ジャン「くだらない日々」(69)
シャキ、シャキン
ジャン「・・・・・・・」
シャキン、・・・・・・チャキ
ジャン(こんくらいでいいか)カチャ
ガチャ
コニー「お、ジャンじゃん」
ジャン「・・・・・んだよ、おまえまだ風呂入ってなかったのか」バサ
コニー「ああ、走らされちゃってさ。・・・・ジャンおまえ、また前髪切ってたのか? タオル巻いたまんまで」
ジャン「ああ。すぐ目に刺さる・・・・濡れてねーとうまく切れん」
コニー「おまえも坊主にしろよ、楽だぜ」
ジャン「絶っっっ対嫌だね。ダサイ。マルコの一・一分けのがちょっとはマシ」ハッ
コニー「んな否定すんなよ・・・・・。でもおまえホント前髪長いよな? 入団したときからだっけ?」ヌギヌギ
ジャン「ああ。・・・・・・入った頃は、立体機動のとき邪魔だから切れっつわれたけどな。成績で黙らせてやったぜ」バサ
コニー「ん? じゃあ切ったらまだ成績伸びるんじゃねえの?」ヌギヌギ
ジャン「そういうモンじゃねーんだっての。まあ俺も・・・・もう切ってもいいんだけど。しかし、・・・・ハッ、まあおまえでも髪伸ばせばよ多少は・・・・・・すごいなこの感触」ジョリ
コニー「勝手に触んなよ・・・・」
ジャン「イヤ待てよおまえ・・・・・すごいなコレ。この感触・・・・・」ジョリジョリ
コニー「あーよく言われんだよな。女子とかからよ」
ジャン「はあー女子、・・・・・女子」
コニー「ああ。さっきも勝手に触りやがってよー」ブツブツ
ジャン「っそ、・・・・・・・ああ、・・・女子。・・・・・髪の色は?」
コニー「は? 俺は伸びたら黒色だけど?」
ジャン「おまえじゃねーバカ! もういいよ!」ジョリジョリ
コニー「いてて! なんだよいてーよ頭! そんなに触りたいならお前も坊主にすればいいだろ!?」
ジャン「絶っっっ対嫌だね! でも一一分けよりもいいよな!!」
コニー「おまえさっきからマルコになんの恨みがあるんだよ・・・・・・アイツ、すごい良いヤツじゃねーか」
ジャン「ハッ良い子ちゃんだよな。髪型からもそれが滲んでるんじゃねえか。だからヤダ」
コニー「なんだそれ・・・・・。アイツさ、この間なんて猫に残した自分のパン分けてやってたんだぜ」
ジャン「それは俺も見た・・・・・正直少し引くぜ・・・・・。・・・・・」ペタペタ
コニー「? 良いヤツじゃんか、なんで引くんだよ。・・・・・・あ」
バタン
コニー(アイツら、いっしょにいるから仲良いと思ってたけど・・・・違うのか?
よくわかんねーな、ジャンって。マルコはわかりやすいのにな。あー頭いてえ)
・・
食堂
ジャン「くっそー・・・・・・体中いてえ」
マルコ「機能の兵站行進は厳しかったね・・・・・みんなも、さすがに今日は訓練所にいるみたいだ」
ジャン「これで休日出歩こうっつったらバカだぜ。・・・・・・お」
コニー「お、ジャン、マルコ」
サシャ「こんにちは! なにしてるんですか?」
ジャン「来た。バカが」
マルコ「おいジャン・・・・・。やあ二人とも、僕らはこの通り、食堂でのんびりしようと思ってね。
君たちは出かけるのか? その格好」
コニー「え? イヤ、もう出かけてきたんだよ」
サシャ「朝にだけ咲く花が、裏の森にあったんですよ。そこの蜜が美味しいので二人で吸ってきました!」
ジャン「うわあ・・・・天才的にバカだ。寝とけよこんな日くらい・・・・・」
マルコ「ジャン・・・・」
コニー「あ・・・・朝うるさかったか? 起こしちまった?」
ジャン「イヤ平気だよ」
コニー「そうか、ならよかった」ホッ
マルコ「ジャンは眠りが浅いからな」
サシャ「へーそうなんですか? 生まれつきですか?」
ジャン「さあ・・・・? でも、実家で夜、うるさかったんだよ。隣の親の部屋がさ。そのせいかな・・・・」
コニー「あーそういや俺の家もうるさかったな・・・・・」
サシャ「なにされてたんですか?」
コニー「え。え、えーっと・・・・・・さ、サニーとマーティンの仕込み?」アセアセ
+サシャ「仕込み? ・・・・・・仕込みといえば、今日、クッキーを焼こうと思って、生地を仕込んでいるんです!
みなさんにもあげますから、楽しみにしててくださいね!」
マルコ「へえ」ホッ「クッキーを作れるのか、サシャ。すごいな。ありがとう、楽しみだよ」
ジャン「ほーこりゃ槍が降るな・・・・・芋女が食べ物をわけるなんて・・・・・」
サシャ「わ、わたしだって四六時中お腹すかせてる訳では・・・・・! ありますけど・・・・・」
コニー「ふーん、じゃあサシャこの後はやることあんのか。俺、なにしようかな」
>>5 +サシャ→サシャ
マルコ「サシャはもう焼き始めるのか?」
サシャ「いえ? ミカサが起きてからです。いっしょにやるので、食堂で待ち合わせです」
ジャン「! おまえ・・・・・やるじゃねえか」
コニー「? なにニヤニヤしてんだよジャン。・・・・・・ちょっと気持ち悪いぞ・・・・・」
ジャン「うっうるせーな」
マルコ「はは・・・・。ミカサといっしょなんだ、彼女は料理もうまいよね」
サシャ「はい! ミカサ直伝のレシピなんです。ミカサはレシピも詳しくて、本当にどこをとっても完璧ですね。ねえジャン」
ジャン「なんで俺に振るんだ。完璧っつーか・・・・・アイツ、社交性はちょっとアレだろ」
マルコ「おいジャン・・・・・」
コニー「良いヤツなのにな。表情固いんだよなーもったいねえ。美人なのに」
ジャン「! おまえ・・・・・・、ミカサを美人だと思ってんのか」
コニー「え? そうなんじゃねえの・・・・・。珍しい顔立ちだけど」
ジャン「美人だって思ってるってことは、・・・・・・コニー、それはつまり・・・・・」
コニー「? なんだよ、いきなりどうしたんだおまえ・・・・・・らしくないな、疲れてんのか?」
ジャン「! ・・・・・・あ、ああ。・・・・・イヤうるせーよ、疲れてなんかいねーよ」
サシャ「疲れてないんですか、すごいです。昨日あれだけハードな訓練だったのに」
ジャン「早起き部隊のセリフじゃねーな・・・・」
マルコ「まあまあ・・・・・。二人とも、座りなよ。サシャも、ミカサが来るまで待つんだろう」
コニー「ああ。・・・・・そうだ、水飲みに来たんだった。とってくるよ」
サシャ「あ、そうでした。行ってきます」
ジャン「ああ・・・・・行ってこいよ」
マルコ「・・・・・ジャン、頬が赤かったぞ」ハハ
ジャン「は、はあ? 気のせいだよ・・・・・。・・・・・おまえに言っても仕方ねーか、知ってるんだったな・・・・」ハア
マルコ「そうそう」(訓練兵の大多数はジャンがミカサを愛してるってことは知ってるし、そのこともジャンは知ってるはずだけど、
まあ突っ込まないでおこう)「・・・・・でも、おまえの一途さは、見ていて気持ちがいいな」
ジャン「うるせーよバカにしてんのか・・・・・お前だって王大好きじゃねーか」
マルコ「ジャンのそれとは種類が違うけど・・・・・・そうだね。王は、僕は唯一ずっと信じているものだからね。
そうだ、ジャン聞いたかい? この前、王政府が主催する催しがあったんだけど、そこで王が言ったことが・・・・・」
ジャン「おー! おかえりサシャとコニー」ササ
サシャ「ただいまです。・・・・・あの、ジャン。その『サシャとコニー』って呼び方、ひとまとめにされたみたいで・・・・・
なんか複雑なんですが」
ジャン「ん? 別にそんな変な呼び方じゃねーだろ。・・・・・・語感がいいんだよ。言ってみろ、サシャとコニー」
サシャ・コニー「「サシャとコニー」」
ジャン「サシャとコニー、サシャとコニー、サシャとコニー、サシャとコニー、・・・・」
サシャ・コニー「「サシャとコニー、サシャとコニー、サシャとコニー、サシャとコニー、・・・・」」
マルコ「・・・・・・」
サシャ「サシャトコニー・・・・・おお、・・・・・言われてみれば、確かに一つの名前みたいな感じがしてきました」
コニー「イヤイヤ・・・・・。ジャン、おまえ馬鹿にしてんのか、オイ」
ジャン「本当に馬鹿だろ・・・・・なに正直にやってんだよ・・・・・」
マルコ「今のはジャンが悪い」
コニー「そうだ、悪い」
ジャン「イヤ別に名前を馬鹿にしようとかそういうんじゃ・・・・・」
ガチャ
クリスタ「おはよう! みんな」
サシャ「・・・・あ、クリスタ、ユミル! ライナー、ベルトルトも」
ジャン「よう。なんだ4人で」
ライナー「ちょっと図書館で会ってな」
クリスタ「今日はゆっくり本でも読もうと思って」
マルコ「本か。いいね、僕もそうしようかな」
ジャン「確かに、今日はなんか、だらっとしてー気分だな」
コニー「へー。・・・・・ユミルが本なんて似合わねーな」ハッ
ユミル「ほう。おまえ、「本」なんて単語知ってたのか。偉いじゃねーか」ニヤニヤ
コニー「ば、バカにすんなよ。俺は天才だぞ」
ベルトルト「やあ、マルコ。ちょうど良かった、これとこれ、この間言ってた本・・・・・・」
マルコ「あ! ありがとう、楽しみにしていたんだ。この作者の小説は本当に面白いよ・・・・・。さすがベルトルトのおすすめだ」
ベルトルト「そうか・・・・・よかった」
クリスタ「・・・・・・あ! その本、おもしろいよね」
ライナー「クリスタも読んだことがあるのか」
クリスタ「ライナーも?」
マルコ「ちょっと話題の作者だもんな。僕も普段読むジャンルの本じゃないんだけど、引き込まれたよ」
コニー「・・・・・・へー、みんな本なんて読んでるのか」
サシャ「わたしたちも読んだほうがいいんですかね。アニもたまに本を読んでるし、借りてみようかな・・・・わ」プニ
ユミル「よーサシャ。今日も健康的な頬っぺしてるな。で、蝶々やった気分はどうだった?」
サシャ「蝶々? あ、花の蜜の話ですか。はい、おいしかったですよ」
コニー「朝だけに咲く花って、不思議だよな~。花とか詳しくないけど、また見てえ」
ジャン「つーかユミル、おまえが持ってるのは雑誌じゃねえか。図書館行ってたんじゃねーのかよ」
ユミル「ああ、こりゃ私物だ。小説なんざ読んでもな~。・・・・・」
クリスタ「・・・・・へえーベルトルト、この人の本全部持ってるんだ。すごいなあ」
ベルトルト「ああ・・・・。この人の話はおもしろいよ」
マルコ「ベルトルトはたくさん本を持ってるし、よく貸してくれるんだよな」
ライナー「一時、貸本屋状態になったことがあったな」ハハ
クリスタ「へえーそうなんだ! やさしいんだね、ベルトルト」
ユミル「・・・・・・」イラッ「ベルトルさんベルトルさん、見ろよ」ペラ
ベルトルト「え? ・・・・・」
ジャン「・・・・なにやってんだユミル。・・・・・・!? おまえ、それ、官能雑誌じゃねーか!」
コニー「ふわー・・・・・なにやってんだよおまえ。ここ食堂だぞ・・・・・」
ユミル「あ? 大した内容じゃねーよ、漫画雑誌なんだし。いいだろ」
ベルトルト「も、もうやめてくれよ・・・・・」
ジャン「え、で、なにやってんだ」
ユミル「『官能本にでてくる、ベルトルさんによく似た男キャラを探す遊び』」
サシャ「ふわー、たしかにこの『おまえ、誘ってんだろ・・・・』って言ってるキャラはベルトルトに似てます」
コニー「ぶはっ、ベルトルト・・・・に似たヤツ、『抱かれたがってんだろ?』だって、おもしろいな」ハハ
ベルトルト「ちょっ、音読しないでくれ。僕とは一切関わりないんだから・・・・・短髪の男なんていくらでもいるじゃないか・・・・」
ジャン「へえ。短髪の男はウケるのか。俺は前髪の短い髪は嫌いだから、いい気味だ」ハッ
サシャ「短い髪、嫌いなんですか?」
ジャン「あ? まあな・・・・・イヤ別に、ベルトルトは関係ねーけど。つーかユミル、なにしてんだ、コレはよ」
ユミル「無実のベルトルさんに辱めを与える遊びだ。雑誌一冊あたり3人はいる」
ベルトルト「そのマンガの人は190センチもないと思うんだけど・・・・・」
ユミル「ええ、シーンがシーンだからな、横になっててよくわかんねーけど。まあそうだな、身長170センチくらいのベルトルさんかな」
ベルトルト「それはもうただのモブだよ・・・・・」
ジャン「ベルトルト、おまえそこまで自虐的になる必要ねーぞ」
ユミル「ハハハ。・・・・・・」チラ
クリスタ「へえ~マルコって小説だけじゃなくて、色んなジャンルの本読むんだ」キャッキャ
マルコ「うん。なにか貸そうか?」キャッキャ
クリスタ「え、いいの!? やったあ、じゃあ動物の本とかないかな?」
マルコ「動物? あ、牧場のドキュメントとかどうかな」
クリスタ「わあ! すごく読みたいよ!」
ユミル「・・・・・・」
ベルトルト「・・・・・・ユミル?」
ユミル「あ? うるせーよ、自分は誘って抱かれたがってるみたいな顔してるくせに・・・・・!」
ベルトルト「し、してない!」
ジャン「もうなんでもいいから、その官能雑誌しまえよ・・・・・キースが来たらどうすんだ」(アレ? ユミルってこんな変なことするヤツだっけか・・・・。
ベルトルトもこんな反応すんのか。知らなかった。みんな疲れてんのかな)
サシャ「・・・・・官能、といえば。ジャンはお母さんに官能本を見てるとこを突撃されたことがあるとか聞いたんですけど・・・・・」
ジャン「はあ?」
コニー「あー、俺が話したんだよ。悪い悪い」
ジャン「ああ、つーかその話は、・・・・・・。まあ俺も、男子の大部屋で話したから、筒抜けになるのはわかってたよ。
で? 笑えましたってか」
サシャ「い、いえ。そういうふうに、構ってくれるお母さんって、なんだかいいなーって思って」
コニー「? おまえの母ちゃんは違ったのかよ」
サシャ「はい。うちは、狩猟民族だからでしょうか、働き頭のお父さんを立てるっていう風習があって・・・・・。
お母さんはわたしたちに対しても、どこか遠慮がちだったんですよね」
コニー「ふーん。地域柄ってヤツか。ジャンの母ちゃんとは逆なのかもな」ハハ
ジャン「へえ。・・・・・アレは嘘なんだ」
サシャ「えっ?」
コニー「え」
ジャン「・・・・・コニー、おまえ理解してなかったな? あの話は、嘘ってのが前提だったんだよ。
嘘だけど、本当っぽくて、驚けておもしろい話。そういうテーマだったんだ。
俺の後には、アルミンが今度の論文は向こう脛の痛みについて書くって話を大真面目にしてた。そういう馬鹿話、いわゆる嘘予告さ」
コニー「うそよこく・・・・・。そ、そうだったのか。悪い」
サシャ「わ、わたしは他の人に話してませんから! 大丈夫です」
ジャン「イヤいいけどよ別に・・・・・笑い話なんだからよ」ハア
ライナー「おいベルトルト、そう気にするなよ・・・・・向こうが空いてるぜ、座るぞ」グイッ
ベルトルト「あ・・・・・ああ」
ユミル「そうだな。本を読むつもりだったんだ・・・・座ろうぜ、クリスタ」
マルコ「あ、ここの席、4人なら座れるけど、どうだい?」
クリスタ「ここに座ろうよ、ユミル。ちょっとマルコと話したいんだ」
ユミル「・・・・・・。いーよ、窮屈だろ。わたしらはこのデカブツ連れて、向こうに座ってるよ。つーか、食堂には水飲みに来ただけだし」スタスタ
クリスタ「あ、ユミル。・・・・・?」
マルコ「・・・・・・あ、僕、なにか嫌われるようなことをしたかな・・・・・?」ハハ
クリスタ「そ、そんなことないよ。だって、マルコはみんなから愛されてるってくらいだし・・・・・」
サシャ「マルコは、いかにもな優等生ですからね。男女構わず、みんな慕ってます」ハイ
クリスタ「そうそう、サシャも言っているとおりだよ・・・・! 彼女、気まぐれだから」
コニー(うーん、慕われてるマルコが、側にわざわざ正直者すぎのジャンを置くって・・・・ヤッパリよくわかんねーな)
サシャ「そういえば・・・・・なんか、子供と大人でわかれたって感じですね」
ジャン「年の話か? こいつ、これでも俺たちより年上なんだよ」グイ
マルコ「い、イヤ、ユミルとライナーは僕より年上だし・・・・・。
でも、わかるよ。年だけじゃなくて、彼らはなんとなく大人びてるよな」
クリスタ「・・・・そういえば、あの3人は入団式で恫喝を受けてなかった子たちだね
コニー「あー、確かに。ってことは、経験値の違いってやつかな?」
マルコ「・・・・・・それは、そうかもね。彼らと僕らは、その点で決定的に違うよ」
ジャン「まあ、あの状況で生き残ったって時点で、運か能力があるって証みたいなもんだからな。
そういう意味ではうらやましいかもしれねーな」
サシャ「わたしたちは、上位とは言っても平凡な一般人ですからね・・・・・。特別ななにかがある、っていうのは、
羨ましくなっちゃいますね。あ、その、不謹慎ですけど。・・・・・」
クリスタ「・・・・・彼らは、わたしたちと違うのかな」
ジャン「あ? まあ恫喝の有無だけを見ればな」
クリスタ「そっか・・・・・。・・・・・」
サシャ「クリスタ?」
クリスタ「あ、ごめん。なんでもないよ」
マルコ「けど・・・・・・、それはあくまで1年目の現時点のことだよね。4年前の経験が全てではないよ。
僕らは若いんだから、訓練時代だけをとっても、これからの2年でいくらでも変わるさ。
・・・・・・人は心変わりするものだし」
コニー「『心変わり』か。・・・・オトコゴコロと秋の空ってヤツだな」
サシャ「コニー、それは女心じゃないんですか?」
コニー「そうだっけ?」
ジャン「どっちでもいいだろ。早起き部隊には、まだ関係ない話だよ。蜜でも吸ってろってな」ハッ
クリスタ「蜜・・・・・? 蜜って、サシャの・・・・・?」ドキドキ
マルコ「クリスタ。クリスタ、違う」ガシ
クリスタ「さ、サシャのじゃないってことは、コニー・・・・・?」
マルコ「え、ええ・・・・・」
ジャン「・・・・・! まずい、このメンツ、絶対的にツッコミが足りねえ・・・・・!」
ガチャ
アルミン「やあ、みんな。ここにいたのか」
アニ「・・・・・」
マルコ「アルミン、アニ。おはよう」
コニー「なんか、珍しい組み合わせだな?」
アルミン「そこで教官に捕まっちゃってさ・・・・・。アニと二人で、君たちを探してたんだ。
これ、今度の遠征の資料」
クリスタ「ありがとう、アルミン、アニ。わざわざごめんね」
ジャン「悪いな」
サシャ「この日の天気はどうなんでしょうね」
アニ「晴れるんじゃない。今日だって天気がよくて・・・・・この食堂は眩しいくらいだ」
マルコ「ここは日当たりがいいからね」
コニー「あったかくって気持ちいいから、つい集まっちまうんだよな」
サシャ「夏になると辛いですけどね・・・・・・人口密度の点からも・・・・・」
ジャン「今が一番いい時期かもな。・・・・・・なるほど、さっきからやたら食堂に人が集まってくるのは、
ランプの明かりに夜光虫が惹かれるみてーなモンだった訳か」
クリスタ「明るい場所でないと、読書もしにくいしね。暗いところは嫌」
アニ「そうだね。暗いところは嫌だよ」
サシャ「アニは、特に暗いところが苦手なんですよね」
マルコ「そうなのか?」
コニー「意外だな。アニにも怖いものがあったなんて・・・・・」
アニ「そりゃあ、これでも女だからね・・・・・。苦手なものの一つや二つあるさ」
マルコ「とにかく、資料をありがとう、二人とも。もし予定がないなら、ここに座って水でも飲んでいきなよ」
コニー「俺の隣空いてるぜ!」
アルミン「ありがとう。じゃあせっかくだし、同席させてもらうよ」
アニ「わたしはいい・・・・・。ちょっと水を飲んだら自主訓練にいかなきゃいけないし。立ってるよ」
サシャ「? お水を飲む間だけでも座ったらいいじゃないですか」
アニ「いいよ、平気」
コニー「! なるほど、それも訓練って訳か・・・・・!」
ジャン「休みの日でも、極力座らず脚力を鍛えるってか? ストレス指数高そうだな・・・・・」
マルコ「まあまあ・・・・・。生活習慣やこだわりは、色々あるよね。僕らは出身が様々だから」
アルミン「特に君ら上位は個性が強いとよく言われるよね・・・・・」
ジャン「アルミン、おまえ自分の性格が一般的とでも思ってんじゃねーだろうな」
アルミン「え・・・・・、まあ比較的変わった性格はしてると自覚はしてるよ。君もなんていうか大概だけど・・・・・。
ここまで個性が豊かな面々が揃うのは、当然、広い範囲から集まってるからだろうな」
コニー「そうだな。この7人だけ見ても、村育ちと街育ちで半々くらいだ」
アルミン「僕のシガンシナ区は街なのかな・・・・?」
サシャ「街でしょう、全然。川沿いは栄えてますから。村舐めないでくださいよ」
コニー「そうだぜ。別世界に思えたぞ、訓練所なんか。なあ、アニ」
アニ「確かにそうだね。違う世界に放り込まれた・・・・って感覚はあるね」
マルコ「そういうものなのか・・・・・」
クリスタ「ジャンはトロスト区出身だよね。この中では、一番街らしい街で育ったといえるんじゃないかな」
ジャン「どうなんだろうな、他の町にあまり行ったことないから、比べようがないが」
サシャ「トロスト区といえば・・・・・今度の遠征はトロスト区が行き先じゃありませんでしたか?」
コニー「おっ、本当だ。実家に顔だせよ、ジャン」
ジャン「いいよ別に・・・・・、つーか昨日訓練所に来たばっかなんだよ。親父が」
アルミン「えっ、そうだったの?」
マルコ「知らなかった・・・・・・。就寝前に教官に呼び出されてたのはそういうことだったのか」
コニー「俺はてっきり、前髪のことで注意されてんのかと・・・・。キース教官だったし」
マルコ「僕もそう思った・・・・・」ハハ
クリスタ「キース教官は、髪型に特に厳しいよね・・・・・。わたしも前髪の長さを注意されたことがあるわ。
髪を結ったら許してくれたけど」
サシャ「男子訓練兵は、髪留めを使いませんから、特に厳しいですよね。厳格なお父さんって感じです。
ジャンは、お父さんに前髪注意されたりしなかったんですか?」
ジャン「された。あの人前髪短くてよ。でも素直に従うってのがしゃくだったな。母さんは認めてたし」
アニ「・・・・そういえば、昨日、お母さんとは会ってないんだろ? やっぱり作戦のときに会いにいったら」
ジャン「えーいいよ・・・・・。そういうの、なんか苦手なんだよ。正直、遠征先がトロスト区って時点で少し嫌だ」
サシャ「相変わらずジャンの愛情表現はわかりにくいですねえ・・・・・」
ジャン「俺はもし本当にトロスト区が襲われても、家族より自分の身を案じてる気すらしてる。内地に行く前に襲わるなんてってな」ハッ
マルコ「まあまあ・・・・。この話題はもうよそう」
マルコ(なるほど、ジャン、今日はいつもに増して刺々しいのは、昨日家族に会ってたからなのか。
口ではああ言っていても、色々思うところがあるんだろうな)
アニ「しかし、本当に明るいな・・・・・・。眩しくなってきた。そろそろ行かなくちゃ」スタスタ
クリスタ「わたしも、この席は少し眩しいな。ユミルたちのところに行くよ。楽しかった、またね」カタ
サシャ「わかりました、クリスタ。自主訓練がんばってきてくださいね、アニ!」
コニー「アニ、本当、真面目だな。昨日アレだけ走ったのに・・・・・」
マルコ「彼女は本当に格闘技が好きみたいだからね。趣味でもあるのかも」
ジャン「あんな小さい身体で、よくやるよな・・・・・」
サシャ「小柄さは、立体機動では有利なんですけどね。もちろんアニの立体機動の成績がいいのは、ただ小柄だからってだけじゃないですけど」
アルミン「彼女は本当にすごいよ・・・・・昨日の兵站行進でも、先頭集団で頭一つ小さかった」
ジャン「冗談抜きで、よく荷物に潰されねーなと思うよな。まあ最たるところはクリスタだけどよ」
マルコ「ああ・・・・・、クリスタにとっては、荷物の重みは自分の体重の半分くらいだものね」
アルミン「そう考えると、僕らにとって体重は一長一短だよね。成績を上げようと思ったら体格を変えるより、それぞれの戦闘スタイルを確立できるかが大切だ」
サシャ「わたしたちが体型で悩まないのって、それのせいもあるんですかね」
コニー「そうだなあ。俺は立体機動のときは小さい身体につくった母ちゃんに感謝しちまうよ」
ジャン「普通、俺たちくらいの年だと、体型の悩みがあるもんらしいけどな。まあ全員、兵士体型という意味では一律なんだけど」
アルミン「・・・・・・僕は正直ライナーがうらやましい・・・・・。僕の華奢な身体も、使いようがあるとは思うけどさ」
コニー「使いようって?」
アルミン「例えば、潜入作戦で女装するとか・・・・・。女性がやるよりも危険は少ないよ」
サシャ「アルミン、そんなことまで考えてるんですか・・・・・」
ジャン「女装って・・・・・。おまえやっぱ変わってるよ。うん」
アルミン「べ、別に僕が女装を進んでしたいとかいう訳ではないよ。そこは誤解しないでくれ」
マルコ「大丈夫、わかってるよ。ライナーに憧れてるんだもんな」
ジャン「まあライナーはわかるな、見た目の意味では。後、長身のベルトルト」
サシャ「女子の長身ならユミルやミカサですかね。・・・・・見た目の意味でも、あの席の3人は大人っぽいってことかもしれませんね」
コニー「そういやアルミン。エレンとミカサは?」
アルミン「二人は自主訓練をしてくるって。そろそろ来ると思うよ。・・・・・あ」
ガチャ
ミカサ「アルミン。ここにいたの」
エレン「探したぜ。・・・・・あー、なんか食堂は明るくて落ち着くな。ちょっと休憩しよう」
サシャ「今日は食堂に大集合ですね」
マルコ「二人とも、自主訓練なんて、根性があるね。僕は今日はもう身体が痛くて・・・・・」ハハ
ミカサ「マルコ、無理は禁物。休養も、筋肉を育てる上では重要だから」
コニー「へー。休憩してても鍛えられるのか?」
ミカサ「鍛錬と休養のバランスが大切」
コニー「へえ・・・・なるほどなあ」
アルミン「ミカサはさすが、詳しいね」
ミカサ「この知識は経験則だけど、正しいと思う。・・・・・筋肉痛のエレンはやるべきではなかった」
エレン「う、うるせーよ。俺は成績あげるために、無理してでもやらなきゃいけねーんだから」
ジャン「ハッ、空回りしてやがるな。俺もミカサの言い分が正しいと思うぜ」
エレン「クソ、なんだよ。見ろよミカサ、俺も大分腹筋割れてきたろ?」グイ
ミカサ「・・・・・・質はいいけど、まだまだ。やはり休養をとらないと、筋肉も効率よくつかないということ」ペタペタ
エレン「くそ、うるせーな・・・・」
ジャン「・・・・・・・チッ」ギリ
エレン「なあミカサの腹筋も見せてくれよ」
ジャン「!?」
アルミン「ちょっと、エレン・・・・・・」
ミカサ「エレン。食堂はさすがに駄目。恥ずかしい」
エレン「え、ああ。そうか。そうだな、悪い。・・・・・・ミカサの10個に割れた腹筋見ると、俺もがんばろうって気分になるんだよな」
ミカサ「エレン・・・・・。次までに12個にしてみせる。楽しみにしていて」
アルミン「ミカサ、色々おかしい」
マルコ「みんな、すごいな・・・・・。僕なんてまだまだだ」ハア
コニー「ミカサと比べたら、誰でも凡人だろ」
ジャン「やってられねーな」ガタ
サシャ「ジャン、どこいくんですか?」
ジャン「水、なくなったからとってくるだけだよ」スタスタ
マルコ(エレンとミカサのやり取りで、掴み合いになるかと思ったけど、・・・・・やっぱりジャンも疲れてるのかな・・・・・)チラ
ジャン(クソ・・・・・・・、なんだよ、女の身体をそんな簡単に見てるんじゃねーよ。触ってるんじゃねーよ。自慢かよ。あー憎たらしい)イライラ
ライナー・ベルトルト・ユミル「「・・・・・・」」チラ
ジャン(駄目だ駄目だ、考えれば考えるほど、頭に血がのぼる。これじゃあ同じじゃねえか、そんなの冗談じゃ・・・・・・)スタスタスタ・・・・・
ライナー「・・・・・・。! ジャン、気をつけろ!」
ジャン「は?」
バキッ!!!
ジャン「えっ」グラッ(床板が抜けて、・・・・・!)
ダンッ
ライナー・ベルトルト・ユミル「「・・・・・・・」」ホッ
ジャン「・・・・・っ」(あ、危ねえ。転んで、机の角に頭打ち付けるところだったぜ。バランスとれてよかった)フラ
ライナー「・・・・ジャン、怪我はないか」
ジャン「ああ、おまえの警告のおかげで、なんとかな・・・・・ありがとよ」
ベルトルト「この床板、そういえば腐ってたんだったね。忘れてたよ」
ユミル「そうだな。直しとかねーと」
ライナー「とにかく大怪我してねーなら、よかったぜ・・・・・本当に」
ジャン「・・・・・・? あ、ああ」
ミカサ「ジャン、大丈夫」タタッ
エレン「怪我ねーか、ジャン」
ジャン「あ、ああ。なんだよ死に急ぎまで、気持ち悪ぃな・・・・・・。変なものでも食ったのか?」
エレン「あ? ちげーよ。でもなんだろうな。お前が死んだらどうしようと思っちまった」
ジャン「ほ、本当にどうしたんだよ・・・・・エレン。だいたい死ぬって縁起でもねえ。
とにかく転んでもねーんだからそんなに騒ぐなよ」
ミカサ「そうね。戻りましょう、エレン」
エレン「ああ」
ライナー「そうだな」
ジャン「・・・・・・?」スタスタ
サシャ「ジャン、どうしたんですか?」
ジャン「板踏み抜いただけだよ。大したことねー、大げさだ」
マルコ「しかし、ライナーの反応は早かったな・・・・・。注意力があるよ」
コニー「ああ、さすが兄貴は、俺たちのことよく見てくれてるってことだよな」
アルミン「そうだね・・・・・」
ユミル「よう。今日はあんたら、ずっとここにいるつもりか?」スタスタ
ライナー「ゆっくりする、と言っていたよな。食堂は気持ちがいいから、それもいいかもな」
マルコ「やあ、さっきはジャンをどうも。そうだね、そうしようかな」
アルミン「君たちは寮に戻るの?」
ベルトルト「うん。できればここにいたいんだけどね」
ジャン「やることがあるのか。まあ俺たちも適当にもどるよ」
マルコ「・・・・・ねえ、おかしなことを聞くけど・・・・・・。君たち、最近、特に落ち着いているよね」
コニー「?」
ライナー「落ち着いている?」
マルコ「うん。より大人びたというか・・・・・。僕の気のせいかもしれないんだけど。
僕らと全く違うと思ってしまうんだ」
ユミル「なんだそりゃ。気のせいだろ。なあ」
ライナー「ああ気のせいだ」
ベルトルト「うん気のせいだ」
エレン「そうだよ、気のせいだぜマルコ」
ミカサ「ええ。気のせい」
アルミン「どうしたの・・・・・みんなで声を合わせて」
マルコ「き、気を悪くしたかい? ごめんね」
ライナー「? 別に気を悪くなんてしてないぜ」
エレン「ああ・・・・・。でも、なんだろうな。全然、そんなことはないって強く思っただけだ」
ジャン「どういう意味だよ・・・・・。さっきからおまえら、大丈夫か?」
ミカサ「どういう意味なのだろう・・・・・」ズキズキ
ユミル「・・・・・。まあ一つ、あんたらとわたしらの違いの原因をあげるとすれば。ヤったことがあるかどうかってことだな」
ジャン「・・・・・・・は?」
マルコ「えっ?」
アルミン「え」
サシャ・コニー「え?」
ライナー「・・・・・・オイオイ、ユミル。ヤったことがあるって・・・・・」
ユミル「なんだよ。あるんだろ?」
ライナー「・・・・・・まあ、あるっちゃあるな」
ベルトルト「そうだね・・・・君とアニといっしょにヤったね。正直、最中は気持ちよかった。なつかしいな」
ユミル「エレンとミカサもあるんだろ?」
エレン「まあ・・・・・・あのときはそういう流れだったからな。二人でヤったな」
ミカサ「アレは仕方がなかった。勢いだった・・・・・あのときのエレンは怖かった」
ユミル「へえ」ハハ
ジャン「・・・・・・ふ、ふざけ・・・・・・・」
マルコ「ゆ、ユミル! 君たちも・・・・・冗談だろう? からかわないでくれよ」ハラハラ
エレン「なんだよ、・・・・・・なに怒ってんだジャン。おまえには関係ないだろ?」
アルミン「え、エレン!」
ジャン「ふざけんな!!」ガタッ
ミカサ「! ジャン、やめて、・・・・・・!」バッ
バキッ!!
―――――
捏造・欝注意
ジャン(・・・・・・? アレ、俺・・・・・・)パチ
カーカー
マルコ「・・・・・・ああ、ジャン。おはよう」
ジャン「マルコ・・・・・・。・・・・・・今、何時だ?」
マルコ「午後4時だ。よく寝ていたね」
ジャン「ああ。・・・・・・ああ、そうか、食堂でおまえと本読んでて・・・・・寝ちまったんだっけ」
マルコ「そうだよ。なにか夢でも見てたのか?」
ジャン「ああ。・・・・・・なんか変な夢だったな。よく覚えてねえけど」
マルコ「僕はでてきた?」ハハ
ジャン「ああ、でてた。たぶん」
カーカー
ジャン「・・・・・・おまえ、本読み終わってたのか?」
マルコ「まあね」
ジャン「起こせばよかったのに」
マルコ「別に。待っててもちっとも苦痛じゃなかったよ。食堂は気持ちがいいし」
ジャン「そうか」
マルコ「うん」
ジャン「・・・・・・・おまえ、本当に良いヤツだな」ハア
マルコ「はは・・・・・・そうかな」
ジャン「ちょっと皮肉ってんだよ。気づけよ。昨日の兵站行進でも、俺に肩貸して、タイムが落ちただろ」
マルコ「手負いの仲間に力を貸すのは、兵士として適当だと思っただけだよ」
ジャン「これは訓練だっつーの・・・・・」
マルコ「そうだったね・・・・・・」
ジャン「そうだよ・・・・・」
マルコ「・・・・・ジャンも、最初はハッキリやめろって言ってたけど。最後には素直に貸させてくれたじゃないか」
ジャン「押し強すぎるんだよ、おまえ」
マルコ「そうかな・・・・・」
ジャン「そうだよ・・・・・・自分を犠牲にして人助けたり、貴重な休日に起きるのを待ったり。変なヤツだな」
マルコ「おまえだって、困ってたら助けてくれるじゃないか」
ジャン「俺は正直者だからな。悪いけど、自分に不利益があるなら、手を貸したりしないぜ」ハッ
マルコ「そうだな。・・・・・・ジャンらしくって、いいと思うよ」
・・・
シャキン、シャキン
ジャン「・・・・・・・」
シャキンッ
ジャン「・・・・・・」
シャキン シャキン パラパラパラ
ジャン(前髪を短くしたのは初めてだ。確かに楽だな。立体機動の成績も伸びるかもな)
ジャン(本当に、母さんの言うとおり、嫌ってくらい似てる。俺の親父に)
ジャン(悪人面で、その通り頭に血が昇りやすくて、暴力的で・・・・・・俺によく似たクソみてえな親父だ)
ジャン(母さんは母さんでビビって自分を守るだけ。そして俺は俺で小さいときは泣いてばっか)
ジャン(クソみてーな家庭だと思って、逃げるみたいに訓練所に来て、誰も信じれないし、自分さえ内地に行ければいいと思っていたけど。
でもアイツは、なんか・・・・・・)
ジャン(・・・・・)
ハヤクフロハイローゼー アッチー ギャハハ
ジャン「・・・・・・ハア。なにやってんだ、・・・・・くだらねー」 カチャ スタスタ バタン
・・・
アルミン「あ。マルコ、パンを残すのやめたんだ」
マルコ「うん。どうしても、お腹すいちゃうしね」ハハ
クリスタ「じゃあ、あの猫たちには、もうご飯をあげていないのね」
マルコ「そうだね。野生に返すことにしたんだ。もう大きくなったし」
ユミル「それがいいぜ。マルコ、ここでも母親やってんのに、猫の母親もしてたら、身体がたりねーよ」
ライナー「ユミル、母親だなんてからかい方はよせ」
ユミル「いいじゃねーか別に。ああ、アンタは父親だな」
ライナー「あのな・・・・・」
アニ「お父さん。これ、次の資料ね」ヒョイ
ライナー「アニ・・・・・」ハア
>>47と差し替え
ニャーニャー
マルコ「よしよし。・・・・・・悪いね、もうパンは持ってこないことにしたんだ」
ニャー?
マルコ「これからは、自分でご飯をとるんだよ」
ゴロゴロ
マルコ「・・・・・・ごめんね、子猫の君たちに僕のパンをあげていたのは、実はやさしさからなんかじゃないんだ」
マルコ「君らに餌を与えて・・・・・本能を奪ってやろうって・・・・・・。そういう支配欲とか、命を弄んでやろうという気持ちからなんだ」
ニャー ミャーミャー
マルコ「ここに来た頃、僕は人間不信でね・・・・・。数年前に、経済的理由で、親に突然捨てられて・・・・・。勿論、親を理解しているし、
恨んではないんだけど・・・・・・。より王のすばらしさに気がつくことができたのは、王の作った孤児院に入ったおかげだし」
マルコ「それでも、人に嫌われるのがすごく怖くなって・・・・・・。誰にも良い顔をせずには
いられなくなったし、そうすることで安心していたんだ。それで疲れて、君らをこうして間接的に虐待していたんだ」
マルコ「みんな嘘つきだ・・・・・・。人間らしい気持ちなんか、本当は誰も持ってない・・・・・。
そう思って、誰も信じられなくて、王の盾になれさえすればいいと思ってたんだけど・・・・・・」
ニャーゴロゴロ
マルコ「ジャンは違ったんだ」
マルコ「人間とは命をかけて愛しうる価値のあるものかもしれない」
ニャーニャー ミャー?
マルコ「・・・・・・はは、ハア。なにやってんだろ、俺。くだらない・・・・・・」カー ギュウ
・・・
コニー「アレ? ジャン、おまえ前髪切ったのか」
ジャン「ああ・・・・・まあな」
コニー「やっぱ楽だろ?」
ジャン「そうだな。・・・・・そうだ、ちょっと坊主頭触らせろ」ジョリジョリ
コニー「お、オイオイ・・・・まーいいけどよー」ハハ
サシャ「あ! コニー、ちょっと触らせてくださいっ」
コニー「えー? あ、ミカサ」
ジャン「!」
ミカサ「コニー。できれば、その、触らせて欲しい。サシャに聞いて・・・・」
コニー「あ、ああ。そりゃいいけどよ」
ミカサ「ありがとう」ジョリジョリ ・・・・・ピト
ジャン「!!」ドキ(み、ミカサと手が当たっちまった・・・・・ッ)
サシャ「あれー、ジャン。前髪切ったんですね。・・・・・似合ってますよ、変じゃないです。そんなに恥ずかしがらなくていいですよ。?」
・・・
アルミン「あ。マルコ、パンを残すのやめたんだ」
マルコ「うん。どうしても、お腹すいちゃうしね」ハハ
クリスタ「じゃあ、あの猫たちには、もうご飯をあげていないのね」
マルコ「そうだね。野生に返すことにしたんだ。もう大きくなったし」
ユミル「それがいいぜ。マルコ、ここでも母親やってんのに、猫の母親もしてたら、身体がたりねーよ」
ライナー「ユミル、母親だなんてからかい方はよせ」
ユミル「いいじゃねーか別に。ああ、アンタは父親だな」
ライナー「あのな・・・・・」
アニ「お父さん。これ、次の資料ね」ヒョイ
ライナー「アニ・・・・・」ハア
ベルトルト「あ、アニ。ライナーがお父さんなら、その、僕は・・・・・?」
アニ「弟?」
ベルトルト「・・・・・・」
マルコ「はは・・・・・・。さあ、みんな移動しようか。次は座学だね」
ユミル「座学ね。かったりーなあ」
クリスタ「もうユミル、いつでもそう言ってるじゃない」
ワイワイ ハハハハハ・・・・・
―――――――
バキッ!!
ジャン「・・・・・ッ! ミカ、」
ミカサ「・・・・・・・。ああ・・・・・」
ジャン「・・・・・っす、すまない、おまえの頬を、・・・・・・・え?」
パンッ
ビチャ、ビチャ
ジャン「え。・・・・・・え?」(ど・・・・泥?)
マルコ「・・・・・・・な、」
ジャン(ミカサが、・・・・・ミカサが弾けちまった。泥の塊みたいなのが、飛び散って。・・・・・・な、なんだこれ)
マルコ「ど、どういうことなんだ・・・・・ミカサ、ミカサ! ジャンも、しっかりしろ。・・・・・・!?」
マルコ(どんどん、食堂が暗くなっていく。どうして。まだ午前中だぞ。なにが・・・・・なにが起こっているんだ)
ジャン「ら・・・・・、ライ、・・・・・・ど、どうした。おまえまで。頭が痛いのか!?」
ライナー「・・・・・・・ぐ・・・・・」ググ
エレン「・・・・・・いってえ・・・・・・ッ」
アルミン「う・・・・・・・」
サシャ「い、・・・・・・痛い・・・・・」
クリスタ「くう・・・・・・っ」
ベルトルト「・・・・・う・・・」
コニー「いって、・・・・・・・。ああ・・・・・・・」
マルコ「みんな、しっかり! い、一体なにが・・・・・」
ユミル「・・・・・あんたがわたしたちに触ったからさ」ズキズキ
ジャン「触った? 俺がミカサに・・・・触ったせいで、ミカサは死んじまったとでも言うのか・・・・・」
ユミル「違うね。ミカサはもう死んでいた」
マルコ「死んでいた?」
ユミル「わたしも。おまえらも。こいつら全員もう死んでる」
ジャン「死んでるって・・・・・」
ユミル「ここは、わたしたちの『楽しかった子供時代』なんだ。死んだわたしたちが、その時代に
焦がれてたせいで・・・・つくっちまった世界だ。
しかし、わたしたちはその時代、本当に楽しんでいた訳じゃない。わたしたちはその時点で
すでに人を殺っちまってたからな。罪人であって、無垢の象徴である子供じゃなかった。
いわば、わたしたちが人を殺したことのない、無垢なアンタらに惹かれて、そのせいでこんな世界まで作っちまったって訳だ・・・・・。
そうだ、惹かれるのは、」
ユミル「ジャン」
ユミル「マルコ」
ユミル「サシャ」
ユミル「コニー」
ユミル「アルミンとクリスタは中間だな。間接的に人を殺している。それが事実であれどうであれ、彼らはそう思っている。
クリスタは母親、アルミンは祖父かな? このあたりはふわっと聞いたことあるだけだから、わからねーけど。
それで、わたしだけは、あの世界であっても記憶が「兵士」に書き換えられない。それで、もう疲れてな。
何度、この暗い世界に来たのかもわかりゃしねえ。おかしなこと、口走っちまって悪かったよ」ハア、ハア
ジャン「待てよ。意味がわからねえ」
マルコ「それで・・・・・訓練兵時代への思いで、この世界ができたとして・・・・・・? なんで、触られただけで
ミカサは弾けてしまったんだ。それに、なぜ今こんなに世界が暗くなっている」
エレン「それは、言い換えると、お前たちがランプの光で、俺たちは夜光虫だからだよ」ズキズキ
ジャン「夜光虫?」
エレン「この世界の中で、人を殺した俺たちは、いわば闇だ。人を殺してないお前たちは光。
闇の俺たちは、夜光虫みたいに、お前らのもとに集まっちまう。でも反対の存在だからな。
触れることはできないし、『強く』触れると熱に耐え切れずに消えちまう」
ユミル「光と闇で恋し合って、強く抱き合った瞬間身体が弾けて、こうして終わったこともあったな。
闇が光に惹かれるのは本能みたいなものだからな」
サシャ「そして光の役割の、主たるところはジャンとマルコでした。わたしたちは解散後、
それはもう残酷な目に遭って死にましたから。
人類を救うため、104期の兵士として・・・・命を全うできたのは、お二方だけなんですよ」
アルミン「君らの友情は、唯一、外の残酷な世界で汚されてない、きれいな訓練兵時代の
象徴みたいなものなんだ。君たちは、くだらない日々と思っているかもしれないけどね」
クリスタ「だからあなたたちが、こうして絶望してしまうと、この世界は光をなくして、消えていってしまうの・・・・・。
この世界は都合がいいから、光があるうちは、わたしたちも解散後の自分の罪を忘れて兵士をしているんだけど、
世界が終われば自分の運命を思い出して、何度でも絶望するの」
ライナー「自分で首を絞めているが、それでも、訓練時代への依存心はなくならない。その依存心から、また世界ができる。
俺たちの人格は、訓練時代に作り上げられたと言ってもいいくらいだからな。その根源を忘れるなんて不可能だ」
ベルトルト「そうさ。安心してくれ・・・・・。君たちが目を覚ますと、また新しい世界できれいな訓練時代が続いているから」
ジャン「意味がわからねえ・・・・・が、ならなぜ・・・・俺たちだけが自分の最期を思い出さないんだ。俺たちとサシャやコニーはなにが違う」
アニ「いてて・・・・・。神の慈悲じゃない」
マルコ「アニ」
アニ「あんたたちは綺麗なままで逝ったからね。罰される意味もない」
マルコ「・・・・・・! 僕が罰されてないというなら、僕の言い分が聞き入れられてもいいはずだ。
僕は、仲間が罰されるのなんて望んでない! そんなふうに苦しめるのなら、この世界なんて消えたほうがいいに決まってるよ!!」
ジャン「だいたい罪ってなんだよ、普通の同期だったじゃねーか。こんな地獄みてーな訓練時代に焦がれるって、一体どんな・・・・・」
エレン「知らないほうがいい」
ジャン「んだよそれ、こんなの、・・・・・・俺たちだって罰されてんじゃねーか」
ジャン(暗い世界の中で、仲間が苦しんでいるのに、なにもできない・・・・・)
アニ「・・・・・!」フラ、バタン
マルコ「アニ! どうした・・・・」
アニ「・・・・・・罪に比例するみたいに、身体も死ぬほど痛いんだ・・・・。良心の呵責が、物理的な痛みになるとこんな感じなのかな」
マルコ「しっかりするんだ、アニ!」ガシ
アニ「あ」
パンッ
ビチャビチャビチャ
マルコ「う、・・・・・・うわあああ、」
ジャン「クソ、どうしたらいいんだ、こんな・・・・」
マルコ「ああ・・・・・、もう彼らには十分です、こんなことやめてください。・・・・・それとも、見てることしかできない今、僕を無知の罪で
罰しているんですか?」
ジャン「無知の罪って、・・・・・・・それならもう、誰でも罪人になっちまうじゃねーか。
本当は、こいつらだって、罪人じゃないんじゃないか?
だれが罪だなんて決めて、だれが罰を与えているんだ?
というか・・・・・・この世界はこいつらが望んで作って・・・・・そのせいでこいつらは苦しんでいて・・・・・?
この状況を恨むべき相手はなんだ? 自分たち104期なのか? もう訳が分からねえ・・・・・。
こんな苦しいだけの世界のループに、一体なんの意味が、
―――――ブチッ
カーカー、カーカー
ムクッ
マルコ「・・・・・・ああ、ジャン、おはよう」
ジャン「マルコ・・・・・・。・・・・・・今、何時だ?」
終わり
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