黒髪娘「そんなにじろじろ見るものではないぞ」(1000)
男「あー」
黒髪娘「きょろきょろするな」
男「うん」
黒髪娘「やれやれ。茶はどうだ?」
男「いただき、ます。はい」
黒髪娘「しばしまて」
ことん
男「……熱ッ」
黒髪娘「猫舌なのか。ふふふっ」
男「悪いですかよ」
黒髪娘「いいや。似ているな、と」
さらさらさらさら……
男「……」
黒髪娘「ずいぶん落ち着いているのだな」
男「いや、結構一杯一杯」
黒髪娘「そうか」
男「質問は可?」
黒髪娘「もちろん」
男「ここはどこで、あなたは誰?」
黒髪娘「ここは温明殿(うんめいでん)と梨壺の間の
あたりにある小さな東屋の一つだ。
おおむねわたしの住処と云って良いだろうな。
と、云っても質問の答えには不十分か。
おそらく、質問の正答は、こうだ。
――ここは平安時代とよばれている」
男「……マジすか」
黒髪娘「私は尚侍(ないしのかみ)だ。
内侍司(ないしのつかさ)を掌握する役目を
承っている。従三位となるな」
男「……なにそれ?」
黒髪娘「判らなければ、そのままでよいと思う。
まぁ、政どころの女性の役人だ」
男(官僚なのか……)
黒髪娘「そちらの方は……」
男「あー。男です。多分、助けてくれたんでしょ?
ありがとうね。これも」
黒髪娘「ああ、その塗り薬は……。うむ。
傷によく効く生薬なのだ」
男「もう平気。かすり傷だし」
黒髪娘「ずいぶんと、落ち着いているのだな」
男「まぁねー」
黒髪娘「聞いて良ければ、なぜ?」
男「あー。ないしのかみ……さん? が」
黒髪娘「黒髪でよい」
男「ああ、んじゃ。黒髪が、さっき『似ている』って。
云ったじゃね? だから、もうちょっと詳しい事情も
知っているんだろうな、と。
その説明を聞くまでは仕方ないじゃん?」
黒髪娘「察しも良いのだな。敬服する」
男「そんなことは、ないけど」
黒髪娘「わたしは、その。……その方の」
男「俺も同じだ。男でいいよ」
黒髪娘「感謝する。男殿の、祖父君とは知己であってな」
男「爺ちゃん?」
黒髪娘「うむ、茶飲み友達というか。生徒というか」
男「……あ。ああっ!」
黒髪娘「?」
男(あな。そうだ。俺、爺ちゃんの家、掃除してた
納戸の奥の長びつのうち側が真っ黒で、
俺はその中に“落ち”て……)
黒髪娘「……我が東屋に唐突に現われたので、
祖父君との知り合いか親族だと考えていたのだ。
幸い祖父君から男殿の容姿は聞き及んでいた」
男「そっか……」
黒髪娘「祖父君は何度もこの東屋を訪れてくれた。
わたしに色々と教えてくれたのだ」
男「爺ちゃんは、小学校の先生だったんだよ。
引退した後もちゃんと先生だったんだな……」
黒髪娘「尊敬申し上げている」
男「……」
黒髪娘「祖父君は……」
男「うん」
黒髪娘「やはり……身罷られたのか」
男「……うん。癌」
黒髪娘「病か」
男「うん」
黒髪娘「何とはなしにそんな気がしていた。
痩せていったし、疲れやすくなっていた。
返せそうもないほどの恩を受けている。
最期の様子を聞いても良いだろうか?
男「病院で、家族に囲まれて。最期まで冗談言ってたよ。
俺には優しくてさ。おれ、ほら。
名前の一文字は、爺ちゃんからもらったから。
二束三文だろうけれど、爺ちゃんの家も俺がもらった。
山の麓だし、古い平屋だけど。庭が綺麗だからって。
その二話で、小さい頃は良く爺ちゃんに遊んでもらった」
黒髪娘「祖父君は磊落な方だった」
男「うん。あんなシモネタばっかり
小学校で云ってたのかよってな」
黒髪娘「ははははっ」 くすっ
男「納戸の掃除をしていて、あの長びつに……」
黒髪娘「判っている。それと対になるのが、
あちらの奥部屋に置いてある長びつなのだ。
唐渡りのものらしいが」
男「そっか。帰れるんだな」
黒髪娘「もちろんだ」
男「よかったぜー。ほっとしたよ。
大学だってバイトだってあるって云うのにさぁ」
黒髪娘「ふふふっ」
すっ
男「うわぅ」
黒髪娘「何を頓狂な声を」きょとん
男「急に触ろうとするから」
黒髪娘「なんだ。別に私は怪物じゃないぞ」
男(つか、近くで見るとすげぇ美人じゃんかよ。
人形みたいっていうか、すげぇ美少女って云うか。
いきなりひんやりした指で触わるな。慌てるだろがっ)
男「び、びっくりしただけ」
黒髪娘「ふむ。――まぁ、礼を逸していたか。すまぬ」
男「いや、そのっ」
黒髪娘「?」
男「ご、豪華で綺麗だからっ。びっくりした」
黒髪娘「? ああ。これか」
さらり
男「つか、すごい格好なんですけれど」
黒髪娘「萌葱の襲だ。普段着だな」
男「ハイスペック過ぎでしょ。
それ、和服……なの? めちゃくちゃ刺繍はいって
あれ、刺繍じゃないの?」
黒髪娘「こういう浮織なのだ」
男「すげぇなぁ」
黒髪娘「まぁ。尚侍ともなればな。これくらいは」
男「それに、その髪、すごいな!
真っ黒で、サラサラで、ろうそくの光できらきらで。
滝みたいに豪華だよなぁ!」
黒髪娘「それはっ……。褒めて頂いたのか? そうなのか?」
男「そうだけど?」
黒髪娘「そうか。ありがとう。――そうか」
男「なんか悪い事言った?」
黒髪娘「いや、嬉しかっただけだ。
そう言ってくれる人は、多くはないから」
男「そうなのか? ものすごく豪華なのに」
黒髪娘「ふふふっ。わたしは変わり者で……。
ああ、そうだな。ヒキコモリなのだ」
男「引きこもり?」
黒髪娘「そうだ。祖父君に聞いたのだが。
家に籠もって読書三昧の日々を過ごす
放蕩者を言うらしいではないか」
男「えー、っと。まぁ……間違ってはいないか」
黒髪娘「それゆえ、女房以外、余り人と会うこともなくてな」
男「そか(……美人なのに、もったいない話だなぁ)」
黒髪娘「しかし、夜も更けた」
男「あぁ、そうかも」
黒髪娘「男殿のお陰で、祖父君の最期を聞くことも出来た」
男「ん? そだな」
黒髪娘「感謝に堪えない」 ふかぶか
男「そんなに頭下げることないじゃん。
正座とか、土下座っぽくて怖いよっ」
黒髪娘「いや、気にかかっていたのだ。
お見舞いに行くことも出来ないゆえ。
物忌みはしていたのだが……」
男「いいっていいって。爺ちゃんの生徒さんじゃん」
黒髪娘「……あの長びつに入れば戻れる。
酒でも飲んで忘れてしまうと良い」
男「?」
黒髪娘「こんな気持ち悪い話は、
一夜の夢として忘れてしまった方が良い。
手間を取らせて本当に申し訳なかった」
男「へ?」
黒髪娘「時を超えて漂流するなど、出来の悪い戯作の
ような物語だろう? 祖父君は哀れみ深くわたしの
我が儘に付き合ってくださったが、普通に考えて
気持ちの悪い話だ」
男「それは……そなのかな」
黒髪娘「男殿には、大きな感謝を」
男「あのさ」
黒髪娘「なんだろう?」
男「黒髪は、いくつ?」
黒髪娘「歳か? 15になった」
男「中学生じゃんよっ!」
黒髪娘「はぅわっ」びくっ
男「なんでそんなに落ち着いちゃっているわけ?」
黒髪娘「びっくりするではないか。
――ごく普通かと思うが」
男「……」
黒髪娘「何か、まずかったのだろうか?」
男「……なんでもないけど」
黒髪娘「礼節を失うのは人として恥ずべきだ」
男「そりゃそうだけど」
黒髪娘「恩人の孫でもあり、また恩人の消息を伝えてくれた
この上なき恩人でもある。その男殿の平安を祈念したいのだ」
男「それはもう判ったけどよ」
黒髪娘「そうか」 ほっ
男「なんで、爺さんが何度も来たのかも判る気がするな」
黒髪娘「?」
男「俺も、また来るから」
黒髪娘「……良いのか? 気持ち悪くないのか?」
男「爺さんが出来たんだし、俺に出来ないわけがねぇ。
それに、爺さんが『あの家を頼む』って云った意味が
これじゃないかって云う気もする」
黒髪娘「よく判らないが」
男「また来っから」
黒髪娘「あの、それはっ」
男「また来っからな!」
ざくっ、ばたんっ
――祖父の平屋。納戸
どてっ。ごろっ
男「……って、ってって。脚! 小指! ぶっけたっ!!」
男「くはぁ痛ってぇ……。って」
男「どうやら」
男(戻れたか。……してみると、最初のは、
頭から落ちたせいで気絶したのか。
普通に足から入れば、ちょっと飛び降りるような
感覚なのかね……)
男「ま、いっか。安全に往復できるって判れば」
……良いのか? 気持ち悪くないのか?
男「なんか、物わかりの云い中学生とか気持ちわりぃっつの」
男「ったく。ヒッキーなめんな」
――数日後、典侍の東屋
ぼて。がたっ
男「おーい! 黒髪~」
からから
黒髪娘「男殿ではないか。本当に来てくれたんだなっ」
男「ちゃんとそう言ったじゃねぇか」
黒髪娘「いや、あれは。その……。
社交辞令というか、虚ろ言かと」
男「なんでそう思うかなぁ」
黒髪娘「それは、女房達がそういう風に」
男「女房ってなに?」
黒髪娘「ああ。それは、ん……。侍女? 召使い?
そのような存在だ。生活を補佐してくれる」
男「ああ。うん(そか、こいつかなり偉いんだもんな)」
黒髪娘「男性の去り際の言葉は信じるものではない、と」
男「なんだかなぁ。すげぇ耳年増な」
黒髪娘「そ、そうか? すまない」 しゅん
男「まぁ、いいや。黒髪はヒッキーなんだろう?」
黒髪娘「うむ、ヒキコモリだぞ」
男「まぁ、そんなわけで色々もってきたわけだ」
黒髪娘「?」
男「まずはー。びゃーん。シュークリームっ!」
黒髪娘「お、おおっ!!」
男「お、すげぇ反応」
黒髪娘「それは知っている!!」
男「なんと!」
黒髪娘「祖父君に頂いたことがあるっ」
男(熱い視線だ。ふふんっ。やはりな。作戦成功だ)
黒髪娘「頂けるのか」
男「うむ」
黒髪娘「感謝する」 ふかぶか、ぺとり
男「だからいきなり土下座はやめれっ」
黒髪娘「そう言うことならば、一席設けよう」
男「一席って?」
黒髪娘「飲むものくらい欲しいのではないか?」
男「ああ、うん」
黒髪娘「茶を入れる」
男「ああ。そう言えば前ももらったっけ。茶、あるんだ」
黒髪娘「うむ、飲むのは貴族だけだが。
祖父君も好きだったゆえこの庵でも沸かすことが出来る」
男「そかそか」
黒髪娘「ぬるめがよいのであろう?」 にこっ
男「あ。……うん」
黒髪娘「?」
男(不意打ちで笑われるとびっくりするな。
やべぇやべぇ。こっちも引きこもり同然だと見破られちまう)
黒髪娘「しばし待っていてくれ」
男「おーけー。この部屋にいればいいのか?」
黒髪娘「うむ、準備をしてくる」
男「ふぅむ。なんか、すかすかした部屋の作りだなぁ」
男(これは……箱? ああ、本か。和綴じの)
ぺらぺら
男「うへぇ。古典だ。あいつ古文読めるのか?
ってあたりまえか。これがあいつらの現代語か。
……これは植物か、薬草かな?
こっちのは、なんだろう。
オカルトか? こっちは漢文か
毎日本を読んでいるとか云ったもんな。
結構あるなぁ」
ぺらぺら
男「ってか、多いな。おいおい。こっちのは天文に見えるな」
男「……よく分かんないけど、平安の中学生って
こんなに勉強するのか? どんだけやってんだ?」
からん
男「お」
黒髪娘「待たせたな」
男「いやいや」
黒髪娘「冷ましてある」
男「ありがとう。ほら、これ、シュークリームだろ」
黒髪娘「わぁ」
男「で。これが堅焼ポテチ。
こっちは俺の好きなサラダせんべい。
で、カントリーマァムと、
抹茶ポッキーと、羊羹と……」
黒髪娘「なんだ、それらは」
男「おやつだよ」
黒髪娘「菓子……なのか?」
男「そうだね」
黒髪娘「こんなにか?」
男「うん、何が気に入るか判らなかったしさ」
黒髪娘「……」そわそわ
男「もしかして、結構気になっている?」
黒髪娘「そんなに不作法ではない」
男「これ、ちょと開けてみ?」
黒髪娘「?」
男「これは包装って云って、まぁ、包む紙みたいなもの」
黒髪娘「うむ」
男「ここを引っ張って」
ぺりぺり
黒髪娘「良い香りが」
男「で、あとはこの内側の小さな包装も」 ペリペリ
黒髪娘「! このように愛らしい菓子が出てきたぞ」
男「食べて」
黒髪娘「頂く……」ちらっ
男「いいよ、どうぞどうぞ」
黒髪娘「甘いっ! これは美味しい」 にこっ
男「そうかそうか」
黒髪娘「こちらも美味しいな」
男「うん。……爺ちゃんはあんまりもってこなかったの?」
黒髪娘「うむ。あ、いや。理屈は判っているのだ。
このような物は、本来手に入るはずもないわけで。
もし何らかの手違いでこの時代に残しては
大問題になってしまう、と」
男(ああ、そうか。……プラスチックやビニールが
遺跡から出土したら大変だもんな)
黒髪娘「そう考えれば、これらも……」
男「ああ、いいよ。そんなにしょんぼりしないで。
要するにばれなきゃ良いんだろう?
俺は爺ちゃんとはちょっと考えも違うしさ。
食い終わったら、残った包装紙とかは
全部きれいにこのコンビニ袋に入れてさ。
俺が持って帰れば、問題なしって訳だ」
黒髪娘「そうしてもらえるか?」
男「ああ。もちろんだ」
黒髪娘「しかし、このように高価な土産を頂いても
わたしには返せる物が余りにもないのだが……」
男「いやいや。構わないよ。
こっちって俺から見たら知らない国だからさ。
来てみると、どきどきして楽しいし」
黒髪娘「はははっ。祖父君も、あれは何か、これは何かと
いくつもいくつも問いを重ねてきたなぁ」
男「俺も聞いちゃうと思うけれど、ごめんな」
黒髪娘「かまわない。……その、男殿は、先生?
……それとも卜筮官や陰陽師なのか?」
男「へ?」
黒髪娘「いや、だから。祖父君は、子弟に学問全般を
指南する事を生業にしていたと聞く。
で、あるから、家系的に男殿もそうなのかと」
男「いや、俺は違うよ。まだ学生だよ。
教育いこうかどうかは、悩んでるなー」
黒髪娘「学生とは? 祖父君の言う生徒とは違うのか?」
男「あー。似たようなもの。ちょっと年が上になって
専門的なことを学んだり研究したり……」
黒髪娘「ふむ」
黒髪娘「よければ……」
男「?」
黒髪娘「わたしに祖父君に続いて、
学問の手ほどきをしてくれないか?」
男「えーっ。俺はそこまでの学識はねぇよ」
黒髪娘「そうなのか? 先ほどから話していても
知恵深く、賢者を感じるのだが」
男(そりゃ時代による格差だよ)
黒髪娘「……」
男「そんなにしょんぼりしないでくれ」
黒髪娘「していない」
男(表情に出ないけど、なんか判っちまうんだよな)
黒髪娘「していないのだぞ?」
男「何を勉強しているんだ?」
黒髪娘「それは、色々と」
男「ふむ。どんな?」
黒髪娘「大きく、文章、明経、明法、算だな。
他にも本草、天文、暦法なども調べている」
男「ちょっと聞きたいな」
黒髪娘「まず、文章(もんじょう)は、唐の歴史と漢文だ。
唐は我が国から見ても隣国だし文化も花開いている。
我が国は唐を手本にして居るから、それを知るのは重要だ」
男(歴史と漢文って事ね。この場合漢文ってのは
大学の一般教養で英語やるくらい必須って訳だ)
黒髪娘「明経は儒学を教える。この世の理と礼節についてだな。
明法は律令についてだ。法……律というのか? あれだ。
この辺は実学なので、位をえるためにはどうしたって必要だ。
算は算術だ。えっと、祖父君によれば、算数? だそうだ」
男「ああ、うん。だいたいは判った。
えっと、学ぶとどうなるんだ?」
黒髪娘「学ぶと?」
男「ほら。位がどうとか」
黒髪娘「ああ。大学寮というのがあって」
男「大学あるのか!?」
黒髪娘「もちろんあるぞ? 大学寮は式部省の一部なんだ。
ここは将来の有力な文官や武官を育てるところで、
陰陽寮とともに、この国の学問の頂点だ。
例えば明経道を教える大学博士ともなると正六位下
という非常に高い位階をえることが出来る」
男「そうなのかぁ。結構きっちりとした機構なんだな」
黒髪娘「殿上人にとって学識は、とても重要なんだ」
男「あれ?」
黒髪娘「?」
男「でもさ。黒髪ってさ」
黒髪娘「うむ」
男「なんだっけ、その。典侍(ないしのすけ)だっけ?」
黒髪娘「そうだ、従四位となる」
男「数字が小さい方が偉いんだろう?」
黒髪娘「そうだな」
男「じゃ、もうすでに偉いんじゃないか」
黒髪娘「……そうかもしれない」
男「じゃぁ、勉強する必要なくないか?」
黒髪娘「ああ。……うん。そうかもしれない。
でも……わたしは女だからな。
そもそも、この従四位も
学識で手に入れたものでもなければ、
自分で手に入れたものでもないのだ」
男「?」
黒髪娘「いや、よそ事をいった」
男「う、うん」
ことことこと
黒髪娘「もう一杯いかがだろうか?」
男「お、もらう」
黒髪娘「煎れよう」
男「えっとさ」
黒髪娘「ん?」
男「次は、サラダせんべい行っておくか?」
黒髪娘「開けさせてくれるのか?」 にこっ
男「ああ、いいぞっ」
黒髪娘「嬉しいぞ。かたじけない、男殿」
男(なんだか、中学生なのになぁ……。
年相応なんだか、大人びちゃってるんだかわからねぇ)
黒髪娘「~♪」
男(あんな表情も出来るのになぁ……)
――男の実家
姉「あら、あんたどこ行ってたの?」
男「あ? 爺ちゃんの家」
姉「ああ。あそこ、どう?」
男「んー。荒れ果ててないよ。何日か掃除したけどさ。
わりと良いな、あそこ。
俺バイクあるし、あそこ済もうかな」
姉「そうねぇ。人がいないと荒れ果てるって云うしねぇ」
男「なんか、結構愛着あるかも。俺」
姉「あんた子供の時はあそこの庭で
相当やんちゃだったからね」
男「そう?」
姉「まったくよぉ。心配で心配で母さん育児放棄よ」
男「心配してねぇじゃん」
姉「まぁ、お爺ちゃんも、すぐ取り壊したり
売られちゃったりしたら寂しいだろうしねぇ」
男「そうだなー」
姉「夜は?」
男「もちろん食うよ」
姉「父さんも母さんも遅いみたいだか、先食べちゃおっか」
男「うん。何食うの?」
姉「メンチと煮物」
男「む。良いね。庶民って物がわかってるね」
姉「あったり前よ。わたしクラスになるとね。
足の爪先から黄金の庶民オーラが出て
髪の毛金色で逆立つわけ」
男「すげぇな」
姉「サイバイマンくらいなら鼻歌交じりで倒せるのよ。
んっ。ほら、運んで」
男「へいへーい」
姉「あんたちゃんとやってんの?」
男「やってる」 こくこく
姉「ならいいけど」
男「さすがに、中学生に後ろから煽られると
勉強する気に多少なるわ」
――黒髪の四阿
がつんっ。すたっ
男 きょろきょろ
しーん
男「おーい、黒髪? いるかー?」
男「いないのかな。おーい?」
ぱたぱたぱたっ
友女房「お、男様っ」
男「!?」
友女房「男様でございますね。ほ、本日はっ。
はぁ、はぁっ」
男「いや、一つ落ち着いて」
友女房「は、はいっ」
男(なんか面白い女の人だな)
友女房「済みません。取り乱しました。
……黒髪の姫はご実家の方に向かっておられまして。
本日のところは、この友っ。
黒髪姫の腹心の女房、友女房がお相手いたします」
男「はぁ」
友女房「お疑いですか? 男様の件は姫より聞いています。
祖父君とも面識がありますし、そのぅ……」
男「あの、爺ちゃんさ。もしかして失礼なコトしなかった?」
友女房「……」
男「その、えーっと。ね?」
友女房「そ、それは……その。
めいどおっぱいとか云いまして」 ごにょごにょ
男「良し、合格。面識があるのは判った」
友女房「ほっといたしました」
男「苦労してるんだね」 ほろり
友女房「そう言ってくださると幸いです」
男「そっか、黒髪、居ないのか」
友女房「ええ。申し訳ありません」
男「まぁ、それはしかたないよ。
ケイタイで様子聞いてから来るわけにも行かないし」
友女房「ケイタイ?」
男「いや、こっちの話」
友女房「姫より、もし男様が来られるようならば
お相手をしてくつろいでいただけと
仰せつかっております」
男「そっか、どうしようかな」
友女房「?」
男「……。ん、いいや、 んじゃしばらく
お邪魔させてもらう。ってか、俺ここにしばらく居て良いの?」
友女房「ええ、ここは姫の引きこもりの砦ですから。
滅多に客人も来ません。少なくとも奥までは。
安心してくださって大丈夫ですよ」
男「ありがとう。ああ、女房さん、だっけ?」
友女房「友女とお呼びください」
男「友女さん。女房さんって結構人数居るんでしょ?」
友女房「この四阿には数人ですね」
男「じゃ、このお菓子、みんなで分けて食べてよ」
――四阿の一室
友女房「お茶を……あら、書ですか?」
男「ああ、うん。俺も勉強しようと思って」
友女房「そちらの書ですか? ずいぶん厚いですね」
男「面倒なんだわ、それ」
友女房「どうぞ」 ことり
男「ありがとう」
友女房「……」
男「……」
カリカリカリ
友女房「えーっと、その。男様」
男「ん?」
友女房「宜しければ、お召し替えをなさいませんか?」
男「なんで?」
友女房「実は前回いらっしゃった時も思ったのですが
男様は見た目はわたし達とたいして変わりませんから
狩衣でも着て頂ければ、もし誰かに見かけられた場合も」
男「ああ。あんまり不審に思われないで済む、と」
友女房「ええ、そうです」
男「いいですけど。そういう服ってあるんですか?」
友女房「ございますよ。僭越ながら用意させて頂きました」
男「申し訳ないです。じゃ、着ちゃった方がいいかな」
――着替え中
友女房「いえ、それは後ろ前が逆です」
男「え? え?」
友女房「紐を先に締めてから」
男「こうです?」
友女房「あら。意外に……」
男「うわぁぁん。見るなぁ!!」
友女房「ご立派ですよ? 男様」
男「生温かい励ましは要りません。
でも結構温かいですね。見た目よりは」
友女房「外歩き用の衣装ですからね」
男「はぁ」
友女房「太刀でも佩けばご立派な公達でございますよ」
そよそよそそよ
友女房「良い風でございますねぇ」
男「静かだなぁ。こんなに静かなの?」
友女房「もう夕暮れでございますから」
男「?」
友女房「内裏に出仕……勤めにいらっしゃる方は、
夜明け前にはいらっしゃいます。
昼には勤務を終えて帰られるのが普通ですよ」
男「そうなの?」
友女房「ええ、灯りがありませんから。
祖父君も驚いていらっしゃいましたが」
男「そっか」
そよそよそそよ
友女房「ささでもお持ちしましょうか?」
男「ささ?」
友女房「お酒ですよ」
男「え。あ。いや……。きゅるる」
友女房「むしろお食事ですね」くすっ
男「面目ない」
――四阿の一室
友女房「たいしたお持てなしも出来ませんが」
男「いえいえ。温かい匂いします。ご馳走の雰囲気!」
ことん、かちん
友女房「こちらは瓜の漬け、ササゲ豆の煮物、
赤魚の醤付けの干物です。あとは豆飯と
酒(ささ)を――」
男「あ、どうも」
とぷとぷとぷ
友女房「どうぞ」
男「頂きます」
友女房「……」にこっ
男「友さんは飲みませんか?」
友女房「わたしは女房ですからね」
男「……んー。頂きます」
友女房「召上がれ」
男「あ。美味いです! 魚すげー美味いっ!」
友女房「それは良かった」
男「いや、ほんと……ん。美味いです」
友女房「……男様は、姫様を普通に扱ってくださいますね」
男「へ? 普通って?」
友女房「いえ」
男「んー。俺は爺ちゃんと違って学が足りてないんで、
まだ色々と判って無いんですよね。多分」
友女房「ええ、まぁ……」
男「?」
友女房「我が姫にこんなことを言うのも何ですが、
姫は皆からは……
妖憑きのキチガイ姫だと云われておりまして」
男「なんでまた?」
友女房「まぁ、もう14ですし?」
男「――?」
友女房「14ですし」
男「よく判らないです」
友女房「14でまだ嫁いでも居ないわけでして。
もう時間の問題で15です。完全な嫁き遅れです。
それなのに宴にも出ず引きこもりで、お恥ずかしい」
男「!?」
友女房「なんですか、うちの姫は」
男(目が座ってる……)
友女房「幼い頃はそれはそれは清らかな心優しく
学問に優れた、それはそれは聡明な姫だったのですが」
男(いまでも勉強好きなのじゃないか?)
友女房「そのうち勉学にどっぷりつかってしまい
時間さえあれば、やれ漢詩がどうのこうの、
天文が巡ってどうのこうのと」
男(あー)
友女房「私どもがお世話をしない限り
碌に髪もとかさぬような出不精のダメ人間に」
男(あー)
友女房「届かれる恋文にも、漢詩で返事を……
しかも痛烈なのを送りつける始末。
和歌ならばともかく、あんなに堅い漢詩で
議論をふっかけられてしまっては返答できるのは、
いまは亡き道真様くらいにちがいなく」
男(あー)
友女房「わたし達も頑張ったんですけれどね。
すごく頑張って色々可愛い襲(衣服)を集めたり
年頃の女性の好む絵巻物をみせたり。
そんなものにはまったく興味もなく、
それでも身分だけは高いものですから
内侍司(ないしのつかさ)入りが決まって
これでなんとか普通になるかと思えば……」
男「?」
友女房「こんな秘密の離れを造って引きこもり三昧」がくり
男「はぁ……。もぐもぐ」
友女房「いえ、姫は悪い訳じゃないんですよ。
悪い姫じゃないんです。
……下々に至るまで優しいですし」
男「はぁ」
友女房「それにしたって、学問に操を捧げるとは
あんまりにもお労しいと……」
男「だってまだ14でしょ?」
友女房「もうすでに残念なことに14なんです」
男「はぁ」
友女房「ですから、せめて男様には姫のお心を
こう、軽やかに、出来れば浮き立った感じに
して頂きたいとか思うんですが」
男「それは本人のつもりがないとあんまり意味がないかと」
友女房「ダメですか」
男「ダメでしょ……もぐもぐ」
友女房「……」 がくり
男(つか、嫁き遅れなのか……)
友女房「なぁ、運も色々なかったんですが」
男「そうなんです?」
友女房「右大臣家のご息女ともなりますと。
お相手にも不足いたしますし……。
当代の東宮はまだ八つにしかなりませんしね。
本来であれば尚侍として後宮に権勢を振るうことも
いえ、我が姫には、似合いもしませんが……」
男「よく判らないけど。身分の高い姫が学問没頭で
婿捜しも放り出して恋愛音痴で婚期を逃したと。
そんな感じ?」
友女房「そうです」 こくり
男(つまり婚活放置で賞味期限間近の腐女子?)
友女房「どこでこうなっちゃったんでしょうか」
男「それは俺に聞かれてもなぁ」
さらさらさらさら
男「ごちそうさまでした」
友女房「お粗末様でした。ささは?」
男「いえ、もう結構です」
友女房「はい。では灯明はこちらに」
男「はい。もう少しレポートを薦めます」
友女房「レポート……勉学ですね?」
男「ええ、なぁ。こっちでやると捗るんで」
友女房「さようですか。姫からくれぐれも粗相の
無いようにと申し使っております。ご存分に」
男「ありがとうございます」
友女房「では……」
男「ふぅ」
男(まぁ、こっちの方が時間の流れが遅いみたいだし。
こっちで三日くらい勉強して帰っても
向こうでは数時間だしな。レポートあげるには都合がいいや)
――四阿。夜
こつん。かたん。
男「……?」
こつん。……きぃ。……きぃ。
男(だれだ? 泥棒?)
黒髪娘「……」こそっ
男「黒髪じゃん」
黒髪娘 びくっ。くるっ
男「あ。俺。お邪魔してる」
黒髪娘「男か。まだ起きていたか」
男「来てるの、知ってた?」
黒髪娘「ああ。女房が知らせてくれた」
男「どうしたんだ? こんな時間に」
黒髪娘「父様の説教がうるさくて、逃げてきた」
男「そうか」
黒髪娘「ん。ん」
男「どした?」
黒髪娘「火鉢を、かき混ぜて欲しい」
男「判ったよ。寒いのか?」
黒髪娘「こっそり牛車で帰ってきたのだ」
男「そうか」
がさごそ。……がさがさ。……ぽぅ。
黒髪娘「かたじけない」
男「いやいや。飯食わせてもらったぞ?」
黒髪娘「ああ。出来ればわたしが一緒にいて
世話を出来れば良かったのだが」
男「黒髪はずいぶん身分が高いらしいじゃないか」
黒髪娘「聞いたのか。友女だな。
……でも、身分なんて当てになるものではない。
わたしの物ではなくて、家のものだ」
男「そんなものか?」
黒髪娘 ふいっ
男(機嫌悪くしちゃったかな)
黒髪娘「男殿は、なぜ学生に?」
男「んーっと。それは進学ってことか?
やっぱし、就職。いや、何となくもあったかなぁ」
黒髪娘「そうか……」
男「寒いのか?」
黒髪娘「いや……。うむ。少し寒いな」
男「えっと、ごめん。ここ姫の部屋なんだよな?」
黒髪娘「部屋というかなんというか。
この時間では女房も起きていないだろう。
すまないが、その記帳を動かすのを手伝ってもらえぬか?」
男「ああ。これか? 間仕切りか」
ずり、ずりっ
黒髪娘「ん。これで多少は良いだろう」
男「えっと」
黒髪娘「そういえば」 くるっ
男「なに?」
黒髪娘「狩衣は似合っているな。始め誰だか判らなかった」
男「そうか。ははっ」
黒髪娘「ほら」
男「?」
黒髪娘「襲だ。それだけでは寒かろう?」
男「女物じゃん」
黒髪娘「蒲団のようにも使うのだ」
男「そうなのか?」
黒髪娘「わたしを信じろ。ほら、そこに座って」
男「ん」
すとん、ふわり
黒髪娘「こうすれば温かいだろう?」
男「あ。あ」
黒髪娘「?」
男「あったかいけど、近くない?」
黒髪娘「夜中に話すのだから、仕方ない」
男「そか」
黒髪娘「何をしていたのだ?」
男「レポート……あー。つまり、その。書き物だ」
黒髪娘「手紙か?」
男「いや、手紙ではなく、報告書みたいなものだな」
黒髪娘「そか。……うん、読んでも判らぬ」
男「あー。英文だから。つまり、唐じゃないところの詩だ」
黒髪娘「そうか。……これは?」
男「あ。お土産だ」
黒髪娘「漢詩ではないか!」
男「そうだよ。ほら、前回紙をもらってっただろ?
あれにな。図書館で漢詩を書き写してきたぞ。
マイナ処そろえたけど、どうよ?」
黒髪娘「……ふむ。……半分ぐらいは見覚えがあるな」
男「うわ。だめか」
黒髪娘「いや、とんでもない。
これだけ新しい漢詩をもらえるなんて、感激だ」
男「よかったよ」 にこっ
――夜。ふたりの襲の中
黒髪娘「温かいな。これはなかなか新規な経験だ」
男「あー。おう。その、さ」
黒髪娘「?」
男「菓子食うか?」
黒髪娘「いただこう」
男「……」
黒髪娘「……ふむ」
男(漢詩に夢中なのな)
黒髪娘「ん?」 くるっ
男「っ! なんだよ」
黒髪娘「いや、不思議そうにうなっていたから」
男「別になんでもない。ほら、食え」
黒髪娘「んっ。美味しいぞ」
男「そっか。ふぅ」
――。――ほぅ。
男「あれは?」
黒髪娘「?」
――ほぅ。――ほぅ。
黒髪娘「夜啼き鳥だろう」
男「そうか」
黒髪娘「まさか怖いのか? 怨霊は最近出るとは聞かないぞ」
男「いや、怖い訳じゃない。ちょっと緊張してるだけ」
黒髪娘「ふふふっ」 かさり
男「漢詩は良いのか?」
黒髪娘「あれは逃げない。少し男殿と話そう」
男「そうか。……何を話すんだ?」
黒髪娘「何でも良いぞ」
男「んー。そうだなぁ。こないだの音楽の話を聞かせてくれよ」
黒髪娘「あれに興味があるのか。あれは笙の笛だったかな」
男「笛か」
黒髪娘「この間は内裏で出世するのに学識が必要だと云ったが
やはり学識だけというわけには行かない」
男「ふむふむ」
黒髪娘「おおざっぱに言って、まず身分。次に学識。
さらには技芸……音楽などの雅ごとだな。
そして人柄が必要となる」
男「その辺は、何となく判ってた」
黒髪娘「正直に告白すると、わたしは技芸がさっぱりでな」
男「そうなのか?」
黒髪娘「声が細くて高すぎる」
男「綺麗な声だと思うけどな。透明感があって可愛いじゃないか」
黒髪娘「ふふふっ。有り難いが、世辞には及ばないのだ」
男(世辞でもないんだけどな)
黒髪娘「黒髪は、なんで引きこもりなんだ?」
男「……」
黒髪娘「――」
男「黒髪?」
黒髪娘「何でだろうな。
改めて考えると引きこもりたいわけではなくて」
男「うん」
黒髪娘「帰るところが、なくなってしまったのだ」
男「よく判らないな」
黒髪娘「……説明しても、これは難しいやも知れぬ」
男「そうなのか?」
黒髪娘「わたしは……何と言えばいいのかな。
憧れてしまったんだ。憧れて、頑張ってしまった。
それは言葉にすれば、博士とか云うものかも知れない。
あんまりにも薄っぺらに聞こえるのだけれど」
男「博士……って。博士のことか?」
黒髪娘「ああ。文章博士でも明法博士でも良いんだけれど。
いや、陰陽博士でも……つまり、博士そのものではなく
学んで、その至る所に憧れたのだと思う」
男「うん」
黒髪娘「でも、それにはなれない」
男「なんで?」
黒髪娘「女はなれぬのだ」
男「――あ」
黒髪娘「でも、わたしはもうそちらに
歩き始めてしまったから、今さら別の夢は見れない。
どうも、わたしは少しとろかったんだな。
もっと早く気が付いておくべきだったのに、気が付き損ねた。
あるいはもう少し賢ければ、器用に方向転換できたかも知れない」
男「……」
黒髪娘「それに、祖父君に出会ってしまった。
未来からやってきて、わたしに学問を授けてくださる
祖父君をわたしは長い間、観音菩薩かと思っていた」 くすくすっ
男「そんなに良い爺ちゃんじゃねぇよ」
黒髪娘「尊敬申し上げている」にこっ
男「いいけどさっ」
黒髪娘「そんなわけで、女にしては知恵をつけすぎたけれど
男になることも出来ない半端者として引きこもっているのだ。
幸い尚侍の処のほうも、私のことを物狂いの姫として
遠ざけていてくれる。わたしがいなくても、仕事は回っている」
男「そっか」
黒髪娘「大臣家の娘が、
名前だけでも入っていれば都合がよいのだ」
男「うん……」
黒髪娘「今度は、男のことを聞かせてくれ」
男「俺か? うーん」
黒髪娘「ここに居座って平気なのか?」
男「ああ、時間の流れがずれて居るみたいだし。
大学生は暇な時は暇なんだよ。
むしろこっちの方が勉強するには良い環境だしな」
黒髪娘「いくらでも居てくれ。歓迎する」
男「いいのかな」
黒髪娘「もちろんだ。男殿と話してると、安らぐ」
男(うわっ。……津か、あんな事言われたせいで
すげー可愛い女の子に見えるぞ。これで嫁ぎ遅れかよ)
黒髪娘「同じ学究の徒だからかな」
男「え?」
黒髪娘「祖父君のお引き合わせかな」
男「えー」
黒髪娘「こうしてくっついているのも、何とも心楽しいことだ」
男「え゛~っ」
うし、一回ここできゅうけいー。
ジブンノシュミバカリデゴメンナサイ
Dion規制解除されたんだな
相変わらずのお手前で支援
>>86
そうなのだ。やってみたらスレ立ってしまったので
夜中にぽちぽち書いてる。総叩きわらったw
でも、もうちょいがんばってみるさー。
――黒髪の四阿
黒髪娘「んぅー」
男「どうした?」
黒髪娘「いや。ん。ちょっと肩が痛くなった」
男「根を詰めすぎだろ」
黒髪娘「そうは云ってもな。
……確かに半日筆写してしまったか」
男「ああ」
黒髪娘「男殿は?」
男「あー。俺の方は一段落。てか、かなり進んだ」
黒髪娘「それは良きことだな」
男「三食つきで勉強三昧ならそりゃ捗るよ」
黒髪娘「そうか……」ぷらぷら
男「何してるの?」
黒髪娘「手が疲れているので、振っているのだ」
男「そか」
前スレとかあんの?
男「……」ぷらぷら
黒髪娘「?」
男「いや、俺も振ってみてる」
黒髪娘「殿方はそのようなことをする物ではない」
男「そうなのか?」
黒髪娘「格に関わる。こっちへ来てくれ」
男「いいけど」 もそもそ
黒髪娘「指の間がだるいのだろう?」
男「ずっと書いたりキー打ったりだったしな」
黒髪娘「こうして、先の方から」
ぺと、きゅ
男「うぁ」
黒髪娘「指圧していくのだ。ぎゅ、ぎゅっとな」
男「いいよ。悪いよ」
黒髪娘「気にすることはない」
黒髪娘「……ん」 きゅ、きゅ
男「ほっそい指だなぁ」
黒髪娘「そうか……嬉しいな。私の数少ない長所だ」
男「そなのか?」
黒髪娘「うん。器量が悪いのだ」
男「へ?」
黒髪娘「何度も言わせるな。私は、その……
生まれつき器量が悪くてな。それでも、幼子は愛らしい。
また賢ければそれだけで清らかなどと云われるだろうが
この歳になっては良い訳は何もつかぬ」
男「美人なのに」
黒髪娘 ぴきっ
男「?」
黒髪娘「そんな事はないっ。それは男殿の世辞だ」
男「そんな事ないんだけどなぁ」
黒髪娘「――では、おそらく価値観だろう」
男「あー。それはあるかもな」
>>101
ないよ。このスレが最初だよ。
夜中に再開してごめんなさいごめんなさい。
黒髪娘「……」 きゅ、きゅ
男「ちなみにさ、この時代だと美人はどんな感じ?」
黒髪娘「んー」じろっ
男「いや、不愉快な話題なら良いんだけどさ」
黒髪娘「ふぅ……。いや、良い。
知識を共有するのは善だ。
そうだなぁ。瓜実と云う言葉があるが、
顔はふっくら目がよいそうだ」
男「黒髪だってふっくらじゃないか」
黒髪娘「足りてないのだ。あとは、黒髪だな」
男「それは合格か」
黒髪娘「うむ。これは最大と云って良い自慢だろうな」
男(それで褒められた時に照れていたのか……)
黒髪娘「顔の造作については、まぁ好みもあるだろうから
細かいことは私はよく判らない。
ただ私は化粧なんて殆どしないから」
男「そだな」
黒髪娘「あとは、雰囲気と体型だな」
男「ふむ」
黒髪娘「まず、雰囲気だがこれはもはや決定的で
かそけき風情が無いとダメだ」
男「かそけきってなんだ?」
黒髪娘「え? 判らないのか。うーむ。
儚げというか、日を当てたら消えてしまいそうな
弱々しい感じだとか、たおやかで女性らしい様子だ」
男「あー」
(つまり線の細い病弱美少女で従順系ね……。
そんで13で結婚ってどんだけロリコン天国だよっ!?)
黒髪娘「わたしは、ほら」
男「?」
黒髪娘「言葉遣いがきっぱりしてしまっているし、
変に漢詩や明法を学んでしまっているし。
そういうたおやかは雰囲気が全くないんだ」
男(そういや、凛々しい美少女系だもんな……。
時代のニーズにはまったく合ってないか)
黒髪娘「和歌や大和歌を女性が学ぶのは良い。
むしろ推奨されるけれど、漢詩はなかなか珍しいしな」
男「そっか」
黒髪娘「それに」 きゅ、きゅ
男「どした?」
黒髪娘「あ、いや。……うん」 かぁっ
男「?」
>>109
いや、Dionはこの間まで規制が入っててスレ立てができなかったんだよ。
で、スレが立てられなかったからしばらくSS書いてなかった。
でも昨日やったらなんかあっさりスレが立ってしまった。
で、頑張るぜーと云う話で。前スレがあるとかではないんだぜ。
まぁ、夜だしママレード饅頭でもくっていってくれろ。
黒髪娘「ほら。さっきの話の続きの、体型だ」
男「あ、ああ」
黒髪娘「もう判っていると思うが、
雰囲気の麗質がそうだから、美人の条件って云うのは
儚げな雰囲気なんだ。具体的に云うと、
首筋がほっそりしていて全体的に細くて
む、むねとか……。無ければ無いほどよくて……」
男(無乳最強世界っ!?)
黒髪娘「わたしは、その。けっこう、太ってる」
男(ふとってないふとってない! 俺基準で十分小柄っ!)
黒髪娘「あちこち出っ張ってて不格好だ」
男(その出っ張りを捨てるなんて、とんでもないっ!)
黒髪娘「こほんっ」 きゅ、きゅっ
男「おう」
黒髪娘「そう言うことなのだっ」
男「そ、そっか」
黒髪娘「まぁ……。本質はそこじゃないのだが」
男「?」
黒髪娘「この時代では、男女は顔を合わせないで
恋をするのが普通なのだ。祖父君が教えてくれたが
そちらの時代では違うのだろう?」
男「ああ、そうだな」
黒髪娘「この時代では、女性は几帳や御簾ごしに
声を掛けるのが常識だ。初めは直接声を掛けもせずに
目の前に相手が居ても女房に伝言を頼むほどだ。
まぁ、これは先ほど云ったかそけき風情とかに
関係あるのだがな」
男「ふぅん」
黒髪娘「だから男女間において、容姿はさほど重要ではない。
まぁ、少なくとも貴族の間ではそう聞いている。
私はなにぶん経験に乏しいのだが……。
むしろ第一印象は、文のやりとりだ」
男「文か~」
黒髪娘「うむ。和歌でも短信でも何でも良いのだが」
男「ふむふむ」
黒髪娘「この時代の恋は、その殆どの部分が
文のやりとりだ。
上手に文で恋の気持ちを盛り上げて、盛り上げて、
盛り上げて後は怒濤のようにそのぅ……」 ごにょごにょ
男「?」
黒髪娘「とにかくっ。
最期は一気に燃え上がるのが
基本であり完成度の高い恋の形であると云うことになっている。
会えなければ会えないほど
あなたの顔が浮かんで恋い焦がれる……とか。
そういう世界の話……らしい。
わたしなど、会ったこともない相手の顔が浮かんでくるなど
酒にでも酔って居るのではないかと思うのだけれど」
男「あはははっ」
黒髪娘「笑わないでくれ。
まぁ、そんな事情だから、本当はそこまで姿形や容姿が
重要なわけではないのだ」
男「そうだよなぁ。容姿にびっくりした時って、
要するに手遅れなんだろ? あははっ」
黒髪娘「うむ」 きゅ、きゅっ
男「そんで?」
黒髪娘「だから、要は文のやりとりの中で、
相手が望むような線が細くて弱々しい、
でも一身に相手に恋い焦がれるような女性を演じられれば
それは“美人”といっても良いかと思う」
男「ああー。うん。納得したぜ」
(つか、それってネット美人とかネカマの論理じゃね?)
黒髪娘「でも、ほら。私は性格も不器用だから」
男「……」
黒髪娘「相手を騙すような歌は、読めない」
男「歌は得意だろう?
あれだって学問の大きな分野だって聞いたぜ?」
黒髪娘「嘘をつくのは苦手だ。
嘘をつけるくらいなら、きっと引きこもりなんてやってない」
男「――そっか」
黒髪娘「でも、この世界では、恋は嘘を基本にしてる。
最初から相手はこうだと決めてかからないとだめなんだ」
きゅ、きゅっ
男「……」
黒髪娘「反対」
男「?」
黒髪娘「反対の手もしよう」
男「え? あ。すごい! 手が軽くなった!」ぶんぶんっ
黒髪娘「そうであろう?」 にこっ
黒髪娘「……」 きゅぅ、きゅぅっ
男(こんな風にしてるところなんて、
すごく可愛い和風美少女なのになぁ……)
黒髪娘「そちらはどうなのだ?」
男「?」
黒髪娘「祖父君に少しは尋ねたのだが。
祖父君は、ほら。お年を召していられたから……」
男「あー」
黒髪娘「そちらの恋はどのようなのだ?」
男「こっちかー。んー。
まず、男女が顔をあわせないと言うことはないな」
黒髪娘「うむ」
男「爺ちゃんから聞いたかと思うけど
義務教育って云って、こっちの世界の日本。
つまり大和では、平民まで含めて全員学校に行くんだ。
えーっと、6、3で9年。殆ど全員が高校まで含めて12年」
黒髪娘「うん、聞いている」
男「男のみ、女性のみの学舎もあるけれど
殆どは驚愕と云って、男女が一緒に学ぶ。
一つの学舎に同じ年齢の子供が百人以上居ることが多い。
学舎全体では数百人ということもあるな」
黒髪娘「ふむ」
男「で、それだけ学ぶ期間が長いから
学舎では友人も作るし、年頃になると異性に興味も出るよな。
まぁ、なんだ。
改めて説明すると照れくさいな。
なんの罰ゲームだよこれっ」
黒髪娘「ん? 興味深い話だぞ?」
男「で、そういう状況で、大抵は気になる異性が出来てー」
黒髪娘「ふむ」
男「紆余曲折があるな」
黒髪娘「その紆余曲折が重要ではないかっ」
男「ぐっ」
黒髪娘「話して欲しい」
男(なんでおれは中学生の女子に圧倒されてるんだっ)
黒髪娘「ほら、丁寧に指圧するから」 きゅぅっ
男「……うう」
黒髪娘「ほら」
男「わぁったよ」
男「まぁ、その辺は年齢に寄るんだよ。
幼い時――おおむね10歳前後とかは、一緒に遊ぶだけだ」
黒髪娘「ふむぅ。筒井筒か?」
男「なにそれ」
黒髪娘「幼なじみ」 きゅっきゅっ
男「ああ、それだ」
黒髪娘「それで?」
男「そっちと違ってこっちには顔を隠す習慣はないからな。
その後もずっと一緒に学び続ける。
あー。最初に云っておくと、こっちの世界では
寿命伸びてるからな? 平均寿命も70超えてるし。
結婚は25~30位が多い。だから、恋愛のペースもずれてるぜ?」
黒髪娘「ふむ。――承知した」
男「15歳くらいになると、やっぱり異性に興味が出てくるな。
で、みんなに隠れてこっそり二人で遊びに
行ったりすることも覚える。
これをデートという」
黒髪娘「それは自宅ではダメなのか?」
男「自宅でも良いけどな。まぁ、人目に触れないというか
ドキドキがほしいんだろ。たぶんな」
黒髪娘「ふむぅ」きゅむ、きゅむ
男「でも、この年齢ではあんまり
身体を――あれだ。その“最期”ってのは推奨されないな」
黒髪娘「そ、そうなのか?」
男「こっちでは成人ってのが20歳なんだ。
結婚も出来ないのにいたずらに
相手とそう言うことするのは、不道徳って云う考えがある。
まぁ、実際には17,8になれば経験してるやつも多いんだけどな」
黒髪娘「そのぅ、男殿は」
男「黙秘する」 きっぱり
黒髪娘「むぅー」
男「20前後になると、お金を稼ぐ方法も増える。
さらに上の学舎、大学に行くやつや、職に就くやつも出る。
そうなると二人のデートも本格的になるな。
遠出したり、食事をしたり、プレゼントをしたり」
黒髪娘「そうか。平民でも貴族のような
贈り物をするようになるのだな」
男「そうだなぁ。つまりあれだ。
みんなが貴族と平民の中間みたいな世界なんだよ」
黒髪娘「ふむふむ」
男「で、その間に出会いと別れがあって。
一人の相手のみで思いを遂げる一対もあれば
相手を変えて恋を楽しむような人もいるわけだ」
黒髪娘「それはこちらも大差ないな」 きゅむ、きゅむ
男「20を越えたあたりで、世間的には成人。
でも、一人前と認められるのは、
特に男は25を超えてからかな。
そうなると思いをさだめた相手に結婚の申し込みをする」
黒髪娘「ふむ」
男「男からが多いけれど、
女性からってのも最近はあるようだな。
……退屈じゃないか?」
黒髪娘「そんな事はない」
男「そか。でも、もう話も終わりだ。
結婚しても良いな、となったら二人で両家の両親に報告して」
黒髪娘「え? そこで報告するのかっ!?」
男「ん? そうだよ。
もちろん許婚とか、両親主導のお見合いなんて
云うのも残っちゃ居る習慣だけれど、少数だ。
結婚は当事者二人の問題だからな。
まぁ、場合によっては反対されたりもするけれど。
最終的には当事者二人の決意が固ければ結婚を阻む物は、
そうはないよ」
黒髪娘「そ……そうなのか……」
男「で、結婚する。めでたしめでたし」
黒髪娘「想像もつかない世界だ」
男「そりゃ、まぁ。俺だってこっちの世界のことは
見てるけれど判らないことばかりだ」
黒髪娘「……うむ」 きゅ……
男「どした?」
黒髪娘「あ。いや。すまん。さぼってしまった」きゅむっ
男「いや、それは良いんだけど」
黒髪娘「はははっ。
いや、ちょっと空想してしまっただけだ。
酒を頂いたわけでもないのにな」
男「……」
黒髪娘「……」
きゅむっ、きゅむっ
黒髪娘「男殿の手は、大きいな」
男「そっか?」
黒髪娘「うむ。大きい」
男「そうか」
ちょい書き溜めてくる60min
/, ヽ \
,'., `、ヽ,
//-─'''''''─-、,!. ', _,,,..-‐''''",二ニ‐-、
_,,,.-''" ._ `ヽ!,,.-‐'''" ,','
|,. _ i'"::::::L,,,!::`i__,,i''''ヽ, ヽ、 ,r'
く (::::::L,,/::;'::::;':::;:::::::;':::::::::::;':L,,,,_\ ,r'
`y'`'"/::::/::;':::::;'::/::::::;':::::::::::;'::::::::::::;} .`、 /
/:::::;:'::::::;!-;'─-/|::;':;':::::::::;:'::::::::::::く,,,_ Y
.,r':::::;:'::r-!::'ーr、;;;;/ .|::;':::;'::::::::::::::::/::::::r` ``ゝ
,r'::::::;:':::::i .,!::::::|_,,,,_ ``'''-、;::::::メ/::::;'::::'ーi 「
,..--─--、;::`i:::::;::! `ヽ ,.-==,く`ソ:::::;':::i`''"
`|:::::;::| !;;oソノ ./\:::/リ
|::::::;::| !ー、_,' `''" /:';:::::`! 非常に興味深いスレですね
|:::::::;::|. 'ー ./:;;:-''"`\
.|::::::;;:::|ヽ、,,,,...... -‐''i:::;r'" `'''`ヽ,ヽ
,.-┴''"ヽ``,`'、 !.,' '/ /`ニ=_,ノ!
.,r' ヽ、`i !ノ ',' i' _,フ'-:'":、
/ '" `i i .ノノ-' ', ! i 「 ';::::::::::::`、
――黒髪の四阿
黒髪娘「~♪」
友女房「ごきげんですね、姫?」 にこにこ
黒髪娘「ああ。友か。見てくれ、立派だろう?」
友女房「あらあら。これはこれは」
黒髪娘「上の兄様からだ。見事な鯛だ」
友女房「ですねぇ、美味しそうです」
黒髪娘「塩をして干そう」
友女房「お食べにならないので?」
黒髪娘「沢山届いたのだ。
食べるのはもうちょっと小さいやつでも良いだろう?
これはひときわ立派だから、男殿にとっておきたい」
友女房「あらあら。そうですねぇ」
黒髪娘「女房達の分もあるから、みんなで食べると良い」
友女房「それはありがとうございます」
かたかた、ぱさり
黒髪娘「うん。その荷物も運んでいってくれ」
友女房「対の部屋も整いましたねぇ」
黒髪娘「男殿もいつまでも自室がないのは居心地も悪かろう」
友女房「そうですね。まぁ、この程度の調度ならば
豪華すぎることもなく、不審なこともなく」
黒髪娘「そうかな。不調法ではないかな?」
友女房「雑色(※)だとすれば過ぎた部屋です」
黒髪娘「男殿は客人だ」
友女房「客人だとばれるとやっかいですよ?」
黒髪娘「それはそうだが……」
友女房「男様は異界のお客人です。
この世界での豪華さなどを気にされないですよ」
黒髪娘「それもそうだな」
友女房「とは言え、右大臣家の格という物がありますからね。
ええ、この友女房が一肌脱ぐといたしましょう」
※雑色:男の使用人
――男の実家
男「おろ。姉ちゃんいたの」
姉「うん、休み~」 ぽりぽり
男「すげぇ格好な」
姉「うっさい」
男「水、飲む?」
姉「あー。ミネラルで。氷一個」
男「寒いのに」
姉「頭はっきりさせたい~」
からん
男「はいよ」
姉「さんくー。この恩は返さないけど」
男「いーよいーよ」
姉「んっく、んっく。……どうしたー?」
男「あー。いやねー。中学生くらいの娘の家庭教師を」
姉「バイト?」
男「似たようなもん」
姉「あんた教育課程いくの?」
男「いや、わかんないけど」
姉「まぁそういうの良いかもね。あんたヘタレだけど。
一応お爺ちゃんに似て責任感強そうだし?」
男「あんまり適正ある気がしないんだけどね」
姉「そこは、ほら。庶民パワーで」
男「そうな。……でも、中学生くらいの女の子の
考えは判らないわ、本当」
姉「会ったり前じゃない。素人童貞なんだから」
男「玄人では経験済みみたいな表現やめろよっ。
誤解を招くよっ! あちこちにっ」
姉「仕方ないじゃない。両面童貞なんだから。
む、両穴童貞って新しくない?」
男「くわぁ~っ」
姉「まぁ子供扱いしない事ね」
男「そうなの?」
姉「女の子は成長早いのよ。
中学生になったら女としてはもういっちょ前。
昔なら子供産んでた年齢よ?
子供扱いなんてとんでもない。
童貞ごとき、のど笛食い破られるわよ」
男「こわっ!? 肉食系にもほどがあるよっ。
んじゃ、大人扱いなのか」
姉「ばっかねー。大人扱いなんてしたら
碌なことになるわけ無いでしょ。
相手は中坊なんだから」
男「どうしろってのさ」
姉「ちゃんと目線会わせて相手の話聞けば?
生徒じゃないんでしょ。
その顔じゃ」
男「う……」
姉「捨てるなら体温覚えさせる前にしなさいよ。
それ、最低限の男の義務だからね」
――黒髪の四阿、炬燵部屋
男「これ、たまらんなぁ」
黒髪娘「悔しいがこの知恵、認めざるをえない」
友女房「さようですねぇ」
男「火事だけは気をつけないと」
黒髪娘「もっともだ」
友女房「祖父君に話を聞いて、
いつか作ろうと計画を練っていた甲斐がありました」
男「でも良く掘りコタツなんて出来たな」
黒髪娘「うむ、驚きだ」
友女房「火鉢がありますからね。
床下に設置して、換気と手入れさえすれば、
後は描いてもらったとおりです。
そもそも火闥(こたつ)といって、
似たものはありましたからね」
男「そうなのかぁ」
黒髪娘「しかし、このふすまを櫓に掛けるという発想」
友女房「ええ、ええ……」
男「和むわぁ」
黒髪娘「天板も便利だな。寒いのに書を読んでかじかまないぞ」
友女房「そうですねぇ。お茶もおけますし」
ことり
男「あ。どーも」
友女房「馴染んでますね」
男「うち、炬燵ないんだよね。爺ちゃんちにはあったけど。
そのせいか、めちゃくちゃおちつきます。はい」
友女房「お気に入りいただけましたか?」
男「もちろん。こんな部屋もらっちゃって良いんですか?」
友女房「ええ。この友女房が監督させて頂きました」
男「むちゃくちゃ感謝します。正座とかも苦手だしね。
掘りごたつ最高だな。膝が楽だ」
黒髪娘「友、甘い物が食べたい」
友女房「そですね」
男「ああ。俺お土産もってきてる」
黒髪娘「これは……?」
友女房「なんでしょう。面妖な」
男「あー。これ、カステラってんだ」
黒髪娘「これは……大きい」
男「一人で全部食うつもりかよっ!?」
黒髪娘「む。すまぬ。違ったのか」
友女房「これは切り分けて食べる菓子なのですね」
男「そうそう。なんか刃物ある?」
友女房「お任せあれ」
とててて
黒髪娘「……」そわそわ
男「そんなに食べたいのか?」
黒髪娘「そんな事はないっ」
男「美味しいよ。これ」
友女房「お皿ももって参りました」
――黒髪の四阿、炬燵部屋
黒髪娘「甘い。なんと美味しいのだ」じぃん
友女房「これは誠に甘露ですねぇ」じぃん
男「涙ぐむほどかな?」
黒髪娘「何を言う、この黄色と茶色の美しいこと」
友女房「ええ、ええっ!」 じぃっ
男「だめ。全部食べちゃダメ」
黒髪娘「お土産ではなかったのか!?」
友女房 こくこく
男「他にも何人か居るでしょうに」
黒髪娘「う゛」
友女房「しかし」
男「しかしもなにも。みんなにお裾分け。
お裾分けしたらまた美味しいのもってくるけれど
お裾分けしないと二度ともってきません」
友女房「そんな」しょぼん
黒髪娘「そういえばそうだ。甘露の美味に我を忘れては
上に立つ物としての示しもつかぬ」
男「よしよし。黒髪はよい子」 くしゃ
黒髪娘「っ」
友女房(あら)
男「また持ってきてやるぞ」
黒髪娘「別に、土産目当てでもてなしているわけではない。
男殿はいつでも我が庵の客人として歓迎する」
男「それはありがたいなぁ。別荘気分」
黒髪娘「うむ。別荘気分でくつろいでくれればそれでよい」
友女房「姫も楽しいですしね」
男「そなの?」
黒髪娘「うむ。男殿と過ごす時間は心楽しい。
知識にすれ違いはあれ、お互い知らぬ分野の
それがある上に、男殿はわたしを一人前の
人間としてみてくれるからな」
男「……」
黒髪娘「話して論を戦わせられるというのは
この上なく愉快なことだ。……蝶よ花よと
扱われるのは、やはり寂しい」
男「そういう物か?」
黒髪娘「うむ」
男「じゃぁ、今日はなんの話をする?」
黒髪娘「男はれぽをとは終わったのか?」
男「終わったよ」
黒髪娘「では、付き合え」
男「なんの話がよい?」
黒髪娘「んーぅ。どうするか」
男「うーん」
黒髪娘「?」
男「いや、話。しなきゃダメか?」
黒髪娘「どういうことだ?」
男「結構勉強、根詰めてただろう?」
黒髪娘「うむ」
男「じゃぁ、しばらく茶を飲んで」
黒髪娘「うむ」
男「で、ゆっくりしろ」
黒髪娘「ゆっくりか……」
男「……」ずずずっ
黒髪娘「温かいな」
男「だなぁ」
友女房「わたしは、このカステラを女房や雑色に
分けて参りますね。珍しい菓子だと云っておきましょう」
黒髪娘「すまぬな」
男「行ってらっしゃい」
ぽやぁ
黒髪娘「……ほぅ」
男「……」
黒髪娘「どうした?」
男「髪、見てた」
黒髪娘「そ、そうか……。どうして?」
男「こんなに綺麗な髪は、こっちではまず見ないから」
黒髪娘「そうか……。この髪だけは藤壺の上にも
褒められたことがあるのだ」
男「そっか」
黒髪娘「……その」
男「?」
黒髪娘「触って、見るか?」
男「良いのか?」
黒髪娘「うむ」
男「じゃ、ちょこっとだけ」 ひょいっ
黒髪娘「っ!」ひくんっ
男「びびってるじゃないか」
黒髪娘「そんな事はない」
男「そっか」
黒髪娘「ど、どうだ? 綺麗か?」
男「うん。すごい、すべすべ」
黒髪娘「女房が毎朝とかしてくれるのだ。
多い時は日に何度も……」
男「そうか」
黒髪娘「引きこもりゆえな。湯浴みや髪梳きの時間はある」
男「世話してもらっている間にも、本読んでるんだろう」
黒髪娘「そう言うことも、まぁ、ある」
男「やっぱし」
黒髪娘「……男殿は短いな」
男「この時代は男も長いのか?」
黒髪娘「いろいろだ」
男「そっか」
黒髪娘「……」ふわり
男「なんか、優しい顔してるな」
黒髪娘「そうかな?」 きょとん
男「うん、良い顔だったよ」
黒髪娘「……くっ」かぁ
男「どしたんだよ」
黒髪娘「眉も描いてないのにっ」
男「は?」
黒髪娘「いや、なんでもない。油断しすぎだ。わたし」
男「よく判らん」
黒髪娘「炬燵でのぼせただけだ」
すっ
黒髪娘「ひゃわっ!」
男「おい、危ないな。髪の毛長いんだから」
黒髪娘「ううう」
男「もう少し、落ち着きなさいって」
黒髪娘「ううっ。不覚だ」
――黒髪の四阿
友女房「あらあら、どうなさいました?
燭灯も着けずに、こんな場所で」
黒髪娘「うん……」
友女房「男様は?」
黒髪娘「今日は、帰った。
バイトとか言うのがあるらしい」
友女房「そうですか。お茶を一旦下げますよ?」
黒髪娘「……」
かちゃかちゃ……
黒髪娘「……」
友女房「どうされました?」
黒髪娘「ん?」
友女房「どうか、なされました?」
黒髪娘「男殿に」
友女房「男様に?」
黒髪娘「髪を触られた」
友女房「なっ!? なんてことを!!
これは気が付かずに申し訳ありませんっ。
すぐお櫛をけずりましょうね。
この友が清らかになるまでお梳かしします。
それにしても男様も、男様ですっ。
いくら異界の方とは言え、姫の髪に手を触れるなどっ。
冗談で済ませられることではございませんよっ。
常識という物を弁えて頂かないとっ」
黒髪娘「いや、違うっ」
友女房「ど、どうしたんですか? 姫」
黒髪娘「その……」
友女房「??」
黒髪娘「触るのを、許したのは、わたしだ」
友女房「ひ、め……?」
黒髪娘「私が、触って良いと云ったんだ」
友女房「ひょぇぇ」
友女房「大丈夫ですか、お熱ですか?
さっきのカステラに酒でも入ってたのでしょうか」
黒髪娘「いや、違うと思う……」
友女房「……」
黒髪娘「どうすればいいだろう?」
友女房「……姫。姫?」
黒髪娘「……」
友女房「いや、でしたか?」
黒髪娘「――」ふるふる
友女房「どんな感じがしましたか?」
黒髪娘「楽の音と、鳥の囀りが。
聞こえた訳じゃないんだけど、溢れそうになって。
どきどきして頬が熱くなって。
……それに」
友女房「それに?」
黒髪娘「こんなに不器量じゃなければいいのにって。
――泣きたくなった」
友女房「さようですか」
黒髪娘「……」
友女房「姫はなぁんにも悪くありませんよ」
黒髪娘「そうだろうか」
友女房「それはもう。友が気を利かせすぎましたか」
黒髪娘「?」
友女房「いえいえ。何でもございません。
姫は……清らかでいらっしゃるから」
黒髪娘「そんな事はない。もう15にもなる。
塵にも埃にもまみれた、みっともない黒い鳥だ」
友女房「……」
黒髪娘「……」
友女房「さ。髪を梳きましょう」 にこりっ
黒髪娘「……ん」
友女房「今晩は温かくして寝ませんとね」
――黒髪の四阿
ことん、かたん
男「んっと。ほいさ」 すたんっ
友女房「男様」
男「お。友さん」
友女房「いらっしゃいませ」
男「お邪魔します。平気そう? 黒髪は居る?」
友女房「いまはお留守にしていらっしゃいますよ。
外せない御用事で尚侍処へいらっしゃっています」
男「ああ。仕事か」
友女房「ええ。おそらくすぐに戻ってらっしゃいますよ。
顔を見せに、と云うか、出仕したという形式のための
出仕ですからね」
男「そっか。待ってて良い?」
友女房「ええ、おこたにどうぞ。お茶をお持ちしますよ」
男「助かる」
こぽこぽこぽ
男「寒いな」
友女房「ええ、寒さが続きますね」
男「ありがとう」
友女房「いえいえ、どういたしまして。
しばらくご一緒して宜しいですか?」
男「もちろん」
友女房「では、失礼します」
男「ふー。温まる」
友女房「ですねぇ」
男「……黒髪は、元気?」
友女房「はい」
男「そっか」
友女房「何かありましたか?」
男「いや、なんか色々抱え込んじゃいそうな人だから?」
友女房「そうですねぇ」
男「……」
友女房「尚侍(ないしのかみ)という官職はですね。
帝に仕えて、皇室行事を取り仕切る秘書のような役割です」
男「ふむ」
友女房「その権力は、時に大臣を凌ぎますね。
『位人臣を極める』等と申しますが、
女性としてはまさに最高位の官職だと云えるでしょう」
男「そう……なのか?」
友女房「ええ。もちろん何事にも例外はありますが。
姫は尚侍としては、規格外です。
何しろ仕事していませんからね」
男「そうだなぁ」
友女房「尚侍、尚侍所の重要な役割の一つに東宮の教育があります」
男「東宮って云うのは、確か帝の息子だろ」
友女房「そうですね。子供の頃から云うことを良く言い聞かせて
育てるわけですから、歴代の帝でも、育ての尚侍には
頭が上がらないことも少なくありませんね。
内裏における影響力は絶大な物があるわけです。
こほん。
その。
下世話な話をすればですね」
男「?」
友女房「察しが悪いですね」
男「ごめん」
友女房「いえ、すみません。
照れ隠しですからお気に為されぬよう。
――こういう事です。
幼い東宮にそば近く接して、その心も身体も導く。
それは、往々にして、えーと、その。
祖父君のいうところの、その……ほら初物を」
男「童貞!?」
友女房「それです。ええ。
それをですね、こう。シてしまうこともあるというか
むしろそれが推奨されているというか……。
東宮の身体を大人にして差し上げるというか。
妃になる尚侍所の女性も少なくはありません」
男「そんなのありか-!?」
友女房「ええ。そもそも、尚侍所に娘を『あげる』というのは
高度に政治的な問題なのです。
もちろんその背景には政治的な闘争もありますし
右大臣家としても後に引くわけにはいかない。
たとえ、東宮が8歳で、姫より6つもお若くとも」
男「……」
友女房「身体のつながりが有れど、無けれど。
姫は東宮の『もの』です。それが尚侍というものですし、
この内裏の秩序なのです」
友女房「――なんて」 にっこり
男「え?」
友女房「まぁ、そういう俗世の噂もあったり
無かったりするのですが、男様は異界より来られたる客人。
内裏の事情などお気になさることもないでしょう。
ましてやうちの姫は妖憑きの変わり者。
東宮のお召しもあるはずもない。
このまま庭の片隅で咲いて、
誰見ることなくひっそり朽ちるのでしょうし。
そのような姿は、見たくありません」
男「……」
友女房「余計なことを申し上げましたか?」
男「あのさ。俺の世界での話したっけ?
黒髪は、今年14だよね。
それは俺の常識では、まだ子供の部類なんだよ」
友女房「ええ、存じておりますよ」
男「だからそういう艶っぽい話はさ、まだ早くてさ」
友女房「そう思うなら、それはそれで結構かと」
男「……うう。とりつく島もない」
――黒髪の四阿、炬燵の間
黒髪娘「ただいま帰参した」
男「おかえりー」
黒髪娘「寒かった。すごく寒いぞ」
男「入れ入れ」
黒髪娘「ありがたい」
いそいそ、ばふっ
黒髪娘「はふぅぅ~」
男「温まった?」
黒髪娘「いや、まだ指先が痺れている」
男「重症だな」
黒髪娘「冬の出仕は大変なのだ」
男「この季節はなぁ。ヒートテックなさそうだし」
黒髪娘「?」
男「いや、こっちの話」
黒髪娘「まぁ。物の怪じみた娘だからな。
仕事らしい仕事もない。気楽と云えば、気楽だ」
男「んー」
黒髪娘「どうした?」
きゅむ
黒髪娘「らにをひゅる?」
男「いや、ほっぺた引っ張ってみたんだよ」
黒髪娘「らかや、いったひ、なんてそんな」
男「んー」
黒髪娘「むぅー」
男「突っ張ってるのかなぁ、って」
黒髪娘「う゛ぅ?」
男「仕事。出来るよな。案だけ学んだもんな。
漢詩も報告書も、上奏文だって律令だって
何でもござれでしょう?」
黒髪娘「……」
男「身につけたもの、使いたくないなんて変じゃない?」
黒髪娘「……」じぃっ
男「三白眼で睨んでも、普段可愛いんだから意味ありません」
黒髪娘「う゛ぅー」
男「ぷぷっ」
黒髪娘「いいかけん、はらさるかっ」
男「ほいほいっ」
黒髪娘「ふむっ……。そのようなことを」
男「気を張り過ぎなんだよ」
黒髪娘「内裏に云っていたのだ。多少は気を張らねば、
どのような政争に巻き込まれるか知れた物ではない」
男「そりゃ、そうか」
黒髪娘「……それは、わたしだって」
男「……」
黒髪娘「学んだ物を、試したい気持ちがないわけではない」
男「うん」
黒髪娘「しかし、この身は女だ。
……望むと望まないとに関わらず。
内裏で女が仕事を為そうとすれば方法は二つしかない。
何らかの閥を率いて、邪魔者を廃するための
権力工作を常にしながら事を為すか、
東宮か帝にはべり、その愛妻、愛妾として
権勢を振るうか……。
多分、私にはどちらも無理だと思う」
男「そっか」
黒髪娘「不器量だからとかではないぞ?
いや、その。もうちょっと目鼻立ちが
整っていればよいとは思うのだが」
男(現代美少女ですからな。きみは)
黒髪娘「性格として、受け入れがたい。……のだと思う。
あるいは無駄な矜持か、こだわりなのかとも思うのだが
それは自らが身につけた学識ではないような気がするのだ」
男「……」
黒髪娘「どうも釣り合いが取れていないのだ。私は」
男「……そっか」
黒髪娘「考えても仕方ないだろう」
男「そだな」
――黒髪の四阿、炬燵の間
黒髪娘「……昴は船乗りの星にて」こくっ
男「眠そうな」
黒髪娘「う……む」こくり
男「寝れば?」
黒髪娘「しかし、うむぅ……」
男「どうしたのさ?」
黒髪娘「部屋に戻るには炬燵から出る必要がある」
男「当たり前だな」
黒髪娘「寒い」
男「うん」
黒髪娘「……寒いではないか」
男「ここで寝たらダメだぞ? 事故があるかも知れないし。
火事なんてまっぴらだろう? 低温火傷も怖い」
黒髪娘「そうは云うが……」
男「仕方ないなぁ。友さーん。友さーん」
友女房「はい、なんでしょう?」
男「黒髪が寒がって動かないから。
ここに褥(しとね)と、掻巻(かいまき)※かなんか
持ってきて貰える?」
友女房「判りました」
黒髪娘「これでは子供みたいだ」
男「寒いから動きたくないなんて
子供のようなことを云うからだろう?」
黒髪娘「そうは言ったって」
男「じゃ、部屋に引き上げるか?」
黒髪娘「寝ている間に男が帰るのは……不本意だ」
男「別にそれはないけどさ」
きぃ、ふぁさん
友女房「寝具の準備が整いましたよ」
黒髪娘「む」
男「どうする?」
黒髪娘「せっかくだから、今宵はここで」
男「ふっ」
黒髪娘「馬鹿にしないで欲しいのだ」
※褥(しとね)と、掻巻(かいまき):平安時代の寝具
麻などで作られた敷き布団と、袖のついた掛布団
男「温かいか-?」
黒髪娘「うむ、期待以上だ」
男「おっと。爪先を炬燵に突っ込むのは禁止だぞ」
黒髪娘「そうなのか?」
男「ちらちら見えるだろ」
黒髪娘「なにがだ?」 きょとん
男「うるせぇ。禁止だ」
黒髪娘「横暴だな」
男「いいのっ。禁止」
黒髪娘「判った。
ところで……男殿は、何を読んでいるんだ?」
男「持ってきた本。勉強してるの」
黒髪娘「なにを?」
男「料理の基本」
黒髪娘「男殿は庖丁(料理人)なのか?」
男「違うから勉強してるんだよ」
黒髪娘「未来の料理か……。
いつも美味しい土産を頂いている」
男「んー。気にしないでくれ。たいした物じゃないからさ。
そもそも、ここで結構飯とかご馳走になってるし」
黒髪娘「ここで供されるのは、ありふれた物だ」
男「あの菓子だって、向こうではコンビニに
売ってる程度の物だよ」
黒髪娘「こんびに?」
男「ああ。えっと、街のあちこちにある商店だ」
黒髪娘「そうか。何が売っているんだ?」
男「飲み物、食べ物、菓子、本」
黒髪娘「本が売っているのか!?」
男「コンビニに売ってるのは漫画や雑誌がせいぜいだけどな。
本は専門の本屋に売っていて、たいがい本屋ってのは
一つの街に一つや二つはあるな」
黒髪娘「そうなのかぁ」
男「布団に入ったら元気だな」
黒髪娘「う」
男「眠くないのかー?」
黒髪娘「少し眠気が去ったのだ」
男「なんだよ、構って欲しいのか?」
黒髪娘「話し相手になって欲しいのだ」
男「素直だな」
黒髪娘「わたしは率直だ」
男「そっか。そういやそうだな」
黒髪娘「男殿の世界では、女も学問を修められるのだろう?」
男「ああ、そうだな」
黒髪娘「学識や技芸をもって宮仕えも叶う」
男「公務員とか、会社員とかな」
黒髪娘「そうか。……ふふふっ」にこっ
男「どした?」
黒髪娘「良い世界だな。
――そんな世界、早く……来ると良いなぁ」
男「……」
黒髪娘「ん?」
男「あのさ」
黒髪娘「うむ」
男「……」
黒髪娘「どうしたのだ」
男「……っ」
黒髪娘「なんだ。変な顔をして」
男「なんでもない。1分くれ」
黒髪娘「……」
男「……」
黒髪娘「?」
男「……あー」
黒髪娘「?」
男「黒髪の。髪の毛、触りたい」
黒髪娘「――え」
男「ダメかな?」
黒髪娘「……駄目……じゃない」
男「触るな?」
さら……さら……
黒髪娘「……うぅ」
男「手触り、良いな」
黒髪娘「あの……ど……どうし……男殿は……」
男「ん?」
黒髪娘「なんで、髪を……」
男「あー。んー。……触りたかったから」
黒髪娘「そ、そうか」
さら……さら……
男「豪華な感じ。……宝物みたいな」
黒髪娘「褒められたみたいだ」
男(なんか、いろいろこだわりとか倫理観とか。
越えちゃってるよな。この髪の感触も、気持ちも)
と、いうところで書き貯めも尽きました。
お昼までQKいってまいります。
みんなの分は、ここにチーズママレードサンドを
置いておきます。食っておくれ。
――黒髪の四阿
友女房「姫~。ひーめーっ」
がたっがたたっ
黒髪娘「どうしたのだ?」
友女房「文ですよっ。藤壺の方から」
黒髪娘「……珍しい」
友女房「遅くなってはいけませんから」
黒髪娘「……梅の香」
友女房「あらあら。まぁまぁ。寒中梅でございますね」
黒髪娘「むぅ……」
友女房「なんで困りますか。
雅やかな心遣いではございませんか」
黒髪娘「こう言うところが隙がない。困る」
友女房「そういう物でございましょうかね」
黒髪娘「……うー」
友女房「なんと?」
黒髪娘「……歌会の誘いだ」
友女房「さようですか。これはまた」
黒髪娘「……」
友女房「何かあるので?」
黒髪娘「形勢を明らかにしないわたしを
哀れにおもってくださったのであろう」
友女房「……」
黒髪娘「このままでは私に風あたりが強くなりすぎると
そう考えてくださったのではないかな」
友女房「さようですか」
黒髪娘「……」
友女房「お返事はいかがいたしましょう」
黒髪娘「……」
友女房「しばらくお考えになられますか」
黒髪娘「そうする」
友女房「姫の良いように」
――夕刻
ごとん、とさっ
男「ふぅ。到着、っと」
黒髪娘「男殿」
男「お。黒髪。お出迎えありがとう」
黒髪娘「出迎えたわけではないが。
しかし、男殿を迎えられると気持ちが暖まる」 にこっ
男(うわ。……すげぇ可愛い。
やばいな。この間髪触ってから、
どんどん可愛く見えるよ。
病気だぞ、これ……)
黒髪娘「どうした? 寒かろう?」
男「おう」
黒髪娘「丁度昼餉だ。いま友に云って用意させる」
男「へぇ、何食べるの?」
黒髪娘「雑煮だ。餅なのだが……。
餅は食べれるだろう?」
男「おー。大好きだぜ」
――黒髪の四阿、炬燵
友女房「さぁ、どうぞ」
黒髪娘「頂こう、男殿」
男「ああ、頂きます。ん。美味しいな」
黒髪娘「温かいなぁ」
男「……お、雑煮は魚なんだ?」
友女房「鯛で出汁を取らせて頂きました」
黒髪娘「餅はそれで良いのか?」
男「おう、とりあえず二つでな」
黒髪娘「んぅ……」
男「お、すごく伸びてるな」
黒髪娘「……ん。んく……。
そんなにじろじろ見るものではないぞ」
男「そっか」
友女房「美味しゅうございますか?」
男「ええ、ばっちりですよ」
黒髪娘「うぅ。美味だ。私は雑煮は大好きだな」
男「カブの葉が美味いよな」
黒髪娘「そちらでも食べるのか?」
男「もちろんだ。味噌汁とかにもいれるぞ」
黒髪娘「うむ。煮るのも旨いな。ひたしもよい」こくり
男「……」 じぃ
黒髪娘「ん? どうした、男殿」
男「いやいや。なんでもないよ」
黒髪娘「?」
男(一瞬見とれたとか、いえねぇし)
黒髪娘「……ふぅ」
男「どした?」
黒髪娘「ん? いや。んー」ぽて
男「??」
黒髪娘「お腹がいっぱいで、温かい炬燵。
駄目になってしまいそうだ」
男「多少駄目になっておいた方がいいよ」
黒髪娘「そうかな」
男「そう思うね」
黒髪娘「男殿」
男「ん?」
黒髪娘「……掌を、借りれるだろうか?」
男「いいけど」
黒髪娘「額に」
男「ん……。うん」
黒髪娘「ああ……」
男「どうしたんだ?」
黒髪娘「温かくて。嬉しい」 くすっ
男「そか」
黒髪娘「……」
男「寝ても、構わないぞ」
黒髪娘「眠いわけではない」
男「そなのか」
黒髪娘「私が、男殿の半分ほどでも
他人を思いやって気を遣える性分であったならなぁ」
男「なんだそれ」
黒髪娘「いいや。……うん」
男「何かあったんだろう? 云ってみろよ」
黒髪娘「……歌会の誘いがあってな」
男「ふむ。パーティーか」
黒髪娘「私の立場もかなり厳しいのだ。
藤壺様がそれに気遣って誘ってくださった」
男「藤壺様って云うのは、良いやつなのか?」
黒髪娘「ああ。世話になっている。
心遣いの細やかなたおやかな方だ。
今上帝の寵をうける妃の一人なのだ」
男「で、何を悩んでいるんだ?」
黒髪娘「そんなわけで藤壺様は後宮では
大きな存在感を持っているが、唯一ではないのだ。
妾妃はひとりではないからな。
私を呼んでくださるのは嬉しい。
私は確かに引きこもりの出不精だが
呼んでくださるのならばはせ参じるくらいのことはしたいのだ。
……しかし、私は気も遣えない不調法物だし
他人の言葉を上手に受け流すことも出来ないし……」
男「そうか? そんなに気にしなくても良いかと思うけど」
黒髪娘「そうはいかない。
宮中では目に見えない諍いや政争が続いているんだ……。
私が参加してみっともないところを見せれば
それは、藤壺の方の恥にもなってしまう」
男「ん~」
黒髪娘「私が恥をかくのは、かまわない。
どうせ物の怪憑きの引きこもりだから。
でも、誘って下さった方に恥をかかせるのは
忍びない……」
男「断れないの?」
黒髪娘「それは、出来る」
男「そっか」
黒髪娘「……でも、藤壺様は、お悲しみになるかな」
男「……」
黒髪娘「いつも断ってきたんだ」
男(――本当は、行きたいんだな)
黒髪娘「……」
男「なんだ、手のひら気に入ったのか?」
黒髪娘「落ち着く」
男「へこんでるな」
黒髪娘「そう言うことではないんだが」
男「?」
黒髪娘「なんでもない。……私の顔をじろじろ見るな」
男「へいへい」
黒髪娘「んぅ……」
男「あのさ」
黒髪娘「うん」 くてっ
男「出ろ、って云ったらどうする?」
黒髪娘「男殿が?」
男「うん」
黒髪娘「……」
男「確かに責任は重大だけどさ。
黒髪がそんなに駄目だってのが、
ちょっと想像できないんだよな」
黒髪娘「……私は本当に不器用なのだ。癇癪持ちだし」
男「癇癪持ってるのか?」
黒髪娘「うん。――やっぱり、悔しいとつらい。
私を人間としてみてくれない人には、優しくできない」
男「それは癇癪じゃないと思うけど」
黒髪娘「そうかな……」
黒髪娘「男殿は、出た方が良いと思うか?」
男「ああ」
黒髪娘「……」
男「思うんだけどさ。あんまり一人で戦う必要も
ないんじゃないか?」
黒髪娘「え?」
男「友さん何回か云ってたよ。“右大臣家の格”とか。
“姫様の名誉”とかさ。それって、つまり名前だよな」
黒髪娘「名前……」
男「あー。よく判らないけどさ。
そう言うのってチーム戦なんじゃないのかな。
現場に行って恥をかくか恥をかかないかは、
黒髪の腕もあるけれど、優秀な女房が居るかどうかにも
左右されるんじゃないの?」
黒髪娘「それは……。確かにその通りだが」
男「友さんって、出来るんじゃねぇの?」
黒髪娘「……う」
男「投げちゃっても良いんじゃないの?」
黒髪娘「男殿……」
男「手を貸すからさ」
黒髪娘「男殿も?」
男「うん」
黒髪娘「なぜっ?」
男「そんなにびっくりするところか?」
黒髪娘「祖父君はそんな事は言わなかった」
男「爺ちゃんと俺は違うよ。
爺ちゃんは、ここに来たことを……
多分、黒髪に何かを教えるためだと思ってたと思う。
黒髪が余りにも希っていたから」
黒髪娘「……」
男「でも、俺は違うからさ」
黒髪娘「……うん」
男「俺としては、もうちょっと
格好良い引きこもりが見たいんだよ」
のぞみっていた?
>>232
希っていたから(こいねがっていたから)
ちょっと書き溜めしてくる
――『和名類聚抄』より
穀類では、稲類、麦類(大麦、小麦、カラスムギ)、
アワ、キビ、ヒエ。主食は米。小麦はうどんのように
して食す。
豆類は、大豆、小豆、クロマメ、ササゲ、エンドウマメ。
イモ類には山芋やクワイ。
野菜は瓜類各種、蒜類(ねぎ、にら、にんにく)、
水菜類(せり、ジュンサイなど)、
園菜類(アオナ、カブラ、タカナ、カラシナ、フキ)
野菜類(ナスビ、アブラナ、ワラビ、ゴボウなど)
草類(ウド、イタドリ、蓬、ユリなど)
蓮類、葛類、たけのこ、タラノメ、ククタチ、キノコetc。
動物性蛋白の補給源としては、魚介類が中心であった。
近海魚は殆ど今日の日本と変わらない物が食されており
庶民は鰯やあじなど。貴族においては鮎や鯛が珍重された。
また貝の類、海草などの水産物が大いに食べられた。
動物も多量にではないが、ヤマドリ、ハト、カモ、ウズラ
またクマ、カモシカ、タヌキ、イノシシ、ウサギなどが
食用として記録に残る。鶏も唐から輸入されたが、卵は
薬用として用いられた。
果実は主に桃、スモモ、ウメ、カキ、タチバナ、梨、
ザクロ、ビワなどが……
――男の実家
男「なんだなんだ。結構食材豊かだな。
もちろん輸送の関係で、いつでも食べられる
訳じゃないんだろうけど。結構あるじゃん」
男「味付けは……」
ぺらっ
男「基本的には、基本は塩と酢か。酢は米酢なのか?
そのほかに、醤(ひしほ)、味醤(ミソ)。
大豆に小麦の麹か。塩分は低そうだなあ。
そのほか、わさびは、あると」
男「あ-。……そゆことね。
砂糖がないわけだ。そんであんなに
美味しい美味し云ってたのか。
砂糖、砂糖……砂糖の歴史ってなんの本に載ってるんだ?
Wikiりゃでてくっか?」
男「砂糖は……奈良時代に輸入。当初は薬用。
ふむ……サトウキビの栽培は江戸時代か。
こりゃ、到底手に入るわけもないな。
いんちきで、黒糖持って行っちまうか」
男(許されないのかも知れないけどなー)
男「まぁ、その辺俺は爺ちゃんとは違うし?」
がちゃ
姉「あら。あんたいたの?」
男「あー。んー。いたよ。ちっと台所使ってる」
姉「なに」
男「いや、ゲル化実験?」
姉「料理してるだけじゃん」
男「まぁね」
姉「ふぅん」
くつくつ、くつくつ
男「……」
姉「ミネラルウォーターとって」
男「はい」 きゅぽ
姉「ん。あんがと」
男「庶民は水道水じゃない?」
姉「ビールの代わりなの」
男「言いたい放題無敵キャラな」
姉「これくらいの強度ないとね。荒くれ者どもの
リーダーはつとまらん!」
男「Aチームかよ」
姉「うはははは! ははっ。そういえば……例のさあ」
男「?」
姉「例の中学の」
男「ああ」
姉「どうなった?」
男「なんでそんな事聞くのさ?」
姉「聞いた方が良いから」
男「なんで?」
姉「まぁ、なんだかんだ云ってさ。
あんた、出来の良い弟だし?
あたしより高給取りになりそうだしさ。
……姉ぶりたいのよ」
男「……そっか」
姉「白状なさいよ。あんた最近、むちゃくちゃ
勉強とかしてるじゃん。バイトも詰め込んでるし」
男「うん、覚悟決まった」
姉「へぇ……」にやにや
男「話すのやめた。中止~」
姉「ちょ。待った待った! もう茶化さないっ!!
教えてよ。ねぇってば」
男「だから、覚悟決まったって」
姉「へぇ。どんな娘? 可愛い? 美少女?
チチの大きさどんなもん? まさかあたしより
でかくないでしょうねっ」
男「すげぇ、頑張り屋さんだよ」
姉「……おやおや。なんか父性じみたこといっちゃって。
もうちゅーしたのか? あん? この童貞。うりうり」
男「してませんー」
姉「なんだよ。チキンだな。ゴム無かったのか?」
男「そう言うんじゃないわけ」
姉「覚悟決まったんでしょ? 条例を突破する
覚悟とか。アグネスを敵に回す覚悟とか。
上野千鶴子あたりから朝まで精神攻撃受けたりして」
男「いや、もうマジ姉ちゃんキツイす」
姉「なーによ~」
男「そう言うんじゃないくて。頑張り屋だからさー。
覚悟決めて、助けて上げなきゃなぁ、と」
姉「わお。なんだ。らぶじゃないのかー。家庭教師路線?
てっきり彼女にして調教飼育するのかと」
男「そうじゃないって」
姉「でもあんたねー。子供だからって女は女なの。
そういう態度ってすげぇ、傷つけると思うよ?」
男「傷つけるとこも含めて。覚悟決めたって事」
姉「……」
男「傷つく覚悟も決めたし。
それで、まぁ。なんか色々あって。
……そういう未来もあれば、それはそれで、善し。かな」
姉「……難しい娘なんだ?」
男「難易度SSだね」
姉「あんたそれローマの休日クラスだから」
男「うっは。まさにその難易度だわ。弾幕で画面見えない系」
姉「ふぅん。よく判らないけど。……いいわね」
男「……ん?」
姉「まぁ、いんじゃない? 一回くらい。
……そういうの。一回くらい賭けてさ。しないと。
人生生きてる意味なんてさ、無いのかも知れないし。
いいんじゃない? あたしは。
そういうの悪くないと思うよ」
――黒髪の四阿
友女房「ええ、その箱はこちらへ。
えーい、それは絹ですよ!? もっと丁寧に運びなさい。
真珠は文箱です。間違えてはなりません」
黒髪娘「あの」
友女房「姫はそこで黙って座っていて下さいっ」
黒髪娘「う、うむ」
友女房「襲は何にいたしましょうね。
右大臣家の何かけて、仇やおろそかな衣装で
歌会に出るわけには参りませんが。
この衣装の色合いこそ最初の関門。
一遍の落ち度もあってはなりませんっ」
ごごごごっ
黒髪娘「いや、友? そこまで殺気立たなくとも……」
友女房「紅梅匂ですかね。柳桜……いや、もう一目華やかに
樺桜と云う手も。しかし人妻ではない乙女ですからね。
乙女で14であると。
……我が姫の異能はその才気と知性ですから」
黒髪娘「……わたしは異能者だったのか」
友女房「成熟した、しとやかな色気。
そして乙女の清らかさ。
しかしそれらはすべて内側から照らしにじむような
知性を基調として表現されなくては。
そうですね……。
やはり、基調は春ですから梅、桜。それに知性の藤色」
黒髪娘「藤壺の君が、藤は使うであろう」
友女房「では、表着は藤色を避けて、
胸元から覗かせましょう。薄色と紗の梅を合わせ
扇には、緑柱石の勾玉をっ!」
黒髪娘「すごい張り切り用だな」
友女房「あたりまえでございますよ。
姫様がとうとう藤壺の君の宴へと参加する。
おつきの女房としてこれほど晴れがましいことは
ございませんですよっ」
黒髪娘「そ、そうか」
友女房「ええ。かくなるうえは、どんな手段を用いても
準備万端、万事遺漏無きよう整えさせて頂きます」
黒髪娘「むぅ」
友女房「後は、お化粧ですね」
黒髪娘「そ、それは……」 きょろきょろ
がたんっ
男「化粧はいいんじゃね?」
黒髪娘「男殿っ」
友女房「男様、いらしてたんですかっ?」
男「うん。まぁ、紅をさすくらいはしないと
まずいけれどさ。黒髪は、黒髪じゃない。
化粧して誤魔化すのも、面倒だろう?」
黒髪娘「……」 こくん
友女房「しかし、それでは……」
男「いや、考えたんだけどさ。
今さら手のひらを返して『普通の姫君』やったって
もう高得点は狙えないだろ?
こんだけ引きこもりもしてれば、
トンデモ噂だって流れちゃってるんだろうし。
いまから一夜漬けで話し方だのなんだの
仕込んでもそうそう上手くいきゃしないよ」
友女房「それはそうかもしれませんが」
男「黒髪は、黒髪のまんまでいいって。
正面突破で。黒髪は、黒髪の積み重ねてきた物で
それだけでみんなを振り向かせないと」
黒髪娘「男殿……」
男「信じないとさ。自分の姫だろー?」
友女房「それはそうですが……」
男「それとも、自信ないのか?」
友女房「いえっ。確かに姫様は変わり者ですが
その賢さ聡明さ、そして優しい心根だけは
どこに出しても恥じる事なき、最高の主でございますっ」
男「だってさ」
黒髪娘「……友も、ありがとう」
友女房「もったいないお言葉です」
男「まぁ、実際それ『だけ』って云うわけには
行かないからさ。幾つか仕込みはするんだけど」
黒髪娘「仕込み……?」
友女房「仕込み、ですか?」
男「うん、だから衣服を整えるのは重要だ。
それから参加するメンバーも調べてくれ」
黒髪娘「判った。何か意味があるのか?」
男「賢いんだから、脳みそ使わないとな」
黒髪娘「やってみる」 こくん
と、いうわけで。本日はここまででQKであります。
また夜にでも、これたら! 落ちたらその時はその時で!
今回はオナヌーですみませんママレード饅頭くらえーい!
――夜の都大路
ギィ、ギィ……
友女房「すみません。本当に色々お世話になって」
男「いや。今回のことは、俺も言い出しっぺだし」
友女房「それにしても、こんなに助けて頂けるとは」
男「乗りかかった船って云うか」
友女房「あの小豆はどうすればよろしいですか?」
男「朝にもう一回、右大臣家いくよ。
いや、昼前が良いかな。あとは煮るんだけど、コツがあるし」
友女房「さようでございますか……」
男「自信なさそうな」
友女房「それは……まぁ。
もちろん、この友。
姫付きの女房としてどこへ出しても恥ずかしくない
身だしなみを整えさせて頂きます。
今回は男様から香油等も頂いておりますし……。
ただ、やはり歌会ともなりますと、
多くの方がお見えになられます。
出席するのは10名だったとしても、
そのお付きの数たるや数倍にもあがるでしょう。
姫にはぶしつけな視線も突き刺さるでしょうし、
なにか事があればその噂は宮中を駆け回ること必至」
男「……」
友女房「姫は……。どなたよりも、学問に打ち込んで
いらっしゃったので、そのことでからかわれよう物ならば
きっと癇癪を起こしてしまいます。
その癇癪が大きな傷口になるのではないかと」
ギィ、ギィ……
男「黒髪もそんな事を云っていたけれど、
それって本当かな。嘘……つくつもりはないんだろうけど
間違いというか、真実ではないんじゃないかなぁ」
友女房「え?」
男「黒髪が癇癪? かっとなって?
……なんだか違和感がないか? 俺は信じないけどな」
友女房「でも、現に何回も何回も……」
男「違うね。絶対に違うね」
友女房「わたくしには判りません。
男様には判るのですか? 癇癪ではないのですか?」
男「ああ。判るな。俺には……うん。身に覚えがあるもん」
友女房「どのようなことなのでしょう……」
男「つまりさ。説明しずらいな……」
黒髪娘「?」
男「黒髪は、学問が好きなんだよ。
見たろう? あの蔵書。金に飽かせて買ったモノが
ないとは言わないけれど、殆ど黒髪が自分で筆写
したんだぜ? どんだけ時間かかるんだよ。
漢詩も、薬草の絵も、天文の図も。
漢書に晋書。全部手書きだ……」
黒髪娘「はぁ……。私は無学でして……。
詳しいことは判らないのです。
姫がたいそうな、それこそ博士にも勝るような
学識をお持ちなのは確信しているのですが」
男「あいつが筆写してるところ見たことある?
星を見るために夜空をじーっと見てるところは?」
友女房「それはもう」
男「すっげぇ嬉しそうじゃなかった?
にやにや笑ったりしてなかった?
楽しそうだったろう」
友女房「ええ。そうですね。この友にはまったく判りませんが」
男「黒髪はさ……あー。面倒だなぁ、言葉が通じないのも。
おたくなんだよ。勉強おたくなんだ。
好きなんだよ、あれが。大好きなの」
友女房「は、はぁ……」
男「だから、黒髪や友が云ってるのは癇癪じゃなくてさ。
いや、もしかしたら癇癪の成分も含まれてるかも
知れないけれど……」
男(それはさ。ほら。あれだよ。通じろよっ。
おたくが、オフ会に行ったとき、
テンションあがりすぎて知識自慢大会始めちゃうとか。
語り始めるとストッパー書きかなくなっちゃって
些細な論争が蘊蓄まみれで無制限になっちゃうとかっ。
うっわぁ、もどかしい。
なんでこれが伝わらないかなぁっ!
つまりあれだよ。
童貞がちょっと可愛い女の子の前で見栄張りすぎて
挙動不審になっちゃうのと大差ねぇんだよっ)
友女房「どう、されました……?」
男「えー。こほんこほんっ」
友女房「お熱でもあるのですか? 頬が赤いような」
男「いや、なんでもねぇですよ?」
友女房「さようですか」
男「……黒髪は、人嫌いじゃないよ。
“みんなに嫌われてる”と思い込んでるだけだ。
だから歌や漢詩や学問の話が出来ると、嬉しい。
周囲から見てると怒ってる風に見えるほど、嬉しいだけだよ」
夜中に再開すまねぇ。
まぁ、ゆっっくりと、朝までぽちぽち書いていきます。
でも、やっぱVip、人いないね。なんか、寒村になったみたい。
スレがちっとも埋まらないもんねw
――数日後、藤壺。早春の歌会。
友女房「大丈夫でございますか? 姫」
黒髪娘「大丈夫。これくらい」
友女房「昨晩は」
黒髪娘「練習した。男殿の注意書きも百回は読んだ」
友女房「いえ、それではお眠りは……」
黒髪娘「寝てなんかいられない」
友女房「はぁ」
黒髪娘「えっと~気持ちを落ち着けよいとは思わなくて良い。
自分の姿勢に気をつけて、相手のことをよく見る。
相手をよく見て、相手の話を聞くこと。
正しく聞くこと。相手が何を言っているかではなくて
“何を言いたいか”を聞くこと」
友女房「男様ですか?」
黒髪娘「うむ。……そういえば、男殿は?」
友女房「流石に歌会の席にはあがれませんから。
雑色と一緒に牛車止まりにいらっしゃると思いますが」
黒髪娘「手間を掛けさせているな」
友女房「そうお思いならば、今日の歌会を乗り切りませんと」
――藤壺の広間
藤壺の君「本日は良くおいで下さいました」
黒髪娘「お招きありがとう……ござい、ます。
……いままでも何度もお呼び頂いたのに
そのたびに断って参りました。
申し訳ありません」
藤壺の君「いえ、よろしいのですよ。
体調が優れなければ、このような宴も楽しめません。
全ては御身が一番大切です。黒髪の姫」
黒髪娘「でも、わたしは……」
藤壺の君「体調、そして吉凶。
そう言うことにしておきましょうよ、姫」 にこり
黒髪娘「お気遣い、ありがとうございます」
藤壺の君「面を伏せるのは、おやめになったのですね」
黒髪娘「あ、あ……。記帳越しでも、判りますか」
藤壺の君「ええ。良いことかと思います。
今日の黒髪の姫は、いままでで一番素敵ですよ」
黒髪娘「……それは」
藤壺の君「参りましょう。本日お招きしたのは
中納言の二の姫を始め親しい方8人ほどです。
心案じて過ごして下さいね」
からり、しず、しず
黒髪娘「お招き頂きました。
右大臣家、尚侍を勤めまする黒髪と云います」
ひそひそひそ
……噂の妖憑きの姫よ。まぁ、あの格好。
右大臣家の娘だもの、服が豪華なのは当たり前よね。
面を伏せもせずに、醜女のくせに。
……あの言葉遣い、殿方のようではありませんか。
二の姫 パチンッ
……! ……。……。
黒髪娘「生来身体弱く、尚侍の職分も十全に果たせぬ身。
このような席に呼ばれ皆様の不興を買うことを恐れ
いままでは庵に閉じこもっていました。
しかし藤壺の君のご厚情あつく、
早春、梅の香かおる歌会に呼ばれましたので
この身を運ばさせて頂きました。
藤壺の君には厚くお礼申し上げさせて頂きます」
藤壺の君「本日は歌会とは言え、ごくごく私的なもの。
後ほどお茶なども振る舞いましょう。
皆様で、歌を詠み、過ごして頂ければ
私としても嬉しく思います」
しずしずしず
雪融けてまもなき春ですが梅のつぼみほころび……
友女房「姫、先ほどの口上はお見事でしたよ」ひそひそ
黒髪娘「あれしきのことなら。
それより、緊張でどうにかなりそうだ。
胸が早打ちして血の気が引く」
友女房「頑張って下さい」
しずしず
本日はお招き頂きありがとうございます……
友女房「それにしてもそうそうたる顔ぶれですね」
黒髪娘「藤壺の君の歌会だ。招かれただけで
宮廷雀からは一段高い扱いを受けるのだぞ。
当たり前と云えば云えるだろう」
藤壺の君「それでは、歌の方を……そうですね」
友女房「始まりましたね」
黒髪娘「うむ」
友女房「大丈夫ですか?」
黒髪娘「漢詩が得手とはいえ、歌が不得手なわけではない。
このような歌会ならば容易くこなせる、はずだ」
~ゐぐひにいとどかかるしらなみ
友女房「ど、どんな感じですか?」
黒髪娘「みな無難な歌を詠んでいるな。
藤壺様がやはり一枚上手というか
艶麗な歌を詠んでいなさるが」
友女房「大丈夫ですか?」
黒髪娘「こちらだって無難な歌ならば
いくらだってやりようはある。
ここは波風をたてずにこなすのが良いだろう」
藤壺の君「では、黒髪の姫?」
黒髪娘「うむ……。私の番か。
そうだな……。
――淡雪ににほへる色もあかなくに
香さへなつかしこぼれたる梅」
藤壺の君「香りさえ懐かしい……。そうですね」
……ちゃんと詠めるではないですか。
いやしかし一首ではまだ噂どおりの文殊の申し子とは。
詠むには詠んだけれど、そこまで素晴らしいかしら。
淡雪を読み込むのは色合いが素敵ですけどねっ。
藤壺の君「では……そうですね」
二の姫「私がその歌を受けましょう。
――梅が枝に啼きてうつろふ鶯の
羽しらたへに淡雪の降る」
藤壺の君「おや、中納言の二の姫」 にこり
黒髪娘「っ!?」
友女房「ど、どうしたんですか?」
同じ淡雪を詠みこむなら二の姫様の方がよほど艶麗ですわ。
鶯の羽の白さを淡雪の降り積もる色合いと重ねるなんて
やはり人前に顔も見せることが出来ない醜女の歌とはねぇ
黒髪娘「こちらの歌に中納言の二の姫が
切り返してきたのだ。
くっ。しかも淡雪の梅を重ねて見事な出来だ。
このような才媛が居たとは……」
友女房「どうしましょう」 おろおろ
黒髪娘「どうしようもこうしようも
むこうがヤる気ならばヤらない訳にはっ」
友女房「姫様ぁ」
うっは。戦闘シーンだって見透かしてくれる人がいたw
描いてる俺だけ持ち上がってたw すんませんすんません。
おそくてすんません。
黒髪娘「――淡雪は誰に零るとも梅の枝に
零れてのこらじいにしえの花」
ひそひそ……ひそひそ……
黒髪娘「この切り返しでどうだ?
受ける太刀が有るかどうか、見せてもらおう」
零る(ふる)と零れる(こぼれる)の重ね遊びだと?
いにしへの花、は「香さへなつかし」を引くのか
……妖憑きの姫は古今万巻に通じるとは聞きましたが。
くぅ、歌がいくら上手くたって、あのように高慢なっ
二の姫「――」
(相手をよく見て、相手の話を聞くこと。
正しく聞くこと。相手が何を言っているかではなくて
“何を言いたいか”を聞くこと)
黒髪娘「あ……」
友女房「ひめ、さま?」
(喧嘩したいの? 相手がそんなに嫌いなの?
違うでしょう。相手の気持ち、見て。
よく見ないと駄目だよ。
自分が言いたい事じゃなくて相手に届く言葉を選んで)
黒髪娘「……済まぬ。詠み損じた。
――梅が……梅が香にむかしをとへば淡雪の
こたへぬ白よ吾が袖にやどれ」
何を……詠んで?
梅の香りに昔のことを尋ねてみれば答えず
淡雪の白さもまた答えてくれず、でも、それでも
袖に留まってくれ?
なんの歌なの。それは、梅と泡雪で春の歌だけど。
でも、なんだかとても想いのこもった……。
黒髪娘「う゛。うぅう……」
友女房「姫様。姫様真っ赤です」
黒髪娘「恥ずかしいのだ。
こ、このような歌っ。頼むから虐めないでくれ」
友女房「どういう事か判りませんが……」
藤壺の君「ふふふふっ」 にこにこ
友女房「え? え?」
二の姫「淡雪と?」
黒髪娘「その……。二の姫の、唐衣の白が。
朧にかすみ、煙ったように美しかったゆえ……」おどおど
友女房「へ?」
二の姫「吾が袖に?」
黒髪娘「ご、ご迷惑だろうか?」
二の姫「いえ。最初から、そう願っていました」
黒髪娘「あ……」
二の姫「お友達になりましょう」 にこり
黒髪娘「感謝する」 ぱぁっ
え? え? なんで……。
答えず、なんじゃないのか? それでも……?
二の姫「歌をかわせば判りますよね。
どれだけの歌をご存じなのか、どれだけ気持ちに
共感されているか。
歌の善し悪しなど、評定するものでもありますまい?
黒髪さまの歌はどれも美しかったです」
黒髪娘「いや、それは……」
二の姫「でも、最期の歌が一番
お心が入っていたように思います」
藤壺の君「ええ」
黒髪娘「あれは、その。とっさの……不出来な物で」
二の姫「良いではありませんか」
ひそひそ……ひそひそ……
名ばかりの尚侍が……。右大臣家の権力を笠に着て。
中納言家の二の姫とご友誼を? 信じられません。
あのような醜女、人と会うことも出来ぬ山だしでは
ありませんか。話によれば、あれは正腹とも限らぬ
そうで……
二の姫 パチンッ!!
友女房 びくっ
二の姫「藤壺の上の歌会です。
自ずと場の品格と云うものが求められましょう。
付き人の恥は主の恥……そう思います」
友女房(うわぁ。二の姫も華奢な姿で
清らかでなよやかな姫君かと思いましたが……。
その実は悋気の激しい、清冽なお方ですのね)
黒髪娘「……」
藤壺の君「歌も一巡りしましたね?
では、お茶のご用意などをいたしましょう。
宇治よりのものがありまして、先日いただいたのです。
皆様にもぜひ……」
友女房(ふぅ……。これでなんとか一息……)
黒髪娘「かたじけない」
二の姫「いいえ。わたくしの我が儘でもありますもの」
――藤壺の広間
しずしず、とぽぽぽ
友女房(流石、藤壺の上……。
※女房の一人一人に至るまで洗練されていて
流れるような給仕ですね……)
黒髪娘「どうした? 友」
友女房「あ、いえ。藤壺の上のところの女房さん
太刀は立ち居振る舞いが洗練されていて、すごいな、と」
黒髪娘「友が一番だ」
友女房「――え」
黒髪娘「友が一番すごい」
友女房「姫様……」
藤壺の君「お茶が入りました。皆さんどうぞ?
それから、茶菓もまた頂きまして」
友女房 ごくりっ
※女房:女性の使用人。和製メイド。下級貴族の娘や
親戚、妾腹の娘等がなることが多かった。
藤壺の君「茶菓の方は、先ほど黒髪の姫から頂きました」
黒髪娘「うむ。唐渡りの茶菓を
当家の料理人に作らせたものだ。
今日は梅の香会と云うことで
梅の香りにあやかったものを用意してみた」
参加者「これは……?」
ふわり
二の姫「梅の香り、ですね」
藤壺の君「梅酒の香りでしょうか?」
友女房(男さんが作ってくれた、梅饅頭です。
あの爽やかな甘さならば、
きっと居並ぶ姫君の心を開かせることも叶うはず……)
黒髪娘「桐箱に入っているゆえ、開けて食べてみて欲しい」
二の姫「これは可愛らしいですね」
藤壺の君「これは、麦団子なのですか?」
黒髪娘「麦粉をねって蒸した饅頭という物だ。
中身には、小豆の餡が入っている」
二の姫「小豆の……?」
――藤壺の殿、牛車止まり
男「どうだい、それ?」
舎人「なんだこりゃ! 美味ぇぇぇ!!」
雑色「ああ、甘い。食ったこともない味だ!」
男「梅饅頭、ってんだよ。唐わたりの菓子さ」
下級女房「おいしいねぇ。すごいねぇ」
男「もう一個食えよ」
舎人「でも。んぐっ。良いのかい?」
雑色「ああ、そうだそうだ」
男「ん? なんで?」
舎人「唐渡りってことは、特別な材料が使ってあるんだろう?
それに、こんなに綺麗に小さく作ってあって。
俺たちみたいな下っ端に振る舞うような……」
雑色「ああ。これは、もしかしたら雲上人が食うような
とんでもないご馳走なんじゃないのかい?」
※舎人、雑色:男の雑用係。執事、召使い、ガードマン
時に牛車の御者なども行なう運転手にも。
男「あはははっ。いいってことさ。
確かに珍しい材料は使っちゃ居るし、
滅多に食べられない物だけれど、
だからといって遠慮してどうするよ。
こいつは右大臣家、黒髪の姫の心遣い。
寒い中で待っている舎人や雑色のみなさん
女房の皆さんにも差し入れしてあげろってさ」
下級女房「そうなの? あ、あの……」
男「ん?」
下級女房「私の友達は、その。
うちの姫のお付きだから、藤壺の中に……」
男「ああ。うん。わかるわかる。
うちのほかの女房さん達もそうだ。お土産だろ?
こっちに少しよけてある。悪いな。
こっちに持ってきてあるのは、
姫達が食べるのを作る時の失敗作とか、
半端モノなんだけどさ」
舎人「とんでもない! 天竺の菓子とはこれのことかと思うぜ」
雑色「ああ、ほんとうだ。妻にも食わせてやりたいもんだよ」
下級女房「ありがとうね。雑色さん」
男「まぁ、今後とも一つ頼むよ」
――藤壺の広間
黒髪娘「梅の実と梅酒の香り付けがある。
茶に合うと思うので、良かったら。その……
食べて欲しい」
ひそひそ……。ひそひそ……。
二の姫「頂きますわ」
藤壺の君「ええ、もちろん」
友女房(どうですか? どうですか、それ?)
黒髪娘「……」じぃっ
藤壺の君「これは……」
二の姫「甘い。……それに梅の香りと、爽やかさが
なんて清々しいのでしょう!」
友女房(やった! やりましたよ!
これが未来の甘味の実力。いわゆる仕込みですねっ。
さすが男さんっ。あの祖父君のお孫さんです)
黒髪娘「よかった」 ほっ
二の姫「それにしてもこれは初めて経験する甘露です」
藤壺の君「ええ。干し柿のようにとろりと甘いですが
それよりも蜜のように心くすぐるような……」
これは……お……美味しいですわね
確かにこの蕩けるような小豆の味が……。
別にこの程度の物、あ。それはわたしのぶんでしてよっ。
唐わたりの製菓の技まで持つとは。文章博士に匹敵する
学識を持つというのもあながち……
友女房「姫様。姫さまっ。
……気に入って下さったみたいですよ?」わたわた
黒髪娘「うむ」
二の姫「雅やかな銘菓です」
藤壺の君「ええ、ありがとうございます」
黒髪娘「あ、いや……それは男ど……こほんっ。
実を言えば、その。
まだ余っているのだ。
お帰りの時に持ち帰れるよう包んであるゆえ
皆様、宜しかったらいかがだろうか?
……。その……。皆様方。
わたしは、生来不調法で、このような席を避けていた」
藤壺の君「黒髪の姫……」
黒髪娘「にもかかわらずこのような席でご厚情を頂き
感謝に堪えぬ。みな、私を悪し様に罵るのも当たり前だ。
仕事を果たしてこれなかったし、
今後はすこしでも出仕しなければと思っている。
ただ、感謝の気持ちだけ、受け取って欲しい……」
>>1紫の上萌えは、通過点だよな?
俺だけの嫁、末摘花のイメージでおk?
>>355
ループする。好みのおにゃのこは複数居ても良いらしい。
そういえば朧月夜は尚侍してた様な気がする。
この女は今上帝と言辞を二股掛けたVip的にはビッチなんだけど
嫌いじゃないんだよなぁ……。
――藤壺の前庭。
ざわざわ……牛車回しを……姫のお帰り……
藤壺の君「本日はおいで下さって、嬉しかったですわ。
黒髪の姫君。美味しい、唐渡りの菓子を、ありがとう」 にこり
黒髪娘「いえ……その……。
藤壺の上のお心遣いで、胸のつかえもとれました」
藤壺の君「取れたとすれば、それは姫の手柄でしょう?」
黒髪娘「私はこんなに癇癪持ちなのに、良くして頂いて……」
藤壺の君「寂しかっただけではないの?」
二の姫「黒髪の姫の才気は男にも負けないのですから
そんなに背を丸めていると世を見誤りますわ」
黒髪娘「二の姫……」
二の姫「今度は私の宮にも遊びに来て下さい。
黒髪の姫には物足りないかも知れませんが、
古謡の歌合わせでも、お茶でもいたしましょう」
黒髪娘「ありがとう。その……。
わたしを、きらわないでくれて」
二の姫「そのようなことを仰っては駄目ですよ」にこり
――建春門の梅の下
黒髪娘「男殿、男殿っ」
男「黒髪、そんなばたばた……おいっ」
かたっ。とっとっと……
黒髪娘「っと……。んっ。大丈夫だ。
少し躓いただけで。
牛車ではまだるっこしくて困る」
男「なんだなんだ。貴婦人して疲れたのか?」
黒髪娘「うむ」
男「クチ尖らせたって駄目だ」
黒髪娘「そのようなことはない」
男「ん? どした」
黒髪娘「いや、ううん」
男「なんだよ、変だなぁ」
黒髪娘「胸がいっぱいで」
男「上手く行ったのか?」
黒髪娘「全てみんなのお陰だ」
男「よかったなぁ、おい。ちゃんと歌も詠めたのか?」
黒髪娘「わっ。よ、よめた」
男「偉いな、おい」 わしゃわしゃ
黒髪娘「男殿に云われたとおり、皆の声を聞いた」
男「聞こえたか?」
黒髪娘「……聞こえた」
男「みんなに嫌われてばかりだったか?」
黒髪娘「嫌われてもいた。疎まれてもいた。
侮られても恨まれてもいた。
……でも、それだけじゃなかった」
男「そっか」
黒髪娘「たぶん……おそらく、友人も。
できたのだと……思う……」
男「予想以上の戦火だな」
黒髪娘「うん……。男殿の……おかげ……」
男「なんだよ、鼻赤くなって。泣くのか?」
黒髪娘「泣かないっ」 ふいっ
黒髪娘「男殿に、その……」
男「なに?」
黒髪娘「礼をしなければならない」
男「気にするなよ」
黒髪娘「気になる。私はこれでもう大臣家の娘だ。
明経を学んだ身でもある。礼節を逸したくはない」
男「それはそれで、めんどうだなぁ……」
黒髪娘「男殿は望まれることはないのか?」
男「んー」
黒髪娘「……」じぃ
男「望み、ねぇ……」
黒髪娘「私でかなえられる……ことは、その……
たいしてないのだが……何か……」
男「んー」
黒髪娘「男殿……」
男(これは、その……。あれかな。フラグ、なのか?
人生初めて過ぎてさっぱり判らんぞ……。
どう答えりゃ良いんだ!?
女の考えてることわからねぇぞ……)
むにっ
黒髪娘「ひゃい?」
男「いや、水くさいって云うか」
黒髪娘「られ、ほっぺらをひっふぁるのらっ」
男「……雰囲気に耐えきれなかったって云うか?」
黒髪娘「う゛うう」
男「礼かぁ。なんか考えておくよ。
それより、祝いの方が先だろう?」
黒髪娘「りわい?」
男「今回の作戦も成功だったし。
舎人や雑色にも恩は売ったしな。いくら貴族がサーバでも
結局噂の流通はネットワークである女房や召使いに
頼っているようなこの世界じゃ、下を味方につけるのは
大きいと思うぞー」
黒髪娘「??」
男「いや。友女房とかにも世話になっただろう?」
黒髪娘 こくり
男「美味い物でも出して、ねぎらってやれ?」
黒髪娘「もりろんだ」
いや、まぁ。実際、オチどうすんのよこれ、とか
あんまりにも考え無しに書いてるので、今日は鈍いわけです。
萌え足りて無いとも言う。
―― 一月後、黒髪の四阿、炬燵の間
男「まだまだ炬燵が有り難いなぁ」
黒髪娘「そうだな。朝夕は特にだ」
男「それなに?」
黒髪娘「宿曜道の本だ」
男「宿曜道ってなに?」
黒髪娘「暦道と占いの混ぜたような物かな。
僧都が学ぶ物だけど、なかなか興味深い」
男「勉強好きな」
ペラッ
黒髪娘「むぅ……。その……好きだぞ? 勉強は。
以前みたいに、出世とか、そう言うことを
考えなくても。私が、私のままで……。
好きだ……けっこう」
男「それでいーじゃんよ」
黒髪娘「む」
男「?」
黒髪娘「そのミカンは私の分ではないか?」
男「あ。すまん」
黒髪娘「最期の一個とっておいたのに!」
男「いや、悪い悪い。半分食うか?」
黒髪娘「当たり前だ」
男「ふふふっ」
黒髪娘「ミカンは丁寧に剥くのが……ん?」
男「いいや、なんかさ」
ぺらっ
黒髪娘「うん」
男「ずいぶん打ち解けたというか。良い感じになったよな」
黒髪娘「?」
男「黒髪もさ、表情が柔らかくなった」
黒髪娘「そのようなことはない。
私は常に礼節には気を遣うほうだ」
男「そりゃ最初からだったけどさ」
黒髪娘「うむ」
男「いまは、結構なれてきたでしょ?」
黒髪娘「そうかな?」
男「馴れた馴れた」
黒髪娘「何か釈然としない物を感じるが」
ペラッ
男「そうか?」
黒髪娘「うむ」
男「ほら。剥けたぞ。……ほれ」
黒髪娘「ん」ぱくっ 「……美味しい。ありがとう」
男「どういたしまして」
黒髪娘「……むむむ。戌羯羅は金星にして宵を過ぐる、か」
男「難しそうだな」 むきむき
黒髪娘「夜空を彷徨う九星についてらしいのだが。
これは明けの明星について話しているようだ。
しゅくら、と読むのかな? 梵語は話せないから」
男「ほれ、もう一個……」
黒髪娘「ん」ぱくっ 「……ひんやりして美味しいな」
男「だよなぁ」
がたーん!
黒髪娘「?」
男「どうしたんだ」
ばたーん。どたたたたっ。
黒髪娘「なんだ、騒がしい」
友女房「姫様っ。大変ですっ」
黒髪娘「何があったのだ。友」
男「どうしたんだ?」
友女房「桐壺様のお付きの者がこちらにっ」
黒髪娘「なにゆえっ!?」
男「どうゆうこと?」
友女房「た、大変ですよ。
どうやら今回ばかりは探索というか、
無理矢理にでも見つけるつもりかと」
黒髪娘「いや、それどころではない。
ほら、先月末の楽の会を」
友女房「そ、そうでしたっ」
男「ちょっとまってくれよ。どういう事なんだ?」
友女房「男様っ。そうだ、男様だってまずいですよっ!」
黒髪娘「いや、今さら些末なことだっ。
それよりまずい。まずいな……。
私はここにいないことになってるし……」
男「どうゆう事なんだ?」
友女房「先月の歌会から、話が姫も多少は
宮中での株が持ち直しまして」
黒髪娘「多少と云ってくれるな」
友女房「珍しい物見たさと云いますか、
あちこちの歌会やらお茶会からたまに声が
かかるようになったのですよ。
姫君も、時間が余りかからないような
小さな会を選んで数回は顔を見せたのですが、
中でも強烈にお招きを下さっているのが
桐壺さまでして……」
黒髪娘「はぁぁ……」
男「それが、どうだめなんだ?」
黒髪娘「桐壺様は後宮では大きな権勢を
持っていらっしゃるのだ。
しかしもうお歳もめしはじめていらっしゃるし
今上帝の寵も薄れつつあるとの噂。
要するに、藤壺の上に強烈な対抗意識を
持っているのだ。
私を誘うのも私自身に興味があるわけではなく、
藤壺の上との間のもめ事に利用しようという気持ちなのだろう。
それが面倒で、何回も断っていたのだ」
男「ふぅん。断っていたのなら別にいいんじゃね?」
黒髪娘「いや、そのぅ……」
友女房「断る時の口実が問題でして。
姫は気鬱の病のせいで吉野の別宅へ
静養に行っていると云うことになっているのです。
ひと月ほどのことですが」
男「え?」
友女房「ですからここにいるのが見つかると
非常にまずいんですよ」
黒髪娘「引きこもっていれば
絶対にばれないと思ったんだが……」
男「どうしてそう言う隙だらけの作戦を立てるっ」
黒髪娘「う゛。し、しかしっ。
この庵を留守にすると、男殿の長びつが
無防備になってしまうではないか」
男「連絡しておいてくれるなりすれば、そんなのさ」
友女房「す、すみませんっ。お二方。
いまは火急の時ですので、どうかご容赦をっ」
黒髪娘「そうだな。えっと、その使いの者は
どれくらいでこちらにくるのか?」
友女房「おそらく、半時もかからぬうちに」
黒髪娘「ではいまから牛車を仕立てても……」
友女房「ええ、絶対ばれてしまいますね」
黒髪娘「くっ……。何か手はないのか」
友女房「いっそ、女房の服で夕闇に紛れ……」
黒髪娘「しかしそれで実家へ帰ろうと、
実家の方も張られている公算が高い。
どうも私に疑いを持って確認に来ているようだし」
男「……あー。んぅ……なんだ。
ひとつばかり、一応思案があると云えば……あるんだが」
――祖父の田舎屋
がたがたっ。どてっ。
黒髪娘「っくぅっ」
男「大丈夫か?」
黒髪娘「かたじけない。男殿。……風の香が」
男「やっぱ違うよな」
黒髪娘「ここは……」
男「話しただろう。爺ちゃん家の納戸だ」
黒髪娘「そうか。ん……」
男「足とか、平気か? 捻ってないか?」
黒髪娘「大丈夫のようだ。いまは何時頃なのだろう?
表はほのかに明るいようだが、夜明け前だろうか?」
男「いや」すちゃっ 「――殆ど真夜中だな」
黒髪娘「あの白い灯りは?」
男「水銀灯だよ。防犯のために、夜を照らしている」
黒髪娘「そうか……。本当に、別の世界なのだな」
男「まぁ、気楽にしてよ。ようこそ、二十一世紀へ」
――男の実家
姉「どーしたのよ、あんた。こんな時間に」
男「しーっ。声、でかい姉ちゃん」
姉「なんなの? 父さんの出張に母さんも
くっついてっちゃったから誰もいないわよ?」
男「そっか、なら、まぁ。いいけど」
姉「どうしたのよ? こんな夜中に? 犯罪?」
男「いや、ちげぇって」
姉「むー。たいした用事じゃないんだったら老後にしてよ。
あたし年金生活になったら暇になる予定だから」
男「姉ちゃんを見込んでたのみがあるんだ」
姉「金なら借りたい位よ?」
男「ちがうって、その……さ。
いや、なんて云えばいいかな。そのぅ……。
決して問題がある事情って訳じゃないんだけど」
そぉ
黒髪娘 ぺこりっ
姉「かっ!」
黒髪娘 びくっ
姉「可愛い~♪ わ。わ。なにこれ! まじ!?」
ぎゅむっぎゅむぅぅぅ~!!
黒髪娘「!?」
男「いや、姉ちゃん。ごめん、そいつ死んじゃうから」
姉「なによ。ははぁん。これがあれ? 例の。
難易度SSの女子中学生?」
男「まぁ……そうなる……かな」
姉「可愛いわねぇ。すっごいちいさいのっ。
それに何これ、こんなに長い黒髪とかっ。
あんたどんだけフェチはいってるのよっ!?
いっやぁ。フィギュア買う程度かと思ってたけど
この姉ちゃんもおそれいったわ! いやぁ参った!!」
男「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
――男の実家、居間
姉「やぁ。ごめんね。あたし、こいつの姉。
この家に一緒に住んでる。
まぁ、こいつはいまは半分くらい爺ちゃんの家に
寝泊まりしてるんだけどねー」
黒髪娘「お初にお目にかかります。
わたしは黒髪ともうします。
弟御にはいつもいつもお世話になっています。
その恩を返す事も出来ずこのように
尋ねてきてしまいましたが
どうかお見知りおき下さい……」 おずおず
男「あー」 おろおろ
姉「ちょ……ごめ……」 ぐいっ
黒髪娘「?」
姉「ちょっとあんた、あたしを萌え殺す気?
鼻血でそうじゃない、あの態度。
髪の毛サラサラで卵肌に潤んだ瞳よ。
なんであんなに奥ゆかしくて清楚なのよ!?
あれ絶滅危惧種だから。大和撫子だから。
お姉ちゃんの物にするから」
男「なんでそこでそうなるっ」
黒髪娘「あの……。こんな余分に、本当にご迷惑を」
姉「いや、迷惑なんかじゃないですから」くるっ
黒髪娘「そう……ですか?」
男「お茶、煎れようか」
姉「ああ、さっさと煎れてくるように」
男「わかったよ」
姉「黒髪ちゃんか。ん、素敵な名前だね」
黒髪娘「ありがとうございます」
姉(ふぅん……。男のTシャツにカーゴパンツ、ねぇ。
どこで着せたのか。“着る物もなかった”のか……。
やっぱり訳ありの“難しい娘”ってやつなのねぇ)
黒髪娘「どうされました?」
姉「ううん。なんでもないよ」
男「おー。茶を入れたぞ」
姉「どうぞ、温かいよ」
黒髪娘「はい」
姉「ハイとか言って。すげぇ清楚だよ。撫子だよっ」
男「興奮するなよ。姉ちゃん」
姉「で、弟はお姉ちゃんになんのお願い有るのかな」
男「まぁ、幾つかあるんだけどさ。
まずはこの黒髪を風呂入れてやって欲しいんだ。
こいつ、多分こっちのことは相当に疎いから」
姉「ふぅん。……聞かない方が良い?」
男「事情は聞かないでくれれば助かる。
そうだなぁ……帰国子女だと思ってもらって間違いない」
姉「いいよ。それくらい」
男「それから着る物なんだけどさ。
適当な女物見繕ってやってくれるかなぁ」
姉「んー。あたしの古着って訳にもいかないよね」
男「バイト代入ってるから、出せる」
姉「夜が明けたら買いに行くとかで良いの?」
男「うん」
姉「一応聞いておくけどさ。しばらく一緒に住むつもり?」
男「爺ちゃんの家でな。大丈夫。五日間だけだし
姉ちゃんがおもってるような悪いことはなんにもないし
俺も、そんな事するつもりはないから」
しかし、ここで休憩。もうしわけないです。
例によって落ちるならそれはそれで。
残っていたらまた書いてみるなう。
パスタ食べたい。オナカヘッタ。
こんなポンチ読んでくれる人に感謝を。
賑やかなのは大歓迎です。
――夜中のバスルーム
姉「さ、脱いだ脱いだ」
黒髪娘「あ、いえっ。その。うわぁ」
姉「ん? ん? やっぱりちょっと小さめね」
黒髪娘「ううう。このように明るいところで。
まるで昼間のような灯りではないか……ですか」
姉「そりゃお風呂だもん。寝室みたいに
暗くするわけにもいかないでしょ。……恥ずかしい?」
黒髪娘「恥ずかしく……ありますが」
姉「大丈夫大丈夫。気を楽に」
黒髪娘「……う゛ぅぅ」
姉(それにしても、このうっすらあばらの浮いた
細っこい身体とか。そのくせ膨らんじゃってる胸とかっ。
その身体に絡みつく滑らかな黒髪とかっ!!
弟、あんた趣味よすぎっ)
黒髪娘「その……」
姉「ん?」
黒髪娘「私はどこか変か……ですか?」
姉「いやいや。綺麗な物だよ」
黒髪娘「そうですか」 ほっ
姉「ほら、こっちきて。流すから」
黒髪娘「あっ……」
姉「熱かった?」
黒髪娘「いえ、温かいです」
姉「おっけーおっけー」
黒髪娘(こんなに明るくて、夜中に誰の助けも
借りることなく湯殿に湯を用意させられる……。
男殿の家は貴族なのか? それともこの世界では
全ての人々がこうなのだろうか……)
姉「ん。まずは暖まろうか。髪の毛はまとめちゃおうね」
黒髪娘「まとめる?」
姉「うん、束ねて、結おう。大丈夫後で綺麗に洗って上げる」
黒髪娘「お手数をおかけします」
姉「ううん。こんなに綺麗だもの。触っていて楽しいよ」
黒髪娘「そうですか?」 かぁっ
姉「これは、宝物だね」
黒髪娘「はい……」
姉「熱くない?」
黒髪娘「心地良い……です」
姉「んー。堅いかな-。もっと砕けた口調でも良いんだよ?」
黒髪娘「う、う……む」 かぁっ
姉「ふふふっ」
ざっぱぁ~
黒髪娘「姉御殿は子細を詮索せぬのだ……ですね」
姉「まぁね」
黒髪娘「……」
姉「あのばか弟が内緒だっつーんだから内緒なんでしょうよ」
黒髪娘「弟御を信用なさっておいでだ」
姉「あはははは。信用じゃないんだってさ」ははっ
黒髪娘「?」
姉「あれはねぇ、へたれだからね。
へたれが昂じてDTだからね~」
黒髪娘「??」
姉「まぁ、その分大事なものは判るでしょうよ。
人の大事な物に口出しするのは
無粋って。ただそれだけよ」
黒髪娘「無粋、ですか」
姉「おやおや。真っ赤だ」
黒髪娘「はい」 にこっ
姉「ゆだったかなぁ。おいで。髪の毛洗おう?」
黒髪娘「はい、姉御殿」
姉(む。……良いわぁぁ。
この腕の中にすっぽり収まる華奢な身体。
まじで鼻血物だわ、さすが難易度SS!)
黒髪娘「どうされました?」
姉「いえいえ。さ、座って」
黒髪娘 ちょこん
――男の実家、男の自室
かちゃ……
黒髪娘「……湯浴みからあがった」
男「ん。そか」
黒髪娘「その、服を、貸してもらった」おろおろ
男「どうした? 入れば? 廊下寒いだろう」
黒髪娘「湯浴み上がりで寒くはないのだが。
……服が落ち着かない」
男「どうした……う」
黒髪娘「変か? やはり変なのだな? 薄物だし」
男(なんで素肌ワイシャツなんだよ……!?
ね、姉ちゃん。あんた何考えてるんだっ)
黒髪娘「寝具に入れてもらうと良いと」
男「あ。ああ。ほら、ベッド使って良いぞ」
黒髪娘「べっど……」
男「この台だ。布団ひいてあっから」
もそもそ
黒髪娘「男殿は眠らぬのか?」
男「あー。うん」
黒髪娘「それでは寒かろう?」
男「気にするな」
黒髪娘「この寝具は男殿のものではないのか?」
男「うん、そうだ。……悪いな、そんなので」
黒髪娘「いや……これが良い」 すりっ
男「そっか」
黒髪娘「温かくて、良い香りだ」
男「そうかぁ?」
黒髪娘「先ほど、姉御殿にしゃんぱうをして頂いた。
桃の香りなのだ。桃の湯で洗うとは驚いた」
男「ああ」(そっちの匂いか。びびった)
黒髪娘「ほら、男殿」
男「?」
男「どうした?」
黒髪娘「桃の香なのだ。そうであろう?」 くいっくいっ
男「ああ。うん、そうだな」
黒髪娘「姉御殿は優しくしてくれたし、褒めてくれた」
男「そうか」
黒髪娘「この髪を褒めてくれたのだ」
男「ああ、立派な髪だ。
……こっちでは、そこまで長い黒髪は珍しいんだよ。
女でもあちこち出掛ける時代だから。
長い髪は動くには不便だろう?」
黒髪娘「わたしも切った方が良いだろうか?」
男「もったいないよ」
黒髪娘「そうか。……そうだな。
私の女としての麗質の、殆ど唯一だし」 ごにょごにょ
男「肩まで布団に入らないと寒いぞ」
黒髪娘「でも、男殿と話していたいのだ」
男(やばいな。……なんか、こっち来てから
可愛らしさが二倍に見える。
やっぱり平安時代の明かりやら服装じゃ
こっちからみたら駄目コスプレだもんなぁ。
普通<現代風>の格好してたら美少女じゃんよ。
犯罪だろ、これは)
黒髪娘「どうされた?」
男「いや、なんでもない」
黒髪娘「全てが明るい。……闇がないのだな」
男「うん、便利さを追い求めた結果だな」
黒髪娘「なんだか……とても恥ずかしかった」
男「明るかったからか?」
黒髪娘「それもあるが、姉御殿が男殿の姉御だと
おもうと、その……とつぎ先のようで。
ううう……姉御殿には嫌われたくないので」
男「ん? うちの姉ちゃんはそんなに簡単に
人を嫌ったりはしないよ。ああ見えて度量はあるから」
黒髪娘「そうでもあろうが……。そうだ。
男殿も寒そうではないか、この寝具に」
男「それはダメ」
黒髪娘「そうすれば話しやすいのに」
男「良いから寝ちゃえ」
黒髪娘「男殿……は?」
男「俺はちゃんと毛布とか有るし、
暖房もあるし、平気なの。ちゃんとここにいるから」
黒髪娘「ん……」ほっ
男(やっぱ、一人で放り出されるのは、怖いよな……)
黒髪娘「この寝具は……温かいな……」
男「だな」
黒髪娘「……すぅ」
男「……」
黒髪娘「……すぅ……くぅ」
男(前髪、細いな……。額にかかって……)」
黒髪娘「んぅ……」
男(眠るとこんなに子供みたいな顔で……)
――男の自室、遅い朝
男「……んぅ」
黒髪娘「すぅ……すぅぅ……」
男「……なんで。こっちにいる?」
黒髪娘「すぅ……くぅ……」 きゅ
男(落ち着け……おれ!!
多分寝ぼけて、じゃなきゃ心細くて
ベッドから俺の布団に来たんだろうけど……。
それにしたって、裸ワイシャツ薄すぎだろっ!
相手は十二単での生活だったんだぞ。
こっちが馴れてないのに~っ)
黒髪娘 もぞもぞ「あ……んぅ……」
男「おはよう」
黒髪娘「おはよう……男殿」
男「肩、抜かせてな」 そぉっ
黒髪娘「んぅ……温かい……」
男「はいはい。もうちょっと寝てて良いから」
黒髪娘「感謝する……すぅ……」
男(心臓にわるい……)
黒髪娘「んぅ……おはよう、ございま……」
黒髪娘「……うぅ。……ん」 ぽやぁ
黒髪娘「友……? 友、手水を……。あ」
(そうか。私は……。男殿の世界に)
かちゃ
男「ああ、目が覚めたか?
ずいぶんしっかり寝ちゃったな。
もう昼前みたいだぞ」
黒髪娘「そうか。あの……。
布団を奪ってしまったか? すまない」
男「ああ、気にするな。おなかすいたか?
姉ちゃんはもう出掛けた。手紙残ってた。
服を調達に云ってくれたみたいだ。
行儀悪いけれど、もうちょっと俺の服で過ごしてくれ。
夕方前には戻ってくるよ」
黒髪娘「色々お手数を掛ける」
男「任せとけ」
黒髪娘「うむ」
男「飯にしようか」
――男の実家、ダイニングキッチン
黒髪娘「これは……」
男「えーっと。パンと目玉焼きと、ジャムと。
クラムチャウダーなんだけど……」
黒髪娘「未来の料理か」
男「まぁ、そうなる」
黒髪娘 どきどき
男「知的好奇心100%の表情だな」
黒髪娘「食べてみたい」
男「もちろん。どうぞ。……んじゃ頂きます」
黒髪娘「頂きます」
かちゃ、ちゃ……
男「どう?」
黒髪娘「うむ。この汁物は……貝か。
何ともいえぬ豊かな味わいだ!」 にこっ
男「良かった」
黒髪娘「このパンなるものの柔らかきこと……」はむっ
男「気に入ったみたいで良かったよ」
黒髪娘「朝からこのような馳走をいただいている。
感謝としか言いようがない」
男「ん?」
黒髪娘 もたもた
男「ああ。ジャム塗るよ」
黒髪娘「これは、塗る物なのか?」
男「そう。パン貸してね。……こうやって、こう」
黒髪娘「ふむ」
男「わかった?」
黒髪娘「理解した。……それにしても」
かちゃ、ちゃ
黒髪娘「何もかも手間を掛けさせることばかりだ。
申し訳なくて、消え入りたくなる」
男「なんだそんなことか。俺が向こうに行ってた時は
俺の方が世話になっていたじゃないか。おあいこ様だよ」
黒髪娘「そうであってくれれば良いのだが」
男「気にすることはないって」
黒髪娘「ん。これは! この味覚は!」
男「だめだった? うちは姉ちゃんの方針で
イチゴジャム禁止なんだわ」
黒髪娘「それは判らぬが、これはミカンか。
なんと爽やかで、甘く、芳醇な味わいだろう!」 ぱぁっ
男「気に入ったか」
黒髪娘「うむ。これは美味しい! 大変美味しい!」
男「あはははっ。いいから、ちょっと拭け」 くすくす
黒髪娘「む?」
男「ほら、口だして」 きゅっ
黒髪娘「これははしたないところを見せた」
男「いや、良いよ。くはははっ」
がちゃん
姉「あ、ご飯中?」
黒髪娘「姉御殿」
男「お帰り、姉ちゃん。早かったね」
姉「まぁね。朝早めから行ってきたし」
黒髪娘「ど、どうぞ。こちらへ」
姉「ありがとうねぇ、黒髪ちゃんっ」むぎゅん
黒髪娘「うう」
男「姉ちゃんも何か食うか?」
姉「あたしテキサスマックバーガー食べてきたから」
男「そっか。じゃ、何か入れるよ」
姉「紅茶が良いな」
男「ほいほい」
姉「~♪」
黒髪娘「どうしたのですか?」
姉「いやいや。美少女と一緒のランチは目の保養ですよ」
黒髪娘「??」
いや、誤字はあるんだ。
誤字はあるんだ、沢山あるんだよ orz
判っていてもなくならないのだ。スミマセンスミマセン。
さてはおまえ「小沢さんは潔白です」みたいなアレだな(T∇T)
反省して粛々と書くよ。
雑談嬉しいよ。展開に影響とかないとはいわんけど
別にストレスはないので余り過剰に気にせずに(>_<)
エロリクには答えられないけどなっ(´∇`)ゥアッフゥ
コトン
男「ほいよ、紅茶だぞ」
姉「さんきゅー!」
男「黒髪のも入れるな。これは、紅い茶なんだ。
甘くして飲んだりする」
黒髪娘「いただき……ます」
男「姉ちゃんの前だと大人しいのな」
姉「気にすること無いのに」
黒髪娘「そんな事はない……です」じっ
男「ぷくくっ」
姉「まぁ、食事の後は着せ替えね! 自信作だからっ」
男「なんか色々思いやられる」
黒髪娘「お世話になります」
姉「くぁ! 可愛いっ!」
黒髪娘「うう」
男「晩飯はどうしよっか?」
姉「あ。鍋にする。弟が作って」
男「ほいほい。飯の後、爺ちゃん家へ移動すっから」
――夕方、男の住む街
黒髪娘「……」おどおど
男「そんなにおっかなびっくりじゃなくても」
黒髪娘「ばれたりはせぬか?」(小声)
男「大丈夫だって。同じ人間じゃない」
黒髪娘「そうでもあろうが、こ、このような髪の
持ち主は居ないではないか。みんな、短いし……」
男「いーの。黒髪は、その髪が綺麗なのっ」
黒髪娘「そう言ってくれるのは嬉しいが」びくっ
男「?」
黒髪娘「いますれ違った婦人、
こちらを見て笑っていなかったか?
くすくす笑っていなかったかっ!?」
男「お前、本当に引きこもりなのな」
黒髪娘「出歩く時に牛車がないなんてっ。
こうやって周囲に壁がない広い空間に出ると
落ち着かないんだっ。うううっ」
男「ハムスターみたいなやつだなぁ」
黒髪娘「あれはなんだ?」
男「ああ、ポストだ。郵便……
んっと、手紙とかを入れると届けてくれる」
黒髪娘「あの赤い箱が届けてくれるのか?」
男「いや、ちがうちがう」はははっ
「こっちでは、雑色とか女房とか、居ないんだよ。
みんなが平民みたいな物だから。
だから、手紙を届ける専門の人がいて、
あの赤い箱からみんなの手紙を取り出して
一通ごとに、宛先の……つまり手紙を書いた人が
届けて欲しい相手に届けて回るんだよ」
黒髪娘「ふむふむ……あ、あれは? もしかして」
男「あれはただのラーメン屋だ」
黒髪娘「らあめん? こんびにではないのか」
男「こんびには、そら。あっちの明るいのだ」
黒髪娘「おお。あれがコンビニか!」
男「寄りたいのか?」
黒髪娘「うむ。い、いや……沢山人がいるな。
いまは、その……任務があるからまたの機会に」
男「くくくくっ。そうだな。先にスーパーいくか。
なぁに、スーパーもコンビニも似たようなものだ」
――スーパー「主婦の店いずみ」
んがー
黒髪娘「開いたっ」
男「自動ドアだって。ほら、えーっと。なんだ。
俺の後くっついてきてな? 見回しても良いけれど
走り出したり迷子になったりするなよ」
黒髪娘「自慢ではないが、走るほどの体力はない」
男「ぷくくくっ」
黒髪娘「この煌びやかな寺社はなんなのだ?」
男「寺社じゃないよ。商店、つまりあー。
商いの店だ。こうやってた何ある物は全部売ってるんだよ」
黒髪娘「これほどの物を商っているのか。
で、物売りはどこにいるのだ?」
男「この加護に、欲しいものを入れていって、
最期に物売りと話をするわけ」
黒髪娘「そうか……。今宵は何を買うのだ?」
男「んー。そうだなぁ、今晩の食事と。
おやつを少しばかりと、明日の分と……」
男(こいつはこっちの世界のこと、何も知らないだけで
別に馬鹿じゃない門な。むしろ賢くて聡明といっても
良いくらいな訳で……)
男「そうだな。普通の男が一日汗水流して働いて
5千から2万くらいかな。こっちの通貨は円と云うんだけど」
姉「ふむ。では、この菜を毎日50個も食すことが出来るのか。
いや、しかし、一族郎党となるとそれでは」
男「だから、貴族は居ないからさ。
もちろんそれ以上稼ぐ人もいるけれどな。
大抵は、お父さんが一家4、5人を食わせればそれで済む」
黒髪娘「そうなるのか」
男「豆腐と……何鍋が良いかな。黒髪は何が良い?」
黒髪娘「判らない。男殿に従う」
男(やっぱり、何となくでも覚えのある味だと安心するよな。
俺もそうだったし。そうなると、塩か、味噌か。
醤油は、醤(ひしお)とはちょっと味が違ったしな。
考えてみれば、みりんもないのか?)
黒髪娘「?」
男「うっし、きまった。味噌だな」
――男の自宅、夜の食卓
ぐつぐつ
黒髪娘「これはよい香りだ」 そわそわ
男「まだ蓋開けちゃダメだからな」
黒髪娘「心得ている」
男「姉ちゃんも、開けようとしないっ」
姉「いいじゃん、ちょっとくらい」
男「湯気が逃げると、煮えるの遅くなるでしょ」
姉「しゃぁないなぁ。あ。ビール」
男「はいはい」
姉「黒髪ちゃんは?」
黒髪娘「わたしは」
男「黒髪は、まだ酒はダメです。はい、お茶ね」
姉「ちぇっ」
黒髪娘「ふふふっ」
男「ったく」
姉「それにしても、どう?」
男「どうって?」 きょとん
姉「とろいなぁ。黒髪ちゃんの格好よ」
黒髪娘「あ……」
男「それは、そのー」 かぁっ
姉「どうよ、この姉! みんなの希望の星!
庶民のスーパースターお姉ちゃんの見立てはっ!
まず、この胸元のタックっ! 清楚な中にも
可憐さを演出する臙脂色のリボンタイっ!!
そして極めつけはっ!」
がたっ、だたんっ。
黒髪娘「ひゃっ!?」
姉「この 黒 タ イ ツ っ!!」
黒髪娘「うっ。ううっ」
姉「黒髪っ娘×黒タイツっ。
この禁欲的な組み合わせに胸ときめかないやつは居る?
板としてもそいつ非国民だから。
割り当て的には衛星軌道の外だからっ!」
男「それ非国民じゃなくて非地球民じゃんよ……」
姉「で、どうなの」ずいっ
黒髪娘「……うう」
男「な、なにが?」
姉「黒タイツよ。黒髪ちゃんの……」
男(あ、あ。ああ……う。
……ぐ……。
く、悔しい。
悔しいがっ。
姉の云うことにも……一理ある……。
似合う。
似合いすぎている……っ。
俺が福本漫画なら悔し涙を流しているところだが……)
姉 にやにや
黒髪娘「……滑稽だろうか?」ちらっ
男(上目遣いしないでくれっ。
ただでさえ、身長差があっていろいろ
いっぱいいっぱいなんだからっ)
男「い、いや。似合う……んじゃねぇすか?」
姉「あ。逃げた」
男「ニゲテナイ」
姉「童貞が逃げた」
ヤバいかなりハマった
他に>>1が書いた作品はないのかね
>>541
魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/maou_kono_warenomonotonare_yuusyayo_kotowaru.html
新ジャンル「完璧な許婚」(許嫁ver)
http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/kanpeki_na_iinazuke.html
同僚女「観念してうちを撫でるんやね」
http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/douryou_okiro_okiro.html
秘書妹「兄さん。今晩の予定についてですが」
http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/hisyoimo_niisan_konbannno_yoteinituitedesuga.html
猟奇妹「兄さん。兄さん。ドアを開けてください」
http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/ryoukimo_niisan_niisan_door_aketekudasai.html
女僧侶「うう。勇気を出してスレを立ててみます」
http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/souryo_yuukiwodasite_thre.html
式子内親王「寒い~。絶対布団から出ないからねっ」
http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/naisinnnou_samui_futonkaradenai.html
侵入女「え、えへへ。始めまして。ストーカーです」
http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/ehehe_hajimemasite_stalker_desu.html
姉「あんたねー。女の子可愛い服着てたら
褒めるっしょ? それ基本でしょ?
基本外したら落とすよ? アクシヅ」
男「うろ覚えのにわかオタネタやめようよ」
黒髪娘「……」そわそわ
男「あー。可愛い。すごく似合う。
こっちのどんな娘より
美人で綺麗だから、安心しろって」
黒髪娘「う、うむ……。ありがとう」
姉(“こっちの”?)
黒髪娘「軽くてふわふわ頼りなくて落ち着かぬが
そう言って貰えると、本当に嬉しい……」
男「調子狂うな」
姉「まぁ、いいじゃない。煮えた?」
男「もうちょっと」
姉「ふぅん」 にやにや
「あんた達二人はゆでだこみたいに、
良く煮えてるみたいだけどね~」
男「うっさい!!」
>>541
兄「ハンバーグだよ! ハンバーグっ!」
http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/ani_hamburg_dayo_hamburg.html
末姫「……ひもじぃです」(未完結)
http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/hime_himojiidesu.html
先輩「もう帰ってもいいですよ」
http://nanabatu.web.fc2.com/new_genre/senpai_moukaettemo_iidesuyo.html
新ジャンル「一人暮らしの級友男宅に居候する腐女子」
(おそらく中盤)
嫁「おかえり~。おとくん。ご飯できてるよっ」
わたしの棲む部屋(R18)
http://wiki.livedoor.jp/izon_matome/d/wkz%a2%a15bXzwvtu.E%bb%e1
――その夜、男の祖父の家
がらがらがら……
男「疲れただろう?」
黒髪娘「少し」
男「うそつけ。引きこもりなんだからぐったりのくせに。
わるいな、ほんとに。騒がしい姉ちゃんでさ。
悪いやつじゃないんだけどな。
ゆるしてくれよ。
まぁ、ほら、あがって」
黒髪娘「ん。その……」
男「?」
黒髪娘「いや、その。この……」
男「ああ。靴な」
黒髪娘「沓(くつ)ならば判るのだが」
男「いま、脱がしてやるよ」
黒髪娘「んぅ……」
男「ほら、もじもじしない」
黒髪娘「しかし。殿方に沓を脱がさせるとは。ううう」
男「?」
黒髪娘「恥ずかしい……」
男「~っ! 恥ずかしがられると、
こっちが余計に恥ずかしいっ」
黒髪娘「済まない。その……抵抗しないので……
出来れば、手早く済ませてくれると……」
男(こいつ計算抜きでこれ云ってるヨ……)
黒髪娘「ひゃ……」
男「なんだよ」
黒髪娘「ちょっとヒヤっとしただけだ。
なんでもない。私は冷静だぞ」 かぁっ
男「うううっ……」
黒髪娘「もう、良いか?」
男「うぐ。うんっ。もう出来た、ほら、行くぞっ?」
黒髪娘「判った」 すくっ。……っとっと
男「手を貸せ。……こっちな?」
――祖父の家、和室。並べた布団で。
黒髪娘「姉御殿はよかったのかな……」
男「良いんじゃないか。多分、明日か明後日には
こっちに顔を出すと思う」
黒髪娘「うむ……。賑やかになるな」
男「あっちの方が良かったか?」
黒髪娘「あちらのほうが都の中心に近いのであろう?」
男「都、と云うか……駅には近いかな」
黒髪娘「で、あれば、こちらの方が落ち着く」
男「そっか。うん、そのせいもあって
こっちに来たんだけどな。
急に色々見ちゃうと、パンクしちゃうだろう。
少し見聞をならさないとな」
黒髪娘「感謝する」
男「いえいえ。ちょっと馴れたら、お出かけにも
連れてってやるよ。本屋とか、見たいだろう?」
黒髪娘「もちろんっ。それは、その……。
もしかすると、でいと、と云うものか?」
男「でいと? あ。ああ……まぁ、そう……かな」
黒髪娘「そうか」 にこり
黒髪娘「男殿……は」
男「ん?」
黒髪娘「いや……良いのか? こんなに世話をさせて」
男「たかだか五日やそこらだろう? 心配するなよ。
黒髪はまだ14で子供なんだから甘えておけ」
黒髪娘「わたしは……子供か……」
男「あー。うん。……そだな。
前も話したけれど、こっちの世界では
二十歳で成人を迎える。元服、みたいなものかな。
だから、黒髪の歳は、まだ、子供だ」
黒髪娘「……うん」
男「でも、黒髪の世界では子供じゃないんだよな。
いや、それは判ってる」
黒髪娘「いや……子供だ……」
男「へ?」
黒髪娘「成人とは元服のような物なのだよな?
女子のそれは裳着(もぎ)と呼ぶのだが……。
それはおそらく、この世界において
独り立ちを意味するのだろう……?」
黒髪娘「よくは、そのぅ。判らないが……。
貴族の居ないこの世界にあって、働いて
菜を米を、味噌を購うと、それが成人なのだな。
成人というのは、我が道を戦える者だ。。
であれば……。
私は、やはり子供なのだろう。
右大臣家の娘として、
自分の口に糊することもせず今を過ごしている。
男の世界の目で見れば、
一人前の人間として扱われずともやむをえぬ……」
男「……」
黒髪娘「そんな私が、言の葉にする資格のない
そんな思いが沢山あるのだろうな……」
男「……黒髪は」
黒髪娘「……」
男「黒髪が大人だか、子供だか。
あの長びつを見つけたこの屋根の下では
俺にはどっちが正しいのか、判らないよ。
でも、
黒髪は、俺の知ってる誰より、頑張り屋さんだよ」
黒髪娘「……ありがとう。男殿」
良い区切りなんでQKしてくるー。
書き溜め書き溜め。
――祖父の家、縁側
チチチ、チチチチッ
黒髪娘「四十雀だ」
男「シジュウカラ?」
黒髪娘「黄色い胸の小さな鳥だ」
男「ああ。ここは、山近いからなー」
黒髪娘「この時代にも居るんだな。……安心する」
男「そりゃ、変わらない物だって沢山あるよ」
黒髪娘「……」ぽやぁ
男「……」ぽやぁ
黒髪娘「今日はこんな感じか?」
男「うん、そう」
黒髪娘「日向ぼっこか……」
男「陽がある間だけな。すぐ寒くなるから」
黒髪娘「色々見聞を広めたい気もするのだが」
男「無理だろ。ほれ」 ちょこんっ
黒髪娘「くぅっ!」
男「どれだけ引きこもりなんだよ。
スーパーに往復するだけで筋肉痛とか」
黒髪娘「いや、しかし。それはわたし個人と云うよりも
牛車によって生活している者全般にいえる事で」
男「あと、動きが鈍い」
黒髪娘「うう……」
男「十二単って重いじゃない?」
黒髪娘「うむ」
男「だから、あれを脱いだら
サイヤ人みたく早くなるかとちょっと期待してた」
黒髪娘「そんなわけ無いであろうっ。
そのなんとか人と云うのはわからぬが。
天竺の導師でもないのに器用に動けるものか」
男「ほら、脚伸ばせ」
黒髪娘「うむ……」おずおず
男「痛いか?」
黒髪娘「そうでもない。すぐに良くなる」
男「まぁ、今日は一日ゆっくりしよう」
黒髪娘「退屈はしないな」
男「そうか?」
黒髪娘「家の中にも見知らぬものが沢山あるのだ。
てれびんとか、水のでる台とか」
男「そりゃそうか」
黒髪娘「こちらの家は、皆小さいのだなぁ」
男「悪いな。ははっ」
黒髪娘「ん?」
男「人間が沢山増えたんだよ。
だから、土地が不足して高くなった。
宮古の中心部は、そりゃすごい価格だぞ」
黒髪娘「そういうことなのか。
しかし、それら全ての家に湯浴みの施設があるのだろう?
さらに云えば、自動の竈(かまど)さえある」
男「そうだな。殆どにはあるな。水洗のトイレも」
黒髪娘「驚愕すべきことだ」
男「かもなー」
黒髪娘「それに、色々書籍もある」
男「いや、それは本じゃなく出前のチラシだから」
黒髪娘「このように色鮮やかな錦絵とは」
男「ピザだって」
黒髪娘「興味深い」
男「うーん」
――祖父の家、納戸
黒髪娘「これがこちらの長びつか」
男「そうそう」
がちゃ、かちゃ……
黒髪娘「何をさがしているのだ?」
男「どっかに懐中電灯とか、そういうのないかなって。
この家、田舎やだから、夜のトイレの廻りとか暗いんだよ」
黒髪娘「わたしなら平気だ。
暗いのは故郷で十分に経験している」
男「まぁ、そりゃそうだろうけど」
がちゃ、かちゃ……
黒髪娘「……ん?」
男「どした?」
黒髪娘「この長びつ、ずいぶん黒いな」
男「ああ、汚れてるし、ここ暗いしな」
黒髪娘「そういえばそうか」
男「あったあった。……え、あっ」 がたっ
むぎゅっ
黒髪娘「っ!!」
男「ご、ごめんっ」
黒髪娘「いや、この程度、なんでもない」
男「いやいや、悪かった」
黒髪娘「こ、こちらこそ……粗末なものを」
男「そんな事無いぞ。ふっくら良い感じだ」
黒髪娘「ふっくらしているからダメなのだ」
男「……」
黒髪娘「……?」
男「あー」
黒髪娘「ん?」
男「いや、こう。色んな誤解がね」
黒髪娘「誤解?」
男「黒髪は、その卑屈なところは良くないぞ?」
黒髪娘「仕方ないではないか。私は不器量なのだ」
男「いいから、こっちこい」
黒髪娘「へ? へ?」
いや、今回はマジでへこんだ。
この2時間くらいp2鯖落ちてたように思う。
もうね、泣きそうです。
――祖父の家、お茶の間
TV:わははははは! あはははは!
男「判ったか!」 ばぁぁん!!
黒髪娘「っく!!」
男「これがこの時代的な『美人の女』だっ」
黒髪娘「馬鹿な! これは肥満した年増ではないかっ!?」
(注:別に1はTVに悪意があるわけではありあせん)
男「時代と共に価値観は変わるのっ」
黒髪娘「この時代だったら
私だって十人並みの器量だったのか……」
男(いや、この時代だったら相当可愛いだろ)
黒髪娘「しかし年齢はどうにもならない……。
どっちつかずなこの身が恨めしい……」
男「いや、そのままでいいんだって。黒髪は」
黒髪娘「それにしても、このてれびは不思議だな」
男「まぁ、そうな」
黒髪娘「道術で動いているのか?
つまり、宝貝のごときものなのか?」
男「当たらずとも遠からず、かなぁ」
黒髪娘「それにしても……」
男「ん?」
黒髪娘「何でこの者たちは裸なのだ?」
男「~~っ。ちがうって、着てるじゃん」
黒髪娘「裸も同然ではないか。……デブなのに」
男「デブじゃないって。しかも裸じゃないって。
ただのキャミソールだろうにっ」
黒髪娘「むぅ」
男「これがこっちの世界のスタンダードなのっ」
黒髪娘「そうなのか。こういうのが人気があるのか……」
男「黒髪はこういうのの影響は受けないで良いんだからなっ」
黒髪娘「むぅ……」
男「こういうのは、そのー。
なんていうのかな、芸人というか。
人気商売で、男性受けを考えてやるものだからっ」
黒髪娘「白拍子※なのか?」
男「それは判らない」
黒髪娘「つまり、その……。遊女、のような?」
男「あー。そうそう。そういうことっ」
黒髪娘「やはり異性への魅力ではないか」ぼそり
男「?」
黒髪娘「いや、なんでもない。いくらなんでも
右大臣家の娘が真似できることではない」
男「そうそう。そのままが一番」
黒髪娘「それはそれで成長を否定されているようでつらい」
男「なんでそんなに急ぐかなぁ」
黒髪娘「……う」
男「まぁ、十分可愛いから心配無用だよ」
※白拍子(しらびょうし):歌舞の一首でありその舞い手。
美人の娘さんがなった。身分は卑しくても貴族の家で
上演することも少なくなかった。
――祖父の家、勝手口
からから
姉「こんばんわー」
男「あー。姉ちゃん。電話しようかと思ってた」
姉「ちゃんと買い物行ってきたよ」
男「さんきゅー。何にした?」
姉「アジとハマグリとね、後は野菜はーカブと大根と、
適当に見繕ってきた。和食が良いんでしょ?」
男「んだね。食べつけてるだろうし」
姉「なんだかなぁ。めちゃ惚れじゃない」
男「そういうんじゃないよ」
ドサドサッ
姉「んっと。黒髪ちゃんは?」
男「ああ、いま部屋。布団ひいてるんじゃないかな」
姉「ふぅん……」
男「どったの?」
姉「いやいや。あんな娘、どこでモンスターボールに
閉じ込めやがったんだこのえろ人間と思って?」にやにや
男「……」
姉「お。なんか反応薄い?」
男「可愛いとは思うけど、そういうのとはね」
姉「違うの?」
男「――わかんねーけど」
姉「ま。難しいよね。中学生じゃ、ずいぶん年も違うし?
まぁ、歳以外にも色々違うみたいだし」
男「え?」
姉「あの子、ずいぶんお嬢様でしょ?」
男「――どうして?」
姉「だって、お風呂場で髪を洗う時、
明らかに“洗ってもらうことに馴れて”いたもの」
男「……」
姉「それも、そんじょそこらの箱入り娘じゃないよね」
男「駆け落ちとか誘拐とかじゃないからな」
姉「あったりまえよ。あんたそんなに根性無いでしょ」
男「う」
姉「……ん? 違う?」
男「ま、仰るとおり」
姉「気持ちはわかるけれどね。
――あんた甘いから。
相手の分まで臆病になるって云うのは」
男「……」
姉「でも、あんまり子供扱いしない方が良いよ」
男「また、云われた」
姉「説明無しで大人が全部責任取るって
まさに子供扱いでしょう?
でも、それでも、一緒にいたいって女が願ったら
そうゆうのってただのいじめだからね。
諦めるなら、相手にも諦めるチャンスくらい
あげなさいよね」
男「経験者みたいだな、姉ちゃん」
姉「うっさい。バカ弟」
――祖父の家、お茶の間
姉「と、云うわけで!」
男「本日は、アジフライとかぼちゃの煮物。
カブのクリーム詰め。大根のお味噌汁です」
姉「いぇーいっ!」
黒髪娘「……」じぃっ
男「どしたの?」
黒髪娘「あ。いえ、すごく美味しそうだ……です」
姉「いいのよ。普段どおりで。黒髪ちゃんは」
黒髪娘「すいません……。すごく美味しそう」
男「ではいただきますっ」
姉「頂きますっ!」
黒髪娘「いた、だきます」 ちらっ
男「そうそう、ご自由にどうぞ。
ああ、ソースかけるな、……んっしょっと」
姉「お姉ちゃんもー!」
姉「美味しいねぇ。
……こうやって、来てみるとさ。
お爺ちゃんの家も良いねぇ。
なんか、落ち着くね。木造住宅は」
男「だろー? 俺なんか気に入っちゃってさ」
黒髪娘 もぐもぐ
姉「美味しい?」
黒髪娘「はい。このカブがとても美味しい」
姉「そっか」 にこにこ
男「なんか予想外に仲が良いな」
黒髪娘「そうか?」
姉「そう? 仲がよいのは普通でしょう」
男(連合軍を組まれた気がする……)
黒髪娘「アジをこのように食べるのは初めてだ」
姉「へ?」
黒髪娘「いつも、煮るか焼くかです」
姉「そうなんだ。ふぅん」
男「あー(たしか、まだ“揚げる”はないんだったな)」
黒髪娘「外側のサクサクがとても美味だ」
姉「だね」 にこっ
男(くっ。姉ちゃん、また何か誤解してるだろう。
金持ちのお嬢様で世間知らずだとかっ。
いや、金持ちのお嬢様は間違いではないんだが)
黒髪娘「ん……」もくもく
姉「ねー。あんた達」
男「ん?」
姉「デートはいかないの?」
男「っく。なっ……。なに云うの、姉ちゃん」
姉「なんだって良いでしょ。黒髪ちゃんに聞いてるの」
黒髪娘「明日連れてって頂けるのだ。
……約束しているのです」 にこり
姉「わお! ね。どこどこ? どこいくの?」
男「……う」
黒髪娘「駅前と云うところの本屋です。
それから、みすどなる所も約束しました」
姉「あんた相手14歳だからって
なに手抜きのコースですませようとしてんのよっ!!
駅前の本屋って何よ、それあんた散歩じゃないのよっ!」
男「ちげーって!! これは手抜きとかじゃないんだって!!」
黒髪娘「あっ。はい。姉御殿。ちがいます。
その、わたしがお願いしたのだ……です」
姉「そなの?」
男「そうなの。こいつ、本好きでさ」
黒髪娘 こくこく
姉「じゃ、しょうがないけど……」むぅ
男「ったく。お味噌汁もう少しいる人ー」
黒髪娘「はい」おずおず
姉「お姉ちゃんもー!」
男「あいあい。わっかりましたっての」
――祖父の家、客室、女性組
姉「ふんふーん♪」
しゃすっ、しゃすっ。
黒髪娘「……」ぴしっ
姉「そんなに緊張しないで良いよ? 黒髪ちゃん」
黒髪娘「は、はい。姉御殿」
姉「本当に、綺麗な髪ね」
黒髪娘「ありがとうございます。
母上にも、その……親しき人にも、
それだけは褒められるのです」
姉「そっか」
黒髪娘「私は生まれつきかわいげのない性分だから」
姉「そんな事無いのに」
黒髪娘「……」
姉「ん。出来た。……黒髪ちゃんは奥ね。
その方が温かいから」
黒髪娘「はい。その……」
姉「ん? なに?」
黒髪娘「髪をとかして頂きありがとうございます」ふかぶか
姉「や、やだなぁ。そんな三つ指ついて頭下げないでよ。
そんなに大したことはしてないってば」
黒髪娘「いえ、男殿もそうですが、
私には何一つ恩返しが出来る当てもないのに
これほどに受け入れてくださって。
感謝の言葉もないです」
姉「やだな、そんなこと。
……それに、私はともかくとしてね。
男相手には、お返しというか……
ほら、あっちも下心も無きにしも……というか……」
黒髪娘「はい?」 きょとん
姉「ん~。お布団入ろうか」
黒髪娘「はい」
ぱちんっ。
姉「……ふぅ」
黒髪娘「……お布団、柔らかい」
姉「黒髪ちゃんは懐いてるね。うちのバカにさ」
黒髪娘「男殿は聡明な方です。
私は何度も助けられました。
意地っ張りで人と衝突して、
それで拗ねて引きこもっていた私を歌会に連れ出してくれた」
姉(引きこもり……か。なんだ、弟のやつ
ちょっとは考えて、手を貸してるんじゃない)
黒髪娘「……初めて内裏の友人と云える人が出来たのも
男殿のお陰だと思ってる……です」
姉「そっか」
黒髪娘「男殿は私にいろいろなことを教えてくれます。
私の学んだことを飽きもせずにいつまでも聞いてくれますし。
寒い日に二人で炬燵に入って、互いに本を読んだり
喋らないで過ごしたりするのも
気持ちが和む……ます」
姉「黒髪ちゃんは、弟のこと……らぶ?」
黒髪娘「らぶ?」 きょとん
姉「あれ?」
黒髪娘「らぶとは……なんでしょう?」
姉「えっと……うぅ。困ったな……」
黒髪娘「??」
姉「弟のこと、好きなのかな、って」
黒髪娘「……」 きゅぅっ
姉「……?」
黒髪娘「わか……りませぬ……」
姉「へ?」
黒髪娘「私は余りにも不調法で、
そんな事が赦されるような……身でも……」
姉「……(っちゃぁ、地雷踏んじゃったかな)」
黒髪娘「でも」
俺「あ、姉さんだ。らぶー」
姉「ああ、君か、らぶー」
姉「……」
黒髪娘「男殿に……触れてもらいたくなる時があって
髪の毛を撫でて欲しいとか。
背中に触りたいとか
その袖に掴まりたいとか……」
姉「……」
黒髪娘「自分でも、なんだかよく判らなくて。
友女にも相談したのですけれど
“姫は悪くない”っていわれて……。
でも、やはり私はそんな風に思えない。
なんだかとっても格好悪くて
情けない気持ちで
不器用すぎて何も出来ない気分で
優しくされてるのに、泣きたくなるし
些細なことで落ち込んでしまうし」
姉「……」
黒髪娘「いえ、その。良くしてもらって。
いつも一緒で、それは嬉しいのだ……です」
姉「嬉しいのだ、でいいよ」 くすっ
黒髪娘「はい」 しゅん
黒髪娘「ざわめいて、羽ばたいて。
心が魑魅(すだま)になって、飛んでいきそうで。
これはその……。好き――なのだろうか?」
姉「……」
黒髪娘「すみませぬ。
学問も儒教の礼は学んだつもりだが
怯懦な心を抑えきれぬ」
姉「ううん。その……友さんだっけ?」
黒髪娘「はい」
姉「友さんの言うとおり。
黒髪ちゃんは、なんにも悪くないよ。
……もうね、そりゃねー。
春になったら花が咲くとか、
夏になれば蝉が鳴くとか
秋になれば葉が染まるとか。
それくらい仕方がないよね」
黒髪娘「そうなの……か?」
姉「こればっかりは、胸の内側が
“そういうことだよ”って熟すまで
待つしかないもんね」
はてさて、良い区切りなんで、ちょっと諸々こなしてきます。
これるとしたら夜。あれだったら容赦せずに落として下され。
みんなの分の、マーマレードサンドっと
平安組出番無さ過ぎて泣けるwww
――駅前の本屋
黒髪娘「なんという数の書だ!!」
男「気に入ったか?」
黒髪娘「うむ! すばらしいぞ。
い、いったい何冊有るのだっ!? 千冊か、二千冊か?」
男「わかんないけど、一万くらいじゃないか?」
黒髪娘「一万っ!?」
男(テンション高いな……。なんかもう、ほんと。
こいつ、すげー可愛いよなぁ)
黒髪娘「入って良いのか? 作法とかはあるのかっ?」
男「この間のスーパーと大差ないよ。
カゴとかはないけれどな。あと、大きな声は出さないこと」
黒髪娘「うむ、わかったぞ」
男「じゃ、行くか」
黒髪娘 じぃっ
男「どうした?」
黒髪娘「余りにも沢山あって、どうすればいいのか判らぬ」
男「あー」
黒髪娘「どうしよう、男殿?」 おろおろ
男「うーん。そうだなぁ」
黒髪娘「そもそも、煌びやかな書が多すぎるではないか」むぅ
男「そういう認識かもな。うん」
黒髪娘 そぉっ。ちょん。
男「なんでそんなにおっかなびっくりなんだ?」
黒髪娘「書は慎重に触れねば壊れてしまうであろう?」
男「ここにあるのは、そこまでボロくはないよ。
うーん。しかたない。まずは案内してやるから
一周ぐるっと回るとしようか」
黒髪娘「手間をかけて申し訳ない」
男「なーに。かえってデートらしいってもんだ」
男「まず、ここがマンガコーナーだ」
黒髪娘「まんがこーなーとはなんだ?」
男「コーナーは、場所って云うような意味だ。
棚によって異なる種類の書物が収められているって訳だよ」
黒髪娘「ではマンガの棚か。……マンガってなんだ?」
男「ぷくくっ」
黒髪娘「笑うことはないではないか。真面目に質問しているのに」
男「いやいや。おれもそっちに行ったばっかりの頃は
会話の殆どが“XXって何だ?”だったとおもってさ」
黒髪娘「うむ。その通りだ。厠(かわや)ってなんだ?
と聞かれた時は、どこの知恵遅れかと思ったぞ」
男「くっ。それはもう良いだろっ」
黒髪娘「で、マンガとはなんなのだ?」どきどき
男「それはこんな感じの……」
黒髪娘「ふむ。おお!!」
男「このちいさな四角の中に、絵と台詞が入ってるわけだ。
右上から読んでいって、物語になってるわけだな」
黒髪娘「ふぅむ。興味深い……」
男「で、こっちは絵本コーナー」
黒髪娘「絵本とは?」
男「こんな感じだ」
黒髪娘「マンガと一緒ではないか」
男「こっちは、小さな四角がないんだよ。基本的にな」
黒髪娘「ふむ。ああ。判るぞ。なぁんだ。
これは、要するに絵物語ではないか」
男「あ、そうなの?」
黒髪娘「うむ。このような物は貴族の間では特に珍重されるのだ。
もちろんこのような綴じ本ではなく巻物なのだが」
男「ふむふむ」
黒髪娘「書の執筆、編纂というのはあちらでは
学識や見識の集大成とも云えるもので
任じられたり人気が出たりするのはとても名誉なことなのだ。
絵物語を書く職人は珍重されている」
男「そりゃこっちでも似たようなものかもなぁ。
ラノベ作家とか人気者だもんな」
黒髪娘「この棚は全て絵物語なのか?」
男「うん、そうだよ。絵本っていうのは、
こちらでは多くの場合、子供向けなんだ。
子供が字を覚え始める頃に絵と一緒だと覚えやすい、
って云う配慮なのかな。
ほら、この本なんか、文字がとても大きいだろう?」
黒髪娘「本当だ……。鮮やかな絵だなぁ」
男「どうした?」
黒髪娘「絵合(えあわせ)というものがあって」
男「ふむ」
黒髪娘「つまり、歌会のような集まりなのだが
みんなが持ち寄った絵を自慢し会うような会なのだ。
もちろん我が家も右大臣家であるから、
唐から取り寄せた秘蔵の絵巻物をいくつも所有している。
しかし、おそらくこの棚ひとつにも満たぬのだろうな、と」
男「……」
黒髪娘「いや、つまらないことを云った」
男「いや。……黒髪は、いいこだな。
次に行くか。まだまだ色々あるんだぜ?」
男「このコーナーは、一般書籍。右は小説で、左は実用書だな」
黒髪娘「小説とは何だ?」
男「物語だよ。絵がついていない、文字だけのやつ」
黒髪娘「ふむふむ。竹取物語のようなものだな」
男「ああ、それってかぐや姫の話だろう?
それはこっちでも親しまれてるぞ?」
黒髪娘「そうなのか? 女房や貴族達はあの美貌の姫を
うらやんだり褒めそやしたりするのだ。
公達がこぞって求婚するのが素敵らしい。
だが、わたしは幼い頃からあの、
殿方を手玉に取るやりようが気にくわなくてな。
いやならいやだと断れば良かろうものを」
男「あー」
黒髪娘「あのような宝物をねだって諦めさせるとは
如何にも不実なやりように思われてたまらぬ」
男「まぁ、そうとも云えるかな」
黒髪娘「これだから私は恋が――
す、すまん。とにかく!
男女の機微が判らないなどと云われるのだ」
男「ふぅん。そう言われるのか」 にやにや
黒髪娘「いいではないかっ。
――で、こちらの実用書とは?」
男「言葉のどおり、実用の書だ。
日常に役立つ技術の指南書だな。
仕事の本とか、資格の本とか、料理の本なんかも含まれる」
黒髪娘「ふむふむ。職人の本と云うことか?」
男「おおむね間違っちゃいないんだろうな」
黒髪娘「それにしても膨大な数だな」
男「前も云ったけれど、もう貴族はいないんだ。
逆に言えば全員が貴族だとも云える。
今では、誰でもが気軽に本が読めるからな」
黒髪娘「全員文字が読めるのか?」
男「読めるよ。もちろん、本を読むのが
好きな人も嫌いな人もいるけれどね」
黒髪娘「うーむ。それでこんなにも書があるのか……」
男「そういうことだな」
男「それから、こっちは雑誌だな」
黒髪娘「雑誌とは何だ?」
男「あー。んー。あれ? いざとなると結構説明が難しいな」
黒髪娘「そうなのか?」
男「この世界の書には大きく分けて二種類有るんだ。
1つは書。今まで見てきたの全部だ。
もう一つは雑誌、ここにあるようなものだな」
黒髪娘「ふむふむ」
男「書の方は、何か書きたいこと1つに搾って
それについて書かれているんだな。大抵はそうだ。
書き上げたら発表される。
中には長い時間かけて書かれるものもある。
雑誌の方は逆に、日取りを決めて定期的に出ている。
週に一回とか、月に一回とか、年に四回とか」
黒髪娘「ふぅむ」
男「で、色んな出来事が書いてあることが多いな。
例えばこれなんかは旅行についての雑誌だ」
黒髪娘「“宇治”と読めたぞ?」
男「うん、この季節……つまり、雪の宇治に行って
温泉につかろうと、そんな事が書いてあるみたいだ」
黒髪娘「なんて精巧な錦絵なのだろうなぁ」 うっとり
ごめんぽ、いわれるまできづかなかった。
さっきからP2のせいか、書き込み失敗しまくって
タイムアウトになった書き込みが「読んでるスレ」に
流れちゃってるみたいだ。
ちょっと対処のしようがないので、止めるね。
一応経緯を説明してみると、
いまp2の鯖が重すぎて(大量規制でp2にながれた?)
オペレーションタイムアウトになっちゃうことがあるんよ
で、タイムアウトにもかかわらず、p2の方の鯖には
データが行ってるみたいで、時間差で書き込まれる。
書いたスレじゃなく見てるスレの方に行っちゃう事故っぽい。
ごめんなさい、ごめんなさい。
ほんと、ママレードを献上します、ごめんなさい。
男「さて。説明はこんなものかな」
黒髪娘「手間を取らせた、男殿」 にこっ
男「結構時間がたったな。面白かったか?」
黒髪娘「うむ、目のくらむ思いであった」
男「そっか」 なでなで
黒髪娘「……むぅ」
男「それじゃさ」
黒髪娘「ん?」
男「何か買ってやるよ」
黒髪娘「え?」
男「その予定だったんだ。沢山は買ってやれないけれど
買ってやるからさ。何が良い? 選んでみればいいよ」
黒髪娘「よ、良いのか?」 どきどき
男「まぁな。でもダメなものはキッパリダメだからなっ。
……特に店のあっちの端には近づかないことっ!」
黒髪娘「迫力があるぞ、男殿。……それなら」
男「どうした?」
黒髪娘「一緒に選んで欲しい」
男「どんな案配だ?」
黒髪娘「えっと、えっと……もう少し」
男「ああ。ゆっくりでいいぞ。時間をかけて」
黒髪娘「選ぶのが楽しすぎるのが問題なのだ」
男「楽しむのが良いって」
黒髪娘 ぱたぱた、ぱたぱた
男「……たのしいなぁ、あいつ」
黒髪娘 ぴたっ
男「お、止まった。実用書にするのか?」
黒髪娘 ぱたぱた
男「違うのか」
黒髪娘 ぴたっ
男「写真集か。そういやそんなのもあったなぁ」
黒髪娘 ぱたぱた
男「せわしないやつ」 ぷくくっ
黒髪娘「男殿、男殿」
男「決まったか?」
黒髪娘「これにしようかと思う」
男「これはまた。面白いのを選んだなぁ」
黒髪娘「そうなのか?」
男「いや、でもそれは読んだことがある。良い本だよ」
黒髪娘「猫の絵が凛々しいと思うのだ」
男「そうだな。小さくて黒いのは、黒髪みたいだ。
……じゃ、それにしようか」
黒髪娘「でも、その。……よいのか?
これは千三百もするから、あの大きな菜が十個も
買えるわけで……そのぅ」
男「いいんだよ。それくらい。遠慮しすぎだ。
それからこっちの一冊は、俺からの贈り物」
黒髪娘「え? え?」
男「古語辞典だよ。黒神はこれがあると助かるだろう」
黒髪娘「こんなに厚い書を頂くわけにはっ」
男「なんだ。絵本を選んだのはそんな理由なのかぁ?
変なところで慎み深いんだなぁ。黒髪は」
黒髪娘「変ではない。それが儒教の礼節だ」
男「いいのいいの。これは、俺が、黒髪にあげたいの」
黒髪娘「そんなっ」
男「――あの話だってさ」
黒髪娘「へ?」
男「あの姫が、蓬莱だ龍だなんて無茶振りして
取ってこれないようなものを
ねだったのがいけなかったんだよ。
そうでなければ、男の中にはごく当たり前の好意で
姫に贈り物をしようとした人もいたと思うぜ?
それこそ、送っただけで満足。
あの姫に使って貰えたら嬉しいなぁって、
それだけの気持ちだったヤツだって、
最期に残った五人の皇子以外にはいたと思うんだよなぁ」
黒髪娘「……」
男「まぁ、そいつらはあの話では、予選オチしたわけだけど」
黒髪娘「あの女は見る目がなかったのだ」
男「かもな」
黒髪娘「ありがとう。大事にする。男殿っ」 にこっ
――駅前ドーナツチェーン店
男「……っと、こんな感じかな」
黒髪娘「何がなにやらさっぱり判らぬ」
男「うん、説明しても良いんだけど、
後ろも並んでるから」
黒髪娘「わっ」
男「適当に俺が選んじゃうぞ」
黒髪娘「う、うむ。頼む」
男「ミートパイがないのが痛いよなぁ。
あれすげー美味いのに」
黒髪娘「白やら桃色やら、美しいなぁ」
男「甘いんだぜ?」
黒髪娘「甘いのかっ」
男「そりゃもう、大人気ですぜ」
黒髪娘「むむむ……。梅饅頭よりもうまいか?」
男「良い勝負かなぁ」
カタン、すとん。
男「まぁ、どうぞ」
黒髪娘「うむ」 きょろきょろ
男「美味しいよ?」
黒髪娘「頂きます」
男「頂きますっ」
黒髪娘 あむっ 「っ!」
男「おお、びびってる。びびってる」
黒髪娘「何という軽さなのだ! 淡雪のようだっ」
男「エンゼルクリームって云うくらいだから」
黒髪娘「どうなつとはこのような食べ物なのか」
男「南蛮渡来の菓子なんだよ」
黒髪娘「これは、なんとも……。
霞を食べているような心地よさではないか」 きらきら
男「どんどんどうぞ?」
黒髪娘「うむっ」
男「こっちのも行けるぞ? ジャム入りだ」
黒髪娘「うむ。頂いている」 そわそわ
男「どうしたんだ?」
黒髪娘「いや」
男「?」
黒髪娘「男殿……」 ちらっ
男「ん?」
黒髪娘「その、わたしは、何か粗相をしているのではないか?」
男「なんでさ?」
黒髪娘「道行く人も店の人もこちらを見ていないか?」
男「あー。うん」
黒髪娘「なにか、悪いことをしてしまっただろうか」
男(今日のも、お出かけ前に姉ちゃんが
わざわざ着飾らせたコーディネートだからなぁ。
悪い意味で手抜きがないって言うか……。
姉ちゃん無駄にきめまくりだろ……)
黒髪娘「ううう」 おろおろ
男「いや、まて。落ち着け。説明するから」
黒髪娘「?」
男「その編み込み、姉ちゃんがやってくれたんだろう?」
黒髪娘「ん? 髪か? そうだ。
姉御殿がそのままだと街歩きでは邪魔にもなるし、
重かろうと編んでくれたのだ」
男「それと、服もさ」
黒髪娘「軽すぎて、心許ない」 かぁっ
男「そういうの、すごく可愛いんだよ。
……タイツとか。似合ってっから」
黒髪娘「――」 きょとん
男「可愛く見えるの。すごく。TVに出てる子みたくっ」
黒髪娘「そう……なのか?」
男「ったく」
黒髪娘「何で男殿が怒るのだ?」 むぅっ
男「怒ってない」
黒髪娘「そんな事無いではないか」
男「なんでもないって。ほら、食べよう?」
黒髪娘「……」
――帰りの夜道
黒髪娘「男殿?」
男「ん?」
黒髪娘「その……なんでもない」しゅん
男「そっか」
黒髪娘「……」
男「……」
黒髪娘「……」 ぎゅっ
男「荷物、持とうか?」
黒髪娘「ううん。これは自分で持ちたいのだ」
男「そうか」
黒髪娘「…………機嫌が悪いの……か?」 ぼそぼそ
男「どうした?」
黒髪娘「なんでもない」 ふるふるっ
黒髪娘「男殿……」
男「どした?」
黒髪娘「頭を……撫でてくれないか?」
男「……」
黒髪娘「髪に触れて欲しいのだ」
男「……ん」
ふわり……。
なで……なで……
男「……こうか?」
黒髪娘「……機嫌を直してくれ」
男「怒ってないよ」
黒髪娘 ぎゅっ
男「……黒髪。ほんとだよ」
黒髪娘「……」
男「本当だってば」 なでなで
――翌日、祖父の実家
さーーーー
黒髪娘「雨だなぁ、男殿」
男「そうだな」
黒髪娘「春の初めの雨だ」
男「そのへんちょっと感覚ずれてるよな。
まだまだ寒いじゃないか」
黒髪娘「温かくならなくても、年さえ開ければ春だ。
同じ寒くても、これから小さく堅くなって行く年末の寒さと
どこかにほころびを感じさせる、年明けの寒さは違う」
男「そっか? でもまぁ、そうかもな。
雪じゃなくて、雨だしな」
黒髪娘「これでは今日は外には出られぬな」
男「行けない訳じゃないけれど、
家にいるのが良さそうだ」
黒髪娘「男殿は何をしているのだ?」
男「調べ物と、レポート」
黒髪娘「そうか。……私もここで本を読んでいて良いか?」
男「もちろん」
ぺらり/カタカタカタ
黒髪娘「……」
男「……」
黒髪娘「……」 もぞもぞ
男「……どした?」
黒髪娘「背中が温かくてくすぐったいのだ」
男「何もこんなにくっつかなくても良いのに」
黒髪娘「部屋の中で、ここが一番温かく思う」
男「そうですか」
黒髪娘「うむ」
ぺらり/カタカタカタ
男「……」
黒髪娘「……」
男「……」
黒髪娘「――我がせこが衣はる雨降るごとに
野辺の緑ぞ色まさりける」
男「それ、どんな歌なんだ?」
黒髪娘「それは、つまり……
衣替えをして、雨が降るごとに、春の緑が濃くなる。
そういう歌だ」 そわそわ
男「そうか。そういえば“一雨ごとに”なんて云うものな」
黒髪娘「そういうことだ」
男「ん?」
黒髪娘「なんだ?」
男「頬っぺ赤いぞ?」
黒髪娘「そんなことはないっ」
男「ふむ」
ぺらり/カタカタカタ
黒髪娘「……」 どきどき
男「……なんかさ」
黒髪娘「うむ?」
男「小腹減った」
黒髪娘「……そうかも知れぬ」
男「ドーナツは腹持ち悪いなぁ」
黒髪娘「蕩けるばかりに美味であるのにな。
浮き世の栄華とは本当にむなしいものだ」しょんぼり
男「栄華ってほどのものか?」
黒髪娘「どおなつに勝る栄耀栄華はあるまいっ」
男「そうかそうか。んー」のびっ
黒髪娘「男殿は大きすぎる」
男「何か言った?」
黒髪娘「見上げるようだ」
男「黒髪が小さいんだよ」
黒髪娘「わたしは標準的な身長だ」
男「……何か食べるとするか」
黒髪娘「ご相伴する」
――祖父の家、台所
男「黒髪ー?」
黒髪娘「ん。ここにいるぞ」
男「お前、餅何個食べる?」
黒髪娘「餅を食べるのか?」
男「このサイズだぞ。ほら」
黒髪娘「存外小さいな。私は3つだ」
男「んじゃ、俺は4つ~」
黒髪娘「焼くのか? 雑煮か?」
男「どうすっかね。チーズいれちゃおっかなぁ」
黒髪娘「ちいず?」
男「いや、間食で高カロリーは危険かな?」
黒髪娘「ちいず……」どきどき
男(まぁ、いいか。こいつそうゆうの関係なさそうだし)
黒髪娘「ちいずとはなんだ?」
男「美味い食べ物だよ」
黒髪娘「それはたのしみだ!」 ぱあぁっ
――祖父の家、居間
黒髪娘「美味しいではないか!」
男「落ち着け」
黒髪娘「餅と同じように伸びるとは」
男(可愛いヤツだな。ぷくくっ)
黒髪娘「熱くて、とろりとしていて」
男「ほら、慌てると、髪についちゃうぞ。
右大臣家の娘なんだろう?」
黒髪娘「それもそうだ」 あむ、あむっ
男「ほら、お茶おくぞ。喉に詰まらせるなよ」
黒髪娘「いくら何でもそこまで子供ではない」むっ
男「くははっ。判った判った」
黒髪娘「この、まろやかな塩味がたまらぬ。
美味く表現できぬが、一個食べるともう一個。
ふたつめを食べると三つめが食べたくなる味だ」
男「ああ、チーズの溶けたヤツって
そう言うところ有るよなー。わかるわかる」 もぐもぐ
黒髪娘「……」 じー
>>791
勉強してない。てけとう?
784の歌は紀貫之。古今和歌集収録。平安貴族は
古今和歌集丸暗記がステータスだったらしいので
黒髪も覚えていたのでしょう。黒髪の歌の解説は
間違ってないけど正解でもない。
そのほか、歌会の歌は、借り物や自作など。
雰囲気だけのなんちゃって平安だと思って貰えれば
それでOKでござる。にんにん。
男「……」 もぐもぐ
黒髪娘「……」 ちらっ
男「もう一個欲しい?」
黒髪娘「……そうとも云える」
男「……半分こだからな」
黒髪娘「うむ」 にこっ
男「ん。美味いなぁ」
黒髪娘「美味しいなぁ。こちらのものは何でも美味しい」
男「あっちのだって美味しいぞ?」
黒髪娘「もてなしの心で用意しているのだ」
男「こっちだってそうさ」
黒髪娘「そうなのか?」
男「確かにこっちは変わった物があるように
見えるかも知れないけれど、例えば近海産の
天然の鯛やカニなんて、一人が食うくらいで
七千円とか八千円とかするものもあるんだぞ?」
黒髪娘「なんとっ!?」
男「な? ものすごく値段が上がって
高級になったものもあるんだよ。
たとえば、生の山葵(わさび)なんて
いまは普通のご家庭じゃ高くて
滅多にお目にかかれるような食べ物じゃない」
黒髪娘「そうであったのか」
男「だから、おれがあっちで受けたもてなしは
本当に大盤振る舞いの、大ご馳走だったんだよ」
黒髪娘「ふむ……。興味深いな」
男「だから、あんまり気を遣うことはないぞ?」
黒髪娘「うむ、わかった」にこっ
男「腹が一杯になったらごきげんか?」
黒髪娘「わたしはいつでも機嫌は良い。
男殿と一緒にいる時ならばなおさらだ」
男「え。……あ」
黒髪娘「どうしたのだ?」
男「いや、その」
(そう言うこと、不意打ちで云うかな。この中学生めっ)
――夜中、祖父の家の廊下
じゃぁぁ~
黒髪娘「寒い」 ぶるるっ
黒髪娘「千年たっても厠(かわや)の寒さは変わらぬのだな。
何でそう言うところだけは変わらないのだろうな」
ぶるるっ。
黒髪娘「寒い……。早く布団に……。ん」
黒髪娘「――」
黒髪娘「これは、満月……か。
雨も上がり、なんと冴え冴えとした……春の、月」
黒髪娘「変わらないのは、月の光」
黒髪娘「……来て、良かった」
からり
男「……すぅ。……ん」
黒髪娘「……」
男「……すぅ。…………くぅ」
(あの髪に、触れたい。触れて、欲しい)
黒髪娘「……」 おずおず
さわっ。……なで。……なで。
男「……んぅ」
黒髪娘「っ」ぴくんっ
男「……すぅ。……くぅー」
黒髪娘 ほっ
(月の光で……。男殿が。……なんだか)
男「……んぅ? 黒髪……? といれか?
――寒いぞ。……んぅ。
……布団入らないと、寒く……なるぞ?」
黒髪娘「あ……」 こくり
男「……すぅ」
黒髪娘(いま……溢れた。
……いま、判った)
男「……すぅ。…………くぅ」
黒髪娘(やっとわかった。
……これが、そうなんだな。
そうか……。これは、知っている。
この気持ちは、ずっとわたしの中にあって……。
男殿に触れられる度に育って……。
今、溢れたんだ……。
こんなに近くにあったのだ……)
男「……冷えちゃうぞ? んぅ。……黒髪」
黒髪娘「はい」
男「……ん?」
黒髪娘「はい。男殿」 にこり
男「……? ……すぅ」
黒髪娘「月の光が凍ってる。
今晩は、特に冷える。
暖かい布団を分けて下さい。男殿」
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
| VIPじゃなきゃヤダヤダーってか?ww .|
|_____________| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
w wwwww || |専用の板でやれ。 |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | |________|
このスレ何番煎じ?|二=- -=二 | | wwwwwwwwww. | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~~|
⌒ヽ__________| . __-=ミ;彡⌒`丶、~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|パートスレ立 て ん な |
^ω^)|馴れ合いシネ |  ̄ ̄ ̄ ̄ |:::`丶今すぐ消えろ |__________|
_つO  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|.VIPを乗っ取るな.|::::::::::ヽ______| ||
/ |なんでここでやる|_______.lノン:::::::l _∧ || /⌒ヽ ||
=二・二=- (^ω^)-┐ ュ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|∀`○ニ( ^ω^#)ニ⊃
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄┗-ヽ ノ ィ赱、 i| VIPでやるな.| ノwww ヽ ノ
w .| とにかく邪魔 ┏┘, `"" ,l______.|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|,_ ,ィ''。_。ヽ、_,. /_ン'(.|. 迷 惑 |
|定期で落ちた糞スレを返せ| `""`|. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|______|
| | w w.w|_______..|
ww.ヽ(`Д´)(`Д´)(`Д| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|∀・)
(__)メ(__)メ(_| VIPから出て行け |氏ね| / ̄ ̄ ̄\
ハ ハ ハ |__________| ̄|| | ^ ^ .|
www w ww | |( ゚д゚ ) w( ゚д゚ )| .>ノ(、_, )ヽ、.|
w w モウクンナ w (つ とノ ww (_゚T)w ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|_
ww -=二・二=- -=二・二=-w(⌒) | w w w ww゚ ゚̄ あまりVIPPERを rニ─`、
ww www  ̄`J / :::::::::::|怒らせないほうがいい`┬─‐ j
悪い、寝オチってましたる。
今晩はこれで一旦切らせて下され。
礼によっておちたら落ちた感じで。
仮眠から戻れれば超速度で
保守時間目安 (休日用)
00:00-02:00 40分以内 __
02:00-04:00 90分以内 _□.--‐<´ヽ`、
04:00-09:00 180分以内 ,.-"`: :.|___\ ヽ、_ノ
09:00-16:00 80分以内 /: : : :,ヽ、\/l`ヽ、 \
16:00-19:00 60分以内 /::/: :〆、 ,×l/:l : l : ̄ヘ<
19:00-00:00 30分以内 |/|: :/● ●|_!_l_l=:-:‐i´
.,-、 |: :|@ @|::|=|: : : : l
保守時間の目安 (平日用) ;|!:::::::`ヽ、|!_ ⌒ _/:/ : : : : : l
00:00-02:00 60分以内 |!:::::::::::::::::∥r:‐t-t//::ヽ, : : : : : l
02:00-04:00 120分以内 ヾー──'‐(::|×|:::ト==l: : : : : : l
04:00-09:00 210分以内 ./: : : : :ノ:|×|:::|:::::::|: : : :l : : l
09:00-16:00 120分以内 /: :/: : :._}=ェ==|:::::::::ゝ、: :l : : :l
19:00-00:00 30分以内. /: :/,|/_/_/_/_/∧_l_lエ´ヘ、:l l: : : l
/: :/ゝ、/_/_/_/_/_l_l_ヘ_ヘ_ヘ,.ゝl : : :|
 ̄ .|:×|:×|  ̄ ̄
.ヽ_人_ノ
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
| VIPじゃなきゃヤダヤダーってか?ww .|
|_____________| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
w wwwww || |専用の板でやれ。 |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | |________|
このスレ何番煎じ?|二=- -=二 | | wwwwwwwwww. | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~~|
⌒ヽ__________| . __-=ミ;彡⌒`丶、~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|パートスレ立 て ん な |
^ω^)|馴れ合いシネ |  ̄ ̄ ̄ ̄ |:::`丶今すぐ消えろ |__________|
_つO  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|.VIPを乗っ取るな.|::::::::::ヽ______| ||
/ |なんでここでやる|_______.lノン:::::::l _∧ || /⌒ヽ ||
=二・二=- (^ω^)-┐ ュ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|∀`○ニ( ^ω^#)ニ⊃
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄┗-ヽ ノ ィ赱、 i| VIPでやるな.| ノwww ヽ ノ
w .| とにかく邪魔 ┏┘, `"" ,l______.|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|,_ ,ィ''。_。ヽ、_,. /_ン'(.|. 迷 惑 |
|定期で落ちた糞スレを返せ| `""`|. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|______|
| | w w.w|_______..|
ww.ヽ(`Д´)(`Д´)(`Д| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|∀・)
(__)メ(__)メ(_| VIPから出て行け |氏ね| / ̄ ̄ ̄\
ハ ハ ハ |__________| ̄|| | ^ ^ .|
www w ww | |( ゚д゚ ) w( ゚д゚ )| .>ノ(、_, )ヽ、.|
w w モウクンナ w (つ とノ ww (_゚T)w ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|_
ww -=二・二=- -=二・二=-w(⌒) | w w w ww゚ ゚̄ あまりVIPPERを rニ─`、
ww www  ̄`J / :::::::::::|怒らせないほうがいい`┬─‐ j
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
| VIPじゃなきゃヤダヤダーってか?ww .|
|_____________| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
w wwwww || |専用の板でやれ。 |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | |________|
このスレ何番煎じ?|二=- -=二 | | wwwwwwwwww. | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~~|
⌒ヽ__________| . __-=ミ;彡⌒`丶、~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|パートスレ立 て ん な |
^ω^)|馴れ合いシネ |  ̄ ̄ ̄ ̄ |:::`丶今すぐ消えろ |__________|
_つO  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|.VIPを乗っ取るな.|::::::::::ヽ______| ||
/ |なんでここでやる|_______.lノン:::::::l _∧ || /⌒ヽ ||
=二・二=- (^ω^)-┐ ュ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|∀`○ニ( ^ω^#)ニ⊃
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄┗-ヽ ノ ィ赱、 i| VIPでやるな.| ノwww ヽ ノ
w .| とにかく邪魔 ┏┘, `"" ,l______.|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|,_ ,ィ''。_。ヽ、_,. /_ン'(.|. 迷 惑 |
|定期で落ちた糞スレを返せ| `""`|. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|______|
| | w w.w|_______..|
ww.ヽ(`Д´)(`Д´)(`Д| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|∀・)
(__)メ(__)メ(_| VIPから出て行け |氏ね| / ̄ ̄ ̄\
ハ ハ ハ |__________| ̄|| | ^ ^ .|
www w ww | |( ゚д゚ ) w( ゚д゚ )| .>ノ(、_, )ヽ、.|
w w モウクンナ w (つ とノ ww (_゚T)w ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|_
ww -=二・二=- -=二・二=-w(⌒) | w w w ww゚ ゚̄ あまりVIPPERを rニ─`、
ww www  ̄`J / :::::::::::|怒らせないほうがいい`┬─‐ j
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
| VIPじゃなきゃヤダヤダーってか?ww .|
|_____________| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
w wwwww || |専用の板でやれ。 |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | |________|
このスレ何番煎じ?|二=- -=二 | | wwwwwwwwww. | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~~|
⌒ヽ__________| . __-=ミ;彡⌒`丶、~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|パートスレ立 て ん な |
^ω^)|馴れ合いシネ |  ̄ ̄ ̄ ̄ |:::`丶今すぐ消えろ |__________|
_つO  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|.VIPを乗っ取るな.|::::::::::ヽ______| ||
/ |なんでここでやる|_______.lノン:::::::l _∧ || /⌒ヽ ||
=二・二=- (^ω^)-┐ ュ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|∀`○ニ( ^ω^#)ニ⊃
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄┗-ヽ ノ ィ赱、 i| VIPでやるな.| ノwww ヽ ノ
w .| とにかく邪魔 ┏┘, `"" ,l______.|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|,_ ,ィ''。_。ヽ、_,. /_ン'(.|. 迷 惑 |
|定期で落ちた糞スレを返せ| `""`|. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|______|
| | w w.w|_______..|
ww.ヽ(`Д´)(`Д´)(`Д| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|∀・)
(__)メ(__)メ(_| VIPから出て行け |氏ね| / ̄ ̄ ̄\
ハ ハ ハ |__________| ̄|| | ^ ^ .|
www w ww | |( ゚д゚ ) w( ゚д゚ )| .>ノ(、_, )ヽ、.|
w w モウクンナ w (つ とノ ww (_゚T)w ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|_
ww -=二・二=- -=二・二=-w(⌒) | w w w ww゚ ゚̄ あまりVIPPERを rニ─`、
ww www  ̄`J / :::::::::::|怒らせないほうがいい`┬─‐ j
――祖父の家、和室
チチチ。チチチチッ。
男「……すぅ。…………くぅ」
黒髪娘「……すぅ。……んに」」
男「……」ぽやぁ
黒髪娘「……くぅん」
男(何で……黒髪が同じ布団にいるんだ?
……夜? トイレ帰りに……)
――暖かい布団を分けて下さい。男殿。
男「っ!?」
黒髪娘「くぅ……。んむぅ……」 ぎゅっ
小さい/桃の匂い/鼓動ぎ/
細い指/パジャマ/
まつげ長い/体温/衣ずれ/
甘い声/しがみついて/体温/くすぐったい――
がばっ!
黒髪娘「んぅっ……」
男「……おはよ」
黒髪娘「……はよ」ぽやっ
男「……」 ばくばくっ
黒髪娘「……眠ぃ」 くてっ
体温。
男(ううっ。自覚無いのか、こいつ……。
何で布団に入ってるんだよっ。いくら寝ぼけてたって……)
黒髪娘「……くぅ」
男「そろそろ、起きない?」
しがみつく小ささ。
黒髪娘「……いまひととき。もうちょっと」
男「そうですか」 びくびく
みじろぎ。
黒髪娘「男殿とくっついてると、温かいのだ」
男「……そだけど」
甘い呼吸。
黒髪娘「んぅ」 きゅっ
――祖父の家、朝の台所
ジャァァァー。
男(……)
男(今朝のあれは……。多分……。
そう言うこと何だよなぁ。
……。
フラグ立てちまったか……?)
男(そりゃ心当たりは色々あるけどさ……)
パチパチ。トントントン。
男(いざ、そうなってみると、衝撃だわ。
……抵抗できないとは思わなんだ。
どんだけ弱いんだよ、俺……)
くちびる。
男(ううう……)
華奢なくびすじ。
男(ううう……。うわぁぁっ!)
男「違うんだ。俺は決してロリではないっ!!」
かちゃっ!
黒髪娘「男殿、顔も洗ったし、衣服も改めたぞ」にこっ
男「~っ!!」 びくっ
黒髪娘「どうしたのだ?」 きょとん
男「いや、なんでもないよ?」 あせっ
黒髪娘「そうか。……ふふふっ。
どうだ? ちゃんと洗えただろう?
ハミガキもしたぞ? 桃の匂いだぞ」 つんつん
男「お、おう。良くできた」
黒髪娘「この程度、なんでもない」
男「……」
黒髪娘「……?」
男「朝ご飯にするか?」
黒髪娘「うむっ」
――祖父の家、居間
男「もう一枚食べるか?」
黒髪娘「いただく」
男「ほいっと。……ジャムか?」
黒髪娘「自分で塗れる……と思う。……ほら」にこっ
男「覚えたな」
黒髪娘「もちろんだ」
男(機嫌良いな……。これは、その。
やっぱり、そう言うことなんだろうなぁ)
黒髪娘「どうだ?」
男「完璧だぞ」
黒髪娘「うむ」 にこっ
男「なんだかんだで、もう最終日か……」
黒髪娘「そうだな」
男「今日はどうする?
帰還は夜の19時ってとこだと思うけど」
黒髪娘「後どれくらいあるのだ?」
男「11時間かな。昼は食べるとして、いや。
夜も食べた方が良いのか」
黒髪娘「食事を決めるのか、予定を決めるのか」
男「同じ事だろう?」
黒髪娘「むぅ。……男殿と一緒ならば、それで良いな。
出掛けたとしても余り見て回ると、
体調に差し支えがありそうだ」
男「体力ないもんなー」
黒髪娘「淑女としてはしかたないのだ」
男「……ノーパソで映画でも見るかぁ」
黒髪娘「てれびんか?」
男「似たようなものだよ」
黒髪娘「楽しみだな」 にこっ
――夕刻、祖父の家
かたたん。からり。
姉「こーんばんわー♪」
男「おう。姉ちゃん」
黒髪娘「こんばんは、姉御殿」
姉「黒髪ちゃん。可愛いねっ」 ぎゅっ
男「抱きつきはやっ!?」
黒髪娘「くすぐったいのだ」にこり
姉「ぶぅぶぅ。いいじゃないのよ。
黒髪ちゃんはわたしのものなのよ?」
男「それはないだろ」
黒髪娘「姉御殿にはお世話になったのだ」
姉「今日、帰るんだよね」
男「そうだよ」
姉「いつごろ?」
男「あと数時間で出る」
黒髪娘 こくり
姉「……ふむ」
男「どした?」
姉「ううん。えっと、お土産持ってきた」
男「なにさ?」
姉「んっとねー。桃シャンプーと、下着と、
ネイルケアの道具と、あとコンビニのお菓子と」
男「姉ちゃん。こいつ、そんなに持ってくのは……」
黒髪娘「いいのだ。男殿。有り難く頂きたい」
男「そか……」
黒髪娘「何から何までお世話になった。姉御殿」ぺこり
姉「いーのいーの。可愛い黒髪ちゃんと
遊べて楽しかったわ」
男「遊んだだけだもんな、ほんと」
姉(ふむふむ……。雰囲気がねー……) くいっ
男「なんだよ」
姉「どうしたのよ。黒髪ちゃんとの距離が近いじゃない。
具体的に云うと、この間より20cmくらい。
隣にいるのが当然みたいに座っちゃって」」
男「う゛」
姉「なんかあった?」
男「あったような……。無かったような……」
黒髪娘「?」
姉「まーだ煮え切らないんだ。あんた」
男「煮え切ると各方面に迷惑掛けるのっ」
姉「物事の優先順位判定、間違えないようになさいよ」
男「……」
姉「“あんたの苦労”なんて一番優先度低いんだからね」
姉「ま、いいわ。ん。
……今日は帰るね」
男「へ? お茶くらい入れるぞ?」
黒髪娘「そうです。こんな早々に」
姉「いーのいーの。顔みてお土産渡したかっただけ。
それに、お迎えとか、送り届けとかさ。
私が見ない方が、良いんでしょ?」
男「姉ちゃん……」
姉「いや、違うよ? 時間がもうちょいだから
二人っきりにして上げようとか云う
そういうらぶろまな心遣いじゃないよ?」 にやにや
男「とっとと帰れよ」
黒髪娘「ふふふふっ」
姉「ま、いいわ。……がんばんなさい」
男「ったく。わかったよ」
黒髪娘「ありがとうございました。姉御殿」
――夜、祖父の家の納戸
黒髪娘「そろそろかの」 どきどき
男「うん。もうちょい。時間がずれちゃうから、
なるべく正確に戻らないと菜」
黒髪娘「あちらでは30日が経過しているのだな」
男「そのはず。吉野で静養って話になってるんだよな?」
黒髪娘「友が万事問題なく手配してくれているとは思うが」
男「まぁ、大丈夫だろう」
黒髪娘「……うん」
男(――“花鳥文螺鈿作り黒檀長櫃”。
チャンスを捉えて何とか調べておかないとなぁ)
黒髪娘「男殿……?」
男「ん?」
黒髪娘「その」
男「うん」
黒髪娘「……」
男「大丈夫。ちゃんと帰れるよ」 ぽむぽむ
黒髪娘「うむ。……友が待っていてくれるものな」
――黒髪の四阿、深夜
がたがたがたっ。がぽんっ!
……しゅとっ。
男「っと、っと、っと。よいしょ」
黒髪娘「す、すまぬ」
男「二人一緒はさすがに狭かったか」
黒髪娘「うむ。でもそれで良かった」
友女房「姫様っ!」
黒髪娘「友っ。どうだ? 今はいつだ?」
友女房「きっかり30日、予定どおりでございますよ」
男「ほっとした」
友女房「ええ。男様、ありがとうございました!」
黒髪娘「久しぶりの庵だなぁ。
真夜中だが、湯浴みの準備を頼んでも良いか? 友」
友女房「ええ、もちろんでございます……が」
黒髪娘「ん? どうした?」
友女房「いえ、多少いろいろがございまして……」
黒髪娘「何があったのだ?」
友女房「いえ、私からは何とも……。
まだ、確としたお話でもないと存じておりますし。
詳しくは藤壺の上からお聞きになられた方が良いかと。
“吉野からお戻り”の際は是非お会いしたいと
何度か文の連絡を頂いております」
黒髪娘「そうなのか……。何があったのだろう。
わかった。明日にでも文を送ってみよう」
友女房「それが宜しゅうございますよ」
下級女房「――」
友女房「姫、湯浴みの準備があるそうです。よろしいですか?」
黒髪娘「うむ、わかった。
……男殿、しばらくお待ちを。炬燵にでも入っていて欲しい」
男「ああ、判ったよ」
とててててっ。
友女房「男殿、お時間を宜しいですか? お話があるのです」
男「判った。こっちも聞きたいことがあったんだ」
――数日後、藤壺の宮
藤壺の君「吉野から良くお戻りになられて、
黒髪の姫。皆も心配していたのですよ?」
黒髪娘「はい。ありがとうございます……」 ふかぶか
藤壺の君「さる歌会はまだ雪残る春でしたが、
はや、山裾には桜の袖がひろがっております」
黒髪娘「はい。風に舞うは雪のよう……」
藤壺の君「本当に……」
黒髪娘「……」
藤壺の君「お茶を入れさせましょう」 ぱちん
しずしず
藤壺の女房「……失礼いたします」
藤壺の君「……」
黒髪娘「……」
藤壺の君「実は、お話ししたいことがありお呼びしたのです」
黒髪娘「はい」
藤壺の君「……話は半月ほど遡るのですが
承香殿(じょうきょうでん)※で鶯の音を愛でる宴が
催された折のことです」
黒髪娘「……」
藤壺の君「宴そのものは、鶯の音こそ少ないものの
盛会でした。管弦の楽の音は素晴らしく
特に中将の笛は昨今にないあでやかさでした。
それはよいのですが、その宴の折に
黒髪の姫の話題が出たのです」
黒髪娘「わたしの……?」
藤壺の君「ええ。くだんの歌会からこちら
姫の話は宮中の噂の的でした。主にその学識や
見識の高さ、歌を詠む姿勢などですが
臨席された帝が興味を持たれて」
黒髪娘「帝が?」
※承香殿(じょうきょうでん):内裏(天皇の住む
私的な場所)の建物の一つ。かなり格が高い。
友女房「ええ、どうやら噂の方はもうすでに
ご存じのようでした。いえ、おそらくは……
尚侍のこともお心をいためておいでだったのでしょう。
その席でも、哀れみ深いご様子で。
そして、ではならば、歌集の編纂でも、
とのお言葉があったのです」
黒髪娘「歌集……ですか!?」
友女房「まぁ」
藤壺の君「ええ。ご存じの通り勅撰集※の選者は
今まで女性が選ばれたことはございません。
ですから戯れ言だという者もいますし
おそらくは帝のご意志とは言え、院か後宮を
通して私的な依頼で……
私撰と云う形になるでしょうが。
しかし、いずれにせよ帝の口から零れた言葉。」
黒髪娘「……」
藤壺の君「宴の席のこととは言え、
仇やおろそかには出来ませぬ……」
※勅撰集:帝もしくは上皇が命令して編集した歌集。
国家の一大文化事業で、選者にえらばれるというのは
「国で一番わかってるひと」認定だった。
比して私人の資格で選定を行なった歌集は私撰和歌集という。
黒髪娘「……」
友女房 がくがくぶるぶる
藤壺の君「正式な勅は未だ出ておりませんが
女性でありながら、帝の信任を受けて
選者に選ばれるかも知れぬ姫の噂で持ちきりです。
このままで行けば、遠からず何らかの話が
持ち上がるでしょう。
帝自らが動かなくてもそのように進むのが内裏。
それは黒髪の姫も重々ご承知でしょう」
黒髪娘「それは……」
藤壺の君「黒髪の姫が代理への出仕を
避けていらっしゃったのはもちろん存じております。
もしかしたら出家を考えていらっしゃるのかとも
思いましたが、前回の宴で、遠慮深く恥じらいを持つ
清らかなる方と判りました」
黒髪娘「……」
藤壺の君「……。姫……」
黒髪娘「はい……」
藤壺の君「歌集の編纂ともなれば、
多くの時を必要としましょう。
短くとも一年。長ければ、それこそ十年が
かかってもおかしくはありません。
それだけにその名誉は計りがたいものがあります。
私的な依頼とは言え、帝のご意向の選者。
それは内裏……いえこの都一番の
歌い手、技芸の理解者と目されると云うこと」
黒髪娘「わたしのような浅学非才のものに勤まるとは……」
藤壺の君「……姫。あの日の姫の瞳を覚えています」
すっ
黒髪娘「あっ……」
藤壺の君「たしかに、この任は重いでしょう。
姫が嫌悪されていた、内裏の政争の駒と
なることもあるでしょう……。
でも、本当の姫は“羽ばたいて”みたかったのでは
ありませぬか? 中納言の二の姫との歌合わせを
見て私はそう感じたのです」
黒髪娘「……それは」
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
| VIPじゃなきゃヤダヤダーってか?ww .|
|_____________| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
w wwwww || |専用の板でやれ。 |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | |________|
このスレ何番煎じ?|二=- -=二 | | wwwwwwwwww. | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~~|
⌒ヽ__________| . __-=ミ;彡⌒`丶、~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|パートスレ立 て ん な |
^ω^)|馴れ合いシネ |  ̄ ̄ ̄ ̄ |:::`丶今すぐ消えろ |__________|
_つO  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|.VIPを乗っ取るな.|::::::::::ヽ______| ||
/ |なんでここでやる|_______.lノン:::::::l _∧ || /⌒ヽ ||
=二・二=- (^ω^)-┐ ュ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|∀`○ニ( ^ω^#)ニ⊃
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄┗-ヽ ノ ィ赱、 i| VIPでやるな.| ノwww ヽ ノ
w .| とにかく邪魔 ┏┘, `"" ,l______.|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|,_ ,ィ''。_。ヽ、_,. /_ン'(.|. 迷 惑 |
|定期で落ちた糞スレを返せ| `""`|. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|______|
| | w w.w|_______..|
ww.ヽ(`Д´)(`Д´)(`Д| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|∀・)
(__)メ(__)メ(_| VIPから出て行け |氏ね| / ̄ ̄ ̄\
ハ ハ ハ |__________| ̄|| | ^ ^ .|
www w ww | |( ゚д゚ ) w( ゚д゚ )| .>ノ(、_, )ヽ、.|
w w モウクンナ w (つ とノ ww (_゚T)w ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|_
ww -=二・二=- -=二・二=-w(⌒) | w w w ww゚ ゚̄ あまりVIPPERを rニ─`、
ww www  ̄`J / :::::::::::|怒らせないほうがいい`┬─‐ j
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
| VIPじゃなきゃヤダヤダーってか?ww .|
|_____________| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
w wwwww || |専用の板でやれ。 |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | |________|
このスレ何番煎じ?|二=- -=二 | | wwwwwwwwww. | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~~|
⌒ヽ__________| . __-=ミ;彡⌒`丶、~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|パートスレ立 て ん な |
^ω^)|馴れ合いシネ |  ̄ ̄ ̄ ̄ |:::`丶今すぐ消えろ |__________|
_つO  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|.VIPを乗っ取るな.|::::::::::ヽ______| ||
/ |なんでここでやる|_______.lノン:::::::l _∧ || /⌒ヽ ||
=二・二=- (^ω^)-┐ ュ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|∀`○ニ( ^ω^#)ニ⊃
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄┗-ヽ ノ ィ赱、 i| VIPでやるな.| ノwww ヽ ノ
w .| とにかく邪魔 ┏┘, `"" ,l______.|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|,_ ,ィ''。_。ヽ、_,. /_ン'(.|. 迷 惑 |
|定期で落ちた糞スレを返せ| `""`|. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|______|
| | w w.w|_______..|
ww.ヽ(`Д´)(`Д´)(`Д| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|∀・)
(__)メ(__)メ(_| VIPから出て行け |氏ね| / ̄ ̄ ̄\
ハ ハ ハ |__________| ̄|| | ^ ^ .|
www w ww | |( ゚д゚ ) w( ゚д゚ )| .>ノ(、_, )ヽ、.|
w w モウクンナ w (つ とノ ww (_゚T)w ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|_
ww -=二・二=- -=二・二=-w(⌒) | w w w ww゚ ゚̄ あまりVIPPERを rニ─`、
ww www  ̄`J / :::::::::::|怒らせないほうがいい`┬─‐ j
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
| VIPじゃなきゃヤダヤダーってか?ww .|
|_____________| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
w wwwww || |専用の板でやれ。 |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | |________|
このスレ何番煎じ?|二=- -=二 | | wwwwwwwwww. | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~~|
⌒ヽ__________| . __-=ミ;彡⌒`丶、~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|パートスレ立 て ん な |
^ω^)|馴れ合いシネ |  ̄ ̄ ̄ ̄ |:::`丶今すぐ消えろ |__________|
_つO  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|.VIPを乗っ取るな.|::::::::::ヽ______| ||
/ |なんでここでやる|_______.lノン:::::::l _∧ || /⌒ヽ ||
=二・二=- (^ω^)-┐ ュ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|∀`○ニ( ^ω^#)ニ⊃
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄┗-ヽ ノ ィ赱、 i| VIPでやるな.| ノwww ヽ ノ
w .| とにかく邪魔 ┏┘, `"" ,l______.|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|,_ ,ィ''。_。ヽ、_,. /_ン'(.|. 迷 惑 |
|定期で落ちた糞スレを返せ| `""`|. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|______|
| | w w.w|_______..|
ww.ヽ(`Д´)(`Д´)(`Д| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|∀・)
(__)メ(__)メ(_| VIPから出て行け |氏ね| / ̄ ̄ ̄\
ハ ハ ハ |__________| ̄|| | ^ ^ .|
www w ww | |( ゚д゚ ) w( ゚д゚ )| .>ノ(、_, )ヽ、.|
w w モウクンナ w (つ とノ ww (_゚T)w ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|_
ww -=二・二=- -=二・二=-w(⌒) | w w w ww゚ ゚̄ あまりVIPPERを rニ─`、
ww www  ̄`J / :::::::::::|怒らせないほうがいい`┬─‐ j
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません