そう、いつも通り……

ライナー「……どうかしたか？ベルトルト」

ベルトルト「い、いや、何でもないよ……」

ライナー「そうか？」

アニ「…………」

そう願いながら、その些細な異変に、見て見ぬ振りをしようとした。

ライナー「アに、お前イツだろうナ？」

アニ「っ？」ﾋﾞｸｯ

ベルトルト「ライナー……？」

ライナー「ん？どうかしたか？ベルトルト、今日のお前、やっぱり何か変だぞ？」

ベルトルト「そ、そうかな？訓練で疲れてるのかも……」

ライナー「ははははははははははははは」

ベルトルト「はは……」

ライナー「ん？どうかしたか？ベルトルト、今日のお前、ん？どうかしたか？ベルトルト、今日のお前」

ベルトルト「ライナー、さっきから一体どうしたんだ！？」

ライナー「……」ﾆﾀｧ

アニ「ねえ」

ライナー「！」ｶﾞﾀｯ

ﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯ

ベルトルト「ちょっ！ライナー！？」

アニ「行っちゃった……何なの？今日のあいつ」

ライナー「おう、おはようお前ら。寝坊しちまったぜ。起こしてくれよな、全く」ﾇｯ

ベルトルト「！？」

アニ「え？」

ライナー「全く、危うく訓練に遅れるところだったじゃないか」

ベルトルト「な、どういうことだ！？」

ライナー「ん？どうした？そんなに驚いて」

アニ「な、何で！？あんた、今ここから、食堂から出て行ったのに！？」

ベルトルト「何で僕たちのテーブルの下から出てくるんだよ！？」

ライナー「は？お前ら、俺をからかってるのか？好い加減に――」ﾎﾟﾘﾎﾟﾘ

ベルトルト「ら、ライナー、ゆ、指が……」

ライナー「ん？指？」

ベルトルト「六本ある……」

アニ「な……！嘘でしょ？」

ライナー「う…！？」ﾋﾞｸﾞｯ

ライナー「な、本当だ！？何で指が六本……！」ｵﾛｵﾛ

アニ「あんた、医務室に……」

ライナー「いや」

ライナー「大丈夫だ」ﾊﾟｸｯ

ベルトルト「？」

ﾌﾞﾁｯ

ﾓｸﾞﾓｸﾞ

ｺﾞｸﾝ

ライナー「オエエエエエエエエエエエエエエ！！！」ｹﾞﾛｹﾞﾛ

アニ「うあああああああああ！」

ライナー「うぐ、流石にいてえな……」

アニ「血が……！血が……！」

アニ「あ、青い！」

ライナー「う？」

ライナー「あ、本当だ。青いな。そろそろだと思うんだがな……」

ｽｯ

アニ「あれ！？あ、赤くなった……」

ライナー「赤くなった？何のことだ」

ベルトルト「何って、血の色だよ！？」

ライナー「血の色？何言ってんだ？お前ら。それじゃあまるで赤くなかったみたいじゃないか。
そもそも俺は別に今、流血してるわけでもないだろ？からかってるのか？」

ライナー「つまらない冗談はやめてくれ」

今朝は一体何だったのだろうか。あのあとは特に目立ったことはなかったが……

どうしても気になる。僕とアニは、ライナーが心配だ。作戦に支障が出ても困るからね。

ライナー「おい、何をぼーっとしている」

ライナー「立体機動は、一瞬の油断が命取りだぞ」

ライナー「気を引き締めろ」

ベルトルト「う、うん」

ジャン「なあ、マルコ」

マルコ「ん？どうしたの？」

ジャン「あのs」

モブA「おーいジャン！ミカサが呼んでるぞー！」

ジャン「！！　今行く！！」ﾄﾞﾋｭｰﾝ

マルコ「あっちょっ……」

マルコ「ねえ」

マルコ「え？」

モブA「これでいいんだよな？」

マルコ「うン」

ジャン「ミカサァーーーーーッ！！」

ミカサ「何？」

ジャン「オレに用ってなんだ！？」

ミカサ「用？何を言っているの？」

ジャン「え？モブAのやつが、ミカサがオレを呼んでるって……」

ミカサ「何を言ってるの？」

エレン「ミカサ、こいつ何言ってんだ？」

ミカサ「さあ……」

ジャン「じゃ、じゃあ、オレに用は…」

ミカサ「ない」

ジャン「そ、そうか……」ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ

ジャン「ただいま…」ｽﾞｰﾝ

マルコ「やあ、ジャン、おはよう」

ジャン「？　お、おはよう」

マルコ「何かあった？」

ジャン「いや……っあ！モブAのやつ見なかったか！？」

マルコ「見てないな…」

ジャン「そうか……」

マルコ「そろそろ僕たちの番だね」

ジャン「お、おう！そうだな！」

マルコ「何があったから知らないけど、上の空だね、ジャン。きをういたあいけないよ？」

ジャン「は？」

マルコ「ほラ、いクよ？｣ﾋｭｰﾝ

ジャン「あ！おい、待てよ！｣ﾋｭｰﾝ

マルコ「ン～ン～」ﾆｺﾆｺ

ジャン「……(なんだ？マルコのやつ、やけに上機嫌…というか、違和感があるな)」

マルコ「ジャァ～ン」

ジャン「あ？」

マルコ「アハハハハハ～！」

マルコ「面白いね～」

マルコ「いいと思ウよ、ソの洞察力ゥゥ～」

ジャン「は？お前何言って――」

マルコ「でも、次の次だから意味はないけどね」

ジャン「っ！」ｿﾞｸｯ

マルコ「バイバイ」ﾋｭｰﾝ

ジャン「あ！おい！マルコ！」

ﾊﾟｼｭｯ ｷﾞｭｩｰｰｰﾝ

ジャン「！？(クソッ！このオレが追いつけねぇだと！？)」

ジャン「はっ！的が！」

ジャン「グッ！」

ｽﾊﾟｧｧｧﾝ

ジャン「あ、危なかった、危うく衝突するところだったぜ……」

教官「キルシュタイン！気を抜くな！」

ジャン「は、はい！すいません！(クソ、マルコの奴は……！)」

ジャン「…………っ」

ジャン「見失った……」

「うああああああああああ！」

ジャン「はっ！この声は！」

ジャン「マルコ！」ｷﾞｭｩｰｰｰﾝ

ｽﾀｯ

ジャン「おい！どこにいる！」

ｸﾞﾁｬｸﾞﾁｬ

ジャン「……？何の音だ？」

ジャン「こっちから……ま、マルコ？」

マルコ「あれ、ジャンじゃないか」

ジャン「ひ、ば、化け物……！」ｶﾞｸｶﾞｸ

マルコ「どうしたの？君も食べるかい？ｸﾁｬｸﾁｬ

マルコ「ジャン、た、たす、け……」

ジャン「ふ、二人、マルコが！マルコを食べて！血が！血が！青……！」

ﾊﾟｼｭ

ジャン「うああああああああああああああああああああああああ！」ﾋｭｩｰｰｰｰﾝ

マルコ「ジャン！どこ行クの！！」

ジャン「何で！何で前からてめえが来るんだよおおおおおおおおお！！」

ジャン「来るな！来るんじゃねぇ！！」

ジャン「あああああああああ！！」ｶﾞﾊﾞｯ

ジャン「あああ……あ？」

クリスタ「ジャン……！」

ジャン「ク、クリスタ？」

クリスタ「良かった！やっと起きた！」

ジャン「クリスタ、何がどうなって……」

クリスタ「大丈夫？何処か痛いとか、気持ち悪いとかない？」

ジャン「ん？あ、おう(ここは、医務室の…ベッドか？)」

クリスタ「ジャン、あなたはね、立体機動の訓練中に倒れたらしいの」

クリスタ「急に気を失って、地面に高速で体を打ち付けたって」

クリスタ「マルコがここまで運んできて――」

ジャン「うああ！！」

クリスタ「え！？何！？」

ジャン「マルコが……！マルコが……！」ｶﾀｶﾀ

クリスタ「ジャン！？大丈夫！？マルコがどうかしたの！？体が震えてるよ！お、落ち着いて！」ｻｽｻｽ

ジャン「うっ、あああ、ああああ！」

クリスタ「ジャン、落ち着いて、呼吸をゆっくり……」

ジャン「う、ああ、ハァーッ、ハァーッ」

クリスタ「そう、その調子。何があったのかは分からないけど、落ち着いて、少しずつ話して、ね？」ｻｽｻｽ

ジャン「うぅ…………」

ジャン「す、すまねえな、クリスタ、落ち着いた」

ジャン「……オレ、どんくらい寝てた？」

クリスタ「4時間くらいかな」

ジャン「そうか……その間、ずっと看病していてくれたのか？」

クリスタ「うん。立体機動の得意なジャンがこんなことになるなんて、心配だったから」

ジャン「ありがとう」ﾎﾞｿｯ

クリスタ「ううん、本当に起きてくれて良かった！」

クリスタ「それで……今から私が教官たちを呼んでくるけど、何があったのか、話せる？嫌だったら、無理にとは言わないけど」

ジャン「……！」

ジャン「いや、教官は呼ばなくていい」

クリスタ「え？」

ジャン「教官に話すと、厄介なことになりそうだからな」

ジャン「聞くのはクリスタ、お前だけでいい」

クリスタ「私？」

ジャン「ああ…看病してくれた礼だ」

クリスタ「よ、よく意味がわからないな……」

ジャン「マルコは……いや、“アイツ”は、マルコじゃねえ」

クリスタ「？」

クリスタ「ジャン、やっぱり頭打ったり」

ジャン「してねえ」

ジャン「オレは正常だ」

ジャン「異常なのはオレじゃねぇ」

ジャン「“アイツ”の方だ」

クリスタ「どういうこと？」

ｶﾞｼｯ

クリスタ「っ！」

ジャン「クリスタ、オレが今から話すことは、明らかにマトモじゃない」

ジャン「だが、信じて欲しい。オレを信じて、アイツにはあまり近づいちゃだめだ」

クリスタ「ジャン！わかった！わかったから！離して！痛い！」

ジャン「あっ」ﾊﾟｯ

ジャン「わ、悪りい！」

クリスタ「だ、大丈夫」

クリスタ「それで、アイツ、ってマルコの事だよね？」

ジャン「そうだ」

ジャン「アイツに異変を感じたのは、立体機動訓練開始の直前からだ。恐らくその時には、マルコは既にオレの知っているマルコじゃあなかった」

クリスタ「マルコがマルコじゃなかった？」

ジャン「ああ。あいつでは考えられないほど、異様にヘラヘラしていた」

クリスタ「ヘラヘラ？あのマルコが？」

ジャン「それだけじゃない」

ジャン「立体機動の訓練が始まって間も無く、アイツはオレに『オレは次の次だ』って言い残して、去って行った」

クリスタ「去って行った？立体機動訓練中でしょ？」

ジャン「アレは人間の成せる技じゃねぇよ。異常なスピードだった」

ジャン「あのミカサよりもはるかに速く、瞬く間に見失っちまった」

クリスタ「……」

ジャン「でも、それから直ぐに、マルコの悲鳴が聞こえたんだ」

ジャン「声の元へと向かったら…」

ジャン「うっ……！」

クリスタ「ジャン！？」

ジャン「だ、大丈夫だ」

ジャン「声の元へと向かったら……」

ジャン「アイツが、マルコを食ってたんだ」

クリスタ「へ？食ってたって、どういうこと！？」

ジャン「二人いたんだよ……マルコが」

ジャン「食われている方のマルコは……オレの知る何時ものマルコに、見えたんだ」

ジャン「でも、既に肉の塊に頭がくっついているようになっていて……」

ジャン「そして、何故か血が青かった」

クリスタ「ジャン、話してるジャンがいつよりも真剣で、嘘を言っていないのはわかるんだけど……ちょっと信じがたいというか……」

ジャン「頼む、信じてくれ！」

ジャン「信じなくてもいい、とにかくアイツには近づかない方がいい」

>>31訂正

クリスタ「へ？食ってたって、どういうこと！？」

ジャン「二人いたんだよ……マルコが」

ジャン「食われている方のマルコは……オレの知る何時ものマルコに、見えたんだ」

ジャン「でも、既に肉の塊に頭がくっついているようになっていて……」

ジャン「そして、何故か血が青かった」

クリスタ「ジャン、話してるジャンがいつよりも真剣で、嘘を言っていないのはわかるんだけど……ちょっと信じがたいというか……」

ジャン「頼む、信じてくれ！」

ジャン「……いや、信じなくてもいい、とにかくアイツには近づかない方がいい」