モバP「分裂する思考」 (28)


アイドルマスター・シンデレラガールズの大石泉さんのSSです。

書き溜めがあるわけではないので、文章が見るに耐えなくなってきた場合、
予告なしにSSの更新停止を宣言して、更新が途絶える可能性があります。

申し訳ありませんが、よろしくお願いします。




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1364291191


[ ??? ]

『犯人は、あなたです』

指の先と共に、全員の視線が私の方を向く。
考えもしなかった。どうして気付かれてしまったのかと。
どうして、どうやって、私の計画を見破ることが出来たというのか。

みなの驚きの表情が少しずつ、疑いの色に染まってゆく。
誰もが私の見苦しい言い訳を聞こうと耳を澄ましている。

私に逃げ場はない。
何人か電話をかけている人がいる。
メディアがじきに駆けつけて私を餌にするだろう。

建物の外から車のドアを閉める音が聞こえた。
もう、間に合わない。

ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
泣いて謝っても、誰も手を差し伸べてはくれなかった。
たった1人の、私のプロデューサーでさえも。

どうして、こんなことになってしまったのだろう。


[ 現在 ]

P「泉は…泉は、まだ…戻らないんですか」

ちひろ「…はい、未だ…聴取がある、との事で」

P「そう、ですか…」

ちひろ「その、プロデューサーさんが責任を感じることでは…ない、と思います」

P「…いえ、俺が…俺が、もっと早く真実に気付けたなら…」

P「泉が今、こんな事にならなくて済んだかもしれないのに」

ちひろ「プロデューサーさん…」

P「…すみません」

ちひろ「あ…そういえば、2つの封筒が事務所に送付されていました」

P「…封筒?」

ちひろ「…その、今回の事件に関する…供述と、泉ちゃんがした事をまとめたもの…です」

P「…そう、ですか」

ちひろ「内容はその2つに分かれていて…」

ちひろ「えっと…その」

P「泉の事を知るためにも…読んでおくべき、でしょう」

ちひろ「…はい」


2つの封筒の中身を別々に取り出す。

中身は似たような形式で綴られ、見慣れない表現が数多く並んでいた。
ちらりと文章を覗きこんだだけで、文章を構成していた人間の緊張感が伝わるほどだ。
ここまで固い文章を羅列されると、事の重大さを実感する。

P「…ちひろさんは現場に居なかったので、俺の回想も交えてわかりやすく語ります」

ちひろ「わかりました」

P「では…1枚ずつ読んでいくことにします」

ちひろ「…はい、お願いします」

P「ああ、えっと…その前に、事の発端から」

P「俺は泉に仕事を取ってきました…それはちひろさんも知ってると思います」

ちひろ「はい、確か…論理的思考力を競うクイズトーナメントに出場した、と」

P「そうです…そこで、泉は…」

ちひろ「………」

瞳に影が差すちひろさんにかける言葉が見つからなかった。
こんなとき、何と言えば彼女を元気づけてあげられるだろうか。
俺の経験から答えを引き出すことは出来ず、視線を手元の文書に戻す。

P「…では、読んでいきます…最初に言ったとおり、1枚ずつ」

ゆっくりと、1文字1文字を辿っていくように、語りはじめた。


[ 資料・1枚目 ]

大石泉。彼女はとても頭がいい。
プログラマーとしても非常に優秀で、彼女の開発するそれはお金になるほどだ。
どちらかというと理系よりで、彼女の論理的思考力には目を見張るものがある。

『泉、今度の仕事、これに決めようと思うんだけど、どうかな』

俺は泉にそう声をかけた。そんな泉にはぴったりな仕事だと言えるからだ。
資料を渡され、流し読みをしているかのようで、一言一句漏らしてはいない。

「私が…この、トーナメントに?確かに分析とか考える事は好きだけど」

『あー…あまり、乗り気じゃないか?』

「…別に、そんなことはないけど…ま、たまには頭の体操もいいかも」

「うん、やろう…かな」

『そうか!良かった…泉なら優勝で間違いなしだ』

少しだけ驚いた表情を見せた後、俺から視線を逸らす泉。
俺が泉を見ている間は、少なくともこちらを見てはくれなさそうだ。

「…私をおだてても、何も出ない…から」

『お世辞なんかじゃないんだけどな、とりあえず決まり、って事で』


『あ、渡した資料は流し読みでも構わないから読んでおいてくれ』

「わかった」

「ふうん。賞品も出るのね」

『ああ、そうそう。ゴールデンのクイズ番組の1年間の出演権だ』

「これなら私も見たことがあるわ。なかなかおもしろい問題が多いから」

『これに出られれば、もっと仕事も増えるから、頑張ろう』

「………」

「そうね」

そう返事をした後、資料を食い入るように眺める泉。
出演権に気が惹かれたのだろうか。やる気が出たなら何よりだ。

『今度、出場者のリストが届くはずだから、リストはそのときになるみたいだ』

「わかったわ」

「もうレッスンもないし、クイズ番組の予習でもするとしましょうか」

『うん、よろしく頼むよ』


それから1週間が経過し、トーナメントの応募が締め切られた。
主催者側もリストを整えたらしく、事務所にはリストが送付された。

『あ、泉。この前の仕事のリスト、来てたから置いておくよ』

「ありがとう」

透明なクリアファイルにきちんと整理されたそのリスト。
名も無きプロダクションから、大手プロダクションまでが記載されている。
俺たちも、大手プロダクションと呼ばれるように頑張らなければ、と思い直す。

「………」

「これ、本当にこの全員が参加するの?」

『そうだけど、どうかしたのか?』

「その…あまりいい噂を聞かないプロダクションも参加をしているようだから」

『…確かに、な』

確かにそのリストには業界でも悪名が流れるプロダクションもいくつかあった。
発売されたCDの売上げランキングの操作を行っている、というのは俺も聞いた。

『でも…泉なら大丈夫って、信じてるから』

『ないと思いたい…けど、不正がないように俺も気をつけるよ』

「うん、なら、いいのだけれど」

不正があったとしても、泉に勝てる存在などそうそう居ない。
肩を並べるほど、というならば、天才発明家と呼ばれる晶葉だろうか。

そう思うからこそ、俺は心配などしていなかった。
だから、思った通り、それを泉に告げた。

「…なら、後は当日を待つだけ。絶対に優勝してみせるから」


用事があるので続きは後日になります。
すみません。ありがとうございました。

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