ベルトルト「残酷な決断」(20)
太陽が西に沈み、訓練兵の貴重な休日が既に終わろうとしていた。
町の方では、今日、一日を存分に楽しんだ訓練兵の賑やかな声が響いていた。
その中に珍しい3人組がいた。
クリスタ、ユミル、そしてベルトルトだ。
「ベルトルさん、今日は一日中、可愛い2人の女の子と遊べて楽しかったろ?」
ユミルのニヤついた表情はいつもにも増していた。
「な…僕は別にそんな…」
「ユミル!あんまり可愛いからと言ってベルトルトをからかい過ぎだよ」
クリスタが毎度のようにユミルを叱りつける。
「ははっ、ベルトルさんをからかうのは楽しくて仕方ないんだ、クリスタ」
ユミルはクリスタの言うことを意に介さず、クリスタに抱きついた。
「ちょっと!急に抱きつかないでよ」
「いいじゃん。女同士だし」
「もー、そういう問題じゃないの」
クリスタは呆れた顔でユミルを見つめた。
「あの…今日はさあ、とても楽しかったよ」
ベルトルトが急に口を開いた。
「へへっ、それは良かったな。じゃあ、また今度、誘って……」
するとユミルが口を急に閉ざし、沈み太陽の方に指を指した。
「あれは、エレンとアニか……」
沈みゆく太陽を背景に2人の姿は赤く輝やいていた。
「綺麗だね……」
「ああ…でもクリスタの方が綺麗だ」
ユミルの言葉を無視し、クリスタがベルトルトに視線を向けた
「…………さてと、もう帰ろうかな、ベルトルト」
(アニ………)
「ベルトルト?」
「うん…あ!ゴメン。ボーッとしてた」
「ふふっ、ベルトルト可愛い」
「なあ、クリスタ。さっきのは愛の告白なんだが」
「はいはい、そうですか。もう聞き飽きたよ、ユミル」
するとクリスタが急に走り出した。
「あ…クリスタ!何を!?」
ユミルはクリスタの思わぬ行動に驚いた。
「ほーら、速く走らないと日が暮れちゃうよ!」
クリスタが軽快な声で、ユミルをからかう。
「そうか、そういうことか。クリスタめ………よし!捕まえてやるぞ!」
そう叫ぶと同時にユミルも走り出した。
「ほらっ!ベルトルさんも急げよ。クリスタに置いていかれるぞ」
2人の行動を呆然と見ていたベルトルトは、あっと呟き、気付けば2人は既に遠くの方まで行っていた。
「置いてけぼりか……」
そう呟きながら、夕日をまた眺めた。
美しくない夕日が滲んで見える。
そして、色々な感情が込み上げ、ただ悲しさだけが残った。
続きは後で。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません