ゆうしゃ「まおうじょうに いくよー」 (61)

ゆうしゃ「おうさまー」

王様「勇者、よくぞ来た」

ゆうしゃ「おはなしってなに?」

王様「お前に大切な任務を授ける」

ゆうしゃ「にんむ? おしごとだね!」

王様「いかにも!」

王様「勇者よ、魔王を討伐するのだ!」

ゆうしゃ「ま、まおうを!?」

王様「では説明しよう」

王様「先日、あばれ大猿の騒ぎがあったのは知ってるか?」

ゆうしゃ「うん。 おいはらうのたいへんだったよ」

王様「お前も退治に参加していたのか、礼を言うぞ」

ゆうしゃ「えへへ」

王様「そう、最近になって魔物どもの動きが活発化しているのだ」

王様「つまりこれは……魔王がなにかをしている!」

王様「可能性が高い!」

ゆうしゃ「たしかに!」

王様「だから魔王城に行き! 事の真偽を確かめ!」

王様「魔王を討ち倒すのだ!」

ゆうしゃ「わかりました!」

ゆうしゃ「あ……でも」

ゆうしゃ「まおうのせいじゃなかったら どうするの?」

王様「その場合の判断はお前に任せよう!」

ゆうしゃ「まかされました!」

王様「さて、先ほど言ったように今は魔物の動きが活発だ」

王様「城の兵士を派遣するわけにはいかん」

ゆうしゃ「うん。 ひとりでいってくるよ」

王様「そうもいかん。 危険な旅になるだろう」

王様「魔法使いを一人お供につける」

王様「彼女と協力し……我が国に平和をもたらしてくれ!」

ゆうしゃ「はい!」

――

ゆうしゃ「おしろの いちばんたかいところ……」

ゆうしゃ「ここにいるって きいたんだけどなあ……」

魔法使い「あらあら、かわいい勇者様ね」

ゆうしゃ「あ、あなたが」

魔法使い「そう。 私があなたの監視役よ」

魔法使い「よろしくね」

ゆうしゃ「かんし?」

魔法使い「そうよ。 城の兵じゃないあなたを完全に信用してるわけじゃないの」

魔法使い「手柄を横取りされても困るしね」

ゆうしゃ「よくわかんない」

魔法使い「……」

魔法使い「川の向こうに城が見えるかしら?」

ゆうしゃ「うん。 このおしろよりもおおきいね」

魔法使い「あれが魔王城よ」

ゆうしゃ「そうなんだ!」

ゆうしゃ「ちかい!」

魔法使い「あそこによくドラゴンが降りているの」

ゆうしゃ「どらごん……すごくつよいやつだね」

魔法使い「そうよ。 ほかにも大型の魔物が出入りしているのを見たわ」

魔法使い「つまり……」

魔法使い「あれは間違いなく魔王城よ!」

ゆうしゃ「なるほど!」

魔法使い「誰がどう見ても、あからさまに魔王城……つまり」

魔法使い「昔から魔王城として認知されていたの」

魔法使い「この城が建つ前からね」

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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────────(~~ヽ::::::::::::|/        = 完 =

ゆうしゃ「まおうじょうのほうが ふるいの?」

魔法使い「そういうこと」

魔法使い「恐ろしいであろう魔王城を見張る必要がある」

魔法使い「だから小屋を建てて」

魔法使い「情報を伝えやすくするために道を作って」

魔法使い「すると人がなんとなく集まってきたから……」

魔法使い「なんとなく城が建った」

魔法使い「そうやってできたのがこの国よ」

ゆうしゃ「すごい」

魔法使い「つまり、この国は魔王城を見張るために存在しているの」

魔法使い「だから魔王城へ行くことは、この国にとって歴史的な任務なの」

魔法使い「あなたにもその自覚を持ってほしいってこと」

ゆうしゃ「う、うん。 がんばるよ」

ゆうしゃ「でも……おうさまは そこまでかんがえてるかなあ」

魔法使い「あ、それもそうね」

魔法使い「じゃあ今言ったことは一旦忘れて」

ゆうしゃ「うん!」

――

ズルズル ズルズル

魔法使い「ふぅふぅ……小舟ぐらい川につけておきなさいよ」

ゆうしゃ「うう……重い……」

魔法使い「運ぶだけで一苦労ね」


大猿A「……」ジー


ゆうしゃ「あ、まものがいるよ」

魔法使い「目を合わせちゃダメよ。襲ってくるかもしれないわ」

ゆうしゃ「わかった」

魔法使い「あ、目を離してもダメよ。襲ってくるかもしれないわ」

ゆうしゃ「むずかしいね」

ザザーン

ゆうしゃ「かわについたよ」

魔法使い「この地点に来たのも私達が初めてよ」

ゆうしゃ「そうなんだ。さかなをとったりしないの?」

魔法使い「したいけど怖かったからやめといたの」

魔法使い「それがこの国の歴史よ」

ゆうしゃ「なるほど」

ゆうしゃ「よいしょっと」

魔法使い「あら、オール持ってきたの?」

魔法使い「私が風の魔法で船を進めるから必要ないわよ」

ゆうしゃ「えっ? でも……」

ゆうしゃ「かわのうえでおそわれたら ふねがしずんじゃうよ?」

魔法使い「……なるほど」

魔法使い「確かに魔法は護衛に回した方がよさそうね」

魔法使い「じゃあ漕いでもらえるかしら?」

ゆうしゃ「まかせて!」

ギーコ ギーコ

魔法使い「けっこう力あるのねえ」

ゆうしゃ「えへへ」

魔法使い「そういえば、あなたのことを聞いてなかったわね」

ゆうしゃ「うん? ぼくはふつうのにんげんだよ」

ゆうしゃ「ちょっとだけつよいから おうさまのおてつだいをしてるんだ」

魔法使い「……」

魔法使い「あなた、男の子だったのね」

ゆうしゃ「えっ!?」

ギーコ ギーコ

ゆうしゃ「なかなかつかないね」

魔法使い「川が狭かったら魔王城が近いでしょ」

魔法使い「だからこれでいいのよ」

ゆうしゃ「そうだね」

ザバァッ!

首長竜「……グルルッ!」

ゆうしゃ「あっ」

ゆうしゃ「つよそう」

魔法使い「魔物っ!?」

魔法使い「ふ、伏せてなさい!」

ボウッ

魔法使い「灼熱の双掌!」

首長竜「!」ピクッ

ヒョイッ

魔法使い「えっ」

魔法使い「かわされ――」

首長竜「グルアァッ!!」

魔法使い(そんな!?)

魔法使い(魔物のくせに火も魔法も知っていて)

魔法使い(その上で襲いかかってきてるの!?)

魔法使い(こんなやつがいるなんて……)

魔法使い(やっぱり魔王城に行くなんて無茶だったんだ……)

ゆうしゃ「たぁああっ!!」

バッ

ゆうしゃ「だぁっ!」

ガキッ!

首長竜「ッ!」

ゆうしゃ「かたいっ!?」

魔法使い「剣が弾かれた!? なんて丈夫なお鼻なの!?」

首長竜「グァァアアア!!」

ザパーン

魔法使い「あれ……潜った……?」

魔法使い「……」

魔法使い「来ないわね……」

ゆうしゃ「いたかったのかな」

魔法使い「と、とにかく! 今のうちに船を進めましょう!」

――

ゆうしゃ「はぁ……はぁ……」

魔法使い「な、なんとか向こう岸までついたわね」

ゆうしゃ「うん。 3にんとも ぶじでよかった」

魔法使い「3人?」

ゆうしゃ「だって まおうじょうからも このかわはみえるよね?」

魔法使い「え……」

魔法使い「あっ! そうか!」

魔法使い「あの竜を使役できる相手なら退治なんか無理なんだ!」

魔法使い「話し合いに持ち込むなら道中の殺生は避けるべきね!」

ゆうしゃ「はなしあい できるといいね」

魔法使い「可能性は……あるわ」

魔法使い「長い間、向こうから攻めてくることもなかったんですもの」

ゆうしゃ「まものがあばれるのが まおうのせいだったらどうしよう?」

魔法使い「その場合魔王と敵対することになるわ、この国はおしまいね」

魔法使い「そうなったらあなたは逃げなさい」

ゆうしゃ「魔法使いさんは?」

魔法使い「……」

魔法使い「最初に魔王城を見つけたのはね、私のご先祖様なのよ」

魔法使い「国にはそれなりの愛着があるの。 だから戦うわ」

ゆうしゃ「そうなんだ」

ゆうしゃ「じゃあぼくもたたかうよ。 にげられないかもしれないし」

魔法使い「……まあ、あまり悪い方には考えないようにしましょう」


魔法使い「さて、着いたわ」

魔法使い「魔王城よ」

ゆうしゃ「すごいおおきい……」

ゆうしゃ「いりぐちは はんたいがわかな?」

魔法使い「まずいわね……川の向こう側から見えない位置だわ」

赤鬼「……」

緑鬼「……」


ゆうしゃ「つよそうな みはりがいるね」

魔法使い「そうね、足が震えてきたわ」

魔法使い「でも……行くしかないわよね」

魔法使い「さあ! 任務開始よ!」

ゆうしゃ「うん!」

ゆうしゃ「ご、ごめんくださーい」

赤鬼「あ? なんだお前ら」

魔法使い「川の向こう側から来た人間です」

赤鬼「 ハァッ!? 」
緑鬼「 ナニィ!? 」

ゆうしゃ「うわっ……おっきぃこえ……」

緑鬼「どうすんだよこれやべえやべえやべえよ」

魔法使い「わ、私達は話し合いに……」

赤鬼「ちくしょうなんで俺達が門番の時にこんなこと……」

緑鬼「通せばいいのか!? 潰せばいいのか!?」

赤鬼「こんなことならまじめに話を聞いておくんだった……」

緑鬼「ま、魔王様に判断をあおってくる!」

赤鬼「あ! 逃げるのかてめぇ!」


赤鬼「……」

赤鬼「まあちょっとここで待ってくれや」

ゆうしゃ「う、うん……」

ドワァアアアアア!
ハァ!? ニンゲン!? ヤッチマオウゼ!
  ナンデニンゲン!? ヤベェ!
ウワァアア!! マオウサマー!!

魔法使い「お、大事になってるみたいね……」

赤鬼「向こうってことは川を渡って来たんだよな?」

ゆうしゃ「うん、そうだよ」

赤鬼「じゃあ……」

赤鬼「いや、やっぱりいい」

ゆうしゃ「?」

赤鬼「かってに話したらダメかも知れねえ」

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ガチャ

緑鬼「と、通せってよ!」

ゆうしゃ「!!」

赤鬼「マジか! じゃあ通れ!」

魔法使い「これは……うまくいくかもしれないわね」

ゆうしゃ「よし! いこう!」


赤鬼「い、一体どうなるんだ……」

ギィィイイ……

ゆうしゃ「あれっ?」

ゆうしゃ「まっくらだ」

魔法使い「おかしいわね……」

バタンッ

ゆうしゃ「ドアがしまった!」

魔法使い「ま、まさか罠!?」

シュボッ

ゆうしゃ「あかりがついた!」

ゆうしゃ「……あれ? ドアにはりがみが……?」

ゆうしゃ「ちょっとこれみてよ、まほうつかいさん」

魔法使い「あ……あ……」

ゆうしゃ「まほうつかいさん?」


ドラゴン「グォォオオオオン!!!」

魔法使い「ど、ドラゴン……」

ドラゴン「グルル……」

ゆうしゃ「ぼ、ぼくたちは はなしあいに……」

ドラゴン「グォオオオン!!!」

魔法使い「ひぃいいっ!!」

魔法使い「に、にに、にげっ!」

ゆうしゃ「わかった! にげよう!こっちに!」


ドラゴンB「グワァアアアアアア!!!」

ゆうしゃ「!! かこまれた!」

魔法使い「だ……」

魔法使い「ダメだわ……もうおしまいよ……」

ドラゴン「グルル……」

ドラゴンB「ガルル……」

ゆうしゃ「ま、まおうをだしてください!」

魔法使い「もう無理よぉ……話し合いどころじゃないわぁ……」

魔法使い「あぁ……」

魔法使い「死ぬならせめて向こう岸の……故郷で……」


魔王「ワハハハハ!! 滑稽だな人間よ!!」

魔王「500年の沈黙を打ち破り、何をしに来たかと思えば!!」

魔王「話し合いだと? 片腹痛いわ!!」

ゆうしゃ「あのひとが……まおう……」

魔王「ドラゴン2匹に腰を抜かす者に話すことなどない!」

魔王「情けなく逃げ帰り、この魔王の恐ろしさを語り継ぐがよい!!」

魔法使い「え……?」

魔法使い「逃して……くれるの……?」

魔王「どうした? ドラゴンの血肉になりたいのか?」

魔法使い「い、いえ! 帰ります!」

ゆうしゃ「……いっしょだ」

魔法使い「勇者くん何やってるの! 逃げ帰るわよ!肩を貸して!」

ゆうしゃ「まおうのセリフ、いっしょだよ?」

ゆうしゃ「ドアのはりがみに かいてることと」

魔法使い「……え?」

ドラゴン「アッ バレタ」

ドラゴンB「ダカラ アンキシロッテ イッタノニ」

魔王「う、うるさい! しょうがないだろう!」

魔王「500年だぞ!? 緊張するわ!!」

魔法使い「え? え?」

ゆうしゃ「あ! あのまおうよくみると……」

ゆうしゃ「やさしそうなおじさん!!」

魔王「!!」

魔王「そんなこと初めて言われたぞ!!」

ゆうしゃ「まほうつかいさん、だいじょうぶ?」

魔法使い「え……?」

ゆうしゃ「ぼくが きいたほうがいい?」

魔法使い「あ……う、ううん。 大丈夫よ」

魔法使い「……こほんっ」

魔法使い「魔王よ、最近我が国の近くでは魔物の動きが活発になっています」

魔法使い「この現象は……あな、あなたが関係しているのですか?」

魔王「魔物? どんなやつだ?」

ゆうしゃ「あばれおおざるです」

魔王「……」

魔王「そんなご当地系のやつの名前を言われても困るな……」

魔王「まぁ私が操っていたのだがな」

魔法使い「は?」

魔王「私が操っていたのだと言ったのだ」

魔法使い「ど...どうして...」

魔王「え?大体魔王ってそんなもんでしょ?後近くに人間住むとかマジ耐えれんわ もう無理」

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                 ゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/`゙
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ゆうしゃ「ひどい!!許さない!!」

魔王「まぁ今のはジョークとして...え?ちょまっ...」

ゆうしゃ「Artemis発射」

魔王「ほげえええええええええええええええ」

その後ゆうしゃは魔王の真相を伝え英雄になりましたとさ

~おしまい~

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