梓「軽音部で一番毛深いのは誰なのか」(125)
梓「ねー純」
純「なに?」
梓「軽音部で一番毛深いのは誰だと思う?」
純「は?」
梓「いや、昨日の夜自分で処理してたんだけどさ
ふと気になり始めて、結局朝まで寝れなくて…」
純「なにやってんの?」
梓「だって気にならない?他の同世代の人達の事」
純「別に気にならないけど」
梓「わかってくれないかなぁ…」
純「うん、わかんない」
梓「ちなみに純は?ちょっと腕見せてよ」
純「え?嫌だよ…」
梓「あ、別に隠さなくてもいいじゃん!見せてよ」
純「嫌だ」
梓「別に減るものじゃないし良いでしょ?ほらっ」
純「……最近サボってるから嫌なんだよ…」
梓「…ケチ」
純「別にそんなに気にしなくてもいいんじゃないの?
みんな似たような感じでしょ?多分」
梓「それでも気になっちゃうんだよ
ちなみに純が軽音部で毛深さランキングを作るとしたらどんな感じになる?」
純「け、毛深さランキングってなんですか…?」
梓「いや、参考までに聞いておこうと思って
適当でいいよ?」
純「(何を言い始めるんだこの子は…)」
梓「できた?」
純「…うんまぁ、一応…」
梓「どれどれ…これ毛深さ順で良いんだよね?」
純「うん、そう」
紬>律>唯>梓>澪
梓「………」
梓「ふむふむ」
純「先輩達に言わないでよ」
梓「純…これ本気で言ってるの?」
純「はい?」
梓「なんで澪先輩がこの位置なの?
これって純の願望でしょ?澪先輩が毛深いなんてありえない!…みたいな」
純「あはは…まぁ、それもあるかも」
梓「わかってないなぁ純は」
純「でも澪先輩はつるんとしてるよ、濃いイメージないもん」
梓「純…現実を見ようよ、澪先輩だって私達と同じだよ?仲間だよ?」
純「う…うるさい!澪先輩は別格なの!」
梓「やれやれ…純には目を覚ましてもらわないと…」
純「どういうこと?」
梓「私が先輩達がどの程度の毛深さなのか調べてきてあげるよ
澪先輩だって黒々とした部分が絶対あr」
純「わーわー!絶対そんな事ない!」
梓「まぁ私にまかせてよ」
梓「うーん…」
梓「………」
梓「まぁ、私を物差しにするとこんなもんかな」
澪>唯>紬>律
梓「まぁでもあくまで私の予想だからね」
梓「明日からさりげなく先輩たちに近づいて証明していくとしよう」
梓「唯先輩唯先輩」
唯「どうしたの?あずにゃん」
梓「私今手相占いにハマってるんです、占わせてもらってもいいですか?」
唯「えー!あずにゃんそんな事できたんだっ?見て見て!」
梓「はい、ではちょっと失礼して…」
唯「はい、どうかな?」
梓「………」
唯「どきどき…」
梓「(流石唯先輩…腕毛の処理残しがけっこうあるなぁ…
まったくやってないって訳じゃ無さそうだけど…)」
梓「(毛自体は細くてそんなに目立たないなぁ、羨ましい…
できれば下の方も確認してみたいけど…)」
唯「あずにゃん?」
梓「(いや…流石に今それはできないか…もうすぐ合宿があるし焦らなくてもいいか
まぁ腕毛を見た感じだとやや薄めって感じかな
私と同じくらいかも)」
唯「ねぇ…どうかなどうかな?」
梓「唯先輩」
唯「うん!」
梓「すいません、何もわかりませんでした」
唯「え?」
梓「じゃあ私はこれで」
唯「…あずにゃん?」
紬「えぇ!本当に?!」
梓「えぇ、ムギ先輩さえ良ければ」
紬「お願いします、一回占いって経験してみたかったのー♪」
梓「そうですか、では見ますね」
梓「………」
梓「(私が思うにムギ先輩の眉毛って全然手を加えてないんだよね
眉毛が濃いから体毛も濃いって結論になりがちだけど…
実際毎日の様に整えている人もいるしあんまり参考にならないと思う)」
紬「…なにかわかった?梓ちゃん」
梓「ええ、もう少し…」
梓「(これは…腕はすごくきれい…剃ってる…?いや…
毛穴も見えないし処理に苦労してる肌に見えない
ムギ先輩ってこんなに腕きれいだったんだ…)」
紬「けっこう時間かかるのね」
梓「(あっ、そうかムギ先輩地毛があの色だもんね
だから毛穴も目立たないんだ…なる程
いずれにしてもムギ先輩の場合腕だけじゃ判断するに難しいな…)」
梓「とりあえずムギ先輩は合宿まで保留か…」
紬「えっ?保留?」
梓「けっこう難しいなぁ…」ブツブツ…
紬「梓ちゃん?どこ行くの?!結果は?!梓ちゃん!」
梓「律先輩律先輩」
律「んー?」
梓「ちょっと占いしたいので腕見せてもらっていいですか?」
律「へー、梓占いとかできたんだ?んじゃ、よろしく」
梓「………」
梓「(律先輩と唯先輩はナチュラル眉毛だからね
ものすごいきっちり眉毛って訳でもないから整えてない眉毛も薄めだと思う
唯先輩があんな感じだったし律先輩も同じ感じかな、でも律先輩処理怠ってそうだなぁ…)」
梓「(む…?…あれ?)」
律「梓…手っていうかさ、腕の方見てないか?」
梓「ちょっと静かにしてください!」
律「?!」
梓「(私以上につるつるだ…!…なんで?!…きのう処理したばっかりとか?!
毛穴も全然確認できないし…もともとが細い毛なのかな?
…まぁ髪の毛も細くてきれいだし…わからなくもないけど…)」
梓「意外ですね…早くも私の予想が外れそうですよ」
律「はい?」
梓「今のところ律先輩が一番薄毛か…」
律「なんの話?占いは?おーい」
澪「じゃあお願いしようかな」
梓「はい、占いますね」
梓「(きましたよメインディッシュが…純…あんたの幻想は打ち破ってあげるからね)」
澪「いい結果だと良いんだけど」
梓「そうですね」
梓「………」
梓「(つるつる…だ、細くて白くてきれいな腕…)」
梓「………」
梓「(…と言いたいところですけど…澪先輩、私の目はごまかせませんよ
一見白くてきれいな腕に小さく見える赤い斑点…澪先輩…これはレーザー使ってますね?
普通の処理じゃ追いつかないと自分で言ってるようなものですよ…)」
梓「(それに澪先輩はきっちり眉毛整えすぎです
もともと体毛が濃いんじゃないかって疑わない方がおかしいですよ
二の腕とか脇か下の毛を見させてもらえれば確定するんだけどなぁ…
流石に無理かな…)」
澪「深刻そうな顔してどうしたんだよ梓、なにかわかった?」
梓「澪先輩…残念ながら私の口からは言えません」
澪「え?」
梓「あぁ…恐ろしい…」
澪「ひぃぃ…どういう事だよぉ梓ぁ!」
梓「それでね純、これが最新のランキングだよ」
澪>紬>梓>唯>律
梓「まぁ唯先輩と私は僅差での判断だけど、これで間違いないよ」
純「そんな訳ないじゃん!私は信じない!」
梓「もう…強情だなぁ」
純「梓の言ってる事なんて信じられないよ!」
梓「何を言って…私は厳重に審査したよ?」
純「そんなに言うなら証拠見せてよ、それなら信じるよ」
梓「わかったよ純、今度みんなで合宿行くから
お風呂の時にみんなの下の毛撮ってきてあげるよ」
純「えっ…」
梓「それなら信じるでしょ?もう…面倒だなぁ…」
純「中野さん、犯罪ですよ?それ」
梓「私も自分の予想を証明したいしね、まぁ任せて」
純「(わ…私知らないもんねー…)」
律「ムギの別荘のお風呂は本当に広いなー」
澪「今年も入れるなんてムギに感謝しないとな」
唯「泳げるぐらい広いもんね、ありがとームギちゃん」
紬「どういたしましてー♪」
梓「(ついにきましたか)」
唯「りっちゃん前髪かわいいね!」
律「う、うるさい!」///
梓「(流石にみんなバスタオル巻いてるなぁ
まぁ私もそうなんだけど)」
梓「………」
梓「(チャンスは先輩達が体を洗う時…
泡が覆うその体は誰でも無防備になる筈…
そのチャンスを逃す訳にはいかないっ!)」
紬「ここのお風呂ね、温泉なのよ?」
唯「へー、そうなんだぁ」
梓「(あ、まずはムギ先輩と唯先輩が体を洗いに…!
これは見逃さない様にしないと…)」
梓「………」ジーーー
唯「ムギちゃんのボディーソープ高そうだね」
紬「使ってみる?」
唯「いいの?ありがとー♪」
梓「(あ、見えた!…唯先輩の下の毛がっ!)」
梓「(う…薄いッッッ!軽く生えてる程度であれは薄いよっっ!
なんで?!…腕の毛私と一緒くらいだったのに…明らかに私より薄いよっ!?)」
梓「(こ…こんなの不公平だよっ!きっと整えてるに違いないよ!
唯先輩め…腕の処理は怠ってる癖に…!)」
紬「良い香りがするでしょ?フランス製のものなの」
唯「そうなんだ!すごい!」
梓「(あ、今度はムギ先輩…もう少し…もう少し角度が……
あ…そうっ!…その角度で…!あっ、見えた!)」
梓「(生え…てる?…生えてるよね…?あれ…
うっすらだけど…金色なせいか余計目立たなくなってる…)」
梓「(う…嘘だ!…ムギ先輩は体毛濃いって思ってたのに…!
こ…これは早くも私のランキングに綻びが……)」
律「澪ー、私たちも体洗おう」
澪「そうするか」
梓「むっ?今度は澪先輩達か…」
澪「それがあってから髪の毛伸ばす様になって…」
律「そんな事があったのか、知らなかった」
梓「(澪先輩…さぁ…見せてください…その黒々とした密林を…!)」
澪「律みたいにショートを考えた事もあるんだけど」
律「いや、澪はロングの方が似合ってるよ」
梓「(そう、律先輩!もう少し澪先輩の髪触って…!
もう少し体傾けて…そう!…その位置!…見えっ」
梓「………」
梓「…えっ……」
梓「無毛…ですか?…まさかの…えっ?」
梓「(だって腕にはちゃんとレーザーの跡が…!!
どういう事?!まさか下までレーザーしちゃってるの…?!)」
律「ロングの方が大人の女性って感じだし
澪にはそれが一番必要な印象だろ?」
澪「も…もう!…からかうなよ律!…気にしてるんだから…!」
律「ごめんごめん…うん?」
梓「(なんですかそれは…まさか高校生にもなって生えてないんですか澪先輩は…!
ギャップがありすぎでしょ…これは現実ですか…?」
律「ちょっと梓!何やってるんだよ!」
梓「へっ?」
梓「い、いえっ!何もしてません!ただ皆さんの洗うところを見てただけで…!」
律「そうじゃなくて、なんで水中カメラかまえてるんだよっ!変態か…?!」
梓「いやっ…これは思い出のアルバムに…!」
律「ちょっと…そのカメラ見せてみろ!」スクッ
梓「こ…これはダメです!…って…えっ?」
梓「………」
梓「………」
梓「み…密林じゃないですか!?律先輩!」
梓「(…な、なに?!この亜熱帯はいったい……?!
だって律先輩は一番きれいな腕してたのに…!
なんで…?腕の毛が下の毛に移動しちゃった…?!
たくましいくらい生えてるよ…?!」
律「み…密林って…余計なお世話だっっ!」///
唯「あずにゃん…なんでそんな事を…」
紬「理由を聞かせて頂戴?」
澪「私も是非聞きたいな」
梓「あ…あの…」
梓「す…すみませんー!軽音部で誰が一番毛深いか知りたかっただけなんです!」
澪「ど…どういう事だ?」///
唯「よくわからないよ?あずにゃん」
梓「で、ですから…自分と比較して誰が一番毛深いのかな…と
本当にそれが知りたかっただけなんです!」
紬「ほ、本当にそれだけ?」
梓「はいっ!その答えが知りたくて…本当にその一心で」
唯「ねぇ…もう許してあげようよ、あずにゃんも反省してるし」
紬「そうね、もうこんな事しないでね」
澪「本当だぞ…私達だから良かったものを…」
律「梓、反省しろよ?」
梓「はい!もう二度とこんな事は致しません!」
律「それに…梓の気になってた事の答え、見つかって良かったな」
梓「へっ?」
唯「あ…あずにゃん…」
紬「…びゅ…ビューティフル……」
澪「うわぁ…」
律「誰が一番か…わかったろ…?」
梓「………」
梓「………」
梓「(律先輩越え…余裕か……)」
その日を境に私は思い知った
体毛は部分的に量の差があると
眉毛が薄いから、腕毛が薄いから、すね毛が薄いから
そんな理由で勝手に妄想を膨らませると
とんでもなく痛い目を見ることになると
体毛が濃い、体毛が薄い
このふた言葉で個人をひとくくりにするものじゃない
それをいたく感じた中野梓16歳の夏だった
終わり
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