月間料理誌「季節のポケモンを食す」 (60)
ピカチュウ尻尾軟骨のコリコリサラダ
サトシ「今日は何を食べるんだ?」
タケシ「そうだな……今日は>>15を食べよう」
だんごろ
タケシ「今日はダンゴロを食べよう」
サトシ「えっ、ダンゴロ? あいつ食べられるのか?」
タケシ「ははっ。俺は岩タイプが専門だからな。ダンゴロだってちゃんと料理できるぞ」
サトシ「へぇー。いったいどう食べるんだ?」
タケシ「まずはこの六角形の穴のところから、角の筋にそってダンゴロを割るんだ」
サトシ「よし、ピカチュウ! ダンゴロの穴に向かってアイアンテールだ!」
ピカチュウ「ピッカァ!」
タケシ「ウソッキー! アームハンマー!」
タケシ「上手く砕けたら岩の部分を取り除いて、中からコアを取りだすんだ」
サトシ「この綺麗なオレンジ色をしてるやつでいいのか?」
タケシ「ああ。透き通ってるのはエネルギーが溜まり切ってない証拠だから、しばらく日干しにして熱を溜めよう」
サトシ「じゃあ、残りのダンゴロも同じようにやっておくぜ」
タケシ「あ、一匹だけ砕かないで残しておいてくれ」
サトシ「分かったぜ!」
タケシ「ダンゴロのコアに熱が溜まるまでの間に準備を進めていこう。
サトシ、いま持ってる木の実を出してくれ」
サトシ「めぼしいのは使い切っちゃったから、カゴのみ、ネコブのみ、あとは……>>24だな」
ナッシーの顔
サトシ「ああそうだ、しゅうかく用にナッシーの顔を植えておいたんだった」
タケシ「いつも鉢植えを持たせてすまないな。さっそく木の実を収穫しよう」
サトシ「オレンの実とモモンの実がなってるから、またフルーツサラダが作れるぜ!」
タケシ「もぎたてだから鮮度も最高だ。これはきっと美味いぞ!」
タケシ「まずタマタマを割って中身の汁を取りだす。このときしばらく置いておくと成分が分離するから
上澄みを捨てて濃厚な部分だけを使うのがミソなんだ。捨てた上澄みはナッシーの鉢植えにやるといい」
サトシ「モコシのみの天然油と混ぜ合わせて、と……だんだんすっきりした白色になるのが不思議だよなあ」
タケシ「ネコブで出汁を取って塩茹でしたカゴのみを、こまかく磨り潰して混ぜると、一気に色が変わるぞ」
サトシ「なんだかブリーソースみたいな色になったな。これはこれでおいしそうだ」
タケシ「オレンのみとモモンのみを一口大に切ってと……」
サトシ「これにソースをかければきのみサラダの出来上がりだな」
タケシ「いや、ここにダンゴロのコアを添えるんだ。
実はそのためにさっきからロコンにほのおのうずを使ってもらってたんだ」
サトシ「ゼリーみたいになってる! もうこれだけでも食べられそうだ」
タケシ「ほどよい甘味と深いコクが特徴なんだ。とけきらずにゼリー状になってる時が一番甘い。
サラダの良いアクセントになってくれるぞ。これを切ってサラダに添えてからソースをかけるんだ」
サトシ「ダンゴロコアの熱でソースが煮立ってるけど、大丈夫なのか?」
タケシ「水気が飛んで味が引き締まるんだ。モモンとオレンも砂糖煮みたいになるぞ」
サトシ「へぇ……」
タケシ「これをさらに軽く炙って乾燥させると、保存の効く良いデザートができる。ちょっと作り置きしておこうか」
サトシ「さあ、メインディッシュに取りかかろうぜ!」
タケシ「よし。ロコン、砕いてないダンゴロにかえんほうしゃだ!」
サトシ「分かった! あの砕いてないダンゴロを鍋代わりにするんだろ」
タケシ「正解だ。ダンゴロのコアは熱を溜めこむ性質があるから、天然の石鍋に最適なんだ」
サトシ「タケシの鍋料理、わくわくするぜ!」
ピカチュウ「ピッカァ♪」
タケシ「サトシ、ダンゴロ鍋の水洗いをやってくれ。
その間に俺はコアの火加減の最終調整をやろう」
サトシ「分かったぜ! いけっミジュマル! みずでっぽうだ!」
タケシ「熱していると水の中に余分な成分が溶け出してくるから、水が色づいたら一度水を捨ててくれ。
2回繰り返して水の色が変わらなくなったら、鍋料理を作り始められるぞ」
サトシ「同じダンゴロのコアなのに、熱を通すと個性が出て来るのはどうしてなんだ?」
タケシ「火の通り方で味や食感に違いが出て来るのがダンゴロコアの醍醐味なんだ。
強火で一気に焼くと、表面に焦げ目ができて肉みたいになるし
弱火でじっくりと溶かしていくとさっきのヤツみたいにゼリー状になる」
タケシ「それは弱火で表面を溶かしてから冷水につけてつくったんだ。
たとえるなら出し巻きタマタマみたいな味だな。でも中心の方が少し硬くて、そこに旨味が凝縮されてるんだ」
タケシ「さあ、ネコブの実で出汁を取れたら、コアを鍋にいれていこう」
サトシ「これ、全部入れちゃっていいのか?」
タケシ「ああ。全部入れてから、ダンゴロの頭から飛び出てる岩で蓋をするんだ。
だいたい5.6匹砕けば1組くらいはぴったりはまるのがある。ダンゴロは生まれついての石鍋なんだ」
サトシ「こっちに別にしてあるやつが、この鍋に上手くはまるやつか……おお、ぴったりだ!」
タケシ「食べ頃になったら蒸気で蓋が自然に外れるから、ダンゴロ鍋は料理初心者でも安心だ」
サトシ「タケシ、それは何をやってるんだ?」
タケシ「ああ。この袋の中にはカゴのみが入ってるんだ。
ダンゴロ鍋から漏れる蒸気でこれを蒸そうと思ってな」
サトシ「へぇ……蓋が棒状だから、そうして吊るしておけるのかあ」
タケシ「鍋の風味がついて味に特徴が出るんだ。
少量入れておいた水に苦みが溶け込んで、代わりに甘い香りがつく。一石二鳥だ」
サトシ「タケシが食べやすく作ってくれるおかげで、苦手だったカゴのみも今では大好物になっちゃったよ。早く食べたくて仕方ないぜ」
サトシ「やった、蓋が外れた! さっそく食べようぜ!」
タケシ「わるいけど、ちょっと待ってくれ。出汁用に入れておいたネコブを取りだすんだ」
サトシ「俺、出汁取ったあとのネコブのみも嫌いじゃないぜ?」
タケシ「捨てるわけじゃないさ。繊維にそって薄く切ってんだ。ルンパッパ、はっぱカッターだ!」
ルンパッパ「るーんパッパッ!」
タケシ「そして、さっき蒸したカゴの実を、溶け出して液体になる直前のコアの中に慎重に入れて、
すかさず冷やすんだ。サトシ、いまからやるから合図したらみずでっぽうを頼む」
サトシ「分かったぜ」
タケシ「カゴのみを押し込むと、そこから液状のコアが漏れ出して形が崩れるから、すぐにやらないとな。よし、頼む!」
サトシ「ミジュマル! みずでっぽう!」
タケシ「完璧だ、ありがとうミジュマル! 深いオレンジ色の中にカゴの実が入って、でんきだまみたいだろう」
ピカチュウ「ぴかぴーかぁ!」
タケシ「これをさっき切ったネコブの実で巻いていけば、ダンゴロコアのネコブ巻きの完成だ。
巻き終わってから少し押しつぶして、切れ目を入れて模様をつけてと……」
サトシ「でんきだまが、かみなりのいしに変わっちゃったぜ!」
タケシ「ネコブの実の色は出汁を取ると鈍って黒っぽくなるんだよな。
でもこれは味が無くなってるじゃなくて、水中で熱することで渋みが変質してるんだ
もとのきつい渋みから、一転して淡い味のエキスが出て来る」
タケシ「主張が弱い味だけど、他の食材を引き立てて味の層を厚くしてくれるのがネコブの利点だ。
鍋類ならとりあえずネコブを入れておけば間違いないぞー」
サトシ「タケシ、もう俺我慢できない。食べていいかな?」
タケシ「まてまて。ちゃんとダンゴロに感謝してから食べるんだぞ」
サトシ「ありがとうダンゴロ! いただきまーす!」
サトシ「さっそくこの丸っこいコアを食べてみるぜ!」
タケシ「おいおい、最初からおもいものを食べるのはよくないぞ。
まずはフルーツサラダやネコブ巻きで胃を整えてからだなあ……」
サトシ「すっげぇ! 口の中でコアがとろけてるぜ! 噛むまえから味が広がってく!
しかも噛んだらもっと深く……うわぁ、タケシ、俺今幸せだ!」
タケシ「ははっ。まあそんなに喜んでくれるなら、細かいことはいいか」
サトシ「油っぽいのに自然に喉を通るし、ダンゴロって美味いなあ」
ピカチュウ「ぴか~♪」
サトシ「こっちの表面に焦げ目がついてる奴は、タケシの言ったとおり肉を食べてるみたいだ。
この歯応えもいいなあ。肉厚で食べごたえがあるぜ」
タケシ「強火で焼いたコアは、茹でずに薄切りにして薄味のソースで和えてから食べるのも美味いんだ。
今はタマタマベースのソースしかないからやらなかったけど、またダンゴロを食べる機会があったら試してみるといい」
サトシ「タケシは本当に物知りだなあ。うん、次はそうしてみるよ!」
タケシ「ダンゴロ鍋とフルーツサラダだと微妙に食べ合わせが悪いだろ。
モモンの実風味をつけた水も用意しておいたから、合間の口直しにするといい」
サトシ「タケシの計画は完璧だぜ! 俺、それ大好きだ!」
ピカチュウ「ぴかぴーか!」
タケシ「うん。サラダも素材の味が活きてるし、少し扱いの難しいカゴの実も上手く調和してる」
サトシ「心配しなくても、タケシの料理はいつも最高だよ!」
サトシ「ネコブ巻きもいいなあ。半熟コアが溶け出してきて、ネコブの皮の間に沁み込んでくる。
味を堪能してるときに、ふいにカゴの実を噛んで香りが鼻を抜ける感じ、高級料理みたいだ」
タケシ「ダンゴロは進化するとコアが外に出るようになるから、外気にコアが慣れてきて食感が変わってしまうんだ。
この絶妙な柔らかさ、トロみを帯びたコアは、ダンゴロを丁寧に加熱することでしか味わえないんだ」
サトシ「へぇ。進化すると味が落ちちゃうのか」
タケシ「いや、悪くなるわけじゃない。ギガイアスの方が好きだって人も多い。
でもダンゴロにはダンゴロ特有の使い道がある。進化だけが絶対じゃないって話だよ」
サトシ「ああ。ピカチュウにはピカチュウの良さがあるしな!」
ピカチュウ「ぴーかちゅ! ぴかぴーかァ♪」
タケシ「身体の強さなんてポケモンの一要素でしかない。
ダンゴロ鍋は、進化前には進化前の良さがあることを教えてくれるんだ。
まあ、サトシなら始めから分かってるだろうけどな」
ダンゴロがこんなに美味しいなんて、俺知らなかった。何も知らずに、食べられるのか疑ってごめんな」
タケシ「さ、鍋を冷める前に食べちゃおうぜ!」
おわり
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