先輩「もしかしてわたしに好意があるんですか?」
男「う……」
先輩「……」
男「……」
先輩「……」 もぐもぐ
男(……何でこのタイミングでその質問が来ますか先輩)
先輩「……」
男「……」
先輩「……?」
男「えーっと」
先輩「はい」
男「……その、ですね」
先輩「判りました」
男「判るんですか」
先輩「どう答えようとしてたにせよ、
その躊躇の時間が内心を吐露してますよね?」
男「――はい」
先輩「理解しました」
男「え?」
先輩「……」 もぐもぐ
男「……その」
先輩「コロッケパンごちそうさまでした」
男「はい」
先輩「では、備品の確認に出掛けましょう」
男「……」
――理科準備室
先輩「B-3、鍵OK」
男「B-3、鍵OK」
先輩「次行きましょうか」
男「はい」
カツン、カツン
先輩「……まだ暮れるのは早いですね」
男「寒いっすね」
先輩「……」
男「……」
先輩「……」
男「その」
先輩「なんです?」
男「さっきのなんですけど」
先輩「はい」
男「俺、先輩のこと好きなんですけど」
先輩「理解しました」
男「……えっと」
先輩「資料室および準備室、鍵OK」
男「――鍵OK」
先輩「……」
男「……」
カツン、カツン
先輩「男くんの告白を理解し、受領しました」
男「……はい」
先輩「それで良しとしておいて下さい」
男「……うう」
先輩「だめですか?」
男「う、了解です」
先輩「よろしい」
――翌日、執行部室
からからから
男「こんにちはっす」
先輩「こんにちは」
男「今日は何かあります?」
先輩「部室連の管理規定会議の草案の印刷です」
カタカタカタ
男「草案なんていつ作ったんです?」
先輩「あと15分で出来ます」
カタカタカタカチョ
男「……」
先輩「……」
男「なんで変な音が混じるんすか?」
先輩「このPC、キーボードのTが欠けて
斜めになっているんです」
男「はぁ」
カタカチョカタカタ
先輩「別に実用に当たって差し支えはありません」
男「まぁ、そうでしょうけど」
先輩「……」
男「……で、なんで草案作ってるんですか?」
先輩「草案があると会議が手早く終わります」
男「そりゃそうですけど、そういうのは会長がするでしょ?」
先輩「会長はそう言うことをしない人です」
男「まぁ、そうですけどっ」
先輩「他人がやらないので自分もやらない。
その論理で始まるのは、限りないサボタージュの
エコーループです。それは不毛ですよ」
男「理解は出来ますけれど」
先輩「よろしい」
男「――」
カチャカタカタン
先輩「出来ました」
男「印刷しちゃいますか。職員室で?」
先輩「いえ、資料室がよいでしょう。
……まぁ、作業は終わりましたし。
もうちょっと放課後が深くなってからが良いでしょうね。
あそこは何かと騒がしい場所ですから」
男「ですね。待つのも馬鹿らしいし」
先輩「……」
男「……何してるんですか?」
先輩「いえ、時間を潰そうと」
男「潰そうと?」
先輩「座ってました」
男「……変な先輩」
先輩「そうですか? 立っているより自然です」
男「そうですけど」
男「先輩。……オレオ食べます?」
先輩「頂きます」
男「はい」
先輩「では」 パリパリ、クシャ
男「……」
先輩「頂きます」 もぐもぐ
男(先輩が食べてるのは、なんか和むんだよなぁ。
不機嫌そうとかみんな云うけど。
そんな事ねーと思うんだけどな-)
先輩「……」じぃっ
男「どうぞどうぞ」
先輩「良いのですか?」
男「残り全部食べてください」
先輩「頂きます」 もぐもぐ
男「……」
先輩「わたしは燃費が悪いんです」
男「そうみたいですね。細いのに」
先輩「小さくはありません。平均の範囲内です」
男「はぁ……」
先輩「……お茶が欲しく思うので買ってきます」
男「あ、俺行ってきます」
先輩「いいえ。わたしが奢ります。
男君はここで留守番しててください。
番ですよ?」
男「はぁ」
先輩「いってきます」
男「いってらっしゃい」
がらがら
男「なんか……」
男(微妙に距離、おかれてるのか?)
男(いや、先輩はいつもあんなもんだよなぁ……)
男「んー。んっぅ」
男「――うっわ、ちゃんとした資料。
いったい何時仕事してるんだ、あの人」
男(いつでもきびきびしてるから
下級生が怯えるんだよなー。あの人。
いや離してみても怯える可能性あるけど。
愛想ないから。ぷくくっ)
からから
先輩「戻りました」
男「お帰りなさい」
先輩「男くんの分は、ミルクティーです」
男「はぁ、ありがとうございます」
先輩「……」こくこく
男「頂きます」
先輩「……どうぞどうぞ。
いつも差し入れもらってますからね」
男「いえ、それは良いんですけどね」
先輩「男くんは」
男「……なんです?」
先輩「……」
男「……」
先輩「なんでもないようです」
男「さいですか」
――資料準備室、複合プリンタ
うぃんがしょーっうぃんがしょーっ
先輩「そっちでホチキスで留めてください」
男「ほいですよ」
先輩「はい」
男「……よっと」
うぃんがしょーっうぃんがしょーっ
先輩「やはり職員室のよりこちらの方が早いですね」
男「いや、それはここのが高性能なんじゃなくて
職員室のが信じられないくらいボロいだけですよ?」
先輩「見てるとイライラします」
男「あー。それは判りますね」
先輩「遅いプリンタは害悪です」
男「ごもっとも」
先輩「……」
男「……」
うぃんがしょーっうぃんがしょーっ
先輩「はい、どぞ」
男「後何種です?」
先輩「2種です」
男「了解」
とんとん、ぱちん。ぱちん。
先輩「男くんは、良くできた後輩ですね」
男「?」
先輩「……」
男(褒められたのかな?)「ありがとうございます」
先輩「はい」
男「……」
ぱちん。ぱちん。
――昼休み、食堂
男「と、ゆーことがあった」
男友「……保留、ねぇ」
男「保留なのか、やっぱり」
男友「無視されたと表現するよりはいんじゃね?」
男「無視、って訳じゃないと思うんですけど」
男友「本当のところは先輩のみぞ知るわけだ」
男「どうなんかなー」
男友「悩むな」
男「悩むよっ」
男友「悩んでも勝率は変わらん。全ては御仏の結縁の
奇なるところのおぼしめしだ」
男「なんだよ。生臭坊主」
男友「俺は坊主じゃない」
男「将来は継ぐんだろう、生臭坊主」
男友「うちの宗派は妻帯が認められてるんだ」
男「二股三つ股OKな宗派なんてあるかよ」
男友「人生経験を積んでこそ有徳の僧となれる。南無」
男「うっわ、なんか適当云ってる」
男友「煩悩即これ菩提」
男「おまえ、なんでハゲなのにもてるんだろうな」
男友「ハゲではない。剃っているのだ。
剃髪だ。最新モードだぞ? 2500年くらい前の」
男「おおざっぱな話だな、おい」
男友「まぁ、なんだ」
男「うん」
男友「速攻で城塞攻略が出来なければ
時間をかけるしか無かろう?」
男「時間か……」
男友「お前みたいに暗い眼鏡はそういうの得意だろう」
男「暗いとか童貞とか云うな」
男友「このような場合、もっとも効果を発揮するのは
……む。しばし待て」
ドーマン! セーマン! ドーマン!セーマン♪
直グニ呼ビマショ陰陽師 レッツゴー♪
男「最悪の着信音だな」
男友「あー。ミハル-? うん。大丈夫だ。
開けてあるよ。……ん? うん。はははっ。
そんなに気にするなよ。おやすいご用さっ」
男「うっわ、爽やかだ。……まぶしいっ」
男友「そうそう。たまたま手に入ったからね。
そう。おっけー。んじゃ交換しようか」
男友「ん。判った。じゃぁ、そだねー。
15時くらいにまたTell入れるわ。
……うん、もちもちっすよ?
ああ、それは期待しちゃうな。
いえいえ、めっそうもない。
いつでもミハルにやられてますよ。ええ。
ははははっ。じゃぁ、また後でっ」
ぽぴっ
男「……」
男友「ふむ、どこまで話したっけ。
……畢竟、お前の問題点というものはだな」
男「いや、お前すごいわ」
男友「どうした?」
男「その切り替えの早さ、尊敬する」
男友「用いては用に従う。禅の思想だ」
男「……マジですごい」
男友「こちらのことは良い。いまはとりあえず
男と先輩の先行きだろ?」
男「お、おう」
男友「まぁ、そういう距離感なら仕方ない。
ヒット&アウェイだな」
男「ヒットは良いとして、逃げて良いのか?」
男友「逃げろ。でも逃げすぎるな。
脇を締めろ、えぐり込め。
ジョー。立つんだジョー」
男「……難しい」
男友「俺の小ネタはスルーか」
男「反応に困る」
男友「お前は幸い馬鹿じゃねぇわけだし。
考えながらその辺やってみるべきだ」
男「うーん」
男友「意思表示はしたんだから、後はし続けるのが大事だな」
男「そういうものか。……判った」
――週明け、昼休みの執行部室
からから……
男「いますかー?」
先輩「男くんです」
男「お邪魔します。よいです?」
先輩「こっそりで」
男「ほいほい、こっそり了解」
先輩「……別に悪いことはしてないのですが」
男「まぁ、昼休みにこの部屋勝手に占領ってのもね。
食堂のみんなに申し訳ないだろうし」
先輩「役得です。享受しましょう」
男「先輩、ご飯は?」
先輩「購買のパンです」 がさがさ
男「飲み物もあるんです?」
先輩「ありますよ? 今日は紅茶です」
男「ところで」
先輩「はい?」
男「駅前で買ってきたフライドポテトがあるんですが」
先輩「……」
男「舌が火傷しそうなほど熱いヤツ」
先輩「……」
男「食います?」
先輩「頂きます」
男「はい、どうぞ」
先輩「これは熱いですね。用心せねば」
男「ナプキンこっちに置きますよっと」
先輩「では、遠慮無く」 もぐもぐ
男「じゃ、俺も飯にします。頂きます」
先輩「いただきます」 ぺこり
男「……」ちらっ
先輩「……」 もぐ
男「……」
先輩「美味しいですよ?」
男「あ、はい。どうぞどうぞ」
男(なんか、こうやって差し入れするのが
意思表示だっつーのが、
情けない気分ではあるんだけど。
これも貢いでいるって云うのかねぇ)
先輩「……」じぃ
男「へ?」
先輩「ここに線をひきますぅー」
男「その線を消しますぅー」
先輩「いえ……」もぐ
男「……」
がさがさ
先輩「男くんにはフライドポテトをもらったので
卵サンドをあげましょう」
男「良いんですか?」
先輩「良いです。差し上げます」
男「んじゃ、頂きます」
先輩「……」
男(あーん、で食べさせてくれるイベントとか)
先輩「……」もぐもぐ
男(ありませんよねー)
先輩「……」こくこく
男「卵サンド、美味しいですね」
先輩「購買のサンドイッチは大抵いまひとつ
迫力に欠けるのですが、卵サンドに限っては
その迫力の無さが、良い具合にプラスの風情になっています。
つまり“しょんぼり美味しい”という類ですね」
男「しょんぼり美味しい……」
先輩「ちなみにレタスサンドはその対極です。
迫力の無さがむしろマイナス方向に働いた
“しょんぼり不味い”です」
男「はぁ……」
先輩「レタスサンドは罠アイテムです」
男「了解です」
先輩「……」こくん
男(やっぱ変な先輩だ。
でもそれなのに可愛く見えるんだから。
我ながら末期というか……)
先輩「美味しかったです、ごちそうさま」
男「いえいえ、お粗末様です」
先輩「……男くん?」
男「はい?」
先輩「胸触ります?」
男「え゛?」
先輩「――」
男「――」
先輩「――」
男「――」
先輩「……困りましたね」
男「いや、こっちこそ。ってかなんですか」がたりっ
先輩「大騒ぎしないでください」
男「~っ。うぅ、はい」
先輩「つまり、わたしの胸に触らないか?
と云う問いかけであり誘いです」
男「いや、えー。え゛~!?」
先輩「……うーん」
男「悩まないでください。意味はわかりました。
いや、よく判りませんけど。
そうじゃなくてっ。
つまり、なんでその発言に至ったかが
全然まったく判りませんけどっ」
先輩「ふむ」
男「なんでそんなに落ち着いてますかっ」
先輩「いや、自分の発言が巻き起こしてしまった
男くんの動揺にかえって落ち着いてしまいました」
男「んな理不尽な」
先輩「つまり、ですね」
男「はい」
先輩「男くんにはいつも差し入れをいただいています。
これには何かお返しをしたい」
男「はぁ」
先輩「ですから胸なんかどうかと思ったのです」
男「――」
先輩「そんなに無言にならないで下さい。
引かれているのかと思うと些か傷つきます」
男「や、その」
先輩「たかが脂肪のかたまりじゃないですか。
ラードや背脂みたいなものです」
男「それ、女性の台詞じゃないです」
先輩「喜んで貰えるかと考えたのですが」
男「なんの罠かと疑いまくりですよ」
先輩「ただのお返しですよ」
男「……」
先輩「ふむ」 じぃっ
男「なんですか?」
先輩「いや、もしかして。
男くんはお返しでそんな事をするのは潔くない。
男性としていかがなものだろう――
と、このように考えているのではないかと」
男(考えてましたーっ)
先輩「難しく考えすぎですよ」
男「簡単に考えても結論変わりません」
先輩「触ってから考えれば良いではないですか」
男「先輩はそういう人だったわけですかっ!?」
先輩「そうです」こくり
男「首肯せんで下さいよっ。副会長っ」
先輩「触りませんか?」
男「勘弁してください」
先輩「度胸がないと云われてしまいますよ?」
男「度胸より大事なものがあると思いたい派閥です」
先輩「ふぅ……」
男「……先輩?」
先輩「これでごまかせると色々お互い良いかな、
と思ったのですが」
男「――」
先輩「やっぱり、答えが先に欲しいと?」
男「もちろん」
先輩「……」
男「……」
先輩「……ふむ」
男「もっかい云いますけれど。
俺、先輩のことが好きです。
付き合って欲しいです」
先輩「それは、理解し、受領しました」
男「はい」
先輩「でも」
先輩「でも――。
やめておいた方が良いと思います」
男「なんでですか……?」
先輩「わたしは異性と恋愛的な文脈で
交際するつもりはないからです」
男「……」
先輩「男くんは、わたしの知っている中で
もっとも出来の良い後輩で、
性格が温かくて人当たりも良いでしょう。
他にいくらでも適当な相手が居ます」
男「そういう物じゃないでしょう」
先輩「はい」
男「……俺は先輩が良いです」
先輩「はい」
男「何でそう言うことを言いますか」
先輩「まさにそれが理由です」
男「?」
先輩「……」
男「……先輩?」
先輩「男くんのご家庭には、車はありますか?」
男「車? はい。えっと、上の兄貴がこないだ買いました。
軽自動車だけど、すごく喜んでいます」
先輩「なら、説明もしやすいですね」
男「どういうことです?」
先輩「車を購入して、嬉しい。
ドライブに出掛けよう。
都心までやってきた。華やかでいいなぁ。
喉が渇いたからそこらの喫茶店で珈琲でも飲もうか」
男「……?」
先輩「しかし、そこで思い知る。
“駐車場がないと自分は喫茶店には入れない”事を」
男「えっと、それってどういう話なんですか?」
先輩「車は生活を便利にします。
時には楽しみも与えてくれる。
でも、それなのに、人を限りなく不便にもする。
電車で遊びに行った時は
あんなにも簡単にできた様々なこと
途中で気が向いた店でお茶を飲む、
食事をする、買い物をする。
それなのに、それらは急に
満足に出来ないようになってしまう。
全てが“駐車”というキーワードで制約される。
活動範囲が広がったはずなのに、
移動範囲が広がったはずなのに
なぜか“車”と“駐車場”という場所から、
透明の鎖でも出ているかのように
行動範囲が設定されている自分が居る。
車を活動の中心に据えて考え始める自分。
それは選択自由度という意味でまさに本末転倒です」
男「……」
先輩「また例えばランニングコストの問題もあります。
ランニングコストは車種や
車の利用の仕方にも関係しますが、
駐車場代やガソリン代に始まり、
車検整備費用、自賠責保険料など圧縮の難しいものもあり、
その金額は一説には最低でも
年間40万円前後になるとも云われています」
男「……良く、判りません」
先輩「それが、所有すると云うことの真実です」
男「所有……」
先輩「所有することによって、
様々なデメリットやリスクが発生して、
結局思ったほど自由にはなれないものです」
男「そんな事はないと思います」
先輩「でも、正しい考察かと推察しています。
男くんはわたしを所有しても、
思ったほどのメリットは得られないと思います」
男「別に所有したいわけじゃないです」
先輩「では、リースで良いでしょう?」
男「リース?」
先輩「レンタカーのように必要な時に借りればいい。
ランニングコストもかからないし、
所有でない以上責任も軽く、
また契約も厳密でなくて良い。
様々なオプションもあり、車種もその都度変えられます。
これは非常に便利な制度だと云えます」
男「そうゆうのってなんかっ」
先輩「わたしのことをリースしたいというのなら
それはそれで検討します。
一緒に遊びに行ったり、
一緒に勉強したり、
食事をしたり、
相談に乗ったり。
全部リースで対応できますよ。
他に好きな女の子が出来た時もトラブルがありません」
男「そういうお金のやりとりのようなのは好きじゃないです」
先輩「説明が足りませんでしたね。
対価が欲しいという話ではありません。
男くんは優秀でお気に入りの後輩ですから
なにかを請求しようなんて考えてません。
ただ、わたしを所有しても良いことはないですから
一時的な契約で十分ではないか、
と云う話をしているんです」
男「……」
先輩「不機嫌にさせてしまいましたね。
ごめんなさい。謝罪します」
男「……」
先輩「お詫びに胸にでも触りますか?」
男「だから、そういうのは嫌です。
ちゃんと付き合ってもいない
人にそう言うことはしませんっ」
先輩「ええ、知ってます。
じゃなければこんな申し出、
怖くて男くん以外にはなかなか出来ません」
男「……」
先輩「わたしは可愛げ無いですよ。
世にツンデレなどというブームがあるそうですが、
わたしは表も裏もこのままです。
ニーズに応えられないと思うのです」
男「俺、子供扱いされてます?」
先輩「少しだけ」
男「聞き分けないな、と思ってます?」
先輩「少しだけ」
男「……了解。んじゃ、この話は一旦打ち切ります」
先輩「助かります」
男「別に諦めた訳じゃないんですけど」
先輩「友人関係。――もしくは同じ生徒会の
先輩と後輩で良いではないですか。
どうしてもと云うならリースで
学外にテイクアウトも受け付けます。
胸くらいなら触っても良いですよ?」
男「だーかーらー」
先輩「照れている顔も可愛いですね」
男「……」
先輩「気が変わるまで、ちゃんと居ますよ」
男「変わらないです」
先輩「その約束を信じるには
わたし達は少し歳を取りすぎていて、
その約束を誓うにはまだ少しだけ幼いんです」
――夕方、ケロケロバーガー
男「って訳で、ふられた」
男友「いや、すっげぇな。超打撃力だな。
達磨大師もびっくりだ。南無」
男「……」
男友「拙僧が聞いた断り台詞の中でも
間違いなく三本の指にの出来だぞ。
是非メモしておこう。そうしよう。何かの時に使えそうだ」
男「マジで勘弁して下さい」
男友「特に“他に好きな女の子が出来た時も、
トラブルがありません”って秀逸だよな。
なんか、“興味も好意もありません”を
迂遠かつ誤解の余地無く伝えるという離れ業だ。
公案でもここまで出来が良いのはなかなか」
男「えぐるなよ」
男友「抉ったのは先輩だ。俺のはただの再生だ」
男「えぐられてるんだよ」
男友「ふむ……」
男「なんだよ」
男友「ケロケロテキサス美味ぇな」
男「BBQソースなんてほっとけ」
男友「おっぱい触りたかったのか?」
男「それが重要な質問なのかよ?」
男友「もちろん。理趣経にもあるとおり
見淸淨句是菩薩位ってやつだ」
男「なんだよそれ」
男友「あー。つまりだな。えろい気持ちを持って
好きな女のおっぱいをみちゃうのはこれもはや
菩薩の境地であると、そういう話だ」
男「で、おまえ。おれが揉みたくなかった
って云ったらどうするんだよ」
男友「このインポ野郎と罵って校内で触れ歩く」
男「――触りたかったですよ? そりゃ」 ふいっ
男友「このエロ野郎。変態むっつりスケベめっ」
男「何が云いたいんだ、お前はっ!
両面待ちのダブルトラップかよっ!?」
男友「いや、お前贅沢だなぁ、と」
男「ふられてんだぞ」
男友「おまえ、先輩に惚れてたんだろ?」
男「そうだよ悪いかよっ」
男友「その先輩は、お前を丁寧に
ふってくれたんじゃねぇの?」
男「裏も表もきっちり焼かれて
サニーサイドアップどころかターンオーバーだよ」
男友「確かにお前、矢傷と切り傷でぼろぼろだろうけど」
男「わりぃか」
男友「その傷が、他の男についてたらどうすんの?」
男「――え」
男友「お前が諦めてくれるならデートでも
勉強会でもこれからのお友達づきあいでも
胸を触らせることでも、何でもやらせてやるって。
――そう言う台詞を、先輩が他の男に言う想像って
したことある?」
男「……」
男友「で、その傷、他の男にくれてやるつもりあるの?」
男「ない」
男友「独占欲、自覚したか?」
男「……した」
男友「相当格好悪いな」
男「うん」
男友「その格好悪さも菩薩の位だと諦めるべき」
男「おまえ、本当に坊主に向いてるな」
――晩夏、文化祭準備の執行部室
先輩「男くん。暗幕の配当どうなってましたっけ?」
男「この」ぺらっ「予定表です」
三年生男子「予備は……36枚か」
先輩「そうなりますね」
男「はい」
三年生男子「委員の方には何枚借りられる?」
先輩「割り当てどおり、五枚です」
三年生男子「余っているならもうちょっと
都合してくれてもいいじゃないか」
先輩「――」
男「出来ません。この余剰枚数は、
暗幕がすでに劣化していて破けていることも
計算にれてあります。
つまり正規配布が駄目だった場合の
正しく“予備”ですから」
三年生男子「でも、こっちの出し物でも
もっと欲しいんだよな。そもそも申請8でだしてんだけど?」
男「均等に配布した結果です、ご了承ください」
三年生男子「……ちっ」
男「でも、全ての暗幕配布が終わり、
事故がなかった場合には予備の36枚は動員可能になります。
その場合の-。えー、第二次配布リストがもう作ってあります。
このリストに、そっちの予約は記入しておきますよ」
三年生男子「おう。何番だ?」
男「2番です」
三年生男子「そっか。なら行けるかもだな。
生きの良い1年飼ってるじゃん」
先輩「うちの腕利きです。あげませんよ?」
三年生男子「けっ。お前のしごきについてきてるんだから
引っこ抜こうとしても無理だろ。まぁ世話になるわ」
先輩「はいはい。大きい声を出さないでください。
この時期は忙しいのですから」
――文化祭準備の執行部室
先輩「ふぅ……」
男「お疲れ様です」
先輩「いつ予備リストなんて作って運用始めたんですか?」
男「今日ですよ?」
先輩「だって、リストでは二番って云いましたよ?」
男「一番は自分ですから」
先輩「?」
男「自分が36枚の予備申請を出しているんです。
つまり、二番以下の人には当たりません」
先輩「……それは」
男「予備的措置です。
どうせ後でまたもめることになるでしょうしね。
一旦執行部のほうで内密に全てを差し押さえ、
そのあと力関係に応じて角の立たない配分にするほうが
良いかと考えました。
幸い、予備リストの順位という言い訳も効きますし」
先輩「うーん。男くんはこの半年で
ずいぶん仕事が出来るようになりましたね」
男「先輩の薫陶のお陰です」
先輩「前から素直で出来る後輩だったけど……」
男「お茶の用意できてますよ」
先輩「……頂きます」
男「お砂糖入れますね」
先輩「その魔法瓶も、半年だね」
男「……そうでしたっけ?」
先輩「……」
男「はいどうぞ。本日はグレープフルーツのゼリー
生物室の清水冷やしもあるんですよ」
先輩「嬉しいな」
先輩「……」もぐもぐ
男「……んせっと」
カチャカタカタン
先輩「何やっているのです?」
男「チェックリスト作ってます。
暗幕だけじゃなくて、長机とか、移動灯とか
音響設備とかもどうせ奪い合いでしょう?
それと体育館とかの特殊施設の仕様時間割を
付き合わせて、リソース配分を」
先輩「それは会長の仕事ではありませんか?」
男「先輩に言われても気になりませんね」
先輩「……」
男「やっぱこうやってみると、三年生の方が
なんだかんだで発言力がありますねー」
先輩「配分が偏っている?」
男「ですね」
先輩「多少バランスを取るべきですね」
男「了解ですー」
先輩「出来るんですか?」
男「出来ないとは言いたくないので、やってみます。
文化部の方にリソースをもうちょい振り分けて、
文化部のお古、ボロった機材を一二年に押し出す予定で。
文化祭の建前ですから、三年も文化系クラブには
文句が言いにくいでしょー」
カチャカタカタン
先輩「……男くん」
男「はい?」
先輩「いえ……」
男「はぁ」
カチャカタカタン
先輩「――ご褒美に胸触りますか?」
男「あー」
男(いや。もう、触りたいけど。
すっげぇ触りたいけどっ。
胸だけじゃなくて全部って云うか、
そう言うんじゃないんだよってのが
わかんないのかな先輩は。
つか、判っててやってるのか、こいつは)
男「結構です」
先輩「そうですか」
男「……」
先輩「……」
男「胸の代わりにお願いして良いですか?」
先輩「はい」
男「絶対うんって云って欲しいんすけど」
先輩「なるべくYesと云うようにします」
男「その胸触るって云うヤツ。
先輩が他の男に云うのだけは死んでもききたくないですね」
先輩「Yes」
男「……」
先輩「それは約束できます。
他の男性に云わなければよいのでしょう?」
男「ずいぶん、あっさりですね」
先輩「男くんには借りがありますからね。
あんなに……その。
傷つけた後も、普通に接してもらっています」
男「……」
先輩「それくらいの対価は安いものでしょう」
男「――いま二回目にふられた気分ですわ」 がくっ
先輩「はい?」
男「いえ、なんでも」
ごめん、こっちも眠気が。
ここで切るよ-。
もし残ってたら続き書くけれど、もしあれだったら
おとしちゃってくださいませ。
ごめんよぅ。
では、おやすみなさい。
――文化祭前日、夕暮れ。新校舎
パチン、カチン。
男「んっと。――よいせ」
先輩「男くん?」
男「おっと。先輩」
先輩「こんなところで何を?」
男「廊下の飾り付けを少々。この辺、殺風景でしょ」
先輩「一人でですか? どこの担当なんです?」
男「バレー部だったかな。
いや、手元に確認書類無いですけど」
先輩「質問の重心は“何故一人で”なのですよ?」
男「ここで作業してれば打ち合わせ
帰りの先輩と会えるかと」
先輩「で、本当の理由は?」
男「たまたま手が空いてるのが俺だっただけっすよ」
先輩「こんな場所で作業してたら、
指先が凍ってしまいます」
男「大げさだなぁ。校舎の中じゃないですか」
先輩「外と同じ気温です」
男「もうちょいで終わっちゃいますから」
先輩「何をしてるんです?」
男「電飾を」
先輩「そんなもの学校にあったんですか?」
男「なんに用途でしょうね。200m分くらい有りますよ」
先輩「ふむ」
男「もうガイド作ったから、こっちの端から
だーっとこの廊下の左右に飾ろうかな、と」
先輩「凝り性ですね」 くすっ
男「だって、ほら」
先輩「?」
男「美術室とか、離れているから。
美術部とか文化系クラブの連中、
文化祭なのに人が流れてこなかったら可哀想っしょ。
どっかの坊主みたいにナンパで
人誘える部ばっかりじゃないし」
先輩「そう……ですね。そう言えば」
男「執行部室にお茶暖めてあるんで。
先輩は良ければそっちにどうぞ」
先輩「いえ、手伝いましょう」
男「すぐ終わりますよ」
先輩「すぐ終わるならば、一緒に作業をして
一緒に部室に戻れば良いではありませんか」
男「……そりゃ」
先輩「どうすればよいです?」
男(こんな事で嬉しくなっっちゃってまぁ。
俺ってばなんて器のちいせぇ男だ)
先輩「こっちの十個ですか? あれ? あれ?」
男「それはコンセントに向かうケーブルですから。
こっちのはし、持っててくださいね」
先輩「これで良いですか?」
男「おけっす。で、俺が留めていくんで。
その束持ったまま、踏まないようについてきてくださいね」
先輩「判りました」こくり
パチン、カチン。
男「……」
先輩「……」
パチン、カチン。
男「……」
――あはははは!
ペンキねぇの? ペンキ!!
ジュースとたこ焼き買ってきたぞー!
先輩「賑やか、ですね」
男「前日ですからね。今日はみんな準備で
ずいぶん遅くまで残るんじゃないすか」
先輩「男くんはクラスの方はいいんですか?」
男「ええ、ノルマ果たしてあります。
見通し立ててましたからね、
早めに動いておきました」
パチン、カチン。
先輩「……いえ」
男「?」
先輩「その、旧校舎でしたよね?」
男「クラスですか? ほら、あのあたりっすよ」
先輩「明かりがついていて、楽しそうですよ」
パチン、カチン。
男「あー。ろり先生を男装させるとか云ってたから」
先輩「一緒に遊ばないで、良いんですか」
男「いまはこっちですねー」
パチン、カチン。
先輩「……」
――文化祭前日、宵。新校舎
男「おーわりっと」
先輩「出来ましたか?」
男「つけてみます?」
先輩「見たいですね」
男「では、どうぞ」 すっ
先輩「?」
男「スイッチですよ。格好悪くてごついですけど。
ここ捻ると、点きますから」
先輩「判りました」 ぱちん
ぱぁっ! ぱっ――ぱっ――
男「ぷっ」
先輩「あ。あははっ」
男「明滅するのかよ、これ~。あはっ」
先輩「良いではないですか。華やかで」
男「もしかしてクリスマスの電飾なんですかね」
先輩「そう言えば、そんな雰囲気もしますね」
男「こう言うのは好きですか?」
先輩「……好き?」
男「?」
先輩「そう言われると悩んでしまいますね」
男「そうですか?」
先輩「好きなのか嫌いなのか、と問われると。
……今まで真剣に考えてみなかった分野の
物事ですから判断がつきかねます」
男「変な先輩っすね」
先輩「そうですか?」
男「例えばよく考えた好きなものってあるんですか?」
先輩「味噌汁ですね」きっぱり
男「……」
先輩「豆腐と絹さやの味噌汁は好物です」
ぱっ――ぱっ――ぱっ――
男「ぷっ。あははははっ」
先輩「そんなに変ですか?」
男「いや、変じゃない。変じゃないんだけど」
先輩「味噌汁を好きな日本人は沢山いるでしょう?」
男「そうなんだけどっ」くくくっ
先輩「男くんは最近かわいげが足りません」
男「いや。くっ。……はい、了解」ぷぷっ
先輩「……」
男「さ、先輩。試運転は良いでしょう?」
先輩「そうですね」
男「執行部室に戻って、茶でも飲みますか。
魔法瓶だから温かいですよ」
先輩「出来がよい後輩は有り難いですが
最近は出来が良すぎる気もします」
男「虐められてますからねー」
――文化祭当日、昼休みの執行部室
からから
男「おじゃましまっす」
先輩「男くん」
男「あ、やっぱりいた」
先輩「ん?」
男「いや、多分いるんだろうな、と」
先輩「文化祭中は何かとトラブルも多いですから。
連絡がつく場所に生徒会の人間が一人くらいは
詰めておいたほうが、何かの役にも立つでしょう」
男「ま、そうですね-」 ごそごそ
先輩「どうしました?」
男「差し入れですよ。家庭科室から、焼きそばと、
カップケーキ」
先輩「買ってきてくれたんですか」
男「こっそりね」
先輩「ん。美味しい」
男「それは何よりです」
先輩「……」
男「……はい、お茶」
先輩「良いのですか? 廻らないで」
男「ああ、はい。ちゃんとスケジュールは管理してます」
先輩「そう、ですか」
男「先輩こそ良いんですか?」
先輩「わたしはクラスでも特例的扱いですからね」
男「へぇ」
先輩「どうも他の人とテンポが合いがたく
気詰まりを感じさせることもあり、
生徒会の仕事に没頭していた方が被害が少ないのです」
男「そうかな」
先輩「クラスでは、わたしはどうやら
相当気むずかしい人間だと思われているようで」
男「笑わないからじゃないですか?」
先輩「笑いますよ」
男「じゃぁ、ほら」
先輩「はい?」
男「いや、笑ってみませんか?」
先輩「出来ません、そんなの」
男「やっぱ笑わないじゃないですか」
先輩「時と場合。つまりTPOです。
この状況で笑える訳ないじゃないですか」
男「そうかなぁ」
先輩「では、男くんが手本を見せてください」
男「いいっすよ」
先輩「拝見します」 じぃっ
男「……う」
男(先輩、まつげ長い……。
ってか、くちびる、柔らかそう)
先輩「ほら」
男「え?」
先輩「笑えないではないですか」
男「いやちょっと待ってくださいよ」
先輩「はい」 じぃっ
男「……」
先輩「……」
男「いや。たんま。
これはタイミングが難しいんです」
先輩「わたしの論が実証されました」
男「ちゃんと笑えますって!」
先輩「それを言うならわたしだって笑えます」
先輩「わたしが気むずかしいだなんて
誤解だと思うのですが……。
これについては本格的に思考する必要がありそうです」
男(ほら、そのちょっと困ったような
怒ったような表情のせいだと思うんですよ。
俺としては。
――その顔、嫌いじゃないんですけどね)
先輩「ふむ……」
ガラガラガラっ
二年生「誰かいますかーっ?」
先輩「何かありましたか?」
二年生「体育館で、喧嘩があったらしくて」
男「あらら」
二年生「それは止めたんですけど。先生が。
それで、どこかの団体の大道具が壊れちゃって。
出来れば団体がどこなのかの調査と
手を貸して貰えればと」
先輩「行けますか?」
男「はい。リストそろえました。書き置きして」
先輩「行けます。案内してください」
二年生「はい、本当に。済みません。
その……結構仕事有りそうなんですけど」
先輩「はい」
二年生「二人で大丈夫ですか?」
先輩「心配はご無用です。出来の良い後輩がいますから」
男「はいはい」
二年生「そうですか。やっぱ良いですよね。
こうはいって、なんでか可愛いんですよねぇ」
男(体育会系だ。女子っておっかねぇ)
先輩「ええ。可愛いですよね」にこっ
男「先輩――(笑えるじゃ……)」
先輩「はい?」
男「いえ。んじゃ、体育館へっ」
――冬、新年、駅前
ゴォォォー。
――♪ ~♪ ~~♪
先輩「男くん?」
男「あれ。先輩。うっわ。
明けましておめでとうございます」
先輩「明けましておめでとうございます」
男「……」
先輩「とはいっても、来週になれば学校で
会えるでしょうけどね」
男「そりゃそうですけど……。
先輩何やってきたんです?」
先輩「わたしは模試の申し込みとか。
一応、受験生になりますし」
男「そう言えばそっか」
先輩「男くんは?」
男「押上のおじさんの家に年始の挨拶です」
先輩「ご家族は」 きょろ
男「ああ、酒かっくらってるので置いてきました」
先輩「そうだったんですね」
男(先輩、私服もクール系なんだな)
ゴォォォー。
――♪ ~♪ ~~♪
先輩「では、また学校ででも」
男「先輩っ」
先輩「はい?」
男「えっと。……ご飯を。どうです?」
先輩「お昼まだだったのですか?」
男「ええ。先輩は食べ……じゃなくて。
じゃなくて」
先輩「?」
男「ご一緒しませんか? 奢ります」
先輩「ふむ。奢られるのは不本意です」
男(駄目かぁ……)
先輩「想定メニューはなんですか?」
男「あー……。お、オムライス?」
先輩「オムライスですか?」
男(は、外したかぁぁ。つか、こんな中途半端な
ダメハブ駅でお洒落な店なんてねぇよっ)
先輩「オムライス。……良いですね」
男「え?」
先輩「それならご相伴しましょう。
しかし、奢りは無しです」
男「は、はいっ」
先輩「案内してくださいね?
わたしはこのあたりは疎いんです」
男「了解であります!」
先輩「ああ。駅ビルにあるんですか」
男「あんまり来ません?」
先輩「来ませんね。わたし、物欲薄いのだそうです」
男「ああ、そんな印象かも知れないですね」
先輩「しかし食欲はあります」
男「それも判る」
うぃん、かしゅーっ
ウエエエマイリマス
先輩「いつも思うのですが」
男「はい?」
先輩「何故この種のビルの飲食店は、
ビルの上層部にあるのでしょうかね」
男「ふむ」
先輩「衛生的な問題からも、水利施設の問題からも
低層階にあった方が良いような気もするんですが」
男「なんだかで読んだことありますけど、
まずは食い物で上の方まで登らせておいて、
それからエスカレーターとかで下のフロアに
移動させるとかいう、なんですか。
モノの売り方に関係あるような話でしたよ」
先輩「なるほど。売るための知恵ですか」
男「きっと腹がいっぱいになると
思考力が鈍って財布の紐がゆるくなるとか、
そんな話なんじゃないでしょうかね」
先輩「わたしには縁のない話のようですね」
男「それはそれで寂しいっすね」
うぃん、かしゅーっ
ハチカイフードフロアデゴザイマス
先輩「だからここに来たのも初めてですよ」
男「そっか。学校の連中は
結構遊び場にしてる見たいですよ?
近場の駅ビルだから」
先輩「そうなんですか」
――駅ビルの飲食店
男「あ。ここです」
先輩「ふむ。オムライスが沢山ですね」
男「ファミレスっぽい値段で、
なんとなーく専門店っぽい雰囲気という。
……学生向け。かな?」
先輩「家族ずれもいるようですね」
男(デートで使いたいとは云えないよなぁ。
おれチキンだー。
なんかこういう、中学生っぽい店って云うのも
そういう選択肢しか無い自分に涙でそう)
先輩「ではメニューを検討します」
男「どうぞどうぞ」
先輩「……」 真剣
男「……」 ぺらっ
男(……真剣なのは先輩らしいけど。ぷくくっ)
先輩「決めました」
男「こっちもおっけですよ」
店員「おきまりですか?」
男「とろけるチーズのミートソースのオムライス。
それとアイスティー」
先輩「わたしは、モッツァレラチーズのトマトソース。
で、飲み物は。うーん。烏龍茶で」
店員「かしこまりました。繰り返させて頂きます……」
――♪ ~♪ ~~♪
男「改めまして、明けましておめでとうございます」ぺこり
先輩「昨年中は何かとお世話になりました。
今年もどうかよろしくお願いいたします」 ぺこり
男「……」
先輩「……」
男「う」
先輩「?」
男(考えてみたら、学校の外って初めてじゃないか!?)
先輩「……」
男(何か喋らないと。なんでもいいからっ)
先輩「?」
男「あー」
先輩「はい」
男「先輩はお正月はどうでした?」
先輩「普段どおりでした」
男「……」
先輩「……」
男(会話が続かないっ!?)
先輩「男くんはどこかに出掛けたのですか?」
男「えーっと。そうですね。
友と一緒に初詣に行きましたね。友の実家に」
先輩「お寺でしたっけ?」
男「ええ」
先輩「どうだったんですか?」
男「除夜の鐘はつきましたよ。
だから、初詣じゃなくてなんて云うんでしたっけ」
先輩「二年詣?」
男「それです」
先輩「お神籤とかするんですか?」
男「いや、それ神社でしょう? あいつのとこは寺だから」
先輩「そういえば、そうですね。
と、なると。巫女さんもいないのですか?」
男「ええ。そういえば、巫女がいないって落ち込んでましたよ」
先輩「落ち込むのですか?」
男「ええ、売り上げが落ち込むそうです」
先輩「ああ」 こくり
男「云われてみると納得ですけどね」
男「先輩こそ初詣は行かなかったんですか?」
先輩「行きましたよ。近所の小さな神社に。
でかけて、お参りして、家に帰るまで30分です」
男「早っ」
先輩「寒いではないですか」
男「それはそうですけど。……一人で?」
先輩「ええ」
男「……」
先輩「どうしました?」
男「いえ、なんでも」
先輩「あとはそうですね。餅を食べて勉強をして
餅を食べてミカンを食べて餅を食べていました」
男「餅ばかりですね」
先輩「前にも云いましたけれど、燃費が悪いんです」
男「そう言えば、そんな事言ってましたよね。
――云ってるそばから補給が来ましたよ」
店員「おまたせいたしました。
とろけるチーズのミートソースのオムライス。
こちらはモッツァレラチーズのトマトソースの
オムライスになります」
――駅のコンコース
……ゴォォォッ
先輩「……」ぶるぶるっ
男「寒いですね」
先輩「はい」
男「……」 すいっ
先輩「……? オムレツは美味しかったです。
ありがとうでしたね。良い店を教えて貰いました」
男「そうですか。ほっとしました」
先輩「何故です?」
男「店不評だったら寂しいじゃないですか」
先輩「いえ、美味しかったですよ。
とろけたチーズとオムレツは非常に合いました。
今度は別のメニューも試してみたいですね」
男「また来ますか?」
先輩「ええ」
男(良かったぁ)
先輩「胸、触りますか?」
男「へ?」
先輩「いえ。良いお店を教えてくれたお礼に」
男「触りません」
先輩「そうですか」
男「そういうの駅のホームで云うのやめてくださいよね」
先輩「では学校でなら良いのですか?」
男「あー。……先輩?」
先輩「はい?」
男「もしかして機嫌が良いんですか?」
先輩「すごく良いです。とても良いです。
オムライスが美味しかったから」
男「機嫌が良いと俺のこと虐めるのもやめてください」
先輩「そういう自覚はないんですけど……」
男「……(ため息)」
先輩「不愉快にさせたのなら謝罪します」
男「不愉快になんかならないですよ」
先輩「良かった」
男「先輩と一緒にいて、それはないです」
先輩「……」
男「……」
~♪ ~♪
先輩「来ましたね」
男「電車に入ればちょっとは温かいでしょ」
プシュー
先輩「そういえば」
男「はい?」
先輩「家族以外に二人で外食をしたのは初めてです」
男「……」
先輩「有意義な経験ですね」
男(胸さわるとかより、そっちのが
よっぽどご褒美ですわ。先輩)
――新学期、昼下がりの教室
男「進級おめでとさん」
男友「おたがいなー」
男「早いな。あっちゅぅ間だ」
男友「そうだな。花に誘われるミツバチのように
飛び回れば、あっという間に一年だ」
男「お前、そのうち刺されるぞ」
男友「これでもそのあたりは見極めている。
拙僧は真心を繋いでいるだけなのだ」
男「真心とか云うな。キモイから」
男友「全否定から入ってくれるな。
そっちこそ、最近先輩どうなん?
さすがに諦めたのか?」
男「いや」
男友「強情だな」
男「そんな都合良く“次”なんて見つからないし
見つけるつもりもないし」
男友「お前は高校生活を彼女無しで
全編押し通すつもりなのか?」
男「そうしたい訳じゃないけど。
先輩以外はいやだ」
男友「……」
男「悪いか?」
男友「仏教的には妄執の類なんだろうが、
お前の場合はきちんと蹴りをつけないと
縁が解けそうにもないだろうからなぁ」
男「……」 ふいっ
男友「お。あれだろ?」
男「ん?」
男友「会長さん」
男「持ち上がりで生徒会長ってな」
男友「いままでだって仕事の仕切りはしてたんだろ」
先輩「……」
三年生――? ――!
先輩 こくり
男「まぁね。実務には問題ない」
男友「んじゃ、適任だろう」
男「あの人、ああ見えて、結構危なっかしい」
男友「そうなのか?」
男「向こうは俺のことそう思ってんだろな。
で、こっちも相手をそう思ってる」
男友「……ふむ」
男「……」
男友「多少は上手く行ってるのか?」
男「あー」
男友「なんだよ」
男「よく判らん」
男友「濁世の事は全てそうだ。五里霧中だ」
男「また坊主節だよ」
男友「俺から見ると、結構仲良さそうに見えるぜ?」
男「悪かぁないよ。悪くは、ない」
男友「ふむ」
男「男子で一番仲がよいとかくらいまでは、
行ってるんじゃないかな」
男友「もう一息」
男「その一息が果てしなく険しいタイプなんだ」
男友「まぁ、下手に関係が安定すると崩すのが
大変だしな。速攻が一番成功率が高い」
男「それで玉砕した」
男友「覚えてるよ」
男「だいたいのところさー」 ぐいっ
男友「ん?」
男「あの人、好きとか嫌いとかよく判ってなさそう」
男友「それはないだろう」
男「なんで?」
男友「馬鹿じゃないから」
男「馬鹿じゃなくても、判って無いことはあるだろ」
男友「無いね。判りたくないって事はあっても」
男「……」
男友「おっぱい揉んでおきゃいいのに」
男「あのなー」
男友「そうすれば、いまとは多少違う風になれただろうに」
男「今さらそんな事出来る訳ねぇよ」
男友「それももっともだ。チキンだしな」
――春、北高への訪問
先輩「どうしました?」
男「いえ、別に」
先輩「緊張ですか?」
男「そんな事はないです」
先輩「北高は結構お嬢様高校ですからね」
男「そうなんですか?」
先輩「戦後しばらくは女子高だったそうですよ」
男「へぇ」
先輩「だから旧校舎は廊下とか細いのだそうで」
男「ああ、あれですね。綺麗ですね、桜で」
先輩「来たことありましたっけ?」
男「ないですね。話は聞いてましたけど」
先輩「話?」
男「友達の彼女(の一人)が北高ですんで」
先輩「わたしは二回目ですけど、気を楽に」
男「はぁ」
先輩「吹奏楽大会のうちあわせと
交流戦の記録の受け渡しくらいで
対して内容のある話じゃないですよ。
学区のお茶会なんて」
男「はぁ」
先輩「そわそわしてますね」
男「だってめちゃくちゃ手をふってるのって
俺たちにじゃありません?」
三階の窓 ぶんぶんぶんっ
先輩「……そうみたいですね」
男「急いだ方が良いのかな」
先輩「どうしたのでしょうか」
男「いや、俺にも判らないですよ」
――北高の廊下
北高書記「ようこそいらっしゃいました」
北高会計「ようこそいらっしゃいました」
先輩「お邪魔します」
北高書記「いまから被服室へご案内しますね」にこにこ
先輩「生徒会室じゃないですか?」
北高会計「被服室の方が広さがあるので。
お茶を飲むならその方が良いかと」にこにこ
先輩「ああ、そうなのですか」
男「お世話になります」
北高書記「いえいえ」
北高会計「今年の吹奏楽はそちらでやりますし」
先輩「そう言えばそうですね」
男「?」
――北高の被服室、お茶会
北高会長娘「ありがとうございますね、わざわざ」 にこっ
先輩「いえ、とんでもないです。
こんな席をセッティングしてもらって」
男「あー。これ、つまらないモノですが、お土産です。
アップルシフォンケーキ……とかなんですけど」
北高書記「ありがとうございます」 にこにこ
北高会計「いま出しますね。
座ってお待ちになっていて下さい」 にこにこ
男「北高の生徒会って女性だけっぽいですか?」
先輩「生徒の殆どが女性ですから。
商業科併設の所はそうらしいですよ」
北高会長娘「お茶をどうぞ」
先輩「ありがとうございます」
男「……」 ちらっ
北高書記 にこにこ
北高会計 にこにこ
男「なんか異様にフレンドリーな気がします」
先輩「……気のせいじゃないと思う」
北高会長娘「こほんっ」
先輩「はぁ」
男「……」
北高会長娘「まぁ、有り体に云います」
先輩「はい」
北高会長娘「うちは女子ばっかりなので
出会いがないです」がしっ
男「すごいストレートですね」
北高会長娘「そんなわけで、
そちらで吹奏楽大会というのは
結構校内では盛り上がっていまして」
北高書記 こくこく
北高会計 こくこく
先輩「そうなんですか?」
北高会長娘「ご存じないかも知れませんが、
去年こちらで大会を行なった時に出会った
そちらの高校と当校の女生徒が
その……交際を始めた事例が二件有りまして」
男「ああ。そう言うことですか」
北高書記「そちらの高校の男子は、その……
格好良いという学区でも評判ですし」
先輩「そうなのですか?」
男「ええ。制服が、ですけど」
北高会長娘「このチャンスに彼氏が
欲しいという娘も相当数いるわけで」
北高書記 こくこく
北高会計 こくこく
先輩「そんなに血道を上げることでしょうか」
男「先輩はここはひとまず黙っておきましょう。
多分ややこしくなるから」
男「お話としては判りました。
では、用件としては、おそらく吹奏楽大会の
開催の……細部を、こちらとそちらの生徒会で
詰めて教師の方に上げたい、と。
その方向性は、応援席の拡大とか、
交流あたりを絡めたいという話ですか」
北高会長娘「その通りです。話が早くて助かりますっ
えーっと……」
男「今年度から副会長をしています二年の男です」
北高会長娘「教師陣を説得するにも、
こちらの方の意思疎通が終わっていて、
計画のアウトラインが出来ている方が
説得しやすいだろうなぁ、なんて」
男「それは判ります。どういった規模を考えてますか?」
北高会長娘「んーっと」
北高書記「はいっ。吹奏楽部の、普通の部員が61名で」
先輩「61!?」
北高会長娘「この時期にわかにに増えたんです」
北高会計「恥ずかしいです」
北高書記「まぁ、そのぅ……。部員が61名と。
出来れば見学者というか、
観客の入場が出来るような形に」
北高会計「だめでしょうかね」
先輩「……」ちらっ
男「ふられちゃって良いですか?」
先輩「任せます」
男「部員が増えたのは、まぁ、体育館の舞台の大きさは
こちらの高校とも大差がないと思いますので、
こちらでの練習が通っているのなら問題ないかと。
ただ、そういうにわかな部員が増えているのであれば
旧来の正規の部員の肩のモチベーションもあると
思いますので二班編制にしても良いかと思いますよ。
61人を30人くらいずつに分けるとか。
もしそうなった場合は、吹奏楽のプログラム変更に
なりますので、あとで事務的な打ち合わせをすれば
よいかと思います。
……えーっと、観客というか、随行ですねー」
北高会長娘「……」 北高書記「……」
男「誤魔化して取り繕うことも出来るんですけれど
そうすると後が余計にややこしくなりそうですよね。
素直にここは親睦会というラインで説得するのが
良いかと思います」
北高会長娘「それで行けますかね」
男「いけると思いますよ。
そもそも吹奏楽の、例えば都の公式な大会と云うよりは、
うちの学区の交流的なイベントに過ぎない訳ですし。
生徒同士の交流を目的とした親睦会と
吹奏楽の組み合わせでいいでしょう。
一般生徒のアンケートによる優秀楽曲も選ぶと良いかな。
吹奏楽の大会は3時間くらいかな。
そのあと、引き続き体育館で懇談会でよいかと。
テーブルそのほかはこちらで用意できます。
後はお茶くらい有れば、済むでしょう?」
北高会長娘「そ、そうですか?」
男「企画書みたいなモノが必要ですよね。
それは……やっぱり実施校であるうちで作った方が
説得力有りますよね。んじゃ、それは作りますので」
北高書記「す、すみませんっ。ねだったみたいで」
北高会計 ぺこぺこ
男「あ。いえいえ。やっぱり高校生ですから。
彼女の一人も欲しいのは
こちらの学生の気持ちだって一緒ですよ、多分」
北高会長娘「本当にありがとうございます」
北高書記「ありがとうございます」
北高会計 ぺこぺこ
先輩「礼を言われるほどのことではないです。
それにまだ実施できると決まった訳でもないですし」
男「そうですよ」
北高会長娘「いえ、お世話になっちゃって」
北高書記「あ。お茶お代わりします」
北高会計「そうですねっ」
先輩「……」
男「カップル成立とかは横に置いても
和やかな感じで交流が進むと良いですね」
北高会長娘「はい」 にこっ
北高書記 こそこそ
北高会計 こそこそ
先輩「?」
――北高の玄関
北高会長娘「そう言えば、生徒会の
他の方々はどうされたんですか?」
先輩「当校は執行部方式なんです。
生徒会長以外は任命制ですから。
お手伝いの非常勤の人がいれば
わたしと男くんの二人で廻っちゃうんですよ」
北高会長娘「すごく効率が良くないですか?」
先輩「馴れていますから。
男くんは出来の良い後輩ですし」
北高会長娘「羨ましいですね!
二人っきりの生徒会役員室とか」
先輩「そう……ですか?」
北高会長娘「うちからすると天国っすなー。
じゃない、天国ですね。あははは。
女ばっかりだと、荒みます。ここだけの話。
潤い成分ゼロです」
北高書記「あのっ」
北高会計「本日は」
男「?」
北高書記「色々、そのお世話にっ」
北高会計「これ、お土産ですので! 紅茶の葉ですっ!」
男「ありがとうございます。
こちらこそ美味しいお茶を頂いて。ども」
北高書記「そ、それでですねっ!」 がばっ
北高会計「はいっ」 めらめら
男「なんでしょう?」
北高書記「そ、その。企画書の件とか、今後のことも
ありますので、その……めっ! あ。メアドの交換なんかっ」
男「あ、そですね。……いいですか?」 ピッ
北高会計「わっ。わたしもよろしいでしょうかっ」
男「はい? 構いませんけど」
――北高からの帰り道
先輩「お疲れ様でした」
男「別になんもしてませんし」
先輩「感謝されてたではないですか」
男「実務じゃないですよ」
先輩「それでも、お仕事です」
男「はーい」
先輩「良い返事ですね」
男「先輩の教育が良いですから」
先輩「……」
男「……」
先輩「そんなに」
男「?」
先輩「恋人が欲しいものでしょうか」
男「あー」
男「あれは、んー。俺もよく判らないですけど。
まぁ、彼氏とか彼女とかいると、
学生時代が充実するというか、
そういう話じゃないですかね」
先輩「彼女達は充実してないのですか?」
男「いや、そういう訳じゃないと思いますが。
後から振り返って、感慨に浸りたいというか
寂しい訳じゃないけど物足りないというか。
……つか、なんで俺が女の人の考えを
代弁しなきゃいけないんですかっ」
先輩「……それもそうですね」
男「そうですよ」
先輩「……」
男「……」
先輩 ちらっ
男「どうしました?」
先輩「いえ、なんでも」
先輩「……」
男(あー。あの顔は)
先輩「……」
男(またなんか猛烈な勢いで考えてるな-。
仕方ないなぁ、先輩も。
どうするかな。
なんか甘い飲み物用意する……っていってもな。
どこかでお茶の誘い。いや、ケロケロバーガーかな)
先輩「男くんは」
男「はい?」
先輩「もてるんですね」
男「はぁぁぁ!?」
先輩「そのように観測できます」
男「藪から棒ですね」
先輩「胸触りませんか?」
男「触りませんっ」
先輩「触りましょう」
男「……え?」
先輩「要請です。触りましょう」
男「……なんで?」
先輩「……」
男「……」
先輩「……」じぃっ
男「……」
先輩「いえ、失言でした。取り消します」
男「……はぁ」
先輩「日が暮れる前に帰りましょう。
話しに出ていた企画書とかも作るんでしょう?」
男「それはまぁ。……あ、ちょっと」
先輩 すたすたすた
男「先輩っ」
――数日後、執行部室
からから
先輩「こんにちは、男くん」
男「こんにちはー」
先輩「何をしているんですか?」
男「先輩を待ってたんですよ」
先輩「何かありましたか?」
男「いやべつに。ケロケロポテト食べるかな、と」
先輩「頂きます」
男「はいどうぞ」
先輩「……」
男「……?」
先輩 すたすた、きぃ、かたん
男(……わざわざ隣に座ってくれるのか?)
先輩「……」もぐもぐ
男「美味いですか?」
先輩「美味しいです」
男(なんか不機嫌な顔に見えるんだけどなぁ)
先輩「……」ちらっ
男「?」
先輩「食べないんですか?」
男「食べますよ」
先輩「……」もぐもぐ
男「そういえば」
先輩「はい?」
男「例の企画書。送ったヤツ」
先輩「はい」
男「通ったみたいですよ。こっちも向こうも」
先輩「お疲れ様です」
男「はいな」
先輩「お疲れ様です」
男「はいな?」
先輩「……」
男(なんかまた不機嫌か?
……それとも、なんか考えてるのかー?)
先輩「男くんは、良くできた後輩ですね」
男「はぁ。ありがとうございます」
先輩「よく差し入れを持ってきてくれます。
わたしのエンゲル係数に付き合わせて申し訳ないです」
男(食べる割には大きくならないけどな。先輩)
先輩「……」
男「どうしました?」
先輩「オムライスを食べに行きます」
男「ああ。オムライス。また食べたいんですか?」
先輩「……」
男(違ったか。的中率悪いな、俺)
先輩「わたしが奢りましょう」
男「はい?」
先輩「私の方が年上ですから」
男「年上ですけど」
先輩「普段の差し入れのお礼を
いままでせずにきたのは問題がありました」
男「いや、こっちの勝手でやってることですから」
先輩「このままでは安心して卒業できません」
男「いや……そうやって精算されるのも寂しいというか」
先輩「オムライスを奢ります」
男「はぁ」
男「じゃぁ、いつ行きましょう? 明日の放課後とか?」
先輩「放課後は困ります」
男「そうなんですか? じゃぁ、日曜ですか」
先輩「はい」
男「じゃぁ、次の日曜で。昼飯で良いですよね?」
先輩「望ましいですね」
男「じゃぁ、待ち合わせは。駅ビルで良いですか」
先輩「メールします」
男「ああ、了解」
先輩「……」
男「どうしたんです?」
先輩「男くんは、余り大量に食べませんね」
男「燃費はわりと良いですね」
先輩「ふむ。判りました」
男(謎だ……)
――日曜、ルミネ入り口
先輩「お待たせしました」
男「待ってません……けど」
先輩「?」
男(なんだろ。先輩ってこんなに美人だったっけ?)
先輩「どうしました?」
男「なんでもないです」
先輩「いきましょう。お腹が減りました」
男「了解」
とてとて。
先輩「……考えてきましたか?」
男「何をです?」
先輩「どのオムライスを食べるか」
男「メニューもないのに無理ですよ」
先輩「前回見たじゃないですか」
男「覚えてないですって、ふつー」
先輩「前回は手慣れた様子だったので、
毎週行っているのかと思いました」
男「まさか。とんでもない」
先輩「ちなみに私はハヤシソースオムライスを食べるのか
エビとホウレン草のクリームソースオムライスにするかで
迷っています」
男「どっちも美味そうですね」
先輩「食べた経験は?」
男「その二種類はどっちもないですね。
カニクリームコロッケはあるけど」
先輩「美味しかったですか?」
男「かなり美味かったですよ」
先輩「……でもやはり、初志貫徹ですね」
男「……」
先輩「……」真剣
男(やっぱり、美人さんだよな。先輩。
髪の毛細いなぁ……。猫っ毛なんだろなぁ。
触りたいっつったら怒るだろうなぁ。
いや、胸よりは普通か?
普通だろ。常識的に)
――エレベーターの中
男「先輩?」
先輩「なんです?」
男「えー」
先輩「?」
男「髪の毛細いですね」
先輩「そうですね。まとまりが悪いのです」
男「……」
先輩「……触りますか?」
男「いいんですか?」
先輩「ちょっとだけなら」
男(なんだ、これ。すげーあがった来た)
先輩「どうぞ?」 くるっ
男「なんで背中向けるんですか?」
先輩「髪に触りやすいかと思って。
正面の方が良いですか?」
男「いや。あの……ちょっとだけですので」
先輩「男くんも変なモノに興味を持ちますね」
男(顔、赤い。やばい、なんか落ち着かないぞ)
先輩「触らないんですか?」
男「……じゃ」
さらっ。
先輩「どうですか」
男「ひんやりしてます」
先輩「暖かったら変でしょう」
男「そうですけど」
うぃん、かしゅーっ
ハチカイフードフロアデゴザイマス
先輩「つきましたよ」
――オムライス専門店、店内
先輩「……」真剣
店員「お決まりになりましたか?」
先輩「……はい。エビとホウレン草の
クリームソースオムライスとレモンティーで。
ハヤシには今回は諦めてもらいます」
男「じゃ俺はハヤシソースオムライスとレモンティーで」
先輩「!」
男「そんな顔すること無いじゃないですか」
先輩「何も言ってません」
男「そりゃそうですけど」
先輩「……」じぃっ
男(なんか俺が悪いコトした雰囲気だぞ)
先輩「味は教えてもらえますよね?」
男「りょ、了解です」
先輩「GWがあけたら、吹奏楽交流会ですね」
男「結局そうなりますね」
先輩「雨が降らなければいいですけど」
男「時期的にどうでしょうね」
先輩「準備はどうなりそうです?」
男「やっつけで良いんじゃないかと。
吹奏楽部と軽音に手伝ってもらって機材準備して
設営はボランティアでやろうかと思ってます」
先輩「ボランティアなんて集まりますか?」
男「そこは、ほら」
先輩「?」
男「北高の生徒にやってもらいますから」
先輩「ああ……。男くん企みましたね」
男「何も企んでませんよ。
でも、北高の女子が設営に参加してくれると、
うちの方からも参加するやつは居るんじゃないですかね」
先輩「やはり企んだように聞こえます」
男「俺じゃなくて、友のアイデアですって」
先輩「……そうですか」
――吹奏楽聞いてお茶飲んでカップルなんて幻想よりも
一緒に設営やって雑談しながら机だの椅子だの運んだ方が
何かと仲良くなってメアド交換のチャンスもあるだろ?
男「一応荒れでも未来の住職ですからね」
先輩「話を聞いてるとそういう印象もないですが」
男(いや、俺だって無いですけど)
店員「お待たせしました。
エビとホウレン草のクリームソースオムライスのお客様は」
先輩「私です」
すっ。かちゃかちゃ。
店員「こちらはハヤシソースのオムライスになります」
男「はい」
すっ。かちゃかちゃ。
男「食べますか」
先輩「そうします」
先輩「……」もぐもぐ
男「どうです?」
先輩「これは美味しいですね。
前回のチーズも捨てがたいですが……。
このエビとクリームのこくは良いです」
男「それは良かった」
先輩「……」真剣
男(すっげぇ集中して食べてるな。なんだか面白いや)
先輩「……」じぃっ
男「どしました?」
先輩「燃費がよい割に食べるのは早いですね?」
男「そりゃ、男ですから」
先輩「ハヤシソースはどうですか?」
男「美味いには美味いですけど、
ちょっと待ってくださいね」
先輩「?」
男「……ん。……。……はい」 カチャ
先輩「?」
男「えーっと、良ければ。気にならなければですけど
残りは先輩食べて良いですよ」
先輩「……っ」
男「そんなにぽかんとした顔しなくても」
先輩「してません」
男「まぁ、気が向いたらで」
先輩「……」
男(またなんか考えてるなー)
かちゃかちゃ。
先輩「その。男くんは。
この線のこっち側を食べて良いですよ?」
男「……(か、可愛いことをっ。ぷくくっ)」
先輩「男くんもきっとエビのクリームソースを
美味しいと思うはずです。美味しいですから」
男「はい。……っく。くくくっ」
先輩「なんで笑ってるんですか」
男「笑ってないです」
先輩「わけて上げませんよ。もう」
男「いや、もらいます。もらいますっ」
先輩「素直になれば良いんです。せっかくのお礼ですから」
男(でも笑っちゃうよな、どうやったって)
先輩「……んぅ。やはり想像通りハヤシライスの味ですね」
男「でも、黄身のとろけた部分と混ぜると、味が変わる訳ですよ」
先輩「そうですか。ふむ」もぐもぐ
男「どです?」
先輩「美味しいです。組み合わせの妙という意味では
そのエビのクリームソースよりも上かも知れません」
男「レトロっぽいあじが卵に合いますよね」 もぐもぐ
先輩「合います」
男「エビも美味しいです」
先輩「ですよね」
男(機嫌良いみたいだ。良かったな)
――駅ビルの中
男「では、ごちそうさまでした」
先輩「いつも差し入れてもらっているのですから
こんなのお礼のうちにも入りませんよ」
男「気にしないで下さい。
先輩に何か食べさせるのは俺の趣味みたいなモノなんで」
先輩「どうしてわたしな」
男「――」
先輩「あ、いえ。何でもないです」
男「はいな」
先輩「……」
男「……」
先輩「カロリーを少し消費したいです」
男「はい?」
先輩「本でも見に行きませんか?」
男「お供しますよ、もちろん」
いじょ。ENE切れです。
本日は寝ますです。明日には終わらせたいけど
落ちるなら方丈記方式で流すと云うことで1つ。
お休みなさい。
――体育館通用路、放課後
北高書記「あ、ありがとうございます」ぺこぺこ
男「いえ、気にしないで下さい」
北高書記「お忙しいのに案内させちゃって」
男「あんまり忙しくもないんですよ。
部活みたいなもので毎日放課後は残ってますから」
北高書記「そうなんですか?」
男「うちは生徒会“役員”じゃなくて“執行部”ですから」
北高書記「?」
男「“部”なんで、部活なんですよ」
北高書記「そうなのですか~」
男「好き勝手に事務やってるだけの部ですけどね」
北高書記「でも、男さんがいて助かりましたよ」
男「雑用係ですから」
北高書記「あ、いえ、そう言うことではなく」
がらがらがらん
男「つきましたよ」
――体育館、放課後
北高書記「わぁ」
男「こんな感じです。広さとかはだいたい一緒でしょう?」
北高書記「ですね。バスケット2面で、
天井はうちの方がちょっと高いかな」
男「舞台は」
北高書記「えーっと、はい。緞帳の裏見て良いですか?」
男「どぞどぞ」
北高書記 たたたっ 「ひゃっ!?」
男「気をつけてくださいね。
ワックス塗ったばっかりみたいでして」
北高書記「す、っすみませんっ」 かぁっ
男「いえいえ」
北高書記「大丈夫みたいですっ」
男「はぁ」
北高書記「テーブルは」
男「16用意する予定です。
長テーブルで良いですよね、会議用の」
北高書記「ええ、そうですね」
男「ざっと並べて。計算してみたんですけど、
椅子はきっちりじゃなくて、
適当に置けばいいかな、と」
北高書記「?」
男「親睦会の参加者が読めないので。
最悪立ち見でも良いでしょう?
椅子をきっちり並べちゃうと、
人が入れなくなる可能性もあるので」
北高書記「そうですね……」ちらっ
男「んで、お茶くらいは予算で用意できると思います。
紙コップは200くらいでいいですよね?」
北高書記「は、はい」
男「お茶菓子は予算の関係できついんですけど。
まぁ、料理部かなんかに声をかけて」
北高書記「それに関しては、はい。
こちらの部を動員しまして。場所を貸して頂ければっ」
男(そういえば、お嬢様高校風味なんだっけ)
北高書記「えっと……出来ますか?」
男「あーっと。調理室でしょう? はい。
おそらく可能です。こちらの調理部にも話は
つけておきますが、もしかしたら合同と云うことも」
北高書記「それは全然」 にこっ
男(にこにこした人だなぁ)
北高書記「そ、そのっ」
男「はぁ」
北高書記「うちの会計が。
この間のおさげで眼鏡の娘ですけど」
男「はい?」
北高書記「男さんによろしくってっ」
男「はい……(なんで?)」
北高書記「いえ、他意はないんですがっ」
男「は、はぁ」
北高書記 わたわた
男「?」
北高書記「その、あれですけどねっ」
男「はい」
先輩「男くん。ここにいた」
男「ああ。先輩」
北高書記「お邪魔してますっ」
男「いま、体育館の案内をしてました」
先輩「いらっしゃいませ」
北高書記「男さんにお手間をかけさせています」
先輩「いえいえ。男くんは出来の良い後輩なので
云えばなんでもやってくれると思います」
北高書記「ですよね。お仕事できる感じですっ」
男(先輩……。あの表情は機嫌悪いのか?)
先輩「……」
北高書記「はい?」
先輩「男くん、どうしたんです?」
男「あ、いえ。なんでもないっすよ?」
先輩「表情が険しいです」
男(あれ? 気にかけてくれるの?
機嫌悪かったんじゃないの?)
先輩「――」じぃっ
北高書記「あのっ」
男「はい?」 先輩「?」
北高書記「もしかして、その。お二人はそのっ」
男「?」
北高書記「お付き合いなさってたりするんですかっ?」
男「あー」 先輩「……」
男(やっぱ、ここは俺が応える所なんだよな……)
男「いや、そういう事実はないよ」
北高書記「あ。そうなんですか?」 ほっ
先輩「男くんは一番出来が良くて可愛い後輩です」
男「え」
北高書記「ですよね。企画書なんてすごい完璧な作りで」
先輩「自慢なくらいです」
北高書記「判ります判ります」 うんうん
男「えー」
先輩「どうかしましたか?」
男「いえ、なんでもないです」
北高書記「やはり二人で生徒会の仕事を
ばりばりこなす訳ですか?」
先輩「ばりばりと云うほどではありません。
比較的無音ですね。静まりかえった部室です」
北高書記「静まりかえってる訳ですか。ふむふむっ」
男「……はぁ」
北高書記「二人で仕事山積みになったりしませんか?」
男「さして問題は……。ね? 先輩」
先輩「二人でやれば、時間は余るくらいですね」
北高書記「なんだか悔しいですね。
私たちは四人がかりでもパニックです」
男「仕事の量が違うんですよ」
先輩「後輩を使うのが肝心です」
北高書記「肝に銘じますっ。
いや私らが何か大きな仕事の度にパニックなのも
お茶会ばっかりで仕事棚上げにしているせいも
あるんですけれどね。あははは。
お恥ずかしいです」 しゅんっ
先輩「男くんの差し入れも相当ですから」
北高書記「え?」
男「あ。いえ、なんでもないです。
先輩っ。では、書記さんをお見送りしてきますんで」
先輩「はい」
北高書記「お見送りなんてっ」
男「いえいえ。ちゃんと送りします。校門くらいまでは」
北高書記「お邪魔しましたっ」
――夕暮れの校門
北高書記「ではでは、お世話になりました。
こちらのほうの段取りとか連絡状況は
メールさせて頂きます」
男「はい。お手数ですけど」
北高書記「いえいえいえ。
こっちから頼んだことですし」 わたわた
男「お役目ですからね」
北高書記「会長さん、すごくお仕事できそうな感じですよね」
男「出来るんですよ。うちの先輩は処理能力桁違いです」
北高書記「はぁ……。うちの会長も思いつきや
行動力だけじゃなくフィニッシュできる能力があれば
素敵なんですけどねぇ」
男「それは適材適所でしょう?
書記さんがこうして頑張ってくれてる訳だし」
北高書記「そっ、そうですねっ!」
男(元気の良い人だなぁ。
なんか、柴犬っぽいよな。この人)
北高書記「あの、ですね」
男「はい?」
北高書記「……」そわそわ
男「なんでしょう」
北高書記「こんど、うっ。打ち合わせで。
会計も来るので、その」
男「?」
北高書記「一緒にお茶でもどうでしょうっ?」
男「ああ。はい。いつでもどうぞ。
連絡して頂ければ、放課後は大抵部室にいますし」
北高書記「や、その。そうじゃなく」
男「?」
北高書記「いえ、そんな感じで……」しょぼん
男「はい。お待ちしてますね」
北高書記「今日はありがとうございましたっ」ぴょこんっ
男「はい、また今度」
――執行部室、夕暮れ
がらがらがらっ。
男「お見送り終了しましたー」
先輩「お疲れ様です」
男「ああ、先輩お茶煎れたんですか?」
先輩「煎れました」
男「云ってくれればやるのに」
先輩「いえ。……私がいれます」
とぽとぽとぽぽぽ……。
先輩「どうぞ」
男「頂きます」
カタカタカタ、カチョカタカタ。
先輩「……」
男「……」
男(なんか、すごい緊迫した空気……のような……)
カチョカタカタ、カタカタカタ。
先輩「……」真剣っ
男(声、かけずらいな……)
先輩「……」
男「……んっ。うーん」のびっ
先輩「男くん」
男「はい?」
先輩「あと10分で終わります」
男「ああ、はい」
先輩「……」
男「(ああ。了解) 待ってますからゆっくりで良いですよ」
先輩「忙しかったら先に帰っても――」
男「いえ、待ってますから」
――夕暮れの、帰り道
男「いけますかー?」
先輩「はい」
男「じゃ帰りますか」
先輩「そうですね」
からから、からから。
先輩「付き合わせたみたいで済みませんね」
男「同じ方向じゃないですか」
先輩「男くんは自転車なのに」
男「たいした距離じゃないです」
先輩「……」
男「……」
からから、からから。
男「それに、この時間ゆっくり
帰るのは嫌いじゃないですよ」
先輩「そうですか?」
男「商店街が好きなんですよ」
先輩「ああ」
男「この時間になると人も増えるけど、
良い匂いでしょ。お総菜とか」
先輩「そうですね。特に……」
男・先輩「揚げ物が」
男「あはははっ」
先輩「メンチカツとか、唐揚げとかが美味しそうです」
男「ああいうの見ちゃうとお腹が減りますよね」
先輩「買い食いはいけません」
男「そうですけどね」
先輩「でも気持ちはわかります」
男(あ。柔らかい表情だ)
男「~♪」
先輩「男くんは、あれ、食べたいですか」
男「まぁ美味しそうですよね」
先輩「では」 ごそごそ
男「?」
先輩「奢りましょう」
男「買い食いは禁止では?」
先輩「例外のない規則はありません」
男「自己言及的な話だなぁ」
先輩「少し待っていてください」
――あいよぉ! ん。はい、双つねっ。熱いよっ!!
男(先輩は、やっぱり美人だよな。
小さいけれど、可愛いって云うよりは、美人さんだ)
先輩「購入しました、どこで」 きょろ
男「あー。それじゃ」
――川沿いのサイクリングロード
シャァァー。
男「寒くないっすか-?」
先輩「大丈夫です」
男「先輩のいえって、橋向こうでしたっけ?」
先輩「えっと、本当に適当なところまでで」
男「いえ。メンチカツのお礼ですから。
ちゃーんと送ってきますよ」
先輩「すみません」
男(いや、この状況って結構役得なんだけどな)
先輩「……」きゅっ
男(役得だ!)
シャァァー。
先輩「……」
男「真っ赤ですねー」
先輩「?」
男「河が。ぎらぎらって」
先輩「はい」
男「……」
シャァァー。
男「ちょっと気合い入れますよ。橋だし」
先輩「降りましょうか」
男「大丈夫っ。先輩軽いから」
先輩「はい」
男「ん、せっと!」
先輩「……」 きゅ
男「大丈夫ですか? 先輩」
先輩「平気です」
シャァァー。
男「……」
先輩「男くん」
男「はい?」
先輩「これ」
男「なんです?」
先輩「……」
男(……え? わからん。何の話だ?)
先輩「……む」
男「む?」
先輩「……っ」 きゅっ
男(む? わっかんねーっ!?)
先輩「……」
――先輩の家の近くの公園
キュリっ
男「ここまでで良いんですか?」
先輩「はい。助かりました」
男「いえ、結構近いじゃないですか」
先輩「電車だと歩くんですよ」
男「そうかもですね」
先輩「……」ちらっ
男「ああ。あのマンションがそうです?」
先輩「そうです」
男「じゃ、また」
先輩「男くん」
男「はい?」
先輩「その」
男「……?」
先輩「その……」
男「はい」
先輩「なんでもありません」
男「……?」
先輩「送って頂いて、ありがとうございました」ぺこり
男「いえ、何度でも」
先輩「……」じぃっ
男「?」
先輩「帰ります」
男「じゃぁ、また明日!」
先輩「はい、明日」こくり
男「俺も帰りまーす」
きゅいっ。シャァァー。
先輩「……」
――昼休み、教室
男「……というわけで、よく判らん」
男友「判らんのか。衆生救いがたしだな」
男「うん」 もぐもぐ
男友「カァァァッツ!!!」
男「っ!? 何だよいきなりっ!」
男友「なっとらんだろ。来てるんだぞ、勝機が」
男「またまたぁ」
男友「いや、本当だぞ」
男「……そうなのか?」
男友「うむ。まぁ、焼餅だな」
男「そんな表情してなかったぞ」
男友「女の表情など参考にならない」
男「そうなのか?」
男友「真実は御仏だけがご承知だ」
男「すぐ坊主話で逃げるし。だいたい俺は……。
もう、一年前にふられてるんだよ」
男友「ふられて諦めたなら離れりゃいいじゃん。
諦められないのに、ふられたことを持ち出してどうする。
真言が足りてないからそうなるんだ」
男「……」 もぐもぐ
男友「はぁ……」
男「まぁ、自分でも煮え切らないのは、判ってる」
男友「そうな。拙僧はそれでも構わないけどな」
男「?」
男友「どうしようかとは思ったけど、
そろそろ良い潮時だから云うことにする」
男「なにを?」
男友「一年前にふられた顛末を聞いた時から
思ってたんだけどな」
男「うん」
男友「先輩って嘘とか上手じゃないだろう?」
男「そうな」
男友「あの振り方は、ネェよ」
男「……ない?」
男友「だって、“特定の異性を付き合う気はない”
けれど、けしてお前のことは嫌いじゃない。
だから“レンタカーみたいな臨時契約にしてくれ”って。
おまえ、そりゃ相当遊んでる……。
拙僧はこんな言葉を使うのは嫌いだけど
世間で言うところのビッチの台詞だろ」
男「……」
男友「断るにしたってもっと別の言い方は
幾っらでもあるだろ? そんな理屈は無いよ。
作り話にしたところで荒唐無稽すぎる。
お前はお前が振られた痛みで
それどころじゃなかったみたいだけどさ」
男「……」
男友「拙僧は云ってるその先輩とやらの方が
自分の云った台詞で瀕死の重傷に聞こえたね」
男「……痛い?」
男友「間抜けな顔をしてるな」
男「いや、理解が追いつかない」
男友「お前は、もうちょっとよく考えた方が良い。
時間をかけて長期戦で攻略するのと
“相手から告白してもらうのを待つ”のとは
まったく違うことなんだよ」
男「……」
男友「いつまで経ってもお気に入りの後輩で
いたいならそれも止めやしないけど、
どうすんだ? 今年が終われば先輩は卒業だぞ?」
男「……それは」
男友「うん」
男「いやだ」
男友「だろうなぁ」
男「行ってくる」
男友「おう。行ったんさい。御仏の加護を」
――昼休み、執行部室
がしょん!
男「先輩っ」
先輩「男くん。あんまり乱暴にすると引き戸が外れます」
男「はい」
先輩「……?」
男「……」
先輩「どうしました?」
男「あー。えっと」
先輩「はい」
男「……単刀直入に聞きますが」
先輩「なんですか? 急に」
男「先輩って俺のことどれくらい好きですか?」
先輩「――」
男「俺はかなり好きです。
っていうか、一年前より好きです。
そもそも、前回の話は何だったんですか」
先輩「前回?」
男「一年前の。個別契約で良い。
レンタルで良いってヤツですよ」
先輩「ずいぶん遡りますね。
そんな話は忘れてしまいました」そわそわ
男「嘘言わないでください」
先輩「……」
男「……」
先輩「……チャイムが鳴りますよ」
男「なりますね」
先輩「午後の授業です」
男「さぼります。先輩もさぼってください」
先輩「そういうことは」
男「後輩に免じて」
先輩「……」
りーんごーんりーんごーん。
先輩「あれは。話したとおりの意味です」
男「……」
先輩「取り立てて目新しい話ではありませんし
間違った話だとも思いません。
費用対効果において所有という概念は
かならずしも幸福には直結しない。
改めて考えてみれば、当たり前のことです」
男「……」
先輩「納得してくれないですか?」
男「出来ないです」
先輩「……男くんは、仕方ない子ですね」
男「子供扱いしようとしてますよね」
先輩「少しだけ」
男「聞き分けないな、困ったな、と思ってる」
先輩「少しだけ」
男「でも本当のことが欲しいんです」
先輩「母は……」
男「……」
先輩「娘の私から見てもなかなかに美しくて教養もあり、
性格は――多少潔癖なところはありますが、
それだって世間で言えば普通の範囲内の
優しい……可愛らしい人なのです」
男「先輩の、お母さん……」
先輩「しかし、父は……。まぁ、いうなれば
“娘や妻には紹介できない秘密の恋人”的な
パートナーを持っていました」
男「――」
先輩「母はずいぶんと憤慨し、悲嘆し――絶望したようです。
自負心もあったのでしょうね。娘の私から見てもその様子は
凄惨で、とても同じ世界に住んでいるとは思えませんでした」
先輩「母の地獄は個人的なもので
娘でしかない私に全貌が判る訳もありませんが
やはりそれは、所有したことに端を発するように思います。
父を所有したのに、父に縛られ。
父を中心に暮らしたのに、父に顧みられることはなく」
先輩「私は道徳的に見て、父が正しかったとは
まったく思いません。父が犯したのは罪です。
しかし、あの地獄にあって母を愛し続けるのは
なかなかに困難だと思わざるを得ません。
きっと父も母を所有して思ったのです。
“こんなはずじゃなかった”と。
結婚なんて、しなければ良かった。
そう思ったのに……手遅れでした」
男「――」
先輩「父がしたことは許せませんが
かといってそれで何かが解決するわけでも
未然に防げる訳でもありません。
相性が悪かった。運が悪かった。
色々あるとは思うのですが……。
あれはもう、出会ったのが悪かったとしか
云えないかも知れません」
先輩「でもやはり。
思うにそれは“所有”から端を発しているような気がします。
私にはまだよく判りませんが……。
彼氏が欲しいだなんて。
なぜ一人の人間の想いに応えるなんて
そんなに責任重大なことに耐えられるのか
みんなの行動が疑問で仕方ありません」
先輩「ですからやはり私は……」
男「先輩の話は、何となくは、判りました。
でも、先輩が俺のこと好きなのかどうかは、
それとは話が別です」
先輩「……以前にも話したとおり
異性とのお付き合いは……その」
男「付き合いは横に置いておいてください。
ただ単純に、どれくらい好きですか?」
先輩「……」
男「俺は異性の中では先輩が一番好きです」
先輩「……あ」
男「?」
先輩「その……」ふいっ
男「だめですか?」
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先輩「男くんは、良くできた後輩で……。
いつも仕事を助けてくれます……ので……。
好き、ですよ。それは」
男「……」
先輩「……一番だと思いますよ。家族以外では」
男「よかったぁ……」
先輩「え?」
男「この際だから云いますけれどっ。
先輩は先輩で、やっぱり相当危なっかしいですよ」
先輩「はい?」
男「いつも張り詰めてるし。表情怖いし。
威圧感ありますよ。美人だけど」
先輩「……びじん」
男「それは良いんです。下級生から見たら
怖いという話ですよ。
やれちゃうに勢いに任せて何でも仕事ため込むし。
水入れ過ぎちゃってフチから盛り上がってる
高価なグラスみたいな人ですよ」
先輩「それといまの話と何の関係が」
男「関係はないです」きっぱり
先輩「っ」
男「俺が先輩を好きなんです。
付き合って欲しいのは山々です。
やっぱり世間的な恋人のいる青春には未練があります。
でもだからって、この出来の良い後輩ってポジションが
嫌いな訳でもありませんよ。
このポジションだって先輩の一番ならそれで良かった。
だし、十分じゃないにせよ、次がある訳だし」
先輩「次……」
男「だから、俺は先輩以外好きな人作りませんから」
先輩「その約束をするには、まだ幼いと云ったはずです」
男「でも去年より一年は資格に近づいてる。
あと何年必要か判らないけど、
毎年更新すれば時間の問題でしょ」
先輩「そんな無茶な」
男「それで十分。ナイス条件です」
先輩「釈然としません」
男「異性では一番好きなお気に入りの出来の良い後輩、で」
先輩「……」
男「怒ってます?」
先輩「怒ってません」
男「なるべく先輩の要望に添った形だと思うんですけど」
先輩「……っ」
男「で、いままでどおり差し入れをして。
俺は先輩以外の女の人には懐かない。
今後は自転車での送迎も業務に含める。
先輩に呼ばれたらすぐ駆けつける」
先輩「それじゃ付き合っているのと
大差がないと思いますっ」
男「既得権ってそういう物じゃないですか」
先輩「~っ」
――授業中の校舎
男「おっけーみたいっす」
先輩「生徒会長が授業放棄して自主早退するなんて」
男「でも今さら出る訳にも行かないじゃないですか」
先輩「それはそうですけど」
男「窓から出ちゃいましょう」
先輩「え?」
男「外回りで玄関にいって、
駐輪所から自転車を出してエスケープ」
先輩「やけに手慣れていませんか?」
男「友の武勇談聞いてますから」
先輩「問題のある友人ですね」
男「問題がある部分は同意です」
かちゃ、ちゃ
男「どぞ」
先輩「高いですよ」
男「1m無いじゃないですか」
先輩「いえ……その」
男「平気ですから」
先輩「ひゃっ……。う」
男「大丈夫でしょ?」
先輩「……」ぱんぱん 「もうっ」
男「んじゃ、靴取り行きますか」
先輩「男くん」
男「はい?」
先輩「……」
男「なんです?」
先輩「胸、触りませんか?」
男「何云ってるんですか」
先輩「胸、触りましょう」
男「……」
先輩「要請です」
男「なんで?」
先輩「このままじゃ私が精神的優位に立てません」
男「そういう理由なんですか」
先輩「……恥ずかしくないとでも?」
男「そうは言いませんけど」
先輩「……さ、触りましょう」
男(……何でこういう流れになるんだよ~)
先輩「……」
男「えっと……では」
先輩「……男くん。すごく真剣な表情です」
男「そう言うことは言わないでください」
すっ
先輩「……」ぎゅっ
男「目をつぶったら判らないと思いますけど」
先輩「そんな事はありません」
男「無理しないでもいいじゃないすか」
先輩「とにかくっ。触りましょう」
男「触りますけど」
さわっ
先輩「……っ」
男「やっぱ無理してるっぽい」
先輩「検品は大事ですよ」
男「?」
先輩「男くんが……その。来年、ですよ?
いえ、再来年か。再来年、また私の後輩になったら」
男「はい」
先輩「もっと先まで触っても良いです」
男「いや、それ以前にもっと普通な接触とか
デートとかにしましょうよ」
先輩「それも含めて全部あげます」
男「え」
先輩「その時は、そのぉ。
……男くんに所有されましょう」
男「本気ですか?」
先輩「出来の良い後輩ですから」ふいっ
男「それは……かなり、嬉しいです」
先輩「先払いです。……男くんですから」
男「え。あ……。はい」
先輩「……」
男「先輩も真っ赤だ」
先輩「そう言うことは言わない。
まだ男くんのものじゃありませんっ」
――二人乗りの自転車
先輩「どこへ行くんですかっ」
男「ケロケロいきましょう。で、放課後まで時間を潰して」
先輩「結局学校に戻るんですよね」
男「まぁ、鞄もありますし。執行部の仕事もあるでしょ」
先輩「はい」
男「奢りますよ」
先輩「だめです。折半です」
男「それでも良いですけど」
先輩「彼氏じゃない人に奢られてばかりはいられません」
男「先輩にもの食べさせるの好きなんですよ」
先輩「へ?」
男「先輩に、差し入れするの。好きなんです」
先輩「何故です?」
男「食べてるところ可愛いから」
先輩「……」
男「……?」
先輩「もしかして今まで
そう言う動機で差し入れしてたんですか!?」
男「そうですよ?」
先輩「……っ」ぎゅうっ
男「先輩っ」
先輩「何でもありませんっ」
男「バランス悪いですって」
先輩「何でも、ありませんっ」
男「先輩っ」
先輩「男くんは本当に出来が良すぎて困りますっ。
来年一年目を離すのが心配になってきました」
男「良いじゃないですか。
呼べばすぐ駆けつける約束なんだから」
先輩「すぐですよ」
男「はいはい」
先輩「勉強もきっちりしてくださいね」
男「了解です」
先輩「それから、生徒会執行部の仕事も」
男「やっときます」
先輩「北高の生徒会とは必要以上に接触しないように」
男「へ? ――あ。はい」
先輩「……美人だってもう一回云うように」
男「はい?」
先輩「~っ。オムライスを全種類食べるまでは
男くんが責任を持って連れて行ってくださいね」
男「それは……。役得です」
先輩「男くん以外の差し入れは、
私だってもう食べたりなんか、しないんですからっ」
おしまい。
面白くないとかオナニーとか言ってる奴はただの中傷であって批評じゃない。
何の役にもたたないゴミのようなコメント垂れ流してるだけ。
「~が~だからつまらない」とかなら理解できるけど
3歳児じゃないんだから感情論でつまらないと一言だけ言われてもね・・・
評論家ぶって他人の作品を評価するならもうちょっとまともな評価しないと自分が恥かくことになるよ。
書いてる側もvipで書くとこうなるのわかってんだろうし
まわりはスルーしてればいいんじゃないの
>>443
書いてる奴も何の役にもたたないゴミだしちょうど釣り合いとれるなw
オナニーで恥かくことになるよ。
>>447
だよな
ID:jnOB9Vk/0みたいな気持ちの悪い一般人が顔真っ赤で食いつくから荒れる訳で
いやエロでも叩かれるわ
叩かれたくなかったらvipじゃなきゃやだやだーを卒業して大人しくパー速行けばいいw
○「」スレって誰でも書けるまさにオナニー
男「」
女「」
で作家気取りw
よく使う記号は///とw
こうすればvipで気持ちよくオナニー出来るって本出せるんじゃね?
俺天才wwwww
今ならオマケで頭の悪い一般人の信者も付くし!
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