女「君はボクの何になってくれるんだい?」完結編 (399)

女「だーれだ」

男「……なんのつもりだ」

女「さあ、ボクが誰だかわかるかな?」

男「手を離せ。見えん」

女「もしかして、わからないのかな?」

男「おい、鼻息が当たってるぞ」

女「もっと近づいて、声を聞けばわかるかなと思ってね」

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男「……」

女「いつも一緒に帰っているのに、酷いなぁ」

男「ほぼ答えじゃねえか」

女「しかたない、答えを言おう」

男「ん……」

女「ふふっ、答えはボクでした」

男「答えになってねえぞ」

女「君にとっては、これでわかるだろう?」

男「なんだそりゃ」

女「ドヤ顔ダブルピース」

男「脈絡のないネタを挟むな」

女「ふふ、うざかった?」

男「ああ、その顔はうざい」

女「それじゃあ、帰ろうか」

男「おう」

女「夏休みもすぐに終わってしまったね」

男「そうだな」

女「ボク達はなにか、変わっただろうか」

男「お前は少なからず変わったな」

女「ん、何がだい?」

男「今学期からポニテになった」

女「おや、気づいてくれたんだ。嬉しいなぁ」

男「まあ、そりゃな」

女「と言っても、まだまだ短いけれど」

男「髪自体そんなに長くなかったしな」

女「ふふっ、君はポニーテールが好きかい?」

男「さあな」

女「まあ、ボクのは短いポニーテールだけれど」

男「まあ髪自体長くなかったしな」

女「このくらいの大きさの方が、ビンビン動いて好きなんだ」

男「できれば効果音を変えて欲しい」

女「いいじゃないか、脈打つような効果音!」

男「ポニテに使う効果音じゃねえ!」

女「じゃあピョンピョン」

男「それがいいな」

女「ピョンピョン♪」

男「ウサギの真似はしなくていい」

女「手で耳を表現しました」

男「言わんでもわかる」

女「じゃあ君は亀さんだ」

男「ウサギとカメって、安直だな。俺のどこに亀の要素がある?」

女「え? 君のここには亀さんがいるんじゃないのかい?」

男「どこ見て言ってんだ」

女「興奮すると首を伸ばす亀さん」

男「もういい、とりあえずガン見はやめろ」

女「がーん!」

男「ガーン見もだめだ」

女「ジロジロ……」

男「ジロジロ見るな」

女「じゃあ視姦!」

男「余計見てんじゃねえか!」

女「じゃあちょっと触らせてくれ!」

男「もっとダメになってる!」

女「なんならいいんだ!?」

男「逆ギレかよ!?」

女「居直っただけだよっ」

男「ほぼ意味変わってねえよ!」

男「……やっぱり夏休みからお前は全然変わってねえ」

女「うん、君も相変わらずだね」

男「ちっ」

女「あ、舌打ち」

男「はぁ……」

女「おや、ため息」

男「いちいち実況するな」

女「そんなこと言いながら君だって『ほら、今アソコがどんな状況か実況してみろ!』とか言うんだろう」

男「どの場面で言う言葉だ」

女「女の子をレイ……」

男「それ以上言うな」

女「き、君が言わせたんじゃないかっ」

男「わざとらしく照れるな!」

女「ふふ、そういえば知ってるかい?」

男「あん?」

女「秋は移ろいの季節だ」

男「いきなりだな……」

女「まあ、そう言わずに聞いてくれよ」

男「……」

女「夏の暑さは、少しずつ秋、冬と寒くなっていく」

男「……そりゃな」

女「そして心も、少しずつ冷えていくんだ」

短いポニーテールを軽く揺らして、ヤツはそう言った。

女「『秋』と『飽き』をかけた人はすごいね。的を射ている」

男「そうだな」

女「ふふっ」

ボクらしくないことを言った。

と、ヤツは照れくさそうに頭を掻いた。

男「まあ、たまにはいいじゃないか?」

女「これからはどんどん下衆なネタを突っ込んでいくよ」

いや、それはいらないけど。

男「そういや秋って、なんか行事あったっけか?」

女「修学旅行があるだろう?」

男「ああ、そういえば」

すっかり忘れていたが、確かにあったな。

女「と言っても、一ヶ月もあとのことだけれど」

男「十月か。長いな」

女「オマケにテストも挟むよ」

男「うわー」

知りたくなかったな、それは。

女「大丈夫だよ。ボクが手取り足取り命取り教えてあげる」

男「殺されそうなんだが」

大丈夫なのかそれは。

女「だ、だだ、大丈夫だよ……ハハハ」

ドモるな。

女「後ろからグサっ……なんてことは万が一にもないよ」

男「じゃあ言うな」

余計怪しいぞ。

女「でも、夏休みが終わってよかったかな」

男「なんでだ?」

俺はあと二、三ヶ月欲しかったけど。

女「君と話をしながら下校ができるからね」

なんだよそりゃ。

女「学校があるからこそ、この時間はあるんだから」

男「でも、話だったらいつもしてるだろ?」

夏休みだって、ほぼお前は俺の部屋にいたし。

外でもお前は俺を誘って色んな所に行っただろ。

女「そうだね。ベッドの上でギシギシとね」

男「してねえ」

どんな話してんだよそれ。

女「君の家のベッドってギシギシしないよね」

基本しないだろ。

したら欠陥品だ。

女「この前激しく動いてみたけどならなかったよ」

男「人ん家のベッドでなにしてんだ」

女「いやいや、ナニはしてないよ」

そんなこと聞いてねえよ!

あとお前が手を上下に動かすのはおかしい。

それはオトコのやり方……こほん。

なんでもない。

女「君のニオイに包まれたら、ボクはナニもしなくても果てるよ」

男「声が大きい」

下校中になんつーこと言ってんだ。

あと無駄に体を震わすな。

男「あーもういい。この話はおしまいだ」

女「じゃあ君の家のエッチな本の話をしようか」

男「はぁ!?」

もっと嫌な話にチェンジした!?

女「最近、お姉さん物増えたよね?」

男「……」

なんで俺のエロ本事情知ってんだよ!

女「友達として、しっかりと君の好みを知っておかないといけないから」

いや。

知らなくていい情報だろ。

女「みんな巨乳のお姉さん達ばかりだったね」

男「お前、どこでそれを……?」

女「新しく買ったから、丸見えな場所に置いてあったけれど?」

……俺のバカ!!

ちゃんと隠せよっ!

女「総合すると。巨乳の年上好きという傾向だね、君は」

男「やめろ、この話はなしだ」

女「梨? 別に果物の話はしていないよ?」

男「無しだ!」

いちいちボケるな。

女「むぅ、じゃあどんな話をすればいいのかな?」

くそ、ニヤニヤ笑いやがって。

女「あ、そうだ」

手を合わせて、ヤツはニッコリと笑った。

女「パンツの話をしようか!」

えっと。

なんでそんなにキラキラした目でそんな話を振ってるんだ?

男「興味ない」

女「ボクは興味があるなあ、君のパンツ」

興味を持つな変態。

女「頼むよ、教えてくれ! パンツの柄!」

この通り! って感じでお願いされても。

女「あるいは脱いで見せてくれ!」

男「道端でパンツ脱ぐやつがどこにいる!?」

アホかお前は!

女「いるよ! 君だ!」

指をさすな!

女「じゃあしょうがない……」

そう言って。

ヤツは短いスカートの中に手を突っ込んで、

白い何かを、下にズラした。

男「……へ?」

女「ボクは脱いで、見せたよ。さあ」

いや。

いやいやいやいや!?

何やってんのお前!?

男「ちょっと待て、とりあえず穿け!」

女「君が、脱ぐまで、ボクは、脱ぐのを、やめない」

ただの痴女じゃねえか!

周りに人がいなくて助かった。

いや、どちらにしろ。

これはマズいだろ!

女「ふふっ、どうしたのかな?」

何を誇らしげに笑ってんだ!?

男「お前……本物の変態か!?」

女「そんなこと言わないでくれよ!」

興奮してしまうじゃないか!

と、ヤツは高らかに叫んだ。

コイツ、マジでヤバい。

というか、今ノーパンなんだよな?

なのにあんなに短いスカートじゃ、風吹いたらアウトだぞ?

つか、若干吹いてるからな、風!

スカートがヒラヒラする度、俺はヒヤヒヤする。

辺りが暗いからってやりすぎだっつーの!

男「……くっ」

もうなんだこの展開。

わけわかんねーけど、俺、パンツ脱ぐしかないのか?

……しかたねえ。

観念(?)して、俺はゆっくりとベルトに手をかけた。

女「なんてね」

ヤツはパンツを戻して。

女「ふふ、はしたないことをしてしまった」

と、ヒラつくスカートを抑えて言った。

男「……はぁ」

女「ため息は幸せが逃げるよ?」

男「うるせー」

ため息くらい吐かせろ。

おかげで背中が汗でビッチョリだ。

女「ちなみに言っておくけれど」

男「なんだ?」

女「今日はこれをするためにパンツを二枚穿いてきたんだ」

男「めちゃくちゃ無駄な仕込みだな!!」

パンツの話はもう絶対する気だったのか!

女「おかげでムレムレのムラムラのヌルヌルさ」

男「最後の擬音おかしいだろ」

女「え? 汗だよ?」

男「……」

まだ、混乱しているようだ。

女「ふふ、何を想像したのかな」

そのニヤケ面やめろ。

男「なんでもねえよ」

女「ふふ、君は面白いなぁ」

いつもよりも口の端を吊り上げながら笑ってやがる。

この野郎、覚えてろよ。

夏休みが終わっても俺とヤツの会話は相変わらずであった。

まあ、ずっと顔を合わせてんだから勝手が違うなんてことはないだろう。

男「ただいま」

妹「おかえりんご!」

男「ただいマンゴー」

妹「うんうん、ちゃんと果物で返してくれたね」

可愛い妹がお出迎えしてくれた。

うむ、幸せだ。

今日は早めに帰ってきたから妹も上機嫌だ。

妹「今日は早いから一緒にゲームできるね!」

男「したいのか?」

妹「うん!」

男「何がしたいんだ?」

妹「んとね、なんでもいい!」

男「じゃあ一人用のゲームやるかな」

妹「一緒にできないじゃん!」

男「え? 妹もやるのか?」

妹「わかってて言うなー!」

可愛いから、ついついいじめたくなる。

男「じゃあ格ゲーでいいか?」

妹「うん」

というか、二人用のゲームなんてそれくらいしか持ってない。

妹「お兄ちゃんの帰りが遅い日、私は頑張って練習していたのだ」

男「一人でやってたのか?」

熱心だな。

もしかしたら、ガチャプレイを卒業しているかもしれないな。

妹「ううん、メンタルトレーニング!」

その発想は無かった。

結果から言うと。

妹「なんで空飛ばないの!?」

男「そんなゲームじゃない!」

妹のメンタルトレーニングは完璧に間違っていた。

大体ガチャプレイに変わりないから、意味がない。

妹「うー……もういいっ、ご飯作ってくる」

半ば諦めて、妹は立ち上がった。

男「おう」

悪いな、手加減しなくて。

男「……やめるか」

妹「ゲーム機片付けといてね」

男「こういうのは敗北者が」

妹「むー」

そんなジトっとした目で見ないでくれ。

しかたなく、俺はゲーム機を片付けて、自分の部屋に向かった。

ちなみに、ゲームは居間のテレビでやっている。

俺の部屋にも妹の部屋にも、テレビはないからな。

帰りが早いととにかくすることもなくダラダラと過ごしてしまいがちだ。

宿題を出されても、まず勉強机に座ることなんてまずない。

飯まで寝るか、漫画を読むか、ゲームするか。

あとはオナ……いや、それは言わなくていいか。

たまには何かしたいものだ。

でも。

男「……何もないな」

何か、することはないだろうか。

妹「お兄ちゃーん」

男「んあっ……」

妹の声がした。

どうやら寝てしまっていたようだ。

男「おーう」

口元の涎を拭き、ベッドから立ち上がって食卓に向かった。

妹「ふふふ……」

妹はニコニコと笑って、食卓を俺に見せないように立っている。

男「ん?」

妹「じゃじゃーん!」

男「……なんだ?」

妹「今日は、お兄ちゃんの大好きなハンバーグでーす!」

男「おー!」

階段を降りている時に、いい匂いがしたのはこれか。

オマケに俺のハンバーグは少し大きめだ。

いいや、少しじゃない。尋常じゃない大きさだ。

妹「ふふん、自信作です♪」

それじゃあ、早速。

男「いただきます」

箸で小さく切って、口に運ぶ。

うむ。美味しい。

男「妹、美味いぞ」

妹「わーい」

手を挙げて喜ぶ妹。

それにしても、どんどん料理が上手くなっていくなぁ。

いつも作ってれば上手くなるのも当然か。

男「ありがとうな」

妹「なーに?」

男「いつも作ってくれてさ」

妹「お兄ちゃんが作んないんだから、私が作らなきゃいけないでしょ?」

仕方なくやってる、って言い方だ。

昔は俺が作ってた時期もあったんだぜ?

妹「でも、それは昔の話」

男「ん?」

妹「今は、作るの楽しいし」

更に妹は言う。

妹「お兄ちゃんが美味しく食べてる所を見ると、嬉しいから」

……おお。

なんか、すげえ照れるな。

男「妹、お前は本当にイイヤツだ」

妹「はいはい、喋らずに食べてね。冷めちゃうよ」

男「はーい」

まるで立場が逆転しているようだ。

俺が年下で、妹が年上みたいな。

でもまあ。

妹は俺よりも要領がいいからな。

おまけに容量も俺よりあるだろう。

何を言ってるんだか。

妹「そーいえばさ」

ニヤついた顔を近づけてきた。

妹「今日調理実習で褒められちゃった。『とーっても上手よー』って」

多分、家庭科の先生の真似だ。ちょっと似てる。

男「おお、良かったじゃん」

妹「でもね、ちょっと悲しかったことがあるんだ」

どうやら、聞いて欲しそうなフリだ。

男「なにが?」

妹「なんてゆーか……えーっと」

男「?」

いきなり言葉を詰まらせる妹。

妹「お兄ちゃんに食べてもらえなかったのが、ちょっと、心残りで」

男「……」

おいおい、妹よ。

お前が妹じゃなきゃ抱きしめてた。

いや、もうアレだ。

妹でも抱きしめる。

妹「ひゃっ!?」

男「もう可愛いなあお前は!」

妹「うわ、お兄ちゃんやめて! 離れてー!」

とか言いながら力入れてないじゃん!

男「今度調理実習があったら残して、持って帰ってきたら食べるぞ?」

妹「ほんと!?」

うお、すげー嬉しそうな顔。

男「もちろん!」

妹「実はね……持ち帰ってきたよ!」

え。

妹「じゃあ食べてもらおうかな~」

え、ちょ、ちょっとまって。

巨大ハンバーグ食べて、もうお腹一杯なんだけど。

あ、でも、調理実習だからそんなに量はないか。

妹「えへへ、ちょっと多めだけど」

男「っ!?」

ちょっと多めってレベルじゃねえぞ!?

……そうだった。

妹はいつも作る分が多かった。

男「こ、こんなに持って帰ったら、グループの子達あんまり食えなかったんじゃないか?」

妹「私達のグループすぐに終わったから、余分に作ったの」

お兄ちゃんのためにね!

と、顔を赤く染めて言った。

……あはは、俺は幸せものだ。

と、いうわけで。

俺の腹は妹の愛に満ち溢れたわけなんだけれど。

男「気持ち悪い……」

腹がパンパンである。もう食えない。

男「美味しいから食えるけどなぁ」

あと、あんなキラキラした顔で見られたら。

もう、死ぬ気で食わざるをえない。

本当に、美味しくて助かる。

そして、数時間が経った。

男「……」

俺は、いつも通りボーっと過ごしている。

男「何か、すること」

思いつく限り考えてみるが、一向に思いつかない。

思い尽いた、という感じだ。

男「あっ」

ふと、携帯電話に目が行く。

男「……誰かにかけてみるか」

いつもだったらそんなことをしないのに。

何故か俺は、ヤツに電話をかけようとする。

男「んー……」

ベッドに一度横たわり、思案する。

こっちから電話して、なんて言えばいい?

話すことなんて決まってないし。

用なんて、別にない。

だからといって。

他に電話できるようなやつは……、

男「……後輩」

いや、ダメだ。

まだ後輩出てないし。

出てない? なんのことだ?

まあ、そんなことはともかくだ。

と、思っていると、携帯が鳴り出した。

噂をするとなんとやら、後輩からである。

後輩『もみもみ! 先輩ですか』

男「こういう時はもしもしって言うんだぞ、後輩」

後輩『あっ、いきなりナカ出しされちゃいました!』

男「ダメ出し!!」

吹き出しそうになったぞ。

危険な間違え方だ。

男「で、どうしたんだ?」

後輩『ふふふっ、実は先輩にお願いがあるんですよー!』

……嫌な予感しかしないんだが。

男「一応聞いてやる」

後輩『先輩、電話でエッチって知ってますか?』

男「……切るぞ」

後輩『わわっ、やめてくださいー!』

後輩はなんでこんなに性に正直なんだろうか。

……アイツもだけど、コイツは更に素直で、ちょっと困る。

後輩『え、えと、電話でエッチっていうのは』

男「説明しなくていい」

しないと言っただろう。

後輩『わ、私する気満々だったのに……!』

いや、お前がする気でも、俺は無いから。

後輩『うう、先輩に弄ばれました……』

嫌な言い方やめろよ!

後輩『う~……やってくれないんですか?』

男「何度も言わせるな。やらん」

後輩『じゃあ先輩の喘ぎ声聞かせてください!』

なんでだよ!?

男「嫌だ!」

後輩『私も喘ぎますから!』

そういう問題じゃない!

後輩『うう……先輩はいつもそうです。私よりイヤらしいこと、たくさん知ってるのに教えてくれない……』

お前は俺をどんな目で見てんだ。

あと俺、そんなに詳しくないからな!

後輩『今日は、これで失礼します。気分はとってもクラウディ・スカイです』

ヤケにカッコいいなそれ。

男「ああ、そうしろそうしろ」

後輩『でもでも先輩の声が聞けたから、元気バリバリです! 下着もパッツンパッツンです!』

主に胸が!

と、後輩はわざとらしく息を切らした。

耳元でハァハァ言うな。

後輩『……あ、でもこのままじゃ眠れません! ムラムラしちゃって!』

うーん。言葉も無い。

男「じゃあ、今日は徹夜だな」

後輩『そーかもです……寝る前にスッキリしようと思います!』

男「ちょっ!?」

何を言い出すんだお前。

後輩『それじゃあ、お風呂でスッキリしてきます! おやすみなさーい!』

そして電話は切れた。

……そ、そうか。

お風呂か。

お、俺もお風呂だと思ってたぞ、うん。

そ、それ以外に何があるんだよ、アハハハ。

男「風呂、か」

そろそろ風呂時ではあるな。

んー、でも。

なんだか、気乗りしない。

風呂は好きなんだが、このモヤモヤした気持ちはなんだろう。

俺は無意識に携帯で、ヤツに電話をかけていた。

指がなんのためらいもなく勝手に。

男「……ええ!?」

いきなり何してんの俺!?

これで出られても、何も話すことないぞ!?

だからって切ったらかけ直して来るかもしれないし……。

とりあえず、待とう……。

男「……」

おかしい。

いつもなら、ワンコールで取ってくるのだが。

いつまでたっても、出やしない。

男「……しかたねえ」

かけ直してきたら、適当に答えよう。

そういう考えに至り、俺は電話を切った。

結局、暇なままだ。

ダメだ、何もない。

ベッドに横たわって、天井の上を見る。

よく知っている天井。

当たり前か、そんなこと。

ゆっくりと上半身だけを上げて。

ふいに、思いついた言葉を漏らした。

男「……散歩」

そういえば、昔。

夜に散歩とか、よくしてたな。

することがなくて、近所をぶらりと。

……あの頃となんにも変わってないのか、俺。

男「……行くか」

とにかく、何かをしたかった。

だから、俺はベッドから跳ね起きる。

ギシリ、とベッドから鈍い音がした。

男「……鳴るじゃねえか」

長年使ってるからな、このベッド。

妹「お兄ちゃん、どこ行くの?」

男「げっ」

見つかってしまった。

コッソリと行こうと思ってたんだが。

妹「ちょっと、何その反応!」

男「いや、別になんでもないよ」

妹「……それで、どこ行くの?」

男「別に、どこも行かないぞ」

妹「じゃあなんで靴を履いてるの?」

男「出かけるから」

妹「どこも行かなくないじゃん!」

男「いや、出かけるって言ってもアレだぞ。別にどこかに行くとかじゃなくてな」

妹「……散歩ってこと?」

男「そーゆーこと」

妹「お兄ちゃんって時々行くよね」

最近は行ってなかったけど、と付け加えた。

男「外の風に当たりたい時があるんだよ」

妹「ほんとーは誰かと会ってるんじゃないの~?」

口の端を釣り上げている。

男「会ってないよ。一人で歩いてんだ」

妹「怪しいなぁ~!」

むふふ、と含み笑い。

何が怪しいというのだ。

男「誰かと歩きたいならお前のこと誘うよ」

俺は妹となら永遠に話せる自信があるぞ。

妹「ふーん」

反応薄っ!!

妹「じゃあ一緒に行ってあげようか?」

男「今日はいいや」

妹「ぶーぶー! じゃあ言わないでよ!」

頬を膨らませて怒る妹。

男「また今度な」

妹「こんな夜遅くに出て、危ないことしないでね」

男「危ないことって?」

妹「例えば……ひ、非行に走るとか!」

そんなこと心配してるのか。

本当にプリティーなシスターだ。

男「まあ、いつものルートだから安心しろ」

妹「お兄ちゃんのいつものルートなんか知らないよ」

そりゃそうか。

一緒に行ったこと、あんまり無いもんな。

というか、俺も記憶が朧げなので、ルートもあやふやである。

男「まあ、大丈夫ってことだ」

妹「むーっ」

男「なんだ? まだ何かあるのか?」

妹「何もないよーだ!」

ベーッと、舌を出される。

何かにつけて、可愛いやつだ。

男「じゃあ行ってくる」

妹「さ、先にお風呂入って寝てるからね! 寂しくて泣いても知らないから!」

男「それは悲しいな」

お出迎えしてくれないと俺は死ぬ。

妹「本当?」

首を傾げている。

男「とか言いつつ待っててくれると俺は信じてるぜ」

妹「待つわけないじゃん!」

極めつけはプイッと、そっぽを向かれた。

男「行ってきます」

妹「ふん、行ってらっしゃい」

背中を向けつつも、手はちゃんと振ってくれる妹であった。


このSSは、

女「君はボクの何になってくれるんだい?」(元スレその一)
女「君はボクの何になってくれるんだい?」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1378559382/)

女「君はボクの何になってくれるんだい?」(元スレその二)
女「君はボクの何になってくれるんだい?」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1378604105/)

と同一のSSです。

上記のスレッドでは、結局最後まで書き切れずにスレが落ちてしまいました。
ですのでここ、SS速報の場をお借りして、完結しようと決意しました。

現在は貼り直し+α(加筆修正、新規追加等)の作業です。

リアルタイムで追っていただいた方にももう一度読んでいただけるような工夫をしています。

ですので、明日明後日までは貼り直し作業が続きますが、既読の方は是非もう一度読んでいただけたらと思います。

今日の投下は以上です。

お前いつものボクっ娘のやつか

妹との会話で時間を取られたが、やっと家を出る。

久しぶりに、夜に散歩するな。

だからといって、懐かしいとかそういう気持ちはない。

男「なんにも考えずに、ブラっと行くだけだもんな」

別に、深く何かをするという感情はない。

だが、ルートはいつも同じ。

数年経っても、それは変わらない。

数年前のわずかな記憶をたどってみると。

街灯が増えていたりとか。

『犬の糞は持ち帰ってください』などのポスターとか。

案外、地味な変化がある。

だからなんだと言われたらそれまでだ。

「おや」

男「ん」

目の前に現れたのは、

女「やあ、運命だね」

ヤツだった。

男「こういう時は偶然とか奇遇とか言うんじゃないのか?」

女「うん、それもいいかもしれないね」

ヤツの隣には、小さな犬がいた。

あれ、コイツ、犬飼ってたか?

男「お前、それ……」

女「ああ、この子は近所の人の犬なんだ。留守番中の散歩を頼まれていてね」

そう言って、犬を軽く撫でた。

犬もそれに呼応して、ヤツにじゃれつく。

なるほどな。

だから電話に出なかったのか。

男「携帯電話、ちゃんと持っとけよな」

女「え?」

キョトンとした声を上げて、ヤツは俺を見た。

女「もしかして、ボクに電話をかけたとか?」

男「まあ、そんなところだ」

女「うーん、惜しいことをしたなぁ」

けれど。

こいつが携帯を常に持ってることって、あんまし無いんだよな。

まず、学校にも持ってきてないし。

そして、現在進行形で携帯していない。

女「君からのラブコールに対応できないなんて、とっても残念だ」

男「ラブコールじゃねえ」

勘違いも甚だしいな。

女「じゃあデリヘルかな?」

男「ありえん」

なんでクラスメイトにそんなこと頼んでんだ。

ありえねーだろ。

女「おや」

急に、犬が踏ん張り始めて。

糞を捻り出した。

女「ふふっ、ウンチだね」

すかさずスコップで糞をすくって、袋に入れた。

女「こんな道端でできるなんて、犬は羨ましいね」

男「何を言ってんだ」

女「夜のテンションは人をおかしくするよ」

お前はいつも平常運転だろ、それで。

女「こんな時間に出会ってしまったんだ。青姦でも洒落込むかい?」

男「遠慮しておく」

平気で口にするような用語じゃないぞ。

女「遠慮は無用さ。この子も一緒にね」

お前、正気か。

女「あはは、目が怖いよ」

お前がそうさせたんだろ。

洒落にならんシャレだ。

女「それじゃあ」

そう言って、俺の横を通り過ぎて、

女「また、明日」

と、にこやかに言った。

男「おう」

軽く手を振っているヤツを見届け、俺はまたゆっくりと歩き始めた。

男「あっ」

そういえば、この散歩のルートには、

公園があったな。

男「たまには中に入ってみるのも面白いかもな」

でも、もし人いたらどうしよう。

……とりあえず、確認してから中に入ろう。

俺は実は、臆病者である。

実は、でもないか。

男「……」

公園を覗いてみたけれど。

暗くて全く見えない。

ライトがない。

男「怖っ……」

幽霊とかは信じないタチだが。

不審者を怖がってしまう。

男「……大丈夫かな?」

まあ、こんなに暗いんだし。

人がいるなんてこと、無さそうだな。

俺は恐る恐る中に入っていった。

この公園は、結構馴染みの場所だ。

男「……懐かしいな」

初めてアイツに会った場所だ。

それに――。

男「うおっ」

急に、携帯が鳴り出した。

いきなりの音に俺はビックリした。

男「も、もしもし?」

その電話は、クラスメイトの男子だった。

こんな夜遅くに、連絡網が回ってきたようだ。

『明日転校生が来る』、という内容だった。

だからって、別にしなくてもいいだろうに。

先生、本気で忘れてたんだな……。

男「やれやれ」

そんな声を出して、俺は携帯をしまった。

そして――。

「……あの」

と。

か細い声が、聞こえた。

男「えっ」

その声は女性だった。

誰かいたのか。

「……男、くん?」

俺の名を、知っている。

暗くて、顔は見えない。

男「そ、そうですけど……」

「……やっぱり!」

だ、誰だ……?

男「あの、どなた、ですか」

「もう、忘れちゃったの?」

ピカっと、ライトが点く。

携帯のライトだ。

「私だよ、私」

男「……?」

俺と同い年くらいの女の子。

しかし、見覚えはある。

男「も、もしかして……」

「……」

男「幼馴染、か……?」

幼馴染(以下、幼)「えへへ、久しぶり」

男「お前……なんで?」

幼「うーん、お父さんの都合で戻ってきたって感じかな」

こいつは俺のおさななじみだ。

小学校の頃、こいつとよく遊んだ。

それも、ほぼ毎日。

幼「こんなところで会えるなんて、ビックリしちゃった」

男「俺の方がビックリだ」

幼「ここって、よく一緒に遊んだもんね」

そうだな。

幼「私、着いたら絶対最初にここに行こーって思ってたの」

男「その言い草だと、着いたのはついさっきなのか?」

幼「うん」

と、歯を出さずに微笑む幼馴染。

幼「んーなんだかあんまり変わってなくてホッとしたなぁ」

大きく伸びをして、彼女は欠伸をした。

幼「うわっ、欠伸出ちゃった。男くんに会って、安心しちゃったのかも」

男「それに、もう夜も更けてるからな」

幼「そうだね」

彼女は空を仰いだ。

幼「……星、綺麗だなぁ~」

俺も、夜空を見上げた。

星は、とても鮮明に見えた。

特にこの公園は、特に星がよく見える。

幼「なんだか、帰ってきたのに同じことしてるなぁ」

男「どういうことだ?」

幼「越したところでも、こうやって空をよく見てたんだ」

ああ、そういえば。

こいつは好きだったな、空を見るのが。

暇になると空を見て。

学校の席が窓際だと、空を見つめたり。

そして、

幼「飽きないなー」

と、言うのだ。

男「……ぷっ」

幼「な、なに?」

男「昔と変わってないな、お前」

ついつい、笑っちまう。

幼「もー、変わったよー」

男「髪型もそんなに変わってないじゃん」

腰まで伸びる、ロングヘアー。

小学校の頃、近所で話題だった。

幼「むむ、じゃあ明日はちょっと変えていこうかな?」

男「そのままでいいと思うぜ」

幼「そう?」

男「見慣れてるし、似合ってるからな」

俺はニコッと笑う。

幼「ぷふっ……男くんだって笑い方変わってなーい」

ふふふっ、と堪えるように笑っている。

ん、明日は?

それって、一体……。

男「引っ越して、それで、学校はどこなんだ?」

幼「ああ、学校ね」

彼女はロングスカートのポケットから生徒手帳らしきものを取り出した。

幼「じゃじゃーん!」

そこには、見覚えのある生徒証があった。

俺と、同じ高校だ。

もしかして、転校生って……。

幼「確か、男くんも一緒の学校だよね?」

男「なんで知ってんだ?」

幼「お母さんから聞いたの。うちのお母さん、男くんのお母さんと仲良いからさ」

あー……どんどん思い出してくる。

家族ぐるみで仲良いんだよな、俺達。

男「そうだったそうだった。マメに連絡取り合ってるって言ってたな」

という母さんも、今は海外でバリバリ仕事中なわけだが。

幼「妹ちゃんは元気?」

男「元気元気。母さんの代わりみたいになってるよ」

幼「わー、頼もしいね!」

男「最近俺は注意されっぱなしだ」

幼「あはは、立場逆転だね」

俺も、そう思う。

幼「それにしても」

幼馴染は、俺をジッと見つめて。

幼「大きくなったね、男くん」

男「……その、くん付けやめろよ」

小学校の頃は付けてなかっただろ。

なんか、むず痒い。

幼「ああ、そうだね。……久しぶりで、ちょっと緊張してたからさ」

まあ、そうだよな。

小学校以来だし、しかたない。

幼「えへへ、男」

男「改めて言われると照れるな」

幼「男が言えって言ったんじゃない」

男「やめろとは言ったけど、言えとは言ってないぞ」

幼「えー酷い!」

男「ははっ」

小学校の頃から変わらない性格。

それに、俺にとってコイツは――幼馴染は――

――初恋の人だ。

ここまでとさせていただきます。

次々回の更新で貼り直し完了&新規投下開始と考えています。


>>69
おそらく、そうだと思います。思い上がりかもしれませんが。



それでは。

これは一体何回再放送する気だ

男「ただいま」

妹「おかえりー」

帰宅後、一番最初に目に留まったのは、タオルを首にかけた、パジャマ姿の妹だった。

男「……ふっふっふ」

妹「あっ……い、今から寝ようとしてたんだよ!」

今はそんなことはどうでもいい。

男「妹よ、聞くがいい」

そう言って、俺はちょいちょいと手招きする。

妹「なぁに?」

俺の口に耳を傾ける妹。

まだ濡れた髪が、乾かしの甘さを表してる。

男「実はな……」

そして、次の日のことだ。

妹「お兄ちゃん起きてー!」

男「んあっ」

妹の大きな声で起こされる。

最近は朝起こす時だけ、部屋にノック無しで入っていいということにした。

そうでもしないと、俺はなかなか起きないのだ。

妹「さー、今日も張り切っていきましょー!」

男「妹……元気だな」

妹「あったりまえでしょー! だってだって~……」

クルクルと元気よく回って、

妹「幼馴染ちゃんが帰ってきたんだもーん!」

と、力強く言った。

それにしたってテンション高いな。

妹「あれれ、お兄ちゃんあんまり喜んでない?」

男「いや、喜んでるさ」

妹「ふーん?」

ただ、そんなに表に現すほどの喜びではない。

感情を表に出すタイプでもないしな。

……でもまあ、内面では結構ハイになってるんだが。

妹「それに、今日転校生が来るんでしょ?」

男「そうだよ」

妹「その転校生って、もう確実に幼馴染ちゃんじゃん!」

キャー! と大喜びの妹。

まるで自分のことのように喜んでいる。

妹「もー、お兄ちゃん優しくしてあげないとだめだよ!」

男「わかってるさ」

妹「久しぶりでお兄ちゃんしか頼れる人いないだろうしさ!」

そうなのだろうか。

あいつの社交性なら、どんどん友達を作りそうだけれど。

数年で変わったところはあまりなかった。

身長や顔はとても女性らしく、美人になっていた。

おまけに、胸もなかなか。

妹「……お兄ちゃん何考えてるの?」

男「……んっ、いやぁ、妹がいつも起こしに来てくれて俺は幸せものだと思っただけだ」

妹「だったら早く朝食食べてよね。せっかく起こしたのに遅れたらどうすんのさ」

男「そうだな……じゃああと五分」

妹「お兄ちゃん?」

男「は、はい」

厳しい妹である。

朝は基本的に和食で、ごはんとみそ汁は常である。

男「いただきます」

それだけでは寂しいので、卵焼きや鮭やらが食卓を彩っている。

量は多い。物凄く。

うん、朝からお腹がいっぱいになりそうだ。

妹「学校で起きたこと、教えてね!」

男「お、おう」

妹、幼馴染のことそんなに好きだったのか。

まあ、頼りない兄貴よりお姉ちゃんの方が良いってことなのか。

うーむ、複雑だ。

妹の家事を眺めつつ、ご飯を黙々と食べる。

それにしても、本当に量が多い。

腹がどんどん溜まっていく。

朝食う量とは到底思えない。

男「ごちそうさま」

妹「はーい。置いといていいよ」

よく出来た子だ。

男「時間は……」

妹が起こしてくれるおかげで、毎日遅刻で慌てることはない。

ただ。

男「……もう時間がない」

違う意味で慌てることが多い。

俺は早速顔を洗って、制服に着替える。

教科書は基本的に置き勉だ。

基本的にカラッポなスクールバッグを持って、

男「じゃあ、行ってくる」

妹「はーい」

玄関の扉を開けると。

女「やあ」

そこにはヤツが立っている。

早いんだよ、お前。

女「朝起きて、気づいたらここにいたんだ」

男「そりゃちょっと病気だな」

女「そうだね。無意識にくまさんパンツを穿いてきてしまった」

言わなくていい。

女「ボクが家で愛用しているパンツをまさか今日に限って穿いてきてしまうとは」

愛用しているのか。

聞きたくなかった。

女「……まあ、この件に関しては長くなりそうだから、イこうか」

男「イかねーよ」

女「おや、学校に行かないのかい?」

……もういい。

こちらが乗るとすぐに落としてくる。

なんとも悪魔みたいなやつだ。

悪魔の羽と尻尾とか生えてるんじゃないか?

女「ボクのお尻を見たりして、どうしたのかな?」

う。

無意識に見てしまっていた。

女「そんなにくまさんが気になるのかな?」

違う。

女「くまさんはボクのお尻を守ってくれるんだ」

お尻を手で隠しながら、ヤツは言った。

そんなこと聞いてねえ。

男「そういえば、連絡網回ってきたか?」

女「ああ、うん。お母さんから聞いたよ」

それがどうかしたの? と言わんばかりに頭にハテナを浮かべている。

男「いや、特に意味はないんだけどな」

女「そうなのかい? もしかして、可愛い女の子が来るかもしれないよ」

……まあ、ハズレてはいない。

女「男の子達はそういう話題をよく華を咲かせるらしいけれど、君は?」

男「さあな」

そんなこと教えん。

コイツは鋭いからな……。

女「そうか。じゃあボクとしようか?」

男「なんでお前とせにゃならんのだ」

女「ボクも可愛い娘には興味があるからね」

こいつ、バイか。

男「そんな話はせんでいい」

女「おや、興味がないのかい?」

ないわけじゃないけど。

俺は転校生が誰なのか知ってるんだから。

する必要なんてまったくない。

女「それにしても、不思議だね」

男「あん?」

女「この時期に転校なんてさ」

男「まあ、そうだな」

父親の都合って言ってたな。

小学校の頃、幼馴染が引っ越した理由は、父親の転勤だったはずだし。

女「まあ、親の都合が妥当だね」

男「そうだろうな」

そして、ヤツは間髪入れずに話を進める。

女「男の子か女の子か、どっちだと思う?」

男「え……」

女「君とボクの子ども……」

男「おい」

話がすり替わってるぞ。

ヤツは小さく咳払いをして、

女「賭けをしようか」

と言った。

……賭けって。

俺は答えを知ってるんだぞ。

この前お前に目隠しされた時同様に。

答えは決まりきっている。

女「君は、どっちだと思う?」

男「……お前から、言えよ」

女「そうかい? じゃあ……どうしようかな」

顎を擦りながら、思案するヤツ。

女「女の子、かな」

男「!」

正解だ。

女「君は、どっちなんだい?」

男「そうなったらオトコって答えざるを得ないだろ」

女「別に、思った方を言っても構わないよ」

そうは言ってもなぁ。

女「違った方はあんなことやこんなことされちゃうけどね」

どんなことだ。

女「それでは、お答えください」

クイズの司会者か

男「……オンナ」

女「ふむ。そうか。ボクと同じか」

ヤツはニコッと笑って、

女「結果が楽しみだね」

と言った。

まあ、答えはわかってるんだけど、な。

朝のホームルーム。

ツヤのあるロングヘアーを揺らしながらやってきた。

颯爽と黒板に名前を書いて。

幼「今日からよろしくお願いします」

と、幼馴染は深々と頭を下げた。

男子は周りのやつと目配せをしたり。

女子はきゃいきゃいとナイショ話をしている。

まあ。

小学校の頃も、幼馴染は異性にも同性にも人気だったしな。

女「ねえ」

隣の席から、小さく声をかけてくる。

女「どうやら二人とも正解だったね」

と、隣の席のヤツが言った。

男「ああ、そうだな」

女「おや、反応が薄いんだね」

あんなに可愛い娘なのに、と。

ヤツは不思議そうに言った。

男「いや、まあ」

すると、幼馴染と目が合う。

幼馴染「あっ」

声をあげて、俺に手を振った。

女「?」

男「……」

そして、こちらに近づいて、

幼馴染「……後ろの席、空いてる?」

男「……あ、ああ」

俺の後ろの席に座ったのだった。

幼「えへへ、良かった、近くで」

男「そうだな」

女「……」

ヤツは黙って、教科書の準備を始めた。

幼「これからよろしくね、男」

男「おう」

そして、ホームルームが終わった。

幼馴染は思った通りたくさんのクラスメイトに囲まれた。

こんなことって、現実でもあるんだな。

女「どうやら、知り合いのようだね」

男「おう」

女「じゃあ、答えは知っていたのかな?」

そうだな。

女「ふふっ、君に、あんな可愛い女の子の友達がいたなんてね」

ほっとけ。

ヤツも幼馴染も、勉強はできる。

だから授業中にちょっかいを出してきたりはしない。

ヤツは伊達メガネをかけて、真剣にノートをとっている。

幼馴染もしっかりとノートをとっている。

幼「?」

男「っ……」

見ているのがバレた。

そりゃそうか。後ろ向いてたらそりゃあバレる。

視線を戻した途中で、ヤツにニヤリと笑われた。

くそ、バレバレか。

俺も、ノートを取るか。

黒板では教師がカツカツと文字を羅列していた。

そして、呪文まで唱えてやがる。

シャーペンを持って、俺は文字を追う。耳に呪文が流れ込む。

そしてゆっくりと頭が重くなり、静かに寝息を立てた。

つまり、おやすみだ。

授業終わりのチャイムと同時に反射的に起きる。

男「んっ……」

小さく伸びをして周りを見渡す。

女「さあ、ご飯だよ」

男「……ああ」

どうやら、昼飯らしい。

今日はいつも以上に量が多かった朝食のせいか、お腹の減りがそれほどでもなかった。

ちょんちょんと、誰かが肩を叩いた。

男「ん?」

言わなくてもわかるだろうが、それは幼馴染だった。

幼馴染「わ、私もいいかな?」

と恐る恐る俺に聞いた。

俺は構わないんだが。

女「……」

ヤツは黙っていた。

男「……いいぞ」

幼「良かったー」

男「お前もいいか?」

ヤツは黙って、ゆっくりと頷いた。

幼「この人は、男のお友達?」

はじめまして、と幼はお辞儀する。

ヤツもお辞儀をするが、声は出さない。

男「中学の頃越してきたんだ」

幼「そうなんだ! だから知らないのかぁ。名前は?」

女「……女」

声小さっ……。

ウンウンと首を縦に振りながら、幼馴染は弁当をつついた。

幼「男の弁当大きいね」

男「妹が作りすぎるんだ」

幼「ふふふ、愛されてるねー」

ああ、愛で満ち溢れてるよ。

そのせいで全く残せない。

幸せ太りの可能性もあるぞ。

今でも体重が変わらないのが謎だ。

幼「私は自分で作ってるんだよ」

男「へえ」

小さな弁当には、細工のきいたおかずが入っている。

一言でいうと可愛い。

幼「女さんは?」

と。

黙ったまま弁当を食べていたヤツに、幼馴染は話を振った。

女「……自分」

小さく声を出した。

幼「へえ、女さんも作るんだ」

……というかお前、誰だ。

なんだ今の声。

初めて聞いたぞ。

中学からの知り合いなはずなのに。

今の声はなんだ。

いつもより声高かったぞ。

幼「あ、これ美味しそう。何かと交換しない?」

ヤツは目線を逸らしつつ頷く。

コイツ、本当に人付き合い下手だな。

幼「うわっ、美味しい!」

幼馴染は顔を緩ませた。

幼「これ、どうやって作るの? あ、私はこれあげるね」

女「……今度」

男「ちゃんと答えろよ」

俺の言葉にヤツはビクリと反応した。

幼「ちょっと、男。そんな言い方しなくてもいいでしょ」

うぐ。

何故か俺が怒られた。

でも、答えないコイツもコイツだろ。

なんで喋らないんだ。

いつもなら口を開けば下ネタなのに。

しかもその怯えた顔はなんだ。

あの憎たらしい笑顔はどうしたんだよ。

幼「あはは、女さんは、恥ずかしがり屋なのかな?」

女「……」

コクリと、小さく頷いた。

嘘つけ。

コイツが俺以外と喋っている所を見たことがない。

そして、今目の当たりにしたことを考えると。

コイツの社交性は皆無に近い、ということだ。

男「はぁ」

ため息を吐いてしまう。

幼「男?」

男「あっ、なんでもねー」

俺は大量の弁当を一気に口に押し込んだ。

そして、やっとこさ授業が終わった後のことである。

幼「男」

男「ん?」

幼「あのね、誰かに学校の案内してもらってって、先生に言われてたんだけど」

男「ああ、じゃあ俺がするよ」

俺に声をかけたのは、つまりそういうことだろ。

幼「あー、ごめん」

男「え?」

俺じゃないのか。

幼「あのね、女さん」

女「!」

突然の指名に驚くヤツ。

いや、お前以外にいないから、周りをキョロキョロしても意味ないぞ。

女「……?」

幼「あの、学校の案内してくれる?」

男「え、お前、コイツにさせるのか?」

幼「うん。女さんと、仲良くなりたいから」

幼馴染のヤツ。

小学校の頃から変わらず、真っ直ぐな目をしている。

男「そうか……」

女「……」

俺はヤツの肩をポンと叩いて。

男「っつーことだ」

女「困ったな」

と、苦笑した。

幼馴染きってのご指名だ。

ここはしっかりと案内しろよ。

すいません、予定より短いですが、これで……。


次回で貼り直しが終えられれば良いのですが……。

>>98
地味に修正や追加をしているので、もう一度目を通していただけたら嬉しいです。

それでは。

男「大丈夫だろうか、あいつ」

少し不安も残しつつ、久しぶりに一人で帰る。

いつもは会話して帰っている場所も、何も喋らずに帰ると、新鮮だ。

さらに、距離も心無しか遠く感じる。

男「うん」

さっさと帰って、妹と戯れよう。

妹よ、待ってろよー!!

ガチャ。

男「あれ?」

鍵が閉まってる。

男「……ま、まさか」

妹がまだ帰ってきていない……だと?

いや、それはない。

多分買い物か何かだろう。

俺はスクールバッグに入っている予備の鍵を取り出して、解錠した。

中に入るとそこには……。

男「!!!!!」

脱ぎ捨てられた妹の制服があった。

男「こここ、これは……」

俺に何をしろというんだ。

妹よ、俺を試しているのか。

男「これは……もう……」

アレをするしか、ない。

男「ちゃんとしないとシワになっちゃうぞ」

制服を畳んで、綺麗にしておいた。

いつもならちゃんとしている妹が、どうしてこんなに散らかしていたのか。

まあ、どうでもいい。

男「妹、いないのか」

妹がいないとなると、することないな。

ちょっと思考中。

……うわ、やばい、ゲームくらいしか思いつかないぞ。

男「さて、と」

ゲームをやることにした。

格ゲーは昨日やったから、いいか。

男「アクションゲーでもやるか」

スカッとして気持ちいいかもしれない。

男「うーっし、やるぜ」

このゲームはハマるが飽きるのも早い。

まあ、そのくらいがいいのかもしれないけどな。

そして、ゲームをのほほんとやっていると。

妹「お兄ちゃん、帰ってきてるのー?」

と、下の階から可愛い声が聞こえた。

愛しのマイシスターである。

男「おーう、おかえり」

妹「ただいまー幼馴染ちゃんは?」

男「知らん」

妹「えー! 今日一緒に帰ったりしなかったの!?」

と言われても。

階段を降りて、妹の場所へ。

妹はエプロンを着けているところだった。

男「幼馴染は前の家とは違うから、多分一緒には帰れないんだ」

妹「え、そうなんだ……」

男「前みたいにはいかないさ」

妹「うー……でも私、幼馴染ちゃんに会いたい!」

そんなこと言われてもな。

あ、でも、この時間なら案内はもうとっくに終わってるだろうし。

電話してみるか。

男「じゃあ、電話かけてやるよ」

妹「ほんと!?」

可愛い妹のためだ。

公園で会った昨日、その時についでに教えてもらった電話番号。

通話ボタンをプッシュ。

男「……」

妹が目の前でドキドキしながら見つめている。

俺もドキドキするぞ、妹。

妹「あ、あのさ、お兄ちゃん」

男「ん?」

妹「制服畳んでくれて、ありがとね」

ペコッと小さく頭をさげた。

ちゃんとお礼も言える、良い子に育った。

お兄ちゃんは嬉しいぜ。

さて、そろそろ出るんじゃないかな……。

幼『もしもし?』

男「おう、幼馴染か」

幼『いきなり電話なんて、どうしたの?』

男「いや、実は妹がお前と話したいって言うから」

幼『あっ、そうなの! 私も妹ちゃんと話したい!』

男「じゃあ代わるよ。ほら」

妹は嬉々として電話を持つと、

妹「お、幼馴染ちゃん!?」

と、上ずった声で言った。

別に妹の電話を待っている意味もないので、俺は部屋に戻ることにした。

それにしても、案内はどうだったんだろうか。

あまり気にしていなかった感じだし、一応つつがなく終わった、のだろうか。

階段を上っている途中、インターホンが鳴った。

男「ん?」

今妹は通話中なので、俺がインターホンの受話器をとった。

男「はい?」

声をかけると。

女『ボクだ』

いつもの声が、受話器から聞こえた。

男「どうした?」

女『ちょっとだけ、あがらせてもらってもいいかな?』



いきなりだが、断る必要もない。

男「ああ、いいぞ」

そういって、受話器を置いて、玄関に向かった。

にしても、急だな。

扉を開けると、そこにはヤツがいて。

少し、目が赤かった。

男「お、おい、どうした?」

女「あはは……」

ヤツはペコッと頭を下げた。

女「お邪魔します」

男「あ、ああ」

いつもとは違って、しおらしい感じだ。

とりあえず、俺の部屋に行く。

……なんだか、だんだん女子を入れることに抵抗が無くなってきている自分が怖い。

でもまあ、コイツには、ってだけだけど。

男「で、どうしたんだよ」

女「いやあ、あはは……」

笑顔に元気がない。

なんというか、苦笑という感じだ。

女「やっと、肩の荷が下りた感じでさ」

と、ヤツはいきなりベッドに倒れこんだ。

お前、人ん家のベッドに平気で乗るな。

男「はは、幼馴染の相手は疲れるってか?」

コイツにも苦手なものってあるんだな。

女「疲れるわけじゃないよ。ただ……」

男「ただ?」

女「彼女には、ボクの持っていないものを持っているから」

男「ふうん?」

そりゃ、胸も身長も幼馴染には勝てないよな。

女「む、どこを見ているのかな?」

男「別に」

女「『別に、お前が可愛いから』って……大胆だなぁ」

男「違う」

女「ふふっ」

やっと。

ヤツはいつもの笑顔に戻った。

女「今日は許可をもらって中に入れさせてもらったことだし」

男「なんだ?」

女「ボクも、くまさんを見せようかな」

男「見せんでいい」

女「でも、朝から気になっていただろう? それに、ボクは君にパンツを見ていいと許可したよ」

ただボーっと見てただけだ。

それに、許可なんかいらん。

というか、お前が見せたいだけじゃねえのか?

男「別に気になってねえよ」

女「じゃあ、ボクのお尻に興味が!?」

もっと悪い方向に進んだだと!?

女「ボクの桃尻にむしゃぶりつきたいというんだね……」

自分で桃尻って言うな。

女「でも、ボクまだ蒙古斑があるんだ」

男「嘘だろ!?」

女「うん、嘘だ」

嘘かよ!

女「そうか……君はおっぱい好き以外にも、お尻好きもあったんだね」

尻を振るな。

女「そんな大好きな君の部屋で、ケツだけ星人をやってもいいかな?」

男「やめろ」

お前は五才児か。

男「そんなことより、だ」

女「ん?」

コイツに、聞いておかないといけないことがある。

男「案内は、どうだったんだ?」

女「案内かい? ちゃんとしたよ」

ヤツは意外にも普通に答えた。

女「その間、色々なことを聞かれたけれどね」

男「ふーん」

まあ、どんなことを聞かれたかは聞かないでおこう。

男「それで、仲良くなれそうか?」

女「彼女自身、とても素敵で可憐で、可愛らしくて、美しい人で――」

一息置いてヤツは言う。

女「――なんだか、敵わない気がした」

敵わない?

どんな表現だよ。

女「ふふっ、なんだか理解に苦しむ顔をしているね」

ヤツは無断で俺のベッドに横になった。

女「理解しなくてもいいさ。多分、一生わからないだろうから」

男「……」

なんだよ、それ。

女「ねえ」

男「ん?」

女「彼女からも、色々と聞いたのだけれど」

彼女ってのは。

多分幼馴染のことだろう。

女「君と彼女は、どんな関係だったんだい?」

コイツ、ストレートに聞くなぁ。

男「別に、普通で平凡で一般的な、普遍的なオサナナジミだ」

女「出会いは?」

男「……幼稚園」

女「クラスは一緒だったのかい?」

男「小学校は六年間同じだ」

急にグイグイ来るな、コイツ。

女「よく一緒に星を眺めていた?」

男「っ……まあな」

幼馴染のやつ、色んなこと教えすぎだろ。

女「……君は、彼女のことが好きかい?」

男「え……」

いきなり空気が変わったのは、言うまでもない。

穏やかに昔をほじくり返していた感じではなく。

鋭く、それでいて鈍い、なんとも言えない空気だ。

男「ああ、好きだ」

……でも。

男「……小学校の頃はな」

女「ふうん」

ヤツは意地悪そうに微笑んだ。

なんだか、気味が悪い。

男「こ、この話は終わりだ。もう答えないぞ」

女「うん。ボクももう質問はしない」

ヤツは更に、俺の枕に顔を埋めて。

女「あー……凄い」

と、のたまった。

男「おい、人の枕の臭いを嗅ぐな」

女「臭いじゃないよ、匂いだよ」

良いニオイなわけねえだろ!

男「やめろ!」

最近洗ってないんだ!

女「す、す……素晴らしい! くんかくんか!」

男「変な擬音を使うな!」

女「ああああ、嗅覚が君に満ち溢れていく!」

気持ち悪い表現!

男「離れろってお前!」

女「も、もうすこし」

ベッドにいるヤツを引き剥がそうとした刹那。

俺は足を滑らせて転んだ。

そして、ヤツの上に、乗っかってしまった。

女「あっ」

男「す、すまん……」

女「やれやれ、性に正直だなぁ」

そんなつもりじゃない!

まるで押し倒したような形になる。

というか、コイツが俺の方に顔を向けたせいだ。

女「近くで見ると、なんだか恥ずかしいね」

ヤツは唇をペロリと舐めた。

なんか、危険な感じだ。

女「こんなところ、妹くんに見られたらどうなるだろうね」

男「ぐっ……」

俺はすかさずヤツの上から離れた。

男「事故だ事故」

女「そうか、それなら良かった」

ヤツはスカートをパンパンと払って。

女「ボクにも心の準備が必要だからね」

と。

無邪気に笑った。

男「どういう意味だよ」

なんか、準備ができてたらいいみたいじゃねえか。

……って、何考えてんだ俺は。

女「それに、君がボクを襲うことなんてできないだろうしね」

当たり前だ。

いきなりそんなことできるか。

いや、いきなりじゃなくてもしねえけどな!

女「ね、さくらんぼくん」

……こんの野郎っ!

くそ、悪かったな……。

女「安心してくれ、ボクも処女だ」

男「聞いてねえ」

女「あ……訂正」

訂正?

ま、まさか

女「ボクは美処女だ」

男「自分で言うな」

あとなんだその単語。

女「そういえば、十月の行事についてなのだけれど」

話を変えるのが上手いんだか下手なんだか。

男「なんだ?」

女「今年はハロウィンパーティーもあるらしいよ」

男「ハロウィンパーティー?」

女「うん。なんでも生徒会が催すだとか」

男「へえ……」

女「じゃあ、ボクはこの部屋で催そうかな」

下半身を震わすな。

男「漏らすなよ」

女「ば、バレた!?」

バレバレだろ。

あと、人の部屋で催そうとするな。

女「なんてね、実は別にしたいとは思ってない」

男「本当か? じゃあ俺が今から長時間トイレにこもっても平気だな?」

女「それは困るなぁ」

男「……行ってこい」

女「うん。……あっ、別に長くても何も言わないかい?」

なんでそんなこと気にしてんだよ。

男「別に」

大くらい誰でもするだろ。

女「喘いだらごめんね」

男「お前人ん家のトイレで何するつもりだよ!?」

女「な、ナニも」

ナニもじゃねえんだよ!!

女「と、とりあえずトイレに行かせてくれ」

男「ああ……あんまり長く居座るなよ」

女「ビデで感じるお年頃なんだ」

知るかよ!!

男「……はぁ」

あいつ漏れそうならもっと顔に出せよ。

なんでずっと笑ってんだよ。

汗も全然垂れてた感じしなかったし。

まあ、下半身は見事に震えてたけど。

男「……」

待つこと数分。

……長い。

あいつまさか……。

だからといって、アイツもオンナだ。

オトコの俺に「まだか?」なんて言われたくないだろう。

男「……にしたって」

遅いよなぁ。

よし、トイレの前まで行こう。

どうであれ、ちょっと長いしな。

トイレで居眠りなんてことはないと思うけど。

男「……」

トイレの前までやってきた。

ノックをしようとした時、流れる音がする。

そして、トイレのドアが開く。

女「おや、出迎えなんてしなくても良かったんだよ」

タイミングが良すぎるだろ。

男「お前、長かったな」

女「あはは、ちょっと考え事をね」

本当かよ。

男「てっきりしてるのかと思ったぞ」

大きい方を。

女「あはは……喘ぎ声は抑えたはずなんだけどなぁ」

そっちじゃねえよ!

男「そろそろ晩飯時だけど、食っていくか?」

女「えっ、いいのかい?」

男「ああ、その方が妹も喜ぶだろうし」

女「それじゃあ……」

その時だった。

妹「お兄ちゃーん」

男「んっ、なんだ?」

妹「今から幼馴染ちゃんが来るからー!」

と、妹は言ったのだった。

更新遅れて申し訳ありません。

SS速報だと時間を気にせず書けるので、ついついゆるゆるとしてしまいます。

貼り直しまだ終わってませんが、これで。

ごめんなさい。それでは。

妹「さっき話してたら、急に来てくれることになったの!」

喜びに溢れる声色を聞いて、ヤツはフッと一笑した。

女「じゃあ、ボクはお暇させてもらうよ」

男「えっ……」

女「客人が二人もいたら、困るだろう?」

ヤツは髪を一度解き、ポニーテールにしなおした。

さっきよりも、綺麗にまとまっていない気がする。

女「幼馴染さんによろしく」

男「……ああ」

俺の部屋に置いていたスクールバッグを持ち、ヤツは階段を下りていった。

俺も、一緒に下りる。

女「君の家にいると、ついつい時間を忘れてしまうよ」

男「そうかい」

俺も、お前がいると異次元に飛ばされた気持ちになる。

玄関まで行くと、ヤツは手を振って。

女「ここまででいいよ。外まで見送らなくても」

男「けどな……」

外まで見送らないと、妹に色々と言われるんだ。

男「ちゃんと見送らせろ」

女「しょうがないにゃあ……いいよ」

どっから覚えてきた。

妹「お兄ちゃん何突っ立って……あっ、女さん!」

女「やあ」

妹「ごめんなさい! 私、電話してて……」

女「いや、気にしなくてもいいよ。そういう時もある」

妹は深々とお辞儀をしたが、ヤツは軽くあしらった。

女「それでは、お邪魔しました」

ペコッと軽く頭を下げて、ヤツは扉を開けた。

そこには。

幼「び、ビックリしたー……」

幼馴染がいたのだった。

幼「あ、あれ? 女さん?」

女「……お邪魔しました」

男「お、おい待っ……」

物凄いスピードで、ヤツは帰っていった。

パンツは、見えなかった。

幼「え、えーっと……?」

幼馴染は首を捻って、不思議そうな顔をした。

無理もない。

誰だってそうなるよな。

妹「幼馴染ちゃーん!」

間髪入れずに、幼馴染に抱きつく妹。

幼「妹ちゃん!? うわー! 大きくなったねー!」

妹をよしよしと撫でる幼馴染。

妹「うわー幼馴染ちゃんのにおいだー! 変わってない!」

幼「ええ、そんなの覚えてたの? なんだか恥ずかしいなぁ」

こうやってみると、姉妹みたいだな。

幼「あ、来たよ、男」

男「おう」

妹「幼馴染ちゃん、今日はご飯食べてって!」

幼「ええっ、でも……」

妹のキラキラ光線を受けてやられないやつはいない。

幼馴染は、どうやら耐えられなくなったようで、

幼「わ、わかった! じゃあお母さんに連絡するねっ」

妹「やった!」

早速取り出して、メールを打ち始めた。

……電話じゃないんだな。

まあ、幼馴染の母さんは寛容な人だし、メールでもいいのだろう。

というか、こうなることもわかってるかもしれないな。

幼馴染はメールを打ち終わり、送信。

「これでよし!」とつぶやいた。

幼「何を作るの? 私も手伝わせて!」

妹「えーっとねー……」

ハッ、と俺を見て妹は頬を膨らませた。

妹「お兄ちゃんは上に行っててー!!」

男「わ、わかったよ」

どうやらオトコの俺は除け者らしい。

非常に悲しいが、トボトボと自分の部屋に向かった。

それにしても。

男「……さっきのアイツ……」

幼馴染を見るなり、走り出した。

男「……何か、あったのか?」

一応、あとで幼馴染にも聞いてみるか。

まあ、幼馴染が何かするとは思えないけども。

もちろん、アイツも。

飯ができるまでの間、俺は漫画を読んでいた。

大分前に妹から借りた少女漫画。

へえ、少女漫画も読んでみると面白いもんだ。

スイスイ読んで、読み終えた。

そして漫画を閉じた瞬間、

妹「お兄ちゃーん!」

幼「できたよー」

と、二人の姉妹からのコールが来た。

姉妹ではないが、本当に息ぴったりだな。

というわけで。

食卓に行くと。

男「……なんだこれ」

食卓に所狭しとたくさんの料理が並んでいる。

幼「張り切っちゃったね」

妹「うん、腕によりをかけて作ったよ!」

男「……これ、みんなで食える分か?」

妹「あー、私達はちょっとだけ食べさせてもらえればいいから!」

幼「食べてくれる人の笑顔が見たいだけだもん」

「ねー」と。

二人合わせて言っている。

五人前はないか、これ。

妹「幼馴染ちゃんの分よそうねー!」

幼「わー、ありがとー! じゃあ私は妹ちゃんの分~」

きゃいきゃいするのはいいけどな。

男「お、俺の分は~?」

妹「はい、これ全部!」

幼「お口に合うかわかんないけど」

いや、待て待て。

お前ら合わせても一人前にもなってねえよ。

男「へ……これ全部?」

妹「うんっ」

腹が爆発するぞ。

最初は美味しくてガツガツ食えた。

しかし、朝食昼食の蓄積分で俺には限界が近づいていた。

やばい。これはリバースする。

幼「だ、大丈夫男?」

大丈夫じゃない。

妹「えへへ、お兄ちゃんは完食することだけが取り柄だもんねー」

残しづらくなった。

でも、取り柄って言うな。

男「う、うおおおお!」

愛しの妹のため、俺は水をフルに活用して飯を流し込んだ。

何度も嗚咽を繰り返したが、なんとか全てを食うことができた。

ただ、もうこれ以上中に入れたり衝撃を加えられたら。

間違いなく戻す。

幼「わー、お粗末さま!」

男「ご、ごちそうさま……」

幼馴染と妹に飯を作らせるのは危険だと、俺は気づいた。

まあ。

今更遅いけどな。

妹「よーっし、じゃあ私はお皿を洗いまーす!」

幼「あ、私も」

妹「いいのいいの! お兄ちゃんの相手してあげて!」

本当に、何から何まで母親みたいになってるな。

幼「そ、そういうなら……えっと、男、大丈夫?」

幼馴染はイスに座り直して、俺の様子を伺った。

男「大丈夫じゃない」

幼「あはは、無理しなくてもいいのに」

じゃああんな量作んないでくれよぉ……。

男「出されたもんは食べる主義なんだ」

というか、妹に『完食することだけが取り柄』とか言われちまったし。

めちゃくちゃ低評価を受けていて正直沈んでいる。

幼「そういうとこ、やっぱり変わってないね」

男「そうか? お前も人の手伝いしたがりは変わってないな」

幼「あはは、そうかもね」

男「で、どうだったんだ」

幼「なにが?」

男「案内、アイツにしてもらっただろ」

幼「うん、してもらった」

ニコッと満面の笑みを浮かべる幼馴染。

男「アイツ、ちゃんとしてたか?」

幼「結構ちゃんとしてくれたよ」

へえ。

あの感じだと、

女『……ここ、職員室』

とか指差して、最低限のことは言わない気がしてたんだが。

幼「結構しっかりと説明してくれて」

男「そうなのか?」

幼「そこであった事件とかも教えてくれたよ」

……アイツ、なかなかやるな。

幼「あとはね、男の話もしたよ」

男「俺の?」

やっぱりしたのか。

幼「男ってさ、私がいなくても大丈夫だったんだねー」

男「どういうことだ?」

幼「だって、小学校の頃よく泣いてたじゃん」

うぐ。

男「よ、よく覚えてないな……」

幼「嘘ー! すぐ泣いてたよ!」

男「……それが、なんの関係がある?」

幼「私、引っ越すとき心配だったんだ、男のこと」

無駄な心配をされていたようだ。

なんだよそれ。

幼「小学校がだんだん上がっていくに連れて、どんどん泣かなくなってたけど」

そう言うと一旦、幼馴染はコップに入ったお茶を飲んだ。

幼「私が引っ越す時に、泣いてたでしょ?」

そんなこともあったような、なかったような。

男「……覚えてない」

幼「それでね、いっつも私男が泣いたらよしよししてたから、『私がいなくなったらどうなっちゃうんだろー』って思ってて」

恥ずかしい。

幼「でも、そんなことなかった。男は、女さんと一緒にいて、少し強くなったみたい」

男「……」

強くなった、と言えるのだろうか。

まあ、下ネタへの反応は早くなった。

それは、嫌な成長だ。

幼「女さん驚いてたよ。『泣いているところなんて見たことない』ーって」

男「そうかい」

幼馴染とよく遊んだことは覚えているが。

よく泣いていた記憶はすっぽ抜けている。

人間、都合の悪いところは忘れちまうもんだな。

幼「あの頃の泣き虫さんじゃなくなったんだねー」

男「うるせー」

妹「へー……」

妹がニヤニヤしながらこっちを見ている。

くそ、聞かれた。

幼「女さんには最近の男のこと教えてもらって、私は昔の男のこと教えてあげたんだ」

男「なんだその生産性のない話題」

幼「あるよ! あるある!」

男「……?」

まあ、共通の話題ってことではあるのか。

幼「なんかさ、女さんって凄く知的で、物静かな娘だよね」

俺のイメージと齟齬が有り過ぎて誰かわからん。

頭が良いのは認めるが。

物静かはダウトだ。

わかってないなぁ、幼馴染は。

俺もコップに入っているお茶を飲む。

幼「でね、男は、女さんみたいな人が好きなの?」

お茶を吹き出してしまった。

男「な、なんでそんな話になる!」

お茶以上と腹ン中のまで吹きそうになったぞ!

幼「えー、でもすっごく仲良さそうなんだもん」

男「いや、そりゃ中学から一緒なのは、俺とアイツしかいないし」

幼「結構な進学校なのに、よく入れたね、男」

うるせえ。

そういえば後輩って勉強できるんだろうか。

……いないやつの話をするのはやめておこう。

男「俺の努力が実を結んだのさ」

妹「女さんのおかげのくせに、よく言うよ」

それは言わないでくれよ、妹。

幼「へえ。今も勉強教えてもらってるの?」

男「ああ、まあ」

幼「へー? やっぱり仲良しじゃん!」

男「……」

まあ、否定はしないでおこう。

幼「それでなんだけど」

男「ん?」

幼「修学旅行の班とかって、決まってるの?」

そういえば、まだ決まってなかった気がする。

なにしろ、テストが終わった後のことだし。

男「いや、まだ」

幼「じゃあさ、男と女さんと私で一緒になろうよ! あと誰か二人くらい誘ってさ!」

思い出した。

幼馴染は、こういうことはテキパキやるタイプだったな。

委員長やってたくらいだし、当たり前か。

男「そうだな」

どうやら話を聞くに、アイツと仲良くなったみたいだし。

妹「ええっ、お兄ちゃん修学旅行行くの!?」

男「行くよ」

妹「……わ、私を一人置いていくつもり!?」

そんな悲しそうな目をしないでくれ。

男「幼馴染……俺は今行こうか行くまいかちょっと揺さぶられてしまった」

幼「男、私もだよ……!」

軽度のシスコンを患っているので、しかたのないことだ。

幼馴染も……いや、シスコンとは言わないけどな。

もうすぐ貼り直しも終わりです。


それではまた。

そして。

幼馴染が転校してきて、ゆるやかに九月が過ぎ去った。

木の葉の色は赤く色づき、衣替えの移行期間と共に、十月が到来したのである。

テスト週間に入ったのであった。

女「テストはもうすぐだ。これからドピュ……ドピュ……教えていくからね」

男「ドピュドピュ教えてもらうのは嫌なんだが」

女「じゃあ、パンパン?」

お前の擬音センスは本当に酷いな。

あと腰を前後に動かすな。

男「あれだ、ドンドン教えてくれ」

女「ドンドンって……叩かれたいのかい?」

太鼓じゃねえんだから。

女「生憎、ボクにはそんな趣味は持ち合わせていないよ」

むしろ叩かれたい。

と、ヤツは口走って。

女「……おっと、今のはカットで」

できるかよっ。

テレビじゃねえんだぞ。

女「それじゃあ、今回のテスト範囲なんだけれど」

と言って、ヤツは小さな紙を取り出した。

男「え、なんでお前そんなの持ってんだよ」

女「先生が口頭で言っていたから、メモしていただけだよ」

クソ、こういうとこだけは優等生だ。

女「……もしかして、範囲がわからないのかな?」

男「……」

まったくわからん。

男「まあなんだ、とりあえずその紙をだな」

ヤツの持っている紙を取ろうとしたが、上にあげて。

女「だーめ☆」

と、いたずらっぽく言った。

ムカつく。

女「簡単に見せるほど、ボクは甘くないよ」

男「なんだよ急に」

くれないのかよ。

女「桃尻だけど甘くないよ……むしろしょっぱい」

手を舐めるな。

それに全然うまくねえし。

桃尻は甘くないじゃないのか。

主に桃だろ甘いのは。

それに、桃尻って別に『桃みたいな尻』って意味でもないからな。

……ボケに真剣にツッコミを入れる必要はないな。

男「見せてくださいお願いします」

女「それじゃあ『三回回ってニャンっ』して」

なっ……。

女「してくれたら、見せてあげるよ」

と。

小悪魔のような微笑みを浮かべながら言いやがった。

女「ふふっ」

短いポニーテールを手で遊ばせながら笑ってやがる。

男「……」

この際仕方ない。

コイツの前でなら別に大したことでもない気がしてきた。

俺は立ち上がって、一回転、二回転。

そして、三回転――

幼「こんにちはー」

男「にゃんっ!!」

と、叫んだのだった。

幼「へ!? あの……あれ!?」

男「……幼馴染」

タイミング悪すぎる。

幼「え、えーっと……」

妹のやつ、また勝手に客をあげたな。

妹よ、俺に何も言わずに客をあげるの、どうにかできないもんかね。

幼「男がテストの勉強困ってるかなーと思って来たんだけど……」

男「……」

俺は顔を赤くしながら座る。

幼「……あ! 女さん!」

どうやら今、ヤツに気づいたみたいだ。

女「……」

小さく一礼。

幼「放課後に女さんと『二人で勉強しよう』とか言ってなかったから、心配できたんだけど」

なんだ、私必要無かったね。

と、幼馴染は苦笑した。

男「いやあ、そんなことないぞ幼馴染!」

いい時に来てくれたな!

タイミングは悪かったけど!

男「こいつがさ、テストの範囲見せてくれなくて困ってるんだよ」

幼「え? そうなの?」

男「幼馴染もチェックしてるだろ? 範囲」

幼「え、えーっと……」

これで勝てる!!

幼「私、範囲とかあんまり考えずに勉強してるから、いちいち書き留めてないよ?」

へ?

女「……ボクも」

なっ!?

幼「もしかして、女さん、男のために範囲チェックしてあげてるの!?」

そ、そんなことないだろ!?

女「……」

う、頷いてやがる……。

なんだよ……すげー迷惑かけてるじゃん、俺……。

幼「うわうわー、男は本当に酷いねー!」

男「う、うるせえ!」

というかなんで今回に限って範囲を教えるのを渋ったんだ。

いつもは簡単に出してくるのに!

なんか、恥ずかしくなる結果になっちまったじゃねえか!

女「……早くやろう」

男「あ、ああ……」

というかそれよりも。

お前、キャラ変わりすぎだっつーの!!

いつもならここで、

女『さあ早くヤろう!』

とか言いところなのに。

黙々と勉強を始めやがった。

この状態のヤツは、なんか話しかけづらい。

だから。

男「……幼馴染」

幼「なに?」

男「ここ、教えてもらえるか?」

必然的に、幼馴染に教えてもらうことになる。

幼「うん、いいよ」

まあ別にいいよな。

三人で勉強するんだから、どっちかに聞くのが当たり前なんだし。

今のアイツは、どうも苦手だしな。

男「ふむふむ」

幼「……ってことで、こうなるんだよ!」

男「なるほどな。わかりやすくていいな」

ちょっと、ちょっかいを出してみるか。

男「誰かさんより、教え方上手いよなぁ」

チラリと見てみる。が、

女「……」

ヤツは、我関せずといった感じ。

逆に腹が立つ。

って、俺はなぜコイツにちょっかいを出そうとしてるんだ。

今は目の前の勉強に集中だ。

幼「……んん?」

首をひねる幼馴染。

幼「ねえねえ女さん」

女「?」

幼「これ、わかる?」

幼馴染にもわからない問題があるんだな。

女「……」

ヤツは問題文を読むと、サッサと文章を書き上げた。

そこには質問された問題の解説がびっしり。

幼「ふんふん……なるほど! 女さんありがとう!」

女「どういたしまして」

……仲良いな、こいつら。

どうやら、学力的にはヤツの方が少し上のようだ。

幼「じゃあじゃあ、ここは?」

女「……」

幼「な、なるほど!」

俺には理解できない次元の話をしている。

まあ、いいさ。

俺は目の前のことに集中すればいいんだ。

短いですがここまで。

毎度区切りの良いところで終わらせているので、長くなったり短くなったりしています。

次回貼り直し終了です。


それでは。

わからないことがあれば幼馴染に聞いて。

範囲はヤツにもらった紙を参照しつつ。

テスト週間は勉強詰めだった。

その結果――。

男「……うおおおお! オール八十点!」

自分としては、出来過ぎなくらいの結果だった。

女「ふふっ、おめでとう。明日は太陽が降ってくるね」

一大事過ぎるだろ、それ。

幼「女さん凄い! 全部満点!!」

女「……」

ペコッと頭を下げた。

もっと喜べよ。

幼「私も満点あるけど、全部じゃないや」

もういやだこの超人ども。

短期間でやるやつと、コツコツやってるやつの差なのだろうか。

納得がいっちまうのがまた情けない。

テストは何の問題もなく終了し、次はみんなが待ちに待った、修学旅行の話である。

約束通り、俺とヤツと幼馴染は一緒の班になった。

幼馴染目当てでやってきた男子二人と、女子が一人。

合計六人の班ができあがった。

幼「修学旅行♪ 修学旅行♪」

ルンルン気分の幼馴染。

女「……」

伊達メガネを控えめに直しながら、うつむいているヤツ。

なんか、真逆な二人だな。

ルートに関しては、みんなの行きたいところを集結させて、幼馴染がそれをまとめた。

凄いな。ちゃんと遅れた時のケースも考えられている。

こりゃ、修学旅行は面白くなりそうだ。

女「ボクは、そう思わない」

と。

帰り道に、ヤツはそう口にした。

男「なんだよ」

他人がいる時と同じような声。

何か不満があるのか。

女「……ボク、いる必要があるかな?」

どういうことだ?

何言ってるんだコイツ。

男「急に変なこと言うな」

女「変じゃないよ」

至って真面目さ。

と、微笑みながら言った。

いや、変だろ。

女「できれば、君とは違う班になりたかったかな」

男「……」

どういうことだよ。

女「ほら、いつも一緒にいるんだから、修学旅行くらい離れてもいいかなって」

そんなことしたらお前。

誰とも話さねえじゃねえか。

いや、でも。

幼馴染は、二人の時は話をしてたって、言ってたな。

案外、複数人数の時だけがダメなのか?

男「まあ、もう班は決まったんだし、変えられねーよ。我慢しろ」

女「そうだね」

でも、

女「欠席という方法も、あるよね?」

と、ヤツはハッキリと言った。

男「……は?」

女「顔が怖いよ。冗談に決まってるじゃないか」

……いや。

コイツは、冗談で言ってなかった。

いつもなら本当か嘘かよくわからないけど。

今のは、本気で言っていた。

それだけは、よくわかる。

長年一緒にいるから、わかるのだろうか

やれやれ。

欠席なんて。

俺が絶対にさせない。

男「来いよ、絶対」

女「……さあね」

肩をすくめて、苦笑した。

イライラとした気持ちで帰宅する。

妹「お、おかえり……?」

怒りをあらわにする俺に、妹は、何か嫌な予感を感じているようだ。

妹「どうしたの?」

恐る恐る、俺に声をかける妹。

妹「まさか、テストの点数……やばかった!?」

男「いいや、テストは良かった」

妹「そっかー」

多分、妹は。

『テストについて』の怒りではないことに、気づいている。

ただ、そのことについては聞かない。

大人な妹だ。

男「飯は?」

妹「まだ作ってないよ。あとのお楽しみに♪」

鼻歌を歌いながら、妹はキッチンに向かった。

エプロンも随分、様になるようになったな。

妹の成長に和んだ後、俺は自分の部屋に向かった。

修学旅行はもうすぐだってのに、アイツはなんであんなこと言ったんだ。

男「はぁ」

そりゃあ、ため息も吐きたくなる。

ベッドに横たわって、もう一度ため息。

男「……なんだってんだよ」

アイツ、何が面白くないってんだよ。

決定的な何かがあるのは確かだろう。

だが、それはわからない。

幼馴染とは仲が良いみたいだし。

他のメンバーだって別段嫌なやつがいるわけでもない。

強いて、他に何かがあるとすれば……。

男「……俺、か?」

確かにヤツは、

女『できれば、君とは違う班になりたかったかな』

と言っていた。

男「……」

俺は、何かアイツにしたのか。

しかし、ヤツが言ったことはほぼ本当の気持ちの発言だった。

長年一緒にいるから、わかる。

男「……どうすりゃいい?」

こんな気持ちのまま、修学旅行を迎えたくない。

誰かに相談できればいいんだが。

妹に話すようなことじゃないし。

幼馴染に言うとややこしくなりそうだ。心配性だしな。

男「……」

ここで後輩の名前を出ないのは可哀想だな。

あ、それにだ。

後輩は一週間遅れてテストがあるんだったな。

修学旅行の都合で、俺達はテストが早い。

テスト中に迷惑だから、電話するのは忍びない。

……んー、なんか無理矢理理由を作ってる感じだな、俺。

後輩と真面目な会話をしたことがないからだろうなぁ。

などと考えていると。

携帯が、鳴り出した。

男「どっかで聞いてるのか?」

と、言いたくなるくらいのタイミングで、後輩からの電話だった。

男「……」

通話ボタンを押す。

男「もしもし」

後輩『ぐすっ……も、もしもし……』

!?

なんでいきなり泣いてるんだ?!

男「お、おい後輩!?」

後輩『せ、先輩ぃ~……ううっ』

男「なんでそんな鼻声なんだ!?」

後輩『あう……あの……今、私……』

そのあと鼻をすする音が数秒続いた。

男「ど、どうしたんだ?」

後輩『私……今、先輩の家の前いるんです』

へ?

男「な、なんで……?」

カーテンを開けて、窓から家の入口を見る。

眼をこすっている後輩がそこにはいた。

窓を開けると、後輩が気づいたようで、声を上げた。

後輩「『あ、先輩!』」

本当の声と電話の声が交じる。

男「ちょ、ちょっと待ってろ!」

携帯の通話を消して、俺は部屋を出て階段を下りた。

外に出ると、後輩は泣いて赤くの顔をさらに赤らめて、

後輩「先輩ぃ……」

と、鼻声で言った。

男「急にどうしたんだ? しかも家の前に来るなんて」

ちょっと怖かったぞ。

もしこれが知らない人からの電話だったらと思うと、ゾッとする。

外に出ると、後輩は泣いて赤くの顔をさらに赤らめて、

後輩「先輩ぃ……」

と、鼻声で言った。

男「急にどうしたんだ? しかも家の前に来るなんて」

ちょっと怖かったぞ。

もしこれが知らない人からの電話だったらと思うと、ゾッとする。

後輩「あの、先輩……そろそろ修学旅行に行きますよね?」

男「ああ、そうだけど」

後輩「ですよね……」

彼女は、ボロボロと涙をこぼし始めた。

男「だから、どうしたんだよ? そんなに泣くことがあるのか?」

後輩「だ、だって……先輩に一週間も会えなくなるなんて……嫌ですっ!」

と、鼻水を垂らしながら、後輩は言った。

男「後輩……」

可愛いこと言うなぁ。

後輩「あぅ……だから、今日会っておこうと思って」

男「テスト期間入っちまうもんな」

後輩「はい。私、あんまり成績良くないです……」

男「そんな感じだな」

後輩「ひ、酷いですよー!」

出来そうなイメージが無いよ、後輩には。

後輩「よーっし、先輩に会えたし、この一周間乗り切ろうと思います!」

男「おう。何かあったら、電話してもいいからな」

後輩「え、電話でしてもいいんですか!?」

『で』の意味が気になるが、スルーしておこう。

男「そうだ、後輩」

後輩「はい?」

俺は、今。

後輩に相談をしようとした。

しかし、喉元まで出かかって、

男「いや、なんでもない」

言うのをやめた。

後輩「な、なんですか!? 途中で抜いちゃうなんて酷いです!」

下ネタを隠す気はないのか。

男「いや、後輩に言うような話じゃないから」

後輩「うー……納得いかないです」

頬を膨らませて、胸の前で腕を組んだ。

胸がデカいと、腕を組むの大変そうだな。

後輩「あー♪ 今先輩おっぱい見ましたね?」

うぐ。

後輩「えっちな先輩です~」

男「う、うるさい」

後輩「先輩だったら触ってもいいですよ?」

男「馬鹿野郎」

そんなこと、できるか。

後輩「……えへへ、それじゃあ私、帰ります。外に出しちゃって、ごめんなさいでしたっ」

男「いいよ、そんなこと。……送って行こうか?」

後輩「嬉しいですけど、もう暗いですし、迷惑になっちゃうので大丈夫です!」

男「そうか。じゃあ、気をつけてな」

後輩「はい、ありがとうございます!」

彼女はペコリと頭を下げて、

後輩「おやすみなさい!」

と、満面の笑みを見せた。

男「おう、おやすみ」

後輩は嬉しそうに手を振って、家の前を後にした。

次回修学旅行開始です。


それでは。

全くお前らときたら...(俺もだ)

全くお前らときたら...(俺もだ)

そして、数日後。

修学旅行当日を迎えた。

男「ん……ふぅ」

いつもなら起きない時間なのに、アラームも妹も無しに起きることができた。

妹「お兄ちゃん、朝……あ、もう起きてる」

男「おはよう」

妹「うん、おはよう」

どうだ、今日はいつもと違って、しっかり起きたぞ。

妹「修学旅行だからってワクワクし過ぎじゃないの~?」

うぐ。

まあ、それが作用しているのは間違いないな。

男「妹よ」

妹「なぁに?」

男「これから一週間俺は家を離れるが……悲しまないでくれ」

妹「うん」

……へ?

反応薄すぎません?

妹「お兄ちゃんの分のご飯作んなくていいのはラッキーだよね!」

ええええ!

男「そ、そんなこと言わないでくれよ」

むしろ俺が悲しくなってくるぞ!

妹「お兄ちゃんがいるとどうしても食費が凄くなっちゃうからさぁ~」

それはお前が作り過ぎるからだろ!

……とは、言えない。

男「そ、そうだな……はは」

なんか、悲しくなってきた。

妹「まあ、私のことは気にしないで楽しんできてよ!」

男「わ、わかったよ……」

いいもんいいもん!

妹のことなんか忘れて楽しんじゃうもん!

……気持ち悪いな。

妹「ふふっ、女さんと幼馴染ちゃんと仲良くね」

男「……ああ」

そういえば。

アイツは、来るんだろうか。

あんな言い方をしていたけれど。

もしも、来ないようなら。

無理にでも連れて行ってやる。

男「……とりあえず、飯を食いたいんだが」

妹「もう用意できてますよーだ」

男「おお、流石」

いつもいつも、感謝。

量が少なければ、尚良いのだけれど。

妹の後をついていって、食卓を見ると。

男「……お、おう」

いつにもまして、豪勢で大量のご飯が並んでいた。

いつもよりも多いじゃねえか!!

妹「えへへ、修学旅行だから、ちょっと豪勢にしてみたよ!」

ちょっと、じゃないぞこれ。

めちゃくちゃ、だぞ。色んな意味で!!

男「い、いただきます」

妹「どうぞどうぞー!」

とにかく食べるしかない。

一つのおかずを口に入れる。

な、な、な……。

男「美味し~い」

妹「やった♪」

くそぅ、美味い!

これなら腹にどんどん入るぜ!

と、最初は調子よくいっていたものの。

うん。

男「うぷっ」

多いな。

軽く八人前くらいあるんじゃないだろうか。

妹「えへへ」

向かいで笑顔を見せている妹。

可愛い妹が作った料理を。

俺は、残すわけにはいかない!

変な信念を持ちながら、俺は食事を続けるのであった。

男「ご、ごちそうさま……」

女「お粗末さまー!」

いつも美味しいごはんをありがとう。

いつか吐くかもしれないけど、その時はごめんな。

朝から腹をパンパンに張らせた俺は、洗面台に行った。

リバースするつもりじゃない。

寝起きの顔を、シャキっとさせるためだ。

冷たいを水を手で掬って、顔に浴びせる。

体の芯がキンと、緊張する。

男「つめてっ」

当たり前のことを反射的に口にしながら、俺は顔をあげる。

服に滴る前に、タオルでササっと顔を拭いて、

男「……おいおい」

自分の顔を見て、ため息を吐いた。

まったく、顔は変わらなかった。

男「……」

どうやら俺は。

まだ、アイツの言葉が。

心のどこかで引っかかっていたみたいだ。

男「くそっ」

顔をパンパンと叩く。

キリっと、一度顔を引き締める。

しっかりしねえと!

部屋で服を着替える。

男「あ……」

制服を着ている自分がいる。

修学旅行は私服だったな。

何してんだ俺は。

ちゃんと今日の分の服を用意してたのに。

気付かずに制服を着ちまうとは。

気を取り直して、私服を着る。

男「……よし」

階段を下りて、玄関で靴を履く。

男「荷物、よし」

大きなバッグを肩にぶら下げて諸々の準備の確認を完了させた。

妹「お兄ちゃん」

男「ん?」

妹がひょっこりと、現れて。

妹「行ってらっしゃい!」

と、Vサインをした。

男「おう、行ってきます」

俺もVサインを返す。

満面の笑みをして、手を振っている。

ああーもう。

修学旅行どうでもよくなるくらい可愛い。

とか言ってる場合ではない。

男「さて」

ドアを開けて、外に出る。

男「……」

ヤツの姿は……、

男「……いない?」

なかった。

男「……ちっ」

アイツ、本当に来ないつもりか?

男「……やれやれ」

俺は学校と逆方向に曲がった。

もちろん、ヤツの家に行くために。

だが、その瞬間。

女「やあ」

ヤツは現れた。

男「……いつもより遅いじゃねえか」

女「いやあ、自慰をしていたら遅くなった」

男「はあ?」

女「お股せ」

いきなりの下ネタコンボで俺は唖然としてしまった。

女「ふふっ、決まった……」

男「全然決まってねえ」

なんだその立ちポーズ。

必殺技決めたキャラクターみたいだな。

女「さて、行こうか」

男「……」

なんだよ。

この前のことは何もないみたいな風にしやがって。

女「どうしたんだい? まさか尿意でも催したのかい?」

男「ちげえよ」

女「もしかして、ボクの私服にムラっとしてしまったかな?」

私服のミニスカなんか見飽きるくらい見た。

今更ムラムラするわけないだろ。

というか、したことねーし。

女「気を取り直して、イクっ!!」

男「イクな」

女「え、行かないのかい?」

ピタリと体を止めるヤツ。

お前はいちいち紛らわしい。

男「行くぞ」

女「うん」

俺が先に歩き始めると、ヤツは微笑を絶やさず、隣をくっついて歩くのだった。

女「元気がないね」

男「そう見えるか?」

女「うん」

ニッコリと笑って、

女「君とは違って、ボクは元気モッコリだけどね」

モリモリだろ。

女「君もモッコリ?」

男「どこ見て言ってんだ」

女「股間!」

なっ、大声で言うな!

女「おっと、口が滑ってしまった」

口を慌てて塞ぐヤツ。

おせえよ。

男「まさかそんなストレートに言うとは……」

女「ん、もっと比喩的に言ったほうが良かったかな?」

男「言わなくていい」

あえて比喩を使わんでいい。

どうやら、俺の思い違いだったのかもしれない。

コイツはいつも通りだ。

何も変わっちゃいない。

あの時は、どうなることやらと思っていたけれど。

全然、変わりないじゃないか。

安心した。

けど、少し不安は残る。

男「……」

女「……」

ヤツの笑顔が、いつも通りではないから。

ここまで。

ついに修学旅行と言ったのにまだ修学旅行開始せず。


それでは。

幼「おはよー」

男「おう」

幼馴染がこちらに手を振っている。

幼馴染以外の班のメンバーはまだ誰もいなかった。

幼「やっときた~」

男「他はまだか」

幼「うん。寂しかったよー」

とか言いつつ、他の班の女子と喋ってたじゃねえか。

幼「おはよ、女さん」

女「……」

さっきまで微笑んでいた顔はすっかり変わっていた。

視線を落として、暗い顔。

男「俺とコイツも、結構来るのは早いほうだと思うけど、幼馴染はもっと早いんだな」

幼「うん、男たちより十五分早く来たかな? もう待ちきれなくって!」

ヤツとは裏腹に、ニッコリと笑顔をみせる幼馴染。

本当に一緒に修学旅行に行くのかと思えるほどの表情の差が出ている。

その後、クラス全員が集まり、校長の長い話があった。

行事毎によくここまで話ができると呆れつつ、首を曲げたりして時間を潰した。

ようやく数分に渡る演説も終わり、バスに移動することになった。

幼「バスの席は班ごとにまとまって座るから、二人一組になってね」

と、幼馴染が言うと、ヤツは俺から離れて、班の女子に話しかけていた。

どうやら、二人組になったらしい。

俺以外の男子も二人で座るようだ。

男「幼馴染、俺と一緒でいいか?」

幼「ん? うんっ、もちろん!」

バスに乗り込むと、幼馴染が指定した席に座っていく。

幼「そういえば、車酔いはもう大丈夫なの?」

男「中学入ってからは平気になった」

小学校の頃、俺は車酔いが酷く、バスでは何度か気持ち悪くなって吐きそうになったことがあった。

今ではそんなことがあったとは思わせないくらい、平気なのだけれど。

幼「よかったー。私エチケット袋持ってきたんだよ」

男「わざわざ俺のために?」

幼「うん。男っていっつも忘れてたじゃない、エチケット袋」

う、うるさい。あんまり思い出させるな。

幼「ふふっ、もうこれ以上は言うのはやめとくね」

俺の頬をつついて、

幼「その顔は『やめろ』って顔だしね」

幼馴染は。

小学校の頃と同じように。

俺に笑いかけた。

男「やめろって」

幼「あはは、照れたー」

そして少し声をあげて笑った。

男「ったく……」

幼「ごめんね?」

この謝り方も、小学校の頃と変わってない。

幼「そういえば、聞きたかったんだけれど」

男「ん?」

幼「女さんと一緒に座ると思ってたのに、どうして離れたの?」

男「知らん」

別になりたかったわけでもないし。

アイツが他の女子と一緒になったみたいだったから。

俺は誰でも良かったしな。

幼「知らんって、本当にそれだけなの?」

男「おう」

幼「喧嘩とかしてない?」

男「してないって」

喧嘩、ではない。

アレは、なんて言えばいいのか。

幼「うーん、嘘ついてない?」

ついてはいない。

ついてはいないけど。

なんて言えばいいかは、わからない。

ここまで。

ボクっ娘成分少なめで申し訳ないです。

それ言おうか迷ってた

パーカーの人かと思った
あの作家に影響されてる所もそっくり

男「気にすることじゃない。別に大したことじゃないから」

幼「何かあったんだね」

う。

自分で墓穴を掘っちまった。

幼「ま、男が言いたくないなら、いいんだけどね」

男「すまんな」

って、なんで俺は謝ってんだ。

こんな会話の後、幼馴染が持ってきたUNOを、同じ班の二人の男子と四人で遊んだ。

何度やっても、幼馴染が一抜けするのであった。

ズルしているとかではなく、本当にUNOが得意らしい。

UNOって、得意とかでなんとかなるゲームなのだろうか。

幼「次負けたら罰ゲームとかにしよっか」

男「勘弁してくれ」

もう二人の男子がまさかのバス酔いでうなだれている今、やってるのは俺と幼馴染のみ。

二人になっても一度も勝てないのに罰ゲームは酷だ。

幼「ねーねー、女さん達もやろうよ」

と、ヤツの方を向いて、幼馴染がUNOに誘う。

俺は向いていないのでどういう風かはわからないが、断られたようだった。

幼「男弱いから面白くないよう」

男「お前なぁ……」

UNOってこんなに実力差が見えるゲームだったっけ……。

バスが動きを止め、お次は新幹線である。

新幹線で今回の修学旅行地まで行くのだが、それほど長い時間はかからなかった。

幼「男、起きて」

目的地に着くまで眠ってしまっていた俺を幼馴染が起こす。

男「ん……」

幼「ヨダレ凄いよ」

そう言って、俺の口元をハンカチで拭こうとして、

幼「おっとっと、またいつものクセが!」

と苦笑いした。

世話焼きだな、こいつは。

幼「ほら、早く拭いて新幹線降りるよ」

男「ああ……」

幼「あ、女さん達も降りてねー」

幼馴染の言葉にヤツは頷いて、

女「……」

小さく、静かに。

俺の顔を見て、ニコッと微笑んだ。

その微笑みの意味はよくわからなかったが。

俺をイラつかせたのは間違いなかった。

男「なんだよ」

幼「え?」

男「なんでもない」

結局ヤツはもう一人の女子と会話をしながら、新幹線を降りた。

幼「みんな降りちゃったよ! 男も早く!」

男「お、おう」

俺も幼馴染に急かされて、さっさと降りた。

ここまでです。
最近本当に更新できなくてすいません。

>>294
今回も少なめで申し訳ないです。

>>295
仰るとおり別人です。

年末に向かってこちらも忙しくなってしまいどうも上手く時間がとれません。


すぐに書こうにも、あまり筆が進まず……。

今から少しだけ進めようと思います。本当にすこしだけ。

新幹線を出て、開口一番。

幼「うわー、なんかすごいね!」

と、幼馴染は満面の笑みで言った。

男「ああ」

いつもいる場所から遠く離れて見ると気づくことってものがある。

見慣れない場所というのは新鮮だ。

幼「あっ、あっちにみんないるよ、行こう」

みんなというのは、俺達の班のことだ。

男「おう」

初日は旅館に荷物をおいて、近くの散策をする予定である。

色づいた紅葉を眺めたりして、なかなかの風流ではある。

……のだが、まだまだ若い俺達高校二年生にはあまり楽しいことでも無かった。

幼「いつも見る風景とは、やっぱり違ってるね」

男「そうだな」

班は縦二列で移動している。

俺の横は幼馴染。

もう一列は男子二人。

そしてもう一列は他の女子とヤツだ。

みんな各々で話をして、盛り上がっている。

幼「みんな、お話してるし、私達も話をして楽しもっか?」

男「そうだな」

素敵な紅葉を眺めるのは、俺の性に合わない。

幼馴染と雑談して、自分らしさを取り戻すとするか。

幼「バスから新幹線で、結構時間かかっちゃったよね」

空を見ながら、幼馴染は言った。

幼「ちょっと歩いて、少ししたらもうご飯になっちゃうね」

男「初日は移動するだけって、書いてあったしな」

幼「うん、そうだね~」

ちょっと残念そうに、幼馴染はため息を吐いた。

幼「一日目も、何かあったらいいのにな」

と、軽く愚痴るように呟いたのであった。

ここまでです。

また来ます。

お前なんかもう一つ書いてなかったか?

そんなことを言っているうちに、もう二日目に突入した。

どこも行っていないせいで、俺含めた男子三人が何か面白い話をすることはなく。

すぐに就寝したので、元気一杯である。

幼「おはよー」

集合場所には、既に女子達が集まっていた。

幼馴染は手を振って俺達を出迎えた。

もう一人の女子も、ちょこっと頭を下げて、小さく「おはよう」と言った。

しかし、ヤツは。

何も言わなかった。

二人の女子に軽く挨拶をして、俺はヤツを睨みつけた。

男「おい」

早朝なので、声がいつもより低い。

男「挨拶ぐらいしろよ」

そう言うと、肩をすくませて、少しだけ手をあげて。

女「やあ」

と、小さく言った。

「挨拶したんだから、咎められることはもうない」

まるで、そんな風だ。

男「……ちっ」

俺は機嫌悪く舌打ちをした。

幼「え、えーっと……朝食に行くよー」

既に他の班が動き始めたので、幼馴染が少し慌てて言った。

その幼馴染の言葉で、俺はヤツを睨みつけるのをやめた。

朝食はさっぱりとした和食だった。

周りはどうやら、夜遅くまで起きていたようで、会話が弾んでいない。

しかし、俺の班……いや、俺の班の男子はケロっとした顔をしていた。

……女子は少し眠そうだ。

幼「昨日会話が弾んじゃってねー」

苦笑いを浮かべる幼馴染が、顔を恥ずかしそうに掻いた。

男「まあ、それならいいじゃねーか。仲良くなれて」

幼「そうかな?」

えへへ、と微笑んで幼馴染はおかずに手を伸ばした。

もうひとりの女子も小さくあくびをしていた。

しかし、ヤツに関してはまったく眠そうな雰囲気が無かった。

男「三人で話してたのか?」

女「うんっ」

にしても、ヤツは眠そうじゃないな。

隠しているのか、夜更かしに強いのか。

まあ。

そんなことはどうでもいいことだ。

>>319
訂正。
×女「うんっ」
○幼「うんっ」

今日はついに本格的に修学旅行が始まる。

色んなところをクラス全員で見学した後、自由行動だ。

各々の班が行きたいと思う所に行ける日なので、皆張り切っている。

俺の班は、幼馴染によってとても有意義になりそうな気配である。

幼「まずはバスに乗るよ! みんなお金の準備しておいてね~」

自由行動開始と同時に、幼馴染が指揮を取る。

班長としての責務を、充分に全うしている。

ここまで。

着々とオチに進んでいます。


>>314
勇者SSを一つ書いています。
こちらが終わったら再開予定です。

色々やることが山積みで、こちらに時間を割くことができず申し訳ない。


もう少しだけ時間をください……本当にごめんなさい。



全員での行動が終了し、班別行動になる。

男「最初どこに行くんだ?」

幼「えっとね、近くの博物館かな。とっても大きくて面白いらしいから」

スケジュールを見ながら、幼馴染は少し真剣な顔をして、ある一つの方向を指さした。

幼「あっちに歩いて行ったらすぐだよ」

男「よくわかってるな」

幼「ふふふ、予習してたんだ」

なんとまあ。

コイツ、できるな。

幼「現地に来てから色々と考えてると、迷っちゃうかもしれないしさ」

地図を見ると、赤ペンで丸や線がたくさんあった。

幼「シミュレーションしたの」

いつもならニッコリとするだけの幼馴染は、俺相手には少しだけ誇ったような態度だった。

男「凄いな。やっぱり班長にして正解だった」

幼「ちゃんと予定通りにするためには、男がちゃんと言う通りにしてくれないといけません」

男「う……わかったよ」

俺は問題児扱いのようだ。

幼馴染の予習は相当なものであった。

幼「この建物はね~」

行く先々の基礎知識を全て覚えていたようだ。

男「お前すげえな」

幼「そうかな? なんか調べてたら楽しくなっちゃって」

照れくさそうに頭をかいた。

まあ、昔からこういうところがある。

一方で、ヤツは。

女「……」

閉口して、何も言わない。

もう一人の女子は男子二人と話している。

一人で、班についてきていた。

男「悪い、幼馴染」

幼「?」

俺はヤツの方に向かった。

ヤツは俺が近づいても、見向きもせず、建造物を見ていた。

男「おい」

女「……」

無視かよ。

遅れましたが、ここまでです。申し訳ありません。

もう少しお待ちください。生存報告。

次回最終更新を致します。

明日の夜に最後まで突っ走りますので、ご準備ください。
ここまで待っていただき本当に申し訳ない気持ちと、ありがたい気持ちでいっぱいです。


それでは、その時に。

おはようございます。

今日の十時以降の更新(日をまたぐ可能性大いにあり)ですので、少々お待ちを。


更に終了後、自分の個人的な連絡もさせていただきます。
時間がある方は是非、それも見ていただけたらと思います。



それでは、また夜に。

男「もう少し楽しんだらどうだ」

女「楽しむ?」

キョトンとした顔をして、ヤツはこちらを見た。

女「建造物を見ることが、楽しいことになるのかな?」

ヤツはいつもと違った笑みを浮かべて、肩をすくめた。

女「ボクは一人でいいから、君は彼女の相手をしてあげたらどうかな」

ヤツは指をさした。その方向には、幼馴染がいた。

幼馴染はこちらを見ていたようで、俺はすかさず視線をそらした。

女「ふふっ、久しぶりに会えたんだから、もっと一緒にいればいいよ」

そして、「この話はおしまい」とばかりに、ヤツは一人で建造物の周りを歩き始めた。

そんなことを言うなら、そうさせてもらう。

アイツのことを気にかけた俺がバカを見るのは、ふざけてるからな。

幼「ねえ、大丈夫なの?」

幼馴染の隣に戻ると、彼女は心配そうに俺に尋ねた。

男「何が」

幼「すっごく怖い顔してる……」

男「……」

そんな感じで、ヤツとのわだかまりを解消することはなかった。

それでも修学旅行は少しずつ、着実と進んでいったのだった。

もちろん、あの日から俺はアイツとは一度も話していない。

仕方ない。アイツが俺を避けているのだから、俺から歩み寄れば逆効果だ。


最終日前日の夜のことである。

男「肝試し?」

幼「うん。班の男女一人ずるペアに分かれて肝試しをするんだって」

なんとまあ。

今どき肝試しをする高校は少ないだろ。

むしろ都市伝説だと思っていたくらいだ。

ペアは公平にクジで決めることになった。

そして、その公平なクジのジャッジに、俺は嘆くことになる。

ヤツとペアになったのだった。

男「よりにもよってお前かよ」

女「それはお互い様なんじゃないかな?」

ふふ、と面白くもないくせに笑ってやがる。

何考えてんだか。

そんなこんなで、肝試しは始まった。

俺達は全体のクラスとしては、一番遅かったが、クラス内の班の中では一番早かった。

一つの小さな提灯を渡され、その光を頼りに、真っ暗な森の中を歩いて行く。

少し入り組んでいるのだが、朧げな提灯があればだいたいわかるようになっている。

どこかで折り返すというわけでもなく、入口から出口までの一本道だ。

開始早々、ヤツは早歩きで、俺よりも先に歩いた。

男「おい、そんなに早く行くなよ」

女「早く終わらせたいからね。君もそうだろう?」

そんなこと思っちゃいない。

男「何か文句があるのかよ」

女「ないよ」

あるだろ。

その言い方は、間違いなくある。

男「お前がなんで怒ってるのかわからねえ」

女「……怒ってる?」

ヤツはピクリと。

俺の言葉に敏感に反応した。

女「ボクは怒ってないよ」

そう言って。

普段見せないような悲しい顔をして。

「ボクが怒ってるのは、ボク自身だ」

俺には聞こえないように何かを言って、ヤツはいきなり駈け出した。

男「お、おい!」

ヤツは一気にスピードに乗り、暗闇に向かってしまった。

男「アイツ……どうするつもりだよ」

提灯は原則男子が持つことになっていたので、俺が持っている。

男「……」

俺は、突然のこともあって、少しの間ボーっと、その場で立ち尽くしていた。

幼「あれ、男?」

男「ん」

振り向くと、そこには幼馴染のペアが来ていた。

どうやら、俺は大分この場に長い間立ち止まっていたようだ。

幼「どうしたの、こんなところで……女さんは?」

男「いや、急に走っていっちまって」

幼「ええ! 追わなくていいの?」

男「早く終わらせたいって言ってたし、案外先に出てるかもしれないぜ」

幼「そうかな……」

そして、俺は幼馴染のペアと出口まで向かった。

だが、事態は一変した。

出口に着いても、ヤツの姿は見当たらなかった。

最後のペアが出口にたどり着いても、ヤツはまだ、姿を現さなかったのだ。

幼「ここ、迷うと本当に危ないって言われてる場所なんだよ……?」

男「!」

幼「整備されてる道を進めば、絶対にここに辿り着けるから……でも、光が無かったら……」

幼馴染の言葉を最後まで聞かず、俺は走りだしていた。

男「はぁはぁっ……おーい!」

真っ暗な森を、一人で走る。

出した声は全てこだまして、静けさだけが俺を包んだ。

提灯は、急ぎすぎて忘れた。

そんなもん、持ってたら走れない。

男「どこにいるんだーー!!」

力一杯の声をあげる。

真っ暗ではっきり見えない道を、ずんずんと進んでいく。

整備された道は、入口から出口の最短距離である。

しかし、整備されていないところはとにかくぐちゃぐちゃで、間違いなく迷ってしまうような道だ。

幼「男!」

男「!」

声の方を向くと、息を切らした幼馴染以外にも、数人の教師たちがいた。

幼「先生達が探すから、生徒は戻れって」

男「戻れるわけねーだろ! 俺の責任でもあるんだ!」

幼「で、でも……」

男「……悪い!」

俺は幼馴染達から離れるように、猛ダッシュで走り去った。

幼「お、男!」

悪い、幼馴染。

こんなことを言うのは、自意識過剰かもしれないけれど。

ヤツは。

ヤツのことは。

俺にしか見つけられないんだ。

どうしてそんなことを思うか?

確信なんてもちろんない。

あるはずがない。

ただ、わかることは。

俺とヤツは、誰よりも長い間一緒にいるからだ。

そりゃあ、幼馴染よりは短いけれど。

それでも、アイツがどこに行くだろうって検討くらいは。

たとえそこが変な場所でも、わかる。

そして、数分後のことだ。

男「……!」

走り続けていた俺は、疲れて、ゆっくりと辺りを見回しながら、ヤツを探していた。

そして、一つ。

小さく縮こまっている、体が見えた。

男「お、おい……」

おそるおそる近づいて、肩を掴むと、ビクリと過敏に反応した。

その小さな体が、俺の方を静かに振り向いた。

そこには、目を真っ赤に腫らして、泣いているヤツがいた。

少々お待ちくださいっ

女「な、何しに来たんだい」

ここまで来て、何しに来たとは酷い言い草だな。

男「お前を探しに来た」

女「どうしてそんなことをするんだい?」

男「……親友だから」

女「親友なら、他にいるじゃないか」

男「え?」

女「幼馴染さんは、君の、一番の親友だろう?」

男「そんなの関係ないだろ」

女「関係あるよ」

ヤツは徐々に立ち上がり、肩を掴んでいた俺の手を払った。

女「……ボクには、君しかいない」

でも、

女「君には、他の人がいる」

自分を抱きしめるように身を硬くして、

女「もう、ダメなんだよ。ボクには、もう、誰もいない」

男「ダメなわけねーだろ!!」

女「!」

コイツは何もわかっちゃいない。

そりゃあ、幼馴染は優しくて、イイヤツで、可愛くて。

コイツよりも胸も大きいし、頭も良くて、社交的だ。

それに、俺は幼馴染のことが大好きだ。今でも、そりゃあ好きだ。

嫌いになれるようなヤツじゃないんだよ。

忘れられるようなヤツじゃないんだよ。

女「だったら……君は……」

ヤツは一度息を飲み込んで、

女「君はボクの何になってくれるんだい?」

と、震えながら、言った。

男「…………俺は……」

中学から今まで、お前とずっと一緒にいたんだ。

そりゃあ、いつも下ネタばっかりで、変なことばっかり言って。

胸も小さいし、いつもニヤついてて、社交性は皆無。

それでも、俺は。

お前の笑顔が、


大好きなんだ。


男「……お前が、好きだ。」

女「え……?」

驚いたような顔をして、俺を見つめた。

男「そりゃ、そんな顔になるよな」

俺だってもう、何を言ってるかわかんねえ。

男「親友がダメなら……その……恋人になれ!」

女「……」

もう、どうにでもなれだ。

とんでもなく強引で、ありえない言葉を次々と、

俺の脳を直接介していないような、そんな感覚。

男「俺は、お前に出会ってからずっと」

ずっと。

男「一目惚れなんだよ」

女「そ、そんな……嘘、だろう?」

ここまで来て嘘なんかつけるか。

男「本当だ。ずっと前から……会った時からずっとな!」

女「……」

ヤツは、静かに息を飲み込んで、涙を流しながら、精一杯の笑顔を作った。

女「なんだ……あはは」

一度、小さく頷いて、

女「ボクも、そうだったんだ」

と、言った。

……言っていいか?

……言っていいよな?

めちゃくちゃ、可愛い。

いつもいつも俺は抑えていた感情だったのだが。

コイツは、本当に可愛い。

下ネタとかボロボロ言いまくるけど。

本当に、たまらなく。

愛しいヤツだ。

女「ふふ、両想いって、今日初めて知ったよ」

俺だってそうだ。

というか、当たり前か。言ってないんだし。

男「それで、だ」

女「……なんだい?」

男「キス……とか?」

女「き、キス!?」

その言葉に驚いて、ヤツの顔はもう真っ赤だ。

きっと俺もだ。

女「……ふふっ、ダメだよ」

男「えっ」

女「まずは、この森を抜けなきゃ、ね?」

あ、忘れてた。

男「そうだったな。ははは……」

もうする気満々だった自分が恥ずかしい。

女「道、わかるかい?」

男「……わからん」

女「奇遇だね、ボクもだ」

そりゃよーござんした。

女「暗くてとっても怖かったけれど、もう怖くない」

ギュッと。

手を握られた。

女「君がいるんだから」

ねっ、と。

いつも以上の、最高の笑顔を見せてきた。

暗さに慣れた目で歩いていると、小さな明りが見えた。探していた教師達のようだ。

怒られるであろうと思っていたが、心配をされたのみで、お咎めは無かった。

幼馴染が森の出口で大粒の涙を流しながら待っていた。

俺と女を見た途端、さらに溢れるように涙を流して、彼女は俺たちを抱きしめた。

「よかった。本当によかった」と、まるでもう二度と帰って来ないのではないかと思っていたような感じであった。


こうして、修学旅行最終日前日は終了したのだった。

最終日はあんなこともあったせいか、俺は帰りの新幹線で爆睡してしまった。

ふと目が覚めると、その横では女も一緒に、似たような体勢で眠っていた。

それを幼馴染がニヤニヤと見ていたのだった。

恥ずかしいが、なんだか嬉しい気もした。

幼「あの夜、何かあったでしょ?」

ニヤつきながら追求してくる幼馴染に、俺は小さく首を縦に振った。

幼「ふふっ、あんなに強く手を握ってたらバレるよ」

男「う、うるせえ」

幼「男は本当にわかりやすいね」

ニコッと小さく微笑んで、

幼「お幸せに」

と、呟いたのだった。

修学旅行が終わって、少し経った日のことだ。

男「悪い、遅れた」

女「ふふっ、いつものことだね」

俺の家の前に女は待っていた。

女「もう少し遅かったらここで公開自慰をしていたところだよ」

男「おい」

相変わらず、いつもと変わらない冗談。

男「そういえば、幼馴染と二人きりの時、なんて言われたんだ?」

女「うーん、彼女からは君のことをよろしくね、とか君の好きなもの、とかを教えてくれたよ」

男「……」

女「よく意味がわからなかったけれど、今になって思うと、とっても恥ずかしいね……」

男「そうだな……」

最初からアイツは、俺がコイツのことを好きなのを知ってたってわけか。

流石幼馴染だな、まったく。

女「じゃあ、行こうか男」

男「おう、そうだな女」

俺達は少し変わったんだ。

小さなことだけれど、変わった。

女「手、握ろうよ」

男「ああ、もちろん」

女「あ、あと、キスも……ね?」

男「……あ、ああ……」

少しずつ、変わっていくんだ。

END

おまけ

妹「あれ、今回は私でオチないの?」

男「オチ担当嫌じゃないのか?」

妹「無かったらなかったで嫌だなー……はぁ」

男「まあまあ」

妹「ふふふ、お兄ちゃん、女さんとは仲良くしてるの?」

男「き、聞くなそんなこと」

妹「だってお兄ちゃんにもやーっとカノジョさんが出来て私はとっても嬉しいんだよ!」

男「ああ、それはよーくわかってるよ」

付き合いを公表した日の飯は、いつもの何倍もあったんだからな。

おまけ

男「お前、最初からわかってたのか?」

幼「何が?」

男「俺と女が、両想いだってこと」

幼「そんなのわかんないよ。でも、男が女さんのこと大好きなのはよくわかったよ」

男「え……」

幼「何年一緒にいたと思ってるの? ふふっ」

全部お見通し……か。

おまけ

後輩「先輩! まさか、女先輩と突き合うなんて!」

男「漢字おかしいだろ!」

後輩「違いますね……先輩が一方的に突くんですね!」

男「とりあえず突くことから離れろ!」

後輩「悲しいです……私も突かれたい!」

男「そこから離れろってば!」

後輩も相変わらずである。

おしまいです。

少し駆け足だった気もしますが、自分が考えたオチに持って行けて良かったです。

さて、九月から続いたこのSSもやっと終了しました。
初めてSS速報でボクっ娘SSを書くことになり、そして長い時間を費やしました。
見てくださった方には本当に長い間待たせてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
自分の至らなさに、一番自分が情けなく思います。

またいつか、ボクっ娘SSかどうかはわかりませんが会いましょう。

あと、少しだけ宣伝をさせていただいて、本当に終了とさせていただきます。



現在SS速報にて投下中の勇者SS↓
勇者「俺が考えてた冒険と全然違うんだけど」~第二章~
勇者「俺が考えてた冒険と全然違うんだけど」〜第二章〜 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1362500166/)



いつもSSに登場しているボクっ娘+男+その他大勢で織りなすオリジナルSS『無題』↓
http://www.pixiv.net/series.php?id=322035



自分からは以上です。

また次のスレでお会いしましょう。

それでは。

このスレッドは一週間後、HTML化依頼をします。



それでは。

もうvipで書くことはないのかな?


過去に書いたタイトルよかったら教えてくれ!

質問がたくさんありましたので、お答え致します。

>>393
時間があったらまた書きたいと思っています。
ただ、ボクっ娘の場合即興でやらないとどうしても深く考えすぎて上手くいかない節があるので、落ちることはたくさんあると思います。

>>394
結構数が多いのであまり覚えていません……ごめんなさい。

このSSまとめへのコメント

1 :  いつも何気なく2P   2013年10月22日 (火) 23:25:33   ID: elfX3yPN

はやく続き書いて

2 :  SS好きの誰かさん   2013年10月26日 (土) 17:24:18   ID: YBe3qhlA

はやーくー

3 :  いつも何気なく2P   2013年11月04日 (月) 11:19:10   ID: -zXC9qm9

はやく続きが見たいよ

4 :  SS好きの774さん   2013年12月10日 (火) 00:35:58   ID: Tba-Ia_H

続きはよ!!!

5 :  SS好きの774さん   2013年12月30日 (月) 04:34:26   ID: SGMiaGpY

期待しているよ

6 :  SS好きの774さん   2014年03月02日 (日) 18:24:53   ID: O8vkA9_s

続きが読みたい

7 :  SS好きの774さん   2014年03月04日 (火) 18:04:33   ID: PE72LZUn

おぉ!待ってた甲斐があった!

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