「開いてなかっただろう」
鈴羽「そうそう、そのことすっかり忘れてた。あはは。しょうがないから公園で寝てたよ」
岡部「相変わらずサバイバルな奴だ。ひとまず問題は解決したな。この後はどうするんだ?」
鈴羽「今日はその辺観光したり、写真撮ったり、買い物したりで忙しいかな」
岡部「そうか。気をつけろよ」
鈴羽「オッケー、行ってきまーす!夕方には帰ってくるよー!」
岡部「・・・朝から元気だな」
紅莉栖は、会話に参加することなくタイムマシンに夢中になっていた。
紅莉栖「へぇー・・・はぁー・・・」
鈴羽「さーて、と、まずはどこ行こうかな」
行きたい所リストと地図を手に、鈴羽は秋葉原を歩いていた。
鈴羽「ちょっと行きたいところ多すぎたかなー。でも移動にお金使いたくないし。 お、ドン・キホーテ」
ご存知、巨大ディスカウントショップの秋葉原店。
鈴羽「そうだ、折り畳み自転車とか、安いのないかな。・・・よし、8000円まで出せる!」
財布の中身と相談した後、意気揚々と店内へ入っていく。
鈴羽「お、あったあった。やっぱ安いなー。どーれにしようかなー・・・ん?」
自転車コーナーの隅に置かれた、在庫セール品に目が留まる。
鈴羽「キック、ボード?」
金属製の土台に、車輪が2つ、根元から長く延びたハンドル。
鈴羽「なんだろ、見たこと無いや」
展示してある見本品に、片足を乗せてみる。
スイーッ。
鈴羽「お?」
もう少し広いところに移動する。
スイーーーッ。
鈴羽「あははは!なにこれ面白い!いくら?」
”特価 3480円”
鈴羽「よっしゃ!これだ!」
ガーーーーーーーーッ
鈴羽「あははははははは!」
ガーーーーーーーーーーーーッ
鈴羽「あはははははははははははは!」
ガッ ガッ ガッ ガッ ガッ ガッ ガッ ガッ ガッ ガッ
鈴羽「あははははははは!どんどんスピード上がってくー!」
信号待ちのパトカーを追い越してしまい、注意された。
鈴羽「ごめんなさーい」
警察官「これ、モーターとか付いてないよね?どうやったらそんなスピード出るの・・・?」
岡部「あいつ、大丈夫だろうか」
紅莉栖「鈴羽さんのこと?大丈夫って、何が?」
岡部「はしゃいで、警察のお世話になったりしていないかと思ってな」
紅莉栖「まさか、子供じゃないんだから。・・・ふわーぁ・・・」
岡部「どうした。寝不足か?」
紅莉栖「ちょっとね、あまり眠れなくて」
岡部「仮眠でもとるか?俺がどければソファーに横になれる」
紅莉栖「ううん、まだ大丈夫。もうちょっと、岡部と話してたいから」
岡部「って、滞在期間は1ヶ月もあるではないか」
紅莉栖「1ヶ月”しか”一緒に居られないの。だから、悔いの無いように、ね」
岡部(くっ・・・この上目遣いでの微笑み・・・!)
鈴羽「ふー、危なかったー」
軽い注意だけで開放された鈴羽は、自重気味の速度でキックボードを漕いでいた。
だが余裕で自転車を追い越している。
鈴羽「生年月日が6年後だなんて、信じてもらえるわけないしねー。・・・おっ」
満開を過ぎ、はらはらと花びらを散らす桜。
カシャ。
鈴羽「いいねー。風流だねー。・・・そっか、なるほど」
鈴羽は何かに気付いたように、いたずらっぽくにひひと笑う。
鈴羽「よし、休憩終了!」
鈴羽「とうちゃーく!」
東京国際展示場。またの名を、東京ビッグサイト。
鈴羽「思ったより近かったなー。わー、海」
カシャ。
鈴羽「ここが、父さんと母さんの出会った場所なんだ」
自動販売機で買ったスポーツドリンクをぐいっと飲み干す。
鈴羽「今年の夏、だったかな。出会うのって」
15分ほど物思いに耽った後、地図を開く。
鈴羽「さーて、次は・・・お、ディズニーランド割と近いじゃん。ついでに行ってみよ」
紅莉栖が、手にしていた本をパサッと落とした。
紅莉栖「はっ・・・」
岡部「寝ていたな?」
紅莉栖「あ、ごめん、ちょっとうつらうつらしちゃった」
岡部「無理をするな。ソファーで寝るといい。今どけ・・・」
立ち上がろうとする岡部の腕を両手で掴み、肩にもたれかかるようにして目を瞑る。
紅莉栖「・・・このままで、いいよ」
岡部「フッ、デレの次は甘えん坊か」
岡部も目を瞑る。
岡部「俺も、考え事をしていたせいで寝不足だ」
紅莉栖「・・・すー・・・すー・・・」
麗らかな陽気の差し込むラボに、穏やかな空気が流れた。
鈴羽「たっだいまー!」
夕方、鈴羽が元気にラボへと帰ってきた。
紅莉栖「おかえりなさい」
岡部「一日中出掛けていたのに、よくそのテンションでいられるな」
鈴羽「体力にも自信あるからね。いひひー」
まゆり「ほえ?どちら様ー?」
岡部「ああ、こいつは阿万音鈴羽といって、えーと・・・俺の知り合い、だ。」
鈴羽(おおー、まゆりさんだ。天然っぽい所は変わってないなぁ)
まゆり「そうなんだー。はじめまして♪スズさんって呼んでもいいかなー?」
鈴羽「いいよ。よろしく、椎名まゆり!」
鈴羽(この時から私の事スズさんって呼ぶようになったのかな?)
岡部「えーと、鈴羽は1週間くらいこっちに滞在するらしくてな。俺の所に来たのだ」
まゆり「そうなんだー。じゃあスズさんもラボメンになっちゃいなよー」
鈴羽「へ?私も?」
まゆり「うんっ!ほら、このピンバッジ、8番目に「A」って入ってるでしょー?」
岡部「!!」
まゆり「これ、阿万音のAってことにしちゃえばー、正式なラボメンになれるよー」
鈴羽「あ、ああ・・・そうだね。じゃ、1週間だけ」
まゆり「やったー!よろしくね!えっへへー♪」
岡部「細かいことを気にしないから、説明が楽で助かる」ボソッ
鈴羽「未来でも、そうだよ」ボソッ
岡部「今日はどこに行ってたのだ?」
鈴羽「うん、ビッグサイトって所と、ディズニーランドの周り見てきた。これに乗って」
自慢げにキックボードを取り出す。
岡部「なっ!?そんなもので千葉まで行ったのか!」
鈴羽「これ、すっごいね!自転車より断然楽しいよ!なんでこれ、未来には無いのかな?」
岡部「ばっ、その話は・・・!」
まゆりに目をやる。
まゆり「んー?」
岡部「・・・気付いてなかったか。鈴羽、未来の話は気をつけろ」ボソッ
鈴羽「ゴメンゴメン。でも、何で無いんだろ?」
岡部「まあ・・・それ、危ないしな、転んだら」
ラボメン全員に、明日のラボへの出欠を確認する。
まゆり「・・・うん、それじゃーねー。・・・っと。フェリスちゃんとるか君も来れるってー」
岡部「全員参加か。すばらしい」
紅莉栖「第6回ラボメン全員ワイワイ会議ね」
まゆり「違うよ紅莉栖ちゃん、第1回、ラボメン全員ついに揃ったよ!ワイワイ会議、だよー」
岡部「・・・また増えるのか。そして長い」
まゆり「店長さんと綯ちゃんも来れるといいなー♪」
鈴羽「店長さん、綯ちゃんって、天王寺さんのこと?」
まゆり「あれ?スズさん知ってるの?もう会った?」
鈴羽「あ、いや、オカリ、岡部倫太郎から聞いたの」
受信メール
3/29 21:20
件名:
本文:
クーニャン、昨日はうちに戻らなかったニャ?
黒木が心配してたニャ。
送信メール
3/29 21:21
件名:
本文:
ごめんなさい。気付いたら12時過ぎちゃってて。
昨日はラボに泊まったの。
黒木さんには謝っといてもらえる?あとで私からも謝るけど。
受信メール
3/29 21:23
件名:
本文:
その辺は心配しなくても大丈夫ニャ。
それより、ラボにお泊り・・・ニャフフ♪
送信メール
3/29 21:25
件名:
本文:
違う!違う!!
岡部の知り合いが来てて、話に夢中になってたら12時過ぎてたってだけ!
明日、ちゃんと説明があると思うから。
受信メール
3/29 21:26
件名:
本文:
ニャーんだ、つまんないニャー。
凶真の知り合いならフェイリスの知り合いでもあるニャ。明日が楽しみニャ♪
送信メール
3/29 21:28
件名:
本文:
うん、とっても元気な子。多分すぐ仲良くなれると思うわ。
今日は11時過ぎには帰ると思うから、よろしく!
綯「まゆりお姉ちゃん、トゥットゥルー♪」
まゆり「綯ちゃん、トゥットゥルー♪あ、店長さんもよく来てくれましたー♪」
天王寺「綯が行きたいって言うからな。俺もたまにはお前らの遊びに付き合ってやるよ」
俺、紅莉栖、まゆり、ダル、萌郁、フェイリス、ルカ子、ミスターブラウン、綯。
9人もの人物がラボ内にひしめき合う。そして更にもう一人。
まゆり「それでは」
まゆりが一歩前に出る。
まゆり「第1回、ラボメン全員ついに揃ったよ!ワイワイ会議ー!」
ダル「なんでタイトル変わったん?」
まゆり「では本日の議題、オカリンからどうぞー」
岡部「うむ、実は1週間限定で、ラボメンが一人追加となる」
ざわ・・・ざわ・・・
岡部「俺の知り合いでな、遠くに住んでるんだが、観光で遊びに来てるんだ。鈴羽、入れ」
鈴羽「どうもー、こんちわー」
ワー!ワー!
鈴羽「始めまして、私は阿万音鈴羽。岡部倫太郎とは知り合いでさ、1週間だけ遊びに来てるんだ」
鈴羽(うっわー、当たり前だけど皆若いなー)
鈴羽「というわけで、短い間だけど、よろしく!」
ダル「おにゃのこのラボメンならいつでもおkなのだぜ!」
るか「は、はじめまして・・・!」
フェイリス「クーニャンが言ってた通り、明るくて元気そうな感じニャ」
萌郁「うふふ、かわいいじゃない」
綯「こんにちは!」
天王寺「また女が増えるのか。お前、女こましの才能あるんじゃねえか?」
岡部「・・・そう言われても仕方ない状況ですね」
天王寺「いいか、女は一人に絞っておけよ?苦労するぞ」
岡部「大丈夫です。俺には心に決めた人がいますから。な、紅莉栖」
紅莉栖「・・・」///
天王寺「のろけんな馬鹿」
紅莉栖「そうだ」
恒例のフリートーク中に、紅莉栖が閃く。
紅莉栖「皆でお花見行かない?ね、岡部」
岡部「花見か、そういえばそんな話もしていたな。皆はどうだ?」
各々が、賛成の反応を示す。
萌郁「私も行きたいけど、バイト中だしなぁ」
天王寺「構わん、行って来い。午後から休みにしといてやるからよ」
萌郁「あら、ありがとうございます」
岡部「よし、決まりだな。上野公園でいいだろう」
まゆり「それじゃ、買出しにレッツゴー♪」
紅莉栖「思ったほど込んでないわね」
岡部「ま、平日だしな。それでも結構いるほうだと思う」
買い物袋の中身を出す。
ジュース、お菓子、お菓子、お菓子、お菓子、から揚げ、バナナ。
岡部「こんなことだろうとは思っていた」
ダル「ま、僕ら学生だし、これが限界だお」
萌郁「私もあまり持ち合わせが無くって」
岡部「ま、仕方ないか」
天王寺「お、いたいた、岡部」
岡部「ミスターブラウン?来れないんじゃなかったんですか?」
天王寺「おお、だから代わりに差し入れだ。どうせ碌なもん買ってないだろ?」
まゆり「わー、お肉だー!」
天王寺「花見といったら焼肉だろう。ほれ、コンロと鉄板。肉も3kgありゃ足りるだろ」
岡部「いいんですか?こんなにしてもらって」
天王寺「大人をなめんなよ?ほれ、ビールもある」
萌郁「わーい♪」
岡部「・・・すいません、何から何までお世話になってしまって」
天王寺「構わねえよ。あの根暗バイトがあんだけ明るくなったのも、お前らのおかげだしな。そのかわり綯も参加させてくれ」
岡部「ええ、もちろんです」
かんぱーい!
やんや、やんやー!
萌郁「ねーぇ紅莉栖ちゃーん、岡部君とはどうなのかしらー?」
紅莉栖「えっ?な、何を急に・・・ってお酒臭い!」
萌郁「お酒臭い?当たり前じゃない、飲んでるんだもの」
岡部「こいつ、酒癖悪いのか・・・」
萌郁「ほーら、お姉さんに話してみー?ほらほらー、遠慮しないでー」
岡部「こら萌郁、俺の紅莉栖にちょっかいをかけるんじゃない」
紅莉栖(ホッ、助か・・・”俺の”って!!)
萌郁「んー?今”俺の”って言ったわね?それはどういうことよー?」
岡部「んっふっふ~」
萌郁「んっふっふ~♪」
全員「んっふっふ~♪」
紅莉栖(ぎゃー///)
岡部「んっふっふ~」
オカリンかわい過ぎワロタ
一同が賑わう中、ダルだけが浮かない表情を浮かべていた。
フェイリス「? ダルニャン?」
ダル「ん?なんか言った?」
フェイリス「なんか元気ないニャ。どうかしたニャ?」
ダル「あ、ああ・・・フェイリスたんの姿が眩しくてめまいがしただけだから心配ないのだぜ!(キリッ」
鈴羽(ジトー・・・)
ダル(阿万音・・・ピンバッジの”A”・・・???)
トイレから出ると、同じく女子トイレから鈴羽が出てきた。
岡部「まるで盛大なラボメン祝いになったかのようだな」
鈴羽「ほんと、なんか自分が偉くなったみたい」
鈴羽が嬉しそうに笑う。
岡部「まあ、確かに今日の主賓はお前だな」
鈴羽「この頃からみんな仲良かったんだね。なんか、嬉しくなったよ」
岡部「この頃から?未来でも交流はあるのか」
鈴羽「うん、家族ぐるみの付き合いって奴?最低でも年に一回は皆で集まってるみたいだよ。今日みたいにね」
岡部「・・・そうか。・・・うん、そうか」
鈴羽「お?オカリンおじさん、嬉しそうだね」
岡部「ま、まあな。我がラボメン達の結束力は素晴らしいものだ」
まゆり「さてさて、宴もたけざおなので」
るか「まゆりちゃん、たけなわ」
まゆり「終わりの一言をオカリンにもらいまーす」
岡部「皆、今日はよく来てくれた。まるで鈴羽のラボメン参加祝いのようになったが」
鈴羽「へへへ、どーも」
岡部「今日はこれにて解散だ。俺はとりあえずラボに戻る」
紅莉栖「あ、じゃあ、私も」
まゆり「そっかー、じゃあまゆしぃ達は帰るね」
フェイリス「お二人の時間を邪魔しちゃいけないニャ♪」
岡部「ああ、すまないな、気を遣わせてしまって」
ダル「もう恥らうことすらなくなった件」
まゆり「今日は楽しかったよー。それじゃみんな、トゥットゥルー♪」
俺、紅莉栖、鈴羽を残し、皆駅のほうへ向かう。
ダルが一人、引き返してきた。
ダル「・・・あ、あの、阿万音氏」
鈴羽「ん?何?と・・・橋田至」
ダル「・・・」
鈴羽「・・・?」
ダル「・・・いや、なんでもないお。アディオス!」
ダルは再び、駅のほうへ走っていく。
鈴羽(・・・父さん・・・まん丸だなぁ・・・)
綯「オカリンお兄さんたち、バイバーイ!」
道具を引き取りに来た天王寺のトラックに、綯が乗り込む。
岡部「さ、俺達も帰るか」
紅莉栖「うん」
鈴羽「私も、キックボード取りに行って、また出かけようかな」
岡部「・・・あれ、本来遠出するためのものではないぞ。せめて町内だ」
鈴羽「えー、楽しいのになー」
岡部「でも今は乗ってきていないのだな」
鈴羽「だって、あんな楽しいものをこんな人ごみに置いてたら、絶対盗まれちゃうじゃん!」
岡部「・・・そうか。大事にしろよ」
鈴羽「当ったり前じゃん!持って帰るよ!」
鈴羽「そんじゃ、行ってくるねー!」
鈴羽がキックボードに乗り、右足で大地を蹴る。
岡部「はやっ!」
紅莉栖「はやっ!」
岡部「・・・未来のあいつは、競輪かなんかやっているのか」
紅莉栖「25年後の人類の筋肉の発達・・・気になるわ」
これが、凡才と秀才の発想の違い。
紅莉栖「ふう、楽しかったけどなんか疲れちゃった」
岡部「確かに。ほら、コーヒー」
紅莉栖「ありがと。・・・ねえ、岡部」
岡部「ん?」
紅莉栖「・・・綯ちゃんって、可愛いね」
岡部「ふむ、確かにミスターブラウンの娘とは俄かに信じがたいな」
紅莉栖「・・・」
岡部「・・・」
紅莉栖「・・・」
岡部「・・・もし娘が出来るなら、お前に似て欲しいものだ」
紅莉栖「っ!・・・」
紅莉栖「なっ・・・何よ、突然!」//////
岡部「口調からなんとなく察しがついた」
紅莉栖「な・・・!何も言ってないけど・・・!」///
岡部「・・・いつになるのだろうな。新たな命を授かるのは」
紅莉栖「う、あ・・・あぅ・・・」///
岡部「残念ながら、俺は学生だ。今はまだお前を養うだけの経済力はない。」
紅莉栖の両肩を掴み、目を見つめる。
岡部「だが・・・いつになるかはわからないが、俺に余裕が出来たとき、必ずお前を、幸せにしてみせる」
紅莉栖「岡部・・・それって、もしかして・・・」
もうすでに紅莉栖の目には涙が溢れていた。
岡部「だから、その日まで、待っていてくれ。紅莉栖」
紅莉栖「・・・ねえ、岡部」
岡部「なんだ」
泣き腫らした目をこすり、岡部の身体にもたれかかる。
左腕で抱き寄せられる。
紅莉栖「・・・なんで、急に告白してくれたの?」
岡部「お前のことが好きだからだ、それ以外に理由はない」
紅莉栖「・・・欲を言えば、もっと別れ際に聞きたかった」
岡部「お前とは1ヶ月”しか”いられない。善は急げ、だ」
紅莉栖「なんか、どっかで聞いた言葉ね」
岡部「ん?そうだったか?」
紅莉栖「うふふ」
鈴羽「こんにちわー、まだやってます?」
天王寺「ん?さっきの姉ちゃんじゃねえか。鈴羽ちゃんっていったっけか?」
鈴羽「うん、あのね、私の知り合いが、このテレビの部品が欲しいって言ってるんだけどさ」
天王寺に、メモの書かれた紙を差し出す。
天王寺「んーと、なになに・・・KV-1310だと!いい趣味してやがる」
鈴羽「へぇ、いいテレビなの?」
天王寺「知らないのか?世界初のトリニトロンチューブだぞ?アパーチャーグリルが画期的でな、そりゃもうシャドーマス
鈴羽「い、いや、その説明はいいや、部品、ある?」
天王寺「おーし、ちょっと待ってろ、・・・あった!」
鈴羽「よかったー。おいくら?」
天王寺「いや、気分がいいから代金はいらねえ。持っていきな」
鈴羽「ホント?やった!助かるー」
黒木「牧瀬様、お帰りなさいませ」
紅莉栖「あ、ごめんなさい、昨日は連絡もしないで」
黒木「いいえ、フェイリス様から伺っております。お気になさらず」
フェイリス「あっ、クーニャン、おかえりニャー」
紅莉栖「ふう」
久々にパジャマに着替え、ベッドに寝転がる。
岡部の言葉がリフレインする。
フェイリス「クーニャーン、あっそびーにきーたニャーン♪」
危ない危ない、もう少しでまた泣きそうだった。
紅莉栖「うふふ、いらっしゃい」
フェイリス「・・・クーニャン、目が腫れてるニャ」
紅莉栖「えっ!?」
鏡を見る。
確かに若干、腫れが残っている気がするが、自分でも気付かないレベル。
紅莉栖(鋭い!この子鋭い!)
フェイリス「もしかして・・・凶真が泣かしたニャ?」
紅莉栖「え・・・えっと、まあ、そうなるのかな・・・?」
フェイリス「ニャニャニャ・・・凶真め、クーニャンを泣かせるとは!クーニャンが許してもフェイリスは許さないニャ!」
フェイリスは携帯を取り出し、電話をかけようとする。
紅莉栖「ま、待って、フェイリスさん!」
フェイリス「ダメニャ!終生の伴侶となるクーニャンを泣かせた罪は重いニャ!」
紅莉栖「い、いや、だから!」
紅莉栖「その・・・岡部に、プロポーズ、みたいなことされて・・・嬉しくて・・・」
フェイリス「ニャ・・・・・・!」
ゆっくりと、携帯を閉じる。
紅莉栖「・・・」
フェイリス「・・・」
紅莉栖「・・・」
フェイリス「・・・」
紅莉栖「・・・」///
留未穂「・・・それって、本当なの?」
紅莉栖(あれ、口調が・・・)
留未穂「・・・聞かせてもらっていい?凶真が何て言ったのか」
紅莉栖「そ、そんなはっきりとしたものじゃなくて、その、えっと・・・」
留未穂「大丈夫、落ち着いて」
大きく深呼吸。
紅莉栖「・・・いつか余裕が出来たら、必ずお前を幸せにする。だから、・・・その日まで、待っていてくれ、って・・・」
感情を抑えきれず、途中から涙声になってしまった。
紅莉栖「・・・やばい、泣きそう・・・」
留未穂「・・・よかったね。紅莉栖ちゃん。好きな人にそんなこと言われたら、泣いちゃうのも仕方ないよ」
紅莉栖「・・・うん。すごく・・・嬉しかった・・・」
留未穂「紅莉栖ちゃん、泣いてもいいんだよ?」
紅莉栖「・・・ありがと、大丈夫。フェイリスさん、優しいのね」
留未穂「なんかね、二人が幸せそうだと、私も嬉しいの。何でかな?うふふ」
紅莉栖「ぬぬぬ、岡部め~
るっくすが少しいいからって調子に乗りおって…
ぽんぽん痛くする呪いかけてやるんだから!」
留未穂「紅莉栖ちゃんは、なんて返事したの?」
紅莉栖「返事・・・か、そういえばしてなかった。先に感情に飲まれちゃって」
留未穂「ダメだよ。凶真が想いを伝えたんだから、紅莉栖ちゃんも伝えなきゃ」
―――私は、なんて返事したの?―――
―――最後まで、『好き』とは口にしてくれなかった―――
三日前の会話を思い出す。
紅莉栖「・・・うん、岡部に、電話する」
留未穂「わかった、私、外に出てる」
紅莉栖「ううん、フェイリスさんはここにいて。勇気が欲しい」
岡部「もしもし、どうかしたか?」
短いコールの後に聞こえる。愛しい人の声。
紅莉栖「あ、もしもし?ごめんね。もう寝てたりしてた?」
岡部「よもや、まだ12時前ではないか。まだ寝るつもりは無い」
紅莉栖「そっか、よかった。・・・」
岡部「・・・もしもし、紅莉栖?もしもし」
紅莉栖「・・・今日のプロポーズ、本当に嬉しかった」
岡部「あ、あれは、まだ正式なものではなくて、予行練習というか、プロポーズのプロポーズというかだな、その」
紅莉栖「ううん、岡部の気持ち、しっかり伝わった」
岡部「ま、まあ、それならいいんだ。予行練習とはいえ本心だからな」
紅莉栖「・・・まだ、返事、してなかったね」
岡部「返事って、俺は十分お前の気持ちを受け取ったつもりだが・・・」
紅莉栖「ちゃんとした答えは言ってなかったでしょ?お願い、言わせて。悔いは残したくないの」
岡部「・・・わかった。聞かせてくれ」
紅莉栖「・・・んん・・・」
フェイリスが紅莉栖の手を握り、”がんばって”と、声に出さずに応援する。
紅莉栖は小さく頷く。
紅莉栖「・・・岡部、倫太郎さん」
岡部「お、おお、フルネームか」
紅莉栖「・・・わ、私を・・・一生、幸せに、してください!」
紅莉栖「私、いつまでも待ってます。倫太郎さんが迎えに来てくれるまで、ずっと、待ってます」
紅莉栖「・・・ひっく、10年だって、20年だって待ちます、私の気持ちは、絶対に変わりません」
紅莉栖「・・・だから、必ず、ひっく、私を・・・幸せに、して、ください・・・!」
紅莉栖につられたのか、フェイリスも鼻をすする。
岡部「・・・ありがとう、紅莉栖」
紅莉栖「・・・これが、私の答えです」
岡部「ああ、しっかりと受け取った。今日はもう遅い。あまり夜更かしするなよ。おやすみ」
岡部「・・・フェイリスが差し向けたのだろう。ボウガンを持った恋のキューピッド、か。ピッタリの言葉だ」
ラボには一人。
皆の配慮に感謝しながら。
”あの日”の自分を思い。
岡部は、泣いた。
留未穂「よかった・・・本当によかった・・・」
紅莉栖「フェ、フェイリスさん、なんでそこまで」
電話の後、えぐえぐと涙を零し続けるフェイリスを、すっかり涙のひいている紅莉栖がなだめていた。
紅莉栖「人の為に泣いてくれるなんて、フェイリスさん、本当にいい娘なのね」
留未穂「だって二人はね、大変な思いをしてやっとここまで辿り着いたんだもん。嬉しくて・・・」
紅莉栖「・・・えっ、フェイリスさん、今、なんて・・・?」
留未穂「?・・・私、今なんか変なこと言った・・・?」
紅莉栖「・・・」
留未穂「・・・?」
紅莉栖「・・・?」
フェイリス「・・・まあいいニャ。さーて、湿っぽいのはここまで!クーニャン、お楽しみの尋問タイムニャ~♪」
紅莉栖(あ、口調、戻った・・・)
紅莉栖「・・・おじゃましまーす」
岡部「おお」
紅莉栖「今日も、岡部だけなんだ」
岡部「そうみたいだな。夜はダルが一人にしてほしいと言っていたが」
紅莉栖「そっか」
二人がけのソファー。定位置となった、岡部の左隣に腰掛ける。
岡部「・・・」
紅莉栖「・・・」
岡部「・・・」
紅莉栖「・・・恥ずかしいな」
紅莉栖「なんか、心がくすぐったいっていうか、変な感じ」
岡部「俺はすっきりしたぞ。俺の想いを全て告げたからな」
紅莉栖「・・・今でも、夢なんじゃないかって思っちゃう」
岡部「たとえこれが夢でも、醒める度に、俺は何度でもお前にプロポーズする」
紅莉栖「・・・じゃあ、夢だったらいいな。そうしたら、あの言葉、何回も言ってもらえるんだもの」
岡部「リハーサルは大事だからな。1度きりの本番の為には入念に練習を重ねるものだ」
紅莉栖「・・・じゃあ、もう一度、リハーサル」
岡部「紅莉栖、俺は必ず、お前を幸せにしてみせる」
案の定、私は泣いた。
岡部「お前、そんなに泣き虫だったか?」
紅莉栖「ぐすっ、 泣き虫じゃ、ないわよ」
岡部「現に泣いているではないか。説得力の欠片も無い」
紅莉栖「・・・誰のせいよ、誰の。まったく、すーぐ女の子を泣かせちゃう男の人っ―――!」
突然、唇を奪われる。
驚きのあまり見開かれた眼は、やがて、ゆっくりと閉じていく。
目尻に溜まった涙が零れそうになるところで、岡部の指がそれを優しく拭った。
岡部「・・・ん・・・これで、許してもらえないか?」
紅莉栖「・・・今回だけ、だからね」
地球と太陽との距離は、約1億5000万km。
”孤独の観測者”は、照れるかのように雲の後に身を隠した。
紅莉栖「もう、来日も今日で4日目かぁ」
紅莉栖は小さく溜息をつく。
岡部「なんだ、まだ4日・・・まさか、帰国が早まるとか、そういう話が・・・?」
紅莉栖「ううん、それは大丈夫。なんか、あっという間だなって思って」
岡部「脅かすな、まったく。俺のプロポーズがフラグになったのかと思ったではないか」
紅莉栖「ごめんごめん。・・・でも、こうやって二人でボーッとしてるだけなのに、時間が早く感じる」
岡部「愛んしたいんの相愛性理論、か」
紅莉栖「ぷふっ、誰がうまいこと言えと。 でも、恋愛に例えるって、素敵な話よね」
岡部「最初に相対性理論と恋愛を結びつかせた人は、何人に”誰がうまいことを言えと”と言われたのだろうな」
紅莉栖「くすくす。・・・去年岡部に告白されてから、会えない時にはすごく時間が長く感じるようになった」
岡部「俺もだ」
紅莉栖「でもね、岡部のこと考えてると、あっという間に休日が終わっちゃうの」
岡部「・・・俺もだ」
紅莉栖「そうだ、岡部、って呼び方、・・・変えてもいい?」
岡部「ん?ああ、好きにするといい。ちょっと前までは”岡部さん”だったしな」
紅莉栖「・・・倫くん」
岡部「りッ・・・なん、だと・・・?」
紅莉栖「・・・駄目、かな」
岡部「い、いや、お前がそうしたいなら構わんが・・・皆の前でそれはさすがにキツいな・・・」
紅莉栖「皆の前では岡部、二人っきりの時は倫くん。これならいい?」
岡部「・・・わかった、特別に許可しよう」
紅莉栖「倫くん」
岡部「・・・クリスティーナ」
紅莉栖「・・・それ、なんか、いや」
岡部「すまん」
紅莉栖「倫くんは私の事、なんて呼んでたの?」
岡部「・・・えーと、それはだな・・・」
紅莉栖「聞かせてほしい」
岡部「・・・怒らないと約束できるか?」
紅莉栖「? 怒らないわよ」
岡部「・・・助手、クリスティーナ、”蘇りし者”、セレセブ、実験大好きっ娘、・・・蒙古斑少女」
紅莉栖「・・・説明してもらえるかしら?」
岡部「だ、だから言ったのだ。怒るな、と」
紅莉栖「怒って、ないわよ?」ニッコリ
岡部「では俺の頬が抓られてる理由を教えてくれるか」
紅莉栖「教えてくれたお礼よ」
紅莉栖「大体はわかるけど、セレセブってなによセレセブって」
岡部「俺もよくわからん」
紅莉栖「それに、蒙古斑少女、って・・・無いわよ、そんなもの」
岡部「知っている」
紅莉栖「ふぇ!? な、なんで・・・?見た、の・・・?」
岡部「じ、事故だ!事故なんだあれは!見たくて見たわけではないからな!かといって見たくないわけではな・・・!」
紅莉栖「・・・もう、いいわよ」
必死に弁明する岡部を見て、紅莉栖は呆れて笑う。
”蘇りし者”。
これの意味については、考えるのをやめた。
紅莉栖「助手、か」
岡部「最初はよくそう呼んでいた。必死に否定する姿が面白くてな」
紅莉栖「なにそれひどい。 最初は、って?」
岡部「お前の存在が必要になった頃からだな、名前で呼ぶようになったのは」
紅莉栖「・・・この世界では、確か初対面の時から紅莉栖って呼んでくれたわね」
岡部「お前の存在が必要になった。あとはわかるな」
紅莉栖「・・・すぐそうやっていい話に持ってくんだから」
岡部「悪いか?」
紅莉栖「・・・悪くないけど。 でもクリスティーナは何故かテンプルにカチンと来るのよね」
岡部「確かにそれも必死に否定していた。途中で諦めたようだったが」
岡部「少し、横になりたい」
紅莉栖は、ソファーの下に移動する。
岡部「実は、昨日から一睡もしていなくてな」
紅莉栖「えっ、大丈夫なの?」
岡部「お前との電話のあと、一睡も出来なかった、というべきか」
紅莉栖「ごめん、私普通に寝ちゃった。・・・疲れちゃったみたいで」
岡部「謝ることもないだろう。睡眠欲は生物の摂理だ。そして俺もそろそろ限界だ」
紅莉栖「おやすみ、倫くん」
岡部「すまないな。来てもらったのに」
紅莉栖「ううん、一緒にいれるだけで、いい」
岡部の腹部に手を当てる。
”紅莉栖が生きている証拠”を優しくなでた。
紅莉栖「・・・痛かったよね」
岡部「そんな過去の傷の痛みなど、もう憶えていない」
紅莉栖「・・・本当によかった、無事で」
またも目が霞み、声がつまる。
岡部「俺だってお前を気絶させてしまった。痛かっただろう。すまない」
紅莉栖「それこそ、憶えてないわよ」
岡部の胸に右耳を当てる。
”岡部が生きている証拠”が、一定のリズムを刻み続ける。
紅莉栖「・・・倫くん、生きてるんだね・・・」
岡部「・・・ん・・・」
目を覚ますと、残照がラボ内を橙色に染めていた。
岡部「何時だ・・・4時半か、と」
起き上がろうとして上げかけた右手に、紅莉栖の左手がつながれている。
紅莉栖「すー・・・すー・・・」
起こさぬようにゆっくり手を解き、そっと紅莉栖を抱き上げる。
岡部「ふんッ・・・ぬぬぬ・・・うぉぉ・・・!」
なんとか、紅莉栖を起こさぬままソファーに寝せることに成功した。
岡部「はぁ、はぁ・・・」
両手が震える。よもや全身全霊をかけなければ紅莉栖一人も抱えられないとは。
岡部「・・・もう少し、体力をつけるべきか」
紅莉栖「すー・・・すー・・・」
紅莉栖の安らかな寝顔に、つい頬が緩む。
飛び級で大学を卒業後、17歳で同大学の研究所に所属。
その頭脳明晰さと若さから、周囲からの嫉妬の眼差しを浴びていたであろうことは容易に想像がつく。
それ故に、常に無表情、感情を表に出さない性格になったのだろう。
だが、今の紅莉栖は。
会話中には優しい微笑を見せる。
綺麗なものを見れば、歳相応の無邪気さを発揮する。
ちょっとからかえば、ムキになって言い返してくる。
そして、俺の事を想って、涙を見せてくれる。
本当の幸せ者は、俺なのかもしれない。
お前が今後、ずっと笑顔でいられるように、俺は努力する。
鈴羽「たっだいまー!」
そして、鈴羽の帰宅によって、全てを台無しにされた。
紅莉栖「っ!・・・ん・・・?」
突然の物音に、紅莉栖は驚いて目を覚ました。
岡部「・・・お帰り、鈴羽」
鈴羽「あれ?オカリンおじさん、なんか怒ってんの?」
岡部「別に」
紅莉栖「あれ、私、いつの間にソファーに・・・?」
鈴羽「あ、寝てたの?ゴメンゴメン」
紅莉栖「え?いや・・・???」
寝ぼけ眼で、イマイチ状況が飲み込めていない。
鈴羽「スカイツリーって、この頃はまだ建造中だったんだね」
岡部「そうか、お前からしたら慣れ親しんだモニュメントなのか」
岡部「一体どこまで行っていたのだ。昨日は帰ってないだろう?」
鈴羽「うん、空港とか見てきたよ」
岡部「羽田か、相変わらず遠くまで行ったのだな」
鈴羽「え?成田だけど」
岡部「お前、馬鹿だろ」
鈴羽「さすがにちょっと遠かったかなー。キックボードでも4時間くらいかかったし」
岡部「いや、どっちにしろその速さはおかしい」
鈴羽「そうだ、はい、お土産」
岡部「・・・なぜ東京都民に東京ばな奈を買ってくるのだ」
鈴羽「私が食べたかったから!」
紅莉栖「あ、おいしそう」
岡部「さすがに今日はもう出かけないだろう」
鈴羽「んにゃ?もうちょいしたら出かけるけど」
岡部「お前の体には永久機関でも仕込まれているのか」
紅莉栖「何か急いでるの?もしかして、未来に帰ったらもう二度と過去には来れない、とか・・・?」
鈴羽「いや、来ようと思えばいつでも来れるよ?」
岡部「・・・ドラマも何もないな」
鈴羽「でも春休み終わっちゃうから、今みたいな長期滞在はしばらく無理かな」
岡部「学生だったのか」
鈴羽「まーねー。今度大学2年になるよ」
岡部「俺と同じか。春休みが終わるということは、日付は同期しているのか?」
鈴羽「うん、選べるのは”何年のどこに行くか”ってだけ。それも自分の生まれる前じゃないといけないんだ」
岡部「タイムパラドックスの危険性を下げるためにはやむなしか」
岡部「そうだ、屋上のあれ、そのうちまたラジ館に移動しておけよ」
鈴羽「? なんで?」
岡部「お前はラボで皆に見送られて、『バイバイ!』と屋上に上がっていくのか?」
鈴羽「あ・・・ああー」
紅莉栖「シュールね」
鈴羽「面倒だなー。明日にしよ」
岡部「面倒・・・って、ここここピッピッ じゃすまないのか?」
鈴羽「一度違う年代に飛んで、また2011年に戻ってこなきゃいけないの。同年じゃエラー出ちゃってさ」
岡部「ま、時間のあるうちにするといい。いつ帰るんだ?」
鈴羽「2日のお昼には帰るかな。3日は父さん用事あるって言ってたし」
地面か…
フンッ!
うわ、なんだこれ!熱っ!
温泉!?マグマ温泉だ!
鈴羽「そんじゃ、行ってくるねー!」
30分ほどの休息ののち、鈴羽はキックボードで駆けていった。
岡部「・・・相変わらず恐ろしい速さだ」
♪
メールだ。
受信メール
3/30 17:06
件名:一斉送信ニャ!
本文:
ラボメンの皆は、4月3日はなんの日か知ってるニャ?
ニャんと、フェイリス・ニャンニャンの18歳の誕生日なのニャ!
というわけで、うちで誕生日パーティーを開催したいんニャけど、皆は来てくれるかニャ?
受信メール
3/30 17:06
件名:おめでとう♪
本文:
フェイリスちゃんもついに大人の仲間入りね。
ラッキーなことにその日はお休みだから、必ず参加しまーす♪
お酒、用意しといてね(*^▽^*)
萌郁
受信メール
3/30 17:07
件名:キタ━(゚∀゚)━!!!!!
本文:
1万年と2千年前から知ってたお!謹んで参加を表明させていただきます!
スーツを着るなんて、大学の入学式以来なのだぜ・・・!
受信メール
3/30 17:07
件名:おめでとー!
本文:
もちろんだよー♪
先月同い年になったのに、またお姉さんになるねー♪
受信メール
3/30 17:08
件名:おめでと!
本文:
その日は私も準備のお手伝いするわね。お世話になってるお礼!
岡部に会いに行けないのは残念だけどw
受信メール
3/30 17:13
件名:Re:一斉送信ニャ!
本文:
無論参加する。
紅莉栖と同い年になるのか。そうは見えないな。
鈴羽は2日に帰ってしまうので参加できないと思われる。
受信メール
3/30 17:35
件名:おめでとうございます
本文:
すいません、家のお手伝いで返事が遅れてしまいました・・・。
もちろん参加いたします。
フェイリス「仲間って、素敵ニャ♪」
日付も変わって間もなく、誰もいないラボに一人の男が現れる。
ダル「・・・・・・」
電気もつけず、奥の開発室へ足を運び、カーテンを閉めて電気スタンドの電源を入れた。
ダル「・・・・・・」
背負ったリュックを降ろすと、中から1つの袋を取り出し、微笑む。
それは、誰にも見せたことのない、慈悲に包まれた、優しい微笑み。
ダル「新作エロゲ、ゲットだZE!!!!」
萌郁は安心の返信速度フイタw
ダル「いやぁー、深夜に並ぶっていうのも、いいものですねぇ~」
かの映画評論家の口調でひとりごちながら、CDドライブにディスクをセットする。
1時間後。
それは、誰にも見せたことのない、慈悲に包まれた、優しい微笑み。
その時、
ラボの階段を軽快に駆け上がる音がした。
ダル「誰ぞ?」
特に慌てる様子もなく、玄関の方へ向かう。
ダル「オカリン?ンモー、一人にしてって言ったのにーィ。 って誰もいない」
玄関のドアを開けると、上からなにやら物音が聞こえた。
ダル「屋上・・・か?」
恐る恐る、階段を上がる。
ダル「誰ぞ・・・こんな時間に・・・?」
屋上のドアを前に、大きく深呼吸をした。
ドアを静かに開ける。
ダル「・・・?」
見覚えのない、金属の塊。
ゆっくりと、慎重に近づく。
ダル「・・・なん、ぞ・・・これ・・・?・・・FG、204?FG・・・ッッ!!!」
耐え難い眩暈に襲われ、ダルは小さく呻きながらその場にしゃがみ込んだ。
鈴羽「ん?」
外から聞こえた小さな物音に、デジタルカメラの画像をチェックしていた鈴羽は顔を上げた。
”FG204”のドアが開き、タラップが降りる。
鈴羽「誰?オカリンおじさん?紅莉栖さん?」
しかし、人影も気配も感じられない。
鈴羽「・・・?ドアの閉まる音が聞こえた気がしたけど・・・」
屋上から身を乗り出し、下を見下ろす。
鈴羽「電気も点いてないし・・・」
3月末の涼しい風が、頬をやさしく撫でる。
鈴羽「・・・?? ま、いっか」
「ひとり2コまで! 鈴羽」
鈴羽の空港土産の残り個数が、残り7個になっている。
岡部「ダルめ、3つ食ったな」
紅莉栖「日本の湿度って嫌ね。髪がベタベタする」
駅前で偶然に出会い、二人は一緒にラボへやってきた。
岡部「雨、降りそうだな」
紅莉栖「せっかくデートなのに」
岡部「まあ、どっちにしろフェイリスへのプレゼントを買いに行かなければならないな」
紅莉栖「そっか。時間ないものね」
岡部「ところで何を買ったらいいのだ?月並みに香水とかがいいのだろうか?」
紅莉栖「だーめ。飲食業に携わる人に香水なんて」
岡部「むう・・・困ったな」
サァァァァァァァ・・・
紅莉栖「あーあ、降ってきちゃった」
小粒の雨が、アスファルトに染み込んでいく。
紅莉栖「もう、ついてないなぁ」
岡部(雨・・・か)
岡部「紅莉栖、ソーイングセットは持ち歩いているか?」
紅莉栖「ソーイングセット?ええ、たまに。今日は無いけど、どうしたの?」
岡部「白い糸は切らさずに入れておくんだぞ」
紅莉栖「? うん」
紅莉栖「髪、ちょこっとだけクセっ毛だから雨は嫌なの。ほら、先が広がっちゃって」
紅莉栖の髪を撫でる。
岡部「悪くないぞ。これはこれで」
サァァァァァァァ・・・
紅莉栖「この雨で、桜も大分散っちゃうのかな」
岡部「だろうな。もう散り頃だしな」
紅莉栖「そっか・・・残念」
岡部「また見に行こう。だから、来年も日本に来てくれ」
紅莉栖「・・・うん。絶対来る」
岡部「さて、そろそろ出かけよう」
紅莉栖「あれ?倫くん、その服」
岡部が羽織ろうとしていたグレーのジャケットに目が留まる。
岡部「ん?ああ、多少のオシャレだ。デートだものな」
紅莉栖「あ、そうなんだ。てっきり白衣で行くのかと・・・」
岡部「さすがの俺でもそれはない」
紅莉栖「・・・」
岡部「どうした?変か?それとも白衣の方がよかったりするのか?」
紅莉栖「すごく・・・かっこいいです」///
岡部「そうか、よかった。この日のために買ったようなものだからな」
人間の性欲のピークは19歳だそうな
相思相愛の男女が一つ屋根のした寝泊まりして何もないなんとことは…
,、 '";ィ'
________ /::::::/l:l
─- 、::::;;;;;;;;;`゙゙''‐ 、 __,,,,......,,,,_/:::::::::/: !|
. : : : : : : `゙'ヽ、:::゙ヾ´::::::::::::::::::::::`゙゙゙'''‐'、. l|
.ヽ:゙ヽ; : : : : : :ノ:::::::::::::::::::::;;、-、、゙::: rー-:'、 / }¬、
. \::゙、: : : :./::::::::::::::;、-''":::::::::: ,...,:::,::., :::':、 _,,/,, ,、.,/ }
ヽ:ヽ、 /::::::::::::::::::::::::: _ `゙''‐''" __,,',,,,___ /~ ヾ::::ツ,、-/
`ヽ、:::::::::;;;、、--‐‐'''''',,iニ- _| 、-l、,},,  ̄""'''¬-, ' ''‐-、 .,ノ'゙,i';;;;ツ
_,,,、-‐l'''"´:::::::' ,、-'" ,.X,_,,、-v'"''゙''yr-ヽ / ゙゙'ヽ、, ,.' j゙,,, ´ 7
,、-''" .l:::::::::::;、-''" ,.-' ゙、""ヾ'r-;;:l 冫、 ヽ、 / __,,.ノ:::::ヽ. / またまたご冗談を
l;、-'゙: ,/ ゞ=‐'"~゙゙') ./. \ / '''"/::::;:::;r-''‐ヽ
,、‐゙ ヽ:::::..,.r'゙ ,,. ,r/ ./ ヽ. ,' '、ノ''" ノ
,、‐'゙ ン;"::::::. "´ '゙ ´ / ゙、 ,' /
' //::::::::: {. V /
/ ./::::::::::::: ', / /
. / /:::::::::::::::::. ',. / ,.、 /
岡部「ぐ・・・高い」
雑貨屋。
これはいいんじゃないか?と手に取る物全てに、同じリアクションをとってしまう。
岡部「予算は1000円、何を買えばいいのだ・・・!」
紅莉栖「倫くん、まだ決まらないの?私買っちゃったけど」
岡部「もうなにもわからん。数字がゲシュタルト崩壊中だ」
紅莉栖「彼女をイメージして、似合いそうなものを選んだら?」
岡部「フェイリス・・・メイド、ピンク、猫、すk・・・猫だな」
猫の形をした、陶器製のアロマキャンドル立てを発見。
岡部「998円か。すばらしい」
紅莉栖「うん、いいと思う」
紅莉栖「どこか喫茶店でも行きたいわね」
岡部「そうだな。ならばいい所がある」
メイクイーン・ニャン×2
紅莉栖「うわぁ」
岡部「初来店時の衝撃をまだ引きずっているのか?」
紅莉栖「軽いトラウマ、かな」
岡部「だがフェイリスとも親しくなった今なら大丈夫だろう」
紅莉栖「・・・そうね、いざ、入店!」
岡部「落ち着け」
フェイリス「お帰りニャさいませ、ごしゅじ、って、凶真!」
岡部「お勤めご苦労」
フェイリス「おやおや、クーニャンも一緒ニャ。お手手を繋いでデートだったニャ?」
紅莉栖「う、うん、そんなところ」
フェイリス「凶真、白衣じゃないから一瞬気付かなかったニャ。その格好も男前ニャ」
岡部「割と高評価だな」
フェイリス「クーニャン、もしや惚れ直したニャー?」
紅莉栖「ふぇ!?あ・・・うん」
フェイリス「ニャフフフ、ラブラブカップル2名さま、ご案内いたしますニャー♪」
紅莉栖「・・・」///
紅莉栖「・・・」///
岡部「出鼻をくじかれたな」
まゆり「お待たせしましたニャ~。アイスコーヒーですニャ~」
岡部「まゆりもバイト中だったのか」
まゆり「トゥットゥルー♪オカリン、今日は白衣じゃないんだねー。普通の格好してるの久々に見た気がするー」
岡部「あ、ああ・・・」
まゆり「オカリンはブラックでしょ、紅莉栖ちゃんはー?」
紅莉栖「え、えっと、ガムシロップだけ」
まゆりは手馴れた手つきでガムシロップをコーヒーに入れ、天使のような微笑で、目を見てかき混ぜる!
客たちの心の声
(で、で、出たァーーーッ!!!あれはマユシィ・ニャンニャン必殺「目を見て混ぜ混ぜ ”エンジェリック・スマイル”」!
”天使に最も近い女性”との呼び声高いマユシィたんの微笑みは、たとえタングステンであろうと一瞬で融解!そして蒸発!!
しかも今日の微笑みは当社比2倍! ま、まさか生きている内にこの目であの秘技が見られるなんて!
というかあのお客さんの女の子も、相当レベルが高い!! 一体今日のメイクイーンは何が起こっているんだァーーーッ!!!
だがリア充は爆発しろ!!!)
紅莉栖「」
まゆり「今日はデートだったのー?仲良しさんだねー♪」
岡部「そんなところだ、バイト、頑張れよ」
会計をすませ、外に出る。
ドアを開けると、そこには口を開けて放心状態で壁にもたれかかる天才少女がいた。
岡部「紅莉栖。・・・紅莉栖-。紅ー莉ー栖ー」
紅莉栖「・・・はっ」
岡部「大丈夫か?前作からほとんどコピペになってしまったぞ」
紅莉栖「あ、ああ、ごめんなさい。ちょっとどぎまぎしちゃって」
岡部「久々のメイド喫茶がメイクイーン。しかも相手がまゆりとあらばやむなし、か」
紅莉栖「倫くんは、あの笑顔、何とも思わないの?」
岡部「まゆりとも長い付き合いだからな、抗体が生まれた」
フェイリスの技を体得したのか…
ブラウン管工房の前を通り過ぎ、ラボに入ろうとしたその時。
ガラッ!
萌郁「紅莉栖ちゃん!?」
紅莉栖「ひわぁッ!?も、萌郁さん!?」
萌郁「誰!?そのひ・・・なんだ、岡部君だったの」
岡部「どうしたんだ、血相変えて」
萌郁「いや、見たことない男の人と歩いてるから、まさか!って思っちゃって」
岡部「・・・」
紅莉栖「わ、私は浮気なんて絶対・・・!」
萌郁「するわけないわよね。ごめんなさい。邪魔しちゃった」
萌郁は苦笑いを浮かべながら小さく手を振り、店内へ戻っていった。
岡部「・・・」
紅莉栖「ぜ、絶対しないからね!神に誓ってもいいから!」
紅莉栖「上着ちょっと濡れちゃった。ハンガー借りていい?」
岡部「ああ、どこかにあるはずだ」
鈴羽「こんちわーっす。どっか出かけてたの?」
岡部「そういうお前は出かけてなかったのか」
鈴羽「雨だからね、今日は休息日。ところで今日は白衣じゃないんだ」
岡部「だあああああああもう!皆してその反応か!岡部=白衣か!じゃあ白衣を脱いだ俺は一体誰なのだ!?」
鈴羽「なんかあったの?」
紅莉栖「ちょっとね」
岡部「今日はもう白衣は着ぬ!さあもうこれで俺が誰だかわかるまい!」
鈴羽「そういや昨日の夜、屋上に来た?」
岡部「いや、10時頃帰ったが」
紅莉栖「り、岡部と一緒にラボを出たわよ」
鈴羽「ふーん?ま、いっか。さてそろそろ戻りますか」
岡部「別にここにいてもいいのだぞ」
鈴羽「二人の邪魔しちゃ悪いっしょ。そんじゃーねー」
バタン。
岡部「・・・」
紅莉栖「・・・」
岡部「・・・なぜ、気まずい空気が流れているのだ?」
紅莉栖「・・・さあ?」
送信メール
4/1 15:40
件名:全ラボメンへ告ぐ
本文:
明日、昼頃に鈴羽が帰る。
見送りに来れる人は返事をくれ。
受信メール
4/1 15:40
件名:了解(^▽^)d
本文:
もう帰っちゃうんだ。もっとお話ししてみたかったな。
明日は晴れるといいわね!
萌郁
受信メール
4/1 15:42
件名:りょうかーい!
本文:
スズさんもう帰っちゃうんだ。早いねー。
今度はいつ来れるのかなー?
安心のノータイムレスポンス
流石指圧師
受信メール
4/1 15:43
件名:ニャニャ・・・!
本文:
その時間、バイト中なのニャ。
お昼休みにちょこっとだけなら抜け出せばなんとかなりそうニャ。
受信メール
4/1 15:44
件名:おk
本文:
そっか、もう帰っちゃうんだね。
でも、未来の話色々聞けて面白かった。また来て欲しいね。
そのあと、また出かけない?デートやり直し!
受信メール
4/1 15:47
件名:了解いたしました
本文:
了解いたしました。お昼前にはお伺いいたします。
岡部「ルカ子、サラリーマンみたいだな」
_|\ _
/ u 。 `ー、___ ヽ
/ ゚ 。 ⌒ 。 ゚ u / つ
/u ゚ (●) u ゚`ヽ。i わ
| 。 ゚,r -(、_, )(●) / ぁぁ
il ! //「エェェ、 ) ゚ u/ あぁ
・ 。 || i rヽ ir- r 、//。゚/ i ああ
\. || l ヽ`ニ' ィ―' il | i ぁあ
゚ヽ | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | ダンッ
・/ヽ| 見ているぞ |て ─ ・。 :
/ .ノ|________.|( \ ゚ 。
 ̄。゚ ⌒)/⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒ヽ\  ̄ 。
まゆり「第12回、ラボメンいっぱい会議-!」
まゆりの指揮で会議が始まる。
まゆり「今日は、スズさんが帰ってしまう日なのです」
鈴羽「いやいや、どーも、見送りにこんなに集まってくれちゃって」
まゆり「今度はいつ来れるのー?」
鈴羽「そうだなー、夏休みになったらまた来ようかな。決まったら岡部倫太郎に連絡するよ」
岡部(未来からどうやって連絡をとる気だ)
紅莉栖「元気でね。皆によろしく」
鈴羽「うん、伝えとく。ところで橋田至は来てないんだ」
フェイリス「最近メイクイーンにも顔を見せてないニャン」
岡部(まったく、自分の娘の見送りにも来ないとは)
鈴羽「そうだ、最期に集合写真撮ろうよ!」
誘導されるがままに、岡部と紅莉栖が恥じらいながらもセンターで腕を組む。
るかはさりげなく岡部の肩に手をかける。
萌郁は紅莉栖の横で、微笑みながら小さくピースサイン。
まゆりとフェイリスが前でしゃがみ、手でハートマークを作って上に上げる。
鈴羽「お、いいねー。じゃ、撮るよー」
岡部「お前は入らなくていいのか?」
鈴羽「いいのいいの。撮るほうが好きだから」
カシャ。
鈴羽「楽しかったなー。また来よっと」
皆に見送られ、ラジ館へとキックボードを駆る。
鈴羽「意外とお金余ったな。記念にこれもう一台買っちゃおうかな」
2台のキックボードを手に、ラジ館の屋上へと上がり、ドアを開ける。
鈴羽「♪~」
鼻歌交じりにタイムマシンのドアを開けようとボタンに手をかけた、その時。
「鈴羽」
鈴羽「どおォッ!!ビックリしたァ!!!」
「おどかしてすまん」
鈴羽「とう、橋田至!?ここでなにしてんの!?」
ダル「鈴羽はここに来るって思ってた。これに乗るために」
鈴羽「あ、ヤバ・・・!えと、これは、その」
ダル「タイムマシン、ファイナルアンサー?」
鈴羽「・・・ファイナルアンサー」
ダル「一昨日の夜、ラボの屋上でこいつを見たとき、わけがわからない幻覚を見たんだお」
鈴羽「あ、あれ、橋田至だったんだ」
ダル「父さん、と呼んでもいいのだぜ」
鈴羽「!! ・・・岡部倫太郎から聞いたの?」
ダル「・・・やっぱそうか、あの幻覚は、夢じゃなかったんだ」
鈴羽「幻覚って?」
ダル「・・・僕と鈴羽は、前にも一度会ってると思われ」
鈴羽「・・・それ、マジ?」
最初は軽い気持ちでダルの話を聞いていたが、聞き終わる頃にはすっかり座り込んでいた。
ダル「ぼんやりとしかわかんないけどガチ。脳内ソースでスマソ」
鈴羽「未来には戻れないタイムマシンか・・・この時代にいれるなら楽しいかもね」
ダル「あの時の鈴羽も同じようなことを言っていた希ガス、ところで鈴羽、何歳?」
鈴羽「今度大学2年になるから、今の父さんと同い年だよ」
ダル「そうか・・・つまり僕は、そう遠くない将来に僕にお嫁さァんが出来る、と?」
鈴羽「うん。ラブラブでこっちが恥ずかしいくらい」
ダル「みwwwなwwwぎwwwっwwwてwwwきwwwたwwwwww」
鈴羽「うわ、リアクションが父さんと一緒。って当たり前か」
ダル「僕のお嫁さァんになる人って、かわいい? ロリ巨乳キボンヌ」
鈴羽「内緒にしとく。でも、声は私とそっくりって言われるかな」
ダル「mjd?それってもしかして世界一かわいいんじゃね?」
'´  ̄  ̄ ` ヽ、
、__/ : : : : : )ノ: :ヾ: : : \
. `7: (: : : : : : : : : : : : :} :)ヽ
i::小● ● ノリル: ; j
从l⊃ 、_,、_, ⊂⊃从ッ》 ビックリしたァ!!!
/⌒ヽ、|ヘ ゝ._) j /⌒i
\ 〃::(y;)>,、 __, イァ/、__/
.ルリゞ::::::((:::::::ルリゞ::::/
'´  ̄  ̄ ` ヽ、
、__/ : : : : : )ノ: :ヾ: : : \
. `7: (: : : : : : : : : : : : :} :)ヽ
{: : ト; ;ハ,リノ;Y川 } : ノ: : i|
i::小● ● ノリル: ; j
从l⊃ 、_,、_, ⊂⊃从ッ》 <える・ぷさい・こんぐるぅ~♪
/⌒ヽ、|ヘ ゝ._) j /⌒i
\ 〃::(y;)>,、 __, イァ/、__/
.ルリゞ::::::((:::::::ルリゞ::::/
鈴羽「あ、そろそろ行かなきゃ。むこうでもいろいろ用事があるからね」
ダル「あ、最期に一つ聞いてよかですか?」
鈴羽「何?答えられる範囲なら」
ダル「オカリンと牧瀬氏って・・・その・・・結婚するん?」
鈴羽「うん、未来でもラブラブだよ。今と同じくらいね」
ダル「そっか、・・・よかった」
鈴羽(父さん、仲間思いだったんだね。なんか、嬉しいな)
ダル「オカリンも、好きな人と幸せになって欲しかったから・・・」
鈴羽(・・・ヤバ、この流れ、ちょっと泣きそう・・・)
ダル「・・・だって僕だけ幸せになったらオカリンに絶対逆恨みされる品wwwwwwwwwwwwwww」
鈴羽「・・・」
>>587
最後のは照れ隠しに2000ガバス
鈴羽「それじゃ。またそのうち来るよ。じゃあね、父さん!」
ダル「しっかり勉強するのだぜ!」
鈴羽「アハハ、父さんもねー」
鈴羽を乗せたタイムマシンは、小さな淡い光の球を漂わせた後、空気に溶けて消えた。
ダル「・・・同い年の娘、か。それなんてエロゲ?」
”オカリンも、好きな人と幸せになって欲しかったから・・・”
なぜこう思ったのかは、自分でもわからない。
だが、この気持ちに、偽りはなかった。
ダル「・・・さて、ラボに行こうかね、と」
>>595
本音に世界線変動率1%
同い年の娘と聞くとオーガスを思い出す
ダル「スラマッパギー」
紅莉栖「あ、橋田。久々に見た気がする」
岡部「今頃来たのか。鈴羽はもう帰ってしまったぞ」
ダル「さっきそこでたまたま会ったお。ちゃんと挨拶したからおk」
岡部「そうか、それならいい」
紅莉栖「ほら、倫く、岡部、動かないで。うーん、こっちの方が似合うかな・・・」
岡部の持ってきた私服をコーディネートする紅莉栖。彼女はもはや恥じらいも戸惑いも見せない。
こんなやりとりを見せ付けられても、もう僕に怒りは沸かない。
一人の少女が存在することによって、僕の未来は約束されたのだから。
ダル「・・・デートかお?」
岡部「う、うむ、そんなところだ。天気もいいのでな」
だからこそ、僕は言う。声を大にして言う。
ダル「リア充爆発しろ!!!!!!!1!氏ね!!!!!!!!!11」
―――ねえ倫くん、この子の名前、決まった?―――
―――うーむ、あれこれ悩みすぎて困っている―――
―――もう。予定日まで1ヶ月切ったわよ―――
―――これ以上焦らせるな。変な名前を付けても知らんぞ―――
―――くすくす。決まらないようだったら、私にもつけたい名前があるんだけど―――
―――・・・そうだな。ここはお前のセンスに任せたほうがいい気がする。で、どんな名前だ?―――
―――うん、私の、一番の思い出にちなんだ名前―――
20年以上前に建造されたラジオ会館の屋上に、タイムマシンは突如現れる。
鈴羽「うーん、久しぶり!2036年!」
自動で降りるタラップを無視し、飛び降りる。
鈴羽「ほっ、と。さーて、まずは・・・6階か」
6階の片隅にある、骨董品屋のような出で立ちの店の中を覗く。
看板には、 ”ブラウン管工房”
鈴羽「ブラウンさーん、いるー?」
天王寺「おう、お帰り、鈴羽ちゃん。どうだった?2011年は」
鈴羽「うん!すっごい楽しかった!」
天王寺「そりゃよかった。で、部品はあったか?」
鈴羽「うん、はい、これでいいの?」
天王寺「おお、でかしたぞ鈴羽ちゃん。よく見つけたな。いくらだった?」
鈴羽「それがね、店長さんがすっごいいい人で、タダで譲ってくれたんだ!」
天王寺「そうか、ラッキーだったな。しかし2011年でこれが見つかるとは思わなかった」
鈴羽「そんなにレアな物なの?」
天王寺「そりゃ世界初のトリニトロンチューブだからな。アパーチャーグリルが画期的でな、そりゃもうシャドーマス
鈴羽「い、いや、その説明はもういいや」
天王寺「む。 そうだ、これ、タダだったんだろ?部品代、返してくれや」
鈴羽「あ、いけない、もうこんな時間!それじゃーねー!また来るよー!」
天王寺「へっへっへ、ちゃっかりしてやがる。父親似かねぇ」
ラジ館から20分ほど、一軒の家に到着。
鈴羽「おーっす」
「あ、鈴羽さん、いらっしゃい!入って入って」
鈴羽「親はいないの?」
「買い物行ってる。まだ帰ってこない所をみると、デートしてるんでしょ」
鈴羽「相変わらず仲いいねー」
「イチャつくのはいいけど、せめて私の前ではやめてほしいわ」
鈴羽「あはは、その気持ちわかる」
「写真撮ってきたんでしょ?見せて見せて」
鈴羽「うん、でもメモカ256GBしかないから思ったほど撮ってこれなかったけど」
「うわー、パパとママ若ーい!」
鈴羽「でしょー。私と同い年の時だからね」
「っていうか、ママが私にそっくりすぎてちょっと怖い!」
鈴羽「そうそう!最初会った時ビックリしたよ、あれ?一緒に連れてきたっけ?みたいな」
「へぇー・・・まゆりさん、秋葉さん、桐生さん・・・みんなわかるなぁ・・・ん、この娘って・・・」
鈴羽「るかさんだよ」
「!! ルカ子さん、この頃からもうバリバリ女の子だったのね・・・」
鈴羽「ねー。るかさんだけ時が止まってるよね。神職だから?」
倫太郎「ただいまー、と。 ん?なんだこれ」
鈴羽「あ、帰ってきたみたい。ちょっと挨拶してくる」
倫太郎「お、鈴羽じゃないか、久しぶりだな。そうか、玄関のキックボードはお前のか」
鈴羽「おじゃましてまーす」
倫太郎「家の中で立ち話もなんだ、ま、その辺に自由に座ってくれ」
紅莉栖「いらっしゃい鈴羽さん。コーヒー入れるわね。二人ともブラックでいいの?」
鈴羽「うん、ありがと。ふふふ」
倫太郎「? なにが可笑しい」
鈴羽「いや、やっぱり同じだなぁ、と思って」
倫太郎「何がだ?」
鈴羽「なんでもなーい♪」
倫太郎「?」
倫太郎「どうだった?2011年は」
鈴羽「すっごい楽しかった!また今度行ってくるよ!」
紅莉栖「そういえばあの時よね。倫くんがプロポーズしてくれたのって」
倫太郎「ああ、そうだったな。 紅莉栖、俺は約束を果たせているか?」
紅莉栖「ええ、幸せよ。あなたと出会えた事に感謝してるわ」
倫太郎「愛してる。紅莉栖」
紅莉栖「私もよ。倫くん」
鈴羽「やめてー。そういうのは私のいないときにして」
鈴羽「それに、あの子の名前の由来もわかった気がするよ。さて、今日はそろそろ帰るかな」
倫太郎「ああ、あいつも今年からお前の後輩となる。頼むぞ」
「よろしくお願いしまーす!橋田先輩!」
話の当事者が階段を降りてくる。
鈴羽「まっかせといてー!ビシビシ指導するからねー!」
倫太郎「言っておくが、半分は紅莉栖の血が流れている。追い抜かれるなよ」
鈴羽「やばっ、そこそこ指導するからねー!」
鈴羽「お邪魔しました。また来るよー」
「また今度タイムマシンの話、じっくり話聞かせてね!」
鈴羽「オッケー!じゃーね、 さくら!」
キックボードを飛ばしすこと30分。
ある一軒家の表札に書かれた名前は。
Hashida Itaru
Yuki
Suzuha
父さんたち、どんな出会いをしたのかな。
二人とも、絶対教えてくれない。
必死に食い下がったところで、出会った場所と時期しか教えてくれない。
夏休みになったら、また2011年に行っちゃおうかな?
鈴羽「ふふふ♪」
玄関の鍵を開ける。
慣れ親しんだはずの廊下も、何故か新鮮に感じた。
壁に掛けられたカレンダー。
明日の日付に書かれた、「秋葉 誕生パーティー」の文字。
衣裳部屋に掛けられたタキシード。
鈴羽「~♪」
鼻歌を交えて、リビングで私の帰りを待つ二人の為に、笑顔を作る。
鈴羽「たっだいまー!」
-fin-
「橋田です」
「お入りください」
玄関のオートロックが小さな金属音をたて、自動ドアが開く。
エレベーターに乗り、最上階のドアのチャイムを鳴らした。
「はーい、あっ、ダルニャン!よく来たニャー!」
「フェイリスたん、来たお!おっほー!相変わらずテラカワユスwwwwww」
「・・・」
「・・・」
「・・・ふふっ」
「・・・ははっ」
「久しぶり、ダルくん」
「っていっても、正月以来だけどね」
ダル「ん、僕が一番乗りだったか」
留未穂「そりゃそうよ。まだ集合30分前だもの。ま、適当に座って」
手にしていた鞄を老執事に預け、ソファーに腰掛ける。
留未穂「奥さんと娘さん、元気にしてる?」
ダル「ああ、お陰様で。 鈴羽は昨日帰って来たよ」
留未穂「そっか、2011年に行ってたんだっけ。岡部君に聞いたわ」
ダル「あの時のこと、覚えてる?」
留未穂「かすかに記憶にある程度かな。なんたって25年前の事だし」
ダル「留未穂ちゃん、あの頃から全然変わってないよね。なんでまだ独身なのかが疑問だよ」
留未穂「社長業って結構忙しいのよ。でもボーイフレンドならいるから安心して」
ダル「それはけしからんな、僕に紹介しなさい」
留未穂「なんでよ」
ピンポーン
倫太郎「おっす。お、ダル、相変わらず早いな。そして相変わらずタキシードか」
まゆり「ダルくん、久しぶり♪留未ちゃんとは先週会ったけどね」
紅莉栖「橋田さん、また痩せたんじゃない?」
ダル「順調に減量中。正月から5kg痩せたよ」
倫太郎「そういえばきのう、うちに鈴羽が来てたぞ」
ダル「ああ、帰り遅いと思ったら寄り道してたのか」
紅莉栖「うちの娘も、鈴羽さんと同じ大学に入ったのよ」
まゆり「へー、じゃあスズさんの後輩になるんだね」
ダル「参ったなー。オカリンはともかく紅莉栖ちゃんの血が入ってるなら、鈴羽絶対追い抜かれるじゃんか」
倫太郎「どういう意味だ。お前も俺と大して成績変わらなかっただろうが」
萌郁「おじゃましまーす」
るか「失礼します」
留未穂「いらっしゃい。全員集合ね」
萌郁「家のこと、全部ダンナに押し付けて来ちゃった♪」
るか「留未穂さん、ご無沙汰しています」
留未穂「いいのいいの、そんなに堅苦しい挨拶は。同じ”ラボメン”じゃないの」
るか「あ、ごめんなさい・・・職業柄で」
まゆり「萌郁さん、家事を押し付けてくるなんて、悪い主婦だね♪」
萌郁「休みはいっつも何もしないでゴロゴロしてるんだもの。たまにはこれくらいやらないとね」
倫太郎(相変わらずルカ子は歳をとらないな・・・)
倫太郎「さて、全員揃ったな。まゆり、頼む」
まゆり「うん、はーい、注目ー!」
まゆりが一歩前へ出る。
まゆり「今日はお集まりくださいまして有難うございます。これより第26回 秋葉留未穂 17+α才記念パーティーを始めます!」
ダル「いつも思うんだけどさ、なんでいつもまゆりが仕切るんだろ?」
倫太郎「さあな。昔からの流れだからしょうがない」
留未穂「みんな、今日は忙しい中集まってくれてありがと。26回もやってて1回も欠員が出ないなんて、素晴らしいわ」
倫太郎「さすがは俺の見込んだラボメンなだけのことはある」
留未穂「ちなみに、26年連続で1番乗りはダル君なのよね」
まゆり「ダルくん、浮気はダメだよ?」
ダル「大丈夫、留未穂ちゃんに関しては嫁公認だから」
留未穂「由季さんともたまに会うしね」
ダル「ああ、そうだ」
談笑中、ダルは上着のポケットから、1枚のメモリーカードを取り出す。
ダル「昨日鈴羽が撮ってきた写真、見てみようか?」
倫太郎「ほう、そういえばあの時、色々写真を撮っていたような」
紅莉栖「確か集合写真も撮ったわよね。私と倫くんが腕組んでさ」
倫太郎「そうだったか?よく覚えているな。さすがだ」
紅莉栖「あの日のこと、忘れるわけないじゃない」
ダル「人前でイチャイチャするのはどうかと思うが」
倫太郎「お前が言えた義理か」
るか「昔の写真・・・は、恥ずかしいな」
倫太郎「いや、お前は全く変わってないから心配するな」
ダルはパソコンにメモリーカードを差込み、昨日の日付が入ったフォルダを開く。
最初に映し出されたのは、かつてのラボで紅莉栖が岡部の頬に口付けをする写真であった。
倫太郎「んなっ!!? なんで1枚目からこれなのだ!」
ダル「ったく、ラボでイチャイチャとしくさって・・・」
倫太郎「お前が言うな! 由季さんと知り合ったあと一時期ずっとラボ貸し切り状態だっただろうが!」
まゆり「改めて見ると、この頃の紅莉栖ちゃんと今のさくらちゃん、ほんとそっくりだねー」
紅莉栖「本当ね。倫くんが溺愛する理由もわかるわ。最近私には全然かまってくれないけど・・・」
倫太郎「な、なんだそれは、お前だって、あ、愛してるぞ!?」
紅莉栖「そうかしら?だったら証拠を見せて?」
倫太郎「証拠って、何故頬を差し出す!こんな所でか!?」
まゆり「愛してるんだったら、これくらい簡単だよね?」
萌郁「ほらほら、チューしちゃいなさいよチューー!」
倫太郎「ええい、うるさい!酒臭い!」
倫太郎「い・・・いくぞ」
早く済ませようと、倫太郎はサッと頬に唇を寄せる。
その刹那、紅莉栖は倫太郎の方を向いた!
重なる二人の唇!
倫太郎「っ!! な゛ーーーっ!!おま、それは卑怯だぞ!」///
紅莉栖「なによ、アメリカじゃキスなんて挨拶みたいなものよ?いい歳して照れないでよ」
萌郁「はいキスいただきましたー!写真に収めましたー!もう家のPCに送信しましたー!」
盛り上がる皆を見て、留未穂は苦笑いに近い笑顔を浮かべる。
留未穂(まったく、皆変わらないわね。気持ちは10代のまんま。でも、ほんと仲間って、素敵)
窓に置かれた、使い古されたアロマキャンドル立て。
陶器で出来た猫が、春の日光を浴びて、ニッと笑ったように見えた。
-fin-
SS3作目「愛縁奇縁のギャザリング」終了。
フゥーハハハ!離脱時間を抜いても9時間費やした!
現在4作目執筆中。
フェイリス「クーニャン、確か明日が誕生日だったニャ?」
紅莉栖「うん、19歳」
フェイリス「明日はラボでクーニャンの誕生パーティーが開かれる予定ニャ」
紅莉栖「わぁ、嬉しいな。あまりそういうのって経験なくって」
フェイリス「ニャフフ、もちろんその後は凶真と二人っきりになれるようにシナリオができてるニャ」
紅莉栖「あはは、お気遣いありがとう」
フェイリス「凶真も今日が待ち遠しかったみたいで、昨日からずっとソワソワしてたニャ」
紅莉栖「そうなんだ。昨日の電話じゃ普段どおりっぽかったけど」
フェイリス「愛する人と会えるのが楽しみじゃない人なんていないニャ。クーニャンこそなんか普段どおりっぽいニャ」
紅莉栖「わ、私は、人前じゃあまり感情を表に出さない性格だから」
10時間のフライト中、岡部に会えるのが楽しみすぎて一睡もしていないのは秘密である。
あのボスにいい人が現れたかどうかは心残りであるなw
ところで2と3はわかるが、1作目って何ぞ?
「ハッピーバースマンスだな。クリス」
7月上旬 アメリカ
紅莉栖「あ、ボス。お疲れ様です」
「確か25日だったな。19歳になるのか」
紅莉栖「ええ。ここに来たときはまだ17歳でしたね」
「そこで質問だ。今年の誕生日はアメリカで過ごしたいか? それとも」
ニヤリとキザに笑い、胸ポケットから1枚のチケットを取り出した。
「2週間、日本でリンタローと一緒に過ごしたいか?(キリッ」
紅莉栖(キタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆)
紅莉栖「・・・」
おかべ「・・・」
紅莉栖「・・・」
おかべ「・・・どうしたらよいのだろう」
紅莉栖「・・・かわいい・・・」
おかべ「へ?」
紅莉栖「やばい・・・超かわいい・・・!!」
おかべ「いやいや、だいいっせいがそれか」
紅莉栖「抱きしめていい?」
おかべ「まて、おちつけ。とりあえずとなりにすわってくれ。いきさつをはなす」
紅莉栖「・・・かわいい・・・!」
>>734
岡部「皆の性格が入れ替わった世界線・・・だと・・・」か”相死相哀のディサイド”でググると出てくる。
駄作。
これだけいい評価をもらえるとは思ってなかった。
貴重な休みのうちの9時間を費やした甲斐があった。
おやすみーノシ
執筆中
11年7月の話(ショタリン)
オチも何も決まってない
執筆予定
だーりん紅莉栖√の続き(消化不良なので)
萌郁が明るくなるまでの経緯(近作のスピンオフ)
初夜(泣ける話仕立て)
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