・和が風越に進学していたら? というIFの物語です
・タコスセットです
・なので、清澄のメンバーが原作と食い違います(具体的には in ○んぽさん out 和・優希)
・京太郎? 誰それ? 須賀京子ちゃんなら知ってますけど……(増えるワカメ案は却下)
・闘牌シーン多め(かも知れません)
・変な打牌があれば容赦なくツッコんで下さい
・大筋に影響が出ない範囲で安価するかも
・>>1は初のスレ立てです。不慣れな部分も多々ありますが寛大な心で(ry
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――昨年夏、高遠原中学の部室。
スカウト「原村さん、風越にぜひ来て下さらない?」
和「お断りします。私はゆーきと一緒に麻雀がしたいので」キッパリ
優希「のどちゃん、私に遠慮する必要はないんだじぇ?」
スカウト「なら片岡さんも一緒にどうかしら? インターミドル個人戦の予選……東風戦でものすごい成績を残しているわね。どうかしら、二人で風越で麻雀を打たない?」
優希「うぅ……でもタコスが……タコスがないと……学食にタコスがあるのは清澄だけだじょ」
スカウト「確かに風越の学食にタコスはないけれど……来春、大手タコスチェーン店がちょうど目の前にオープンする予定なのよ」
優希「行くじぇ!」キラキラ
スカウト「片岡さんはこう言ってるけど……原村さんはどうかしら?」
和「……考えさせて下さい」
――そして現在。
和(あの時、私は考えさせて下さいと返事しましたが……)
優希「タコスうまうま」モグモグ
和(もう答えは決まっていました。私にはゆーきと離れること何てできません)
今、和たちが居るのは風越女子高校麻雀部の部室。
教室と教室の間にある壁をくりぬいて、無理矢理一つの空間に繋げた横長い部屋だった。
和(……本当にすごい部員数ですね)
辺りを見渡す限りの人、人、人、人の山。
総勢80名。この全てが同じ麻雀部でしのぎを削り合うライバルであり、仲間でもある。
優希「何か恐そうなおねーさんが出てきたじぇ」ゴックン
その優希の声で和の意識は現実に戻った。
京子ちゃん入れても清澄足りない……
>>6
マホの設定を変更して同級生ということにすればいいんだよ(適当)
コーチ「新入生諸君、まずはおめでとう」
コーチを務める久保貴子は、新鮮みもありがたみも特に感じられない、ありきたりなあいさつを長々と……続けなかった。
コーチ「……と、こんな内容の話は全員耳にタコができるぐらい聞いているだろう?」
優希「タコスは好きだじぇ」
コーチ「うるせぇぞそこ! だから、お前らが一番聞きたかっただろう話をしてやる」
そう言って貴子はニヤリと口元を歪めた。
コーチ「うちの麻雀部は完全実力主義! 学年なんか関係ねぇ、強いヤツがレギュラーだ!」
眠気を誘うようなその演説を聞き流していた新入部員たちが一気に色めき立った。
コーチ「うちはランキング制度を導入している。団体戦に出たいヤツ、目標は単純だ。5位以内に入れ! それだけで良い。……だが『5つも席があるのなら、何とかなりそうだ』とかいう甘い考えは捨てろ。ここに居る二・三年生はその環境で今まで過ごしてきたんだ、並大抵の努力で追いつけるとは思うな」
そう区切ると、貴子は部室の奥の方へと目を向けた(新入生が部室の前、二・三年生は後に座っている)。
>>6 >>7
先鋒 ○んぽさん
次鋒 ワカメ
中堅 部長
副将 京子ちゃん
大将 咲さん
コーチ「福路ィ!」
美穂子「はい」
しっかりと芯の通ったおちついた声色が返ってきた。
コーチ「池田ァ!」
華菜「はいだし!」
元気の良いどこか猫を連想させるかわいらしい声色が返ってきた。
コーチ「新入生は……原村ァ!」
和「は、はい」ビクゥ
コーチ「後は……隣のタコス女で良いか」
優希「じょ?」クビカシゲ
コーチ「今からお前ら四人で麻雀を打って貰う! 他のヤツは見学だ。先輩の顔を立てようだとか変なことを考えて手を抜くなよ?」
和「もちろんです」
優希「あったり前だじぇ!」
コーチ「知ってるヤツも多いと思うが、原村は昨年度のインターミドルチャンピオン。文句なしで最強の中学生だった訳だ。そいつとうちのトップツー、どっちが強いかしっかりその目に焼き付けておけ!」
※牌の表記
萬子 一二三四五六七八九 赤【五】
筒子 ①②③④⑤⑥⑦⑧⑨ 赤【⑤】
索子 123456789 赤【5】
字牌 東南西北白發中
東風戦 25000点持ち 喰いタンあり・後付けあり
赤ドラあり(萬子1枚・筒子2枚・索子1枚)
東家 片岡優希
南家 池田華菜
西家 原村和
北家 福路美穂子
東一局0本場 ドラ③ 親 片岡優希
優希(風越最強だか何だか知らないけど……東風戦で私に挑むとは良い度胸だじぇ!)
優希配牌
二四四六七八①③③⑥⑦西白 ツモ【⑤】 打西
配牌でドラドラ、第一ツモで赤⑤筒ツモ。
真っ直ぐ手が伸びればメンタンドラ3で満貫は確保できる好手だ。
優希(ついてこれるかな……タコス力万全の私に!)
――そして四巡目。
優希手牌
二三四四六七八①③③【⑤】⑥⑦ ツモ三
優希「リーチだじぇ!」打①
華菜 打2
和 打北
美穂子(話には聞いていたけど……本当に早いわね)
部員たちのことを少しでも理解できるようにと、美穂子は新入部員全員分のデータに目を通していた。
インターミドルチャンピオンの和は当然、無名中の無名選手であっただろう優希のことも調べている。
その間、美穂子の魔手により何台のパソコンがお亡くなり遊ばされたのかは考えてはならない。
――が、ただ一つ、たった一つだけ確かな事実がある。その後、貴子の胃薬の量が増えたという。
優希捨て牌
西白2①(リーチ)
四巡目 美穂子手牌
四六①②233357中中中 ツモ9
美穂子(ひとまず様子見かしら)打①
中・混一まで伸びそうな手牌だったが、親リー相手に攻めるにはいささか遠すぎる牌姿。
美穂子はノータイムでオリを選択した。
美穂子(素直そうな子だから、オーラスまでには……)
優希「一発ツモォ! 8000オールだじぇ!」ドンッ
五巡目 優希手牌
二三三四四六七八③③【⑤】⑥⑦ ツモ五
リーチ・一発・ツモ・平和・タンヤオ・ドラ3、瞬速の親倍和了だった。
東家 片岡優希49000(+24000)
南家 池田華菜17000(-8000)
西家 原村和17000(-8000)
北家 福路美穂子17000(-8000)
東一局1本場 ドラ東 親 片岡優希
優希(調子良いじょ~)フフン♪
優希配牌
一二四七八九④⑤⑤東東北發 ツモ【5】 打北
配牌でドラの連風牌が対子、第一ツモが赤5索、東を叩けば跳満が確定する。
東場で爆発的な火力と速度を得る、優希らしい配牌だった。
二巡目 優希手牌
一二四七八九④⑤⑤【5】東東發 ツモ⑥ 打一
三巡目 優希手牌
二四七八九④⑤⑤⑥【5】東東發 ツモ五 打二
四巡目 優希手牌
四五七八九④⑤⑤⑥【5】東東發 ツモ5 打発
優希「リーチだじぇ!」
優希が再度リーチ宣言をしたのは、十巡目のことだった。
優希捨て牌
北一二発⑤⑤
四三93(リーチ)
華菜(連続親リー……これで負けたら、またぶたれるんだろうなぁ)ハァ
十巡目 華菜手牌
二三七八八八②③④68東東 ツモ【⑤】
現状では役なしだが、一四萬7索待ち、ドラ3の一聴向。
リーチをかければ最低でも8000、形勢を立て直せるだけの打点が見込める。
華菜(幸い安牌らしきものはたくさんあるし……半荘戦ならまだしも、東風戦でこの点差……好き勝手に走らせる訳にはいかない)打②
和「チー」 チー②①③ 打6
華菜(タンヤオはない……一発消しか?)
美穂子 打5
華菜(キャプテンそんなきつい牌を……! 安牌を増やすために……)ウルウル
優希「一発ならずだじぇ!」打8
和「それです。ロン、一気通貫・赤1の1本場は2300」パララ
和手牌
七七④【⑤】⑥⑦⑧⑨88 チー②①③
優希「じょっ!」
華菜(! 命拾いしたし……押してたら遅かれ早かれ振ってたし)フゥ
東家 片岡優希45700(-3300)
南家 池田華菜17000
西家 原村和20300(+3300)
北家 福路美穂子17000
優希(うぅ……ドラ5が流されちゃったじょ……)
優希手牌
五五【五】七八九④【⑤】⑥5【5】東東
東二局0本場 ドラ8 親 池田華菜
東家 池田華菜17000
南家 原村和20300
西家 福路美穂子17000
北家 片岡優希45700
華菜(さあて、一度きりの親番……何が何でも連荘、できればタコス娘から直撃を取る。配牌は……)
華菜配牌
一一四六九①①②⑨69南南 ツモ9
理牌し終わって、華菜は思わず顔を引きつらせた。
0面子4対子のチートイかトイトイでもしてくれと言わんばかりの配牌。
華菜(……どこかにいる麻雀の神様……教えて下さい……華菜ちゃんはコーチにぶたれてろという暗示なのでしょうか)
決してそこまで悪い牌姿でもない。
チートイはツモ次第だが、トイトイなら鳴いて良いのだ。
だが、タンピン系と比較すると格段にスピードは劣る。
華菜(でも今は鳴くよりも泣きたい気分だし……)打九
和 打北
美穂子 打9
華菜「……! それポンッ!」(キャプテン!)
二巡目 華菜手牌
一一四六①①②⑨6南南 ポン999 打⑨
和 打⑨
美穂子 打一
華菜「それもポン!」
三巡目 華菜手牌
四六①①②6南南 ポン一一一 ポン999 打6
トイトイでは明らかにスピード負けしてしまう。
華菜が連荘するためには、優希のツモをどれだけ飛ばせるかがカギだった。
池田が連荘できるかどうか>>23
試合後に池田がコーチにぶたれるかどうかがかかっています
できる
――数巡後。
華菜「ロン! 7700!」
優希「じぇ!?」
華菜手牌
①①①【⑤】 ポン南南南 ポン一一一 ポン999 ロン⑤
トイトイ・赤1、50符3翻の和了だった。
華菜(いよっし! 直撃で一気に差を詰めた! どこかにいる麻雀の神様(>>23)ありがとう!)
東家 池田華菜24700(+7700)
南家 原村和20300
西家 福路美穂子17000
北家 片岡優希38000(-7700)
東二局1本場 ドラ一 親 池田華菜
華菜配牌
一九①②③⑤⑥⑦⑨138東 ツモ七 打8
華菜(まずまずだし! 筒子のイッツーか……できればドラを重ねたいところだけど)
④筒引きで一気通貫が確定。
序盤だろうが、上家の河に④筒が現れれば即鳴きの一手である。
和 打西
美穂子 打南
優希 打中
二巡目 華菜手牌
一七九①②③⑤⑥⑦⑨13東 ツモ⑧ 打東
華菜(……嵌張の方が埋まったし。でも、両面が残ったと考えれば悪くない)
そして迎えた八巡目。
八巡目 華菜手牌
一一九①②③⑤⑥⑦⑧⑨34 ツモ5
華菜「リーチだし!」(今度はこっちの番だ!)打九
和「とおらば――リーチです」
>>26
和の追っかけが通るor通らない
通る
和 打【⑤】
華菜(赤切りリーチ!? デジタルが親リーに対し、わざわざ打点を下げてまで危険牌を打ってきたってことは……間違いなく待ちが多い)
和捨て牌
西1八九42
東【⑤】(リーチ)
華菜(さらにだけど……もしかしなくても染まってる?)
第一打が字牌なら染め手の可能性は低く思えたが、その後の捨て牌が妙だ。
良くある「染める気はなかったが、ツモが一色の牌に偏っていて気が付けば染まっていた」というケース。
その時の捨て牌に似ているように池田は思った。
――二巡後。
和「ツモ! 3100・6100!」パララ
和手牌
①②③③④【⑤】⑦⑧⑨⑨⑨北北 ツモ北
⑥⑨筒北の変則三面張。
リーチ・ツモ・メンホン・赤1、跳満の和了だった。
東家 池田華菜17600(-7100)
南家 原村和33600(+13300)
西家 福路美穂子13900(-3100)
北家 片岡優希34900(-3100)
華菜(ぐぅ……跳満親被り……! 確かにその牌姿なら赤は二枚いらないけど……っていうか)
華菜「デジタルは満貫あればリーチしないんじゃなかったっけ?」
和「これ以上の良型変化はありませんし、どうせ全ツしなければならない場面でしたので」
すみません、中途半端ですが眠気が限界を超えてきたのでここで一旦ストップします
今日の深夜か、明日の夕方に後半戦を終了させます
本人確認用にトリ付けました
帰宅しました
17:30から投稿を開始します
東三局0本場 ドラ九 親 原村和
東家 原村和33600
南家 福路美穂子13900
西家 片岡優希34900
北家 池田華菜17600
和(さて、トップと僅差の2着で親番……ここで突き放したいところですが……)
3着目との点差の開きが大きく、まず連対は確保できるだろうという状況。
他家にツモ和了りされれば親被りで1着目との差が開き、逆に自身が1着目から和了れればトップの地位を盤石のものにできる。
間違いなく攻めに重きを置いた打牌をすべき場面である。
和配牌
二二六③⑧3389東南西中 ツモ三 打西
和(……厳しい牌姿です)ムゥ
両面搭子と対子の複合形が一つ、他には対子が一つに、辺張が一つと苦しい態勢。
和は思わず口を尖らせた。
不要牌の処理をしている間に役牌を重ねるか、タンヤオが見える形になれば御の字というレベルだろう。
二巡目 和手牌
二二三六③⑧3389東南中 ツモ七 打南
三巡目 和手牌
二二三六七③⑧3389東中 ツモ6 打9
和(……間に合うでしょうか)ウツムキ
美穂子(……クールそうに見えて、意外と感情を表に出すタイプなのね)フフッ
まだ浅い巡目なので、美穂子の観察眼を持ってしても和の手牌がどのような形になのかは判断できない。
だが、あまり良くないものなのだろうという点だけは理解できた。
三巡目 美穂子手牌
三四四③③③④⑨⑨3455 ツモ【五】
この牌姿ならば、④筒を落とし暗刻確定させるのが聴牌への近道(二三四五六萬234567索待ちの一聴向になる)だが、
美穂子(少し迂回しましょうか)打⑨
美穂子の選択はタンヤオへと向かう打⑨筒。
自身がラス親とはいえ、現在トップと21000点差のラス目、安手で場を流すのは得策ではない。
親がとろとろしているのならば、打点を追っても良いだろうと判断した。
四巡目 美穂子手牌
三四四【五】③③③④⑨3455 ツモ② 打⑨
美穂子は狙い澄ましたように有効牌を引き入れる。
美穂子(メンタンピン赤で……圏内まで詰め寄ります!)
優希(東場の私がドラを引けないとは……でも)
優希にとって運気が最大限流れてくる東場だと、赤入り麻雀ならドラの2・3枚配牌で含まれていることの方が多い。
だが、今回は通常のドラが扱いにくい老頭牌だったとはいえ、珍しく一枚も引かなかった。
四巡目 優希手牌
五七⑥⑧⑧111白白發中中 ツモ發
とはいえ、東場は東場。優希のホームグラウンドであることに変わりはない。
優希(――この手ならドラはいらないじぇ!)打五
ドラは来なかったのではなく、いらなかっただけなのだ。
そして次巡、和が捨てた中に手を伸ばす。
優希「ポン!」
五巡目 優希手牌
七⑥⑧⑧111白白發發 ポン中中中 打七
五巡目 華菜手牌
九九九①①②22235北發 ツモ北
ドラの九萬が暗刻で打点は十分。
だが、面前で進めるには重すぎる牌姿で、他に何か一役欲しかった。
そんな場面で重なった自風牌、池田はニンマリと笑みを浮かべる。
華菜(おっ……良いとこ引いた!)打發
優希「それもポン!」打⑥
華菜「げっ」
――が、その表情が一転して曇った。
優希手牌
■■■■■■■ ポン發發發 ポン中中中
華菜(……地雷原を歩いているような気分だし)カタカタ
發と中が鳴かれていて、白が場に一枚も出ていない。
点数的に何が何でも和了っておきたい場面だが、白を引いたら地力で重ねられない限り和了れなくなってしまう。
華菜(……来んな……来んな……来んな……来んな……来んなよ!)ソォ~ット
華菜は恐る恐る山へと手を伸ばす。
牌をしっかりと掴み、親指で牌の表面をなぞる。
華菜(!?)ビビクン
>>40
華菜(何も……何も掘られてないし!?)ガビーン
華菜(鳥さんだったし!)パァァ
鳥さんで
六巡目 華菜手牌
九九九①①②22235北北 ツモ1 打5
華菜(助かった! セーフッ! 何となくだけど、二分の一の確率で死んでた気がするし!)ニャー
和 打北
華菜「ポン!」
七巡目 華菜手牌
九九九①①②12223 ポン北北北
打①で辺③筒待ちに受けるか、打②で①筒2索のシャボ待ちに受けるかという場面。
華菜(……待ちは減るけどこっちで)打②
華菜はシャボ待ちを選択した。
ここから良型の待ちに移行するのはほぼ不可能。
ならば他家に使われやすい③筒よりも、2枚しかないが使い難い①筒の方が河には現れやすそうに思えた。
八巡目 優希手牌
⑧⑧111白白 ポン發發發 ポン中中中 ツモ中
優希は⑧筒白のシャボ待ちで既に大三元を聴牌していた。
そして、引き入れた中を躊躇なく既に自身の右手側で晒されている中へと加える。
優希「カンだじぇ!」ガッ
優希(のどちゃんにまくられそうとか……そんなの関係ないじぇ! イケイケどんどん、東場の私ならそれで押し切れる!)
と優希は胸中で独白するが、実際は南場でもイケイケどんどんの全ツ麻雀をしている。
優希は南場が苦手だと思っているが、それは間違いだった。
正しくは、東場が得意、南場は普通というものである。
集中力が途切れ、優希のツキが一般人レベルまで落ちる南場でも全ツ麻雀をすると、当然和了点数よりも放銃点数の方が上回り、まくられることが多い。
八巡目 優希手牌
⑧⑧111白白 ポン發發發 加カン中中中中 リンシャンツモ二
優希「残念……リンシャンならず」打二
優希の打牌が終わり、カンドラがめくられた。そこにあったのは④筒、新ドラは⑤筒となった。
そして――それと同時に和が動く。
和「ポン」
和手牌
■■■■■■■■■■■ ポン二二二 打東
優希(のどちゃんはお急ぎのようだな)
ここまで来てようやく現れた連風牌。
和が喰いタンで連荘狙いに来ているというのは、誰の目から見ても明らかだった。
美穂子(ようやくタンヤオに向かった……いや、向かえたと言った方が正しいかしら)
和手牌
■■■■■■■■68 ポン二二二
美穂子(彼女の切り出し順番と視点移動から読み取れたのは、端の2枚くらいだけど……役牌とタンヤオの両天秤にかけていたくらいなら、まだ二聴向というところ。注意しないといけないのは片岡さんね。たぶん④⑤⑦⑧筒のどれかと白のシャボ待ち……)
美穂子は、優希が⑤⑥⑥白白や⑥⑥⑦白白から⑥を打って小三元に構えるようなタイプではないと思っている。
実際、それは正しいのだが。
④④⑥白白
⑤⑤⑥白白
⑥⑦⑦白白
⑥⑧⑧白白
ならば、考えられるのは上記の4通り。ここから⑥筒が打たれたのなら、④⑤⑦⑧筒と白は死んでも切れない。
⑥⑥⑥白白から⑥を打つ暴挙もありえるが、そうであればフリテンなので知ったことではない。
さらに、落とされた⑥筒が単純に浮き牌であった可能性も当然あるのだが、美穂子の観察眼がそれはないと訴えている。
九巡目 美穂子手牌
三四四五【五】②③③③④345 ツモ【⑤】
美穂子は赤⑤筒を引き入れて聴牌。
美穂子(④⑤筒なら使えるから私は恵まれているわね)打②
当然、リーチは掛けない。
――そして次巡。
美穂子「ツモ! 4000・8000です!」
十巡目 美穂子
三四四五【五】③③③④【⑤】345 ツモ六
ツモ・タンヤオ・平和・三色・赤々・ドラ1、優希と華菜の聴牌を潜り抜け美穂子はダマ倍満ツモを達成した。
東家 原村和25600(-8000)
南家 福路美穂子29900(+16000)
西家 片岡優希30900(-4000)
北家 池田華菜13600(-4000)
和と優希が「なっ!?」「じょ!?」と悲鳴に近い驚嘆の声を漏らす中、華菜は「よしっ!」と我がことのように喜んだ。
華菜(やった! 流石キャプテン! ラス親でトップと1000点差! 和了りトップ確定じゃないですか! あっでも……よく考えたら)
華菜「――このままだと華菜ちゃんがラスだし……」マッサオ
しかし、その顔は再び絶望色に塗り直された。
華菜を応援する会の出番かっ!
ちょっとごはんで席を外します
>>45
どんどん応援してあげて下さい
スレ開くと結構レスが付いてて驚きました
もしかして闘牌ものは需要がないのだろうかと不安になっていたので、ちょっと安心です
0:00から投稿を再開します
東四局0本場 ドラ④ 親 福路美穂子
東家 福路美穂子29900
南家 片岡優希30900
西家 池田華菜13600
北家 原村和25600
和(スピード勝負になりました……ゆーきと福路先輩が千点の手を和了るその前に、私は3900をツモるか池田先輩以外から和了らないといけません)
それはスピード麻雀が全盛のネット麻雀会で頂きに君臨する和にとって、得意分野中の得意分野だった。
しかし、一翻で良い優希と美穂子、対して三翻が必要な和ではいくら得意分野とはいえ劣勢は否めない。
和配牌
一【五】六八⑤⑦⑧2238發中 ツモ③ 打一
和(状況は決して良くないというのに……なぜでしょう、楽しい……おもしろいですね)
配牌は悪くない。
面子こそないが両面搭子が3つ、受け入れ枚数は多く一聴向くらいまではあっさり進みそうだ。
だが、それから先が長そうな牌姿でもあった。
面前で進めれば優希にも美穂子にも追いつけないだろうと和は思った。
和(急所は④⑥筒……役牌が重なれば良いですが、タンヤオに向かうのなら⑦⑧は実質辺張、④筒はドラなので早々顔を見せてくれないでしょう、最終形が嵌④待ちになるとあまりうれしくありません……早急にケアしなければ)
――三巡目。
華菜捨て牌
五六⑥
和「チー」
華菜の河に顔を出した⑥筒にすかさず反応した。
そして發を打つ。次に掴む有効牌が中でない限りタンヤオだ。
三巡目 和手牌
三【五】六八③⑤223發中 チー⑥⑦⑧ 打發
華菜「ポン」
華菜が發を叩く。
逆転をあきらめていないのならば、倍満を直撃させるか、三倍満以上のツモが必要。
リーチ・一発・ツモ・裏ドラと打点を上げる要素を全て捨て去り、發を晒したということは、ある程度逆転手が張れる算段が付いているのだろう。
華菜手牌
■■■■■■■■■■■ ポン發發發 打④
和(……ここでドラ!? 安直な決めつけはいけませんが……池田先輩は索子の染め手とは違ったのでしょうか)
まだまだ序盤とはいえ、華菜の狙いは捨て牌から察するには索子の染め手。
持っていると後々危険牌になるドラの④筒は落とすのなら第一打で落とすべきだ。
常識にかからない不自然な打牌に目を見開いたが、急所を埋めるべく直ぐさま河に出た④筒を奪い取る。
和(でも鳴かない理由にはなりません)
和「チー」
四巡目 和手牌
三【五】六八223中 チー④③⑤ チー⑥⑦⑧ 打中
華菜「――良いのか? それもポンだ」ニヤリ
華菜手牌
■■■■■■■■ ポン中中中 ポン發發發 打④
華菜は中・發を鳴いて、手出しでドラを連打。
もう考えるまでもない。
大三元か!?
大三元なのか!?
大三元なのだろう!?
和(――!? すごい……偶然ですね)
華菜の手は先局、自身の親友が狙ったのと同じ手だろうと和は思い知らされた。
優希(あのイケダとかいうヤツ……私と同じ手を……)グヌヌ
この東風戦、結局思い通りに進んだのは東一局0本場だけだった。
どうにもうまくいかない。
優希(もしや、私の同胞――呪われしタコスの一族なのか)クワッ
下家からは役満を匂わせる仕掛けが入り、対面に座る親友はきっちりまくれるだけの手を作っている。
そして、上家には……優希はちらりと美穂子をのぞき見る。
美穂子「……」ニコッ
微笑みを返された。
優希(……このおねーさん、何考えているのか全然わからないじょ)
最中、大差を付けていたというのに、美穂子は今と同じくおっとりとした空気を振りまきながら佇んでいた。
格の違いから来るのだろうか、その余裕を前にすると、オーラスを迎えてトップ目だというのに心に余裕が持てなかった。
だが、逃げる訳にはいかない。
優希(――とにかく、さっさと和了れば問題ない。初陣は勝利で飾らせてもらうじぇ!)
六巡目 優希手牌
一二三④【⑤】⑥⑥34【5】東東白 ツモ4
優希(手は進む……手は進むけど)
白を切れば③④⑤⑥⑦筒23456索そして東とかなり待ち受けの広い一聴向に構えられる。
だが、
華菜手牌
■■■■■■■ ポン中中中 ポン發發發
華菜捨て牌
五六⑥④④
この仕掛けに対して白は危険牌中の危険牌。
ノータイムで打ち出せずに優希は逡巡する。
優希(風越にタコス屋ができたのはつい最近。イケダが本当にタコスの眷属だとしても、もっと昔からタコスを愛してきた私とは年期が違う)
いきなりどうしてタコスの話になるのか、全く理解できない思考回路だが、優希は優希なりに池田華菜という人物を推察する。
優希(そう、言うなれば)ニヤッ
優希は似合わないニヒルな笑みを口元に浮かべた。
優希(――ニワカは相手にならないってことだじぇ!)
優希の河に白が打ち出された。
優希(通れ――!)
優希は拝みながら、華菜の顔へと目をやる。
発声は、なかった。
その後は、鳴きも入らず淡々と摸打が続いた。
そして、終盤へと突入する。
十巡目 優希手牌
一二三④【⑤】⑥⑥344【5】東東 ツモ⑨
優希(生牌の⑨筒……イヤな予感がするじぇ)
美穂子からリーチがかかった直後なので、優希は慎重に検討する。
この巡目だ、美穂子以外も聴牌している可能性が高い。
捨て牌
東家 福路美穂子
西912九6
南⑥(リーチ)
南家 片岡優希
九南西白四南
二
西家 池田華菜
五六⑥(チー)④(チー)④白
【⑤】②四
北家 原村和
一九發(ポン)中(ポン)3西
1西6
優希(上家のおねーさんは打⑥筒リーチなら通る……のどちゃんは喰いタンだから通る……イケダは索子のホンイツか?)
優希は捨て牌の傾向から他家の手牌を脳内に描き出す。
優希(問題ないじぇ!)打⑨
優希は自分の感覚を否定して、常識を以て判断した。
――ロン。
優希「じょ!?」
華菜「ロン」
池田手牌
①①①⑨⑨北北 ポン中中中 ポン發發發 ロン⑨
華菜「ホンイツ・トイトイ・ホンロウ・中・發、しめて8翻は倍満……きっちりまくったし!」
優希「ヒィィィッ!」
東家 福路美穂子28900(-1000)
南家 片岡優希14900(-16000)
西家 池田華菜30600(+17000)
北家 原村和25600
優希は頭を掻きむしって雀卓にダイブし、和は悔しそうに唇を噛みしめた。
華菜は「見たかあたしの勇姿を!」と言わんばかりに、見学者たちの歓声へと手を振って答えている。
コーチ「やれやれ……コンビ打ちしろとは誰も言ってなかったんだが」ギロリ
美穂子「何のことでしょうか?」キョトン
美穂子はとぼけるが、誰の目から見てもオーラスの打牌は不自然だった。
二三四六八⑥⑦456777 ツモ七
美穂子はこの形から⑥筒を切って⑦筒単騎に待ち構えたのだ。
そもそも和了りトップが確定している状況で、タンヤオが確定しているこの手牌ならリーチをする必要がない。
待ちの広さを言えば、打7索で⑤⑧筒待ちにするのが効率的である。
コーチ「……良い性格してるよ、お前」ハァ
美穂子「ありがとうございます」
コーチ「褒めてねぇよ……わざわざ打⑥筒で⑨筒誘い出し、さらにはリー棒までオマケしやがって」(あいつが調子に乗るだろうが……)
美穂子「大丈夫です。華菜はこの一年で強くなりました、その経験には自信を持って良いはずです」
コーチ「チッ」
美穂子「私は華菜のことを――誇りに思っていますから」
1も災難だったなww
>>59
雑談スレにもいた方ですか? マジでゴメンナサイデシタ……
とりあえず今日の投稿はこれにて終了となります
次回更新は明日(というか今日)の夕方以降で
レギュラー選抜戦みたいなのをやりたいと思います
また、リクエスト等ありましたら私の書ける範囲で対応しますので、ご要望はお気軽に
今後ともよろしくお願いいたします
ある日、美穂子は間違って部活が休みの日に登校してしまった。
そのまま帰宅するのももったいないと思った彼女は、部室の清掃をしていた。
――そのとき。
貴子ノート。
そう表題に書いてある日記帳のようなものを美穂子は発見した。
美穂子(……ちょっとだけ覗いても)
いけないことだとはわかっていたが、好奇心が美穂子の自制心を上回った。
そしてゆっくりとページをめくる。
福路美穂子(三年・校内ランキング1位)
精度の高いデジタル打ちもさることながら、手牌読みもすばらしい。
把握できる情報量が多ければ多いほど有利な麻雀という競技に置いて、かなりのアドバンテージを持っていると言えるだろう。
また、その手腕は過去2年の戦績から、他校の生徒が相手でも通用するのは確かである(昨年の龍門渕を相手に互角以上で渡り合えたのは福路のみだった)。
団体戦では先鋒に配置してポイントゲッターとしての期待をしたい。
池田華菜(二年・校内ランキング2位)
かわいい(断言)。
生意気そうな目とか、ちょっと厳しく当たると涙目になるメンタルとか、よくわからないけどネコミミとかしっぽが生えているときもある。
やっぱ、かわいいよなぁ……。
美穂子(……確かに華菜のあれは何なのかしら)
原村和(一年・校内ランキング3位)
デジタル打ちの精度では上位二名を凌駕するが、ここぞというときにポカミスをやらかす傾向があり、ランキング3位の座に甘えている。
ネット麻雀界で「運営が用意したプログラム」とまで評される「のどっち」その人であることを確認済みだが、明らかに力を十全に発揮できていない(悔しいが「のどっち」ならば池田より強いだろう)。
精神的なものなのか環境的要因からなのか、現時点では不明だが要対策。近い内にあの人に相談してみるか。
片岡優希(一年・校内ランキング4位)
スピード・打点どちらの面でも我が校最優(東場のみ)。南場に入れば、全ての面で翳りを見せる(とはいえ東場のリードがあるのでトータルすると戦績は悪くない)。
級友の原村曰く、片岡は「集中力がないから」南場で失速するとのことだが、集中力があれば配牌が良くなったりツモが良くなるのならば誰も苦労しない(麻雀はやる気の問題と言うのは、あの難易度設定を間違えている同人ゲーと、一部トッププロだけで良い)。
間違いなくあちら側の住人だが、どこまで自覚があるのかは不明。
当然ながら感覚的な打ち手であり、下手に干渉すると良くない結果が出る可能性も高い。現時点ではとにかく経験を積ますことが重要か。
美穂子(あの人……?)
深堀純代(二年・校内ランキング5位)
かわいくないけど、強い。
その見た目通り、堅強な守備には目を見張るものがある。
吉留未春(二年・校内ランキング6位)
昨秋からメキメキと頭角を現した成長株。
メガネを着用するようにしたことと、池田と仲良くなれたことが好調の要因らしい。
池田は天使(至言)。
文堂星夏(一年・校内ランキング7位)
福路に感化されて一気に才能を開花させた(声だけが)美(しい)少女。
才能は原村・片岡の両名には劣るが、それでもランキング5・6位の二名とならば差はない。
将来性を買って経験を積ませてみる手も……。
美穂子(……私は何も見ていないわ)
その日、美穂子は逃げるように学校から去った。
池田は和相手なら勝ち越しそうな気もするけどな
>>71
すみません、言葉足らずでした
確かに池田(速攻・高火力型)と和(速攻・中火力型)がサシで勝負すると池田に分があると思います
ですが、個人戦の戦績を見比べる限り、不特定多数との勝負であれば、池田の収支を和の収支が上回るはずです
校内ランキングの選出方法が部活中の総合収支で判断されるのなら、和は池田より上にランクインされてしかるべきではないかと考察しています
コーチ「例えばの話なんですが」
??「何だ」
コーチ「ネット麻雀では最強でも、現実の麻雀では力を出し切れないヤツがいるんです。どうするべきかと思いまして」
??「……私は立場的に誰かを贔屓する訳にはいかないんだが」
コーチ「ですから例えばの話です」
??「実際にネト麻を打っているのを見て探るしかないんじゃないか? どんな些細な違いでも良いからそれを見つけたらまた電話してくれ」
和と優希が風越に入学して一月半あまりの時間が流れたある日。
貴子に呼び出された和は、部活終了後ミーティングルームを尋ねた。
和「原村です」コンコン
コーチ「おお、来たか。開けて良いぞ」
和「失礼します」
コーチ「なあ……明日、お前がネト麻を打っているところを見たいんだが、良いか?」
和「ネト麻をですか? 別に問題ありませんが……」
コーチ「自分でもわかっていると思うが、お前はネト麻での実力を部活では発揮し切れていない。能力を出し切れていれば、福路はともかく池田よりはランキングが上になっていないとおかしい」
和「……どうすれば良いのでしょうか」ウツムキ
コーチ「そこでだ、冒頭の話に戻る。ネト麻でのお前と部活でのお前、何が違っているのか実際に見て判断したい」
和「そんなことで私は強くなれるのですか?」
コーチ「まあ騙されたと思って一度見せてくれ。それで原因がわかれば良し、わからなくてもマイナスの面はないだろう?」
和「わかりました。ぜひよろしくお願いします」ペッコリン(私には負けられない理由がありますから……)
コーチ「気にすんな、コーチとしての仕事の内だ」
――翌日、原村邸。和の部屋。
和「では始めます」
コーチ「ああ、頼んだぞ。それと私がいるからって普段と違うことするなよ……どんな些細なことでも、だ」
和「どんな些細なことでもですか……わかりました」エトペンダキー
コーチ(ペンギンのぬいぐるみ? あっ、あれエトペンか。私も欲しかったんだが人気で買えなかったんだよなぁ)
東一局 0本場 ドラ⑥ 親 龍門渕透華
東家 龍門渕透華
南家 モモ
西家 いずみん☆最強
北家 のどっち
コーチ「オイィィ! 本名で登録してんじゃねぇーよ!」ガビーン
和「え? え?」ビクゥ
色々ツッコミどころがありすぎるHNが見えるが、明らかに一つおかしいものが混じっている。
思わず叫んでしまった貴子を責められる人はいないだろう。
コーチ「あっスマン、こっちの話だ」
和「……そうですか」ホッ
貴子は、部活中あまりに酷いミスをした者には、容赦なく平手で制裁を加えている。
特に和自身が叩かれた経験がある訳ではないが、全く恐怖心を抱いていないと言えば嘘になる。
まったく意味不明のツッコミだったが、貴子の機嫌を損ねてしまった訳ではなかったのだとわかり、和は安堵の表情を浮かべた。
コーチ(ネット最強の雀士「のどっち」がいる卓だから間違いなく最上位の卓……流石にあの「龍門渕透華」以外がここまで上ってこられるとは思えん)ゲンナリ
「見つけましたわよ、のどっち!」
どこかで金髪のお嬢様が高笑いをあげた。
「お父様の呼びつけを無視して、ネト麻に張り付いていた甲斐がありましたわ」
「透華様、旦那様がお呼びで……」
「おだまりなさい! こんな機会滅多にありませんのよ? みすみす逃してたまりますか!」
龍門渕透華配牌
五八【⑤】⑥12469東南西北 ツモ四 打北
「あまり良い形ではありませんが、配牌でドラドラ……不要な字牌を処理する間に東を重ねるかタンヤオが見える形にしたいですわね」
モモ配牌
【五】七⑥13348東北白白發 ツモ⑨ 打北
「……染めで最強っぽいっすけど、赤含みの搭子を落とすのは効率悪すぎっす」
どこかで影の薄い少女が呟く。
「白赤1で2000……これが現実的な線っすね」
よーし、がんばるっすよ~と気合いを入れた。
「誰に許可を得て最強を名乗っとんねん」
のどっちというHNが同卓者に含まれているのを見て、特徴的な髪型をした少女が吐き捨てた。
いずみん☆最強配牌
一三六七①⑧33689西中 ツモ西 打9
「――ウチの敵やあらへんって証明したる」
そもそも、のどっちというHNが良くない。
一年前、自身に刻みつけられた敗北という名の刻印。
それを押しつけてきたアイツにどことなく似ているのだ。
「つぶすで」
のどっち配牌
一六九①②③⑥⑧77南發中
和(さて……始めましょうか)ゴッ
天使が――舞い降りた。
とりあえずさわりだけ
続きは夕方に投稿します
六巡目 龍門渕透華手牌
四五八八⑤【⑤】⑥2468東發 ツモ三
(……さて、ここは打發もしくは打東とすべき場面でしょうけど)
とりあえずタンヤオの見える牌姿まで伸びた。
嵌張が多いとはいえ、聴牌まではそう遠くないようにも思えるが、
(この巡目にもかかわらず、急所が2カ所も残っています……それに……)
打⑤
この牌姿だと聴牌したときにドラ側の⑤筒かドラの⑥筒を切らねばならない可能性が高い。
それで放銃でもすれば間違いなく大火傷、守備を固める意味で先に落とした。
(のどっち相手にスピードを落とすのは愚策かも知れませんが……わたくしはじっくりねっとりあなたのことを見てみたいのです)
「チー」カチッ チー⑤④⑥
モモは画面に表示されたチーのボタンをクリックした。
(ありがたいっすね、急所が埋まったっす)
ドラ表示牌待ちの嵌張という中々埋められない搭子、それを順子にすることができた。
(上家は早いのか、どうにもならない手、そのどっちかっぽいっすね)
比較的浅い巡目でドラ側を落とした透華をそう評した。
ドラ側は、基本的にドラのくっつきを狙って聴牌間近まで持っておく打ち手が多い。
落としてきた以上、かなり手が進んでいるのか、逆に手の進みが遅く危険牌になりそうなものを打ち出したのか、そのどちらかの可能性が高く思えた。
六巡目 モモ手牌
二三四【五】七1334白白 チー⑤④⑥ 打1
(六萬を引くか鳴くかでタンヤオ、白が出ればポンして打4索で聴牌っすよ)
今更だがスレタイからは想像できないような真面目な内容だなwwww
「チー」カチッ チー768
(ようやく……ですわね)
十一巡目 龍門渕透華手牌
三四五八八【⑤】⑥224發 チー768 打發
意図的にスピードを落としていたとはいえ、中々嵌張が埋まらずにここまできた。
ここでようやく一聴向と、間に合うかどうかは微妙なところである。
だが、勝負になる牌姿にはなってきた。
十三巡目 のどっち手牌
一一六八①②③⑥⑧577白 ツモ8 打③
一方、のどっちの手牌は勝負になる形ではなかった。
前巡、生牌の白を掴んだことで暗刻になっていた一萬を打ってオリ。
この局は傍観の構えだ。
十四巡目 龍門渕透華手牌
三四五【⑤】⑥22 ポン八八八 チー768 ツモ6
(……ド危険牌ですわね)
透華はツモってきた6索を見てため息を出す。
捨て牌
東家 龍門渕透華 手牌三四五【⑤】⑥22 ポン八八八 チー768
北91中南東
七北發發⑨4
五
南家 モモ 手牌■■■■■■■■■■ チー⑤④⑥
北⑨東發81
中⑤七49七
4③
西家 いずみん☆最強 手牌■■■■■■■■■■ ポン⑧⑧⑧
9①中①②一
三⑥三④8北
③西
北家 のどっち 手牌■■■■■■■■■■■■■
南九中發91
九東二一③八
終盤に入って36索のラインが一枚も見えていない。
ここまでわかりやすく危ない牌も少ないだろう。
(……でも押しますわ。例えこの牌で放銃しようとも、わたくし的には間違いではありません)
打6
透華は6索をツモ切った。
何のために序盤に⑤筒を打ったのか。
決してここで退くためではない。
>>87
何でこんなタイトルにしたのか自分でも疑問です……
「ロン。1300」カチッ
いずみん☆最強手牌
五六七3366西西西 ポン⑧⑧⑧ ロン6
「アホゥ通らんわ、龍門渕透華の偽物……本人とはレベルがちゃうで」
昨年の団体戦、龍門渕と臨海女子の試合はインターハイでも屈指の好勝負。
今、相手にしているHN龍門渕透華はその「龍門渕透華」に憧れた誰かなのだろうといずみん☆最強(笑)は推測した。
「……何か今バカにされた気がするわ」イラッ
東家 龍門渕透華23700(-1300)
南家 モモ25000
西家 いずみん☆最強26300(+1300)
北家 のどっち25000
東二局0本場 ドラ⑨ 親 モモ
東家 モモ25000
南家 いずみん☆最強26300
西家 のどっち25000
北家 龍門渕透華23700
モモ配牌 二三八①23479西北北白 ツモ⑥ 打①
(平和っすかね……チャンタと下の三色まで見るのはドリーマーだけで十分っす)
配牌で客風牌が対子になっている以上、目指せる役というのは少ない。
究極の理想を言えば、一萬・1索・8索・白、そして②③筒を引いてのチャンタ・三色だろうが、それはよほどの幸運に恵まれないと不可能。
幸い一面子・一雀頭、両面搭子と嵌張搭子が一つずつと牌姿は悪くない。
(一度っきりの親番、何とかものにしたいっす)
いずみん☆最強配牌
一七九①③⑥⑦⑧⑨1發中中 ツモ七 打1
「筒子に染めろってガイアがウチにささやきよるわ」
絶好の配牌に黒い笑みを浮かべた。
先ほど和了ったとはいえたったの1300点。
場は平らと言って差し障りないだろう。
中・ホンイツなら最低でも3900、そうなれば残り二局を最速のギアで逃げ切るだけだ。
「どうした泉? ついに頭がイカレてしもうたんか?」
「泉がおかしいんは元からやで、怜」
「それもそうやったわ、竜華。でも、その内太陽のエネルギーで七対子を和了ったりしたらどないしよか……」
「対子王子!?」
のどっち配牌
一三四五七②④⑧2236南 ツモ六 打南
コーチ(今回は勝負になりそうだな)
タンピン系の軽い手を引いた和を見て、貴子は安堵の息を漏らす。
二巡目 のどっち手牌
一三四五六七②④⑧2236 ツモ④ 打一
コーチ(とりあえずタンヤオは確定か……)
龍門渕透華配牌
五五六八④④【⑤】⑦⑨3588 ツモ9 打9
(絶好の配牌……これで負けるとクるものがありますわね……)
二巡目 龍門渕透華手牌
五五六八④④【⑤】⑦⑨3588 ツモ⑦ 打④
「ポン」
のどっち手牌
■■■■■■■■■■■ ポン④④④ 打②
「ぐぬぬ……鳴かせてしまいましたわ……でも、わたくしのツモが増えたと好意的に捉えましょう」
十五巡目 モモ手牌
二三②②234677 チー⑦⑤⑥ ツモ東
(うわっ……生牌引いてしまったっす……)
思ったように手が進まず、形テンとれれば良いかなくらいのニュアンスで打っていたところに持ってきた東。
自分では使いようのない牌だが、ツモ切って染め手気配濃厚な下家をわざわざアシストしてやろうとは思えない。
いずみん☆最強手牌 ■■■■■■■■■■ ポン中中中(東家)
捨て牌
1一619九
發南白一發西
北
(張ってるかどうか微妙なラインっすけど、これは切れないっすね。こいつじゃなくても、のどっちや龍門渕透華が持ってる可能性も高いっす)
のどっち手牌 ■■■■■■■■■■ ポン④④④
捨て牌
南一②西西3
⑧一九四81
六3
龍門渕透華手牌 ■■■■■■■■■■ チー⑥④【⑤】
捨て牌
9⑦八五88
⑧二中9⑥7
打7
(……オリっす)
モモは前巡、龍門渕透華が通している7索を打った。
もう残りは数巡、深追いはできない。
のどっち 打3
龍門渕透華 打4
「ロン」
「ロン。2000」
「え?」
のどっち手牌
二三四五六七22【5】6 ポン④④④ ロン4
「47索待ち――! 前巡の打3索は35から6を引いて出たもの――わたくしとしたことが……」ガクン
東家 モモ25000
南家 いずみん☆最強26300
西家 のどっち27000(+2000)
北家 龍門渕透華21700(-2000)
「純くーん! 透華が、透華が灰になってる!」
「ああん? あいつはいっつもハイになってるじゃねぇか」
「そのハイじゃないよ! 灰だよ、灰! 吸血鬼が日に当たったみたいな灰だよ!」
「アホ毛を切り取って庭に植えときゃ、その内また生えてくるさ」
「そっちが本体だったの!?」ガビーン
眠いので寝ます
続きは明日の早朝に
深堀さんはかわいい
東三局0本場 ドラ⑨ 親 いずみん☆最強
東家 いずみん☆最強26300
南家 のどっち27000
西家 龍門渕透華21700
北家 モモ25000
いずみん☆最強配牌
【五】②④⑦266689東白發 ツモ三
「さっきから一色に偏った配牌がえらい来るなぁ……」
よくあることではあるが、どうにも作為的な何かを感じずにはいられない配牌だった。
「でも、今回は手なりで打つで。タンヤオ・赤1で上等や」
打發
「ポン」
モモ手牌
■■■■■■■■■■■ ポン發發發 打西
「特急券鳴かせてもうたけど……まあええわ。のどっち以外が安手で和了してくれたならオーラスでウチが和了りトップになる」
二巡目 いずみん☆最強手牌
三【五】②④⑦266689東白 ツモ8 打白
のどっち 打發
>>99 咲日和だとマジでかわいい
二巡目 龍門渕透華
四八①①④⑦1239南西北 ツモ四 打南
(……いささか重すぎる牌姿ですわね)
デジタル打ちの透華にとって、不調期が訪れることは仕方ないことだとわかっている。
だが、何もそれが今日この一戦で来なくても良いだろうと、文句の一つや二つ零したくなっても仕方ない。
(のどっちの……のどっちとの勝負で何もできずに終わる何て……わたくしには耐えられません!)
モモ 打南
いずみん☆最強 打白
のどっち 打白
三巡目 龍門渕透華
四四八①①④⑦1239西北 ツモ③ 打北
(何が何でも先制聴牌して即リー――オーラスに望みを託します)
モモ 打中
いずみん☆最強 打白
のどっち 打1
四巡目 龍門渕透華
四四八①①③④⑦1239西 ツモ② 打9
「リーチ」
その音声が流れたのは八巡目のことだった。
そして一巡が流れた。
東家 いずみん☆最強手牌 ■■■■■■■■■■■■■
捨て牌
白白9西北東
1東8⑦
南家 のどっち手牌 ■■■■■■■■■■■■■
捨て牌
發白1東⑧七
南南六④
西家 龍門渕透華手牌 ■■■■■■■■■■■■■
捨て牌
南北9東西⑦
九1(リーチ)二
北家 モモ手牌 ②③⑨⑨779 チー八六七 ポン發發發
捨て牌
西南中⑥⑥一
9六⑧⑦
(うわぁ……掴まされたっす)
八巡目 モモ手牌
②③⑨⑨779 チー八六七 ポン發發發 ツモ3
(現物の9索とスジの③筒は通りそうっすけど……3索をどうにかして生かせないと和了り目がないっすね)
ここまで原点をキープしているモモだが、この局が終わるともう残るはオーラスのみという状況。
何が何でも点棒を稼いでおきたかった。
(恐いけど……押すっすよ)
常識的に考えれば、押す場面ではない。
發・ドラドラで3900が確定しているとはいえ、未だ一聴向。
待ちが好形になるかも微妙な牌姿で、リーチ相手に勝負するのは分が悪い。
だが、モモは押した。
そもそもこれが実戦であれば「誰も彼女の捨て牌から和了れない」のだから。
打3
「ロン。1300」
十三巡目 龍門渕透華手牌
四四①①①②③④12345 ロン3
(無スジの生牌をツモ切り……張っていたのでしょうか)
東家 いずみん☆最強26300
南家 のどっち27000
西家 龍門渕透華23000(+1300)
北家 モモ23700(-1300)
(……和了ったものの、未だラス。しかし、のどっちとの差は4000点に縮まりましたわ)
僅差とはいえ着順の変わらない和了をした透華を、下手クソと認定する打ち手もいるかも知れない。
だが、他家に和了された場合、平均4000点の損をしているという統計データもある。
1300点の手を和了するということは、実際は5300点の得をしているという見方もできた。
(さて……逆転に必要なのは直撃かツモで3900……何が何でも作って見せますわ)
とりあえずここまで
本当は午前中にネト麻編を終わらせておきたかったのですが、ちょっと時間が足りませんでした
続きはまた夕方以降に投稿します
申し訳ないがMSはNG
19:30から投稿を再開します
東四局0本場 ドラ東 親 のどっち
東家 のどっち27000
南家 龍門渕透華23000
西家 モモ23700
北家 いずみん☆最強26300
1着目のどっちと4着目龍門渕透華の点差は僅か4000。
趨勢はまだまだ見極められないとも思える。
だが、この勝負を後から眺めていた貴子には勝者が誰になるのか、予感めいた確信を抱いていた。
のどっち配牌
五七⑤⑥⑧⑧12589南發 ツモ白 打南
コーチ(少し、遠いか)
和の配牌は、萬子と筒子こそ好形、もしくはそれに変化しうる形。
しかし、索子は辺張2つと真ん中とはいえ孤立牌が一つとあまり良い形とは言えなかった。
コーチ(……だが、勝つのはこいつだ)
エトペンを抱いて、どこか心ここに在らずという様子でパソコンに向かう和。
完全に電脳の海へとダイブしているようだった。
コーチ(この集中力……部活中では見られなかった)
今までの和とは違う、そう貴子に思わせるだけの打牌をしてきた。
結果だけ言うと、2000点の手を一回和了しただけ。
地味。その一言に全てが集約される。
しかし、そこに至るまでの過程で「一度も」選択ミスをしていない。
少なくとも、貴子がこの一月半の間見てきた「原村和」の姿ではなかった。
コーチ(もっとお前を見せてくれ――のどっち!)
龍門渕透華配牌
二九①④⑤⑧7789西北發 ツモ⑤ 打北
(……上等じゃありませんか。やってやりましょう)
あまり良い配牌とは言えなかった。
だが、透華は気丈に嗤う。
二巡目 龍門渕透華手牌
二九①④⑤⑤⑧7789西發 ツモ③ 打西
二巡目で③筒をツモる。
面子が二つ完成した。
三巡目 龍門渕透華手牌
二九①③④⑤⑤⑧7789發 ツモ① 打發
三巡目で①筒をツモる。
雀頭が完成した。
(リーチ・平和で2翻……残りは一発か裏。デジタルのわたくしが運だのみをするというのも皮肉ですわね)
モモ配牌
一四五六七八八①3南西北中 ツモ③ 打③
(今度こそ染めで決まりっすね。西か中にホンイツの3900でまくりきるっす)
手なりで進めれば、安手の可能性が高く思えた。
多少効率は落ちようとも、自風牌か中を重ねて萬子に染める。
それが勝利への近道だ。
そうモモは判断した。
「ポン」
いずみん☆最強手牌 ■■■■■■■■■■■ ポン中中中 打一
しかし、二巡目のモモのツモが回る前に、いずみん☆最強が動く。
のどっちがツモ切った中を鳴いた。
(……前途多難っすね。でもあきらめることだけはしないっす)
二巡目 モモ手牌
一四五六七八八①3南西北中 ツモ九 打中
(西が重ならなければ、チンイツにするか、面前でリーヅモ裏頼みの運ゲーに持ち込むっす)
いずみん☆最強配牌
三四九④⑦⑨458東北中中 ツモ一 打北
(両面搭子2つに、中の対子……千点でええんやから上々の配牌や)
700点差の2位につけるいずみん☆最強はグッと拳を握る。
何でも良いから和了れば勝ちが確定する以上、この配牌に文句を言えばバチが当たるのではないかとすら思えた。
「ポン」カチッ
二巡目 いずみん☆最強手牌
一三四九④⑦⑨458東 ポン中中中 打一
(勝ったで……!)
のどっちが捨てた中を拾う。
いずみん☆最強の胸中では勝利が確定していた。
十二巡目 龍門渕透華手牌
二三①①③④⑤【⑤】⑤⑥789 ツモ④
(きましたわ!)
リーチ・平和・赤1で3900の確定する④筒を引いた。
何も迷うことはない。
「リーチ」カチッ 打⑤
即リーの一手である。
(――逆転して見せますわよ!)
十二巡目 モモ手牌
一二四四五六七八八九 ポン西西西 ツモ三
(来たっすよ……リーチが掛かってるっすけど、関係ないっす)打八
一四七萬待ちの西・ホンイツを聴牌。
ツモろうが出和了りだろうが関係ない。
その瞬間勝利が確定する。
「ポン」
のどっち手牌 ■■■■■ ポン五五【五】 チー⑦⑤⑥ ポン⑧⑧⑧ 打三
(対面はリーチ、上家は染め色の八萬を手出し……そして下家は三副露、何やウチ以外全員張っとるやないか)
東家 のどっち手牌 ■■■■ ポン五五【五】 チー⑦⑤⑥ ポン⑧⑧⑧
捨て牌
南一發白19
182⑥54
2三
南家 龍門渕透華手牌 ■■■■■■■■■■■■■
捨て牌
北西發九3⑨
⑨東7二⑤(リーチ)3
西家 モモ手牌 ■■■■■■■■■■ ポン西西西
捨て牌
③中北南34
⑦①⑨白⑦八
發
北家 いずみん☆最強手牌 二三四②④4【5】556 ポン中中中
捨て牌
北一九東98
發⑨六白⑦9
(ボッチになったような……疎外感を覚えるわー)
いずみん☆最強の口から乾いた苦笑が零れた。
十四巡目 いずみん☆最強手牌
二三四②④4【5】556 ポン中中中 ツモ7
(――追いついたで!)打4
(四家聴牌――! まあ和了るのはわたくしですけど)
龍門渕透華 打白
(違うっす……)
モモ 打西
(――ツモったる!)
いずみん☆最強 打6
全員が全員、ノータイムのツモ切り。
恐らく、「鳴かない」「自動和了」「ツモ切り」というオプションを全部有効にしているのだろう。
そうしてしばしの間、淡々と摸打が繰り返された。
そして――それに終わりを告げる音声が流れる。
「ツモ」
「ツモ。1000オール」
十七巡目 のどっち手牌
六七②② ポン五五【五】(南家) チー⑦⑤⑥ ポン⑧⑧⑧(南家) ツモ八
東家 のどっち31000(+4000)
南家 龍門渕透華21000(-2000)
西家 モモ22700(-1000)
北家 いずみん☆最強25300(-1000)
和「何かわかりましたでしょうか?」クビカシゲ
対局が終わり、和は貴子へと向き直って判断を仰ぐ。
コーチ「……ちょっと待ってろ」
貴子はそう言って携帯電話を取り出し、部屋の外へと出た。
和「……コーチ?」
そして数分後、部屋に戻って来ると開口一番こう言った。「原村、お前明日からそのペンギン持って来い」と。
和「……」
コーチ「……」
……痛いほどの静寂が部屋を支配した。
コーチ「もう一度言う、そのペンギン持って部活に来い」
和「はい、わかりまし……はいぃぃ? エ、エトペンをですか!?」
コーチ「エトピリカになりたかったペンギンだか何だか知らないが、お前が今抱いているそれだ」
和「ほ、本気ですか? さ、流石に恥ずかしいのですが……」(きっちり知っているじゃないですか……)
コーチ「ネット最強の雀士が校内ランキング3位に甘んじている方が恥ずかしいと思うがな」
和「う……まさか試合でも持って行かないとだめですか?」
コーチ「当然だ。まあ気にするな、他校には真剣を帯刀している選手までいるが、特に注意はされてない。大丈夫だろう」
和「いや、それは銃刀法違反なので問題です」
コーチ「……」
和「……」
……再び痛いほどの静寂が部屋を支配した。
やや駆け足気味になりましたが、ネト麻編はこれにて終了
上位卓の東風戦特有のクソ鳴き・早仕掛け・安手の応酬をうまく表現できていれば……と思います
次回からはレギュラー選抜戦、その後県大会へと繋がっていく予定です
今後ともよろしくお願いします
乙~
ネトマの雰囲気は出てたと思うがやっぱり天鳳でなくハンゲなんだな間違いない
しかし日程見ると…あれ?合宿無いの?
>>113
泉の手牌5が雀頭で③待ちなら456 55も567 55も13巡目で既に聴牌で待ちも変わってなくね
>>121
うっわー……すみません、ミスです
手元のメモを見ると、泉の手牌は↓のようになってました
二三四六④4【5】556 ツモ②
間違って最終形を書いてしまったみたいです。申し訳ない
よく見れば河もおかしい
何で泉の九巡目に六萬が捨てられてるんだ……正しくは九萬です
重ね重ね申し訳ない
――数日後。
県予選まで後二十日あまり。風越女子麻雀部一同は、週末を利用して強化合宿を行っていた。
コーチ(どうしたものだろうな……)
貴子は悩んでいた。
六年連続で続いていた団体戦全国出場の記録。
昨年、龍門渕高校の台頭により潰えてしまった。
コーチ(……今年も龍門渕のメンバーは替わらないだろう。ならば、どうしても天江衣を倒さなければならない)
昨年、風越を破って全国へ出場した龍門渕は部員全員が一年生。
今年もそっくりそのまま――それも一年経ったのだから昨年より強くなって出てくる。
コーチ(先鋒は福路で動かせない……あそこまで安定して点を稼げる選手はウチにはいない)
華菜でも悪くはないが、美穂子ほどの安定感は持ち合わせていない。
優希も南場のことを考えると全幅の信頼を置くことはできないだろう。
コーチ(消去法で片岡は次鋒に据える他ない。福路でリードを稼いだ後に、片岡の東場での爆発が重なれば間違いなく他校はパニックになる。南場の失速はそのドサクサに紛れてごまかすしかない)
東場の優希は平然と2~3万点を稼ぎ出す。
美穂子が先鋒戦で稼いだ点棒と足すと、かなりのリードになるのは明らかだ。
そうなれば、他家は自由に打てなくなる。
離れすぎた点差をカバーしようと大物手を狙わざるを得なくなるからだ。
大将に別格の選手を据えている龍門渕は違うかも知れないが、場を早く流してくれれば風越の利になるので問題ない。
コーチ(中堅は5~7位の誰かを置く。大量リードがある場面なら、最悪ほとんどの局をベタオリしてでも耐えられれば良い……となれば、池田か原村のどちらかを副将、そして大将に置くことになる)
別段、中堅を軽んずる訳ではない。
接戦時やリード時にはゲームを壊さずに大将へと繋ぎ、ビハインド時には追い上げを要求される副将。
勝っている場面なら逃げ切り、負けている場面なら逆転が要求される大将。
この二つと比較すれば、重要度が下がるだけだ(それを逆手に取って中堅にエースを置く学校もあるのだが)。
コーチ(福路の言う通り、池田はこの一年でさらに強くなった……だが、天江衣に勝てるとは思えない)
池田はOGとの練習試合でトップ率31%を叩き出した。
4回に1回勝てれば良い、麻雀という競技で3回に1回近く勝てる数字を残せるというのは尋常ではない成績だ。
だが、天江衣なら――トップ率100%を叩き出してもおかしくない。
それくらい別格の相手なのだ。
コーチ(ならば、残るは原村……いや)
――のどっち、か。
コーチ(何故だろうな……のどっちを見てから原村があちら側の人間のような気がした。打ち筋は完璧なデジタル……オカルトとは無縁のなはずだが……いや、だからか。人間に完璧なデジタル打ちなぞできない。福路ですら、打牌ミスは0ではない)
オカルトの頂点に君臨する天江衣、そして究極のデジタルを実現するのどっち。
一見相反する二人だが、意外と似たもの同士なのかも知れない。そう貴子は思った。
コーチ(分の悪い賭けは好きじゃないんだが……配られたカードで勝負するしかない)
宮永照に神代小蒔、そして天江衣……こんなジョーカーが配られている高校ではない。
だが、風越にはデジタルの頂点がある。
ならば、それをぶつけるのが正着打だろうと貴子は結論を出した。
コーチ(後はそこの決着を見るだけか……)
そして、貴子は現実へと帰還した。
コーチ(深堀、吉留、文堂……この三人に対して差はない。いつランキングに変動があってもおかしくないほどに、だ)
東南戦 25000点持ち 喰いタンあり・後付けあり
赤ドラあり(萬子1枚・筒子2枚・索子1枚)
東家 文堂星夏
南家 吉留未春
西家 深堀純代
北家 原村和
コーチ(……この勝負で頭一つ抜けたやつが)
――団体戦のレギュラーの座を掴み取る。
遅くなりましたが、ようやくレギュラー選抜戦まで進みました
今日の投稿はここで終了です
レギュラー選抜戦の勝者は安価で決定させますので、次回更新は人が多そうな時間帯にします(金曜夜か土曜夜)
エントリーナンバー1 中堅戦最多失点の文堂
エントリーナンバー2 役満ツモられてもほぼ±0のみはるん
エントリーナンバー3 私だけ焼き鳥……な深堀さん
この中に嫁がいる方は応援してあげて下さい
Q説明文に悪意を感じる? A気のせいです。事実しか書いてません
>>120
oh……確かにないのは不自然ですね
という訳でレギュラー選抜戦の舞台を強化合宿にさせていただきました
ありがとうございます
成績的にはそれほど差のない三人だが、打ち筋はかなり違っていた。
純代は堅い守備に定評がある。
事実、本人も一番自信を持っている部分だった。そして、それは攻撃面でも純代の力になっている。
手牌が短くなってもオリきれる自信があるから、積極的に鳴き仕掛けを入れられるのだ。だからこそ、和了率も高い。
反面、星夏は面前志向が強い打ち手である。
他二名と比較すると和了率で劣るが、その分一発が大きい。
若干ゴリ押しすぎる嫌いがあるので余分な放銃をすることもあるが、それは逆に成長点を残しているとも言えた。
未春は貧乳の至ってどこにでもいるデジタル打ち。
ランキングと同じく、二人の中間に位置するような打ち筋だった。
自身より年下なのにかかわらず、乳袋を形成させている和を一方的にライバル視している。
そんなタイプが全然違う三人と和の対局は、静かに始まった。
和「ツモ。300・500」
東一局、開幕ダッシュ……といえるかどうかは微妙なゴミ手だが、先制したのは和だった。
和手牌
二四六六 チー④③⑤ ポン⑧⑧⑧ ポン222 ツモ三
ボロボロの配牌から三副露して無理矢理聴牌。
先制の勝ち鬨をあげた。
純代「ロン。2600」
東二局、悪くない牌姿だった星夏が、中盤の二副露に対し押して放銃した。
純代手牌
二三⑤⑤234白白白 ポン中中中 ロン一
未春「ツモ。500・1000」
東三局、負けじと未春が和了した。
未春手牌
④【⑤】⑥⑦⑧⑨22西西 チー②①③ ツモ西
ホンイツまで伸びそうな牌姿だったが、わざわざ和了を見逃すのは悪手だろう。
未春「ロン。1000」
東四局、再び未春が和了る。
未春手牌
二二③④⑤⑥⑦567 ポン333 ロン②
どうにでも伸びそうな牌姿だったが、和の親番を警戒して速攻で流した。
そして、大きな点数移動がないまま後半戦――南場を迎えた。
南一局0本場 ドラ② 親 文堂星夏
東家 文堂星夏20400(-4600)
南家 吉留未春27700(+2700)
西家 深堀純代26300(+1300)
北家 原村和25600(+600)
六巡目 純代手牌
四四九九九白發 チー二一三 ポン中中中 ツモ六
捨て牌
東家 文堂星夏
北西南發⑨④
南家 吉留未春
東中(ポン)一二(チー)98
西家 深堀純代
5⑥③72
北家 原村和
東北九⑨②
純代(……)打白
純代は、生牌の白を残すのではなく、場に一枚切れの發を手牌に残した。
一見不可解に見える選択だが、きちんと理論で裏付けされた打牌である。
スピード全盛の現代麻雀では、役牌は一鳴きが基本。
逆に言えば、場に一枚切れているということは、誰もその牌を持っていない(いなかった)という可能性が高い。
例外は雀頭として使用するつもりの場合、他には七対子くらいか。
純代(……發は山にある)
それが純代の読みだった。
そして、それが功を奏し、二巡後に發を重ねる。
八巡目 純代手牌
四四六九九九發 チー二一三 ポン中中中 ツモ發 打六
星夏「とおらばリーチ!」打發
星夏が強気で牌を打った。
染め手が明白な他家がいる中で、一枚切れとはいえ役牌を打つのは躊躇してしまう(実際はそれほど当たらないものだが)。
純代「……通らない」
純代手牌
四四九九九發發 チー二一三 ポン中中中 ロン發
純代「8000」
純代の経験が發を引き出した。
東家 文堂星夏12400(-8000)
南家 吉留未春27700
西家 深堀純代34300(+8000)
北家 原村和25600
南二局0本場 ドラ南 親 吉留未春
未春「チー!」 チー①②③
八巡目 未春手牌
一二二二三四1234【5】 チー①②③ 打四
未春は星夏が捨てた①筒を喰いとった。
未春(文堂さんあたりなら、多分これは無視するんだろうけど……私は鳴く。和了れない11600よりも和了れる2900だ)
面前に拘れば、最高で平和・三色・赤1の11600を見込めた牌姿。
だが、未春は鳴いて三色・赤1の2900を確定させた。
序盤ならまだしも中盤に入れば鳴いて聴牌できるのなら鳴く。
攻撃は最大の防御である。他家の和了チャンスを潰すメリットが大きいからだ。
自身が和了れば他家は和了れない。ならば、必然的に点棒は守られる。
未春(入学当初は雲の上の存在だっかた華菜ちゃん……ようやく背中が見えたと思えば、原村さんに片岡さんが出てきた。でも、私は負けられない)
――華菜ちゃんと一緒にインハイで闘うんだ!
その想いが未春をこの位置まで押し上げた原動力だった。
ただ、麻雀が好きだったから入学した風越。
名門あるここに麻雀特待生として入部した華菜との実力差は、天と地ほどあった。
だけど、昨秋ちょっとしたきっかけでお互いに親友とも言える存在になれた。
未春(私はなりたい――華菜ちゃんと肩を並べられる存在に)
未春「ツモ! 1000オール!」
九巡目 未春手牌
一二二二三1234【5】 チー①②③ ツモ6
未春の想いが牌を引き寄せた。
東家 吉留未春30700(+3000)
南家 深堀純代33300(-1000)
西家 原村和24600(-1000)
北家 文堂星夏11400(-1000)
1本場は全員ノーテンで流局。
流れ2本場となり、南三局へと進んだ。
南三局2本場 ドラ北 親 深堀純代
十巡目 星夏手牌
三五七③④【⑤】⑧⑧23344 ツモ5
星夏(う……やっぱり索子が先に埋まったか)
打七萬で嵌四萬待ちタンヤオ・三色・赤1が確定。
理想はツモ四萬で七萬切りリーチ、時点が待ちは良くないが一盃口の確定する2索引きだった。
今回は三色は確定するものの、平和も一盃口も付かない5索引き。
それでも打点は十分なので、ダマ聴でも良いかも知れない。
星夏「リーチ!」打七
だが、星夏は牌を曲げる。
星夏(……満貫でも悪くないけど、それでは損失を取り戻し切ることすらできない。前に進むことにはならない)
決して浅くない巡目。
一四七萬のラインは今、星夏が七萬を打つまで場に見えていなかった。
守備の堅い三人が、ダマで構えていたところで吐き出してくれるだろうか?
答えは――否。出てこない。
星夏(どうせ地力でツモる以外に和了り目はない。これで間違ってないはず……)
星夏「ツモ!」
十二巡目 星夏手牌
三五③④【⑤】⑧⑧233445 ツモ四
リーチ・ツモ・タンヤオ・三色・赤1、それだけでは終わらなかった。
表ドラの下の牌は2索――。
星夏「裏々で――4200・8200!」
星夏の意地が山に届いた。
東家 深堀純代25100(-8200)
南家 原村和20400(-4200)
西家 文堂星夏28000(+16600)
北家 吉留未春26500(-4200)
ここで安価。オーラスで、
1.文堂さんが逃げ切る
2.みはるんがなんとかする
3.深堀さんがなんとかする
4.我らがデジタル畜生が空気を読まず逆転(この選択肢の場合は放銃者も指定してください。結果的に2位の人が団体レギュラーに)
本日20時までに一番多かったご意見を採用します
みなさんお気軽にどしどし書き込んで下さい
同数の場合は投票者のコンマ下一桁の合計が一番大きかった選択肢に決定します
昨日一日執筆に当ててこれだけしか書けなかったとは……ワロタwwワロタ……
投稿が遅れてしまい本当に申し訳ないです
じゃあ4で
放銃者は文堂
4 放銃は文堂が
みなさん投票ありがとうございました
20時締め切りだったので>>141->>154までの書き込みを反映させていただきます
1.1票
2.5票
3.0票
4.7票(文堂さん6票・深堀さん1票)
みはるん人気ありすぎwwww
しかし、文堂さん半荘一戦で放銃四回って……コーチ「文堂ゥ!!」ボコー
という訳で今から続きを書いてきます
文堂さん深堀さん恨むならrッツを恨んでくれ・・・
美少女のバーゲンセールみたいな作品でそんなキャラに書かれたことを・・・
南四局0本場 ドラ四 親 原村和
東家 原村和20400
南家 文堂星夏28000
西家 吉留未春26500
北家 深堀純代25100
未春(これ……完全に配牌頼みの運ゲーになってるよね)ハァ
ほぼ横一直線に並んだ点棒を見て、未春は苦笑した。
この状況ならほぼ間違いなく、全員が早和了りを目指す。
親の和は連荘狙い、暫定トップの星夏は逃げ切り狙いだ。
そのトップと1500点差の未春も、星夏に直撃ならノミ手でも逆転トップ。
純代も1600以上の直撃か、2000ツモで手が届く。
未春配牌
一一二九①①①⑦⑨南西白發
未春(第一ツモで幺九牌を引くのを祈るしかない)
八種十一牌。
麻雀の神がこの場に居るのならば、これでどうしろと言うのだと問いつめたい。
未春は九種九牌で流局するのを願う他なかった。
和 打三
星夏 打北
一巡目 未春手牌
一一二九①①①⑦⑨南西白發 ツモ三
未春(……終わった)打九
役牌を重ねるか、チャンタにするか。直撃なら片方、ツモなら両立が逆転条件。
諦める気持ちは一欠片も持ち合わせていなかったが、間に合う気もしなかったのも純然なる事実だった。
五巡目 星夏手牌
五六六六②③④⑥111南南 ツモ⑤
星夏(役なしだけど三面張……迷うことはない。和了りトップなんだ)
星夏はゴクリと喉を鳴らした。
理想はリーチの必要がないツモ南で打⑥筒(四五七萬待ちの三面張)だったが、文句は言ってられない。
星夏「リーチ!」打五
平場なら⑤はツモ切りでも良いかも知れないが、今回は即リーの一手である。
連風牌の南を重ねるまで待って、ダブ南・高め三暗刻とするのも悪いとまでは言えないが、この状況に限れば悪い。
聴牌できるチャンスがあるのなら、それに逆らう必要はないだろう。
星夏(勝たせてもらいます!)
和「リーチ」打四
そして次巡、和から追っかけリーチがかかる。
星夏 打四
六巡目 未春手牌
一一一二三①①①⑦⑨南南西 ツモ⑧
未春(私も追いついた……信じられない)
字牌処理を終えていなかったというのに、都合良く嵌張が埋まって聴牌。
流れというものを信じている訳ではないが、今回ばかりはその存在が頭をよぎった。
未春(私は曲げないけどね)打西
今の状況であれば、オリ打ちすると最下位になることはない。
未春(本当は何が何でも勝ちたい……だけど、欲で身を滅ぼす愚行は避けたい。当たり牌も少ないし)
待ちは一四萬南の変則三面張だが、一は自分で三枚使っているし、四は二枚切れ、南も二枚しか残っていない。
二軒リーチにつっかかるにはいささか待ちが悪いと言えた(場況的には曲げるべきだろうが)。
純代「リーチ」打四
未春(そっちも!? ていうか何!? 四萬三連打って私に対する嫌がらせ!? もう良いよ! 次のツモで和了れなかったら曲げて四家リーチで流局にしてやるもん!)
和 打北
星夏 打3
「ロン」
しかし、未春に次のツモは回ってこなかった。
和「11600」
和手牌
四五六⑥⑦⑦⑧⑧⑨4577 ロン3
リーチ・一発・平和・ドラ1、30符4翻の和了だった。
東家 原村和34000(+13600)
南家 文堂星夏15400(-12600)
西家 吉留未春26500
北家 深堀純代24100(-1000)
各々が勝つのは自分だという意気込みで挑んだこの一戦、終わってみれば、和がトップで、差のない2・3着に未春と純代。四度の放銃が響いた星夏がダンラス。
ほとんどランキング順通りの決着だった。
コーチ(何というか原村らしいな)フッ
貴子は皮肉気に笑った。
純代・未春・星夏が我こそはと競い合う中、あっさり勝利をかっさらう。
色々な意味で空気が読めないというか、一言で表すなら「雰囲気ぶちこわしすぎだバカ」である。
コーチ(吉留の作戦勝ちか……残り二週間、ランキング5位に食い込んでくるのは多分こいつだろう。一番周りが見えている)
純代はなまじ技術があるだけに、一定以上のラインは自分の力(ツモ)でどうにかしようとしてしまっている。
星夏はスタイル的(基本面前・好打点で押せ押せ)にある程度は仕方ないとはいえ、振り込みすぎだ。
反面、未春は自分が特別優れている訳ではないのを自覚している。
だから、身の丈に合った麻雀を打って、力を最大限に発揮できていた。
コーチ(ベストメンバーは揃った……待ってろよ、龍門渕)
――その玉座、返してもらうぞ!
レギュラー選抜戦完
これで本日の投稿は終了です
次回からは県大会編、大将戦ではついに和のあの台詞が……
今後ともよろしくお願いいたします
>>159
初期のみはるんも酷かったです……途中から美少女化しましたけどwww
何で文堂さんと深堀さんはそのまんまなんや……
――長野県団体戦予選の初日。
風越の面々は、二回戦で当たることになるであろう、昨年団体戦三位だった城山商業の試合を観戦していた。
和(いよいよ……ですね。ここから、一戦たりとも負けられない麻雀が始まります。それにしても……)
きょろきょろと辺りを見渡して、自身を見ているものがいないことを確認すると和は大きくあくびをした。
和(眠いです……)
中学時代は団体戦は早々に敗退、チームの想いを背負って戦ったのはたった一回こっきり。
個人戦ではプレッシャーがなかったという訳ではないが、負けても悔しい思いをするのは自分だけ。
名門風越女子の看板を背負い挑む今回とはレベルが段違いである。
平たく言えば、昨日は一睡もできていない。
和(まだ……ゆーきとも別れたくありません)
その他にも自身が長野に残れるか、それとも東京の進学校に転校させるかがかかっていた。
麻雀は運だけで全てが決まる不毛なゲーム――和の父はそう考えている。
そんなお遊びにほうけている時間があれば、その分勉強に充てるべきだとも。
今回優勝できなければ、夏休み明けには長野に自分はいないだろう。
和(私は、証明しなければならないのです)
麻雀は決して運だけで語れるほど底の浅いゲームではない。
麻雀のおもしろさを、奥深さを――麻雀に秘めた自身の思いを。
和「優勝――しましょ……「どーん!」へぶぅ!?」
和がぐっと拳を握りしめ気合いを入れていると、突然背中を叩かれた。
和「ケホッケホッ……ゆーき、あなたは私に恨みでもあるんですか?」ジロ
華菜「ないぞ! 全然ない!」
和「……って池田先輩!?」
華菜「天江にリベンジしようと思ってたら、自分よりランキングが下の一年に大将の座を奪われたとか全然気にしてないし! ホントだからな!」
優希「それを根に持ってるっていうんだじぇ、イケダ」
華菜「うるさい! あと先輩には敬語使え」
未春「華菜ちゃん小物臭いね」ズバァ
華菜「……」
華菜「し、試合でどちらが小物か証明してやるし!」
――数時間後。県予選二回戦の副将戦。
東一局
城山商業「ツモ。2000オール」
東一局1本場
華菜「ロン。6400の一本付けだしっ!」
東二局
城山商業「ロン。7700」
東三局
城山商業「ツモ。3000・6000」
東四局
城山商業「ツモ。1600・3200」
南一局
華菜「ロン。8000――いい加減に止まれし!」
南二局
城山商業「ツモ。4000・8000」
華菜「ちょ……」
南三局0本場 ドラ白 親 風越女子(池田華菜)
東家 風越女子172600(+1100)
南家 寿台28900(-34600)
西家 城山商業113900(+40400)
北家 岡山第一84600(-14600)
現在の状況は圧勝と言っても良い点差。
しかし、このリードのほとんどは先鋒美穂子・次鋒優希の両名がもたらしたものであった。
美穂子は二万点をあっさり稼ぎ、優希はその流れをさらに増幅させて四万点も叩き出した。
そのリードを受けて中堅・未春も一万点を積み重ね、現在に至る訳である。
華菜(……ッ! このままだと本当に華菜ちゃん小物だし……)カタカタ
華菜の成績も決して悪い訳ではない。
城山商業が猛チャージする中、なんとかプラス収支で止まっている。
華菜配牌
八九③④⑤⑥⑦1白白發中中 ツモ白
華菜(やっぱ華菜ちゃんに小物は似合わないし)ニヤリ
満貫確定の配牌に華菜はニンマリと笑みを浮かべた。
華菜(原村、お前に出番は回ってこない)
――あたしが決めてしまうからな!
九巡目 華菜手牌
③④⑤⑥⑥⑦白白白發發中中 ツモ中
華菜(来た……来たし!)
打⑥筒で②⑤⑧筒の三面張でメンホン・小三元・ドラ3の倍満を聴牌。
しかし華菜は、
華菜「リーチせずにはいられないな」打⑦
――⑦筒を打って牌を曲げた。
和「何考えてるんですか――ッ!?」ガタンッ
優希「……流石の私でもここは打⑥リーチだじぇ」
点差が点差なのでリーチ自体が悪手と思われそうだが、そうでもない。
リーチすると親の三倍満が確定し、それの直撃に耐えうるだけの点棒が寿台には残っていないのだ。
多少和了率が落ちるとはいえ、大将戦に入る前に勝ちが確定するかもしれないのなら決して悪くはない。
コーチ「池……ぶっ……す」プチン
しかし、何も役満に拘る必要は全くない。
サイバイマンで足りるのなら、待ちの多い方を取るべきなのだ。
――数巡後。
華菜「ロン――32000だ」ドヤァ
華菜手牌
③④⑤⑥⑥白白白發發中中中 ロン發
県予選二回戦・副将戦
風越女子204600(+33100)
寿台-3100(-66600)
城山商業113900(+40400)
岡山第一84600(-14600)
美穂子「ああ、良かった……」ホッ
未春「ハラハラしましたね」
コーチ「……――……――……」ブツブツブツブツ
和「ヒィ!?」ガタガタガタ
優希「……イケダの冥福を祈っておくじょ」ナムナム
華菜「今戻ったし!」
満面の笑顔で観戦室に戻った華菜を迎えたのは貴子の右手だった。
華菜「にゃッ!?」
パアンと頬を打つ音が観戦室に鳴り響く。
コーチ「池田ァ!! てめぇさっきの⑦筒切りはなんだ!?」
イケダァ!! クワシイハナシハホテルデキカセテモラウゾ!(ボウ)
ナ、ナンデホテルマデモドルヒツヨウガアルンデスカ?(セイロン)
ボコー
イタイシ!
ン? イマナンデモスルッテイッタヨナ?(ナンチョウ)
イッテナイシ!(ハクシン)
ボコー
コーチ「お前らは自分の部屋で待機してろ……わかったな?」
全員「はい」
オラァ! テメェハコッチダ
ズルズルズル……
和「……」
優希「……庇う言葉がみつからないじぇ」
未春「痛そう」
美穂子「痛い」
星夏「あ、そう言えば私たちは牌譜の整理があるんでした」
純代「……急いでやらないとコーチに怒られてしまう」
ミ、ミンナハクジョウダシー!
ズルズルズル……
>>193は48000の間違いです。申し訳ない
お昼の更新はここまでで、京子ちゃんのアンケートはまた夕方(5時頃)に更新します
――五月上旬のある休日。
京子「はぁ……部活行く気になれないなぁ……」トボトボ
一人の少女が繁華街をあてもなくふらふらと歩いていた。
金色のツインテールもしゅんと垂れている。
辺りは人の山、同年代の姿も見えるが、京子は制服姿なのでどこか浮いていた。
京子「みんな強すぎ……私はどうすりゃ良いんだ?」
オリエンテーションの時、壇上で演説する部長が格好良かったから、お近づきになれるならと何となく入部した麻雀部。
最初の頃は全く勝てなかったが、初心者だから仕方がないと割り切れた。
しかし、もう一月あまりが経ったというのに、自身はいったい何回勝てたというのだろうか。
間違いなく片手の指で数えられる。
京子「しかも咲があんなに強いなんてなぁ……」
一番驚いたのは、中学時代からの親友・宮永咲の麻雀だった。
咲「カン、もういっこカン、もういっこカン。嶺上ツモ、32000。京ちゃんの責任払いだね」ニッコリ
思い出すだけで身震いしてしまう。
京子「あと一人で団体戦に出られると知って、勧誘(というか拉致)したらこんなことになるなんて……」
あんまり麻雀は好きじゃないんだと渋る咲を無理矢理部室まで引っ張ってきた。
その後は語るまでもない。
久が口八丁手八丁で丸め込んで、あれよあれよという間に咲は麻雀部員と化していた。
京子「何か間違ったかなぁ……いや間違ってないのか。咲という強力なカードを部に連れてくることができたんだから」
――私はどうしてもみんなで大会に出たいのよ。
個人戦じゃだめいけないんですか?
その京子の質問にどこか遠くを見るような視線で久は語った。
京子「間違っているのは私の弱さ……か。ハハッ……」
自嘲気味に京子は笑った。
京子「落ち込むなんてらしくねーな。こんなとこで油売ってる場合じゃない……学校行くか!」
割と単純な作りの京子の頭はこうしてふらふらと歩いているだけで、立ち直った。
そして、学校へと戻ろうと体を反転させたその時――
ドンッ
>>19時までの多数決(同数の場合はコンマ一桁の合計数が多い選択肢に決定)
1.ぶつかった相手は南浦数絵だった
数絵「探したぞ……京子」
京子「か、数絵……?」
2.ぶつかった相手は染谷まこだった
まこ「はぁはぁ……ようやく見つけたわい。どうしたんじゃ? 悩みがあるならワシが相談に乗るぞ?」
京子「せ、先輩……?」
3.ぶつかった相手は竹井久だった
久「やっほー! 青春してるわね」
京子「ぶ、部長……?」
4.ぶつかった相手は宮永咲だった
咲「京ちゃん……私を置いていかないでよ」
京子「さ、咲……?」
5.ぶつかった相手は藤田靖子だった
靖子「すまないっ! 大丈夫か?」
京子「あっ……はい、大丈夫です」(……この人どこかで見たような?)
6.ぶつかった相手は南浦プロだった
南P「失礼! ……ん? 君は確か数絵の……?」
京子「須賀京子です。部活では数絵さんのお世話になっています」(この人……プロだったよな)ゴクリ
7.ぶつかった相手は戒能良子だった
良子「そこのガール、さっきから独り言が漏れていますよ?」
京子「あわわわわ!?」
京子ちゃん編の序章投下完了
という訳でアンケートにご協力よろしくお願いします
須賀京子の参考画像希望
7
ミスった、これで大丈夫なはず
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3753341.jpg
あっ>>209を見落としてた。マジすみません
参考画像ありがとうございます
おもちでかいな……
個人的には、自分が貧乳故に、他の娘のおもちが大好きな京子が良いと思った(小並感)
これでどうよ
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3753421.jpg
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3753424.jpg
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3753436.jpg
1.0票
2.1票
3.0票
4.0票
5.0票
6.2票
7.6票
みなさん投票ありがとうございました
京子ちゃんの師匠は6票を集めた戒能プロに決定です
清澄メンバーからはまこの1票のみ、南浦プロと戒能プロに投票が集中……
私の予想とは大違いでしたww
咲さん師匠でリンシャン小悪魔化か部長師匠で悪待ち京ちゃんかになるのかなと想像してたので
それでは続きを書いてきます
>>214
>>1はハルヒの橘京子のイメージで書いてました。参考↓
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3753501.jpg
>>215は全部イメージに近いです
でも高身長な京太郎のスペックを思えば、>>211の方が正しいのかなあとも
まあ、みなさんそれぞれ好きな京子像でイメージして良いんじゃないでしょうか(丸投げ)
戒能「そこのガール、さっきから独り言が漏れていますよ?」
京子「あわわわわ!?」
戒能「……ふんふむ。ウォーリィを打ち明ける相手なら私が務めましょう」
戒能「さあ、さあ、さあ!」ズイッ
京子(……この人、私をからかいたいだけじゃないか? つーか誰?)
戒能「チッチッ、若人をからかう趣味はありません。私の名前は戒能良子です」
京子「人の思考を読まないで下さい」
戒能「私にかかればブレックファースト前です」
京子「あーっ! 思い出した! 確か……イタコのソロモン王で傭兵な人だ!」
戒能「ノー! どうしてそこまで知っていてプロ雀士という私の職業が出てこないのですか!」
ネーオカーサーン、アノオネーチャンタチナニシテルノー?
ウエノサンウエノサンウエノサンウエノサン
メッ! コドモハミチャダメデス
ドウシタ? チワゲンカカ?
ココハドコダ……スミレ、アワイ、タカミ、セイコ……ミンナマイゴニナッテシマッタ
ワカイッテイイワネェ……
キョウハコロモトドライブダー サトミー、オマエノトモダチハコナイノカー?
ミンナヨウジガデキタラシイゾー ジツハトウカタチモツゴウガツカナカッタンダー
京子「大声出さないで下さい……めちゃくちゃ注目されてます」ヒソヒソ
戒能「誰のせいですか! とりあえずそこのカフェに入りましょう。ここは何故か死の匂いがします」ヒソヒソ
地味にキャップとぽんこつと不幸コンビが混ざっとるんだが……
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3753955.jpg
(タコスのトレスで)すまんな
京子「……と言う訳です」
戒能「アンダスタンドしました。要約すると、弱すぎる自分をどうにかしたいということですね」
京子「まあそうです」(何で初対面の人にこんなこと話してんだろ……)
戒能「麻雀歴一カ月のルーキーが中々勝てないというのは珍しくもなく当たり前です。しかし、全く勝てないというのはアブノーマルですね……」
京子「おおぅ……戒能プロがアブノーマルって言うともやもやしますね」
戒能「シャラップ! とりあえずあなたがスーパー弱いのか、他の人がウルトラ強いのか判断するために一度打ってみましょう」
京子「へ? ……私なんかと打ってくれるんですか? えっと一応トッププロですよね?」
戒能「一応は余計ですがまあいいでしょう。私はあなたとミートするためにここに来たのですから」
京子「?」
戒能「あなたにわかるような言葉でうまく説明できませんが……う~ん、虫の知らせとでも言えば良いのでしょうか。まあ一般的にはオカルトに分類される力に導かれたと言っておきましょう」
京子「余計に意味が……?」
戒能「ゴシップというものはあることないことが含まれています。そのあることの部分で引っかかるものがあったということです。こんなんでも“一応”トッププロなのですから、理由もなく女子高生とお茶をするなんてノーウェイです」
京子「根に持ってたのか……この人案外子供っぽいな」(す、すみません……)
戒能「……脳内と口から出る言葉がリバースしてます。タイムイズマネー、早速雀荘に行きましょう」ガタンッ
アイスティー2ツで420エンニナリヤス!
リョウシュウショプリーズデスー。メイギハマツヤマフロティーラデ
京子「……経費で落としてる。せこい……」
今日の投稿はここで終了です
(まさか選ばれるとは思ってなくて展開を考えてなかったとは言えない……)
続きは明日の早朝か夜にしますので、よろしくお願いします
>>221
風越女子高校先鋒・福路美穂子と精神病患者キャップは別人
はっきりわかんだね
>>222
ええんやで(ニッコリ
なんというすばらなお仕事
まどかみたいでカワイイと思った(小並感)
自分は絵心なんて欠片も持ち合わせていないので、トレスと言えども綺麗に描ける方は尊敬に値します
ようやく帰宅……何もかんも年末が悪い
今から書きため……ずに随時投下していきます
――とあるノーレート雀荘。
戒能「エブリワン、よろしくですー」
おっさん「おっ、かわいいお嬢ちゃんたちが相手か。今日はついてるな」
じいさん「ばあさんの若い頃はお主らより綺麗じゃったぞい」
京子「よ、よろしくお願いします」
東風戦 赤あり 喰いタンあり 後付けあり
東一局0本場 ドラ一 親 おっさん
東家 おっさん
南家 須賀京子
西家 じいさん
北家 戒能良子
戒能配牌
二三①①②④④12356東
戒能(オーラスまではおとなしくするつもりでしたが……無駄に好配牌です)
ドラを引けば下の三色が確定する好配牌。
面前に拘ったとしてもそう聴牌まで時間はかからなそうな牌姿だ。
戒能(さて……京子の第一打は……)
おっさん 打①
京子 打4
戒能(すっげーデンジャラスです。染め手……もしくはチャンタでしょうか)
じいさん 打7
一巡目 戒能手牌
二三①①②④④12356東 ツモ二
戒能(まあ、手なりでゴーでしょう)打東
おっさん 打七
京子 打④
戒能(④筒をノータイムでツモ切り……視ていないというのに彼女の考えがクリアにわかります)
じいさん 打東
二巡目
二二三①①②④④12356 ツモ一
戒能(何かムカツキます)打二
来て欲しい時には来てくれないくせに、来なくて良い時にはわらわらと集まってくる。
気まぐれな牌に戒能は少し腹を立てた。
戒能(まあ支配してなかったらこんなもんでしょう)
京子「チー!」打中
六巡目 京子手牌
二三七八南南北白白發 チー三四【五】
捨て牌
4④6⑧2④
中
淡々と続く摸打の静寂を破ったのは京子だった。
親のおっさんが捨てた三萬を両面チー。
萬子のホンイツかチンイツだということはバレバレだろうなと本人も自覚していた。
京子(あとちょいだけど……)
比較的手広い二聴向だが、この巡目になると字牌は絞られそうだし、ドラが姿を現すとすれば誰かが聴牌した時だろう。
京子(染谷先輩みたいにうまくは行かないか……)
清澄高校麻雀部の中で唯一の初心者だった京子が上達のために始めたのが強者の模倣だった。
唯一自分でもできるかもと思えたのが、染谷まこの染め麻雀だった。
久の悪待ちは真似したがただ和了れないだけだったし、咲の嶺上開花はそもそもカンする機会があまりないので再現しようがない。
数絵の南場に入れば強くなるという特性に至っては意味がわからなかった。
じいさん 打7
戒能「ロン。7700ですー」
戒能手牌
一二三①②③④④12356 ロン7
京子(――もう張ってたのか!)
戒能捨て牌
東二七九②①
京子(わかりっこねぇ……)
ドラ側の二萬を序盤に落としているのが不自然ではあるが、その他は嵌張と辺張の処理をしているようにしか映らない。
京子(でも部長とか染谷先輩はこんな時放銃するのはあんまり見た記憶がないな)
序盤の出会い頭の一発を喰らうのは大抵が自身、時々咲と数絵という配分だった。
京子(……強いヤツはこの捨て牌からわかるのか?)
東家 おっさん25000
南家 須賀京子25000
西家 じいさん17300(-7700)
北家 戒能良子32700(+7700)
東二局0本場 ドラ九 親 須賀京子
東家 須賀京子
南家 じいさん
西家 戒能良子
北家 おっさん
戒能(……ついうっかり和了ってしまいました。気をつけないとですね)
様子見に止めるつもりだったが、飛び出した当たり牌にプロ雀士の性がかってに和了宣言をしていた。
戒能配牌
【五】八八九①⑦⑨378東南西
戒能(これはまた仕掛け甲斐がありそうな……)
麻雀の神はどうやら自分によほどいじわるがしたいらしい。
上の三色を見つつ、チャンタもつけられればという牌姿。
七萬⑧筒9索は出たら即鳴きの一手だろう。
戒能(程々にプレッシャーはかけるつもりですが……その前にまた和了ってしまいそうです)
京子 打南
じいさん 打發
一巡目 戒能手牌
【五】八八九①⑦⑨378東南西 ツモ北 打南
二巡目 京子手牌
一四五六③⑥⑦⑧⑧28東中 ツモ⑦
京子(今回は和了れそうだ)打一
やや浮き牌が多いとはいえ、既に二面子が完成している上に、一盃口の種まである。
この牌姿に文句を付ける訳にはいかないだろう。
――二巡後。
四巡目 京子手牌
四五六③⑥⑦⑦⑧⑧28東中 ツモ三
京子(よし……伸びた) 打中
おっさん「ポンだ」 打⑥
■■■■■■■■■■ 中中中(東家)
京子「――ッ! チー」打東
五巡目 京子手牌
三四五六③⑥⑦⑧28 チー⑥⑦⑧
京子(やっべぇ……反射的に鳴いてしまった。イーペー捨ててタンのみってどうなんだ?)
じいさん 打七
戒能(ハリーですか? ならばこちらも――)
戒能「チー」打⑤
五巡目 戒能手牌
三【五】⑦⑨2378東西 チー七八九
戒能(イージーには行かせません)
未だ三聴向、聴牌までの道のりは遠いが、プレッシャーを掛けるには十分だ。
七巡目 京子手牌
三四五六③⑥⑦⑧78 チー⑥⑦⑧ ツモ三 打③
京子(張った……けど片和了りのタンのみ)
東家
捨て牌 三三四五六⑥⑦⑧78 チー⑥⑦⑧
南一一東2①
③
南家 じいさん手牌 ■■■■■■■■■■■■■
捨て牌
發①白南發
西家 戒能手牌 ■■■■■■■■■■ チー七八九
捨て牌
南八北①東西
北家 おっさん手牌 ■■■■■■■■■■ ポン中中中(東家)
捨て牌
9發4③1⑨
京子(……とりあえず一枚も見えてない。ツモに期待か)
そう京子が結論を出していると、
じいさん 打9
京子(さっそく和了れない方かよ!)
戒能 打6
京子(――フリテンッ!)
おっさん 打6
フリテン後に当たり牌二連打。
よくあることではあるが、京子には十分なショックであった。
京子(まじかよ……)
八巡目 京子手牌
三三四五六⑥⑦⑧78 チー⑥⑦⑧ ツモ 打6
京子「ツモ! えっと……500オールです!」ホッ
安堵の表情を浮かべて京子が手牌を倒した。
絶体絶命と思われた状況からまさかのツモだった。
じいさん「かーっ! 安っすいのう!」
京子「えっと……す、すみません」
おっさん「負けてるからってお嬢ちゃんに当たってじゃねーぞ、じいさん」
戒能(……ラストワンを引いて来ましたか。彼女に流れが向きそうですね)
戒能手牌
三【五】⑦⑨233789 チー七八九
東家 須賀京子26500(+1500)
南家 じいさん16800(-500)
西家 戒能良子32200(-500)
北家 おっさん24500(-500)
東二局1本場 ドラ白 親 須賀京子
京子配牌
四九④⑤6788南西西白發 ツモ2
京子(……ええいっ! やってしまえ)打⑤
とりあえず打九→打南として様子を見たい牌姿だが、京子はホンイツ決め打ちの打⑤を選択した。
じいさん 打1
戒能 打北
おっさん 打八
二巡目 京子手牌
四九④26788南西西白發 ツモ東 打④
じいさん 打東
戒能 打西
京子「ポン!」打四
京子手牌
九26788東南白發 ポン西西西(西家)
――五巡後。
京子「ロン! ん~と……3900!」
京子手牌
24888發發 チー567 ポン西西西(西家) ロン3
捨て牌
⑤④四九南九
東
おっさん「あいたた……もう張ってたかぁ」
戒能(捨て牌からしてほとんど無駄ヅモなしで無理染め成功……偶然かそれとも――)
京子の捨て牌は六巡目を除き全て手出し。
初手で両面搭子を落とし、染め手に向かったのだと判断できた。
戒能(いささかアーリーですね。まだまだじっくり見極めないと)
東家 須賀京子30700(+4200)
南家 じいさん16800
西家 戒能良子32200
北家 おっさん20300(-4200)
東二局2本場 ドラ9 親 須賀京子
京子「ロン! うむむ……8000?」
十二巡目 京子手牌
⑨⑨白白 ポン發發發(南家) ポン西西西(南家) チー⑥⑤⑦
戒能「ノー、違います。7700の二本付けで8300ですー」
東家 須賀京子40000(+9300)
南家 じいさん16800
西家 戒能良子22900(-9300)
北家 おっさん20300
戒能手牌
一一二三四①②③⑤⑥⑦23
捨て牌
北南中中九(←リーチ)三
三6
戒能(今度は先制リーチを躱されました……しかも――)
京子捨て牌
五4466八
南東9二⑧
今回の筒子の染め手であることを欠片も隠そうともしていない京子の捨て牌。
この内、八巡目までの牌全てが手出しである。
戒能(今回もほとんど無駄ヅモがナッシングですー。捨て牌から察するに配牌は……)
京子配牌
五八⑤⑦⑧⑨4466西西發發
戒能(こんな感じでしょうか。普通ならチートイかトイトイを狙いたくなるでしょうが)
四対子なら七対子の二聴向の上、鳴きを考慮すればトイトイも遠くない。
第一打の五萬は理解できるが、その後の46索の対子落としは理解に苦しむ。
戒能(――彼女は染め手にこだわった。んー、ただ下手だからそうするしかなかったという訳ではなさそうですし……)
もちろん京子が上手な訳ではない。
初心者にしては、そこそこ打てる方だというだけだ。
初級者以上中級者未満というのが、現時点での京子の位置づけとして正しいだろうと戒能は思っている。
戒能(彼女自身のこともですが……彼女が全くウィンできないというチームメイトのことが気になります)
中途半端ですが今日はここまで
眠気に勝てそうにありません
続きは今日の昼以降にまた投稿します
おはようございます
昨日は急に仕事が入り投稿できませんでした
今日のお昼前後から投稿を再開しますのでよろしくお願いします
朝の出来事
>>1「久々に天鳳でもするか~」
>>1「くっそヤキトリで振り込んでないのにラス喰らった……もう一回や!」
>>1「ぐぬぬ……」
>>1「……麻雀ってクソゲーやわ」
東二局3本場 ドラ北 親 須賀京子
戒能(さて、あまり独走させたくありませんし……一度ストップさせましょう)
一巡目 戒能手牌
一四八②⑥⑨1147東南北 ツモ白
戒能(……やっべーくらいにバッドです。流れが完全にキョーコに向いてます)
この牌姿を十三不塔と言って役満扱いにするローカルルールもあるが、あいにく現代で採用している場所はほとんどない。
九種九牌でもない今回はこのクソ配牌でやっていくしかないのだ。
戒能(どうにかしようと思えばどうにでもできますが……それはオーラスまでお預けです。今回は下家にファイトしてもらいましょう)打東
おっさん「ポン」
■■■■■■■■■■ ポン東東東(西家)
――二巡目。
戒能(……)打八
おっさん「チー」
■■■■■■■ チー八七九 ポン北北北(西家)
――三巡目。
戒能(さて、これがラストです)打北
おっさん「おいおい、ドラだぜ? ポン」
■■■■ ポン東東東(西家) チー八七九 ポン北北北(西家)
戒能(――ホンイツ役役ドラ3、跳満に対して攻められますか?)
京子(くっ……早い!?)
四巡目 京子手牌
三四五六七七②②②白白發發 ツモ【⑤】
決して京子の牌姿が悪い訳ではない。
まだまだ序盤と言える巡目で二五八七萬・白發待ちの一聴向。
親番なら押しても良さそうにも思えたが、
京子(字牌は捨てられないし……萬子は論外。筒子を落とすしかない)
京子の選択はオリ。
待ちの枚数、打点といった要素は京子にとって関係なかった。
一月あまり――局数に直せば優に百は超えるだろう数を連敗し続けている。
自身の身に染みた敗北の匂いが濃くなってきたのを確かに感じ取った。
京子(いつもだ……いつも私はこんな場面で振り込む。だからオリないといけないんだ)打②
だが――
じいさん「ロン。2600の三本付けじゃ」
じいさん手牌
二二③④④④④234678 ロン②
敵は一人ではない。
特殊な状況を除くと、自分以外の三人は全て敵なのだ。
京子「え? そっち? っていうかリーチしないの?」
じいさん「萬子をツモった時に困るからのう……安手で流して次の親番に期待するのも悪くなかろう」
東家 須賀京子36500(-3500)
南家 じいさん20300(+3500)
西家 戒能良子22900
北家 おっさん20300
おつ
細かい事いうと>>235は5200やでー
東三局0本場 ドラ一 親 じいさん
東家 じいさん
南家 戒能良子
西家 おっさん
北家 須賀京子
――七巡目。
じいさん「リーチじゃ!」
東家 じいさん ■■■■■■■■■■■■■
捨て牌
北西白⑨二⑨
①(←リーチ)
南家 戒能良子 ■■■■■■■■■■■■■
捨て牌
西九1②①
西家 おっさん ■■■■■■■■■■ ポン中中中(南家)
捨て牌
⑤六⑥⑧⑦①
北家 須賀京子
捨て牌
西東北1白2
京子(……安牌がない)
京子手牌
一一三五八九②③④④⑤67
京子の調子は変わらず良かった。
面子オーバーの形だが、辺張の処理をしている内にそれなりになりそうな感じである。
しかし、今回に限ってはそれが裏目に出てしまった。
親のリーチに対して通りそうな牌が一枚足りとも手の内に存在しない。
京子(安牌増やせ! 安牌増やして! 安牌増やして下さい!)
今の京子にできるのは、戒能とおっさんが安牌を増やしてくれることを願うだけだった。
>>245
ん? 今なんでもするって……言ってなかった
表記してる箇所としてない箇所があって申し訳ないのですが、ポンの横の(○家)はどこから鳴いたかを示しています
紛らわしくて申し訳ない
戒能手牌
二三三⑤【⑤】【⑤】⑥⑧⑧4678 ツモ③
戒能(……私からは⑤筒が全部見えてます。③筒は通りそうに思えますが)
チリチリと脳髄の奥が疼く。
まるでそれを切ると危険があると言わんばかりに。
戒能(③筒が一枚も見えてないのがアンナチュラル。逆に③筒は危険牌)
京子「……」ナミダメ
戒能(――キョーコには安牌がなさそうです。こうすれば)
打⑥
おっさん「おいおい……じいさん、それは通ってるのか?」
じいさん「ワシはロンと言ってない。そういうことじゃ」
おっさん「そうかい……なら俺もこうするか」打⑥
京子「っ!」パアァ打③
戒能(――フィッシュ。入れ食いですね)
じいさん「おっと、ロン」
京子(えっ? スジ……)
じいさん手牌
二三四六六①②2224【5】6 ロン③
じいさん「一発で……裏はなかったわ。7700」
京子「辺③筒待ち――っ!」ガタンッ
じいさん「ようやく調子が出てきたわい」
東家 じいさん28000(+7700)
南家 戒能良子22900
西家 おっさん20300
北家 須賀京子28800(-7700)
東三局1本場 ドラ9 親 じいさん
おっさん「ロン」
京子「え?」
おっさん「安めだが見逃す余裕はねぇ――4200」
おっさん手牌
①②③⑦⑧99 チー⑤④⑥ ポン西西西 ロン⑥
東家 じいさん28000
南家 戒能良子22900
西家 おっさん24500(+4200)
北家 須賀京子24600(-4200)
>>243
二巡目におっさんがすり替えしてた……。どこのバイニンなんだこいつ
正しくは↓です。ごめんなさい
■■■■■■■ チー八七九 ポン東東東(西家)
東四局0本場 ドラ北 親 戒能良子
東家 戒能良子28000
南家 おっさん22900
西家 須賀京子24500
北家 じいさん24600
――オーラス。
卓の中央で回転するサイコロに視線を送りながら戒能は力の歯車を噛み合わせる。
戒能(……必要なのは嶺上牌が有効牌になること……そしてカン材が集まること)
しかし、噛み合わない。
あまりにも大きすぎるソレは戒能の器ですら扱いきれなかった。
戒能(――ッ! やはりインポッシブルですね……制約が必要です……一聴向以上には進まない――これでどうですか)
先ほどよりは多少小さくなった。
だが――
戒能(……まだキツイですね。では……ドラが来ない――何とかなりませんか)
もっと――もっと削らないと――
戒能(まだダメですか……二翻以下でしか和了れない――これ以上は出せませんよ)
カチリ。確かに何かが組み合わさった。
戒能(――)ゴッ
京子(ハハッ、オーラスを迎えてみれば全員二万点台か……最初はツイてたのに)
自身に染み付いた負け癖に最早笑うしかなかった。
ここから逆転するのに何点必要なのか、そんなことは既に眼中になく、部活の対局を思い返す。
京子(……咲と同卓した時っていっつもこんな感じだったよな……)
いつも――いつもと言って良い。
オーラスが近くなれば、何故か場が平らになっていて――
京子(何故か咲が和了って終わる――まさかこの人)
――数十分前。
戒能『その幼なじみのリンシャンさんが入部してから全く勝てないということですね』
京子『まあ……そうです。それまでは全く勝てなかった訳じゃないんです。勝率はお察しですけど』
戒能『hmm……なるほどなるほどなるほど~』
――そして現在へと戻る。
京子(まさか……だけど、なんかそんな空気も流れているような……)
一巡目 京子手牌
【五】②④【⑤】⑥4469西北北北 ツモ三
京子(すげぇ配牌……でもこれ和了れるのか?)
ドラ5の跳満確定手。
しかし、これといって狙える手役がなく、面前で進めてリーチするしかない牌姿でもあった。
京子(やれるだけやってみっか……)打9
――六巡目。
東家 戒能良子 ■■■■■■■■■■■■■
12中79六
南家 おっさん ■■■■■■■■■■■■■
東中一二北⑨
西家 須賀京子
9西8⑨三
北家 じいさん ■■■■■■■■■■■■■
西中九④1
京子(誰も動いてない……一番早いのは多分私だ)
六巡目 京子手牌
【五】六②④【⑤】⑥44【5】6北北北 ツモ7
トントン拍子で有効牌を引き入れた京子は役なしだがドラ6を聴牌。
いったいどこのドラゴンロードなんだと問いつめたくなる。
共通点は両者ともにおもちが好物なことだけであろう。
京子(――勝たせてもらう! プロが相手とか手加減されてるとかそんなの関係ない!)
京子「リーチ!」打②
京子は②筒を強打した。
マナーが悪い。清澄高校の部長は何を教えているというのだ。
戒能「カン」
京子(えっ……)
戒能手牌
二三四五五③白白白白 明カン②②②②(西家) リンシャンツモ④
しっかりと有効牌を引き入れて――当然、それだけでは終わらせない。
戒能「もう一つカン」
戒能手牌
二三四五五④③ 暗カン白白白白 明カン②②②②(西家)
京子「連カン!?」
戒能「――リンシャンツモ。5800」
戒能手牌
二三四五五③④ 暗カン白白白白 明カン②②②②(西家) ツモ⑤
戒能「キョーコの責任払いで逆転トップですー」
一位 戒能良子28700(+5800)
二位 じいさん28000
三位 おっさん24500
四位 須賀京子18800(-5800)
六月最初の日曜日。
京子の姿は予選会場の控え室の中にあった。
ぼんやりとした視線の先にあるモニターには、級友の数絵が対局室へと脚を運んでいる様子が映し出されている。
京子(ここまで来たか)
いや、来てしまったと言った方が正確か。
そう考えながらも、京子は対局へと思いをはせる。
インターハイ団体戦長野県予選の決勝。
頼もしいを通り越して恐ろしいとまで言えるくらい強いチームメイト。
彼女たちの力ならここまで来れるのは当然だとも言えた。
京子(戒能プロが教えてくれた“不思議な力”の使い方)
何か特別な打ち方をするように指導された訳ではない。
ただ、自分の気の赴くまま、好きなように麻雀を打った。
京子(それ以来、私は変わった。最もそれは大きな変化じゃなくて、ちょっとずつだったんだけど)
視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚――五感には属さない異質な感覚。
京子にもそれがほんの少しわかるようになった。
京子(そして――勝てるようになった。まあ、咲にだけは一度も勝ってないけど……それは他のみんなも一緒だから)
久に――
数絵に――
まこに――
京子は勝てるようになった。
といっても勝ち越している訳でもなく、総合収支を上回っている訳でもない。
ただ、ツイているときは勝てることもある。
それだけ。京子が部内最弱であることに変わりはない。
京子(運ゲーだよな、麻雀って)
当然だ。
上級者が初心者に大敗するのも日常茶飯事。
いかなる技術も圧倒的な強運の前には吹き飛んでしまう。
京子(でも、だから、だからこそ――おもしろい。私でも勝てる。私が信じるべきなのは付け焼き刃の技術なんかじゃない)
上級者の模倣。
それは決して悪いことではない。
麻雀に限らず、あらゆる競技において最も簡単に上達する方法の一つであろう。
だが、物事には順番がある。
基礎を身に付けず、模倣に走っても中途半端に終わるだけだ。
京子(今は自分の運を信じる――運を最大限に生かす麻雀をするしかない)
配牌に始まりツモる牌、ドラ、他家が捨てる牌。どれも毎局同じではない。
最適解を見つけ出すのに、京子は経験が足りなさすぎた。
だから、流れに身を委ね、運に全てを賭ける。
京子「精一杯楽しむぞーっ! 行けっ数絵、君に決めたっ!」
まこ「なしてポケモン風なんじゃ……」
咲「京ちゃんゲームが好きだから……」
久「やれやれ、まるで男の子みたいね」
京子以外の三人は顔を合わせて笑い合う。
一月前、逃亡した部員がいた部活とは思えないやさしく暖かい空気だった。
麻雀のこと――好きですか。
京子(あの時は答えられなかった。でもすぐにわかったんだ)
私は、私は麻雀のこと――
戒能『中途半端ですが――キョーコは力に目覚めつつあります』
一月前、戒能が雀荘で言った台詞に目を白黒させた。
戒能曰く、異能の力を持つものと長くいればその影響を受け、時折目覚める人間がいるらしい。
しかし、そうならばなぜ自分は負け続けているのか。京子には訳がわからなかった。
そうして困惑する京子を余所に、戒能は話を続ける。
戒能『よりによって模倣という形で使っているとは……私が呼ばれた意味がわかったような気がします』
模倣――それは染谷まこの猿真似をしていることを差しているのだろう。
ちょっとでも染められそうな牌姿なら、無理にでも染めに向かう。
それくらいなら自分でもできるのではと京子は考えてのことだった。
戒能『しかし、その力は本当に相手のことを理解していないと十全に発揮されません』
実際のところ、まこの染め手は経験の積み重ねから来る、精細な山読み技術を持ってして実現されているものである。
なので、京子が行っていたのは、劣化模倣も良いところだった。
久のこと――
咲のこと――
数絵のこと――
まこのこと――
そんなもの京子に理解できる訳がない。
強者たる彼女たちのことなど――。
戒能『なので、キョーコには自分のことを理解する――自分の好きな麻雀を打つことから始める必要がありますー』
好きな麻雀?
意味がわからなかった。
元々、麻雀というのは久とお近づきになるための手段であって――目的ではなかった。
戒能『んー……重傷ですねー。最初に聞きますが、麻雀のこと――好きですか。』
京子『っ!』
楽しくなかったのかと聞かれれば、楽しかったと答える。
でも、それは久と麻雀が打てるからか、咲と麻雀が打てるからか、数絵と麻雀が打てるからか、まこと麻雀が打てるからか。
麻雀そのものがおもしろかったからか――好きだったからか。
京子『わかり……ません。私にはわかりません!』
京子のそれは叫びに近かった。
ぐるぐると色々なことが頭の中を駆けめぐり、うまく言葉で表せない。
戒能『……その答えを見つけた時が、あなたのスタートです』
そして、戒能は自身の連絡先を書いた紙を京子に渡す。
京子『これは……?』
戒能『事情はどうあれ、困っている少女を見放すほど薄情ではありません。またいつか会いましょう』
戒能はいつかと言ったが次の機会は早かった。
翌日、電話をかけるなり、京子は開口一番こう言った。
――大好きです!
完全完璧を目指していると、いつまでたっても投稿できそうにないので開き直って更新
スランプは書いて書いて書きまくって脱すしかない!
という訳でがんばります
今後ともよろしくお願いいたします
インターハイ長野県予選団体戦決勝。
参加58校の頂点を決める戦いが今、始まろうとしていた。
既に場決めも終わり、山がせり上がってくるのを待つばかりである。
美穂子「よろしくお願いします」
おっとりとした少女が、礼儀正しくあいさつをした。
東家 風越女子・福路美穂子
――証明する。私たちが最強だと。
純「おうっ! よろしく頼むぜ」
長身のボーイッシュな少女が、右手を上げて応えた。
南家 龍門渕・井上純
――あ~、何かハラ減ったわ。
睦月「よ、よろしくお願いします」
ポニーテールの少女は、緊張気味に頭を下げた。
西家 鶴賀学園・津山睦月
――私なりに精一杯。
数絵「よろしくお願いいたします」
青いリボンで髪をまとめた少女が、凛とした視線で全員を貫いた。
北家 清澄・南浦数絵
――私とおじいさまの麻雀。それが最強だ。
自身の強さを証明するために、仲間のために――各々が牌を握る。
今、決戦の幕が切って落とされた。
ルール
・東南戦・十万点持ち・順位ウマなし・先鋒~大将まで点数は引き継ぐ
・喰いタンあり・後付けあり・喰い替えなし
・表ドラ・裏ドラ・カンドラ・カン裏あり
なお、カンドラは暗カン即開け・明カン後開け
・赤ドラあり(赤五萬×1・赤⑤筒×2・赤5索×1)
・連風牌対子は4符として扱う
・役満の重複なし
・大三元・大四喜・四槓子のパオあり
・大明槓からの嶺上開花は責任払い
・国士無双に限り暗カンへのチャンカンが可能
・途中流局 九種九牌・四家リーチ・三家和・複数家による四カンツ
なお、その場合は親の連荘とする
・チョンボは子・親ともに4000オールの罰符
その局はノーゲーム扱いとし、場棒を増やさず親の連荘となる
・チョンボに該当する行為
錯チー・錯ポン・錯カン
誤ロン・フリテンロン
・チョンボに該当しないが、和了放棄となる行為
空チー・空ポン・空カン
少牌・多牌
先鋒戦・前半
東一局0本場 ドラ南 親 風越女子・福路美穂子
東家 風越女子・福路美穂子
南家 龍門渕・井上純
西家 鶴賀学園・津山睦月
北家 清澄・南浦数絵
美穂子配牌
六六九②③【⑤】357789白 ツモ七
美穂子(ようやく……と言っていいかしら。また龍門渕と打てる)
美穂子は愛おしそうに牌を撫でる。
美穂子にとって実に一年ぶりの対龍門渕戦だった。
伝統校の意地だったのか、それとも相手に断られたのか。
それは美穂子にわからないことだったが、ここ一年間、風越は龍門渕と練習試合を組んでいない。
リベンジしようとした秋季大会には、なぜか龍門渕が参加していなかった。
美穂子(さあ――勝負よ)打白
あまりにも長かった屈辱の時。
くすぶり続けた心の火。
それを今、全開にして――王者の座を取り戻す。
一巡目 純手牌
一一二三四四七九①④⑥⑧4 ツモ4
純(ふぅん……今年は楽しめそうだな)
上家の美穂子を見て口元を歪める。
昨年の県大会決勝では、誰も純を止めることができなかった。
麻雀で勝つということは当然楽しいことなのだが、あまりにも手応えがなさすぎた。
しかし、今年は一筋縄では行かないだろう。
純はそう確信していた。
純(バカヅキ状態の透華は間違いなくオレでも苦戦する相手。それを他家を使ってうまく押さえた風越の女。相手に不足はねぇ……)
昨年の風越戦は先鋒~中堅、大将は龍門渕のワンサイドゲームだった。
だが、副将戦だけは違う。
試合には勝ったが勝負には負けたという内容だった。
純(――勝つぜ)打①
目指すは完全勝利。
それ以外は眼中になかった。
一巡目 睦月手牌
一五六八八九③④④⑧8西白 ツモ6
睦月(何で私はここにいるんだろう……)
鶴賀学園麻雀部はつい一月前、何とか団体戦出場ができるだけの人数が揃った寄せ集め集団。
部にも部員にも愛着はあるが、今回の出場は記念出場。
期待していなかったと言えば嘘になるが、決勝の舞台に自分が座ることになるとは思いもしなかった。
『むっちゃん先輩がんばってっす』
自称重度のコミュ障という影の薄い後輩。
話してみると意外にテンションが高くてびびった。
むしろ自分の方がコミュ障なのではないかと落ち込んだりしたが、何だかんだで可愛い後輩である。
『が、がんばれ~』
いつもおどおどしている小動物系の同級生。
なにげに自分より身長もおもちも大きかったりするのだが、なぜだか小さく見える。
その豪快としか表せない闘牌には驚かされっぱなしだ。
あのくらいの運が自分にも欲しい。
『むっきー頼んだぞ』ワハハ
いつも半笑いを浮かべているムードメーカーな部長。
部活で何らかの騒ぎがあった場合、大抵元凶は彼女である。
そんな普段の様子からは想像できないが、麻雀のプレイスタイルは守備型。
とある例外を除けば、放銃率は部内で一番低い。
なんだかんだで尊敬に値する人物である。
『睦月、任せた』
いつも凛々しくて、かっこいい理想の先輩。
適切な作戦を出す参謀役で、ここまで来れたのは全て彼女のおかげだろう。
麻雀のプレイスタイルはバリバリのアナログ派で、何だか憧れる。
自分もあんな麻雀が打てるようになりたい。
睦月(うむ――任されました)打白
一巡目 数絵手牌
二三【⑤】⑥14457東北中中 ツモ南
数絵(東場にしては気が利いているじゃないか)
第一ツモでドラを引き、数絵は思わず笑みを浮かべた。
数絵(……無理をするつもりはないが、ギリギリまで攻める)
この二カ月で自分は恐ろしく強くなった――そう思う。
それまでも練習する場所だけは困らなかった。
祖父の知り合いのプロがいくらでも相手をしてくれた。
確かにレベルアップには繋がったが、負けぐせのようなものが付いていた。
周りには格上しかいない環境、たかが十五の小娘が勝てる訳がない。
しかし、清澄高校麻雀部では適度に勝って適度に負けた。
初めての近い世代でのライバル。
それは数絵の心を強くした。
――こいつらに絶対に負けられない、と。
数絵(無論ここでも――負けるつもりはない)打一
純「チー」打⑧
■■■■■■■■■■ チー五四六
捨て牌
①北四西一⑧
六巡目、純が動く。
美穂子がツモ切った五萬を喰いとった。
美穂子(私の手が進んだのを感じて鳴いたのかしら……)
六巡目 美穂子手牌
六六七九②③④【⑤】23789
八萬14索待ちという狭い一聴向だが、有効な手替わりまで考慮すればそれほど悪くない牌姿である。
美穂子(この娘のクセは映像があったから大体把握できてるけど……この鳴きだけは本当に注意が必要ね)
丁度一年前、純の前に風越の先鋒は大敗を喫した。
良いところまで手が進んだその瞬間、この長身の麗人は奇妙な鳴きを入れてくる。
そして、不思議とその後はこちらの手が進まなくなるのだ。
七巡目 美穂子手牌
六六七九②③④【⑤】23789 ツモ北
美穂子(やっぱり不要牌……)
有効牌をツモる可能性は決して高くないといえる牌姿だったが、今回不要牌を引いたのは必然のように感じられた。
美穂子(痛いわね……前半は実質三局しかないということになるのかしら)
――数巡後。
純「ツモ。300・500」
純手牌
一二三七八九④⑥44 チー五四六 ツモ⑤
東一局終了時点
一位101100 龍門渕
二位99700 鶴賀学園
三位99700 清澄
四位99500 風越女子
数絵ちゃんはどこから一を捻りだしたんだ…
東二局0本場 ドラ⑧ 親 龍門渕・井上純
東家 龍門渕・井上純
南家 鶴賀学園・津山睦月
西家 清澄・南浦数絵
北家 風越女子・福路美穂子
十巡目 美穂子手牌
三四四五六③④⑦⑧⑧456 ツモ②
美穂子(……)
ピタリと美穂子の手が止まった。
そして、ゆっくりと右目を開く。
純手牌
■■■■■■■ ポン白白白(北家) ポン⑥⑥⑥(南家)
捨て牌
五4八2九1
9⑨北西
打⑦筒で満貫手を聴牌だが、下家の純が露骨に染め手を匂わせる捨て牌と副露。
⑥筒が三枚切れなら⑦筒は比較的通りやすそうに思えるが、染め手ならばシャボ待ちの可能性も十分であり無視できない。
美穂子「リーチ」打⑦
しかし、美穂子は確信を持って⑦筒を打った。
放銃期待値と和了期待値を比較して――などというデジタル的思考とは全く関係ない部分で。
――風越控え室。
華菜「おおっ! キャプテン早くも開眼!」
優希「相手は死ぬ――だじぇ!」
純『チー』打發
純手牌
⑦中中中 チー⑦⑥⑧ ポン白白白(北家) ポン⑥⑥⑥(南家)
未春「なにやってんのこの人……」
和「一発消し……をするにはもったいない手牌です。⑦筒も残り一枚ですし……」
控え室は完全に空気が二手に分かれていた。
はしゃぐ華菜と優希、困惑する未春と和。
前者は早くも全開になった美穂子に興奮し、後者は純の不可解な鳴きに疑問符を顔に貼り付けた。
貴子「ん、そのままだとツモられそうな気がしたんだろう」
未春「コーチがミーティングで言っていた、井上純の流れ麻雀ってやつですか……」
十一巡目 美穂子手牌
三四四五六②③④⑧⑧456 ツモ北 打北
華菜「くっそー! 一発ならずだし!」
優希「そもそも消されてるけどな!」
十二巡目 純手牌
⑦中中中 チー⑦⑥⑧ ポン白白白(北家) ポン⑥⑥⑥(南家) ツモ【五】
貴子「ほら、その通りになっただろ?」
未春「ずらされなかったら今のがキャプテンのツモ。一発に赤で倍満になってましたね……」
和「ただの結果論です。流れだとか、そんなオカルトありえません」
――十三巡目。
「ツモ」
和了の発声をしたのは――
睦月「400・700です」
睦月手牌
一二五六七①①①234789 ツモ三
鶴賀学園先鋒、津山睦月だった。
純(……最悪は回避したぜ)
純手牌
二【五】中中 チー⑦⑥⑧ ポン白白白(北家) ポン⑥⑥⑥(南家)
東二局終了時点
一位102200 鶴賀学園(+1500)
二位100300 龍門渕(-700)
三位99300 清澄(-400)
四位98200 風越女子(-1400)
華菜「そんなのアリか――っ!」ガタン
未春「えっ!?」ビクゥ
貴子「見事に最悪を回避したな。敵ながらあっぱれと言う他ない」
というかお前らは去年も似たような光景を見ただろうがと、貴子は動じず返す。
貴子「にゃーにゃーうるせえんだよ。おい池田、あいつは誰だ?」
華菜「へ? キャプテンの福路先輩に決まってるし」
貴子「そう、キャプテンだ。今代の風越のキャプテンというのはどんなヤツなんだ?」
華菜「キャプテン――キャプテンはどんな打ち手にも負けない最強の雀士で、あたしたちの誇りだし!」
貴子「お前にしては珍しくわかってるじゃねぇか。なら今すべきことはわかっているな?」ニヤリ
華菜「祝勝会の会場を押さえとくし!」
未春「気が早すぎるよ、華菜ちゃん……」
優希「タコスはあるのか!?」
和「ゆーきも気が早すぎます」
寝ます
続きはまた明日の深夜に
>>291
むっきー多牌してんじゃん……
一二五六七①①234789 ツモ三
の間違いです。ごめんなさい
って符が変わるううう~っ!?
>>291は↓だったということで脳内補完お願いします
一二五六七①①①23477 ツモ三
東三局0本場 ドラ一 親 鶴賀学園・津山睦月
東家 鶴賀学園・津山睦月
南家 清澄・南浦数絵
西家 風越女子・福路美穂子
北家 龍門渕・井上純
美穂子『ツモ。1300・2600です』
美穂子手牌 ドラ一
一二三五六七②③④⑤⑥北北 ツモ①
捨て牌
9⑨中發42
二(←リーチ)北西
華菜「いよっし! キャプテンナイスですっ!」
未春「これで暫定トップだね」
優希「今回は普通に和了れたじぇ」
貴子「鳴けなきゃズラせねぇし、流れも変えられない。そんだけの話だろ。私から見りゃ、あいつも運に左右されて一喜一憂する普通の打ち手だ」
――運そのものを引き寄せる天江のような打ち手とは違って。
東三局終了時点
一位103400 風越女子(+5200)
二位99600 鶴賀学園(-2600)
三位99000 龍門渕(-1300)
四位98000 清澄(-1300)
東四局0本場 ドラ⑨ 親 清澄・南浦数絵
東家 清澄・南浦数絵
南家 風越女子・福路美穂子
西家 龍門渕・井上純
北家 鶴賀学園・津山睦月
睦月『ツモ。300・500です』
睦月手牌 ドラ⑨
一二三六七八③③12223 ツモ2
捨て牌
96東北59
發
華菜「鶴賀のゴミツモでキャプテンの3900が流されたし……」
美穂子手牌
一二三⑨⑨34567 ポン中中中
優希「それでもトップのままで次は二回目の親番だじぇ」
華菜「まあな」
東四局終了時点
一位103100 風越女子(-300)
二位10700 鶴賀学園(+1100)
三位98700 龍門渕(-300)
四位97500 清澄(-500)
――清澄控え室。
まこ「ついとるのう、風越と龍門渕が勝手につぶし合いをしてくれよるわ」
久「ホントにね……」
二~三万点のビハインドは覚悟しとったんじゃがのうと、まこは嬉しい誤算に頬を緩ませる。
追従する久も明らかな安堵の表情を浮かべた。
数絵にとって鬼門と言える東場。
有象無象が相手ならともかく、今回は決勝戦まで勝ち上がってきた強豪。楽な訳がない。
咲「でも、ここから先は数絵ちゃんの領域(テリトリー)」
京子「ぶっちぎれぇ!」
今、南風が吹き荒れる。
南一局0本場 ドラ4 親 風越女子・福路美穂子
東家 風越女子・福路美穂子
南家 龍門渕・井上純
西家 鶴賀学園・津山睦月
北家 清澄・南浦数絵
南場に突入した瞬間、正面から風が吹く。
純(風……?)
思わず顔を上げ、その方向を確認すると、そこには不敵な笑みを浮かべた南浦数絵がいた。
純(清澄の……確かあのオッサンプロの孫だとか言ってたっけな)
昨日、マスコミに騒がれていたのを思い出す。
何でそんな無名校にと疑問を抱きはしたが、特に深くは考えなかった。
なぜなら純のチームメイトには、プロアマ交流戦でブッチギリの一位になれる魔物がいたから。
プロの親類と言われるより、透華と互角以上に渡り合った美穂子の方がよっぽど強そうに思えた。
純(……そこそこやれそうじゃねーか)
すかさす評価を上方修正する。
強者のオーラで肌がビリビリと震えた。
この感覚が間違っていたことは今までにない。
純(アツくなってきたぜ!)
美穂子配牌
一二六七八八⑦157西發發中 打西
美穂子(あまり良い形ではないわね……)
發を鳴いて速攻――としたい配牌だが、萬子以外の形が悪すぎる。
場合によっては發が出ても鳴かず、落として喰いタンを狙った方が早いかも知れない。
二巡目 美穂子手牌
一二六七八八⑦157發發中 ツモ⑧ 打1
二巡目 純手牌
一四八九①①④④⑦⑧⑨69 ツモ【5】
純(ちっ……重すぎる牌姿だぜ)
手役が付けられそうにない牌姿。
赤ドラを引き入れたが、聴牌までが険しく長い。
どうせこの先はこれ以上伸ばしようのないクズ牌がごまんと来るのだろうと、純は思った。
純(まあそれでもやれることをやるしかねぇんだが)打9
睦月 打白
純(そいつは鳴けねぇ……)
最早和了る気はない。
数絵の出鼻を挫く。
純はそれだけを考えていた。
数絵 打①
純(――それだ!)「ポンッ!」
純手牌
一四八九④④⑦⑧⑨【5】6 ポン①①①(西家)
純(俺のクソみてえなツモ筋をプレゼントするぜ)打一
三巡目 数絵手牌
三三六七②③④⑤⑥⑦357 ツモ9
数絵(む……)打9
とんとん拍子に聴向数を減らす手牌の進行が急に止まった。
南場の入り口とはいえ、今の自分なら無駄ヅモなしで聴牌までたどり着く自信があったというのにだ。
数絵(龍門渕め……余計なことを)
六巡目 純手牌
八④④⑦⑧⑨44【5】6 ポン①①①(西家) ツモ4
純(こえー、三巡連続でドラツモかよ……)
ドラ4だが和了れる気のしない牌姿。
だが、純に後悔の念はない。
純(満貫潰させてもらったぜ)打八
六巡目 睦月手牌
三四五②③④⑤⑥⑦⑨⑨66 ツモ5
睦月(平和……)
ドラもなければ役もないシャボ待ち。
⑨筒が強いとはいえ、6索が弱く、裏ドラ期待を含めてもリーチはリスキーすぎる。
そんな思考でダマに構えていたところ、平和の付く5索を持ってきた。
睦月(トップの風越とは2600点差……和了れば逆転、攻めない理由はない)
睦月は点棒入れを開き、千点棒を手に取る。
睦月「リー数絵「ロン」チ」
しかし、その千点棒が場に出されることはなかった。
数絵手牌
三三五六七②③④⑤⑥⑦57 ロン6
捨て牌
南9白西3
数絵「5200」
睦月(突き刺さったッ! ……モロヒを嫌って3索は曲げなかったのか?)
そう思えば逆にツイていたとも言える。
8000が5200で済んだのだから。
睦月(何とか原点まで戻して次に繋ぎたいけど……)
南一局終了時点
一位103100 風越女子
二位102700 清澄(+5200)
三位98700 龍門渕
四位95500 鶴賀学園(-5200)
ちょっと短すぎますが、今日はここまでです
次回更新は明日の朝か、夕方にします
更新が遅くなって申し訳ありません
ですが、エタらせる気はないので、気長に待っていただけると助かります
気長に待つのはいいけどできたら遅くなるなら生存報告的なのは欲しいかな
極端だが別に予告した日より半年空きそうです!でも定期的に連絡あれば待てるもんよ
これから執筆開始します
投稿は三十分後くらいからになりそうです
>>312
了解です
更新が大幅に遅れそうなときは生存報告をします
南二局0本場 ドラ 親 龍門渕・井上純
東家 龍門渕・井上純
南家 鶴賀学園・津山睦月
西家 清澄・南浦数絵
北家 風越女子・福路美穂子
純配牌
三【五】①②④⑥⑨22459南中
純(ちっ……あれだけやっておいてこの程度の配牌か)
好調者のツモ筋を前局で奪ったが、結局和了られてしまったというのは良くなかった。
本来なら一気に自分に流れ込んで来るはずのツキが中途半端にしか来ていない。
純(だが俺にとっては上等の配牌だ……ドラが三つもあるんだ、喰いタンで12000貰うぜ)
急所が多すぎるが、和了れば満貫確定。
腕の見せ所だと純は口元を吊り上げた。
純(――止めてやる)打南
睦月「ポンッ!」
■■■■■■■■■■■ ポン南南南(東家) 打九
純(ダブ南……好きにしやがれ。俺の方が早いッ)
九巡目 美穂子手牌
二二三五六六七八②④⑥⑦⑧ ツモ⑤
美穂子(手の進みが遅いわね……やっぱり彼女達のせいかしら?)
比較的好形の多い配牌だったが、未だに一聴向とツモがいまいちだった。
美穂子自身はオカルトな能力を有していないが、オカルトを否定する訳ではない。
それと初めて出会ったのは三年前のインターミドル。
地獄単騎を苦もなくツモって裏ドラで爆発的な火力を生み出すあのお下げの少女。
本来、出和了りに特化したものである悪待ちを一線級の戦力にして見せたあの不思議な打ち手。
それと比較すれば、ツキがどうとか流れがどうとか言うのはずいぶんと理解出来る範疇である。
「南場だけ強い」という特異性に至っては、「東場だけ強い」という後輩がいるのだから最早常識の範囲内ですらあった。
美穂子(最少失点で凌ぐ……そして後半戦の東場で猛ラッシュ……というのが理想よね)
東家:純 ■■■■■■■■■■■■■
中9⑨①1④
⑥
南家:睦月 ■■■■■■■ チー三四五 ポン南南南(東家)
九西中發東⑦
白二7
西家:数絵 ■■■■■■■■■■■■■
①白③⑧⑨⑨
發⑥九
北家:美穂子 二二三五六六七八②⑤④⑥⑦⑧
發①13九⑦
3東
美穂子(対面は萬子待ち……他二人は私と同じくらいかしら)
自身の観察眼と捨て牌から読み取れる情報を総合する。
美穂子(……ギリギリまで押します)打②
筒子の受け入れを最大限に広げる打②筒を選択した。
純「チーッ!」
■■■■■■■■■■■ チー②③④ 打6
美穂子(――ッ! ダメね……二人聴牌、ドラが一枚も見えていないしもう押せないわ)
九巡目 睦月手牌
五七③④【⑤】⑤⑤ ツモ四 チー三四五 ポン南南南(東家)
睦月(――危険牌ッ!)
引いてきた四萬は、両面待ちへと変化する好牌ではなく、純に対する危険牌という意識が上回った。
睦月(でも……ここで④筒を打って逃げてもオリ切る自信はない)
中張牌でぶくぶくに肥え太った手牌は、他家から見れば格好の獲物でしかないだろう。
最早、どうにも後戻り出来ない場所まで踏み入れてしまっている。
睦月(通れ――)打七
純「それだッ!」
純手牌
【五】六②②222456 チー②③④ ロン七
純「――12000」
睦月「くっ……」
純(恨まないでくれよ? 東場では良い思いをさせてやったんだからな)
南二局0本場終了時点
一位110700 龍門渕(+12000)
二位103100 風越女子
三位102700 清澄
四位83500 鶴賀学園(-12000)
>>314
ドラは2索です
記入漏れすみません
すみません眠くなったので落ちます
続きは明日の朝か夕方に
南二局1本場 ドラ:4 親:龍門渕・井上純
東家:龍門渕・井上純
南家:鶴賀学園・津山睦月
西家:清澄・南浦数絵
北家:風越女子・福路美穂子
一巡目 数絵手牌
三三四六七②④⑥88東白中 ツモ4
数絵(悪くはない……字牌の処理を終えれば勝手にそれなりの形になりそうだ)打東
萬子が好形であるし、筒子の両嵌、8索の対子も悪くはない。
字牌を払っている間に、好牌が自然とくっつきそうに思えた。
二巡目 数絵手牌
三三四六七②④⑥488白中 ツモ②
数絵(だが、ちんたらしている訳にはいかない。龍門渕が鬱陶しい……)打白
鳴いて流れを変える――そんな打ち手はプロ雀士である祖父の知り合いにごまんと居た。
そして、その誰もが紛れもない強者であった。
だからこそ、数絵は警戒するし、対処法も知っている。
数絵(ツキの喰い合いになれば、自力がものを言う――私を舐めるなッ!)
三巡目 純手牌
三七八九【⑤】⑧⑨⑨278東發 ツモ6
純(親で連荘中だというのに手が重い……簡単には流れが断ち切れねぇみたいだな)打發
上の三色が見える牌姿だが、逆に言えばそれ以外は役牌程度しか手役が付かない状態である。
四巡目 純手牌
三七八九【⑤】⑧⑨⑨2678東 ツモ白
純(クソッ!)打白
別段不思議でも何でもない無駄ヅモだが、純は流れに乗れていないからだと考えた。
だから好調者とツモ筋を入れ替えるしかない。
そのためには、⑦筒・9索チーはむちろん、⑨筒ポンも行う。
出来面子からの鳴きも辞さない構えだった。
純(無理矢理でも動くしかねぇ……)
六巡目 睦月手牌
二二二三③⑤⑦⑧⑨2345 ツモ八
睦月(④筒が欲しいんだけど……そううまくはいかないか)
連続放銃で東場のリードが完全になくなり、ラスに転落。
親に連荘させるなぞ論外と言わざるを得ない状況。
リーチドラ1とはいえ三面張、それも幺九牌が待ちに含まれていれば和了率はかなり高くなる。
睦月(何が何でも置いて行かれない……勝負できる点差で次に回してみせる)打八
数絵「チー」打4
■■■■■■■■■■ チー八六七
睦月(この巡目で両面チー……? ドラ打ちということは張ったか手が高いか……)
数絵捨て牌
東白中三六4
睦月(この捨て牌じゃわかりっこない……)
ドラを切っているとはいえ、赤ドラありのルールでは打点が低いと考えるのは危険。
わかることは染め手の可能性は低いであろうということとくらいか。
役牌の可能性も同じく低そうだが、喰い三色なのかタンヤオなのか、意表を突いて三暗刻の可能性すらある。
睦月(だけどまだオリない……好形で聴牌できれば、親リーがかかってない限りは押す)
六巡目 美穂子手牌
四六六九④⑤⑦⑦⑧114發 ツモ③
美穂子(私だけ完全に蚊帳の外ね……)
着々と手の進む他家を尻目に、自身はようやく面子が一つできたという手牌。
どうにもこうにも手の施しようがない状態だった。
美穂子(でもそれは想定内……南場では点棒をキープすることが私の役割)打九
純「チーだ」打2
■■■■■■■■■■ チー九七八
美穂子(……? それを鳴くの?)
純捨て牌
①南發白東
美穂子(次のツモに注意ね……清澄が聴牌しているのを察知しての鳴きなら)
七巡目 美穂子手牌
四六六③④⑤⑦⑦⑧114發 ツモ8
美穂子(――これは清澄の当たり牌!)打發
ツモは一巡ずれて、美穂子のツモは鳴きがなかった場合、数絵がツモるはずだった牌。
明らかに不要な8索だが、美穂子は抱えて發を打った。
数絵(喰いとられた――だが、その程度で私を上回った気になるな)
数絵手牌
三四五②②④⑤⑥88 チー八六七
数絵(――聴牌してしまえば、私は止まらないッ!)
八巡目 数絵手牌
三四五②②④⑤⑥88 チー八六七 ツモ②
数絵「ツモッ! 400・600」
南二局1本場終了時点
一位110100 龍門渕(-600)
二位104100 清澄(+1400)
三位102700 風越女子(-400)
四位83100 鶴賀学園(-400)
今日はここで終了です
明日はちょっと時間がとれそうにないので、土日に一気に投稿したいと思います
南三局0本場 ドラ:④ 親:鶴賀学園・津山睦月
東家:鶴賀学園・津山睦月
南家:清澄・南浦数絵
西家:風越女子・福路美穂子
北家: 龍門渕・井上純
睦月配牌
六八②③⑦⑦⑨114東西西中 打4
一巡目 数絵手牌
三五六①②⑥⑦⑧⑨577北 ツモ④ 打北
一巡目 美穂子手牌
四五七⑥⑥⑦⑧⑨389南發 ツモ九 打發
一巡目 純手牌
一二③③⑤⑧345東東白白 ツモ2 打⑧
睦月『チー』打⑦
六八②③11東西西中 チー⑧⑦⑨
――風越女子控え室。
華菜「鶴賀は何やってんだ……? チャンタか役牌バックだろうけど、東風戦じゃないんだぞ」
優希「面前じゃ聴牌まで遠いから、先制されたら字牌連打でベタオリか? ビビってんだじょ」
華菜「半荘二戦のトータルだというのに弱気だな。あたしなら面前で進めて裏期待のリーチ一択だし」
優希「同じくだじょ」
二巡目 数絵手牌
三五六①②④⑥⑦⑧⑨577 ツモ【⑤】
未春「うわっ……ツモがずれて清澄に赤が入っちゃった……」
華菜「ツキを逃した……鶴賀に浮上の目はなさそうだし」
和「偶然です。ツキとか流れとかそんなオカルトありません!」
優希「出たじぇ……のどちゃんの石頭……」
数絵 打三
美穂子『チー』打3
七九⑥⑥⑦⑧⑨89南 チー三四五
華菜「へっ……? キャプテンそこで仕掛けるんですか?」
優希「八萬か7索ならわかるけど……二巡目で両面チーは、キャプテンらしくないじぇ」
二巡目 純手牌
一二③③⑤2345東東白白 ツモ6 打東
優希「辺張落とさないのか?」
華菜「打③東白の方が受け入れ枚数が多いし。ドラ側の③と役牌の白を切るより東切った方がいいだろ」
三巡目 睦月手牌
六八②③11東西西中 ツモ東 打中 チー⑧⑦⑨
華菜「にゃっ!? 良いとこ引いて来たし!」
三巡目 数絵手牌
五六①②④【⑤】⑥⑦⑧⑨577 ツモ6 打②
優希「イッツー目を捨てたじょ」
華菜「愚形聴牌を嫌ったか? ③筒が純カラだから結果的に正着打だし」
三巡目 美穂子手牌
七九⑥⑥⑦⑧⑨89南 ツモ7 打南 チー三四五
華菜「うおおぉぉぉぉぉ! キャプテンナイス聴牌! 速攻だし!」
優希「さっきはらしくない仕掛けだと言ってなかったか、イケダ?」
華菜「細かいことを気にしてたら胸が育たないぞ」
優希ペターン「なっ!?」ノドパイチラッ
未春ペターン「なっ!?」ノドパイチラッ
貴子ナミモリッ「なっ!?」ノドパイチラッ
和トクモリッ「どうして全員私の胸に目を向けますか!?」
華菜ペターン「というかコーチには成長の目が残されてないっしょ」ケラケラ
未春ペターン「あっ(察し)」
貴子ナミモリッ「ん? 誰だこんなところに⑦筒を置いているのは(唐突)」
イケダァ! オマエサッキジャンタクヲチラチラミテタダロ!
ナンデミルヒツヨウ……ギャー! チーピンガカオニメリコンダシ!
モイッコチーピン!
ギャーシ!
オラァ! リーチイッパツ(イミシン)ダ!
ニャアアアァァァァァァッ!? モウハコテンダシ……
ワルイナイケダァ……コノタクハコシタアリナンダ
優希ペターン「懲りないヤツだじょ……」
和トクモリッ「わざとやられてるのでしょうか……?」
未春ペターン「私は華菜ちゃんがドMでも大丈夫だからね……?」
数絵「リーチ」
北②①(←リーチ)
純(クソッタレ! いくら何でも早すぎるだろうがッ!)
心の中で悪態をついた純を責められる人間はいないだろう。
数絵の河に並んでいる牌は、美穂子が喰った三萬を入れても僅か四種。
ここまで序盤では待ちの読みようもない。
美穂子 打【5】
純(一発目に無スジの赤を捨てるかフツー!? 風越が押している……こいつも聴牌か!?)
四巡目 純手牌
一二③③⑤⑥23456白白 ツモ④
純(ドラ! スジの2索でオリても問題ないが……)
だが、それでは勢いに乗った状態で数絵を親番へと向かわせることになる。
それだけはどうしても避けたい。
捨て牌
東家:睦月 ■■■■■■■ ポン東東東(北家) チー⑧⑦⑨
4⑦中六
南家:数絵 ■■■■■■■■■■■■
北②①(←リーチ)
西家:美穂子 ■■■■■■■■■ チー三四五
發3南【5】
北家:純 一二③③④⑤⑥23456白白
東
純(――こっちだ)打白
睦月 打八
数絵 打西
睦月「……ッポン」打2
■■■■ ポン西西西(南家) ポン東東東(北家) チー⑧⑦⑨
純(こいつオリてなかったのか!? 余計なことしやがって、清澄のツモが増えただろうが!)
数絵 打南
純(ふぅ……ツモられなかったか。しかし鶴賀は、いまさら2索が出たのなら染め手とは違う……チャンタと仮定するなら2900点の手でリーチと喧嘩する気か!?)
美穂子 打【五】
純(……連続で赤打ってんじゃねーよ! どいつもこいつも好き勝手に打ちやがって!)
五巡目 純手牌
一二③③④⑤⑥23456白 ツモ7
純(現張りだが役がない……)
リーチをすると現張りのメリットはかなり薄まる。
むしろ待ちが愚形の純の方が出和了りの望みが低くなり、不利な立場になってしまう。
純「リーチ!」
しかし、純は躊躇なく白を曲げる。
純(――だが関係ねぇ。どうせ全員ツッパってんだ。ここで退いたら前半戦は清澄に持って行かれちまう)
数絵(ありがたい……わざわざリー棒までくれるとは、気が利いているじゃないか龍門渕)
数絵は、ニヤリと不敵に口元を歪めた。
既に南二局1本場の和了で自身は仕上がっている。
だからこそ、四家聴牌だろうが、めくり合いで負ける気はしかなった。
睦月 打七
睦月の打った和了牌を気にも留めず、数絵は山へと手を伸ばす。
数絵「ツモ。メンピンドラドラ三色」
六巡目 数絵手牌
五六④【⑤】⑥⑦⑧⑨45677 ツモ四
数絵「――裏1は4000・8000ッ!」
南三局0本場終了時点
一位121100 清澄(+17000)
二位105100 龍門渕(-5000)
三位98700 風越女子(-4000)
四位75100 鶴賀学園(-8000)
WBCを見るのでしばらく落ちます
決着が早く付けば、続きを書きます
強すぎワロタwww
初戦からこれくらい打ってくれてたら胃にやさしいんですけどね……
南四局0本場 ドラ:① 親:清澄・南浦数絵
東家:清澄・南浦数絵
南家:風越女子・福路美穂子
西家:龍門渕・井上純
北家:鶴賀学園・津山睦月
美穂子(片岡さんと打っているみたいね……真逆だけれど)
優希の力が最大限に発揮されるのは東一局、数絵の力が最大限に発揮されるのは南四局。
前者は起家で後者はラス親と、正に真逆。
美穂子(だからこそ、彼女の強さはわかる……だけど、決して無敵ではない)
東風戦に限った部内ランキングでは、優希はずば抜けた成績の一位。
美穂子ですら、敵わない。
だがしかし、それは無敗という意味ではないのだ。
美穂子(片岡さんも、南浦さんも、一般人じゃない。だけど、彼女達はまだ人間の域にいる)
先制を許しても、あっさり追いついた上、直撃を取った経験がある。
焼き鳥に追い込んだ経験もある。
百戦、千戦といった長期間のアベレージでは、決して勝てることはない。
だが、半荘二戦という短期決戦ならば、そんな逸般人を上回る成績を残せることも少なくない。
美穂子(全力で止める――そして後半戦の東場で目一杯稼ぐ。私にはそれができるはず)
風越に入学して以来三年間、いや正確には三年前のインターミドル以来だろうか。
超常の力を持った打ち手を倒す手段を磨き続けた。
だから、負けない。負けるわけがない。
一巡目 美穂子手牌
一三九⑦⑧11235東南白 ツモ南
聴牌までそう時間はかかりそうにない牌姿だった。
反面、打点はほとんど見込めそうにもない。
だけどこれで十分。
美穂子(ありがとう)
麻雀へか、仲間達へか、はたまた三年前のあの人へか、美穂子は最大限の感謝を送る。
美穂子(――私の輝ける舞台を用意してくれて)打5
純「チー」打一
■■■■■■■■■■ チー534
一巡目 純手牌
九⑥⑥⑧999東西中 チー534
純(これ何て役で和了れば良いんだ?)
麻雀では四面子一雀頭を完成させても、役がなければ和了できない。
そんな当たり前のことを、これでもかというくらい無視した鳴きだった。
純は、自分自身をバカなヤツだと鼻で笑う。
純(これ以上なく無様な両面チー……だが、ああするしかなかった)
好調者のツモ順をそのままにしておくのは危険極まりないと感覚が訴えかける。
南三局は睦月と美穂子が積極的に動く中、数絵はあっさりツモ和了った。
あまり効果はないのかも知れない。
だが、そうだとしても自分の打ち筋を、感覚を、裏切るわけにはいかないのだ。
純(心中する気はさらさらねぇが……このままではいられねぇ)
無様に散ることよりも、自分自身を表現できずに終わることが恐かった。
純(仕上がった清澄を潰す……そして後半でまくりきってやる!)
睦月(これは……逃げなかった私へのご褒美だろうか……)
出来過ぎた配牌に、睦月は天の采配をも連想した。
連続放銃で点棒を一気に手放しながらも、自身の親番では決して退かず、前に進んだ。
勇敢だったのか、無謀だったのか。
それは自分でもわからない。
だが、不思議と悪いことをしている気はしなかった。
一巡目 睦月手牌
⑤⑧⑨2244566889 ツモ發
緑の奇跡すら見える牌姿。
46000点もの点差を一気に縮めることも不可能ではない。
睦月(うむ……楽しい、のか?)打⑤
麻雀は和了れなければ意味がない。
麻雀は和了れなければおもしろくない。
ならば、楽しいと思えている今、この手が和了れない手であるはずがない。
二位と16000点差。
オーラスで大きな手を狙う必要性は薄い。
だが、数絵はその手を緩めることはなかった。
二巡目 数絵手牌
三六①①①②③④⑨8南白白 ツモ發
ドラ3で筒子の一色手が見える牌姿。
睦月の⑤筒を鳴いても良かったかも知れない。
だが、今の自分なら、多少時間はかかれど、この手を面前で育て上げられる。
数絵(――全力で潰す)打8
睦月「ポンッ」打⑧
■■■■■■■■■■ ポン888(東家)
数絵(染め手か……なおさら負けるわけにはいかない)
三巡目 数絵手牌
三六①①①②③④⑨南白白發 ツモ⑧ 打三
美穂子 打白
数絵(スルー……)
純 打白
数絵(それもスルー……!)
一鳴きも二鳴きもしない。あくまでも面前で。
行けると確信しているのだから、リズムは何が何でも乱さない。
睦月 打⑨
四巡目 数絵手牌
六①①①②③④⑧⑨南白白發 ツモ⑦ 打六
数絵(――これで一聴向ッ!)
純(やばい! 清澄やばい! 鶴賀もやばい! ここまで感覚が警笛を鳴らしていることはそうそうねぇぞ!)
三巡目 純手牌
九⑥⑥⑧999東西中 ツモ南 チー534
純(どれなら鳴ける? 何が何でもずらさねぇと、清澄はやばいまんまで清澄のツモを奪った鶴賀までやべぇ)
最早数絵は止まらない。
そんな数絵のツモ筋を奪った睦月も放置できない。
ならば、この局は美穂子に和了ってもらうのが理想。
純(考えろ……勘を働かせろ……それぞれの牌の持つ意味を導きだすんだ)
萬子……通るが、風越の欲しい牌とは違う。
筒子……清澄に直撃だ。
索子……通るが、風越の欲しい牌とは違う。
字牌……清澄の自風牌の東は論外。俺の自風牌の西は俺以外に必要性がない。
純(残りは中か南……常識的に考えれば絞るべきなのは連風牌の南……だから)
純 打南
純(――こっちで当たるんだろ? 風越!)
確信にも近い自信のあった問い掛け。
純の想いに応えるかのように、美穂子は南を晒す。
美穂子「ポン」打東
■■■■■■■■■■ ポン南南南(西家)
純(良しっ! これで少なくとも鶴賀は止まった……あとは風越に流してもらえれば良い)
四巡目 純手牌
九⑥⑥⑧999東西中 ツモ中 打九 チー534
睦月 打東
数絵 打南
美穂子 打⑦
――龍門渕控え室。
四巡目 美穂子手牌
一二三九⑦⑧1123 ツモ九 打⑦ ポン南南南(西家)
透華「……は? 何をやってますのあの女ッ!」
一「打⑦で聴牌に取らず……1索は鶴賀に危なく見えるけど、親に危なく見える筒子を落とすのは変だね」
智紀「九萬・1-4索の変則三面張を最終形に見立てた決め打ち……?」
透華「相変わらずやばげ! やばげですわ、あの女!」
数絵(これだけ染め手の気配を匂わせても押して来るのか……)
どういうことだと訝しむも、だからと言って何かが出来る訳でもない。
数絵はただ真っ直ぐに山へと手を伸ばす。
数絵(ふっ……この手を相手に)
六巡目 数絵手牌
①①①②③④⑤⑦⑧⑨白白發 ツモ⑥
数絵「リーチッ!」打發
高めツモで三倍満まで伸びるメンホンドラ3。
数絵(――攻め続けられるか?)
①④⑦筒白の四面張。
白は枯れているとはいえ、それでも実質三面張。
数絵(例えお前が当たり牌を掴まずとも――私がツモる方が早いッ!)
睦月「――ポ、ポンッ……」打9
■■■■■■■ ポン發發發(東家) ポン888(東家)
純「そいつをカンだ!」
純手牌
⑥⑥⑧東西中中 カン9999(北家) チー534
純(ちくしょうッ! 動きたくない場面だが、動かなきゃ和了られる……!)
嶺上ツモ西
純(張ったとして筒子で勝負ってか? 絶対にお断りだ……)
打東として⑥西中のポン聴、⑦でチー聴が取れる。
だが、その結果として放たれる⑥⑧筒は、果たして数絵に通るのだろうか?
そもそもこの局、純に和了る気はほとんどない。
その上、たった1000点の手を和了るには、あまりにもリスキーすぎる打牌だ。
ならば、⑦筒ツモからの⑥-⑨待ち、⑥筒ツモからの⑧筒単騎待ちを考慮した役牌落としがベストである。
純はそう考えた。
純(こっちだ)打中
純の打牌が終わると同時にカンドラがめくられる。
カンドラ表示牌:3
純(っし! 流れが変わったッ!)
もしも、流れが数絵に向いているのなら、カンドラは筒子となったはず。
だが、姿を見せたのは索子。
純(鶴賀か風越か……どっちにしろ清澄に和了られるよりはマシだ)
睦月 打5
数絵 打北
美穂子 打⑧
純(ん……? ⑧筒は通るのか……もったいねぇ)
純手牌
⑥⑥⑧東西西中 ツモ⑥ 打中 カン9999(北家) チー534
七巡目 睦月手牌
2234466 ツモ2 ポン發發發(東家) ポン888(東家)
睦月(……どうする?)
前巡5索を切っているので、打4は論外。
だが、このまま嵌3索待ちとするか、46索のシャボ待ちにするかという場面。
睦月(3索は私の一枚にカンドラ表示牌に一枚……どうせ索子は出ないだろうし)打3
純粋に残り枚数の多くなる46索シャボに移行させた。
睦月(和了らなきゃ……! 私が足を引っ張るわけにはいかないんだから!)
数絵 打4
睦月「あっ」
実況『あっ』
靖子『あっ』
風越控え室「あっ」
龍門渕控え室「あっ」
鶴賀控え室「あっ」
清澄控え室「あっ」
睦月「それ――ロン! 32000ッ!」
睦月手牌
2224466 ロン4 ポン發發發(東家) ポン888(東家)
美穂子「いいえ、5200点です」
睦月「えっ?」
美穂子「――頭ハネです」
美穂子手牌
一二三九九九1123 ロン4 ポン南南南(西家)
先鋒・前半戦終了時点
一位114900 清澄(-6200)
二位105100 龍門渕
三位104900 風越女子(+6200)
四位75100 鶴賀学園
実況『前半戦終了ううぅぅぅッ! ダークホース鶴賀学園の役満は成立ならず!』
――風越控え室。
華菜「キャプテンさすがですっ!」
優希「危なかったじぇ……」
和「ハラハラしました……」
未春「同じく……」
貴子「……ちっ」
靖子『これは風越のファインプレーだな。あえて最終形を索子に見定めることで鶴賀を潰し、結果的にトップの清澄を削った』
――龍門渕控え室。
透華「ぐぬぬ……うちが二位、プロの身内相手だといえ二位とは屈辱ですわ!」
一「いやあ、純くんがんばったんじゃない? あれ以上の結果はちょっとキツイよ」
智紀「まだ後半がある……」
透華「だまらっしゃい! もう後半しかないのですわ! 龍門渕の辞書に敗走という言葉は載っていませんでしてよ! 純! 後半は何が何でも勝って来なさい!」
実況『しかし、それでも清澄は前年度上位二校を相手にトップと快進撃を続けています』
――清澄控え室。
久「……」
まこ「惜しかったのう……河は和了れそうな顔をしとったんじゃが……」
京子「そんな日もありますよ。それもトップなんですから、後半も勝つ! なあ咲」
咲「うん。カツ丼さんみたいな人もいないし……大丈夫じゃないかなぁ」
久「ん~……」
まこ「さっきからあんたは何難しい顔しとんじゃ?」
久「いや……風越の先鋒……どっかで見たことがあるような、ないような……」
靖子『しかし鶴賀は苦しいな。格上三校を相手に-24900で萎縮しなければいいが……』
――鶴賀控え室。
智美「言われたい放題だなー」ワハハ
ゆみ「睦月は決して逃げていない。内容は悪いものじゃなかったさ。それに」チラリ
桃子「――私が全部取り返すからモーマンタイっすよ!」ヌゥ
佳織「うわっ! あなた誰ですか!?」ビクッ
智美「そいつがモモだぞー。佳織には何故か見えなかったけどなー」ワハハ
佳織「せ、妹尾佳織です。よろしくお願いします桃子さん」アタフタ
シーン
佳織「き、消えた……!?」
桃子「かおりん先輩の目の前にいるっすよ」ヌゥ
佳織「キャーッ! で、出たー!」ヒィィィィィィ
チョ! ドコイクンスカカオリンセンパイッ!
オバケェェェェ! タスケテサトミチャァァァァン!
オバケジャナイッスヨー!
ウソダァァァァァ!
智美「……大丈夫かなあ」ワハハ
ゆみ「笑ってる場合じゃない気もするな」
智美「笑ってないぞー?」ワハハ
ゆみ「……えっ?」
桃子「……えっ?」ヌゥ
佳織「……えっ?」
智美「みんな仲良しさんだなー」ワハハ
先鋒戦の前半だけで40kbってどういうことですかね……?
次は春分の日に更新します
東一局0本場 ドラ:九 親:龍門渕・井上純
東家:龍門渕・井上純
南家:鶴賀学園・津山睦月
西家:風越女子・福路美穂子
北家:清澄・南浦数絵
美穂子「ツモ。1300・2600です」
美穂子手牌
二三四五六九九⑦⑧⑨456 ツモ一
後半戦の開幕は、美穂子の高速和了だった。
好配牌からの好ツモ。
この局に限れば、誰が純の替わりに座っていたとしても止められなかったのでは。
そう思えるくらいに早かった。
純(クソッ! 早すぎる……)
それにはもちろん理由がある。
前半戦の南場で猛威を振るっていた数絵が、東場に戻ったことで勢いを失ったこと。
純(風越の女狐め……前半戦の勢いを全部持ってきやがった!)
そして、美穂子が頭ハネでツキを根こそぎかっさらって行ったこと。
――つまり、今の美穂子は南場の数絵と同じレベルであるという訳だ。
純(東二局は何が何でも止めねぇと……この勢いのまま親番に突入されるのだけはゴメンだぜ)
東家:龍門渕・井上純 102500(-2600)
南家:鶴賀学園・津山睦月 73800(-1300)
西家:風越女子・福路美穂子 110100(+5200)
北家:清澄・南浦数絵 113600(-1300)
東二局0本場 ドラ:3 親:鶴賀学園・津山睦月
東家:鶴賀学園・津山睦月
南家:風越女子・福路美穂子
西家:清澄・南浦数絵
北家:龍門渕・井上純
数絵「リーチ」
数絵捨て牌
白西⑤②發6
③2④(←リーチ)
純(来たか……こいつは東場だと弱いってわけじゃない。南場だと強すぎるだけだ。だが……)
調子は底とまでは行かなくても、かなり悪いはずの数絵が聴牌出来ている。
ならば、最高調とも言える美穂子が聴牌出来ていないはずがない。
美穂子捨て牌
⑨西⑧北八⑨
五⑤南
一見、何の変哲もない平和系の捨て牌。
だが、何かがおかしい。
純(索子が……ない)
仮に、美穂子が聴牌しているとすれば、染め手の可能性があるようにも見える。
だが、純は確信めいた予感があった。
純(2索もしくは3索か9索待ちの混一、いや清一か? リーチ者への安牌を打ったらズドン……ってパターンに見えるぜ)
九巡目 純手牌
三五五④⑥⑧1234899 ツモ【五】 打三
純(とりま壁だな)
流れが自身にないと承知の数絵が攻めているということは、少なくとも両面以上の好形聴牌。
ならば、壁は信用して良いはずだと純は考えた。
純(最悪一発さえ消えちまえば清澄に差し込んでも良い……風越だけは和了らさせねぇ)
睦月(一発目に無スジの生牌……? 龍門渕も攻めてる……これ以上の失点が出来ない私が取るべき手段は……)
純が五萬を暗刻抱えで三萬が壁になっていたことは、睦月にはわかりようがない。
完オリではないにしろ、攻めは放棄したも同然の打牌だったのだが、睦月からは押しているようにしか見えなかった。
十巡目 睦月手牌
六七七八八九①①⑥⑥889 ツモ7
睦月(聴牌だけど、役なし……リーチしても勝てるかは……どうだろ)
いくら親とはいえ、リーのみ、それもシャボ待ちで追っかけるのは気が引けた。
睦月(……オリ……かな?)
極めて常識的な、大多数の場面では間違いではない行動。
だが――
純(鶴賀のヤツ、さっきから何を考え込んでる? ――まさかッ!)
嫌な予感……いや、悪寒と表現した方が正しいかも知れない。
純の背筋を凍り付かせる絶対零度の稲妻が走った。
純(やめろ! 索子(そいつ)は安牌なんかじゃねぇ!)
叫ぶことが許されるのなら、今すぐ大声を上げたかった。
この局で、美穂子に和了らせることだけは避けなければならないのだから。
しかし、無慈悲にも睦月の右手から9索が放たれた。
睦月 打9
「――ロン」
美穂子手牌
1237779東東東中中中 ロン8
美穂子「12000点です」
東家:鶴賀学園・津山睦月 61800(-12000)
南家:風越女子・福路美穂子 123100(+13000)
西家:清澄・南浦数絵 112600(-1000)
北家:龍門渕・井上純 102500
実況『ついに逆転ッッッッッ! 王権復古! 風越が跳満でトップに躍り出ました!』
藤田『避けようのない放銃だったな……聴牌に取ってもダメ、片スジ頼っても⑥筒は通るが六萬は……』
数絵手牌
二二三三四四七八⑥⑦⑧5【5】
藤田『清澄に高い方で直撃だ』
10kb書けなかったけど、とりあえず更新
続きはまた明日に
東三局0本場
東家:風越女子・福路美穂子
南家:清澄・南浦数絵
西家:龍門渕・井上純
北家:鶴賀学園・津山睦月
ただただ、美穂子は冷淡に卓を見つめる。
燃え上がるようなルビー色の瞳が、凍り付かせるようなサファイアの瞳が、対局者を丸裸にする。
理牌を終え第一打を放ったその瞬間、他家の手牌はあたかも透けているような感覚になる。
他家の手の進み具合だけでなく、山に残っている牌は何かといった情報まで副次的に得られる。
それは、絶え間なき研磨を積んだその証にして、完成系。
今、卓の支配権は美穂子の元にあった。
「ロン、7900点です」
――一閃。
純の胸元を刃が掠める。
「ロン、6100点です」
――一閃。
数絵の脇腹へと銀光が奔る。
「ロン、4500点です」
――一閃。
睦月の額に赤い線が流れる。
実況『前半戦から合わせて怒濤の六連続和了――! 風越女子の勢いが止まりません!』
藤田『とにかく周りが良く見えている。福路とその他三人では、認識できている情報量が全然違うのだろうな』
華菜「よっし! キャプテンナイスです!」
優希「すごいじぇ! 東場の私よりほんのちょっと弱いくらいだじょ!」
美穂子の大活躍に、華菜は自分のことのように喜びを爆発させる。
続く優希の発言は、それに水を差してしまうかのように捉えられてしまってもおかしくない。
だが、それを咎めるものはいない。
東場で最強の存在は彼女なのだから、そしてその優希が自分よりほんのちょっと弱いと表現している。
それは、これ以上のない最大の賛辞を送っていることに他ならないのだと誰もが知っているのだ。
未春「あはは、片岡さん、それだけは譲らないんだ」
優希「私は東風の神だからな!」
和「はあ……ゆーきは、南場でも神になれるくらい集中できればもっと強くなれますよ」
優希「それは無理だじぇ!」
ジト目を送る和に優希は胸を張って答えた。
東三局3本場 ドラ:北 親:風越女子・福路美穂子
東家:風越女子・福路美穂子 141600(+18500)
南家:清澄・南浦数絵 106500(-6100)
西家:龍門渕・井上純 94600(-7900)
北家:鶴賀学園・津山睦月 57300(-4500)
睦月(……これが全国レベルの打ち手――こんなにも差があるというのか)
緊張の糸が今にも切れそうだった。
元々、出場できただけでもラッキーという程度だった大会。
それでも、決勝戦まで進んでしまうと欲が出る。
もっと打ちたい。もっと勝ちたい。もっと――強くなりたい。
前半戦の南場以降、終始劣勢ながらも睦月の精神をその想いが支えていたが限界が近づいていた。
一巡目 睦月手牌
一二二②③【⑤】⑧28南南北白 ツモ⑨ 打2
睦月(……無理だ! この人達を相手にこの手牌で勝負は……)
北か白が重ならない限りは染め手に行くしか和了り目はなさそうな牌姿。
ただ、染めるにしても染めないにしても面前での聴牌は厳しく、副露を駆使しなければならないだろう。
睦月(甘い牌が出てくる訳がない……! 絞られて聴牌できずが関の山だ……)
それは刷り込みに近い恐怖のインプット。
不可思議な鳴きでツキを喰い獲る純。
そして脅威の手牌読みで急所牌をビタ止めできる美穂子の力が合わさってのものだった。
二巡目 睦月手牌
一二二②③【⑤】⑧⑨8南南北白 ツモ④ 打8
睦月(私は……どうすれば……)
純(まずい、鶴賀がそろそろ限界か? 冗談じゃねぇぞ、風越をこれ以上走らせてたまるか)
もしも、ここで睦月の戦意が削がれてしまえば、美穂子の障害が一つ減ることになる。
そうなればますます点差は広がり、風越優勢の流れを形勢させてしまう。
純「ポンッ!」打1
二巡目 純手牌
六七⑥⑦⑦⑦3【5】北中 ポン888(北家)
純(クソッタレ! 世話の焼けるお嬢様だ!)
無駄に空気の読める自分が嫌になる。
麻雀がただの絵合わせゲームならスルーすることができたというのに。
純(相手が機械なら関係ない、聴牌効率だけを重視した打ち方が正着だ。だが人間はそんなに単純じゃねぇ、必ず偏りが発生する)
放っておければどれだけ気楽なものか、気づかなければどれだけ安易なものか。
純(俺はその偏りを利用する、それが勝利へと近づく方法と知っているから)
――だから、ほっとけねぇ。
純(最後のプレゼントだ、風越のツモ筋をお前にやる! これ以上は何もできねーぞ!)
三巡目 睦月手牌
一二二②③④【⑤】⑧⑨南南北白 ツモ⑥ 打二
四巡目 睦月手牌
一二②③④【⑤】⑥⑧⑨南南北白 ツモ⑧ 打二
五巡目 睦月手牌
一②③④【⑤】⑥⑧⑧⑨南南北白 ツモ① 打一
睦月(これは……)
流れというものが存在するのならば、それは間違いなく自分に向いているのだろう。
そう錯覚させるほどに、染め手へとツモは偏っている。
睦月(まだ、大丈夫……私はやれる……!)
六巡目 睦月手牌
①②③④【⑤】⑥⑧⑧⑨南南北白 ツモ南 打白
睦月から無作為に放たれた白。
それに手を伸ばす者がいた。
「ポン」
美穂子手牌 ■■■■■■■■■■ ポン白白白(北家)
純(バッカヤロウゥゥゥッ! 簡単に役牌手放してるんじゃねぇぞ! これでツモ筋が元通りじゃねぇか!)
美穂子 打⑦
純「ポンだっ!」打中
七巡目 純手牌
六七⑥⑦3【5】北 ポン⑦⑦⑦(東家) ポン888(北家)
純(鳴きたきゃないが――風越に元のツモ筋を与える訳には行かねぇ!)
睦月「リーチ」打⑨
純(そら来た! お前の連荘もここで終わりだ、風越)
睦月「一発ツモ」
八巡目 睦月手牌 ドラ:北 裏ドラ:北
①②③④【⑤】⑥⑧⑧⑧南南南北 ツモ北
睦月「6300・12300ッ!」
東家:風越女子・福路美穂子 129300(-12300)
南家:清澄・南浦数絵 100200(-6300)
西家:龍門渕・井上純 88300(-6300)
北家:鶴賀学園・津山睦月 82200(+24900)
実況『三倍満炸裂ゥゥゥッ! ダークホース鶴賀学園が風越の連荘を止めたァァッ!』
ゆみ「龍門渕に助けられたな。しかし、睦月の判断があってこその和了だ」
モモ「むっちゃん先輩が、枚数を重視して北打ってたら終わってたっすね」
美穂子手牌
三四五④⑤⑥東東東北 ポン白白白(北家)
智美「ガン牌してるんじゃなかってくらい、こっちの浮き牌に合わせてくるなー」ワハハ
佳織「がんぱい?」
ゆみ「あー、ガン牌っていうのは……」
>>398
裏も北
およ、わかり難い表現でごめんなさい
>>399さんのおっしゃる通り、裏ドラも北なので11翻(三倍満)です
>八巡目 睦月手牌 ドラ:北 裏ドラ:北
>①②③④【⑤】⑥⑧⑧⑧南南南北 ツモ北
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