唯「う、憂がなんか別の人になっちゃった!」(264)

カチャカチャ

憂(今日もご飯ができました♪)


憂「おねーちゃーん。ごはんできたよー?」



憂「…あれ?」



憂「…」




唯「…」カリカリカリカリカリ

ガチャ

憂「お姉ちゃん?ご飯できたよ?」

唯「…」カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ

憂「…」

唯「…~!」カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ ポキッ

憂「お、お姉ちゃん?ご飯だよ?」

唯「…あ、憂。後で食べるね」

憂「え!?ぐ、具合でも悪いの!?」

唯「そうじゃないけど…ちょっと出てて」

憂「…うん」

バタン

憂(…)

― 食卓

憂「…お姉ちゃん。おいしい?」

唯「…うん。おいしいよ」


唯「ごちそうさま」

ガタン

憂「…」


………

― 唯の部屋


唯「…」カリカリカリカリカリカリカリ

サラサラサラサラサラ

カリカリカリカリカリカリカリ

カリカリカリカリカリカリカリ ポキッ


唯「…あ、アイス食べたいな。冬なのに」

ガチャッ

憂「お姉ちゃん今アイス食べたいって言った?」

唯「おおっ、憂」


憂「はいこれ」

唯「あー…憂。

お姉ちゃんは今アイスクリームのハーゲーダッシュが食べたいの」

憂「!」

唯「このカロコン75はラクトアイスでしょ」

憂「ハーゲーダッシュ、い、今買ってくるね!」

ダダダダッ ガチャ バタン


唯「あっ…えっ…」

唯「…あれ?」


憂「行ってきます!」

バン!

唯「行っちゃった…」

― 外

ゴオオオォォォン

ヒュウウウウ…


憂「はぁ…はぁ…」タッタッタッ


― コンビニ

姫子「ありがとうございましたー」

ガーッ

憂「はぁ…寒いなぁ…」

キュウウゥゥン

男「あ、F-15だ」

男A「スクランブルかな?」

憂「…お姉ちゃん」


ドン

男「あ、失礼」

憂「ご、ごめんなさい!」

男「大丈夫ですか?」

憂「だ、大丈夫です!」ダダッ


男A「あー、気の毒に。お前の面構えがキモいからだぞ」

男「うわぁ傷つくなぁ…」

憂(早く帰らなきゃ…)タッタッタッ

― 居間

テレビ『―ラQ、来週は『悪魔ッ子』をお送りします』

唯(…なんでさっきあんなこと言っちゃったのかな?)

唯(なんでかやたら憂に意地悪したくなったし…)

唯(帰ってきたら憂と一緒にアイス食べよー)


ガチャ バタン

唯「あっ、お帰り!」

憂「はい」

唯「あ、ありがとう」

憂「どういたしまして」

唯(憂…?)

唯「憂、さっきはごめんね~」

憂「なんのことだっけ?」

唯「寒かったでしょ」

憂「そう?気にしてないよ?」

唯「あ、でも…」


憂「アイス溶けちゃうよ?」


唯「あ、うん」

― 深夜

憂「…」

唯「といれー」ガチャ


憂「…」

唯「わっ、わわわ。憂!?」

憂「どうしたの?」

唯「と、トイレに行こうと思って」


憂「そう。おやすみ」ニコッ

― 朝

唯「あれ?朝ご飯は」

憂「…朝ご飯?」

唯「え…うん…あれ?今日は憂作らなかったの?」

憂「あ、そうなんだ…ごめんね。今日は作っていないんだ」


唯「あ、お弁当も?」

憂「うん。ごめんね」


唯「あ…うん。じゃ、じゃあ、わ、私、学校行くね」

憂「いってらっしゃい」

唯「あ、あれ?憂。学校行かないの?」

憂「学校?…あ、行くんだ…?」

唯「そ、そうだよ。それに憂…昨日出かけた時のまんまだよ格好…」

憂「あ…そっか…気にしないでいいよ…先に行って…」

唯「う、うん。じゃ。じゃあ先行くね」

バタン!

………

タッ タッ タッ タッ

唯(憂じゃない…)


唯「う、憂がなんか別の人になっちゃった!」

― 放課後


律「という相談を受けたんだが…なぁ…実際、どうなんだ?」


和「ええ。今朝見かけたんだけどなんとなく違和感があったわね。

だいたい遅刻ギリギリで学校に来たのが不思議だったのよ。

伊達に幼稚園から憂見てないわよ」


唯「お弁当も作ってくれないし、それどころか朝ご飯も作ってないんだよ!?」

律「でもそれは唯が意地悪したことへの仕返しかも知れないぞ」

和「でも憂に限ってそんな事あるかしら?」

唯「なんかおかしいんよ!絶対あれは憂じゃないよ!」

律「でも憂ちゃんじゃなかったら誰が―」


ガチャ

律「お、グッドタイミング」

梓「はい?」

唯「ねぇ!あずにゃん憂今日なんかおかしくなかった!?」


梓「…え?そういえばなんかわからないけど…喩えようのない違和感がありましたね」


紬「…ねぇ。DNA鑑定とかしてみる?」ニヤッ

律「ム、ムギなんでそんな…」

澪「…」


律「ま、まぁ、とにかくもう少し様子を見てみようぜ」

唯「う、うん…」


梓「ちょ、ちょっと待って下さい私にも説明してくださいよ!」

……


梓「じゃあ、憂は明日も注意して見てみますよ」

唯「ありがとうあずにゃーん」

梓「でもそれ以外になんか心当たりとかないんですよね?」

唯「うーん。一度だけ憂を怒っちゃった…からなのかなー?」

梓「ええ…?」

― 平沢家

憂「…」

トントントントントントントントン

唯(包丁の切り方もなんか違うような…?)

トントントントントントントントン

唯「ね、ねぇ?憂なんかお姉ちゃんに隠してない?」


トントントントントントントントントントントントントントントントン トンッ!

憂「何言ってるの?」

唯「え?」


憂「どうして?お姉ちゃんにそんなことするわけ無いでしょ?」ズィッ

唯「…ぁ、うん」

憂「どうしたの?」ニコッ

唯「な…なんでもない…」

憂「そうなの?ご飯もうすぐできるからね?」


唯(…違う!絶対憂じゃない!)

― 中野家


純『へぇ~。憂がねー』

梓「そう。純はなんか違和感とかあった?」

純『うーん。特別なんか…あ、でもなんか』

ピーッピーッピーッピーッ プツッ

梓「あれ?純?」

ツーツーツーツー

梓「切れちゃった」



>宛先. 鈴木 純

>題名. 無題

>本文. 途中で切れちゃったけど、とにかく憂の様子を注意して見てみて



梓「よし…」

パチン

― 朝


純「おはよー」

梓「あ、おはよ」

純「ねぇ、憂の話さぁー」

梓「ん?憂の話?」

純「え、だから昨日言って…」


憂「あ、おはよう純ちゃん」


純「お、おはよ。憂」

憂「あれ?純ちゃん。顔色悪いよ?」

純「え?そう?いやぁ…」

― 同時刻


タタタタッ

和「あら。おはよう唯」

唯「和ちゃん!憂の様子やっぱりおかしいよ!」

和「朝から何言ってるのよ?」


唯「え、だからほら!憂が」

和「憂ちゃんが?」

唯「え?」

和「どうしたの?」

唯「の、和ちゃん…?」ゾッ

和「ん、なに?唯」

唯「ちょ、ちょっと先行くね!」ダッ

和「あ、唯!?」

― 3の2 教室

唯「り、りっちゃあああああああああああああああん!」

律「お、どうした唯」

唯「や、やっぱり憂おかしいよ!」


律「な、何の話だよ?」


和「え?憂ちゃんがおかしいって…」

澪「え…?」

紬「憂ちゃんがどうしたの?」


唯「え、あ…えへへ…なんでもないよ…」


唯(ど、どうして…?なんで…?)

― 昼休み 2の1 教室

梓「な、何を言ってるんですか?」

唯「あ…あずにゃん?」ヘタッ

梓「ど、どうしたんですか?」


憂「あ、お姉ちゃん。どうしたの?」

唯「ひ、ひいいいいいいいいいい」ダダッ



唯「はぁ…はぁ…」

唯「な…なんで…?どうして…?どうして?」

(み、みんなおかしいよ…)

(な、なんで誰もおかしいって思わないの?)



さわ子「という訳で、音楽のテストは―」

唯「…」ボー

(どうみてもいつもの憂じゃないし・・・)

(なのにどうして誰も・・・)


(ま、まさか…お…おかしいのは私なのかな…?)

???「―沢さん!…平…さん!」


さわ子「平沢唯さん!」

唯「あっ!はい!」

さわ子「ちょっとー。センターまで1ヶ月ないのは分かるけど…無理してるの?」

唯「あ…いえ…そんな」

さわ子「顔色も悪いし~。…特別に保健室で寝てもいいわよ?」

唯「あ…ありがとうございます」

(そういえばあんまり寝てないんだっけ…)

さわ子「ナイショよ」


ガララッ

唯「ありがとうございましたー」



澪「あ、唯…大丈夫だったか?」

唯「う、うん。澪ちゃんどうしたの?」

澪「あ、ちょっとな…」


唯「…ねぇ、澪ちゃん。昨日の憂の話覚えてる?」


澪「…う、憂ちゃんの?」

唯「澪ちゃん?」


澪「…あ、ちょっとトイレ行かないか?」

OCN規制解除明けで調子に乗っていた

ごめんなさい

澪「…朝からみんなおかしいよな?」

唯「澪ちゃんは違和感があるの!?」

澪「ああ。どういう訳かみんな昨日唯が憂ちゃんがおかしいって言った事覚えてない」

唯「じゃあやっぱり・・・」

澪「唯はおかしくない」

― トイレ

澪「…状況を整理するぞ」

唯「憂がアイスを買いに行ってから様子がおかしくなった」

澪「最初周りも違和感を抱いていたのに、一晩明けたらまるで最初からそんな話は無かったかのように」

唯「絶対おかしいよ!憂!わかるもん!私の妹だもん!」

澪「ああ…そうだな」

唯「でも誰も気づかないよ…元の憂を忘れてるみたいに…」

澪「…」

唯「時々憂がお姉ちゃんお姉ちゃんってくっついてくるのが嫌になる時もあったよ!」

澪「えっ」

唯「でも憂いないとだめえええええ!…うっ…うえ…ういいいいいいいいいいいいい」

澪「な、泣くな唯!」

唯「う゛ぇ…ひっぐ…うぇっ…ういっ…」


澪「…これは勘なんだけど…誰かに迂闊に相談するとダメな気がする…

とにかく慎重に調べていこう」


唯「で、でもあの憂は怖くて家に帰れないよ・・・」


澪「そうだ。和はなんだって言ってたんだ?」

唯「うん…和ちゃんも何の事?って…」

澪「やっぱりか…さっき確認したが律もムギも覚えてない」

唯「あ、あずにゃんは?」

澪「梓か…」

ごめんさすがに落ちたと思ってた

保守ってくれた人もうちょっと待ってて…

― 放課後 2の3


唯「あーずにゃん…はいないね…」

澪「よかったような良くなかったような…」

唯「うん…」

澪「とりあえず戻ろうか」



純「あの…唯先輩」

唯「あ、純ちゃん」

純「憂の話ってどうなったんですか?」

澪「!?」

唯「じゅ、純ちゃん!」ダキッ

純「ぎゃあ!」

………

純「え…誰も覚えてないって…」

澪「そういう事なんだ…誰も憂ちゃんがおかしいって話を覚えてない」

純「梓がメールしてきたのに知らない知らないって言うから気味悪かったんですが…」


唯「…あずにゃんも覚えてないんだ」

純「はい」

澪「そのメールは梓に見せた?」

純「あ、いえ…まだです」

澪「じゃあそのまま保存しておいてくれ」

純「一体どういう事なんですか?」

唯「わかんない…」

澪「うーん。まずは学校での憂ちゃんの様子を教えてくれないかな」

純「えっと、まず梓に言われてたので注意して見てたんですが今日は特に…」

澪「なんだ…」

純「でも昨日なんですが、憂は常に相手の様子を見てから答えるというか…ワンテンポ開けて…」

澪「…」

唯「あっ…それ…憂は朝もそんな感じだった!朝ご飯作るのも学校行くの知らなかったみたいに」

純「あっ、そうです!こっちの出方を伺って話を無理に合わせてるみたいな!」

澪「合わせてる…」

純「何をするにも周りを見てそれを真似している、みたいなそんな感じです」

澪「…ま、まさか本当に憂ちゃんは」ゾゾッ

― 職員室

さわ子「え?憂ちゃんの様子?」

澪「はい。なんか具合悪そうだったとかそういうのは…」

さわ子「えーと…2の1は3時間目ね…」

唯「…」ゴクッ


さわ子「まー、特に思い当たらないわね」

澪「そうですか…」

唯「ありがとうございました」

澪「失礼しました」



純「どうでした!?」タタッ


さわ子(…あれ?あの三人ってどういう組み合わせかしら?)

― 廊下

唯「さわちゃんやっぱり空振りだったね~」

澪「やっぱり教科担任くらいじゃダメだな」

純「私が見てても今日は違和感なかったですから…」


澪「とにかく…普段どおりに振舞おう。逆に私達がおかしいってことになったらマズイし」

唯「うん!」

純「はいっ!」

澪「気づいたことがあったらお互いこまめに連絡を取り合おう」

純「じゃあ私、行きます!」タタッ


唯「これからどうしよう澪ちゃん?」

澪「とりあえず普段どおりにしないとかえって不自然になるからな…部室に行こう」

唯「う、うん」

澪(…何が起きてるんだろう)


………

― 部室


紬「できた!」

律「その花なんて名前なんだ?」

紬「サンザシっていうの。ハーブの一種よ」

律「へぇー」

澪(…ぶら下げてドライフラワーでも作るのか)


紬「そして、今日はヨモギ茶にしてみました」カチャ

律「ヨモギ茶?」

紬「しかも特別製よ~」

澪「珍しいな…」

律「いただきまーす」ズッ

律「げっ!」ガターン

律「げぇぇぇっ」ダダッ

ブパッ ジャーッ

律「ふへぇぇぇ!」


澪「…」ススッ


澪「ぇ!」

唯「よ、よもぎ餅の味がする…」


紬「りっちゃんにはあんまり美味しくないの?」ススッ

ガチャ

梓「あれ?どうしたんですか?」

律「梓これ飲んでみろよ!」

梓「え?なんですこれ?」ススッ


梓「ぎゃあ!」ブバッ

律「うわ!」



紬「ちなみにケーキはこしょうとにんにくのパウンドケーキよ」

律「にんにく?」

紬「はいりっちゃん」カチャ

律「え?ううっ」パク

律「ぎゃああああああああああああ」ガッタッターン

紬「…」


唯「あずにゃんあーん」

梓「あ…唯センp」パク

梓「ぎゃああああああああ」ガターン


唯「え?あずにゃん!?」


澪(どういう反応だよ…)

― トイレ


澪「ふぅ…」

唯「やっぱり誰も覚えてなかったみたいだね…」

澪「綺麗さっぱり忘れてたな…」


ジャバババババ― キィッ


唯「澪ちゃーん。先に出てていいよ」

澪「あ、じゃあ廊下で待ってる」



紬「ねぇ澪ちゃん」

澪「む、ムギ!?」

紬「話があるの…」

澪「は、話って!?」


紬「ねぇ、りっちゃん達おかしいよね?」

澪「え?」

紬「私見たの…」

澪「何を?」

紬「憂ちゃんがりっちゃんと話してたところ…」

澪「いつ?」

紬「昨日の夜よ」

澪「何を話してたんだ?」

紬「車で通りがけに見ただけだから…」

紬「でもその後気になってりっちゃんに電話したの」

紬「そしたら『なに言ってんだよムギ~。私はずっと家にいたぜ』って…」

紬「憂ちゃんの話を聞いたあとだっただけに気味が悪くて…」

澪「…!」


紬「だからさっき聞かれたときは黙ってたの…」

澪「そうだったのか…」

紬「あの様子だと梓ちゃんも」


紬「じゃあ、私にも何かあったら連絡ちょうだい」

澪「ああ」

紬「先に戻ってるね。りっちゃん達に感づかれないように」

ジャーッ


タッタッタッ

唯「あ、ムギちゃん…?」

澪「ムギは大丈夫だ」

唯「ほんと!?」

澪「だけどいつも通りにするんだぞ」

唯「うん…」

― 帰り道

澪「いいか。もう憂ちゃんは何を仕掛けてくるかわからないぞ」

唯「うん」

澪「不用意に変なもの食べたり、出かけたりするなよ。

あとこまめに連絡を誰かに取ること。だけど間違っても和や律はやめろ」

唯「おぉ…和ちゃん…」

澪「もちろん梓もダメだからな。取ってもムギか私、あとは純ちゃんだ。

憂ちゃんはありとあらゆることに長けてる。油断したらだめだぞ」

唯「あずにゃんが…」

澪「…」ギュッ

唯「!?」


唯「み、澪ちゃん…?」


澪「な…なんか急に抱きつきたくなった」バッ

唯「あはは。また明日。澪ちゃん」

― 平沢家

唯「…」


ガチャ

唯「…」キョロキョロ

タッタッタッ

憂「あ、おかえりお姉ちゃん。遅かったね」

唯「あ、う、うん」


憂「ご飯できてるよ」

……

唯「…」モグモグ

唯(どうしよう…毒とか入ってないよね…?)

憂「おいしい?今日のはちょっとひと手間かけてみたんだよ」

唯「あ、そ、そうなんだ~」モグモグ

唯「…」モグモグ

唯「あ~…おいしいよー」モグモグ

憂「そうでしょ?だってひと手間かかってるもん」

唯「うん…おいしいね…」ボーッ

モグモグモグモグ

唯「おいし…」ボェーッ


唯「…」


唯「」


ピリリリリリ ピリリリリリ

唯「あー。でんわー…」ガタッ

憂「あっ…!」

ピリリリリ ピッ

澪『あ、唯!大丈夫か』

唯「だいじょうだよぉ~」


澪『!?』

唯「あーみおちゃーん。いまごはんたべてるからまたあとで―」

澪『切るな!』


唯「えー?」


憂「お姉ちゃん。ご飯食べてる時は電話しないの」バッ

ピッ

唯「あー…。ういーごめーん」

プツッ ツーツーツーツーツーツー……

澪「あっ!」

プツッ ツーツーツーツーツーツー……

澪「あっ!」


澪「唯!」バッ



澪母「あら?どこいくの?」

澪「ちょっと出かけてくる!」バタン


………

澪「はぁ…はぁ…っ…く…」

澪(間に合え…間に合ってくれ…)

タッ タッ タッ …

― 平沢家

唯「…ぁ…ぅぃ…」

憂「お姉ちゃん。おやすみ…」ニコッ


ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!

憂「あ?」


ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!

憂「…」

ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!

憂「…」

ガチャ

澪「おい!唯は!?」

憂「え?いきなりどうしたんですか?」

澪「唯に会いたいんだけど」

憂「お姉ちゃんですか?どうぞ上がってください」スッ


澪「…」

澪(どうする…どうすればいいんだ…今上がったら…殺される?)

澪(唯…)

憂「どうしたんですか?お姉ちゃんに会いに来たんじゃないん―」

唯「あぁ~。みおちゃーん」

憂「お、お姉ちゃん!?」


澪「あ、ああ…唯」

唯「…んっ?みおちゃんどうしたの?」

澪(…様子が変だ…)

澪「じゃあ、ちょっと上がらせてもらうよ」

憂「どうぞ」

唯「あ~みおちゃーん。あのね。いまういが―」

憂「!」

憂「今お茶出しますから」ダッ

澪「!」

澪「唯!ちょっと部屋行こうぜ!」ガシッ

唯「おーぅ?」

― 唯の部屋

唯「えへへっ…みおちゃーん」ヒシッ

澪「おい!しっかりしろ!」

パッチーン

唯「へべっ!?」ドサッ

唯「みみみみ澪ちゃん!?」

澪「大丈夫か唯!?」

唯「あ…わ、う、憂の作ったご飯食べたら変な気持ちになって…」

澪「だろうな」

ピッ ピピピッ

澪「あ、ムギか?」

紬『どうしたの?なんかあった?』

澪「憂ちゃんが行動に出た。唯に一服盛ったらしい」

唯「うぅ…」

紬『え!?ど、どうしよう!わ、私今行くね!』

澪「いや、待ってくれ。まだ感づいているのは私だけと思わせる」

紬『でも』

ギッ…ギッ…ギッ…

唯「…憂が来たよ!」

澪「あとで!」ピッ

ガチャ

憂「お茶ですよ」

澪「…ああ、ありがとう」

憂「急にどうしたんですか?」

澪「…ちょっと唯と話したくてね」

唯「…」ガクガクガク

憂「そうですか」ニコッ

バタン!

澪「…」

唯「も…もう家にいたくないよぉ…」


澪(なんとかならないのか…?)

澪「あ」

唯「え?」

……

澪「という訳で、唯に数学を教えるので連れていきます。お泊りで」

憂「そうですか…お姉ちゃん。歯ブラシと明日の教科書持った?」

唯「だ、大丈夫」


澪「じゃあ!」ポエッ

唯「い、行ってきます」

憂「いってらっしゃい」

バタン!


憂「…」

― 夜道


唯「どうしてこうなっちゃんだろう…私が憂にアイスなんか買いに行かせたから…」

澪「そういえばアイスを買いに行ったんだっけ。憂ちゃん」

唯「うん。なんでかハーゲーダッシュ食べたくなって、そしたら憂が買いに行くって」

澪「うん」

唯「帰ってきた憂は…なんか憂のカッコした別の…宇宙人とかみたいな」

澪「境はアイス買いに行った後からか…」

唯「うん…多分」

澪「どこのコンビニだったとか…通り道に何かあるとか…わからないかな…?」


澪「そもそもあれはホントに憂ちゃんなのか…?」

― 澪の部屋

紬「おかえり澪ちゃん、唯ちゃん」

澪「む、ムギ!?」

紬「さすがに居ても立ってもいられないもの…」

澪「とりあえず今日のところは唯を憂ちゃんから引き離せたが…」

紬「この手は何度も使えないね…」

唯「うう…」


……

澪「私達がどう動けばいいのかわからないのは問題だな…」

唯「こんな話誰も信じてくれないし…」

紬「そもそも憂ちゃんが本物かどうかもわからない訳よね…」

澪「まぁな…」

紬「そこでDNA鑑定よ」

唯「鑑定?」

紬「それで憂ちゃんが本物かどうか判断できればもっと手は打ちやすいわ」

唯「…む、ムギちゃん。やろう!」

紬「唯ちゃん。検体採取するときに担当者が勝手に家に入ってもいい?」

唯「も、もちろん!」

紬「ごめんね。憂ちゃんから取れるのは期待できないから…」

澪「結果出るはどのくらいだろ?」

紬「うん。昼ぐらいには出せるようにする」

澪「あと、明日で誰が敵で誰が味方かはっきりさせよう。

今の状態じゃお互い信用できない…」

唯「うん…」

― 朝・澪の部屋


澪「…おはよう唯」

唯「澪ちゃん…おはよう…」

澪「寝れなかったな…」

唯「うん…」


澪母「朝ご飯できてるわよ~」

― 通学路

澪「ムギが結果を持ってくるのは今日の昼だっけ…」

律「おーっおはよう諸君!」

唯「!」

澪「!」

律「どうしたんだよこんな所で!?澪の家にでも泊まってたのか?」

澪「あ、ああ。唯に勉強教えてたんだよ」

律「えー、私も誘ってくれよぉ!冷たいぞ澪!」

澪「…あ、ああ。ちょっと急だったから」

……

和「あら。みんなおはよう」

憂「みなさんおはようございます。お姉ちゃん、おはよう!」

律「おーす!」

唯「お、おはよ…」

澪「…おはよう」

― 教室


紬「おはよう!」

唯「ムギちゃんおはよー」

律「ムギおはよー」

和「おはよう」



澪「おはようムギ」

紬「澪ちゃん」スッ

紬「これから検体採取らしいわ…」ボソ

澪「そうか…」


唯「憂…」

紬「お昼にははっきりするわ…唯ちゃん。もう少し…もう少し待って」

― 昼休み・2の1

純「…無事ですか唯先輩?」

唯「うん…」

澪「純ちゃんも元気そうで何より…」

純「…憂がどんどん馴染んでます。一昨日の違和感なんてもう欠片も…」ボソボソ

澪「今、ムギにDNA鑑定させてる」ボソッ

純「えっ?」

澪「それで全てがはっきりするといいんだが…」

― 教室

紬「あ、純ちゃんどうだった?」

澪「いや…特に何もないそうだ」

唯「…」

紬「ところでDNA鑑定の結果が出たわ。あの憂ちゃん、本人だそうよ…」

澪「まさか…」

唯「うそ…」

澪「に、二重人格とか?それとも私達がおかしいのか…?」

紬「まさか…」

唯「…あれ?」


紬「どうしたの?」

唯「あ…うん…なんでもない…」

唯(なんか今思い出せそうだったんだけどな…)

澪「とりあえず私はもう一度みんなを揺さぶってみるよ。

みんな忘れたふりをしてるだけなら最高なんだが…」

紬「ええ…」

唯「やっぱり私がおかしいのかな?」

澪「唯!」

唯「あ…ごめん…澪ちゃん…」


澪「じゃあ、私は早速やって来る」ガタッ

澪「―」

和「―、―」

唯「…澪ちゃん。私も頑張ろう!」

紬「そうそう!頑張ろうよ!」



澪「なぁ、最近憂ちゃん雰囲気変わったよな?」

和「え?そうかな?私には何も…」


澪(和はダメか…)

― 放課後・部室


澪「なぁ…憂ちゃん様子変じゃなかったか?」

唯「うん…」

澪「律は?」

律「あ、いや…別に何も」


澪「あれー?おっかしいな?梓はどうだ?」

梓「私も別に…」

澪「そうか…」

紬「…」

律「あれ?今日はお茶にしないのか?ムギ」

紬「あ、ごめん…。今日なんだか忘れてきちゃって…」

律「そ、そんなぁ!」


澪「…あ、トイレ行ってくる」

律「おーう」


唯(憂…)

唯「…ぁ」ズズッ

チーン ポイッ

ボロッ

唯「ゴミ箱がいっぱいだ…」

律「うわ、ゴミが…掃除当番誰だよ!」

唯「あ、私ゴミ捨ててくるよ…」


律「あ、一緒に―」

唯「あ、りっちゃんいいよ」

― 塵芥室


唯「…ごーみごみぽいぽい」ドサドサッ

唯「…あれ?」


唯「ムギちゃんの持ってきた花、ゴミ箱に入ってる…」


― トイレ

ジャー バシャバシャ


澪(…みんな…あの日の憂ちゃんの話だけ覚えてないってことか…)

(都合の悪い記憶はトリミングして…)

(…削除?)ブルッ

(な、何考えてんだ私…)


さわ子「ねぇ、澪ちゃん?」

澪「!?」バッ

さわ子「そんな驚かないでよ…」

澪「あ、すみません…」

ジャー キュッ

さわ子「ねぇ、気になってるんだけど唯ちゃんはどうしたの?すごく落ち着きないし、何かに怯えてるような…」

澪「あ…それは…」

さわ子「昨日の鈴木さんと唯ちゃんにあなたっていうのも変な組み合わせじゃない。何かあったんでしょ?」

澪「実は…」

律「おい澪~こんなところにいたのか」

澪「り、律!」

さわ子「あら。りっちゃん」

律「さわちゃーん。澪ったら私に隠しごとしてるんだぜ」

さわ子「隠しごと?」

律「それって後ろ暗い事なんだろ?澪」

さわ子「り、律ちゃん?」


澪「さ、さわ…」

律「さぁ、澪。一緒に行こう」

さわ子「ちょっと…?」

律「あ、さわちゃんもね」


・・・・・・・・・

― 部室

ガチャ

唯「ただいま~」

澪「あ…唯…」

唯「み、澪ちゃん?」


澪「…あー。唯…あの…」

澪「あれ…わかんない…?」

唯「…!?」


ザッ

梓「唯センパイ♪」

唯「…あ、あずにゃん?」

律「唯」


澪「唯…に…げ…」


梓「あれ?唯先輩。どうして私から逃げるんですか?」

唯「あ…あずにゃ…こ…来ないで…」

梓「どうしたんですか?」ニコッ


唯「ひゃああああん」ダッ

バタァン ダダダダダドタバタバタバタ

― 市道


唯「はぁっ…はぁっ…」ゼイゼイ

和「あら唯。どうしたの?」


唯「の、和ちゃん…?」

和「汗かいたらちゃんと着替えなきゃ風邪ひくわよ」ニコリ

唯「ひ、ひいぃ…」

和「唯?」

唯「ち…の…のどかちゃん…こないで…」

和「え?どうして?」

唯「ひっ」ダダッ

………


唯「はぁ…はぁ…」

唯(どうしよう…!も…もう誰も…!)


律「おーい!唯!」

梓「唯先パーイ!」


唯(り、りっちゃん達来たああああああああん!!!!!)

ダダダッ

唯(だ、誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ)

これはわかりづらい

………

唯「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…」

唯(うううううう…もう走れない…澪ちゃん…)


(澪『唯…に…げ…』)

(み、澪ちゃんまで…おかしくなっちゃった…)

唯「うぅ…うぇぇぇ…えっぐ…」

律「ゆーいーどこだー」

澪「唯ー!出ておいでー」

梓「あずにゃんですよー!唯先輩出てきてくださーい」



唯(ま、またきたあああああん)ダッ

梓「あっ!いた!待て!唯先輩!」

澪「唯!」



律「おーい!待てよー!」

唯「ぜぇ…ぜぇ…はぁ…ひぃ…」

唯(こ、この道見通しが良すぎる!隠れれない!)


律「唯どこだー!?」


唯(こ、交番がある!さ、最後の力を!)


唯「ひいいいいいいいっ」

ガララッ!

唯「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…」

男性警官「ど、どうしました!?」バッ

唯「ぜぇ…はぁ…ぜぇ…ぜぇ…はぁ…はぁ…はぁ…」ヘタッ

男性警官「だ、大丈夫?」

唯「はぁ…はぁ……あっ…その…えと」

唯(…ど、どうしよう…あっ、そうだ!)

唯「だ、誰かに追いかけられました!」

男性警官「追いかけられた!?」ガタッ

男性警官「まだいるか!?」ガラッ!

ヒュッ カシャッ ジャキッ

唯(あっ、伸びる警棒)

男性警官「もういないか…」キョロキョロ

ガチャ

女性警官「な、何かありました?」

男性警官「あ、この子の話聞いてあげて。追いかけられたらしい」

女性警官「はい。あ、じゃあこっち座ってもらえるかな?」


……

女性警官「えーと、じゃあ事情を聞きたいので。まずお名前から教えてもらえますか?」

唯(…め、面倒なことになっちゃったよ!)

……

女性警官「追いかけてきたのは何人ぐらい?」

唯「さ、3人くらいだったかな…」

女性警官「3人ね」

唯「は…はい」

女性警官「心当たりはあるかな?」

唯「な、ないです」

女性警官「最初に追いかけられた場所はどこかな?」

唯「え、えーと」

唯(誰か助けてー!)

………

ブロロロ キッ

男性警官「着いたよ」

唯「は、はい…」

唯(家までパトカーで送ってもらっちゃったよ…でも家には憂がいるんだってば…うぅ…)

女性警官「安心していいんだからね!お巡りさんが付いてます!」

唯「あ、ありがとうございます…」

ガチャ バタム

女性警官「今日から唯ちゃんの家の周りも巡回するから安心してね」

唯「は…はは……はい…」

女性警官「変なことがあったら110番だからねー」

唯「じゃ、じゃあ失礼します…」

女性警官「気をつけて帰ってね~」

ブロロロロン


唯「私のお家には…う…憂がいるんだよ…」ヘタリ

……

唯(うう…見慣れた家が心霊スポットに見えるよ…)


ガチャリ


唯「う、憂?いるの?」

唯(ま、真っ暗…)

憂「―。―。」

唯(憂?)


ギッ

憂「qうぇrちゅいおp@23え4r5t67う890-sdfghjkl;いこlp@:qwせdrftgyふじこlp;@」

唯「!!!!1」

憂「2うぇ456hjこlp;@:s!kzsxdcvbんmk,l;:m!@うぇrちゅいおp」

唯「ひ、ひぃっ」ガタッ

憂「34567890-q2えdrtyふじこlp;@:lp―」ギロッ スクッ

憂「お姉ちゃん?お帰り。お夕飯できて―」

唯「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」

ガチャ バッターン


唯「ひっ…はぁ…はぁ…」

最初の唯以外にも、どう考えてもおかしいポイントが
何か所かあるんだよな

― 橋の下

唯「行く場所がないよ…」

唯「みんな信用できない…」

「ういものどかちゃんもあずにゃんもりっちゃんも…みおちゃんも…」

「みんなみんなおかしくなっちゃっ…あれ?ムギちゃんは…?」

「…」


ピッ ピポパポッ

紬『もしもし!?唯ちゃん!?』

唯「む、むぎちゃああああああああああん」

紬『無事だったのね!今どこ!?』

唯「今、秋月橋の下に隠れてるよぉ…コワイよぉ…」

紬『今迎えに行くから!待っててね!』プツッ

プーッ プーッ プーッ


唯「た…助かった…むぎちゃん…」

唯「でもなんか忘れてる…!」

唯「あっ!純ちゃんだ!」

唯「あああああ純ちゃんもムギちゃんに頼んで助けてもらわないと!」

唯(―紬『純ちゃんどうだった?』)

唯「あれ?純ちゃんのことなんでムギちゃんが知ってるの?」

唯「澪ちゃんは一回も純ちゃんのこと話してないよ…」


唯「む…ムギちゃんが知ってるわけないんだ…純ちゃん!」


唯「あああああどうしよう!」

唯「ああああ!私も場所教えちゃった!む、ムギちゃんが来るっ!」

唯「じゅじゅじゅじゅじゅんちゃんをたすけにいかないと!」

唯「あっ!りっちゃん達も来る!あああああああ!どうしようっ!」アタフタ

― コンビニ

姫子「ありがとうございましたー」

ガーッ


純「ふう…」

純(『500円雑学シリーズ 都市伝説オカルト大全』によると

こういうのは宇宙人が憂を拉致してその後クローンが成り代わった、ってことかぁ…)

唯「あっ!純ちゃん!」

純「あ!唯先輩」

唯「よかったー!」

純「あの、早速なんですけど。憂は偽物なんでは!?」

唯「…どういうこと?」

純「何らかの理由で憂と入れ代わった何者かが…」

唯「あ、なかなかの推理!」

純「だから違和感があるんです。忠実に憂を装ってはいますが、そこは唯先輩の目はごまかせない!」

唯「なるほどね~さすが純ちゃん」

純「え、いや、じょ、冗談ですよ?」

唯「75点くらいかな」

純「え?75点ですか?」

唯「100点満点でね」

純「ど、どうしたんですか?」

唯「純ちゃん」ニコッ


純「え?…え?」



唯「ちなみにみんながどうしてそれに気付かないのかというと」

純「あれ・・・ゆ、唯先輩?」

唯「やっぱりナイショね」

パサッ、フワッ


憂「純ちゃん、凄いよ」

純「う、憂!?」


憂「でも…まさか立ち読みでいい線いってる推理されちゃうなんてね」

純「あ…あぁ…」

グイッ

純「あっ!」

憂「…ッ」

クチャァ

純「あ…ぃぇ…ぇ」

憂「…ちゃんと記憶を削除してるからだよ?」


純「」

ドサッ

タッタッ タッ

唯「う…うい…!?」

純「」

憂「あ、お姉ちゃん!」

唯「!」

憂「見られちゃったね」


唯「じゅ、純ちゃんに何したの!?」

憂「死んじゃったりはしないから大丈夫だよ。ちょっとだけ記憶を修正させてもらったの」

唯「修正…まさか澪ちゃん達にも」

憂「うん。あとさわ子先生もついでに」

 「あとはお姉ちゃんだけなんだよ?」

 「忘れちゃえば怖くなくなるんだよ?」

唯「なんでそんなことするのっ!?」

憂「なんでって…?」

憂「使命のためだよ。お姉ちゃん…って、もう忘れちゃったよね」

唯「憂っ!ふざけないでっ!」

憂「ふざけてなんかいないよ?お姉ちゃん」ニコッ

ジリッ ジリッ ジリッ


唯「こ…来ないで…」

憂「さすがお姉ちゃんだよね」

唯「い…いや…」

憂「すぐ見破っちゃった」

憂「まぁ、精神をキャリアに移植してすぐは記憶とのミキシングも上手く行かないから仕方ないんだけどね」

唯「あ…あ…う…憂を…返してよ…」

憂「憂を返してって…私が憂だよ。お姉ちゃん」

唯「憂なんか、ホントの憂じゃないよ…」

憂「私が憂だよ。単に今はキャリアとして行動してるから違和感があるだけで、正真正銘、つむじからつま先まで私だよ」

 「何よりもお姉ちゃんが大好きな平沢憂だよ」

唯「い、意味わからないこと言わないで!」

憂「それにね、実は最初のキャリアはお姉ちゃんなんだよ?」

唯「!」

憂「どうして私に苛立ったりしたのか理由がはっきりしなかったでしょ?」

唯「…あっ」

憂「それはキャリアを移行する作業手順の一つだったんだよ」

 「とにかく私を一旦家から追い出すことが必要だったの」

憂「あまりにも衝撃的な記憶は綺麗に改ざんしにくいから…」


憂「それにお姉ちゃんキャリアとしては耐性が強くて扱いにくくて…」

憂「だからキャリアは途中でお姉ちゃんから私に変えたの」

憂「ねぇ、お姉ちゃん。早く嫌なことは忘れよう?」

唯「や…やめて…」

憂「お姉ちゃんが苦しんでる姿は見たくないの」

唯「やだっ!やめてっ!うい!」ブンブンブン

憂「もーっ、暴れちゃだめだよ」

唯「いや~っ!」


「唯ちゃん!こっち!」

ゴキッ

憂「ぎゃっ」ドサッ


紬「はぁっ…はぁっ…」

紬「ゆ、唯ちゃん…大丈夫…?」

唯「む、ムギちゃん…」

紬「嫌な予感がして…」


唯「む、むぎちゃあああああああん」

紬「もう大丈夫よ」ガシッ

紬「憂ちゃん」

憂「…ありがとうございます」ムクッ


唯「え!?え?む、ムギちゃん?」

紬「ダメよ唯ちゃん。ちゃんと見極めないと~」

唯(だ、騙された…)

唯「いやああああああああああ!!!!!!!!!!」

憂「お姉ちゃん」ニコッ


……

唯「…あっ」ドサッ

憂「…どうあがいてもどうにもならないことなんだよ。お姉ちゃん」

憂「お姉ちゃんが私に対して急に意地悪したくなったのもね。ちょっと寂しかったけど…」

唯「ぁ…っ…う…い…」


憂「ちょっとだけおやすみ。お姉ちゃん」

唯「マジコンやってるけどなんでもいいです。つーか今までマジコン自体忘れてたよ」

憂「はぁ!? マジコンは神だから広めなきゃ!! マジコンマジ神!!!」

ごめん気づいたら寝てた

― 平沢家・唯の部屋


唯(…)

唯(…あ…あれ?)キョロキョロ


唯(私の部屋…?)


唯(ベッド…真っ暗だし…)

唯(そっか…そうだよね…夢だよね)

唯(そんなこと…あるワケないよ…)

ガチャ

憂「あ…目が覚めたの?」

唯「!」ビクッ

憂「おはようお姉ちゃん」

唯「ひっ…」


憂「まだ重大さがわかってないのかなお姉ちゃん」

唯「ううっ、こ、来ないで…」モゾ

憂「そもそも私達は栄誉ある任務を遂行するために選ばれた存在なんだよ」

唯「ひっ…ひぃっ」ジリジリ

憂「1度はキャリアに選ばれた身なのに、邪魔しちゃだめなんだよ」

唯「ひ、ひぇ…」ガクガクガクブルブル

憂「お姉ちゃん。大好きだよ…そのふわふわの髪もそのぷにぷにのほっぺたも」


唯「!」バッ

ガッシャーン!

憂「何!?」

憂「何投げたの!?お姉ちゃん!どうしてそういうことするの!?」バキィッ

唯「あうっ!」ドサッ

唯(…お願い誰か気づいてっ!)

憂「お姉ちゃん!?」グイッ

唯「あうっ」

憂「どうしてそんな事するの!私はお姉ちゃんのためを思ってやってるんだよ全部っ!全部全部!」

唯「う…憂じゃない!お前なんか憂じゃない!」キッ

憂「ーッ!」

唯「お前は憂じゃない!」


……

― 同・玄関前


女性警官「午前2時14分…異常はありませんでした…」カリカリ

男性警官「やれやれ…イカれた奴が多いご時世だよなぁ…」

女性警官「よしできた。パトロールカードをポストへぺたっ!」

男性警官「行くかぁ…」

ガッシャーン


女性警官「え!」

男性警官「ガラスの音だ!」

女性警官「…さ、3階みたいです!」

男性警官「おい裏に回れ!」

女性警官「はい!」

………

ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!

ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!

「警察です!どうしました!?」

「ひらさわさーん!ひらさわゆいさーん!?」


唯「!」

唯(お…お巡りさん)

憂「…」チッ

憂「お姉ちゃん。ちょっと待っててね。もうおイタしちゃだめだよ」

ガチャ バタン

………


ガチャ

唯「どうかしましたか?」

女性警官「あ、こんばんは。夜分遅くにすみません。

ガラスが割れる音がしましたが大丈夫ですか?」


唯「あ、大丈夫です。ちょっと手が滑っただけなので」

女性警官「そう?ならいいけど…もし…」


男性警官「何でもないのか?」ズイ

女性警官「みたいです」

唯「お騒がせしました」

女性警官「何かあったら110番してね?」

唯「あ、はい!」

女性警官「じゃあ帰るからね」

唯「すみません。ご心配おかけしました」ペコッ

キィ―


唯「…」


男性警官「ちょっと待って貰える?」ガシッ

唯「はい?」

ガチャ。

男性警官「一応家の中を調べさせてもらえますか?

さっきの相談にしても、今のガラスの音はそうそう見過ごせない」

唯「どういう権限です?」

男性警官「…」

唯「ちょっと!」

男性警官「…あんた、平沢唯さんじゃないだろ」

唯「!」

男性警官「そうだな?」

唯「まさか…」

男性警官「…!」

唯「はぁっ!」バキッ ゴッ

男性警官「ぐぁっ!?」


唯「ふッ」バキッ ゴン ヒュッ

男性警官「うぐっ…」


グイッ ブチィッ

唯「はい拳銃貰っちゃったー」チャキ

男性警官「な!?」

女性警官「え!?」

バッ ジャキッ

女性警官「離しなさい!撃つぞ!」プルプル


唯「もうお姉ちゃんのフリしなくていいや」


憂「ふふっ」パサッ フワッ


女性警官「!」

憂「あなたは撃てない」スタッ


憂「ご苦労様でした」


ゴキッ

警官「」


憂「ふふっ…邪魔されちゃ困るんです」

無線機『ピーッ、SA198応答せよ!今、緊急発信したようだが大丈夫か!?』

憂「うるさいな…」スッ


憂「SA198よりさくらPS、誤報です。失礼しました」カチ

無線機『誤報了解、追って詳細報告願いたい―ガッ』

憂「了解」カチ


ポイッ  ガシャッ

無線機『―さくら106とさくら114は解除に伴い通常密行に移行、以後の…』

憂「…」

バキッ!グシャッ!

ガッ ガッ バキィッ




カツ カツ カツ … バタン


……

……

唯(し…静かになった…)


ガチャ

憂「お待たせお姉ちゃん」

唯「…!」


バサッ

ガチャッ

唯「ひっ…!ピストル!?」

憂「ピストルだよ~。私こんなモノ向けられちゃった」


憂「ふふ…ねぇ、お姉ちゃん。お巡りさんなんて呼んでたの…おりこうさんだね」ソッ

唯「あ…あぁ…」

憂「…ちょっと痛いだけなんだから、最初からこうすればよかったね」スッ

唯「い…いや…」

憂「大丈夫。ちょっとチクってするだけだよ。お注射より痛くないよ?」

唯「や、やだやだやだ!やめて憂!」

クチャ

唯「あっ…」

憂「明日からまた一緒に学校行こうね。お姉ちゃん」

― 3月

和「長かったようで短かった3年間…」

さわ子「あなた達が私の手から離れる時が来たのね…」ヨヨヨヨ

憂「お姉ちゃん卒業しちゃうんだ…」ウルウル

純「なんか感動的だね」


唯「あずにゃーん」ギュッ

梓「…ゆ、唯先輩っ!あの…いつまでも私のこと…」

唯「忘れないよ!」


紬「いつ見てもいいわね~」


律「あぁ…卒業式終わったのか…実感ないな」

澪「高校生活も今日で最後なんだな…」


紬「みんな、写真撮ろうよ~!」

唯「はいはーい!」

 資料番号1023A <23-01-21 甲 警察庁長官通達 ■は墨塗り>

   
                                              

    極 秘                                       甲 警察庁長官通達            

                          
                                              平成23年1月21日

                                              警 察 庁 長 官


                         

 警察庁各局・各部・各課長
 各付属機関の長
 各地方機関の長

 各都道府県の警察の長 殿

 警察庁(甲)刑事局発第■■■号
 警察庁(甲)警備局発第■■■号
 警察庁(甲)交通局発第■■■号
 警察庁(甲)長官官房局発第■■号
 警察庁(甲)情報通信局発第■■号
 警察庁(甲)生活安全局発第■■号




          未確認飛行物体、未確認生物関連の事案に対する徹底防圧姿勢の明確化及び治安維持について



 (概要)

 平成22年12月11日■■県■■■市において覚知された未確認飛行物体の飛来、及びその関連が思案される一連の事案についての通達。

 その対策には最大の努力を払い警戒と徹底した捜査を期すよう指示したもの。

 (本文)
 
 削 除

資料番号901A <22-12-11 当日の航空自衛隊、パイロットとの交信内容を書き起こしたメモの一部>


21:35:55 P「目標の右側、所定位置に付いた。国籍表示なし、大型機、1機、こんな形状の機体は初めて見る」



21:46:55 C「引き続き通告を続けよ、領空まで20マイル」

21:49:55 C「了解、通告に従っているように見えるか?」

21:50:14 P「見えない」


21:53:55 C「目標機領空侵入、領空侵犯警告を発信されたし!警告開始」


21:58:22 P「目標に警告に従う様子なし、更に速力が上昇!」

21:59:49 P「ターゲット、ネガティブコンタクト。目標を見失った」


付記 元データ逸失のためほとんど内容は残っていない

憂「ねぇ、宇宙人って信じる?」

?「宇宙人ですか?」

憂「うん」

?「え…いたら面白いかなって思いますけど…」


憂「けいおん部に入ったら、宇宙人に会えるかもよ」

?「え?宇宙人ですか?」


憂「なーんてね。冗談だよ。どうかな?軽音部!

去年までは私のお姉ちゃんもいたけどすごい部だったんだよ!」

?「じゃ、じゃあ、見学させてもらえますか?」



憂「はい、一名様ご案内!」

                                    おわり

>>1は死ぬべき

なんかこの>>1からは、「どう?わけわかんないだろ?謎が深まるだろ?面白いだろ?ww」って言われてるような気しかしない

>>233
だっていきなり宇宙人に襲われたらワケ分からんし怖いだろww
一応「ああ、でもそういうことか」程度には捉えてもらえるかなと思ったんだがな

往生際悪いが説明してから消えた方がいいかなこれ?

最初の唯のカリカリ(勉強しているという唯にはありえない行為)
は、感染済みだったって事でいいが、

ヨモギ茶とこしょうとにんにくのパウンドケーキを食べた
律&梓の反応がいまいちよく分からない
どっちもちゃんとレシピがある物だが……

感染体はヨモギやコショウ、ニンニクに拒絶反応を起こし、
それを(なぜか)紬は知ってたって事であれば
もうちょっと説明がほしいし、
単純に律と梓には合わなかったってだけであれば
食べた後の反応とそれを見た周りの反応が
思わせぶりすぎる

>>251
同意
回収し切れなかったのかわからんだそこだけ何も触れなかった所為で浮いてる

>>256
与えられた情報だけで考えると、

感染するといじわるしたくなる(アイス買に行かせたり)

ヨモギ茶やはこしょうとにんにくのパウンドケーキなど、
いわゆるあまり一般的ではないおやつを出す事が
紬なりのいじわる

実はあの時点で紬は感染済(それ以降の行動は演技)

そう考えればいきなり降ってわいたような感のあるDNA鑑定や
その結果(実は鑑定なんてしてなくて、本人だと信じ込ませる為の嘘)、
なんで純に話したこと知ってるのかについても説明がつく

>>256
厄払いの意味を持つヨモギでお茶
魔除けの意味でニンニクを使ったパウンドケーキ

サンザシの枝を下げるのも魔除け

紬はそういう西洋古来の魔除けもたまたま知っていて、律の奇妙なリアクションに不安を覚えて
気休め的に行動したって裏設定。あと誰か穿ってドラキュラとか疑ってくれないかなというミスリード目的もある

ちなみにヨモギ茶とはこしょうとにんにくのパウンドケーキは、逆に
ムギが持ってくるものだから美味しいだろうと盲目的に信用して食べた4人が取った自然の反応という設定。

2つともあまり美味しいとは言えないので。ちなみに律達には吸血鬼のたぐいとかではないので効果はなかった

サンザシが捨てられたのがムギの記憶も抹消された象徴

みたいな?

>>257
いじわるしたくなるんじゃなくって、一時的に憂を家から追い出したかっただけじゃね?
>>172でそう言ってるし

>>258
紬の思わせぶりで余裕がある発言のせいで
あの時点で感染済と思い込んでしまったが、
そっちの方が自然だな

>澪「…」ススッ
>
>
>澪「ぇ!」
の部分はお茶に対する違和感じゃなくて、
「そんな絶叫するほど変な味じゃないだろ」
っていう 驚きか

>>259
見落としてたわ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom