岡部「眠れる森のクリスティーナ」(89)

ー2011年 7月20日ー

…ごめ………こんで……

…でも……だから…

わた…まだ…







岡部「……っ!!」ガバ!!


岡部「………」


岡部「また…か…」


岡部(落ち着け岡部倫太郎。いや、鳳凰院凶真。ここはシュタインズゲート世界線であり…まゆりが死ぬこともなければ…)

ガチャ

紅莉栖「ハロー…ってなんだ、岡部だけか」

岡部「紅莉栖……」

紅莉栖「ふぇ!?」

岡部「ティーナ…」

紅莉栖「いや、わざわざティーナを付けるな!そのまま名前で良かったのに…」

紅莉栖「………」

紅莉栖「い、いや、別に名前で呼んで欲しいとかそんなんじゃなくてだな、だから…変なあだ名で呼ばれるのと比べてだな…」

岡部「ふっ…寝ぼけていただけだ。安心するが良い助手よ」

紅莉栖「だから普通に呼べ……って岡部、あんた汗だくじゃない」

岡部「えっ…あ、あぁこのラボの暑さで寝ていたからか。寝汗の一つでもかく」

紅莉栖「………………」ジー

岡部「な、何なのだ?」

紅莉栖「…別に。そんなに暑いならさっさとラボにエアコンを導入すればいいじゃない」

岡部「その資金を得るために、今まさに助手に新しいガジェット制作を一任してるのではないか!」

紅莉栖「何一つ手伝ってないくせに偉そうに。ま、私の分野を活かした発明品だから何も出来ないだろうけど」

岡部「ぐぬぬ…それで、いい加減教えてくれても良いんじゃないのか?その新しいガジェット」

紅莉栖「そうね。あとちょっとでひと段落つくし、あんたがシャワーから上がったら教えてあげるわ」

岡部「はい?シャワー?」

紅莉栖「……レディーがいるのに寝汗ビッショリでも平気な男の人って…」

岡部「……夏真っ盛りなのにラボ以外に来る場所が無い女の人って…」

紅莉栖「うるさいっ!!さっさと浴びてこい!!」

岡部「わ、わかった!……覗くなよ?」

紅莉栖「覗くかっ!!!」

シュタインズゲート世界線に辿り着いて一年が経過し、再び夏が訪れた。

あれ以来、俺にリーディングシュタイナーが発動する事もなければタイムマシンが現れることもない。

そんな中で紅莉栖は去年と同じようにATFの特別講師として日本に招かれている。

話を聞く限り、講演の前後で休みを大量に取り、日本の滞在期間をかなり延ばしているらしい。仕事は紅莉栖曰く“最も信頼している先輩”に任せたから何の問題もないようだ。

紅莉栖がそこまで信頼を寄せている先輩…仕事のできるスラットしたキャリアウーマンみたいな像が浮かんだ。

何にせよ…紅莉栖が日本に長く居てくれるのは…まぁ、嬉しい話だ。本人には言わんがな。

そんなわけで今は何一つ問題のない生活をすごしている。

シャァァァァァァ…

岡部「いや、一つだけあるか…」

ァァァァァァ…

岡部「まぁ、それぐらいは甘んじて受けるさ」

キュ

岡部「ふぅ…シャワーの後はドクペを飲まねばな。まだあっただろうか」

紅莉栖「さっき冷蔵庫を見たら何本かっ……」

岡部「ん?どうした?」

紅莉栖「な、何でもない…」

岡部「??」

紅莉栖「べ…別に…髪を下ろしたあんたが珍しいなって思っただけよ…」ゴニョゴニョ

岡部「ん?あぁ、クリスティーナはほとんど見たことなかったか」

紅莉栖「そ、そうね。前にまゆりからアルバムを見せてもらった時ぐらい」

岡部「ぐぬぬ…まゆりめ…余計な真似を…」

紅莉栖「なんか髪型違うだけで随分若返ったみたい」

岡部「失礼な。老け顔だというのか」

紅莉栖「そう言ってるのよ……あとは無精髭」

岡部「ん??」

紅莉栖「あ、あとはその無精髭を何とかしたら…マシになるんじゃない?」

岡部「馬鹿言うな。無精髭を生やして不摂生さを出してこそ、マッドサイエンティストなのだ!」

紅莉栖「あんた…素材は悪くないのに勿体無いわね」

紅莉栖(でも…身嗜みとか素行とかをしっかりさせたら…普通に岡部ってモテそうよね)

紅莉栖「それはそれで…困る」

岡部「何がだ」

紅莉栖「な、何でもないっ!」

岡部「??……それで、クリスティーナよ、早速見せてもらおうか」

紅莉栖「へ?」

岡部「へ?って…ガジェットに決まってるではないか」

紅莉栖「あ、あぁ…そうね。まだ完成ってわけではないけど…これよ」

岡部「これは…ヘッドセットを繋いだラジオ…?」

紅莉栖「見てくれはね。でも中身は全くの別物。…これはね、対象が望んだ夢を見せるガジェットなの」

岡部「ゆ、夢?」

岡部(ヘッドセットを見て一瞬タイムリープ関連じゃないかとヒヤッしたぞ…)

紅莉栖「そ。人が夢を見る理由については、欲求や衝動を満たす為や記憶の整理の為だったりと諸説あるから、具体的な答えは出ていない。…でも、見たい夢に近づける事は不可能じゃないわ」

岡部「随分前に、寝る前に飛行機の映像を見せた人がパイロットになる夢を見たってTVでやっていた気がするが…」

紅莉栖「それに近いわね。まずこのヘッドセットを装着して眠る。すると対象者の脳の情報が、繋がれたこの受信機に送られる。そして、その情報をもとに“対象者が望んでいる事”を電波に変換してヘッドセットに伝え、対象者の脳に情報として送るってわけ。そうすれば、その夢を見る可能性が格段に上昇するってわけ」

岡部「そ、それは大丈夫なのか?」

紅莉栖「説明だけだと大仰だけど、あくまで販売目的のガジェットだから大丈夫よ」

岡部「そうか…なら良いんだが…」

紅莉栖「ま、これはまだ未完成だけどね。もう一つ機能をつけるつもり」

岡部「まだ他にも?」

紅莉栖「えぇ。あ、これに関しても完成するまで内容は秘密ね」

岡部「随分と勿体ぶるではないか」

紅莉栖「何処かのマッドサイエンティストの度肝を抜くためよ。その前に、ちゃんと夢を見れるかを確かめる必要があるけどね」

岡部「望む…夢か」

紅莉栖「悪いけど、試運転は私がする。自分で確かめてみないと信用出来ないしね」

岡部「だろうな。まぁ、お前の作ったものなら大丈夫だろうが…」

紅莉栖「ふぇ!?…あ、ありがとぅ…//」

岡部「な、何を狼狽えている?」

紅莉栖「だ、だってあんたが素直に褒めたりするから…」

岡部「助手の力量を理解するのは当然ではないか」

紅莉栖「岡部。…あんた、もしかしてまた…」

岡部「ん?」

紅莉栖「な、なんでもない。それじゃあ私はこのガジェットを試してみるなら」

岡部「試す?」

紅莉栖「夢を見せるガジェットなんだから寝るに決まってるでしょ」

岡部「寝るって言ったって…」

紅莉栖「この実験の為にわざわざ昨夜はほとんど寝てないから今すごく眠い。アンダスタン?」

岡部「…どうせ夜中まで@ちゃんに張り付いていたんだろ?」

紅莉栖「う、うるさい!」

岡部「否定はしないんだな」

紅莉栖「もう寝る!おやすみ!」

岡部「はぁ…わかった。俺はメイクイーンに用事があるから出かける。鍵はかけとくぞ?」

紅莉栖「メイクイーン?あんたたまにラボにいない時があるけどフェイリスさんのとこに行ってるの?」

岡部「まぁな」

紅莉栖「何でよ」

岡部「企業秘密だ」

紅莉栖「む…勝手にすれば?」

岡部「言われなくてもそうするさ。夕方には帰る」

バタン

紅莉栖「あっ……」

紅莉栖「…知らない。バカ岡部」


紅莉栖「あーイライラする!岡部を殴り倒す夢でも見れたら良いのに!!」



紅莉栖「………ん、んんっ」

キーンコーンカーンコーン!

紅莉栖「あ、あれ??」


制服姿の女子A「やっばっ…お弁当忘れたかも…」

制服姿の女子B「500円ぐらいなら貸すよー!」

キャッキャ!


紅莉栖(ここは…教室?それにこの制服…)

ガヤガヤ…


紅莉栖(もしかして、菖蒲院女子学園?わたしはラボにいたはずなのに…って事は)

紅莉栖「夢は無事に見れたって事ね。尚且つ、私は夢を見ているという事を自覚できている。これはつまり…明晰夢って事よね」


紅莉栖(って事は…この夢の中の私は自分の思い通りに行動できる神みたいな存在なのかしら)

紅莉栖「ふふっ…それこそ、世界の支配構造を破壊できるのかもね」

紅莉栖(だけど、なんで菖蒲院?…2週間しか逆留学してないし、そこまで思い出という思い出もないんだけど…それに)

学ラン姿の男子A「うわ、ポケモ◯パンのシールミュウだぜ!」

学ラン姿の男子B「ウェーイw俺ネオラントー」

紅莉栖「…あそこは女子校だった。だから男子生徒がいるはずがない。…どういう事なのかしら」

??「牧瀬さん…あの、牧瀬さん!」

紅莉栖「へ?あ、はい!」

るか(菖蒲院女子学園の制服姿)「あ、あの…」

紅莉栖「」

るか「ま、牧瀬さん?」

紅莉栖「So cute…」

るか「は、はぃ??」

紅莉栖(ま、待って待って待って…漆原さんは男なのに何故学ランじゃないの??いや、学ランの漆原さんってのも想像しにくいけど…)

紅莉栖「想像しにくい?……もしかして」

るか「へ?」

紅莉栖(私の脳は“学ランの漆原さん”より“女性用の制服を着た漆原さん”を選んだんだのかも。想像しにくい“現実”より想像しやすい“空想”を創りだしたのね…それにしても…)

るか「?」

紅莉栖「改めて自信なくす件について…」

るか「ぼ、僕…何かしましたか?」ウルウル…

紅莉栖「ううん!何でもないわ!気にしないで!それで…どうしたの?」

るか「あ、あの…教室の外で待ってますよ?」

紅莉栖「待ってるって誰が?」

るか「誰って…先輩ですよ」

紅莉栖「へ?先輩って…もしかして比屋定…」

紅莉栖(教室の入口でこちらの様子を伺っていたのは…白衣でもなく学ランで、髪も立ててないけど…あれは紛れもない…)

紅莉栖「岡部ぇ!?」

るか「どうしたんですか!?」

紅莉栖「え、あの、いや…大丈夫」

紅莉栖(そ、そりゃあ私の夢なんだから漆原さんと同じように岡部が出てきてもおかしくはないわよね。な、何を動揺してるのよ私!)

紅莉栖「あ、じゃあ行ってくるわね」

るか「あ、はい」



るか「……羨ましいなぁ…牧瀬さん」ボソ

紅莉栖(え…今何かいったかしら?)

岡部「お、来た来た」

紅莉栖「ご、ごめんなさい。漆原さんと話してて」

紅莉栖(ってかなんでそんな姿なのよ…無精髭もないし…なんて言うか…かっこいいじゃない…///)

岡部「いや、良いんだ。それじゃあ行こうか」

紅莉栖(き、気のせいか?岡部の声が爽やかじゃないか?気のせいか?)

紅莉栖「い、行くって何処に…?」

岡部「何処って…食堂に決まってるじゃないか。いつもそうだろ?」

紅莉栖「そ、そう…よね。そうだったわ」

紅莉栖(こ、この夢ではそうなってるのね…)

岡部「……??ほら、行くぞ?紅莉栖」

紅莉栖「ふぇ?岡部、今名前で…」

岡部「こーらっ紅莉栖」

チョップ!

紅莉栖「あぅ!?」

岡部「ちゃんと先輩を付けなきゃ駄目だぞ!」

紅莉栖「へ?…え?…あ、はい。…先…輩…」

岡部「それでよし!」

ナデナデ

紅莉栖「えっ?あ…はぅ…///」

紅莉栖(なんぞ!!!なんぞこれぇぇぇぇぇぇ~!!!!)

ー食堂ー

岡部「それでさっ!その時のダルが面白くってさ!」

紅莉栖「そ、そうなの…なんですか」

紅莉栖(しばらく岡部と話して感じた事)

岡部「いやぁ、あれには皆大爆笑だったよ!」


紅莉栖( 一体誰なんだこの爽やかな男は!!??)

紅莉栖(さっきから厨二病の“ち“の字もない、明朗快活な人間になってるの!?……あとかっこいいし…)

紅莉栖「岡部先輩…」

紅莉栖(最初は岡部なんかに敬語と先輩呼びとか屈辱とか思ったけど…なんかここまで爽やかだとなんか普通に大丈夫だわ…あとかっこいいし…)

岡部「ん…?」

紅莉栖「いや、岡部先輩と橋田……先輩は本当に仲いい…ですね」

岡部「あぁ!そりゃあ親友だからな」パァ!

紅莉栖(いやだから誰だよコイツぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!)


紅莉栖(いや、落ち着けェ…落ち着くのよ私。これは私の中で起きている夢。つまり、私の想定内で起き得る事象しか起きないはず)

岡部「そう言えば、うちのクラスでまた一組カップルが別れたらしいんだよ」

紅莉栖「そ、そうなんですかー」

紅莉栖(そうよ!爽やか岡部も、そんな岡部とかマジネタだわーみたいな事をきっと考えてたから実際に夢に出てきただけ!)

岡部「最初はわりとラブラブだったのに意外だよなぁ…」

紅莉栖(だから、常に冷静たれ。私の夢の中で私が狼狽える事など…ない!!)

岡部「俺たちも気をつけような?付き合って一年ぐらいだけどさ」

紅莉栖「……………え」
紅莉栖(……………え)


紅莉栖「ええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!????」

岡部「紅莉栖!?」

紅莉栖「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」

岡部「だ、大丈夫か?」

紅莉栖「へ…あ…え…」

紅莉栖(お…岡部ががが?わわわ私のこここ恋人??いや、あの、その、唐突過ぎてあばばばばばばばば)

紅莉栖「しょ.証明…」

岡部「へ?」

紅莉栖「そ、そうよ!岡部が私の恋人なんて状況信じられない!証明が必要よ!」

岡部「お、おい紅莉栖…」

紅莉栖(あれ?…でもこの場合どうなったら証明されるんだろう…恋人を証明するには“恋人がする事をする”って事よね。例えばキスとか)

紅莉栖「……………」


紅莉栖「!!!!!!」ボン!

紅莉栖「ききききき/////////」

岡部「紅莉栖、顔が真っ赤だが大丈夫なのか?熱があるなら今日は帰った方が…」

紅莉栖「だっだだだだ大丈夫だけど、ちょっと昼休みにやらなきないけない用事思い出したからいってくる!!!」ガタッ!

岡部「お、おい!?紅莉栖!?」

【保健室】

紅莉栖(とりあえず気分が悪いって事にして、保健室で色々考えられること時間が出来たわね……漆原さんの心配そうな顔にはちょっと罪悪感が芽生えたけど…)

紅莉栖「考えなきゃいけない内容を三行で纏めてみた結果…」

岡部
岡部
岡部

紅莉栖「……ヤンデレかっ!!」

紅莉栖(いけない…セルフツッコミほど虚しくなるものはないわね…)

紅莉栖「でも…あの状況は一体どういう事よ…とりあえず、現実と異なる点を挙げようかしら」

・菖蒲院女子学園なのに共学
・漆原さんの女性用制服
・厨二病が抜けた岡部
・先輩岡部
・爽やか岡部
・岡部との恋人関係

紅莉栖(う…半分以上が岡部関連…)

紅莉栖「とりあえず、この中で疑問として解決しているのは漆原さんの事かしら」

紅莉栖(漆原さんの場合は男性制服より女性制服の方が違和感ないと脳が判断したって事よね)

紅莉栖「って事は、同じ学校のまゆりの場合は男性制服を見慣れてるから男性制服を着た漆原になるのかしら…興味深いわね…」

紅莉栖(でもそうなったら、厨二病が抜けた爽やかな先輩岡部との…こ、恋人関係なんて想像できないから説明がつかない)

紅莉栖「そ…そりゃあ…まぁ…“もし私と岡部が同じ学校だったら岡部は先輩だし、厨二病の抜けた優しい岡部になったら良いなー”みたいな事を妄想した事が無い事はないけど…」

紅莉栖「“そんな岡部ともし恋人になったらどうなんだろうなー、学生の青春を送りたかったなー”みたいな妄想を全くした事がないかと聞かれたら…そりゃあ嘘になるけど…」

紅莉栖「………………………」


紅莉栖「全部お見事綺麗に再現されてる件についてーー!!!!!!」

紅莉栖「いやいやいやいや、そんな…え?あ、その…えぇ!?」

紅莉栖(つまり…この夢の状況は全部私が望んだ事…?)

紅莉栖「あるあ…ねーよ!!…と言いたいけど…うぅ…否定はできない…」

紅莉栖(そうなると、菖蒲院女子学園が共学になってる理由も説明がつく…)

紅莉栖「単純に…岡部と同じ学校でスクールライフを送る整合性を作る為…?」

紅莉栖(誰なのよ!!そんな甘ったるいスイーツのような理由で共学にするような馬鹿は!!私だ馬鹿野郎!!)

紅莉栖「ぅぅぅ~///恥ずかしぃ~///」

紅莉栖「そ…そりゃあ…岡部の事は嫌いってわけじゃないし……」

紅莉栖「むしろ好きだし…///」

紅莉栖(って事は…想像でなくても当人が望んでるシチュエーションや願望なら再現されるわけね。…まぁ、“夢”だし…)


紅莉栖「でででも!!ここまでストレートに夢に出なくていいと思うわけ!!適応できるか!!」

キーンコーンカーンコーン!

紅莉栖「あ、五時限目が終わったのかしら……にしては随分早くない?」

紅莉栖(ある程度の結論が出た以上、もう時間は必要ないって脳が判断したから…?)

紅莉栖「だとしたら、時間をも操る私はまさしく神様なのかしら…ふふ」

岡部「誰が神様だって?」

紅莉栖「そりゃあ…思いどうりに時間を操れる……」

岡部「………」

紅莉栖「岡部ぇぇぇぇ!!??」

岡部「まぁた呼び捨てにする…」

紅莉栖「先輩……」

紅莉栖(ここここここのタイミングで岡部来るのは聞いてない!!聞いてないぞ!!私の脳!!)

岡部「よろしい。それで、俺は時間を超越した覚えはないんだが?」

紅莉栖「ご、ごめんなさい。えっと…休んでたら、そんな夢を見たんで」

岡部「時間跳躍…タイムリーパーか、なんか面白そうだけど、映画とさ観てたら大変そうだな」

紅莉栖「…そう思います」

岡部「それで、具合はどうだ?」

紅莉栖「えっ…あ、大丈夫…です。あの、どうしてここに?」

岡部「休み時間に会いに行ったら保健室に行ったと聞いたからな。そりゃあ会いに行くさ」

紅莉栖「でも、あの…休み時間…長くないし…」

岡部「いざとなったら俺も体調を壊せば良いさ」

紅莉栖「そ、それは岡部…先輩に悪いというか…」

岡部「紅莉栖…」ガシッ

紅莉栖「ひゃい///!」

紅莉栖(かかかかか肩!!肩掴まれたたたたたた)

岡部「もしかして…俺の事が嫌いになったか?」

紅莉栖「…へ?」

岡部「何か…今日の紅莉栖はよそよそしいからさ。何か隠してるんじゃないかとか…考えちゃってさ」

紅莉栖「そ、そんな事ない!です。ただ…その、最近変な夢をよく見てて…」

岡部「夢?」

紅莉栖「そう!岡部先輩と私がお互いに憎まれ口を叩き合いながら同じラボ…サークルにいる夢です!そこではなぜか私が岡部先輩にタメ口で話してて…そんな夢を頻繁に見るから混乱しちゃって…」

岡部「…そうなのか?」

紅莉栖「は、はい!」

岡部「そっか。…良かった」

紅莉栖「へ?」

岡部「正直な話、さっきまでの授業中は紅莉栖に他に好きな人が出来たんじゃないかって不安になってた」

紅莉栖「そ、そんな…」

岡部「ごめん。紅莉栖の彼氏なのに紅莉栖の事信じてやれなくて。自分でもここまで女々しいとは思わなかった…」

紅莉栖「岡部…」

紅莉栖(私はこんなに弱々しい岡部を見たことがないはずなのに…何故か脳の奥がむず痒いような感覚がする……)

紅莉栖(それでも真っ先に思い浮かんだのは…岡部の力になりたい…!)

岡部「でもさ、もし他に好きな男が出来た場合には…遠慮なく」

紅莉栖「そんな事ない!!」

岡部「!!」

紅莉栖「そんな事…ないです…」

紅莉栖(良いよね…?夢の中なら…本音をぶつけても…良いよね)

紅莉栖「スゥゥゥゥ…」

紅莉栖「私は岡部の事が好き!誰よりも好き…!…だから…そんな悲しそうな顔をしないで!!…でないと私が」

岡部「……紅莉栖っ!!」

ギュ

紅莉栖「お、岡部ぇ!?」

紅莉栖(ちょちょちょちょちょ!!??ハグはいかん!!ハグはいかん!!)

岡部「紅莉栖と恋人でいるのがさ…夢なんじゃないかと思った…」

紅莉栖(みみ耳元でその声はいかん!!その声はいかん!!)

岡部「紅莉栖の様子がおかしいと思った時…夢から醒めたんじゃないかと思った…」

紅莉栖(う…実際そうなんだけど…)

岡部「夢じゃなくて…良かった…」

スッ

紅莉栖「ひゅい!///」

紅莉栖(頬に手が…)

岡部「………」

紅莉栖(あの岡部さん??目を瞑ってますがあのそれは岡部さん!!??段々顔が近づいてますが岡部さん!!!???)


紅莉栖(私…まだ心の準備がっ!!!!)








紅莉栖「岡部さん!!??」

ガバッ!!

岡部「うわっと!?いきなり背後から不意打ちとは何だ!?クリスティーナよ…!」

紅莉栖「へ?ティーナ?あの…岡部…先輩?」

岡部「……………」

岡部「俺だ。機関による攻撃により、クリスティーナに後輩属性が付いているようだ…ああ、そうだ。どうやら奴とは伝説の桜の木の下で決着をつける必要があるな…エル・プサイ・コングルゥ」

紅莉栖「………………」

紅莉栖(ここは……ラボ…つまり…)

紅莉栖「…リアルッ!!??」

岡部「ど、どうしたのだお前は……ニヤニヤと笑いながら寝てたと思ったらいきなりそんな慌て出して…」

紅莉栖「ニヤニヤなんかしてない!!」

岡部(思いっきりしてたんだがな…)

紅莉栖(おーけー牧瀬。これは現実よ。岡部は厨二病。岡部とは先輩後輩の関係でもない。岡部とは恋人でもない)

紅莉栖(……だけど)

先輩岡部『夢じゃなくて…良かった…』

紅莉栖「……あぅ///」

岡部「??」

岡部「それで、どうだった?」

紅莉栖「未遂だったけどドキドキした…」

岡部「は?」

紅莉栖「え?」

紅莉栖「…………………」

紅莉栖「あぁ!!ガジェットですね!!実験の話ですねわかります!!」

岡部「お前は何と戦ってるんだ」

紅莉栖「そ、そうね。まだ一回目だから何回か検証する必要はあるけど、効果は現れたわ」

紅莉栖(むしろ現れすぎワロタってレベルなんだけどね…)

岡部「まぁ、お前のあのにやけ顔を見ればわかったさ」

紅莉栖「だから!にやけてなんかいない!」

紅莉栖(正直自信は皆無だけど…)

岡部「ふむぅ…」

紅莉栖「な、何よ…」

岡部「クリスティーナがにやけ、尚且つ俺を先輩呼ばわりするような夢はどんな夢か、考えてな」

紅莉栖「んなっ!?」

岡部「ふっ、この俺の灰色の頭脳を持ってすれば一瞬で答えがわかった。それはー」

紅莉栖「ちょ!ちょちょちょっ」

岡部「世界の支配構造を破壊させた俺は狂気のマッドサイエンティストとして世界の頂点に君臨した!!」

紅莉栖「は?」

岡部「そして、俺は世界の人々から畏れられ、しかし一部の人間からは敬意と羨望の眼差しを浴びるのだ。クリスティーナ、お前もその一人だ」

紅莉栖「……………」

岡部「そして、マッドサイエンティストオタクとなったお前は助手だけにとどまらず、東京電機大学に入り直し、正式な後輩になる。そして俺に出会ったクリスティーナは敬意を込めて言うのだ!!岡部せんp」

紅莉栖「んなわけあるかああああ!!!!」

岡部「ぐふぅ!!」

紅莉栖(狼狽えた私が馬鹿だったわ!)

岡部「まったく…教えてくれてもいいではないか。ケチな女だな」

紅莉栖「うっさい!プライバシーの侵害よ」

岡部「…で、その夢はお前にとってはいい夢だったのか?」

紅莉栖「へ?」

岡部「内容はもう聞かん。だが、本来の目的である望んだ夢をみれたのかだけは教えてくれてもいいだろう?」

紅莉栖「そ…それはっ…」

紅莉栖(岡部と学校生活を送って恋人になる夢…それは…)

紅莉栖「う…うん…悪い夢じゃあ…なかった」

岡部「…そうか」

紅莉栖「ええ」

岡部「………」

紅莉栖「な、何よっ」

岡部「は?」

紅莉栖「一回目とはいえ実験を成功させたんだから驚くなりリアクション取りなさいよ」

岡部「リアクション?」

紅莉栖「だから…流石は紅莉栖様だーとか、恐れ入りましたーとかっ」

岡部「昨日も言ったが、俺はお前の腕を信用しているし、流石だとも思ってる」

紅莉栖「……あ、ありがとう…」

岡部「お…おう…」

紅莉栖(ふざけない岡部…ぅぅ…夢の中の岡部と被るじゃない…)

紅莉栖「……………」

岡部「………………」

紅莉栖「そ、そういえば今は何時?」

岡部「ん?今7時になったとこだ」

紅莉栖「って事は4時間ぐらい寝てたいたのね」

紅莉栖(夢の中では3時間も経っていない。現実の時間=≠夢の中の時間ってわけね)

紅莉栖「…わかった。私はホテルに帰ってこのガジェットの研究を進めるわ」

岡部「待て!」

紅莉栖「へ?」

岡部「いや…あまり実験に夢中になりすぎるなよ?」

紅莉栖「…どういうこと?」

岡部「そのガジェットが夢を見せるということは、つまり脳を眠らせないって事じゃないのか?」

紅莉栖「そうね。夢を見る=脳は活動中って事だからそうなるわ。…何?心配してくれてるの?」

岡部「当たり前だ」

紅莉栖「ふぇ!?」

岡部「万一にでも脳に負担がかかるのなら…心配するのは当然だろ」

紅莉栖「な、何よさっきから…明日は槍でも降るんじゃない?」

岡部「ら、ラボメンの身を案じるのは当然だろう」

紅莉栖「それだけ?」

岡部「え?」

紅莉栖「え?」

紅莉栖(……………)

紅莉栖「………なななな何でもない!!じゃあ帰るから!」

岡部「おい!」

紅莉栖「大丈夫。実験はしないから。もう一つの機能を付けるための構造を考えるだけにする」

岡部「そうか」

紅莉栖「うん。それじゃあ」

ガチャ バタン!

岡部「………」

岡部「過敏になり過ぎか…」

ーホテルー
紅莉栖(結局、研究しようと思ったけど頭が働かなかった件について…)

岡部(夢)『夢じゃなくて良かった…』

岡部(現実)『心配するのは当然だろ』

紅莉栖「~~~~っ」

ジタバタジタバタ!

紅莉栖「何なのよ!前門の夢岡部、後門のリアル岡部ってわけ!?…刺激が強すぎるだろ常考!!」

紅莉栖(い…いけない…橋田みたいになってる。自重しないと…)

紅莉栖「ううう…こういう時は実験なりなんなりして頭の中をスッキリさせたいんだけど…」

当たり前だ 心配するのは当然だろ

紅莉栖「……ぁぅ///」

紅莉栖(べ…別に言われた忠告を守る必要なんてないんだけど…ないんだけど…)

紅莉栖「…@ちゃんにスレでも立てるか…」

好きな奴が夢でもリアルでも優しい件につい

紅莉栖「ってこんなスレ立てられるかぁ!!!」

ー7月21日ー

紅莉栖(まぁ…案の定ほとんど眠れなかった…)

紅莉栖「ぎゃ、逆に考えるのよ!おかげで今日の数時間を実験に使えると考えるのよ!」

紅莉栖(ラボの前まで来たけど…目に隈とか出来てないかな……大丈夫そうね)ガチャ

紅莉栖「ハロー」

まゆり「あ、紅莉栖ちゃんだ!トゥットゥルー♪」

るか「牧瀬さん、こんにちは」

紅莉栖(う、漆原さん…嫌でも女性用の制服が思い出すわ。嫌じゃないけど…むしろ私より似合ってたけど…)

まゆり「そうだ!るか君るか君!紅莉栖ちゃんにも話聞いて貰おうよ!」

るか「確かに…歳上の女性の意見も必要だよね」

紅莉栖「どうしたの?」

るか「牧瀬さん、実は……妊娠しちゃったんですっ!」

紅莉栖「なるほど…妊娠かぁ…」

紅莉栖「………………」

紅莉栖「はあああああああああああああああああああ!!!???」

紅莉栖「妊娠って…ににににに妊娠の妊娠!!??漆原さんがががが!!??」

るか「え…?」

紅莉栖「漆原さんが妊娠とか何が起きたの!?え、いつのまにか夢の中へ入ってた!?何なの!?陽水なの!?」

るか「えぇ!!??いや、ちがっ」

紅莉栖「天狗よ!天狗の仕業よ!!」

まゆり「紅莉栖ちゃん!落ち着い」

紅莉栖「まゆり!これが落ち着いていられる!?…もしかして…その漆原さんの妊娠した子供って…お…おか」

まゆり「落ち着いて!!」ギュッ!

紅莉栖「あうっ!?」

まゆり「るか君!るか君!今の流石に説明不足だよ。主語をちゃんと付けないと」

るか「岡部さんの…子供かぁ…///」

まゆり「るか君?」

るか「あ、はいっ!?な、何でしょう」

まゆり「説明!」

るか「あ、すいません。僕ってばうっかりしちゃって…」

紅莉栖「同じクラスの女の子が?」

るか「はい…僕とまゆりちゃんの友達なんですけど…」

まゆり「それでね、まゆしぃとるか君にも、どうしたら良いかなって相談されたのです」

紅莉栖「どうしたら良いのかって…産んで育てるか否かって事?」

まゆり「…うん」

紅莉栖「デリケートな問題ね…私たち赤の他人がどれだけ言おうとも結局はその女の子と彼氏が決断しなきゃいけない事よ」

まゆり「うん…」

紅莉栖「本来、結婚して経済的にも人間的にもしっかりしてからするべき事。どちらの選択をとっても過酷な道のりが待ってるでしょうね」

るか「そうですよね…」

紅莉栖「とにかく、その二人がするべき事はお互いの両親と話をしてきっちり結論を出すこと。その際に男の方はぶん殴られるかもね。…ま、一時の快楽に溺れたかは知らないけど軽率過ぎだとは思うわね」

まゆり「ふわぁ…」

紅莉栖「ご、ごめなさい。知らない人の事だからって冷たい言い方になっちゃったと思う」

まゆり「違うよ!まゆしぃ達はその話を聞いてその子の心配であたふたする事しか出来なかったから」

るか「牧瀬さんはやっぱり凄いなぁ…」

紅莉栖「ううん、二人はその女の子の友達なんだしそれが正しいのよ」

紅莉栖(っていうか…その女の子が相談する対象の中に漆原さんも入ってるってのは流石ね…)

まゆり「……………」

紅莉栖「まゆり?」

まゆり「でも、紅莉栖ちゃんもオカリンと同じ事を言うから、やっぱり二人の考てる事って似てるなーって」

紅莉栖「岡部にもこの話を?」

まゆり「うん。そしたら、オカリンは“どちらを選んでも苦しみを伴う状況でも、選ばなくてはならない時が来る”って」

紅莉栖「へぇ…その岡部は?」

るか「ドクペが無いからさっき買いに行きました。多分直ぐに戻ってくるかと」

紅莉栖「あいつがねぇ……そういえば、最近あいつがメイクイーンによく言ってるみたいだけど」

るか(ぎくっ)

紅莉栖「まゆりは何か岡部から聞いてない?」

まゆり「え、えーと…まゆしぃは最近学校の補習でメイクイーンに行けてないからわからないのです」

紅莉栖「そう…」

るか(ほっ…)

ガチャ

岡部「全く…ドクペを買いに行くだけで汗だくだ…」

まゆり「あ、オカリンおかえりー」

るか「おか…凶真さん、おかえりなさい」

岡部「なんだ、助手も来てるのか?俺よりも遅くラボに着くとは重役出勤もいいところだな」

紅莉栖「私はあんたの下っ端でもないし、そもそもラボで寝泊まりしてるあんたより早く着くとか不可能じゃない」

岡部「そこを何とかするのが助手だろう」

紅莉栖「できるかっ!」

紅莉栖(いつもの岡部ね。…べ、別に素直な岡部が名残惜しいとかじゃないしっ)

まゆり「んー、じゃあまゆしぃはそろそろメイクイーンに行ってくるのです!」

紅莉栖「あら?最近行ってないって言ってたけど今日は久しぶりの出勤なの?」

まゆり「え?あ、うーん、そうだねー久しぶりだよー」

紅莉栖「?」

るか「じゃあ、僕も家でやらないといけない事があるのでそろそろ…」

岡部「む、るか子よ妖刀五月雨の素振り、忘れるなよ」

るか「あ、はい!」

まゆり「じゃあオカリンまた後でメイクイ」

岡部「ちょっ」

るか「まゆりちゃん!さ、早く!早く行こっ!」

まゆり「あわわわわ~」

バタン!

紅莉栖「……なに?あんたまた今日もメイクイーンに行くの?」

岡部「…まぁな。極秘任務だ」

紅莉栖「…………」ジー

岡部「何だそのジト目は」

紅莉栖「…別に。どうせろくでもない事だろうけど、まゆりを巻き込むのはやめときなさいよ」

岡部「別に…巻き込んではいないさ」

紅莉栖「あっそ。…そう言えばまゆり達から聞いたみたいね、クラスメイトの妊娠の話」

岡部「ん?あぁ…あの話か」

紅莉栖「珍しい事もあるわね。あんたと意見が合うなんて」

岡部「どちらかを選ばなくてはならないってやつか?」

紅莉栖「そう」

岡部「別に…当たり前の事を言っただけだろ。自分の迂闊な行為で辛い選択や結末を迫られたとしても…受け入れなければならない」

紅莉栖「…岡部?」

岡部「無かった事にしてやり直す事などできない。本来そうであるべきだ」

紅莉栖「………」

岡部「そうあるべきなんだ…」

紅莉栖(……錯覚だ)

紅莉栖(目の前にいる岡部に、“お前は明日消える運命だ”と言われても納得して消えていきそうな儚さを感じたのは…錯覚だ)

紅莉栖「お、岡部の癖に真面目な事を言うのね」

岡部「馬鹿を言うな。俺は常に真剣だ」

紅莉栖「お盛んなカップルへのDT丸出しの僻みかと思ったわ」

岡部「んな!?う、うるさいぞ処女!そういうお前こそ寂しい学生生活を送ったから悔しいんだろ!」

紅莉栖「はぁ!?リア充だし!そりゃあもうリア充だったし!!」

紅莉栖(ただし夢の中に限る)

岡部「その癖に色々とオープンなアメリカで相手にされていない辺り、やはり尻に蒙古斑が消えていないおこちゃ」

紅莉栖「それ以上言ったらあんたの大脳新皮質をポン酢漬けにしてだな!!」

岡部「…ふっ」

紅莉栖「な、何よ…」

岡部「何でもない」

紅莉栖「何でもなくないでしょ!何か含みのある笑いだった!」

岡部「そんな事はない。考えすぎだ」

紅莉栖「いいや、あった」

岡部「ない」

紅莉栖「あった」

岡部「ない」

ダル「あのー僕はいつまでそこ新婚夫婦っぷりを見せつけられるん?」

岡部&紅莉栖「…………」

岡部&紅莉栖「うおわあああああああああああああああ」

ダル「まったくー暑い中お熱いんだからー」

紅莉栖「だだだ誰が新婚イチャイチャラブラブ夫婦だ!!」

ダル「そこまで言って無い件について…」

岡部「とにかく、気配を消して侵入してくるのはやめろ!」

ダル「男は誰しもダンボールとスニーキングに憧れる時が来るのだぜい」

岡部「お前の体型じゃあまともなサイズのダンボールじゃあ入らないだろ…」

ダル「ダンボールへの愛情があればダンボールは答えてくれるんだお!」

紅莉栖「お前は何を言ってるんだ」

岡部「…………」

ダル「…………」

紅莉栖「な、何よ」

岡部「いやぁ、当たり前のようにネラー語を出すなって」

ダル「女の子でミルコのAAは中々出ないっしょ…」

紅莉栖「うるさいわね!た、たまたま同じ言葉だっただけよ!!」

岡部「たまたまねぇ…」

ダル「たまたまねぇ…」

紅莉栖「そ、そこを詮索すんな!」





岡部「っと、そろそろ俺も出なくては」

紅莉栖「またフェイリスさんのところ?」

岡部「ん、あぁ…」

紅莉栖「何、また企業秘密?」

岡部「そんな所だ」

紅莉栖「…あっそ。その企みには橋田も絡んでいるの?」

ダル「え、いやぁ、何とも言えませんなぁ」

紅莉栖「なんだそれ。ま、今日は私の頼みをきいてもらうわよ」

ダル「ん?今何でも」

紅莉栖「言うか!!」

岡部「ダルに何か頼み事を?」

紅莉栖「えぇ。ガジェットの件についてね。…企業秘密よ」

岡部「…?そうか。じゃあ、俺は行ってくる」

バタン!

紅莉栖「…何よ」

ダル「ニヤニヤ」

紅莉栖「ニヤニヤすんな!!」

ダル「んで、今日は何で僕が呼び出されたん?」

紅莉栖「私が作ってるガジェットが形になったんだけど、」

ダル「あー!あの夢のやつか!なるほど、つまり僕を人柱にして実験結果を聞きたいわけですねわかります」

紅莉栖「違う。そうじゃない」

ダル「違うん?」

紅莉栖「あんたにこのガジェットをつけたらHENTAIな夢しか見ないでしょ」

ダル「よく…わかってるじゃないか…」

紅莉栖「かっこいい声を作るな気持ち悪い」

ダル「んじゃあ、尚更なんでなん?」

紅莉栖「このガジェットにもう一つ付けたい機能があって…」



ー夜ー


【御茶ノ水 ホテル】

紅莉栖(橋田の見立てでガジェットの部品も集まりそう。足りなくても、秋葉原で手に入りそう)

紅莉栖「これさえ作れたら…」

紅莉栖「………岡部」

紅莉栖「な、な、何だ!!この片思い全開みたいな乙女思考は!?」

紅莉栖「だいたい!デリカシーが無いのよね!レディー相手に処女がどうとかって!!」

紅莉栖(ま、まぁ…あの時は私が岡部にDTが何とかってふっかけたからだけど…)

紅莉栖「だって仕方ないじゃない…」

紅莉栖「岡部の消え入りそうな表情…見ていられなかったのよ…」

紅莉栖(……………………)

紅莉栖(/////)

紅莉栖「う、うがああああ鬱だあああああああああ」

紅莉栖「論理的じゃない!!こんなの全然論理的じゃない!!落ち着いて…素数を数えて落ち着くのよ…」






紅莉栖「983、991、997…もうやめよ。虚しくなってきた…」


紅莉栖「そもそも!こんな事になったのも岡部が悪いんだ!そうだ!岡部のせいだ!」

紅莉栖「腹いせにこのガジェットを使って夢の中に岡部を呼んでタコ殴りにしてやるわ!!」スチャ

紅莉栖「おやすみ!!覚悟しときなさいよバカ岡部!!」

紅莉栖(………………)

紅莉栖「ヴァージンで悪かったな…」

紅莉栖(私だって…初めては好きな人に捧げたいと…思ってるんだぞ…)









サー

紅莉栖「……ん…んん」

紅莉栖「んっ…ここは……ホテルの部屋で…私は今ベッドの中」

紅莉栖(確か…ガジェットを使おうとしてそのまま寝たのは憶えてるけど…)

紅莉栖「今回は…失敗かしら」

紅莉栖「………にしてもやけにスースーするわね」

紅莉栖「………」(半裸)

紅莉栖「ふぁ!?」(半裸)

ガチャ!!

岡部「どうした!紅莉栖!」

紅莉栖「お、岡部!?何勝手にシャワーをつかっ…」

岡部「何って」(半裸)

紅莉栖「うおおおおおおおお!!??」


紅莉栖「な、な、な、ななな////」

紅莉栖(何で岡部が私の部屋に…!?…そそそ、それにシャワーで…!?)

岡部「大丈夫か?」

紅莉栖(し…しかもバスタオル一枚って…)

紅莉栖(こ…これも…ガジェットの効果…)

岡部「紅莉栖?」

紅莉栖(だだだだからって私と岡部がこんな…姿でホテルの中とか…おかしいでしょ…///)

岡部「紅莉栖!」

紅莉栖「ひゃい!!」

岡部「紅莉栖…まだ身体の調子が悪いんじゃないか…?」

紅莉栖「へ…?どういう事…?」

岡部「どういうって…だから…その…」

紅莉栖「待って」

岡部「ん?」

紅莉栖「と…取り敢えずお互い服を着ましょ?」

岡部「あ、あぁ…そうだな」

紅莉栖「の…覗くなよ!」

岡部「あ、あぁ…」

紅莉栖(何か残念そうに見えるのは気のせい…よね?)

紅莉栖(何にしても、取り敢えず今回のこの夢の状況を把握しないといけないわね)

紅莉栖(にしても…私はその場にあった服があったから良いけど…)

岡部「………」(ガウン姿)

紅莉栖「……」ジー

岡部「ん?」

紅莉栖「………」ジー

紅莉栖(なんで言うか岡部って長身だし痩せてるからガウンの格好がセクシーというか……)

岡部「そ、そんなに見られたら恥ずかしいぞ…」

紅莉栖「な、何でもない///」

紅莉栖(そもそも、なんで男性用のガウンなんか部屋に置いてあったっけ!?夢にありがちなご都合主義!?…いや、あって良かったけど…)

紅莉栖「あ、あの…岡部?」

岡部「っ!お、おぅ」

紅莉栖(待って…ここで変に状況を訊いたら前の夢みたいに怪しまれないかしら……って)

紅莉栖「よくよく考えたら遠慮しなくていいか。夢なんだし」ボソッ

岡部「今なんだって?」

紅莉栖「ううん、何でもない。岡部、訊かせて欲しい事がある」

岡部「何だ?」

紅莉栖「…今日の私たちの行動。出来るだけ事細かに」

岡部「…………………」

岡部「なななななな何だって???」

紅莉栖「何をそんなに慌ててるのよ」

岡部「いや…だって、そりゃあ…」

紅莉栖「今日起きた事を耳で聴いて覚える。そうやって記憶に残したいのよ」

紅莉栖(適当に言ってみたけど、これで岡部が我が家に来た理由がわかりそうね。)

岡部「……事細かに…か?」

紅莉栖「そうして貰えたら助かる」

岡部「お、お前も意外とアレなんだな…」

紅莉栖「アレってなによ」

岡部「何でもない…」

紅莉栖(…随分と歯切れが悪いわね。なんか妙に顔も赤いし)

岡部「じゃ…じゃあ話すぞ?」

紅莉栖「うん」

岡部「ごほんっ!今日は…その…まず最初に、午前中ラボの前で待ち合わせた」

紅莉栖「えぇ…そうね」

紅莉栖(当然記憶に無いけど…)

岡部「まずは…お前が前から行きたがってた東京の観光地を巡ったよな?浅草とか…お台場とか」

紅莉栖「そ、そうだったわね…」

紅莉栖(何よ、まるでデートじゃない…なんでそういうとこの記憶が無いのよ…)

岡部「久々のデートだったからお互いにはしゃ」

紅莉栖「で、ででででデートぉぉ!?」

紅莉栖(まるでどころかまんまデートだったああああああ)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年03月02日 (日) 03:56:15   ID: n3V-OYh6

完結してなくね?

2 :  SS好きの774さん   2014年10月19日 (日) 11:19:59   ID: iyC5OOK4

こういう途中で投げ出すssってもったいないよなー

3 :  SS好きの774さん   2016年02月22日 (月) 01:15:56   ID: FJ9rAH-q

うおおおぉ!続きが気になるッ!

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