佐々木「親友の一歩先があるのなら」 (196)

佐々木「キョン、もし僕が誰かに告白されたって言ったら、信じるかい?」

キョン「ああ、普通にあるだろうな」

佐々木「それは、どうしてだい?」

キョン「お前が佐々木だからとしか言いようがない」

佐々木「くっくっ、なかなか興味深い意見だね」

キョン「そういや小泉は、十人中八人が一見して目を惹かれるってお前について言っていたな」

佐々木「光栄にして過分な褒め言葉だね」

キョン「そうか? 俺はそれ聞いたとき、妥当な評価だと感心したけどな」

佐々木「…………」

キョン「おい、なんで睨むんだよ」

佐々木「何となく。強いて言えば、君が本気でそう思っていそうだから」

キョン「それは、悪いことじゃないだろ?」

佐々木「それでいて、自分が八人の側なのかあぶれた二人の方なのかを気にもかけない」

キョン「……悪い。お前が何を言いたいのかさっぱりわからないんだが」

佐々木「以前僕の恋愛観について君に語ったこと、覚えてるかな?」

キョン「覚えてるぜ。恋愛感情は病気の一種だって」

佐々木「まさしく。病気であれば誰かに感染することだってあり得るわけさ」

キョン「……感染?」

佐々木「身近にそういう人物がいれば、周りの人間に影響を与えかねない」

キョン「なるほど。物語なんかじゃ友達と思っていた幼馴染が告白されて、初めて自分の思いに気づいたりってベタなパターンが――」

佐々木「ねえキョン。君、もしかしてわざと言ってるのかな?」

キョン「わざとも何も、俺とお前は中3からの付き合いだし、そもそも幼馴染とは言えないだろ?」

佐々木「……おかしいな。以前の僕は君のそういう鈍さを割と好ましく思っていたはずなんだけど」

キョン「へえ、それは初耳だ。今は違うのか?」

佐々木「うん、手が届く位置にいるとたまに無性に引っ叩きたくなるんだ」

キョン「そ、そいつは穏やかじゃないな」

佐々木と面倒な会話をしながらイチャイチャしたい

佐々木「最近困っているんだよ。誰かさんのせいで自分の立ち位置がわからなくなる」

キョン「詰まる所情緒不安定か、正直ちょっと意外だな」

佐々木「まったく、自己分析は得意な方だと思っていたのに」

キョン「その点については同意できそうにないが」

佐々木「おっと、それは普通にショックだ」

キョン「まぁ、これは単に俺の甘えなのかもしれないが」

佐々木「甘え?」

キョン「全国トップレベルの学力のお前が平均以下の凡人だったら俺はどうなるんだって話」

佐々木「学力のことはともかく、キョンは、非凡だと思うけどね」

キョン「何を根拠に。それこそ過大評価だろ」

佐々木「僕みたいなのと付き合えるんだ。少なくとも普通じゃないよ」

キョン「……やれやれ、自分で言ってりゃあ世話ないな」

佐々木「だから、僕のせいで君が変人扱いされていた件については申し訳なく思っているよ」

キョン「……その点についても同意できそうにないな。俺はこれで案外自分本位なんだ」

佐々木「それは、どういう意味だい?」

キョン「お前と一緒に過ごせるなら変人扱いされるくらいどうってことない」

佐々木「……おっと」

キョン「そう思えるくらいには二人の時間を楽しめていたんだが、お前は違ったのか?」

佐々木「……いや、ええっと、楽しんでいた、かな」

キョン「だったら問題ないだろ。俺は自分の意志で選択肢を選んだんだから」

佐々木「そ、そうだね。悪かった、変なことを言って」

キョン「いや、いい。で、本題だけど」

佐々木「あ、うん」

キョン「その、本当に告白されたのか?」

佐々木「まあ、客観的に見れば、されたといっていい状態だったと思う」

キョン「……仮にも自分の色恋沙汰でその遠回りな言い方はどうかと思うぞ」

佐々木「そのくらい大目に見てくれ。こっちだって慣れているわけじゃない」

キョン「だけど、今回が初めてってわけじゃないんだろ?」

佐々木「それはそうだけど……、って、妙に確信をもって言うね?」

キョン「さっきお前、八人がどうの二人がどうのごちゃごちゃ言ってたろ」

佐々木「……あれに対するこれが返答ってわけ? 君だって相当回りくどいじゃないか」

キョン「あー、話が進まん。相手は同じ学校のやつなのか?」

佐々木「……うん、一個上だよ」

キョン「そいつは、悪い噂とかないんだろうな? 女遊びが激しいとか」

佐々木「…………」

キョン「ん、どうした? 変な顔して」

佐々木「……なんでもない」

佐々木(真っ先にそういうところから突いてくる辺りが本当、憎らしいよ)

佐々木「そうだね。周囲の評判は悪くないよ」

キョン「そっか」

佐々木「学期末テストは常に上位をキープ。バレー部の副キャプテンでもある」

キョン「……ふぅん、デキる男なんだな」

佐々木「体育会系の割に温厚な顔立ちで、十人中八人は振り返りたくなる容姿ってところかな」チラ

キョン「…………」

佐々木(……と、ここまで聞くとクラスメイトたちは良くも悪くも囃し立てるんだけど)

キョン「それで、お前はそいつに興味があるのか?」

佐々木(やはり彼はこう来る……って)

佐々木「……あ、気になるんだ?」

キョン「そりゃまあ、少しは……」フイ

佐々木(…………あー、これは悔しい)

佐々木(肯定されて、嬉しいと思っている僕が、とても悔しい)

キョン「そんなことより、お前にその気はあるのかよ」

佐々木「いや、今のところ興味はないね。少なくとも彼と呼吸を合わせるのは難儀しそうだ」

キョン「あれ? 何だ、そうなのか?」

佐々木「……ん、何か引っかかることでも?」

キョン「いやだって、お前は告白に対しての返事を悩んで、俺に打ち明けたんじゃ」

佐々木「それは違うよ。僕はあくまで告白されたという事実を――」

キョン「事実を、なんだ?」

佐々木「あ、いや、ごめん。ちょっと待って」

キョン「……ん?」

佐々木(ええと、そもそも僕はどうしたかったんだっけ)

佐々木(ああ、そうだ。告白されたって言ったら彼が信じるか試してみようと思って)

佐々木(……いや、違うか。彼がその話を聞いたら、どう反応してくれるのか興味があって)チラ

佐々木(なら、こうして反応は見れたわけだし、うん、もう目的はとっくに果たしてるじゃないか)フゥ

キョン「何さっきからぶつぶつ言ってんだ?」ズイ

佐々木「うわっ!?」ビクッ

キョン「ちょっ、そんなに驚くことないだろ」

佐々木「……あ、いや、すまない。ちょっと考え事をしていて」

キョン「……顔赤いぞ?」

佐々木「え……、あれ、おかしいな。熱でもあるのかな」

キョン「ん、どれどれ?」スッ

佐々木「……ッ」ヒョイ

キョン「……って、おい、なんで避けんだ」

佐々木「大袈裟にされるのは好きじゃないんだ。ごめん、少し席を外させてもらうよ」スク

――ガチャ


佐々木「……ふぅ」

佐々木「まったく、らしくないな。動揺しすぎだ」

佐々木(……やはり僕は凡人であるようだよ、キョン)

佐々木(突発的な事態に反応しきれず、思考停止に陥ってしまうんだから)

佐々木「…………」

佐々木(結局のところ、僕はどうしようもなく臆病で、煮え切らない性分なんだろうね)

佐々木(それだけに、目があることを確認できたのは僥倖か)

佐々木(後はほんの少しを踏み出す勇気)

佐々木(今の関係を壊すのは、怖い。とても怖い、けど)

佐々木(僕が僕自身を追い込まないと、望む物はいつまでも手に入らない)

佐々木「……人気者の先輩からの告白を断るにあたっては、それなりの建前が必要なんだよ、キョン」ボソ

佐々木(だからごめん。悪いけれど、君を利用させてもらうね)

キョン「…全く、あいつはやっぱり良くわからん」

国木田「どうしたのキョン、難しい顔しちゃって」

キョン「ああ国木田か…ちょっと佐々木と話しててな」

国木田「ふーん…恋愛相談?」

キョン「まあそんなとこだ、察しがいいな」

国木田「えへへ、キョンに褒められた」
「それで、どんな内容だったの?」

キョン「それは…流石に話せない」
「国木田を信じてないわけじゃないが、口外すべきじゃない」

国木田「それもそうだね、自分の恋愛相談は相手以外には知られたくないし」

キョン「そういうことだな」

まだ来ないのか

そんなルートはない

撃沈か

まだ保守してたのか

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