ミカサ「青い花」(51)
エレミカのお話
書き終わっているので淡々と投下していきます
訓練兵時代です
不手際があったらすみません
ミカサ「あ」
エレン「ん?」
ミカサ「あの花はシガンシナに咲いていたものと同じ花」
エレン「ああ、よく薪拾いに行ったときに見かけたな」
ミカサ「あれは確かリンドウの仲間だとおばさんが言っていた」
エレン「・・・そうか」
ミカサ「ここは人があまり来ないから草花が多い」
エレン「そうだな」
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期待
ミカサ「おはよう」
エレン「おはよう」
アルミン「おはよう」
ミカサ「エレン、アルミン、これを。よかったら使ってほしい」
アルミン「わあ、きれいだね。これは、押し花のしおり?」
ミカサ「そう。先日見つけたシガンシナにも咲いていた花。それと薄紙を使って作った」
ミカサ「赤いリボンはエレンの、黄色いリボンはアルミンの、そして青いリボンは私のもの。お揃いで作ったからもらって」
エレン「厚い兵法書読むときとかしおりがあったら便利だよな。ありがとな、ミカサ」
アルミン「僕もよろこんで使わせてもらうね、ありがとうミカサ」
ミカサ「喜んでもらえてうれしい」
ミカサ「では私は宿舎に寄ってから行くので先に訓練場に行っていて」
エレン「おう」
アルミン「またあとでね」
アルミン「エレン、どうして出さなかったんだよ。絶対にミカサは喜んだのに」
エレン「出せるかよ。俺が作ったのは色が褪せちまってるしこんなきれいにしおりにしたりしてねえんだぞ」
アルミン「そんなことないよ。十分色は残ってるしエレンが一生懸命作ったんじゃないか。・・・しかしミカサもこの花を押し花にしてるなんてね」
エレン「ああ。やっぱりあいつにとってもこの花は特別なのかもな」
アルミン「ミカサってさ、意外と器用で女の子らしいところあるよね」
エレン「意外か?ミカサは昔から器用だぞ?」
アルミン「・・・うん、そうだね」
エレン「・・・」
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アルミン「今日も疲れたね」
エレン「ああ、特別きつかったけどまた強くなれた気がする」
ミカサ「二人とも今日は早く寝ること。疲れが溜まると良くない」
アルミン「・・・ねえミカサ、エレンがミカサに渡したいものがあるんだって」
エレン「ちょ、おいアルミン!」
ミカサ「エレン?何?」
エレン「何でもねえよ」
アルミン「エレン、大丈夫だから出しなよ」
エレン「うるせえな、まだなんだよ」
アルミン「何がまだなのさ!往生際が悪いぞ!」
エレン「まだ時間が必要なんだよ!とにかくこの話は終わりだ!」
ミカサ「エレン、アルミンはエレンが話を切り出しやすいようにしてくれた。そんな風に言うべきじゃない」
ミカサ「それに、エレンがまだだと言うなら私は待とう。だからアルミンも落ち着いて」
エレン「・・・わかった。アルミン悪かったな」
アルミン「僕の方こそお節介だったね。ごめんなさい」
ミカサ「さあ、スープが冷めてしまうから、早く食べよう」
アルミン「うん、あ、夕食後にエレンと今度の座学のテストの勉強をするんだけど、ミカサも一緒にするだろう?自習室を予約してあるんだ」
ミカサ「もちろん。実は私もよくわからない部分があってアルミンに聞きたいと思っていたところ」
エレン「じゃあ俺が皿を片付けておくからお前らは鍵借りて来いよ」
アルミン「わかった。頼むね」
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ミカサ「・・・アルミン」
アルミン「わかってるよ、さっきの話だろ?」
アルミン「でもミカサは待つって言ったし、エレンが用意してるものだ。僕が先に話すわけにはいかないよ」
ミカサ「確かにその通り。でもいつまで待てばいいのか、それすらわからないとドキドキして今夜は眠れそうにない」
アルミン「まあエレンがああ言うんだから、ちょっと待ってみてよ」
ミカサ「頑張る」
アルミン「あ、エレン」
エレン「よ、じゃあさっそく始めるか」
ミカサ「エレンが先にアルミンに教えてもらうといい」
エレン「そうか、なら頼むな、アルミン。ここの法則の項なんだけど・・・」
エレン「んー、ちょっと休憩にしないか。頭がクラクラする」
アルミン「エレンは大げさだなあ。でもかなり進んだから次のテストはばっちりだね」
ミカサ「ハーブティーを淹れてこよう。休憩にはちょうどいいはずだから」
エレン「おお、頼む」
アルミン「一人で平気?」
ミカサ「ええ。大丈夫。アルミンも教えるのに疲れたはず。休んでいて」
アルミン「ありがとう、お願いするよ」
アルミン「・・・エレン、さっきは本当にごめん。余計なことをして」
エレン「いや、言ってなかった俺が悪いんだ。気にしないでくれ」
アルミン「それで、その、聞いてもいいかな?何のためにミカサを待たせるのか」
エレン「ああ、あの押し花にちょっと手を加えてるんだ。花も増やしてるし」
アルミン「そうなの!?ああ、本当に悪いことしたな。ごめん」
エレン「だからもういいって。それよりさ、仕上げの時にはアルミンにも協力してもらいたいんだ」
アルミン「僕にできることならぜひ手伝うよ」
エレン「俺は不器用だからな。細かいことはいつもミカサがやってくれてたんだけど今回はそうもいかねえから」
ミカサ「何がそうもいかないの?」
エレン「!!!おま、お前、いつから入ってきてたんだよ!!!ノック位しろよ!」
ミカサ「ごめんなさい。両手がふさがっていてノックできなかった」
ミカサ「ティーセットを持ってきた。ので、一緒に飲もう」
アルミン「ミカサ、話聞いてた?」
ミカサ「いえ、聞こえなかった。教えてほしい」
エレン「お前に渡すものの相談だ。これ以上は聞くな。それから過剰な期待もするな」
ミカサ「わかった」
アルミン「エレン、結構はっきり言うんだね」
エレン「ミカサはきちんと説明すれば余計な詮索はしないからな。濁すのが一番よくない」
アルミン「へえ」
ミカサ「エレンは猫舌だから予め少し取り分けて来た。そっちはもう冷めているはずだからそっちから飲むといい。その間にポットの中の分も冷めるだろう」
ミカサ「アルミンは濃いほうが好きだからこの葉を少し足そう」
エレン「さすがだな、ミカサ」
アルミン「僕らの好みを覚えてくれてるんだね」
ミカサ「当たり前のこと」
エレン「ミカサは豆が好きだな」
アルミン「そうだね」
ミカサ「特にそういうわけではない」
エレン「兵站行進のときに豆持って行ってるのはお前くらいだぞ」
アルミン「わざわざ荷物に入れるくらいだから好きなんでしょ?」
ミカサ「いえ、豆は手軽に食べることが出来るし良質なタンパク質でできている。それに腹持ちもいいので、兵站行進にはうってつけの食品」
エレン「いや、甘いからだろ?」
ミカサ「え」
エレン「豆は少し甘いから好きなんだろ?」
アルミン「へえ、ミカサは甘党なんだね。開拓地では甘いものなんか手に入らなかったから知らなかったよ」
エレン「シガンシナにいたころは父さんが内地のお土産でたまに砂糖菓子をくれたんだ。アルミンも食べただろ?」
アルミン「うん。よく覚えてるよ。あれは本当においしかった」
エレン「砂糖菓子を食べてる時のミカサはなんだかいつもより嬉しそうだった。お前は甘いものが好きなんだろ?」
ミカサ「ええ。甘いものはなんだか安心する。ので、好き。エレンが私の好みを知っていてくれてうれしい」
アルミン「ぼ、僕も今覚えたよ。やっぱりシガンシナ時代のことは二人しか知らないこともあるな。ちょっとだけ悔しいや」
ミカサ「そんなことはない。私は私がシガンシナに来る前の二人のことは知らない。よかったらその頃の話を聞きたい」
アルミン「いいよ、そうだな、あれは僕たちが7歳の頃、エレンが泣きながら僕の家に来たことがあってね・・・」
エレン「おいアルミン!その話は止めろって!ほんとに止めろ!ほら!勉強の続きするぞ!」
ミカサ「エレン、もう大方済んだのだからいいじゃない。それにまだハーブティーもたっぷり残っている。注いであげよう」
エレン「だってそれまだ熱いだろ?飲めねえよ」
ミカサ「もう十分冷めた。でも心配ならフーフーしてあげる」
エレン「・・・」
ミカサ「どう?もう飲めそう?」
エレン「ああ、ありがと」
ミカサ「もっと二人とこうしてのんびり過ごす時間が欲しい」
アルミン「そうだね。開拓地の頃は四六時中一緒だったから僕も寂しく感じる時があるよ」
エレン「お前は女子寮ではちゃんとやれてるのか?」
ミカサ「ええ。だいぶ慣れた。最初は女の子との接し方がよくわからなかったけど、兵士を目指すだけあってさっぱりした気持ちの良い子が多い。
それなりにやれていると思う。明日も同室のみんなと裁縫をすることになっている。教え合って上手くなりたい」
アルミン「ミカサは器用だもんね。エレンなんかこの前、とれたボタンを付け直すのに背中の方まで一緒に縫ってシャツに怒ってたんだよ」
ミカサ「エレン、シャツは悪くない。それは理不尽というもの。それに、そういうことは私にやらせてほしい。ボタン付けくらいいつでもするから」
エレン「俺だってボタン付けるくらいできる。いつまでもお前に頼るわけにいかないだろ」
ミカサ「私たちは家族。助け合うのは当たり前」
エレン「そうかよ」
アルミン「はは。ねえミカサ。このハーブティーおいしいね。街で買ってきたのかい?」
ミカサ「いいえ。訓練所の裏山でハーブが群生しているところがある。先日、女子の何人かでそこで摘んできたものを使った」
エレン「しっかり溶け込んでんだな。いいことじゃねえか」
ミカサ「でも一番好きなのはエレンとアルミン」
エレン「俺たちは比べるもんじゃねえだろ」
アルミン「そうそう。別格だよ別格」
ミカサ「それもそうだった。ふふふ」
ミカサ「もう消灯も近い。私はティーセットを片付けてから部屋に戻る」
アルミン「じゃあ自習室の鍵は僕たちが返しておくよ」
エレン「ミカサはアルミンに教えてもらわなくていいのか」
ミカサ「ええ。エレンと同じところだったので隣で聞いていて理解した」
エレン「どこだったんだ」
ミカサ「137ページの第5章」
アルミン「・・・エレン、今度もう一回説明するから」
エレン「ああ、頼む」
ミカサ「?」
ミカサ「では鍵はお願いする。今夜は冷えるから、おなかはきちんとしまって寝ること。おやすみなさい」
エレン「おやすみ」
アルミン「おやすみ。また明日」
アルミン「片付けも終わったし、僕たちも部屋に戻ろう」
エレン「ああ」
エレン「なあアルミン。ミカサってなんか変わったか?」
アルミン「うーん、そんなに変わらない気もするけど、雰囲気がちょっと優しくなったかもね」
エレン「・・・そうか」
アルミン「どうしたんだい。急に」
エレン「何でもねえよ」
アルミン「ミカサに限らず、変わっていくものなんだよ。僕やエレンも、ね」
エレン「・・・別々の宿舎で過ごすようになってから、俺の知らないミカサが生まれたような気がするんだ。ハーブ摘みに行ったのなんて全然知らなかった」
アルミン「大勢の女子と一緒に過ごすようになって、ミカサも色々影響を受けてるのかもしれないね」
エレン「女子か・・・」
エレン「俺も変わっていくのかな」
アルミン「みんな変わっていくさ」
エレン「なんか変な感じだな。同じ人間なのに変わっていくなんて」
アルミン「うん。でも僕は僕がどんなに変わっても、エレンがどんなに変わっても、いつまでもエレンの友達でいるよ」
エレン「当たり前だろ。俺もいつまでもアルミンの友達だ」
アルミン「ミカサも?」
エレン「そうだ」
エレン「ミカサも、そう、だ」
アルミン「心配ないと思うよ」
エレン「何がだ?」
アルミン「いや、なんでもないよ。もう戻ろう」
エレン「ああ」
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ミカサ「おはよう」
アルミン「おはよう」
エレン「はよ」
アルミン「今日は午前の座学だけだからちょっと休めるね」
エレン「俺は立体機動の訓練したい」
アルミン「僕は昨日の疲れがまだ残ってるからありがたいよ。ミカサは女子と裁縫だっけ」
ミカサ「そう。クリスタが刺繍の図柄がたくさん載っている本を書庫で見つけてくれたので、刺繍入りの何かを縫うつもり」
アルミン「完成したら見せてね」
ミカサ「ええ」
エレン「俺たちは昨日の勉強の続きだな」
アルミン「はいはい。とことん付き合うよ」
ミカサ「私も一緒に勉強したいのだけど」
エレン「女子同士の約束が先だろ?そっちにいけよ。俺たちはまた同じ自習室にいるから」
ミカサ「わかった。早く縫い上げていこう」
エレン「いや、ゆっくりこい。そうだな、5時までは俺とアルミンの特訓だ」
ミカサ「そんなに?」
アルミン「エレン大丈夫?そんなに長く机に向かえるの?」
エレン「平気だ。それよりアルミン。仕上げは手伝ってくれるんだよな?」
アルミン「・・・ああ!うん、もちろん。喜んで手伝うよ」
エレン「頼むよ。じゃあ座学も頑張ろうぜ」
ミカサ「?」
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ミカサ「では私は部屋で裁縫をしてくる。5時には自習室に行くから必ず待っていて」
エレン「おう、ゆっくりでいいぞ」
ミカサ「いえ、5時きっかりに行く。ではまた」
アルミン「またね」
アルミン「・・・それで?エレン!やるんだね!今!ここで!」
エレン「ああ!勝負は今!ここで決める!」
アルミン「とは言っても何をするのか正直分からないよ」
エレン「まあまずはこれを見てくれ」
アルミン「これ・・・いろんな色の押し花?」
エレン「ああ。でもその白や紫は添えるだけだ。大事なのはこっち」
アルミン「赤と黄色と青の花だね。これは特別なの?」
エレン「俺とアルミンとミカサだ。これをあのシガンシナの花の押し花と一緒にこの色紙に並べる」
アルミン「素敵じゃないか。エレンが考えたの?」
エレン「・・・やっぱり俺らしくないかな」
アルミン「昔のエレンなららしくないけど、今はそうでもないよ。エレンも変わったんだ」
エレン「どういう意味だよ」
アルミン「ミカサが喜ぶと思って考えたんだろう?昔からエレンは優しかったけど、より相手の気持ちになって考えられるようになったってことさ」
アルミン「それになにより、ミカサへの気持ちが変わったんだろ?」
エレン「それは・・・」
エレン「俺って変かな」
アルミン「全然変じゃないよ」
アルミン「みんな変わっていくんだ。心配ないよ」
エレン「ミカサに変に思われるんじゃないか」
アルミン「その点に関しては全く問題ないね」
エレン「なんでだよ」
アルミン「どうしてもだよ」
エレン「・・・うーん、こんな感じか」
アルミン「うん。バランスもいいと思う。あとは周りを補強すればいいね」
エレン「助かったよアルミン。俺だけじゃこんな風に並べられなかったと思う。薄紙を貼りあわせるのだってやってもらって良かった」
アルミン「僕が手伝ったのなんてそこくらいじゃないか。エレンが一人で作ったようなものだよ」
エレン「・・・あのさ、昨日のミカサが甘党だって話だけど、そう思った本当の切欠は砂糖菓子じゃなくて、この花なんだ」
アルミン「そうなの?」
エレン「ああ。あの花はシガンシナでミカサと薪拾いに行ってた林のそばによく咲いてたんだけど、
ある日、ミカサとちょっと離れたところで枯れ枝を探してた時、ミカサがうずくまってるのが目に入ったんだ」
エレン「腹でも痛いのかと思って近づいて行ったら、ミカサのやつ夢中でこの花の蜜を吸ってたんだ。摘んでは吸って摘んでは吸ってを延々と繰り返してた」
アルミン「へえ、あのミカサがそんなことを」
エレン「ちょっと想像つかないだろう?俺も驚いた。でもミカサがあんまり夢中だったから隠れて見てたんだ。それでそのうち、辺りの花は全てミカサが吸い尽くしちまった」
アルミン「ごめん、ちょっと面白いと思った」
エレン「大丈夫だ、俺も面白いと思ったから。それでな、ミカサももう花がないことに気づいたんだよ。
そしたらなんか急におろおろして吸っては投げていた花を拾い出したんだ。こう、両手にいっぱいになるくらい」
アルミン「また随分と吸ったね」
エレン「な。俺も一緒に吸えばよかったって思ったよ。そのあと、両手いっぱいに花を載せたままミカサは走って行った。
小川の方向だったから、俺は先回りして川の対岸で待ち伏せしてミカサを驚かそうと考えた」
エレン「たくさんの花を手に載せたミカサが川の前に現れた。飛び出すタイミングを窺うために様子を見てたら、ミカサは、ふいにパッと花のかたまりを空に投げ上げた」
エレン「ゆっくりと降ってくる青い花と、それが川に落ちてゆるゆると流されていく様子をミカサはじっと見てた。
口がごめんなさいと動くのが見えた。俺はなんだか見てはいけないものを見てしまったような気がした」
エレン「でも今ならわかる。青い花が降る中でじっと佇むミカサを、俺は綺麗だと思ったんだ。・・・この花は、俺にとって大切なもので、ミカサの象徴みたいなもんだ」
アルミン「エレン・・・」
エレン「だから、俺は変わったけど、変わってないんだ。シガンシナにいた時から」
アルミン「そっか。じゃあもう少し、完成まで頑張ろう」
エレン「そうだな、じきに5時になっちまうしな」
エレン「で、できた・・・疲れた」
アルミン「すごいよエレン!とっても綺麗だ!」
エレン「そうかな、アルミンがそういうなら安心だ」
アルミン「これはミカサも喜ぶよ」
エレン「そうだといいんだけどな」
ミカサ「私がどうかしたの?」
エレン「わああああああああああ!!!!」
アルミン「あああああああああああ!!」
エレン「おま、おま、お前は!!昨日ノックしろって言ったばかりだろ!?」
ミカサ「ごめんなさい、両手がふさがっていた。それに5時きっかりに行くと言ってあったから二人とも私が行っても驚かないと思っていた」
ミカサ「今日もハーブティーを淹れてきた。二人とも長く勉強を続けて疲れていると思う。休憩しよう。甘い風味の炒り豆もある」
アルミン「あ、僕、マルコと立体機動装置の整備を一緒にする約束したんだった!ごめん、もう行くね!」
ミカサ「ならこの小さいポットを持って行って。丁度二人分くらいある。多めに淹れて来たから遠慮しないでいい。あと、豆も」
アルミン「ありがとう。もらっていくよ」
アルミン「じゃあまた夕食の時に!エレン!心配いらないからね!」
エレン「・・・ああ、ありがとな、アルミン」
ミカサ「エレン、何か心配事があるなら話してほしい」
エレン「いや、なんでもないんだ」
ミカサ「最近のエレンは何となく雰囲気が違う。何かあるなら言ってほしい」
エレン「お前には関係ねえよ。・・・いや、やっぱりお前のせいだ」
ミカサ「・・・ごめんなさい。それで、私の何が良くないのだろう、必ず直してみせる」
エレン「いや、いいんだ、お前はそのままで」
エレン「変わったけど、変わってないんだ」
ミカサ「エレンの言っていることがよくわからない」
エレン「このトロスト区の訓練所にもシガンシナ区と同じ青い花が咲いてるだろう?そういうことだよ」
ミカサ「今日のエレンは文学的。私にはよくわからない。私は悪いところはないの?」
エレン「ないよ。お前のせいだけどお前は悪くないんだ」
ミカサ「私はこのままでエレンのそばにいていいの?」
エレン「当たり前だろ。俺たちはずっと一緒だ」
ミカサ「私はエレンのそばにいられれば幸せ」
エレン「同じだな」
ミカサ「何と?」
エレン「今も昔も、俺もお前も」
ミカサ「やっぱりよくわからない」
ミカサ「そんなちょっと意地の悪いエレンには熱いハーブティーを飲んでもらおう」
ミカサ「でもそばにいていいと言ってくれてうれしい。ので、少しだけぬるくしてあげよう」
エレン「熱いままでいいからさ、またフーフーしてくれよ」
ミカサ「意地悪エレンが甘えん坊エレンになった」
エレン「たまにはいいだろ」
ミカサ「うん」
エレン「ところでさ、これ、やるよ。包んだりしてなくてごめんな」
ミカサ「これは・・・押し花の壁掛け?」
エレン「ああ、吊るせるように紐をつけたんだ。ベッドのところに飾れるだろ」
ミカサ「エレン・・・とても・・・とてもうれしい。うれしくて、何と言ったらいいかわからないくらい」
エレン「それはよかった」
ミカサ「これはあの青い花。こっちの小さな赤と黄色と青の花は、エレンとアルミンと私?」
エレン「よくわかったな」
ミカサ「わかる。この前渡したしおりもリボンの色をこの通りにしたから」
ミカサ「三人でシガンシナにいた頃のことを思い出す」
エレン「まあ、飾ってくれよ」
ミカサ「エレン、本当にありがとう。こんな素敵なものをもらっていいのだろうか」
エレン「お前のために作ったんだ。もらってくれなきゃ困る。それに、アルミンが薄紙を貼ったり花の並べ方をアドバイスしてくれて出来たんだから、アルミンにも礼を言えよ」
ミカサ「ありがとう。アルミンにも必ずお礼を言おう」
エレン「そうしてくれ。お前の方は裁縫どうなったんだ?何縫ったんだよ」
ミカサ「ハンカチにした。でも久々だし初めての図柄なのであまり上手くできなかった」
エレン「見せてくれよ」
ミカサ「今度上手くできたら」
エレン「今見たい」
ミカサ「・・・これ」
エレン「・・・お前、どんだけこの花好きなんだよ」
ミカサ「木陰で居眠りするエレンのそばにその花は咲いていた。この花のように、エレンのそばで風に揺れていたいと思った」
エレン「・・・そうかよ」
エレン「なあミカサ。このハンカチ、俺にくれよ」
ミカサ「エレンにあげるならもっと綺麗にできたものにしたい。これは試作品」
エレン「これがいいんだよ。綺麗にできたのはアルミンにあげたらいいだろ。お前が最初に縫ったこれが欲しい。それに、これも十分綺麗だぞ」
ミカサ「そこまで言うならそれはエレンにあげる。今度改めて綺麗にできたものを渡そう」
エレン「じゃあもらうぞ。ありがと」
ミカサ「こちらこそ。こんないいものをもらったのに、ハンカチは試作品で申し訳ない」
エレン「いや、俺はうれしいぞ。・・・本当に器用で・・・綺麗だ」
ミカサ「そう?もっと褒めてほしい」
エレン「綺麗だ」
ミカサ「なんだかくすぐったい」
エレン「今までだってずっと思ってたぞ、綺麗だって」
ミカサ「ではもっともっと綺麗にできるように練習しよう」
エレン「いや、これ以上綺麗になったら困る」
ミカサ「なぜ?」
エレン「俺だけのものにできなくなったら嫌だからだ」
ミカサ「心配しなくてもそれはエレンのもの。その図柄はエレン専用にしよう」
エレン「・・・そうしてくれ。俺だけのものでいてくれ」
ミカサ「今度はわがままエレンになった」
エレン「こんな俺は嫌か?」
ミカサ「いえ、大好き」
エレン「そうか」
ミカサ「うん」
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ミカサ「あ」
エレン「あの花だな」
ミカサ「ええ、ここにも咲いていたのは知らなかった」
エレン「・・・あの花、お前によく似合うよ」
ミカサ「そう?先日、書庫でリンドウの花言葉を調べた。『寂しい愛情』『誠実』『正義』などがあった」
ミカサ「どう?にはふ?」
エレン「・・・お前、蜜を吸いたかっただけだろ」
ミカサ「ふふ、あはふへおいひい」
エレン「ったく、花ってのは」
ミカサ「・・・!!」
ミカサ「エ、エレン・・・!」
エレン「ふはへふんははふへ」
エレン「髪に付けるもんだろ?ほら」
エレン「あと、似合うって言ったのは撤回だ。お前はもう寂しくなんかないだろ」
ミカサ「エレン」
エレン「ん?」
ミカサ「口に花粉が付いている」
エレン「あ・・・」
エレン「!」
ミカサ「ふふ、エレンも花と同じくらい甘い」
おわり
以上になります
読んでくださった方、期待レスをくださった>>3の方、ありがとうございました
このSSまとめへのコメント
かあいいいいいいいいいいおろろろろろろ///////
やばたんやばたん///これサイコーです乙ありがとう
この続きあたっけ?
エレンの母さん生き返るやつ