苗木「霧切さんの手袋を取っちゃった」 (30)

霧切「……」

苗木「あ、あの、霧切さん」

霧切「……手袋、返して」

苗木「う、うん……」

霧切「……」ゴソゴソ

苗木「……そ、その、霧切さん、あの、さ」

霧切「今のは忘れて、それじゃあね」

苗木「ちょっ、ちょっと待ってよ!」

霧切「なに、同情でもしたいの? 不愉快だわ」

苗木「ち、ちがっ」

霧切「それじゃ」

苗木「霧切さんっっ!!!」

ぎゅっ

霧切「なに? 引き止めてどうするつもり?」

苗木「ごめん、霧切さん」

霧切「構わないわ、自分でも気持ち悪いと思うし、だから」苗木「それは違うよ!」

苗木「気持ち悪いなんて、思ってなんていないよ! ただ、軽はずみで手袋を取って傷付けたことを謝りたいんだ!」

霧切「別に傷付けられていないわ、だから……」

苗木「……霧切さん、手袋、外すよ」

霧切「なにをっ……あっ」

苗木「霧切さんの手……」

霧切「グロテスクでしょ、こんなの」

苗木「……触るね」

霧切「ちょっと、苗木君……」

きゅっ、にぎにぎ

苗木「手袋してたからかな、暖かいね」

霧切「……苗木君の手は、少し冷えていて気持ちいいわ」

苗木「そっか、へへ」

霧切「ねぇ、そろそろ良いでしょ?」

苗木「嫌だ」

霧切「離しなさい」

苗木「嫌だ!」

霧切「苗木君のくせに生意気よ、ハナ・シナ・サイ!」

苗木「絶対に離さない!」

霧切「嫌がらせのつもりかしら」

苗木「傷付けられていない、って言ったよね、あの言葉が本当なら嫌がらせにはならないよね?」

霧切「傷付いたわ、すごく傷付いた、だから離して」

苗木「傷付けちゃってごめん、でも、だから離すわけにはいかないんだよ」

霧切「……苗木君は私にどうして欲しいの」

苗木「話を聞いて欲しいんだ」

霧切「話?」

苗木「あのね、霧切さん、ボクはね」

霧切「苗木君は?」

苗木「ボクは君が、君が好きだよ、霧切響子さん」

霧切「!」

苗木「と、ところで霧切さん」

霧切「なに、かしら」

苗木「後ろからしがみつくのって少し恥ずかしいから、こっち向いて貰えないかな?」

霧切「……嫌よ」

苗木「えぇっ!?」

霧切「しばらくはこのままで話して」

苗木「……じゃあ、手をこっちに回して?」

霧切「はい」

苗木「ありがとう、霧切さん。霧切さんの手……ボクだけしか知らない、霧切さんの手」

スリスリ

霧切「苗木君、なにをしているのかしら」

苗木「頬擦りだよ、ボクは霧切さんを愛してる、顔も、性格も、この手も」

霧切「っ……生意気よ、苗木君」

苗木「ボクは、霧切さんが大好きだよ」

霧切「苗木君……」

苗木「霧切さんはどう、かな?」

霧切「苗木君、私は……そうね」

苗木「……」

霧切「苗木君、手を離して、目を閉じて歯を食いしばりなさい」

苗木「……うん」

霧切「行くわよ苗木君、覚悟しなさい」

苗木「……」

霧切「ん……」

ちゅっ

苗木「……」

霧切「……」

苗木「……き、霧切さん、今のって」

霧切「うるさいわ苗木君、黙りなさい、んぅっ」

ちゅっ

苗木「う、あ、えっと、あの……」

霧切「……」

苗木「その、き、キス、しちゃった、ね? あ、あは」

霧切「……」

苗木「うぅ、き、霧切さん?」

霧切「苗木君、タキシードは私が着るわね」

苗木「タキシード?」

霧切「……何でもないわ」

苗木「?」

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