小鳥「星の散りばめられた夜空の下で」 (42)
初投稿です。アイマスのssです。
色々と不備があるかもしれませんが、温かく見ていただけたら幸いです。
一応書き溜めてます。大体30レスほど。
あんまり掲示板で書き込みしたこと無いので、
連投しすぎて落ちたりしないか冷や冷やしながら投稿させていただきます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1379481375
午後9時の夜、私、音無小鳥は一人自宅マンションの階段を上って行きます。
行き先は屋上、手には3つの水筒と1つの筒箱、1つのタッパー、箸、そして1つのグラスを入れたバッグを持って上がります。
私の住む3階から屋上の11階まで上がって行くのは、なかなか辛いものがありますね。
え?エレベーターがあるのになぜ階段なのかって?
今から屋上ですることを知られたら2X歳の私は恥ずかしいんです・・・
9階、10階と階段を上り、いよいよ屋上へ。
屋上に着き、あたりを軽く見渡します・・・よかった、今日は誰もいないみたい。
マンションの西側の柵のそばに置かれたベンチに腰かけ、横に置いてある小さなテーブルに持っていたバッグを置きます。
バッグを置いた時にゴトリと音がしたのはご愛嬌、結構重かったから仕方が無い。
一息つくと同時に、私は空を見上げます。
「わあ・・・」と、思わず声に上げて感嘆してしまいました。
台風一過で風は少し強いけれど、雲ひとつ塵ひとつない夜空。
その澄みきった夜空には、たくさんの星々が散りばめられ、南の空には半月、上限の月が浮かんでいます。
絶妙な配置で建っている周りの建物のおかげで、私のマンションの周りからの光は少なく、お蔭でこのように都会でも星がよく見えるのです。
・・・っと、本来の目的を忘れていました、バッグから詰め込んできたモノを取り出していきましょう。
1つの水筒を開けます。中には何と!・・・氷です。
氷を3つ4つ、グラスに入れます。ひとつずつ入れていくとカラコロと心地いい音が。
次に2つ目の水筒を開け、グラスに注ぎます。中身は焼酎です・・・皆さん三岳ですよ!三岳!!
実はこれ、屋久島まで迷子になったあずささんが土産に・・・というのは冗談で、散歩中に迷子になったあずささんが立ち寄った酒屋で見かけて私にくれたんです。
迷子になったことは変わらない?・・・そうですね、うふふっ♪
最後に3つ目の水筒に入れたお水をグラスに注いで、焼酎の水割りが完成です!!
そして、筒箱を開けます、勢いよく引っこ抜いたため、ポン!と良い音が出てしまいました・・・
開いたと同時にふわりとほのかに磯の香りがします。そう、中身は海苔です。
実家から、「お中元で沢山貰ったから」と大量に送られてきた缶の筒に入った海苔。今日は味付け海苔・・・というよりも普通の焼き海苔の気分です。
一枚だけ、海苔を取り出して口に運びます。歯にあてがった感触から、海苔は全く湿気ていない模様。
パリッ!と小気味よい音が鳴ったと同時に、海苔は鮮烈な磯の香りと、焼き海苔独特の香ばしさが口の中に広がります。
「この瞬間がいいのよね」と、思わず顔が綻んでしまう。
海苔を飲みこみ、微かに海苔の香りの余韻が口に残っている間に、焼酎を口に入れていきます。
「ああ~!美味し!!」・・・やだ、無意識に声が出た。
すぐに周りを見渡す・・・よかった、誰もいなかった・・・誰かいたら、恥ずかしくて死ねる。
くせのないお酒とくせのない肴、それが上手く、丁度よくマッチするんです。
さっきのようなお酒の一口目って、たまらなく幸せですよねっ!だから「ああ~!」って声が出てしまうんです!そうなんです・・・
海苔と少しずつ飲んでいると、一杯目のお酒はいつの間にか無くなってしまいました。
すかさず、2杯目のお酒の準備をします、と同時にバッグから取り出したタッパーも開けちゃいます。
タッパーの中身は、先日作ったほうれん草と水菜のおひたしに、鰹節と叩いた梅干を和えたもの。
誰だ、今、海苔といいおひたしの和え物といい、つまみがおばさんくさいって言った奴は。どうせ私は2X歳のおばさんですよーだ!
でもこの和え物、この前のお花見の時に社長やあずささんから好評だったんです、お酒に合う!って。それに、プロデューサーさんも褒めてくれて・・・
早速頂いちゃいましょう!どれ一口・・・
うん、美味しい!我ながら褒めてしまいます!
水菜とほうれん草が良い感じにクタクタになってて、絶妙なシャキシャキ感。
梅が良い感じにサッパリさせて・・・鰹節がいいアクセントなんです!
これはお酒も進んじゃいます♪
最近のマンションは屋上に上がれないのがな、寂しいよね
まぁ安全のためにはしかたないけど
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しばらく飲み続けていました。持ち込んだおつまみは無くなって、お酒だけで飲んでいます。
実はこの時のお酒が一番好きだったりします。
空や周りの景色、喧騒を聞きながら、飲む。
時々もの思いにふけったり・・・妄想も・・・たまに・・・
多少寒いけれど、空はホントに綺麗に澄んでいます。
昨日まで来ていた台風が空気の塵をも吹き飛ばしたのでしょう、星も沢山見える!
月は半月だけど、そうは思わせないように輝き、ベンチとテーブルそして私の影を作っています。
そういえば、もうすぐ中秋の名月ね・・・
全員でお月さまが見たいってみんなが言ってたから、その日はお月見です。とっても楽しみ♪
お月さまといえば、貴音ちゃんね。
この前、半端な形の月を見てたから、「満月じゃない日も見るのね」って聞いてみたの。
そうしたら、「小鳥嬢、様々な形があることが月の魅力なのですよ」って微笑んで言ってくれて・・・
どうしてあの子あんなに大人びてるの?
でも、時々子供っぽい年頃の女の子みたいな反応もするし・・・ホントかわいい。
だから、今日はこの半月の日に屋上に上がって飲むことにしたんです!
不格好な半月・・・確かに、こういう月も見るとなかなかいい。
満月や、三日月とはまた違った顔を見せてくれています。
ついついグラスが口に運ばれる頻度が多くなっちゃう。
そうしていると、音を立てて風が吹いてきました。
寒い・・・先週まではエアコンが無ければ生きていけないほどの暑さだったのに・・・
普通だと心地良い気温だけど、風のおかげで体感気温はかなり低い。
ホントは日本酒のつもりだったんです、でも昨日思わず空けてしまって・・・お恥ずかしい。
これだったら、今日はお湯割りでも良かったのかもしれません。
でも、おととしの、夏真っ盛りの時にこんな感じで飲んだ時は悲惨でした・・・
近くで花火大会があって、屋上からその花火を見ながら飲んだのよね。
ただただ暑かった・・・その日は最低気温が過去最高だったとか、そういうのだったはず。
冷たいお酒を飲んでいるはずなのに、飲めば飲むほど汗が出て・・・
お風呂上がりに飲んだのに、結局またお風呂に入った記憶があります。
そんな日に比べると、今日はとてもお酒を飲むには良い日ですよ?
おととし、か・・・
おととしの夏は、確か律子さんがプロデュース業に専念するようになって、今所属している子たちがちょうど入った時期。
あの頃はみんなレッスンばかりで、社長や律子さんが数少ない仕事を取ってきたら、みんな喜びあってたわね。
去年の春にプロデューサーさんがやって来て、律子さんが竜宮小町を作って、1stライブでみんな大活躍して・・・それから一気にお仕事が入りこんできた。
みんな、どんどん輝いていって、途中で色々あったけどみんなで乗り越えて、もっともっと輝いて・・・
そうしていくうちに、みんなが遠いところに行ってしまったような気がして・・・
ある日、つい「私がいなくても・・・」って声に出してしまったのよね。
そうしたら、たまたま聞いていた春香ちゃんがすごい剣幕で私の方にやって来て・・・
「なんてこと口にしてるんですか!!」
「小鳥さんがじゃないといけないんです!!」
「小鳥さんがいるから私たちは安心して頑張れるんですよ!!」
「そんなこと、そんなこと絶対に言わないでください!!」
って言われて・・・その声聞きつけてみんなやって来て・・・
春香ちゃんが事情話したらみんなからまた同じように怒られちゃいました。
最後に社長と話をした時に、「キミは本当にアイドル達から愛されているねぇ」と言ってくれて・・・
その日の夜、誰もいなくなった事務所で一人、大泣きしてしまいました。
私は幸せ者なんだなぁって・・・
今いる、あの765プロが好き。
春香ちゃんの明るい声と、笑顔いっぱいでクッキーを差し出す顔、
千早ちゃんの一人音楽を聴きながら、でもみんなの姿を見て優しく微笑む顔、
みんなのために一生懸命お茶を入れている雪歩ちゃんの真剣な顔、
奔放に振る舞う美希ちゃんと、それに振り回される真ちゃんの姿、
楽しそうに会話をする伊織ちゃんとやよいちゃん、
きっちりした律子さんとおっとりとしたあずささんの、噛み合わなさそうで、実は噛み合った会話、
ゲームで一喜一憂したり、いたずら心で目をキラキラとさせる、真美ちゃんと亜美ちゃん、
そして、その子たちを幸せそうに眺める社長とプロデューサーさん、
・・・そんなみんなが、私は本当に大好きです。
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ああ・・・・最近はすぐに感傷的になってしまう。
まさか、とs・・・いや!考えたくない!!
涙が交じったお酒は美味しくないんです!!
楽しいことを考えますよ!楽しいことを!!
2X歳がなんだー!ファイトー!おー!!・・・ふぁいとぉ・・・
そういえば今日、あずささんが星座占いで私の乙女座が1位だったって言ってました。
「何かいいことが起きるかもしれませんね~」ってにっこり笑って言ってて・・・
確かに、今日は早く仕事が終わって、今こうしてゆっくりと飲んでいるけど・・・
まさか、流れ星が見られるかも?!
そう思って私は再び空を見上げます。
北の空にはカシオペアと北斗七星、南の空には、はくちょう座や織姫と彦星も良く見えます。
前に流星をみんなで見た時、私は・・・そうだ、「今年こそ」って願ったんだ・・・とほほ。
今、流れ星が降ってきたら、何て願おうかしら?
う~ん・・・あっ!そうだ!!
「何か良いことありますよ~に!!」って願いましょう!!
今日は別段、流星群の日でもないからおそらく見ることはできないでしょうね。
でも、目で見えなくても流れ星は降っているんだから、今ここで願ったら叶うかもしれないよね。
ということで、願ってみましょう!!
手を組んで、目を閉じて・・・せーの!
「何か良いことありますよ~に!!」
ありったけの念を込めて願ったせいか、つい、ふぅと一息ついちゃいました。
何か良いこと起きたらいいな・・・って、あれ、携帯が鳴ってる。
誰だろう・・・って、プロデューサーさん?!
どうしたんだろう、何か書類の不備でもあったのかしら・・・
心配になりながら、電話を取ります。
「もしもし・・・」
『もしもし、音無さん?・・・あの、今暇ですか?』
「いえ・・・仕事のことで何かありましたか?」
ドキドキしながら尋ねます。
『いや!そういうのじゃないんです!』
よかった、とほっとします。ならどうして、私に電話を・・・?
『実は、一人で飲んでたんですけど、なんだかちょっと心寂しいというか・・・』
『それで今、音無さんに時間があるのだったら、お誘いしようかな、と思って・・・』
なあんだ、飲みのお誘いか・・・ってええ!!二人っきりでの飲みのお誘い?!
「わ、私は今、家で飲んでるだけですが・・・」
『それなら、一緒に飲みましょうよ!!』
何とプロデューサーさんからのお誘い。とても嬉しいお誘いです!でも・・・
「男っ気が無くて暇そうだから、プロデューサーさんは私を誘ったんですか?」
と、ちょっと意地悪な質問をしてしまいます。
『まさか!そんなことはないですよ!!』
「・・・うふふ、冗談ですよ♪」
『もう・・・ホントに純粋に音無さんと二人で飲みたかったんですよ』
「・・・」
思いがけない、どストレートな返事に言葉が出ません。
『ち、ちょっと、言った自分も恥ずかしんですから、何か言ってくださいよ・・・』
こっちのセリフです!言われた私だって、すっごい恥ずかしいんです・・・
『あの・・・来てくれますか?』
「は、はい!もちろん!!」
『では、場所は○○の~~ってところですから・・・どれくらいで行けますか?』
「えっと・・・意外と遠くないので、歩いていきますね。準備も兼ねたら、多分30分もしないうちに着きそうです」
『分かりました。じゃあ、待ってますから!!』
そうして電話は切れました。
グラスに残った、ほとんど解けた氷の浮かぶ一口分のお酒を一気に飲み、
テーブルに置かれた水筒たちをバッグに入れていきます。
忘れ物は・・なし!よし、屋上から階段を駆け下りていきます。
とても足取り軽く駆け下ります。だって・・・
良いことがあったのですから♪
準備は完了!戸締りもよし!
さあ~て!行きますよ~!!
マンションを出て、道路に出て速足で歩きます。そう、あの人のもとへ。
あ、そうだ!立ち止まって、空を見上げて再び願い事をします。
もう1つ良いことを願うのは、わがままでしょうか?
星の散りばめられた夜空の下で、私、音無小鳥は駆けていく。
その空には、もしかしたら、一筋の光が流れているのかもしれません。
おわり
この稚作に付き合って頂き、ありがとうございました。
先日カッコつけて家のベランダで飲んだ時に思いつきました。
一人でも面白いと思っていただける方がいてくれたら幸いです。
中秋の名月も近いので、その頃に何か落としたいと思います。
P.S. ピヨちゃんは最高。
>>12さん
最近はそうですね、学校の屋上を開放する高校も少なくなっているようです。
学校の屋上とか、アニメでよく見る憧れのシチュだったのに・・・笑
しばらくしたら、html化とやらを申請しようと思います。
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