貴音「誰もいないと思ったので」 (46)

響「クーラーの効いた事務所でのんびり」

響「夏はやっぱりこれが一番さー」グデー

響「あとはアイスがあればカンペキなんだけど」

響「あるかな」

響「おっ、あず○バー」

響「あらあら~」

響「……なんちゃって/// はむっ」

響「んまーい」

響「今自分は世界一の幸せ者かも」

響「……こういうアイスのCMなら自分喜んで出るのに」






響「ガツンと沖縄、ゴーヤバー!!」キリッ

響「うん、カンペキだぞ」

貴音「」

響「……いや、ゴーヤバーは無いか」

貴音「」

響「うちなーんちゅの自分でさえ買わないぞ」

貴音「」

響「我那覇さんそういうおっちょこちょいなところあるからなー」

貴音「」

響「……ん?」クルッ

貴音「」






響「」

響「は、はいさい貴音!!」

貴音「」

響「もちろんね、その、後で買ってくるつもりだったんだぞ?」

貴音「」

響「だから、そのなんていうか」

貴音「……っ」

響「た、貴音?」









貴音「うぁ、あっ、うわああああああああん!!!!!!」

響「えっ」

貴音「うわあん、あうあうあう!!」

響「ちょ、ちょっと貴音!?」

貴音「響!! わたくしは……、わたくしはもう……!! ああああ!!」

響「ごめん!! すぐに買ってくるから落ち着いて、ね?」

貴音「違うのです……!! 違うのです、えっ、ひぐっ、うわああああん!!」

響「ち、違うのか?」






響「はい、あーん」

貴音「……はむっ」

響「あーん」

貴音「あむっ」

響「落ち着いた?」

貴音「わたくしとしたことが、取り乱してしまいました」

響「いきなりどうしちゃったの? 自分かなりビックリしたぞ」

貴音「申し訳ありませんでした、でもその前に一つだけ」

響「ん?」

貴音「ごぉやばぁ、は無いと思いますよ?」

響「うぎゃああああ!!」

貴音「ひ、響!?」

響「……自分としたことが、取り乱したぞ」

響「じゃなくて!! 一体何があったの?」

貴音「実は……」







貴音『あぁ、空腹のままに彷徨う昼餉時』

貴音『本日わたくしを呼んでいるのはどちらのらぁめんでしょうか』

貴音『とはいえ、この辺りでの新たな出会いは無いに等しいで』

『新装開店 麺屋わるきゅーれ』

貴音『はああああああああああん』

貴音『いけません、落ち着かなけれ』

『新装開店 麺屋わるきゅーれ』

貴音『はああああああああああん』

貴音『いけません、いけません四条貴音!!』

貴音『こんなことではらぁめん淑女の名に泥を塗る事になってしまいます故』

貴音『らぁめんとの出会いは常に粛々と清純にあらねばなりません』

貴音『ましては初対面、清く正し』チラ

『新装開店 麺屋わるきゅーれ』

貴音『はああああああああああん』

貴音『……欲望のままに生きる事の何が悪いというのですか』

貴音『ソウダゾ!! タカネハタダシイゾ!!』

貴音『うんうん、響がそういうのなら間違いではないのでしょう』

貴音『らぁめんの前では素直になれ、とじいやも言っていた気がしないでもありません』

貴音『確か四条家の家訓にも、そう書いてあっ』グゥ

貴音『おっと、いけません』

貴音『このままでは空腹のあまり行き倒れになってしまいます』

貴音『では、行きましょう……、おや?』

貴音『店内に人の姿が見えませんね』

貴音『っ!? 身体が勝手に……』

貴音『止まりなさい!! 止まるのです!!』

貴音『あああああああああああああっ』

貴音『今のわたくしは』

ガララッ

貴音『超はらへりんぐがぁるだぜぇ』












店員『』

響「……」フルフル

貴音「……響」

響「……何?」

貴音「……何故震えているのですか?」

響「……アイス食べたからな」

貴音「……では、どうして脇腹をつねっているのですか?」

響「……自分の癖さー」

貴音「……」






貴音「はらへりんぐがぁる」

響「んふっ!!」

貴音「響までもわたくしの事を笑うのですね」

響「違っ、違うんだぞ貴音!!」

貴音「もういいのです、信じていたわたくしが愚かだったのですから」

響「咳だって、咳!! 最近風邪気味だから……、こほこほ」

貴音「……真ですか?」

響「本当だぞ!! この偽りの無い透き通った瞳を見て欲しいさー!!」

貴音「……」






貴音「はらへりんぐがぁる」

響「……っ」

響「……ね? 自分が貴音の事笑うなんて有り得ないからな!!」

貴音「響……」












貴音「腹由実」

響「ぐふっ!!」

貴音「もうわたくしの笑顔は失われました」

響「そんなの卑怯だぞ!!」

響「誰さ腹由実って!! しかも絶対字違うよね!?」

貴音「川´ラ`)」

響「やめろォ!!」

貴音「ひぐっ、ぐしゅ……」

響「話戻すぞ? 店員さんにバッチリ聞かれちゃったんだな?」

貴音「入り口側の券売機をいじっていたらしく……、うぅ……」

貴音「しかも正確には『超はらへりんぐがぁるだぜぇ☆』というような感じで、完全に☆がついてました」

貴音「死にたい」

響「☆て……、☆て……」プルプル

貴音「その後、その店員はあたかもわたくしがその場にいなかったかのように作業を続けました」

貴音「その場に、いなかったかのように!!」

響「う、うーん……」

貴音「どうして何の反応も示してはくれなかったのですか!!」

響「いや……、自分がその店員の立場にいたら同じ対応しちゃうと思うぞ」

貴音「あれは対応ではありません!! そこには何の応えもありませんでした!!」

響「んじゃあ貴音ならどうするのさ」

貴音「……わたくしですか、ふむ」






貴音「わたくしも、はらへりんぐがぁるでございます」キリッ

響「言うかぁ!!」

貴音「らぁめん屋の店員たるもの、その程度の返しが出来なくては話になりません!!」

響「そんな話は必要ないぞ!!」

貴音「無言だけは……、無言だけは無いと思うのです……」

響「むしろ店員さんの方がかわいそうだぞ」

貴音「あの女の何処がかわいそうだというのですか!!」

響「全部だぞ!! 真面目に働いてたらいきなり銀髪の女が『超はらへりんぐがぁるだぜぇ☆』って言いながら入って来るなんて災難以外の何物でもないぞ!!」

貴音「『原由実』ぐらい言っては良いでしょうに!!」

響「やめろォ!!」

響「間違ってなかったらそれはそれでまずいと思うぞ」

貴音「あぁ、きっとあの店では酷いあだ名を付けられているに違いありません」

響「間違いなくはらへりんぐがぁる」

貴音「……思えばあの悪女も響と同じぽにぃてぇるでした」ギュム

響「痛ああああ!! 自分の髪を掴むなぁ!!」

貴音「ずるるるるるるるる!!」

響「んぎゃあああああ!!」






パシンッ!!

貴音「」

響「はあっ、はあっ」

貴音「痛い……」

響「そうやって、逃げるのか?」

響「自分の知ってる貴音はいつでも堂々としていて、自分を曲げる事なんてしなかった」

響「だけど今の貴音は、違う」

響「おかしな事して、自分の犯した過ちから目を逸らしてる」

貴音「っ!!」

響「そんなの、貴音らしくないよ」

響「それに、自分は」

響「たとえ、はらへりんぐがぁるやYUMIX原だったとしても」

響「貴音の事を見捨てたりなんかしない!!」

響「光と影、表と裏があるように」

響「響と貴音はずっと一緒さー!!」






貴音「響……」

響「貴音……」

ガシッ

響「えっ」

貴音「そうですか、一緒ですか」

響「ど、どうして自分の手を引いて歩くんだ?」

貴音「それはですね」






貴音「響にも同じ道を歩んでいただきたいからです」ニコッ

響「」

響「離して!!」ジタバタ

貴音「意味がわかりません」

貴音「何ですか光と影、響と貴音とは」

響「ひえぇ」

貴音「何も深くありません、というよりも何が言いたいのか分かりかねます」

響「それっぽい事を言えば大丈夫かなーって」

貴音「人が真剣に悩んでいるのにそれを茶化すとは言語道断雨霰」

響「ぬヮぬ」

貴音「そして何故わたくしは頬を打たれなくてはならなかったのでしょうか?」

響「たまたま当たっちゃっただけで……」

響「でも、叩いちゃった以上戻れなくなっちゃって」

貴音「なんと」

貴音「……実はわたくしまだ、はらへりんぐがぁるなのです」

響「さっき食べたんだよね?」

貴音「先程はあまりの恥ずかしさにらぁめんを食せずに帰ってしまいましたので」

響「ま、まさか、今向かってるのって」チラッ






『新装開店 麺屋わるきゅーれ』

貴音「ふふっ」

響「」

響「ごめんなさい!! 謝るから許して!!」ジタバタ

貴音「許す? 許すも何も、わたくしたちは運命共同体と言ったのは響ではありませんか」

響「やだやだやだやだ!!」

貴音「響、往生際が悪いですよ」

響「助けてぇ!! 誰かぁ!!」

ガラッ

貴音「たのもー!!」

響「」

店員「いらっしゃ……」

貴音「わたくし達は……」

貴音「超はらへりんぐがぁるずだぜぇ☆ミ」









店員「」

響「うぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!!」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

あずさ「あら? 楽しみにしてたアイスが無い……」

あずさ「やっぱり名前を書いておくべきだったのかしら」シュン

貴音「あずさ」

あずさ「あら、貴音ちゃん」

貴音「申し訳ありません、あずさのものとは知らずに食べてしまいました」ペコ

あずさ「い、いいのよ別に」

貴音「ですので、こちらの新たなあず○ばぁを」

あずさ「本当に? じゃあありがたくいただきます」

あずさ「うん、やっぱこれよね」

貴音「ふふっ」

あずさ「……ところで」

響「ハラ…リン…ァルズ……ハハッ」

あずさ「響ちゃんに何が……?」

貴音「響には運命を共にしていただいただけです」

あずさ「う、運命?」

貴音「何故ならわたくし達は」









貴音「仲間だもんげ!!」

響「…ハラ……ユミ……」

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