【咲安価】京太郎奇怪綺譚:拾弐巻目【都市伝説】 (975)

                                 ,.ー-‐.、
                               ヽ、   ヽ  __
                               /,..-ニ‐- '"_,..)
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                          ̄

・咲-saki-の安価スレです
・原作とは違う性格付け・設定付けをされたキャラが登場する可能性があります
・現実に実在する人物、団体とは一切関係がありません。ここ重要
・色んな意味で広い目で見てください
・何かおかしい事があればそれはフリーメイソンってやつの仕業なんだ


前スレ
【咲安価】京太郎奇怪綺譚:拾弐巻目【都市伝説】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363702849/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1364398114


立て乙!!!!

おっつん

あ、やってもうた

拾参で脳内変換おねがいしますー

クロチャーすげえ!

早くも一角崩せたし、これでかなり有利だな

左右からシザーマン。
ハサミを用いた左右同時攻撃。

正面からてけてけ。
その豪快な腕力から繰り出される豪快なテレフォンパンチ。


三方向からの同時攻撃に、京太郎と穏乃は対応を迫られる。


京太郎「(いいか、タイミングと呼吸を合わせろよ)」

穏乃『分かってるってば、頼りにしてよ』

京太郎「(いち)」

穏乃『にの』

京太郎「さんっ!!」


てけてけの攻撃が一番早い。
そう判断し、彼等は振るわれる拳に靴裏を合わせるようなキックを放つ。
軌道を逸らしつつ、脚で押してその威力を高める一撃。

てけてけの腕力に、彼等の強靭な脚力が加わった破壊的な一撃は。


右側に軌道を逸らされ、二体のシザーマンの内一体に直撃した。



京太郎「柔良く」

穏乃『剛を制す! ……だっけ?』

京太郎「その通りだ、穏乃! 100点やるよ!」



京太郎の行動を選択して下さい
・攻撃、必殺、防御
・装備変更
・アイテム使用
・フォームシフト
・ネクサスシフト
>>28


てけてけ判定
>>30

シザーマン判定
>>31

なんにせよ、攻撃だ攻撃
先が読めないのは今に始まった事じゃねえ

こういう時は攻撃だ

>>25
おまかせあれ!

ほい

行動書いてなかったので安価下です
でも安価下になってよかったんじゃないかな、玄ちゃん


【#シザーマン攻撃てけてけ必殺】


攻撃VS必殺
     攻撃


0+7+10+10+5-10=22

9+8+10-6=21

0+1=1


京太郎&穏乃の攻撃サイド確定!


60×2-50+(22-1)=91ダメージ!


シザーマンB、撃破!

絆パワーが・・・絆パワーが来てる。確実に

喉元に向けて突き出されるハサミ。

京太郎はそれでスウェーでかわし、体を起こさず捻った勢いをそのまま足に乗せる。

そして渾身の、後ろ回し蹴り。

その一撃はシザーマンの側頭部に命中し、その存在の根を刈り取った。


京太郎「これで、残るはてけてけ一人か」

穏乃『やっべー、今日私大活躍じゃない?』

京太郎「はいはい大活躍大活躍」

穏乃『もっと褒めようよー!』



軋む骨。
歪む表情。
震える筋肉。
地を鷲掴む指。
大地を押し、その反動で身体を空へと舞い上がらせんとする掌。

次の一撃に、必殺の意思を込めてくる。

そんな確信があった。



京太郎「気を抜くな」

穏乃『あいよっ』

京太郎「頼りにしてるんだから、俺がもっと安心して信じられる位しっかりしてくれ」

穏乃『……まっかせときなって!』



そして、てけてけは跳び上がった。



京太郎の行動を選択して下さい
・攻撃、必殺、防御
・装備変更
・アイテム使用
・フォームシフト
・ネクサスシフト
>>58


てけてけ判定
>>60

絆(ネクサス)!

そんでもって攻撃!

姫子
ネクサス
攻撃

ネクサス
攻撃

【#オーラス必殺】


攻撃VS必殺


ネクサスシフト発動!
HP全回復!


4+6+35=45

6+4+10-6-15=-1


京太郎・ネクサスの攻撃サイド確定!


264×2-140+(45)=431ダメージ!


てけてけ、撃破!

都市伝説第二陣突破!

皆さんの勝利です!

空中から跳びかかり、その豪腕を組むてけてけ。

組まれた両手はハンマーのように振るわれる。
当たれば鉄筋コンクリートすら粉砕するだろう。

だがそんな一撃を、彼と彼女は一歩引くだけで悠々と避け。


京太郎「……ネクサスッ!!」


脚で大地を踏みしめ、膝を回し、腰を捻り、身体の芯を意識して、肩を綺麗に動かし、肘を回し、拳を握り。


一撃必殺の正拳突きを、光とともに敵の頭蓋に叩き込んだ。



京太郎「……ふぅ」

京太郎「(ここまで短時間にネクサスを連続で使ったのは、初めてかもしれん)」

姫子『気ぃ抜いてる場合じゃなかよ?』

京太郎「……まさか。もうですか?」

姫子『おおあたりー。ここに私達が来たんは、そのためやけん?』

京太郎「ですよねー。ああ、マジでギリギリだった」


事前に用意されていたポイントへ。
射撃に適した、厳選された狙撃ポイント。
まだ距離は遠いが、これでも近いぐらいなのだ。

これから襲来する、第三陣は。


白い魔神。白い悪夢。
力を付けた今ですら、彼等が恐れおののく存在。

しかもそれに加えて、今回は一体ではない。

白と黒、二対の魔神。



京太郎「勘弁してくれっての」

京太郎「……くねくねが、二体とかさぁ」

今日はつくづく黒フードの本気を見る日だな

【くねくね・量産型】

HP:111

ATK:0
DEF:0

・保有技能
『壊心の一撃』
心は豆腐、体は鎧。
力は要らない。突けば崩れる。
敵味方問わず全ての判定値補正を全て0にする。
自身の攻撃サイドが確定した場合、敵のHPを強制的に0にする。
倒した敵を【永久発狂】させる。

量産型って男の子だよな

これ完全コンマ勝負か?
強制HP0ってシズの不倒不屈で耐えられる?

量産型って付くだけで弱く感じると言う都市伝説

 


    声が、聞こえる。



 

衣「……ふぅ」

純「大丈夫か? 疲れたか、衣」

衣「大丈夫だ。このくらい」

透華「……無理は、いけませんわよ」

衣「衣はもう子供じゃない。一人でだって、やっていける……」

衣「一人でも立派にやっていけるって、父君と母君に誇ると、そう決めたんだ」



純「……寂しいこと言うなよ、衣。お前が今背中を預けてるのは誰だ?」

衣「え?」

透華「貴方の後ろに居るのは、貴女の家族です」

透華「貴女の事が大好きな、家族です」

透華「頼って、良いんですわよ」

純「気張りすぎるな。お前の後ろには、俺達がいる」



「もっと頼れよ。家族だろ?」

「もっと心から信じなさい。わたくし達は、家族です」



衣「……家族」

衣「家族、か」

衣「うん、そうだ。衣達は、家族だった」




衣「ゆくぞ! 友の為、家族の為、未来の為、我ら数多の者達の先駆けとならんッ!!」

純「おうっ!」

透華「行きますわよ!」





宥「……負けない」


淡「負けてなんか、いられない」


宥「『赤マント』に」


淡「『ホシガミ』に」


宥「怖くて他人をただ遠ざけてた、あの頃の私なんかに」


淡「興味のないフリしてただ寂しいだけだった、あの頃の私なんかに」


宥「昔の、情けない自分なんかに」


淡「昔の、バカだった自分なんかに」




「「自分なんかに、負けてられないっ!!」」

11話の時も思ったけど、これもう最終回でいいよね!

【都市伝説第三陣】



http://www.youtube.com/watch?v=qTa7XrlYBR4

そういやおやっさん何してるんだろ

今日の>>1は静かに燃える曲をチョイスするな

瞳を閉じる。

この狙撃に、瞳は必要ない。


京太郎「(……声が、聞こえる)」

京太郎「(不思議だ)」

京太郎「(外したら終わりで、外したら死ぬかもしれないってのに)」

京太郎「(こんなにも、気持ちが落ち着いてる)」


銃を構える。
以前必要だった周囲の観測状況も、今となっては必要ない。

進化した姫子の能力は、以前よりも強く京太郎と結びついている。

ゆえに、直接干渉できる。

二人が以前の戦いよりもずっと強い、そんな絆を育んできた成果だ。



姫子『5。4。3。2。1』

京太郎「(……当たれ)」

姫子『……発射!』



そして、銀の流星が放たれた。




京太郎の行動を選択して下さい
・攻撃、必殺、防御
・装備変更
・アイテム使用
・フォームシフト
・ネクサスシフト
>>107


くねくね白判定
>>109

くねくね黒判定
>>110

あ、ミス。今のナッシー!

よっしゃ!何にしよう…

って考えた瞬間の「あ、ミス。今のナッシー! 」わろたww

瞳を閉じる。

この狙撃に、瞳は必要ない。


京太郎「(……声が、聞こえる)」

京太郎「(不思議だ)」

京太郎「(外したら終わりで、外したら死ぬかもしれないってのに)」

京太郎「(こんなにも、気持ちが落ち着いてる)」


銃を構える。
以前必要だった周囲の観測状況も、今となっては必要ない。

進化した姫子の能力は、以前よりも強く京太郎と結びついている。

ゆえに、直接干渉できる。

二人が以前の戦いよりもずっと強い、そんな絆を育んできた成果だ。



姫子『5。4。3。2。1』

京太郎「(……当たれ)」

姫子『……発射!』



そして、銀の流星が放たれた。




京太郎の行動を選択して下さい
・攻撃、必殺、防御
・装備変更
・アイテム使用
・フォームシフト
・ネクサスシフト
>>111


くねくね白判定
>>113

くねくね黒判定
>>114

姫子
攻撃
というか今回姫子かネクサス以外選んだらどうなるんだ?

姫子
カタキウチ
防御

姫子防御

姫子 カタキウチ 防御

てょ

うむ

【#白攻撃黒攻撃】


     攻撃
防御VS
     攻撃


2+5+6=13

2+1=3

4+2=6


京太郎&姫子の攻撃サイド確定!


135×2-0+(13-3)=280ダメージ!


白いくねくね、撃破!

ハラハラする
補正無しで行動パターンも分からんからこっからは運かな

流星は夜を切り裂き、悪夢の額を撃ち穿つ。

一撃だ。
一撃で、白いくねくねはその存在を砕かれた。

くねくね自身が以前より弱くなっているとはいえ、それだけが要因ではない。

これは彼等が日々成長してきたという、その証明。
弛まず歩んできたという。その証明だ。


京太郎「これでラストだ!」

姫子「あっ、たれぇっ!」



白いくねくねが消滅した。
その事に気付き、一瞬足が止まった黒いくねくねを狙い撃つ。

銃口を向け、銃弾が走るラインを推測し、銃身を固定する。

あとは柔らかく、羽に触れるように、引き金を引く。



姫子『5。4。3。2。1』

京太郎「(……決まれ)」

姫子『……発射!』



それだけだ。




京太郎の行動を選択して下さい
・攻撃、必殺、防御
・装備変更
・アイテム使用
・フォームシフト
・ネクサスシフト
>>129


くねくね黒判定
>>131

姫子防御カタキウチ

てょ

【黒くね攻撃】



防御VS
     攻撃


0+1+6=7

2+6=8


くねくねの攻撃サイド確定!


『壊心の一撃』発動!

『アイビーの種』発動!

無効化されます

咲さんの置き土産のおかげで助かった

咲さんの形見役に立った

宥姉との絆の代わりに咲ちゃんとの絆が砕け散ることに

ひっでーなお前ら

発射された銀の弾丸は一直線にくねくねへと向かい……そして、回避された。

一度、白いくねくねを撃った。
弾道の軌跡を見せた。
それが命中しなかった理由。


京太郎「一回で見切るか……」

姫子『……! 右、回避!』

京太郎「うおっ!?」


京太郎のすぐ近くに突然現れたくねくねのヘナっとした一撃を、死に物狂いでかわす。


短距離であれば瞬間移動可能。
高速機動ほどではないが、くねくねも距離を短時間で詰めることに関してはエキスパートだ。


ましてや今の彼は、目を閉じた状態。
感覚を完全に姫子に任せている状態。
命すら彼女に託している状態だ。

眼を閉じたまま、この敵を仕留めなければならない。


京太郎「(触れられたら、多分それでアウトだな)」

京太郎「来いよくねくね。背筋張って生きてる奴と、そうじゃない奴の違いを教えてやる」


瞬間、消えるくねくね。

現れたのは彼の背後。そのまま触れ、彼も自身と同じモノにしようとした、その時——




京太郎の行動を選択して下さい
・攻撃、必殺、防御
・装備変更
・アイテム使用
・フォームシフト
・ネクサスシフト
>>158


くねくね黒判定
>>160

防御

防御

ほい

あ、ああああああぶなかった

触れてもアウトとかホントこのスレのくねくねは原典と比べて凶悪だな!
原典なんて見てもくねくねだと分からなければオッケーだったり見て発狂した人を見るのはオッケーだったりしてるのに

その手が。
横合いから飛んできた、何も無いところから飛んできた弾丸に弾かれた。


京太郎「ま」

姫子「どう撃ったって、私達二人の弾丸は無敵やけん」


二発目、三発目、四発目。
次々とあらぬ方向へと撃ち出される弾丸。


それらは壁に、コンクリの地面に、電柱に、電灯に。

それぞれ当たり、跳弾し、まるで結界のように機能する。

そして全ての弾丸は、最初に放たれた弾丸を中心に固まるように集まり、その破壊力は集約され……



まるでショットガンの玉のように、くねくねの胴を打ち砕いた。



京太郎「もう、来んなよ」

京太郎「お前の相手は、少し心臓に悪いんだ」


声が、聞こえる。
先程まで聞こえていた不思議な声ではなく、物理的な声。

遠くから聞こえる、友人たちの勝利の雄叫びだ。


京太郎「……皆、勝ったか」

京太郎「乗り切った。皆で、乗り切った」

京太郎「……ぁぁ」



京太郎「よっしゃあああああああああああッ!!!!」


京太郎「勝ったぞコノヤローーーッ!!!!」




【#くね攻撃くね】


防御VS
     攻撃


5+0+6=11

1+5=6


京太郎&姫子の攻撃サイド確定!


135×2-0+(11-6)=275ダメージ!


黒いくねくね、撃破!

西ルート侵攻軍全滅!

大侵攻を乗り切りました!

リアル時間で四時間は戦ってたしな、うん

京太郎「終わっ、たァッーー!!」


格納を解除し、姫子を送り返す。
姫子は格納前は警察署の会議室に居たようなので、そこに帰ったのだろう。


地面に疲れ果てて寝転んだ彼の耳に、近くを話しながら歩いているであろう人達の声が聞こえてくる。

その声は、心の隅で気にかかっていた。
だが聞きたくはなかった、そんな矛盾する感情を向けている人物の声。



「お前、あれほど戦うなと言ってただろう」

「無理無理、逃げられなかったし」

「……はぁ。だからわざわざ俺が迎えに行くハメになったんだがな」

「でも黒いおにーさん強いねー。あのまま戦ってれば私達なら倒せたんじゃない? あのお姉さん」

「そこら辺は計画上の問題だ。お前が気にすることじゃない」

「……はーい」

「すねるなというに」


跳ねるように飛び起きる。


京太郎「お前……いや、お前ら」

黒「……うげっ」

士栗「あ、おにーさん。奇遇だねー」


黒フード。
青山士栗。

ここで会うには考え得る限り、最悪の相手。

コンディションも状況も最悪だ。



京太郎「くっそめんどくせぇタイミングで……!」

>黒「……うげっ」

黒フードさんの反応がどんどんフレンドリーにww

というか、黒フードさんにも力があることが判明。
のちに京太郎と一騎打ちで戦いそうな予感。

>士栗「あ、おにーさん。奇遇だねー」
??「こんな奇遇があってたまるか〜〜!!」

黒「ご苦労さん、とでも言ってやろうか」

京太郎「お前、誰のせいで……」

黒「ああ、今ここでどうこうする気はないさ。士栗もうるせぇしな」

京太郎「お前の言葉なんか、信用……」

士栗「あ、おにーさん聞いてよ! さっきさー!」

京太郎「う、うん?」

士栗「おにーさんのあの面倒な鎧? の能力の事とか考えてたらさ」

士栗「あのお姉さん?に追い詰められた時、色々出来るようになったんだよね」

士栗「見てて見てて!」


とことこと歩きながら、その辺りから戦いで砕けたコンクリートの石片を拾う少女。

コンクリートを二つ重ね、見ててーと京太郎へと声を張り上げる。


黒「なあ、須賀京太郎」

京太郎「んだよ」

黒「お前、『自分にしか出来ないこと』を考えた事はあるか?」

京太郎「は?」

黒「どんなジャンルにおいても『専売特許』というものは希少だということさ」

黒「土壇場での覚醒も、秘められた能力の開花も、都合の良い新たな力も」

黒「全て、お前の専売特許じゃない」


訝しげる京太郎をよそに、士栗は二人に魅せつける形で『それ』を始める。

彼女は拳を振り上げ、二つ重ねたコンクリートを空中で叩く。

そして。

拳に触れていなかった方のコンクリートだけが、『粉砕』された。
文字通り、砂になるように。


京太郎「……は?」

士栗「これで次はもう、あの鎧みたいなのの能力で防げないよね?」

何この糞チート!
貫通スキル取得して来やがった!

【青山士栗/口裂け女】(弱体化.ver)


HP:666

ATK:666
DEF:666


・保有技能

『Sigrid/約束された勝利』
天地を砕く剛力。音を置き去りにする神速。刃筋の立たない身体。
ただ純粋に、強く。ただ純粋に、在る。ただ純粋な、力。
自身の判定値を+100する。
「ダメージを無効にする」効果を任意で無効にする事が出来る。

やはりここでドラゴンボール並みのインフレを必要としている!

京太郎「お前、まさか、士栗の経験値稼ぎに、今回……」

黒「まあ、そういう側面が在ったのは否定しない。結果だけ見れば大成功だしな」

京太郎「……っ!」


『どう転がっても損がないように』。

確かにそれは策の基本であり、理想とも言える。

だが。
だが、こんな事を誰が予想していたのだろうか。

この男があれだけの戦力を用意しておきながら、それでも勝利を確信していなかったと。

誰が、予想できるのだろうか。


黒「おい士栗、先に帰ってろ」

士栗「……えー?」

黒「……ああ、分かった分かった。コイツに今は危害を加えないと約束してやる」

士栗「約束だよ? 破ったら……」

黒「いいからさっさと帰れ」

士栗「ん。んじゃまたねー、おにーさん」


爆音。コンクリートが踏み砕かれる音。
数百メートルをひとっ跳びする勢いで、彼女は跳び去って行った。



黒「……ふむ」

京太郎「……なんだよ」

黒「今は、12月半ばだな」

京太郎「それがどうした?」

黒「お前に、次の年は来ない」

京太郎「は?」



黒「これは宣誓でもないし、脅迫でもないし、宣戦布告でもない」

黒「お前はこの年が終わる前に、死ぬ」

黒「これは絶対の事実で、避けられない運命だ」

黒「お前が生きて新たな年の夜明けを見る事はない」

黒「お前の物語は」





黒「そこで、終わる」





第十四話:完

先生、いつぞやのクリスマスイベントは笑って過ごしたいです……

この前も死ぬって言ってなかったっけ?

なんだか黒フードさんも焦ってるように見えてきた…

【次回予告】



「お前の生き方は、間違ってるんだよ」



「見れば分かる。このフードの下の、俺の顔を」



「ゲームでもしようじゃないか」

「この街のどこかに八つ」

「『コトリバコ』という箱を隠した」

「全部見つけられたその時は、お前達に『真理』を教えてやる」



「天の向こう側って、何があるんだろうね」

「天国でもあるんじゃねーかな」

「星の向こう側なら、きっと素敵なとこなんだろうね」



「……救いようがない。救われない。救われちゃならない愚か者だ」



「京太郎が、死ぬ」



「ああ、そういう事か……」



「俺の生き方は」

「間違っていた」



その日。


この物語の主人公、須賀京太郎は、その命を落とした。




第十五話:Other Side of the sky/天の向こう側

次回「京太郎死す」
ヂュエルスタンバイ!
だなこれ

ここまできてあれだが、まほシナリオの意味ってなんだ?

アレ?今まであった前編ってついてない

あれ、コトリバコって7種類じゃなかったっけ

本日の投下は以上です。皆さん、お疲れ様でしたー
予想以上に長引いた……平日に深夜までほんっと申し訳ない!
皆さんには頭が上がらんですよ


次回は黒フードさんがその重い腰を上げる回
負け惜しみとかじゃなく、今回の作戦の結果を黒フードさんは本気で成功だと思っております

あぐりちゃんは未だ成長の余地を残し、能力の応用の余地もある『成長するボス』
結局の所、地力で上回らないと勝てないタイプです


他のルートに行けば淡と共闘してホシガミと戦ったり、リゾートバイトが周囲の都市伝説と合体して合体都市伝説化したりした可能性も微レ存



では、今夜はこれにて。お付き合い頂き、感謝

レス返しは明日しますー。おやすみなさいませ

たしかに
結局鏡の意味がよくわからんかった

乙なのよー
結局、姫様が空気のまま終わった……

乙ー
そういや姫様空気だったな

現状ネクサスでもダメージ通らないからな
地力強化つったら竜華さんの料理くらいしか・・・
一体どれだけ食べればいいんだ

竜華さんに京太郎の家に泊まり込んでもらって3食+おやつを毎日作ってもらえばあるいは

おつー

鏡シナリオは黒フードの発言的にまだまだ伏線がたっぷりありそうだし、持ち越しかな

>>235
>>236
もう(嫁入りするしか)ないじゃん・・・

校長だっけ、大沼さん

あとどうでもいいかもしれんがスパロボOEガチで出るらしいぞ

ホントに出るみたい
ソースはファミ通

こんばん笑っていいともの友達紹介テレフォンショッキング

無くなってしまった時はビックリしました。でもしゃーないと言えばしゃーない


>>78
>>82
量産型の渋さと、世間一般におけるカスタム機や試作機との扱いの差について

>>80
まさしく今更ですが、前に書いた通り今は無理ですー
処理上の問題なんですけどね

>>98
おやっさんは避難誘導したりその能力で中央の管制部を守っていたり色々忙しかった模様
戦闘力ある人じゃないですし

>>108
特に何もないんじゃないですかね。くねくね相手なら、初手ネクサストリプル→姫子が最適手だったと思いますし

>>140
>>142
>>148
ファッ!?

>>166
フリーメイソンが一ヶ月でやってくれました

>>208
あれからもうリアルで三ヶ月。早いもんですね

>>217
申し訳ないが結局死ななかった城之内はNG

>>220
>>226
あの子達は本来四章で出番がある子達なので。三章の今回はゲストで顔見せだけなのです

>>221
・・・忘れてたテヘペロ

>>223
コトリバコは物語に語られるイッポウ〜チッポウと、作ってはならないと禁じられたハッカイがあるようです

>>229
>>231
小蒔「くねくねが出てきたら危ないから下がってて下さいとのお達しです」
小蒔「……釈然としません」

>>246
>>247
ひゃっふう



埋めネタどうしたものか

>>250!キミの意見を聞こう!

ペルソナのクロス小ネタ

あれで50レス分埋めろとか鬼畜ですか

じゃあご飯と風呂とその他もろもろ終わらせてからだらだら書きます

メガテン新作マダー?
悪魔デザインが素敵ですよね、4

ライドウはカヤちゃん可愛いのに出番なくて不憫

外伝やスピンオフくらい出番下さいよー

前スレで適当に埋めます

コトリバコとか初見怖いけど改めて見ると創作っぽいんだよな 洒落怖の名作はまあ捻くれた見方すると大体そうなんだけど
とか調子乗ってリゾートバイト読んでたら急に鳴り出すラップ音に生臭い異臭

構想してた咲×ペルソナスレと設定被っててワロタwww

……ワロタorz

前から思ってましたが王者つええ

『とんでもない説明書』という都市伝説を持ち髪の毛をドリルにする能力とか適当に設定したことが今になって悔やまれます


ラブコメかー
……ラブコメかー
三章も残り二話でしかもおっとこ臭いシナリオなのでラブコメは次の埋めネタになりますが、ご勘弁を!


>>260

>>267
さあ、躊躇わず書くんです!
いつ書く? 今でしょ!

別にラヴ(クラフト)コメディでもいいんやで

>>269

【きょうたろうにっき】


「俺は慄然たる思いで机の引出しから突如現れたその異形の物体を凝視した」
「それは大小の胸部を持つ者を組み合わせたとしか言い様の無い美少女の姿をしており、狂気じみた桃色が純白の顔と肌を彩っていた」
「彼女らは這いずり回るような冒涜的な足音で私に近付くと、何とも名状し難き声で俺と彼女らの子孫のおぞましき未来を語るのであった」
「また、彼女は時空を超越した底知れぬ人生の墓場に通じる紙状の婚姻届を有しており、この世の物ならざる奇怪な判子を取り出しては、俺を混迷に陥れるのであった」


「俺がこの日記を書くのも最後となるだろう」
「もはや奴等の好意に気付き生きているのは奴らを除けば俺だけだ」
「いずれ俺も・・・いや、そんな!あの手は何だ!窓に!窓に!」


こうですか?

しかしここの咲キャラはおどろくほどボッチ臭がしないな(一部除く)
みんなリア充的な感じ(一部除く)
原作に無い友人関係を各自で構築してて、それでいて全ての中心に主人公が居るって構図は素敵

あ、あの人も登場さえしてくれれば友達ぐらいできるはずだから……

こんばんワードプロセッサー


今夜21:30開始
世界一即戦力になる男、就職成功してたのか・・・
ちょっとびっくりです


>>283
>>284
す、菫さんとかてるてるの友達だし



ふむ・・・
http://togech.jp/2013/03/20/644
ちょっとR-18

この子は出そうか出すまいか考えている内に話が固まってしまい出せなくなったという裏話



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投下はっじめーるよー

絶望は崖と似ている。


気付けばどこにも進めず、降りる事も出来ず。
八方塞がりな現状に、ただ心を削られるのみ。


落ちれば地獄、周囲には何も無く、ただ一人ぼっちの自分がそこに居る。

何もせず何も出来ず何も起こらず、ただ時間が流れる実感だけが己の中にある。


その内立っている事すら出来なくなり、うずくまって膝を抱えて時間を過ごすようになる。


上も向けず、前も向けず、ただ俯いて下を向く。
少しだけ気紛れに顔を上げようとしても、下を向いている以上、見える物は眼下に広がる地獄だけ。


落ちるだけなら簡単だ。
死を選ぶだけなら簡単だ。

だが、絶望に呑まれてすぐに死を選べるほど人は強くもないし、弱くもない。


人の精神の根底には、『死の恐怖』という魔神が住んでいるがゆえに。


だからこそ、じわりじわりと『それ』は迫る。


『絶望に抱かれ続ける恐怖』が『死の恐怖』を凌駕した時、人は絶望を理由に死を選ぶ。



京太郎は、それを天江衣との関係で実感し。
誰の中にでも少なかれある『死を望む部分』を理解し。

また一つ成長した。それが11月の事件の顛末。


だが、誰も気付かない。誰も問題としていない部分がある。
それはあっても無くても変わらないのかもしれないが、彼に欠けている部分という事に間違いはない。

その事を彼は自覚しているし、だからこそ天江衣に決定的な言葉を投げかける事が出来なかったのだから。



須賀京太郎は大切な誰かとの死別を経験した事が無い。

あえて、もっと確信を突く言葉を選ぶのならば。


須賀京太郎は、心折れるような絶望をした経験が無い。

燃える街。
焼ける人。
焦げる空。


灼き尽くされた風景が、目の前に広がる。

……以前にも、一度見た風景。

リアルよりもはるかにリアリティのある情景。

前回よりも更にリアリティの増したそれは、以前と違い転がる骸も鮮明に映し出す。



凄惨な風景を映し出す視覚も。
肌を焼く熱を感じ取る触覚も。
焦げる肉の嫌な匂いに嗅覚も。


全てが悲鳴を上げている。
こんなもの、望んでいなかったんだ、と。

……違う。悲鳴を上げているのは俺だ。
俺が、嘆きの咆哮を上げている。叫べば、世界が変わるとでも思っているのだろうか。


既に終わった灰色、今まさに終わっている黒色、そしてそれ以外の色のコントラスト。

燃え尽きた人達は灰に。街は炭化して黒焦げに。炎と流れる血の赤だけが世界を彩っている。



そこに在ったのは、ただ純粋な地獄に他ならなかった。

人の手で生み出された、悪意の結果に他ならなかった。


その地獄の中で、動く命は俺以外に何一つとして無かった。

動物であれ植物であれ、有機物であれ無機物であれ、炎以外の何者も動く事の無い世界。



燃え盛る、燃え尽きる、燃え落ちる煉獄の中心で、ただ一人。


立ち尽くす、俺は———

京太郎「……また、ヤな夢見たな」


そんなこんなで、彼の一日は始まった。
ここしばらく、彼の一日の始まりはこんな風に悪夢で始まる事が多いのだが。

既に学校は冬休みに入り、この事務所も年末という事でてんてこ舞いだ。
ただでさえする事が多いというのに、依頼量まで激増する。
もっとも、師走にメインで走り回るのは彼一人だけなのだが。

クリスマスも終わり、あと数日で今年も終わる
依頼もあらかた片付け、ようやく一日を自由にできそうになった12月の30日の朝。

この日は、そんな日だった。


京太郎「(……なんか最近悪夢ばっか見るな)」

京太郎「(終わってしまった、世界の夢)」

京太郎「なんで、あんな夢ばっか見るかな……」

京太郎「この前の都市侵攻が、意外と尾を引いてんのかね」


鯖の味噌漬けを皿に盛り付け、二人分運ぶ。
小鍛治家の味噌汁は、代々なめこと豆腐とネギが伝統だ。
ほどほどに水気の飛んだ美味しそうな白米と、添えられたお新香が食欲を誘う。


健夜「いただきまーす」

京太郎「いただきます」



・・・・



朝ごはんを食べ終わって、京太郎が食器を洗い、健夜が居間の掃除をしている光景。

日常といって差し支えない、事務所の朝。


健夜「成長してるのかもね。君が」

京太郎「はい?」

健夜「その、夢の話」


京太郎の話を聞いて、健夜が出した結論はそれだった。

健夜「『予知夢』とかは都市伝説でも有名だしね」

健夜「圧倒的な強敵に何度も追い詰められた経験と、色んな人と同じ気持ち・同じ場所で戦った連帯感」

健夜「それに今までの経験値が加わって、もう一つ上のステージに行けそうになってるのかも」

京太郎「ああ、この前の大規模戦闘がきっかけで……」

健夜「そうそう」

京太郎「結局、俺の都市伝説って何なんですかね」

健夜「……そのうち、分かるんじゃないかなー」

京太郎「(……やっぱこの人知ってんじゃないかな)」

健夜「き、聞かれても何も答えないよ?」

京太郎「いや、何も言ってねえっすけど」



健夜「京太郎くんが一番仲が良いのは怜ちゃんだし、その影響もあるのかもね」

京太郎「あー、それは凄く説得力ありますね」

健夜「それで、その『凄くリアリティのある悪夢』ってどんな夢だったの?」

京太郎「……それは」


もしも。


京太郎「(もしも、これが予知夢の一種であったと仮定して)」

京太郎「(これが、避けられない未来の映像であると仮定して)」

京太郎「(あの光景が、この街の未来の姿であるとするのなら)」



それは、つまり——

京太郎「……ん?」


そんな思考に耽る彼の目に映る、一枚の手紙。
朝郵便受けの中から纏めて持ってきた郵便物の中に混じっていた、一通の無骨な封筒。

進研ゼミの勧誘と並んでいるからこそ、その普通さが目立つ。

進研ゼミをやったら成績が上がりました! 志望校に受かりました!
クラスの美少女と仲良くなりました! 彼女が出来ました!

無論京太郎はやっていないからこそ、進研ゼミからの勧誘が来るのだが。



京太郎「なんだこれ? ……差出人は」


住所も書いていない。
宛先と、裏面に差出人の名前しか書かれていない。

その、宛先人の名は——



京太郎「——『黒フード』、とか書いてあるな」



宿敵の名。
未だ本名不詳の悪人。この街の敵。

京太郎の中で、ぶっちぎりに危険な人物のカテゴリーに入っている存在。

そいつが送ってきた手紙だとするのなら、その内容もロクなもんじゃないだろう。


用心しつつ、少年はその封筒の口を切って開けた。

——「よう、元気か」

——「お前が元気じゃなかったら、俺は嬉しい」


京太郎「……いきなりうぜぇ」


——「単刀直入に言おう。と言うより、さっさと終わらせたい」

——「お前に書く手紙というだけで、書いていて吐き気がするからな」


京太郎「(……逆の立場だったとしたら、俺もそう思うだろうな)」


——「ゲームでもしようじゃないか」

——「この街のどこかに八つ」

——「『コトリバコ』という箱を隠した」

——「全部見つけられたその時は、お前達に『真理』を教えてやる」



京太郎「……は?」

京太郎「……『コトリバコ』?」

京太郎「おいおいおい、ちょっと待て……!!」


——「設置したのは12月30日の朝。丁度この手紙が届く頃だ」

——「今探しても見つからないように、封印を施してある」

——「封印が解除されるのは12月30日夜。せいぜい足掻け」


京太郎「や」

京太郎「ヤバい、コイツ、いったい何考えて……!」


——「そして、苦しんでくれ」



手紙をポケットにねじ込み。


少年は、急いで外へと駆け出した。

【コトリバコ】


『子取り箱』。


呪殺というジャンルにおいて、頂点に座す都市伝説。


約150年程前、東北地方に非人道的な差別を受け続ける、とある部落が存在した。
部落差別がまだまだ根強く、解放運動の活発化まで早くとも数十年の時間を必要とする時代である。


そこに、一人の男が逃げ込んできた。
それが全ての始まりである。


かつてこの国において黒船来航より始まった公武の対立構造。
尊王攘夷運動やそれに類する各地の紛争。

国が生まれ変わるきっかけとなった戊辰戦争、日本国最後の内戦と呼ばれる西南戦争。

それらはあまりにも有名だが、それらに及ばずとも多くの人を巻き込んだ内乱がある。


その内の一つが、この男がこの部落に流れ着くきっかけとなった『隠岐騒動』である。

気になった人は調べてみよう。

大雑把に言えば、一地方による幕府からの独立運動。

『船幽霊のムラサ』等のオカルトで有名な、隠岐で発生した一連の騒乱の総称である。



逃げ込んできた男を部落の村人は『厄介事』と判断し、男を殺そうとする。
しかしそこで、男は命乞いのための取引を提案する。

「迫害から逃れるための武器。自由になるための武器が欲しくはないか?」
「憎い奴、気に入らない奴、敵を殺すための武器が欲しくはないか?」
「俺を見逃してくれるのなら、最初に作った武器を俺にくれるのなら」
「その武器の作り方を教えてやる」


その悪魔の提案を、村人は受け。
彼らは、悪魔に魂を売った。



箱/武器の作り方は、凄惨かつおぞましいものだった。

小箱の中を雌の畜生の血で満たし、一週間後に血が乾ききる前に蓋をする。

そして……その箱の中に、殺したばかりの『子供の一部』を入れる。

生まれたばかりの赤子の臍の緒と人差し指の先。それと、その子のハラワタから絞った血。
七歳までの子供の人差し指の先と、その子のハラワタから絞った血。
十歳までの子供の、人差し指の先。

子供を間引き、その子供の一部を材料として完成する呪い。

ゆえに、『子取り箱』。


内包する子供の数で、「イッポウ」「ニホウ」〜「チッポウ」「ハッカイ」と名前が変わり、数字が大きくなるほど呪いも増していく。

「ハッカイだけは絶対に作るな」と念を押し、男は最初に作らせたハッカイを持ってその部落を去った。


材料になった子供を殺す時は、苦しめて苦しめて苦しみ抜かせて殺す。
だから、この小箱に近づいた女性と子供は、苦しんで苦しんで苦しみ抜いて死ぬ。

徐々に内蔵が千切れ、血反吐を吐いて死ぬ。
痛みと苦しみの中、怨嗟に呑まれて死ぬ。

その小箱に近づいただけで、女子供は問答無用で殺される。



女性と子供だけを殺す、おぞましい呪いの都市伝説。

えっ

今回八つだよやコトリバコ
ハッカイあるよね?

死に方グロい

女子供だけ、ってのが更にやべぇな
咲の二次創作ってのがここに来て響いてるくる都市伝説だ

すこやんなら大丈夫だな、だって世間ではああいうのを干物って言うんだろ?

京太郎「(ヤバい、各所に連絡して準備しても間に合うか……?)」

京太郎「とりあえず連絡だ。人手が要る」



京太郎「霧島の人達に何か気休めでも対抗策練って貰わないと」

京太郎「『女性と子供』がヤバい」

京太郎「捜索に参加できないのは当然として、一般人にも死者が出かねない」

京太郎「警察だって、年末に休日出勤してる男性と、緊急で呼び出してきてくれる男性と……それで、何人集まる」

京太郎「ああクッソ、本気でヤバいもん持ち出して来やがって……!」



京太郎「探すのだって頭使わないとダメだ」

京太郎「この街全体から、手がかり無しで小さな小箱を八つ探す……」

京太郎「……無理だ。無茶過ぎる」

京太郎「ただでさえ、どう転がったとしても時間との勝負になりかねないってのに」

京太郎「何も考えず闇雲に探し回れば、全部見つかる前に年が明けちまう」


京太郎「……どうする」



京太郎「……誰を、頼るべきだ?」

どの程度まで近づいていいのかわからんもんな

【移動可能先】


・原村家

人物:原村和(メイン)、宮永咲etc…

オカルトとは関係のない知識面からのアプローチ。


・新子家

人物:新子憧(メイン)、高鴨穏乃etc…

街に流れる噂の情報。


・生徒会室(長期休暇中職務処理)

人物:花田煌、二条泉、船久保浩子、原村和etc…

有用な情報、あるいはヒントの提示。


・園芸部温室(部活動中)

人物:松実宥(メイン)、宮永咲、松実玄etc…

学外における情報、ほぼ確実にイベントが発生するヒント。
また、サポートアイテムの入手が可能。


・プラネタリウム(年中無休)

人物:大星淡etc…

夜間の街の情報。都市伝説に関する有用なヒント。


・清水谷家

人物:清水谷竜華(メイン)、園城寺怜、江口セーラetc…

人脈からくる広範囲の情報。ヒントの提示。時々ステータスアップ


・龍門渕邸

人物:天江衣、龍門渕透華、国広一etc…

都市伝説の種類に関して確定で一つ情報ピースを入手可能。


・事務所支部部室

人物:今まで登場した人物全て(メイン)、今まで登場した事の無い人物

全ての人物が居る可能性有り。何でも起きる可能性有り。何でも手に入る可能性有り。

【調査目的:コトリバコの対策。及び捜索】

【移動先指定可能回数:残り三回】

【情報ピース:コトリバコについての詳細を入手済み】

【情報ピースを二つ集めて下さい】



京太郎「さて、どこに行くべきか」



移動先を指定して下さい



>>351

事務所支部部室

【事務所支部部室】



TV【今度生まれ変わったら、天使のようなロボットに……】



小蒔「ううっ、えぐっ……」

霞「あぁ……」

初美「ハンカチ、ハンカチ……」

巴「……リルル」

春「……」


京太郎「え、何やってんですか」


〜ちょいと時間経過〜



小蒔「鉄人兵団が一番だって言ってたの、京太郎さんじゃないですか」

京太郎「いや、そりゃそうだけどさぁ」

霞「地元では私達見る機会なかったもの。感動したわ」

春「……面白かった」

京太郎「(そういや小学校の頃、遠足の帰りのバスの中でドラえもんよく見てたなぁ)」

京太郎「(だいたい途中の良い所で終わって生殺しだったけど)」

巴「これ、リメイクもされてるんだっけ?」

初美「泣きました、泣きました……!」

京太郎「……いやまあ、楽しんで頂いて何よりです」

京太郎「……ってわけです。すみませんが、海底鬼岩城上映会は後回しでお願いします」


霞「どう見ます? 姫様」

小蒔「仕込みを半分使いましょう。ここが使い時だと思います」

巴「三ヶ月コツコツやってた仕込みを半分ですか。ちょっと痛いですね」

小蒔「ケチると運気が逃げますよ? こういう時のための仕込みでしょう」


京太郎「何か、考えが?」


初美「この街全体にちょこっと小細工しましょう、って事ですよー」

京太郎「小細工?」

小蒔「ちょっとした結界の応用です」

京太郎「(次元連結システム並みに便利な言葉だな、結界)」

春「……水と、拳銃を想像して」

京太郎「? おう」

小蒔「この場合は拳銃がコトリバコ。撃たれる人がその被害者です」

小蒔「でも、水中で拳銃を撃っても人まで届くものでしょうか?」

小蒔「そういう小細工をします。呪い自体は無くせませんが、回収する人への影響は無効化出来るかもしれません」

京太郎「おおっ……!」


霞「とは言っても、そんなに長続きはしないでしょう」

巴「多分持って一〜二時間くらいかな? 探すのは任せるよ」

初美「その代わり、貴方達が全力で頑張れる場所は保証しますよー」

春「ま、頼りにしてて」

京太郎「……お願いしますっ!!」


霞「私は北で」

初美「私は東ですかね?」

巴「それなら、南に」

春「西に行けばいいのかな」



小蒔「……あれ? 私は?」



霞「……よ、四人要れば十分ですし」

初美「そ、捜索の方のお手伝いとか、ほら」

春「余った?」

巴「コラッ!」



小蒔「……」

京太郎「……そ、捜索の手伝いお願いします」

小蒔「……はい」

 


【コトリバコ探索時の死亡判定が消滅しました】


 

【調査目的:コトリバコの対策。及び捜索】

【移動先指定可能回数:残り二回】

【情報ピースを二つ集めて下さい】



京太郎「さて、どこに行くべきか」



移動先を指定して下さい



>>383

もんぶち

【龍門渕邸】


京太郎「というわけで、ちょっとの間ハギヨシさんをお借りできないかと……」

透華「あら、衆道にでも目覚めました?」

京太郎「ちげえ! ってか人の話聞いてました!?」

透華「冗談ですわ。貴方は衣に発情するロリコンですものね」

京太郎「ちげえ! ってか貴女俺をそんな目で見てたのか!?」

透華「冗談ですわ。コトリバコの件でしたわね」

京太郎「……俺をからかって楽しいですかー」

透華「ふふふ。ええ、勿論」



透華「打てば響いてくれる貴方をからかう人は、割と多いのではないかしら」

ハギヨシの都市伝説って判明してるっけ?

透華「ですがその件ならもっと適任が居ますわ。智紀、智紀!」

智紀「はい、透華。何? フェスの最中だったんだけど」

京太郎「あ、ともきーさん。おはようございます」

智紀「ちょっと時間的におはようは厳しいけどね」



智紀「で、何?」

透華「この街の監視カメラ等に写っている、どこかで不審者が現れていないかどうかのデータをハッキングなさい」

透華「データは洗って選別して。かつ、特徴のある小箱を持っていたらビンゴですわ」

京太郎「!」

透華「時間帯はおそらく12月29日から30日の間の夜間帯」

透華「できますわね?」

智紀「ま、やれって言うならやるけど」

京太郎「出来るんですか!?」

智紀「夕方五時まで待って。選別の方には時間が掛かるから」

京太郎「すげぇ……」

透華「出来たら先月のペンタゴンの件は許してさしあげます」

智紀「別に証拠残さなかったんだから、いいじゃない……」

京太郎「(……聞かなかったことにしよう)」




とある日の風景。


透華「智紀、エナンザムは使うんじゃありませんわよ!」

智紀「了解! エナンザム!」


とある日の風景終了。




【情報ピース:『不審者の出没情報』を入手しました】

【調査目的:コトリバコの対策。及び捜索】

【移動先指定可能回数:残り一血回】

【情報ピースを一つ集めて下さい】



京太郎「さて、どこに行くべきか」



移動先を指定して下さい



>>403

> 残り一血回
なんか怖い

園芸部音質

【園芸部温室】


玄「よいしょっ」

咲「うんしょっ」


京太郎「おー、やってるやってる。年末の掃除か」


咲「あ、京ちゃん。いらっしゃい」

玄「手伝いに来てくれたの? それなら嬉しいな」

京太郎「半分はそうですよ。重いのは後で運んどきますんで、置いといても大丈夫かと」


玄「ありがと! ふにゃー、疲れた疲れた」

咲「先輩、髪にゴミついてますよ」

玄「ややっ、髪長いとこういう時不便なんだよねぇ」



京太郎「宥さんは……あ、居た居た。奥だな」

情報とアイテムのウェイトってどうなんだろうな

名前だけは出たからまだマシじゃね?……タコスよりは

>>419
タコスは出てきただろうが、和のクラスメートと転校生の計二人も

まこ「……」

宥「……あ、いらっしゃい」

京太郎「どうも、おじゃましてます」

宥「今日はどうしたの? 咲ちゃんか、玄ちゃんか、私に会いに来たの?」

京太郎「まあ半分は。ちょっと聞きたい事がありまして」

宥「?」

京太郎「フリーメイソンで、『コトリバコ』って取り扱ってました」

宥「!」

宥「……そこに椅子とテーブルがあるから、座って。詳しく聞かせて欲しいな」



京太郎「ってな感じです。もうブツ自体は仕込まれてるかと」

宥「……そっかぁ」

京太郎「で、何か心当たりはありませんか? なんでもいいんです!」

宥「結果から言えば、私に心当たりはないよ」

宥「そっちはもう、私が関わっていた部分じゃないし」

宥「そういうものがあると話に聞いていた、ってぐらい」

京太郎「……そう、ですか」


宥「でも、ちょっと考えはある」


京太郎「……! 聞かせて下さい」

宥「植物の種を植える時、貴方はどうやって撒く?」

京太郎「? そりゃ植木真ん中に埋めたり、種の間隔を空けたり……」

宥「そうだね。『要点』か、効果を見込むために『出来るだけ広範囲』に散らしたりするよね」

京太郎「……? ……!」

宥「畑は違えど、これもそうなんじゃないかな」



京太郎「コトリバコを設置しても、それが誰も居ないような地区なら無駄撃ちになる……!」

京太郎「年末年始の新子神社の参拝ルート! 電車のホーム!」

京太郎「大通りや街の中を動きまわるバス、被害を増やそうとすれば逆に場所は限られる!」

京太郎「加えて、コトリバコを一箇所に集中すれば家から出ない人もそこそこ居る年末だ」

京太郎「街の一地区しか巻き込めない可能性もある。なら、八個それぞれある程度散らしてくるはずだ」

京太郎「見つかれば見つかるほど、残りのコトリバコの場所は絞り込める!」



宥「そんな感じかな」

京太郎「ありがとうございます。突破口、見つかったかもしれません」

宥「うん。……ルーベライズ、ちゃんと持ってる?」

京太郎「今も首から下げてますよ?」

宥「良かった。外さないようにね……なんだか、嫌な予感がするから」

京太郎「? はい、絶対外しませんよ。約束します」

京太郎「約束破ったら、針千本飲んでやりますよ!」

宥「あはは、そんな事したら死んじゃうよ?」

宥「(咲ちゃんのことは……まだ、良いかな。終わってからで)」

宥「(心配事が増えても良い事無いし。そんなに急ぐことでもないもんね)」

宥「(……頑張って)」



【情報ピース:『敵側の思考』を入手しました】





【情報ピース三つ。情報が完成しました!】


【第十五話におけるコトリバコ捜索発見判定が、全て自動で成功します】

夜が降りてくる。

……嫌な、予感がする。

肌が粟立つ。背筋に悪寒が走る。脳裏にあの悪夢が蘇る。


京太郎「いつもと、何か違うな……」


街の空気か。
自分の心境か。
それとも、それ以外の何かか。


『今夜は、いつもの事件とは何かが違う』。

そんな直感。そんな予感。
そんな確信が、彼の胸の中に在った。

胸騒ぎがやけに不快で、頭を振って考えを振り払う。


京太郎「いつも通り俺はやるだけだ」

京太郎「これまでも、これからも、ずっと」

京太郎「やり方は変わらない。変えなくたってやっていける」


自分を奮い立たせるように、強い言葉を紡ぐ。

強い言葉、強い意志、強い光を宿す瞳。

だが、何故か。今日だけは。



京太郎「……行くか」



そんな彼の背中が、ひどく頼りなく、弱々しく見えた。




END.
第十五話前編:Other Side of the sky/天の向こう側

START.
第十五話後編:Only Neat Thing to Do/たった一つの冴えたやり方

本日の投下時は以上です。皆さん、お疲れ様でしたー


次回決戦。血は流れます、絶対に
コトリバコはフリーメイソンがかつて手順にそって作り、死蔵していたものを黒フードが持ち出した物です


>>322
八つです

>>325
ある意味このスレの原作という点に対する最強のメタですね

>>326
女性だから!

>>335
結界が無ければ半径3〜4kmってとこでしょうか

>>391
させてないですね

>>417
皆さん次第です

>>419
>>420
>>421
(>>1のHPが削れる音)



では今夜はこれにて。お付き合い頂き感謝です

デモンベインがスパロボに参戦するというかつ都市伝説だった事実。おやすみなさいませー

乙ー
そういや昔デモベでスパロボの動画あったよね

こんばんワイヤードロジック


明日20:30よりスタートです
咲ちゃんは京ちゃんの幼馴染。現状それ以上でもそれ以下でもなく


>>442
スパロボE?


http://pazusoku.blog.fc2.com/blog-entry-374.html

(震え声)

申し訳ありませんが、一身上の都合によりこのスレを凍結し、HTML化依頼させて頂く事となりました。

私生活などの関係上、ここから投下を続ける事が難しいであろうと判断した次第です。

ここまで読んでくださっていた皆さんには感謝が絶えません。申し訳ない気持ちで一杯です。

なおスマブラも半永久に凍結します。ここと合わせ、再開の予定はありません。

タコスとまこの出番もありません。>>1の作品では未来永劫咲ちゃんはヒロイン化しません。

照を優遇する事はありません。淡は>>1の嫁じゃありません。

小林立先生は咲最終回までもう休載しません。

原作咲ではこれから京太郎が大活躍です。

この作品において、死者は絶対に出ないという設定です。

ロールスロイスは絶対に壊れません。




では皆さん、また機会があればお会いしましょう。

それでは……

うっそぴょーんとネタばらし

ま、ご察しの通りエイプリルフールです。イッツァジョーク、銀河美少年

言う事全部嘘にしなければならないって決まりもないですので、>>459は一部本当で一部嘘です。HAHAHA

とりあえずエター系は全部嘘でごぜーます。今夜普通に投下しますよ



「エイプリルフールは本当は午前中にしか嘘をついてはいけない」。
これ、実は都市伝説です。このスレの定義では、ですが

そもそもこれは一地方で「そういう習慣があった」というレベルで、大多数の外国人は知らない事も多いそうです

エイプリルフールの起源は幾つもの説がありますが、有力なものにはことごとく「午前中だけ」なんて記述はなかったりします

例えるなら関西弁のようなもので、「そういう習慣がある」というのが「実はこうなんだ」と勘違いされたタイプですね

関西弁が使われている≠関西弁がその国の標準語、ということです

国別で「エイプリルフール午前中説」の普及の割合を調べれば、日本人がトップに立つ……なんて冗談交じりに言われたりするほどだったりします

ってなわけで今夜もレッツゴー投下。20:30〜


しかしそれまでに各所のエイプリルフールネタを回りきれるのか・・・?

今年も色々素敵
特に型月は何アレレベルです

でもジャンヌ可愛い!あざとい可愛い!

火鉈ちゃんはド迫力。何がとは言いませんが

え?もう一話あんの?嘘だろ承太郎!

このまま投下して日付変わったらどうするんだ雷電!


……>>1からのアナウンスです。途中で投下間隔がやけに空いたな、と思ったその時は。

>>1がこっそりちょっとだけ!ちょっとだけだから!

と遊んでいるものとお思いください

なんもかんも型月が悪い


投下はっじめーるよー

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】



全てが終わった。
終わってしまった。


燃える街。
焼ける人。
焦げる空。


灼き尽くされた風景が、目の前に広がる。

足掻いた結果が、このザマだ。


リアルよりもはるかにリアリティのある情景。

人の死が彩る、『現実』という俺に突き付けられた刃。



凄惨な風景を映し出す視覚も。
肌を焼く熱を感じ取る触覚も。
焦げる肉の嫌な匂いに嗅覚も。


全てが悲鳴を上げている。
こんなもの、望んでいなかったんだ、と。

当たり前だ。
こんな光景など見たくなかったからこそ、戦い続けたんだ。



既に終わった灰色、今まさに終わっている黒色、そしてそれ以外の色のコントラスト。

世界に与えられた赤色の主達を、俺は知っている。
……誰よりも、知っている。


そこに在ったのは、ただ純粋な地獄に他ならなかった。

それは俺の罪に対する、俺だけに向けられた地獄。


何故ならば。


その地獄の中で、動く命は俺以外に何一つとして無かった。

この地獄は俺だけが見ている、俺だけが苦しんでいる地獄。


燃え盛る、燃え尽きる、燃え落ちる煉獄の中心で、ただ一人。


立ち尽くす、俺は———



【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】

穏乃「あこーっ!」

憧「ん? ああ、待ってたわよ」

穏乃「京太郎が電話で連絡してたんだっけ?」

憧「そ。だからまぁ、この辺りに一番詳しい私が手伝ってあげるって話になってね」

穏乃「神社の方は良いの? 今一番忙しい時期でしょ?」

憧「事情を話したらお父さんもお母さんも『行って来なさい』だってさ」

憧「今年はお姉ちゃんも珍しく手伝ってるからね。大丈夫大丈夫」

穏乃「よっし、それなら行こっか!」

憧「アンタだけ? それとも他にも誰か居たりする?」

穏乃「あっちで待ってるよ。今こっちに来てるのは——」




憧「さすがに鳥居の上とかには無いでしょう。仕込む時に目立ち過ぎるし、神社から丸見えだし」

穏乃「私を登らせてから言う台詞!?」

憧「多分参拝道辺りだと思うのよね……」

穏乃「なんで?」

憧「ここを通った女性や子供が、そこでちょっと体調崩したって噂を聞いたのよ」

穏乃「あ、そっか。封印されててもちょこっとは影響出てるかもしれないんだ」

憧「だから……ん?」

穏乃「どしたの?」

憧「なんかこの石畳だけ上に土が乗ってなくて、その周りはやけに土が乗ってるような気がしない?」

穏乃「ん? ……んー、分かんない」

穏乃「(毎日通ってる道だから、憧だけに分かる何かとかあるのかな)」

憧「……しず。この石畳、ひっくり返すわよ」

穏乃「うええっ!?」



穏乃「……あった」

憧「あったわね」

穏乃「ど、どうしよっか!?」

憧「神代先輩呼んで処理してもらうわよ。まず電話ね」

穏乃「そだねっ、よし!」



穏乃「コトリバコ一つ目、ゲットー!!」

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】



「泣かないで、私の大切な人」

「恨んだりしないわよ。あんたが頑張ってた事だって、私はちゃんと分かってるから」

「だから、そんな顔はやめなさい。ね?」


崩れたビル。
瓦礫のそばで倒れる少女。

その腹には瓦礫の破片が刺さっていて、どう考えても致命傷だ。


……なんでだ。

……なんでッ!!


「良いから喋るな! 今止血してる、気をしっかり持てば……!!」

「気休めはよしなっての。私がもう助からない事なんて、私が一番分かってるわよ」


なんでだ。なんでだ。なんでだ。



「いい? これから私が言う言葉を、一言一句逃さず聞いておくこと」

「やめろよ、やめてくれよ、頼むからやめてくれ……そんな、遺言みたいな……!!」

「気に病むのはやめなさい。これは、あんたのせいじゃない」

「だけど、俺は、お前を、守れ——」

「私は、アンタを許すから」



血の気の薄れた顔で、苦痛に耐えて無理して微笑んだ、彼女の顔は。



「アンタが私を守れなくても。何も守れなかったとしても」

「アンタがどんな結末を迎えても、私はアンタが頑張ってた事を知ってるから」

「私は、私だけは……少なくとも、アンタを許すから」



とても……綺麗だった。



「……だか、ら……泣か……な……」

「……」



「……おい。おい、嘘だろ? 起きてくれよ、目を開けてくれよ、おい」

「……あ、ああああ」

「あ、あ、う、あ、あああああああああ!!!」




「憧ぉおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」




【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】

和「……はい。はい。では、連絡を回しておきます」

和「……ふぅ」

姫子「お疲れ。休まなくてよかの?」

姫子「部室に残って管制兼伝令役として待機するのも、大切だとは思うけんどね」

和「皆、自分の出来る事を探して、自分の出来る範囲で精一杯頑張ってます」

和「だから……私は、ここで私に出来る事をしたい」

和「先輩が残ってくれて助かりました。助力をお願い出来ますか?」

姫子「よかと。どんどん頼ってね」



和「——は、どうなってますか?」

姫子「んー、なんか手掛かりば見つけたみたいやね」

和「……」

和「なら、そっちは自由にさせておきましょう。新子神社周辺の人員を一部移動させます」

和「(ここに一つ……ここにも一つ……なら、残りは……)」

姫子「(……地図とにらめっこしとる)」



和「(時間は……捜索開始から、15分経過。残り時間はあとよく持って1時間45分)」

和「(それ以上は『持たない』と、先輩達から念を押されている)」

和「(ギリギリまで発動を粘って、コトリバコ起動と同タイミングで結界を張ったのもそのため)」

和「(結界の維持時間の節約。……それでも、時間は相当に足りてない)」

和「(『もう』二個見付かった、と考えるべきか。それとも……)」

和「(『まだ』二個しか見付かってないと、考えるべきか)」

和「……終盤になれば、情報も増える。発見の難易度も激増する」

和「頭を使わなければ、きっと見つけることすら……だから、私はここで頑張らないと」



久「おじゃまするわよー」

智紀「……失礼する」

姫子「はれ?」

和「先輩方、何故ここに……」

久「頭の良さそうなので暇そうな奴片っ端から引っ張ってきたわ」

久「お祭り騒ぎなら、私も混ぜなさいっての!」

和「あの、受験などは……」

久「や、別に一日二日休んだぐらいじゃ何も変わんないでしょ」

和「……」

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】


「あ、あはは……ちょっと、ドジ踏んじゃいました」

「な、んで……お前が……?」


崩壊した部室。差し出されるメモ。
部室の奥で、息も絶え絶えに床に座り込み、メモを差し出す少女。


「これ、受け取って下さい……これだけは、守れました……」

「待て、喋るな! 今手当を」

「フリーメイソンの、首領の、居場所です。一発逆転の、チャ、ンス……」

「京太郎君なら、きっ、と……これ、さえ、あれば」

「喋るなって、もう、もう……!!」


彼女の身体の至る所に、黒色のナイフが刺さっている。
急所には一本も刺さっていないが、床を見る限り既に出血多量。

……またしても、手遅れだ。
……なんでだ。
……なんでッ!!


「ちょっと……一言、良いでしょうか」

「……ああ、勿論」

「私、実は……死にたくないなんて、思ってたりするんですよね」

「……っ」

「ああ、別に、貴方を恨んでいるわけじゃないんです」

「それでも……そんな私が、命を賭けてでも、助けたいと思える、とも、だちが……」

「引っ、越し、てばかりで、友達なんて居なかった私が……変わったもんだなぁ、って」

「……俺は。お前の良い友達で、居られたか」

「勿論です。貴方は、私の、大切な、しんゆっ、げほっ、こほっ」

「!! よせ、無理に喋るな!!」


彼女の喀血が、俺の服にかかる。

なんでだ。なんでだ。なんでだ。

なんで、皆、俺の前から——


「もしいつか、私みたいな面倒な子に出会ったら、その時は……」

「貴方の……そ、の、優しさ……で……守って……」

「それ……が、きっと……貴方も……」

「……」



「……は、はは。お前みたいな堅物でも、人をからかう事があるんだな」

「おいおい、笑えない冗談はよせよ。おい、起きろ」

「起きろってんだよ!!」


「おい、和ァッ!!!!」


【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】

淡「うっわ気持ち悪っ! 気持ち悪っ!」

淡「なんかゾワゾワっとする! 今日の街気持ち悪い!」

宥「……そんなに?」

淡「今は範囲すっごく狭いけど、地球の触覚が私の触覚みたいなもんだし」

宥「そうなんだぁ」

淡「だからたぶん……こっち? かな」



淡「あったあった。駅のコインロッカーの中だね」

宥「わぁ、凄いね。淡ちゃん」

淡「ふっふーん。で、これどうしよっか?」

宥「あ、任せて」

淡「おおっ? 袖から赤い布が出てきたっ」

宥「これで、ぐるぐる巻きにして……」

淡「……あれ? 気持ち悪くなくなった」

宥「これは私の一部だから。この布も、ルーベライズもそう」

宥「これを巻けば、私より弱い都市伝説や能力は機能しなくなるんだ」

淡「あー、すがっちから聞いた事ある。あの巫女のお姫様の時の」

宥「あんまり使わないんだけどね。使い勝手も悪いから……」



宥「次も、分かる?」

淡「んー……ちょっと、難しいかも。近づかないと場所までは分かんないね」

淡「数が多くてごちゃごちゃしてるから。残り一個になるまでは方角くらいしか分かんなそう」

宥「そっか……」

淡「ま、地道に探さないとね。捜査は足で稼ぐ!」

宥「私達、刑事じゃないよぅ……」

淡「今連絡したら、残り五個だって! 気合入れてくよー!」

コインロッカー・・・
コインロッカーベイビーって都市伝説が来るかと思った
今もってるのがハッカイってオチじゃないよね?

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】



「いやあ、こんな取り返しの付かない所に来てようやく分かっちゃうなんてね」

「私、やっぱりバカだったよ。もっと君と話しておくべきだった」

「ぐ、離しなさい! これは立派な裏切り行為ですよ!」


炎の手が燃える風景。
その中で数少ない燃え残ったビルの屋上で、三つの人物が対峙している。


俺。
彼女。
そして、散々苦しめられてきたフリーメイソンの幹部の一人。



「待て、やめろ。そんなことしても俺は嬉しくない」

「でもさ。やっぱり私には、この方法が一番いいように思えるよ」

「やっちゃいけない事やっちゃったもん。償えない事やっちゃったもん」

「だから私はこうするって決めた。逃げるみたいでかっこ悪いけど、後よろしくね?」

「やめろって言ってんだろ! お前がそんな事したら、俺は、何のために……!!」


ビルの屋上。
既に立てない俺。

幹部を抱え拘束し、ビルの端に立つ彼女。


「離しなさい! こんな、こんな結末が私に……!」

「私達はフリーメイソンで、悪者だよ。悪者は、最後の最後で絶対に死ななくちゃいけない」

「最後に残るのは、愛と正義と友情で」

「最後に生き残るべきなのは、『善い人達』であるべきなの。あそこにいる、私の友達みたいにね」



そして、飛び降りる。



「じゃあね、すがっち!」

「こんな所で言うのも何だけど、大好きだったよっ!」



数瞬後。
重力と能力で加速した物体が地面に激突し、潰れる音がした。



「あ」

「う、あああああああああ」



「あわ、い」



【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】

予知夢説
パラレルワールド説
実はこれは咲ちゃんが書いてる小説

さあどれだ

>>535
ハギヨシの都市伝説の能力

一「あの、なんで港まで来たんですか?」

健夜「ここが結構近かったから。歩いて五分くらいだったし」

一「いや、全然答えになってないんですけど……」

健夜「さっき見つけた、コトリバコあるでしょ?」

一「あ、はい。これで四つ目だそうです」

健夜「貴方のワニで、ここから100mくらい離れた沖までこの箱を運んで、海にポイしてくれない?」

一「はい?」

健夜「難しいかな?」

一「や、お茶の子さいさいですよ。海なら結界の外に出ても周囲に人は居ないでしょうしね」

一「行って、『ロロン』」



ワニが箱を咥え、海を沖の方角へ。
ワニが離し煙のように消え去ると、残る者は海にプカプカと浮かぶ小箱のみ。

……その、次の瞬間。


閃光。
大爆発。
そして、一瞬遅れて来た爆音。

海が抉れ、小箱ごと消し飛んだという衝撃の光景。



健夜「やー、ふっ飛ばしたふっ飛ばした。次探しに行こっか」

一「そ、そうですね」



一「(この人だけは絶対に敵に回さないようにしよう……)」

>>530
話しの繋がりから見ると宥姉なんじゃないの
パラレルかなんかの

>>540
いくら敵でも京太郎が宥姉の心配をしないことはないだろ?
あと今回は流れ的にすこやんが死んだか?

傾物語みたいな感じでちょっとした出会いの違いで
世界が崩壊したあれみたいな?

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】


街を、凄まじい光の柱が薙ぎ払う。

巨人。

いや、例えるのなら魔神の方が相応しい。

悪魔のように、ただ無慈悲に街を焼き払っている。

その口から放たれる破壊そのものとさえ言える、悪夢のような光が。

全てを破壊し、飲み込んでいる。

俺の住む街を。
俺の愛した街を。
街に住む人々と共に焼き払っていく。

だけど、そんなものも今の俺の目には入らない。


「待ってくれ、待ってくれ、待ってくれ……!!」

「くっ、ゴホッ、あ、ぎっ……」

「俺はまだ、貴女に何の恩も、返せて……」

「そんな事……無いよ。それは、謙遜、し過ぎじゃないかな……」


……もう、助かる見込みが無い。
体の半分は焼け、爛れている。
無理に動かせばその部分が落っこちてしまいそうな程に、酷い怪我。

彼女は、あの魔神に挑み。
全力で戦って、そして敗北したのだ。

……彼女を最強と信じていた俺には、にわかに信じがたい光景。
だけど、紛れも無い現実だ。

この手を濡らす赤い彼女の命そのものが、その温度が。
俺に、逃げられやしない現実を突き付ける。


「この街から、脱出すれば、たぶんアイツは追ってこないから」

「君は……逃げて。それで、生き、延びて……」

「逃げるんなら、貴女も一緒に!!」

「……聞き分けの無い子だなぁ。もう」

「……あ、そうだ。ちょっと、私のお願い聞いて貰っていい?」

「何ですか!? 何でも聞きますから、だから……!」

「昔みたいに、引き取られて、すぐの……あの頃みたいに、私を呼んでくれない?」

「なんでか、いつからか、貴方は、勝手に一線引いて、さん付けに敬語で話すように、なっちゃった……からさ」

「……ダメ、かな」

「ダメなわけ、ないじゃないか。俺は、貴方の弟なんだ」


「だから、俺を置いて行かないでくれ、姉ちゃん……!!」


「……ああ、これで心残りが無くなった。ずっと、寂しかったんだよ?」

「ありがとう。……わ、たしと、出会ってくれて。出会えて、良かっ……た……」


落ちる手。尽きる命。もう動かない彼女と、動けない俺。燃える街。

俺は呆然と、目の前の現実を受け入れられずに居た。


【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】

京太郎「(なんだ)」


京太郎「(なんなんだ、視界とは別に、俺の脳裏に浮かぶこの映像は)」


京太郎「(目を逸らしたくなるくらいの、悲劇の連鎖は)」


京太郎「(これが本当に、『予知夢』なのだとしたら)」


京太郎「(これが本当に、俺達の辿る『未来』なのだとしたら)」


京太郎「……ふざけんな」


京太郎「そんな事、あってたまるか……!!」

まだだ、まだ俺達にはアンサーさんがいるんだ!?

アンサーさんはもう出番はないんだ。あきらめるしかない

>>556
ならばgoogle先生に・・・
検索ワード『黒フード 正体』
もしかして:百目木静?

みたいな?

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】



「行こう」


「もう、ええんか?」

「……もうちょっと休んでても、文句は言われないよ?」

「行くってんなら、ボクらは付いて行くけどさ」

「『戦ってくれ』なんと、誰も言わなかよ? それでも?」


「それでも、だ」


数えきれないほど死んだ。
俺達の愛した街は、もう欠片も残っていない。

フリーメイソンの全勢力による侵攻。
たった一人でも俺達では太刀打ちすら出来なかった四天王の襲来。
かの魔神がもたらした災厄。

それらは俺達の住む街を、そこに住む者達を、一部を除いて皆殺しにした。



「確かに、復讐したいって気持ちが俺の中に無いなんて言わない」

「復讐したいし、友達の仇も、仲間の仇も、家族の仇も打ちたい」

「……だけど、それ以上に」


「俺は、俺みたいな奴をこれ以上生み出したくないんだ」

「悲劇を、俺で最後にしたい」

「……だから。力を貸してくれ、みんな」



「ふふん。うちは相棒やし」

「言われなくたって、ついてくでー」


「……立派だなぁ、京太郎は」

「うん、私も腹決めよう。頑張るよっ!」


「僕にそんなカッコイイ志は無いけどさ」

「君が行くのなら、ボクは君を守る。もうこれ以上、大切な人に死んで欲しくなんてないから」


「……見てっと、痛々しかと」

「でも、貴方がそげんことしたいのなら、誰にも邪魔させなか」



「……ありがとう」



そして俺達は、決戦の地へと向かった。
生き残った、戦う意思を持つ人々と共に。

いつしか皆の中心に俺が居て、気付けば皆の命を俺が預っていた。

いつしか俺には、皆を生きて返さなければならない責任が出来ていた。



【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】

怜「……ん、ん。ありがとさん」

怜「ほな、電話切るな?」



衣「どうだ?」

怜「うちらが見つけたこれで、六つ目やて」

透華「残り30分……かなり厳しくなって来ましたわね」

怜「時間は十分すぎるくらいやで。なんなら残り十分でも一向に構わんよ」

衣「いや、普通に構うってば」

透華「この豪胆さ、流石あの人の相棒といったところでしょうか……」

怜「……ん?」


彼女の意志とは無関係に、能力が発動する。
以前にも何度かあった事。近い未来と、遠い未来を見通すくだんの特性。

彼女の瞳に、『遠い未来』の光景が映る。


怜「……あかん」

衣「?」

透華「どうなさいました?」

怜「ヤバい。ヤバい。ヤバい。これはあかん!」

怜「あ、相棒が、きょーくんが、アイツが——」



怜「——京太郎が、死ぬ」



その一言が、この街の在り方の、この夜の戦いの。


『終わり』の火蓋を、切って落とした。

関係としては『守護者になった士郎=エミヤ』みたいな感じで
『都市伝説になった京太郎=黒フード』なのかな?

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】


何がなんだか分からなかった。


「あー良かった。無事だったみたいで」

「……あ、あ」

「あんたまで死んじゃったりしたらさ。私も流石にもう立ち上がれないだろうし」

「なん、で」

「あーあ、私もカッコつけ過ぎかなぁ」



銃声。
俺を庇って、撃たれて、そのまま物陰に押し込んでくれた彼女。
流れる血。逃走するスナイパー。笑顔の彼女。



「お前まで、お前まで、なんでっ……!!」

「いーんだよ……これで。心残りとか、無いし」

「やめろよそういうの! いつもみたいに強がれよ!

「私は不屈だって、無敵だって、諦めないって!」」

「強がれよ! お前のそういうとこ尊敬してたんだぞ、俺はっ!!」

「……私も、京太郎のそういうとこ、尊敬してるよ」

「ね。……最後に、さ、ちょっと……お願い、していい?」

「最後とか、お前までそんな事言うなよ……!!」



「嘘でもいいからさ。————って、言ってくれない?」



「……っ!」

「————」

「……これで、良いか?」

「うん。……けっこう、まんぞく」

「ちな、みに、どのくらい……ほんき?」

「お前、分かってて聞いてないか?」

「だよねー……ちょっ、と……意外で、嬉しかった……」



「良かった。憧と、京太郎と、出会えて……」

「それも……子供の頃に。なんて、素敵な奇跡なんだろうって、ずっと……」

「……」


既に涙は枯れていた。俺はただ、ポツリと呟くように。


「穏乃」


それだけしか、彼女に言葉を手向けられなかった。



【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】

姫子が犯人だと!?と一瞬考えてしまった俺を許してくれ

京太郎「……あ、はい。あとは、ラスト一個ですね」

京太郎「大丈夫です。場所は見当が付いてますので」

京太郎「んじゃ、電話切ります」

京太郎「……居るんだろ? 出てこいよ」


「なんだ、気付いてたか」



町の中央。
開けた場所。

街をぐるっと円環状に包むように七つの箱が見付かったと聞いた時、京太郎はその確信を深めた。

すなわち、八つ目の箱の在り処。



京太郎「お前だったら……『街の中とは言ったが人が持ってないとは言ってない』」

京太郎「『俺の懐に隠してたんだよ』ぐらいは、言いかねないと思ってたさ」

京太郎「黒フード」


黒「ふむ……まさにその通りだ」

黒「八つ目は、俺の手の中にある」


黒フードが懐から取り出した小箱。
それこそが八つ目にして最強の箱、『ハッカイ』。


京太郎「そいつをさっさと渡せ。ゲームはお前の負けだ」

黒「そう焦るな。約束はもう一つあっただろう」

黒「教えてやるよ。『真理』を」

黒「お前に、魂の底から理解させてやる」



黒「お前の生き方は、間違ってるんだよ」

やはり最後は自分で持ってたか・・・

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】



「ボクさ、二度も家族を無くしちゃって、ちょっと自信無くしてたんだ」

「ボクには何も出来ないのかなって。何でこんな事になったんだろうって」

「それでも……良かった」

「ボ、ク、は……たった一人の、観客だけは」

「……友達だけは、守れた……」


「……なんで」

「アンタ、言ったじゃないか。俺を守ってくれるって」

「ならなんで、俺より先に行こうとしてるんだよ」

「アンタが俺を置いて先に行ったら……俺を、守れないんじゃないのかよ」

「だから……頼むよ……!!」

「貴女まで、貴女までッ……!!」


……強敵と、戦った。
穏乃を欠き負傷した状態で勝てる相手ではなく。
……皆が止める間も無く、彼女は特攻した。

なすすべもなく討たれる彼女。
死した彼女から現れた巨大なワニ。
ワニは彼女の支配から解き放たれたにも関わらず、敵へと果敢に特攻し相打ちとなった。
その瞳から涙が流れているように見えたのは。
その咆哮が「よくも」という、嘆きと憤怒の叫びに聞こえたのは。

ただの気のせいとは、俺にはどうしても思えなかった。


「……あはは、君が、そんな……顔してるの、初め……て、見たかも」

「……間が……悪かったのかな。それとも……君は、ボクの前では、強がって……たのかな」

「……どっちでも……いいかな……」

「やめてくれよ! そんな事言うなよ、なんで、なんで、なんで……!!」

「家族は……たい、せつ、に……ね……?」

「君に……い、つ、か……娘とか……出来た時は……」

「ちゃんとして、あげるんだよ……?」

「分かった、分かったから! だからアンタも……!!」



「涙を流して……看取って……くれる、人の……腕の中で……」

「笑、って、死ねる……なんて……本当に……嬉しいな……」

「ボク……には……もったい、な……」


握った手はまだ暖かくて。
だけど、徐々にその温度はどこかへ行って。


「一、さん……」


……なんで世界は、こんな現実を許すのかと。
それだけが……俺の中に残された、たった一つの思考だった。



【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】

ま、後一時間以内で終わればなかったことにできる

黒「さあ、全力で打ち込んでこい」

京太郎「は?」


両手を広げ、受け入れるように待ち構える黒フード。

それはどんな構えよりも無防備で、己の首を晒すかのような自殺行為。

しかしその口調は、自信に満ちていた。


黒「一撃、打たせてやるよ。まずは思い知れ」

黒「なぁにハンデキャップみたいなもんだ。ここで俺を倒せれば、後が楽になるんじゃないか?」

黒「それに何よりも。……お前は、俺を殺したいはずだ」

黒「俺だってそうなんだからな」



その言葉は言外に『お前の攻撃なんかじゃ俺は倒れない』という自信に満ちていて。

その舐め切った態度が、京太郎の思考に火を付けた。



京太郎「……上等だ」

京太郎「ここでお前を倒して、コトリバコを回収して」

京太郎「今までの因縁に、決着付けてやるッ!!」



黒「倒すのは無理でも、このフードくらいどけられるだろ?」

黒「それすりゃ出来なきゃ、もうお話にならん」

黒「何も分かってない。何も気付いてないお前でも、嫌でも理解するさ」

黒「見れば分かる。このフードの下の、俺の顔を」

パサッ
黒「これでお前も俺のsy・・・」
京太郎「・・・誰だお前!!」

とかだったら黒フードはどうするつもりなんだろ

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】



頭を撫でられる感覚が、こそばゆくて心地良い。
心が抉られる感覚が、死にたくなる程痛々しい。

苦しみで命が絶てるなら、もうとっくに俺の命は尽きているだろう。


「う、くっ、あ、ああ……」


嘆いているのは俺だ。
彼女は、一切の言葉を発してはいない。


たくさんの別れがあって、たくさんの別れの言葉があって。
それは別れてきた人達に、別れを言うために必要な物が残されていたから。
だけどそれすら、彼女には許されない。

身体の欠損は、彼女に言葉を紡ぐ権利すら与えない。
走る痛みと苦しみは、彼女に地獄を実感させているだろう。

それでも。


それでも彼女は笑って、笑顔で、素敵な笑みで。

俺の頭を撫でて、迫る死への不安も、今在る苦しみも一切見せないで。


……分かってる。
……なんでかんなんて、分かってる。
……この人が何故そうしているかなんて、分かってる。


それらは全て、俺を安心させるためで。

俺に重荷を背負わせないためで。

苦痛に耐える彼女の行動は全て、自分の為ではなく他人の為に。


痛いほど伝わる、彼女の優しさ。


それがかえって、俺の心を深く抉る刃となる。


……俺の頭を撫でていた手が、止まり。
やがて、力無くだらりと落ちて。
それでも彼女の死に顔は、微笑んでいた。


「……ひめ、こ……さん……」



もう戦いたくなんて無かった。
もう失いたくなんて無かった。

それでも、もう勝利を手にするまで引く事なんて出来なかった。

俺達の敗北で失われる物。
俺達が犠牲にしてきた物。

それらはあまりにも多過ぎて、とっくの昔に逃げ道なんてなくなってたんだから。


……それに、何より。


もう帰る場所なんてない俺達が、どこに逃げるというのだろうか。



【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】

【須賀京太郎】

HP:520

ATK:35
DEF:35

・保有技能

『比翼の鳥』
人一人にして人に非ず。翼片翼にて翼に非ず。
人物を指定し、己の中に格納する能力。
格納した人物に応じた能力と補正を得る。

『????』
????


〈装備〉
E:『アイビーの種』
効果:ステータスを『0にする』能力を、一度だけ無効にする。

E:『腕輪:Nexus』【防具】
ATK補正+15
DEF補正+15

・『オモイヤリ』【長物】
ATK補正+15
DEF補正+10

・『シュクジュ』【盾】
ATK補正+5
DEF補正+20

・『カタキウチ 』【遠隔武装】
ATK補正+25

・『フクツ』【靴】
自身の判定値を+5する。

・『ハリコノトラ』【針】
自身のATKを0に減少させ、その減少させた分の数値をDEFに加える。

・『ヒトノワ』【遠隔武装】
効果発動宣言ターン、自身のHPを1まで減少させ減少させた分の数値をATKに加える。


〈アイテム〉
・秘薬『クレイジーダイヤモンド』×2
効果:HPを50回復

・秘薬『烈火の姫君』
効果:HPを150回復

・注射『ただのビタミン剤』
効果:任意のステータスを50上昇させる。

・投網『スパイディ』
効果:使用した次のターン、相手の出す手が分かる

・視鏡『爆砕点穴』
効果:現在戦闘中の相手の行動パターンを知る事が出来る

【フォームシフト対象者】


【園城寺怜】

ATK補正+30
DEF補正+30

・保有技能

『未来余地』Ver.2
少し先の未来、時々遠い未来を認識する能力。
どんな未来でも、変えられる。
自身の判定値に+10する。
判定コンマで相手を上回った次のターン、相手の選ぶ選択肢を知る事が出来る。
奇襲・罠・不意打ちに類するものを無効化する。

『D&T』
「未来余地」の派生技巧。
命を削り、未来を識るくだんの本懐。
能力の使用を宣言する事で、それぞれの効果が適用される。
ダブル:MAXHPの1/4を消費して発動。戦闘終了・フォームシフト実行まで、自身の判定値を+10する。
トリプル:MAXHPの1/2を消費して発動。戦闘中、相手の選択した行動が常に表示される。

・適正武器
全て



【高鴨穏乃】

HP補正+200
ATK補正+10
DEF補正+10

・保有技能

『B2A(いともたやすく走り去るえげつないババア)』Spec.2<<高速機動>>
凡百の存在には至れない高速の世界。
何よりも速く、誰よりも疾く。
自身の判定値に+10する。
<<高速機動>>に属する技能を持たない者との戦闘時、自身の判定値に+10する。

『不倒不屈』Spec.2
決して諦めない姿勢が奇跡を起こす、彼女の精神性。
HPが0になった時、HP1で耐える事が出来る。
一戦闘につき二回まで。

・適性武器
【長物】【靴】

【国広一】

ATK補正+40
DEF補正+80

・保有技能

『メスメリック・マジシャン』Act.2
魔法も科学も技術も奇術も奇跡も、全て突き詰めれば同一の物となる。
技術の先の笑顔の魔法。奇術の先に紡ぐ魔法。
戦闘ダメージ以外で自身のステータスが変化した時、それを任意で無効化できる。
50以下のダメージを無効化する。
1000以上のダメージを無効化する。
ダメージ計算時、自身のDEFを二倍にする。


・適正武器
【盾】【針】


【鶴田姫子】

ATK補正+60

・保有技能
『発砲美人』Type.2<<遠隔攻撃>>
矢射(やさ)す優しさ、撃つ美しさ。
千発千中、一撃確殺。的確的射的中の業。
自身の判定値を+5する。
<<遠隔攻撃>>を持たない敵の判定値を-15する。
自身の判定値がゾロ目であった場合、自身の攻撃サイドを確定させる。

『リザベーション・バースト』
「発砲美人」の派生技能。
仲間の意思を継ぐ力。先行ダメージの余剰エネルギーを鎖状の拘束具として具現させ、炸裂させる。
能力発動ターン、攻撃サイド確定時のダメージにその戦闘中に与えた全てのダメージを加算する。
一戦闘一回のみ。


・適性武器
【遠隔武装】

【現状ネクサスシフト最終ステータス】


【須賀京太郎/Nexus】

HP:940

ATK:264
DEF:244


・保有技能

『比翼の鳥』
人一人にして人に非ず。翼片翼にて翼に非ず。
人物を指定し、己の中に格納する能力。
格納した人物に応じた能力と補正を得る。

『????』
????

『未来余地』Ver.2
少し先の未来、時々遠い未来を認識する能力。
どんな未来でも、変えられる。
自身の判定値に+10する。
判定コンマで相手を上回った次のターン、相手の選ぶ選択肢を知る事が出来る。
奇襲・罠・不意打ちに類するものを無効化する。

『ダブル&トリプル』
「未来余地」の派生技巧。
命を削り、未来を識るくだんの本懐。
能力の使用を宣言する事で、それぞれの効果が適用される。
ダブル:MAXHPの1/4を消費して発動。戦闘終了・フォームシフト実行まで、自身の判定値を+10する。
トリプル:MAXHPの1/2を消費して発動。戦闘中、相手の選択した行動が常に表示される。

『B2A(いともたやすく走り去るえげつないババア)』Spec.2<<高速機動>>
凡百の存在には至れない高速の世界。
何よりも速く、誰よりも疾く。
自身の判定値に+10する。
<<高速機動>>に属する技能を持たない者との戦闘時、自身の判定値に+10する。

『不倒不屈』Spec.2
決して諦めない姿勢が奇跡を起こす、彼女の精神性。
HPが0になった時、HP1で耐える事が出来る。
一戦闘につき二回まで。

『メスメリック・マジシャン』Act.2
魔法も科学も技術も奇術も奇跡も、全て突き詰めれば同一の物となる。
技術の先の笑顔の魔法。奇術の先に紡ぐ魔法。
戦闘ダメージ以外で自身のステータスが変化した時、それを任意で無効化できる。
50以下のダメージを無効化する。
1000以上のダメージを無効化する。
ダメージ計算時、自身のDEFを二倍にする。

『発砲美人』Type.2<<遠隔攻撃>>
矢射(やさ)す優しさ、撃つ美しさ。
千発千中、一撃確殺。的確的射的中の業。
自身の判定値を+5する。
<<遠隔攻撃>>を持たない敵の判定値を-15する。
自身の判定値がゾロ目であった場合、自身の攻撃サイドを確定させる。

『リザベーション・バースト』
「発砲美人」の派生技能。
仲間の意思を継ぐ力。先行ダメージの余剰エネルギーを鎖状の拘束具として具現させ、炸裂させる。
能力発動ターン、攻撃サイド確定時のダメージにその戦闘中に与えた全てのダメージを加算する。
一戦闘一回のみ。


・装備
・秘薬『クレイジーダイヤモンド』×2
効果:HPを50回復
・秘薬『烈火の姫君』
効果:HPを150回復
・注射『ただのビタミン剤』
効果:任意のステータスを50上昇させる。
・投網『スパイディ』
効果:使用した次のターン、相手の出す手が分かる
・視鏡『爆砕点穴』
効果:現在戦闘中の相手の行動パターンを知る事が出来る

戦力としてのネクサスを知ってるはずだからいきなり使うのは危険そう
コトリバコ持ってるし、初手は怜かな?

黒「おいおい、なんでわざわざコトリバコを殴るんだ?」

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】



「え、あ、な」

「ドジ踏んでもうたなぁ……ま、しゃあないやろ」

「あ、う、あ、え」

「動揺しすぎや。……言語になってないで」



たとえ、友人が死んでも、恋人が死んでも、家族が死んでも。
街が消えても、帰る場所がなくても、どんな場所に行っても。

たとえ、世界が終わっても。

彼女だけは、俺の隣に居てくれると信じていた。

……何の根拠も無く。
……何の保証も無く。

そんな無意識の甘えが、彼女の死を呼び込んだというのなら。


……俺が、彼女を。誰よりも大切な相棒を……殺したも、同然だ。


「……ボソボソ」

「!! なんだ、何か言う事あるのか!?」

「……ボソボソ」

「待ってくれ、もう一回、聞こえなかっ——」


彼女のか細い声を聞き逃さないようにと。
耳ごと顔を彼女に近づけた、その一瞬。

彼女の体が動いて、彼女の顔が俺に迫って。

唇に、何かが触れる感触。



「……わっはっは、情けない顔しとる相棒に、最後の気合注入ぅー……」

「と、き……?」

「笑うんや……きょ……ごほっ、笑って、生きるんや……」

「……怜……」

「乙女の……ファースト、キスまで、貰っといて……」

「幸せに、ならん……なんて。……笑って……人生、過ごさんなんて……」

「……ゆる……さ……へ……」

「……」

「……怜?」

「おい、怜」

「なあ、おいってば、怜」

「怜」




「怜」



【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】

てか、死亡判定がなくなったのはコトリバコの探索時のみで
この戦闘で死亡判定が無いとは限らないんだぞ

けどみんな目の前で死んでるんだよな・・・
兵部みたいに目の前で死んだ奴の能力獲得とかしてたりして

最も信を置く相棒を呼び、彼は『オモイヤリ』をその手に構える。



京太郎「怜ッ!」

怜『! 良かった、今連絡しようと……って何やこの状況』

京太郎「ここでこいつを仕留めないとヤバいんだ。残り時間は?」

怜『5分ちょいやな。ぎりっぎりや』

京太郎「……突破する。一撃、俺達の全部を込めた一撃で仕留める」

怜『(……やっこさん、逃がしてはくれなそうやなぁ)』

怜『(この戦いがあの結末に繋がらん事を祈って、全力でやるしか無い!)』



京太郎の右手の腕輪が、キラリと光る。



黒「……オモイヤリ、か」

黒「……」

黒「本当に、忌々しい」



そして、黒フードの右手に付けられた『漆黒の腕輪』もキラリと光る。



京太郎「ここで引導を渡してやるぜ、黒フードッ!!」




【一方的攻撃判定】

【計算式:判定コンマ数値+自身の攻撃力の二倍-相手の防御力=ダメージ】

【狙撃などと計算式は同じです】


京太郎の行動を選択、判定値を出して下さい
・アイテム使用
・武器変更
・フォームシフト
・ネクサスシフト
>>628

ネクサス

黒フードの腕輪を装備して、ラスボス化した宮永姉妹を倒すことに
最後はすこやんが扉の向こう側へ・・・

黒「ああ、そうだ」

黒「言い忘れてたがな」

黒「士栗の……口裂け女の事だが」

黒「アイツの素体をいじる時にな。適当なデータが無かったから」

黒「アイツの素体としての性能は、俺自身のデータを元に作ったんだわ」


揺るがない。
顔面に、その額に直撃させたというのに、揺らがない。
まるで子供が素手で岩盤を殴ったかのように、動かない。

京太郎達の絆(ネクサス)の一撃は確かに必殺の一撃だった。

それは黒フードの後ろに抜けていった衝撃波が、細い街路樹をへし折った事からも伺える。



黒「だからそれじゃ、俺は倒せねえな」



しかし。

衝撃波でフードは吹き飛ぶ。

その素顔が、ようやく晒され——



京太郎「——な、に?」

怜『……ああ、やっぱ……』

穏乃『嘘!?』

一『……え?』

姫子『なん……で?』





264×2-666+(20)=0ダメージ!


黒フードにノーダメージ!

最大攻撃翌力は姫子のヒトノワなんだよな

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】



決着。

全ての戦いに、決着を付ける一撃。

それがフリーメイソンの首領、その忌々しい胸の中心に突き刺さる。


「……見事だ、少年」

「まさか、『そんな力』に目覚めていたとはな……」

「私の、敗北……か……」


倒れ伏す首領。
終わる戦い。

だけど。


「何も、返って来ない」

「当たり前、だよな」

「失うだけで……何も、手に入ったりはしなかった……」


魔神を倒し。黒幕を殺し。勝利を手にして。

……なのに。

この胸の中の、虚無感は何だ。
この虚しさは、寂しさは、一体なんなんだ。


「……なんで、俺、生きてんだ?」

「もう勝ったし、良いよな?」



「死にたい」



諦観と嘆きの果て。
生きる意味も、頑張る意味も、生まれた意味ももう無くて。
生きる事すらもう嫌になった、俺は——



「よう、勝ったか……」

「……! おやっさん! 良かった、アンタは生きていてくれたのか!!」

「……『生きていてくれたのか』、か」

「どうした? あ、そうだ! 俺勝ったぜ! これで、ようやく……」

「……お前をそんな風にしちまったのは、俺達大人の責任なんだろうなぁ」

「おやっさん?」

「聞け、京太郎」




「これがお前の、最後の希望だ」



【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】

フードの下には、20代も半ばという男性。
髪は漆黒で、その瞳と同じ飲み込まれるような黒。
地獄の底のような、色が混じりすぎたがゆえの黒。

だが、それより。

何よりも、京太郎を驚愕させたのは——




京太郎「俺と、同じ、顔……!?」




そのフードの下の顔は、京太郎と瓜二つ。

髪の色、加齢の点を除けば、同一人物といっても差し支えないほどに。

間違いなく。

黒フードの正体は、『須賀京太郎』その人であった。

【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】



「これからお前を、別の世界に送る」

「おやっさん!?」

「未来か、過去か、平行世界か、異世界か、別の次元かは分からない」

「だが……人間の居る地球って点だけは、変わらんだろうよ」

「待て、おやっさん! そんな能力の使い方したら……!」

「いいさ。……俺ももう、助からん」



おやっさんの、服の下から滲む血。
……傷口を、包帯で抑えて。服を着替えて。

ただ、俺に気付かせないためだけに、気力を振り絞ってこの人は……



「やめろ! 尚更だ! 今から病院に行けば、間に合——」



「この世界は、お前に対して厳しすぎる」

「帰れないあの街も、還らない思い出も、返って来ない大切な物も」

「全てがお前を苦しめる。お前は、もうこの世界では生きられない」

「だから……別の世界にでも、行って来い」



視界が歪む。
おやっさんの能力が発生させる、空間の歪みの兆候だ。


「おやっさ——」

「もしだ」

「どっかでお前が、また守りたい物を見つけた、その時は」

「お前が守れなかった物に似た何かを見つけた、その時は」

「こんどこそ、守れよ」



「……まったく。お前はまるで、出来の悪い息子みたいな奴だったよ」

「勝手にどこぞに行って、何もかも忘れて、幸せになってこい」




そして俺は、この世界から別の世界へと飛ばされた。




【■■■■■■■■■■■■■■■■■■】

【時空のおっさん】



未来、過去、平行世界、異世界。
それらの隙間に存在する『狭間の世界』に住まう人物の都市伝説。


未来へと渡ってしまったり、過去へと飛んでしまったり。
平行世界に飛ばされたり、狭間の世界に落ちてしまったり。

そういった己の世界へ戻れなくなった人を導く、お人好しなおっさんの都市伝説。


彼は世界を渡る能力と、世界から外れてしまった人物を元の世界に戻す能力を持つ。

世界から外れ、迷子になってしまった人物を前者の能力で探し。
後者の能力で元の世界に戻し続ける、良心ある世界の管理者。


それゆえに、この都市伝説の所持者に戦闘力は一切無い。
ただし世界の隙間に引き篭もったり、そこに人を呼び込んだりは出来る。
逃げる事、守る事に関しては一級品。

また、世界の外へと飛ばされた人間を助ける唯一無二の力でもある。
戦う力ではなく、人を助ける力。


……そして、能力の特性上。

『別の世界』まで『この世界』の人間を飛ばすためには、命を対価とする必要がある。




その正体のほとんどが謎のベールに包まれた、おっさんの都市伝説。

【須賀京太郎/黒フード】


補正後最終HP:1000

補正後最終ATK:666
補正後最終DEF:666


・保有技能

『比翼の鳥』
人一人にして人に非ず。翼片翼にて翼に非ず。
人物を指定し、己の中に格納する能力。
格納した人物に応じた能力と補正を得る。
彼に力を貸す者は、もう誰一人としていない。


『TTT(闇)』
The Templehero T。
寺生まれのTさん。この世のありとあらゆる理不尽の天敵。
絶望を絶つ者。どこかの誰かの希望の具現。
すでにその輝きは失われ、変質している。
目の前で死んだ親しい人物の保有技能・ステータス補正を獲得する。
ただし一部の人物は獲得時に変質、そのまま獲得する事は出来ない。


〈装備〉

E:『腕輪:Nodus』【防具】
ATK補正+15
DEF補正+15

・獲得技能


最終判定値+225


『未来余地』Ver.2
少し先の未来、時々遠い未来を認識する能力。
未来なんて、変えられやしなかった。

『ダブル&トリプル』
「未来余地」の派生技巧。
命を削り、未来を識るくだんの本懐。
意味も無く、価値も無く、削られる命。

『B2A(いともたやすく走り去るえげつないババア)』Spec.2
凡百の存在には至れない高速の世界。
何よりも速く、誰よりも疾く。
けれど、誰のピンチにも間に合わない。

『不倒不屈』Spec.2
決して諦めない姿勢が奇跡を起こす、彼女の精神性。
諦めた方が、良かったのかもしれない。

『メスメリック・マジシャン』Act.2
魔法も科学も技術も奇術も奇跡も、全て突き詰めれば同一の物となる。
技術の先の笑顔の魔法。奇術の先に紡ぐ魔法。
誰も守れぬ無敵の盾。

『発砲美人』Type.2<<遠隔攻撃>>
矢射(やさ)す優しさ、撃つ美しさ。
千発千中、一撃確殺。的確的射的中の業。
最後まで、運命だけは打ち抜けなかった。

『リザベーション・バースト』
「発砲美人」の派生技能。
仲間の意思を継ぐ力。先行ダメージの余剰エネルギーを鎖状の拘束具として具現させ、炸裂させる。
仲間の意志を、こんな形で継ぎたくなんて無かったのに。

『三位一体』
三つの都市伝説が融合した形態。
彼が手伝い、彼女が目覚め、彼に受け継がれた力。
放射能と、水と、氷の治水。

『反物質砲弾』
かつて無敵であり、最強であった必殺の一撃。
家族を奪われた痛みと苦しみを、ただ無心にぶつけるために。
一度のみ、発動したその戦闘に強制勝利する。
ストック0。

『神人重/上一衣』
「九面」と呼ばれる神々の降霊技能。
神は巫女の仇を討たんとする男を認め、その力を貸した。
一度のみ、指定した九面の神を降ろす事が出来る。
ストック0。

『星の女神』
母なる星の無垢なる力。
彼女が最期まで手に入れられなかったその加護を、彼女は彼に手渡した。
精神干渉に類する能力を無効化する。

『月の輝夜姫』
遙か高みより見下ろす、美しき月の姫の加護。
命尽きたその時に、彼に託した彼を守るための刃。
一度のみ、指定した対象に「狂化」のバッドステータスを付加する。
「狂化」した人物の操作権を得る。
ストック0。

『照魔鏡』
真実の象徴。
本質であり、真実であり、ゆえに頂点に最も近い性質。
一度のみ、一ターンの間ありとあらゆる『干渉』を任意で無効出来る。
ストック0。

『紅の鎧』
赤い、紅い、朱いマント。
肉体ではなく、心を覆い守る鎧。
自身に対してダメージを与える能力を任意で無効化する。

黒「……ま、分かってるよな。お前は」

黒「なにせお前は、俺の記憶を覗いてたんだから」

京太郎「……!」



ようやく、少年も理解する。

あの光景は、予知夢などではなく。
目の前の男が体験してきた、本物の掛け値なしの地獄。

だが、しかし。

苦しい思いをした者に、他人を苦しめる権利があるなんて理屈が、通る筈がない。


ましてや、それを現在進行形で行なっている人物が——



京太郎「てめぇ……俺達が! あの人達から託された想いを、なんだと思ってやがる!」

京太郎「お前が、俺が、この街の人達を進んで傷付けるだと!?」

京太郎「ふざけるなッ!!」



憤怒の咆哮。
それに込められた、魂が震えるような怒り。



黒「……俺に託した人達は、もう死んだんだ!」



嘆きの慟哭。
それに込められた、魂が引き裂かれるような悲しみ。


黒「みんなみんな、死んだんだ」


その瞳は虚ろで、だけどそれは感情が無いなんて事じゃなく。
その瞳から流れ出た感情があまりに多過ぎて、何もかもが枯れてしまった証拠。

その奥には、どうしようもないほどに滲み出る『嫉妬』の姿が見て取れた。


黒「死んだんだ」


折れて、歪んで、堕ちきって。
失って、奪われて、何もかもをなくしたその姿が。

雄弁に、京太郎にその言葉を伝えていた。



黒「死んだんだ……」



『お前もいつかこうなる』、と。

「俺は誤解してた。気付きもしなかった。俺の本当の願いは、俺が本当に欲しかった物は……優しさだったんだ」


血を吐き出すような、静かで激しい言葉

たとえるのなら懺悔。
喉を掻き毟るような、純粋で混じり気のない苦痛のみが込められた言葉。

それを祈るように、流れぬ涙の代わりとするかのように。

『須賀京太郎』は、言葉を続ける。



「だから優しい人を守ってきた。優しい人が住む場所を守ってきた。人が優しい気持ちを持てる心を守ってきた」

「ただ、優しくされたいだけだったんだ」


己の中の、そんな自分の本音に気付いた時。
彼は『それ』を、罪悪だと恥じた。


「全部自分のためだ。全部自分の中で完結してた。優しさの無い世界に、俺は耐えられなかったから」


見返りを求めて、誰かを助けていた自分に。



「優しい人に生きて居て欲しいと、救われて欲しいと、幸せであって欲しいと自然に、心からそう思えたから」

「だから自分も優しい人になれれば、優しくなれれば、人からそう思ってもらえるんだと勘違いして」

「それを自分の心の拠り所にして、生きてたんだ。そんな自分の利己的な醜い欲にも、気付けてなかったんだ」


淡々とした言葉。
なのに、そこには計り知れないほどの感情が込められていて。

『もうやめろ』と、そう言いたくなるくらいに。

その言葉は、『須賀京太郎』を傷つけていた。



「隣の人に優しく出来ない奴に突っかかって、優しい人を蝕む悪夢に殴りかかって、優しさを食い潰す現実を否定して」

「その果てに、全部失った」


『須賀京太郎』の在り方の本質と、それが迎える結末。
それを彼は知っている。彼だけが、知っている。



「優しさだけを求めてた俺への罰は、この世界が残酷だって事実を思い知らせる事だったんだ」

「綺麗事ばっかり吐いてた俺は、その果てに綺麗な物を全て失った」

「綺麗な物を壊して、綺麗な者を死なせて、綺麗なものを穢した」



彼にもう言葉は届かない。
届かせる事が出来る人達は、すでに皆彼岸の向こう側だ。

だからもう……彼には、何の言葉も届かない。



「……救いようがない。救われない。救われちゃならない愚か者だ」

涙など、一滴も流してはいないというのに。

誰がどう見ても、彼は泣いていた。



「この街で……いや、違うか? ……まあいい」

「俺が、この素晴らしい街で」



「出会った事は、間違いだった」

「頑張った事は、間違いだった」

「疾走った事は、間違いだった」



「俺なんかがこの街を守ろうなんて思った傲慢、その時点で間違いだったんだ」

「それに気付くのに……何年かかったんだろうな……」



そして取り出したハッカイ……コトリバコを、『昔の自分』へと向ける。



京太郎「! ネクサス、解除!」


そして、それに気付き彼も臨戦態勢へ。

すでに結界のタイムリミットは過ぎている。
コトリバコは、その発動に何の制限も受けていないのだ。

この状況、確実にコトリバコの干渉を受ける彼女らを格納し続ける訳にはいかない。

子供で女性。危険過ぎる。
ならば、選択肢はたった一つ。


京太郎「(ルーベライズでしのいで、第二波が来る前に再度穏乃格納で距離を取る。)」

京太郎「(一回ならしのげるはずだ。そのまま逃げて、勝機を探す)」

京太郎「(ここで俺が死んで、コイツを野放しにするわけには——)」



黒「実に、面倒だった」

黒「ネクサスはいいとして、だ。その、ルーベライズは勿論の事」

黒「追い込まれると誰かしら助けに来たり、出会ったり……」

黒「本当に、面倒だった」

黒「街全域への干渉で仲間と切り離す作戦。データ取りも兼ねたリハーサルの侵攻」

黒「お前を殺すために、最も相応しい武器」

黒「ロジックを組み立てて、ようやく、ここまで来た」

黒「……死ねよ」

黒「死ね」



呪いが木箱の継ぎ目から漏れ始め、そして。

 



「京ちゃん?」


その場に、場違いなほど可愛らしい声が響く。



 

京太郎「さ、き……?」

咲「あ、京ちゃん! 電話で言ってた緊急の用って何?」


声色を普段変えているだけで。

その気になれば、彼だってかつての声をそっくりそのまま出せる。

自分の声だ、なんの不思議もない。



京太郎「……あ」



宮永咲は、『須賀京太郎』からの「緊急の用だ。すぐ来てくれ」という電話に従っただけ。

疑問に思ったとしても、それはすぐに氷解する。

だって信じてるんだから。いつだって、どこだって。

宮永咲は、須賀京太郎を信じている。



京太郎「て」



そして、彼も一瞬で気付く。

この状況。この最悪。この作戦。

コトリバコ。

その対象になりうる人物が二人。

ルーベライズは一つ。



黒「選んで死ね」

黒「偽善者」



チェックメイト。




「テメェエエエエエエエッ!!!!」

首から下げたルーベライズを外し、輪にしたまま咲へと放り投げる。

それは輪投げのように、クルクルと飛び咲の首へとかかる。


咲「わ、わっ!?」

京太郎「それを絶対に外すんじゃねぇぞ、咲!」

咲「え? あ、う、うん!」


……これで、終わり。

どうしようもない。避けられない。

練りに練られた、彼を殺すためだけの戦略。

ここで、彼の生涯は幕を閉じる。


黒「……おりこうさん」

黒「そうだよな」

黒「『俺』は、咲を見捨てられないよな」



どこか安心したような、成し遂げたような顔。
どこか悲しそうな、後悔を滲ませた顔。
どこか苦しそうな、怒りを滾らせるような顔。


……一瞬、かいま見えた黒フードの感情。


そのどれが、本当の感情なのか。

京太郎には、分からなかった。



黒「俺なんて……生まれなきゃ良かったのにな」


放出される呪い。
絶大な苦痛を伴う、内臓をねじ切る呪い。
それも、作る事すら禁じられたハッカイの呪い。


黒「絆なんて、信じるべきじゃなかったよな」


それが、少年の体を蝕む。
響く絶叫。あまりにもその声は苦しげで、痛々しく。
痛みに耐えるために、声帯をちぎろうとしているかのようにすら聞こえた。


黒「……なぁ。俺は、そう思うよ」

全否定。

……己の存在そのものを、全否定する台詞。
未来の自分から、今の自分を否定されるという現実。


京太郎「……やめろよ」


しかし。


「『それ』、まで、否定、しないでくれよ……」

「暖かかった、だろ……?」

「優、し、かった、だろ……?」

「大、好きだっただ、ろ……?」

「『俺』が、そんな事、言うなよ…!!」



内臓がグチャグチャになっても、気力だけで喋る。

こんな風になってしまっても、譲れない事はある。

自分が……須賀京太郎が、それを否定するなんて事。

許せるはずがない。

けれど。



黒「……さぁ、どうだったっけか」

黒「もう、忘れちまった気がする」

黒「……なんか。約束とか、遺言とか」

黒「あったような……なかったような……」



黒「……もう、思い出せねえや」



もう、彼の物語は悲劇で幕を閉じている。



黒「だけどな」

黒「俺の生き方は、間違っていた」

黒「それだけは……多分、絶対に忘れない」




京太郎「馬鹿、野郎……ッ!!」

咲「天の向こう側って、何があるんだろうね」


そんな話を、あの姉妹とした覚えがある。
そんな彼女の問いに、適当に答えた覚えがある。


京太郎「天国でもあるんじゃねーかな」


そんな自分の答えに、凄く嬉しそうに笑っていた咲の笑顔を覚えている。
そんな妹の笑顔に、思わず微笑んでいた姉の笑顔が素敵だった事を覚えている。


照「星の向こう側なら、きっと素敵なとこなんだろうね」


そんな風に三人で見上げた空が、満天の星空で感動した事を覚えている。
そんな時間を守りたいと思ったのが、自分の原動力の一つであった事を覚えている。




……?

なんで、こんな事を、俺は、思い出して……


「……京、ちゃん?」


ああ、そういう事か……


「京ちゃん、京ちゃん。ねぇ、起きてよ」


これは、走馬灯か。
今まさに、死んで行ってるのか。
……俺は。


「ねぇ、ねえってば!!」



……泣くなよ、咲。

お前に……泣かれると、俺は……なん……つーか……

泣くなよ……咲……




その日。


この物語の主人公、須賀京太郎は、その命を落とした。




第十五話:完

【次回予告】



「ぜったい、諦めへん」

「諦めてたまるもんか。アイツが褒めてくれたんだ、だから」

「ボクは、諦めない」

「諦めたりしなか、絶対に」

「諦めるかよ」

「諦めるのは性に合いませんわね」

「諦めないっす」

「諦めないよ、私も」

「まだ終わってない。だから、諦めない」

「諦めませんよー」

「諦めませんわ。ウチは、この命を」

「諦めてないんだろ? わっかんねーけど」

「諦めん」

「諦めません、何があっても!」

「『諦めるな』と、そう教わった」

「諦めたくないなぁ……」

「諦めないよー!」

「諦める? ご冗談を」

「アイツなら、諦めないと思うから」

「ここはまだ、諦める所じゃない」

「諦めたらそこで終わり」

「じゃ、諦めなきゃ終わらないんだね」



「諦めない」



「だから」



「「「「戻って来い! 須賀、京太郎ッ————!!!!」」」」




第十六話前編:Petit Prince/星の王子様

本日の投下はこれにて終了です。皆さん、お疲れ様でしたー

前にもちょろっと話しましたが14〜16話はワンセットなのです
三章は「京太郎編」でもあり。色んな意味で彼が主役です

黒フードに対して京太郎の知人が嫌悪感を持つのは、そりゃ自分が好ましく思ってる奴が闇堕ちして自己否定してんの見たら気分悪くなりますよという話

久、宥、衣がそう。対して視点と感覚がちょっと特別な淡、当時京太郎と面識なかった泉は嫌悪感を抱かないというわけです


黒フードさんの気持ちや心中はめんどくさいのでササっと終わりません
なので最低限残して切り取りました。テンポ悪くなるので
そっちはそっちでやりますのでー。本人が自分の気持ちを分かってないというのがめんどくささに倍率ドン


京太郎と黒フードは存在するだけで互いの存在の全否定。現状、どうしようもなく



では今夜はこれにて。お付き合い頂き、感謝感激雨霰

レス返しは明日します。おやすみなさいませー

黒フード=京太郎ってのは結構前から気づいてたけど、
殺そうとする理由だけはずっと疑問だった。
つまり「須賀京太郎」が大嫌いってことか……

 



【きょうたろうにっき】



 

【■■年■■月■■日】


今日は俺の誕生日。
めでたく18歳となりました、とでも書いておこう。

咲に日記帳なるものをプレゼントして貰った。
今日から極力毎日書いていこうと思う。

あと二ヶ月もすれば俺達も高校3年生。


先輩方は進学したり、就職したり……人それぞれだが、今でも俺に力を貸してくれている。

本当に、ありがたい。


新結成した仲間達と、また一年頑張ろう。


こんなにも頼れる奴らが傍に居てくれるのなら、明日が不安になるはずがない。


この絆と在り方を、大切にして行きたいと思う。

【■■年■■月■■日】



最近、都市伝説の出現率と強さが増してきた。

本来自然発生する都市伝説は全国的に見てもそう多くはないはずなのに……


何か、陰謀の匂いがする。

あくまで勘でしか無いが。


あの人が帰ってくるまで、この街は俺が守る。

その誓いを忘れたわけではないし……今はもう、その誓いを抜きにしてもこの街を守りたいと思っている。


この街は良い街だ。
それは何よりも、そこに住まう人達の気質に他ならない。


いつまでも、どこまでも、守って行きたい。

【■■年■■月■■日】



彼女が出来ました。



ひゃあああああああああほぅううううううううっ!!! 

【■■年■■月■■日】


二年前に貰った『Next』の腕輪が、ようやく俺と適合した。


強敵との戦い。
絶対的な窮地。

そして、駆けつけてきてくれた仲間。


それが、目覚めのきっかけとなってくれたんだと思う。



『Nodus』。


英語においては、
「困難な状況」「難局」「物と物の繋ぎ目」
などの意味を持つ。


……そして。


ラテン語で読めば、「絆」という意味になる。


困難な状況を、絆で繋ぎ打ち破る。


これ以上無いくらいに、俺達にピッタリな力だ。


俺自身の容量が拡大され、常時二人格納・短時間なら四人同時格納も可能になった。

二人格納は弱点を補ったり、長所を伸ばしたり……可能性は無限大。

基本形態が増えたようなものだ。
純粋な対応力で言えば圧倒的である。

四人同時格納による突破力も合わさって、もう怖いものなど何も無い。



これが、絆なんだ。

【■■年■■月■■日】



……負けた。敗北した。

恐ろしく強かった。

なんなんだ、アイツは。


なんとか逃走したが、次も上手く行くとは限らない。

……策を練らなければ、太刀打ちすら出来ないだろう。


仮面を付けた貴族風の服装の都市伝説。

ナイトメア・マスカレイドと名乗っていた。


おそらくアレが、この街で暗躍している黒幕の一味。


打倒しなくてはならない。
もう負ける訳にはいかない。

俺が負ければ、後は無い。


俺が敗北する事で失われてしまう物が、この街には多すぎる。

【■■年■■月■■日】


……随分と、日が開いた。

瓦礫と化した事務所を掘り起こしていた時にこの日記が見つかった時は、思わず泣きそうになったもんだ。


……フリーメイソン。

そして、四天王。


恐ろしく巨大な組織。

恐ろしく強力な構成員。

そして、凄まじい力を持つ四天王。



四天王一人目。

『ナイトメア・マスカレイド』。

謎の存在だ。
何度か戦い倒したものの、何度も蘇り戦いを挑んでくる。
そのタイミングがまた絶妙で、コイツさえ居なければ……助けられた命は、数え切れないと思う。

戦闘力自体も高く、油断すれば敗北は免れない。



四天王二人目。

『松実宥』。

……何故、あの人が。
分からない。分からないが、人の気持ちなんて言わなければ伝わらない。
伝わらないのに、何も言ってくれない。
それが小骨のように引っかかって、あの人と分かり合う事を諦められない。

あのマントは、あの人の心を包む鎧。
他人と己の間に挟み込んだ、拒絶のフィルターだ。

……心に鎧を纏っても、心を守れはしないのに。



四天王三人目。

『大星淡』。

コイツは……なんだろうか。
勝利でもなく、敗北でもなく。
もっと別の所を目指していて、それに淡自身無自覚なような……そんな気がする。

あくまで推測だが。
淡は対等の存在を求めて生きている。
そう、俺は思う。

だからおそらく、彼女は誰かと一度全力でぶつからなければ納得しない。
ぬるま湯のようなぬるい関係に、淡は納得しない。

……この状況になって、初めて淡について真剣に考えている気がする。

すでに、もう戻れない所まで来てしまったというのに。
これは俺の感傷で、後悔なんだろうか。

健夜さんのツテで、風の噂に聞いていた霧島神境の人が応援に来てくれるらしい。

これでとりあえず、淡だけは制圧できるだろう。



そして、四人目——



(此処より下の部分は焦げていて読めない)

【■■年■■月■■日】



俺は、あの街を守れなかった。

何も、守れなかった。


だが、あの巨人。

悪夢を顕現させたような、恐るべき魔神。

アレを倒さなければ、どこに逃げたって意味は無い。

だから姉ちゃんも、決死の覚悟でアレに挑んだのだ。

アレを倒さなければ、俺達に未来は無い。



負ける事も、逃げる事も、折れる事も許されない。


散っていった人達。
俺に付いて来てくれる人達。
俺が敗北する事で蹂躙されてしまう人達。


それら全ての命に、俺は責任を持たなければならない。


そうやって、生きてきた。



倒すべき都市伝説。あの魔神の名は——




(此処より下の部分は焦げていて読めない)

【■■年■■月■■日】



……辛い。

だが、もう戻れない。



【■■年■■月■■日】



また、一人行ってしまった。



【■■年■■月■■日】



なんでだ



【■■年■■月■■日】



いつ終わる?
いつ終わってくれるんだ?

この、地獄は



【■■年■■月■■日】



逃げたい。

……どこに?



【■■年■■月■■日】



死にたい



【■■年■■月■■日】



【■■年■■月■■日】



【■■年■■月■■日】



【■■年■■月■■日】



また、一人



【■■年■■月■■日】



【■■年■■月■■日】

【新・きょうたろうにっき】



新しい日記帳を買った。

今日ここから、また新しい自分を始めようと思う。


……おやっさんに飛ばされたこの世界は、どうやら俺から見れば過去の世界。

または、それによく似た世界であるようだ。

起きる出来事もそっくりそのまま、俺の世界の過去にあった出来事の様である。


この世界に飛ばされて、しばらく俺は死体のように生きていた。

……いや、死んでいなかっただけで、生きてはいなかったのかもしれない。


ただ生きる気力も、死ぬ覚悟も出てこない。
身体も動かさず、頭も動かさず。

そんな生ける屍となったまま、己が餓死する瞬間を待っていた。


……そんな俺を助けてくれたのは、熊倉先生だった。


俺が通っていた高校の教頭先生。
柔らかい物腰と笑顔で、生徒達に人気だった先生。
時に厳しく、時に優しく。俺もお世話になっていた人だ。


熊倉先生は親身に、そして誠実に俺を看病してくれた。
俺に言葉もかけてくれた。ぼかした愚痴も聞いてもらった。

そのお陰で、立ち上がるだけの勇気を絞り出す事が出来るようになった。



感謝しても感謝しきれない。だけど、今は。


この世界を見てみよう。


俺がこの世界に飛ばされた事にも、きっと意味があるはずだ。

【■■年■■月■■日】



……見つけて、しまった。


アレは俺だ。過去の俺だ。


そういえば、そんな事もあった気がする。


とりあえず、こっそり手を回して手助けしておこう。








【■■年■■月■■日】



……もし。

もしもだ。

未来を知る俺が。運命を知る俺が。

この世界で、悲劇の原因を取り除いていけば。


この世界だけは……悲劇を、回避できるんじゃないだろうか?


考えろ。
思い出せ。
そして、どうすれば良いのか論理を組み立てろ。


練った対策を講じて、その上で俺はどう動く?


……もう、二度と。


失敗なんて、許されない。

【■■年■■月■■日】



・メモ


・都市伝説大侵攻
・四天王
・魔物である彼女達について
・『須賀京太郎』の強化
・問題のある人物達の問題解決
・強力な仲間の用意
・魔神
・死亡回避
・予想される未来へのフローチャート
・戦力候補検討(鹿児島、岩手、北海道、東京etc……)

【■■年■■月■■日】



また暫く日が空いてしまった。


フリーメイソンに入る事になった。

今思えばとんでもない作戦だと思うが、これが一番効率的だと思う。


フリーメイソンの内情。
そのシステムと隠し玉。

俺はこの組織について知らない事が多すぎる。

『敵を知り己を知れば百戦危うからず』と言うが、俺は敵の事を何も知らない。

だからこそ、内部深くまで潜入しなければならないのだ。



……なにより。


ここでしか、出来ない事もある。

京太郎は京四郎だった?

■■年■■月■■日】



……驚いた事が、二つある。


一つは、俺がいきなり幹部待遇だったこと。

じっくりとのし上がる予定だったので、これは予想外だ。


二つ目は……首領に俺の正体がバレていた事。

そして、俺の正体を知りつつも首領が俺を幹部待遇にしたことだ。


まあ、大体何を考えているかは分かるが。

……だからこそ、あの首領は俺に敗北したのだから。


今はもう、俺にあの首領を倒すだけの力は残っていない。

今は我慢の時。雌伏の時だ。


こらえてこらえて、最高のタイミングでひっくり返してやる。

【■■年■■月■■日】



最近、ちょっと体調が優れない。



……なんか、見覚えのある奴が部下になった。


何やってんだマスカレイド。


人事は俺に任されているので、とりあえず俺の部下にして管理下に置く。


ふと、そこで良手を思いついた。


四天王の構成員を『調節』する。


上手く行けば仲間の説得、『俺』の経験値、四天王の補充と偽って強い仲間の用意。


様々な条件をクリアできるかもしれない。


やってみる価値はある。よし……

黒幕はリッツじゃね(適当)

【■■年■■月■■日】



健夜さんとアイツと……そして、照ちゃんと接触する。


洗いざらい、全て話す。

俺の正体も、この世界の未来も、そしてその原因も。


これが切り札になるはずだ。

未来を変えるために考えた俺の策の、主軸となる部分。


これで照ちゃんとアイツはほどなくこの街を離れ、健夜さんはこの街に残り暗躍する。

なんとかなる事だけを、祈る。

計画の露呈を防ぐために、真実を話すのはこの三人だけ。

人格も能力も共に信じられる、安心して託せるこの三人以外にはもう誰にも話さない。



これでダメだったらもうおしまいだ。

要所要所で『俺』が頑張らないとダメな所とか、特に。

不安要素しかない。「自分を信じろ」なんて、今の俺には反吐の出る言葉だ。



……なんか、本当に体調悪い。

明日病院にでも行く事にする。

だからアイツって誰だよ……

【■■年■■月■■日】



体調が悪い理由が判明した。

……と言うより、実感した。

戦う機会があり、その時に。



『寺生まれのTさん』と言えば最高の対抗神話であり、最強の対抗神話。

俺は自分がそうだと教えてもらい、自覚し、最後の戦いの前にその力を目覚めさせた。


……だが。


対抗神話には、定義がある。



『都市伝説を討つ為の都市伝説。
 都市伝説殺し。都市伝説の天敵。アンチ都市伝説。

 人々が「助かりたい」「こうあって欲しい」「この恐怖から逃げたい」と思った結果生み出された概念。

 誰かを恐怖の底から救い出す、純粋な希望としての都市伝説。

 都市伝説と対になる、世界でもっとも新しい神話の形』。


そして、寺生まれのTさんにも。


『ありとあらゆる都市伝説に介入し、悲劇や死を消し飛ばして行く漢の対抗神話。

 最強の都市伝説殺し。
 どこかの誰かが望んだ「私を助けてくれるヒーロー」そのもの。
 悪夢と絶望の対になる、夢と希望の具現者。

 都市伝説と対になる、とある英雄の対抗神話』


誰の希望にもなれなかった。
助けを求めてきた人達を、救えなかった。
何一つとして、守れなかった。


誰かの希望になれなかった俺は、もう対抗神話としての自分を保てなくなっている。

己の定義を曲げてしまった俺は、もう俺自身という存在ですら守れなくなっている。


ましてや、悪の組織に入り悪を手助けする正義の味方など、あるものか。



普通の都市伝説なら、滅多にこんな事にはならないだろう。


だが俺は寺生まれのTさんであり、もっとも対抗神話としての特性が強い。


その影響は間違いなく、対抗神話の特性が強く影響する俺の精神に来る。


……いつ正気を失うか。それまでに、どこまでやれるか。


正気を失う事は怖くない。……ただ、未来を変えられないかもしれない事だけが怖い。



また守れないかもしれない事だけが、怖い。

【■■年■■月■■日】



宥さんがフリーメイソンに入ってきた。


今の俺から見ると年下なのに、どうにも違和感がある。
年上が年下になっているというのが、どうにも……


あ、それでも姉ちゃんよりは年下だった。
少しだけ安心したが、本人に言ったら怒られるんだろうか?

……怒られるだろうな。もう、怒ってなんてくれないけれど。

死人に口は無い。思い返しても、心が痛むだけだ。



宥さんの視線が凄く痛いかった。

凄く嫌われている様子。

……それも、仕方無いか。



もう「多少の犠牲は仕方ない」と妥協した俺は。

もう誰かの助けになれない、誰かに手を伸ばせない俺は。

もうあの頃には戻れない俺は。


この人にとって、かつてこの人の友人だった『俺』じゃない。



……寂しくなんてないし、辛くもない。


俺はただ、未来を変えるだけだ。

【■■年■■月■■日】



(ページが破られている)



【■■年■■月■■日】



とりあえずは予定通り。

何とかなった。どうにかなった。

これで予想外の出来事が起こらない限り、後はどうにかなるはずだ。

ここからは俺が頑張る番。
未来を変えるため、積み上げなければならない。

時系列から考えれば、二年後に『俺』は高校に進学する。


計画の本格的なスタートはそこからだ。


今はそのために仕込みをしなければならない時期。


未来を変えるため、俺がしくじるわけにはいかない。

【■■年■■月■■日】


最強の味方を作らなければならない。

でなければ、あの『魔神』は倒せない。

今の俺一人では、太刀打ちすら不可能だろう。



モデルは最強の都市伝説、『口裂け女』。

流れる噂をコントロールし、戦闘力においても最強の存在を作り出す。

この世界に来てから気づいた事だが、俺……と言うより寺生まれのTさんには、後付けで都市伝説に干渉する特性があるらしい。

これを用いれば、都市伝説をある程度改造できるようだ。


思い返せば。
俺と共闘した仲間が成長したり、対抗神話に近い特性を得たり。

もっとメタな話をすれば、バッドエンドで終わる都市伝説を持った人がハッピーエンドで終わったり。

誰かの暴走した都市伝説を抑え込む事が出来たのは、この特性が大きいのかもしれない。


……ハッピーエンド、か。


都市伝説には干渉できても、現実には干渉できなかった。


ただ、それだけの話だ。


思い出すのも、思い返すのもやめにしよう。


そんな事で何かが変わる事はない。



後悔も感傷も、未来を変えてくれはしない。

【■■年■■月■■日】



……少しだけ、後悔に塗れた思い出を夢に見た。


「死にたくない」と、ただ一人。


誰も俺を責めなかった。
今際の時に、誰も俺を責めなかった。

それどころか、死際の時の皆は、皆、俺なんかの事を気遣っていて……


それがかえって、俺の心を抉って砕いた。

そんな気持ちを受け止めて一人で生きていけるほど、俺は強くはなかったのに。


だけど、そんな中でただ一人。ただ一言。


「死にたくない」と、ただ一人。


言っていた女の子の事を、思い出した。

死際にこぼれ落ちた言葉。なら、あれは紛れもなく本音のはずだ。

……こんな事で、贖罪になるとは思っていない。

自己満足かもしれない。そんな事、彼女は望んでいないかもしれない。

それでも。

それでもだ。


「死にたくない」と、ただ一人。


そう呟いていた、ただの女の子が。

全てが終わった後の平和な世界、もう誰も彼女を傷付けない世界で。



幸せになれたのなら……これ以上に、素晴らしい事はないと、そう思う。



この世界に来て初めて。

こんな俺にも、『希望』が出来た。

【■■年■■月■■日】



……見つけた。

フリーメイソンの、素体都市伝説軍団。

これを使えば簡易に、かつ瞬時に都市伝説を生成できる。

もっとも、ガワとなる噂やデータが無ければどうしようもないのだが。

数は50を超えている。

これだけの数、一体どうやって……


とにかく、これをどうにかして消費し切らせなくてはならない。



俺の世界ではこれが全て一気に投入され、四天王と魔神までそこに加わった大規模襲撃という悪夢があった。



質でも量でも上回られた俺達は完全な敗北を喫し、数え切れないほどの死者と街そのものを失った。

その対価として俺達が手に言いれたのは、フリーメイソン首領の所在。

……あまりにも、割に合わなすぎる。


だからこそこの軍団を何処かのタイミングで消費させ、かつどこで作られたかを調査し。

根本的に、フリーメイソンの戦力を削ぐ必要がある。



よって調査は、以後も継続する。

【■■年■■月■■日】



……ふと、思う。

何故、俺だけがこんなに頑張らなくてはならないのか。

何故、『俺』だけがのうのうと何も知らず青春を謳歌しているのか。


全てが終わって何もかもを守れても、その中心に俺はいない。

俺は、この世界の須賀京太郎じゃないから。

どんなに頑張っても、報われる事なんてありえない。


幸せになるのはこの世界の奴だけで、俺の世界の奴らの現実は、何も変わらない。

幸せになるのはこの世界の俺だけで、今ここにいる俺の現実は、何も変わらない。


……何故。何故だ。


なんでこんな理不尽が、まかり通るんだ……?







【■■年■■月■■日】



なんか昨日はストレスが貯まってたのか無茶苦茶な文を書いてしまった。

翌日になって読み返すとめっちゃ恥ずかしいと思いました。まる


別に見返りを求めて戦っているわけじゃないので、問題なんて無いっていうのに。



それよりも、口裂け女が完成に近づいている。

『俺』もすでに入学し、そろそろ計画が始動すべき時が近づいてきたようだ。




・人間の持つ都市伝説への検証結果メモ

・人間の秘められた都市伝説にも干渉できないか、という実験
・都市伝説改造の応用

・限定的には成功

・俺の中にある能力の元の持ち主に対してのみ、干渉可能らしい
・それ以外の人間には不可能

・共鳴作用?
・能力を使いこなせていなければ、暴走させる程度なら可能

・暴走させ、その人物の本音を『俺』に吐露させる。
・戦闘自体は『俺』の経験値に

・タイミングは適宜。戦力比を見て実行する

【■■年■■月■■日】



都市伝説を調整。自然発生の都市伝説と織り交ぜフリーメイソン側の都市伝説を投入する。


もう、何人か巻き込まれて死んでしまう位なら仕方無い。
街が滅んでしまう最悪の未来に比べれば安いものだ。


ひたすら経験値を積ませ、戦いを経験させ。
結果的に『敵が徐々に強くなっている』という状況を作り出す。

階段は段数を増やせば、登れないほど高い段差にはならないという事。


期待通り、予想通り。

『俺』とその仲間達は勝利を重ね続けた。


……楽しそうだった、そんな風に見えた。

苦労はしていても、それを分かち合う仲間が居る。

困難にあっても、支えてくれる仲間が居る。

勝利の先で、共に喜びを共感しあう仲間が居る。



仲間が居る。



……何故か。


そんな彼らが、そんな光景が、その中心にいる『俺』が。

とてつもなく不愉快で、不快な存在に見えた。


……なんでだろうか?

【■■年■■月■■日】



ネクサス。

Nexus。

絆。

ハッピーエンド。



結局、赤マントですらハッピーエンド。

今日この日まで死人すら出ていない。

『俺』は誰一人として、この街で都市伝説に殺される被害者を出していない。



……俺の世界の、宥さんは。
俺の仲間は、俺の町の人達は。
みんなみんな、死んでしまったというのに。




    なんで、お前だけ




……なんだか感情が高ぶって冷静で居られなくなってきたので、寝る。


明日には頭も冷えてるだろうし。

【■■年■■月■■日】



授業中、居眠りしている『俺』を発見。


「今なら殺せる」と思考している自分に気づく。


……ヤバい。





【■■年■■月■■日】



……自覚症状がハッキリしてきた。
自己診断だが、おそらくもうそんなに時間は残されていない。


都市伝説の二〜三段階目に近い状況だ。

都市伝説と己の自我の境界が曖昧になり、拮抗し。
自分の深層心理が勝手に表出し、理性が保ちにくくなっている。


こんな。

……こんな本音が、嫉妬が、俺の中にあったのか。


ことさら強く発生しているのが、『俺』への殺意。


『守りたい物』『大切な人』のカテゴリーの外にあり、かつ俺の己への自己嫌悪がそれを後押ししている。



許せない。死ね。消えろ。苦しめ。



   何故、お前だけが



……ずっと。俺が、俺自身に対して思っていたことだ。

死にたいという気持ちは、自分を『殺したい』という気持ちの裏返しで。

「俺だけが生き残ってしまった」という気持ちが、俺をここまで突き動かしていた。


そんな本音が、俺の本音が、深層心理が。

俺の意識と混ざって、わけの分からない事になっている。


……日記を付けていて、良かった。

俺の精神の推移を示したこれだけが唯一、俺の指針となってくれるだろう。

【■■年■■月■■日】



俺の現状はコーヒーとミルクの比率が常に変動しているようなもの。

コーヒーは俺の理性。ミルクは俺の深層心理。

完全に混ざり物のない俺の意識を保てる時間が、日に日に少なくなって行ってるのが分かる。





【■■年■■月■■日】



フリーメイソンが保有する素体を全部使い切っての大侵攻。

これで素体は全部使い切れるし、戦力は大幅に削れるはずだ。

かなりの死人が出るかもしれないが、それも仕方ない。

今の『俺』とその周囲は甘すぎる。

危機感がない。戦いで「失ってしまうかもしれない」という認識が薄すぎる。


……失うべきだ。来たるべき未来の戦いで、全てを失わないために。

誰かの死で、『覚悟』を決めさせる。


この侵攻で、現状山積みになっている問題を全てクリアーする。


変わるはずだ、未来は。


これで、未来は変えられる。

【■■年■■月■■日】



口裂け女が生まれた。

一年以上の月日をかけた、待望の切り札である。


生まれたばかりの彼女が目を開けて、こちらを見た瞬間。



—— 一瞬、俺の脳裏に走る懐かしい彼女達の笑顔 ——



何故か胸の奥から溢れ出てきたのは、予想していた気持ちではなく。

やり遂げたという達成感ではなく。

これで未来が変わるという歓喜でもなく。



『会いたい』。


『帰りたい』。



そんな気持ちで。

そんな不可能で。

そんな理不尽で。



俺は年甲斐もなく、何年も前に枯れてしまった涙を流した。

【■■年■■月■■日】



そろそろ、限界か。

命を絶つ事も考えなければ……

だけど、まだ仕込みは終わってない。

今のままでは、来たるべき未来の戦いに敗北してしまう。

何か、何かもう一つ。

例えどんな事をしてでも、何を犠牲にしてでも……







【■■年■■月■■日】



要らない。

もう、『須賀京太郎』は要らないだろう。

戦力は十分揃っているし、まだ他に策を考えれば補える範囲だ。

須賀京太郎が死ぬ事で、あの街の戦力を一致団結させつつ覚悟を決めさせる。

だからもう、須賀京太郎は要らない。


生かしておくメリットとデメリット、殺すメリットとデメリット。
それを天秤にかければ殺した方が得だと、俺はそう思う。


だから、もう死なせてやろう。


あの生き方を選んだ時点で、バッドエンドは確定してるんだから。


幸せな内に殺してやるのが、『俺』の為って奴だ。

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