ミカサ「私のマスターはあなた?」 (9)

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黒髪の少女は衛宮切嗣を見て尋ねる。切嗣は渋い顔で彼女を眺め、

「君はミカサ・アッカーマンでいいんだな。後の指示はそこにいるアイリスフィールに一任する。以上だ」

それだけを告げてその場を後にした。

「待って。私はあなたの名前を聞いていません」

「僕かい?」

切嗣は立ち止まる。だが振り返らない。冷たい、仕事としての口調で彼は答えた。

「僕はただの暗殺者さ」

――――
「切嗣はいつもああなのですか?」

ミカサはアイリの部屋から外を覗く。外ではアイリと切嗣の娘であるイリヤとがクルミの芽を探して遊んでいる。切嗣の目は少年のようで、いつかのエレン・イェーガーをミカサに思い出させた。それは先ほどの名乗りの雰囲気とはあまりに違いすぎた。

「ごめんなさい。切嗣も悪気があったとか、そういうことじゃないと思うわ。何か考えがあると思うの」

アイリは後ろからミカサに近づき、肩に手を置く。穏やかな、やさしげな雰囲気を醸し出していた。

「仕事の彼も、イリヤとああやって遊んでいる彼も、やっぱり本物なのよ」

「マスターのことを信頼しているようですね」

「ええ、だって彼は私を外の世界を見せてくれたんだから」

「外へ?」

ミカサは聞き返す。

「私は生まれてから一度もこの城から出たことがなかったの。でもね、切嗣がいろいろ見せてくれたのよ。日本の家を一回見てみたいって言ったことを覚えているかしら」

微笑んで窓の外の二人を見つめる。
雪に足を取られたイリヤに切嗣が手を差し伸べる。

「私も壁から外に出ることはほとんどありませんでした」

「そうだったわね」

ミカサは、ミカサの世界では人類は巨人に追い詰められ、たった二枚の壁のみが人類の希望となってしまった。

巨人に閉じ込められたミカサたちと、運命に閉じ込められたアイリ。どこか似通ったところがあったのかもしれない。

「一つだけお願いがあるのですが、よいでしょうか?」

「なに?」

「私を呼び出すために使った聖遺物、マフラーを返しては貰えませんでしょうか?」

ミカサはアイリと相対する。

「大切なものなのね?」

「はい、命よりも」

偽りのない目だった。

「わかりました、私も話を通しておきます」

「ありがとうございます」

ミカサは一礼する。
――これでミカサはようやくスタートラインに立った。これでやっとエレンを救えるかもしれない。

そばに入れなくてごめんなさい、そう彼女はつぶやいた。


雨生龍之介の手に痛みが走って紋章が浮かび上がる。

「ん? なんだこれ」

「君が僕のマスターなのかな?」

龍之介の前に少年が立っていた。ロープで拘束されている二人の少年少女とは違う、邪悪な空気をまとっている少年だ。

「お前誰?」

「僕の名前はアルミン・アルレルト。この聖杯戦争ではキャスターの位だね」

「聖杯戦争だかなんだが知らないけどさ、俺はこの子たちをどう[ピーーー]かで今忙しいんだよね。邪魔するなら帰ってくれないかな」

龍之介は正直言って期待外れだった。悪魔が出てくる、そんな思いだったにも関わらず、出てきたものは単なる少年だ。それもあどけなさが残るような。

「あの二人を[ピーーー]の? そんなもったいないことしちゃだめだよ」

アルミンは龍之介の前を横切って二人の前にひざまずく。二人は手と足が縛られている。

「いや、エレンとミカサを思い出すね。二人とも、元気?」

龍之介は思わずため息をつく。もうなるようになってしまえ、そんな気分だった。

アルミンはまず足のロープを外す。二人には安どの色がうかがえる。

そして足だけを外し、手を後ろに縛られたままの状態でアルミンはにこやかに言った。

「僕が生かしてあげるのは二人のうち一人だけだよ。二人が殺し合って、生き残ったほうを生かしてあげるよ。武器はないけど大丈夫だよね。なんて言っても君たちには歯がある。あっ、でも首をかみ切るのは禁止だ。早く終わっちゃうからね?」

二人は理解できていない。戸惑って二人で顔を見合わせる。

「どうしたの? 早くはじめないと二人とも殺しちゃうよ?」

アルミンは指を鳴らす。その瞬間

「うぁぁぁぁ!」

二人が同時に悲鳴を上げる。そして二人それぞれの右足が根元から腐るようにして落ちた。

「二人で一緒じゃないと不平等だからね。ほら、早くはじめて」

男の子は這いつくばり、女の子との肩に噛みつく。女の子は叫び、絶望で顔をゆがめた後、左足で男の子を蹴飛ばし、転んだ男の子の脇腹に噛みつき、肉をはぎ取った。

「いいかい? 人間っていうのが二番目に輝くのは本気で生きたいと思うときなんだ」

アルミンは不気味に微笑んで龍之介にいう。

「くくくっ。はははっ、いいね、最高にcoolじゃん! ほらほら、もっとやろうぜ」

「わかってくれて嬉しいよ。僕はいいマスターに恵まれたようだね」

二人の食い合いの終わりは女の子が男の子の心臓を食いちぎったことで終わった。

「あーあ、終わっちゃったよ。それじゃあ君が勝者か」

アルミンは体中歯形と血にまみれた女の子を抱きかかえ言った。

「龍之介っていったっけ? 人間が一番輝く瞬間を見たいと思わない?」

「ついていかせてもらうぜ、ええっと……」

「アルミンでいいよ。さあ、行こうか」

「お前が俺のマスターでいいんだな?」

「ほう、バーサーカが会話が出来るとは」

間桐臓硯は心底意外そうに言った。

「お前の差し金じゃないんだな」

間桐雁夜は左手に宿った令呪をなでる。今のところ思ったよりも魔力の消費は激しくない。

「ああ、儂は全く関与しておらん。魔力の消費も激しくないようで、お前にしては当たりを引いたようじゃ」

臓硯はにやりと笑う。その笑いは全く、自身の息子の勝利、幸運をたたえるものではない。これから待っている未知数の恐怖を楽しんでいる。

「お前に与えるサーヴァントの真名はエレン・イェーガー、上手く使え。さすればもしかすると桜を救えるかもしれぬぞ」

呵々と笑う。そんなことは言われなくてもわかっている。雁夜はバーサーカ―に近づく。能力はバーサーカ―にしては高くない。


しかし、と臓硯は考える。
通常バーサーカーにまともな会話を期待することは難しいにも関わらず、普通のコミュニケーションが可能なバーサーカ―が召喚された。

かもすると此度の聖杯戦争は何かあるやもしれん。

臓硯は地下室を後にする。そしてどこかに消えていった。


―――
「あなたが私のマスターかな?」

金髪の少女、轡を聖遺物として召喚された彼女の名前はクリスタ・レンズだった。

「あっ、ええっと。そうです――じゃなくて、そうだ。あなた、じゃなくてお前が私のサーヴァントなのだ」

ウェイバー・ベルベットはたどたどしいような口調を使う。サーヴァントはあくまで使い魔だ。魔術師たるもの厳格な対応をしなければならない。

「お前は一体何のクラスで召喚されたんだ」

「え? 轡を媒介で召喚したんだし、マスターなんだから私がライダーだってことくらいわかるんじゃないのかな?」

素直な疑問を呈すように小首を傾げる。

「ふぇ? ああ、そうだった、じゃなくて、あれ?」

「まあ、そんなことどっちでもいっか。うっかりっていうのもあるもんね」

クリスタはウェイバーの両手を握って

「私の名前はクリスタ・レンズです。よろしくお願いします、マスター」

優しく微笑んだ。

「おい! そんな簡単に名前をいうんじゃないって! どこでだれが聞いてるかわからないだろ!」

「そうでした、ごめんなさい」

「まあいい、今僕の泊まっているところまで行くぞ」



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