男「単位取れないし小説家になるわ」 (19)
友「お前……それマジでいってんの?」
男「マジもマジ、超本気よ」
友「いや、でも……」
男「俺、才能あると思うのよね。根拠はないけど」
友「うわぁ……」
男「んだよ、そのあからさまな反応は」
友「いやいや、有り得ないだろ。親に申し訳ないとか思わないのか?」
男「大丈夫だって、賞取るまでは学生続けっから」
友「やめとけって、時間の無駄だぞ」
男「やっぱジャンルはミステリーだな」
友「お前の思考回路がミステリーだよ」
男「トリックさえしっかりしてれば素人でも形になるだろ」
友「西尾も真っ青なトンデモトリックな上、整合性取れなくなって途中で飽きるのが目に見えてるわ」
男「クローズドサークルとか書いてみたいよな」
友「マジでやめとけって。それ書くのに時間費やしてまた単位落とすんだろ」
男「いいじゃん。作家になれるなら」
友「なれないから言ってるんだよバカ」
男「絶海の孤島で起きる連続殺人とか超わくわくするだろ?」
友「作者がお前の時点でまったくわくわくしねーよ」
友「もう頼むから真面目に勉強してくれよ。女ちゃん泣いてたぞ、男と一緒に卒業できないかもって」
男「そんなに一緒がいいならアイツも留年すればいいのに」
友「だからお前はバカなんだよバカ」
男「でも今は携帯電話とかあるからなぁ……。孤島とかもやりにくいよな」
友「知らねーよ。圏外とかしとけよ」
男「このご時世で携帯が繋がらないところって日本から何メートルぐらいなんだ?」
友「なんで俺に訊くんだよ勝手に調べてくれよ」
男「圏外の孤島としても狼煙上げられたりしたら犯人詰むよな?」
友「たまたま助けが来なかったとかでいいだろ」
男「偶然に賭けてクロードサークルとか、犯人の頭弱すぎるだろ」
男「俺はそんな奴を黒幕にしたくない」
友「知るかバカ」
男「そうだ、舞台を群馬にしよう」
友「は? 絶海の孤島はどこにいったんだ?」
男「いいじゃん、群馬とか陸の孤島だし」
友「……は?」イラッ
男「ああ、すまん。そう言えばお前群馬出身だったな」
友「お前群馬舐めてるだろ?」
男「すげーぞ。この間、旅行で群馬に行ったんだが、ドコモの奴ら全員繋がんなかったもん」
男「群馬マジスゲーな。文明王国日本じゃあないな最早」
友「いやいや、ごくごく一部だからなそれ」
友「お前が行ったのは山奥とかだろ? そうだろ?」
男「舞台は陸の孤島群馬。昔の旧友からパーティーの誘いを受けた主人公は、嫌々ながらも群馬へと向かう」
友「お前どれだけ群馬嫌いなの? なに、田舎だから行きたくないってか?」
男「ところが集まった先で、主催者である旧友が殺されてしまう」
男「事件はそれだけでは終わらなかった。続々と起こる殺人、狂気のクローズドサークルへ主人公は挑む……」
友「全然クローズドサークルじゃねーだろ。歩いて逃げろよバカなのか?」
男「お前群馬舐めてるだろ? 駅の数とか物凄く少ないんだぞ」
男「無計画に逃げても途中で干からびるのがオチだぞ」
友「お前の方が群馬舐めてるよね?」
友「そもそもそれ、肝心の携帯電話封じれてないよね?」
男「登場人物が全員ドコモ派だったことにしよう」
友「AUならまだしも、んなもん天文的確率だろ」
友「そもそも群馬でも普通にドコモ繋がるからね?」
男「いや、そんなはずはない」
友「そろそろ本気で怒るぞ」
男「わかったよ。『本小説の群馬はフィクションです』って注釈入れとくわ」
友「頼むから群馬からは離れてくれよもう」
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