美鳥「西園美鳥、ミッションスタート!」 (34)
美鳥「美魚がこの世界に留まって欲しいって思ってくれたおかげであたしはまだここにいる」
美鳥「でも、あくまであたしは美魚の影」
美鳥「だから影は影らしく、隠れてミッションをこなすべきよね」
美鳥「!!早速困ってる人の予感!」
美鳥「闇の執行部?…なにこれ、何かのマンガなの?」
美鳥「でも嘘には見えないのよね、なんだか文字とか真剣だし」
美鳥「…何より視線を感じる」
??「じーーーーー!!!」
美鳥「…変な金髪がすっごい見てる」
美鳥「ま、いいか。あたしはやることをやるだけよ」
美鳥「さて、そんなこんなで地下迷宮まで辿り着いちゃったよ」
美鳥「…スクレボをなんとなく見てて助かったって感じ」
美鳥「よし、行きますか」
??「…さぁて、お手並み拝見といきましょうか…」
地下一階
美鳥「こんな落とし穴引っかかる人いないでしょ、子供でもなけりゃ」
美鳥「さて、先に行こうっと」
??「落ちる!?落ちてる!?ぎゃあああああああぁぁぁぁぁ…」
地下八階
美鳥「何度か死にかけたけど、なんとかここまで来たわね」
美鳥「ねえ、大丈夫?」
沙耶「…いつから気付いてたの?さすがね、影と名乗るだけあるわ」
美鳥「いや、それよりボロボロだけど」
沙耶「そんなこと関係ないわよ!ええそうよ、あなたみたいな普通の子が来られたのに一流のスパイたるあたしはトラップ引っかかりまくったわよ!おかしいでしょ、笑いなさいよ!!」
美鳥「あっはっはっは」
沙耶「うんがー!笑うなー!!」
美鳥「あれが大ボス?」
沙耶「へ?」
時風「…」
沙耶「来たわね…時風瞬」
美鳥(あれ、あれって?)
沙耶「クソックソッ」パンパン
沙耶「相変わらず効きやしない!!」パンパン
時風「無駄だと言っている、お前はここでゲームオーバーだ」
沙耶「く…!」
美鳥「はいはい、そこまで」
沙耶「へ?」
時風「何の真似だ、部外者は出しゃばるな」
美鳥「ほい」ピラッ
時風「」
沙耶「ねえ、こいつ伸びちゃったけど何したのよ」
美鳥「魔除けみたいなもんだよ」
美鳥(理樹くんの園児服写真、予想通り効果は抜群ね)
美鳥「これでいい?」
沙耶「ええ、こいつがいなけりゃあたしは大丈夫よ。ありがとう」
美鳥「このくらいいいって、じゃあ、後は頑張って」
沙耶「ええ!」
美鳥「やれやれ、1つミッションコンプリートはしたわけだけど」
美鳥「…3日もかかっちゃった」
美鳥「疲れたし今日はお風呂入って寝ようかな…」
美鳥「あ、あの子名前聞いてなかった」
美鳥「ま、いっか。機会があればまた会うでしょ」
翌日
美鳥「」
沙耶「…」
美鳥「えっと、地下迷宮はクリアしたんでしょ?まだなんかあるの?」
沙耶「ええ…直枝理樹君って知ってる?」
美鳥「おや、理樹君の知り合い?」
沙耶「えっと…そうじゃなくて」
沙耶「理樹君を紹介してほしいなって」
美鳥「」
美鳥(なんか、スパイの顔からメスの顔になってるし)
美鳥(それにすごく、下世話な気がすると言うか)
美鳥「うーん、あたしもそこまで仲がいいわけじゃないけど」
美鳥「頼まれたからには断れないね、任せて」
沙耶「ほんと?ありがとう!」
美鳥「そんなに理樹君が好きなんだねぇ」ニヤニヤ
沙耶「そそそsssそんなんじゃないからあああああ!!」パンパン
美鳥「わかったわかった、銃を乱射しない」
美鳥「じゃあ作戦を建てなきゃね」
沙耶「作戦って?」
美鳥「そりゃもちろん、あなたと理樹君が仲良くなる方法!」
美鳥(作戦の内容はこうだ)
美鳥(まずあたしが美魚のフリをして理樹君をグラウンドに呼び出す)
美鳥(話している途中、仕掛けであたしに矢が飛んでくる)
美鳥(…なんで矢かはわからない、あの金髪の子が譲らなかった)
美鳥(その矢からあの子があたしを庇ってくれる)
美鳥(要は話すきっかけづくり…って感じだけど)
美鳥(…不安だ)
グラウンド
理樹「おまたせ、西園さん」
美鳥「来ていただきありがとうございます、直枝さん」
理樹「ううん、西園さんから呼び出してくれるなんて珍しいね」
美鳥(えーと、この位置…っと)
美鳥「話したいことがありましたから」
理樹「話したいこと?」
美鳥(いや、ないんだけどね。なんとか場を繋がなきゃ)
美鳥「はい。…美鳥を覚えていますか?」
理樹「え、美鳥を?…うん、もちろんだよ、大切な…僕と美魚にとって大切な人だからね」
美鳥(あれから大分経つのにまだ覚えててくれたんだ)
美鳥(しかも大切な、か)
美鳥(…嬉しいよ、理樹君)
理樹「美鳥がどうかしたの?」
美鳥「あ…いえ、また美鳥に会えたらいいですね…と、思いまして」
理樹「うん…そうだね、僕も会いたいよ」
美鳥「!」
理樹「って、ええ!?」
美鳥(矢が…今だよ、金髪の子、あたしに飛びついて…)
沙耶「」
美鳥「」
美鳥(ありのまま今起こったことを話すよ)
美鳥(あたしに矢が飛んできたと思ったら金髪の子の額に刺さった)
美鳥(何を言ってるかわからないと思うけど)
美鳥(…あたしにもわからない)
理樹「う、うわああ!?や…矢ぁ!?なんでこんなとこで矢が飛んでくるのさ!!」
美鳥「ちょ、ちょっと、大丈夫!?」
沙耶「…あ、先端が吸盤だこれ」
美鳥「」
理樹「え…?」
沙耶「あ、あはははは…」
美鳥「…驚かせて、このバカ」
沙耶「すみません」
理樹「えっと、よくわからないけど無事ならよかったよ」
美鳥「まったく、心配させないで下さい」
美鳥「それと、結果はともかくありがとうございます」
理樹「僕からもお礼を言うよ、西園さんを助けてくれて」
沙耶「え、ええ、このくらい造作も無いことよ!」
沙耶「あーっはっは!!」
美鳥「あ、わたしはこれで、直枝さんはその子を」
美鳥「もしかすると、倒れた時に怪我をしているかもしれませんし」
理樹「うん、わかったよ、じゃあまたね」
美鳥(頑張れ、金髪の子)
美鳥「あれから数時間」
美鳥「うまくいったかなー」
理樹「あ、ここにいたんだ」
美鳥「!」
美鳥「直枝さん」
理樹「芝居はしなくていいよ…久しぶりだね、美鳥」
美鳥「あ」
美鳥「気付いてたんだ、いつから?」
理樹「最初から、かな」
理樹「…美鳥と西園さんは似てるけど、なんて言ったらいいかな…わかるから」
美鳥「…へぇ」
美鳥(やっぱり理樹君には敵わないなあ)
美鳥(あの世界であたしをあたしと見てくれた理樹君)
美鳥(その理樹君に下手な芝居しても仕方なかったか)
理樹「でもどうして?美鳥は消えたはずだよね…」
美鳥「理樹君と鈴ちゃんはどうして今居るの?他の皆も。つまりはそういうこと」
美鳥「美魚が願ったあたし、だからあたしはここにいるわけ」
美鳥「…全然わかりにくいか」
理樹「ううん、わかるよ、大丈夫」
理樹「僕も美鳥にまた会いたかった」
理樹「ちゃんとお礼を言ってなかったから…ありがとう、僕を…西園さんを助けてくれて」
美鳥「そんなこと、忘れてくれてよかったのに…」
美鳥「…じゃああたしからもありがとう、だね」
理樹「え?」
美鳥「お姉ちゃんが願ったからここに居られたんだと思った」
美鳥「…理樹君もだったんだね、あたしを願ってくれたのは」
美鳥「だから、ありがとう」
美鳥「本当の、西園美魚の妹…西園美鳥にしてくれて」
その夜
美鳥「来ると思ってた」
沙耶「あなたには感謝しきれないわね」
沙耶「…理樹君と友達になれたわ」
美鳥「あたしもあなたには感謝してるよ」
美鳥「おかげさまで、理樹君と話せた。あたしとして」
美鳥「ありがとう」
沙耶「…」
美鳥「…」
沙耶「ふふっ」
美鳥「あははっ」
美鳥「そう言えば、名前を聞いてなかったよね」
沙耶「あ…そうね、あたしもあなたの名前を知らない」
美鳥「あたしは西園美鳥」
沙耶「朱鷺戸沙耶よ、改めてよろしくね、美鳥…あたしの最初の友人として」
美鳥「ええ、あたしにとっても初めての友人よ」
美鳥「よろしく、沙耶」
その日、初めてあたしに友達ができた
西園美魚としてでなく、西園美鳥としての
夜の空に月にかかる雲
それは、鳥の姿に見えた
END
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乙