のび太「これが…スタンド…」 (30)

のび太「やめてよおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

空き地にこだまする地獄の底から助けを求めるかのような悲鳴。

のび太はずり落ちた眼鏡を直しもせずに空き地を駆けずり回っている。

ジャイアン「はっはァーー!!のび太ァ!!こないだの試合の負けの責任をとってもらおうかァー!?……この縄で…『首吊り』の刑だァーーーッ!!」

ジャングルの生態系を特集した番組で聞いたことのあるような声でのび太を追い回しているのは、剛田武。通称ジャイアン。

のび太「そんなことしたら…死んじゃうよオォォォォ!!!」

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スネ夫「見てよジャイアン!のび太の顔!!鼻水たらして涙流してさぁ……みっともないったらないよ!
のび太ァ??こんな顔しずかちゃんに見られたら嫌われちゃうね??」

とんがった前髪を触りながら、とんがった口でのび太を侮辱しているのは骨川スネ夫。通称スネ夫。

のび太「ううッ……」

のび太は悔しさと怒りでスネ夫を睨みつけた。ジャイアンを睨む勇気は無かった。

しかし、のび太の顔に興味も持ったのはジャイアンだった。

ジャイアン「のび太ァ?なんだその顔は?」

ジャイアンはゴリラのような顔でのび太を睨み返した。

スネ夫が横で、のび太に向かって「アーメン」と呟きながら空で十字を切った。

ジャイアン「そんな反抗的な態度をとるのび太は……」

ジャイアンは手に持っていた縄を持ち替え、振りかぶった。

ジャイアン「お仕置きだァーーーーーーッ!!!!」

のび太「やめてえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

ドラえもんがのび太を捜しに家を出たのは空も暗くなった夜7時を過ぎたころだった。

周りの家の換気扇から多種多様な夕飯の匂いが漂ってくる。

ドラえもん「のび太君遅いなぁ…どこでなにやってるんだか」

ドラえもんはのび太の馬鹿っぷりには日頃から呆れ果てていたが、きっといつかわかってくれるという希望をのび太には持っていた。



が、今日はそうもいかなかった。

ドラえもん「今日はママとパパの結婚記念日だってゆうのに…心配かけさせて…今日という今日は僕も怒り心頭だ」

[たぬき]はのび太にどのようにして怒りをぶつけようか考えていた。あのマヌケにわかってもらえるにはどうしたらいいか…。

怒りに身を任せて勢いで押し切るか…。

いやダメだ。前に似たようなことをしたら、のび太君に「ロボットのヒステリーほど見苦しいのはないよ」って言われたし…

[たぬき]はどうしたものかと、頭を悩ませたが、空き地に着いた瞬間そんな事も吹っ飛んでしまった。

[たぬき]「の…のび太君……のび太ァァァァァァァ!!!」

のび太「やあ[たぬき]…遅かったじゃないか…」

木の枝に縄で昆布巻きのような姿でぶら下がっているのび太が[たぬき]に皮肉を言った。

sagaするの忘れてた

ドラえもんはのび太にどのようにして怒りをぶつけようか考えていた。あのマヌケにわかってもらえるにはどうしたらいいか…。

怒りに身を任せて勢いで押し切るか…。

いやダメだ。前に似たようなことをしたら、のび太君に「ロボットのヒステリーほど見苦しいのはないよ」って言われたし…

ドラえもんはどうしたものかと、頭を悩ませたが、空き地に着いた瞬間そんな事も吹っ飛んでしまった。

ドラえもん「の…のび太君……のび太ァァァァァァァ!!!」

のび太「やあドラえもん…遅かったじゃないか…」

木の枝に縄で昆布巻きのような姿でぶら下がっているのび太がドラえもんに皮肉を言った。

空き地からの帰り道、のび太は今日あったことをドラえもんに伝えた。

のび太「見たろ…ドラえもん……僕…勝ったよ…一人で…ドラえもんがいなくても。

だからドラえもん、これで安心して未来に帰れるね」

あまりの精神的ショックからだろうか、のび太は支離滅裂なことをドラえもんに言った。

ドラえもんは「うん、うん」とただ頷くことしか出来なかった。

のび太「ドラえもん…そういえば今日はパパとママの結婚記念日だね…」

ドラえもん「そうだよ。のび太君のこと心配してるよ。だから早く帰ろう?」

ドラえもんはのび太に肩を貸しながら、のび太を叱る事ばかり考えてた自分の愚かさを呪った。

時々肩に冷たいものが当たった。

その夜、のび太は両親に「おめでとう」と一言告げると部屋に引きこもった。

ドラえもんはのび太に、「寝る時まで部屋には入らないでくれ」と言われたので、
居間でママとパパと共に「凶悪化する少年犯罪。正義に燃える栃木県警24時」を見ていた。

ママに「のびちゃん何かあったの?」と聞かれたが、
ドラえもんは「ちょっと…」と言うしかなかった。

のび太は布団を頭から被り、涙を流しながら本を読んでいた。

のび太「うっ…ひっく…」

のび太は今日あったこと、これまであったことをマンガをよんで必死に頭から記憶を消し去ろうと努力したが、

2?3ページはマンガに没頭して笑顔になることもあったが、

すぐにジャイアンの頭が脳裏をかすめ、そのたびに涙がこぼれ落ちた。

のび太「くそ…くそ…なんで僕がこんな目に……」

のび太の中で悲しみの波が消えると、怒りの波がじわじわと音をたててのび太を支配し始めた。

のび太「くそ……ジャイアンのやつ……くそ……スネ夫のやつ……くそ…くそ…」

のび太はわなわなと怒りに体が震え、血管がビートを刻みだす。

のび太「くそ…くそ…くそ…くそ…くそ…くそ…」

のび太は読んでいた本のページ一枚をかみちぎり、
吐き出した。涙はすっかり枯れ果て、
その変わりに怒りのハートが憎しみの炎で燃えたぎっていた。

のび太「クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

気が付くと、のび太の部屋の襖が跡形もなく消え去っていた。

のび太「………ッ!」

のび太には何が起こったのか、何故かそれを理解するのに時間はいらなかった。

のび太「…この…肉体の内側から漲るエネルギーッ!!…

そして、『朝、ウンコをしてトイレットペーパーで拭いたら一回で拭ききれた』ような気持ちの良さッ!!

ああぁ??ッ♪神よ感謝します!このような力を頂いて……そして僕はこの力で…神をも超える存在になるッ!!この『スタンド』で!!」

ごめん文字化けした
気が付くと、のび太の部屋の襖が跡形もなく消え去っていた。

のび太「………ッ!」

のび太には何が起こったのか、何故かそれを理解するのに時間はいらなかった。

のび太「…この…肉体の内側から漲るエネルギーッ!!…

そして、『朝、ウンコをしてトイレットペーパーで拭いたら一回で拭ききれた』ような気持ちの良さッ!!

ああぁ〜〜ッ♪神よ感謝します!このような力を頂いて……そして僕はこの力で…神をも超える存在になるッ!!この『スタンド』で!!」

ドラえもんに「目が覚めると襖が消えてた」と言うと、
そんなバカな、という顔でのび太を見ていたが気にせず朝食を食べるため下に降りた。


ドラえもん「ねえ、のび太君」

ドラえもんはサラダに箸を伸ばしながら言った。

ドラえもん「なんだか…顔つきが変わったみたいだけど…」

のび太「そう?」

ママ「確かにそうねぇ…濃くなったというか…線が太くなったわねぇ」

のび太も鏡を見て思ってはいたが、成長期の子供ならこんなもんだろうと気にもとめなかった。

現に、パパも「のび太も成長期なんだな」と言っていたので 、のび太もドラえもんもママも納得した。

ドラえもんは続けてのび太に聞いた。

ドラえもん「ねえ、のび太君」

のび太「今度はなんだいドラえもん?」

のび太は少々うっとうしいと思いつつもドラえもんが自分に何を聞きたいかが気になった。

ドラえもん「のび太君の後ろに『いる』のは一体誰なんだい?」

その頃、ジャイアンとスネ夫は空き地で昨日の事で話に花を咲かせていた。

ジャイアン「昨日ののび太の泣き声は良かったなァ??」

スネ夫「ジャイアンは悲鳴フェチだからねぇ」

ジャイアン「昨日ものび太の悲鳴で三回はやったぜ??♪」

スネ夫は何をやったのかジャイアンにあえて聞かなかった。

そしてスネ夫は内心、この変態ゴリラ・ゴリラ・ゴリラを嫌っていた。

ジャイアン「今日は学校休みだし、朝からのび太の悲鳴聞き放題だなァ…」

ジャイアンは恍惚な表情で空を眺めた。

ジャイアンにとってのび太はある意味『特別』な存在なのかもしれない。

スネ夫「そんなことよりジャイアン、今週号の『ジョジョ』は読んだかい?」

ジャイアン「ったりめーだよ!」

ジャイアンは土管から飛び降り、スネ夫に語りだした。

ジャイアン「今週号から『20部』の始まりだからなぁ!見ないわけが無いぜ!!」

『ジョジョの奇妙な冒険』。
荒木飛呂彦による長編冒険活劇である。
2部までは『波紋』、3部からは『スタンド』と呼ばれる力を持った登場人物達がバトルを繰り広げるといったものだ。

ジャイアン「実際、最初は不安だったんだぜェ???」

荒木飛呂彦は105歳で去年この世を去ってしまったのだ。
この時は世界各地の読者が嘆き悲しみ、
『最も高齢なマンガ家』でギネスにも載った。
そして、今年から、無名の新人がジョジョを引き継ぐという衝撃のニュースが流れたのだ。

スネ夫「それは僕も不安だったよ。どこの大根漫画家だか知らないやつが『ジョジョ』を書くって言うんだからね」

何より、『19部』の時点で荒木飛呂彦本人が「体力の限界」ということでジョジョを最後にすると、公式に発表していた。

ジャイアン「もうジョジョも読めないのかと思ってた矢先だからな」

スネ夫「でも…読んでみてビックリしたよ…」

ジャイアン「ああ…震えたぜハート…」

スネ夫「あれ…荒木先生が書いてるのかと思ったほどの出来だったよね…」

ジャイアン「何よりいじめられっ子が主人公ってのも珍しいよなァ」

スネ夫「ジョジョも最近マンネリ感があったのは否めないからね…
『19部』で『イクラをタラコに変えるスタンド』が出てきたときジョジョは終わったと思ったからね。
新しい風がジョジョに入ったのは良かったかもしれない」

ジャイアン「いじめられっ子が主人公か……のび太の野郎が書いてたら笑えるな」

スネ夫「爆笑ものだよ」

のび太「……え…?」

のび太は焦った。何故?この『スタンド』は『スタンド』を持っているやつにしか見えないはずだ。

ママとパパの様子を見ればわかる。

ドラえもんを怪訝そうな顔で見ている。ママとパパには見えないのだ。

それなのになんでドラえもんには見えるんだ?

のび太「も、もしかして…」

のび太は「引っ込め」と『スタンド』に向かって念じると、ヒュッとあっという間にのび太の中に消えていった。

ドラえもん「?あれ?」

のび太「ドラえもん、何だって?」

ドラえもん「いや、あれ?うーん、何でもないよ」

ドラえもんは目をこすりながら何度ものび太の後ろを見た。

のび太「まったく…疲れてるんじゃない?」

ドラえもん「うーん…おかしいなあ…」

のび太は部屋に戻ると、先程の出来事を考えていた。

のび太「ドラえもんにはスタンドが見えていた……何故だ……もしかしてドラえもんも『スタンド』を……?」

のび太は机の前に椅子に座ると、柄にもなく頭を抱えた。

のび太「なんでドラえもんも『スタンド』を…!僕だけの特別な力じゃ無かったのか…?」

のび太「………ドラえもん……悪いな」

のび太は椅子から立ち上がり、頭を上げた。

のび太「ドラえもん…こうするしかないんだ……『スタンド使い』はこの世に二人もいらないんだ…」

のび太は『スタンド』という力を手に入れてから、その力に溺れてしまっていた。

自分の邪魔になる障害は『スタンド』で消し去ればいい。

単純なやつが力を手に入れるとこうなるという良い例だ。

のび太は襖の前で息を殺してドラえもんを待った。

のび太の後ろでは同じく息を殺して『スタンド』が身構えていた。

のび太「…………」

ドラえもん「…あんなこといいな♪出来たらいいな♪」

ドラえもんが階段を昇ってくるのがわかる。
のび太は一層緊張した面持ちでドラえもんを待つ。


しずか「のび太さーーーーん!!」

窓のそとでしずかちゃんがのび太を呼んだ。

のび太「…しずか」

襖を開けたドラえもんがいきなり現れたのび太に驚き、小さく「おぅ」と声を出した。

ドラえもん「の、のび太君、びっくりしたなァ?。何してるんだい?」

のび太「いや…。しずかちゃんが呼んでるから行くよ」

ドラえもん「あ、うん。行ってらっしゃい」

のび太「(助かったな…ドラえもん)」

しずか「のび太さん!」

このかわいらしい少女は源静。通称しずかちゃん。

将来のび太と結婚するという運命を背負っている。

のび太「しずかちゃん、どうしたんだい?」

のび太は眼鏡を中指で直しながら言った。

しずか「あ、この前のテスト、私のカバンに入ってたか…ら…」

のび太「?」

しずか「のび太さん、顔つき変わったわね……」

のび太「そうかい?」

のび太はテストを返してもらい、でっかく書かれてある丸を見て、
テストなんて『スタンド』があればしなくていいさと言い聞かせ、
しずかを空き地に誘った。


しずか「昨日も皆で遊んだの?」

のび太はしずかに悪気はないのだとはわかっていたが、
その質問を聞くとズキンと痛みが走った。

のび太「あ…ああ、うん。そうだよ」

しずか「私もギター教室が無かったらなぁー」

しずかは女子と遊ぶことはあるが、ほとんどはスネ夫ジャイアンのび太と一緒に遊んでいた。

しずかとのび太は空き地までの道のりをたわいもない話で盛り上がっていた。

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