アリス「わんわんっ」 (37)

忍「アリス…まだ犬を飼う話を引きずっているのですか…?」

アリス「ううん。ただ、シノに日頃の感謝をこめてご奉仕しようかと、わん」

忍(なんてわざとらしい『わん』のつけかた…)

忍「それでどうして犬の真似を?」

アリス「犬は人に忠実だっていうし…日本人は犬が好きって聞いたから、わん! 忠犬ハチ公とか」

忍「なるほど…」

忍(そこで犬の真似というのも…どうなんでしょうか)

忍(アリスというよりは、カレンが考えそうなことですが…)

忍「…アリス、お手」スッ

アリス「わん!」ポン

忍(可愛いから良しとしましょう!)

忍「では、アリスは今日一日私のワンちゃんですね」

アリス「わんっ」

アリス(シノに恩返ししたいってカレンに相談したら、なぜか犬の真似をすることになって…

    正直どうかなと思ってたけど…意外とヒかれてないみたいでよかった…)

【一階】

アリス「イサミー」

勇「あらアリスが取りにきてくれたの?」

アリス「うんっ、わたしシノの忠実な犬だから」

勇「⁉」

アリス「じゃぁもらっていくね」トテトテ

勇(あの子たち…難度の高いプレイをしてるのね…)

アリス「シノ、持ってきたよ」

忍「ありがとうございますアリス。早速食べましょうか」

アリス「うん」ストン

忍「……」

アリス「……」

忍「…食べないんですか?」

アリス「わん」

忍「? …あ、犬だから食べれないってことですか?」

アリス「わん」コクリ

忍(妙なこだわりがあるんですね…)

忍「今は人間に戻ってもいいんですよ?」

アリス「わふ」フルフル

忍「んー……はい、アリス」アーン

アリス「!」

忍「大丈夫ですよ。ワンちゃんは雑食ですし。それとも私からの手渡しじゃ嫌ですか?」

アリス「そ、そんなことないよっ」ブンブン

アリス「あーんっ、……おいしいよ、シノ!」

忍「はい、よかったです」ニコー

アリス(シノはやっぱり優しいなぁ…わたし、今日はただの犬なのに…)

忍「そうだ、アリス。私、犬を飼ったらやってみたいことがあったんです」

アリス「どんなこと?」

忍「えっとですね…」トテトテ

アリス「シノ?なんで離れちゃうの…?」

忍「アリス」バ

忍「さあ、私の胸に飛び込んできてください!」

アリス「え、えぇっ!?」

忍「ほら、ワンちゃんって『おいでー』って言ったら胸に飛び込んでくるイメージがあって…憧れてたんですよ」

アリス「で、でも……」

アリス(シノに抱きつくなんて恥ずかしいよ…///)

忍「アリス」ジー

アリス「う……シノ…」

忍「さ、アリス」ニコ

アリス「!」ドキッ

アリス(シノが待ってる……い、行かなきゃ!)

アリス「し、シノっ!」タッタッタッ、ギューッ

忍「えへへ…アリスー」ギュー

アリス(幸せ……)スリスリ

忍「…ちなみにアリス」

アリス「なに?」

忍「アリスはいつまで犬になりきってくれるんですか?」

アリス「んー…さすがに学校ではちょっと恥ずかしいから…明日の朝までかな」

忍「…絶対ですよ?約束ですからね」

アリス「? うん」

忍「ふふ、ありがとうございます」

◇◇


勇「忍ー、この間貸した辞書返し……」

忍「あ、お姉ちゃん」

勇「あんたたち…なにやってるの?」

忍「アリスを私の膝の上に乗せて抱っこしながら金髪……もとい、頭を撫でている最中です」ナデナデ

アリス「し、しの…やっぱりわたし、この体勢は恥ずかしいよ…///」

忍「大丈夫ですよ、アリスは可愛いですから」キリ

アリス「どういうこと!?」

勇「抱っこするのはいいけど、なんで向かい合ってるの?」

忍「このほうがアリスの顔を眺めやすいので」

勇「はあ……まぁ、幸せそうで何よりだわ。じゃぁ辞書返してもらうわよ」

忍「はい」

勇「アリス」

アリス「?」

勇「頑張ってね」

アリス「う、うん」

パタン。

アリス(イサミ、なんか笑ってたような……気のせいだよね)

忍「アリス」

アリス(というか、この体勢はあんまり人には見られたくなかった…)

忍「…アリス」

アリス「あ、な、なに?シノ」

忍「そんなにお姉ちゃんが気になりますか?」

アリス「いや、別にそういうわけじゃ…」

忍「今日だけはアリスは私のものですからね」ギュ

アリス「っ…///」

忍「アリス、返事は?」

アリス「……うん…///」

忍「じゃぁ、今日は一緒にお風呂に入りましょうね」

アリス「えぇっ!?」パッ

忍「あ、なんで離れるんですか」

アリス「い、いや、だって…お風呂は…」

忍「今日のアリスはワンちゃんなんですよ。ペットは飼い主が責任をもって洗ってあげないといけません」

アリス「あ、洗っ…/// ぜ、絶対やだ!!」

忍「そんなに嫌がらなくても…」シュン

アリス「あ…シノが嫌とかじゃないんだよ…?……わたし、自分の体に自信ないから……」

忍「でもカレンとは一緒に入ったことありますよね?」

アリス「カレンは…小さい頃からそうだし…」

忍「…私は悲しいです…」

アリス「し、しのー……あぅ…」

忍「…じゃぁ、お風呂は諦めるとして、一緒に寝ませんか?」

アリス「あ、うん、それなら…」

忍(お風呂を断られた腹いせに思いきり抱きついて寝ましょう)

アリス(な、なんか嫌な予感が…気のせいだよね…)

アリス「…あの、ところでシノ」

忍「なんですか?」

アリス「そろそろ下りてもいいかな…?」

忍「ダメです」

アリス「うぅ…///」

忍「ところで、アリスはすっかり犬の真似を放棄してますよね」

アリス「ほ、放棄はしてないけど……だってシノが語尾はつけなくていいって言うから…」

忍「じゃぁ「わん」って鳴いてみてください」

アリス「えー………、わん」

忍「最初はあんなにノリノリだったのに…」

アリス「いや、だって……今の状況、恥ずかしいんだもん…」

アリス(シノとの距離がすごく近いし、シノはじっとこっち見てくるし…)カァッ

忍「普通ワンちゃんは抱っこしたら喜ぶものなんですけどね」

アリス「……」

忍「私は不甲斐ない飼い主です…」

アリス「~~っ、わんっ」ギュッ

アリス「し、シノは不甲斐なくないよ!」

忍「アリス…」

アリス「……大好きだよ、シノ…///」

忍「…えへへ、嬉しいです」

忍「アリスは本当に…優しくて可愛いですね。今日一日だけでも独占できて嬉しかったです」

アリス「……し、シノさえよければ、わたしはいつでも…その…シノだけのものに…」ゴニョゴニョ

忍「え?ごめんなさい、よく聞こえないのですが…」

アリス「っ…う、ううん!なんでもないっ」

忍「?」

◇◇


次の日。


カレン「あーりすーっ!」ガバァッ

アリス「ひゃぁっ!か、カレン、勢いつけて抱きついてこないで!」

カレン「OH、ごめんなさい…アリスが小さいこと忘れてマシタ」

アリス「ち、小さくはないってば!」



忍「……」

陽子「シノー、どうしたの?アリスたちのほうジッと見て」

綾「なにか考え事?」

忍「いえ…アリスは犬耳でも猫耳でもうさぎ耳でも似合いそうだな、と」

陽子「真面目な顔でなに考えてんだ…」

綾「陽子も犬耳似合いそうよね」

陽子「えー…綾のが似合うよ。猫耳とか」

綾「そ、そう?」ドキドキ



カレン「それにしてもアリス、今日はなんだかいつもと香りが違うヨウな…」クンクン

アリス「き、気のせいだよー」

アリス(シノと一緒に寝るからっていつもよりちょっと高いシャンプーをわざわざお小遣いで買ってきたとか……自分でもちょっとヒいちゃう…)

カレン「まぁどのみちアリスはいー香りデス!」



忍「…」

陽子「シノ?」

忍「やっぱり私、昨日アリスと一緒にお風呂入りたかったです…」ズン…

陽子(どうしよう、長い付き合いなのに幼なじみの言ってることが理解できない…)

◇◇

忍「アリス」

アリス「なに?シノ」

忍「また今度、ペットになってくださいね」ニコー

アリス「え…/// で、でも…その」

忍「…嫌ですか?」

アリス「……、ううん…シノが言うなら…する」

忍「ありがとうございますっ」

ーー

忍「ふんふんふーん♪」

陽子「なんかシノ、ご機嫌だなあ」

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