英雄「俺がやりすぎ?」(4)
英雄「どういうことですか?」
賢者「その言葉の通りだよ」
英雄「俺はただ、助けられる人を助けようとしているだけです!それの何がいけないんですか!」
賢者「君は英雄として……いや、一人の人間として……余りにも頑張りすぎた」
賢者「考えてもみてくれ。君は魔物を倒しつくし、世界に 平和を授けてくれた」
英雄「俺だけの力じゃない!アナタがいたから俺は!」
賢者「私は背負わせすぎたのかもしれないね。……少し、山にでもいかないかい?」
賢者「この山は、君の故郷があったところだね」
英雄「……」
賢者「君は剣の技術に長け、王国の騎士になることを夢見て鍛錬を重ね……遂に王都から声を掛けられる程の実力に成長したね」
英雄「やめてください。あの時の俺は未熟者でしかありません」
賢者「王が君に下した命令は遺跡の調査。そこで君は、いや君たちは世界で初めて魔物と戦った人間なったんだったね」
英雄「……未熟だった俺は、自分の身しか守れなかった」
賢者「普通は生きているだけで凄い話なんだけどね」
賢者「何とか魔物を倒した君は、息が切れながら故郷にたどり着き、魔物たちに襲われる故郷を見ながら、そこで一度息絶えてしまったね」
英雄「……正直、今でも実感がわきません。俺は一度死んだのに今も生きていて」
賢者「魔物を殲滅するための数百年間を、老いずに生きていたことにかい?最も、老化しないのは今も同じだけど」
英雄「……俺はただ、助けられる人を助けたかっただけです」
賢者「その通りだ。だから私は、私の命を糧に君を蘇らせ、こんな過酷な数百年間を過ごさせてしまった」
英雄「……」
賢者「私は魂どころか、君にしか認識されない存在になってしまったが、魔法は問題なく扱えるし気にはしていない。
謝るべきなのは私の方だ」
賢者「魔物は増えていき、王国を滅ぼし、大陸を、世界を掌握し……人間も君以外は魔物に支配される存在になってしまっていた」
英雄「俺は結局、今でもアナタの正体を知りませんが……ただ、戦い続けた」
賢者「戦って、戦って、戦って戦って戦って戦い続けて」
賢者「まずは少し知能集団を壊滅し」
賢者「次に王国だった土地に住む魔物を滅ぼして」
賢者「更に大陸を掌握していた魔物も打ち倒し」
賢者「今さっき、恐らくはこの世界最後の魔物も殺し、君は最初に倒した魔物から生まれた存在を全て消すことに成功した」
英雄「本当に最後なんですか?こんなにあっけないものなんですか?」
賢者「ああ、最後さ。きっとね」
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