響「妖精の呼子笛」 (110)

響(プロジェクトフェアリーが結成してから、どれくらいだろう)

響(フェアリーは、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進を続けている)

響(今が頑張り時)

響(だから、大きな見落としをしていることに)

響(気がつかなかったのかな)

-961プロ-

美希「ねぇねぇ、最近ミキたち、すっごく調子いいって思わない?」

貴音「ええ、そうですね。素晴らしきことです」

響 「うんうん、自分もそう思うぞー!」

響 「ライブもCDの売り上げも調子いいし」

響 「黒井社長も、いつもより多めに”ウィ”って言ってた気がするさー」エヘヘ

美希「えー!それミキもみたかったの!」アハハ

貴音「面妖な...」フフ

貴音「ですが二人とも。油断は禁物ですよ」

響 「むぅ...それくらいわかってるさー」

美希「わかってるの!だって来月は、待ちに待ったアリーナでのライブなの!」

響 「黒井社長も言ってたぞ”ウィ、今が頑張り時だ。せいぜい気を抜かずにやりたまえ。ウィ”って」

美希「黒井社長黒井社長って...響は黒井社長のこと好きなの?」

響 「ち、違うぞ!黒井社長は、自分をアイドルとしてデビューさせてくれたから恩を感じてるだけで...」ワタワタ

貴音「ふふ...冗談ですよ、響」ギュ

響 「え、そうだったのか?...もう!!からかわないでよね!」

美希「あはっ、ごめんなのー」

貴音「さて、そろそろだんすれっすんの時間ですね」スッ

響 「あっ、ホントだ!急がなきゃ!」

美希「よーし、響!今日は負けないよ!!」

響 「なにを~~~、自分こそ負けないもんね!」

貴音「ふふ...仲良きことは美しきかな、ですね」

響 「貴音にだって負けないんだからね!」

美希「ミキだって!」

貴音「...面妖な」

響 「あははっ...!よしっ、それじゃあ早く行こう!」

貴音「ええ」

美希「れっつらゴーなの!」

-レッスンスタジオ-

<♪~~♪♪~~♪♪>

美希「カッコ悪いわよ アタシを墜とすの バレてるの~♪」タンタン

貴音「やっぱあんたには高値の花ね~♪」タンタン

響 「Thrillのない愛なんて~♪」タンタン



黒井「...どうですか?うちのフェアリー達は」

トレーナー「ええ。三人とも素晴らしい逸材です」

トレーナー「私から教えられることも、じき無くなるでしょう」

黒井「フッフッフッ、それも当然」

黒井「この私が自ら発掘したアイドルだ。この程度で満足してもらっちゃ困る」

黒井「もっと先へ...高木の悔しがる顔が目に浮かぶようだ...ククッ」

黒井「ハーーーーーーーーーッハッハッハッハッハッハッハっ!!!」

トレーナー(やだ、この人ちょっと怖い...)

響「まっすぐすぎて 反吐が出るものね~」♪ 

響「...おっと」フラ


ズキン


響「痛っ」

響(ひだり膝が...ひねったか?)チラ

響「.....?」

響(あれ、もう痛くない...。ひねった...わけじゃないみたいだ)グニグニ


美希「響ー、さぼってると置いてっちゃうのー!」タンタン

響「な、なにをー!ちょっとミスしちゃっただけさー」スタッ

響(ライブまで止まってなんていられないさー!)


<♪~~♪♪~~♪♪>

・・・・・・・・・・・・・・

-翌月 アリーナ-


黒井「さあ、いよいよ今日はアリーナでの初ライブだ」

黒井「お前達はそれぞれ未来のトップアイドルに相応しい逸材として」

黒井「十分な投資をしてきたつもりだ」

黒井「今日はその成果を、ギャラリーに存分に見せつけてやるが良い!」


響 「黒井社長!自分、精一杯頑張るぞ!!」グッ

美希「ミキがキラキラするところ、みんなにい~っぱい見てもらうの!」

貴音「練習で培ったものをすべて出せるよう、わたくしも全力を尽くします」

美希「終わったらみんなでいっぱいおにぎり食べるの!」

響 「よーし、じゃあ終わったら自分、ポーク卵おにぎりを作って美希にご馳走するぞ!」

美希「えっ、なにそれ!すっごくおいしそうなの!」

響 「沖縄のローソンで売ってるおにぎりさー。暖めて食べるんだぞ!」

貴音「では響、わたくしにはらぁめんを作ってくださいね」

響 「わかったぞ!味は何味がいい?」

貴音「そうですね...味噌、いえしょうゆ、いや、とんこつ...魚介すぅぷも......」じゅるり

貴音「........」ブツブツ

響 「...ら、ライブが終わるまでに決めておいてね」



黒井(ライブ前にこのリラックス。さすが、私が見つけた金の卵達だ)

黒井(高木よ、せいぜい見ているがいい。私のアイドルが遥かな高みへ舞い上がる様をな!)

黒井「...ヒヒッ、クハハハハハハ!」

三人「 ! 」ビクッ

-ステージ-

美希「みんなー!!今日はプロジェクトフェアリーのライブに来てくれて、ありがとーなのー!!!」

ウォオオオオオオォォォォ


貴音「わたくし達と共に過ごすこの時が、素晴らしいものとなりますよう」

響 「自分たち、全力で歌って踊るからな!みんなしっかり見てて欲しいさー!!」

ヴォォオオオオオオォォォォアアアアアアアアアア!!!!!



P「凄い熱気だな...」

春香「う、うらやましいですね~...」

千早「そうね...こんな大舞台でたくさんの人に自分の歌を聞いてもらえるなんて」

伊織「なにいってんのよ、私達だっていつかあの場所に立ってやるんだから!」

P「...そうだな、みんなまとめてトップアイドルにしてやるさ!」

P「そしていつか、みんなであの場所に立とう!」グッ



美希「じゃあいくよー!!ミュージック、スタート!!!!」

<♪~~♪♪~~♪♪>

美希「カッコ悪いわよ アタシを墜とすの バレてるの~♪」タンタン

貴音「やっぱあんたには高値の花ね~♪」タンタン

響 「Thrillのない愛なんて~♪」タンタン


響 (やっぱりきょうも体が軽い!)クル

響 (自分が思う以上に体が動く!気持ちいい!)ザッ

響 (今の自分なら、何だってできるぞ!!!)タン


ズキン


響 (っ!痛・・・!)

響 (ひざが、痛い?また?...でも)


美希「カッコ悪いわよ その気にさせようと 頑張るの~」♪

貴音「本に書いてある 計画Cね~」♪



響 (...まだまだ!)

響「まっすぐすぎて 反吐が出るものね~」♪ タンタン


ハイ! ハイ! ハイ!
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

貴音「逢いたくても すぐには逢えなくて~」♪

ワウォオオオオオオォォォォ!



響 「いつまでも走りたいね 視線が釘づけ 黒い犬~」♪

ヴォォオオオオオオォォォォ!




美希「今日はゲストとして、ミキたちの会社の社長がきてくれてるの~!」

ウォオオー



貴音「君と過ごす 初めてのクリスマスday~」♪

ヴァアァォオオオオオオォォォォ!

・・・・・・・・・・・・・・


美希「みんなー、今日はありがとーなのー!!」

貴音「まこと、夢のような時間でした...」

響 「みんなー!次の曲が最後だぞー!最後まで応援よろしくねー!!」

響 (ラスト一曲...いけるぞ!)ズキズキ


美希「最後の曲は、”KisS”なの!いっくよー!」


三人「「「Ready?」」」


ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

美希「絡まる吐息 交わる視線 Uh…Come baby Come baby 」♪ タンタン


貴音「ねぇKiss Kiss Kiss 何十回も~」♪タンタン


響 「止めないKiss your kiss ~」♪タンタン


響 (痛い...けど、今までで一番良いダンスができてる...!)ズキズキ

響 (考えなくても体がどんどん動く...もっと...この先で、何かを掴める気がする...!)

響 (もっと先へ...もっと踊りたい!)タンタン


美希「さあKiss Kiss Kiss ~」♪タンタン

貴音「堕ちてくKiss your kit~」♪タンタン

響 「息ができなくていい 死んでもいい~」♪ タン

響 (・・・!!!)


タン



ボキン

響(あ...)グラッ


響 (何かが壊れる、音がした)


貴音「....!?」

美希「...!!!」



響 (貴音、美希...)

響 (あれ、おかしいな)


響 (空が......暗い...)



ザッ

-----------------------------


響「......っ!!!」ハッ

響「.........」ガバッ

響「....はぁ...はっ...はぁっ...」


響(ここ...自分の部屋...)

響(今のは...夢?)


響「.............」


響(また、あの日の...)モソモソ


響「...ッ」ズキ

響(...夢じゃない)

響(自分の左ひざは......)

-----------------------------------

-病院-

医師『手術は成功です』

美希『ほんとなの!?』バッ

貴音『っ!』パァ


医師『ええ、傷もほとんど残りません』

医師『...ですが』


医師『開いてみてわかったことですが想像以上に患部のダメージがひどく...』

医師『リハビリが順調に行けば一般の生活に支障はないと思いますが...』



医師『激しい運動は控えてください』



響 『...!』ビクッ

美希『...え』

黒井『それは』

黒井『もう、ダンスはできないと、いうことですか』

貴音『黒井殿っ!やめてください!』

医師『.......』

美希『そんな......』



響 『...........』

-----------------------------------

響 「......」

響 「事務所、行かなきゃな」

いぬ美「くぅーん」

はむ蔵「ぢゅぅ,,,」

響 「ははっ、そんなに心配しなくても大丈夫さー」

響 「松葉杖をもって...よしっ」

響 「じゃあみんな、行ってくるぞー」カツン


バタン

-961プロ-

響 「....」カッカツッ

女性社員「おはよう、響ちゃん」

響 「あ、はいさーい」

女性社員「階段のぼるの大変そうね、補助しなくて大丈夫?」

響 「うん、これもリハビリだからね!なんくるないさー!」ニコ

女性社員「そう、頑張ってね」

響 「ありがと!」


カツン 

カッ

響「....むぅ」

カツン 

カツン カツン

響 「よっ、ほっ」

カツン カツン

響 「む」

カツン カツン

響 「...ふぅ、ようやく上りきったさー」

響 「...ん?」



男性社員「...クソ、黒井の野郎!」スタスタ

男性社員「業績不振につき減俸だと!ふざけやがって」

男性社員「俺がどれだけお前の会社のために身を粉にして働いてきたと...おっと」


ドンッ


響 「わっ」

響 「たたっ」トッ

カク

響 「あ」

響 (あ、足がうまく...!)ガクン


ぐら


響 (た、たしか後ろ、階段...)

響 (落ち......!)

ドン

響 (.....!)目ギュー

響 (...って、あれ、痛くない...?)

響 「...ん」オソルオソル


貴音「響、大丈夫ですかっ!?」ガシッ

響 「た、貴音!!」

響 「貴音が支えてくれたのか...ぁ、ありがとう」

貴音「怪我にならなくて何よりです」ニコッ


貴音「さて」

貴音「...そこの者!響を突き飛ばしておいて謝罪もなしとはどういうことですか!」

男性社員「....チッ、うるせぇな、ちょっとぶつかっただけだろ!」

貴音「...なるほど、上等です」

貴音「あなたには少し、お灸をすえる必要があるようですね...!!」ゴゴゴ

響 「わ、わー!貴音!自分大丈夫だから!」ワタワタ



男性社員「しまった、フェアリーの奴らか...」コソコソ

美希「逃がさないのっ」バッ

男性社員「うぉっ」

響 「美希!」

響  「美希まで、こんなところでどうしたんだ?」

美希「響を迎えに来たにきまってるの!でも、こんなことになってるとは思わなかったな」

響 「ちょっとぶつかっただけだぞ...だから、その人を通してあげてよ」

美希「響は甘いの!もう少しで響がキズモノになっちゃうところだったんだよ!」プンプン

貴音「まったくです...。響に何かあったら、わたくし、正気でいられるとは思いません」

美希「そうなの!だからこの男には、少しお説教が必要だって思うな!」


男性社員「.......ハッ!」

男性社員「キズモノになっちゃうだと?何言ってんだ?」


男性社員「もうキズモノみたいなもんだろうが!!」


響 「...っ!!」ビク

男性社員「知ってるんだぜ、踊れなくなったんだろ!?」

男性社員「ダンスが売りのアイドルが踊れなくなったんて、お笑い話だよなぁ!」

男性社員「黒井社長もせっかく育てたアイドルがポンコツになってさぞがっかりだろうな!」

男性社員「ざまぁみろだ!」ハハッ




響 「........」


美希「....お前」

美希「絶対ゆるさないの」ワナワナ

美希「...貴音、とめないでよね」ツカツカ


貴音「ふふ...その心配は不要です。美希」

貴音「怒りを抑えられないのは、わたくしも同じ」ワナワナ

貴音「恥を知りなさい。この...下郎めが!!!」ツカツカ

響 「やめてっ!」


貴音・美希「「っ!」」

響 「やめてよ、二人とも」

貴音「響...」

響 「自分、大丈夫だから...」フルフル

美希「で、でも、響震えてるの...」


響 「大丈夫だってば!それより、二人が自分のために暴力を振るう方がいやだぞ」

響 「それにほら自分、完璧だから...」ニッ

響 「ねっ、だから、やめてほしいさー」


美希「...そこまでいわれたら、何もいえないの」

貴音「ええ。響はまこと、心優しいのですね」ギュゥ

響 「わぷっ、苦しいよ、貴音~」ムギュ

男性社員「...けっ!なんだこの茶番はよ!笑わせるぜ」

美希「ねぇそこの人」

美希「さっさとミキたちの前から消えて欲しいの」

男性社員「っ!...ちっ」スタスタ



男性社員「くそっ!なんだってんだよ」ズカズカ

???「おい待ちたまえ、そこの君ィ」

男性社員「なんだよ!....っ、黒井社長...!」

黒井 「やあやあ、おはよう。今のやりとり、見させてもらったよ」

黒井 「うちの可愛いフェアリーちゃん達に、随分と心無いことを言っていたみたいだね」

男性社員「そ、それは...」

黒井 「減俸では甘かったようだな。私の会社に君のような人間は要らない」

黒井 「君は、明日から来なくていい」

男性社員「そ、そんな...」ガク


黒井 「.........さて....」

-打合せ室-

美希「もう、腹立たしいったらないの!」プンプン

貴音「まったくです!あのような男がいたとは!」プンプン

響 「まぁまぁ二人とも、落ち着いて...」

響 「あ、でも、自分のために怒ってくれて、ありがとうね」ニコッ

美希・貴音「「響ぃ....」」ガバッ

響 「わっ、わっ!!」 バターン


響 「ちょ、ちょっと二人とも、苦しいっはなれてっ」

美希「や!なの」ギュー

貴音「.....」ギュー

響 「もう、離れてってばぁ」ワタワタ

響 「......」

響 「もう、しょうがないなぁ」

響 「ありがとう...ふたりとも」ギュー

響 「そういえば、今日は二人にお土産があるさー」

美希「えっ!なになに!」バッ

響 「美希には...」ゴソゴソ

響 「はい!これ、約束してたポーク卵おにぎり!」

美希「わー!すごい、でっかいの!」キラキラ

響 「沖縄のローソンだと、おにぎりを買ったら”温めますか?”って聞かれるんだぞ!」

美希「へー!」

響 「お客様、あたためますか?だぞ!」ニヘ

美希「おねがします!なの!」ニヘ

貴音「......」ウズウズ

響 「はいっどうぞ!」

美希「ありがとうなのー!」ハムッ

美希「わっ、これすごくおいしいの!シンプルな味だけど、何だか懐かしいって感じなの!」

響 「そっか!喜んでくれてうれしいぞ!」ニヘ

貴音「....響っ!ひびきっ!わたくしにはっ、わたくしにはないのですかっ!」

響 「わっ貴音落ち着いてっ...もちろんちゃんとあるさー」

美希「がっつくなんてみっともないの」モグモグ

響 「貴音にはこれ!ラーメンバーガー!」

美希「ラーメン、ばーがー?」

響 「さすがにラーメンは持ってこられなかったからね。バーガーにしてみたぞ!」

貴音「面妖な...!」ワクワク

美希「♪」モグモグ

貴音「♪」モフモフ

響 「......♪」ニコニコ

響 (友達と、黒井社長がいて...)

響 (...自分は幸せ物さー)


コンコン

響 「あ、はい、どうぞー」


ガチャ

黒井「ウィ、響ちゃん、いるかい?」

響 「あ、黒井社長!はいさい!」

黒井「ああ、ちょっと話があるんだがいいかな?」

貴音「......」ピクッ

美希「......」ピクッ

響 「ん、了解さー!すぐ行くね!」ガタッ

響 「じゃ、二人ともちょっと行ってくるね」カツッ

貴音「あ、響....」

響 「ん?」クル

貴音「...いえ、何でもありません。ご馳走様でした」

美希「おいしかったの!」

響 「えへへ、ありがと!じゃあ行ってきまーす!」


ガチャ


二人「......」

-社長室-

響 「どうしたの?二人きりで打ち合わせなんて」

黒井「.......」

響 「......なんてね、本当は自分、わかってるさー」

響 「.......」

響 「これからのこと、でしょ?」

黒井「...そうだ」

黒井「医師に確認したんだが、こういうケガというものは手術したあと」

黒井「リハビリが大変なんだそうだ」

黒井「手術で落ちた筋力を回復させるのに軽く半年」

黒井「元のようにダンスができるようになるには」

黒井「通常の何倍ものリハビリが必要だという」

響 「.......」

黒井「今、響ちゃんがリハビリを頑張っているのは知っている」

黒井「だが、ちょうど伸び盛りのこの時期に、1年のブランクというのは致命的だろう」

黒井「そして......1年という期間は、業界が新たなアイドルを見つけるには十分すぎる時間だ」

黒井「できれば応援したい...だが、こうなった今となっては」

黒井「このまま君をアイドルとして売り出すことは難しい」

響 「っ!」

黒井「そこで考えたんだが」

黒井「プロジェクトフェアリーは解散」

黒井「響ちゃんは歌手として、ソロデビューするというのはどうだろう」

黒井「もちろん、他の二人もだ」

響 「え.....」

黒井「王者は孤高であるべきだ」

黒井「フェアリーは常々、馴れ合いが過ぎると考えていた事もある。......いい機会だろう」

響 「黒井社長、それは」

黒井「響ちゃんはダンスだけじゃなく、歌唱力も十分ある」

黒井「それは、自身のたゆまぬ努力の結晶に違いない」

響 (.....サイ)

黒井「これから努力すれば、もしかしたら歌手として大成することも可能かもしれない」

響 (...ルサイ)

黒井「このまま君の才能をつぶしてしまうには惜しい」

黒井「君には期待しているのだからな」


黒井「響ちゃんなら、ソロでもやっていけるさ」


響 (ウルサイ!)



響 (.....でも)

黒井「悪い話じゃ内と思うんだが...どうだね」

響 「.......」


響 (嫌なのに...なんで)


響 「ありがとう、黒井社長」

響 「心配かけてごめんなさい」


響 「考えて、見ます」ニコッ


響 (自分...なんで、笑ってるんだろう)

響 「...失礼します」カツ

黒井「ウィ」


ガチャ


黒井「......」

黒井「......」

黒井「...クソッ!」ダン

黒井(歌手で再起...詭弁だな)

黒井(この世界は、彼女の歌だけで生きていけるほど甘くはない)

黒井(ダンスのない彼女など、この世界では木っ端のようなものだろう)

黒井「......」

黒井「...それは困る。彼女達にはかなりの投資をしているのだ」

黒井「もっと利用させてもらわねば困るのだよ...」カチカチ

黒井「.....」カチカチ

-打合せ室-


ガチャ

貴音「っ!響!」パッ

美希「おかえりなさいなの!」

響 「ん、ただいまー」カツ

美希「...何もなかった?黒井社長にひどいこと言われたりしてない?」

響 「.....ッ!」


響 (フェアリーが解散なんて、言える訳ない...)


響 「......ううん、たいしたことは言われなかったさー」

響 「ウィ、リハビリの調子はどうだー、とか、そんな感じだったよ」ヘラ

貴音「そうでしたか...」ホッ

響 「......」

響 「あ、自分そろそろリハビリの時間だから行かなきゃっ」

美希「そうなの?あ、じゃあミキもついてくっ!」

響 「だ、だめっ!!」

美希「っ!」ビクッ

美希「え...?」

響 「あ...」

響 「ご、ごめん...」

響 「でも、今日はちょっと一人でやりたい気分なんだ」

響 「だからごめん、また今度ね」

美希「う、うん...」

響 「...ごめん」

響 「じゃ、行ってくるさー」カツン

貴音「ええ、お気をつけて。響」


ガチャ


美希「...響?」

貴音「......」

響 「.........」カツッカツッ

響 (美希にどなっちゃった...自分、最低だぞ)

響 (後で、ちゃんと謝らなきゃ)

響 「またおにぎりでも作ってあげるさー」カツッ

響 「.......」カツン

響 「さて...と」


カツッカツッ

-打合せ室-


美希「響、なんか様子がおかしかったの...」

貴音「ええ。無理矢理にでも付いていった方が良かったのでしょうか...」


コンコン


美希「あ、はーいなの」


ガチャ


黒井「ウィ、響ちゃんいるかい?」

貴音「響なら、先程りはびりに向かいましたが」

黒井「.......何?そんなはずはない」


黒井「今日はリハビリの予定など入っていないぞ」


美希・貴音「!」

貴音「黒井殿、それは真ですか!」

黒井「ああ、間違いない。彼女のリハビリについては私も報告を受けているからな」

黒井「当然、スケジュールも把握している」

黒井「今日は、休みのはずだ」

美希「っ!」ピポパ

美希「...........だめ、つながらないの!」

貴音「響!!」ダッ

美希「ミキも行くのっ!」


ガチャ

ダダダダダダ



黒井「......」

タタタタタ...

貴音「響...どこにいるのです、響...!」タタタ

美希「待つの、貴音!」タタタタタ

貴音「美希!」

美希「やみくもに探しても見つからないの!響の行きそうなところをジューテン的にあたった方が良いって思うな!」

貴音「響が...今の響が向かいそうなところ...」

美希「響、なんだかちょっと思いつめてるみたいだったの」

美希「だから、踊れなくて辛いのかなって......っ!!!もしかして...!」ハッ


美希・貴音 「「スタジオ!!」」


貴音「......だとしたら、一刻の猶予もありません!急がねば!!」ダッ

美希「響......!」ダッ

タタタタタタ...

.........

-レッスンスタジオ前-

美希「...はぁ、はぁ...」

貴音「ここにいるのですか、響...!」


<♪~~♪♪~~♪♪>


美希「っ!中から聞こえてくる音...これ、オーバーマスターのメロディなの!」

貴音「っ!!」


バンッ


<♪~~♪♪~~♪♪>


貴音(中央にだれか倒れて...あれは)


響 「...うぁ........ぁ......っ...」ブルブル


貴音「ひびきっ!!!」

美希「響!大丈夫!!?」

貴音「あぁ、響...どうしてこんな.......!」

響 「う...ぁあ...た、かね...みき...」

美希「響!しっかりして!響!!」

響 「貴音、美希...」ギュ

響 「自分の...足」ズキ


響 「ポンコツになっちゃった...」ズキンズキン


響 「ダンス、できない...」

響 「タップもターンも...!」

響 「ステップも......!!」

貴音「ひび...」

響 「いらない.....」ポロ

貴音「!」


響 「ダンスができないなら」ポロポロ


響 「こんな足いらない!!」ボロボロ


響 「うぁああああああああぁ!!」ボロボロ


貴音「....っ!」ギュウッ

美希「響...」




黒井「.......」

.......

-夜-


-美希の家-

美希「....ねぇ、お姉ちゃん」

美希「お医者さんの知り合い...いない?」

美希「...そっかぁ」

美希「........」

美希「...え、調べてくれるの!」

美希「ありがとう!お姉ちゃん大好きなの!」

-貴音の家-

貴音「...じいや」

貴音「お願いがあるのですが...」

貴音「なんと、もう調べは付いている、と」

貴音「ふふ、さすがはじいやです」

貴音「...ありがとう、じいや」

-翌日 病院の屋上-


響 「.......」ボー

響 (......)

ドタドタ

響 (......?)

???「あー、おわったおわった!」

響 「!」

響 (この声...765プロの)

P 「あれ、君は...」

響 「変態プロデューサー...!」ケイカイ

P 「おいおい、その誤解は解けたはずだろ?そんな風に呼ばないでくれ」

響 「あ、ご、ごめん、つい...」シュン

P 「いや、いいけど....それより響は何してるんだこんなとこで...って」

P 「おい、どうしたんだその足」

響 「...あはっ」

響 「うまくなりたくて頑張ったのに」

響 「頑張りすぎてケガしてできなくなっちゃうなんて」

響 「バカみたいさー」


P 「......」

P 「おいおい、響は完璧なんだろう?」

P 「バカなんかじゃないさ」

響 「...でも、自分もうアイドルできないって」

P 「......」

P 「俺の知っている響は、そんなことではあきらめたりしない」

P 「足が折れようが靭帯ぶっちぎれようが、ステージでみんなに夢を与える」

P 「そういうガッツを持った奴だって、思ってたんだけどな」

響 「いや、さすがに靭帯が切れてたら無理だぞ...」

P 「ゴホン...まぁ、それは言いすぎにしてもだ」

P 「うちのアイドルが今のお前の姿を見たら、がっかりするぞ」

P 「IUで私達765プロを正面から打ち負かした響が、こんなことで諦めてしまうなんてってな」

響 「...っ」ドキ


P 「......春香たちはまだ諦めてなんていない」

P 「いつか、お前達フェアリーを倒すんだって、今も一生懸命頑張ってる」

響 「...自分」

P 「響、戦え」

響 「!」

P 「可能性が0%じゃない限り」

P 「戦い続けろ」

P 「そうすりゃかならず」

P 「道は拓かれる!.....なんてな」

響 「プロデューサー...」


P 「...キツい道のりになるだろう」

P 「それでもやるか?」


響 「...やる!」

響 「自分、やってやるぞ!!」

P 「よし!!その意気だ......っと」チラ

P 「響、来客みたいだぞ」

響 「えっ!」クル



黒井「ウィ」ビッ



響 「黒井社長!」

P 「それじゃ俺はこれで。頑張れよ、響」

響 「うん、ありがとうプロデューサー!...自分、ちょっとだけ見直したぞ!」

P 「ははっ、ありがとう」

黒井「...」

P  「どうも、お久しぶりです」

黒井「貴様......まだあの男の下についているのか」

P  「はい。次こそは負けませんよ」

黒井「...フン、何度つぶしても這い上がってくるその根性だけは褒めてやろう」

黒井「だが、何度やっても結果は同じだ」

黒井「頂点は我が961プロが誇る妖精達のモノだ」

黒井「ククク、貴様達のアイドル、何度でも叩き潰してやろう」

黒井「その心が折れるまでな......ハーッハッハッハ!!!」

P  「...」


P (...なるほど)

P (響をクビにするつもりはないのか。...安心した)ホッ

P 「次の戦い、楽しみにしていますよ」

P 「では、失礼します」ザッ

黒井「...フン」

黒井「...おっと、私としたことがレディを待たせてしまうとは」

黒井「すまなかったね響ちゃん」

響 「う、ううん...ねぇ、黒井社長」

響 「どうしたの?いつもより楽しそうだけど」

黒井「...ウィ、そんなことは..........いや、そうかもしれないな」

響 「?」

黒井「まぁいい、それより響ちゃん」

響 「なんだ?」



黒井「ドイツへ行こう」



響 「....?」キョトン

響 「....?」

響 「......」

響 「え!?」


黒井「ドイツだ」


響 「ど、ドイツ!?ってなんでだ!!?」ワタワタ

響 「自分、沖縄で育ったけどドイツには行ったことないぞ!」

響 「ももももしかして自分、売られちゃうのか!?」

響 「右も左もわからない、言葉も通じない土地で、悪いクスリの中毒にされて...」ガクガク

響 「うぎゃーー!!そんなのやだぞーー!!助けてにぃにー!!」ビャー


黒井「おい待ちたまえ!そうではない!」

響 「...うが?」

黒井「ドイツに響ちゃんのひざを直してくれる医者がいることを探し当てたのだよ」

黒井「有名なサッカー選手を何人も治療している名医らしい」

黒井「貴音ちゃんや美希ちゃんも、偶然同じ医者に行き当たったらしくてな」

黒井「キミをドイツに連れて行ってやってくれと、今朝からうるさくてかなわん」

響 「社長...?」



黒井「961プロに敗者は要らない」


響 「!」ビクッ


黒井「......だが、響ちゃんはまだ敗者ではない」

黒井「それに、せっかく育てた金の卵をこのまま手放すのは惜しい」

黒井「痛んでしまってもいまだ金の卵には間違いないのだからな」

黒井「ドイツへ行け。手術代は私が持とう」

響 「いいの!?」

黒井「ああ...だが!」ビシッ

響 「っ!」

黒井「...だが、これはただ与えるだけではない。未来への投資だ」

黒井「君達にはすでにかなりの投資をしているのに、さらに今回の投資。わかっているな?」

黒井「この金は必ず、何倍にもして返してもらおう」

響 「何倍にもして...」ゴクリ


黒井「1年後、もう一度フェアリーを結成する」

響 「!」パッ


黒井「当然、半端な結果は許さない」


黒井「フェアリーでトップアイドルになること。それが条件だ」

黒井「できなければ,,,,そうだな、手術代はどんな手を使ってでも返済してもらうとしよう」

黒井「...この条件が飲めるかね?」

響 「黒井社長...!!!」

響 「...自分、やるぞ!」

響 「絶対リハビリを成功させて」


響 「アイドルに返り咲いてやるさー!!」


黒井「ウィ....」ビッ



響 (貴音、美希、黒井社長、プロデューサー、にぃに、あんまー...)


響 (自分は、いろんな人に支えられて輝いてる)


響 (ひとりじゃない)


響 (みんなの気持ちが自分たちをうごかしてくれるんだ!)

..............

-半年後-


貴音「...」カタ

パサッ

貴音「....?」ペラ

貴音「!!!」


ダダダダダ


貴音「美希!美希!響からまた手紙が来ましたよ!!!」

美希「ほんと!?みせてなの!」ババッ

貴音「あわてないでください」バッ

貴音「あわてず、そっとあけるのです、破れてしまいますからね」ソー

美希「そんな宝物を扱うみたいにしないでなの!はやく!はやくなの!!」

----------------------

響 『はいさい!貴音、美希、!元気?』

響 『手術は無事成功して、今はリハビリにはげむ毎日だぞ!』

響 『こっちでの生活にも、だいぶ慣れたよ』

響 『水瀬財閥の系列のなんかがあるとかで、伊織がやよいを連れて時々遊びに来るんだ」

響 『財閥ってすごいね!』


響 『あ、そうだ!この間、半年振りにスタジオに行ったよ!』

<♪~~♪♪~~♪♪>


タンタン


「カッコ悪いわよ アタシを墜とすの バレてるの~♪♪」タンタン


<♪~~♪♪~~♪♪>


「やっぱあんたには高値の花ね~♪」タンタン


<♪~~♪♪~~♪♪>


「覚えておけば? Come again! ♪♪」タタンッ





響 『P.S  自分、アイドルが...フェアリーが大好き!!!』




ホイッスル!のエピローグを読み直してたら、

風祭君と響って似てるよな。背がちっちゃいとこが。

ってことで組み合わせてみました。楽しかったです。

ありがとうございました。

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