冷蔵庫「冷えてるってのは、悪いことじゃないんだよ?」 (21)

短編で終わらせます。

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——思えば、店頭で並んでいた時が一番輝けていたのかも知れない。


キラキラした汚れの無い私の身体を、人間達が舐め回すように見ては隣の子と比べられた。


買われた時は店の人の笑顔が心地よかった。


けど、それも……十年前の記憶だ。


————

——




子供「アイスーアイスーたーべよ」ガチャ


子供「ホワイトモンブラーン!」バタンッ!!


冷蔵庫「痛ッ!! もっとそっと閉めてよ……」


冷蔵庫「……嬉しそうだからいいか」


冷蔵庫「アイスさんさようなら」

卵「また人間に食べられたね。僕も明日には目玉焼きかな」


冷蔵庫「うん。でも仕方ないよ……そういう運命なんだから」


卵「人間に食べられるだけの運命、か……僕も冷蔵庫さんみたいな物が良かったな」

——私の立場が羨ましいってなによ。


十年も立ったまま、好き勝手に物を入れられて身体は乱暴に扱われる。


他の、食材と呼ばれる者たちの終の言葉が、ずっと記憶へ上書きされていく。


いっそ、このコードが抜かれて廃棄されたら楽になれるのに……。


冷蔵庫「こんな生き方のなにが羨ましいのよ……」


母「いやー今日は大特価市だからまとめ買いしすぎちゃったわ 入るかしらね」


冷蔵庫「きた……今日は火曜日か。また一杯入れられちゃう」


母「魚とお肉はチルド、あらまだ在ったわね」ギュウギュウ


冷蔵庫「そこ狭いからダメ……もっと優しく……」


母「冷凍食品と……ビールに」ドスッ


冷蔵庫「あうぅ……ひぐっ!」


母「あとは上に適当に詰めときましょ」ギュウギュウ


冷蔵庫「うぶぅ! そんな冷えなくなるぅぅ」


母「あら、氷用の水が全然入ってない。もう! 使ったなら入れといてって言ってるのに」ナミナミ


冷蔵庫「ダメ! そんなのタプタプになる! 冷たい氷が一杯出ちゃうよぉぉ」


母「おしまいっと。さーってテレビを見ましょう。愛人とどうなるのかしら うふふ」


冷蔵庫「ハァハァ……またこんなに入れられた」グスッ


※詰め込みすぎはダメですよ

突発的に浮かんだので書き溜めがこれだけです。

また書き溜めて書き込みます。

垣根「呼んだ?」

メルヘン野郎はおかえりください。
この冷蔵庫に性別はあるのかしら?

>>7 禁書好きですよ。

>>8 女性的です。


終わりまで出来たので投下します。

〜〜夕方〜〜


次男「ただいま」


母親「おかえり。三男と一緒にご飯食べちゃって」


次男「うん」ガチャ


冷蔵庫「今日も表情が暗い。最近ずっとだなこの子」


次男「はぁ」パタン


冷蔵庫「またため息、か」


〜〜夜〜〜


父「帰ったぞー」


冷蔵庫「ひっ!!」


母親「おかえりーお疲れさま ビールあるわよ」


父「おう、サンキュー」クパッ


父「ビールはどこだ?」


冷蔵庫「いやああ! 毎日観音開きしたまま見ないで! ビールの位置同じなの!!」


父「あったあった」 パタン


冷蔵庫「初めての日からずっとこの扱い方、慣れない……」

〜〜深夜〜〜


長女「ただいまっても皆寝てるか」


長女「今日は……」ガチャ


長女「これね」パタン


冷蔵庫「なんで長女は毎日野菜持って部屋に行くのかしら」


————


長女「うふ」テカテカ ガチャ


冷蔵庫「おふ! 化粧マジックパネェ 慣れねぇ すっぴんこえぇ」


————

——




冷蔵庫「気配がする、奴がいるわね」


ポット「Gの野郎か……」


冷蔵庫「ポットさんこんばんわ 。奴が身体を這う感触は本当におぞましい……退治したいけど出来ない……」


ポット「冷蔵庫の嬢ちゃん……そいつは世界中の家電が思ってるよ……」


G「じょ……」


G(好きで好きで嫌われる為に生まれてきてない……ちくしょう!)


G「あっ、残飯ペロペロ」

〜〜翌日〜〜


冷蔵庫「今日は次男以外いないのか」


次男「……」ガチャ パタン


次男「……」グビグビ


冷蔵庫「珍しい、コーラなんて普段飲まないのに」


次男「……」


冷蔵庫「包丁? 包丁なんて持ってどこに……」


ポット「おい、あいつヤバいんじゃないか?」


電子レンジ「まさか……自殺?」

冷蔵庫「そんな! はっ! コンセントから次男の部屋の家電に!!」


————


次男部屋パソコン「緊急通信? 誰だ」


冷蔵庫「一階の冷蔵庫です! 次男は次男は大丈夫ですか!?」


パソコン「大丈夫とは言えないな……俺の身体に遺書を打ってやがる」


冷蔵庫「そんな! どうしよう助けないと……」

ポット「落ち着け冷蔵庫。コンセントから事情は把握した」


冷蔵庫「落ち着いてる場合じゃないよ! 次男は唯一、詰め込みすぎる母親のアフターフォローをしてくれた……賞味期限の確認もしてくれた……三男が溢した牛乳も嫌な顔ひとつしないで拭いて……」


電子レンジ「冷蔵庫ちゃん……」

冷蔵庫「それに!! 入れたら不味くなる芋類をちゃんと取り除いてくれた! 私のことわかってくれてたんだよ!」


ポット「冷蔵庫……」


冷蔵庫「あんな良い子が自殺なんかしていいはずがない!!」


ポット「ああ、そうだな」


電子レンジ「私もそう思う」


エアコン「良い話だ。湿気出しちまいそうだぜ」グスッ


パソコン「おい! ヤバイぞ書き終わっちまう!!」


冷蔵庫「そんな!!」

??「話はコンセントを伝って聞かせてもらったよ」


??「ええ。私たちの力、冷蔵庫にあげる」


冷蔵庫「あなた達は……」


ポット「おお! テレビに洗濯機!!」


電子レンジ「さ、三種の神器ですって……」


テレビ「さぁ!! 今こそ、国境無き食材を全て包み込み!!」


洗濯機「全てを生かすその偉大な力を解放するのです!!」


冷蔵庫「力が! 力が溢れてくる!! これなら行ける!!」ガターーン!


ポット「冷蔵庫が立った!」


電子レンジ「行きなさい冷蔵庫ちゃん! 貴女自身の願いの為に!!」


冷蔵庫「はい!!」ガタッ ガタガタ ブチブチ ガタガタ

————


冷蔵庫「待ってなさい次男! 貴女は死なせない」


ガタガタ ゴンゴン ゴンッ!


冷蔵庫「痛い! 階段の幅で身体が削られる!!」


卵「負けるな! 次男を助けたいんだろ!!」


冷蔵庫「卵さん……うん!!」


————


次男「なにか音がする? まさか帰って来たのかな」アセアセ


パソコン「いいぞ、そのままいるんだ。お前は死んだらいけない。アダルトサイトすら見ない素直なお前がな」


ドゴーーン


冷蔵庫「次男死んじゃダメ!!」


次男「」


パソコン「ふっ、間に合ったな」

次男「なにこれ……えっ……えっ」


次男(自殺しようとしたけどまだ何もしてない……まさか死神?)


次男(鎌も刀も持ってないし、なにより冷蔵庫ってなんだよ……アン〇ンマンのマグネット付いてるし、おもっきり家の冷蔵庫だし)


冷蔵庫「死んじゃダメ!!」


次男「し、死んじゃ……うわああああああああ!!」ガシャーン!


パソコン「なんてこった!! 錯乱して窓に突っ込みやがった!!」


冷蔵庫「次男!? あっ、起きて走っていく。意外にタフね」


刺身「ばっかもーん!! はやく後を追わんか!!」


冷蔵庫「でも、二階から飛び降りたら冷凍庫が……」


冷凍食品「かまわねぇ、やりな嬢ちゃん」


アイス「助けたいんでしょ!?」


冷蔵庫「ごめん皆……私は行く!!」フラーーイ!!


冷蔵庫「着地! いてっ! 思ったより大丈夫だ」

〜〜街道〜〜


次男「ハァハァ……思わず逃げたけど…… 痛いっ! ガラスが」


冷蔵庫「見つけた!! 待って!!」


次男「なんでここまで!!」


————


三男「ねぇねぇ、母さん母さん。あれうちの冷蔵庫?」


母親「」


父「」


<ミロヨ! レイゾウコガハシッテル


<ナンカノサツエイジャネ?


冷蔵庫「待ってよぉぉ!!」

〜〜ビル屋上〜〜


次男「ここまでくれば……」


冷蔵庫「なんでこんなに逃げるの!?」


卵「もしかして……そうか! 謎は全て解けた!!」


卵「パーシャルだ! パーシャル最大にすれば声が次男に届くはず!!」


冷蔵庫「ほ、本当? パーシャル最大!!」ウィーン


冷蔵庫「あっ、あー、聞こえますか? 貴方はそこにいますか?」


次男「冷蔵庫が喋った……もう何も驚かないけどね」


冷蔵庫「良かった! 会話成功!」

冷蔵庫「パソコンから聞いたよ! いじめが原因なの?」


次男「パソコンも喋るの……? 家電っていったいなんなの」


冷蔵庫「私には次男の気持ちはわからないけど……死んでほしくない」


次男「……家電界にはいじめはないんだね。羨ましいな」


冷蔵庫「ううん。次から次に新しいものが作られて、コンセント越しには古い家電は罵られるよ」


冷蔵庫「スリープ機能もないのかとか、消費電力多すぎとか……」


次男「なんかごめん……いつもうちの食材を守ってくれてたのに……そんなことも知らなくて」


冷蔵庫「いいよ。もう死んだりしない?」


次男「うん。僕のことちゃんと見てくれてる存在がいるのわかったから」


冷蔵庫「良かった……」

冷蔵庫「次男……本当に良かった」


次男「走ったら喉渇いた、飲み物もらうね」ガチャ


次男「あんなに走ったのに、ちゃんと冷えてる」


冷蔵庫「冷えてるってのは、悪いことじゃないんだよ?」


次男「うん。少し思考がホット過ぎたから凄く美味しく感じる」


冷蔵庫「良かった。帰ろっか」


次男「うん、夕飯の材料がないと母さん大変だしね」


冷蔵庫「うん!」


————

——




喋れるようになった私を、最初こそ戸惑っていた皆だけど、今は前よりもっと大切にしてくれる。


前から聞きたかった長女の野菜は、母親と父との三人の話し合いになったけどなんだったのかな?


私は、冷蔵庫というカタチに誇りを持って生きてます。


————


三男「アイスちょうだーい」ガチャ


冷蔵庫「はーい」



終わり

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