俺「何でも屋をやるぞ」俺「俺も」 (60)

俺「先週から始めた何でも屋を今日も営業していくぞ」

俺「おう」

俺「古本屋だけじゃきついからな」

俺「利鞘も少ないし」

俺「その点、何でも屋を兼業したら売り上げがどんどん上がってきた」

俺「店舗を改装増築する手間もないから純利益がぐんぐん伸びるね」

俺「じゃあ今日も業務を始めるぞ」

俺「了解」

少年「」

俺「いらっしゃいませー」

少年「これお願いします」ドサッ

俺「漫画が・・・・・・8冊ですね」

少年「はい」

俺「じゃあ査定しますので少々お待ちくださいね」

俺「」カタカタカタ

俺「」カタカタカタ

俺「」カタカタカタ

俺「・・・これくらいになります」スッ

少年「・・・もう少し高くなりませんか?」

俺「結構ですし、再版も今出てるのでこれ以上にはならないですね」

少年「そうですか・・・」

俺「・・・」

俺「でも、8冊持ってきてくれたからちょっとだけおまけして」カタカタ

俺「これでどう?」スッ

少年「・・・はい!」

少年「それでお願いします」

俺「ではこちらは買い取らせていただきます」チャラッ

少年「ありがとうございました!」チャリ ギュ

ウィーン ウィーン ピシャン

俺「ありがとうございましたー」

俺「ふう」

俺「古本とはいえ品揃えを充実させるのも仕事だからな」

俺「そうだな」

俺「とはいえ古本だけじゃあんまり儲けられないんだよな」

俺「でもこの辺は変わった客が多いから、何でも屋は結構当たりだな」

ウィーン

高校生「」

俺「いらっしゃいませ」

高校生「あのさ、喧嘩売ってる?」

俺「喧嘩ですか?」

高校生「喧嘩売ってるのかって聞いてんだよ」

俺「・・・はい、売ってます」

俺「口喧嘩、殴り合いの喧嘩、殺し合いの喧嘩など取り揃えております」

俺「カップルの方には痴話喧嘩をお勧めしておりますが」

高校生「いらねえよ」

俺「そうですか」

高校生「じゃあこの殴り合いの喧嘩買おうか」スッ

俺「ありがとうございます」スッ

俺「こちらお取り扱いの難しい商品ですのでご説明させていただきます」

高校生「ん」

俺「"使用上の注意"」

俺「"本品を取り扱う際は、他者や周囲の物を巻き込む可能性の少ない広い場所で使うこと"」

俺「"二人以上で使用が可能となりますが、不特定多数の人数が使用すると収拾が取れなくなる可能性があります"」

俺「"ごく稀に、重度の骨折や出血多量、臓器破裂などが起こる場合があります"」

俺「"本品を使用した際に起こった怪我、破損、人災や天災は一切当方では補償致しませんのでご了承ください"」

俺「・・以上ですがよろしいですか」

高校生「おう」

俺「ではこちらが商品になります」

俺「ありがとうございましたー」

俺「いらっしゃいませー」

男性「あの、因縁を買ってしまったんですけど」

俺「はい・・どちらで」

男性「えーと・・向こうの信号で」

俺「路上ですねぇはい」

俺「・・・それは押し売りですか?」

男性「ん~~~・・・そうなんですかねぇ?」

俺「こちらで買うこともできますが」

男性「出来ますか」

俺「売っていただければ」

男性「じゃあお願いします」

俺「分かりました」チャラ

男性「ありがとうございます」チャラ

男性「あとですね」

俺「はい」

男性「反感も買ってしまったんですよ」

俺「それは路上・・・?」

男性「えーと会社・・・」

俺「会社、なるほど」

男性「ついさっきなんですけどね」

俺「どなたから?」

男性「女子社員達からですね」

俺「一人ではないと」

男性「はい」

俺「じゃあそれもまとめてこちらで買いましょうか」

男性「お願いします」

男性「それと恨みも買ってしまったんですよね」

俺「それは女子社員とは別・・・?」

男性「いや一緒です」

俺「一緒でしたか」

男性「恨みを買ってしまったから反感も買ってしまったというか」

俺「他の人たちが、この人ならいろんなものを買ってくれると?」

男性「そういうわけじゃないと思うんですけど」

俺「そうですか」

俺「反感と恨みの買い取り価格はこれくらいになりますがいかがですか」スッ

男性「・・・はい、いいです」

俺「では確かに買い取りましたので」ジャラジャラ

男性「すいません」ジャラジャラ

俺「ありがとうございました」

俺「またお越しくださいませー」


俺「はあーーーーっっ」

俺「結構疲れるんだよなー」

俺「お疲れ―」

俺「なんつーのかな、気疲れなんだよね、肉体的疲れじゃなくて」

俺「わかるわかる」

俺「少し休憩してくるからその間頼むわ」

俺「はいよ」

俺「いらっしゃいませー」

女「すぅいませぇ~ん」

女「あのぉ、媚って売れますぅ~?」

俺「はい、出来ますよ」

俺「程度や品質によって価格は上下しますが」

女「え~と~、さっきぃ~、カ↓レシ↑からぁ~」

女「お金貸してくれって頼まれてぇ~」

女「でもぉ~あたしぃ~バッグ買っちゃったじゃぁ~ん?」

俺「あー、まぁ知らないですけど」

女「だからぁ~、お金が欲しいなぁと思ってぇ~★」

俺「そうですか」

俺「・・これなら結構品質もよさそうなので」カタカタカタ

俺「これくらいでどうでしょう」スッ

女「うっそぉマジでぇ~!!」

女「こんなにもらえるなんてチョー最高~!」

女「いいよいいよ!全然オッケー!」

俺「では買い取らせていただきます」ペラッ

俺「こちらが買取価格となります」スッ

女「」

女「こんなにもらえるだなんて、本当に助かりました」

女「どうもありがとうございます」


ウィーン ウィーン ピシャ


俺「買い取った瞬間性格変わる奴いるからめんどいんだよな」

俺「前なんか気弱な性格買ったら一気に乱暴になった奴もいたし」

俺「でもそれをどこかで楽しんでる俺がいる」

男「すいません」

俺「いらっしゃいませ」

男「あの、俺を高く買ってもらえませんか」

俺「はい?」

男「俺を、高く買ってください」

俺「えー、特技は?」

男「歌です」

俺「趣味は?」

男「歌です」

俺「資格は?」

男「歌です」

俺「・・・」

男「高く買える男だと思うんですけど」

俺「・・・」

俺「買いかぶりすぎです」

男「・・・」

俺「友人で、いつでも親身になって相談に乗ってくれる整体師がいるんですが」

俺「私、あいつのことは高く買ってるんですよ」

俺「でもあなたに、あなたを高く買うだけの理由がない」

男「・・・」

俺「と言うわけで・・・」

男「・・・」

男「すいませんでした」

ウィーン ウィーン ピシャ

俺「ああいうやつもいるんだよな」

俺「卵がさ」

俺「無事に生まれるか食われるかも分かんない卵が」

俺「・・・」

俺「・・・」

俺「おかえり」

俺「ただいま」

俺「少し休んだら楽になったよ」

俺「それはよかった」

俺「じゃあ次はお前が休憩しろよ」

俺「はいよ」

俺「ありがとうございましたー」

俺「・・・」

俺「ふあ~ぁ」ノビー

俺「今日はこれで終わりだな」

俺「ああ」

俺「これ整理してから閉めるか」

俺「おう」

俺「・・・」

俺「夕飯何がいい?」

俺「今日は・・ラーメンかな」

俺「俺は炒飯だったんだけど」

俺「・・・じゃあラーメン炒飯セット頼んで分担するか」

俺「いいな」

俺「それで決まりってことで」

俺「」テクテク


♪♪♪~♪♪~~~


俺「ん?」

俺「・・・?」

俺「あっちから聞こえる」

俺「どうする?」

俺「行く」

俺「分かった」

俺「駅前の方だな」

男「どうし~ても~君だ~けが~忘れられなく~て~♪」

男「また今日~も~ひとり~ごと~つぶやくばかり~で~♪」

俺「」

俺「路上ライブなんてやってたのかさっきの人」

俺「結構人集まってるな」

俺「・・・」


俺「特技、趣味、資格、歌」

俺「ってだけはあるな」

俺「そうだな」

俺「・・・」

俺「・・・」

男「どうもありがとうー!!」

パチパチパチパチパチパチ フゥー フゥー ウェーイ

男「」

俺「」

男「・・・あっ、さっきの」

俺「どうも」

男「・・・どうでした?」

俺「・・良かったですよ」

男「でしょ?でしょ?」

俺「でも、・・・いつまでも路上でやってたら売れませんよ」

俺「何かアテはないんですか」

男「・・・」

俺「・・・」

俺「テレビオーディションとか受けてみたらどうですか」

男「・・・」

俺「最近はテレビ番組でデビューする歌手ってのもいますから」

男「・・・明日」

男「そのオーディション受けるんですよ」

俺「!」

男「生放送のオーディション番組で」

男「・・・」

男「路上で応援してくれるみんなの期待に応えたいけど」

男「正直、不安で・・・」

男「・・・」

俺「・・・」

男「でも、こうやって路上でやってれば、少ないけど金も稼げるし」

俺「・・・」

俺「・・・」

俺「・・・あんまり、自分を安売りしない方がいいですよ」

男「・・え?」

俺「自分で安値をつけたら、その値段になってしまいますから」

男「・・・」

俺「・・・」

男「・・・」

俺「・・・頑張ってくださいね」スタスタ

男「・・・」

翌日

俺「さて今日もよろしくお願いします」

俺「よろしくお願いします」


客「すいませーん」

俺「いらっしゃいませ」

客「煮え湯って売ってますか?」

俺「はい、ありますよ」

俺「どれくらいの煮え湯がいいですか」

客「そりゃあ・・・とびっきりのを」

俺「とびっきり」

俺「じゃあこれなんてどうでしょう」ボコボコボコボコ

客「いいですねえ!」

俺「あと、苦汁もいかがですか」

客「お願いします」

俺「どれくらいのを?」

客「とびっきりのを!」

俺「では・・・これはどうですか?」ドロ・・・ドロ・・・

客「うんうん!いいです!」

俺「一応飲ませる用の苦汁と煮え湯はお求めいただけるということですが」

俺「なめさせる用の辛酸はいかがですか?」

客「それもぜひ!」

俺「はい、こちらが辛酸ですね・・・ウッ」ツーン

客「あ、ど、どうもぉ・・ウッ」ツーン

俺「ありがとうございましたー」

ウィーン

男「」

俺「いらっしゃいませ」

男「・・あの」

俺「・・はい?」

男「・・・」

俺「・・・」

男「・・・あの、自信を、売ってくれませんか」

俺「・・・自信ですか」

男「はい」

俺「・・・どれくらいの」

男「・・・」

男「プレッシャーに押しつぶされない」

男「自分に負けないくらいの、自信を・・・」

俺「・・・分かりました」

男「えと、いくらしますか」

俺「」スタスタ・・・  ・・・スタスタ

俺「こちらが自信になります」

男「値段はどれくらいですか」

俺「これが一番ちょうどいい自信かなと思うので持ってきたのでどうぞ」

男「あの!おいくらなんですか!!!!」

俺「・・・」

男「・・・」

俺「・・・」

俺「・・・」

俺「・・・不安を、売ってください」

男「・・え」

俺「それが、この自信の・・・代金です」

男「・・・」

俺「・・・」

男「・・・」

俺「・・・」ニコ

男「・・・」

男「・・・」

男「・・・」コク

ウィーン ウィーン ピシャ

俺「ありがとうございましたー」

俺「・・・ったくよ~」

俺「ん?なんだよ」

俺「味な真似しちゃって」

俺「うるせぇな~」

俺「あんな顔されてたらなんとかしなきゃって思うだろ」

俺「へへ、まぁな」


俺「番組、何時からだっけ」

俺「20時からじゃないか」

俺「よし、それまではきっちり仕事やろう」

俺「おう」

ウィーン

客「」

俺「いらっしゃいませ」

客「ここに良い道草は置いてますかね」

俺「はいありますよ!」

俺「噛みごたえと舌触り、のどごし・コク・キレで特・上・中・並とありますが」

客「どれがいいのかしら」

俺「お値段は少し張りますが、特の道草は噛みごたえ抜群で長く噛んでいられますよ」

客「じゃあ特の道草をいただこうかしら」

俺「ありがとうございます」

俺「よし、これで今日は終わりだ」

俺「じゃあ帰ろうか」

俺「今日はどうする」

俺「家で飲む気分かなぁ」

俺「いいね、宅飲み」

俺「今日はバイクだしな」

俺「そうと決まれば行きますか」

ウーウーウー ピーポーピーポー

俺「・・・お?」

俺「事故かよ・・・」

俺「はぁ・・・」

男「・・・」

俺「!!!」

俺「大丈夫ですか!!」

男「俺は大丈夫だけど・・・」

男「もうだめだ・・・もうだめだ・・・」

俺「車ですか、バイクですか」

男「タクシーなんだけど、事故車で道ふさがれちゃって・・・」

男「しかも破片がタイヤに当たってパンクしちまって・・・・」

俺「・・・」

俺「・・・乗ってください!」

男「え?」

俺「ここにいるより、バイクに乗った方が早いです!」

俺「バイクならここの横をすり抜けられます!」

男「・・でも」

俺「この際仕方ないでしょう!さ、早く後ろに乗って!!」

男「・・・」

俺「早く!!!」

男「・・・わかった!」

俺「・・・しっかりつかまっててくださいよ・・・!!!」ブロロロロロオオオオオン!!!!!

キュワァァァアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ・・・・・ ァァァァ・・・・ ァァァァ・・・・ ァァ・・・

キュルキュルキュルキュルキュル キャキャキャキャキャァァァァァァァァァ!!!

俺「着きましたよ!」ハァハァ

男「ありがとう・・・」

俺「もうすぐで始まるんじゃないですか?!」

俺「急いで!!」

男「・・・ありがとう!!」ダッ

俺「男さん!!!!」

男「?」

俺「・・・」

俺「あなたには、誰にも負けない自信があります!」

俺「それは、私が保証します!!」

俺「全力で戦ってきてください!!!」

男「・・・・おう!!!」グッ

俺「・・・」

警官「・・・」

俺「・・・」

俺「やっぱり来てましたか」

俺「そりゃあ高速で二人乗りしてたらそうなりますよね」

俺「さ、行きましょうか」

男「」スーハースーハースーハー

男「」スゥゥゥゥーーー

男「」

男「」ハァァァァーーーーーー

「あなたには、誰にも負けない自信があります!」

「私が保証します!!」

男「・・・」

男「よし、やるぞ」グッ

司会「と言うわけで、暫定一位は94点のNo.36さんになりました!」

司会「さぁ続きましてエントリーNo.37、男さんです!!!」


男「東京都から来ました、男です。よろしくお願いします」

司会「今回歌っていただく歌はご自分で作詞作曲された曲だそうですね」

男「はい、今回のために作った曲を持ってきました」

男「路上で鍛えた自分の全てを出して勝負したいと思います」

司会「わかりました」

司会「それでは張り切って歌っていただきましょう、男さんで」

司会「高値の花!」

・・・・・・・・・・・・


客「御免ください」

客「若い時の苦労って売ってます?」

俺「そうですねー、どれくらいの苦労がいいですか?」

客「そこそこきついくらいのが」

俺「じゃあ・・・」ゴソゴソ

俺「これはどうでしょうか」

客「ん~・・・もうちょっときつくてもいいですね」

俺「だったらこっちはどうですか」

客「・・・」

客「・・はい、これにします」

俺「ありがとうございます」

客「これ、代金ね」トンッ

俺「はいまいど!」

ウィーン

俺「どうもありがとうございましt・・・」

男「」

俺「・・・」

男「・・・」

男「どうも」

俺「・・・」

俺「どうも」

男「悪いね、俺のせいで」

俺「・・・まぁいいですよ」

俺「パトカー乗るのちょっと楽しかったし」

俺「・・・で、今日はなんですか」

男「今日はな・・・」

俺「お詫びに来たんじゃないんでしょう?」

男「・・・」

男「あぁ、そうだ」

男「俺を、高く買ってくれないか」

俺「・・・」

俺「無理ですよ」

俺「・・・」

俺「だって、値がつけられないですから」


                       ―完―

どうも、オレオです。
今回はシンプルにまとめてみました。
楽しんでいただけてとても嬉しいです。


姉妹過去作はこちら
俺「疲れた」俺「俺も」
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1858719.html
俺「眠い」俺「俺も」
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1859014.html
俺「腹減った」俺「俺も」
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1859201.html
俺「憎い」俺「俺も」
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1859350.html
俺「行くぞ」俺「俺も」
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1859532.html
俺「人生ゲームをやるぞ」俺「俺も」
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1861286.html#comments

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