キョン「ち、近寄るな! 化け物!」(1000)

朝倉「あたしの負け。よかったね、延命できて」

キョン「あ……あ…………」

朝倉「いつかまたあたしみたいな急進派が来るかもしれない。それか長門さんの操り主が意見を変えるかもしれない」

キョン「うあ…………ああ……」

朝倉「それまで涼宮さんとお幸せに。じゃあね」


シュウウウウウウウウ・・・・・・


長門「……教室の再構成を開始…………完了」

長門「続いて肉体の再構成…………完了」ムクッ

キョン「うわ……あ……」

長門「……」スタスタ

キョン「ひっ!」ビクッ




キョン「ち、近寄るな! 化け物!」

長門「……」ピタッ



キョン「ぜ、全部ただの電波話だと思ってたんだ! 全部嘘だと……!」

キョン「きっとこういう奴なんだろう、適当に話を合わせておくかと思ってたんだよ! それが……」


長門「……」


キョン「本当だったなんて、お前が本当に宇宙人だったなんて……あんな凄まじい力を……」

キョン「し、しかも、全身串刺しになっても平然としてやがった……平然と……」


長門「……」スッ


キョン「近寄るなと言ってるだろう!?」


長門「……」


キョン「あんな、まるで化け物みたいな力…………化け物、化け物化け物化け物!!」

キョン「なーんてな」

長門「……」

キョン「ありがとよ長門」

長門「…いい。私は私の役目をしただけ。それより私のm」

ギュッ

長門「……ビクッ」

キョン「もういいんだ、いいんだよ長門」

長門「……」

キョン「さぁ、ホテルへ行こう」

長門「……コク」

谷口「うぃーす。WAWAWA忘れ物……ん?」


キョン「あ……」

長門「……」


谷口「何だ、お前らこんなところで何してるんだ? お、忘れ物みっけ」ゴソゴソ

谷口「なーんか怪しいな。こんな誰もいない教室で何を……」

キョン「なな何でもないんだ! ほら行こう!」グイグイ

谷口「おいおい引っ張るなよ! 何だってんだ!」

キョン「いいから早く帰ろう! ここにいちゃ駄目だ!」


ドタドタドタドタ・・・・・・



長門「……」

長門「…………あ」


長門「眼鏡の再構成を……忘れた……」

谷口「なぁ、さっきの6組の長門だろ? どうして誰もいない教室に一緒にいたんだ?」

キョン「う……それはだな……」

谷口「ははーん。さてはお前、長門に告白したんだろう? そして見事に玉砕した」

谷口「それでバツが悪くなって慌てて教室から出てきた。どうだ、正解だろう!」

キョン「あー……じ、実はそうなんだ。は、はは」

谷口「やっぱりか! はっはっは、まぁ気にするなよ。女なんて星の数ほどいるさ!」

キョン「……」


キョン(それにしても……)

キョン(長門が宇宙人だってのは本当だった。ということは朝比奈さんや古泉が言ってたことも……)

キョン(何よりも涼宮、涼宮がとんでもない存在だって話も本当だったってことになる)

キョン(SOS団は化け物の巣窟ってことか。冗談じゃない、そんな所にいたら命がいくつあっても足りない)

キョン(どうすればいいんだ……どうすれば……)

~翌日 朝 登校中~


キョン(一晩たって少しは冷静になってきたな。俺は取り乱しすぎていたのかもしれない)

キョン(確かに長門は宇宙人だった。そして長門の言う通り、涼宮もとんでもない存在なんだろう)

キョン(しかし、だからと言って朝比奈さんや古泉が言ってたことまで本当だとは限らない)

キョン(古泉はどうでもいいが、あの愛くるしい朝比奈さんが得体の知れない未来人だなんて信じたくない)




~北高 下駄箱~


キョン「ん? 下駄箱に手紙が……朝比奈さんから!」


『昼休み 部室でまってます。 みくる』


キョン「これは早速確かめるチャンスだな。しかし罠の可能性も……実際朝倉の時は……」

キョン「いや、朝比奈さんに限ってそれはない! 何より朝比奈さんからのお誘いだ、行かなきゃ男じゃない!」

~昼休み 部室前~


キョン「よし、行くか」コンコン

『あ、は~い』


ガチャ


みくる大「キョンくん……久しぶり」

キョン「あの、朝比奈さんのお姉さんですか?」

みくる大「あたしはあたし、朝比奈みくる本人です。ただし、あなたの知っているあたしよりもっと未来から来ました」

キョン「いえいえ、お姉さんでしょう。どうも初めまして」

みくる大「もう、信用してよ。ほら、ここに星型のほくろがあるでしょ。触ってみる?」

キョン「いきなり何胸元を見せつけてるんですか! 痴女ですかあなたは!」

みくる大「痴女じゃないです!」

キョン「いやいやいやいやいや。ありえない、ありえないでしょう……」

みくる大「信じてよ、もう……」

キョン「ほ、本当に朝比奈さんなんですか……?」

みくる大「やっと信じてくれた……」

キョン「嘘だろ、朝比奈さんも本物の未来人だった。きっと古泉も……」

キョン「あ、あの、ハルヒがとんでもない存在だって話は……」

みくる大「……本当です」

キョン「う、うわああああああああああああ!!」

みくる大「きゃ! きょ、キョンくん!?」

キョン(やっぱりSOS団はやばい! こんな団にいては確実に俺の命が危ない!)

みくる大「キョンくん、落ち着いて!」

キョン「これが落ち着いていられますか! 涼宮と一緒にいたら殺される!?」


みくる大(キョンくん……やっぱりこの世界のキョンくんは……)


みくる大「キョンくん、出来れば涼宮さんとは仲良くしてほしいんだけど」

キョン「絶対に嫌だ!!」

みくる大「どうしても?」

キョン「どうしてもです!」

みくる大「……分かりました。あたしからはもう言うことはありません」


ガチャ


みくる大「いろいろ混乱させちゃってごめんなさい、キョンくん」

みくる大「…………バイバイ」


バタン


キョン(これでハッキリSOS団はやばいということが分かった。これからどうする?)

キョン(どうするもこうするもない。今すぐにSOS団を辞めて、あいつらから距離をとるんだ!)

キョン(同じクラスだから、涼宮とはずっと同じ教室にいることになるがそれは仕方ない)

キョン(とにかくSOS団だけは絶対に辞めなくては!)

~教室~


ハルヒ「キョン、今日の放課後に朝倉の住んでたマンションに行くわよ! 調査の必要があるわ」

キョン(言え、言うんだ!)

キョン「な、なあ涼宮、話があるんだが」

ハルヒ「何よ?」

キョン「その……SOS団を辞めたいんだ」

ハルヒ「はぁ? いきなり何を言い出すのよアンタ」

キョン「どうしても辞めたいんだ! 頼む!」

ハルヒ「駄目に決まってるでしょ! アンタはSOS団の雑用係なんだから!」

先生「おーい、そこの2人。とっくにチャイム鳴ったぞー」

ハルヒ「とにかく! 絶対駄目だからね!」


キョン(やっぱり許しちゃくれないか。まあいい、意志は伝えたんだ。後は団活に行かなければいい)

キョン(そのうち涼宮も諦めるだろう。これでいいんだ)

~放課後~


キョン(よし、長居は無用だ。さっさと帰ろう)

ハルヒ「ちょっと待ちなさい」ガシッ

キョン「ひっ!」

ハルヒ「何よ、変な顔して」

キョン(化け物……化け物に腕を掴まれて……)

キョン「う、うわあああ!」バッ

ハルヒ「きゃ! ちょっと何すんのよ!」

キョン「ひいい!」ダダッ

ハルヒ「あ! こら待ちなさい!」


キョン「逃げなきゃ! 逃げなきゃ! 逃げなきゃ!」ダダダダッ

ハルヒ「くおらああ! 待ちなさーい!」シュタタタタ

キョン「うわああああ! 速えぇぇぇ!」

ハルヒ「捕まえた!」

キョン「わぎゃ!」

ハルヒ「さーて、どうしてくれようかしら?」

キョン「ひいいいいい!」

ハルヒ「まったくもう! ほら、朝倉の家まで行くわよ」ズルズル

キョン「は、離してくれ! 誰かー! 助けてくれー!!」ジタバタ

ハルヒ「こ、こら! そんなに暴れるんじゃないの!」

先生「こらそこ、何してるんだ?」

ハルヒ「あーもう! 何でもないわよ!」パッ

キョン「今だ!!」ダダッ

ハルヒ「ああ! こらー! もう!」



キョン「な、何とか逃げ切れたか。でもあれじゃ意味ないよな。これから毎日逃げ続けないといけないのか?」

キョン「何とか涼宮に諦めてもらう方法はないものか。はぁ、憂鬱だ」

キョン「ん? 家の前に誰かいるな」

古泉「どうも。お待ちしていました」

キョン(げっ……長門、朝比奈さんときて最後は古泉か。SOS団にはもう関わりたくないというのに)

古泉「いつぞやの約束を果たしに参りました」

キョン「や、約束?」

古泉「ええ、超能力をお見せするという」

キョン「あ、ああ、あれか。いや、あれはもういいんだ。だから帰ってくれないか?」

古泉「まぁそう遠慮なさらず。どうぞお乗りください」グイグイ

キョン「こら押すな! というかいつの間にタクシーが!? 絶対怪しいだろう!」

古泉「新川さん、手伝ってください」

新川「承知」グイイイ

キョン「うわ何この爺さん強い!? 離せって!」


バタン ブロロロロ・・・・・・


キョン「人さらいーー!!」

~街中~


古泉「到着しました。ここです」

キョン「……ただの横断歩道じゃないか。ここが何だってんだ?」

古泉「今さらですが、今ならまだ引き返せますよ?」

キョン「そうか。なら俺は帰る。じゃあな」

古泉「では行きますか」グイッ

キョン「手を離せ! お前人の話を聞く気ないだろう!」

古泉「少しの間、目を瞑っていてもらえますか?」

キョン「嫌だ! その間に何をする気だ!」

古泉「少しの間、目を瞑っていてもらえますか?」

キョン「……分かった、分かったよ! 瞑ればいいんだろう!」

古泉「結構。では」

キョン(何なんだ。俺はいったいどうなるんだ?)

古泉「もう目を開けていただいて結構ですよ」

キョン「な、何だこの灰色の空間は……それにあれだけいた人がいない。車も……どうなってるんだよ!」

古泉「落ち着いてください。ここは……」

キョン「終わりだ! この世の終わりだ! うわああああ!」

古泉「落ち着けって」


キョン「つまり、ここは涼宮が発生させた空間で……」

古泉「ええ、僕たち超能力者はこの空間に入る能力を持っています」

キョン(やっぱり……やっぱりハルヒは化け物みたいな能力を持っていたのか)

古泉「着きました。ここでいいでしょう」

キョン「何だ? こんな屋上まで来て何をしようってんだ?」

古泉「あれを見てください」

キョン「あれ?」


オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・


キョン「な……な……」

古泉「あれは僕たちが『神人』と呼んでいるもので……」

キョン「か、か、怪獣だー!!」

古泉「は?」

キョン「だ、誰か、警察! 自衛隊ー!」

古泉「落ち着けって」



古泉「どうやら仲間達が戦い始めたようですね。では僕も行ってきます」シュウウウ


ヒュウウウウン!!


キョン「こ、古泉が赤い球になって飛んでいった……」


バシュッ!! ビシュッ!! グオオオオオオオオオオ!!


キョン「何だよ、これが本当に現実の光景なのかよ……」

キョン「怖い……怖い……うわああああああ!」ダッ

古泉「ふう、終わりましたよ。あれ?」キョロキョロ

古泉「……逃げましたか」


キョン「ぜぇ、ぜぇ、に、逃げ出したはいいが、どこに逃げればいいんだ!」

古泉「待てー」

キョン「ぎゃああ! 赤球が追いかけてくる!?」

古泉「捕まえました。まったく、手を煩わせないでくださいよ」

キョン「は、離せー! 俺をこの空間から出してくれー!」

古泉「言われなくても、もうすぐこの空間は崩壊しますよ」

キョン「え?」


ピシッ! パキッ パキパキパキパキッ!!


キョン「そ、空に亀裂が……」

古泉「少し移動しましょう。そこにいると元に戻った途端に車に撥ねられますよ」

古泉「どうです? ちょっとしたスペクタクルだったでしょう」

キョン「も、元に戻った……帰ってきたのか……」

古泉「タクシーが来ました。乗りましょう」


バタン ブロロロロロ・・・・・・



~キョン家前~


古泉「今日はお疲れ様でした。これで僕たち超能力者のことを分かっていただけたと思います」

キョン「あ、ああ……」

古泉「では。失礼します」



キョン「……くそ、何がお疲れ様だ。人にトラウマ植え付けるだけ植え付けて帰りやがって」

キョン「あの灰色の異常な空間、白い巨大な化け物、そして超能力者。嫌だ、俺はあんなのに関わりたくない!」

キョン「早くSOS団と縁を切らないと……どんな手を使ってでも」
 

~翌日 教室~


キョン(気まずいってレベルじゃないぞ! 何で俺の席はこいつの真ん前なんだ!)

ハルヒ「……」

キョン(昨日あんなことがあったってのに、なぜ何も言ってこない? 何か企んでるのか?)

ハルヒ「ねえキョン」

キョン「は、はいぃ!?」

ハルヒ「アンタ、何でSOS団を辞めたいの?」

キョン「え? そ、それは……」

キョン(どうする、何て答えればいい? 命が惜しいからなんて馬鹿正直に言うわけにいかないし)

ハルヒ「ねえ、さっさと答えなさいよ」

キョン「お、おおおお前みたいなわがまま女とこれ以上付き合ってられないからだよ!」

キョン(…………って、何を言ってるんだ俺は!? こんなことを言ったら!)

ハルヒ「ふーん、あっそ」

キョン(あ、あれ? 何だよその反応。もう訳が分からん!)

~放課後 下駄箱~


キョン(結局あれからハルヒは1度も話しかけてこなかったな。諦めたのか?)

長門「……」

キョン(それならいいんだけどな。うーん、かえって不気味だ)

長門「……」

キョン(これで平穏な日常を取り戻せればいいんだが。どうだろうな)

長門「……」

キョン「……」

長門「……」

キョン「わーー!! 長門ぉぉ!!」

長門「……」

キョン「お、お前、いつからそこにいたんだ!?」

長門「最初から」

長門「……」

キョン「な、何だよ。そんな目で俺を見るなよ!」

長門「……」

キョン「ううう……」

長門「……」

キョン「ああもう! 分かってる! 分かってるさ!」

キョン「お前は俺の命を救ってくれた! お前がいなかったら間違いなく俺は朝倉に殺されていた!」

キョン「そのことには感謝してる! でも……でもよ……」

キョン「怖いんだ。あんな凄まじい力を使うお前が……人外のお前が……」

キョン「どうしようもなく怖くてたまらないんだ。自分でもこの恐怖心はどうにもならないんだよ!」

キョン「だから、もう俺に関わらないでくれ! 俺はもうあんな怖い目に遭いたくない!」

キョン「俺が言いたいのはこれだけだ……じゃあな」タッタッタッ


長門「……」

~夜 キョン家~


キョン「う~ん、むにゃむにゃ……し、白い巨人が追いかけてくるー……」


ピリリリリリリリ!! ピリリリリリリリ!!


キョン「うぎゃあ! びっくりした!? って、携帯か……こんな時間に誰だ?」ピッ

古泉『どうも、古泉です』

キョン「バイバーイ」

古泉『待ってください、緊急事態なんです』

キョン「緊急事態? 何だよ?」

古泉『直接お話したいので、外に出てきていただけませんか? あなたの家の前にいますので』

キョン「来てるのかよ!? 嫌だ! 俺は関わりたくない!」

古泉『そうも言っていられません。出てこないとインターホン連打しまくりますよ?』

キョン「やめてくれ!? 分かった! すぐ行くから!」

古泉「どうも」

みくる「こ、こんばんは、キョンくん」

長門「……」

キョン(げっ、長門に朝比奈さんまでいる……)

キョン「そ、それで緊急事態ってのは何なんだ?」

古泉「ええ、それがですね…………涼宮さんが世界を終わらせようとしています」

キョン「は? 世界を何だって?」

古泉「涼宮さんがこの世界を消そうとしているのですよ。そして新しい世界を創造しようとしている」

古泉「現在涼宮さんは閉鎖空間を発生させ、その中に1人でいます。我々でも侵入できません」

キョン「せ、世界を消すだと! 何でまたそんなことを!」

古泉「どうやら涼宮さんはこの世界に愛想を尽かしたようです。原因は言わずもがな」

みくる「……」

長門「……」

キョン「お、俺のせいだってのかよ!」

古泉「全てあなたのせいと言うつもりはありません。涼宮さんはもっと以前から不満を溜め込んでいましたからね」

古泉「ですが、キッカケにはなった。つまり……」

キョン「俺がSOS団を辞めると言ったからか?」

古泉「その通りです」

キョン「そんな! 俺はただ命が惜しくて……」

古泉「僕たちに言い訳してもしょうがないですよ」

キョン「そ、それで、どうすれば世界は助かるんだ?」

みくる「あう……」

長門「……」

キョン「な、何だよ?」

古泉「ハッキリ言いましょう。無理です。世界はもう助かりません」

キョン「……は? 助からない?」

古泉「ええ。もう打つ手はありません」

キョン「そんな馬鹿な! 長門、お前なら何とかなるんじゃないのか! お前の能力で涼宮を消しちまうとか!」

長門「不可能。涼宮ハルヒの閉鎖空間へはわたしも侵入できない」

長門「今の状態の涼宮ハルヒを消すには、世界を丸ごと消すしか方法はない」

キョン「それじゃ意味ないだろうが!」

古泉「ですから打つ手なしと言ったでしょう。全て終わりですよ」

キョン「お、終わり……全て……?」

古泉「そうです。新しい世界ではもっと幸せに暮らしたいですね」

みくる「キョンくん……」

長門「……」

キョン「嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!」


キョン(終わり……これで俺の人生は終わり……何で、どうしてこんなことに……)

キョン(俺が悪かったのか……俺はSOS団を辞めるべきじゃなかったのか……)

キョン(駄目だ……頭がこんがらがって何も……)

長門「……」ピクッ

古泉「おや? これは……」

キョン「何だ、どうしたんだ?」

古泉「まさか……ふふ、ふふふふふ」

キョン「何だよいきなり笑い出したりして。気色悪いな」

古泉「ふふふ、どうやら世界は滅びずにすんだようですよ」

キョン「何! それは本当か!」

古泉「ええ、危機は去りました。もう大丈夫ですよ」

キョン「しかし何だって急に……いったい何があったんだ?」

古泉「ふふ、今日はもう遅いので僕は帰ります」

キョン「おいこら教えろ! お前何か知ってるだろ!」

みくる「あ、あたしも帰りますね」

長門「……」スタスタ

キョン「2人まで!? ああもう! 結局何だったんだよ!」

~翌日 教室~


キョン(ハルヒに特に変わった様子はないな。それにしても、俺はこれからどうすればいいんだよ)

キョン(今回みたいなことが起こった以上、俺はSOS団にずっといないといけないのか……)

キョン(俺は……これからもずっと命の危機にさらされ続けないといけないのか……)

ハルヒ「ねえキョン」

キョン「はぃぃぃ! な、何だ?」

ハルヒ「もういいわよ」

キョン「え? もういいって何が?」

ハルヒ「SOS団。もう辞めてもいいわよ。というかクビ。アンタうざったいわ」

キョン「ほ、本当か! 本当にいいのか!」

ハルヒ「いいって言ってるでしょ。アンタがいなくてもおもいきり楽しんでやるわよ」

キョン「本当に本当にいいんだな!!」

ハルヒ「しつこい!」

キョン(やった……やった! これで解放された! もう怯えなくていいんだ! いやっほぅ!)

~昼休み 廊下~


キョン(実に清々しい気分だ! 空気がうまい! 素晴らしい開放感!)

キョン(平穏がこんなに素晴らしいものだったとは! 本当によかったよかった!)

みくる「キョンくん」

古泉「やぁ、どうも」

キョン「朝比奈さん、古泉も」

古泉「SOS団を正式に辞められたそうですね」

キョン「情報が早いな」

みくる「キョンくん、もう戻ってきてはくれないの?」

キョン「……すみません朝比奈さん、俺はもう戻りません」

みくる「そんな……どうして……」

古泉「我々としてはできるならSOS団にずっといてほしいのですが」

キョン「すまんな。俺は普通の人間だ。普通の生活を送りたい」

古泉「……そうですか。残念です。あなたとはいい友人になれそうだったのですが」

みくる「キョンくーん……」

キョン「短い間でしたがお世話になりました朝比奈さん。お茶おいしかったです」

みくる「そんな! あたしなんて何も……」

キョン「古泉もじゃあな。長門にもよろしく言っといてくれ」

古泉「ええ。では」

キョン「ああ」



古泉「行ってしまいましたね」

みくる「うん……」

古泉「最大の危機は去ったとはいえ、まだまだ苦労は続きそうですね」

みくる(SOS団で気軽にお話しできるの、キョンくんだけだったのに……)

~放課後~


谷口「ようキョン。お前SOS団辞めたんだって? 何だってまた」

キョン「まあその、いろいろあってな」

谷口「ま、何たって涼宮の団だもんな。嫌になって当然だよな!」

キョン「そ、そうなんだよ! まったくよ!」

谷口「ということはお前、今暇だな?」

キョン「え? まあそうだな」

谷口「今からクラスの奴らでカラオケ行くんだけどよ。お前も来ないか?」

キョン「カラオケ、か」

キョン(そうだな。これまではSOS団の活動やら何やらでろくに遊びにもいけなかったしな。よし)

キョン「ああ、俺も行く。誘ってくれてありがとよ」

谷口「決まりだ。それじゃ行こうぜ」

~SOS団 部室~


ハルヒ「という訳でキョンはクビにしたわ! これからは4人で活動していくわよ!」

みくる「涼宮さん……」

ハルヒ「あんな奴いてもいなくても一緒よ! あたし達でガンガン不思議を見つけるわよ!」

古泉「……」

長門「……」


みくる「涼宮さん、何だか無理をしているように見えます……」

古泉「そうですね」

みくる「キョンくん、本当にもう戻ってこないのかな?」

古泉「あなたが色仕掛けでもすれば戻ってくるんじゃないですか? その身体で」

みくる「え? ええええええええ!?」

古泉「……冗談です」

長門「……」

~カラオケ店~


キョン「普通は偉大だっぜー! 学んだ自分褒めようー♪」

谷口「ぎゃははは! 下手糞ー!」

キョン「うるせー!」

国木田「楽しそうだねキョン。何かいいことあったのかな?」


キョン「ふう。喉が渇いたな」

クラスメイト1「ようキョン。携帯の番号とアドレス交換しないか?」

キョン「え? あ、ああ、いいぞ」

クラスメイト2「あ、俺も俺も」

キョン(俺、よく考えたらSOS団以外は谷口と国木田くらいしか親交がなかったんだな)

キョン(何て寂しい奴なんだ俺は! これからはそういうところも変えていかないとな。解放されたことだし)

キョン「なぁ、携帯のアドレスと番号教えてくれないか?」

クラスメイト3「ああ、オッケー」

~数日後 教室~


キョン「ああ、普通の日常っていいなぁ」

谷口「よーうキョン」

キョン「おう、どうした?」

谷口「ちょっと頼みごとがあるんだけどいいか?」

キョン「頼みごと?」

谷口「駅前のビデオ屋にDVDを代わりに返してきてほしいんだよ」

キョン「何で自分で行かないんだ?」

谷口「これからどうしても外せない用事があってよ。返却期限今日までなんだ。頼むよ」

キョン「しょうがないな。分かった、行ってきてやる」

谷口「サンキュー! 助かったぜ」

キョン「で、DVDは?」

谷口「これだ。今度チロルチョコを奢ってやるからよ」

キョン「安いなおい。まあいい。じゃ、行くとするか」

~駅前 駐輪場~


キョン「到着っと。せっかくここまで来たし、どこか寄っていくかな」

???「やあキョン」

キョン「うわっ…………って、何だ佐々木か」

佐々木「何だとはとんだご挨拶だ。久しぶりに会ったというのに」

キョン「久しぶりと言ってもせいぜい3ヶ月くらいだろ」

佐々木「そうだけれどね。それでも中学の卒業式以来、久しぶりなことに変わりはない」

キョン「まあそうだな」

佐々木「キョンは確か北高だったな。どうだい、愉快な高校生活をつつがなく送れているかい?」

キョン「あー、楽しいと言えば楽しいな。友達もいっぱいできたし」

キョン(危うく非日常生活を送る羽目になるところだったがな)

佐々木「そうか。それは何よりだ」

キョン「お前は市外の私立だっけ。そっちはどうなんだ?」

佐々木「ほう、覚えていてくれたか。嬉しいよ」

佐々木「今の僕は、授業についていくのに必死な毎日さ」

キョン「そりゃ大変だな」

佐々木「今日もこれから塾に行かなければならない。おや?」

キョン「どうした?」

佐々木「そろそろ電車の時間だ。名残惜しいが今日のところはお別れするとしよう」

キョン「おっと佐々木、せっかく再会したんだ。携帯の番号とアドレス交換しようか」

佐々木「いい考えだ。よっと、これでいいかい?」

キョン「完了っと。じゃあまたな」

佐々木「うん、また機会があれば」


キョン(ふむ、思わぬ再会だったな。佐々木も元気そうだ)

キョン(おっと、DVD返しに行かないと。忘れるところだった)

~その日の夜 キョン家~


ピリリリリリリリ ピリリリリリリリ


キョン「っと、電話だ。相手は……佐々木?」ピッ

佐々木『やあキョン』

キョン「おう。どうかしたのか?」

佐々木『なに、せっかく番号を交換したんだ。ゆっくり話でもしようと思ってね。迷惑だったかい?』

キョン「そんなことはないさ。いいぞ、何を話そうか?」

佐々木『そうだね、君の近況でも聞きたいね』

キョン「近況か。少し前まではいろいろ面倒なことがあったんだが」

佐々木『ほう、何があったんだい?』

キョン「言わないでおく。早く忘れたいからな」

佐々木『そうかい。では聞かないでおくことにしよう』

キョン「最近は楽しいぞ。ちょっと前にクラスの奴らとカラオケに行ったんだがな……」

キョン「それでよ、国木田が意外に凄まじい音痴でな……」

佐々木『ふーん、楽しそうだね』

佐々木『…………羨ましいよ』

キョン「佐々木?」

佐々木『僕にはそういう風に遊べる友達は少ないからね』

キョン「そうなのか? お前の愛想の良さなら友達なんてすぐに」

佐々木『僕の高校はほとんどが男子でね。なかなかそうはいかないのさ』

佐々木『それに……』

キョン「それに、何だ?」

佐々木『僕のこの男子に対する口調を気に入らない輩もいるみたいでね』

佐々木『中学時代のクラスメイトは、みんな受け入れて仲良くしてくれたのだが』


キョン(佐々木……まさかとは思うがイジめられたりとかしてないよな?)

佐々木『何だか変な話になってしまったな。申し訳ない』

キョン「なあ佐々木」

佐々木『何だい?』

キョン「お前がよければ、いつでも電話してきていいからな。どうせ俺はいつも暇だし」

キョン「愚痴ぐらいいつでも聞いてやる。お前もいろいろ発散させたいだろうしな」

佐々木『キョン…………そうだね、お言葉に甘えるとするよ』

キョン「おう、任せとけ」

佐々木『今日はそろそろこの辺で』

キョン「ああ、おやすみ」

佐々木『キョン』

キョン「何だ?」

佐々木『ありがとう。君は優しいね』


キョン(優しい、か。本当に優しければ、どんなに怖くてもSOS団を辞めなかったんだろうけどな)

~数日後 SOS団部室~


ハルヒ「みくるちゃん、お茶!」

みくる「は、はい、ただいま」

ハルヒ「さっさとしなさい! まったくトロいわね!」

みくる「ひっ! ご、ごめんなさい!」

ハルヒ「古泉くん、何か面白いことないの?」

古泉「今のところは何も。オセロでもしますか?」

ハルヒ「結構よ、もう飽きたし。有希……は期待しても無駄ね」

長門「……」

ハルヒ「ああもう! 何か事件でも起きないかしら? それともあたしが起こした方が早い?」


みくる(涼宮さん、最近ずっと機嫌が悪いです……)

古泉(ああ、また閉鎖空間が……これで1週間連続です。最近は気の休まる暇がないですね)

~その日の夜 閉鎖空間~


古泉「や、やっと倒しました。今日は苦戦しましたね」

古泉「ここのところ、閉鎖空間が発生する回数が激増していますね……」

古泉「おかげで僕の出撃回数は増える。団活を途中で抜けるため、涼宮さんの機嫌がますます悪くなる」

古泉「そしてますます閉鎖空間が……まさに悪循環ですね」

古泉「彼が辞めてからですよ、ここまで激増したのは。まったく素敵な置き土産です」

古泉「彼がSOS団に残ってくれていれば……考えても仕方ありませんね」


同僚「古泉、また別の場所に閉鎖空間が発生したそうだ。行くぞ」

古泉「はいはい、今行きますよ」

同僚「こら! もっとシャキっとせんか!」

古泉「すみません……」


古泉(まったく、恨みますよ本当に)

~キョン家~


キョン「ふぅむ」

佐々木『どうしたんだい?』

キョン「なに、お前と夜に電話で話すのが習慣になってきたなと思ってな」

佐々木『迷惑だったかい?』

キョン「そんなことはないさ。お前と話すのは楽しいしな」

佐々木『そうかい、それはよかった』

佐々木『僕もいい気晴らしになってるよ。ほぼ毎日毎日勉強漬けで息が詰まりそうだからね』

キョン「勉強、か」

佐々木『そういえばキョン、君の方はどうなんだい?』

キョン「どうとは?」

佐々木『勉強さ。はかどっているのかい?』

キョン「それを聞くなよ……」

佐々木『その様子だとあまり芳しくないようだね』

キョン「まあな。ま、あまり気にしちゃいないが」

佐々木『また中学の時みたいに学習塾に叩き込まれてしまうよ?』

キョン「う……そう、かな……?」

佐々木『キョン、よかったらさ……」

キョン「ん?」

佐々木『放課後、一緒に勉強しないか? 図書館あたりで』

キョン「一緒にって……お前塾は?」

佐々木『毎日行っているわけではないさ。僕の空いている時間で、ね』

キョン「うーん、勉強と聞くとどうしても拒否反応が……でもどうにかしないと駄目だよな。よし!」

佐々木『決まりだね。放課後に図書館。いいね』

キョン「ああ。お前となら楽しみだ」

佐々木『ふふ、ではまた明日』


キョン(ま、部活もバイトもしてないんだからな。勉強に打ち込むのもいいだろう)

~翌日 放課後 図書館前~


キョン「悪い佐々木、待たせちまったか?」

佐々木「ふむ、12分30秒ほど待ったかな」

キョン「細かいなおい。待たせてすまん」

佐々木「いいさ。それじゃ行こうか」



キョン「さぁて、始めるとするか」

佐々木「キョンが苦手なのは数学と英語だったね。まずは数学から勉強しようか」

キョン「よく覚えてるなお前。よし、ドンとこい!」

佐々木「その威勢がいつまで続くかな?」

キョン「お前は俺にやる気を出させたいのか、出させたくないのか、どっちなんだ?」

佐々木「もちろん出させたいさ。頑張れキョン、ファイトだキョン」

キョン「感情がこもってない」

キョン「う~ん、う~ん……」

佐々木「……」カリカリ

キョン「佐々木、この問題教えてくれないか?」

佐々木「ああそれかい。その問題はこの公式をだね…………」

キョン「ああなるほど。サンキュー」

佐々木「どういたしまして」

キョン「しっかし、見事に分からない問題だらけだ……」

佐々木「ちゃんと授業は聞いているのかい?」

キョン「ぱんぱかぱ~ん」

佐々木「聞いてないんだね。そんなことだろうと思った」

キョン「午後の授業になるとどうしても眠気がな……」

佐々木「君の場合、眠気に関係なく最初から聞く気がないのだろう?」

キョン「言い返せません」

佐々木「これからはその授業態度も改めないとね」

キョン「しっかし佐々木の教え方はうまいな。学校の退屈な授業より余程ためになる」

佐々木「そうかい、そう言ってもらえると嬉しいよ」

キョン「毎日佐々木の授業を受けたいくらいだな」

佐々木「それは褒めすぎだ。照れる」

キョン「照れてるのか? ちょっと顔を見せてみろ」

佐々木「こら、真面目に勉強しないか」



佐々木「今日はこんなところかな」

キョン「おう。時間も時間だしな」

佐々木「では帰るとしよう。キョンは次はいつ空いてる?」

キョン「俺はいつでも空いてるぞ」

佐々木「じゃあまた2日後に。じゃあね」

キョン「ああ、またな」


キョン(佐々木と勉強会か。こういうのもいいな。いっちょ気合入れて頑張るとするか)

~数日後 SOS団部室~


ハルヒ「気分が乗らないから今日の団活は中止。さっさと帰っていいわよ」

みくる「え? せっかくお茶を淹れたのに……」

ハルヒ「ゴキュゴキュゴキュプハァ! これでいい? それじゃお先」バタン


古泉「おやおや。では僕も失礼させていただきます」

長門「……」


バタン


みくる「……」

みくる「はぁ、今日は未来からいくつか指令が来てるんだけど……量が多すぎますぅ……」

みくる「あの、せめて少し減らして…………ううう、却下されました……」

みくる「仕方ないです。頑張ります……」


みくる「キョンくんに手伝ってもらえたらなぁ。今頃何をしてるんだろう?」

~図書館~


キョン「えっと、これでどうだ?」

佐々木「うん、正解」

キョン「はぁ~、やっと解けた」

佐々木「キョン、授業はちゃんと聞いているかい?」

キョン「ああ。毎度毎度睡魔との戦いだがな」

佐々木「まったく、君って奴は」

キョン「しかし、ま」

佐々木「何だい?」

キョン「お前と勉強するようになってしばらく経つけど、こういうのもいいなと思ってな」

佐々木「そうかい?」

キョン「何というか、ほんの少しだけ勉強の面白さが分かってきたって言うか」

佐々木「それは良かったじゃないか」

キョン「お前のおかげだよ。ありがとな」

佐々木「ふふ、どういたしまして」

キョン「さてと、続き続き……おっと」

佐々木「どうしたんだい?」

キョン「消しゴムを机の下に落としちまった。よっと……」ゴソゴソ

キョン「お、あったあった…………うお!!」ゴンッ!!

佐々木「な、何だ、どうしたのだキョン?」

キョン「何でもない! 何でもないんだ!?」

佐々木「ふぅん……」

キョン「……」

佐々木「キョン、何色だった?」

キョン「白。はっ!!」

佐々木「キョン、見たんだね……」

キョン「わ、わざとじゃない! わざとじゃないんだ!?」

佐々木「キョ~~ン~~……」

~6月~


キョン「今日は佐々木も塾だし暇だな。さて、どうするか」

キョン「そうだな、久しぶりにゲーセンにでも行くか。よし」

キョン「おーい谷口、一緒にゲーセン行かないか?」

谷口「悪い、今日はちょっと用事があるんだよ」

キョン「そうか、国木田はどうだ?」

国木田「僕も塾があるから」

キョン「そっか。他に行ける奴いないかー?」

クラスメイト1「俺行けるぞー」

クラスメイト2「俺も俺も」

クラスメイト3「僕も行くよ」

クラスメイト4「他にも誘うか?」

キョン「おお、一気に集まったな。よし、このメンツで行くとするか」

全員「おー」

~ゲームセンター~


キョン「うりゃ! そりゃ!」

クラスメイト1「あたたたたたたた!」


ドーン!! KO!!


キョン「ぎゃああ負けた!?」

クラスメイト1「ふはは! これで俺の勝ち越し決定!」

キョン「くっそー! 今度はあそこのエアホッケーで勝負だ!」

クラスメイト1「おう、望むところだ」

クラスメイト2「盛り上がってるなー」

クラスメイト3「キョーン、それ終わったら次あれやろうぜ」

キョン「おう」


キョン(放課後に友達と一緒に遊ぶ。こんな普通のことがこんなに楽しいとは)

キョン(佐々木との勉強も順調だし、本当にSOS団を辞めてよかった)

~北高 グラウンド~


ハルヒ「今度の野球大会は絶対勝つわよ! 早速千本ノックいくわよ!」

みくる「ひいいい……」

ハルヒ「はい古泉くん!」カキーン

古泉「よっと」パシッ

ハルヒ「次は有希!」カキーン

長門「……」

ハルヒ「こら有希! 動きなさい! 次みくるちゃん!」カキーン

みくる「わ! わ! わ!」


ゴスッ!!


みくる「う……ゲホッ! ゴホッ!」

ハルヒ「みくるちゃん! 打球がお腹に直撃したくらいでへこたれるんじゃないの! 立ちなさい!」

みくる「ご、ごめんなさい……うううう……」

ハルヒ「古泉くん! 本番ではホームラン以外許さないからね! 打てなきゃ罰ゲームよ!」

古泉「承知しました」

ハルヒ「みくるちゃん! 試合では過激なビキニを着なさい! 相手チームを骨抜きにするのよ!」

みくる「え、ええええええええ!!」

ハルヒ「有希! アンタはもっとキビキビ動きなさい! 覇気がないわ!」

長門「……」

ハルヒ「みんな文句ないわね! 返事は!」

古泉「はい」

みくる「うううう~~……はい」

長門「……」


ハルヒ(……みんな言うこときいてくれるのはいいんだけど、なーんか張り合いがないわね)

ハルヒ(少しは言い返してきたりしないのかしら? 物足りないわ)

申し訳ない
少し離れる
夜8時か9時くらいから再開する

書き溜めは全部できてるから、再開したらサクサク終わらせる

~7月7日~


キョン(今日は七夕か。まあこの年になると特に関係ないが)


ドンッ!!


キョン「いてっ! 何かにぶつかって……ん? 笹? というか竹?」

ハルヒ「何かと思ったらアンタか」

キョン「ぎゃああ! 涼宮!?」

ハルヒ「人の顔みて悲鳴上げるなんて失礼ね」

キョン「す、すまん。というか何だよそれ。どこから持ってきた?」

ハルヒ「アンタには関係ないでしょ」

キョン「そりゃそうだ」

キョン(しかし、こいつもこうして見ると普通の人間にしか見えないよな。とても凄まじい力を持ってるようには)

ハルヒ「何をジロジロ見てんのよ! さっさとそこをどきなさい!」ブンブンッ!!

キョン「うわわわ! 振り回すな! 危ない!」

~数日後 夕方~


キョン「今日はちょっと長引いたな。佐々木の奴、最近やたら熱心に教えるようになってきたからな」

キョン「ま、嫌じゃないからいいけどな。おかげで授業の内容も分かるようになってきたし」

DQN「おい、そこのてめぇ、ちょっと待てや」

キョン(ん? 何だこの見るからに柄の悪そうな奴)

キョン(……まさか、カツアゲか?)

DQN「ちょいとてめぇに話があるんだけどよ」ガシッ!!

キョン(痛っ!! 肩が……こいつ何て力してるんだ!)

DQN「ここじゃなんだからよ、そこの路地裏まで来い」ズルズル

キョン「な! ちょ、ちょっと待て!?」

キョン(くそ! 力が強くて振りほどけねえ!)

DQN「はい、1名様ご案なーい」ズルズル

キョン「離せー!!」

~路地裏~


DQN「よし、ここらでいいだろ」

キョン(やっぱりカツアゲか……まったくついてない)

キョン(しかし、相手は1人だ。さっきまでは肩を掴まれてから無理だったが、今なら隙をついて)

DQN「てめぇは距離をとったみたいだけどよぉ」

キョン「ん?」

DQN「涼宮ハルヒにとって、てめぇが重要な人物であることに変わりはないわけだ」

キョン「……は?」

DQN「上はもうほっとけって言ってるけどよ、まだまだてめぇには利用価値があると思うんだわ」

キョン「お前……何を言って……」

DQN「そこでよ…………」

キョン「まさか……まさか……」


DQN「てめぇを殺して涼宮ハルヒの出方を見ることにしたっつーわけだ」

DQN「はっ!」


ギュゥゥゥゥゥゥゥゥン!!


キョン「な! こ、この空間は! 朝倉の時と同じ……」

DQN「これでてめぇはどこにも逃げられねぇ。覚悟しな」

キョン「嘘だろ……マジかよ……」

キョン(何で……何でまた俺が……何だよこれ……どうして……どうして……)

キョン(殺される……殺される殺される殺される殺される殺される殺される!!)

DQN「じゃあな。うりゃぁ!!」


ドガーン!!


DQN「うお! 何だ!」

キョン「この轟音……このパターンはまさか……」


長門「……」

キョン「な、ななななな長門!?」

DQN「うげっ、マジかよ」

長門「……」

DQN「空間封鎖も情報封鎖も完璧にしたってのによ。あれでも足りないってのかよ」

長門「彼は……殺させない」

DQN「こっちだって後に引けねぇんだよ! いくぜ!」

キョン(ま、また人外同士の戦いか……)




DQN「くそ、やっぱり勝てねぇか。強すぎだてめぇ」

長門「情報連結の解除開始」

DQN「ああ、さっさとやってくれ。ちっ、命拾いしたなてめぇ」

キョン「ひぃっ!」


シュウウウウウウウウウウウ・・・・・・

キョン「お、お前、何でまた助けて……」

長門「……」

キョン「というか、やけに来るの早かったな。まさか監視して……?」

長門「急進派の残存勢力が動くのを感知したため、急行した」

キョン「そ、そうか。急進派とやらは他には……?」

長門「今のインターフェースで最後。全て消滅したか、考えを改めた」

キョン「よかった。ならもう安心なんだな」

キョン「……ということは、もうお前が俺に関わる必要もないってことだよな」

長門「……」

キョン「助けてくれたのには感謝する。だけどよ……」


キョン「やっぱりお前ら…………普通じゃねえよ……」


長門「……」

~終業式~


谷口「よっしゃあ! 明日から夏休みだ!」

キョン「はしゃぎすぎだ、お前は」

クラスメイト1「キョン、明日は駅前に集合だからな」

クラスメイト2「遅れるなよ」

キョン「おーう、分かってる」

国木田「楽しみだね」

キョン「ああ、海なんて久々だ」

谷口「水着美女をナンパしまくるぜ! ふひひひ!」

キョン「あの馬鹿はほっといて。たっぷりと満喫するとするか」


キョン(この間はまた危険なことに巻き込まれたからなぁ……)

キョン(まったく、あれっきりにしてほしいもんだ。俺は青春を楽しみたいだけなんだからよ)

~翌日 キョン家~


キョン「よし、忘れ物はないな」

キョン妹「あれ~? キョンくん、荷物持ってどこ行くの?」

キョン「クラスメイトと海に遊びに行くんだよ。泊りがけでな」

キョン妹「海~! ずるーい! あたしも行くー!」

キョン「駄目だ。クラスメイトと行くのに、妹なんか連れて行けるわけないだろ」

キョン妹「行くったら行くのー!」

キョン「駄目ったら駄目なのー!」

キョン妹「いいもん! 無理矢理にでも着いていくから!」

キョン「そうはさせん! さらばだ!」ダダダッ

キョン妹「ああ! 待ってー!」

キョン「着いてくるなって!」

~駅前~


クラスメイト1「あ、キョン来た。遅いぞー」

キョン「すまんすまん。妹を振り切るのに時間がかかってな」

クラスメイト3「これで全員か?」

クラスメイト4「谷口がまだだ」


???「さぁ行くわよ!!」


キョン「あの声は……げっ、涼宮」


ハルヒ「楽しみね、孤島の別荘! 何か事件でも起きないかしら?」

古泉「はは、そうですね」


キョン(あいつらもどこか行くのか。危ね、鉢合わせするところだった)

国木田「谷口来たよ。行くよーキョン」

キョン(ま、そっちはそっちで迷惑にならないように楽しんでくれ)

~海~


キョン「海だー!」

クラスメイト1「着いたぞー!」

谷口「みんな! あの岩場まで泳いで競争するぞ!」

一同「おーー!!」


クラスメイト2「俺のバタフライの威力、見せてやる!」

クラスメイト4「俺の背泳ぎが唸りを上げる!」

クラスメイト3「位置について、よーいドーン!」

一同「うおーーーー!!」バシャバシャバシャバシャ!!


国木田「みんなー、海に入る前に準備体操しないと駄目だよー」


キョン「ぐわっ!! 足つった足つった!?」

クラスメイト1「救助!」

クラスメイト4「救助ー!!」

~すいか割り~


クラスメイト3「もうちょい右ー。そのまま真っ直ぐ真っ直ぐ」

クラスメイト2「そこだ! おもいきりぶっ叩け!」

キョン「ちええい!!」 ゴンッ!!

谷口「ぎゃあああ! あ、頭が! 何すんだ!? 馬鹿になったらどうする!」

クラスメイト4「ぎゃははは!」

クラスメイト1「元からだろーが!」



~ナンパ~


谷口「任せとけって。俺のテクを見せてやる!」

キョン「本当に大丈夫かよ」

国木田「期待しないほうがいいよ」

谷口「へいそこのお姉さん! 玉ねぎ食べれる?」

キョン「お前はどこぞの5歳児か」

~夜 花火~


キョン「あちち! 花火こっちに向けるな!?」

谷口「わはは! 喰らえ、ネズミ花火爆弾!」

国木田「線香花火は綺麗だねー」パチパチパチ

クラスメイト1「おーい、ロケット花火打ち上げるぞー」

クラスメイト4「よっしゃこーい」


ヒュ~ルルルルルル・・・・・・  パパーン!!


谷口「おー」

キョン「見事だな」


キョン(……楽しい、本当に楽しい。これだよ、これが俺の高校生活だ!)

キョン(危うく非日常に巻き込まれるところだったが、これが俺の日常なんだ!)

~図書館~


キョン「という感じでだな。楽しかったぞ、海!」

佐々木「へー、よかったじゃないか」

キョン「いやぁ、また行きたいな。馬鹿騒ぎってのはいいもんだ」

佐々木「キョン、手が止まってるよ」

キョン「あ、ああ。厳しいな」

佐々木「君が夏休みの宿題を早めに全部すませたいから手伝ってくれと言い出したんだろう」

キョン「それはそうだが」

佐々木「……」

キョン「……」

佐々木「……いいなぁ」

キョン「佐々木?」

佐々木「海か。ちょっと羨ましいよ」

キョン「……」

佐々木「……」

キョン「あー、佐々木よ」

佐々木「何?」

キョン「これ、なんだがな」スッ

佐々木「これは……チケット? 水族館のだね」

キョン「友達にお前とのことを話したらな、ニヤニヤしながらこれをくれてよ」

キョン「その、せっかくだし、よかったら一緒に行かないか?」

佐々木「……」

キョン「……何をポカーンとしてるんだよ」

佐々木「ああ、すまない。まさか君から誘われるとは思ってもいなかったからね」

キョン「何だそりゃ。それで行くのか?」

佐々木「……行くよ。喜んで」

キョン「決まりだ。今度の土曜日な」

佐々木「うむ、楽しみにしてるよ」

~土曜日 水族館前~


キョン「お~、随分でかい水族館だな。人も多い」

佐々木「2ヶ月ほど前にオープンしたばかりらしいよ」

キョン「よし、早速入るとするか」



佐々木「あの魚はハマクマノミ。スズメダイ科で珊瑚の有るきれいな海に生息しているよ」

佐々木「あっちの魚はアカマダラハタ。ハタ科の魚で体長は1メートルにもなるそうだ」

キョン「佐々木よ。解説もいいんだが、もう少し素直に楽しんだらどうだ?」

佐々木「素直にかい?」

キョン「そう、素直にだ」

佐々木「分かったよ」


佐々木「あの魚はおいしそうだね。刺身か焼くか、から揚げにするか」

キョン「おい」

佐々木「キョン、クリオネだよ。綺麗だね」

キョン「おお、ホントだな」

佐々木「何だか幻想的だね」

キョン「そうそう、そういう風に楽しめばいいんだ」

佐々木「わ、こっちも綺麗」

キョン「おお、クラゲが光ってる」

佐々木「キョン、こっちもこっちも」

キョン「はいはい」


キョン(どうやら楽しんでくれてるようだな。よかったよかった)

キョン(勉強ばかりじゃつまらないもんな。チケットをくれたアイツには感謝しなきゃな)


佐々木「深海魚はあまりおいしそうじゃないね」

キョン「それはもういいって」

ペンギン「キュー」ヨチヨチ


佐々木「きゃー! 見て見てキョン! ペンギンだよペンギン!」

キョン「あ、ああ……」

佐々木「ヨチヨチ歩いてる! ヨチヨチ! ヨチヨチ!」

キョン「おーい……」

佐々木「あーんもー! かわいぃー! あ! 写真撮らなきゃ写真!」

キョン「佐々木さーん……」


佐々木「はっ!」

キョン「……正気に戻ったか?」

佐々木「……」

キョン「……」

佐々木「あのペンギンはフンボルトペンギン。日本の水族館ではもっともポピュラーなペンギンで」

キョン「もう遅いって」

~イルカショー~


イルカ「キェー」ザッパーン!


佐々木「わー凄い凄い! あんなに高く跳んでる!」

キョン「お前、もう開き直ったな」

佐々木「何か言った?」

キョン「何でも」


キョン(しかし……)

佐々木「わ! 水しぶきが! あはは冷たーい!」

キョン(佐々木って……)

佐々木「あははは、あはははは!」


キョン(こんなに……可愛かったっけ?)

~夕方~


佐々木「キョン、今日はありがとう。楽しかったよ」

キョン「ああ、俺もだ。佐々木の意外な一面も見れたしな」

佐々木「あ、あれは忘れてくれ。僕も我を失ってたんだ」

キョン「そうはいかんな。その時の写真もバッチリ撮れてるし」

佐々木「……キョン、そのカメラをこっちに渡すんだ」

キョン「断る!」ダダッ

佐々木「あ! こら、待つんだキョン!」

キョン「わははは! 永久保存にしてやる!」

佐々木「待てー!」


キョン(ん? よく考えたら……)

キョン(今日、佐々木と一緒に水族館周ったのって…………デートじゃないか?)

~夏休み中盤 夜 北高~


クラスメイト1「よーし、今から北高に潜入するぞー!」

クラスメイト3「みんな覚悟はいいかー!」

一同「おー!」


キョン「まったく。誰だ、夜の学校で肝試ししようなんて言い出した奴は」

谷口「まあまあ、結構楽しそうじゃねえか。お前も何だかんだで来てるくせに」

キョン「ほっとけ」

谷口「でもよ、メンバーが男だけってのは味気ないよな。俺が海でのナンパに成功していれば……」

キョン「はいはい」

クラスメイト2「お前ら行くぞー」

キョン「おっと。しょうがない、行くか」

谷口「待ってくれー」

クラスメイト1「うおー真っ暗だ。ライトライト」

クラスメイト4「いやー、雰囲気出てるなー」

キョン(肝試しか。佐々木を連れてきたらどんな反応をしただろうな)

谷口「お、おいキョン」

キョン「どうした?」

谷口「前、あそこ、何かいないか?」

キョン「別に何もいない…………んん?」


ヒタ・・・・・・ ヒタ・・・・・・


キョン(確かに何かいる……まさか本当にお化け? いや、お化けなんているわけが……)


ヌオオオオオオオオオ!!!!

キョン「う、うわああああああああ!!」


長門「ばあ」

キョン「ぎゃああああああああ!!」

谷口「何だよ長門かよ。驚かせやがって」

キョン「ああああああ!! うわああああああ!!」

谷口「落ち着けよキョン、長門だって」

キョン「俺にとってはこっちの方が怖い!!」

長門「……」


ハルヒ「ちょっと有希、どうしたのよ? あ!!」

キョン「うげ! 涼宮!」

古泉「おやおや、これはこれは」

みくる「キョンくん……」


ハルヒ「まったくもう! せっかく何か発見したと思ったのに。ぬか喜びさせるんじゃないわよ!」

キョン「な、何でお前らこんなところにいるんだよ!」

ハルヒ「あたし達は北高の七不思議を調べるために、学校に泊り込んでるのよ!」

キョン「はぁ? また物好きな。って、俺たちも似たようなものか」

キョン(ん? 涼宮は何でも叶える力を持ってるんだったよな。それで七不思議を調べている)

キョン(……ということは)

古泉「ふふ……」ススッ

キョン「うわ! 何だよ! 顔を近づけるな気色悪い!」

古泉「あなたも体験してみますか? なかなかスリリングですよ」

古泉「黒板に食べられそうになったり、ドッペルゲンガーと遭遇したり……」

キョン「うわあああああああああ!!」

谷口「ど、どうしたキョン!?」

キョン「みんな! ここは危険だ! 早く学校から出るんだ!」

クラスメイト1「何だよキョン、びびってんのか?」

キョン「いいから早く!!」

クラスメイト2「わ、分かったよ。そんな泣きそうな顔で怒鳴るなよ……」

クラスメイト1「みんな帰るぞー。撤収ー」


古泉「賢明な判断です。さて、我々はもう少し頑張るとしますか」

~夏休み終盤~


キョン「まさか宿題のやり忘れがあったとはな……全部終わらせたと思って安心しきっていたのに」

佐々木「君らしいね。どこか抜けている」

キョン「うるせー」

佐々木「でも気づかないまま新学期を迎えるようなことにならないで良かったじゃないか」

キョン「そうだな。早く図書館に行ってすませてしまおう」


キョン「それにしても、はぁ」

佐々木「どうしたんだい?」

キョン「楽しかった夏休みももう終わりかと思ってな」

佐々木「そんな小学生みたいなことを言ってないで。ほら、早く行くよ」

キョン「誰が小学生だ。おい、待ってくれ」

佐々木「でも……確かに楽しかったね。充実してたよ」

~夏休み終盤~


キョン「まさか宿題のやり忘れがあったとはな……全部終わらせたと思って安心しきっていたのに」

佐々木「君らしいね。どこか抜けている」

キョン「うるせー」

佐々木「でも気づかないまま新学期を迎えるようなことにならないで良かったじゃないか」

キョン「そうだな。早く図書館に行ってすませてしまおう」


キョン「それにしても、はぁ」

佐々木「どうしたんだい?」

キョン「楽しかった夏休みももう終わりかと思ってな」

佐々木「そんな小学生みたいなことを言ってないで。ほら、早く行くよ」

キョン「誰が小学生だ。おい、待ってくれ」

佐々木「でも……確かに楽しかったね。充実してたよ」

~夏休み終盤~


キョン「まさか宿題のやり忘れがあったとはな……全部終わらせたと思って安心しきっていたのに」

佐々木「君らしいね。どこか抜けている」

キョン「うるせー」

佐々木「でも気づかないまま新学期を迎えるようなことにならないで良かったじゃないか」

キョン「そうだな。早く図書館に行ってすませてしまおう」


キョン「それにしても、はぁ」

佐々木「どうしたんだい?」

キョン「楽しかった夏休みももう終わりかと思ってな」

佐々木「そんな小学生みたいなことを言ってないで。ほら、早く行くよ」

キョン「誰が小学生だ。おい、待ってくれ」

佐々木「でも……確かに楽しかったね。充実してたよ」



キョン「……………………ん?」

~夏休み終盤~


キョン「まさか宿題のやり忘れがあったとはな……全部終わらせたと思って安心しきっていたのに」

佐々木「君らしいね。どこか抜けている」

キョン「うるせー」

佐々木「でも気づかないまま新学期を迎えるようなことにならないで良かったじゃないか」

キョン「そうだな。早く図書館に行ってすませてしまおう」


古泉「おや、こんにちは」

キョン「むっ、古泉……」

佐々木「どちら様かな?」

キョン「……知り合いだ、一応な」

古泉「どうも、古泉一樹です。仲睦まじいようで羨ましいですよ」


キョン(こいつ、佐々木のことも知ってるのか? 怪しいな……)

キョン「それで、何か用かよ?」

古泉「いえいえ。たまたま会ったので挨拶をしただけです。これからSOS団でカラオケに行くのですよ」

キョン「何だ、結構楽しそうじゃねえかよ」

古泉「そう思いますか? 実は今、結構大変なことが起こっていましてね」

キョン「大変なこと?」

古泉「おっと失礼。今のあなたには関係ないことでしたね。お二人はこれからどちらへ?」

キョン「図書館へ宿題をしに行くんだよ」

古泉「宿題、ですか」

キョン「もう話はいいだろう。佐々木、行くぞ」スタスタ

佐々木「おっと。では失礼」

キョン「何が大変なのかは知らんが、俺たちを巻き込まないでくれよ」


古泉「ふむ、宿題……宿題ですか」

古泉「……試してみる価値はありそうですね」

~始業式 教室~


谷口「あーあ、夏休み終わっちまったなぁ」

国木田「楽しかったよね。いろんな所に行ったし」

キョン「ああ、充実してた」

クラスメイト1「おーい、体育館に移動だってよ」



~廊下~


古泉「やあ、どうも」

キョン「またお前か」

古泉「あなたのおかげで無事に9月を迎えられました。感謝しています」

キョン「……何のことだ?」

古泉「こっちの話ですよ。では失礼します」


キョン「……何のこっちゃ。相変わらず訳分からん」

~放課後 図書館~


キョン「よっ。今日もよろしく頼む」

佐々木「任された」


キョン「……」カリカリ

佐々木「……」カリカリ

キョン「なぁ佐々木」

佐々木「何?」

キョン「お前と一緒に勉強するようになって、結構経ったよな」

佐々木「そうだね」

キョン「お前のおかげで成績も上がったよ。お袋も喜んでくれたしな」

キョン「だから…………ありがとな」

佐々木「なに、礼を言われるほどのことはしてないさ」

キョン「佐々木、前からずっと聞きたかったんだが」

佐々木「何かな?」

キョン「どうしてお前はここまで俺の勉強に付き合ってくれるんだ?」

佐々木「うーん、電話で僕の愚痴を聞いてくれたお礼、というのもあるけど」

キョン「けど?」

佐々木「1番の理由は…………僕がキョンと一緒にいたかったから、かな」

キョン「佐々木……」


キョン(おいおいおい! まさか……これってまさか……)


佐々木「ふふ。キョン、そこの問題間違えてるよ」

キョン「え? あ、ああ……」

佐々木「ふふふ……」


キョン(…………からかわれてるのか?)

~SOS団 映画撮影中~


ハルヒ「カットカット! そうじゃないって言ったでしょ! 何度言ったら分かるのよ!」

みくる「ご、ごめんなさい……」

ハルヒ「まったく、こんな調子で文化祭までに間に合うのかしら。もう1回、よーい、アクション!」


みくる「ユ、ユキさん! あにゃたのおみょいどおりにゃあ」

ハルヒ「カットー!! いい加減にしなさいよ! この!」


バコッ!!


みくる「痛い!! ご、ごめんなさいごめんなさい!」

古泉「涼宮さん、暴力は……」

ハルヒ「何よ、文句でもあるの?」

古泉「……いえ」

長門「……」

ハルヒ「まったく。もういいわ、別のシーンから撮りましょ。移動するわよ」

古泉「分かりました」

みくる「はい……」

長門「……」

ハルヒ「あ、機材は古泉くんが全部1人で運んでね」

古泉「……了解です」

ハルヒ「ほら、さっさとする!」

みくる「は、はいぃ~!」

長門「……」

ハルヒ「ボーっと突っ立ってんじゃないわよ! そこどきなさい!」


ドンッ!!


長門「…………」

古泉(お、重い……今回はいつになく人使いが荒いですね)

~文化祭 当日~


佐々木「や、キョン。来たよ」

キョン「おう。じゃあ一緒に周るか」


谷口「ああ! キョン、そいつが噂の彼女だな! 羨ましいぞコンチクショー!!」

国木田「はいはい。邪魔しないの」ズルズル

谷口「くきぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


佐々木「今の目から血の涙を流していた人物は誰だい?」

キョン「気にするな。覚えなくていい。それよりどこから行く?」

佐々木「キョンのクラスの出し物が見たいな」

キョン「ただのアンケート発表だ。見る価値はない」

佐々木「おや、そうかい」

キョン「お、やけに長い行列があるな。あれは何の店だ?」

佐々木「どうやら焼きそば喫茶らしいよ」


鶴屋「寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 焼きそば1つ300円! 水道水はただで飲み放題だよー!」


キョン(ずいぶん元気な人だな。それにしてもあの格好……)

佐々木「キョン、何を見とれているのかな?」

キョン「は! 何でもない! 何でもないぞ!」

佐々木「確かに綺麗なウェイトレスさんだ。君が夢中になるのも分かる」

キョン「だから違うって…………あ!」


みくる「い、いらっしゃいませ~。こちらへどうぞ~」


キョン(朝比奈さんだ……見つかったら気まずいな……)

キョン「佐々木、ここは待ち時間長そうだから別の場所へ行こう」

佐々木「ん、分かった」

キョン「ほう、ここでは占いをやってるのか」

佐々木「キョン、入ってみようよ」

キョン「へえ、興味あるのか。お前は占いといった類のものは信じないたちだと思ってた」

佐々木「たまにはね。入るよ」ガラッ


キョン「うわ、ここもいっぱいだ」

佐々木「人気あるみたいだね」

キョン「お、あそこ空いてるぞ」

佐々木「チャンスだ、行くよ」


キョン「すみませーん。よろしくお願いしまーす」



長門「……」


キョン「お邪魔しましたー」

キョン「結構周ったな」

佐々木「そろそろお昼だね。少しお腹がすいてきたかな」

キョン「そうだな。どこかで昼飯食うか。どこかいい所なかったかな」

佐々木「ちょっとパンフレットを見せて」

キョン「おう……って佐々木!?」

佐々木「?」

キョン「足元足元! 階段が!?」

佐々木「え? わぁっ!」

キョン「危ない! くっ!」


ダンッ! ズダーン!


キョン「ぐえっ!!」

佐々木「…………あれ? あまり痛くない?」

キョン「いててて。だ、大丈夫か、佐々木……」

佐々木「キョン! 君が庇ってくれたのか」

キョン「すまんが、早くどいてくれ」

佐々木「ああ、すまない。すぐに…………ひゃ!」

キョン「ど、どうした!? どこか怪我でもしたのか!」

佐々木「い、いや、どこも怪我はしてないよ。ただ……」

佐々木「その、右手は問題ない。ガッシリと僕の上半身を支えてくれて頼もしい限りだ」

佐々木「ただ、左手が、その……僕の……を……鷲掴みに……」

キョン「え? わあああお尻!?」

キョン「凄い柔らかい! 違う!! すまん佐々木!?」パッ

佐々木「い、いや、いいんだキョン。よっと」スック

佐々木「それより……助けてくれてありがとう、キョン」

キョン「あ、ああ、どういたしまして」

キョン「だいぶ周ったな。最後に体育館行くか。ライブとかいろいろやってるらしいぞ」

佐々木「いいね。行ってみよう」



~体育館~


キョン「お、ちょうどライブをやって……ええええ!?」


ハルヒ「大好ーきな人が遠ーい♪ 遠すぎて泣きたくなるのー♪」


キョン「な、何であいつが歌ってるんだ……?」

古泉「それはですね」

キョン「びっくりした! いたのかお前!」

古泉「涼宮さんがライブで歌いたいと言い出しましてね。強引にボーカルを代わってもらったのですよ」

キョン「ひでぇな、おい!」

佐々木「ふむ、あの人が涼宮さんか……」

佐々木「今日は楽しかったよ」

キョン「そうか、それは良かった」

佐々木「涼宮さんのライブ、凄かったね」

キョン「そういえば、何でお前が涼宮のこと知ってたんだ?」

佐々木「噂はよく聞いていたからね。いろんな噂を」

佐々木「どうやら君は、涼宮さんと何やらただならぬ関係にあったようだね」

キョン「変な言い方をするな」

佐々木「好きだったのかい?」

キョン「ないないないないないないないないないないないない!!」

佐々木「ふふ、じゃあ…………僕のことはどう思ってる?」

キョン「え? あ、え、えっと……」

佐々木「くっく、冗談だよ。じゃあ今日はこのへんで。バイバイ」

キョン「あ、ああ」


キョン(佐々木…………俺は佐々木のことを……)

~11月~


キョン「うわ、雨降ってきやがった。傘、傘」

キョン「はあ。今日は佐々木も塾だし、まっすぐ帰るとするか」


古泉「くっ、よっ、はぁっ」


キョン「ん? あれは古泉か? 何か運んでるようだが」

キョン「ま、俺には関係ないか。こんな雨の中ご苦労さん」



古泉「はぁ、やっぱり片手では運びにくいですね。昨日の閉鎖空間で左手を骨折してるというのに」

古泉「こんな状態なのに、1人でストーブを取りに行かせるなんてひどいですよ……」

古泉「うわっと! 危ない、落とすところでした……」


古泉「あー…………ちくしょ…………」

~12月17日~


佐々木「そういえば、もうすぐクリスマスだね」

キョン「ああ、あと1週間だな。お前は何か予定はあるのか?」

佐々木「いや、何もないよ」

キョン「そっか。それならよ…………クリスマス、俺と一緒に過ごさないか?」

佐々木「え?」

キョン「お、お前がよければだが……」

佐々木「…………くっくっ」

キョン「何だよ、何笑ってるんだよ」

佐々木「ごめん、悪気はないよ。ただ嬉しくて……」

キョン「じゃ、じゃあOKなんだな?」

佐々木「喜んで。まさか君から誘ってくれるとはね」

キョン「よし、決まりだ!」

佐々木「ふふ、楽しみにしてるよ」

~夜 キョン家~


キョン「クリスマスは佐々木と一緒か……」

キョン「クリスマスに女の子と2人きりなんて、人生で初めてだ」

キョン「どうしよう……どうすればいい……?」

キョン「1人じゃ分からんな……誰かに相談するか」


キョン妹「キョンくーん」

キョン「だあっ! びっくりした!? いつからいた!」

キョン妹「さっきから何をブツブツ言ってるのー?」

キョン「何でもない何でもない。ほら、もう寝ろ」

キョン妹「うん、おやすみー」


キョン「さてと、俺ももう寝るとするか」

キョン「ふふふ、今から楽しみだ」

~翌日 教室~


キョン「よう、おはよ」

谷口「おっす」

国木田「おはよう」

キョン「なあ、ちょっと相談したいことがあるんだが……」

ハルヒ「キョン! 今日の放課後を楽しみにしてなさいよ!」

キョン「びっくりした! 何だいきなり!?」

ハルヒ「何よこれくらいで。とにかく、放課後ちゃんと部室に来なさいよね」

キョン「はぁ? 何で俺が」

ハルヒ「口答えしない!」


キョン(何だ? あれ以来1度も話しかけてきたこともなかったくせに、今日はやけに絡んでくるな)

キョン(何か企んでるのか? ま、俺には関係ないか)

~放課後~


ハルヒ「キョン! 部室に行くわよ!」

キョン「だから何で俺が!? 何しに行くんだよ!」

ハルヒ「部室でやる鍋パーティの打ち合わせよ! ほら、つべこべ言わずに来る!」グイグイ

キョン「ぐえええ! ネクタイを掴むな! 離せ!」



~部室~


ハルヒ「みんな! 揃ってるー?」バァン

みくる「あ、こんにちは。涼宮さん、キョンくん」

古泉「やあ、どうも」

長門「……」

ハルヒ「よーし! 早速打ち合わせを始めるわよ!」


キョン(……何だ? 何かおかしいぞ、この反応)

みくる「キョンくん、今お茶を淹れますね」

キョン「え? え?」

古泉「どうです? 久しぶりに将棋でも」

キョン「何だと!?」

長門「……」ペラ・・・ ペラ・・・

キョン「ちょっと待て! 何でお前らそんなに馴れ馴れしいんだよ! おかしいだろう!」

ハルヒ「はぁ? アンタ何言ってるのよ?」

キョン「何って……俺はもうお前らとは関係ないはずだ! 何でここにいなきゃならない!」

みくる「え……?」

古泉「何でもなにも…………あなたはSOS団の一員ではありませんか」

キョン「…………は? 何を言って……?」

ハルヒ「今日のアンタおかしいわよ。何か変なものでも食べたんじゃないの?」


キョン(おかしい……これは絶対におかしい! どうなってるんだよ!)

キョン(と、とにかく、俺はここにいてはいけない……ここは俺の居場所じゃない! 逃げなきゃ!)

みくる「キョンくん、いったいどうしちゃったんですか?」

古泉「少し落ち着きましょう」

キョン「う……う……うわああああああ!!」ガチャ! ダダダダッ!!

ハルヒ「あ! こらキョン! どこ行くのよ!」



~下駄箱~


キョン「ぜえ、ぜえ、い、いったいどうなってるんだよ。わけが分からん……」

キョン「とにかく、一旦家に帰って落ち着こう。それから…………ん?」

キョン「ない! 鞄がない! しまった、部室に落としてきちまったか!」

キョン「くそ、どうする? 取りに戻るか、諦めるか」

キョン「あの中には勉強道具一式が入ってるからなぁ。あれがないと佐々木との勉強が……」

キョン「……仕方ない、取りに戻ろう」

キョン「なぁに、取ってすぐに逃げれば大丈夫さ! 俺ならできる!」

~部室前~


キョン(よし行くぞ! そ~っとそ~っと)


カチャ


キョン(…………あれ? 誰もいない……?)

キョン(いや、いる! 誰かが椅子に腰掛けて……)


長門「……」ペラ・・・ ペラ・・・


キョン(長門1人か。他の奴らはどこかに行ったのか?)

キョン(長門は怖いが……鞄を取ってくるだけだ! 大丈夫!)


長門「あ」


キョン(しまった! 気づかれたか!)

長門「あ、あの……どちらさま……?」


キョン(くそ! こうなったら強行突入を…………あれ?)

キョン(何かさっきまでと長門の雰囲気が違うような……)


長門「あの……その……」


キョン(それに、最近の長門って眼鏡はかけてなかったよな……?)


長門「あ、あなたは……」


キョン(おかしい、おかしいおかしいおかしいおかしい!)

キョン(駄目だ! 頭がおかしくなりそうだ! 世界はいったいどうなっちまったんだ!?)


長門「あの……」ガタッ


キョン「うわ!! うわ、わあああああああ!!」ダダダダッ

~廊下~


キョン(間違いない! ここは俺の知ってる世界じゃねえ! 何で俺はこんな世界に!)


???「あ! キョンくん、待ちなさい!」


キョン「え! な、何だ!?」


朝倉「キョンくん! 今日掃除当番なのにサボったでしょ!」

キョン「え……あ、朝倉……?」

朝倉「代わりにわたしがやっといたわよ。罰として明日は掃除当番代わってよね」

キョン「な…………なん……で……?」

朝倉「キョンくん聞いてるの? 何をボーっとしてるのよ?」

キョン「あ……あ……あああああああ……」

朝倉「もう! キョンくんったら!」

キョン「ひ……ひ……ひぃぃぃぎゃああああ!!」ダダダダッ

朝倉「あ! キョンくん!」


キョン(何で! 何で朝倉がここにいるんだ! 長門にやられて消えたはずだろう!?)


朝倉「キョンくーん! どうしたのよー!」タタタッ


キョン(ひいいいい!! 追ってきやがった!?)

キョン(と、とにかく今は逃げないと! 捕まったら殺される!?)


朝倉「待ちなさーい! もー!」


キョン(逃げろ! 逃げろ! 逃げろ! 逃げろ! 逃げろ!!)



朝倉「キョンくーん! 待たないと…………このナイフで刺 し 殺 し ちゃ う よ!」


キョン「ぎ、ぎゃあああああああああああああああ!!!!」

佐々木「キョン! キョン! しっかりするんだ!」


キョン「ああああああああああ…………はっ!!」

佐々木「きょ、キョン! 目が覚めたのかい? 大丈夫?」

キョン「あ、あれ? 佐々木?」

佐々木「よかった……よかった……」

キョン「何だ? どうなってるんだ? ここはどこだ?」

佐々木「ここは病院だよ。君は交通事故に遭ったんだ」

キョン「事故! 俺が!」

佐々木「うん。僕と別れた直後にトラックに撥ねられて……君は3日間も昏睡してたんだよ」

キョン「3日もか! あれ? ということは……」

佐々木「どうしたんだい?」


キョン(さっきまでのは夢……か。そうか、全部夢だったんだな)

キョン(そっか、そりゃそうだよな。あんなことがあるわけないもんな)

キョン「しかし、やけにリアルな夢だったな。そういえば身体中が痛い……」

佐々木「あまり動かない方がいいよ。10日間は安静にしろと言われたし」

キョン「10日間! マジかよ……」

佐々木「どうかした?」

キョン「すまんな。せっかくクリスマス一緒に過ごそうと約束したのに」

佐々木「そのことか。いいんだよ、気にしなくて」

佐々木「僕は……キョンが無事だっただけで充分だから」

キョン「佐々木……」






喜緑「まったく長門さんたら。監視していて正解でしたよ」

喜緑「それにしても、ずいぶんと無茶苦茶な改変をしましたね。修正するのが大変でした」

~翌日~


谷口「ようキョン! 目が覚めたって聞いて見舞いに来たぞ!」

国木田「思ったよりも元気そうだね。よかった」

キョン「おう、サンキュー」

谷口「ちなみに俺たちだけじゃねえぞ」

キョン「え?」


クラスメイト「おー、いたいた」

クラスメイト2「おっすキョン!」

クラスメイト3「元気かー?」

クラスメイト4「生きてて良かったなー、おい」

クラスメイト5「キョンくん、大丈夫ー?」

キョン「うお、いっぱい来たな」

谷口「まだまだ来るみたいだぞ。どうだ、感動したか?」

キョン「ああ。やっぱり持つべきものは友達だな」

~退院の日~


佐々木「退院おめでとう、キョン」

キョン「ああ。それにしても、10日間も入院する必要なかったような」

佐々木「何を言ってるんだい。目撃者によれば、本当に凄い事故だったんだよ」

佐々木「何せ車に跳ねられて10メートル以上吹っ飛んだ後、さらに別の車に轢かれたらしいからね」

キョン「そんなに凄いことになってたのか俺!?」

佐々木「ああ。その程度の怪我ですんだ幸運に感謝しないとね」

キョン「そうだな。一生分の幸運を使い切っちまったかもな……」


キョン「ところで佐々木。お前俺が意識を失っている間、ずっと付きっ切りでいてくれたらしいな」

佐々木「あ、うん」

キョン「ありがとな。お前のおかげで俺は助かったのかもな」

佐々木「僕は別に……ただ君のことが心配だったから……」

キョン「そっか。じゃ、帰るとするか」

~元旦 神社~


佐々木「キョン、あけましておめでとう」

キョン「おう、あけましておめでとう。それじゃ初詣をすませるとするか」



佐々木「それにしても、凄い人だね」

キョン「はぐれないようにな。手を繋ぐか?」

佐々木「何で君はさらっとそういうことを……」



ガランガラン! パンパン


キョン「何てお願いしたんだ?」

佐々木「今年は2人とも健康でいられますようにって。去年みたいなことにならないようにね。君は?」

キョン「今年は平穏無事に過ごせますように」

佐々木「何だいそれ?」

キョン「なに、平穏が1番ってことだ」

ハルヒ「まったくもう! せっかく初詣に来たのに、何よこの凄い人だかり!」

長門「……」

ハルヒ「ほら有希! モタモタしないでちゃんと着いてきなさい!」

長門「……」


ハルヒ「それにしても、みくるちゃんも古泉くんも情けないわね。風邪ひいちゃうなんて」

ハルヒ「たかが雪山で3日間遭難しただけなのに。あの身体の弱さはどうにかならないかしら?」

長門「……」

ハルヒ「はあ、さっさとすませちゃいましょ。でもあたしは神様にお願いなんてしないわ!」

ハルヒ「『願いを叶えさせなさい!』と命令するのよ! それがあたしのやり方よ!」

長門「……」

ハルヒ「ほら、ボーっとしてないで行くわよ!」グイッ!!

長門「……」

~2月 バレンタインデー~


佐々木「はいキョン、チョコレート」

キョン「おお! ありがとう佐々木!」

佐々木「手作りだ。あまり自信はないけどね」

キョン「いやいや、手作りってだけで嬉しさ倍増だって」


キョン「いやー、佐々木からも貰えるとはな」

佐々木「僕からも?」

キョン「あ、いや、その……」

佐々木「キョン、僕以外の女の子からも貰ったのかい?」

キョン「あ、ああ、クラスの女子から2つほど……」

佐々木「ふーん、キョンって案外モテるんだね」

キョン「で、でも1番嬉しいのはお前のチョコだぞ!」

佐々木「ふ~~~ん……」

キョン「本当だって!?」

ハルヒ「ああああもう! 何も不思議が見つからない!」

ハルヒ「イライラする! あーイライラする!!」


古泉(ああ、今日も無事に閉鎖空間から生きて戻れるでしょうか……)

みくる「す、涼宮さん、落ち着いて」

ハルヒ「うっさい! 話しかけんな!」

みくる「ひっ!!」

長門「……」

ハルヒ「ったく! 今日はもう解散! 各自勝手に帰りなさい!」ズンズンズン


みくる「最近の涼宮さん、怒ってばかりですね……」

古泉「そうですか? 元からあんなものでしょう。では、お仕事がありますので僕も失礼します」

長門「……」スタスタ


みくる(SOS団を結成してずいぶん経つのに…………いまだに皆バラバラだなぁ)

~3月~


キョン「へえ、新しい友達ができたのか」

佐々木「うん。まだ知り合って日は浅いけどね」

キョン「どんな奴なんだ?」

佐々木「面白い子だよ。いろんな話を聞かせてくれる」

キョン「へー、面白いか。名前は?」

佐々木「橘。橘京子さんだよ」

キョン「橘か。お前が面白いと言うくらいだから、よほどなんだろうな。俺も会ってみたいな」

佐々木「うん。本当に面白い話を聞かせてくれたよ」

佐々木「…………本当に……ね」


ゾクッ!!


キョン(な、何だこの感じ!? 何か、猛烈に嫌な予感が……)

~数日後~


キョン「コンビニコンビニ~」

???「こんにちは」

キョン「ん? 誰だ?」

橘「初めまして。あたしは橘京子といいます」

キョン「橘? 橘……ああ、佐々木の友達の」

橘「佐々木さんから話は聞いているようですね。好都合です」

橘「今時間ありますか? 少しお話があるのです」

キョン「別に構わんが……何の話だ?」

橘「佐々木さんについてです。佐々木さんと…………涼宮さんについて……ね」

キョン「な、何だと!?」


キョン(何でだ! 何でこいつの口から涼宮の名前が出てくるんだ! 何者なんだこいつは)

橘「――――――――と、いう訳なのです」


キョン「つまり……お前は古泉たちとは別の超能力者の組織の一員で……」

キョン「その組織では、涼宮が持っている能力は、本来佐々木が持っているはずだったものと考えられていて……」

キョン「そして、涼宮の能力を佐々木に移そうとしている……」

橘「その通りです。さすが涼宮さんたちに関わっていただけあって、理解が早いですね」

橘「ここまではいいですね。そこで、あなたに頼みたいことがあるのです」

橘「ズバリ! あなたにも手伝ってほしいのです。佐々木さんと親しいあなたなら……」

キョン「……」ブツブツ

橘「……あれ? どうかしましたか? 何だか様子がおかしいですけど」


キョン(嘘だろ……せっかく涼宮たちから離れたというのに、また危険なことに巻き込まれるのかよ)

キョン(それも、よりによって佐々木を巻き込んで…………佐々木……佐々木……)

キョン(そうだ、佐々木を巻き込んじゃいけない! 佐々木をこんな危険な連中に関わらせたら駄目だ!)

橘「あのー、聞いてますか?」

キョン「させねぇ……」

橘「はい?」

キョン「そんなことはさせねぇって言ってんだよ!」ダダッ!!

橘「あ! ちょっと、どこに行くのですか!」


キョン「佐々木……佐々木……」ピッ プルルルル プルルルル

キョン「佐々木、早く出てくれ!」

佐々木『や、キョン。何か用かな?』

キョン「佐々木! 今すぐ駅前の喫茶店に来てくれ!」

佐々木『喫茶店? いきなりどうしたんだい?』

キョン「大事な話があるんだ! 頼む!」

佐々木『……どうやらただ事ではない様子だね。何かあったのかい?』

キョン「いいから! すぐに来てくれ!」

佐々木『……分かった。すぐに向かうよ』

~喫茶店~


佐々木「いったい何事だいキョン。急に呼び出したりして」

キョン「ついさっき、橘京子が俺に接触してきた」

佐々木「橘さんが?」

キョン「お前、聞いたのか? 涼宮のこととか能力のこととか全部」

佐々木「……半信半疑だったけど、君のその様子を見るとどうやら本当だったみたいだね」

佐々木「荒唐無稽な話だったけど、実に興味深いと思ったよ」

キョン「佐々木、橘とは金輪際関わるな! 関係を断て!」

佐々木「どうして?」

キョン「あいつは危険だ! 一緒にいたらお前の身が危ない!」

佐々木「……知り合って日が浅いとはいえ、橘さんは僕の友人だ」

佐々木「その友人を悪く言われると、あまりいい気持ちはしないね」

キョン「駄目だ佐々木! 俺の言うことを聞け!」

佐々木「少し落ち着こうキョン。君は頭に血が上っている」

キョン「落ち着いてるよ!」

佐々木「全然落ち着いてない。どうしてそこまで必死なんだい?」

キョン「佐々木! 聞いてくれ! 俺は…………俺は…………」




キョン「お前のことが好きなんだ!!」




佐々木「……………………え?」



キョン「お前が好きだ!! 好きで好きでたまらない!! 世界で1番大切な存在だ!!」

キョン「だから……だからこそ、お前を危険な目に遭わせたくない! お前を失いたくないんだ!!」

佐々木「……」

キョン「……」

佐々木「キョン、何でこのタイミングで告白? 脈絡がなさすぎるよ」

キョン「……」

佐々木「それにここは喫茶店だ。大勢の人がいる中でそんなことを大声で……恥ずかしくないのかい?」

キョン「……」

佐々木「まったく、君という奴は。少しは常識というものをだね……」

キョン「佐々木」

佐々木「何?」






キョン「顔がニヤけてる」


佐々木「!!」

佐々木「こ、これは、心の準備もなくいきなり言われたから……その…………」


キョン「佐々木、俺は何の根拠もなくこんなことを言ってるんじゃない」

キョン「実際に涼宮たちと関わって危険な目に遭ったからこそ、警告してるんだ」

佐々木「……」

キョン「頼む佐々木、俺はこれからもずっとお前と一緒にいたいんだ」

佐々木「……分かったよキョン。君がそこまで言うのなら」

キョン「ほ、本当か佐々木!」

佐々木「ああ、橘さんとは距離をとる。もう関わらないよ」

キョン「ああ! それでいい!」

佐々木「それに、もともと涼宮さんの能力を僕にという話には興味なかったしね」

佐々木「僕には能力なんていらない。そんな強力な能力、持ちたくもないよ」

キョン「よかった……本当によかった……」

佐々木「ああ。キョン、それからもう1つ」

キョン「え? 何かあったか?」

佐々木「君からの告白の返事さ」

キョン「あ」

佐々木「僕も…………ううん、わたしもキョンのことが大好き」

キョン「ええと、それじゃあらためて。佐々木、好きだ。俺と付き合ってくれないか?」

佐々木「うん、喜んで」








佐々木「キョン、これからもずっとよろしくね」

キョン「ああ佐々木。もちろん、ずっと一緒だ」

~夜 キョン家~


キョン「いやぁよかったよかった。安心した」

キョン「佐々木が了承しない限り、能力の移し替えなんてしないだろうからな」

キョン「……いや、そんなことで諦める連中か?」

キョン「そうだよな。佐々木の意思に関係なく、強引な手で来るかもしれない。不安は尽きないな」

キョン「何か対策を考えないとな。一般人の俺に何が出来るかは分からんが……」

キョン「いや、佐々木は俺が守る! 俺が守らないとな」


キョン「……あれ? コーヒーがない」ゴソゴソ

キョン「あ、そっか。コンビニに行く途中で橘に話しかけられたから……」

キョン「しょうがない。今から買いに行くか」


キョン妹「あれ? キョンくんどこ行くのー?」

キョン「コンビニだ。すぐに戻る」

キョン「たしかにまだ不安の種はある…………が! それよりもだ!」

キョン「佐々木と恋人同士か……ずっと一緒にいたけど、恋人となると特別だよな」

キョン「ふふ、ふふふ、恋人か。まさか俺に彼女ができるとはな。しかもあんなに可愛い!」

キョン「……やばい、今凄い幸せだ。こんな幸せがいつまでも続けばな」


???「残念ながら、そうもいかないんだよな」


キョン「だ、誰だ!?」

キョン(何だ今の声は! 何者だ! 橘の仲間か!)


???「お前には本当にすまないと思っている。けど、仕方ないんだ」


キョン「な、何を言って……かは! な、何だ!? 急に……眠気……が…………」


???「大丈夫だ。少しの間眠っててもらうだけだから」


キョン(くそ……いったい…………何だって……ん……だ…………――――)

キョン「う……ん……は! こ、ここは……?」

キョン「こ、この灰色の世界は……どこかで見たような……」

キョン「思い出した! ここは閉鎖空間だ! 何で俺がこんなところに……?」


???「目が覚めたようだな」

キョン「……え?」

???「悪かったな、眠らせたりして。でも眠らせないとお前抵抗しただろうし」

キョン(これは……どうなってるんだ……?)

???「さて、何から説明するべきか。とりあえずは自己紹介だな」

キョン(何で…………何で……?)


キョン(……どうして俺が、そこにいる?)



キョン(異)「俺はこことは違う世界から来た。違う世界のお前だよ」

キョン「お、俺が……2人……?」

キョン(異)「ちなみに、俺だけじゃねえぞ」

古泉(異)「どうも」

みくる(異)「こ、こんばんは」

長門(異)「……」

キョン(異)「こいつらも俺と同じ、異世界のSOS団だ。ここまでは理解したか?」

キョン「あ、ああ、何とか……かなり驚いてるが」

キョン(異)「ちなみに、ここはハルヒが発生させた閉鎖空間の中だ。ああ、ハルヒとはそっちの世界のハルヒな」

キョン(異)「……ん? 何かボーっとしてるな。大丈夫か?」

キョン「大丈夫なわけあるか! いったい何がどうなってる!」

キョン「何で異世界人のお前らがここにいる! 何をしに来た! どうして俺はここにいる!」

キョン(異)「……」

キョン「な、何だよ。どうして急に黙り込む?」


キョン(異)「この世界は……………………間もなく消滅する」

キョン「……は? しょ、消滅するって…………この世界がか?」

キョン(異)「そう、お前の世界がだ」

キョン「ど、どういうことだよ!? いきなり消滅するって!?」

古泉(異)「僕から説明しましょう。あなたは5月の出来事のことを覚えていますか?」

キョン「え? 5月?」

古泉(異)「涼宮さんが世界を改変しようとした時のことです」

キョン「あ、ああ、あったな」

古泉(異)「あの時、涼宮さんは突然改変するのをやめて、世界は救われましたよね。なぜだと思います?」

キョン「さ、さあ? 古泉たちも結局教えてくれなかったからな」

古泉(異)「涼宮さんはギリギリで踏みとどまった。そして、新たなもう1つの世界を創り上げたのですよ」

キョン(異)「それが俺たちの世界、ということらしい」

キョン「もう1つの世界……何で涼宮はそんなことを」

古泉(異)「あなたですよ」

キョン「え?」

古泉(異)「あなたがいるこの世界を壊したくない。心の奥底でそう思ったからですよ」

古泉(異)「だからこそ『世界を上書きして書き換える』のではなく『もう1つの世界を創る』という方法をとったのですよ」

キョン「ん? ちょっと待て。お前らにとって、こっちの出来事は異世界の出来事だろう?」

キョン「なのに、何でここまで詳しく知ってるんだよ?」

キョン(異)「そりゃ、長門がいるからな」

キョン「ああ……そういうことね……」


長門(異)「……」


キョン「もう1つの世界か。涼宮はいったいどんな世界を創ったんだ?」

古泉(異)「簡単なことです。あなたも含めたSOS団『5人』が仲良く活動する世界、ですよ」

みくる(異)「あたし達の世界の涼宮さんは幸せそうです。5人揃ってて、何よりキョンくんがいて……」

古泉(異)「不思議はいまだに見つけられていませんが……」

キョン(異)「それでも、馬鹿騒ぎをしている時のあいつは心底楽しそうだ」

古泉(異)「そちらの涼宮さんは、そんな理想の世界を創りあげることにより、ストレスを発散させていたのでしょうね」

キョン(異)「……だが、それは単に気を紛らわせていたにすぎない」

古泉(異)「ええ。現にそちらの涼宮さんは、一見楽しそうに見えてもまったく満足できていなかった」

みくる(異)「1番重要なキョンくんがいませんからね……」

古泉(異)「そんな不満が積もりに積もって……ある出来事をきっかけに一気に爆発した」

キョン「ある出来事? 何だそれは?」

古泉(異)「……」

みくる(異)「……」

キョン(異)「……」

キョン「な、何だよ。いったい何だってんだよ?」




古泉(異)「涼宮さんもいたのですよ、あの喫茶店に」

古泉(異)「そして見てしまった。あなたが佐々木さんに告白するところを」

ハルヒ死ね
氏ねじゃなくて死ね
嫉妬丸出しの糞ビッチ

sssp://img.2ch.net/ico/4ou.gif
>>662
キャラに嫉妬とか腐女子だけにしてくれよ

キョン「な……そ、そんなことが原因で涼宮はこの世界を消そうとしているのか!?」

キョン(異)「ああ。しかも事態はもっと厄介なんだ」

キョン「何だよ! まだ何かあるってのか!」

キョン(異)「この世界だけじゃないんだ。ハルヒが消そうとしているのは」

キョン「え?」

古泉(異)「このままでは僕たちの世界も消滅してしまうのですよ。涼宮さんの凄まじいエネルギーの余波を受けてね」

キョン「な、何だと……」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・


キョン「うわ! じ、地震か!?」

古泉(異)「どうやら世界に影響が出始めているようですね。世界中に閉鎖空間が発生しています」

キョン「す、涼宮は今どこにいるんだ!」

古泉(異)「強力な閉鎖空間を作り、閉じこもっています」

古泉(異)「我々でも侵入は不可能なため、説得に行くこともできません」

キョン「ど、ど、どうすればいい! どうすればこの世界は助かるんだ!」

古泉(異)「…………ハッキリ言いましょう。手遅れです。もはやこの世界が助かる方法はありません」

キョン「…………は?」

キョン(ま、またかよ……5月の時に続いてまた……)

古泉(異)「ただし、我々の世界が助かる方法はあります」

キョン「え……?」

古泉(異)「それは……涼宮さんが世界を消すよりも早く、我々が涼宮さんごとこの世界を消すことです」

古泉(異)「元凶である涼宮さんをこの世界ごと消すことにより、我々の世界だけは助かるのです」


キョン(この世界が助かる方法はない? 涼宮より早くこの世界を消す? オマエ、ナニヲイッテルンダ……?)


キョン(異)「分かったか? 俺たちはそのためにこの世界に来た」

キョン「この世界を…………消す……」

古泉(異)「ええ、それしか方法はありません」

キョン(異)「すまんな。俺はもっと他に方法はないのかと食い下がったんだが……」

キョン「ま……待て! ちょっと待て! 今、この世界もお前らの世界もやばい状況だってのは分かった」

キョン「だけど、この世界を消すなんて…………お前ら、本気か?」

古泉(異)「……これが冗談に聞こえますか?」

キョン「う……」

みくる(異)「あたし達、他に方法がないか必死に探したんです! でも、何もなくて……」

みくる(異)「何より、もう時間が……ないんです……」

キョン「ふざけるな! 自分の世界が消されると聞いて黙っていられるか!!」

みくる(異)「ひっ!!」

キョン「おい! 本当に、本当に他に手はないのかよ!」

古泉(異)「先程も言いましたが、涼宮さんは強力な閉鎖空間に閉じこもっているため、手が出せません」

古泉(異)「それに、仮に涼宮さんの元に辿りつけても何もできませんよ。完全に心を閉ざしています」

キョン「な、長門! お前なら何とかできるだろ! お前のトンデモパワーで……」

長門(異)「不可能。わたしでも涼宮ハルヒの閉鎖空間へは侵入できない」

キョン「そんな……本当に手はないのかよ……」

キョン「待て……ちょっと待て……おかしい、おかしいぞ」

キョン「何でこの世界が消されなくちゃいけない。お前らの世界が消えればいいだろう!」

キョン「そうだ、そうだよ! もともとこっちが本当の世界で、そっちが後から創られた世界なんだからよ!」

古泉(異)「駄目です。原因である涼宮さんがいる以上、そちらの世界が消えるしかありません」

キョン「す、涼宮だけを消すってわけにはいかないのか! 何も世界全部を消すことはないだろう!」

古泉(異)「涼宮さんは閉鎖空間の中にいるため、ピンポイントで涼宮さんだけを消すことはできません」

古泉(異)「丸ごと……世界全てを丸ごと消すしかないのです」

キョン「お、お前らに世界を消すなんてことできるのかよ! そんな力があるのか!」

キョン(異)「できるんだよ。長門になら」

キョン「な!」


長門(異)「……」

キョン(異)「今の長門は、情報統合思念体からあらゆる能力を使用できる許可を得ているからな」

キョン「う……うう……」

一か八か元凶を絶とうぜ

>>702
そういうこというのやめようよ。

>>705

                ハ        _
    ___         ∥ヾ     ハ
  /     ヽ      ∥::::|l    ∥:||.
 / 聞 え  |     ||:::::::||    ||:::||
 |  こ ?  |     |{:::::∥.  . .||:::||
 |  え      |     _」ゝ/'--―- 、|{::ノ!
 |  な 何   |  /   __      `'〈
 |  い ?   ! /´   /´ ●    __  ヽ
 ヽ      / /     ゝ....ノ   /´●   i
  ` ー―< {           ゝ- ′ |

        厶-―    r  l>        |
      ∠ヽ ゝ-―     `r-ト、_,)      |
      レ^ヾ ヽ>' ̄     LL/  、   /
      .l   ヾ:ヽ ` 、_      \\ '
     l    ヾ:ヽ   ト`ー-r-;;y‐T^
      |    ヾ `ニニ「〈〉フ /∥. j

キョン(異)「本当にすまん。俺たちにとってもこれが最後の手段なんだ」

古泉(異)「道は2つ。そちらの世界が消えて僕らの世界が生き残るか、両方の世界が消えるか……」

古泉(異)「僕たちは前者をとらざるを得なかったのです……」

キョン「本当に……本当に俺たちの世界が助かる方法は……?」

古泉(異)「…………ありません」


キョン「ふざけるな……ふざけるなよ…………あまりにも……突然すぎるだろう……こんなの……」


キョン(異)「……」

古泉(異)「……」

みくる(異)「……」

長門(異)「……」


キョン(異)「本当に…………すまん……」

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   ∩___∩         |
   | ノ\     ヽ        |
  /  ●゛  ● |        |
  | ∪  ( _●_) ミ       j
 彡、   |∪|   |        J
/     ∩ノ ⊃  ヽ
(  \ / _ノ |  |
.\ “  /__|  |
  \ /___ /

長門(異)「……」ピクッ

古泉(異)「むっ……」

キョン(異)「どうした、2人とも?」

古泉(異)「どうやら、この世界の僕たちも奮闘しているようです。ですが、もう……」

キョン「本当に…………もうおしまいなのかよ……」

みくる(異)「キョンくん……」


キョン「何で…………何でこのことを俺に教えに来た?」

古泉(異)「異変の原因であるあなたには、知っておいてもらうべきだと思いまして」

キョン「原因? 原因だと? 俺は普通の人間なんだ! 一般人なんだよ! お前らとは違うんだ!」

キョン「俺はただ普通の生活を送りたかっただけなんだ! 普通に友達を作って遊んで勉強して恋をして」

キョン「普通じゃない連中と関わり合いになりたくなかった! それがそんなにいけないことだったのかよ!」


キョン(異)「……」

古泉(異)「……あと30分ほどで崩壊が始まります。そろそろ始めましょう。長門さん」

長門(異)「……」スッ

キョン「待て……待ってくれ……せめて最後に佐々木の声を……」

古泉(異)「残念ですが……今や世界中を閉鎖空間が多い尽くしているので、携帯は繋がりませんよ」

キョン「そんな……最後の悪あがきすら俺にはできないのかよ……」

古泉(異)「悪あがき……ですか」

キョン「……そうだ、悪あがきだ! 悪あがきだよ!」

キョン「俺は涼宮のところへ行く! 黙って最後を迎えるよりマシだ!!」

古泉(異)「行ってどうするのです?」

キョン「決まってるだろう! 説得するんだよ!」

古泉(異)「無理です。涼宮さんの閉鎖空間には誰も侵入できませんし、できたとしても……」

キョン「それでも行くんだ! 必ず、必ず奇跡を起こしてみせる!!」

古泉(異)「……」

キョン(異)「……」

古泉(異)「分かりました。ギリギリまで……そうですね、残り10分まで待ちましょう」

キョン「涼宮は今どこにいる?」

古泉(異)「場所は……――――」

キョン「…………分かった。じゃあ俺は行く」


キョン「……」

キョン(異)「……」

キョン「……せいぜいそっちの涼宮を大切にしろよ」タタッ・・・・・・



古泉(異)「行ってしまいましたね」

キョン(異)「……いけると思うか?」

古泉(異)「……」

キョン(異)「奇跡、起きるといいな」

タッタッタッタッタッタッタッタッタ!!



キョン(走れ! 走れ! 走れ!!)

キョン(諦めてたまるか! 諦めてたまるか! 諦めてたまるかよ!)

キョン(こんなので終わってたまるか! 終わりにしてたまるか!)


ガッ!!


キョン「おわっと!!」ビターン!!

キョン「いって、小石か…………くそ!!」ダダダッ!!



キョン(時間がない! 急げ! 急げ! 急げ!!)

キョン(生きるんだ! これからもずっと!)

キョン(あいつと…………あいつと一緒に……ずっと…………)

     絶対に……

               絶対に…………


















                   






                           佐々木…………

~朝 登校中~


谷口「おっすキョン!」

国木田「おはよう」

キョン「ああ、おはよう……」

谷口「いよいよ明日から春休みだな! 待ちわびたぜ!」

国木田「何か予定でもあるの?」

谷口「決まってるだろう! 今度こそナンパを成功させてだな」

国木田「はは、谷口は相変わらずだね。ねえキョン」

キョン「……」

国木田「キョン? どうしたの?」

キョン「え? ああ、何でもない」



谷口「何をボーっとしてるんだ?」

キョン「何でもない。大丈夫。大丈夫だ……」

和月だろ

~放課後 部室~


キョン「うーす」ガチャ

みくる「あ、こんにちはキョンくん」

長門「……」

古泉「こんにちは。涼宮さんは?」

キョン「掃除当番だ」


みくる「今お茶を淹れますね」

キョン「ありがとうございます、朝比奈さん」

古泉「昨日はお疲れ様でした」

キョン「ああ……」

古泉「……どうかされましたか?」

キョン「…………そうだよな」


キョン「そう簡単に起きないから、奇跡っていうんだよな……」

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>>765
銀魂で言ってたやつか

キョン「結局あいつは駄目だったんだな」

古泉「ええ、涼宮さんの元へは辿りつけませんでした」

キョン「長門、あいつの最後の様子はどんな風だったんだ?」

長門「知りたい?」

キョン「……いや、やっぱりいい」


キョン「はぁ、あまりにも後味が悪すぎるよな……」

古泉「ええ。しかし、ああするしか我々の世界を守る方法はなかったのです」

キョン「それは分かってるけどよ。はぁ……」

みくる「キョンくん、元気出してください」

キョン「ありがとうございます。はぁ……」

長門「……」

キョン「はぁ…………」

キョン「ん? 電話だ。部室の外に出るか」


バタン


キョン「もしもし」

佐々木『キョン…………僕だよ…………』

キョン「その声は……佐々木か。どうした? 久しぶりだな」

佐々木『…………やっぱり。僕の「キョン」はいなくなってしまったんだね』

キョン「お前……まさか記憶が……?」

佐々木『キョン、僕は諦めないよ。必ず僕の「キョン」を取り戻してみせる』

佐々木『僕には頼もしい味方もいるからね。では』 ツーツーツー

キョン「佐々木……」 



古泉「おや? どうかされましたか?」

キョン「ああ。どうやらほんの少しだけ、奇跡は起きていたようだ」

>>766
あちこち貼るな死ねクズ

>>793
お前も二回もレスしないでいいよ^^;

>>800

                ハ        _
    ___         ∥ヾ     ハ
  /     ヽ      ∥::::|l    ∥:||.
 / 聞 え  |     ||:::::::||    ||:::||
 |  こ ?  |     |{:::::∥.  . .||:::||
 |  え      |     _」ゝ/'--―- 、|{::ノ!
 |  な 何   |  /   __      `'〈
 |  い ?   ! /´   /´ ●    __  ヽ
 ヽ      / /     ゝ....ノ   /´●   i
  ` ー―< {           ゝ- ′ |

        厶-―    r  l>        |
      ∠ヽ ゝ-―     `r-ト、_,)      |
      レ^ヾ ヽ>' ̄     LL/  、   /
      .l   ヾ:ヽ ` 、_      \\ '
     l    ヾ:ヽ   ト`ー-r-;;y‐T^
      |    ヾ `ニニ「〈〉フ /∥. j

長門「……」

キョン「ん? 長門、どうしたんだ?」

長門「わたしは……………………化け物?」

キョン「長門……」

長門「……」

キョン「そんなことはない。絶対だ! もしそんなことを言う奴がいたら、俺が許さねえよ」

長門「……そう」



ハルヒ「みんなー! 揃ってるー!」バァン!

キョン「もう少し静かに入ってこい! 相変わらず騒々しい奴だ」

みくる「こんにちは、涼宮さん」

古泉「どうもです」

長門「……」

ハルヒ「ちゃんと揃ってるわね! それじゃ、今から春休みの予定についてミーティングを始めるわよ!」

~帰り道~


キョン「……他人事じゃないよな。現にこの世界だって何度か消えかけている」

キョン「またいつそんなピンチに見舞われてもおかしくない。その時、俺はどうするんだろうな」

キョン「あいつと同じように最後まで悪あがきするのか。それとも……」


    諦めてたまるか……

                       絶対に……   
                     

キョン「今のは…………空耳か……?」

キョン「……」

キョン「今日はもうさっさと帰ろう。明日もSOS団の活動があるからな」



 
  ――――「キョン、これからもずっとよろしくね」――――

  ――――「ああ佐々木。もちろん、ずっと一緒だ」――――


~おしまい~

無事に投下終了

支援してくれた人
保守してくれた人
最後まで読んでくれた人

本当にありがとう!


では

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佐々木エンドか一時はどうなるかと

>>1乙次回も期待するぜ

あとアンチかゆとりかニコ厨か知らんがさっさと寝ろ



谷川「マジなハルヒSSは営業妨害ですぞ!!!」

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>>900
ムックかよww

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